(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】固定部と可動部との間の非接触電力伝送のための方法、電力供給回路、および電力供給回路を含む非接触接続システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20231220BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20231220BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536962
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2021086456
(87)【国際公開番号】W WO2022129504
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020000031361
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500200708
【氏名又は名称】マーポス、ソチエタ、ペル、アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MARPOSS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】ダビデ、カスタルディーニ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ、ルッジェーリ
(57)【要約】
固定部(14)と可動部(15)との間の非接触電力伝送のための方法と、固定部によって支持された一次コイル(20)を有する一次共振回路と、一次共振回路に面し、可動部によって支持された二次コイル(21)を有する二次共振回路とを備えた空気結合変圧器(19)を備える、本方法を実施するための電力供給回路(17)。一次共振回路は、一次電流(I1)を循環させる交流一次電圧(V1)を供給される。一次電流(I1)は、次に、二次電流(I2)を循環させる交流二次電圧(V2)を二次共振回路内で誘起する。共振条件の達成に影響を及ぼす電気的変数、例えば一次電圧の周波数(F)が、共振条件で動作するように調整される。固定部と可動部との間の距離(d)は、そのような電気的変数の値の関数として決定される。非接触接続システムが、固定部と可動部と電力供給回路とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部(14)によって支持された一次コイル(20)を有する一次共振回路と、前記一次共振回路に面し、可動部(15)によって支持された二次コイル(21)を有する二次共振回路とを備えた空気結合変圧器(19)を備える電力供給回路(17)を用いた、前記固定部(14)と前記可動部(15)との間の非接触電力伝送のための方法であって、
前記方法は、
-一次電流(
I1)を循環させる一次交流電圧(V
1)を前記一次共振回路に供給するステップであって、前記一次電流が、二次電流(I
2)を循環させる二次交流電圧(V
2)を前記二次共振回路内で誘起する、ステップと、
-前記一次電圧(V
1)が前記一次電流(I
1)と同相である共振条件の達成に影響を及ぼす少なくとも1つの電気的変数を調整するステップと、
-前記固定部(14)と前記可動部(15)との間の距離(d)を監視するステップと
を備え、前記方法は、前記固定部(14)と前記可動部(15)との間の前記距離(d)を監視するステップが、
-前記共振条件の達成に影響を及ぼす前記少なくとも1つの電気的変数の値を検出することと、
-前記固定部(14)と前記可動部(15)との間の前記距離(d)を、前記少なくとも1つの電気的変数の前記値の関数として決定することと
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記距離(d)を決定するステップが、前記固定部(14)と前記可動部(15)との間の前記距離(d)と、前記共振条件の達成に影響を及ぼす前記少なくとも1つの電気的変数の前記値とをリンクする実験法則を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電気的変数が前記一次電圧(V
1)の周波数(F)であり、前記共振条件が共振周波数(F
R)において達成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
