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特表2023-554453蒸気流から軽沸成分と重沸成分とを回収する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】蒸気流から軽沸成分と重沸成分とを回収する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/44 20060101AFI20231220BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 45/82 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 57/04 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C07C51/44
C07C47/22
C07C45/82
C07C57/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537081
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2021085344
(87)【国際公開番号】W WO2022128834
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20215567.7
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トアステン メアカー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヒラー
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD11
4H006BC10
4H006BD84
4H006BS10
(57)【要約】
本発明は、軽沸成分と重沸成分とを蒸気流から回収する方法であって、A1)軽沸成分と重沸成分とを含む蒸気流(1)を、塔(2)に、前記塔(2)の塔底の位置で、導入する工程、A2)軽沸成分が富化された蒸気流(3)を、塔(2)の塔頂から抜き出す工程、A3)重沸成分が富化された液体流(4)を、塔(2)の塔底から引き出し、かつ液体流(4)を、部分流(5)と部分流(6)とに分割する工程、A4)部分流(5)を、塔(2)よりも上方の位置で塔(2)に再循環させて戻し、その際、部分流(5)は実質的に断熱保持される工程、A5)中沸成分が富化された流れ(7)を、塔(2)の中間部分から抜き出し、かつ流れ(7)を部分流(8)と部分流(9)とに分割する工程、A6)熱交換器(10)において部分流(9)を冷却して、冷却された流れ(11)を供給し、かつ流れ(11)を流れ(12)として塔(2)の塔頂よりも下方の導入位置で、前記塔(2)に再循環させて戻す工程、およびA7)重沸成分が富化された部分流(6)と、中沸成分が富化された部分流(8)とを抜き出す工程を含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気流から軽沸成分と重沸成分とを回収する方法であって、
A1)軽沸成分と重沸成分とを含む蒸気流(1)を、塔(2)に前記塔(2)の塔底の位置で導入する工程、
A2)前記軽沸成分が富化された蒸気流(3)を、前記塔(2)の塔頂から抜き出す工程、
A3)前記重沸成分が富化された液体流(4)を、前記塔(2)の前記塔底から抜き出し、かつ前記液体流(4)を、前記重沸成分が富化された部分流(5)と部分流(6)とに分割する工程、
A4)前記部分流(5)を、前記塔(2)の前記塔底よりも上方の位置で前記塔(2)に再循環させて戻す工程であって、前記再循環の間、前記部分流(5)は実質的に断熱保持される、再循環させる工程、
A5)中沸成分が富化された流れ(7)を、前記塔(2)の中間部分から抜き出し、かつ前記流れ(7)を部分流(8)と部分流(9)とに分割する工程、
A6)前記部分流(9)を前記熱交換器(10)において冷却して、前記冷却された流れ(11)を供給し、かつ前記流れ(11)を流れ(12)として前記塔(2)の前記塔頂よりも下方の導入位置で前記塔(2)に再循環させて戻す工程、および
