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特表2023-554491風味改変型タンパク質及びそれを含む食製品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】風味改変型タンパク質及びそれを含む食製品
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/415 20060101AFI20231220BHJP
   A23L 27/30 20160101ALI20231220BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20231220BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20231220BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20231220BHJP
   A23G 4/06 20060101ALI20231220BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20231220BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20231220BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20231220BHJP
   A23L 2/64 20060101ALI20231220BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20231220BHJP
   A23L 25/10 20160101ALI20231220BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
C07K14/415 ZNA
A23L27/30 Z
A23L27/00 Z
A23L27/00 E
A23L27/00 D
A23L27/00 101A
A23L27/00 101
A23L27/30 A
A23L27/30 C
A23C9/13
A23L27/60 B
A23G4/06
A23F5/24
A23F3/16
A23L2/60
A23L2/64 101
A23L19/00 Z
A23L25/10
C12N15/29
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537469
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 IB2021062109
(87)【国際公開番号】W WO2022137121
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/128,207
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/174,550
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/223,608
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523226538
【氏名又は名称】アマイ プロテインズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AMAI PROTEINS LTD
【住所又は居所原語表記】2A Haim Holzman St., Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サミシュ イラン
(72)【発明者】
【氏名】カス イタマール
(72)【発明者】
【氏名】ヘクト ダリット
(72)【発明者】
【氏名】マルコ シュムエル
(72)【発明者】
【氏名】ズケール インバル
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B016
4B027
4B036
4B047
4B117
4H045
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC05
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4B001AC43
4B014GB13
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4B014GG08
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4B014GK05
4B014GK07
4B014GL03
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4H045GA23
4H045GA24
(57)【要約】
本発明は、参照MNEIタンパク質からの2つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、置き換え、又はそれらの任意の組み合わせを有するアミノ酸配列を含む改変MNEIタンパク質であって、改変MNEIタンパク質が、参照MNEIタンパク質と比較して少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する、改変MNEIタンパク質、及び食品産業におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変単鎖モネリン(MNEI)タンパク質であって、参照MNEIタンパク質からの2つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、置き換え、又はそれらの任意の組み合わせを有するアミノ酸配列を含み、前記改変MNEIタンパク質が、前記参照MNEIタンパク質と比較して少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する、改変単鎖モネリン(MNEI)タンパク質。
【請求項2】
少なくとも2つ以上のアミノ酸の欠失、置き換え、又はそれらの任意の組み合わせが、前記参照MNEIタンパク質の表面上又は前記参照MNEIタンパク質のコア内に位置する、請求項1に記載の改変MNEIタンパク質。
【請求項3】
少なくとも2つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、置き換え、又はそれらの任意の組み合わせが、46~56残基にわたる前記改変MNEIタンパク質のループ及びベータ鎖エッジ内に位置する、請求項1に記載の改変MNEIタンパク質。
【請求項4】
参照MNEIタンパク質と40%~98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む改変MNEIタンパク質であって、前記改変MNEIタンパク質が、前記参照MNEIタンパク質と比較して少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する、改変MNEIタンパク質。
【請求項5】
ロゼッタエネルギー単位(REU)で表される-182未満のエネルギーを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の改変MNEIタンパク質。
【請求項6】
前記少なくとも1つの食品関連特性が、甘味度、甘味動態、マスキング効果、味覚の増強、及び異味のうちの少なくとも1つである、請求項1~5のいずれか一項に記載の改変MNEIタンパク質。
【請求項7】
前記参照MNEIタンパク質と比較して少なくとも1.5倍増加した甘味度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の改変MNEIタンパク質。
【請求項8】
前記参照MNEIタンパク質と比較して、下記の少なくとも1つの特徴を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の改変MNEIタンパク質。
(1)増加された熱安定性、(2)増加されたpH安定性、(3)増加された溶解性、(4)疎水性領域への減少した結合、(5)高圧安定性、及び(6)増加された貯蔵寿命安定性。
【請求項9】
前記改変MNEIタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はその断片若しくはバリアントを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の改変MNEIタンパク質。
【請求項10】
前記参照MNEIタンパク質が、配列番号45に記載の前記アミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の改変MNEIタンパク質。
【請求項11】
経口送達用製品の調製に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の改変MNEIタンパク質、又は請求項1~10のいずれか一項に記載の2つ以上の改変MNEIタンパク質の任意の組み合わせ。
【請求項12】
前記製品が、食製品、栄養補助食製品、又は薬剤である、請求項11に記載の改変MNEIタンパク質、又はMNEIタンパク質の組み合わせ。
【請求項13】
風味改変剤、風味増強剤、又は風味マスキング剤として使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の改変MNEIタンパク質、又は請求項1~10のいずれか一項に記載の2つ以上の改変MNEIタンパク質の任意の組み合わせ。
【請求項14】
甘味料として使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の改変MNEIタンパク質、又は請求項1~10のいずれか一項に記載の2つ以上の改変MNEIタンパク質の任意の組み合わせ。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の改変MNEIタンパク質、又は請求項1~10のいずれか一項に記載の2つ以上の改変MNEIタンパク質の任意の組み合わせを含む、食製品。
【請求項16】
少なくとも1つの食品成分を含む、請求項15に記載の食製品。
【請求項17】
前記食品成分が、人工風味料、食品添加物、食用染料、防腐剤、又は甘味増強剤のうちの少なくとも1つである、請求項16に記載の食製品。
【請求項18】
前記食品成分が、ステビア、スクロース、アガベネクター、玄米シロップ、ナツメヤシ糖、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、ラカンカ、糖アルコール、希少砂糖、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン、ネオテーム、アドバンテーム、及び食物繊維からなる群から選択される、請求項17に記載の食製品。
【請求項19】
請求項1~10のいずれか一項に記載の改変MNEIタンパク質、又は請求項1~10のいずれか一項に記載の2つ以上の改変MNEIタンパク質の任意の組み合わせを含む、甘味組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の甘味組成物を含む、摂取可能な組成物。
【請求項21】
前記摂取可能な組成物が、低い血糖効果を有し、液体又は固体の食料品の形態にある、請求項20に記載の摂取可能な組成物。
【請求項22】
1つ以上の改変単鎖モネリン(MNEI)タンパク質を含む食品又は飲料配合物であって、前記1つ以上の改変MNEIタンパク質が、100gr又は100ml当たり約0.2mg~約30mgの範囲にある、食品又は飲料配合物。
【請求項23】
前記配合物が、約2~約8.5の範囲のpHを有する、請求項22に記載の食品又は飲料配合物。
【請求項24】
前記改変MNEIタンパク質が、配列番号45に記載の前記配列を含む参照MNEIタンパク質と40%~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の食品又は飲料配合物。
【請求項25】
前記改変MNEIタンパク質が、配列番号1~27からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はその断片若しくはバリアントを含む、請求項22に記載の食品又は飲料配合物。
【請求項26】
ヒト対象による消費のために配合された食品又は飲料組成物であって、前記組成物が、請求項22~25のいずれか一項に記載の配合物を含む、食品又は飲料組成物。
【請求項27】
前記飲料が、炭酸清涼ドリンク、非炭酸清涼ドリンク、ファウンテン飲料、冷凍レディ・トゥ・ドリンク飲料、コーヒー飲料、茶飲料、乳飲料、果実飲料、風味付き水、増強水、スポーツドリンク、エネルギードリンク、アイソトニックドリンク、低カロリードリンク、及びアルコール飲料からなる群から選択される、請求項26に記載の飲料組成物。
【請求項28】
前記食品が、ベーカリー製品、クッキー、ビスケット、ベーキングミックス、シリアル、菓子類、キャンディー、トフィー、チューインガム、風船ガム、乳製品、ヨーグルト、風味付きヨーグルト、ピーナッツバター、醤油及び他のダイズベースの製品、非乳製品、サラダドレッシング、ケチャップ、マヨネーズ、酢、冷凍デザート、肉製品、魚肉製品、瓶入り及び缶詰食品、卓上甘味料、チョコレート、果実、乾燥果実、並びに野菜からなる群から選択される、請求項26に記載の食品組成物。
【請求項29】
前記組成物が、参照MNEIタンパク質を有する食品又は飲料組成物と比較して、少なくとも1つの改善された食品又は飲料関連特性を有する、請求項26に記載の食品又は飲料組成物。
【請求項30】
前記少なくとも1つの改善された食品又は飲料関連特性が、より良好な甘味プロファイル、短縮された甘い残味、より良好な甘味度、より良好な甘味動態、増加された熱安定性、高圧安定性、増加されたpH安定性、疎水性領域への減少した結合、改善された凍結解凍安定性、乾燥後の改善された再構成性、増加された溶解性、砂糖のものにより近い感覚プロファイル、及び増加された貯蔵寿命安定性からなる群から選択される、請求項29に記載の食品又は飲料組成物。
【請求項31】
少なくとも1つの追加の食品成分を含む、請求項26に記載の食品又は飲料組成物。
【請求項32】
前記食品成分が、風味料、食品添加物、食用染料、防腐剤、及び甘味増強剤からなる群から選択される、請求項31に記載の食品又は飲料組成物。
【請求項33】
前記食品成分が、ステビア、スクロース、アガベネクター、玄米シロップ、ナツメヤシ糖、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、ステビオールグリコシド、ラカンカ、糖アルコール、希少砂糖、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン、ネオテーム、アドバンテーム、及び食物繊維からなる群から選択される、請求項31に記載の食品又は飲料組成物。
【請求項34】
前記食品又は飲料組成物が、低血糖効果を有する、請求項26に記載の食品又は飲料組成物。
【請求項35】
前記炭酸清涼ドリンクが、コーラ、レモンライム風味のスパークライン飲料、オレンジ風味の発泡性飲料、グレープフルーツ風味の発泡性飲料、ブドウ風味の発泡性飲料、ラズベリー風味の発泡性飲料、イチゴ風味の発泡性飲料、パイナップル風味の発泡性飲料、ジンジャーエール、ルートビア、及び麦芽飲料からなる群から選択される、請求項27に記載の飲料組成物。
【請求項36】
前記非炭酸清涼ドリンクが、果実ジュース、果実風味ジュース、ジュースドリンク、ネクター、野菜ジュース、野菜風味ジュース、スポーツドリンク、エネルギードリンク、タンパク質ドリンク、ビタミン入り増強水、ニアウォータードリンク、ココナッツウォーター、茶、コーヒー、カカオドリンク、ミルク構成成分含有飲料、穀類抽出物含有飲料、及びスムージーからなる群から選択される、請求項27に記載の飲料組成物。
【請求項37】
請求項22に記載の配合物を含む、添加糖が少ないか、又は無糖の清涼飲料製品。
【請求項38】
請求項22に記載の配合物を含む、添加糖が少ないか、又は無糖の乳製品。
【請求項39】
請求項22に記載の配合物を含む、添加糖が少ないか、又は無糖のソース製品。
【請求項40】
請求項22に記載の配合物を含む、添加糖が少ないか、又は無糖の乾燥果実。
【請求項41】
請求項22に記載の配合物を含む、添加糖が少ない又は無糖のガム製品。
【請求項42】
請求項22に記載の配合物を含む、添加糖が少ない又は無糖のスプレッド製品。
【請求項43】
請求項22に記載の配合物を含む、添加糖が少ない又は無糖のシロップ製品。
【請求項44】
前記アミノ酸の欠失、置換、置き換え、グラフト化、又はそれらの任意の組み合わせが、前記改変タンパク質のループ領域の安定化を、(i)少なくとも1つの水素結合を添加すること、(ii)前記ループ領域を保持するベータ鎖を延長させること、(iii)前記ループ領域における相対的なデバイ-ウォーラー因子を減少させること、又は(iv)それらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つによって達成することができる、請求項1に記載の改変単鎖モネリン(MNEI)タンパク質。
【請求項45】
前記安定化が、(i)凝集の減少、(ii)溶融温度の上昇、(iii)貯蔵寿命安定性の増加、又は(iv)それらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを行うことができる、請求項44に記載の改変単鎖モネリン(MNEI)タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味改変型タンパク質、並びにそれを含む配合物及び食製品に関する。風味改変型タンパク質は、動物飼料及びヒト消費のための様々な配合物中に提供され得る。
【背景技術】
【0002】
砂糖の代替物は、代謝異常症候群の根底にある原因としての砂糖の過剰摂取の結果として、疾患認識の増加に起因してますます注目されている。代謝異常症候群の既知の症状発現は、糖尿病、肥満、虫歯、いくつかのタイプのがん、及び多くの追加の病気である。飲食業界は、消費者及び公的政策当局の要求を満たすために、より健康的で低減したカロリーの食品を生成することに挑戦している。この一部として、多数の国が、砂糖税及び警告ラベルを適用している。
【0003】
食品産業は、製品の成功に必要な味覚を提供しながら、消費者の動向に適合するより自然でより良好な食品及び飲料にするという課題に直面している。低カロリー甘味料成分は、食物中のカロリー及び砂糖レベルを低減しようとする消費者の選択肢を広げているが、これらの成分は、味覚、安定性、及び汎用性によって限定されている。
【0004】
世界市場での競争に成功するために、最適な感覚特性及び良好な安定性を有する食製品及び飲料製品のための健康的な甘味代替物に対する緊急の世界的ニーズが存在する。人工の高強度甘味料(high-intensity sweetener、HIS)、例えば、サッカリン、アスパルテーム、シクラメート、並びにアセスルファムK、スクラロース、ネオテーム、及びアドバンテームは、糖尿病、高脂血症、代謝異常症候群などの砂糖関連疾患に罹患している患者のための低カロリー甘味料として世界中で使用されている。HISは、様々な副作用を有し、例えば、これらのゼロカロリー甘味料は、砂糖よりも程度が低いとしても、ミクロビオームと相互作用し、肥満及び前糖尿病状態を引き起こすことが報告されている(Suez et al.,2014,Nature volume 514,pages 181-186)。アメリカ心臓協会(The American Heart Association)は、「有害な健康への影響に関する証拠不足(”a dearth of evidence for adverse health effects”)」と主張する、HISに対する助言を公開した(Johnson et al.,2018,Circulation,Vol.138,No.9)。この助言では、天然(ステビオールグリコシド及びラカンカ)及び人工の全てのHISを同じ精査下に置いた。更に、低強度甘味料(low-intensity sweetener、LIS)、すなわち希少糖及びポリオール(例えば、キシリトール、マンニトール、アルロースなど)は、高コストを伴い、人体によって完全に消化されず、膨満、下痢、及び他の有害な胃腸作用を回避するためにそれらの使用が限定される。したがって、現在、著しい(30%超)砂糖の低減を可能にし、味覚、健康、コスト、及び製品適合性に完全に対処する良好な砂糖の代替物は存在しない。
