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特表2023-554404後期促進複合体/サイクロソーム(APC/C)阻害剤としてのN-ベンジル-アルファ-アミノアミド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】後期促進複合体/サイクロソーム(APC/C)阻害剤としてのN-ベンジル-アルファ-アミノアミド
(51)【国際特許分類】
   C07C 237/04 20060101AFI20231220BHJP
   C07C 237/20 20060101ALI20231220BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20231220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 237/06 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C07C237/04 CSP
C07C237/20
A61K31/198
A61P35/00
C07C237/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536451
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2021086290
(87)【国際公開番号】W WO2022129397
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20383100.3
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】511000083
【氏名又は名称】コンセホ スペリオール デ インベスティガシオネス シエンティフィカス(セエセイセ)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS(CSIC)
【住所又は居所原語表記】C/Serrano,117,E-28006 Madrid,Spain
(71)【出願人】
【識別番号】511150067
【氏名又は名称】オックスフォード ブルックス ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】バスティダ コディナ,アガタ
(72)【発明者】
【氏名】ベニト アレナス,ラウル
(72)【発明者】
【氏名】ボラノス-ガラシア,ヴィクトル エム.
(72)【発明者】
【氏名】クルティス、ナタリエ ラウラ
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206GA19
4C206GA28
4C206KA01
4C206KA14
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA37
4C206NA14
4C206ZB26
4H006AA01
4H006AB28
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM71
4H006BN30
4H006BT16
4H006BV22
(57)【要約】
本発明は、後期促進複合体/サイクロソーム(APC/C)機能の阻害剤である式(I)に関し、ここで、RおよびRについての意味は、本明細書に開示されるとおりである。これらの化合物は、癌の治療、特に乳癌の治療において有用である。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその薬学的塩:
【化1】

式中、
は、H、アリール、C-C20アルキル、-CF、CClまたは-CBrを表し;
は、任意で-NHまたはCyにより置換された、C-Cアルキルを表し;
Cyは、任意で-OHにより置換された、フェニル基(-Ph)を表す。
【請求項2】
Cyは、パラ位が-OHにより置換されたフェニル基(-Ph)を表す、請求項1に記載の式Iの化合物またはその薬学的塩。
【請求項3】
は、-CF、CClまたは-CBrである、請求項1または2に記載の式Iの化合物またはその薬学的塩。
【請求項4】
は、-NHにより置換されたC-Cアルキルである、請求項3に記載の式Iの化合物またはその薬学的塩。
【請求項5】
は-CFである、請求項4に記載の式Iの化合物またはその薬学的塩。
【請求項6】
は、式R-aの基である、請求項1~3および5のいずれか1項に記載の式Iの化合物またはその薬学的塩:
【化2】

【請求項7】
は、式R-bの基である、請求項1~3および5のいずれか1項に記載の式Iの化合物:
【化3】

【請求項8】
前記式Iの化合物は、
【化4】

から選択される、請求項1に記載の式Iの化合物またはその薬学的塩。
【請求項9】
前記式Iの化合物は、
【化5】

である、請求項8に記載の式Iの化合物またはその薬学的塩。
【請求項10】
前記式Iの化合物は、
【化6】

から選択される、請求項1に記載の式Iの化合物またはその薬学的塩。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項12】
プロ-N-4-トシル-L-アルギニンメチルエステル(proTame)から選択されるさらなる化合物と組み合わせた、請求項1~10のいずれか1項に記載の式Iの化合物を含む薬学的組成物。
【請求項13】
治療に使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
癌の治療における使用のための、式Iの化合物またはその薬学的塩:
【化7】

式中、
は、H、アリール、C-C20アルキル、-CF、CCl、または-CBrを表し;
は、任意で-COR、-SR、-OHまたはCyにより置換された、C-Cアルキルを表し;
Cyは、任意で-OHにより置換された、フェニル基(-Ph)を表す。
【請求項15】
前記式Iの化合物は、
【化8】

から選択される、請求項14に記載の使用のための、式Iの化合物またはその薬学的塩。
【請求項16】
前記式Iの化合物は、
【化9】

である、請求項15に記載の使用のための、式Iの化合物またはその薬学的塩。
【請求項17】
前記式Iの化合物は、
【化10】

から選択される、請求項14に記載の使用のための、式Iの化合物またはその薬学的塩。
【請求項18】
乳癌の治療のための、請求項14~17のいずれか1項に記載の使用のための、式Iの化合物またはその薬学的塩。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、後期促進複合体/サイクロソーム(APC/C)の阻害剤である式Iの化合物と、癌の治療、特に乳癌の治療に使用するためのその薬学的組成物と、に関する。さらに、本発明は、proTAMEと組み合わせて投与される式Iの化合物の組成物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
癌は、多くの人々に影響を及ぼす疾患であり、ヒトにおける死の主要な原因である。癌は、部分的には制御されない細胞増殖を特徴とする(Golias, CH., Charalabopoulos, A., Charalabopoulos, K. Cell proliferation and cell cycle control: a mini review. Int J Clin Pract, 2004, 58, 12, 1134-1141参照)。したがって、細胞分裂(例えば、有糸分裂)を妨害する化合物は、癌化学療法装備(armament)の一部であり得る。例えば、パクリタキセルのような、臨床使用におけるいくつかの昨今の分裂妨害物質は、微小管を標的とすると考えられ、従って、分裂の紡錘体機能を妨害することができる(Wang, T-H., Hsin-Shih Wang, MD., Soong, YK. Paclitaxel-Induced Cell Death. Cancer 1, 2000, 88 (11)参照)。実際、長期の分裂の妨害は、細胞にアポトーシスを引き起こさせ得る。