(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】二酸化炭素電気分解における固体酸化物電解セルの運転のための改良された方法
(51)【国際特許分類】
C25B 1/23 20210101AFI20231220BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20231220BHJP
C25B 13/07 20210101ALI20231220BHJP
C01B 32/40 20170101ALI20231220BHJP
【FI】
C25B1/23
C25B15/02
C25B13/07
C01B32/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537283
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2021085707
(87)【国際公開番号】W WO2022136025
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】キュンガス・ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ハイレデール-クラウスン・トマス
(72)【発明者】
【氏名】ラス-ハンスン・イェベ
(72)【発明者】
【氏名】ブレノウ・ベングト・ピーダ・ゴスタウ
(72)【発明者】
【氏名】ナアビュー・トビーアス・ホルト
【テーマコード(参考)】
4G146
4K021
【Fターム(参考)】
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC01
4G146JD02
4K021AA09
4K021BB04
4K021CA08
4K021CA09
4K021DB53
(57)【要約】
本発明は、高温乾式固体酸化物電解において二酸化炭素を一酸化炭素に転化するための方法であって、コーキングの問題に取り組むことによってSOECおよびSOECスタックの寿命の増加をもたらすと同時に、各セルまたはスタックからのできるだけ多くのCO生成を確実にする方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温乾式固体酸化物電解において、二酸化炭素を一酸化炭素に転化するための方法であって、以下のステップ:
1)70~100体積%のCO
2および0~30体積%のCOを含む燃料ガスストリームを供するステップであって、COのモル分率(x
CO)が0~0.3の範囲であるステップ;
2)フラッシュガスストリームを供するステップ;
3)燃料側とオキシ側とを有する固体酸化物電解セル(SOEC)を供するステップ;
4)燃料ガスストリームおよびフラッシュガスストリームを600~1000℃、例えば700℃~850℃の範囲のガスストリーム入口温度Tに加熱するステップ;
5)2~30s
-1の範囲の空間速度SV
fuelで、燃料ガスストリームをSOECの燃料側に供給ステップ;
6)0.1~20s
-1の範囲の空間速度SV
flushで、フラッシュガスストリームをSOECのオキシ側に供給ステップ;
7)-0.2A/cm
2~-1A/cm
2の範囲の電流密度iを有する電解電流を固体電解質を通して通電して、SOECの燃料側でCO
2の一部をCOに電気分解的に転化し、SOECのオキシ側でO
2富化フラッシュガスを生成するステップ、
を含む方法。
【請求項2】
x
CO、T、SV
fuel、SV
flushおよびiが、コーキングポテンシャルCPが≦-15となるように選択され、CPが以下の式(I)によって与えられる、請求項1に記載の方法。
【数1】
【請求項3】
式(I)のコーキングポテンシャルCPが、SOECの運転の間、-100~-15、例えば-80~-15または-60~-15の範囲にある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
生成物ガスストリームが、15~95体積%のCO、例えば、15~90、20~80、20~70、20~60、20~50体積%のCO、または30~50体積%のCOを含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
燃料ガスストリームが、80~100体積%のCO
2、0~20体積%のCO、0~1体積%のH
2Oおよび0~1体積%のH
2からなり、残部は不活性であり、COのモル分率(x
CO)は0~0.2の範囲である、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
燃料ガスストリームが、88~98体積%のCO
2、1~12体積%のCO、0~1体積%のH
2Oおよび0~1体積%のH
2からなり、残部は不活性であり、COのモル分率(x
CO)は0~0.2の範囲である、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
フラッシュガスが、空気、乾燥空気、O
2、CO
2、N
2、蒸気またはそれらの混合物を含む、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記の固体酸化物電解セルが、SOECの燃料側への燃料ガス入口と、SOECの燃料側からの燃料生成物ガス出口とを備える、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記の固体酸化物電解セルが、SOECのオキシ側へのフラッシュガス入口と、SOECのオキシ側からのフラッシュガス出口とを備える、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
酸素富化フラッシュガスストリームが、SOECのオキシ側から収集される、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
CO富化生成物ガスストリームが、SOECの燃料側から収集される、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記生成物ガスストリームを、第1のCO富化ガスストリームと第2のCO
2富化ガスストリームとに分割するさらなるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2のCO
2富化ストリームがSOECの燃料側にリサイクルされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
SOECの燃料側が、電源に電気的に接続された金属ニッケルを含む、請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
固体電解質を介してイオン接触する燃料側およびオキシ側を有する固体酸化物電解セル(SOEC)における高温乾式CO
2電解のための運転条件を選択するための方法であって、以下のステップ:
i.燃料ガスストリームを、SOECの燃料側に、2~30s
-1の範囲の空間速度SV
fuelで供給するステップであって、前記燃料ガスストリームは70~100体積%のCO
2および0~30体積%のCOを含み、COのモル分率(x
CO)は0~0.3の範囲であるステップ;
ii.フラッシュガスストリームを、SOECのオキシ側に、0.1~20s
-1の範囲の空間速度SV
flushで供給するステップ、
iii.前記燃料およびフラッシュガスストリームを、600~1000℃の範囲のガスストリーム入口温度Tに加熱することによって、SOECに熱を供給するステップ、および引き続き
iv.電解電流iを、SOECの電解質を通して、-0.2A/cm
2~-1A/cm
2の範囲の電流密度で通電するステップ、
を含み、
T、SV
fuel、SV
flushおよびiの値は、以下の反復プロセス:
a)T、SV
fuel、SV
