(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ガス分配機能を備えた、溶接スタッドを基板面に溶接するための溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/20 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
B23K9/20 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537246
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2021084152
(87)【国際公開番号】W WO2022128531
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100,9494 Schaan,Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ エアハルト
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ リップナー
(72)【発明者】
【氏名】エリック シュルテ スードホフ
(57)【要約】
本発明は、溶接室を備えた保護ガス溜めを含むとともに、溶接工程中に溶接スタッドを溶接室内に保持するための保持装置を含む、溶接軸線に沿って溶接スタッドを基板面に溶接方向に溶接するための溶接装置に関する。保護ガス溜めは、入口チャネル355と、分配室356と、複数の第1の接続チャネル350と、保護ガス供給ラインを入口チャネル355に接続できる、溶接室内への保護ガス入口とを有し、入口チャネル355は分配室356内に通じており、第1の接続チャネル350は、入口チャネル355までの異なる距離をおいて分配室356内に通じており、第1の接続チャネル350は、分配室356を保護ガス出口に空圧的に接続し、第1の接続チャネル356が分配室356内に通じている、入口チャネル355までの距離が大きくなるほど、第1の接続チャネル356の共通の断面積が大きくなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接室を備えた不活性ガスカバーを含むとともに、溶接作業中に溶接スタッドを前記溶接室内に保持するための保持装置を含む、溶接軸線に沿って前記溶接スタッドを基板(被留め付け部材)に溶接方向に溶接するための溶接装置、特に溶接ガンであって、前記不活性ガスカバーは、入力チャネルと、分配室と、多数の第1の接続チャネルと、前記溶接室内への不活性ガス入口とを有し、不活性ガス供給ラインを前記入力チャネルに接続でき、前記入力チャネルは、前記分配室内に開口し、前記第1の接続チャネルは、前記入力チャネルからの異なる距離をおいて前記分配室内に開口し、前記第1の接続チャネルは、前記分配室を前記不活性ガス出口に空圧的に接続し、前記第1の接続チャネルが前記分配室内に開口する、前記入力チャネルからの距離が大きくなるほど、前記第1の接続チャネルの共通の断面積がますます大きくなることを特徴とする、溶接装置。
【請求項2】
第1の接続チャネルが前記分配室内に開口する、前記入力チャネルからの前記距離が大きくなるほど、個々の前記第1の接続チャネルの断面積がますます大きくなる、請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
第1の接続チャネルが前記分配室内に開口する、前記入力チャネルからの前記距離が大きくなるほど、個々の前記第1の接続チャネルの密度がますます大きくなる、請求項1又は2に記載の溶接装置。
【請求項4】
前記不活性ガス入口は、前記溶接軸線の周囲に環状に配置された多数の入口開口部を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項5】
前記第1の接続チャネルは、前記溶接軸線と実質的に平行に延在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項6】
前記第1の接続チャネルは、前記溶接軸線の周囲に環状に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項7】
前記分配室は、前記溶接軸線の周囲に環状に形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項8】
前記第1の接続チャネルは、前記溶接室内に開口し、前記不活性ガス入口まで延びる、請求項1~7のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項9】
