(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】カルボキシル環内酸無水物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 263/44 20060101AFI20231220BHJP
C07D 498/04 20060101ALI20231220BHJP
C07D 317/36 20060101ALI20231220BHJP
C07D 265/06 20060101ALI20231220BHJP
C08G 69/10 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C07D263/44
C07D498/04 101
C07D317/36
C07D265/06
C08G69/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536531
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 CN2021137111
(87)【国際公開番号】W WO2022127704
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】202011486166.0
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507232478
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.5, Yiheyuan Road, Haidian District, Beijing 100871, China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲呂▼ ▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】田 子由
【テーマコード(参考)】
4C072
4J001
【Fターム(参考)】
4C072AA01
4C072BB02
4C072CC01
4C072CC11
4C072EE03
4C072FF03
4C072GG01
4C072GG07
4C072JJ02
4C072JJ05
4C072UU01
4C072UU03
4C072UU08
4J001DA01
4J001DB02
4J001EA33
4J001EA34
4J001EA35
4J001EA36
4J001EA37
4J001FA03
4J001FA05
4J001FB01
4J001FC01
4J001GA05
4J001GA13
(57)【要約】
本発明はカルボキシル環内酸無水物の製造方法及び製造物に関する。式(II)の化合物の製造方法であって、当該方法は式(I)の化合物を環化試薬と反応させて式(II)の化合物及び酸を生成し、かつエポキシ化合物を酸捕捉剤とするステップを含む。本発明は新しいカルボキシル環内酸無水物の合成方法に係り、コストが低く、実験に必要な試薬、場所及び装置への要求が低く、条件が温和であり、基質の適用範囲が広く、官能基耐性が高く、合成経路は一部の溶媒と他の高付加価値の副生成物を回収することができ、廃液排出が少なく、拡大しやすく、極めて高い工業及び学術的価値を有し、ポリアミノ酸、ポリヒドロキシ酸(ポリエステル)、ポリメルカプト酸(ポリチオエステル)等の製品の迅速な大規模生産及び応用を大幅に推進することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)の化合物の製造方法であって、
当該方法は、式(I)の化合物を環化試薬と反応させて式(II)の化合物及び酸を生成し、かつエポキシ化合物を酸捕捉剤とするステップを含み、
【化1】
R
1は-R
4-R
5-R
6であり、R
4はH、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、ヒドロキシ基又はメルカプト基で置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基)、任意に置換されたC
1-6アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニルアミノ基又はアミノカルボニル基、グアニジノ基、任意に置換されたフェニル基(例えば、ヒドロキシ基で置換される)、任意に置換されたベンジル基(例えば、ヒドロキシ基で置換される)、インドール基、イミダゾール基、グアニジノ基又はカルボニルアルコキシ基又はアルコキシカルボニル基であり、
R
5は非存在、オキシ基、セレン基、チオ基、カルボニル基、エステル基、エステルイミノ基又はイミノエステル基、イミノ基、アミノ基、カルボニルアミノ基、カルボニルイミノ基又はイミノカルボニル基、ベンジルエステル基、任意に置換されたフェニル基(例えば、ヒドロキシ基で置換される)、任意に置換されたベンジル基(例えば、ヒドロキシ基で置換される)、インドール基、イミダゾール基、グアニジノ基、カルボニルアルコキシ基又はアルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、チオール基、又はカルボキシル基であり、
R
6は非存在、H、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、ヒドロキシ基、メルカプト基又はハロゲンで置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基)、任意に置換されたC
1-6アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、カルボニルアミノ基、グアニジノ基、任意に置換されたフェニル基(例えば、ヒドロキシ基で置換される)、アミノ保護基、ヒドロキシ保護基又はカルボキシル保護基、任意に置換されたベンジル基(例えば、ヒドロキシ基で置換される)、任意に置換されたフェニルアルキル基、任意に置換されたベンジルアルキル基、インドール基、イミダゾール基、グアニジノ基、カルボニルアルコキシ基又はアルコキシカルボニル基、ベンジルエステル基、ベンジルイミノカルボニルアルキル基、トリフルオロアセチル基、tert-ブトキシカルボニル基又は-[O(CH
2)
m1]
m2-O-R
7であり、
R
7はH、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、ヒドロキシ基又はメルカプト基で置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基)、任意に置換されたC
1-6アルコキシ基、又はイミノアルキル基であり、m1及びm2はそれぞれ独立して1-6の整数であり、
R
2はN、O又はSであり、又はR
1及びR
2はそれらに接続された炭素原子と共に3-7員環を形成し、前記3-7員環はハロゲン、メルカプト基又はヒドロキシ基で任意に置換され、前記3-7員環は例えば、インドール基、イミダゾール基、ピロリジニル基、メルカプトピロリジニル基又はヒドロキシピロリジニル基であり、R
2がO又はSである場合にR
2に接続されたHはヒドロキシ基又はメルカプト保護基で任意に置換され、
R
3は非存在、H、ハロゲン、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、ヒドロキシ基又はメルカプト基で置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基)、任意に置換されたC
2-6直鎖又は分岐鎖アルケニル基又はアルキニル基、C
1-6アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基を表し、そのうちの一つ又は複数の水素原子は任意にハロゲン、酸素又は窒素で置換され、又はR
3はアミノ保護基、例えば、Boc又はCbzである、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は、式(III)の構造を有し、
【化2】
R及びR’はそれぞれ独立してH、ハロゲン、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、任意に置換されたC
2-6直鎖又は分岐鎖アルケニル基又はアルキニル基、アルコキシ基又はシクロアルキル基であり、そのうちの一つ又は複数の水素原子はハロゲン、C
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、酸素又は窒素で任意に置換され、又は、R及びR’のうちの一つはエポキシ基における二つの炭素原子と共に5-7員の環を形成する、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法であって、
エポキシ化合物はエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、ジメチルエチレンオキシド、エポキシシクロヘキサン及びそれらのハロゲンで置換された誘導体、例えば、エピクロロヒドリンから選択される一種又は複数種である、方法。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか一項に記載の製造方法であって、
環化試薬はホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、三塩化リン及び五塩化リンから選択される一種又は複数種である、方法。
【請求項5】
請求項1-4のいずれか一項に記載の製造方法であって、
R
1はH、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、任意に置換されたアリール基又はBnNHCOCH
2CH
2SeCH
2CH
2であり、好ましくは、前記任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基は、直鎖又は分岐鎖のC
1-6アルキル基、C
1-6アルキルヒドロキシ基、C
1-6アルキルメルカプト基、C
1-6アルキルカルボキシル基、C
1-6アルキルアミノ基、C
1-6アルキルカルボニルアミノ基、C
1-6アルキルアリール基、C
1-6アルキル複素環基、C
1-6アルキルグアニジノ基、C
1-6アルキルチオC
1-6アルキル基、C
1-6アルキルオキシC
1-6アルキル基であり、好ましくは、アリール基又は複素環基は任意に置換され、例えば、ヒドロキシ基又はメルカプト基で置換され、好ましくは、前記アミノ基、ヒドロキシ基又はカルボキシル基は保護され、
好ましくは、R
1はH、CH
3、CH(CH
3)
2、CH
2CH(CH
3)
2、CH(CH
3)CH
2CH
3、CH
2-C
6H
5、メチルインドール基、CH
2-C
6H
4-OH、CH
2-COOH、CH
2-CONH
2、(CH
2)
2-COOH、(CH
2)
4-NH
2、(CH
2)
2-CONH
2、(CH
2)
2-S-CH
3、CH
2-OH、CH(CH
3)-OH、CH
2-SH、メチルイミダゾール基、BnCO
2NH(CH
2)
4、BnCO
2(CH
2)
2、CH
2-CH
2-CH
2-CN
3H
4、BnNHCOCH
2CH
2SeCH
2CH
2、CH
3O(CH
2CH
2O)
3COCH
2CH
2、SHC(CH
3)
2、C
6H
5、C(CH
3)
3OCH
3又はトリフルオロアセチルイミノブチル基である、方法。
【請求項6】
請求項1-5のいずれか一項に記載の製造方法であって、
R
2はN又はOであり、好ましくはR
3は非存在、H又はメチル基であり、又はR
1及びR
2はそれらに接続された炭素原子と共にピロリジニル基又はヒドロキシピロリジニル基を形成し、そのうちのイミノ基は任意に保護される、方法。
【請求項7】
請求項1-6のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記式(I)の化合物はアミノ酸又はその誘導体であり、例えば、Boc又はCbzで保護されたアミノ酸であり、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、トリプトファン、セリン、チロシン、システイン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、ε-N-ベンジルオキシカルボニルリジン、グルタミン酸ベンジル、サルコシン、ヒドロキシプロリン、(S)-2-アミノ-4-((3-(ベンジルアミノ)-3-オキシプロピル)セレン)ブタン酸、γ-(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)グルタミン酸、ペニシラミン、L-フェニル乳酸、L-マンデル酸、又はオキシ-tert-ブチル-セリン、又はε-N-トリフルオロアセチル-L-リジンから選択され、かつ前記式(II)の化合物は対応するアミノ酸又はその誘導体のカルボキシル環内酸無水物であり、例えば、N-又はO-カルボキシル環内酸無水物である、方法。
【請求項8】
請求項1-7のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記方法は、大気条件下で行われ、及び/又は前記方法は、室温又は加熱しない条件下で行われる、方法。
【請求項9】
請求項1-8のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記製造方法は、さらに結晶化及び/又はカラムクロマトグラフィーのステップを含む、方法。
【請求項10】
共重合体の形成方法であって、
請求項1-9のいずれか一項に記載の製造方法におけるステップを含み、かつ式(II)の化合物を共重合体に形成するステップをさらに含み、好ましくは、前記共重合体はポリアミノ酸-N-カルボキシル内酸無水物である、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
R
1はカルボキシル基を含む基であり、例えば、COOHCH
2CH
2-であり、例えば、式(I)の化合物はグルタミン酸であり、前記共重合体は好ましくはポリL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物である、方法。
【請求項12】
式(V)の化合物の製造方法であって、
前記方法は、式(IV)の化合物を環化試薬と反応させて、式(V)の化合物及び酸を生成し、かつエポキシ化合物を酸捕捉剤とするステップを含み、
【化3】
【化4】
そのなかで、RはN、O又はSであり、R
1は非存在、H、ハロゲン、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、任意に置換されたC
2-6直鎖又は分岐鎖アルケニル基又はアルキニル基、C
1-6アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基を表し、例えば、ベンジル基であり、そのうちの一つ又は複数の水素原子はハロゲン、酸素又は窒素で任意に置換され、又はR
1はBoc又はCbzであり、R
2はH、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、ヒドロキシ基又はメルカプト基で置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基)又は任意に置換されたC
1-6アルコキシ基又は任意に置換されたアリール基であり、例えば、ハロゲン又はC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基で置換されたフェニル基、例えば、メチルフェニル基、又はカルボニルオキシアルキル基、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基であり、RがO又はSである場合にRに接続されたHはヒドロキシ基又はメルカプト保護基で任意に置換された、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法であって、
酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は式(III)の構造を有し、
【化5】
そのなかで、R及びR’はそれぞれ独立してH、ハロゲン、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、任意に置換されたC
2-6直鎖又は分岐鎖アルケニル基又はアルキニル基、アルコキシ基又はシクロアルキル基であり、そのうちの一つ又は複数の水素原子はハロゲン、C
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、酸素又は窒素で任意に置換され、又は、R及びR’のうちの一つはエポキシ基における二つの炭素原子と共に5-7員の環を形成する、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の製造方法であって、
エポキシ化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、ジメチルエチレンオキシド、エポキシシクロヘキサン及びそれらのハロゲンで置換された誘導体、例えば、エピクロロヒドリンから選択される一種又は複数種であり、
好ましくは、環化試薬はホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、三塩化リン及び五塩化リンから選択される一種又は複数種であり、
好ましくは、前記方法は大気条件下で行われ、及び/又は前記方法は室温又は加熱しない条件下で行われ、
好ましくは、前記製造方法はさらに結晶化及び/又はカラムクロマトグラフィーのステップを含む、方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の製造方法であって、
式(IV)の化合物は、
【化6】
β-アラニン、3-アミノ-3-(4-メチルフェニル)プロピオン酸又は3-アミノ-3-(4-クロロフェニル)プロピオン酸であり、かつ、式(V)の化合物は、
【化7】
β-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物、3-アミノ-3-(4-クロロフェニル)プロピオン酸-N-カルボキシル内酸無水物又は3-アミノ-3-(4-メチルフェニル)プロピオン酸-N-カルボキシル内酸無水物である、方法。
【請求項16】
共重合体の形成方法であって、
請求項12-15のいずれか一項に記載の製造方法におけるステップを含み、かつ式(V)の化合物を共重合体に形成するステップをさらに含む、方法。
【請求項17】
ポリマーの合成方法であって、
請求項1-9のいずれか一項に記載の方法を用いて式(II)の化合物を製造し、及び/又は請求項12-15のいずれか一項に記載の方法を用いて式(V)の化合物を製造し、かつ一種又は複数種の同一又は異なる式(II)の化合物及び/又は一種又は複数種の同一又は異なる式(V)の化合物を重合してポリマーを形成することを含み、好ましくは、ポリマーはポリアミノ酸である、方法。
【請求項18】
L-アラニン-L-グルタミン酸-L-リジン-L-チロシンポリペプチド重合体の製造方法であって、
L-アラニン、L-グルタミン酸誘導体、L-リジン誘導体又はL-チロシンを環化試薬と反応させて対応するアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物及び酸を生成することを含み、
一種又は複数種の対応するアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物の製造過程においてエポキシ化合物を酸捕捉剤として使用し、次に対応するアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物を重合してL-アラニン-L-グルタミン酸-L-リジン-L-チロシンポリペプチド重合体を形成し、好ましくは、環化試薬はホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、三塩化リン及び五塩化リンから選択される一種又は複数種であり、好ましくは、エポキシ化合物は請求項2又は3に定義されるエポキシ化合物であり、好ましくは、L-グルタミン酸誘導体はL-グルタミン酸ベンジルであり、及び/又はL-リジン誘導体はNε-トリフルオロアセチル-L-リジンである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物の製造方法に関し、具体的にはカルボキシル環内酸無水物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミノ酸(ポリポリペプチド高分子、合成ポリポリペプチドなどとも呼ばれる)は、重要な生体高分子であり、薬物としてもよく、薬物製剤としてもよく、高級生体材料、化粧品、不斉触媒などの多くの高付加価値分野に重要な用途があり、市場潜在力が巨大である。例えば、ポリリジンは細胞培養、抗菌材料、遺伝子トランスフェクション材料に用いることができる。ポリグルタミン酸とアスパラギン酸は薬物製剤と担体、医療用材料に用いることができ、ポリグルタミン酸とポリアスパラギン酸に基づく複数のナノ薬物が米国、日本、及び中国で臨床試験段階に入る。ポリバリンとポリロイシンは、不斉Julia-Colonnaエポキシ化反応の触媒として工業的に使用されている。ポリサルコシンは医薬製剤と担体に用いることができる。酢酸グラチラマーはポリアミノ酸であり、L-アラニン-L-グルタミン酸-L-リジン-L-チロシンポリペプチドポリマー酢酸塩(4種のNCAを重合して製造される)であり、売り上げは2012年に40億ドルに達し、長年に全世界のTOP20の売れ行きの薬である。
【0003】
ポリアミノ酸は、主にアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物(以下NCAと略記する)の開環重合により製造され、NCAは一般的に対応するアミノ酸(又はその誘導体)の環化合成により製造される(
図1)。1906年LeuchがNCAを発見して以来、既に100年以上の歴史があり、使用された環化試薬は、塩化チオニル、ホスゲン、トリホスゲン(Triphosgene)、PCl
3、PCl
5等を経て、現在トリホスゲンが最も一般的である(Kricheldorf,H.R.,Polypeptides and 100 years of chemistry of alpha-amino acid N-carboxyanhydrides.Angew.Chem.,Int.Ed.2006,45(35),5752-5784)。しかしながら、どのような環化試薬を使用しても、現在工業と実験室はNCAを合成する時にいずれも厳しい無水条件を必要とし、無水テトラヒドロフラン(以下にTHFと略称する)のような高価な無水溶媒を使用することを含み、反応過程において乾燥した窒素ガスで保護し、密閉された試薬ボトルで50-60度まで加熱し、反応して大量の高濃度塩酸を含有する廃液を生成し、装置を腐食すると同時に廃液処理の難しさを増加させる。さらに深刻なのは、NCAの後処理が非常に複雑で操作しにくく、少しでも不注意があれば、収量のないリスクに直面することがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kricheldorf,H.R.,Polypeptides and 100 years of chemistry of alpha-amino acid N-carboxyanhydrides.Angew.Chem.,Int.Ed.2006,45(35),5752-5784
【非特許文献2】Kramer,J.R.;Deming,T.J.,General Method for Purification of alpha-Amino acid-N-carboxyanhydrides Using Flash Chromatography.Biomacromolecules2010,11(12),3668-3672
【非特許文献3】Gkikas,M.;Avery,R.K.;Olsen,B.D.,Thermoresponsive and Mechanical Properties of Poly(L-proline)Gels.Biomacromolecules 2016,17(2),399-406
【非特許文献3】Fabrice Cornille,B.S.Y.;Jean-Luc Copier,A.;Jean-Pierre Senet,B.;Yves Robin,V.L.P.PROCESS FOR THE PREPARATION OF N-CARBOXYANHYDRIDES.US 6,479,665 B2,2002
【非特許文献4】Smeets,N.M.B.;van der Weide,P.L.J.;Meuldijk,J.;Vekemans,J.A.J.M.;Hulshof,L.A.,A Scalable Synthesis ofl-Leucine-N-carboxyanhydride.Org.Process Res.Dev.2005,9(6),757-763
【非特許文献5】Biomacromolecules 2011,12,6,2396-2406;J.Org.Chem.1965,30,4,1158-1161
【非特許文献6】J.Am.Chem.Soc.1941,63,3,860-862
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本分野では、従来の方法の欠陥を克服できるカルボキシル環内酸無水物、特にアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物の製造方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、長期の作業において従来のアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物(NCA)の合成は、無水溶媒を使用してグローブボックスで繰り返し再結晶する必要があり、結晶化できないNCAに対して、無水溶媒を使用してグローブボックスでシリカゲルカラムにより分離する必要がある(Kramer,J.R.;Deming,T.J.,General Method for Purification of alpha-Amino acid-N-carboxyanhydrides Using Flash Chromatography.Biomacromolecules2010,11(12),3668-3672)。NCA重合は、モノマーの純度に対する要求が高いため、一部のNCAに対して常に前記分離ステップを複数回繰り返す必要がある。また、従来の合成方法は、ヒドロキシ基及びメルカプト基などのような側鎖官能基を一般的に保護する必要があり、重合が完了した後に脱保護のステップを増加させてこれらの官能基を放出する必要があり、合成のステップ及びコストを増加させる。以上の様々な制限のため、NCAの工業化製造のコストが高く、これはさらに下流製品のポリアミノ酸が非常に高価であることをもたらし、その大規模な製造及び多くの応用の展開を制限する。窒素ガスの保護を必要とせず、一般的な溶媒を使用し、グローブボックスの外部で高い収率で側鎖保護を必要としないNCAを精製分離すれば、必然的にポリアミノ酸の合成難度とコスト価格を大幅に低減することができ、さらにポリアミノ酸をより大規模でより広く使用するように推進する。本発明者らは、従来の技術におけるこれらの欠陥に対して、カルボキシル環内酸無水物、特にアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物を製造する方法を提供し、当該方法はエポキシ化合物をNCA合成過程における塩酸捕捉剤として使用する。より重要なことは、新たな方法によりいくつかの従来の合成が極めて困難であるか又は得られないモノマーが安価で入手しやすくなり、それによりいくつかの新規なポリアミノ酸及びそのタンパク質コンジュゲートの簡便及び制御可能な合成をさらに促進し、タンパク質薬物、生物材料の分野に広範な応用の将来性を示す。
【0007】
また、本発明の方法は、アミノ酸を環化してアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物(NCA)を生成するために用いられるだけでなく、アミノ酸誘導体を環化してカルボキシル環内酸無水物を生成するために用いられてもよく、下式に示すように、
【化1】
この中で、X=NH、O又はSであり、対応する生成物はNCA、OCA及びSCAである。
R’はH、Boc又はCbzであってもよい。
【0008】
一態様では、本発明は製造方法を提供し、当該製造方法はアミノ酸、ヒドロキシ酸、メルカプト酸又はそれらのうちのいくつかの官能基(例えば、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシ基又はカルボキシル基、例えば、α-アミノ基又はε-アミノ基)が保護された誘導体を環化試薬と反応させてN-、O-又はS-カルボキシル環内酸無水物及び酸を生成し、かつエポキシ化合物を酸捕捉剤とするステップを含み、条件は前記アミノ酸、ヒドロキシ酸又はメルカプト酸又はそれらの誘導体が対応するカルボキシル環内酸無水物を形成することができることである。
【0009】
一態様では、本発明は式(II)の化合物の製造方法を提供し、当該方法は、式(I)の化合物を環化試薬と反応させて式(II)の化合物及び酸を生成し、かつエポキシ化合物を酸捕捉剤とするステップを含み、
【化2】
R
1は-R
4-R
5-R
6であり、R
4はH、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、ヒドロキシ基又はメルカプト基で置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基)、任意に置換されたC
1-6アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニルアミノ基(-CO-NH
2)、グアニジノ基、任意に置換されたフェニル基(例えば、ヒドロキシ基又はアルキル基で置換される)、任意に置換されたベンジル基(例えば、ヒドロキシ基又はアルキル基で置換される)、インドール基、イミダゾール基、グアニジノ基又はカルボニルアルコキシ基であり、
R
5は非存在、オキシ基(-O-)、セレン基(-Se-)、チオ基(-S-)、カルボニル基(-CO-)、エステル基(カルボニルオキシ基、-COO-)、エステルイミノ基(-COO-NH-)(又はオキシカルボニルイミノ基)、イミノ基、アミノ基、カルボニルアミノ基(-CO-NH
2)、カルボニルイミノ基(-CO-NH-)、ベンジルエステル基(BnCOO-)、任意に置換されたフェニル基(例えば、ヒドロキシ基で置換される)、任意に置換されたベンジル基(例えば、ヒドロキシ基で置換される)、インドール基、イミダゾール基、グアニジノ基、カルボニルアルコキシ基、又はカルボキシル基であり、
R
6は非存在、H、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、ヒドロキシ基又はメルカプト基で置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基)、任意に置換されたC
1-6アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、アミノ基、カルボニルアミノ基、グアニジノ基、任意に置換されたフェニル基(例えば、ヒドロキシ基で置換される)、アミノ保護基、ヒドロキシ保護基又はカルボキシ保護基、任意に置換されたベンジル基(例えば、ヒドロキシ基で置換される)、任意に置換されたフェニルアルキル基、任意に置換されたベンジルアルキル基、インドール基、イミダゾール基、グアニジノ基、カルボニルアルコキシ基、ベンジルエステル基、ベンジルイミノカルボニルアルキル基又は-[O(CH
2)
m1]
m2-R
7であり、
R
