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特表2023-554439デンドロビウム・フィンブリアタム抽出物およびそれを含む洗い流し不要な化粧品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】デンドロビウム・フィンブリアタム抽出物およびそれを含む洗い流し不要な化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20231220BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20231220BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231220BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20231220BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/08
A61Q19/00
A61Q1/04
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536982
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 FR2021052301
(87)【国際公開番号】W WO2022129763
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】2013687
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500078211
【氏名又は名称】エル・ヴェ・エム・アッシュ ルシェルシュ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 裕貢
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】グルギヨン,ロレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ウズール,カトリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブルトー,アンヌ-ロール
(72)【発明者】
【氏名】ソビロ,ローラン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC251
4C083AC302
4C083AC311
4C083AC332
4C083AC422
4C083AC432
4C083AD052
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD332
4C083AD662
4C083BB41
4C083BB47
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD31
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE16
4C083FF01
(57)【要約】
ケラチン物質、特に皮膚および/または唇、特に顔および/または首の皮膚への局所適用のための洗い流し不要な化粧品組成物であって、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を含む化粧品組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン物質、特に皮膚および/または唇、特に顔および/または首の皮膚への局所適用のための洗い流し不要な化粧品組成物であって、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を含む化粧品組成物。
【請求項2】
デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物が、組成物の総重量に対して0.01重量%~10重量%の範囲の原料の含有量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
ガストロジア・エラタ種のランの根の抽出物をさらに含む、請求項1または2に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
抗酸化剤、エモリエント剤、保湿剤、抗老化剤、香料およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの化粧品アジュバントをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
皮膚老化の徴候、特に、皮膚の堅さの損失、皮膚の弾力性の損失、皮膚の厚さの減少、ならびにしわおよび/または小じわの出現を予防および/または軽減するための物質としての、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物の化粧品的な使用。
【請求項6】
ケラチン物質、特に皮膚および/または唇のケアおよび/またはメークアップのための化粧方法であって、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧品組成物を前記ケラチン物質に局所適用することを含む方法。
【請求項7】
皮膚老化の徴候、特に、皮膚の堅さの損失、皮膚の弾力性の損失、皮膚の厚さの減少、ならびにしわおよび/または小じわの出現を予防および/または軽減するための、請求項6に記載の化粧方法。
【請求項8】
前記化粧品組成物が、老化したまたは老化の徴候を示している皮膚に適用される、請求項6または7のいずれか一項に記載の化粧方法。
【請求項9】
デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物であって、少なくとも以下の工程を含む抽出方法によって得られることを特徴とする抽出物:
a)植物物質を粉砕する工程;
b)少なくとも一つの抽出工程とその後の濾過工程;
c)工程b)の終わりに得られた抽出物を濃縮する工程;
d)ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビン酸カリウム/安息香酸ナトリウム、グリセロールまたはプロパンジオール、好ましくはプロパンジオールを添加する工程;
e)濾過工程、および
f)デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を得る工程。
【請求項10】
全植物から得られることを特徴とする、請求項9に記載のデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物。
【請求項11】
ベタインならびにcisおよびtransメリロトシドから選択される少なくとも一つの代謝産物を含むことを特徴とする、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物。
【請求項12】
デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を得るための方法であって、少なくとも以下の工程を含む方法:
a)植物物質を粉砕する工程;
b)少なくとも一つの抽出工程とその後の濾過工程;
c)工程b)の終わりに得られた抽出物を濃縮する工程;
d)ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビン酸カリウム/安息香酸ナトリウム、グリセロールまたはプロパンジオール、好ましくはプロパンジオールを添加する工程;
e)濾過工程、および
f)デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を得る工程。