前記不活性ガスカバーは、前記収集室と多数の第2の接続チャネルとを有し、前記第1の接続チャネル及び前記第2の接続チャネルは、前記収集室内に開口し、前記第2の接続チャネルは、前記収集室を前記不活性ガス入口に空圧的に接続する、請求項1~8のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項10】
前記第2の接続チャネルの共通の断面積は、前記第1の接続チャネルの共通の断面積よりも小さい、請求項9に記載の溶接装置。
【請求項11】
前記第2の接続チャネルは、前記溶接軸線と実質的に平行に延在する、請求項9又は10に記載の溶接装置。
【請求項12】
前記第2の接続チャネルは、前記溶接軸線の周囲に環状に配置される、請求項9~11のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項13】
前記収集室は、前記溶接軸線の周囲に環状に形成される、請求項9~12のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項14】
前記第2の接続チャネルは、前記溶接室内に開口し、前記不活性ガス入口まで延びる、請求項9~13のいずれか一項に記載の溶接装置。
【請求項15】
前記不活性ガスカバーは、前記溶接方向に面する開口部を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に言うと、溶接方向の溶接軸線に沿って溶接スタッドを基板(被留め付け部材)に溶接するための溶接装置に関する。本発明は、特に溶接ガンに関する。
【背景技術】
【0002】
異なる用途において、様々なスタッドを基板(被留め付け部材)に留め付けるための多くの既知の装置及び方法がある。例えば、スタッドを基板に接触させて、そこに電流が印加される。この目的のため、スタッドは、導電性スタッドホルダによって保持される。スタッドと基板との間を電流が流れると直ちに、スタッドは、基板からリフトオフされてアークを形成する。放出されるエネルギーにより、スタッド及び基板の材料が部分的に液化される。次いで、電流がオフに切り替えられ、スタッドが液化した材料に浸漬され、更にこの材料が冷却されて固化する。その後、スタッドは、一体的に接合された方法で基板に接続される。
【0003】
スタッド及び基板の材料を十分短い時間で液化するのに必要なエネルギーを提供するために、非常に高い電流強度の電流を生成し、対応する定格の電気ケーブルを使用して電流をスタッドに供給する装置が知られている。液化された材料の酸化を避けるため、スタッドと基板との間の接触箇所を不活性ガスで覆うことが知られている。この場合、不活性ガスは、液化された材料との溶接箇所を通過して流れ、いくつかの状況下で周囲空気中に存在する酸素を周囲空気から追い出す。
【0004】
例えば、建造物又は造船における用途の場合、アイテムを基板に留め付けるために、アイテムがねじ込まれるねじ山を有する様々な大きさのスタッドが使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、基板(被留め付け部材)へのスタッドの留め付けを改善できる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
溶接室を備えた不活性ガスカバーを含むとともに、溶接作業中に溶接スタッドを溶接室内に保持するための保持装置を含む、溶接軸線に沿って溶接スタッドを基板に溶接方向に溶接するための溶接装置の場合、不活性ガスカバーは、入力チャネルと、分配室と、多数の第1の接続チャネルと、溶接室内への不活性ガス入口とを有し、不活性ガス供給ラインを入力チャネルに接続でき、入力チャネルは、分配室内に開口し、第1の接続チャネルは、入力チャネルからの異なる距離をおいて分配室内に開口し、第1の接続チャネルは、分配室を不活性ガス出口に空圧的に接続し、本目的は、第1の接続チャネルが分配室内に開口する、入力チャネルからの距離が大きくなるほど、第1の接続チャネルの共通の断面積がますます大きくなることにより達成される。これにより、入力チャネルからより大きな距離をおいて位置する第1の接続チャネルのより低い暴露を部分的に補償する効果がもたらされる。結果として、いくつかの状況下で、不活性ガスが溶接箇所に向かってより均一に流れる。溶接装置は、好ましくは、溶接ガンとして形成される。
【0007】
