(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】単一分子速度論による分子バーコード分析
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20231220BHJP
C07K 1/13 20060101ALI20231220BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20231220BHJP
【FI】
C12Q1/68 100Z
C07K1/13
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536198
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 US2021010050
(87)【国際公開番号】W WO2022132188
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】アド、オメル
(72)【発明者】
【氏名】ボア、ロバート イー.
(72)【発明者】
【氏名】マコーマック、エバン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイニング、ブリアナ リー
(72)【発明者】
【氏名】サーストン、トーマス レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】リード、ブライアン
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QS34
4B063QX10
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045EA50
4H045EA61
(57)【要約】
本開示の態様は、バーコード認識分子と分子バーコードとの間の結合相互作用に基づいて分子バーコード内容を決定する方法を提供する。いくつかの態様において、本開示は、分子バーコードを、同分子バーコード上の1つ以上の部位に結合するバーコード認識分子と接触させることと、一連のシグナルパルスを検出することと、一連のシグナルパルスにおけるバーコード特異的パターンに基づいてバーコード内容を決定することと、を含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子バーコードを、分子バーコード上の1つ以上の部位に結合するバーコード認識分子と接触させることであって、前記分子バーコードが、ポリペプチドを含む分析物に付着している、接触させることと;
前記バーコード認識分子と前記分子バーコードとの間の結合相互作用を示す一連のシグナルパルスを検出することと;
前記一連のシグナルパルスにおけるバーコード特異的パターンに基づいて、前記分子バーコードのアイデンティティを決定することと;
を含む方法。
【請求項2】
前記分析物が、前記分子バーコードを介して表面に固定化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分子バーコードが、少なくとも1つの生体分子を含む連結基を介して前記表面に固定化される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記連結基は二本鎖核酸を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記連結基は少なくとも1つのビス-ビオチン部分に結合したアビジンタンパク質を含むタンパク質-リガンド複合体を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記連結基が:
ビス-ビオチン部分を含む二本鎖核酸であって、前記分子バーコードに付着している二本鎖核酸と、
ビス-ビオチン部分に結合したアビジンタンパク質であって、前記表面に付着しているアビジンタンパク質と、
を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分子バーコードが核酸バーコードまたはポリペプチドバーコードである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記バーコード認識分子がオリゴヌクレオチドである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記分子バーコードが核酸バーコードであり、前記バーコード認識分子がオリゴヌクレオチドである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも4ヌクレオチド長である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記オリゴヌクレオチドが30ヌクレオチド長未満である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記オリゴヌクレオチドが、約5~約25ヌクレオチド長である、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記バーコード認識分子がタンパク質または核酸アプタマーである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記バーコード認識分子が少なくとも1つの検出可能な標識を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記バーコード認識分子は、前記少なくとも1つの検出可能な標識を含む標識生体分子に付着される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記標識生体分子が標識核酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記バーコード認識分子は、少なくとも1つの生体分子を含む連結基を介して前記標識生体分子に付着される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記連結基はタンパク質-リガンド複合体を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記タンパク質-リガンド複合体が、少なくとも2つのリガンド結合部位を含む多価タンパク質を含み、
前記バーコード認識分子は、前記多価タンパク質上の第1のリガンド結合部位に結合した第1のリガンド部分を含み、
前記標識生体分子は、前記多価タンパク質上の第2のリガンド結合部位に結合した第2のリガンド部分を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記多価タンパク質は、4つのビオチン結合部位を含むアビジンタンパク質であり、前記リガンド部分はビオチン部分である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ビオチン部分の少なくとも1つはビス-ビオチン部分であり、前記ビス-ビオチン部分は前記アビジンタンパク質上の2つのビオチン結合部位に結合している、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記分子バーコードが少なくとも1つの検出可能な標識を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの検出可能な標識が発光標識または導電性標識である、請求項14~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの検出可能な標識が、前記バーコード認識分子と前記分子バーコードとの間の結合中に消光されない消光標識である、請求項14~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの検出可能な標識が、前記バーコード認識分子と前記分子バーコードとの間の結合中に消光される非消光標識である、請求項14~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記分子バーコードと前記分析物との間の既知の関連に基づいて前記分析物を同定することをさらに含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記分析物を同定することは、前記分析物が由来するサンプルのアイデンティティを決定することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記サンプルが血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または単一細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記分析物がタンパク質またはその断片を含み、前記分析物を同定することが前記タンパク質のアイデンティティを決定することを含む、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記バーコード特異的パターンのシグナルパルスは、前記バーコード認識分子と前記分子バーコード上の部位との間の結合の解離速度に特徴的なパルス持続時間を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記バーコード特異的パターンの各シグナルパルスは、バーコード認識分子結合の会合速度に特徴的であるパルス間持続時間によって別のシグナルパルスから分離される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記接触させることが、前記分子バーコードを、前記分子バーコード上の異なるまたは重複する部位に結合する2つ以上のバーコード認識分子と接触させることを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記2つ以上のバーコード認識分子は、同じ混合物中で前記分子バーコードと同時に接触させられる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記2つ以上のバーコード認識分子は、異なる混合物中で前記分子バーコードと別々に接触させられる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記分子バーコードおよび前記バーコード認識分子を含む混合物を提供することをさらに含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記混合物は複数の分子バーコードを含み、前記複数の分子バーコードの各分子バーコードには異なる分析物が付着している、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記バーコード認識分子は、複数のうちの2つ以上の分子バーコードに結合する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記バーコード認識分子と前記2つ以上の分子バーコードのそれぞれとの間の結合相互作用は、異なるバーコード特異的パターンを生成する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記バーコード認識分子と前記2つ以上の分子バーコードのそれぞれとの間の結合相互作用は、同じバーコード特異的パターンを生成する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記混合物は、複数のうちの2つ以上の分子バーコードに結合する複数のバーコード認識分子を含む、請求項36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記分子バーコードが一連のインデックス配列を含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
各インデックス配列は、前記一連の任意の他のインデックス配列と異なる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記一連の少なくとも2つのインデックス配列は同じである、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記一連のインデックス配列は、一連のバーコード認識分子結合部位に対応する、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記バーコード認識分子は、前記一連の2つのインデックス配列を含む分子バーコード上の部位に結合する、請求項41~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記分析物が、生物学的供給源または合成供給源に由来する、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ポリペプチドがタンパク質またはタンパク質断片である、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記分子バーコードは、切断部位を含むリンカーを介して前記分析物に付着される、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記接触させることの前に、前記分子バーコードから前記分析物を切断することをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記一連のシグナルパルスは、一連のリアルタイムシグナルパルスである、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記ポリペプチドを配列決定することをさらに含む、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記ポリペプチドを配列決定することが:
前記ポリペプチドを1つ以上の末端アミノ酸認識分子と接触させることと;
前記ポリペプチドが分解されている間に、前記1つ以上の末端アミノ酸認識分子と前記ポリペプチドの末端で露出された連続アミノ酸との会合を示す一連のシグナルパルスを検出し、それによって前記ポリペプチドを配列決定することと、
を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記方法は単一の反応容器内で実施される、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも1つのハードウェアプロセッサと;
少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されたとき、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに請求項1~53のいずれか一項に記載の方法を実行させるプロセッサ実行可能命令を記憶する少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読記憶媒体と、
を含む、システム。
【請求項55】
少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されたとき、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに請求項1~53のいずれか一項に記載の方法を実行させるプロセッサ実行可能命令を記憶する少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項56】
分子バーコードを、前記分子バーコード上の1つ以上の部位に結合するバーコード認識分子と接触させることであって、前記分子バーコードが分析物に付着しており、酵素が前記分析物に結合されている、接触させることと;
前記バーコード認識分子と前記分子バーコードとの間の結合相互作用を示す一連のシグナルパルスを検出することと;
前記一連のシグナルパルスにおけるバーコード特異的パターンに基づいて、前記分子バーコードのアイデンティティを決定することと;
を含む、方法。
【請求項57】
前記分析物が、前記分子バーコードを介して表面に固定化される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記分子バーコードが、少なくとも1つの生体分子を含む連結基を介して前記表面に固定化される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記連結基は二本鎖核酸を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記連結基は少なくとも1つのビス-ビオチン部分に結合したアビジンタンパク質を含むタンパク質-リガンド複合体を含む、請求項58または59に記載の方法。
【請求項61】
前記連結基が:
ビス-ビオチン部分を含む二本鎖核酸であって、前記分子バーコードに付着している二本鎖核酸と、
ビス-ビオチン部分に結合したアビジンタンパク質であって、前記表面に付着しているアビジンタンパク質と、
を含む、請求項58~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記分子バーコードが核酸バーコードまたはポリペプチドバーコードである、請求項56~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記バーコード認識分子がオリゴヌクレオチドである、請求項56~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記分子バーコードが核酸バーコードであり、前記バーコード認識分子がオリゴヌクレオチドである、請求項56~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも4ヌクレオチド長である、請求項63または64に記載の方法。
【請求項66】
前記オリゴヌクレオチドが30ヌクレオチド長未満である、請求項63~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記オリゴヌクレオチドが、約5~約25ヌクレオチド長である、請求項63~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記バーコード認識分子がタンパク質または核酸アプタマーである、請求項56~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記バーコード認識分子が少なくとも1つの検出可能な標識を含む、請求項56~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記バーコード認識分子は、少なくとも1つの検出可能な標識を含む標識生体分子に結合される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記標識生体分子が標識核酸である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記バーコード認識分子は、少なくとも1つの生体分子を含む連結基を介して前記標識生体分子に結合される、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記連結基はタンパク質-リガンド複合体を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記タンパク質-リガンド複合体が、少なくとも2つのリガンド結合部位を含む多価タンパク質を含み、
前記バーコード認識分子は、多価タンパク質上の第1のリガンド結合部位に結合した第1のリガンド部分を含み、
前記標識生体分子は、前記多価タンパク質上の第2のリガンド結合部位に結合した第2のリガンド部分を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記多価タンパク質は、4つのビオチン結合部位を含むアビジンタンパク質であり、前記リガンド部分はビオチン部分である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記ビオチン部分の少なくとも1つはビス-ビオチン部分であり、前記ビス-ビオチン部分は前記アビジンタンパク質上の2つのビオチン結合部位に結合している、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記分子バーコードが少なくとも1つの検出可能な標識を含む、請求項56~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記少なくとも1つの検出可能な標識が発光標識または導電性標識である、請求項69~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記少なくとも1つの検出可能な標識が、前記バーコード認識分子と前記分子バーコードとの間の結合中に消光されない消光標識である、請求項69~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記少なくとも1つの検出可能な標識が、前記バーコード認識分子と前記分子バーコードとの間の結合中に消光される非消光標識である、請求項69~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記分子バーコードと前記分析物との間の既知の関連に基づいて前記分析物を同定することをさらに含む、請求項56~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記分析物を同定することは、前記分析物が由来するサンプルのアイデンティティを決定することを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記サンプルが血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または単一細胞である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記分析物がタンパク質またはその断片を含み、前記分析物を同定することが前記タンパク質のアイデンティティを決定することを含む、請求項81~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記バーコード特異的パターンのシグナルパルスは、前記バーコード認識分子と前記分子バーコード上の部位との間の結合の解離速度に特徴的なパルス持続時間を含む、請求項56~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記バーコード特異的パターンの各シグナルパルスは、バーコード認識分子結合の会合速度に特徴的であるパルス間持続時間によって別のシグナルパルスから分離される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記接触させることが、前記分子バーコードを、前記分子バーコード上の異なるまたは重複する部位に結合する2つ以上のバーコード認識分子と接触させることを含む、請求項56~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記2つ以上のバーコード認識分子は、同じ混合物中で前記分子バーコードと同時に接触させられる、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記2つ以上のバーコード認識分子は、異なる混合物中で前記分子バーコードと別々に接触させられる、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記分子バーコードおよび前記バーコード認識分子を含む混合物を提供することをさらに含む、請求項56~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記混合物は複数の分子バーコードを含み、前記複数の分子バーコードの各分子バーコードには異なる分析物が付着している、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記バーコード認識分子は、複数のうちの2つ以上の分子バーコードに結合する、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記バーコード認識分子と前記2つ以上の分子バーコードのそれぞれとの間の結合相互作用は、異なるバーコード特異的パターンを生成する、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記バーコード認識分子と前記2つ以上の分子バーコードのそれぞれとの間の結合相互作用は、同じバーコード特異的パターンを生成する、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
前記混合物は、複数のうちの2つ以上の分子バーコードに結合する複数のバーコード認識分子を含む、請求項91~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記分子バーコードが一連のインデックス配列を含む、請求項56~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
各インデックス配列は、前記一連の任意の他のインデックス配列と異なる、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記一連の少なくとも2つのインデックス配列は同じである、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
前記一連のインデックス配列は、一連のバーコード認識分子結合部位に対応する、請求項96~98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記バーコード認識分子は、前記一連の2つのインデックス配列を含む分子バーコード上の部位に結合する、請求項96~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記分子バーコードは、切断部位を含むリンカーを介して前記分析物に付着される、請求項56~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記接触させることの前に、前記分子バーコードから前記分析物を切断することをさらに含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記一連のシグナルパルスは、一連のリアルタイムシグナルパルスである、請求項56~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記分析物が、生物学的供給源または合成供給源に由来する、請求項56~103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
分析物が核酸である、請求項56~104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
酵素が重合酵素である、請求項56~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記分析物がデオキシリボ核酸であり、前記酵素がDNAポリメラーゼである、請求項56~106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記核酸を配列決定することをさらに含む、請求項105~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記核酸を配列決定することは、合成による配列決定反応を実施することを含み、それにより前記酵素は、鋳型として前記核酸を使用して相補的核酸鎖を合成する、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記方法は単一の反応容器内で実施される、請求項56~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