【請求項13】
デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物が、デンドロビウム・フィンブリアタム変種オキュラタムの抽出物であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧品組成物、請求項5に記載の化粧品的な使用、請求項6~8のいずれか一項に記載の化粧方法、請求項9~11のいずれか一項に記載のデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物および請求項12に記載のデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を得るための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品分野に関する。本発明は、特に、本発明は、デンドロビウム・フィンブリアタム(Dendrobium fimbriatum)種のランの抽出物を含む洗い流し不要な化粧品組成物、ならびに皮膚老化の徴候を予防および/または軽減するためのその使用に関する。本発明はまた、デンドロビウム・フィンブリアタム(Dendrobium fimbriatum)の特定の抽出物およびそのような抽出物を得るための抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、生体を環境から保護する最初のバリア(障壁)である。そのため、皮膚は、外因性(例えば、紫外線、温度変化、大気汚染、タバコの煙など)であれ、内因性(例えば、ホルモンなど)であれ、皮膚老化の兆候を誘発する多くの要因にさらされる。これらはそれぞれ、外因性老化および内因性(または生理的)老化と称される。
【0003】
外因性老化は、深いしわや、堅さ、柔軟さおよび弾力性を失った皮膚の形成、および染み・そばかすとして知られる皮膚の色素斑の出現などの臨床的変化を引き起こす。同時に、内因性または生理学的老化により、特に皮膚細胞の再生が遅くなり、表皮真皮接合部が変化する。表皮真皮接合部は、表皮の細胞をその下の組織である真皮に固定するのに不可欠である。細胞外マトリックス(ECM)は、特定の方式で組織化された高分子の集合体からなる複雑なネットワークであり、高分子同士を結びつけるものである。皮膚においては、一方で弾力性、強度および圧縮性といった特性を与え、他方では皮膚細胞の増殖、移動または分化といった様々な細胞機能を調節する。このように、真皮において、ECMは皮膚の生理学に不可欠な役割を果たしている。ECMの変化は、皮膚の質に直接影響を及ぼし、それは本質的に堅さ、弾力性の損失、縮緬じわ(fine wrinkle)または小じわの出現によって現れる。
【0004】
このような背景から、生物学的な標的に作用する新規の「抗老化」物質、特に皮膚老化の徴候を予防および/または軽減する物質を見出すことが常に求められている。
【0005】
予期せぬことに、本出願人は、真皮ECMの特定のタンパク質に対するデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物のインビトロでの効果を発見した。特に、本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、エラスチン、フィブリリン1、コラーゲン1およびナイドジェンの合成を有意に増強させることができる。さらに、この抽出物はインビトロで線維芽細胞の老化の形態学的マーカーを低下させることもできる。従って、本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、老化の兆候、特に、皮膚の堅さの損失、皮膚の弾力性の損失、皮膚の厚さの減少、ならびにしわおよび/または小じわの出現を予防および/または軽減するための抗老化物質として化粧品的に関心を有する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第一の目的は、ケラチン物質、特に皮膚および/または唇、および特に顔および/または首の皮膚へ局所適用のための洗い流し不要な化粧品組成物であって、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を含む化粧品組成物に関する。
【0007】
本発明による「洗い流し不要な化粧品組成物」とは、適用後に洗い流すことを目的とする、ケラチン物質を洗浄するための「洗い流す化粧品組成物」(例えば、シャワージェル、シャンプー)とは対照的に、その有益な効果(保湿、抗老化など)を確かなものとするために適用後にケラチン物質との接触性を保持したままにすることを目的とするケア組成物、例えば、乳液、クリーム、ポマード、軟膏、スティック、ゲル、ローション、セラム(serum)などを意味する。
【0008】
本発明による用語「ケラチン物質」とは、皮膚および/またはその付属器官、および唇を意味する。特に、用語「ケラチン物質」は、顔、首および/または体、および唇の皮膚を含む。
【0009】
本発明はまた、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物の化粧品としての使用であって、皮膚老化の徴候、特に、皮膚の堅さの損失、弾力性の損失、厚さの減少、ならびにしわおよび/または小じわの出現を予防および/または軽減するための物質としての使用に関する。
【0010】
本発明はまた、ケラチン物質、特に皮膚および/または唇をケアおよび/またはメークアップするための化粧方法であって、本発明による化粧品組成物を該ケラチン物質に局所適用することを含む化粧方法に関する。
【0011】
本発明はまた、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物であって、少なくとも以下の工程を含む抽出方法によって得られることを特徴とする抽出物に関する:
a)植物物質を粉砕する工程;
b)少なくとも一つの抽出工程とその後の濾過工程;
c)工程b)の最後に得られた抽出物を濃縮する工程;
d)ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビン酸カリウム/安息香酸ナトリウム、グリセロールまたはプロパンジオール、好ましくはプロパンジオールを添加する工程;
e)濾過工程、および
f)デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を得る工程。
【0012】
本発明はまた、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物であって、ベタインならびにcisおよびtransメリロトシドから選択される少なくとも一つの代謝産物を含むことを特徴とする抽出物に関する。
【0013】
本発明はまた、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を得るための方法であって、少なくとも以下の工程を含む方法に関する:
a)植物物質を粉砕する工程;
b)少なくとも一つの抽出工程とその後の濾過工程;
c)工程b)の最後に得られた抽出物を濃縮する工程;
d)ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビン酸カリウム/安息香酸ナトリウム、グリセロールまたはプロパンジオール、好ましくはプロパンジオールを添加する工程;
e)濾過工程、および
f)デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を得る工程。
【0014】
発明の詳しい説明
デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を含む洗い流し不要な化粧品組成物