flushおよびiの運転条件を初期値に設定すること;
b)セルにおいて多様に分布した複数の位置に関して局所温度および局所ガス組成を決定すること;
c)前記の局所ガス組成に基づいて、前記位置のそれぞれについて、下回るとBoudouard反応による炭素形成が熱力学的に有利となる局所温度(局所Boudouard温度)を推定すること、
d)測定された局所温度から局所Boudouard温度を減じ、それによってBoudouard差を得ること、および
e)前記位置のそれぞれに関してBoudouard差がゼロより大きくなるまで、ガス流量、入口温度(複数可)および/または電解電流密度を変化させること、
によって選択される、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2(二酸化炭素)電気分解において固体酸化物電解セル(SOEC)を運転するための改良された方法を提案する。本発明はまた、CO2(二酸化炭素)電気分解において固体酸化物電解セル(SOEC)スタックを運転するための改良された方法を提案する。
【背景技術】
【0002】
電解セルは、H2O(水)をH2(水素)に、CO2をCO(一酸化炭素)に、またはH2OおよびCO2の組み合わせを合成ガス(CO、CO2、H2およびH2Oの組み合わせ)に、電気化学的に変換するために使用することができる。一酸化炭素は伝統的に、化石燃料から、例えば天然ガスの水蒸気改質を介して、製造される。従って、従来の方法を用いたCOの製造は、著しいCO2排出と関連している。あるいは、一酸化炭素は、CO2の電気分解によって製造することができる。低炭素エネルギー源(風力、太陽光、原子力など)からの電気が電気分解プロセスに使用される場合、CO製造に関連するCO2排出を最小限に抑えることができ、または負にすることさえできる。従って、電気分解は、伝統的な化石燃料をベースとする方法と比較して、COを製造するための潜在的により持続可能な方法である。
【0003】
CO2電解のための方法は、概して、低温CO2電解と高温CO2電解の2つの群に分類することができる。しばしば電気化学的CO2還元(eCO2R)と呼ばれる低温CO2電解は、二酸化炭素還元反応(CO2+H2O+2e-→CO+2OH-)がセルのカソード上で水溶液中で行われ、水分子が電気化学反応に関与し、カソード上でH2OからOH-に変換されるプロセスである。これは、「湿式電解」と呼ばれることがある。大気圧では、低温CO2電解セルの運転温度は、主に水である反応流体のために、100℃に制限される。低温電解では、CO2の拡散係数が比較的低く、印加される過電圧が大きい。電解質は概してポリマーであるかまたは液体でさえあり、なぜならそれは高温に耐える必要がないからである。低温電解によって得ることができる生成物の例は、水素ガス、一酸化炭素、メタノール、エチレンおよびギ酸である。低温湿式CO2電解における主な課題は、電極不安定性、CO生成に対する低い選択性、高い電力消費および低い電流密度を含む。低温電解の例は、例えばWO18228723(特許文献1)に見出すことができる。
【0004】
高温CO2電解は、固体酸化物電解セル(SOEC)におけるCO2電解を指す。SOECにおいて、二酸化炭素還元反応(CO2+2e-→CO+O2-)は、適切な触媒の表面上で気相中で行われる。SOECの典型的な運転温度は、約600℃~1000℃である。高温電解では、CO2の拡散係数は比較的高く、印加される過電圧は低い。電解質は概して、高温で酸素イオン伝導体となるセラミック材料、例えば安定化ジルコニアまたはドープセリアでできている。
【0005】
高温電解は、蒸気の存在の有無にかかわらず実施することができる。蒸気が存在する場合、それは「湿式電解」と称され得る。高温湿式電解によって得ることができる生成物の例としては、合成ガス(CO、CO2、H2およびH2Oの組み合わせ)である。高温湿式電解の例は、例えばWO18206235(特許文献2)に見出すことができる。蒸気が存在しない場合、それは「乾式電解」と称され得る。高温乾式電解によって得ることができる生成物の例は、一酸化炭素ガス、特に高純度一酸化炭素ガス(本質的にCOとCO2との組合せ)である。高温乾式電解の例は例えば、例えばWO2018/228716(特許文献3)、WO2016/091636(特許文献4)、WO2015/014527(特許文献5)、WO2014/154253(特許文献6)、WO2018/206235(特許文献7)に見出すことができる。
【0006】
特に、WO2018/206235はその例1において、75個のセルからなるSOECスタックにおける乾式電解のための動作点を開示している。それは、50Aの電解電流を通電しながら、100Nl/分の流量でカソードに供給される純粋なCO2を用いて、700℃の平均温度で運転される。スタックのカソード側から出るガスは、26%のCOおよび74%のCO2からなる。
【0007】
高温電解のためのSOECは一般に、燃料電極、固体電解質、オキシ電極、および任意選択的に接触層を含み、面内導電率を増加させ、隣接するインターコネクトへの改善された接触を提供する。本発明の文脈において、語句「燃料側」は、燃料電極を含み、CO2還元反応(CO2+2e-→CO+O2-)が起こっているSOECの側を表す。語句「オキシ側」は、オキシ電極を含み、O2発生反応(2O2-→O2+4e-)が起こっているSOECの側を指す。SOECは、セルのスタック(SOECスタックと呼ばれる)で配置され得る。SOECスタックでは、複数のセルは一般に、直列に電気的に接続され、並列に流体接続される。セルは一般に、相互接続プレート(インターコネクトとも呼ばれる)を介在させることによって、離隔した位置に配置される。相互接続プレートは、隣接するセル間の電気的接触と、
それぞれ燃料および酸素電極への燃料および酸素のための流れ場を提供する役割を果たす。CO2電解システムでは、通常、複数のSOECスタックが同時に運転されて、必要なCO生成速度に達する。高温CO2電解のためのシステムでは、スタックは、一般に、並列に流体接続されるように配置され、そして好ましくは、それらはSOECスタックの各々に同時に燃料ガスを提供するために、入口マニホールドの周りに配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO18228723
【特許文献2】WO18206235
【特許文献3】WO2018/228716
【特許文献4】WO2016/091636
【特許文献5】WO2015/014527
【特許文献6】WO2014/154253
【特許文献7】WO2018/206235
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、CO2電解システムの事業経費(OPEX:operating expenditure)および資本的支出(CAPEX:capital expenditure)を低減することが望ましい。直観的には、OPEXは、SOECスタックを最大可能転化率で運転することによって最小化することができる。乾式CO2電解では、これは、できるだけ多くの量のCO2供給材料を一酸化炭素(CO)生成物に転化することを意味する。最大可能CO2転化率は熱力学によって決定され、それはガス中のCO/CO2比、絶対圧力および温度の関数である。例えば、1barでの乾式CO2電解において800℃では、最大CO/CO2比は約11.8である。より高いCO/CO2比では、圧力が高いほどおよび温度が低いほど、Boudouard反応(2CO=CO2+C)は熱力学的に有利になる。Boudouard反応は、セル内で炭素形成(コーキングまたは炭化とも呼ばれる)を引き起こし、これは次に、セルおよびスタックの故障を引き起こし得る。その結果、SOECスタックを運転するタスクがより複雑になる。
【0010】
