(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】キナーゼ阻害剤およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07D 205/04 20060101AFI20231220BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231220BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231220BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20231220BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231220BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20231220BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20231220BHJP
C07D 207/14 20060101ALI20231220BHJP
C07D 211/60 20060101ALI20231220BHJP
A61K 31/397 20060101ALI20231220BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20231220BHJP
A61K 31/4462 20060101ALI20231220BHJP
C07D 401/12 20060101ALI20231220BHJP
A61K 31/4427 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C07D205/04 CSP
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/14
A61P21/00
C07D207/14
C07D211/60
A61K31/397
A61K31/40
A61K31/4462
C07D401/12
A61K31/4427
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536389
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 US2021063724
(87)【国際公開番号】W WO2022133040
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520096736
【氏名又は名称】エイビーエム セラピューティックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】チェン チェン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063CC12
4C063DD02
4C063EE01
4C084AA19
4C084MA02
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC02
4C086BC07
4C086BC21
4C086GA06
4C086GA08
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA94
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
キナーゼ阻害剤、そのような化合物を含む薬学的組成物、およびそのような化合物または組成物を用いる方法、例えば、がんもしくは腫瘍などの増殖異常、またはいくつかの態様では、キナーゼ、例えば、MEK、COT1、FGFR4、MINK、MYO3A、PKG1B、およびPLK3などであるがそれらに限定されないキナーゼの調節異常に関連する疾患もしくは障害を治療する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体:
式中、
G
1はCHまたはCR
2であり、
G
2、G
3、およびG
4は互いに独立してN、CH、またはCR
2であるが;
但し、G
2、G
3、およびG
4のうちの少なくとも2つは互いに独立してCHまたはCR
2であり;
さらに、但し、G
1がCHであれば、G
2、G
3、およびG
4のうちの少なくとも1つはNまたはCR
2であり;
mは0、1、2、3、4、または5であり;
pは0、1、2、3、または4であり;
qは1、2、または3であり;
各R
1は独立して、ハロゲン、OH、NH
2、NO
2、CN、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル、置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル、置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-N(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)
2、-NH[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]
2、-C(=O)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル)からなる群より選択され;
各R
2は独立して、ハロゲン、OH、NH
2、NO
2、CN、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル、置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル、置換されていてもよいC
1~C
6ハロアルキル、置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ、-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-O-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-N(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)
2、-NH[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]
2、-C(=O)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル)からなる群より選択され;
各R
3は独立して、ハロゲン、OH、NH
2、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
1~C
6ハロアルキル、-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン-COOH、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン-C(=O)-O-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-N(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)
2、-NH[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]
2、-C(=O)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル)からなる群より選択され;かつ
R
4は、水素、ハロゲン、OH、NH
2、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
1~C
6ハロアルキル、-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン-COOH、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン-C(=O)-O-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-N(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)
2、-NH[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]
2、-C(=O)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル)からなる群より選択される。
【請求項2】
式(I)の化合物が、式(I-1)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体であり、
式中、G
1、G
2、G
3、G
4、p、q、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、式(I)に関して規定した通りである、
請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項3】
式(I)の化合物が、式(I-2a)、(I-2b)もしくは(I-2c)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体であり、
式中、G
1、G
2、G
3、G
4、p、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、式(I)に関して規定した通りである、
請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項4】
式(I)の化合物が、式(I-3a)、(I-3b)もしくは(I-3c)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体であり、
式中、G
1、G
2、G
3、G
4、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、式(I)に関して規定した通りである、
請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項5】
G
1がCHである、請求項1~4のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項6】
G
1がCR
2である、請求項1~4のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項7】
G
2がNである、請求項1~5のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項8】
G
2がCHである、請求項1~5のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項9】
G
2がCR
2である、請求項1~5のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項10】
G
3がNである、請求項1~8のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項11】
G
3がCHである、請求項1~8のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項12】
G
3がCR
2である、請求項1~8のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項13】
G
4がNである、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項14】
G
4がCHである、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項15】
G
4がCR
2である、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項16】
G
4がCR
2である、請求項1~14のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項17】
G
1がCHであり、G
2がCFであり、G
3がCHであり、G
4がCFである、請求項1~4のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項18】
G
1がCFであり、G
2がCFであり、G
3がCFであり、G
4がCFである、請求項1~4のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項19】
G
1がCHであり、G
2がNであり、G
3がCHであり、G
4がCHである、請求項1~4のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項20】
G
1がCHであり、G
2がNであり、G
3がCHであり、G
4がCFである、請求項1~4のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項21】
G
1がCHであり、G
2がNであり、G
3がCHであり、G
4がCClである、請求項1~4のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項22】
G
1がCHであり、G
2がCHであり、G
3がNであり、G
4がCHである、請求項1~4のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項23】
各R
1が独立して、ハロゲンおよび置換されていてもよいC
2~C
6アルキニルからなる群より選択される、請求項1~22のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項24】
mが2であり、各R
1が独立して、ハロゲンおよび置換されていてもよいC
2~C
6アルキニルからなる群より選択される、請求項1~22のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項25】
一方のR
1がハロゲンであり、他方のR
1が、置換されていてもよいC
2~C
6アルキニルである、請求項24記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項26】
一方のR
1がフルオロであり、他方のR
1がエチニルである、請求項25記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項27】
各R
1が独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群より選択される、請求項24記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項28】
一方のR
1がフルオロであり、他方のR
1がヨードである、請求項27記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項29】
一方のR
1がクロロであり、他方のR
1がブロモである、請求項27記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項30】
R
4が水素である、請求項1~29のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項31】
R
4が、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
1~C
6ハロアルキル、および-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]からなる群より選択される、請求項1~29のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項32】
R
4が、置換されていてもよいC
1~C
6アルキルである、請求項31記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項33】
R
4が、メチル、エチル、およびプロプ-2-イルからなる群より選択される、請求項32記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項34】
R
4が、置換されていてもよいC
1~C
6ハロアルキルである、請求項31記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項35】
R
4が2-フルオロエト-1-イルである、請求項34記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項36】
R
4が、-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]である、請求項31記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項37】
R
4が2-メトキシエト-1-イルである、請求項36記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項38】
表1:
の化合物より選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体。
【請求項39】
請求項1~38のいずれか一項記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される希釈剤または担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項40】
請求項1~38のいずれか一項記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、第2の予防剤または治療剤とを含む、組み合わせ。
【請求項41】
対象におけるがんまたは腫瘍などの増殖異常の治療および/または予防における使用のための、請求項1~38のいずれか一項記載の化合物。
【請求項42】
増殖異常またはがんが、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、結腸直腸、前立腺、膵臓、肺、外陰部、甲状腺、肝がん、肉腫、膠芽腫、頭頚部、メラノーマの悪性または良性腫瘍、ならびに皮膚の良性過形成および前立腺の良性過形成などの他の過形成状態からなる群より選択される、請求項41記載の化合物。
【請求項43】
有効量の請求項1~38のいずれか一項記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、請求項39記載の薬学的組成物、または請求項40記載の組み合わせを対象に投与する工程
を含む、対象におけるがんまたは腫瘍などの増殖異常を治療しかつ/または予防するための方法。
【請求項44】
増殖異常またはがんが、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、結腸直腸、前立腺、膵臓、肺、外陰部、甲状腺、肝がん、肉腫、膠芽腫、頭頚部、メラノーマの悪性または良性腫瘍、ならびに皮膚の良性過形成および前立腺の良性過形成などの他の過形成状態からなる群より選択される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
医薬の製造のための、請求項1~38のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項46】
有効量の請求項1~38のいずれか一項記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、請求項39記載の薬学的組成物、または請求項40記載の組み合わせと細胞をインビトロ、エクスビボ、またはインビボで接触させる工程
を含む、MEK、COT1、FGFR4、MINK、MYO3A、PKG1B、およびPLK3からなる群より選択される1つまたは複数のキナーゼの活性を阻害するための方法。
【請求項47】
神経変性疾患の治療における使用のための、請求項1~38のいずれか一項記載の化合物。
【請求項48】
神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病からなる群より選択される、請求項47記載の化合物。
【請求項49】
有効量の請求項1~38のいずれか一項記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、請求項39記載の薬学的組成物、または請求項40記載の組み合わせを対象に投与する工程
を含む、対象における神経変性疾患を治療するための方法。
【請求項50】
神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病からなる群より選択される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
有効量の請求項1~38のいずれか一項記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、請求項39記載の薬学的組成物、または請求項40記載の組み合わせを対象に投与する工程
を含む、対象における免疫不全疾患を治療するための方法。
【請求項52】
神経変性疾患が、からなる群より選択され、免疫不全疾患が、がん、感染症、およびいくつかの遺伝病からなる群より選択される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
有効量の請求項1~38のいずれか一項記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、請求項39記載の薬学的組成物、または請求項40記載の組み合わせと細胞をインビトロ、エクスビボ、またはインビボで接触させる工程
を含む、MEK、COT1、FGFR4、MINK、MYO3A、PKG1B、およびPLK3からなる群より選択される1つまたは複数のキナーゼの活性を阻害するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2020年12月16日に出願の米国仮出願第63/126,364号の優先権および恩典を主張し、その開示はその全体において参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本開示は、化合物と、そのような化合物を含む薬学的組成物と、増殖異常、がんもしくは腫瘍、またはいくつかの態様では、非限定的にはMEKキナーゼなどのキナーゼの調節不全に関連する疾患もしくは障害の治療の方法におけるかまたは治療のための医薬におけるそのような化合物または組成物の使用とに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
