(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】共結晶のCDK阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 401/12 20060101AFI20231220BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20231220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231220BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231220BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231220BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
A61K31/5377
A61P35/00
A61P37/06
A61P29/00
A61P31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537470
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 IB2021061895
(87)【国際公開番号】W WO2022130304
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】202041055174
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523039020
【氏名又は名称】オーリジーン オンコロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バート, ウダイ
(72)【発明者】
【氏名】ボカリアル, ラナディープ
(72)【発明者】
【氏名】バディガー, サンガメッシュ エシュワラッパ
(72)【発明者】
【氏名】デヴァナタン, クリシュナスワーミ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC22
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA14
4C086NA20
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB31
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、式(I)のフマル酸化合物及びその結晶形態、ならびに、これらの調製方法に関する。(I)本発明はまた、CDK7により媒介される様々な疾患または障害、特に、がんまたは他の増殖性疾患を治療するための医薬用途に好適な調製物に関する。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物のフマル酸塩である、塩:
【化1】
【請求項2】
前記塩が結晶性である、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
形態1を有する、請求項2に記載の塩。
【請求項4】
式(I)の化合物:
【化2】
と、フマル酸との共結晶。
【請求項5】
式(I)の化合物とフマル酸のモル比が1:1である、請求項4に記載の共結晶。
【請求項6】
約15.0±0.2の2θ角において少なくとも1つのピークを含む、X線粉末回折パターンを特徴とする、請求項4または5に記載の共結晶。
【請求項7】
約:5.0±0.2、10.0±0.2、10.5±0.2、15.0±0.2、18.7±0.2、及び19.8±0.2から選択される2θ角において、少なくとも1つのピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項4~5のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項8】
約:5.0±0.2、10.0±0.2、10.5±0.2、15.0±0.2、18.7±0.2、及び19.8±0.2から選択される2θ角において、少なくとも2つのピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項4~5のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項9】
約:5.0±0.2、10.0±0.2、10.5±0.2、15.0±0.2、18.7±0.2、及び19.8±0.2から選択される2θ角において、少なくとも3つのピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項4~5のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項10】
約:5.0±0.2、10.0±0.2、10.5±0.2、15.0±0.2、18.7±0.2、及び19.8±0.2の2θ角においてピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項4~5のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項11】
約:5.0±0.2、10.0±0.2、10.5±0.2、15.0±0.2、18.7±0.2、19.8±0.2、20.0±0.2、22.0±0.2、及び22.5±0.2から選択される2θ角において、少なくとも4つのピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項4~5のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項12】
約:5.0±0.2、10.0±0.2、10.5±0.2、15.0±0.2、18.7±0.2、19.8±0.2、20.0±0.2、22.0±0.2、及び22.5±0.2の2θ角においてピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項4~5のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項13】
約:5.0±0.2、10.0±0.210.5±0.2、12.0±0.2、14.8±0.2、15.0±0.2、15.6±0.2、17.6±0.2、18.7±0.2、19.8±0.2、20.0±0.2、20.1±0.2、21.2±0.2、22.0±0.2、22.5±0.2、23.4±0.2、24.0±0.2、25.0±0.2、26.1±0.2、26.8±0.2、27.4±0.2、及び36.6±0.2の2θ角においてピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項4~5のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項14】
実質的に
図2に示すXRDパターンを特徴とする、請求項4~13のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項15】
示差走査熱量測定により測定すると、約195℃~約210℃において吸熱転移を有する、請求項4~14のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項16】
示差走査熱量測定により測定すると、約195℃~約205℃、約198℃~約205℃、及び約199℃~約204℃から選択される吸熱転移を有する、請求項4~15のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項17】
前記吸熱転移が203℃±3℃における、請求項15または16に記載の共結晶。
【請求項18】
実質的に
図4に示す熱重量分析を有する、請求項4~17のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項19】
実質的に
図8に示す動的水蒸気吸着を有する、請求項4~18のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項20】
式(I)のフマル酸化合物の調製方法であって、
a) フマル酸を、前記式(I)の化合物:
【化3】
と、溶媒とを含む混合物に加えることと、
b) 前記混合物から前記式(I)のフマル酸化合物を得ることと、
を含む、前記方法。
【請求項21】
前記混合物が、前記式(I)の化合物の溶液を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記フマル酸が溶媒に溶解している、請求項20~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒が、メタノール、アセトニトリル、アセトン、アニソール、ジクロロメタン、ジクロロエタン、エタノール、酢酸メチル、n-プロピルアセテート、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、イソブチレン、アセテート、メチルシクロヘキサン、メチルtert-ブチルエーテル、n-ヘキサン、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、もしくは水、または、これらのいずれかの混合物である、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記式(I)のフマル酸化合物を得ることが、
i. 前記式(I)の化合物とフマル酸とを含む混合物を撹拌することと、
ii. 前記混合物を周囲温度まで冷却することで懸濁液を形成することと、
iii. 前記式(I)のフマル酸化合物を前記懸濁液から単離することと、
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記式(I)のフマル酸化合物を単離することが、前記混合物から前記式(I)のフマル酸化合物を濾過することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記式(I)のフマル酸化合物が実質的に純粋な形態である、請求項20~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記式(I)のフマル酸化合物の純度が、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、及び約99%から選択される、請求項20~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
式(I)のフマル酸結晶性化合物、または前記式(I)の化合物とフマル酸との共結晶の調製方法であって、
【化4】
a) 前記式(I)のフマル酸化合物と溶媒とを含む混合物を任意選択的に加熱することと、
b) 前記混合物から前記式(I)のフマル酸化合物を結晶化することと、
を含む、前記方法。
【請求項29】
混合物が、前記溶媒に溶解した、前記式(I)のフマル酸化合物の溶液である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記溶媒が、メタノール、エタノール、アニソール、イソプロパノール、ブタノール、1,2-ジメトキシエタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、メチル=tert-ブチルエーテル、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、及びキシレン、またはこれらのいずれかの組み合わせから選択される、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記混合物から前記式(I)のフマル酸化合物を結晶化する工程が、前記溶媒を周囲温度にて蒸発させることで、前記共結晶を溶液から沈殿させることを含む、請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記混合物から前記式(I)のフマル酸化合物を結晶化する工程が、前記混合物を周囲温度以下まで冷却することで共結晶を沈殿させることを含む、請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
式(I)のフマル酸結晶性化合物、または前記式(I)の化合物とフマル酸との共結晶の調製方法であって、
【化5】
a) 貧溶媒を、前記式(I)のフマル酸化合物と溶媒とを含む混合物に加えることと、
b) 前記混合物から前記式(I)のフマル酸化合物を結晶化することと、
を含む、前記方法。
【請求項34】
前記混合物を加熱して溶液を形成する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記溶媒が、アセトン、酢酸n-プロピル、アセトニトリル、メタノール、酢酸イソプロピル、イソブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、酢酸n-ブチル、1-ペンタノール、1-プロパノール、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸イソブチル、イソブタノール、またはエタノールである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記式(I)のフマル酸化合物を含む前記混合物が溶液であり、前記混合物から前記式(I)のフマル酸化合物を結晶化する工程が、前記溶液を過飽和させることで、前記式(I)のフマル酸化合物を前記溶液から沈殿させることを含む、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記溶液を過飽和させる工程が、貧溶媒を加えることを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記溶液を過飽和させる工程が、前記溶液を周囲温度以下まで冷却することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記溶液を過飽和させる工程が、溶液温度を、約20℃超で維持することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記貧溶媒が、ジクロロメタン、ジクロロエタン、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、酢酸イソブチル、酢酸イソブチレン、メチルシクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、及びこれらの混合物である、請求項33~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記貧溶媒が、1,2-ジクロロエタン、n-ヘキサン、及びメチルシクロヘキサンである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記式(I)のフマル酸化合物を含む前記混合物がスラリーである、請求項28~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記式(I)のフマル酸結晶性化合物を単離することをさらに含む、請求項28~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記式(I)のフマル酸結晶性化合物を単離することが、前記混合物から前記式(I)のフマル酸結晶性化合物を濾過することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記式(I)のフマル酸化合物が実質的に純粋な形態である、請求項28~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記式(I)のフマル酸結晶性化合物の純度が、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、及び約99%から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記式(I)のフマル酸結晶性化合物が、請求項1~7のいずれか1項に記載の式(I)のフマル酸結晶性化合物である、請求項28~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
