IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2023-554452低い残留モノマー含有量を有するアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーを製造する方法
<>
  • 特表-低い残留モノマー含有量を有するアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーを製造する方法 図1
  • 特表-低い残留モノマー含有量を有するアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーを製造する方法 図2
  • 特表-低い残留モノマー含有量を有するアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーを製造する方法 図3
  • 特表-低い残留モノマー含有量を有するアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーを製造する方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】低い残留モノマー含有量を有するアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/00 20060101AFI20231220BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20231220BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20231220BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20231220BHJP
   C08F 289/00 20060101ALI20231220BHJP
   C10M 145/14 20060101ALI20231220BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20231220BHJP
   C10M 107/02 20060101ALI20231220BHJP
   C10M 105/32 20060101ALI20231220BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
C08F2/00 A
C08F220/18
C08L33/06
C08L91/00
C08F289/00
C10M145/14
C10M101/02
C10M107/02
C10M105/32
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537080
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2021086447
(87)【国際公開番号】W WO2022129495
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20215325.0
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランク-オーラフ メーリング
(72)【発明者】
【氏名】マリア シュティマイアー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シンメル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン カール マイアー
(72)【発明者】
【氏名】ソフィア シラク
【テーマコード(参考)】
4H104
4J002
4J011
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104BB41A
4H104CB08C
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB13
4H104LA20
4J002AE001
4J002BG032
4J002BG052
4J002FD026
4J002FD076
4J002FD202
4J002FD206
4J002GN00
4J011AA05
4J011AC03
4J011BB01
4J011BB02
4J011BB08
4J011BB09
4J011BB15
4J011HA03
4J011HB06
4J011HB13
4J011HB14
4J026AA08
4J026BA05
4J026BA27
4J026BA36
4J026DB05
4J026DB15
4J026DB26
4J026EA08
4J026FA07
4J026GA06
4J100AB02R
4J100AJ10R
4J100AL03Q
4J100AL05P
4J100BA20R
4J100CA04
4J100CA05
4J100FA04
4J100FA19
4J100JA28
(57)【要約】
本発明は、低い残留モノマー含有量を有するアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーを製造する方法、この方法によって得られるアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ならびに潤滑剤用途におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法であって、以下のステップ
(i) 反応混合物を準備するステップであって、前記反応混合物は、
(A) 少なくとも2種の異なるアルキル(メタ)アクリレート、
(B) 任意選択的に、連鎖移動剤、および
(C) 任意選択的に、基油
を含むステップと、
(ii) ステップ(i)で準備した前記反応混合物を反応容器に装入するステップと、
(iii) 前記反応混合物を所望の反応温度に加熱するステップと、
(iv) 使用されたモノマーの総量に基づいて、0.1重量%~4重量%のフリーラジカル開始剤を、連続的または段階的のいずれかで添加するステップと、
(v) 少なくとも95%のモノマー転化率が達成された後に、使用されたモノマーの総量に基づいて0.05重量%~0.2重量%の開始剤および使用されたモノマーの総量に基づいて1重量%未満、好ましくは0.5重量%以下の、C4~14アルキルアクリレート、C4~14アルキルメタクリレート、C4~14アルキルマレエート、C4~14アルキルフマレート、およびスチレン、好ましくは、C4~14アルキルアクリレートおよびスチレンからなる群から選択される追加のモノマーを前記反応混合物に添加するステップと、
(vi) 任意選択的に、前記反応混合物をさらに加工して標的のポリアルキル(メタ)アクリレートを得るステップと
を含み、
HPLC法により残留モノマー含有量を測定することによって、前記転化率を決定する、
方法。
【請求項2】
前記アルキル(メタ)アクリレートが、前記アルキル(メタ)アクリレートの総量に基づいて、
(a) 0.2重量%~50重量%のC1~6アルキル(メタ)アクリレート、
(b) 50重量%~99.8重量%のC7~20アルキル(メタ)アクリレート、および
(c) 0重量%~10重量%の1種以上の更なるコモノマー
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記C1~6アルキル(メタ)アクリレートがメチルメタクリレートである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記C7~20アルキル(メタ)アクリレートがC10~15アルキルメタクリレートである、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記C7~20アルキル(メタ)アクリレートが、線状または分岐状C10~15アルキルメタクリレート、ならびに線状および分岐状C10~15アルキルメタクリレートの混合物から選択される、請求項2または3記載の方法。
【請求項6】
前記C7~20アルキル(メタ)アクリレートがラウリルメタクリレートである、請求項2または3記載の方法。
【請求項7】
前記連鎖移動剤が、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、および2-エチルヘキシル-チオグリコレートからなる群から選択され、好ましくは、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、および2-メルカプトエタノールから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
開始剤および開始剤が、アゾ開始剤およびペルオキシ化合物からなる群から独立的に選択され、好ましくは、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチル-ペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、および2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、より好ましくは、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、およびtert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記追加のモノマーが、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、およびスチレン、好ましくは、2-エチルヘキシルアクリレートおよびスチレンからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
以下のステップ
(i) 反応混合物を準備するステップであって、前記反応混合物は、
(A) 少なくとも2種の異なるアルキル(メタ)アクリレートであって、
