(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】試料中の目的の分析物を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/531 20060101AFI20231220BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231220BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20231220BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20231220BHJP
C07K 7/02 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
G01N33/531 B
A61K47/68
A61K51/10
G01N33/543 501D
G01N33/543 525E
C07K7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537967
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2021086724
(87)【国際公開番号】W WO2022136234
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】フォミン,マクシム
(72)【発明者】
【氏名】ハインドル,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ヒルリングハウス,ラルス
(72)【発明者】
【氏名】クーヘルマイスター,ハンネス
(72)【発明者】
【氏名】モハメド,モハメド・ヨスリー・ハッサン
(72)【発明者】
【氏名】エルシュレーゲル,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】シモンイオバ,ソナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C085KA03
4C085KB82
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA70
4H045EA50
4H045FA10
4H045FA57
4H045FA61
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法に関する。本発明は、さらに、試料中の目的の分析物を検出するためのキット、複合体、複合体を合成する方法およびその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の目的の分析物を検出するための方法であって、
a)前記目的の分析物を含む前記試料を提供するステップと、
b)リンカーを含む複合体を提供するステップであって、前記リンカーが、標識化合物および分析物特異的結合剤に共有結合し、前記標識化合物が、検出可能な信号、好ましくは化学発光ベースの信号を生成することができる、複合体を提供するステップと、
c)ステップa)の前記試料をステップb)の前記複合体と結合させるステップと、
d)前記標識化合物の前記検出可能な信号を使用することによって前記目的の分析物を検出するステップと、を含み、
前記複合体が式I:
【化1】
の化合物であり、
式中、Aは前記標識化合物を表し、Bは前記分析物特異的結合剤を表し、またはその逆であり、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1である、方法。
【請求項2】
前記複合体が式II:
【化2】
の化合物であり、
式中、A、B、mおよびnのそれぞれは、請求項1において述べたものと同じ意味を有し、
式中、Xは、t≧1、好ましくはt=1、3、5または7の(CHOH)
t-CH
2OHである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複合体が式III:
【化3】
の化合物であり、
式中、A、B、mおよびnのそれぞれは、請求項1において述べたものと同じ意味を有し、
式中、XはOHであり、r≧1であり、好ましくはr=1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
XがOHであり、および/またはmが2もしくは4もしくは6である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Xがt=1、3、5または7の(CHOH)
t-CH
2OHである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記標識化合物が、第1のコンジュゲーション法によって前記リンカーに共有結合され、前記第1のコンジュゲーション法が、クリックケミストリー、アミド、エステル、イミド、炭酸塩、カルバミン酸塩、スクアレート、チアゾール、チアゾリジン、ヒドラゾン、オキシム、ジヒドロピリダジン、チオール・マレイミド、付加環化、フォトクリック、シュタウディンガーライゲーション、ディールス・アルダー、テトラジンライゲーション、クロスカップリング、ピクテ・スペングラー、クアドリシクランの群から選択され、
および/または
前記分析物特異的結合剤が、抗体、抗体の分析物特異的フラグメントおよび/または誘導体、アプタマー、シュピーゲルマー、ダルピン、レクチン、アンキリンリピート含有タンパク質、およびKunitz型ドメイン含有タンパク質からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記複合体が式IV-1:
【化4】
の化合物であり、
式中、nは1よりも大きく、好ましくは1≦n≦15であり、例えば、n=10である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複合体が式VまたはVI:
【化5】
【化6】
の化合物であり、
式中、式VまたはVIのnは、互いに独立して、1よりも大きく、好ましくは1≦n≦15であり、例えば、n=10である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)がペプチドベースの合成、好ましくは固相ペプチド合成(SPPS)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記試料中の前記目的の分析物を検出するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項11】
試料中の目的の分析物の検出を実行するためのキットであって、別個の容器に、
a)前記分析物を固定可能な固相と、
b)式I:
【化7】
の化合物であって、
式中、Aは標識化合物を表し、Bは分析物特異的結合剤を表し、またはその逆であり、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1である、
化合物と、を含む、キット。
【請求項12】
前記試料中の前記目的の分析物を検出するための、請求項11に記載のキットの使用。
【請求項13】
式I:
【化8】
の複合体であって、
式中、Aは標識化合物を表し、Bは分析物特異的結合剤を表し、またはその逆であり、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1であり、
好ましくは、前記化合物が、試料中の目的の分析物を検出するのに適している、複合体。
【請求項14】
請求項13に記載の複合体を合成する方法であって、
a)モノマーまたはその誘導体を提供するステップであって、前記モノマーが、アミノ基、カルボキシ基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含むアミノ酸であり、前記アミノ基または前記カルボキシ基が第1の保護基によって保護されており、前記少なくとも1つのヒドロキシル基または各ヒドロキシル基が第2の保護基によって保護されている、モノマーまたはその誘導体を提供するステップと、
b)固相ペプチド合成のプロセスにおいて前記モノマーを使用し、前記第1の保護基および第2の保護基を切断し、式III:
【化9】
の複合体であって、
式中、Aは前記標識化合物を表し、Rは第2のスペーサーを表し、またはその逆であり、Rは分析物特異的結合剤に共有結合することができるか、または分析物特異的結合剤に共有結合され、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1である、
複合体を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
モノマーまたはその誘導体が、以下の式m-1からm-4から選択され、
【化10】
式中、FmocHNは、9-フルオレニルメトキシカルボニル保護基によって保護されたアミンを意味する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法に関する。本発明は、さらに、試料中の目的の分析物を検出するためのキット、複合体、複合体を合成する方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