A7)前記重沸成分が富化された前記部分流(6)と、前記中沸成分が富化された前記部分流(8)とを抜き出す工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記流れ(7)を、前記塔(2)内の充填物の中間部分で抜き出す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程A7)で抜き出される前記部分流(6)の量を、工程A7)で抜き出される前記部分流(8)の量で調整する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
B1)前記流れ(11)から少なくとも1つの更なる部分流(13)を分割する工程、および
B2)前記部分流(13)を、前記塔(2)において前記流れ(7)が抜き出される位置よりも下方の位置で前記塔(2)に導入する工程
をさらに含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
塔(2)に導入された後の前記流れ(12)および/または前記部分流(13)が、上昇蒸気に対して向流で導かれる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記塔(2)に対して、前記流れ(12)を、前記流れ(7)が抜き出される前記位置よりも高い位置で導入し、かつ前記部分流(13)を、抜き出された前記流れ(7)よりも低い位置で導入する、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
C1)前記部分流(6)を、塔(14)の塔頂よりも下方の位置で前記塔(14)に導入する工程、
C2)前記塔(14)内部で前記部分流(6)をガス流(15)によりパージして、前記部分流(6)から残留軽沸成分を回収する工程、
C3)軽沸成分を含む流れ(16)を、前記塔(14)の前記塔頂から引き出し、かつ前記流れ(16)を、前記塔(2)の前記塔底よりも上方の位置で前記塔(2)に導入する工程、および
C4)前記軽沸成分が取り除かれた流れ(17)を、前記塔(14)の前記塔底から抜き出す工程
をさらに含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
D1)前記部分流(8)を、塔(18)に前記塔(18)の塔頂よりも下方の位置で導入する工程、
D2)前記塔(18)内部で前記部分流(8)をガス流(19)によりパージして、前記部分流(8)から残留軽沸成分を回収する工程、
D3)軽沸成分を含む流れ(20)を前記塔(18)の前記塔頂から抜き出す工程、および
D4)前記軽沸成分が取り除かれた流れ(21)を、前記塔(18)の塔底から抜き出す工程
をさらに含む、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記蒸気流(1)が、オレフィン、脂肪族アルコール、脂肪族アルデヒド、アリルアルコール、アリルアルデヒド、およびアリルケトンからなる群より選択される有機化合物の酸化から生ずる、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記軽沸成分がアクロレインを含むか、またはアクロレインからなり、かつ前記重沸成分がアクリル酸を含むか、またはアクリル酸からなる、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記蒸気流(1)が水も含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程A5)で抜き出された前記流れ(7)が水を含む、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記塔(2)の前記塔底における温度が、70~85℃の範囲である、請求項10から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記部分流(5)の温度が、70~85℃の範囲である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記流れ(11)が、最高で20℃の温度を有する、請求項10から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽沸成分と重沸成分とを含む蒸気流から、前記軽沸成分と前記重沸成分とを回収する方法に関する。具体的には、本発明の方法は、従来技術の方法と比較して、重沸成分の回収を改善することができる。好ましくは、本発明は、プロペンの、アクロレインへの酸化において副生成物として形成されるアクリル酸の回収を改善しながら、アクロレインおよびアクリル酸を含む蒸気から、アクロレインおよびアクリル酸を回収するための方法に関する。
