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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】マルチビーム電子スキャン
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/147 20060101AFI20231220BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20231220BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01J37/147 B
H01J37/20 D
H01J37/28 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536385
(86)(22)【出願日】2021-12-19
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 US2021064258
(87)【国際公開番号】W WO2022140214
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/129,559
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/540,169
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プレットナー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン ダグ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジェイソン ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ケーワイン マーク
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE03
5C101EE22
5C101EE48
5C101FF02
5C101FF52
5C101FF56
(57)【要約】
マルチビーム電子走査システムは、スワスティングを用いる。システムは、照明ビームを放射するように構成された電子放出源を含む。照明ビームは、ビームスプリッタレンズアレイによって複数の電子ビームに分割される。システムはまた、電子ビームの各々を、第1の方向を含む複数の方向に、2つの異なる軸に沿って偏向させるように構成された電子偏向システムを含む。最後に、スワスステージを使用して、試料を一定速度で第1の方向に平行な第2の方向に移動させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
照明ビームを放出するように構成される電子放出源と、
前記照明ビームを複数の電子ビームに分割するように構成されるビームスプリッタレンズアレイと、
前記電子ビームの各々を、第1の方向を含む複数の方向に、2つの異なる軸に沿って偏向させるように構成される電子偏向システムと、
試料を一定速度で前記第1の方向に平行な第2の方向に移動させるように構成されるスワスステージと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記電子偏向システムは、所定の長さの時間または所定の走査距離にわたって前記第1の方向に沿って各電子ビームを偏向するようにさらに構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電子偏向システムは、所定の長さの時間または所定の走査距離の終わりまで前記電子ビームを偏向した後、前記電子ビームを前記第1の方向に直交または実質的に直交する第3の方向に移動させるようにさらに構成されることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電子偏向システムは、前記電子ビームが前記第3の方向に移動した後、前記電子ビームを前記第2の方向に平行な第4の方向に移動させるようにさらに構成されることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記電子偏向システムは、前記試料の視点から積み重ねられた矩形のグループに走査線を書き込むように構成され、各矩形は、所定数の走査線を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記各矩形は、前記試料の走査領域を表し、他のラインに隣接するラインは、前記他のラインとは逆方向に書き込まれることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記矩形は、前記電子偏向システムの視点から平行四辺形として書かれ、前記スワスステージの一定の速度であることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
