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特表2023-554484抗菌型複合材料及び抗菌型複合材料の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】抗菌型複合材料及び抗菌型複合材料の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/86 20060101AFI20231220BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20231220BHJP
   C04B 35/111 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C04B41/86 R
C04B38/00 303Z
C04B35/111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537416
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 CN2021128060
(87)【国際公開番号】W WO2022142707
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011634998.2
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519385445
【氏名又は名称】▲無▼▲錫▼小天鵝電器有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUXI LITTLE SWAN ELECTRIC CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.18,SOUTH CHANGJIANG ROAD,NEW DISTRICT,WUXI,JIANGSU 214028,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 青波
(72)【発明者】
【氏名】曹 ▲運▼奕
(72)【発明者】
【氏名】熊 明
(72)【発明者】
【氏名】高 源
【テーマコード(参考)】
4G019
【Fターム(参考)】
4G019FA15
(57)【要約】
本出願は抗菌型複合材料および抗菌型複合材料の調製方法を提供する。抗菌型複合材料は、セラミック基体と、殺菌剤を含み、セラミック基体の表面の少なくとも一部を被覆する抗菌機能層と、を含み、ここで、抗菌機能層の成分は可溶性抗菌ガラスを含む。本出願は抗菌型複合材料の殺菌効率及び殺菌効果を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌型複合材料であって、
セラミック基体と、
可溶性抗菌ガラスを含み、前記セラミック基体の表面の少なくとも一部を被覆する抗菌機能層と、を含む、
抗菌型複合材料。
【請求項2】
前記セラミック基体は多孔質セラミック基体である、
請求項1に記載の抗菌型複合材料。
【請求項3】
前記セラミック基体の材料は酸化アルミニウムである、
請求項1に記載の抗菌型複合材料。
【請求項4】
前記セラミック基体の形状は球形であり、前記セラミック基体の直径範囲は0.1mm~20mmである、
請求項1に記載の抗菌型複合材料。
【請求項5】
前記可溶性抗菌ガラスは、無機殺菌剤0.1質量部~10質量部と、酸化ホウ素1質量部~20質量部と、酸化カルシウム10質量部~30質量部と、酸化リン30質量部~70質量部と、を含む、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の抗菌型複合材料。
【請求項6】
前記無機殺菌剤は、
酸化銀0.1質量部~5質量部、又は
酸化亜鉛0.2質量部~10質量部を含む、
請求項5に記載の抗菌型複合材料。
【請求項7】
前記可溶性抗菌ガラスは、
着色剤0.0001質量部~0.0008質量部、及び/又は
酸化セリウム0.0001質量部~0.0006質量部をさらに含み、
着色剤は、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、硫化カドミウムの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む、
請求項5に記載の抗菌型複合材料。
【請求項8】
抗菌型複合材料の調製方法であって、
セラミック基体を調製するステップと、
可溶性抗菌ガラスの熔融液を調製するステップと、
前記セラミック基体の表面の少なくとも一部に前記抗菌ガラスの熔融液を塗布するステップと、を含む、
抗菌型複合材料の調製方法。
【請求項9】
前記セラミック基体を調製するステップは、
セラミック粉体材料を調製するステップと、
前記セラミック粉体材料を噴霧造粒してセラミック素体を得るステップと、
前記セラミック素体を焼結して前記セラミック基体を得るステップと、を含む、
請求項8に記載の抗菌型複合材料の調製方法。
【請求項10】
前記可溶性抗菌ガラスの熔融液を調製するステップは、
酸化銀:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.1~5):(1~20):(10~30):(30~70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップ、または、酸化亜鉛:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.2~10):(1~20):(10~30):(30~70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップと、
前記混合物を熔融させて前記可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップと、を含む、