少なくとも1つのハードウェアプロセッサと;
前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されたとき、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサに請求項56~110のいずれか一項に記載の方法を実行させるプロセッサ実行可能命令を記憶する少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読記憶媒体と、
を含む、システム。
【請求項112】
少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されたとき、同少なくとも1つのハードウェアプロセッサに請求項56~110のいずれか一項に記載の方法を実行させるプロセッサ実行可能命令を記憶する少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項113】
分子バーコードを、前記分子バーコード上の1つ以上の部位に結合するバーコード認識分子と接触させることであって、前記分子バーコードが、生体分子を含む分析物に付着している、接触させることと;
前記バーコード認識分子と前記分子バーコードとの間の結合相互作用を示す一連のシグナルパルスを検出することと;
前記一連のシグナルパルスにおけるバーコード特異的パターンに基づいて、前記分子バーコードのアイデンティティを決定することと;
前記生体分子を配列決定反応条件に供することによって、前記生体分子を配列決定することと、
を含む、方法。
【請求項114】
前記分析物が、前記分子バーコードを介して表面に固定化される、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記分子バーコードが、少なくとも1つの生体分子を含む連結基を介して前記表面に固定化される、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記連結基は二本鎖核酸を含む、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記連結基は少なくとも1つのビス-ビオチン部分に結合したアビジンタンパク質を含むタンパク質-リガンド複合体を含む、請求項115または116に記載の方法。
【請求項118】
前記連結基が:
ビス-ビオチン部分を含む二本鎖核酸であって、前記分子バーコードに付着している二本鎖核酸と、
ビス-ビオチン部分に結合したアビジンタンパク質であって、前記表面に付着しているアビジンタンパク質と、
を含む、請求項115~117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記分子バーコードが核酸バーコードまたはポリペプチドバーコードである、請求項113~118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記バーコード認識分子がオリゴヌクレオチドである、請求項113~119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
前記分子バーコードが核酸バーコードであり、前記バーコード認識分子がオリゴヌクレオチドである、請求項113~120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも4ヌクレオチド長である、請求項120または121に記載の方法。
【請求項123】
前記オリゴヌクレオチドが30ヌクレオチド長未満である、請求項120~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記オリゴヌクレオチドが、約5~約25ヌクレオチド長である、請求項120~123のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
前記バーコード認識分子がタンパク質または核酸アプタマーである、請求項113~124のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
前記バーコード認識分子が少なくとも1つの検出可能な標識を含む、請求項113~125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
前記バーコード認識分子は、少なくとも1つの検出可能な標識を含む標識生体分子に結合される、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記標識生体分子が標識核酸である、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記バーコード認識分子は、少なくとも1つの生体分子を含む連結基を介して前記標識生体分子に付着される、請求項127または128に記載の方法。
【請求項130】
前記連結基はタンパク質-リガンド複合体を含む、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記タンパク質-リガンド複合体が、少なくとも2つのリガンド結合部位を含む多価タンパク質を含み、
前記バーコード認識分子は、前記多価タンパク質上の第1のリガンド結合部位に結合した第1のリガンド部分を含み、
前記標識生体分子は、前記多価タンパク質上の第2のリガンド結合部位に結合した第2のリガンド部分を含む、
請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記多価タンパク質は、4つのビオチン結合部位を含むアビジンタンパク質であり、前記リガンド部分はビオチン部分である、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記ビオチン部分の少なくとも1つはビス-ビオチン部分であり、前記ビス-ビオチン部分は前記アビジンタンパク質上の2つのビオチン結合部位に結合している、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記分子バーコードが少なくとも1つの検出可能な標識を含む、請求項113~133のいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
前記少なくとも1つの検出可能な標識が発光標識または導電性標識である、請求項126~134のいずれか一項に記載の方法。
【請求項136】
前記少なくとも1つの検出可能な標識が、前記バーコード認識分子と前記分子バーコードとの間の結合中に消光されない消光標識である、請求項126~135のいずれか一項に記載の方法。
【請求項137】
前記少なくとも1つの検出可能な標識が、前記バーコード認識分子と前記分子バーコードとの間の結合中に消光される非消光標識である、請求項126~135のいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
前記分子バーコードと前記分析物との間の既知の関連に基づいて前記分析物を同定することをさらに含む、請求項113~137のいずれか一項に記載の方法。
【請求項139】
前記分析物を同定することは、前記分析物が由来するサンプルのアイデンティティを決定することを含む、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
前記サンプルが血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または単一細胞である、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
前記分析物を同定することが前記生体分子のアイデンティティを決定することを含む、請求項138~140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
前記バーコード特異的パターンのシグナルパルスは、前記バーコード認識分子と前記分子バーコード上の部位との間の結合の解離速度に特徴的なパルス持続時間を含む、請求項113~141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
前記バーコード特異的パターンの各シグナルパルスは、バーコード認識分子結合の会合速度に特徴的であるパルス間持続時間によって別のシグナルパルスから分離される、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記接触させることが、前記分子バーコードを、前記分子バーコード上の異なるまたは重複する部位に結合する2つ以上のバーコード認識分子と接触させることを含む、請求項113~143のいずれか一項に記載の方法。
【請求項145】
前記2つ以上のバーコード認識分子は、同じ混合物中で前記分子バーコードと同時に接触させられる、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記2つ以上のバーコード認識分子は、異なる混合物中で前記分子バーコードと別々に接触させられる、請求項144に記載の方法。
【請求項147】
前記分子バーコードおよび前記バーコード認識分子を含む混合物を提供することをさらに含む、請求項113~146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
前記混合物は複数の分子バーコードを含み、前記複数の各分子バーコードには異なる分析物が付着している、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記バーコード認識分子は、前記複数のうちの2つ以上の分子バーコードに結合する、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
前記バーコード認識分子と前記2つ以上の分子バーコードのそれぞれとの間の結合相互作用は、異なるバーコード特異的パターンを生成する、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
前記バーコード認識分子と前記2つ以上の分子バーコードのそれぞれとの間の結合相互作用は、同じバーコード特異的パターンを生成する、請求項149に記載の方法。
【請求項152】
前記混合物は、複数のうちの2つ以上の分子バーコードに結合する複数のバーコード認識分子を含む、請求項148~151のいずれか一項に記載の方法。
【請求項153】
前記分子バーコードが一連のインデックス配列を含む、請求項113~152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項154】
各インデックス配列は、前記一連の任意の他のインデックス配列と異なる、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
前記一連の少なくとも2つのインデックス配列は同じである、請求項153に記載の方法。
【請求項156】
前記一連のインデックス配列は、一連のバーコード認識分子結合部位に対応する、請求項153~155のいずれか一項に記載の方法。
【請求項157】
前記バーコード認識分子は、前記一連の2つのインデックス配列を含む分子バーコード上の部位に結合する、請求項153~156のいずれか一項に記載の方法。
【請求項158】
前記分子バーコードは、切断部位を含むリンカーを介して前記分析物に付着される、請求項113~157のいずれか一項に記載の方法。
【請求項159】
前記接触させることの前に、前記分子バーコードから前記分析物を切断することをさらに含む、請求項158に記載の方法。
【請求項160】
前記一連のシグナルパルスは、一連のリアルタイムシグナルパルスである、請求項113~159のいずれか一項に記載の方法。
【請求項161】
前記分析物が、生物学的供給源または合成供給源に由来する、請求項113~160のいずれか一項に記載の方法。
【請求項162】
前記生体分子がポリペプチドである、請求項113~161のいずれか一項に記載の方法。
【請求項163】
前記生体分子を配列決定することが:
前記ポリペプチドを1つ以上の末端アミノ酸認識分子と接触させることと;
前記ポリペプチドが分解されている間に、前記1つ以上の末端アミノ酸認識分子と前記ポリペプチドの末端で露出された連続アミノ酸との会合を示す一連のシグナルパルスを検出し、それによって前記ポリペプチドを配列決定することと、
を含む、請求項162に記載の方法。
【請求項164】
前記生体分子が核酸である、請求項113~161のいずれか一項に記載の方法。
【請求項165】
重合酵素が前記核酸に結合している、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記核酸がデオキシリボ核酸であり、前記重合酵素がDNAポリメラーゼである、請求項165に記載の方法。
【請求項167】
前記生体分子を配列決定することが:
合成による配列決定反応を実施することを含み、それにより重合酵素は、鋳型として前記核酸を使用して相補的核酸鎖を合成する、請求項164~166のいずれか一項に記載の方法。
【請求項168】
前記方法は単一の反応容器内で実施される、請求項113~167のいずれか一項に記載の方法。
【請求項169】
少なくとも1つのハードウェアプロセッサと;
前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されたとき、前記少なくとも1つのハードウェアプロセッサに請求項113~168のいずれか一項に記載の方法を実行させるプロセッサ実行可能命令を記憶する少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読記憶媒体と、
を含む、システム。
【請求項170】
少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されたとき、同少なくとも1つのハードウェアプロセッサに請求項113~168のいずれか一項に記載の方法を実行させるプロセッサ実行可能命令を記憶する少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一分子速度論による分子バーコード分析に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロアレイ技術の進歩により、ハイスループット形式で単一分子の大規模並列分析を行うことが可能になった。これらの分子のアイデンティティおよび起源、ならびにアレイ内のそれらの位置を決定することは、臨床用途、診断、および生物医学研究にとって重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
いくつかの態様において、本開示は、分子バーコードを、同分子バーコード上の1つ以上の部位に結合するバーコード認識分子と接触させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、バーコード認識分子と分子バーコードとの間の結合相互作用を示す一連のシグナルパルスを検出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、一連のシグナルパルスにおけるバーコード特異的パターンに基づいて分子バーコードのアイデンティティ(identity)を決定することをさらに含む。
【0004】
いくつかの態様において、本開示は、分子バーコードを、同分子バーコード上の1つ以上の部位に結合するバーコード認識分子と接触させることであって、分子バーコードがポリペプチドを含む分析物に付着される(attached)、接触させることと;バーコード認識分子と分子バーコードとの間の結合相互作用を示す一連のシグナルパルスを検出することと;一連のシグナルパルスにおけるバーコード特異的パターンに基づいて分子バーコードのアイデンティティを決定することと、を含む方法を提供する。
【0005】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、タンパク質またはタンパク質断片である。いくつかの実施形態において、方法は、ポリペプチドを配列決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドを配列決定することは、ポリペプチドを1つ以上の末端アミノ酸認識分子と接触させること;およびポリペプチドが分解されている間に、1つ以上の末端アミノ酸認識分子とポリペプチドの末端に露出した連続アミノ酸との会合(association)を示す一連のシグナルパルスを検出し、それによってポリペプチドを配列決定すること、を含む。いくつかの実施形態において、方法は、単一の反応容器内で行われる。
【0006】
いくつかの態様において、本開示は、分子バーコードを、同分子バーコード上の1つ以上の部位に結合するバーコード認識分子と接触させることであって、分子バーコードが分析物に付着され、分析物が酵素に結合している、接触させることと;バーコード認識分子と分子バーコードとの間の結合相互作用を示す一連のシグナルパルスを検出することと;一連のシグナルパルスにおけるバーコード特異的パターンに基づいて分子バーコードのアイデンティティを決定することと、を含む方法を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態において、分析物は核酸である。いくつかの実施形態において、酵素は重合酵素である。いくつかの実施形態において、分析物はデオキシリボ核酸であり、酵素はDNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態において、方法は、核酸を配列決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、核酸を配列決定することは、合成による配列決定反応を実施することを含み、それによって、酵素は、鋳型として核酸を使用して相補的核酸鎖を合成する。いくつかの実施形態において、本方法は、単一の反応容器内で行われる。
【0008】
いくつかの態様において、本開示は、分子バーコードを、同分子バーコード上の1つ以上の部位に結合するバーコード認識分子と接触させることであって、分子バーコードが生体分子(例えば、ポリペプチド、核酸)を含む分析物に付着される、接触させることと;バーコード認識分子と分子バーコードとの間の結合相互作用を示す一連のシグナルパルスを検出することと;一連のシグナルパルスにおけるバーコード特異的パターンに基づいて分子バーコードのアイデンティティを決定することと、生体分子を配列決定反応条件に供することによって生体分子を配列決定することと、を含む方法を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、生体分子はポリペプチドである。いくつかの実施形態において、生体分子を配列決定することは、ポリペプチドを1つ以上の末端アミノ酸認識分子と接触させることと;ポリペプチドが分解されている間に、1つ以上の末端アミノ酸認識分子とポリペプチドの末端に露出した連続アミノ酸との会合を示す一連のシグナルパルスを検出し、それによってポリペプチドを配列決定することと、を含む。いくつかの実施形態において、生体分子は核酸である。いくつかの実施形態において、重合酵素は、核酸に結合される。いくつかの実施形態において、核酸はデオキシリボ核酸であり、重合酵素はDNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態において、生体分子を配列決定することは、合成による配列決定反応を実施し、それにより、重合酵素は、鋳型として核酸を使用して相補的核酸鎖を合成することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、単一の反応容器内で行われる。
【0010】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態において、分子バーコードは分析物に付着される。いくつかの実施形態において、方法は、分子バーコードと分析物との間の既知の関連(association)に基づいて分析物を同定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、分析物を同定することは、分析物が由来するサンプル(例えば、血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、単一細胞)のアイデンティティを決定することを含む。いくつかの実施形態において、分析物は生体分子(例えば、ポリペプチド、核酸)またはその断片を含み、分析物を同定することは、生体分子のアイデンティティを決定することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、分子バーコードは分析物に付着され、分析物は分子バーコードを介して表面に固定化される。いくつかの実施形態において、分子バーコードは、少なくとも1つの生体分子を含む連結基を介して表面に固定化される。いくつかの実施形態において、連結基は二本鎖核酸を含む。いくつかの実施形態において、連結基は少なくとも1つのビス-ビオチン部分に結合したアビジンタンパク質を含むタンパク質-リガンド複合体を含む。いくつかの実施形態において、連結基は、二本鎖核酸と、少なくとも1つのビス-ビオチン部分に結合したアビジンタンパク質を含むタンパク質-リガンド複合体を含む。いくつかの実施形態において、連結基は、ビス-ビオチン部分を含む二本鎖核酸であって、分子バーコードに付着している二本鎖核酸と、ビス-ビオチン部分に結合したアビジンタンパク質であって、表面に付着しているアビジンタンパク質とを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、本開示の分子バーコードは、核酸バーコードまたはポリペプチドバーコードである。いくつかの実施形態において、本開示のバーコード認識分子はオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、分子バーコードは核酸バーコードであり、バーコード認識分子はオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも4ヌクレオチド長(例えば、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10ヌクレオチド長)である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、30ヌクレオチド長未満(例えば、25ヌクレオチド長未満、20ヌクレオチド長未満、または15ヌクレオチド長未満)である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、約5~約50ヌクレオチド長(例えば、約5~約25ヌクレオチド長)である。いくつかの実施形態において、本開示のバーコード認識分子はタンパク質または核酸アプタマーである。
【0013】
いくつかの実施形態において、本開示のバーコード認識分子は、少なくとも1つの検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態において、本開示の分子バーコードは、少なくとも1つの検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、発光標識または導電性(conductivity)標識である。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、バーコード認識分子と分子バーコードとの間の結合中に消光されない消光(quenched)標識である。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、バーコード認識分子と分子バーコードとの間の結合中に消光される非消光(unquenched)標識である。
【0014】
いくつかの実施形態において、本開示のバーコード認識分子は、少なくとも1つの検出可能な標識を含む標識された生体分子に結合される。いくつかの実施形態において、標識された生体分子は、標識核酸である。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、少なくとも1つの生体分子を含む連結基を介して標識生体分子に結合される。いくつかの実施形態において、連結基はタンパク質-リガンド複合体を含む。いくつかの実施形態において、タンパク質-リガンド複合体は、少なくとも2つのリガンド結合部位を含む多価タンパク質を含み、バーコード認識分子は、多価タンパク質上の第1のリガンド結合部位に結合した第1のリガンド部分を含み、標識生体分子は、多価タンパク質上の第2のリガンド結合部位に結合した第2のリガンド部分を含む。いくつかの実施形態において、多価タンパク質は、4つのビオチン結合部位を含むアビジンタンパク質であり、リガンド部分はビオチン部分である。いくつかの実施形態において、ビオチン部分の少なくとも1つはビス-ビオチン部分であり、ビス-ビオチン部分はアビジンタンパク質上の2つのビオチン結合部位に結合している。
【0015】
いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンのシグナルパルスは、バーコード認識分子と分子バーコード上の部位との間の結合の解離速度(dissociation rate)に特徴的なパルス持続時間を含む。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンの各シグナルパルスは、バーコード認識分子結合の会合速度(association rate)に特徴的であるパルス間持続時間によって別のシグナルパルスから分離される。いくつかの実施形態において、一連のシグナルパルスは、一連のリアルタイムシグナルパルスである。
【0016】
いくつかの実施形態において、方法は、分子バーコードを、分子バーコード上の異なるまたは重複する部位に結合する2つ以上のバーコード認識分子と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、2つ以上のバーコード認識分子は、同じ混合物中で分子バーコードと同時に接触させられる。いくつかの実施形態において、2つ以上のバーコード認識分子は、異なる混合物中で分子バーコードと別々に接触させられる。
【0017】
いくつかの実施形態において、方法は、分子バーコードおよびバーコード認識分子を含む混合物を提供することをさらに含む。いくつかの実施形態において、混合物は複数の分子バーコードを含み、複数の分子バーコードの各分子バーコードには異なる分析物が付着している。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、複数のうちの2つ以上の分子バーコードに結合する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子と2つ以上の分子バーコードのそれぞれとの間の結合相互作用は、異なるバーコード特異的パターンを生成する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子と2つ以上の分子バーコードのそれぞれとの間の結合相互作用は、同じバーコード特異的パターンを生成する。いくつかの実施形態において、混合物は、複数のうちの2つ以上の分子バーコードに結合する複数のバーコード認識分子を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、分子バーコードは、一連のインデックス配列を含む。いくつかの実施形態において、各インデックス配列は、一連のインデックス配列の任意の他のインデックス配列と異なる。いくつかの実施形態において、一連のインデックス配列の少なくとも2つのインデックス配列は同じである。いくつかの実施形態において、一連のインデックス配列は、一連のバーコード認識分子結合部位に対応する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、一連のインデックス配列の2つのインデックス配列を含む分子バーコード上の部位に結合する。