米国特許第9,511,150号明細書は、糖アルコールおよび架橋試薬、高分子、および治療用バイオコンジュゲートを報告している。米国特許出願公開第2016/0250896号明細書は、ホスホネートおよびスルホネートならびに親水性リンカー、ならびに細胞結合分子への薬物のコンジュゲーションのためのそのようなリンカーの使用を報告している。米国特許出願公開第2010/0009902号明細書は、選択された分子量を有するPEG(ポリエチレングリコール)とのコンジュゲーションを報告している。Vlahov I.R.ら、J.Org.Chem.75(2010)3685-3691は、葉酸-薬物コンジュゲートの毒性プロファイルを制御するための炭水化物ベースの合成アプローチを報告している。より詳細には、この文献は、1-アミノ-1-デオキシ-d-グルシトール-γ-グルタメートサブユニットのペプチド骨格への組み込みを開示している。Fmoc戦略固相ペプチド合成(SPPS)に適したFmoc-3,4;5,6-ジ-O-イソプロピリデン-1-アミノ-1-デオキシ-d-グリシトール-γ-グルタメートの合成は、δ-グルコノラクトンからの4つのステップにおいて達成された。交互のグルタミン酸および3,4;5,6-ジ-O-イソプロピリデン-1-アミノ-1-デオキシ-d-グリシトール-γ-グルタメート部分をシステイン担持樹脂上に添加し、続いて葉酸塩を添加し、脱保護し、開裂して、以下の新たな葉酸-スペーサーを単離した:Pte-γGlu-(Glu(1-アミノ-1-デオキシ-d-グルシトール)-Glu)2-Glu(1-アミノ-1-デオキシ-d-グルシトール)-Cys-OH。
【0003】
ポリマー化学の分野で知られている特定の技術的特徴は、組み込まれたモノマーの量および/またはポリマー鎖長の均一性の欠如を示す多分散性である。特定の技術的課題は、しばしば観察されるリンカーを含む化合物およびコンジュゲートの多分散性によってもたらされる。
【0004】
具体的には、PEG系リンカーは、このような欠点を有し得る。典型的に使用される重合化学の技術的特徴のために、得られる高分子量PEG分子は、実質的な多分散性を特徴とする。すなわち、典型的な重合は、異なる分子量を有する分子の混合物を生じる。そのような混合分子量PEG分子をリンカーとして使用することは、得られたコンジュゲート間の多分散性の伝播をもたらす。結果として、所望のコンジュゲートが均一な分子量と定義されるため、コンジュゲートのいかなる分析も複雑である。しかしながら、このような均一な分子量は達成されない。さらに、スペーサー中のPEG部分の親水性にもかかわらず、PEGとの特定のコンジュゲートは、依然として十分な溶解性を欠いている。
【0005】
多糖類はまた、糖化学の複雑さおよび困難さのために、多分散性であり、構造が可変である傾向がある。より長くより複雑なアルコールの合成は、精巧で低収率の保護基操作を必要とする。
【0006】
したがって、上記の課題を克服することが当該技術分野において緊急に必要とされている。
【0007】
本発明のために、機能性分子を有利に架橋するために使用され得るポリオールを有する特定の実質的に単分散のリンカー分子が考案されている。本発明者らは、ポリオールを有する特定のリンカー分子が、PEG含有誘導体よりも優れた親水性を提供するだけではないことを見出した。例示的な状況において、分析物特異的結合剤と標識化合物とを架橋するそのようなリンカーを含む複合体は、分析物検出アッセイにおいて改善された信号対雑音比をもたらす。さらに、リンカーおよび/または複合体は、単分散性を示し、これは好ましくはペプチド合成から生じ、HPLCクロマトグラムによって示され得る。
【0008】
本発明の目的は、試料中の目的の分析物を検出するための方法を提供することである。さらに、本発明は、試料中の目的の分析物を検出するためのキット、複合体、複合体を合成する方法およびその使用を提供することを目的とする。
【0009】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。さらなる実施形態は、従属請求項にしたがう。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
以下では、本発明は以下の態様に関する:
【0011】
第1の態様では、本発明は、試料中の目的の分析物を検出するための方法であって、
a)目的の分析物を含む試料を提供するステップと、
b)リンカーを含む複合体を提供するステップであって、リンカーが、標識化合物および分析物特異的結合剤に共有結合し、標識化合物が、検出可能な信号、好ましくは化学発光ベースの信号を生成することができる、複合体を提供するステップと、
c)ステップa)の試料をステップb)の複合体と結合させるステップと、
d)標識化合物の検出可能な信号を使用することによって目的の分析物を検出するステップと、を含み、
複合体が式I:
【化1】
の化合物であり、
式中、Aは標識化合物を表し、Bは分析物特異的結合剤を表し、またはその逆であり、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2、特に2から8の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1である、方法に関する。
【0012】
第2の態様では、本発明は、試料中の目的の分析物を検出するための本発明の第1の態様にかかる方法の使用に関する。
【0013】
第3の態様では、本発明は、試料中の目的の分析物の検出を実行するためのキットであって、別個の容器に、
a)分析物を固定可能な固相と、
b)式I:
【化2】
の化合物であって、
式中、Aは標識化合物を表し、Bは分析物特異的結合剤を表し、またはその逆であり、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2、特に2から8の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1である、
化合物と、を含む、キットに関する。
【0014】
第4の態様では、本発明は、試料中の目的の分析物を検出するための本発明の第3の態様にかかるキットの使用に関する。
【0015】
第5の態様では、本発明は、式I
【化3】
の複合体であって、
式中、Aは標識化合物を表し、Bは分析物特異的結合剤を表し、またはその逆であり、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2、特に2から8の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1であり、
好ましくは、化合物が、試料中の目的の分析物を検出するのに適している、複合体に関する。
【0016】
第6の態様では、本発明は、本発明の第5の態様の複合体を合成する方法であって、
a)モノマーまたはその誘導体を提供するステップであって、モノマーが、アミノ基、カルボキシ基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含むアミノ酸であり、アミノ基またはカルボキシ基が第1の保護基によって保護されており、少なくとも1つのヒドロキシル基または各ヒドロキシル基が第2の保護基によって保護されている、モノマーまたはその誘導体を提供するステップと、
b)固相ペプチド合成のプロセスにおいてモノマーを使用し、第1の保護基および第2の保護基を切断し、式III
【化4】
の複合体であって、
式中、Aは標識化合物を表し、Rは第2のスペーサーを表し、またはその逆であり、Rは分析物特異的結合剤に共有結合することができるか、または分析物特異的結合剤に共有結合され、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2、特に2から8の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1である、
複合体を形成するステップと、
を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】Elecsys E170の結果:本発明および比較例にかかるトロポニンT hsアッセイの結果を示している。
【
図3】Elecsys E170の結果:本発明および比較例にかかるトロポニンT hsアッセイの結果を示している。
【
図4】Elecsys E170の結果:本発明および比較例にかかるトロポニンT hsアッセイの結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態および例に限定されず、これらは変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0019】
いくつかの文献が本明細書中で引用されている。本明細書に引用されている各文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、説明書等を含む)は、上記であろうと以下であろうと、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。このように組み込まれた参照の定義または教示と、本明細書に引用された定義または教示との間に矛盾がある場合には、本明細書の本文が優先する。