請求項1~19のいずれか1項に記載の、式(I)のフマル酸化合物、または式(I)の化合物-フマル酸共結晶と、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項49】
対象における、選択的転写CDKにより媒介される疾患及び/または障害の治療方法であって、必要とする前記対象に、請求項1~19のいずれか1項に記載の、治療に有効な量の式(I)のフマル酸化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項50】
前記選択的転写CDKが、CDK7、CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
選択的転写CDKにより媒介される前記疾患及び/または障害が、がん、炎症性障害、自己炎症性障害、及び感染症からなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記がんが、胸部、肝臓、肺、結腸、腎臓、膀胱(小細胞肺癌を含む)、非小細胞肺癌、頭頸、甲状腺、食道、胃、膵臓、卵巣、胆嚢、子宮頸、前立腺及び皮膚(扁平上皮細胞癌を含む)の癌を含むがん腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、毛様細胞性リンパ腫、骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、及びバーキットリンパ腫を含む、リンパ系リネージの造血性腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、ならびに前骨髄球性白血病を含む、骨髄リネージの造血性腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉系由来の腫瘍;星状膠細胞腫、神経芽細胞腫、膠腫、及び神経鞘腫を含む、中枢神経系及び末梢神経系の腫瘍;ならびに、精上皮腫、黒色腫、骨肉腫、奇形癌、ケラトアカントーマ、色素性乾皮症、甲状腺濾胞性癌、及びカポジ肉腫を含む他の腫瘍からなる群から選択されるがんである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
(S,E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブタ-2-エナミド、またはその薬学的に許容される塩である、化合物。
【請求項54】
(S,E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブタ-2-エナミドと、薬学的に許容される担体または賦形剤と、を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月18日に出願されたインドの仮出願番号202041055174の利益を主張し、当該明細書はその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、結晶形態を含む、式(I)のフマル酸化合物、及びそれらの調製方法に関する。本発明はまた、上記式(I)のフマル酸化合物を含む医薬組成物、その結晶形態、及び、これらの治療剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
サイクリンH及びMAT1と複合体を形成するCDK7は、Tループの活性化において、細胞周期CDKをリン酸化し、これらの活性を促進する(Fisher et al.,Cell.,Aug 26;78(4):713-24,1994)。そのため、CDK7を阻害することで、特に、少なくとも、大部分の細胞型においては、細胞周期に関して、CDK2、CDK4、及びCDK6に対する絶対要件を欠くことに関して、遺伝子ノックアウト研究での注目に値する証拠が存在する(Malumbres et al.,Nature Cell Biology,11,1275-1276,2009)ことを考慮すると関係している可能性がある、細胞周期の進行を阻害する強力な手段がもたらされることが提示されている一方で、異なる腫瘍はいくつかが必要ではあるが、他の界面層CDK(CDK2、CDK4、CDK6)とは無関係のようである。最近の遺伝及び生化学研究では、細胞周期の進行に対するCDK7の重要性が確認されている(Larochelle et al.,Mol Cell.,M ar 23;25(6):839-50.2007;Ganuza et al.,EM BO J.,May 30;31(11):2498-510,2012)。
【0004】
サイクリン依存性キナーゼ7(CDK7)は、細胞周期CDKを活性化し、基本転写因子IIヒト(TFIIH)のメンバーである。CDK7は、転写、及び場合によっては、DNA修復においてもまた、役割を果たす。三量体Cak複合体CDK7/サイクリンH/MAT1もまた、基本転写/DNA修復因子IIHである、TFIIHの構成要素である(Morgan,D.0.,Annu.Rev. Cell Dev.Biol.13,261-91,1997)。TFIIHサブユニットとして、CDK7は、RNAポリメラーゼII(pol II)の最大のサブユニットであるCTD(カルボキシ末端ドメイン)をリン酸化する。哺乳類pol IIのCTDは、コンセンサス配列1YSPTSPS7を含む52個の7塩基繰り返しで構成され、2及び5位におけるSer残基のリン酸化状態が、CTDの機能において決定的な役割を有する可能性が高いということを示しており、RNAP-IIの活性化に重要であることが示されている。CTD 7塩基のSer-2及びSer-5の両方をリン酸化するCDK9(Pinhero et al.,Eur.J.Biochem.,271,pp.1004-1014,2004)とは対照的に、転写開始の一部としてのプロモーターにおいて、RNAP-IIのSer-5(PSS)を主にリン酸化するCDK7(Gomes et al.,Genes Dev.2006 Mar l;20(5):601-12,2006)。
【0005】
CDK7に加えて、他のCDKも、RNA pol(II)CTDをリン酸化して調節することが報告されている。他のCDKとしては、正の転写伸長因子(P-TEFb)の活性形態を構成する、Cdk9/サイクリンT1またはT2(Peterlin and Price,Mol Cell.,Aug 4;23(3):297-305,2006)、ならびに、RNAPII CTDキナーゼの最新のメンバーとしての、Cdkl2/サイクリンK及びCdkl3/サイクリンK(Bartkowiak et al.,Genes Dev.,Oct l 5;24(20):2303-16,2010;Blazek et al.,Genes Dev.Oct 15;25(20):2158-72,2011)が挙げられる。
【0006】
RNAP II CTDリン酸化の妨害は、抗アポトーシスBCL-2ファミリーのものを含む、半減期の短いタンパク質に優先的に影響を及ぼすことが示されている(Konig et al.,Blood,1,4307-4312,1997;The transcriptional non-selective cyclin-dependent kinase inhibitor flavopiridol induces apoptosis in multiple myeloma cells through transcriptional repression and down-regulation of Mcl-1;Gojoet al.,Clin.Cancer Res.8,3527-3538,2002)。
【0007】
CDK7酵素複合体は、細胞内での複数の機能:細胞周期の調節、転写制御、及びDNA修復に関与していることを、このことは示唆している。1つのキナーゼが、このような多様な細胞プロセス(これらのいくつかは、相互排他的でさえある。)に関与していることが分かったのは、驚くべきことである。CDK7のキナーゼ活性における、細胞周期依存性の変化を発見しようとする複数の試みが成功していないままであることもまた、不可解である。その基質であるCDC2の活性及びリン酸化状態は、細胞周期の間に変動するため、このことは予想外である。実際、cdk7の活性は、Cdc2/2サイクリンA、及び、Cdc2/サイクリンB複合体の両方、ならびに、細胞分裂に必要であることが示されている(Larochelle,S.et al.Genes Dev 12,370-81,1998)。実際、CTDキナーゼを標的にする、非選択性汎CDK阻害剤であるフラボピリドールは、慢性リンパ性白血病(CLL)の治療に有効性を示しているが、不十分な毒性プロファイルに苦しめられている(Lin et al.,].Clin.Oncol.27,6012-6018,2009;Christian et al.,Clin.Lymphoma Myeloma,9,Suppl.3,Sl79-S185,2009)。
【0008】
国際公報のWO2016193939は、CDK7阻害剤、当該阻害剤の調製プロセス、当該阻害剤を含む医薬組成物、ならびに、様々な障害の治療における、特に、がん及び他の増殖性疾患の治療における、プロテインキナーゼ阻害剤としての治療剤としての、当該阻害剤の使用について記載しており、当該公報は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれている。CDK7の阻害剤は、現在、がんの治療のために開発されている。創薬のためには、その調製、精製、再現性、安定性、バイオアベイラビリティ、及び、他の特徴に関して、望ましい特性を有する薬剤の形態を用いることが一般的には有利である。
【0009】
したがって、例えば、安全、有効、かつ高品質の医薬品の製造を容易にすることに関する好適な特性を有する薬学的に有用な製剤及び剤形を調製するための、CDK7阻害分子の新しい形態、塩、及び/または、共結晶が求められている。
【発明の概要】
【0010】
式(I)の化合物は、(S,E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブタ-2-エナミドとしても知られている。本開示は、高収率及び純度を有する式(I)の化合物のプロセス及び合成を提供する。発明した、式(I)のフマル酸化合物は、その遊離塩基形態と比較して、予想外の物理化学的性質、例えば、高い安定性、高い純度、及び低い吸湿性を示す。
【0011】
一態様では、本発明は、式(I)のフマル酸化合物を提供する:
【化1】
【0012】
一態様では、本発明は、式(I)の化合物とフマル酸とを含む共結晶を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、式(I)の化合物-フマル酸(1:1)共結晶を提供する:
【化2】
【0014】
さらなる態様では、本発明は、式(I)のフマル酸化合物の調製方法に関する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、式(I)のフマル酸結晶化合物の調製方法に関する。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、式(I)のフマル酸化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0017】
別の一態様では、本発明は、本明細書に記載する種々の疾患、障害、または病状を治療するための、式(I)のフマル酸化合物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】式(I)のフマル酸化合物の単結晶の、非対称単位を示す。
【
図2】25℃で収集した、式(I)のフマル酸形態の化合物1のXRPDパターンを示す。
【
図3】式(I)のフマル酸化合物の、示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを示す。
【
図4】式(I)のフマル酸化合物の熱重量測定(TGA)を示す。
【
図5A】式(I)のフマル酸化合物の、光学及び偏光顕微鏡法研究を示す。
【
図5B】式(I)のフマル酸化合物の偏光顕微鏡法研究を示す。
【
図6A】25℃、40℃、及び60℃で収集した、式(I)のフマル酸形態の化合物1の、VT-XRDパターンの重なりを示す。
【
図6B】様々な湿度条件で収集した、式(I)のフマル酸形態の化合物1のVH-XRPDパターンの重なりを示す。
【
図7】異なる条件に晒された、式(I)のフマル酸形態の化合物1のXRPDパターンの重なりを示す。
【
図8】式(I)のフマル酸形態の化合物1の、動的水蒸気吸着(DVS)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で用いる場合、以下の言葉及び語句は一般に、それらが用いられる文脈が別の意味を示すような場合を除き、後述する意味を有するものと意図される。
【0020】
本明細書で使用される場合、交換可能に使用される「対象」、「個体」または「患者」という用語は、哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類を含む任意の動物、最も好ましくはヒトを指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、または「治療」という用語は、(1)疾患を阻害すること、例えば、疾患、病状、症候群、または障害の病理または総体症状を経験しているかまたは示している個体における疾患、病態、または障害を阻害すること(すなわち、病理及び/または総体症状のさらなる発達を停止させること)、ならびに(2)疾患を改善または抑制すること、例えば、疾患、病態、または障害の病理または総体症状を経験しているかまたは示している個体における疾患、病態、または障害を改善すること(すなわち、病理及び/または総体症状を反転させること)、例えば疾患の重症度を減少させることを指す。一実施形態では、「治療する」、「治療すること」、または「治療」という用語は、疾患、病状、症候群、または障害の開始または発症または進行を予防するまたは遅延させることを意味する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または他の問題もしくは合併症のないヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した、安全な医学的判断の範囲内にあり、妥当な利益/リスク比に見合う、化合物、材料、組成物及び/または剤形を指す。