本発明は、第一の態様において、ケラチン物質、特に皮膚および/または唇、特に顔および/または首の皮膚への局所適用のための洗い流し不要な化粧品組成物であって、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を含む化粧品組成物に関する。
本発明の文脈における「デンドロビウム・フィンブリアタム(Dendrobium fimbriatum)」とは、東南アジア原産の蘭科(ラン科:オルキダセアエ(Orchidaceae))由来の植物を意味する。これはまた、カリスタ・フィンブリアタ(Callista fimbriata)、デンドロビウム・ノルマル(Dendrobium normale)、デンドロビウム・フィンブリアタム変種オキュラタム(Dendrobium fimbriatum var. oculatum)、デンドロビウム・パキストニイ(Dendrobium paxtonii)、カリスタ・オクラタ(Callista oculata)という名称としても知られている。残りの説明では、デンドロビウム・フィンブリアタムまたはデンドロビウム・フィンブリアタム変種オキュラタムの抽出物について言及する。
本発明によれば、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、特に、化粧品活性成分として、特に「抗老化」化粧品活性成分として、洗い流し不要な化粧品組成物中に使用される。
【0015】
本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、植物抽出物である。用語「植物抽出物」とは、一般に、植物原料から抽出することによって得られる、それ自身は自然界に存在しない単離された物質を意味する。
【0016】
用語「植物物質」または「植物原料」とは、本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物が調製される植物デンドロビウム・フィンブリアタムの全部または一部を意味する。
【0017】
本発明によデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、特に、根、茎、花、花弁およびこれらの混合物から選択される植物物質、または全植物から調製することができる。本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、好ましくは、全植物から調製される。
【0018】
抽出工程自体の前に、植物物質を乾燥、凍結乾燥、および/または粉砕することができる。あるいは、植物物質を湿らせてから粉砕して使用することもできる。特定の実施態様によれば、植物物質は、抽出前に、例えば、乳鉢、ミキサー、伝統的なミル、または当分野で従来から使用されている当業者に知られている任意の他の方法によって粉砕される。
【0019】
本発明によれば、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、有利には化粧品的に許容できる極性溶媒を用いて得られる極性抽出物である。用語「化粧品的に許容できる」とは、ケラチン物質、特に皮膚および/または唇と適合することを意味する。
【0020】
好ましい極性溶媒は、少なくとも一つのO-H極性共有結合を含む化合物からなる溶媒である。特に好ましい極性溶媒は、溶媒または溶媒の混合物として、水、C1-C4アルコール、例えばエタノール、グリコール、例えばエチレングリコール、グリセロール、ブチレングリコールおよびプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビン酸カリウム/安息香酸ナトリウム、プロパンジオールおよびこれらの混合物から選択される。
【0021】
好ましい実施態様によれば、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、水およびアルコールの混合物中で植物物質を抽出することによって得られるヒドロアルコール抽出物であり、該アルコールは、水/アルコール混合物の1%~99%v/v(体積/体積)を示す。非限定的例として、植物物質は、10%v/v水および90%v/vアルコール;20%v/v水および80%v/vアルコール;30%v/v水および70%v/vアルコール;40%v/v水および60%v/vアルコール;50%v/v水および50%v/vアルコール;60%v/v水および40%v/vアルコール;70%v/v水および30%v/vアルコール;80%v/v水および20%v/vアルコール;90%v/v水および10%v/vアルコール、を含む混合物を用いて抽出できる。
【0022】
好ましい実施態様によれば、植物物質は、50%v/v水および50%v/vアルコールを含む混合物を用いて抽出される。
【0023】
デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、好ましくは、水およびエタノールの混合物、特に45%~55%v/v水および45%~55%v/vエタノールを含む混合物、好ましくは50%v/v水および55%v/vエタノールを含む混合物中で植物物質を抽出することによって得られる。
【0024】
本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、植物物質を粉砕する工程、極性溶媒中に粉砕材料を分散させる工程、濾過により可溶相と不溶相を分離する工程、濃縮する工程、任意に再溶解する工程を実施する、当業者に知られている様々な抽出方法によって調製することができる。
【0025】
本発明によれば、抽出は加熱還流(hot by reflux)により、あるいは環境温度での浸軟により行うことができる。抽出は、特に超音波、マイクロ波、押し出し成形、パルス電場、亜臨界水および/または凍結抽出などの周知の物理化学技術を用いて行うこともできる。
【0026】
植物物質の抽出は、加熱還流で実施することが好ましい。用語「加熱還流」とは、抽出温度が少なくとも60℃、好ましくは少なくとも65℃、より好ましくは少なくとも70℃、好ましくは少なくとも75℃、より好ましくは少なくとも80℃であることを意味する。
還流により抽出する場合、抽出時間は、特に15~180分、好ましくは30~120分、好ましくは45~90分、50~70分の範囲であり得て、例えば50分、55分、60分、65分または70分である。
【0027】
抽出方法は、植物物質から液相を分離するための濾過工程を含むことが有利である。当業者であれば、特に0.1μm~0.5μm、特に0.2~0.3μmの濾過直径を有する適切な濾過篩を選択するであろう。
【0028】
抽出溶媒に対して親和性を有する物質を植物物質から完全に取り出すために、抽出と濾過のサイクルを数回繰り返すことができる。特に、抽出/濾過サイクルは、少なくとも2回、好ましくは少なくとも3回、またはさらには4回またはそれ以上、例えば5回繰り返すことができる。
【0029】
各抽出/濾過サイクルの終わりに、抽出工程を繰り返すことを目的として、溶媒は集まれ、未使用の溶媒と置き換えられる。抽出工程を連続的に繰り返すことにより、特に溶媒が目的の分子で飽和するのを避けることにより、抽出される植物物質から最大の目的の化合物の抽出が有利に可能になる。
【0030】
次いで、連続する抽出工程の終わりに、集められたさまざまな溶媒を一緒にする。
【0031】
抽出溶媒に対して親和性を有する物質が植物材料から除去されると、後者は排除することができる。あるいは、これは、他の用途のために保管しておくこともできる。
【0032】
抽出物は、有利には、抽出溶媒の一部を除去することによって濃縮することができる。かなりの量の有機溶媒を含まない水性濃縮物を得ることも可能であり、抽出溶媒をすべて除去することによって乾燥残留物を得ることもできる。
【0033】