【0002】
工業規模において、ケトンまたはアルデヒドといった多くの有機生成物が、有機前駆体化合物の部分気相酸化によって製造される。しかしながら、有機化合物の部分気相酸化の主な副反応は、所望の生成物が、より一層酸化された副生成物、特にアルデヒドからカルボン酸へと酸化されてしまうことである。したがって、所望の生成物を必要な純度で得るためには、この酸化反応からの蒸気流を、精製プロセスにかける必要がある。先行技術の精製プロセスでは、少なくとも許容可能な純度で所望の生成物を回収することができるが、通常、特にその使用が経済面で魅力となるであろう濃度で副生物を回収することはできない。副生成物もまた同様に価値のある材料の場合があるが、それらは、従来技術の精製プロセスの欠陥により失われてしまう。
【0003】
例えば、工業規模において、アクロレインは、不均一触媒の存在下で気相中におけるプロペンの選択的酸化によって製造される。この方法における主な副反応は、所望の生成物が酸化してアクリル酸になることである。反応器を出た後、高温のガス状生成物流は急冷塔において水で冷却される。急冷塔の機能は、更なる反応を停止し、ガス状生成物流から副生成物を吸収することであり、したがって、主に水、およびアクリル酸といった高沸成分の反応ガスからの分離が促進される。アクロレインを精製するための従来技術の代表的なアクロレイン急冷塔を、以下の図5に示す。従来技術の代表的な急冷塔では、プロペンの酸化で生じる高温ガスが、急冷塔のサンプセクションで急冷塔に入り、熱交換器を介して、いわゆるサンプポンプ-アラウンドの再循環流によって冷却される。このようにして得られた負荷水流をストリッピング塔に供給し、ストリッピング塔内で再循環ガスによりストリッピングし、吸収されたアクロレインを回収する。残りの負荷水流は、約14~18重量%のアクリル酸を含有する。通常、負荷水流中に依然として含まれるアクリル酸は、回収するに値する貴重な材料である。しかしながら、前記負荷水流中のアクリル酸は、比較的低濃度である。そのため、工業規模でみると、負荷水流からアクリル酸を回収することは、魅力的ではない。したがって、アクリル酸を含有する水流は、大抵の場合、熱酸化装置に送られるが、これは、通常、貴重な材料の損失を意味する。
【0004】
したがって、軽沸成分の回収に加えて、重沸成分の回収の改善をも可能にする、改良された方法が必要とされていた。
【0005】
この問題は、精製プロセスにおけるサンプポンプ-アラウンドの冷却をオフにして、塔の塔底に再循環させて戻す流れを実質的に断熱保持することにより解決することが見出された。実質的に断熱保持された流れの再循環により、従来技術の方法と比較して、塔内のサンプの温度が高まる。結果として、塔内の凝縮が少なくなり、したがって、塔内のサンプへ戻る凝縮された軽沸成分および中沸成分の流れが大幅に減少する。これにより、サンプ内の重沸成分が濃縮される。サンプポンプ-アラウンドによる冷却が失われた分は、上部ポンプ-アラウンドによる冷却によって補われる。この上部ポンプ-アラウンドは、塔(2)の中間部分から流れ(7)を抜き出すこと、流れ(7)を、抜き出される部分流(8)と、部分流(9)とに分割すること、熱交換器(10)内で部分流(9)を冷却して、冷却された流れ(11)を供給すること、流れ(12)として、流れ(11)を塔(2)の塔頂よりも下方の導入点に再循環させて前記塔(2)へ戻すことを含む。
【0006】
したがって、本発明の目的は、蒸気流から軽沸成分と重沸成分とを回収する方法(A)であって、
A1)軽沸成分と重沸成分とを含む蒸気流(1)を、塔(2)に、前記塔(2)の塔底の位置で導入する工程、
A2)軽沸成分が富化された蒸気流(3)を、塔(2)の塔頂から抜き出す工程、
A3)重沸成分が富化された液体流(4)を、塔(2)の塔底から抜き出し、かつ液体流(4)を、重沸成分が富化された部分流(5)と部分流(6)とに分割する工程、
A4)部分流(5)を、塔(2)の塔底よりも上方の位置で塔(2)に再循環させて戻す工程であって、再循環の間、部分流(5)は実質的に断熱保持される、再循環させる工程、
