(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】プログラム可能なトランスポザーゼおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/54 20060101AFI20231220BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20231220BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20231220BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20231220BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
C12N15/55
C12N9/22
C12N9/10
C12N15/09 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537585
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2021086348
(87)【国際公開番号】W WO2022129438
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523227812
【氏名又は名称】ユニバーシタット ポンペウ ファブラ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】グエル カーゴル,マルク
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス-メヒアス ガルシア,アヴェンシア
(72)【発明者】
【氏名】パラレス マスミティア,マリア
(72)【発明者】
【氏名】イヴァンチッチ ジェルマノビッチ,ディミトリエ
(72)【発明者】
【氏名】ラメ,アマル
(57)【要約】
本開示は、以下を含む組成物をベースとした効率的かつ正確なプログラム可能な遺伝子送達技術を提供する:(i)標的核酸配列を結合して切断することができる部位特異的DNA結合タンパク質を含む、またはそれからなる第1のタンパク質;または第1のタンパク質をコードする核酸構築物;および(ii)トランスポザーゼを含む、またはトランスポザーゼからなる第2のタンパク質;または第2のタンパク質をコードする核酸構築物;ここで、トランスポザーゼは、修飾された高活性型PiggyBacである。
【選択図】図なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)標的核酸配列を結合して切断することができる部位特異的DNA結合タンパク質を含む、またはそれからなる第1のタンパク質;または前記第1のタンパク質をコードする核酸構築物;および
(ii)トランスポザーゼを含む、またはトランスポザーゼからなる第2のタンパク質;または前記第2のタンパク質をコードする核酸構築物;を含む組成物であって、
ここで、前記トランスポザーゼは、配列番号9の高活性型PiggyBacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型PiggyBacである、組成物。
【請求項2】
前記第1のタンパク質および前記第2のタンパク質が、任意によりリンカーを介して互いに融合して融合タンパク質を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のタンパク質が、任意によりリンカーを介して、前記第2のタンパク質のC末端部に融合されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記トランスポザーゼが、未修飾の高活性型PiggyBacと比較して、切除活性を増大させるための1つ以上のアミノ酸変異、および/または未修飾の高活性型PiggyBacと比較して、DNA結合活性を低下させるための1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型PiggyBacである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記1つ以上のアミノ酸変異が、R372A、K375A、およびD450Nからならない、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記1つ以上のアミノ酸変異が、M194、D450、T560、S564、S573、S592、またはF594の位置で切除活性を増大させるアミノ酸置換の中から選択され、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応し、好ましくはアミノ酸置換M194Vおよび/またはD450Nの中から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記1つ以上のアミノ酸変異が、M194またはD450の位置で切除活性を増大させるアミノ酸置換の中から選択され、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応し、好ましくはアミノ酸置換M194Vおよび/またはD450Nの中から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記1つ以上のアミノ酸変異が、位置R275、R277、R347、R372、K375、R376、E377、および/またはE380におけるDNA結合活性を低下させるアミノ酸置換の中から選択され、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応し、好ましくはアミノ酸置換R275A、R277、R347S、R372A、K375A、R376A、E377A、および/またはE380Aの中から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記1つ以上のアミノ酸変異が、位置R372、K375、R376、E377、および/またはE380におけるDNA結合活性を低下させるアミノ酸置換の中から選択され、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応し、好ましくはアミノ酸置換R372A、K375A、R376A、E377A、および/またはE380Aの中から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記修飾された高活性型PiggyBacが、二重変異N347SおよびD450Nを含み、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記修飾された高活性型PiggyBac変異が、以下のアミノ酸置換のうちの1つまたはアミノ酸置換の組み合わせを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物:R372A/K375A/R376A/D450N、K375A/R376A/E377A/E380A/D450N、R372A/K375A/R376A/E377A/E380A/D450N、M194V、R376A、E377A、E380A、M194V/R372A/K375A、S351A/R372A/K375A/R388A/D450N/W465A/S573A/M589V/S592G/F594L、R245A/R275A/R277A/R372A/W465A/M589V、R275A/325A/R372A/T560A、N347A/D450N、N347S/D450N/T560A/S573A/F594L、R202K/R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/N347S/K375A/D450N/S592G、R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/R277A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/F594L、R245A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G、R277A/G325A/N347A/K375A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G/F594L、V34M/R275A/G325A/N347S/S351A/R372A/K375A/D450N/T560A/S564P、G325A/N347S/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、S230N/R277A/N347S/K375A/D450N、T43I/R372A/K375A/A411T/D450N、G325A/N347S/S351A/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、Y177H/R275A/G325A/K375A/D450N/T560A/S564P/S592G;位置番号は、配列番号9の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応し、典型的には、前記修飾されたトランスポザーゼは、配列番号2~8、10~18、および135~149のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。
【請求項12】
前記組成物は、第2のトランスポザーゼを含む、またはそれからなる第3のタンパク質、または前記第3のタンパク質をコードする核酸構築物をさらに含み;ここで、前記第2のトランスポザーゼは、配列番号9を有する高活性型PiggyBac、または配列番号9を有する前記高活性型PiggyBacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む修飾された高活性型PiggyBacのいずれかである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1、第2および第3のタンパク質が、任意によりリンカーを介して、互いに融合して三重融合タンパク質を形成する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1のタンパク質が、RNA誘導型ヌクレアーゼもしくはニッカーゼ、またはジンクフィンガーヌクレアーゼを含む、またはそれらからなる、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記第1のタンパク質が、活性DNA切断ドメインおよびガイドRNA結合ドメインを含み、配列番号31の化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、配列番号72の黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)、配列番号74のCpf1、配列番号29のカンピロバクター・ジェジュニCas9(CjCas9)、配列番号70の化膿連鎖球菌Cas9ニッカーゼ(nCas9)、配列番号75のCasX、または配列番号76の黄色ブドウ球菌Cas9ニッカーゼに対して、少なくとも80%、90%、95%、99%または少なくとも100%の同一性を有するヌクレアーゼタンパク質であり、
好ましくは、前記第1のタンパク質が、配列番号72の黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)および配列番号31の化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)からなる群から選択されるCas9タンパク質である、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
ガイドRNAと、ゲノムに挿入するための外因性核酸とをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記トランスポザーゼが、前記ガイドRNAに含まれる少なくとも1つの特定のRNA配列に結合できるRNA結合タンパク質に融合され、
任意により、前記RNA結合タンパク質は、MS2バクテリオファージコートタンパク質(MCP)であり、前記ガイドRNAは、好ましくは配列番号153と少なくとも75%の同一性を共有するMS2 RNAテトラループ結合配列を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記外因性核酸が、典型的には5kb~25kb、より好ましくは8kb~20kbのサイズを有する大きいDNA断片である、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、ナノ粒子中に含まれる、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
請求項2~17のいずれか一項に記載の融合タンパク質、典型的にはメッセンジャーRNA(mRNA)をコードする核酸。
【請求項21】
細胞のゲノムへの外因性核酸配列の部位特異的組み込みのためのin vitro方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物、ガイドRNA、および前記外因性核酸を前記細胞に送達することを含む方法。
【請求項22】
細胞のゲノムへの前記外因性核酸配列の部位特異的組み込みによる疾患の治療に使用するための、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物、ガイドRNA、および外因性核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子編集および遺伝子療法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
がん、発達障害、および一部の感染症などの多くの疾患は、共通の遺伝的異常およびエピジェネティックな異常を有する。遺伝子療法は、細胞に遺伝物質を導入して、ゲノムを直接標的にして編集し、遺伝的機能不全細胞を修正し、それによって関連疾患を治癒するように設計されている。
【0003】
遺伝子編集ツールボックスは、ここ数年で大幅に拡大しており、遺伝子療法に加えて、必要な対象における障害を治療するために欠損遺伝子を修復する有望なツールも含む。
【0004】
伝統的に、遺伝子編集は、ゲノム内の目的の配列に二本鎖破断(DSB)を誘導する人工エンドヌクレアーゼの設計に基づく1。細胞は、次の2つの主要な経路:非相同末端結合(NHEJ)または相同性指向修復(HDR)のいずれかを介してDSBを修復する2。最近では、DSBに依存しない編集も開発されている。デアミナーゼ、すなわち塩基エディタ(BE)3を使用して、DNA塩基を直接編集することに基づく方法、および、逆転写酵素(RT)、すなわちプライムエディタ(PE)4を利用してDNA塩基をin situ置換することに基づく方法も利用できるようになった。
【0005】
しかし、病理学的遺伝的欠陥は、数塩基から大きな欠失まで多岐にわたり得る。塩基エディタまたはプライムエディタは、少数の塩基のみを標的にしており、HDRベースの編集は、サイズに合わせた拡張は十分でない5。NHEJをベースにした方法論は、相同性非依存性標的組み込み(HITI)などとして開発されている6。この方法は、数キロベースの挿入に対して実証されているが、非常に大規模な編集に対しては依然として非効率的である5。HITIは、エクソンを送達するために働き得るが、ジストロフィン(約14kb)またはラミニン-α2(約9kb)などの遺伝子のcDNAを確実に送達するには十分な効率ではない可能性がある。
【0006】
高精度CRISPRプログラム可能なトランスポゾンは、細菌で報告されている7、8が、哺乳動物細胞では利用できない。ジンクフィンガーまたは化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogene)Cas9(SpCas9)を哺乳動物適合性piggyBac(PB)またはsleeping beautyトランスポザーゼに融合するこれまでの試みでは、比較的低レベルの精度でシステムが送達された9-11。PBシステムは、効率がサイズに応じて適切に調整され12、変異に依存しない技術であり、DNA修復機構への依存性が低いことにより、あらゆる組織で働くため、遺伝子療法にとって魅力的なツールである。
【0007】
したがって、in vitro、ex vivo、またはex vivoのいずれかで、哺乳動物細胞に標的遺伝子を送達するための新規システムを開発する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0008】
特定のプログラム可能なトランスポザーゼおよび標的遺伝子編集におけるそれらの使用は、WO2020250181に開示されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
本開示は、ここで、以下を含む組成物をベースとしたさらに効率的かつ正確なプログラム可能な遺伝子送達技術を提供する:(i)標的核酸配列を結合して切断することができる部位特異的DNA結合タンパク質を含む、またはそれからなる第1のタンパク質;または第1のタンパク質をコードする核酸構築物;および(ii)トランスポザーゼを含む、またはトランスポザーゼからなる第2のタンパク質;または第2のタンパク質をコードする核酸構築物;ここで、トランスポザーゼは、修飾された高活性型PiggyBacである。このような技術は、小さい核酸断片のみでなく、大きい核酸断片も送達できる能力を有する。本発明者らは、哺乳動物細胞およびin vivoマウス肝臓においてこの技術を試験し、驚くべきことにそれらすべてにおいて、高効率(5~10%)の部位指向性組み込みを達成した。
【0010】
一実施形態では、組成物は、(i)標的核酸配列を結合して切断することができる部位特異的DNA結合タンパク質を含む、またはそれからなる第1のタンパク質;または第1のタンパク質をコードする核酸構築物;および(ii)トランスポザーゼを含む、またはトランスポザーゼからなる第2のタンパク質;または第2のタンパク質をコードする核酸構築物;を含み、ここで、トランスポザーゼは、配列番号9の高活性型PiggyBacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型PiggyBacである。
【0011】
一実施形態では、第1のタンパク質および第2のタンパク質は、任意によりリンカーを介して、互いに融合して融合タンパク質を形成する。一実施形態では、第1のタンパク質は、任意によりリンカーを介して、第2のタンパク質のC末端部に融合される。
【0012】
一実施形態では、トランスポザーゼは、未修飾の高活性型PiggyBacと比較して、切除活性を増大させるための1つ以上のアミノ酸変異、および/または未修飾の高活性型PiggyBacと比較して、DNA結合活性を低下させるための1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型PiggyBacである。
【0013】
一実施形態では、1つ以上のアミノ酸変異は、R372A、K375A、およびD450Nからならない。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸変異は、M194、D450、T560、S564、S573、S592、またはF594の位置で切除活性を増大させるアミノ酸置換の中から選択され、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応し、好ましくはアミノ酸置換M194Vおよび/またはD450Nの中から選択される。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸変異は、M194またはD450の位置で切除活性を増大させるアミノ酸置換の中から選択され、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応し、好ましくはアミノ酸置換M194Vおよび/またはD450Nの中から選択される。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸変異は、位置R275、R277、R347、R372、K375、R376、E377、および/またはE380におけるDNA結合活性を低下させるアミノ酸置換の中から選択され、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応し、好ましくはアミノ酸置換R275A、R277、R347S、R372A、K375A、R376A、E377A、および/またはE380Aの中から選択される。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸変異は、位置R372、K375、R376、E377、および/またはE380におけるDNA結合活性を低下させるアミノ酸置換の中から選択され、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応し、好ましくはアミノ酸置換R372A、K375A、R376A、E377A、および/またはE380Aの中から選択される。
【0014】
一実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、二重変異N347SおよびD450Nを含み、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応する。一実施形態では、修飾された高活性型PiggyBac変異は、以下のアミノ酸置換のうちの1つまたはアミノ酸置換の組み合わせを含み:R372A/K375A/R376A/D450N、K375A/R376A/E377A/E380A/D450N、R372A/K375A/R376A/E377A/E380A/D450N、M194V、R376A、E377A、E380A、M194V/R372A/K375A、S351A/R372A/K375A/R388A/D450N/W465A/S573A/M589V/S592G/F594L、R245A/R275A/R277A/R372A/W465A/M589V、R275A/325A/R372A/T560A、N347A/D450N、N347S/D450N/T560A/S573A/F594L、R202K/R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/N347S/K375A/D450N/S592G、R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/R277A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/F594L、R245A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G、R277A/G325A/N347A/K375A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G/F594L、V34M/R275A/G325A/N347S/S351A/R372A/K375A/D450N/T560A/S564P、G325A/N347S/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、S230N/R277A/N347S/K375A/D450N、T43I/R372A/K375A/A411T/D450N、G325A/N347S/S351A/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、Y177H/R275A/G325A/K375A/D450N/T560A/S564P/S592G;位置番号は、配列番号9の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応し、典型的には、修飾されたトランスポザーゼは、配列番号2~8、10~18、および135~149のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0015】
一実施形態では、組成物は、第2のトランスポザーゼを含む、またはそれからなる第3のタンパク質、または第3のタンパク質をコードする核酸構築物をさらに含み;ここで、第2のトランスポザーゼは、配列番号9を有する高活性型PiggyBac、または配列番号9を有する高活性型PiggyBacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む修飾された高活性型PiggyBacのいずれかである。一実施形態では、第1、第2、および第3のタンパク質は、任意によりリンカーを介して、互いに融合して三重融合タンパク質を形成する。
【0016】
一実施形態では、第1のタンパク質は、RNA誘導型ヌクレアーゼもしくはニッカーゼ、またはジンクフィンガーヌクレアーゼを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、第1のタンパク質は、活性DNA切断ドメインおよびガイドRNA結合ドメインを含み、配列番号31の化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、配列番号72の黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)、配列番号74のCpf1、配列番号29のカンピロバクター・ジェジュニCas9(CjCas9)、配列番号70の化膿連鎖球菌Cas9ニッカーゼ(nCas9)、配列番号75のCasX、または配列番号76の黄色ブドウ球菌Cas9ニッカーゼに対して、少なくとも80%、90%、95%、99%または少なくとも100%の同一性を有するヌクレアーゼタンパク質であり、好ましくは、第1のタンパク質は、配列番号72の黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)および配列番号31の化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)からなる群から選択されるCas9タンパク質である。
【0017】
一実施形態では、組成物は、ガイドRNA、およびゲノムに挿入するための外因性核酸をさらに含む。
【0018】
一実施形態では、トランスポザーゼは、ガイドRNAに含まれる少なくとも1つの特定のRNA配列に結合できるRNA結合タンパク質に融合され、任意により、RNA結合タンパク質は、MS2バクテリオファージコートタンパク質(MCP)であり、ガイドRNAは、好ましくは配列番号153と少なくとも75%の同一性を共有するMS2 RNAテトラループ結合配列を含む。
【0019】
一実施形態では、外因性核酸は、典型的には5kb~25kb、より好ましくは8kb~20kbのサイズを有する大きいDNA断片である。
【0020】
一実施形態では、組成物は、ナノ粒子中に含まれる。
【0021】
本発明はまた、本明細書に開示される融合タンパク質のいずれか1つをコードする核酸、典型的にはメッセンジャーRNA(mRNA)の形態に関する。
【0022】
本発明はまた、外因性核酸配列を細胞のゲノムに部位特異的に組み込むためのin vitro方法であって、本発明の組成物、ガイドRNA、および外因性核酸を細胞に送達することを含む方法に関する。
【0023】
本発明はまた、細胞のゲノムへの外因性核酸配列の部位特異的組み込みによる疾患の治療に使用するための、本発明の組成物、ガイドRNA、および外因性核酸に関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】プログラム可能なトランスポザーゼ技術:cas9(赤色)は、操作されたPBトランスポザーゼドメイン(ピンク色)と結合される。実験で使用した変異体、およびPBのコアモデル内の対応する位置(位置563は、C-t上にあり、このモデルには含まれない)の表を示す。
【
図2】
図2Aは、cas9のバリアントに対するプログラム可能なトランスポザーゼの依存性を示す。ヌクレアーゼcas9とPBとの融合は、dead cas9(dcas9)またはニッカーゼcas9(ncas9)との融合とは対照的に、標的挿入および全挿入において優れた結果を示す。青色は、標的挿入を示し、黄色は、オフターゲット挿入を示す。
図2Bは、PBのバリアントのプログラム可能なトランスポザーゼ依存性を示す。DNA結合が減少した切除が増強された変異体は、最良のオンターゲット:オフターゲット比を示す(オレンジ色)。オンターゲット挿入は、AAV部位(緑色)およびTRAC部位(青色)で実施した。
図2Cは、様々なリンカーの試験を示す。リンカーの長さおよびトポロジーは、Spcas9およびPB融合のオンターゲット活性に顕著な影響を与えることはない。
【
図3】Hersheyレポーター細胞株:HEK293T細胞株は、1つのスプライシングアクセプターおよびgRNA標的部位が先行するGFPのC末端断片を含むように操作された。PBトランスポゾンは、CAGプロモーター、GFPのN末端断片、その後にスプライシングドナーを組み合わせて生成された。灰色の三角形は、PB ITR;SA:スプライシングアクセプター;SD:スプライシングドナー;標的:標的挿入部位;*挿入プロセスにより破壊されるITR。
【
図4】
図4Aは、PBのバリアントのプログラム可能なトランスポザーゼ依存性を示す。DNA結合を減少させるための様々な変異と関連した切除が増強された変異体450は、最良のオンターゲットを示す。R372およびR376のAへの同時変異は、十分に許容されない。E377は、DNA結合に関与しないが、Aへの変異は、K375およびR376のAへの変異時に、その領域での負電荷の蓄積を回避するのに有益であり得る。
図4Bでは、R372A/K375Aは、標的DNAへの結合の減少の結果として、PBの組み込み活性を低下させる(D450Nでも同様に観察される)。オフターゲット組み込みの試験は進行中である。
【
図5】二本鎖破断およびプログラム可能なDNA結合ドメインが標的挿入に影響を及ぼす。効率的なオンターゲット挿入には、挿入部位における二本鎖破断およびPBの共局在が必要である。
【
図6】複数の挿入のサンガー配列決定による検証(NGSにより測定して、より包括的な分布は、
図2aを参照)を示す。ITR TTAAは、標的挿入の過程で喪失する。NGG Pamは、赤で強調表示する。
【
図7】cas9を含まないPB K375A_R376A_E377A_E380A_D450Nの挿入活性。標的挿入機構をさらに調査するために、hyPB K375A_R376A_E377A_E380A_D450Nをcas9なしでクローニングし、hek293T細胞でRFPトランスポゾンを使用して、その挿入効率をhyPB WTと比較して試験した。結果は、融合cas9がないと、この変異体は挿入活性がないことを示している。
【
図8】A Guide-seqを使用した標的挿入部位の特徴評価を示す。プログラム可能なトランスポザーゼは、複数のインデルによってITR部位を不活化することにより、不可逆的な挿入を生じさせる。B Guide-seqを使用した挿入部位全体の特徴評価を示す。オンターゲット挿入のみがTCR遺伝子座において検出された(上のパネル)。サンガー配列決定は、4つのクローンについて示している(下のパネル)。
【