【0020】
以下、本発明の各要素について説明する。これらの要素は特定の実施形態とともに列挙されているが、これらは任意の方法および任意の数で組み合わせて追加の実施形態を作成し得ることを理解されたい。種々の説明された実施例および好ましい実施形態は、本発明を明示的に説明された実施形態のみに限定するように解釈されるべきではない。この記載は、明示的に記載された実施形態を任意の数の開示および/または好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持し、且つ包含するものと理解されるべきである。さらにまた、本出願に記載されている全ての要素の任意の順列および組み合わせは、文脈が別段の意味を示さない限り、本出願の説明によって開示されていると考えるべきである。
【0021】
定義
単語「備える(comprise)」、ならびに「備える(comprises)」および「備えること(comprising)」のような変形は、記載された整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループの包含を意味するが、いかなる他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループの除外を意味しないことが理解されよう。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0023】
比率、濃度、量、および他の数値データは、「範囲」の形式で本明細書に表され得るかまたは提示され得る。このような範囲の形式は、便宜上および簡潔にするために単に使用されているに過ぎないことが理解され、したがって、その範囲の境界として明示的に列挙されている数値を含むだけではなく、各数値および部分範囲があたかも明示的に列挙されているかのごとく、その範囲内に包含される個々の数値または部分範囲の全てを含むことを柔軟に解釈するべきである。例示として、「4%~20%」の数値範囲は、4%~20%という明示的に列挙されている値を含むだけではなく、表示されている範囲内の個々の値および部分範囲を含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、4、5、6、7、8、9、10、...18、19、20%などの個々の値と、4~10%、5~15%、10~20%などの部分範囲とが含まれる。この同じ原理は、最小値または最大値を列挙する範囲に適用される。さらに、このような解釈は、その範囲の幅または記載されている特性にかかわらず、適用すべきである。
【0024】
「約」という用語は、数値に関連して使用される場合、示された数値よりも5%小さい下限値を有し、且つ示された数値よりも5%大きい上限値を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
【0025】
本明細書で使用される目的の分析物を「検出する」という用語は、本明細書の他の箇所に記載されている適切な検出方法を使用して、目的の分析物の定量または定性、例えば試料中の目的の分析物の存在または量を指す。
【0026】
本開示の文脈において、「分析物」、「分析物分子」、または「目的の分析物」という用語は、検出可能な標識によって分析される化学種を互換的に指すために使用される。検出可能な標識、すなわち分析物によって分析されるのに適した化学種は、生体内に存在する任意の種類の分子とすることができ、これらに限定されないが、核酸(例えば、DNA、mRNA、miRNA、rRNAなど)、アミノ酸、ペプチド、タンパク質(例えば、細胞表面受容体、サイトゾルタンパク質など)、薬物分子、代謝産物またはホルモン(例えば、テストステロン、エストロゲン、エストラジオールなど)、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド(例えば、ビタミンD)、別の分子の特定の修飾に特徴的な分子(例えば、タンパク質上の糖部分またはホスホリル残基、ゲノムDNA上のメチル残基)または生物によって内在化された物質(例えば、治療薬、乱用薬物、毒素など)またはそのような物質の代謝産物を含む。このような分析物は、バイオマーカーとして役立つことがある。本発明の文脈において、「バイオマーカー」という用語は、生物系の生物学的状態の指標として使用される当該系内の物質を指す。「分析物」は、分析物特異的受容体によって結合され得る任意の分子とすることができる。実施形態では、分析物は、感染因子の抗原である。感染因子の例は、ヒトに感染するウイルス、細菌および原虫病原体である。実施形態では、分析物は、ウイルス抗原、実施形態では肝炎ウイルス抗原またはヒトレトロウイルス抗原である。実施形態では、分析物は、C型肝炎ウイルスまたはB型肝炎ウイルスまたはHIV抗原である。
【0027】
一般に、「受容体」という用語は、標的分子の特定の空間的および極性の構成、すなわち分析物のエピトープ部位を認識することができる任意の化合物または組成物を表す。したがって、本明細書で言及される「分析物特異的受容体」という用語は、分析物に結合または複合体化することができる分析物特異的反応物を含む。これは、これらに限定されないが、抗体、具体的にはモノクローナル抗体または抗体断片を含む。そのような受容体は、例えば分析物を固定化するために、分析物のキャッチャとして作用することができる。抗体によって認識されるエピトープが結合され、続いて分析物の別のエピトープに特異的な標識抗体が結合される。他の受容体は、当業者にとって公知である。受容体ベースの分析物アッセイにおける様々な受容体の特定の使用は、本開示を参照して当業者によって理解されるであろう。
【0028】
目的の複数の分析物または分析物は、試料、例えば生物学的試料または臨床的試料中に存在し得る。「生物学的試料または臨床的試料」という用語は、本明細書において互換的に使用され、組織、器官もしくは個体の部分または片を指し、通常、組織、器官または個体の全体を表すことが意図されているこのような組織、器官または個体よりも小さい。分析に際して、生物学的試料または臨床的試料は、組織の状態、または器官もしくは個体の健康もしくは疾患状態に関する情報をもたらす。生物学的試料または臨床的試料の例は、これらに限定されないが、血液、血清、血漿、滑液、髄液、尿、唾液およびリンパ液などの液体試料、または乾燥血液スポットおよび組織抽出物などの固体の生物学的試料または臨床的試料を含む。生物学的試料または臨床的試料のさらなる例は、細胞培養物または組織培養物である。
【0029】
本開示に関連して、「抗体」という用語は、完全な免疫グロブリン分子、具体的にはIgM、IgD、IgE、IgAまたはIgG、ならびにFabフラグメントまたはVL-、VH-もしくはCDR領域などのそのような免疫グロブリン分子の一部に関する。さらにまた、この用語は、キメラ抗体およびヒト化抗体のような、修飾および/または改変された抗体に関する。この用語はまた、修飾または改変されたモノクローナルまたはポリクローナル抗体、ならびに組換え的にまたは合成的に作製/合成された抗体に関する。この用語はまた、分離された軽鎖および重鎖、Fab、Fab/c、Fv、Fab’、F(ab’)2のような、損傷を受けていない抗体ならびにその抗体フラグメント/部分に関する。「抗体」という用語はまた、抗体誘導体、二機能性抗体および抗体構築物、例えば一本鎖Fv(scFv)、二重特異性scFvまたは抗体融合タンパク質を含む。
【0030】
化学において、「固相合成」は、分子が固体支持体材料上に共有結合し、選択的保護基化学を利用して単一の反応容器内で段階的に合成される方法である。具体的な実施形態として、固相ペプチド合成は、ペプチドの合成のための個別のステップを含む一般的な技術である。このアプローチは、生成物を失うことなく未反応試薬を洗浄によって除去することを可能にする。通常、ペプチドは、アミノ酸鎖のカルボニル基側(C末端)からアミノ基側(N末端)に合成される。ペプチド合成では、アミノ保護アミノ酸がポリスチレンビーズなどであるがこれに限定されない固相材料に結合され、それによってカルボニル基と樹脂との間に共有結合、最も多くの場合アミド結合またはエステル結合を形成する。次いで、アミノ基が脱保護され、次のアミノ保護アミノ酸のカルボニル基と反応される。固相は、ここでジペプチドを担持する。このサイクルが繰り返されて、所望のペプチド鎖を形成する。全ての反応が完了した後、合成されたペプチドは、固相から切断される。
【0031】
より具体的には、入ってくる各アミノ酸のカルボキシル部分は、いくつかの戦略のうちの1つによって活性化され、先行するアミノ酸のα-アミノ基と結合する。入ってくる残基のα-アミノ基は、この部位でのペプチド結合形成を妨げるために一時的にブロックされる。残基は、次の合成サイクルの開始時に脱ブロックされる。さらに、アミノ酸上の反応性側鎖が適切な保護基によって修飾される。ペプチド鎖は、合成サイクルの反復によって伸長される。過剰な試薬が使用されて、反応を可能な限り完了に近付ける。
【0032】