本開示は、本明細書において記載される新規な環状アミンおよびそれらの同位体誘導体、ならびにそのような化合物を含有する薬学的組成物による、がん、より具体的には固形腫瘍および脳腫瘍などの、哺乳類、特にヒトにおける異常な細胞成長の治療に関する。加えて、本開示はそのような化合物を調製する方法に関する。
【0004】
キナーゼは高エネルギーのリン酸供与分子から特異的基質へのリン酸基の移動を触媒する酵素である。このプロセスは、基質がリン酸基を獲得し、高エネルギーATP分子がリン酸基を供与する、リン酸化として公知である。このエステル交換はリン酸化された基質およびADPを生成する。
【0005】
キナーゼはそれらが作用する基質によってプロテインキナーゼ、脂質キナーゼ、炭水化物キナーゼという広範なグループに分類される。キナーゼは細菌からカビ、蠕虫、哺乳類に至るまで様々な種で見ることができる。500を超える異なるキナーゼがヒトでは同定されてきた。
【0006】
MAPキナーゼ(MAPK)は様々な細胞外成長シグナルに応答するセリン/スレオニンキナーゼのファミリーである。例えば、成長ホルモン、上皮成長因子、血小板由来成長因子、およびインスリンはすべてMAPK経路に関与し得る細胞分裂促進刺激と考えられる。受容体レベルでのこの経路の活性化はシグナル伝達カスケードを開始し、これによりRas GTPaseがGDPをGTPと入れ替える。次に、RasはRafキナーゼ(MAPKKKとしても公知)を活性化し、これはMEK(MAPKK)を活性化する。MEKはMAPK(ERKとしても公知)を活性化し、これは次に転写および翻訳を調節し得る。RAFおよびMAPKはいずれもセリン/スレオニンキナーゼであるが、MAPKKはチロシン/スレオニンキナーゼである。
【0007】
MAPK経路の発がん能がこれを臨床的に重要なものにしている。これは制御されない成長およびその後の腫瘍形成に繋がり得る細胞プロセスに関連付けられている。この経路内の変異は、いずれも様々な形態のがんに関連付けられている細胞分化、増殖、生存、およびアポトーシスに対するその調節効果を変化させる。
【0008】
そのようなキナーゼはメラノーマ、結腸直腸がん、甲状腺がん、グリオーマ、乳がんおよび肺がんなどの一般的なヒトがんにおいて高頻度で異常に発現されることが公知である。
【0009】
キナーゼの阻害は、哺乳類のがん細胞の成長を妨害するための、ひいては、特定の形態のがんを治療するための、有用な方法である。ピロロピリジンおよびアニリノピリミジン誘導体などの様々な化合物がキナーゼ阻害特性を有することが示されてきた。多くの特許公報は特定の二環式誘導体、特にキナゾリノン誘導体に言及している。
【0010】
多様な化学構造を備えたいくつかの化合物がMEK阻害剤へと発展し、それらのうちの4つ(トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブおよびセルメチニブ)は強力なアロステリックMEK1/2阻害剤として記載されている。例えば、トラメチニブは低ナノモル範囲でMEK1/2酵素を阻害する。
【0011】
しかしながら、それらの構造的な特徴により、これらのキナーゼ阻害剤の多くが示す薬物動態特性は不十分であり、それらのいくつかはP-糖タンパク質(P-gp)または乳がん耐性タンパク質(BCRP)などのアクティブトランスポーターの基質になり、細胞膜や脳に浸透する傾向は非常に低い。したがって、それらは血液脳関門(BBB)によって保護されている脳における腫瘍またはがんの治療のために用いられるには適していない。
【0012】
よって、特定のキナーゼの選択的阻害剤である本開示の化合物は、哺乳類における異常な細胞成長、特にがんの治療に有用である。加えて、これらの化合物は細胞膜の浸透性が良好であり、したがって、ヒトにおける脳腫瘍を含む腫瘍またはがんを治療するために有用である。
【発明の概要】
【0013】
概要
1つの局面では、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体が提供され:
式中、
G
1はCHまたはCR
2であり、
G
2、G
3、およびG
4は互いに独立してN、CH、またはCR
2であるが;
但し、G
2、G
3、およびG
4のうちの少なくとも2つは互いに独立してCHまたはCR
2であり;
さらに、但し、G
1がCHであれば、G
2、G
3、およびG
4のうちの少なくとも1つはNまたはCR
2であり;
mは0、1、2、3、4、または5であり;
pは0、1、2、3、または4であり;
qは1、2、または3であり;
各R
1は独立して、ハロゲン、OH、NH
2、NO
2、CN、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル、置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル、置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-N(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)
2、-NH[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]
2、-C(=O)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル)からなる群より選択され;
各R
2は独立して、ハロゲン、OH、NH
2、NO
2、CN、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル、置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル、置換されていてもよいC
1~C
6ハロアルキル、置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ、-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-O-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-N(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)
2、-NH[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]
2、-C(=O)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル)からなる群より選択され;
各R
3は独立して、ハロゲン、OH、NH
2、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
1~C
6ハロアルキル、-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン-COOH、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン-C(=O)-O-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-N(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)
2、-NH[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]
2、-C(=O)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル)からなる群より選択され;かつ
R
4は、ハロゲン、OH、NH
2、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
1~C
6ハロアルキル、-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン-COOH、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン-C(=O)-O-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-N(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)
2、-NH[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]
2、-C(=O)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル)からなる群より選択される。
【0014】
別の局面では、式(I-1)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体が提供され、
式中、G
1、G
2、G
3、G
4、p、q、R
1、R
2、R
3、およびR
4は式(I)に関して規定した通りである。
【0015】
別の局面では、式(I-2a)、(I-2b)もしくは(I-2c)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体が提供され、
式中、G
1、G
2、G
3、G
4、p、R
1、R
2、R
3、およびR
4は式(I)に関して規定した通りである。
【0016】
別の局面では、式(I-3a)、(I-3b)もしくは(I-3c)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体が提供され、
式中、G
1、G
2、G
3、G
4、R
1、R
2、R
3、およびR
4は式(I)に関して規定した通りである。
【0017】
いくつかの態様では、表1の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体が提供される。
【0018】
いくつかの局面では、本明細書において記載されるいずれかの式の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体と、薬学的に許容される希釈剤または担体とを含有する薬学的組成物が提供される。
【0019】
いくつかの局面では、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の少なくとも1つの化合物、または表1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体と、第2の予防剤または治療剤とを含有する組み合わせが提供される。
【0020】
いくつかの局面では、対象におけるがんまたは腫瘍などの増殖異常の治療および/または予防における使用のための式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物などの式(I)の化合物、または表1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体が提供される。いくつかの態様では、増殖異常またはがんは、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、結腸直腸、前立腺、膵臓、肺、外陰部、甲状腺、肝がん、肉腫、膠芽腫、頭頚部、メラノーマの悪性または良性腫瘍、ならびに皮膚の良性過形成および前立腺の良性過形成などの他の過形成状態からなる群より選択される。
【0021】
いくつかの局面では、対象におけるがんまたは腫瘍などの増殖異常を治療しかつ/または予防する方法であって、有効量の本明細書において示されるいずれかの式の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体、または本明細書において開示されるいずれかの式の化合物を含有する薬学的組成物、または本明細書において開示されるいずれかの式を含有する組み合わせを対象に投与する工程を含む方法が提供される。いくつかの態様では、増殖異常またはがんは、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、結腸直腸、前立腺、膵臓、肺、外陰部、甲状腺、肝がん、肉腫、膠芽腫、頭頚部、メラノーマの悪性または良性腫瘍、ならびに皮膚の良性過形成および前立腺の良性過形成などの他の過形成状態からなる群より選択される。
【0022】
いくつかの局面では、本開示は、医薬の製造のための、本明細書において記載されるいずれかの式の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体の使用を提供する。
【0023】
いくつかの局面では、本開示は、MEKなどの関連するキナーゼの阻害に感受性がある増殖異常、がん、または腫瘍を有する対象において抗増殖または抗転移効果をもたらすための方法であって、有効量の本明細書において示されるいずれかの式の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体、または本明細書において開示されるいずれかの式の化合物を含有する薬学的組成物、または本明細書において開示されるいずれかの式を含有する組み合わせを対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0024】
いくつかの局面では、神経変性疾患の治療における使用のための、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物などの式(I)の化合物、または表1の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体が提供される。いくつかの態様では、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病からなる群より選択される。
【0025】
いくつかの局面では、本開示は対象における神経変性疾患を治療するための方法を提供する。いくつかの態様では、方法は、有効量の本明細書において示されるいずれかの式の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体、または本明細書において開示されるいずれかの式の化合物を含有する薬学的組成物、または本明細書において開示されるいずれかの式を含有する組み合わせを対象に投与する工程を含む。いくつかの態様では、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病からなる群より選択される。
【0026】
いくつかの局面では、本開示は対象における免疫不全疾患を治療するための方法を提供する。いくつかの態様では、方法は、有効量の本明細書において示されるいずれかの式の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体、または本明細書において開示されるいずれかの式の化合物を含有する薬学的組成物、または本明細書において開示されるいずれかの式を含有する組み合わせを対象に投与する工程を含む。いくつかの態様では、免疫不全疾患は、がん、感染症、およびいくつかの遺伝病からなる群より選択される。
【0027】
また別の局面では、細胞におけるMEK、COT1、FGFR4、MINK、MYO3A、PKG1B、およびPLK3などの1つまたは複数のキナーゼの活性を阻害するための方法であって、有効量の本明細書において示されるいずれかの式の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体、または本明細書において開示されるいずれかの式の化合物を含有する薬学的組成物、または本明細書において開示されるいずれかの式を含有する組み合わせと細胞をインビトロ、エクスビボ、またはインビボで接触させる工程を含む方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
定義
特に定義されていない限り、本明細書において用いられるすべての技術的および科学的用語は本発明が属する技術分野における当業者によって通常は解釈されるものと同じ意味を有する。本明細書において参照されるすべての特許、出願、公開済みの出願、および他の出版物はそれらの全体において参照により組み入れられる。このセクションに記された定義が参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、または他の出版物に記された定義と矛盾するかまたはそうでなければ一致していない場合は、参照により本明細書に組み入れられる定義よりもこのセクションに記された定義が優先される。
【0029】
本明細書において用いるように、「1つの(a)」または「1つの(an)」は「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味する。
【0030】
本明細書において用いるように、本明細書における「約」のついた値またはパラメータへの言及はその値またはパラメータ自体へ向けられた態様を含む(かつ記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は「X」の記載を含む。
【0031】
特に明示されていない限り、本明細書において用いられる「個体」または「対象」は、ヒト、ウシ、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、およびヒツジ動物を非限定的に含む哺乳類を意図している。よって、本明細書において提供される組成物および方法は、農業用動物および家庭用ペットにおける用途を含む、ヒトの医療および獣医学的文脈の両方における用途がある。個体はがんなどの本明細書において記載される状態を有すると診断されたか、またはその疑いがあるヒトであり得る。個体はがんなどの本明細書において記載される状態に伴う1つまたは複数の症状を呈するヒトであってもよい。個体はがんなどの本明細書において記載される状態に伴う変異したかまたは異常な遺伝子を有するヒトであってもよい。個体は、がんなどの本明細書において記載される状態を、遺伝的にか何かで発症する傾向があるかまたは発症するリスクがあるヒトであってもよい。
【0032】
本明細書において用いるように、「治療」または「治療する」とは臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本明細書において提供される組成物および方法の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果は以下のうちの1つまたは複数を非限定的に含む:状態に起因する1つまたは複数の症状を軽減すること、状態の程度を小さくすること、状態を安定化させること(例えば、状態の悪化を防止するかまたは遅延すること)、状態の拡大(例えば、転移)を防止するかまたは遅延すること、状態の進行を遅延するかまたは遅らせること、病状を改善すること、疾患の寛解(部分的かまたは全面的かに関わらず)をもたらすこと、状態を治療するために要する1つまたは複数の他の薬剤の用量を低減すること、状態を治療するために用いられる別の薬剤の効果を高めること、状態を有する個体の生活の質を向上すること、および/または生存期間を延ばすこと。がんを治療する方法はがんの病理学的帰結の減少を包含する。本明細書において記載される方法は治療のこれらの局面のうちの任意の1つまたは複数を企図している。
【0033】
本明細書において用いられるように、「リスクのある」個体とはがんなどの本明細書において記載される疾患または状態を発症するリスクのある個体である。「リスクのある」個体は検出可能な疾患を有していてもいなくてもよく、本明細書において記載される治療方法に先立って検出可能な疾患を示したことがあってもなくてもよい。「リスクのある」とは、個体ががんなどの本明細書において記載される疾患または状態の発症と相関する測定可能なパラメータである1つまたは複数のいわゆるリスクファクタを有することを表している。1つまたは複数のこれらのリスクファクタを有する個体は、これらのリスクファクタのない個体よりも疾患または状態を発症する可能性が高い。
【0034】
本明細書において用いるように、「併用療法」とは2つ以上の異なる化合物を含む療法を意味する。よって、1つの局面では、本明細書において詳述される化合物と他の化合物とを含む併用療法が提供される。いくつかのバリエーションでは、併用療法は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体もしくは賦形剤、非薬学的活性化合物、および/または不活性物質を任意で含む。様々な態様では、併用療法による治療は、本明細書において提供される単一の化合物の単独の投与と比較して、付加的であるかまたは相乗的でさえある(例えば、付加的よりも大きな)結果をもたらすことがある。いくつかの態様では、個々の療法について一般的に用いられる量と比較して、各化合物がより少ない量で併用療法の一部として用いられる。好ましくは、個々の化合物のいずれかを単独で用いるよりも、併用療法を用いて、同一またはより大きな治療的利益が達成される。いくつかの態様では、同一またはより大きな治療的利益が、個々の化合物または治療について一般的に用いられる量と比較して、併用療法においては化合物をより少ない量(例えば、より低い用量またはより少ない頻度の投薬スケジュール)で用いて達成される。好ましくは、化合物の少量の使用は化合物に伴う1つまたは複数の副作用の数、重症度、頻度、および/または期間の減少をもたらす。
【0035】
本明細書において用いるように、「有効量」という用語は本明細書において提供される化合物の、効能および毒性のそのパラメータと組み合わせて、所与の治療形態において有効となる量を意図している。当技術分野において理解されているように、有効量は1つまたは複数の用量であってもよく、すなわち、単回用量または複数回用量が所望の治療エンドポイントを達成するために必要とされることがある。有効量は1つまたは複数の治療剤を投与する文脈で考慮されてもよいし、1つまたは複数の別の剤と組み合わされて所望のまたは有益な結果が達成される可能性があるかまたは達成されるのであれば、単一の剤が有効量で与えられることが考慮されてもよい。任意の同時投与化合物の好適な用量は、化合物の複合作用(例えば、相加的または相乗的効果)により任意で低減してもよい。様々な態様では、有効量の組成物または療法剤は、(i)がん細胞の数を減少させる;(ii)腫瘍サイズを減少させる;(iii)末梢器官へのがん細胞の浸潤を阻害するか、遅延させるか、ある程度遅らせるか、好ましくは停止させる;(iv)腫瘍転移を阻害する(例えば、ある程度遅らせる、好ましくは停止させる);(v)腫瘍成長を阻害する;(vi)腫瘍の発生および/または再発を防止するかまたは遅延させる;かつ/または(vii)がんに伴う1つまたは複数の症状をある程度緩和することがある。様々な態様では、該量は、がんなどの本明細書において記載される疾患または状態の1つまたは複数の症状を改善する、軽減する、減らす、および/または遅延させるのに十分なものである。
