(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】プレフィルド・シリンジ用の注入終点シグナリング・デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20231220BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20231220BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61M5/315
A61M5/32 500
A61M5/32 510K
A61M5/28 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536469
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 IB2020001081
(87)【国際公開番号】W WO2022129969
(87)【国際公開日】2022-06-23
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519266638
【氏名又は名称】バイオコープ プロダクション ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルコス、アラン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066FF05
4C066LL30
4C066NN08
4C066QQ48
4C066QQ84
(57)【要約】
針シュラウドを有するプレフィルド・シリンジに取り付けるための注入終点シグナリング・デバイスであって、シュラウドが第1の後退位置から第2の延出位置に並進する、注入終点シグナリング・デバイス。注入終点シグナリング・デバイスは、近距離無線通信(NFC)回路と、作動スイッチとを備え、プレフィルド・シリンジに取り付けられると、第1のシュラウド後退位置において、作動スイッチは、NFC回路を、注入終点情報にNFC回路がアクセス不可能である非アクティブ状態に維持し、第2のシュラウド延出位置において、作動スイッチは、NFC回路を、注入終点情報にNFC回路がアクセス可能であるアクティブ状態に維持する。作動スイッチは、シュラウドの一部と作動スイッチとの相互協働面係合により非アクティブ状態からアクティブ状態に移行される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレフィルド・シリンジに取り付けられるように適合及び構成された注入終点シグナリング・デバイスであって、
前記プレフィルド・シリンジは注入後用針シュラウドを有し、前記針シュラウドは、前記シュラウドが後退されていて前記プレフィルド・シリンジの針が露出する第1の位置から、前記シュラウドが延出して前記プレフィルド・シリンジの前記針が前記シュラウドによって完全に包囲される第2の位置に並進するように構成され、
前記注入終点シグナリング・デバイスは、近距離無線通信(NFC)回路と作動スイッチとを有する無線注入終点シグナリング・システムを有し、
前記プレフィルド・シリンジに取り付けられたとき、
前記第1の、シュラウド後退位置において、前記作動スイッチは、前記NFC回路がオフであり且つ注入終点情報が前記NFC回路によってアクセス不可能である非アクティブ状態に前記NFC回路を維持し、
前記第2の、シュラウド延出位置において、前記作動スイッチは、前記NFC回路がオンであり且つ前記注入終点情報が前記NFC回路によってアクセス可能であるアクティブ状態に前記NFC回路を維持し、
前記作動スイッチは、前記シュラウドの一部と前記作動スイッチとの相互協働面係合によって前記非アクティブ状態から前記アクティブ状態へ動かされる、注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項2】
前記作動スイッチと前記針シュラウドとの前記相互協働面係合は、前記シュラウドが完全延出位置に位置決めされたときに提供される、請求項1に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項3】
近距離無線通信回路ホルダ本体を有し、前記回路ホルダ本体は、前記プレフィルド・シリンジの長手方向本体の外向き面に取り付けられる、請求項1又は請求項2に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項4】
前記回路ホルダ本体は、前記針安全シュラウドの外向き面に取り付けられる、請求項3に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項5】
前記回路ホルダ本体は、長手方向中心軸に平行である平面内で前記プレフィルド・シリンジに取り付けられる、請求項3又は4に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項6】
前記回路ホルダ本体は、前記近距離無線通信回路のマイクロコントローラを受け入れ且つ位置決めるように構成及び寸法決めされたソケットを有する、請求項3から5までのいずれか一項に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項7】
前記近距離無線通信回路は、円盤形状の回路基板に組み込まれ、前記マイクロコントローラは、前記回路基板の第1の面に配置され、前記作動スイッチは、前記回路基板の反対側の第2の面に配置される、請求項3から6までのいずれか一項に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項8】
前記円盤形状の回路基板の前記第1の面は、少なくとも1つ以上の保持ラグによって、前記回路ホルダ本体の円盤形状のベースの内向き面に対して保持される、請求項3から7までのいずれか一項に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項9】
前記保持ラグは、前記回路ホルダ本体の前記円盤形状のベースの回転軸の周りに半径方向に配される、請求項8に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項10】
前記円盤形状のベースの前記回転軸は、前記プレフィルド・シリンジの前記長手方向中心軸に垂直である、請求項9に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項11】
前記円盤形状のベースの前記回転軸は、前記長手方向中心軸に平行な水平平面に対して垂直である、請求項9又は請求項10に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項12】
前記回路ホルダ本体は、前記円盤形状のベースの周囲に配置された少なくとも1つ以上の壁であって、前記円盤形状のベースから離れるように同じ方向に延在する少なくとも1つ以上の壁を有する、請求項3から11までのいずれか一項に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つ以上の延在壁は、円弧形状であり、前記デバイスが前記プレフィルド・シリンジ及び/又は前記針安全シュラウドに取り付けられたとき、前記壁は、前記プレフィルド・シリンジ及び/又は前記針安全シュラウドの少なくとも1つの側壁と弾性変形可能な当接で係合する、請求項12に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項14】
