(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】電極コーティング装置およびそれを用いた電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20231220BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20231220BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231220BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231220BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20231220BHJP
B05D 3/14 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
H01M4/62 Z
B05D7/24 301E
B05D5/12 B
B05D3/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536177
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 KR2022013097
(87)【国際公開番号】W WO2023048419
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0127327
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ス・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン・スン・オー
(72)【発明者】
【氏名】キュ・テ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジ・ジャン
【テーマコード(参考)】
4D075
5H050
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC80
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC94
4D075BB05Z
4D075BB24Z
4D075BB81Z
4D075CA13
4D075CA21
4D075CA22
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB01
4D075DC18
4D075DC19
4D075EA10
4D075EB07
4D075EB12
4D075EB14
4D075EB16
4D075EB19
4D075EB22
4D075EB37
4D075EB39
5H050AA14
5H050AA19
5H050BA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA11
5H050EA22
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA28
5H050GA02
5H050GA22
5H050GA27
5H050GA29
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、電極コーティング装置およびそれを用いた電極の製造方法に関し、上記電極コーティング装置は、電極スラリーを表面に塗布した電極集電体の裏面に電極スラリーにバインダーとして含有されたイオン性バインダーが有する電荷と反対の電荷を有するように静電気を誘導することによって、電極スラリーの乾燥工程時に溶媒の揮発が発生しても、バインダーが電極スラリーの表面に移動するのを防止することができるので、電極スラリーを乾燥して形成される電極合材層と電極集電体の接着力を改善する効果に優れているという利点がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール・ツー・ロール方式で電極集電体を移動させる移送部と、
前記移送部によって移動する電極集電体の表面に電極スラリーを吐出するコーターと、
前記電極スラリーを表面に塗布した電極集電体の裏面に静電気を誘導する静電気誘導部と、を含む電極コーティング装置。
【請求項2】
静電気誘導部は、表面に静電気誘導物質をコーティングした帯電領域を含むローラーを含む、請求項1に記載の電極コーティング装置。
【請求項3】
静電気誘導物質は、エボナイト、ガラス、ナイロン、ウール、レーヨン、羊毛、シルク、絹織物、紙、鉄、ゴム、銅、銀、金、白金、ポリスチレン、アクリル、セルロイド、ポリビニルクロライド、ポリプロピレンポリエチレン、シリコーンまたはテフロン(登録商標)を含む、請求項2に記載の電極コーティング装置。
【請求項4】
静電気誘導部は、
モーターと、前記モーターのモーター軸と軸結合し、外周面にギアが形成された動力伝達軸とで構成されるモーター部と、
前記動力伝達軸とギア結合し、動力伝達軸の回転によって回転するように外周面にギアが形成された円形の回転摩擦部材と、前記回転摩擦部材の外周面の一側に接触するように設置された固定摩擦部材と、前記回転摩擦部材から一定距離離隔し、前記回転摩擦部材を中心に前記固定摩擦部材と対称を成す位置に設置される弧状の静電気誘導部材と、前記静電気誘導部材の一側に設置された静電気誘導線とで構成される静電気発生部と、