あるいは、抽出工程からの生成物を凍結乾燥または細かく分解することで粉末の形態にすることもできる。
【0034】
各抽出/濾過サイクルの終わりに集められた溶媒は、好ましくは一緒にされ、抽出物は真空濃縮され、次にエタノールが少なくとも部分的に蒸発される。
【0035】
最後に、濃縮された抽出物をプロパンジオールで希釈し、濾過した後包装する。当業者であれば、特に0.1μm~0.5μm、特に0.2μmの濾過直径を有する適当な濾過篩を選択するであろう。
【0036】
用語「包装する」とは、得られた抽出物を、その保存、保管、取扱いが可能な条件下でパッキングすることを意味する。
【0037】
したがって、本発明はまた、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物であって、少なくとも以下の工程を含む抽出方法によって得られることを特徴とする抽出物に関する:
a)植物物質を粉砕する工程;
b)少なくとも一つの抽出物工程とその後の濾過工程;
c)工程b)の終わりに得られた抽出物を濃縮する工程;
d)ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビン酸カリウム/安息香酸ナトリウム、グリセロールまたはプロパンジオール、好ましくはプロパンジオールを添加する工程;
e)濾過工程、および
f)デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を得る工程。
【0038】
本発明の特定の実施態様によれば、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、少なくとも以下の工程を含む抽出方法によって得られる:
a)植物物質、好ましくは乾燥全植物を粉砕する工程;
b)ヒドロアルコール溶媒を用いて還流させることによって抽出する工程;
c)濾過することで粉砕物および抽出物を回収する工程;
d)任意に、前の抽出/濾過工程の終わりに集められた粉砕物を用いて、工程b)およびc)を1~4回繰り返し、各抽出/濾過工程の終わりに新しい抽出物を回収する工程;
e)各抽出/濾過工程で集められた抽出物を一緒にする工程;
f)抽出溶媒の一部を蒸発させ、抽出物を真空濃縮させる工程;
g)ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビン酸カリウム/安息香酸ナトリウム、グリセロールまたはプロパンジオール、好ましくはプロパンジオールを添加する工程;
h)濾過工程、および
i)デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を包装する工程。
【0039】
好ましくは、水およびエタノールの混合物は、ヒドロアルコール溶媒、特に、45%~55%v/v水および45~55%v/vエタノールを含む混合物、好ましくは50%v/v水および50%v/vエタノールを含む混合物として使用される。
【0040】
植物物質の抽出は、好ましくは、特に、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも65℃、より好ましくは少なくとも70℃、好ましくは少なくとも75℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度で加熱還流によって行われる。
【0041】
各抽出/濾過サイクルの抽出時間は、好ましくは15~180分、好ましくは30~120分、好ましくは45~90分、50~70分、例えば50分、55分、60分、65分または70分である。
【0042】
濾過工程では、好ましくは、0.1μm~0.5μm、特に0.2μm~0.3μmの濾過直径を有する濾過篩を使用する。
【0043】
本発明の特定の好ましい実施態様によれば、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、少なくとも以下の工程を含む抽出方法によって得られる:
a)乾燥草木、好ましくは全植物を粉砕する工程;
b)80℃で50%エタノールで時間還流させることによって抽出する工程;
c)濾過することで、粉砕物1および抽出物Xを回収する工程;
d)粉砕物1を80℃で50%エタノールで1時間還流させることによって抽出する工程;
e)濾過することで、粉砕物2および抽出物Yを回収する工程;
f)粉砕物を80℃で50%エタノールで1時間還流させることによって抽出する工程;
g)濾過することで、粉砕物3および抽出物Zを回収する工程;
h)抽出物X、YおよびZを一緒にする工程;
i)エタノールを蒸発させ、抽出物を真空濃縮する工程;
j)プロパンジオールを添加する工程;
k)濾過工程、及び
l)デンドロビウム・フィンブリアタム(Dendrobium fimbriatum)の抽出物を包装する工程。
【0044】
本発明の抽出方法によって得られるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、INCI名:水(および)プロパンジオール(および)デンドロビウム・フィンブリアタム・オキュラタム抽出物(WATER (and) PROPANEDIOL (and) DENDROBIUM FIMBRIATUM OCULATUM EXTRACT)のものである。
【0045】
溶液の形態の本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタム抽出物は、好ましくは、約1%の乾燥物質、約35%のプロパンジオールおよび約64%の水を含む。与えられたパーセンテージは、抽出物の総重量に対する重量パーセンテージである。用語「約」とは、測定された割合が±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±2%変動し得ることを意味する。
【0046】
特に上述の方法に従って得られる、本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタム抽出物は、好ましくは、EN ISO 17294-2-ICP-MS法によって測定して300~1000ppmの範囲の総鉱物含有量(特に、リン、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムおよびカリウム)を含む。
【0047】
本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、好ましくは、アントロンを用いた方法(Loewus, 1952)によって測定して0.1%~0.5%の範囲の含有量の糖を含む。
【0048】
デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、好ましくは、フォリン-チオカルト法(Folin Ciocalteu method)(Ainsworth, 2007)で測定して0.1%~0.5%のポリフェノールを含む。
【0049】
好ましい実施態様によれば、上述の方法によって得られるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、ベタインならびにcisおよびtransメリロトシドから選択される少なくとも一つの代謝産物を含むことを特徴とする。
【0050】
したがって、本発明は、同様に、ベタインならびにcisおよびtransメリロトシドから選択される少なくとも一つの代謝産物を含むことを特徴とする、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物に関する。
【0051】
好ましい実施態様によれば、本発明の化粧品組成物に使用されるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、上記の抽出方法によって得られる。
【0052】