図9】Guide-seqによる挿入プロファイリングのプログラム可能なトランスポザーゼの特徴評価により、hyPB変異体とCas9との組み合わせが、正確なトランスポゾン挿入を実施したことが示された。
【
図10】Cas9誘導HDRなどの他の標的挿入プラットフォームに対するCas9-hyPB R372A-K375A-D450Nのベンチマークを示す(300bp相同アームを使用した)。
【
図11】マウス肝臓におけるCas9-hyPB R372A-K375A-D450Nのin vivo展開を示す。qPCRによって測定された相対コピー数を報告する。
【
図12】プログラム可能なトランスポザーゼは、CasX、CjCas9、Cpf1、SaCas9などの様々なCasバリアントを使用して操作でき、その一部は、標的部位におけるプログラム可能な挿入という点でSpCas9と同様の結果を達成した。試験したCasバリアントの各々は、3つの独立したgRNAを使用して、スプリットGFPレポーター細胞株の特定の標的領域を標的にした。
【
図13】Cas9と単一のgRNA(gRNA-TCR1またはAAVS1-3)、またはニッカーゼCas9、および近くの位置を標的とする2つのgRNA(gRNA-TCR1およびAAVS1-3)ならびに修飾されたhyPB(変異体R372A-K375A-D405N)と融合したプログラム可能なDNA結合ドメイン(ZnF)による二本鎖破断により、標的挿入がもたらされる。効率的なオンターゲット挿入には、挿入部位における二本鎖破断およびPBの共局在が必要である。これは、ヌクレアーゼCas9またはニッカーゼCas9による二重切断によって達成され得る。
【
図14】プログラム可能なトランスポザーゼは、2つのhyPBドメインおよびCas9ヌクレアーゼの二量体ポリペプチドとして操作でき、Cas9-hyPBと比較して、より優れたプログラム可能な挿入が得られる。スプリットGFPレポーター細胞株は、標的部位へのスプリットGFPトランスポゾンのプログラム可能な挿入に使用した。hyPB R372A-K375A-D450Nの変異体は、Cas9への単量体または二量体融合のために使用されている。条件:1-挿入機構としてhyPBのみを使用する陰性対照;2:pcDNA発現ベクターにおけるCas9-hyPB R372A-K375A-D450Nの陽性対照;3:レンチウイルス発現ベクターにおけるCas9-hyPB R372A-K375A-D450Nの陽性対照;4:C末端でhyPB R372A-K375A-D450Nの2ユニットに融合させたCas9ヌクレアーゼ;5:一方はC末端に、他方はN末端において、hyPB R372A-K375A-D450Nの2つのユニットに融合させたCas9ヌクレアーゼ。
【
図15】プログラム可能な転位が生じた細胞の選択を数サイクル行うことで、ライブラリーから最適な変異体の組み合わせを選択することができた。Cas9に融合した場合にCas9-hyPB R372A-K375A-D450Nよりも濃縮度、およびプログラム可能な挿入能力が高いいくつかの変異体を同定した。
【
図16】選択のサイクルが進むにつれて、オンターゲット効率が向上する。各サイクルから選択されたバルクバリアントを、AAVS1を標的とするgRNAおよび1/2GFPトランスポゾンと共にレポーター細胞株に同時トランスフェクトした。プラスミドの量は、クローニング効率を正規化するためにPBコピー数によって補正した。
【
図17】(A)上位に選択された候補のオンターゲット効率を示す。最後のサイクルから選択された96個のランダムクローンの中から最も高いオンターゲット活性に基づいて、6個の個別の候補を選択した。個々のオンターゲット活性をCas9-hyPB R372A-K375A-D450Nと比較した。(B)上位のオンターゲット活性バリアントにおける主要なPB残基を示すロゴを示す。
【
図18】相同性非依存性標的挿入(HITI)に対するCas9-hyPB R372A-K375A-D450N(FiCAT)のベンチマークを示す。
【
図19】4つの異なるヌクレアーゼタンパク質を使用したFiCAT R372A-K375A-D450Nのプログラム可能な挿入活性を示す。SpCas9は、gRNA-TRAC-1のみによるプログラム可能な挿入の対照として使用する(左)。各ヌクレアーゼは、1/2GFPレポーター細胞株への標的挿入のために3つの独立したgRNA(1~3)と共に使用した。
【
図20】ミニサークルルシフェラーゼトランスポゾンの肝臓への組み込みを示す。ミニサークルルシフェラーゼトランスポゾン、Rosa26遺伝子座を標的とするsgRNA、およびFiCAT(Cas9-hyPB R372A-K375A-D450N)mRNAを流体力学的注入によって送達し、ルシフェラーゼシグナルをモニターした。
【
図21】(a)CasX(左)およびCpf1(中央)による編集活性、(b)SaCas9(左)、CjCas9(中央)による編集活性を示す。インデルを含むリードの平均%+/-SDを2つのテクニカルリピートで示し、N=3の生物学的反復の代表的な画像を示す。TRAC-1部位を標的とするSpCas9を参考として使用した(右)。
【
図22】選択サイクル全体でのオンターゲット効率の向上を示す。(A)各サイクルから選択されたバルクバリアントを、AAVS1を標的とするgRNAおよび1/2GFPトランスポゾンと共にレポーター細胞株に同時トランスフェクトした。プラスミドの量は、クローニング効率を正規化するためにPBコピー数によって補正した。(B)各サイクルのバルクバリアントを発現するレンチウイルスを生成し、レポーター細胞株を感染させるために使用した。
【
図23】gRNA tcr1と1/2GFP MCトランスポゾンを同時トランスフェクトしたcas9_PBライブラリー濃縮の4サイクルおよび5サイクル後に、バルクバリアントから単離した1つの変異体のFiCAT(hyPB R372A-K375A-D450N)と比較した、特異的標的組み込みを示す。
【
図24】1/2GFPレポーター細胞株での標的挿入のためのSpCas9またはSaCas9のいずれかと融合させた二量体hyPB R372A-K375A-D450Nのプログラム可能な挿入活性を示す。
【
図25】1/2GFPレポーター細胞株における標的挿入のためのプログラム可能な挿入活性の相対的比較を示す。(A)SpCas9タンパク質と融合させたhyPB R372A-K375A-D450N(左)とSpCas9を別途添加したMCPタンパク質と融合したhyPB R372A-K375A-D450N(右)の比較を示す。(B)SpCas9を別途添加したMCPタンパク質に融合させた3つのhyPB変異体(R372A-K375A-D450N;R202K-R275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L;およびR275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L)間の比較を示す。
【
図26】1/2GFPレポーター細胞株における標的挿入のためのプログラム可能な挿入活性の比較を示す。(A)hyPB R372A-K375A-D450NとSpCas9タンパク質との共発現(左)と、hyPB R372A-K375A-D450NおよびSpCas9タンパク質を含む融合タンパク質(右)との比較を示す。(B)SpCas9と共発現した3つのhyPB変異体(R372A-K375A-D450N;R202K-R275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L;およびR275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L)間の相対的比較を示す。
【
図27】SpCasおよびhyPB R372A-K375A-D450Nを含む第1の融合タンパク質と、MCPタンパク質およびhyPB変異体(R372A-K375A-D450N;R202K-R275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L;およびR275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L)を含む第2の融合タンパク質との共発現による1/2GFPレポーター細胞株における標的挿入のためのプログラム可能な挿入活性の相対的比較を示す。
【
図28】SpCasおよびhyPB R372A-K375A-D450Nを含む融合タンパク質と、3つのhyPB変異体(R372A-K375A-D450N;R202K-R275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L;およびR275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L)との共発現による1/2GFPレポーター細胞株における標的挿入のためのプログラム可能な挿入活性の相対的比較を示す。
【
図29】hyPB R272A-K275A-D450Nの二量体に融合したSpCas9(左)と、第1のhyPB R272A-K275A-D450Nおよび第2のhyPB変異体に融合したSpCas9(右)との間の、1/2GFPレポーター細胞株における標的挿入のためのプログラム可能な挿入活性の比較を示す。
【0025】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈上明らかに別段の指示がない限り、単数形および複数形の参照が含まれる。したがって、例えば、「剤(an agent)」への言及には、単一の剤および複数のそのような剤が含まれる。
【0026】
「核酸配列」および「ヌクレオチド配列」という用語は、単量体ヌクレオチドから構成される、または単量体ヌクレオチドを含む任意の分子を指すために互換的に使用され得る。核酸は、オリゴヌクレオチドであってもポリヌクレオチドであってもよい。ヌクレオチド配列は、DNA、RNA、またはそれらの混合物であり得る。ヌクレオチド配列は、化学的に修飾され得るか、または人工的であり得る。ヌクレオチド配列には、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノおよびロックド核酸(LNA)、さらにグリコール核酸(GNA)およびトレオース核酸(TNA)が含まれる。これらの配列の各々は、分子骨格の変化により、天然に存在するDNAまたはRNAと区別される。また、ホスホロチオエートヌクレオチドを使用してもよい。他のデオキシヌクレオチド類似体としては、限定されないが、本開示のヌクレオチドにおいて使用され得る、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、ホスホロジチオエート、N3’P5’-ホスホルアミデートおよびオリゴリボヌクレオチドホスホロチオエート、ならびにそれらの2’-O-アリル類似体および2’-O-メチルリボヌクレオチドメチルホスホネートが挙げられる。
【0027】
「導入遺伝子」という用語は、外因性核酸配列、特に遺伝子産物をコードする外因性のDNAまたはcDNAを指す。遺伝子産物は、RNA、ペプチド、またはタンパク質であり得る。遺伝子産物のコード領域(CDS)に加えて、導入遺伝子は、発現を促進または増強するために、例えば、プロモーター、エンハンサー(複数可)、応答エレメント(複数可)、レポーターエレメント(複数可)、インスレーターエレメント(複数可)、ポリアデニル化シグナルおよび/または他の機能的エレメント(複数可)など、1つ以上の操作配列を含むか、またはそれらに関連付けられていてもよい。本開示の実施形態は、特に明記しない限り、任意の既知の好適なプロモーター、エンハンサー(複数可)、応答エレメント(複数可)、レポーターエレメント(複数可)、インスレーターエレメント(複数可)、ポリアデニル化シグナル(複数可)、および/または他の機能エレメントを利用してもよい。好適なエレメントおよび配列は、当業者にはよく知られている。
【0028】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために同義的に使用される。この用語は、1つ以上のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体または修飾された誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0029】
「結合タンパク質」という用語は、別の分子に非共有結合により結合することができるタンパク質を指す。結合タンパク質は、例えばDNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合タンパク質の場合、同じタンパク質の1つ以上の分子に結合して、ホモ二量体、ホモ三量体などを形成できる、および/または異なるタンパク質(複数可)の1つ以上の分子に結合することができる。結合タンパク質は、2つ以上のタイプの結合活性を有し得る。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合活性、RNA結合活性、およびタンパク質結合活性を有する。
【0030】
「Cas9」または「Cas9ヌクレアーゼ」という用語は、Cas9タンパク質またはその断片(例えば、Cas9の活性または不活性なDNA切断ドメイン、および/またはCas9のgRNA結合ドメインを含むタンパク質)を含むRNA誘導型ヌクレアーゼを指す。Cas9ヌクレアーゼは、casn1ヌクレアーゼまたはCRISPR(クラスター化された規則的に間隔をあけられた短いパリンドロームリピート)関連ヌクレアーゼとも呼ばれることもある。CRISPRは、移動性の遺伝エレメント(ウイルス、転移因子、およびコンジュゲートプラスミド)に対する防御を提供する適応免疫システムである。CRISPRクラスターは、スペーサー、先行する可動エレメントに相補的な配列、および標的侵入核酸を含む。CRISPRクラスターは、転写されて、プロセシングされて、CRISPR RNA(crRNA)となる。II型CRISPRシステムでは、pre-crRNAを正しくプロセシングするには、トランスコードされた低分子RNA(tracrRNA)、内因性リボヌクレアーゼ3(rnc)、およびCas9タンパク質を必要とする。tracrRNAは、リボヌクレアーゼ3を利用したpre-crRNAのプロセシングのガイドとして機能する。続いて、Cas9/crRNA/tracrRNAは、スペーサーに相補的な線状または環状dsDNA標的をエンドヌクレアーゼにより切断する。crRNAに相補的ではない標的鎖は、エンドヌクレオチド分解的に最初に切断され、次に3’-5’エキソヌクレアーゼによりトリミングされる。自然界では、DNA結合および切断には典型的には、タンパク質および両方のRNAを必要とする。しかし、一本鎖ガイドRNA(「sgRNA」または単に「gNRA」)は、crRNAおよびtracrRNAの両方の態様を1つのRNA種に組み込むように操作できる。
【0031】
Cas9は、CRISPRリピート配列内の短いモチーフ(PAMまたはプロトスペーサー隣接モチーフ)を認識し、自己と非自己とを区別するのに役立つ。Cas9ヌクレアーゼの配列および構造は、当業者によく知られている。Cas9オルソログは、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)およびサーモフィルス菌(S.thermophilus)を含むがこれらに限定されない様々な種で記載されている。追加の好適なCas9ヌクレアーゼおよび配列は、本開示に基づいて当業者には明らかであり、そのようなCas9ヌクレアーゼおよび配列には、Chylinski et al.,2013(RNABiol.10(5):726-37)に開示されている生物および遺伝子座に由来するCas9配列が含まれ、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
いくつかの実施形態では、Cas9ヌクレアーゼは、不活性な(例えば、不活化された)DNA切断ドメインを有する。ヌクレアーゼ不活化Cas9タンパク質は、「dCas9」タンパク質(ヌクレアーゼ「dead」Cas9の略)と互換的に称され得る。不活性DNA切断ドメインを有するCas9タンパク質(またはその断片)を生成するための方法は、当技術分野で知られている(例えば、Jinek et al.,2012.Science.337(6096):816-821;Qi et al.,2013.Cell.152(5):1173-83を参照、それぞれの全内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0033】
「ジンクフィンガータンパク質」という用語は、1つ以上のジンクフィンガーを介して、配列特異的方法でDNAを結合するタンパク質、またはより大きいタンパク質内のドメインを指し、これらは、亜鉛イオンの配位によって構造が安定化されるジンクフィンガータンパク質の結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である。「ジンクフィンガータンパク質」という用語は、多くの場合、「ZFP」と略される。
【0034】
「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」という用語は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合させることによって生成される人工制限酵素を指す。ジンクフィンガードメインは、特定の所望のDNA配列を標的とするように操作することができ、これによりジンクフィンガーヌクレアーゼが複雑なゲノム内の固有の配列を標的にすることが可能になる。「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」は、多くの場合、「ZFN」または「ZNP」と略される。
【0035】
本明細書で使用される「アミノ酸配列」または「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指す。特に指定しない限り、アミノ酸残基のポリマーは、任意の長さであり得る。
【0036】
本明細書で使用する「外因性」という用語は、細胞内に天然には存在しないが、1つ以上の遺伝的、生化学的または他の方法によって細胞に導入できる分子を指す。細胞内の天然の存在は、細胞の特定の発生段階および環境条件に関して決定することもできる。したがって、例えば、筋肉の初期発生中にのみ存在する分子は、成体筋肉細胞に関しては外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導された分子は、非熱ショック細胞にとっては外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全の内因性分子の機能型、または正常に機能する内因性分子の機能不全型を含み得る。
【0037】
対照的に、「内因性」分子は、特定の環境条件下、特定の発生段階で特定の細胞内に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリア、葉緑体もしくは他の細胞小器官のゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸を含むことができる。追加の内因性分子には、例えば、転写因子および酵素などのタンパク質を含み得る。
【0038】
「標的配列」または「標的核酸配列」または「標的部位」は、結合するにあたって十分な条件が存在する限り、結合分子が結合する、例えばゲノム中の核酸の一部を定義する配列である。例えば、配列5’-GAATTC-3’は、EcoRI制限エンドヌクレアーゼの標的部位である。
【0039】
「融合」という用語は、2つ以上のサブユニット分子が連結している分子を指す。いくつかの実施形態では、2つの間の連結は、共有結合である;あるいは、2つの間の連結は非共有結合であり、例えば分子間相互作用に依存し得る。サブユニット分子は、同じ化学タイプの分子であっても、異なる化学タイプの分子であってもよい。
【0040】
「融合タンパク質」という用語は、少なくとも2つの異なるタンパク質からのタンパク質ドメインを含むハイブリッドポリペプチドを指す。例えば、1つのタンパク質ドメインは、融合タンパク質のアミノ末端(N末端)部分またはカルボキシ末端(C末端)タンパク質に位置し、したがってそれぞれ「アミノ末端融合タンパク質」または「カルボキシ末端融合タンパク質」を形成し得る。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、核酸配列によって完全にコードされ得る一本鎖ポリペプチドであり、ペプチド結合によって直接、または任意によりペプチドリンカーを介して共有結合により連結した少なくとも2つのタンパク質ドメインを含む。
【0041】
本明細書で使用される「遺伝子」または「ゲノム」という用語は、遺伝子産物をコードするDNA領域、ならびにそのような調節配列が、コード配列および/または転写される配列に隣接しているか否かに関係なく、遺伝子産物の産生を調節するすべてのDNA領域を含む。したがって、遺伝子としては、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合部位および内部リボソーム侵入部位などの翻訳調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位、および遺伝子座制御領域が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0042】
「真核」細胞という用語としては、これらに限定されないが、真菌細胞(酵母など)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えば、T細胞)が挙げられる。
【0043】
本明細書で使用される「連結された」という用語は、2つ以上の構成成分(配列エレメントなど)が並置されていることを指し、この場合、構成成分は、両方の構成成分が正常に機能し、構成成分の少なくとも1つが、他の構成成分の少なくとも1つに発揮される機能を媒介できるように配置されている。
【0044】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」とは、それぞれ、その配列が全長のタンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一ではないが、完全長のタンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持するタンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は、対応する天然分子よりも多い、少ない、または同じ数の残基を有することができ、および/または1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチド置換を含むことができる。
【0045】
本明細書で使用される「トランスフェクト」という用語は、真核細胞または原核細胞または生物への核酸(DNAまたはRNAのいずれか)の導入を指す。
【0046】
「切断」という用語は、DNA分子の共有結合骨格の破断を指す。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を含むがこれらに限定されない様々な方法によって開始することができる。一本鎖状の切断および二本鎖状切断は、両方とも可能であり、二本鎖切断は、2つの異なる一本鎖切断イベントの結果として生じ得る。DNAの切断により、平滑末端またはスタッガー末端のいずれかが産生され得る。特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、標的化二本鎖DNAの切断のために使用される。
【0047】
「特異性」という用語は、選択された配列に対して一定の配列同一性を共有する配列を選択的に結合する能力を指す。
【0048】
「挿入」および「組み込み」という用語は、第2の核酸配列またはゲノムもしくはその一部への核酸配列の付加を指す。挿入または組み込みに関して「特異的」、「部位特異的」、「標的化された」、および「オンターゲット(on-targeted)」という用語は、本明細書では互換的に使用され、第2の核酸の特定の部位またはゲノムもしくはその一部の特定の部位への核酸の挿入を指す。逆に、用語「ランダム」、「非標的」および「オフターゲット(off-targeted)」は、望ましくない部位への核酸の非特異的かつ意図しない挿入を指す。「合計」または「全体」という用語は、挿入の合計数を指す。
【0049】
「変異」という用語は、配列、例えば核酸またはアミノ酸配列内の残基の別の残基による置換を指す;および/または核酸もしくはアミノ酸配列内の1つ以上の残基の欠失もしくは挿入を指す。変異は、典型的には、元の残基を同定し、その後配列内の残基の位置を特定し、次に新たに置換された残基の同一性を特定することによって本明細書に記載される。本明細書で提供されるアミノ酸置換(変異)を作製するための様々な方法は当技術分野で周知であり、例えば、Green&Sambrook,2012(Molecular cloning:a laboratory manual(4th Ed.).Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)によって提供される。好ましい実施形態では、タンパク質における変異という用語は、アミノ酸置換を指す。
【0050】
「トランスポザーゼ」という用語は、トランスポゾンの末端に結合し、カットアンドペースト機構または複製転位機構によってゲノムの別の部分への移動を触媒する酵素を指す。
【0051】
「修飾された」という用語は、対応する未修飾のタンパク質または核酸配列とは異なるタンパク質または核酸配列を指す。
【0052】
「リンカー」という用語は、2つの隣接する分子または部分を連結する化学基または分子を指す。
【0053】
本明細書で使用する「ベクター」および「プラスミド」という用語は、例えば第2の目的のポリヌクレオチドを保有することができ、例えば遺伝子配列を標的細胞に移入することができる任意のポリヌクレオチドを指す。したがって、この用語には、ベクターを組み込むのみでなく、クローニング、発現ビヒクルも含む。特に、本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、核酸の発現を指示することができる任意のポリヌクレオチドを指す。いくつかの態様では、「ベクター」および「プラスミド」という用語は、「核酸構築物」という用語と互換的に使用される。
【0054】
本明細書で使用される場合、2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップの数を考慮して、配列によって共有される同一位置の数に対応されたものであり(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数x100)、各ギャップの長さは、2つの配列を最適に整列させるために導入する必要がある。配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定は、下記のとおり数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0055】
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.、4:11-17、1988)を使用して決定することができ、これは、PAM120重量残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用する。あるいは、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanとWunsch(J.Mol,Biol.48:444-453,1970)アルゴリズムを使用して、Blossom62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれかを使用して決定できる。ギャップウェイトは、16、14、12、10、8、6、または4、長さウェイトは、1、2、3、4、5、または6を使用する。
【0056】
2つのヌクレオチドアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えばデフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=4、および両方の鎖の比較を使用する核酸配列用のBLASTNプログラムなどのアルゴリズムを使用して決定することもできる。
【0057】
本明細書で使用される「組換え」または「操作された」という用語は、人工的に作製されたタンパク質または核酸配列を指す。
【0058】
本明細書で使用される「対象」という用語は、個々の生物、例えば個々の哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では、対象は、げっ歯類である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、またはイヌである。いくつかの実施形態では、対象は、脊椎動物、両生類、爬虫類、魚類、昆虫、ハエ、または線虫である。いくつかの実施形態では、対象は、研究動物である。
【0059】
「治療」、「治療する」、および「治療すること」という用語は、本明細書に記載されているように、疾患または障害、またはそれらの1つ以上の症状を逆転、軽減、発症を遅らせる、または進行を阻害することを目的とした臨床介入を指す。本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」、および「治療すること」という用語は、本明細書に記載されているように、疾患または障害、またはそれらの1つ以上の症状を逆転、軽減、発症を遅らせる、または進行を阻害することを目的とした臨床介入を指す。いくつかの実施形態では、治療は、1つ以上の症状が発現した後、および/または疾患が診断された後に施し得る。他の実施形態では、例えば、症状の予防、発症の可能性の低下、または発症の遅延、または疾患の発症もしくは進行の阻害のために、症状がない場合に治療を施し得る。例えば、症状の発症前に(例えば、症状歴の見地から、かつ/または遺伝的もしくは他の感受性因子の見地から)、治療を感受性のある個体に施すことができる。治療は、症状が解消した後も継続して、例えば、これらの再発を予防または遅延させ得る。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明は、
(i)標的核酸配列を結合して切断することができる部位特異的DNA結合タンパク質を含む、またはそれからなる第1のタンパク質;または第1のタンパク質をコードする核酸構築物;
(ii)トランスポザーゼを含む、またはトランスポザーゼからなる第2のタンパク質;または第2のタンパク質をコードする核酸構築物;を含む組成物に関し、
ここで、トランスポザーゼは、配列番号9の高活性型PiggyBacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型PiggyBacである。
【0061】
操作されたジンクフィンガータンパク質(ZFP)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、および最近ではCas9などのRNA誘導型DNAヌクレアーゼなどの現在のゲノム操作ツールは、ゲノム内の配列特異的DNA切断に影響を与える。このプログラム可能な切断により、非相同末端結合(NHEJ)による切断部位でのDNAの変異、または相同性指向修復(HDR)による切断部位周囲のDNAの置換が生じ得る。