-前記一次電圧(V
1)と前記一次電流(I
1)との間の位相シフト(Δφ)を検出するセンサデバイス(26)が、前記一次共振回路に接続され、
-コントローラ(27)が設けられ、前記コントローラ(27)は、前記一次電圧(V
1)と前記一次電流(I
1)との間の前記位相シフト(Δφ)を入力として受け取り、前記一次電圧(V
1)が前記一次電流(I
1)と同相である共振条件において動作するように前記一次電圧(V
1)の前記周波数(F)を調整するようにインバータ(22)を制御する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
共振周波数分割の場合、前記一次電圧(V1)の前記周波数(F)が、より低い周波数を有する共振ピークを検出し、それに追従するように調整される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電気的変数が、前記一次共振回路を基準とする全体的なインダクタンスである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記固定部(14)と前記可動部(15)との間の前記距離(d)は、前記電力供給回路(17)に結合された電気負荷(7)が最小電力消費を有するときに決定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工作機械(1)の回転スピンドル(3)に接続され、それと共に回転するバランス調整ヘッド(7)に電力を供給するための方法であって、前記固定部(14)および前記可動部(15)が、それぞれ、前記工作機械(1)のフレーム(2)および前記回転スピンドル(3)に取り付けられるように適合される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
固定部(14)と可動部(15)との間の電力の非接触伝送のための電力供給回路(17)であって、
-前記固定部(14)によって支持された一次コイル(20)を有する一次共振回路と、前記一次共振回路に面し、前記可動部(15)によって支持された二次コイル(21)を有する二次共振回路とを備えた空気結合変圧器(19)であって、前記一次共振回路が、一次電流(I
1)を循環させる一次交流電圧(V
1)を供給され、前記一次電流が、二次電流(I
2)を循環させる二次交流電圧(V
2)を前記二次共振回路内で誘起する、空気結合変圧器(19)と、
-前記一次電圧(V
1)が前記一次電流(I
1)と同相である共振条件の達成に影響を及ぼす少なくとも1つの電気的変数を調整するように構成されたコントローラ(27)と
を備え、前記電力供給回路は、それが、前記共振条件の達成に影響を及ぼす前記少なくとも1つの電気的変数の値を検出することと、前記固定部(14)と前記可動部(15)との間の距離(d)を、前記少なくとも1つの電気的変数の前記値の関数として決定することとを行うように構成された処理ユニットを用いた、前記固定部(14)と前記可動部(15)との間の前記距離(d)を測定するための測定システムを備えることを特徴とする、電力供給回路(17)。
【請求項10】
-前記一次共振回路に接続され、前記一次電圧(V
1)と前記一次電流(I
1)との間の位相シフト(Δφ)を検出するように適合されたセンサデバイス(26)と、
-直流で電力を受け取り、前記一次共振回路に前記一次交流電圧(V
1)を印加するインバータ(22)であって、前記コントローラ(27)は、前記一次電圧(V
1)と前記一次電流(I
1)との間の前記位相シフト(Δφ)を入力として受け取り、前記一次電圧(V
1)が前記一次電流(I
1)と同相である共振条件において動作するように前記一次電圧(V
1)の周波数(F)を調整するように前記インバータ(22)を制御するように適合された、インバータ(22)と
をさらに含む、請求項9に記載の電力供給回路(17)。
【請求項11】
-前記二次交流電圧(V
2)を対応する電圧(V
OUT)に変換する整流デバイス(24)と、
-一方の側において前記整流デバイス(24)に接続され、他方の側において電気負荷(7)に電力供給する電子DC-DC電力変換器(25)と
をさらに備える、請求項9または10に記載の電力供給回路(17)。
【請求項12】
前記一次共振回路が、前記一次コイル(20)に直列に接続された第1のコンデンサを備える、請求項9から11のいずれか一項に記載の電力供給回路(17)。