(a) 0.2重量%~25重量%のC1~6アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチルメタクリレート、および
(b) 75重量%~99.8重量%のC7~20アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート
を含む少なくとも2種の異なるアルキル(メタ)アクリレート、
(B) 任意選択的に、連鎖移動剤、ならびに
(C) 任意選択的に、基油
を含むものであるステップと、
(ii) ステップ(i)で準備した前記反応混合物を反応容器に装入するステップと、
(iii) 前記反応混合物を所望の反応温度に加熱するステップと、
(iv) 使用されるモノマーの総量に基づいて、0.1重量%~4重量%のフリーラジカル開始剤を、連続的または段階的のいずれかで添加するステップと、
(v) 少なくとも95%のモノマー転化率が達成された後に、使用されたモノマーの総量に基づいて0.05重量%~0.2重量%の開始剤および使用されたモノマーの総量に基づいて1重量%未満、好ましくは0.5重量%以下の、C4~14アルキルアクリレート、C4~14アルキルメタクリレート、C4~14アルキルマレエート、C4~14アルキルフマレート、およびスチレン、好ましくは、C4~14アルキルアクリレートおよびスチレンからなる群から選択される追加のモノマーを前記反応混合物に添加するステップと、
(vi) 任意選択的に、前記反応混合物をさらに加工して標的のポリアルキル(メタ)アクリレートを得るステップと
を含み、
HPLC法により残留モノマー含有量を測定することによって、前記転化率を決定する、
請求項1記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法によって製造され、かつ1重量%未満、好ましくは0.7重量%未満の総残留モノマー含有量を有し、前記残留モノマー含有量が、HPLC法によって決定されるものである、ポリアルキル(メタ)アクリレート。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法によって製造され、かつ0.1重量%未満、好ましくは0.07重量%未満の残留メチルメタクリレート含有量を有し、前記残留モノマー含有量が、HPLC法によって決定されるものである、ポリアルキル(メタ)アクリレート。
【請求項13】
工業用流体中の添加剤としての、請求項11または12記載のポリアルキル(メタ)アクリレートの使用。
【請求項14】
工業用流体であって、
(A) 請求項1から10までのいずれか1項によって製造された0.5重量%~50重量%のポリアルキル(メタ)アクリレートと、
(B) API群I、II、III、IVおよびV油、ならびにそれらの混合物、好ましくは、API群II、III、IV油、およびそれらの混合物からなる群から選択される50重量%~99.5重量%の基油と、
(C) 0重量%~5重量%の1種以上の更なる添加剤と
を含む、工業用流体。
【請求項15】
工業用流体であって、
(A) 請求項1から10までのいずれか1項記載に従って製造された0.5重量%~25重量%のポリアルキル(メタ)アクリレートと、
(B) 炭化水素ベースのAPI群I、II、III、IVおよびV油、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される75重量%~99.5重量%の基油と、
(C) 0重量%~5重量%の1種以上の更なる添加剤と
を含む、工業用流体。
【請求項16】
成分(C)が、慣用のVI改善剤、分散剤、消泡剤、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、防食添加剤、染料、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14または15記載の工業用流体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い残留モノマー含有量を有するアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーを製造する方法、この方法によって得られるアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ならびに潤滑剤用途におけるそれらの使用に関する。
【0002】
残留モノマー含有量を減少させることは、残留モノマーを含有していないか、またはそのレベルが非常に低い製品が異なる商業的魅力を有することから、一般的に、ポリマー製造者が望んでいることである。残留モノマーが存在すると、ポリマー加工の最中の長期曝露の結果として、労働者、時には顧客にさえ危険が生じる可能性がある。追加的な開始剤ショットまたは後加工処理などのように、残留モノマー含有量を減少させる公知の技術は幾つか存在している。それにもかかわらず、最良の、または最も適切な技術を選択することは、必ずしも簡単なことではなく、依然としてこの問題に関する科学文献が比較的不足していることが観察される。用いるべき技術は、純度のグレードを決定するポリマー用途と、ポリマー品質とに依存し、また、モノマーを減少させる幾つかの技術によってポリマー特性が変わってしまうこともある。
【0003】
未変換または残留モノマーは、数多くの理由からポリアルキル(メタ)アクリレートの製造業者にとって問題となる。
【0004】
ポリマーは、通常、重合プロセスの所望の生成物であり、したがって、製品のパフォーマンスを最大化し、特定の製品コストを最小限に抑えるためには、変換率を可能な限り高くするべきである。残留モノマー含有量が高いと、通常、変換率が低くなってしまう。
【0005】
残留モノマー含有量は、例えば環境および持続可能性の規格において、ポリマーの登録に影響を与える。特定のモノマーまたは反応物、例えばメチルメタクリレートモノマーの残留含有量は、EUエコラベル登録の特定の限度を下回っている必要があり、一般的に、可能な限り低くするべきである。
【0006】
低分子有機化合物は、臭気、引火点、および揮発性(VOC)に悪影響を及ぼす。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ポリアルキル(メタ)アクリレート中のモノマー、すなわちメチルメタクリレートの全残留含有量を10000重量ppm未満に減少させて、所望の生成物のより高い転化率を達成し、上述したような欠点を回避することであった。
【0008】
技術水準
米国特許第4,867,894号明細書には、異なるモノマーの混合物を反応容器に装入して加熱する、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの製造が開示されている。その後、開始剤が添加され、更なるモノマーとより多くの開始剤との混合物が添加される。残留モノマー含有量を減少させるために、反応の終わりに更なる追加のモノマーを添加することについては言及されていない。
【0009】
米国特許出願公開第2008/0132663号明細書には、1種以上のエチレン性不飽和化合物をフリーラジカル重合する方法であって、エチレン性不飽和化合物の少なくとも80重量%を最初に装入し、少なくとも1種の重合開始剤を少なくとも2回のステップで添加し、第1のステップよりも第2のステップでより多くの開始剤を添加する方法が開示されている。同様に、残留モノマー含有量を減少させるために、反応の終わりに更なる追加のモノマーを添加することについては言及されていない。
【0010】
先行技術の方法では、その後の高価で時間のかかる真空脱気またはストリッピングステップを行うことなく残留モノマー含有量を必要なレベルまで減少させることはできない。
【0011】
ここで、驚くべきことに、追加のモノマー、例えばアルキル(メタ)アクリレートを、フリーラジカル開始剤ショットの最終的な添加と同時に、またはその少し前に添加することが、ポリマー生成物の残留モノマー含有量を減少させるのに好適な方法であることが見出された。さらに驚くべきことに、メチルメタクリレートの残留モノマー含有量に対して最大の残留モノマー量の減少が起こり、それによって、臭気が改善され、かつ所望のポリマーの引火点が著しく上昇することが見出された。
【0012】
本発明は、真空脱気またはストリッピング操作なしで必要なレベルを達成するのに好適な手法で方法を改変する。
【0013】
本発明は、同一の、または異なったアルキル(メタ)アクリレートのポリマー、ならびに同一の、または異なったアルキル(メタ)アクリレートと、アルキル(メタ)アクリレート以外の他のコモノマー(例えば、スチレンなど)とのコポリマーを製造するために使用することができ、これらのポリマーは、最小限に抑えられた残留モノマー含有量を有する。
【0014】
ポリマーにおける残留モノマー含有量が低いことは、例えばEUエコラベルの要件に準拠したものを含む潤滑剤の配合物にとって好ましい選択となる。
【0015】
EUエコラベルの基準によって、最終製品、ここでは潤滑剤配合物中の特定の物質の割合が制限される。それに応じて、添加剤の最大処理率が定義される。
【0016】
発明の説明
本発明の第1の対象は、ポリアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法であって、
(i) 反応混合物を製造するステップであって、反応混合物は、
(A) 少なくとも2種の異なるアルキル(メタ)アクリレート、
(B) 任意選択的に、連鎖移動剤、および
(C) 任意選択的に、基油
を含むものであるステップと、
(ii) ステップ(i)で製造した反応混合物を反応容器に装入するステップと、
(iii) 反応混合物を所望の反応温度に加熱するステップと、
(iv) 使用されるモノマーの総量に基づいて、0.1重量%~4重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%のフリーラジカル開始剤を、連続的または段階的のいずれかで添加するステップと、
