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  • 特表-自動車用のバッテリアセンブリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】自動車用のバッテリアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/249 20210101AFI20231220BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20231220BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20231220BHJP
   H01M 10/613 20140101ALN20231220BHJP
   H01M 10/625 20140101ALN20231220BHJP
【FI】
H01M50/249
H01M50/244 Z
H01M10/6554
H01M10/613
H01M10/625
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537255
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2022061113
(87)【国際公開番号】W WO2022253493
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】102021002803.1
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーアス・シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーアス・ルオフ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・リードリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・ヨースト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・シュタッシュ
(72)【発明者】
【氏名】マリウス・ゲックル
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031KK01
5H040AA07
5H040AS07
5H040AY08
5H040NN00
5H040NN03
(57)【要約】
本発明は、バッテリハウジング(14)と、バッテリハウジング(14)の底部プレート(16)の上に配置されている少なくとも1つのセルモジュール(12)とを備える自動車用のバッテリアセンブリに関する。少なくとも1つのセルモジュール(12)は、セルモジュールハウジング(22)と、セルモジュールハウジング(22)内に配置された複数のバッテリセル(24)とを含む。セルモジュールハウジング(22)の底部(26)は、接着コンパウンド(28)を使用して、バッテリハウジング(14)の底部プレート(16)に接続されている。セルモジュールハウジング(22)は、更なる接着剤(30)を使用して、バッテリハウジング(14)の側壁(18)に接続されている。その場合、更なる接着剤(30)は、セルモジュールハウジング(22)の底部(26)とバッテリハウジング(14)の底部プレート(16)との間に配置された接着コンパウンド(28)よりも大きいせん断強さを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリハウジング(14)と、前記バッテリハウジング(14)の底部プレート(16)の上に配置されている少なくとも1つのセルモジュール(12)とを備える自動車用のバッテリアセンブリであって、前記少なくとも1つのセルモジュール(12)は、セルモジュールハウジング(22)と、前記セルモジュールハウジング(22)内に配置された複数のバッテリセル(24)とを含み、前記セルモジュールハウジング(22)の底部(26)は、接着コンパウンド(28)を使用して、前記バッテリハウジング(14)の前記底部プレート(16)に接続されている、前記バッテリアセンブリにおいて、
前記セルモジュールハウジング(22)は、更なる接着剤(30)を使用して、前記バッテリハウジング(14)の側壁(18)に接続され、前記更なる接着剤(30)は、前記セルモジュールハウジング(22)の前記底部(26)と前記バッテリハウジング(14)の前記底部プレート(16)との間に配置された前記接着コンパウンド(28)よりも大きいせん断強さを有することを特徴とする、前記バッテリアセンブリ。
【請求項2】