本発明の有利な態様は、第1の接続チャネルが分配室内に開口する、入力チャネルからの距離が大きくなるほど、個々の第1の接続チャネルの断面積がますます大きくなることを特徴とする。更に有利な態様は、第1の接続チャネルが分配室内に開口する、入力チャネルからの距離が大きくなるほど、個々の第1の接続チャネルの密度がますます大きくなることを特徴とする。
【0008】
有利な態様は、不活性ガス入口が、溶接軸線の周囲に環状に配置された多数の入口開口部を含むことを特徴とする。
【0009】
有利な態様は、第1の接続チャネルが溶接軸線と実質的に平行に延在することを特徴とする。更なる有利な態様は、第1の接続チャネルが溶接軸線の周囲に環状に配置されることを特徴とする。更なる有利な態様は、分配室が溶接軸線の周囲に環状に形成されることを特徴とする。
【0010】
有利な態様は、第1の接続チャネルが、溶接室内に開口し、不活性ガス入口まで延びることを特徴とする。
【0011】
有利な態様は、不活性ガスカバーが、収集室と多数の第2の接続チャネルとを有し、第1の接続チャネル及び第2の接続チャネルが、収集室内に開口し、第2の接続チャネルが、収集室を不活性ガス入口に空圧的に接続することを特徴とする。好ましくは、第2の接続チャネルの共通の断面積は、第1の接続チャネルの共通の断面積よりも小さい。同様に好ましくは、第2の接続チャネルは、溶接軸線と実質的に平行に延在する。同様に好ましくは、第2の接続チャネルは、溶接軸線の周囲に環状に配置される。同様に好ましくは、収集室は、溶接軸線の周囲に環状に形成される。同様に好ましくは、第2の接続チャネルは、溶接室内に開口し、不活性ガス入口まで延びる。
【0012】
有利な態様は、不活性ガスカバーが、溶接方向に面する開口部を有することを特徴とする。
【0013】
以下では、図面を参照して、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】溶接装置を概略的に示す部分縦断面図である。
【
図5】不活性ガスカバーを概略的に示す展開縦断面図である。
【
図6】不活性ガスカバーを概略的に示す展開縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、溶接スタッド20を基板(被留め付け部材)30に溶接するための溶接装置10が概略的に示されている。溶接スタッド20の材料及び基板30の材料は、導電性であり、特に金属である。溶接装置10は、押しボタンスイッチとして形成されたトリガスイッチ41を有する溶接ガン40、溶接ユニット50、第1の電気ケーブル61、接続端子63を有する第2の電気ケーブル62、例えば電力ケーブルとしての電気供給ケーブル64、電気通信ライン65、ガスシリンダとしてのガス貯蔵器70、管状ガス供給ライン71、及びガスホース72を含む。
【0016】
第1のケーブル61は、溶接ユニット50を介して溶接スタッド20に電流を供給するのに役立つ。第2のケーブル62は、接続端子63が基板30にクランプされたときに、基板30を溶接ユニット50に電気的に接続するのに役立つ。溶接スタッド20が基板30と接触すると、回路が閉じ、それによって、例えば直流又は交流の形態の溶接電流が、溶接ユニット50を介して溶接スタッド20に印加され得る。このため、溶接ガン40は、
図1に示されていない溶接電流接点要素を含む。溶接ユニット50は、所望の電圧及び電流強度で溶接電流を提供するために、例えば電気コンデンサ、サイリスタ、絶縁ゲート電極を有するバイポーラトランジスタ、又はパワーエレクトロニクスからの他の構成要素、及びマイクロプロセッサを有する関連する制御ユニットも含む、供給ケーブル64からの電流を溶接電流に変換するための図示されていない装置を含む。
【0017】
ガス供給ライン71及びガスホース72は、溶接作業中に周囲領域からの酸素による酸化から接触領域を保護するために、溶接スタッド20と基板30との間の接触領域にガス貯蔵器70からの不活性ガスを供給するのに役立つ。接触領域へのガスの流れを制御するために、ガス貯蔵器70、ガス供給ライン71、溶接ユニット50、ガスホース72、又は溶接ガン40は、バルブ(図示せず)、特に制御可能バルブを含む。
【0018】
溶接ユニット50は、作動要素52を有する入力装置51と、視覚表示要素54及び無線送信ユニットを有する出力装置53とを有する。入力装置51は、例えば、電圧、電流強度、溶接電流の電力及び持続時間、スタッドの位置及び速度など、溶接装置10のユーザにより、溶接装置10で実行される溶接方法のパラメータを入力するのに役立つ。出力装置53は、例えば、溶接方法のパラメータに関する情報、溶接方法又は他の変数の検出された放射に関する情報、溶接作業の品質に関する情報、溶接作業を改善するための手段に関する情報、溶接スタッドの検出された特性に関する情報、若しくは前述の変数から導出される情報、並びに/又は溶接装置10、特に溶接ガン40を洗浄及び/若しくは維持するための推奨事項若しくは指示である情報をユーザに出力するのに役立つ。