(v) 少なくとも95%のモノマー転化率が達成された後に、使用されるモノマーの総量に基づいて0.05重量%~0.2重量%の開始剤および使用されるモノマーの総量に基づいて1重量%未満、好ましくは0.5重量%以下の追加のモノマーを反応混合物に添加するステップと、
(vi) 任意選択的に、反応混合物をさらに加工して標的のポリアルキル(メタ)アクリレートを得るステップと
を含み、
転化率は、HPLC法によって残留モノマー含有量を測定することによって決定するものである方法を目的とする。
【0017】
本発明によれば、残留モノマー含有量は、以下の試験条件で以下のHPLC法を使用して決定した:
検出:UV、200nm
カラム:LiChrospher 60-5 Si(125mm×3mm、5μm)
溶離液:n-ヘキサンLiChr.:THFLiChr.=99.6:0.4
流量:0.9mL/min
注入体積:20μL
【0018】
定量化は、校正標準を使用した外部線形多点校正を使用することによって行われる。校正標準は、残留含有量が決定されるモノマーに対応する。サンプルは、100mgの対応するモノマーを25mLフラスコに添加することによって製造され、その後、このフラスコは溶離液で満たされる。
【0019】
本発明の更なる対象において、アルキル(メタ)アクリレート(A)は、
(a) 0.2重量%~50重量%のC1~6アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチルメタクリレート、
(b) 50重量%~99.8重量%のC7~20アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート、および
(c) 0重量%~10重量%の1種以上の更なるコモノマー
を含む。
【0020】
本発明の更なる対象において、アルキル(メタ)アクリレート(A)は、
(a) 0.2重量%~25重量%のC1~6アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチルメタクリレート、
(b) 75重量%~99.8重量%のC7~20アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート、および
(c) 0重量%~10重量%の1種以上の更なるコモノマー
を含む。
【0021】
各成分(a)、(b)、および(c)の含有量は、アルキル(メタ)アクリレートの総量に基づく。特に、成分(a)、(b)、および(c)の割合は、合計100重量%になる。
【0022】
本発明の更なる対象において、アルキル(メタ)アクリレート(A)は、
(a) 0.2重量%~25重量%のC1~6アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチルメタクリレート、および
(b) 75重量%~99.8重量%のC7~20アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート
を含む。
【0023】
本発明の更なる対象において、アルキル(メタ)アクリレート(A)は、
(a) 10重量%~15重量%のC1~6アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチルメタクリレート、および
(b) 85重量%~90重量%のC7~20アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート
を含む。
【0024】
各成分(a)および(b)の含有量は、アルキル(メタ)アクリレートの総量に基づく。特に、成分(a)および(b)の割合は、合計100重量%になる。
【0025】
「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリル酸のエステルおよびメタクリル酸のエステルの両方を指す。メタクリレートおよびメタクリレートとアクリレートとの混合物は、アクリレートよりも好ましい。
【0026】
本発明による使用のためのC1~6アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸と1~6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状アルコールとのエステルである。「C1~6アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、特定の長さのアルコールを有する個々の(メタ)アクリル酸エステル、および異なる長さのアルコールを有する(メタ)アクリル酸エステルの同様の混合物を包含する。
【0027】
好適なC1~6アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、およびヘキシル(メタ)アクリレートを含む。特に好ましいC1~6アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレートおよびn-ブチル(メタ)アクリレートであり、メチルメタクリレートが特に好ましい。
【0028】
本発明による使用のためのC7~20アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸と7~20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状アルコールとのエステルである。「C7~20アルキルメタクリレート」という用語は、特定の長さのアルコールを有する個々の(メタ)アクリル酸エステル、および異なる長さのアルコールを有する(メタ)アクリル酸エステルの同様の混合物を包含する。
【0029】
好適なC7~20アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、2-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、2-ブチルオクチル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2-ブチルデシル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、2-メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-メチルドデシル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2-メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5-イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、およびエイコシル(メタ)アクリレートを含む。
【0030】
本発明による使用のためのC10~15アルキルメタクリレートは、メタクリル酸と10~15個の炭素原子を有する線状または分岐状アルコールとのエステルである。「C10~15アルキルメタクリレート」という用語は、特定の長さのアルコールを有する個々のメタクリル酸エステル、および異なる長さのアルコールを有するメタクリル酸エステルの同様の混合物を包含する。
【0031】
好適なC10~15アルキルメタクリレートは、例えば、デシルメタクリレート、2-プロピルヘプチルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、2-メチルウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2-メチルドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、2-メチルトリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、および/またはペンタデシルメタクリレートを含む。
【0032】
特に好ましいC10~15アルキルメタクリレートは、線状C12~14アルキルアルコール混合物のメタクリル酸エステル(C12~14アルキルメタクリレート)、特に、ラウリルメタクリレート、分岐状C10~15アルキルメタクリレート、または線状および分岐状C10~15アルキルメタクリレートの混合物である。
【0033】
本発明による使用のためのコモノマーは、8~17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アシル基に1~11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基に1~10個の炭素原子を有するビニルエーテル、アルコール基に1~10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレート、アルコール基に1~10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエート、分散性酸素および窒素官能化モノマー、ならびにこれらのモノマーの混合物からなる群から選択され得る。
【0034】
8~17個の炭素原子を有するスチレンモノマーの例は、スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばアルファ-メチルスチレンおよびアルファ-エチルスチレン、環上にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエンおよびパラ-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えば、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、およびテトラブロモスチレンであり、スチレンが好ましい。
【0035】
アシル基に1~11個の炭素原子を有するビニルエステルの例は、ビニルホルメート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル2-エチルヘキサノエート、ビニルバーサテートを含む。好ましいビニルエステルは、アシル基に、2~9個、より好ましくは2~5個の炭素原子を含む。ここで、アシル基は、線状であっても、または分岐状であってもよい。
