(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】新生児胆道閉鎖症のバイオマーカーの使用及び検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/49 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
G01N33/49 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536463
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 CN2021139607
(87)【国際公開番号】W WO2022127933
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】202011506061.7
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011510885.1
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519069268
【氏名又は名称】深▲じぇん▼市▲絵▼云生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】賈 偉
(72)【発明者】
【氏名】謝 国祥
(72)【発明者】
【氏名】周 科軍
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045DA53
2G045FB06
(57)【要約】
本発明は、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するための診断装置の調製におけるバイオマーカーとしての抱合型ビリルビンの使用を開示する。本発明はまた、ビリルビンの含有量の検出方法と、安定型ビリルビン定量的検出試薬と、ビリルビンの含有量を検出し、被検者の胆道閉鎖症、乳児肝炎症候群、α1アンチトリプシン欠損症又はアラジール症候群のリスクを評価するためのキットの調製における、前記ビリルビン定量的検出試薬の使用とを開示する。本発明はまた、ビリルビンの含有量の検出、又は新生児胆道閉鎖症のリスクの評価用のキット及びその使用と、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するための方法と、抱合型ビリルビンの発現レベルを用いて新生児胆道閉鎖症のリスクを予測するための装置とを開示する。本発明は、簡便性、迅速性、試料調製の柔軟性、低検出限界、高再現性及び高感度という利点を有し、試料調製及び検出方法は簡便かつ容易であり、低コストであり、一般的な使用に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するための診断装置の調製におけるバイオマーカーとしての抱合型ビリルビンの使用であって、
前記診断装置は、抱合型ビリルビンを定量的に検出し、
好ましくは、前記抱合型ビリルビンは、ビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドを含むことを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記診断装置は、医療機器、キット、試験紙及び検出装置から選択され、前記診断装置は、被検者からの生体試料を検出し、
好ましくは、前記被検者は新生児であり、及び/又は、前記生体試料は血液試料であり、
より好ましくは、前記血液試料は、全血、血漿、血清及び乾燥血液スポットから選択され、例えば、乾燥血液スポットであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記診断装置は、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するために被検者の他の検出指標を任意に組み合わせることができ、前記他の検出指標は、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、MMP-7、及び新生児胆道閉鎖症を直接的又は間接的に診断できる他の指標のうちの1つ又は複数から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記生体試料は有機溶媒分散系に含まれ、
好ましくは、前記有機溶媒分散系の有機溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、プロピレングリコール及びアセトニトリルのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択され、及び/又は、前記生体試料を遠心分離した後、上清を採取して検出し、
及び/又は、前記定量的検出方法は、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法であることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記有機溶媒分散系は、第1安定剤及び第2安定剤を含み、前記有機溶媒分散系における前記第1安定剤と前記第2安定剤の含有量の重量比は、1:(1~50)の範囲にあり、
好ましくは、前記有機溶媒分散系における前記第1安定剤と前記第2安定剤の含有量の重量比は、1:(10~45)の範囲にあり、及び/又は、前記第1安定剤は、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(PG)及びtert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択され、前記第2安定剤はアスコルビン酸であり、
より好ましくは、前記有機溶媒分散系における前記第1安定剤と前記第2安定剤の含有量の重量比は、1:(20~40)の範囲にあり、及び/又は、前記第1安定剤はジブチルヒドロキシトルエン(BHT)であり、前記第2安定剤はアスコルビン酸であり、
さらに好ましくは、前記有機溶媒分散系における前記第1安定剤と前記第2安定剤の含有量の重量比は、1:(30~40)の範囲にあることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
ビリルビンの含有量の検出方法であって、
前記検出方法は、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法による定量的検出方法であり、前記ビリルビンの含有量は、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドのいずれか1つの含有量、又は複数の含有量、又はそれらの合計を含むことを特徴とする、検出方法。
【請求項7】
前記液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法において、前記液体クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー、超高速液体クロマトグラフィー及びナノリットル液体クロマトグラフィーから選択され、
好ましくは、前記液体クロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィーであり、液体クロマトグラフィーカラムはC8及びC18シリカゲルカラムから選択され、及び/又は、前記液体クロマトグラフィーの移動相は、pH3~4.5の超純水から選択される水相Aと、アセトニトリル、エタノール、メタノール、プロピレングリコール及びイソプロパノールのうちの1つ又は複数から選択される有機相Bとから構成され、及び/又は、前記質量分析法は、四重極質量分析法、飛行時間型質量分析法、イオンヒドラジン質量分析法及び高分解能軌道ヒドラジン質量分析法から選択され、
より好ましくは、前記pHは、pH調整剤によって調整され、前記pH調整剤は、好ましくは酢酸アンモニウム-酢酸、ギ酸アンモニウム-ギ酸、トリフルオロ酢酸及びトリクロロ酢酸緩衝系から選択され、より好ましくは酢酸アンモニウム-酢酸緩衝系であり、及び/又は、前記有機相Bは、アセトニトリル、メタノール及びイソプロパノールのうちの1つ又は複数から選択され、前記有機相Bは、好ましくはアセトニトリル、メタノール及びイソプロパノールから構成され、及び/又は、前記質量分析法の条件及び質量分析法の定性的及び定量的検出モードの設定は、エレクトロスプレーイオン源(ESI)を選択し、検出すべき標的化合物の応答に基づいてイオンスキャンモードを選択し、多重反応モニタリング法(MRM)を選択し、多重反応モニタリングモードのパラメータを設定することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用又は請求項6に記載の検出方法。
【請求項8】
安定型ビリルビン定量的検出試薬であって、
前記ビリルビン定量的検出試薬は、第1安定剤及び第2安定剤を含む系内に分注されているビリルビン標準を含み、前記ビリルビン標準は、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドのいずれか1つ以上の標準を含み、
好ましくは、前記第1安定剤及び前記第2安定剤は、請求項5に記載の使用における第1安定剤及び第2安定剤に記載の通りであり、
より好ましくは、前記第1安定剤及び前記第2安定剤を含む前記系は、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びアスコルビン酸を含む有機溶媒分散系であり、
さらに好ましくは、前記有機溶媒分散系の有機溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、プロピレングリコール及びアセトニトリルのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択されることを特徴とする、前記ビリルビン定量的検出試薬。
【請求項9】
前記第1安定剤及び前記第2安定剤を含む前記系は、固体担体を含む固体系であり、
好ましくは、前記固体担体は濾紙シートであり、
より好ましくは、前記濾紙シートは、分析濾紙、定性分析濾紙及び低速定量無灰濾紙から選択され、及び/又は、前記濾紙シートは、固体担体として使用される場合、以下のように前処理される:前記第1安定剤及び前記第2安定剤を含む前記有機溶媒分散系に浸漬された後、日陰で乾燥されることを特徴とする、請求項8に記載のビリルビン定量的検出試薬。
【請求項10】
ビリルビンの含有量を検出し、被検者の胆道閉鎖症、乳児肝炎症候群、α1アンチトリプシン欠損症又はアラジール症候群のリスクを評価するためのキットの調製における、請求項8又は9に記載のビリルビン定量的検出試薬の使用。
【請求項11】
ビリルビンの含有量の検出、又は新生児胆道閉鎖症のリスクの評価用のキットであって、
前記キットは、請求項8~10のいずれか一項に記載のビリルビン定量的検出試薬を含み、前記ビリルビンの含有量は、請求項6に記載の検出方法におけるビリルビンの含有量に記載の通りであり、
好ましくは、前記キットは、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドのいずれか1つ以上の標準及び内部標準を含み、
より好ましくは、前記内部標準はタウリンビリルビン標準を含むことを特徴とする、キット。
【請求項12】
遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドのいずれか1つ以上の前記標準は、それぞれ第1安定剤及び第2安定剤を含む系内に分注されており、
好ましくは、前記系は、前記標準を含む液体分散系及び前記標準を包含する試験紙から選択され、及び/又は、前記第1安定剤及び前記第2安定剤は、請求項5に記載の使用における第1安定剤及び第2安定剤に記載の通りであることを特徴とする、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
被検者から選択される胆道閉鎖症、乳児肝炎症候群、α1アンチトリプシン欠損症及びアラジール症候群のリスクを評価することを含み、好ましくは、請求項6又は7に記載の検出方法に定義された通りであるキットの使用方法をさらに含む、請求項11又は12に記載のキットの使用。