前記接着コンパウンド(28)の前記せん断強さは、約0.1MPa~約2MPaの範囲にあり、及び/又は前記更なる接着剤(30)の前記せん断強さは、約5MPa~約15MPaの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリアセンブリ。
【請求項3】
前記接着コンパウンド(28)は、前記更なる接着剤(30)よりも高い熱伝導率を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリアセンブリ。
【請求項4】
前記側壁(18)は、前記バッテリハウジング(14)の前記底部プレート(16)と一体に形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリアセンブリ。
【請求項5】
前記接着コンパウンド(28)は、前記セルモジュールハウジング(22)の前記底部(26)を実質的に面状に覆っており、前記セルモジュールハウジング(22)の前記底部(26)の、前記接着コンパウンド(28)によって覆われた面は、前記セルモジュールハウジング(22)の側壁(32)の、前記更なる接着剤(30)によって覆われた面よりも何倍も大きいことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリアセンブリ。
【請求項6】
前記バッテリハウジング(14)の前記底部プレート(16)の上で前記接着コンパウンド(28)が占める面の周辺は、特にシールコード及び/又はシールテープ(34)として形成された画定要素によって画定されており、前記画定要素は前記バッテリハウジング(14)の前記底部プレート(16)と前記セルモジュールハウジング(22)の前記底部(26)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のバッテリアセンブリ。
【請求項7】
前記セルモジュールハウジング(22)は、前記バッテリハウジング(14)の前記側壁(18)に面する外壁(38)を有するエネルギー吸収要素(36)を含み、前記更なる接着剤(30)は、前記エネルギー吸収要素(36)の前記外壁(38)と前記側壁(18)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のバッテリアセンブリ。
【請求項8】
前記バッテリハウジング(14)のトラフ形状の収容部が、前記側壁(18)及び前記底部プレート(16)によって提供され、前記バッテリハウジング(14)は、前記収容部に接続されるハウジングカバー(20)を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のバッテリアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリハウジングと、バッテリハウジングの底部プレートの上に配置されている少なくとも1つのセルモジュールとを備える自動車用のバッテリアセンブリに関する。少なくとも1つのセルモジュールは、セルモジュールハウジングと、セルモジュールハウジング内に配置された複数のバッテリセルとを含む。セルモジュールハウジングの底部は、接着コンパウンドを使用して、バッテリハウジングの底部プレートに接続されている。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バッテリモジュールがハウジング内に配置されている、車両用の液冷バッテリシステムを記載している。ハウジングは、バッテリモジュールを取り囲むフレームと、フレームに接続されている冷却プレートと、を含む。フレームの内部では、バッテリモジュールが冷却プレートの上に配置されている。一方では、バッテリモジュールは、熱伝導性構造接着剤を使用して冷却プレートに接着されている。他方では、フレームもまた、構造接着剤を使用して冷却プレートの上側に接続されており、フレームの角部領域では、追加して溶接接続が設けられている。
【0003】
更に、自動車用のバッテリアセンブリでは、セルモジュールをバッテリハウジングにねじ止めすることが企図されていてもよい。その場合、セルモジュールハウジングの底部とバッテリハウジングの底部プレートとの間に熱伝導性ペーストが配置されていてもよい。それぞれのセルモジュールハウジングの側面付近に配置されたねじ止めストリップにねじを取り付けることによって、セルモジュールをバッテリハウジングに接続することができる。ただし、この実施形態では、セルモジュールの側面付近には、ねじ用工具によるねじへのアクセスを確保するために、対応する空きスペースを設ける必要がある。これは不適切である。
【0004】
更に、バッテリハウジングの側面でのみ行われるそのようなセルモジュールの接続は、自動車のバッテリアセンブリ用セルモジュールの場合に当てはまり得るように、特にセルモジュールが比較的高重量を有する場合、理想的でない。
【0005】