前記少なくとも1つ以上の延在壁はそれぞれ、それぞれの前記延在壁のそれぞれの近位端から前記長手方向中心軸に対して略垂直に延びる捕捉肩部を有する、請求項12又は請求項13に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項15】
前記捕捉肩部は、カールしたリップを形成するように前記肩部の半径方向遠位端から近位方向に延び、前記カールしたリップは、前記プレフィルド・シリンジの前記本体から直交方向外側に延びる対応するフィンガ・ストップと弾性変形可能な留め係合で係合するように構成される、請求項14に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項16】
前記1つ以上の延在壁、前記捕捉肩部及び前記カールしたリップは、少なくとも1つの延在壁の後縁から他の延在壁の後縁へと延びる裏カバーによって閉じられる、請求項12から15までのいずれか一項に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項17】
前記裏カバーは、回転可能なヒンジを有する、請求項16に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項18】
前記回転可能なヒンジは、前記延在壁のうちの1つの縁に沿って設けられる、請求項17に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項19】
前記回路基板作動スイッチは、前記回路ホルダ本体が前記プレフィルド・シリンジ本体及び/又は前記針安全シュラウドに取り付けられたとき、前記長手方向中心軸に平行に且つ前記長手方向中心軸に沿って配置される、請求項1から18までのいずれか一項に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項20】
前記作動スイッチは、前記シュラウドの近位部と前記作動スイッチとの協働面係合によって前記非アクティブ状態から前記アクティブ状態に動かされる、請求項1に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項21】
前記作動スイッチは、変位可能又は可動な電気接点である、請求項1に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【請求項22】
前記変位可能又は可動な電気接点は、マイクロスイッチ、付勢又は拘束された導電性金属ストリップ、及び可動な導電性表面からなる群から選択される、請求項21に記載の注入終点シグナリング・デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレフィルド・シリンジ及び関連技術に関する。詳細には、本発明は、一般にNFC(near field communications)と略される近距離無線通信回路を使用するプレフィルド・シリンジ用のシグナリング・アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
プレフィルド・シリンジはそれ自体、当業者に知られており、医薬品であるか又は他の物質であるかにかかわらず、様々な固定用量又は単位用量の物質の投与のために一般に使用されている。例えば、プレフィルド・シリンジは一般に、予防接種運動及びプログラムのためのワクチンなどの薬物の投与のために、或いは、例えば、糖尿病、又は、固定の予め測定され貯蔵された用量の薬剤、例えば、ヘビ若しくはクモの咬傷の治療に使用される抗毒素の投与による管理を必要とする他の障害などの、長期の病状の治療のために、或いは、急性疼痛若しくは外傷、心筋梗塞、アナフィラキシー、細菌性若しくは毒性ショックなどのような、生命を脅かす可能性のある他の状況の治療若しくは発症のための緊急注射のために使用される。したがって、プレフィルド・シリンジの用途は広範囲にわたり、よく知られている。
【0003】
そのようなプレフィルド・シリンジは一般に、
近位端及び遠位端を有する細長い中空シリンジ本体であって、近位端に第1の開口と、前記近位端において前記第1の開口の周りで中空シリンジ本体の外側へ突出するカラー又はフランジとを有する、細長い中空シリンジ本体と、
細長い中空シリンジ本体の遠位端に取り付けられる又は取り付け可能であるとともに、前記遠位端において細長い中空シリンジ本体の第2の開口を閉じる注射針と、
中空本体に導入される制御された量の注入可能な材料と、
前記細長い中空シリンジ本体に中空シリンジ本体の近位端及び対応する近位開口を介して挿入されるように構成及び寸法決めされ、プランジャ本体を有するプランジャであって、プランジャ本体が、プランジャ本体の遠位端に配置されたストッパと、前記プランジャ本体の近位端に配置されたプランジャ・ヘッドとを有する、プランジャと、
を有する。
【0004】
そのようなプレフィルド・シリンジに関する一般的な課題の1つは、再使用の試みを回避するために、或いは、追跡のために、例えば、注入可能な物質がプレフィルド・シリンジから投与されたかどうか及びどのくらい投与されたかを知るために、シリンジが実際にいつ使用されたかを知らせることができることである。このため、この一般的な課題を克服しようとするために、様々な追跡システムがそのようなプレフィルド・シリンジに関連付けられてきた。
【0005】
例えば、国際公開第2014089086号として公開された国際特許出願が、アナフィラキシー・ショックを治療するためのエピネフリンなどの薬剤を含む自動注射器などの電子薬剤デバイスを使用する方法に関する。このデバイスは、センサ、RFID、NFCなどのIDタグ、又はBluetooth通信などの短距離無線通信のための他のタグ、メモリ、ディスプレイ、及びスピーカ、並びに、プロセッサ及び通信インタフェースを含み、プロセッサが、構成要素のうちの1つ又は複数を相互接続し、通信インタフェースが、wifi、モバイル・キャリア・ネットワーク、又は衛星を介した通信のためのインタフェースを含む。プロセッサは、薬剤の投与及び薬剤の有効期限などのイベントの発生に応答して、通信インタフェースを介して携帯電話などの少なくとも1つ又は複数の遠隔システムと通信するように構成される。センサは、デバイスの起動を検出し、デバイスが起動すると電子回路を完成又は破壊する脆弱性の要素を含む。センサは、自動注射器デバイスの使用に応答してアクションを行うように信号をIDタグに提供し、使用時間のログとともに、デバイスが使用されたことを示すようにメモリを変更する。IDタグはまた、自動注射器デバイスから、NFC対応モバイル・デバイス、例えば携帯電話などの無線リーダに情報を提供する。携帯電話は、RFID、NFC、又は他の無線通信を使用して、自動注射器デバイスにプリントされるか又は自動注射器デバイス・メモリに記憶される薬剤情報を読み取る。
【0006】