【請求項14】
新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するための方法であって、請求項11又は12に記載のキットを新生児胆道閉鎖症のリスクの評価用のキットとして使用し、
(1)新生児を被検者として、請求項2に記載の生体試料を被検試料として取得するステップと、
(2)請求項6に記載の検出方法を使用して、ビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドを含み、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、MMP-7、及び新生児胆道閉鎖症を直接的又は間接的に診断できる他の指標のうちの1つ又は複数から選択される、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するために被検者の他の検出指標を任意に組み合わせる、前記被検試料中のバイオマーカーの発現レベルを定量的に検出するステップと、
(3)リスクの評価のために前記バイオマーカーの発現レベルを分析し、前記分析では定量的検出方法のカットオフ値(cutoff値)と比較することができ、前記リスクの評価の結果を被検者の胆道閉鎖症のリスクの高低の評価に使用することができるステップと、
(4)評価の結果に従って、被検者を高リスク群と低リスク群に分け、高リスク群では被検者が胆道閉鎖症であるか否かを判定するためにさらなる臨床診断の必要性を示唆するステップとを含み、
好ましくは、ステップ(3)に記載の定量的検出方法のカットオフ値は、ステップ(2)に記載の定量的検出方法を使用し、健常新生児の被検試料中のバイオマーカーのレベルと、胆道閉鎖症の新生児の被検試料中の対応するバイオマーカーのレベルとを事前に測定し、統計分析によって決定される値であることを特徴とする、方法。
【請求項15】
抱合型ビリルビンの発現レベルを用いて新生児胆道閉鎖症のリスクを予測するための装置であって、
(1)被検者の被検試料を受け取るためのモジュールと、
(2)少なくとも、ビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドから選択される抱合型ビリルビンを含み、任意に、被検試料中の遊離型ビリルビン、ビリベルジン、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、MMP-7、及び胆道閉鎖症を診断できる他の臨床指標を含むバイオマーカーの発現レベルに関するデータを検出するためのモジュールと、
(3)被検試料及び検出方法に関連する対照発現プロファイルを含むデータベースにバイオマーカーの発現レベルを入力することに基づいてリスクスコアを生成するためのモジュールとを含み、前記対照発現プロファイルは、被検試料及び検出方法に従って事前に導出され、検出したバイオマーカーのカットオフ値として表現されてもよく、リスクの評価では、被検試料中のバイオマーカーの発現レベルを、検出方法としての高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法のカットオフ値と比較し、前記カットオフ値を超える場合、被検者の胆道閉鎖症のリスクが高いとみなすことができる、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は出願日が2020年12月18日である中国特許出願2020115060617及び2020115108851の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明は、生物医学技術ならびに分析及び検出技術の分野に関し、特に新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するために使用できるバイオマーカー、ならびに新生児胆道閉鎖症のモニタリング、スクリーニング及び診断の分野におけるその使用に関する。本発明はまた、前記バイオマーカーの検出方法及び装置に関し、特に前記バイオマーカーの定性的及び定量的検出及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0003】
胆道閉鎖症(Biliary atresia、BA)は、新生児期に発生する肝外胆道系の進行性の特発性疾患であり、重度の新生児炎症性線維性胆管閉塞であり、様々な長さの肝内胆管及び肝外胆管に影響を及ぼし、新生児閉塞性黄疸の主要な原因であり、小児肝移植の主要な原因でもあり、小児肝移植の約60%を占めている。先天性胆道閉鎖症と診断された小児の80%以上は、適時に治療を受けなければ、生後1年以内に肝不全で死亡する。多くの小児は胆道閉鎖症と診断された時点で重度の肝線維症であることが多く、すぐに肝硬変に進行し、最終的には肝不全となる。したがって、胆道閉鎖症の早期診断がますます急務となっている。肝門部空腸吻合術(葛西手術)は胆道閉鎖症に対する第一選択の治療法である。葛西手術の治療効果は手術のタイミングに大きく左右される。研究では、生後30日又は45日以内に葛西手術を行った場合、術後の黄疸消失率及び自己肝の5年生存率が有意に高く、肝移植の必要性が有意に低いことが判明した。しかし、残念ながら胆道閉鎖症は現時点では適時に診断されず、手術は通常2ヶ月後に行われる。
【0004】
胆道閉鎖症の早期スクリーニングと診断は患者にとって非常に重要であり、貴重な治療時間を節約し、予後を改善することができる。現在、臨床現場において一般的に使用されている術前診断方法には、肝生検、膵胆管造影、肝胆管造影、十二指腸管検査などが含まれる。しかし、これらの技術には限界がある。画像検査では、胆嚢の異常(胆嚢の縮小と収縮不良)及び肝門部線維塊は、胆道閉鎖症の小児の超音波検査での肝臓の特徴的な徴候である(Taら.Making the diagnosis of biliary atresia using the triangular cord sign and gallbladder length,Pediatric Radiology,2000,30(2):69-73)が、肝門部線維塊は必ずしもすべての小児に存在するわけではなく、超音波検査の結果は医師や装置などによって大きく異なる。したがって、文献で報告されている胆道閉鎖症の診断の感度と特異性は異なる。最近、メタアナリシスでは、胆嚢閉鎖症と肝門部線維塊の両方の特異性は99%に達する可能性があるが、対応する感度は28%と80%であることが報告されている(Liuら.The value of γ-GT for early diagnosis of biliary atresia,Chinese Medical Journal(Taipei),1998,61(12):716-720)。
【0005】
生後3か月未満の乳児は胆管径が小さく、胆管内の液体も少ないため、胆道閉鎖症の診断における磁気共鳴膵胆管映像の高い偽陽性率は避けられない。さらに、胆道閉鎖症の病理学的特徴は、小胆管過形成、胆栓形成、毛細胆管と肝細胞の胆汁うっ滞、門脈領域又は小葉周囲の線維化であり、初期段階では肝小葉構造が見える。したがって、胆道閉鎖症を他の新生児胆汁うっ滞症と鑑別するために臨床応用すると、検出精度が低かったり、処理が複雑であったりするため、胆道閉鎖症の診断と治療が遅れることになる。疾患の初期段階では、BAの臨床症状、生化学的指標、画像及び組織学的特徴は他の胆汁うっ滞症と重複しており、鑑別診断プロセスは長く複雑かつ高価であるため、診断が遅れがちになり、患者の家族の経済的負担が増える。肝生検や十二指腸管検査には不必要な手術が伴い、胆道閉鎖症が疑われる小児にさらなる被害をもたらす。したがって、単純かつ特異的な診断方法の探求は止むことがなく、単純かつ効果的な診断用のバイオマーカーの探求は、胆道閉鎖症の早期スクリーニングと診断にとって非常に重要である。
【0006】
胆道閉鎖症のスクリーニングと診断用の既存の血清学的指標には、以下のものが含まれる:(1)血清総ビリルビン及び直接型ビリルビン:初期スクリーニング指標として使用する。新生児血清総ビリルビン>2.0mg/dL(42~51μmol/L)、又は直接型ビリルビン>1.0mg/dL(17μmol/L)の場合は胆道閉鎖症のスクリーニングが必要であるが、胆道閉鎖症の診断の特異性は低い;(2)GGT:大規模調査研究では、胆道閉鎖症群のGGTの含有量は他の胆汁うっ滞症群よりも有意に高いことが年齢層別に示されている(Chen Xら.The value of γ-GT in combination with age for diagnosis of biliary atresia,Pediatric Gastroenterology and Nutrition,2016,63(3):370-373)。Liuら(The value of γ-GT for early diagnosis of biliary atresia,Chinese Medical Journal(Taipei),1998,61(12):716-720)は、GGT>300U/Lの場合、胆道閉鎖症の診断の精度は60%~85%であると報告している。GGTは胆道閉鎖症のスクリーニング指標として最も一般的に使用されているが、臨床例では小児間で大きな違いがあり、精度には限界がある;(3)その他の指標:血清胆汁酸、プロトロンビン濃度、血小板測定には多くの影響因子がある。
【0007】
新生児胆道閉鎖症の診断用のバイオマーカーは、先行技術において研究されてきた。中国特許出願CN101221129Bは、肝胆管疾患の迅速なスクリーニングと診断、特に新生児黄疸及び先天性胆道閉鎖症の早期検出に適した、スルホン化胆汁酸酵素蛍光毛細管分析方法及び酵素蛍光定量キットを開示している。CN108267585Aは、生体試料中のバイオマーカーとしてのMMP-7を開示している。CN102818866Bは、血清中のタウロケノデオキシコール酸とケノデオキシコール酸の比率が新生児胆道閉鎖症のバイオマーカーとして使用されることを開示している。
【0008】
ビリルビンは、赤血球が破壊された後に放出されるヘモグロビンの脱鉄によって形成され、ビリルビンの80%は脾臓と肝臓に由来し、残りは骨髄に由来する。ビリルビンは、間接型ビリルビン又は非抱合型ビリルビン、抱合型ビリルビン、δ-ビリルビンという3つの形態で存在する。そのうち、抱合型ビリルビン及びδ-ビリルビンはジアゾ試薬と直接反応することができ、直接型ビリルビンとして知られている。抱合型ビリルビンは、肝臓に入った間接型ビリルビンが肝内グルクロノシルトランスフェラーゼの作用によってグルクロン酸に結合して生成される。ビリルビンは黄疸の重要な臨床的決定因子であり、肝機能の重要な指標でもある。様々な種類の肝炎、肝硬変、閉塞性黄疸では直接型ビリルビンの含有量が増加し、トランスアミナーゼよりも感度が高い。重度の貧血では血清中の直接型ビリルビンの含有量が低下する。したがって、ビリルビンの含有量の検出は臨床的に非常に重要である。
【0009】
現在、遊離型ビリルビン及び抱合型ビリルビンを検出する生化学的方法には、主にジアゾニウム塩修飾J-G法、ビリルビンオキシダーゼ法、化学酸化法、バナジン酸法、経皮ビリルビン測定法などがある。ジアゾニウム法もオキシダーゼ法も、血中脂質や溶血による干渉を受けやすい。同時に、従来の生化学的方法では大量の血液が必要であり、これらの検出方法では生体試料に対する厳しい要件があり、血清又は血漿中の抱合型ビリルビンしか検出できない。経皮ビリルビン測定装置は総ビリルビンしか検出できず、遊離型ビリルビンと抱合型ビリルビンを鑑別することはできない。
【0010】
中国特許出願CN109991177Aは、直接型ビリルビンの含有量を測定するオキシダーゼ法に使用できる緩衝試薬を開示している。中国特許出願CN109541238Aでは、オキシダーゼとその基質を反応させて過酸化水素を生成し、次に過酸化水素とペルオキシダーゼを反応させて酸素を放出し、溶液中の直接型ビリルビンをビリベルジンへ酸化し、それによって吸収ピークが450nmで低下し、その低下度合いを記録して直接型ビリルビンの含有量を算出する。中国特許出願CN108613976Aは、全自動生化学分析装置用の検出キットを開示している。中国特許出願CN111579703Aでは、液体クロマトグラフィー・タンデムトリプル四重極質量分析法を使用して、ビリルビン酸化生成物であるBOX A、BOX B及びヘマチン酸の3つの化合物の定性的及び定量的方法を確立し、3つの化合物の標準を用いて、液体クロマトグラフィー条件、質量分析検出条件及び質量分析パラメータの最適化を含む、機器分析法の最適化を実行する。