【0023】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体または賦形剤」という語句は、液体もしくは固体充填剤、希釈剤、溶媒、または、封入材料などの、薬学的に許容される物質、組成物、またはビヒクルを意味する。賦形剤または担体は一般に、安全で無毒であり、生物学的にも別の学問的にも望ましくないものではなく、獣医学での使用、加えて、ヒトでの薬学的使用に許容される賦形剤または担体が挙げられる。一実施形態では、各構成成分は、本明細書に定義されるように「薬学的に許容される」。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.;Lippincott Williams & Wilkins:Philadelphia,Pa.,2005;Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th ed.;Rowe et al,Eds.;The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2009;Handbook of Pharmaceutical Additives,3rd ed.;Ash and Ash Eds.;Gower Publishing Company:2007;Pharmaceutical Preformulation and Formulation,2nd ed.;Gibson Ed.;CRC Press LLC:Boca Raton,Fla.,2009を参照されたい。
【0024】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」とは、存在する酸または塩基部分をその塩形態に転換することにより、親化合物が修飾される、開示した化合物の誘導体を意味する。薬学的に許容される塩の例としては、塩基性残基のミネラルまたは有機酸塩(例えばアミン)、酸性残基のアルカリまたは有機塩(例えばカルボン酸)などが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の薬学的に許容される塩としては、例えば、無毒性無機または有機酸から形成される、親化合物の従来の無毒性塩が挙げられる。本開示の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般的に、このような塩は、これら化合物の遊離酸または塩基形態を、水中もしくは有機溶媒中、またはこの2つの混合物中(一般に、エーテル、酢酸エチル、アルコール、またはアセトニトリル(ACN)などの非水媒体が好ましい。)で、化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることにより調製することができる。
【0025】
「がん」 は: 心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形腫;頭頸部:頭頸部の扁平上皮癌、喉頭癌及び下咽頭癌、鼻腔癌及び鼻傍洞癌、鼻咽頭癌、唾液腺癌、口腔癌及び咽頭癌;肺:気管支原性癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌、非小細胞の肺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支の腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫性過誤腫、中皮腫;結腸:大腸癌、腺癌、消化管間質の腫瘍、リンパ腫、カルチノイド、ターコット症候群;胃腸:胃癌、胃食道接合部腺癌、食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸 (腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カルポシ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);乳癌: 転移性乳癌、非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌、管状腺癌、髄質癌、粘液性癌、非浸潤性小葉癌、トリプルネガティブ乳癌;泌尿生殖器:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病、腎細胞癌)、膀胱及び尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌、尿路上皮癌)、前立腺(腺癌、肉腫、去勢耐性前立腺癌)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胚性癌腫、奇形癌腫、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫)、明細胞癌、乳頭癌;肝臓:肝癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨形成性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(網状細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞性軟骨腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、及び巨細胞腫瘍;甲状腺:甲状腺髄様癌、分化型甲状腺癌、乳頭状甲状腺癌、濾胞性甲状腺癌、ヒュルトレ細胞癌、及び未分化甲状腺癌;神経系:頭蓋骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜腫(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚芽腫[松果体腫瘍]、多形性神経膠芽腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、腫瘍前子宮頸部異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類癌]、肉芽腫-髄腔細胞腫瘍、セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胚性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫);血液:血液(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、ほくろ異形成性母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;ならびに副腎:神経芽細胞腫を含むが、これらに限定されない細胞増殖性疾患の状態を指す。したがって、本明細書で提供されているような「がん性細胞」という用語は、上記で特定された状態のいずれか1つを患う細胞を含む。
【0026】
本明細書で使用する場合、「共結晶(複数可)」とは、特定の化学量論的(モル)比で、同じ結晶格子内に少なくとも2種の不揮発性成分を含む単相結晶性物質であって、当該結晶格子内の配置が、(塩におけるような)イオン結合、または、共有相互作用に基づいておらず、当該構成成分のうちの少なくとも2種が室温で固体である、上記単相結晶性物質を意味する。共結晶は、固有の性質を有する固有の結晶構造を形成する、2種以上の構成成分で構成される。共結晶は、水和物、溶媒和物、及び包接化合物を包含することができる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「結晶形態」という用語は、結晶性物質のある特定の格子構成を指すことを意味する。同じ物質の異なる結晶形態は、一般に異なる結晶格子(例えば、単位格子)を有し、これは、各結晶形態に特有の異なる物理的特性に起因する。場合によっては、異なる格子構成は、異なる水または溶媒含有量を有する。
【0028】
本明細書で使用する場合、「治療に有効な量」とは、そのような治療が必要な哺乳類に投与されたときに、治療をもたらすのに十分な量を意味する。治療に有効な量は、治療される対象、対象の体重及び年齢、病状の重篤度、投与様式などに応じて変化し、当業者により速やかに決定することができる。
【0029】
「実質的に純粋」という用語は、本明細書で使用する場合、90%以上純粋である結晶性多形を意味し、任意の他の化合物、または、結晶形態の代替の多形を10%未満含有することを意味する。好ましくは、結晶性多形は、95%を超えて純粋である、またはさらに、98%を超えて純粋である。
【0030】
「実質的に図~に示すように」という語句は、その図に現れる値の、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも99%を有するパターンを意味する。
【0031】
本明細書で使用する場合、数値または数値範囲を指す場合の「約」という用語は、言及される数値または数値範囲が実験的変動性内(または統計的実験誤差内)の近似値であり、したがってその数値または数値範囲は、例えば、指定された数値または数値範囲の1%~15%で変化し得ることを意味する。
【0032】
各実施形態は、本発明の説明として提供され、本発明の限定として提供されるものではない。実際、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明に記載する化合物、組成物、及び方法に、様々な修正及び変形が行えることが当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として図示または説明されている特徴を別の実施形態に応用して、さらに別の実施形態を生み出してもよい。したがって、本発明は、そのような修正及び変形、ならびにこれらの均等物を含むことが意図される。本発明の他の目的、特徴、及び態様は、以下の詳細な説明に開示されているか、またはそれから明白である。本説明は例示的な実施形態の説明でしかなく、本発明のより広い態様を限定するものとして解釈されるべきではないことが当業者によって理解されるべきである。
【0033】
式(I)のフマル酸化合物
一実施形態では、本発明は、式(I)のフマル酸化合物を提供する:
【化3】
【0034】
一実施形態では、本発明は、式(I)の化合物-フマル酸の共結晶を提供する。
【0035】
一実施形態では、フマル酸に対する式(I)の化合物のモル比は、1:1である。
【0036】
一実施形態では、本発明は、式(I)のフマル酸結晶性化合物を提供する。
【0037】
一実施形態では、本発明は、形態1を有する、式(I)のフマル酸結晶性化合物を提供する。
【0038】
式(I)のフマル酸化合物の同定分析
異なる結晶形態は、固体状態特性決定法によって、例えばX線粉末回折(XRPD)によって特定され得る。他の特性決定法、例えば示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、動的水蒸気吸着(DVS)などは、形態の同定をさらに助けるだけでなく、安定性及び溶媒/水含有量を決定する。
【0039】
屈折(ピーク)のXRPDパターンは、典型的には特定の結晶形態のフィンガープリントとみなされる。XRPDピークの相対強度は、特にサンプルの調製技法、結晶サイズの分布、使用される様々なフィルター、サンプルの取り付け手順、及び用いられる特定の計器に応じて広く変化し得る。場合によっては、機器の種類または設定に応じて、新たなピークが観測され得るか、または既存のピークが消失し得る。本明細書で使用される場合、「ピーク」という用語は、少なくとも約4%の相対高さ/強度の相対高さ強度を有する屈折を指す。さらに、計器の変化及び他の要因は、2θ値に影響を及ぼし得る。したがって、本明細書で報告されるものなどのピーク割り当ては、プラスもしくはマイナス約0.2°(2θ)だけ変化し得、「実質的に」及び「約」という用語は、本明細書でXRPDの文脈において使用される場合、上述の変化を包含することを意味する。
【0040】
一実施形態では、結晶性化合物の多形は、粉末X線回折(XRD)により特性決定される。θは回折角を表し、°で測定される。一実施形態では、XRDで用いられる回折計は、回折角を、回折角シータ(θ)の2倍として測定する。したがって、一実施形態では、本明細書に記載する回折パターンは、角2シータ(2θ)に対して測定されるX線強度を意味する。
【0041】
同様に、DSC、TGA、またはその他の熱的実験に関する温度測定値は、機器、特定の設定、試料調製などに応じて約±3℃変化し得る。したがって、「実質的に」いずれかの図に、または、「約」という用語で示されるとおりのDSCサーモグラムを有する本明細書中で報告される結晶形態は、そのような変化に対応することが理解される。
【0042】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物は結晶形態である。一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物は実質的に結晶性である。
【0043】
一実施形態では、「実質的に結晶性」とは、少なくとも一定の重量パーセントが結晶性である、式(I)のフマル酸化合物を意味する。特定の重量パーセントは、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、及び99.9%を含む。一実施形態では、「実質的に結晶性」とは、少なくとも70%が結晶性である、式(I)のフマル酸化合物を意味する。一実施形態では、「実質的に結晶性」とは、少なくとも80%が結晶性である、式(I)のフマル酸化合物を意味する。一実施形態では、「実質的に結晶性」とは、少なくとも85%が結晶性である、式(I)のフマル酸化合物を意味する。一実施形態では、「実質的に結晶性」とは、少なくとも少なくとも90%が結晶性である、式(I)のフマル酸化合物を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に結晶性」とは、少なくとも95%が結晶性である、式(I)のフマル酸化合物を意味する。一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物は99.9%が結晶性である。
【0044】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物は結晶形態1をとる。
【0045】
一実施では、式(I)のフマル酸結晶性化合物は無水である。
【0046】
一実施形態では、本発明は、式(I)のフマル酸化合物の共結晶を提供する。
【0047】
一実施形態では、式(I)のフマル酸結晶性化合物は、X線回折分析により特性決定される。
【0048】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約5.0±0.2の2θ角において少なくとも1つのピークを含む、X線粉末回折パターンにより特性決定される。
【0049】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約10.0±0.2の2θ角において少なくとも1つのピークを含む、X線粉末回折パターンにより特性決定される。
【0050】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約15.0±0.2の2θ角において少なくとも1つのピークを含む、X線粉末回折パターンにより特性決定される。
【0051】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約12.0±0.2の2θ角において少なくとも1つのピークを含む、X線粉末回折パターンにより特性決定される。
【0052】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約18.0±0.2の2θ角において少なくとも1つのピークを含む、X線粉末回折パターンにより特性決定される。
【0053】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約22.0±0.2の2θ角において少なくとも1つのピークを含む、X線粉末回折パターンにより特性決定される。
【0054】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約24.0±0.2の2θ角において少なくとも1つのピークを含む、X線粉末回折パターンにより特性決定される。