【0019】
通信ライン65は、溶接ガン40、特に
図1に示されていない溶接ガン40の制御装置と、溶接ユニット50、特に制御ユニット並びに/又は入力装置51及び/若しくは出力装置53との間の通信に役立つ。例えば、この通信により、例えば溶接電流と溶接スタッド20の移動との同期を達成するために、又はこれをより容易にするために、溶接作業のパラメータに関する情報の交換が達成される。図示されていない実施例の場合、溶接ガンと溶接ユニットとの間の通信は、無線で、無線通信により、又は溶接電流を搬送する第1の電気ケーブルにより行われる。
【0020】
溶接ガン40は、開口部46を有する筐体42を有し、この筐体42から、トリガスイッチ41を有するハンドル43が突出している。溶接ガン40はまた、スタッドホルダ44を有し、その上で溶接スタッド20が溶接作業中に保持される。この目的のため、スタッドホルダは、例えば、(詳細に示されていない)2つ、3つ、4つ又はそれを超える弾性アームを含み、それらの間に溶接スタッド20がクランプ嵌合によって挿入及び保持される。溶接ガン40はまた、溶接スタッド20に溶接電流を印加するために、例えば1つ以上の弾性アームの形態でスタッドホルダ44に組み込まれた、溶接電流接点要素を有する。
【0021】
溶接ガン40は、溶接ガン及び溶接ユニット50の様々な構成要素及び装置を制御するための制御装置99も有する。制御装置99は、溶接作業の1つ以上のパラメータを制御するように意図されている。この目的のため、制御装置99は、様々な電子構成要素、例えば、1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上の一時的又は恒久的なデータメモリなどを含む。
【0022】
溶接ガン40は、第1のリフト磁石として形成されたスタッドリフト装置も有し、スタッドリフト装置が作動すると、開口部46から後方への(
図1では上向きの)力でスタッドホルダ44上において動作する。制御装置99は、スタッドリフト装置を制御し、特にそれを作動及び非作動させるために、(図示せず)信号線を介してスタッドリフト装置と通信する。
【0023】
溶接ガン40は、ばね要素又は第2のリフト磁石として形成されたスタッド浸漬装置も有し、スタッド浸漬装置が作動すると、前方に開口部46に向かう(
図1では下向きの)力でスタッドホルダ44上において前方に動作する。制御装置99は、スタッド浸漬装置を制御し、特にそれを作動及び非作動させるために、(図示せず)信号線を介してスタッド浸漬装置と通信する。スタッド浸漬装置がばね要素として形成される場合、スタッドホルダがスタッドリフト装置によって後方に移動すると、好ましくは、このばね要素は、張力をかけられ、その結果、スタッドリフト装置が非作動すると直ちに、ばね要素がスタッドホルダを前方に移動させる。
【0024】
溶接装置10を用いた溶接方法では、最初に、基板30及びスタッド20が提供される。更なるステップでは、例えば、後に続く溶接作業の所望のパラメータに関する情報が入力装置を介してユーザによって入力される。更なるステップでは、溶接スタッド20と基板30との間の溶接電流は、第1のケーブル61及び第2のケーブル62を用いて、溶接ユニット50によって溶接スタッド20に印加される。更なるステップでは、溶接スタッド20は、溶接スタッド20と基板30との間に流れる溶接電流を維持しながら、スタッドリフト装置によって基板からリフトオフされ、溶接スタッド20と基板30との間にアークを形成する。特にアークによって生成される熱のため、溶接スタッド20及び/又は基板30の材料は、次いで、部分的に液化される。更なるステップでは、溶接スタッド20は、スタッド浸漬装置により、溶接スタッド20又は基板30の液化された材料に浸漬される。次に、溶接スタッド20又は基板30の液化された材料が固化し、その結果、溶接スタッド20が、一体的に接合された方法で基板30に接続される。
【0025】
図2は、溶接軸線105に沿って溶接スタッド120を基板(被留め付け部材)130に溶接方向110に溶接するように意図された、溶接装置100の縦断面を概略的に示す。溶接装置100は、溶接方向110を定める溶接ガンとして形成される。溶接装置100は、スタッドホルダとして形成された、外径dAを有する保持装置144を有し、この保持装置は、溶接作業中に溶接スタッド120を保持するための、内径dIを有するスタッド受容部121を有し、スタッド受容部121に溶接スタッド120を挿入でき、スタッド受容部121内では、溶接スタッド120が、好ましくは、クランプ作用によって保持される。溶接スタッド120の接触面125は、溶接作業前及び/又は溶接作業中に基板130と接触する。