【0011】
上記の先行技術では、間接型ビリルビン及び直接型ビリルビンの定量的測定は可能であるが、直接型ビリルビンの各成分の定量的測定は不可能である。本発明は、先行技術の欠点を改善することを目的とし、ビリルビンを含む試料中の成分の定性的及び定量的分析方法を提供する。この方法は、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するために簡便かつ確実に適用することができ、臨床現場における新生児胆道閉鎖症の迅速かつ効率的なスクリーニングと診断のための実行可能な解決策を提供する。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、新生児胆道閉鎖症のリスクの評価、スクリーニング及び/又は診断を簡便、確実かつ効率的に行うことができる技術的解決策を提供する。本発明は、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するためのバイオマーカーを提供し、本発明はまた、新生児胆道閉鎖症のリスクの評価方法を提供する。本発明は、新生児胆道閉鎖症のリスクが高い患者の臨床スクリーニングに使用できる、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するための製品、方法又は装置を調製するためのバイオマーカーを提供する。
【0013】
本発明によって提供される新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するためのすべての技術的解決策は、評価結果に基づいてさらなる臨床診断及び治療措置を行うか否かを判定することができる。本明細書で提供される概念、方法及びデータに基づいて、本発明は新生児胆道閉鎖症の早期かつ迅速なスクリーニングを可能にする。
【0014】
本発明は、ビリルビンを含む被検試料中のビリルビン、より具体的にはビリルビンの各成分の定量的検出方法を提供することを目的とする。本発明はまた、前記検出方法に適したキットを提供することを目的とする。本発明はまた、前記検出方法に適した装置を提供することを目的とする。本発明はまた、医療検出の分野における前記検出方法の使用を提供することを目的とする。
【0015】
本発明は、ビリルビン及びその代謝産物と、新生児胆道閉鎖症のリスクとの関連性を調査する。本発明では、健常新生児及び胆道閉鎖症の新生児からの血液試料中のビリルビン及びその代謝産物を測定することにより、ビリルビン及びその代謝産物が新生児胆道閉鎖症のリスクに関連していることを判定した。バイオインフォマティクス法と組み合わせて、本発明のバイオマーカーのレベルを被検者の胆道閉鎖症のリスクと関連させる。例として、ビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドをバイオマーカーとして使用し、健常新生児及び胆道閉鎖症の新生児患者からの被検試料中のビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドの含有量を検出し、カットオフ値(cutoff値)を決定する;被検者からの同じ被検試料中のビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドの含有量がカットオフ値より高い場合、被検者の胆道閉鎖症のリスクが高いことを示し、さらなる臨床診断と治療の必要性を示す。
【0016】
本発明は、新生児胆道閉鎖症に関連するバイオマーカーを提供し、さらに、新生児胆道閉鎖症のリスクの評価、スクリーニング及び/又は診断における前記バイオマーカーの使用を提供し、さらに、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するためのツール及び方法を提供し、さらに、より具体的には、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するための診断製品の調製における前記バイオマーカーの使用、ならびに関連する診断製品及び使用方法を提供する。
【0017】
本発明は、バイオマーカーのスクリーニング及び検証の研究プロセス及び結果について説明する。本発明では、健常新生児、胆道閉鎖症の新生児、及び他の原因による胆汁うっ滞症の新生児からの血液試料中のビリルビン及びその成分の含有量の差を定量的に測定することにより、ビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドの定量的検出値が、健常新生児、胆道閉鎖症が疑われる新生児、及び他の原因による胆汁うっ滞症の新生児を鑑別するためのリスク評価の指標として使用できることが判明した。この独創的な研究成果に基づいて、本発明者らは、検出指標としてビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドの含有量を使用する、臨床現場における新生児胆道閉鎖症の早期スクリーニング及び診断のための使用をさらに探求し、これにより、新生児の出生後の胆道閉鎖症のスクリーニングを迅速、簡便かつ効率的に行うことが可能となり、高リスクの小児に対してさらなる医療措置を迅速に行うことが可能となる。
【0018】
本発明者らは、臨床現場における新生児胆道閉鎖症の迅速なスクリーニングのためのバイオマーカーとして使用できるビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドを組み合わせる方法を提案する;例として、本発明者らは、新生児胆道閉鎖症のリスクの評価用の好適な診断製品を調製するためのバイオマーカーとして使用できるビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドを提案し、当該診断製品は、ビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドを定量的検出指標として使用し、ビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドの定量的検出試薬を含み、任意に、被検者からの血液試料を処理するための試薬及び他の検出試薬を含み得る。
【0019】
上記の発見及び概念に基づいて、本発明の第1態様は、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するための診断装置の調製におけるバイオマーカーとしての抱合型ビリルビンの使用を提供し、前記診断装置は、抱合型ビリルビンを定量的に検出する。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記抱合型ビリルビンは、ビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記診断装置は、医療機器、キット、試験紙及び検出装置から選択され、前記診断装置は、被検者からの生体試料を検出する。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記被検者は新生児であり;及び/又は、前記生体試料は血液試料である。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記血液試料は、全血、血漿、血清及び乾燥血液スポットから選択され、例えば、乾燥血液スポットである。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記診断装置は、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するために被検者の他の検出指標を任意に組み合わせることができ、前記他の検出指標は、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、MMP-7、及び新生児胆道閉鎖症を直接的又は間接的に診断できる他の指標のうちの1つ又は複数から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記生体試料は有機溶媒分散系に含まれる。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記有機溶媒分散系の有機溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、プロピレングリコール及びアセトニトリルのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択され;及び/又は、前記生体試料を有機溶媒分散系に分散させた後、遠心分離して上清を採取し、本発明によって提供される検出方法に従って検出する。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記定量的検出方法は、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法である。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記有機溶媒分散系は、第1安定剤及び第2安定剤を含む。前記第1安定剤は、非極性媒体中に一定の溶解度を有する酸化防止剤から選択され、前記第2安定剤は、極性媒体中に一定の溶解度を有する酸化防止剤から選択される。前記有機溶媒分散系における前記第1安定剤と前記第2安定剤の含有量の重量比は、1:(1~50)の範囲にある。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記有機溶媒分散系における前記第1安定剤と前記第2安定剤の含有量の重量比は、1:(10~45)の範囲にあり;及び/又は、前記第1安定剤は、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(PG)及びtert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択され、前記第2安定剤はアスコルビン酸である。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記有機溶媒分散系における前記第1安定剤と前記第2安定剤の含有量の重量比は、1:(20~40)の範囲にあり;及び/又は、前記第1安定剤はジブチルヒドロキシトルエン(BHT)であり、前記第2安定剤はアスコルビン酸である。
【0031】
前記有機溶媒分散系における前記第1安定剤と前記第2安定剤の含有量の重量比は、1:(30~40)の範囲にある。
【0032】
いくつかの実施形態では、生体試料は以下のように処理され得る:タウリンビリルビンを内部標準として生体試料に添加し、次に第1安定剤及び第2安定剤を含む有機溶媒分散系を添加し、光を避けて振盪し、遠心分離し、上清を採取して検出する。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1安定剤及び第2安定剤を含む有機溶媒分散系は、BHT及びアスコルビン酸のメタノール-アセトニトリル混合溶液であり得る;特定の実施形態として、系内の前記第1安定剤と前記第2安定剤の含有量の重量比は、1:1~1:50、好ましくは1:10~1:45、より好ましくは1:20~1:40、さらに好ましくは1:30~1:40の範囲にある。
【0034】
好ましくは、振盪及び遠心分離は、0~10℃、任意に0℃、4℃、10℃で行われ、振盪条件は1000~2000rpm、好ましくは1400~1500rpmであり、振盪時間は10~30分、好ましくは15~25分であり、遠心力は100000~250000gであり、遠心時間は10~30分である。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記診断装置は、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するために被検者の他の検出指標を任意に組み合わせることができ、他の検出指標は、遊離型ビリルビン、ビリルビンジグルクロニド、ビリベルジン、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、MMP-7、及び新生児胆道閉鎖症を直接的又は間接的に診断できる他の指標のうちの1つ又は複数から選択される。