【0055】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約:5.0±0.2、10.0±0.2、10.5±0.2、15.0±0.2、18.7±0.2、及び19.8±0.2においてピークを含むX線粉末回折パターンにより特徴付けられる2θ値を有する。
【0056】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約:5.0±0.2、10.0±0.2、10.5±0.2、15.0±0.2、18.7±0.2、及び19.8±0.2において少なくとも1つ、2つ、または3つのピーク(複数可)を含むX線粉末回折パターンにより特徴付けられる2θ値を有する。
【0057】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約:5.0±0.2、10.0±0.2、10.5±0.2、15.0±0.2、18.7±0.2、19.8±0.2、20.0±0.2、22.0±0.2、及び22.5±0.2においてピークを含むX線粉末回折パターンにより特徴付けられる2θ値を有する。
【0058】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約:5.0±0.2、10.0±0.2、10.5±0.2、15.0±0.2、18.7±0.2、19.8±0.2、20.0±0.2、22.0±0.2、及び22.5±0.2において少なくとも4つのピークを含むX線粉末回折パターンにより特徴付けられる2θ値を有する。
【0059】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、5.0±0.2、10.0±0.210.5±0.2、12.0±0.2、13.6±0.2、14.8±0.2、15.0±0.2、17.6±0.2、18.7±0.2、19.8±0.2、20.0±0.2、21.2±0.2、22.0±0.2、22.5±0.2、24.0±0.2、25.0±0.2、26.1±0.2、及び27.4±0.2の2θ値を有する。
【0060】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約:5.0±0.2、10.0±0.210.5±0.2、12.0±0.2、14.8±0.2、15.0±0.2、15.6±0.2、17.6±0.2、18.7±0.2、19.8±0.2、20.0±0.2、20.1±0.2、21.2±0.2、22.0±0.2、22.5±0.2、23.4±0.2、24.0±0.2、25.0±0.2、26.1±0.2、26.8±0.2、27.4±0.2、及び36.6±0.2においてピークを含むX線粉末回折パターンにより特徴付けられる2θ値を有する。
【0061】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、約:5.0±0.2、10.0±0.210.5±0.2、12.0±0.2、13.6±0.2、14.8±0.2、15.0±0.2、15.6±0.2、16.5±0.2、17.6±0.2、18.7±0.2、19.3±0.2、19.8±0.2、20.0±0.2、20.1±0.2、21.2±0.2、22.0±0.2、22.5±0.2、23.0±0.2、23.4±0.2、24.0±0.2、25.0±0.2、25.6±0.2、26.1±0.2、26.8±0.2、27.4±0.2、28.9±0.2、29.3±0.2、30.1±0.2、30.5±0.2、31.4±0.2、32.2±0.2、33.4±0.2、36.1±0.2、36.6±0.2、38.0±0.2、39.2±0.2、40.2±0.2、40.6±0.2、及び41.0±0.2においてピークを含むX線粉末回折パターンにより特徴付けられる2θ値を有する。
【表1】
【0062】
任意の固体状態の式(I)のフマル酸化合物を説明するための、特性決定情報を本明細書で提供する。しかしながら、そのような特定の形態が指定の組成物に存在することを当業者が決定するには、そのような情報の全てを要するわけではなく、当業者が特定の形態の存在を確認するのに十分であると認識するであろう特性決定情報のいずれかの部分を使用して、特定の形態の同定を達成することができ、例えば、特徴的なピークでも、そのような特定の形態が存在することを当業者が判断するのに十分であり得ることを理解されたい。
【0063】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、
図2に実質的に示すようなXPRDパターンを有する。
【0064】
一実施形態では、示差走査熱量測定(DSC)により、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、融解に対応する、約190℃~約210℃のピーク温度を有する吸熱を示す。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、融解に対応する、約195℃~約210℃から選択される範囲にピーク温度を有する吸熱を示す。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、融解に対応するDSCにより、約195℃~約205℃、約198℃~約205℃、及び、約199℃~約204℃から選択される範囲にピーク温度を有する吸熱を示す。一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、203℃±3℃にピーク温度を有する吸熱を示す。
図3を参照されたい。
【0065】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、
図4に実質的に示すような熱重量分析を有する。
【0066】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、
図8に実質的に示すような動的水蒸気吸着を有する。
【0067】
式(I)のフマル酸化合物の調製方法
一実施形態では、本発明は、式(I)のフマル酸化合物の調製方法であって、
a) フマル酸を、上記式(I)の化合物
【化4】
と溶媒とを含む混合物に加えることと、
b) 上記混合物から上記式(I)のフマル酸化合物を得ることと、
を含む、上記方法を提供する。
【0068】
一実施形態では、混合物は、式(I)の化合物の溶液を含む。一実施形態では、溶液は、溶液に溶解した式(I)の化合物を含む、固体粗物質を含む。一実施形態では、固体粗物質は、約70%~約90%の、式(I)の化合物を含む。
【0069】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物を調製する工程a)において、フマル酸を溶媒に溶解する。
【0070】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物の調製において、溶媒は、メタノール、アセトニトリル、アセトン、アニソール、ジクロロメタン、ジクロロエタン、エタノール、酢酸メチル、酢酸n-プロピル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、イソブチレン、アセテート、メチルシクロヘキサン、メチル=tert-ブチルエーテル、n-ヘキサン、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、もしくは水、または、これらのいずれかの混合物である。
【0071】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物の調製において、溶媒は、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、エタノール、酢酸メチル、n-プロピルアセテート、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、プロパノール、ブタノール、酢酸n-ブチル、メチルシクロヘキサン、メチル=tert-ブチルエーテル、n-ヘキサン、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、もしくは水、または、これらのいずれかの混合物である。
【0072】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物の調製において、溶媒は、メタノール、エタノール、酢酸メチル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、プロパノール、ブタノール、酢酸n-ブチル、メチルシクロヘキサン、もしくは水、または、これらのいずれかの混合物である。
【0073】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物の調製において、溶媒は、メタノール、エタノール、酢酸メチル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、プロパノール、n-ヘキサン、n-ヘプタン、もしくは水、または、これらのいずれかの混合物である。
【0074】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物の調製において、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、もしくは水、または、これらのいずれかの混合物である。
【0075】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物の調製において、溶媒は、メタノールまたはエタノールである。
【0076】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物の調製において、溶媒は、メタノールである。
【0077】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物の調製において、式(I)のフマル酸化合物を得ることは、
i. 上記式(I)の化合物とフマル酸とを含む混合物を撹拌することと、
ii. 上記混合物を周囲温度まで冷却することで懸濁液を形成することと、
iii. 上記式(I)のフマル酸化合物を上記懸濁液から単離することと、
を含む。
【0078】
一実施形態では、工程(i)の、式(I)の化合物とフマル酸とを含む混合物は、50℃~70℃の範囲の温度で撹拌される。一実施形態では、工程(i)の撹拌温度は、55℃~65℃である。一実施形態では、工程(i)の撹拌温度は、60℃~65℃である。
【0079】
一実施形態では、工程(i)の撹拌時間は、2~16時間である。一実施形態では、工程(i)の撹拌時間は、4~10時間である。一実施形態では、工程(i)の撹拌時間は、4~10時間である。一実施形態では、工程(i)の撹拌時間は、4時間である。
【0080】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物を懸濁液から単離する工程は、懸濁液から得た式(I)のフマル酸化合物を濾過することを含む。一実施形態では、懸濁液から得た式(I)のフマル酸化合物を濾過する工程は、懸濁液から得た式(I)のフマル酸化合物を洗浄し、乾燥させることをさらに含む。一実施形態では、懸濁液から濾過した式(I)のフマル酸化合物を、溶媒で洗浄する。一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物をメタノールで洗浄する。
【0081】
一実施形態では、本明細書に記載する方法で調製した式(I)のフマル酸化合物は、実質的に純粋な形態である。一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物の純度は、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、及び約99%から選択される。一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物の純度は、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、及び約98%から選択される。
【0082】
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、1:1、または1:>1、例えば、1:1.3、もしくは1:2などの、遊離塩基:酸のモル比を有してよい。
【0083】
式(I)のフマル酸化合物の結晶化方法
本明細書に記載される固体形態(例えば、結晶性形態)は、特定の利点を有し得、例えば、取り扱いの容易さ、処理の容易さ、貯蔵安定性、及び精製の容易さなどの望ましい特性を有し得る。さらに、結晶形態は、溶解プロファイル、貯蔵寿命、及び生物学的利用能などの医薬製品の性能特性を改善するために有用であり得る。
【0084】
一実施形態では、本発明は、式(I)のフマル酸結晶性化合物の調製方法であって、
a) 上記式(I)のフマル酸化合物と溶媒とを含む混合物を任意選択的に加熱することと、
b) 上記混合物から上記式(I)のフマル酸化合物を結晶化することと、
を含む、上記方法を提供する。
【0085】
一実施形態では、本発明は、式(I)の化合物とフマル酸との共結晶の調製方法であって、
a) 上記式(I)のフマル酸化合物と溶媒とを含む混合物を任意選択的に加熱することと、
b) 上記混合物から上記式(I)のフマル酸化合物を結晶化することと、
を含む、上記方法を提供する。
【0086】
式(I)のフマル酸結晶性化合物の調製方法の一実施形態では、混合物は、溶媒に溶解した式(I)のフマル酸化合物の溶液である。
【0087】
式(I)のフマル酸結晶性化合物の調製方法の一実施形態では、溶媒は、溶媒または溶媒混合物に溶解した式(I)のフマル酸化合物を含む。いくつかの実施形態では、溶液は反応混合物を含む。
【0088】
一実施形態では、混合物はスラリーまたは懸濁液である。一実施形態では、スラリーまたは懸濁液は、式(I)の化合物を含む粗固体物質を含む。
【0089】
式(I)のフマル酸結晶性化合物の調製方法の一実施形態では、溶媒は、アルコール、エーテルケトン、エステル、塩素系溶媒、ニトリル、もしくは炭化水素、またはこれらの組み合わせである。
【0090】
式(I)のフマル酸結晶性化合物の調製方法の一実施形態では、溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、アニソール、イソプロパノール、ブタノール、1,2-ジメトキシエタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、メチル=tert-ブチルエーテル、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、クロロホルム、酢酸イソブチレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、メチルシクロヘキサン、メチル=tert-ブチルエーテル(MTBE)、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、水、及びこれらの混合物から選択される。式(I)のフマル酸結晶性化合物の調製方法の一実施形態では、溶媒は、メタノール、エタノール、アニソール、イソプロパノール、ブタノール、1,2-ジメトキシエタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、メチル=tert-ブチルエーテル、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、及びキシレン、またはこれらのいずれかの組み合わせである。
【0091】
式(I)のフマル酸結晶性化合物の調製方法の一実施形態では、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、1,2-ジメトキシエタノール、2-メトキシエタノール、または2-エトキシエタノールである。