しかしながら、腫瘍には、細胞分裂中の染色体の正確かつ時宜を得た分離を確実にするタンパク質Cdc20のようないくつかのタンパク質によって組織化された非常に複雑な信号網である紡錘体集合チェックポイント(SAC)を不活性化させることにより、微小管妨害薬物に対して耐性を発現するものがある。細胞分裂中に姉妹染色分体を引き離す微小管ポリマーに対して染色体を付着させるための部位である、動原体へのSACタンパク質の動員は、SACの完全な活性および最適な機能に不可欠である。BubR1へのCdc20の結合は、Cdc20の動原体への動員を媒介する一方、後期促進複合体/サイクロソーム(APC/C)へのCdc20の結合は、細胞周期進行中のプロテアソームによるその後の分解(degradation)のために、APC/Cと特定のユビキチン基質との相互作用を調節し、したがって、一方向的な方法で細胞周期を前方に支配する(Meadows JC, Millar JB. Sharpening the anaphase switch. Biochem Soc Trans 2015, 43:19-22; Izawa D, Pines J. The mitotic checkpoint complex binds a second CDC20 to inhibit active APC/C. Nature 2015, 517: 631-34; Di Fiore B. et al. The ABBA motif binds APC/C activators and is shared by APC/C substrates and regulators. Dev Cell 2015, 32:358-72; Zich J, Hardwick KG. Getting down to the phosphorylated 'nuts and bolts' of spindle checkpoint signalling. Trends Biochem Sci. 2010, 35:18-27;およびWO 2012/149266参照)。乳房腫瘍に対する、より効果的な治療アプローチの開発を可能にするためには、Cdc20が異常に過剰産生される癌細胞、ならびに、異常なSAC信号および染色体分離欠損に関連する腫瘍における、APC/C調節を含む、SAC機能に重要なCdc20タンパク質-タンパク質相互作用に影響を及ぼす新規の化学的阻害剤を開発することが必要である。Cdc20タンパク質は、乳癌の進行を促進するための腫瘍タンパク質として機能し得る。今日まで、ProTAMEと組み合わせた化合物アプシン(Apcin)のみが、癌治療戦略としてCdc20の標的である(Lixia Wanga, Jinfang Zhangb, Lixin Wanb, Xiuxia Zhoua, Zhiwei Wanga, Wenyi Wei. Targeting Cdc20 as a novel cancer therapeutic strategy. Pharmacol Ther. 2015; 151: 141-151; PCTUS2011050203;およびUS 2013/0230458を参照)。アプシン(APC/C阻害剤)は、Cdc20に結合し、APC/Cの基質認識を妨げ、それによってAPC/C基質のユビキチン化を阻害する。
【0003】
したがって、癌の治療のために、特に乳癌の治療のために、APC/Cの新規阻害剤を準備(dispose)する必要がある。
【0004】
〔本発明の概要〕
本発明の第一の態様は、式Iの化合物またはその薬学的塩に関する:
【0005】
【化1】
【0006】
式中、
は、H、アリール、C-C20アルキル、-CF、CClまたは-CBrを表し;
は、任意で-NHまたはCyにより置換された、C-Cアルキルを表し;
Cyは、任意で-OHにより置換された、フェニル基(-Ph)を表す。
【0007】
したがって、式Iの化合物は、遊離(free)であっても塩の形態であってもよい。式Iの化合物の塩のアニオンの例には、特に、アニオンクロリド(Cl)およびアニオンTFA(CFCO )が含まれる。
【0008】
式Iの化合物のいくつかは、様々な立体異性体を生じさせることができるキラル中心を有することができる。本発明は、これらの立体異性体の各々、およびそれらの混合物にもまた関する。
【0009】
式Iの化合物のR基は、利用可能なオルト位、メタ位またはパラ位のいずれかにあることができる。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、Cyが、パラ位が-OHにより置換されたフェニル基(-Ph)を表す、上記で定義された式Iの化合物に関する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、Rが、-CF、CClまたは-CBrであり、好ましくはRが-CFである、上記で定義された式Iの化合物に関する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、Rが、-NHにより置換されたC-Cアルキルである、上記で定義された式Iの化合物に関する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、Rが、式R-aの基である、上記で定義された式Iの化合物に関する:
【0014】
【化2】
【0015】
【0016】
別の実施形態において、本発明は、Rが、式R-bの基である、上記で定義された式Iの化合物に関する:
【0017】
【化3】
【0018】
【0019】
別の実施形態において、本発明は、前記式Iの化合物が、
【0020】
【化4】
【0021】
から選択される、上記で定義された式Iの化合物に関する。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、前記式Iの化合物が、
【0023】
【化5】
【0024】
から選択される、上記で定義された式Iの化合物に関する。
【0025】
本発明の別の実施形態は、上記で定義された式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と、1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物に関する。
【0026】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、単独で、またはプロドラッグと組み合わせて投与することができ、前記プロドラッグは、好ましくは、プロ-N-4-トシル-L-アルギニンメチルエステル(proTame)である。
【0027】
したがって、本発明の別の態様は、プロ-N-4-トシル-L-アルギニンメチルエステル(proTame)から選択されるさらなる化合物と組み合わせた、上記で定義された式Iの化合物を含む薬学的組成物に関する。
【0028】
本発明の別の態様は、治療に使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0029】
本発明の別の態様は、癌の治療における使用のための、式Iの化合物に関する:
【0030】
【化6】
【0031】
式中、
は、H、アリール、C-C20アルキル、-CF、CCl、-CBr、または-Clを表し;
は、任意で-NHまたはCyにより置換された、C-Cアルキルを表し;
Cyは、任意で-OHにより置換された、フェニル基(-Ph)を表す。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、上記で定義された使用のための式Iの化合物に関し、前記式Iの化合物は、
【0033】
【化7】
【0034】
から選択される。
【0035】
別の実施形態では、本発明は、上記で定義された使用のための式Iの化合物に関し、前記式Iの化合物は、
【0036】
【化8】
【0037】
から選択される。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、乳癌の治療のための、上記で定義された使用のための式Iの化合物に関する。
【0039】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を、本発明の実施において使用することができる。本明細書および特許請求の範囲を通して、「含む」という用語およびその変形物は、他の技術的特徴、添加剤、成分、または工程を排除することを意図するものではない。本発明のさらなる目的、利点、および特徴は、説明を検討することによって当業者に明らかになるか、または本発明を実施することによって知ることができる。以下の実施例および図面は、例示のために提供され、本発明を限定することを意図するものではない。