【0005】
甘味タンパク質(sweet protein、SP)は、スクロースとは異なり、タンパク質がインスリン応答を誘導しないため、グリセミック指数を有しない天然の美味な低カロリー甘味料を提供することによってHISを置き換える可能性を有する(Weihrauch 2001及びCohen 2001)。SPは、南国の果実に見られ、砂糖よりも700~3,000倍甘い。これらの健康甘味料は、砂糖と同様に甘味受容体に結合するが、タンパク質として消化される。それらは、グリセミック指数がゼロであり、約0カロリーを有し、健康又はミクロビオームに悪影響を及ぼさないと予想される。タウマチンは、現在、市場において世界的に承認されている唯一の甘味タンパク質である。価格の高さ、限定された供給、及び最適以下の感覚プロファイルに起因して、SPは、一般に、著しい(30%超)砂糖低減解決策として使用されない。タウマチン以外に、SPは、費用、限定された供給、低い安定性、特に脂肪環境における短い貯蔵寿命、及び残味に起因して、大量食品市場に参入していない。したがって、前述の問題のうちの1つ以上を克服するための組成物及び配合物を開発する必要がある。
【0006】
英国特許第2123672号は、タウマチン及びモネリンなどの甘味タンパク質、並びに任意選択で食用酸又は増量剤とともに、様々な飲料、マウスウォッシュ中に、又は医薬ベースとして組み込まれる弱酸性多糖ガムを記載している。
【0007】
国際公開第8402450号は、タウマチン又はモネリンの、ガムベース、甘味料、及び風味料を含むチューインガム組成物の表面への適用を記載している。
【0008】
国際公開第2019/215730号は、改善された食品関連特性を有する改変タンパク質を開示している。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの態様によれば、本開示は、単鎖モネリン(Monellin、MNEI)タンパク質の改変バージョンを提供し、これは、MNEI参照タンパク質からの2つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、置き換え、又はそれらの任意の組み合わせを有するアミノ酸配列を含み、改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質と比較して少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する。
【0010】
いくつかの他の態様によれば、本開示は、改変MNEIタンパク質を含む食製品を提供し、これは、MNEI参照タンパク質からの2つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、置き換え、又はそれらの任意の組み合わせを有するアミノ酸配列を含み、改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質と比較して少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する。いくつかの実施形態によれば、改変タンパク質は、参照MNEIタンパク質からの少なくとも3つのアミノ酸の欠失、挿入、置き換え、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、2つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、置き換え、又はそれらの任意の組み合わせは、参照MNEIタンパク質の表面又は参照MNEIタンパク質のコアに位置する。いくつかの実施形態によれば、2つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、置き換え、又はそれらの任意の組み合わせは、改変MNEIループ(「リンカー領域」とも呼ばれる)及びベータ-鎖エッジ内に位置する。いくつかの実施形態によれば、2つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、置き換え、又はそれらの任意の組み合わせは、46~56残基にわたる改変MNEIループ及びベータ-鎖エッジ内に位置する。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、(i)少なくとも1つの水素結合を添加すること、(ii)ループ領域を保持するベータ鎖を延長させること、(iii)ループ領域における相対的なデバイ-ウォーラー因子を減少させること、又は(iv)それらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つによってループ領域を安定化させる、該アミノ酸の欠失、置換、置き換え、グラフト化、又はそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態によれば、該安定化は、(i)凝集の減少、(ii)溶融温度の増加、(iii)貯蔵寿命安定性の増加、又は(iv)それらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つに関連する。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、改変MNEIタンパク質は、ロゼッタエネルギー単位(Rosetta Energy Unit、REU)で表される-182未満のエネルギーを有する。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの食品関連特性は、甘味度、甘味動態、マスキング効果、味覚の増強、異味、又はそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態によれば、改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質と比較して少なくとも1.5倍増加した甘味度を有する。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質と比較して、(1)増加された熱安定性、(2)増加されたpH安定性、(3)増加された溶解性、(4)疎水性領域への減少した結合、(5)高圧安定性、(6)増加された貯蔵寿命安定性、及びそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、改変MNEIタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はその断片若しくはバリアントを含む。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、参照MNEIタンパク質は、配列番号45に記載の配列を有する。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、改変MNEIタンパク質又はその任意の組み合わせは、経口送達用製品の調製において使用される。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、製品は、食製品、栄養補助食製品、又は薬剤である。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、改変MNEIタンパク質又はその任意の組み合わせは、風味改変剤又は風味増強剤として使用される。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、改変MNEIタンパク質は、甘味料として使用される。
【0022】
いくつかの態様によれば、本開示は、本発明の改変タンパク質を含む食製品を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、食製品は、少なくとも1つの食品成分を含む。いくつかの実施形態によれば、食品成分は、人工風味料、食品添加物、食用染料、防腐剤、又は砂糖添加物のうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態によれば、食品成分は、ステビア、スクロース、アガベネクター、玄米シロップ、ナツメヤシ糖、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、ラカンカ、糖アルコール、希少砂糖、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン、ネオテーム、アドバンテーム、及び食物繊維からなる群から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、該ステビアは、レバウジオシド又はステビオールグリコシドである。いくつかの実施形態によれば、該レバウジオシドは、RebMである。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、RebMと本発明の改変MNEIタンパク質との間に相乗作用が存在する。
【0026】
いくつかの態様によれば、本開示は、本発明の改変MNEIタンパク質を含む甘味組成物を提供する。いくつかの実施形態によれば、本開示は、該甘味組成物を含む摂取可能な組成物を提供する。いくつかの実施形態によれば、摂取可能な組成物は、低い血糖効果を有し、液体又は固体食料品の形態にある。
【0027】
本発明は、いくつかの態様によれば、改善された食品又は飲料関連特性を有する特定の食品及び飲料配合物を提供する。
【0028】
いくつかの態様によれば、本開示は、100gr又は100ml当たり約0.2mg~約30mgの範囲の1つ以上の改変単鎖モネリン(MNEI)タンパク質を含む食品又は飲料配合物を提供する。いくつかの実施形態によれば、範囲は、100gr又は100ml当たり約0.4mg~約10mgである。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、該配合物は、約2~約8.5の範囲のpHを有する。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、該改変MNEIタンパク質は、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む参照MNEIタンパク質と40%~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、改変MNEIは、配列番号1~27からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はその断片若しくはバリアントを含む。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、改変MNEIタンパク質は、消化可能なタンパク質である。
【0033】
いくつかの態様によれば、本発明は、ヒト対象による消費のために配合された食品又は飲料組成物を提供し、本組成物は、該配合物を含む。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、飲料組成物は、炭酸清涼ドリンク、非炭酸清涼ドリンク、ファウンテン飲料、冷凍レディ・トゥ・ドリンク飲料、コーヒー飲料、茶飲料、乳飲料、果実飲料、風味付き水、増強水、スポーツドリンク、エネルギードリンク、アイソトニックドリンク、低カロリードリンク、及びアルコール飲料からなる群から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、食品組成物は、焼成品、クッキー、ビスケット、ベーキングミックス、シリアル、菓子類、キャンディー、トフィー、チューインガム、乳製品、ヨーグルト、風味付きヨーグルト、醤油及び他のダイズベースの製品、非乳製品、サラダドレッシング、ケチャップ、マヨネーズ、酢、冷凍デザート、肉製品、魚製品、瓶入り及び缶詰食品、卓上甘味料、チョコレート、果実、乾燥果実、並びに野菜からなる群から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、該組成物は、参照MNEIタンパク質を有する食品又は飲料組成物と比較して、少なくとも1つの改善された食品又は飲料関連特性を有する。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの改善された食品又は飲料関連特性は、改善された甘味プロファイル、短縮された甘い残味、改善された甘味度、改善された甘味動態、増加された熱安定性、高圧安定性、増加されたpH安定性、疎水性領域への減少した結合、改善された凍結解凍安定性、乾燥後の改善された再構成性、増加された溶解性、砂糖のものにより近い感覚プロファイル、及び増加された貯蔵寿命安定性からなる群から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの追加の食品成分を含む食品又は飲料組成物。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、食品成分は、風味料、食品添加物、食用染料、防腐剤、又は甘味増強剤のうちの少なくとも1つである。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、食品成分は、ステビア、スクロース、アガベネクター(agave nectar)、玄米シロップ、ナツメヤシ糖、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、ステビオールグリコシド、ラカンカ、糖アルコール、希少砂糖、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン、ネオテーム、アドバンテーム、及び食物繊維からなる群から選択される。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、希少砂糖は、アルロース又はタガトースである。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、食品又は飲料組成物は、低い血糖効果を有する。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、炭酸清涼ドリンクは、コーラ、レモンライム風味の発泡性飲料、オレンジ風味の発泡性飲料、グレープフルーツ風味の発泡性飲料、ブドウ風味の発泡性飲料、ラズベリー風味の発泡性飲料、イチゴ風味の発泡性飲料、パイナップル風味の発泡性飲料、ジンジャーエール、ルートビア、及び麦芽飲料からなる群から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、非炭酸清涼ドリンクは、果実ジュース、果実風味ジュース、ジュースドリンク、ネクター、野菜ジュース、野菜風味ジュース、スポーツドリンク、エネルギードリンク、タンパク質ドリンク、ビタミン入り増強水、ニアウォータードリンク、ココナッツウォーター、茶、コーヒー、カカオドリンク、ミルク構成成分含有飲料、穀類抽出物含有飲料、及びスムージーからなる群から選択される。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、配合物は、経口送達用製品を調製するのに使用される。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、製品は、食製品若しくは飲料製品、栄養補助食物製品、又は薬剤である。
【0047】
いくつかの態様によれば、本開示は、本発明の配合物を含む食製品又は飲料製品を提供する。
【0048】
いくつかの態様によれば、本開示は、該配合物を含む添加糖が少ないか、又は無糖の清涼飲料製品を提供する。
【0049】
いくつかの態様によれば、本開示は、該配合物を含む添加糖が少ないか、又は無糖の乳製品を提供する。いくつかの実施形態によれば、該乳製品は、ヨーグルト又はマラビ(malabi)である。
【0050】
いくつかの態様によれば、本開示は、該配合物を含む添加糖が少ないか、又は無糖のソース製品を提供する。いくつかの実施形態によれば、該ソースは、ケチャップである。
【0051】
いくつかの態様によれば、本開示は、該配合物を含む添加糖が少ないか、又は無糖の乾燥果実を提供する。いくつかの実施形態によれば、該乾燥果実は、クランベリー、レーズン、ブルーベリー、プルーン、サクランボ、リンゴ、パイナップル、スイカ、カンタロープ、イチジク、バナナ、ナツメヤシ、スグリ、及びアプリコットからなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、該乾燥果実は、フルーツレザー(fruit leather)である。
【0052】
いくつかの態様によれば、本開示は、該配合物を含む添加糖が少ないか、又は無糖のガム製品を提供する。いくつかの実施形態によれば、該ガム製品は、チューインガム又は風船ガム製品である。
【0053】
いくつかの態様によれば、本開示は、該配合物を含む添加糖が少ないか、又は無糖のスプレッド製品を提供する。いくつかの実施形態によれば、該スプレッド製品は、ピーナッツバターである。
【0054】
いくつかの態様によれば、本開示は、該配合物を含む添加糖が少ないか、又は無糖のシロップ製品を提供する。
【0055】
本明細書に開示されている主題をより良く理解し、実際にそれがどのように実行され得るかを例証するために、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ、ここで実施形態を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】MNEIの相対甘味を示すヒストグラムであり、MNEI改変タンパク質の甘味を、DM09に対して、水中で希釈した1:4000の効力に基づいて6°Bxで評価した。
図2A】MNEI(図2A)、DM13(図2B)、DM28(図2C)、及びDM31(図2D)の甘味強度の用量応答を示すグラフである。
図2B】MNEI(図2A)、DM13(図2B)、DM28(図2C)、及びDM31(図2D)の甘味強度の用量応答を示すグラフである。
図2C】MNEI(図2A)、DM13(図2B)、DM28(図2C)、及びDM31(図2D)の甘味強度の用量応答を示すグラフである。
図2D】MNEI(図2A)、DM13(図2B)、DM28(図2C)、及びDM31(図2D)の甘味強度の用量応答を示すグラフである。
図3】90℃に最大10分加熱した後の、クエン酸緩衝液中のDM13の安定性を示すヒストグラムである。Y軸は、甘味強度である。
図4】95℃に30秒間加熱した後のクエン酸緩衝液中のDM13の安定性を示すヒストグラムである。Y軸は、甘味強度である。
図5A】21℃及び32℃で8週間保存した後のDM13の安定性を示すヒストグラムである。Y軸は、甘味強度である。
図5B】21℃及び32℃で8週間保存した後のDM13の安定性を示すヒストグラムである。Y軸は、甘味強度である。
図6】添加された砂糖が69%低減した対照ケチャッププロトタイプ及びDM09を有する例示的なケチャップの特性を示すスパイダーグラフであり、結果は、対照ケチャップが、DM09を有するケチャップと比較して、より甘くなく、より酸味があり、より塩味があり、かつ舌により強い刺痛をもたらすことを示す。