α-アミノ基をブロックするために使用される「ブロック基」または「保護基」または「保護基」は、使用される合成化学および側鎖保護基の性質の双方を判定する。最も一般的に使用される2つのα-アミノ保護基は、Fmoc(9-フルオレニル-メトキシ-カルボニル)およびtBoc(tert.-ブチルオキシカルボニル))である。Fmoc側鎖保護は、典型的には、tert.-ブタノールのエステル、エーテルおよびウレタンの誘導体によって提供され、典型的な対応するtBoc保護基は、ベンジルアルコールのエステル、エーテルおよびウレタンの誘導体である。後者は、通常、より高い酸安定性のために電子求引性ハロゲンの導入によって修飾される。シクロペンチルまたはシクロヘキシルアルコールのエーテルおよびエステルの誘導体も使用される。
【0033】
ペプチドを完全に組み立てた後、必要に応じて側鎖保護基が除去され、不安定な残基に最小限の損傷を与える条件を用いて、ペプチドが固体支持体から切断される。
【0034】
その後、生成物が分析されて配列を検証することができる。合成ペプチドは、通常、ゲルクロマトグラフィまたはHPLCによって精製される。
【0035】
標識および/または標的分子のペプチドへの結合は、異なる方法によって可能である。非限定的な例として、SPPSに適した構成要素がペプチドに組み込まれてもよく、構成要素は、場合により保護され、SPPSプロセス後に選択されるさらなる化合物との結合を形成するために使用され得る反応性基を含む。あるいは、選択された化合物は、SPPSプロセスに入るときに構成要素に既に結合されてもよい。他の代替形態も可能である。
【0036】
Fmoc保護基は、塩基に不安定である。Fmoc保護基は、通常、ピペリジンなどの希釈塩基によって除去される。側鎖保護基は、ペプチドを支持体に固定する結合も切断するトリフルオロ酢酸(TFA)による処理によって除去される。tBoc保護基は、弱酸(通常、希釈TFA)によって除去される。フッ化水素酸(HF)は、アミノ酸側鎖を脱保護するため、および樹脂支持体からペプチドを切断するための双方に使用され得る。Fmocは、ペプチド鎖が各サイクルで酸に供されず、市販の自動ペプチド合成において使用される主要な方法になっているため、tBocよりも穏やかな方法である。
【0037】
ペプチド合成において主に使用されるアミノ基の保護基は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)およびt-ブチルオキシカルボニル(Boc)である。いくつかのアミノ酸は、入ってくるN-保護アミノ酸との反応から特異的に保護されなければならない官能基を側鎖に担持する。Boc基およびFmoc基とは対照的に、これらは、ペプチド合成の過程にわたって安定でなければならないが、ペプチドの最終脱保護中にも除去される。
【0038】
「標識化合物」は、検出可能であるかまたは検出可能な状態にされ得る部分を含む。当業者は、特定の信号が減少または増加するように、物理的活性化(または励起)または化学試薬と併せて検出可能な信号を提供することができ、且つ修飾され得る化合物または組成物としての標識を知っている。
【0039】
検出可能な信号を生成することができる標識化合物の特定の実施形態は、分析測定のために化学発光、好ましくは電気化学発光(ECL)を利用するいくつかの市販の機器によって検出可能な標識を含む。ECLを放射するように誘導され得る種(ECL活性種)がECL標識として使用されている。ECL標識の例は、i)金属が、例えば、トリスビピリジル-ルテニウム(RuBpy)部分などのRu含有、Ir含有および/またはOs含有有機金属化合物を含む第VIII族の貴金属からの有機金属化合物、ならびにii)ルミノールおよび関連化合物を含む。ECLプロセスにおいてECL標識に関与する種は、本明細書ではECL共反応物と呼ばれる。一般的に使用される共反応物は、RuBpyからのECLについては第三級アミン(例えば、米国特許第5,846,485号明細書を参照)、シュウ酸塩および過硫酸塩、およびルミノールからのECLについては過酸化水素(例えば、米国特許第5,240,863号明細書を参照)を含む。ECL標識によって生成された光は、診断手順におけるレポーター信号として使用され得る(Bardら、米国特許第5,238,808号明細書)。例えば、ECL標識は、抗体、核酸プローブ、受容体またはリガンドなどの結合剤に共有結合され得る。結合相互作用における結合試薬の関与は、ECL標識から放射されたECLを測定することによって監視され得る。あるいは、ECL活性化合物からのECL信号は、化学環境を示し得る(例えば、ECL共反応物の形成または破壊を監視するECLアッセイを記載する米国特許第5,641,623号を参照)。ECL、ECL標識、ECLアッセイおよびECLアッセイを実施するための機器に関するさらなる背景については、米国特許第5,093,268号明細書;米国特許第5,147,806号明細書;米国特許第5,324,457号明細書;米国特許第5,591,581号明細書;米国特許第5,597,910号明細書;米国特許第5,641,623号明細書;米国特許第5,643,713号明細書;米国特許第5,679,519号明細書;米国特許第5,705,402号明細書;米国特許第5,846,485号明細書;米国特許第5,866,434号明細書;米国特許第5,786,141号明細書;米国特許第5,731,147号明細書;米国特許第6,066,448号明細書;米国特許第6,136,268号明細書;米国特許第5,776,672号明細書;米国特許第5,308,754号明細書;米国特許第5,240,863号明細書;米国特許第6,207,369号明細書および米国特許第5,589,136号明細書;国際公開第99/63347号パンフレット、国際公開第00/03233号パンフレット、国際公開第99/58962号パンフレット、国際公開第99/32662号パンフレット、国際公開第99/14599号パンフレット、国際公開第98/12539号パンフレット、国際公開第97/36931号パンフレットおよび国際公開第98/57154号パンフレットを参照されたい。
【0040】
「化学発光に基づく信号」という用語は、化学反応の結果として光の放射(発光)によって生成される信号を指す。この信号は、例えば、化学発光を利用するいくつかの市販の機器によって検出可能である。
【0041】
本開示の文脈において、「複合体」という用語は、リンカー、標識化合物および分析物特異的結合剤の反応によって生成される生成物を指す。この反応は、一方では標識化合物とリンカーとの間、他方ではリンカーと分析物特異的結合剤との間に共有結合の形成をもたらす。
【0042】
「リンカー」という用語は、標識化合物と分析物特異的結合剤との間のスペーサーとして機能し、および/または親水性および溶解性などの複合体の物理化学的特性に影響を及ぼす化合物を指すことができる。
【0043】
「分析物特異的結合剤」という用語は、目的の分析物、例えばモノクローナル抗体に特異的に結合することができる(巨大)分子(タンパク質、ペプチド、核酸など)を指す。
【0044】
「Aは標識化合物を表し、Bは分析物特異的結合剤を表し、またはその逆である」という用語は、式IのAが標識化合物を表し、式IのBが分析物特異的結合剤を表すことを意味する。あるいは、式IのBが標識化合物を表し、式IのAが分析物特異的結合剤を表すことを意味する。
【0045】
「ステップa)の試料をステップb)の複合体と結合させる」という用語は、目的の分析物を含むかまたは含有する試料とステップb)の複合体との反応を指す。好ましくは、結合は、試料、好ましくは目的の分析物と複合体との間の共有結合を指す。
【0046】
「ペプチド」という用語は、天然に存在するL-アミノ酸またはその類似体、例えばD-アミノ酸またはN-アルキル化アミノ酸などを使用して形成される分子を意味する。好ましいアミノ酸は、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、TyrおよびValからなる群から選択される。カルボン酸およびアミノ基を有する他の構成要素も可能である。さらに、蛍光色素またはビオチンのような修飾も可能である。
【0047】
「固相ペプチド合成(SPPS)」は、十分に確立された方法である。Merrifieldらは、続いて不均一反応媒体として固相樹脂を使用してアミノ酸モノマーを結合することによってペプチドを構築するための便利な戦略を最初に開発した(R.B.Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85(1963)2149-2154)。
【0048】
ペプチドの溶液中合成と比較して大きな利点として、SPPSは容易に自動化され得、不純物または副生成物、試薬ならびに未反応の出発物質が、生成物または中間体が固相に係留されたままで洗い流され得る。
【0049】
通常、上述したMerrifield法は、架橋ポリスチレン樹脂のいわゆる「リンカー」への第1のC末端アミノ酸の結合から始まる。「リンカー」は、樹脂と合成されるペプチドのC末端アミノ酸との架橋要素として機能し、リンカーは、合成後のペプチドの脱離に使用される酸感受性結合を含む。
【0050】