請求項8に記載の抗菌型複合材料の調製方法。
【請求項11】
前記混合物を熔融させて前記可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップは、
前記混合物を950℃~1350℃の温度範囲内で0.5時間~2時間の熔融を行い、前記可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップを含む、
請求項10に記載の抗菌型複合材料の調製方法。
【請求項12】
前記調製方法は、前記混合物を熔融させて前記可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップの前に、
前記混合物を予熱するステップをさらに含む、
請求項10に記載の抗菌型複合材料の調製方法。
【請求項13】
前記混合物を予熱するステップは、
前記混合物を250℃~350℃の温度範囲内で0.5時間~1.5時間予熱するステップを含む、
請求項12に記載の抗菌型複合材料の調製方法。
【請求項14】
前記セラミック基体の表面の少なくとも一部に前記抗菌ガラスの熔融液を塗布するステップは、
前記セラミック基体を予熱するステップと、
予熱された前記セラミック基体を前記抗菌ガラスの熔融液に浸漬するステップと、
前記抗菌ガラスの熔融液から前記セラミック基体を取り出して冷却するステップと、を含む、
請求項8乃至13のいずれか1項に記載の抗菌型複合材料の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年12月31日に中国国家知的財産局に提出された出願番号202011634998.2及び「抗菌型複合材料及び抗菌型複合材料の調製方法」という発明の名称の中国特許出願の優先権を主張するものであり、この出願の全内容は引用により本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、無機抗菌材料の技術分野に関し、特に抗菌型複合材料及び抗菌型複合材料の調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗菌材料は殺菌・抗菌性能を有する機能材料であって、主に抗菌剤を添加することにより抗菌作用を発揮する。関連技術の欠点の一つは、抗菌剤の抗菌効果が不十分であることである。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、上記技術的課題の少なくとも1つを解決することを目的とする
【0005】
そのため、本出願の第1目的は、抗菌型複合材料を提供することである。
【0006】
本出願の第2目的は、抗菌型複合材料の調製方法を提供することである。
【0007】
本出願の第1目的を達成するために、本出願の実施例は、セラミック基体と、殺菌剤を含み、セラミック基体の表面の少なくとも一部を被覆する抗菌機能層と、を含む抗菌型複合材料を提供する。
【0008】
本技術案は、セラミック基体の表面に殺菌剤を含有する抗菌機能層を被覆することにより、抗菌機能層の抗菌効果を向上させ、抗菌型複合材料のコストを低減させる。具体的には、抗菌効果において、抗菌型複合材料の抗菌殺菌効果は、水や空気等の媒体との接触面積の影響を受ける。抗菌型複合材料の比表面積が大きいほど殺菌処理待ちの媒体との接触面積が大きくなる。比表面積とは、物体について単位質量当たりの総面積のことである。本技術案は、抗菌機能成分または材料をバルク材料(Bulk)として直接調製する技術案に比べて、セラミック基体の表面に殺菌剤を含有する抗菌機能層を被覆することにより、単位質量当たりの抗菌機能層の比表面積を向上させ、ひいては抗菌機能層および抗菌機能層を有する抗菌型複合材料の抗菌効果を向上させる。また、洗濯機に適用可能な抗菌材料を例にすれば、洗濯機の使用寿命は約4000時間であり、可溶性抗菌ガラス等の洗濯機に適用可能な抗菌材料を例にすれば、その使用寿命は約10000時間である。言い換えれば、抗菌材料の使用寿命は洗濯機の使用寿命よりはるかに長く、使用者が洗濯機の廃棄交換を必要とする場合、可溶性抗菌ガラスなどの抗菌材料の浪費を招く。同様に、洗濯機、エアコンなどの製品の場合、抗菌材料を過剰に添加すると、上記製品の生産コストが不必要に増加される。このため、本技術案は、抗菌機能層をセラミック基体の表面に塗布するように印加することにより、抗菌型複合材料の徐放周期と洗濯機、エアコン等の製品の使用寿命とをお互いにマッチングさせて抗菌型複合材料の浪費を回避し、殺菌機能の実現を必要とする洗濯機、エアコン等の製品の生産コストを効果的に低減することができる。
【0009】
また、本出願の上記実施形態により提供される技術案は、さらに以下のような付加的な技術的特徴を有することができる。
【0010】
上記技術案において、セラミック基体は多孔質セラミック基体である。
【0011】
抗菌型複合材料の表面および内部に疎な多孔質構造が分布されているため、抗菌機能層は多孔質構造中に入り込んで充填することができ、セラミック基体と緊密に結合することができる。また、抗菌機能層が多孔質構造中に入り込んで充填されるので、本技術案は多孔質構造を用いて抗菌機能層中の殺菌機能成分の放出速さを合理的に制御することができる。具体的には、多孔質構造を有するセラミック基体は、表面が滑らかなセラミック基体に比べて、抗菌機能層の徐放速さを制限し、抗菌機能層の徐放周期を延長することができる。以上より、本技術案は多孔質構造を用いて抗菌機能層中の殺菌剤の徐放周期を調整することができ、殺菌剤が比較的長い時間周期内で安定して放出されることを保証することができる。
【0012】
上記のいずれか一つの技術案において、セラミック基体の材料は酸化アルミニウムである。
【0013】
酸化アルミニウムのセラミックは優れた機械的性能を有し、その耐摩性、耐食性、熱安定性がより良く、セラミック基体の使用寿命を保証することができる。
【0014】