本発明の化粧品組成物に使用されるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、好ましくは、少なくとも以下の工程を含む抽出方法によって得られる:
a)乾燥草木、好ましくは全植物を粉砕する工程;
b)80℃で50%エタノールで1時間還流させることによって抽出する工程;
c)濾過することで、粉砕物1および抽出物Xを回収する工程;
d)粉砕物1を80℃で50%エタノールで1時間還流させることによって抽出する工程;
e)濾過することで、粉砕物2および抽出物Yを回収する工程;
f)粉砕物を80℃で50%エタノールで1時間還流させることによって抽出する工程;
g)濾過することで、粉砕物3および抽出物Zを回収する工程;
h)抽出物X、YおよびZを一緒にする工程;
i)エタノールを蒸発させ、抽出物を真空濃縮する工程;
j)ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビン酸カリウム/安息香酸ナトリウム、グリセロールまたはプロパンジオール、好ましくはプロパンジオールを添加する工程;
k)濾過工程、および
l)デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を包装する工程。
【0053】
別の実施態様によれば、本発明の化粧品組成物に使用されるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、ベタインならびにcisおよびtransメリロトシドから選択される少なくとも一つの代謝産物、特にベタインを含むことを特徴とする。
【0054】
本発明は同様に、デンドロビウム・フィンブリアタムを得るための方法であって、少なくとも以下の工程を含む方法に関する:
a)植物物質を粉砕する工程;
b)少なくとも一つの抽出工程とその後の濾過工程;
c)工程b)の終わりに得られた抽出物を濃縮する工程;
d)ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビン酸カリウム/安息香酸ナトリウム、グリセロールまたはプロパンジオール、好ましくはプロパンジオールを添加する工程;
e)濾過工程、および
f)デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を得る工程。
【0055】
本発明の特定の実施態様によれば、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を得るための方法は、少なくとも以下の工程を含む:
a)乾燥植物物質、好ましくは全植物を粉砕する工程;
b)ヒドロアルコール溶媒を用いて還流させることによって抽出する工程;
c)濾過することで、粉砕物および抽出物を回収する工程;
d)任意に、前の抽出/濾過工程の終わりに集められた粉砕物を用いて、工程b)およびc)を1~4回繰り返し、各抽出/濾過工程の終わりに新しい抽出物を回収する工程;
e)各抽出/濾過工程の終わりに集められた抽出物を一緒にする工程;
f)抽出溶媒を蒸発させ、抽出物を真空濃縮する工程;
g)ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビン酸カリウム/安息香酸ナトリウム、グリセロールまたはプロパンジオール、好ましくはプロパンジオールを添加する工程;
h)濾過工程、および
i)包装工程。
【0056】
好ましくは、水およびエタノールの混合物は、ヒドロアルコール溶媒として使用され、特に、45%~55%v/v水および45~55%v/vエタノール、好ましくは50%v/v水および55%v/vエタノールを含む混合物が使用される。
【0057】
植物物質の抽出は、好ましくは、、特に、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも65℃、より好ましくは少なくとも70℃、好ましくは少なくとも75℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度で加熱還流によって行われる。
【0058】
各抽出/濾過サイクルの抽出時間は、好ましくは30~120分、好ましくは45~90分、50~70分、例えば50分、55分、60分、65分または70分である。
【0059】
濾過工程では、好ましくは、0.1μm~0.5μm、特に0.2μmの濾過直径を有する濾過篩を使用する。
【0060】
本発明の特定の好ましい実施態様によれば、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、少なくとも以下の工程を含む抽出方法によって得られる:
a)乾燥草木、好ましくは全植物を粉砕する工程;
b)80℃で50%エタノールで1時間還流させることによって抽出する工程;
c)濾過することで、粉砕物1および抽出物Xを回収する工程;
d)粉砕物1を80℃で50%エタノールで1時間還流させることによって抽出する工程;
e)濾過することで、粉砕物2および抽出物Yを回収する工程;
f)粉砕物を80℃で50%エタノールで1時間還流させることによって抽出する工程;
g)濾過することで、粉砕物3および抽出物Zを回収する工程;
h)抽出物X、YおよびZを一緒にする工程;
i)エタノールを蒸発させ、抽出物を真空濃縮する工程;
j)ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビン酸カリウム/安息香酸ナトリウム、グリセロールまたはプロパンジオール、好ましくはプロパンジオールを添加する工程;
k)濾過工程、および
l)デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を包装する工程。
【0061】
用量
本発明によれば、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、所望の効果を得るのに有効な量で化粧品組成物に使用される。特定の実施態様において、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は前記化粧品組成物中に、組成物の総重量に対して0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、特に0.2重量%~5%、好ましくは0.3重量%~3重量%の範囲の原料の含有量で存在し、これは、組成物の総重量に対して0.0001重量%~0.1重量%、好ましくは0.002重量%~0.05重量%、より好ましくは0.003重量%~0.03重量%の範囲の乾燥物質の含有量に相当する。
【0062】
特定の好ましい実施態様において、本発明の化粧品組成物に使用されるデンドロビウム・フィンブリアタム抽出物は、FINGE GOLD ORCHIDという名称で販売されている製品である。
【0063】
好ましい実施態様において、デンドロビウム・フィンブリアタム抽出物を含む前記化粧品組成物は、ケラチン物質、特に皮膚および/または唇、特に、顔および/または首の皮膚をケアおよび/またはメークアップするための組成物である。
特定の実施態様によれば、本発明の化粧品組成物は、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物に加えて、また少なくとも一つの他の植物抽出物、例えば、ガストロジア・エラタ(Gastrodia elata)種のランの抽出物、好ましくは、INCI名:ガストロジア・エラタ根抽出物(GASTRODIA ELATA ROOT EXTRACT)の抽出物を含む。ガストロジア・エラタ(Gastrodia elata)抽出物は本発明の組成物中に、所望の効果、特に皮膚老化の徴候、特に、皮膚の堅さの損失、皮膚の弾力性の損失、皮膚の厚さの減少、ならびにしわおよび/または小じわの出現を予防および/または軽減する効果を得るのに有効な量で存在する。特に、前記ガストロジア・エラタ(Gastrodia elata)抽出物は、組成物の総重量に対して0.01重量%~10重量%、特に0.02重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~4重量%の範囲の原料(製品の重量)の含有量で存在し、組成物の総重量に対して0.0001重量%~0.1重量%、好ましくは0.0002重量%~0.05重量%、より好ましくは0.0005重量%~0.04重量の乾燥物質の含有量に相当する。
