(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20231220BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231220BHJP
C01G 51/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G51/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537042
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 KR2021016671
(87)【国際公開番号】W WO2022131573
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0178507
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】511038879
【氏名又は名称】ポスコ ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】イ、 サン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ジョン イル
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ジュン フン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、 サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 クォン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】パク、 インチョル
(72)【発明者】
【氏名】クウォン、 オーミン
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE07
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
(57)【要約】
リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関し、正極活物質は、Ni含有量が75モル%以上のリチウムニッケル系化合物粒子であり、リチウムニッケル系化合物粒子の中心部と表面部とにおけるAlの濃度差が1mol%以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni含有量が75モル%以上のリチウムニッケル系化合物粒子であり、
前記リチウムニッケル系化合物粒子の中心部と表面部とにおけるAlの濃度差が1mol%以下である
リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記リチウムニッケル系化合物粒子の平均粒径(D50)は、10μm~20μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記リチウムニッケル系化合物粒子は、下記の化学式1で表されるものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
Li
aNi
xCo
yMn
zAl
1-(x+y+z)O
2
(前記化学式1において、aは0.95≦a≦1.15、xは0.75≦x≦0.98、yは0<y<0.2であり、zは0<z<0.2であり、y+z≦0.25である)
【請求項4】
前記表面部は、前記リチウムニッケル系化合物粒子の最表面から深さ方向にリチウムニッケル系化合物粒子の平均半径の30%以下の長さに相当する領域である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記化学式1において、x+y+zは、0.98~0.999の範囲である、請求項3に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
ニッケル原料物質、コバルト原料物質、マンガン原料物質、およびアルミニウム原料物質を溶媒中で共沈して、前駆体化合物を製造する段階;
前記前駆体化合物およびリチウム原料物質を混合して混合物を生成する段階;および
前記混合物を焼成する段階を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、
前記リチウム二次電池用正極活物質は、Ni含有量が80モル%以上のリチウムニッケル系化合物粒子であり、前記リチウムニッケル系化合物粒子の中心部と表面部とにおけるAlの濃度差が1mol%以下である
リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記共沈する段階は、11.0~12.0のpHで行うものである、請求項6に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記リチウムニッケル系化合物内のAl含有量は、
前記リチウムニッケル系化合物粒子内のリチウムを除いた金属元素全体を基準として、0.1モル%~2モル%である、請求項6に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記表面部は、前記リチウムニッケル系化合物粒子の最表面から深さ方向にリチウムニッケル系化合物粒子の平均半径の30%以下の深さに相当する領域である、請求項6に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の正極活物質を含む正極;
負極;および
非水電解質
を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電気自動車の爆発的な需要増大と走行距離増大の要求に後押しされて、これに適用させることができる高容量および高エネルギー密度を有する二次電池の開発が全世界的に活発に進められている。
【0003】
特に、このような高容量電池を製造するためには、高容量正極活物質が要求されている。このような高容量正極活物質として、ニッケルの含有量が高いリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を適用する方策が提案されている。
【0004】
しかし、ニッケルの含有量が高いリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質は、ニッケル含有量の増加による構造的不安定性の増加によって、充電状態で温度増加時に分解される温度が低くなる問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、容量を維持しながらも初期抵抗および抵抗増加率を減少させ、熱安定性に優れたリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0006】
他の実施形態は、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0007】
さらに他の実施形態は、前記正極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、Ni含有量が75モル%以上のリチウムニッケル系化合物粒子であり、前記リチウムニッケル系化合物粒子の中心部と表面部とにおけるAlの濃度差が1mol%以下であってもよい。
【0009】
前記リチウムニッケル系化合物粒子の平均粒径(D50)は、10μm~20μmであってもよい。
【0010】
前記リチウムニッケル系化合物粒子は、下記の化学式1で表されるものであってもよい。
LiaNixCoyMnzAl1-(x+y+z)O2
前記化学式1において、aは0.95≦a≦1.15、xは0.75≦x≦0.98、yは0<y<0.2であり、zは0<z<0.2であり、y+z≦0.25である。
【0011】
一実施形態において、前記化学式1において、x+y+zは、0.98~0.999の範囲であってもよい。
【0012】
前記表面部は、前記リチウムニッケル系化合物粒子の最表面から深さ方向にリチウムニッケル系化合物粒子の平均半径の30%以下の深さに相当する領域であってもよい。