7はH、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、ヒドロキシ基又はメルカプト基で置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基である)、任意に置換されたC
1-6アルコキシ基、カルボニルアルキル基又はイミノアルキル基であり、m1又はm2はそれぞれ独立して1-6の整数であり、
R
2はN、O又はSであり、又はR
1及びR
2はそれらに接続された炭素原子と共に3-7員環を形成し、前記3-7員環はハロゲン、メルカプト基又はヒドロキシ基で任意に置換され、前記3-7員環は例えば、インドール基、イミダゾール基、ピロリジニル基、メルカプトピロリジニル基又はヒドロキシピロリジニル基であり、R
2がO又はSである場合にR
2に接続されたHはヒドロキシ基又はメルカプト保護基で任意に置換され、
R
3は非存在、H、ハロゲン、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、ヒドロキシ基又はメルカプト基で置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基)、任意に置換されたC
2-6直鎖又は分岐鎖アルケニル基又はアルキニル基、C
1-6アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基を表し、そのうちの一つ又は複数の水素原子は任意にハロゲン、酸素又は窒素で置換され、又はR
3はBoc又はCbzである。
【0010】
一実施形態では、酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は式(III)の構造を有し、
【化3】
R及びR’はそれぞれ独立してH、ハロゲン、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、任意に置換されたC
2-6直鎖又は分岐鎖アルケニル基又はアルキニル基、アルコキシ基又はシクロアルキル基であり、そのうちの一つ又は複数の水素原子はハロゲン、C
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、酸素又は窒素で任意に置換され、又は、R及びR’のうちの一つはエポキシ基における二つの炭素原子と共に5-7員の環を形成する。
【0011】
一実施形態では、エポキシ化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、ジメチルエチレンオキシド、エポキシシクロヘキサン及びそれらのハロゲンで置換された誘導体、例えば、エピクロロヒドリンから選択される一種又は複数種である。
【0012】
一実施形態では、環化試薬は、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、三塩化リン及び五塩化リンから選択される一種又は複数種である。
【0013】
一実施形態では、R1はH、任意に置換されたC1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、任意に置換されたアリール基又はBnNHCOCH2CH2SeCH2CH2であり、好ましくは、前記任意に置換されたC1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基は、直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基、C1-6アルキルヒドロキシ基、C1-6アルキルメルカプト基、C1-6アルキルカルボキシル基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基、C1-6アルキルアリール基、C1-6アルキル複素環基、C1-6アルキルグアニジノ基、C1-6アルキルチオC1-6アルキル基、C1-6アルキルオキシC1-6アルキル基である。好ましくは、アリール基又は複素環基は任意に置換され、例えば、ヒドロキシ基又はメルカプト基で置換される。好ましくは、アミノ基、ヒドロキシ基又はカルボキシル基は保護される。
【0014】
一実施形態では、R1はH、CH3、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、CH(CH3)CH2CH3、CH2-C6H5、メチルインドール基(例えば、3-メチルインドール基)、CH2-C6H4-OH、CH2-COOH、CH2-CONH2、(CH2)2-COOH、(CH2)4-NH2、(CH2)2-CONH2、(CH2)2-S-CH3、CH2-OH、CH(CH3)-OH、CH2-SH、メチルイミダゾール基、BnCO2NH(CH2)4、BnCO2(CH2)2、CH2-CH2-CH2-CN3H4、BnNHCOCH2CH2SeCH2CH2、CH3O(CH2CH2O)3COCH2CH2、SHC(CH3)2、C6H5、C(CH3)3OCH3又はトリフルオロアセチルイミノブチル基である。これらの官能基は任意に置換されてもよく、例えば、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、アリール基で置換される。一実施形態では、R1上のアミノ基、ヒドロキシ基又はカルボキシル基は保護されてもよい。これらの官能基の保護基の選択及び保護方法は当業者に知られている。
【0015】
一実施形態では、R2はN又はOである。一実施形態では、R3は非存在、H又はメチル基である。一実施形態では、R1及びR2はそれらに接続された炭素原子と共にピロリジニル基又はヒドロキシピロリジニル基を形成し、任意にそのうちのイミノ基が保護される。当業者は、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基又はメルカプト基等が保護されてもよいことを理解すべきである。これらの官能基の保護基の選択及び保護方法は当業者に知られている。例えば、N-tert-ブトキシカルボニルグリシン、N-tert-ブトキシカルボニルサルコシン又はL-N-tert-ブトキシカルボニルプロリンを使用することができる。
【0016】
一実施形態では、式(I)の化合物はアミノ酸又はその誘導体であり、例えば、Boc又はCbzで保護されたアミノ酸であり、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、トリプトファン、セリン、チロシン、システイン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、ε-N-ベンジルオキシカルボニルリジン、グルタミン酸ベンジル、サルコシン、ヒドロキシプロリン、(S)-2-アミノ-4-((3-(ベンジルアミノ)-3-オキシプロピル)セレン)ブタン酸、γ-(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)グルタミン酸、ペニシラミン、L-フェニル乳酸、L-マンデル酸、又はオキシ-tert-ブチル-セリン、又はε-N-トリフルオロアセチル-L-リジンから選択される。前記式(II)の化合物は対応するカルボキシル環内酸無水物、例えば、N-又はO-カルボキシル環内酸無水物であってもよい。一実施形態では、あるアミノ酸、例えば、リジン又はグルタミン酸の側鎖上のアミノ基又はヒドロキシ基は保護される必要があり、例えば、ε-N-トリフルオロアセチル-L-リジン、ε-N-ベンジルオキシカルボニルリジン、グルタミン酸ベンジル又はγ-(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)グルタミン酸である。
【0017】
一実施形態では、前記方法は大気条件下で行われる。
別の実施形態では、前記方法は室温又は加熱しない条件下で行われる。
【0018】
一実施形態では、製造方法はさらに結晶化及び/又はカラムクロマトグラフィーのステップを含む。
【0019】
別の態様では、本発明は共重合体を形成する方法を提供し、当該方法は式(II)の化合物を形成するステップ及び共重合体を形成するステップを含むことができる。好ましくは、R
1はカルボキシル基を含む基であり、例えば、COOHCH
2CH
2である。例えば、式(I)の化合物はグルタミン酸であり、式(II)の化合物はL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物である。好ましくは、前記共重合体はポリL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物である。
前記共重合体は以下の式で表され、
【化4】
nは2以上の整数であり、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80又は90である。例えば、共重合体は、
【化5】
であり、nが20である。
【0020】
別の態様では、本発明は式(V)の化合物の製造方法を提供し、当該方法は、式(IV)の化合物を環化試薬と反応させて式(V)の化合物及び酸を生成し、かつエポキシ化合物を酸捕捉剤とするステップを含み、
【化6】
【化7】
RはN、O又はSであり、R
1は非存在、H、ハロゲン、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、任意に置換されたC
2-6直鎖又は分岐鎖アルケニル基又はアルキニル基、C
1-6アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基を表し、そのうちの一つ又は複数の水素原子はハロゲン、酸素又は窒素で任意に置換され、又はR
1はBoc又はCbzであり、R
2はH、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、ヒドロキシ基又はメルカプト基で置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基)又は任意に置換されたC
1-6アルコキシ基又はカルボニルオキシアルキル基、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基であり、RがO又はSである場合にRに接続されたHはヒドロキシ基又はメルカプト保護基で任意に置換された。
【0021】
一実施形態では、酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は式(III)の構造を有し、
【化8】
R及びR’はそれぞれ独立してH、ハロゲン、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、任意に置換されたC
2-6直鎖又は分岐鎖アルケニル基又はアルキニル基、アルコキシ基又はシクロアルキル基であり、そのうちの一つ又は複数の水素原子はハロゲン、C
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、酸素又は窒素で任意に置換され、又は、R及びR’のうちの一つはエポキシ基における二つの炭素原子と共に5-7員の環を形成する。
【0022】
一実施形態では、エポキシ化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、ジメチルエチレンオキシド、エポキシシクロヘキサン及びそれらのハロゲンで置換された誘導体、例えば、エピクロロヒドリンから選択される一種又は複数種である。
【0023】
一実施形態では、環化試薬は、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、三塩化リン及び五塩化リンから選択される一種又は複数種である。
【0024】
一実施形態では、前記方法は大気条件下で行われ、及び/又は前記方法は室温又は加熱しない条件下で行われる。
【0025】
一実施形態では、前記製造方法はさらに結晶化及び/又はカラムクロマトグラフィーのステップを含む。
【0026】
一実施形態では、式(IV)の化合物は、
【化9】
、β-アラニン、3-アミノ-3-(4-メチルフェニル)プロピオン酸、又は3-アミノ-3-(4-クロロフェニル)プロピオン酸であり、かつ、式(V)の化合物は、
【化10】
、β-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物、3-アミノ-3-(4-クロロフェニル)プロピオン酸-N-カルボキシル内酸無水物又は3-アミノ-3-(4-メチルフェニル)プロピオン酸-N-カルボキシル内酸無水物である。
【0027】
別の態様では、本発明は共重合体を形成する方法を提供し、当該方法は式(V)の化合物を形成するステップ及び共重合体を形成するステップを含むことができる。
【0028】
一実施形態では、共重合体は、
【化11】
であり、nが2以上の整数であり、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80又は90である。例えば、共重合体はポリアミノ酸-N-カルボキシル内酸無水物である。例えば、共重合体は、
【化12】
であり、nが50である。
上記重合ステップは、反応原料にN,N-ジメチルアシルとベンジルアミン開始剤を添加するステップを含むことができ、例えば、N,N-ジメチルアシルとベンジルアミン開始剤と式(II)又は(V)の化合物を混合する。
上記式(I)及び式(IV)の化合物は、実施例における全ての開始アミノ酸又はアミノ酸誘導体を含むことができる。上記式(II)及び式(V)の化合物は、実施例における全ての反応生成物、すなわちN-又はO-カルボキシル内酸無水物、特にアミノ酸-N-カルボキシル内酸無水物を含むことができる。
【0029】
別の態様では、本発明は、本発明の製造方法により製造された化合物を提供する。
【0030】
一実施形態では、式(II)の化合物は以下の構造の一つを有し、
【化13】
。
【0031】
別の態様では、本発明は、本明細書で製造されたアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物のポリアミノ酸の製造における用途を提供する。本明細書で製造されたカルボキシル環内酸無水物、例えば、アミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物において、エポキシ化合物を酸捕捉剤として使用することができる。
【0032】
本発明はさらにアミノ酸又はその誘導体のカルボキシル環内酸無水物の製造方法を提供し、前記方法はアミノ酸又はその誘導体を環化試薬と反応させてアミノ酸又はその誘導体のカルボキシル環内酸無水物及び酸を生成し、かつエポキシ化合物を酸捕捉剤とするステップを含む。一実施形態では、前記アミノ酸又はその誘導体は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、トリプトファン、セリン、チロシン、システイン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、ε-N-ベンジルオキシカルボニルリジン、グルタミン酸ベンジル、サルコシン、ヒドロキシプロリン、(S)-2-アミノ-4-((3-(ベンジルアミノ)-3-オキシプロピル)セレン)ブタン酸、ペニシラミン、L-フェニル乳酸、L-マンデル酸、又はオキシ-tert-ブチル-セリン、又はL-アスパラギン酸-1-メチルエステル又は、
【化14】
誘導体は上記20種の天然アミノ酸の対応するBoc又はCbzで保護されたアミノ酸であってもよい。本発明の方法は、アミノ酸、ヒドロキシ酸又はメルカプト酸及びそれらのいくつかの官能基、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基又はカルボキシル基、例えば、α-アミノ基又はε-アミノ基が保護された誘導体に適用され、それらが対応するカルボキシル環内酸無水物、例えば、N-、S-又はO-カルボキシル環内酸無水物を形成することができればよい。当業者であれば、これらの保護が必要であるか否か及びこれらの官能基を保護する基及び方法を容易に決定することができる。
本発明は、さらに上記アミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物をポリアミノ酸に形成する方法又はステップを含むことができる。
