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特表2023-554364正極活物質の再生方法及びこれから再生された正極活物質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】正極活物質の再生方法及びこれから再生された正極活物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20231220BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20231220BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231220BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01M10/54
H01M4/525
H01M4/36 D
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536176
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 KR2022010773
(87)【国際公開番号】W WO2023038283
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0120485
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】セ・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨンシク・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・キョン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ソ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョンベ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウンキュ・ソン
【テーマコード(参考)】
4G048
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H031AA00
5H031BB00
5H031BB01
5H031BB02
5H031RR02
5H050AA02
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB07
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA13
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、正極活物質の再生方法及びこれから再生された正極活物質に関し、より詳細には、(a)集電体及びこれにコーティングされた正極活物質層を含む廃正極を、空気中で300~650℃で熱処理して、正極活物質を回収するステップと、(b)回収した正極活物質を塩基性のリチウム化合物水溶液中で10分~40分間沈降させるステップと、(c)前記沈降後に上澄み液を除去し、沈降物を収得するステップと、(d)乾燥した沈降物にリチウム前駆体を添加し、空気中で400~1000℃でアニーリングするステップとを含む正極活物質の再生方法及びこれから再生された正極活物質に関する。
本発明によれば、再生正極活物質から発生する微粉を除去することで、電池の出力性能(rate performance)を大きく改善し、酸を用いないので環境に優しく、これによって、中和及び廃水処理が必要でないので、工程費が低減され、正極活物質を分解せずにそのまま再生するので、捨てられる金属元素がなく、集電体を溶解しないので、これの回収が可能であり、有機溶媒を使用しないので、有毒ガスの発生又は爆発の危険性がなく安全であり、熱処理及び沈降などの管理が容易な工程を用いることで大量生産に適した、正極活物質の再生方法、及びこれから再生されて電気化学的性能、抵抗特性及び容量特性に優れた正極活物質を提供する効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)集電体及び前記集電体にコーティングされた正極活物質層を含む廃正極を、空気中で300~650℃で熱処理して、正極活物質を回収するステップと、
(b)回収した正極活物質を塩基性のリチウム化合物水溶液中で10分~40分間沈降させるステップと、
(c)前記沈降させるステップの後に上澄み液を除去し、沈降物を収得するステップと、
(d)前記沈降物にリチウム前駆体を添加し、空気中で400~1000℃でアニーリングするステップとを含むことを特徴とする、正極活物質の再生方法。
【請求項2】
前記(a)ステップの前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー及び導電材を含むことを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項3】
前記正極活物質は、下記化学式1
[化学式1]
LiNiMnCo2+δ
(前記化学式1において、Mは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群から選択される1種以上を含み、1<a≦1.1、0<x<0.95、0<y<0.8、0<z<1.0、0≦w≦0.1、-0.02≦δ≦0.02、x+y+z+w=1である。)で表されることを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項4】
前記(b)ステップは、前記塩基性のリチウム化合物水溶液100ml当たり正極活物質0.1~100gを投入して沈降させることを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項5】
前記(b)ステップの前記塩基性のリチウム化合物水溶液は、塩基性リチウム化合物を0重量%超~15重量%以下含むことを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項6】
前記(b)ステップは、前記回収した正極活物質を沈降させる前に、前記回収した正極活物質と前記塩基性のリチウム化合物水溶液を撹拌して洗浄することを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項7】
前記撹拌は、一週間以内で行うことを特徴とする、請求項6に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項8】
前記(c)ステップの前記沈降物は、粒子サイズがバイモーダル(dimodal pattern)以上のマルチモーダルパターン(multimodal pattern)を有し、前記マルチモーダルパターンは、粒子サイズが小さいピークが、粒子サイズが大きいピークよりもピーク高さが低いことを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項9】
前記(c)ステップの沈降物は、粒子サイズ1μm以下の粒子が合計5体積%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項10】
前記(c)ステップは、収得した沈降物を乾燥するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項11】
前記(d)ステップのリチウム前駆体は、LiOH、LiCO、LiNO及びLiOからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項12】
前記(d)ステップのリチウム前駆体は、リチウムの量を基準として、少なくとも前記(a)ステップの正極活物質内のリチウムのモル比から、減少した沈降物内のリチウムのモル比の差に該当する量だけ添加することを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項13】
