(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】中耳疾病の磁気治療用の医療用カート
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
A61M37/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536331
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 US2021072938
(87)【国際公開番号】W WO2022133459
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520152766
【氏名又は名称】オトマグネティクス,インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】19 Firstfield Road #200,Gaithersburg,MD 20878 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャピロ,ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA80
4C267BB40
4C267BB44
4C267BB56
4C267CC14
4C267EE01
4C267GG16
(57)【要約】
外耳道を介して患者に磁気剤を投与するための医療用カート(350)が開示される。本医療用カートは、磁気剤を患者の耳の中耳空間に導くように構成される磁石アセンブリアレイ(336)を備えている。磁石アセンブリはさらに、磁気剤を第2の投与が行われる耳に導き、重力に対抗して磁気剤を第1の投与が行われる耳に保持させる磁力を発生させるように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気剤送達カートであって、
上側ベッドプラットフォームと、
前記上側ベッドプラットフォームの下に位置付けられる磁気アセンブリであって、前記上側ベッドプラットフォームの長手方向軸の下の中心に置かれ、前記磁気剤送達カートの近位端に位置合わせされる、磁気アセンブリと、
前記磁気アセンブリを隠すように構成される1つまたは複数の側部整形部であって、取り外し可能である側部整形部と、
前記上側ベッドプラットフォームの上部に位置付けられるとともに前記磁石アセンブリの中心より上に位置するヘッドレストであって、該ヘッドレストは、
第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部であって、前記第1の頭部輪郭部は、第1の投与位置にある患者に対して構成され、前記第2の頭部輪郭部は、第2の投与位置にある患者に対して構成される、第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部、ならびに
前記第1の投与位置、前記第2の投与位置、および前記磁石アセンブリの位置に従って構成される位置合わせグリッドであって、前記第1の投与位置にある患者の矢状面に対応する第1の位置垂直線、前記第2の投与位置にある患者の矢状面に対応する第2の位置垂直線、および前記患者の眼に沿った横断面に対応する水平線を備える位置合わせグリッド
をさらに備えるヘッドレストと
を備えている磁気剤送達カート。
【請求項2】
前記磁気アセンブリが、複数の磁石ピラーの磁石アレイを備えており、前記複数の磁石ピラーが、所定数の行および列を有する行および列グリッド構造に位置している、請求項1に記載の磁気剤送達カート。
【請求項3】
前記所定数の行および列が、磁気治療剤に加えられる複数の磁力に基づき決定される、請求項2に記載の磁気剤送達カート。
【請求項4】
第1の磁力が、前記第1の投与位置にある右耳に基づいており、第2の磁力が、前記第1の投与位置にある左耳に基づいており、第3の磁力が、前記第2の投与位置にある右耳に基づいており、第4の磁力が、前記第2の投与位置にある左耳に基づいている、請求項3に記載の磁気剤送達カート。
【請求項5】
前記複数の磁石ピラーのそれぞれが、複数の磁気ディスクをさらに備えており、該複数の磁気ディスクは、互いに結合されており、同じ方向に磁化される、請求項2から4のいずれか一項に記載の磁気剤送達カート。
【請求項6】
前記複数の磁石ピラーのそれぞれが、同数のディスクを備えている、請求項5に記載の磁気剤送達カート。
【請求項7】
患者固定ハーネスと、
適所にロックされるようにブレーキを備える1つまたは複数のキャスタと、
第1の保管位置から第2の位置へと折り畳まれるように構成される1つまたは複数のカンチレバーレッグであって、前記第2の位置は前記磁気剤送達カートを適所に固定する、カンチレバーレッグと
をさらに備えている、請求項1から6のいずれか一項に記載の磁気剤送達カート。
【請求項8】
前記ヘッドレストが、前記磁石アセンブリに従って前記ヘッドレストを位置決めまたは取り付けるように構成される1つまたは複数の位置合わせマーキングをさらに備えている、請求項1から7のいずれか一項に記載の磁気剤送達カート。
【請求項9】
前記ヘッドレストが、取り外し可能であり、かつ様々な頭部直径に輪郭が適合する複数のヘッドレストから選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の磁気剤送達カート。
【請求項10】
外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステムであって、
治療薬に付着された磁気ナノ粒子を含む磁気治療剤と、
医療用カートであって、
上側ベッドプラットフォーム、
前記上側ベッドプラットフォームの下に位置付けられる磁気アセンブリであって、前記上側ベッドプラットフォームの長手方向軸の下の中心に置かれ、前記磁気剤送達カートの近位端に位置合わせされる、磁気アセンブリ、
前記磁気アセンブリを隠すように構成される1つまたは複数の側部整形部であって、取り外し可能である側部整形部、
前記上側ベッドプラットフォームの上部に位置付けられるとともに前記磁石アセンブリの中心より上に位置するヘッドレストであって、該ヘッドレストは、
第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部であって、前記第1の頭部輪郭部は、第1の投与位置にある患者に対して構成され、前記第2の頭部輪郭部は、第2の投与位置にある患者に対して構成される、第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部、ならびに
前記第1の投与位置、前記第2の投与位置、および前記磁石アセンブリの位置に従って構成される位置合わせグリッドであって、前記第1の投与位置にある患者の矢状面に対応する第1の位置垂直線、前記第2の投与位置にある患者の矢状面に対応する第2の位置垂直線、および前記患者の眼に沿った横断面に対応する水平線を備える位置合わせグリッド
をさらに備えるヘッドレスト
を備える医療用カートと
を備えている、外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【請求項11】
前記磁気アセンブリが、複数の磁石ピラーの磁石アレイを備えており、前記複数の磁石ピラーが、所定数の行および列を有する行および列グリッド構造に位置している、請求項10に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【請求項12】
前記所定数の行および列が、前記磁気治療剤に加えられる複数の磁力に基づき決定される、請求項11に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【請求項13】
第1の磁力が、前記第1の投与位置にある右耳に基づいており、第2の磁力が、前記第1の投与位置にある左耳に基づいており、第3の磁力が、前記第2の投与位置にある右耳に基づいており、第4の磁力が、前記第2の投与位置にある左耳に基づいている、請求項12に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【請求項14】
前記複数の磁石ピラーのそれぞれが、複数の磁気ディスクをさらに備えており、該複数の磁気ディスクは、互いに結合されており、同じ方向に磁化される、請求項10から13のいずれか一項に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【請求項15】
前記複数の磁石ピラーのそれぞれが、同数のディスクを備えている、請求項14に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【請求項16】
患者固定ハーネスと、
適所にロックされるようにブレーキを備える1つまたは複数のキャスタと、
第1の保管位置から第2の位置へと折り畳まれるように構成される1つまたは複数のカンチレバーレッグであって、前記第2の位置は前記磁気剤送達カートを適所に固定する、カンチレバーレッグと
をさらに備えている、請求項10から15のいずれか一項に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【請求項17】
前記ヘッドレストが、前記磁石アセンブリに従って前記ヘッドレストを位置決めまたは取り付けるように構成される1つまたは複数の位置合わせマーキングをさらに備えている、請求項10から16のいずれか一項に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【請求項18】
前記ヘッドレストが、取り外し可能であり、かつ様々な頭部直径に輪郭が適合する複数のヘッドレストから選択される、請求項10から17のいずれか一項に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【請求項19】