【0033】
本発明において、エポキシ化合物は環化試薬を添加する前に添加することができる。本発明の方法は、さらに保護基、例えば、Boc又はCbzを除去するステップを含むことができる。
【0034】
本発明は、さらにポリマーを合成する方法を提供し、当該方法は上記方法を用いて式(II)の化合物を製造し及び/又は上記方法を用いて(V)の化合物を製造し、かつ一種又は複数種の同一又は異なる式(II)の化合物及び/又は一種又は複数種の同一又は異なる式(V)の化合物を重合してポリマーを形成することを含む。好ましくは、ポリマーはポリアミノ酸である。例えば、重合度は4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80又は90である。
【0035】
本発明は、さらにL-アラニン-L-グルタミン酸-L-リジン-L-チロシンポリペプチド重合体の製造方法を提供し、当該製造方法はL-アラニン、L-グルタミン酸誘導体、L-リジン誘導体又はL-チロシンを環化試薬と反応させて対応するアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物及び酸を生成することを含み、一種又は複数種の対応するアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物の製造過程においてエポキシ化合物を酸捕捉剤として使用し、次に対応するアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物を重合してL-アラニン-L-グルタミン酸-L-リジン-L-チロシンポリペプチド重合体を形成する。好ましくは、環化試薬は、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、三塩化リン及び五塩化リンから選択される一種又は複数種である。好ましくは、エポキシ化合物は上記に定義されたエポキシ化合物である。好ましくは、上記誘導体は、カルボキシル基又はアミノ基で保護されたアミノ酸である。例えば、L-グルタミン酸誘導体は、L-グルタミン酸ベンジルであり、及び/又はL-リジン誘導体は、Nε-トリフルオロアセチル-L-リジンである。
【発明の効果】
【0036】
本発明の方法は、以下の利点を有する:
1.他の酸捕捉剤に対して、エポキシ化合物と塩酸はTHFでの反応速度が非常に速く、室温でほぼ瞬間的に完了し、完全に酸を除去するだけでなく、塩素イオンを除去することができる。
2.エポキシ化合物の価格は、ピネン及びリモネン等の価格より低く、コストが低い。
3.エポキシ化合物と塩酸で生成された生成物である1-クロロ-2-プロパノール又は2-クロロ-1-プロパノールを容易に分離精製し、化学工業原料として販売することができる。以上の特徴は、当該方法が安価でかつゼロに近く排出することができ、環境汚染が小さく、さらにいくつかの高付加価値の副生成物を創造することができることを決定する。
4.合成自体であっても後続の再結晶/カラムクロマトグラフィーであっても、無水溶媒とグローブボックスを完全に排除することができ、全ての過程で安価な分析純度の溶媒を用いて通常の実験環境で高収率で高純度NCAモノマーを得ることができる。
5.加熱する必要がなく、窒素ガス保護を必要とせず、速度が一般的な方法より速い。
6.普遍性及び官能基との相容性が高く、いくつかの一般的な方法で取得できないか又は合成しにくいモノマーに対して、本方法はいずれもうまく製造でき、かつ明瞭な特徴づけ証明を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】従来のNCA合成方法、及びその重合でポリアミノ酸を製造する。
【
図2】ポリL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物のSEC特徴付け。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書に記載のように、“アミノ酸”は構造H2N-Rx-COOHを有する化合物を指すことができ、Rxは有機基であり、かつNH2はRxと任意に組み合わせることができる(例えば、プロリンの場合)。アミノ酸誘導体とは、アミノ酸の原子を置換した化合物である。アミノ酸は、任意の既知のアミノ酸を含み、αアミノ酸、βアミノ酸、γアミノ酸、δアミノ酸等を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、当該用語は、α又はβアミノ酸を指すことができる。本明細書において、アミノ酸は20種の天然アミノ酸であってもよく、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、トリプトファン、セリン、チロシン、システイン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン又はヒスチジンである。又は、アミノ酸誘導体とは、アミノ酸の原子が置換された化合物、例えば、ε-N-ベンジルオキシカルボニルリジン、グルタミン酸ベンジル、サルコシン、ヒドロキシプロリン、(S)-2-アミノ-4-((3-(ベンジルアミノ)-3-オキシプロピル)セレン)ブタン酸、γ-(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)グルタミン酸、ペニシラミン、フェニル乳酸、マンデル酸、又はオキシ-tert-ブチル-セリン、或いはBoc又はCbzなどの保護基で保護されたアミノ酸、例えば、Boc又はCbzで保護された天然に存在するアミノ酸であってもよい。保護基による保護は、α-アミノ酸、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基に対する保護であってもよく、側鎖上の対応する官能基に対する保護であってもよく、又は両者の保護であってもよい。上記のアミノ酸は、L-アミノ酸又はD-アミノ酸であってもよい。一実施形態では、R1は、H、CH3、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、CH(CH3)CH2CH3、CH2-C6H5、インドール基(C8NH6)、CH2-C6H4-OH、CH2-COOH、CH2-CONH2、(CH2)2-COOH、(CH2)4-NH2、(CH2)2-CONH2、(CH2)2-S-CH3、CH2-OH、CH(CH3)-OH、CH2-SH、-C3H6、イミダゾール基またはグアニジノ基である。
【0039】
本明細書に記載のように、“エポキシ化合物”は、3員環式エーテル構造を有する化合物である。例えば、エポキシ化合物は、式(III)に示す構造を有することができる:
【化15】
ここで、R及びR’はそれぞれ独立してH、ハロゲン、任意に置換されたC
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、任意に置換されたC
2-6直鎖又は分岐鎖アルケニル基又はアルキニル基、アルコキシ基又はシクロアルキル基であり、一つ又は複数の水素原子はハロゲン、C
1-6直鎖又は分岐鎖アルキル基、酸素又は窒素で任意に置換され、又は、R及びR’のうちの一つはエポキシ基中の二つの炭素原子と共に5-7員の環を形成する。具体的には、エポキシ化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、ジメチルエチレンオキシド、シクロヘキシルエポキシ及びそれらのハロゲンで置換された誘導体であってもよく、例えば、塩素化、臭素化又はフッ素化のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、ジメチルエチレンオキシド又はシクロヘキシルエポキシである。
【0040】
本明細書に記載のように、“環化試薬”は、本明細書に示されるアミノ酸又はその誘導体(例えば、本明細書に示される式Iに示される)の環化を触媒してカルボキシル環内酸無水物を生成する試薬を指す。例えば、環化試薬は、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、三塩化リン及び五塩化リンから選択することができる。
【0041】
本明細書に記載のように、“ハロゲン”は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を指す。いくつかの実施形態では、ハロゲンは塩素原子であってもよい。
【0042】
本明細書に記載のように、“アルキル基”は、1-30個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素を指し、それは任意に置換されてもよく、本明細書にさらに説明されるように、様々な置換度を許可する。本明細書に記載のように、“アルキル基”は、メチル基、エチル基、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル及び2-エチルヘキシルを含むがこれらに限定されない。いくつかの場合、アルキル基のうちの一つ又は複数の炭素原子はヘテロ原子で置換されてもよく、かつそれぞれ“ヘテロアルキル基”と呼ばれる。非限定的な例は、アルコキシ基を含み、それはアルキル基における炭素原子が酸素で置換された基を指す。アルキル基は、炭素数1-6のアルキル基であってもよい。“C1-6アルキル基”は、1-6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル及びn-ヘキシルを含むがこれらに限定されない。“C1-6アルコキシ基”は、C1-6アルキルのうちの一つ又は複数の炭素原子が酸素で置換された基を表し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基又はヘキシルオキシ基である。「アルキル」又は「アルコキシ」は、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アリール基等で任意に置換されてもよい。アルコキシ基とは、C1-6アルコキシ基を指してもよい。
【0043】
本明細書に記載のように、“アルケニル基”は、2-30個の炭素原子を有しかつ一つ又は複数の炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖非芳香族炭化水素を指し、それは任意に置換されてもよく、本明細書にさらに説明されるように、様々な置換度を許可する。本明細書に記載のように、“アルケニル基”は、ビニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル及び3-ブテニルを含むがこれらに限定されない。いくつかの場合、アルケニル基又はアルケニレン基における一つ又は複数の炭素原子はヘテロ原子(例えば、実行可能な場合に窒素、酸素又は硫黄から選択される)で置換されてもよく、かつそれぞれ“ヘテロアルケニル基”と呼ばれる。「アルケニル基」は、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、アリール基等で任意に置換された。
【0044】
本明細書に記載のように、アリール基は、フェニル基、ビフェニル基又はナフチル基のアリール基であってもよく、モノ、ビス又はトリで置換されてもよく、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルキル基、メチル基、メルカプト基、カルボキシル基等で置換される。アリール基から誘導された置換基は、アリール基と同様に置換されてもよく、例えば、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基又はアロイル基である。
【0045】
本明細書に記載のように、ヘテロアリール基は、芳香族単環式又は二環式のヘテロシクリル基であってもよく、これらのヘテロシクリル基はそれぞれ5-7個又は8-12個の環原子を含有し、1-2個の環原子は硫黄原子又は酸素原子であるか又は1-4個の環原子は窒素原子であり、それは例えば、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、フリル基、ピラニル基、ピラニル基、ベンゾフリル基、ピロリル基、イミダゾール基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジン基、ピリダジニル基、インダゾール基、イソインドール基、インドール基、プリン基、キノリル基、イソキノリル基、2,3-ジアザナフチル基、1、5-ジアザナフチル基、キノキサリン基、キナゾリン基、シンノリン基、プテリジン基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、チアゾリル基又はイソチアゾリル基であると理解することができる。ヘテロアリール基は、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、アリール基等で任意に置換された。
【0046】
本明細書に記載のように、“置換”は、指定された一つ又は複数の置換基で、指定されたモチーフの一つ又は複数の水素原子を置換することを指し、特に説明しない限り、様々な置換度を許可し、条件は置換して安定的又は化学的に実行可能な化合物を生成することである。「任意に置換された」とは、基が置換されていても置換されていなくてもよいことを意味する。置換は、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、アリール基による置換であってもよい。
【0047】
本発明の方法
発明者らは、NCA合成において高濃度の塩酸を生成し、例えば、合成及び精製過程において水が存在すると、塩酸がNCAの分解又は重合を触媒し、それにより合成失敗をもたらすことを発見した。当該原因に基づいて、従来の文献及び特許は、合成過程において有機アミン(例えば、トリエチルアミン)(Gkikas,M.;Avery,R.K.;Olsen,B.D.,Thermoresponsive and Mechanical Properties of Poly(L-proline)Gels.Biomacromolecules 2016,17(2),399-406)、ピネン(Fabrice Cornille,B.S.Y.;Jean-Luc Copier,A.;Jean-Pierre Senet,B.;Yves Robin,V.L.P.PROCESS FOR THE PREPARATION OF N-CARBOXYANHYDRIDES.US 6,479,665 B2,2002)、リモネン(Smeets,N.M.B.;van der Weide,P.L.J.;Meuldijk,J.;Vekemans,J.A.J.M.;Hulshof,L.A.,A Scalable Synthesis ofl-Leucine-N-carboxyanhydride.Org.Process Res.Dev.2005,9(6),757-763)を酸捕捉剤として添加すること等の方法が挙げられる。しかしながら、発明者らは、アミンが塩基であるため、過剰量であればNCA重合を引き起こし、不足量であれば塩酸の副作用を完全に除去することに不十分であるため、実際の操作においてその添加当量を把握しにくく、かつトリエチルアミンと塩酸により生成された塩化トリエチルアンモニウム塩の副生成物は水及び有機溶媒においていずれも高い溶解性を有し、除去しにくい、かつトリエチルアミンは求核性を有する塩素イオンを除去することができず、依然としてNCA分解が誘発されることがあり、効果が理想的ではない(Biomacromolecules 2011,12,6,2396-2406;J.Org.Chem.1965,30,4,1158-1161)。ピネンと塩酸は、テトラヒドロフラン(NCA合成の最も一般的な溶媒)で反応が遅く(J.Am.Chem.Soc.1941,63,3,860-862)、合成過程において生成された塩酸をタイムリーで効果的に除去することができないため、依然として無水溶媒と窒素ガスで保護する必要がある。同時にピネンとクエン酸の価格も高く、工業生産のコストを増加させる(Smeets,N.M.B.;van der Weide,P.L.J.;Meuldijk,J.;Vekemans,J.A.J.M.;Hulshof,L.A.,A Scalable Synthesis ofl-Leucine-N-carboxyanhydride.Org.Process Res.Dev.2005,9(6),757-763)。