前記静電気誘導線によって静電気誘導部材と連結され、表面に電荷を帯び、電極集電体の裏面と対面するように設けられる静電気板と、を含む、請求項1に記載の電極コーティング装置。
【請求項5】
回転摩擦部材は、外周面の上部または下部にギアが形成され、
ギアが形成されない外周面に前記固定摩擦部材が面接触する、請求項4に記載の電極コーティング装置。
【請求項6】
電極スラリーは、イオン性バインダーを含有し、
静電気誘導部は、電極集電体の表面に塗布した電極スラリーのイオン性バインダーと反対電荷を電極集電体の裏面に誘導する、請求項1に記載の電極コーティング装置。
【請求項7】
イオン性バインダーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールおよびアルギネートからなる群から選ばれる1種以上の重合体を含む、請求項6に記載の電極コーティング装置。
【請求項8】
移送部は、20~100m/minの速度で運行される、請求項1に記載の電極コーティング装置。
【請求項9】
電極集電体の一面に電極スラリーを塗布する段階と、
電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に静電気を誘導する段階と、を含む電極の製造方法。
【請求項10】
電極スラリーは、イオン性バインダーを含有し、
電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に誘導される静電気は、前記イオン性バインダーと反対電荷を有する、請求項9に記載の電極の製造方法。
【請求項11】
イオン性バインダーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールおよびアルギネートからなる群から選ばれる1種以上の重合体を含む、請求項9に記載の電極の製造方法。
【請求項12】
電極集電体の裏面に静電気を誘導する段階は、
電極集電体の裏面と静電気誘導物質との接触帯電によって行われたり;または摩擦部材の摩擦帯電によって行われる、請求項9に記載の電極の製造方法。
【請求項13】
前記静電気を誘導する段階後に、
電極集電体の一面に塗布した電極スラリーを乾燥させる段階をさらに含む、請求項9に記載の電極の製造方法。
【請求項14】
電極スラリーを乾燥させる段階は、50℃~200℃の温度で行われる、請求項13に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極集電体上に電極スラリーをコーティングする装置およびそれを用いた電極の製造方法に関するものである。
【0002】
本出願は、2021年9月27日付の韓国特許出願第10-2021-0127327号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池の電極は、このような活物質とバインダー(binder)樹脂成分を混合して溶媒に分散させてスラリー(slurry)を作成し、これを集電体の表面に塗布し、乾燥した後、合材層を形成して製作される。
【0004】
このようなリチウム二次電池のより高いエネルギー密度を達成するためには、高容量の活物質を用いて電極にローディング(loading)される活物質のローディングが高まるにつれて、活物質と電極間の接着力が低下したり、負極活物質相互間の接触界面の変化による抵抗増加に伴い、充放電サイクルが進行されるにつれて容量が急激に低下し、サイクル寿命が短くなるという問題点を有している。
【0005】
一般的に、バインダーとして高分子バインダーが広く用いられており、このような高分子バインダーの量を増やして、活物質間のみならず、活物質と集電体間の結着力を高め、集電体から活物質の脱離を減少させ、電池の充放電による体積膨張の抑制効果を高めることができるが、過量の高分子バインダーを使用する場合、バインダーの電気絶縁性によって負極の電気抵抗が高くなり、相対的に活物質の量が減少するので、容量減少などの問題点が台頭している。
【0006】
また、乾燥工程でスラリー内の溶媒が揮発し、スラリーの内部に均一に分散していたバインダーがスラリーの表面に上がって集中する現象が誘導されるので、これによって、電極内の均一な化学反応を誘導しにくく、バインダーの長さが長くなるほどバインダー同士が別々に集まる傾向が高くなり、経時性にも影響を及ぼすという問題がある。
【0007】
したがって、少量でも強い接着力で電極の製造時に電極活物質間または電極活物質と集電体間の分離を防止し、強い物性で繰り返される充放電時に発生する電極活物質の体積膨張を制御して、電極の構造的安定性およびこれによる電池の性能向上を図ることができる技術の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2015-0014629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これより、本発明の目的は、電極スラリー乾燥工程でもスラリー内に含有されたバインダーが表面に上がって集中する現象を防止して、電極の合材層と電極集電体間の接着力を向上させることができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述のような問題を解決するために、
本発明は、一実施形態において、
ロール・ツー・ロール方式で電極集電体を移動させる移送部と、
上記移送部によって移動する電極集電体の表面に電極スラリーを吐出するコーターと、