【0040】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、Cdc20-o-TFB-Tyr複合体、o-TFB-Tyr Cdc20およびアプシン(Apcin)複合体の接触、o-TFB-Tyr-Cdc20の3D構造を示す。
【0041】
図2は、比較のためにCdc20阻害剤アプシンを用いた、トリプルネガティブ乳癌細胞に対して試験した化合物のMTTアッセイによる細胞毒性分析を示す。選択された第3世代の化合物o-TFB-Tyrを用いて24時間処理した後の、非同期HCC-38トリプルネガティブ乳癌細胞の細胞毒性分析。HCC-38細胞は、25μMおよび5μM濃度の化合物o-TFB-Tyr(パネルA)、ならびに、1μM濃度の化合物o-TFB-Tyr(パネルB)に、単独で、およびproTAMEとの組み合わせで、曝露した。使用した陰性対照は、未処理細胞(培地)であり、一方、使用した陽性対照は、アプシン25μM単独、proTAME 10μM単独、および、proTAME 10μMと組み合わせたアプシン25μMであった。データは、陰性対照カラム(培地)と比較して、全てのカラムを用いて、一元配置分散分析およびDunnett検定によって分析した、p<0.001。反復実験を行った。
【0042】
図3は、化合物o-TFB-Tyrの5μM、1μM、0.5μMおよび100nMの濃度での細胞毒性分析を示す。HCC-38癌細胞を、化合物o-TFB-Tyr単独に対して、およびproTAMEと組み合わせた化合物o-TFB-Tyrに対して、曝露した。使用した陰性対照は、未処理細胞(培地)であり、一方、使用した陽性対照は、proTAME 10μMと組み合わせたアプシン25μMであった。データは、陰性対照カラム(培地)と比較して、全てのカラムを用いて、一元配置分散分析およびDunnett検定によって分析した、p<0.001。反復実験を行った。
【0043】
図4は、ADME試験の一部を構成する細胞膜透過性試験の原理を示す。
【0044】
図5は、HeLa細胞における様々な濃度での化合物o-TFB-Tyrを、Mps1キナーゼの小化合物阻害剤であって、SACの上流調節因子であるリバーシン(Reversine)と、Cdc20の小サイズバインダーであって、Cdc20によるAPC/C活性化の阻害剤であるアプシンと、比較した、相対的細胞毒性を示すグラフである。この試験では、化合物o-TFB-Tyrが、多様な組織を起源とする異なるタイプの癌に対して、より高い細胞毒性効果を示すことが確認された。
【0045】
図6では、HeLa細胞における化合物o-TFB-Tyrの相対的細胞毒性の比較を、同じ濃度の化合物アプシン、m-TFB-Tyr、p-TFB-Tyr、およびo-TFB-Lysと比較した。化合物o-TFB-Tyr、m-TFB-Tyr、およびp-TFB-Tyrは、化学構造の観点から密接に関連している。比較試験では、化合物o-TFB-Tyrが、培養中の癌細胞に対して、より高い細胞毒性効果を示すことが確認された。したがって、o-TFB-Tyrおよび構造的に関連する分子の抗癌活性を説明する、o-TFB-Tyrおよび異性体m-TFB-Tyr、p-TFB-Tyrの重要な立体化学的特徴を明らかにする。比較分析は、主張した化合物であるo-TFB-Tyr、m-TFB-Tyr、p-TFB-Tyr、およびo-TFB-LysのR2残基の化学的性質が、これらの分子の癌細胞の細胞毒性を説明することもまた示した。
【0046】
図7は、DMSO(1.2%v/v)、Mps1キナーゼ阻害剤であるリバーシン、Cdc20バインダーであるアプシンおよび化合物o-TFB-Tyrで処理したHCC-38細胞のクローン原性アッセイである。37℃で12日間インキュベーションした後、クローンを染色した。HCC38細胞を化合物を用いて24時間処理した後、培地を48時間毎に交換した。このアッセイにおいて、より少ない数のトリプルネガティブ乳癌細胞クローンが、リバーシンおよびo-TFB-Tyrで処理された細胞において一貫して観察され、癌細胞における後者の化合物の所望の細胞毒性が確認された。
【0047】
図8では、次いで、クローン原性アッセイの各ウェルを、DICイメージングおよび蛍光イメージングのために装備されたAxiozoom Zeiss Axioplan蛍光顕微鏡を使用して走査し、ImageJ2画像処理ソフトウェア(Fiji)を使用して分析した。ここでは、画像処理ソフトウェアによって生成された代表的な画像を示す。
【0048】
図9は、化合物o-TFB-TyrがAPC/CによるサイクリンBのユビキチン化の阻害を引き起こすことを示すウェスタンブロットである。その結果、非ユビキチン化サイクリンBは、プロテアソームによる分解から逃れる。この分析はまた、アプシンが、Cdc20によるAPC/C活性化の拮抗薬として、化合物o-TFB-Tyrよりも比較的効果が低いことを示す。この試験では、ウェル当たり200,000細胞の密度を有するHCC-38細胞を使用した。
【0049】
〔実施例〕
計算(Computing)
Cdc20タンパク質(剛性)の結合部位内に、化学構造Iを有する柔軟性のリガンドをドッキングするための技術(Maestro Suite、Schrodinger)を提示する(図1)。この方法は、化合物(o-、m-、p-TFB-aa、リガンド)のための予め生成された一連の構造、および、タンパク質の結合部位内のリガンドの最終的な柔軟性勾配に基づく最適化、に基づく。受容体の結合部位は、立方体ボックスとして定義され、結合ポケットの中心に化合物を配置する。すべての場合において、ボックスは、結合部位の定義からのドッキング結果の独立性を保証するために、十分大きい。ドッキングパラメータ(スコアドッキングkcal/mol)は、最良の化合物-タンパク質複合体のアイデアを与える。
【0050】
<o-、m-またはp-トリフルオロベンジル-L-アミノ酸誘導体(o-TFB-Tyr、o-TFB-Lysおよびm-TFB-Tyr、p-TFB-Tyr)の合成>
1.t-ブトキシカルボニル基を用いた、L-アミノ酸のアミノ基の保護:
【0051】
【化9】
【0052】
L-アミノ酸を、アルゴン下、水とジオキサン(手順A)、または、水と2-プロパノール(手順B)の1:1混合物中で懸濁させた。その後、水中の水酸化ナトリウム(手順A)または水酸化カリウム(手順B)を、絶えず撹拌しながら添加した。ジ-tert-ブチルカーボネートを添加した後、反応系を室温で撹拌した。反応が終了したら、減圧下で体積の半分にまで溶媒を除去し、次いで、溶液がpH=2になるまで硫酸水素カリウムを添加した。反応溶液を酢酸エチルにて抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液および水にて洗浄した。溶液を、硫酸ナトリウムにて乾燥させ、次いで濾過した。濾液を濃縮乾固した。本発明者らは、さらなる精製を行わずに、生成物を次の反応に使用した。
【0053】
【表1】
【0054】
2.Boc-L-アミノ酸とトリフルオロベンジルアミンとのカップリング反応
2.1 カップリング試薬としての2-トリフルオロベンジルアミンの使用
【0055】
【化10】
【0056】
Boc-L-アミノ酸を、アルゴン下、乾燥DMF中に溶解させた。この後、ジイソプロピルエチルアミン(手順A)または2,4,6-コリジン(手順B)と、HBTUと、を室温(r.t.)で連続的に添加し、30分間撹拌した。次いで、トリフルオロベンジルアミンを室温で添加し、この反応系を室温で一晩中撹拌した。反応が完了したら、溶媒を減圧下で除去した。次いで、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。
【0057】
【表2】
【0058】
(2S)-2,6-ビス[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-N-[2-(トリフルオロメチル)ベンジル]ヘキサンアミド(3)
【0059】
【化11】