一方では、CO2転化率を最大化し、生成物ストリーム/スタック出口における非常に高いCO/CO2比で運転して、OPEXを最小化することが望ましいが、そのような運転ストラテジーは、コーキングによるセル故障および高価なスタック交換を引き起こし得る。他方、スタックが非常に低CO2転化率で運転される場合、それは最適に利用されず、所望のCO生成速度に達するためにはより多くのスタックが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、高温CO2電解における主な課題の1つがコーキング(炭素形成)を含むことを見出した。
【0012】
本発明の目的は、コーキングの問題に対処することによってSOECおよびSOECスタックの寿命を延ばすと同時に、各セルまたはスタックからの可能な限り高いCO生成を確実にすることである。
【0013】
COおよびCO2の存在を伴う化学的プロセスは、炭化(コークス化)する傾向を有する。CO/CO2系におけるコーキング(炭素、すなわちCの形成)の蓋然性は、Boudouard反応(2CO→CO2+C)の熱力学によって決まることが知られている。熱力学は起こる反応の傾向を決定し、一方で反応速度論が反応の速度を決定する。従って、CO-CO2ガス混合物では、より高いCO/CO2比、より高い圧力およびより低い温度において、コーキングの蓋然性(COからのCの形成)が増加することが知られている。例えば、800℃および大気圧での乾燥CO/CO2では、CO/CO2が7.8を超えるといつでも、コーキングが熱力学的に有利である。750℃では、CO/CO2比が3.6を超えるとコーキングが熱力学的に有利であり、一方、700℃では、CO/CO2比が1.7を超えると、コーキングが熱力学的に有利である。
【0014】
従って、Boudouard反応から、特定のCO/CO2比を有する所与の乾燥CO/CO2系について、下回るとCOが炭化する傾向が大幅に増加する臨界温度を決定できることも知られている。この温度は、Boudouard温度と呼ばれることもある。上記で挙げた値に基づき、CO/CO2比が7.8のCO-CO2系に関するBoudouard温度は800℃であり、CO/CO2比が3.6のCO-CO2系に関するBoudouard温度は750℃であり、そしてCO/CO2比が1.7のCO-CO2系に関するBoudouard温度は700℃である。
【0015】
従って、本発明者らは、SOECがBoudouard温度を超えて運転された場合、コーキングの問題をSOEC内部で回避できると考えた。しかしながら、本発明者らは、SOECがBoudouard温度を超えて運転された場合でも、依然としてコーキングの傾向があり、従って寿命に悪影響を及ぼすことを見出した。本発明者らはまた、Boudouard温度を超えて運転されたときに、いつコーキングを回避できるか、およびいつコーキングが起こるかについて、明確なパターンは存在しないことを見出した。
【0016】
本発明者らは、今回、SOECにおいて、コーキングの蓋然性が運転温度とセルまたはスタックを出るCO/CO2比との組合せによってのみ決定されるのではなく、コーキングがはるかに起こりやすいSOECにおける条件が、以下の臨界パラメータの組み合わせに主に依拠することを見出した:燃料ガスの入口温度(T)、空間速度(SVfuel)およびCO濃度(XCO);フラッシュガスの入口温度(T)および空間速度(SVflush);ならびにSOECにおいて電解質を通る電解電流密度(i)の組合せ。
【0017】
第1の態様において、本発明は、高温乾式固体酸化物電解において、二酸化炭素を一酸化炭素に転化するための方法であって、以下のステップを含む方法に関する:
1)70~100体積%のCO2、0~30体積%のCOを含む燃料ガスストリームを供するステップであって、COのモル分率(xCO)が0~0.3の範囲であるステップ;
2)フラッシュガスストリームを供するステップ;
3)燃料側とオキシ側とを有する固体酸化物電解セル(SOEC)を供するステップ;
4)燃料ガスストリームおよびフラッシュガスストリームを600~1000℃、例えば700~850℃の範囲のガスストリーム入口温度Tに加熱するステップ;
5)2~30s-1の範囲の空間速度SVfuelで、燃料ガスストリームをSOECの燃料側に供給するステップ;
6)0.1~20s-1の範囲の空間速度SVflushで、フラッシュガスストリームをSOECのオキシ側に供給するステップ;
7)-0.2A/cm2~-1A/cm2の範囲の電流密度iを有する電解電流を固体電解質を通して通電して、SOECの燃料側でCO2の一部をCOに電気分解的に転化し、SOECのオキシ側でO2富化フラッシュガスを生成するステップ。
【0018】
この方法は、SOECの寿命を損なうことなく、セル内でのCO2の高い転化率をもたらす。
【0019】
本発明者らは、5つのプロセスパラメータの組み合わせの間の関係を調節することが、SOECにおけるコーキングを回避または大幅に低減する条件を提供することを見出した:入口温度、燃料ガスの空間速度、燃料ガスのCO濃度、フラッシュガスの空間速度、およびSOECを通る電解電流密度。
【0020】
工業規模でのCO富化ガスの製造のためには、SOECは、通常、SOECスタック中に配置される。複数のスタックが、SOECシステム内にさらに配置されてもよい。
【0021】
乾式の固体酸化物電解では、燃料ガスストリームは乾燥しているべきであり、これは、燃料ガスストリームが約0~1体積%のみのH2Oを含むことを意味する。これは、水と一酸化炭素との反応が、水素および二酸化炭素を形成すること(水性ガスシフト反応)を回避するためである。COをCO2、CO、H2OおよびH2の混合物から分離することは、COおよびCO2の混合物から分離するよりもはるかに困難である(例えば、WO18228716を参照されたい)。さらに、燃料ガスストリームは、約0~1体積%のみのH2を含むことが好ましい。これは、水素と二酸化炭素との反応が、水および一酸化炭素を形成すること(逆水性ガスシフト)を回避するためである。COをCO2、CO、H2OおよびH2の混合物から分離することは、COおよびCO2の混合物から分離するよりも困難である。燃料ガスは、少量の他の非反応性成分を含んでいてもよい。
【0022】
概して、セル内、セル間(すなわち、スタック内)およびスタック間(すなわち、高温CO2電解のためのシステム内)において、温度は極めて均一に保たれることが好ましい。しかしながら、実際には、セル間およびセル内の両方において小さな温度勾配が存在し得る。例えば、セル内の温度変動は、25、30、40またはさらには50℃であり得る。特に、入口温度と出口温度との間の差は、本発明から逸脱することなく、50℃まで、またはさらには75℃もしくは100℃までであり得る。燃料ガスストリーム及びフラッシュガスストリームの入口温度も変動し得る。フラッシュガスおよび燃料ガスが異なる入口温度を有する場合、または入口温度が異なる入口にわたって変動する場合、平均入口温度(すなわち、入口温度の算術平均)がTに使用されるべきである。これは、本発明の全ての態様について同様である。
【0023】
SOECにおいて、燃料側およびオキシ側は、運転可能であるために、固体電解質を介してイオン接触しなければならないことは理解されるべきである。
【0024】
本発明の第2の態様では、固体電解質を介してイオン接触する燃料側およびオキシ側を有する固体酸化物電解セル(SOEC)における高温乾式CO2電解のための運転条件を選択するための方法であって、以下のステップ:
i.燃料ガスストリームを、SOECの燃料側に、2~30s-1の範囲の空間速度SVfuelで供給するステップであって、前記燃料ガスストリームは70~100体積%のCO2および0~30体積%のCOを含み、COのモル分率(xCO)は0~0.3の範囲であるステップ;
ii.フラッシュガスストリームを、SOECのオキシ側に、0.1~20s-1の範囲の空間速度SVflushで供給するステップ、