上記電極スラリーを表面に塗布した電極集電体の裏面に静電気を誘導する静電気誘導部と、を含む電極コーティング装置を提供する。
【0011】
ここで、上記静電気誘導部は、電極スラリーを表面に塗布した電極集電体の裏面と静電気誘導物質を接触させて接触帯電によって静電気を誘導したり、または摩擦部材の摩擦帯電によって形成された電荷を用いることによって静電気を誘導することができる。
【0012】
一例として、静電気誘導部は、表面に静電気誘導物質をコーティングした帯電領域を含むローラーを含み、上記ローラーの静電気誘導物質と電極集電体の接触によって静電気を誘導することができる。
【0013】
この場合、上記静電気誘導物質は、エボナイト、ガラス、ナイロン、ウール、レーヨン、羊毛、シルク、絹織物、紙、鉄、ゴム、銅、銀、金、白金、ポリスチレン、アクリル、セルロイド、ポリビニルクロライド、ポリプロピレンポリエチレン、シリコーンまたはテフロン(登録商標)を含んでもよい。
【0014】
他の一例として、上記静電気誘導部は、
モーターと、上記モーターのモーター軸と軸結合し、外周面にギアが形成された動力伝達軸とで構成されるモーター部と、
上記動力伝達軸とギア結合し、動力伝達軸の回転によって回転するように外周面にギアが形成された円形の回転摩擦部材と、上記回転摩擦部材の外周面の一側に接触するように設置された固定摩擦部材と、上記回転摩擦部材から一定距離離隔し、上記回転摩擦部材を中心に上記固定摩擦部材と対称を成す位置に設置される弧状の静電気誘導部材と、上記静電気誘導部材の一側に設置された静電気誘導線とで構成される静電気発生部と、
上記静電気誘導線によって静電気誘導部材と連結され、表面に電荷を帯び、電極集電体の裏面と対面するように設けられる静電気板と、を含み、上記回転摩擦部材によって誘導された電荷を電極集電体の裏面に近接させることによって静電気を誘導することができる。
【0015】
このとき、上記回転摩擦部材は、外周面の上部または下部にギアが形成され、ギアが形成されない外周面に上記固定摩擦部材が面接触する構造を有していてもよい。
【0016】
一方、上記電極集電体の表面に塗布する電極スラリーは、イオン性バインダーを含有することができ、上記静電気誘導部は、電極集電体の表面に塗布した電極スラリーのイオン性バインダーと反対電荷を電極集電体の裏面に誘導することができる。
【0017】
このとき、上記イオン性バインダーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールおよびアルギネートからなる群から選ばれる1種以上の重合体を含んでもよい。
【0018】
また、上記移送部は、20~100m/minの速度で運行されてもよい。
【0019】
しかも、本発明は、一実施形態において、
電極集電体の一面に電極スラリーを塗布する段階と、
電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に静電気を誘導する段階と、を含む電極の製造方法を提供する。
【0020】
このとき、上記電極スラリーは、イオン性バインダーを含有し、電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に誘導される静電気は、上記イオン性バインダーと反対電荷を有していてもよい。
【0021】
また、上記イオン性バインダーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリロニトリル(PAN:polyacrylonitrile)、ポリアクリルアミド(PAM:polyacryl amide)、スチレンブタジエンゴム(SBR:styrene butadiene rubber)、アクリロニトリルブタジエンゴム(acrylonitrile butadiene rubber)、アクリルゴム(acrylic rubber)、ブチルゴム(butyl rubber)、フッ素ゴム(fluoro rubber)、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)、ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)およびアルギネートからなる群から選ばれる1種以上の重合体を含んでもよい。
【0022】
また、上記電極集電体の裏面に静電気を誘導する段階は、電極集電体の裏面と静電気誘導物質との接触帯電によって行われたり、または摩擦部材の摩擦帯電によって行われ得る。
【0023】
また、上記静電気を誘導する段階後に、電極集電体の一面に塗布した電極スラリーを乾燥させる段階をさらに含んでもよい。
【0024】
このとき、上記電極スラリーを乾燥させる段階は、50℃~200℃の温度で行われ得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る電極コーティング装置は、電極スラリーを表面に塗布した電極集電体の裏面に電極スラリーにバインダーとして含有されたイオン性バインダーが有する電荷と反対の電荷を有するように静電気を誘導することによって、電極スラリーの乾燥工程時に溶媒の揮発が発生しても、バインダーが電極スラリーの表面に移動するのを防止することができるので、電極スラリーを乾燥して形成される電極合材層と電極集電体の接着力を改善する効果に優れているという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による電極コーティング装置の構造を概略的に示す構造図である。
