IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーロン インダストリーズ インクの特許一覧

特表2023-554424不織布、カーペットおよびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】不織布、カーペットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/011 20120101AFI20231220BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20231220BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20231220BHJP
   D04H 3/153 20120101ALI20231220BHJP
【FI】
D04H3/011
D04H3/16
D04H3/14
D04H3/153
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536935
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 KR2021016956
(87)【国際公開番号】W WO2022145726
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0187593
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒ-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン-シン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウ-ソク
(72)【発明者】
【氏名】カン,ドンホン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジョン-スン
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA21
4L047AA28
4L047AB03
4L047AB07
4L047BA08
4L047CB01
4L047CC16
(57)【要約】
本発明は、不織布、カーペットおよびその製造方法に関する。本発明によれば、カールの問題が改善された、形態安定性に優れた不織布、カーペットおよびその製造方法を提供することができる。また、本発明は、形態安定性に関する評価と予測が定量的に可能な不織布およびその製造方法を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点Tを有する高融点ポリエステル、および前記融点Tより低い融点Tを有する低融点ポリエステルを溶融紡糸してウェブを製造する第1段階と、
前記ウェブを結合させる第2段階と、
前記結合したウェブに油剤を付与する第3段階と、
油剤が付与された不織布の潜在応力指数が5.00以下となるように熱を加える第4段階と、を含む、不織布の製造方法(但し、前記潜在応力指数は、DIN 53369により180℃の温度で不織布を5分間以内に露出させ、前記不織布を約1分間常温に冷却した後、測定された冷却応力(cooling stress)(cN)を不織布の単位重量(g/m)で割ったもので、無次元の定数である)。
【請求項2】
下記関係式1を満たす温度Tで10秒~130秒間熱を加えて前記第4段階を行う、請求項1に記載の不織布の製造方法:
[関係式1]
20℃≦低融点ポリエステルの融点T-温度T≦60℃
【請求項3】
高融点ポリエステル糸80~92重量%および低融点ポリエステル糸8~20重量%を含むウェブを製造する、請求項1に記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
纎度が7.0~10.0デニールである前記高融点ポリエステル糸、および纎度が2.0~5.0デニールである前記低融点ポリエステル糸を含むウェブを製造する、請求項3に記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
前記低融点ポリエステル糸の本数Nに対する前記高融点ポリエステル糸の本数N(フィラメントの本数)の比(N/N)は2.0~5.0の範囲であるウェブを製造する、請求項3または4に記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
前記高融点ポリエステルの融点Tは250℃以上であり、前記低融点ポリエステルの融点Tは245℃以下である、請求項3に記載の不織布の製造方法。
【請求項7】
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)およびポリナフタレンテレフタレート(polynaphthalene terephthalate)から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の不織布の製造方法。
【請求項8】
前記低融点ポリエステルは、アジピン酸およびイソフタル酸のうち1つ以上が共重合されたポリエステルである、請求項7に記載の不織布の製造方法。
【請求項9】
第1熱結合温度Tを有するロール(roll)にウェブを通過させ、前記ロールを通過したウェブに第2熱結合温度Tを加えてウェブを結合する、請求項1に記載の不織布の製造方法(但し、第2熱結合温度Tは第1熱結合温度T以上の温度である)。
【請求項10】
前記第1熱結合温度Tは120~190℃の範囲であり、前記第2熱結合温度Tは140~240℃の範囲である、請求項9に記載の不織布の製造方法。
【請求項11】
前記温度Tは下記の関係式2を満たす、請求項9または10に記載の不織布の製造方法:
[関係式2]
第1熱結合温度T≦温度T≦第2熱結合温度T
【請求項12】