そのうえ、セルモジュールがバッテリハウジングのねじ止めストリップにねじ止めされている、セルモジュールのそのような配置の場合、バッテリハウジングの側面押込みを顧慮すると、各セルモジュールによって、有効性が比較的低い側面形状しか提供されていない。これにより、バッテリアセンブリの断面係数が相応に低くなる。それに対応して、セルモジュールをバッテリハウジングにねじ止めする場合、バッテリアセンブリの機械的総合性能のために各セルモジュールの機械的剛性が最適には使用されない。
【0006】
更に、セルモジュールハウジングの底部とバッテリハウジングの底部プレートとの間に比較的高額の熱伝導性ペーストを配置することは、比較的高コストにつながる。これに加えて、その場合、設けるべき大量の熱伝導性ペーストは、不利な様式で、バッテリアセンブリの相応に高い重量の原因となる。
【0007】
これに加えて、セルモジュールハウジングの底部とバッテリハウジングの底部プレートとの間に隙間又は空間を設計する場合には、許容誤差を考慮に入れる必要がある。その結果、セルモジュールハウジングの底部とバッテリハウジングの底部プレートとの間に比較的大きな隙間又は大きな空間が生じる。それに対応して、このような空間又は隙間をできる限り広範囲にわたって充填するために、比較的高額の熱伝導性ペーストを使用する必要がある。これは、上述のように、バッテリアセンブリの費用及び重量の観点から不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】CN 112151910 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、少なくとも1つのセルモジュールのバッテリハウジングへの機械的接続の改善が達成される、冒頭に記載の種類のバッテリアセンブリを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本課題は、請求項1の特徴を有するバッテリアセンブリによって解決される。本発明の目的に応じた発展形態を有する有利な実施形態は、従属請求項及び以下の説明に記載される。
【0011】
本発明による自動車用のバッテリアセンブリは、バッテリハウジングと、少なくとも1つのセルモジュールとを備える。少なくとも1つのセルモジュールは、バッテリハウジングの底部プレートの上に配置されている。少なくとも1つのセルモジュールは、セルモジュールハウジングと、セルモジュールハウジング内に配置された複数のバッテリセルとを含む。セルモジュールハウジングの底部は、接着コンパウンドを使用して、バッテリハウジングの底部プレートに接続されている。更に、セルモジュールハウジングは、更なる接着剤を使用して、バッテリハウジングの側壁に接続されている。その場合、更なる接着剤は、セルモジュールハウジングの底部とバッテリハウジングの底部プレートとの間に配置された接着コンパウンドよりも大きいせん断強さを有する。
【0012】
それに対応して、バッテリハウジングの側壁とセルモジュールハウジングとの間に配置された更なる接着剤によって、少なくとも1つのセルモジュールのバッテリハウジングへの機械的接続が確保される。すなわち、比較的高いせん断強さを有する更なる接着剤は、機械的要件を顧慮すると、主荷重を担う。したがって、本バッテリアセンブリの場合、少なくとも1つのセルモジュールのバッテリハウジングでの機械的接続の改善が実現される。
【0013】
それに対して、接着コンパウンドのせん断強さが低いことによって、必要な取り外しの際、少なくとも1つのセルモジュールハウジングをバッテリハウジングから極めて容易に分離することができる。この目的のために、確かに最初に更なる接着剤を切断する必要がある。しかし、この更なる接着剤の優れたアクセス性により、例えば、振動カッタなどの形態の前後に動く切断工具を使用して、極めて容易にその切断を実施することができる。
【0014】
更なる接着剤を使用して形成された接着剤層のそのような切断の後、例えば、取り出しツールを使用して、少なくとも1つのセルモジュールをバッテリハウジングから極めて容易に取り出すことができる。接着コンパウンドが比較的低いせん断強さしか有していないので、少なくとも1つのセルモジュールのバッテリハウジングからのこの取り出しは、特に容易である。
【0015】
少なくとも1つのセルモジュールをバッテリハウジングに、特にバッテリハウジングの側壁にねじ止めすることを省略することによって、特に費用削減及び重量削減を達成することができる。ここでは、特に、高いせん断強さを有する更なる接着剤を使用することによる、バッテリ全体構造へのセルモジュールの効果的な機械的接続が重要である。
【0016】