【
図2】本発明による静電気誘導部の一例を示すイメージである。
【
図3】本発明による静電気誘導部の他の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な実施形態を有していてもよいところ、特定の実施形態を挙げて詳細に説明しようとする。
【0028】
しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解すべきである。
【0029】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解すべきである。
【0030】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるというのは、上部のみならず、下部に配置される場合も含んでもよい。
【0031】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0032】
<電極製造用コーティング装置>
本発明は、一実施形態において、
ロール・ツー・ロール方式の供給工程を通じて電極集電体を走行方向に移動させる移送部と、
上記移動ユニットの上部に位置し、移動ユニットによって移動する電極集電体の表面に電極スラリーを吐出するコーターと、
上記移動ユニットの下部に配置され、上記コーターによって電極スラリーを表面に塗布した電極集電体の裏面に静電気を誘導する静電気誘導部と、を含む電極製造用コーティング装置を提供する。
【0033】
本発明による電極製造用コーティング装置は、
図1に示されたように、電極集電体を移動させる移送部11および12と、電極集電体の表面に電極スラリーを供給するコーター20と、電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に静電気を誘導する静電気誘導部30と、を含む。
【0034】
このとき、上記移送部11および12は、当業界において通常的に適用される方式によって電極組立体を走行させることができるが、具体的には、ロール・ツー・ロール方式で電極集電体の走行方向の前方および後方に配置される一対のローラー11および12を含んでもよい。
【0035】
また、上記移送部11および12は、電極組立体の表面に電極スラリーを一定に塗布し得る速度で運行されてもよいが、具体的には、20~100m/minの速度で運行されてもよく、より具体的には、30~90m/min、40~90m/min、50~100m/min、70~100m/min、20~80m/min、20~60m/min、20~40m/min、40~80m/min、または25~70m/minの速度で運行されてもよい。本発明は、移送部11および12の運行速度を上記のように制御することによって、電極組立体の表面に電極スラリーを一定の厚さで塗布することができると共に、静電気誘導部が電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に静電気を誘導するのに要求される時間を提供し得る。
【0036】
また、上記コーター20は、移動する電極集電体の表面に電極スラリーを供給するユニットであり、当業界において通常適用される方式で適用されてもよいが、具体的には、スロットダイコーターを含んでもよい。
【0037】
上記スロットダイコーターは、電極集電体上に電極スラリーを塗布して電極合材層を形成するが、上部ダイおよび下部ダイに形成される一対の吐出口を通じて電極スラリーを吐出する構造を有することができ、これにより、電極集電体上に2層の電極合材層を形し得る。
【0038】
また、上記静電気誘導部30は、移送部によって移動する電極集電体の下部に位置し、コーター20により電極スラリーを吐出し、吐出した電極スラリーを表面に塗布した電極集電体の裏面に静電気を誘導する。
【0039】
ここで、上記静電気誘導部30は、電極集電体の表面に塗布した電極スラリーが電荷を有するイオン性バインダーを含有し、上記静電気誘導部30は、電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面にイオン性バインダーの電荷と反対の電荷で帯電するように静電気を誘導することができる。
【0040】
すなわち、静電気誘導機は、(+)電荷を示すイオン性バインダーを含有する電極スラリーを電極集電体に塗布する場合、静電気誘導機は、電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に(-)電荷を誘導することができ、または(-)電荷を示すイオン性バインダーを含有する電極スラリーを電極集電体に塗布する場合、静電気誘導機は、電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に(+)電荷を誘導することができる。
【0041】