【0062】
一実施形態では、部位特異的DNA結合タンパク質は、RNA誘導型DNAヌクレアーゼ、ジンクフィンガータンパク質、および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼを含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0063】
一実施形態では、部位特異的DNA結合タンパク質は、RNA誘導型DNAヌクレアーゼおよびジンクフィンガータンパク質を含むまたはそれらからなる群から選択される。
【0064】
一実施形態では、部位特異的DNA結合タンパク質は、RNA誘導型ヌクレアーゼである。
【0065】
一実施形態では、部位特異的DNA結合タンパク質は、Cas9タンパク質(例えば、限定されないが、化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)、またはカンピロバクター・ジェジュニCas9(CjCas9);他のいくつかの好適な例は、下記に記載される)、またはそのバリアント(例えば、ニッカーゼCas9(nCas9)またはdead Cas9(dCas9))、Cas12aタンパク質、Cas12bタンパク質、Cpf1タンパク質、またはCasXタンパク質(そのバリアントおよび機能的断片を含む)である。
【0066】
一実施形態では、部位特異的DNA結合タンパク質は、そのバリアントおよび機能的断片を含むCas9タンパク質である。
【0067】
CRISPR-Cas9システムは、配列特異的二本鎖破断(DSB)を介して、遺伝子を不活化するまたは修飾するための非常に効果的なツールである。これらのDSBは、細胞のDNA損傷応答機構によって認識され、内因性DSB修復経路によって修復できる。主な修復経路は、非相同末端結合(NHEJ)であり、多くの場合、フレームシフト変異が生じ、遺伝子の機能が破壊される可能性がある小さな挿入および/または欠失が生じる。この経路を利用して、遺伝子ノックアウト変異を生成することができる。あるいは、修復鋳型(例えば、ラミニン-α2タンパク質、その機能的バリアントまたはその断片をコードする導入遺伝子を含む、またはそれらからなる核酸構築物など)の存在下で、損傷は、相同性指向修復(HDR)によって、シームレスに修復することができる。しかし、注目すべき進歩にもかかわらず、正確な遺伝子修飾を導入するためのHDR媒介ゲノム編集は、NHEJ媒介遺伝子破壊よりも効率がはるかに低い。さらに、HDR経路による大規模な数kbの置換は困難をもたらし、選択および/または大集団の細胞選別が必要になる。したがって、HDR経路は現在、主として遺伝子内の主要な領域の局所的な置換に限定して用いられているが、大きな全長遺伝子には用いられていない。上で説明したように、本発明は、この欠点を解決する。
【0068】
一実施形態では、Cas9タンパク質は、(i)活性DNA切断ドメインおよび(ii)ガイドRNA結合ドメインを含む。
【0069】
既知のCas9タンパク質の中でも、化膿連鎖球菌Cas9タンパク質は、ゲノム操作のツールとして、広く使用されている。このCas9タンパク質は、2つの異なるヌクレアーゼドメインを含む大きいマルチドメインタンパク質である。
【0070】
一実施形態では、Cas9タンパク質は、コリネバクテリウム・ウルセランス(NCBI Refs:NC_015683.1、NC_017317.1)配列番号19;Corynebacterium diphtheria(NCBI Refs:NC_016782.1、NC_016786.1)配列番号20;Spiroplasma syrphidicola(NCBI Ref:NC_021284.1)配列番号21;Prevotella intermedia(NCBI Ref:NC_017861.1)配列番号22;Spiroplasma taiwanense(NCBI Ref:NC_021846.1)配列番号23;Streptococcus iniae(NCBI Ref:NC_021314.1)配列番号24;Belliella baltica(NCBI Ref:NC_018010.1)配列番号25;Psychroflexus torquisi(NCBI Ref:NC_018721.1)配列番号26;ストレプトコッカス・サーモフィルス(NCBI Ref:YP_820832.1)配列番号27;Listeria innocua(NCBI Ref:NP_472073.1)配列番号28;カンピロバクター・ジェジュニ(CjCas9)(NCBI Ref:YP_002344900.1)配列番号29(配列番号81によってコードされる);髄膜炎菌(NCBI Ref:YP_002342100.1)配列番号30;黄色ブドウ球菌(SaCas9)配列番号72(配列番号77によってコードされる);および化膿連鎖球菌(SpCas9)(NCBI Ref:NC_017053.1)配列番号31由来のCas9タンパク質を含むかまたはそれからなる群から選択される。
【0071】
一実施形態では、本明細書で野生型Cas9タンパク質に言及する場合、野生型Cas9タンパク質は、別段の指定がない限り、配列番号31を有する化膿連鎖球菌由来のCas9(spCas9)に対応する。
【0072】
一実施形態では、Cas9タンパク質は、「Cas9バリアント」であってもよい。本明細書で使用される「Cas9バリアント」は、本明細書に記載のCas9タンパク質と相同性を共有するタンパク質であり、その断片が含まれる。
【0073】
一実施形態では、Cas9バリアントは、配列番号31を有する野生型Cas9タンパク質、または配列番号19~30もしくは72を有する他の任意のCas9タンパク質に対して、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、または少なくとも約99.9%であり得る。
【0074】
一実施形態では、Cas9バリアントは、1つまたはいくつかのアミノ酸置換を有するCas9タンパク質のアミノ酸配列を含む。例えば、Cas9のDNA切断ドメインには、HNHヌクレアーゼサブドメインおよびRuvC1サブドメインの2つのサブドメインが含まれることが知られている。HNHサブドメインは、gRNAに相補的な鎖を切断するが、RuvC1サブドメインは、非相補鎖を切断する。
【0075】
これらのサブドメイン内の変異により、Cas9のヌクレアーゼ活性がサイレンシングされ得る。例えば、置換D10AおよびH841Aは、配列番号31を有する化膿連鎖球菌Cas9タンパク質のヌクレアーゼ活性を完全に不活化することが知られており、その結果、sgRNAによってプログラムされた方法でDNAを結合する能力を依然として保持しているdead Cas9(dCas9)が生じる。原則として、dCas9は、別のタンパク質またはドメインに融合したときに、適切なsgRNAと共発現するのみで、そのタンパク質を事実上あらゆるDNA配列に標的化できる。一実施形態では、dCas9タンパク質は、配列番号66に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。一実施形態では、dCas9タンパク質は、配列番号71に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはこのアミノ酸配列からなる。
【0076】
Cas9ニッカーゼ(nCas9)に関しては、RuvCヌクレアーゼドメイン内での点変異(D10A)が異なるCas9ヌクレアーゼのバリアントであり、DNAにニックを入れることはできるが、切断することはできない。一実施形態では、nCas9タンパク質は、配列番号65に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。一実施形態では、nCas9タンパク質は、配列番号70に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはこれらからなる。いくつかの実施形態では、SaCas9ニッカーゼ(SanCas9)は、配列番号80に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、SaCas9ニッカーゼ(SanCas9)は、配列番号76に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
一実施形態では、Cas9バリアントは、Cas9の断片を含み、これにより、断片が、配列番号31を有する野生型Cas9タンパク質、または配列番号19~30もしくは72を有する任意の他のCas9タンパク質の対応する断片に対して、少なくとも約70%同一である、少なくとも約80%同一である、少なくとも約90%同一である、少なくとも約95%同一である、少なくとも約96%同一である、少なくとも約97%同一である、少なくとも約98%同一である、少なくとも約99%同一である、少なくとも約99.5%同一である、または少なくとも約99.9%同一であるようになる。
【0078】
一実施形態では、Cas9バリアントは、DNA切断ドメインまたはガイドRNA結合ドメインのうちの1つのみを含む。
【0079】
一実施形態では、例示的なCas9バリアントは、ヒト化Cas9(hCas9)またはそのバリアントもしくは機能的断片である。本明細書で使用される場合、「ヒト化Cas9」または「hCas9」という用語は、ヒト細胞用に配列最適化されたCas9タンパク質を指す。
【0080】
一実施形態では、hCas9タンパク質は、配列番号64に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。一実施形態では、hCas9タンパク質は、配列番号69に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0081】
一実施形態では、部位特異的DNA結合タンパク質は、cpf1タンパク質である。一実施形態では、cpf1タンパク質は、配列番号78に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。一実施形態では、cpf1タンパク質は、配列番号74に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0082】
一実施形態では、部位特異的DNA結合タンパク質は、CasXタンパク質である。一実施形態では、CasXは、配列番号79に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。一実施形態では、CasXは、配列番号75に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0083】
以下でさらに詳しく説明するが、本開示の特定の態様は、部位特異的DNA結合タンパク質、特にRNA誘導型ヌクレアーゼ、特に本明細書に記載のCas9タンパク質のいずれかをコードする核酸構築物を含むベクターまたはプラスミド(例えば、発現ベクター、パッケージングベクターなど)にも関し;ベクターまたはプラスミドは、好ましくは、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌細胞、または藻類細胞における発現に好適である。
【0084】
一実施形態では、部位特異的DNA結合タンパク質は、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)である。
【0085】
ジンクフィンガータンパク質は、配列特異的方法でDNAに結合できるタンパク質である。ZFPは、真核生物に不均一に分布している。ZFPは、DNA認識、RNA結合、およびタンパク質結合に関与していることが確認されている。ジンクフィンガータンパク質の特定の分類は、折り畳まれたドメインのタンパク質骨格の全体的な形状を考慮した「折り畳み群」に基づく。ジンクフィンガーの最も一般的な「折り畳み群」は、C2H2またはCys2His2様(「古典的なジンクフィンガー」)、トレブルクレフ(treble clef)、およびジンクリボンである。これらのタンパク質を特徴付ける代表的なモチーフは、Li&Liu,2020(Int J Mol Sci.21(4):1361)の表1に開示されており、この表は参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
ZFPは、ゲノム内の特定のゲノムDNA配列に結合できる任意のZFP、そのバリアントまたは機能的断片であり得る。ZFPの非限定的な例としては、C2H2、gagナックル、トレブルクレフ(treble clef)、ジンクリボン、Zn2/Cys6様、もしくはTAZ2ドメイン様、またはそれらの任意の組み合わせから選択される折り畳み群またはジンクフィンガーモチーフを含むZFPが挙げられる。一実施形態では、ZFPは、C2H2ジンクフィンガータンパク質である。
【0087】
一実施形態では、ZFPは、操作されたZFPである。操作されたジンクフィンガーアレイをDNA切断ドメイン(通常は、FokIの切断ドメイン)に融合して、ジンクフィンガーヌクレアーゼを生成できる。このようなジンクフィンガーとFokIの融合体は、ゲノム操作に有用な試薬となっている。
【0088】
ZFPは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれ以上のジンクフィンガードメインを含むことができる。ZFPは、2~12、2~10、2~8、3~8、4~8、または5~8のジンクフィンガードメインを含むことができる。一実施形態では、ZFPは、6つのジンクフィンガードメインを含む。
【0089】
一般的なモジュラーアセンブリプロセスでは、それぞれが3塩基対のDNA配列を認識できる個別のジンクフィンガーを組み合わせて、9塩基対から18塩基対の長さの範囲の標的部位を認識する3フィンガー、4、5、または6フィンガーアレイを生成することが含まれる。別の方法では、2フィンガーモジュールを使用して、最大6つの個別のジンクフィンガーを含むジンクフィンガーアレイを生成する。
【0090】
一実施形態では、ZFPの結合ドメインは、目的の配列に結合するように操作することができる。操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するZFPと比較して、改善された結合特異性を有し得る。
【0091】
一実施形態では、ZFPをコードする例示的な核酸配列は、配列番号32、配列番号34、配列番号36、または配列番号38を含むか、またはこれらからなる。一実施形態では、これらの配列によってコードされる例示的なアミノ酸配列は、配列番号33、配列番号35、配列番号37、または配列番号39を含むか、またはそれらからなる。
【0092】
一実施形態では、ZFPは、配列番号33、35、37または39のいずれか1つに対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0093】
一実施形態では、ZFPは、Gal4 DNA結合ドメインを有しない。Gal4は、CGG-N11-CCGに結合し、ここで、Nは、任意の塩基であり得る。このタンパク質は、ガラクトースをグルコースに変換するために使用される酵素をコードするGAL1、GAL2、GAL7、GAL10、およびMEL1などのガラクトース誘導遺伝子の遺伝子発現のための正の制御因子である。これは、これらの遺伝子の上流活性化配列(UAS-G)にある17塩基対の配列を認識する。したがって、Gal4は、ゲノム内の非常に高頻度の短配列を認識するために、部位特異的ではない。一実施形態では、ZFPは、部位特異的になるように操作されたGal4 DNA結合ドメインを有する。
【0094】
以下にさらに詳述するように、本開示の特定の態様は、部位特異的DNA結合タンパク質、特に本明細書に記載のZFPをコードする核酸構築物を含むベクターまたはプラスミド(例えば、発現ベクター、パッケージングベクターなど)に向けられ;ベクターまたはプラスミドは、好ましくは、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌細胞、または藻類細胞における発現に好適である。
【0095】
本発明によれば、第2のタンパク質は、トランスポザーゼを含むか、またはトランスポザーゼからなる。
【0096】
トランスポゾンは、転位を受けることができる染色体セグメント、例えば、宿主DNA内に相補的配列が存在しない場合でも全体として転座することができるDNAである。トランスポゾンは、ヒト細胞内で長い範囲のDNA操作を行うために使用できる。哺乳動物細胞で使用される一般的なトランスポゾンシステムとしては、これらに限定されないが、不活性トランスポゾンから再構築されたSleeping Beauty(SB)、および蛾イラクサギンウワバ(Trichoplusia)から単離されたPiggyBac(PB)が挙げられる。PiggyBacは、SBよりも転位活性が高く、瘢痕なく切除され得る。
【0097】
ネイティブDNAトランスポゾンには典型的には、トランスポザーゼタンパク質をコードする1つの遺伝子が含まれており、トランスポザーゼ結合部位を有する逆方向末端反復(ITR)が隣接している。それらの転位中に、トランスポザーゼタンパク質は、これらのITRを認識し、ランダムな方法でエレメントの切除およびその後の他の場所への再組み込みを触媒する。さらに、これらのトランスポゾンの一部は、遺伝子療法プロトコルで使用するために適応され得、二成分システムとして使用され、プラスミドには、目的のDNA配列がトランスポゾンITR間に配置される発現カセットが含まれ、トランスポザーゼ酵素またはin vitroで合成されたそのmRNAをコードする配列を含む同時トランスフェクトされたプラスミドによって誘導されて、宿主ゲノムに導入することができる。本開示によれば、トランスポゾンに基づくシステムは、細胞内での治療遺伝子としての導入遺伝子の安定した組み込みおよび持続的な発現を効率よく媒介するために使用される。
【0098】
本開示のトランスポザーゼまたは修飾されたトランスポザーゼは、外因性核酸をゲノムの特定の部位に挿入できる任意のトランスポザーゼであり得る。本開示のいくつかの態様は、本明細書に記載の方法および戦略を使用して設計されたトランスポザーゼ融合タンパク質を提供する。本開示のいくつかの実施形態は、そのようなトランスポザーゼもしくは修飾されたトランスポザーゼをコードする核酸、および/またはそれらを含む融合タンパク質を提供する。本開示のいくつかの実施形態は、トランスポザーゼもしくは修飾されたトランスポザーゼをコードするそのような核酸構築物を含むプラスミドもしくは発現ベクター、および/またはそれを含む融合タンパク質を提供する。
【0099】
トランスポザーゼの非限定的な例としては、Frog Prince、Sleeping Beauty、高活性型Sleeping Beauty、PiggyBac、および高活性型PiggyBacが挙げられる。
【0100】
一実施形態では、トランスポザーゼは、高活性型PiggyBacトランスポザーゼである。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、配列番号9に対応する、または配列番号67によってコードされる高活性型PiggyBacトランスポザーゼである(本開示では、hyPBまたは単にPBとも呼ばれる)。
【0101】
一実施形態では、トランスポザーゼは、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼである。
【0102】
本明細書で使用される場合、「修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼ」とは、配列番号9の野生型高活性型PiggyBacトランスポザーゼと比較して、1つ以上のアミノ酸置換、典型的には1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以下のアミノ酸置換を含むトランスポザーゼを指す。より具体的には、修飾された高活性型PiggyBacは、(i)野生型高活性型PiggyBacトランスポザーゼと比較して、切除活性を増大させるための1つ以上のアミノ酸置換、および/または(ii)野生型高活性型PiggyBacトランスポザーゼと比較して、DNA結合活性を低下させるための1つ以上のアミノ酸置換を含む。一実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼは、配列番号9で表される配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、高活性型PiggyBacトランスポザーゼに対する1つ以上の変異は、三重変異R372A/K375A/D450Nからならず、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型PiggyBacのアミノ酸番号に対応する。
【0104】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、切除活性を増大させるための1つ以上のアミノ酸変異を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型Piggybacは、アミノ酸位置番号[194~200]、[214~222]、[434~442]または[446~456]、例えば、位置D198、D201、R202、M212および/またはS213におけるアミノ酸置換(位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacのアミノ酸番号に対応する)によって規定される領域内のアミノ酸変異の中から選択される、切除活性を増大させるための1つ以上のアミノ酸変異を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型Piggybacは、位置450、560、564、573、589、592、および/または594のアミノ酸変異の中から選択される、切除活性を増大させるための1つ以上のアミノ酸変異を含み、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacのアミノ酸番号に対応する。
【0107】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、M194および/またはD450の位置のアミノ酸変異の中から選択される切除活性を増大させるための1つ以上のアミノ酸変異を含み、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacのアミノ酸番号に対応し、好ましくは、アミノ酸置換は、M194Vおよび/またはD450Nの中から選択される。
【0108】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、DNA結合活性を低下させるための1つ以上のアミノ酸変異を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、位置254、275、277、347、372、375、および/または465のアミノ酸変異の中から選択される、DNA結合活性を低下させるための1つ以上のアミノ酸変異を含み、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacのアミノ酸番号に対応する。
【0110】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、R275、N347、R372、K375、R376、E377、およびE380から選択される、DNA結合活性を低下させるための1つ以上のアミノ酸変異を含み、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacのアミノ酸番号に対応する。
【0111】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、R372、K375、R376、E377、およびE380から選択されるDNA結合活性を低下させる1つ以上のアミノ酸変異を含み、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacのアミノ酸番号に対応し、好ましくはアミノ酸置換R372A、K375A、R376A、E377A、および/またはE380Aの中から選択される。
【0112】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、N347、R372、およびK375から選択されるDNA結合活性を低下させるための1つ以上のアミノ酸変異を含み、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacのアミノ酸番号に対応し、好ましくは、アミノ酸置換N347S、N347A、R372A、K375Aの中から選択され、より好ましくはアミノ酸置換N347S、N347Aの中から選択される。
【0113】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型Piggybacは、上記で定義した切除活性を増大させるための1つ以上のアミノ酸変異;および上記で定義したDNA結合活性を低下させるための1つ以上のアミノ酸変異を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型Piggybacは、位置D450での切除活性を増大させるための少なくとも1つのアミノ酸置換、ならびに位置N347、R372およびK375においてDNA結合活性を低下させるための少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、好ましくは、高活性型Piggybacの修飾されたトランスポザーゼは、二重変異N347SおよびD450N、または三重変異D450N、R372AおよびK375Aを含み、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacのアミノ酸番号に対応する。より好ましい実施形態では、高活性型Piggybacの修飾されたトランスポザーゼは、二重変異N347SおよびD450Nを含み、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacのアミノ酸番号に対応する。
【0115】
いくつかの実施形態では、前述の実施形態で開示した修飾された高活性型Piggybacは、アミノ酸位置番号[158~169]によって画定される領域に少なくとも1つの変異、例えばA166Sおよび/または位置Y527、R518、K525、N463における少なくとも1つの変異をさらに含む。
【0116】
典型的には、修飾された高活性型Piggybacは、配列番号1の修飾された高活性型Piggybacに対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型Piggybacは、1つ以上のアミノ酸置換、配列番号9と比較して、典型的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以下のアミノ酸置換を有する配列番号9の高活性型Piggybacのバリアントである。
【0118】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型Piggybacは、以下の位置34、43、117、202、230、245、268、275、277、287、290、315、325、341、346、347、350、351、356、357、388、409、411、412、432、447、460、461、465、517、560、564、571、573、576、586、587、589、592、および/または594のアミノ酸変異のうちの1つ以上をさらに含む。位置番号は、高活性型PiggyBac配列のアミノ酸番号(配列番号9)に対応する。
【0119】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、以下の変異または変異の組み合わせを含む:V34M、T43I、Y177H、R202K、S230N、R245A、D268N、K287A、K290A、K287A/K290A、R315A、G325A、R341A、D346N、N347A、N347S、T350A、S351E、S351P、S351A、K356E、N357A、R388A、K409A、A411T、K412A、K432A、D447A、D447N、D450N、R460A、K461A、W465A、S517A、T560A、S564P、S571N、S573A、K576A、H586A、I587A、M589V、S592G、またはF594L、D450N/R372A/K375A、R275A/R277A、K409A/K412A、R460A/K461A、R275A/R277A/N347S/K375A/T560A/S573A/M589V/S592GおよびR245A/R275A/R277A/R372A/W465A。
【0120】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、以下のアミノ酸置換またはアミノ酸置換の組み合わせを含む:R372A/K375A/D450N、R372A/K375A/R376A/D450N、K375A/R376A/E377A/E380A/D450N、R372A/K375A/R376A/E377A/E380A/D450N、M194V、M194V/R372A/K375A、S351A/R372A/K375A/R388A/D450N/W465A/S573A/M589V/S592G/F594L、R245A/R275A/R277A/R372A/W465A/M589V、R275A/325A/R372A/T560A、N347A/D450N、N347S/D450N/T560A/S573A/F594L、R202K/R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/N347S/K375A/D450N/S592G、R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/R277A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/F594L、R245A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G、R277A/G325A/N347A/K375A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G/F594L、V34M/R275A/G325A/N347S/S351A/R372A/K375A/D450N/T560A/S564P、G325A/N347S/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、S230N/R277A/N347S/K375A/D450N、T43I/R372A/K375A/A411T/D450N、G325A/N347S/S351A/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、Y177H/R275A/G325A/K375A/D450N/T560A/S564P/S592G;位置番号は、高活性型PiggyBac配列のアミノ酸番号(配列番号9)に対応する。
【0121】