【0036】
当技術分野において理解されているように、「有効量」は1つまたは複数の用量であってもよく、すなわち、単回用量または複数回用量が所望の治療エンドポイントを達成するために必要とされることがある。有効量は1つまたは複数の治療剤を投与する文脈で考慮されてもよいし、1つまたは複数の別の剤と組み合わせて所望のまたは有益な結果が達成される可能性があるかまたは達成されるのであれば、化合物またはその薬学的に許容される塩は有効量で与えられることが考慮されてもよい。
【0037】
「治療有効量」とは、所望の治療成績をもたらす(例えば、がんなどの本明細書において記載される疾患または状態の1つまたは複数の症状の重症度または期間を低減すること、症状の重症度を安定化させること、または症状を排除すること)のに十分な化合物またはその塩の量を指す。治療的使用のためには、有益なまたは所望の結果は、例えば、疾患または状態の発症時に現れるその合併症および中間的な病理学的表現型を含む、疾患に起因する1つまたは複数の症状(生化学的、組織学的および/または行動学的)を軽減すること、疾患または状態を患うものの生活の質を向上させること、疾患または状態を治療するために必要な他の薬物の用量を低減すること、別の薬物の効果を高めること、疾患または状態の進行を遅延すること、および/または患者の生存期間を延ばすことを含む。
【0038】
予防的有効量を含む、化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量は、個体ががんの既往歴を有しかつ概して(必ずしもというわけではないが)手術(例えば外科的切除)、放射線療法、化学療法を非限定的に含む療法に応答性があった臨床環境を指すアジュバント環境において個体に与えられてもよいと理解される。しかしながら、これらの個体は、それらのがんの既往歴によりがんを発症するリスクがあると見なされる。「アジュバント環境」における治療または投与とはその後の治療様式を指す。
【0039】
本明細書において用いるように、「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」とは、生物学的にか何かで望ましくないものではない材料を意味し、例えば、該材料は、任意の顕著で望ましくない生物学的効果を引き起こしたりまたはそれが含有されている組成物の他の成分のどれとも有害な様式で相互作用したりすることなく、患者に投与される薬学的組成物に組み込まれ得る。薬学的に許容される担体または賦形剤は、毒物学的および製造試験の要件を満たし、かつ/または米国食品医薬品局が作成したInactive Ingredient Guideに含まれていることが好ましい。
【0040】
「薬学的に許容される塩」とは、遊離(塩ではない)化合物の生物活性の少なくとも一部を保持しかつ薬物または医薬品として個体に投与し得る塩である。そのような塩は、例えば:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸と形成されるかまたは酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸などの有機酸と形成される酸付加塩;(2)親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンによって置き換えられるか;または有機塩基と配位するかのいずれかの際に形成される塩を含む。許容される有機塩基はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを含む。許容される無機塩基は水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどを含む。薬学的に許容される塩は、製造プロセスにおいてインサイチュで、またはその遊離酸もしくは塩基の形態で本明細書において提供される精製された化合物を好適な有機もしくは無機塩基または酸とそれぞれ別々に反応させ、このように形成された塩をその後の精製時に単離することによって調製し得る。
【0041】
本明細書において用いられる「賦形剤」という用語は、本明細書において提供される化合物を有効成分として含有する錠剤などの薬物または医薬品の製造において用いられることがある不活性または非活性の物質を意味する。賦形剤という用語によって、バインダー、崩壊剤、コーティング、圧縮/カプセル化助剤、クリームもしくはローション、滑剤、非経口投与用溶液、チュアブル錠用材料、甘味料もしくは香料、懸濁/ゲル化剤、または湿式造粒剤として用いられる任意の物質を非限定的に含む、様々な物質が包含されることがある。バインダーは、例えば、カルボマー、ポビドン、キサンタンガムなどを含み;コーティングは、例えば、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ジェランガム、マルトデキストリン、腸溶コーティングなどを含み;圧縮/カプセル化助剤は、例えば、炭酸カルシウム、デキストロース、フルクトースdc(dc = "直接圧縮可能")、ハニーdc、ラクトース(無水物または一水和物;任意でアスパルテーム、セルロース、または微結晶性セルロースと組み合わせたもの)、デンプンdc、スクロースなどを含み;崩壊剤は、例えば、クロスカルメロースナトリウム、ジェランガム、デンプングリコール酸ナトリウムなどを含み;クリームまたはローションは、例えば、マルトデキストリン、カラギーナンなどを含み;滑剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウムなどを含み;チュアブル錠用材料は、例えば、デキストロース、フルクトースdc、ラクトース(一水和物、任意でアスパルテームまたはセルロースと組み合わせたもの)などを含み;懸濁/ゲル化剤は、例えば、カラギーナン、デンプングリコール酸ナトリウム、キサンタンガムなどを含み;甘味料は、例えば、アスパルテーム、デキストロース、フルクトースdc、ソルビトール、スクロースdcなどを含み;湿式造粒剤は、例えば、炭酸カルシウム、マルトデキストリン、微結晶セルロースなどを含む。
【0042】
「アルキル」は飽和した直鎖または分岐鎖一価炭化水素構造およびそれらの組み合わせを指しかつ含む。具体的なアルキル基は1~20個の炭素原子を有するものである(「C1~C20アルキル」)。より具体的なアルキル基は1~8個の炭素原子(「C1~C8アルキル」)または1~6個の炭素原子(「C1~C6アルキル」)を有するものである。特定の炭素数を有するアルキル残基の名前が挙げられている場合、その炭素数を有するすべての幾何異性体を包含しかつ記載していることが意図されており;よって、例えば、「ブチル」はn-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、およびtert-ブチルを含むことを意味しており;「プロピル」はn-プロピルおよびイソ-プロピルを含む。この用語はメチル、t-ブチル、n-ヘプチル、オクチルなどの基によって例示される。
【0043】
「アルケニル」は少なくとも1つのオレフィン性不飽和部位を有する(すなわち、少なくとも1つの式C=C部分を有する)、好ましくは2~10個の炭素原子、より好ましくは2~8個の炭素原子を有する不飽和炭化水素基を指す。アルケニルの例は-CH2-CH=CH-CH3および-CH=CH-CH=CH2を非限定的に含む。
【0044】
「アルキニル」は少なくとも1つのアセチレン性不飽和部位を有する(すなわち、少なくとも1つの式C≡C部分を有する)、好ましくは2~10個の炭素原子、より好ましくは2~8個の炭素原子などを有する不飽和炭化水素基を指す。
【0045】
「アルコキシ」という用語は-O-アルキル基を指し、ここでOは分子の残り部分に対する結合点であり、アルキルは上に規定した通りである。
【0046】
「チオアルコキシ」という用語は-S-アルキル基を指し、ここでSは分子の残り部分に対する結合点であり、アルキルは上に規定した通りである。
【0047】
「ハロアルキル」は1、2、3、4、5、6、7、8、または9つのハロ置換基などの1つまたは複数のハロ置換基を備えたアルキル基を指す。ハロアルキル基の例は-CF3、-(CH2)F、-CHF2、CH2Br、-CH2CF3、- CH2CHF2、および-CH2CH2Fを含む。
【0048】
「炭素環」、「炭素環式」、または「カルボシクリル」は、3~13個の環炭素原子を有する単環または複数の縮合環を有する飽和または不飽和の非芳香族環状炭化水素基などを指す。1つを超える環を含む炭素環は縮合、スピロもしくは架橋、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。縮合環系では1つまたは複数の環はアリールであり得る。少なくとも1つの環が芳香性である1つを超える環を有する炭素環は非芳香環位置または芳香環位置のいずれかで親構造に結合してもよい。1つのバリエーションでは、少なくとも1つの環が芳香性である1つを超える環を有する炭素環は非芳香環位置で親構造に結合している。
【0049】
「ヘテロ環」、「ヘテロ環式」、または「ヘテロシクリル」は、単環または複数の縮合環を有し、1~10個の環炭素原子と1~4個の窒素、硫黄または酸素などの環ヘテロ原子とを有する飽和または不飽和の非芳香族基などを指す。1つを超える環を含むヘテロ環は縮合、スピロもしくは架橋、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。縮合環系では1つまたは複数の環はアリールまたはヘテロアリールであり得る。少なくとも1つの環が芳香性である1つを超える環を有するヘテロ環は非芳香環位置または芳香環位置のいずれかで親構造に結合してもよい。1つのバリエーションでは、少なくとも1つの環が芳香性である1つを超える環を有するヘテロ環は非芳香環位置で親構造に結合している。
【0050】
「アリール」または「Ar」は単環(例えば、フェニル)または、縮合環が芳香性であってもなくてもよい複数の縮合環(例えば、ナフチルまたはアントリル)を有する不飽和芳香族炭素環式基を指す。1つのバリエーションでは、アリール基は6~14個の環炭素原子を含有する。少なくとも1つの環が非芳香性である1つを超える環を有するアリール基は芳香環位置または非芳香環位置のいずれかで親構造に結合していてもよい。1つのバリエーションでは、少なくとも1つの環が非芳香性である1を超える環を有するアリール基は芳香環位置で親構造に結合している。
【0051】
「ヘテロアリール」または「HetAr」は1~10個の環炭素原子と、窒素、酸素および硫黄などのヘテロ原子を非限定的に含む少なくとも1つの環ヘテロ原子とを有する不飽和芳香族炭素環式基を指す。ヘテロアリール基は単環(例えば、ピリジル、フリル)または、縮合環が芳香性であってもなくてもよい複数の縮合環(例えば、インドリジニル、ベンゾチエニル)を有してもよい。少なくとも1つの環が非芳香性である1つを超える環を有するヘテロアリール基は芳香環位置または非芳香環位置のいずれかで親構造に結合してもよい。1つのバリエーションでは、少なくとも1つの環が非芳香性である1を超える環を有するヘテロアリール基は芳香環位置で親構造に結合している。
【0052】
「ハロゲン」という用語は塩素、フッ素、臭素、またはヨウ素を表す。「ハロ」という用語はクロロ、フルオロ、ブロモ、またはヨードを表す。「ハロゲン」および「ハロ」という用語は均等であると理解され、置換基を指す場合には互換的に用いてもよい。
【0053】
「置換された」という用語は、特定された基または部分が、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボニルアルコキシ、アシルアミノ、アミノ、アミノアシル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、シアノ、アジド、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、チオール、チオアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、カルボシクリル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、アラルキル、アミノスルホニル、スルホニルアミノ、スルホニル、オキソ、カルボニルアルキレンアルコキシなどの置換基を非限定的に含む1つまたは複数の置換基を備えていることを意味する。「非置換」という用語は特定された基が置換基を備えていないことを意味する。「置換されていてもよい」という用語は特定された基が置換されていないか、または1つもしくは複数の置換基によって置換されていることを意味する。「置換された」という用語が構造系を説明するために用いられる場合、置換は系上の原子価によって許容される位置で起きることを意味する。
【0054】
「実質的に純粋な」化合物の組成物は、組成物が、異なる立体化学形態の化合物であってもよい不純物を15%以下、または好ましくは10%以下、またはより好ましくは5%以下、またはさらにより好ましくは3%以下、最も好ましくは1%以下しか含有していないことを意味する。例を挙げると、実質的に純粋な(S)化合物の組成物は、組成物が(R)形態の化合物を15%以下、または10%以下、または5%以下、または3%以下、または1%以下しか含有していないことを意味する。
【0055】
本明細書において与えられる任意の式は、構造式によって図示される構造を有する化合物ならびに特定のバリエーションまたは形態を表すように意図されている。特に、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物などの本明細書において与えられる任意の式の化合物は不斉中心を有することがあり、したがって、異なるエナンチオマー形態で存在することがある。これらの立体異性体混合物は当業者には公知の方法によって、例えば、クロマトグラフィーまたは分別結晶化によって、それらの物理化学的または光学的差異に基づいてそれらの個々のステレオマーに分割し得る。ジアステレオマーおよびエナンチオマーを含むすべてのそのような異性体は発明の一部と見なされる。一般式の化合物のすべての光学異性体および立体異性体、ならびに任意の比率のそれらの混合物は式の範囲内にあると見なされる。よって、本明細書において与えられる任意の式はラセミ体、1つまたは複数のエナンチオマー形態、1つまたは複数のジアステレオマー形態、1つまたは複数のアトロプ異性体形態、および任意の比率のそれらの混合物を表すように意図されている。さらに、特定の構造は幾何異性体(すなわち、シスおよびトランス異性体)として、互変異性体として、またはアトロプ異性体として存在することがある。加えて、本明細書において与えられる任意の式は、そのような化合物の水和物、溶媒和物、ならびにアモルファスおよび多型形態、ならびにそれらの混合物のいずれか1つをそのような形態が明示的に列挙されていなくても指すことも意図している。いくつかの態様では、溶媒は水であり、溶媒和物は水和物である。
【0056】
本明細書において与えられる任意の式は化合物の非標識形態ならびに同位体標識形態を表すことも意図している。同位体標識された化合物は、1つまたは複数の原子が、選択された原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられていることを除いて、本明細書において与えられる式によって示される構造を有する。本明細書において記載される化合物に組み込まれ得る同位体の例は、それぞれ2H、3H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、36Cl、および125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素、ヨウ素の同位体を含む。重水素(すなわち、2H)などのより重い同位体による置換は、より大きな代謝安定性に起因する特定の治療上の利点、例えば、インビボ半減期の延長または必要な投与量の減少をもたらすことがある。本明細書において記載される同位体標識化合物およびそれらのプロドラッグは、概して、同位体標識されていない試薬を容易に入手可能な同位体標識された試薬で置き換えて、下に記載されるスキームにおいてまたは例および調製において開示される手順を行うことによって調製し得る。
【0057】
本明細書において与えられる任意の式に言及する際には、特定された変数(variable)について可能な種のリストからの具体的な部分の選択肢は、他の箇所で現れる該変数について種のうちの同一の選択肢を規定することを意図していない。言い換えると、変数が1回を超えて出現する場合、特定されたリストからの種の選択肢は、別途記載されていない限り、式における他の箇所での同一の変数についての種の選択肢とは無関係である。
【0058】
帰属(assignment)および名称(nomenclature)に関する前述の解釈上の考慮事項にしたがって、本明細書におけるあるセットへの明示的な言及は、化学的に意味を持ちかつ別途明記されていない場合には、そのようなセットのうちの態様への独立した言及、および、明示的に言及されたセットのうちのサブセットのあらゆる可能な態様に対する言及を暗示していると理解される。
【0059】
例示的化合物
化合物およびそれらの塩(薬学的に許容される塩など)は、概要および添付の請求項を含む本明細書において詳述されている。幾何異性体(シス/トランス)、E/Z異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、およびラセミ混合物を含む任意の比率のそれらの混合物を含むあらゆる立体異性体を含む、本明細書において記載されるすべての化合物、本明細書において記載される化合物の塩および溶媒和物の使用、ならびにそのような化合物を調製する方法も提供される。本明細書において記載される任意の化合物が薬物と呼ばれることもある。
【0060】
1つの局面では、式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体が提供され、
式中、
G
1はCHまたはCR
2であり、
G
2、G
3、およびG
4は互いに独立してN、CH、またはCR
2であるが;
但し、G
2、G
3、およびG
4のうちの少なくとも2つは互いに独立してCHまたはCR
2であり;
さらに、但し、G
1がCHであれば、G
2、G
3、およびG
4のうちの少なくとも1つはNまたはCR
2であり;
mは0、1、2、3、4、または5であり;
pは0、1、2、3、または4であり;
qは1、2、または3であり;
各R
1は独立して、ハロゲン、OH、NH
2、NO
2、CN、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル、置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル、置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-N(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)
2、-NH[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]
2、-C(=O)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル)からなる群より選択され;
各R
2は独立して、ハロゲン、OH、NH
2、NO
2、CN、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル、置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル、置換されていてもよいC
1~C
6ハロアルキル、置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ、-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-O-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-N(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)
2、-NH[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]
2、-C(=O)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル)からなる群より選択され;
各R
3は独立して、ハロゲン、OH、NH
2、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
1~C
6ハロアルキル、-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン-COOH、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン-C(=O)-O-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-N(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)
2、-NH[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]
2、-C(=O)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル)からなる群より選択され;かつ
R
4は、ハロゲン、OH、NH
2、置換されていてもよいC
1~C
6アルキル、置換されていてもよいC
1~C
6ハロアルキル、-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン-COOH、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン-C(=O)-O-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-N(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)
2、-NH[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC
1~C
6アルキレン)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルコキシ)]
2、-C(=O)-(置換されていてもよいC
1~C
6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC
2~C
6アルキニル)からなる群より選択される。
【0061】
式(I)の化合物のいくつかの態様では、mは0である。式(I)の化合物のいくつかの態様では、mは1である。式(I)の化合物のいくつかの態様では、mは2である。式(I)の化合物のいくつかの態様では、mは3である。式(I)の化合物のいくつかのでは、mは4である。式(I)の化合物のいくつかの態様では、mは5である。
【0062】
いくつかの態様では、式(I)の化合物は式(I-1)の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体であり、
式中、G
1、G
2、G
3、G
4、p、q、R
1、R
2、R
3、およびR
4は式(I)に関して規定した通りである。
【0063】
式(I)および(I-1)の化合物のいくつかの態様では、qは1である。式(I)または(I-1)の化合物のいくつかのでは、qは2である。式(I)または(I-1)の化合物のいくつかの態様では、qは3である。
【0064】
いくつかの態様では、式(I)の化合物は式(I-2a)、(I-2b)もしくは(I-2c)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体であり、
式中、G
1、G
2、G
3、G
4、p、R
1、R
2、R
3、およびR
4は式(I)に関して規定した通りである。
【0065】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、および(I-2c)の化合物のいくつかの態様では、pは0である。式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、および(I-2c)の化合物のいくつかの態様では、pは1である。式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、および(I-2c)の化合物のいくつかの態様では、pは2である。式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、および(I-2c)の化合物のいくつかの態様では、pは3である。式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、および(I-2c)の化合物のいくつかの態様では、pは4である。
【0066】
いくつかの態様では、式(I)の化合物は式(I-3a)、(I-3b)、もしくは(I-3c)の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは同位体誘導体であり、
式中、G
1、G
2、G
3、G
4、R
1、R
2、R
3、およびR
4は式(I)に関して規定した通りである。
【0067】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、G1はCHまたはCR2である。いくつかの態様では、G1はCHである。いくつかの態様では、G1はCR2である。いくつかの態様では、G1はCR2であり、G1のR2はハロゲンである。いくつかの態様では、G1はCR2であり、G1のR2はフルオロである。
【0068】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、G2はN、CH、またはCR2である。いくつかの態様では、G2はNである。いくつかの態様では、G2はCHまたはCR2である。いくつかの態様では、G2はCHである。いくつかの態様では、G2はCR2である。いくつかの態様では、G2はCR2であり、G2のR2はハロゲンである。いくつかの態様では、G2はCR2であり、G2のR2はフルオロである。
【0069】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、G3はN、CH、またはCR2である。いくつかの態様では、G3はNである。いくつかの態様では、G3はCHまたはCR2である。いくつかの態様では、G3はCHである。いくつかの態様では、G3はCR2である。いくつかの態様では、G3はCR2であり、G3のR2はハロゲンである。いくつかの態様では、G3はCR2であり、G3のR2はフルオロである。
【0070】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、G4はN、CH、またはCR2である。いくつかの態様では、G4はNである。いくつかの態様では、G4はCHまたはCR2である。いくつかの態様では、G4はCHである。いくつかの態様では、G4はCR2である。いくつかの態様では、G4はCR2であり、G4のR2はハロゲンである。いくつかの態様では、G4はCR4であり、G2のR2はフルオロである。いくつかの態様では、G4はCR4であり、G2のR2はクロロである。
【0071】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、G1はCHであり、G2はCFであり、G3はCHであり、G4はCFである。
【0072】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、G1はCFであり、G2はCFであり、G3はCFであり、G4はCFである。
【0073】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、G1はCHであり、G2はNであり、G3はCHであり、G4はCHである。
【0074】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、G1はCHであり、G2はNであり、G3はCHであり、G4はCFである。
【0075】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、CH、G2はNであり、G3はCHであり、G4はCClである。
【0076】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、CH、G2はCHであり、G3はNであり、G4はCHである。
【0077】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、mは0である。
【0078】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、mは1である。いくつかの態様では、R1は、ハロゲン、OH、NH2、NO2、CN、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、置換されていてもよいC2~C6アルキニル、置換されていてもよいC1~C6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、-N(置換されていてもよいC1~C6アルキル)2、-NH[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]2、-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC2~C6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC2~C6アルキニル)からなる群より選択される。いくつかの態様では、R1は、ハロゲン、置換されていてもよいC2~C6アルキニル、および-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)からなる群より選択される。いくつかの態様では、R1はハロゲンである。いくつかの態様では、R1はフルオロである。いくつかの態様では、R1はクロロである。いくつかの態様では、R1はブロモである。いくつかの態様では、R1はヨードである。いくつかの態様では、R1は置換されていてもよいC2~C6アルキニルである。いくつかの態様では、R1はエチニルである。いくつかの態様では、R1は-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)である。いくつかの態様では、R1は-C(=O)-CH3である。
【0079】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、mは2である。いくつかの態様では、各R1は独立して、ハロゲン、OH、NH2、NO2、CN、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、置換されていてもよいC2~C6アルキニル、置換されていてもよいC1~C6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、-N(置換されていてもよいC1~C6アルキル)2、-NH[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]2、-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC2~C6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC2~C6アルキニル)からなる群より選択される。いくつかの態様では、各R1は独立して、ハロゲン、置換されていてもよいC2~C6アルキニル、および-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)からなる群より選択される。いくつかの態様では、各R1は独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群より選択される。いくつかの態様では、一方のR1はフルオロであり、他方のR1はヨードである。いくつかの態様では、一方のR1はクロロであり、他方のR1はブロモである。いくつかの態様では、一方のR1はハロゲンであり、他方のR1は置換されていてもよいC2~C6アルキニルである。いくつかの態様では、一方のR1はフルオロであり、他方のR1はエチニルである。いくつかの態様では、一方のR1はハロゲンであり、他方のR1は-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)である。いくつかの態様では、一方のR1はフルオロであり、他方のR1は-C(=O)-CH3である。
【0080】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、mは3である。いくつかの態様では、各R1は独立して、ハロゲン、OH、NH2、NO2、CN、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、置換されていてもよいC2~C6アルキニル、置換されていてもよいC1~C6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、-N(置換されていてもよいC1~C6アルキル)2、-NH[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]2、-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC2~C6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC2~C6アルキニル)からなる群より選択される。いくつかの態様では、各R1は独立して、ハロゲン、置換されていてもよいC2~C6アルキニル、および-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)からなる群より選択される。いくつかの態様では、各R1は独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群より選択される。
【0081】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、mは4である。いくつかの態様では、各R1は独立して、ハロゲン、OH、NH2、NO2、CN、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、置換されていてもよいC2~C6アルキニル、置換されていてもよいC1~C6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、-N(置換されていてもよいC1~C6アルキル)2、-NH[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]2、-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC2~C6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC2~C6アルキニル)からなる群より選択される。いくつかの態様では、各R1は独立して、ハロゲン、置換されていてもよいC2~C6アルキニル、および-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)からなる群より選択される。いくつかの態様では、各R1は独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群より選択される。
【0082】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、mは5である。いくつかの態様では、各R1は独立して、ハロゲン、OH、NH2、NO2、CN、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC2~C6アルケニル、置換されていてもよいC2~C6アルキニル、置換されていてもよいC1~C6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、-N(置換されていてもよいC1~C6アルキル)2、-NH[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]2、-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC2~C6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC2~C6アルキニル)からなる群より選択される。いくつかの態様では、各R1は独立して、ハロゲン、置換されていてもよいC2~C6アルキニル、および-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)からなる群より選択される。いくつかの態様では、各R1は独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群より選択される。
【0083】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)の化合物のいくつかの態様では、R4は、水素、ハロゲン、OH、NH2、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC1~C6ハロアルキル、-[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、置換されていてもよいC1~C6アルキレン-COOH、置換されていてもよいC1~C6アルキレン-C(=O)-O-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、置換されていてもよいC1~C6アルコキシ、-O-[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、-NH(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、-N(置換されていてもよいC1~C6アルキル)2、-NH[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、-N[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]2、-C(=O)-(置換されていてもよいC1~C6アルキル)、-C(=O)-(置換されていてもよいC2~C6アルケニル)、および-C(=O)-(置換されていてもよいC2~C6アルキニル)からなる群より選択される。いくつかの態様では、R4は、水素、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC1~C6ハロアルキル、および-[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]からなる群より選択される。いくつかの態様では、R4は、水素、置換されていてもよいC1~C6アルキル、置換されていてもよいC1~C6ハロアルキル、-[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]、および置換されていてもよいC1~C6アルキレン-COOHからなる群より選択される。いくつかの態様では、R4は、メチル、エチル、プロプ-2-イル、2-フルオロエト-1-イル、2-メトキシエト-1-イル、-CH2-CH2-COOHおよび-CH2-CH2-CH2-COOHからなる群より選択される。いくつかの態様では、R4は水素である。いくつかの態様では、R4は置換されていてもよいC1~C6アルキルである。いくつかの態様では、R4はメチル、エチル、およびプロプ-2-イルからなる群より選択される。いくつかの態様では、R4はメチルである。いくつかの態様では、R4はエチルである。いくつかの態様では、R4はエチルプロプ-2-イルである。いくつかの態様では、R4は置換されていてもよいC1~C6ハロアルキルである。いくつかの態様では、R4は2-フルオロエト-1-イルである。いくつかの態様では、R4は-[(置換されていてもよいC1~C6アルキレン)-(置換されていてもよいC1~C6アルコキシ)]である。いくつかの態様では、R4は2-メトキシエト-1-イルである。いくつかの態様では、R4は置換されていてもよいC1~C6アルキレン-COOHである。いくつかの態様では、R4は-CH2-CH2-COOHである。いくつかの態様では、R4は-CH2-CH2-CH2-COOHである。
【0084】
いくつかの態様では、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、および(I-3c)の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩が本明細書において提供される。
【0085】
いくつかの態様では、表1に記載される化合物およびそれらの塩、ならびにそれらの使用が本明細書において提供される。
【0086】
【0087】
式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)もしくは(I-3c)、または表1の化合物などの本明細書において与えられる任意の式または化合物は、構造式によって図示される構造を有する化合物ならびに特定のバリエーションまたは形態を表すように意図されている。特に、本明細書において与えられる任意の式の化合物は不斉中心を有し、したがって、異なるエナンチオマーまたはジアステレオマー形態で存在することがある。一般式の化合物のすべての光学異性体および立体異性体、ならびに任意の比率のそれらの混合物は式の範囲内にあると見なされる。よって、本明細書において与えられる任意の式はラセミ体、1つまたは複数のエナンチオマー形態、1つまたは複数のジアステレオマー形態、1つまたは複数のアトロプ異性体形態、および任意の比率のそれらの混合物を表すように意図されている。表1の化合物が具体的な立体化学配置で示されている場合、化合物の任意の代替的な立体化学配置、ならびに任意の比率の化合物の立体異性体混合物も本明細書において提供される。例えば、表1の化合物が「S」立体化学配置にある立体中心を有する場合、その立体中心が「R」立体化学配置にある化合物のエナンチオマーも本明細書において提供される。同様に、表1の化合物が「R」配置にある立体中心を有する場合、「S」立体化学配置にある化合物のエナンチオマーも本明細書において提供される。「S」および「R」の両方の立体化学配置を有する化合物の混合物も提供される。加えて、表1の化合物が2つ以上の立体中心を有するのであれば、化合物の任意のエナンチオマーまたはジアステレオマーも提供される。さらに、特定の構造は幾何異性体(すなわち、シスおよびトランス異性体)として、互変異性体として、またはアトロプ異性体として存在することがある。加えて、表1の任意の化合物はラセミ体、1つまたは複数のエナンチオマー形態、1つまたは複数のジアステレオマー形態、1つまたは複数のアトロプ異性体形態、および任意の比率のそれらの混合物を表すように意図されている。さらに、特定の構造は幾何異性体(すなわち、シスおよびトランス異性体)として、互変異性体として、またはアトロプ異性体として存在することがある。加えて、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、または(I-3c)などの本明細書において与えられる任意の式は、そのような化合物の水和物、溶媒和物、およびアモルファス形態、ならびにそれらの混合物を、そのような形態が明示的に列挙されていなくても、指すように意図されている。いくつかの態様では、溶媒は水であり、溶媒和物は水和物である。
【0088】
本明細書において図示される化合物は、塩が図示されていなくても塩として存在することがあり、当業者にはよく理解されているように、本明細書において提供される組成物および方法は、ここに図示される化合物のすべての塩および溶媒和物ならびに化合物の非塩および非溶媒和物形態を包含すると理解される。いくつかの態様では、本明細書において提供される化合物の塩は薬学的に許容される塩である。
【0089】
1つのバリエーションでは、本明細書における化合物は個体への投与のために調製された合成化合物である。別のバリエーションでは、実質的に純粋な形態の化合物を含有する組成物が提供される。別のバリエーションでは、本明細書において詳述される化合物と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物が提供される。別のバリエーションでは、化合物を投与する方法が提供される。精製された形態、薬学的組成物、および化合物を投与する方法は、本明細書において詳述される任意の化合物またはその形態に適している。
【0090】
本明細書において提供されるG1、G2、G3、G4、m、p、q、R1、R2、R3、およびR4の任意のバリエーションまたは態様は、G1、G2、G3、G4、m、p、q、R1、R2、R3、およびR4のあらゆる他のバリエーションまたは態様と、それぞれの組み合わせが個別にかつ具体的に記載されているかのように組み合わされ得る。