【請求項13】
前記二次共振回路が、前記二次コイル(21)に直列に接続された第2のコンデンサを備える、請求項9から12のいずれか一項に記載の電力供給回路(17)。
【請求項14】
工作機械(1)のための非接触接続システム(12)であって、請求項9から13のいずれか一項に記載の電力供給回路(17)を含み、前記工作機械の、それぞれ、フレーム(2)および回転スピンドル(3)に取り付けられるように適合された前記固定部(14)および前記可動部(15)を備える、非接触接続システム(12)。
【請求項15】
前記固定部(14)と前記可動部(15)との間に通信デバイス(18)をさらに備える、請求項14に記載の非接触接続システム(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送のための方法、および非接触接続システムの固定部と可動部との間の電力の非接触伝送のための電力供給回路に関する。
【0002】
本発明は、有利には、工作機械内の機械部品の機械加工を制御するためのシステムに適用され得、ここにおいて、非接触接続システムは、制御ユニットと、(少なくとも)砥石車を支持する回転スピンドルに取り付けられたバランス調整ヘッドとを通信させ、以下の説明は、このことを、一般性を失うことなく明示的に参照する。
【0003】
本発明は、バランス調整ヘッドなしに、ならびに、振動センサ、例えば音響センサ、および/または電力供給される必要がある可動部内の他のセンサもしくはデバイスを備える、制御システムにも適用され得る。
【背景技術】
【0004】
例えば、欧州特許第0690979号明細書、欧州特許第1870198号明細書および欧州特許第3134980号明細書に記載されているように、(少なくとも)砥石車を支持し、軸方向キャビティ内に収容されたバランス調整ヘッドを備えた、工作機械(特に研削盤)の回転スピンドル(ハブ)が知られている。バランス調整ヘッドは、回転軸に対して偏心した少なくとも1つのバランスマスを含み、その位置は、調整可能であり、電気モータによって制御される。
【0005】
一般に、バランス調整ヘッドは、砥石車とワークピースとの間または砥石車とドレッシング工具(ドレッサ)との間の接触によって引き起こされる超音波音響放射を検出するための振動センサ(すなわち、マイクロフォン)をも備える。振動センサによって生成された電気信号は、機械加工サイクルを制御するために(既知の方法で)使用される。
【0006】
スピンドルに取り付けられたバランス調整ヘッドと固定位置において配置された制御ユニットとの間でアナログおよびデジタル情報を伝送する双方向非接触通信システムがある。特に、通信システムは、デジタル制御信号をバランス調整ヘッドに送信するために(例えば、振動センサの読み取りをアクティブ化/非アクティブ化するために、またはバランスマスを移動させる電気モータを制御するために)制御ユニットによって使用され、デジタル診断信号および振動センサのアナログ読み取り値を制御ユニットに送信するためにバランス調整ヘッドによって反対方向に使用される。
【0007】
非接触電力伝送システムは、必要な電力供給をバランス調整ヘッドに提供する。一般に、電力伝送システムは、機械の固定部と一体の要素(固定子)に配置された一次コイルと、機械の可動部と一体の要素(回転子)、例えば回転スピンドルに配置された二次コイルとを有する、空気結合変圧器を備える。空気結合変圧器の2つのコイルの間には、(例えばスピンドルの熱膨張によりスピンドルが回転すると固定子が回転子に触れ、その両方が損傷するリスクを回避するために)小さすぎても、(空気結合変圧器が、大きすぎる空隙のために十分な電力を回転子に伝達することができなくなることを防止するために)大きすぎてもならない距離(通常、数ミリメートル、例えば1~8mm)がある。一般に、各バランス調整システムについての設計段階において、正しい動作のために遵守されなければならない固定子と回転子との間の距離の範囲(すなわち、空気結合変圧器の2つのコイル間の距離)が定義され得る。
【0008】
スピンドルが取り付けられた後に(一般に、保守または修理の後に)、固定子と回転子との間の距離は、設計段階において定義された範囲内にあることを保証するのに十分な精度で測定されなければならない。しかしながら、固定子と回転子との間の距離の手動測定は、外部の手動ゲージによるアクセスを阻止する保護ケーシングがあり得るので、実行するのが常に容易であるとは限らない。
【0009】