【0092】
式(I)のフマル酸結晶性化合物の調製方法の一実施形態では、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはブタノールである。一実施形態では、溶媒は、メタノールまたはエタノールである。
【0093】
式(I)のフマル酸結晶性化合物の調製方法の一実施形態では、溶媒は、アセトニトリル、アセトン、アニソール、ジクロロメタン、ジクロロエタン、エタノール、メタノール、酢酸メチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソブチレン、メチルシクロヘキサン、メチル=tert-ブチルエーテル(MTBE)、n-ヘキサン、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、水、及びこれらの混合物から選択される。
【0094】
一実施形態では、混合物から式(I)のフマル酸化合物を結晶化する工程は、溶媒を周囲温度にて蒸発させることで、式(I)のフマル酸化合物を溶液から沈殿させることを含む。一実施形態では、混合物から式(I)のフマル酸化合物を結晶化する工程は、混合物を周囲温度以下まで冷却することで、式(I)のフマル酸共結晶化合物の共結晶を沈殿させることを含む。
【0095】
一実施形態では、本発明は、式(I)のフマル酸結晶性化合物の調製方法であって、
【化5】
a) 貧溶媒を、式(I)のフマル酸化合物と溶媒とを含む混合物に加えることと、
b) 上記混合物から上記式(I)のフマル酸化合物を結晶化することと、
を含む、上記方法を提供する。
【0096】
一実施形態では、本発明は、式(I)のフマル酸結晶性化合物の共結晶の調製方法であって、
【化6】
a) 貧溶媒を、式(I)のフマル酸化合物と溶媒とを含む混合物に加えることと、
b) 上記混合物から上記式(I)のフマル酸化合物を結晶化することと、
を含む、上記方法を提供する。
【0097】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物と溶媒とを含む混合物を加熱することで、溶液を形成する。
【0098】
式(I)のフマル酸結晶性化合物の調製方法の一実施形態では、溶媒は、アセトン、酢酸n-プロピル、アセトニトリル、メタノール、酢酸イソプロピル、イソブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、酢酸n-ブチル、1-ペンタノール、1-プロパノール、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸イソブチル、イソブタノール、またはエタノールである。
【0099】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物を含む混合物は溶液であり、混合物から式(I)のフマル酸化合物を結晶化する工程は、溶液を過飽和させることで、式(I)のフマル酸化合物を溶液から沈殿させることを含む。
【0100】
一実施形態では、溶液を過飽和させる工程は、貧溶媒を加えることを含む。
【0101】
一実施形態では、溶液を過飽和させる工程は、溶液を周囲温度以下まで冷却することを含む。
【0102】
一実施形態では、溶液を過飽和させる工程は、溶液温度を、約20℃超で維持することを含む。
【0103】
本明細書で使用する場合、「貧溶媒」とは、化合物結晶が不溶性、わずかに不溶性、または、部分的に可溶性、即ち、(1mg/mL未満の溶解度)である溶媒を意味する。実際には、結晶が溶解する溶液に貧溶媒を加えることで、溶液中での結晶の溶解度、即ち過飽和が下がり、これにより、対象となる化合物の沈殿が促進される。一実施形態では、結晶を、貧溶媒と有機溶媒との組み合わせで洗浄する。一実施形態では、貧溶媒は水である一方で、他の実施形態では、貧溶媒は、ヘキサンもしくはペンタンなどのアルカン溶媒、または、1,2-ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、もしくはキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒である。
【0104】
一実施形態では、貧溶媒は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、酢酸イソブチル、酢酸イソブチレン、メチルシクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、及びこれらの混合物である。
【0105】
一実施形態では、貧溶媒は、1,2-ジクロロエタン、n-ヘキサン、及びメチルシクロヘキサンである。
【0106】
一実施形態では、式(I)のフマル酸化合物の結晶形態の作製方法を使用して、式(I)の化合物-フマル酸の試料から、1種以上の不純物を取り除く。
【0107】
一実施形態では、結晶化後、式(I)のフマル酸化合物は実質的に純粋である。いくつかの実施形態では、結晶形態の式(I)のフマル酸化合物は、90%を超えて純粋である。いくつかの実施形態では、結晶形態の式(I)のフマル酸化合物の純度は、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超、及び99%超から選択される。いくつかの実施形態では、結晶形態の式(I)のフマル酸化合物の純度は、95%超である。いくつかの実施形態では、結晶形態の式(I)のフマル酸化合物の純度は、98%超である。いくつかの実施形態では、結晶形態の式(I)のフマル酸化合物の純度は、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、及び約99%から選択される。
【0108】
一実施形態では、式(I)のフマル酸結晶性化合物は、本明細書に記載する式(I)のフマル酸結晶性化合物である。
【0109】
いくつかの実施形態では、式(I)のフマル酸化合物は実質的に単離されている。
【0110】
「実質的に単離されている」とは、塩、共結晶、または化合物が形成または検出された環境から少なくとも部分的に、または実質的に分離されていることを意味する。部分単離としては、例えば、本明細書に記載する塩が豊富な組成物を挙げることができる。実質的な分離は、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、または少なくとも約99重量%の本発明に記載する塩またはその塩を含有する、組成物を含み得る。化合物及びその塩を単離する方法は、当技術分野では日常的である。
【0111】
一実施形態では、調製方法は、結晶化を誘導することをさらに含む。方法は、例えば、減圧下で結晶を乾燥させることもまた含むことができる。一実施形態では、沈殿または結晶化を誘導することは、核生成が、種結晶、または、環境との相互作用(晶析装置の壁、撹拌インペラ、音波処理など)の存在下で生じる、二次核生成を含む。
【0112】
医薬組成物
一実施形態では、本発明は、式(I)のフマル酸化合物と、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0113】
一実施形態では、本発明は、式(I)の化合物-フマル酸共結晶(1:1)と、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0114】
本発明の一実施形態は、少なくとも1種の他の治療剤及び薬学的に許容される担体または賦形剤と共に、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を含む、医薬組成物に関する。
【0115】
式(I)のフマル酸化合物の使用
一実施形態では、本発明は、式(I)のフマル酸化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤(薬剤的に許容される担体もしくは希釈剤など)と、を含む医薬組成物の使用を提供する。一実施形態では、本発明は、本明細書に記載する式(I)の化合物-フマル酸共結晶(1:1)と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤(薬剤的に許容される担体もしくは希釈剤など)と、を含む医薬組成物の使用を提供する。本発明で記載する、式(I)の化合物-フマル酸共結晶を、薬学的に許容される賦形剤(担体もしくは希釈剤など)と組み合わせることができる、または、担体により希釈することができる、もしくは、カプセル、サッシェ、紙、もしくは他の容器の形態であることができる担体に封入することができる。
【0116】
別の実施形態では、本発明は、選択的転写CDKの異常活性と関連する疾患及び/または障害の治療及び/または予防で使用するための、式(I)のフマル酸化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0117】
別の実施形態では、本発明は、選択的転写CDKの異常活性と関連する疾患及び/または障害に苦しむ対象の治療で使用するための、式(I)の化合物-フマル酸共結晶(1:1)を含む医薬組成物を提供する。
【0118】
本発明の一実施形態は、選択的転写CDKの異常活性と関連する疾患及び/または障害の治療及び/または予防で使用するための、少なくとも1種の他の治療剤と共に、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を含む、医薬組成物に関する。
【0119】
別の実施形態では、本発明は、対象における選択的転写CDKの阻害方法であって、当該阻害を必要とする対象に、治療に有効な量の、本明細書に記載する式(I)のフマル酸化合物を投与することを含む、上記方法を提供する。
【0120】
別の実施形態では、本発明は、対象における、選択的転写CDKにより媒介される疾患及び/または障害の治療方法であって、当該治療を必要とする対象に、治療に有効な量の、本明細書に記載する式(I)のフマル酸化合物を投与することを含む、上記方法を提供する。
【0121】
別の実施形態では、本発明は、転写CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18の異常活性と関連する疾患及び/または障害に苦しむ対象の治療で使用するための、本明細書に記載する式(I)のフマル酸化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0122】
別の実施形態では、本発明は、転写CDK7の異常活性と関連する疾患及び/または障害に苦しむ対象の治療で使用するための、本明細書に記載する式(I)のフマル酸化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0123】
さらに別の実施形態では、本発明は、治療に有効な量の、本明細書に記載する式(I)のフマル酸化合物を投与することを含む、対象において選択的転写CDK(CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18)により媒介される障害及び/または疾患または病状の治療方法を提供する。
【0124】
さらに別の実施形態では、本発明は、治療に有効な量の、本明細書に記載する式(I)のフマル酸化合物を投与することを含む、対象において転写CDK7により媒介される障害及び/または疾患または病状の治療方法を提供する。
【0125】
さらに別の実施形態では、本発明は、選択的転写CDKの阻害方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、必要とする対象における、特に転写CDK7、CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18;より具体的にはCDK7の阻害方法であって、そのような受容体/キナーゼの阻害を引き起こすのに効果的な量の、本明細書に記載する式(I)のフマル酸化合物を、上記対象に投与することによる、上記方法を提供する。
【0126】
別の態様では、本発明は、生体試料または対象における、キナーゼの活性の阻害方法に関する。一実施形態では、キナーゼは、選択的転写CDKである。別の実施形態では、選択的転写CDKは、CDK7、CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18である。さらに別の実施形態では、選択的転写CDKは、特にCDK7である。
【0127】
一実施形態では、疾患及び/または障害は、がん、炎症性障害、自己炎症性障害、及び感染症である。
【0128】
一実施形態では、キナーゼの活性の阻害は不可逆的である。他の実施形態では、キナーゼの活性の阻害は可逆的である。
【0129】
本発明に記載する化合物は通常、医薬組成物の形態で投与される。このような組成物は、薬学分野で周知の手順を用いて調製することができ、本発明の少なくとも1種の化合物を含む。本発明の医薬組成物は、本明細書に記載する1種以上の化合物、及び、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。通常、薬学的に許容される賦形剤は、規制当局により認可されているか、または一般的に、ヒトもしくは動物での使用には安全であると考えられている。薬学的に許容される賦形剤としては、担体、希釈剤、滑剤及び潤滑剤、防腐剤、緩衝剤、キレート剤、ポリマー、ゲル化剤、増粘剤、溶媒などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
医薬組成物は、経口、非経口、または吸入経路により投与することができる。非経口投与の例としては、注射による投与、経皮、経粘膜、経鼻、及び経肺動脈投与が挙げられる。
【0131】
好適な担体の例としては、水、食塩水、アルコール、ポリエチレングリコール、ピーナッツオイル、オリーブオイル、ゼラチン、ラクトース、白土、スクロース、デキストリン、炭酸マグネシウム、糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸、セルロースの低級アルキルエステル、ケイ酸、脂肪酸、脂肪酸アミン、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
医薬組成物は、1種以上の薬学的に許容される補助剤、湿潤剤、沈殿防止剤、保存剤、緩衝剤、甘味剤、着香剤、着色剤、または、前述のいずれかの組み合わせもまた含んでよい。
【0133】
医薬組成物は従来の形態、例えば、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、注射液、または、局所適用のための製品であってよい。さらに、本発明の医薬組成物を、所望の放出プロファイルをもたらすように製剤化してよい。
【0134】
純粋な形態または適切な医薬組成物での、本発明の化合物の投与は、医薬組成物の適格な投与経路のいずれかを用いて実施することができる。投与経路は、本発明の活性化合物を、適切な、または所望の作用部位に効果的に移動させる任意の方法であってよい。好適な投与経路としては、経口、経鼻、頬側、皮膚、皮内、経皮、非経口、直腸、皮下、静脈内、尿道内、筋肉内、または局所が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
固体経口製剤としては、錠剤、カプセル(ソフトまたはハードゼラチン)、糖衣錠(粉末またはペレット形態で、活性成分を含有する)、トローチ剤、及びロゼンジが挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
液体製剤としては、シロップ剤、エマルション、及び、懸濁液または溶液などの無菌注射可能な液体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