本開示に従って使用するための非常に好ましい修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼとしては、以下のアミノ酸置換の組み合わせを含む修飾された高活性型PiggyBacが挙げられる:R372A/K375A/D450N、S351A/R372A/K375A/R388A/D450N/W465A/S573A/M589V/S592G/F594L、R245A/R275A/R277A/R372A/W465A/M589V、N347A/D450N、N347S/D450N/T560A/S573A/F594L、R202K/R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/N347S/K375A/D450N/S592G、R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/R277A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/F594L、R245A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G、R277A/G325A/N347A/K375A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G/F594L、V34M/R275A/G325A/N347S/S351A/R372A/K375A/D450N/T560A/S564P、G325A/N347S/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、S230N/R277A/N347S/K375A/D450N、T43I/R372A/K375A/A411T/D450N、G325A/N347S/S351A/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、Y177H/R275A/G325A/K375A/D450N/T560A/S564P/S592GおよびR275A/325A/R372A/T560A;位置番号は、高活性型PiggyBac配列のアミノ酸番号(配列番号9)に対応する。
【0122】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、以下のアミノ酸置換またはアミノ酸置換の組み合わせを含む:R245A/R275A/R277A/R372A/W465A/M589V、R275A/325A/R372A/T560A、N347A/D450N、N347S/D450N/T560A/S573A/F594L、R202K/R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/N347S/K375A/D450N/S592G、R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/R277A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/F594L、R245A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G、R277A/G325A/N347A/K375A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G/F594L、G325A/N347S/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、S230N/R277A/N347S/K375A/D450N、G325A/N347S/S351A/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、Y177H/R275A/G325A/K375A/D450N/T560A/S564P/S592G;位置番号は、高活性型PiggyBac配列のアミノ酸番号(配列番号9)に対応する。
【0123】
より好ましい実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、以下のアミノ酸置換の組み合わせを含む:N347A/D450N、N347S/D450N/T560A/S573A/F594L、R202K/R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/N347S/K375A/D450N/S592G、R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/R277A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/F594L、R245A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G、R277A/G325A/N347A/K375A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G/F594L、G325A/N347S/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、S230N/R277A/N347S/K375A/D450N、G325A/N347S/S351A/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、Y177H/R275A/G325A/K375A/D450N/T560A/S564P/S592G;位置番号は、高活性型PiggyBac配列のアミノ酸番号(配列番号9)に対応する。
【0124】
いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、配列番号1~8、10~18、および135~149のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0125】
いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、配列番号1~8および10~18のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0126】
いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、配列番号90~99のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0127】
いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、配列番号135~149のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、配列番号135~140のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、配列番号141~149のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0128】
いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、保存された触媒トライアドに関与するhyPBと比較して、例えば、配列番号9または配列番号11のアミノ酸番号に対応するアミノ酸268および/または346(例えば、D268Nおよび/またはD346N)に1つ以上の変異を含み得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、切除に重要なhyPBと比較して、例えば、配列番号9または配列番号12のアミノ酸番号に対応するアミノ酸287、287/290および/または460/461(例えば、K287A、K287A/K290A、および/またはR460A/K461A)における1つ以上の変異を含み得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、標的結合に関与するhyPBと比較して、配列番号9または配列番号13のアミノ酸番号に対応する、例えば、アミノ酸351、356、および/または379(例えば、S351E、S351P、S351A、および/またはK356E)での1つ以上の変異を含み得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、組み込みに重要なhyPBと比較して、配列番号9または配列番号14のアミノ酸番号に対応する、例えば、アミノ酸560、564、571、573、589、592、および/または594(例えば、T560A、S564P、S571N、S573A、M589V、S592G、および/またはF594L)に1つ以上の変異を含み得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、アライメントに関与するhyPBと比較して、配列番号9または配列番号15のアミノ酸番号に対応する、例えば、アミノ酸325、347、350、357および/または465(例えば、G325A、N347A、N347S、T350Aおよび/またはW465A)での1つ以上の変異を含み得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、十分に保存されているhyPBと比較して、例えば、配列番号9または配列番号16のアミノ酸番号に対応するアミノ酸576および/または587(例えば、K576Aおよび/またはI587A)において、1つ以上の変異を含むことができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、Zn2+結合に関与するhyPBと比較して、例えば、配列番号9または配列番号17のアミノ酸番号に対応する586(例えば、H586A)において、1つ以上の変異を含み得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、プログラム可能なトランスポザーゼは、組み込みに関与するhyPBと比較して、例えば、配列番号9または配列番号18のアミノ酸番号に対応する315、341、372、および/または375(例えば、R315A、R341A、R372A、および/またはK375A)において、1つ以上の変異を含み得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、配列番号9で表される配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、高活性型PiggyBacと比較して、ゲノムへのDNAの組み込みの特異性が高いために選択される。いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacは、配列番号9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18に関して本明細書に開示される修飾のうちの1つ以上を有するアミノ酸配列を含み、それぞれ、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18で表される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を保持する。
【0137】
いくつかの実施形態では、高活性型PiggyBacトランスポザーゼは、配列番号67に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、SB100トランスポザーゼは、配列番号68に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0138】
いくつかの実施形態では、SB100トランスポザーゼは、配列番号73に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、1つ以上の変異を含む修飾されたSleeping Beautyトランスポザーゼである。いくつかの実施形態では、高活性型Sleeping BeautyトランスポザーゼまたはSB100における1つ以上の変異は、以下に対応する:配列番号9または配列番号73のL25F、R36A、I42K、G59D、I212K、N245S、K252AおよびQ271L。
【0140】
特定の実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、Himar1C9変異体ではない。
【0141】
本開示の特定の態様は、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌細胞、または藻類細胞における発現に適した本開示のトランスポザーゼまたは修飾されたトランスポザーゼを含む核酸構築物を含むベクターまたはプラスミド(例えば、発現ベクターまたはパッケージングベクター)を対象とする。いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、Cas9との融合タンパク質として発現する。いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼは、別個のベクターからのCas9と共発現するが、同じ細胞に送達される。いくつかの実施形態では、修飾されたトランスポザーゼまたはそれを含む融合タンパク質は、細胞への送達のためにレンチウイルス粒子にパッケージングされる。
【0142】
実施例に示すとおり、新たに開発された高活性型PiggyBacトランスポザーゼ変異ライブラリーを使用して、特定の標的転位を実施する修飾された高活性型PiggyBacを同定した。このようなライブラリーを使用して、陽性の標的転位を有する修飾された高活性型PiggyBacを同定した。
【0143】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸番号に対応するアミノ酸245、275、277、325、347、351、372、375、388、450、465、560、564、573、589、592、594から選択されるアミノ酸のうちの1つ以上の変異を含むことができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼ変異は、以下から選択されるアミノ酸修飾のうちの1つ以上を含むことができる:配列番号9のアミノ酸番号に対応するR245A、R275A、R277A、R275A/R277A、G325A、N347A、N347S、S351E、S351P、S351A、R372A、K375A、R388A、D450N、W465A、T560A、S564P、S573A、M589V、S592G、またはF594L。
【0145】
一実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸番号に対応するアミノ酸修飾D450Nを含む。
【0146】
一実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼは、配列番号1に対応し、アミノ酸修飾R372A、K375A、およびD450を含む。
【0147】
一実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸番号に対応するアミノ酸修飾R245AおよびD450を含む。
【0148】
一実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸番号に対応するアミノ酸修飾R245A、G325A、およびS573Pを含む。
【0149】
一実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸番号に対応するアミノ酸修飾R245A、G325A、D450およびS573Pを含む。
【0150】
一実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸番号に対応するアミノ酸修飾N347SまたはN347Aを含む。
【0151】
一実施形態では、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸番号に対応するアミノ酸修飾N347SおよびD450Nを含む。
【0152】
他の場合、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼは、配列番号9のアミノ酸番号に対応するアミノ酸修飾N347AおよびD450Nを含む。一実施形態では、この修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼは、配列番号137のアミノ酸配列を含む。
【0153】
前に述べたように、本明細書に開示されるエレメントに融合できるが、単独でまたは異なるエレメントと組み合わせて使用することもできる修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼが本明細書に提供される。トランスポザーゼは、本発明者らによって生成された。したがって、配列番号9のアミノ酸配列を含む修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼが提供され、
-位置34のアミノ酸は、VまたはMであり、
-位置43のアミノ酸は、TまたはIであり、
-位置177のアミノ酸は、YまたはHであり、
-位置202のアミノ酸は、RまたはKであり、
-位置230のアミノ酸は、SまたはNであり、
-位置245のアミノ酸は、Aであり、
-位置268のアミノ酸は、DまたはNであり、
-位置277のアミノ酸は、RまたはAであり、
-位置275のアミノ酸は、RまたはAであり、
-位置277のアミノ酸は、RまたはAであり、
-位置325のアミノ酸は、AまたはGであり、
-位置347のアミノ酸は、SまたはAであり、
-位置351のアミノ酸は、E、P、またはAであり、
-位置372のアミノ酸は、RまたはAであり、
-位置375のアミノ酸は、KまたはAであり、
-位置388のアミノ酸は、RまたはAであり、
-位置409のアミノ酸は、KまたはAであり、
-位置411のアミノ酸は、AまたはTであり、
-位置412のアミノ酸は、KまたはAであり、
-位置450のアミノ酸は、DまたはNであり、
-位置460のアミノ酸は、RまたはAであり、
-位置465のアミノ酸は、WまたはAであり、
-位置517のアミノ酸は、SまたはAであり、
-位置560のアミノ酸は、TまたはAであり、
-位置564のアミノ酸は、PまたはSであり、
-位置571のアミノ酸は、SまたはNであり、
-位置573のアミノ酸は、SまたはAであり、
-位置576のアミノ酸は、KまたはAであり、
-位置586のアミノ酸は、HまたはAであり、
-位置587のアミノ酸は、IまたはAであり、
-位置589のアミノ酸は、MまたはVであり、
-位置592のアミノ酸は、GまたはSである、および/または、
-位置594のアミノ酸は、LまたはFである。
【0154】
本開示はまた、特にex vivoまたはin vivoでの遺伝子療法における医薬品として使用するための、本明細書に提供される修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼに関する。
【0155】
一実施形態において、第1のタンパク質および第2のタンパク質は、直接的またはリンカーを介して間接的に互いに融合して、融合タンパク質を形成し、ここで、第1のタンパク質は、標的核酸配列を結合して切断することができる部位特異的DNA結合タンパク質(上記のとおり)を含むか、またはそれからなり、第2のタンパク質は、トランスポザーゼ(上記のとおり)を含むか、またはそれからなる。
【0156】
一方では部位特異的DNA結合タンパク質に関連し、他方ではトランスポザーゼに関連する任意の実施形態は、本明細書に記載の融合タンパク質の場合に準用して適用される。
【0157】
したがって、一実施形態では、融合タンパク質は、以下を含むか、またはそれらからなる:
(i)上述のとおり、RNA誘導型DNAヌクレアーゼ、ジンクフィンガータンパク質、または転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼを含むか、またはそれらからなる第1のタンパク質、および
(ii)上述のとおり、配列番号9の高活性型PiggyBacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型PiggyBacであるトランスポザーゼを含む、またはそれからなる第2のタンパク質。
【0158】
一実施形態では、融合タンパク質は、以下を含むか、またはそれらからなる:
(i)上述のとおり、RNA誘導型DNAヌクレアーゼまたはジンクフィンガータンパク質を含む、またはそれらからなる第1のタンパク質、および
(ii)上述のとおり、配列番号9の高活性型PiggyBacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型PiggyBacであるトランスポザーゼを含む、またはそれからなる第2のタンパク質。
【0159】
一実施形態では、融合タンパク質は、以下を含むか、またはそれらからなる:
(i)上述のとおり、RNA誘導型DNAヌクレアーゼを含む、またはRNA誘導型DNAヌクレアーゼからなる第1のタンパク質、および
(ii)上述のとおり、配列番号9の高活性型PiggyBacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型PiggyBacであるトランスポザーゼを含む、またはそれからなる第2のタンパク質。
【0160】
一実施形態では、融合タンパク質は、以下を含むか、またはそれらからなる:
(i)上述のとおり、Cas9タンパク質またはそのバリアントを含む、またはそれらからなる第1のタンパク質、および
(ii)上述のとおり、配列番号9の高活性型PiggyBacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型PiggyBacであるトランスポザーゼを含む、またはそれからなる第2のタンパク質。
【0161】
一実施形態では、第1のタンパク質および第2のタンパク質は、融合タンパク質中でいずれの順序でも配向することができる。
【0162】
一実施形態では、融合タンパク質は、直接的またはリンカーを介して間接的に、第2のタンパク質のC末端部に融合された第1のタンパク質を含むか、またはそれからなる。換言すれば、融合タンパク質は、N末端からC末端まで以下のものを含むか、またはそれらからなる:(i)第2のタンパク質(すなわち、トランスポザーゼ);(ii)任意により、リンカー;および(iii)第1のタンパク質(すなわち、部位特異的DNA結合タンパク質、好ましくはRNA誘導型DNAヌクレアーゼ;より好ましくはCas9タンパク質またはそのバリアント)。
【0163】
一実施形態では、融合タンパク質は、直接的またはリンカーを介して間接的に、第2のタンパク質のN末端部に融合された第1のタンパク質を含むか、またはそれからなる。換言すれば、融合タンパク質は、N末端からC末端まで以下のものを含むか、またはそれらからなる:(i)第1のタンパク質(すなわち、部位特異的DNA結合タンパク質、好ましくはRNA誘導型DNAヌクレアーゼ;より好ましくはCas9タンパク質またはそのバリアント);(ii)任意により、リンカー;および(iii)第2のタンパク質(すなわち、トランスポザーゼ)。
【0164】
一実施形態では、融合タンパク質は、リンカーを含む。
【0165】
リンカーの好適な例としては、第1のタンパク質と第2のタンパク質との間(任意の順序で)のペプチドリンカーが挙げられる。
【0166】
一実施形態では、ペプチドリンカーは、(GGS)n、配列番号133を有する(GGGGS)n、(G)n、配列番号134を有する(EAAAK)n、XTENリンカー、および(XP)nモチーフ、およびこれらのいずれかの組み合わせを含むかまたはそれからなる群から選択され、式中、nは独立して1~50の整数である。
【0167】
一実施形態では、リンカーは、12~24アミノ酸長であるか、または36~72ヌクレオチド長の核酸配列によってコードされる。
【0168】
一実施形態では、リンカーは、XTENリンカーまたは(GGS)nリンカーである。
【0169】
一実施形態では、リンカーは、表1に示されるリンカーの中から選択される。
【表1】
【0170】
一実施形態では、リンカーは、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、またはそれらの組み合わせを含む、またはこれらからなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、それぞれ、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62の例示的な核酸配列によってコードされる。
【0171】
一実施形態では、リンカーは、配列番号49のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり;配列番号48の例示的な核酸配列によってコードされる。
【0172】
また、本明細書では、本開示で提供される核酸構築物のいずれかの発現から得られる融合タンパク質も提供される。
【0173】
一実施形態では、融合タンパク質は、三重融合タンパク質である。
【0174】
このような三重融合タンパク質は、以下を含むか、またはそれらから構成され得る:
-1つの第1のタンパク質(すなわち、1つの部位特異的DNA結合タンパク質)および2つの第2のタンパク質(すなわち、2つのトランスポザーゼ);または
-2つの第1のタンパク質(すなわち、2つの部位特異的DNA結合タンパク質)および1つの第2のタンパク質(すなわち、1つのトランスポザーゼ)。
【0175】
一実施形態では、三重融合体は、1つの第1のタンパク質(すなわち、1つの部位特異的DNA結合タンパク質)および2つの第2のタンパク質(すなわち、2つのトランスポザーゼ)を含むか、またはそれらからなり、三重融合体は、N末端からC末端まで:
-(i)部位特異的DNA結合タンパク質、(ii)第1のトランスポザーゼ、(iii)第2のトランスポザーゼ;または
-(i)第1のトランスポザーゼ;(ii)部位特異的DNA結合タンパク質、(iii)第2のトランスポザーゼ;または
-(i)第1のトランスポザーゼ;(ii)第2のトランスポザーゼ、(iii)部位特異的DNA結合タンパク質を含む。
【0176】
一実施形態では、第1および第2のトランスポザーゼは同一である。一実施形態では、第1のトランスポザーゼと第2のトランスポザーゼは、異なる。例えば、第1のトランスポザーゼは、高活性型PiggyBacトランスポザーゼであり得、第2のトランスポザーゼは、本明細書に記載の修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼのいずれかから選択される修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼであり得る。あるいは、第1および第2のトランスポザーゼは、両方とも、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼであり得るが、それぞれが本明細書に記載の異なる置換または置換の異なる組み合わせを有する。
【0177】
一実施形態では、第1および第2のトランスポザーゼは、機能的二量体を形成することができる。
【0178】
一実施形態では、三重融合体は、2つの第1のタンパク質(すなわち、2つの部位特異的DNA結合タンパク質)および1つの第2のタンパク質(すなわち、1つのトランスポザーゼ)を含むか、またはそれらからなり、三重融合体は、N末端からC末端まで:
-(i)第1の部位特異的DNA結合タンパク質、(ii)第2の部位特異的DNA結合タンパク質;(iii)トランスポザーゼ;または
-(i)第1の部位特異的DNA結合タンパク質;(ii)トランスポザーゼ、(iii)第2の部位特異的DNA結合タンパク質、または、
-(i)トランスポザーゼ;(ii)第1の部位特異的DNA結合タンパク質、(iii)第2の部位特異的DNA結合タンパク質を含む。
【0179】
一実施形態では、第1および第2の部位特異的DNA結合タンパク質は、同一である。一実施形態では、第1および第2の部位特異的DNA結合タンパク質は、異なる。例えば、第1の部位特異的DNA結合タンパク質は、Cas9タンパク質であり得、第2の部位特異的DNA結合タンパク質は、本明細書に記載されるCas9タンパク質バリアントのいずれかから選択される、Cas9タンパク質のバリアントであり得る。あるいは、第1および第2の部位特異的DNA結合タンパク質の両方は、Cas9タンパク質バリアントであり得るが、それぞれが異なるバリアントである。
【0180】
一実施形態では、三重融合タンパク質は、任意により、そのタンパク質のうちの2つの間、または3つのタンパク質の間にリンカーを含む。
【0181】
また、本明細書では、以下を含む融合タンパク質も開示される:
(i)第2のタンパク質は、トランスポザーゼを含むか、またはトランスポザーゼからなる;または上記の第2のタンパク質をコードする核酸構築物、および
(ii)少なくとも1つの特定のRNA配列に結合することができるRNA結合タンパク質;またはそのRNA結合タンパク質をコードする核酸構築物。
【0182】
一実施形態では、融合タンパク質は、上記のようにリンカーを含む。
【0183】
一実施形態では、第2のタンパク質は、トランスポザーゼを含むか、またはトランスポザーゼからなり、トランスポザーゼは、配列番号9を有する高活性型PiggyBacである。一実施形態では、第2のタンパク質は、トランスポザーゼを含むか、またはトランスポザーゼからなり、このトランスポザーゼは、配列番号9を有する高活性型PiggyBacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む修飾された高活性型PiggyBacである。特に、修飾された高活性型PiggyBacは、本明細書に開示されるもののいずれかであり得る。
【0184】
一実施形態では、トランスポザーゼ/RNA結合タンパク質融合体は、上記のとおり、部位特異的DNA結合タンパク質を含む、またはそれからなる第1のタンパク質にさらに融合することができる。
【0185】
いくつかの実施形態では、RNA結合タンパク質は、MS2バクテリオファージコートタンパク質(MCP)またはその断片である。
【0186】
いくつかの実施形態では、MCPは、配列番号151と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する(例えば、配列番号150の核酸配列によってコードされる)。
【0187】
いくつかの実施形態では、RNA結合タンパク質は、少なくとも1つの特定のRNA配列に結合することができ、RNA配列は、テトラループを含む。「テトラループ」という用語は、「ステムループ」および「ヘアピンループ」という用語と同じ意味で使用される。
【0188】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのテトラループは、MS2 RNAテトラループ結合配列である。
【0189】
いくつかの実施形態では、テトラループは、ガイドRNA(gRNA)内に含まれる。特定の実施形態では、上記のとおり、gRNAは、Cas9タンパク質と複合体を形成している。
【0190】