図7】添加された砂糖が69%低減したケチャッププロトタイプが、全糖ケチャップと比較して、より甘くなく、より酸味があり、かつより明るい色を有することを示すスパイダーグラフである。
図8】DM09を有するケチャッププロトタイプ(添加された砂糖が69%低減されたもの)が、全糖ケチャップに非常に類似した感覚プロファイルを有することを示すスパイダーグラフである。
図9】DM28を有するケチャップが、DM09を有するケチャップと比較して類似した感覚プロファイルを有することを示すスパイダーグラフである。
図10】1ヶ月の貯蔵寿命後に、DM09を有するケチャップが、その甘味を失わないことを示すスパイダーグラフである。製品に生じる変化は、1ヶ月の貯蔵寿命後のケチャップに典型的なものである(より暗い色、より調味された、より酸味のある、より濃厚な、より滑らかでない質感)。
図11】添加された砂糖が33%低減したプレーンヨーグルトが、DM09を有し、かつ添加された砂糖が33%低減したプレーンヨーグルトより甘くないことを示すスパイダーグラフである。
図12】DM09を有するプレーンヨーグルト(添加された砂糖が33%低減した)が、全糖ヨーグルトに類似した感覚プロファイルを有することを示すスパイダーグラフである。
図13】DM28を有するイチゴヨーグルトが、DM09を有するイチゴヨーグルトに類似した感覚プロファイルを有することを示すスパイダーグラフである。
図14】2週間の貯蔵寿命後に、DM09を有するプレーンヨーグルトが、DM09を有する新鮮なプレーンヨーグルトに類似した感覚プロファイルを有することを示すスパイダーグラフである。
図15】ステビア及びDM09を有する水溶液が、同じ甘味レベル当量で、ステビアを単独で有する水溶液より甘いことを示すスパイダーグラフである。
図16】ラカンカ、ステビア、及びDM09の組み合わせを有する水溶液が、同じ甘味レベル当量で、ラカンカ及びステビアのみを有する水溶液と比較して、より甘く、より短い「遅発性」であることを示すスパイダーグラフである。
図17】レモン風味ドリンク(ステビアを有する50%の砂糖低減、5°Bx当量)が、ステビア及びDM09(各々2.5°Bx当量)に非常に類似した感覚プロファイルを有することを示すスパイダーグラフである。
図18】DM031を有するケチャップ(添加された砂糖が69%低減した)が、DM09を有するケチャップに非常に類似した感覚プロファイルを有することを示すスパイダーグラフである。
図19】DM31を有するイチゴヨーグルトが、DM09を有するイチゴヨーグルトに類似した感覚プロファイルを有することを示すスパイダーグラフである。
図20】DM09を有するチューインガムが、30秒間の咀嚼後にDM09を有しないチューインガムより甘いことを示すスパイダーグラフである。
図21】DM09及び50%の砂糖低減を有するピーナッツバターが、全糖ピーナッツバターに類似した感覚プロファイルを有することを示すスパイダーグラフである。
図22】DM09(70%の砂糖低減)を有するアイスコーヒーが、DM09(70%の砂糖低減)を有しないアイスコーヒーより甘いことを示すスパイダーグラフである。
図23】クランベリージュース(40%の砂糖低減、ステビア、及びDM09)が、全糖クランベリージュースに類似した感覚プロファイルを有することを示すスパイダーグラフである。
図24】DM28を有するクランベリージュースが、DM09を有するクランベリージュースより甘いことを示すスパイダーグラフである。
図25】40%の砂糖低減、ステビア、及びDM31を有するクランベリージュースが、40%の砂糖低減、ステビア、及びDM09を有するクランベリージュースに類似した感覚プロファイルを有することを示すスパイダーグラフである)。
図26】乾燥クランベリー(50%の砂糖低減及びDM09)が、DM09を有しない乾燥クランベリー(50%の砂糖低減)より甘いことを示すスパイダーグラフである。
図27】DM09を有するモモレザーが、DM09を有しないモモレザーより甘いことを示すスパイダーグラフである。
図28】40%の添加砂糖低減+DM09及びステビアを有するアイス緑茶が、DM09及びステビアを有しない40%の添加砂糖低減を有するアイス緑茶と比較してより甘いことを示すスパイダーグラフである。
図29】50%の添加砂糖低減+DM31を有するマラビが、DM31を有しない50%の添加砂糖低減を有するマラビと比較してより甘いことを示すスパイダーグラフである。
図30A】DM31においてなされた変化を強調する結晶構造画像である。図30Aは、DM31の結晶構造(黒色)とMNEI(PDB ID:2o9u)の結晶構造(白色)との整列を示す。図30Aのより小さいパネルは、DM31における選択されたアミノ酸変化、並びに再設計されたループを拡大したものである。再設計されたループは、増加された安定性、並びに新しい水素結合及び近くの2つの伸長されたベータ-鎖をもたらした(図30A、右下パネル)。図30Bは、DM31の同じループ領域と公開データベースで利用可能な追加のMNEI構造との重ね合わせを示す。DM31は、黒色でマークされている。
図30B】DM31においてなされた変化を強調する結晶構造画像である。図30Aは、DM31の結晶構造(黒色)とMNEI(PDB ID:2o9u)の結晶構造(白色)との整列を示す。図30Aのより小さいパネルは、DM31における選択されたアミノ酸変化、並びに再設計されたループを拡大したものである。再設計されたループは、増加された安定性、並びに新しい水素結合及び近くの2つの伸長されたベータ-鎖をもたらした(図30A、右下パネル)。図30Bは、DM31の同じループ領域と公開データベースで利用可能な追加のMNEI構造との重ね合わせを示す。DM31は、黒色でマークされている。
図31A】いくつかのMNEI構造(2o9u、liv7、5zlp)、DM09、及びDM31についての正規化されたB因子を示すヒストグラムである。最初に、骨格B因子を、Z-スコア正規化を使用して各構造について別々に正規化した。B因子は、異なる二次構造エレメント(図31A)、並びに再設計されたループ領域の一部である特定の残基(MNEIの配列に従って番号付けされたE48~E54)(図31B)についての平均として示される。
図31B】いくつかのMNEI構造(2o9u、liv7、5zlp)、DM09、及びDM31についての正規化されたB因子を示すヒストグラムである。最初に、骨格B因子を、Z-スコア正規化を使用して各構造について別々に正規化した。B因子は、異なる二次構造エレメント(図31A)、並びに再設計されたループ領域の一部である特定の残基(MNEIの配列に従って番号付けされたE48~E54)(図31B)についての平均として示される。
図32】MNEI(A)、DM09(B)、及びDM31(C)の結晶構造における安定化水素結合を示す。再設計されたループ領域は、黒枠で強調されている。
図33A】ベータ-ターンの従来の定義(図33B)と比較した、DM31上の結晶構造におけるループ領域(図33A)を示す。DM31のループ構造(図33A)は、図33Bに示される概略定義と一致する。
図33B】ベータ-ターンの従来の定義(図33B)と比較した、DM31上の結晶構造におけるループ領域(図33A)を示す。DM31のループ構造(図33A)は、図33Bに示される概略定義と一致する。
図34A】16%SDS PAGEトリシンタンパク質ゲルの画像であり、消化前(TO)、口腔相の終わり(3分、M)、胃腸消化相の終わり(2時間、G)、及び十二指腸相の終わり(2時間、D)において1ugのインビトロで消化された試料がクーマシーブルーで染色されており、図34Bは、図34Aと関連する詳細な陽性対照M、G、及びDとして使用されるα-ラクトアルブミンの画像を示す。
図34B】16%SDS PAGEトリシンタンパク質ゲルの画像であり、消化前(TO)、口腔相の終わり(3分、M)、胃腸消化相の終わり(2時間、G)、及び十二指腸相の終わり(2時間、D)において1ugのインビトロで消化された試料がクーマシーブルーで染色されており、図34Bは、図34Aと関連する詳細な陽性対照M、G、及びDとして使用されるα-ラクトアルブミンの画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
人工低カロリー甘味料は、市場で容易に利用可能であるが、多くは、重大な副作用を有する。例えば、カロリー又は炭水化物を添加せずに食品及び飲料を甘くするために広く使用されているサッカリンは、膀胱がんなどのがんに関連付けられている。したがって、最適な感覚プロファイルを提供し、かつ食製品及び飲料における使用に好適である、現在利用可能な人工低カロリー甘味料の置き換え品に対して著しいニーズが存在する。
【0058】
本開示は、MNEIベースの甘味タンパク質及びMNEI味覚改変型タンパク質に関し、既知の甘味料に対して改善された特性を示すタンパク質の特定に基づく。そのようなタンパク質は、最適化方法、例えば、様々なコンピューター方法によって特定された。
【0059】
驚くべきことに、本発明者らは、MNEI(本明細書では「参照タンパク質」と示される)のアミノ酸配列に様々な特定の欠失又は置換を導入することによって、参照MNEIタンパク質と比較して少なくとも1つの改善された特性を有するタンパク質がもたらされることを見出した。タンパク質の少なくとも1つの改善された特性は、食品及び飲料用途における改変MNEIタンパク質の適合性及び使用において重要であり得ることが示唆された。
【0060】
具体的には、以下の実施例に示されるように、タンパク質(本明細書では「改変タンパク質」又は「デザイナータンパク質」と示される)は、それらの参照タンパク質と比較して改善された感覚プロファイル及び/又は安定性を示した。感覚プロファイルは、本明細書に記載されるように、味覚プロファイル(例えば、甘味度、後味、及び残味)に関する。
【0061】
したがって、本開示は、その最も広い態様において、参照MNEIタンパク質の配列と比較して少なくとも2つのアミノ酸の欠失、置き換え(置換)、及び/又は挿入を有するアミノ酸配列を含む改変MNEIタンパク質に関し、改変タンパク質は、参照MNEIタンパク質と比較して少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する。
【0062】
少なくとも1つの改善された食品関連特性は、食品及び飲料用途における改変タンパク質の適合性を増加させる特性、例えば、風味、質感、味覚、甘味閾値、甘味レベル、甘味プロファイル、感覚プロファイル、甘味動態、安定性(構造的及び機能的)、耐熱性、食品マトリックスへの適合性、貯蔵寿命、他の風味のマスキング及び/若しくは増強、異味、味覚開始、残味、味覚のまろやかさ、又は砂糖の様な味覚を包含する。
【0063】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの食品関連特性は、感覚に影響を及ぼす特性である。本明細書で使用される場合、「適切に感覚に影響を及ぼす」という用語は、例えば、味覚によって決定される感覚的印象の変化を指す。感覚に影響を及ぼす特性としては、例えば、甘味度(砂糖の様な風味)、甘味動態(開始時間、残存する時間、味覚持続時間)、異味の欠如(例えば、金属味覚)、及び他の味覚のマスキング又は増強などの甘味プロファイルが挙げられる。例えば、改善された特性は、増加した甘味、低減した開始時間、又は低減した残味に関する。
【0064】
少なくとも1つの特性が感覚に影響を及ぼす特性であるいくつかの実施形態によれば、改変タンパク質は、砂糖代替物とみなすことができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの食品関連特性は、甘味度、低減した開始時間、又は低減した残味のうちの少なくとも1つである。
【0065】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの食品関連特性は、安定性である。いくつかの実施形態において、安定性は、熱安定性、より長い貯蔵寿命、低pHに対する安定性、塩濃度安定性、イオン強度安定性、又は脂肪含有若しくはタンパク質含有マトリックスにおける安定性のうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの食品関連特性は、熱安定性である。
【0066】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの食品関連特性は、増加された貯蔵寿命安定性である。例えば、改変タンパク質は、少なくとも1週間、2週間、1ヶ月、更には1年にわたって安定であり得る。
【0067】
貯蔵寿命安定性は、示差走査熱量測定、示差走査蛍光定量法、円二色性、及び感覚分析によってテイスティングされる。いくつかの実施形態において、食品の味覚は維持され、タンパク質は無傷である。
【0068】
上記で詳述したように、改変MNEIタンパク質は、少なくとも1つの追加の食品成分と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの食品関連特性は、改変MNEIタンパク質と少なくとも1つの食品成分との間の相乗効果を指し得る。いくつかの実施形態によれば、該相乗効果は、味覚増強、味覚遮断、又は味覚改変に影響を及ぼし得る。食品成分の非限定的な例としては、人工若しくは天然の風味料、食品添加物、食用染料、防腐剤、増量剤、又は追加の砂糖添加物が挙げられる。食品成分は、味覚のマスキング又は増強効果を有し得る。
【0069】
本明細書に記載されるように、参照タンパク質は、味覚改変型タンパク質及び/又は味覚増強タンパク質及び/又は味覚タンパク質、具体的には甘味タンパク質である。味覚改変型タンパク質は、感覚プロファイルを改善し、例えば、非甘味物質、例えば、水及び酸味物質に甘味を添加し得る。本明細書で使用される場合、呈味タンパク質は、味覚受容体に結合し、味覚を誘発することが知られている。本明細書で使用される場合、甘味タンパク質は、甘味受容体に結合し、甘味の感覚を誘発することが知られている。甘味受容体の非限定的な例としては、1型メンバー1(TAS1R1、ヒト遺伝子のUniprot ID:TS1R1 HUMAN)、味覚受容体1型メンバー2(TAS1R2、T1R2、TR2、UniProt-Q8TE23)、味覚受容体1型メンバー3(TAS1R3、T1R3、UniProt-Q7RTX0)などの2つのサブユニットからなる味覚受容体ヘテロ二量体が挙げられる。
【0070】
いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、天然に存在するタンパク質である。いくつかの他の実施形態において、参照タンパク質は、熱帯植物などの植物に見られる。植物の非限定的な例としては、マビンロウ、オウブリ(oubli)、セレンディピティベリー(serendipity berry)、カテムフェ(katemfe)、ミラクルフルーツベリー、又はレンバ(lemba)のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、モネリンである。
【0072】
いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、A鎖(GenBank登録番号P02881)及びB鎖(GenBank登録番号P02882)からなるモネリンである。
【0073】
いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、MNEIである。
【0074】
野生型モネリンとMNEIとの主な違いは、Gly-Pheジペプチドを使用して、2つのサブユニットをMNEIと呼ばれる単鎖モネリンに接続した領域である。
【0075】
いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、天然に見られない配列であり、したがって、合成タンパク質、又は操作されたタンパク質若しくはデザイナータンパク質と呼ばれる。合成タンパク質は、天然に存在するタンパク質のアミノ酸配列の全体若しくは一部(タンパク質のポリペプチド鎖の全て又は一部)、又はその一部を含み得る。例えば、参照タンパク質は、野生型タンパク質の少なくとも2つのポリペプチド鎖が他のアミノ酸によって共有結合されるように、天然に存在するタンパク質に対応する単一のポリペプチド鎖をもたらす、天然に存在するタンパク質の結合改変を含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、MNEIとして既知の改変モネリンタンパク質である。
【0077】
いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、単鎖モネリン(MNEI)タンパク質(配列番号45)である。本明細書で言及されるMNEIアミノ酸番号は、Protein Databank(Protein Databank、PDB)ID2o9uに従う。
【0078】
本明細書に記載の改変タンパク質は、様々な方法によって設計され得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、タンパク質設計は、以下に更に記載されるように、コンピューターツールを使用して、又は専門的なタンパク質設計及び構造生物学方法、例えば、部位指向的変異誘発、タンパク質操作、若しくは指向進化によって行われる。本発明者らは、参照風味タンパク質、並びに配列及び/又は構造的特徴において参照風味タンパク質に対して局所的又は全体的な類似性を有する他のタンパク質の配列データ、構造データ、及び/又は進化データに基づくコンピューター方法論を開発した。本明細書において開発され、適用されるコンピューター方法は、本発明者らが、エネルギー的に有利であり、したがって、熱安定性、ハロ安定性(halostability)、pH安定性、貯蔵寿命、折り畳み、及び溶解性の特徴などの改善された形質を有すると予測される特定のアミノ酸置換を有するタンパク質を設計することを可能にした。具体的には、コンピュータータンパク質設計(Computational Protein Design、CPD)を、受容体への機能的結合に必要でない参照タンパク質構造及び/又は配列内の特定の部位又は領域に適用した。更に、CPDは、本発明者らが、必要とされる改善された特徴に適合するアミノ酸の所定のセットへの置換を限定することを可能にした。アミノ酸の所定のセットは、入力データ、すなわち、CPDに供されるタンパク質の領域、並びに出力データ、すなわち、得られる改変タンパク質中に存在するアミノ酸の位置及び型の両方にある。
【0080】
例えば、CPDを使用することによって、「非理想的」アミノ酸(例えば、疎水性コア内の親水性アミノ酸又は外部表面領域上の疎水性アミノ酸)を「理想的」アミノ酸(例えば、外部表面領域中の親水性アミノ酸及び疎水性コア内の疎水性アミノ酸)で置き換えることが可能である。
【0081】
理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、疎水性アミノ酸を外部表面領域上の親水性アミノ酸で置換することが、口腔への非特異的結合を低減し、残存する後味を低減することを示唆する。
【0082】
本明細書で開発された方法論は、「安定化置換」、例えば、タンパク質構造の全体的なエネルギーを減少させるアミノ酸置換を検索することを含む。全体的なエネルギーは、当技術分野で既知のアルゴリズムを適用することによって計算され得る。そのようなアルゴリズムの非限定的な例としては、Rosetta、OSPREY(M.Hallen,J.Martin,et al.,Journal of Computational Chemistry 2018;39(30):2494-2507)、又はEnCoM(Frappier V,Chartier M,Najmanovich RJ.Nucleic Acids Res.2O15;43(W1):W395-400)が挙げられる。これらのCPD法は、進化的配列及び構造的コンセンサス、規則的及び高温分子動力学(molecular dynamic、MD)、並びに他の動的シミュレーション、相関変異分析(correlated mutational analysis、CMA)、表面静電分析、目視検査、並びに空洞、疎水性パッチ、満たされていない水素結合などの分析などの一連の直交法による集束及びフィルタリングを受ける。