【0064】
特定の実施態様によれば、本発明の化粧品組成物は、少なくとも本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を含み、さらに、例えば、乳剤(milk)、クリーム、ポマード、油中水型または水中油型エマルション、軟膏、スティック、ゲル、ローション、セラム、またはその他の粉末の形態の局所適用のための組成物を得る目的で、当業者に公知のものから一つまたはそれ以上の化粧品として許容できる賦形剤を含む。
【0065】
組成物の性質に応じて、一つまたはそれ以上の化粧品的に許容できる賦形剤は、ポリマー、界面活性剤、レオロジー剤、香料、電解質(electrolyte)、pH調整剤、抗酸化剤、防腐剤、色素、真珠層、顔料およびこれらの混合物から選択される。
本発明の化粧品組成物は、ケラチン物質、特に皮膚および/または唇、特に顔および/または首の皮膚に局所適用するのに適した任意の剤形であってよく、本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物および、抗酸化剤、エモリエント剤、保湿剤、抗老化剤、香料およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの化粧品アジュバントをさらに含む。
【0066】
化粧品としての使用および化粧方法
以下に記載する化粧方法および化粧品としての使用は、ケラチン物質、特に健康なケラチン物質、好ましくは健康な皮膚および/または唇、特に健康な唇(「健康な」対象)への適用を意図している。
【0067】
本発明による用語「健康なケラチン物質」とは、病態(病理学的影響を受けた「不健康な」対象)の一部である疾患または障害を示さないケラチン物質を意味する。本明細書の残りの部分では、健康な皮膚および/または唇、あるいは皮膚および/または唇は、互換的に言及される。
【0068】
以下の実施例に示されるように、本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、細胞外マトリックスのいくつかのタンパク質、特にエラスチン、フィブリリン1、コラーゲン1およびナイドジェンの合成を有意に増加させることができる。従って、本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物は、化粧品、特に化粧品の「老化防止」有効成分として興味深い。
【0069】
化粧品の「抗老化」活性成分という用語は、本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタム抽出物が、皮膚老化の徴候、特に、皮膚の堅さの損失、皮膚の弾力性の損失、皮膚の厚さのの減少、ならびにしわおよび/または小じわの出現を予防および/または低減するのに有効であり、細胞の寿命を増加させることを意味する。
【0070】
したがって、本発明はまた、上記のデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物の非治療的化粧品としての使用であって、皮膚老化の徴候、特に、皮膚の堅さの損失、皮膚の弾力性の損失、皮膚の厚さの減少、ならびにしわおよび/または小じわの出現を予防および/または低減するための物質としての使用に関する。
【0071】
特定の好ましい実施態様によれば、本発明は、FINGE GOLD ORCHIDという名称で販売されていることを特徴とするデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物の使用に関する。
【0072】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明は、少なくとも以下の工程を含む抽出方法によって得られることを特徴とする、デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物の使用に関する:
a)植物物質を粉砕する工程;
b)少なくとも一つの抽出工程とその後の濾過工程;
c)工程b)の終わりに得られた抽出物を濃縮する工程;
d)プロパンジオールを添加する工程;
e)濾過工程、および
f)デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を得る工程。
【0073】
好ましい実施態様によれば、本発明は、ベタインならびにcisおよびtransメリロトシドから選択される少なくとも一つの代謝産物、特にベタインを含むことを特徴とするデンドロビウム・フィンブリアタムの使用に関する。
【0074】
本発明は同様に、ケラチン物質、特に皮膚および/または唇のケアおよび/またはメークアップのための化粧方法であって、上記の化粧品組成物を前記ケラチン物質に局所適用することを含む化粧方法に関する。
【0075】
別の特定の実施態様によれば、本発明の化粧品としての使用または化粧方法において使用される化粧品組成物は、ガストロジア・エラタ(Gastrodia elata)種のランの抽出物、好ましくは、INCI名:GASTRODIAの抽出物をさらに含む。
【0076】
ELATA根抽出物
本発明によれば、化粧方法は、皮膚老化の徴候、特に、皮膚の堅さの損失、皮膚の弾力性の損失、皮膚の厚さの減少、ならびにしわおよび/または小じわの出現を予防および/または軽減することを意図している。
【0077】
化粧品組成物は、好ましくは、老化したまたは老化の徴候を示している皮膚に適用される。
【0078】
次に、本発明を以下の非限定的な実施例で説明する。パーセンテージ(%)は、特に断らない限り、組成物の総重量に対する原料(RM)の重量で表される。
【実施例
【0079】
実施例1:デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物の調製
工程1:全乾燥デンドロビウム・フィンブリアタム植物を粉砕する工程;
工程2:80℃で50%エタノールで1時間還流させることによって抽出する工程;
工程3:濾過することで、粉砕物1および抽出物Xの回収を可能にする工程;
工程4:粉砕物1を80℃で50%エタノールで1時間還流させることによって抽出する工程;
工程5:濾過することで、粉砕物2および抽出物Yの回収を可能にする工程;
工程6:粉砕物2を80℃で50%エタノールで1時間還流させることによって抽出する工程;
工程7:濾過することで、粉砕物3および抽出物Zの回収を可能にする工程;
工程8:抽出物X、YおよびZを一緒にする工程;
工程9:エタノールを蒸発させ、抽出物を真空濃縮する工程;
工程10:プロパンジオールを添加する工程;
工程11:濾過工程、及び
工程12:デンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物を包装する工程。
【0080】
こうして得られた抽出物はINCI名:水/AQUA、プロパンジオールデンドロビウム・フィンブリアタムオキュラタム抽出物(WATER/AQUA, PROPANEDIOL DENDROBIUM FIMBRIATUM OCULATUM EXTRACT)である。乾燥物質含有量は1%であり、35%と64%の水を含む。
【0081】
実施例2:実施例1によって調製したデンドロビウム・フィンブリアタム抽出物の植物化学的特徴。
【0082】