方法であって、
電子放出源から照明ビームを放出するステップと、
ビームスプリッタレンズアレイを用いて前記照明ビームを複数の電子ビームに分割するステップと、
電子偏向システムを介して、前記電子ビームの各々を、第1の方向を含む複数の方向に、2つの異なる軸に沿って偏向させるステップと、
スワスステージ上で試料を一定速度で前記第1の方向に平行な第2の方向に移動させるステップと、
を備える方法。
【請求項9】
前記電子偏向システムは、所定の長さの時間または所定の走査距離にわたって前記第1の方向に沿って各電子ビームを偏向するようにさらに構成されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電子偏向システムは、所定の長さの時間または所定の走査距離の終わりまで前記電子ビームを偏向した後、前記電子ビームを前記第1の方向に直交または実質的に直交する第3の方向に移動させるようにさらに構成されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電子偏向システムは、前記電子ビームが前記第3の方向に移動した後、前記電子ビームを前記第2の方向に平行な第4の方向に移動させるようにさらに構成されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電子偏向システムは、前記試料の視点から積み重ねられた矩形のグループに走査線を書き込むように構成され、各矩形は、所定数の走査線を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
各矩形は、前記試料の走査領域を表し、他のラインに隣接するラインは、前記他のラインとは逆方向に書き込まれることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記矩形は、電子偏向システムの視点から平行四辺形として書かれ、前記スワスステージの一定の速度であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータプロセッサに方法を実行させる命令を記憶する、コンピュータ可読媒体であって、この方法は、
電子放出源から照明ビームを放出するステップと、
ビームスプリッタレンズアレイを用いて前記照明ビームを複数の電子ビームに分割するステップと、
電子偏向システムを介して、前記電子ビームの各々を、第1の方向を含む複数の方向に、2つの異なる軸に沿って偏向させるステップと、
スワスステージ上で試料を一定速度で前記第1の方向に平行な第2の方向に移動させるステップと、
を備える、コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
電子偏向システムは、所定の長さの時間または所定の走査距離にわたって第1の方向に沿って各電子ビームを偏向するようにさらに構成されることを特徴とする請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記電子偏向システムは、所定の長さの時間または所定の走査距離の終わりまで前記電子ビームを偏向した後、前記電子ビームを前記第1の方向に直交または実質的に直交する第3の方向に移動させるようにさらに構成されることを特徴とする請求項16に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記電子偏向システムは、前記電子ビームが前記第3の方向に移動した後、前記電子ビームを前記第2の方向に平行な第4の方向に移動させるようにさらに構成されることを特徴とする請求項17に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記電子偏向システムは、前記試料の視点から積み重ねられた矩形のグループに走査線を書き込むように構成され、各矩形は、所定数の走査線を含むことを特徴とする請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記各矩形は、前記試料の走査領域を表し、他のラインに隣接するラインは、前記他のラインとは逆方向に書き込まれることを特徴とする請求項19に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してウェハ検査システムの分野に関する。より具体的には、本開示は、マルチビーム走査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の参照
本出願は、Tomas Plettnerらによって2020年2月22日に出願された先行出願である米国仮出願第63/129559号の利益を主張し、これはあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