同様に、米国特許第2019038840号として公開された米国特許出願が、外部デバイスに制御信号を送信するように構成された第1の送信アンテナと、制御信号を送信するために送信アンテナに命令を提供するように構成された、第1の送信アンテナに接続された制御電子機器と、第2のバイパス・アンテナであって、バイパス・アンテナが非外乱位置にあると、制御電子機器が送信アンテナに命令を提供することを阻止し、バイパス・アンテナが非外乱位置から変位すると、制御電子機器が送信アンテナに命令を提供することを許可するように位置決め及び構成された第2のバイパス・アンテナと、の2つのアンテナの複雑な配置を有するプレフィルド・シリンジを開示している。2つのアンテナ及び制御電子機器の複雑な配置は、シリンジ・プランジャの近位端において組み込まれ、押しボタンによって覆われている。バイパス・アンテナは、物理的に破壊的な電気スイッチとして構成され、そのため、押しボタンがシリンジのユーザによって押されると電気接点が切断される。押しボタンを押すことでバイパス・アンテナとの電気接点が修復不可能に破壊され、一次アンテナ回路が作動し、シリンジの使用開始をシグナリングする。
【0007】
さらに、国際公開第2018111969(A1)号として公開された国際特許出願が、シリンジのピストンに作用するようにサイズ決め及び寸法決めされたシャフトと、無線センサの少なくとも2つのサブユニットを収容する指作動式ヘッド部分とを備える、シリンジから薬剤を押し出すようになっているプランジャ・ロッドを開示している。作動前形態では、サブユニットが物理的障壁により互いに離間し、無線センサが非稼働である。作動後形態では、サブユニットが互いに接続され、センサが信号を送信するように稼働する。ユーザが、指作動式ヘッド部分を作動させて物理的障壁を可逆的に動かし、プランジャ・ロッドを作動前形態から作動後形態に移行させる。センサにより送信された信号は、シリンジからの薬剤の放出に関する情報を有し、遠隔受信機により受信される。
【0008】
上述した文献に開示されている解決策にもかかわらず、近距離無線通信を使用する注入終点(注入エンドポイント)検出及びシグナリングに対する克服されるべき多くの課題が依然として残っている。これは特に、特定のやり方で機能するように特に改変されるプレフィルド・シリンジに当てはまる。例えば、注入が完了すると針刺し損傷からユーザを保護するために安全機構を組み入れているプレフィルド・シリンジも知られている。そのようなプレフィルド・シリンジは多くの場合、注入が完了した後、針からユーザを自動的に保護するか又は針を取り外すシステムを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2014089086号
【特許文献2】米国特許第2019038840号
【特許文献3】国際公開第2018111969(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、1つの目的によれば、本出願人は、針安全機構を有するプレフィルド・シリンジに取り付けるとともにプレフィルド・シリンジとともに使用するように適合及び構成された注入終点シグナリング・デバイスであって、注入終点に関する情報は、針安全機構が作動したときにのみ、近距離無線通信回路などの無線通信回路を介してシグナリングされることが可能である、注入終点シグナリング・デバイスを提供する。
【0011】
これら及び他の目的は、以下で説明されるか又は以下に続く明細書から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の1つの目的は、プレフィルド・シリンジに取り付けられるように適合及び構成された注入終点シグナリング・デバイスであって、プレフィルド・シリンジは、注入後用針シュラウドを有し、針シュラウドは、シュラウドが後退するとともにプレフィルド・シリンジの針が露出する第1の位置から、シュラウドが延出するとともにプレフィルド・シリンジの針がシュラウドによって完全に包囲される第2の位置に並進(移転)するように構成される、注入終点シグナリング・デバイスにおいて、
注入終点シグナリング・デバイスは、近距離無線通信(NFC)回路と作動スイッチとを有する無線注入終点シグナリング・システムを有し、
プレフィルド・シリンジに取り付けられると、
第1のシュラウド後退位置において、作動スイッチは、NFC回路を、前記NFC回路がオフであるとともに注入終点情報にNFC回路がアクセス不可能である非アクティブ状態に維持し、
第2のシュラウド延出位置において、作動スイッチは、NFC回路を、前記NFC回路がオンであるとともに注入終点情報にNFC回路がアクセス可能であるアクティブ状態に維持し、
作動スイッチは、シュラウドの一部と作動スイッチとの相互協働面係合により非アクティブ状態からアクティブ状態へ移行される、注入終点シグナリング・デバイスである。
【0013】
プレフィルド・シリンジが実質的に概して上記で説明されたようなものであり、以下の、すなわち
近位端及び遠位端を有する細長い中空シリンジ本体であって、近位端に第1の開口と、前記近位端において前記第1の開口の周りで中空シリンジ本体の外側へ突出するカラー又はフランジとを有する、細長い中空シリンジ本体と、
細長い中空シリンジ本体の遠位端に取り付けられている又は取り付け可能であるとともに、前記遠位端において細長い中空シリンジ本体の第2の開口を閉じる注射針と、
中空本体に導入される制御された量の注入可能な材料と、
前記細長い中空シリンジ本体に中空シリンジ本体の近位端及び対応する近位開口を介して挿入されるように構成及び寸法決めされ、プランジャ本体を有するプランジャであって、プランジャ本体が、プランジャ本体の遠位端に配置されたストッパと、前記プランジャ本体の近位端に配置されたプランジャ・ヘッドとを有する、プランジャと、
を有することが、本発明から理解されるべきである。
【0014】
概して、たいていのそのようなプレフィルド・シリンジはもっぱら、例えば、ワクチン又は他の単回投与薬剤を投与する場合の、使い捨て用であり、その使用後、現在の適切な望ましい処理実施に従って処分されるべきである。
【0015】
プレフィルド・シリンジは、注入後用針シュラウドを有する。表現「注入後用針シュラウド(post-injection needle shroud)」とは、本明細書の目的のため、シリンジ内に収容された物質の放出の完了時又はその後すぐに稼働する能動又は受動的な針シュラウドを装備したプレフィルド・シリンジを指すものと理解されるべきである。この情況では、針安全シュラウドに関する表現「能動」及び「受動」はそれぞれ、以下、すなわち
「受動」-針シュラウドに関してプレフィルド・シリンジの1つ又は複数の構成要素の移動の結果として自動的に作動する針シュラウドであって、その作動が、シリンジ・チャンバからの物質の放出を行う以外の、プレフィルド・シリンジのユーザによるいかなるアクションとも独立している、針シュラウド、
「能動」-シリンジ・チャンバからの注入可能な物質の通常の排出に対する、排出動作の終了時にプレフィルド・シリンジのユーザによって行われる別個の又は意図的な動作により作動する、針シュラウド
を指す。
【0016】