【0091】
組成物
本明細書において開示されかつ/または記載される化合物と、1つまたは複数の追加の薬剤、医薬品、アジュバント、担体、賦形剤などとを含む薬学的組成物などの組成物も提供される。好適な薬剤および医薬品は本明細書において記載されるものを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、本明細書において記載されるように、薬学的に許容される賦形剤またはアジュバントと少なくとも1つの化学物質とを含む。薬学的に許容される賦形剤の例は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウムを非限定的に含む。いくつかの態様では、本開示は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤と混合された上記の化合物を含む薬学的組成物を提供する。いくつかの態様では、本明細書において記載される1つまたは複数の化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する薬学的組成物などの組成物が提供される。
【0092】
いくつかの態様では、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物、または表1の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、を含む薬学的に許容される組成物が提供される。いくつかの局面では、組成物は本明細書において記載される化合物の調製において用いられることがある合成中間体を含有してもよい。本明細書において記載される組成物は任意の他の好適な活性または不活性な剤を含有してもよい。
【0093】
本明細書において記載される組成物のいずれも無菌であってもよいし、または無菌である成分を含有してもよい。殺菌は当技術分野で公知の方法によって達成し得る。本明細書において記載される組成物のいずれも実質的に純粋な1つまたは複数の化合物を含有してもよい。
【0094】
本明細書において記載される薬学的組成物と、本明細書において記載される疾患または状態を患う患者を治療するために該組成物を用いるための説明書とを含む、パッケージされた薬学的組成物も提供される。
【0095】
医薬製剤
本開示は、薬学的に許容される担体と共に製剤化された、本明細書において記載される1つまたは複数の化合物を含有する組成物、例えば、薬学的組成物も提供する。発明の薬学的組成物は、併用療法において、すなわち他の剤と組み合わせても投与し得る。例えば、併用療法は少なくとも1つの他の活性剤と組み合わされた本明細書において記載される化合物を含み得る。
【0096】
薬学的に許容される担体は、生理学的に適合性のあるあらゆる担体、賦形剤、安定剤、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含んでもよい。好ましくは、担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適している。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、本明細書において記載される化合物は、化合物を不活性化することがある酸および他の天然条件の作用から化合物を保護するための材料でコーティングされてもよい。
【0097】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は投与される標準的な投与量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、またはイムノグロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、および、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはTWEEN(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0098】
発明の薬学的組成物は1つまたは複数の薬学的に許容される塩を含んでもよい。薬学的に許容される塩は親化合物の望ましい生物学的活性を保持し、望ましくない毒物学的効果を何ら付与しない。そのような塩の例は酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などの非毒性無機酸、ならびに脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの非毒性有機酸に由来するものを含む。塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、ならびにN,N'ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの非毒性有機アミンに由来するものを含む。
【0099】
発明の薬学的組成物はまた薬学的に許容される抗酸化剤を含んでもよい。薬学的に許容される抗酸化剤の例は、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤を含む。発明の薬学的組成物において採用してもよい好適な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、多価アルコール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、オリーブオイルなどの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルを含む。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材の使用によって、分散液の場合には要求される粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持し得る。
【0100】
本明細書において記載される化合物の任意の好適な製剤を調製し得る。一般的には、Remington's Pharmaceutical Sciences, (2000) Hoover, J. E. editor, 20 th edition, Lippincott Williams and Wilkins Publishing Company, Easton, Pa., pages 780-857を参照されたい。製剤は適切な投与経路に適するように選択される。化合物が安定した非毒性の酸または塩基塩を形成するのに十分に塩基性または酸性である場合、塩としての化合物の投与が適切な場合がある。薬学的に許容される塩の例は、生理学的に許容されるアニオンを形成する酸と形成される有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、およびα-グリセロリン酸塩である。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、および炭酸塩を含む、好適な無機塩も形成されてもよい。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知の標準的な手順を用いて、例えば、生理学的に許容されるアニオンをもたらす好適な酸とアミンなどの十分に塩基性の化合物によって得られる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)塩も作製される。
【0101】
企図される化合物が薬理学的組成物において投与される場合、化合物は薬学的に許容される賦形剤および/または担体と混合して製剤化され得ることが企図される。例えば、企図される化合物は、中性化合物としてもしくは薬学的に許容される塩として経口的に、または生理食塩水中で静脈内に投与し得る。リン酸塩、重炭酸塩またはクエン酸塩などの従来の緩衝剤をこの目的のために用い得る。もちろん、当業者であれば、具体的な投与経路向けの多数の製剤を提供するために、本明細書の教示の範囲内で製剤を改変することがある。特に、企図される化合物は、それらを水または他のべヒクルにさらに溶けやすくするために改変されてもよく、これは、例えば、十分に通常の技術の範囲内である軽微な改変(塩の形成、エステル化など)で容易に達成されることがある。患者における最大限の有益な効果のために本化合物の薬物動態を管理すべく、特定の化合物の投与経路および投与量レジメンを改変することも十分に通常の技術の範囲内である。
【0102】
本明細書において記載される式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、および(I-3c)を有する化合物は、概して、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、グリセロール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒に可溶である。1つの態様では、本発明は式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、および(I-3c)を有する化合物を薬学的に許容される担体と混合することによって調製される製剤を提供する。1つの局面では、製剤は、a)記載の化合物を水溶性有機溶媒、非イオン性溶媒、水溶性脂質、シクロデキストリン、トコフェロールなどのビタミン、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質、またはそれらの組み合わせに溶解して溶液を準備する工程;およびb)1~10%の炭水化物溶液を含有する生理食塩水または緩衝剤を加える工程を含む方法を用いて調製されてもよい。1つの例では、炭水化物はデキストロースを含む。本方法を用いて得られた薬学的組成物は安定しており、動物および臨床用途に有用である。
【0103】
いくつかの態様では、本明細書において記載される化合物もしくはその塩、または本明細書において記載される組成物は、筋骨格系疾患を治療する方法に用いられることがある。いくつかの態様では、骨格筋の量、質および/または強さが増加する。いくつかの態様では、筋肉タンパク質の合成が増加する。いくつかの態様では、骨格筋線維の萎縮が阻害される。
【0104】
本方法における使用のための水溶性有機溶媒の実例は、ポリエチレングリコール(PEG)、アルコール、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、またはそれらの組み合わせを非限定的に含む。アルコールの例は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、またはプロピレングリコールを非限定的に含む。
【0105】
本方法における使用のための水溶性非イオン性界面活性剤の実例は、CREMOPHOR(登録商標)EL、ポリエチレングリコール修飾CREMOPHOR(登録商標)(ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレアート35)、水素化CREMOPHOR(登録商標)RH40、水素化CREMOPHOR(登録商標)RH60、PEG-サクシネート、ポリソルベート20、ポリソルベート80、SOLUTOL(登録商標)HS(12-ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール660)、モノオレイン酸ソルビタン、ポロキサマー、LABRAFIL(登録商標)(エトキシル化キョウニン油)、LABRASOL(登録商標)(カプリル-カプロイルマクロゴール-8-グリセリド)、GELUCIRE(登録商標)(グリセロールエステル)、SOFTIGEN(登録商標)(PEG6カプリル酸グリセリド)、グリセリン、グリコール-ポリソルベート、またはそれらの組み合わせを非限定的に含む。
【0106】
本方法における使用のための水溶性脂質の実例は、植物油(vegetable oil)、トリグリセリド、植物油(plant oil)、またはそれらの組み合わせを非限定的に含む。脂質油の例は、ひまし油、ポリオキシルヒマシ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油、ピーナッツ油、ペパーミント油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、水素化植物油、水素化大豆油、ココナッツオイルのトリグリセリド、パームシードオイル、およびそれらの水素化形態、またはそれらの組み合わせを非限定的に含む。
【0107】
本方法における使用のための脂肪酸および脂肪酸エステルの実例は、オレイン酸、モノグリセリド、ジグリセリド、PEGのモノもしくはジ脂肪酸エステル、またはそれらの組み合わせを非限定的に含む。
【0108】
本方法における使用のためのシクロデキストリンの実例は、アルファ-シクロデキストリン、ベータ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン、またはスルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリンを非限定的に含む。
【0109】
本方法における使用のためのリン脂質の実例は、大豆ホスファチジルコリン、またはジステアロイルホスファチジルグリセロール、およびそれらの水素化形態、またはそれらの組み合わせを非限定的に含む。
【0110】
当業者であれば、具体的な投与経路向けの多数の製剤を提供するために、本明細書の教示の範囲内で製剤を改変することがある。特に、化合物は、それらを水または他のべヒクルにさらに溶けやすくするために改変されてもよい。患者における最大限の有益な効果のために本化合物の薬物動態を管理すべく、特定の化合物の投与経路および投与量レジメンを改変することも十分に通常の技術の範囲内である。
【0111】
薬物の組み合わせ
態様の方法は、有効量の本開示の少なくとも1つの例示的化合物を投与する工程を含むが、任意で、化合物は1つまたは複数の追加の治療剤と組み合わせて投与されてもよい。いくつかの態様では、追加の治療剤は、対象におけるがんまたは腫瘍などの増殖異常を治療するのに有用なことが公知である。いくつかの態様では、追加の治療剤は神経変性障害を治療するのに有用なことが公知である。いくつかの態様では、追加の治療剤は免疫不全疾患を治療するために有用なことが公知である。いくつかの態様では、追加の治療剤はRAS阻害剤、RAF阻害剤、およびERK阻害剤からなる群より選択される抗がん剤である。いくつかの態様では、追加の治療剤はPD-1抗体などの免疫療法剤である。
【0112】
追加の活性成分は本開示の少なくとも1つの例示的化合物とは別の薬学的組成物において投与されてもよいし、または単一の薬学的組成物において本開示の少なくとも1つの例示的化合物と共に含まれてもよい。追加の活性成分は本開示の少なくとも1つの例示的化合物の投与と同時に、その前に、またはその後に投与されてもよい。
【0113】
投与量および剤形
疾患の予防または治療のために、本明細書において記載される化合物の適切な投与量は治療される疾患の種類、疾患の重症度および経過、化合物が予防または治療目的で投与されるかどうか、送達様式、過去の療法、および対象の病歴に応じて異なるであろう。本明細書において記載される化合物は一度にまたは一連の治療にわたって対象に好適に投与される。疾患の種類および重症度に応じて、典型的な1日の投与量は上記の要素に応じて約0.0001mg/kg~100mg/kg以上の範囲となってもよい。数日以上の反復投与については、状態に応じて、疾患の症状の望ましい抑制が起こるまで治療が持続される。
【0114】
例えば、投与量は0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重もしくは10mg/kg体重または1~10mg/kgの範囲内とし得る。治療レジメンは1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月に1回または3~6ヶ月毎に1回の投与を含んでもよい。別の態様では、徐放性製剤が投与され、これは非徐放性製剤と比較して投与頻度を減少させるであろう。
【0115】
担体材料と組み合わせて単一剤形を形成し得る活性成分の量は、概して、対象に毒性を及ぼすことなく治療効果をもたらす組成物の量になるであろう。概して、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わせた約0.01パーセント~約99パーセントの活性成分、好ましくは約0.1パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約1パーセント~約30パーセントの活性成分の範囲となるであろう。
【0116】
投与
本明細書において記載される組成物は当技術分野で公知の様々な方法のうちの1つまたは複数を用いて1つまたは複数の投与経路を介して投与し得る。当業者には理解されるように、投与の経路および/または様式は所望される結果に応じて異なるであろう。本明細書において記載される化合物および組成物のための投与経路は経口、舌下、頬側、鼻腔内、局所、直腸、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または、例えば注射もしくは注入による、他の非経口投与経路を含む。本明細書において用いられる「非経口投与」という表現は、経腸および局所投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内の注射および注入を非限定的に含む。
【0117】
治療の方法
本明細書における化合物および薬学的組成物は任意の好適な目的のために用いられてもよい。例えば、本化合物は療法および/または試験において用い得る。
【0118】
本明細書における化合物および薬学的組成物は個体におけるがんまたは腫瘍などの増殖異常を治療しかつ/または予防するために用いられてもよい。いくつかの態様では、個体におけるがんまたは腫瘍などの増殖異常を治療するかまたは予防する方法であって、その必要のある個体に、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物、または表1の化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む方法が提供される。いくつかの態様では、対象におけるがんまたは腫瘍などの増殖異常を治療するかまたは予防する方法であって、その必要のある対象に、治療有効量の少なくとも1つの本明細書において記載される化学物質を投与する工程を含む方法が提供される。
【0119】
いくつかの態様では、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物、または表1の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩は、MEK、COT1、FGFR4、MINK、MYO3A、PKG1B、およびPLK3からなる群より選択される1つまたは複数のキナーゼの阻害剤であり、よってすべて哺乳類における、特にヒトにおける抗増殖または抗転移剤(例えば、抗がん剤)としての治療的使用に適合される。特に、本発明の化合物は、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、結腸直腸、前立腺、膵臓、肺、外陰部、甲状腺、肝がん、肉腫、膠芽腫、頭頚部、メラノーマの悪性および良性腫瘍、ならびに皮膚の良性過形成(例えば、乾癬)および前立腺の良性過形成(例えば、BPH)などの他の過形成状態などの様々なヒト過剰増殖性障害の予防および治療に有用である。加えて、本発明の化合物はこれらの障害に起因する脳転移に対して活性を備えている可能性があると予想される。
【0120】
いくつかの態様では、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物、または表1の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩は、様々なキナーゼに関連する異常な発現リガンド/受容体相互作用または活性化もしくはシグナル伝達事象が関与する追加の障害の治療にも有用なことがある。そのような障害は、チロシンキナーゼの異常な機能、発現、活性化またはシグナル伝達が関与する、神経性、グリア性、星状細胞性、視床下部性、ならびに他の腺性、大食細胞性、上皮性、間質性、および割腔性のものを含むことがある。
【0121】
対象におけるがんなどの増殖障害または腫瘍の治療のための医薬の製造における式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物、または表1の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩の使用も本明細書において提供される。
【0122】
いくつかの態様では、増殖障害またはがんは、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、結腸直腸、前立腺、膵臓、肺、外陰部、甲状腺、肝がん、肉腫、膠芽腫、頭頚部、メラノーマの悪性または良性腫瘍、ならびに皮膚の良性過形成(例えば、乾癬)および前立腺の良性過形成(例えば、BPH)などの他の過形成状態からなる群より選択される。いくつかの態様では、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物、または表1の化合物は、これらの障害に起因する脳転移に対して活性を備えている可能性がある。
【0123】
MEK、COT1、FGFR4、MINK、MYO3A、PKG1B、およびPLK3などの1つまたは複数のキナーゼの活性を阻害するための方法も提供され、該方法はその必要のある個体に、治療的有効量の本明細書において記載される少なくとも1つの化学物質を投与する工程を含む。いくつかの態様では、細胞におけるMEK、COT1、FGFR4、MINK、MYO3A、PKG1B、およびPLK3などの1つまたは複数のキナーゼを阻害する方法であって、該細胞を式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物、または表1の化合物、またはその薬学的に許容される塩などの少なくとも1つの本明細書において記載される化学物質と接触させる工程を含む方法が提供される。加えて、個体のMEK、COT1、FGFR4、MINK、MYO3A、PKG1B、およびPLK3などの1つまたは複数のキナーゼの活性を阻害するための医薬の製造における式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物、または表1の化合物、またはその薬学的に許容される塩などの少なくとも1つの本明細書において記載される化学物質の使用が本明細書において提供される。
【0124】