また、機械動作中に、固定子と回転子との間の距離を、設計段階において定義された範囲内にあることを保証するように、周期的におよび十分な精度で監視および測定することが有用である。実際には、回転子および固定子は、スピンドルの熱膨張により、設置段階において設定された条件よりも近くに移動し得る。または、摩耗、または異なるプロセスのための設備一新により砥石車が交換されると、砥石車支持は、異なる厚さを有し、回転子と固定子との間の距離の変化を引き起こし得る。
【0010】
これらの理由で、「非接触」電子測定デバイス(例えば、レーザ測定デバイス)または固定子と回転子との間の距離を測定することができる1つ以上のセンサが、固定子に設置され得る。しかしながら、この設置は、コストおよび寸法の増加をもたらし、利用可能な空間が極めて限られるいくつかの適用例において問題を引き起こすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第0690979号明細書
【特許文献2】欧州特許第1870198号明細書
【特許文献3】欧州特許第3134980号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、固定部と可動部、例えば回転部との間の非接触電力伝送のための方法と、そのような固定部と可動部との間の距離を容易に監視することを可能にする電力供給回路と、前記回路を含む非接触接続システムとを提供することであり、方法および回路は、十分な精度で、ならびにコストおよび空間の大幅な増加なしに距離を決定することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、添付の特許請求の範囲において定義されるように、非接触電力伝送のための方法、電力供給回路、およびそのような回路を含む非接触接続システムを提供する。
【0014】
特許請求の範囲は、本発明の実施形態を説明し、本明細書の不可欠な部分を形成する。
【0015】
本発明は、実施形態の非限定的な例を示す添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】フレームと、砥石車を支持し、バランス調整ヘッドを備えた回転スピンドルと、非接触接続システムとを備える工作機械を概略的に示す図である。
【
図2】
図1に示されている非接触接続システムの一部である、本発明による電力供給回路を概略的に示す図である。
【
図3】
図2に示されている電力供給回路に対応する、一次側を参照する等価な電気回路を概略的に示す図である。
【
図4】
図2の電力供給回路の空気結合変圧器の概略図である。
【
図5】接続システムの回転子と固定子との間の距離が変動するにつれて、
図2の電力供給回路における一次側を基準とするインダクタンスがどのように変動するかを示すグラフである。
【
図6】接続システムの回転子と固定子との間の距離が変動するにつれて、
図2の電力供給回路における共振周波数がどのように変動するかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1では、参照番号1は、全体として工作機械(特に研削盤)を示し、そのいくつかの構成要素のみが示されている。
【0018】
工作機械1はフレーム2を備え、フレーム2は、(それらの間に配置されたベアリングによって)回転可能に、回転軸4を中心に回転する回転スピンドル3を支持する。
【0019】
スピンドル3は、既知の図示されていない手段を使用して取り外し可能にスピンドル3に固定され、例えばコーンカップリングを備える、対応する砥石車ハブによって砥石車5を支持する。スピンドル3は、中心に軸方向開口部6を有する。バランス調整ヘッド7は、スピンドル3に接続され、それと共に回転することができ、より具体的には、バランス調整ヘッド7は軸方向開口部6に収容される。既知のタイプのバランス調整ヘッド7は、回転軸4に対して偏心した2つのバランスマス8と、バランスマス8の角度位置を調整するための相対的な電気モータ9とを備える。バランス調整ヘッド7には、音響センサ10、または振動センサも収容されている。
【0020】
一般に、バランス調整ヘッド7の機能は、砥石車5のバランスをとることであり(この動作は、砥石車5が交換されるときはいつでも、および砥石車5の摩耗の結果として必要であるとき、実行される)、バランス調整ヘッド7に収容された音響センサ10は、プロセス監視を実行することを可能にする。
【0021】