上記のいずれか一つの技術案において、セラミック基体の形状は球形であり、セラミック基体の直径範囲は0.1mm~20mmである。
【0015】
球形または略球形のセラミック基体の比表面積が大きく、その表面の抗菌機能層が抗菌・抑菌作用を発揮するのにさらに有利である。
【0016】
上記のいずれか一つの技術案において、可溶性抗菌ガラスは、無機殺菌剤0.1質量部~10質量部と、酸化ホウ素1質量部~20質量部と、酸化カルシウム10質量部~30質量部と、酸化リン30質量部~70質量部と、を含む。
【0017】
酸化リンと酸化ホウ素との添加量及び割合を制御することにより、ホウ素カルシウムリンを含むガラス材料中で銀イオンや亜鉛イオン等の無機殺菌剤を合理的な速さで徐放することができる。具体的には、出願人は、本出願を実現する過程で、酸化リンの添加により銀イオンの溶解率を増大させ、銀イオンの放出を促進することを見出した。逆に、酸化ホウ素の添加により銀イオンの溶解率を低下させ、銀イオンの放出を抑制することができる。したがって、本技術案は酸化リンと酸化ホウ素の添加量及び具体的な割合を制御する(すなわち、酸化リンの含量は30質量部~70質量部、酸化ホウ素の含量は1質量部~20質量部である)。これにより、本技術案は、可溶性抗菌ガラス中の銀イオンの徐放速度および徐放効率を合理的に制御することができる。また、酸化カルシウムの添加により、可溶性抗菌ガラスの熔融温度を適切に低下させ、可溶性抗菌ガラスの生産コストを低減させ、可溶性抗菌ガラスの生産効率を向上させることができる。
【0018】
上記のいずれか一つの技術案において、無機殺菌剤は、酸化銀0.1質量部~5質量部、又は酸化亜鉛0.2質量部~10質量部を含む。
【0019】
銀イオンや亜鉛イオンはいずれも良好な殺菌消毒効果を有し、金属酸化物ガラスの格子をドープの形で占拠し、液体に浸漬または洗掘された環境下で時間の推移変化に伴って安定して放出され、長時間殺菌作用を実現する。酸化銀や酸化亜鉛を無機殺菌剤として使用することにより、殺菌効果を保証するだけでなく、無機殺菌剤が長期的に安定し、分解しにくいことも保証することができる。
【0020】
上記のいずれか一つの技術案において、可溶性抗菌ガラスは、着色剤0.0001質量部~0.0008質量部、および/または酸化セリウム0.0001質量部~0.0006質量部をさらに含み、着色剤は、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、硫化カドミウムの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む。
【0021】
着色剤を添加する目的は、可溶性抗菌ガラスの色を調整および制御することにある。ホウ素カルシウムリン三元酸化物可溶性抗菌ガラスに酸化セリウムを添加することにより、殺菌剤としての金属イオン中の高原子価金属イオンの割合を高めることができる。したがって、酸化セリウムの添加により、本出願の実施例に係る可溶性抗菌ガラスの殺菌効果及び殺菌効率を向上させることができる。
【0022】
本出願の第2目的を達成するために、本出願の実施例は、セラミック基体を調製するステップと、可溶性抗菌ガラスの熔融液を調製するステップと、セラミック基体の表面の少なくとも一部に抗菌ガラスの熔融液を塗布するステップと、を含む抗菌型複合材料の調製方法を提供する。
【0023】
本出願の実施例に係る抗菌型複合材料の調製方法は、本出願のいずれか一つの実施例に係る抗菌型複合材料を得ることができ、本出願の実施例に係る抗菌型複合材料の調製方法は、本出願のいずれか一つの実施例に係る抗菌型複合材料のすべての有益な効果を有するものであり、ここではこれ以上言及しない。
【0024】
上記技術案において、セラミック基体を調製するステップは、セラミック粉体材料を調製するステップと、セラミック粉体材料を噴霧造粒してセラミック素体を得るステップと、セラミック素体を焼結してセラミック基体を得るステップと、を含む。
【0025】
本技術案はセラミック粉体材料を用いて噴霧造粒することにより、均一な形態のセラミック素体を得ることができる。さらに、本技術案は、焼結により、機械的強度の高いセラミック基体を得ることができる。
【0026】
上記技術案において、可溶性抗菌ガラスの熔融液を調製するステップは、酸化銀:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.1~5):(1~20):(10~30):(30~70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップ、または、酸化亜鉛:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.2~10):(1~20):(10~30):(30~70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップと、混合物を熔融させて可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップと、を含む。
【0027】
酸化リンと酸化ホウ素の添加量及び割合の制御は、ホウ素カルシウムリン中で銀イオンまたは亜鉛イオンを合理的な速さで徐放させることができる。酸化カルシウムの添加は、可溶性抗菌ガラスの熔融温度を適切に低下させ、可溶性抗菌ガラスの生産コストを低減させ、可溶性抗菌ガラスの生産効率を向上させることができる。
【0028】
上記のいずれか一つの技術案において、混合物を熔融させて可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップは、混合物を950℃~1350℃の温度範囲内で0.5時間~2時間の熔融を行い、可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップを含む。
【0029】