【0036】
本発明の第2態様は、ビリルビンの含有量の検出方法を提供し、前記検出方法は、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法による定量的検出方法であり、本発明における「ビリルビン」とは、被検試料中の遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド(bilirubinβ-monoglucuronide、BMG)、ビリルビンジグルクロニド(bilirubinγ-diglucuronide、BDG)のいずれか1つ以上を指す。含有量を検出する場合、前述の成分は、個別に又は組み合わせて測定することができ、すなわち、ビリルビンの含有量は、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドのいずれか1つの含有量、又は複数の含有量、又はそれらの合計であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法において、前記液体クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー、超高速液体クロマトグラフィー及びナノリットル液体クロマトグラフィーから選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記液体クロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィーであり、液体クロマトグラフィーカラムはC8及びC18シリカゲルカラムから選択される。例として、クロマトグラフィーカラムはAcquity BEH C18(2.1*50mm、1.7μm)から選択され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーカラムのカラム温度は35~45℃であり、注入量は1~20μLであり、流量は0.2~0.6mL/分である。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法において、液体クロマトグラフィーの移動相は、pH調整剤によってpHが3~4.5に調整された超純水から選択される水相Aと、アセトニトリル、エタノール、メタノール、プロピレングリコール及びイソプロパノールのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される有機相Bとから構成される。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記pHは、pH調整剤によって調整され、前記pH調整剤は、好ましくは、酢酸アンモニウム-酢酸、ギ酸アンモニウム-ギ酸、トリフルオロ酢酸及びトリクロロ酢酸緩衝系から選択される;好ましい例として、前記pH調整剤は酢酸アンモニウム-酢酸緩衝系である。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記有機相Bは、アセトニトリル、メタノール及びイソプロパノールのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される;好ましい例として、前記有機相Bは、アセトニトリル、メタノール及びイソプロパノールを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィーは勾配溶出を使用する;例示的な目的として、勾配溶出スキームの1つは以下の通りである:0分、95%移動相A及び5%移動相B;0.5分、70%移動相A及び30%移動相B;2.0分、5%移動相A及び95%移動相B;4.0分、5%移動相A及び95%移動相B;4.1分、95%移動相A及び5%移動相B;5.0分、95%移動相A及び5%移動相B。
【0044】
いくつかの特定の実施形態では、前記液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法における質量分析は、四重極質量分析法、飛行時間型質量分析法、イオンヒドラジン質量分析法及び高分解能軌道ヒドラジン質量分析法から選択される;前記質量分析の条件及び質量分析の定性的及び定量的検出モードの設定は、エレクトロスプレーイオン源(ESI)を選択し、検出すべき標的化合物の応答に基づいてイオンスキャンモードを選択すること;多重反応モニタリング法(MRM)を選択し、多重反応モニタリングモードのパラメータを設定することを含む。
【0045】
いくつかの特定の実施形態では、前記検出方法の被検試料が第1安定剤及び第2安定剤を含む系内に分注されていることを特徴とする、好ましい被検試料が提供される。
【0046】
前記第1安定剤及び第2安定剤、前記被検試料及びその処理は、本発明の第1態様によって提供される使用に記載の通りである。
【0047】
本発明の第3態様は、第1安定剤及び第2安定剤を含む系内に分注されているビリルビン標準を含む安定型ビリルビン定量的検出試薬を提供する;前記ビリルビンは、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドのうちの1つ又は複数を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記第1安定剤及び前記第2安定剤は、本発明の第1態様に記載の使用における第1安定剤及び第2安定剤に記載の通りである。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1安定剤及び第2安定剤を含む前記系は、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びアスコルビン酸を含む有機溶媒分散系である。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記有機溶媒分散系の有機溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、プロピレングリコール及びアセトニトリルのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態では、第1安定剤及び第2安定剤を含む前記系は、固体担体を含む固体系である。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記固体担体は濾紙シートである。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記濾紙シートは、分析濾紙、定性分析濾紙及び低速定量無灰濾紙から選択され;及び/又は、前記濾紙シートは、固体担体として使用される場合、以下のように前処理される:第1安定剤及び第2安定剤を含む有機溶媒分散系に浸漬された後、日陰で乾燥される。
【0053】
上記のいずれかに記載の検出試薬の調製方法には、前記系内に標準を分注することが含まれる。
【0054】
本発明の第4態様は、ビリルビンの含有量を検出し、被検者の胆道閉鎖症、乳児肝炎症候群、α1アンチトリプシン欠損症又はアラジール症候群のリスクを評価するためのキットの調製における、本発明の第3態様に記載のビリルビン定量的検出試薬の使用を提供する。
【0055】
本発明の第5態様は、ビリルビンの含有量の検出、又は新生児胆道閉鎖症のリスクの評価用のキットを提供し、前記キットは、本発明の第3態様に記載のビリルビン定量的検出試薬を含み、前記ビリルビンの含有量は、本発明の第2態様に記載の検出方法におけるビリルビンの含有量に記載の通りである。
【0056】
いくつかの実施形態では、前記キットは、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドのいずれか1つ以上の標準及び内部標準を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記内部標準はタウリンビリルビン標準を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドのいずれか1つ以上の前記標準は、それぞれ第1安定剤及び第2安定剤を含む系内に分注されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記系は、前記標準を含む液体分散系及び前記標準を包含する試験紙から選択され;及び/又は、前記第1安定剤及び前記第2安定剤は、本発明の第1態様に記載の使用における第1安定剤及び第2安定剤に記載の通りである。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記系は固体系であり、前記固体系は本発明の第3態様によって提供される検出試薬に記載の通りである。
【0061】
本発明によって提供されるビリルビンの含有量の検出方法、及びビリルビンの含有量の検出又は新生児胆道閉鎖症のリスクの評価用のキットは、複数のビリルビンを別個に又は同時に測定し、任意の検出目的のために遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドを定量的に検出するために使用することができる。例示的な目的として、これらの検出指標、又は1つ以上の検出指標が感度のある任意の疾患又は症状、例えば、新生児胆道閉鎖症、乳児肝炎症候群、α1アンチトリプシン欠損症、アラジール症候群などから選択される疾患又は症状の診断、リスクの評価及び薬物治療効果の評価に使用可能である、医療関連の診断、リスクの評価などに適用することができる。
【0062】
本発明の第6態様は、本発明の第5態様に記載のキットの使用を提供し、前記使用は、被検者から選択される胆道閉鎖症、乳児肝炎症候群、α1アンチトリプシン欠損症及びアラジール症候群のリスクを評価することを含み;好ましくは、前記使用は、キットの使用方法をさらに含み、前記使用方法は、本発明の第2態様に記載の検出方法に定義された通りである。
【0063】
本発明の第7態様は、本発明の第5態様に記載のキットを新生児胆道閉鎖症のリスクの評価用のキットとして使用する、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するための方法を提供し、前記方法は以下のステップを含む。
【0064】
(1)新生児を被検者として、本発明の第1態様に記載の生体試料を被検試料として取得する。
【0065】
(2)本発明の第2態様に記載の検出方法を使用して、前記被検試料中のバイオマーカーの発現レベルを定量的に検出し、リスクの評価のために前記バイオマーカーの発現レベルを分析し、前記分析は定量的検出方法のカットオフ値との比較であってもよく、当該リスクの評価の結果は被検者の胆道閉鎖症のリスクの高低の評価に使用され得る。
【0066】
前記バイオマーカーは、ビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドを含み、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するために被検者の他の検出指標を任意に組み合わせることができ、前記他の検出指標は、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、MMP-7、及び新生児胆道閉鎖症を直接的又は間接的に診断できる他の指標のうちの1つ又は複数から選択される。
【0067】
前記定量的検出方法は、上記のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法による定量的検出方法である。
【0068】
前記被検試料は、被検者の全血、血漿、血清及び乾燥血液スポットから選択される。
【0069】
(3)リスクの評価のために前記バイオマーカーの発現レベルを分析し、前記分析では定量的検出方法のカットオフ値(cutoff値)と比較することができ、当該リスクの評価の結果は被検者の胆道閉鎖症のリスクの高低の評価に使用され得る。
【0070】