不織布の総重量100重量%に対して0.05重量%以上の含有量となるように前記結合したウェブに油剤を付与する、請求項1に記載の不織布の製造方法。
【請求項13】
互いに融着された高融点ポリエステル糸および低融点ポリエステル糸;並びに油剤を含む不織布であり、
前記不織布は、潜在応力指数が5.00以下である、不織布(但し、前記潜在応力指数は、DIN 53369により180℃の温度で不織布を5分間以内に露出させ、前記不織布を約1分間常温に冷却した後、測定された冷却応力(cooling stress)(cN)を不織布の単位重量(g/m)で割ったもので、無次元の定数である)。
【請求項14】
厚さが0.20~0.60mmの範囲であり、単位重量が70~140g/mの範囲である、請求項13に記載の不織布。
【請求項15】
前記高融点ポリエステル糸80~92重量%、および低融点ポリエステル糸8~20重量%を含む、請求項13に記載の不織布。
【請求項16】
前記低融点ポリエステル糸の本数Nに対する前記高融点ポリエステル糸の本数N(フィラメントの本数)の比(N/N)が2.0~5.0の範囲である、請求項13に記載の不織布。
【請求項17】
前記高融点ポリエステル糸は、纎度が7.0~10.0デニールであり、前記低融点ポリエステル糸は、纎度が2.0~5.0デニールである、請求項13に記載の不織布。
【請求項18】
前記高融点ポリエステルの融点Tは250℃以上であり、前記低融点ポリエステルの融点Tは245℃以下である、請求項13に記載の不織布。
【請求項19】
請求項1に記載の方法で製造された不織布の一面に、ニードル(needle)を利用してカーペット原糸を植え付ける段階を含む、カーペットの製造方法。
【請求項20】
請求項13に記載の不織布、および前記不織布に植え付けられた原糸を含む、カーペット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年12月30日付の韓国特許出願第10-2020-0187593号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、不織布、カーペットおよびその製造方法に関する。具体的には、本発明は、スパンボンド不織布、カーペットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カーペットは、気泡紙用不織布にカーペット糸(BCF yarn)を植え付けるタフティング工程を経て製造される。そして、不織布(気泡紙)およびカーペットが該製造工程で受ける外力(例えば物理的圧力または熱)は相当である。
【0004】
例えば、不織布の製造工程において糸を製造する段階では熱、引張力、冷却などの外力が加わり、不織布ウェブを結合(例えばウェブ形態の固定)させるためには高温および圧力が必要である。また、タフティング工程においてはニードルにより不織布に穴あきが発生して損傷を受け、バックコーティング工程においては加熱および冷却が求められる。
【0005】
このような製造工程は、不織布およびカーペットに潜在応力を付与し、不織布およびカーペットの形態安定性および機械的物性を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、不織布およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、形態安定性が改善された不織布およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、機械的物性に優れた不織布およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、形態安定性に関する評価および予測が定量的に可能な不織布を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、製造工程中の不織布の潜在応力指数を調節および評価(または確認)するように、不織布の形態安定性を定量的に評価および予測できる不織布の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、不織布およびこれを含むカーペットを提供することにある。
【0012】
本発明の上記目的およびその他の目的は、以下で詳細に説明する本発明によって全て解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る一例において、本発明は、不織布を製造する方法に関する。具体的には、前記方法は、長繊維スパンボンド不織布を製造する方法に関する。
【0014】
本発明によれば、前記方法は、ウェブを結合させ(例えばウェブ形態の固定)、油剤を付与した後、潜在応力を緩和するために熱を加える段階を含む。より具体的には、前記方法は、
融点Tを有する高融点ポリエステル、および前記融点Tより低い融点Tを有する低融点ポリエステルを溶融紡糸してウェブを製造する第1段階と、
前記ウェブを結合させる第2段階と、
前記結合したウェブに油剤を付与する第3段階と、
油剤が付与された不織布の潜在応力指数が5.00以下となるように熱を加える第4段階と、を含む。前記方法は、不織布に残っている潜在応力を効果的に減少させることができる。
【0015】
実験的に確認した結果、不織布の重量が低い場合、応力値は相対的に低くなる傾向があり、高重量の不織布の場合には応力の高い傾向がある。しかし、相対的に低い応力を示すからといって必ずしもカールの発生程度が少ないわけではない。したがって、不織布の形態安定性に影響を及ぼす重量(秤量)と応力値の両方を考慮することが、不織布の製造段階で最終製品であるカーペットのカールの発生程度を予測し、カールの発生を低減するのに有意である。
【0016】
そこで鋭意研究の結果、本発明者は油剤が付与された不織布に潜在応力指数が5.00以下に調節されるように熱を加える場合、不織布およびそれから製造されたカーペットの機械的物性(および均一性)と形態安定性を同時に確保できることを確認して、本発明を完成した。
【0017】