【0083】
アミノ酸置換は、以下の考察に基づく:(a)表面静電電位及び表面上の疎水性パッチ(の欠如)、(b)特定の範囲におけるタンパク質の等電点(pI)の保持、(c)タンパク質内空洞の分析、(d)高温又は室温動力学における相関変異分析、正常モード分析、及び二乗平均平方根変動(root mean square fluctuation、RMSF)を含む動的安定性、(e)置換エネルギー学のエントロピー及び/又はエンタルピー構成要素、(f)特定の置換の可視化、(g)精選された多重配列整列(multiple sequence alignment、MSA)の進化的保全分析によって反映されるような関連タンパク質のファミリーにおいて許容されるアミノ酸型、並びに(h)低擬似エネルギーCPD計算に反映される置換の頻度。
【0084】
コンピューター方法は、以下のステップのうちの1つ以上を含む。
(1)多重配列整列(MSA)又は多重構造整列。このステップでは、標的参照タンパク質又はその断片との類似性を有するDNA配列及び/又はタンパク質配列が、公開データベースにおいて照会される。得られた結果に基づいて、多重配列整列(MSA)又は多重構造整列が構築され、保存率が計算される。MSA結果に従って、行われるべきCPDのレベルに関する決定がなされる。非保存ポジションでは、全てのアミノ酸(システインを伴う又は伴わない)がCPDにおいて許容されるが、より保存されたポジションでは、CPDは、類似した特性(電荷、サイズ、内部動力学など)を有する残基に限定される。このステップは、生物物理学的知識及び保存データに基づいて各ポジションにおける置換を限定することを伴う。MSAは、配列に沿った各位置が、おそらくアミノ酸の置換又は欠失又は挿入の潜在的確率を考慮に入れて、各アミノ酸の相対存在量と相関する方法で記載されるポジション特異的置換マトリックス(Position Specific Substitution Matrix、PSSM)を生じ得る。
(2)タンパク質機能分析及び構造-機能-動力学関係の分析。このステップでは、(活性、構造、結合などに対する)既知の影響を有する置換のデータベースが、事前知識を使用して構築される。以前の知識に基づいて、タンパク質の安定性及び/又は機能を妨害することが既知の置換及び置換隣接ポジション(例えば、0.5~1nmの距離)は、CPD中に限定され、置換されない。
(3)CPD。このステップは、ROSETTA、OSPREY、SCWRL、PyMol、AlphaFoldなどの指定されたソフトウェアによって部分的に行われる。決定論的CPDを行う前に、参照タンパク質3D構造/モデルのエネルギーを最小化する。CPDは、1つのアミノ酸が別のアミノ酸によって置き換えられる部位指向的アミノ酸置き換え、又は異なる長さを有するタンパク質をもたらすような他のアミノ酸配列によるタンパク質領域の置き換えを含み得る。後者は、アブイニシオ方法によってループなどの領域を再構築することによって、又は他のタンパク質から領域を取り出すことによって行うことができ、この方法は、「グラフト化」と呼ばれ得る。各参照タンパク質について、複数のモデルが考慮される。
(4)選択:最低エネルギーを有するタンパク質のモデルが収集される。MSAはこれらのモデル上で組み立てられ、保存配列が決定される。生物化学的及び生物物理学的事前知識に基づいて、置換のサブセットが選択される。これらのサブセットは、CPD中に高頻度で出現する1つ以上のポジションでの置き換えを表す。次いで、各サブセットをタンパク質の3D構造上でモデル化し、エネルギーを最小化する。次いで、最低エネルギーサブセットが、更なるコンピューター的及び実験的検証のために選択される。
【0085】
CPDにおいて使用される考慮事項のうちの1つは、受容体結合部位、並びに結合領域及びその近傍においてアミノ酸を置換するかどうかである。味覚受容体結合に重要なアミノ酸残基の決定は、一般に、様々なアミノ酸の単一点置換によって行われ得る。本明細書の実施例において詳述されるように、本発明者らは、味覚受容体に対する推定結合部位を特徴付けるためにコンピューター分析を使用した。本発明者らは、参照タンパク質及び改変タンパク質に結合する味覚受容体中のいくつかの新規の結合部位を特定した。
【0086】
CPDにおける別の考慮事項は、受容体への結合に必要とされる機能的可塑性を保持する一方で、熱安定性を増加させることであり、これは、多くの場合、タンパク質剛性化に本質的に関連する。タンパク質は、受容体を活性化するために、いくつかの立体構造変化(「機能的可塑性」としても既知)を受けなければならない。したがって、本発明者らは、機能的可塑性が保持されなければならない領域を保存しながら剛性化することができる領域に焦点を当てた。
【0087】
改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質(アミノ酸配列)に基づいており、したがって、改変MNEIタンパク質に関して本明細書に記載の任意の特徴/特性/特徴付けは、参照対応MNEIタンパク質に対して提供されることに留意しなければならない。
【0088】
本明細書に記載されるように、改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質(参照アミノ酸配列)に対して、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも10個、少なくとも15個、又は少なくとも18個のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するアミノ酸配列を含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質(参照アミノ酸配列)に対して、2~20個のアミノ酸置換、欠失、又は挿入、2~10個のアミノ酸置換、3~10個のアミノ酸置換、3~6個のアミノ酸置換を含む。本明細書で使用される範囲は、例えば、3~6が3、4、5、及び6を含むような範囲の限界を含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、配列番号45に記載の配列を有する参照MNEIタンパク質に対して、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも10個、少なくとも15個、又は少なくとも18個のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質のアミノ酸配列と40%~98%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照アミノ酸配列と90%~98%同一のアミノ酸配列を含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照アミノ酸配列と60%~90%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照アミノ酸配列と70%~90%同一のアミノ酸配列を含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、配列番号45に記載のアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、配列番号45に記載のアミノ酸配列と90%~98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0095】
2つ以上のアミノ酸配列間の同一性%は、2つ以上の配列を比較し、最大一致について整列させた場合に決定される。本開示の文脈において、同一性%を有する本明細書に記載されるような配列(アミノ酸)は、同一性が計算される参照配列と同じ機能/活性を有するとみなされる。
【0096】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質のアミノ酸配列と40%~98%類似したアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照アミノ酸配列と90%~98%の類似性のアミノ酸配列を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照アミノ酸配列と60%~90%の類似性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照アミノ酸配列と70%~90%類似したアミノ酸配列を含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、配列番号45に記載のアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、配列番号45に記載のアミノ酸配列と90%~98%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、配列番号1~21のうちの1つに記載のアミノ酸配列、そのバリアント、又は前述の断片を含む。特に、改変MNEIタンパク質は、配列番号1、4、16、19、若しくは24のうちの1つに記載のアミノ酸配列、そのバリアント、又は前述の断片を含み得る。改変MNEIタンパク質はまた、配列番号1~21のうちの1つ、特に配列番号1、4、16、19、又は24のうちの1つと少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一の配列を含み得る。
【0101】
本明細書で使用される場合、配列類似性又は配列相同性は、類似した物理化学的特性を有して保存されているアミノ酸、例えば、ロイシン及びイソロイシンの量(%)を指す。
【0102】
配列同一性の決定において、ギャップはカウントされず、配列同一性は、2つのうちの短い方の配列に対するものである。この文脈において、参照MNEIタンパク質(アミノ酸配列)の長さは、改変MNEIタンパク質(アミノ酸配列)と同じであってもよいし、改変MNEIタンパク質(アミノ酸配列)と異なっていてもよいことに留意しなければならない。
【0103】
「アミノ酸配列」及び/又は「ポリペプチド鎖」という用語は、アミノ酸配列又はポリペプチド鎖を有するタンパク質を記載するために使用される。したがって、「参照タンパク質」という用語は、「参照アミノ酸配列」という用語に相当し、「改変タンパク質」という用語は、「改変アミノ酸配列」という用語に相当する。「アミノ酸配列」及び/又は「ポリペプチド鎖」という用語は、3D構造を有する配列、並びに3D構造を有しない配列を包含することに留意しなければならない。
【0104】
本開示に関連して本明細書で使用される場合、「断片」という用語は、短縮された、すなわち、少なくとも1つのアミノ酸が欠如している完全長タンパク質に由来するタンパク質又はペプチドに関する。そのような断片は、タンパク質の一次配列の少なくとも10個超、例えば、20個、又は30個以上の連続するアミノ酸を含み得る。
【0105】
本開示で使用される場合、「バリアント」という用語は、例えば、置換、欠失、挿入、又は化学改変によるアミノ酸配列の改変を含むタンパク質又はペプチドの誘導体に関する。そのような改変は、いくつかの実施形態において、タンパク質又はペプチドの機能性を低減しない。そのようなバリアントは、1つ以上のアミノ酸が、それらのそれぞれのD-立体異性体によって、又はオルニチン、ヒドロキシプロリン、シトルリン、ホモセリン、ヒドロキシリジン、及びノルバリンなどの天然に存在する20個のアミノ酸以外のアミノ酸によって置き換えられているタンパク質を含む。しかしながら、そのような置換は、保存的であってもよく、すなわち、アミノ酸残基が化学的に類似したアミノ酸残基で置き換えられる。
【0106】
コンピューター最適化プロセスの一部として、改変タンパク質は、エネルギー的考慮、すなわち、低エネルギーを有する配列に基づいて、コンピューター分析、生物情報学分析、又は構造-生物学分析の後に、アミノ酸配列の大きな出力集団から選択され得る。
【0107】
エネルギー計算は、アミノ酸配列全体に適用され得るか、又は代替的に、タンパク質内の特定の領域又は選択されたアミノ酸に限定され得る。後者(異なる領域又は選択されたアミノ酸)において、情報を統合して、タンパク質全体を測定することができる。
【0108】
アミノ酸配列(例えば、改変タンパク質)の各々1つの計算は、ロゼッタエネルギー単位(REU)を使用することなどによって、物理ベース(生物物理学的方法としても既知)と、統計ベースの潜在性(知識ベースの潜在性又は情報学的方法としても既知)とを組み合わせることによって行われ得る。ロゼッタエネルギー単位(REU)は、ロゼッタソフトウェアのアルゴリズムであり、コンピューターモデリング及びタンパク質構造分析のためのアルゴリズムのパッケージである。ロゼッタソフトウェアは、デノボタンパク質設計、酵素設計、リガンドドッキング、並びに生物学的高分子及び高分子複合体の構造予測を含む、コンピューター生物学における注目すべき科学的進歩を可能にする。ロゼッタエネルギー関数は、いかなる実際の物理エネルギー単位とも一致しない、物理ベースの潜在性と、統計ベースの潜在性との組み合わせである。ロゼッタエネルギーは、恣意的な尺度であり、REU(「ロゼッタエネルギー単位」)と呼ばれることもある。
【0109】
いくつかの実施形態において、REUは、少なくとも1つのアミノ酸置換を含むタンパク質配列全体について計算され得る。いくつかの他の実施形態において、REUは、タンパク質配列全体の少なくとも1つのアミノ酸置換を含む少なくとも1つの領域について計算され得る。いくつかの他の実施形態において、REUは、タンパク質配列全体における少なくとも1つのアミノ酸置換について計算され得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-182未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される約-190のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される約-195のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-195未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-196未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-197未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-198未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される約-198のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-198.4未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-200未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表されるより低い-203のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-206.4未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-210未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-214.6未満のエネルギーを有する。
【0111】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-270.11未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される--300未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-350未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-400未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-410未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-418未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-420未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-430未満のエネルギーを有する。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-433未満のエネルギーを有する。
【0112】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-182~REUで表される約-214.6のエネルギーを有する。いくつかの他の実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-195~REUで表される約-214.6のエネルギーを有する。いくつかの他の実施形態において、改変タンパク質は、REUで表される-197~REUで表される約-214.6のエネルギーを有する。
【0113】
本明細書に記載されるように、改変タンパク質は、タンパク質の様々な領域におけるアミノ酸置換又は欠失から生じ得る。本明細書で使用される場合、「タンパク質の領域」は、タンパク質配列(アミノ酸配列)又は構造の一部であるアミノ酸配列又は構造モチーフを指す。タンパク質領域の非限定的な例としては、タンパク質表面、タンパク質コア、タンパク質ループ、二次構造エレメント、二次構造キャッピング、ジスルフィド、結合部位、リンカー、疎水性パッチ、又はタンパク質疎水性領域が挙げられる。
【0114】
参照タンパク質におけるアミノ酸置換は、特定のタンパク質領域又は配列に限定されない。アミノ酸置換を含み得る参照タンパク質の領域は、参照タンパク質表面、疎水性コア、又はループ領域と呼ばれる領域(二次構造が欠如している領域としても示される)、二次構造のエッジ(二次構造キャッピング領域としても示される)、ジスルフィド領域、結合部位領域、リンカー領域、及び疎水性パッチ領域を含む。
【0115】
本明細書で使用される場合、「参照表面領域」、「参照コア領域」、又は「参照ジスルフィド結合又はループ領域」は、参照MNEIタンパク質であり得る参照タンパク質の対応する領域を指し得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、参照タンパク質構造及び/又は配列内の限定された領域内で置換され得る。いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、表面領域において置換され得る。いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、コア領域において置換され得る。いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、ジスルフィド結合によって置換され得る。いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、ループ領域において置換され得る。いくつかの実施形態において、2つ以上のアミノ酸の置き換えは、参照タンパク質の表面上に位置する。