前記(d)ステップのリチウム前駆体は、前記(a)ステップの正極活物質内のリチウムの合計100mol%を基準として1~40mol%に該当するリチウムを提供できる量で添加することを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項14】
前記(d)ステップのアニーリング温度は、前記リチウム前駆体の融点を超える温度であることを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項15】
前記(d)ステップのアニーリングした沈降物を、金属又は炭素を含有したコーティング剤でコーティングした後、100~1200℃で熱処理するステップ(f)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の正極活物質の再生方法により製造されることを特徴とする、再生正極活物質。
【請求項17】
下記化学式1
[化学式1] LiNiMnCo2+δ
(前記化学式1において、Mは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群から選択される1種以上を含み、1<a≦1.1、0<x<0.95、0<y<0.8、0<z<1.0、0≦w≦0.1、-0.02≦δ≦0.02、x+y+z+w=1である。)で表される化合物を含み、粒子サイズがバイモーダル(dimodal pattern)以上のマルチモーダルパターン(multimodal pattern)を有し、前記マルチモーダルパターンは、粒子サイズが小さいピークが、粒子サイズが大きいピークよりもピーク高さが低く、フッ素(F)の含量が5000ppm以下であることを特徴とする、再生正極活物質。
【請求項18】
前記再生正極活物質は、表面が、金属又は炭素を含有したコーティング剤でコーティングされたことを特徴とする、請求項17に記載の再生正極活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2021年09月09日付の韓国特許出願第10-2021-0120485号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、正極活物質の再生方法及びこれから再生された正極活物質に関し、より詳細には、再生正極活物質から発生する微粉を除去することで、電池の出力性能(rate performance)を大きく改善し、酸を用いないので環境に優しく、これによって、中和及び廃水処理が必要でないので、工程費が低減され、正極活物質を分解せずにそのまま再生するので、捨てられる金属元素がなく、集電体を溶解しないので、これの回収も可能であり、有機溶媒を使用しないので、有毒ガスの発生又は爆発の危険性がなく安全であり、熱処理や沈降などの管理が容易な工程を用いることで大量生産に適した、正極活物質の再生方法、及びこれから再生されて電気化学的性能、抵抗特性及び容量特性に優れた再生正極活物質に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、大きく、正極活物質層がアルミニウムなどの金属ホイルにコーティングされた正極、負極活物質層が銅などの金属ホイルにコーティングされた負極、正極と負極が混ざり合わないように防ぐ分離膜、及び正極と負極との間でリチウムイオンを移動できるようにする電解液などからなる。
【0004】
前記正極活物質層は、活物質として主にリチウム系酸化物を使用し、前記負極活物質層は、活物質として主に炭素材を使用するが、前記リチウム系酸化物には、一般にコバルト、ニッケルまたはマンガンなどのような稀少金属が含有されているので、使用後に廃棄されるリチウム二次電池の正極、またはリチウム二次電池の製造工程で発生する正極スクラップなど(以下、「廃正極」という)から稀少金属を回収して再利用する研究が多く行われている。
【0005】
廃正極から稀少金属を回収する従来の技術は、廃正極を塩酸、硫酸または硝酸などで溶解させた後、コバルト、マンガン、ニッケルなどを有機溶媒で抽出し、再び正極活物質の合成のための原料として使用する方法がほとんどである。
【0006】
しかし、酸を用いた稀少金属の抽出法は環境汚染の問題があり、中和工程と廃水処理工程が必ず必要であるため、工程コストが大幅に上昇し、正極活物質の主要金属であるリチウムを回収することができないという欠点を有する。
【0007】
このような欠点を解消するために、最近は、廃正極から、正極活物質を分解せずに、正極活物質として直接再生する方法(direct recycled method)が研究されており、このような方法として、大きく、焼成(calcination)、溶媒溶解(solvent dissolution)、アルミニウムホイル溶解(Al foil dissolution)、破砕及びスクリーニング(crushing & screening)などの4種類程度が紹介されている。
【0008】
しかし、前記焼成方法は、工程は単純であるが、再生正極活物質の表面に異物が生成され、廃ガスが発生し、エネルギー消費が大きいという欠点がある。
【0009】
また、前記溶媒溶解方法は、比較的表面がきれいな再生正極活物質を得ることができるが、バインダーを溶かすために使用するN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの溶媒が有毒ガスであり、かつ爆発の危険性があるため、安定性が劣悪であり、高価の溶媒回収工程が必要であるという欠点がある。
【0010】
また、前記アルミニウムホイル溶解方法は、工程安定性が良く、工程コストが低く、バインダーの除去が容易であるが、再生正極活物質の表面に除去しにくい異物が生成され、アルミニウムホイルの除去過程で水素ガスが発生して爆発の危険性があるという欠点がある。
【0011】
最後に、前記破砕及びスクリーニング方法は、最も単純な工程によるという利点があるが、集電体と正極活物質を完全に分離させることが難しく、破砕過程で正極活物質の粒度分布が変わり、バインダーが残留して再生正極活物質の電池特性が退化するという欠点がある。
【0012】
そのため、廃正極から捨てられる金属元素なしに、出力性能が改善された正極活物質を、少ない費用及び環境に優しく安全に再生する方法の開発が至急な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、再生正極活物質から発生する微粉を除去することで、電池の出力性能(rate performance)を大きく改善し、酸を用いないので環境に優しく、これによって、中和及び廃水処理が必要でないので、工程費が低減され、正極活物質を分解せずにそのまま再生することによって、捨てられる金属元素がなく、集電体を溶解しないので、これの回収が可能であり、有機溶媒を使用しないので、有毒ガスの発生又は爆発の危険性がなく安全であり、熱処理や沈降などの管理が容易な工程を用いることで大量生産に適した、正極活物質の再生方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、電気化学的性能、抵抗特性及び容量特性に優れた正極活物質を提供することを目的とする。
【0015】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、I)本発明は、(a)集電体及び前記集電体にコーティングされた正極活物質層を含む廃正極を、空気中で300~650℃で熱処理して、正極活物質を回収するステップと、(b)回収した正極活物質を塩基性のリチウム化合物水溶液中で10分~40分間沈降させるステップと、(c)前記沈降後に上澄み液を除去し、沈降物を収得するステップと、(d)前記沈降物にリチウム前駆体を添加し、空気中で400~1000℃でアニーリングするステップとを含む正極活物質の再生方法を提供する。
【0017】
II)前記I)において、前記(a)ステップの正極活物質層は、好ましくは、正極活物質、バインダー及び導電材を含むことができる。
【0018】
III)前記I)又はII)において、前記正極活物質は、好ましくは、下記化学式1
[化学式1] LiNiMnCo2+δ