iii.前記燃料およびフラッシュガスストリームを、600~1000℃の範囲のガスストリーム入口温度Tに加熱することによって、SOECに熱を供給するステップ、および引き続き
iv.電解電流iを、SOECの電解質を通して、-0.2A/cm2~-1A/cm2の範囲の電流密度で通電するステップ、
を含み、T、SVfuel、SVflushおよびiの値は、以下の反復プロセス:
a)T、SVfuel、SVflushおよびiの運転条件を初期値に設定すること;
b)セルにおいて多様に分布した複数の位置に関して局所温度および局所ガス組成を決定すること;
c)前記の局所ガス組成に基づいて、前記位置のそれぞれについて、下回るとBoudouard反応による炭素形成が熱力学的に有利となる局所温度(局所Boudouard温度)を推定すること、
d)測定された局所温度から局所Boudouard温度を減じ、それによってBoudouard差を得ること、および
e)前記位置のそれぞれに関するBoudouard差がゼロより大きくなるまで、ガス流量、入口温度(複数可)および/または電解電流密度を変化させること、
によって選択される、前記方法が提供される。
【0025】
固体酸化物電解セルにおける高温乾式CO2電解のための運転条件を選択するためのこの方法は、所与のSEOCまたはSOECスタックのための一連の運転パラメータを得るために試行錯誤手順として使用することができ、この手順は組み合わせて、高温乾式固体酸化物電解において二酸化炭素を一酸化炭素に転化するための方法を提供し、これは、Boudouard温度領域の外側であり、著しいコーキングが起こらないことを意味する。
【0026】
図:
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】
図2は、SOECを備えるシステムの一実施態様を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、SOECスタック繰り返し単位の概略図である。
【
図4】
図4a、4b、4c、4dおよび4eは、コーキングポテンシャル(CP)と様々な臨界処理パラメータ(T、SV
flus、SV
fuel、%COおよびi)との間の関係を示しており、他の点では固定された条件下での各パラメータの影響を実証している。
【
図5】
図5は、V
fuel、V
oxygenおよびセルの活性面積に関する前提に基づいて、いくつかの可能なSV
fuel、SV
flushおよびiの組み合わせに関して式(I)によって計算された、例示的なコーキングポテンシャルを示す。ケース#1では、V
fuel,V
oxygenおよびセル活性面積(A)は、本願の例1から得られた。
【0028】
発明の詳細な説明
本明細書では、上記で定義されるような高温乾式固体酸化物電解において二酸化炭素を一酸化炭素に転化する方法が開示される。
【0029】
本文脈において、語句「入口温度」は、例えばセルまたはスタックの下のガスマニホールドにおいて、ガスがセルまたはスタックに入る位置(複数可)の近傍の温度を表すことが意図される。実験的に、入口温度は、熱電対を用いて容易に決定される。フラッシュガスおよび燃料ガスが異なる入口温度を有する場合、または入口温度が異なる入口にわたって異なる場合、平均入口温度(すなわち、入口温度の算術平均)が、好ましくは使用されるべきである。
【0030】
語句「フラッシュガス」は、SOECセルまたはスタックのオキシ側に供給されるガスを表すことが意図される。フラッシュガスは、アノード反応で形成された酸素をセルまたはスタックから外へ運ぶために使用される。フラッシュガス流はさらに、セルまたはスタック内の温度勾配をならすために使用することができる。
【0031】
語句「燃料ガス」は、SOECセルまたはスタックの燃料側に供給されるガスを表すことが意図される。本文脈において、SOECが乾式CO2電解方式(すなわち、CO2をCOおよびO2に転化する)で運転される場合、燃料ガスは、CO2および任意選択的にCOを含む。それはさらに、微量の他成分、例えば5%未満の全量までのH2、N2、H2Oを含んでいてもよい。
【0032】
語句「生成物ガス」は、SOECセルまたはスタックの燃料側から出るガスを表すことが意図される。本文脈において、SOECが乾式CO2電解で運転される場合、生成物ガスはCOおよびCO2を含む。電流がSOECセルまたはスタックを通って流れている限り、生成物ガス中のCO含有量は、燃料ガス中のCO含有量よりも高くなる。生成物ガスはさらに、微量の他成分、例えば5%未満の全量までのH2、N2、H2Oを含んでいてもよい。
【0033】
「空間速度」は、SOECまたはSOECスタックなどの反応器を通るガス流の速度を記述するために広く使用されているパラメーターである。空間速度SVは、本明細書で使用される場合、単位時間当たりの、反応器を通過する供給材料の反応器体積の数として定義される。従って、「フラッシュガスの空間速度」は、SOECセルまたはスタックのオキシ側コンパートメントの全体積で除した、フラッシュガスの体積流量を表し、「燃料ガスの空間速度」は、SOECセルまたはスタックの燃料側コンパートメントの全体積で除した、燃料ガスの体積流量を表す。ガスの体積流量は、ガス流量計またはロタメーターを使用して容易に決定され、本明細書に示される値は標準状態(0℃、1気圧)下で測定された値を表す。SOECセルまたはスタックの燃料側(カソード)コンパートメントおよびオキシ側(アノード)コンパートメントの全体積は、図面(技術図面)から決定することができる。あるいは、SOECスタック内の燃料コンパートメントの全体積(Vfuel)は、以下の式に従って推定することができる:
【0034】
【数1】
ここで、WはSOEC活性面積の幅であり、LはSOEC活性面積の長さであり、H
fuel,avは燃料側ガスチャネルの平均高さであり、そしてnはスタック中のガスチャネルの数である。単一のSOECが試験される場合、nは1に等しい。同様に、SOECのオキシ側の全体積(V
oxygen)は、以下の式に従って決定することができる:
【0035】
【数2】
ここで、H
oxygen,avは、オキシ側ガスチャネルの平均高さである。W、L、H
fuel,avおよびH
oxygen,avは、幾何学的な式を使用して測定または計算することができる。
【0036】
ガスにおけるガス種の「モル分率」(xCO)という語句は、本文脈において、ガス混合物中のガス種のモル数を、当該ガス混合物中の全モル数で除したものを表す。例えば、燃料ガス中のCOのモル分率が5モル%である場合、xCO=0.05である。
【0037】
語句「電解電流密度」は、SOEC活性面積で除した、セルまたはスタックを通って流れる全電解電流として定義される。「SOEC活性面積」は、電気化学的に活性である、すなわち電気化学反応に関与するSOECの幾何学的面積を表す。矩形活性面積を有するSOECの場合、活性面積は、WにLを乗じることによって推定することができる。
【0038】
本発明の文脈において、語句「不活性」は、関連する温度でSOEC中の化学反応または電気化学反応に関与しないガス種を表す。不活性種には、典型的には、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが含まれる。いくつかの状況では、例えば不活性ガスがフラッシュガスとして使用される場合には、不活性ガスはCO2、空気、蒸気などを含むこともできる。
【0039】
本文脈において、「局所」は、12×12×12cm3よりも小さい、好ましくは1×1×1cm3よりも小さい、より好ましくは0.1×0.1×0.1cm3よりも小さい体積を表すことを意味する。
【0040】