対象におけるがんまたは腫瘍などの増殖異常を治療しかつ/または予防するための方法であって、その必要のある個体に、治療有効量の式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物、または表1の化合物、またはその薬学的に許容される塩などの少なくとも1つの本明細書において記載される化学物質を投与する工程を含む方法も提供される。加えて、対象における増殖障害、がん、または腫瘍を治療しかつ/または予防するための医薬の製造における式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物、または表1の化合物、またはその薬学的に許容される塩などの少なくとも1つの本明細書において記載される化学物質の使用が本明細書において提供される。
【0125】
1つの態様では、治療されるかまたは予防される疾患または状態はがんなどの異常な細胞増殖である。「がん」という用語は、前がん状態、非悪性、低悪性度、高悪性度、および悪性のがんを指す。任意の組織型のがんが本明細書において開示される化合物による治療または予防のために企図される。がんの例示的なタイプは癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、白血病、およびリンパ性悪性腫瘍を含む。より具体的には、特定の態様ではがんは扁平細胞がん(例えば、上皮扁平細胞がん)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がんおよび肺の扁平上皮がんを含む肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、消化管がんを含む胃(gastric)または胃(stomach)がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮がん、唾液腺がん、腎臓がんまたは腎がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝がん、肛門がん、陰茎がん、ならびに頭頸部がんである。
【0126】
治療有効量の本明細書において記載される化合物または組成物を個体に投与することによって、がんの治療を必要とする個体におけるがんを治療する方法が本明細書において提供される。がんの治療を必要とする個体におけるがんの治療のための医薬の製造における本明細書において記載される化合物または組成物の使用も本明細書において提供される。がんの治療を必要とする個体におけるがんの治療のための本明細書において記載される化合物または組成物の使用も本明細書において提供される。がんの治療を必要とする個体におけるがんの治療における使用のための本明細書において記載される化合物または組成物も本明細書において提供される。
【0127】
別の態様では、治療されるかまたは予防される疾患または状態は神経変性疾患である。神経変性疾患の例示的なタイプは、神経変性プロセスの結果として起こる筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病を非限定的に含む。
【0128】
いくつかの態様では、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病などの神経変性疾患を治療するかまたは予防する方法であって、その必要のある個体に、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の化合物、または表1の化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む方法が提供される。いくつかの態様では、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病などの神経変性疾患を治療するかまたは予防する方法であって、治療有効量の少なくとも1つの本明細書において記載される化学物質を対象に投与する工程を含む方法が提供される。
【0129】
治療有効量の本明細書において記載される化合物または組成物を個体に投与することによって、神経変性疾患の治療を必要とする個体における神経変性疾患を治療する方法が本明細書において提供される。神経変性疾患の治療を必要とする個体における神経変性疾患の治療のための医薬の製造における本明細書において記載される化合物または組成物の使用も本明細書において提供される。神経変性疾患の治療を必要とする個体における神経変性疾患の治療のための本明細書において記載される化合物または組成物の使用も本明細書において提供される。神経変性疾患の治療を必要とする個体における神経変性疾患の治療における使用のための本明細書において記載される化合物または組成物も本明細書において提供される。
【0130】
1つの局面では、本明細書において記載される化合物または組成物と使用説明書とを含むキットが本明細書において提供される。いくつかの態様では、キットはがんの治療を必要とする個体におけるがんの治療における使用説明書を含んでもよい。別の態様では、キットは神経変性疾患の治療を必要とする個体における神経変性疾患の治療における使用説明書を含んでもよい。キットは、バイアル、シリンジ、またはIVバッグなど、化合物または組成物の投与において用いられることがある任意の材料または器具をさらに含んでもよい。キットは無菌包装も含んでもよい。
【0131】
概括的合成方法
式(I)の化合物を下のそれらの概括的な調製のための例示的合成スキームおよび続く具体例を参照して説明する。当業者であれば、本明細書における様々な化合物を得るためには、最終的に所望される置換基が適宜保護されるかまたは保護されないで反応スキームを通じて持ち越されて所望の生成物が得られるように出発物質が適切に選択されることがあると認識するであろう。あるいは、最終的に所望される置換基の代わりに、反応スキームを通じて持ち越され、所望の置換基で適宜置換されることがある好適な基を採用することが必要であるかまたは望ましいことがある。加えて、当業者であれば、特定の官能基(アミノ、カルボキシ、または側鎖基)を反応条件から保護するために保護基を用いてもよいこと、およびそのような基は適切な場合には標準的な条件下で除去されることを認識するであろう。特に記載しない限り、変数は式(I)を参照して上に規定したとおりである。
【0132】
化合物の特定のエナンチオマーを得ることが望ましい場合、これは、エナンチオマーを分離するかまたは分割するための任意の好適な従来の手順を用いて、対応するエナンチオマー混合物から達成してもよい。よって、例えば、ジアステレオマー誘導体はエナンチオマーの混合物、例えば、ラセミ体、および適切なキラル化合物の反応によって生成してもよい。次いでジアステレオマーを任意の簡便な手段によって、例えば、結晶化によって分離し、所望のエナンチオマーを回収してもよい。別の分割プロセスでは、キラル高速液体クロマトグラフィーを用いてラセミ体を分離してもよい。あるいは、所望されるのであれば、記載されたプロセスの1つにおいて適切なキラル中間体を用いることによって特定のエナンチオマーを得てもよい。
【0133】
化合物の特定の異性体を得るかまたはそうでなければ反応の生成物を精製することが望まれる場合、中間体または最終生成物にもクロマトグラフィー、再結晶化および他の従来の分離手順を用いてもよい。
【0134】
本明細書において記載される化合物を調製する概括的方法は下の例示された方法に図示されている。本明細書において提供されるスキームにおける変更可能な基は、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)またはそれらの任意のバリエーションに関して規定されている。本明細書において記載される他の化合物が同様の方法によって調製されてもよい。
【0135】
いくつかの態様では、式(I)の化合物はスキームAに示される手順を介して合成され、ここでG1、G2、G3、G4、p、q、R1、R2、R3、およびR4は式(I)に関して規定した通りであるか、または本明細書において詳述されるその任意のバリエーションである。具体例は下の実施例セクションに提供されている。
【0136】
スキームA
合成が上では具体的に記載されていない出発物質は市販されているか、または当業者には周知の方法を用いて調製し得る。
【0137】
いくつかの態様では、式(I)の化合物はスキームBに示される手順を介して合成され、ここでG1、G2、G3、G4、p、q、R1、R2、R3、およびR4は式(I)に関して規定した通りであるか、または本明細書において詳述されるそれらの任意のバリエーションである。具体例は下の実施例セクションに提供されている。
【0138】
スキームB
合成が上では具体的に記載されていない出発物質は市販されているか、または当業者には周知の方法を用いて調製し得る。
【0139】
いくつかの態様では、式(I)の化合物はスキームCに示される手順を介して合成され、ここでG1、G2、G3、G4、p、q、R1、R2、R3、およびR4は式(I)に関して規定した通りであるか、または本明細書において詳述されるそれらの任意のバリエーションであり、Xは、非限定例としてはハロゲン(例えば、ブロモ、ヨード)などの、カップリング反応に適した脱離基であり、R1-Mは、非限定例としてはボロン酸、ボロン酸エステル、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機ケイ素化合物、および末端アルキンなどの、カップリング反応に適した化合物である。具体例は下の実施例セクションに提供されている。
【0140】
スキームC
合成が上では具体的に記載されていない出発物質は市販されているか、または当業者には周知の方法を用いて調製し得る。
【0141】
いくつかの態様では、式(I)の化合物はスキームDに示される手順を介して合成され、ここでG1、G2、G3、G4、p、q、R1、R2、R3、およびR4は式(I)に関して規定した通りであるか、または本明細書において詳述されるそれらの任意のバリエーションである。具体例は下の実施例セクションに提供されている。
【0142】
スキームD
合成が上では具体的に記載されていない出発物質は市販されているか、または当業者には周知の方法を用いて調製し得る。
【実施例】
【0143】
以下の実施例は本明細書において提供される組成物、使用、および方法を、限定するためではなく、説明するために提示されている。当業者であれば、式(I)、(I-1)、(I-2a)、(I-2b)、(I-2c)、(I-3a)、(I-3b)、(I-3c)の他の化合物またはそれらの塩にアクセスするために、好適な出発物質および試薬の選択によって以下の合成反応およびスキームを変更してもよいことを認識するであろう。化合物は上に記載の概括的方法を用いて調製される。
【0144】
以下の化学的略称を実施例全体にわたって用いる:ACN(アセトニトリル)、AcOH(酢酸)、CuI(ヨウ化銅(I))、DCM(ジクロロメタン)、DIEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、Et3N(トリエチルアミン)、EtOAc(酢酸エチル)、Et2O(ジエチルエーテル)、1H NMR(プロトン核磁気共鳴)、HATU((1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート)、HCl(塩酸)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、K2CO3(炭酸カリウム)、LCMS(液体クロマトグラフィー・質量分析)、LiHMDS(リチウムビス(トリメチルシリル)アミド)、LiNH2(リチウムアミド)、MeOH(メタノール)、Na2SO4(硫酸ナトリウム)、NaBH3CN(シアノ水素化ホウ素ナトリウム)、NaOH(水酸化ナトリウム)、n-BuLi(n-ブチルリチウム)、NH3.H2O(アンモニア水)、PdCl2(dppf)(1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウムジクロリド)、PE(石油エーテル)、prep-HPLC(分取高速液体クロマトグラフィー)、POCl3(塩化ホスホリル)、TBAF(フッ化テトラブチルアンモニウム)、THF(テトラヒドロフラン)、およびTFA(トリフルオロ酢酸)。
【0145】
実施例1:N-(アゼチジン-3-イル)-2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド(化合物1)の調製
工程1:2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)安息香酸の合成
MeCN(30mL)中の2,4,6-トリフルオロ安息香酸(646mg、3.67mmol)と2-フルオロ-4-ヨードアニリン(1000mg、4.22mmol)との混合物にLiNH
2(295mg、12.8mmol)をN
2下で加えた。反応を60℃で1時間撹拌した。反応が完了した後、反応を室温まで冷却し、次いでpH = 2になるまで1N HClを加えた。混合物を30分間撹拌し、次いでろ過した。得られたケーキを乾燥させて、2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)安息香酸(1.22g、収率85%)をピンク色の固形物として得た。
【0146】
工程2:3-(2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成
CH2Cl2(20mL)中の2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)安息香酸(200mg、0.51mmol)と、3-アミノアゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(263mg、1.53mmol)と、ピリジン(141mg、1.78mmol)との溶液にPOCl3(20mg、0.13mmol)を加えた。反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去した。残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc = 4/1)によって精製して、3-(2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(230mg、収率82%)を白色の固形物として得た。
【0147】
工程3:N-(アゼチジン-3-イル)-2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミドの合成
CH
2Cl
2(10mL)中の3-(2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(170mg、0.31mmol)の溶液にTFA(2mL)を加えた。反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去し、残渣をCH
2Cl
2で溶解し、pH>7になるまでNH
3.H
2Oを加え、混合物を濃縮乾固させた。残渣をprep-HPLCによって精製して、N-(アゼチジン-3-イル)-2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド(TFA塩、17mg、収率10%)を黄色の固形物として得た。
【0148】
実施例2:2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(ピロリジン-3-イル)ベンズアミド(化合物2)の調製
工程1:3-(2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成
CH
2Cl
2(20mL)中の2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)安息香酸(200mg、0.51mmol)と、3-アミノピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(285mg、1.53mmol)と、ピリジン(141mg、1.78mmol)との溶液にPOCl
3(20mg、0.13mmol)を加えた。反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去した。残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc = 4/1)によって精製して、3-(2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(170mg、収率60%)を白色の固形物として得た。
【0149】
工程2:2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(ピロリジン-3-イル)ベンズアミドの合成
CH
2Cl
2(10mL)中の3-(2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(170mg、0.30mmol)の溶液にTFA(2mL)を加えた。反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去し、残渣をCH
2Cl
2で溶解し、pH>7になるまでNH
3.H
2Oを加え、混合物を濃縮乾固させた。残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2/MeOH = 25/1 +0.5% NH
3.H
2O)によって精製して、2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(ピロリジン-3-イル)ベンズアミド(TFA塩、130mg、収率75%)を白色の固形物として得た。
【0150】
実施例3:2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(ピペリジン-3-イル)ベンズアミド(化合物3)の調製
工程1:3-(2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成
CH
2Cl
2(20mL)中の2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)安息香酸(200mg、0.50mmol)と、3-アミノピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(200mg、1.00mmol)と、POCl
3(3滴)と、ピリジン(120mg、1.5mmol)との溶液を室温で一晩撹拌した。反応混合物をEtOAcで抽出し、ブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濃縮し、残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2/MeOH 30:1~20:1、v/v)によって精製して、3-(2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(170mg、収率59%)を白色の固形物として得た。
【0151】
工程2:2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(ピペリジン-3-イル)ベンズアミドの合成
CH
2Cl
2/TFA(10mL/1mL)中の3-(2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(170mg、0.30mmol)の混合物を室温で3時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を蒸発させ、残渣をprep-HPLCによって精製して、2,4-ジフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(ピペリジン-3-イル)ベンズアミド(50mg、収率35%)を白色の固形物として得た。
【0152】
実施例4:N-(アゼチジン-3-イル)-2,3,4,5-テトラフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド(化合物4)の調製
工程1:2,3,4,5-テトラフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)安息香酸の合成
THF(20mL)中の2,3,4,5,6-ペンタフルオロ安息香酸(500mg、2.36mmol)と2-フルオロ-4-ヨードアニリン(559mg、2.36mmol)との混合物にN
2下でLiHMDS(7mL、THF中1M)を加え、反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去し、残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2/MeOH = 10/1)によって精製して、2,3,4,5-テトラフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)安息香酸(700mg、収率69%)を黄色の固形物として得た。
【0153】
工程2:3-(2,3,4,5-テトラフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成
CH2Cl2(20mL)中の2,3,4,5-テトラフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)安息香酸(200mg、0.47mmol)と、3-アミノアゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(240mg、1.4mmol)と、ピリジン(129mg、1.63mmol)との溶液にPOCl3(20mg、0.13mmol)を加えた。反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去して3-(2,3,4,5-テトラフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(粗製)を得、これは精製せずに次の工程で用いた。
【0154】
工程3:N-(アゼチジン-3-イル)-2,3,4,5-テトラフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミドの合成
CH
2Cl
2(20mL)中の3-(2,3,4,5-テトラフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(274mg、0.47mmol)の溶液にTFA(2mL)を加えた。反応を室温で2時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去し、残渣をCH
2Cl