【0036】
アルコール基に1~10個の炭素原子を有するビニルエーテルの例は、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルオクチルエーテルを含む。好ましいビニルエーテルは、アルコール基に4~8個の炭素原子を含む。ここで、アルコール基は、線状であっても、または分岐状であってもよい。
【0037】
「(ジ)エステル」という表記は、モノエステル、ジエステル、ならびにエステル、特にフマル酸および/またはマレイン酸の混合物が使用され得ることを意味する。アルコール基に1~10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルフマレートは、モノメチルフマレート、ジメチルフマレート、モノエチルフマレート、ジエチルフマレート、メチルエチルフマレート、モノブチルフマレート、ジブチルフマレート、ジペンチルフマレート、およびジヘキシルフマレートを含む。好ましい(ジ)アルキルフマレートは、アルコール基に、1~8個、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む。ここで、アルコール基は、線状であっても、または分岐状であってもよい。
【0038】
アルコール基に1~10個の炭素原子を有する(ジ)アルキルマレエートは、モノメチルマレエート、ジメチルマレエート、モノエチルマレエート、ジエチルマレエート、メチルエチルマレエート、モノブチルマレエート、ジブチルマレエートを含む。好ましい(ジ)アルキルマレエートは、アルコール基に、1~8個、より好ましくは1~4個の炭素原子を含む。ここで、アルコール基は、線状であっても、または分岐状であってもよい。
【0039】
分散性酸素官能化モノマーの例は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、および1,10-デカンジオール(メタ)アクリレートである。
【0040】
分散性窒素官能化モノマーの例は、アミノアルキル(メタ)アクリレート、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレート;アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えば、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド;複素環式(メタ)アクリレート、例えば、2-(1-イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、1-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-ピロリドン、N-メタクリロイルモルホリン、N-メタクリロイル-2-ピロリジノン、N-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-ピロリジノン、N-(3-メタクリロイルオキシプロピル)-2-ピロリジノン;複素環式ビニル化合物、例えば、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、3-エチル-4-ビニルピリジン、2,3-ジメチル-5-ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9-ビニルカルバゾール、3-ビニルカルバゾール、4-ビニルカルバゾール、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリジン、3-ビニルピロリジン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルオキサゾール、および水素化ビニルオキサゾールである。
【0041】
N-分散剤モノマーは、具体的には、N-ビニルピロリジノン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、およびN,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーであり得る。
【0042】
本発明によって製造されるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの重量平均分子量は、10,000g/mol~600,000g/molの範囲、好ましくは20,000g/mol~200,000g/molの範囲、より好ましくは30,000g/mol~150,000g/molの範囲である。本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの数平均分子量は、5,000g/mol~200,000g/molの範囲、好ましくは10,000g/mol~80,000g/molの範囲、より好ましくは15,000g/mol~60,000g/molの範囲である。
【0043】
好ましくは、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、1.5~3.5の範囲、より好ましくは1.8~2.5の範囲の多分散指数(PDI)M/Mを有する。
【0044】
およびMは、市販のポリメチルメタクリレート標準を使用してサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される。測定は、溶離剤としてTHFを用いたゲル浸透クロマトグラフィーで実施される。
【0045】
好適な連鎖移動剤(B)は、特に油溶性メルカプタン、例えば、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、および2-エチルヘキシル-チオグリコレートであり、好ましくは、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、または2-メルカプトエタノール、そうでなければテルペンのクラスからの連鎖移動剤、例えばテルピノレンから選択され、n-ドデシルメルカプタンが好ましい。
【0046】
本発明で使用すべき基油(C)は、API群I、II、III、IV、V油およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。これらは、好ましくは、API群V油から、またはAPI群I、IIもしくはIII油およびそれらの混合物から選択される。API群II油が最も好ましい。
【0047】
ステップ(ii)で述べた反応容器は、不活性ガス下、好ましくは窒素雰囲気下の、撹拌機および温度制御システムを備えた任意の好適な反応容器であり得る。
【0048】
ステップ(iii)で述べた反応温度は、一般的に、20℃~200℃、好ましくは90℃~120℃の範囲である。重合は、周囲圧力、減圧、または高圧で行われ得、周囲圧力または高圧のいずれかが好ましい。
【0049】
1、2、3、またはそれより多くのタイプのフリーラジカル開始剤を別々に、または組み合わせて使用することができる。本発明によって使用される開始剤および開始剤は、同一であっても、または異なっていてもよく、アゾ開始剤、例えば、アゾビス-イソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)および1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ならびにペルオキシ化合物、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、tert-ブチルペル-2-エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、tert-ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートおよび2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、ならびに前述の化合物のうちの2つ以上の相互の混合物、ならびに前述の化合物とフリーラジカルを同様に形成することができる明示されていない化合物との混合物からなる群から選択され得る。
【0050】
好ましい開始剤およびは、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチル-ペルオキシベンゾエート、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、およびtert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、より好ましくは、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートおよびtert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートからなる群から独立的に選択される。開始剤およびとしては、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートが特に好ましい。
【0051】
ステップ(v)で述べた追加的なアルキル(メタ)アクリレートは、C4~14アルキルアクリレート、C4~14アルキルメタクリレート、C4~14アルキルマレエート、C4~14アルキルフマレート、およびスチレンからなる群から選択され得る。2-エチルヘキシルアクリレート、スチレン、およびC12~14アルキルアクリレート(ラウリルアクリレート)が好ましく、好ましくはC4~14アルキルアクリレートおよびスチレンである。
【0052】
これらは、好ましくは、油溶性であり、油溶性ホモポリマーを形成することができるポリマーを製造するために使用される大部分のアルキル(メタ)アクリレート(A)よりも反応性がある。残留メチルメタクリレートとの良好な反応性を示すアルキル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0053】