(前記化学式1において、Mは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群から選択される1種以上を含み、1<a≦1.1、0<x<0.95、0<y<0.8、0<z<1.0、0≦w≦0.1、-0.02≦δ≦0.02、x+y+z+w=1である。)で表される化合物であってもよい。
【0019】
前記(b)ステップは、好ましくは、塩基性のリチウム化合物水溶液100ml当たり正極活物質0.1~100gを投入して沈降させるステップであってもよい。
【0020】
IV)前記I)~III)において、前記(b)ステップの塩基性のリチウム化合物水溶液は、好ましくは、塩基性リチウム化合物を0重量%超~15重量%以下含むことができる。
【0021】
V)前記I)~IV)において、前記(b)ステップは、好ましくは、回収した正極活物質を沈降させる前に、回収した正極活物質と塩基性のリチウム化合物水溶液を撹拌して洗浄することができる。
【0022】
VI)前記I)~V)において、前記撹拌は、好ましくは、一週間以内で行うことができる。
【0023】
VII)前記I)~VI)において、前記(c)ステップの沈降物は、好ましくは、粒子サイズがバイモーダル(dimodal pattern)以上のマルチモーダルパターン(multimodal pattern)を有し、前記マルチモーダルパターンは、粒子サイズが小さいピークが、粒子サイズが大きいピークよりもピーク高さが低くてもよい。
【0024】
VIII)前記I)~VII)において、前記(c)ステップの沈降物は、好ましくは、粒子サイズ1μm以下の粒子が合計5体積%以下であってもよい。
【0025】
IX)前記I)~VIII)において、前記(c)ステップは、好ましくは、収得した沈降物を乾燥するステップを含むことができる。
【0026】
X)前記I)又はIX)において、前記(d)ステップのリチウム前駆体は、好ましくは、LiOH、LiCO、LiNO及びLiOからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0027】
XI)前記I)~X)において、前記(d)ステップのリチウム前駆体は、好ましくは、リチウムの量を基準として、少なくとも前記(a)ステップの正極活物質内のリチウムのモル比から、減少した沈降物内のリチウムのモル比の差に該当する量だけ添加することができる。
【0028】
XII)前記I)~XI)において、前記(d)ステップのリチウム前駆体は、好ましくは、前記(a)ステップの正極活物質内のリチウムの合計100mol%を基準として1~40mol%に該当するリチウムを提供できる量で添加することができる。
【0029】
XIII)前記I)~XII)において、前記(d)ステップのアニーリング温度は、好ましくは、前記リチウム前駆体の融点を超える温度であってもよい。
【0030】
XIV)前記I)~XIII)において、前記(d)ステップのアニーリングした沈降物を、好ましくは、金属又は炭素を含有したコーティング剤でコーティングした後、100~1200℃で熱処理するステップを含むことができる。
【0031】
また、XV)本発明は、前記正極活物質の再生方法により製造される再生正極活物質を提供する。
【0032】
また、XVI)本発明は、下記化学式1
[化学式1] LiNiMnCo2+δ
(前記化学式1において、Mは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群から選択される1種以上を含み、1<a≦1.1、0<x<0.95、0<y<0.8、0<z<1.0、0≦w≦0.1、-0.02≦δ≦0.02、x+y+z+w=1である。)で表される化合物を含み、粒子サイズがバイモーダル(dimodal pattern)以上のマルチモーダルパターン(multimodal pattern)を有し、前記マルチモーダルパターンは、粒子サイズが小さいピークが、粒子サイズが大きいピークよりもピーク高さが低く、フッ素(F)の含量が5000ppm以下である再生正極活物質を提供する。
【0033】
XVII)前記XVI)において、前記再生正極活物質は、好ましくは、表面が、金属又は炭素を含有したコーティング剤でコーティングされたものであってもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、再生正極活物質から発生する微粉を除去することで、電池の出力性能(rate performance)を大きく改善し、酸を用いないので環境に優しく、これによって、中和及び廃水処理が必要でないので、工程費が低減され、正極活物質を分解せずにそのまま再生するので、捨てられる金属元素がなく、集電体を溶解しないので、これの回収が可能であり、有機溶媒を使用しないので、有毒ガスの発生又は爆発の危険性がなく、熱処理や沈降などの管理が容易な工程を用いることで大量生産に適した、正極活物質の再生方法、及びこれから再生されて電気化学的性能、抵抗特性及び容量特性に優れた正極活物質を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の実施例を例示するものであり、後述する詳細な説明と共に本発明の技術思想をさらに理解させる役割をするものであるので、本発明は、このような図面に記載された事項に限定されて解釈されてはならない。
【0036】
図1】正極シートから電極板を切断した後に廃棄される正極スクラップを示す図である。
図2】実施例1(a)、比較例1(b)及び比較例2(c)で製造した再生正極活物質と参考例(d)の正極活物質のそれぞれに対するSEM(Scanning Electron Microscope)写真(images)である。
図3】実施例1、比較例1及び比較例2で沈降又は洗浄後に収得した沈降物または固形物の粒度分布のグラフである。
図4】実施例1、比較例1及び比較例2でアニーリングした後に収得した再生正極活物質と参考例(Reference NCM65)の正極活物質の粒度分布を比較したグラフである。
図5】実施例1及び比較例1で製造された再生正極活物質と参考例(Reference NCM65)の正極活物質に対してセル評価した結果であって、サイクル回数による出力性能(Rate performance)を示すグラフである。
図6】本発明に係る一つの実施例であって、正極活物質の再生工程に対するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明者らは、廃正極から、正極活物質を分解せずに、正極活物質として直接再生する方法(direct recycled method)を研究していたところ、焼成方法により、リチウム二次電池の製造工程で発生する正極スクラップから正極活物質を回収し、その後、改質工程に回収された正極活物質を塩基性水溶液中で所定時間沈降させるステップを適用して微粉を除去する場合に、再生された正極活物質の電池特性などが大きく改善されることを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0038】
以下、本記載の正極活物質の再生方法及びこれから再生された正極活物質を詳細に説明する。
【0039】
但し、本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常の又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づき、本発明の技術的思想に符合する意味及び概念で解釈されなければならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明の一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないため、これらを代替できる様々な均等物と変形例があり得、様々な他の構成で配列、代替、組み合わせ、分離またはデザインされ得ることを理解しなければならない。
【0040】
本記載で使用されたすべての技術的・科学的用語は、特に定義されていない限り、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解されるものと同じ意味を有する。
【0041】
正極活物質の再生方法