(4)評価の結果に従って、被検者を高リスク群と低リスク群に分け、高リスク群では被検者が胆道閉鎖症であるか否かを判定するためにさらなる臨床診断の必要性を示唆する。
【0071】
いくつかの好ましい実施形態では、ステップ(3)に記載の定量的検出方法のカットオフ値は、ステップ(2)に記載の定量的検出方法を使用し、健常新生児の被検試料中のバイオマーカーのレベルと、胆道閉鎖症の新生児の被検試料中の対応するバイオマーカーのレベルとを事前に測定し、統計分析によって決定される値である。
【0072】
本発明の第8態様は、抱合型ビリルビンの発現レベルを用いて新生児胆道閉鎖症のリスクを予測するための装置を提供し、前記装置は、
(1)被検者の被検試料を受け取るためのモジュールと、
(2)少なくとも、ビリルビンモノグルクロニド及び/又はビリルビンジグルクロニドから選択される抱合型ビリルビンを含み、任意に、被検試料中の遊離型ビリルビン、ビリベルジン、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、MMP-7、及び胆道閉鎖症を診断できる他の臨床指標を含むバイオマーカーの発現レベルに関するデータを検出するためのモジュールと、
(3)被検試料及び検出方法に関連する対照発現プロファイルを含むデータベースにバイオマーカーの発現レベルを入力することに基づいてリスクスコアを生成するためのモジュールとを含み、前記対照発現プロファイルは、被検試料及び検出方法に従って事前に導出され、検出したバイオマーカーのカットオフ値として表現されてもよく、リスクの評価では、被検試料中のバイオマーカーの発現レベルを、検出方法としての高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法のカットオフ値と比較し、当該カットオフ値を超える場合、被検者の胆道閉鎖症のリスクが高いとみなすことができる。
【0073】
前記ツールは、診断製品及び分析試験装置から選択される。
【0074】
本発明における「診断製品」とは、医療機器、キット、試験紙、医療装置などを指す。当業者に知られているように、前記医療機器、キットなどの定義は、政府当局の関連法規と政策の規定に関連しており、国や地域によってその分類と意味が異なる。本発明における医療機器、キット、試験紙などの名詞は、本発明のバイオマーカーの適用形態を例示するためにのみ使用されており、政府当局によって定義されたものではなく、前記診断製品は、本発明の目的に適合する限り、関連する政府当局によって登録された医療製品であってもよく、当業者が一時的に適用する方法及び形態で使用する製品又は製品の組み合わせであり得る。
【0075】
本発明における「被検試料」には、被検者の体液、血液、血漿、血清が含まれ得る。血液、血漿、血清試料が好ましい。本発明の顕著な効果として、被検者の踵の血液や指先の血液、又は踵の血液や指先の血液から調製した乾燥血液スポットなど、被検者の少量の被検試料により、本発明によって提供されるバイオマーカーを検出できることが判明した。
【0076】
本発明における「血液試料」とは、被検者から採取した全血、血漿、血清、踵の血液や指先の血液、又は臨床現場において一般的に使用されている乾燥血液スポットであってもよく、前記乾燥血液スポットは、被検者の踵の血液や指先の血液から採取したものであり得る。本発明の検出方法は、従来の生化学的方法の限界を克服し、少量の生体試料中のビリルビンの定性的及び定量的検出を可能にする。
【0077】
本発明の一例として、品質管理、内部標準、内部標準希釈剤などのビリルビンモノグルクロニドの定量的検出試薬を含む、新生児胆道閉鎖症のリスクの評価用のキットを提供する。一実施形態として、前記品質管理はビリルビンモノグルクロニド含有品質管理を含み、前記内部標準はタウリンビリルビン標準を含み、前記内部標準希釈剤は2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール含有メタノールアセトニトリル溶液を含む。また、酢酸アンモニウム及び酢酸含有水溶液をさらに含み得る。
【0078】
本発明の一例として、新生児の踵又は指先から採取した血液から調製した乾燥血液スポットを被検試料として使用し、本発明の実施例に記載の検出条件下で、ビリルビンモノグルクロニドの含有量が2.5μMを超える場合に被検者の新生児胆道閉鎖症のリスクが高いとみなすことができる。特定の実施形態の1つとして、本出願人は、実施例に記載の検出条件下で、2.5μMを超える場合の被検者の血液試料中のビリルビンモノグルクロニドの含有量をカットオフ値(cutoff値とも呼ばれる)として使用し、新生児胆道閉鎖症のリスクを迅速に検出・評価することができる。実施例におけるカットオフ値は、記載された検出方法、検出条件、標準などの条件下で決定された基準である。当業者は、本発明の示唆に従って、高速液体クロマトグラフィー技術、例えばガスクロマトグラフィー質量分析検出技術を含むがこれに限定されない、ビリルビンモノグルクロニドの定量的検出方法をスクリーニング・最適化することができ、また、本発明の示唆に従って、前記検出方法及び検出条件に基づいてカットオフ値を最適化・決定することによって新生児胆道閉鎖症のリスクを評価することもできる。上記の異なる検出方法のカットオフ値のスクリーニングにおいて、本発明の検出方法は、特に臨床試料がない場合に他の検出方法のカットオフ値を決定するための参照及び比較として使用することもできる。したがって、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するための検出指標としてのビリルビンモノグルクロニドの含有量の使用は、検出方法及びカットオフ値の違いに関わらず、本発明の教示に基づいて当業者によって達成可能な範囲内にあると理解されるべきである。
【0079】
本発明の正の進歩的な効果は:
本発明によって提供される技術的解決策は、新生児胆道閉鎖症のリスクを効果的に評価することができ、臨床現場における新生児胆道閉鎖症の早期スクリーニングを可能にする。臨床用途では、新生児の血液試料中のバイオマーカーの含有量を定量的に測定することにより、胆道閉鎖症のリスクが高い新生児を迅速にスクリーニングすることができる。本発明のバイオマーカーは、新生児胆道閉鎖症のスクリーニング用のマーカーとして使用され、新生児胆道閉鎖症のリスクをさらに評価するために、任意に他の検出指標及び検出手段と組み合わせることができ、また、診断プロセスにおいて、任意に他の検出指標及び検出手段と組み合わせることができる。他の検出指標は、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、MMP-7及び臨床指標から選択される。
【0080】
本発明によって提供される技術的解決策は、ビリルビンの各成分の個別又は共同の定量的検出を可能にする。液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法を使用して、ビリルビン及びその代謝産物の定性的及び定量的方法を確立した。研究では、液体クロマトグラフィー条件、質量分析検出条件及び質量分析パラメータの最適化、試料の前処理などの機器分析法の最適化により、具体的には液相条件の選択、質量分析条件の設定、標準溶液の調製、分析法の最適化、標準曲線の作成、試料の前処理、試料中のビリルビン及びその代謝産物の定性的及び定量的検出を含む、標的物質の定性的及び定量的検出を正確かつ迅速に行うことができる。
【0081】
本発明は、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法を使用してビリルビンの各成分の含有量を定量的に検出し、試料採取の利便性が高く検出結果が信頼できるという利点を有し、従来の生化学的方法と比較して精度が高く検出限界が低く、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドを同時に検出することができ、科学研究、臨床診断及び評価のためにより多くの指標を提供することができる。
【0082】
本発明によって提供される技術的解決策は、新生児胆道閉鎖症のリスクを効果的に評価することができ、臨床現場における新生児胆道閉鎖症の早期スクリーニングを可能にする。臨床用途では、新生児の血液試料中のバイオマーカーの含有量を定量的に測定することにより、胆道閉鎖症のリスクが高い新生児を迅速にスクリーニングすることができる。本発明のバイオマーカーは、新生児胆道閉鎖症のスクリーニング用のマーカーとして使用され、新生児胆道閉鎖症のリスクをさらに評価するために、任意に他の検出指標及び検出手段と組み合わせることができ、また、診断プロセスにおいて、任意に他の検出指標及び検出手段と組み合わせることができる。他の検出指標は、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、MMP-7及び臨床指標から選択される。
【0083】
本発明は、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法を使用して、新生児胆道閉鎖症のバイオマーカーとして血液試料中のビリルビン及びその代謝産物を定量的に検出し、試料採取の利便性が高く、効率が高く、検出結果が信頼できるという利点を有する。血液試料は、全血、血漿、血清及び乾燥血液スポットから選択される。乾燥血液スポットは、新生児の踵の血液又は指先の血液から採取される。実施形態の1つとして、本発明者らは、乾燥血液スポットを被検試料として使用する診断製品を検討した。乾燥血液スポット採取の利便性が高いため、新生児の出生後の胆道閉鎖症のスクリーニングを迅速に行うことに役立ち、さらに、新生児の出生後の胆道閉鎖症のスクリーニングを迅速に推進することに役立つ。一方、再採取が必要な場合でも、乾燥血液スポットの調製技術が成熟しており、試料採取の利便性が高く、新生児への外傷が少ない又はほとんどないため、繰り返しの検出が必要な場合でも特に有利である。さらに、本発明によって提供される高速液体質量分析定量的検出方法は、従来の生化学的方法と比較して精度が高く、検出限界が低い特徴を有する。
【0084】
本発明は、新生児胆道閉鎖症のスクリーニング及びリスクの評価用のバイオマーカーとしての本発明のバイオマーカーの使用を初めて提案し、新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するために使用することができ、臨床現場における新生児胆道閉鎖症のリスクの早期スクリーニング及びさらなる診断のために使用することができ、新生児胆道閉鎖症の小児の最適な手術のタイミングを得、予後を改善することができる。
【0085】
本発明は、先行技術と比較して、簡便性、迅速性、試料調製の柔軟性、低検出限界、高再現性及び高感度という利点を有し、試料調製及び検出方法は簡便かつ容易であり、低コストであり、一般的な使用に適している。
【0086】
本明細書で引用されたすべての文献は、個々の出版物又は特許又は特許出願の全体が参照により本明細書に取り込まれ、あらゆる目的に使用されることが具体的かつ個別に記載された場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に取り込まれ、あらゆる目的に使用される。さらに、本明細書で引用されたCAS番号は、個々のそのような番号の全体が参照により本明細書に取り込まれ、あらゆる目的に使用されることが具体的かつ個別に記載された場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に取り込まれ、あらゆる目的に使用される。
【0087】
別途に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つ」及び「当該」は、文脈上明らかに異なる意味を示さない限り、複数の言及対象を含む。例えば、「成分」を言及すると、1つ以上の成分の組み合わせなどを含むことを指す。
【0088】
本発明の目的、技術的解決策及び効果をより明確かつ明瞭にするために、以下、添付の図面及び実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。本明細書に記載された特定の実施例は、本発明を説明することのみを意図したものであり、本発明を限定することを意図したものではないことを理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】移動相Aとして酢酸アンモニウム-酢酸系を用いた場合のビリルビン及びその代謝産物の液体クロマトグラムであり、各標的検体を効果的に分離できることがわかる。