【0013】
他の実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、ニッケル原料物質、コバルト原料物質およびマンガン原料物質、およびアルミニウム原料物質を溶媒中で共沈して、前駆体化合物を製造する段階;前記前駆体化合物およびリチウム原料物質を混合して混合物を生成する段階;および前記混合物を焼成する段階を含むことができる。
【0014】
前記共沈する段階は、11.0~12.0のpHで実施できる。
【0015】
また、前記リチウムニッケル系化合物粒子内のリチウムを除いた金属元素全体を基準として、0.1モル%~2モル%であってもよい。
【0016】
さらに他の実施形態によるリチウム二次電池は、前記正極活物質を含む正極、負極、および非水電解質を含むことができる。
【発明の効果】
【0017】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、Alが正極活物質全体として均一に含まれて、高容量を確保しながらも常温および高温寿命特性を向上させると同時に、熱安定性に優れ、かつ、初期抵抗特性に優れ、抵抗増加率が顕著に減少したリチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】リチウム二次電池用正極活物質粒子の表面部を説明するための図である。
【
図2】実施例3により製造した正極活物質の内部に存在するAl元素を分析した結果である。
【
図3】比較例4により製造した正極活物質の内部に存在するAl元素を分析した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるものであり、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する請求項の範疇によってのみ定義される。
【0020】
本明細書において、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%を意味する。
【0021】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、Ni含有量が75モル%以上のリチウムニッケル系化合物粒子であり、前記リチウムニッケル系化合物粒子の中心部と表面部とにおけるAlの濃度差が1mol%以下であってもよい。
【0022】
一実施形態によれば、前記リチウムニッケル系化合物粒子の中心部と表面部とにおけるAlの濃度差は、0mol%~1mol%であってもよい。一実施形態において、中心部と表面部とにおけるAlの濃度差が0mol%というのは、実質的に同一であることを意味する。中心部と表面部とにおけるAlの濃度は、各領域に存在するAlの平均濃度を意味し、濃度差は、中心部と表面部とに存在するAlの濃度の差を意味するだけで、中心部のAlの濃度が表面部より最大1mol%大きいことだけを意味するのではない。例えば、中心部のAlの濃度が0.52mol%、表面部のAlの濃度が0.45mol%で、中心部のAlの濃度が表面部より大きくてもよく、中心部のAlの濃度が0.92mol%、表面部のAlの濃度が0.97mol%で、中心部のAlの濃度が表面部のAlの濃度より小さくてもよい。
【0023】
また、中心部と表面部とにおいてドーピング元素のAlの濃度差が前記範囲内に含まれるというのは、正極活物質粒子の内部全体としてAlが実質的に均一に存在することを意味するものであって、つまり、中心部と表面とにおいてドーピング元素のAlの濃度差が実質的にほとんどないことを意味する。
【0024】
このように、正極活物質粒子の内部全体としてドーピング元素のAlが均一な濃度で位置する場合、正極活物質は、高容量を維持しながら、同時に常温および高温サイクル寿命特性を顕著に向上させることができる。また、リチウムイオンが円滑な経路を形成可能で、初期抵抗および抵抗増加率を減少させることができ、構造的安定性を確保可能で、熱安定性を向上させることができる。
【0025】
ここで、前記表面部は、前記リチウムニッケル系化合物粒子の最表面から深さ方向にリチウムニッケル系化合物粒子の平均半径の30%以下の深さに相当する領域を意味する。これを
図1を参照して説明すれば、リチウムニッケル系化合物粒子の最表面から深さ方向に、半径(a)の30%以下の深さ(b)に相当する領域を意味する。例えば、リチウムニッケル系化合物粒子の粒径が10μmであれば、半径が5μmであり、よって、最表面から、深さ方向(つまり、中心側)に1.5μmに相当する領域が表面部を意味するのである。
【0026】
一実施形態において、前記リチウムニッケル系化合物粒子は、下記の化学式1で表されるものであってもよい。
LiaNixCoyMnzAl1-(x+y+z)O2
前記化学式1において、aは0.95≦a≦1.15、xは0.75≦x≦0.98、yは0<y<0.2であり、zは0<z<0.2であり、y+z≦0.25である。
【0027】
一実施形態において、前記化学式1において、x+y+zは、0.98~0.999の範囲であってもよいし、より具体的には0.99~0.999の範囲であってもよい。つまり、ドーピング元素のAlの含有量は、リチウムニッケル系化合物粒子内のリチウムを除いた金属元素全体を基準として、0.1モル%~2モル%の範囲であってもよいし、0.1モル%~1モル%の範囲であってもよい。ドーピング元素の含有量が前記範囲を満足する場合、高容量を確保すると同時に、常温および高温寿命特性に優れた正極活物質を実現することができる。
【0028】
一実施形態において、前記xは、0.80~0.96であってもよい。つまり、前記リチウムニッケル系化合物は、ニッケル含有量が75モル%以上の高ニッケル(high-Ni)化合物であって、高出力特性を有する正極活物質を実現することができる。このような組成を有する一実施形態による正極活物質は、体積あたりのエネルギー密度が高くなるので、これを適用する電池の容量を向上させることができ、電気自動車用への使用にも適合する。
【0029】
前記正極活物質のタップ密度は、2.3g/cc~2.7g/ccの範囲、より具体的には2.45g/cc~2.7g/ccの範囲であってもよい。タップ密度が前記範囲を満足する場合、同じ体積の電極に多くの正極活物質を投入できるため、体積あたりのエネルギー密度を増加させることができ、これによって、電解液内のリチウム塩、例えば、LiPF6が分解されて生成されるHFから内部の1次粒子を保護できる。これによって、リチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0030】
前記正極活物質の平均粒径(D50)は、10μm~20μmの範囲、より具体的には12μm~18μmの範囲であってもよい。共沈工程で他の金属原料と類似のpH範囲で反応するので、pH範囲の調整なくても容易に粒子内部にドーピング元素を均一に位置させることができ、このような平均粒径を有する活物質に成長させることができる。一実施形態による正極活物質は、単一粒子でもよく、粒径の小さい1次粒子が少なくとも1つ造粒された粒径の大きい2次粒子でもあり得るので、前記平均粒径(D50)は、2次粒子の粒径であってもよい。この場合、2次粒子の平均粒径(D50)が前記範囲に含まれさえすれば良いし、1次粒子の平均粒径(D50)は限定する必要がない。
【0031】
本明細書において他に定義がない限り、平均粒子直径(D50)は、粒度分布における累積体積が50体積%である粒子の直径を意味し、PSA(particle size analyzer)で測定できる。
【0032】
このように、本実施例の正極活物質は、前駆体の製造時、共沈工程でドーピング元素としてAl原料を投入してAlドーピングされた前駆体を製造した後、正極活物質を製造するため、粒子全体としてAlの濃度が均一である。したがって、本実施例の正極活物質を適用したリチウム二次電池は、優れた放電容量を示すと同時に、向上した初期効率、優れた常温および高温寿命特性を示す。また、初期抵抗、抵抗増加率、平均リーク電流、発熱ピーク温度および発熱量を顕著に減少させることができる。
【0033】