本発明の正極活物質の再生方法は、(a)集電体及び前記集電体にコーティングされた正極活物質層を含む廃正極を、空気中で300~650℃で熱処理して、正極活物質を回収するステップと;(b)回収した正極活物質を塩基性のリチウム化合物水溶液中で10分~40分間沈降させるステップと;(c)前記沈降後に上澄み液を除去し、沈降物を収得するステップと;(d)収得した沈降物にリチウム前駆体を添加し、空気中で400~1000℃でアニーリングするステップとを含むことを特徴とし、この場合に、再生された正極活物質の電気化学的性能、抵抗特性及び容量特性などが大きく改善され、酸を用いないので環境に優しく、これによって、中和及び廃水処理が必要でないので、工程費が低減され、正極活物質を分解せずにそのまま再生するので、浪費される金属元素がなく、集電体を溶解しないので、これの回収も可能であり、有機溶媒を使用しないので、有毒ガスの発生又は爆発の危険性がなく、熱処理や沈降などの管理が容易な工程を用いることで大量生産に適するという利点がある。
【0042】
(a)廃正極から正極活物質を回収するステップ
本発明に係る(a)廃正極から正極活物質を回収するステップは、好ましくは、集電体及びこれにコーティングされた正極活物質層を含む廃正極を、空気中で300~650℃で熱処理して、正極活物質を回収するステップであってもよく、この場合に、工程が簡単であり、しかも、バインダー、導電材及び集電体をきれいに除去するという効果がある。
【0043】
前記廃正極は、使用後に廃棄されたリチウム二次電池から分離された正極、リチウム二次電池の製造工程で発生する不良正極シートまたは正極スクラップなどであり得る。
【0044】
前記(a)ステップの正極活物質層は、好ましくは、正極活物質、バインダー及び導電材を含むことができる。
【0045】
前記正極活物質は、好ましくは、下記化学式1
[化学式1] LiNiMnCo2+δ
(前記化学式1において、Mは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群から選択される1種以上を含み、1<a≦1.1、0<x<0.95、0<y<0.8、0<z<1.0、0≦w≦0.1、-0.02≦δ≦0.02、x+y+z+w=1である。)で表される化合物であってもよい。
【0046】
前記正極活物質は、より具体的な例として、LiCoO(以下、「LCO」という)などのようなリチウムコバルト酸化物;LiMnO又はLiMnなどのようなリチウムマンガン酸化物;LiFePOなどのようなリチウムリン酸鉄化合物;LiNiOなどのようなリチウムニッケル酸化物;前記リチウムニッケル酸化物においてニッケル(Ni)の一部をマンガン(Mn)で置換したニッケルマンガン系リチウム複合金属酸化物;及び前記リチウムニッケル酸化物においてニッケル(Ni)の一部をマンガン(Mn)とコバルト(Co)で置換したNCM系リチウム複合遷移金属酸化物からなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、ニッケルマンガン系リチウム複合金属酸化物、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物、またはこれらの混合であり、この場合に、可逆容量及び熱安定性に優れるという効果がある。
【0047】
前記導電材は、一例として炭素系導電材であってもよく、好ましくは、カーボンブラック、CNT、またはこれらの混合であってもよい。
【0048】
前記バインダーは、一例として高分子バインダーであってもよく、好ましくは、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidene fluoride、PVdF)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、またはこれらの混合であってもよく、より好ましくはポリビニリデンフルオリドであってもよい。
【0049】
前記熱処理温度は、好ましくは400~600℃、より好ましくは500~600℃、さらに好ましくは530~580℃であってもよく、この範囲内で、集電体は溶けずにバインダーなどのみが除去されることで、集電体から正極活物質が容易に分離されるという利点がある。
【0050】
前記熱処理時間は、好ましくは10分~5時間、より好ましくは30分~5時間、さらに好ましくは30分~2時間、より一層好ましくは30分~1時間であってもよく、この範囲内で、集電体は溶けずにバインダーなどのみが除去されることで、集電体から正極活物質が容易に分離されるという利点がある。
【0051】
本記載において、熱処理時間は、当該熱処理温度で処理される時間であって、当該熱処理温度に到達する時間は計算されない。
【0052】
下記の図1は、正極シートから正極板を切断した後に廃棄される正極スクラップを示す。
【0053】
図1を参照すると、長いシート状の正極集電体であるアルミニウムホイル10に、正極活物質、導電材、バインダーなどを含む正極活物質層20をコーティングして、正極シート30を製造した後、これを一定のサイズに打ち抜いて正極板40を生産し、その後に残った部分として正極スクラップ50が発生する。前記打ち抜きは、正極シートを切断する一つの手段である。
【0054】
また、前記正極活物質層20は、正極活物質、導電材、バインダー及び溶媒などが混合されたスラリーをアルミニウムホイル10にコーティングして形成されるもので、スラリーが温度などのような環境に非常に敏感であるため、コーティング条件を決めるのが非常に難しく、そのため、所定のテストを通じて所望の品質の正極シート30が製造される条件を探すまでに廃正極シートが発生する。
【0055】
参考に、下記実施例では、廃正極として正極スクラップを使用した。
【0056】
(b)正極活物質を塩基性水溶液中で沈降させるステップ
本発明に係る(b)正極活物質を塩基性水溶液中で沈降させるステップは、好ましくは、回収した正極活物質を塩基性のリチウム化合物水溶液中で10分~40分間沈降させるステップであってもよく、この場合に、正常サイズの正極活物質粒子は十分に沈降し、微粉状態の正極活物質は浮遊状態を維持して、微粉の分離効率に優れるという効果がある。
【0057】
前記沈降時間は、好ましくは15~40分、より好ましくは20~40分、さらに好ましくは20~35分、より一層好ましくは20~30分であってもよく、この範囲内で、正常サイズの正極活物質粒子は十分に沈降し、微粉状態の正極活物質は浮遊状態を維持して、微粉の分離効率に優れ、特に、回収した正極活物質がNCM系活物質であるときにさらに適するという利点がある。
【0058】
前記(b)ステップは、好ましくは、塩基性のリチウム化合物水溶液100ml当たり正極活物質0.1~100gを投入して沈降させるステップであってもよく、より好ましくは、塩基性のリチウム化合物水溶液100ml当たり正極活物質0.1~50gを投入して沈降させるステップであってもよく、さらに好ましくは、塩基性のリチウム化合物水溶液100ml当たり正極活物質0.1~10gを投入して沈降させるステップであってもよく、この範囲内で、正常サイズの正極活物質粒子は十分に沈降し、微粉状態の正極活物質は浮遊状態を維持して、微粉の分離効率に優れるという効果がある。
【0059】
前記(b)ステップの塩基性のリチウム化合物水溶液は、好ましくは、塩基性リチウム化合物を0重量%超~15重量%以下含んでもよく、より好ましくは、塩基性リチウム化合物を0重量%超~10重量%含んでもよく、この範囲内で、正常サイズの正極活物質粒子は十分に沈降し、微粉状態の正極活物質は浮遊状態を維持して、微粉の分離効率に優れるという効果がある。
【0060】
前記(b)ステップは、好ましくは、回収した正極活物質を沈降させる前に、塩基性のリチウム化合物水溶液中で撹拌して洗浄するステップ(b-1)を含むことができ、この場合に、正極活物質の表面を改質する工程として、先の熱処理過程で正極活物質の表面に発生したLiFなどのような金属フッ化物などの異物を除去するという効果がある。
【0061】
前記撹拌は、一例として、一週間以内、好ましくは一日以内、より好ましくは1時間以下、40分以下、30分以下、または20分以下で行うか、または、一例として5分以上、好ましくは10分以上、20分以上、または30分以上行ってもよく、この範囲内で、正極活物質の表面に発生したLiFなどのような金属フッ化物などの異物が全て除去され、それにもかかわらず、リチウムの過剰溶出も発生しないので、電池の容量特性に優れるという利点がある。