概して、半導体製造の産業は、シリコンなどの基板上に積層されパターニングされる半導体材料を使用して集積回路を製造するための非常に複雑な技術を含む。回路集積の大規模化および半導体デバイスのサイズの縮小により、製造されたデバイスは、欠陥に対してますます敏感になってきている。すなわち、デバイスの故障を引き起こす欠陥はますます小さくなってきている。デバイスは、エンドユーザまたは顧客への出荷に先立って、概して、故障がない必要がある。
【0004】
従来の電子走査は、単純な単一ビームスワス技術を使用する。しかしながら、単一ビーム走査システムは、単一ビームのみが大型試料を走査するために使用されるため、遅く、非効率的である。したがって、いくつかの走査アプローチは、マルチカラム技術を伴う。しかしながら、マルチカラム技術の使用は、新たな問題を引き起こす。例えば、マルチカラム走査システムは、電子ビームの複数のカラムを利用する。しかしながら、各カラムは、各カラムのための空間要件のため、別のカラムから離れて離間されなければならない。さらに、各カラムはそれ自体の部品を必要とするので、マルチカラムシステムを使用することははるかにコストがかかり複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0031498号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、上述の問題に対処する改善された電子走査システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下は、本開示のある実施形態の基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を提示する。この概要は、本開示の広範な概観ではなく、本開示の主要/重要な要素を識別するものでも、本開示の範囲を定めるものでもない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、簡略化された形態で本明細書に開示されるいくつかの概念を提示することである。
【0008】
本開示の一態様は、システムを対象とする。システムは、照明ビームを放射するように構成された電子放出(エミッタ)源を含む。システムはまた、照明ビームを複数の電子ビームに分割するように構成されたビームスプリッタレンズアレイを含む。システムは、2つの異なる軸に沿って、第1の方向を含む複数の方向に電子ビームの各々を偏向させるように構成された電子偏向システムをさらに含む。最後に、システムは、第1の方向に平行な第2の方向に一定速度で試料を移動させるように構成されたスワスステージを含む。
【0009】
本開示の他の態様は、方法、および方法を実行するための命令を記憶するコンピュータ可読媒体を対象とする。この方法は、最初に電子放出(エミッタ)源から照明ビームを放射することを含む。次に、本方法は、ビームスプリッタレンズアレイを使用して、照明ビームを複数の電子ビームに分割するステップを含む。第3に、本方法は、電子偏向システムを介して、電子ビームの各々を、第1の方向を含む複数の方向に、2つの異なる軸に沿って偏向させることを含む。最後に、本方法は、第1の方向に平行な第2の方向に一定の速度でスワスステージ上で試料を移動させることを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、電子偏向システムはさらに、所定の長さの時間または所定の走査距離にわたって第1の方向に沿って各電子ビームを偏向するように構成される。いくつかの実施形態では、電子偏向システムは、電子偏向システムが所定の長さの時間または所定の走査距離の終わりまで電子ビームを偏向した後に、電子偏向システムが電子ビームを第1の方向に直交するまたは実質的に直交する第3の方向に移動させるようにさらに構成される。いくつかの実施形態では、電子偏向システムは、電子ビームが第3の方向に移動した後、電子偏向システムが電子ビームを第2の方向に平行な第4の方向に移動させるようにさらに構成される。いくつかの実施形態では、電子偏向システムは、試料の視点から積み重ねられた矩形のグループに走査線を書き込むように構成され、各矩形は、所定の数の走査線を含む。いくつかの実施形態では、各長方形は、試料の走査領域を表し、別のラインに隣接する各ラインは、他のラインと反対方向に書き込まれる。いくつかの実施形態では、矩形は、電子偏向システムの視点から平行四辺形として書かれ、スワスステージの一定の速度を説明する。
【0011】
本開示のこれらおよび他の態様は、図面を参照して以下でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態による、従来のスワスを有する例示的な単一ビームシステムを示す。
図2】本開示の実施形態による、従来のスワスを有する例示的なマルチカラムシステムを示す。
図3A】本開示の実施形態による、従来のスワスティングを有するマルチビームシステムを示す図である。
図3B】本開示の実施形態による、従来のスワスを有するマルチビームシステムの上面図である。
図4A】本開示の実施形態による、平行スワスを有するマルチビームシステムを示す図である。
図4B】本開示の実施形態による、平行スワスを有するマルチビームシステムの上面図である。