他の実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、ニッケル原料物質、コバルト原料物質およびマンガン原料物質、およびアルミニウム原料物質を溶媒中で共沈して、共沈生成物を製造する段階;前記共沈生成物およびリチウム原料物質を混合して混合物を生成する段階;および前記混合物を焼成する段階を含む。
【0034】
以下、製造方法についてより詳細に説明する。このような方法で製造された正極活物質に関する具体的な特性は一実施形態で説明したものと同一であるので、ここでは省略する。
【0035】
まず、ニッケル原料物質、コバルト原料物質、マンガン原料物質およびアルミニウム原料物質を溶媒中で共沈して、前駆体化合物を製造する。
【0036】
前記ニッケル原料物質は、ニッケルを含むヒドロキシド、オキシド、カーボネート、スルフェート、ナイトレート、これらの水和物、またはこれらの組み合わせであってもよい。前記コバルト原料物質は、コバルトを含むヒドロキシド、オキシド、カーボネート、スルフェート、ナイトレート、これらの水和物、またはこれらの組み合わせであってもよい。また、前記マンガン原料物質は、マンガンを含むヒドロキシド、オキシド、カーボネート、スルフェート、ナイトレート、これらの水和物、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0037】
前記アルミニウム原料物質は、Al2(SO4)3、Al(NO3)3、Al2(CO3)3、またはこれらの組み合わせであってもよい。前記アルミニウム原料物質ではない、Al(OH)2は水に溶けないので、一実施形態による共沈工程に適用できない。
【0038】
このように、一実施形態による正極活物質の製造方法は、ドーピング元素のアルミニウムを含むアルミニウム原料物質を、ニッケル、コバルトおよびマンガン原料物質と共に、前駆体を製造するための共沈工程で添加するので、別途の共沈工程を行わなくてもよい。また、アルミニウム原料物質を前駆体を製造するための共沈工程で添加するので、最終生成物の正極活物質の内部に全体としてAlが均一に含む、つまり、位置することができ、例えば、中心部と表面部とにおけるAlの濃度差が1mol%以下、0mol%~1mol%であってもよい。
【0039】
前記ニッケル原料物質、前記コバルト原料物質、前記マンガン原料物質および前記アルミニウム原料物質の混合比は、最終活物質である化学式1の組成が得られるように適切に調節可能である。
【0040】
前記溶媒は、水を使用することができる。
【0041】
前記共沈工程は、金属イオンの酸化を防止するために、不活性ガスをパージング(purging)して実施でき、20℃~60℃の温度で実施できる。
【0042】
前記不活性ガスは、N2、アルゴンガス、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0043】
また、前記共沈反応は、キレート剤およびpH調整剤を前記金属塩水溶液に添加して実施できる。前記キレート剤としては、NH4(OH)、C3H6O3、またはこれらの組み合わせであってもよく、前記pH調整剤としては、NaOH、NaCO3、NH4HCO3、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0044】
前記キレート剤の使用量は、共沈工程が起こるように適切に調節して使用することができ、前記pH調整剤は、共沈工程がpH6.5~8、そして11.0~12.0の条件で起こるように適切に調節して使用することができる。共沈工程のpHが前記範囲に含まれる場合、微粉の発生が少なく、表面の球形度が増加し、電気化学特性が向上するというメリットがある。
【0045】
前記乾燥工程は、100℃~160℃で1時間~24時間実施できる。
【0046】
前記乾燥工程の前に、ろ過工程をさらに実施できる。このようなろ過工程は、通常の方法で実施できる。
【0047】
前記前駆体化合物およびリチウム原料物質を混合して混合物を生成する。前記前駆体化合物および前記リチウム原料物質の混合比は、目的とする化学式1の生成物組成が得られるように適切に調節可能である。
【0048】
前記リチウム原料物質としては、リチウムを含むヒドロキシド、オキシド、カーボネート、スルフェート、ナイトレート、これらの水和物、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0049】
次に、前記混合物を焼成して、リチウム二次電池用正極活物質を製造する。
【0050】
前記焼成工程は、酸素を500L/分~1000L/分で流入しながら実施できる。また、前記焼成工程は、例えば、300℃~500℃の範囲で1時間~5時間維持した後、1℃/分~3℃/分の昇温速度で700℃~900℃の範囲まで昇温させた後、この温度で、8時間~15時間維持する工程で実施できる。
【0051】
前記焼成工程の後、水洗工程をさらに実施して、表面の残留リチウムを除去することができる。
【0052】
さらに他の実施形態は、正極、負極、および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0053】
前記正極は、電流集電体、およびこの電流集電体に形成された正極活物質を含む正極活物質層を含む。前記正極活物質は、一実施形態による正極活物質を含む。
【0054】
前記正極において、前記正極活物質の含有量は、正極活物質層の全体重量に対して、90重量%~98重量%であってもよい。
【0055】
一実施形態において、前記正極活物質層は、バインダーおよび導電剤をさらに含むことができる。このとき、前記バインダーおよび導電剤の含有量は、正極活物質層の全体重量に対して、それぞれ1重量%~5重量%であってもよい。
【0056】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いによく付着させ、また、正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。前記バインダーの代表例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0057】
前記導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性材料であればいずれも使用可能である。導電剤の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0058】
前記電流集電体としては、アルミニウム箔、ニッケル箔、またはこれらの組み合わせを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0059】
前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー、および選択的に導電剤を溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この活物質組成物を電流集電体に塗布して形成する。このような活物質層の形成方法は当該分野にて広く知られた内容であるので、本明細書において詳しい説明は省略する。前記溶媒としては、N-メチルピロリドンなどを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0060】
前記負極は、電流集電体、およびこの電流集電体に形成され、負極活物質を含む負極活物質層を含むことができる。
【0061】
前記負極活物質層において、前記負極活物質層における負極活物質の含有量は、負極活物質層の全体重量に対して、80重量%~98重量%であってもよい。
【0062】
前記負極活物質層は、バインダーを含み、選択的に導電剤をさらに含んでもよい。前記負極活物質層におけるバインダーの含有量は、負極活物質層の全体重量に対して、1重量%~5重量%であってもよい。また、導電剤をさらに含む場合には、負極活物質を90重量%~98重量%、バインダーを1重量%~5重量%、導電剤を1重量%~5重量%使用することができる。
【0063】