上記イオン性バインダーは、電荷を有するものであれば、その種類が特に限定されるものではないが、電極活物質との接合力および合材層の内部での電気的物性を考慮して、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリロニトリル(PAN:polyacrylonitrile)、ポリアクリルアミド(PAM:polyacryl amide)、スチレンブタジエンゴム(SBR:styrene butadiene rubber)、アクリロニトリルブタジエンゴム(acrylonitrile butadiene rubber)、アクリルゴム(acrylic rubber)、ブチルゴム(butyl rubber)、フッ素ゴム(fluoro rubber)、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)、ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)およびアルギネートからなる群から選ばれる1種以上の重合体を含んでもよい。上記重合体は、カルボキシル基(-COOH)やスルホン基(-SOOOH)などを含んでいて、一部がNa+やLi+などのアルカリ金属イオンなどと塩の形態を有することによって(-)電荷を有していてもよい。
【0042】
また、上記静電気誘導部30は、電極集電体の表面を帯電させて静電気を誘導し得るものであれば、その形態や駆動方式が限定されるものではないが、具体的には、移動する電極集電体と直接的に摩擦して接触帯電を誘導する構造を有したり、別途の摩擦部材を具備して摩擦帯電を誘導する構造を有していてもよい。
【0043】
物質は、原子核と電子で構成され、中性を維持するためには、電子と核の数が同じでなければならない。しかしながら、電子(特に、核から最も遠い軌道にある電子)が相対的に自由に動くので、2つの物質が接触すると、1つの物質は、電子を受けて負電荷を帯び、他の物質は、電子を喪失して正電荷を帯びる。このとき、接触圧力が強く、電子の剥離率(接触速度)が高いほど帯電量が多くなる。
【0044】
このような現象を用いて物質の表面に電荷を付与する帯電方式には、接触帯電、摩擦帯電、剥離帯電などがある。そのうち、「接触帯電」は、互いに異なる2つの物体が接触して分離するときに発生する。互いに異なる物体が接触すると、各物体で電荷移動が起こり、電気二重層を形成し、電荷分離によって静電気が発生する。また、同じ種類の物体であるとしても、腐食、平滑性などの表面状態によって接触帯電が発生することがあるが、このような帯電方式の1つが「摩擦帯電」である。「摩擦帯電」とは、物体が摩擦を起こしたり摩擦によって接点が移動して電荷が分離するときに静電気が発生する現象をいう。
【0045】
本発明の静電気誘導部30は、このような接触帯電と摩擦帯電を用いて移動する電極集電体の表面に電荷を付与することができる。
【0046】
一例として、上記静電気誘導部は、
図2に示されたように、接触帯電の方式を適用して電極スラリーSを表面に塗布した電極集電体Fの裏面に当接するローラー30を含み、上記ローラー30は、電極集電体Fの裏面のうち電極スラリーSを塗布した領域、すなわちコーティング部Fcの裏面に静電気誘導物質が直接当接するように静電気誘導物質を表面にコーティングすることができる。
【0047】
上記ローラー30は、電極スラリーSを塗布した部Fcの裏面に静電気誘導物質をコーティングした帯電領域31を含んでいて、電極集電体Fの走行中に裏面に直接電荷を誘導することができ、このとき、使用可能な静電気誘導物質としては、エボナイト、ガラス、ナイロン、ウール、レーヨン、羊毛、シルク、絹織物、紙、鉄、ゴム、銅、銀、金、白金、ポリスチレン、アクリル、セルロイド、ポリビニルクロライド、ポリプロピレンポリエチレン、シリコーンまたはテフロン(登録商標)などを使用することができる。
【0048】
例えば、上記静電気誘導物質は、テフロン(登録商標)、ポリビニルクロライド、セルロイドまたはゴムを含んでもよい。
【0049】
また、上記静電気誘導物質は、電極スラリーを塗布したコーティング部Fcの裏面にコーティングされるので、ローラー30の全面にコーティングされたり、ローラーの中央部のみにコーティングされてもよい。静電気誘導物質がローラー30の中央部にコーティングされる場合、上記ローラー30は、両端に静電気誘導物質がコーティングされない非帯電領域32を含んでもよいし、このとき、静電気誘導物質がコーティングされない非帯電領域32の総面積は、ローラー30の全体表面の25%以下であってもよい。
【0050】
他の一例として、上記静電気誘導部30は、摩擦帯電の方式を適用して摩擦部材を備える構成を有していてもよい。具体的には、上記静電気誘導部30は、
図3に示されたように、モーター322と、上記モーターのモーター軸と軸結合し、外周面にギアが形成された動力伝達軸321とで構成されるモーター部320と、;上記動力伝達軸321とギア結合し、動力伝達軸の回転によって回転するように外周面にギアが形成された円形の回転摩擦部材331と、上記回転摩擦部材の外周面の一側に接触するように設置された固定摩擦部材332と、上記回転摩擦部材331から一定距離離隔し、上記回転摩擦部材331を中心に上記固定摩擦部材332と対称を成す位置に設置される弧状の静電気誘導部材333と、上記静電気誘導部材333の一側に設置された静電気誘導線334とで構成される静電気発生部330と;上記静電気誘導線334により静電気誘導部材333と連結され、表面に電荷を帯び、電極集電体の裏面と対面するように設けられる静電気板340と;を含んでもよい。
【0051】
ここで、上記モーター部320は、外部から電源323を供給されたり、バッテリーなどによって駆動するモーター322と、上記モーター322のモーター軸と軸結合し、外周面にギアが形成された動力伝達軸321とで構成される。動力伝達軸321の外周面に形成されたギアは、後述する回転摩擦部材と噛合し、回転摩擦部材を回転させるために形成されたものである。
【0052】