図5A】本開示の実施形態による、試料の視点からの1つのスワス単位を示す。
図5B】本開示の実施形態による偏向システムの視点からの1つのスワス単位を示す。
図6】本開示の実施形態による、従来のスワスティングを使用するマルチビームシステムのための走査線書き込みを示す。
図7】本開示の実施形態による、並列スワスティングを使用するマルチビームシステムのための走査線書き込みを示す。
図8】本開示の実施形態によるマルチビーム電子走査システムの一例を示す。
図9】本開示の実施形態による、並列電子走査のための方法を示すフロー図である。
図10】本開示の実施形態によるコンピュータシステムの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では、本開示の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が述べられる。本開示は、これらの具体的な詳細のいくつかまたはすべてを伴わずに実施され得る。他の例では、本開示を不必要に不明瞭にしないために、周知のプロセス動作は詳細に説明されていない。本開示は、特定の実施形態と併せて説明されるが、本開示を実施形態に限定することを意図しないことが理解されるであろう。
【0014】
ウェハ中の欠陥は、1つまたは複数の分散型小型カラムを有するSEM、複数の原子間力顕微鏡(AFM)プローブ、複数のプローブを有する近接場マイクロ波ツール、イオンビームプローブ、または複数の近位光学プローブの形態の高分解能の分散型プローブ検査ツールを使用して検出することができる。
【0015】
従来の電子走査は、典型的には、単一ビーム、単一軸偏向器、および試料、例えば、ウェハを保持するスワスステージを伴う。図1は、本開示の実施形態による、従来のスワスを有する例示的な単一ビームシステム100を示す。図1に示すように、単一の電子ビーム102が源から放出され、電子偏向器104によって偏向される。いくつかの実施形態では、電子偏向器104は、単軸偏向システムを備える。図1に示すように、偏向システム104は、試料108を保持するスワスステージ106の移動方向114に直交する方向112にビーム102を偏向する。いくつかの実施形態では、スワスステージ106は一定の速度で移動する。いくつかの実施形態では、速度は数ミリメートル/秒のオーダーである。いくつかの実施形態では、一定速度を考慮に入れるために。偏向システム104は、実際には、ステージ方向114に実質的に直交する対角線方向に線116を偏向する。ここで、「実質的に」とは、ベクトル成分の総和の50%以上のベクトル成分をいう。例えば、ベースベクトルに完全に直交する第1のベクトル、ならびにベースベクトルと45度の角度を形成する第2のベクトルは、依然として実質的に直交すると考えられる。これは、第2のベクトルを等しい大きさの2つのベクトルに分解することができ、1つはベースベクトルと平行であり、1つは直交するからである。しかしながら、ベースベクトルに対して22.5度の角度を形成する第3のベクトルは、ベースベクトルに平行な成分が直交方向の成分の大きさの2倍であるため、実質的に直交しているとは考えられない。
【0016】
図1の単一ビームシステム100は、長い走査線を「書き込む」ことができる。「走査線(ライン)を走査する」とは、電子ビームを偏向させて試料に衝突させ、次いでビームを線に沿って一方向に移動させることを指す。線(これは、ステージもしくは試料のエッジ、またはラインのための所定の停止点であり得る)のエッジ110のいずれかに当たった後、偏向システムは電子ビームを開始位置に後退させ、書き込みまたは走査を再び開始する。単一ビームシステム100は、より大きな書き込み時間と帰線時間の比を可能にするが、単一ビームは、充分なスループットをもたらさないことがあり、したがって、試料を電子走査するための最も効率的なシステムではないことがある。単一のビームシステムを用いて試料全体を走査しようとすることは、単一の塗装ブラシ毛で壁を塗装することと同様である。
【0017】
いくつかの実施形態では、単一電子ビームシステムが不充分であり得るため、マルチカラムアプローチは、システム100の欠陥のうちのいくつかに対処し得る。図2は、本開示の実施形態による、従来のスワスティングを有する例示的なマルチカラムシステム200を示す。システム200は、同時に描画する複数の電子ビームカラムがあることを除いて、システム100と同様である。したがって、システム200は、それぞれがビーム202および222などの単一のビームを放出する2つの異なる電子源を含む。各列はまた、書込線216のための偏向器204および224等のそれ自体の偏向器を含む。図2は、同じ試料208を保持する同じスワスステージ206の2つの別個のセクションを示すことに留意されたい。しかしながら、カラムの各々が別のカラムから遠く離れているので、ステージの別個のセクションが図2に示されている。これは、各列が偏向器などの他のハードウェアを必要とし、列が互いに近接するように間隔をあけている場合、複数の列が互いに隣り合って適合するのに充分な空間がないからである。さらに、同じハードウェアの複数のコピーを有することは、製造および組み立ての観点からより高価であり、これは非効率性につながる。マルチカラムシステム200は単一ビームシステム100を上回る改良であるが、マルチカラムシステムで試料を走査することは、塗装ブラシ当たり単一の剛毛のみで複数の個々の塗装ブラシで壁を塗装することと同様である。