A5)中沸成分が富化された流れ(7)を、塔(2)の中間部分から抜き出し、かつ流れ(7)を部分流(8)と部分流(9)とに分割する工程、
A6)部分流(9)を熱交換器(10)において冷却して、冷却された流れ(11)を供給し、かつ流れ(11)を流れ(12)として塔(2)の塔頂よりも下方の導入位置で、前記塔(2)に再循環させて戻す工程、および
A7)重沸成分が富化された部分流(6)と、中沸成分が富化された部分流(8)とを抜き出す工程を含む方法である。
【0007】
本発明の文脈において、液体流(4)および部分流(5)はサンプポンプ-アラウンドを形成し、流れ(7)、部分流(9)、流れ(11)、および流れ(12)は上部ポンプ-アラウンドを形成する。
【0008】
部分流(6)には、重沸成分が富化される。従来技術の方法と比較して、本発明の方法によれば、部分流(6)中の重沸成分、例えば、アクリル酸の濃度を高めることが可能である。これは、本発明による実施例に示されている。部分流(8)には、中沸成分が富化される。
【0009】
本発明による方法は、以下の図1にも示される。
【0010】
本発明によれば、工程A5)で塔(2)に導入される部分流(5)の温度、すなわち、このように再循環された部分流(5)の温度は、実質的に断熱保持される。したがって、従来技術の方法とは対照的に、本発明による方法においては、部分流(5)が再循環されるサンプポンプ-アラウンド用の熱交換器は、完全に止められるか、または完全に存在しないことさえある。
【0011】
本発明の文脈において、塔(2)は、好ましくは、その塔底に急冷部を有し、その中間部分に蒸留部を有し、かつその塔頂部にもう一つの急冷部を有するように操作される。
【0012】
本発明の文脈において、充填物という用語は、化学工学における当業者に知られる通りに使用され、ランダムな、または構造化されたあらゆる種類の充填物、および塔内の気相および液相を密接に接触させるために使用されるプレートまたはトレイを指す。
【0013】
本発明の文脈において、流れを塔内に導入または再循環させることは、例えば、注目している流れを液体分配器により分配することを含む。
【0014】
本発明の文脈において、流れ(7)が塔(2)から抜き出される位置は、流れ(7)の側方抜き出しとも称する。
【0015】
塔(2)内部において、中沸点成分および重質沸騰成分が凝縮し、塔のサンプへと下向きに流れる。ほとんどの場合、これらの成分の凝縮は、塔(2)内の充填物の高さにわたって生じる。したがって、流れ(7)を塔(2)内の充填物の中間部分で抜き出すことが好ましい。これにより、上部ポンプ-アラウンドにおける再循環液流を使用することができる。
【0016】
本発明による方法の一実施形態において、流れ(7)は、塔(2)内の充填物の中間部分において抜き出される。
【0017】
サンプポンプ-アラウンド流、すなわち部分流(5)の冷却が失われるほど、塔(2)内部の液体部分の量は減っていく。言い換えれば、サンプポンプ-アラウンド流による冷却が失われた分が、上部ポンプ-アラウンドによって補われなかった場合は、液体流(4)および部分流(6)を塔(2)の塔底から抜き出すことができなかった。しかしながら、本発明による方法の工程A5)およびA6)で実現される上部ポンプ-アラウンドは、サンプポンプ-アラウンドの冷却が失われた分を補うだけでなく、塔(2)の塔底またはサンプから部分流として抜き出される液体流(6)の量または体積の調整を可能にする。好ましくは、工程A7)で部分流として抜き出される部分流(8)の量または体積は、工程A7)で抜き出される部分流(6)の量または体積に等しい。
【0018】
本発明による方法の一実施形態において、工程A7)で抜き出される部分流(6)の量は、工程A7)で抜き出される部分流(8)の量によって調整される。
【0019】
塔(2)内の液体、特に中沸成分と、さらに重沸成分とは、様々な方法で逆流させることができる。選択肢の1つとして、流れ(7)を抜き出すための液体収集器、液体オーバーフロー(排水管)、および液体分配器を塔(2)の中間部分に設け、これにより、あらゆる凝縮された液体が塔のサンプに向かって下方に逆流することができる。この選択肢に加えて、またはそれに代えて、部分流(13)を流れ(11)から分割し、前記部分流(13)を、流れ(7)の側方抜き出しよりも低い位置で塔(2)に導入することによって、逆流させることもできる。この部分流(13)は、塔(2)内に導入された後、塔のサンプへ向かって下向きに流れる。原則として、流れ(11)から任意の更なる部分流を分割し、それらを部分流(13)と同様に塔(2)へ導入することも可能である。