本研究において、本出願人は、実施例1の方法によって得られたデンドロビウム・フィンブリアタム抽出物の植物化学的プロフィールを研究した。
【0083】
2.1. 遠心分配クロマトグラフィー(CPC)による抽出物の分画
二つのCPC実験を連続して行った。
【0084】
2.1.1. CPC 1
あらかじめ固定相/移動相混合物に溶解した乾燥抽出物を、あらかじめ平衡化しておいたカラム(FCPE300(登録商標)(Rousselet Robatel Kromaton))にCPCで注入した。流速は20mL/minとし、カラムの回転速度は1200rpmとした。三相溶媒系はn-ヘプタン/メチル-ter-ブチル-エーテル/アセトニトリル/水(1/1/1, v/v)に相当し、分離は上昇モード(ascendant mode)で行った。
20mlの画分を、実験(溶出と押し出し成形)全体を通して集め、薄層クロマトグラフィープロファイルにより一緒にした。こうして4つの画分を得た。
【0085】
カラム内に保持された化合物はすべて押し出し成形によって回収し、真空乾燥してCPC2注入液を得た。
【0086】
2.1.2. CPC2
あらかじめ固定相/移動相混合物に溶解した乾燥抽出物を、あらかじめ平衡化しておいたカラム(FCPE300(登録商標)(Rousselet Robatel Kromaton))にCPCで注入した。流速は20mL/minとし、カラムの回転速度は1200rpmとした。三相溶媒系はn-ヘプタン/メチル-ter-ブチル-エーテル/アセトニトリル/水(1/1/1, v/v)に相当し、分離は上昇モード(ascendant mode)で行った。
20mlの画分を実験(溶出と押し出し成形)全体を通して集め、薄層クロマトグラフィープロファイルにより一緒にした。こうして9つの画分を得た。
【0087】
2.2. NMR分析および主要代謝産物の同定
F1~F13の各画分の一定分量をDMSO-d6に溶解し、クライオプローブを備えたBruker Avance AVIII-600スペクトロメーター(Karlsruhe, Germany)を用いて、298Kで13C NMRにより分析を行った。スペクトルを処理した後、Natexploreが開発したコンピュータスクリプトを用いて、すべての13C NMRシグナルの絶対強度を自動的に集め、一連の画分のスペクトルに群化した。得られた表について階層的群分析(PermutMatrix, 1.9.3, LIRMM, Montpellier, France)を行た。得られた13C NMR化学シフトクラスターは、2次元マップ上のデンドログラムの形で示した。代謝産物を同定するため、HCAにより得られた各13C NMR化学シフトクラスターを、低分子量天然物の構造と予測化学シフトを含むACD/NMR Workbook Suite 2012 (ACD/Labs、Ontario、Canada)データベース管理ソフトウェアの構造検索エンジンに手動で送信した。脱複製プロセスの終わりに、データベースにより提案された分子構造を確認するために、同定されたと思われる化合物を含む画分に対して2D NMR実験(HSQC、HMBC、COSY)を行った。
【0088】
各画分でNMRにより同定された主な代謝産物を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
2.3. 結論
粗抽出物を2回の連続実験で、CPC技術により合計13の画分に分画した。最も極性の低い画分F1~F4(粗抽出物の質量の約3.8%を示す)は、長鎖アルキル(脂肪酸またはアルコール)から構成されていた。中程度の極性の画分F5~F10(粗抽出物の質量の約21.6%を示す)には、多様なポリフェノール(メリロート酸、デンドロフェノール、ジヒドロメリロトシド)、ならびにクマリン、シリンガルアルデヒドおよびいくつかのフェノール酸、例えばオルト-クマル酸、バニリン酸、p-ヒドロキシ安息香酸および3-ヒドロキシ-3-(2-ヒドロキシフェニル)-プロパン酸が含まれていた。その他の非フェノール酸もこれらの画分(レブリン酸、スベリン酸、2,4-ジメチル-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボン酸および1,3,4-ペンタントリカルボン酸)で同定した。押し出し成形工程で回収した最も極性の高い画分F11~F13(粗抽出物の質量の約74.5%を占める)は、主に、単糖、ジヒドロメロトシド(dihydromelotoside)、trans-メリロトシド、cis-メリロトシド、グリセロール、コリン、ベタイン、ウリジンおよびアデノシンから構成されていた。
【0091】
こうして得られた抽出物について、以下の実施例で生物学的効果を試験した。
【0092】
実施例3:正常ヒト線維芽細胞における真皮細胞外マトリックスマーカーの発現に対するデンドロビウム・フィンブリアタムの効果
この研究において、本出願人は、培養中の正常ヒト線維芽細胞(NHF)における細胞外マトリックス(ECM)の合成に関与する種々のタンパク質の発現に対する、実施例1に従って調製したランのデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物の効果を評価しようとした。
【0093】
3.1. 正常ヒト線維芽細胞の培養と処理
正常ヒト線維芽細胞(NHF)は、37歳の女性ドナーの腹部形成術から得られたものとした。細胞を、継代5(P5)で10%ウシ胎児血清を補充したDMEM 1g/Lグルコース培地中で、96ウェルプレートにおいてウェル当たり15,000細胞の播種密度で播種した。
【0094】
デンドロビウム・フィンブリアタムの乾燥抽出物をエタノール中50μg/mlの濃度で使用した。
【0095】
コンフルエンス(D1)で、NHFを、DMEM 1g/Lグルコース培地+10%FCS(ウシ胎児血清)中の上記抽出物で処理した。処理は、各条件についてn=4で5日間行い、D3で単層を再処理した。対照(未処理)条件では、培地を新鮮な培地に置き換えた。
【0096】
3.2. 免疫マーキング
【0097】
3.2.1. マーキングプロトコル
処理の終わりに、細胞をPBS(PBS錠剤、Invitrogen GIBCO)で3回洗い流し、次に、ホルマリン(ホルマリン溶液10%中性緩衝液、Sigma)で10分間固定した。
【0098】
PBSで3回洗い流した後、0.1%PBSトリトン(Triton X-100, Sigma)の溶液で細胞膜を(研究したマーカーに応じて)透過処理するかしなかった。次に、それらをPBSで再度3回洗い流した。
【0099】
細胞を1%PBS/BSA溶液(アルブミン、ウシ血清由来、Sigma)で環境温度で30分間覆った。
【0100】
次に、1%PBS/BSA溶液を、1%PBS/BSAで希釈した、マークされた各タンパク質に対応する一次抗体溶液(表1を参照)と置き換えた。次に、プレートを4℃で一晩インキュベートした。
【0101】
次に、細胞をPBSで3回洗い流し、標的とする一次抗体に応じた二次抗体溶液(表1を参照)と1/1000のDAPI(4',6'-ジアミジノ-2-フェニルインドール、ジヒドロクロライド、Invitrogen Molecular Probes)を1%PBS/BSAで希釈しました。プレートを環境温度の暗所に1時間放置した。
次に、二次抗体溶液を吸引し、細胞をPBSで2回、蒸留水で1回洗い流した。各ウェルに1mLのPBSを入れた。画像を取得するまで、プレートを4℃の暗所で保管した。
【0102】
【表2】
【0103】
3.2.2. HCSによる画像取得
プレートは、Thermo CellomicsのArrayScan XTiでスキャンした。
【0104】
取得条件:
検出:DAPI:フィルターXF53_386_23
Alexa Fluor 568:フィルターXF53_572_15
解像度:1104 x 1104
対物レンズ:10x ドライ
画像数:ウェルごとに25枚
【0105】