前記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離可能な物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープ可能な物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0064】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離可能な物質としては、炭素物質として、リチウムイオン二次電池において一般に使用される炭素系負極活物質はいずれも使用可能であり、その代表例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらを共に使用することができる。
【0065】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムと、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属との合金が使用できる。
【0066】
前記リチウムをドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si、SiOx(0<x<2)、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO2、Sn-Y(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられる。
【0067】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。前記負極活物質層はさらに、バインダーを含み、選択的に導電剤をさらに含んでもよい。
【0068】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いによく付着させ、また、負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては、非水性バインダー、水性バインダー、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0069】
前記非水性バインダーとしては、エチレンプロピレン共重合体、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミド、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0070】
前記水性バインダーとしては、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、アクリロニトリル-ブタジエンラバー、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0071】
前記負極バインダーとして水性バインダーを使用する場合、粘性を付与可能なセルロース系化合物をさらに含むことができる。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としては、Na、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤の使用含有量は、負極活物質100重量部に対して、0.1重量部~3重量部であってもよい。
【0072】
前記導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性材料であればいずれも使用可能である。導電剤の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0073】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、導電性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0074】
前記負極は、負極活物質、バインダー、および選択的に導電剤を溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この活物質組成物を電流集電体に塗布して形成する。前記溶媒としては、N-メチルピロリドンを使用することができ、前記バインダーとして水系バインダーを使用する場合には、水を使用することができる。
【0075】
このような負極の形成方法は当該分野にて広く知られた内容であるので、本明細書において詳しい説明は省略する。
【0076】
前記電解質は、非水性有機溶媒と、リチウム塩とを含む。
【0077】
前記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。
【0078】
前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが使用できる。前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、デカノリド(decanolide)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが使用できる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用できる。また、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使用できる。さらに、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用可能であり、前記非プロトン性溶媒としては、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などが使用できる。
【0079】
前記非水性有機溶媒は、単独でまたは1つ以上混合して使用することができる。1つ以上混合して使用する場合の混合比率は、目的とする電池性能により適切に調節可能であり、これは当該分野にて従事する者には広く理解できる。
【0080】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートとを混合して使用するのが良い。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、1:1~1:9の体積比で混合して使用する方が、電解液の性能に優れることができる。
【0081】
前記非水性有機溶媒を混合して使用する場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートとの混合溶媒は、環状カーボネートとプロピオネート系溶媒との混合溶媒、または環状カーボネート、鎖状カーボネートおよびプロピオネート系溶媒の混合溶媒を使用することができる。前記プロピオネート系溶媒としては、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0082】
このとき、環状カーボネートと鎖状カーボネート、または環状カーボネートとプロピオネート系溶媒とを混合使用する場合には、1:1~1:9の体積比で混合して使用する方が、電解液の性能に優れることができる。また、環状カーボネート、鎖状カーボネートおよびプロピオネート系溶媒を混合して使用する場合には、1:1:1~3:3:4の体積比で混合して使用することができる。もちろん、前記溶媒の混合比は、所望の物性に応じて適切に調節してもよい。
【0083】
前記非水性有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含んでもよい。このとき、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は、1:1~30:1の体積比で混合できる。
【0084】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては、下記の化学式2の芳香族炭化水素系化合物が使用できる。
【0085】
【0086】
(前記化学式2において、R1~R6は、互いに同一または異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、ハロアルキル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。)