SOECの典型的な運転温度は約600℃~1000℃である:電解質として使用されるセラミック膜において十分な酸化物イオン伝導率に達するためには高温が必要である。一般的に使用される電解質材料には、安定化ジルコニア、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ドープセリア、ドープランタンガレートなどが含まれる。一般に使用されるオキシ電極材料には、ペロブスカイト材料、例えばSrドープLaMnO3(LSM)、SrドープLaFeO3(LSF)、SrドープLaCoO3(LSC)、SrドープLa(Co,Fe)O3(LSCF)、SrドープSmCoO3等多数が含まれる。ペロブスカイト材料はさらに、一般的には、ドープされたセリアと混合されて、複合オキシ電極(SOECアノード)を形成する。Sr以外のドーパント、例えばCa、Baが、ペロブスカイト以外の材料、例えばRuddlesden-Popper相のように知られている。一般的に使用される燃料電極材料には、金属Niと安定化ジルコニアとの複合体、例えばNi-YSZ、または金属Niとドープセリアとの複合体が含まれる。
【0041】
本発明者らは今回、できるだけ高いCO/CO2比でSOECスタックの安全な運転を可能にする、CO2電解におけるSOECスタックのための運転ウィンドウを見出した。特に、本発明者らは、スタックに対するコーキングポテンシャル(CP)を定義し、本発明者らはさらに、コーキングポテンシャル(CP)がT、SVflush、SVfuel、xCOおよびiの関数として推定することができ、以下によって定義されることを見出した:
【0042】
【数3】
一実施態様において、SOECまたはSOECスタックは、CP≦-50の条件下で運転される。これは、CO
2のCOへの高い転化率と、1年を超えるSOECの長い寿命をもたらす。
【0043】
同時に、SOECスタックがCP≦-15となるように運転される場合に、経済的収益性が最大化される。これは、CO2のCOへの高い転化率と、1年を超えるSOECの長い寿命、および同時に高い収益性をもたらす。本発明の一実施態様において、CPは-75~-15の範囲である。CPに関して、現実のより低い範囲は存在しない。しかしながら、CPのより低い範囲は、-100、-80または-75であり得る。式(I)は、大気圧で実験的に決定された。従って、実験式(I)は、大気圧付近の圧力、少なくとも0.5~2bar、例えば0.7~1.8barの絶対圧力下で適用可能である。
【0044】
一実施態様において、燃料ガスストリームは、80~100、例えば88~98体積%のCO2を含む。一実施態様において、燃料ガスストリームは、0~20体積%、例えば1~12体積%のCOを含む。一実施態様において、燃料ガスストリームは、80~100、例えば88~98体積%のCO2および0~20体積%、例えば1~12体積%のCOを含む。一実施態様において、燃料ガスストリームのCOのモル分率(xCO)は、0~0.2、例えば0.01~0.15または0.05~0.1の範囲である。一実施態様において、生成物ガスストリームは、15~95体積%のCO、例えば、15~90、20~80、20~70、20~60、20~50体積%のCO、または30~50体積%のCOを含む。一実施態様において、燃料ガスストリームに存在するガスのいくらかの残部は、不活性ガス(例えば、N2または希ガス)である。
【0045】
特定の実施態様において、燃料ガスストリームは、80~100体積%のCO2、0~20体積%のCO、0~1体積%のH2Oおよび0~1体積%のH2からなり、残部は不活性であり、COのモル分率(xCO)は0~0.2、例えば、0.01~0.15または0.05~0.1の範囲である。そのような燃料ガスストリームは、20~50体積%の範囲のCOならびに低含有量のH2O及びH2を含む生成物ガスストリームを得ることができるという利点を有する。
【0046】
別の特定の実施態様において、燃料ガスストリームは、88~98体積%のCO2、1~12体積%のCO、0~1体積%のH2Oおよび0~1体積%のH2からなり、残部は不活性であり、COのモル分率(xCO)は0~0.2の範囲である。そのような燃料ガスストリームは、20~50体積%の範囲のCOならびに低含有量のH2O及びH2を含む生成物ガスストリームを得ることができるという利点を有する。
【0047】
別の実施態様において、特定のSOECスタックデザインのための運転条件を選択するための方法は、式(I)を使用してCP=_15を満たすT、SVfuel、SVflush、XCOおよびiの初期セットを選択することにより開始され、次いで請求項15で特許請求されるような運転パラメーターを選択するためのガイダンスに従って進行する。
【0048】
図面の詳細な説明
図1は、SOECの概略図である。SOEC(1)は、燃料側(11)と、酸素イオン伝導性電解質(12)と、オキシ側(13)とを備える。燃料ガス(101)が燃料側(11)に供給され、そこでガスストリーム中に存在するCO2の一部が電気化学的にCOに転化される。電気化学反応の駆動力は、電源ユニット(20)によって供給される電位によって提供される。得られる生成物ガスストリーム(102)は、燃料ガスよりも高いCO含有量を有し(すなわち、COで富化されている)、このCO富化生成物ガスストリームは、SOECの燃料側から収集される。
【0049】
酸素イオンの流れが、SOECのオキシ側(13)へと電解質(103)を通過する。SOECのオキシ側では、アノード反応が起こってイオン性酸素を酸化する。フラッシュガス(104)が、アノード反応で形成された酸素をSOECから外へ運ぶために使用される。オキシ側での電気化学反応の結果として、フラッシュガスストリーム(104)は酸素で富化される。酸素富化フラッシュガスストリーム(105)が、SOECのオキシ側から収集される。
【0050】
図2は、SOECを備えるシステム(2)の一実施態様を示すブロック図である。ガスストリーム(201)は、任意選択的にCO
2富化ガスストリーム(203)と混合され、得られた燃料ガスストリーム(101)は、SOEC(10)の燃料側(11)に供給される。燃料ガスストリーム中に存在するCO
2の一部は、電気化学的にCOに転化される。得られたCO富化生成物ガスストリーム(102)は、SOECの燃料側から収集される。生成物ガスストリーム(102)は、任意選択的にガス精製ユニット(30)に供給することができ、そこで生成物ガスストリーム(102)は、第1のCO富化生成物ガスストリーム(202)と第2のCO
2富化生成物ガスストリーム(203)とに分割される。CO
2富化生成物ガスストリーム(203)は、任意選択的に、上述のようにSOECの燃料側にリサイクルして戻すことができる。
【0051】
フラッシュガスストリーム(104)は、SOEC(10)のオキシ側(13)に供給される。オキシ側での電気化学反応の結果として、フラッシュガスストリーム(104)は酸素で富化される。酸素富化フラッシュガスストリーム(105)が、SOECのオキシ側から収集される。
【0052】
図3は、SOECスタック繰り返し単位の概略図である。より具体的には、インターコネクト(40)が、隣接するSOEC(10)間にどのように配置されるかが示されている。この図では、SOECのオキシ側が上向きで面しており、SOECの燃料側が下向きで面している。SOECの幅W、およびSOECの長さLが概略的に示されている。2つの異なる任意のインターコネクト形状が示されている。
図3aにおいて、燃料側ガスチャネルの平均高さH
fuel,avおよびオキシ側ガスチャネルの平均高さH
oxygen,avは、
図3bにおけるよりも低く、これは2つの図におけるインターコネクトデザイン間の形状の相違によるものである。
【0053】
図4a、4b、4c、4dおよび4eは、コーキングポテンシャル(CP)と様々な臨界処理パラメータ(T、SV
flush、SV
fuel、%CO、およびi)のそれぞれとの間の関係を示しており、他の点では固定された条件下での各パラメータの影響を実証している。
図4は、例4~8においてより詳細に説明される。
【0054】
本方法を、以下の非限定的な例においてより詳細に説明する。
【実施例】
【0055】
例
例1