化合物の局所投与形態としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、粉末、溶液、点眼または点耳剤、含浸包帯が挙げられ、防腐剤、薬剤浸透を補助する溶媒などの、適切な従来の添加剤を含有してよい。
【0138】
本発明の医薬組成物は、文献で公知の従来技術によって調製することができる。
【0139】
本明細書に記載する疾患または障害の治療で使用するための、本明細書に記載する式(I)のフマル酸化合物の好適な用量は、関連する当業者により決定することができる。治療量は一般に、動物研究から導かれる予備的証拠に基づき、ヒトの用量範囲研究により識別される。用量は、不必要な副作用を引き起こさずに所望の治療的効果をもたらすのに十分でなければならない。投与方法、投薬形態、及び好適な医薬賦形剤もまた、当業者によって十分用いられ、調整することができる。あらゆる変化及び修正が、本発明の範囲内であると想定されている。
【0140】
一実施形態では、本発明で開示する式(I)のフマル酸化合物は、医薬投与のために製剤化される。
【0141】
本発明のさらに別の実施形態は、選択的転写CDKの異常活性と関連する疾患及び/または障害の治療及び予防における、本発明で開示する式(I)のフマル酸化合物の使用を提供し、特に、選択的転写CDKは、CDK7、CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18であり、より具体的にはCDK7である。
【0142】
本発明のさらに別の実施形態は、選択的転写CDKの阻害によりその症状が治療、改善、低下、及び/または予防される疾患の治療及び/または予防における、式(I)のフマル酸化合物の使用を提供し、特に、選択的転写CDKは、CDK7、CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18であり、より具体的にはCDK7である。
【0143】
さらに別の実施形態によれば、選択的転写CDKが媒介する障害及び/または疾患または病状は、増殖性疾患または障害または病状である。
【0144】
さらに別の実施形態では、選択的転写CDKにより媒介される疾患及び/または障害は、限定されるものではないが、がん、炎症性障害、自己炎症性障害、または感染症からなる群から選択される。
【0145】
他の実施形態では、式(I)のフマル酸化合物を用いて治療または予防することが可能な増殖性疾患は、通常、CDK、より具体的には、CDK7、CDK9、CDK12、CDK13、または18の異常活性と関連する。CDK7、CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18の異常活性は、CDK7、CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18の活性の増加、及び/または、不適切な(例えば、異常)活性であり得る。一実施形態では、CDK7、CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18は過剰発現せず、CDK7、CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18の活性が増加する、及び/または、不適切である。特定の他の実施形態では、CDK7、CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18が過剰発現し、CDK7、CDK9、CDK12、CDK13、またはCDK18の活性が増加する、及び/または、不適切である。
【0146】
さらに別の実施形態によれば、式(I)のフマル酸化合物は、ウィルス病、真菌症、神経/神経変性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、関節炎、抗増殖性(例えば、眼網膜)疾患、神経細胞疾患、脱毛症、及び、心血管疾患などの増殖性疾患の治療法で有用であることが予想されている。
【0147】
さらに別の実施形態によれば、式(I)のフマル酸化合物は、乳癌、肝癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、膀胱癌(小細胞肺癌を含む)、非小細胞肺癌、頭頸癌、甲状腺癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌、胆嚢癌、子宮頸癌、前立腺癌及び皮膚癌(扁平上皮細胞癌を含む)を含むがん腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、毛様細胞性リンパ腫、骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、及びバーキットリンパ腫を含む、リンパ系リネージの造血性腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、ならびに前骨髄球性白血病を含む、骨髄リネージの造血性腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉系由来の腫瘍;星状膠細胞腫、神経芽細胞腫、膠腫、及び神経鞘腫を含む、中枢神経系及び末梢神経系の腫瘍;ならびに、精上皮腫、黒色腫、骨肉腫、奇形癌、ケラトアカントーマ、色素性乾皮症、甲状腺濾胞性癌、及びカポジ肉腫を含む他の腫瘍を含むがこれらに限定されない種々のがんの治療において有用である。
【0148】
さらに別の実施形態によれば、対象は、ヒトを含む哺乳類である。
【0149】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、薬剤として使用するための、式(I)のフマル酸化合物を提供する。
【0150】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、薬剤の製造における、式(I)のフマル酸化合物の使用を提供する。
【0151】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、がんの治療で使用するための、式(I)のフマル酸化合物を提供する。
【0152】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、選択的転写CDKの異常活性と関連する疾患及び/または障害を治療するための薬剤の製造における、式(I)のフマル酸化合物の使用を提供する。
【0153】
さらに別の実施形態では、本発明は、がん治療のための薬剤の製造における、式(I)のフマル酸化合物の使用を提供する。
【0154】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、選択的転写CDKの異常活性と関連する疾患及び/または障害に苦しむ対象を治療するための薬剤として使用するための、式(I)のフマル酸化合物を提供する。
【0155】
さらに別の実施形態に従うと、本発明は、抗増殖剤、抗がん剤、免疫抑制剤、及び、鎮痛剤から独立して選択される、1種以上の追加の化学療法剤とともに、治療に有効な量の式(I)のフマル酸化合物を、必要とする対象に投与することを含む。
【0156】
本発明の治療方法(複数可)は、安全かつ有効な量の式(I)のフマル酸化合物を、必要とする対象(特にヒト)に投与することを含む。
【0157】
一実施形態では、本発明は、(S,E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブタ-2-エナミド、またはその薬学的に許容される塩である、化合物を提供する。
【0158】
一実施形態では、本発明は、(S,E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブタ-2-エナミドと、薬学的に許容される担体または賦形剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0159】
併用療法
特定の実施形態では、例えば、がんなどの疾患、障害、及び病状の治療に、相乗的または相加的な治療効果をもたらす、化学療法剤、治療用抗体、及び/または、放射線治療との、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶の併用療法のための方法を本明細書で提供する。特定の実施形態では、化学療法剤は、分裂抑制剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬、挿入抗生物質、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答調節剤、抗ホルモン、血管新生阻害剤、及び抗アンドロゲン剤からなる群から選択される。
【0160】
例えば、さらなる治療剤は、クロラムブシル、シクロホスファミド、シスプラチンなどのアルキル化剤;ドセタキセルもしくはパクリタキセルなどの分裂抑制剤;5-フルオロウラシル、シタラビン、メトトレキサート、もしくはペメトレキセドなどの代謝拮抗薬;ダウノルビシンもしくはドキソルビシンなどの抗腫瘍抗生物質;プレドニゾンもしくはメチルプレドニゾロンなどのコルチコステロイド;ベネトクラクスなどのBCL-2阻害剤;もしくは、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、アベルマブ、BMS 936559、もしくはMPDL3280Aなどの免疫治療化合物、またはこれらの組み合わせを含んでよい。一実施形態では、免疫治療化合物は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)を含む。
【0161】
特定の実施形態では、さらなる治療剤はドセタキセルである。ドセタキセルは、抗微小管阻害剤として知られている化学療法剤の1種である。ドセタキセルは、転移性前立腺癌などの、種々のがんを治療するために用いられる。ドセタキセル治療は多くの場合、静脈内投与され、多くの場合、プレドニゾンなどのコルチコステロイドの前投薬を含む。特定の実施形態では、さらなる治療剤は、がん細胞でアポトーシスを誘導することができるBCL-2阻害剤の、ベネトクラクスである。ベネトクラクスは通常、経口投与される。
【0162】
いくつかの実施形態では、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を、エルロチニブ、ボルテゾミブ、ジスルフィラム、没食子酸エピガロカテキン、サリノスポラミドA、カルフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラジシコール、乳酸脱水素酵素A(LDHーA)、フルベストラント、スニチニブ、レトロゾール、メシル酸イマチニブ、フマスナート、オキサリプラチン、5-FET(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン、ラパチニブ、ロナファルニブソラフェニブ、ゲフィチニブ、代謝拮抗薬(メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)など);タキソイド(例えばパクリタキセル)、ABRAXANE(登録商標)(クレモフォア非含有)、パクリタキセルのアルブミン組み換えナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Ill.)、及び、ドセタキセル/ドキセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金類似体;レチノイン酸などのレチノイド;ならびに、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体などの、1種以上の化学療法剤と組み合わせて用いることができる。
【0163】
いくつかの実施形態では、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を、化学療法剤、抗炎症剤、ステロイド、免疫抑制剤、免疫腫瘍剤、代謝酵素阻害剤、ケモカイン受容体阻害剤、及びホスファターゼ阻害剤などの、1種以上の追加の薬剤、加えて、がんなどの疾患、障害、または病状を治療するための標的療法と組み合わせて使用することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を、がん治療のための1種以上のキナーゼ阻害剤との併用療法で使用することができる。例示的なキナーゼ阻害剤としては、イマチニブ、バリシチニブゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、スニチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ピルフェニドン、パゾパニブ、クリゾチニブ、ベムラフェニブ、バンデタニブ、ルキソリチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、レゴラフェニブ、トファシチニブ、カボザンチニブ、ポナチニブ、トラメチニブ、ダブラフェニブ、アファチニブ、イブルチニブ、セリチニブ、イデラリシブ、ニンテダニブ、パルボシクリブ、レンバチニブ、コビメチニブ、アベマシクリブ、アカラブルチニブ、アレクチニブ、ビニメチニブ、ブリガチニブ、エンコラフェニブ、エルダフィチニブ、エベロリムス、フォスタマチニブ、ギルター、ラロトレクチニブ、ロルラチニブ、ネタルスジル、オシメルチニブ、ペキシダルチニブ、リボシクリブ、リボシクリブ、テムシロリムス、XL-092、XL-147、XL-765、XL-499、及びXL-880が挙げられる。
【0165】
いくつかの実施形態では、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を、HSP90阻害剤(例えば、XL888)、肝臓X受容体(LXR)モジュレーター、レチノイド関連オーファン受容体ガンマ(RORγ)モジュレーター、CK1阻害剤またはCK1α阻害剤などのチェックポイント阻害剤、Wnt経路阻害剤(例えば、SST-215)、または、ミネラルコルチコイド受容体阻害剤(例えば、エサキセレノン)、XL-888またはポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤(がん治療用のオラパリブ、ルカプリブニラパリブ、タルゾパリブなど)と組み合わせて使用することができる。
【0166】
いくつかの実施形態では、がんの治療に対して、本明細書で開示する式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1の阻害剤またはPD-L1の阻害剤、例えば、抗PD-1モノクローナル抗体または抗PD-L1モノクローナル抗体、例えば、ニボルマブ(Opdivo)、ペムブロリズマブ(Keytruda、MK-3475)、アテゾリズマブ、アベルマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、セトレリマブ、トリパリマブ、シンチリマブ、AB122、JTX-4014、BGB-108、BCD-100、BAT1306、LZM009、AK105、HLX10、及びTSR-042、AMP-224、AMP-514、PDR001、デュルバルマブ、ピディリズマブ(Imfinzi(登録商標)、CT-011)、CK-301、BMS 936559、及びMPDL3280Aと組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、PDR001、MGA012、PDR001、AB122、またはAMP-224である。いくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体は、ニボルマブまたはペムブロリズマブである。いくつかの実施形態では、抗PD1抗体は、ペムブロリズマブである。いくつかの実施形態では、抗PD1抗体は、ニボルマブである。