【0018】
上述のように、単一ビームおよびマルチカラムシステムは、いくつかの欠点を有する。これらの欠点に対処するための1つのアプローチは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,362,425号に記載されるものなどのマルチビームシステムを使用することである。マルチビームシステムは、複数のビームが互いに近い試料の領域を走査することを可能にする。しかしながら、マルチビームシステム内のビームは非常に近接して配置されるため、マルチビームシステムを使用する従来のスワスは、非常に小さい書き込み時間対帰線時間比をもたらす。比率が小さくなると、書き込み/走査システムの効率が低下する。
【0019】
図3Aは、本開示の実施形態による、従来のスワスティングを有するマルチビームシステム300を示す図である。マルチビームシステム300は、照明ビームがビームスプリッタを使用して複数のビーム302に分割されることを除いて、単一ビームシステム100と同様である。加えて、電子偏向器304は、複数のビーム304のそれぞれを、スワスステージ306上に位置する試料308上に偏向する。システム100と同様に、スワスステージ306は、一定速度で方向314に移動している。従来のスワスティングでは、偏向システム304は、方向314に直交または実質的に直交する方向312に各ビーム304に対して単一の線を書き込む。しかしながら、ビーム304は互いに近接して配置されるので、書かれた「ライン」の幅は、図1に書かれた「ライン」よりもはるかに狭い。したがって、再帰時間に対する書き込み時間の比ははるかに小さく、それによって、非効率的な書き込みまたは走査につながる。
【0020】
図3Bは、本開示の実施形態による、従来のスワスを有するマルチビームシステム300の上面図である。図3Bの視点は、放出(エミッタ)源の視点から試料308およびステージ306を真っ直ぐ下に見下ろしている。ビーム302は、試料の視点から直線を描く。システム100と同様に、偏向システムは、ステージ306の一定の速度に対処する角度で各ビーム302を偏向する。図3Bに示されるように、各ビーム302は、他のビームと並列にまたは同時にそのそれぞれの線を書き込む。また、図3Bから分かるように、走査レーンの幅が短いため、この構成では帰線時間がより顕著である。
【0021】
マルチビームシステムを使用する従来のスワスは、低い書き込み対帰線時間比をもたらすので、他のアプローチが考慮され得る。例えば、マルチビームシステムは、ステップアンドスキャン技術を利用することができる。いくつかの実施形態では、ステップアンドスキャンマルチビームシステムは、デュアル軸偏向器を使用して、静止ステージ上に位置する試料上の正方形フレームをスキャンする。次いで、正方形フレームが走査された後、ステージは、偏向システムが隣接する正方形フレームを走査することを可能にするように所定量だけ移動する。このアプローチは、デュアル軸偏向システムを利用し、2次元走査を可能にする。しかしながら、この手法には2つの欠点がある。第1に、走査された正方形領域は、電子機器および光学の問題に遭遇する前に、非常に大きい可能性がある。正方形フレームが大きすぎると、ノイズおよび歪みが生じる。第2に、試料及びステージは実際の実質量を有するので、デッドストップからステージをスタートし、その後ステージを停止させ、移動による振動を含め、ステージが静止するまで待機するのに時間がかかり、数ミリ秒程度の遅延が生じる。この遅延は、電子走査の観点から非常に費用がかかる。したがって、この欠陥に対処することができるマルチビームシステムは、非常に有益であろう。
【0022】
図4Aは、本開示の実施形態による、並列スワスティングを有するマルチビームシステム400を示す図である。システム300と同様に、放出(エミッタ)源は、複数のビーム402に分割される照明ビームを放出する。次いで、電子偏向器404は、方向414に移動するスワスステージ406上の試料408上にビーム402を偏向する。いくつかの実施形態では、偏向器404は、ビーム402を方向414に平行な方向412に偏向するように構成されたデュアル軸偏向システムを含む。電子偏向システム304は、方向314から実質的に直交する方向に線を書き込むが、電子偏向システム404は、方向414に平行な線からなる方向412にフレームを書き込む。いくつかの実施形態では、各フレームは、所定の量の線を含み、ビーム402の配置に基づく所定の寸法を有する。例えば、システムが10μmピッチで間隔をあけた10×10個のビームのアレイを含む場合、フレーム幅「x」は約1μmであり、長さ「y」は、走査電子機器および光学系がサポートできるだけ長くすることができ、この場合は10μmである。