本技術案で採用した熔融工程における温度制御は、各金属酸化物の十分な熔融を保証するとともに、本実施形態では均質で清澄な可溶性抗菌ガラスの熔融液を得ることができるように保証する。
【0030】
上記のいずれか一つの技術案において、調製方法は、混合物を熔融させて可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップの前に、混合物を予熱するステップをさらに含む。
【0031】
予熱工程の目的は、原料中の不純物と気体をさらに効果的に排出し、ガラス液が熔融過程で過度に多くの気泡を発生させないように避け、可溶性抗菌ガラスの材質を堅固で緻密にするように保証することである。
【0032】
上記のいずれか一つの技術案において、混合物を予熱するステップは、混合物を250℃~350℃の温度範囲内で0.5時間~1.5時間予熱するステップを含む。
【0033】
本技術案は、混合物を250℃~350℃の温度範囲内で予熱し、予熱時間は0.5時間を超え1.5時間未満である。上記の予熱条件は、原料中の不純物とガスを効果的に除去することができる。
【0034】
上記のいずれか一つの技術案において、セラミック基体の表面の少なくとも一部に抗菌ガラスの熔融液を塗布するステップは、セラミック基体を予熱するステップと、予熱されたセラミック基体を抗菌ガラスの熔融液に浸漬するステップと、抗菌ガラスの熔融液からセラミック基体を取り出して冷却するステップと、を含む。
【0035】
本技術案は、セラミック基体をガラス熔融液に浸漬することにより、ガラス熔融液がセラミック基体の表面に均一に印加されるようにすることができる。
【0036】
本出願の追加的な態様および利点は、以下の説明部分で明らかになるか、または、本出願の実践によって理解される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本出願の上述及び/又は追加の態様及び利点は、以下の図面に関連して実施例の説明から明らかで理解しやすいものとなる。
【0038】
図1】本出願の一実施例に係る抗菌型複合材料の調製方法のステップフローチャートの1である。
図2】本出願の一実施例に係る抗菌機能層の調製方法のステップフローチャートの1である。
図3】本出願の一実施例に係る抗菌機能層の調製方法のステップフローチャートの2である。
図4】本出願の一実施例に係る抗菌型複合材料の調製方法のステップフローチャートの2である。
図5】本出願の一実施例に係る抗菌型複合材料の調製方法のステップフローチャートの3である。
図6】本出願の一実施例に係る抗菌型複合材料の調製方法のステップフローチャートの4である。
図7】本出願の一実施例に係る抗菌型複合材料の調製方法のステップフローチャートの5である。
図8】本出願の一実施例に係る抗菌型複合材料の調製方法のステップフローチャートの6である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本出願の上述の目的、特徴、および利点をより明確に理解できるようにするために、以下、添付図面および具体的な実施形態に関連して、本出願についてさらに詳細に説明する。なお、本出願の実施例および実施例における特徴は、衝突することなく互いに組み合わせることができる。
【0040】
以下の説明では、本出願を十分に理解するために多くの具体的な詳細が述べられているが、本出願は、この説明とは異なる他の方法で実施することもできるので、本出願の保護範囲は、以下に開示される具体的な実施例によって限定されるものではない。
【0041】
以下、図1図8を参照して、本出願のいくつかの実施例に係る抗菌型複合材料および抗菌型複合材料の調製方法について説明する。
【0042】
本出願の一実施例に係る抗菌型複合材料は、セラミック基体と、セラミック基体の表面の少なくとも一部を被覆する抗菌機能層と、を含み、抗菌機能層の成分は、可溶性抗菌ガラスを含む。
【0043】
本出願の実施例の目的は、抗菌機能層を添加して抗菌機能を実現し、抗菌機能層に殺菌剤を添加し、抗菌機能層が抗菌型複合材料のセラミック基体の表面の少なくとも一部を被覆する抗菌型複合材料を提供することにある。セラミック基体の表面の抗菌機能層中の殺菌剤は、水中または空気中で緩やか且つ安定して放出され、消毒殺菌機能を実現する。
【0044】
本出願の実施例に係る抗菌型複合材料は、洗濯機、エアコン等の家電用品に適用され、洗濯機の洗濯用水やエアコンが置かれた室内空間を殺菌することができる。
【0045】
特に、本出願の実施例は、セラミック基体の表面に殺菌剤を含有する抗菌機能層を被覆している。上記方式は抗菌機能層の比表面積を高め、殺菌剤の徐放及び殺菌効果を促進及び向上させることができる。
【0046】
本出願の実施例の一部の実施形態において、セラミック基体は多孔質セラミック基体である。セラミック基体における多孔質構造は、原料の選択および割合の制御によって実現されてもよいし、工程パラメータの制御によって実現されてもよい。
【0047】
例えば、本出願の実施例では、酸化アルミニウム(Al)を原料とし、酸化アルミニウムを含む原料を均一に研磨混合した後高温焼結し、原料が高温で固相反応を起こし、多孔質セラミック基体を形成するようにする。
【0048】
さらに例えば、本出願の実施例では、多孔質セラミックの原料に孔形成剤を添加し、孔形成剤を含有する原料を高温焼結してもよい。孔形成剤としては、具体的にはキトサン、グルコースなどの炭素元素と酸素元素を含む低分子有機物が挙げられる。上記炭素含有の低分子有機物は高温で分解され、セラミック基体中の孔隙率をさらに増加させる。
【0049】
セラミック基体の表面および内部に疎な多孔質構造が分布されているため、抗菌機能層が多孔質構造中に入り込んで充填され、セラミック基体と緊密に結合するだけでなく、抗菌機能層中の殺菌剤の徐放周期を多孔質構造により調整することができ、殺菌剤の長い時間周期内での安定的な放出を保証することができる。
【0050】