2で溶解し、pH>7になるまでNH
3.H
2Oを加え、混合物を濃縮乾固させた。残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2/MeOH = 25/1 +0.5% NH
3.H
2O)によって精製して、N-(アゼチジン-3-イル)-2,3,4,5-テトラフルオロ-6-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミド(73mg、2工程で収率32%)を黄色の固形物として得た。
【0155】
実施例5:N-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(化合物5)の調製
工程1:3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチン酸の合成
THF(200mL)中の3,5-ジフルオロイソニコチン酸(5.00g、31.5mmol)と2-フルオロ-4-ヨードアニリン(7.45g、31.5mmol)との混合物をN
2下で0℃まで冷却した。LiHMDS(95mL、THF中1M)を加え、反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去し、残渣をCH
2Cl
2で溶解させ、NaOH水溶液(2N、500mL)で洗浄した。水層を濃塩酸(100mL)でpH = 1になるまで処理し、混合物をろ過し、ケーキを乾燥させて、3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチン酸(10g、収率85%)を黄色の固形物として得た。
【0156】
工程2:3-(3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成
CH2Cl2(300mL)中の3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチン酸(10g、26.6mmol)と3-アミノアゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(13.7g、79.8mmol)との混合物にN2下でピリジン(7.4g、93mmol)およびPOCl3(1mL)を加えた。反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去し、残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(EtOAc 100%)によって精製して、3-(3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(6.7g、収率48%)を得た。
【0157】
工程3:N-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミドの合成
CH
2Cl
2(200mL)中の3-(3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(6.7g、12.6mmol)の溶液にTFA(10mL)を加えた。反応を室温で2時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去した。残渣をCH
2Cl
2/MeOH(100mL、10/1)に溶解し、pH>7になるまでNH
3.H
2Oを加え、混合物を濃縮乾固させ、残渣をCH
2Cl
2(100mL)で処理した。30分後に黄色の固形物が形成され、ろ過し、乾燥させてN-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(純度100%、4.13g、収率76%)を得た。有機層を濃縮乾固させ、残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2/MeOH = 10/1)によって精製して、N-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(いくらかの塩を含有していた、1.7g、31%)を黄色の固形物として得た。
【0158】
実施例6:N-(1-エチルアゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(化合物6)の調製
MeOH(350mL)中のN-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(3.82g、8.88mmol)と、AcOH(20mg)と、アセトアルデヒド(45mL、17.8mmol)との混合物を室温で1時間撹拌した。NaBH
3CN(1.12g、17.8mmol)を加え、反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去した。残渣をCH
2Cl
2(200mL)で溶解し、水で洗浄した。有機層を乾燥させ、濃縮し、残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2/MeOH = 25/1 +0.5%NH
3.H
2O)で精製して黄色の油状物を得た。Et
2O(50mL)を加え、混合物を30分間撹拌し、ろ過し、乾燥させて、N-(1-エチルアゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(3g、収率74%)を黄色の固形物として得た。
【0159】
実施例7:3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(1-メチルアゼチジン-3-イル)イソニコチンアミド(化合物7)の調製
CH
2Cl
2(10mL)中の3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチン酸(100mg、0.26mmol)と1-メチルアゼチジン-3-アミン(70mg、0.81mmol)との溶液にN
2下でピリジン(73mg、0.93mmol)およびPOCl
3(10mg)を加え、反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去した。残渣をprep-HPLCによって精製して、3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(1-メチルアゼチジン-3-イル)イソニコチンアミド(25mg、収率21%)を黄色の固形物として得た。
【0160】
実施例8:3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(1-イソプロピルアゼチジン-3-イル)イソニコチンアミド(化合物8)の調製
MeOH(10mL)中のN-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(215mg、0.50mmol)と、アセトン(1mL)と、NaBH
3CN(63mg、1.0mmol)と、AcOH(3滴)との溶液を室温で一晩撹拌した。反応が完了した後、溶媒を蒸発させ、残渣をprep-HPLCによって精製して、3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(1-イソプロピルアゼチジン-3-イル)イソニコチンアミド(50mg、収率21%)を黄色の固形物として得た。
【0161】
実施例9:3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(1-(2-フルオロエチル)アゼチジン-3-イル)イソニコチンアミド(化合物9)の調製
DMF(10mL)中のN-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(130mg、0.3mmol)とK
2CO
3(82mg、0.6mmol)との混合物に1-フルオロ-2-ヨードエタン(42mg、0.24mmol)を0℃で加えた。次いで反応を室温で一晩撹拌した。溶媒の除去後、残渣をH
2O(20mL)に溶解した。混合物をEtOAc(50mL×3)で抽出し、Na
2SO
4で乾燥させた。有機層を濃縮し、残渣をprep-HPLCで精製して、3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(1-(2-フルオロエチル)アゼチジン-3-イル)イソニコチンアミド(10mg、収率7%)を黄色の固形物として得た。
【0162】
実施例10:3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(1-(2-メトキシエチル)アゼチジン-3-イル)イソニコチンアミド(化合物10)の調製
DMF(5mL)中のN-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(200mg、0.46mmol)とK
2CO
3(190mg、1.38mmol)との溶液に1-ブロモ-2-メトキシエタン(58mg、0.41mmol)を0℃で加えた。次いで反応を室温で一晩撹拌した。溶媒の除去後、残渣をH
2O(20mL)に溶解し、混合物をEtOAc(50mL×3)で抽出し、Na
2SO
4で乾燥させ、有機層を濃縮した。残渣をprep-HPLCによって精製して、3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(1-(2-メトキシエチル)アゼチジン-3-イル)イソニコチンアミド(38mg、収率17%)を黄色の固形物として得た。
【0163】
実施例11:N-(アゼチジン-3-イル)-3-((4-エチニル-2-フルオロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミド(化合物11)の調製
工程1:N-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-((トリメチルシリル)エチニル)フェニル)アミノ)イソニコチンアミドの合成
DMF(10mL)中のN-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(400mg、0.93mmol)とエチニルトリメチルシラン(238mg、2.42mmol)との混合物にN
2下でPdCl
2(dppf)(101mg、0.14mmol)とCuI(50mg、0.28mmol)とEt
3N(187mg、1.86mmol)とを室温で加え、反応を室温で1時間撹拌し、溶媒を除去し、残渣をH
2O(100mL)で溶解し、混合物をCH
2Cl
2(50mL×3)で抽出し、Na
2SO
4で乾燥させた。有機層を濃縮して、N-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-((トリメチルシリル)エチニル)フェニル)アミノ)イソニコチンアミド(150mg、収率40%)を黄色の固形物として得た。
【0164】
工程2:N-(アゼチジン-3-イル)-3-((4-エチニル-2-フルオロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミドの合成
DMSO(2mL)中のN-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-((トリメチルシリル)エチニル)フェニル)アミノ)イソニコチンアミド(153mg、0.38mmol)の混合物にTBAF(1M、0.38mL)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応を濃縮し、粗残渣をprep-HPLCによって精製して、N-(アゼチジン-3-イル)-3-((4-エチニル-2-フルオロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミド(TFA塩、40mg、収率24%)を黄色の固形物として得た。
【0165】
実施例12:N-(1-エチルアゼチジン-3-イル)-3-((4-エチニル-2-フルオロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミド(化合物12)の調製
工程1:N-(1-エチルアゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-((トリメチルシリル)エチニル)フェニル)アミノ)イソニコチンアミドの合成
DMF(10mL)中のN-(1-エチルアゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(400mg、0.87mmol)とエチニルトリメチルシラン(255mg、2.61mmol)との溶液にN
2下でPdCl
2(dppf)(94mg、0.13mmol)とCuI(50mg、0.26mmol)とEt
3N(175mg、1.74mmol)とを室温で加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、溶媒を除去し、残渣をH
2O(100mL)に溶解し、混合物をCH
2Cl
2(50mL×3)で抽出し、Na
2SO
4で乾燥させた。有機層を濃縮し、残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2/MeOH = 10/1)によって精製して、N-(1-エチルアゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-((トリメチルシリル)エチニル)フェニル)アミノ)イソニコチンアミド(340mg、収率91%)を黄色の固形物として得た。
【0166】
工程2:N-(1-エチルアゼチジン-3-イル)-3-((4-エチニル-2-フルオロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミドの合成
DMSO(2mL)中のN-(1-エチルアゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-((トリメチルシリル)エチニル)フェニル)アミノ)イソニコチンアミド(340mg、0.79mmol)の溶液に、TBAF(1M、0.79mL)を室温で30分間加え、反応を濃縮して粗生成物を得、残渣をprep-HPLCによって精製して、N-(1-エチルアゼチジン-3-イル)-3-((4-エチニル-2-フルオロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミド(TFA塩、27mg、収率7%)を黄色の固体として得た。
【0167】
実施例13:N-(アゼチジン-3-イル)-3-クロロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(化合物13)の調製
工程1:3-クロロ-5-フルオロイソニコチン酸の合成
N
2下で-78℃まで冷却したTHF(20mL)中の3-クロロ-5-フルオロピリジン(500mg、3.8mmol)の溶液にn-BuLi(4.75mL、ヘキサン中1.6M)を加えた。反応を-78℃で1時間撹拌し、固体CO
2を加え、反応を室温で16時間撹拌した。反応は完了しなかった(所望化合物90%および出発物質8%)。溶媒を除去し、残渣をCH
2Cl
2で洗浄し、ろ過し、乾燥させて、3-クロロ-5-フルオロイソニコチン酸(670mg、粗製)を白色の固体として得、これを精製せずに次の工程に直接用いた。
【0168】
工程2:3-クロロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチン酸の合成
THF(30mL)中の3-クロロ-5-フルオロイソニコチン酸(670mg、3.8mmol)と2-フルオロ-4-ヨードアニリン(900mg、3.8mmol)との混合物をN2下で0℃まで冷却した。LiHMDS(11.4mL、THF中1M)を加え、反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去し、残渣をCH2Cl2および2N NaOHで洗浄し、合わせた水層をpH = 1になるまで濃HClで処理し、混合物を室温で16時間撹拌した。混合物をろ過し、乾燥させて、3-クロロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチン酸(240mg、2工程で収率16%)を黄色の固形物として得た。
【0169】
工程3:3-(3-クロロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成
CH2Cl2(20mL)中の3-クロロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチン酸(240mg、0.61mmol)と3-アミノアゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(316mg、1.84mmol)との溶液にN2下でピリジン(170mg、2.14mmol)およびPOCl3(30mg)を加え、反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去して3-(3-クロロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルを得、これは精製せずに次の工程に用いた。
【0170】
工程4:N-(アゼチジン-3-イル)-3-クロロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミドの合成
CH
2Cl
2(30mL)中の3-(3-クロロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(330mg、0.60mmol)の溶液にTFA(3mL)を加えた。反応を室温で2時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去した。残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2/MeOH = 25/1 +0.5%NH
3.H
2O)によって精製して、N-(アゼチジン-3-イル)-3-クロロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(180mg、2工程で収率66%)を黄色の固形物として得た。
【0171】
実施例14:N-(アゼチジン-3-イル)-3-((4-ブロモ-2-クロロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミド(化合物14)の調製
工程1:3-((4-ブロモ-2-クロロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチン酸の合成
THF(10mL)中の3,5-ジフルオロイソニコチン酸(160mg、1.0mmol)と4-ブロモ-2-クロロアニリン(207mg、1.0mmol)との混合物をN
2下で0℃まで冷却した。LiHMDS(3mL、THF中1M)を加え、反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去し、残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2/MeOH = 10/1)によって精製して、3-((4-ブロモ-2-クロロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチン酸(180mg、収率52%)を黄色の固形物として得た。
【0172】
工程2:3-(3-((4-ブロモ-2-クロロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成
CH2Cl2(20mL)中の3-((4-ブロモ-2-クロロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチン酸(180mg、0.52mmol)と3-アミノアゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(269mg、1.56mmol)との溶液にN2下でピリジン(144mg、1.83mmol)およびPOCl3(25mg)を加え、反応を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去して3-(3-((4-ブロモ-2-クロロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(粗製)を得、これは精製せずに次の工程に用いた。
【0173】
工程3:N-(アゼチジン-3-イル)-3-((4-ブロモ-2-クロロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミドの合成
CH
2Cl
2(30mL)中の3-(3-((4-ブロモ-2-クロロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(260mg、0.52mmol)の溶液にTFA(3mL)を加え、反応を室温で2時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去した。残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2/MeOH = 15/1 +0.5%NH
3.H
2O)によって精製して、N-(アゼチジン-3-イル)-3-((4-ブロモ-2-クロロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミド(120mg、2工程で収率58%)を黄色の固形物として得た。
【0174】
実施例15:N-(アゼチジン-3-イル)-3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(化合物15)の調製
工程1:3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチン酸の合成
THF(30mL)中の3-フルオロイソニコチン酸(820mg、5.8mmol)と2-フルオロ-4-ヨードアニリン(1380mg、5.8mmol)との溶液にLiHMDS(17.4mL、17.4mmol)を0℃で加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した。混合物に1N NaOH水溶液(20mL)を加えた。混合物をEtOAc(50mL×2)で抽出した。1N HClの添加によってpH = 5~7になるまで水相を酸性化し、混合物を30分間撹拌し、次いでろ過し、ケーキを乾燥させて、3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチン酸(350mg、収率17%)を白色の固形物として得た。
【0175】