外耳道を介して患者に磁気剤を送達するための方法であって、
患者を第1の投与位置で医療用カート上に配置決めする工程であって、前記医療用カートが、磁石アセンブリおよびヘッドレストを備えており、該ヘッドレストが、第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部を備えており、前記ヘッドレストが、水平位置合わせ線、第1の位置垂直位置合わせ線、および第2の位置垂直位置合わせ線を備えている、工程と、
前記患者の鼻梁を第1の垂直位置インジケータと位置合わせする工程と、
前記患者の眼を水平面で水平位置インジケータと位置合わせする工程と、
第1の投与が行われる耳が水平面より上にあるように前記患者の頭部を回転させる工程と、
磁気治療剤を前記第1の投与が行われる耳に投与する工程と、
前記磁石アセンブリによって前記患者の第1の耳の中耳空間に磁気治療剤を押し込む工程と、
前記患者を前記医療用カート上で第2の投与位置に再び位置決めする工程と、
前記患者の鼻梁を第2の垂直位置インジケータと位置合わせする工程と、
前記患者の眼を水平面で水平位置インジケータと位置合わせする工程と、
第2の投与が行われる耳が水平面より上にあるように前記患者の頭部を回転させる工程と、
前記磁気治療剤を前記第2の投与が行われる耳に投与する工程と、
前記磁石アセンブリによって前記患者の第2の耳の中耳空間に前記磁気治療剤を押し込む工程と、
前記磁石アセンブリにより前記磁気治療剤を、前記患者の第2の耳の前記中耳空間に残るように前記第1の投与が行われる耳に押し込む工程と
を含む方法。
【請求項20】
外耳道を介して患者に磁気剤を送達するための方法であって、
患者の頭部の直径に基づき前記患者の頭部に適合するヘッドレストを決定する工程であって、前記ヘッドレストが、第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部を備えており、前記ヘッドレストが、水平位置合わせ線、第1の位置垂直位置合わせ線、および第2の位置垂直位置合わせ線を備えている、工程と、
磁石アセンブリに相対的な1つまたは複数の位置合わせマーカに基づき前記ヘッドレストを医療用カート上で位置合わせする工程と、
前記患者を前記医療用カート上で第1の投与位置に位置決めする工程であって、前記医療用カートが、磁石アセンブリおよび前記ヘッドレストを備えている、工程と、
前記患者の鼻梁を第1の垂直位置インジケータと位置合わせする工程と、
前記患者の眼を水平面で水平位置インジケータと位置合わせする工程と、
第1の投与が行われる耳が水平面より上にあるように前記患者の頭部を回転させる工程と、
磁気治療剤を前記第1の投与が行われる耳に投与する工程と、
前記磁石アセンブリによって前記患者の第1の耳の中耳空間に磁気治療剤を押し込む工程と、
前記患者を前記医療用カート上で第2の投与位置に再び位置決めする工程と、
前記患者の鼻梁を第2の垂直位置インジケータと位置合わせする工程と、
前記患者の眼を水平面で水平位置インジケータと位置合わせする工程と、
第2の投与が行われる耳が水平面より上にあるように前記患者の頭部を回転させる工程と、
前記磁気治療剤を前記第2の投与が行われる耳に投与する工程と、
前記磁石アセンブリによって前記患者の第2の耳の中耳空間に前記磁気治療剤を押し込む工程と、
前記磁石アセンブリにより前記磁気治療剤を、前記患者の第2の耳の前記中耳空間に残るように前記第1の投与が行われる耳に押し込む工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2020年12月15日出願の「MEDICAL CART FOR MAGNETIC TREATMENT」と題された米国特許仮出願第63/125,825号に基づく優先権を主張し、その開示は、その全体を参照することにより本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
本開示は、磁気治療薬を投与するための医療用カートまたはベッドを対象とする。患者の身体内の身体標的に治療薬(例えば、薬物、タンパク質、または遺伝子)を磁気送達するには、治療薬を運ぶ磁気ナノ粒子に対する磁力を、特定の方向に位置決めさせる必要がある。具体的に、磁力は、最初に(例えば、点滴器、シリンジ、ピペットにより、ゲルもしくは綿棒を介して、または他の方法により)配される場所から磁気ナノ粒子を所望の標的に送達する必要がある。例えば、患者の中耳感染症を治療する状況では、磁気ナノ粒子は、臨床医が点滴器によって外耳(外耳道)内に配することができ、その後、磁力が粒子を押し込んで、外耳から鼓膜(鼓膜)を通り中耳空間内へと運ぶ。磁力は、外耳から中耳までの方向を向くように構成される。これらの特定の方向に磁力を発生させるのに、磁石は、得られる磁力の配向が、患者の解剖学的構造と、投与位置から領域治療の標的位置までの方向との両方に一致するように構成されねばならない。
【0003】
さらに磁場は、治療ペイロードを有する磁気ナノ粒子を投与位置から介在組織を通って所望の標的位置へと移動させるほど強力でなければならない。例えば、投与位置は外耳であってもよく、そこで薬剤は鼓膜を通って導かれ、中耳空間などの所望の標的位置に到達する。本例では、介在組織は強力な障壁であり(皮膚と同様、鼓膜は人体の保護バリアである)、組織障壁を通過するのに強力な磁力を必要とする。加えて、磁石からナノ粒子までの距離は相当なものである場合があり(外耳から中耳まで正確に位置合わせするのに十分な引張力を磁気が生み出すには、磁石を頭部の後ろに配する必要がある)、そのため磁石は、この種の力を発生させるために相当なサイズの場合がある(例えば、少なくとも頭部の幅である)。強力な磁力は強力な磁石を必要とし得るため、より大きな磁石、または複数の磁石の大型アセンブリが、そのような強力な力を提供し得る。しかし、大きな磁石は重いため、強力かつ重い磁石または磁石アセンブリを安全かつ便利に収容可能なデバイスまたはシステムを提供することが望ましい場合がある。本明細書に開示されるように、磁石または磁石アセンブリをカートに閉じ込めることが、可能な解決策である。
【0004】
さらに、患者の配向および磁気粒子に対する磁力の方向は、解剖学的構造および物理学の両方に基づき、その他の制約に対処することが必要な場合がある。具体的に、中耳感染症を治療する状況では、磁気ナノ粒子は、液体製剤を形成するために液体溶液に入れられる場合がある。その製剤は、点滴器を介して液体として外耳に投与される場合がある。磁気転写による治療中、液体溶液は外耳内に留まる必要がある。このため、患者の頭部は、重力によって磁力の印加中に磁気ナノ粒子の液体製剤が外耳道から漏出しないように配向されねばならない。さらに、磁気粒子は、重力により鼓膜(ear drum)(鼓膜(tympanic membrane))に押し付けられることが望ましい場合もある(耳をワックスで塞ぐことでは、このような目的を達成できない)。このような必要性により、患者をどのように配向してよいかに関する制約が生じ、具体的に、患者の頭部は、外耳道が下向き(この場合、液体が外耳道から排出されてしまう)にならないように配向されねばならない。
【0005】
加えて、治療薬を投与する医師または臨床医による使用を容易にするのに、患者の快適さが重要である。これによりさらに、患者をどのように配置してよいか、臨床医がどのように患者に接近するかについて制約と制限が生じ、それによりシステム設計に影響が及ぶ。具体的に、本明細書には、患者にとって快適であり、臨床医による使用が容易であり、かつ治療薬を磁気送達する必要性を満たすように構成された医療用カートが開示される。
【0006】
加えて、中耳感染症を治療する場合、一般的には両耳を治療しなければならない。1回のセッションで両耳を治療できることが望ましい。患者の左耳が最初に治療されると仮定する。これは、以下に開示されるカートが、左耳道内に配された磁気粒子に磁力を印加することで、磁気粒子を左鼓膜(左鼓膜)に通して左中耳空間へ移動させることを意味する。次に、右耳を治療する。右耳の治療中に印加される磁力は、左中耳から磁気粒子を引き戻すように作用してはならない(すなわち、完了したばかりの左耳の治療を部分的にも元に戻すように作用してはならない)。これにより、患者が治療されているときに磁気粒子に印加され得る磁力の方向に対してさらに別の制約が課されてしまう。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、患者の中耳空間に治療薬を磁気送達するためのシステムと方法を提供する。本発明が開示するカートシステムは、患者の頭部の位置合わせ、および磁力の位置合わせを可能にし、そうすることでこれらの磁力によって、外耳から鼓膜を通り中耳空間へと、治療薬(薬物、タンパク質、または遺伝子)を取り付けた磁気ナノ粒子を運ぶことができる。カートに閉じ込められた磁石アセンブリは、十分な磁力を提供するほどの大きさである。さらに、本システムは両耳の治療を可能にし、第2の耳の治療は、先行する第1の耳の治療に干渉しない。本システムは、医師または臨床医によるシステムの有効かつ容易な使用のために、患者に快適さをもたらす。
【0008】
本開示の一態様は、磁気剤送達カートであって、上側ベッドプラットフォームと、上側ベッドプラットフォームの下に位置付けられる磁気アセンブリであって、上側ベッドプラットフォームの長手方向軸の下の中心に置かれ、磁気剤送達カートの近位端に位置合わせされる、磁気アセンブリと、磁気アセンブリを隠すように構成される1つまたは複数の側部整形部であって、取り外し可能である側部整形部と、上側ベッドプラットフォームの上部に位置付けられるとともに磁石アセンブリの中心より上に位置するヘッドレストであって、当該ヘッドレストは、第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部であって、第1の頭部輪郭部は第1の投与位置にある患者に対して構成され、第2の頭部輪郭部は第2の投与位置にある患者に対して構成される、第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部、ならびに、第1の投与位置、第2の投与位置、および磁石アセンブリの位置に従って構成される位置合わせグリッドであって、第1の投与位置にある患者の矢状面に対応する第1の位置垂直線、第2の投与位置にある患者の矢状面に対応する第2の位置垂直線、および患者の眼に沿った横断面に対応する水平線を備える位置合わせグリッドをさらに備えるヘッドレストとを備えている、磁気剤送達カートである。