更に、このようにして、少なくとも1つのセルモジュールハウジングの底部とバッテリハウジングの底部プレートとの間の隙間又は空間を特にわずかに抑えることができる。これは、特に、少なくとも1つのセルモジュールがバッテリハウジングにねじ止めされているバッテリアセンブリと比較した場合に当てはまる。接着コンパウンドを介在させて、少なくとも1つのセルモジュールをバッテリハウジングの底部プレートの上で直接位置合わせすることにより、許容差の連鎖(Toleranzkette)の低減が達成可能である。それに伴い、接着コンパウンドの費用、及び接着コンパウンドの量もまた節約することができる。これは、バッテリアセンブリの重量削減に寄与する。
【0017】
自動車内に本バッテリアセンブリを使用すると、この場合、本バッテリアセンブリの少なくとも1つのセルモジュールによって、好適には、高電圧バッテリが設けられているので、そのような重量削減は、特に自動車のCO収支を顧慮すると、とりわけ有利である。
【0018】
これに加えて、セルモジュールハウジングの底部とバッテリハウジングの底部プレートとの間のわずかなギャップ裕度により、セルモジュールハウジング内に収容されたバッテリセルの特に効果的な冷却を、バッテリセルの動作中に実現することができる。特に、これにより、バッテリセルの急速充電能力を向上させることができる。
【0019】
ギャップ裕度は、本バッテリアセンブリの場合、有利な様式で、バッテリハウジングの底部プレートによって提供された接着面の面形状許容誤差と、少なくとも1つのセルモジュールハウジングの底部によって提供された接着面の面形状許容誤差と、からのみ生じる。これにより、バッテリアセンブリを、比較的少量の接着コンパウンドで仕上げることができる。
【0020】
更に、ねじ用工具を用いてねじ止めするアクセス性のための空きスペースをあらかじめ備える必要がないため、少なくとも1つのセルモジュールのバッテリハウジングへの接続が、設置空間を顧慮すると改善されている。このとき、セルモジュールハウジングをバッテリハウジングに接続するために更なる接着剤を使用することにより、少なくとも1つのセルモジュールのバッテリハウジングとのねじ止めが省略されることが重要である。
【0021】
そのうえ、セルモジュールハウジングによって、バッテリ全体又はバッテリアセンブリの機械的性能に有効に寄与することが可能である。更に、バッテリアセンブリの内部でパワーパスを簡単な解決策で開くことができ、かつ有効に利用することができる。しかも、少なくとも1つのセルモジュールは、ねじ又は全ねじを使用して少なくとも1つのセルモジュールをバッテリハウジングに接続する場合と同様に、容易に取り外すことができる。
【0022】
好適には、接着コンパウンドのせん断強さは、約0.1MPa~約2MPaの範囲にある。更に、更なる接着剤のせん断強さは、約5MPa~約15MPaの範囲にある場合、それは有利であることが判明した。特にこのようにして、更なる接着剤を使用してセルモジュールハウジングがバッテリハウジングの側壁に接続されている比較的小さな接着面を設ける場合であっても、大きな粘着力をもたらすことを達成することができる。一方、接着コンパウンドの比較的低いせん断強さ又は低い引張強さは、修理又はリサイクルの場合、セルモジュールを上方に引っ張ることによってセルモジュールを破損なく取り外すことができることを保証する。
【0023】
本発明の更なる利点、特徴、及び詳細は、好ましい実施形態の以下の説明及び図面(複数可)の参照によって明らかになる。これまで記載した特徴、及び図面の説明で以下に記載し、及び/又は図面にのみで示される特徴及び特徴の組み合わせは、そのつど示される組み合わせだけではなく、本発明の範囲を逸脱することなく別の組み合わせ又は単独で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】異なるせん断強さを有する2つの接着剤を使用して、セルモジュールがバッテリアセンブリのバッテリハウジングに接着されている、バッテリアセンブリの極概略図である。
図2図1によるバッテリアセンブリの部分概略図である。
図3】バッテリアセンブリと、バッテリハウジングからセルモジュールを持ち上げるための取り出しツールと、の更なる部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図では、同じ要素、又は機能が同じ要素には、それぞれ同じ参照符号が付与されている。
【0026】
図1では、セルモジュール12がバッテリハウジング14に配置されているバッテリアセンブリ10が、極めて概略的に示されている。バッテリハウジング14は、底部プレート16と、底部プレート16を取り囲む側壁18と、を有する、本明細書ではトラフ形状の収容部を含む。側壁18は、例えば本明細書で示されているように、特にバッテリハウジング14の底部プレート16と一体に形成されていてもよい。更に、バッテリハウジング14は、本明細書では詳細に図示されていない手法で、トラフ形状の収容部に接続されているハウジングカバー20を含む。トラフ形状の収容部及びハウジングカバー20により画定された収容スペースの内部には、少なくとも1つのセルモジュール12が配置されている。