【0167】
いくつかの実施形態では、がんの治療に対して、本明細書で開示する式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を、PD-L1の阻害剤と組み合わせて使用することができる。ヒトPD-L1に結合する抗体としては、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ティスレリズマブ、BMS-935559、MEDI4736、FAZ053、KN035、CS1001、CBT-502、A167、STI-A101、CK-301、BGB-A333、MSB-2311、HLX20、KN035、AUNP12、CA-170、BMS-986189、及びLY3300054が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗PD-L1モノクローナル抗体は、BMS-935559、MEDI4736、MPDL3280A、またはMSB0010718Cである。いくつかの実施形態では、抗PD-L1モノクローナル抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブである。
【0168】
いくつかの実施形態では、がんの治療に対して、本明細書で開示する式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を、CTLA-4阻害剤、例えば、抗CTLA-4抗体、例えば、イピリムマブ(Yervoy)、トレメリムマブ、及びAGEN1884;及び、ホスファチジルセリン阻害剤、例えば、バビツキシマブ(PGN401);サイトカインに対する抗体(IL-10、TGF-bなど);セミプリマブなどの他の抗がん剤と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、PD-L1及びCTLA-4の阻害剤、例えば、抗PD-L1/CTLA-4二重特異性抗体または抗PD-1/CTLA-4二重特異性抗体である。PD-L1及びCTLA-4に結合する二重特異性抗体としては、AK104が挙げられる。
【0169】
特定の実施形態では、本発明は、他の治療剤及び薬学的に許容される担体と共に、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を含む組成物を提供する。式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を、1種以上の他の治療剤(好ましくは1種または2種、より好ましくは1種)と組み合わせて投与し、(1)本発明の化合物の予防及び/または治療薬効果の予防及び/または治療効果を補完する、及び/または向上させる、(2)薬力学を調節する、吸収改善を改善する、または、本発明の予防用及び/または治療用化合物の用量減少を減少させる、及び/または、(3)本発明の予防用及び/または治療用化合物の副作用を軽減または緩和することができる。本明細書で使用する場合、「共同投与」という語句は、以前に投与された治療用化合物が体内にまだ存在している間に、第2の化合物が投与される(例えば、2つの化合物は、患者内で同時に効果的であり、2つの化合物の相乗効果を含み得る)ように、2種以上の異なる治療用化合物を投与する任意の形態を意味する。
【0170】
例えば、異なる治療用化合物は、同じ製剤中、または、同時もしくは連続のいずれかで、個別の製剤中のいずれかで、投与することができる。特定の実施形態では、異なる治療用化合物は、互いに1時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、または1週間以内に投与することができる。したがって、このような治療を受ける個体は、異なる治療用化合物の併用効果の恩恵を受けることができる。対応する化合物は、同一または異なる経路、及び、同一または異なる方法により投与することができる。特定の実施形態では、他の治療用化合物は、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶の投与前、または投与後の、1時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、または1週間以内に投与することができる。特定の実施形態では、他の治療用化合物は、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶の投与前、または投与後の、0.5時間~24時間以内に投与することができる。特定の実施形態では、他の治療用化合物は、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶の投与前、または投与後の、0.5時間~72時間以内に投与することができる。特定の実施形態では、他の治療用化合物は、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶の投与前、または投与後の、2時間以内に投与することができる。
【0171】
本発明の化合物及び他の薬剤を含む併用薬は、両方の構成成分が単一の製剤に含有される併用調製物として、または、個別の製剤として投与することができる。個別の製剤による投与としては、製剤の同時投与及び/または、いくつかの時間間隔により隔てられる投与が挙げられる。いくつかの時間間隔を伴う投与の場合、2つの化合物が、共同療法の間の時間の少なくともいくつかにおいて、患者内で同時に活性となる限り、本発明の化合物を最初に投与し、別の薬剤を続けて投与することができる、または、別の薬剤を最初に投与し、本発明の化合物を続けて投与することができる。それぞれの薬剤の投与法は、同一または異なる経路、及び、同一または異なる方法により投与することができる。
【0172】
他の薬剤の用量は、臨床で用いられている用量に基づき適切に選択することができる、または、本発明の化合物と組み合わせて投与される際に効果的な、低下した用量であることができる。本発明の化合物と他の薬剤の配合比は、投与される対象の年齢及び体重、投与法、投与時間、治療される障害、症状、ならびにこれらの組み合わせに従い適切に選択することができる。例えば、他の薬剤は、1質量部の本発明の化合物に対して、約0.01~約100質量部の量で用いることができる。他の薬剤は、適切な比率で、2種以上の任意の薬剤の組み合わせとなることができる。本発明の化合物の予防及び/または治療効果を補完する、及び/または向上させる他の薬剤としては、既に発見されている薬剤だけでなく、上記メカニズムに基づき、将来発見されるであろう薬剤もまた挙げられる。
【0173】
特定の実施形態では、本発明の式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を、がん治療の非化学的方法と共同投与してよい。特定の実施形態では、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を、がん治療の非化学的方法と共同投与してよい。特定の実施形態では、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を、放射線療法と共同投与してよい。特定の実施形態では、式(I)のフマル酸化合物またはその共結晶を、手術、熱アブレーション、集束超音波療法、凍結治療、または、これらのいずれかの組み合わせを共同投与してよい。
【0174】
実験
本発明は、適切な材料を用いて、以下の実施例の手順に従い、式(I)のフマル酸化合物を調製する方法を提供する。当業者は、以下の調製手順の条件及びプロセスの、既知の変形形態を用いて、これらの化合物を調製することができることを理解するであろう。さらに、詳述する手順を利用することで、当業者は、本発明のさらなる化合物を調製することができる。
【0175】
分析方法
X線粉末回折:
X線粉末回折パターンを、CuKa放射線(45kV、40mA)を用いて、X’Pert3 PRO MPD回折計で収集した。
【0176】
【0177】
HPLC:
以下に詳述する方法を用いて、ダイオードアレイ検出器を備えたAgilent HP1100シリーズシステムで、ChemstationソフトウェアvB.04.03を用い、純度分析を行った。
【表3】
【0178】
熱重量分析及び示差走査熱量測定:
熱重量分析(TGA)データを、TA Instruments製のQ5000 TGAを用いて収集した。TA Instruments製のTA Q2000 DSCを用いて、示差走査熱量測定(DSC)を行った。方法パラメーターを以下に記載する。
【表4】
【0179】
式(I)の化合物は非晶質であることが判明した。式(I)の化合物の調製において、最終精製では、冗長なカラムクロマトグラフィー操作を必要としたが、これにより、不純物が近くに溶出し、複数の不純物画分の精製が必要となったため、所望の化合物の収率を得ることが極めて困難となった。
【0180】
より良い収率を得るため、及び、式(I)の化合物の調製の最終工程において、冗長なカラム精製を避けるため、本発明者らは、様々な溶媒系を用いることで、式(I)の最終化合物を結晶化/沈殿させるように何度か試みたが、いずれの方法でも成功しなかった。異なる溶媒系(例えば、エタノール、メタノール、IPA、DMSO、DMFなど)、及び温度範囲と共に、様々な酸(例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸など)を用いることによる塩スクリーニング法でさえも、より良好な純度を伴っての有望な収率は全く得られなかった。その後、驚くべきことに、式(I)のフマル酸化合物が、自然では、優れた純度を伴う結晶性であることが分かったことが判明した。
【0181】
さらに、式(I)のフマル酸化合物は、濾過可能性、吸湿性、純度、及び安定性などの様々な所望の特性において、式(I)の化合物の他の塩/共結晶と比較して、予想外に有利である。また、式(I)のフマル酸化合物は、結晶性形態のみを示した。このような結晶性物質は、他の酸付加塩/共結晶では得られなかった。
【0182】
実施例-1:式(I)のフマル酸化合物の調製
【化7】
【0183】
工程-1:2-(3-ブロモフェニル)-3-メチル酪酸の合成
2MのLDA(698mL、1.38mol)を、30分にわたり-78℃で、2-(3-ブロモフェニル)酢酸(150g、0.69mol)のTHF(700mL)溶液に加えた。反応塊を2時間、-78℃で撹拌した後、-78℃で30分にわたり、臭化イソプロピル(255g、2.07mol)を滴下した。反応塊を室温で一晩撹拌した。反応塊を、1NのHCl(pH2)でクエンチし、生成物を酢酸エチル(500mL×3)に抽出した。まとめた有機層を水、続いてブラインで洗い、乾燥させて減圧濃縮し、粗化合物を得、これを、0~10%酢酸エチル-ヘキサン系で溶出することで、シリカカラムにより精製して、表題化合物2を得た(150g、収率83%)。LCMS:m/z = 254.80(M-2H)-
【0184】
工程-2:tert-ブチル=3-(2-(3-ブロモフェニル)-3-メチルブタンアミド)-5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-カルボキシレートの合成
2-(3-ブロモフェニル)-3-メチル酪酸(70g、0.0.27mol)を、無水DCM(500mL)に溶解させて塩化オキサリル(68mL、0.78mol)を0℃で滴下し、続けて、触媒量のDMF(0.8mL)を加え、反応塊を同じ温度で30分間維持した。反応塊を室温にし、4時間撹拌した。溶媒、及び過剰の塩化オキサリルを、真空下で留去した。得られた残渣をDCM(250mL)に再溶解し、tert-ブチル=3-アミノ-5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-カルボキシレート(化合物3、49g、0.218mol)及びTEA(55mL、0.546mol)の、冷却THF(250mL)溶液に、0℃で30分間ゆっくりと加えた。反応物を室温で12時間撹拌した後、反応塊を減圧濃縮し、残渣をDCMに溶解して、飽和NaHCO3溶液及びブラインで洗った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。得られた粗物質を、15%酢酸エチル-ヘキサンで溶出することで、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物4を得た(90g、71%)。LCMS:m/z=363.80(M-Boc+2)。
【0185】
工程-3:tert-ブチル=5-シクロプロピル-3-(3-メチル-2-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ブタンアミド)-1H-ピラゾール-1-カルボキシレートの合成
tert-ブチル=3-(2-(3-ブロモフェニル)-3-メチルブタンアミド)-5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-カルボキシレート(90g、0.193mol)及び4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(62g、0.251mol)の、1,4-ジオキサン(500mL)の脱気溶に、酢酸カリウム(37.80g、0.386mol)を加えた。反応塊を10分間、室温で脱気しながら撹拌し、PdCl2(dppf).DCM錯体(12.5g、0.015mol)を加えた。反応塊を、3~4時間、100℃で加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、Celite(登録商標)床で濾過し、濾液を蒸発させて、暗褐色液体を得た。粗物質を、20%の酢酸エチル含有ヘキサンで溶出することで、シリカカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物5(90g、86%)を得た。LCMS:m/z=410(M-Boc+1)+。
【0186】
工程-4:(E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブタ-2-エナミドの合成
tert-ブチル=5-シクロプロピル-3-(3-メチル-2-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ブタンアミド)-1H-ピラゾール-1-カルボキシレート(10g、0.019mol)及び(E)-N-(5-ブロモピリジン-2-イル)-4-モルホリノブタ-2-エナミド(7.7g、0.023mol)の、1,4-ジオキサン(100mL)及び水(40mL)との脱気溶液に、Cs2CO3(14.5g、0.045mol)を加えた。反応塊を、脱気しながら10分間撹拌し、Pd(PPh3)4(1.1g、0.00095mol)を加えた。反応塊を密閉管内で4時間、100℃で加熱した。次いで、反応塊を冷却し、ブライン溶液で希釈した。得られた水層を分離し、酢酸エチルで再抽出した。まとめた有機層を蒸発乾固し、粗物質を、10~15%のメタノール含有DCMで溶出することで、シリカカラムクロマトグラフィーにより精製し、純粋な化合物8(4.5g、44%)を得た。LCMS:m/z=529.15(M+H)+;HPLC:95.17%、保持時間:6.34分。
【0187】
工程-5:キラル分離
化合物の(E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブタ-2-エナミドを、キラル分取HPLCカラム(方法:カラム:Chiral Pak IA(20mm X 250mm、5マイクロメートル)、溶出:イソクラティック(50:50)、A=ACN、B=MeOH、流速:20mL/分)により分離し、それぞれ、(S,E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブタ-2-エナミド、及び(R,E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブタ-2-エナミドである、純粋なS及びR異性体を得た。