【0020】
以下の図2にも示される別の実施形態において、本発明による方法は、
B1)流れ(11)から少なくとも1つの更なる部分流(13)を分割する工程、および
B2)部分流(13)を、塔(2)において流れ(7)が抜き出される位置よりも下方の位置で、塔(2)に導入する工程をさらに含む。
【0021】
部分流(12)および部分流(13)は液体流である。したがって、それらは塔(2)へ導入された後、前記塔(2)を通って下方に流れる。
【0022】
本発明による方法の更なる一実施形態において、塔(2)に導入された後の流れ(12)および/または部分流(13)が、上昇蒸気に対して向流で導かれる。
【0023】
本発明の文脈において、上昇蒸気という用語は、化学工学における当業者に知られる通りに使用され、主に軽沸成分を含む上昇蒸気を示す。
【0024】
本発明による方法が工程B1)およびB2)をさらに含む実施形態において、塔(2)に対して、流れ(12)を、流れ(7)が抜き出される位置よりも高い位置で導入し、かつ部分流(13)を、抜き出される流れ(7)よりも低い位置で導入する。
【0025】
本発明によれば、重沸成分が富化された液体流(4)が、塔(2)の塔底から抜き出され、この液体流(4)から部分流(6)が分割され、次いで抜き出される。原則として、この部分流(6)は、その中に含まれる重沸成分の更なる処理にかけることができる。しかしながら、これよりも前に、部分流(6)を更なる精製工程(C)にかけ、あらゆる残留軽沸成分を部分流(6)から取り除くことが好ましい。この精製工程は、好ましくはストリップ塔である塔(14)において、あらゆる軽沸成分を取り出すためのパージガス流(15)を用いて行われるのが好ましく、これにより軽沸成分を含む流れ(16)を得て、この流れ(16)を塔(14)から抜き出し、塔(2)へと再循環させて戻し、かつ軽沸成分が除かれた流れ(17)は、塔(14)から抜き出された後、更なる処理にかけてもよい。
【0026】
以下の図3にも示される別の実施形態において、本発明による方法は、
C1)部分流(6)を、塔(14)の塔頂よりも下方の位置で前記塔(14)に導入する工程、
C2)塔(14)内部で部分流(6)をガス流(15)によりパージして、部分流(6)から残留軽沸成分を回収する工程、
C3)軽沸成分を含む流れ(16)を、塔(14)の塔頂から引き出し、かつ前記流れ(16)を、塔(2)の塔底よりも上方の位置で前記塔(2)に導入する工程、および
C4)軽沸成分が取り除かれた流れ(17)を、塔(14)の塔底から抜き出す工程をさらに含む。
【0027】
本発明によれば、流れ(7)は、塔(2)の中間部分、好ましくは塔(2)内の充填物の高さで抜き出され、かつ部分流(8)と部分流(9)とに分割され、部分流(9)は、まず冷却され、次いで塔(2)の塔頂よりも下方の導入点で、前記塔(2)に再循環されて戻される。したがって、流れ(7)および部分流(8)は、主に蒸気流(1)の中沸成分を含有する。1つ以上の中沸成分が価値のある材料である場合には、部分流(8)を別の製造工程へ供給することができる。しかしながら、これに先立って、部分流(8)を更なる精製工程(D)にかけて、残留しているあらゆる軽沸成分を部分流(8)から取り出すのが好ましい。この精製工程は、好ましくはストリップ塔である塔(18)において、あらゆる軽沸成分を取り出すためのパージガス流(19)を用いて行われるのが好ましく、これにより軽沸成分を含む流れ(20)を得て、この流れ(20)を塔(18)から抜き出し、かつ軽沸成分が取り除かれた流れ(21)は、塔(18)から抜き出された後、更なる処理にかけてもよい。軽沸成分を含む流れ(20)を、塔(2)へ再循環させて戻し、かつ前記塔(2)の塔底よりも上方の位置で前記塔(2)へ導入してもよい。あるいは、流れ(20)を、焼却に送ってもよい。
【0028】
以下の図4にも示される更なる実施形態において、本発明による方法は、
D1)塔(18)に対して、部分流(8)を、前記塔(18)の塔頂よりも下方の位置で導入する工程、
D2)塔(18)内部で、部分流(8)をガス流(19)によりパージして、部分流(8)から残留軽沸成分を回収する工程、