【0027】
少なくとも1つのセルモジュール12は、本明細書では、セルモジュールハウジング22と、本明細書では詳細に図示されていない、そのセルモジュールハウジング22の内部に配置されたバッテリセル24と、を有する。実際に、セルモジュール12の個々のバッテリセル24は、導電するように相互に接続されており、各セルモジュール12のバッテリセル24は、電気的に直列接続及び/又は並列接続され得る。
【0028】
特にバッテリアセンブリ10によって、自動車用高電圧バッテリを提供する必要がある場合、すなわち、定格出力が60ボルトを超え、かつ特に数100ボルトまでを有する、好適には自動車のトラクションバッテリとして形成された電気エネルギー貯蔵器を設ける必要がある場合、バッテリハウジング14内で複数のセルモジュール12は、導電するように相互に接続されていてもよい。
【0029】
セルモジュールハウジング22は、バッテリハウジング14の底部プレート16を向いている底部26を有する。底部26と底部プレート16との間には、接着コンパウンド28が配置されている。この接着コンパウンド28は、好適には、熱伝導性に形成されているので、接着コンパウンド28を介して、バッテリセル24の動作中にバッテリセル24からバッテリハウジング14又は対応する冷却装置に放出されたその熱を吸収することができる。例えば、接着コンパウンド28の熱伝導率は、約2W/mKである、特に、2W/mK~2.5W/mKの範囲である。
【0030】
接着コンパウンド28は、確かに、バッテリハウジング14の内部でセルモジュール12の確実な固定をもたらす。ただし、好適には、少なくとも1つのセルモジュール12を修理又は交換する場合、セルモジュール12をバッテリハウジング14から、特に底部プレート16から再度、容易に分離することができるように、接着コンパウンド28のせん断強さ又は粘着力が決定されている。好適には、接着コンパウンド28は、クラッシュ要件及び動作安定性要件を満たすことができる最低粘着量を有する。しかも、接着コンパウンド28の比較的低いせん断強さ又は低い引張強さによって、セルモジュール12をバッテリハウジング14から破損せずに取り外すこと、特にバッテリハウジング14のトラフ形状の収容部から取り出すことが保証されている。
【0031】
熱伝導性接着剤として使用される接着剤28とは異なり、更なる接着剤30は、バッテリケース14への少なくとも1つのセルモジュール12の構造的接続をもたらす。図1に概略的に示されるこの更なる接着剤30を使用して、セルモジュールハウジング22は、本明細書では、バッテリハウジング14の側壁18に接続されている。この更なる接着剤30は、極めて高いせん断強さを有し、このせん断強さは、例えば、特に8MPa~14MPaの範囲であり得る。それに対して、接着コンパウンド28のせん断強さ又は引張強さは、特に約0.5MPa~1.5MPaの範囲であり得る。
【0032】
固定用接着剤として使用される更なる接着剤30のせん断強さ又は引張強さも、熱伝導性接着剤として使用される接着コンパウンド28のせん断強さ又は引張強さも、特にDIN EN ISO 527-2に準拠して決定することができる。
【0033】
バッテリハウジング14への少なくとも1つのセルモジュール12の安定した固定のために、更なる接着剤30は、セルモジュール12の横に、特にセルモジュールハウジング22の側壁32とバッテリハウジング14のトラフ形状の収容部の側壁18との間に配置されている。セルモジュール12を取り外すために、高いせん断強さを有する更なる接着剤30を、例えば、振動カッタを使用して切断することができる。セルモジュールハウジング22の側面では、そのような切断工具に対して優れたアクセス性が提供されているため、切断は特に容易である。
【0034】
好適には、接着コンパウンド28は、セルモジュールハウジング22の底部26を実質的に平面状に覆う。接着コンパウンド28が十分平らにされているように、かつバッテリハウジング14の底部プレート16とセルモジュールハウジング22の底部26との間の空間又は隙間ができる限り均一に接着コンパウンド28によって満たされるように、対応する接着面を画定するために、画定要素が設けられていてもよい。
【0035】
したがって、例えば、シールコード又はシールテープ34として形成された画定要素は、接着コンパウンド28がバッテリハウジング14の底部プレート16の上を占める面の周辺を画定する。その場合、シールテープ34などの画定要素は、少なくとも1つのセルモジュール12をバッテリハウジング14へと取り付ける前に、セルモジュール12及び/又は底部プレート16に貼付けてもよい。
【0036】
そのような画定要素を設けるには、特に、フォーム材が適切である。セルモジュール12の底部プレート16との導電接続部が設けられている必要がある場合、そのようなフォーム材はまた、金属でコーティングされていてもよい。それに対応して、フォーム材は、画定要素の導電性金属によって取り囲まれていてもよい。