【0117】
いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、受容体に対する参照タンパク質の予測される又は既知の結合部位に隣接するエリアにない限定された領域で置換され得る。この文脈において、「隣接する」は、結合界面から4~7Åを意味し得る。
【0118】
いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、参照タンパク質構造及び/又は配列内の異なる領域で置換され得る。いくつかの実施形態において、参照タンパク質は、少なくとも表面領域、コア領域、ジスルフィド結合若しくはループ領域、又はそれらの任意の組み合わせにおいて置換され得る。
【0119】
本明細書で使用される場合、タンパク質表面領域は、部分的又は完全な溶媒接触可能性を有するエリア(SASA-溶媒接触可能表面エリア)である。本明細書で使用される場合、タンパク質コア領域は、50%未満、又は内部コアについては20%未満のアミノ酸相対SASA(溶媒接触可能表面エリア)を有する溶媒に接触可能でないエリアである。
【0120】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照表面領域に対して、表面領域において10%~98%、20%~98%、30%~98%、40%~98%、50%~90%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照疎水性コア(疎水性パッチ)領域に対して、疎水性コア(疎水性パッチ)領域において、10%~98%、20%~98%、30%~98%、40%~98%、50%~90%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照疎水性コア(疎水性パッチ)領域に対して、疎水性コア(疎水性パッチ)領域において、10%~98%、20%~98%、30%~98%、40%~98%、50%~90%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は98%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照表面領域に対して、表面領域において3(3)~40(40)個のアミノ酸置換、4~30個、5~30個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0124】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照表面領域に対して、表面領域において少なくとも1(1)個、2(2)個、3(3)個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも18個、少なくとも20個、少なくとも25個、又は少なくとも30個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照コア領域に対して、コア領域において20%、30%、50%、80%、90%、95%、又は98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照アミノ酸配列コア領域に対して、コア領域において20%、30%、50%、80%、90%、95%、又は98%類似したアミノ酸配列を含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照コア領域に対して、コア領域において1~5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照中の受容体に結合する参照領域に対して、受容体に結合する領域(受容体結合部位)において90%、95%、又は98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照受容体結合部位に対して、受容体結合部位において90%、95%、又は98%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0130】
いくつかの実施形態において、参照タンパク質の受容体結合部位は、改変タンパク質において置換されていない。
【0131】
いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合のうちの少なくとも1つが除去され、それらの周りの領域が、除去されたジスルフィド結合の各々の周りの8~20個の置換で再設計される。
【0132】
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されるそれらの一般的に既知の3文字記号又は1文字記号のいずれかによって言及され得る。本明細書で使用される場合、アミノ酸置換(置き換え)は、1つのアミノ酸から異なるアミノ酸への変化を指す。これは、典型的には、非同義ミスセンスの変異によって引き起こされるDNA配列における点変異に起因し、これは、コドン配列を変化させて、参照とは異なるアミノ酸をコードする。アミノ酸の置き換えは、一般に、置き換えられたアミノ酸がどの程度類似又は非類似であるか、かつ配列又は構造におけるそれらのポジションに依存して、タンパク質の機能又は構造に影響を及ぼし得る。例えば、アミノ酸置換は、サイズ、極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、かさ高さ(又は柔軟性)、ベータ-分岐、特定の二次構造若しくは特定の溶媒接触可能性領域に存在する傾向、芳香族性、特定の結合相互作用(水素結合、塩橋、極性及び非極性相互作用)を付与する能力、pK、砂糖及び他の翻訳後改変物に結合する能力、並びに/又は関与する残基の両親媒性における類似性に基づいて行われ得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、保存的置き換えであり得る。そのような置き換えは、1つのアミノ酸の、類似した特性を示す別のアミノ酸への変化を包含する。保存的アミノ酸の置き換え(保存的アミノ酸「置換」又は保存的アミノ酸変異とも示される)は、所与のアミノ酸を、類似した生物化学的、構造的、及び/又は化学的特性を有する異なるアミノ酸に変化させる、タンパク質におけるアミノ酸の置き換えである。
【0134】
例えば、アミノ酸は、それらの構造及びそれらの側鎖(R基)の一般的な化学的特徴に基づいて、6つの主要なクラスに分類され得る。
脂肪族:イソロイシン(I)、ロイシン(L)、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、
ヒドロキシル又は硫黄/セレン含有:セリン(S)、システイン(C)、トレオニン(T)、メチオニン(M)、
環状:プロリン(P)
芳香族:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
塩基性:ヒスチジン(H)、リジン(K)、アルギニン(R)
酸性及びそれらのアミド:アスパルテート(D)、グルタメート(E)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)。
【0135】
更に、以下の群の各々は、互いに保存的置換である他の例示的なアミノ酸を含有する。
1)非常に小さい:アラニン(A)、グリシン(G)、
2)負電荷:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、
3)極性(アミド化カルボキシル側鎖):アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、
4)正電荷:アルギニン(R)、リシン(K)、
6)芳香族:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、及び場合によってはヒスチジン(H)、
7)小極性:セリン(S)、トレオニン(T)、
8)硫黄含有:システイン(C)、メチオニン(M)
9)小:Ala(A)、グリシン(G)、セリン(S)。
【0136】
10)ベータ-分岐:バリン(V)、イソロイシン(I)、及び場合によってはスレオニン(T)、
11)極性:アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、
【0137】
それにもかかわらず、複数のアミノ酸インデックスをもたらすアミノ酸の多数のクラスターが存在し、各々がアミノ酸の特徴の異なる態様を強調し、例えば、aaインデックスデータベースhttps://www.genome.jp/aaindex/における数百のそのようなインデックスを参照されたい。結果として、保存的置き換えのいくつかは、飲食業界における工業的使用のためのタンパク質適合性のための他の重要な特徴、例えば、舌への非特異的結合又は他の感覚プロフィール態様を表し得る。
【0138】
追加の保存分析は、以下に基づく。
-非極性「疎水性」アミノ酸は、バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)、アラニン(A)、チロシン(Y)、ヒスチジン(H)、スレオニン(T)、セリン(S)、プロリン(P)、グリシン(G)、アルギニン(R)、及びリジン(K)からなる群から選択され、
-「極性」アミノ酸は、アルギニン(R)、リジン(K)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)からなる群から選択され、
-「正電荷」アミノ酸は、アルギニン(R)、リジン(K)、及びヒスチジン(H)からなる群から選択され、かつ
-「酸性」アミノ酸は、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、グルタミン酸(E)、及びグルタミン(Q)からなる群から選択される。
【0139】
いくつかの実施形態において、置き換えは、ラジカル置き換えである。ラジカル置き換え(置換)は、アミノ酸の、異なる特性を有する別のアミノ酸への交換である。
【0140】
参照タンパク質と改変タンパク質との間の配列類似性及び/又は配列同一性の程度は、一般に、改変タンパク質の特性に影響を及ぼし得る。例えば、多数の置換は、結合動態、折り畳み動態、溶解性、熱安定性、ハロ安定性、pH安定性、貯蔵寿命、非水性粒子(例えば、食品マトリックス中のタンパク質若しくは脂肪、又は口腔内の疎水性領域)への結合、3D構造、並びにその活性及び関連する特性に影響を及ぼし得る。本明細書において開発及び適用されるコンピューター方法は、改善された改変タンパク質をもたらす置換のための推定アミノ酸残基の完全な理解を提供する。
【0141】
いくつかの態様によれば、参照タンパク質は、配列番号45に記載のアミノ酸配列を有するMNEIである。以下の実施例1に示されるように、CPD分析は、置換又は欠失の標的としていくつかのアミノ酸を明らかにした。
【0142】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアミノ酸置換は、保存的置換である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアミノ酸置換は、ラジカル置換である。いくつかの実施形態において、2つ以上のアミノ酸が置換される。
【0143】
複数の変異を含む、MNEIにおけるアミノ酸置換が以前に報告された。例えば、Zhengらは、改善された甘味及び安定性を有する新規の二重変異体MNEIベースのタンパク質を報告した。具体的には、Zhengらは、MNEIにおける単一置換E2Nが、3倍改善された甘味及びわずかに低減した安定性をもたらしたことを実証した。Zhengらは、E2N置換(例えば、E2N/E23A、E2N/Y65R)に加えて追加の置換、E23A、又はY65Rを導入しても甘味に影響を及ぼさないことを更に示した。
【0144】
いくつかの実施形態において、MNEIである参照タンパク質における少なくとも3つのアミノ酸置換のうちの少なくとも2つ又は少なくとも3つは、保存的置換である。
【0145】
本明細書に記載されるように、本明細書に記載の改変MNEIタンパク質は、改善された食品関連特性を有する。改変タンパク質の甘味度(砂糖の様な風味)、異味の欠如、低減した開始時間、及び低減した残味などのタンパク質の甘味プロファイルは、当技術分野で既知の任意の既知の味覚試験によって決定され得る。例えば、スクロース又は他の甘味料の甘味との比較は、味覚パネルによって行われ得、甘味度は、以下の実施例において詳述されるように等級付けされ得る。
【0146】
比較は、例えば、甘味の感覚を誘発するのに必要な最小濃度、又は甘味プロファイル、甘味開始時間、残味、口当たり、後味、異味、及び望ましくない味覚のマスキングなどの特徴を含む甘味プロファイル評価を決定することによって、スクロースなどの既知の甘味料と比較して、改変タンパク質の閾値を決定することによって行われ得る。
【0147】
本明細書で使用される場合、甘味に影響を及ぼす特性という用語は、約0.28mg/L、約0.5mg/L以上の甘味閾値、約1~20秒間、時には2~18秒間、時には2~4秒間の甘味持続時間のうちの少なくとも1つによって決定される甘味感覚を包含する。
【0148】
改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質の様に、甘味受容体に結合する。
【0149】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、重量基準で砂糖よりも300~16,000高い知覚される甘味閾値を有する。
【0150】
感覚プロファイルは、経時的な味覚強度を示す味覚動態、すなわち、開始持続時間(味覚を感じるまでの時間)、味覚持続時間、及び残味の時間(ガウステールに対応する)を含む。追加の特徴としては、異味(例えば、他の受容体への結合に起因する)、味覚のまろやかさ、金属味及び他の副味、他の成分との相乗効果(例えば、ステビアなどの他の風味又は望ましくない味覚のマスキング及び増強)、口当たり、渋味などが挙げられる。
【0151】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、以下のうちの少なくとも1つが参照タンパク質に対して、等しいか又は改善されていることを特徴とする:(1)構造的熱安定性、(2)機能的熱安定性、(3)pH安定性、(4)水若しくは部分的に水性の環境(例えば、脂肪を含有する食品)における溶解性、又は(5)貯蔵寿命安定性。
【0152】
本明細書に記載の改変タンパク質は、甘味、並びに経口送達用製品の調製において甘味料として使用され得る他の味覚効果(望ましくない味覚のマスキング、より少ない後味、より少ない残味、より少ない異味、旨味、より良好な口当たり)を特徴とする。
【0153】
改変タンパク質は、風味改変剤又は風味増強剤として使用され得る。
【0154】
本明細書に記載の改変タンパク質は、経口製品として使用するためのものである。いくつかの実施形態において、製品は、食製品若しくは飲料製品、栄養補助食物製品、又は薬剤である。製品の調製のために、本明細書に記載のタンパク質は、任意の食品グレードの添加物と組み合わされ得る。食製品又は飲料製品は、微粉末、凍結乾燥物、顆粒、錠剤などを含むがこれらに限定されない任意の固体乾燥形態で提供及び使用され得る。いくつかの実施形態において、本組成物は、液体形態で、例えば、水中の溶質(水溶液)として提供される。
【0155】
改変タンパク質を含む製品は、様々な用途を有し得る。これとしては、(以下の各々は、本開示の別々の実施形態を構成する)、飲食業界(果実及び野菜ジュース及びネクター、清涼ドリンク、レディ・トゥ・ドリンク飲料、シロップ、機能性ドリンク、スポーツドリンクなど)において、乳産業、すなわち、乳製品、ヨーグルト、及びプディングにおいて、製薬産業において、自然療法産業、機能性食品産業(例えば、機能性食品バー)、並びに他のヘルスケア製品(例えば、練り歯磨き及びマウスウォッシュ)、菓子類、キャンディー、及びガム産業、野菜(例えば、ケチャップ又はソース)、又は賦形剤若しくは添加物として風味改変組成物の使用を必要とする任意の他の用途において甘味料、風味料、増強剤、マスキング剤、及び風味特徴を有するタンパク質としての利用が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0156】
いくつかの実施形態によれば、追加の食品成分は、スクロース、フルクトース、グルコース、アガベネクター、玄米シロップ、ナツメヤシ糖、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、ラカンカ、糖アルコール、希少砂糖、ステビオールグリコシド、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、及び食物繊維からなる群から選択される。
【0157】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照タンパク質に対して、等しいか又は改善された構造的熱安定性を有する。
【0158】
「構造的熱安定性」又は「熱安定性」という用語は、本明細書で使用される場合、参照タンパク質の温度より高い温度でその3D構造を保持する改変タンパク質の能力を指す。タンパク質の3D構造安定性は、円偏光二色性(Circular Dichroism、CD)、又は示差走査蛍光定量法(Differential Scanning Fluorimetry、DSF)若しくは示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)などの熱シフトアッセイ、又は塩化グアニジニウムなどのタンパク質変性剤を用いる滴定などの、当技術分野で既知の任意の方法によって測定され得る。3Dタンパク質構造は、タンパク質機能に影響を与え得る。注目すべきことに、食製品及び飲料製品に必要とされる貯蔵寿命及び熱安定性は、構造的熱安定性に関連する可能性があり、異なる測定可能なものからなり、例えば、低温殺菌(又は消費者包装された良好な最終製品の調製中の熱処理)は、異なるプロトコルによって適用することができ、非常に短時間にわたってタンパク質構造を保持する耐熱性に関連する。
【0159】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照タンパク質に対して、等しいか又はより高い機能的熱安定性を有する。「機能的熱安定性」という用語は、本明細書で使用される場合、改変タンパク質が、参照タンパク質と比較して、高温への曝露後にその機能を保持する能力を指す。
【0160】
いくつかの実施形態において、本明細書の改変タンパク質は、より高い温度で、又はより高い温度に限られた時間曝露した後に、その甘味効果を維持することができる。換言すれば、室温を超える温度、時には最大50℃、時には最大100℃、又は更には最大150℃の温度に製品を曝露した後に、甘味又は感覚プロファイルに明らかな変化がない。タンパク質の機能、例えば、甘味は、タンパク質がその味覚を感じることができる温度まで冷却された後、感覚試験によって測定され得る。
【0161】
いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、参照タンパク質に対して、等しいか又はより高いpH安定性を有する。pH安定性は、参照タンパク質に対して、より広いpH範囲での改変タンパク質の長期安定性を指し、すなわち、改変タンパク質は、製品を3~8の任意のpH、時には4~8のpHに曝露した後に3D構造及び/又は機能を維持する。例えば、コーラのようなソーダは、2.3~2.5のpHを有し、このpHでは、甘味タンパク質の一部は不安定であり、すぐに又は飲料の通常の貯蔵寿命よりも短い時間の後に機能性を失う。
【0162】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質よりも高い溶解性を有する。溶解性は、水性、部分的に水性、又は非水性の環境、例えば、脂肪を含有する食品であり得る。