熱力学的考察に基づくとコーキングは予想されないが、前記のコーキングポテンシャルが正である条件下で、乾式CO2電解においてSOECスタックを運転した。
【0056】
より具体的には、電気ヒーターを用いて、燃料ガス(食品グレードCO2)を加熱し、それにより入口温度(T)を725℃まで上昇させた。燃料ガス組成は、≧99.9%CO2であり、CO含有量はppmレベルであった(すなわち、xCO=0)。SOECスタックは、直列に接続された75個のセルを含み、それぞれは108cm2の活性面積を有していた。燃料側コンパートメントの全体積(Vfuel)は243cm3であり、一方、オキシ側コンパートメントの全体積(Voxygen)は405cm3であった。燃料ガスを、1.26s-1の燃料ガスの空間速度(SVfuel)に対応する1.1Nm3/hの体積流量でスタックに供給した。スタックのオキシ側のフラッシュガスとして空気を使用し、1.03s-1のフラッシュガスの空間速度(SVflush)に対応する1.5Nm3/hの体積流量でスタックに供給した。スタック電流を、-0.37A/cm2の電解電流密度(i)に対応する-40Aに固定した。これらの条件下で、スタックに供給されたCO2の60%がCOに転化されたが、これはスタック出口付近でのCO/CO2比60/40=1.5に対応する。
【0057】
725℃の乾燥CO/CO2混合物では、CO/CO2比が2.47を超えるといつもコーキングが熱力学的に有利であり、これは71.2%のCO2転化率に相当する。換言すると、熱力学的考察に基づくと、スタック内部に炭素は形成されるはずではなかった。しかしながら、スタックは、相当なコーキングを受け、わずか12.5時間の運転後に故障した。
【0058】
上記の条件下でのコーキングポテンシャル(CP)は72.3であり、すなわち、コーキングは実際にはスタックにおいて極めて有利であり、それによって、スタックがわずか数時間の試験後に故障した理由が説明される。スタック中の炭素形成はまた、ラマン分光法を用いた試験後分析でも確認された。
【0059】
例2
熱力学的考察に基づくとコーキングは予想されず、前記のコーキングポテンシャルが負である条件下で、すなわち本発明の方法に従って、乾式CO2電解においてSOECスタックを運転した。
【0060】
より具体的には、電気ヒーターを用いて、燃料ガス(食品グレードCO2)を加熱し、それにより入口温度(T)を750℃まで上昇させた。燃料ガスは食品グレードCO2およびCOの混合物であった。燃料ガスにおけるCO含有量は3.6%であった(すなわちxCO=0.036)。SOECスタックは、直列に接続された75個のセルを含み、それぞれは108cm2の活性面積を有していた。燃料側コンパートメントの全体積(Vfuel)は243cm3であり、一方、オキシ側コンパートメントの全体積(Voxygen)は405cm3であった。燃料ガスを、9.14s-1の燃料ガスの空間速度(SVfuel)に対応する8Nm3/hの体積流量でスタックに供給した。スタックのオキシ側のフラッシュガスとして空気およびCO2の混合物を使用し、9.81s-1のフラッシュガスの空間速度(SVflush)に対応する14.3Nm3/hの体積流量でスタックに供給した。スタック電流を、-0.46A/cm2の電解電流密度(i)に対応する-50Aに固定した。これらの条件下で、スタックに供給されたCO2の19.6%がCOに転化されたが、これはスタック出口付近でのCO/CO2比(19.6+3.6)/(100-19.6-3.6)=0.30に対応する。
【0061】
750℃の乾燥CO/CO2混合物では、CO/CO2比が3.6を超えるといつもコーキングが熱力学的に有利であり、これは78.4%のCO2転化率に相当する。換言すると、熱力学的考察に基づくと、運転下でスタック内部に炭素は形成されないはずである。上記条件下でのコーキングポテンシャル(CP)は-59.9であり、すなわちコーキングは起こらない。
【0062】
例3
熱力学的考察に基づくとコーキングは予想されず、前記のコーキングポテンシャルが負である条件下で、すなわち本発明の方法に従って、乾式CO2電解においてSOECスタックを運転した。
【0063】
より具体的には、電気ヒーターを用いて、燃料ガス(食品グレードCO2)を加熱し、それにより入口温度(T)を745℃まで上昇させた。燃料ガスは食品グレードCO2およびCOの混合物であった。燃料ガスにおけるCO含有量は3.6%であった(すなわちxCO=0.036)。SOECスタックは、直列に接続された75個のセルを含み、それぞれは108cm2の活性面積を有していた。燃料側コンパートメントの全体積(Vfuel)は243cm3であり、一方、オキシ側コンパートメントの全体積(Voxygen)は405cm3であった。燃料ガスを、9.14s-1の燃料ガスの空間速度(SVfuel)に対応する8Nm3/hの体積流量でスタックに供給した。スタックのオキシ側のフラッシュガスとして空気およびCO2の混合物を使用し、9.81s-1のフラッシュガスの空間速度(SVflush)に対応する14.3Nm3/hの体積流量でスタックに供給した。スタック電流を、-0.65A/cm2の電解電流密度(i)に対応する-70Aに固定した。これらの条件下で、スタックに供給されたCO2の27.4%がCOに転化されたが、これはスタック出口付近でのCO/CO2比(27.4+3.6)/(100-27.4-3.6)=0.45に対応する。
【0064】
745℃の乾燥CO/CO2混合物では、CO/CO2比が3.37を超えるといつもコーキングが熱力学的に有利であり、これは77.1%のCO2転化率に相当する。換言すると、熱力学的考察に基づくと、運転下でスタック内部に炭素は形成されないはずである。上記条件下でのコーキングポテンシャル(CP)は-30.5であり、すなわちコーキングは起こらない。2つのスタックは、コーキングなしで1年を超えて、上記の条件下で運転された。経済的観点から、例3に列挙される条件下での運転は、1時間あたりのスタックあたりにより多くのCOガスを生成できるので、例2に列挙される条件下での運転よりも有利である。
【0065】
例4
コーキングポテンシャル(CP)を、一連の実際的な運転条件に対して推定する。フラッシュガスの空間速度をSV
flush=9s
-1で固定し、燃料ガスの空間速度をSV
fuel=7s
-1で固定し、燃料ガスにおけるCOのモル分率はx
CO=0.05とし、電解電流密度をi=-0.5A/cm
2で固定した。入口温度(T)の変化の影響を調べた。
図4aにプロットする。選択した一連の運転条件の下では、675℃でCP=7.9、703℃でCP=0、750℃でCP=-17.9である。概して、入口温度が高いほど、CPはより低くなる。従って、炭素形成を回避するためには、スタックを高温で運転することが望ましく、ただし、これが、他のメカニズム(例えば、インターコネクトの腐食)によってスタック寿命を損なわないことを条件とする。
【0066】
例5
CPを、一連の実際的な運転条件に対して推定する:入口温度をT=700℃で固定し、燃料ガスの空間速度をSV
fuel=7s
-1で固定し、燃料ガスにおけるCOのモル分率はx
CO=0.05とし、電解電流密度をi=-0.5A/cm
2で固定した。フラッシュガスの空間速度(SV
flush)の変化の影響を調べた。
図4bにプロットする。選択した一連の運転条件の下では、1s
-1でCP=6.9、9s
-1でCP=0.8、および29s
-1でCP=-14.2である。概して、フラッシュガスの空間速度が高いほど、CPはより低くなる。従って、炭素形成を回避するためには、スタックを高いフラッシュガス空間速度で運転することが望ましく、ただし、これが法外に高価でないことを条件とする。
【0067】
例6
CPは、一連の実際的な運転条件に対して推定される:入口温度をT=700℃で固定し、フラッシュガスの空間速度をSV
flush=9s
-1で固定し、燃料ガスにおけるCOのモル分率はx
CO=0.05とし、電解電流密度をi=-0.5A/cm