【0060】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.63 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.54-4.47 (2H, m), 7.36 (1H, t, J = 7.5 Hz), 6.65 (1H, b.s.), 5.17 (1H, b.s.), 4.65-4.56 (2H, m), 4.07 (1H, b.s.), 3.09 (2H, m), 1.89-1.81 (1H, m), 1.69-1.59 (1H, m), 1.53-1.44 (2H, m), 1.42 (9H, s), 1.40 (9H, s), 1.40-1.39 (2H, m) ppm. 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ 172.1, 156.2, 155.8, 136.4, 132.3, 130.1, 128.0 (q, J = 30.9 Hz), 127.5, 125.9 (q, J = 5.8 Hz), 124.4 (q, J = 273.9 Hz), 80.2, 79.2, 54.6, 39.9 (q, J = 2.5 Hz), 39.7, 31.5, 29.7, 28.4, 28.2, 22.6 ppm. LRMS (ESI-ES+): m/z 504 (M+H)+, 526 (M+Na)+. IR (KBr): ν 3318, 3080, 2978, 2934, 2867, 1693, 1610, 1525, 1457, 1392, 1367, 1315, 1250, 1166, 1121, 1059, 1039, 867, 769, 655 cm-1
【0061】
(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-{4-[(tert-ブトキシカルボニル)ヒドロキシ]フェニル}-N-[2-(トリフルオロメチル)ベンジル]プロパンアミド(4)
【0062】
【化12】
【0063】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.60 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.47 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.37-7.30 (2H, m), 7.14 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.03 (2H, d, J = 8.4 Hz), 6.34 (1H, b.s.), 5.03 (1H, b.s.), 4.57 (1H, dd, J = 15.6, 6.4 Hz), 4.52 (1H, dd, J = 15.6, 6.4 Hz), 4.34 (1H, b.s.), 3.11-3.00 (2H, m), 1.55 (9H, s), 1.38 (9H, s) ppm. 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ 171.0, 155.4, 151.8, 150.0, 136.1, 133.9, 132.2, 130.2, 130.1, 128.0 (q, J = 31.3 Hz), 127.5, 125.9 (q, J = 6.5 Hz), 124.3 (q, J = 274.0 Hz), 121.4, 83.6, 80.4, 55.8, 39.9, 37.4, 28.2, 27.7 ppm. LRMS (EI): m/z 538 (M+, 0.1), 321 (100), 231 (6), 159 (22), 136 (21)。
【0064】
(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-[4-(ヒドロキシ)フェニル]-N-[2-(トリフルオロメチル)ベンジル]プロパンアミド(5)
【0065】
【化13】
【0066】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.58 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.43 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.32 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.22 (1H, b.s.), 6.93 (2H, d, J = 8.1 Hz), 6.66 (2H, d, J = 8.1 Hz), 6.41 (1H, t, J = 6.2 Hz), 5.19 (1H, b.s.), 4.59 (1H, dd, J = 15.4, 6.1 Hz), 4.46 (1H, dd, J = 15.5, 5.6 Hz), 4.31 (1H, b.s.), 2.97 (1H, J = 14.3, 6.5 Hz), 2.92 (1H, dd, J = 14.3, 7.8 Hz), 1.39 (9H, s) ppm. 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ 171.5, 155.6, 155.1, 135.9, 132.2, 130.3, 130.0 (q, J = 3.3 Hz), 127.9 (q, J = 29.7 Hz), 127.8, 127.5, 125.8 (q, J = 5.1 Hz), 124.3 (q, J = 274.3 Hz), 115.6, 80.6, 56.2, 39.9, 37.5, 28.2 ppm. LRMS (EI): m/z 438 (M+, 0.5), 321 (100), 231 (5)。
【0067】
2.2 カップリング試薬としての3-または4-トリフルオロベンジルアミンの使用
【0068】
【化14】
【0069】
Boc-L-チロシンをアルゴン下で乾燥DMF中に溶解させた。この後、2,4,6-コリジンおよびHBTUを、室温で連続的に添加し、30分間撹拌した。次いで、3-トリフルオロベンジルアミン(手順A)または4-トリフルオロベンジルアミン(手順B)を室温で添加し、反応系を室温で一晩中撹拌した。反応が完了した際、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。
【0070】
【表3】
【0071】
(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-{4-[(tert-ブトキシカルボニル)ヒドロキシ]フェニル}-N-[3-(トリフルオロメチル)ベンジル]プロパンアミド(6)
【0072】
【化15】
【0073】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.48 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.43 (1H, s), 7.61 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.27 (1H, b.s.), 7.15 (2H, d, J = 8.3 Hz), 7.04 (2H, d, J = 8.3 Hz), 6.58 (1H, b.s.), 5.16 (1H, b.s.), 4.36 (3H, s), 3.05 (2H, s), 1.54 (9H, s), 1.36 (9H,s) ppm. 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ 171.3, 155.5, 151.8, 150.0, 138.8, 134.0, 130.9, 130.7 (q, J = 32.9 Hz), 130.2, 129.1, 124.3, 124.2, 123.9 (q, J = 271.3 Hz), 121.4, 83.5, 80.4, 55.8, 42.9, 37.6, 28.2, 27.6 ppm. LRMS (EI): m/z 321 (100), 231 (6), 159 (34), 136 (22)。