上述したように、針シュラウドは、シュラウドが後退するとともにプレフィルド・シリンジの針が露出する第1の位置から、シュラウドが延出するとともにプレフィルド・シリンジの針がシュラウドによって完全に包囲される第2の位置に並進するように構成される。このようにして動作するプレフィルド・シリンジの一例は、Becton Dickinson社により販売されているBD Ultrasafe Passive(商標)の商品名で入手可能であり、これは、プレフィルドISO規格ガラス製シリンジ用のパッシブ針ガード機構に関し、これについて、注射は片手で行うことができる。このデバイスでは、針安全シュラウドは、開始時及び注入移動の間中、針が露出する第1の位置にあり、その注入移動の際、プランジャは、シリンジのプランジャ・ヘッドが一対の弾性変形可能な解除ウィングと係合し、それにより解除ウィングが中心軸から半径方向外側に押され、次いで、針シュラウドの近位端において針シュラウドの弾性変形可能な部分を圧迫するまで、シリンジの長手方向中心軸に沿って遠位方向に移動する。シュラウドの近位端における針シュラウドの弾性変形により、シュラウドのボアがその長さに沿って僅かに広がる。当接スリーブは、シュラウドのボア内に配置され、シリンジ・バレルの外面との固定軸係合接触で位置決めされる。予め拘束された付勢ばねが、シュラウドのボア内においてシュラウドの遠位端と当接スリーブの遠位向き接触面との間に配置され、ばねは、当接スリーブの遠位向き接触面に対して当接する。注入完了時に弾性変形可能なウィングと相互作用するプランジャ・ヘッドによって引き起こされる、シュラウドの弾性変形された広がりにより、予め拘束された付勢ばねが中心軸に沿って軸方向に拡張すると同時に当接スリーブの遠位向き接触面に押し当たることが可能となり、それによって、シュラウドを遠位方向に駆動する。シュラウドは、遠位方向にシュラウド後退位置からシュラウド延出位置に移動するにつれ、注入時に露出した針を覆い始める。
【0017】
さらに、シュラウドが遠位方向に移動するにつれ、シュラウドの近位端の弾性変形が解除され、シュラウドのボアの内径が通常の状態に戻り始める。シュラウドは、シュラウドの近位端に隣接してシュラウドに配置された少なくとも1つのリセスにより、所定の軸方向限界を超えて遠位に延出することを防がれ、このリセスは、当接スリーブに配置されているとともに当接スリーブから延びる少なくとも1つの半径方向突出スプールを受け入れる。近位リセスの位置、当接スリーブ、及び、付勢ばねの対応する拡張により、第1の針露出位置から、第2の針包囲位置、すなわちシュラウド延出位置への、シュラウドの軸方向移動の程度が決まる。
【0018】
上述したように、注入終点シグナリング・デバイスはまた、近距離無線通信回路と作動スイッチとを有する無線注入終点シグナリング・システムを有する。注入終点シグナリング・デバイスが上述したもののようなプレフィルド・シリンジに取り付けられると、第1のシュラウド後退位置において、作動スイッチは、近距離無線通信回路を、前記回路がオフであるとともに注入終点情報にNFC回路がアクセス不可能である非アクティブ状態に維持する。本明細書において使用される場合、「非アクティブ」及び「オフ」という用語は、NFC回路が注入終点情報を検索するか又は見い出すことが不可能であることを指す。当該終点情報は例えば、単一ビットのデータ、又は電気パルス、又は、電子などの荷電粒子の通過を可能にする単純状態の開閉される導電若しくは半導電ゲートとすることができる。
【0019】
これとは反対に、第2のシュラウド延出位置において、作動スイッチは、NFC回路を、前記回路がオンであり、したがって、注入終点情報にNFC回路がアクセス可能であるアクティブ状態に維持する。したがって、本明細書において使用される場合、「アクティブ」及び「オン」という用語は、そのような回路が既知のやり方で通電されると、NFC回路が注入終点情報を検索するか又は見い出すことが可能であることを指す。
【0020】
このようにして、作動スイッチがアクティブすなわち「オン」状態にある場合にのみ、終点情報をNFC回路が利用可能であること、また、実際に完了した注入のみが、NFC回路を介して、別個のNFCリーダ、又は、適切なNFC搭載スマートフォン・デバイスに知らされることができることが保証される。
【0021】
RFID技術の派生又は進化としての近距離無線通信(NFC)技術は、当業者によく知られている。これは、国際規格ISO/IEC14443及びISO/IEC18000-3において詳細に記載されており、前者は、NFC IDタグに見られるような情報を記憶するために使用されるIDカードの機能を規定し、後者は、NFC搭載デバイスによって使用されるRFID通信を規定している。NFCの基礎は、無線周波数識別、すなわちRFID技術において見い出されるべきであり、このRFID技術は、給電するためだけでなく、他の場合では給電されていない又は通電されていない、電波を使用するパッシブ電子タグと通信するための、適切に装備されたハードウェアを提供する。したがって、本発明において使用されるNFC回路は、例えば、注入可能な物質の種類、単位用量、濃度、有効期限などのような情報セット、及び、そのようなNFC IDタグの制限内で適切に記憶することができる任意の他の有用又は必要な情報を記憶するパッシブIDタグを有する。NFC回路はまた、NFC回路が通電されるとスマートフォンなどの別のNFC対応デバイスと前記情報を交換することを通常可能にする、適切な対応する通信構成要素を有する。NFC回路の一部を形成するアンテナも設けられ、NFCプロトコルの所与の機能周波数の電波を捕捉し、それによって回路を通電する。
【0022】
さらに、上述したように、近距離無線通信回路の作動スイッチは、上記で説明したようにプレフィルド・シリンジに取り付けられると、シュラウドの一部と作動スイッチとの相互協働面係合により非アクティブ状態からアクティブ状態へ動かされる。したがって、作動スイッチは、安全シュラウド機構の一部と係合し、この一部との物理的な相互作用によって動かされる。
【0023】
好都合には、別の目的によれば、作動スイッチと針安全シュラウドの対応部との相互協働面係合は、シュラウドが完全延出位置に位置決めされた場合にのみ、もたらされる。換言すると、近距離無線通信回路は、シュラウドが、プレフィルド・シリンジの針を完全に覆う、その最終的な延出位置に達した場合にのみ、アクティブとなる。このようにして、プレフィルド・シリンジは処分が安全なだけでなく、さらに、放出及び/又は注入終点が達成されていること、したがって、終点情報に、終点シグナリング・デバイスに組み込まれたNFC回路がアクセス可能にされ、次いで、その終点情報を、通常のやり方で、注入点シグナリング・デバイス内に配置されたNFC回路の通電により、NFC搭載リーダ・デバイスにシグナリングすることができることを確信することができる。
【0024】
さらに別の目的によれば、作動スイッチは、シュラウドの近位部と作動スイッチとの協働面係合によって非アクティブ状態からアクティブ状態へ動かされる。シュラウドの適切な近位部は、シュラウドの近位端の近くでシュラウド内に配置されたリセスとすることができ、このリセスは、上記で説明したように、当接スリーブに配置されているとともに当接スリーブから延びる少なくとも1つの半径方向突出スプールを受け入れる。そのような構成では、作動スイッチは、シュラウドに取り付けられると、また、非アクティブ状態において、シュラウドのボアに向いたリセスよりも上の位置からリセスが提供するスペースを占めるように位置決めされる。注入が完了すると、シュラウドは、当接スリーブに対する付勢ばねの相互作用により、上記で説明したように近位方向において軸方向に移動し、そのため、当接スリーブの突出スプールがシュラウドのリセスに係合し、作動スイッチに押し当たって、前記スイッチを非アクティブすなわち「オフ」状態からアクティブすなわち「オン」状態に移行する。