バランス調整ヘッド7は、バランス調整ヘッド7および音響センサ10の動作を制御する制御デバイス11を備える。
【0022】
非接触接続システム12が設けられ、2つの機能を有し、すなわち、非接触接続システム12は、バランス調整ヘッド7に電力を供給し、スピンドル3に取り付けられたバランス調整ヘッド7の制御システム11と、工作機械1のフレーム2に接続され、非接触接続システム12と工作機械1の数値制御(図示せず)との間に配置された制御ユニット13との間でアナログおよびデジタル情報を伝送するための双方向通信を可能にする。
【0023】
非接触接続システム12は、ケーブルによって制御ユニット13に接続された工作機械1のフレーム2に取り付けられた、固定部14、または固定子と、例えば、軸方向開口部6に沿って延びるコイル状電気ケーブル16によってバランス調整ヘッド7に接続されたスピンドル3に取り付けられた可動部、好ましくは回転部15、または回転子とを備える。
【0024】
さらに、非接触接続システム12は、バランス調整ヘッド7に電力を伝送する(固定子14に部分的に配置され、回転子15に部分的に配置された)電力供給回路17と、好ましくは(例えば、米国特許第5688160号明細書に記載されている代替案のうちの1つによる)光学タイプの(固定子14に部分的に配置され、回転子15に部分的に配置された)通信デバイス18とを備える。
【0025】
通信デバイス18は、(例えば、音響センサ10の読み取りをアクティブ化/非アクティブ化するための、またはバランス調整ヘッド7のバランスマス8を変位させる電気モータ9を制御するための)制御信号をバランス調整ヘッド7の制御デバイス11に送信するために、制御ユニット13によって使用され、診断信号、および/または音響センサ10によって提供され、スピンドルが受ける振動に関連する信号を制御ユニット13に伝送するために、バランス調整ヘッド7の制御デバイス11によって反対方向に使用される。
【0026】
図2に示されているように、電力供給回路17は、固定子14に配置されたインダクタンスL
1を有する一次コイル20と、回転子15に配置され、一次コイル20に磁気的に結合されたインダクタンスL
2を有する二次コイル21(すなわち、一次コイル20によって生成された磁場は、二次コイル21にリンクされる)とを有する、(
図4により詳細に示されている)空気結合変圧器19を備える。2つのコイル20および21の間には、(例えばスピンドルの熱膨張によりスピンドル3が回転すると固定子14が回転子15に触れ、その両方が損傷するリスクを回避するために)小さすぎても、(空気結合変圧器19が、大きすぎる空隙のために十分な電力を回転子15に伝達することができなくなることを防止するために)大きすぎてもならない距離d(通常、数ミリメートル、例えば1~8mm)がある。
【0027】
一次共振回路は、直列に接続された、一次コイル20と、キャパシタンスC1を有する第1のコンデンサとを含む。同様に、二次共振回路は、直列に接続された、二次コイル21と、キャパシタンスC2を有する第2のコンデンサとを含む。共振回路は、共振条件で動作するように適合された回路を意味する。特に、一次共振回路と二次共振回路とは、直列共振回路である。
【0028】
代替的に、異なるタイプの共振回路、例えば、並列共振回路または直列共振回路と並列共振回路の組合せを使用することが可能である。
【0029】
電力供給回路17はインバータ22をも備え、インバータ22は、電源デバイス23から直流電気エネルギーを受け取り、一次交流電圧V1を一次共振回路に印加し、一次交流電圧V1は、可変周波数Fを有し、一次電流I1の循環を引き起こす。
【0030】
一次共振回路内を循環する電流I1は、二次交流電圧V2を二次共振回路内で誘起し、二次交流電圧V2は、一次電圧V1と同じ可変周波数Fを有し、二次交流電流I2の循環を引き起こす。
【0031】
好ましい実施形態によれば、電力供給回路17は、二次交流電圧V2および二次交流電流I2を、対応する直流電圧VOUTおよび対応する直流電流IOUTに変換するダイオード整流器24を備える。整流器24は、(電気ケーブル16を介して)バランス調整ヘッド7が接続されたDC/DC電子電力変換器25を補充する。
【0032】
好ましくは、電圧VOUTを安定化する(すなわち、VOUTのリップルを低減する)ために、安定化キャパシタンスCOUTを有するコンデンサが、整流器24と並列に接続される。代替的に、キャパシタンスCOUTを有するコンデンサによって実行される機能は、整流器24に統合され得る。