いくつかの実施形態では、gRNAは、少なくとも1つのMS2 RNAテトラループ結合配列を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、2つ以上のMS2 RNAテトラループ結合配列を含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのMS2 RNAテトラループ結合配列を含むgRNAは、配列番号153と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する(例えば、配列番号152のDNA配列によってコードされる)。
【0192】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質中のMCPは、Cas9タンパク質に非共有結合により結合したgRNA自体に含まれる少なくとも1つのMS2 RNAテトラループ結合配列に非共有結合により結合する;特に、融合タンパク質のCas9/gRNA複合体への結合は、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼの切除活性を、Cas9/gRNA複合体によって特異的に認識される部位に向ける。
【0193】
以下にさらに詳述するように、本開示の特定の態様は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸構築物を含むベクターまたはプラスミド(例えば、発現ベクター、パッケージングベクターなど)にも向けられ;ベクターまたはプラスミドは、好ましくは、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌細胞、または藻類細胞における発現に好適である。
【0194】
本発明によれば、組成物は、第1のタンパク質および/または第2のタンパク質(または両方を含む融合タンパク質)を、上記のとおりタンパク質として、またはこれらのタンパク質をコードする核酸構築物として含むことができる。
【0195】
核酸配列の標的編集、例えば、ゲノムDNAへの特異的修飾の導入(例えば、外因性核酸の挿入)は、ヒトの遺伝性疾患を治療するための有望なアプローチである。この目的を達成するために、本発明者らは、所望の修飾の組み込みにおいて非常に効率的である;オフターゲット活性が最小限である;およびヒトゲノム内の部位を正確に編集するようにプログラムすることができるゲノム編集に使用するための改良された核酸構築物を提供することを目的とした。
【0196】
したがって、本出願の特定の態様は、外因性核酸、例えば目的の遺伝子(GOI)のゲノムへの部位特異的挿入を改善する際に使用するための核酸構築物を対象とする。いくつかの実施形態では、GOIは、治療遺伝子、例えば治療タンパク質をコードする遺伝子である。目的の治療遺伝子の例としては、嚢胞性線維症疾患を治療するためのCFTR遺伝子(嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子);脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療するためのSMN1遺伝子(運動神経細胞生存1);骨粗鬆症および骨折を予防するためのLRP5遺伝子(LDL受容体関連タンパク質5)バリアントG171V;およびアルツハイマー病の素因を軽減するためのAPP遺伝子(アミロイドベータ前駆体タンパク質)バリアントA673Tが挙げられる。
【0197】
いくつかの実施形態では、挿入のための外因性核酸(例えば、GOI)は、最大約10kb、最大約15kb、最大約20kbの長さ、最大約25kbの長さ、最大約30kbの長さ、最大約35kbの長さ、または最大約40kbの長さであり得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、挿入するための外因性核酸は、最大10kb、最大15kb、最大20kbの長さ、最大25kbの長さ、最大30kbの長さ、最大35kbの長さ、または最大40kbの長さ、例えば、約1kb~約40kb、約1kb~約39kb、約1~約38kb、約1kb~約37kb、約1kb~約36kb、または約1kb~約35kb、例えば、より好ましくは5~25kbであり、典型的には、8~20kbであり得る。
【0199】
一実施形態では、本発明の組成物は、以下を含むかまたは以下からなる:
a.上述の部位特異的DNA結合タンパク質を含む、またはそれからなる、上述の第1のタンパク質をコードする核酸構築物;
b.上述したように、配列番号9の高活性型PiggyBacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型PiggyBacであるトランスポザーゼを含む、またはそれからなる、第2のタンパク質をコードする核酸構築物。
【0200】
別の実施形態では、本発明の組成物は、上記のとおり、(i)部位特異的DNA結合タンパク質を含む、またはそれからなる第1のタンパク質、および(ii)上記のとおり、配列番号9の高活性型PiggyBacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型PiggyBacであるトランスポザーゼを含む、またはこのトランスポザーゼからなる第2のタンパク質を含むか、またはこれらからなる上記の融合タンパク質をコードする核酸構築物を含む、またはそれからなる。
【0201】
一実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸構築物は、上記のとおり、第1のタンパク質と第2のタンパク質との間、または三重融合タンパク質の場合、そのタンパク質のうちの2つの間、または3つのタンパク質の間のリンカーをコードする核酸配列をさらに含む。
【0202】
本開示によれば、第1および第2のタンパク質、または第1および第2のタンパク質を含む、またはそれらからなる融合タンパク質は、外因性核酸の部位特異的挿入を可能にする、および/または促進する。
【0203】
いくつかの実施形態は、以下のいずれかを含むプラスミドまたはベクター(例えば、発現ベクターなど)を対象とする:
-第1のタンパク質をコードする核酸構築物;または
-第2のタンパク質をコードする核酸構築物;または
-第1のタンパク質をコードする核酸構築物および第2のタンパク質をコードする核酸構築物;または
-融合タンパク質または三重融合タンパク質をコードする核酸構築物。
【0204】
いくつかの実施形態では、プラスミドは、パッケージングプラスミドである。いくつかの実施形態では、プラスミドは、キャプシドタンパク質、例えば、gagおよびpolをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、ウイルスエンベロープのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む第2のプラスミド(エンベローププラスミド)と外因性核酸導入遺伝子を含む核酸構築物を含む第3のプラスミドと組み合わされ、ここで、組み合わせが産生細胞株(例えば、真核細胞、原核細胞および/または細胞株)に導入される場合、外因性核酸導入遺伝子をコードする核酸構築物と、第1のタンパク質、第2のタンパク質、第1のタンパク質と第2のタンパク質の両方、または融合タンパク質のいずれかをコードする核酸構築物を含むウイルス粒子が産生される。
【0205】
いくつかの実施形態では、プラスミドは、キャプシドタンパク質、例えば、gagおよびpol(パッケージングプラスミドであって、パッケージングプラスミドには機能的インテグラーゼが欠如している)をコードするポリヌクレオチドを含む第2のプラスミドと、ウイルスエンベロープのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む第3のプラスミド(エンベローププラスミド)と、外因性核酸導入遺伝子を含む核酸構築物を含む第4のプラスミドと組み合わされ、この組み合わせが産生細胞株(例えば、真核細胞および原核細胞および/または細胞株)に導入されると、外因性核酸導入遺伝子を含む核酸構築物と、第1のタンパク質、第2のタンパク質、第1のタンパク質と第2のタンパク質の両方、または融合タンパク質のいずれかをコードする核酸構築物を含むウイルス粒子が産生される。
【0206】
一実施形態では、第1のタンパク質、第2のタンパク質、第1および第2の両方のタンパク質または融合タンパク質、および/または外因性核酸導入遺伝子は、レンチウイルス粒子を使用して細胞に送達される。
【0207】
一実施形態では、核酸構築物は、標的核酸配列を結合するように操作された部位特異的DNA結合タンパク質を含む、またはそれからなる第1のタンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列と、外因性核酸導入遺伝子のゲノムへの挿入を可能にするトランスポザーゼを含む、またはトランスポザーゼからなる第2のタンパク質をコードする第2のポリヌクレオチド配列と、任意により、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとの間のリンカーをコードする核酸配列を含む第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態では、第1のタンパク質は、上述したように、ジンクフィンガータンパク質またはCas9タンパク質またはそのバリアントであり、および/または第2のタンパク質は、上述のように、修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼである。
【0208】
融合タンパク質を産生するための好適なリンカーの例は、上記に記載されている。
【0209】
いくつかの実施形態では、第1のタンパク質が第2のタンパク質とは別のプラスミドから発現されるため、リンカーは必要ない。
【0210】
一実施形態では、リンカーを使用する代わりに、第1および/または第2のポリヌクレオチド配列は、それぞれ第1および第2のタンパク質をコードする核酸を含み、それらの末端の少なくとも1つに、リンカーの機能を果たす追加のヌクレオチドをさらに含む。
【0211】
一実施形態では、核酸構築物は、DNAまたはRNAの形態である。
【0212】
また、本明細書では、本開示で提供される核酸構築物のいずれかを含むベクターも提供される。特に、ベクターは、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌細胞、または藻類細胞における発現に好適である。また、本明細書では、本開示で提供される核酸構築物またはベクターのいずれかを含む宿主細胞も提供される。
【0213】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、宿主細胞内で発現する。好適な宿主細胞としては、これらに限定されないが、真核細胞および原核細胞および/または細胞株が挙げられる。このような宿主細胞またはそのような細胞から生成される細胞株の非限定的な例としては、COS、CHO(例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)、およびperC6細胞、ならびにSpodoptera fugiperda(Sf)などの昆虫細胞、またはSaccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesなどの真菌細胞が挙げられる。
【0214】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、微生物に由来する。本明細書に開示される特定の方法に有用な微生物としては、例えば、細菌(例えば、大腸菌)、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae)、および植物が挙げられる。宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよい。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核細胞である。好適な真核宿主細胞としては、これらに限定されないが、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌細胞、および藻類細胞が挙げられる。
【0215】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、コンピテント宿主細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、天然にコンピテントである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、例えば塩化カルシウムおよび熱ショックを使用するプロセスによってコンピテントにされる。使用される細胞は、任意の細胞コンピテント、特に真核細胞、特に哺乳動物、例えばヒトまたは動物であり得る。それらは、体細胞性幹または胚性幹または分化したものであり得る。いくつかの態様では、細胞には、293T細胞、線維芽細胞、肝細胞、筋細胞(骨格、心臓、平滑細胞、血管など)、上皮細胞の神経細胞(ニューロン、グリア細胞、星状細胞)、腎臓細胞、眼球細胞などが含まれる。これには、昆虫、植物細胞、酵母、または原核細胞も含まれ得る。さらに、初代細胞を単離し、ヌクレアーゼ(例えば、ZFNまたはTALEN)またはヌクレアーゼ系(例えば、CRISPR/Cas)による治療後の治療対象への再導入のためにex vivoで使用してもよい。好適な初代細胞としては、末梢血単核球(PBMC)、および限定されないが、CD4+T細胞またはCD8+T細胞などのTリンパ球などの他の血液細胞サブセットが挙げられる。好適な細胞としては、例として、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞(CD34+)、神経幹細胞および間葉幹細胞などの幹細胞も挙げられる。
【0216】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に開示される核酸構築物を含むプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、核酸構築物を含むプラスミドは、パッケージングプラスミドである。いくつかの実施形態では、核酸構築物を含むプラスミドは、キャプシドタンパク質、例えばgagおよびpolをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(i)核酸構築物を含むプラスミドと、宿主細胞内でこれと組み合わされる、(ii)ウイルスエンベロープのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド(エンベローププラスミド)と;(iii)外因性核酸配列(例えば、GOI)を含むプラスミドとでトランスフェクトされ、産生されるウイルス粒子は、外因性核酸、例えばGOI、ならびに第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を含む。
【0217】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(i)核酸構築物を含むプラスミドと、これと組み合わされる、(ii)キャプシドタンパク質、例えば、gagおよびpolをコードするポリヌクレオチドをさらに含む核酸構築物を含むプラスミド(パッケージングプラスミド、ここで、パッケージングプラスミドは機能的なインテグラーゼを欠いている)と;(iii)ウイルスエンベロープのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド(エンベローププラスミド)と、(iv)外因性核酸配列(例えば、GOI)を含むプラスミドとでトランスフェクトされ、産生されるウイルス粒子は、外因性核酸、例えばGOI、ならびに第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を含む。
【0218】
さらなる実施形態では、ベクター、例えば、本開示によるレンチウイルスベクターは、本開示の核酸構築物および外因性核酸によってコードされる第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を生物、例えば哺乳動物、より具体的には目的の哺乳動物標的細胞に送達するために使用することができる。第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を含むレンチウイルスベクターは、例えば肝臓細胞(例えば肝細胞)、筋細胞、脳細胞、腎細胞、網膜細胞、および造血細胞などの様々な細胞型に形質導入することができる。いくつかの実施形態では、本開示の標的細胞は、「非分裂」細胞である。これらの細胞としては、通常は分裂しない神経細胞などの細胞が挙げられる。しかし、本開示が非分裂細胞(これらに限定されないが、筋細胞、白血球、脾臓細胞、肝臓細胞、眼細胞、上皮細胞など)に限定されることは意図するものではない。
【0219】
特定の実施形態では、パッケージングされた第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)が、例えば生物のDNAの遺伝子編集のために生物に投与される。いくつかの実施形態では、生物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、生物は、非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態では、生物は、非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では、生物は、げっ歯類である。いくつかの実施形態では、生物は、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、またはイヌである。いくつかの実施形態では、生物は、脊椎動物、両生類、爬虫類、魚類、昆虫、ハエ、または線虫である。いくつかの実施形態では、生物は、研究動物である。いくつかの実施形態では、生物は、遺伝子操作されており、例えば、遺伝子操作された非ヒト対象である。生物は、いずれの性別であってもよく、あらゆる発達段階にあり得る。
【0220】
核酸、例えば外因性核酸をゲノムに挿入するための方法が記載されている。例えば、Yusa et al.PNAS 4(108):1531-1536(2011);Feng et al.Nuc.Acid Res.4(38):1204-1216(2009);Kettlun et al.Amer.Soc.Gene and Cell Ther.9(19):1636-1644(2011);Skipper et al.20(92):1-23(2013);Li et al.PNAS 25:E2279-E2287(2013);Mates et al.Nature Genetics 41(6):753-761(2009);Mali et al.Nat.Methods 10(10):957-963;Vargas et al.J.Trans.Med.14(288):1-15(2016);Gersbach et al.Acc.Chem.Res.47:2309-2318(2014);Chandrasegaran et al.Cell Gene Ther.Ins.3(1):33-41(2017);Wilson et al.649:353-363(2010);Zhao Zhang,et al.Mol Ther Nucleic Acids.9:230-241(2017);Naldini L.EMBO Mol Med.11(3)(2019);およびNaldini L,et al.Hum Gene Ther.27(10):727-728(2016)を参照、これらはその各々が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0221】
本開示は、ゲノムの特定の部位に核酸(典型的には外因性核酸)を挿入するための、第1のタンパク質および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)をコードする核酸構築物を提供する。本発明はまた、ゲノムの特定の部位に外因性核酸を挿入するための第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を提供する。いくつかの実施形態では、挿入のための外因性核酸は、最大長5kb、最大長10kb、最大長15kb、長さ20kb、最大長25kb、最大長30kb、最大長35kb、または最大長40kb、特に長い核酸の場合、例えば5kb~25kb、典型的には8kb~20kbであり得る。
【0222】
別の実施形態では、ゲノムへの部位特異的核酸挿入のための方法が提供される。
【0223】
したがって、本開示は、外因性核酸配列を細胞のゲノムに部位特異的に組み込むための方法に関し、本方法は、
(i)本明細書に開示される第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)、または本明細書に開示される核酸構築物、
(ii)細胞のゲノムに組み込まれる外因性核酸、および
(iii)細胞のゲノムへの外因性核酸の部位特異的組み込みを決定するためのガイドRNAを含む組成物を細胞に送達することを含み;
第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)が細胞のゲノム内での特定のゲノムDNA配列に結合することにより、ゲノムの切断およびガイドRNAによって決定される、細胞のゲノムへの外因性核酸配列の部位特異的組み込みが生じる。
【0224】
本方法の特定の実施形態では、外因性核酸は、少なくとも5kb、少なくとも6kb、少なくとも7kb、少なくとも8kb、少なくとも9kb、典型的には5~25kb、好ましくは、8~20kbで構成されるサイズの核酸断片である。
【0225】
本方法の特定の実施形態では、外因性核酸は、遺伝性障害の欠損を修正するために、それを必要とする対象のゲノムに挿入される治療用導入遺伝子である。
【0226】
本方法の特定の実施形態では、組成物は、in vitroまたはex vivoで、典型的には哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞、より好ましくは遺伝性障害を患うヒト対象から得られたヒト細胞において送達される。
【0227】
本方法の特定の実施形態では、本組成物は、典型的には遺伝性障害の治療的処置のために、それを必要とする哺乳動物、例えばヒト対象にin vivoで送達される。
【0228】
いくつかの実施形態では、本方法は、標的DNAを、本明細書に記載のCas9およびトランスポザーゼを含む融合タンパク質のいずれかと接触させることを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、DNAを、2つの連結されたポリペプチド(i)Cas9;および(ii)トランスポザーゼを含む融合タンパク質と接触させることを含み、活性型Cas9は、DNA、例えばゲノムDNAの領域にハイブリダイズするgRNAを結合する。
【0229】
いくつかの実施形態では、本方法は、標的DNAを、本明細書に記載のZFPおよびインテグラーゼを含む融合タンパク質のいずれかと接触させることを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、DNAを、2つの連結されたポリペプチド(i)ZFP;および(ii)インテグラーゼを含む融合タンパク質と接触させることを含み、活性型ZFPは、DNA、例えばゲノムDNAの領域にハイブリダイズする。
【0230】
いくつかの実施形態では、第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)は、ウイルスベクター、例えば、レンチウイルス粒子を使用して、標的DNA、例えば、ゲノムDNAを含む生物および/または細胞に送達される。
【0231】
レンチウイルスをパッケージングするための方法が記載されている。Grandchamp et al.9(6):1-13(2014);Voelkel et al.107(17):7805-7810(2010);Tan et al.80(4)1939-1948;Li et al.9(8):1-9(2014);Mates et al.Nature Genetics 41(6):753-761(2009);およびRobert H Kutner1,et al.NATURE PROTOCOLS 4(4):495(2009)を参照、そのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0232】
典型的には、レンチウイルス送達システムは、ウイルス疾患を引き起こすために必要とされる遺伝子成分を含まない完全なウイルスを産生するために使用される、別々のプラスミド上に異なるレンチウイルス遺伝子を有する分割システムを使用する。例えば、1つのプラスミド(エンベローププラスミド)は、ウイルスエンベロープ(env)のタンパク質をコードすることができ;別のプラスミド(パッケージングプラスミド)は、キャプシドタンパク質(例えば、gagおよびpol)ならびに逆転写酵素および/またはインテグラーゼのような酵素をコードすることができ;さらに、さらなるプラスミド(トランスファープラスミド)は、(ゲノム組み込みのための)長末端反復配列およびpsi配列(遺伝子をウイルスにパッケージングするためのシグナルを示す)が隣接する目的の遺伝子(GOI)を含む。これらのプラスミドが同時に細胞に導入された場合、疾患を引き起こすために必要なウイルス遺伝子を持たずに、目的の遺伝子を含むウイルスが産生される。
【0233】
本開示の特定の態様では、本発明のレンチウイルスベクター(または粒子)は、許容細胞(293T細胞など)にin vitroで、レンチウイルスベクターゲノムの特定の成分を含むプラスミド、およびポリペプチドGAG、POLおよびエンベロープタンパク質(複数可)またはレトロウイルス粒子の形成を可能にするのに十分なこれらのポリペプチドの一部をコードするgag、polおよびenv配列をトランスで提供する少なくとも1つの他のプラスミドでトランスフェクトすることによる、分割システム、例えばトランス相補システム(ベクター/パッケージングシステム)によって取得可能である。
【0234】
一例として、宿主細胞は、a)レンチウイルスgagおよびpol配列を含むパッケージングプラスミド、b)エンベロープタンパク質(複数可)(VSV-Gなど)をコードする遺伝子を含む第2のプラスミド(エンベロープ発現プラスミドまたはシュードタイピングenvプラスミド)、c)5’と3’との間のLTR配列、psiキャプシド化配列、および導入遺伝子を含むプラスミドベクター、ならびにd)本明細書に開示の第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)をコードする核酸構築物を含むプラスミドベクターでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)をコードする核酸構築物は、別個のプラスミドではなくパッケージングプラスミド上にある。gag、polおよびenv cDNAをコードする核酸は、従来技術およびデータベースで入手可能なウイルス遺伝子配列から、従来の技術に従って有利に調製することができる。
【0235】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、本明細書に記載の核酸構築物を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、本明細書に記載される第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を含む。
【0236】
プラスミド中で使用されるプロモーターは、同一であっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、プラスミドトランス相補システムにおいて、コートタンパク質のgagおよびpolの発現を促進するためのエンベローププラスミドおよびプラスミドベクターのそれぞれ、ベクターゲノムのmRNAおよび導入遺伝子は、同一であっても異なっていてもよいプロモーターである。このようなプロモーターは、遍在性プロモーター、または特異的プロモーター、例えばウイルスプロモーターCMV、TK、RSV LTRプロモーターおよびU6もしくはH1などのRNAポリメラーゼIIIプロモーター、あるいはenv、gagおよびpolをコードするヘルパーウイルス(すなわち、アデノウイルス、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス)のプロモーターから有利に選択することができる。
【0237】
本開示のレンチウイルスベクターの産生のために、本明細書に記載のプラスミドを宿主細胞に導入することができ、ウイルスが産生され、回収される。好適な細胞としては、これらに限定されないが、真核細胞および原核細胞および/または細胞株が挙げられる。このような細胞またはそのような細胞から生成される細胞株の非限定的な例としては、例えば、COS、CHO(例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)、およびperC6細胞、ならびにSpodoptera fugiperda(Sf)などの昆虫細胞、またはSaccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesなどの真菌細胞が挙げられる。
【0238】
宿主細胞がプラスミドでトランスフェクトされ、本開示のレンチウイルスベクター(または粒子)が産生されると、本開示のレンチウイルスベクター(または粒子)を細胞の上清から精製することができる。濃度を高めるためのレンチウイルスベクターの精製は、密度勾配精製(例えば、塩化セシウム(CsCl))、クロマトグラフィー技術(例えば、カラムまたはバッチクロマトグラフィー)、または超遠心分離などの任意の好適な方法によって達成することができる。例えば、本発明のベクターは、2回または3回のCsCl密度勾配精製ステップに供することができる。ベクターは、望ましくは、細胞を溶解することと、ライセートをクロマトグラフィー樹脂に適用することと、クロマトグラフィー樹脂からウイルスを溶出させることと、本開示のレンチウイルスベクターを含む画分を収集することと、を含む方法を使用して、感染細胞から精製させる。
【0239】
レンチウイルスベクターの送達方法が記載されている。例えば、Vargas et al.J.Trans.Med.14(288):1-15(2016);Mali et al.Nat.Methods 10(10):957-963;Mates et al.Nature Genetics 41(6):753-761(2009);Skipper et al.20(92):1-23(2013)を参照されたい。
【0240】
第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)またはそれをコードする核酸構築物を含むレンチウイルスベクターは、任意の経路によって対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、in vivoまたはex vivoのいずれかで対象の細胞に送達され得る。
【0241】