【0037】
図1からは更に、セルモジュール12が、耐衝撃形状をもたらしているエネルギー吸収要素36を有することができることが明らかである。そのようなエネルギー吸収要素36は、バッテリアセンブリ10に側方からの力が印加されたときに、変形することによって衝撃エネルギーを吸収し、これにより、特にバッテリセル24の損傷を回避することができる。図1で概略的に示された実施形態の場合、更なる接着剤30は、エネルギー吸収要素36の外壁38とバッテリハウジング14のトラフ形状の収容部の側壁18との間に配置されている。
【0038】
中空スペースを有するチャンバという方法により、側壁32と特に一体に形成されたエネルギー吸収要素36の考えられる実施形態は、例えば、図2で示されている。
【0039】
それに対して、図3から、バッテリハウジング14のトラフ形状の収容部に付属し得るエッジフランジ40の可能な実施形態が明らかである。特に、そのようなエッジフランジ40には、バッテリハウジング14のハウジングカバー20(図1を参照)を固定することができる。
【0040】
図3では、更に、接着剤30の切断後、セルモジュール12をバッテリハウジング14から取り外すために使用することができるリフト装置42が概略的に示されている。したがって、リフト装置42を操作することによって、特にセルモジュールハウジング22の底部26をバッテリハウジング14の底部プレート16(図1を参照)から分離することを達成できる。セルモジュール12のバッテリハウジング14への構造的接続に使用することができる、したがって、固定接着剤と称され得る更なる接着剤30を切断した後、リフト装置42を操作することができる。
【0041】
例えば、リフト装置42は、スレッドスピンドル44を含んでもよく、スレッドスピンドル44を回転させることによって、セルモジュールハウジング22の底部26の持ち上げ、したがって、セルモジュール12全体をバッテリハウジング14の底部プレート16(図1を参照)から持ち上げることを達成できる。セルモジュール12をバッテリハウジング14のトラフ形状の収容部から取り出すことは、そのようなリフト装置42を設けた場合に極めて容易である。
【0042】
異なるせん断強さを有する接着剤を、好適には、一方では熱伝導性接着コンパウンド28の形態で提供し、他方では固定接着剤として使用される更なる接着剤30の形態で提供することによって、本明細書では、相互にマッチングされた2つの接合コンセプトが実現されている。一緒に作用する接合コンセプトによって、一方では、バッテリアセンブリ10の通常動作時の要件に対して、他方では、例えば、バッテリアセンブリ10を装備した自動車の事故発生時のような、特別なインシデント時の要件に対しても、セルブロック又はセルモジュール12をバッテリハウジング14の内部に固定するために十分な粘着力が提供される。
【0043】
更に、少なくとも1つのセルモジュール12を破損することなく取り外し、修理時に個別構成部品を再使用する選択肢が与えられており、表面の手間のかかる清掃を必要としないであろう。これに加えて、セルモジュール12のバッテリセル24からバッテリハウジング14への、特に内蔵冷却装置への十分な放熱が保証されている。
【0044】
熱伝導性接着剤又は接着コンパウンド28によって提供される接合コンセプトの可能なパラメータは、以下で例示して説明される。したがって、接着コンパウンド28として、Sika Deutschland GmbH製の接着剤を使用してもよく、ブランド名Sikaflex(登録商標)-953 L30で入手可能である。これは、シラン末端ポリマーからなる二液性接着剤である。この接着剤は、0.5MPa~1.5MPaの引張強さ及び30±20Pa・sの粘度を有する。この接着剤又はこの接着コンパウンド28の熱伝導率は、2W/mK~2.5W/m/Kの範囲にある。更に、この材料を使用すると、接着コンパウンド28のDIN EN ISO 527-2準拠の破断伸びは、約20%~50%である。
【0045】
バッテリハウジング14の底部プレート16と少なくとも1つのセルモジュール12の底部26との間の実質的に水平な面上に、この接着コンパウンド28は、広く平面状に塗布することができる。しかし、例えば、接着コンパウンド28が塗布される底部プレート16の面は、完全に水平である必要はない。特に、水平から+10°~-10°の逸脱が存在してもよい。
【0046】
十分な放熱が保証されているように、好適には、底部プレート16と底部26との間の接合部又は隙間は、できる限り小さい。特に、隙間のサイズは、0.5ミリメートル~3ミリメートルの範囲であってもよい。
【0047】