【0062】
(c)上澄み液を除去し、沈降物を収得するステップ
本発明に係る(c)上澄み液を除去し、沈降物を収得するステップは、好ましくは、前記沈降後に上澄み液を除去し、沈降物を収得するステップであってもよい。
【0063】
前記(c)ステップの沈降物は、好ましくは、粒子サイズがバイモーダル(dimodal pattern)以上のマルチモーダルパターン(multimodal pattern)を有し、前記マルチモーダルパターンは、粒子サイズが小さいピークが、粒子サイズが大きいピークよりもピーク高さが低くてもよく、この場合に、電気化学的性能、抵抗特性及び容量特性に優れ、電池の出力性能を大きく改善させるという効果がある。
【0064】
前記マルチモーダルパターンは、好ましくは、バイモーダルまたはトリモーダルパターンであってもよく、より好ましくはバイモーダルパターンであり、この場合に、電気化学的性能、抵抗特性及び容量特性に優れ、電池の出力性能を大きく改善させるという効果がある。
【0065】
前記(c)ステップの沈降物は、好ましくは、粒子サイズ1μm以下の粒子が合計5体積%以下であってもよく、より好ましくは3体積%以下であってもよく、さらに好ましくは2体積%以下であり、この範囲内で、電気化学的性能、抵抗特性及び容量特性に優れ、電池の出力性能を大きく改善させるという効果がある。
【0066】
本記載において、粒子サイズ、そのパターン及び体積%などのような粒度分布に関連する値は、本発明の属する技術分野において一般に使用又は市販されている粒度分析器で測定することができ、具体例として、Horiba LA 950V2粒度分析器を用いて測定することができる。
【0067】
本記載において、上澄み液を除去する方法は、上澄み液をデカンテーションしたり、すくい出したりする方法などのように、上澄み液を、浮遊している微粉と共に除去する方法であれば、特に制限されない。
【0068】
前記(c)ステップは、好ましくは、収得した沈降物を乾燥するステップ(c-1)を含むことができ、この場合に、リチウム前駆体の添加工程を最適化するという効果がある。
【0069】
前記乾燥は、好ましくは70~200℃、より好ましくは20~130℃下でこれ以上重量変化がなくなるまで、一例として1~24時間行うことができ、この範囲内で、沈降した活物質に含まれた水分を効率的に除去するという効果がある。
【0070】
(d)沈降物にリチウム前駆体を添加した後、アニーリングするステップ
本発明に係る(d)沈降物にリチウム前駆体を添加した後、アニーリングするステップは、好ましくは、沈降物にリチウム前駆体を添加し、空気中で400~1000℃でアニーリングするステップであってもよく、この場合に、結晶性の増加又は結晶構造の回復などのように結晶性を改善することによって、再生正極活物質の電池特性を向上させるという効果がある。
【0071】
前記(d)ステップのリチウム前駆体は、好ましくは、LiOH、LiCO、LiNO及びLiOからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0072】
前記(d)ステップのリチウム前駆体は、好ましくは、リチウムの量を基準として、少なくとも前記(a)ステップの正極活物質内のリチウムのモル比から、減少した沈降物内のリチウムのモル比の差に該当する量だけ添加することができ、より好ましくは、前記(a)ステップの正極活物質内のリチウムのモル比に対して0.0001~0.2のリチウムのモル比となる量で添加することができ、この範囲内で、再生正極活物質内の不足したリチウムが補充されて、結晶性の増加又は結晶構造の回復などのように結晶性を改善することによって、再生正極活物質の電池特性が向上するという利点がある。
【0073】
前記(d)ステップのリチウム前駆体は、好ましくは、前記(a)ステップの正極活物質内のリチウムの合計100mol%を基準として1~40mol%に該当するリチウムを提供できる量で添加してもよく、より好ましくは、1~15mol%に該当するリチウムを提供できる量、さらに好ましくは、7~11mol%に該当するリチウムを提供できる量で添加してもよく、この範囲内で、再生正極活物質に抵抗を増加させ得る残留前駆体が残らないので、電池特性の向上に非常に有用である。
【0074】
前記(d)ステップのアニーリング温度は、リチウム前駆体の融点に応じて、制限された範囲内で調節可能であるが、例えば、LiCOの場合に融点が723℃であるので、好ましくは700~900℃、より好ましくは710~780℃でアニーリングすることができ、LiOHの場合に融点が462℃であるので、好ましくは400~600℃、より好ましくは450~480℃でアニーリングすることができ、この範囲内で、結晶構造が回復されることで、電池の出力性能に優れるという効果がある。
【0075】
前記(d)ステップのアニーリング温度は、好ましくは、前記リチウム前駆体の融点を超える温度であってもよく、但し、1000℃を超える場合、正極活物質の熱分解が発生して、電池の性能低下が発生することがある。
【0076】
(e)コーティング剤でコーティングした後、熱処理するステップ
本発明に係る(e)コーティング剤でコーティングした後、熱処理するステップは、選択的なステップであって、好ましくは、前記(d)ステップのアニーリングした沈降物を、金属又は炭素を含有したコーティング剤でコーティングした後、100~1200℃で熱処理するステップであってもよく、この場合に、正極活物質自体の性質をそのまま維持しながらも、構造的安定性及び電気化学的性能を改善するという効果がある。
【0077】
前記金属を含有したコーティング剤は、好ましくは、B、W、Al、Ti、Mg、Ni、Co、Mn、Si、Zr、Ge、Sn、Cr、Fe、V及びYからなる群から選択される1種以上を含有したコーティング剤であり、より好ましくは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群から選択された1種以上を含有したコーティング剤であり、この場合に、集電体の分離工程及び正極活物質の表面の改質工程を経ながら損失されたリチウム以外の金属または表面コーティング層が補充または復旧されるという効果がある。
【0078】
前記熱処理温度は、好ましくは100~1000℃、より好ましくは200~1000℃、さらに好ましくは200~500℃であってもよく、この範囲内で、正極活物質自体の性質をそのまま維持しながらも、構造的安定性及び電気化学的性能を改善するという効果がある。
【0079】
具体例として、前記コーティング剤が、B、B-W、B-Ti、またはB-W-Tiを含有する場合、熱処理温度は200~500℃であることが好ましい。
【0080】
前記コーティング剤は、好ましくは、正極活物質の総100重量部を基準として0.01~10重量部、より好ましくは0.1~1重量部であってもよく、この範囲内で、正極活物質自体の性質をそのまま維持しながらも、構造的安定性及び電気化学的性能を改善するという効果がある。
【0081】
前記熱処理時間は、好ましくは1~16時間、より好ましくは3~7時間行われてもよく、この範囲内で、正極活物質自体の性質をそのまま維持しながらも、構造的安定性及び電気化学的性能を改善するという効果がある。
【0082】
前記コーティング方法は、本発明の属する技術分野で通常用いるコーティング方法であれば、特に制限されず、一例として、液状のコーティング剤を製造して正極活物質と混合する液相法、ボールミリングの高い機械的エネルギーを用いる機械化学的方法、流動層コーティング法、噴霧乾燥法、水溶液状態でコーティング剤を活物質の表面に沈殿させる沈殿法、気相のコーティング剤と正極活物質との反応を活用する方法、またはスパッタリング(sputtering)法などであってもよい。
【0083】