【0025】
さらなる目的によれば、作動スイッチは、回路ホルダ本体がプレフィルド・シリンジ本体及び/又は針安全シュラウドに取り付けられると、長手方向中心軸に対して平行に長手方向中心軸に沿って配置される。
【0026】
したがって、またさらなる目的によれば、作動スイッチは、変位可能又は可動な電気接点である。
【0027】
別の目的によれば、変位可能又は可動な電気接点は、マイクロスイッチ、付勢又は拘束された導電性金属ストリップ、及び可動な導電性表面からなる群から選択される。変位可能又は可動な電気接点は概して、電気接点が相互作用する回路を電流又は電荷が通り得ない第1の非アクティブすなわち「オフ」位置から、電気接点が相互作用する回路を電荷又は電流が通ることを可能にされる第2のアクティブすなわち「オン」位置に、可動である又は変位するように配置される。導電性表面がスイッチとして実施される場合では、そのような導電性表面は有益には、例えば、積層、埋め込み、化学的であるか物理的であるかを問わず堆積、エッチング、彫刻、ドーピングなどのような、当業者に知られている範囲の技術のいずれかによって、そのような表面内又は表面上に分布する導電性材料を有することができる。特に好都合な実施例では、電気接点アプリケータ上に配置された導電性表面は、炭素又は金属粒子を有する。この導電性表面は、シュラウドが完全延出位置に移動する場合に、シュラウドに設けられた対応するリセス内に当接スリーブの突出スプールが嵌められると、電気接点を形成する。そのような位置に達成するまで、導電性表面は、電気接点の確立により終点情報をNFC回路がアクセス可能であるようにさせることを防ぐように構成及び編成される。
【0028】
さらに別の目的によれば、注入終点シグナリング・デバイスは、近距離無線通信回路ホルダ本体を有し、回路ホルダ本体は、プレフィルド・シリンジの長手方向本体の外向き面に取り付けられる。
【0029】
またさらなる目的では、好都合には、回路ホルダ本体は、針安全シュラウドの外向き面に取り付けられる。「外向き面」とは、シュラウドのボアに内方へ向く、シュラウドの内面すなわち内向き面に対する、シュラウドの外面、すなわち、外方に向く表面を指すことを理解されたい。
【0030】
さらに別の目的によれば、回路ホルダ本体は、長手方向中心軸に対して平行にある平面内でプレフィルド・シリンジに取り付けられる。
【0031】
さらに、また好都合には、別の目的によれば、回路ホルダ本体は、針シュラウドの外向き面に取り付けられ、また、プレフィルド・シリンジの少なくとも一部と係合し、そのため、回路ホルダ本体は、シュラウドから取り外すことができず、シュラウドが第1のシュラウド後退位置から第2のシュラウド延出位置まで長手方向中心軸に沿って軸方向に移動することを可能にする。そのような取り付けの最終結果は、回路ホルダ本体がシリンジの長手方向中心軸に対して平行であるだけでなく、前記平行な長手方向平面内で前記長手方向中心軸に対して略直交にその両側に延びることである。
【0032】
さらに、また別の目的によれば、好都合には、NFC回路の作動スイッチの変位可能又は可動な電気接点は、電気接点が確立されない第1の非アクティブ位置から、電気接点を確立する第2の接触位置へ、長手方向中心軸に対して平行な方向への、シュラウドの並進運動によりアクティブ電気接点を確立する。したがって、シュラウドは、例えば当接スリーブの突出スプールを介して、作動スイッチをNFC回路の電気的にギャップのある又は電気的に絶縁されたエリアから直接又は間接的に動かすように働き、それにより、回路を閉じ、電流又は電荷が流れることを可能にし、それにより、終点情報をNFC回路がアクセス可能であるようにさせもする。
【0033】
別の目的によれば、回路ホルダ本体は、近距離無線通信回路のNFCマイクロコントローラを受け入れるとともに配置するように構成及び寸法決めされたソケットを有する。回路ホルダ本体に設けられたソケットは、例えば注入終点シグナリング・デバイスをプレフィルド・シリンジに取り付けると、NFCマイクロコントローラが回路ホルダ本体に対して移動することを防ぐように働く。
【0034】
さらに、また、さらなる目的によれば、近距離無線通信回路は好都合には、円盤形状の回路基板に組み込まれ、NFCマイクロコントローラは、回路基板の第1の面に配置され、作動スイッチは、回路基板の反対側の第2の面に配置される。そのような構成により、一方で、マイクロコントローラと回路ホルダ本体の着座ソケットとの物理的な面相互作用により、円盤形状の回路基板が着座することが可能となり、他方で、針シュラウドとの対応する協働面係合のために作動スイッチを解放しておく。
【0035】
さらに別の目的によれば、円盤形状の回路基板の第1の面は、少なくとも1つ又は複数の保持ラグによって回路ホルダ本体の円盤形状のベースの内向き面に対して保持される。保持ラグは、円盤形状の回路基板を回路ホルダ本体内に保持するのに役立ち、デバイスがプレフィルド・シリンジに取り付けられると、ソケットとともに、針シュラウドに対して、回路基板、したがって、対応する作動スイッチを適切に位置決めする。
【0036】
さらなる目的では、保持ラグは、回路ホルダ本体の円盤形状のベースの回転軸の周りに半径方向に配される。
【0037】
さらに別の目的によれば、回路ホルダ本体の円盤形状のベースの回転軸は、プレフィルド・シリンジの長手方向中心軸に対して垂直にある。このことから、本明細書における他の箇所で述べたように、終点シグナリング・デバイスは、少なくとも部分的に円盤形状であること、及び、ディスクは、プレフィルド・シリンジに取り付けられると、シリンジの長手方向中心軸に対して平行であるだけでなく平行な平面内で直交する平面内にあることが理解されるであろう。したがって、回路ホルダ本体の円盤形状のベースの回転軸は、長手方向中心軸に対して平行である水平面に対して垂直にある。
【0038】
別の目的によれば、回路ホルダ本体は、円盤形状のベースの周囲に配置されるとともにそのベースから離れて同じ方向に延在する少なくとも1つ又は複数の壁を有する。壁は、プレフィルド・シリンジ及び/又は針シュラウドの少なくとも一部と係合するように形状決め及び構成される。
【0039】
したがって、さらなる目的によれば、少なくとも1つ又は複数の延在壁は、円弧形状であり、デバイスがプレフィルド・シリンジ及び/又は針安全シュラウドに取り付けられると、前記壁は、プレフィルド・シリンジ及び/又は針安全シュラウドの少なくとも1つの側壁と弾性変形可能な当接で係合する。
【0040】
したがって、上記から、回路ホルダ本体は好都合には、好ましくは円盤形状のベースを有すること、及び、このベースには例えば、好ましくは、回路ホルダ本体のベースの平面に対して直交する方向に、前記ベースの周囲から前記ベースから離れて延在する一対の壁が設けられることが理解されるであろう。さらに、壁は好都合には、プレフィルド・シリンジ及び/又は針シュラウドに取り付けられると弾性変形可能である係合面を形成するように回路ホルダ本体のベースの回転軸に対して略平行な方向に延在しており、長手方向中心軸の周りでの注入終点シグナリング・デバイスのいかなる側方移動も防ぐ。