この接合箇所で、接着コンパウンド28は、バッテリハウジング14の底部プレート16と各セルモジュールハウジング22の底部26との間でできる限り全面に配置されているので、一方では、均一な熱輸送を達成し、他方では、セルモジュール12の均一な固定を達成することができる。
【0048】
それに対して、更なる接着剤30を使用する構造的接続のために、ポリウレタン接着剤の形態での二液性接着剤、例えば、DuPont製のBETAFORCE(商標)9050という名称で入手でき、それに対応して識別コードBF9050を有する場合がある接着剤を使用することができる。この接着剤は、1Pa・s未満の粘度及び0.3W/mK未満の熱伝導率を有する。
【0049】
更に、この接着剤では、DIN EN ISO 527-2準拠の破断伸びは、150%~250%の範囲にある。そのうえ、この接着剤は、約100ショアA未満のショア硬度と、最高約800℃の耐熱性と、を有する。
【0050】
更なる接着剤30は、好適には、セルブロック又はセルモジュール12の長手方向の両側面と、バッテリハウジング14、つまり、特に側壁18との間で、実質的に垂直な面上に塗布される。ただし、その面は、厳密に垂直である必要はなく、特に垂直からの逸脱は+10°~-10°であり得る。
【0051】
更なる接着剤30が塗布される接合部は、関連する全ての許容誤差を考慮に入れて、好適には、少なくとも1.5mmの厚さがある。これにより、修理時には、切断工具、例えば、振動工具をこの領域に挿入して、接着接続を緩めることができる。
【0052】
好適には、更なる接着剤30は、そのせん断強さが少なくとも8MPaであるように、剛性要件を満たす。このようにして、更なる接着剤30によって、比較的小さな面であっても極めて大きな粘着力をもたらすことができる。
【0053】
特に、セルモジュールハウジング22の底部26の、接着コンパウンド28によって覆われた面に対して、セルモジュールハウジング22の側壁32で接着剤30によって覆われた面は、極めて小さく、好適には、何倍も小さい。比較的短い長さと低い切断力の切断工具によって、又は短い工程時間内に、接着剤30の切断とその後のセルモジュール12の取り外しが可能であるため、相応に小さな、更なる接着剤30が占める面を設けることは、一方では、有利である。
【0054】
更に、次いで、バッテリセル24の起こり得る故障に対する措置を設けるために、セルモジュール12の側壁32の領域に、更に大きな面を用意している。例えば、次いで、セルモジュール12又はセルブロックに全く妨げることなく側面の通気孔又は換気口を設けることができるか、又は側壁32の領域に自由な空隙を用意することができる。特にそのような予防措置によって、熱的イベント発生時に、少なくとも1つのバッテリセル24から流出する気体又は流体をバッテリハウジング14の対応する開口部に誘導することができる、特に適切に誘導することができる。
【0055】
更に、両方の接合コンセプトは、更なる接着剤30によって実行されている構造的接続を十分に再度緩めることができるように、好適には、シールテープ34若しくは対応するシールリップ及び/又はフォームビードなどによって分離されている。更に、例えば、図1で示されたシールテープ34などの形態の画定要素は、熱伝導性接着剤又は接着コンパウンド28が水平面に残るように働く。
【0056】
接着箇所の清掃が必要な場合、異なる措置を採用してもよい。例えば、単純なプラスチックスクレーパを使用することで、接着コンパウンド28をセルモジュール12若しくはセルモジュールハウジング22の下側から、又は底部プレート16の上側から容易に手作業で取り除くことができる。側面の固定接着剤として使用される更なる接着剤30の余分な量は、単純に鋭利な工具によって機械的に取り除くことができる。修理時には、これに加えて、固着している接着剤残留物を完全に取り除く必要はない。むしろ、この場合、接着コンパウンド28を再度塗布するために設けられるべき隙間高さ、又は更なる接着剤30を再度塗布するために設けられるべき隙間幅を考慮に入れる必要があるのみである。
【0057】
接着コンパウンド28及び更なる接着剤30を提供するための上記で例示した製品の代わりに、熱伝導性接着剤又は接着コンパウンド28用に、例えば、Polytec PT GmbHの製品、例えば、熱伝導率が約2.5W/mKでは0.5MPaの剛性又はせん断強さを有する型式VP2108の製品を使用してもよい。Polytec PT GmbH社から、接着コンパウンド28を提供するために、更なる熱伝導性接着剤、例えば、識別コードTC 433を有する、充填剤として窒化ホウ素を含むエポキシ樹脂系接着剤を購入することができる。
【0058】
更に、Copaltec社から、例えば、型式ST 25又はST 30の製品を、接着コンパウンド28を提供するために購入することができる。そのようなポリウレタン封止用コンパウンドは、有利な様式で同様に、熱伝導率が約1.5W/mKでは2MPaの範囲の低剛性又は低せん断強さを有する。