【0019】
いくつかの実施形態において、本開示の分析物は、生物学的供給源または合成供給源に由来する生体分子を含む。いくつかの実施形態において、生体分子は、混合または精製されたサンプルに由来する。いくつかの実施形態において、生体分子は、生物学的サンプル(例えば、血清、血液、組織、唾液、尿、または他の生物学的供給源)に由来する。いくつかの実施形態において、生体分子は合成ライブラリーに由来する。いくつかの実施形態において、生体分子は、患者サンプル(例えば、ヒトサンプル)から得られる。いくつかの実施形態において、生体分子は核酸またはポリペプチドである。いくつかの実施形態において、生体分子は、核酸アプタマー、タンパク質、またはタンパク質断片である。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示の分子バーコードは、リンカー(例えば、共有結合連結基または非共有結合連結基)を介して分析物に付着される。いくつかの実施形態において、分子バーコードは、切断部位を含むリンカーを介して分析物に付着される。いくつかの実施形態において、方法は、分子バーコードをバーコード認識分子と接触させる前に、分子バーコードから(例えば、切断部位で)分析物を切断することをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、本開示の分子バーコードは、表面に固定化(例えば、付着)される。いくつかの実施形態において、分子バーコードは、リンカー(例えば、共有結合連結基または非共有結合連結基)を介して表面に結合される。いくつかの実施形態において、表面はアレイによって構成される。いくつかの実施形態において、アレイの表面は、それに付着した複数の分子バーコードを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、本開示に従う複数のバーコード認識プロセスは、アレイ上で並行して実行される。いくつかの実施形態において、アレイはサンプルウェルのアレイを含む。いくつかの実施形態において、アレイは約10,000~約1,000,000個のサンプルウェルを含む。いくつかの実施形態において、サンプルウェルの体積は、約10-21リットル~約10-15リットルである。
【0023】
いくつかの態様において、本開示は、少なくとも1つのハードウェアプロセッサと、プロセッサ実行可能命令を記憶する少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読記憶媒体とを備えるシステムを提供し、プロセッサ実行可能命令は、少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに本開示に従う方法を実行させる。いくつかの態様において、本開示は、少なくとも1つのハードウェアプロセッサによって実行されたとき、少なくとも1つのハードウェアプロセッサに本開示に従う方法を実行させるプロセッサ実行可能命令を記憶する少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0024】
本発明の特定の実施形態の詳細は、以下に記載されるように、詳細な説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、実施例、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、単一分子結合相互作用の検出による分子バーコード認識の例を示す。
【
図2】
図2は、単一分子結合相互作用の検出による動的ペプチド配列決定反応の例を示す。
【
図3】
図3は、シグナルパルス検出および分析の例を示す。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に従って使用するための分子バーコード構築物の例を示す。
【
図5A】
図5A~5Bは、単一細胞ポリペプチド配列決定に関連して使用されるバーコード認識の例を示す。
図5Aは、単一細胞由来のポリペプチドが細胞特異的バーコードで標識される一般的なプロセスを示す。
図5Bは、単一アレイ基板上での動的配列決定およびバーコード認識によって分析することができるバーコード化ポリペプチドを一般的に示す。
【
図6】
図6は、集積デバイスのピクセルの例示的な概略図を示す。
【
図7A】
図7A~7Dは、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによるバーコード認識の例を示す。
図7Aは、DNAバーコード複合体を、DNAバーコードにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブと接触させることによるバーコード認識のためのプロセスの図を示す。
図7Bは、単一の反応チャンバにおける2つの異なるバーコードへのオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションを示す単一分子強度トレースを示す。
図7Cは、単一の反応チャンバにおける3つの異なるバーコードへのオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションを示す単一分子強度トレースを示す。
図7Dは、3つの異なるバーコードが、強度および寿命データに基づいて互いに区別され得ることを示すプロットである。
【
図8】
図8は、バーコード認識およびペプチド配列決定のためのプロセスの例示的説明図を示す。
【
図9A】
図9A~9Cは、単一反応チャンバにおけるバーコード認識およびアミノ酸認識を含む単一分子実験において得られたデータを示す。
図9Aは、バーコード認識のアッセイ(左のプロット)およびアミノ酸認識のアッセイ(右のプロット)中に決定された寿命測定値を示す。
図9Bは、バーコードおよびアミノ酸認識の組合せアッセイ中に決定された寿命測定値を示す。
図9Cは、
図9A~9Bの個々のアッセイおよび組み合わせたアッセイにおいて決定された寿命測定値(ビン比)の分布を示すプロットである。
【
図10-1】
図10A~10Gは、単一反応チャンバにおけるバーコード認識およびペプチド配列決定を含む単一分子実験において得られたデータを示す。
図10A~10Dは、単一のバーコード化ポリペプチドを使用したバーコードおよびアミノ酸認識のアッセイ中に決定された寿命測定値を示す。
図10E~10Fは、2つの異なるバーコード化ポリペプチドを使用したバーコードおよびアミノ酸認識のアッセイ中に決定された寿命測定値を示す。
図10Gは、N末端アミノ酸を除去する切断試薬の添加が、アミノ酸認識を排除することを示す。
【
図11】
図11は、2つの異なるバーコードのバーコード認識を含む単一分子実験において得られたデータを示し、異なる動的パルス特性が、1つのバーコードを別のバーコードから区別するために使用され得ることを示す。
【
図12-1】
図12A~12Eは、ハイブリダイゼーションによるバーコード認識の例を示す。
図12Aは、インデックス配列のライゲーションによって作製することができるコンビナトリアルバーコードを一般的に示す。
図12Bは、異なる長さのオリゴヌクレオチドプローブを使用するバーコード認識の例示的説明図を示す。
図12Cは、バーコード認識アッセイの例示的なワークフローを示す。
図12Dは、並行して行われた認識アッセイのオンチップイメージングを示す(上の画像において強調された領域は、下の画像において拡大されて示されている)。
図12Eは、結合頻度(上)およびτ
on(下)を評価するプロットを示す。
【
図13A】
図13A~13Cは、単一分子スクリーニングアッセイに関連して使用されるバーコード認識の例を示す。
図13Aは、例示的なコード構築物およびインビトロ転写/翻訳から得られる産物を示す。
図13Bは、バーコード認識(上)および抗体/抗原スクリーニング(下)についてのシグナルトレースを示す。
図13Cは、指向進化スクリーニングアプローチのための例示的ワークフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書の一部を構成する添付の図面は、説明とともに本発明のいくつかの実施形態を示し、本発明の原理を説明するのに役立つ。
本開示の態様は、単一分子結合相互作用を検出することによる分子バーコード認識の方法、およびそのような方法を実施するための組成物に関する。いくつかの態様において、本開示の方法は、分子バーコード上の1つ以上の部位での単一分子結合相互作用に対応する速度論情報(kinetic information)に基づいて、多重化サンプルから分子バーコード内容(molecular barcode content)をデコンボリューションするためのアプローチを提供する。
【0027】
いくつかの態様において、本開示は、別個の結合事象がリアルタイムで監視されることを可能にする単一分子分析における進歩と併せて、従来のバーコーディング原理を活用する分子バーコーディング技法の発見に関する。本願の発明者らは、プローブを使用して分子バーコード内容を調べて、内容特異的結合速度論を評価することができることを認識および理解しており、これは、従来のバーコード分析に対する代替または追加の次元を提供する。
【0028】
いくつかの態様において、本開示の方法は、単一分子結合相互作用をリアルタイムでモニタリングすることによるバーコード認識に関する。
図1は、本明細書で説明される実施形態に従うバーコード認識の例を示す。いくつかの実施形態において、分子バーコード100を、分子バーコード上の1つまたは複数の部位に結合し、そこから解離する少なくとも1つのバーコード認識分子と接触させる。いくつかの実施形態において、異なる結合相互作用に基づいて異なるバーコード内容情報を得ることができる。例えば、いくつかの実施形態において、異なる結合相互作用は、同じまたは異なるバーコード領域(barcode sites)に結合する異なるバーコード認識分子について観察することができる。いくつかの実施形態において、異なる結合相互作用は、異なるバーコード領域に結合する同じバーコード認識分子について観察することができる。
【0029】
上のパネルに示されるように、いくつかの実施形態において、分子バーコード100は、分子バーコード100上の第1の部位に結合する第1のバーコード認識分子101と接触させられ、これは、シグナルパルスデータにおいて第1のパターンを生成する。下のパネルに示されるように、いくつかの実施形態において、分子バーコード100は、分子バーコード100上の第2の部位に結合する第2のバーコード認識分子102と接触させられ、これは、シグナルパルスデータにおいて第2のパターンを生成する。いくつかの実施形態において、異なる結合相互作用のそれぞれは、シグナルパルスデータにおいて異なるパターンを生成する。本明細書の他の箇所で説明されるように、シグナルパルスデータ内のこれらの異なるパターンは、分子バーコード100に関する異なる内容情報を決定するために使用されてもよい。いくつかの実施形態において、分子バーコード100は分析物103に付着され(attached)、分子バーコードの内容は分析物103に関する情報に関連付けられる。
【0030】
いくつかの実施形態において、結合相互作用は、バーコード認識分子の化学組成およびそれが結合するバーコード上の部位の両方の因子であることが理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態において、分子バーコードは核酸バーコードであり、バーコード認識分子はオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブが核酸バーコード上の部位に結合する場合、オリゴヌクレオチドプローブの単一塩基修飾は、部位に結合するその能力を必ずしも排除するわけではなく、むしろ、この修飾は、オリゴヌクレオチドプローブと部位との間で観察される結合速度論(binding kinetics)を変化させる可能性が高い(例えば、
図1のシグナルトレースに示されるように、異なる結合プロファイルを生成する)。同様に、特定のオリゴヌクレオチドプローブが、化学的に異なる(例えば、単一塩基だけ異なる)2つ以上の核酸バーコード領域に結合する場合、異なる結合速度論が、異なるバーコード領域のそれぞれにおけるオリゴヌクレオチド間で観察されるであろう。したがって、いくつかの態様において、本開示の方法は、高感度であり、より少ない試薬しか必要とせず、所望の結果を達成するように操作することができる。
【0031】
いくつかの態様において、本明細書に記載される方法は、動的ペプチド配列決定反応と同様の原理に従う。したがって、いくつかの態様において、本開示は、ポリペプチド配列決定および分子バーコード認識を同時に(例えば、同じ反応混合物中で)または単一表面上で(例えば、単一反応容器中で)行うことを可能にする技術の発見に関する。これらの技術は、全体を通して同様の原理に従うので、このことは、データ分析を合理化して、配列決定およびバーコード分析のためのより効率的かつ安価な全体的プロセスを提供する。
【0032】
背景として、動的ペプチド配列決定反応は、アミノ酸が末端から徐々に切断されるにつれて、アミノ酸認識分子とポリペプチドの末端との間の結合相互作用を評価することによってリアルタイムで行われる。
図2は、別個の結合事象がシグナル出力のシグナルパルスを生じる動的ペプチド配列決定反応の例を示す。
図2の挿入パネル(左)は、動的ペプチド配列決定の一般的スキームを示す。示されるように、アミノ酸認識分子200および切断試薬201は、目的のポリペプチドを有する配列決定反応混合物中に存在する。アミノ酸認識分子200は、末端アミノ酸と会合し(例えば、結合し)、それから解離し、検出可能なシグナルが、各会合事象の持続時間にわたって生成される。このオンオフ結合は、一般に、切断試薬201によるアミノ酸切断よりも速い速度で生じるので、結合事象は、特定の末端アミノ酸を同定するために使用され得るシグナル出力において一連のパルスを生じる。
【0033】
図2は、挿入パネル(左)に示される例示的なポリペプチドについての経時的なシグナル出力強度の進行(右パネル)を示す。一般的に示されるように、1つの種類の末端アミノ酸が関与する結合事象は、他の種類の末端アミノ酸について観察される特性パターンから識別可能な一連のパルスにおいて特性パターンを生じる。これらの事象をリアルタイムで監視することによって、シグナルパルスデータを分析して、ポリペプチドのアミノ酸配列情報に対応する一連の特性パターンを決定することができる。動的配列決定を行い、それから得られたデータを分析するための方法および組成物は、2019年11月15日出願のPCT国際公開第WO2020102741A1号(発明の名称「METHODS AND COMPOSITIONS FOR PROTEIN SEQUENCING」)および2021年5月20日出願のPCT国際公開第WO2021236983A2号(発明の名称が「タンパク質配列決定のための方法および組成物(METHODS AND COMPOSITIONS FOR PROTEIN SEQUENCING)」)においてさらに十分に記載されており、これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【0034】
単一分子速度論(Single-Molecule Kinetics)
本開示の態様は、分子バーコードの内容(content)を同定することに関する。本明細書で使用される場合、分子バーコードに関する「同定すること」、「認識すること」、「認識」などの用語は、分子バーコードの部分的なアイデンティティ(例えば、部分配列情報)ならびに完全なアイデンティティ(例えば、完全配列情報)の決定を含む。いくつかの実施形態において、この用語は、(例えば、オリゴヌクレオチドプローブとの相補性に基づいて)分子バーコードの少なくとも一部のヌクレオチド配列を決定または推測することを含む。さらに他の実施形態において、この用語は、分子バーコード上の1つまたは複数の部位における特定のインデックス配列の有無など、分子バーコードのある特定の特徴を決定または推測することを含む。したがって、いくつかの実施形態において、用語「バーコード内容(barcode content)」、「バーコードアイデンティティ」、および本明細書で使用される同様の用語は、分子バーコードに関する定性的情報を指す場合があり、分子バーコードを生化学的に特徴付ける特定の配列情報(例えば、インデックスのヌクレオチド配列)に限定されるものではない。
【0035】
いくつかの実施形態において、バーコード認識は、バーコード認識分子と分子バーコードとの間の異なる会合事象を観察することによって行われ、各会合事象は、ある持続時間にわたって持続するシグナルの大きさの変化を生成する。いくつかの実施形態において、これらの大きさの変化は、一連のシグナルパルス、またはシグナルトレース出力における一連のパルスとして検出される。
【0036】
シグナルトレース出力および分析の非限定的な例を
図3に示す。例示的なシグナルトレース(I)は、会合事象に対応する持続時間にわたって持続するシグナル強度のピークとして各々が現れる2つのシグナルパルスで示されている。したがって、ほぼベースラインシグナルを有する2つのシグナルパルス間の持続時間は、分子バーコードがバーコード認識分子と検出可能に会合していない持続時間に対応し得る。いくつかの実施形態において、シグナルパルスデータは、パネル(II)および(III)に図示されるように分析されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態において、シグナルデータは、閾値レベルをシグナルデータの1つ以上のパラメータに適用することによって、シグナルパルス情報を抽出するために分析され得る。たとえば、パネル(II)は、シグナルトレース例(I)のシグナルデータに適用される閾値大きさレベル(「ML」)を示す。いくつかの実施形態において、MLは、ある時間点で検出されるシグナルと所与のデータセットに対して決定されるベースラインとの間の最小差である。いくつかの実施形態において、シグナルパルス(「sp」)は、MLを超える大きさの変化の指標となり且つある持続時間にわたり持続するデータの各部分に割り当てられる。いくつかの実施形態において、閾値持続時間は、MLを満たすデータの部分に適用されてシグナルパルスがその部分に割り当てられるかを決定し得る。たとえば、実験アーチファクトは、所望の信頼性でシグナルパルスを割り当てるのに十分な持続時間にわたり持続しないMLを超える大きさの変化を引き起こし得る(たとえば、観測領域中への拡散や観測領域内に固着する試薬などの非特異的検出事象)。それゆえ、いくつかの実施形態において、シグナルパルスは、閾値大きさレベルおよび閾値持続時間に基づいてシグナルデータから抽出される。
【0038】
抽出されたシグナルパルス情報は、例示を目的として重ね合わせられたシグナルトレース例(I)と共にパネル(II)に示される。いくつかの実施形態において、シグナルパルスの大きさのピークは、ML超を持続する持続時間にわたり検出された大きさを平均することにより決定される。いくつかの実施形態において、本明細書で用いられる「シグナルパルス」とは、ある持続時間にわたりベースライン超を持続するシグナルデータの変化(たとえば、シグナルトレース例(I)により例示される生のシグナルデータ)またはそれから抽出されたシグナルパルス情報(たとえば、パネル(III)に例示される処理シグナルデータ)を指し得ることが認識されるべきである。
【0039】
パネル(III)は、例示的なシグナルトレース(I)から抽出されたシグナルパルス情報を示す。示されるように、各シグナルパルスは、バーコード認識分子と分子バーコードとの間の会合事象に対応するパルス持続時間(「pd」)を含む。いくつかの実施形態において、パルス持続時間は、結合(binding)の解離速度に特有である。また、示されるように、各シグナルパルスは、パルス間持続時間(interpulse duration)(「ipd」)により別のシグナルパルスから分離される。いくつかの実施形態において、パルス間持続時間は、結合の会合速度に特有である。いくつかの実施形態において、大きさの変化(「ΔM」)は、ベースラインとシグナルパルスのピークとの間の差に基づいてシグナルパルスに対して決定可能である。
【0040】
いくつかの実施形態において、シグナルパルス情報を分析して、一連のシグナルパルスにおけるバーコード特異的パターンに基づいてバーコード内容を同定することができる。例えば、パネル(III)に示されるように、いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターン(影付き領域)は、パルス持続時間およびパルス間持続時間に基づいて決定される。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、本明細書の他の箇所で説明されるように、パルス持続時間、またはパルス持続時間の要約統計量に基づいて決定される。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、パルス持続時間、パルス間持続時間、および大きさの変化のうちのいずれか1つ以上に基づいて決定される。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、参照データに基づいて、分子バーコード(例えば、バーコード内容)の特定の特徴および/または配列に関連されるべく決定される。
【0041】
したがって、
図3によって例示されるように、いくつかの実施形態において、本開示の方法は、バーコード認識分子と分子バーコードとの会合(例えば、結合)を示す一連のシグナルパルスを検出することによって行われる。一連のシグナルパルスは、一連のシグナルパルスにおけるバーコード特異的パターンを決定するために分析されてもよく、バーコード特異的パターンは、バーコード内容を解読するために使用されてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、一連のシグナルパルスは、経時的な光シグナル(optical signal)の大きさの一連の変化を含む。いくつかの実施形態において、光シグナルの一連の変化は、会合事象(association events)中に生成される発光の一連の変化を含む。いくつかの実施形態において、発光は、バーコード認識のための1つ以上の試薬に関連付けられた検出可能な標識によって生成される。例えば、いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は発光標識を含む。本開示に従う発光標識およびそれらの使用の例は、本明細書の他の箇所で提供される。
【0043】
いくつかの実施形態において、一連のシグナルパルスは、経時的な電気シグナルの大きさの一連の変化を含む。いくつかの実施形態において、電気シグナルの一連の変化は、会合事象中に生成されるコンダクタンスの一連の変化を含む。いくつかの実施形態において、導電性は、バーコード認識のための1つ以上の試薬に関連付けられた検出可能な標識によって生成される。例えば、いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は導電性標識を含む。導電性標識を使用して単一分子を同定するための方法が記載されている(例えば、米国特許出願公開第2017/0037462号明細書を参照されたい)。
【0044】
本明細書で説明されるように、シグナルパルス情報は、一連のシグナルパルスにおけるバーコード特異的パターンに基づいてバーコード内容を同定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは複数のシグナルパルスを含み、各シグナルパルスはパルス持続時間を含む。いくつかの実施形態において、複数のシグナルパルスは、バーコード特異的パターン中のパルス持続時間の分布の要約統計量(たとえば、平均、メジアン、時間減衰定数)により特徴付けられてもよい。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンの平均パルス持続時間は、約1ミリ秒~約10秒の間(例えば、約1ms~約1sの間、約1ms~約100msの間、約1ms~約10msの間、約10ms~約10sの間、約100ms~約10sの間、約1s~約10sの間、約10ms~約100msの間、または約100ms~約500msの間)であり得る。いくつかの実施形態において、平均パルス持続時間は、約50ミリ秒~約2秒、約50ミリ秒~約500ミリ秒、または約500ミリ秒~約2秒である。
【0045】
いくつかの実施形態において、異なるバーコード内容に対応する異なるバーコード特異的パターンは、要約統計量における統計的有意差に基づいて互いに区別されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、1つのバーコード特異的パターンは、少なくとも10ミリ秒(例えば、約10ms~約10s、約10ms~約1s、約10ms~約100ms、約100ms~約10s、約1s~約10s、または約100ms~約1s)の平均パルス持続時間の差に基づいて、別のバーコード特異的パターンと区別可能であり得る。いくつかの実施形態において、平均パルス持続時間の差は、少なくとも50ms、少なくとも100ms、少なくとも250ms、少なくとも500ms、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、平均パルス持続時間の差は、約50ms~約1s、約50ms~約500ms、約50ms~約250ms、約100ms~約500ms、約250ms~約500ms、または約500ms~約1sである。いくつかの実施形態において、1つのバーコード特異的パターンの平均パルス持続時間は、別のバーコード特異的パターンの平均パルス持続時間と、約10~25%、25~50%、50~75%、75~100%、または100%超、例えば、約2倍、3倍、4倍、5倍、またはそれを超えて異なる。いくつかの実施形態において、異なるバーコード特異的パターン間の平均パルス持続時間の差が小さいほど、統計的信頼度で互いを区別するために、各バーコード特異的パターン内でより多くの数のパルス持続時間を必要とし得ることを理解されたい。
【0046】
いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、一般に、バーコード認識分子と分子バーコードとの間の複数の会合(例えば、結合)事象を指す。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、少なくとも10個の会合事象(例えば、少なくとも25個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも250個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、またはそれ以上の会合事象)を含む。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、約10~約1,000個の会合事象(例えば、約10~約500個の会合事象、約10~約250個の会合事象、約10~約100個の会合事象、または約50~約500個の会合事象)を含む。いくつかの実施形態において、複数の会合事象は、複数のシグナルパルスとして検出される。