【0048】
長期的に研究した後、発明者は、エポキシ化合物、例えば、プロピレンオキシド(propylene oxide、以下POと略称する)をNCA合成過程における塩酸捕捉剤として使用し、従来の技術の欠点を克服できることを発見した。エポキシ化合物、例えば、POと塩酸とのTHFでの反応は、速度が極めて速く、室温でほぼ瞬間的に完了し、完全に酸を除去するだけでなく、塩素イオンを除去することができる。PO等のエポキシ化合物の価格はピネン及びリモネン等の価格より低く、コストが低い(PO価格¥169元/リットル、ピネン価格¥771元/キログラム、リモネン価格¥1129元/キログラム、データソース:北京大学試薬管理プラットフォームにおける各化学物質の最も低い価格)。また、POと塩酸で生成された生成物である1-クロロ-2-プロパノール基又は2-クロロ-1-プロパノールは、容易に分離精製でき、化学工業原料として販売することができる。以上の特徴は、当該方法が安価でかつゼロに近く排出することができ、環境汚染が小さく、さらにいくつかの高付加価値の副生成物を製造することができることを決定する。
【0049】
したがって、本発明は、特にアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物の製造方法を提供し、当該方法は、アミノ酸と環化試薬を反応させてアミノ酸-N-カルボキシル環内酸無水物及び酸を生成し、かつエポキシ化合物を酸捕捉剤とするステップを含む。アミノ酸は、任意の種類のアミノ酸であってもよく、例えば、上記のように定義される。本明細書において、酸はハロゲン化水素であってもよく、例えば、塩化水素又は臭化水素である。環化試薬は、以上のように定義することができ、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、ジメチルエチレンオキシド、エポキシシクロヘキサン及びそれらのハロゲンで置換された誘導体を含む。この方法を用いれば、上述した全ての効果を得ることができる。方法は、アミノ酸又はその誘導体を容器に添加し、溶媒、例えば、分析純度のテトラヒドロフランを添加し、エポキシ化合物、例えば、プロピレンオキシドを添加し、均一に撹拌した(例えば、磁気撹拌で撹拌した)後、大気条件下で、環化試薬、例えば、トリホスゲンを添加し、次に撹拌する(例えば、密封又はガスガイドプラグがやや開く)ことを含むことができる。
【0050】
本発明は、さらにポリアミノ酸-N-カルボキシル内酸無水物を製造する方法を提供する。当該方法は、上記のアミノ酸-N-カルボキシル内酸無水物を製造するステップを含む。当該方法は、さらに得られたアミノ酸-N-カルボキシル内酸無水物をN,N-ジメチルホルムアミド及びベンジルアミン開始剤と反応させるステップを含むことができる。好ましくは、当該アミノ酸の側鎖はカルボキシル基を含み、例えば、R1基は任意に置換されたC1-6直鎖又は分岐鎖アルキルカルボキシル基である。例えば、当該アミノ酸はグルタミン酸である。
【0051】
例えば、方法は、L-グルタミン酸にテトラヒドロフラン及びエピクロロヒドリンを添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲンを添加し、室温で反応させた後に乾燥させ、結晶化し、最終生成物であるL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物を得ることを含む。方法は、さらにL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物にN,N-ジメチルホルムアミド及びベンジルアミン開始剤を添加し、室温で反応させ、最終生成物であるポリL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物を得て、重合度Nが20であり、実施例に示すとおりである。従来の方法に比べて、当該ポリアミノ酸-N-カルボキシル内酸無水物を製造する方法を利用した方は、より高い収率でポリアミノ酸-N-カルボキシル内酸無水物を製造することができる。
【実施例】
【0052】
以下の実施例に、本明細書に開示された化合物、組成物及び方法のいくつかの例示的な実施形態を示した。これらの実施例は、いかなる方式で制限されるものではない。これらの実施例は、任意の好ましい実施形態を示すか、任意の更なる研究の方向を示すと見なすべきではない。下記実施例に使用される実験方法は、特別な説明がなければ、いずれも従来の方法であり、使用される材料、試薬等は、特別な説明がなければ、いずれも商業的に取得することができる。
【0053】
実施例1:L-グルタミン酸ベンジル-N-カルボキシル内酸無水物の合成
L-グルタミン酸ベンジル(5.0g、21.1mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン60mLを添加し、プロピレンオキシド(15.3mL、211mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(3.184g、10.5mmol、0.5当量)を添加した。室温で1.5時間撹拌した。水で洗浄し、乾燥させ、拡散して結晶化し、最終生成物であるL-グルタミン酸ベンジル-N-カルボキシル内酸無水物(5.159g、収率93%)を得た。
L-グルタミン酸ベンジル-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.42-7.31(m,5H),6.70(s,1H),5.13(s,2H),4.38(ddd,J=6.7,5.4,1.0 Hz,1H),2.59(t,J=6.9 Hz,1H),2.32-2.21(m,1H),2.18-2.06(m,1H)。
13C NMR(101MHz,CDCl3)δ172.5,169.6,152.2,135.3,128.8,128.7,128.4,67.2,57.0,29.8,26.9。
【0054】
実施例2:グリシン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
N-tert-ブトキシカルボニルグリシン(1.0g、5.7mmol、1当量)を100mLの丸底フラスコに添加し、分析純度のアセトニトリル20mLを添加し、プロピレンオキシド(4mL、57.1mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(861mg、2.9mmol、0.5当量)を添加した。1.5時間反応させ、スピン乾燥し、結晶化した。最終生成物のグリシン-N-カルボキシル内酸無水物(357mg、収率62%)を得た。
グリシン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.83(s,1H),4.18(s,2H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ169.4,153.0,46.3。
【0055】
実施例3:ε-N-ベンジルオキシカルボニル-L-リジン-N-カルボキシル内酸無水物
ε-N-ベンジルオキシカルボニル-L-リジン(1.0g、3.6mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、プロピレンオキシド(2.5mL、36mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(534mg、1.8mmol、0.5当量)を添加した。室温で1.5時間撹拌した。水洗し、乾燥し、結晶化した。最終生成物であるε-N-ベンジルオキシカルボニル-L-リジン-N-カルボキシル内酸無水物(929mg、収率85%)を得た。
ε-N-ベンジルオキシカルボニル-L-リジン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ9.08(s,1H),7.40-7.28(m,5H),7.26(t,J=6.1 Hz,1H),5.00(s,2H),4.43(dd,J=7.4,5.1 Hz,1H),2.99(dt,J=6.1,6.1 Hz,2H),1.80-1.58(m,1H),1.48-1.22(m,4H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ171.7,156.1,152.0,137.3,128.4,127.8,127.8,124.2,65.2,57.0,30.7,28.8,21.6。
【0056】
実施例4:L-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
L-アラニン(1.0g、11.2mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン30mLを添加し、プロピレンオキシド(8.0mL、112.2mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(1.674g、5.6mmol、0.5当量)を添加した。室温で19.5時間撹拌した。水で洗浄し、乾燥させ、結晶化し、最終生成物であるL-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物(821mg、収率64%)を得た。
L-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ6.76(br,1H),4.42(qd,J=7.0,1.0 Hz,1H),1.56(d,J=7.0 Hz,3H)。
13C NMR(101MHz,CDCl3)δ170.3,152.6,53.5,17.8。
【0057】
実施例5:L-チロシン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
L-チロシン(1.0g、6.1mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、プロピレンオキシド(4.3mL、61mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(897mg、3.0mmol、0.5当量)を添加した。室温で7時間撹拌した。水洗し、乾燥し、結晶化した。最終生成物であるL-チロシン-N-カルボキシル内酸無水物(961mg、収率83%)を得た。
L-チロシン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ9.34(br,1H),9.03(br,1H),6.97(d,J=8.4 Hz,2H),6.69(d,J=8.4 Hz,2H),4.70(td,J=5.0,1.0 Hz,1H),2.93(dd,J=14.5,5.0 Hz,1H),2.89(dd,J=14.5,5.0 Hz,1H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ170.9,156.5,151.7,130.7,124.6,115.2,58.5,35.5。
【0058】
実施例6:サルコシン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
N-tert-ブトキシカルボニルサルコシン(1.0g、5.3mmol、1当量)を100mLの丸底フラスコに添加し、分析純度のアセトニトリル20mLを添加し、氷水浴下でプロピレンオキシド(3.7mL、53mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(793mg、2.7mmol、0.5当量)を添加した。1.5時間反応させ、水で洗浄し、乾燥させ、結晶化させ、最終生成物であるサルコシン-N-カルボキシル内酸無水物(381mg、収率63%)を得た。
サルコシン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ4.13(s,2H),3.03(s,3H)。
13C NMR(101MHz,CDCl3)δ165.5,152.4,51.0,30.4。
【0059】
実施例7:L-ヒドロキシプロリン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
L-N-tert-ブトキシカルボニルヒドロキシプロリン(5.0g、21.6mmol、1当量)を250mLの丸底フラスコに添加し、分析純度の50mLのアセトニトリルを添加し、氷水浴でプロピレンオキシド(15.1mL、216mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(3.222g、10.8mmol、0.5当量)を添加した。1.5時間反応させる。水洗し、乾燥させ、シリカゲルカラムに通し、最終生成物であるL-ヒドロキシプロリン-N-カルボキシル酸無水物(2.696g、純度:質量分率が95%であり、収率が75%であり、5%EAを含有する)を得た。
L-ヒドロキシプロリン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ5.31(br,1H),4.72(dd,J=10.8,6.8 Hz,1H),4.54(ddd,J=4.8,4.8,1.5 Hz,1H),3.71(dd,J=11.2,4.8 Hz,1H),3.06(dd,J=11.2,1.5 Hz,1H),2.23(ddd,J=12.2,10.8,4.8 Hz,1H),1.95(dd,J=12.2,6.8 Hz,1H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ170.3,154.7,72.6,62.3,55.0,35.5。
【0060】
実施例8:L-メチオニン-N-カルボキシル内酸無水物
L-メチオニン(1.0g、6.7mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン20mLを添加し、プロピレンオキシド(4.7mL、67mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(1.002g、3.4mmol、0.5当量)を添加した。室温で2時間撹拌した。水洗し、乾燥させ、シリカゲルカラムに通し、最終生成物であるL-チオニル-カルボキシル酸無水物(700mg、収率60%)を得た。
L-メチオニン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.06(br,1H),4.51(ddd,J=7.4,5.0,1.1 Hz,1H),2.67(t,J=6.6 Hz,2H),2.25(dtd,J=14.6,6.6,5.0 Hz,1H),2.17-2.01(m,1H),2.09(s,3H)。
13C NMR(101MHz,CDCl3)δ169.9,152.9,56.7,30.2,29.8,15.2。
【0061】
実施例9:L-トリプトファン-N-カルボキシル内酸無水物
L-トリプトファン(1.0g、4.9mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、プロピレンオキシド(3.4mL、49mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(749mg、2.5mmol、0.5当量)を添加した。室温で1.5時間撹拌した。水で洗浄し、乾燥させ、結晶化し、最終生成物であるL-トリプトファン-N-カルボキシル内酸無水物(1.020g、収率90%)を得た。