【0074】
(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-[4-(ヒドロキシ)フェニル]-N-[3-(トリフルオロメチル)ベンジル]プロパンアミド(7)
【0075】
【化16】
【0076】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.92 (1H, b.s.), 7.47 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.41 (1H, s), 7.36 (1H, t, J = 7.7 Hz), 7.20 (1H, b.s.), 6.97 (1H, b.s.), 6.95 (2H, d, J = 8.4 Hz), 6.65 (2H, d, J = 8.4 Hz), 5.38 (1H, b.s.), 4.38 (1H, dd, J = 15.5, 5.2 Hz), 4.31 (1H, dd, J = 15.5, 5.6 Hz), 4.24 (1H, q, J = 7.1 Hz), 2.91 (2H, d, J = 7.1 Hz), 1.36 (9H, s) ppm. 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ 171.9, 155.7, 155.4, 138.7, 130.9 (×2C), 130.3, 129.0, 127.4, 124.2, 124.1 (q, J = 3.1 Hz), 123.9 (q, J = 272.3 Hz), 115.4, 80.4, 56.1, 42.8, 37.7, 28.1 ppm. LRMS (EI): m/z 438 (M+, 0.3), 321 (100), 231 (3), 159 (54), 136 (24)。
【0077】
(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-{4-[(tert-ブトキシカルボニル)ヒドロキシ]フェニル}-N-[4-(トリフルオロメチル)ベンジル]プロパンアミド(8)
【0078】
【化17】
【0079】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.55 (2H, d, J = 8.1 Hz), 7.20 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.18 (2H, d, J =8.1 Hz), 7.07 (2H, d, J = 8.5 Hz), 6.23 (1H, b.s.), 5.00 (1H, b.s.), 4.41 (2H, d, J = 6.3 Hz), 4.32 (1H, q, J = 7.1 Hz), 3.14 (1H, dd J = 13.7, 7.1 Hz), 3.02 (1H, dd, J = 13.7, 7.1 Hz), 1.57 (9H, s), 1.41 (9H,s) ppm. 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ 171.1, 155.4, 151.9, 150.1, 141.7, 133.9, 130.2, 129.6 (q, J = 33.8 Hz), 127.7, 125.6 (q, J = 3.7 Hz), 124.0 (q, J = 272.9 Hz), 121.5, 53.6, 80.5, 56.0, 42.9, 37.6, 28.2, 27.6 ppm. LRMS (EI): m/z 538 (M+, 0.1), 321 (100), 231 (4), 159 (20), 136 (15)。
【0080】
(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-[4-(ヒドロキシ)フェニル]-N-[4-(トリフルオロメチル)ベンジル]プロパンアミド(9)
【0081】
【化18】
【0082】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.45 (2H, d, J = 7.0 Hz), 7.35 (1H, b.s.), 7.11-7.04 (3H, m), 6.93 (2H, d, J = 8.3 Hz), 6.65 (2H, d, J = 8.3 Hz), 5.56 (1H, b.s.), 4.37 (1H, dd, J = 15.5, 6.0 Hz), 4.27-4.14 (2H, m), 2.85 (2H, d, J = 7.0 Hz), 1.33 (9H, s) ppm. 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ 172.0, 155.6, 152.0, 141.8, 130.2, 129.3 (q, J = 34.5 Hz), 127.6, 127.1, 125.2, (q, J = 4.2 Hz), 124.0 (q, J = 272.0 Hz), 115.3, 80.2, 56.0, 42.6, 37.7, 28.0 ppm. LRMS (EI): m/z 438 (M+, 0.5), 321 (100), 231 (5), 159 (25), 136 (25)。
【0083】
3.Boc-トリフルオロベンジルアミノ酸誘導体の脱保護反応
【0084】
【化19】
【0085】
Boc-トリフルオロベンジルアミド誘導体を、CHCl:TFA[2:1]の混合物中に、アルゴン下、室温で溶解させ、当該溶液をこの温度で攪拌した。反応が完了した際、溶媒を減圧下で除去した。粗反応生成物を、2つの手順で精製した:1)手順A: revelerisカートリッジSRC C18を使用する逆相クロマトグラフィー、2)手順B:Dowex 50WX4樹脂を使用する陰イオン交換クロマトグラフィー、続いてシリカゲルクロマトグラフィー。
【0086】
【表4】
【0087】
(2S)-2,6-ジアミノ-N-[2-(トリフルオロメチル)ベンジル]ヘキサンアミド(o-TFB-Lys-TFA)(手順A)(10)
【0088】
【化20】
【0089】
1H-NMR (500 MHz, D2O): δ 7.79 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.65 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.54 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.52 (1H, t, J = 7.8 Hz), 4.70 (1H, d, J = 15.4 Hz), 4.57 (1H, d, J = 15.4 Hz), 4.04 ( 1H, t, J = 6.6 Hz), 2.94 (2H, t, J = 7.8 Hz), 1.98 (2H, m), 1.72-1.63 (2H, m), 1.43-1.34 (2H, m) ppm. 13C-NMR (125 MHz, D2O): δ 170.1, 135.4 (q, J = 1.7 Hz), 133.2, 130.7, 128.8, 128.1 (q, J = 30.7 Hz), 127.0 (q, J = 6.0 Hz), 125.0 (q, J = 274.4 Hz), 53.6, 41.2 (q, J = 2.8 Hz), 39.6, 31.0, 26.9, 21.8 ppm. LRMS (ESI-ES+): m/z 304 (M+H)+, 326 (M+Na)+. IR (KBr): ν 3080, 2882, 2824, 1673, 1433, 1316, 1203, 1128, 1061, 1040, 840, 800, 770, 723 cm-1
【0090】
(2S)-2-アミノ-N-[2-(トリフルオロメチル)ベンジル]-3-[4-(ヒドロキシ)フェニル]プロパンアミド(o-TFB-Tyr-TFA)(手順A)(11)
【0091】
【化21】
【0092】