D3)軽沸成分を含む流れ(20)を塔(18)の塔頂から抜き出す工程、および
D4)軽沸成分が取り除かれた流れ(21)を、塔(18)の塔底から抜き出す工程をさらに含む。
【0029】
原則として、本発明による方法は、工程A1)の蒸気流(1)の起源および組成に関して、前記蒸気流が軽沸成分と重沸成分とを含む限り、制限されない。
【0030】
しかしながら、蒸気流(1)が、オレフィン、脂肪族アルコール、脂肪族アルデヒド、アリルアルコール、アリルアルデヒド、およびアリルケトンからなる群より選択される有機化合物の酸化から生ずることが好ましい。
【0031】
好ましくは、蒸気流(1)は、主な副生成物としてアクリル酸を生ずるプロペンのアクロレインへの酸化によるものである。
【0032】
本発明による方法の一実施形態において、軽沸成分が、アクロレインを含むか、またはアクロレインからなり、かつ重沸成分が、アクリル酸を含むか、またはアクリル酸からなる。
【0033】
本発明の文脈において主要な重沸成分であるアクリル酸の他、重沸成分は、水および他の重質沸騰成分も含み得るが、特にアリルアクリレート、アリルアルコール、および酢酸を、少量のみ含んでいてもよい。
【0034】
本発明による方法にかける前に、プロペンからアクロレインへの酸化により生じた高温蒸気流をまず反応器の最終段階で冷却し、反応器を出た後に水で急冷して、更なる反応、特に形成されたアクロレインの酸化を停止する。
【0035】
本発明による方法の別の実施形態において、蒸気流(1)が水も含む。この水は、塔(2)内で、具体的には塔(2)の中間部分における充填物の高さにおいて凝縮する。したがって、水は流れ(7)中にも存在する。
【0036】
本発明による方法の好ましい一実施形態において、工程A5)で抜き出される流れ(7)が、水を含む。
【0037】
水の他に、流れ(7)は、少量の軽沸成分、例えばアクロレイン、ホルムアルデヒド、およびアセトアルデヒドの残留物、ならびに少量の重沸成分、例えばアクリル酸を含むことがある。
【0038】
実質的に断熱保持された部分流(5)により、本発明による方法では、従来技術の方法と比較して、塔(2)の塔底またはサンプの温度が高くなる。例えば、蒸気流(1)が、プロペンの酸化により生じたものであり、したがって、軽沸成分としてのアクロレインおよび重沸成分としてのアクリル酸を含む場合、塔(2)において、以下の温度変化が観察される:塔底またはサンプの温度は、約65℃(従来技術による方法)から、約70~85℃の範囲の温度、好ましくは70℃超、例えば70℃超~85℃の範囲の温度、または少なくとも75℃、例えば75~85℃の範囲の温度、または特に80~85℃の範囲の温度に上昇する。結果として、塔(2)の塔底またはサンプから抜き出された液体流(4)、および液体流(4)から分割され、塔(2)へ再循環して戻す際に実質的に断熱保持される部分流(5)も、70~85℃の範囲の温度を有する。部分流(5)を実質的に断熱保持することの更なる結果として、塔(2)内の充填物のレベルでの温度上昇も生じる:温度は、約48℃(従来技術の方法)から50~70℃の範囲の温度に上昇する。
【0039】
本発明による方法の好ましい一実施形態において、塔(2)の塔底における温度が、70~85℃の範囲である。
【0040】
本発明による方法の別の好ましい一実施形態において、部分流(5)の温度が、70~85℃の範囲である。
【0041】
サンプの冷却が行われないと、塔(2)の塔頂においても著しい温度上昇が生じることが予想される。しかしながら、本発明による方法における工程A5)および工程A6)で実現される上部ポンプ-アラウンドにより、塔(2)の塔頂においては、せいぜい極めて小さい温度上昇しか起こらないか、または全く温度上昇が起こらない。具体的には、この効果は、引き続き部分流(12)として、好ましくは部分流(13)および任意の更なる部分流としても導入される流れ(11)が、高くても20℃の温度まで、好ましくは10~20℃の範囲の温度まで冷却されることにより達成される。
【0042】
本発明による方法のさらに好ましい一実施形態において、流れ(11)が、最高で20℃の温度を有する。
【0043】
本発明による方法を、図1図5、および実施例によりさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】請求項1に記載の方法の概略図である。
