IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルコン インコーポレイティドの特許一覧

<>
  • 特表-ヒト水晶体嚢の安定性の自動評価 図1
  • 特表-ヒト水晶体嚢の安定性の自動評価 図2
  • 特表-ヒト水晶体嚢の安定性の自動評価 図3
  • 特表-ヒト水晶体嚢の安定性の自動評価 図4
  • 特表-ヒト水晶体嚢の安定性の自動評価 図5A-5C
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ヒト水晶体嚢の安定性の自動評価
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/117 20060101AFI20231220BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20231220BHJP
   A61B 3/14 20060101ALI20231220BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20231220BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61B3/117
A61B3/10 800
A61B3/14
A61B3/113
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537601
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 IB2021059742
(87)【国際公開番号】W WO2022136956
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/129,386
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アルフレッド キャンピン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン グリューンディヒ
(72)【発明者】
【氏名】アルミン ハウプト
(72)【発明者】
【氏名】マーク アンドリュー ジエルケ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ハンター ペティット
【テーマコード(参考)】
4C316
4C601
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA08
4C316AA15
4C316AA21
4C316AB16
4C316FA02
4C316FA04
4C316FA19
4C316FB07
4C316FB22
4C316FB26
4C601DD13
4C601EE20
(57)【要約】
ヒト患者の眼内の水晶体嚢の安定状態を評価するための方法は、内部に眼球サッケードを生じさせる眼の運動後に同時に、エネルギー源を介して、所定のスペクトル内の電磁エネルギーを眼の瞳孔上へ案内することを含む。本方法はまた、画像取り込みデバイスを用いて眼球サッケードを指示する眼の画像を獲得することと、ECUを介して、画像を用いて水晶体嚢の運動曲線を計算することと、を含む。加えて、本方法は、ECUを介して、運動曲線に基づいて、時間正規化された水晶体嚢振動トレースを抽出することと、次に、ECUを介して水晶体嚢振動トレースをモデルに当てはめ、これにより、水晶体嚢の不安定状態を評価することと、を含む。また、エネルギー源と、画像取り込みデバイスと、ECUと、を含む、本方法の実施形態を遂行するための自動システムも本明細書において開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者の眼内の水晶体嚢の安定状態を評価するための方法であって、前記方法が、
内部に眼球サッケードを生じさせる前記眼の運動後に同時に、エネルギー源を介して、所定のスペクトル内の電磁エネルギーを前記眼の瞳孔上へ案内することと、
画像取り込みデバイスを用いて前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得することと、
電子制御ユニット(ECU)を介して、前記画像を用いて、前記水晶体嚢の運動を記述する運動曲線を計算することと、
前記ECUを介して、前記運動曲線に基づいて、時間正規化された水晶体嚢振動トレースを抽出することと、
前記ECUを介して、前記時間正規化された水晶体嚢振動トレースをモデルに当てはめ、これにより、前記水晶体嚢の不安定状態を評価することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記運動曲線を計算することが、位置曲線、瞬間速度曲線、及び/又は加速度曲線を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電磁エネルギーが光エネルギーであり、前記エネルギー源が光源であり、前記画像取り込みデバイスがカメラであり、前記眼の画像を獲得することが、前記眼内の特性プルキンエ反射の画像を獲得することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記特性プルキンエ反射が、P1座標を有するP1反射、及びP4座標を有するP4反射を含み、前記方法が、前記ECUを介して前記P1座標を前記P4座標から減算し、これにより、前記眼の回転を補正することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記特性プルキンエ反射がP1反射を含み、前記運動曲線を計算することが、前記P1反射の運動曲線を計算することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
動的注視誘導キューを、前記眼の視線に沿って配置された視標へ送り、これにより、前記眼球サッケードを誘起することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記画像取り込みデバイスが高速度カメラであり、前記エネルギー源を介して、前記所定のスペクトル内の電磁エネルギーを前記眼の前記瞳孔上へ案内することが、赤外(IR)光ビームを前記瞳孔上へ案内することを含み、前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得することが、ホットミラーを用いて、前記眼から反射されたIR光を前記高速度カメラに向けて案内することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記所定のスペクトル内の電磁エネルギーを前記眼の前記瞳孔上へ案内することが、超音波エネルギーを用いて前記水晶体嚢を直接撮像することを含み、前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得することが、前記水晶体嚢の超音波画像を収集することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水晶体嚢振動トレースをモデルに当てはめることが、前記眼のサッケード作動力の集中質量モデルを用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記画像を獲得している間に光学レンズを介して異なる調節要求を前記のヒト患者に提示することと、
非線形集中質量モデルを用いて前記水晶体嚢振動トレースの前記モデル当てはめを遂行することと、
をさらに含み、
潜在的な前記水晶体嚢の不安定状態を診断することが、前記眼の毛様体筋活動を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ヒト患者の眼内の水晶体嚢の不安定状態を評価するための自動システムであって、前記システムが、
誘起された眼球サッケードと同時に所定のスペクトル内の電磁エネルギーを前記眼上又は内へ案内するように構成されたエネルギー源と、
前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得するように構成された画像取り込みデバイスと、
前記エネルギー源及び前記画像取り込みデバイスと通信する電子制御ユニット(ECU)と、
を備え、前記ECUが、