前記潜在応力指数は、実験例で後述のように、DIN 53369に従って測定された不織布の応力を不織布の単位重量(g/m)で割った値である。具体的には、前記潜在応力指数は、DIN 53369により180℃の温度で不織布を5分間以内に露出させ、前記不織布を約1分間常温に冷却した後、測定された冷却応力(cooling stress)(cN)を不織布の単位重量(g/m)で割ったもので、無次元の定数として取り扱われる。場合によっては、前記不織布の熱処理時に応力(熱応力)を測定することができる。この時、不織布の180℃の熱に対する露出時間は4分間以内、3分間以内または2分間以内であり得る。
【0018】
このように、本発明の方法は、不織布の製造工程中の不織布の潜在応力指数を調節する段階を含み、これによって当該段階で不織布の潜在応力を数値として評価(または確認)するため、不織布の形態安定性を改善できる工程を定量的に評価および行うことができる。したがって、不織布が有する形態安定性に関する予測および評価を定量的に行うこともできる。
【0019】
一方、本明細書で言及される物品、物品の特性および物品を製造するための工程条件に関連してこれらが熱または温度に影響を受ける場合、特に明記しない限り、前記熱または温度は常温であり得る。この時、「常温」とは、特に減温または加温しない状態の温度を意味し、例えば、15~30℃の範囲内の温度を意味する。
【0020】
以下、本発明の製造方法に関する各段階を詳しく説明する。
【0021】
前記方法は、融点Tを有する高融点ポリエステル、および前記融点Tより低い融点Tを有する低融点ポリエステルを溶融紡糸してウェブを製造する第1段階を含む。
【0022】
前記ウェブの形態は特に限定されない。例えば、前記ウェブは等方性または非等方性の形態であり得る。
【0023】
一例として、前記方法は、高融点ポリエステル糸80~92重量%および低融点ポリエステル糸8~20重量%を含むウェブを製造することができる。この時、用語「糸」はフィラメントという用語と混用することができる。
【0024】
具体的には、前記低融点ポリエステル糸の含有量の下限は、例えば、8.5重量%以上、9.0重量%以上、9.5重量%以上、10.0重量%以上、10.5重量%以上、11.0重量%以上、11.5重量%以上、12.0重量%以上、12.5重量%以上、13.0重量%以上、13.5重量%以上、14.0重量%以上、14.5重量%以上、15.0重量%以上、15.5重量%以上、16.0重量%以上、16.5重量%以上、17.0重量%以上、17.5重量%以上または18.0重量%以上であり得る。そして、前記低融点ポリエステル糸の含有量の上限は、例えば、19.5重量%以下、19.0重量%以下、18.5重量%以下、18.0重量%以下、17.5重量%以下、17.0重量%以下、16.5重量%以下、16.0重量%以下、15.5重量%以下、15.0重量%以下、14.5重量%以下、14.0重量%以下、13.5重量%以下、13.0重量%以下、12.5重量%以下、12.0重量%以下、11.5重量%以下、11.0重量%以下、10.5重量%以下、または10.0重量%以下であり得る。熱接着剤としての機能を果たす低融点ポリエステルの含有量が上記の範囲未満である場合、熱接着効果が十分でない。そして、低融点ポリエステルの含有量が上記の範囲を超える場合、繊維間の接触程度が増加しながら繊維間の移動が制約される。これにより、タフティング工程でニードルが不織布(または気泡紙)を貫通する場合、繊維の損傷程度が激しくなり、不織布の引張強度の特性が低下する。
【0025】
一例として、前記方法によれば、纎度が7.0~10.0デニールの前記高融点ポリエステル糸を含むウェブを製造することができる。前記高融点ポリエステル糸の纎度が上記の範囲未満の場合、フィラメントが細く、単位面積当たりのフィラメント本数が多いので、タフティング工程でフィラメント破損が発生し、製品の品質(例えば均一性)が低下する。また、前記高融点ポリエステル糸の纎度が上記の範囲を超える場合、フィラメントの冷却が不足して均一な形態の製品を製造することが難しく、タフティング工程でBCFヤーン(yarn)の高さ均一性が低下する。
【0026】
一例として、前記方法によれば、纎度が2.0~5.0デニールの前記低融点ポリエステル糸を含むウェブを製造することができる。低融点ポリエステル糸の纎度が上記の範囲未満である場合紡糸性が不良であり、上記の範囲を超える場合、フィラメント同士が互いに付着するバンドル(bundle)現象により製品の品質(例えば均一性)が低下する。
【0027】
一例として、前記方法によれば、纎度が7.0~10.0デニールの前記高融点ポリエステル糸、および纎度が2.0~5.0デニールの前記低融点ポリエステル糸を含むウェブを製造することができる。
【0028】
前記纎度は、例えば、紡糸時に使用される口金の紡糸口径および紡糸時の吐出量などを調節して確保することができる。
【0029】
一例として、前記方法によれば、前記低融点ポリエステル糸の本数Nに対する前記高融点ポリエステル糸の本数N(フィラメントの本数)の比(N/N)が2.0~5.0の範囲であるウェブを製造することができる。具体的には、前記比(N/N)の下限は、例えば、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上または2.5以上であり、その上限は例えば、4.5以下、4.0以下、3.5以下、または3.0以下であり得る。前記比が上記の範囲を超える場合、つまり、高融点成分が低融点成分より過度に多い場合、フィラメント間のボンディングポイント(bonding point)が不足して十分な強度を付与することが難しい。反面、前記比が上記の範囲未満である場合、ボンディングポイント(bonding point)が多くなり、フィラメント間の自由度(例えば繊維間移動)が制限されるが、これは、例えば、タフティング工程で繊維の損傷をもたらすことができる。
【0030】