L-トリプトファン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ11.00(d,J=2.5 Hz,1H),9.09(s,1H),7.55(d,J=7.9 Hz,1H),7.36(d,J=8.1 Hz,1H),7.15(d,J=2.5 Hz,1H),7.13-7.05(m,1H),7.05-6.96(m,1H),4.78(t,J=5.0 Hz,1H),3.22(dd,J=15.0,5.0 Hz,1H),3.14(dd,J=15.0,5.0 Hz,1H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ171.3,151.9,136.0,127.2,124.5,121.1,118.6,118.5,111.5,107.1,58.3,26.5。
【0062】
実施例10:L-プロリン-N-カルボキシル内酸無水物
L-N-tert-ブトキシカルボニルプロリン(1.0g、4.7mmol、1当量)を100mL丸底フラスコに添加し、15mLの分析純度のアセトニトリルを添加し、氷水浴でプロピレンオキシド(3.7mL、47mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(700mg、2.3mmol、0.5当量)を添加した。2.5時間反応させる。水洗し、乾燥させ、シリカゲルカラムに通し、最終生成物であるL-プロリン-N-カルボキシル酸無水物(470mg、収率72%)を得た。
L-プロリン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ4.32(dd,J=9.1,7.4 Hz,1H),3.73(dt,J=11.3,7.4 Hz,1H),3.30(ddd,J=11.3,8.5,4.6 Hz,1H),2.28(dtd,J=12.4,7.4,3.7 Hz,1H),2.24-2.14(m,1H),2.09(dtd,J=14.3,9.1,7.4,4.6 Hz,1H),1.92(dq,J=12.4,9.1 Hz,1H)。
13C NMR(101MHz,CDCl3)δ168.9,154.9,63.1,46.5,27.6,26.9。
【0063】
実施例11:L-フェニルアラニン-N-カルボキシル内酸無水物
L-フェニルアラニン(1.0g、6.1mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、15mLの分析純度のテトラヒドロフランを添加し、プロピレンオキシド(4.3mL、60mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(897mg、4.0mmol、0.5当量)を添加した。室温で7時間撹拌した。水で洗浄し、乾燥させ、結晶化させ、最終生成物であるL-フェニルアラニン-N-カルボキシル内酸無水物(961mg、収率83%)を得た。
L-フェニルアラニン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.38-7.27(m,3H),7.17(dd,J=7.7,1.8 Hz,2H),6.48(br,1H),4.53(ddd,J=7.8,4.3,1.0 Hz,1H),3.24(dd,J=14.2,4.3 Hz,1H),3.01(dd,J=14.2,7.8 Hz,1H)。
13C NMR(101MHz,CDCl3)δ168.9,152.1,134.0,129.3,128.1,59.0,37.9。
【0064】
実施例12:L-セリン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
L-セリン(1.0g、9.5mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のジオキサン30mLを添加し、プロピレンオキシド(6.7mL、95.2mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(1.415g、4.8mmol、0.5当量)を添加した。室温で4時間撹拌した。シリカゲルカラムに通し、結晶化し、最終生成物であるL-セリン-N-カルボキシル内酸無水物(890mg、収率71%)を得た。
L-セリン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,THF-d8)δ7.89(brs,1H),4.69(brs,1H),4.35-4.32(m,1H),3.81(dd,J=11.6,3.4 Hz,1H),3.71(dd,J=11.6,2.7 Hz,1H)。
13C NMR(101MHz,THF-d8)δ170.6,153.6,61.6,61.5。
【0065】
実施例13:L-スレオニン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
L-スレオニン(2.0g、8.4mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン30mLを添加し、プロピレンオキシド(12mL、95.2mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(2.5g、4.8mmol、0.5当量)を添加した。室温で12時間撹拌した。水で洗浄し、乾燥させ、結晶化し、最終生成物であるL-スレオニン-N-カルボキシル内酸無水物(1.186g、収率48%)を得た。
L-スレオニン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ9.05(brs,1H),5.17(brs,1H),4.32(dd,J=2.3,1.1 Hz,1H),3.98(qd,J=6.6,2.3 Hz,1H),1.14(d,J=6.6 Hz,3H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ170.5,152.7,65.4,63.7,19.9。
【0066】
実施例14:γ-(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)L-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物の合成
γ-(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)L-グルタミン酸アミノ酸(2.82g、9.6mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン50mLを添加し、プロピレンオキシド(6.7mL、96.1mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(1.475g、4.8mmol、0.5当量)を添加した。室温で2時間撹拌した。シリカゲルカラムを通過させ、最終生成物であるγ-(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)L-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物(2.206mg、収率72%)を得た。
γ-(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)L-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ9.09(br,1H),4.46(ddd,J=7.9,5.4,1.2 Hz,1H),4.20-4.07(m,2H),3.60(dd,J=5.3,4.2 Hz,2H),3.57-3.47(m,5H),3.46-3.39(m,2H),3.24(s,3H),2.47(t,J=7.6 Hz,2H),2.10-1.96(m,1H),1.99-1.83(m,1H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ171.8,171.4,151.9,71.3,69.8,69.7,69.6,68.2,63.5,58.1,56.2,29.1,26.5。
【0067】
実施例15:(S)-2-アミノ-4-((3-(ベンジルアミノ)-3-オキシプロピル)セレン)ブタン酸-N-カルボキシル酸無水物
(S)-2-アミノ-4-((3-(ベンジルアミノ)-3-オキシプロピル)セレン)ブタン酸塩酸塩(1.0g、2.7mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、プロピレンオキシド(2.0mL、27mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(397mg、1.3mmol、0.5当量)を添加した。室温で1.5時間撹拌した。水洗し、乾燥させ、シリカゲルカラムに通し、最終生成物である(S)-2-アミノ-4-((3-(ベンジルアミノ)-3-オキシプロピル)セレン)ブタン酸-N-カルボキシル内酸無水物(570mg、収率58%)を得た。
(S)-2-アミノ-4-((3-(ベンジルアミノ)-3-オキシプロピル)セレン)ブタン酸-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ9.11(br,1H),8.40(t,J=5.9 Hz,1H),7.36-7.19(m,5H),4.52(ddd,J=7.8,5.2,1.2 Hz,1H),4.28(d,J=5.9 Hz,2H),2.75(t,J=7.3 Hz,2H),2.69-2.58(m,2H),2.55(t,J=7.3 Hz,2H),2.12-2.00(m,2H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ171.4,170.8,152.0,139.4,128.3,127.2,126.7,56.9,42.1,36.5,31.9,18.4,18.3。
【0068】
実施例16:L-システイン-N-カルボキシル内酸無水物
L-システイン(10.0g、82.5mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン120mLを添加し、プロピレンオキシド(23mL、330.2mmol、4当量)を添加し、トリホスゲン(12.313g、41.3mmol、0.5当量)を添加した。室温で5時間撹拌し、スピン乾燥し、結晶化した。最終生成物であるL-システイン-N-カルボキシル内酸無水物(9.443g、収率78%)を得た。
L-システイン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりである(THF-d8に少量のDMSO-d6を添加する):
1H NMR(400MHz,THF-d8)δ13.36-12.30(br,1H),8.27(br,1H),4.35(ddd,J=8.5,3.9,1.4 Hz,1H),3.69(dd,J=11.2,8.5 Hz,1H),3.47(dd,J=11.2,3.9 Hz,1H)。
13C NMR(101MHz,THF-d8)δ173.4,173.2,56.8,32.7。
【0069】
実施例17:L-フェニル乳酸-O-カルボキシル内酸無水物
L-フェニル乳酸(1.0g、6.0mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、プロピレンオキシド(4.2mL、60mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(893mg、3.0mmol、0.5当量)を添加した。室温で24時間撹拌し、水で洗浄し、乾燥し、結晶化した。最終生成物であるL-フェニル乳酸-O-カルボキシル内酸無水物(750mg、収率65%)を得た。
L-フェニル乳酸-O-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.41-7.29(m,3H),7.26-7.19(m,2H),5.30(t,J=4.9 Hz,1H),3.38(dd,J=14.9,4.9 Hz,1H),3.25(dd,J=14.9,4.9 Hz,1H)。
13C NMR(101MHz,CDCl3)δ166.5,147.9,131.6,129.8,129.3,128.5,80.0,36.5。
【0070】
実施例18:L-マンデル酸-O-カルボキシル内酸無水物の合成
L-マンデル酸(1.0g、6.6mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン20mLを添加し、プロピレンオキシド(4.6mL、66mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(976mg、3.3mmol、0.5当量)を添加した。室温で24時間撹拌し、水で洗浄し、乾燥させ、結晶化し、最終生成物であるL-マンデル酸-O-カルボキシル酸無水物(575mg、収率49%)を得た。
L-マンデル酸-O-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ7.47-7.40(m,2H),7.39-7.24(m,3H),5.04(s,1H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ174.2,140.3,128.2,127.8,126.7,72.5。
【0071】
実施例19:D-ペニシラミン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
D-ペニシラミン(1.0g、6.7mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、プロピレンオキシド(5.8mL、82.5mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(1.22g、4.1mmol、0.5当量)を添加した。室温で1.5時間撹拌し、スピン乾燥し、結晶化した。最終生成物であるD-ペニシラミン-N-カルボキシル内酸無水物(771mg、収率53%)を得た。
D-ペニシラミン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ13.18(s,1H),8.24(s,1H),4.12(d,J=1.0 Hz,1H),1.62(s,3H),1.41(s,3H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ171.6,170.2,66.5,52.9,29.8,25.9。
【0072】
実施例20:オキシ-tert-ブチル-L-セリン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
オキシ-tert-ブチル-L-セリン(1.0g、6.2mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、プロピレンオキシド(4.3mL、62.0mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(930.1mg、3.1mmol、0.5当量)を添加した。合計1.5時間撹拌し、シリカゲルカラムに通し、最終生成物であるオキシ-tert-ブチル-L-セリン-N-カルボキシル内酸無水物(1.0081g、収率87%)を得た。
オキシ-tert-ブチル-L-セリン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.95(br,1H),4.57(dt,J=2.8,1.5 Hz,1H),3.62(dd,J=10.3,2.8 Hz,1H),3.50(dd,J=10.3,2.8 Hz,1H),1.10(s,9H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ170.2,152.3,73.2,59.9,58.6,27.1。
【0073】
実施例21:L-N-tert-ブトキシカルボニルアスパラギン酸-1-メチル-N-カルボキシル内酸無水物の合成