【0033】
センサデバイス26は、一次共振回路に接続され、一次電圧V
1と一次電流I
1との間の位相シフトΔφを検出する。好ましくは、センサデバイス26は、それ自体で、ボックス28によって極めて概略的に
図2に表されている信号調整デバイスに接続される。
【0034】
最後に、電力供給回路17はコントローラ27を備え、コントローラ27は、一次電圧V1と一次電流I1との間の位相シフトΔφを入力として受け取り、一次電圧V1と一次電流I1との間の位相シフトΔφに応じて一次電圧V1の(したがって、一次電流I1の)周波数Fを調整するようにインバータ22を制御する。
【0035】
動作中、コントローラ27は、一次電圧V1と一次電流I1との間の位相シフトΔφを相殺するように、すなわち、(容量性インピーダンスが誘導性インピーダンスに等しく、したがって、一次電圧V1が一次電流I1と完全に同相である)共振条件において動作するように、一次電圧V1の(したがって、一次電流I1の)周波数Fを変動させる。共振条件が発生する周波数Fの値は、共振周波数FRと呼ばれる。
【0036】
コントローラ27は、実質的に連続的に(すなわち、常に、動的に)共振条件に従うように(すなわち、一次電圧V1と一次電流I1との間の位相シフトΔφを相殺する共振周波数FRを識別するように)一次電圧V1の周波数Fを調整することに留意されたい。固定子14と回転子15との間の距離dが測定または監視されなければならないとき、この距離は、共振条件を維持するように設定された周波数から、すなわち共振周波数FRから得られる。
【0037】
図3は、
図2の電力供給回路17に対応する、一次側を参照する等価な電気回路を概略的に示す。そのような回路は、一次電圧V
1と、(インバータ22および一次コイル20の寄生電気抵抗に対応する)電気抵抗R
1と、キャパシタンスC
1と、一次コイル20のインダクタンスL
1と、二次コイル21および一次側を基準とする二次コイル21に接続されたすべてのものに対応するインピーダンスZ
2とを生成するインバータ22を備える。
【0038】
以下のように仮定する。
【0039】
L
1=n
2*L
2
C
1=C
2/n
2
ここで、nは、2つのコイル20および21の間の巻数比であり、また、ユニタリ値をとることができ、
インピーダンスZ
2は以下に等しい。
【数1】
ここで、ωは角度脈動であり、Mは2つのコイル間の相互インダクタンス値であり、R
Lは負荷抵抗である。
【0040】
共振条件は、以下の場合に発生する。
【数2】
L
1は、一次コイル20のインダクタンスであり、一次コイル20の特性(すなわち、巻数N)および(
図4に概略的に示されている)空気結合変圧器19の磁気回路の特性に依存する。そのような磁気回路は、固定子14と回転子15との間の距離dを変化させることによって変動する全体的な磁気抵抗Rを有する。
【数3】
図4に示されている空気結合変圧器の磁気回路の概略図から、以下を推論することが可能である。
【数4】
コイル20および21が巻かれたフェライトコアF1およびF2の透磁率は、空気の透磁率よりもはるかに大きいため、全体的な磁気抵抗Rは、主に、空隙の磁気抵抗R
AIRに依存する。
【0041】
空隙の磁気抵抗RAIRは、固定子14と回転子15との間の距離dに比例するため、一次コイル20のインダクタンスL1は距離dに反比例すると推論することが可能である。次に、一次回路の共振周波数FRは、固定子14と回転子15との間の(すなわち、2つのコイル20および21の間の)距離dの平方根に比例する。
【0042】
結論として、共振周波数FRなど、共振条件の達成に影響を及ぼす電気的変数の値を知ることで、固定子14と回転子15との間の(すなわち、2つのコイル20および21の間の)距離dを決定することが可能である。したがって、外部のプローブまたはデバイスの必要なしに、ただし、共振条件の達成に影響を及ぼす周波数の値(すなわち、共振周波数FR)を検出し、そのような周波数の値の関数として距離dを決定する処理ユニットを含む測定システムによって、固定部14と可動部15との間の距離dを監視し、より具体的には測定または決定することが可能である。より具体的には、コントローラ27は、一次回路が(一次電圧V1が一次電流I1と同相である)共振条件において動作するように、一次電圧V1の周波数Fを調整する。処理ユニット、例えば制御ユニット13は、一次電圧V1の周波数Fによってとられる値、すなわち共振周波数FRを検出し、そのような値に応じて固定子14と回転子15との間の距離dを決定する。