【0009】
本開示の別の態様は、外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステムであって、治療薬に付着された磁気ナノ粒子を含む磁気治療剤と、医療用カートであって、上側ベッドプラットフォーム、上側ベッドプラットフォームの下に位置付けられる磁気アセンブリであって、上側ベッドプラットフォームの長手方向軸の下の中心に置かれ、磁気剤送達カートの近位端に位置合わせされる、磁気アセンブリ、磁気アセンブリを隠すように構成される1つまたは複数の側部整形部であって、取り外し可能である側部整形部、上側ベッドプラットフォームの上部に位置付けられるとともに磁石アセンブリの中心より上に位置するヘッドレストであって、該ヘッドレストは、第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部であって、第1の頭部輪郭部は第1の投与位置にある患者に対して構成され、第2の頭部輪郭部は第2の投与位置にある患者に対して構成される、第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部、ならびに、第1の投与位置、第2の投与位置、および磁石アセンブリの位置に従って構成される位置合わせグリッドであって、第1の投与位置にある患者の矢状面に対応する第1の位置垂直線、第2の投与位置にある患者の矢状面に対応する第2の位置垂直線、および患者の眼に沿った横断面に対応する水平線を備える位置合わせグリッドをさらに備えるヘッドレストを備える、医療用カートとを備えている、外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステムである。
【0010】
本開示の別の態様は、外耳道を介して患者に磁気剤を送達するための方法であって、患者を医療用カート上で第1の投与位置に位置決めする工程であって、医療用カートが磁石アセンブリおよびヘッドレストを備えており、ヘッドレストが第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部を備えており、ヘッドレストが、水平位置合わせ線、第1の位置垂直位置合わせ線、および第2の位置垂直位置合わせ線を備えている、工程と、患者の鼻梁を第1の垂直位置インジケータと位置合わせする工程と、患者の眼を水平面で水平位置インジケータと位置合わせする工程と、第1の投与が行われる耳が水平面より上にあるように患者の頭部を回転させる工程と、磁気治療剤を第1の投与が行われる耳に投与する工程と、磁石アセンブリによって患者の第1の耳の中耳空間に磁気治療剤を押し込む工程と、患者を医療用カート上で第2の投与位置に再び位置決めする工程と、患者の鼻梁を第2の垂直位置インジケータと位置合わせする工程と、患者の眼を水平面で水平位置インジケータと位置合わせする工程と、第2の投与が行われる耳が水平面より上にあるように患者の頭部を回転させる工程と、磁気治療剤を第2の投与が行われる耳に投与する工程と、磁石アセンブリによって患者の第2の耳の中耳空間に磁気治療剤を押し込む工程と、磁石アセンブリにより磁気治療剤を、患者の第2の耳の中耳空間に残るように第1の投与が行われる耳に押し込む工程とを含む方法である。
【0011】
本開示のまた別の態様は、外耳道を介して患者に磁気剤を送達するための方法であって、患者の頭部の直径に基づき患者の頭部に適合するヘッドレストを決定する工程であって、ヘッドレストが第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部を備えており、ヘッドレストが、水平位置合わせ線、第1の位置垂直位置合わせ線、および第2の位置垂直位置合わせ線を備えている、工程と、磁石アセンブリに相対的な1つまたは複数の位置合わせマーカに基づきヘッドレストを医療用カート上で位置合わせする工程と、第1の投与位置で患者を医療用カート上に位置決めする工程であって、医療用カートが磁石アセンブリおよびヘッドレストを備えている、工程と、患者の鼻梁を第1の垂直位置インジケータと位置合わせする工程と、患者の眼を水平面で水平位置インジケータと位置合わせする工程と、第1の投与が行われる耳が水平面より上にあるように患者の頭部を回転させる工程と、磁気治療剤を第1の投与が行われる耳に投与する工程と、磁石アセンブリによって患者の第1の耳の中耳空間に磁気治療剤を押し込む工程と、患者を医療用カート上で第2の投与位置に再び位置決めする工程と、患者の鼻梁を第2の垂直位置インジケータと位置合わせする工程と、患者の眼を水平面で水平位置インジケータと位置合わせする工程と、第2の投与が行われる耳が水平面より上にあるように患者の頭部を回転させる工程と、磁気治療剤を第2の投与が行われる耳に投与する工程と、磁石アセンブリによって患者の第2の耳の中耳空間に磁気治療剤を押し込む工程と、磁石アセンブリにより磁気治療剤を、患者の第2の耳の中耳空間に残るように第1の投与が行われる耳に押し込む工程とを含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の少なくとも1つの態様による、患者の頭部ならびに左耳および右耳の解剖学的構造の断面図を示す図である。
【
図2】本開示の少なくとも1つの態様による、医療用カート上で第1および第2の薬剤送達位置にある患者の断面図を示す図である。
【
図3】本開示の少なくとも1つの態様による、医療用カートを備える、小児患者に薬剤を投与するためのシステムを示す図である。
【
図4A】本開示の少なくとも1つの態様による、磁気アレイの磁石を備える磁気アセンブリの三次元図および輪郭図を示す図である。
【
図4B】本開示の少なくとも1つの態様による、磁気アレイの磁石を備える磁気アセンブリの三次元図および輪郭図を示す図である。
【
図5A】本開示の少なくとも1つの態様による、ヘッドレストの表面にある透明な位置合わせグリッドを示す図である。
【
図5B】本開示の少なくとも1つの態様による、ヘッドレストの表面にある透明な位置合わせグリッドを示す図である。
【
図5C】本開示の少なくとも1つの態様による、ヘッドレストの表面にある透明な位置合わせグリッドを示す図である。
【
図5D】本開示の少なくとも1つの態様による、ヘッドレストの表面にある透明な位置合わせグリッドを示す図である。
【
図6】本開示の少なくとも1つの態様による、安全バーまたはガードレールを備える医療用カートの平面図を示す図である。
【
図7】本開示の少なくとも1つの態様による、折込みまたは折畳み(folding up or down)が可能なカンチレバーレッグを備える医療用カートの輪郭図を示す図である。
【
図8A】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8B】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8C】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8D】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8E】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8F】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8G】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8H】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8I】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8J】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8K】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8L】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8M】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図8N】本開示の少なくとも1つの態様による、外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を例示する図である。
【
図9】本開示の少なくとも1つの態様による、医療用カート上で患者に磁気治療剤を投与するためのフロー図を示す図である。
【