【0041】
さらに別の目的によれば、少なくとも1つ又は複数の延在壁はそれぞれ、それぞれの延在壁のそれぞれの近位端から長手方向中心軸に対して略直交に長手方向中心軸から離れて延びる捕捉肩部を有する。捕捉肩部は、針シュラウドに取り付けられたフィンガ・トップであって、他の場合ではバックストップとして知られているフィンガ・ストップと係合及び当接するように設計され、肩部は、使用時に片手の指が押さえる表面を提供し、その一方、プランジャは、同じ手の親指によって全体的に押される。
【0042】
さらなる目的によれば、捕捉肩部は、シュラウドから直交方向外側に延びる対応するフィンガ・ストップ又はバックストップと弾性変形可能な留め係合で係合するように構成されたカールしたリップを形成するように近位方向に肩部の半径方向遠位端から延びる。カールしたリップは、シリンジのバックストップに回路ホルダ本体をクランプする又は留めるように働き、ユーザが注射時に自身の親指でプランジャを押している最中に終点シグナリング・デバイスのいかなる望ましくない移動も防ぐ。
【0043】
さらに別の目的によれば、捕捉肩部には、フィンガ・ストップ又はバック・ストップとの係合に役立つように肩部から離れて近位に延びる1つ又は複数の弾性変形可能な着座ラグが設けられる。これらの着座ラグは、バックストップが肩部と係合する際に弾性的に動かされることで、肩部をバックストップの周縁の上に動かし、弾性変形させ、次いで、バックストップの縁が着座する際、その初期の変形していない状態に戻す。
【0044】
さらに別の目的によれば、1つ又は複数の延在壁、捕捉肩部及びカールしたリップは、少なくとも一方の延在壁の後縁から他方の延在壁の後縁に延びる裏カバーによって閉じられる。そのような構成では、注入終点シグナリング・デバイスは、例えば、NFC回路の機能を妨げる可能性がある、ユーザによるデバイスの改ざん、及び/又は、流体、塵埃などの不慮の侵入を防止するために、本質的に全周を密閉される。
【0045】
別の目的によれば、裏カバーは、例えば、注入終点シグナリング・デバイスをプレフィルド・シリンジに取り付けることを容易にするために、次いで、デバイスがプレフィルド・シリンジに取り付けられるとその後で裏カバーを閉じるために、回転可能なヒンジを有する。
【0046】
したがって、1つのさらなる目的は、回転可能なヒンジが延在壁のうちの1つの縁に沿って設けられることを想定している。したがって、このようにして、裏カバーは、延在壁のうちの1つの縁のうちの1つと整列されるヒンジ関節を有するパネル又はドアとして本質的に構成される。裏カバーにはまた、対応する対向ラッチ機構と、シグナリング・デバイスの取り付け時の開位置からプレフィルド・シリンジへの取り付け後の閉位置に移動した場合に裏カバーを固定するために、ラッチを受け入れるように対向壁の対向縁に設けられた対応する対向リセスとを設けることができる。
【0047】
要するに、注入終端シグナリング・デバイスは、以下の通り機能するように設計される。
【0048】
注入終点シグナリング・デバイスは、軸方向に並進可能な針シュラウドを有するプレフィルド・シリンジの外面に取り付けられ、シュラウドを、注入前の第1のシュラウド後退位置から、注入完了時の第2のシュラウド延出位置に、プレフィルド・シリンジの長手方向中心軸に沿って並進させ、その第2の位置において、プレフィルド・シリンジの針は完全に覆われ、それにより、プレフィルド・シリンジをユーザによるその後の処分のために安全にする。シグナリング・デバイスは、プレフィルド・シリンジの長手方向中心軸と平行整列で位置決めされる作動スイッチを有し、このスイッチはさらに、シュラウドの近位端の近くに設けられたリセス内に位置決めされる。シュラウドの近位リセスは、シリンジ・バレルの遠位端と固定接触でその遠位端の近くに配置された当接スリーブに設けられている突出スプールを受け入れる。注入が完了すると、プレフィルド・シリンジのプランジャ・ヘッドが、シュラウドのための解除機構を作動させ、シュラウドが長手方向中心軸に沿って遠位方向に移動する。当接スリーブの固定位置に比して、シュラウドの相対移動により、近位リセスは、当接スリーブの突出スプールと接触するまで、シュラウドの一部として近位方向に移動する。この時点で、突出スプールはリセスに入り、作動スイッチと係合することで、作動スイッチを「オフ」位置から「オン」位置に移行させる。突出スプールがシュラウドのいかなるさらなる軸方向移動も防ぐことを考慮すると、作動スイッチは、この位置において「オン」又は作動状態にあるままであり、別個に記憶されたデータ・ビット、電気インパルス、又は単に電流方向であれ、注入終点情報が、NFC回路がアクセス可能であるようにされ、NFC回路は、例えば、プレフィルド・シリンジをNFC搭載スマートフォン又は対応するNFCリーダに近づけるか又はその逆に行うことによって、既知のやり方で通電することができる。次いで、終点シグナリング・デバイスの適切に通電されたNFC回路は、アクセス可能にされたばかりの終点情報を含む、NFC回路に記憶されたいかなるタグ情報も、既知のやり方でリーダによって、また、NFC回路の機能によって、明示、及び/又は通信、及び/又は受信させることができる。
【0049】
ここで、本発明を、本発明の様々な実施例の例示のために提供される図面に関連してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1A】本発明による終点シグナリング・デバイスが取り付けられている、受動針安全シュラウド機構を装備したプレフィルド・シリンジの上面の概略斜視図である。
【
図1B】本発明による終点シグナリング・デバイスが取り付けられている、受動針安全シュラウド機構を装備したプレフィルド・シリンジの下面の概略斜視図である。
【
図2A】本発明による終点シグナリング・デバイスを装備した、
図1のプレフィルド・シリンジの前面の概略軸方向図である。
【
図2B】本発明による終点シグナリング・デバイスを装備した、
図1のプレフィルド・シリンジの後面の概略軸方向図である。
【
図3A】近距離無線通信回路の位置に関する詳細を示す、下側から見た、本発明による終点シグナリング・デバイスの概略斜視図である。
【
図3B】近距離無線通信回路の位置に関する詳細を示す、下側から見た、本発明による終点シグナリング・デバイスの概略斜視図である。
【
図4A】本発明による終点シグナリング・デバイスのさらなる詳細の概略斜視図である。
【
図4B】本発明による終点シグナリング・デバイスのさらなる詳細の概略斜視図である。
【
図5A】針シュラウド及び本発明による対応する終点シグナリング・デバイスの2つの主要な位置のうちの1つを示す、
図1に示すような受動針安全シュラウド機構を備えたプレフィルド・シリンジの概略断面図である。
【
図5B】針シュラウド及び本発明による対応する終点シグナリング・デバイスの2つの主要な位置のうちの1つを示す、
図1に示すような受動針安全シュラウド機構を備えたプレフィルド・シリンジの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