追加のモノマーは、好ましくは、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、およびスチレンからなる群から、より好ましくは、2-エチルヘキシルアクリレートおよびスチレンから選択される。
【0054】
「少なくとも95%のモノマー転化率が達成された後」という表現は、反応による熱放出の減速によって示される重合の最終段階に関連する。この時点で、生成物中の残留モノマー含有量は、5%未満(少なくとも95%のモノマー転化率に対応)であり、通常、反応で使用されるモノマーの総量に対して、1%~5%である。
【0055】
それに対応して、転化率は、上記のように、HPLC法によって残留モノマー含有量を測定することによって決定された。
【0056】
本発明によって使用される基油は、潤滑粘度の油を含む。そのような油は、天然油および合成油、水素化分解、水素化および水素化仕上げから誘導された油、未精製油、精製油、再精製油、またはそれらの混合物を含む。
【0057】
基油は、American Petroleum Institute(API)によって指定されているように定義することもできる(2008年4月版の”Appendix E-API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils”, section 1.3 Subheading 1.3. Base Stock Categories”を参照)。
【0058】
APIは、現在、潤滑剤ベースストックの5つの群を定義している(API 1509, Annex E - API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils, September 2011)。群I、II、およびIIIは鉱油であり、これらの群は、鉱油が含有する飽和物および硫黄の量とそれらの粘度指数によって分類され、群IVはポリアルファオレフィンであり、群Vは、エステル油などを含む他のもの全てである。以下の表は、これらのAPI分類を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
本発明によって使用される適切な非極性基油の100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従って決定して、好ましくは1mm/s~20mm/sの範囲であり、より好ましくは1mm/s~10mm/sの範囲であり、より好ましくは1mm/s~5mm/sの範囲である。
【0061】
本発明によって使用することができる更なる基油は、群II-IIIフィッシャー・トロプシュ誘導基油である。
【0062】
フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、当該技術分野で公知である。「フィッシャー・トロプシュ誘導」という用語は、基油がフィッシャー・トロプシュ法の合成生成物であるか、またはこれから誘導されることを意味する。フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、GTL(ガス・ツー・リキッド)基油とも呼ばれ得る。本発明のコンプレッサー油の基油として都合良く使用することができる好適なフィッシャー・トロプシュ誘導基油は、例えば、欧州特許第0776959号明細書、欧州特許第0668342号明細書、国際公開第97/21788号、国際公開第00/15736号、国際公開第00/14188号、国際公開第00/14187号、国際公開第00/14183号、国際公開第00/14179号、国際公開第00/08115号、国際公開第99/41332号、欧州特許第1029029号明細書、国際公開第01/18156号、国際公開第01/57166号、および国際公開第2013/189951号に開示されているようなものである。
【0063】
本発明の方法によって製造されたポリアルキル(メタ)アクリレートは、さらに加工することができる。更なる反応ステップは、ポリアルキル(メタ)アクリレートを希釈して基油中でより低い固体の含有量を得ること、濃縮して基油中でより高い固体の含有量を得ること、反応混合物を濾過すること、反応混合物を脱気すること(ストリッピング、揮発性成分の除去)、または反応混合物を他のポリマーなどの更なる成分とブレンドすることからなる群から選択され得る。
【0064】
本発明の方法によって製造されたポリマーは、低い残留モノマー含有量を特徴とする。
【0065】
本発明の更なる対象は、ポリアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法であって、
(i) 反応混合物を製造するステップであって、反応混合物は
(A) 少なくとも2種の異なるアルキル(メタ)アクリレートであって、
(a) 0.2重量%~25重量%のC1~6アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチルメタクリレート、および
(b) 75重量%~99.8重量%のC7~20アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート
を含む少なくとも2種の異なるアルキル(メタ)アクリレート、
(B) 任意選択的に、連鎖移動剤、ならびに
(C) 任意選択的に、基油
を含むものであるステップと、
(ii) ステップ(i)で製造した反応混合物を反応容器に装入するステップと、
(iii) 反応混合物を所望の反応温度に加熱するステップと、
(iv) 使用されるモノマーの総量に基づいて、0.1重量%~4重量%、好ましくは1重量%~2重量%のフリーラジカル開始剤を、連続的または段階的のいずれかで添加するステップと、
(v) 少なくとも95%のモノマー転化率が達成された後に、使用されるモノマーの総量に基づいて0.05重量%~0.2重量%の開始剤および使用されるモノマーの総量に基づいて1重量%未満、好ましくは0.5重量%以下の追加のモノマーを反応混合物に添加するステップと、
(vi) 任意選択的に、反応混合物をさらに加工して標的のポリアルキル(メタ)アクリレートを得るステップと
を含み、
転化率を、(上記のように)HPLC法によって残留モノマー含有量を測定することによって決定する、
方法を目的とする。
【0066】
本発明の更なる対象は、ポリアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法であって、
(i) 反応混合物を製造するステップであって、反応混合物は、
(A) 少なくとも2種の異なるアルキル(メタ)アクリレートであって、
(a) 10重量%~15重量%のC1~6アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチルメタクリレート、および
(b) 85重量%~90重量%のC7~20アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート
を含む少なくとも2種の異なるアルキル(メタ)アクリレート、
(B) 任意選択的に、連鎖移動剤、ならびに
(C) 任意選択的に、基油
を含むものであるステップと、
(ii) ステップ(i)で製造した反応混合物を反応容器に装入するステップと、
(iii) 反応混合物を所望の反応温度に加熱するステップと、
(iv) 使用されるモノマーの総量に基づいて、0.1重量%~4重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%のフリーラジカル開始剤を、連続的または段階的のいずれかで添加するステップと、
(v) 少なくとも95%のモノマー転化率が達成された後に、使用されるモノマーの総量に基づいて0.05重量%~0.2重量%の開始剤および使用されるモノマーの総量に基づいて1重量%未満、好ましくは0.5重量%以下の追加のモノマーを反応混合物に添加するステップと、
(vi) 任意選択的に、反応混合物をさらに加工して標的のポリアルキル(メタ)アクリレートを得るステップと
を含み、
転化率を、(上記のように)HPLC法によって残留モノマー含有量を測定することによって決定する、
方法を目的とする。
【0067】
本発明の更なる対象は、本明細書で先に記載されているような方法によって製造され、かつ1重量%未満、好ましくは0.7重量%未満の総残留モノマー含有量と、メチルメタクリレートを含有するコポリマーの場合に0.1重量%未満、好ましくは0.07重量%未満の残留メチルメタクリレート含有量とを有する、ポリアルキル(メタ)アクリレートを目的とし、残留モノマー含有量は、上記のようにHPLC法によって決定される。
【0068】
残留モノマー含有量の減少は、全ての場合で、10%超改善された。
【0069】
本発明の更なる対象は、本明細書で先に記載されているような方法によって製造され、かつ製造プロセスにおいてステップ(v)なしで製造されたポリアルキル(メタ)アクリレートの引火点よりも高い引火点を有する、ポリアルキル(メタ)アクリレートを目的とする。
【0070】
得られるポリマー溶液の粘度は、基油または希釈油(C)の割合によって調整されて、200cSt~2000cStの範囲にされる。
【0071】
粘度調整剤を最もコスト効率良く使用することを確実にするためには、ポリマー増粘効率(TE)が重要である。TEは、特定量のポリマーを添加した後の油の100℃での動粘度の増加を表す。
【0072】
増粘効率は、主にポリマーの化学構造と分子量との関数である。大きな分子は、小さな分子よりも良好な増粘剤であり、同じ分子量では、一部のポリマー化学構造が、他のものよりも良好な増粘剤である。
【0073】
本発明によって製造されたポリアルキル(メタ)アクリレートは、100℃で、本発明によるものではない生成物と同等の、または僅かに改善された増粘効率を有する。この僅かな増加は、本発明による生成物の残留モノマー含有量の減少に関連している。
【0074】