一例として、前記高融点ポリエステルの融点Tは250℃以上であり得る。具体的には、前記高融点ポリエステルの融点Tの下限は、例えば、255℃以上、260℃以上、265℃以上または270℃以上であり得る。前記高融点ポリエステルの融点Tの上限は特に限定されないが、例えば、290℃以下、285℃以下、280℃以下、275℃以下、270℃以下、265℃以下、または260℃以下であり得る。
【0031】
一例として、前記低融点ポリエステルの融点Tは250℃未満であり得る。具体的には、前記低融点ポリエステルの融点Tの上限は、例えば、245℃以下、240℃以下、235℃以下、230℃以下、225℃以下、220℃以下、215℃以下、210℃以下、205℃以下、200℃以下、195℃以下、180℃以下、175℃以下、170℃以下、165℃以下、160℃以下、または155℃以下であり得る。そして、その下限は、例えば、150℃以上、155℃以上、160℃以上、165℃以上、170℃以上、175℃以上、180℃以上、185℃以上、190℃以上、195℃以上、200℃以上、205℃以上、210℃以上、215℃以上、220℃以上、225℃以上または230℃以上であり得る。前記低融点ポリエステルの融点温度が上記の範囲未満である場合、不織布に関連する工程中に加わる熱によって低融点ポリエステル成分が溶けやすく、これによって不織布(または気泡紙)の破断および熱収縮が発生しやすい。また、前記低融点ポリエステルの融点温度が上記の範囲を超える場合、不織布の柔軟性が低くなり、かつカーペットの製造時に使用されるコーティング樹脂などとの伸び差が大きくなり、これはカーペットの使用期間が経過するにつれてカーペット縁の反り上がりが激しくなる問題が生じる。
【0032】
一例として、前記高融点ポリエステルの固有粘度(IV)は0.640以上であり得る。例えば、前記高融点ポリエステルの固有粘度の下限は、例えば、0.645以上または0.650以上であり得る。その上限は特に限定されないが、例えば、0.700以下であり得る。
【0033】
一例として、前記低融点ポリエステルの固有粘度(IV)は0.725以上であり得る。具体的には、前記低融点ポリエステルの固有粘度の下限は、例えば、0.750以上、0.800以上、0.850以上または0.900以上であり得る。その上限は特に限定されないが、例えば、0.950以下であり得る。
【0034】
前記高融点および低融点ポリエステルに関連して、ポリエステルの種類は特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)、ポリナフタレンテレフタレート(polynaphthalene terephthalate)などのポリエステルを使用することができる。具体的には、上記に列挙したポリエステルのうちの少なくとも1つ以上をポリエステル成分としてウェブに含むことができる。
【0035】
一例として、前記低融点ポリエステルは共重合ポリエステルであり得る。例えば、前記低融点ポリエステルは、アジピン酸が共重合されたポリエステル、イソフタル酸が共重合されたポリエステル、またはアジピン酸とイソフタルが共重合されたポリエステルであり得る。これら共重合体は、その重合過程でアジピン酸(adipic acid)やイソフタル酸(isophthalic acid)などの共重合単量体を添加する方式で製造することができる。
【0036】
一例として、前記紡糸は、高融点ポリエステルの融点Tより高い温度(例えば、260℃以上の温度)で行うことができる。このような紡糸は、公知の装置を利用して行うことができる。
【0037】
特に限定されないが、前記紡糸は3500~6000m/minの速度範囲で行うことができる。
【0038】
一例として、前記2種のポリエステルは紡糸口金の同一または異なるノズルから各ホール(hole)を介して紡糸され同時に冷却され、その結果として固化される。冷却方式は特に限定されず、例えば、適切な温度の冷却風や大気温度(常温)を利用して行うことができる。
【0039】
一例として、前記フィラメントは所定の延伸比で延伸することができる。例えば、冷却されたフィラメントは所定の紡糸速度で延伸することができ、各フィラメントは一定の間隔で分繊が行われる。
【0040】
前記方法は、前記ウェブを結合させる第2段階を含む。具体的には、前記第2段階は、ウェブに熱を加えてウェブを結合させる段階であってもよい。当該段階によってウェブが結合され、いわゆる形態が固定された不織布が得られる。
【0041】
ウェブを結合させるために前記ウェブに熱を加えることは、公知の方法により行うことができる。例えば、ロール(roll)(例えば、カレンダーロールまたはエンボスロール)またはローラ(roller)や熱風(HAT:hot air through)が用いられる。この時、加圧と共に行うこともできる。ロールの形態、熱風を加える方法およびそれぞれの熱結合温度を維持(またはウェブに熱を提供)する手段または方法は公知の技術から当業者が適切に選択することができる。
【0042】
一例として、前記方法は、第1熱結合温度Tを有するロールにウェブを通過させ、前記ロールを通過したウェブに第2熱結合温度Tを加えてウェブを結合することができる。つまり、具体的には、前記第2段階は、第1熱結合温度Tを維持するロールにウェブを通過させ、ロールを通過したウェブに熱風による第2熱結合温度Tを加える方式で行うことができる。この時、第1熱結合温度Tは、第2熱結合温度T以下の温度であり得る。特に限定されないが、前記ウェブが2個のロールの間を通過することができ、この場合、2個のロールの間でウェブに対する加圧が行われる。
【0043】
一例として、前記熱風による第2熱結合温度Tは、前記第1熱結合温度Tと同じであるか、またはそれより高くてもよい。
【0044】
一例として、前記第1熱結合温度Tは、120~190℃の範囲であり得る。当該温度で不織布の適切な形態安定性を付与することができる。
【0045】
一例として、前記熱風による第2熱結合温度Tは、140~240℃の範囲であり得る。当該温度で不織布の適切な形態安定性を付与することができる。
【0046】