5nmの画素サイズを仮定すると、フレームラインは、「y「方向に2000画素を有し、「x」方向に200画素を有し、これは200本の走査線に対応する。フレーム内の走査線は、システム300内の直交線よりも長さがはるかに長いので、システム400では、書き込み時間と帰線時間との比がはるかに大きい。偏向システム404はまた、試料408全体を走査するために、以前に書き込まれたフレーム416の上に現在のフレーム418を積み重ねるように構成される。いくつかの実施形態では、偏向器の「高速」軸は、y軸(例えば、ステージ運動と平行)にあり、「低速」軸は、x軸にある。いくつかの実施形態では、電子ラスタ走査機能は、他の典型的なSEMで見られるものと形態が異ならない;それらは、特徴的な線形ランプ領域と、鋸歯関数がリセットされる戻り時間とを有する鋸歯関数として成形される。他の実施形態では、電子機器ラスタ走査機能は、別のラインに隣接する各ラインが、他のラインと反対方向に書き込まれるように、鋸歯状運動ではなく蛇行運動でラスタ走査するように構成されるであろう。そのような実施形態では、帰線時間はさらに低減される。
【0023】
図4Bは、本開示の実施形態による、平行スワスを有するマルチビームシステム400の上面図である。図3Bと同様に、図4Bは、放出(エミッタ)源の視点からの上面図である。各矩形フレームはビーム402によって書かれる。システム400は、現在のフレーム418を前のフレーム416の上に積み重ねるように構成される。システム300と同様に、各ビーム402は、他のビーム402と同時に線を書き込む。
【0024】
図5Aは、本開示の実施形態による、試料の視点からの1つのスワス単位を示す。フレーム518は、偏向システムがステージの移動を説明するので、試料の視点から長方形のように見える。図5Bは、本開示の実施形態による偏向システムの視点からの1つのスワス単位を示す。フレーム518は、方向514におけるステージの移動を説明する平行四辺形に似ている。
【0025】
いくつかの実施形態では、ステージが連続的に移動しているので、各ラインは、1つのラインが書き込まれた時間にステージが蓄積したシフトに対抗しなければならない。そのような実施形態では、実際のビデオフレームは矩形フレームではなく、むしろ平行四辺形であり、その傾きはステージスワス速度に正確に対抗する。そのような実施形態では、これは、長方形の画像フレームを生成するであろう。他の実施形態では、スキャン電子機器は実際に矩形をスキャンする。しかしながら、そのような実施形態では、実際の画像フレームは、矩形の代わりにタイル化された平行四辺形である。平行四辺形である画像フレームを組み込むシステムは、標準的な画像分析アルゴリズムが典型的に正方形の画素を仮定するため、平行四辺形の形状の画素を考慮するために、画像分析アルゴリズムに対する修正を含む必要がある。
【0026】
様々な実施形態によれば、書き込み線またはフレームの幅は、マルチビームアレイの物理的配置に応じて変化する。いくつかの実施形態では、ビームの2D配列は、スワスステージの移動により、本質的に単一次元に折り畳まれる。図6は、本開示の実施形態による、従来のスワスティングを使用するマルチビームシステムのための走査線書き込みを示す。図6に示されるように、ビーム622および624は物理的にビーム602の垂直下に位置するが、スワスステージの移動は、2D配置をビームの単一の列に効果的に変化させる。線616の幅は、マルチビームの物理的配置によって制限および/または画定される。図7は、本開示の実施形態による、並列スワスティングを使用するマルチビームシステムのための走査線書き込みを示す。マルチビームの配置は図6と同じである。各矩形フレーム716および718の幅は、ビーム702,722,および742の配置によって画定される。図6と同様に、スワスステージの移動は、ビームの2D配置をビームの単一の列に効果的に変化させる。図6および7から分かるように、平行スワスは、はるかに効率的な走査線をもたらす。
【0027】
図8は、本開示の実施形態によるマルチビーム電子走査システムの一例を示す。システム800は、電子放出(エミッタ)源850を含む。電子エミッタ源850は、照明ビーム852を放出する。システム800はまた、照明ビーム852を複数の電子ビーム802に分割するように構成されたビームスプリッタレンズアレイ840を含む。次に、マルチビーム802は、電子偏向器804によって試料808上に偏向される。一部の実施態様においては、電子偏向器804が、上述の方法を用いて試料を走査するように構成された走査偏向器である。
【0028】
図9は、本開示の実施形態による、並列電子走査のための方法を示すフロー図である。方法900は、電子放出(エミッタ)源から照明ビームを放出すること(902)で始まる。次いで、照明ビームは、ビームスプリッタレンズアレイを使用して複数の電子ビームに分割される(904)。次に、電子ビームの各々は、電子偏向システムを介して、2つの異なる軸に沿った複数の方向に偏向される(906)。いくつかの実施形態では、複数の方向は第1の方向を含む。最後に、試料は、第2の方向に一定の速度でスワスステージ上で移動される(908)。いくつかの実施形態では、第2の方向は第1の方向と平行である。