前記コーティング剤は、一例として、球形、板状形、角形または針状形であってもよく、このような形状は、一例として、その製造過程で工程条件などを変化させて調節することができ、本発明の属する技術分野で一般に認められる定義に従う限り、特に制限されない。前記コーティング剤は、好ましくは、平均直径が1~1000nmであり、比表面積が10~100m/gであってもよく、より好ましくは、平均直径が10~100nmであり、比表面積が20~100m/gであってもよく、この範囲内で、正極活物質の表面に均一に付着して、正極活物質の構造的安定性を付与することで、正極活物質の格子変形や結晶構造の崩壊による寿命特性及び電気化学的性能の低下の問題を改善することができる。
【0084】
本記載において、平均直径は、本発明の属する技術分野で通常用いられる測定方法で測定することができ、一例として、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができ、具体的に、正極活物質の粒子を分散媒中に分散させた後、Microtrac MT 3000などのような市販されているレーザー回折粒度測定装置に導入して、約28kHzの超音波を出力60Wで照射し、測定装置における粒径分布の50%基準での平均粒径(D50)を算出することができる。
【0085】
本記載において、比表面積は、本発明の属する技術分野で通常用いられる測定方法で測定することができ、一例として、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法により測定することができ、具体的には、BEL Japan社のBELSORP-mino IIを用いて、液体窒素温度下(77K)での窒素ガスの吸着量から算出することができる。
【0086】
下記の図6は、本発明に係る一つの実施例であって、正極活物質の再生工程に対するフローチャートである。
【0087】
図6を参照すると、まず、正極スクラップを準備する(ステップS10)。例えば、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物、カーボンブラック及びポリビニリデンフルオリドに、NMP(N-methyl pyrrolidone)を添加して混合製造したスラリーを、アルミニウムホイル上にコーティングし、約120℃の真空オーブンで乾燥して、正極シートを製造する。これから一定サイズの正極板を打ち抜いた後、残った正極スクラップを準備することができる。
【0088】
前記正極スクラップは、アルミニウムホイル上に正極活物質層を有し、正極活物質層は、溶媒の揮発後、正極活物質と導電材をバインダーが結合させる構造となる。したがって、バインダーを除去すると、アルミニウムホイルから正極活物質が分離される。
【0089】
次に、準備した正極スクラップを適当なサイズに破砕する(ステップS20)。ここで、破砕は、正極スクラップを取り扱いが容易なサイズに切断またはシュレッディング(shredding)することを含む。具体例として、破砕した正極スクラップは、1cm×1cmのサイズであってもよい。前記破砕は、一例として、ハンドミル、ピンミル、ディスクミル、カッティングミル、ハンマミルのような様々な乾式粉砕装備を用いてもよく、生産性を高めるために高速切断機を用いてもよい。
【0090】
前記破砕は、好ましくは、正極スクラップの取り扱い及び以降の工程で用いる装備で求められる特性を考慮して、破砕を行うか否か、または片のサイズなどを決定することができるが、例えば、連続的な処理が可能な装備を用いる場合であれば、流動性が良くなければならないので、正極スクラップをさらに小さい片に破砕しなければならない。
【0091】
次に、正極スクラップを空気中で熱処理する(ステップS30)。ここで、熱処理は、活物質層内のバインダーを熱分解するために行うものである。
【0092】
前記のような空気中での熱処理を通じて、活物質層内のバインダーと導電材がCOとHOに熱分解されて除去される。バインダーが除去されるため、集電体から活物質が分離され、分離された活物質は、容易に粉末形態で選別される。したがって、ステップS30のみでも活物質層を集電体から分離し、さらに、活物質層内の活物質を粉末の形態で回収することができる。
【0093】
前記熱処理は、空気中で行うことが重要であるが、還元気体又は非活性気体雰囲気で熱処理を行う場合、バインダーと導電材が熱分解されずに炭化する。炭化すると、炭素成分が活物質の表面に残るようになり、再利用活物質の性能が低下する。しかし、空気中で熱処理を行う場合、バインダーと導電材中の炭素成分が酸素と反応してCO、COなどのガスとして消えるため、バインダーと導電材がいずれも除去される。
【0094】
前記熱処理は、好ましくは300~650℃で行い、具体例として550℃で行うが、300℃未満であると、バインダーの除去が難しいため、集電体を分離することができず、650℃を超えると、集電体が溶けてしまい、集電体を分離することができないという問題が発生する。
【0095】
前記熱処理は、好ましくは、温度上昇速度が1~20℃/min、より好ましくは温度上昇速度が3~10℃/minであり、具体例としては5℃/minであるが、この範囲内で、熱処理装備に無理がかかることなく実現可能であり、正極スクラップに熱衝撃などを発生させないという利点がある。
【0096】
前記熱処理は、一例として、バインダーが十分に熱分解され得る程度の時間の間行うことができ、好ましくは30分以上、より好ましくは30分~5時間行い、具体例としては30分前後であるが、この範囲内で、バインダーが十分に熱分解され、また、熱分解効率に優れるという効果がある。
【0097】
前記熱処理は、一例として、様々な形態のファーネス(furnace)を用いて行い、例えば、ボックスタイプのファーネスを用いて行い、生産性を考慮すると、連続的な処理が可能なロータリーキルン(rotary kiln)を用いて行う。
【0098】
前記熱処理後には、大気中で徐冷または急冷することができる。
【0099】
次に、表面改質ステップとして、回収された活物質を洗浄する(ステップS40)。
【0100】
前記洗浄は、熱処理ステップ(S30)中に活物質の表面に生成されているおそれがある反応物を除去して、再生活物質の表面に異物が残らないようにする。
【0101】
前記洗浄時に塩基性のリチウム化合物水溶液で洗浄することが重要であるが、もし、硫酸や塩酸水溶液を使用すれば、正極活物質の表面のフッ素(F)化合物などのような異物を洗浄することはできるが、正極活物質に存在するCo、Mgなどの遷移金属を溶出させてしまい、再生正極活物質の性能を低下させる。
【0102】
しかし、前記塩基性のリチウム化合物水溶液は、安全かつ安価でありながらも、ステップS30の熱分解後にもあるいは微量残されているかもしれないバインダーなどを、他の元素の損失なしに除去できるだけでなく、正極活物質に存在する遷移金属を溶出させず、また、洗浄過程で溶出し得るリチウムの量を補充できる役割も併行することができるので、非常に好ましい。
【0103】
前記塩基性のリチウム化合物水溶液は、一例として、0%超~15%以下で塩基性リチウム化合物を含有し、これを超える高濃度のリチウム化合物水溶液は、洗浄後に活物質の表面に過量のリチウム化合物を残留させることがあるため、その後のアニーリング工程に悪影響を及ぼす。
【0104】
前記(b)ステップは、具体例として、塩基性のリチウム化合物水溶液100ml当たり正極活物質1~5gを投入して沈降させるステップであってもよく、この範囲内で、正常サイズの正極活物質粒子は十分に沈降し、微粉状態の正極活物質は浮遊状態を維持して、微粉の分離効率に優れるという効果がある。
【0105】
前記リチウム化合物は、好ましくはLiOHである。
【0106】
本記載において、%は、特に定義しない限り、重量%を意味する。
【0107】
前記洗浄は、一例として、回収された正極活物質と前記塩基性のリチウム化合物水溶液を撹拌して混合する方法で行う。ここで、撹拌は、特に制限されないが、機械的撹拌または超音波撹拌であってもよい。
【0108】
前記洗浄は、具体例として10分~20分間行うが、この範囲内で、リチウムの過剰溶出による電池の容量低下を防止するという効果がある。
【0109】