本出願の実施例の一部の実施形態において、セラミック基体の材料は酸化アルミニウム(Al)である。
【0051】
酸化アルミニウムのセラミックは優れた機械的性能を有し、その耐摩性、耐食性、熱安定性がより良く、セラミック基体の使用寿命を保証することができる。
【0052】
本出願の実施例の一部の実施形態において、セラミック基体の形状は球形であり、セラミック基体の直径範囲は0.1mm~20mmである。球形または略球形のセラミック基体の比表面積が大きく、その表面の抗菌機能層が抗菌・抑菌作用を発揮するのにさらに有利である。
【0053】
本出願の実施例の一部の実施形態において、可溶性抗菌ガラスは、殺菌剤の添加量が0.1質量部~10質量部である無機殺菌剤と、添加量が1質量部~20質量部である酸化ホウ素(B)と、添加量が10質量部~30質量部である酸化カルシウム(CaO)と、添加量が30質量部~70質量部である酸化リン(P)と、を含む。
【0054】
関連技術のガラス材料における無機殺菌剤の徐放性能は制御困難である。洗濯機に置かれた殺菌剤ドープ可溶性抗菌ガラスを例に挙げると、一定の洗濯手順と洗濯時間範囲内で、可溶性抗菌ガラス中の無機殺菌剤の放出速度が速すぎると、無機殺菌剤が早く放出完了され、洗濯機の後期使用中の殺菌効果が低下し、さらに殺菌効果が失われることがある。可溶性抗菌ガラス中の無機殺菌剤の放出速度が遅すぎると、洗濯機の全使用中の殺菌効果がいずれも不十分であり、衣類や家紡用品に対する効果的な殺菌が困難になる。
【0055】
いかなる理論にもかかわらず、出願人は、本出願の実施例を実現する過程で、無機殺菌剤の徐放速度は、殺菌剤の添加量と基材としての可溶性ガラスの成分及び配合比との影響を受けることを見出した。従って、本出願の実施例は、ガラス材料における無機殺菌剤の徐放速度及び徐放効率を合理的に制御するために、酸化ホウ素、酸化カルシウム及び酸化リンを主成分とする三元酸化物可溶性抗菌ガラスを提供する。ただし、酸化ホウ素、酸化カルシウムおよび酸化リンの質量比は、酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(1-20):(10-30):(30-70)である。上記の成分および配合比の原料は、ガラス形成領域内であることができる。酸化リンと酸化ホウ素との添加及び割合を制御することにより、銀イオンまたは亜鉛イオン等の無機殺菌剤がホウ素カルシウムリン中で合理的な速さで徐放することができる。酸化リンの添加は銀イオンの溶解率を増大させて銀イオンの放出を促進するが、酸化ホウ素の添加は銀イオンの溶解率を低下させて銀イオンの放出を抑制する。したがって、本実施例では、リンホウ素間の配合比を制御することにより、可溶性抗菌ガラス中の銀イオンの徐放速度および徐放効率を合理的に制御することができる。また、酸化カルシウムの添加は、可溶性抗菌ガラスの熔融温度を適切に低下させ、可溶性抗菌ガラスの生産コストを低減させ、可溶性抗菌ガラスの生産効率を向上させることができる。
【0056】
本出願の実施例の一部の実施形態において、無機殺菌剤は、酸化銀0.1質量部~5質量部を含む。例えば、本実施例の可溶性抗菌ガラスの材料は、具体的には、酸化銀0.1質量部と、酸化ホウ素19.9質量部と、酸化カルシウム10質量部と、酸化リン70質量部と、を含む。再び例えば、本実施例の可溶性抗菌ガラスの材料は、具体的には、酸化銀5質量部と、酸化ホウ素20質量部と、酸化カルシウム30質量部と、酸化リン45質量部と、を含む。
【0057】
本出願の実施例の一部の実施形態において、無機殺菌剤は、酸化亜鉛0.2質量部~10質量部を含む。例えば、本実施例の可溶性抗菌ガラスの材料は、具体的には、酸化亜鉛0.2質量部と、酸化ホウ素19.8質量部と、酸化カルシウム10質量部と、酸化リン70質量部と、を含む。再び例えば、本実施例の可溶性抗菌ガラスの材料は、具体的には、酸化亜鉛10質量部と、酸化ホウ素10質量部と、酸化カルシウム30質量部と、酸化リン50質量部と、を含む。
【0058】
銀イオンや亜鉛イオンはいずれも良好な殺菌消毒効果を有し、金属酸化物ガラスの格子をドープの形で占拠し、液体に浸漬または洗掘された環境下で時間の推移変化に伴って安定して放出され、長時間殺菌作用を実現する。
【0059】
無機殺菌剤として酸化銀や酸化亜鉛を使用することにより、殺菌効果を保証するだけでなく、殺菌剤が長期的に安定し、分解しにくいことも保証することができる。
【0060】
本出願の実施例の一部の実施形態において、可溶性抗菌ガラスは、添加量が0.0001質量部~0.0008質量部である着色剤をさらに含み、着色剤は、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、硫化カドミウムの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む。例えば、本実施例の可溶性抗菌ガラスにおける着色剤の含量は、0.0001質量部または0.0004質量部または0.0008質量部であってもよい。
【0061】
着色剤を添加する目的は、可溶性抗菌ガラスの色を調整および制御することにある。ここで、当業者は、上記範囲内で、着色剤の添加量および具体的な種類について柔軟に選択および調整することができる。着色剤は、原料配合の過程で、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化リン等の基質原料と共に添加、相互混合することができ、可溶性抗菌ガラスが熔融加熱に入る過程で、着色剤を熔融ガラス液中に均一に分布させ、熔融及び冷却後に、均一に揃う色の可溶性抗菌ガラスを得ることができる。
【0062】
本出願の実施例の一部の実施形態において、着色剤は、酸化コバルト(Co)、酸化マンガン(MnO)、酸化鉄(Feおよび/またはFe)、酸化銅(CuO)、硫化カドミウム(CdS)の少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む。本実施形態の着色剤は、具体的には、金属酸化物着色剤である。金属酸化物着色剤は性能が安定しており、高温に強く、分解しにくい。