本発明の更なる対象は、工業用流体中の添加剤としての、本明細書で先に記載されているような方法によって製造されたポリアルキル(メタ)アクリレートの使用を目的とする。
【0075】
本発明の更なる対象は、
工業用流体であって、
(A) 本明細書で先に記載されている方法によって製造された0.5重量%~50重量%のポリアルキル(メタ)アクリレートと、
(B) API群I、II、III、IVおよびV油、ならびにそれらの混合物、好ましくは、API群I、II、III油、およびそれらの混合物からなる群から選択される50重量%~99.5重量%の基油と、
(C) 0重量%~5重量%の1種以上の更なる添加剤と
を含む、工業用流体を目的とする。
【0076】
本発明の更なる対象は、
工業用流体であって、
(A) 本明細書で先に記載されている方法によって製造された0.5重量%~25重量%のポリアルキル(メタ)アクリレートと、
(B) API群I、II、III、IVおよびV油、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される75重量%~99.5重量%の基油と、
(C) 0重量%~5重量%の1種以上の更なる添加剤と
を含む、工業用流体を目的とする。
【0077】
本発明の更なる対象は、EUエコラベルの要件に準拠した工業用流体であって、
(A) 本明細書で先に記載されている方法によって製造された0.5重量%~13重量%のポリアルキル(メタ)アクリレートと、
(B) 植物油であるAPI群IVおよびV油、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、好ましくは、API群IVおよびV油、ならびにそれらの混合物から選択される87重量%~99.5重量%の生分解性基油と、
(C) 0重量%~5重量%の1種以上の更なる添加剤と
を含む、工業用流体を目的とする。
【0078】
各成分(A)、(B)、および(C)の含有量は、潤滑油組成物の総組成に基づく。特定の実施形態では、成分(A)、(B)、および(C)の割合は、合計100重量%になる。
【0079】
生分解性基油は、植物油、ポリアルキレングリコール、および合成エステルからなる群から選択される。
【0080】
一般的に使用される好適な植物油は、ダイズ油、ナタネ油、綿実油、オリーブ油、ヒマワリ油、およびキャノーラ油である。
【0081】
ポリアルキレングリコールは、API群V基油およびそれらの混合物から選択され得、合成エステルは、API群V基油およびそれらの混合物から選択され得る。
【0082】
本発明による工業用流体はまた、成分(C)として、従来のVI改善剤、分散剤、消泡剤、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、防食添加剤、染料、およびそれらの混合物からなる群から選択される更なる添加剤も含有していてもよい。
【0083】
従来のVI改善剤は、特にブタジエンおよびイソプレンに基づく水素化スチレン-ジエンコポリマー(HSD、米国特許第4116917号明細書、同第3772196号明細書、および同第4788316号明細書)、ならびにまたオレフィンコポリマー(OCPs, K. Marsden: Literature Review of OCP Viscosity Modifiers, Lubrication Science 1 (1988), 265)、特に、分散作用を有するN/O官能形態でも頻繁に存在し得るポリ(エチレン-co-プロピレン)タイプのもの、または分散剤、摩耗保護添加剤および/もしくは摩擦調整剤としての有利な添加剤特性(ブースター)を有するN官能形態で通常存在するPAMA(Roehm and Haasの西独国特許第1520696号明細書、RohMax Additivesの国際公開第2006/007934号)を含む。
【0084】
潤滑油、特にモーター油のためのVI改善剤および流動点降下剤の編集物は、例えば、T. Mang, W. Dresel (eds.): ”Lubricants and Lubrication”, Wiley-VCH, Weinheim 2001: R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.): ”Chemistry and Technology of Lubricants”, Blackie Academic & Professional, London 1992;またはJ. Bartz: ”Additive fuer Schmierstoffe”, Expert-Verlag, Renningen-Malmsheim 1994に詳述されている。
【0085】
適切な分散剤は、ポリ(イソブチレン)誘導体、例えば、ホウ酸化PIBSIを含むポリ(イソブチレン)スクシンイミド(PIBSI)、およびN/O官能基を有するエチレン-プロピレンオリゴマーを含む。
【0086】
分散剤(ホウ酸化分散剤を含む)は、潤滑油組成物の総量に基づいて、好ましくは0~5重量%の量で使用される。
【0087】
好適な消泡剤は、シリコーン油、フルオロシリコーン油、フルオロアルキルエーテルなどである。
【0088】
消泡剤は、好ましくは、潤滑油組成物の総量に基づいて、0.005~0.1重量%の量で使用される。
【0089】
好ましい清浄剤は、金属含有化合物、例えば、フェノキシド;サリチレート;チオホスホネート、特に、チオピロホスホネート、チオホスホネート、およびホスホネート;スルホネートおよびカーボネートを含む。金属として、これらの化合物は、特に、カルシウム、マグネシウム、およびバリウムを含有し得る。これらの化合物は、好ましくは、中性または過塩基性の形態で使用され得る。
【0090】
清浄剤は、好ましくは、潤滑油組成物の総量に基づいて、0.2~1重量%の量で使用される。
【0091】
好適な酸化防止剤は、例えば、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤を含む。
【0092】
フェノール系酸化防止剤は、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4’-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール);4,4’-ビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール);4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール);4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール);2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール);2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-エチル-フェノール;2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール;2,6-ジ-t-アミル-p-クレゾール;2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N’-ジメチルアミノメチルフェノール);4,4’チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール);4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール);2,2’-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール);ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド;n-オクチル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート;n-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート;2,2’-チオ[ジエチル-ビス-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などを含む。これらのうち、ビスフェノール系酸化防止剤およびエステル基含有フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0093】
アミン系酸化防止剤は、例えば、モノアルキルジフェニルアミン、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなど;ジアルキルジフェニルアミン、例えば、4,4’-ジブチルジフェニルアミン、4,4’-ジペンチルジフェニルアミン、4,4’-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、4,4’-ジノニルジフェニルアミンなど;ポリアルキルジフェニルアミン、例えば、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなど;ナフチルアミン、具体的には、アルファ-ナフチルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、およびさらにアルキル置換フェニル-アルファ-ナフチルアミン、例えば、ブチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、ノニルフェニル-アルファ-ナフチルアミンなどを含む。これらのうち、その酸化防止効果の観点から、ナフチルアミンよりもジフェニルアミンが好ましい。
【0094】