一例として、前記第2熱結合温度Tは、前記第1熱結合温度Tより高くてもよい。具体的には、前記第1熱結合温度Tと前記第2熱結合温度Tとの温度差は20~60℃の範囲であり得る(T>T)。当該温度で不織布の適切な形態安定性を付与することができる。
【0047】
前記方法は、結合したウェブ(例えば不織布)に油剤を付与(コーティング)する第3段階を含む。
【0048】
前記油剤は、ウェブ(不織布)またはこれを形成するフィラメント表面にその皮膜を形成することができる。前記皮膜は、続くタフティング工程でニードル(needle)の貫通時に発生するニードルと不織布との間の摩擦を低減することができるので、ウェブまたはこれを形成する繊維の損傷を防止することができる。また、油剤皮膜を介して摩擦による発熱が減少するので、ニードルの寿命を延ばすこともできる。
【0049】
一例として、前記油剤は、不織布の総重量100重量%に対して0.05重量%以上の含有量になるように前記結合したウェブ(またはこれを形成するフィラメント)に付与(コーティング)することができる。この時、油剤含有量の基準となる不織布の総重量とは、例えば、第3段階で油剤が付与された不織布の重量、前記ウェブ結合段階を経た不織布の重量、または後述する第4段階を行って製造された不織布の重量であり得る。具体的には、前記油剤の含有量の下限は、例えば、0.1重量%以上、0.15重量%以上、0.20重量%以上、0.25重量%以上、0.30重量%以上、0.35重量%以上、0.40重量%以上、0.45重量%以上または0.50重量%以上であり得る。そして、前記油剤の含有量の上限は、例えば、5.0重量%以下、4.5重量%以下、4.0重量%以下、3.5重量%以下、3.0重量%以下、2.5重量%以下、2.0重量%以下、1.5重量%以下、または1.0重量%以下であり得る。油剤の含有量が上記の範囲未満の場合、油剤の含有量が不足して油剤が不織布を形成するフィラメント内部に均一に侵入できず、十分な油剤皮膜が形成されにくく、その結果、タフティング工程中にフィラメントが損傷し得る。また、少ない含有量の油剤を使用する場合、タフティング性が悪くなり、BCFヤーン(yarn)が抜けることになる。そして、油剤の含有量が上記の範囲を超える場合、滑りが増加して巻取り工程に適さず、テンション(tension)制御が難しい。さらに、過剰の油剤はタフティング工程に使用されるニードルバーに粘着することになり、ニードルバーに粘着した油剤上に粉塵などの異物が残ってしまい、タフティング工程でカーペット糸が均一な間隔で植え付けられることを妨害することがある。
【0050】
使用可能な油剤の種類は特に限定されない。例えば、前記油剤としては、シリコーン系油剤またはエステル系油剤を使用することができる。
【0051】
前記方法は、前記結合したウェブまたは油剤が付与された不織布の潜在応力指数が5.00以下となるように熱を加える第4段階を含む。本発明者は、潜在応力指数が5.00を超える場合には製品のカールの程度が顕著となり形態安定性が良くないことを後述する実験例で確認して、実験的に確認した。前記潜在応力指数はDIN 53369により180℃の温度で不織布を5分間以内に露出させ、その後、前記不織布を常温で約1分間冷却した後、測定された冷却応力(cooling stress)(cN)を不織布の単位重量(g/m)で割って計算することができる。
【0052】
一例として、前記結合したウェブ(不織布)の潜在応力指数は、MD(machinedirection or mechanical、機械方向)で5.00以下であり得る。
【0053】
一例として、前記結合したウェブ(不織布)の潜在応力指数は、CD(cross direction、垂直方向)で5.00以下であり得る。
【0054】
一例として、結合したウェブ(不織布)の潜在応力指数は、MDおよびCDで5.0以下であり得る。
【0055】
具体的には、MDおよび/またはCDにおいて、前記潜在応力指数の上限は例えば、4.9以下、4.8以下、4.7以下、4.6以下、4.5以下、4.4以下、4.3以下、4.2以下、4.1以下、または4.0以下であり得る。そして、前記潜在応力指数の下限は例えば、1.5以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上または3.5以上であり得る。
【0056】
一例として、前記熱を付与して(潜在)応力を弛緩する段階は、所定の温度Tで行うことができる。具体的には、前記熱を付与して応力を弛緩する段階は、下記関係式1を満たす温度Tで行うことができる。
【0057】
[関係式1]
20℃≦低融点ポリエステルの融点T-温度T≦60℃
【0058】
つまり、低融点ポリエステルの融点Tは温度Tより大きく、低融点ポリエステルの融点Tと温度Tの差は20~60℃の範囲であり得る。
【0059】
関係式1を満たす温度Tの熱が加わりながら前記第4段階が行われる場合、コーティングされた油剤が乾燥されるだけでなく、不織布を製造する過程(例えば、ウェブを結合するための熱結合段階など)で不織布(またはウェブ)に付与される潜在応力が効果的に減少する。これにより、潜在応力により現れる製品の形態不安定性(例えば、カールまたは縁の反り上がり)を改善することができる。
【0060】
具体的には、前記温度差(△T=T-T)の下限は例えば、25℃以上、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上または55℃以上であり、その上限は例えば、55℃以下、50℃以下、45℃以下、40℃以下、35℃以下、30℃以下、または25℃以下であり得る。前記温度差(△T=T-T)が上記の範囲未満である場合、不織布のスチフネス(stiffness)が増加してタフティング性能が低下し、不織布の幅収縮が増加し、不織布の初期の物性変形が激しくなり、不織布をタイルカーペット気泡紙として使用しにくい。特に、前記温度差(△T=T-T)未満の条件が与えられる場合、不織布の引裂強力が顕著に減少し、タフティング後にタイルカーペット気泡紙が破れる問題が生じる。逆に、前記温度差(△T=T-T)が上記の範囲を超える場合には潜在応力を効果的に減少しにくい。