【0063】
本出願の実施例の一部の実施形態において、可溶性抗菌ガラスは、添加量が0.0001質量部~0.0006質量部である酸化セリウムをさらに含む。例えば、本実施例の可溶性抗菌ガラス中の酸化セリウムの含量は、0.0001質量部または0.0003質量部または0.0006質量部であってもよい。希土類元素であるセリウムイオン(Ce3+)はエネルギー準位が豊富で、原子価が高いという特徴がある。ホウ素カルシウムリン三元酸化物可溶性抗菌ガラスに酸化セリウムを添加することにより、殺菌剤としての銀イオン中の高原子価銀イオン(すなわち、二価状態の銀イオンまたは三価状態の銀イオン)の割合を高めることができ、または殺菌剤としての亜鉛イオン中の高原子価亜鉛イオン(すなわち、四価状態の亜鉛イオン)の割合を高めることができる。したがって、酸化セリウムの添加により、本出願の実施例に係る可溶性抗菌ガラスの殺菌効果及び殺菌効率を向上させることができる。
【0064】
図1に示すように、本出願の実施例に係る抗菌型複合材料の調製方法は、
セラミック基体を調製するステップS102と、
可溶性抗菌ガラスの熔融液を調製するステップS104と、
セラミック基体の表面の少なくとも一部に抗菌ガラスの熔融液を塗布するステップS106と、を含む。
【0065】
可溶性抗菌ガラスの熔融液は、塗布またはスプレーなどの方式でセラミック基体の表面に印加することができる。例えば、本出願の実施例は、熔融した可溶性抗菌ガラスの熔融液にセラミック基体を浸漬してもよいし、可溶性抗菌ガラスをガラス粉末として研磨し、セラミック基体の表面に接着剤等の材料を介してガラス粉末を接着し、セラミック基体を熱処理してガラス粉末を熔融または部分的に熔融させ、セラミック基体の表面の少なくとも一部を被覆するようにしてもよい。
【0066】
本出願の実施例に係る抗菌型複合材料の調製方法は、本出願のいずれか1つの実施例に係る抗菌型複合材料を得ることができ、該抗菌型複合材料の表面の抗菌機能層に徐放性能に優れ、徐放効率が合理的に制御可能な殺菌剤がドープされている。本出願の実施例に係る抗菌型複合材料の調製方法は、本出願のいずれか1つの実施例に係る抗菌型複合材料のすべての有益な効果を有するものであり、ここではこれ以上言及しない。
【0067】
図7に示すように、本実施例の一部の実施形態において、セラミック基体を調製するステップは、
セラミック粉体材料を調製するステップS702と、
セラミック粉体材料を噴霧造粒してセラミック素体を得るステップS704と、
セラミック素体を焼結してセラミック基体を得るステップS706と、を含む。
【0068】
具体的には、本実施例は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素等を含む冷間等方圧加圧の粉体素材を用いて破砕し、プレハブの種結晶をふるいにかけた後、ボールミルを加えて転動させ、少なくとも2回の水噴霧及びセラミック粉体材料添加の操作を行うことにより、セラミック粉体材料が直径1mm~20mmの球状セラミック素体まで転動成長するようにし、ひいてはセラミック素体の表面をバフ磨きし、セラミック素体を乾燥させることができる。本実施例では、セラミック素体を1500℃の温度条件で2時間焼結する。焼結工程の昇温時の温度制御は、焼結設備を室温から1000℃まで100℃/hの昇温速さで昇温し、焼結設備を1000℃から1500℃の焼結温度まで50℃/hの昇温速さで昇温することである。焼結後、本実施例では直径0.9mm~18mmのセラミック基体を得ることができる。上記ステップは、酸化アルミニウムセラミック基体、酸化ジルコニウムセラミック基体、トルマリンセラミック基体、麦飯石セラミック基体などの種類のセラミック基体を調製するのに適している。本実施例では、セラミック粉体材料を用いて噴霧造粒することにより、均一な形態のセラミック素体を得ることができる。さらに、本技術案は、焼結により、機械的強度の高いセラミック基体を得ることができる。
【0069】
図2に示すように、本出願の実施例の一部の実施形態では、可溶性抗菌ガラスの熔融液を調製するステップは、
酸化銀:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.1-5):(1-20):(10-30):(30-70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップS202と、
混合物を熔融させて可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップS204と、を含む。
【0070】
図3に示すように、本出願の実施例の一部の実施形態では、可溶性抗菌ガラスの熔融液を調製するステップは、
酸化亜鉛:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.2-10):(1-20):(10-30):(30-70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップS302と、
混合物を熔融させて可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップS304と、を含む。
【0071】
銀イオン(Ag及び/またはAg2+)又は亜鉛イオン(Zn2+及び/またはZn4+)は良好な殺菌消毒効果を有し、金属酸化物ガラスの格子をドープの形で占拠し、液体に浸漬又は洗掘された環境下で時間の推移変化に伴って安定して放出され、長時間殺菌作用を実現する。
【0072】