典型的なSPPSプロトコルの例として、N末端は、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基によって保護され得、これは酸中で安定であるが、塩基によって除去可能である。ペプチド骨格に組み込まれたN末端アミノ基のみが、Fmoc基を除去した後、後続のアミノ酸のカルボン酸基と反応することができることを確実にするために、任意の側鎖官能基が塩基安定基によって保護される。既に述べたように、第1のアミノ酸の固定化後の第1のステップは、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中の20%ピペリジンを用いたFmoc基の除去によるアミノ官能の脱保護である。アミノ官能は、塩基の存在下で次のアミノ酸のO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)エステルを介して活性化カルボン酸と結合されて、新たなアミド結合を形成する。このプロセスは、所望のペプチドが樹脂に集合するまで繰り返される。最後のステップとして、トリフルオロ酢酸(TFA)を含有する溶液を使用して、完全なペプチドが樹脂から切断される。溶液中の放出されたペプチドが沈殿され、さらに精製する前に洗い流され得る。
【0051】
SPPSのこの「古典的な」方法は、修飾樹脂、リンカー、保護基、結合化学および開裂手順を使用して近年最適化されたが、原理は同じままである。
【0052】
本明細書で使用される「固相」という用語は、分子を隔離するために当業者によって典型的に使用される固体、半固体、ゲル、フィルム、膜、メッシュ、フェルト、複合体、粒子、樹脂、紙などを含む多種多様な材料を指す。固相は、例えばクロマトグラフィカラム内の材料、または具体的な実施形態として、固相合成のためのデバイスのカラム内の官能化樹脂とすることができる。固相は、非多孔質または多孔質とすることができる。固相は、非磁性または磁性(反磁性、常磁性、および超常磁性の特徴を包含する)とすることができる。
【0053】
上述したような固相の表面は、例えばブロモアセチル化、シリル化、硝酸を用いたアミノ基の付加、および中間タンパク質、デンドリマーおよび/またはスターポリマーの結合によって、連結部位を提供するように修飾され得る。このリストは限定することを意味するものではなく、当業者に公知の任意の方法が使用され得る。
【0054】
用語「ポリオール単位」は、1つまたは複数のOH基を含むモノマー(例えば、アミノ酸)を指す。そのようなモノマーは、互いに共有結合されてホモポリマーまたはヘテロポリマーを形成することができる。
【0055】
「直鎖リンカー」という用語は、全てまたは少なくとも全てのOH基がリンカー骨格/主鎖に直接結合しているポリオール単位によって形成されるリンカーを指す。
【0056】
「分岐リンカー」という用語は、1つまたは複数のOH基が側鎖に結合されているポリオール単位によって形成されるリンカーを指す。「整数」という用語は、正の整数を意味し、分数を意味しない。
【0057】
「キット」は、少なくとも1つの試薬、例えば障害の処置のための薬品、または本発明のバイオマーカー遺伝子もしくはタンパク質を特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)である。キットは、好ましくは、本発明の方法を実行するためのユニットとして、促進、流通、または販売される。典型的には、キットは、バイアル、チューブなどの1つまたは複数の容器手段を密接に閉じ込めて受け入れるように区画化された担体手段をさらに備え得る。特に、容器手段のそれぞれは、第1の態様の方法において使用される別個の要素のうちの1つを備える。キットは、反応触媒を含むがこれに限定されない1つまたは複数の他の試薬をさらに備えてもよい。キットは、緩衝液、希釈剤、フィルタ、ニードル、注射器、および使用説明を伴う添付文書を含むがこれらに限定されない、さらなる材料を含む1つまたは複数の他の容器をさらに備えてもよい。標識は、組成物が特定の用途に使用されることを示すために容器上に提示され得て、インビボ使用またはインビトロ使用のいずれかに関する指示も示し得る。コンピュータプログラムコードは、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク)などのデータ記憶媒体もしくは装置上に、またはコンピュータもしくはデータ処理装置に直接提供されてもよい。さらに、キットは、較正目的のために、本明細書の別の箇所に記載されるようなバイオマーカーの標準量を含み得る。
【0058】
この詳細な説明において、「一実施形態」、「実施形態」、または「実施形態では」への言及は、言及されている特徴が、本開示にかかるその全ての態様に関して本技術の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。さらに、「一実施形態」、「実施形態」、または「複数の実施形態」への個々の言及は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。しかしながら、そのような実施形態は、特に明記しない限り、および当業者に容易に明らかになることを除いて、相互に排他的ではない。したがって、本開示にかかるその全ての態様における技術は、本明細書に記載の実施形態の任意の様々な組み合わせおよび/または統合を包含することができる。
【0059】
実施形態
第1の態様では、本発明は、試料中の目的の分析物を検出するための方法であって、
a)目的の分析物を含む試料を提供するステップと、
b)リンカーを含む複合体を提供するステップであって、リンカーが、標識化合物および分析物特異的結合剤に共有結合し、標識化合物が、検出可能な信号、好ましくは化学発光ベースの信号を生成することができる、複合体を提供するステップと、
c)ステップa)の試料をステップb)の複合体と結合させるステップと、
d)標識化合物の検出可能な信号を使用することによって目的の分析物を検出するステップと、を含み、
複合体が式I:
【化5】
の化合物であり、
式中、Aは標識化合物を表し、Bは分析物特異的結合剤を表し、またはその逆であり、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2、特に2から8の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1である、方法に関する。
【0060】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の主題、特に本発明の第1の態様にかかる方法が、構造および多分散性に対する極めて良好な制御を有する、特にペプチドベースのポリオールリンカーを含む複合体を示すことを見出した。単一の分子量および純粋なリンカーを使用すると、生成物の精製、特性評価の複雑さを減少させ、製造の再現性を向上させる。特に、固相ペプチド化学が利用されて、本発明の複合体を得ることができる。
【0061】
本発明にしたがって言及される方法は、上述したステップから本質的になる方法、またはさらなるステップを含む方法、を含む。さらに、本発明の方法は、好ましくは、エクスビボ、より好ましくはインビトロの方法である。さらに、本発明の方法は、上記で明示的に述べられたものに加えて、ステップを含んでもよい。例えば、さらなるステップは、目的のさらなる分析物の検出および/または本方法によって得られた結果の試料前処理、濃縮ステップまたは評価に関連し得る。本方法は、手動で実行されても、自動化によって支援されてもよい。好ましくは、ステップ(a)、(b)、(c)および/または(d)は、全体的にまたは部分的に、例えば適切なロボットおよび感覚機器による自動化によって支援されてもよい。
【0062】
ステップb)によれば、複合体が提供される。複合体は、式Iの化合物である。複合体は、リンカーを含む。リンカーは、標識化合物と分析物特異的結合剤とを共有結合する。標識化合物は、検出可能な信号を生成することができる。好ましくは、検出可能な標識は、化学発光ベースの信号である。
【0063】
ステップc)によれば、ステップa)の試料がステップb)の複合体と結合される。
【0064】
ステップd)によれば、標識化合物の検出可能な信号を使用することによって、目的の分析物が検出される。
【0065】
本発明の第1の態様の実施形態では、XはOHである。この場合、ポリオール単位を有する直鎖リンカーを含む複合体が形成され得る。あるいは、Xは、t≧1の(CHOH)t-CH2OHである。好ましくは、t=1、3、5または7、例えば3または5である。この場合、ポリオール単位を有する分岐リンカーを含む複合体が形成され得る。
【0066】
本発明の第1の態様の実施形態では、mは整数である。mは、1から8の範囲から選択される。好ましくは、mは、2以上、例えば、2または3または4または5または6または7または8である。
【0067】
本発明の第1の態様の実施形態では、nは整数である。nは、1から20の範囲から選択される。好ましくは、mは、2以上、例えば、2または3または4または5または6または7または8または9または10または11または12または13または14または15または16または17または18または19または20である。
【0068】
本発明の第1の態様の実施形態では、rは整数である。rは、0以上である。好ましくは、例えば、X=(CHOH)t-CH2OHでt≧1の場合、rは0である。X=OHの場合、rは1以上である。
【0069】
本発明の第1の態様の実施形態では、sは整数である。sは、0以上である。好ましくは、sは0である。
【0070】