【0087】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒の具体例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0088】
前記電解質は、電池寿命を向上させるために、ビニレンカーボネートまたは下記の化学式3のエチレンカーボネート系化合物を寿命向上添加剤としてさらに含んでもよい。
【0089】
【0090】
(前記化学式3において、R7およびR8は、互いに同一または異なり、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択され、前記R7とR8の少なくとも1つは、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択されるが、ただし、R7およびR8がすべて水素ではない。)
【0091】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに使用する場合、その使用量は適切に調節可能である。
【0092】
前記電解質は、ビニルエチレンカーボネート、プロパンスルトン、スクシノニトリル、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができ、このとき、使用量は適切に調節可能である。
【0093】
前記リチウム塩は、有機溶媒に溶解して、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。このようなリチウム塩の代表例としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO2C2F5)2、Li(CF3SO2)2N、LiN(SO3C2F5)2、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ここで、xおよびyは、自然数であり、例えば、1~20の整数である)、LiCl、LiIおよびLiB(C2O4)2(リチウムビスオキサラトボレート(lithium bis(oxalato)borate:LiBOB)からなる群より選択される1または2以上を支持(supporting)電解塩として含む。リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で使用するのが良い。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動できる。
【0094】
リチウム二次電池の種類によって、正極と負極との間にセパレータが存在してもよい。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライド、またはこれらの2層以上の多層膜が使用可能であり、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜が使用可能であることはもちろんである。
【0095】
リチウム二次電池は、使用するセパレータと電解質の種類によって、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池に分類され、形態によって、円筒形、角型、コイン型、パウチ型などに分類され、サイズによって、バルクタイプと薄膜タイプとに分けられる。このような電池の構造と製造方法はこの分野にて広く知られているので、詳しい説明は省略する。
【実施例】
【0096】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるものであり、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0097】
(実施例1-共沈時のドーピング元素0.005モル投入)
(1)正極活物質前駆体の製造
ニッケル原料物質としてはNiSO4・6H2O、コバルト原料物質としてはCoSO4・7H2O、マンガン原料物質としてはMnSO4・H2O、アルミニウム原料物質としてAl2(SO4)3・14~18H2Oを蒸留水に溶解させて金属塩水溶液を製造した。
【0098】
前記金属塩水溶液を共沈反応器を用いて、N2をパージング(purging)し、反応器の温度は50℃を維持しながら、共沈反応器にキレート剤としてNH4(OH)を投入し、pH調整のためにNaOHを添加して、共沈工程を実施した。
【0099】
共沈工程により得られた沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄した後、100℃のオーブンで24時間乾燥して、(Ni0.795Co0.10Mn0.10Al0.005)(OH)2正極活物質前駆体を製造した。
【0100】
(2)正極活物質の製造
前記(Ni0.795Co0.10Mn0.10Al0.005)(OH)2正極活物質前駆体と、LiOH・H2O(Samchun Chemicals、battery grade)を1:1.03のモル比で均一に混合して混合物を製造した。前記混合物をチューブ炉(tube furnace)に装入して、酸素を200mL/minで流入させながら焼成した。この焼成工程は480℃で5時間1次熱処理し、次に、昇温速度2.5℃/分で760℃まで昇温した後、この温度で12時間維持して実施した。
【0101】
得られた焼成生成物を水洗工程を実施して、製造された正極活物質は平均粒径(D50)が15μmであり、全体組成はLi1.03Ni0.795Co0.10Mn0.10Al0.005O2であった。
【0102】
(比較例1-ドーピングしない正極活物質の製造)
(1)正極活物質前駆体の製造
ニッケル原料物質としてはNiSO4・6H2O、コバルト原料物質としてはCoSO4・7H2O、およびマンガン原料物質としてはMnSO4・H2Oを蒸留水に溶解させて金属塩水溶液を製造した。
【0103】
前記金属塩水溶液を共沈反応器を用いて、N2をパージング(purging)し、反応器の温度は50℃を維持しながら、共沈反応器にキレート剤としてNH4(OH)を投入し、pH調整のためにNaOHを添加して、共沈工程を実施した。この共沈工程はpH11~12の条件で実施した。
【0104】
共沈工程により得られた沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄した後、100℃のオーブンで24時間乾燥して、(Ni0.8Co0.1Mn0.1)(OH)2正極活物質前駆体を製造した。
【0105】
(2)正極活物質の製造
前記(Ni0.8Co0.1Mn0.1)(OH)2正極活物質前駆体と、LiOH・H2O(Samchun Chemicals、battery grade)を1:1.03のモル比で均一に混合して混合物を製造した。前記混合物をチューブ炉(tube furnace)に装入して、酸素を200mL/minで流入させながら焼成した。この焼成工程は480℃で5時間1次熱処理し、次に、昇温速度2.5℃/分で760℃まで昇温した後、この温度で12時間維持して実施した。
【0106】
得られた焼成生成物を水洗工程を実施して、正極活物質を製造した。製造された正極活物質は平均粒径(D50)が15μmであり、全体組成はLi1.03Ni0.8Co0.1Mn0.1O2であった。
【0107】
(比較例2-リチウム原料混合時のドーピング元素0.005モルを投入)
(1)正極活物質前駆体の製造
ニッケル原料物質としてはNiSO4・6H2O、コバルト原料物質としてはCoSO4・7H2O、およびマンガン原料物質としてはMnSO4・H2Oを蒸留水に溶解させて金属塩水溶液を製造した。
【0108】
次に、共沈反応器を用意した後、共沈反応時、金属イオンの酸化を防止するためにN2をパージング(purging)し、反応器の温度は50℃を維持した。
【0109】
前記共沈反応器にキレート剤としてNH4(OH)を投入し、pH調整のためにNaOHを使用した。
【0110】
共沈工程により得られた沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄した後、100℃のオーブンで24時間乾燥して、(Ni0.8Co0.1Mn0.1)(OH)2組成の正極活物質前駆体を製造した。
【0111】
(2)正極活物質の製造