図2】請求項4に記載の実施形態による方法の概略図である。
図3】請求項7に記載の実施形態による方法の概略図である。
図4】請求項8に記載の実施形態による方法の概略図である。
図5】従来技術による方法の概略図である。
【0045】
図1は、請求項1に記載の方法の概略図であり、番号は、
(1)軽沸成分と重沸成分とを含む蒸気流、
(2)塔、
(3)軽沸成分が富化され、かつ塔(2)の塔頂から抜き出された蒸気流、
(4)重沸成分が富化され、かつ塔(2)の塔底から抜き出された液体流、
(5)液体流(4)から分割され、かつ塔(2)に再循環させられる部分流、
(6)液体流(4)から分割され、かつ当該方法から抜き出される部分流、
(7)塔(2)の中間部分から抜き出された流れ、
(8)流れ(7)から分割された部分流、
(9)流れ(7)から分割され、かつ冷却へ送られる部分流、
(10)熱交換器、
(11)冷却された流れ、および
(12)冷却され、再循環させられる流れを意味する。
【0046】
図2は、請求項4に記載の実施形態による方法の概略図であり、番号は、
(1)軽沸成分と重沸成分とを含む蒸気流、
(2)塔、
(3)軽沸成分が富化され、かつ塔(2)の塔頂から抜き出された蒸気流、
(4)重沸成分が富化され、かつ塔(2)の塔底から抜き出された液体流、
(5)液体流(4)から分割され、かつ塔(2)に再循環させられる部分流、
(6)液体流(4)から分割され、かつ当該方法から抜き出される部分流、
(7)塔(2)の中間部分から抜き出された流れ、
(8)流れ(7)から分割された部分流、
(9)流れ(7)から分割され、かつ冷却へ送られる部分流、
(10)熱交換器、
(11)冷却された流れ、
(12)冷却された流れ(11)から分割され、再循環させられる部分流、および
(13)冷却された流れ(11)から分割され、再循環させられる部分流を意味する。
【0047】
図3は、請求項7に記載の実施形態による方法の概略図であり、番号は、
(1)軽沸成分と重沸成分とを含む蒸気流、
(2)塔、
(3)軽沸成分が富化され、かつ塔(2)の塔頂から抜き出された蒸気流、
(4)重沸成分が富化され、かつ塔(2)の塔底から抜き出された液体流、
(5)液体流(4)から分割され、かつ塔(2)に再循環させられる部分流、
(6)液体流(4)から分割され、かつ当該方法から抜き出される部分流、
(7)塔(2)の中間部分から抜き出された流れ、
(8)流れ(7)から分割された部分流、
(9)流れ(7)から分割され、かつ冷却へ送られる部分流、
(10)熱交換器、
(11)冷却された流れ、
(12)冷却された流れ(11)から分割され、再循環させられる部分流、
(13)冷却された流れ(11)から分割され、再循環させられる部分流、
(14)塔
(15)部分流(6)をパージするためのガス流、
(16)軽沸成分を含み、塔(14)の塔頂から抜き出された流れ、および
(17)軽沸成分が取り除かれ、塔(14)の塔底から抜き出された流れを意味する。
【0048】
図4は、請求項8に記載の実施形態による方法の概略図であり、番号は、
(1)軽沸成分と重沸成分とを含む蒸気流、
(2)塔、
(3)軽沸成分が富化され、かつ塔(2)の塔頂から抜き出された蒸気流、
(4)重沸成分が富化され、かつ塔(2)の塔底から抜き出された液体流、
(5)液体流(4)から分割され、かつ塔(2)に再循環させられる部分流、
(6)液体流(4)から分割され、かつ当該方法から抜き出される部分流、
(7)塔(2)の中間部分から抜き出された流れ、
(8)流れ(7)から分割された部分流、
(9)流れ(7)から分割され、かつ冷却へ送られる部分流、
(10)熱交換器、
(11)冷却された流れ、
(12)冷却された流れ(11)から分割され、再循環させられる部分流、
(13)冷却された流れ(11)から分割され、再循環させられる部分流、
(14)ストリップ塔、
(15)部分流(6)をパージするためのガス流、
(16)軽沸成分を含み、ストリップ塔(14)の塔頂から抜き出された流れ、
(17)軽沸成分が取り除かれ、ストリップ塔(14)の塔底から抜き出された流れ、
(18)ストリップ塔、
(19)部分流(8)をパージするためのガス流、
(20)軽沸成分を含み、ストリップ塔(18)の塔頂から抜き出される流れ、および
(21)軽沸成分が取り除かれ、ストリップ塔(14)の塔底から抜き出された流れを意味する。