【0188】
S異性体:(S,E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブタ-2-エナミド(式(I)の化合物)
1HNMR(DMSO-d6,400MHz):δ 12.02 (s, 1H), 10.78 (s, 1H), 10.44 (s, 1H), 8.61 (s, 1H), 8.28 (d, 1H), 8.07-8.05 (m, 1H), 7.68 (s, 1H), 7.57 (d, 1H), 7.41-7.37 (m, 2H), 6.81-6.78 (m, 1H), 6.49 (d, 1H), 6.13 (s, 1H), 3.61-3.58 (m, 4H), 3.36-3.34 (m, 1H), 3.12 (d, 2H), 2.41-2.32 (m, 5H), 1.82-1.76 (m, 1H), 0.97 (d, 3H), 0.88-0.85 (m, 2H), 0.67 (d, 3H), 0.62-0.59 (m, 2H);LCMS:m/z=529.15(M+H)+;HPLC:96.72%,保持時間:6.39分;Chiral HPLC:97.68%,保持時間:14.47。
【0189】
R異性体:(R,E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブタ-2-エナミド
1HNMR(DMSO-d6,400MHz):δ 12.02 (s, 1H), 10.78 (s, 1H), 10.44 (s, 1H), 8.61 (s, 1H), 8.28 (d, 1H), 8.07-8.04 (m, 1H), 7.68 (s, 1H), 7.57 (d, 1H), 7.41-7.37 (m, 2H), 6.81-6.78 (m, 1H), 6.50 (d, 1H), 6.14 (s, 1H), 3.61-3.58 (m, 4H), 3.36-3.34 (m, 1H), 3.12 (d, 2H), 2.40-2.39 (m, 5H), 1.82-1.76 (m, 1H), 0.97 (d, 3H), 0.88-0.85 (m, 2H), 0.67 (d, 3H), 0.62-0.60 (m, 2H);LCMS:m/z=529.15(M+H)+;HPLC:96.24%,保持時間:6.39分;Chiral HPLC:97.92%,保持時間:8.80。
【0190】
工程-6:式(I)のフマル酸化合物の調製
式(I)の化合物をメタノール(4体積)に溶解させ、溶液を60~65℃まで加熱し、これに、フマル酸溶液を加えた(1.1、例えば、フマル酸を、式(I)の化合物の投入に対して約6体積のメタノールに溶解させた)。反応混合物を60~65℃にて4時間にわたって撹拌し、室温に冷却した。得られた懸濁液を室温で16時間撹拌した。固体を濾過し、2体積のメタノールで洗い、3時間吸引乾燥した。物質を、45~50℃で、真空下にて4時間さらに乾燥させ、表題化合物を白色固体として得た。収量:85%。
【0191】
実施例-2:多形のスクリーニング法
A. メタノール/アセトン混合物からの結晶化
室温で、式(I)のフマル酸化合物(200mg)を、ガラス管の中のメタノールとアセトンの混合物(15mL:15mL)に溶解させた。溶液を室温で、ゆっくりと蒸発させ、10日後に結晶を観察して、固体形態の、式(I)のフマル酸化合物を得た。
【0192】
B. 溶液結晶化
式(I)のフマル酸化合物(15mg)を、円錐フラスコ内で、溶媒(15mL)(アセトン、エタノール、アセトニトリル、酢酸イソブチレン、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、n-ヘキサン)に溶解させた。透明溶液が形成するまで、溶媒をその沸点付近で加熱した。溶液を室温でゆっくりと蒸発させた。10日後に結晶を得、結晶形態の式(I)のフマル酸化合物を得た。
【0193】
C. 貧溶媒結晶化
式(I)のフマル酸化合物(10mg)を、円錐フラスコ内で、その沸点付近で溶媒(10mL)(酢酸メチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、1-ブタノール、及びアセトニトリル)に溶解させた。透明溶液が形成されると、対応する貧溶媒(1mL)(1,2-ジクロロエタン、n-ヘキサン、及びメチルシクロヘキサン)のうちの1つを、透明溶液に加えた。溶液を室温で、ゆっくりと蒸発させ、10日後に結晶を得、必要な固体形態の、式(I)のフマル酸化合物を得た。
【0194】
D. 冷却結晶化
透明溶液が形成されるまで、式(I)のフマル酸化合物(10mL)を、円錐フラスコ内で、対応する溶媒の沸点付近で、溶媒(10mL)(酢酸メチル、酢酸n-プロピル、1-ペンタノール、メタノール、及びメチルシクロヘキサン)に溶解させた。溶液を、2~8℃に維持した氷浴に移し、次いで結晶を成長させた。次いで、溶液を濾過し、固体形態の、式(I)のフマル酸化合物を得た。
【0195】
E. スラリー結晶化
室温で、式(I)のフマル酸化合物(20mg)を、ガラス瓶内で、有機溶媒(5mL)(1,2-ジクロロエタン、酢酸メチル、酢酸n-プロピル、アセトニトリル、イソブタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-プロパノール、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、n-ヘキサン)に加えた。得られたスラリーを、200rpmで24時間撹拌した。24時間後、スラリーを濾過し、必要とされる固体形態の、式(I)のフマル酸化合物を得た。
【0196】
式(I)のフマル酸化合物の特性評価
本明細書に記載するとおりに調製した固体は、X線粉末回折調査(XPRD)、示差走査熱量計(DSC)、熱重量分析(TGA)、動的水蒸気吸着(DVS)、及び単結晶構造調査により、式(I)のフマル酸結晶性化合物であることが確認された。
【0197】
i. 単結晶X線の結晶構造分析
式(I)のフマル酸化合物の単結晶を、偏光顕微鏡の下で選択した。選択した結晶を、100Kでの、Bruker Kappa Apex2 CCD回折計でのデータ収集に用いた。X線生成器を、Cu Kα(λ=1.5418Å)放射線を用いて、40kV及び30mAで操作した。データを、1.0度のωスキャン幅で収集した。経験的吸収補正後のデータ削減を、Apex2ソフトウェアスイート内の様々なモジュールに適合させた。SHELXTLパッケージを用いる直接法により構造を解析し、同パッケージからのF2での全行列最小二乗法により精密化した。非水素原子は全て、異方的に精製し、水素原子はライディングモデルにより精密化した。Mercury 3.1及びPymolを用いて、構造を描写した。
【0198】
式(I)のフマル酸化合物の単結晶は、1.5Åの解像度より良好にX線を回折し、統計量が良好な一連の回折データ(表2)を、室温で収集した。構造は、直接法により解析され、良好な形状に精密化した。研究により、式(I)の化合物の完全な3次元構造が上手く測定され、化合物に存在する唯一のキラル中心に絶対配置が割り当てられた。フマル酸は、H結合を、ピリジン環及びそれに隣接するアミド-NHとを接触させ、2分子の化合物を、このような相互作用によって繋げる。同様に、フマル酸は、ピラゾール環のN原子、及びこれ隣接するアミド-NH基とH結合もまた形成し、化合物の、2個の隣接する分子環で架橋接触を確立する。
【表5】
【0199】
単結晶X線調査により、式(I)のフマル酸化合物の構造が判明した。本調査により、フマル酸分子が、共結晶としての式(I)の化合物と関連することが確認され、非対称単位中に、式(I)の化合物が1分子、及び、フマル酸が1分子存在することもまた、明らかとなった(モル比は1:1)。式(I)の化合物のフマル酸原子とN原子との、水素結合の距離を測定すると、2.6~2.9Åであり、これは、共結晶に関して通常観察される距離であった。
図1。
【0200】
ii. X線粉末回折調査
一実施形態では、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、5.02、9.99、10.52、11.93、14.98、18.71、22.08、22.51、及び24.03の2θ値において、特徴的なブラッグピークを示した。X線粉末回折調査のスキャンを
図2に示す。X線粉末回折調査のピークを表1に示す。
【0201】
iii. 示差走査熱量測定
式(I)の化合物-フマル酸共結晶の示差走査熱量分析(DSC)は、200.2℃にて開始する融解/分解の前に、203.9℃(ピーク温度)での吸熱を示した(
図3)。
【0202】
iv. 熱重量分析(TGA)
式(I)の化合物-フマル酸共結晶のTGA分析を、Q5000 TA TGA器具で行った。正確に秤量した(5~15mg)の試料を白金パンに載せ、50mL/分の窒素パージ下で、30~300℃の温度範囲にて10℃/分の速度で加熱した。TGAサーモグラムは、175℃の後で重量喪失の開始を示した。このことは、溶媒/水分の吸着がなかったことを示している。
図4。
【0203】
光学及び偏光顕微鏡検査
100xの倍率で、光学及び偏光顕微鏡(Linkam THMSE 600:TMS94ホットステージを装着した、Nikon ECLIPSE,LV100POL)により、粉末試料を確認した。Media cybernetics製のビデオカメラ、及びQcaptureソフトウェアを用いて、顕微鏡写真を取得した。光学顕微鏡検査においては、式(I)の化合物-フマル酸共結晶は、不規則形状/板状の晶癖を示した(
図5A)一方で、式(I)の化合物-フマル酸共結晶の偏光顕微鏡検査は、複屈折性パターンが存在することが示され、故に、その結晶の性質が確認された(
図5B)。
【0204】
実施例-4:式(I)の化合物-フマル酸共結晶の安定性
温度可変型X線回折(VT-XRD)
Anton Paar製の温度-湿度チャンバー(THC)を使用して、in situで、湿度の関数としてXRPDパターンを収集した。湿気を、VTI Inc.製のRH-200で生成し、窒素ガス流で運んだ。THCの内部で、試験体の隣に配置した、Rotronic製のHygroClipセンサーにより、湿度及び温度を監視した。PANalytical X’Pert PRO MPD回折計で、対称Bragg-Brentano鏡映形状にてXRPDパターンを収集した。所定の温度で、60分間等温を維持した。10℃/分で、加熱速度を維持した。およそ200mgの試料を、VT-XRD分析に用いた。45kV及び40mAで操作する、長い微細焦点線源を用いて、Cu Kα放射線を生成した。ニッケルフィルター、0.02radのSollerスリット、11.6mmの固定入射ビームマスク、0.76mmの固定1/2°散乱線除去スリット、及び、0.38mmの固定1/4°発散スリットを用いて、入射ビームを条件設定した。5mmの散乱線除去スリット、0.04radのSollerスリットを用いて、回折ビームを条件設定した。試料から240mmに位置する走査位置検出型検出器(X′Celerator)を使用し、回折パターンを収集した。データを収集し、Data Collectorソフトウェアv.5.5を用いて分析した。
【0205】
式(I)のフマル酸化合物を様々な温度に曝すと、物理的に安定であることが判明した。式(I)の化合物-フマル酸共結晶は安定のままであり、より高温条件でも、固体形態の変態/相変化が生じないことが、VT-XRD分析により確認された。この観測結果から、式(I)のフマル酸化合物は、様々な温度条件にて物理的に安定であることが判明した。
図6Aを参照されたい。
【0206】
可変湿度X線回折(VH-XRD)
Anton Paar TTK 450ステージを用いて、in situで、温度の関数としてXRPDパターンを収集した。試料を、試料ホルダーの下に直接配置した抵抗ヒーターで加熱し、試験体ホルダー内に位置する白金-100抵抗センサーで温度を監視した。ヒーターを駆動し、Data Collectorでインターフェース接続したAnton Paar TCU 100により収集した。およそ200mgの試料を、VH-XRD分析に用いた。
【0207】
本発明の化合物を、様々な湿度条件に曝した。試料、即ち、式(I)のフマル酸化合物を、40%のRH~85%のRHに、続けて、85%~40%のRHの脱着サイクルに曝した。試料を、各RHのレベル(吸着及び脱着の両方)で1時間、平衡させた。この吸着-脱着サイクルの間に収集したPXRDパターンは、相対湿度曝露の関数としての変化を何ら示さなかった。この観測結果から、式(I)のフマル酸化合物は、様々な相対湿度状条件において、物理的に安定したままであったことを確認することができる。
図6Bを参照されたい。
【0208】
式(I)のフマル酸化合物を、25℃/60%の相対湿度(RH)及び40℃/75%のRHの条件に6ヶ月、さらに通したところ、上記条件の6ヶ月後であっても、固体形態及び粒子モルホロジーの観点では、式(I)のフマル酸化合物は無変化のままであることが観察された。
図7を参照されたい。
【0209】
動的水蒸気吸着(DVS)
本発明の化合物の吸湿調査を、25℃でDVS器具(Q5000SA,TA instruments,New Castle,Delaware,USA)によって行い、本発明の化合物の、湿度に対する物理的安定性、または、吸湿傾向を調査した。器具は、温度制御チャンバー内に収容される微量天秤で構成された。湿度は、加湿段階で乾燥気体(窒素)の流れを調節する弁を切り替えることで、調節した。器具は、平衡条件を用いて、25±0.1℃で、10%のRH工程で、40~90%のRHの吸湿条件に対してプログラミングした。平衡条件は、10分以内、及び最大60分の滞留時間、続いて、90%のRH~10%のRH工程の脱着において、合計の質量変化が0.01%未満となるように設定した。脱着に対する平衡条件は、10分以内、及び最大60分の滞留時間において、合計の質量変化が0.01%未満となるように設定した。
【0210】
湿度が増加するに従い、式(I)のフマル酸化合物による重量増加/吸湿は増加し、典型的な「S」字曲線を示した。90%のRHにおいては、約0.646% w/wの重量/湿気が式(I)のフマル酸化合物により得られた。式(I)のフマル酸化合物共結晶の、DVS吸着-脱着等温線(25℃)を、
図8に示す。
【0211】
実施例-5:式(I)のフマル酸化合物の溶解度
式(I)の遊離塩基化合物、及び、式(I)のフマル酸化合物の平衡安定性を、様々な媒体で測定した。過剰量の、式(I)の化合物、及び式(I)のフマル酸化合物を、様々な媒体を含有するガラス瓶に加えた。振盪水浴中で振盪するために、これらの瓶を、200rpmで、適切な温度(水に対しては25℃、及び、緩衝液に対しては37℃)にて、維持した。得られた調製物を濾過し、HPLCにより分析した。結果を以下に示す。
【表6】
【0212】
参照による援用
本明細書で述べられる全ての刊行物及び特許は、それぞれ個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されるかのように、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、本明細書におけるいかなる定義をも含む本出願が優先する。
【0213】
均等物
対象発明の特定の実施形態が論じられたが、上記明細書は例証的であって制限的ではない。本発明の多くの変型は、本明細書及び下記特許請求の範囲を考慮すれば当業者に明らかとなるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲を、それらの同等物の全範囲とともに、及び明細書をそのような変型とともに参照することによって決定されるべきである。
【国際調査報告】