前記画像を用いて前記水晶体嚢の運動曲線を算出することであって、前記運動曲線が前記水晶体嚢の運動を記述する、算出すること、
前記運動曲線に基づいて、時間正規化された水晶体振動トレースを抽出すること、及び
前記時間正規化された水晶体振動トレースをモデルに当てはめ、これにより、前記水晶体嚢の不安定状態を評価すること、
を行うように構成されている、自動システム。
【請求項12】
前記電磁エネルギーが光エネルギーであり、前記エネルギー源が光源であり、前記画像取り込みデバイスが高速度カメラであり、前記画像が前記眼内の特性プルキンエ反射のものである、請求項11に記載の自動システム。
【請求項13】
前記特性プルキンエ反射が、P1座標を有するP1反射、及びP4座標を有するP4反射を含み、前記ECUが、前記ECUを介して前記P1座標を前記P4座標から減算し、これにより、前記眼の回転を補正するように構成されている、請求項12に記載の自動システム。
【請求項14】
前記特性プルキンエ反射がP1反射を含み、前記ECUが、前記P1反射の瞬間速度曲線、瞬間加速度曲線、及び/又は瞬間位置曲線を計算することによって、前記特性プルキンエ反射のうちの1つの前記運動曲線を計算するように構成されている、請求項12に記載の自動システム。
【請求項15】
視標をさらに備え、前記ECUが、動的注視誘導キューを前記視標へ送り、前記眼球サッケードを誘起するように構成されている、請求項11に記載の自動システム。
【請求項16】
前記画像取り込みデバイスが高速度カメラであり、前記電磁エネルギーが赤外(IR)光ビームであり、前記自動システムが、前記眼から反射されたIR光を前記高速度カメラに向けて案内するように構成されたホットミラーをさらに備える、請求項11に記載の自動システム。
【請求項17】
前記エネルギー源及び/又は前記画像取り込みデバイスが、超音波エネルギーを介して前記水晶体嚢を直接撮像するように構成された超音波トランスデューサを含み、前記ECUが、前記水晶体嚢の超音波画像を収集することによって前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得するように構成されている、請求項11に記載の自動システム。
【請求項18】
前記ECUが、前記眼のサッケード作動力の集中質量モデルを用いて前記水晶体振動トレースの前記モデル当てはめを遂行するように構成されている、請求項11に記載の自動システム。
【請求項19】
ヒト患者の眼内の水晶体嚢の不安定状態を診断する際に高速度ビデオカメラと共に使用するための電子制御ユニット(ECU)であって、前記ECUが、
プロセッサと、
前記高速度ビデオカメラと通信するトランシーバと、
命令が記録されたメモリと、
を備え、前記プロセッサによる前記命令の実行が、前記プロセッサに、
赤外(IR)光が前記眼の瞳孔上へ案内された際の前記高速度カメラからの前記眼の画像を受け取ることであって、前記画像がP1特性プルキンエ反射を含む、受け取ること、
前記特性プルキンエ反射と同時に、動的注視誘導キューを前記視標へ送り、これにより、所定の眼球サッケードを誘起するために十分に前記視標を運動させること、
前記水晶体嚢の運動を記述する前記P1特性プルキンエ反射の瞬間速度曲線、加速度曲線、及び/又は位置曲線を計算すること、
前記瞬間速度曲線、加速度曲線、及び/又は位置曲線に基づいて、時間正規化された水晶体振動トレースを抽出すること、並びに
集中質量モデルを用いて前記水晶体振動トレースをモデルに当てはめ、これにより、小帯の状態を診断すること、
を行わせる、電子制御ユニット(ECU)。
【請求項20】
前記トランシーバが、前記ヒト患者と前記視標との間に視線に沿って位置付けられた調整可能光学レンズに結合されており、前記命令の実行が、前記プロセッサに、前記調整可能光学レンズを介して異なる調節要求が前記ヒト患者に提示されている間に前記特性プルキンエ反射の前記画像を獲得させる、請求項19に記載のECU。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒト患者の眼内の潜在的な水晶体嚢の安定性を非侵襲的に診断又は評価するための自動方法及びシステムに関する。本教示に従って効果的に診断され得る非限定的な例示的な水晶体の安定状態は小帯不全(ZI(zonular insufficiency))のものである。加えて、本明細書において説明されるソリューションは、例えば、術前の適合プロセスの間、最適な白内障手術計画を決定する際、又は患者の調節能力を評価する際における、調節性眼内レンズ(aIOL(accommodative intraocular lens))デバイスのための候補患者の評価に適応させられ得る。同様に、水晶体嚢の安定性又は一般的な眼の健康に関連する他の術前、術後、診断、又は治療手順も本教示から恩恵を受けることができる。
【0002】
ヒトの眼の水晶体は、水晶体嚢、上皮、及び支持繊維を含む。水晶体嚢は、具体的には、外周が、当技術分野において、チン膜/チン小帯、又は単に小帯と称される弾性繊維の輪に固着した薄い透明膜である。眼内の毛様体筋は、調節の間に小帯に集団的に作用するよう収縮又は弛緩し、これは、水晶体嚢の形状を変更する効果を有する。したがって、小帯は、毛様体筋によって水晶体に与えられる様々な力を適切に調節しつつ光軸に沿って水晶体嚢を固定することによって適切な眼機能の恩恵をもたらす。
【0003】
上述のZI状態は、小帯が過度に弾性的である、又は「だらりとしている(floppy)」ときに存在する。したがって、水晶体及び嚢袋は毛様体筋への固着が弱くなり得る。その結果、ZI状態と診断された患者は、白内障手術、水晶体交換、又はaIOLデバイス挿入の間に何らかの合併症を起こす可能性が高くなり得る。ZI患者の手術をする外科医は、嚢袋を安定化させるための嚢支持デバイスを利用することによって、レーザベースの嚢切開手順を遂行することによって、又は他の予防措置を取ることによって手術のリスクを軽減することを試み得るであろう。
【0004】
小帯のサイズはおよそ数十マイクロメートルである。虹彩の背後における小帯の極めて小さいサイズ及びしっかりと遮蔽された部位は、小帯の構造的完全性の有効な直接的な光学的検査を妨げる。したがって、所与の患者におけるZI状態の存在は、通例、例えば、外科医が、眼球運動を誘起するために患者の身体に刺激を与える、細隙灯検査を用いて、間接的に明らかにされる。例えば、臨床医は、手による刺激を与えるために、患者の頭を支持するヘッドレストをたたいてもよく、又は患者の頭の側部を直接軽くたたいてもよい。代替的アプローチでは、超音波刺激が用いられ得る。
【0005】
いずれのアプローチを用いても、患者は刺激の到来を予期するため、患者の不安の増大をもたらし得る。特に、超音波刺激は、概して、超音波測定デバイスと患者の眼との直接の接触を必要とする。さらに、診断結果は技能依存性及び主観性が高くなりがちである。その結果、潜在的ZI状態又は他の水晶体嚢の不安定状態が、例えば、眼科手術中に、予想外に発見される可能性があり、これは手術の結果に悪影響を及ぼすか、又は手術計画の変更を必要とし得るであろう。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において開示されるのは、ヒトの眼の水晶体嚢の構造的完全性の自動評価を遂行するための方法及びシステムである。本教示は、潜在的な水晶体又は水晶体嚢脱臼を予測し得る潜在的な水晶体嚢の不安定状態を検出するために用いられ得る。例として、限定するものではないが、本教示は、小帯の状態、並びに/或いは調節性眼内レンズ又は別の外科的処置の患者の可能性を評定することに適用され得る。本アプローチは、このような状態を正確に、再現可能に診断する過程で、水晶体振動を測定し、定量化することを含む。
【0007】
水晶体嚢の不安定状態を評価するための方法の一実施形態は、内部に眼球サッケードを生じさせる眼の運動後に同時に、エネルギー源を介して、所定のスペクトル内の電磁エネルギーを眼の瞳孔上へ案内することを含む。本方法は、画像取り込みデバイスを用いて眼球サッケードを指示する眼の画像を獲得することと、その後、電子制御ユニット(ECU(electronic control unit))を介して、画像を用いて水晶体嚢の運動曲線を計算することと、を含む。本方法は、ECUを介して、曲線に基づいて、時間正規化された水晶体嚢振動トレースを抽出することと、次に、ECUを介して水晶体嚢振動トレースをモデルに当てはめ、これにより、水晶体嚢の不安定状態を評価することと、をさらに含む。