1H-NMR (500 MHz, CD3OD): δ 7.72 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.56 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.50 (1H, t, J = 7.7 Hz), 7.13 (1H, d, J = 7.5 Hz), 6.97 (2H, m), 6.66 (2H, m), 4.64 (1H, d, J =15.3 Hz), 4.28 (1H, d, J = 15.3 Hz), 4.14 (1H, dd, J = 10.0, 5.9 Hz), 3.17 (1H, dd, J = 13.6, 5.9 Hz), 2.94 (1H, dd, J = 13.6, 10.0 Hz) ppm. 13C-NMR (125 MHz, CD3OD): δ 167.9, 154.0, 133.6, 131.6, 129.7, 129.5, 127.2, 126.5 (q, J = 30.1 Hz), 125.3 (q, J = 5.1 Hz), 124.4, 123.4 (q, J = 273.6 Hz), 114.8, 53.7, 39.2, 35.2 ppm. LRMS (ESI-ES+): m/z 339 (M+H)+, 361(M+Na)+, 699 (2M+Na)+. IR (KBr): ν 3416, 3089, 2928, 1677, 1615, 1518, 1439, 1370, 1317, 1204, 1122, 1061, 1041, 840, 801, 770, 723 cm-1
【0093】
(2S)-2-アミノ-N-[2-(トリフルオロメチル)ベンジル]-3-[4-(ヒドロキシ)フェニル]プロパンアミド(o-TFB-Tyr)(手順B)(12)
【0094】
【化22】
【0095】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.69 (1H, t, J = 6.1 Hz), 7.63 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.50 (1H, dd, J = 7.7, 7.4 Hz), 7.43 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.37 (1H, dd, J = 7.6, 7.4 Hz), 7.02 (2H, m), 6.77-6.74 (2H, m), 4.62 (2H, d, J = 6.1 Hz), 3.61 (1H, dd, J = 8.8, 4.3 Hz), 3.13 (1H, dd, J = 13.8, 4.3 Hz), 2.68 (1H, dd, J = 13.8, 8.8 Hz), 3.05 (3H, b.s.) ppm. 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ 147.7, 155.2, 136.4, 132.3, 130.6, 130.4, 128.7, 128.2 (q, J = 30.6 Hz),127.6, 126.0 (q, J = 6.3 Hz), 124.4 (q, J = 274.2 Hz), 115.7, 56.4, 40.0, 39.8 (q, J = 2.1 Hz) ppm. LRMS (EI): m/z 321 (34), 231 (25), 159 (56), 136 (100)。
【0096】
(2S)-2-アミノ-N-[3-(トリフルオロメチル)ベンジル]-3-[4-(ヒドロキシ)フェニル]プロパンアミド(m-TFB-Tyr)(手順B)(13)
【0097】
【化23】
【0098】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.75 (1H, t, J = 5.8 Hz), 7.50-7.44 (2H, m), 7.39 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.33 (1H, d, J = 7.5 Hz), 6.97 (2H, d, J = 8.2 Hz), 6.71 (2H, d, J = 8.2 Hz), 4.41 (2H, s), 3.58-3.50 (1H, m), 3.04 (1H, dd, J = 13.4, 4.2 Hz), 2.86 (3H, b.s.), 2.65 (1H, dd, J = 13.4, 9.0 Hz) ppm. 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ 174.9, 155.6, 139.0, 130.9 (q, J = 1.4 Hz), 130.8 (q, J = 32.3 Hz), 130.2, 129.0, 128.0, 124.2 (q, J = 3.7 Hz), 124.1 (q, J = 3.9 Hz), 123.9 (q, J = 272.1 Hz), 115.5, 56.3, 42.5, 40.0 ppm. LRMS (EI): m/z 338 (M+, 0.2), 321 (50), 231 (26), 159 (95), 136 (100)。
【0099】
(2S)-2-アミノ-N-[4-(トリフルオロメチル)ベンジル]-3-[4-(ヒドロキシ)フェニル]プロパンアミド(p-TFB-Tyr)(手順B)(14)
【0100】
【化24】
【0101】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.75 (2H, J = 5.6 Hz), 7.50 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.22 (2H, d, J = 8.0 Hz), 6.96 (2H, d, J = 8.4 Hz), 6.70 (1H, d, J = 8.4 Hz), 4.39 (2H, s), 3.51 (1H, dd, J = 8.3, 5.0 Hz), 3.10 (3H, s), 3.00 (1H, dd, J = 13.8, 5.0 Hz), 2.66 (1H, dd, J = 13.8, 8.3 Hz) ppm. 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ 174.9, 155.7, 142.0 (q, J = 1.4 Hz), 130.2, 129.4 (q, J = 33.6 Hz), 127.9, 127.6, 125.4 (q, J = 5.4 Hz), 124.0 (q, J = 272.1 Hz), 115.4, 56.3, 42.4, 40.0 ppm. LRMS (EI): m/z 338 (M+, 0.2), 321 (44), 231 (25), 159 (85), 136 (100) 107 (33)。
【0102】
<機能的および薬理学的(ADME)アッセイ>
(標的分子との相互作用の効果)
(機能的(生物学的)試験)
in vitroにおけるMTTアッセイに基づく細胞毒性分析を実施して、新しい低分子量化合物の癌細胞に対する所望の生物学的効果を確認した。トリプルネガティブ乳癌細胞株(HCC38)においてCdc20が増幅されることが知られているので、当該トリプルネガティブ乳癌細胞株(HCC38)を用いて、合計45個の独自の分子を試験した。
【0103】
セット1の結果。リード化合物(o-TFB-Tyr)を、25uMおよび5uMで、単独でおよびAPC/C拮抗薬であるproTAMEとの組み合わせで試験した。報告されているCdc20阻害剤であるアプシンを比較のために使用した(図2参照)。
【0104】
セット2の結果。リード化合物(o-TFB-Tyr)を、5uM~100nMの濃度範囲で、単独でおよびAPC/C拮抗薬であるproTAMEとの組み合わせで試験した。報告されているCdc20阻害剤であるアプシンを比較のために使用した(図3参照)。
【0105】
図2および図3に要約された機能的試験から、1つの化合物(o-TFB-Tyr)が、細胞透過性(図4)を含む薬理学的試験のために選択された。
【0106】
(薬理学的試験)
これらは、o-TFB-TyrのADME(Adsorption、Distribution、Metabolism、Excretion:吸収、分布、代謝および排泄)アッセイの決定を含んだ。これらの試験の結果は以下のように要約される。