3.2.3. 画像分析
画像は、ArrayScanシステムの分析ソフトウェアを用いて、スポット検出器バイオアプリケーション(bio-application)によって分析した。
【0106】
このプログラム(パイプライン)は、標的タンパク質の発現に対応する赤色のマーキングを検出できる。測定ゾーンの表面は、画像の表面全体として定義される。
【0107】
細胞数は、DAPIの青色のマーキングを検出して核を計数することによって決定した。
【0108】
マーカーとその細胞発現に応じて、結果を次のように示す。
-検出されたマーキングの強度(閾値)/細胞の番号:この方法は、例えば、繊維の形態の構造を定量化するために使用した。
-合計フィールドのマーキングの強度/細胞の番号:この方法は、構造を考慮せずに、研究対象のマーカーの合成の一般的な定量化を提供した。
【0109】
3.3. 統計分析
結果の統計分析は、平均、標準偏差、信頼区間(α=0.05)の計算からなる。
【0110】
対照試料と処理試料との間で観察されたこれらの比率の差の有意性は、スチューデント検定によって測定した。ステューデント検定は、値が0.05未満の場合に有意であると言われる。
【0111】
3.4. 結果
【表3】
【0112】
結果では、本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物によるNHFの処理が、エラスチンの発現に対して非常に強い刺激を誘導したことを示している(+96%)。また、フィブリリン1、コラーゲン1およびナイドジェンなどの他のECMマーカーの発現に対しても強い刺激を誘導した(+35%~+52%)。
【0113】
総合すると、これらの結果では、本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物が、皮膚環境の細胞外マトリックスのいくつかの成分の合成を著しく増強させることができることを示唆している。したがって、この抽出物は、皮膚の生理学的機能、特に皮膚の堅さの損失、皮膚の弾力性の損失、皮膚の厚さの減少、および/またはしわおよび/または小じわの出現の予防および/または予防に関連して使用するための化粧上の重要性を有する。
【0114】
実施例4:NHFの寿命に対するデンドロビウム・フィンブリアタムまたはガストロジア・エラタ(Gastrodia elata)抽出物の効果
この研究において、出願人は、正常なヒト線維芽細胞の寿命に対する、実施例1に従って調製したランのデンドロビウム・フィンブリアタムの抽出物の作用を評価しようとした。
【0115】
4.1 研究プロトコル
4.1.1. フローサイトメトリーにより研究した老化線維芽細胞のモデル
【0116】
ドナー(58歳の女性ドナー)の真皮から線維芽細胞を採取し、培養し、一連の継代によって老化させ、老化表現型(老化線維芽細胞のモデル)を与えた。
【0117】
老化の特定の形態学的マーカーは、フローサイトメトリーによって測定した。この技術は、非常に高い流速で定量的な方法で、多数の細胞(数万個)の光学的特性(蛍光、細胞形態に関連する光の拡散など)を研究することを可能にするという利点がある。したがって、統計的に有意なデータを導き出すことが可能である。
【0118】
研究する細胞を培地中に懸濁させた。サイトメーターでは、細胞を1つずつ分析チャンバーに送し、そこで細胞パラメーターを測定または評価できる複数のレーザービームを射する。
【0119】
レーザービームの反対側で測定された回折光を用いて、細胞のサイズ(前方散乱パラメーター、FSC)を評価する。側面で測定された回折光(側面散乱パラメーター、SSC)は、細胞の粒度の尺度を与える。この粒度は、細胞の複雑さ、例えば、細胞小器官の密度、タンパク質凝集体、および内部または表面の不規則性に相当する。老化に伴い、特に細胞小器官の酸化損傷、リポフスチンの蓄積、または巨大分子の損傷後に、細胞のサイズと粒度が増加する。
【0120】
4.1.2. 正常ヒト線維芽細胞の培養と処理
本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタム抽出物の効果を、ガストロジア・エラタ種のランの根の抽出物の効果と比較して評価した。
【0121】
デンドロビウム・フィンブリアタム抽出物:
-親溶液:(50:50)EtOH/H2O混合物中の1%(10mg/mLの乾燥抽出物)
-最終溶液:0.0006%、すなわち6μg/mL(培地で1/1666.6に希釈)
【0122】
ガストロジア・エラタ抽出物:
-親溶液:100%BG(ブチレングリコール)/H2O(50:50)含有1%根抽出物
-最終溶液:0.06%(培地で1/1666.7に希釈)
【0123】
処理条件:
-未処理:10%(FCS)
-Ctl Exp BG/H2O (50:50) 1/400
-ガストロジア・エラタ 0.06%(乾燥抽出物6μg/mLに相当)
-デンドロビウム・フィンブリアタム 6μg/mLの乾燥抽出物
【0124】
4.1.1項で得た老化線維芽細胞を、10%FCSを補充したDMEM 1g/Lグルコース培地に播種し、D1、D4、D6、D8、D11およびD13に上記の条件下で処理した。
【0125】
D14で細胞を洗浄し、Accutase(登録商標)処理により回収し、次に、形態学的老化マーカーをフローサイトメトリーにより測定した。
【0126】
4.2. 結果
細胞を成分と接触させてから14日後に、FSCとSCCの各パラメーターについて4つの条件を比較した。
- (1):未処理の初期継代(継代7)細胞
- (2):未処理の後期継代(継代28)細胞=老化した細胞
- (3):ガストロジア・エラタ(等量 6μg/mLの乾燥抽出物)で処理した後期継代(P28)の細胞
- (4): デンドロビウム・フィンブリアタム(6μg/mLの乾燥抽出物)で処理した後期継代(P28)細胞
【0127】
4.2.1. FSCの測定
【表4】
【0128】
老化した線維芽細胞では、細胞のサイズが有意に大きくなる。デンドロビウム・フィンブリアタムによる処理は、細胞老化のこの形態学的徴候を軽減する。
【0129】
4.2.2. SSCの測定
【表5】
【0130】
細胞の粒度は、老化した線維芽細胞で有意に高くなる。デンドロビウム・フィンブリアタムによる処理は、細胞老化のこの形態学的徴候を軽減するが、ガストロジア・エラタ抽出物は効果を示していない。
【0131】
したがって、結果では、本発明によるデンドロビウム・フィンブリアタム抽出物による処理が線維芽細胞の老化と闘うのに利益をもたらしたことを示唆している。この効果は、ガストロジア・エラタの抽出物よりも顕著に優れている。
【0132】
最後に、この抽出物は抗老化活性成分として使用できる。
【0133】
実施例5:化粧品製剤
【0134】
5.1. クリーム形態の組成物
【表6】
【0135】
この組成物は、適用時の心地よい肌合いに加えて、特に顔および首の皮膚の堅さおよび弾力性の損失を予防するという顕著な抗老化有効性を有する。
【0136】
5.2. ローションの形態の組成
【表7】
【0137】
この組成を皮膚、特に顔に適用すると、引き締め効果、滑らかにする抗老化効果が得られる。
【0138】
参考文献
Loewus, Improvement in Anthrone Method for Determination of Carbohydrates; Analytical Chemistry, 24(1), 219-219 - January 1952.
Ainsworth, E., Gillespie, K. Estimation of total phenolic content and other oxidation substrates in plant tissues using Folin-Ciocalteu reagent. Nat Protoc 2, 875-877 (2007).
【国際調査報告】