また、上記動力伝達軸321の外周面に形成されたギアは、後述する回転摩擦部材331と噛合し、該回転摩擦部材331を回転させるために形成されたものである。
【0053】
上記静電気発生部330は、上記動力伝達軸321とギア結合するように設置され、上記モーター322が回転すると、上記動力伝達軸321の回転によって回転するように外周面にギアが形成された円形の回転摩擦部材331と、上記回転摩擦部材331の外周面の一側に接触するように設置された固定摩擦部材332と、上記回転摩擦部材331から一定距離離隔し、上記回転摩擦部材331を中心に上記固定摩擦部材332と対称を成す位置に設置される弧状の静電気誘導部材333と、上記静電気誘導部材333の一側に設置される静電気誘導線334とで構成される。
【0054】
このとき、上記回転摩擦部材331は、発生した静電気の損失を減らすために、外周面の上部または下部にギアが形成され、ギアが形成されていない外周面に上記固定摩擦部材332が面接触するように形成することが好ましい。
【0055】
このような上記回転摩擦部材331と上記固定摩擦部材332を成す材質は、特に限定されないが、静電気発生量を高めるためには、帯電順位の高い材質を使用することが好ましく、それぞれの形状に加工できる材質からなるものを使用してもよい。
【0056】
また、上記動力伝達軸321と回転摩擦部材331は、ウォームギア方式で相互噛合するように設置されたものであり、上記動力伝達軸321が回転すると、上記動力伝達軸321のギアに噛合した上記回転摩擦部材331が回転し、これによって、上記回転摩擦部材331と固定摩擦部材332が摩擦し、静電気が発生する。
【0057】
上記のように発生した静電気は、静電気発生部位、すなわち上記固定摩擦部材332の近接位置で当該静電気を相殺させようとする力が最も強いため、上記静電気板340に発生した静電気を最大限相殺させることなく伝達するために、上記回転摩擦部材331に隣接し、かつ上記固定摩擦部材332から最も遠距離に静電気誘導部材333を設置する。
【0058】
また、上記固定摩擦部材332は、多様な形態で形成して使用してもよく、図示してはいないが、一体型のパッドを上記本体ケース310に固定して使用してもよい。例えば、上記固定摩擦部材は、ブラッシュ形態を有していてもよい。
【0059】
上記静電気誘導線334は、上記回転摩擦部材331と固定摩擦部材332に発生した静電気が静電気板340に誘導されるに際して損失を生じないように、絶縁素材で被覆された電線を使用することが好ましい。
【0060】
また、上記静電気板340は、上記静電気誘導部材333に連結され、誘導された静電気を広い面積に放出するために形成され、その形状は、図示のように板状で形成され、広い面積を有するように形成し、電極集電体の裏面に所定の距離で離隔するように配置されてもよい。このとき、上記隔離距離は、1~30cmであってもよく、具体的には、1~20cm、1~10cm、1~5cm、5~10cm、10~20cm、または15~30cmであってもよい。
【0061】
上記静電気板340は、電極スラリーを表面に塗布した電極集電体の裏面に所定の距離で離隔して配置されることによって、電極集電体の裏面に間接的に帯電を誘導することができる。
【0062】
しかも、上記静電気誘導部30は、電極集電体の裏面に静電気を十分に誘導するために回転摩擦部材331の回転速度などを制御することができ、このために、ケースの内部に別に制御部350をさらに含んでもよい。
【0063】
本発明による電極コーティング装置は、上述した構成を有することによって、電極集電体の表面に塗布した電極スラリーのイオン性バインダーが電極の乾燥過程で揮発される溶媒の影響で表面に移動して濃度が高くなるのを防止できるという利点がある。
【0064】
<電極の製造方法>
しかも、本発明は、一実施形態において、
上記電極コーティング装置を用いた電極の製造方法を提供する。
【0065】
具体的には、上記電極の製造方法は、電極集電体の表面に電極スラリーを塗布する段階と、電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に静電気を誘導する段階と、を含む。
【0066】
本発明による電極の製造方法は、電荷を有するイオン性バインダーを含有する電極スラリーを電極集電体の表面に塗布し、電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に上記イオン性バインダーが有する電荷の反対電荷で帯電させて静電気を誘導することによって、電極スラリーの乾燥時に電極スラリー内の溶媒が揮発し、バインダーが電極スラリーの表面に集中するのを防止することができる。
【0067】
具体的には、上記電極スラリーは、(+)電荷を示すイオン性バインダーを含有することができ、この場合、電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面には、(-)電荷を誘導することができる。または、上記電極スラリーは、(-)電荷を示すイオン性バインダーを含有する電極スラリーを含有することができ、この場合、電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に(+)電荷を誘導することができる。
【0068】