【0107】
(速度論的溶解度(Kinetic solubility))
これは、潜在的な問題を特定し、かつ、適切な濃度範囲を決定するために、ADME試験を開始する前に実施される、有益な初期スクリーニングである。速度論的溶解度は、比濁法を用いて測定した。この試験の結果を以下の表1に示す。
【0108】
【表5】
【0109】
このデータは、o-TFB-Tyrが水溶液に容易に可溶であることを実証した。
【0110】
(吸収)
これは、ヒト結腸直腸腺癌細胞株であるCaco-2細胞における腸透過性アッセイを用いて決定した(図4参照)。この試験の結果を以下の表2に示す。
【0111】
【表6】
【0112】
また、化合物が半透膜を横切って両方向に自由に拡散することを示している。このことは、言い換えると、薬物としての化合物の使用を制限する可能性があるABCトランスポーターなどの膜タンパク質によって、化合物が活発に輸送されないことを示す。
【0113】
(分布、代謝および排泄)
(代謝安定性試験)
肝臓は、大多数の医薬品にとって、主要な薬物代謝臓器である。薬物代謝を調べるために良好なin vitroのモデルは、肝臓の細胞よりも小さい画分であるミクロソームの使用に基づく。
【0114】
この試験の結果を以下の表3に示す。当該結果では、45分間後に8%のインタクト(intact)な分子が存在し、化合物が安定であることを実証した。
【0115】
【表7】
【0116】
(薬物クリアランス)
代謝によって除去された薬物の3分の2は、少なくとも部分的に、全てのCYP活性のほぼ50%を占めるアイソフォームCYP3A4とシトクロムP450(CYP)酵素とによって代謝される。このため、本発明者らは、CYP3A4がo-TFB-Tyrのクリアランスに関与するか否かを試験した。以下の表4は、シトクロムP450(CYP3A4アイソフォーム)抑制(IC50)測定を示す。リード化合物(o-TFB-Tyr)によるCYP3A4の可能な阻害を、CYP3A4基質として、ミダゾラムおよびテストステロンを用いて試験した。
【0117】
【表8】
【0118】
両方の場合において、IC50は、シトクロムP450アイソフォームCYP3A4によって代謝されることが知られている対照化合物のIC50よりも、はるかに高かった。比較のために、ミダゾラムおよびテストステロンを用いた対照化合物(ケトコナゾール)のデータを以下の表5に示す。
【0119】
【表9】
【0120】
総合すれば、表4および5に示されるデータは、シトクロムP450アイソフォームCYP3A4が、o-TFB-Tyrのクリアランスにおいてわずかな役割を果たすようであることを示唆する。しかし、これらの観察を確認するためには、さらなる研究が必要である。
【0121】
(血漿タンパク質結合アッセイ)
非特異的な血漿タンパク質の結合は、リード化合物のその後の阻害能に影響を及ぼし得る、遊離薬物濃度の程度に対して大きく影響し得る(以下の表6参照)。
【0122】
【表10】
【0123】
両方の場合(ヒトおよびマウス)において、タンパク質の総リカバリーが観察され、このことは、非特異的な血漿タンパク質の結合が存在しないことを示した。
【0124】
(細胞毒性の結果)
(主な成果)
HeLa細胞において実施された細胞毒性およびクローン原性試験では、この癌細胞株における化合物o-TFB-Tyrの中等度の細胞毒性活性(すなわち、200~10μMの範囲)を確認する。HeLa細胞で観察された細胞毒性効果(図5および6に示す)は、トリプルネガティブ乳癌細胞株HCC-38で観察されたものと同等であった。さらに、化合物o-TFB-Tyrで処理したHCC-38細胞のウェスタンブロット分析では、APC/C E3ユビキチンリガーゼの基質であるサイクリンBの阻害によってモニターされるように、Cdc20によるAPC/C活性化に対するこの化合物の阻害効果が確認された。化合物o-TFB-Tyrに構造的に関連する一連の化合物の細胞毒性も、HCC-38およびHeLa細胞の両方で試験し、化合物o-TFB-Tyrの特定の立体化学的特徴が、この化合物の所望の生物学的活性に対して重要な効果を有することを確認した。
【0125】
(方法論)
(細胞増殖)
以下のプロトコールの全体を無菌条件で実施した。10%ウシ胎仔血清(FBS)(Sigma F7524)を補ったダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、HeLa細胞を培養した。細胞を計数し、透明底の96ウェルプレート(Greiner Bio-One)内に6,000細胞/ウェルの密度で播種した。100μLの細胞を各ウェルに添加し、インキュベーター中に一晩中置いた。翌日に培地を吸引し、100μLの処理(treatment)をウェルに加えた。細胞を対照(培地単独、リバーシン 5μM、アプシン 25μM)で処理した。アプシンおよび化合物のすべての原液(stock solution)を、ジメチルスルホキシド(DSMO)中で固体を再懸濁することによって調製し、次いで、当該原液を、培地中で希釈して200μMの濃度を達成した後、培地中で再度希釈して、試験する最終濃度にした。
【0126】
(細胞毒性分析)
in vitroの細胞毒性分析は、細胞増殖の定量的測定、および、その後の化合物の相対的な毒性の評価を含んだ。(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテルトラゾリウムブロミド(MTT)は、細胞生存率、増殖および細胞毒性の指標として細胞代謝活性を測定する、広く利用されている細胞毒性アッセイである。当該細胞毒性アッセイでは、ミトコンドリアデヒドロゲナーゼによって、水溶性の黄色のテトラゾールMTTが不溶性の紫色のホルマザン結晶へ還元される。不溶性の紫色の結晶生成物をDMSO中に溶解させ、吸光度(570nm)を測定することによって、得られた着色した溶液を定量した。還元は、ミトコンドリア還元酵素が活性である場合にのみ起こり得、したがって、生存細胞の数との直接的な相関がある。化合物で処理された細胞によって産生された紫色のホルマザンと未処理の対照細胞との比較によって、計算された細胞生存率(%)にて化合物の細胞毒性を確認することが可能になった。試験した処理を3回実施した。
【0127】
細胞を培養し、72時間の曝露処理を行った;曝露終了の3時間前に、5μLのMTT(5mg/mL)(Invitrogen M6494)を各ウェルに添加し、次いで、残りの曝露処理の時間の間、培養器内にプレートを配置した。各ウェルから溶液を吸引し、次いで100μLのDMSOをウェルに加え、プレートを振盪機上に室温で15分間置いた。各ウェルについて均質な色が見えたら、吸光度を測定した(570nm)(Spectramax i3x)。処理された細胞についての細胞毒性の読み取り値を、陰性対照(培地単独)に対して正規化し、以下の式から、細胞の生存率%を計算した:
【0128】
【数1】
【0129】
データは、GraphPad Prism 7.0、GraphPad Software、Inc.を使用して、一元配置分散分析(ANOVA)および事後Dunnet検定(post hoc Dunnet test)によって分析した。得られたデータについて、全ての処理を対照(培地単独)と比較した、p<0.001。
【0130】
(クローン原性試験)
以下の手順の全体を無菌条件で行った。HeLa細胞を計数し、透明底の6ウェルプレート(Greiner Bio-One)中に、500細胞/ウェル(250細胞/mL)の密度で播種した。2mLの細胞をそれぞれのウェルに添加し、培養器(37℃、5%CO)内に一晩中置いた。翌日、培地を吸引し、1.5mlの処理(treatment)をウェルに加えた。細胞を対照(培地単独)および化合物で処理した。化合物の全ての原液は、DMSO中に固体を再懸濁させることによって調製され、次いで、当該原液は、試験される最終濃度にまで培地中で希釈された。HeLa細胞の生存率は、細胞毒性剤による処理後の細胞再生死(cell reproductive death)を測定する細胞生存に基づくアッセイであるクローン原性アッセイを用いて測定した。細胞を培養し、72時間の曝露処理を行った。次いで、各ウェルから溶液を吸引し、2mLの培地をウェルに添加し、プレートを培養器内に戻した。プレートをさらに9日間(合計10日間)培養し、数日毎に、細胞を1×PBSで洗浄し、各ウェル中の2mL培地を2mLの新鮮な培地と交換した。処理を加えてから10日間培養した後、各ウェルから溶液を吸引し、細胞を1x PBSで2回洗浄した。次いで、PBS中の4%パラホルムアルデヒド(Alfa Aesar J61899)500μLを各ウェルに加え、プレートを室温で30分間培養した。各ウェルから溶液を吸引し、次いで4~5滴のクリスタルバイオレット(メタノール中0.5% w/v)を各ウェルに添加した。プレートを室温で15分間培養した。各ウェルを水で洗浄することによって溶液を穏やかに除去し、クローンを可視化した。クローン原性アッセイの結果の代表的な像を図7に示す。