本発明の第1の態様の実施形態では、zは整数である。zは、1以上である。好ましくは、zは、5から10である。
【0071】
本発明の第1の態様の実施形態では、複合体は、式II:
【化6】
の化合物であり、
式中、A、B、mおよびnのそれぞれは、式Iに関して上述したものと同じ意味を有し、
式中、Xは、t≧1、好ましくはt=1、3、5または7の(CHOH)
t-CH
2OHである。
【0072】
本発明の第1の態様の実施形態では、複合体は、式III:
【化7】
の化合物であり、
式中、A、B、mおよびnのそれぞれは、式Iに関して上述したものと同じ意味を有し、
式中、XはOHであり、r≧1であり、好ましくはr=1である。
【0073】
本発明の第1の態様の実施形態では、ステップb)は、ペプチドベースの合成、好ましくは固相ペプチド合成(SPPS)を含む。
【0074】
本発明の第1の態様の実施形態では、XはOHであり、および/またはmは、2もしくは4もしくは6である。
【0075】
本発明の第1の態様の実施形態では、Xは、t=1、3、5または7の(CHOH)t-CH2OHである。
【0076】
本発明の第1の態様の実施形態では、標識化合物は、酵素、蛍光色素、発光色素、金属キレート複合体、および放射性同位体を含む部分からなる群から選択される。
【0077】
本発明の第1の態様の実施形態では、標識化合物は、電気化学的に酸化または還元されたときに発光するように誘導され得る。
【0078】
本発明の第1の態様の実施形態では、標識化合物は、Ru2+またはIr3+である金属イオンを含む。
【0079】
好ましくは、標識化合物は、以下の群から選択される:RuまたはIr。
【0080】
本発明の第1の態様の実施形態では、標識化合物は、第1のコンジュゲーション法によってリンカーに共有結合され、第1のコンジュゲーション法は、以下の群から選択される:クリックケミストリー、アミド、エステル、イミド、炭酸塩、カルバミン酸塩、スクアレート、チアゾール、チアゾリジン、ヒドラゾン、オキシム、ジヒドロピリダジン、チオール・マレイミド、付加環化、テトラジンライゲーション、フォトクリック、シュタウディンガーライゲーション、ディールス・アルダー、クロスカップリング、ピクト・スペングラー、クアドリシクラン。
【0081】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物特異的結合剤は、抗体、抗体の分析物特異的フラグメントおよび/または誘導体、アプタマー、シュピーゲルマー、ダルピン、レクチン、アンキリンリピート含有タンパク質、およびKunitz型ドメイン含有タンパク質からなる群から選択される。
【0082】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物特異的結合剤は、第2のコンジュゲーション法によってリンカーに共有結合され、第2のコンジュゲーション法は、クリックケミストリー、アミド、エステル、イミド、炭酸塩、カルバミン酸塩、スクアレート、チアゾール、チアゾリジン、ヒドラゾン、オキシム、ジヒドロピリダジン、チオール・マレイミド、付加環化、テトラジンライゲーション、フォトクリック、シュタウディンガーライゲーション、ディールス・アルダー、クロスカップリング、ピクテ・スペングラー、クアドリシクランから選択される。
【0083】
好ましくは、分析物特異的結合剤は、以下の群から選択される:抗体、Fab。
【0084】
本発明の第1の態様の実施形態では、式I、IIまたはIIIのAは、標識化合物を表し、式I、IIまたはIIIのBは、分析物特異的結合剤を表す。
【0085】
本発明の第1の態様の実施形態では、式I、IIまたはIIIのBは、標識化合物を表し、式I、IIまたはIIIのAは、分析物特異的結合剤を表す。
【0086】
本発明の第1の態様の実施形態では、ステップ(c)の前、最中または後に、分析物が固相に固定化される。
【0087】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料は、痰、唾液、液体、尿、全血、溶血全血、血清および血漿からなる群から選択される。
【0088】
本発明の第1の態様の実施形態では、ステップ(b)の複合体は、溶解形態で提供され、ステップ(c)は、液体水性緩衝液中で行われる。
【0089】
本発明の第1の態様の実施形態では、液体水性緩衝液は、リン酸塩、トリス緩衝液、クエン酸塩、カコジル酸塩、バルビタール、グリシン、HEPES、MES、PIPES、MOPS、ビス-トリスメタン、ADA、ビス-トリスプロパン、ACES、MOPSO、BES、AMPB、TES、DIPSO、MOBS、アセトアミドグリシン、TAPSO、TEA、POPSO、HEPPSO、EPS、HEPPS、トリシン、ジシンアミド、Gly-Gly、HEPBS、ビシン、TAPSおよびそれらの混合物から選択される。
【0090】
本発明の第1の態様の実施形態では、液体水性緩衝液は、リン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS、好ましくはpH6.0~7.4)およびそれらの混合物から選択される。
【0091】
本発明の第1の態様の実施形態では、複合体は、式IV-1またはIV-2の化合物である:
【化8】
【化9】
式中、nは1よりも大きく、好ましくは1≦n≦15であり、例えば、n=10である。好ましくは、複合体は、以下の式の化合物である:
【化10】
【0092】
この化合物は、ここではBPRu-(MF77)10K(MH)アミドと略される。
【0093】
本発明の第1の態様の実施形態では、複合体は、式VまたはVI:
【化11】
【化12】
の化合物であり、
式中、式VまたはVIのnは、互いに独立して、1よりも大きく、好ましくは1≦n≦15であり、例えば、n=10である。
【0094】
好ましくは、複合体は、以下の式の化合物である:
【化13】
【0095】
この化合物は、ここではBPRu-(MF74)5K(MH)アミドと略される。
【0096】
好ましくは、複合体は、以下の式の化合物である:
【化14】
【0097】
好ましくは、複合体は、以下の式の化合物である:
【化15】
【0098】
実施形態では、標識化合物は、葉酸またはその誘導体を含有しないか、または含まない。
【0099】
複数の実施形態では、標識化合物は、葉酸受容体結合リガンドを含有しないか、または含まない。
【0100】
実施形態では、分析物特異的結合剤は、システインを含有しないか、または含まない。
【0101】
いくつかの実施形態では、本方法は、薬物送達を含まない。
【0102】
実施形態では、本方法は、診断方法、好ましくはインビトロ診断方法である。
【0103】
実施形態では、n>2である。
【0104】
実施形態では、n>4である。
【0105】
複数の実施形態では、標識化合物は、薬物化合物、例えば、デスアセチルビンブラスチンヒドラジドまたはその誘導体を含まない。
【0106】
実施形態では、X=(CHOH)t-CH2OHであり、t≧1、好ましくはt=1、3、5または7である。
【0107】
第2の態様では、本発明は、試料中の目的の分析物を検出するための本発明の第1の態様にかかる方法の使用に関する。
【0108】
本発明の第1の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第2の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0109】
第3の態様では、本発明は、試料中の目的の分析物の検出を実行するためのキットであって、別個の容器に、
a)分析物を固定可能な固相と、
b)式I:
【化16】
の化合物であって、
式中、Aは標識化合物を表し、Bは分析物特異的結合剤を表し、またはその逆であり、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2、特に2から8の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1である、
化合物と、を含む、キットに関する。
【0110】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第3の態様に適用され、その逆も同様である。
【0111】
本発明の第3の態様の実施形態では、複合体は、式II:
【化17】
の化合物であり、
式中、A、B、X、mおよびnのそれぞれは、態様21において言及されたものと同じ意味を有し、
式中、Xは、t≧1、好ましくはt=1、3、5または7の(CHOH)
t-CH
2OHである。
【0112】
本発明の第3の態様の実施形態では、複合体は、式III:
【化18】
の化合物であり、
式中、A、B、mおよびnのそれぞれは、態様21において述べたものと同じ意味を有し、
式中、XはOHであり、r≧1であり、好ましくはr=1である。
【0113】
本発明の第3の態様の実施形態では、XはOHであり、mは、2または4または6である。
【0114】
本発明の第3の態様の実施形態では、Xは、t=1、3、5または7の(CHOH)t-CH2OHである。
【0115】
本発明の第3の態様の実施形態では、複合体は、溶解形態で具体化される。
【0116】
本発明の第3の態様の実施形態では、少なくとも1つの容器または複数の容器は、ガラスまたはプラスチックから作られる。