【0008】
本方法の任意選択的な実装形態は、動的注視誘導キューを視標へ送ることを含み得、視標は患者の視線に沿って配置されている。注視誘導キューは、以下において、及び一般的技術において、眼球サッケードと称される、所定の制御された眼球運動を誘起する。誘起される眼球サッケードは、光ベースの実施形態では、特性プルキンエ反射の誘起と同時に行われる。
【0009】
本方法のこのような光ベースの実施形態の部分として、特性プルキンエ反射の1つ以上の画像が高速度カメラを用いて収集され得、電子制御ユニット(ECU)が特性プルキンエ反射のうちの1つ、例えば、本明細書において説明されるとおりのP1反射のための運動曲線を計算する。他の実施形態は、本明細書において記載されるとおりの水晶体/嚢の構造的完全性を診断する際に、水晶体嚢振動を指示する他の反射又は運動を取り込むことを選択して、プルキンエ反射の誘起及び検出を実施しなくてもよい。
【0010】
本方法はまた、ECUを介して、運動曲線に基づいて、時間正規化された水晶体振動トレースを抽出することと、その後、時間正規化された水晶体振動トレースをモデルに当てはめ、上述の水晶体/嚢構造の状態を診断することと、を含む。
【0011】
また、本明細書においては、水晶体/嚢の状態を診断するためのシステムが開示される。代表的実施形態によれば、システムは、エネルギー源、例えば、IR又は可視光、超音波エネルギー等を含む。エネルギー源は、電磁エネルギーを目標位置に向けて案内するように動作可能であり、目標位置はシステムの動作時にはヒト患者の眼の位置と一致する。システムは画像取り込みデバイスを含む。画像取り込みデバイスが高速度カメラであるときには、ホットミラーがカメラに対して所定の角度で配置され得る。このようなミラーは、目標位置から反射された光をカメラに向けて案内するように構成され得る。任意選択的な注視誘導視標は目標位置の反対に位置付けられ得る。ECUは、このようなシステムの部分として用いられるとき、エネルギー源、画像取り込みデバイス、及び任意選択的な注視誘導視標と通信する。
【0012】
電磁エネルギーが可視又はIRスペクトル内の光波を含む代表的実施形態では、このような光は、患者の瞳孔内に特性プルキンエ反射を誘起するために十分な所定の強度レベルで瞳孔上へ案内され得る。ECUは、実施形態によっては、注視誘導キューを視標へ送るように構成され得、これは、特性プルキンエ反射を誘起するのと同時に行われ得、これにより、視標に相対位置を変更させる。本事例における相対位置の変更は、眼内にサッケードを誘起するために十分であるものである。しかし、上述されたように、他の実施形態では、他の種類の撮像が用いられてもよく、したがって、特性プルキンエ反射は単に本開示の範囲内の1つの可能な反射にすぎない。
【0013】
ECUはまた、例えば、高速度カメラ又は超音波読み取りを用いて、特性プルキンエ又は他の眼反射の画像を獲得し、その後、プロセッサを用いて特性眼反射のうちの所定のものの1つ以上の運動曲線を計算するように構成されている。ECUは曲線に基づいて、時間正規化された水晶体振動トレースを抽出し、また、プロセッサを介して、所定の集中質量モデルを用いて、時間正規化された水晶体振動トレースのモデル当てはめを遂行するように構成されている。ECU、又はECUを用いる施術者/外科医は、次に、このようなモデル当てはめの結果を用いて、不安定性の可能性のある水晶体/嚢の状態を診断する。
【0014】
別の可能な実施形態におけるECUは、高速度ビデオカメラと共に使用するように構成されている。本実施形態におけるECUは、プロセッサと、高速度ビデオカメラ及び視標と通信するトランシーバと、コンピュータ可読命令が記録されたメモリと、を含む。プロセッサによる命令の実行は、プロセッサに、IR光ビームが眼の瞳孔上へ案内された際の高速度カメラからのP1特性プルキンエ反射の画像を受け取らせる。
【0015】
同様に、命令の実行は、ECUに、動的注視誘導キューを視標へ送り、これにより、所定の眼球サッケードを誘起するために十分に視標を運動させることを行わせ、これは特性プルキンエ反射と同時に行われる。この特定の実施形態におけるECUは、P1特性プルキンエ反射の瞬間速度、加速度、及び/又は位置曲線を計算し、運動曲線に基づいて、時間正規化された水晶体振動トレースを抽出し、集中質量モデルを用いて水晶体振動トレースをモデルに当てはめ、これにより、小帯の状態を診断する。
【0016】
上述の特徴及び利点、並びに本開示の他の可能な特徴及び利点は、添付の図面と関連して、本開示を実施するための最良の形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本開示に係る潜在的な水晶体/嚢関連の構造状態を診断又は評価するための自動システムの概略図である。
図2図2は、ヒトの眼の瞳孔内の典型的な特性プルキンエ反射の概略図である。
図3図3は、本方法の任意選択的な部分として利用可能な交互又は動的視覚キューの例示的なシーケンスの概略図である。
図4図4は、本明細書において記載される種類の水晶体/嚢の状態を診断するための例示的な方法を説明するフローチャートである。
図5A-5C】図5A-5Cは、本開示の範囲内で利用可能なサッケード水晶体振動の代表的な集中質量モデルの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の上述及び他の特徴は、添付の図面と併せて、以下の説明及び添付の請求項からより完全に明らかになるであろう。これらの図面は、本開示に係るいくつかの実施形態を示すのみであり、その範囲の限定と考えられるべきでないことを理解したうえで、本開示は、添付の図面の利用を通じてさらなる特定性及び詳細とともに説明される。図面又は本明細書の他所において開示される寸法はいずれも例示のみを目的としている。
【0019】
本開示の実施形態が本明細書において説明される。しかし、本開示の実施形態は単なる例にすぎず、他の実施形態は、様々な、及び代替的な形態を取ることができることを理解されたい。図は必ずしも原寸に比例しておらず、一部の特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために、誇張されるか、又は最小限にとどめられ得るであろう。したがって、本明細書において開示される特定の構造的及び機能的詳細は限定として解釈されるべきでなく、当業者に、本開示を様々に利用することを教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。当業者であれば理解するように、図のうちのいずれか1つを参照して例示及び説明された様々な特徴を、1つ以上の他の図に例示された特徴と組み合わせ、明示的に例示又は説明されていない実施形態を作り出すことができる。例示された特徴の組み合わせは典型的な適用のための代表的実施形態をもたらす。しかし、本開示の教示と一貫した特徴の様々な組み合わせ及び変更が特定の適用又は実装形態のために望ましくなり得るであろう。
【0020】
特定の専門用語は以下の説明において参照のみを目的として使用されていることがあり、それゆえ、限定を意図されていない。例えば、「上方(above)」及び「下方(below)」などの用語は、参照された図面内の方向を指す。「前方(front)」、「後方(back)」、「前(fore)」、「後(aft)」、「左(left)」、「右(right)」、「後部(rear)」、及び「側部(side)」などの用語は、議論されている構成要素又は要素を説明する文章及び関連図面を参照して明らかにされる、一貫した、しかし、任意の座標系内における構成要素又は要素の部分の向き及び/又は場所を記述する。さらに、「第1」、「第2」、「第3」等などの用語は、別個の構成要素を記述するために使用され得る。このような専門用語は、以上において具体的に言及された語、それらの派生語、及び同様に重要な語を含み得る。
【0021】
図面を参照すると、同様の参照符号は同様の構成要素を指し、図1に、自動評価システム10が概略的に示されている。システム10は、限定するものではないが、小帯、並びに/或いは眼11の角膜12及び虹彩17の背後に位置する他の組織の構造的完全性などの、ヒト患者の眼11内の水晶体/嚢構造の構造的完全性を推測するように構成されている。例えば、このような診断又は評価は、小帯不全(ZI)状態、又は本明細書において述べられるとおりの水晶体/嚢の安定性に関連する他の状態のものであり得、診断された状態は、ビデオトラッキング、画像解析、及び物理モデリングの統合プロセスを通じて生成されたメトリックによって表される。