【0061】
前記関係式1を満たす温度Tの熱を付与する方法は特に限定されない。例えば、シリンダードライヤーを使用するかまたは熱風を加える方法などの公知の手段や方法を、前記関係式1を満たす温度Tを提供するために考えられる。
【0062】
一例として、前記熱を付与して応力を弛緩する工程が行われる温度Tは、下記関係式2を満たすことができる。不織布が製造される全工程を考慮すると、前記温度Tが関係式2を満たすことが潜在応力を緩和するのに有利である。
【0063】
[関係式2]
第1熱結合温度T≦温度T≦第2熱結合温度T
【0064】
一例として、前記熱を付与して応力を弛緩する工程は、前記温度Tで10~130秒間行うことができる。例えば、前記温度Tで熱を付与して応力を弛緩する工程が行われる時間は20秒以上、30秒以上、40秒以上、50秒以上、60秒以上、70秒以上、80秒以上、90秒以上、100秒以上、110秒以上または120秒以上であり得る。そして、その上限は例えば、120秒以下、110秒以下、100秒以下、90秒以下、80秒以下、70秒以下、60秒以下、50秒以下、40秒以下、または30秒以下であり得る。前記時間が上記の範囲未満である場合、不織布が十分に弛緩しないので再熱処理による効果を十分に得られない。また、前記時間が上記の範囲を超える場合、不織布またはこれから製造される気泡紙の物性に変形が加わるだけでなく、生産設備が過度に大きくなり、生産性が減少し、製造原価が増加する。
【0065】
一例として、前記方法により製造された不織布の厚さは0.20~0.60mmの範囲内であり得る。具体的には、前記不織布の厚さ下限は例えば、0.25mm以上、0.30mm以上、0.35mm以上または0.40mm以上であり、その上限は例えば、0.55mm以下、0.50mm以下、0.45mm以下、または0.40mm以下であり得る。
【0066】
一例として、前記方法により製造された不織布の単位重量、つまり、秤量は70~140g/mであり得る。具体的には、前記結合したウェブの秤量の下限は、例えば、75g/m以上、80g/m以上、85g/m以上、90g/m以上、95g/m以上、100g/m以上または105g/m以上であり、その上限は例えば、135g/m以下、130g/m以下、125g/m以下、120g/m以下、115g/m以下、110g/m以下、105g/m以下、100g/m以下、95g/m以下、または90g/m以下であり得る。上記の範囲を満たす場合、適正レベルの軽量性および機械的物性を確保することができる。
【0067】
一例として、前記方法により製造された不織布は、上述した厚さおよび秤量を同時に有し得る。例えば、前記不織布は0.30~0.40mmの厚さおよび85~95g/mの秤量を有し得る。または、前記不織布は、例えば、0.35~0.55mmの厚さおよび90~120g/mの秤量を有し得る。
【0068】
他の一例において、本発明は不織布に関する。前記不織布は、上述した製造方法により提供することができる。
【0069】
前記不織布は、互いに融着された高融点ポリエステル糸および低融点ポリエステル糸;並びに油剤を含み、潜在応力指数が5.00以下を満たすことができる。具体的には、前記互いに融着された高融点ポリエステル糸および低融点ポリエステル糸は不織布(またはウェブ)を形成し、前記油剤は、各ポリエステル糸または不織布(またはウェブ)上にコーティングされて皮膜を形成することができる。そして、前記不織布が有するMDおよび/またはCDでの潜在応力指数は、例えば、5.0以下であり得る。具体的な潜在応力指数は、製造方法に関する内容で説明した通りである。
【0070】
一例として、結合したウェブ(不織布)の潜在応力指数はMDおよびCD方向で5.0以下であり得る。具体的な潜在応力指数は、製造方法に関する内容で説明した通りである。
【0071】
一例として、前記不織布の厚さは0.20~0.60mmの範囲内であり得る。具体的な厚さは、製造方法に関する内容で説明した通りである。
【0072】
一例として、前記不織布の単位重量、つまり、秤量は70~140g/mであり得る。具体的な不織布の秤量は、製造方法に関する内容で説明した通りである。
【0073】
一例として、前記不織布は、前記高融点ポリエステル糸80~92重量%および低融点ポリエステル糸8~20重量%を含んでもよい。具体的な成分間重量比率は、製造方法に関する内容で説明した通りである。
【0074】
一例として、前記不織布において、前記低融点ポリエステル糸の本数Nに対する前記高融点ポリエステル糸の本数N(フィラメントの本数)の比(N/N)は2.0~5.0の範囲であり得る。具体的な本数比は、製造方法に関する内容で説明した通りである。
【0075】
前記不織布に含まれる前記高融点ポリエステル糸および低融点ポリエステル糸の纎度は、製造方法に関する内容で説明した通りである。
【0076】
前記高融点ポリエステル糸および低融点ポリエステル糸にそれぞれ含まれるポリエステルの融点は、製造方法に関する内容で説明した通りである。
【0077】
前記高融点ポリエステル糸および低融点ポリエステル糸に含まれるポリエステルの種類は、製造方法に関する内容で説明した通りである。
【0078】
その他に前記不織布に含まれる構成、例えば、前記不織布の製造に使用される成分およびその特性に関する説明は、製造方法に関する内容で説明したので、省略する。
【0079】
さらに他の一例において、本発明は、カーペットの製造方法に関する。前記方法は、上述した方法により製造された不織布の一面に、ニードル(needle)を利用してカーペット原糸を植え付ける段階を含むことができる。
【0080】
具体的には、前記方法は、
融点Tを有する高融点ポリエステル、および前記融点Tより低い融点Tを有する低融点ポリエステルを溶融紡糸してウェブを製造する第1段階と、
前記ウェブを結合させる第2段階と、
前記結合したウェブ(例えば不織布)に油剤を付与する第3段階と、