【0131】
次いで、クローン原性アッセイの各ウェルを、DICイメージングおよび蛍光イメージングのために装備されたAxiozoom Zeiss Axioplan蛍光顕微鏡を使用して走査し、ImageJ2画像処理ソフトウェア(Fiji)を使用して分析した。画像処理ソフトウェアによって生成された代表的な像を以下に示す(図8)。
【0132】
(サイクリンB1レベルの測定による、Cdc20によるAPC/C活性化阻害の確認)
以下の手順の全体を無菌条件で行った。HeLa細胞を計数し、2mLの体積で200,000細胞/ウェルの密度で透明底の6ウェルプレート(Greiner Bio-One)に播種し、培養器(37℃、5%CO)内に一晩中置いた。翌日、培地を吸引し、1.5mLの処理(treatment)をウェルに加えた。細胞を対照(培地単独)および化合物にて処理した。小化合物の全ての原液は、DSMO中に固体を再懸濁させることによって調製され、次いで、当該原液は、試験される最終濃度にまで培地中で希釈された。有糸分裂に対するこれらの化合物の効果を、APC/C-Cdc20の下流標的であるサイクリンB1のレベルを測定することによって、分析した。細胞を培養し、24時間の曝露処理を行った。次いで、プレートを氷上に置き、各ウェルから溶液を吸引した。細胞をPBSにて2回洗浄し、次いで300μLの溶解緩衝液(50mM Tris pH8、150mM NaCl、5mM ETDA、1% Triton X-100、5mM βe、ウシ膵臓由来のデオキシリボヌクレアーゼI、cOmplete Mini EDTAを含まないプロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(1錠/溶解50mL))を各ウェルに添加し、プレートを撹拌しながら10分間培養した。細胞スクレーパーを用いて、各ウェルを2分間こすり、次いで、各ウェルの溶液を、対応する標識エッペンドルフチューブに移した。次いで、チューブを14,500rpm、4℃で30分間遠心分離した。それぞれのチューブからの上清を、清浄なエッペンドルフチューブに移し、急速凍結し、-20℃で保存した。図9は、化合物o-TFB-Tyrで処理したHCC-38細胞のウエスタンブロットを示す。図9から、サイクリンBの阻害によってモニターされるように、Cdc20によるAPC/C活性化の阻害が確認された。マウス抗サイクリンB1抗体(BD Pharmingen 554177)を一次抗体として使用した。APが連結した抗マウスIgG抗体を二次抗体として使用した(Sigma SAB3701107-1)。マウス抗α-チューブリン抗体(Santa Cruz Biotechnology sc-32293)をタンパク質濃度負荷の内部対照として使用した。
【図面の簡単な説明】
【0133】
図1】Cdc20-o-TFB-Tyr複合体、o-TFB-Tyr Cdc20およびアプシン(Apcin)複合体の接触、o-TFB-Tyr-Cdc20の3D構造を示す。
図2】比較のためにCdc20阻害剤アプシンを用いた、トリプルネガティブ乳癌細胞に対して試験した化合物のMTTアッセイによる細胞毒性分析を示す。選択された第3世代の化合物o-TFB-Tyrを用いて24時間処理した後の、非同期HCC-38トリプルネガティブ乳癌細胞の細胞毒性分析。HCC-38細胞は、25μMおよび5μM濃度の化合物o-TFB-Tyr(パネルA)、ならびに、1μM濃度の化合物o-TFB-Tyr(パネルB)に、単独で、およびproTAMEとの組み合わせで、曝露した。使用した陰性対照は、未処理細胞(培地)であり、一方、使用した陽性対照は、アプシン25μM単独、proTAME 10μM単独、および、proTAME 10μMと組み合わせたアプシン25μMであった。データは、陰性対照カラム(培地)と比較して、全てのカラムを用いて、一元配置分散分析およびDunnett検定によって分析した、p<0.001。反復実験を行った。
図3】化合物o-TFB-Tyrの5μM、1μM、0.5μMおよび100nMの濃度での細胞毒性分析を示す。HCC-38癌細胞を、化合物o-TFB-Tyr単独に対して、およびproTAMEと組み合わせた化合物o-TFB-Tyrに対して、曝露した。使用した陰性対照は、未処理細胞(培地)であり、一方、使用した陽性対照は、proTAME 10μMと組み合わせたアプシン25μMであった。データは、陰性対照カラム(培地)と比較して、全てのカラムを用いて、一元配置分散分析およびDunnett検定によって分析した、p<0.001。反復実験を行った。
図4】ADME試験の一部を構成する細胞膜透過性試験の原理を示す。
図5】HeLa細胞における様々な濃度での化合物o-TFB-Tyrを、Mps1キナーゼの小化合物阻害剤であって、SACの上流調節因子であるリバーシン(Reversine)と、Cdc20の小サイズバインダーであって、Cdc20によるAPC/C活性化の阻害剤であるアプシンと、比較した、相対的細胞毒性を示すグラフである。この試験では、化合物o-TFB-Tyrが、多様な組織を起源とする異なるタイプの癌に対して、より高い細胞毒性効果を示すことが確認された。
図6】HeLa細胞における化合物o-TFB-Tyrの相対的細胞毒性の比較を、同じ濃度の化合物アプシン、m-TFB-Tyr、p-TFB-Tyr、およびo-TFB-Lysと比較した。化合物o-TFB-Tyr、m-TFB-Tyr、およびp-TFB-Tyrは、化学構造の観点から密接に関連している。比較試験では、化合物o-TFB-Tyrが、培養中の癌細胞に対して、より高い細胞毒性効果を示すことが確認された。したがって、o-TFB-Tyrおよび構造的に関連する分子の抗癌活性を説明する、o-TFB-Tyrおよび異性体m-TFB-Tyr、p-TFB-Tyrの重要な立体化学的特徴を明らかにする。比較分析は、主張した化合物であるo-TFB-Tyr、m-TFB-Tyr、p-TFB-Tyr、およびo-TFB-LysのR2残基の化学的性質が、これらの分子の癌細胞の細胞毒性を説明することもまた示した。
図7】DMSO(1.2%v/v)、Mps1キナーゼ阻害剤であるリバーシン、Cdc20バインダーであるアプシンおよび化合物o-TFB-Tyrで処理したHCC-38細胞のクローン原性アッセイである。37℃で12日間インキュベーションした後、クローンを染色した。HCC38細胞を化合物を用いて24時間処理した後、培地を48時間毎に交換した。このアッセイにおいて、より少ない数のトリプルネガティブ乳癌細胞クローンが、リバーシンおよびo-TFB-Tyrで処理された細胞において一貫して観察され、癌細胞における後者の化合物の所望の細胞毒性が確認された。
図8】次いで、クローン原性アッセイの各ウェルを、DICイメージングおよび蛍光イメージングのために装備されたAxiozoom Zeiss Axioplan蛍光顕微鏡を使用して走査し、ImageJ2画像処理ソフトウェア(Fiji)を使用して分析した。ここでは、画像処理ソフトウェアによって生成された代表的な画像を示す。
図9】化合物o-TFB-TyrがAPC/CによるサイクリンBのユビキチン化の阻害を引き起こすことを示すウェスタンブロットである。その結果、非ユビキチン化サイクリンBは、プロテアソームによる分解から逃れる。この分析はまた、アプシンが、Cdc20によるAPC/C活性化の拮抗薬として、化合物o-TFB-Tyrよりも比較的効果が低いことを示す。この試験では、ウェル当たり200,000細胞の密度を有するHCC-38細胞を使用した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】