(Ni0.8Co0.1Mn0.1)(OH)2正極活物質前駆体、LiOH・H2O(Samchun Chemicals、battery grade)およびAl(OH)2(Samchun Chemicals)を1:1.03:0.005モルで均一に混合して混合物を製造した。前記混合物をチューブ炉(tube furnace)に装入して、酸素を200mL/minで流入させながら焼成した。この焼成工程は480℃で5時間1次熱処理し、次に、昇温速度5℃/分で760℃まで昇温した後、この温度で12時間維持して実施した。
【0112】
得られた焼成生成物を水洗工程を実施して正極活物質を製造した。製造された正極活物質は平均粒径(D50)が15μmであり、全体組成はLi1.03Ni0.795Co0.1Mn0.1Al0.005O2であった。
【0113】
(比較例3-リチウム原料混合時のドーピング元素0.01モルを投入)
(Ni0.8Co0.1Mn0.1)(OH)2正極活物質前駆体、LiOH・H2O(Samchun Chemicals、battery grade)およびAl(OH)2(Samchun Chemicals)を1:1.03:0.010モルで均一に混合したことを除けば、前記比較例2と同様に実施して、Li1.03Ni0.79Co0.1Mn0.1Al0.01O2組成の正極活物質を製造した。
【0114】
(比較例4-リチウム原料混合時のドーピング元素0.02モルを投入)
(Ni0.8Co0.1Mn0.1)(OH)2正極活物質前駆体、LiOH・H2O(Samchun Chemicals、battery grade)およびAl(OH)2(Samchun Chemicals)を1:1.03:0.020モルで均一に混合したことを除けば、前記比較例2と同様に実施して、Li1.03Ni0.78Co0.1Mn0.1Al0.02O2組成の正極活物質を製造した。
【0115】
(実施例2-共沈時のドーピング元素0.01モル投入)
(1)正極活物質前駆体の製造
製造された正極活物質前駆体の粒子全体の組成が(Ni0.79Co0.1Mn0.1Al0.01)(OH)2となるようにニッケル原料物質およびドーピング原料物質の混合量を調節したことを除けば、実施例1の(1)と同様の方法により、正極活物質前駆体を製造した。
【0116】
(2)正極活物質の製造
前記(Ni0.79Co0.1Mn0.1Al0.01)(OH)2正極活物質前駆体を用いて、実施例1の(2)と同様の方法により、Li1.03Ni0.79Co0.1Mn0.1Al0.01O2組成の正極活物質を製造した。
【0117】
(実施例3-共沈時のドーピング元素0.02モル投入)
(1)正極活物質前駆体の製造
製造された正極活物質前駆体の粒子全体の組成が(Ni0.78Co0.1Mn0.1Al0.02)(OH)2となるようにニッケル原料物質およびドーピング原料物質の混合量を調節したことを除けば、実施例1の(1)と同様の方法により、正極活物質前駆体を製造した。
【0118】
(2)正極活物質の製造
前記(Ni0.78Co0.1Mn0.1Al0.02)(OH)2正極活物質前駆体を用いて、実施例1の(2)と同様の方法により、Li1.03(Ni0.78Co0.1Mn0.1Al0.02)O2組成の正極活物質を製造した。
【0119】
(比較例5-ドーピングしない正極活物質の製造)
(1)正極活物質前駆体の製造
ニッケル原料物質、コバルト原料物質およびマンガン原料物質の混合比を調節して(Ni0.92Co0.04Mn0.04)(OH)2組成の正極活物質前駆体を製造したことを除けば、比較例1と同様の方法により、正極活物質前駆体を製造した。
【0120】
(2)正極活物質の製造
前記(1)の正極活物質前駆体を用いて、比較例1の(2)と同様の方法により、全体の組成がLi1.03Ni0.92Co0.04Mn0.04O2の正極活物質を製造した。
【0121】
(比較例6-リチウム原料混合時のドーピング元素0.005モルを投入)
(1)正極活物質前駆体の製造
比較例5の(1)と同様の方法により、(Ni0.92Co0.04Mn0.04)(OH)2組成の正極活物質前駆体を製造した。
【0122】
(2)正極活物質の製造
前記(1)の正極活物質前駆体を用い、Al(OH)3(Samchun Chemicals)0.005モルを混合したことを除けば、比較例2の(2)と同様の方法により、Li1.03Ni0.915Co0.04Mn0.04Al0.005O2組成の正極活物質を製造した。
【0123】
(実施例4-共沈時のドーピング元素0.005モル投入)
(1)正極活物質前駆体の製造
製造された正極活物質前駆体の粒子全体の組成が(Ni0.915Co0.04Mn0.04Al0.005)(OH)2となるようにニッケル、コバルトおよびマンガン原料物質およびドーピング原料物質の混合量を調節したことを除けば、実施例1の(1)と同様の方法により、正極活物質前駆体を製造した。
【0124】
(2)正極活物質の製造
前記(Ni0.915Co0.04Mn0.04Al0.005)(OH)2正極活物質前駆体を用いて、実施例1の(2)と同様の方法により、Li1.03Ni0.915Co0.04Mn0.04Al0.005O2組成の正極活物質を製造した。
【0125】
(実施例5-共沈時のドーピング元素0.01モル投入)
(1)正極活物質前駆体の製造
製造された正極活物質前駆体の粒子全体の組成が(Ni0.91Co0.04Mn0.04Al0.01)(OH)2となるようにニッケル、コバルトおよびマンガン原料物質およびドーピング原料物質の混合量を調節したことを除けば、実施例1の(1)と同様の方法により、正極活物質前駆体を製造した。
【0126】
(2)正極活物質の製造
前記(Ni0.91Co0.04Mn0.04Al0.01)(OH)2正極活物質前駆体を用いて、実施例1の(2)と同様の方法により、Li1.03Ni0.91Co0.04Mn0.04Al0.01O2組成の正極活物質を製造した。
【0127】
(比較例7-ドーピングしない正極活物質の製造)
(1)正極活物質前駆体の製造
マンガン原料物質を除き、ニッケル原料物質およびコバルト原料物質の混合比を調節して(Ni0.96Co0.04)(OH)2組成の正極活物質前駆体を製造したことを除けば、比較例1と同様の方法により、正極活物質前駆体を製造した。
【0128】
(2)正極活物質の製造
前記(Ni0.96Co0.04)(OH)2正極活物質前駆体を用いて、比較例1の(2)と同様の方法により、全体の組成がLiNi0.96Co0.04O2の正極活物質を製造した。
【0129】
(比較例8-リチウム原料混合時のドーピング元素0.005モルを投入)
(1)正極活物質前駆体の製造
比較例7の(1)と同様の方法により、(Ni0.96Co0.04)(OH)2組成の正極活物質前駆体を製造した。
【0130】
(2)正極活物質の製造
前記(Ni0.96Co0.04)(OH)2正極活物質前駆体を用い、Al(OH)2(Samchun Chemicals)0.005モルを混合したことを除けば、比較例2の(2)と同様の方法により、Li1.03Ni0.955Co0.04Al0.005O2組成の正極活物質を製造した。
【0131】
(実施例6-共沈時のドーピング元素0.005モル投入)
(1)正極活物質前駆体の製造
製造された正極活物質前駆体の粒子全体の組成が(Ni0.955Co0.04Al0.005)(OH)2となるようにマンガン原料物質を除き、ニッケル原料物質およびコバルト原料物質の混合量を調節したことを除けば、実施例1の(1)と同様の方法により、正極活物質前駆体を製造した。
【0132】
(2)正極活物質の製造
前記(Ni0.955Co0.04Al0.005)(OH)2正極活物質前駆体を用いて、実施例1の(2)と同様の方法により、Li1.03Ni0.955Co0.04Al0.005O2組成の正極活物質を製造した。
【0133】
(実施例7-共沈時のドーピング元素0.01モル投入)
製造された正極活物質前駆体の粒子全体の組成が(Ni0.95Co0.04Al0.01)(OH)2となるようにマンガン原料物質を除き、ニッケル原料物質およびコバルト原料物質の混合量を調節したことを除けば、実施例1の(1)と同様の方法により、正極活物質前駆体を製造した。
【0134】
(2)正極活物質の製造
前記(Ni0.95Co0.04Al0.01)(OH)2正極活物質前駆体を用いて、実施例1の(2)と同様の方法により、Li1.03Ni0.95Co0.04Al0.01O2組成の正極活物質を製造した。