いくつかの実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、in vivoで送達され得る。いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物によってコードされる第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を含むレンチウイルスベクターを使用して、目的の遺伝子を送達する、および/または対象のDNAにおける遺伝的欠陥を標的とすることができる。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、非経口的に、好ましくは血管内(静脈内を含む)で対象に投与される。非経口的投与する場合、ベクターは、滅菌水溶液または分散液などの注射に好適である薬学的ビヒクル中で与えられることが好ましい。
【0242】
いくつかの実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、ex vivoで使用することができる。
【0243】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物によってコードされる第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を含むレンチウイルスベクターを使用して、目的の遺伝子を送達する、および/または対象のDNAにおける遺伝的欠陥を標的とすることができる。いくつかの実施形態では、細胞が対象から除去され、本開示の核酸構築物によってコードされる第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を含むレンチウイルスベクターが、ex vivoで細胞に投与されて、細胞のDNAを修飾させる。次に、修飾されたDNAを保持する細胞が拡張され、対象に再注入される。特定の実施形態では、本開示の核酸構築物によってコードされる第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を含むレンチウイルスベクターは、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法に使用して、患者の自家T細胞を遺伝子修飾させて、腫瘍抗原に特異的なCARを発現させることができる。さらなる実施形態では、修飾されたCAR-T細胞は、ex vivoで拡張させ、患者に再注入させる。いくつかの実施形態では、改変されたT細胞は、より特異的にがん細胞を標的とする。抗体療法とは異なり、CAR-T細胞は、in vivo内で複製することができ、その結果、長期間の持続が得られる。
【0244】
本開示のレンチウイルスベクター、または本開示のレンチウイルスベクターを使用してex vivoで修飾された細胞の投与後、対象をモニタリングして、導入遺伝子の発現を検出することができる。治療の用量および期間は、治療対象の状態または疾患に応じて個別に決定される。本発明のベクターにおける目的の遺伝子の投与によって産生される遺伝子発現に基づいて、様々な状態または疾患を治療することができる。本発明の方法を使用して送達されるベクターの投与量は、宿主による所望の応答および使用されるベクターに応じて変化するであろう。
【0245】
一部の遺伝子療法用途では、遺伝子療法ベクターが特定の組織タイプに対して高い特異性で送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外表面上のウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現させることによって、所定の細胞型に対する特異性を有するように修飾させ得る。リガンドは、目的の細胞型に存在することが知られている受容体に対して親和性を有するように選択される。
【0246】
本開示の特定の態様は、外因性核酸配列を生物のゲノムDNAに挿入する方法に関し、本方法は、生物のゲノム内の特定のゲノムDNA配列を特定することと;本開示の核酸構築物を含むレンチウイルス粒子を生物に投与して、特定のゲノムDNA配列に結合させて、外因性核酸をゲノムDNAに挿入することと、を含み、ここで、外因性核酸は、特定のゲノムDNA配列において、組み込まれる。
【0247】
本開示の特定の態様は、単一コピーまたは複数コピーの外因性核酸配列の細胞への制御された部位特異的組み込みのための方法に関し、本方法は、a)本開示の核酸構築物、ベクター、または第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を細胞に送達することと、b)外因性核酸を細胞に送達することと、を含み、ここで、第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)が、細胞のゲノム内で、特定のゲノムDNA配列に結合することにより、ゲノムの切断および外因性核酸の1つ以上のコピーの細胞のゲノムへの組み込みが生じる。いくつかの態様では、細胞への送達は、レンチウイルス粒子によって行われる。
【0248】
いくつかの戦略を使用して、組み込み部位を試験して、指向性組み込みに最適な機構をスクリーニングできる。
【0249】
本明細書に開示される修飾トランスポゾンの分析には、プロモーター、GFPのコード配列の半分、およびゲノム内の標的挿入部位の下流にスプライス部位ドナーを有するレポーター細胞株を使用することができる。例えば、レンチウイルスペイロードには、融合インテグラーゼバリアントを有し、その後に逆位スプライス部位アクセプターおよびGPFの残りの半分を有することができる。GFPの発現は、直接挿入が起こり、GFP含有mRNAが、挿入部位および組み込まれたペイロードから生成され、このmRNAのスプライシングによって完全なGFP CDSがもたらされるときに生じる。
【0250】
VPRトランス相補システムは、組み込み変異体のスクリーニングおよび比較にも使用され得る。トランス相補システムは、発現して、粒子にロードされたときに、自身の組み込みを促進する融合インテグラーゼバリアントを含むレンチウイルスペイロードの標的挿入に使用でき、VPR融合を使用してウイルス粒子にロードされるであろう。これは、粒子の産生に使用されるパッケージングベクター内にコードされた組み込み欠陥INをトランスで補完する。ICまたはFISHプローブなど、組み込みマッピングに使用できる他の方法。標的挿入は、TCRaまたはRFP標的破壊、または標的スプライス部位組み込みによるGFP活性化によってスクリーニングすることもできる。
【0251】
クロマチン内の挿入領域および標的領域を同時染色するFISHアプローチでは、Hek293Tゲノム内の目的のトランスポゾン遺伝子の場所を特定するための蛍光in situハイブリダイゼーションが実施され得る。Hek293Tは、1)GOI-トランスポゾン、2)プログラム可能なトランスポザーゼ、および3)gRNAを用いて、PPP1R12にトランスフェクトされ得る。プローブは、PPP1R12遺伝子、CD46遺伝子(陰性対照として)、およびGOIを標的とするように設計されており、PCR増幅されたDNAからNick Translation Mix(Sigma)を使用して合成され得る。
【0252】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される修飾されたトランスポザーゼを含む第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)は、例えばGenetrapアッセイによって決定したときに、野生型トランスポザーゼ(または対応する野生型トランスポザーゼを含む融合タンパク質)と比較して、ゲノムへの外因性核酸の挿入の特異性が改善される。いくつかの実施形態では、HEK293T細胞または任意の他の許容可能な細胞は、以下のプラスミドまたはペイロードを有するレンチウイルス粒子でトランスフェクトまたは形質導入される:(i)DNAの特定の領域を標的とするgRNAを含むプラスミド、(ii)第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)をコードし、第2のタンパク質が修飾されたトランスポザーゼである、本開示の核酸構築物を含むプラスミド、および(iii)プロモーターを欠くレポータータンパク質、例えば、GFPをコードする核酸配列を含むgenetrapプラスミド。いくつかの実施形態では、genetrapプラスミドは、逆方向反復を有するトランスポゾンをさらに含む。
【0253】
いくつかの実施形態では、GFP挿入を含む細胞のパーセントは、フローサイトメトリーによって決定することができる。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質が修飾されたトランスポザーゼである第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)は、対応する野生型タンパク質と比較して、GFPの挿入を含む細胞のパーセントを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、または少なくとも30%増加させる。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質が修飾されたトランスポザーゼである第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)は、GFPの挿入を含む細胞のパーセントを約15~30%増加させる。
【0254】
いくつかの実施形態では、標的部位での挿入のパーセントおよび標的部位でのカバー率(挿入部位あたりのリード数)は、ゲノムDNA抽出およびウイルスLTRに特異的なオリゴヌクレオチドを用いた標的配列決定によって決定することができる。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質が修飾されたトランスポザーゼである第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)は、対応する野生型タンパク質と比較して、標的部位での挿入のパーセントを少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、または少なくとも100倍増加させる。いくつかの実施形態では、標的部位での挿入のパーセントは、約10~100倍増加する。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質が修飾されたトランスポザーゼである第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)は、対応する野生型タンパク質と比較して、標的部位におけるカバー率(挿入部位あたりのリード数)を、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、少なくとも110倍、少なくとも120倍、少なくとも130倍、少なくとも140倍、少なくとも150倍、少なくとも160倍、少なくとも170倍、少なくとも180倍、少なくとも190倍、または少なくとも200倍増加させる。いくつかの実施形態では、標的部位におけるカバー率(挿入部位あたりのリード数)は、少なくとも100倍である。
【0255】
いくつかの実施形態では、標的部位での挿入のパーセントおよび標的部位でのカバー率(挿入部位あたりのリード数)は、ゲノムDNA抽出およびウイルス挿入LTRに特異的なオリゴヌクレオチドを用いた標的配列決定によって決定することができる。
【0256】
本開示の第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を含むレンチウイルスベクターの可能な用途としては、遺伝子療法、すなわち任意の哺乳動物細胞、特にヒト細胞における遺伝子導入が含まれる。これは、分裂細胞または静止細胞、肝臓、膵臓、筋肉、心臓などの中心器官または末梢器官に属する細胞であり得る。遺伝子療法により、神経栄養因子、酵素、転写因子、受容体などのタンパク質の発現が可能になり得る。本発明によるレンチウイルスベクターは、研究目的にも特に好適であり得る。
【0257】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物、第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)、および/またはレンチウイルスベクターは、疾患を治療するために対象に投与される。いくつかの実施形態では、疾患は、遺伝子療法の恩恵を受けることができる遺伝性障害である。
【0258】
いくつかの実施形態では、第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)、またはそれらをコードする核酸構築物、または以下に開示されるキットもしくは組成物、または第1および第2のタンパク質(別々に、または上記の融合タンパク質の一部として)を含むレンチウイルスベクター、または本開示による核酸構築物は、医薬品として使用することができる。
【0259】
本開示によるレンチウイルスベクターは、対象における遺伝性疾患を治療するのに特に好適であり得る。
【0260】
本発明は、
(i)RNA誘導型ヌクレアーゼまたはジンクフィンガーヌクレアーゼ、
(ii)トランスポザーゼ、
(iii)ガイドRNA、および
(iv)目的の核酸または遺伝子、例えばゲノムに挿入するための外因性核酸、を含む組成物にも関し、
ここで、トランスポザーゼは、配列番号9の高活性型Piggybacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型Piggybacである。
【0261】
一実施形態では、修飾された高活性型PiggyBac変異は、アミノ酸置換R372A/K375A/D450Nを含む。
【0262】
好ましい実施形態では、修飾された高活性型PiggyBac変異は、アミノ酸置換R372A/K375A/D450Nを含まない。
【0263】
いくつかの実施形態では、修飾された高活性型PiggyBac変異は、以下のアミノ酸置換またはアミノ酸置換の組み合わせを含み:S351A/R372A/K375A/R388A/D450N/W465A/S573A/M589V/S592G/F594L、R245A/R275A/R277A/R372A/W465A/M589V、R275A/325A/R372A/T560A、N347A/D450N、N347S/D450N/T560A/S573A/F594L、R202K/R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/N347S/K375A/D450N/S592G、R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/R277A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/F594L、R245A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G、R277A/G325A/N347A/K375A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G/F594L、V34M/R275A/G325A/N347S/S351A/R372A/K375A/D450N/T560A/S564P、G325A/N347S/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、S230N/R277A/N347S/K375A/D450N、T43I/R372A/K375A/A411T/D450N、G325A/N347S/S351A/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、Y177H/R275A/G325A/K375A/D450N/T560A/S564P/S592G、位置番号は、高活性型PiggyBac配列のアミノ酸番号(配列番号9)に対応する。
【0264】
好ましい実施形態では、修飾された高活性型PiggyBac変異は、以下のアミノ酸置換またはアミノ酸置換の組み合わせを含み:R245A/R275A/R277A/R372A/W465A/M589V、R275A/325A/R372A/T560A、N347A/D450N、N347S/D450N/T560A/S573A/F594L、R202K/R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/N347S/K375A/D450N/S592G、R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/R277A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/F594L、R245A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G、R277A/G325A/N347A/K375A/D450N/T560A/S564P/S573A/S592G/F594L、G325A/N347S/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、S230N/R277A/N347S/K375A/D450N、G325A/N347S/S351A/K375A/D450N/S573A/M589V/S592G、Y177H/R275A/G325A/K375A/D450N/T560A/S564P/S592G、位置番号は、高活性型PiggyBac配列のアミノ酸番号(配列番号9)に対応する。
【0265】
いくつかの実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼは、Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼは、SpCas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼは、SaCas9タンパク質である。
【0266】
本発明はまた、以下をコードする核酸を含む組成物にも関する:
(i)上記のRNA誘導型ヌクレアーゼまたはジンクフィンガーヌクレアーゼ、
(ii)上記のトランスポザーゼ、
(iii)ガイドRNA、および
(iv)目的の核酸または遺伝子、例えばゲノムに挿入するための外因性核酸。
【0267】
いくつかの実施形態では、組成物の核酸は、好適な発現ベクターを介して細胞内で発現する。本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、発現させるヌクレオチド配列に作動可能に連結される発現制御配列を含むポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用エレメントを含む。発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはin vitro発現システムにおいて供給され得る。発現ベクターとしては、コスミド、プラスミド(例えば、裸であるかまたはリポソームに含まれる)、および組換えポリヌクレオチドを組み込むウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)など、当技術分野で公知であるすべてのものが含まれる。
【0268】
好ましい実施形態では、2つの核酸は、同じ細胞または細胞集団内で共発現される。いくつかの実施形態では、2つの核酸は、同時に共発現される。別の実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼまたはジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする核酸が最初に発現する。別の実施形態では、トランスポザーゼをコードする核酸が最初に発現する。
【0269】
本発明は、以下を含む組成物にもさらに関する:
(i)本明細書に開示されるRNA誘導型ヌクレアーゼおよびトランスポザーゼを含む融合タンパク質、またはそれをコードする核酸、
(ii)本明細書に開示されるトランスポザーゼ、またはそれをコードする核酸、
(iii)ガイドRNA、および
(iv)目的の核酸または遺伝子、例えばゲノムに挿入するための外因性核酸。
【0270】
本発明は、以下を含む組成物にもさらに関する:
(i)本明細書に開示されるRNA誘導型ヌクレアーゼおよびトランスポザーゼを含む第1の融合タンパク質、またはそれをコードする核酸、
(ii)少なくとも1つの特定のRNA配列に結合するように操作されたRNA結合タンパク質と、本明細書に開示されるトランスポザーゼ、またはそれをコードする核酸とを含む第2の融合タンパク質、
(iii)ガイドRNA、および
(iv)目的の核酸または遺伝子、例えばゲノムに挿入するための外因性核酸。
【0271】
本開示は、本明細書に記載の開示された方法を実施するための組成物も提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、本開示で定義される核酸構築物またはベクター、およびパッケージングベクターに含まれるかまたは結合される、ゲノムに挿入するための外因性核酸をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0272】
本開示はさらに、以下を含む組成物に関する:
(i)本明細書に開示されるRNA誘導型ヌクレアーゼおよびトランスポザーゼを含む融合タンパク質、またはこの融合タンパク質をコードする核酸、
(ii)ガイドRNA、および
(iii)目的の核酸または遺伝子、例えばゲノムに挿入するための外因性核酸。
【0273】
特定の実施形態では、目的の核酸または遺伝子は、典型的には5kb~25kb、より好ましくは8kb~20kbのサイズを有する大きいDNA断片である。
【0274】
また、本開示により、本明細書に記載の開示された方法を実施するためのキットも提供される。キットは、本明細書に記載の核酸構築物または融合タンパク質を含むことができる。いくつかの態様では、キットは、本明細書に記載の核酸構築物または融合タンパク質を含むレンチウイルス粒子を含むことができる。
【0275】
本キットは、本発明の方法を実践するためにキットの構成要素を使用するための指示書をさらに含むことができる。本発明の方法を実践するための指示書は、通常、好適な記録媒体に記録される。例えば、指示書は、紙またはプラスチックなどの基材に印刷され得る。したがって、指示書は、添付文書としてキット内に、キットの容器またはその構成要素のラベル(すなわち、パッケージングまたはサブパッケージングに関連する)内に存在し得る。他の実施形態では、指示書は、好適なコンピュータ可読記憶媒体上に存在する電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、実際の指示書は、キット内に存在しないが、遠隔ソースから、例えばインターネットを介して指示書を得るための手段が提供される。この実施形態の一例は、指示書を閲覧できる、および/または指示書をダウンロードできるウェブアドレスを含むキットである。指示書と同様に、指示書を得るためのこの手段も適切な基材に記録される。
【0276】
本開示は、典型的には、以下を含むキットに関する:
第1の組成物であって、
(i)第1の融合タンパク質が、修飾された高活性型Piggybacに融合された第1の誘導型RNAニッカーゼCas9、典型的には配列番号70のSpCas9ニッカーゼのアミノ酸配列を含む、本明細書で定義される第1の融合タンパク質、または第1の融合タンパク質をコードする核酸、および
(ii)第1の誘導型RNA核酸を含む第1の組成物と、
第2の組成物であって、
(iii)第2の融合タンパク質が、修飾された高活性型Piggybacに融合された第2の誘導型RNAニッカーゼCas9、典型的には配列番号76のSaCas9ニッカーゼのアミノ酸配列を含む、本明細書で定義される第2の融合タンパク質、または第2の融合タンパク質をコードする核酸、および
(iv)第2の誘導型RNA核酸を含む第2の組成物と、
任意により、ゲノムに挿入するための核酸、例えば5kb~25kb、より好ましくは8kb~20kbのサイズを有する核酸、
ここで、第1および第2の融合タンパク質は、ヘテロ二量体化を形成し、ゲノムDNA領域の隣接部位で第1および第2の誘導型RNAによって決定される二重切断を形成することができ、任意により隣接部位間に核酸を挿入することができる。
【0277】
特定の実施形態では、組成物またはキットは、ミニサークル、プラスミドまたはウイルスベクター、特に非組み込みウイルスベクター、例えば非組み込みレンチウイルスベクター中に外因性核酸を含む。
【0278】
特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物またはキットは、ナノ粒子中に含まれる。
【0279】
特定の実施形態では、本組成物は、以下を含む核酸組成物である:
(i)本明細書に開示される融合タンパク質をコードする核酸構築物、
(ii)ガイドRNA、および
(iii)目的の核酸または遺伝子、例えばゲノムに挿入するための外因性核酸。
【0280】
特定の実施形態では、本キットは、以下を含む:
・(i)本明細書に開示される第1の融合タンパク質をコードする核酸構築物であって、第1の融合タンパク質が、修飾された高活性型Piggybacに融合された第1の誘導型RNAニッカーゼCas9、典型的には配列番号70のSpCas9ニッカーゼのアミノ酸配列を含む、核酸構築物、および
(ii)第1の誘導型RNA核酸を含む第1の組成物と、
・(iii)本明細書に開示される第2の融合タンパク質をコードする核酸構築物であって、ここで、第2の融合タンパク質が、修飾された高活性型Piggybacに融合された第2の誘導型RNAニッカーゼCas9、典型的には配列番号76のSaCas9ニッカーゼのアミノ酸配列を含む、核酸構築物、および
(iv)第2の誘導型RNA核酸を含む第2の組成物。
【0281】
特定の実施形態では、キットまたは組成物は、特にヒトにおける障害の治療において、例えば、それを必要とするヒト対象における遺伝子欠損を治療するための薬物として使用するためのものである。
【0282】
いくつかの実施形態では、核酸構築物は、送達方法に応じて、RNA、DNA、またはタンパク質の形態であり、外因性核酸をコードするポリヌクレオチド配列は、RNAまたはDNAの形態である。特に、外因性核酸をコードするポリヌクレオチド配列は、RNAの形態である。
【0283】
いくつかの実施形態では、組成物またはキットは、ウイルスを含まず、パッケージングベクターは、ナノ粒子、例えばポリマーまたは脂質ナノ粒子である。パッケージングベクターは、組成物のエレメントに結合する担体であってもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、ウイルスベクター、特にレンチウイルス粒子に含まれる。
【0284】
いくつかの実施形態では、組成物またはキットは、(a)RNAの形態の本明細書に記載の核酸構築物(例えば、Cas9およびトランスポザーゼを含む)、(b)必要に応じてガイドRNA(例えば、別個の直鎖一本鎖RNA分子として)、および(c)パッケージングベクターに含まれるか、パッケージングベクターに結合した、DNA形態(例えばベクター)で挿入するための外因性遺伝子を含むポリヌクレオチドを含む。
【0285】
いくつかの実施形態では、組成物は、(a)タンパク質の形態の本明細書に記載の融合タンパク質(例えば、Cas9およびトランスポザーゼを含む)、(b)必要に応じてガイドRNA(例えば、別個の直鎖一本鎖RNA分子として)であって、ここで、融合タンパク質およびガイドRNAはリボ核タンパク質複合体(RNP)を形成する、ガイドRNA、および(c)パッケージングベクターに含まれるかまたはパッケージングベクターに結合する、DNA形態(例えばベクター)で挿入するための外因性遺伝子を含むポリヌクレオチドを含む。
【0286】
いくつかの実施形態では、組成物は、(a)DNAの形態の本明細書に記載の核酸構築物(例えば、Cas9およびトランスポザーゼを含む)、(b)必要に応じてガイドRNA(例えば、別個の直鎖RNA分子として、またはベクター内のDNAとして)、および(c)パッケージングベクターに含まれる、またはパッケージングベクターに結合する、DNA形態(例えばベクター)で挿入するための外因性遺伝子を含むポリヌクレオチドを含む。
【0287】
いくつかの実施形態では、組成物は、(a)タンパク質の形態の本明細書に記載の融合タンパク質(例えば、Cas9およびインテグラーゼを含む)、(b)必要に応じてガイドRNA(例えば、融合タンパク質と複合体を形成する別個のRNA分子として)、および(c)パッケージングベクターに含まれるか、パッケージングベクターに結合した、挿入するための外因性遺伝子を含むポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、パッケージングベクターは、レンチウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、(a)融合タンパク質は、gag-polまたはVPR(ウイルスタンパク質R)によってレンチウイルスカプシドに結合される。いくつかの実施形態では、(c)ポリヌクレオチドは、インテグラーゼのペイロードとしてのRNAの形態である。
【0288】
特定の実施形態では、ZFPが使用される場合、(b)ガイドRNAは必要とされ得ない。
【0289】
本発明は、
(i)少なくとも1つの特定のRNA配列に結合するように操作されたRNA結合タンパク質、ゲノムへの外因性核酸の挿入を可能にするDNA結合タンパク質、および第1のタンパク質と第2のタンパク質をつなぐリンカーを含む融合タンパク質、
(ii)Cas9タンパク質、および
(iii)融合タンパク質の結合のための少なくとも1つの特異的なRNA配列を含むガイドRNA、
(iv)目的の核酸または遺伝子、例えばゲノムに挿入するための外因性核酸、を含む組成物であって、
ここで、DNA結合タンパク質は、本開示の修飾されたトランスポザーゼであり、典型的には、未修飾の高活性型Piggybacと比較して、切除活性を増大させるための1つ以上のアミノ酸変異、および配列番号9による未修飾の高活性型Piggybacと比較して、DNA結合活性を低下させるための1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型Piggybacである、組成物にもさらに関する。
【0290】
いくつかの実施形態では、RNA結合タンパク質は、MS2バクテリオファージコートタンパク質(MCP)である。
【0291】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質のMCPによって認識される少なくとも1つのRNA配列は、テトラループである。本明細書で使用される場合、用語「テトラループ」は、用語「ステムループ」および「ヘアピンループ」と互換的に使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAテトラループは、MS2 RNAテトラループ結合配列である。
【0292】
いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも1つのMS2 RNAテトラループ結合配列を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、2つ以上のMS2 RNAテトラループ結合配列を含む。本明細書で使用される場合、用語「2つ以上」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11またはそれ以上を意味する。
【0293】
様々な実施形態が特許請求の範囲に記載されている。いくつかの追加の実施形態を以下に開示する。
【0294】
E1.