【0022】
術前及び術後の眼評価と併せた本教示の利用は、例えば、潜在的な術中のリスクをより正確に識別し、最適なレンズ選択を支援することによって、白内障手術計画の結果を改善する助けになり得る。偽水晶体眼と共に術後に利用されると、本教示はまた、様々な小帯の問題に関係した視力障害を診断する助けにもなり得る。同様に、本教示は、当業者によって理解されるであろうように、多数の他の光学的又は眼科学的処置及び/又は診断にとって有益になり得る。
【0023】
本明細書において図2図5Cを特に参照して説明されるように、図1の自動評価システム10は、高速な眼球運動又はサッケードの間に眼11内に位置する水晶体の運動を測定することによって水晶体/嚢の安定性を推測するために用いられ得る。システム10は、実施形態によっては、角膜12及び水晶体から反射された赤外光を自動的に追跡する。小帯繊維上の水晶体の弾性的懸架のゆえに、残りの眼組織に対する水晶体運動は若干の遅延を伴って開始し、特性振動を有するオーバーシュートを伴って終了する。ZI状態及び他の眼状態は、それ自体で異常な水晶体/嚢振動をもたらす、顕著な水晶体の不安定性によって広範に特徴付けられる。それゆえ、このような異常振動のモデルベースの定量化が本方法50の部分として用いられる。その結果、本明細書において記載されるアプローチは、細隙灯及び他の競合アプローチと比べて、より正確で患者に優しい仕方で眼11の特定の状態を診断するために用いることができる。
【0024】
図1に示される自動評価システム10の可能な非限定的実施形態は、電磁エネルギー(矢印LL)、例えば、光又は超音波エネルギーを眼11の瞳孔16上へ案内するように動作可能なエネルギー源14を含む。可能な適用では、エネルギー源14は赤外(IR)光源であり、電磁エネルギー(矢印LL)は、IRスペクトルの眼に安全な部分内のIR光ビームの形態のものである。それゆえ、システム10の動作中、瞳孔16は電磁エネルギー(矢印LL)による照射のための目標位置を形成する。光源14に加えて、システム10は高速度カメラなどの画像取り込みデバイス18を含み得る。画像取り込みデバイス18がかように具現されるとき、システム10はまた、ホットミラー20を含み得、後者は光軸(AA)に対して所定の角度(θ)で配置され、θは、可能な実装形態では、約15°である。それゆえ、ホットミラー20は、瞳孔16から反射されたエネルギー(矢印LLR)を画像取り込みデバイス18に向けて案内するように構成されている。代替的に、光ベースの運動検出及び追跡の代わりに、超音波トランスデューサ140が、眼11内の水晶体嚢を直接撮像するために用いられてもよい。
【0025】
自動評価システム10の部分として、任意選択的な注視誘導視標22が患者の反対に光軸(AA)に沿って位置付けられている。以下においてさらに説明されるとおりの電子制御ユニット(ECU)25が、エネルギー源14、画像取り込み18、及び任意選択的な注視誘導視標22と通信しており、ECU25は、本方法50を具現するコンピュータ可読コード又は命令を実行するように構成されている。例示を簡単にするために単体の枠の略図として概略的に示されているが、ECU25は、1つ以上のネットワーク化デバイス、1つ以上のプロセッサPによって読み込まれ得るデータ/命令を提供することに関与する非一時的(例えば、有形)媒体を含む、コンピュータ可読媒体又はメモリ(M)を含み得る。
【0026】
メモリ(M)は、限定するものではないが、不揮発性媒体及び揮発性媒体を含む、多くの形態を取り得る。理解されるであろうように、不揮発性媒体は、例えば、光若しくは磁気ディスク及び他の永続メモリを含み得、その一方で、揮発性媒体は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM(dynamic random-access memory))、スタティックRAM(SRAM(static RAM))等を含み得、それらのいずれか又は全ては主メモリを構成し得る。限定するものではないが、入力/出力回路機構、局部発振器又は高速クロック、バッファ、ラッチ等を含む、図示されていないが、当技術分野において確立した他のハードウェアがECU25の部分として含まれてもよい。
【0027】
図1に示される自動評価システム10の様々な構成部品に関して、エネルギー源14は、任意選択的に、電磁スペクトルの眼に安全な部分内に含まれる波長、例えば、約1.4μmよりも大きいIR波長を有する、適用に適したIR光源として具現され得る。このような非限定的な例示的実施形態におけるエネルギー源14として用いるのに適した選択肢としては、IR発光ダイオード(LED(light-emitting diode))、連続波レーザ等を挙げることができる。例示を簡潔且つ明確にするために省略されているが、エネルギー源14は、電源、フィルタ、増幅器、導波路、及び適用に適した品質の電磁エネルギー(矢印LL)の生成及び伝搬を確実にするために適した他の構成要素に結合されており、及び/又はそれらを含み得る。
【0028】
ホットミラー20は、ショートパスエッジフィルタとして動作する、すなわち、入射光の可視波長を透過し、その一方で、IR/熱発生波長を画像取り込みデバイス18に向けて反射するように構成された熱反射ミラーとして具現され得る。この特定の実施形態におけるECU25は、システム10の動作中に、電磁エネルギー(矢印LL)を眼11の瞳孔16上へ案内するようエネルギー源14の動作を制御するように構成されている。実施形態によっては、運動する注視キューへの患者の焦点の適切な固定及び追跡を確実にするための矯正光学素子24が眼11と視標22との間に光軸(AA)に沿って配置され得る。このような矯正光学素子24は、矯正光学素子のための任意選択的なモジュールとして、近視患者、又は球形/円筒形欠陥などの、他の視力障害を有する患者に有利に用いられ得る。明確且つ簡潔にするために図1から省略されているが、矯正光学素子24は、様々な実施形態において、手動切り替え可能レンズ、液体レンズ、及び/又は雲霧システムのための架台を含み得る。
【0029】
本アプローチの部分として、電磁エネルギー(矢印LL)は、瞳孔16内の特性反射、例えば、プルキンエ反射を誘起するために十分である所定の強度レベルで到来する。電磁エネルギー(矢印LL)は瞳孔16上へ案内され、そこで、入射電磁エネルギー(矢印LL)は角膜12及び水晶体(図示せず)内を伝搬し、それらによって反射される。この様態の照射は、IR/光ベースの実施形態では、4つの特性プルキンエ反射を生じさせることになる。第1及び第4の特性プルキンエ反射P1及びP4が図2に示されており、本明細書においていくつかの実施形態において用いられる。
【0030】
図2を簡単に参照すると、眼11の概略図は、周囲の強膜15、すなわち、眼11の白目内の中心にある虹彩17を含む。当技術分野においてプルキンエ像又はプルキンエ-サムソン(Samson)像とも称される、プルキンエ反射は、瞳孔16内の物体の、外部に可視の反射として現れる。プルキンエ反射のうち最も明るいものになる傾向があるP1プルキンエ反射は、瞳孔16の区域内の角膜12(図1参照)の外側区域上で可視である。倒立したP4プルキンエ反射は、同様に瞳孔16の区域内の角膜12の後面上で可視である。双方とも図2から省略されているP2及びP3プルキンエ反射は、角膜12の内面及び前面上で可視である。それゆえ、図1のシステム10の動作中、眼11から反射された光は、角度の付いたホットミラー20によって画像取り込みデバイス18の方向に意図的に偏向させられる。一方、画像取り込みデバイス18は、適用に適した高い周波数、例えば、約300Hzよりも大きいシャッター速度で作動する。他の実施形態では、水晶体の位置の追跡のために、異なる技術、例えば、光コヒーレンストモグラフィ(OCT(optical coherence tomography))又は超音波生体顕微鏡(UBM(ultrasonic biomicroscopy))が、場合によっては、上述のプルキンエ反射の代わりに、水晶体/嚢構造の直接撮像された特徴を用いて、利用され得るであろう。
【0031】