2で固定した。燃料ガスの空間速度(SV
fuel)の変化の影響を調べた。
図4cにプロットする。選択した一連の運転条件の下では、1s
-1でCP=134.9、7s
-1でCP=0.8、および13s
-1でCP=-43.8である。概して、燃料ガスの空間速度が高いほど、CPはより低くなる。従って、炭素形成を回避するためには、スタックを高い燃料ガス空間速度で運転することが望ましく、ただし、これが法外に高価でないことを条件とする。
【0068】
例7
CPを、一連の実際的な運転条件に対して推定する:入口温度をT=700℃で固定し、フラッシュガスの空間速度をSV
flush=9s
-1で固定し、燃料ガスの空間速度をSV
flush=9s
-1で固定し、電解電流密度をi=-0.5A/cm
2で固定した。燃料ガスにおけるCOのモル分率(x
CO)の変化の影響を調べた。
図4dにプロットする。選択した一連の運転条件の下では、x
CO=0.01でCP=-24.6、x
CO=0.05でCP=0.8、およびx
CO=0.10でCP=2.6である。概して、燃料ガスにおけるCOのモル分率が高いほど、CPはより高くなる。従って、炭素形成を回避するためには、スタックを低いCOモル分率で運転することが望ましく、ただし、スタックの燃料側入口におけるNiが金属状態を維持することを条件とする。
【0069】
例8
CPを、一連の実際的な運転条件に対して推定する:入口温度をT=700℃で固定し、フラッシュガスの空間速度をSV
flush=9s
-1で固定し、フラッシュガスの空間速度をSV
flush=9s
-1で固定し、燃料ガスにおけるCOのモル分率はx
CO=0.05とした。電解電流密度(i)の変化の影響を調べた。
図4eにプロットする。選択した一連の運転条件の下では、-0.1A/cm
2でCP=-69.8、-0.5A/cm
2でCP=0.8、および-1.5A/cm
2でCP=81.8である。概して、電解電流密度がより負であるほど、CPはより高くなる。従って、炭素形成を回避するためには、スタックを低い電解電流密度で(すなわち、ゼロに近い電流で)運転することが望ましい。しかしながら、スタックの生成速度は電解電流の絶対値に正比例し、従って、商業的妥当性を確保するためには高い電流密度(すなわち、より負の電流)が必要とされる。
【0070】
例9
75個のセルからなるSOECスタックを、純粋なCO2を100Nl/分の流量でカソードに供給して、700℃の平均温度で、50Aの電解電流を通電しながら運転し、スタックのカソード側から出るガスにおける26%のCOおよび74%のCO2に相当する、CO2のCOへの転化率を得た。これは、WO2018/206235の例1の開示に対応する。
【0071】
上記の例は、乾式CO2電解におけるSOECスタックの動作点を記載している。運転温度(T)は700℃であり、燃料ガスストリームにおけるCOのモル分率(xCO)は0である。しかしながら、D1は、SVfuel、SVflushおよびiの推定を可能にするために、スタックについての幾何学的情報を開示していない。例えば、燃料ガスの体積流量に関する値(100Nl/分)は記載されているが、SVfuelの値を推定するためには燃料側コンパートメントの全体積(Vfuel)を知る必要がある。同様に、スタック電流に関する値(50A)が記載されるが、iの値を推定するためには、セルあたりの活性面積(およびセルが直列に接続されているかまたは並列に接続されているか)を知る必要がある。最後に、フラッシュガス流量も空間速度も言及されておらず、フラッシュガスが使用されるかどうかも、WO2018/206235の例1では全く触れられていない。
【0072】
図5では、上述のように、V
fuel、V
oxygenおよびセルの活性面積に関する前提に基づいて、コーキングポテンシャルが、いくつかの可能なSV
fuel、SV
flushおよびiの組み合わせに関して計算されている。
【0073】
ケース#1では、Vfuel、Voxygenおよびセル活性面積(A)の値は、本願の例1から得られた。疑義を避けるために、これらは好ましい実施態様を表すものではなく、WO2018/206235の例1で言及されるSV、セル面積でもないことが強調されるべきである。
【0074】
ケース#2~#4は、SVfuelの変化をもたらすVfuelのバリエーションを表す。SVfuelを増加させることによって、コーキングを回避することができる。低いSVfuelでは、コーキングが起こる。
【0075】
ケース#5~#6は、#1と比較したセル活性面積のバリエーションを表す。セル活性面積を増加させることによって、コーキングを回避することができる。セル活性面積を減少させることにより、コーキングが起こる。
【0076】
ケース#7~#8は、フラッシュガス流量のバリエーションを表す。フラッシュガス流量を増加させることは、わずかなポジティブな効果を有し、コーキングをわずかに起きにくくする。
【0077】
ケース#9~#10は、より高いSVfuelでのフラッシュガス流量のバリエーションを表す。フラッシュガス流量を増加させることは、わずかなポジティブな効果を有し、コーキングをわずかに起きにくくする。しかしながら、コーキングは依然として起こる。
【0078】
要約すると、これらのデータは、本特許出願の発明を偶発的に予測するのには十分でない情報しかWO2018/206235の例1には開示されていないことを明確に示している。その説明には、何のヒントも示唆も存在していない。
【0079】
実施態様:
実施態様1。高温乾式固体酸化物電解において、二酸化炭素を一酸化炭素に転化するための方法であって、以下のステップを含む方法:
1)70~100体積%のCO2および0~30体積%のCOを含む燃料ガスストリームを供するステップであって、COのモル分率(xCO)が0~0.3の範囲であるステップ;
2)フラッシュガスストリームを供するステップ;
3)複数の固体酸化物電解セル(SOEC)を含む固体酸化物電解セルスタック(SOECスタック)を供するステップであって、各セルは固体電解質を介してイオン接触する燃料側およびオキシ側を有し、前記の複数のSOECは、直列に電気的に接続され、並列に流体接続され、インターコネクタによって分離されているステップ;
4)燃料ガスストリームを600~1000℃、例えば700~850℃の範囲の燃料ガス入口温度Tに加熱するステップ;
5)1~30s-1の範囲の空間速度SVfuelで、燃料ガスストリームをSOECの燃料側に供給するステップ;
6)0.1~20s-1の範囲の空間速度SVflushで、フラッシュガスストリームをSOECのオキシ側に供給するステップ;
7)-0.2A/cm2~-1A/cm2の範囲の電流密度iを有する電解電流を固体電解質を通して通電して、電極側の燃料側でCO2の一部をCOに電気分解的に転化し、SOECのオキシ電極側でO2富化フラッシュガスを生成するステップ。
【0080】
請求項2~14は、同等に実施態様1と組み合わせることができる。
【0081】
実施態様2。高温乾式固体酸化物電解において、二酸化炭素を一酸化炭素に転化するための方法であって、以下のステップを含む方法:
1)70~100体積%のCO2および0~30体積%のCOを含む燃料ガスストリームを供するステップであって、COのモル分率(xCO)が0~0.3の範囲であるステップ;
2)フラッシュガスストリームを供するステップ;
3)複数の固体酸化物電解セル(SOEC)を含む複数の固体酸化物電解セルスタック(SOECスタック)を供するステップであって、各セルは固体電解質を介してイオン接触する燃料側およびオキシ側を有し、および前記の複数のSOECはSOECスタック内に配置され、SOECは直列に電気的に接続され、並列に流体接続され、インターコネクトによって分離されており;各スタックは、燃料ガスストリームを各スタックに同時に供給するため、および各スタックから生成物ガスストリームを同時に受け取るためのマニホールド上に備え付けられている、前記ステップ;