ここで図面を参照すると、安全シュラウドを装備したプレフィルド・シリンジ(1)が、
図1A及び
図1Bにおいてそれぞれ上面斜視図及び下面斜視図で示され、より詳細に
図5A及び
図5Bの例示的な断面図で示されている。プレフィルド・シリンジ(1)は、近位端(3)及び遠位端(4)を有する細長い中空シリンジ本体(2)を有し、近位端(3)に第1の開口(5)と、前記近位端(3)において前記第1の開口(5)の周りで中空シリンジ本体(2)の外側へ突出するカラー(6)又はフランジとを有する。取り外し可能な又は脆弱性の針キャップ(8)によって覆われた注射針(7)が、細長い中空シリンジ本体(2)の遠位端(4)に取り付けられ、前記遠位端(4)において細長い中空シリンジ本体(2)の第2の遠位開口(7)を閉じる。液体又は泡状の薬物などの、制御された量の注入可能な材料(図示せず)が、シリンジ構成要素の組み立て時に中空本体(2)に導入される。
【0052】
プランジャ(9)が、細長い中空シリンジ本体(2)に中空シリンジ本体(2)の近位端(3)及び対応する近位開口(5)を介して挿入されるように構成及び寸法決めされ、プランジャ(9)は、プランジャ本体又はロッド(10)を有し、プランジャ本体又はロッド(10)が、プランジャ本体(10)の遠位端(12)に配置されたストッパ(11)を有する。ストッパ(11)は、既知のやり方で、例えば、プランジャ本体(9)の遠位端(12)にねじ山付き突起(13)を設け、また、ストッパ(11)の内側に対応するねじ山付きボア(14)を設けることによって、プランジャ本体(10)に接続することができる。プランジャ本体(10)は、前記プランジャ本体(10)の近位端(16)に配置されたプランジャ・ヘッド(15)をさらに有する。プランジャ(9)及びシリンジ本体(2)は、シリンジ本体(2)の長手方向中心軸(17)に沿って実質的に長手方向に整列している。針シュラウド(18)が、シリンジ本体(2)の外側に沿ってその周りに延在し、近位端(19)及び遠位端(20)を有する。例示したもののような安全針シュラウドを有する市販品は、Becton Dickinson社によりBD Ultrasafe Passive(商標)の商品名で販売されている。
【0053】
図5A及び
図5Bにおいてより詳細に見てとることができるように、針シュラウド(18)は、脆弱性の又は取り外し可能な針キャップ(8)が取り外されると針(7)が露出される、第1のシュラウド後退位置(
図5Aを参照)から、注射の完了時にのみ有効であるとともに、針(7)が針シュラウド(18)によって完全に覆われる、
図5Bに示すような、第2のシュラウド延出位置へ、移動するように構成される。針シュラウド(18)は、ボア(21)を画定し、近位端(19)及び遠位端(20)を有する。シュラウド(18)は、シリンジ(2)がシュラウド(18)のボア(21)内に保持されるように、シリンジ(2)の近位端(3)に隣り合って配置された近位端(19)から、シリンジ(2)の外側に沿い、シリンジ(2)の遠位端(4)にわたって、この遠位端を遠位方向に越えて、シュラウド(18)の遠位端(20)へ延在する。シュラウド(18)は、弾性変形可能な部分(24)を介して、シュラウドの近位端(19)においてシリンジ(2)に対して係合する。圧縮された付勢ばね(25)がボア内に配置され、シュラウド(18)の遠位端(20)に対して着座している。ばね(25)の近位端(26)が当接スリーブ(27)に当接し、この当接スリーブは、シリンジ(2)の近位端(4)から近位方向に、近位端(4)に隣り合って、シリンジ(2)の外面(28)を囲むとともに外面(28)において固定位置に着座している。当接スリーブ(27)は、少なくとも1つの突出スプール(29)をさらに有し、この突出スプールは、シュラウドの内向き面(30)、例えば、長手方向中心軸(17)と長手方向に整列した溝と、摺動係合で係合する。シュラウド(18)には、シュラウド(18)の外向き面(32)からシュラウド(18)の内向き面(30)に延在するリセス(31)又はオリフィスがさらに設けられており、リセス又はオリフィス(31)は、シュラウド(18)の近位端(19)から遠位方向に、近位端(19)に隣り合って配置されている。
【0054】
図5A及び
図5Bにおいて、より詳細に示すように、注入終点シグナリング・デバイス(33)が、シュラウド(18)の外向き面(32)に取り付けられ、外向き面(32)と係合する。初期のシュラウド後退位置(
図5A)において、注入終点シグナリング・デバイス(33)は、以下でより詳細に説明されるように、シュラウド(18)の近位端(19)の近くに配置される。
【0055】
図2A及び
図2Bは、針安全シュラウドを装備したプレフィルド・シリンジに取り付けられた場合の注入終点シグナリング・デバイス(33)の図を概略的に示す。
図2Aは、プレフィルド・シリンジの長手方向中心軸(17)に沿った、遠位端(4、20)から見た図を示し、
図2Bは、針安全シュラウドを装備したプレフィルド・シリンジの近位端(3、19)から見た図を示す。
図1A及び
図1Bと併せて、これらの図から明らかとなるように、注入終点シグナリング・デバイス(33)は、シュラウド(18)の幅にわたって広がっており、且つ長手方向中心軸に対して直交(A-A’)であるだけでなく平行(B-B’)でもある平面内にあり、さらに、前記長手方向中心軸に対して平行にシュラウドのそれぞれの側壁(34)とさらに係合することを見てとることができる。
図2A及び
図2Bから見てとることができるように、注入終点シグナリング・デバイス(33)は、シュラウド(18)の外向き面(32)から僅かに高くなって、シュラウド(18)上にその幅にわたって位置決めされたボタン・キャップに似ている。
【0056】
図3A、
図3B、
図4A及び
図4Bは、注入終点シグナリング・デバイス(33)のより詳細な例示的な図、特に、注入終点シグナリング・デバイス(33)の相対的な構成要素部品の斜視図を表す。
【0057】
図3A及び
図3Bは、注入終点シグナリング・デバイス(33)のさらなる詳細を見せるために回路ホルダ本体(35)を裏側斜視図で示す。回路ホルダ本体(35)は、近距離無線通信(NFC)回路(36)を受け入れるとともに保持するように形状決め及び構成されており、この回路の種類及び機能はそれ自体知られている。NFC回路(36)は、円盤形状のプリント回路基板(37)を有し、円盤形状のプリント回路基板(37)の第1の面(39)上にアンテナ(38)と、作動スイッチ(40)とを組み込んでいる。回路基板(37)の反対側の第2の面(41)には、NFC回路(36)の機能を制御するNFCマイクロ・コントローラ(42、
図5A、
図5B)が設けられている。回路ホルダ本体(35)は、円盤形状又は略円盤形状のベース(43)を有し、このベースは、円盤形状の回路基板(37)を受け入れるとともに保持するように構成及び寸法決めされる。そのため、回路ホルダ本体(37)のベース(43)にはソケット(44)が設けられており、このソケットは、回路基板(37)の反対側の第2の面(41)に配置されたNFCマイクロ・コントローラ(42)を受け入れるとともに着座させるように寸法決め及び位置決めされる。ソケット(44)は、終点シグナリング・デバイス(33)がシュラウド(18)に取り付けられると、回路基板(37)の反対側の面(41)における作動スイッチ(40)がプレフィルド・シリンジ(1)の長手方向中心軸(17)に平行整列して適正に位置決めされることをさらに可能にする。