図10】本開示の少なくとも1つの態様による、医療用カートを構成し、かつ医療用カート上で患者に磁気治療剤を投与するためのフロー図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、磁力を使用して磁気剤を標的位置に押し込むことによって、患者の中耳に影響を及ぼす病状を治療するための医療用カートを記載する。種々の態様では、患者(例えば、小児または成人)は、医療用カートまたはベッドの上に横たわるかまたは座り、磁気剤による医療処置の手技を受ける場合がある。磁気剤は、薬物、タンパク質、または遺伝子などの治療薬が付着した磁気粒子を含んでおり、磁気剤は、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2020/0146995号明細書に開示されるように、磁力によって患者の中耳に導かれる。一態様では、医療用カートは、ベッドプラットフォームと、ヘッドレストと、1つまたは複数のガイドレール(guild rails)と、医師または臨床医による患者の頭部の位置合わせをガイドするための位置合わせグリッドと、患者を快適に保つための他の構成部分(例えば、カバー、クッションなど)とを備えている。医療用カートは、ベッドプラットフォームの下に位置付けられる磁石アセンブリをさらに備えており、磁気粒子を患者の中耳に引き込ませるように構成されている。磁気アレイは、患者に対する威圧的な外観を低減するために、取り外し可能な側部カバーまたは整形部によって隠されてもよい。
【0014】
種々の態様では、医療用カートは、患者の片耳または両耳を治療するように構成され、治療処置中の患者の適合のために最適化される。加えて、医療用カートは、医師または臨床医による有効かつ容易な使用のために設計されており、臨床設定に適合させることができる(安全かつ都合よく使用される、非使用時に収納できるなど)。一態様では、ヘッドレストは、臨床医が患者を医療用カート上に位置決めするようにガイドして、医師または臨床医による磁気治療薬の投与を補助する位置合わせグリッドを備えている。ヘッドレストの形状および位置合わせグリッドの位置は、
図1および
図2に示されるように、磁気アセンブリの位置および近接度に従って、かつ、物理学の原理(例えば、重力または磁力)ならびに左耳および右耳のヒトに対する解剖学的制約を考慮して構成されてもよい。
【0015】
図1は、患者の頭部(102)、ならびに左耳(104)および右耳(106)の解剖学的構造の断面図を示す図である。この断面図は、患者の頭部を上方から下向きに見た図(横断平面図)であり、鼻(108)は上部位置に配向され、頭部(110)の後部は下部位置に配向されている。右外耳道(112)(外耳)の配向角度は、円錐形のマーキングによって示される。右鼓膜(114)(右鼓膜)の配向は、矢印「右鼓膜を通る方向」によって示される。左外耳道の配向(118)および左鼓膜(120)は、点線で表される。
図1は、患者のおおよその、または代表的な解剖学的配向を例示しており、正確な配向は患者ごとに変動し得ることが理解される。
【0016】
図1が例示するこれらの解剖学的特徴は、左耳および右耳への治療剤の投与に最適な患者の位置を決定するために考慮される。治療処置中、磁気治療剤は外耳を介して外耳道に投与され、重力と磁力を組み合わせることで中耳に導かれる。磁気治療剤は、複数の治療用磁気粒子を含んでおり、液体組成物または製剤に入れて点滴器またはシリンジによって外耳を介して投与される場合がある。
【0017】
図2は、医療用カート上の第1および第2の薬剤送達位置にある患者の断面図を例示する図である。第1の位置(222)は、治療薬を患者の右耳に投与することに関連し、第2の位置(224)は、治療薬を患者の左耳に投与することに関連する。第1の位置(222)および第2の位置(224)は、治療薬の液体製剤を重力によって外耳内に留めて漏出しないようにするのに最適である。投与位置(222)(224)は、それぞれの外耳道を、外耳道が下向きの角度を向かないように水平面より上の位置に配向する。ヘッドレスト(226)の形状は、患者の頭部を第1の位置(222)に支持する第1の頭部輪郭部(228)を備えており、それにより患者は第1の位置(222)に快適に留まることができると同時に、磁力および重力が磁気治療薬に作用し、薬剤を中耳に導く。同様に、ヘッドレスト(226)の形状は、患者が自身の頭部を第2の位置(224)に置くための第2の頭部輪郭部(230)を備えている。ヘッドレスト(226)の外形図は、第1の位置(222)および第2の位置(224)で患者の頭部を適所に固定する楔部(232)(234)を縁部に有する正規分布曲線に類似している(例えば、正規分布の1パーセンタイルおよび99パーセンタイル)。ヘッドレスト(226)は、発泡体または非常に堅固な形状記憶発泡体などの高密度の支持材料からなっていてもよい。
【0018】
図2はさらに、磁場を発生させて磁気治療薬に作用する、ヘッドレスト(226)の下に位置付けられる磁石アセンブリ(236)を示す。種々の態様では、磁石アセンブリ(236)は、磁石アセンブリ(236)を患者が見えないようにする取り外し可能な整形部によって覆われてもよい。中耳疾病はあらゆる年齢群に影響を及ぼし得るが、中耳感染症は特に低年齢児において流行している。幼児の場合、親または子供に対し威圧的となり得る他のあらゆる特徴を患者に示すことなく、単純なベッドなど、処置システムを慣れ親しんだものにすることが望ましい。取り外し可能な整形部は、磁気アセンブリを隠し、かつ医療用カートを従来のベッドのように見せるよう構成される。これは、患者のストレスを低減し、かつ患者を容易に置くのに役立ち得る。患者が落ち着いているとき、動きが減少するので、患者の耳が水平面の下に下がる可能性が減少する。これにより最終的に、患者は長期間にわたり最適な送達位置に留まることが可能になり、治療剤が投与を行われた耳から不意に滴り落ちることが防止される。このため、
図2に示すように、磁石アレイ(236)は、ベッドプラットフォーム(238)の下に位置付けられてヘッドレスト(226)の下に位置決めされることで、磁石アレイ(236)は患者に見えなくなる。
【0019】
図2は、磁気アレイ(236)が発生する指向性磁力をさらに示す。磁力(240a)~(240n)は、磁力の方向をさらに示す矢印によって示されている。磁石アセンブリ(236)の位置、サイズ、形状、および磁化は、磁力(240a)(240c)が実質的に患者の鼓膜(ear drum)(鼓膜(tympanic membrane))(214)(220)を通って向くように選択される。例えば、磁力(240a)は右鼓膜(214)を向き、その間に右外耳道配向(212)は水平面より上に留まる。
【0020】
種々の態様では、左右の両耳が、単回投与セッションで治療されてもよい。単回セッションで両耳を治療するには、第1の耳の治療後、第2の耳の治療が、第1の耳に対して完了したばかりの治療を元に戻さないか、または部分的に元に戻さないことが必要である。例えば、患者の右耳(206)は、先ず第1の治療位置(222)で治療され、磁気治療薬が患者の右中耳空間に引き寄せられることを可能にする。次いで、患者の左耳が、右耳の後に続いて治療されてもよい。第2の治療位置(224)で左耳(204)を治療する間、「浮遊」磁力が右耳(206)から磁気粒子を引き寄せないことが必要である。第1の治療位置(222)および第2の治療位置(224)は、磁力(240b)および(240n)が治療歴のある耳の中に磁気治療薬を保持するように特異的に設計される。例えば、患者が第2の治療位置(224)にある場合、右耳(206’)に対する磁力(240n)は、実質的に右鼓膜を通って配向されるが、左耳(240)に対する磁力(240c)も左鼓膜を通って配向され、かつ粒子を左中耳空間から引き戻すように配向されない。
【0021】
さらに、医療用カートが患者の頭部を自然に支持するように構成されることで、頭部が磁気アセンブリによって発生される磁力に従って配向されることが望ましい。このため、本システムは、第1および第2の耳への投与のために、重力および磁力に従って患者の頭部を特異的に位置決めする所定のヘッドレスト形状を開示する。さらに、臨床医が迅速かつ正確に患者の頭部を投与位置に配するのを補助するために、透明の位置合わせグリッドがヘッドレストに可視化されるか、または刻印されてもよい。
【0022】
種々の態様では、ヘッドレストの形状、第1および第2のヘッドレスト輪郭の位置、ならびに位置合わせグリッドの位置は、磁気アセンブリに対する相対位置、および磁気アセンブリが発生する力に従って決定される。したがって、磁気アセンブリは、患者の外耳道内で治療薬に所望の磁力を発生させる(例えば、投与される耳の外耳道が1テスラの力を被る)ように、磁石の位置、サイズ、形状、および磁化に従って構成される。磁場と同じでも等しくもない磁力は、第1の投与位置(222)および第2の投与位置(224)に左耳および右耳に対する指向力(ベクトル)を発生させるように構成される。
【0023】
ベクトル磁場がBで表され、
【0024】
【0025】
【数2】
にわたって変動する三次元ベクトルである場合、磁気ナノ粒子に対する力は、
【0026】
【数3】
よって与えられ、さらにそれ自体は、空間にわたって変動する三次元ベクトル、すなわち
【0027】
【0028】
【数5】
は、ヤコビ行列であり、kは、磁気ナノ粒子のサイズおよび材料パラメータに左右される特性を有する係数である。代替的、および同等に、磁力Fはまた、
【0029】
【数6】
として書くこともでき、式中、gradは勾配であり、
【0030】
【数7】
は、Bのノルムである。本発明者らは、磁石アセンブリの選択が、磁力
【0031】
【数8】
が所望の方向を向くように選択されたことを開示しており、このことは、所望の方向が
図3に示す方向に一致することを意味している。この選択は、両耳に対して意図された患者頭部の配向のために正確な方向で力を発生させる、候補となる磁石配置を見出すために、磁石要素の配置に対して数学的最適化を実施することによって行われる。
【0032】
図3は、医療用カート(350)を備える、小児患者(302)に磁気治療薬を投与するためのシステム(300)を示す図である。本態様では、磁気治療剤組成物は、患者に投与可能である治療成分に付着される鉄などの磁気ナノ粒子を含む。本システムは、磁気アセンブリ(336)が発生させる磁場(348)の結果である磁力によって、これらの薬剤を患者の中耳に引き寄せるように構成される。一態様では、システム(300)は、6か月齢の若さの患者(302)に対して構成することができる。患者の頭部に対するヘッドレスト(326)は、患者の頭部直径に基づき選択または構成されてもよい。磁石は、ヘッドレストの下、システムの内部に確認することができるが、患者または患者の周囲の第三者には見えない場合もある。システムまたはカートの構造は、小型であり、かつ車輪上にあってもよく、これにより、システムの不使用時により容易な保管が可能となる。