前記油剤が付与された不織布の潜在応力指数が5.00以下となるように熱を加える第4段階と、
ニードル(needle)を利用して不織布の一面にカーペット原糸を植え付ける第5段階と、を含む。カーペット原糸は、例えば、BCFヤーンであり得る。
【0081】
前記カーペットの製造方法に関連して、前記第1~第4段階などに関する説明は上述した通りである。
【0082】
前記第5段階は、いわゆるタフティング(Tufting)工程と呼ばれる段階であって、公知の方法および装置を使用して行うことができる。例えば、前記タフティングは、ループ(loop)形態で所定のゲージ(例えば、1/10ゲージ)からなる。そして、タフティング工程は、カーペット原糸が所定の纎度(例えば、500~1500デニール)および高さ(例えば、3.0~0.7mm)を有するように行われる。タフティング工程によって前記カーペット原糸は不織布の一面で視認できるように植え付けられる。
【0083】
一例として、前記カーペットの製造方法は、後面に樹脂コーティング液を塗布する第6段階をさらに含むことができる。カーペットの形態安定性を付与する当該工程は、いわゆるバックコーティング(back coating)工程と呼ばれるが、この時、後面とは、例えば、カーペット原糸が視認される面の反対面を意味する。場合によっては、前記バックコーティング工程においては樹脂成分と共にガラスマット(glass mat)を使用することができ、コーティング液を乾燥させるために熱風を加えることができる。
【0084】
バックコーティング用コーティング液に含まれる樹脂の種類は特に限定されない。例えば、前記コーティング液はPVC、PE、EVAまたはSBRなどの樹脂成分を含み得る。このようなコーティング液またはそれから得られたバックコーティング層は1層以上で形成され得る。
【0085】
一例として、前記方法は、後面に塗布された樹脂コーティング液が乾燥された後、得られたカーペットを一定の大きさに切断する第7段階をさらに含み得る。当該段階を経た後、タイルカーペット(tile carpet)を製造することができる。
【0086】
製造されたタイルカーペットの4つの角部が反り上がるカール(curling)が発生することがある。カールの程度が激しい場合、タイルカーペットの施工が不可能であることもあるため、カールの程度を減少させることが求められる。このような試みは関連技術分野では続いてきた。上述のように、本発明では不織布の製造工程中に不織布に残っている潜在応力を定量的に確認および評価することによって、カーペットのカールの問題を効率的に管理および防止することができる。
【0087】
さらに他の一例において、本発明は、カーペット(carpet)に関する。前記カーペットは上述した特性の不織布、および前記不織布に植え付けられた原糸を含む。前記カーペットは、角部が反り上がるカールの問題が改善されたものであり得る。
【0088】
一例として、前記カーペットは、タイルカーペット(tile carpet)であり得る。
【0089】
その他に前記カーペットの構成または製造する方法などは上述の通りであるので、省略する。
【発明の効果】
【0090】
本発明によれば、カールの問題が改善された、形態安定性に優れた不織布、カーペットおよびその製造方法を提供することができる。また、本発明は、形態安定性に関する評価および予測が定量的に可能な不織布およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下、本発明の具体的な実施形態により、本発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施形態は本発明の例示として提示したものに過ぎず、本発明の権利範囲はこれによって限定されるものではない。
【0092】
<実施例および比較例>
実施例1
固有粘度(IV)が0.645であり、溶融温度が254℃であるPET原料(第1成分原料);および固有粘度(IV)が0.920であり、溶融温度が171℃であるCo-PET原料(第2成分原料)(共重合単量体としてアジピン酸を使用して製造されたCo-PET)を準備した。そして、スパンボンドの製造装置を用いて5,000m/minの紡糸速度および270℃の紡糸温度の条件で前記原料をそれぞれ紡糸してフィラメント繊維を製造した。この時、第1成分PETの纎度は8.5De’に調節し、第2成分Co-PETの纎度は3.6De’に調節し、前記第1成分PETと第2成分Co-PETの重量比率(wt%)は85:15に調節した。また、第1フィラメント本数Nと第2フィラメント本数Nとの比(N/N)は2.3に調節した。
【0093】
移動するコンベヤネット(net)上に紡糸されたフィラメント繊維をウェブ形態に積層した後、カレンダー温度140℃で1次結合させ、HAT熱風温度175℃で2次結合させてスパンボンド不織布を製造した。次に、製造された不織布全体重量100重量%に対して油剤の含有量が約0.5wt%となるように不織布に油剤をコーティングした。油剤がコーティングされた不織布の秤量は約90gsmであり、厚さは約0.34mmである。油剤のコーティング後、後述する引張強度、引裂強力および潜在応力指数を測定した。
【0094】
製造された不織布(カーペット気泡紙)を別途のシリンダー形態の熱処理装置に投入し、30m/minの速度で移動させながら150℃の温度で20秒間再熱処理した。再熱処理後、後述する引張強度、引裂強力、収縮率および潜在応力指数を測定した。
【0095】
そして、不織布(カーペット気泡紙)に対してタフティングを行った(1/10ゲージ、カーペット原糸(BCF)1240De’、Pile原糸の高さ4.0mm)。その後、カーペット原糸がタフティングされた気泡紙に、PVC造液とガラスマット(Glass Mat)を6.4kg/mだけコーティングしてタイルカーペットを製造した。最終製造されたタイルカーペットについては、後述のように、(Aachen評価を経て)タイルカーペットの4つの角部に対するカール値を測定した。
【0096】
実施例2