【0026】
溶接装置100は、ハンドル(図示せず)とトリガスイッチ(図示せず)とを備えた概略的に示されている筐体101と、更には不活性ガスカバー140とを含み、不活性ガスカバー140は、周囲空気からの酸素による溶接溶融物の酸化を抑制又は完全に防止するために、不活性ガスで満たされるように意図されている。この目的のため、不活性ガスカバー140は、入力チャネル155と、分配室156と、溶接軸線105の周囲に環状に配置された、複数の第1の接続チャネル150とを含む、不活性ガス供給源を有する。不活性ガスカバー140に供給するための不活性ガス供給ライン、例えば不活性ガスホース145などを、入力チャネル155に接続することができる。
【0027】
溶接軸線105と平行に延在する第1の接続チャネル150の各々は、不活性ガスカバー140の溶接室141内に入口開口部160で開口し、その結果、入口開口部160が、溶接軸線105の周囲に同様に環状に配置され、一緒になって不活性ガス入口を形成する。入力チャネル155及び第1の接続チャネル150は分配室156内に開口し、第1の接続チャネル150は、分配室156を不活性ガス入口に空圧的に接続する。第1の接続チャネル150が分配室156内に開口する、入力チャネル155からの距離が大きくなるほど、個々の第1の接続チャネル150の各々の断面積がますます大きくなる。入力チャネル155から離れた、溶接軸線105の周囲に環状に形成された、分配室156にわたる圧力降下により、入力チャネル155からより大きな距離をおいて位置する第1の接続チャネル150(
図2の右側)のより低い暴露が生じる。このより低い暴露は、断面積の増加により部分的に補償される。結果として、いくつかの状況下で、不活性ガスが溶接箇所に向かってより均一に流れる。
【0028】
更に、不活性ガスカバー140は、溶接軸線の周囲に同様に環状に配置され、溶接軸線105に対して径方向に不活性ガスカバー140を貫通して外方に周囲領域に通じており、不活性ガス出口を形成する、多数の出口開口部170を有する。溶接軸線105を横断する(
図2では図面の平面に直交する)方向、特に周方向において、出口開口部170は、それぞれ入口開口部160からずらして配置される。
【0029】
更に、不活性ガスカバー140は、溶接方向110に面するとともに、溶接方向110に対して横断方向に開口部直径dMを有する、開口部180を有する。不活性ガス入口、具体的には入口開口部160は、開口部180から溶接方向110とは逆方向に入口距離aEをおいて位置する。不活性ガス出口、具体的には出口開口部170は、開口部180から溶接方向110とは逆方向に出口距離aAをおいて位置する。
【0030】
出口距離aAは、開口部の直径dMと内径dIとの差の約半分の大きさ、すなわち、溶接スタッド120と不活性ガスカバー140との間の径方向距離xとほぼ同じ大きさである。更に、出口距離aAは、入口距離aEよりも大きい。開口部180が基板130で覆われると、入口開口部160を通って溶接室141に流入した不活性ガスはまず、流路190に沿って開口部180の径方向外側領域へ流れ、次いで、あらゆる方向から径方向内方に溶接スタッド120へ流れ、その後、実質的に軸方向上方に出口開口部170へ流れる。これにより、溶接軸線105の周囲に放射状に対称的に配置されるトロイダル流パターンが形成され、溶接スタッド120における溶接箇所を不活性ガスで均一且つ効果的に覆う効果がもたらされる。例えば、保持装置144と不活性ガスカバーとの間の狭い隙間(
図2では出口開口部170の上方)から徐々にしか漏出しない、周囲空気は、出口開口部170を通る流れによって連行され、溶接箇所から遠ざけられる。
【0031】
図3では、更なる実施例の分配室256が概略的に示されており、視認方向が溶接方向と一致する。入力チャネル255及び多数の第1の接続チャネル250は、分配室256内に開口する。第1の接続チャネル250が分配室256内に開口する、入力チャネル255からの距離が大きくなるほど、個々の第1の接続チャネル250の密度がますます大きくなる。個々の第1の接続チャネル250のみが、(
図3の底部における)入力チャネル255に最も近接して配置される。対照的に、互いに近接して位置する第1の接続チャネル250のより大きな群は、入力チャネル255から見て、分配室256の反対側に(