【0033】
一態様では、ヘッドレストは、示されるような形状とすることができ、磁石はカート内部でヘッドレストの下にある。患者の自然な頭部位置は、ヘッドレストにより設定可能であり、かつ、磁力が外耳道から鼓膜を通って中耳に向くように耳を配向することができる。医療用カートは、磁石アセンブリを用いてその前に治療した耳を「未処置」とすることなく、一度に片耳を治療するように構成される。
【0034】
図4A~
図4Bは、磁気アレイを備える磁気アセンブリ(400)の三次元図および側面図を例示する図である。磁気アセンブリ(400)は、治療剤が鼓膜を越えて導かれるように、磁気ナノ粒子に所定の磁力を与えるように構成される。加えて、その患者は、磁力の方向が両鼓膜と同じ方向に配向されるように位置決めされ、この方向は磁場の方向とは異なり、区別されている。したがって、磁気アセンブリが発生させる磁場は、
図2に例示されるような頭部の両配向として第1の位置(222)および第2の位置(224)に対して設計する必要がある。最終的に、磁気アセンブリは、製造のコスト、容易さ、および安全性に基づき設計かつ構成されてもよい。
【0035】
種々の態様では、磁気アセンブリ(400)は、電磁石、永久磁石、または永久磁石のアレイを備えていてもよい。
図4A~
図4Bは、1個の大きく強力な磁石ではなく、複数の協力ではあるが小さな永久磁石で構成される磁気アセンブリの態様を例示する。小さな磁石は、1個の大きな磁石よりも容易に調達することができ、製造プロセス中により安全に取り扱うことができる。
図4A~4Bの磁気アセンブリ(400)は、7個の行(404)および7個の列(406)に従って配列される複数のピラー(402)の磁気アレイを備えている。加えて、磁気アレイはさらに、同様のN個の行×N個の列の構造で構成されてもよく、そうすることで、N×N構造により、磁気剤が鼓膜を越えるのに十分な量の磁力が磁気ナノ粒子に与えられる。一態様では、磁石アセンブリは、投与される耳の外耳道内で磁気治療薬に1テスラの力を発生させるように構成される。
【0036】
一態様では、磁石アセンブリ(400)のピラー(402)は、ネオジムN42ディスク磁石などの複数の小型ディスク磁石(408)を備えており、各ディスクは直径2インチ×高さ1インチであり、支持ロッドの通過を支持するための1/4インチ穴が中央にある。複数のディスク磁石は、支持ロッド(410)によって一体的に結合されてもよく、このとき複数のディスクのそれぞれは、同じ垂直方向に磁化され、対向する極性端部が互いに引き付けられる場合がある。一態様では、アレイ中の各ピラー(402)に対して10個の磁気ディスク(408)が存在してもよい。一態様では、磁石アセンブリは、幅約14インチ+/-1インチ、深さ14インチ+/-1インチ、および高さ10インチ+/-1インチであってもよい。
【0037】
複数のディスクの磁場が組み合わさることで、結果として各ピラーに対し磁場が発生する。同様に、複数のピラーの磁場が組み合わさることで、結果として磁気アセンブリに対し磁場が発生する。それゆえ、得られる同じ磁場が、異なる磁気アセンブリピラーとディスクの組み合わせによって発生される場合がある。上記で論じたように、得られる磁場は、磁気ナノ粒子に対する算出された磁力に従って決定される。
【0038】
図5A~
図5Dは、透明な位置合わせグリッド(346)に従ってヘッドレスト(325)の表面上で位置決めされる医療用シミュレーションマネキンを示す図である。位置合わせグリッド(346)により、臨床医は、磁気アセンブリが発生させる裸眼では見えない磁力に従って患者の頭部を容易に位置合わせすることができる。位置合わせグリッドは、位置合わせグリッドが高コントラストで示され、かつ保護カバーを通して確認できるように、ヘッドレストの暗色と対照的な明色で示されてもよい。位置合わせグリッドと併せて保護カバーまたは衛生カバーが使用されてもよく、これにより臨床医は、患者がヘッドレストと直接接触することなく、保護カバーを通して位置合わせグリッドを視認できるようになる。別の態様では、位置合わせグリッド(346)は、ヘッドレスト(326)の表面に刻み込まれてもよい。同様に、物理的な刻印は、保護カバーを通して知覚されてもよい。
【0039】
ヘッドレスト(326)は取り外し可能であってもよく、位置合わせグリッドが上側ベッドプラットフォーム(338)の下の磁石アセンブリと正確に位置合わせされるようにヘッドレストを取り付けまたは位置合わせするために1つまたは複数のヘッドレストマーキングを必要とする。臨床医は、患者の背後または横に立ち、患者の頭部とヘッドレスト(326)の位置合わせグリッド(346)との位置合わせを補助することが予想される。加えて、ヘッドレスト(326)は、異なる患者頭部の直径に対して異なるサイズであってもよく、位置合わせグリッドがヘッドレストの形状に対して固有に調整されることを必要とする場合がある。一態様では、ヘッドレストの第1および第2の頭部輪郭部の形状とサイズは、小さいまたは大きい患者に適合するように異なるサイズである。したがって、位置合わせグリッドは、患者の頭部が、磁力が磁気治療薬に作用するための所望の位置にあるように調整される。
【0040】
図5Cは、右耳(306)が治療のために位置決めされている第1の投与位置(322)にある医療シミュレーションマネキンを示す。位置合わせグリッド(346)は、第1の垂直位置インジケータ(352)と、第2の垂直位置インジケータ(354)と、水平位置インジケータ(356)とをさらに備えている。一態様では、臨床医は、水平位置インジケータ(356)に従って患者の眼を位置合わせし、第1の垂直位置インジケータ(352)に従って患者の鼻梁を位置合わせする。加えて、臨床医は、右外耳(306)が水平より上にあるように患者の頭部を位置合わせする。
【0041】
図5Dは、上側ベッドプラットフォーム(338)の上部に位置するマットレス(358)と、調節可能な安全ベルト(360)と、患者を適所に保持するのを補助するガードレール(370)とを任意選択で備える医療用カートを示す。
図6は、安全バーまたはガードレール(370)を備える医療用カート(350)の平面図をさらに示す。患者は調節可能な安全ベルト(360)によって固定され得るが、ガードレール(370)により医療用カート(350)の側部をさらに支持することが望ましい。医療用カートは、患者が第1の位置から第2の位置に動かされるように構成され、ガードレールは、位置移行中に患者がカートから落ちるのを防止する場合がある。
【0042】
図7は、上または下に折り畳まれ得るカンチレバーレッグ(366)を備える医療用カート(350)の側面図を示す図である。一態様では、医療用カート(350)は、専用の保管スペースを必要とすることなく既存の検査室に適合し得るように小型の設計としてもよい。医療用カート(350)は、より小さな保管サイズに折り畳むために、上側ベッドプラットフォーム(338)上に折畳みヒンジ(374)を備えてもよい。加えて、医療用カート(350)は、医療用カート(350)の位置決めおよび再配置用に1つまたは複数のキャスタ(362)をさらに備えてもよい。キャスタ(362)の少なくとも1つは、地面に沿った横方向移動に対してロック可能であるため、医療用カート(350)が地面に対し垂直な枢動軸を中心に枢動することを可能にし得る。位置が選択されると、医療用カート(350)は、カンチレバーレッグ(366)および1つまたは複数のキャスタブレーキ(364)によって適所に固定される。こうして、使用後にカートを折り畳み保管場所に転がし込むことができる。
図7は、患者の視野から見た、磁石アセンブリ(336)を覆う取り外し可能な側面整形部(368)をさらに示す。磁石アセンブリ(336)は、カートの近位端(378)に位置付けられ、かつカートの長手方向軸の中心に位置合わせされる。
【0043】
図8A~
図8Nは、医療用カート(350)上で外耳道を介して患者に磁気治療剤を投与するための治療処置を示す図である。
図8Aは、ヒンジ式の上側ベッドプラットフォーム(338)を跳ね上げ、カンチレバーレッグ(366)を展開させ、キャスタブレーキ(364)をロックすることによって適所に固定された医療用カート(350)を示す。
図8Bは、患者を医療用カートに乗せて患者の頭部をヘッドレスト(326)の上に置く臨床医を示す。
図8Cは、患者の頭部を左耳投与位置(324)に位置合わせする臨床医を示す。
図8Dは、第2の垂直位置インジケータ(354)に従って位置合わせされた患者の頭部を示しており、患者の鼻梁は、第2の垂直位置インジケータ(354)と垂直に位置合わせされている。
図8Eは、水平/横方向の位置インジケータ(356)に従って位置合わせされた患者の頭部を示しており、患者の眼は、水平/横方向の位置インジケータ(356)と位置合わせされている。
図8Fは、約15~20度回転した患者の頭部を示しており、左耳(306)は水平面より上に位置決めされている。患者の頭部が投与位置に回転された後、臨床医は、磁気治療剤を患者に投与する。
図8Gは、安全ハーネス(360)で患者を固定し、患者が所定の治療期間にわたって投与位置に留まるのを確実にする臨床医を示す。
図8Hは、患者を右耳投与位置(322)へと慎重に移動させる臨床医を示す。
図8Iは、第1の垂直位置インジケータ(352)(右耳)に従って位置合わせされた患者の頭部を示しており、患者の鼻梁は、第1の垂直位置インジケータ(352)と垂直に位置合わせされている。
図8Jは、水平/横方向の位置インジケータ(356)に従って位置合わせされた患者の頭部を示しており、患者の眼は、水平/横方向の位置インジケータ(356)と位置合わせされている。