L-N-tert-ブトキシカルボニルアスパラギン酸-1-メチルエステル(1.0g、4.0mmol、1当量)を50ミリリットルのナスフラスコに添加し、15mLの分析純度のアセトニトリルを添加し、磁気撹拌で、プロピレンオキシド(2.8mL、40.0mmol、10当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(613.2mg、2.0mmol、0.5当量)を添加した。0度で二時間反応させ、直接抽出して乾燥させ、最終生成物であるL-N-tert-ブトキシカルボニルアスパラギン酸-1-メチル-N-カルボキシル内酸無水物(500mg、収率71%)を得た。
L-N-tert-ブトキシカルボニルアスパラギン酸-1-メチル-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ8.96(d,J=4.4 Hz,1H),4.32(ddd,J=7.2,4.4,3.0 Hz,1H),3.70(s,3H),3.23(dd,J=16.8,7.2 Hz,1H),2.91(ddd,J=16.8,3.0,1.1 Hz,1H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ170.9,165.1,148.9,52.9,48.4,30.7。
【0074】
実施例22:Nε-(tert-ブトキシカルボニル)-L-リジン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
Nε-(tert-ブトキシカルボニル)-L-リジン(1.0g、4.1mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、15mLの分析純度のテトラヒドロフランを添加し、磁気撹拌で、プロピレンオキシド(2.8mL、41.0mmol、10当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(620.2mg、2.0mmol、0.5当量)を添加した。室温で二時間反応させ、水で洗浄し、乾燥させ、結晶化させ、最終生成物であるNε-(t-ブトキシカルボニル)-L-リジン-N-カルボキシル内酸無水物(888mg、収率80%)を得た。
Nε-(t-ブトキシカルボニル)-L-リジン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ9.07(br,1H),6.79(t,J=6.0 Hz,1H),4.42(dd,J=7.3,5.2 Hz,1H),2.89(q,J=6.0 Hz,2H),1.78-1.57(m,2H),1.37(s,9H),1.43-1.19(m,4H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ171.7,155.6,152.0,77.4,57.0,30.6,28.9,28.3,21.6。
【0075】
実施例23:Nε-トリフルオロアセチル-L-リジン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
Nε-トリフルオロアセチル-L-リジン(1.0g、4.1mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、15mLの分析純度のテトラヒドロフランを添加し、磁気撹拌で、プロピレンオキシド(2.8mL、41.0mmol、10当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(620.2mg、2.0mmol、0.5当量)を添加した。室温で二時間反応させ、水で洗浄し、乾燥させ、結晶化させ、最終生成物であるNε-トリフルオロアセチル-L-リジン-N-カルボキシル内酸無水物(900mg、収率81%)を得た。
Nε-トリフルオロアセチル-L-リジン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6,δ)9.40(t,1H),9.09(s,1H),4.43(t,1H),3.17(q,2H),1.86-1.58(m,2H),1.50(p,2H),1.44-1.21(m,2H)。
【0076】
実施例24:L-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物の合成
L-グルタミン酸(1.0g、6.8mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、磁気撹拌で、エピクロロヒドリン(2.1mL、68.0mmol、10当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(1.01g、3.4mmol、0.5当量)を添加した。室温で20時間反応させ、乾燥させ、結晶化させ、最終生成物であるL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物(1.0g、収率89%)を得た。
L-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.27(br,1H),9.09(br,1H),4.46(ddd,J=7.5,5.5,1.2 Hz,1H),2.37(t,J=7.5 Hz,2H),2.00(dtd,J=14.0,7.5,5.5 Hz,1H),1.87(dq,J=14.7,7.5 Hz,1H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d6)δ173.4,171.5,152.0,56.3,29.1,26.6。
【0077】
実施例25:吸収剤の比較実験
(S)-2-アミノ-4-((3-(ベンジルアミノ)-3-オキシプロピル)セレン)ブタン酸-N-カルボキシル内酸無水物の合成を例として、異なる吸収剤の分離収率に対する影響を比較した。
(S)-2-アミノ-4-((3-(ベンジルアミノ)-3-オキシプロピル)セレン)ブタン酸塩酸塩(1.0g、2.7mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、プロピレンオキシド(2.0mL、27mmol、10当量)を添加し、トリホスゲン(397mg、1.3mmol、0.5当量)を添加した。室温で1.5時間撹拌した。焼入れ、カラムを通過し、最終生成物である(S)-2-アミノ-4-((3-(ベンジルアミノ)-3-オキシプロピル)セレン)ブタン酸-N-カルボキシル内酸無水物(570mg、収率58%)を得た。
(S)-2-アミノ-4-((3-(ベンジルアミノ)-3-オキシプロピル)セレン)ブタン酸塩酸塩(1.0g、2.7mmol、1当量)を反応フラスコに添加し、15mLの分析純度のテトラヒドロフランを添加し、α-ピネン(0.6mL、3.8mmol、1.4)を添加し、トリホスゲン(346mg、1.2mmol、0.4当量)を添加した。50度で5時間撹拌した。アミノ酸を溶解できず、カラム分離により対応する生成物を得ることができず、分離収率が0%であった。ピネンを吸収剤とし、長時間加熱し撹拌した後、少量の反応のみがあり、カラム分離を試み、生成物はカラムで迅速に分解されたと推測されている。
【0078】
実施例26:異なるエポキシ化合物の効果実験
L-グルタミン酸ベンジル-N-カルボキシル内酸無水物の合成を例とし、具体的な実験過程は、それぞれエチレンオキシド、ジメチルエチレンオキシド又はシクロヘキシルエポキシを吸収剤として使用したことだけを除いて、実施例1と同じである。
1、エチレンオキサイド吸収剤
L-グルタミン酸ベンジル(1.0g、4.2mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン9mLを添加し、エチレンオキシドのTHF溶液(8mL、3M in THF、6当量)を添加し、トリホスゲン(637.3mg、2.1mmol、0.5当量)を添加した。室温で1.5時間撹拌した。水で洗浄し、結晶化し、最終生成物であるL-グルタミン酸ベンジル-N-カルボキシル内酸無水物(1.0g、収率93%)を得た。
【0079】
2、ジメチルエチレンオキシド吸収剤
L-グルタミン酸ベンジル(1.0g、4.2mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、ジメチルエチレンオキシド(1.47g、20mmol、4.8当量)を添加し、トリホスゲン(642.5mg、2.1mmol、0.5当量)を添加した。室温で1.5時間撹拌した。スピン乾燥し、シリカゲルカラムに通し、最終生成物であるL-グルタミン酸ベンジル-N-カルボキシル内酸無水物(272.2mg、収率25%)を得た。
【0080】
3、シクロヘキシルエポキシ吸収剤の使用
L-グルタミン酸ベンジル(1.0g、4.2mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、シクロヘキシルオキシラン(2.5g、25mmol、6.0当量)を添加し、トリホスゲン(626.4mg、2.1mmol、0.5当量)を添加した。室温で1.5時間撹拌した。スピン乾燥し、シリカゲルカラムに通し、最終生成物であるL-グルタミン酸ベンジル-N-カルボキシル内酸無水物(546.3mg、収率49%)を得た。
【0081】
4、エピクロロヒドリン吸収剤の使用
L-グルタミン酸ベンジル(1.0g、4.2mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、エピクロロヒドリン(1.3mL、16.8mmol、4当量)を添加し、トリホスゲン(632.5mg、2.1mmol、0.5当量)を添加した。室温で1.5時間撹拌した。水で洗浄し、結晶化し、最終生成物のL-グルタミン酸ベンジル-N-カルボキシル内酸無水物(959mg、収率86%)を得た。
実験結果をまとめて表1に示す。
【表1】
【0082】
実施例27:β-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
【化16】
β-アラニン(1.0g、11.2mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン40mLを添加し、磁気撹拌下で、エピクロロヒドリン(3.5mL、44.9mmol、4当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(1.67g、5.6mmol、0.5当量)を添加した。室温で14時間反応させ、スピン乾燥させ、結晶化させ、最終生成物であるβ-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物(879mg、収率68%)を得た。
β-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ8.38(s,1H),3.26(td,J=6.7,2.8 Hz,2H),2.75(t,J=6.7 Hz,2H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d
6)δ167.0,149.6,34.3,28.3。
【0083】
実施例28:3-アミノ-3-(4-メチルフェニル)プロピオン酸-N-カルボキシル内酸無水物の合成
【化17】
3-アミノ-3-(4-メチルフェニル)プロピオン酸(1.0g、5.6mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン30mLを添加し、磁気撹拌で、エピクロロヒドリン(1.8mL、22.3mmol、4当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(826.6mg、2.8mmol、0.5当量)を添加した。室温で4時間反応させ、スピン乾燥させ、結晶化させ、最終生成物である3-アミノ-3-(4-メチルフェニル)プロピオン酸-N-カルボキシル内酸無水物(1.017g、収率89%)を得た。
3-アミノ-3-(4-メチルフェニル)プロピオン酸-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ8.90(d,J=3.0 Hz,1H),7.21(s,4H),4.76(td,J=6.2,3.0 Hz,1H),3.13(dd,J=16.1,6.2 Hz,1H),2.94(dd,J=16.1,6.2 Hz,1H),2.29(s,3H)。
13C NMR(101MHz,DMSO)δ166.1,149.3,137.5,136.7,129.4,126.0,49.0,36.3,20.7。
【0084】
実施例29:3-アミノ-3-(4-クロロフェニル)プロピオン酸-N-カルボキシル内酸無水物の合成
【化18】
3-アミノ-3-(4-クロロフェニル)プロピオン酸(1.0g、5.0mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン30mLを添加し、磁気撹拌で、エピクロロヒドリン(1.6mL、20.0mmol、4当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(755.6mg、2.5mmol、0.5当量)を添加した。室温で3時間反応させ、スピン乾燥させ、結晶化させ、最終生成物である3-アミノ-3-(4-クロロフェニル)プロピオン酸-N-カルボキシル内酸無水物(953mg、収率84%)を得た。
3-アミノ-3-(4-クロロフェニル)プロピオン酸-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ8.95(d,J=2.8 Hz,1H),7.48(d,J=8.1 Hz,2H),7.37(d,J=8.1 Hz,2H),4.86-4.80(m,1H),3.15(dd,J=16.1,5.5 Hz,1H),2.98(dd,J=16.1,7.2 Hz,1H)。
13C NMR(101MHz,DMSO)δ165.8,149.2,138.6,132.8,128.8,128.2,48.8,36.0。
【0085】
実施例30:ε-N-トリフルオロアセチル-L-リジン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
【化19】
ε-N-トリフルオロアセチル-L-リジン(1.0g、4.1mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン20mLを添加し、磁気撹拌で、プロピレンオキシド(1.2mL、16.4mmol、4当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(624.3mg、2.0mmol、0.5当量)を添加した。室温で3時間反応させ、スピン乾燥させ、結晶化させ、最終生成物であるε-N-トリフルオロアセチル-L-リジン-N-カルボキシル内酸無水物(953mg、収率84%)を得た。
ε-N-トリフルオロアセチル-L-リジン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ9.42(t,J=6.5 Hz,1H),9.10(s,1H),4.43(t,J=6.5 Hz,1H),3.17(q,J=6.5 Hz,2H),1.75(ddt,J=15.5,10.6,5.2 Hz,1H),1.69-1.59(m,1H),1.49(p,J=7.4 Hz,2H),1.43-1.34(m,1H),1.34-1.21(m,1H)。
13C NMR(101MHz,DMSO)δ171.7,156.8,156.4,156.0,155.7,152.0,120.3,117.4,114.6,111.7,57.0,30.6,27.7,21.6。
【0086】
実施例31:L-バリン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
【化20】
L-バリン(1.0g、8.5mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン20mLを添加し、磁気撹拌で、プロピレンオキシド(2.4mL、34.0mmol、4当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(1.29g、4.3mmol、0.5当量)を添加した。室温で4時間反応させ、水で洗浄し、乾燥させ、結晶化させ、最終生成物であるL-バリン-N-カルボキシル内酸無水物(890mg、収率72%)を得た。