図1A及び
図1Bから見てとることができるように、終点シグナリング・デバイス(33)がシュラウド(18)に取り付けられ、シュラウド(18)が初期の後退位置にある場合、作動スイッチ(40)は、外面(32)から貫入し、リセス(31)内に入り込んでシュラウド(18)のボア(21)に延出する。ベース(43)には、ベース(43)の周囲(46)からその周りに延在する周壁(45)も設けられており、周壁(45)には、1つ又は複数の半径方向に離間した保持ラグ(47)が設けられ、この保持ラグは、ベース(43)と周壁(46)とによって画定された内部容積部に突出するヘッド部分(48)を含む。回路基板(37)がこの内部容積部に挿入される際、ラグ(47)は弾性的に半径方向外側に変形して、円盤形状の回路基板を通すことを可能にし、次いで、元に戻って回路基板の上で閉じ、突出するヘッド部分(48)が、回路基板(37)の第1の面(39)と保持面係合で係合する。
【0058】
図3A、
図3B、
図4A及び
図4Bに示すように、回路ホルダ本体(35)は、ベース(43)の周囲から前記ベース(43)に対して直交に同じ方向に延在する一対の弾性変形可能な側壁(49、50)をさらに有する。側壁(49、50)はそれぞれ、第1の端(51、51’)及び第2の端(52、52’)と、外側縁(53、53’)とを有する。側壁(49、50)は、円盤形状のベース(43)の周囲によって画定されるとともにベース(43)の周囲に少なくとも部分的に延びてもいる円弧に対応する円弧形状を有し、それぞれの第1の端(51、51’)及び第2の端(52、52’)が間にシュラウド(18)の幅よりも僅かに狭いスペースを画定しており、そのため、終端シグナリング・デバイス(33)の取り付け時に、側壁が弾性変形し、そのそれぞれの第1の端(51、51’)及び第2の端(52、52’)を介して、長手方向中心軸(17)の両側で、シュラウド(18)の対応する側壁(34、34’)と摩擦及び弾性係合する。回路ホルダ本体(35)は、一対の捕捉肩部をさらに有し、各肩部(54、54’)が、それぞれの延在側壁(49、50)のそれぞれの第1の端すなわち近位端(51、51’)から離れてそこから長手方向中心軸(17)に対して略直交して延びる。捕捉肩部(54、54’)は、プレフィルド・シリンジ(1)の本体(2)から直交方向外側に延びるとともにシュラウド(18)に取り付けられる対応するフィンガ・ストップ又はバックストップ(58)と弾性変形可能な留め係合で係合するように構成されたカールしたリップ(57、57’)を形成するように、肩部(54、54’)の第1の半径方向遠位端(55、55’)から、肩部の第1の端から離間した第2の端(56、56’)に延びる。捕捉肩部(54、54’)には好都合には、フィンガ・ストップ又はバック・ストップとの係合に役立つように肩部から離れて延びる1つ又は複数の弾性変形可能な着座ラグ(59、59’)が設けられる。これらの着座ラグ(59、59’)は、終点シグナリング・デバイス(33)の取り付け時にバックストップ(58)が肩部と係合する際、弾性的に動かされることで、肩部(54、54’)をバックストップ(58)の周縁の上に動かし、弾性変形させ、次いで、バックストップ(58)の縁が肩部(54、54’)に着座する際、その初期の変形していない状態に戻す。
【0059】
図面、特に
図1Bから見ることができるように、回路ホルダ本体(35)は、背部がないものとして表されており、つまり、裏カバーを有していない。しかしながら、示していないが、延在壁、捕捉肩部及びカールしたリップのうちの1つ又は複数に、少なくとも一方の延在側壁(49)の第1の縁(53)から他方の延在側壁(50)の反対向き縁(53’)に延びる裏閉鎖カバーを設けることが有用であるとすることができる。裏カバーには、例えば延在側壁(49、50)のうちの一方の縁(53、53’)のうちの一方に沿って配置された、回転可能なヒンジをさらに設けることができる。このことは、例えば、終点シグナリング・デバイス(33)への塵埃及び/又は液体の何らかの侵入を防止するために、特に、終点シグナリング・デバイスの構成要素、例えば、回路基板、アンテナ、NFCマイクロ・コントローラ及び/又は作動スイッチのいずれかのユーザによる改ざんを防止するために、特に好都合である。当然のことながら、そのような関節裏カバーは、終点シグナリング・デバイス(33)をシュラウド(18)に取り付ける場合に開かれ、その後、デバイス(33)の取り付けが完了すると閉じられる。裏カバーの閉鎖は、裏カバーにおけるラッチと、関節又はヒンジ点が設けられる縁(53)とは反対の縁(53’)に設けられる、ラッチ用の対応する受け入れリセスと、の組み合わせにより適切に行うことができる。
【0060】
ここで、再び
図5A及び
図5Bを参照しながら、終点シグナリング・デバイス(33)の機能を説明する。注入前及び注入時のシュラウドがとる位置である、
図1Aに示されたシュラウド後退位置において、シュラウド(18)は、脆弱性の又は取り外し可能な針キャップ(8)が取り外されると針(7)を露出させる。終点シグナリング・デバイスの作動スイッチは、長手方向中心軸(17)に対して平行にあり、シュラウド(18)のリセス(31)に係合され、シュラウドのボア(21)に延出する。注入が進むにつれ、プランジャ(9)及びプランジャ・ヘッド(15)がシリンジの近位端(3)に向かって遠位方向に動かされる。注入が完了すると、プランジャ(9)及びプランジャ・ヘッドは、シリンジの近位端に位置付けられ、プランジャ(9)のストッパ(11)がシリンジの遠位端(4)に位置付けられる。この地点で、針安全機構を例えば本明細書の他の箇所で説明したように作動させることで、圧縮された付勢ばねを拡張させ、シリンジ本体(2)の外面と固定位置接触している当接スリーブ(27)に押し付ける。当接スリーブ(27)及びシリンジ本体(2)は、後退位置から針を覆う延出位置に移動されるシュラウド(18)の方向とは逆の方向に移動される。シリンジ本体(2)に対する、シュラウド(18)の長手方向中心軸(17)に沿った相対的な逆並進運動は、当接スリーブ(31)及び関連する突出スプール(29)が、シュラウド(18)の内面に沿って、突出スプール(29)がリセス(31)に係合する地点へと移動すると、停止する。突出スプール(29)が作動スイッチ(40)と表面接触するのもこの地点である。図面に示した実例では、スイッチは、突出スプールがリセスに入る際に持ち上がってリセス(31)から出て、それにより、スイッチを非アクティブすなわち「オフ」状態からアクティブすなわち「オン」状態へ動かす。「オフ」状態から「オン」状態への作動スイッチの動きは、NFC回路が前にアクセス不可能であった注入終点情報を、前記NFC回路が見ることができる又はアクセス可能なものにする。シリンジ(1)はこの時点で、スマートフォン又はNFCリーダなどのNFC搭載デバイスの近くにもたらされることができ、このデバイスが、終点シグナリング・デバイス(33)内のNFC回路(36)を通電し、この時点でアクセス可能な注入終点情報を含む、NFC回路に記憶されたいかなる情報も、NFCリーダ又はNFC搭載スマートフォン・デバイスに知らせる。
【国際調査報告】