本記載において、回収された正極活物質を塩基性のリチウム化合物水溶液で洗浄する理由は、回収された活物質の表面に存在し得るLiFなどのような金属フッ化物(metal fluoride)などを除去する、表面改質を行うためである。ステップS30の熱処理の間には、活物質層内のバインダーと導電材がCOとHOになって気化して除去されるが、この過程でCOとHOが活物質の表面のリチウムと反応してLiCO、LiOHが形成されることもあり、PVdFのようなバインダーに存在していたFが正極活物質を構成するリチウムやその他の金属元素と反応して金属フッ化物が形成されることもある。このようなLiFなどのような金属フッ化物が正極活物質の表面に残っていると、再利用時に電池特性が劣化する。
【0110】
次に、洗浄された正極活物質を塩基性のリチウム化合物水溶液中で沈降させる(ステップS50)。
【0111】
前記沈降時間は、正極活物質の種類によって15~40分の範囲内で制限的に変更することができるが、正極活物質がNCM系活物質である場合、好ましくは20~25分間行う。
【0112】
前記沈降された沈降物は、具体例として、微粉状態の正極活物質が浮遊している上澄み液をデカンテーションしたり、液体移送ポンプなどを用いて上澄み液を汲み出したりすことによって収得する。
【0113】
前記収得した沈降物は、具体例として、オーブン(convection type)を用いて空気中で乾燥する。
【0114】
次に、乾燥された正極活物質にリチウム前駆体を添加し、アニーリングする(ステップS60)。
【0115】
先のステップS30、S40及びS50を経る間に正極活物質内のリチウムの損失が発生するため、ステップS60では、そのようなリチウムの損失量を補充する。それだけでなく、先のステップを経る間に正極活物質の表面に変形構造(例として、LCO活物質の場合にCo)が生じることがあるため、ステップS60では、アニーリングを通じて正極活物質の結晶構造を回復することで、再生正極活物質の特性を改善したり、新生正極活物質のレベルまで回復させたりする。ここで、「新生」は、「再生」の反対の概念であって、初めて作られたことを意味し、実施例で使用した「原材料」などと同じ言葉である。
【0116】
前記リチウム前駆体としては、具体例としてLiOHを使用する。
【0117】
前記リチウム前駆体は、前記正極活物質層に使用された新生正極活物質内のリチウムと他の金属のモル比を対比して、損失されたリチウムのモル比だけ添加することが好ましい。損失されたリチウムの量よりも過度に多い量のリチウム前駆体の添加は、未反応のリチウム前駆体を再生正極活物質に残すようになり、これは、抵抗を増加させる役割をするため、適切な量のリチウム前駆体の投入が必要である。一例として、新生正極活物質内のリチウムと他の金属のモル比が1である場合、リチウムが0.001~0.4モル比となる量のリチウム前駆体を添加することができ、好ましくは、リチウムが0.01~0.2モル比となる量のリチウム前駆体を添加することができる。
【0118】
具体例として、リチウム前駆体を、ICP分析の結果に基づいて、新生正極活物質内のリチウム含量に対する損失された比率である0.09~0.1モル比(リチウム金属基準)で添加すると、新生正極活物質と同等レベルまで容量改善効果を示す。ここで、ICP分析の結果は、±0.02程度の誤差値を有する。
【0119】
前記アニーリングは、一例として、400~1000℃の条件下で空気中で行い、好ましくは600~900℃の条件下で行い、この温度は、リチウム前駆体の種類に応じて制限された範囲内で変化しなければならない。
【0120】
前記アニーリング温度は、リチウム前駆体の融点を超える温度が好ましい。但し、1000℃を超える温度では、正極活物質の熱分解が発生して性能の低下が発生するため、1000℃を超えないようにする。これによって、リチウム前駆体としてLiCOを使用する場合、アニーリング温度は700~900℃が適切であり、さらに好ましくは710~780℃であり、最も好ましくは750~780℃であってもよい。また、リチウム前駆体としてLiOHを使用する場合、アニーリング温度は400~600℃が適切であり、より適切には450~480℃であり、最も適切には470~480℃であってもよい。
【0121】
前記アニーリング時間は、一例として1時間以上とすることがよく、好ましくは15時間以下であり、より好ましくは4~6時間である。アニーリング時間が長いと、結晶構造の回復が十分になされ得るが、長時間アニーリングするとしても性能に大きな影響を与えることはない。このとき、アニーリング装備は、熱処理ステップS30と同一または類似の装備を用いることができる。
【0122】
前記アニーリングステップは、安全かつ安価でありながらも、結晶構造の回復、すなわち、結晶性を改善して再生正極活物質の電池特性を回復させる。
【0123】
以上のような正極活物質の再生ステップを通じて得られた再生正極活物質は、新生正極活物質と類似の粒度分布を有し、表面にバインダーや導電材の炭化により生じる炭素成分が残留しないので、別途の追加処理なしに100%そのまま、または新生活物質と混合して正極の製造に使用可能である。
【0124】
次に、選択的なステップとして、アニーリングした正極活物質に表面コーティングをさらに行うことができる(S70)。
【0125】
前記表面コーティングは、一例として、金属又は炭素を含有したコーティング剤を固相または液相方式で表面にコーティングした後、100~1200℃で熱処理することであるが、熱処理温度が100℃未満である場合、表面コーティングを通じて異種金属による表面保護層が形成されず、1200℃を超える場合、正極活物質の熱分解により電池の性能が低下する。
【0126】
具体的に、B、W、B-Wなどの金属酸化物を正極活物質にコーティングした後、熱処理すると、活物質の表面にリチウムボロンオキシド層を形成することができ、これが表面保護層の役割をする。
【0127】
前記表面コーティングの固相または液相方式は、具体例として、混合(mixing)、ミリング(milling)、噴霧乾燥(spray drying)またはグラインディング(grinding)などの方法によって行う。
【0128】
参考に、先のアニーリングステップS60においてリチウム:正極活物質内の他の金属のモル比が1:1になるようにした場合、正極活物質内のリチウムがコーティング剤と反応してリチウム:正極活物質内の他の金属のモル比が1:1未満に減少するようになると、電池の容量発現を100%にすることができない。そのため、先のステップS60で足りなくなったリチウムを添加して、リチウム:正極活物質内の他の金属のモル比が1:1になるようにするだけでなく、正極活物質内の他の金属と対比してリチウムが0.0001~0.1モル比さらに多く含まれるように、過剰添加するものである。そうすると、ステップS70の表面コーティング時に、リチウム:正極活物質内の他の金属のモル比が1:1になり、さらに、表面保護層も形成するようになる。
【0129】
具体的に、ステップS60で0.0001~0.1モル比程度過剰に添加したリチウムが、ステップS70でB、W、B-Wなどの金属酸化物と反応し、リチウム:正極活物質内の他の金属のモル比が1:1未満に減少しないので、容量の低下が発生しない。
【0130】
再生正極活物質
本発明の再生正極活物質は、上述した正極活物質の再生方法により製造されることを特徴とし、この場合に、再生正極活物質から発生する微粉が除去されることで、電池の出力性能(rate performance)などを大きく改善するという効果がある。
【0131】
また、本発明の再生正極活物質は、好ましくは、下記化学式1
[化学式1] LiNiMnCo2+δ
(前記化学式1において、Mは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群から選択される1種以上を含み、1<a≦1.1、0<x<0.95、0<y<0.8、0<z<1.0、0≦w≦0.1、-0.02≦δ≦0.02、x+y+z+w=1である。)で表される化合物を含み、粒子サイズがバイモーダル(dimodal pattern)以上のマルチモーダルパターン(multimodal pattern)を有し、前記マルチモーダルパターンは、粒子サイズが小さいピークが、粒子サイズが大きいピークよりもピーク高さが低く、フッ素(F)の含量が5000ppm以下であることを特徴とし、この場合に、電気化学的性能、抵抗特性及び容量特性などに優れるという効果がある。