【0163】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質に対して改善された貯蔵寿命を有する。改善された貯蔵寿命は、製品を最大150℃の任意の温度、時には4℃~150℃の任意の温度、又は100°に曝露した後に、本組成物を含む製品の甘味(機能)の変化又は物理的劣化(例えば、色の変化、相分離など)が感知されないことを指す。
【0164】
いくつかの他の実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質に対して、等しいか改善されている、以下のうちの少なくとも1つを特徴とする:(1)折り畳み動態、(2)タンパク質の翻訳後改変(例えば、グリコシル化又はアセチル化)パターンが、参照タンパク質と異なり、(3)ジスルフィド結合の数が、ジスルフィド結合を有しない参照MNEIタンパク質に対してより多い。
【0165】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、参照MNEIタンパク質に対して、等しいか又はより高い折り畳み動態を有する。すなわち、折り畳まれていない構造又は部分的に折り畳まれた構造からのタンパク質折り畳み速度は、(例えば、分子動力学によって、又は実験的インビトロ若しくはインビボ方法によってインシリコで評価されるように)より速い。あるいは、より速い折り畳み動態は、例えば、変性剤滴定(例えば、塩化グアニジニウム及び/又は高濃度尿素)又は他の方法による変性実験におけるより遅い、折り畳まれていない動態を指す。
【0166】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、評価される宿主生物における参照MNEIタンパク質に対して、等しいか又はより高い発現収率を特徴とする。
【0167】
いくつかの実施形態において、改変MNEIタンパク質は、8.6~9.5のpI値を有する。
【0168】
本明細書に記載の改変MNEIタンパク質は、甘味、並びに経口送達用製品の調製において甘味料として使用され得る他の味覚効果(望ましくない味覚のマスキング、より少ない後味、より少ない残味、より少ない異味、より少ない残味の開始、及び旨味)を特徴とする。
【0169】
改変MNEIタンパク質は、風味改変剤又は風味増強剤として使用され得る。
【0170】
本明細書に記載の改変MNEIタンパク質は、経口製品として使用するためのものである。いくつかの実施形態において、製品は、食製品、栄養補助食製品、又は薬剤である。製品の調製のために、本明細書に記載のタンパク質は、任意の食品グレードの添加物と組み合わされ得る。食製品は、微粉末、凍結乾燥物、顆粒、錠剤などを含むがこれらに限定されない任意の固体乾燥形態で提供及び使用され得る。いくつかの実施形態において、本組成物は、液体形態で、例えば、水中の溶質(水溶液)として提供される。
【0171】
改変MNEIタンパク質を含む製品は、様々な用途を有し得る。これとしては、(以下の各々は、本開示の別々の実施形態を構成する)、飲食業界(果実及び野菜ジュース及びネクター、清涼ドリンク、レディ・トゥ・ドリンク飲料、シロップ、機能性ドリンク、スポーツドリンクなど)において、乳産業、すなわち、乳製品、ヨーグルト、及びプディングにおいて、製薬産業において、自然療法産業、機能性食品産業、並びに他のヘルスケア製品(例えば、練り歯磨き及びマウスウォッシュ)、菓子類、キャンディー、及びガム産業、野菜(例えば、ケチャップ又はソース)、又は賦形剤若しくは添加物として風味改変組成物の使用を必要とする任意の他の用途において甘味料、風味料、増強剤、又はマスキング剤としての利用が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0172】
製品は、追加の食品成分を含み得る。いくつかの実施形態において、食品成分は、甘味料、例えば、ステビオールグリコシドである。本明細書に記載の改変タンパク質とステビオールグリコシドとの組み合わせは、相乗効果を生み出す。したがって、いくつかの実施形態において、製品は、配列番号1~21によって示される少なくとも1つの改変タンパク質及びステビオールグリコシドを含む。
【0173】
ステビア(本明細書において、ステビオールグリコシド又はその混合物と示される)及び/又はその変種が、0.5°Bx~8°Bxスクロース当量の範囲で本発明の改変タンパク質と組み合わされる場合、改変タンパク質は、スクロース甘味の30%~70%の置き換えを表す。知覚される甘味強度は、0.5°Bx~8°Bxのスクロース当量でステビア溶液の少なくとも100%である。知覚される残存感覚プロファイルは、0.5°Bx~8°Bxのスクロース当量でステビア溶液の100%よりも優れている。
【0174】
知覚される酸味感覚プロファイルは、0.5°Bx~8°Bxのスクロース当量でステビア溶液の100%よりも優れている。
【0175】
いくつかの実施形態によれば、追加の食品成分は、スクロース、アガベネクター、玄米シロップ、ナツメヤシ糖、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、ラカンカ、糖アルコール、希少砂糖、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、及び食物繊維からなる群から選択される。
【0176】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の配合物は、後味若しくは異風味(例えば、金属味若しくは甘草味)が減少、排除、若しくはマスキングされたか、又は苦味が減少、排除、若しくはマスキングされたか、又は甘味の残存が減少、排除、若しくはマスキングされた砂糖の様な味覚プロファイルを提供する。
【0177】
本発明による改変MNEIタンパク質は、当技術分野で既知の任意の方法によって生成され得、例えば、タンパク質は、合成的に、組み換えDNA技術によって、又は発酵槽、植物、植物カルス、若しくは他の生物反応器を介した微生物におけるタンパク質生成によって生成され得ることに留意しなければならない。いくつかの実施形態において、改変タンパク質は、細菌、例えば、E.Coliにおいて生成され得る。いくつかの他の実施形態において、改変タンパク質は、Saccharomyces cerevisiae又はPichia pastorisなどの産生酵母において生成され得る。いくつかの他の実施形態において、改変タンパク質は、Trichoderma、又はAspergillusなどの糸状菌において生成され得る。
【0178】
「酵母菌及び糸状菌」という用語としては、任意のKluyveromyces sp.、例えば、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Saccharomyces sp.、例えば、Saccharomyces cerevisiae、Pichia sp.、例えば、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia memhranaefaciens、Pichia minuta(Ogataea minuta、Pichia lindneri)、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pyperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Hansenula polymorpha、Candida albicans、任意のAspergillus sp.、例えばAspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknow ens e、Fusarium sp.、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、Physcomitrella patens、Myceliopthora、及びNeurospora crassaが挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
いくつかの実施形態において、選択されたアミノ酸配列のDNA配列は、RNA及びDNAレベルで最適化される。RNAレベルでは、これは、リボソームへの迅速な挿入を確実にするためのRNA二次構造の最小化を含む。DNAレベルでは、これは、宿主生物に対するコドン最適化を含む(RNAレベル最適化を考慮に入れる)。コドン使用の最適化は、発現される各アミノ酸に対して宿主生物において最も豊富なtRNAを使用することを優先する。
【0180】
上記に関して、提供される場合、例えば、10%、50%、120%、500%などのパーセンテージ値は、「倍数変化」値、すなわち、それぞれ0.1、0.5、1.2、5などと交換可能であることが理解されるべきである。
【0181】
本明細書で使用される場合、全ての科学用語及び技術用語は、別段の指定がない限り、当技術分野で一般的に使用される意味を有する。本明細書で提供される定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。
【0182】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」、及びそれらの活用形は、「含むが、これらに限定されない」ことを意味する。「から本質的になるという用語は、組成物、方法、又は構造が、追加の成分、ステップ、及び/又は部分を含み得るが、追加の成分、ステップ、及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法、又は構造の基本的かつ新規の特徴を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、言及された値よりも最大1%、より具体的には5%、より具体的には10%、より具体的には15%、場合によっては最大20%高く又は低く逸脱し得る値を示し、逸脱範囲は整数値を含み、適用可能な場合、非整数値も同様に連続範囲を構成する。
【0183】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈によってそうでない旨が明示されない限り、複数の指示物を含むことを留意しなければならない。
【0184】
本明細書で使用される場合、「溶液」は、副構成成分(溶質)が主構成成分(溶媒)内に均一に分布されている液体混合物を指す。懸濁液又は濁った混合物とは対照的に、溶液は透明であり、粒子状物質を含まない。
【0185】
本明細書で使用される場合、「シロップ」又は「飲料シロップ」は、流体、典型的には水が添加されて、レディ・トゥ・ドリンク飲料又は「飲料」を形成する飲料前駆体を指す。典型的には、シロップ対水の体積比は、1:3~1:8、より典型的には1:4~1:6である。水に対するシロップの体積比も「スロー」として表される。飲料業界で一般的に使用される比率である1:5の比率は、「1+5スロー」として知られている。
【0186】
配合物は、「そのまま」又は他の甘味料、風味料、及び食品成分と組み合わせて使用され得る。
【0187】
甘味料の非限定的な例としては、ステビオールグリコシド、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、ズルコシドA、ステビオールビオシド、ルブソシド、並びにStevia Rebaudiana Bertoni植物に見られる他のステビオールグリコシド、及びそれらの混合物、ステビア抽出物、ラカンカ(Luo Han Guo)抽出物、モグロシド、高フルクトースコーンシロップ、コーンシロップ、転化砂糖、フルクトオリゴ糖、イヌリン、イヌロオリゴ糖、カップリング砂糖、マルトオリゴ糖、マルトデキスチン(maltodextin)、コーンシロップ固形物、グルコース、麦芽糖、スクロース、ラクトース、アスパルテーム、サッカリン、スクラロース、糖アルコールが挙げられる。
【0188】
風味料の非限定的な例としては、クランベリー、レモン、オレンジ、バナナ、ブドウ、ナシ、パイナップル、ガラナ、リンゴ、マンゴー、ビターアーモンド、コーラ、シナモン、砂糖、わたあめ、及びバニラ風味料が挙げられる。
【0189】
他の食品成分の非限定的な例としては、風味料、酸味料、有機及びアミノ酸、着色剤、増量剤、改変デンプン、ガム、質感剤、防腐剤、抗酸化剤、乳化剤、安定剤、増粘剤、並びにゲル化剤が挙げられる。
【0190】
本明細書で使用される場合、語句「砂糖の様な特徴」、「砂糖の様な味」、「砂糖の様な甘味」、「砂糖みたい」、及び「砂糖の様」は同義である。砂糖の様な特徴は、スクロースの特徴に類似した任意の特徴を含み、これとしては、最大応答、風味プロファイル、時間プロファイル、順応挙動、口当たり、濃度/応答関数挙動、味覚及び風味/甘味相互作用、空間パターン選択性、並びに温度効果が挙げられるが、これらに限定されない。これらの特徴は、スクロースの味覚が天然及び合成高効力甘味料の味覚とは異なる程度である。特徴がより砂糖の様であるかどうかは、専門家の感覚パネルによる砂糖及び機能性味覚改善組成物の評価によって決定される。そのような評価は、本組成物の特徴における類似性を定量化する。組成物がより砂糖の様な味覚を有するかどうかを決定するための好適な手順は、当技術分野でよく知られている。
【0191】
本明細書で使用される場合、「風味」又は「風味特徴」という用語は、味覚、匂い、及び/又は質感の構成要素の組み合わされた感覚認知である。本明細書で使用される場合、「増強する」という用語は、風味特徴の感覚認知を、その性質を変化させることなく、増大させること、強化すること、強調すること、拡大すること、及び強化することを含む。本明細書で使用される場合、「改変する」という用語は、そのような特徴の質又は持続時間が不十分であった場合に、風味特徴の感覚認知を変更すること、変化させること、抑制すること、低下させること、高めること、及び補足することを含む。
【0192】
本明細書で使用される場合、「味覚改変型タンパク質(taste-modifying protein、TMP)」は、甘味、旨味などであるがこれらに限定されない基本味覚の置換物として作用するタンパク質、並びにブロッカー、増強剤、マスキング剤、並びに風味特徴を有するタンパク質として定義される。
【0193】
本発明における「高効力甘味料」は、スクロースと比較して強い甘味を有するタンパク質を意味し、天然に存在するタンパク質、組み換えタンパク質、又はこれらの組み合わせであり得る。高効力甘味料は、同量のスクロースの5倍以上、10倍以上、50倍以上、100倍以上、500倍以上、1000倍以上、5000倍以上、10000倍以上、50000倍以上、100000倍以上の甘味を示す。
【0194】
本明細書で使用される場合、「栄養機能構成成分」は、ヒトに対する栄養素を指し、ミネラル、有機酸、ビタミン、ポリフェノール、タンパク質、アミノ酸、食物繊維、及び糖質(糖類を除く)からなる群から選択されるいずれか1つ以上を指す。
【0195】
本明細書で使用される場合、「機能的」という用語は、熱又は他のプロセス(可能な構造変化ではあるが)後の機能(例えば、甘味)の保存を指す。
【0196】
本明細書で使用される場合、「機能的安定性」という用語は、乾燥形態、水形態、又は緩衝液形態における純粋な材料の化学的安定性ではなく、配合物又は消費者包装された良好な条件における安定性、及び機能的感覚特性を維持する安定性を指す。
【0197】
本明細書で使用される場合、「食料品」という用語は、飲料、菓子製品、チューインガム製品、又は食製品を含む任意の食用口腔組成物を意味する。
【0198】
本明細書で使用される場合、「飲料」という用語は、任意の飲用可能な液体又は半液体を意味し、例えば、風味付き水、清涼ドリンク、果実ドリンク、コーヒーベースのドリンク、茶ベースのドリンク、ジュースベースのドリンク、ミルクベースのドリンク、ゼリードリンク、炭酸又は非炭酸ドリンク、アルコール又は非アルコールドリンクが挙げられる。
【0199】
本明細書で使用される場合、「経口摂取可能な組成物」及び「甘味組成物」は同義であり、ヒト又は動物の口に接触する物質を指し、これとしては、口に取り込まれ、続いて口から排出される物質、及び飲まれる、食べられる、飲み込まれる、又は他の方法で摂取される物質が挙げられ、一般に許容可能な範囲で使用される場合、ヒト又は動物の消費に安全である。これらの組成物としては、食品、飲料、医薬品、機能性食品、口腔衛生品/化粧品などが挙げられる。これらの製品の非限定的な例としては、コーラ、ジンジャーエール、ルートビア、サイダー、果実風味清涼ドリンク(例えば、レモン-ライム、クランベリー、又はオレンジなどの柑橘類風味清涼ドリンク)などの非炭酸及び炭酸清涼ドリンク(carbonated soft drink、CSD)、粉末清涼ドリンクなど、果実又は野菜に由来する果実ジュース、絞ったジュースなどを含む果実ジュース、果実粒子を含有する果実ジュース、果実飲料、果実ジュース飲料、果実ジュースを含有する飲料、果実風味料を有する飲料、野菜ジュース、野菜を含有するジュース、及び果実と野菜とを含有する混合ジュース、スポーツドリンク、エネルギードリンク、ニアウォーター、及び同様のドリンク(例えば、天然又は合成風味料を有する水)、コーヒー、ココア、茶、緑茶、ウーロン茶などの茶類又は飲料、ミルク飲料、ミルク構成成分含有コーヒー、カフェオレ、ミルク茶、果実ミルク飲料、飲用ヨーグルト、乳酸菌飲料などのミルク構成成分含有飲料、乳製品、焼き菓子製品、ヨーグルト、ジェリー、グミ、飲用ジェリー、プディング、ババロア、ブランマンジェ、ケーキ、ブラウニー、ムース、ピーナッツバターなどのデザート、茶の時間又は食後に食べられる加糖食製品又は飲料製品、冷凍食品、冷たい菓子類、例えば、アイスクリーム類、例えば、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトースアイスなど(ミルク製品に甘味料及び様々な他の種類の原料を添加して、得られた混合物を攪拌及び冷凍した食製品又は飲料製品)、及び冷菓類、例えば、シャーベット、デザートアイスなど(砂糖液に様々な他の種類の原料を添加して、得られた混合物を攪拌及び冷凍した食製品又は飲料製品)、アイスクリーム、一般的な菓子類、例えば、ケーキ、クラッカー、ビスケット、あんこの詰め物が入ったパンなどの焼き菓子類又は蒸し菓子類、餅及びスナック、卓上製品、一般的な砂糖菓子、例えば、チューインガム(例えば、チクル又はその置換物(ゴム又は特定の食用天然合成樹脂又はワックスを含む)などの実質的に非水溶性の咀嚼可能なガムベースを含む組成物を含む)、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、ミント、ヌガーキャンディ、ジェリービーンなど、果実風味のソース、チョコレートソースなどを含むソース、食用ゲル、バタークリーム、小麦ペースト、ホイップクリームなどを含むクリーム、いちごジャム、マーマレードなどを含むジャム、甘いパンなどを含むパン類又は他のデンプン製品、スパイス、焼肉、焼き鳥、バーベキュー肉などに使用される調味醤油、並びにトマトケチャップ(ケチャップ)、ソース、ヌードルスープなどを含む一般調味料、加工農産物製品、畜産製品、又は魚介類、ソーセージなどの食肉加工製品、レトルト食品又は飲料製品、ピクルス、保存食品、醤油、嗜好品、副食品、ポテトチップス、クッキーなどのスナック類、シリアル製品、経口投与又は口腔内で使用される薬物、医薬部外品、及び栄養補助食物(例えば、ビタミン、咳止めシロップ、のど飴、咀嚼医薬品錠、アミノ酸、苦味のある薬物又は医薬品、酸味料など)であって、薬物が固体、液体、ゲル、又はエアロゾル形態、例えば、丸剤、錠剤、スプレー、カプセル、シロップ、ドロップ、トローチ剤、粉末などであり得る、薬物、医薬部外品、及び栄養補助食物、パーソナルケア製品、例えば、口腔内で使用される口腔用組成物、例えば、口内清涼剤、うがい剤、口内洗浄剤、練り歯磨き、歯研磨剤、歯磨き剤、口腔スプレー、歯のホワイトニング剤など、栄養補助食物、動物飼料、並びに疾患(例えば、心血管疾患及び高血中コレステロールレベル、糖尿病、骨粗鬆症、炎症、又は自己免疫障害)の予防及び治療を含む、医学的又は健康的利益を提供し得る任意の食品又は食品の一部を含む機能性製品。