上記イオン性バインダーは、電荷を有するものであれば、その種類が特に限定されるものではないが、電極活物質との接合力および合材層の内部での電気的物性を考慮して、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリロニトリル(PAN:polyacrylonitrile)、ポリアクリルアミド(PAM:polyacryl amide)、スチレンブタジエンゴム(SBR:styrene butadiene rubber)、アクリロニトリルブタジエンゴム(acrylonitrile butadiene rubber)、アクリルゴム(acrylic rubber)、ブチルゴム(butyl rubber)、フッ素ゴム(fluoro rubber)、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)、ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)およびアルギネートからなる群から選ばれる1種以上の重合体を含んでもよい。上記重合体は、カルボキシル基(-COOH)やスルホン基(-SOOOH)などを含んでいて、一部がNa+やLi+などのアルカリ金属イオンなどと塩の形態を有することによって、(-)電荷を有していてもよい。
【0069】
一例として、電極スラリーに含有されたイオン性バインダーは、一部がNa+で置換されたカルボキシメチルセルロース(Na-CMC)を含み、上記静電気誘導機は、上記電極スラリーを表面に塗布した電極集電体の裏面に(+)電荷を誘導することができる。
【0070】
また、上記イオン性バインダーは、電極スラリー全体100重量部に対して0.5~10重量部で含まれてもよいし、具体的には、全体100重量部に対して0.5~5重量部、または1~4重量部で含まれてもよい。
【0071】
また、電極集電体の裏面に静電気を誘導する段階は、電極集電体の裏面と静電気誘導物質との接触帯電によって行われたり;または摩擦部材の摩擦帯電によって行われ得る。
【0072】
具体的には、上記静電気誘導は、エボナイト、ガラス、ナイロン、ウール、レーヨン、羊毛、シルク、絹織物、紙、鉄、ゴム、銅、銀、金、白金、ポリスチレン、アクリル、セルロイド、ポリビニルクロライド、ポリプロピレンポリエチレン、シリコーンまたはテフロン(登録商標)などの静電気誘導物質を電極集電体の裏面に接触させたり;または別途の摩擦部材を準備し、準備した摩擦部材の摩擦によって生成された電荷を電極集電体の裏面に近接させることによって行われ得る。
【0073】
一方、本発明による電極の製造方法は、電極集電体の裏面に静電気を誘導する段階後に、電極集電体の一面に塗布した電極スラリーを乾燥させる段階をさらに含んでもよい。
【0074】
上記乾燥段階は、高温条件で行われ、電極スラリーの溶媒が揮発しても、電極集電体の裏面に誘導された静電気によって電極スラリー内に均一に分散したイオン性バインダーが電極集電体に近い電極スラリーの下部に固定されるので、イオン性バインダーが電極スラリーの表面に移動して集中するのを防止することができる。
【0075】
このとき、電極スラリーを乾燥させる段階は、電極スラリーに含有された溶媒を除去するのに必要な温度で行われ得、具体的には、50℃~200℃であってもよく、より具体的には、50℃~200℃、80℃~200℃、100℃~200℃、80℃~150℃、または110℃~180℃であってもよい。
【0076】
本発明による電極の製造方法は、上述した電極コーティング装置を用いて行われ得、これによって、電荷を有するイオン性バインダーを含有する電極スラリーを電極集電体の表面に塗布し、電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に上記イオン性バインダーが有する電荷の反対電荷で帯電させて静電気を誘導することによって、電極スラリーの乾燥時に電極スラリー内の溶媒が揮発し、バインダーが電極スラリーの表面に集中するのを防止することができる。
【0077】
以下、本発明を実施例および実験例に基づいてより詳細に説明する。
ただし、下記実施例および実験例は、本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0078】
<実施例1~3および比較例1~3.リチウム二次電池用負極の製造>
リチウム二次電池用負極を製造するために銅薄板を準備した。これとは別に、ホモミキサーに水を注入し、負極活物質としての天然黒鉛およびケイ素(Si)含有粒子とバインダーとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)およびNaで置換されたカルボキシメチルセルロース(CMC)を80:10:1:2の重量比で秤量し、それぞれ別に投入した後、3,000rpmで60分間混合して、負極スラリーを製造した。
【0079】
図1のような構造の電極コーティング装置の移送部11に準備した銅薄板を固定させ、コーター20に製造された負極スラリーを投入した。次に、電極コーティング装置を作動させて、電極集電体としての銅薄板の表面に負極スラリーを塗布した。
【0080】
負極スラリーを塗布した電極集電体を乾燥部に移送し、負極スラリーが乾燥された負極合材層を形成し、これを圧延して、リチウム二次電池用負極を製造した。このとき、負極合材層の総厚さは、150μmであり、製造された負極の総厚さは、約200μmであった。また、静電気誘導部は、
図3に示されたように、摩擦帯電方式で負極スラリーを表面に塗布した銅薄板の裏面に静電気を誘導し、移送部の走行速度、乾燥前の静電気誘導部の作動の有無(すなわち、+電荷帯電の有無)、および乾燥部の乾燥温度は、下記表1に示された通りである。