【
図2】移動相Aとしてギ酸アンモニウム-ギ酸系を用いた場合の液体クロマトグラムであり、各標的検体を効果的に分離できることがわかる。
【
図3】移動相Aとしてトリフルオロ酢酸系を用いた場合の液体クロマトグラムであり、各標的検体を効果的に分離できることがわかる。
【
図4】高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法により標的成分を検出する際に、品質管理に応じて作成した標準曲線である。
【
図5】胆道閉鎖症の新生児と健常新生児対照を鑑別するための各代謝産物のROC曲線下面積である。
【
図6】胆道閉鎖症の新生児と健常新生児の被検試料中のビリルビンモノグルクロニドのレベルの違い、及び胆道閉鎖症の新生児と健常新生児対照を鑑別するためのビリルビンモノグルクロニドのROC曲線下面積を示す一連の散布図である。
【
図7】胆道閉鎖症の新生児と胆汁うっ滞症の他の乳児の被検試料中のビリルビンモノグルクロニドのレベルの違い、及び胆道閉鎖症の新生児と胆汁うっ滞症の他の乳児を鑑別するためのビリルビンモノグルクロニドのROC曲線下面積を示す一連の散布図である。
【
図8】胆道閉鎖症の新生児と健常新生児対照を鑑別するためのビリルビンモノグルクロニドとビリルビンジグルクロニドの組み合わせのROC曲線下面積である。
【
図9】乳児肝炎症候群の小児、α1アンチトリプシン欠損症の小児、アラジール症候群の小児及び健常新生児対照の被検試料中のビリルビンモノグルクロニドのレベルの違い、及び乳児肝炎症候群の小児、α1アンチトリプシン欠損症の小児、アラジール症候群の小児及び健常新生児対照を鑑別するためのビリルビンモノグルクロニドのROC曲線下面積を示す一連の散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
ヒト血液中の主要なビリルビンには、血清中の既知の4つのビリルビン成分、すなわち、α-、β-、γ-及びδ-ビリルビン(bilirubin IXα、Bα;bilirubin β-monoglucuronide、BMG;bilirubin γ-diglucuronide、BDG;δ-bilirubin、Bδ)が含まれる。そのうち、α-ビリルビンは非抱合型ビリルビン(unconjugated bilirubin、UCB)であり、β-、γ-及びδ-ビリルビンは抱合型ビリルビン(conjugated bilirubin、CB)である。通常、肝細胞中のα-ビリルビンは主に2つの供給源があり、1つは肝細胞の基底膜上の有機アニオン輸送ポリペプチド(organic anion transporting polypeptides、OATP1B1、OATP1B3)トランスポーターを介して末梢血から摂取して肝細胞に輸送することであり、もう1つは肝細胞中のヘモグロビンの酸化分解によって生成されることである。肝細胞中のα-ビリルビンの98%~99%は、グルクロン酸トランスフェラーゼ1A1(UDP-glucuronosyltransferase 1A1、UGT1A1)によってグルクロン酸化され、それぞれ1つ又は2つのグルクロン酸に結合し、β-又はγ-ビリルビンに変換され、毛細胆管膜上の多剤耐性関連タンパク質2(multidrug resistance-associated protein、MRP2)トランスポーターを介して胆管に排出される。一方、胆汁うっ滞、特に閉塞性胆汁うっ滞では、肝細胞から分泌された胆汁が胆管にうまく入ることができないため、末梢血中の胆汁酸(bile acids、BA)と抱合型ビリルビンが蓄積・増加する。被検者の生体試料中の抱合型ビリルビンの含有量を測定することは、臨床診断にとって非常に重要である。
【0091】
本発明者らは、先行技術では抱合型ビリルビン及び抱合型ビリルビン関連成分と新生児胆道閉鎖症との関連性が開示されておらず、新生児胆道閉鎖症のリスクの評価用のマーカーとして検討されておらず、先行技術では新生児胆道閉鎖症の診断のための抱合型ビリルビン及び抱合型ビリルビンの各成分に関する技術的解決策や技術的啓発が提供されていないことを発見した。
【0092】
本発明者らは、抱合型ビリルビン及び抱合型ビリルビン関連代謝産物と新生児胆道閉鎖症との関連性を多数の実験を通じて研究・模索し、臨床現場における新生児胆道閉鎖症のリスクの評価の分野におけるその使用を模索した。
【0093】
現在、遊離型ビリルビン及び抱合型ビリルビンを検出する生化学的方法には、主にジアゾニウム塩修飾J-G法、ビリルビンオキシダーゼ法、化学酸化法、バナジン酸法、経皮ビリルビン測定法などがある。ジアゾニウム法もオキシダーゼ法も、血中脂質や溶血による干渉を受けやすい。同時に、従来の生化学的方法では大量の血液が必要であり、特に新生児では臨床的操作性がよくない。さらに、これらの検出方法では生体試料に対する厳しい要件があり、血清又は血漿中の抱合型ビリルビンしか検出できない。経皮ビリルビン測定装置は総ビリルビンしか検出できず、遊離型ビリルビンと抱合型ビリルビンを鑑別することはできない。
【0094】
本発明者らは、ビリルビンの各成分を定量的に検出するための技術的解決策を最初に模索した。実施例では、液相条件の選択、質量分析条件の設定、標準溶液の調製、分析法の最適化、標準曲線の作成、試料の前処理などを含む研究作業により、ビリルビンの各成分の定性的及び定量的検出を可能にする。以下、実施例を参照して説明する。
【0095】
本明細書の実施例で使用される試薬の供給源は以下の通りである:
ジタウリンビリルビンのジナトリウム塩:カタログ番号201102、Sigma-Aldrich Chinaから購入
ビリベルジン:カタログ番号30891、Sigma-Aldrich Chinaから購入
遊離型ビリルビン:カタログ番号B4126、Sigma-Aldrich Chinaから購入
メタノール:カタログ番号900688、Sigma-Aldrich Chinaから購入
アセトニトリル:カタログ番号900667、Sigma-Aldrich Chinaから購入
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT):カタログ番号B1378、Sigma-Aldrich Chinaから購入
酢酸アンモニウム:カタログ番号73594、Sigma-Aldrich Chinaから購入
酢酸:カタログ番号45754、Sigma-Aldrich Chinaから購入
ギ酸アンモニウム:カタログ番号70221、Sigma-Aldrich Chinaから購入
ギ酸:カタログ番号5330020050、Sigma-Aldrich Chinaから購入
トリフルオロ酢酸:カタログ番号302031、Sigma-Aldrich Chinaから購入
トリクロロ酢酸:カタログ番号T6399、Sigma-Aldrich Chinaから購入
ビリルビンモノグルクロニド、出願人の研究室製、CAS番号:27071-67-6、分子式:C39H44N4O12、平均分子量:760.786、純度:≧90%;
ビリルビンジグルクロニド、出願人の研究室製、CAS番号:17459-92-6、分子式:C45H52N4O18、平均分子量:936.921、純度:≧90%。
【0096】
実施例1:液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法の確立と最適化
本実施例では、液相条件の選択、質量分析条件の設定、標準溶液の調製、分析法の最適化、標準曲線の作成を含む、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法に基づく生体試料中のビリルビンの各成分の定性的及び定量的検出方法の確立プロセスを例示的に説明する。本実施例の検出方法は、高感度、高選択性、強力な抗干渉能力を有しており、ビリルビンの各成分の定性的及び定量的分析に有効なツールとなり得る。
【0097】
ビリルビン試料には様々な成分が含まれている。本発明者らは、液体クロマトグラフィーの移動相AのpHが3~4.5の場合、ビリルビン試料の主成分である遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドを効果的に分離でき、広範囲のクロマトグラフィーカラム、特にC8及びC18シリカゲルカラムに適しており、カラム温度及び注入量に対する良好な適用性を備えていることを研究により発見した。
【0098】
質量分析法は、四重極質量分析法、飛行時間型質量分析法、イオンヒドラジン質量分析法及び高分解能軌道ヒドラジン質量分析法から選択することができ、前記質量分析法の条件及び質量分析法の定性的及び定量的検出モードの設定は、エレクトロスプレーイオン源(ESI)を選択し、検出すべき標的化合物の応答に基づいてイオンスキャンモードを選択すること;多重反応モニタリング法(MRM)を選択し、多重反応モニタリングモードのパラメータを設定することを含む。
【0099】
1.検出条件の検討
機器及び試薬:アセトニトリル(クロマトグラフィー純度グレード)、メタノール(クロマトグラフィー純度グレード)、イソプロパノール(クロマトグラフィー純度グレード)、酢酸アンモニウム(クロマトグラフィー純度グレード)、酢酸(クロマトグラフィー純度グレード)、手動又は自動ピペット(10~200μL、100~1000μL)、すべて市販されている。
【0100】
液相条件1:移動相A:酢酸アンモニウム+酢酸でpH3.5に調整した超純水溶液、移動相B:アセトニトリル:メタノール:イソプロパノール=8:1:1、カラム温度:40℃、クロマトグラフィーカラム:Acquity BEH C18(2.1*50mm、1.7μm)、注入量:5μL。
【0101】
液相条件2:移動相A:ギ酸アンモニウム+ギ酸でpH4.5に調整した超純水溶液、移動相B:アセトニトリル:メタノール:イソプロパノール=8:1:1、カラム温度:40℃、クロマトグラフィーカラム:Acquity BEH C18(2.1*50mm、1.7μm)、注入量:5μL。
【0102】
液相条件3:移動相A:トリフルオロ酢酸アンモニウムでpH3に調整した超純水溶液、移動相B:アセトニトリル:メタノール:イソプロパノール=8:1:1、カラム温度:40℃、クロマトグラフィーカラム:Acquity BEH C18(2.1*50mm、1.7μm)、注入量:5μL。
【0103】
機器及び試薬:アセトニトリル(クロマトグラフィー純度グレード)、メタノール(クロマトグラフィー純度グレード)、イソプロパノール(クロマトグラフィー純度グレード)、酢酸アンモニウム(クロマトグラフィー純度グレード)、酢酸(クロマトグラフィー純度グレード)、手動又は自動ピペット(10~200μL、100~1000μL)、すべて市販されている。
【0104】
液相条件:移動相A:77mg酢酸アンモニウム+250μL酢酸でpH3~4.5に調整した超純水溶液、移動相B:アセトニトリル:メタノール:イソプロパノール=8:1:1、カラム温度:40℃、クロマトグラフィーカラム:Acquity BEH C18(2.1*50mm、1.7μm)、注入量:5μL。
【0105】
高速液体クロマトグラフィーの手順は以下の表1に示された通りである。
表1:高速液体クロマトグラフィーの手順
【0106】
質量分析条件の設定:表2に示されるように、エレクトロスプレーイオン源(ESI)を選択し、化合物の応答に基づいて適切なイオンスキャンモードを選択し、正イオンモードで多重反応モニタリング法(MRM)取得モードを使用し、多重反応モニタリングモードのパラメータを設定し;スキャン時間は0.4~4分であった。半自動サンプリング法を使用して、標準溶液をそれぞれイオン源に注入し、対応する親イオンのピークを選択し、その娘イオンを二次イオン質量分析法でフラグメントイオン情報を取得し、前記化合物のMRM質量分析検出方法を確立した。
表2:ビリルビン及びその代謝産物のMRM質量分析検出パラメータ
【0107】
上記のスキームで説明した質量分析プロセスにおいて、イオン源の温度は150℃、キャピラリー電圧は3000V、脱溶媒ガスの温度は500℃、脱溶媒ガスの流量は1000L/時間、衝突ガスはアルゴンガスである。
【0108】