【0135】
(比較例9-共沈時のLCOにAlドーピング)
製造された正極活物質前駆体の粒子全体の組成がCo(OH)2となるようにマンガン原料物質を除き、ニッケル原料物質およびコバルト原料物質の混合量を調節したことを除けば、実施例1の(1)と同様の方法により、正極活物質前駆体を製造した。
【0136】
(2)正極活物質の製造
前記Co(OH)2の正極活物質前駆体を用いて、実施例1の(2)と同様の方法により、Li1.03Co0.99Al0.01O2組成の正極活物質を製造した。製造された正極活物質は平均粒径(D50)が8μmであった。
【0137】
(比較例10-NC反応後にpH調整してAlドーピングする場合)
ニッケル原料物質としてはNiSO4・6H2O、コバルト原料物質としてはCoSO4・7H2Oを用いた。これらの原料を蒸留水に溶解させて第1金属塩水溶液を製造した。
【0138】
また、アルミニウム原料物質としてはAl2(SO4)3・14~18H2Oを蒸留水に溶解させて第2金属塩水溶液を製造した。
【0139】
次に、共沈反応器を用意した後、共沈反応時、金属イオンの酸化を防止するためにN2をパージング(purging)し、反応器の温度は50℃を維持した。
【0140】
前記第1金属塩水溶液を共沈反応器を用いて、N2をパージング(purging)し、反応器の温度は50℃を維持しながら、共沈反応器にキレート剤としてNH4(OH)を投入し、pH調整のためにNaOHを添加して、11~12のpH条件で共沈工程を実施して、(Ni0.96Co0.04)(OH)2を製造した後、前記第2金属塩水溶液を用いてpH9.0~10.0の条件で共沈工程を実施して、(Ni0.92Co0.04Al0.04)(OH)2を製造した。
【0141】
得られた沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄した後、100℃のオーブンで24時間乾燥して、(Ni0.92Co0.04Al0.04)(OH)2組成の正極活物質前駆体を製造した。
【0142】
(2)正極活物質の製造
前記(Ni0.92Co0.04Al0.04)(OH)2の正極活物質前駆体を用いて、実施例1の(2)と同様の方法により、Li1.03Ni0.92Co0.04Al0.04O2組成の正極活物質を製造した。製造された正極活物質は平均粒径(D50)14μmであった。
【0143】
(実験例1)X線回折評価
前記実施例1~7および比較例1~8により製造された正極活物質の格子定数をCuKα線を用いてX線回折測定で得た。測定されたa軸の長さおよびc軸の長さを下記表1に示した。また、結晶軸間の距離比(c/a軸比)を下記表1に併せて示した。
【0144】
また、活物質の結晶粒サイズ(crystalline size)を測定して、下記表1に示した。
【0145】
次に、正極活物質に対してCuKα線をターゲット線として、X’Pert powder(PANalytical社)XRD装置を用いて、測定条件は2θ=10°~130°、スキャンスピード(°/S)=0.328、ステップサイズは0.026°/ステップの条件でX線回折測定試験を実施して、(003)面および(104)面の強度(ピーク面積)を得た。この結果からI(003)/I(104)を求めて、その結果を下記表1に示した。
【0146】
ドーピングによる結晶学的考察のために、ハイスコアプラスリートベルトソフトウェア(high score plus Rietveld software)を用いてリートベルト(Rietveld)分析を実施し、この結果をR-ファクター(factor)として下記表1に示した。
【0147】
リートベルト(Rietveld)分析のためのXRD測定は、CuKα線をターゲット線として、X’Pert powder(PANalytical社)XRD装置を用いて、測定条件は2θ=10°~130°、スキャンスピード(°/S)=0.328、ステップサイズは0.026°/ステップの条件で実施して、(006)面、(102)面および(101)面の強度を得ており、この結果から下記式1によりR-ファクターを求めて、その結果を下記表1に示した。この結果から、GOF(Goodness of Fit)値が1.2以内で計算されることによって、Rietveld構造分析の結果は信頼できる数値といえる。
R-ファクター={I(006)+I(102)}/I(101)
【0148】
タップ密度は(JEL STAV II(J.Engelsmann AG社)タップ密度測定器を用いて測定した。具体的には、正極活物質100gを100mlのメスシリンダーを活用して3000回tappingして密度を測定した。
【0149】
下記表1中、Mは、NixCoyMnzを意味する。
【0150】
【0151】
表1を参照すれば、ドーピング元素の投入時期およびドーピング量によってXRDで分析される結晶構造を示す因子値が変化することを確認できる。特に、結晶粒サイズはAlドーピング量によって同一の焼成条件でも大きく変化することが分かる。一方、Alをドーピングする場合、a値とc値がわずかに減少することが分かった。したがって、Alドーピングの場合、ニッケルコバルトマンガン系正極活物質内のNiサイトにAlがドーピングされて構造的安定性を向上させる役割を適切に果たすと予測される。これによって、初期効率および電気化学物性を全般的に向上させることができる。
【0152】
また、同一のドーピング量でドーピングしても、共沈時、ニッケル、コバルトおよびマンガン原料物質と共にAl原料物質を投入してAlドーピングされた前駆体を製造した後、正極活物質を製造する場合と、前駆体の製造後、リチウム原料物質と共にAl原料物質を混合して正極活物質を製造する場合とを比較すれば、結晶粒サイズおよびR-ファクターがすべて減少した。つまり、共沈時、ドーピング原料のAl原料物質を投入してドーピングされた前駆体を製造した後、正極活物質を製造することが、正極活物質の性能に肯定的な影響を与えることをもう一度確認できる。
【0153】
一方、陽イオン混合インデックス(Cation mixing index)であるI(003)/I(104)値は大きく減少しなかった。特に、前駆体の製造後、リチウム原料と共にドーピング原料を粉末状態で混合して正極活物質を製造する場合と比較する時、共沈時、Al原料物質を投入して前駆体を製造した後、正極活物質を製造する場合、c値の変化幅が大きく、結晶粒サイズの変化は少ないことを確認できる。この結果から、実施例により正極活物質を製造する場合、電気化学的特性が改善されると予想され、熱安定性が改善されてDSC peak温度が大きく向上することを予測できる。
【0154】
(実験例2)電気化学性能評価
(1)コイン型半電池の製造
実施例1~7および比較例1~10により製造された正極活物質を用いてコイン型半電池を製造した。
【0155】
具体的には、正極活物質、デンカブラック導電剤、およびポリビニリデンフルオライドバインダー(商品名:KF1100)を96.5:1.5:2の重量比で混合し、この混合物を固形分が約30重量%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(N-Methyl-2-pyrrolidone)溶媒に添加して正極活物質スラリーを製造した。
【0156】
前記スラリーをドクターブレード(Doctor blade)を用いて正極集電体のアルミニウム箔(Al foil、厚さ:15μm)上にコーティングし、乾燥した後、圧延して正極を製造した。前記正極のローディング量は約14.8mg/cm2であり、圧延密度は約3.2g/cm3であった。
【0157】
前記正極、リチウム金属負極(200μm、Honzo metal)、電解液とポリプロピレンセパレータを用いて、通常の方法で2032コイン型半電池を製造した。前記電解液は1M LiPF6をエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(混合比EC:DMC=1:1の体積比)に溶解させて混合溶液を使用した。
【0158】
(2)容量評価
前記コイン型半電池を常温(25℃)で10時間エージング(aging)した後、充放電テストを進行させた。
【0159】