図1を再び参照すると、以下において図4を特に参照して説明される本方法50の部分として、ECU25は、任意選択的に、水晶体/嚢運動を誘起するのと同時に注視誘導キュー信号(矢印CC22)を視標22へ送るように構成され得る。任意選択的な注視誘導キュー信号(矢印CC22)は、視標22に、その相対位置を、眼11の所定のサッケードを誘起し、その結果、その内部に位置する水晶体/嚢の検出可能な振動を誘起するために十分なレベルに変更させる。
【0032】
図3に示されるように、例えば、注視誘導キュー信号(矢印CC22)を視標22へ送ることは、照光パネル35のそれぞれの照光デバイスL1及びL2を別個に点灯させることを含み得る。ライトL1及びL2は、任意選択的に、距離(d)によって互いに離間されており、所定のシーケンスに従って順次点灯させられる2つの(又はより多くの)離散的なLED、白熱電球、又は他の高速点灯光源として具現され得る。注視誘導キュー信号(矢印CC22)は、例えば、例として、ECU25又は別の制御デバイスの作用によって、矢印A及びBによって指示されるように交互の様態でオン及びオフに切り替えられる、左右に並んだLEDの対として実施することができるであろう。限定するものではないが、交互の位置における動的物体の投影又は表示、例えば、動的画像を示すように構成されたビデオディスプレイ、又は任意の他の好適な構成などの、他の実施形態も企図され得る。患者が運動目標を追跡したとき、眼11は所定の運動範囲にわたって運動させられ、このような眼球運動は、制御された再現可能な様態の水晶体振動を誘起する。
【0033】
図1のECU25はまた、眼11の画像のセットを獲得するように構成されている。これは、上述されたように水晶体/嚢を直接撮像することを含み得るか、或いはそれは、上述されたように、エネルギー源14へのエネルギー制御信号(矢印CC14)の送信と併せた、画像取り込みデバイス18への取り込み制御信号(矢印CC18)の送信を介して特性プルキンエ反射P1及びP2を取り込むことによる間接的撮像を含み得る。ECU25は、その後、プロセッサ(P)を介して、水晶体嚢の運動を記述する撮像された水晶体/嚢運動の運動曲線を計算する。これは、第1の特性反射P1などの、特性プルキンエ反射のうちの所定のものの、或いは眼11の任意の直接撮像されたランドマーク構造、例えば、水晶体自体の瞬間速度、加速度、位置、及び/又は他の曲線を計算することを必要とし得る。加えて、ECU25は、運動曲線に基づいて、時間正規化された水晶体振動トレースを抽出し、その後、プロセッサ(P)を介して、集中質量モデルを用いて水晶体振動トレースのモデル当てはめを遂行するように構成されている。次に、このようなモデル当てはめの結果を用いて潜在的な水晶体/嚢の状態が診断され、場合によっては、ECU25はデータファイル30を出力信号(矢印CCO)の部分として出力する。
【0034】
図4を参照すると、ヒト患者の眼11(図1及び図2)内の潜在的な水晶体/嚢の構造的不安定状態を推測/診断するための方法50は、ブロックB52(「準備」)から開始され、ブロックB52は、ヒト患者を図1の自動評価システム10に対して配置することを必要とし得る。例えば、患者は、任意選択的な視標22などに向かって、特定の方向に向いた椅子にゆったりと着座させられてもよく、画像取り込みデバイス18は、実施形態によっては、ホットミラー20及びエネルギー源14に隣接して配置される。次に、患者は視標22へ目を向け、方法50がブロックB54へ進む間、この姿勢を維持する。
【0035】
ブロックB54において、自動評価システム10を制御する施術者、又はECU25自体がエネルギー制御信号(矢印CC14)を介してエネルギー源14の動作を開始し、患者が視標22への合焦を維持する間に電磁エネルギー(図1の矢印LL)を眼11に向けて案内する。水晶体/嚢が間接的に撮像される光ベースの実装形態では、電磁エネルギー(矢印LL)は、瞳孔16内の特性プルキンエ反射P1及びP4を誘起するために十分である強度レベルに維持される。任意選択的な矯正光学素子24がブロックB52の部分として採用される場合には、このとき、ブロックB54は、患者の視力に基づく仕方で患者が視標22に焦点を合わせるのを支援するために、介在する矯正光学素子24を通して視標22を見ることを必要とし得る。特性プルキンエ反射と同時に、任意選択的な動的注視誘導キュー(矢印CC22)を、眼11の視線に沿って配置された視標22へ送り、これにより、眼球サッケードを誘起する。このような動的注視誘導キュー(矢印CC22)は、プルキンエ反射を撮像するのとは対照的に、水晶体/嚢が直接撮像される実施形態においても、所望される場合には用いられ得る。
【0036】
これが進行している間に、ECU25は、画像取り込みデバイス18を用いて、場合によっては特性プルキンエ反射を含む、眼11のビデオ画像、静止画像、超音波画像、又は他の画像を獲得し得る。すなわち、視標22上の運動画像と連動して患者の光軸が変化するのに従って、画像取り込みデバイス18は画像を連続的に獲得し、収集された画像をECU25のメモリ(M)に保存する。代替的に、ECU25は、各々の任意選択的な注視誘導視覚キュー(矢印CC22)の出現の前及び後の時間間隔によって規定されるサッケードごとの離散的な画像シーケンスを保存してもよい。後者のアプローチは、データ転送負荷及びその後の画像処理時間を最小限に抑えるのに役立ち得る。方法50は、次に、任意選択的なブロックB56へ進み得る。
【0037】
ブロックB56は、IR又は他の光を用いてプルキンエ反射を誘起する実施形態において用いられ得る。このような場合には、ブロックB56は、所定の因子、例えば、強度、サイズ、形状、絶対位置、及び/又は相対位置、すなわち、反射P4に対する反射P1の、又はその逆の相対位置に基づいて、患者の眼11内の第1及び第4の特性プルキンエ反射P1及びP4(図2参照)を検出し、識別することを必要とする。ブロックB56の部分として、ECU25のプロセッサ(P)は、当業者によって理解されるであろうように、各々のものの幾何学的特徴、例えば、重心に基づいて反射P1及びP4の対応する座標を抽出し得る。次に、方法50はブロックB58へ進む。
【0038】
図4に示される方法50のブロックB58において、ECU25は、ブロックB56からの、又は水晶体/嚢が直接撮像される類似のブロックからのデータを正規化し得る。例えば、ECU25は水晶体運動を抽出し、次に、眼11の回転を補正し得る。P1及びP4プルキンエ反射を取り込む実装形態では、例えば、これは、第1の反射P1の座標をP4座標から減算することを必要とし得る。ブロックB58の部分として、ECU25はサッケードの識別を識別し、時間正規化された水晶体振動トレースを抽出し得る。眼11の個々のサッケードは、例えば、例として、反射P1の、注目点の運動曲線を計算することによって識別され得る。検出された速度スパイクはサッケードの存在を表し、このような速度スパイクが0へ再接近した後に水晶体振動が生じる。次に、方法50はブロックB60へ進む。
【0039】
方法50のこの特定の実施形態のブロックB60は、ECU25を介して、収集された振動トレースに対してモデル当てはめを遂行し、これにより、潜在的水晶体/嚢の構造的不安定状態を診断することを含む。本開示に係る水晶体振動測定のための2つの非限定的な例示的な診断適用は、眼11の多くの他の水晶体の安定性に関連する状態と共に、以上において大まかに説明されたとおりの、小帯不全(ZI)の検出、及び調節性IOL(aIOL)適合の検出を含む。
【0040】
特に、ZI検出については、眼11内の小帯の繊維完全性を測定することは、収集された水晶体振動データに基づいて小帯張力を推定することによって遂行され得る。可能なアルゴリズム的アプローチは、動的モデルを用いて、収集されたデータを適合させる。すなわち、OCT生体測定又は他の方法論に基づいて水晶体質量を推定し、次に、モデルを、サッケード眼刺激に基づく振動周波数及び振幅に当てはめる。例えば、剛性及び減衰項を調整することによる最小2乗適合を行う。ECU25は、例えば、小帯張力と相関する、剛性パラメータkについて解くことができるであろう。この適用のためには単純な線形集中質量モデルで十分になり得るが、その一方で、所与のデータセットへの当てはめを改善するために、より複雑なモデルが用いられてもよい。
【0041】