【0132】
前記フッ素(F)の含量は、好ましくは500ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下であってもよく、この範囲内で、優れた抵抗特性及び容量特性が実現されるという効果がある。
【0133】
前記再生正極活物質は、好ましくは、金属又は炭素を含有したコーティング剤でコーティングされてもよく、この場合に、正極活物質自体の化学的及び物理的変化なしに正極活物質の構造的安定性が改善されることで、出力性能、寿命特性、容量などの電気化学的特性が向上し、正極活物質の表面で異種元素で置換されて残留リチウム量の減少及びpH減少の効果により物理化学的特性も改善される。
【0134】
本発明の再生正極活物質は、上述した正極活物質の再生方法の内容をすべて含むことができる。したがって、ここでは、それについての重複記載を省略する。
【0135】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0136】
[実施例]
実施例1
正極板の打ち抜き後に捨てられた正極スクラップ(集電体:アルミニウムホイル、正極活物質:NCM系リチウム複合遷移金属酸化物)を破砕し、これを空気中で550℃下で30分間熱処理して、バインダーと導電材を除去し、集電体と正極活物質を分離した後、正極活物質を回収した。ここで、熱処理温度に到達するまでの温度上昇速度は5℃/minであった。
【0137】
回収した正極活物質15gを、表面に存在するLiFなどのフッ化金属(metal fluorine)などのような異物の除去のために、1重量%濃度のLiOH水溶液450mlに投入し、10分間撹拌して洗浄した。前記洗浄が終わった後、正極活物質が分散している状態で撹拌を中止し、20分間沈降させた後、上澄み液をデカンテーションし、沈降物を回収した。回収した沈降物を100℃下で12時間乾燥した。
【0138】
乾燥した沈降物に、原材料の正極活物質内のリチウムと、他の金属とのモル比を基準として、リチウムが0.11モル比となる量でリチウム前駆体であるLiOHを投入し、空気中で750℃下で5時間アニーリングして、再生正極活物質を製造した。ここで、正極活物質内のリチウムと他の金属のモル比は、ICP分析を通じて測定した。
【0139】
比較例1
前記実施例1において、沈降時間を置かずにろ過して、沈降物の代わりに固形物を収得した以外は、前記実施例1と同様の方法で再生正極活物質を製造した。
【0140】
比較例2
前記実施例1において、沈降時間を1時間に延ばした以外は、前記実施例1と同様の方法で再生正極活物質を製造した。
【0141】
参考例
再利用活物質ではなく新生(fresh)のNCM系リチウム複合遷移金属酸化物(NCM651520)を使用した。
【0142】
[試験例]
前記実施例1、比較例1~2及び参考例で製造した再生正極活物質の特性を、下記の方法で測定し、その結果を下記の表1及び図2乃至図5に示した。
【0143】
*表面の状態:SEM装置を用いて撮影して、写真に示された表面の状態から評価した(下記の図2参照)。このとき、HITACHI社のs-4200を用いて撮影できるが、測定装置や方法による偏差はない。
【0144】
*粒度分布:粒度分析器を用いて測定した。このとき、Horiba LA 950V2粒度分析器を用いて測定できるが、測定装置や方法による偏差はない。
【0145】
*ICP分析:ICP分析装置を用いてLiFの残存量、活物質内のリチウムと他の金属の比率、並びにF、B及びWなどのような特定元素の含量(mg/kg)を測定した。このとき、実験室でよく使用する一般のICP分析装置で測定できるが、測定装置や方法による偏差はない。
【0146】
*セル評価:再生または新生正極活物質96重量%、導電材であるカーボンブラック2重量%及びバインダーであるPVdF2重量%を秤量し、これらをNMPに混合してスラリーを製造した。これをアルミニウムホイルにコーティングして正極を製造した後、セル(Coin Half Cell、CHC)を製造し、電圧3~4.5Vの条件で電気化学的性能を評価した。
【0147】
【表1】
【0148】
前記表1に示したように、本発明に係る再生正極活物質(実施例1)は、本発明に係る沈降工程を経なかった比較例1~2と比較して、F含量などのような不純物の含量が低く、活物質内のリチウムと他の金属の比率が新生正極活物質(参考例)と同一であるので、全体的な物性特性に優れることが確認できた。
【0149】
下記の図2は、実施例1(a)、比較例1(b)及び比較例2(c)で製造した再生正極活物質と参考例(d)の正極活物質のそれぞれに対するSEM(Scanning Electron Microscope)写真(images)である。
【0150】
図2において、写真(a)は、本発明に係る沈降工程を経た実施例1で製造した再生正極活物質のSEM写真である。沈降工程が省略された比較例1に該当する写真(b)と比較すると、全体的に微粉が大幅に除去されたことを確認することができる。また、沈降工程を本発明に係る時間よりも長くした比較例2に該当する写真(c)は、沈降時間を過度に長くしたため、微粉の正極活物質も沈降されて、比較例2とほぼ同様のレベルの微粉が再生正極活物質内に存在していることを確認することができる。写真(d)は、参考例の正極活物質のSEM写真であり、実施例1の写真(a)と類似の表面状態を有する。このような結果を通じて、本発明に係る沈降工程を適用して再生正極活物質を製造する場合、微粉が除去されて新生正極活物質と類似の表面状態で製造されることが確認できた。
【0151】
下記の図3及び図4は、実施例1、比較例1及び比較例2において、それぞれ沈降又は洗浄後に収得した沈降物または固形物の粒度分布のグラフと、アニーリングした後に収得した再生正極活物質と参考例(Reference NCM65)の正極活物質の粒度分布を比較したグラフである。参考に、図3及び図4において、横軸は粒子のサイズ(particle size、μm)であり、縦軸は体積(volume、%)である。
【0152】
図3を参照すると、本発明に係る沈降工程を経た実施例1の沈降物の場合、そうでない比較例1及び2の固形物または沈降物と比較して、1μm近傍の微粉が大幅に減少したことを確認することができる。
【0153】
また、図4を参照すると、本発明に係る沈降工程及びアニーリング工程を経た実施例1の再生正極活物質は、そうでない比較例1及び2の再生正極活物質とは異なって、参考例の新生正極活物質(reference NCM65)と類似の形態の粒度分布を示すことを確認することができる。このような結果を通じて、本発明に係る沈降工程及びアニーリング工程を適用して再生正極活物質を製造する場合、新生正極活物質と類似の粒度分布で製造されることが確認できた。
【0154】
下記の図5は、実施例1及び比較例1で製造された再生正極活物質と参考例(Reference NCM65)の正極活物質に対してセル評価した結果であって、サイクル回数による出力性能(Rate performance)を示すグラフである。これは、互いに異なる電流でサイクルの繰り返し回数による容量を評価して出力性能(rate performance)を考察したものである。参考に、図5のグラフにおいて、横軸はサイクル(cycle)回数であり、縦軸は容量(capacity)である。
【0155】
図5を参照すると、実施例1、比較例1及び2で製造した再生正極活物質はいずれも、参考例の正極活物質(Reference NCM65)と比較して出力性能が高かった。これは、本発明に係る焼成工程及びアニーリング工程のみでも、参考例の新生正極活物質に比べて結晶性が良くなったためであると類推される。
【0156】
次に、実施例1で製造した再生正極活物質と、比較例1及び2で製造した再生正極活物質とを比較すると、実施例1で製造した再生正極活物質が、本発明に係る沈降工程の追加により微粉が効果的に除去されることで、再生正極活物質の出力性能などが大幅に向上したものと類推される。
【符号の説明】
【0157】
10 集電体
20 活物質層
30 正極シート
40 正極板
50 正極スクラップ
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】