上記の検出条件下で、3つの異なる液相条件下で検出されたビリルビンの各成分の典型的なクロマトグラムはそれぞれ
図1、
図2、
図3に示された通りである。
【0109】
標準溶液の調製
上記の液相条件1を使用した。
(1)遊離型ビリルビン標準溶液の調製:遊離型ビリルビンを適量秤量し、クロロホルムを加え、濃度1mg/mLの母液を調製した。
(2)ビリルビンモノグルクロニド標準溶液の調製:ビリルビンモノグルクロニドを適量秤量し、50%メタノール溶液を加え、濃度1mg/mLの母液を調製した。
(3)ビリルビンジグルクロニド標準溶液の調製:ビリルビンジグルクロニドを適量秤量し、50%メタノール溶液を加え、濃度1mg/mLの母液を調製した。
(4)ビリベルジン標準溶液の調製:ビリベルジンを適量秤量し、メタノールを加え、濃度1mg/mLの母液を調製した。
(5)混合標準母液:1%BHTを含むメタノールを使用して、濃度50μmol/Lの遊離型ビリルビン、ビリルビンモノグルクロニド、ビリルビンジグルクロニド及びビリベルジンを含む混合標準を調製した。
(6)混合標準溶液:1%BHTを含むメタノールを使用して、混合標準母液を希釈し、20、4、1、0.2μmol/Lの混合標準溶液を順次調製した。
(7)上記で調製した標準母液を下記の濃度の標準溶液とするように比例希釈し、注入量を1μLとし、標的物質の含有量に対するピーク面積から標準曲線を作成し、その標準曲線は
図4に示された通りである。
【0110】
実施例2:血液試料中のビリルビンの定性的及び定量的測定
サンプリング:3人の被検者の血清、血漿及び全血試料を採取し、各試料を3つの部分、例えば血清01、血清02、血清03に分け、合計9つの生体試料を得た。
【0111】
生体試料の処理:
血清01:試料20μLを採取し、内部標準としてタウリンビリルビンを10μLずつ加え、次に1mg/mLのBHT及び200mmol/Lのアスコルビン酸を含むメタノール:アセトニトリル(1:1、V/V)溶液80μLを加え、10℃、1450rpmで光を避けて20分間振盪した。4℃、18000gで20分間遠心分離した。上清60μLを96ウェルプレートにピペッティングし、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析検出による被検試料として使用した。
【0112】
血清02:試料20μLを採取し、内部標準としてタウリンビリルビンを10μLずつ加え、次に1mg/mLのBHT及び175mmol/Lのアスコルビン酸を含むメタノール:アセトニトリル(1:1)溶液80μLを加え、10℃、1450rpmで光を避けて20分間振盪した。4℃、18000gで20分間遠心分離した。上清60μLを96ウェルプレートにピペッティングし、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析検出による被検試料として使用した。
【0113】
血清03:試料20μLを採取し、内部標準としてタウリンビリルビンを10μLずつ加え、次に1mg/mLのBHT及び204mmol/Lのアスコルビン酸を含むメタノール:アセトニトリル(1:1)溶液80μLを加え、10℃、1450rpmで光を避けて20分間振盪した。4℃、18000gで20分間遠心分離した。上清60μLを96ウェルプレートにピペッティングし、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析検出による被検試料として使用した。
【0114】
血漿01:試料20μLを採取し、内部標準としてタウリンビリルビンを10μLずつ加え、次に1mg/mLのBHT及び180mmol/Lのアスコルビン酸を含むメタノール:アセトニトリル(1:1)溶液80μLを加え、10℃、1450rpmで光を避けて20分間振盪した。4℃、18000gで20分間遠心分離した。上清60μLを96ウェルプレートにピペッティングし、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析検出による被検試料として使用した。
【0115】
血漿02:試料20μLを採取し、内部標準としてタウリンビリルビンを10μLずつ加え、次に1mg/mLのBHT及び160mmol/Lのアスコルビン酸を含むメタノール:アセトニトリル(1:1)溶液80μLを加え、10℃、1450rpmで光を避けて20分間振盪した。4℃、18000gで20分間遠心分離した。上清60μLを96ウェルプレートにピペッティングし、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析検出による被検試料として使用した。
【0116】
血漿03:試料20μLを採取し、内部標準としてタウリンビリルビンを10μLずつ加え、次に1mg/mLのBHT及び170mmol/Lのアスコルビン酸を含むメタノール:アセトニトリル(1:1)溶液80μLを加え、10℃、1450rpmで光を避けて20分間振盪した。4℃、18000gで20分間遠心分離した。上清60μLを96ウェルプレートにピペッティングし、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析検出による被検試料として使用した。
【0117】
全血01:試料20μLを採取し、内部標準としてタウリンビリルビンを10μLずつ加え、次に1mg/mLのBHT及び200mmol/Lのアスコルビン酸を含むメタノール:アセトニトリル(1:1)溶液80μLを加え、10℃、1450rpmで光を避けて20分間振盪した。4℃、18000gで20分間遠心分離した。上清60μLを96ウェルプレートにピペッティングし、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析検出による被検試料として使用した。
【0118】
全血02:試料20μLを採取し、内部標準としてタウリンビリルビンを10μLずつ加え、次に1mg/mLのBHT及び206mmol/Lのアスコルビン酸を含むメタノール:アセトニトリル(1:1)溶液80μLを加え、10℃、1450rpmで光を避けて20分間振盪した。4℃、18000gで20分間遠心分離した。上清60μLを96ウェルプレートにピペッティングし、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析検出による被検試料として使用した。
【0119】
全血03:試料20μLを採取し、内部標準としてタウリンビリルビンを10μLずつ加え、次に1mg/mLのBHT及び190mmol/Lのアスコルビン酸を含むメタノール:アセトニトリル(1:1)溶液80μLを加え、10℃、1450rpmで光を避けて20分間振盪した。4℃、18000gで20分間遠心分離した。上清60μLを96ウェルプレートにピペッティングし、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析検出による被検試料として使用した。
【0120】
上記で処理した試料を、実施例1のLC-MS/MS条件に従って注入・検出し、液相条件1を選択し、内部標準校正法及び外部標準法で定量し、検出結果は以下の表3に示された通りである。
表3:検出指標及び検出結果
【0121】
実施例3:乾燥血液スポット中のビリルビン成分の定性的及び定量的測定
乾燥血液スポット試料の調製
生後4日以内の新生児から指先の血液を採取して乾燥血液スポット試料を調製した。工程は以下の通りである:
濾紙シートの前処理:903濾紙シートを1mg/mLのBHT及び200mmol/Lのアスコルビン酸を含むエタノール溶液に2分間繰り返し浸漬し、取り出して水切りをした後、日陰で自然乾燥させてバックアップとして用意した。
【0122】
準備:適切な試験管に適量の希釈剤を加えた。マイクロピペットをラテックスチップに接続し、接続部分で空気漏れがあるか否かを確認するか、又はバックアップとして使い捨てのマイクロピペット(サイフォンの原理)、採血針、75%エタノール又はヨードホール綿棒などを用意した。
マッサージ:左手の薬指の指先の尺骨側の筋肉が多い中央部を優しくマッサージし、局所組織を自然にうっ血させた。指の側面や指先の使用を避けた。
【0123】
消毒:採血部位を75%エタノール又はヨードホール綿棒で拭き、自然乾燥させた。
【0124】
鍼:左手の親指、人差し指、中指で皮膚と皮下組織に張りを持たせるように採血部位を固定し、使い捨ての滅菌採血針を右手に持ち、指先の尺骨側から深さ2~3mmまで刺入し、すぐに針を引き抜いた。
【0125】
血液の拭き取り:血液が自然に流れ出た後、滅菌乾燥綿球(綿棒)で最初の一滴の血液を拭き取った。
【0126】
血液の吸引:使い捨てのマイクロピペットで血液を吸引するか、又は濾紙シートに血液を滴下し、滅菌乾燥綿球(綿棒)で傷口を押さえて止血し、血液の流れがスムーズでない場合は、左手で採血部位の遠位端から指先にかけて少し圧迫して血液を流出させることができる。
【0127】
混乱を避けるため、試料採取後すぐに患者識別を行った。
【0128】
光を避けた涼しい場所で4時間乾燥させ、アルミホイル袋に入れ、4℃で保存した。
【0129】
乾燥血液スポット試料の前処理
乾燥血液スポット3点をパンチサンプラーで採取し、純水20μLを加え、10℃、1450rpmで20分間シェーカーで振盪し、内部標準(タウリンビリルビン)10μLと、1mg/mLのBHT及び200mmol/Lのアスコルビン酸を含むメタノール:アセトニトリル(1:1)溶液80μLを加え、引き続き10℃、1450rpmで20分間シェーカーで振盪し、4℃、18000gで20分間遠心分離し、上清60μLを96ウェルプレートに注入した。
【0130】
高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析
実施例1のLC-MS/MS条件に従って注入・検出し、液相条件1を選択し、内部標準校正法及び外部標準法で定量し、測定された含有量は以下の表4、方法論的パラメータは以下の表5に示された通りである。
表4:検出指標及び含有量の検出結果
表5:方法論的パラメータ
【0131】
実施例4:安定型ビリルビン定量的検出試薬
本発明は、第1安定剤及び第2安定剤を含む系内に分注されているビリルビン標準を含む安定型ビリルビン定量的検出試薬を提供し、前記ビリルビンは、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドのうちの1つ又は複数を含む。本実施例の目的は、安定型ビリルビン定量的検出試薬を例示的に提供することであり、その調製方法及び安定性について検討した。
【0132】
安定型ビリルビン定量的検出試薬の調製
濾紙シートの前処理:分析用濾紙シートを1mg/mLのBHT及び200mmol/Lのアスコルビン酸を含むエタノール溶液に2分間繰り返し浸漬し、取り出して水切りをした後、日陰で自然乾燥させ、4℃で保存した。
【0133】
定量的検出試薬の調製:遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドを正確に秤量し、別個にエタノールに溶解し、使い捨てのマイクロピペットで溶液を吸引し、別個に濾紙シートに滴下し、光を避けた涼しい場所で4時間乾燥させ、アルミホイル袋に入れ、4℃で保存した。
【0134】
実施例1のLC-MS/MS条件に従って注入・検出し、液相条件1を選択し、内部標準校正法及び外部標準法で定量し、検出結果は以下の表に示された通りであり、以下の日数置いた試料を定量的検出の対象とし、結果は表6に示された通りである。
表6
【0135】
実施例5:ビリルビンの含有量の検出キット
本発明は、ビリルビンの定量的検出に使用できるキットを提供し、前記キットの検出指標は、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドのいずれか1つの含有量、又は複数の含有量、又はそれらの合計を含む。本実施例の目的は、ビリルビンの含有量の検出キットを例示的に提供することである。
【0136】
前記検出キットは、第1安定剤及び第2安定剤を含む系内に分注されているビリルビン標準を含み、前記ビリルビンは、遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドのうちの1つ又は複数を含む。本実施例の目的は、安定型ビリルビン定量的検出試薬を例示的に提供することであり、その調製方法及び安定性について検討した。