図8Kは、約15~20度回転した患者の頭部を示しており、右耳(304)は水平面より上に位置決めされている。患者の頭部が投与位置に回転された後、臨床医は、磁気治療剤を患者に投与する。
図8Lは、安全ハーネス(360)で患者を固定し、患者が所定の治療期間にわたって投与位置に留まるのを確実にする臨床医を示す。
図8Mは、医療用カートから降りる患者を支持する臨床医を示す。
図8Nは、ヒンジ式の上側ベッドプラットフォーム(338)が保管位置に折り畳まれ、カンチレバーレッグ(366)が引っ込められる医療用カートの保管位置を示す。キャスタブレーキ(364)は解放されてもよく、カートは保管位置に配されてもよい。
【0044】
図9は、医療用カート上で患者に磁気治療剤を投与するためのフロー図を示す図である。患者は、医療用カート上で第1の投与位置に位置決めされる(502)。患者の頭部は、ヘッドレストの第1の頭部輪郭部に位置決めされる。患者の鼻梁は、ヘッドレストの第1の位置垂直インジケータと位置合わせされる(504)。患者の眼は、ヘッドレストの水平インジケータと位置合わせされる(506)。患者の頭部は、第1の投与が行われる耳が水平面より上にあるように、約15~20度回転させられる(508)。磁気治療剤は、臨床医によって第1の投与が行われる耳に投与される(510)。治療剤は所定の待機期間にわたって供給され、その間に、磁気アセンブリが発生させる磁力によって、第1の投与が行われる耳の中耳空間に押し込まれる(512)。所定の待機期間の後、患者は、第2の投与が行われる耳を第2の投与位置に移動または再配置される(514)。患者の鼻梁は、ヘッドレストの第2の位置垂直インジケータと位置合わせされる(516)。患者の眼は、ヘッドレストの水平インジケータと再び位置合わせされる(518)。患者の頭部は、第2の投与が行われる耳が水平面より上にあるように、約15~20度回転させられる(520)。磁気治療剤は、臨床医によって第2の投与が行われる耳に投与される(522)。治療剤は所定の待機期間にわたって供給され、その間に、磁気アセンブリが発生させる磁力によって、第2の投与が行われる耳の中耳空間に押し込まれる(524)。患者が第2の投与位置にある期間にわたり、第1の耳に投与される治療薬は、磁気アセンブリが発生させる磁力によって押し込まれ、第1の耳の標的中耳空間内に維持される(526)。
【0045】
図10は、医療用カートを構成し、かつ医療用カート上で患者に磁気治療剤を投与するためのフロー図を示す図である。患者頭部の直径が、臨床医により測定される(602)。患者頭部の直径は、適宜サイズ調整されたヘッドレストを決定かつ選択するために使用され(604)、そうすることで、患者の頭部はヘッドレストの頭部輪郭位置にぴったりと適合する。ヘッドレストは、ヘッドレスト上の位置マーカに従って、医療カート上の相補的マーカと位置合わせされる(606)。位置マーカにより、ヘッドレストの位置合わせグリッドが所望の患者位置合わせ位置を正確に示すことになる。患者は、医療用カート上で第1の投与位置に位置決めされる(608)。患者の頭部は、ヘッドレストの第1の頭部輪郭部に位置決めされる。患者の鼻梁は、ヘッドレストの第1の位置垂直インジケータと位置合わせされる(610)。患者の眼は、ヘッドレストの水平インジケータと位置合わせされる(612)。患者の頭部は、第1の投与が行われる耳が水平面より上にあるように、約15~20度回転させられる(614)。磁気治療剤は、臨床医によって第1の投与が行われる耳に投与される(616)。治療剤は所定の待機期間にわたって供給され、その間に、磁気アセンブリが発生させる磁力によって、第1の投与が行われる耳の中耳空間に押し込まれる(618)。所定の待機期間の後、患者は、第2の投与が行われる耳を第2の投与位置に移動または再配置される(620)。患者の鼻梁は、ヘッドレストの第2の位置垂直インジケータと位置合わせされる(622)。患者の眼は、ヘッドレストの水平インジケータと再び位置合わせされる(624)。患者の頭部は、第2の投与が行われる耳が水平面より上にあるように、約15~20度回転させられる(626)。磁気治療剤は、臨床医によって第2の投与が行われる耳に投与される(628)。治療剤は所定の待機期間にわたって供給され、その間に、磁気アセンブリが発生させる磁力によって、第2の投与が行われる耳の中耳空間に押し込まれる(630)。患者が第2の投与位置にある期間にわたり、第1の耳に投与される治療薬は、磁気アセンブリが発生させる磁力によって押し込まれ、第1の耳の標的中耳空間内に維持される(632)。
【0046】
本明細書中に記載される主題の様々な態様を、下記の番号付き実施例で説明する。
【実施例】
【0047】
実施例1:磁気剤送達カートであって、上側ベッドプラットフォームと、上側ベッドプラットフォームの下に位置付けられる磁気アセンブリであって、上側ベッドプラットフォームの長手方向軸の下の中心に置かれ、磁気剤送達カートの近位端に位置合わせされる、磁気アセンブリと、磁気アセンブリを隠すように構成される1つまたは複数の側部整形部であって、取り外し可能である側部整形部と、上側ベッドプラットフォームの上部に位置付けられるとともに磁石アセンブリの中心より上に位置するヘッドレストであって、当該ヘッドレストは、第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部であって、第1の頭部輪郭部は第1の投与位置にある患者に対して構成され、第2の頭部輪郭部は第2の投与位置にある患者に対して構成される、第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部、ならびに、第1の投与位置、第2の投与位置、および磁石アセンブリの位置に従って構成される位置合わせグリッドであって、第1の投与位置にある患者の矢状面に対応する第1の位置垂直線、第2の投与位置にある患者の矢状面に対応する第2の位置垂直線、および患者の眼に沿った横断面に対応する水平線を備える位置合わせグリッドをさらに備えるヘッドレストとを備えている、磁気剤送達カート。
【0048】
実施例2:磁気アセンブリが、複数の磁石ピラーの磁石アレイを備えており、複数の磁石ピラーが、所定数の行および列を有する行および列グリッド構造に位置している、実施例1に記載の磁気剤送達カート。
【0049】
実施例3:所定数の行および列が、磁気治療剤に加えられる複数の磁力に基づき決定される、実施例2に記載の磁気剤送達カート。
【0050】
実施例4:第1の磁力が、第1の投与位置にある右耳に基づいており、第2の磁力が、第1の投与位置にある左耳に基づいており、第3の磁力が、第2の投与位置にある右耳に基づいており、第4の磁力が、第2の投与位置にある左耳に基づいている、実施例3に記載の磁気剤送達カート。
【0051】
実施例5:複数の磁石ピラーのそれぞれが、複数の磁気ディスクをさらに備えており、複数の磁気ディスクは、互いに結合されており、同じ方向に磁化される、実施例2から4のいずれか1つに記載の磁気剤送達カート。
【0052】
実施例6:複数の磁石ピラーのそれぞれが、同数のディスクを備えている、実施例5に記載の磁気剤送達カート。
【0053】
実施例7:患者固定ハーネスと、適所にロックされるようにブレーキを備える1つまたは複数のキャスタと、第1の保管位置から第2の位置へと折り畳まれるように構成される1つまたは複数のカンチレバーレッグであって、第2の位置は磁気剤送達カートを適所に固定する、カンチレバーレッグとをさらに備えている、実施例1から6のいずれか1つに記載の磁気剤送達カート。
【0054】
実施例8:ヘッドレストが、磁石アセンブリに従ってヘッドレストを位置決めまたは取り付けるように構成される1つまたは複数の位置合わせマーキングをさらに備えている、実施例1から7のいずれか1つに記載の磁気剤送達カート。
【0055】
実施例9:ヘッドレストが、取り外し可能であり、かつ様々な頭部直径に輪郭が適合する複数のヘッドレストから選択される、実施例1から8のいずれか1つに記載の磁気剤送達カート。
【0056】
実施例10:外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステムであって、治療薬に付着された磁気ナノ粒子を含む磁気治療剤と、医療用カートであって、上側ベッドプラットフォーム、上側ベッドプラットフォームの下に位置付けられる磁気アセンブリであって、上側ベッドプラットフォームの長手方向軸の下の中心に置かれ、磁気剤送達カートの近位端に位置合わせされる、磁気アセンブリ、磁気アセンブリを隠すように構成される1つまたは複数の側部整形部であって、取り外し可能である側部整形部、上側ベッドプラットフォームの上部に位置付けられるとともに磁石アセンブリの中心より上に位置するヘッドレストであって、該ヘッドレストは、第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部であって、第1の頭部輪郭部は第1の投与位置にある患者に対して構成され、第2の頭部輪郭部は第2の投与位置にある患者に対して構成される、第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部、ならびに、第1の投与位置、第2の投与位置、および磁石アセンブリの位置に従って構成される位置合わせグリッドであって、第1の投与位置にある患者の矢状面に対応する第1の位置垂直線、第2の投与位置にある患者の矢状面に対応する第2の位置垂直線、および患者の眼に沿った横断面に対応する水平線を備える位置合わせグリッドをさらに備えるヘッドレストを備える、医療用カートとを備えている、外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【0057】
実施例11:磁気アセンブリが、複数の磁石ピラーの磁石アレイを備えており、複数の磁石ピラーが、所定数の行および列を有する行および列グリッド構造に位置している、実施例10に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【0058】