【0047】
いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、本明細書に記載されるような要約統計量によって特徴付けられ得る複数のシグナルパルスを指す。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、少なくとも10個のシグナルパルス(例えば、少なくとも25個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも250個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、またはそれ以上のシグナルパルス)を含む。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、約10~約1,000個のシグナルパルス(例えば、約10~約500個のシグナルパルス、約10~約250個のシグナルパルス、約10~約100個のシグナルパルス、または約50~約500個のシグナルパルス)を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、ある時間間隔にわたって生じるバーコード認識分子と分子バーコードとの間の複数の会合(例えば、結合)事象を指す。いくつかの実施形態において、バーコード認識は、分子バーコードが異なる持続時間にわたって異なる組のバーコード認識分子に曝露される反復洗浄サイクルによって実行され得る。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンの持続時間は、約1分~約30分(例えば、約1分~約20分、約1分~10分、約5分~約20分、約5分~約15分、または約5分~約10分)である。
【0049】
いくつかの実施形態において、(例えば、所与の組のバーコード認識分子が洗浄サイクル中に除去される前に)バーコード特異的パターンとの所望の信頼レベルを提供する十分な会合事象を可能にする持続時間を達成するように、実験条件を構成することができる。これは、例えば、試薬濃度、1つの試薬と別の試薬とのモル比(例えば、バーコード認識分子と分子バーコードとの比、1つのバーコード認識分子と別のバーコード認識分子との比)、異なる試薬種類の数(例えば、異なる種類のバーコード認識分子の数)、結合特性(例えば、バーコード認識分子結合のための速度論的および/または熱力学的結合パラメータ)、試薬修飾(例えば、相互作用速度論を変更し得るポリオールおよび他のタンパク質修飾)、反応混合物成分(例えば、pH、緩衝剤、塩、二価カチオン、界面活性剤、および本明細書に記載される他の反応混合物成分などの1つ以上の成分)、反応温度、および当業者に明らかな様々な他のパラメータ、ならびにそれらの組み合わせを含む様々な特性に基づいて反応条件を構成することによって達成することができる。反応条件は、例えば、シグナルパルス情報(例えば、パルス持続時間、パルス間持続時間、大きさの変化)、標識戦略(例えば、蛍光色素分子、連結基の数および/または種類)、表面修飾(例えば、分子バーコード固定化を含むサンプルウェル表面の修飾)、サンプル調製(例えば、分析物サイズ、固定化のための分子バーコード修飾)、および本明細書に記載される他の態様を含む、本明細書に記載される1つ以上の態様に基づいて構成され得る。
【0050】
分子バーコード
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、分子バーコードを、分子バーコード上の1つ以上の部位に結合するバーコード認識分子と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、複数の分子バーコード上の1つ以上の部位に結合する。したがって、いくつかの実施形態において、バーコード認識分子を使用して、混合物中の複数の異なる単一分子(例えば、同じまたは異なる分子バーコードを含む異なる分析物)からバーコード内容を解読することができる。例示的かつ非限定的な例として、多重化混合物は、分子バーコードに付着した複数の分析物を含むことができる。これらの分子バーコードのいくつかは、それに付着した分析物についてサンプルの起源を示すサンプルインデックスを含むことができ、サンプルインデックスに結合するバーコード認識分子を使用して、どの分析物が対応するサンプルに由来するかを決定することができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、本開示の方法における使用のための単一分子構築物は、
図4に示されるような一般的形態のものであり得る。いくつかの実施形態において、単一分子構築物は、分子バーコード(例えば、速度論的バーコード)を含む。いくつかの実施形態において、本開示の分子バーコードは、核酸バーコード(例えば、一本鎖核酸)である。いくつかの実施形態において、核酸バーコードは、DNA、RNA、PNA、および/またはLNAを含む。いくつかの実施形態において、分子バーコードは、ポリペプチドバーコードである。
【0052】
いくつかの実施形態において、分子バーコードは、一連のインデックス配列を含む。例えば、いくつかの実施形態において、分子バーコードは一連のインデックス配列を含む核酸バーコードである。いくつかの実施形態において、各インデックス配列は、一連のインデックス配列の任意の他のインデックス配列と異なる。いくつかの実施形態において、一連のインデックス配列の少なくとも2つのインデックス配列は同じである。いくつかの実施形態において、一連のインデックス配列は、一連のバーコード認識分子結合部位に対応する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、一連のインデックス配列の2つのインデックス配列を含む分子バーコード上の部位に結合する。いくつかの実施形態において、各インデックス配列は、バーコード内容に関して異なる情報を提供する。
【0053】
図4にさらに示されるように、いくつかの実施形態において、分子バーコードは、分析物(例えば、ペイロード分子、検出分子)に付着される。いくつかの実施形態において、分析物は、生物学的供給源または合成供給源に由来する。いくつかの実施形態において、分析物は、血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または単一細胞に由来する。いくつかの実施形態において、分析物は生体分子である。いくつかの実施形態において、分析物は核酸またはポリペプチドである。いくつかの実施形態において、分析物は、核酸アプタマー、タンパク質、またはタンパク質断片である。いくつかの実施形態において、分析物は小分子、代謝産物、または抗体である。いくつかの実施形態において、分子バーコードは、リンカーを介して分析物に結合される。いくつかの実施形態において、リンカーは、切断部位(例えば、光切断可能部位)を含む。したがって、いくつかの実施形態において、切断配列を含む単一分子構築物は、分析物の除去を可能にして、基板表面(例えば、チップ)上でのローディングおよび/または分析を単純化する。
【0054】
また、
図4に示すように、いくつかの実施形態において、分子バーコードは付着分子を含む。いくつかの実施形態において、付着分子は、分子バーコードの表面固定化に適した任意の部分または連結基である。いくつかの実施形態において、付着分子は、共有結合性または非共有結合性の連結基を含む。いくつかの実施形態において、付着分子はビオチン部分を含む。いくつかの実施形態において、付着分子はビス-ビオチン部分を含む。表面固定化に有用な連結基ならびに他の組成物および方法は、本明細書中の他の場所でさらに詳細に記載され、そして当該分野で公知である。
【0055】
図4は、1つの例示的な構成を提供するに過ぎず、開示の単一分子構築物に関して非限定的であることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、切断部位は、所望の実施に応じて単一分子構築物に組み込まれなくてもよい任意の構成要素である。いくつかの実施形態において、再び
図4を参照すると、付着分子は、分子バーコードが分析物を介して表面に付着され得るように、分析物に隣接し得る。単一分子構築物の他の構成および連結戦略の例は、本明細書の他の箇所に提供される。
【0056】
一部の態様において、本開示の方法は、分子アイデンティティ、サンプル起源、および/またはアレイ上の単一分子の位置を解読することを含むバーコードデコンボリューションアプローチに関する。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、多重化サンプル中の分子バーコード情報をデコンボリューションするために有利に使用される。例えば、本開示の方法は、単一細胞ポリペプチド配列決定のための技術に適用することができる。
図5Aは、単一細胞由来のポリペプチド分子が細胞特異的バーコードで標識される一般的なプロセスを示す。いくつかの実施形態において、得られた単一分子構築物は、本開示に従ってポリペプチド配列決定(例えば、動的ペプチド配列決定)およびバーコード認識によって分析することができる(
図5B)。
【0057】
バーコード認識分子
いくつかの態様において、本開示は、バーコード認識分子およびそれを使用する方法を提供する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、バーコード領域に関する所望の結合速度論に基づいて選択または操作することができる。例えば、いくつかの態様において、本明細書に記載される方法は、複数の部位が各部位での結合相互作用に基づいて互いに区別されなければならない多重化形式で行うことができる。したがって、異なる部位がシグナルパルス情報に基づいてより高い信頼度で区別され得るように、1つの部位における結合相互作用は、別の部位における結合相互作用とは十分に異なるべきである。
【0058】
理論により拘束されることを望むものではないが、バーコード認識分子は、結合の会合速度または「オン」速度(kon)と結合の解離速度または「オフ」速度(koff)とにより規定される結合アフィニティー(KD)に従ってバーコード領域に結合する。速度定数koffおよびkonは、それぞれ、パルス持続時間(たとえば、検出可能な会合事象に対応する時間)およびパルス間持続時間(たとえば、検出可能な会合事象の間の時間)のクリティカル決定因子である。いくつかの実施形態において、これらの運動速度定数は、最良の精度を与えるパルス持続時間およびパルス速度(たとえばシグナルパルス周波数)を達成するように工学操作可能である。
【0059】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、従来から知られている技術を用いて当業者によって工学操作可能である。いくつかの実施形態において、望ましい特性は、分子バーコード上の1つ以上の部位に低~中程度の親和性で(例えば、約50nM以上、例えば、約50nM~約50μM、約100nM~約10μM、約500nM~約50μMのKDで)結合する能力を含み得る。例えば、いくつかの態様において、本開示は、可逆的結合相互作用を検出することによるバーコード認識の方法を提供し、低~中程度の親和性で分子バーコードに可逆的に結合するバーコード認識分子は、高親和性結合相互作用よりも有益な結合データをより高い確実性で有利に提供する。
【0060】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、他のオフターゲット(例えば、非相補的)部位に有意に結合することなく、約10-6M未満(例えば、約10-7M未満、約10-8M未満、約10-9M未満、約10-10M未満、約10-11M未満、約10-12M未満、10-16M程度まで)の解離定数(KD)で分子バーコード上の1つ以上の部位に結合する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、約100nM未満、約50nM未満、約25nM未満、約10nM未満、または約1nM未満のKDで分子バーコード上の1つ以上の部位に結合する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、約50nM~約50μM(例えば、約50nM~約500nM、約50nM~約5μM、約500nM~約50μM、約5μM~約50μM、または約10μM~約50μM)のKDで分子バーコード上の1つ以上の部位に結合する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、約50nMのKDで分子バーコード上の1つ以上の部位に結合する。
【0061】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、少なくとも0.1s-1の解離速度(koff)で分子バーコード上の1つ以上の部位に結合する。いくつかの実施形態において、解離速度は、約0.1s-1~約1,000s-1(例えば、約0.5s-1~約500s-1、約0.1s-1~約100s-1、約1s-1~約100s-1、または約0.5s-1~約50s-1)である。いくつかの実施形態において、解離速度は、約0.5s-1~約20s-1である。いくつかの実施形態において、解離速度は、約2s-1~約20s-1である。いくつかの実施形態において、解離速度は、約0.5s-1~約2s-1である。
【0062】
いくつかの実施形態において、KDまたはkoffの値は、公知の文献値であり得るか、または値は、経験的に決定され得る。例えば、KDまたはkoffの値は、単一分子アッセイまたはアンサンブルアッセイにおいて測定することができる。いくつかの実施形態において、koffの値は、本明細書の他の箇所に記載されるような単一分子アッセイにおいて得られるシグナルパルス情報に基づいて経験的に決定することができる。例えば、koffの値は、平均パルス持続時間の逆数によって近似することができる。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、2つ以上の部位のそれぞれについて異なるKDまたはkoffで2つ以上の化学的に異なるバーコード領域に結合する。いくつかの実施形態において、第1の部位に対する第1のKDまたはkoffは、第2の部位に対する第2のKDまたはkoffと少なくとも10%(例えば、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%、またはそれ以上)異なる。いくつかの実施形態において、KDまたはkoffの第1および第2の値は、約10~25%、25~50%、50~75%、75~100%、または100%超、例えば、約2倍、3倍、4倍、5倍、またはそれ以上異なる。
【0063】
本明細書に記載されているように、バーコード認識分子は、分子バーコード上の1つ以上の部位を他のバーコード領域よりも結合することができる任意の生体分子であってもよい。認識分子としては、例えば、オリゴヌクレオチド、核酸、およびタンパク質が挙げられ、これらのいずれも合成または組換えであり得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子はオリゴヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ)である。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、核酸バーコードを、核酸バーコード上の1つ以上の部位に結合するオリゴヌクレオチドプローブと接触させることによって行うことができる。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブと核酸バーコードとの間の結合は、ハイブリダイゼーションまたはアニーリングを介して生じる。特定の実験条件(例えば、濃度、温度)を超えて、結合特性は、大部分、オリゴヌクレオチドプローブの長さおよび含量、ならびにそれが結合する(例えば、ハイブリダイズする、またはアニールする)核酸バーコード上の部位とのその相補性の程度によって駆動される。したがって、いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、長さ、ヌクレオチド含量(例えば、G/C含量、異なる結合特性を有するヌクレオチドアナログ(例えば、LNAアナログまたはPNAアナログ))、相補性の程度、ならびに実験因子(例えば、濃度、温度、緩衝液条件(例えば、pH、塩、マグネシウム)、およびDNA変性溶媒または安定化溶媒)を含むがこれらに限定されない、シグナルパルス特性を調節するための種々の調節可能な特徴を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、少なくとも4ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、または少なくとも30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、30ヌクレオチド長未満(例えば、25ヌクレオチド長未満、20ヌクレオチド長未満、15ヌクレオチド長未満、12ヌクレオチド長未満、10ヌクレオチド長未満)である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、約3~約30ヌクレオチド長(例えば、約3~約10、約3~約8、約5~約25、約5~約15、または約5~10ヌクレオチド長)である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチド長である。
【0066】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、オリゴヌクレオチドプローブと完全に相補的ではない1つ以上のバーコード領域に結合し、そのバーコード内容情報を提供することができる。例えば、いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、オリゴヌクレオチドと100%未満(例えば、99%未満、98%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満またはそれ未満)相補的である配列を有する1つ以上のバーコード領域に結合する。
【0067】
オリゴヌクレオチドに加えて、核酸アプタマーを、本開示に従うバーコード認識分子として使用することができる。核酸アプタマーは、所望の親和性および選択性で標的に結合するように工学操作された核酸分子である。したがって、核酸アプタマーは、当技術分野で公知の選択および/または濃縮技術を使用して、所望のバーコード領域に結合するように工学操作され得る。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、DNAアプタマーまたはRNAアプタマーなどの核酸アプタマーを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、タンパク質またはポリペプチドである。いくつかの実施形態において、認識分子は、抗体若しくは抗体の抗原結合部分、SH2ドメイン含有タンパク質若しくはその断片、または不活性化酵素生体分子、たとえば、ペプチダーゼ、アミノトランスフェラーゼ、リボザイム、アプタザイム、若しくはtRNAシンテターゼ(「繰返しポリペプチド分析および処理のための分子および方法(MOLECULES AND METHODS FOR ITERATIVE POLYPEPTIDE ANALYSIS AND PROCESSING)」という名称の2016年9月2日出願の米国特許出願第15/255,433号明細書に記載のアミノアシルtRNAシンテターゼおよび関連分子を含む)である。
【0069】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、アミノ酸認識分子である。例えば、いくつかの実施形態において、分子バーコードはポリペプチドバーコードを含み、アミノ酸認識分子を使用して、ポリペプチドからバーコード内容を解読することができる。いくつかの実施形態において、アミノ酸認識分子は、異なる動的結合特性を有する1つ以上の種類の末端アミノ酸に結合する。いくつかの実施形態において、アミノ酸認識分子は、異なる動的結合特性を有するポリペプチドの異なるセグメントに結合する。例えば、いくつかの実施形態において、アミノ酸認識分子は、N末端またはC末端に同じ種類のアミノ酸を含むが、末端アミノ酸に対して最後から2番目(例えば、n+1)および/または後続の位置(例えば、2番目、3番目、4番目、5番目、またはそれ以上の位置のうちの1つまたは複数での異なるアミノ酸の種類)のアミノ酸含量が異なるポリペプチドセグメントに結合する。これらの概念(例えば、最後から2番目以上の位置のみにおけるアミノ酸含量の差異に基づく示差的結合速度論)およびアミノ酸認識分子のさらなる例は、2019年11月15日に出願されたPCT国際公開第WO2020102741A1号(発明の名称「タンパク質配列決定のための方法および組成物(METHODS AND COMPOSITIONS FOR PROTEIN SEQUENCING)」)(これは、その全体が参考として援用される)により詳細に記載される。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、分子バーコードを1つ以上のバーコード認識分子と接触させることを含む。この議論の目的のために、本明細書に記載される方法の文脈における1つ以上のバーコード認識分子は、代替的に一組のバーコード認識分子と称され得る。いくつかの実施形態において、一組のバーコード認識分子は、少なくとも2個から最大20個(例えば、2~15個、2~10個、5~10個、10~20個)のバーコード認識分子を含む。いくつかの実施形態において、一組のバーコード認識分子は、20個超(例えば、20~25個、20~30個)バーコード認識分子を含む。しかしながら、任意の数のバーコード認識分子が、所望の用途に対応するために、本開示の方法に従って使用され得ることを理解されたい。
【0071】
本開示によれば、いくつかの実施形態において、バーコード認識分子に付着した標識からの発光を検出することによって、分子バーコード内容を同定することができる。いくつかの実施形態において、標識されたバーコード認識分子は、少なくとも1つの分子バーコードに結合するバーコード認識分子と、バーコード認識分子に関連付けられる発光を有する発光標識とを含む。このようにして、発光(例えば、発光寿命、発光強度、および発光に基づく動的結合データを含む、本明細書の他の箇所に記載される他の発光特性)をバーコード認識分子の結合と関連付けて、少なくとも1つの分子バーコードを同定することができる。いくつかの実施形態において、複数の種類の標識されたバーコード認識分子を本開示に従う方法で使用することができ、各種類は、複数の中から一意に識別可能な発光を有する発光標識を含む。適切な発光標識は、蛍光色素などの発光分子を含んでもよく、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0072】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、結合誘導型(binding-induced)発光を有する標識を含む。例えば、いくつかの実施形態において、標識アプタマーはドナー標識およびアクセプター標識を含むことができる。遊離および未結合分子として、標識されたアプタマーは、ドナーおよびアクセプター標識が、標識間の検出可能なFRETを制限する距離(例えば、約10nm以上)によって分離される立体構造をとる。バーコード領域に結合すると、標識されたアプタマーは、ドナー標識およびアクセプター標識が、標識間の検出可能なFRETを促進する距離(例えば、約10nm以下)内にある立体構造をとる。さらに他の実施形態において、標識されたアプタマーは、消光部分を含むことができ、分子ビーコンと同様に機能することができ、発光は、遊離分子として内部消光され、バーコード領域に結合すると回復する(例えば、Hamaguchiら(2001年)、Analytical Biochemistry 294,126-131)。標識アプタマーと標識分子バーコードとの間のFRETの使用などの類似および代替の標識戦略は、当業者には明らかであろう。理論に束縛されることを望むものではないが、結合誘導型発光のためのこれらおよび他の種類の機構は、バックグラウンド発光を有利に低減または排除して、本明細書に記載される方法の全体的な感度および精度を増加させ得ると考えられる。
【0073】
いくつかの実施形態において、分子バーコード内容は、標識されたバーコード認識分子の1つ以上の電気的特性を検出することによって同定することができる。いくつかの実施形態において、標識されたバーコード認識分子は、少なくとも1つの分子バーコードに結合するバーコード認識分子と、バーコード認識分子に関連付けられた導電性標識とを含む。このようにして、1つ以上の電気的特性(例えば、電荷、電流振動色、および導電率に基づく動的結合データを含む他の電気的特性)をバーコード認識分子の結合と関連付けて、少なくとも1つの分子バーコードを同定することができる。いくつかの実施形態において、複数の種類の標識されたバーコード認識分子が、本開示に従う方法において使用されてもよく、各種類は、複数の中から一意に識別可能な電気シグナルの変化(例えば、バーコード特異的パターンの導電率の振幅および導電率遷移の変化などのコンダクタンスの変化)を生成する導電性標識を含む。いくつかの実施形態において、複数の種類の標識されたバーコード認識分子はそれぞれ、異なる数の荷電基(例えば、異なる数の負および/または正の荷電基)を有する導電性標識を含む。したがって、いくつかの実施形態において、導電性標識は電荷標識である。電荷標識の例としては、デンドリマー、ナノ粒子、核酸および複数の荷電基を有する他のポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態において、導電性標識は、その正味電荷(例えば、正味正電荷または正味負電荷)によって、その電荷密度によって、および/またはその荷電基の数によって一意に識別可能である。
【0074】
配列決定
本明細書に記載されるように、いくつかの態様において、本開示は、配列決定および分子バーコード認識を同時に(例えば、同じ反応混合物中で)、連続して、および/または単一の表面上で(例えば、単一の反応容器中で)行うことを可能にする技術の発見に関する。したがって、いくつかの態様において、本開示は、生体分子に付着した分子バーコードのアイデンティティを決定すること(例えば、本明細書に記載されるバーコード認識によって);および生体分子を配列決定することによって、バーコード化生体分子を分析する方法を提供する。
【0075】
いくつかの実施形態において、方法は、(a)バーコード化生体分子を表面に固定化することと、(b)生体分子に付着した分子バーコードのアイデンティティを決定することと、(c)生体分子を配列決定することであって、(b)および(c)が表面上で行われることとを含む。いくつかの実施形態において、そのようなバーコード化および配列決定の方法は、単一の表面に固定化されたおよび/または単一の反応容器(例えば、サンプルウェル)内に含有された複数のバーコード化生体分子をバーコード化および配列決定することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、単一の表面に固定化されたおよび/または単一の反応容器(例えば、サンプルウェル)内に含有された2個以上(例えば、3個以上、5個以上、10個以上、20個以上、2~100、5~50、5~20、5~10、50~100)のバーコード化生体分子をバーコード化および配列決定することを含む。