本教示のaIOL適合の適用については、調節機能を測定するためのアプローチは、異なる調節状態の間における小帯張力を推定し、その後、水晶体振動データに基づいて毛様体筋活動を推測することを含み得る。可能なアルゴリズム的アプローチでは、図1のECU25は、動的モデルを用いてデータに当てはめ、OCT生体測定、又はモデルを振動周波数及び振幅に当てはめるために適した他の方法に基づいて水晶体質量を推定することができるであろう。このようなアプローチは、同様に、異なる調節状態におけるサッケード眼刺激に基づくものであり、例えば、剛性項及び減衰項を調整することによる最小2乗適合を用いて、剛性パラメータk、及び調節運動/張力範囲x0について解く。非線形集中質量モデルがこの目的のために用いられてもよい。
【0042】
さらに、ブロックB60に関して、図5A図5B、及び図5Cに、方法50の文脈において使用可能な例示的な集中質量動的モデルが示されている。1次元集中質量モデルがサッケード眼球運動のための系レベルの挙動を記述することができる。図5Aに示されるように、小帯繊維の放射状配置の単純化された表現が、質量mを有する水晶体19を毛様体筋/毛様体60に接続しており、これにより、水晶体19は、ばね定数kを有する2つのばね62によって、2つの定着点、すなわち、毛様体60から懸架されている。図5Aにおけるばね62は小帯繊維を表す。初張力は毛様体筋の収縮状態を表し、x0、すなわち、質量(m)からの定着点の距離によって与えられる。生理環境の減衰作用は、ばね62と平行に配置されたダッシュポット61によって表され、ダッシュポット61は減衰係数bを有する。
【0043】
x0に関して、この値はaIOLのための潜在的適性インジケータである。調節要求が増大する間における張力の減少は毛様体60の収縮の存在を指示し、その一方で、張力の変化の不足はこのような収縮の不足を指示する。ばね定数kに関して、この値は、系の剛性、主として、小帯張力と相関する。それゆえ、剛性の不足は潜在的な外科的課題を指示し得る。
【0044】
線形振動子については、問題の系は次式のように数学的に記述することができる:
【数1】
ここで、mは、この場合も先と同様に、水晶体19の集中質量であり、xは、共振モードにおける水晶体19の線形変位である。値
【数2】
は減衰項であり、kxは復元力であり、F(t)は、サッケード加速度プロファイルに基づくサッケード作動力である。
【0045】
より複雑な非線形振動子については、異なる調節状態、すなわち、x0によって表される毛様体運動に対して応答振幅が変化し、非線形性を指示する。このような非線形性はおそらく復元力及び減衰力の部分である。それゆえ、式(1)は次式のように変更され得る:
【数3】
非線形振動子では、式(1)の減衰項
【数4】
は式(2)の非線形関数
【数5】
になり、これは、スクイズフィルム減衰、又は粘弾特性の組み合わせなどの項を含む非常に複雑な非線形項になり得る。例えば、式(2)の非線形関数
【数6】
は次式のように表され得る:
【数7】
復元力k(x)の非線形挙動は、非線形ばね力を有する非線形ばねとして記述することができる、例えば:
k(x)=keff(x+x0)p+keff(x-x0)p
【0046】
図5Bに、例示的な非線形モデルが概略的に示されている。変更された集中質量モデルは、マックスウェル減衰項によって表される、減衰の粘弾性モデルを組み込んでいる。マックスウェル減衰項は、別のばね162と直列の別のダッシュポット161を仮定し、クリープ及び弾性などの材料特性、当技術分野において十分に確立した小帯の特性を表す。
【0047】
例えば、OCTを用いて、自然の水晶体形状が調節の間に測定される場合には、本明細書において追加の水晶体形状パラメータと称される、別のパラメータx1を導入することによって、老眼の水晶体19の効果が図5Cの非線形モデルにおいて考慮されてもよい。
【0048】
図4を再び参照すると、ブロックB62において、方法50は、例えば、以上において記載されたとおりの力学モデル又はモデル群の異なる係数を含むことによって、メトリックを計算することを含む。代替的に、例えば、外科的問題、調節性IOL選択のための適性、推奨等を指示する主要係数に基づいて、別個のメトリックを計算することができるであろう。単一又は複数のメトリックの異なる値は、指示された外科的問題に従って手術を計画すること、又は調節性IOLを受け入れるための所与の患者の適性を決定することなどの、多数の有益なプロセスのための推奨を促すことになる。これらの特定の推奨のためのメトリックの境界は、臨床研究における患者コホートを用いて規定されてもよい。
【0049】
本技術の別の潜在的実装形態は、患者の残存調節を測定することによって毛様体筋駆動の調節性IOLを受け入れるための老眼患者の適性を決定することであることができるであろう。例えば、2016年10月4日に発行されたCampinらへの特許、米国特許第9,456,739B2号明細書を参照されたい。同特許はその全体が本明細書において参照により組み込まれる。aIOLは、移植後に調節能力を保持するように設計され、この目的を達成するために、毛様体筋の適切な機能に依存する。健康な眼では、毛様体筋は遠くの物体への固視の間に弛緩させられる。これは、結果として、小帯繊維及び嚢袋を張力下に置き、このような張力は最終的に水晶体に伝達される。その結果、水晶体は扁平になる。
【0050】
したがって、より近い物体への図1及び図2の眼11の調節の間には、毛様体筋は収縮し、これにより、小帯繊維及び嚢袋にかかる張力を低下させる。低下した張力は、水晶体がその屈折力を増大させることを可能にする。小帯繊維の張力におけるこの差は異なる水晶体の揺動挙動を誘起し、調節状態は、非調節又は遠方焦点状態よりも強い水晶体の揺動を誘起する。この効果は老眼において顕著である。したがって、本方法50の部分として用いられる本提案の力学モデルは、水晶体の揺動の測定から小帯張力を導出するために用いることができる。ある範囲の調節要求にわたる本開示の測定からの張力値を比較することで、毛様体筋活動の定量的推測が可能になる。すなわち、毛様体筋が収縮したとき、張力は調節要求の増大とともに減少する。張力の変化が検出されないとき、図1の出力ファイル30内に取り込まれ得る診断結果は、毛様体筋活動は無視できるほどのものである、となる。
【0051】
適切な毛様体筋活動応答は多くの新たな調節性IOLの設計の機能のために極めて重要であり、白内障手術に先立つ重要なスクリーニング因子になり得る。残存調節潜在能力を診断するために用いられるとき、図1の例示的なハードウェア機構は、異なる調節要求を被験者に提示することができる光学素子の存在を必要とする。これは、上述されたように、容易に交換又は調整することができる仕方で図1の矯正光学素子24を光路内に導入することによって達成することができるであろう。本事例における測定は、2つ以上の異なる調節要求において知覚される視標22を用いて実施される。データ解析パイプラインは画像解析のために同様であり得る。本教示を調節評価に適用するときの最も大きな相違は、方法50の部分として用いられる基礎をなす力学モデルのより高い複雑性である。
【0052】
以上においては図4の例示的な方法50及び図1の自動評価システム10を参照して説明されたが、当業者は、システム10の構成要素又はサブシステムを本開示の範囲内で用い得ることを理解するであろう。例えば、小帯不全状態を診断するときには、ECU25は、高速度カメラとして具現された画像取り込みデバイス18と共に用いられ得る。例示的な実施形態では、ECU25は、上述のプロセッサ(P)と、図1の画像取り込みデバイス18及び視標22と通信するトランシーバ(Tx)と、本方法50を実施するための命令が記録されたメモリ(M)と、を含む。
【0053】
このような命令の実行は、プロセッサ(P)に、図1及び図2に示されるように、電磁エネルギー(矢印LL)が眼11の瞳孔16上へ案内された際の、画像取り込みデバイス18からの、P1反射及びP4反射を潜在的に含む、眼11の画像を受け取ること、並びに任意選択的な動的注視誘導キュー(矢印CC22)を視標22へ送り、これにより、所定の眼球サッケードを誘起するために十分に視標22又はその上のディスプレイを運動させることであって、これは、光ベースの実施形態では、特性プルキンエ反射と同時に行われ得る、運動させること、を行わせる。命令の実行はまた、プロセッサ(P)に、検出された水晶体運動の1つ以上の運動曲線を計算すること、曲線に基づいて、時間正規化された水晶体振動トレースを抽出すること、並びに図5A図Cに示される集中質量モデルのうちの1つを用いて水晶体振動トレースをモデルに当てはめ、これにより、小帯の状態を診断すること、を行わせる。