実施例12:所定数の行および列が、磁気治療剤に加えられる複数の磁力に基づき決定される、実施例11に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【0059】
実施例13:第1の磁力が、第1の投与位置にある右耳に基づいており、第2の磁力が、第1の投与位置にある左耳に基づいており、第3の磁力が、第2の投与位置にある右耳に基づいており、第4の磁力が、第2の投与位置にある左耳に基づいている、実施例12に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【0060】
実施例14:複数の磁石ピラーのそれぞれが、複数の磁気ディスクをさらに備えており、複数の磁気ディスクは、互いに結合されており、同じ方向に磁化される、実施例10から13のいずれか1つに記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【0061】
実施例15:複数の磁石ピラーのそれぞれが、同数のディスクを備えている、実施例14に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【0062】
実施例16:患者固定ハーネスと、適所にロックされるようにブレーキを備える1つまたは複数のキャスタと、第1の保管位置から第2の位置へと折り畳まれるように構成される1つまたは複数のカンチレバーレッグであって、第2の位置は磁気剤送達カートを適所に固定する、カンチレバーレッグとをさらに備えている、実施例10から15のいずれか1つに記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【0063】
実施例17:ヘッドレストが、磁石アセンブリに従ってヘッドレストを位置決めまたは取り付けるように構成される1つまたは複数の位置合わせマーキングをさらに備えている、実施例10から16のいずれか一項に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【0064】
実施例18:ヘッドレストが、取り外し可能であり、かつ様々な頭部直径に輪郭が適合する複数のヘッドレストから選択される、実施例10から17のいずれか一項に記載の外耳道を介して患者に磁気剤を送達するためのシステム。
【0065】
実施例19:外耳道を介して患者に磁気剤を送達するための方法であって、患者を医療用カート上で第1の投与位置に位置決めする工程であって、医療用カートが磁石アセンブリおよびヘッドレストを備えており、ヘッドレストが第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部を備えており、ヘッドレストが、水平位置合わせ線、第1の位置垂直位置合わせ線、および第2の位置垂直位置合わせ線を備えている、工程と、患者の鼻梁を第1の垂直位置インジケータと位置合わせする工程と、患者の眼を水平面で水平位置インジケータと位置合わせする工程と、第1の投与が行われる耳が水平面より上にあるように患者の頭部を回転させる工程と、磁気治療剤を第1の投与が行われる耳に投与する工程と、磁石アセンブリによって患者の第1の耳の中耳空間に磁気治療剤を押し込む工程と、患者を医療用カート上で第2の投与位置に再び位置決めする工程と、患者の鼻梁を第2の垂直位置インジケータと位置合わせする工程と、患者の眼を水平面で水平位置インジケータと位置合わせする工程と、第2の投与が行われる耳が水平面より上にあるように患者の頭部を回転させる工程と、磁気治療剤を第2の投与が行われる耳に投与する工程と、磁石アセンブリによって患者の第2の耳の中耳空間に磁気治療剤を押し込む工程と、磁石アセンブリにより磁気治療剤を、患者の第2の耳の中耳空間に残るように第1の投与が行われる耳に押し込む工程とを含む方法。
【0066】
実施例20:外耳道を介して患者に磁気剤を送達するための方法であって、患者の頭部の直径に基づき患者の頭部に適合するヘッドレストを決定する工程であって、ヘッドレストが第1の頭部輪郭部および第2の頭部輪郭部を備えており、ヘッドレストが、水平位置合わせ線、第1の位置垂直位置合わせ線、および第2の位置垂直位置合わせ線を備えている、工程と、磁石アセンブリに相対的な1つまたは複数の位置合わせマーカに基づきヘッドレストを医療用カート上で位置合わせする工程と、第1の投与位置で患者を医療用カート上に位置決めする工程であって、医療用カートが磁石アセンブリおよびヘッドレストを備えている、工程と、患者の鼻梁を第1の垂直位置インジケータと位置合わせする工程と、患者の眼を水平面で水平位置インジケータと位置合わせする工程と、第1の投与が行われる耳が水平面より上にあるように患者の頭部を回転させる工程と、磁気治療剤を第1の投与が行われる耳に投与する工程と、磁石アセンブリによって患者の第1の耳の中耳空間に磁気治療剤を押し込む工程と、患者を医療用カート上で第2の投与位置に再び位置決めする工程と、患者の鼻梁を第2の垂直位置インジケータと位置合わせする工程と、患者の眼を水平面で水平位置インジケータと位置合わせする工程と、第2の投与が行われる耳が水平面より上にあるように患者の頭部を回転させる工程と、磁気治療剤を第2の投与が行われる耳に投与する工程と、磁石アセンブリによって患者の第2の耳の中耳空間に磁気治療剤を押し込む工程と、磁石アセンブリにより磁気治療剤を、患者の第2の耳の中耳空間に残るように第1の投与が行われる耳に押し込む工程とを含む方法。
【0067】
特定の態様が上記で詳細に開示されてきたが、この記述は単に例示目的のためのものである。それゆえ、本発明の多くの態様は、ほんの一例として上述されており、別段の定めのない限り本発明の必要または必須の要素としては意図されていないことを理解されたい。上述のものに加えて、例示的な態様のうち開示された態様に対する修正および対応する等価な工程は、以下の特許請求の範囲で定められる本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示による利益を有する当業者によって行われる可能性があり、先述の範囲は、かかる修正および等価な構造を包含するように最も広い解釈を与えられることとなる。
【0068】
本開示では、いくつかの図面を通して、同様の参照符号は、同様のまたは対応する部分を示す。
【0069】
本明細書中で言及される特許、特許出願、刊行物、または他の開示物はすべて、あたかも個々の参考文献がそれぞれ参照により明確に援用されるかのように、その全体が参照によって本明細書中に援用される。参照により本明細書中に援用されると言われるすべての参考文献およびいずれかの資料、またはそれらの一部は、援用された資料が既存の定義、陳述、または本開示に記載される他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ、本明細書中で援用される。そのため必要な程度にまで、本明細書中に記載される開示は、参照により本明細書中で援用されるあらゆる矛盾する資料に取って代わるので、本出願に明確に記載される開示が優先される。
【0070】
本開示は、種々の例および例示的な態様を参照して記述されている。本明細書中に記載の態様は、開示された発明の種々の態様の様々な詳細の例示的な特徴を提供するものとして理解される。それゆえ、別段の定めのない限り、開示された態様の1つまたは複数の特徴、要素、構成成分、構成要素、成分、構造、モジュール、および/または態様は、可能とされる程度にまで、開示された発明の範囲から逸脱することなく開示された態様の1つまたは複数の他の特徴、要素、構成成分、構成要素、成分、構造、モジュールと組み合わせ、それらから分離され、それらと交換され、かつ/または再配置されてもよいことを理解されたい。したがって、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な態様のいずれかの種々の置換え、修正、または組合せを行うことができることが認識されるであろう。加えて、当業者は、本開示を検討した後、本明細書中に記載の本発明の種々の態様に対する多くの等価物を認識する、または単なる慣例的な実験を使用してその等価物を確認可能となるであろう。ゆえに本開示は、種々の態様の記載ではなく、特許請求の範囲によって限定される。
【0071】
当業者は、一般的に本明細書中、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文(bodies))で使用される用語が、概して「包括的な(open)」用語として意図されることを認識するであろう(例えば、「含む(including)」という用語は「を含むが、これに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、「有すること(having)」という用語は「少なくとも~を有する(having at least)」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は「を含むが、これに限定されない(includes but not limited to)」と解釈されるべきである、など)。さらに当業者であれば、導入された請求項の列挙の具体的な数が意図される場合、このような意図は請求項に明示的に列挙されることになり、先述の列挙が存在しない場合、このような意図は存在しないことが理解されるであろう。例えば、理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の列挙を導入するために導入句「少なくとも1つの(at least one)」および「1つまたは複数の(one or more)」の使用を包含する場合がある。しかし、かかる句の使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項の列挙の導入が、かかる導入された請求項の列挙を包含するいずれか特定の請求項を、このような列挙を1つしか包含していない請求項に限定することを示唆するようには解釈されてはならず、同じ請求項が「1つまたは複数」または「少なくとも1つ」という導入句、および「a」または「an」などの不定冠詞(例えば、「a」および/または「an」は、典型的には「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味すると解釈されるべきである)を含む場合であっても、同じことが、請求項の列記を導入するために使用される明確な項目の使用にも当てはまる。