【0200】
本明細書で使用される場合、ステビアは、Stevia rebaudiana(Bertoni)(ブラジル及びパラグアイ原産のAsteracae(Compositae)科の多年生低木)の一般名である。ステビア葉、葉の水性抽出物、及びステビアから単離された精製ステビオールグリコシドは、ノンカロリー及び天然起源の両方として望ましい甘味料として開発されてきた。Stevia rebaudianaから単離されたステビオールグリコシドとしては、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドC、ズルコシドA、ルブソシド、ステビオールビオシド、レバウジオシドB、レバウジオシドD、及びレバウジオシドFが挙げられる。
【0201】
Reb M(レバウジオシドXとも呼ばれる)、(13-[(2-O-β-D-グルコピラノシル-3-O-β-D-グルコピラノシル-ベータ-D-グル-コピラノシル)オキシ]エントカウル-16-エン19-オイック酸-[(2-O-β-D-グルコピラノシル-3-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グ-ルコピラノシル)エステル]は、Stevia rebaudianaから単離され、特徴付けられた。
【0202】
本明細書に記載されるように、食品又は飲料組成物は、改善された食品又は飲料関連特性を有する。本組成物の甘味度、異味の欠如、低減した開始時間、及び低減した残味などの本組成物の甘味プロファイルは、当技術分野で既知の任意の既知の味覚試験によって決定され得る。例えば、スクロース又は他の甘味料の甘味との比較は、感覚パネルによって行われ得、甘味度は、以下の実施例において詳述されるように等級付けされ得る。
【0203】
非限定的な実施例
実施例1:MNEIベースのタンパク質の設計
MNEIベースのタンパク質の設計を以下のように行った:単鎖モネリン、MNEI(配列番号45)は、約11kDの分子量及び約8.7のpIを有する96個のアミノ酸から構成されるポリペプチドである。
【0204】
コンピューター方法
上記のように、コンピューター分析及びヒト-専門家分析は、コンピューター的に、専門家によって、実験的に、又はこれらの方法の組み合わせによって更に分析され得る低減した配列空間を提供する。そのような分析は、個々のアミノ酸、アミノ酸のクラスター、又は他の組み合わせに適用され得る。
【0205】
コンピューター的タンパク質設計(CPD)プロセスの間、アミノ酸の置き換え及び/又は欠失は、受容体結合部位の一部である可能性が低い特定の領域、例えば、ヘリックスの周り、タンパク質コアを形成するベータ-シートの非曝露側、又はMNEIを野生型モネリンから区別する操作されたループにおいて許容された。ロゼッタ実行は、600Kモデルをもたらした。全てのモデルのエネルギーが引き出されたとき、結果グラフは、ロジット関数の形態を有した。ロジット関数(対数オッズとしても既知)は、オッズの対数p/(1-p)であり、式中、pは、確率である。これは、シグモイド「ロジスティック」関数の逆である。
【0206】
更なる分析のために、5Kの最低モデルを選択した。置き換えの数(MNEIと比較して)をREUの関数としてプロットすると、ガウス分布が得られ、集団が正常であり、更なる分析に有効であることが示された。
【0207】
MNEIにおけるループ設計
MNEI中のY47-K56ループ(すなわち、Gly-Pheペプチド)は、柔軟なループであり、分子動力学(MD)シミュレーションによってpH=2及び7で実証される。このループは、モネリンにとって天然ではなく、天然モネリンの2つのサブユニット(鎖A及び鎖B)のリンカーとして導入された。このようにして、MNEIを生成した。導入されたループは、甘味に影響を有せず、したがって、MNEIは、モネリンと同じ甘味を有するが、MNEIは、より高いTm(溶融温度)を有し、ループがタンパク質安定性に対して有し得る影響を例示する(Curr Opin Struct Biol.1999 Aug;9(4):494-9)。ループの重要性を特定して、本発明者らは、収率、安定性、及び感覚プロファイルを増加させるためにループを再設計及び短縮した。
【0208】
手順:
グラフト化
MNEIのループ及び2つの隣接するベータ-シートの3D構造整列に続いて、2つの類似したタンパク質を特定した。これらのPDBに基づいて、4つのモデルを構築し、ロゼッタを使用して最小化した。
【0209】
サイズベース及びアブ-イニシオモデリング
上記で概説したグラフト化手順とは別に、物理的及び生物物理学的考察に基づいて、追加のループ変更を得た。MNEI安定性に対するループ長の影響を研究するために、Rosetta又はSwiss-PDB-ViewerなどのCPDソフトウェアを使用して、様々な長さを有するループをモデル化した。ループモデリングは、MNEI配列を使用する物理的考察に基づいて、又は相同性モデリングに基づいて行われた。次いで、各モデルをエネルギー最小化し、GROMOS96 43B 1力場を使用してエネルギーを計算した。この分析に基づいて、6つ、5つ、及び4つの残基を有するループを、これらの長さを有するループがエネルギー的により好ましいことが見出されたため、更に試験した。
【0210】
熱安定性
MNEI配列の異なるバリエーションを構築し、各々のモデルのエネルギーをロゼッタによって予測した。更なる分析のために、最低エネルギー配列DM28(4merループ、すなわち元のMNEIループを3アミノ酸短縮した4アミノ酸のループを有する)を選択し、100K反復を有するロゼッタを使用してエネルギーCPD計算を行った。次いで、鋳型としてDM28を使用し、4merループを特定のアミノ酸置換と組み合わせて、追加のバリエーションを構築した(DM29、DM31、DM32、及びDM33をもたらす、表3及び表4を参照されたい)。DM09に基づいて、1つの追加のバリアントDM30を添加した。最低エネルギー配列DM31を更なる分析のために選択した。
【0211】
【表1】
【0212】
図30図32は、PDBにおいて利用可能な結晶構造及び本発明者らによって解明されたDM31の結晶構造を使用して、DM31の特性をMNEIの特性と比較する。これらの図は、新しいタンパク質DM31をもたらす置換、挿入、及び欠失、並びにループ再設計が、タンパク質を著しくより剛性な構造エレメントを有しながら、より安定させたことを示唆する。安定性の増加は、MNEIのループ構造と比較して、DM31のコンパクトな再設計されたループ構造によって示唆される(図30B)。更に、図31A及び図31Bに示されるB因子分析は、DM31のループ残基についての低減したB因子(図31B)、並びに二次構造エレメントについての低減した平均(図31A)を実証する。B因子は不規則性を示すため、これらの結果は、DM31の安定性の増加を実証する。
【0213】
図32は、MNEIにおける対応するループ(図32A、PDB ID:2o9u)と比較して、より良好に最適化された水素結合、並びにDM31のこの領域における新しい結合(図32C)を実証する、再設計されたループ及び隣接するベータ鎖における骨格媒介水素結合を示す。新しい水素結合は、不規則なループを置き換える安定したベータターンを示す。水素結合もまた表1Bに示される。この図は、DM31に存在し、利用可能なMNEI構造のうちの少なくとも1つには存在しない19個の水素結合を例示する。表中の数字は、骨格窒素上の関与する水素と、アクセプターとしての骨格酸素との距離を示す。表は、MNEI(1.15Aの分解能)に利用可能な最高分解能構造である2o9u構造において、DM31結晶構造(1.6オングストロームの分解能)と比較して水素結合が少なく、これらの結合のいくつかの最適化が(距離及び角度に関して)あまりされていないことを示唆している。図31に記載されるB因子の増加を超えて、2o9u構造は、二重占有を有する3つの残基(E4、M42、及びE48)を有し、DM31構造において剛性化されたこの高分解能構造における不規則性を強調する。
【0214】
図30Aの挿入図は、選択されたアミノ酸置換、並びに再設計されたループ領域を強調している。これらの変化は、デザイナータンパク質DM31の増加した安定性及び甘味の基礎である。図30Aのループ領域を示す挿入図(図30Bにも見られる)は、ループエリアの残基が新規の水素結合(図32)を形成するだけでなく、近くの2つのベータ鎖の伸長にも関与していることを示しており、これも安定性の増加を示している。全体として、ベータターンによって連結された伸長されたベータ鎖による不規則なループの置き換えは、タンパク質のこの領域を剛性化し、溶融温度の著しい増加が示されるように、安定性の増加をもたらす。
【0215】
【表2】
【0216】
B因子(デバイ-ウォーラー因子)
温度因子、B因子、又は原子変位パラメータとしても既知のデバイウォーラー因子は、Protein Data Bank(PDB)に寄託された全てのX線構造中の全ての原子について含まれる。これらの値は、全てのタンパク質原子について与えられ、実験的電子密度マップから参照される原子の平均変位を指す。そのような混乱は、2つの異なる現象、すなわち、原子の温度依存振動によって引き起こされる動的不規則性、及び静的不規則性の結果である。
【0217】
再モデル化ループの安定性を実証するために、Structural Proteomic Center(Weizmann Institute of Science)によって調製された結晶構造に基づいて、DM09及びDM31の値に対してMNEI(PDB ID:2O9U、1IV7、5Z1P)の構造の骨格B因子を比較した。各タンパク質について、骨格B因子値を最初に、Z-スコア正規化を使用して別々に正規化した。
【0218】
正規化後、DM31に導入されたループ設計(3個のアミノ酸の欠失)は、再設計されたループ中のB因子を、高いB因子を有するポジションを除去すること、及び隣接残基に影響を及ぼすことの両方によって減少させたことが明らかであった。
【0219】
図31A図31Bは、MNEI構造体、DM09、及びDM31の正規化B因子を実証した。最初に、骨格B因子を、Z-スコア正規化を使用して別々に各構造について正規化した。領域(A)及びループ残基(B)による。
【0220】
結晶構造品質保証分析
ソフトウェアMolProbityは、タンパク質構造の生物物理学的特性に関する品質保証分析を事前形成する。MolProbityを使用して、MNEI構造を調べ、それらをDM09及びDM31の結晶構造と比較した。比較によって、DM31が参照MNEI構造と比較して好ましい形質を有したことが実証された。留意すべきことに、DM31は、不良な回転異性体を有せず、MolProbityによれば、その回転異性体の96%超が好ましい。MolProbityが調べる別の態様は、異なるアミノ酸についてのこれらの角度の既知の統計的分布に関連する骨格二面角の組み合わせである。これらの分布に関して、DM31は、外れ値角度を有せず、97パーセントを超える好ましい値を実証する。
【0221】
【表3】
【0222】
水素結合:ループ領域にベータ-ターンを導入する
タンパク質は、それらの二次構造も決定する水素結合によって安定化される。PyMolを使用して、DM31、DM09、及び代表的な高品質MNEI構造、PDB id 2O9Uの結晶構造の水素結合を分析した。この分析によって、E48とE51(MNEIにおけるE54に相当)との間のデザイナーループ領域に新しい水素結合が存在することが明らかになった。この導入された結合は、ループ領域を安定化することを目的とした設計の結果であり、MNEI構造に見られるランダムコイル不安定ループよりもはるかにより安定している従来の剛性II型ベータ-ターンをもたらした。
【0223】
図32A図32Cは、MNEI(A)、DM09(B)、及びDM31(C)の水素結合を実証する。ループ領域は、四角で囲まれている。
【0224】
図33は、DM31ループ構造がベータ-ターンの構造的定義:DM31設計ループの構造、及び概略的ベータ-ターンと一致することを示す。
【0225】
実施例2:MNEIデザイナータンパク質DM13~DM33のクローニング、発現、及び特徴付け。
組み換えMNEIタンパク質を、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside、IPTG)で誘導されたT7プロモーター下でE.coli BL21(DE3+)において生成した。この系を使用して、MNEIタンパク質を高密度発酵プロセスにおいて細胞質タンパク質(溶解性画分)として発現させた。デザイナーMNEI(Designer MNEI、DM)は、最大11%のアミノ酸置換を有する設計されたタンパク質である。2つのDM分子が、本発明の発明者に対して国際公開第2019/215730号に開示された(DM08及びDM09)。両方のタンパク質は、MNEIの2位、23位、及び65位に3つの置換を含有し、より高い熱安定性及び増加した安定性をもたらす。
【0226】
本発明は、35位、36位、及び70位でDM08又はDM09のいずれかに、2位及び23位で置き換えを逆転させて、又は逆転させずに、最大3つの余分なアミノ酸置換を添加するように生成された新規のDM分子を開示する。更に、モネリンB鎖とA鎖とを接続するループから4つのアミノ酸が除去された2つの固有のDM分子を生成した(DM28及びDM29)。次いで、36位及び70位での置換を新たに設計されたループと組み合わせて、3つの追加のバリアントを生成した(DM31、DM32、及びDM33)。DM09(DM30)に対して単一のアミノ酸置換のみを有する1つの追加のバリアントを生成した。
【0227】
全てのDMをE.Coli発酵で生成し、95%超のレベルまで精製した。
【0228】
クローニング
DM08及びDM09の配列に基づく部位指向的変異誘発(site-directed mutagenesis、SDM)を使用して、DM13~DM33を作り出した。
【0229】
DM28~33におけるループ除去について、類似した方法で欠失を行った。表2は、このプロセスに使用されたプライマーを列挙する。全ての最終構築物配列を確認した。
【0230】
【表4】
【0231】
DM13~DM33及びDM-3、8~12のヌクレオチド配列を表3に列挙する。
【0232】
【表5】
【0233】
発酵
全てのDMクローンを、Sartorius BioStatB系を使用する3L容器又はSolaris Jupiter系の2L容器中での発酵に供した。いくつかのDMクローンを、VTT(Finland)及びSciVac(Israel)でアウトソーシングすることによって生成した。全ての発酵は、「High cell-density fermentation of Escherichia coli」by Arie Geerlof-EMBL Hamburg 29 January 2008に基づくプロトコルに従った。
【0234】
精製
全てのDM試料を、以下のステップを使用して精製した。
1.圧力均質機による溶解。
2.マルチモード樹脂上でのタンパク質の捕捉、同じ緩衝液中の増加するNaCl濃度での溶出。
3.以下の群からの樹脂を使用する少なくとも1つの研磨ステップ:
1.イオン交換。
2.疎水性相互作用。
3.サイズ排除。
4.最終微生物濾過(0.2μm)及び-20℃での保存。
【0235】
特徴付け
精製レベル
精製レベルを、ゲル電気泳動、続いてクーマシー染色及び濃度測定分析を使用して評価した。50~500ng/レーンのBSA標準曲線を使用して、20pg/レーンの各タンパク質を流すことによって、濃度測定による分析を行った。全ての試料において、最大汚染は、3%(すなわち、97%純度)に達した。
【0236】
甘味評価
プロの感覚パネルは、0=全く甘くない、及び100=非常に甘いという、0~100の尺度(大きさの推定)で、砂糖溶液で最初に較正されたパネリストを含む。較正後、テイスティング者は、検証されたテイスティングプロトコルに従って同じ尺度で試験試料を等級付けした。スクロースの線形尺度を、2°Bx、4°Bx、6°Bx、及び8°Bxの濃度で得た。
ブリックス(Brix、Bx)=gr/100ml。
初期甘味評価を、選択された効力X4000で各試験において、6°Bxの砂糖、DM09、及び新たに選択されたDMと比較することによって行った。全ての希釈を水のみで行った。試料を、6°Bxスクロース及びDM09を対照として使用して、異なる機会に専門家パネルによって評価した(図1)。
【0237】
DSF及びDSC分析-熱感度
ナノテンパープロメテウス(Nanotemper Prometheus)を使用する示差走査蛍光定量法(DSF)によって相対Tmを決定した。DSFは、容易で迅速かつ正確な、タンパク質の安定性及び凝集の分析のための方法である。DSFは、タンパク質中のトリプトファン及びチロシン残基の蛍光の変化を検出する。トリプトファン及びチロシン残基の蛍光は、それらの近接環境に強く依存する。タンパク質コンフォメーションの変化は、蛍光変化として反映される。蛍光比(330/350)の一次導関数を使用して、変曲点を決定する。二次レポーターフルオロフォアが必要とされないため、タンパク質溶液は、緩衝液組成とは無関係に、250mg/ml~10μg/mlの濃度範囲にわたって分析することができる。DM13~33を、10mMリン酸緩衝液pH7中、0.5mg/mlの濃度で分析した。
【0238】
表4は、改変型タンパク質DM13~DM33の特性を要約する。結果は、タンパク質甘味及び熱安定性の制御におけるいくつかのアミノ酸の役割を示す。E2、E23、及びY65に加えて、70位のロイシンをイソロイシンで置換すると、Tmが2℃増加した。安定性は、36位のリジンをスレオニンで置換することによって更に増加したが、この置換はまた、タンパク質甘味の低減を引き起こした。4アミノ酸ループをもたらすループ設計は、約7~10℃のTmの増加で表される安定性の増加をもたらした。
【0239】
【表6】
【0240】
結論:Tm及び甘味レベルに対する特定のポジションの影響
E2-Nで置換=>Tm及び甘味の増加(DM22とDM23又はDM20とDM21との比較)。
E23-A又はVで置換=>Tmの増加(DM13とDM15又はDM17とDM22との比較)。甘味に対して及ぼす明確な影響はない(他の置換のバックグラウンドに対して)。
E23-A対Vで置換=>(DM09とDM27との比較)。
E23-Iで置換=>Tmの増加(DM13とDM15又はDM17とDM22との比較)。甘味に対して及ぼす明確な影響はない。
N35-Tで置換=>いずれのパラメータに対しても及ぼす明確な影響はない。
K36-Tで置換=>Tmの増加、甘味の強い低減(DM14とDM17、DM24とDM14、又はDM13とDM16との比較)
Y65-R対Kで置換=>(DM08とDM27との比較)
L70-Iで置換=>Tmのわずかな増加、甘味に対して及ぼす明確な影響はない(DM09とDM14又はDM08とDM13との比較)。
【0241】
ループ設計-E50、F52、R53の欠失=>Tmの大きな増加、甘味に対して及ぼす明確な影響はない。
【0242】
実施例3:モネリンデザイナータンパク質DM13についての甘味強度及び安定性の感覚評価
MNEI(図2A)と比較したDM13(図2B)、DM28(図2C)、及びDM31(図2D)の甘味強度の用量応答を行った。パネリストは最初に、0=全く甘くない、及び100=非常に甘いという、0~100の尺度(大きさの推定)で、砂糖溶液で較正された。スクロースの線形尺度を、2°Bx、4°Bx、6°Bx、及び8°Bxの濃度で得た。ブリックス(Bx)=gr/100ml。較正後、テイスティング者は、検証されたテイスティングプロトコルに従って同じ尺度で、増加濃度で試験試料を等級付けした。