【0076】
ポリペプチド配列決定。いくつかの実施形態において、バーコード化生体分子は分子バーコードを含むポリペプチドである。いくつかの実施形態において、分子バーコードのアイデンティティは、本明細書に記載されるバーコード認識の方法に従って決定される。いくつかの実施形態において、方法は、ポリペプチドを配列決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドを配列決定することは、ポリペプチド分解プロセス中に単一分子結合相互作用を検出することによって行われる(例えば、
図2に示され、本明細書に記載されるように)。
【0077】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドを配列決定することは、ポリペプチドの配列情報を決定することを指す。いくつかの実施形態において、これは、ポリペプチドの一部(またはすべて)についての各連続するアミノ酸のアイデンティティを決定することを含み得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、これは、ポリペプチド内のアミノ酸のサブセットのアイデンティティを評価すること(例えば、ポリペプチド中の各アミノ酸のアイデンティティを決定することなく、1つまたは複数のアミノ酸の種類の相対位置を決定すること)を含み得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸含有量(content)情報は、ポリペプチド中の異なる種類のアミノ酸の相対的位置を直接決定することなく、ポリペプチドから得ることができる。アミノ酸含有量のみを使用して、存在するポリペプチドのアイデンティティを推測することができる(例えば、アミノ酸含有量をポリペプチド情報のデータベースと比較し、どのポリペプチドが同じアミノ酸含有量を有するかを決定することによって)。
【0078】
いくつかの態様において、バーコード化ポリペプチドのポリペプチド配列決定は、ポリペプチドのアミノ酸の1つ以上の種類を同定することによって実施され得る。いくつかの実施形態において、ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸(例えば、末端アミノ酸および/または内部アミノ酸)が標識され(例えば、アミノ酸結合タンパク質などのバインダを使用して、直接的または間接的に)、ポリペプチド中の標識アミノ酸の相対位置が決定される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド中のアミノ酸の相対位置は、一連のアミノ酸標識および切断ステップを用いて決定される。
【0079】
いくつかの実施形態において、末端アミノ酸(例えば、N末端またはC末端アミノ酸)のアイデンティティは、末端アミノ酸が除去され、末端で次のアミノ酸のアイデンティティが評価された後に評価され;このプロセスは、ポリペプチド中の複数の連続したアミノ酸が評価されるまで繰り返される。いくつかの実施形態において、アミノ酸のアイデンティティを評価することは、存在するアミノ酸の種類を決定することを含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸の種類を決定することは、例えば、天然に存在する20個のアミノ酸のうちのどれが末端アミノ酸であるかを決定することによって(例えば、個々の末端アミノ酸に特異的であるバインダを用いて)、実際のアミノ酸のアイデンティティを決定することを含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸の種類は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セレノシステイン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンから選択される。しかしながら、いくつかの実施形態において、末端アミノ酸の種類のアイデンティティを評価することは、ポリペプチドの末端に存在し得る潜在的なアミノ酸のサブセットを決定することを含み得る。いくつかの実施形態において、末端アミノ酸の種類のアイデンティティを評価することは、アミノ酸が翻訳後修飾を含んでいることを決定することを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、タンパク質またはポリペプチドは、複数のより小さいポリペプチドに消化することができ、配列情報は、これらのより小さいポリペプチドの1つ以上から得ることができる(例えば、ポリペプチドの末端アミノ酸を順次評価し、そのアミノ酸を除去して末端で次のアミノ酸を露出する方法を使用する)。いくつかの実施形態において、ポリペプチド配列決定の方法は、ポリペプチド末端を、末端アミノ酸検出および末端アミノ酸切断の反復サイクルに供することを含み得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドを配列決定することは、連結基を介して固体支持体の表面に固定化された(例えば、サンプルウェルの底または側壁面に付着させる)ポリペプチドを提供することを含む。いくつかの実施形態において、連結基は、ポリペプチドの官能化末端と表面に付着された相補的機能部分との間の共有結合性または非共有結合性の連結によって形成される。例えば、いくつかの実施形態において、連結基は、ポリペプチドのビオチン部分(例えば、バーコード化ポリペプチド)と表面のアビジンタンパク質との間の非共有性の連結によって形成される。いくつかの実施形態において、連結基は核酸を含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列決定反応において末端アミノ酸を検出および切断するために他の末端が自由になるように、一方の末端で官能化部分を介して表面に固定化される。したがって、いくつかの実施形態において、特定のポリペプチド配列決定反応で使用される試薬は、ポリペプチドの固定化されていない(例えば遊離の)末端の末端アミノ酸と優先的に相互作用する。このようにして、ポリペプチドは、例えば動的ポリペプチド配列決定反応におけるように、検出および切断の反復サイクルにわたって固定化されたままである。
【0083】
いくつかの実施形態において、動的ポリペプチド配列決定は、末端アミノ酸と標識アミノ酸認識分子および切断試薬(例えば、エキソペプチダーゼ)との結合相互作用を評価することによってリアルタイムで実施される。
図2は、別個の結合事象がシグナル出力のシグナルパルスを生じる配列決定方法の例を示す。
図2の挿入パネル(左)は、このアプローチによるリアルタイム配列決定の一般的なスキームを示している。示されるように、標識アミノ酸認識分子200は末端アミノ酸(ここではフェニルアラニンとして示される)と会合し(例えば、結合し)、同末端アミノ酸から解離し、それは末端アミノ酸を同定するために使用され得るシグナル出力における一連のパルスを発生させる。いくつかの実施形態において、一連のパルスは、対応する末端アミノ酸のアイデンティティの診断となり得るパルスパターン(例えば、特性パターン)を提供する。
【0084】
図2の挿入パネル(左)にさらに示されるように、いくつかの実施形態において、配列決定反応混合物は、エキソペプチダーゼ201(例えば、切断試薬)をさらに含む。いくつかの実施形態において、エキソペプチダーゼは、標識アミノ酸認識分子の濃度よりも低い濃度で混合物中に存在する。いくつかの実施形態において、エキソペプチダーゼは、ほとんどまたはすべての種類の末端アミノ酸を切断するような幅広い特異性を示す。したがって、動的配列決定アプローチは、エキソペプチダーゼ切断活性によって触媒される分解反応の過程にわたって、ポリペプチドの末端で結合する認識分子を監視することを含み得る。
【0085】
図2は、経時的なシグナル出力強度の進行をさらに示す(右パネル)。いくつかの実施形態において、エキソペプチダーゼによる末端アミノ酸切断は、標識アミノ酸認識分子の結合パルスよりも低い頻度で起こる。このようにして、ポリペプチドのアミノ酸をリアルタイム配列決定プロセスで計数および/または同定することができる。いくつかの実施形態において、1つの種類のアミノ酸認識分子は、2つ以上の種類のアミノ酸と会合することができ、異なる特性パターンは、1つの種類の標識アミノ酸認識分子と異なる種類の末端アミノ酸との会合に対応する。例えば、いくつかの実施形態において、異なる特徴的パターン(フェニルアラニン(F、Phe)、トリプトファン(W、Trp)およびチロシン(Y,Tyr)のそれぞれによって示されるように)は、分解の過程で、ある種類の標識アミノ酸認識分子(例えば、ClpSタンパク質)が異なる種類の末端アミノ酸と会合することに対応する。いくつかの実施形態において、それぞれがアミノ酸の異なるサブセットと会合することができる、複数の標識アミノ酸認識分子を使用することができる。
【0086】
いくつかの実施形態において、動的ペプチド配列決定は、異なる会合事象、例えば、アミノ酸認識分子とペプチドの末端のアミノ酸との間の会合事象を観察することによって行われ、ここで、各会合事象は、一定時間持続するシグナル、例えば、発光シグナルの大きさの変化を生じる。いくつかの実施形態において、異なる会合事象、例えばアミノ酸認識分子とペプチドの末端のアミノ酸との間の会合事象を観察することは、ペプチド分解プロセス中に行うことができる。いくつかの実施形態において、ある特徴的なシグナルパターンから別のシグナルパターンへの転移は、アミノ酸切断(例えば、ペプチド分解によるアミノ酸切断)を示す。いくつかの実施形態において、アミノ酸切断は、ポリペプチドの末端からの少なくとも1つのアミノ酸の除去(例えば、ポリペプチドからの少なくとも1つの末端アミノ酸の除去)を指す。いくつかの実施形態において、アミノ酸切断は、特徴的なシグナルパターン間の持続時間に基づく推論によって決定される。いくつかの実施形態において、アミノ酸切断は、標識切断試薬とポリペプチド末端のアミノ酸との会合によって生じるシグナルの変化を検出することによって決定される。アミノ酸は、分解中にポリペプチドの末端から連続的に切断されるので、大きさの一連の変化、または一連のシグナルパルスが検出される。
【0087】
いくつかの実施形態において、シグナルパルス情報は、一連のシグナルパルスにおける特性パターンに基づいてアミノ酸を同定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、特性パターンは、各シグナルパルスがパルス持続時間を含む複数のシグナルパルスを含む。いくつかの実施形態において、複数のシグナルパルスは、特性パターン中のパルス持続時間の分布の要約統計量(たとえば、平均、メジアン、時間減衰定数)により特徴付けられてもよい。いくつかの実施形態において、特性パターンの平均パルス持続時間は、約1ミリ秒~約10秒間(たとえば、約1ms~約1s、約1ms~約100ms、約1ms~約10ms、約10ms~約10s、約100ms~約10s、約1s~約10s、約10ms~約100ms、または約100ms~約500ms)である。いくつかの実施形態において、単一ポリペプチド中の異なる種類のアミノ酸に対応する異なる特性パターンは、要約統計量の統計的有意差に基づいて互いに識別され得る。たとえば、いくつかの実施形態において、1つの特性パターンは、少なくとも10ミリ秒間(たとえば、約10ms~約10s、約10ms~約1s、約10ms~約100ms、約100ms~約10s、約1s~約10s、または約100ms~約1s)の平均パルス持続時間の差に基づいて他の特徴パターンから識別可能であってもよい。いくつかの実施形態において、異なる特性パターン間の平均パルス持続時間差が小さくなるほど、統計学的信頼度で互いを区別するために各特性パターン内により多くの数のパルス持続時間を必要とし得ることが認識されるべきである。
【0088】
動的配列決定を実施するための方法および組成物は、2019年11月15日に出願されたPCT国際公開第WO2020102741A1号、および2021年5月20日に出願されたPCT国際公開第WO2021236983A2号により完全に記載されており、これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【0089】
核酸配列決定。いくつかの実施形態において、バーコード化生体分子は分子バーコードを含む核酸である。いくつかの実施形態において、酵素は、核酸に結合される。例えば、いくつかの実施形態において、核酸分子は、少なくとも1つのハイブリダイズしたプライマー/重合酵素複合体を含む。いくつかの実施形態において、核酸分子は、配列決定プライマーが核酸分子にアニールするように、核酸分子の一部に相補的である配列決定プライマーと接触させられる。このプライミング位置は、重合酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)が核酸分子に結合してハイブリダイズしたプライマー/重合酵素複合体を形成することができる部位を生成する。いくつかの実施形態において、分子バーコードのアイデンティティは、本明細書に記載されるバーコード認識の方法に従って決定される。いくつかの実施形態において、方法は、核酸を配列決定することをさらに含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、核酸配列決定は、バーコード化生体分子の核酸に相補的な新生核酸鎖に組み込まれる一連のヌクレオチドモノマーを同定することによって(例えば、一連の標識ヌクレオチドモノマーの組み込みの時間経過を検出することによって)行われる。いくつかの実施形態において、核酸配列決定は、重合酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)によって合成される鋳型依存性核酸配列決定反応生成物に組み込まれる一連のヌクレオチドを同定することによって行われる。
【0091】
いくつかの実施形態において、核酸配列決定の方法は、以下のステップを包含する:(i)標的体積中の複合体(この複合体は、バーコード化核酸、プライマー、および重合酵素を含む)を、1つ以上の標識ヌクレオチドを含む核酸配列決定反応組成物に曝露するステップ;(ii)1つ以上の励起エネルギーの一連のパルスを標的体積の近傍に向けるステップ;(iii)プライマーを含む核酸鎖への連続的な取り込みの間に、標識ヌクレオチドからの複数の放出光子を検出するステップ;ならびに(iv)放出光子のタイミングおよび必要に応じて発光強度を決定することによって、取り込まれたヌクレオチドの配列を同定するステップ。
【0092】
標的核酸(例えば、バーコード化核酸)の核酸塩基と相補的ヌクレオシドポリリン酸(例えば、dNTP)との間の塩基対合の際に、重合酵素(例えば、ポリメラーゼ)は、新たに合成された鎖の3’ヒドロキシル末端とdNTPのアルファリン酸との間にホスホジエステル結合を形成することによって、dNTPを新たに合成された核酸鎖に組み込む。dNTPにコンジュゲートされた標識が蛍光色素分子を含む例では、その存在は励起によってシグナリングされ、発光のパルスは、取り込みステップの間および/または後に検出される。dNTPの末端(ガンマ)リン酸にコンジュゲートしている標識の場合、新しく合成された鎖にdNTPを組み込むと、ベータリン酸とガンマリン酸、およびサンプルウェルに自由に拡散する標識の放出がもたらされ、蛍光色素分子から検出される発光が減少する。
【0093】
いくつかの実施形態において、鋳型依存性核酸配列決定生成物は、天然に存在する核酸ポリメラーゼによって行われる。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは、天然に存在するポリメラーゼの突然変異体または改変変異体である。いくつかの実施形態において、鋳型依存性核酸配列決定生成物は、鋳型核酸鎖に相補的な1つ以上のヌクレオチドセグメントを含むであろう。いくつかの実施形態において、鋳型核酸の配列を決定することは、その相補的核酸鎖の配列を決定することを含む。
【0094】
「重合酵素」または「ポリメラーゼ」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、重合反応を触媒することができる任意の酵素を指す。ポリメラーゼの例には、限定されるものではないが、核酸ポリメラーゼ、転写酵素、またはリガーゼが含まれる。単一分子の核酸伸長(例えば、核酸配列決定のための)に向けられた実施形態は、標的核酸分子に相補的な核酸を合成することができる任意のポリメラーゼを使用し得る。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、および/またはそれらの1つ以上の突然変異体または改変された形態であり得る。
【0095】
ポリメラーゼの例は、限定されるものではないが、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、熱安定性ポリメラーゼ、野生型ポリメラーゼ、改変ポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼI、T7DNAポリメラーゼ、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼφ29(ψ29)DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tliポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、VENTポリメラーゼ、DEEPVENTポリメラーゼ、EX-Taqポリメラーゼ、LA-Taqポリメラーゼ、Ssoポリメラーゼ、Pocポリメラーゼ、Pabポリメラーゼ、Mthポリメラーゼ、ES4ポリメラーゼ、Truポリメラーゼ、Tacポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tmaポリメラーゼ、Tcaポリメラーゼ、Tihポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、Platinum Taqポリメラーゼ、Tbrポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Pfutboポリメラーゼ、Pyrobestポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Sacポリメラーゼ、クレノウ(Klenow)フラグメント、3’~5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、ならびにそれらのバリアント、修飾産物および誘導体、が含まれる。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは、単一サブユニットポリメラーゼである。
【0096】
配列決定中に、重合酵素は、標的核酸分子(例えば、バーコード化核酸)のプライミング位置に結合(例えば、付着)させることができる。プライミング位置は、標的核酸分子の一部に相補的なプライマーであり得る。いくつかの実施形態において、プライミング位置は、標的核酸分子の二本鎖セグメント内に提供されるギャップまたはニック(nick)である。ギャップまたはニックは、0から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、または40ヌクレオチドの長さであり得る。ニックは、二本鎖配列の一方の鎖に切断を提供することができ、これは、例えば、鎖置換ポリメラーゼ酵素などの重合酵素のプライミング位置を提供することができる。
【0097】
場合によっては、配列決定プライマーは、固体支持体に固定化されていてもされなくてもよい標的核酸分子(例えば、バーコード化核酸)にアニーリングすることができる。固体支持体は、例えば、核酸配列決定に使用されるチップ上のサンプルウェル(例えば、ナノアパーチャ、反応チャンバ)を含むことができる。いくつかの実施形態において、配列決定プライマーは、固体支持体に固定化され得、そして標的核酸分子のハイブリダイゼーションはまた、標的核酸分子を固体支持体に固定化する。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは、固体支持体に固定化され、可溶性プライマーおよび標的核酸は、ポリメラーゼに接触される。しかしながら、いくつかの実施形態において、ポリメラーゼ、標的核酸およびプライマーを含む複合体は、溶液中で形成され、複合体は、固体支持体に固定化される(例えば、ポリメラーゼ、プライマー、および/または標的核酸の固定化を介して)。いくつかの実施形態において、サンプルウェル(例えば、ナノアパーチャ、反応チャンバ)内の構成要素のいずれも、固体支持体に固定化されていない。例えば、いくつかの実施形態において、ポリメラーゼ、標的核酸およびプライマーを含む複合体は、溶液中で形成され、同複合体は、固体支持体に固定化されていない。
【0098】
適切な条件下で、アニーリングされたプライマー/標的核酸に接触されるポリメラーゼ酵素は、プライマー上に1つ以上のヌクレオチドを付加または組み込み可能であり、ヌクレオチドは、鋳型依存的様式でプライマーに5’~3’付加可能である。プライマーへのヌクレオチドのそのような取り込み(例えば、ポリメラーゼの作用を介した)は、一般に、プライマー伸長反応と称され得る。各ヌクレオチドは、核酸伸長反応中に(例えば、その発光寿命および/または他の特性に基づいて)検出および同定することができ、伸長プライマーに組み込まれる各ヌクレオチド、したがって、新しく合成された核酸分子の配列、を決定するために使用できる検出可能な標識と関連付けることができる。新たに合成された核酸分子の配列相補性によって、標的核酸分子(例えば、バーコード化核酸)の配列も決定することができる。場合によっては、配列決定プライマーの標的核酸分子へのアニーリングおよび配列決定プライマーへのヌクレオチドの取り込みは、同様の反応条件(例えば、同じまたは同様の反応温度)または異なる反応条件(例えば、異なる反応温度)で起こり得る。いくつかの実施形態において、合成方法による配列決定は、標的核酸分子の集団(例えば、標的核酸のコピー)の存在、および/または標的核酸の集団を達成するための標的核酸の増幅のステップを含み得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、合成による配列決定を使用して、評価されている各反応における単一分子の配列を決定する(そして、配列決定のための標的鋳型を調製するために核酸増幅は必要とされない)。いくつかの実施形態において、本出願の態様によれば、複数の単一分子配列決定反応が並行して(例えば、単一のチップ上で)実施される。例えば、いくつかの実施形態において、複数の単一分子配列決定反応は、それぞれ、単一のチップ上の別個の反応チャンバ(例えば、ナノアパーチャ、サンプルウェル)で実施される。
【0099】
いくつかの実施形態において、単一分子配列決定において使用される標的核酸分子(例えば、バーコード化核酸)は、一本鎖標的核酸(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、DNA誘導体、リボ核酸(RNA)、RNA誘導体)鋳型であり、これは、サンプルの底壁または側壁などの固体支持体に固定化または付着された、配列決定反応の少なくとも1つの追加成分(例えば、DNAポリメラーゼ、配列決定プライマーなどのポリメラーゼ)を含むサンプルウェル(例えば、反応チャンバまたは反応容器)に付加、または固定化される。標的核酸分子またはポリメラーゼは、サンプルウェルの底壁または側壁などのサンプル壁に直接またはリンカーを介して付着させることができる。サンプルウェルはまた、プライマー伸長反応を介した核酸合成に必要な任意の他の試薬、例えば、適切な緩衝液、補因子、酵素(例えば、ポリメラーゼ)およびデオキシリボヌクレオシドポリリン酸、例えば、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)およびデオキシチミジン三リン酸(dTTP)dNTPを含むデオキシリボヌクレオシド三リン酸、(それらは、発光標識を含む)、を含むことができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、dNTPの各クラス(例えば、アデニン含有dNTP(例えば、dATP)、シトシン含有dNTP(例えば、dCTP)、グアニン含有dNTP(例えば、dGTP)、ウラシル含有dNTP(例えば、dUTP)、およびチミン含有dNTP(例えば、dTTP))は、発光分子から放出される光の検出が新たに合成された核酸に組み込まれたdNTPのアイデンティティを示すように、異なる発光特性を含む発光分子にコンジュゲートされる。発光分子からの放出光(例えば、少なくとも1つの発光標識を含む標識された生体分子からの放出光)は、任意の適切なデバイスおよび/または方法を介して検出され、その適切な発光分子(したがって、関連するdNTP)に帰することができる。発光分子は、同発光分子(例えば、本出願の標識された生体分子)の存在が新たに合成された核酸鎖へのdNTPの組み込みまたはポリメラーゼの活性を阻害しないように、任意の位置でdNTPにコンジュゲートされ得る。いくつかの実施形態において、発光分子は、dNTPの末端リン酸(例えば、ガンマリン酸)にコンジュゲートされている。
【0101】
いくつかの実施形態において、一本鎖標的核酸鋳型(例えば、バーコード化核酸)は、配列決定プライマー、dNTP、ポリメラーゼ、および核酸合成に必要な他の試薬と接触させることができる。いくつかの実施形態において、すべての適切なdNTPは、dNTPの取り込みが連続的に起こり得るように、一本鎖標的核酸鋳型と同時に接触され得る(例えば、すべてのdNTPが同時に存在する)。他の実施形態において、dNTPは、一本鎖標的核酸鋳型と連続的に接触させることができ、ここで、一本鎖標的核酸鋳型は、各々の適切なdNTPと別々に接触させられ、一本鎖標的核酸鋳型と異なるdNTPとの接触の間の洗浄ステップを伴う。一本鎖標的核酸鋳型を各々のdNTPと別々に接触させ、その後洗浄するそのようなサイクルは、同定されるべき一本鎖標的核酸鋳型の各々の連続する塩基位置について反復され得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、配列決定プライマーは、一本鎖標的核酸鋳型にアニールし、ポリメラーゼは、一本鎖標的核酸鋳型に基づいて、プライマーにdNTP(または他のヌクレオシドポリホスフェート)を連続的に組み込む。取り込まれた各dNTPに関連する独特の発光分子は、dNTPのプライマーへの取り込みの間またはその後に、適切な励起光で励起され得、その発光は、その後、任意の適切なデバイスおよび/または方法を使用して検出され得る。光の特定の放出(例えば、特定の放出寿命、強度、スペクトル、および/またはそれらの組み合わせを有する)の検出は、組み込まれた特定のdNTPに起因する可能性がある。次いで、検出された発光分子の収集から得られた配列を用いて、配列相補性を介して一本鎖標的核酸鋳型の配列を決定することができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、本開示は、米国特許出願第14/543,865号、第14/543,867号、第14/543,888号、第14/821,656号、第14/821,686号、第14/821,688号、第15/161,067号、第15/161,088号、第15/161,125号、第15/255,245号、第15/255,303号、第15/255,624号、第15/261,697号、第15/261,724号、第15/600,979号、第15/846,967号、および第15/847,001号、に記載された技術において有利に利用され得る方法および組成物を提供し、これらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