【0049】
図5は、従来技術による方法の概略図であり、番号は、
(30)軽沸成分と重沸成分とを含む蒸気流、
(31)塔、
(32)軽沸成分が富化され、かつ塔(31)の塔頂から抜き出された蒸気流、
(33)重沸成分が富化され、かつ塔(31)の塔底から抜き出された液体流、
(34)液体流(33)から分割され、かつ塔(31)に再循環させられる部分流、
(35)部分流(34)を冷却するための熱交換器、
(36)冷却された流れ(34)
(37)液体流(33)から分割された部分流、
(38)ストリップ塔、
(39)部分流(6)をパージするためのガス流、
(40)軽沸成分を含み、ストリップ塔(38)の塔頂から抜き出された流れ、
(41)軽沸成分が取り除かれ、ストリップ塔(28)の塔底から抜き出された流れ、
(42)塔(31)の中間部分から抜き出された流れ、
(43)流れ(42)から分割された部分流、
(44)流れ(42)から分割され、かつ冷却に送られる部分流、
(45)熱交換器、
(46)冷却された流れ、
(47)冷却された流れ(42)から分割された部分流、および
(48)冷却された流れ(42)から分割された部分流を意味する。
【0050】
実施例
本明細書の実施例は、図3(本発明による実施例)および図5(比較例)に示す方法に基づく、プロセスの計算モデルを使用して実行される。プロセスモデリングは、確立されかつ信頼できる方法論であり、実際のプラント建設に先立ち、複雑な化学プロセスをシミュレートするために技術者により使用される。本明細書における実施例の文脈において、市販のモデリングソフトウェアAspen Plus(登録商標)(Aspen Technology, Inc., 20 Crosby Roads, Bedford, Massachusetts 01730, USA)を、公共データベースからの物性データと組み合わせて使用した。
【0051】
比較例:
本発明による方法の利点を例示するために、アクロレイン含有流の精製を、図5の概略図に示された方法についてシミュレートした。アクロレイン含有ガス流(30)を、塔(31)のサンプセクションに導入し、熱交換器(35)を介して(液体流(33)、部分流(34)、および流れ(36)からなる)サンプポンプ-アラウンドで冷却した。廃液(高沸成分)である部分流(37)を再循環ガスストリッパーである第2塔(38)に送り、アクロレインを回収した。再循環ガスストリッパーからの廃液である流れ(41)を、ポンプ(図示せず)により廃液槽に送った。塔(31)内の高温ガスを、流れ(42)、部分流(44)、流れ(46)、部分流(47)、および部分流(48)からなる上部ポンプ-アラウンドを介して、熱交換器(45)によりさらに冷却した。アクロレインが富化された蒸気流(32)を、塔の塔頂から抜き出し、さらに処理するために吸収装置(図示せず)に送った。塔(31)の塔底から抜き出された液体流(33)は、18.350重量%のアクリル酸を含有していた。液体流(33)の全組成を以下の表1に示す。
【0052】
本発明による実施例:
モデリングソフトウェアであるAspen Plus(登録商標)を使用して、図3の概略図に示された方法について、アクロレイン含有流の精製をシミュレートする。アクロレイン含有ガス流(1)を、塔(2)のサンプセクションに導入した。比較例とは対照的に、(液体流(4)および部分流(5)からなる)サンプポンプ-アラウンドは冷却されないが、実質的に断熱保持された。廃液(高沸成分)である部分流(6)を再循環ガスストリッパーである第2塔(14)に送り、アクロレインを回収した。再循環ガスストリッパーからの廃液である流れ(17)を、ポンプ(図示せず)を介して廃液槽に送った。塔(2)内の高温ガスを、流れ(7)、部分流(9)、流れ(11)および部分流(12)からなる上部ポンプ-アラウンドを介して、熱交換器(10)により冷却した。アクロレインが富化された蒸気流(3)を、塔の塔頂から抜き出し、さらに処理するために吸収装置(図示せず)に送った。塔(2)の塔底から抜き出された液体流(4)は、51.635重量%のアクリル酸を含有したが、これは比較例の液体流(33)における重量%のほぼ3倍である。部分流(6)の全組成を以下の表1に示す。
【0053】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】