【0117】
第4の態様では、本発明は、試料中の目的の分析物を検出するための本発明の第3の態様にかかるキットの使用に関する。
【0118】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様および/または本発明の第3の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第4の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0119】
第5の態様では、本発明は、式I
【化19】
の複合体であって、
式中、Aは標識化合物を表し、Bは分析物特異的結合剤を表し、またはその逆であり、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2、特に2から8の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1であり、
好ましくは、化合物が、試料中の目的の分析物を検出するのに適している、複合体に関する。
【0120】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様および/または本発明の第3の態様および/または本発明の第4の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第5の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0121】
本発明の第5の態様の実施形態では、複合体は、式II:
【化20】
の化合物であり、
式中、A、B、X、mおよびnのそれぞれは、態様28において言及されたものと同じ意味を有し、
式中、Xは、t≧1、好ましくはt=1、3、5または7の(CHOH)
t-CH
2OHである。
【0122】
本発明の第5の態様の実施形態では、複合体は、式III:
【化21】
の化合物であり、
式中、A、B、mおよびnのそれぞれは、態様28において述べたものと同じ意味を有し、
式中、XはOHであり、r≧1であり、好ましくはr=1である。
【0123】
本発明の第5の態様の実施形態では、XはOHであり、mは、2または4または6である。
【0124】
本発明の第5の態様の実施形態では、Xは、t=1、3、5または7の(CHOH)t-CH2OHである。
【0125】
本発明の第5の態様の実施形態では、AまたはBは、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質からなる群から選択される。
【0126】
本発明の第5の態様の実施形態では、Aが分析物特異的結合剤を含み、Bが標識化合物を含むか、またはBが分析物特異的結合剤を含み、Aが標識化合物を含む。
【0127】
本発明の第5の態様の実施形態では、分析物特異的結合剤は、抗体、抗体の分析物特異的フラグメントおよび/または誘導体、アプタマー、シュピーゲルマー、ダルピン、レクチン、アンキリンリピート含有タンパク質、およびKunitz型ドメイン含有タンパク質からなる群から選択され、標識化合物は、酵素、蛍光色素、発光色素、金属キレート複合体、および放射性同位体を含有する部分からなる群から選択される。
【0128】
第6の態様では、本発明は、本発明の第5の態様の複合体を合成する方法であって、
a)モノマーまたはその誘導体を提供するステップであって、モノマーが、アミノ基、カルボキシ基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含むアミノ酸であり、アミノ基またはカルボキシ基が第1の保護基によって保護されており、少なくとも1つのヒドロキシル基または各ヒドロキシル基が第2の保護基によって保護されている、モノマーまたはその誘導体を提供するステップと、
b)固相ペプチド合成のプロセスにおいてモノマーを使用し、第1の保護基および第2の保護基を切断し、式III
【化22】
の複合体であって、
式中、Aは標識化合物を表し、Rは第2のスペーサーを表し、またはその逆であり、Rは分析物特異的結合剤に共有結合することができるか、または分析物特異的結合剤に共有結合され、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2、特に2から8の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1である、
複合体を形成するステップと、
を含む、方法に関する。
【0129】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様および/または本発明の第3の態様および/または本発明の第4の態様および/または本発明の第5の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第6の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0130】
本発明の第6の態様の実施形態では、第1および/または第2の保護基は、エステル、エーテル、シリルエーテル、アセタール、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、アミドおよびtertブチルエステルの群から選択される。
【0131】
本発明の第6の態様の実施形態では、モノマーまたはその誘導体は、以下の式m-1からm-4から選択される:
【化23】
式中、FmocHNは、9-フルオレニルメトキシカルボニル保護基によって保護されたアミンを意味する。略語m-1はまた、本明細書および本開示の内容において、MF77と命名され得る。略語m-2はまた、本明細書および本開示の内容において、(化合物)18(例えば、スキーム4を参照)またはFA36と命名され得る。略語m-3はまた、本明細書および本開示の内容において、S779と命名され得る。略語m-4はまた、本明細書および本開示の内容において、MF74と命名され得る。
【0132】
本発明の第6の態様の実施形態では、固相合成の分野において公知の標準的な知識およびプロセス、方法および技術を使用することによって、上記提示された式IIIの複合体が、自動固相ペプチド合成(SPPS)装置において合成され、この装置を使用して提供され得る。
【0133】
さらなる実施形態では、本発明は、以下の態様に関する:
【0134】
1.試料中の目的の分析物を検出するための方法であって、
a)目的の分析物を含む試料を提供するステップと、
b)リンカーを含む複合体を提供するステップであって、リンカーが、標識化合物および分析物特異的結合剤に共有結合し、標識化合物が、検出可能な信号、好ましくは化学発光ベースの信号を生成することができる、複合体を提供するステップと、
c)ステップa)の試料をステップb)の複合体と結合させるステップと、
d)標識化合物の検出可能な信号を使用することによって目的の分析物を検出するステップと、を含み、
複合体が式I:
【化24】
の化合物であり、
式中、Aは標識化合物を表し、Bは分析物特異的結合剤を表し、またはその逆であり、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2、特に2から8の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1である、方法。
【0135】
2.複合体が式II:
【化25】
の化合物であり、
式中、A、B、mおよびnのそれぞれは、態様1において述べたものと同じ意味を有し、
式中、Xは、t≧1、好ましくはt=1、3、5または7の(CHOH)
t-CH
2OHである、態様1に記載の方法。
【0136】
3.複合体が式III:
【化26】
の化合物であり、
式中、A、B、mおよびnのそれぞれは、態様1において述べたものと同じ意味を有し、
式中、XはOHであり、r≧1であり、好ましくはr=1である、態様1に記載の方法。
【0137】
4.XがOHであり、および/またはmが2もしくは4もしくは6である、態様1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
5.Xがt=1、3、5または7の(CHOH)t-CH2OHである、態様1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0139】
6.標識化合物が、酵素、蛍光色素、発光色素、金属キレート複合体、および放射性同位体を含有する部分からなる群から選択される、態様1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0140】
7.標識化合物が、電気化学的に酸化または還元されたときに発光するように誘導され得る、態様1から6のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
8.標識化合物が、Ru2+またはIr3+である金属イオンを含む、態様1から7のいずれか一項に記載の方法。
【0142】