L-バリン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,Chloroform-d)δ6.85(br,1H),4.22(dd,J=4.2,1.0 Hz,1H),2.25(heptd,J=6.9,4.2 Hz,1H),1.08(d,J=6.9 Hz,3H),1.03(d,J=6.9 Hz,3H)。
13C NMR(101MHz,Chloroform-d)δ169.1,153.7,63.2,30.9,18.3,16.7。
【0087】
実施例32:L-ロイシン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
【化21】
L-ロイシン(2.0g、15.2mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン40mLを添加し、磁気撹拌で、プロピレンオキシド(6.0mL、91.0mmol、6当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(2.30g、7.6mmol、0.5当量)を添加した。室温で3時間反応させ、水で洗浄し、乾燥させ、結晶化させ、最終生成物であるL-ロイシン-N-カルボキシル内酸無水物(1.70g、収率70%)を得た。
L-ロイシン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ9.13(br,1H),4.45(dd,J=8.7,5.5 Hz,1H),1.81-1.65(m,1H),1.65-1.49(m,2H),0.92-0.85(m,6H)。
13C NMR(101MHz,DMSO-d
6)δ172.1,152.0,55.6,40.1,24.2,22.8,21.2。
【0088】
実施例33:ポリβ-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物の合成
【化22】
β-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物(150mg、1.3mmol、50当量)をガラス瓶に添加し、4mLのクロマトグラフィー純度のN,N-ジメチルホルムアミドを添加し、26マイクロリットル(1MのN,N-ジメチルホルムアミド溶液)のベンジルアミン開始剤を添加し、室温で30時間反応させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、真空乾燥させ、最終生成物であるポリβ-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物(91mg、収率99%)を得た。重合度:50。
ポリβ-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,Chloroform-d)δ3.78-3.62(m,2H),2.86-2.72(m,2H)。
【0089】
実施例34:ポリL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物の合成比較実験
1.従来の合成ルート
【化23】
三角フラスコにおいて、10gのL-グルタミン酸、50mLのベンジルアルコールを秤量し、0度で6mLの濃硫酸を滴下し、0度で16h反応させ、イソプロパノールとトリエチルアミンで中和して洗浄し、ジエチルエーテルで沈殿させ、乾燥させる。10gのL-グルタミン酸ベンジルを得て、収率が42%であった。
L-グルタミン酸ベンジル(5.0g、21.1mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン60mLを添加し、磁気撹拌下で、プロピレンオキシド(15.3mL、211mmol、10当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(3.184g、10.5mmol、0.5当量)を添加し、室温で1.5時間撹拌し、水洗し、酢酸エチルで抽出し、乾燥させ、拡散結晶し、最終生成物であるL-グルタミン酸ベンジル-N-カルボキシル内酸無水物(5.159g、収率93%)を得た。
L-グルタミン酸ベンジル-N-カルボキシル内酸無水物(201mg、0.8mmol、50当量)をガラス瓶に添加し、4mLのクロマトグラフィー純度のN,N-ジメチルホルムアミドを添加し、15マイクロリットル(1MのN,N-ジメチルホルムアミド溶液)のベンジルアミン開始剤を添加し、室温で30時間反応させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、真空乾燥させ、最終生成物であるポリL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物(100mg、収率60%)を得た。
ポリL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物(100mg)を5mLのテトラヒドロフランに溶解し、1mLの臭化水素酸酢酸溶液を添加し、室温で3日間密封反応させ、沈殿させ、40mgのポリL-グルタミン酸を得て、収率が68%であった。
4つのステップの総収率は:16%であった。
【0090】
2.ポリL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物の直接2段階合成
【化24】
L-グルタミン酸(1.0g、6.8mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、磁気撹拌で、エピクロロヒドリン(2.1mL、68.0mmol、10当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(1.01g、3.4mmol、0.5当量)を添加した。室温で20時間反応させ、乾燥させ、結晶化させ、最終生成物であるL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物(1.0g、収率89%)を得た。
L-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物(200mg、1.2mmol、20当量)をガラス瓶に添加し、4mLのクロマトグラフィー純度のN,N-ジメチルホルムアミドを添加し、58マイクロリットル(1MのN,N-ジメチルホルムアミド溶液)のベンジルアミン開始剤を添加し、室温で30時間反応させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、真空乾燥させ、最終生成物であるポリL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物(120mg、収率80%)を得た。重合度Nは20であった。
二つのステップの総収率は:72%であった。
ポリL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物の核磁気共鳴水素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ4.40-3.92(m,1H),3.89-3.11(m,2H),2.41-2.16(m,1H),2.04-1.67(m,1H)。
SEC特徴付けは
図2を参照した。
【0091】
理解すべきことは、その詳細な説明を参照しながら本発明を説明したが、前の説明は説明を目的とするものであり添付の特許請求の範囲によって限定された本発明の範囲を限定するものではない。他の態様では、利点及び修正は添付の特許請求の範囲内にある。
【0092】
実施例における異なるアミノ酸及び生成物に対応する構造式及び名称は以下のとおりである。
【0093】
【0094】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
別の態様では、本発明は共重合体を形成する方法を提供し、当該方法は式(II)の化合物を形成するステップ及び共重合体を形成するステップを含むことができる。好ましくは、R
1はカルボキシル基を含む基であり、例えば、COOHCH
2CH
2である。例えば、式(I)の化合物はグルタミン酸であり、式(II)の化合物はL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物である。好ましくは、前記共重合体はポリL-グルタミン
酸である。
前記共重合体は以下の式で表され、
【化4】
nは2以上の整数であり、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80又は90である。例えば、共重合体は、
【化5】
であり、nが20である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
一実施形態では、共重合体は、
【化11】
であり、nが2以上の整数であり、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80又は90である。例えば、共重合体はポリアミノ
酸である。例えば、共重合体は、
【化12】
であり、nが50である。
上記重合ステップは、反応原料にN,N-ジメチルアシルとベンジルアミン開始剤を添加するステップを含むことができ、例えば、N,N-ジメチルアシルとベンジルアミン開始剤と式(II)又は(V)の化合物を混合する。
上記式(I)及び式(IV)の化合物は、実施例における全ての開始アミノ酸又はアミノ酸誘導体を含むことができる。上記式(II)及び式(V)の化合物は、実施例における全ての反応生成物、すなわちN-又はO-カルボキシル内酸無水物、特にアミノ酸-N-カルボキシル内酸無水物を含むことができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
【
図1】従来のNCA合成方法、及びその重合でポリアミノ酸を製造する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
例えば、方法は、L-グルタミン酸にテトラヒドロフラン及びエピクロロヒドリンを添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲンを添加し、室温で反応させた後に乾燥させ、結晶化し、最終生成物であるL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物を得ることを含む。方法は、さらにL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物にN,N-ジメチルホルムアミド及びベンジルアミン開始剤を添加し、室温で反応させ、最終生成物であるポリL-グルタミン酸を得て、重合度Nが20であり、実施例に示すとおりである。従来の方法に比べて、当該ポリアミノ酸を製造する方法を利用した方は、より高い収率でポリアミノ酸を製造することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0088
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0088】
実施例33:ポリβ-アラニ
ンの合成
【化22】
β-アラニン-N-カルボキシル内酸無水物(150mg、1.3mmol、50当量)をガラス瓶に添加し、4mLのクロマトグラフィー純度のN,N-ジメチルホルムアミドを添加し、26マイクロリットル(1MのN,N-ジメチルホルムアミド溶液)のベンジルアミン開始剤を添加し、室温で30時間反応させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、真空乾燥させ、最終生成物であるポリβ-アラニ
ン(91mg、収率99%)を得た。重合度:50。
ポリβ-アラニ
ンの核磁気共鳴水素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,Chloroform-d)δ3.78-3.62(m,2H),2.86-2.72(m,2H)。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0089
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0089】
実施例34:ポリL-グルタミン
酸の合成比較実験
1.従来の合成ルート
【化23】
三角フラスコにおいて、10gのL-グルタミン酸、50mLのベンジルアルコールを秤量し、0度で6mLの濃硫酸を滴下し、0度で16h反応させ、イソプロパノールとトリエチルアミンで中和して洗浄し、ジエチルエーテルで沈殿させ、乾燥させる。10gのL-グルタミン酸ベンジルを得て、収率が42%であった。
L-グルタミン酸ベンジル(5.0g、21.1mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン60mLを添加し、磁気撹拌下で、プロピレンオキシド(15.3mL、211mmol、10当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(3.184g、10.5mmol、0.5当量)を添加し、室温で1.5時間撹拌し、水洗し、酢酸エチルで抽出し、乾燥させ、拡散結晶し、最終生成物であるL-グルタミン酸ベンジル-N-カルボキシル内酸無水物(5.159g、収率93%)を得た。
L-グルタミン酸ベンジル-N-カルボキシル内酸無水物(201mg、0.8mmol、50当量)をガラス瓶に添加し、4mLのクロマトグラフィー純度のN,N-ジメチルホルムアミドを添加し、15マイクロリットル(1MのN,N-ジメチルホルムアミド溶液)のベンジルアミン開始剤を添加し、室温で30時間反応させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、真空乾燥させ、最終生成物であるポリ
ベンジルL-グルタミン
酸(100mg、収率60%)を得た。
ポリ
ベンジルL-グルタミン
酸(100mg)を5mLのテトラヒドロフランに溶解し、1mLの臭化水素酸酢酸溶液を添加し、室温で3日間密封反応させ、沈殿させ、40mgのポリL-グルタミン酸を得て、収率が68%であった。
4つのステップの総収率は:16%であった。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
2.ポリL-グルタミン
酸の直接2段階合成
【化24】
L-グルタミン酸(1.0g、6.8mmol、1当量)を厚肉耐圧瓶に添加し、分析純度のテトラヒドロフラン15mLを添加し、磁気撹拌で、エピクロロヒドリン(2.1mL、68.0mmol、10当量)を添加し、均一に撹拌した後、大気条件下で、トリホスゲン(1.01g、3.4mmol、0.5当量)を添加した。室温で20時間反応させ、乾燥させ、結晶化させ、最終生成物であるL-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物(1.0g、収率89%)を得た。
L-グルタミン酸-N-カルボキシル内酸無水物(200mg、1.2mmol、20当量)をガラス瓶に添加し、4mLのクロマトグラフィー純度のN,N-ジメチルホルムアミドを添加し、58マイクロリットル(1MのN,N-ジメチルホルムアミド溶液)のベンジルアミン開始剤を添加し、室温で30時間反応させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、真空乾燥させ、最終生成物であるポリL-グルタミン
酸(120mg、収率80%)を得た。重合度Nは20であった。
二つのステップの総収率は:72%であった。
ポリL-グルタミン
酸の核磁気共鳴水素スペクトルは以下のとおりであった:
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ4.40-3.92(m,1H),3.89-3.11(m,2H),2.41-2.16(m,1H),2.04-1.67(m,1H)。
SEC特徴付けは
図2を参照した。
【国際調査報告】