4)燃料ガスストリームを600~1000℃、例えば700~850℃の範囲の燃料ガス入口温度Tに加熱するステップ;
5)1~30s-1の範囲の空間速度SVfuelで、燃料ガスストリームをSOECの燃料側に供給するステップ;
6)0.1~20s-1の範囲の空間速度SVflushで、フラッシュガスストリームをSOECのオキシ側に供給するステップ;
7)-0.2A/cm2~-1A/cm2の範囲の電流密度iを有する電解電流を固体電解質を通して通電して、電極側の燃料側でCO2の一部をCOに電気分解的に転化し、SOECのオキシ電極側でO2富化フラッシュガスを生成するステップ。
【0082】
請求項2~14は、同等に実施態様2と組み合わせることができる。
【0083】
参照符号リスト
1: SOEC
2: SOEC
10: SOEC
11: 燃料側
12: 酸素イオン伝導性電解質
13: オキシ側
20: 電源ユニット
30: ガス精製ユニット
40: インターコネクト
101: 燃料ガス/燃料ガスストリーム
102: 生成物ガスストリーム
103: 電解質
104: フラッシュガス/フラッシュガスストリーム
105: 酸素富化フラッシュガスストリーム
201: ガスストリーム
202: CO富化生成物ガスストリーム
203: CO2富化ガスストリーム
【手続補正書】
【提出日】2023-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温乾式固体酸化物電解において、二酸化炭素を一酸化炭素に転化するための方法であって、以下のステップ:
1)70~100体積%のCO
2および0~30体積%のCOを含む燃料ガスストリームを供するステップであって、COのモル分率(x
CO)が0~0.3の範囲であるステップ;
2)フラッシュガスストリームを供するステップ;
3)燃料側とオキシ側とを有する固体酸化物電解セル(SOEC)を供するステップ;
4)燃料ガスストリームおよびフラッシュガスストリームを600~1000℃、例えば700℃~850℃の範囲のガスストリーム入口温度Tに加熱するステップ;
5)2~30s
-1の範囲の空間速度SV
fuelで、燃料ガスストリームをSOECの燃料側に供給するステップ;
6)0.1~20s
-1の範囲の空間速度SV
flushで、フラッシュガスストリームをSOECのオキシ側に供給するステップ;
7)-0.2A/cm
2~-1A/cm
2の範囲の電流密度iを有する電解電流を固体電解質を通して通電して、SOECの燃料側でCO
2の一部をCOに電気分解的に転化し、SOECのオキシ側でO
2富化フラッシュガスを生成するステップ、
を含む方法
において、
x
CO
、T、SV
fuel
、SV
flush
およびiが、コーキングポテンシャルCPが≦-15となるように選択され、CPが以下の式(I)によって与えられる、前記方法。
【数1】
【請求項2】
式(I)のコーキングポテンシャルCPが、SOECの運転の間、-100~-15、例えば-80~-15または-60~-15の範囲にある、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
生成物ガスストリームが、15~95体積%のCO、例えば、15~90、20~80、20~70、20~60、20~50体積%のCO、または30~50体積%のCOを含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
燃料ガスストリームが、80~100体積%のCO
2、0~20体積%のCO、0~1体積%のH
2Oおよび0~1体積%のH
2からなり、残部は不活性であり、COのモル分率(x
CO)は0~0.2の範囲である、請求項1~
3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
燃料ガスストリームが、88~98体積%のCO
2、1~12体積%のCO、0~1体積%のH
2Oおよび0~1体積%のH
2からなり、残部は不活性であり、COのモル分率(x
CO)は0~0.2の範囲である、請求項1~
4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
フラッシュガスが、空気、乾燥空気、O
2、CO
2、N
2、蒸気またはそれらの混合物を含む、請求項1~
5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記の固体酸化物電解セルが、SOECの燃料側への燃料ガス入口と、SOECの燃料側からの燃料生成物ガス出口とを備える、請求項1~
6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記の固体酸化物電解セルが、SOECのオキシ側へのフラッシュガス入口と、SOECのオキシ側からのフラッシュガス出口とを備える、請求項1~
7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
酸素富化フラッシュガスストリームが、SOECのオキシ側から収集される、請求項1~
8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
CO富化生成物ガスストリームが、SOECの燃料側から収集される、請求項1~
9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記生成物ガスストリームを、第1のCO富化ガスストリームと第2のCO
2富化ガスストリームとに分割するさらなるステップを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
第2のCO
2富化ストリームがSOECの燃料側にリサイクルされる、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
SOECの燃料側が、電源に電気的に接続された金属ニッケルを含む、請求項1~
12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
固体電解質を介してイオン接触する燃料側およびオキシ側を有する固体酸化物電解セル(SOEC)における高温乾式CO
2電解のための運転条件を選択するための方法であって、以下のステップ:
i.燃料ガスストリームを、SOECの燃料側に、2~30s
-1の範囲の空間速度SV
fuelで供給するステップであって、前記燃料ガスストリームは70~100体積%のCO
2および0~30体積%のCOを含み、COのモル分率(x
CO)は0~0.3の範囲であるステップ;
ii.フラッシュガスストリームを、SOECのオキシ側に、0.1~20s
-1の範囲の空間速度SV
flushで供給するステップ、
iii.前記燃料およびフラッシュガスストリームを、600~1000℃の範囲のガスストリーム入口温度Tに加熱することによって、SOECに熱を供給するステップ、および引き続き
iv.電解電流iを、SOECの電解質を通して、-0.2A/cm
2~-1A/cm
2の範囲の電流密度で通電するステップ、
を含み、
T、SV
fuel、SV
flushおよびiの値は、以下の反復プロセス:
a)T、SV
fuel、SV
flushおよびiの運転条件を初期値に設定すること;
b)セルにおいて多様に分布した複数の位置に関して局所温度および局所ガス組成を決定すること;
c)前記の局所ガス組成に基づいて、前記位置のそれぞれについて、下回るとBoudouard反応による炭素形成が熱力学的に有利となる局所温度(局所Boudouard温度)を推定すること、
d)測定された局所温度から局所Boudouard温度を減じ、それによってBoudouard差を得ること、および
e)前記位置のそれぞれに関してBoudouard差がゼロより大きくなるまで、ガス流量、入口温度(複数可)および/または電解電流密度を変化させること、
によって選択される、前記方法。
【国際調査報告】