容量評価は200mAh/gを基準容量とし、充放電条件はCC/CV2.5V~4.25V、1/20Cカット-オフ条件で、0.1C充電/0.1C放電後、0.2C充電/0.2C放電条件で充放電を実施した後、初期容量を測定した。
【0160】
常温サイクル寿命特性は常温(25℃)で、高温サイクル寿命特性は高温(45℃)で0.3C充電/0.3C放電条件で30回を測定後、1番目の放電容量に対する30番目の放電容量の比率を測定した。
【0161】
これに対する結果を下記表2、表3および表4に示した。
【0162】
(3)抵抗特性の測定
高温初期抵抗(直流内部抵抗:DC-IR(Direct current internal resistance))は電池を45℃で定電流-定電圧2.5V~4.25V、1/20Cカット-オフ条件で、0.2C充電および0.2C放電を1回実施し、4.25V充電100%で放電電流印加後、60秒後の電圧値を測定して、これを計算して、その結果を下記表2、表3および表4に示した。
【0163】
抵抗増加率は高温(45℃で初期に測定した抵抗(高温初期抵抗)対比サイクル寿命30回後の初期抵抗の測定方法と同一に実施して抵抗を測定し、その上昇率を百分率(%)に換算して、その結果を下記表2、表3および表4に示した。
【0164】
平均リーク電流(Average leakage current)は55℃の高温で半電池を4.7Vに維持した時、120時間経過する間の電流発生を測定して、その値の平均値を求めて、その結果を下記表2、表3および表4に示した。
【0165】
(4)熱安定性評価
示差重量熱分析(DSC:Differential Scanning Calorimetry)分析は、半電池を初期0.1C充電条件で4.25Vまで充電後、半電池を分解して正極のみ別途に得て、この正極をジメチルカーボネートで5回洗浄して用意した。DSC用ルツボに洗浄された正極を電解液に含浸させた後、温度を265℃まで上昇させながら、DSC機器でMettler toledo社DSC1 star systemを用いて、熱量変化を測定して、得られたDSCピーク温度および発熱量の結果を下記表2、表3および表4に示した。DSCピーク温度は発熱ピークが現れた温度を示す。
【0166】
【0167】
表2は、Ni0.80モル、Co0.10モル、Mn0.10モルを基準としてAlドーピング量を変化させた比較例1~4、実施例1~3の正極活物質に対する電気化学特性を測定した結果である。これとともに、比較のために、共沈時、Alを投入してAlドーピングされたLCO前駆体を製造した後、正極活物質を製造した比較例9およびニッケルおよびコバルト反応後、pH範囲を調整し、アルミニウムドーピング原料を投入してアルミニウムドーピングされた前駆体を製造後、正極活物質を製造した比較例10に対する電気化学特性を測定した結果も表2に示した。表2を参照すれば、金属元素を全くドーピングしない比較例1の場合、放電容量の面では210.1mAh/gであり、常温および高温寿命はそれぞれ96%、93%水準であるが、抵抗増加率113%および平均リーク電流0.51mAと非常に高いことを確認できる。特に、熱安定性指標を示すDSC peak温度は225.2℃で熱安定性が非常に低いことを確認できる。
【0168】
前駆体の製造後、リチウム原料と共にAlを混合してドーピングされた正極活物質を製造した比較例2~4の場合、構造がやや安定化されて、比較例1と比較する時は、平均リーク電流およびDSCが少し改善され、常温および高温サイクル寿命特性が向上したが、容量が大きく減少した。
【0169】
また、AlをドーピングしたLCO正極材である比較例9の場合、抵抗特性はやや改善され、熱安定性および寿命特性もやや改善されたが、容量が顕著に低いことを確認できる。
【0170】
これと共に、比較例10の場合、初期抵抗および抵抗増加率が非常に高く、初期効率および熱安定性は低下し、常温および高温寿命特性、容量特性がすべて低下していることを確認できる。
【0171】
これに対し、前駆体を製造する共沈工程でAl原料を共に投入してドーピングされた前駆体を製造した後、正極活物質を製造一実施例1~3の場合、容量に優れていながらも、常温および高温寿命特性、高温初期抵抗、抵抗増加率および平均リーク電流特性が顕著に向上することを確認できる。特に、DSC peak温度も非常に高いので、構造的安定性が確保されていることを確認できる。
【0172】
このような結果を考慮する時、Alを共沈時に投入してドーピングされた前駆体を製造した後、正極活物質を製造する場合、正極活物質の物性に非常に有利な結果をもたらすことを確認できる。
【0173】
【0174】
【0175】
表3は、Ni0.92モル、Co0.04モル、Mn0.04モルを基準としてAlのドーピング量を変化させた比較例5~6および実施例4~5の正極活物質に対する電気化学特性を測定した結果である。表4は、Ni0.96モル、Co0.04モルを基準としてAlのドーピング量を変化させた比較例7~8および実施例6~7の正極活物質に対する電気化学特性を測定した結果である。
【0176】
表3および表4を参照すれば、表2の結果と類似の形態を示すことが分かる。
【0177】
Alを共沈工程でドーピングする実施例4~7の正極活物質は、Alが正極活物質の内部まで均一にドーピングされるため、容量減少が少なく、常温および高温寿命特性が増加したことが分かる。これとともに、初期抵抗、抵抗増加率および平均リーク電流が減少したことが分かる。
【0178】
また、正極活物質粒子の構造的な安定性が増加してDSC温度は増加することを確認できた。
【0179】
このような結果を考慮する時、本発明のように、前駆体の製造時、共沈段階でAlドーピング原料を投入してドーピングされた前駆体を製造した後、正極活物質を製造する場合、ニッケルの含有量が非常に高い正極活物質の性能を画期的に改善できることが分かる。
【0180】
(実験例3)正極活物質の断面分析(FIB-EDS(Al)分析)
実施例3および比較例4により製造された正極活物質に対して、FIB(Focused Ion Beam、SEIKO 3050SE)で断面を切断し、SEM(Scanning Electron Microscope、JEOL JSM-6610)装置を用いてelement mappingした。
【0181】
具体的には、正極活物質の断面において2次粒子の内部から表面部まで均一な距離のポイントをAl元素に対するLine scanningをした。その結果を
図2および
図3に示した。つまり、
図2および
図3は、それぞれ実施例3および比較例4により製造した正極活物質の内部に存在するAl元素を分析して示した結果であって、spectrumはSEM写真に表示した位置であり、数値はその位置に存在するAlモル%を示したものである。
【0182】
図2を参照すれば、実施例3の正極活物質は、粒子表面および中心においてAlの濃度が均一に維持されることを確認でき、中心部と表面部(スペクトル1-3:半径の約30%に相当する)とのAlの平均濃度がすべて約1.4モル%であって、濃度差がないことが分かる。
【0183】
これに対し、
図3に示したように、比較例4の正極活物質は、粒子表面へいくほどAlの濃度が高く、粒子中心へいくほどAlの濃度が低くなり、中心部と表面部(スペクトル1-3、これは半径の約30%の長さに相当)とのAlの平均濃度がそれぞれ約1.5モル%と約2.87モル%であって、中心部と表面部とのAlの濃度差が、約1.37モル%と大きいことが分かる。
【0184】
これとともに、前記実施例3および比較例4と同様に、実施例1、2および4~7と、比較例1~3および5~8により製造された正極活物質に対する表面部と中心部とのAlの濃度を測定して、その結果を下記表5に示した。比較のために、実施例3および比較例4の結果も下記表5に示した。
【0185】
【0186】
前記表5に示したように、実施例1~7の場合、中心部と表面部とのAlの濃度差が0モル%~1モル%であるのに対し、Alがドーピングされた比較例2-4、6、および8の場合、濃度差が1.32モル%~1.41モル%であって、非常に大きいことが分かる。
【0187】
本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
【国際調査報告】