上記ステップにおいて、可溶性抗菌ガラスの総質量100質量部(100wt%)を基準にして、殺菌剤としての酸化銀の含量を0.1wt%~5wt%、酸化ホウ素の含量を1wt%~20wt%、酸化カルシウムの含量を1wt%~30wt%、酸化リンの含量を30wt%~70wt%とする。または、上記ステップにおいて、可溶性抗菌ガラスの総質量100質量部(100wt%)を基準にして、殺菌剤としての酸化亜鉛の含量を0.2wt%~10wt%、酸化ホウ素の含量を1wt%~20wt%、酸化カルシウムの含量を10wt%~30wt%、酸化リンの含量を30wt%~70wt%とする。
【0073】
なお、本実施例では、可溶性抗菌ガラス中の各酸化物の割合関係を質量分率で限定する。各元素の酸化物を直接原料とする場合、本実施形態では、上記ステップにおける比例関係に基づいて原料の耐荷重計測を直接行うことができる。各元素の塩類化合物を直接原料とする場合、本実施形態では、各原料のモル質量と質量分率との換算関係から元の秤量比例を確定することができる。液体原料を用いる場合、本実施形態では、体積濃度と質量分率との換算関係から元の秤量比例を確定することができる。当業者は上述した換算および秤量方式を知っており、本出願の実施例はこれについては言及しない。
【0074】
また、本実施例では、無機殺菌剤、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化リンを含む主原料のほか、他の金属酸化物副資材を添加することもできる。例えば、本実施形態では、硝酸銀(AgNO)、リン酸カルシウム(Ca(HPO)、リン酸ナトリウム(NaHPO)、リン酸アンモニウム(NHPO)、ホウ酸(HBO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化銅(CuO)、酸化コバルト(Co)、酸化セリウムCeOを原料として、可溶性抗菌ガラスを調製することができる。ここで、全原料の質量総和を100wt%として、各原料が全原料中に占める質量比は、硝酸銀の占有割合が3wt%、リン酸カルシウムの占有割合が78wt%、リン酸ナトリウムの占有割合が8.7wt%、リン酸アンモニウムの占有割合が0.9wt%、ホウ酸の占有割合が5.9wt%、酸化亜鉛の占有割合が2.55wt%、酸化銅の占有割合が0.4wt%、酸化コバルトの占有割合が0.05wt%、酸化セリウムの占有割合が0.5wt%である。
【0075】
少ない可溶性抗菌ガラスを調製する場合には、本出願の実施例の秤量プロセスは、分析天秤を用いて実現することができ、メノウ乳鉢や遊星ボールミルなどの小型の混合設備で原料の混合研磨を実現し、白金るつぼに入れた混合物を電気抵抗炉またはマッフル炉で熔融させ、最終的に白金るつぼ中のガラス液をアルミニウム板金型または鉄板金型の上に傾倒して冷却成形する。
【0076】
実際の生産において大量の可溶性抗菌ガラスを調製する場合、本出願の実施例の秤量プロセスは、大型台秤を用いて実現することができ、ミキシングミルにより原料の混合研磨を実現し、窯炉などの大型設備により混合物の熔融および冷却を実現する。
【0077】
なお、本実施例の冷却成形工程は、自然冷却であってもよいし、炉内冷却であってもよいし、水焼入れ方式による冷却であってもよい。
【0078】
なお、本実施例の熔融工程は、大気雰囲気中で行ってもよいし、還元雰囲気中や不活性ガス中で行ってもよい。
【0079】
冷却後、本実施形態は、可溶性抗菌ガラスの内部応力を除去するためにアニール工程を実施することもできる。アニール工程の温度範囲は200℃~500℃、アニール期間は2時間~4時間である。
【0080】
本出願の実施例の一部の実施形態において、混合物を熔融させて可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップは、混合物を950℃~1350℃の温度範囲内で0.5時間~2時間の熔融を行い、ガラス液を得るステップを含む。図4に示すように、抗菌機能層は、
セラミック基体を調製するステップS402と、
混合物を950℃~1350℃の温度範囲内で0.5時間~2時間の熔融を行い、抗菌ガラスの熔融液を得るステップS404と、
セラミック基体の表面の少なくとも一部に抗菌ガラスの熔融液を塗布するステップS406と、によって調製される。
【0081】
本実施形態で採用した熔融工程における温度制御は、各金属酸化物の十分な熔融を保証するとともに、本実施形態では均質で清澄な可溶性抗菌ガラスを得ることができるように保証する。
【0082】
本出願の実施例の一部の実施形態において、調製方法は、混合物を熔融させて可溶性抗菌ガラスの熔融液を得る処理の前に、混合物を予熱するステップをさらに含む。図5に示すように、抗菌機能層は、
セラミック基体を調製するステップS502と、
原料を秤量混合し、混合物を得るステップS504と、
混合物を予熱するステップS506と、
混合物を熔融させて可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップS508と、
セラミック基体の表面の少なくとも一部に抗菌ガラスの熔融液を塗布するステップS510と、によって調製される。
【0083】
予熱工程の目的は、原料中の不純物と気体をさらに効果的に排出し、ガラス液が熔融過程で過度に多くの気泡を発生させないように避け、可溶性抗菌ガラスの材質を堅固で緻密にするように保証することである。
【0084】
本出願の実施例の一部の実施形態において、混合物を予熱するステップは、混合物を250℃~350℃の温度範囲内で0.5時間~1.5時間予熱するステップを含む。図6に示すように、抗菌機能層は、
セラミック基体を調製するステップS602と、
原料を秤量混合し、混合物を得るステップS604と、
混合物を250℃~350℃の温度範囲内で0.5時間~1.5時間予熱するステップS606と、
混合物を熔融させて可溶性抗菌ガラスの熔融液を得るステップS608と、
セラミック基体の表面の少なくとも一部に抗菌ガラスの熔融液を塗布するステップS610と、によって調製される。
【0085】