発光標識
本明細書で使用される場合、発光標識は、1つ以上の光子を吸収し、その後、1以上の持続時間後に1つ以上の光子を放出し得る分子である。いくつかの実施形態において、この用語は、文脈に応じて、「標識」、「検出可能な標識」、または「発光分子」と互換的に使用される。本明細書に記載される特定の実施形態に従う発光標識は、バーコード認識分子の発光標識、分子バーコードの発光標識、または本明細書に記載される別の標識組成物の発光標識を指し得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、発光標識は、第1および第2の発色団を含む。いくつかの実施形態において、第1の発色団の励起状態は、第2の発色団へのエネルギー移動を介して緩和することができる。いくつかの実施形態において、エネルギー移動は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)である。そのようなFRET対は、混合物中の複数の発光標識の中から標識を区別することをより容易にする特性を有する発光標識を提供するために、または本明細書の他の場所に記載されるようなバックグラウンド蛍光を制限する結合誘導型蛍光を提供するために有用であり得る。さらに他の実施形態において、FRET対は、第1の発光標識の第1の発色団および第2の発光標識の第2の発色団を含み、例えば、バーコード認識分子上の第1の標識と分子バーコード上の第2の標識との間でFRETが生じる。特定の実施形態において、FRET対は、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、第2のスペクトル範囲の発光を放出することができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、発光標識は、蛍光色素分子または色素を指す。典型的には、発光標識は、芳香族またはヘテロ芳香族化合物を含み、ピレン、アントラセン、ナフタレン、ナフチルアミン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンズインドール、オキサゾール、カルバゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、フェナントリジン、フェノキサジン、ポルフィリン、キノリン、エチジウム、ベンザミド、シアニン、カルボシアニン、サリチレート、アントラニレート、クマリン、フルオロセイン、ローダミン、キサンテン、または他の同様の化合物であり得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、発光標識は、下記:5/6-カルボキシローダミン6G、5-カルボキシローダミン6G、6-カルボキシローダミン6G、6-TAMRA、アベリア(Abberior)(登録商標)スター(STAR)440SXP、アベリア(Abberior)(登録商標)スター(STAR)470SXP、アベリア(Abberior)(登録商標)スター(STAR)488、アベリア(Abberior)(登録商標)スター(STAR)512、アベリア(Abberior)(登録商標)スター(STAR)520SXP、アベリア(Abberior)(登録商標)スター(STAR)580、アベリア(Abberior)(登録商標)スター(STAR)600、アベリア(Abberior)(登録商標)スター(STAR)635、アベリア(Abberior)(登録商標)スター(STAR)635P、アベリア(Abberior)(登録商標)スターレッド(STARRED)、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)350、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)405、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)430、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)480、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)488、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)514、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)532、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)546、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)555、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)568、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)594、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)610×、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)633、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)647、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)660、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)680、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)700、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)750、アレキサフルオル(AlexaFluor)(登録商標)790、AMCA、アトー(ATTO)390、アトー(ATTO)425、アトー(ATTO)465、アトー(ATTO)488、アトー(ATTO)495、アトー(ATTO)514、アトー(ATTO)520、アトー(ATTO)532、アトー(ATTO)542、アトー(ATTO)550、アトー(ATTO)565、アトー(ATTO)590、アトー(ATTO)610、アトー(ATTO)620、アトー(ATTO)633、アトー(ATTO)647、アトー(ATTO)647N、アトー(ATTO)655、アトー(ATTO)665、アトー(ATTO)680、アトー(ATTO)700、アトー(ATTO)725、アトー(ATTO)740、アトー(ATTO)Oxa12、アトー(ATTO)Rho101、アトー(ATTO)Rho11、アトー(ATTO)Rho12、アトー(ATTO)Rho13、アトー(ATTO)Rho14、アトー(ATTO)Rho3B、アトー(ATTO)Rho6G、アトー(ATTO)Thio12、BDホライゾン(Horizon)(商標)V450、ボディピー(BODIPY)(登録商標)493/501、ボディピー(BODIPY)(登録商標)530/550、ボディピー(BODIPY)(登録商標)558/568、ボディピー(BODIPY)(登録商標)564/570、ボディピー(BODIPY)(登録商標)576/589、ボディピー(BODIPY)(登録商標)581/591、ボディピー(BODIPY)(登録商標)630/650、ボディピー(BODIPY)(登録商標)650/665、ボディピー(BODIPY)(登録商標)FL、ボディピー(BODIPY)(登録商標)FL-X、ボディピー(BODIPY)(登録商標)R6G、ボディピー(BODIPY)(登録商標)TMR、ボディピー(BODIPY)(登録商標)TR、CALフルオル(Fluor)(登録商標)ゴールド540、CALフルオル(Fluor)(登録商標)グリーン510、CALフルオル(Fluor)(登録商標)オレンジ560、CALフルオル(Fluor)(登録商標)レッド590、CALフルオル(Fluor)(登録商標)レッド610、CALフルオル(Fluor)(登録商標)レッド615、CALフルオル(Fluor)(登録商標)レッド635、カスケード(Cascade)(登録商標)ブルー、CF(商標)350、CF(商標)405M、CF(商標)405S、CF(商標)488A、CF(商標)514、CF(商標)532、CF(商標)543、CF(商標)546、CF(商標)555、CF(商標)568、CF(商標)594、CF(商標)620R、CF(商標)633、CF(商標)633-V1、CF(商標)640R、CF(商標)640R-V1、CF(商標)640R-V2、CF(商標)660C、CF(商標)660R、CF(商標)680、CF(商標)680R、CF(商標)680R-V1、CF(商標)750、CF(商標)770、CF(商標)790、クロメオ(Chromeo)(商標)642、クロミス(Chromis)425N、クロミス(Chromis)500N、クロミス(Chromis)515N、クロミス(Chromis)530N、クロミス(Chromis)550A、クロミス(Chromis)550C、クロミス(Chromis)550Z、クロミス(Chromis)560N、クロミス(Chromis)570N、クロミス(Chromis)577N、クロミス(Chromis)600N、クロミス(Chromis)630N、クロミス(Chromis)645A、クロミス(Chromis)645C、クロミス(Chromis)645Z、クロミス(Chromis)678A、クロミス(Chromis)678C、クロミス(Chromis)678Z、クロミス(Chromis)770A、クロミス(Chromis)770C、クロミス(Chromis)800A、クロミス(Chromis)800C、クロミス(Chromis)830A、クロミス(Chromis)830C、Cy(登録商標)3、Cy(登録商標)3.5、Cy(登録商標)3B、Cy(登録商標)5、Cy(登録商標)5.5、Cy(登録商標)7、ディライト(DyLight)(登録商標)350、ディライト(DyLight)(登録商標)405、ディライト(DyLight)(登録商標)415-Co1、ディライト(DyLight)(登録商標)425Q、ディライト(DyLight)(登録商標)485-LS、ディライト(DyLight)(登録商標)488、ディライト(DyLight)(登録商標)504Q、ディライト(DyLight)(登録商標)510-LS、ディライト(DyLight)(登録商標)515-LS、ディライト(DyLight)(登録商標)521-LS、ディライト(DyLight)(登録商標)530-R2、ディライト(DyLight)(登録商標)543Q、ディライト(DyLight)(登録商標)550、ディライト(DyLight)(登録商標)554-R0、ディライト(DyLight)(登録商標)554-R1、ディライト(DyLight)(登録商標)590-R2、ディライト(DyLight)(登録商標)594、ディライト(DyLight)(登録商標)610-B1、ディライト(DyLight)(登録商標)615-B2、ディライト(DyLight)(登録商標)633、ディライト(DyLight)(登録商標)633-B1、ディライト(DyLight)(登録商標)633-B2、ディライト(DyLight)(登録商標)650、ディライト(DyLight)(登録商標)655-B1、ディライト(DyLight)(登録商標)655-B2、ディライト(DyLight)(登録商標)655-B3、ディライト(DyLight)(登録商標)655-B4、ディライト(DyLight)(登録商標)662Q、ディライト(DyLight)(登録商標)675-B1、ディライト(DyLight)(登録商標)675-B2、ディライト(DyLight)(登録商標)675-B3、ディライト(DyLight)(登録商標)675-B4、ディライト(DyLight)(登録商標)679-C5、ディライト(DyLight)(登録商標)680、ディライト(DyLight)(登録商標)683Q、ディライト(DyLight)(登録商標)690-B1、ディライト(DyLight)(登録商標)690-B2、ディライト(DyLight)(登録商標)696Q、ディライト(DyLight)(登録商標)700-B1、ディライト(DyLight)(登録商標)700-B1、ディライト(DyLight)(登録商標)730-B1、ディライト(DyLight)(登録商標)730-B2、ディライト(DyLight)(登録商標)730-B3、ディライト(DyLight)(登録商標)730-B4、ディライト(DyLight)(登録商標)747、ディライト(DyLight)(登録商標)747-B1、ディライト(DyLight)(登録商標)747-B2、ディライト(DyLight)(登録商標)747-B3、ディライト(DyLight)(登録商標)747-B4、ディライト(DyLight)(登録商標)755、ディライト(DyLight)(登録商標)766Q、ディライト(DyLight)(登録商標)775-B2、ディライト(DyLight)(登録商標)775-B3、ディライト(DyLight)(登録商標)775-B4、ディライト(DyLight)(登録商標)780-B1、ディライト(DyLight)(登録商標)780-B2、ディライト(DyLight)(登録商標)780-B3、ディライト(DyLight)(登録商標)800、ディライト(DyLight)(登録商標)830-B2、ディオミクス(Dyomics)-350、ディオミクス(Dyomics)-350XL、ディオミクス(Dyomics)-360XL、ディオミクス(Dyomics)-370XL、ディオミクス(Dyomics)-375XL、ディオミクス(Dyomics)-380XL、ディオミクス(Dyomics)-390XL、ディオミクス(Dyomics)-405、ディオミクス(Dyomics)-415、ディオミクス(Dyomics)-430、ディオミクス(Dyomics)-431、ディオミクス(Dyomics)-478、ディオミクス(Dyomics)-480XL、ディオミクス(Dyomics)-481XL、ディオミクス(Dyomics)-485XL、ディオミクス(Dyomics)-490、ディオミクス(Dyomics)-495、ディオミクス(Dyomics)-505、ディオミクス(Dyomics)-510XL、ディオミクス(Dyomics)-511XL、ディオミクス(Dyomics)-520XL、ディオミクス(Dyomics)-521XL、ディオミクス(Dyomics)-530、ディオミクス(Dyomics)-547、ディオミクス(Dyomics)-547P1、ディオミクス(Dyomics)-548、ディオミクス(Dyomics)-549、ディオミクス(Dyomics)-549P1、ディオミクス(Dyomics)-550、ディオミクス(Dyomics)-554、ディオミクス(Dyomics)-555、ディオミクス(Dyomics)-556、ディオミクス(Dyomics)-560、ディオミクス(Dyomics)-590、ディオミクス(Dyomics)-591、ディオミクス(Dyomics)-594、ディオミクス(Dyomics)-601XL、ディオミク
ス(Dyomics)-605、ディオミクス(Dyomics)-610、ディオミクス(Dyomics)-615、ディオミクス(Dyomics)-630、ディオミクス(Dyomics)-631、ディオミクス(Dyomics)-632、ディオミクス(Dyomics)-633、ディオミクス(Dyomics)-634、ディオミクス(Dyomics)-635、ディオミクス(Dyomics)-636、ディオミクス(Dyomics)-647、ディオミクス(Dyomics)-647P1、ディオミクス(Dyomics)-648、ディオミクス(Dyomics)-648P1、ディオミクス(Dyomics)-649、ディオミクス(Dyomics)-649P1、ディオミクス(Dyomics)-650、ディオミクス(Dyomics)-651、ディオミクス(Dyomics)-652、ディオミクス(Dyomics)-654、ディオミクス(Dyomics)-675、ディオミクス(Dyomics)-676、ディオミクス(Dyomics)-677、ディオミクス(Dyomics)-678、ディオミクス(Dyomics)-679P1、ディオミクス(Dyomics)-680、ディオミクス(Dyomics)-681、ディオミクス(Dyomics)-682、ディオミクス(Dyomics)-700、ディオミクス(Dyomics)-701、ディオミクス(Dyomics)-703、ディオミクス(Dyomics)-704、ディオミクス(Dyomics)-730、ディオミクス(Dyomics)-731、ディオミクス(Dyomics)-732、ディオミクス(Dyomics)-734、ディオミクス(Dyomics)-749、ディオミクス(Dyomics)-749P1、ディオミクス(Dyomics)-750、ディオミクス(Dyomics)-751、ディオミクス(Dyomics)-752、ディオミクス(Dyomics)-754、ディオミクス(Dyomics)-776、ディオミクス(Dyomics)-777、ディオミクス(Dyomics)-778、ディオミクス(Dyomics)-780、ディオミクス(Dyomics)-781、ディオミクス(Dyomics)-782、ディオミクス(Dyomics)-800、ディオミクス(Dyomics)-831、eフルオル(eFluor)(登録商標)450、エオシン、FITC、フルオレセイン、ハイライト(HiLyte)(商標)フルオル(Fluor)405、ハイライト(HiLyte)(商標)フルオル(Fluor)488、ハイライト(HiLyte)(商標)フルオル(Fluor)532、ハイライト(HiLyte)(商標)フルオル(Fluor)555、ハイライト(HiLyte)(商標)フルオル(Fluor)594、ハイライト(HiLyte)(商標)フルオル(Fluor)647、ハイライト(HiLyte)(商標)フルオル(Fluor)680、ハイライト(HiLyte)(商標)フルオル(Fluor)750、IRダイ(IRDye)(登録商標)680LT、IRダイ(IRDye)(登録商標)750、IRダイ(IRDye)(登録商標)800CW、JOE、ライトサイクラー(LightCycler)(登録商標)640R、ライトサイクラー(LightCycler)(登録商標)レッド610、ライトサイクラー(LightCycler)(登録商標)レッド640、ライトサイクラー(LightCycler)(登録商標)レッド670、ライトサイクラー(LightCycler)(登録商標)レッド705、リサミンローダミンB、ナフトフルオレセイン、オレゴングリーン(OregonGreen)(登録商標)488、オレゴングリーン(OregonGreen)(登録商標)514、パシフィックブルー(PacificBlue)(商標)、パシフィックグリーン(PacificGreen)(商標)、パシフィックオレンジ(PacificOrange)(商標)、PET、PF350、PF405、PF415、PF488、PF505、PF532、PF546、PF555P、PF568、PF594、PF610、PF633P、PF647P、クエーサー(Quasar)(登録商標)570、クエーサー(Quasar)(登録商標)670、クエーサー(Quasar)(登録商標)705、ローダミン123、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミングリーン、ローダミングリーン-X、ローダミンレッド、ROX、セタ(Seta)(商標)375、セタ(Seta)(商標)470、セタ(Seta)(商標)555、セタ(Seta)(商標)632、セタ(Seta)(商標)633、セタ(Seta)(商標)650、セタ(Seta)(商標)660、セタ(Seta)(商標)670、セタ(Seta)(商標)680、セタ(Seta)(商標)700、セタ(Seta)(商標)750、セタ(Seta)(商標)780、セタ(Seta)(商標)APC-780、セタ(Seta)(商標)PerCP-680、セタ(Seta)(商標)R-PE-670、セタ(Seta)(商標)646、セタウ(SeTau)380、セタウ(SeTau)425、セタウ(SeTau)647、セタウ(SeTau)405、スクエア(Square)635、スクエア(Square)650、スクエア(Square)660、スクエア(Square)672、スクエア(Square)680、スルホローダミン101、TAMRA、TET、テキサスレッド(TexasRed)(登録商標)、TMR、TRITC、ヤキマイエロー(YakimaYellow)(商標)、ゼノン(Zenon)(登録商標)、Zy3、Zy5、Zy5.5、およびZy7の1つ以上から選択される色素を含む。
【0108】
発光
いくつかの態様において、本開示は、発光標識の1つ以上の発光特性に基づくバーコード認識に関する。いくつかの実施形態において、発光標識は、発光寿命、発光強度、輝度、吸収スペクトル、発光スペクトル、発光量子収率、またはそれらの2つ以上の組み合わせに基づいて同定される。いくつかの実施形態において、複数の種類の発光標識は、異なる発光寿命、発光強度、輝度、吸収スペクトル、発光スペクトル、発光量子収率、またはそれらの2つ以上の組み合わせに基づいて互いに区別することができる。
【0109】
いくつかの実施形態において、発光標識を一連の別個の光パルスに曝露し、標識から放出される各光子のタイミングまたは他の特性を評価することによって、発光を検出する。いくつかの実施形態において、標識から順次放出された複数の光子についての情報は、標識を同定し、それによって関連するバーコード領域を同定するために集約され、評価される。いくつかの実施形態において、標識の発光寿命は、標識から連続的に放出される複数の光子から決定され、発光寿命は、標識を同定するために使用されてもよい。いくつかの実施形態において、標識の発光強度は、標識から順次放出される複数の光子から決定され、発光強度は、標識を同定するために使用されてもよい。いくつかの実施形態において、標識の発光寿命および発光強度は、標識から順次放出される複数の光子から決定され、発光寿命および発光強度は、標識を同定するために使用されてもよい。
【0110】
本開示のいくつかの態様において、単一分子は、複数の別個の光パルスに曝露され、一連の放出された光子が、検出および分析される。いくつかの実施形態において、一連の放出された光子は、実験過程にわたって混合物中で存在するとともに変化しない単一分子に関する情報を提供する。しかしながら、いくつかの実施形態において、一連の放出された光子は、混合物内の異なる時間に存在する一連の異なる分子に関する情報を提供する(例えば、反応またはプロセスが進行するにつれて)。
【0111】
特定の実施形態において、発光標識は、1つの光子を吸収し、ある持続時間の後に1つの光子を放出する。いくつかの実施形態において、標識の発光寿命は、持続時間を測定することによって決定または推定することができる。いくつかの実施形態において、標識の発光寿命は、複数のパルス事象および発光事象について複数の持続時間を測定することによって決定または推定することができる。いくつかの実施形態において、標識の発光寿命は、持続時間を測定することによって、複数の種類の標識の発光寿命の間で区別することができる。いくつかの実施形態において、標識の発光寿命は、複数のパルス事象および放出事象について複数の持続時間を測定することによって、複数の種類の標識の発光寿命の間で区別することができる。特定の実施形態において、標識は、標識の発光寿命を決定または推定することによって、複数の種類の標識の間で同定または区別される。特定の実施形態において、標識は、複数の種類の標識の複数の発光寿命の中で標識の発光寿命を区別することによって、複数の種類の標識の中で識別または区別される。
【0112】
発光標識の発光寿命の決定は、任意の適切な方法(例えば、適切な技術を用いて寿命を測定することによって、または放出の時間依存特性を決定することによって)を用いて行うことができる。いくつかの実施形態において、1つの標識の発光寿命を決定することは、別の標識に対する寿命を決定することを含む。いくつかの実施形態において、標識の発光寿命を決定することは、基準に対する寿命を決定することを含む。いくつかの実施形態において、標識の発光寿命を決定することは、寿命(例えば、蛍光寿命)を測定することを含む。いくつかの実施形態において、標識の発光寿命を決定することは、寿命を示す1つ以上の時間特性を決定することを含む。いくつかの実施形態において、標識の発光寿命は、励起パルスに対して1つ以上の時間ゲートされたウィンドウにわたって生じる複数の放出事象(emission events)(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90,100以上の放出事象)の分布に基づいて決定され得る。例えば、励起パルスに関して測定された光子到達時間の分布に基づいて、標識の発光寿命を、異なる発光寿命を有する複数の標識と区別することができる。
【0113】
発光標識の発光寿命は、標識が励起状態に達した後に放出される光子のタイミングを示すものであり、標識は光子のタイミングを示す情報によって区別することができることを理解されたい。いくつかの実施形態は、標識によって放出される光子に関連する時間を測定することによって、標識の発光寿命に基づいて標識を複数の標識から区別することを含み得る。時間の分布は、分布から決定され得る発光寿命の指標を提供し得る。いくつかの実施形態において、時間の分布を既知の標識に対応する参照分布と比較することなどによって、時間の分布に基づいて、標識を複数の標識から区別可能である。いくつかの実施形態において、発光寿命の値は、時間の分布から決定される。
【0114】
本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態において、発光強度は、パルス励起エネルギーの送達によって励起される発光標識によって放出される単位時間当たりの放出光子の数を指す。いくつかの実施形態において、発光強度は、パルス励起エネルギーの送達によって励起され、かつ特定のセンサまたはセンサの組によって検出される標識によって放出される単位時間当たりの放出光子の検出された数を指す。
【0115】
本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態において、「輝度(brightness)」は、発光標識あたりの平均発光強度を報告するパラメータを指す。したがって、いくつかの実施形態において、「発光強度」は、一般に、1つ以上の標識を含む組成物の輝度を指すために使用され得る。いくつかの実施形態において、標識の輝度は、その量子収率と吸光係数との積に等しい。
【0116】
本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態において、発光量子収率は、発光事象をもたらす所与の波長または所与のスペクトル範囲内の励起事象の割合を指し、典型的には1未満である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の発光標識の発光量子収率は、0~約0.001の間、約0.001~約0.01の間、約0.01~約0.1の間、約0.1~約0.5の間、約0.5~0.9の間、または約0.9~1の間である。いくつかの実施形態において、標識は、発光量子収率を決定または推定することによって同定される。