好適な酸化防止剤はさらに、硫黄およびリンを含有する化合物、例えば金属ジチオホスフェート、例えば、亜鉛ジチオホスフェート(ZnDTP)、「OOSトリエステル」=ジチオリン酸と、オレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、アルファ-ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステル(燃焼時に無灰)からの活性化二重結合との反応生成物;有機硫黄化合物、例えば、ジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、改質チオール、チオフェン誘導体、キサンテート、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄含有カルボン酸;複素環式硫黄/窒素化合物、特に、ジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール;亜鉛ビス(ジアルキルジチオカルバメート)、およびメチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート);有機リン化合物、例えば、トリアリールおよびトリアルキルホスファイト;有機銅化合物、ならびに過塩基性カルシウムおよびマグネシウムベースのフェノキシドおよびサリチレートからなる群から選択され得る。
【0095】
酸化防止剤は、潤滑油組成物の総量に基づいて、0~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.2~2重量%の量で使用される。
【0096】
流動点降下剤は、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、塩素化パラフィン-ナフタレン縮合物、塩素化パラフィン-フェノール縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレンなどを含む。5.000~50.000g/molの質量平均分子量を有するポリメタクリレートが好ましい。
【0097】
流動点降下剤の量は、好ましくは、潤滑油組成物の総量に基づいて、0.1~1重量%である。
【0098】
好ましい耐摩耗添加剤および極圧添加剤は、硫黄含有化合物、例えば、亜鉛ジチオホスフェート、亜鉛ジC3~12-アルキルジチオホスフェート(ZnDTP)、亜鉛ホスフェート、亜鉛ジチオカルバメート、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、ジスルフィド、硫化オレフィン、硫化油および脂肪、硫化エステル、チオカーボネート、チオカルバメート、ポリスルフィドなど;リン含有化合物、例えば、ホスファイト、ホスフェート、例えば、トリアルキルホスフェート、トリアリールホスフェート、例えば、トリクレジルホスフェート、アミン中和モノアルキルホスフェートおよびジアルキルホスフェート、エトキシル化モノアルキルホスフェートおよびジアルキルホスフェート、ホスホネート、ホスフィン、これらの化合物のアミン塩または金属塩など;硫黄およびリン含有耐摩耗剤、例えば、チオホスファイト、チオホスフェート、チオホスホネート、これらの化合物のアミン塩または金属塩などを含む。
【0099】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の総量に基づいて、0~3重量%、好ましくは0.1~1.5重量%、より好ましくは0.2~0.9重量%の量で存在し得る。
【0100】
使用される摩擦調整剤は、機械的に活性のある化合物、例えば、モリブデンジスルフィド、グラファイト(フッ素化グラファイトを含む)、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリイミド;吸着層を形成する化合物、例えば、長鎖カルボン酸、脂肪酸エステル、エーテル、アルコール、アミン、アミド、イミド;トライボケミカル反応を通じて層を形成する化合物、例えば、飽和脂肪酸、リン酸エステルおよびチオリン酸エステル、キサントゲネート、硫化脂肪酸;ポリマー状の層を形成する化合物、例えば、エトキシル化ジカルボン酸部分エステル、ジアルキルフタレート、メタクリレート、不飽和脂肪酸、硫化オレフィンまたは有機金属化合物、例えば、モリブデン化合物(モリブデンジチオホスフェートおよびモリブデンジチオカルバメートMoDTC)、およびそれらとZnDTPとの組み合わせ、銅含有有機化合物を含み得る。
【0101】
摩擦調整剤は、潤滑油組成物の総量に基づいて、0~6重量%、好ましくは0.05~4重量%、より好ましくは0.1~2重量%の量で使用され得る。
【0102】
先に列挙されている化合物のうちの幾つかは、複数の機能を果たし得る。例えば、ZnDTPは、主に耐摩耗添加剤および極圧添加剤であるが、酸化防止剤および腐食防止剤(ここでは、金属不動態化剤/不活性化剤)の特徴も有する。
【0103】
先に列挙されている添加剤は、なかでも、T. Mang, W. Dresel (eds.): ”Lubricants and Lubrication”, Wiley-VCH, Weinheim 2001; R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.): ”Chemistry and Technology of Lubricants”に詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】実験1~8の生成物中の残留モノマー含有量を示す。
図2】実験1~8における総残留モノマー含有量の減少を示す。
図3】実験1~8における残留メチルメタクリレート含有量の減少を示す。
図4】ポリマーの引火点と残留MMA濃度の増加との相関関係を示す。
【0105】
本発明を以下の非限定的な例によってさらに説明する。
【0106】
実験の部
略称
C10~15AMA C12~15アルキルメタクリレート、77%分岐および23%線状
(平均分子量=279g/mol)
nDDM n-ドデシルメルカプタン
tDDM tert-ドデシルメルカプタン
EHA 2-エチルヘキシルアクリレート
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
KV ASTM D445によって測定された動粘度
KV100 ASTM D445によって100℃で測定された動粘度
LIMA C12~15アルキルメタクリレート、60%分岐および40%線状
(分子量=273g/mol)
LMA ラウリルメタクリレート、73%のC12、27%のC14;全て線状
(分子量=262g/mol)
MMA メチルメタクリレート(分子量=100.12g/mol)
重量平均分子量
数平均分子量
PDI 多分散指数1
ReMo 残留モノマー(複数可)
Sty スチレン
TBPEH tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート
TE 試験油中における100℃での動粘度として測定された増粘効率
【0107】
試験方法
本発明および比較例によって製造されたポリアルキル(メタ)アクリレートを、それらの分子量、PDI、およびそれらのバルク粘度に関して特徴付けた。
【0108】
ポリアルキル(メタ)アクリレートの分子量および多分散度は、公知の方法によって決定することができる。例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することができる。分子量を決定するために、浸透圧法、例えば気相浸透圧測定を使用することも同様に可能である。述べられている方法は、例えば、P.J. Flory, ”Principles of Polymer Chemistry” Cornell University Press (1953), Chapter VII, 266-316、および”Macromolecules, an Introduction to Polymer Science”, F.A. Bovey and F.H. Winslow, Editors, Academic Press (1979), 296-312、およびW.W. Yau, J.J. Kirkland and D.D. Bly, ”Modern Size Exclusion Liquid Chromatography, John Wiley and Sons, New York, 1979に記載されている。本明細書に提示されているポリマーの分子量を決定するために、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用することが好ましい。
【0109】
ポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均分子量(M)は、以下の測定条件を使用して、DIN 55672-1によって、ポリメチルメタクリレート校正標準を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した:
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、連続的に蒸留してポンプで循環
オーブン温度:35℃
カラム:カラムセットは4つのカラムからなる:2つのカラムSDV 106Å、1つのカラムSDV 104Å、および1つのカラムSDV 103Å(PSS Standards Service GmbH, Mainz, Germany)、全て、サイズ300×8mmおよび平均粒子径10μm
流量:1mL/min
注入体積:100μL
機器:オートサンプラー、ポンプ、カラムオーブンからなるAgilent 1100シリーズ
検出デバイス:Agilent 1260シリーズの屈折率検出器。
【0110】
本発明によれば、残留モノマー含有量を以下の試験条件で以下のHPLC法を使用して決定した:
検出:UV、200nm
カラム:LiChrospher 60-5 Si(125mm×3mm、5μm)
溶離液:n-ヘキサンLiChr.:THFLiChr.=99.6:0.4
流量:0.9mL/min
注入体積:20μL
【0111】
定量化は、校正標準を使用した外部線形多点校正を使用することによって行われる。校正標準は、残留含有量が決定されるモノマーに対応する。サンプルは、100mgの対応するモノマーを25mLフラスコに添加することによって製造され、その後、このフラスコは溶離液で満たされる。