本実施形態は、混合物を250℃~350℃の温度範囲内で予熱し、予熱時間は0.5時間を超え1.5時間未満である。上記の予熱条件は、原料中の不純物とガスを効果的に除去することができる。
【0086】
本出願の実施例の一部の実施形態において、ガラス液を冷却成形してガラス液を得るステップは、金属金型を予熱するステップと、金属金型にガラス液を注ぎ込んで自然冷却成形し、可溶性抗菌ガラスを得るステップと、を含む。
【0087】
本実施形態の金属金型は、アルミニウム製金型や鉄製金型などの耐熱性と熱伝導性に優れた金属金型であってもよい。冷却成形前に金属金型を予熱する目的は、ガラス液が傾倒及び成形の過程で炸裂することを避けることである。自然冷却成形とは、ガラス液を収容した金属金型を室温環境(例えば、20℃~30℃の間)に置いて自然冷却し、液状のガラス液が固体塊状のガラス体になるまで行うことをいう。
【0088】
本出願の実施例の一部の実施形態において、金属金型を予熱するステップは、金属金型を200℃~300℃の温度範囲に予熱するステップを含む。
【0089】
本実施形態では、金型を200℃~300℃の温度範囲内で予熱し、予熱時間は1時間~2時間とする。例えば、本実施形態は、原料の熔融と金属金型の予熱はそれぞれ2つの電気抵抗炉を用いて実現することができる。原料加熱の昇温速さと金属金型予熱の昇温速さは、当業者が加熱設備の性能に応じて選択して調整することができる。ただし、本実施形態は、混合物を熔融させてガラス液を得た後に予熱が完了し且つ温度が適切な金属金型を直ちに取り出して使用するように、原料が熔融温度に接近または到達した後に金属金型を予熱する電気抵抗炉を開く。
【0090】
なお、抗菌機能層を調製する原料は銀源原料を含み、銀源原料は硝酸銀(AgNO)、塩化銀(AgCl)、硫酸銀(AgSO)、炭酸銀(AgCO)、臭化銀(AgBr)、ヨウ化銀(AgI)、酸化銀(AgO)のうちの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む。抗菌機能層を調製する原料はホウ素源原料を含み、ホウ素源原料はホウ酸(HBO)を含む。抗菌機能層を調製する原料はカルシウム源原料を含み、カルシウム源原料は、炭酸カルシウム(CaCO)、硝酸カルシウム(Ca(NO)、硫酸カルシウム(CaSO)、リン酸カルシウム(Ca(HPOまたはCaHPO)、塩化カルシウム(CaCl)、酸化カルシウム(CaO)の少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む。抗菌機能層を調製する原料はリン源原料を含み、リン源原料は、リン酸カルシウム(Ca(HPOまたはCaHPO)、リン酸アンモニウム((NHPO)、酸化リン(P)の少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む。
【0091】
銀源原料は酸化銀を供給するための原料である。それに応じて、ホウ素源原料、カルシウム源原料、リン源原料は、酸化ホウ素を供給するための原料、酸化カルシウムを供給するための原料、酸化リンを供給するための原料の順である。なお、銀、ホウ素、カルシウム及びリンを含む原料は、酸化物として直接添加してもよいし(すなわち、酸化銀、酸化ホウ素、酸化カルシウム及び酸化リンを原料として直接添加してもよいし)、塩類化合物として添加してもよい(例えば、塩化銀、ホウ酸、炭酸カルシウム、各種のリン酸塩、カルシウムリン酸塩等の物資を原料として添加してもよい)。ここで、塩類化合物を原料とすると、銀、ホウ素、カルシウム及びリンを含む各塩類化合物が高温条件下で酸化されて酸化物となり、熔融後に酸化物ガラスを得る。そのうち、金属塩類化合物を原料とすることは、金属酸化物を原料とすることに比べて、ガラスの均質度や清澄度を向上させることができる。
【0092】
図8に示すように、本出願の実施例の一部の実施形態において、セラミック基体の表面の少なくとも一部に抗菌ガラスの熔融液を塗布するステップは、
セラミック基体を予熱するステップS802と、
予熱されたセラミック基体を抗菌ガラスの熔融液に浸漬するステップS804と、
抗菌ガラスの熔融液からセラミック基体を取り出して冷却するステップS806と、を含む。
【0093】
本実施形態では、ステップS804の浸漬動作を行う前に、セラミック基体を予熱することにより、セラミック基体が急に熱せられてマイクロクラック等の表面欠陥が発生することを回避することができる。ステップS806において、抗菌ガラスの熔融液からセラミック基体を取り出した後、セラミック基体を直接的に自然冷却してもよいし、アニール処理を行った後にセラミック基体を冷却してもよい。本実施例では、セラミック基体をガラス熔融液中に浸没する。ガラス熔融液がセラミック基体の表面に均一に印加されるようにすることができる。
【0094】
以上より、本出願の実施例は、セラミック基体の表面に殺菌剤を含有する抗菌機能層を被覆する有益な効果がある。上記方式は抗菌機能層の比表面積を高め、殺菌剤の徐放及び殺菌効果を促進及び向上させることができる。
【0095】
本明細書の説明において、用語「一実施例」、「いくつかの実施例」、「具体的な実施例」等の説明は、該実施例または例に関連して説明された具体的な特徴、構造、材料、または特徴が本出願の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上述した用語の概略的な表現は、必ずしも同じ実施例または実例を意味するものではない。さらに、記述された具体的な特徴、構造、材料、または特徴は、任意の1つまたは複数の実施例または例において適切な方法で結合することができる。
【0096】
以上は本出願の好ましい実施例に過ぎず、本出願を限定するものではなく、当業者にとって本出願は種々の変更及び変化が可能である。本出願の精神及び原則の範囲内で行われたいかなる修正、同等の置換、改良等も、本出願の保護範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】