【0117】
本明細書において使用される場合、いくつかの実施形態において、励起エネルギーは、光源からの光のパルスである。いくつかの実施形態において、励起エネルギーは可視スペクトルにある。いくつかの実施形態において、励起エネルギーは紫外線スペクトルにある。いくつかの実施形態において、励起エネルギーは赤外線スペクトルにある。いくつかの実施形態において、励起エネルギーは、発光標識であって、そこからの複数の放出光子が検出されることになる発光標識の吸収極大またはその近くにある。特定の実施形態において、励起エネルギーは、約500nm~約700nmの間(例えば、約500nm~約600nmの間、約600nm~約700nmの間、約500nm~約550nmの間、約550nm~約600nmの間、約600nm~約650nmの間、または約650nm~約700nmの間)にある。特定の実施形態において、励起エネルギーは単色であってもよく、またはスペクトル範囲に限定されてもよい。いくつかの実施形態において、スペクトル範囲は、約0.1nm~約1nmの間、約1nm~約2nmの間、または約2nm~約5nmの間の範囲を有する。いくつかの実施形態において、スペクトル範囲は、約5nm~約10nmの間、約10nm~約50nmの間、または約50nm~約100nmの間の範囲を有する。
【0118】
デバイスおよびシステム
本開示に従う方法は、いくつかの態様において、基板の表面上の分子バーコードを固定化することを含み得る。いくつかの実施形態において、基板は、本明細書に記載されるようなバイオセンサー、マイクロアレイ、チップ、または集積デバイスなどの固体支持体である。いくつかの実施形態において、複数の分子バーコードは、アレイ上の複数の部位に結合される(例えば、各部位は、それに付着された複数のうちの1つの分子バーコードを有する状態で)。いくつかの実施形態において、分子バーコードは、サンプルウェルのアレイを備える基板上のサンプルウェルの表面上(例えば、サンプルウェルの底面上)に固定化されてもよい。いくつかの実施形態において、分子バーコードは、直接的または間接的に(例えば、リンカーを介して、または表面に付着された分析物を介して)固定化される(例えば、表面に付着される)。固定化分子バーコードは、例えば本開示に記載されるような、任意の適切な共有結合性または非共有結合性のリンカーまたは連結基を使用して付着させることができる。
【0119】
いくつかの実施形態において、分子バーコードは、当技術分野で公知の技法(例えば、クリックケミストリー)を使用して形成され得る共有結合性連結基を介して表面に付着される。いくつかの実施形態において、分子バーコードは、非共有結合性連結基を介して表面に付着される。いくつかの実施形態において、非共有結合性連結基はアビジンタンパク質を含む。アビジンタンパク質はビオチン結合タンパク質であり、一般にアビジンタンパク質の4つのサブユニットのそれぞれにビオチン結合部位を有している。アビジンタンパク質には、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、トラプタビジン、タマビジン、ブラダビジン、ゼナアビジン、およびそれらの相同体およびバリアントが含まれる。場合によっては、単量体、二量体、または四量体形態のアビジンタンパク質を使用することができる。いくつかの実施形態において、アビジンタンパク複合体のアビジンタンパク質は、四量体形態(例えば、ホモテトラマー)のストレプトアビジンである。いくつかの実施形態において、アビジンタンパク質のビオチン結合部位は、ビオチン化表面、ビオチン化分子バーコード、および/またはビオチン化分析物のための付着点を提供する。
【0120】
アビジンタンパク質の多価性は、種々の連結配置を可能にし得る。例えば、いくつかの実施形態において、ビオチン連結部分は、アビジンタンパク質への単一の付着点を提供するために使用され得る。いくつかの実施形態において、ビス-ビオチン連結部分は、アビジンタンパク質への2つの付着点を提供するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本開示のバーコード構築物は、2つのビス-ビオチン連結部分によって形成されるアビジンタンパク質複合体を介して表面に固定化される。いくつかの実施形態において、バーコード構築物は、2つのビス-ビオチン連結部分のうちの一方を含み、表面は、2つのビス-ビオチン連結部分のうちの他方を含む。単一分子表面固定化のための適切な組成物および方法のさらなる例は、2020年10月9日に出願された「気相における表面改質(SURFACE MODIFICATION IN THE VAPOR PHASE)」という名称の米国特許出願第17/067,184号、および2018年5月4日に出願された「生物学的反応における表面反応性と防汚性を改良した基材(SUBSTRATES HAVING MODIFIED SURFACE REACTIVITY AND ANTIFOULING PROPERTIES IN BIOLOGICAL REACTIONS)」という名称の米国特許出願第15/971,493号に記載されており、これらは両方ともその全体が参照により組み込まれる。
【0121】
いくつかの態様において、本開示は、単一分子閉じ込め部位のアレイを有する基板を含む装置を提供する。いくつかの実施形態において、複数の単一分子閉じ込め部位はそれぞれ、本明細書に記載の分子バーコードを含む単一分子を含む。いくつかの実施形態において、分子バーコードは、単一分子閉じ込め部位の表面に固定化される。いくつかの実施形態において、装置は、試薬(例えば、1つ以上のバーコード認識分子、または本明細書に記載される組成物のうちの任意の1つ以上)を基板と接触させて維持するためのレセプタクルまたは他の手段を備える。したがって、いくつかの実施形態において、基板は、本開示の1つ以上のバーコード認識分子と接触している複数の異なる分子バーコードを含む。いくつかの実施形態において、複数の異なる分子バーコードおよび1つ以上のバーコード認識分子は、本明細書の他の箇所に記載されるような結合パラメータ(例えば、KD、koff、kon、パルス持続時間、パルス間持続時間、および他のシグナル特性)に従って相互作用する。いくつかの実施形態において、基板は集積デバイスである。いくつかの実施形態において、複数の単一分子閉じ込め部位は、複数のサンプルウェルを含む。
【0122】
本開示に従う方法は、いくつかの態様において、単一分子分析を可能にするシステムを用いて実施され得る。システムは、集積デバイスと、集積デバイスにインターフェースするように構成された機器と、を含み得る。集積デバイスは、ピクセルのアレイを含み得るとともに、個別ピクセルは、サンプルウェルと少なくとも1つの光検出器とを含む。集積デバイスのサンプルウェルは、集積デバイスの表面上または表面全体にわたり形成され得るとともに、集積デバイスの表面上に配置されたサンプルを受け取るように構成され得る。全体として、サンプルウェルは、サンプルウェルのアレイとみなされ得る。複数のサンプルウェルは、サンプルウェルの少なくとも一部分が単一サンプル(たとえば、ポリペプチドなどの単一分子)を受け取るように好適なサイズおよび形状を有し得る。いくつかの実施形態において、サンプルウェル内のサンプルの数は、いくつかのサンプルウェルが1つのサンプルを含有し、一方、他のものがゼロ、2、またはそれ以上のサンプルを含有するように、集積デバイスのサンプルウェル内に分配され得る。
【0123】
励起光は、集積デバイスの外部の1つ以上の光源から集積デバイスに提供される。集積デバイスの光学コンポーネントは、光源から励起光を受け取り、光を集積デバイスのサンプルウェルのアレイに指向させ、そしてサンプルウェル内の照射領域を照明し得る。いくつかの実施形態において、サンプルウェルは、サンプルウェルの表面に近接してサンプルを保持できるようにするとともにサンプルへの励起光の送達およびサンプルからの放出光の検出を容易にし得る構成を有してもよい。照明領域内に位置決めされるサンプルは、励起光により照明されるとそれに反応して放出光を放出し得る。たとえば、サンプルは、励起光の照明を介して励起状態を達成するとそれに反応して光を放出する蛍光マーカーで標識されていてもよい。次いで、サンプルにより放出される放出光は、分析されるサンプルを有するサンプルウェルに対応するピクセル内の1つ以上の光検出器により検出され得る。いくつかの実施形態によれば数がおおよそ10,000ピクセル~1,000,000ピクセルの範囲内であり得るサンプルウェルのアレイ全体にわたり実施されるとき、複数のサンプルは並行して分析可能である。
【0124】
集積デバイスは、励起光を受け取って励起光をサンプルウェルアレイ間に指向させるための光学システムを含み得る。光学システムは、集積デバイスの他の光学コンポーネントに励起光を結合して、他の光学コンポーネントに励起光を指向させるように構成された1つ以上のグレーティングカプラーを含み得る。例えば、光学システムは、グレーティングカプラーからサンプルウェルアレイに向けて励起光を指向させる光学コンポーネントを含み得る。かかる光学コンポーネントは、光学スプリッターと光学コンバイナーと導波路とを含み得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の光学スプリッターは、グレーティングカプラーからの励起光を結合して励起光を導波路の少なくとも1つに送達し得る。いくつかの実施形態によれば、光学スプリッターは、導波路の各々が実質的に類似した量の励起光を受け取るようにすべての導波路にわたり実質的に均一な励起光の送達を可能にする構成を有し得る。かかる実施形態は、集積デバイスのサンプルウェルが受け取る励起光の均一性を改善することにより集積デバイスの性能を改善し得る。たとえば、サンプルウェルに励起光を結合するためにおよび/または光検出器に放出光を指向させるために、集積デバイスに含めるのに好適なコンポーネントの例は、「分子をプローブ、検出、および分析するための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」という名称の2015年8月7日出願の米国特許出願第14/821,688号明細書、および「分子をプローブ、検出、および分析するための外部光源付き集積デバイス(INTEGRATED DEVICE WITH EXTERNAL LIGHT SOURCE FOR PROBING,DETECTING,AND ANALYZING MOLECULES)」という名称の2014年11月17日出願の米国特許出願第14/543,865号明細書(両方ともその全体が参照により組み込まれる)に記載されている。集積デバイスに実装され得る好適なグレーティングカプラーおよび導波路の例は、「光カプラおよび導波路システム(OPTICAL COUPLER AND WAVEGUIDESYSTEM)」という名称の2017年12月15日出願の米国特許出願第15/844,403号明細書(その全体が参照により組み込まれる)に記載されている。
【0125】
追加のフォトニック構造は、サンプルウェルと光検出器との間に配置されてもよく、そうでなければ、放出光を検出する際のシグナルノイズに寄与する励起光が光検出器に到達するのを低減または防止するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、集積デバイスのための回路として作用し得る金属層は、空間フィルタとしても作用し得る。適切なフォトニック構造の例は、スペクトルフィルタ、偏光フィルタ、および空間フィルタを含むことができ、2018年7月23日に出願された「光除去フォトニック構造(OPTICAL REJECTION PHOTONIC STRUCTURES)」という名称の米国特許出願第16/042,968号、および2020年12月11日に出願された「電荷移動効率を改善した集積回路と関連技術(INTEGRATED CIRCUIT WITH IMPROVED CHARGE TRANSFER EFFICIENCY AND ASSOCIATED TECHNIQUES)」という名称の米国仮特許出願第63/124,655号に記載されており、これらは両方ともその全体が参照により組み込まれる。
【0126】
集積デバイスから離れて位置決めされるコンポーネントは、集積デバイスに励起源を位置決めおよびアライメントするために使用され得る。かかるコンポーネントは、レンズ、ミラー、プリズム、ウィンドウ、アパーチャ、アテニュエータ、および/または光ファイバーをはじめとする光学コンポーネントを含み得る。追加の機械的コンポーネントは、1つ以上のアライメントコンポーネントの制御を可能にするために機器に含まれ得る。かかる機械的コンポーネントは、アクチュエーター、ステッパーモータ、および/またはノブを含み得る。好適な励起源およびアライメント機構の例は、「パルスレーザーおよびシステム(PULSED LASER AND SYSTEM)」という名称の2016年5月20日出願の米国特許出願第15/161,088号明細書(その全体が参照により組み込まれる)に記載されている。ビームステアリングモジュールの他の一例は、「コンパクトビーム整形およびステアリングアセンブリー(COMPACT BEAM SHAPING AND STEERINGASSEMBLY)」という名称の2017年12月14日出願の米国特許出願第15/842,720号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。好適な励起源のさらなるの例は、「分子をプローブ、検出、および分析するための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」という名称の2015年8月7日出願の米国特許出願第14/821,688号明細書(その全体が参照により組み込まれる)に記載されている。
【0127】
集積デバイスの個別ピクセルと共に位置決めされる光検出器は、ピクセルの対応するサンプルウェルからの放出光を検出するように構成および位置決めされ得る。好適な光検出器の例は、「受け取った光子の時間ビニングのための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS)」という名称の2015年8月7日出願の米国特許出願第14/821,656号明細書(その全体が参照により組み込まれる)に記載されている。いくつかの実施形態において、サンプルウェルおよびそのそれぞれの光検出器は、共通軸に沿ってアライメントされ得る。こうすると、光検出器は、ピクセル内のサンプルウェルにオーバーラップし得る。
【0128】
検出放出光の特性は、放出光に関連付けられるマーカーを同定するための指標を提供し得る。かかる特性は、光検出器により検出される光子の到着時間、光検出器により経時的に蓄積される光子の量、および/または2つ以上の光検出器にわたる光子の分布をはじめとするいずれかの好適な種類の特性を含み得る。いくつかの実施形態において、そのような特性は、ルミネセンス寿命、ルミネセンス強度、輝度、吸収スペクトル、発光スペクトル、ルミネセンス量子収率、波長(例えば、ピーク波長)、およびシグナル特性(例えば、パルス持続時間、パルス間持続時間、シグナル強度の変化)のうちのいずれか1つ、または2つ以上の組み合わせであり得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、光検出器は、サンプルの放出光に関連付けられる1つ以上のタイミング特性(たとえば発光寿命)の検出を可能にする構成を有してもよい。光検出器は、励起光のパルスが集積デバイスを介して伝搬した後の光子到着時間の分布を検出し得るとともに、到着時間の分布は、サンプルの放出光のタイミング特性の指標(たとえば、発光寿命のプロキシ)を提供し得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の光検出器は、標識により放出される放出光の確率の指標(たとえば発光強度)を提供する。いくつかの実施形態において、複数の光検出器は、放出光の空間分布をキャプチャーするようにサイズ決めおよび配置され得る。次いで、1つ以上の光検出器からの出力シグナルは、複数の標識間で標識を区別するために使用され得るとともに、複数の標識はサンプル中のサンプルを同定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、複数の励起エネルギーにより励起され得るとともに、複数の励起エネルギーに反応してサンプルにより放出される放出光および/または放出光のタイミング特性は、標識を複数の標識から区別し得る。
【0130】
動作時、励起光を用いてウェル内のサンプルの一部または全部を励起することと、サンプル放出からのシグナルを光検出器で検出することと、により、サンプルウェル内のサンプルのパラレル分析が行われる。サンプルからの放出光は、対応する光検出器により検出されて少なくとも1つの電気シグナルに変換され得る。電気シグナルは、集積デバイスの回路内の伝導ラインに沿って伝達され得るとともに、集積デバイスにインターフェースされた機器に接続され得る。電気シグナルは、その後、処理および/または解析され得る。電気シグナルの処理または解析は、機器上または機器外のいずれかに位置する好適なコンピューティングデバイスで行われ得る。
【0131】
機器は、機器および/または集積デバイスの動作を制御するためのユーザインターフェースを含み得る。ユーザインターフェースは、ユーザによる機器への情報の入力、たとえば、機器の機能を制御するために使用されるコマンドおよび/または設定値などの情報の入力を可能にするように構成され得る。いくつかの実施形態において、ユーザインターフェースは、ボタン、スイッチ、ダイヤル、および音声コマンド用マイクロフォンを含み得る。ユーザインターフェースは、機器および/または集積デバイスの性能に関するフィードバック、たとえば、適正アライメントおよび/または集積デバイス上の光検出器からのリードアウトシグナルにより得られる情報、のユーザによる受取りを可能にし得る。いくつかの実施形態において、ユーザインターフェースは、可聴フィードバックを提供するためにスピーカーを用いたフィードバックを提供し得る。いくつかの実施形態において、ユーザインターフェースは、ユーザに視覚フィードバックを提供するためにインジケータライトおよび/またはディスプレイスクリーンを含み得る。
【0132】
いくつかの実施形態において、機器は、コンピューティングデバイスに接続するように構成されたコンピュータインターフェースを含み得る。コンピュータインターフェースは、USBインターフェース、ファイヤワイヤ(FireWire)(商標)インターフェース、または任意の他の好適なコンピュータインターフェースであり得る。コンピューティングデバイスは、ラップトップコンピュータやデスクトップコンピュータなどの任意の汎用コンピュータであり得る。いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイスは、好適なコンピュータインターフェースを経由してワイヤレスネットワークを介してアクセス可能なサーバ(たとえば、クラウドベースサーバ)であり得る。コンピュータインターフェースは、機器とコンピューティングデバイスとの間の情報の通信を促進し得る。機器を制御および/または構成するための入力情報はコンピューティングデバイスへ提供され得、およびコンピュータインターフェースを介して機器に伝達され得る。機器により発生する出力情報は、コンピュータインターフェースを経由してコンピューティングデバイスにより受け取られ得る。出力情報は、機器の性能、集積デバイスの性能、および/または光検出器のリードアウトシグナルから発生するデータに関するフィードバックを含み得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、機器は、集積デバイスの1つ以上の光検出器から受け取ったデータを解析するようにおよび/または励起源に制御シグナルを伝達するように構成される処理デバイスを含み得る。いくつかの実施形態において、処理デバイスは、汎用プロセッサ、特化(specially-adapted)プロセッサ(たとえば、中央処理ユニット(CPU)、たとえば、1つ以上のマイクロプロセッサーコア若しくはマイクロコントローラコア、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、カスタム集積回路、ディジタルシグナルプロセッサー(DSP)、またはそれらの組合せ)を含み得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の光検出器からのデータの処理は、機器の処理デバイスおよび外部コンピューティングデバイスの両方により実施され得る。他の実施形態において、外部コンピューティングデバイスは省略され得るとともに、1つ以上の光検出器からのデータの処理は、集積デバイスの処理デバイスのみにより実施され得る。
【0134】
いくつかの実施形態によれば、発光放出特性に基づいてサンプルを解析するように構成された機器は、異なる発光分子間の発光寿命および/若しくは強度の差並びに/または異なる環境の同一発光分子の寿命および/若しくは強度の差を検出し得る。発光放出寿命の差は、異なる発光分子の存在若しくは不在を見分けるためにおよび/または発光分子が晒される異なる環境若しくは条件を見分けるために使用可能であることを、本発明者らは認識し高く評価した。いくつかの場合には、寿命(たとえば、発光波長ではない)に基づいて発光分子を見分けることは、システムの態様を単純化し得る。例として、波長識別光学素子(たとえば、波長フィルタ、各波長の専用検出器、異なる波長の専用パルス光源、および/または回折光学素子)は、寿命に基づいて発光分子を見分けるときに数が低減され得るかまたは排除され得る。いくつかの場合には、単一特性波長で動作する単一パルス光源は、光学スペクトルの同一波長領域内で放出するが測定可能に異なる寿命を有する異なる発光分子を励起するために使用され得る。同一波長領域に放出する異なる発光分子を励起して見分けるために、異なる波長で動作する複数の光源ではなく単一のパルス光源を使用する解析システムは、動作および維持の複雑さが軽減され、よりコンパクトになり得るとともに、より低コストで製造され得る。
【0135】
発光寿命解析に基づく解析システムはある特定の利益を有し得るが、解析システムにより得られる情報量および/または検出確度は、追加の検出技術を許容すれば増加させることができる。たとえば、システムのいくつかの実施形態は、発光波長および/または発光強度に基づいてサンプルの1つ以上の性質を見分けるように追加的に構成されてもよい。いくつかの実装形態において、発光強度は、異なる発光標識を区別するために追加的または代替的に使用され得る。たとえば、いくつかの発光標識は、それらの減衰率が類似しているおそれがあったとしても、有意に異なる強度で放出し得るかまたはそれらの励起確率に有意差(たとえば、少なくとも約35%の差)を有し得る。測定励起光に対してビンシグナルを参照することにより、強度レベルに基づいて異なる発光標識を区別可能であり得る。
【0136】
いくつかの実施形態によれば、異なる発光寿命は、発光標識の励起に続く発光放出事象を時間ビンするように構成された光検出器を用いて区別され得る。時間ビニングは、光検出器に対する単一電荷蓄積サイクル時に発生し得る。電荷蓄積サイクルは、光発生キャリアが時間ビニング光検出器のビンに蓄積されるリードアウト事象間のインターバルである。時間ビニング光検出器の例は、「受け取った光子の時間ビニングのための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS)」という名称の2015年8月7日出願の米国特許出願第14/821,656号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。いくつかの実施形態において、時間ビニング光検出器は、光子吸収/キャリア発生領域で電荷キャリアを発生して電荷キャリア貯蔵領域の電荷キャリア貯蔵ビンに電荷キャリアを直接移送し得る。かかる実施形態において、時間ビニング光検出器は、キャリア移動/キャプチャー領域を含まないこともあり得る。かかる時間ビニング光検出器は、「直接ビニングピクセル」と称され得る。直接ビニングピクセルを含む時間ビニング光検出器の例は、「直接ビニングピクセルを備えた集積光検出器(INTEGRATED PHOTODETECTOR WITH DIRECT BINNING PIXEL)」という名称の2017年12月22日出願の米国特許出願第15/852,571号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0137】
いくつかの実施形態において、各試薬が発光強度に基づいて同定され得るように、同じ種類の異なる数の蛍光色素分子がサンプル中の異なる試薬に連結され得る。例えば、2つの蛍光色素分子を第1の標識認識分子に連結してもよく、4つ以上の蛍光色素分子を第2の標識認識分子に連結してもよい。異なる数の蛍光色素分子のために、異なる認識分子に関連する異なる励起および蛍光色素分子放出確率が存在し得る。例えば、ビンの見かけの強度が第1の標識された認識分子よりも有意に高くなるように、シグナル蓄積間隔中に第2の標識された認識分子についてより多くの発光事象が存在し得る。
【0138】
蛍光色素分子減衰率および/または蛍光色素分子強度に基づいて生物学的若しくは化学的サンプルを区別することは、光学励起および検出システムの単純化を可能にし得ることを、本発明者らは認識し高く評価した。たとえば、光学励起は、単一波長光源(たとえば、複数の光源ではなく1つの特性波長を生成する光源または複数の異なる特性波長で動作する光源)で実施され得る。そのほか、波長識別光学素子およびフィルタは、検出システムに必要とされないこともあり得る。また、異なる蛍光色素分子からの放出を検出するために、各サンプルウェルに対して単一光検出器が使用され得る。「特性波長」または「波長」という語句は、放射線の限定バンド幅内の中心波長または主波長(たとえば、パルス光源による20nmバンド幅出力内の中心波長またはピーク波長)を意味するものとして用いられる。場合によっては、「特性波長」または「波長」は、光源による放射線出力の合計バンド幅内のピーク波長を意味するものとして用いられ得る。
【0139】
例示的な集積デバイス
本開示の一態様によれば、例示的な集積デバイスは、上述の機器と組み合わせて単一分子分析を実施するように構成されてもよい。本明細書で説明する例示的な集積デバイスは、例示的であることが意図されており、他の集積デバイス構成が、本明細書で説明する任意のまたはすべての技法を実施するように構成され得ることを理解されたい。
【0140】
図6は、集積デバイス1-102のピクセル1-112の断面図である。ピクセル1-112は、ピン留めフォトダイオード(PPD)であり得る光検出領域と、蓄積ダイオード(SD0)であり得る電荷蓄積領域とを含む。いくつかの実施形態において、光検出領域および電荷蓄積領域は、半導体材料の領域をドープすることによってピクセルの半導体材料内に形成されてもよい。例えば、光検出領域および電荷蓄積領域は、同じ導電型(例えば、n型ドーピングまたはp型ドーピング)を用いて形成することができる。
【0141】
ピクセル1-112の動作中に、励起光がサンプルウェル1-108を照射して、サンプルからの蛍光放出を含む入射光子を光軸に沿って光検出領域PPDに流すことができる。