図3の頂部に)配置される。結果として、第1の接続チャネル250が分配室256内に開口する、入力チャネル255からの距離が大きくなるほど、第1の接続チャネル250の共通の断面積がますます大きくなる。
【0032】
図4では、
図3に示す実施例の収集室266が概略的に示されており、視認方向が溶接方向と一致する。
図4に示されていない第1の接続チャネルに加えて、多数の第2の接続チャネル270は、収集室266内に開口する。第2の接続チャネル270は、溶接軸線の周囲に環状に配置され、溶接軸線の周囲に同様に環状に配置された収集室266の円周にわたって均一に分配される。第2の接続チャネル270の数は、
図3に示す第1の接続チャネル250の数よりも少なく、その結果、第2の接続チャネル270の共通の断面積は、第1の接続チャネル250の共通の断面積よりも小さい。結果として、いくつかの状況下で、第1の接続チャネル250及び第2の接続チャネル270を通って流れる不活性ガスの流量がより均一になる。そして、これには、示されていない溶接箇所が不活性ガスにより均一にさらされるという効果がある。
【0033】
図5では、不活性ガスカバー340が展開縦断面図で示されており、その結果、実質的に筒状、特に円筒状の不活性ガスカバー340の円周に沿った流れチャネルの配置を確認することができる。不活性ガスカバー340は、入力チャネル355と、分配室356と、多数の第1の接続チャネル350と、収集室366と、多数の第2の接続チャネル370とを含む。入力チャネル355は、分配室356内に開口する。第1の接続チャネル350は、一方では分配室356内に、他方では収集室366内に開口する。第2の接続チャネル370は、一方では収集室366内に、他方では、これ以上は図示されていない溶接室内に開口し、この目的のため、不活性ガス入口を形成する入口開口部360まで延びる。入力チャネル355、第1の接続チャネル350、及び第2の接続チャネル370は、溶接軸線と実質的に平行に延在し、入力チャネル355に接続された不活性ガス供給ラインを、不活性ガスカバー340の溶接室に空圧的に接続する。
【0034】
入力チャネル355からの距離の増加に伴って、第1の接続チャネル350がますます大きな群で配置され、その結果、第1の接続チャネル350が分配室356内に開口する、入力チャネル355からの距離が大きくなるほど、第1の接続チャネル350の密度がますます大きくなる。結果として、第1の接続チャネル350が分配室356内に開口する、入力チャネル355からの距離が大きくなるほど、第1の接続チャネル350の共通の断面積もますます大きくなる。先の実施例に関して説明したように、結果として、いくつかの状況下で、不活性ガスが溶接箇所に向かってより均一に流れる。
【0035】
図6では、不活性ガスカバー440が展開縦断面図で示されており、その結果、実質的に筒状、特に円筒状の不活性ガスカバー440の円周に沿った流れチャネルの配置を確認することができる。不活性ガスカバー440は、入力チャネル455と、分配室456と、多数の第1の接続チャネル450と、収集室466と、多数の第2の接続チャネル470とを含む。入力チャネル455は、分配室456内に開口する。第1の接続チャネル450は、一方では分配室456内に、他方では収集室466内に開口する。第2の接続チャネル470は、一方では収集室466内に、他方では、これ以上は図示されていない溶接室内に開口し、この目的のため、不活性ガス入口を形成する入口開口部460まで延びる。入力チャネル455、第1の接続チャネル450、及び第2の接続チャネル470は、溶接軸線と実質的に平行に延在し、入力チャネル455に接続された不活性ガス供給ラインを、不活性ガスカバー440の溶接室に空圧的に接続する。
【0036】
入力チャネル455からの距離の増加に伴って、第1の接続チャネル450が分配室456内に開口する、入力チャネル455からの距離が大きくなるほど、個々の第1の接続チャネル450の断面積がますます大きくなる。結果として、第1の接続チャネル450が分配室456内に開口する、入力チャネル455からの距離が大きくなるほど、第1の接続チャネル450の共通の断面積もますます大きくなる。先の実施例に関して説明したように、結果として、いくつかの状況下で、不活性ガスが溶接箇所に向かってより均一に流れる。
【0037】
本発明は、溶接ガンの例に基づいて記載されている。この場合、記載された実施例の特徴は、単一の留め付けのための装置内で所望通りに互いに組み合わせることができる。本発明による装置は、他の目的にも適していることが指摘される。
【国際調査報告】