【0081】
【0082】
<実験例>
本発明によって製造された電極の性能を評価するために、下記のような実験を行った。
【0083】
イ)負極合材層の接着力の評価
実施例および比較例で製造された正極を横および縦の長さがそれぞれ25mm、70mmとなるように切断し、プレスを用いて70℃、4MPaの条件で加圧して試験片を製作した。準備した試験片を両面テープを用いてガラス板に付着して固定し、このとき、集電体がガラス板に対面するように配置した。引張試験機を用いて試験片の第2合材層部分を25℃で100mm/minの速度で90°の角度で剥離し、このときの剥離力をリアルタイムで測定し、その平均値を負極合材層の接着力と定義した。その結果を下記表2に示した。
【0084】
ロ)電極抵抗の評価
実施例および比較例で製造された負極を対象に4ポイントプローブ(4-point probe)方式で電極の面抵抗を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0085】
ハ)電極寿命の評価
ホモミキサー(homo mixer)にN-メチルピロリドンを注入し、正極スラリー固形分100重量部に対して正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2を96重量部と、導電材としてカーボンブラック2重量部と、バインダーとしてPVDF2重量部を秤量して投入した後、2,000rpmで30分間混合して、正極スラリーを製造した。
【0086】
製造された正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥し、圧延して、正極を製造した。このとき、正極合材層の総厚さは、160μmであり、製造された正極の総厚さは、約200μmであった。
【0087】
製造された正極と実施例および比較例の負極との間に多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなる分離膜(厚さ:約16μm)が介在されるように積層し、電解液としてE2DVCを注入して、フルセル(full cell)形態のセルを製作した。
ここで、「E2DVC」とは、カーボネート系電解液の一種であり、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1:1(体積比)の混合物に、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6、1.0M)およびビニルカーボネート(VC、2重量%)を混合した溶液を意味する。
【0088】
製造された各リチウム二次電池を対象に25℃で充電終止電圧4.25V、放電終止電圧2.5V、0.33C/0.33Cの条件で200回充放電(n=200)を実施しつつ、容量保持率(Capacity Retention[%])を測定した。その結果を下記表2に示した。
【0089】
【0090】
本発明によって製造された電極は、電極合材層と電極集電体間の接着力に優れ、電気的性能に優れていることが分かる。
【0091】
具体的には、電極集電体の表面に電極スラリーを塗布し、電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に静電気を誘導した実施例のリチウム二次電池用負極は、負極合材層と集電体との接着力が35N/mを超過する高い接着力を示し、電極抵抗が2.2Ω/sq.以下であり、200回充放電後の容量保持率が95%を超過することが示された。
【0092】
一方、電極スラリーを塗布した電極集電体の裏面に静電気を誘導しない比較例のリチウム二次電池用負極は、負極合材層と集電体間の接着力が弱いのみならず、電気的性能が低いことが確認された。
【0093】
このような結果から、本発明による電極コーティング装置およびこれを用いた電極の製造方法は、電極スラリーを表面に塗布した電極集電体の裏面に電極スラリーにバインダーとして含有されたイオン性バインダーが有する電荷と反対の電荷を有するように静電気を誘導することによって、電極スラリーの乾燥工程時に溶媒の揮発が発生しても、バインダーが電極スラリーの表面に移動するのを防止することができるので、電極スラリーを乾燥して形成される電極合材層と電極集電体の接着力を改善する効果に優れているという利点がある。
【0094】
以上では、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野における通常の知識を有する者なら、特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解できる。
【0095】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0096】
1 電極コーティング装置
11および12 移送部
20 コーター
30 静電気誘導部
31 帯電領域
32 非帯電領域
40 乾燥部
50 圧延部
310 本体ケース
320 モーター部
321 動力伝達軸
322 モーター
323 外部電源
330 静電気発生部
331 回転摩擦部材
332 固定摩擦部材
333 静電気誘導部材
334 静電気誘導線
340 静電気板
350 制御部
F 電極集電体
S 電極スラリー
Fc 電極集電体の電極スラリーコーティング部
Fn 電極集電体の電極スラリーがコーティングされない無地部
【国際調査報告】