図6に示すように、ピクセル1-112は、集積デバイス(図示せず)の格子カプラからの励起光をサンプルウェル1-108に光学的に(例えば、エバネッセント的に)結合するように構成された導波路1-220を含んでもよい。それに応答して、サンプルウェル1-108内のサンプルは、光検出領域PPDに向かって蛍光を放射し得る。いくつかの実施形態において、ピクセル1-112は、スペクトルフィルタ、偏光フィルタ、および/または空間フィルタなどの1つまたは複数の光除去構造を含むことができる1つまたは複数のフォトニック構造1-230も含むことができる。例えば、フォトニック構造1-230は、光検出領域PPDに到達する励起光の量を減少させ、および/または光検出領域PPDに到達する蛍光放出の量を増加させるように構成されてもよい。また、ピクセル1-112に示されるように、ピクセル1-112は、1つ以上の金属層1-240を含んでもよく、それは、本明細書でさらに説明されるように、フィルタとして構成されてもよく、および/または転送ゲートを制御するように構成される制御回路からの制御シグナルを搬送してもよい。
【0142】
いくつかの実施形態において、ピクセル1-112は、1つ以上の制御シグナルに応答してピクセル1-112の1つ以上の半導体領域に電気バイアスを印加することによってピクセル1-112の動作を制御するように構成された1つ以上の転送ゲートを含んでもよい。例えば、転送ゲートST0が光検出領域PPDと蓄積領域SD0との間の半導体領域に第1の電気的バイアスを誘起すると、半導体領域に転送経路(例えば、電荷転送チャネル)が形成され得る。入射光子によって光検出領域PPDで生成された電荷キャリア(例えば、光電子)は、転送経路に沿って蓄積領域SD0に流れる。いくつかの実施形態において、第1の電気バイアスは、サンプルからの電荷キャリアが蓄積領域SD0に選択的に向けられる収集期間中に印加されてもよい。あるいは、転送ゲートST0が光検出領域PPDとて蓄積領域SD0との間の半導体領域に第2の電気的バイアスを与えるとき、光検出領域PPDからの電荷キャリアが転送経路に沿ってて蓄積領域SD0に到達するのを阻止することができる。いくつかの実施形態において、ドレインゲートREJは、サンプルからの蛍光放出光子が光検出領域PPDに到達する前の排除期間(rejection period)中などに、励起光によって光検出領域PPD内で生成されたノイズ電荷キャリアを光検出領域PPDおよび蓄積領域SD0から引き離すために、ドレインDへのチャネルを提供することができる。いくつかの実施形態において、リードアウト期間中に、転送ゲートST0は第2の電気的バイアスを提供することができ、転送ゲートTX0は電気的バイアスを提供して、蓄積領域SD0に記憶された電荷キャリアを、処理のために、浮遊拡散(FD)領域であり得るリードアウト領域に流すことができる。
【0143】
様々な実施形態によれば、本明細書で説明する転送ゲートは、半導体材料および/または金属を含むことができ、電界効果トランジスタ(FET)のゲート、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)のベースなどを含むことができることを理解されたい。
【0144】
いくつかの実施形態において、ピクセル1-112の動作は、1つ以上の収集シーケンスを含んでもよく、各収集シーケンスは、1つ以上の排除(例えば、ドレイン)期間および1つ以上の収集期間を含む。一例において、励起光源の1つ以上のパルスに従って実行される収集シーケンスは、光源からの励起光子に応答してピクセル1-112内(例えば、光検出領域PD内)で生成された電荷キャリアを廃棄するためなど、排除期間を伴って開始することができる。例えば、励起光子は、サンプルウェルからの蛍光放出光子の到達の前に、ピクセル1-112に到達し得る。電荷蓄積領域のための転送ゲートは、電荷蓄積領域を光検出領域に結合する電荷転送チャネルにおいて低い導電率を有するようにバイアスされ、電荷蓄積領域における電荷キャリアの転送および蓄積を阻止することができる。ドレイン領域のためのドレインゲートは、光検出領域とドレイン領域との間のドレインチャネルにおいて高い導電性を有するようにバイアスされてもよく、光検出領域からドレイン領域への電荷キャリアの排出を容易にする。光検出領域に結合された任意の電荷蓄積領域のための転送ゲートは、光検出領域と電荷蓄積領域との間で低い導電率を有するようにバイアスされてもよく、それにより、排除期間中に電荷キャリアが電荷蓄積領域に転送または蓄積されないようにする。
【0145】
排除期間に続いて、収集期間が生じてもよく、収集期間では、入射光子に応答して生成された電荷キャリアが1つ以上の電荷蓄積領域に転送される。収集期間中、入射光子は蛍光放出光子を含むことができ、電荷蓄積領域(複数可)における蛍光放出電荷キャリアの蓄積をもたらす。例えば、電荷蓄積領域のうちの1つのための転送ゲートは、光検出領域と電荷蓄積領域との間で高い導電性を有するようにバイアスされてもよく、電荷蓄積領域における電荷キャリアの蓄積を容易にする。光検出領域に結合された任意のドレインゲートは、収集期間中に電荷キャリアが廃棄されないように、光検出領域とドレイン領域との間で低い導電率を有するようにバイアスされ得る。
【0146】
いくつかの実施形態において、第2の排除期間および第1の排除期間および収集期間に続く第2の排除期間など、収集シーケンスにおいて複数の拒絶期間および/または収集期間を含むことができ、拒絶期間および収集期間の各対は、励起光のパルスに応答して行われる。一例では、収集シーケンスの各収集期間中に(例えば、励起光の複数のパルスに応答して)光検出領域において生成された電荷キャリアは、単一の電荷蓄積領域に集約され得る。いくつかの実施形態において、電荷蓄積領域に集められた電荷キャリアは、次の収集シーケンスの前に処理のために読み出されてもよい。代替的または付随的に、いくつかの実施形態において、第1の収集シーケンス中に第1の電荷蓄積領域に集められた電荷キャリアは、第1の電荷蓄積領域に順次結合された第2の電荷蓄積領域に転送され、次の収集シーケンスと同時に読み出されてもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上のピクセルから電荷キャリアを読み出すように構成された処理回路は、ルミネセンス強度情報、ルミネセンス寿命情報、ルミネセンススペクトル情報、および/または本明細書に記載の技術を実施することに関連付けられたルミネセンス情報の任意の他のモードのうちの1つ以上を決定するように構成され得る。
【0147】
いくつかの実施形態において、第1の収集シーケンスは、各励起パルスに続く第1の時間に、励起パルスに応答して光検出応答において生成された電荷キャリアを電荷蓄積領域に転送することを含んでもよく、第2の収集シーケンスは、各励起パルスに続く第2の時間に、励起パルスに応答して光検出応答において生成された電荷キャリアを電荷蓄積領域に転送することを含んでもよい。例えば、第1および第2の時間の後に集められた電荷キャリアの数は、受け取られた光の輝度寿命情報を示すことができる。
【0148】
本明細書でさらに説明されるように、集積デバイスのピクセルは、集積回路の制御回路からの1つ以上の制御シグナルを使用して、例えば、集積回路のピクセルのドレインおよび/または転送ゲートに制御シグナルを提供することによって、1つ以上の収集シーケンスを実行するように制御され得る。いくつかの実施形態において、電荷キャリアは、処理のために、各ピクセルおよび/またはピクセルの行もしくは列に関連付けられたリードアウトピクセル中に、各ピクセルのFD領域から読み出され得る。いくつかの実施形態において、ピクセルのFD領域は、相関二重サンプリング(CDS)技術を使用して読み出され得る。
【実施例】
【0149】
実施例1:多重化のための手段としてのバーコード認識
単一分子バーコード認識実験を実施して、単一反応チャンバ内で複数の異なるバーコードを識別する可能性を調べた。
図7Aは、実験が行われた一般的なプロセスを示す。示されるように、DNAバーコード複合体は、ストレプトアビジン連結基を介して反応チャンバ表面に固定化される。バーコード化分子は、一本鎖DNAバーコード領域、ハイブリダイズした鎖によって形成される二本鎖領域、およびビス-ビオチン部分を含む。バーコード化分子のビス-ビオチン部分はストレプトアビジンによって結合され、ストレプトアビジンはさらに、表面上のビオチン部分に結合される。バーコードに相補的な配列を含有する標識オリゴヌクレオチドプローブを導入し、固定化DNAバーコードへのプローブのハイブリダイゼーションを検出する。
【0150】
図7Aには、これらの実験で使用した標識オリゴヌクレオチドプローブの1つの一般的な描写も示されている。標識オリゴヌクレオチドプローブ(Tris-ATRho6GDNA)は、DNAバーコードに相補的な一本鎖領域を含み、この一本鎖領域は、ストレプトアビジン連結基を介して、3コピーの蛍光色素(ATTORho6G)を有する二本鎖DNAに結合している。
【0151】
第1組の実験では、2つの異なる標識オリゴヌクレオチドプローブを、反応チャンバ表面に固定化された2つの異なるバーコードを有する単一反応チャンバに導入し、バーコードとプローブとの間のハイブリダイゼーション事象を24時間にわたってモニターした。
図7Bは、これらの実験中に得られた例示的な単一分子強度トレースを示す。示されるように、一連のハイブリダイゼーション事象は、強度トレースにおいて検出される一連のシグナルパルスを生じる。各強度トレースの右側に示されているのは、対応するシグナルパルスデータから生成された強度対寿命のプロットである。
【0152】
第2組の実験では、3つの異なる標識オリゴヌクレオチドプローブを、反応チャンバ表面に固定化された3つの異なるバーコードを有する単一反応チャンバに導入し、バーコードとプローブとの間のハイブリダイゼーション事象をモニターした。
図7Cは、これらの実験中に得られた例示的な単一分子強度トレースを示す。各強度トレースの右側に示されているのは、対応するシグナルパルスデータから生成された強度対寿命のプロットである。
図7Dは、3つのバーコードを使用する代表的な実験から生成された強度対寿命のプロットである。
【0153】
図7Bおよび7Cに示される強度トレースおよびプロットは、異なるバーコードが、シグナルパルスパターンおよび/または発光特性(寿命、強度)における差異に基づいて区別され得ることを実証した。例えば、
図7Dに示されるように、3つの異なるバーコードの各々は、強度対寿命のプロットにおいて観察される異なるクラスターに対応し、3つのバーコードが個々に識別可能であることを可能にする。したがって、これらの実験結果は、バーコードがDNAハイブリダイゼーションを介してオンチップパルシングを生成すること、およびバーコードが、動的ペプチド配列決定反応中のアミノ酸認識に類似した寿命および動的パルス特性を示し、バーコード認識およびペプチド配列決定のための同様の分析を可能にすることを確認した。
【0154】
実施例2:バーコード認識およびポリペプチド配列決定
単一分子認識実験を行って、単一反応チャンバ内でバーコード認識およびポリペプチド配列決定を行う可能性を調べた。
図8は、アミノ酸認識によるポリペプチド配列決定の前にバーコード認識が行われる一般的なプロセスを示す。示されるように、バーコード化ポリペプチドは、ストレプトアビジン連結基を介して反応チャンバ表面に固定化され、バーコード認識は、標識オリゴヌクレオチドプローブを使用して行われる。バーコード認識が完了すると、バーコードに相補的な非標識オリゴヌクレオチドの添加は、任意のさらなるバーコード認識を阻害する。このステップの後に、本明細書中に記載されるアミノ酸認識によるポリペプチド配列決定が続く。
【0155】
これらの研究では、バーコード化ポリペプチドを単一分子反応チャンバの表面に固定化した。第1組の実験では、バーコードに相補的な標識オリゴヌクレオチドプローブを反応チャンバに導入し、バーコード認識データを得た(
図9A、左パネル)。オリゴヌクレオチドプローブを3コピーのATTORho6G色素で標識した。第2組の実験では、標識末端アミノ酸結合タンパク質を反応チャンバに導入し、アミノ酸認識データを得た(
図9A、右パネル)。末端アミノ酸結合タンパク質を4コピーのCy3色素で標識した。第3組の実験では、標識オリゴヌクレオチドプローブおよび標識アミノ酸結合タンパク質の両方を反応チャンバに導入し、認識データを得た(
図9B)。3組の実験からのデータを用いて、寿命測定値(ビン比)の分布を示すプロットを作成した(
図9C)。
【0156】
これらの実験結果は、バーコードおよびアミノ酸の同時認識が、バーコード化ポリペプチドについて観察され得(
図9B)、寿命および強度データが個々のパラメータと一致する(
図9A~9C)ことを確認した。結果はさらに、バーコードおよびアミノ酸認識が、
図8に示されるワークフローに従って連続的に行われ得ること、またはバーコードおよびアミノ酸認識が同時に行われ得ることを示した。この実施例において、オリゴヌクレオチドプローブおよびアミノ酸結合タンパク質を、寿命の区別を可能にする異なる色素セットで標識した。
【0157】
さらなる実験を実施して、ポリペプチド配列決定反応において使用されるポリペプチド分解条件下でのバーコードおよびアミノ酸認識の可能性を調べた。
以前の研究と同様に、バーコード化ポリペプチドを単一分子反応チャンバの表面に固定化した。
図8に示す連続的ワークフローに従って、標識オリゴヌクレオチドプローブ(100nM)を反応チャンバに導入し、バーコード認識データを得た(
図10A)。次に、バーコードに相補的な非標識オリゴヌクレオチド(100nM)を導入したところ、バーコードと標識プローブとの間の検出可能なハイブリダイゼーション事象が減少した(
図10B)。次いで、標識された末端アミノ酸結合タンパク質(50nM)を導入し、アミノ酸認識データを得た(
図10C)。最後に、切断剤(40μMのPfuTET、3μMのhTET)を導入したところ、標識された末端アミノ酸結合タンパク質とポリペプチドとの間の検出できる結合事象が減少した(
図10D)。
【0158】
同様の実験を、単一の反応チャンバの表面に固定化された2つの異なるバーコード化ポリペプチドを使用して実施し、ここで、異なる標識オリゴヌクレオチドプローブおよび異なる標識末端アミノ酸結合タンパク質を反応チャンバに導入した。
図10E~10Fは、2つのバーコード化ポリペプチドの異なるバーコード(
図10E)および末端アミノ酸(
図10F)が認識によって識別可能であったことを確認するデータを示す。
図10Gは、N末端アミノ酸を除去する切断試薬の添加が、アミノ酸認識を排除することを示す。
【0159】
これらの実験結果は、寿命が異なる(lifetime-differentiated)オリゴヌクレオチドプローブおよびアミノ酸結合タンパク質を使用して、複数の異なるバーコードおよびポリペプチドを同時に認識する能力を実証した。切断剤(cutter)の添加後のシグナルの喪失を通して、結果は、N末端アミノ酸の除去によって動的に配列決定されるバーコード化ポリペプチドの能力をさらに実証した。
【0160】
図11は、2つの異なるバーコードのバーコード認識を含む単一分子実験において得られたデータを示し、異なる動的パルス特性が、1つのバーコードを別のバーコードから区別するために使用され得ることを示す。この例では、固有の配列を有する2つのバーコードは、パルス持続時間、パルス間持続時間、およびパルスSNRの異なるプロファイルを示し、これらは、別個の寿命(ビン比)特性を有する色素セットを使用する必要なく、一方を他方から区別するために使用することができる。
【0161】
実施例3:ハイブリダイゼーションによるバーコードの読み出し
コンビナトリアルバーコードは、
図12Aに示すように、インデックス配列をライゲーションして、ハイブリダイゼーション配列を有するバリアントバーコードを生成することによって生成される。バリアントバーコード化分子は、ストレプトアビジンでコーティングされたスライドに添加され、ここで、バーコード化分子は、ストレプトアビジンに付着した捕捉オリゴヌクレオチドに結合するハイブリダイゼーション配列を介して表面に固定化される(
図12B)。固定化されたバーコード化分子を、インデックス配列に結合する標識オリゴヌクレオチドプローブと接触させ、これらの結合事象を一連のシグナルパルスとして検出する。12Bにも示されるように、観察されたシグナルパルスにおけるパターンは、オリゴヌクレオチドプローブの長さに依存して変化する。
【0162】
図12Cは、バーコード認識アッセイについての例示的なワークフローを示し、これは、アッセイの過程にわたって異なる時点で異なるオリゴヌクレオチドプローブを洗浄する反復工程を含む。このアプローチにおいて、色および速度論の両方に基づいてプローブを区別することによって、インデックスあたり16の配列、または65536のバリアントを有することが可能である。
図12Dは、並行して行われた認識アッセイのオンチップイメージングを示す(上の画像において強調された領域は、下の画像において拡大されて示されている)。
図12Eは、結合頻度(binding frequency)(上)およびτ
on(下)を評価するプロットを示す。
【0163】
実施例4:単一分子スクリーニング
単一分子スクリーニング技術は、超高スループットの選択と低スループッのト二次スクリーニングとの間のギャップを埋めるものであり、高スループット(ナノフォトニックチップ上で10
5)および正確な表現型特徴付けを有する中間の根拠を提供する。バリアントバーコードは、インビトロ転写/翻訳から得られる産物が分析のためのバリアントバーコードを含有する抗体スクリーニングアッセイにおいて使用されるコード構築物に含まれる(
図13A)。
図13Bに示すように、蛍光プローブを使用して、結合速度論を用いてバリアントバーコードを調べ(上)、抗体/抗原スクリーニングは、同様に単一分子速度論に基づく(下)。
図13Cは、指向進化スクリーニングアプローチのための例示的ワークフローを示す。
【0164】
均等物および範囲
請求項では、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、相反する指示がない限りまたはとくに文脈から自明でない限り、1つまたは2つ以上を意味し得る。グループの1つ以上のメンバー間に「or(または)」を含む請求項または説明は、相反する指示がない限りまたはとくに文脈から自明でない限り、グループメンバーの1つ、2つ以上、またはすべてが所与のプロダクトまたはプロセスに存在するか、利用されるか、または他の形で関連する場合、満足されるとみなされる。本発明は、グループの厳密に1つのメンバーが所与のプロダクトまたはプロセスに存在するか、利用されるか、または他の形で関連する実施形態を含む。本発明は、グループメンバーの2つ以上またはすべてが所与のプロダクトまたはプロセスに存在するか、利用されるか、または他の形で関連する実施形態を含む。
【0165】
さらに、本発明は、列挙された請求項の1つ以上から他の請求項に1つ以上の限定、要素、文節、および記述語が導入された、変形形態、組合せ形態、および入替え形態をすべて包含する。たとえば、他の請求項に依存するいずれかの請求項は、同一基本請求項に依存するいずれかの他の請求項に見いだされる1つ以上の限定を含むように修正可能である。要素がリストとして、たとえば、マーカッシュグループ形式で提示された場合、要素の各サブグループもまた開示され、且つ任意の要素をグループから除外可能である。一般に、本発明または本発明の態様が、特定の要素および/または特徴を含んで参照される場合、本発明の特定の実施形態または本発明の態様は、そのような要素および/または特徴からなるかまたは本質的にそれらからなると理解されるべきである。簡単にするために、それらの実施形態は、本明細書では、とくにこの通りの言葉で明記されていない。
【0166】
本明細書および特許請求の範囲で用いられる「and/or(および/または)」という語句は、そのように結合された要素の「一方または両方」、すなわち、いくつかの場合には連結して存在し且つ他の場合には分離して存在する要素を意味するものと理解すべきである。「and/or(および/または)」を用いて列挙された複数の要素は、同様に解釈されるべきである。すなわち、要素の「1つ以上」は、そのように結合される。任意選択的に、具体的に特定された要素に関連するかしないかにかかわらず、「and/or(および/または)」という句により具体的に特定された以外の他の要素が存在していてもよい。したがって、たとえば、「Aおよび/またはB」という参照語は、「comprising(~を含む)」などのオープンエンドの言語と組み合わせて用いられる場合、一実施形態において、Aのみ(任意選択的にB以外の要素を含めて)、他の実施形態において、Aのみ(任意選択的にA以外の要素を含めて)、さらに他の実施形態において、AおよびBの両方(任意選択的に他の要素を含む)などを意味し得る。
【0167】
本明細書および特許請求の範囲で用いられる場合、「or(または)」は、以上に定義された「and/or(および/または)」と同一の意味を有するものと理解すべきである。たとえば、リスト中の分離したアイテムの場合、「or(または)」または「and/or(および/または)」は、包括的なものと解釈されるものとする。すなわち、少なくとも1つを含むが、それだけでなく、いくつかの要素または列挙された要素の2つ以上も含まれ、任意選択的に、追加の列挙されていないアイテムも含まれる。明らかに相反する指定がされている用語、たとえば、「onlyoneof(~のうちの1つのみ)」または「exactlyoneof(~のうちの厳密に1つ)」または特許請求の範囲で用いられる場合の「consistingof(~からなる)」は、いくつかの要素または列挙された要素のうち厳密に1つの要素の包含を意味するであろう。一般的には、本明細書で用いられる「or(または)」という用語は、「either(いずれか一方)」、「oneof(~の1つ)」、「onlyoneof(~のうちの1つのみ)」、または「exactlyoneof(~のうちの厳密に1つ)」などのように排他性の用語が先行する場合、排他的代替物(すなわち「一方または他方ただし両方ではない」)を表すとのみ解釈されるものとする。特許請求の範囲で用いられる「consistingessentiallyof(~から本質的になる)」は、特許法の分野で用いられるその通常の意味を有するものとする。
【0168】
本明細書および特許請求の範囲で用いられる場合、1つ以上の要素のリストを参照する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト中の任意の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解すべきであるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的に列挙されたあらゆる要素の少なくともの1つを含むとは限らず、要素のリスト中の要素の任意の組合せが除外されるとは限らない。また、この定義では、具体的に特定された要素に関連するかしないかにかかわらず、「少なくとも1つ」という語句が参照する要素のリスト内に具体的に特定された要素以外の要素が、任意選択的に存在してもよいことも許容される。そのため、限定されるものではないが例として、「atleastoneofAandB(AおよびBの少なくとも1つ)」(または等価的に「atleastoneofAorB(AまたはBの少なくとも1つ)」または等価的に「atleastoneofAand/orB(Aおよび/またはBの少なくとも1つ)」)は、一実施形態において、Bが存在せずに(任意選択的にB以外の要素を含めて)、任意選択的に2つ以上のAを含めて、少なくとも1つのA、他の実施形態において、Aは存在せずに(任意選択的にA以外の要素を含めて)、任意選択的に2つ以上のBを含めて、少なくとも1つのB、さらに他の実施形態において、任意選択的に2つ以上のAを含めて、少なくとも1つのA、および任意選択的に2つ以上のBを含めて、少なくとも1つのB(任意選択的に他の要素を含めて)などを意味し得る。
【0169】
また、明らかに相反する指定がされていない限り、2つ以上の工程または行為を含む本明細書に特許請求されたいずれの方法でも、方法の工程または行為の順序は、方法の工程または行為が挙げられた順序に必ずしも限定されるとは限らないことを理解すべきである。
【0170】
特許請求の範囲では、以上の明細書の場合と同様に、「comprising(~を含む)」、「including(~を含む)」、「carrying(~を担持する)」、「having(~を有する)」、「containing(~を含有する)」、「~を含む(involving)」、「~を保持する(holding)」、「composedof(~で構成される)」などの移行句はすべて、オープンエンドであることを理解すべきである。「consistingof(~からなる)」および「consistingessentiallyof(~から本質的になる)」という移行句だけは、米国特許庁特許審査手順マニュアル(UnitedStatesPatentOfficeManualofPatentExaminingProcedures)のセクション2111.03に示されるように、それぞれ、クローズまたはセミクローズの移行句であるものとする。オープンエンドの移行句(たとえば、「comprising(~を含む)」)を用いた本文書に記載の実施形態は、代替実施形態において、オープンエンドの移行句により記載される特徴について「consistingof(~からなる)」および「consistingessentiallyof(~から本質的になる)」として企図されることが認識されるべきである。たとえば、適用が「AとBとを含む組成物」を記載する場合、適用はまた、代替実施形態の「AとBとからなる組成物」および「AとBとから本質的になる組成物」も企図する。
【0171】
範囲が与えられる場合、端点が含まれている。さらに、とくに指定がないかぎりまたはとくに文脈および当業者の理解から自明でないかぎり、範囲として表現された値は、文脈上明らかに異なる場合を除いて、範囲の下限の1/10単位まで、本発明のさまざまな実施形態で指定の範囲内の任意の特定の値または部分範囲を仮定し得る。
【0172】
本出願では、さまざまな発行特許、公開特許出願、雑誌論文、および他の出版物(それらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)が参照される。組み込まれた参照のいずれかと本明細書との間で矛盾がある場合、本明細書が優先するものとする。それに加えて、先行技術に包含される本発明の特定の実施形態はいずれも、請求項の任意の1項以上から明示的に除外され得る。そのような実施形態は、当業者に公知であるとみなされるので、たとえ本明細書で明示的に除外が明記されていないとしても、それらは除外され得る。先行技術の存在に関係するかしないかにかかわらず、任意の理由で、本発明の任意の特定の実施形態を任意の請求項から除外し得る。
【0173】
当業者であれば、通常の実験の域を出ることなく、本明細書で説明した特定の実施形態に対する多くの等価形態が分かるであろう。またはそれらを確認できるであろう。本明細書に記載の実施形態の範囲は、以上の説明に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に明記される通りである。以下の特許請求の範囲に規定される本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、本明細書に各種変更および修正を加え得ることは当業者であれば分かるであろう。
【0174】
本明細書の変数のいずれかの定義での化学基のリストの列挙は、列挙された基のいずれかの単一基または組合せとしてのその変数の定義を含む。本明細書の変数に対する実施形態の列挙は、いずれかの単一実施形態またはいずれかの他の実施形態若しくはその一部分との組合せとしての実施形態を含む。本明細書の実施形態の列挙は、いずれかの単一実施形態またはいずれかの他の実施形態若しくはその一部分との組合せとして実施形態を含む。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】