【0043】
共振周波数FRの情報を受け取り、固定子14と回転子15との間の距離dを決定する処理ユニットは、図に記載され、示されているように制御ユニット13に含まれ得るか、または、制御ユニット13によって実行される処理動作を容易にするようにコントローラ27に統合され得る。
【0044】
周波数以外の電気的変数、いかなる場合でも、一次共振回路を基準とする全体的なインダクタンスまたは全体的なキャパシタンスなど、共振条件の達成に影響を及ぼす電気的変数から開始して、外部のプローブまたはデバイスの必要なしに固定子14と回転子15との間の距離dを監視し、より具体的には測定または決定することが可能である。
【0045】
全体的なインダクタンスおよび全体的なキャパシタンスは、共振条件を達成するように修正された一次共振回路を基準とするインダクタンスまたはキャパシタンス(どの物理量が考慮されるかに応じる)を意味する。特に、一次共振回路のインダクタンスまたはキャパシタンス値は、好適な回路を使用することによって共振条件において動作するように既知の方法で調整され得る。
【0046】
例えば制御ユニット13に含まれる処理ユニットは、共振条件において動作するとき、周波数Fによって、または、両方とも一次共振回路を基準とする全体的なインダクタンスまたは全体的なキャパシタンスによってとられる値(FR)の関数として、固定子14と回転子15との間の距離dを決定する。
【0047】
結論として、共振周波数FR、または、一次共振回路を基準とする全体的なインダクタンスもしくは全体的なキャパシタンスなど、共振条件の達成に影響を及ぼす別の電気的変数の値を知ることで、固定子14と回転子15との間の(すなわち、2つのコイル20および21の間の)距離dを決定することが可能である。
【0048】
好ましい実施形態によれば、共振条件の達成、および固定子14と回転子15との間の距離の測定は、適用の簡単さ、必要な回路、したがって寸法およびコストの観点から最も有利な解決策であるため、好ましくは周波数に基づいて支持される。キャパシタンスおよびインダクタンスはまた、共振条件を達成し、したがって固定子14と回転子15との間の距離を決定するために、これらの電気的変数のうちの1つに作用することがシステムが動作しているときにより複雑であり、より大きい寸法およびより高いコストを伴う場合でも、使用され得る。
【0049】
この解決策がより複雑である場合でも、いくつかの電気的変数に同時に作用することも可能である。
【0050】
好ましい実施形態によれば、固定子14と回転子15との間の距離dと、共振条件の達成に影響を及ぼす電気的変数によってとられる値とをリンクする実験法則が使用される(例えば
図5および
図6に示されている)。言い換えれば、これは、距離dを、周波数F(
図6)の関数として、または全体的なインダクタンスL
1(
図5)もしくは一次共振回路の全体的なキャパシタンス(
図5)の関数として表す。実験法則は、例えば、前に実行された適切な試験から得られる。
【0051】
共振周波数FR(および/または他の電気的変数)の情報は、コントローラ27にある。コントローラ27は、工作機械1の制御ユニット13の論理回路によって読み取られ得るレジスタを介してそれを利用可能にすることができ、制御ユニット13が対応するシグナリングを扱う。
【0052】
誘導性構成要素およびキャパシタンスについて設定された許容差により、この技術は、絶対距離測定値を提供するために較正段階を必要とし得る。しかしながら、この較正は固定子14のみに関係するべきであり、回転子15が現場で交換される場合、較正を繰り返す必要がないという利点がある。これは、新しい回転子15が、名目上予想されるものとは大きく異なるインダクタンスL2およびキャパシタンスC2の値を有しない場合に当てはまる。
【0053】
この技術の考えられる制限は、「過結合」システム条件における共振周波数分割に存在する、「周波数分割」として文献で知られている現象に関する。「過結合」条件は、相互インダクタンス値が比較的高い間に負荷の電気抵抗(すなわち、バランス調整ヘッド7の等価電気抵抗)が特に小さくなるとき、到達される。この問題を回避するために、コントローラ27は、周波数ジャンプを回避するために、共振周波数分割の場合に、すなわち「過結合」条件において動作しているときに、より低い周波数で共振ピークにロックされたままであるように設計される。
【0054】