【0243】
図2によって実証するように、DM13、DM28、及びDM31は、MNEIよりも4倍甘い。
【0244】
クエン酸緩衝液中、95℃で30秒間の熱処理
クエン酸緩衝液(pH=3)をサーモミックス中で95℃に予熱した。95℃で、DM13(5°Bxイソスイートの濃度で)を緩衝溶液に添加し、この温度で30秒間維持した。30秒後、溶液を直ちに冷凍庫で冷却した。
【0245】
専門家パネル(n=15)は、製品をテイスティングし、甘味強度を0~100の尺度で評価した。各々の処理された製品を、参照(加熱無しの同じ溶液)と比較してテイスティングした。全ての製品をコード番号で提供した。図4に示すように、DM13は、95℃のクエン酸緩衝液中で30秒間安定している。
【0246】
クエン酸緩衝液中、90℃で10分間の熱処理
クエン酸緩衝液(pH3)をサーモミックスで90℃に予熱した。90℃で、DM13(5°Bxイソスイートの濃度で)を緩衝溶液に添加し、この温度で適宜に1分、3分、及び10分間維持した。
【0247】
適当な時間の後、溶液を直ちに冷凍庫で冷却した。
【0248】
専門家パネルは製品をテイスティングし、甘味強度を0~100の尺度で評価した。処理した製品を、参照(加熱せずに同じ溶液)と比較してテイスティングした。全ての製品をコード番号で提供した。図3に示すように、DM13は、90℃のクエン酸緩衝液中で10分間安定している。
【0249】
21℃及び32℃で8週間後のDM13甘味安定性
DM13の貯蔵寿命安定性を、クエン酸緩衝液(0.113%クエン酸、0.016%クエン酸三ナトリウム、99.9%水)中、21℃及び32℃で4週間及び8週間試験した。DM13を5ブリックス当量(効力1:4000)で添加した。
【0250】
処理した製品を専門家パネルによってテイスティングし、新鮮な溶液と比較した。図5A図5Bに示すように、DM13は、両方の温度で8週間安定している。
【0251】
実施例4:デザイナー-MNEI(DM)タンパク質を有するケチャップ及びプレーンヨーグルト配合物
DMタンパク質を有するケチャップの配合を表5に提示する。
【0252】
【表7】
【0253】
DMタンパク質を有するヨーグルトの配合を表6に提示する。
【0254】
【表8】
【0255】
試験方法-味覚タンパク質の専門家パネル
全ての感覚評価を、分析的識別のための訓練された専門家パネルを使用して決定した。感覚専門家パネルを、潜在的なテイスターのスクリーニングプロセスによって確立した。ISO標準(IS 8586-1)に従って行われたスクリーニング試験は、テイスターの感覚感受性、一貫性、及び感覚記憶を調べた。パネルを十分に訓練し、較正する。高い性能結果を維持するために、選択されたパネルを定期的に訓練する。
【0256】
ケチャップ及びプレーンヨーグルトプロトタイプの感覚プロファイル-試験手順:
各カテゴリー(ケチャップ/プレーンヨーグルト)について、専門家パネルによって感覚語彙を決定した。カテゴリーからの広範囲の製品をテイスティングし、カテゴリーを記載する全ての関連感覚属性を上げることによって、感覚語彙を構築した。製品を最もよく記載するために、可能な限り多様な言語を使用する。
【0257】
感覚語彙を有した後、アンケートにおいて製品を記載するために使用されるキー属性を選択する。
【0258】
ケチャップ及びプレーンヨーグルトについての感覚プロファイルの構築:パネリストは、用語集から選択された全ての属性にわたって固定基準点(0)を用いて、二元尺度(-3~+3)で各試験製品を基準品に対して評価した。試験製品が特定の属性(例えば、より甘い、より濃厚など)について基準品より「多い」と評価された場合、正の評価(+1、+2、又は+3)を得、特定の属性(例えば、より甘くない、あまり濃厚ではないなど)について基準品より「少ない」と評価された場合、負の評価(-1、-2、又は-3)を得た。属性の前及び間に、テイスティング者はミネラルウォーターで口をすすぎ、無塩クラッカー及びキュウリを食べ、再び水を飲むように要求された。
【0259】
結果
ケチャッププロトタイプ
図6に実証するように、添加された砂糖が69%低減したケチャッププロトタイプは、DM09を有するケチャッププロトタイプと比較して、より甘くなく、より酸味があり、より塩味があり、舌により強い刺痛を有する。
【0260】
図7は、添加された砂糖が69%低減したケチャッププロトタイプが、全糖ケチャッププロトタイプと比較して、より甘くなく、より酸味があり、かつより明るい色を有することを示す。
【0261】
DM09を有するケチャップ(添加された砂糖が69%低減した)が、全糖ケチャッププロトタイプに非常に類似した感覚プロファイルを有することが実証された(図8)。
【0262】
図9は、DM28を有するケチャップが、より多くの「遅発性」及びより多くの粘着性を有することを除いて、DM09を有するケチャップと比較して類似した感覚プロファイルを有することを実証する。
【0263】
図18は、DM031を有するケチャップ(添加された砂糖が69%低減した)が、DM09を有するケチャップに非常に類似した感覚プロファイルを有することを実証する。
【0264】
1ヶ月後の貯蔵寿命後に、DM09を有するケチャップが、その甘味を失わない。製品に生じる変化は、1ヶ月の貯蔵寿命後のケチャップに典型的なものである(より暗い色、より調味された、より酸味のある、より濃厚な、より滑らかでない質感)(図10)。
【0265】
ヨーグルトプロトタイプ
図11に実証するように、添加された砂糖が33%低減したプレーンヨーグルトが、DM09を有し、かつ添加された砂糖が33%低減したプレーンヨーグルトより甘くない。
【0266】
図12は、DM09を有するプレーンヨーグルト(添加された砂糖が33%低減した)が、全糖ヨーグルトプロトタイプに類似した感覚プロファイルを有することを実証する。
【0267】
図13に示すように、DM28を有するイチゴヨーグルトが、わずかにより酸味があることを除いて、DM09を有するイチゴヨーグルトに類似した感覚プロファイルを有する。
【0268】
図19は、DM31を有するイチゴヨーグルトが、DM09を有するイチゴヨーグルトに類似した感覚プロファイルを有することを実証する。
【0269】
図14は、2週間の貯蔵寿命後に、DM09を有するプレーンヨーグルトが、DM09を有する新鮮なプレーンヨーグルトに類似した感覚プロファイルを有することを実証する。
【0270】
実施例5:甘味料の組み合わせ
甘味料についての感覚プロファイル-試験手順:
多くの甘味料及び甘味料の組み合わせをスクリーニングした。最良の結果を有する甘味料の組み合わせは、ステビア対ステビア+DM09、並びにラカンカとステビアとの組み合わせ対ラカンカ、ステビア、及びDM09の組み合わせであった。各甘味溶液は、5°Bxに相当する最終濃度にあった(2つの甘味料の組み合わせにおいて、各甘味料は、2.5°Bxに相当する濃度にあり、3つの甘味料の組み合わせにおいて、各甘味料は、1.7°Bxに相当する濃度にあった)。
【0271】
アンケートにおける感覚属性を、パネリストの予備的なテイスティングによって決定した。
【0272】
各甘味料溶液についての感覚プロファイルの構築:パネリストは、各試験溶液(甘味料+DM09/DM28)を、基準液(DM09/DM28を有しない甘味料)に対して、選択された属性にわたって固定基準点(0)を用いて二元尺度(-3~+3)で評価した。試験製品が特定の属性(例えば、より甘い、より残味があるなど)について基準品より「多い」と評価された場合、正の評価(+1、+2、又は+3)を得、特定の属性(例えば、より残味がないなど)について基準品より「少ない」と評価された場合、負の評価(-1、-2、又は-3)を得た。
【0273】
テイスティングの前及び間に、テイスティング者はミネラルウォーターで口をすすぎ、無塩クラッカー及びキュウリを食べ、再び水を飲むように要求された。
【0274】
レモン風味ドリンクプロトタイプ
DMタンパク質を有するレモン風味ドリンクの配合を表7~表8に提示する。
【0275】
【表9】
【0276】
【表10】
【0277】
結果
図15に示すように、ステビア及びDM09を有する水溶液は、同じ甘味レベル当量で、ステビアを単独で有する水溶液より甘い。図16は、ラカンカ、ステビア、及びDM09の組み合わせを有する水溶液が、同じ甘味レベル当量で、ラカンカ及びステビアのみを有する水溶液と比較して、より甘く、より短い「遅発性」であることを実証する。
【0278】
図17に示すように、レモン風味ドリンク(ステビアを有する50%の添加砂糖低減(5°Bx当量)が、ステビア及びDM09(各々2.5°Bx当量)に非常に類似した感覚プロファイルを有する。
【0279】
実施例6:デザイナーモネリン(DM)タンパク質を有するチューインガムプロトタイプ
チューインガムは、通常、ガムベース、軟化剤、甘味料、及び風味料から構成される。ガムベースは、チューインガムにその「咀嚼」を与えるものである。それは、ガムに所望の質感を与える食品グレードのポリマー、ワックス、及び軟化剤の組み合わせから作製される。
【0280】
DMタンパク質を有するチューインガムの配合を表9に提示する。
【0281】
【表11】
【0282】
調製指示:
最初に、ガムベースを加熱し、溶融した塊をミキサーに入れる。
【0283】
次に、成分1~13を継続した混合中に徐々に添加する。
【0284】
次いで、塊を混練して、ガムを滑らかにし、形成し、成形する。
【0285】
糖アルコール及び人工甘味料を含有する参照チューインガム試料を、甘味タンパク質が添加された同量の糖アルコール及び人工甘味料を有するチューインガム試料と比較する。
【0286】
0.01~0.05重量%の甘味タンパク質をレシピに添加した。
【0287】
甘味タンパク質効力は、4000~8000であり、48~56ブリックスに相当する。
【0288】
感覚パネル:
チューインガムの感覚プロファイルを、分析的識別のための訓練された専門家パネルを使用して構築した。
【0289】
パネリストは、試験した各チューインガム製品を、アンケートにおける全ての属性にわたって評価した。30秒後、2分後、及び4分後に属性を測定した。
【0290】
製品の前及び間に、テイスティング者はミネラルウォーターで口をすすぎ、無塩クラッカー及びキュウリを食べ、再び水を飲むように要求された。
【0291】
結果
図20に示すように、DM09を有するチューインガムが、30秒間の咀嚼後にDM09を有しないチューインガムより甘い。
【0292】
実施例7:デザイナーMNEI(DM)タンパク質を有するピーナッツバタープロトタイプ
DMタンパク質を有するピーナッツバターの配合を表10に提示する。
【0293】
【表12】
【0294】
全ての成分を混合物が均質になるまで混合する。
【0295】
結果
図21に示すように、DM09、50%の砂糖低減を有するピーナッツバターが、全糖ピーナッツバターに非常に類似した感覚プロファイルを有する。
【0296】
実施例8:デザイナーMNEI(DM)タンパク質を有するアイスコーヒープロトタイプ
DMタンパク質を有するアイスコーヒーの配合を表11に提示する。
【0297】
【表13】
【0298】
コーヒー、砂糖、マルトデキストリン、及びDM09を混合して、組み合わせ混合物とする。次いで、混合物が均質になるまで、7~9gの混合物を89~94gのミルクと混合する。
【0299】
結果
図22に示すように、DM09(70%の砂糖低減)を有するアイスコーヒーが、DMを有しないアイスコーヒー(70%の砂糖低減)より甘い。
【0300】
実施例9:クランベリージュースプロトタイプ
DMタンパク質を有するクランベリージュースの配合を表12~表15に提示する。
【0301】
【表14】
【0302】
【表15】
【0303】
【表16】
【0304】
【表17】
【0305】
結果
図23は、クランベリージュース(40%の砂糖低減、ステビア、及びDM09)が、全糖クランベリージュースに類似した甘味を有することを実証する。図24は、DM28を有するクランベリージュースが、DM09を有するクランベリージュースより甘いことを実証する。図25は、クランベリージュース(40%の砂糖低減、ステビア、及びDM31)が、40%の砂糖低減、ステビア、及びDM09を有するクランベリージュースに類似した感覚プロファイルを有することを実証する。
【0306】
実施例10:乾燥クランベリー及びモモレザープロトタイプ
DMタンパク質を有する乾燥クランベリーの配合を表16~表18に提示する。
【0307】
【表18】
【0308】
クランベリーを、クランベリーが45~60°Bx(全糖適用の場合)又は20~30°Bx(DM適用の場合)に達するまで、最大6時間1:3の比で注入シロップに浸漬し、次いでクランベリーを70~86°Bx(全糖適用の場合)又は33~45°Bx(DM適用の場合)に達するまで、70~120℃でオーブン乾燥させた。
【0309】
【表19】
【0310】
クランベリーを45~60°Bx(全糖適用の場合)又は25~38°Bx(DM適用の場合)に達するまで、最大6時間1:3の比で注入シロップに浸漬し、次いでクランベリーを74~84°Bx(全糖適用の場合)又は42~54°Bx(DM適用の場合)に達するまで、70~120℃でオーブン乾燥させた。
【0311】
【表20】
【0312】
クランベリーを、クランベリーが45~60°Bx(全糖適用の場合)又は20~30°Bx(DM適用の場合)に達するまで、2~6時間1:3の比で注入シロップに浸漬した。次いで、クランベリーを70~120℃でオーブン乾燥させる。乾燥は、クランベリーが全糖適用の場合は70~86°Bx又はDM適用の場合は33~45°Bxに達すると完了したとみなす。2時間後、クランベリーをオーブンから取り出し、混合物(マルトデキストリン及び乾燥DM09)を乾燥クランベリー上に噴霧する(混合物噴霧量は、10%の添加砂糖に相当し、全糖レシピからこの量を計算した)。クランベリーをオーブンに戻し入れ、70~120℃で更に10~30分間更に乾燥させる。
【0313】
DM09を有するモモレザーの配合を表19に提示する。
【0314】
【表21】
【0315】
モモを剥き、種を除去した。剥いたモモを、フードプロセッサー内でクエン酸とブレンドして滑らかなペーストにした。次いで、DM09を均質ブレンドに添加した。混合物を注ぎ、滑らかにして薄い均一な層にし、乾燥するまで脱水炉中で、40℃で9~10時間乾燥させた。乾燥したモモレザーを取り出し、冷却した。レザーを巻いて、気密容器に保存した。
【0316】
結果
図26は、乾燥クランベリー(50%の砂糖低減及びDM09)が、乾燥クランベリー(50%の砂糖低減)と比較してより甘いことを実証する。
【0317】
図27は、DM09を有するモモレザーが、DM09を有しないモモレザーより甘いことを実証する。
【0318】
実施例11:デザイナーMNEI(DM)タンパク質を有するアイス緑茶プロトタイプ
DMタンパク質を有するアイス緑茶の配合を表20に提示する。
【0319】
【表22】
全糖アイス茶は、8g/100mlを含有する。
**緑茶バッグを95℃の水中に1.5分間浸漬することによって、緑茶抽出物を作製する。
【0320】
結果
図28に示すように、40%の添加砂糖低減+DM09及びステビアを有するアイス緑茶が、ステビアを有しない40%の添加砂糖低減を有するアイス緑茶と比較してより甘い。
【0321】
実施例12:デザイナーMNEI(DM)タンパク質を有するマラビプロトタイプ
DMタンパク質を有するマラビの配合を表21に提示する。
【0322】
【表23】
【0323】
ミルク、クリーム、砂糖、及びバラ水を100℃に加熱した。その間、コーン粉を水と混合した。液体が100℃に達したら、コーン粉を添加し、混合した。温度が60℃に下がったら、DM31を添加し、混合した。デザートを給仕皿に注ぎ、冷却した。
【0324】
結果
図29に示すように、50%の添加砂糖低減+DM31を有するマラビが、50%の添加砂糖低減を有するマラビと比較してより甘い。
【0325】
実施例13:インビトロ消化性研究
消化性研究の目的は、消化後の胃腸管において、甘味料として使用されるDMタンパク質の結末を決定することであった。試験したタンパク質は、Escherichia coli(E.Coli)BL21(DE3)における精密発酵によって生成されたDM31タンパク質であった。
【0326】
インビトロ消化性静的モデルを、INFOGESTのプロトコル(Nature Protocols 14,991-1014(2019))に従って行った。
【0327】
インシリコアレルゲン性分析を、消化モデルの終わりに得られた消化ペプチドに対して行った。
【0328】
消化性サイクルは、経口消化(M)、胃消化(G)、及び十二指腸消化(D)を含む。使用した消化酵素:胃ペプシン(模擬胃流体(Simulated Gastric Fluid、SGF)中で調製-(2,000U/ml SGF))、消化十二指腸酵素を、模擬十二指腸流体(Simulated Duodenal Fluid、SDF)-トリプシン(100U/mL SDF)、及びキモトリプシン(25U/mL SDF)中で調製した。陽性対照は、既知の完全に消化可能なタンパク質、α-ラクトアルブミンであった。陰性対照は、タンパク質の存在を有しなかった。
【0329】
使用した試料分析:タンパク質SDSゲル-各消化相のタンパク質試料を16.5%SDS PAGEトリシンタンパク質ゲル上で泳動させ、クーマシーブルーを使用して染色した。
【0330】
質量分光ペプチドの特定:各サイクルの2回の反復、G及びDを、Q-Exactiveプラス(Thermo)を使用してSmoller Proteomics Center,TechnionにおいてLC-MS/MSによって分析し、DMの配列に対するDiscoverソフトウェア及び宿主微生物(E-coli)データベースによって特定した。
【0331】
結果
図34に示すように、DM31タンパク質は、胃相の終わりに部分的に消化され、十二指腸相の終わりに完全に消化される。INFOGESTプロトコルを使用した静的モデルによって得られた結果は、生理的消化性プロセスの間のDMタンパクの消化性を明確に実証する。
【0332】
DM-31消化の間、腸管内で産生されるペプチドは、アレルゲン性リスクを有しない。結果は、DM-31消化がいかなる安全性の懸念とも関連しないことを実証する。
【配列表フリーテキスト】
【0333】
配列番号1: 合成配列
配列番号2: 合成配列
配列番号3: 合成
配列番号4: 合成
配列番号5: 合成
配列番号6: 合成
配列番号7: 合成
配列番号8: 合成
配列番号9: 合成
配列番号10: 合成
配列番号11: 合成
配列番号12: 合成
配列番号13: 合成
配列番号14: 合成
配列番号15: 合成
配列番号16: 合成
配列番号17: 合成
配列番号18: 合成
配列番号19: 合成
配列番号20: 合成
配列番号21: 合成
配列番号22: 合成
配列番号23: 合成
配列番号24: 合成
配列番号25: 合成
配列番号26: 合成
配列番号27: 合成
配列番号28: 合成
配列番号29: 合成
配列番号30: 合成
配列番号31: 合成
配列番号32: 合成
配列番号33: 合成
配列番号34: 合成
配列番号35: 合成
配列番号36: 合成
配列番号37: 合成
配列番号38: 合成
配列番号39: 合成
配列番号40: 合成
配列番号41: 合成
配列番号42: 合成
配列番号43: 合成
配列番号44: 合成
配列番号45: 合成
配列番号46: 合成
配列番号47: 合成
配列番号48: 合成
配列番号49: 合成
配列番号50: 合成
配列番号51: 合成
配列番号52: 合成
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30A
図30B
図31A
図31B
図32
図33A
図33B
図34A
図34B
【配列表】
2023554491000001.app
【国際調査報告】