(i)RNA誘導型ヌクレアーゼまたはジンクフィンガーヌクレアーゼからなる第1のタンパク質と、
(ii)トランスポザーゼからなる第2のタンパク質と、
(iii)任意により、第1のタンパク質と第2のタンパク質とをつなぐリンカーと、を含み、
ここで、前記トランスポザーゼは、配列番号9の高活性型Piggybacと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含む修飾された高活性型Piggybacであり、
前記第1のタンパク質は、前記第2のタンパク質のC末端部に直接的に、またはリンカーを介して間接的に融合されている、融合タンパク質。
【0295】
E2.前記トランスポザーゼが、未修飾の高活性型Piggybacと比較して、切除活性を増大させるための1つ以上のアミノ酸変異、および未修飾の高活性型Piggybacと比較して、DNA結合活性を低下させるための1つ以上のアミノ酸変異を含む、修飾された高活性型Piggybacである、実施形態1に記載の融合タンパク質。
【0296】
E3.切除活性を増大させるための前記1つ以上のアミノ酸変異が、アミノ酸位置番号[194~200]、[214~222]、[434~442]または[446~456]、例えば、位置D198、D201、R202、M212またはS213におけるアミノ酸置換(位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacのアミノ酸番号に対応する)によって画定される領域内のアミノ酸変異の中から選択される、実施形態2に記載の融合タンパク質。
【0297】
E4.前記1つ以上のアミノ酸変異が、M194またはD450の位置で切除活性を増大させる前記アミノ酸置換の中から選択され、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacの前記アミノ酸番号に対応し、好ましくはアミノ酸置換M194Vおよび/またはD450Nの中から選択される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0298】
E5.前記1つ以上のアミノ酸変異は、位置R372、K375、R376、E377、および/またはE380におけるDNA結合活性を低下させるアミノ酸置換の中から選択され、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacのアミノ酸番号に対応し、好ましくはアミノ酸置換R372A、K375A、R376A、E377A、および/またはE380Aの中から選択される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0299】
E6.前記修飾された高活性型Piggybacが、位置D450での切除活性を増大させるための少なくとも1つのアミノ酸置換、ならびに位置R372およびK375においてDNA結合活性を低下させるための少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、好ましくは、前記高活性型Piggybacの修飾されたトランスポザーゼは、三重変異D450N、R372AおよびK375Aを含み、位置番号は、配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacのアミノ酸番号に対応する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0300】
E7.前記修飾された高活性型Piggybacが、アミノ酸位置番号[158~169]によって画定される領域に少なくとも1つの変異、例えばA166Sおよび/または位置Y527、R518、K525、N463において少なくとも1つの変異をさらに含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0301】
E8.前記修飾された高活性型Piggybacが、配列番号1の前記修飾された高活性型Piggybacに対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の同一性、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0302】
E9.前記修飾された高活性型Piggybacが、1つ以上のアミノ酸置換、典型的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以下のアミノ酸置換を有する配列番号1の高活性型Piggybacのバリアントである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0303】
E10.前記修飾された高活性型Piggybacが、位置番号245、268、275、277、287、290、315、325、341、346、347、350、351、356、357、388、409、412、432、447、460、461、465、517、560、564、571、573、576、586、587、589、592、および/または594において、1つ以上のアミノ酸置換をさらに含み、位置番号は、前記高活性型PiggyBac配列の前記アミノ酸番号(配列番号9)に対応する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0304】
E11.前記修飾された高活性型PiggyBac変異が、以下のアミノ酸置換またはアミノ酸置換の組み合わせを含み:R245A、D268N、R275A、R277A、K287A、K290A、K287A/K290A、R315A、G325A、R341A、D346N、N347A、N347S、T350A、S351E、S351P、S351A、K356E、N357A、R388A、K409A、K412A、K432A、D447A、D447N、D450N、R460A、K461A、W465A、S517A、T560A、S564P、S571N、S573A、K576A、H586A、I587A、M589V、S592G、またはF594L、D450N/R372A/K375A、R275A/R277A、K409A/K412A、R460A/K461A、R275A/R277A/N347S/K375A/T560A/S573A/M589V/S592GおよびR245A/R275A/R277A/R372A/W465A、位置番号は、高活性型PiggyBac配列のアミノ酸番号(配列番号9)に対応する、実施形態10に記載の融合タンパク質。
【0305】
E12.前記修飾された高活性型PiggyBac変異が、以下のアミノ酸置換またはアミノ酸置換の組み合わせを含み:R372A/K375A/D450N、R372A/K375A/R376A/D450N、K375A/R376A/E377A/E380A/D450N、R372A/K375A/R376A/E377A/E380A/D450N、M194V、R376A、E377A、E380A、M194V/R372A/K375A、S351A/R372A/K375A/R388A/D450N/W465A/S573A/M589V/S592G/F594L、R245A/R275A/R277A/R372A/W465A/M589V、R275A/325A/R372A/T560A、N347A/D450N、N347S/D450N/T560A/S573A/F594L、R202K/R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/N347S/K375A/D450N/S592G、R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/R277A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/F594L;位置番号は、高活性型PiggyBac配列のアミノ酸番号(配列番号9)に対応し、典型的には、前記修飾されたトランスポザーゼは、配列番号1~8および10~18のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する、実施形態10に記載の融合タンパク質。
【0306】
E13.前記リンカーが、XTEN配列またはGGS配列、好ましくはXTEN配列を含むペプチドリンカーである、実施形態1~12のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0307】
E14.前記リンカーが、典型的には配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61のいずれかから選択される、3~50アミノ酸長を有するペプチドリンカーである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0308】
E15.前記第1のタンパク質が、活性DNA切断ドメインおよびガイドRNA結合ドメインを含むCas9タンパク質である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0309】
E16.前記第1のタンパク質が、活性DNA切断ドメインおよびガイドRNA結合ドメインを含むヌクレアーゼタンパク質であり、配列番号31の化膿連鎖球菌Cas9、配列番号72のSaCas9、配列番号74のCpf1、配列番号29のCjCas9、配列番号70のSpCas9ニッカーゼ、配列番号75のCasXまたは配列番号76のSaCas9ニッカーゼに対して、少なくとも80%、90%、95%、99%、または少なくとも100%の同一性を有する、実施形態1~15のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0310】
E17.前記第1のタンパク質が、配列番号72のSaCas9または配列番号31の化膿連鎖球菌Cas9からなる群から選択されるCas9タンパク質である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0311】
E18.
(i)RNA誘導型ヌクレアーゼまたはニッカーゼからなる第1のタンパク質と、
(ii)第1のトランスポザーゼからなる第2のタンパク質と、
(iii)第2のトランスポザーゼからなる第3のタンパク質と、
(iv)任意により、第1および第2のタンパク質と第2および第3のタンパク質との間のペプチドリンカーと、を含む三重融合タンパク質であって、
前記第1および第2のトランスポザーゼが、例えば実施形態3~12のいずれか1つに記載のとおり、同一のまたは異なる修飾されたPiggybacトランスポザーゼの配列を有する、実施形態1~17のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0312】
E19.前記第1のタンパク質が、配列番号33のジンクフィンガータンパク質である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
【0313】
E20.
(i)実施形態1~19のいずれか1つに記載の融合タンパク質、または前記融合タンパク質をコードする核酸と、
(ii)ガイドRNAと、
(iii)ゲノムに挿入するための外因性核酸と、を含む組成物。
【0314】
E21.前記外因性核酸が、典型的には5kb~25kb、より好ましくは8kb~20kbのサイズを有する大きいDNA断片である、実施形態20に記載の組成物。
【0315】
E22.キットであって、
(i)
-実施形態1または18のいずれか1つに記載の第1の融合タンパク質、または前記第1の融合タンパク質をコードする核酸であって、前記第1の融合タンパク質が、修飾された高活性型Piggybacに融合された第1の誘導型RNAニッカーゼCas9、典型的には配列番号70のSpCas9ニッカーゼのアミノ酸配列を含む、第1の融合タンパク質、または前記第1の融合タンパク質をコードする核酸、および
-第1の誘導型RNA核酸を含む第1の組成物と、
(ii)
-実施形態1~18のいずれか1つに記載の第2の融合タンパク質、または第2の融合タンパク質をコードする核酸であって、第2の融合タンパク質が、修飾された高活性型Piggybacに融合された第2の誘導型RNAニッカーゼCas9、典型的には配列番号76のSaCas9ニッカーゼのアミノ酸配列を含む、第2の融合タンパク質、または第2の融合タンパク質をコードする核酸、および
-第2の誘導型RNA核酸を含む第2の組成物と、
(iii)
任意により、ゲノムに挿入するための外因性核酸、例えば5kb~25kb、より好ましくは8kb~20kbのサイズを有する外因性核酸と、を含み、
ここで、前記第1および第2の融合タンパク質は、ヘテロ二量体化を形成し、ゲノムDNA領域の隣接部位で前記第1および第2の誘導型RNAによって決定される二重切断を形成することができ、任意により前記隣接部位間に前記外因性核酸を挿入することができる、キット。
【0316】
E23.前記外因性核酸が、ミニサークル、プラスミドまたはウイルスベクター、特に非組み込みウイルスベクター、例えば非組み込みレンチウイルスベクター中に含まれる、実施形態20~22のいずれか1つに記載の組成物またはキット。
【0317】
E24.前記組成物が、ナノ粒子中に含まれる、実施形態20~23のいずれか1つに記載の組成物またはキット。
【0318】
E25.修飾された高活性型Piggybacトランスポザーゼであって、未修飾の高活性型Piggybacと比較して、切除活性を増大させるための少なくとも1つのアミノ酸変異、および/または未修飾の高活性型Piggybacと比較して、DNA結合活性を低下させるための少なくとも1つのアミノ酸変異を含み、
ここで、切除活性を増大させるための前記少なくとも1つの変異は、位置194におけるMのアミノ酸置換、典型的にはM194Vである、および/またはDNA結合活性を低下させるための前記少なくとも1つのアミノ酸変異は、位置R376、E377、およびE380、典型的には、R376A、E377A、および/またはE380Aにおける前記アミノ酸置換の中から選択される、修飾された高活性型Piggybacトランスポザーゼ。
【0319】
E26.配列番号9の未修飾の高活性型Piggybacと比較したときに、以下の変異の組み合わせを含む、修飾された高活性型Piggybacトランスポザーゼ:R372A/K375A/D450N、R372A/K375A/R376A/D450N、K375A/R376A/E377A/E380A/D450N、R372A/K375A/R376A/E377A/E380A/D450N、M194V、R376A、E377A、E380A、M194V/R372A/K375A、S351A/R372A/K375A/R388A/D450N/W465A/S573A/M589V/S592G/F594L、R245A/R275A/R277A/R372A/W465A/M589V、R275A/325A/R372A/T560A、N347A/D450N、N347S/D450N/T560A/S573A/F594L、R202K/R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/N347S/K375A/D450N/S592G、R275A/N347S/R372A/D450N/T560A/F594L、R275A/R277A/N347S/R372A/D450N/T560A/S564P/F594L。
【0320】
E27.以下からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸変異をさらに含む、実施形態25または26に記載の修飾された高活性型Piggybacトランスポザーゼ:位置245でAであるアミノ酸、位置275でRまたはAであるアミノ酸、位置277でRまたはAであるアミノ酸、位置325でAまたはGであるアミノ酸、位置347でNまたはAであるアミノ酸、位置351でE、P、またはAであるアミノ酸、位置372でRであるアミノ酸、位置375でAであるアミノ酸、位置450でDまたはNであるアミノ酸、位置465でWまたはAであるアミノ酸、位置560でTまたはAであるアミノ酸、位置564でPまたはSであるアミノ酸、位置573でSまたはAであるアミノ酸、位置592でGまたはSであるアミノ酸、かつ位置594でLまたはFであるアミノ酸。
【0321】
E28.配列番号9の未修飾の高活性型PiggyBacと比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の追加の修飾を含み、前記修飾された高活性型PiggyBacが、配列番号9の高活性型PiggyBacと比較して、DNA結合活性の低下および/または切除活性の増大を示す、実施形態25または26の修飾された高活性型PiggyBacトランスポザーゼ。
【0322】
E29.実施形態1~18のいずれか1つに記載の融合タンパク質をコードする核酸、典型的にはメッセンジャーRNA(mRNA)。
【0323】
E30.配列番号110~112からなる群から選択される配列またはそれらの対応するmRNA配列を含む、実施形態28の融合タンパク質をコードする核酸。
【0324】
E31.実施形態25~28のいずれか1つに記載の修飾された高活性型Piggybacをコードする核酸。
【0325】
E32.実施形態29~31のいずれか1つに記載の核酸を含む発現ベクター。
【0326】
E33.実施形態29~31のいずれか1つに記載の核酸、または実施形態32に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【0327】
E34.外因性核酸配列を細胞のゲノムに部位特異的に組み込むための方法であって、本方法は、
(i)実施形態1~18のいずれか1つに記載の融合タンパク質、または実施形態29~31のいずれか1つに記載の核酸、
(ii)前記細胞の前記ゲノムに組み込まれる外因性核酸、および
(iii)前記細胞の前記ゲノムへの前記外因性核酸の部位特異的組み込みを決定するためのガイドRNAを含む組成物を前記細胞に送達することを含み;
前記融合タンパク質が、前記細胞の前記ゲノム内での前記特定のゲノムDNA配列に結合することにより、前記ゲノムの切断および前記ガイドRNAによって決定される、前記細胞の前記ゲノムへの前記外因性核酸配列の部位特異的組み込みが生じる、方法。
【0328】
E35.前記外因性核酸は、少なくとも5kb、少なくとも6kb、少なくとも7kb、少なくとも8kb、少なくとも9kb、典型的には5~25kb、好ましくは、8~20kbで構成されるサイズの核酸断片である、実施形態34に記載の方法。
【0329】
E36.前記外因性核酸は、遺伝性障害の欠損を修正するために、それを必要とする対象のゲノムに挿入される治療用導入遺伝子である、実施形態34または35に記載の方法。
【0330】
E37.前記組成物が、in vitroまたはex vivoで、典型的には哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞、より好ましくは遺伝性障害を患うヒト対象から得られたヒト細胞において送達される、実施形態34~36のいずれか1つに記載の方法。
【0331】
E38.前記組成物が、典型的には遺伝性障害の治療的処置のために、それを必要とする哺乳動物、例えばヒト対象にin vivoで送達される、実施形態34~37のいずれか1つに記載の方法。
【0332】
E39.外因性核酸配列を生物のゲノムDNAに挿入する方法であって、実施形態20~24のいずれか1つに記載の1つ以上の組成物またはキットを前記生物に投与することであって、これにより、前記1つ以上の組成物またはキットに含まれる前記融合タンパク質が、特定のゲノムDNA配列に結合し、前記組成物に含まれる前記外因性核酸の前記ゲノムDNAへの挿入が可能になることを含み;
ここで、前記外因性核酸は、前記生物、例えば、それを必要とする非ヒト生物またはヒト対象の細胞の前記ゲノムの特定の部位に組み込まれる、方法。
実施例
【0333】
プログラム可能なトランスポザーゼを実現するために、本発明者らの設計原理は、CRISPRシステムの正確なゲノム標的化と、挿入および切除活性の増強および標的DNA結合活性の低下を呈するPBバリアントとを組み合わせることを試みた。本発明者らは、ヌクレアーゼSpCas9とPBトランスポザーゼとを融合することから開始した(
図1)。PBおよびSpCas9バリアントの多様なライブラリーを構築し(
図2a、b、c)、ここでは、PBバリアント、3つのSpCas9バリアント(ヌクレアーゼSpCas9(cas9)、dead SpCas9(dcas9)、ニッカーゼSpCas9(ncas9))、および6つのリンカー(4xGGS、5xGGS、7xGGS、8xGGS、XTEN、FOKI)のライブラリーを試験した。
【0334】
PBトランスポザーゼの様々な部分を多様化させた。特に重点を置いたのは、トランスポザーゼと標的DNAの相互作用に関与する可能性のある15個のアルギニンおよびリジン残基に囲まれた3個のアスパラギン酸残基(D268、D346、D447)の触媒トライアドによって形成される触媒コアドメインである
14。過去に調査した高活性型
9に加えて、PBの切除および組み込み活性に影響を与え得る追加の残基
15を多様化した(配列番号1~N)。最も性能の高い変異体を単離するために、オンターゲット組み込み時のエメラルドGFP(emGFP)再構成に基づいて、ターゲット遺伝子を挿入するための高感度レポーターシステムを開発した。スプライシングアクセプターが先行するプロモーターのないemGFPのC末端(C-t)半分をHek293T細胞のゲノムに挿入して、レポーター細胞株(Hersheyと短縮される)を構築した。相補的な「挿入トラップレポーター」は、上流プロモーターおよびemGFPのN末端(N-t)の最初の半分、その後のスプライスドナー、そしてこれらすべてをPB逆方向反復が隣接するようにコードし、構築された。特異的なgRNA誘導型cas9は、PBにN-t半分をC-t半分に隣接して挿入するように指示し、得られた転写産物のスプライシングにより、緑色蛍光の生成が生じる(
図3)。cas9-PBキメラタンパク質のライブラリーを構築し、「挿入トラップレポーター」およびガイドRNA(gRNA)と共に、Hersheyレポーターを含む細胞にトランスフェクトした。より高度にプログラム可能な挿入を示すバリアントを、同じレポーター細胞株を使用して、別々に試験した(
図2a、2b、4a、4b)。このアッセイでは、emGFPのN-t半分および上流に完全なRFP配列を含む二重トランスポゾンを使用して、オンターゲット活性(emGFP陽性細胞)および総転位活性(RFP陽性細胞)を試験した。オンターゲット対オフターゲットの比は、RFP陽性細胞の総パーセンテージ(総挿入活性)に対して、emGFP陽性細胞のパーセンテージ(オンターゲット活性)を除算することによって計算した。
【0335】
Hershey細胞株中でのオンターゲットおよびオフターゲット転位について、PBバリアントに融合させたcas9バリアントの様々な組み合わせを試験した。i)無傷のヌクレアーゼ活性を有するcas9(
図2A)、およびii)切除活性が増大およびiii)t-DNA結合活性が低下したPBバリアント(
図2B;
図4A、
図4B)を含むNter-cas9-PB-Cter融合体において、最高レベルのプログラム可能な挿入が観察された。正確かつ効率的な標的挿入を達成するには、3つのパラメーターすべてが重要であることが観察された。第1に、cas9ヌクレアーゼ活性の要件は、PBに融合したncas9(D10A)およびdcas9(D10AおよびH840A)による標的挿入の効率が著しく低いことによって示された(
図2A)。標的化組み込みの促進におけるcas9の二本鎖破断(DSB)活性の役割をさらに調べるために、トランスポゾンの指向性局在化のためにジンクフィンガー-PB融合体を使用することによって、オンサイトターゲティングとDSB活性を分離し、独立したCas9ヌクレアーゼによりオンサイトDSBで補完した。Znf-PB融合体は、標的挿入活性を全く示さないか、または非常に低い標的挿入活性を呈したが、gRNA誘導型cas9を用いて、Znf結合部位の近くに、DSBを導入することと組み合わせることにより回復した(
図5)。これらの結果は、PB近傍でのcas9によるDSBの生成がPBの挿入活性を促進し、挿入部位における標準的なTTAAの要件を回避するメカニズムと一致する。実際、cas9-PB挿入部位の分析では、逆方向末端反復(ITR)配列が、標的部位近くの小インデルの存在によって破壊されることが示された(
図6)。この破壊の重要な結果は、PBによる組み込みメカニズムの不可逆性である。ITRまたはTTAAが破壊されることによりトランスポゾンの可動性は、排除されるかまたは減少する
16。このメカニズムが、cas9-PBによるプログラム可能な挿入の効率に寄与している可能性が高く、cas9の「検索」および「カット」活性と修飾されたPBの「ペースト」活性との組み合わせが、高レベルの精度に寄与する。第2に、高切除PB変異体は、より高度なプログラム可能な挿入に寄与していると考えられる(D450N、M194V;
図2B、
図4A、
図4B)。この切除の増強は、組み込みのために準備されたドナーDNA基質が増加した結果であり得る。さらに、好ましい切除基質が破壊されることにより、より高い切除活性を有するPB変異体であっても十分な切除が妨げられ得る(
図6)。第3に、t-DNA結合が減少しているPB変異体は、最低のオフターゲットレベルをもたらした(
図2B、
図4A、
図4B)。この結果は、PB単独の挿入活性を不活性化するcas9-PB融合におけるcas9の配列特異的DNA結合によって補完されるPBによる固有の非特異的DNA結合の減少と一致している(
図7)。
【0336】
ゲノムガイドアプローチを使用すると、Guide-seq
17ベースのプロトコルの修飾型を使用して、プログラム可能なトランスポザーゼ挿入部位およびオフターゲットレベルの特徴を明らかにすることができた(
図8A)。検出されたオンターゲット挿入はいずれもTTAA部位では起こらず、cas9によって生成されたDSB部位への組み込みがさらに明らかになり、結果として好ましい切除基質の喪失がもたらされた(
図8B)。さらに、TRAC遺伝子座を標的とするプログラム可能なトランスポザーゼ技術により修飾された細胞に対してGuide-seq解析を実施する。1~10%の感度で、オンターゲットのすべての挿入を検出した(
図9)。
【0337】
cas9ベースのHDRなどの正確な遺伝子送達のための現在の方法を使用してプログラム可能なトランスポザーゼ技術をベンチマークした(