【0072】
加えて、導入された請求項の列挙の具体的な数が明示的に列挙されている場合でも、当業者であれば、このような列挙は、典型的には少なくとも列挙された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語句を伴わない「2つの列挙」をそのまま列挙すること(bare recitation)は、典型的には少なくとも2つの列挙、または2つ以上の列挙を意味する)。さらに、「A、B、およびCなどのうち少なくとも1つ」に類似する慣例表現が使用される例では、概してこのような構成は、当業者がその慣例表現を理解する意味で意図される(例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBをともに、AおよびCをともに、BおよびCをともに、ならびに/またはA、B、およびCをともに有するシステムなどを含むが、それらに限定されない)。「A、B、またはCなどのうち少なくとも1つ」に類似する慣例表現が使用される場合、概してこのような構成は、当業者がその慣例表現を理解する意味で意図される(例えば、「A、B、またはCのうち少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、AおよびBをともに、AおよびCをともに、BおよびCをともに、ならびに/またはA、B、およびCをともに有するシステムなどを含むが、それらに限定されない)。典型的に、2つ以上の代替用語を提示する離接語および/または句は、明細書、特許請求項の範囲、または図面にあるかに関係なく、前後関係で示されていない限りはこれら用語のうち1つ、これら用語のいずれか、または両方の用語を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、「AまたはB」という句は、典型的に「A」もしくは「B」、または「AおよびB」の可能性を含むと理解されるであろう
【0073】
添付の特許請求の範囲に関して、当業者であれば、請求項中に列挙された操作が一般的にあらゆる順序で実行されてよいことを理解するであろう。また、請求項の列挙は順序通りに提示されているが、種々の操作は、記載される順序以外の順序で実行されてもよく、または同時に実行されてもよいことを理解されたい。このような代替的な順序付けの例には、文脈上別段の定めのない限り、重複、インターリーブ、中断、並べ替え、増分、予備、補足、同時、逆、またはその他様々な順序付けが挙げられ得る。さらに、「に応答する(responsing to)」、「に関連する(related to)」、または他の過去形の形容詞のような用語は、概して、文脈上別段の定めのない限り、このような変形を除外することを意図していない。
【0074】
「一態様(one aspect)」、「一態様(an aspect)」、「一例示(an exemplification)」、「一例示(one exemplification)」などに対するあらゆる言及が、その態様に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの態様に含まれることを意味することを特筆すべきである。ゆえに、本開示全体における様々な場所にある「一態様では(in one aspect)」、「一態様では(in an aspect)」、「一例示では(in an exemplification)」、および「一例示では(in one exemplification)」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ態様を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の態様においてあらゆる適切な形で組み合わされてもよい。
【0075】
本明細書中で使用されるとき、「a」、「an」、および「the」という単数形は、文脈上明らかに別段の定めのない限り、複数の参照を含む。
【0076】
例えば限定されないが上部、下部、左、右、下方、上方、前、後、およびそれらの変形など、本明細書中で使用される方向に関する表現は、添付の図面に示される要素の配向に関するものとし、別段の明示的な定めのない限り、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0077】
本開示で使用される「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、別段の定めのない限り、当業者が定める特定の値における許容可能な誤差を意味し、この誤差は、その値がどのように測定または判定されるかに部分的に依存する。特定の態様では、「約」または「およそ」という用語は、1、2、3、または4の標準偏差以内を意味する。特定の態様では、「約」または「およそ」という用語は、所与の値または範囲の50%、200%、105%、100%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.05%以内を意味する。
【0078】
本開示において、別段の定めのない限り、すべての数値パラメータは、その数値パラメータがパラメータの数値を決定するために使用される基礎となる測定技法の固有の変動特性を有する「約」という用語によって、すべての例で前置きおよび修飾されるものとして理解されたい。最低限でも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を限定する試みとしてではなく、本明細書中に記載の各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、かつ通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0079】
本明細書中で列挙されるあらゆる数値範囲は、列挙された範囲内に包含されるすべての部分範囲を含む。例えば、「1~100」という範囲は、列挙された最小値1と列挙された最大値100との間の(かつそれらを含む)、すなわち1以上の最小値と100以下の最大値とを有するすべての部分範囲を含む。また、本明細書中で列挙されるすべての範囲は、列挙された範囲の終点を含む。例えば、「1~100」という範囲は、終点1と100を含む。本開示で列挙されるあらゆる最大数値制限は、その中に包含されるすべての低い数値制限を含むことが意図され、本開示で列挙されるあらゆる最小数値制限は、その中に包含されるすべての高い数値制限を含むことが意図される。したがって、本出願人は、明示的に列挙された範囲内に包含されるあらゆる部分範囲を明示的に列挙するために、特許請求の範囲を含め本開示を補正する権利を保有する。このような範囲はすべて、本質的に本開示に記載されている。
【0080】
本開示において言及され、かつ/またはあらゆる出願データシート(Application Data Sheet)に列挙されるあらゆる特許出願、特許、非特許刊行物、または他の開示材料は、援用された材料が本明細書と矛盾しない程度に、参照により本明細書中で援用される。そのため必要な程度にまで、本明細書中に明確に記載される開示は、参照により本明細書中で援用されるあらゆる矛盾する資料に取って代わる。本明細書中で参照により援用されると言われるが、既存の定義、記載、もしくは本明細書中に記載される他の開示資料と矛盾するあらゆる資料またはその部分は、援用される資料と既存の開示資料との間に矛盾が生じない範囲までしか援用されないものとする。
【0081】
用語「含む(comprise)」(および「含む(comprises)」や「含むこと(comprising)」など含むのあらゆる形態)、「有する(have)(および「有する(has)」や「有すること(having)」など有するのあらゆる形態)、「備える(include)」(および「備える(includes)」や「備えること(including)」など備えるのあらゆる形態)、ならびに「含有する(contain)」(および「含有する(contains)」や「含有すること(containing)」など含有するのあらゆる形態)は、オープンエンド(open-ended)の連結動詞である。その結果、1つもしくは複数の要素を「含む」、「有する」、「備える」、または「含有する」システムは、それら1つまたは複数の要素を保有しているが、それら1つまたは複数の要素のみを保有することに限定されない。同様に、1つもしくは複数の特徴を「含む」、「有する」、「備える」、または「含有する」システム、デバイス、または装置の要素は、それら1つまたは複数の特徴を保有するが、それら1つまたは複数の特徴のみを保有することに限定されない。
【0082】
要約すると、本明細書中に記載の概念を採用することにより生じる多数の利益が記述されている。1つまたは複数の形態についての前述の説明は、例示および記載の目的で提示されている。この説明は、網羅的であること、または開示された正確な形態に限定されることを意図していない。上記の教示に照らして、修正または変形が可能である。原理および実用的な用途を例示することによって、企図された特定の使用に適するように種々の修正を伴って種々の形態を当業者が利用するのを可能にするために、1つまたは複数の形態が選択かつ記載された。本明細書とともに提出される特許請求の範囲は、全体的な範囲を定めることが意図される。
【国際調査報告】