【0059】
固定接着剤として使用される更なる接着剤30のために、特に、Ruehl社の製品、例えば、3MPa~10MPaのせん断強さを有する型式Purocast 765の製品を使用してもよい。
【0060】
更に、更なる接着剤30を提供するために、例えば、L&L Products社からの、約10MPaのせん断強さを有する型式PU 10キャストの製品を使用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 バッテリアセンブリ
12 セルモジュール
14 バッテリハウジング
16 底部プレート
18 側壁
20 ハウジングカバー
22 セルモジュールハウジング
24 バッテリセル
26 底部
28 接着コンパウンド
30 ハウジングカバー
32 側壁
34 シールテープ
36 エネルギー吸収要素
38 外壁
40 エッジフランジ
42 ディスペンサ装置
44 スレッドスピンドル


図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリハウジング(14)と、前記バッテリハウジング(14)の底部プレート(16)の上に配置されている少なくとも1つのセルモジュール(12)とを備える自動車用のバッテリアセンブリであって、前記少なくとも1つのセルモジュール(12)は、セルモジュールハウジング(22)と、前記セルモジュールハウジング(22)内に配置された複数のバッテリセル(24)とを含み、前記セルモジュールハウジング(22)の底部(26)は、接着コンパウンド(28)を使用して、前記バッテリハウジング(14)の前記底部プレート(16)に接続されている、前記バッテリアセンブリにおいて、
前記セルモジュールハウジング(22)は、更なる接着剤(30)を使用して、前記バッテリハウジング(14)の側壁(18)に接続され、前記更なる接着剤(30)は、前記セルモジュールハウジング(22)の前記底部(26)と前記バッテリハウジング(14)の前記底部プレート(16)との間に配置された前記接着コンパウンド(28)よりも大きいせん断強さを有することを特徴とする、前記バッテリアセンブリ。
【請求項2】
前記接着コンパウンド(28)の前記せん断強さは、約0.1MPa~約2MPaの範囲にあり、及び/又は前記更なる接着剤(30)の前記せん断強さは、約5MPa~約15MPaの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリアセンブリ。
【請求項3】
前記接着コンパウンド(28)は、前記更なる接着剤(30)よりも高い熱伝導率を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリアセンブリ。
【請求項4】
前記側壁(18)は、前記バッテリハウジング(14)の前記底部プレート(16)と一体に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリアセンブリ。
【請求項5】
前記接着コンパウンド(28)は、前記セルモジュールハウジング(22)の前記底部(26)を実質的に面状に覆っており、前記セルモジュールハウジング(22)の前記底部(26)の、前記接着コンパウンド(28)によって覆われた面は、前記セルモジュールハウジング(22)の側壁(32)の、前記更なる接着剤(30)によって覆われた面よりも何倍も大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリアセンブリ。
【請求項6】
前記バッテリハウジング(14)の前記底部プレート(16)の上で前記接着コンパウンド(28)が占める面の周辺は、特にシールコード及び/又はシールテープ(34)として形成された画定要素によって画定されており、前記画定要素は前記バッテリハウジング(14)の前記底部プレート(16)と前記セルモジュールハウジング(22)の前記底部(26)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリアセンブリ。
【請求項7】
前記セルモジュールハウジング(22)は、前記バッテリハウジング(14)の前記側壁(18)に面する外壁(38)を有するエネルギー吸収要素(36)を含み、前記更なる接着剤(30)は、前記エネルギー吸収要素(36)の前記外壁(38)と前記側壁(18)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリアセンブリ。
【請求項8】
前記バッテリハウジング(14)のトラフ形状の収容部が、前記側壁(18)及び前記底部プレート(16)によって提供され、前記バッテリハウジング(14)は、前記収容部に接続されるハウジングカバー(20)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリアセンブリ。
【国際調査報告】