【0054】
このように、図1の自動評価システム10、及び図2図5Cを参照して説明された付随する方法50は、水晶体/嚢の状態の、並びに残存調節潜在能力/毛様体筋活動及び他の可能な有益な眼科適用の非侵襲的診断又は評価を可能にする。本教示は、施術者が、上述の運動追跡、解析、及び以上において記載されたとおりの物理モデリングを通じて生成されたメトリックを介して、眼11内の支持構造の、例えば、眼11の隠れた小帯の構造状態を正確に推測することを可能にする。それゆえ、本教示は、術前の評価を改善する助けとなり得る。同様に、本教示は、偽水晶体眼を評価し、上述された種類の潜在的な小帯の問題に関係する視力障害を診断することなどによって、術後の状況に拡張され得る。これら及び他の利点は、本開示を考慮して当業者によって容易に理解されるであろう。
【0055】
詳細な説明及び図面若しくは図は本開示を支援し、説明するが、本開示の範囲は請求項によってのみ規定される。クレームされている開示を実施するための最良の形態及び他の実施形態のうちのいくつかが詳細に説明されたが、添付の請求項において規定される本開示を実践するための様々な代替的な設計及び実施形態が存在する。
【0056】
さらに、図面において示される実施形態、又は本記載において述べられた様々な実施形態の特徴は、必ずしも互いに独立した実施形態として理解されるべきではない。むしろ、一実施形態の例のうちの1つにおいて説明される特徴の各々は、他の実施形態からの1つ又は複数の他の所望の特徴と組み合わせることができ、言葉で、又は図面を参照して説明されない他の実施形態をもたらすことが可能である。したがって、このような他の実施形態は添付の請求項の範囲の枠組み内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A-5C】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
さらに、図面において示される実施形態、又は本記載において述べられた様々な実施形態の特徴は、必ずしも互いに独立した実施形態として理解されるべきではない。むしろ、一実施形態の例のうちの1つにおいて説明される特徴の各々は、他の実施形態からの1つ又は複数の他の所望の特徴と組み合わせることができ、言葉で、又は図面を参照して説明されない他の実施形態をもたらすことが可能である。したがって、このような他の実施形態は添付の請求項の範囲の枠組み内に含まれる。
また、本開示は以下の発明を含む。
第1の態様は、
ヒト患者の眼内の水晶体嚢の安定状態を評価するための方法であって、前記方法が、
内部に眼球サッケードを生じさせる前記眼の運動後に同時に、エネルギー源を介して、所定のスペクトル内の電磁エネルギーを前記眼の瞳孔上へ案内することと、
画像取り込みデバイスを用いて前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得することと、
電子制御ユニット(ECU)を介して、前記画像を用いて、前記水晶体嚢の運動を記述する運動曲線を計算することと、
前記ECUを介して、前記運動曲線に基づいて、時間正規化された水晶体嚢振動トレースを抽出することと、
前記ECUを介して、前記時間正規化された水晶体嚢振動トレースをモデルに当てはめ、これにより、前記水晶体嚢の不安定状態を評価することと、
を含む方法である。
第2の態様は、
前記運動曲線を計算することが、位置曲線、瞬間速度曲線、及び/又は加速度曲線を計算することを含む、第1の態様における方法である。
第3の態様は、
前記電磁エネルギーが光エネルギーであり、前記エネルギー源が光源であり、前記画像取り込みデバイスがカメラであり、前記眼の画像を獲得することが、前記眼内の特性プルキンエ反射の画像を獲得することを含む、第2の態様における方法である。
第4の態様は、
前記特性プルキンエ反射が、P1座標を有するP1反射、及びP4座標を有するP4反射を含み、前記方法が、前記ECUを介して前記P1座標を前記P4座標から減算し、これにより、前記眼の回転を補正することをさらに含む、第3の態様における方法である。
第5の態様は、
前記特性プルキンエ反射がP1反射を含み、前記運動曲線を計算することが、前記P1反射の運動曲線を計算することを含む、第3の態様における方法である。
第6の態様は、
動的注視誘導キューを、前記眼の視線に沿って配置された視標へ送り、これにより、前記眼球サッケードを誘起することをさらに含む、第1の態様における方法である。
第7の態様は、
前記画像取り込みデバイスが高速度カメラであり、前記エネルギー源を介して、前記所定のスペクトル内の電磁エネルギーを前記眼の前記瞳孔上へ案内することが、赤外(IR)光ビームを前記瞳孔上へ案内することを含み、前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得することが、ホットミラーを用いて、前記眼から反射されたIR光を前記高速度カメラに向けて案内することを含む、第1の態様における方法である。
第8の態様は、
前記所定のスペクトル内の電磁エネルギーを前記眼の前記瞳孔上へ案内することが、超音波エネルギーを用いて前記水晶体嚢を直接撮像することを含み、前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得することが、前記水晶体嚢の超音波画像を収集することを含む、第1の態様における方法である。
第9の態様は、
前記水晶体嚢振動トレースをモデルに当てはめることが、前記眼のサッケード作動力の集中質量モデルを用いることを含む、第1の態様における方法である。
第10の態様は、
前記画像を獲得している間に光学レンズを介して異なる調節要求を前記のヒト患者に提示することと、
非線形集中質量モデルを用いて前記水晶体嚢振動トレースの前記モデル当てはめを遂行することと、
をさらに含み、
潜在的な前記水晶体嚢の不安定状態を診断することが、前記眼の毛様体筋活動を検出することを含む、第1の態様における方法である。
第11の態様は、
ヒト患者の眼内の水晶体嚢の不安定状態を評価するための自動システムであって、前記システムが、
誘起された眼球サッケードと同時に所定のスペクトル内の電磁エネルギーを前記眼上又は内へ案内するように構成されたエネルギー源と、
前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得するように構成された画像取り込みデバイスと、
前記エネルギー源及び前記画像取り込みデバイスと通信する電子制御ユニット(ECU)と、
を備え、前記ECUが、
前記画像を用いて前記水晶体嚢の運動曲線を算出することであって、前記運動曲線が前記水晶体嚢の運動を記述する、算出すること、
前記運動曲線に基づいて、時間正規化された水晶体振動トレースを抽出すること、及び
前記時間正規化された水晶体振動トレースをモデルに当てはめ、これにより、前記水晶体嚢の不安定状態を評価すること、
を行うように構成されている、自動システムである。
第12の態様は、
前記電磁エネルギーが光エネルギーであり、前記エネルギー源が光源であり、前記画像取り込みデバイスが高速度カメラであり、前記画像が前記眼内の特性プルキンエ反射のものである、第11の態様における自動システムである。
第13の態様は、
前記特性プルキンエ反射が、P1座標を有するP1反射、及びP4座標を有するP4反射を含み、前記ECUが、前記ECUを介して前記P1座標を前記P4座標から減算し、これにより、前記眼の回転を補正するように構成されている、第12の態様における自動システムである。
第14の態様は、
前記特性プルキンエ反射がP1反射を含み、前記ECUが、前記P1反射の瞬間速度曲線、瞬間加速度曲線、及び/又は瞬間位置曲線を計算することによって、前記特性プルキンエ反射のうちの1つの前記運動曲線を計算するように構成されている、第12の態様における自動システムである。
第15の態様は、
視標をさらに備え、前記ECUが、動的注視誘導キューを前記視標へ送り、前記眼球サッケードを誘起するように構成されている、第11の態様における自動システムである。
第16の態様は、
前記画像取り込みデバイスが高速度カメラであり、前記電磁エネルギーが赤外(IR)光ビームであり、前記自動システムが、前記眼から反射されたIR光を前記高速度カメラに向けて案内するように構成されたホットミラーをさらに備える、第11の態様における自動システムである。