【0112】
一般的な重合手順1(例1~9)
187.72g(1.87mol;使用されるモノマーの総量に基づいて13.0%)のメチルメタクリレート、1256.28g(4.80mol;使用されるモノマーの総量に基づいて87.0%)のラウリルメタクリレート、10.4g(使用されるモノマーの総量に基づいて0.72%)の連鎖移動剤nDDM、および556gのパラフィン油(Chevron 100N)を組み合わせることによって、反応混合物を製造した。
【0113】
混合物を、温度計と、温度制御器と、追加的な漏斗と、パージガス入口と、パージガス出口を有する水冷式還流凝縮器とを備えた3リットルの反応器に装入し、次いで、ドライアイス(CO)で不活性化し、150rpmの撹拌機速度で15L/hの窒素流において110℃に加熱した。反応温度に達したら、10.83gのパラフィン油(Chevron 100N)中に入った合計14.44g(使用されるモノマーの合計量に基づいて1%)の開始剤混合物(3.61g;使用されるモノマーの合計量に基づいて0.25%)tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートを3回のステップで添加した:1時間で開始剤溶液の5%、2時間目で25%、3時間目で70%。全ての開始剤溶液を装入した後に、混合物を1時間の保持期間にわたって100℃に冷却した。
【0114】
上記のプロセスによって、約71.2重量%の粗ポリマー固体含有量を有する1994.23gポリマー溶液が得られた。
【0115】
ポリマー溶液の後処理については以下に記載する。
【0116】
ポリマー溶液の後処理1
100℃で1時間保持した後に、サンプルを開始剤溶液(4.33gのパラフィン油Chevron 100N中に入った1.44gのtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)および部分的に3.6gまたは7.2gの追加のモノマーで処理し、その直後に、開始剤を添加する。さらに1時間の保持期間が続いた。
【0117】
記載されているプロセスによって、それぞれ72.2%~72.6%の範囲の粗ポリマー固体含有量を有するそれぞれ2000g(追加のモノマーなし)または2003.6gおよび2007.2g(追加のモノマーを添加した場合)のポリマー溶液が得られた。
【0118】
一般的な重合手順2(例10~14)
1980.8g(7.26mol;使用されるモノマーの総量に基づいて99.79%)のLIMA、4.2g(0.042mol;使用されるモノマーの総量に基づいて0.21%)のメチルメタクリレート、39g(使用されるモノマーの総量に基づいて1.95%)の連鎖移動剤nDDM、および29g(使用されるモノマーの総量に基づいて1.45%)の連鎖移動剤tDDMを組み合わせることによって、反応混合物を製造した。
【0119】
混合物を、温度計と、温度制御器と、追加的な漏斗と、パージガス入口と、パージガス出口を有する水冷式還流凝縮器とを備えた3リットルの反応器に装入し、次いで、ドライアイス(CO)で不活性化し、150rpmの撹拌機速度で15L/hの窒素流において110℃に加熱した。反応温度に達したら、15gのLIMA中に入った合計20g(使用されるモノマーの合計量に基づいて1%)の開始剤溶液(5g;使用されるモノマーの合計量に基づいて0.25%)tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートを3回のステップで添加した:1時間で開始剤溶液の2%、2時間目で25%、3時間目で73%。全ての開始剤溶液を装入した後に、混合物に1時間の保持期間が設けられた。
【0120】
ポリマーの後処理については以下に記載する。
【0121】
ポリマー溶液の後処理2
1時間の保持期間の後に、混合物を開始剤(4gのtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート;使用されるモノマーの総量に基づいて0.2%)で処理した。さらに3時間の保持期間が続いた。次いで、混合物を別の開始剤ショット(4gのtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート;使用されるモノマーの総量に基づいて0.2%)および10gの追加のモノマー(2-エチルヘキシルアクリレート)で処理し、その直後に、開始剤を添加した。混合物を反応温度で一晩撹拌し、翌朝滴下した。
【0122】
記載されているプロセスによって、100%の粗ポリマー固体含有量を有する2000g(追加のモノマーなし)または2010g(追加のモノマーを添加した場合)のポリマーが得られた。
【0123】
【表2】
【0124】
例1、2、7、および8は、これらのポリマーを製造する方法が、後処理の間、重合反応の終わりに特定量の追加のモノマーを添加することを含まず、追加的な開始剤ショット(チェーサーショット)が添加されたのみであるため、比較例である。
【0125】
例3~6および9は、これらのポリマーを製造する方法が、重合反応の終わりに追加的な開始剤ショットを含み、同様に、EHA(例3および4)またはスチレン(例5および6)またはLMA(例9)の添加も含んでいたため、本発明によるものである。
【0126】
本発明によって製造されたポリアルキル(メタ)アクリレート生成物は、13重量%のメチルメタクリレートおよび87重量%のLMAを含有する。
【0127】
【表3】
【0128】
例10~12は、これらのポリマーを製造する方法が、後処理の間、重合反応の終わりに特定量の追加のモノマーを添加することを含まず、追加的な開始剤ショットが添加されたのみであるため、比較例である。
【0129】
例13および14は、これらのモノマーを製造する方法が、重合反応の終わりに追加的な開始剤ショットを含み、同様に、EHAの添加も含んでいたため、本発明によるものである。
【0130】
本発明によって製造されたポリアルキル(メタ)アクリレート生成物は、0.21重量%のメチルメタクリレートおよび99.79重量%のLIMAを含有する。
【0131】
本発明によって製造されたポリマーの分子量およびPDIは、以下の表2に開示されている。
【0132】
【表4】
【0133】
全ての実施例が、それぞれ53,600g/mol(例9)~54,600g/mol(例3および5)および15,400(例13および14)の非常に狭い範囲の重量平均分子量Mを有することが示される。PDIは、1.7~2.0である。
【0134】
【表5】
【0135】
例1~2および7~8は、後処理ステップで追加のモノマーが添加されなかったため、比較例である。例3~6および9は、それらを製造する方法が、重合反応の終わりに追加的な開始剤ショットを含み、同様に、EHA(例3および4)またはスチレン(例5および6)またはLMA(例9)の添加も含んでいたため、本発明によるものである。
【0136】
100℃で測定された動粘度は全て、837mm/s(例2)および913mm/s(例5)の狭い範囲にあることが分かる。これは、全ての例がほぼ同じバルク粘度を示すことを意味する。
【0137】
実施例および比較例の残留モノマー含有量は、以下の表4に列挙されている。
【0138】
【表6】
【0139】
驚くべきことに、重合終了時に開始剤を添加することは、追加のモノマーも添加したとき、より効率的であることが見出された。追加的な開始剤ショットおよび追加のモノマーショットを用いて製造されたポリアルキル(メタ)アクリレートの最終的な残留モノマー含有量(例3~6、および9、および13~14)は、新鮮なモノマーを添加しない場合(例1、2、7、および8、および10~12)よりも低かった。この減少は、総残留モノマーについて、同様に個々のモノマー、ここではメチルメタクリレートについて、また長鎖(メタ)アクリレートの合計またはメタクリレートとスチレンとの合計について明らかであった。
【0140】
残留モノマー含有量の減少は、個々のモノマーについて示されているように、全ての場合において、比較例よりも10%超改善された(図1を参照)。
【0141】
生成物のバルク粘度(KV100として測定)および増粘効率が著しく変化することはなく、再現性の誤差の範囲内であった。固体含有量は一般的に僅かに増加し、それによって、ポリマー生成物を製造する方法がより経済的になる。
【0142】
本発明によって製造されたポリアルキル(メタ)アクリレート中のより低い残留モノマー含有量の効果と一緒に、臭気の減少も観察された。これらの結果は、以下の表5に示されている。
【0143】
【表7】
【0144】
残留モノマー含有量の減少に臭気の減少が伴うと結論付けることができる。
【0145】
生成物中の残留モノマー、特にメチルメタクリレートの減少は、引火点の上昇と関連し得る。
【0146】
校正曲線は、ASTM D93、ISO 2719によるペンスキー-マルテンス密閉式引火点試験を使用して決定した。87重量%のLMAおよび13重量%のMMAを含むポリマー(Chevron Group II基油中で74%のポリマー)に基づいて、異なるポリマー溶液A~Eを製造した。ベースポリマーAを、先にさらに記載されているような一般的な重合手順1によって製造したが、後処理は行わなかった。
【0147】
次いで、ロータリーエバポレーターを用いて揮発性化合物をポリマーAから除去し、ポリマーBを得た。
【0148】
次いで、ポリマーBに、異なる量のMMAを添加した:約0.1%でポリマーCが得られ、約0.4%でポリマーDが得られ、約0.8%でポリマーEが得られた。
【0149】
残留モノマー含有量の対応する値は、以下の表6に示されている。
【0150】
【表8】
【0151】
引火点と残留MMA濃度の増加との明確な相関関係が分かり、すなわち、引火点は、残留MMA含有量の増加に伴って低下する。相関関係は、図4に視覚化されている。
【0152】
残留LMAの濃度は、例A~Eでほぼ同一であった。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】