図10)。プログラム可能なトランスポザーゼは、より高い効率を示し、大きいペイロードではギャップが拡大する。最良の変異体は、HDRよりも2倍の効率および高精度で挿入(最大8kb)を達成した。また、プログラム可能なトランスポザーゼと、Cas9を触媒的に死んだ型のPBに融合させたHITIバリアントと比較した。これは、SB100トランスポザーゼのDNA結合ドメインを使用した同様のアプローチによって最近示唆されているように、DNAを挿入部位に動員するのに助けになり得る。プログラム可能なトランスポザーゼは、代替の補助HITI法と比較して、2倍高い効率を呈する(
図18)。In vivoマウスモデルでプログラム可能なトランスポザーゼ活性を示すことを目的として、プログラム可能なトランスポザーゼのmRNA型を構築した。in vivo JetPEI試薬を使用して、Rosa26ゲノムのセーフハーバーを標的としたプログラム可能なトランスポザーゼをマウス肝臓に送達し、内因性遺伝子と比較して導入遺伝子のコピー数が多いことが観察され(
図11)、導入遺伝子の発現を経時的に維持した(
図20)。
【0338】
要約すると、CRISPR分子の認識、および修飾されたPBのDNAカットアンドペースト活性による切断を組み合わせて、正確かつ効率的な遺伝子送達を実施するための効率的なツールを生成した。この技術は、ペイロードのサイズに合わせて非常に十分に拡張される。Hek293Tおよびマウス肝臓におけるその有効性を示した。プログラム可能なトランスポザーゼ技術を、高度な治療および他の用途のための治療遺伝子送達のための汎用プラットフォームとして構想している。
【0339】
hyPBに融合させたCasバリアントの結果
プログラム可能な転位を行うために操作されたhyPBの能力の特徴をさらに明らかにするために、試験するプログラム可能なトランスポザーゼのSpCas9モジュールを置換したが、他のCasタンパク質は、ヌクレアーゼ活性を有する異なる生物の構成要素であった(すなわち、配列番号72のSaCas9、配列番号74のcpf1、配列番号75のCasX、および配列番号29のCjCas9)。スプリットGFPレポーターの上流領域を標的とする特異的なgRNAを設計し、Hershey細胞株トランスフェクション用にクローニングした。(以下の表2を参照)。標的転位をGFP発現によって測定した(
図12)。
【0340】
これらの結果は、別の一連の実験でも確認された。CjCas9およびLbCpf1については、良好なプログラム可能な挿入活性が得られたが、CasXは、本アッセイでは、任意のプログラム可能な組み込みが達成されなかった。注目すべきことに、SaCas9は、試験したCasタンパク質の中で最も高いレベルのプログラム可能な挿入を有し、修飾されたhyPBに融合されたSpCas9と同様のレベルであった(
図19)。インデルを、使用した異なるCasタンパク質、および各タンパク質に対して設計された3つの異なるgRNAに対してIlumina NGSによって決定し(
図21)、正規化目的で示した。
【0341】
これらの陽性結果から、プログラム可能な転位のために操作されたhyPBが任意の配列特異的ヌクレアーゼモジュールに有用であることが確認される。
【0342】
PB変異体の二量体に融合したCas9の追加の結果
転位を行う際に二量体として作用するPBの性質を考慮して、Cas9とhyPB R372A-K375A-D450N変異体との融合タンパク質の生成を試みた。これらの融合体のオンターゲット活性をCas9-PB変異体のみと比較した。構成Cas9-PB-PBの性能が優れていることが観察された。一方、構成PB-Cas9-PBは、Cas9-PB単量体融合体を上回る性能ではなかった(
図14)。Cas9への二量体融合では、クローニングおよび発現を容易にするために、記録された型のhyPB R372A-K375A-D450N変異体を使用した。
【0343】
興味深いことに、二量体hyPB R372A-K375A-D450Nに融合したCas9が、SpCas9ではなくSaCas9である場合、活性はさらに増大する(
図24)。二量体hyPBを用いた場合のSpCas9を上回るSaCas9の性能の向上は、単量体hyPBを用いて得られた結果と一致する(
図12および
図19)。
【0344】
ZNF-PB変異体回復の結果
標的組み込みの促進において、SpCas9ニッカーゼバリアント(D10A)による一本鎖切断を促進する一方で、オフターゲット部位での非誘導DSBによるオフターゲット活性を低下させる2つのgRNAの標的部位の近傍(4ヌクレオチド)で誘導される二本鎖破断(DSB)活性の役割をさらに調査したいと考えた。D450N変異体およびR372A-K375A-D450N変異体との融合により、トランスポゾンの指向性局在化のためにジンクフィンガー-PB融合体を使用し、独立したニッカーゼCas9による2つのオンサイト一本鎖破断、またはCas9ヌクレアーゼによる1つのDSBでそれを補完した。
【0345】
Znf-PB融合体は、標的挿入活性が全く示されないか、または非常に低い標的挿入活性を呈した。これは、ヌクレアーゼまたはニッカーゼのいずれかである単一または二重gRNA誘導型cas9を用いて、Znf結合部位近くにDSBを導入することと組み合わせたときに回復した(
図13)。
【0346】
Cas9-hyPB変異体バリアントの結果
より高い効率でプログラム可能な転位を行うことができる変異体の組み合わせをさらに探索するために、スプリットGFPレポーターシステムのプログラム可能な挿入によってGFPが再構成される細胞の選択サイクルを数回実施した。興味深いことに、Cas9-hyPB R372A-K375A-D450Nを上回るいくつかの組み合わせが観察された(
図15)。特に注目に値するのは、hyPBのAA:A351-A372-A375-A388-N450-A465-A573-V589-G592-L594(配列番号2としても同定される)(R372A-K375A-D450N(配列番号1)と比較して、陽性細胞集団が数倍豊富である)、また、程度は低いが、A245-A275-A277-A372-A465-V589(配列番号3)およびA275-A325-A372-A560(配列番号4)において、hyPBで変異しているCas9に融合したhyPBのバリアントである。
【0347】
別の一連の実験では、PiggyBac DNAライブラリーがTwist Bioscienceによって産生され、cas9と融合してレンチウイルスベクターにクローン化させ、stb4コンピテント細胞に形質転換され、100倍のバリアントの複雑性が確保された。プラスミドをmaxiprepによって精製し、レンチウイルスパッケージングプラスミドと共にHek293T細胞に同時トランスフェクトした。レンチウイルスを使用して、1/2GFPレポーター細胞株を感染させた。感染細胞に、1/2GFPトランスポゾンおよびAAVS1配列を標的とするgRNAをトランスフェクトした。GFP陽性細胞をフローサイトメトリーソーティングによって選択し、ゲノムDNAを抽出した。PBは、抽出されたgDNAから増幅され、レンチウイルスベクターに再クローニングされて、新しいサイクルを再開させた。最も性能の高いプログラム可能なトランスポザーゼバリアントを選択し、AAVS1 gRNAおよびMC1/2GFPと共に個別にトランスフェクトした。
【0348】
まず、96個のバリアントのランダム選択を実施し、最も性能の高いバリアントを個別にスクリーニングした(
図16)。高いオンターゲット挿入に最良なPBアミノ酸バリアントの概要により、変異D450N、R372A、およびK375Aの重要性が確認される;しかし、標的効率の増加に寄与する他の重要な残基も強調している(
図17B)。最良のオンターゲット効率を有する6つのPBバリアントを選択した(
図17A)。個々のオンターゲット活性は、FiCAT(Cas9-hyPB R372A-K375A-D450N)と比較して、以下のバリアントで大幅に向上した:N347A-D450N;N347S-D450N-T560A-S573A-F594L;R202K-R275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L;R275A-N347S-K375A-D450N-S592G;R275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L;およびR275A-R277A-N347S-R372A-D450N-T560A-S564P-F594L(両側t検定)。
【0349】
この実験を繰り返して確認した(
図22A)。また、本発明者らは、各サイクルのバルクバリアントを発現するレンチウイルスを産生し、PBバリアントCNによって力価を補正するレポーター細胞株を感染させ、全サイクルにおいてオンターゲット効率の同様の増加を示した(
図22B)。単一変異体は、cas9_PBライブラリー濃縮の4サイクルおよび5サイクル後にバルクバリアントから単離された。FiCAT変異体、gRNA tcr1、および1/2GFP MCトランスポゾンをオンターゲットレポーター細胞株にトランスフェクトすることにより、変異体を個別に試験した。最良のFiCAT変異体をFiCAT R372A_K375A_D450Nと比較して示す(
図23)。個々のオンターゲット活性は、FiCAT(Cas9-hyPB R372A-K375A-D450N)と比較して、以下のバリアントで大幅に向上した:R202K-R275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L;R245A-N347S-R372A-D450N-T560A-S564P-S573A-S592G;R275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L;N347A-D450N;R277A-G325A-N347A-K375A-D450N-T560A-S564P-S573A-S592G-F594L;N347S-D450N-T560A-S573A-F594L;V34M-R275A-G325A-N347S-S351A-R372A-K375A-D450N-T560A-S564P;G325A-N347S-K375A-D450N-S573A-M589V-S592G;S230N-R277A-N347S-K375A-D450N;T43I-R372A-K375A-A411T-D450N;G325A-N347S-S351A-K375A-D450N-S573A-M589V-S592G;Y177H-R275A-G325A-K375A-D450N-T560A-S564P-S592G。
【0350】
変異体R372A-K375A-D450Nと比較して、変異体R202K-R275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L、R275A-R277A-N347S-R372A-D450N-T560A-S564P-F594LおよびR275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594Lの優位性は、SpCas9および2つのhyPBを含む三重融合タンパク質においてさらに示された(
図29)。
【0351】
Cas9およびhyPBの非共有結合による連結の結果
リンカーを介したCas9とhyPB R372A-K375A-D450Nとの共有結合による結合に加えて、MS2-MCPシステムを使用して、MCPタンパク質を結合するMS2配列のテトラループを含む修飾されたgRNAを介して、Cas9とMCPタンパク質およびhyPB R372A-K375A-D450Nからなる融合タンパク質とを連結する。
【0352】
MCP-hyPB R372A-K375A-D450N融合タンパク質とCas9との組み合わせは、Cas9-hyPB R372A-K375A-D450N融合タンパク質と比較して、プログラム可能な挿入活性が増加した(
図25A)。さらに、MCPタンパク質をhyPBの他の変異体と融合させ、SpCas9と組み合わせてプログラム可能な転位を行った。使用した両方のバリアント(R202K-R275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L、およびR275A-N347S-R372A-D450N-T560A-F594L)は、R372A-K375A-D450Nの性能を上回った(
図25B)。
【0353】
プログラム可能な転位のためのCas9およびhyPBの脱共役の結果
また、リンカーまたはMS2-MCPシステムを使用することなく、hyPB R372A-K375A-D450Nを使用して、SpCas9の性能を試した。同じ細胞内で、SpCas9およびhyPB R372A-K375A-D450Nを共発現させ、Cas9-hyPB R372A-K375A-D450N融合タンパク質と比較して、プログラム可能な挿入活性の増加が記録された(
図26A)。Cas9に融合していないが同時に発現され、プログラム可能な転位の活性を達成するために互いに作用する、試験したhyPB変異体バリアントの数を拡張した(
図26B)。
【0354】
Cas9-hyPBおよびMCP-hyPB融合タンパク質の共発現結果
単量体のうちの1つが非共有結合により連結している融合体の二量体型を得るために、MCPタンパク質に融合したhyPB R372A-K375A-D450N変異体とSpCas9に融合したhyPB変異体とを同時トランスフェクトした。SpCas9に融合させたいくつかのhyPB変異体を、特異的標的組み込みについて比較した(
図27)。
【0355】
Cas9-hyPBおよびhyPBバリアントの共発現の結果
同様の方法で、単量体のうちの1つが連結していない融合体の二量体型を得るために、SpCas9 hyPB R372A-K375A-D450N融合タンパク質およびhyPB変異体を独立して同時トランスフェクトした(
図28)。
【0356】
方法
クローニングおよびプラスミド。ランダム挿入モニタリング用のRFPトランスポゾンPB512-Bは、System Biosciences Incから購入した。hyPBベクターは、Wellcome Trust Sanger Institute(pCMV_hyPBase)から入手した9。プラスミドベクターpCRTM-Blunt II-TOPO(登録商標)は、Invitrogenから入手し、cas9、ncas9およびSP-dcas9-VPRは、Addgene(Addgeneプラスミド#41815、#41816、#63798)から得た。最後に、SB100XおよびpT4-HBは、Dr.Zsuzsana Zizsvakの厚意により寄贈された。gRNAは、Zero Blunt TOPO PCRクローニングキット(Invitrogen)を使用して産生した。gblock遺伝子断片(Integrated DNA Technologies)は、U6プロモーター、20nt標的部位、gRNA足場およびターミネーターを含む。gRNA TRACは、研究室で設計および検証され、gRNA aavs1-3配列は、以前に記載されている18。
【0357】
hyPBおよびPB RFP1/2emGFP SMN1トランスポゾンへのヌクレアーゼ、ニッカーゼ、およびdead cas9の融合は、BspQI酵素および標準的な方法を使用したGolden Gateアセンブリによって実施した。
【0358】
Quickchange Lightning変異誘発キット(Agilent)の説明書に従って、部位指向性変異誘発によって、cas9に融合されたhyPB配列(cas9_PBプラスミド)に様々な変異を導入した。プライマーは、hyPB配列に対して次の変異を実現するために、QuickChange Primer Designを使用して設計された:M194V、R245A、G325A、R372A、K375A、R376A、E377A、E380A、D450N、S564P(配列番号90~99を参照)。すべてのプラスミドは、必要に応じて、入手可能である。PB1/2emGFP SMN1は、emGFP配列の最初の半分とSMN1イントロン6配列をpiggyBacアクセプターベクターに導入することによって得た。pT4 SMN1 2/2emGFPは、SB100Xトランスポゾンベクター中に、SMN1イントロン6の第2の半分および部分的なemGFPを追加することによって得た。SMN1を含むemGFP配列は、Sri Kosuriからの寄付であるDYP004reporter19から得た。
【0359】
異なるサイズのトランスポゾンおよびHDR鋳型は、スプリットemGFPレポーターシステムの上流で部分cDNA(NC_000006.12)断片をクローニングすることによって生成された。
【0360】
細胞培養、トランスフェクション、およびエレクトロポレーション。Hek293T細胞株(Thermo Fisher Scientific)およびC2C12細胞株(ATCC)を、高グルコース(Gibco,Therm Fisher)、10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMグルタミンおよび100Uペニシリン/0.1mg/mLストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を使用して、5%CO2インキュベーター内で、37℃で培養した。Jurkat細胞株は、GlutamaxおよびHEPES(Gibco,Thermo Fisher)および10%FBSを添加したRoswell Park Memorial Institute1640培地(RPMI)を使用して、5%CO2インキュベーター内で、37℃で培養した。この細胞株は、Manel Juan(Hospital Clinic,Barcelona)から寄贈されたものである。Hek293T細胞のトランスフェクション実験は、製造業者の指示に従ってリポフェクタミン3000試薬を使用するか、OptiMemでDNA-PEI比1:3のポリエチレンイミン(PEI、Thermo Fisher Scientific)を使用して実施した。細胞を前日に播種して、トランスフェクション日に70%のコンフルエンシーに達した(通常、接着性p12ウェルプレートに290,000細胞)。プラスミドDNAの比率は、p12ウェルプレートに0.076pmolのプログラム可能なトランスポザーゼまたはCas9のいずれかを使用し、トランスポザーゼ1:gRNA2.5:トランスポゾン2.5またはCas9 1:gRNA2.5:HDR鋳型2.5であった。
【0361】
emGFPスプライシングに基づく再構成アッセイ。pT4 SMN1 2/2emGFPを含むHek293T細胞株は、SB100XおよびpT4 SMN1 2/2emGFP DNA構築物のPEI媒介トランスフェクション、その後の単一クローン拡張およびPCR遺伝子型解析によって生成した(補足表3)。陽性クローンを選択して拡張し、その後のアッセイに使用した。emGFP再構成アッセイの場合、12ウェルプレートに0.076pmolのプログラム可能なトランスポザーゼまたはhyPBと0.19pmolのトランスポゾンおよびgRNAを使用して、プログラム可能なトランスポザーゼ、gRNA、およびトランスポゾンのプラスミドは、プログラム可能なトランスポザーゼ1:gRNA2.5:トランスポゾン2.5の比率でトランスフェクトされた。オンターゲット挿入は、トランスフェクションの5日後にemGFP蛍光によって測定した。オフターゲット転位は、トランスフェクションの15日後にRFP蛍光によって測定した。オンターゲット挿入は、PBバリアント、gRNA、およびPB1/2SMN1 RFP emGFP(最終的な構築物名を挿入)発現プラスミドを同時トランスフェクトすることにより、および(BD LSR Fortessa;BD Biosciences.530/30フィルターを備えた青色488nmレーザーおよび610/20フィルターを備えた黄緑色561nmレーザー)測定されたemGFP発現によって、14日後(エピソーム崩壊の平均日数nを設定)のemGFPおよびRFP蛍光を決定することにより測定した。
【0362】
挿入部位配列決定のためのジャンクションPCR。BD FACSAria(Biosciences)を使用して、emGFPで選別された細胞に対してジャンクションPCRを実施した。選択された細胞には、レポーター細胞株上のTRAC標的部位を標的とするPB1/2emGFP SMN1トランスポゾンがオンターゲット挿入されていた。ゲノムDNAは、DNeasy Blood and tissueキット(Qiagen)を使用して抽出した。プライマーは、トランスポゾンの3’ITR(順方向)と、レポーター細胞株の2/2emGFPまたは内在性T細胞受容体(TRAC)(逆方向)のイントロンを標的として設計した(補足表4)。
【0363】
Guide-SEQ実験のバイオインフォマティクス解析。Illuminaの読み取りは、usearch20を使用して、クラスター化し、bwa-mem21を使用してリファレンスにマッピングさせた。オンターゲット挿入の特徴付けでは、PythonスクリプトおよびSamtools22を使用して、標的挿入部位の5’および3’ジャンクションをカバーするリードを選択した。インデルの数は、CRISPR-GA23を使用して取得した。オンターゲットおよびオフターゲット実験では、ベクターに対してマッピングさせたクラスター化リードが選択され、bwa-memを使用して参照ゲノムに対してマッピングさせた。挿入ピークの重要性は、macs224アルゴリズムを使用して評価した。
【0364】
標的挿入に適応したGuide-seqライブラリーの調製。適合したGuide-seq15プロトコルの実装は、DNeasy Blood and tissueキット(Qiagen)を使用してゲノムDNAを抽出し、Q800R3 Sonicatorを使用して500bp断片に断片化することによって実施した。KAPA Hyper Prep Kit(KR0961-v5.16)および3μgの断片化ゲノムDNAを使用して、末端修復、Aテーリング、およびYアダプターのライゲーションを行い、その後1X比でAMPure XP SPRIビーズ精製を行った。アダプターライゲーション後、各サンプルを2つに分割し、GSP5’またはGSP3’で増幅して、それぞれ5’および3’の接合部を捕捉した。5’および3’トランスポゾンとゲノムの接合部を捕捉するために、製造業者のプロトコルに従ってKAPA HiFi DNAポリメラーゼを使用して、2つのnested PCRを実施した:最終容量25μl中P5_1およびPB_5_GSP1またはPB_3_GSP1を含むPCR1;および最終容量25μl中P5_2、PB_5_GSP2またはPB_3_GSP2を含むPCR2。5’および3’PCR産物をAMPure XP SPRIビーズ精製、1X比で精製し、等モル比で混合し、Illumina Miseq Reagent Kit V2-500サイクル(2x250bpペアエンド)で配列決定した。3μlの100μMカスタムプライマーインデックス1およびリード2を配列決定反応に添加した。
【0365】
In vivoでのマウス肝臓への標的挿入。動物実験手順は、Animal Experimentation Ethic Committee of Barcelona Biomedical Research Parkによって承認された。この研究には、生後8~10週目のC57BL/6Jを使用した。動物は、Jackson Laboratoriesから購入し、雄および雌を区別することなく使用した。プログラム可能なトランスポザーゼmRNAは、製造業者の指示に従って、RiboMAX Large Scale RNA Production Systems-T7(Promega)を使用して生成した。Rosa26 gRNA25は、IDTから購入した。プログラム可能なトランスポザーゼmRNA、Rosa26を標的とするgRNA、およびPB512-Bトランスポゾンを1:1:2.5の比率で後眼窩から注入した。合計60μgの核酸をNP比7で、in vivo-JetPEI(Polyplusトランスフェクション)と複合体化させた。注射後10日後に動物を安楽死させ、肝臓を単離して均質化した。DNeasy Blood and tissueキット(Qiagen)を使用して、肝臓サンプルからゲノムDNAを抽出した。Tfrc内因性遺伝子に対するトランスポゾンの相対コピー数をqPCRによって得た(プライマーは、補足表1に記載)。ルシフェラーゼ発現のイメージングは、IVISスペクトルイメージングシステム(Caliper Life Sciences)を使用して、FiCAT-gRNA-トランスポゾンまたはトランスポゾン対照の投与後の様々な時点で実施した。製造業者の指示に従って、D-ルシフェリンカリウム塩(Gold Biotechnology)の腹腔内注射の5分後に画像を撮影した。
【0366】
PB構造モデリング。イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)piggyBacトランスポザーゼタンパク質の3D構造は、Robetta Webタンパク質構造予測サーバー(http://robetta.bakerlab.org)によって得た。コアドメイン(131~550aa)は、埋め込みデカルト空間最小化および全原子最適化を備えたモンテカルロアルゴリズムに基づくRosetta比較モデリング法によって予測した
26。三次構造の折り畳みは、SPServerおよびProSa-Webの知識ベースの方法で分析および検証した(補足
図2)。二次構造は、PSIPREDおよびHHPred機械学習ベース方法で解析した。次に、PBのコアは、比較タンパク質モデリング法によって、PyMOLを使用して、精密化のためのモデリングを実施した。精密化プロセスは、piggyBacモデルとウイルスDNAおよび標的宿主DNAに結合したHIVインテグラーゼテトラマーからなるCryo-EM HIV-1鎖転移複合体インタソーム(PDB ID:5U1C)およびX線回折Tn5トランスポザーゼ複合体構造(PDB ID:1MUS27)との重ね合わせによって誘導した。鎖転移DNAおよびドナーDNAは、それぞれHIV-1インタソームとTn5との重ね合わせから外挿した。タンパク質と接触する界面のヌクレオチドを二本鎖DNAとしてX3DNAで解析した。統計的ポテンシャルを使用して、タンパク質とDNAとの間の相互作用をスコア化し、理論的なPWM
28を生成した。理論上のPWMは、この界面内のすべての潜在的な二本鎖DNA配列を試験し、統計的ポテンシャルでランク付けし、複数の配列アラインメントを作成するために上位を選択することによって得られる。本稿の提出中に、cryo-EM構造が利用可能になった。これは、実施したモデリングと重要な一致を示している
29。piggyBacトランスポザーゼ鎖転移複合体のCryo-EM構造(PDB ID:6X67)により、モデルの一般的な折り畳みが確認され、仮説を立てたドメインが、ドナーおよび標的DNAとの接触に関与していることが確認された。
【0367】
【0368】
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【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】