【0029】
いくつかの実施形態では、電子偏向システムはさらに、所定の長さの時間または所定の走査距離にわたって第1の方向に沿って各電子ビームを偏向するように構成される。いくつかの実施形態では、電子偏向システムは、電子偏向システムが所定の長さの時間または所定の走査距離の終わりまで電子ビームを偏向した後に、電子偏向システムが電子ビームを第1の方向に直交するまたは実質的に直交する第3の方向に移動させるようにさらに構成される。いくつかの実施形態では、電子偏向システムは、電子ビームが第3の方向に移動した後、電子偏向システムが電子ビームを第2の方向に平行な第4の方向に移動させるようにさらに構成される。いくつかの実施形態では、電子偏向システムは、試料の視点から積み重ねられた矩形のグループに走査線を書き込むように構成され、各矩形は、所定の数の走査線を含む。いくつかの実施形態では、各長方形は、試料の走査領域を表し、別のラインに隣接する各ラインは、他のラインと反対方向に書き込まれる。いくつかの実施形態では、各ラインは同じ方向に走査される。いくつかの実施形態では、矩形は、電子偏向システムの視点から平行四辺形として書かれ、スワスステージの一定の速度である。
【0030】
図10は、本開示の実施形態によるコンピュータシステムの一例を示す。特定の実施形態によれば、本開示の特定の実施形態を実施するのに適したシステム1000は、プロセッサ1001と、メモリ1003と、インターフェース1011と、バス1015(例えば、PCIバスまたは他の相互接続ファブリック)とを含む。適切なソフトウェアまたはファームウェアの制御下で動作するとき、プロセッサ1001は、オペレーティングシステムカーネル、コンテナ化ストレージドライバ、および1つまたは複数のアプリケーションなどのアプリケーションを実装する役割を果たす。プロセッサ1001の代わりに、またはプロセッサ1001に加えて、様々な特別に構成されたデバイスを使用することもできる。インターフェース1011は、典型的には、ネットワークを介してデータパケットまたはデータセグメントを送受信するように構成される。
【0031】
サポートされるインターフェースの特定の例は、イーサネット(登録商標)インターフェース、フレームリレーインターフェース、ケーブルインターフェース、DSLインターフェース、トークンリングインターフェースなどを含む。さらに、高速イーサネット(登録商標)インターフェース、ギガビットイーサネット(登録商標)インターフェース、ATMインターフェース、HSSIインターフェース、POSインターフェース、FDDIインターフェースなど、様々な非常に高速のインターフェースを提供することができる。一般に、これらのインターフェースは、適切な媒体との通信に適したポートを含むことができる。場合によっては、それらはまた、独立したプロセッサ、場合によっては揮発性RAMを含んでもよい。独立したプロセッサは、パケット交換、メディア制御および管理などの通信集約的タスクを制御することができる。
【0032】
様々な実施形態によれば、システム1000は、本明細書に示すように、電子走査システムを実行するように構成されたコンピュータシステムである。いくつかの実施形態では、プロセッサ1001は、上述の方法のすべてのステップ、ならびに上述のまたは上述のプロセスを実装するために必要な任意の機能またはプロセスを実行するように構成される。いくつかの実装形態では、コンピュータ構成要素のうちの1つまたは複数が仮想化され得る。例えば、物理サーバは、局所化された環境またはクラウド環境において構成され得る。物理サーバは、電子走査システムが実行される1つ以上の仮想サーバ環境を実装してもよい。特定のコンピュータシステムが説明されるが、種々の代替構成が可能であることを認識されたい。例えば、モジュールは、コンピュータシステムに接続された別のデバイス上に実装されてもよい。
【0033】
ここで提示される本開示のある実施形態は、概して、半導体検査およびプロセス制御の分野に対処し、上記で要約されるハードウェア、アルゴリズム/ソフトウェア実装およびアーキテクチャ、ならびに使用事例に限定されない。
【0034】
前述の開示は、理解を明確にする目的である程度詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲内で特定の変更および修正が実施され得ることは明らかであろう。本開示のプロセス、システム、および装置を実装する多くの代替方法があることに留意されたい。したがって、本実施形態は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきであり、本開示は、本明細書に与えられる詳細に限定されない。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】