再熱処理を10m/minの速度で60秒間行ったことを除いて、実施例1と同様の過程を経て不織布およびカーペットを製造した。
【0097】
実施例3
第2成分原料であるCo-PETの融点および固有粘度(IV)がそれぞれ226℃および0.820であり、第2成分原料の紡糸温度が280℃であり、カレンダー温度が180℃であり、HAT熱風温度が205℃であり、再熱処理を30m/minの速度で205℃の温度で20秒間行ったことを除いて、実施例1と同様の過程を経て不織布およびカーペットを製造した。
【0098】
実施例4
再熱処理を10m/minの速度で60秒間行ったことを除いて、実施例3と同様の過程を経て不織布およびカーペットを製造した。
【0099】
実施例5
再熱処理温度を175℃に設定したことを除いて、実施例4と同様の過程を経て不織布およびカーペットを製造した。
【0100】
比較例1
再熱処理を120m/minの速度で5秒間行ったことを除いて、実施例1と同様の過程を経て不織布およびカーペットを製造した。
【0101】
比較例2
再熱処理を160℃で行ったことを除いて、実施例1と同様の過程を経て不織布およびカーペットを製造した。
【0102】
比較例3
再熱処理を4m/minの速度で、150℃の温度で150秒間行ったことを除いて、実施例1と同様の過程を経て不織布およびカーペットを製造した。
【0103】
比較例4
再熱処理を120m/minの速度で、205℃の温度で5秒間行ったことを除いて、実施例3と同様の過程を経て不織布およびカーペットを製造した。
【0104】
比較例5
再熱処理を220℃の温度で行ったことを除いて、実施例3と同様の過程を経て不織布およびカーペットを製造した。
【0105】
比較例6
再熱処理を4m/minの速度で、205℃の温度で150秒間行ったことを除いて、実施例3と同様の過程を経て不織布およびカーペットを製造した。
【0106】
比較例7
再熱処理を5m/minの速度で、100℃の温度で120秒間行ったことを除いて、実施例3と同様の過程を経て不織布およびカーペットを製造した。
【0107】
実施例および比較例の不織布の製造工程を比較すると以下の通りである。
【0108】
【表1】
【0109】
<物性評価方法>
実施例および比較例で製造された不織布および/またはカーペットに対して下記物性を評価し、その結果を表2および表3に記載した。
【0110】
1.引張強度(kgf/5cm)
KS K 0521(Cut Strip)により引張強度を測定した。具体的には、実施例および比較例のスパンボンド不織布を20cm×5cmの大きさの試験片で製造し、前記試験片に200mm/minの引張速度を加えながら万能引張試験装置(Instron)を用いてMDおよびCD方向それぞれに対する引張強度を測定した。このような引張強度は、潜在応力指数の測定のために再熱処理の前後にそれぞれ測定した。
【0111】
2.引裂強力(kgf)
KS K 0536(Single Tongue)により引裂強力を測定した。具体的には、実施例および比較例のスパンボンド不織布を7.6cm×20cmの大きさの試験片で製造し、前記試験片に300mm/minの引張速度を加えながら万能引張試験装置(Instron)を用いてMDおよびCD方向それぞれに対する引裂強力を測定した。このような引裂強力は、潜在応力指数の測定のために再熱処理の前後にそれぞれ測定した。
【0112】
3.潜在応力指数
実施例および比較例のスパンボンド不織布を5.0cm×70cmの大きさの試験片で製造し、DIN 53369(Thermal shrinkage and shrinkage force)に従って潜在応力を測定した。具体的には、DIN 53369によると、重さ50gの荷重で不織布を固定した後、180℃のチャンバー内で2分間熱応力(cN)を測定することができるが、熱応力値が測定される2分間の時間が経過した後、大気中に不織布を1分間露出させて冷却応力(潜在応力)を測定した。そして、測定された冷却応力(cN)を試験片の単位重量(g/m)で割って、潜在応力指数を求めた。潜在応力指数は無次元の定数として取り扱う。
【0113】
このような引張強度は、潜在応力指数の測定のための再熱処理の前後にそれぞれ測定した。
【0114】
4.幅収縮率(%)
カーペット気泡紙として使用される一般的な不織布の幅である3.8mを基準として再熱処理前と再熱処理後の変化率を収縮率で示した。そして、これを実施例および比較例で製造された不織布に対して計算した。
【0115】
幅収縮率(%)
=[(再熱処理前の不織布の幅)-(再熱処理後の不織布の幅)]/(再熱処理前の不織布の幅)×100
この時、再熱処理前の不織布の幅は3.8mmである。
【0116】
5.カール(Curling)(mm)
DIN EN986(Aachen Test)によりカールを測定した。具体的には、60℃のオーブン(oven)でタイルカーペット(50×50cm)を約30分間予熱し、界面活性剤が1wt%含まれている水に予熱されたタイルカーペットを約30分間浸漬した後、60℃のオーブンで24時間予熱処理を行った。そして、予熱処理されたタイルカーペットを48時間常温に放置した後、カール高さを測定した。この時、前記カールは、それぞれ4つの角部に対して測定されたカール高さの平均値である。
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
上記表2および表3により、実施例の条件で再熱処理を行い、潜在応力指数を5.0以下に調節する場合、比較例の場合より不織布の平均的な幅収縮率とカーペットのカールの程度を同時に減少できることが分かった。つまり、本発明によれば、形態安定性に優れた不織布およびカーペットを提供することができる。
【0120】
一方、再熱処理の前後の引張強度および引裂強力の変化程度を算術平均化して比較すると、本実施例による再熱処理が行われる場合、再熱処理の前と後の引張強度および引裂強力の変化が大きくないことが分かった。これは、本発明による再熱処理により機械的物性および形態安定性を同時に確保できることを意味する。
【国際調査報告】