工程2:3-(3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成
ピリジン(10mL)中の3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチン酸(200mg、0.55mmol)と3-アミノアゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(290mg、1.68mmol)との混合物にPOCl3(6滴)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/MeOH 100:1~30:1、v/v)によって精製して、3-(3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(100mg、収率35%)を茶色の固形物として得た。
【0176】
工程3:N-(アゼチジン-3-イル)-3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミドの合成
CH
2Cl
2/TFA(10mL/1mL)中の3-(3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(100mg、0.19mmol)の混合物を室温で3時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を蒸発させて、N-(アゼチジン-3-イル)-3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(TFA塩、100mg、収率98%)を茶色の油状物として得た。
【0177】
実施例16:N-(アゼチジン-3-イル)-4-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ニコチンアミド(化合物16)の調製
工程1:4-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ニコチン酸の合成
THF(40mL)中の4-クロロニコチン酸(1.0g、6.3mmol)と2-フルオロ-4-ヨードアニリン(1.5g、6.3mmol)との溶液にLiHMDS(19.1mL、19.1mmol)を0℃で加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した。混合物に1N NaOH水溶液(20mL)を加えた。混合物をEtOAc(60mL×2)で抽出した。1N HClの添加によりpH = 5~7になるまで水相を酸性化し、混合物を30分間撹拌し、次いでろ過し、ケーキを乾燥させて、4-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ニコチン酸(1.0g、収率45%)を白色の固形物として得た。
【0178】
工程2:3-(4-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成
DMF(10mL)中の4-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ニコチン酸(200mg、0.55mmol)と、3-アミノアゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(193mg、1.12mmol)と、HATU(319mg、0.84mmol)と、DIEA(145mg、1.12mmol)との混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣をprep-HPLCによって精製して、3-(4-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(180mg、収率63%)を白色の固形物として得た。
【0179】
工程3:N-(アゼチジン-3-イル)-4-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ニコチンアミドの合成
CH
2Cl
2/TFA(15mL/1.5mL)中の3-(4-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(180mg、0.35mmol)の混合物を室温で3時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を蒸発させて、N-(アゼチジン-3-イル)-4-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ニコチンアミド(TFA塩、80mg、収率43%)を茶色の油状物として得た。
【0180】
実施例17:3-((4-アセチル-2-フルオロフェニル)アミノ)-N-(アゼチジン-3-イル)-5-フルオロイソニコチンアミド(化合物17)の調製
工程1:3-((4-アセチル-2-フルオロフェニル)アミノ)-N-(アゼチジン-3-イル)-5-フルオロイソニコチンアミドの合成
DCM(10mL)中の3-(3-((4-エチニル-2-フルオロフェニル)アミノ)-5-フルオロイソニコチンアミド)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチル(500mg、1.2mmol)の溶液にTFA(1mL)を室温で加えた。混合物を室温で3時間撹拌した。濃縮して粗生成物を得、次いでprep-HPLC(0.1%TFA/MeCN/H
2O)によって精製して、3-((4-アセチル-2-フルオロフェニル)アミノ)-N-(アゼチジン-3-イル)-5-フルオロイソニコチンアミド(5mg、収率1%、TFA塩)を黄色の固形物として得た。
【0181】
実施例18:3-(3-(3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-イル)プロパン酸(化合物18)の調製
工程1:3-(3-(3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-イル)プロパン酸の合成
DMF(5mL)中のN-(アゼチジン-3-イル)-3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(32mg、0.06mmol)と、K
2CO
3(17mg、0.12mmol)と、3-ブロモプロパン酸(10mg、0.06mmol)との混合物を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去し、残渣をprep-HPLC(0.1%TFA/MeCN/H
2O)によって精製して、3-(3-(3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-イル)プロパン酸(12mg、収率40%、TFA塩)を黄色の固形物として得た。
【0182】
実施例19:4-(3-(3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-イル)ブタン酸(化合物19)の調製
工程1:4-(3-(3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-イル)ブタン酸メチルの合成
DMF(5mL)中のN-(アゼチジン-3-イル)-3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(100mg、0.24mmol)と、4-ブロモブタン酸メチル(43mg、0.24mmol)と、K
2CO
3(67mg、0.49mmol)との混合物を室温で16時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を除去し、残渣は精製せずに次の工程に用いた。
【0183】
工程2:4-(3-(3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-イル)ブタン酸の合成
MeOH(5mL)中の4-(3-(3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-イル)ブタン酸メチル(100mg、0.19mmol)の溶液にNaOH水溶液(2N、5mL)を加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応が完了した後、混合物を濃縮し、残渣をprep-HPLC(0.1%TFA/MeCN/H
2O)によって精製して、4-(3-(3-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)アゼチジン-1-イル)ブタン酸(100mg、収率86%、TFA塩)を黄色の固形物として得た。
【0184】
実施例20:N-(1-アセチルアゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(化合物20)の調製
工程1:N-(1-アセチルアゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミドの合成
DMF(1mL)中のN-(アゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(60mg、0.14mmol)と無水酢酸(21mg、0.21mmol)との溶液にK
2CO
3(39mg、0.28mmol)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をろ過し、Prep-HPLC(0.1%NH
3-H
2O)によって精製して、N-(1-アセチルアゼチジン-3-イル)-3-フルオロ-5-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド(34mg、収率52%)を黄色の固形物として得た。
【0185】
本明細書において記載される化合物、使用、および方法の上記の説明によって当業者が本明細書において記載される化合物、使用、および方法を作製しかつ用いることが可能になるが、当業者であれば本明細書における特定の態様、方法、および例のバリエーション、組み合わせ、および均等物の存在を理解しかつ認識するであろう。本明細書において提供される化合物、使用、および方法は、したがって、上述の態様、方法、または例によって限定されるべきではなく、むしろ本明細書において提供される化合物、使用、および方法の範囲および精神に含まれるすべての態様および方法を包含する。
【0186】
本明細書において開示されるすべての参照文献はそれらの全体において参照により組み入れられる。
【0187】
式(I)の化合物のインビトロおよびインビボ活性を、以下の手順を用いて決定した。
【0188】
生物学的実施例B1
MEK1/2阻害アッセイ
試験化合物を100%DMSOに溶解して10mMストック溶液を調製した。試験化合物ごとに100x溶液の4倍段階希釈物を合計で7つの濃度で調製した。陽性対照化合物としてのスタウロスポリンは100x溶液の3倍連続希釈物を用いて合計で10の濃度にした。試験化合物およびスタウロスポリンの最終開始濃度はそれぞれ2μMおよび0.1μMであった。自動液体ハンドラーにより、プレートマップに従って250nLの化合物を384ウェルプレートに移した。そして、MEK1(Carna、07-141)を2.5x最終濃度(0.015nM)になるように、40nMの不活性ERK2(Carna、04-143-10)を含有する1xキナーゼ緩衝液で希釈した。384ウェルプレートの各ウェルに10uLの酵素ミックスを加えた。10μLの1xキナーゼ緩衝液を陰性対照として用いた。酵素ミックスおよび化合物をRTで10分間プレインキュベートした。ATP(100μM)およびキナーゼ基質8(GL BioChem、112396)を含有する15μLの基質ミックスを384ウェルプレートに加え、RTで30分間反応させた。30μLの停止バッファーを加えて反応を停止させた。Caliper EZ Readerで変換率を読み取った。
【0189】
化合物の阻害率は次のように計算される:
%阻害=(変換%_max-変換%_試料)/(変換%_max-変換%_min)×100
変換%_試料:試料の変換%値
変換%_min:陰性対照の平均変換%値
変換%_max:陽性対照の平均変換%値。
【0190】
用量反応曲線はGraphPad Prism 5でフィッティングし、IC50は以下の式を用いたlog(阻害剤)vs.応答-可変勾配プログラムによって計算する:
Y=ボトム+(トップ-ボトム)/(1+10^((LogIC50-X)*ヒルスロープ))
【0191】
抗増殖アッセイ
CellTiter GloによるA375細胞株における試験化合物のインビトロ抗増殖研究。空気中にて5%CO2とともに37℃で細胞を対応する培地中において単層培養物として常法によって維持した。
【0192】
指数関数的に成長する細胞をトリプシン-EDTA消化によって回収した。細胞ペレットを新たな培地に再懸濁し、必要に応じて濃度を調整した(ウェルあたりの細胞密度は以下のフォームに列挙した)。細胞生存率はトリパンブルー染色によると98%超であった。プレートマップに従って細胞を96ウェルプレートに播種した(90μL/ウェル)。プレートを37℃および5%CO2で一晩インキュベートした。次の日、プレートマップに従って10x化合物含有培地を調製した。10μLの10x化合物含有培地をアッセイプレートの各ウェルに移した(最終DMSO濃度は0.5%であった)。培地を穏やかに混ぜ、37℃および5%CO2でさらに72時間または144時間インキュベートした。
【0193】
試薬はメーカーの指示書に従って調製した。50μLのCellTiter-Glo試薬を各ウェルに加えた。内容物をオービタルシェーカー上で2分間混ぜて細胞の溶解を誘導した。プレートを室温で10分間インキュベートして発光シグナルを安定化させた。各ウェルの反応内容物100μLを透明なプレートから白壁/白不透明の96ウェルプレートに移した。発光はEnvisionで記録した。
【0194】
発光測定結果[時間ゼロ(T0)、対照成長(C)、および6つの濃度レベルの薬物の存在下での試験成長(Ti)]を用いて、各薬物濃度レベルでの成長率を算出した。
【0195】
成長阻害率(GI)については、Ti>=T0の場合の濃度はGI(%)=[(Ti-T0)/(C-T0)]×100およびTi<T0の場合の濃度はGI(%)=[(Ti-T0)/T0]×100として算出する。XLFit(Excel)ツールを用い、4パラメータ方程式にフィッティングして濃度応答曲線を生成してデータを解析した。対照の細胞成長を50%阻害する化合物濃度(GI50)は、yが方程式f(x)205[fit=(A+((B-A)/(1+((C/x)^D))))]による非線形回帰を用いたDMSO処理した対照ウェルの正味の成長の50%である場合に逆補間し、式中Aは最小応答(Ymin)であり、Bは最大応答(Ymax)であり、Cは曲線の変曲点(Re GI50)であり、Dはヒル係数である。50%成長阻害(GI50)は曲線上の50%成長阻害にて算出した。指標値は各試験化合物濃度での阻害率(IR)の合計であった。
【0196】
表AはA375メラノーマ細胞およびHT-29結腸がん細胞での合成化合物の抗増殖性を示す。
【0197】
【表A】
+++:<100nM;++:100~1,000nM;+:>1,000nM;N.D.:未測定
【0198】
生物学的実施例B2
MDCK-MDR1透過性アッセイ
MDCK-MDR1細胞は、P-糖タンパク質という排出タンパク質をコードする遺伝子であるMDR1遺伝子によるMadin Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞のトランスフェクションに由来している。この細胞株は、阻害剤の有無にかかわらず、P-gpの基質を同定するために理想的である。細胞をMultiscreen(商標)プレートにシーディングして、実験前に4日間にわたってコンフルエントな単層を形成した。4日目に、試験化合物(1~30μM濃度)を膜の頂端側に加え、単層を通過する化合物の輸送を120分間モニタリングした。薬物排出を検討するために、側底部コンパートメントから頂端部コンパートメントへの化合物の輸送を調査し排出比を算出することも必要であった。
【0199】
透過係数(Papp)は以下の方程式から算出した:
Papp=[(dQ/dt)/C0xA]
式中、dQ/dtは細胞を通過する薬物の透過率であり、C0は時間ゼロでのドナーコンパートメント濃度であり、Aは細胞単層の面積である。
【0200】
排出比は平均頂端部→側底部(A-B)Pappデータおよび側底部→頂端部(B-A)Pappデータから算出される。
排出比=Papp(B-A)/Papp(A-B)
【0201】
表BはMDCK-MDR1アッセイにおける化合物1の透過性をまとめたものである。
【0202】
【0203】
生物学的実施例B3
Caco-2透過性アッセイ
Caco-2細胞は薬物化合物の透過性を測定するためのインビトロアッセイとして広く用いられている。Caco-2細胞株はヒト結腸直腸がんに由来し、培養すると細胞は分極した腸細胞の単層に自発的に分化する。Caco-2細胞は、細胞および血液脳関門への薬物化合物の透過性に影響を与える最も関連性の高い細胞膜アクティブトランスポーターのうちの2つであるP-糖タンパク質および乳がん耐性タンパク質を発現する。
【0204】
細胞をMillipore Millicellプレートにシーディングして、実験前に20日間にわたってコンフルエントな単層を形成した。20日目に、試験化合物(1~30μM濃度)を膜の頂端側に加え、単層を通過する化合物の輸送を120分間モニタリングした。薬物排出を検討するために、側底部コンパートメントから頂端コンパートメントへの化合物の輸送を調査することも必要であった。
【0205】
透過係数(Papp)は以下の方程式から算出した:
Papp=[(dQ/dt)/C0xA]
式中、dQ/dtは細胞を通過する薬物の透過率であり、C0は時間ゼロでのドナーコンパートメント濃度であり、Aは細胞単層の面積である。C0は実験開始時の投与溶液の分析から得られる。
【0206】
Caco-2アッセイにおける選択された化合物の透過性を表Cにまとめる。
【0207】
【0208】
生物学的実施例B4
マウス薬物動態研究
化合物5および6の薬物動態学的特性を、標準的なプロトコルを用いて静脈内および経口投与を介してCD-1マウスで検討した。試験品は、透明な溶液または微細な懸濁液のいずれかとして、20%ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンにおいて製剤化した。表Dはマウスにおける化合物5および6の静脈内注射による薬物動態学的特徴を示す。
【0209】
【0210】
表Eはマウスにおける化合物1の経口投与による血漿曝露を示す。
【0211】
【0212】
生物学的実施例B5
インビボ薬力学研究
インビボでの式(I)の化合物の活性は、対照と比べた試験化合物による腫瘍成長の阻害量によって決定し得る。様々な化合物の腫瘍成長阻害効果は、僅かに変更したCorbett T. H., et al., "Tumor Induction Relationships in Development of Transplantable Cancers of the Colon in Mice for Chemotherapy Assays, with a Note on Carcinogen Structure", Cancer Res., 35, 2434-2439 (1975)およびCorbett T. H., et al., "A Mouse Colon-tumor Model for Experimental Therapy", Cancer Chemother. Rep. (Part 2)", 5, 169-186 (1975)の方法に従って測定される。腫瘍は、0.1mlのRPMI1640培地に懸濁させた100万~500万個の対数増殖期培養腫瘍細胞(ヒトA375メラノーマまたはHT-29結腸直腸がん細胞)を皮下注射することによって左側腹部に誘発させる。腫瘍が容易にわかるように十分な時間が経過した後(大きさ100~150mm3/直径5~6mm)、試験動物(雌のBALB/cヌードマウス)を1日1回または2回の経口投与によって試験化合物(20%ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンに10~15mg/mlの濃度で処方)で処理する。抗腫瘍効果を決定するために、腫瘍を2つの直径にわたってVernier測径器でミリメートルで測定し、腫瘍サイズ(mm3)をGeran, R. I., et al. "Protocols for Screening Chemical Agents and Natural Products Against Animal Tumors and Other Biological Systems", Third Edition, Cancer Chemother. Rep., 3, 1-104 (1972)の方法に従って式:腫物サイズ(mm3)=(長さ×幅2)/2を用いて算出する。結果は式:阻害(%)=(TuWcontrol-TuWtest)/TuWcontrol×100%に従って阻害率として表される。腫瘍移植の側腹部位はさまざまな化学療法剤について再現可能な用量/応答効果を提供し、該測定方法(腫瘍直径)は腫瘍成長率を評価するための信頼性のある方法である。
【0213】
本発明の化合物(以下「活性化合物」)の投与は作用部位への化合物の送達を可能にする任意の方法によって実施し得る。これらの方法は経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、皮下、筋肉内、血管内または注入を含む)、局所、および直腸投与を含む。
【0214】
薬学的組成物は、例えば、錠剤、カプセル、丸剤、粉末、徐放性製剤、溶液、懸濁液として経口投与に、無菌溶液、懸濁液もしくは乳液として非経口注射に、軟膏もしくはクリームとして局所投与に、または坐剤として直腸投与に好適な形態であってもよい。薬学的組成物は正確な投与量の単回投与に好適な単位剤形であってもよい。薬学的組成物は従来の薬学的担体または賦形剤と、活性成分としての発明に係る化合物とを含むであろう。加えて、他の薬剤または医薬品、担体、アジュバントなどを含んでもよい。
【0215】
下に提供される例および調製は本発明の化合物およびそのような化合物を調製する方法をさらに説明しかつ例示している。本発明の範囲は以下の例および調製の範囲によって何ら限定されないと理解されたい。以下の例では、特に明記しない限り、単一のキラル中心を備えた分子はラセミ混合物として存在する。特に明記しない限り、2つ以上のキラル中心を備えた分子はジアステレオマーのラセミ混合物として存在する。単一のエナンチオマー/ジアステレオマーは当業者に公知の方法によって取得されてもよい。
【国際調査報告】