第17の態様は、
前記エネルギー源及び/又は前記画像取り込みデバイスが、超音波エネルギーを介して前記水晶体嚢を直接撮像するように構成された超音波トランスデューサを含み、前記ECUが、前記水晶体嚢の超音波画像を収集することによって前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得するように構成されている、第11の態様における自動システムである。
第18の態様は、
前記ECUが、前記眼のサッケード作動力の集中質量モデルを用いて前記水晶体振動トレースの前記モデル当てはめを遂行するように構成されている、第11の態様における自動システムである。
第19の態様は、
ヒト患者の眼内の水晶体嚢の不安定状態を診断する際に高速度ビデオカメラと共に使用するための電子制御ユニット(ECU)であって、前記ECUが、
プロセッサと、
前記高速度ビデオカメラと通信するトランシーバと、
命令が記録されたメモリと、
を備え、前記プロセッサによる前記命令の実行が、前記プロセッサに、
赤外(IR)光が前記眼の瞳孔上へ案内された際の前記高速度カメラからの前記眼の画像を受け取ることであって、前記画像がP1特性プルキンエ反射を含む、受け取ること、
前記特性プルキンエ反射と同時に、動的注視誘導キューを前記視標へ送り、これにより、所定の眼球サッケードを誘起するために十分に前記視標を運動させること、
前記水晶体嚢の運動を記述する前記P1特性プルキンエ反射の瞬間速度曲線、加速度曲線、及び/又は位置曲線を計算すること、
前記瞬間速度曲線、加速度曲線、及び/又は位置曲線に基づいて、時間正規化された水晶体振動トレースを抽出すること、並びに
集中質量モデルを用いて前記水晶体振動トレースをモデルに当てはめ、これにより、小帯の状態を診断すること、
を行わせる、電子制御ユニット(ECU)である。
第20の態様は、
前記トランシーバが、前記ヒト患者と前記視標との間に視線に沿って位置付けられた調整可能光学レンズに結合されており、前記命令の実行が、前記プロセッサに、前記調整可能光学レンズを介して異なる調節要求が前記ヒト患者に提示されている間に前記特性プルキンエ反射の前記画像を獲得させる、第19の態様におけるECUである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者の眼内の水晶体嚢の安定状態を評価するための方法であって、前記方法が、
内部に眼球サッケードを生じさせる前記眼の運動後に同時に、エネルギー源を介して、所定のスペクトル内の電磁エネルギーを前記眼の瞳孔上へ案内することと、
画像取り込みデバイスを用いて前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得することと、
電子制御ユニット(ECU)を介して、前記画像を用いて、前記水晶体嚢の運動を記述する運動曲線を計算することと、
前記ECUを介して、前記運動曲線に基づいて、時間正規化された水晶体嚢振動トレースを抽出することと、
前記ECUを介して、前記時間正規化された水晶体嚢振動トレースをモデルに当てはめ、これにより、前記水晶体嚢の不安定状態を評価することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記運動曲線を計算することが、位置曲線、瞬間速度曲線、及び/又は加速度曲線を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電磁エネルギーが光エネルギーであり、前記エネルギー源が光源であり、前記画像取り込みデバイスがカメラであり、前記眼の画像を獲得することが、前記眼内の特性プルキンエ反射の画像を獲得することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記特性プルキンエ反射が、P1座標を有するP1反射、及びP4座標を有するP4反射を含み、前記方法が、前記ECUを介して前記P1座標を前記P4座標から減算し、これにより、前記眼の回転を補正することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記特性プルキンエ反射がP1反射を含み、前記運動曲線を計算することが、前記P1反射の運動曲線を計算することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
動的注視誘導キューを、前記眼の視線に沿って配置された視標へ送り、これにより、前記眼球サッケードを誘起することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記画像取り込みデバイスが高速度カメラであり、前記エネルギー源を介して、前記所定のスペクトル内の電磁エネルギーを前記眼の前記瞳孔上へ案内することが、赤外(IR)光ビームを前記瞳孔上へ案内することを含み、前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得することが、ホットミラーを用いて、前記眼から反射されたIR光を前記高速度カメラに向けて案内することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記所定のスペクトル内の電磁エネルギーを前記眼の前記瞳孔上へ案内することが、超音波エネルギーを用いて前記水晶体嚢を直接撮像することを含み、前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得することが、前記水晶体嚢の超音波画像を収集することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水晶体嚢振動トレースをモデルに当てはめることが、前記眼のサッケード作動力の集中質量モデルを用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記画像を獲得している間に光学レンズを介して異なる調節要求を前記のヒト患者に提示することと、
非線形集中質量モデルを用いて前記水晶体嚢振動トレースの前記モデル当てはめを遂行することと、
をさらに含み、
潜在的な前記水晶体嚢の不安定状態を診断することが、前記眼の毛様体筋活動を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ヒト患者の眼内の水晶体嚢の不安定状態を評価するための自動システムであって、前記システムが、
誘起された眼球サッケードと同時に所定のスペクトル内の電磁エネルギーを前記眼上又は内へ案内するように構成されたエネルギー源と、
前記眼球サッケードを指示する前記眼の画像を獲得するように構成された画像取り込みデバイスと、
前記エネルギー源及び前記画像取り込みデバイスと通信する電子制御ユニット(ECU)と、
を備え、前記ECUが、
前記画像を用いて前記水晶体嚢の運動曲線を算出することであって、前記運動曲線が前記水晶体嚢の運動を記述する、算出すること、
前記運動曲線に基づいて、時間正規化された水晶体振動トレースを抽出すること、及び
前記時間正規化された水晶体振動トレースをモデルに当てはめ、これにより、前記水晶体嚢の不安定状態を評価すること、
を行うように構成されている、自動システム。
【請求項12】
前記電磁エネルギーが光エネルギーであり、前記エネルギー源が光源であり、前記画像取り込みデバイスが高速度カメラであり、前記画像が前記眼内の特性プルキンエ反射のものである、請求項11に記載の自動システム。
【請求項13】
前記特性プルキンエ反射が、P1座標を有するP1反射、及びP4座標を有するP4反射を含み、前記ECUが、前記ECUを介して前記P1座標を前記P4座標から減算し、これにより、前記眼の回転を補正するように構成されている、請求項12に記載の自動システム。
【請求項14】
前記特性プルキンエ反射がP1反射を含み、前記ECUが、前記P1反射の瞬間速度曲線、瞬間加速度曲線、及び/又は瞬間位置曲線を計算することによって、前記特性プルキンエ反射のうちの1つの前記運動曲線を計算するように構成されている、請求項12に記載の自動システム。
【請求項15】
視標をさらに備え、前記ECUが、動的注視誘導キューを前記視標へ送り、前記眼球サッケードを誘起するように構成されている、請求項11に記載の自動システム。
【国際調査報告】