結果として、実行される制御のタイプに鑑みて、「過結合」条件が発生した場合、システムによって選択される共振周波数は、インダクタンスL1およびキャパシタンスC1の値によって排他的に決定される公称値よりも低くなる。
【0055】
一般に、周波数シフトが距離dの決定に与える影響を最小限に抑えるために、軽負荷条件(すなわち、負荷の電気抵抗が高い条件)において評価を実行することが好ましい。実際には、この条件では、共振周波数は、前述のように空気結合変圧器19のリラクタンスRのみに依存する。言い換えれば、距離dの測定は、好ましくは、バランス調整ヘッド7が動作しておらず(すなわち、待機条件においてオンに切り替えられ)、したがって適度な電気負荷を提供するとき、実行される。
【0056】
距離dの測定が、重負荷条件(すなわち、負荷の電気抵抗が低い条件)、および距離dが小さいときに得ることができる高い相互インダクタンス値において実行される場合、距離dの測定は、過小評価されることがある。しかしながら、これは、固定子14と回転子15との間の距離dが小さいとき、最も安全な状況である。
【0057】
図5は、実験的に得られた図を示し、距離dと、共振の条件が到達されたときの一次共振回路を基準とする(ΔLで示されている)全体的なインダクタンスとの間の相関を示す。
【0058】
図6は、実験的に得られた図を示し、距離dと一次電圧V
1の周波数Fとの間の相関を示す。
【0059】
図2は、電力供給回路17の好ましい実施形態を示す。この回路は、使用される電子機器のタイプによって異なる方法で作ることができ、例えば、整流デバイス24および変換器25は省略され得る。
【0060】
実行された実験的試験では、重負荷の場合でも「過結合」現象はめったに発生しない。その存在は、回転子と固定子とが極めて近接しているときに現れ始める。この場合、実際には、測定された周波数Fは、予想された周波数と比較してわずかに減少したが、前述のように、コミットされた誤差は、実際の距離よりも小さい距離dを推定することになる。したがって、これは、固定子14と回転子15との間の不要な接触を回避するためのより予防的な結果をもたらす。
【0061】
添付図に示されている実施形態では、上記で説明された非接触電力伝送方法は、工作機械1において制御ユニット13を回転スピンドル3のバランス調整ヘッド7に接続する非接触接続システム12において実施され、回転スピンドル3が(少なくとも)1つの砥石車5を支持する。図示されていない他の実施形態によれば、上記で説明された方法は、異なるタイプの適用例に取り付けられた非接触接続システムにおいて実施され得る。
【0062】
非接触電力伝送方法および電気的供給回路は、これまで、バランス調整ヘッドを備える工作機械内の機械部品の機械加工を制御するためのシステムを参照して説明され、示された。それらは、バランス調整ヘッドなしに、ならびに、振動センサ、例えば音響センサ、および/または電力供給される必要がある可動/回転部内の他のそれ自体既知のセンサもしくはデバイスを備える、制御システムにも適用され得る。
【0063】
本明細書で説明された実施形態は、本発明の保護の範囲から逸脱することなく互いに組み合わせられ得る。
【0064】
上記で説明された方法および回路は、いくつかの利点を提供する。
【0065】
第1に、上記で説明された方法および回路は、十分な精度で距離dを測定することを可能にする(すなわち、固定子14と回転子15との間の距離dの測定は、このタイプの適用例の特定の要件について十分に正確である)。特に、上記で説明された方法および回路は、高い精度が要求されるとき、すなわち、距離dがより小さく、固定子14と回転子15との間の偶発的なおよび潜在的に破壊的な接触のリスクがより大きいとき、特に正確である。
【0066】
さらに、上記で説明された方法および回路は、距離dの実際の値が、すでに存在するものに加えてハードウェア要素を必要とせずに、および回転子15または通信デバイス18によって使用される通信プロトコルを測定に関与させることなしに決定され得るので、コストおよび空間の大幅な増加を伴わない。
【0067】
さらに、上記で説明された方法および回路は、適用要件によって回転子15および固定子14の幾何学的形状の変動に容易にカスタマイズされ、適合され得るため、極めて柔軟である。
【0068】
最後に、上記で説明された方法および回路のおかげで、回転子15および固定子14の全体的な寸法に影響を及ぼすことなしに重要な診断機能を導入することが可能である。
【国際調査報告】