【0137】
本実施例のキットの構成は表7に示された通りである。
表7
【0138】
そのうち、前記ビリルビン標準含有濾紙は、以下の方法に従って調製した:
分析用濾紙シートを1mg/mLのBHT及び200mmol/Lのアスコルビン酸を含むエタノール溶液に2分間繰り返し浸漬し、取り出して水切りをした後、日陰で自然乾燥させ、4℃で保存した。遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドを正確に秤量し、別個にエタノールに溶解し、使い捨てのマイクロピペットで溶液を吸引し、別個に濾紙シートに滴下し、光を避けた涼しい場所で4時間乾燥させ、アルミホイル袋に入れ、4℃で保存した。
【0139】
実施例6:新生児胆道閉鎖症のスクリーニングへの本発明の検出方法の使用
本発明によって提供される技術的解決策は、ビリルビンの定量的検出方法を可能にする。前記ビリルビンの含有量の検出方法及びビリルビンの含有量の検出キットは、複数のビリルビンを別個に又は同時に測定し、任意の検出目的のために遊離型ビリルビン、ビリベルジン、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドを定量的に検出するために使用することができる。これらの検出指標、又は1つ以上の検出指標が感度のある任意の疾患又は症状の診断、リスクの評価及び薬物治療効果の評価に使用可能である、医療関連の診断、リスクの評価などに適用することができる。
【0140】
本実施例では、新生児胆道閉鎖症のスクリーニングに適用される本発明の技術的解決策について説明されているが、同様に、ビリルビン成分の変化をもたらす可能性のある他の疾患又は症状に対するスクリーニング、診断、リスクの評価及び薬物治療効果のモニタリングにも適用することができる。例えば、前記疾患又は症状は、新生児胆道閉鎖症、乳児肝炎症候群、α1アンチトリプシン欠損症、アラジール症候群などから選択される。本実施例では、健常新生児39名、乳児肝炎症候群の小児10名、α1アンチトリプシン欠損症の小児9名、アラジール症候群の小児5名から乾燥血液スポットを採取した。
【0141】
本実施例では、健常新生児及び胆道閉鎖症の新生児の血液試料中のビリルビン及びその代謝産物の含有量を検討した。本実施例では、胆道閉鎖症の新生児39名及び健常新生児対照300名から、生後4日以内に調製した乾燥血液スポットである血液試料を採取した。
【0142】
乾燥血液スポット試料の調製
濾紙シートの前処理:903濾紙シートを1mg/mLのBHT及び200mmol/Lのアスコルビン酸を含むエタノール溶液に2分間繰り返し浸漬し、取り出して水切りをした後、日陰で自然乾燥させてバックアップとして用意した。
【0143】
準備:適切な試験管に適量の希釈剤を加えた。マイクロピペットをラテックスチップに接続し、接続部分で空気漏れがあるか否かを確認するか、又はバックアップとして使い捨てのマイクロピペット(サイフォンの原理)、採血針、75%エタノール又はヨードホール綿棒などを用意した。
【0144】
マッサージ:左手の薬指の指先の尺骨側の筋肉が多い中央部を優しくマッサージし、局所組織を自然にうっ血させた。指の側面や指先の使用を避けた。
【0145】
消毒:採血部位を75%エタノール又はヨードホール綿棒で拭き、自然乾燥させた。
【0146】
鍼:左手の親指、人差し指、中指で皮膚と皮下組織に張りを持たせるように採血部位を固定し、使い捨ての滅菌採血針を右手に持ち、指先の尺骨側から深さ2~3mmまで刺入し、すぐに針を引き抜いた。
【0147】
血液の拭き取り:血液が自然に流れ出た後、滅菌乾燥綿球(綿棒)で最初の一滴の血液を拭き取った。
【0148】
血液の吸引:使い捨てのマイクロピペットで血液を吸引するか、又は濾紙シートに血液を滴下し、滅菌乾燥綿球(綿棒)で傷口を押さえて止血し、血液の流れがスムーズでない場合は、左手で採血部位の遠位端から指先にかけて少し圧迫して血液を流出させることができる。
【0149】
混乱を避けるため、試料採取後すぐに患者識別を行った。
【0150】
光を避けた涼しい場所で4時間乾燥させ、アルミホイルの袋に入れ、4℃で保存した。
【0151】
乾燥血液スポット試料の前処理
乾燥血液スポット3点をパンチサンプラーで採取し、純水20μLを加え、10℃、1450rpmで20分間シェーカーで振盪し、内部標準(タウリンビリルビン)10μLと、1mg/mLのBHT及び200mmol/Lのアスコルビン酸を含むメタノール:アセトニトリル(1:1)溶液80μLを加え、引き続き10℃、1450rpmで20分間シェーカーで振盪し、4℃、18000gで20分間遠心分離し、上清60μLを96ウェルプレートに注入した。
【0152】
高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析
実施例1のLC-MS/MS条件に従って注入・検出し、液相条件1を選択し、内部標準校正法及び外部標準法で定量した。その結果、胆道閉鎖症の新生児では、ビリルビンモノグルクロニドの平均値は28μmol/L、最大値は82μmol/L、最小値は2.9μmol/Lであり、健常新生児では、ビリルビンモノグルクロニドの平均値は1.25μmol/L、最大値は3.10μmol/L、最小値は0.02μmol/Lである。ビリルビンモノグルクロニドを診断指標とし、カットオフ値を2.5μmol/Lとした場合、胆道閉鎖症の診断に対するビリルビンモノグルクロニドの感度は100%、特異性は95.2%である。
【0153】
さらに、胆道閉鎖症の診断に対するビリルビンジグルクロニドの感度は85%、特異性は95%である。胆道閉鎖症の診断に対するビリルビンモノグルクロニドとビリルビンジグルクロニドの組み合わせの感度は99%、特異性は95%である。
【0154】
したがって、
図5、
図6及び
図8に示されるように、ビリルビンモノグルクロニド及びビリルビンジグルクロニドのアップレギュレーションを新生児胆道閉鎖症の特徴的な検出指標として使用することが期待される。
【0155】
図5は、胆道閉鎖症の新生児と健常新生児対照を鑑別するための各代謝産物のROC曲線下面積である。
【0156】
図6は、胆道閉鎖症の新生児と健常新生児の被検試料中のビリルビンモノグルクロニドのレベルの違いを示す一連の散布図である。
【0157】
図8は、胆道閉鎖症の新生児と健常新生児対照を鑑別するためのビリルビンモノグルクロニドとビリルビンジグルクロニドの組み合わせのROC曲線下面積である。
【0158】
図9に示されるように、乳児肝炎症候群、α1アンチトリプシン欠損症、アラジール症候群では、乳児肝炎症候群の診断に対するビリルビンモノグルクロニドの感度は99%、特異性は95%であり;α1アンチトリプシン欠損症の診断に対するビリルビンモノグルクロニドの感度は99%、特異性は95%であり;アラジール症候群の診断に対するビリルビンモノグルクロニドの感度は96%、特異性は95%である。
【0159】
実施例7:胆道閉鎖症患者と他の胆汁うっ滞症患者との鑑別
本実施例では、胆道閉鎖症の新生児26名、及び他の疾患による胆汁うっ滞症の新生児40名から血清試料を採取し、実施例1の高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法に従って、血清試料中のビリルビンモノグルクロニドの含有量を検出した。その結果、胆道閉鎖症の小児におけるビリルビンモノグルクロニドの含有量は他の胆汁うっ滞症の小児におけるビリルビンモノグルクロニドの含有量よりも有意に高く(
図7、P<0.0001);ROC曲線下面積は0.90(95%CI=0.83~0.97)であり、>75μmol/Lのカットオフ値をとると、実施例1の検出条件に従って、感度は84.6%(65.1%~95.6%)であり、特異性は82.5%(67.2%~92.7%)であるため、ビリルビンモノグルクロニドは、胆道閉鎖症を他の新生児胆汁うっ滞症から最初に鑑別するためのバイオマーカーとして使用することができる。
【0160】
実施例8:ビリルビンモノグルクロニドをバイオマーカーとして使用する診断ツールの作成
以上の実施例により、ビリルビンモノグルクロニドの定量的検出値が、健常新生児、胆道閉鎖症の新生児、及び他の原因による胆汁うっ滞症の新生児を鑑別するための指標として使用できることが判明した。この独創的な研究成果に基づいて、本実施例の目的は、検出指標としてビリルビンモノグルクロニドの含有量を使用する、臨床現場における新生児胆道閉鎖症の早期スクリーニング及び診断のための使用を例示的に提供することである。新生児の出生後の胆道閉鎖症のスクリーニングを迅速、簡便かつ効率的に行うことは、高リスクの小児に対してさらなる医療措置を迅速に行うことにとって非常に重要である。
【0161】
そのため、本発明者らは、使用目的に基づき、ビリルビンモノグルクロニドをバイオマーカーとして使用する好適なツールを作成することを提案し、前記ツールは、ビリルビンモノグルクロニドをバイオマーカーとして使用し、その発現レベルを被検者の胆道閉鎖症のリスクの高低を判定する手段として使用する。前記ツールは、診断製品又は分析試験製品であってもよく、特定の実施例として、本実施例は、ビリルビンモノグルクロニドの定量的検出試薬を含み、任意にビリルビンの他の代謝成分の定量的検出用の試薬を含み、被検者の血液試料の処理用の試薬をさらに含み、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析検出方法に使用する検出試薬、例えば、内部標準、内部標準希釈剤、高速液体クロマトグラフィーに適用する移動相試薬をさらに含む、診断製品の一例としてのキットを提供する。
【0162】
本発明者らは、前記キットが乾燥血液スポットを被検試料として使用する好ましい解決策を検討した。乾燥血液スポット採取の利便性が高いため、新生児の出生後の胆道閉鎖症のスクリーニングを迅速に行うことに役立ち、さらに、新生児の出生後の胆道閉鎖症の早期スクリーニングを迅速に推進することに役立つ。一方、再採取が必要な場合でも、乾燥血液スポットの調製技術が成熟しており、試料採取の利便性が高く、新生児への外傷が少ない又はほとんどないため、繰り返しの検出が必要な場合でも特に有利である。
【0163】
キットには通常、標準を保管するための少なくとも1つの容器が含まれている。当該容器は、単一コンパートメント型又はマルチコンパートメント型であり得る。例えば、当該容器は、マルチウェルプレート(96ウェルプレートなど)、又は他の同様の容器であり得る。一部のキットでは、当該容器はバイオマーカーの測定にも適している。一部のキットでは、当該容器は、標準検出、又は高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析などの被検試料中のバイオマーカーの機器分析に使用することができる。
【0164】
以下のキットは、特定の実施形態の1つとして使用される:
表8:キットの構成
【0165】
実施例9:キットの使用
本発明はさらに、診断キットの使用を研究し、検証した。
【0166】
本実施例では、本発明者らは、実施例1の方法に従って、胆道閉鎖症と臨床診断された新生児30名及び健常新生児562名から生後4日以内に調製した乾燥血液スポットを採取し、実施例1の検出方法と組み合わせて、実施例3のキットに含まれる試薬を用いて乾燥血液スポット中のビリルビンモノグルクロニドの含有量を検出した。
【0167】
検出結果は以下の表9に示された通りであり、カットオフ値>2.5μmol/L(
図7のA)の場合、感度は100%(88.43%~100%)であり、特異性は98.74%(97.42%~99.49%)(
図7のB)である。新生児の乾燥血液スポット中のビリルビンモノグルクロニドの含有量は新生児胆道閉鎖症のリスクを評価するための信頼できるマーカーとして使用することができ、実施例のキットは新生児胆道閉鎖症のリスクを評価することができることがわかる。
表9
【0168】
上記は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとって、本発明の方法から逸脱することなく、様々な修正及び追加が可能であることに留意すべきであり、これらの修正及び追加も本発明の保護範囲に属するとみなされるべきである。
【国際調査報告】