9.標識化合物が、第1のコンジュゲーション法によってリンカーに共有結合され、第1のコンジュゲーション法が、クリックケミストリー、アミド、エステル、イミド、炭酸塩、カルバミン酸塩、スクアレート、チアゾール、チアゾリジン、ヒドラゾン、オキシム、ジヒドロピリダジン、チオール・マレイミド、付加環化、フォトクリック、シュタウディンガーライゲーション、ディールス・アルダー、テトラジンライゲーション、クロスカップリング、ピクテ・スペングラー、クアドリシクランの群から選択される、態様1から8のいずれか一項に記載の方法。
【0143】
10.分析物特異的結合剤が、抗体、抗体の分析物特異的フラグメントおよび/または誘導体、アプタマー、シュピーゲルマー、ダルピン、レクチン、アンキリンリピート含有タンパク質、およびKunitz型ドメイン含有タンパク質からなる群から選択される、態様1から9のいずれか一項に記載の方法。
【0144】
11.分析物特異的結合剤が、第2のコンジュゲーション法によってリンカーに共有結合され、第2のコンジュゲーション法が、クリックケミストリー、アミド、エステル、イミド、炭酸塩、カルバミン酸塩、スクアレート、チアゾール、チアゾリジン、ヒドラゾン、オキシム、ジヒドロピリダジン、チオール・マレイミド、付加環化、テトラジンライゲーション、フォトクリック、シュタウディンガーライゲーション、ディールス・アルダー、クロスカップリング、ピクテ・スペングラー、クアドリシクランから選択される、態様1から10のいずれか一項に記載の方法。
【0145】
12.式I、IIまたはIIIのAが標識化合物を表し、式I、IIまたはIIIのBが分析物特異的結合剤を表す、態様1から11のいずれか一項に記載の方法。
【0146】
13.式I、IIまたはIIIのBが標識化合物を表し、式I、IIまたはIIIのAが分析物特異的結合剤を表す、態様1から12のいずれか一項に記載の方法。
【0147】
14.ステップ(c)の前、最中または後に、分析物が固相に固定化される、態様1から13のいずれか一項に記載の方法。
【0148】
15.試料が、痰、唾液、液体、尿、全血、溶血全血、血清および血漿からなる群から選択される、態様1から14のいずれか一項に記載の方法。
【0149】
16.ステップ(b)の複合体が溶解形態で提供され、ステップ(c)が液体水性緩衝液中で行われる、態様1から15のいずれか一項に記載の方法。
【0150】
17.液体水性緩衝液が、リン酸塩、トリス緩衝液、クエン酸塩、カコジル酸塩、バルビタール、グリシン、HEPES、MES、PIPES、MOPS、ビス-トリスメタン、ADA、ビス-トリスプロパン、ACES、MOPSO、BES、AMPB、TES、DIPSO、MOBS、アセトアミドグリシン、TAPSO、TEA、POPSO、HEPPSO、EPS、HEPPS、トリシン、ジシンアミド、Gly-Gly、HEPBS、ビシン、TAPSおよびそれらの混合物から選択される、態様1から16のいずれか一項に記載の方法。
【0151】
18.複合体が式IV-1:
【化27】
の化合物であり、
式中、nは1よりも大きく、好ましくは1≦n≦15であり、例えば、n=10である、態様1から17のいずれか一項に記載の方法。
【0152】
19.複合体が式VまたはVI:
【化28】
【化29】
の化合物であり、
式中、式VまたはVIのnは、互いに独立して、1よりも大きく、好ましくは1≦n≦15であり、例えば、n=10である、態様1から18のいずれか一項に記載の方法。
【0153】
20.ステップb)がペプチドベースの合成、好ましくは固相ペプチド合成(SPPS)を含む、態様1から19のいずれか一項に記載の方法。
【0154】
21.試料中の目的の分析物を検出するための、態様1から20のいずれか一項に記載の方法の使用。
【0155】
22.試料中の目的の分析物の検出を実行するためのキットであって、別個の容器に、
a)分析物を固定可能な固相と、
b)式I:
【化30】
の化合物であって、
式中、Aは標識化合物を表し、Bは分析物特異的結合剤を表し、またはその逆であり、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2、特に2から8の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1である、
化合物と、を含む、キット。
【0156】
23.複合体が式II:
【化31】
の化合物であり、
式中、A、B、X、mおよびnのそれぞれは、態様22において言及されたものと同じ意味を有し、
式中、Xは、t≧1、好ましくはt=1、3、5または7の(CHOH)
t-CH
2OHである、態様22に記載のキット。
【0157】
24.複合体が式III:
【化32】
の化合物であり、
式中、A、B、mおよびnのそれぞれは、態様22において述べたものと同じ意味を有し、
式中、XはOHであり、r≧1であり、好ましくはr=1である、態様22に記載のキット。
【0158】
25.XがOHであり、mが2または4または6である、態様22から24のいずれか一項に記載のキット。
【0159】
26.Xが、t=1、3、5または7の(CHOH)t-CH2OHである、態様22から25のいずれか一項記載のキット。
【0160】
27.複合体が溶解形態で具体化される、態様22から26のいずれか一項に記載のキット。
【0161】
28.試料中の目的の分析物を検出するための、請求項22から27のいずれか一項に記載のキットの使用。
【0162】
29.式I
【化33】
の複合体であって、
式中、Aは標識化合物を表し、Bは分析物特異的結合剤を表し、またはその逆であり、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2、特に2から8の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1であり、
好ましくは、化合物が、試料中の目的の分析物を検出するのに適している、複合体。
【0163】
30.複合体が式II:
【化34】
の化合物であり、
式中、A、B、X、mおよびnのそれぞれは、態様29において言及されたものと同じ意味を有し、
式中、Xは、t≧1、好ましくはt=1、3、5または7の(CHOH)
t-CH
2OHである、態様29に記載の複合体。
【0164】
31.複合体が式III:
【化35】
の化合物であり、
式中、A、B、mおよびnのそれぞれは、態様29において述べたものと同じ意味を有し、
式中、XはOHであり、r≧1であり、好ましくはr=1である、態様29に記載の複合体。
【0165】
32.XがOHであり、mが2または4または6である、態様29から31のいずれか一項に記載の複合体。
【0166】
33.Xが、t=1、3、5または7の(CHOH)t-CH2OHである、態様29から32のいずれか一項記載の複合体。
【0167】
34.AまたはBが、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質からなる群から選択される、態様29から33のいずれか一項に記載の複合体。
【0168】
35.Aが分析物特異的結合剤を含み、Bが標識化合物を含むか、またはBが分析物特異的結合剤を含み、Aが標識化合物を含む、態様29から34のいずれか一項に記載の複合体。
【0169】
36.分析物特異的結合剤が、抗体、抗体の分析物特異的フラグメントおよび/または誘導体、アプタマー、シュピーゲルマー、ダルピン、レクチン、アンキリンリピート含有タンパク質、およびKunitz型ドメイン含有タンパク質からなる群から選択され、標識化合物が、酵素、蛍光色素、発光色素、金属キレート複合体、および放射性同位体を含有する部分からなる群から選択される、態様29から35のいずれか一項に記載の複合体。
【0170】
37.態様29から36のいずれか一項に記載の複合体を合成する方法であって、
a)モノマーまたはその誘導体を提供するステップであって、モノマーが、アミノ基、カルボキシ基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含むアミノ酸であり、アミノ基またはカルボキシ基が第1の保護基によって保護されており、少なくとも1つのヒドロキシル基または各ヒドロキシル基が第2の保護基によって保護されている、モノマーまたはその誘導体を提供するステップと、
b)固相ペプチド合成のプロセスにおいてモノマーを使用し、第1の保護基および第2の保護基を切断し、式III
【化36】
の複合体であって、
式中、Aは標識化合物を表し、Rは第2のスペーサーを表し、またはその逆であり、Rは分析物特異的結合剤に共有結合することができるか、または分析物特異的結合剤に共有結合され、
Xは、OH、またはt≧1、好ましくはt=1、3、5もしくは7の(CHOH)
t-CH
2OHであり、
mは、1から8、好ましくは≧2、特に2から8の整数であり、
nは、2から20、好ましくは5から20の整数であり、
rは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、ここで、X=OHの場合、r≧1であり、
sは、整数であり、≧0、好ましくは0であり、
zは、整数であり、≧1である、
複合体を形成するステップと、
を含む、方法。
【0171】
38.第1および/または第2の保護基が、Fmoc、tBu(tert-ブチル)ならびにエーテル、エステルおよび/またはアセタールの群から選択される、態様37に記載の方法。
【0172】
39.モノマーまたはその誘導体が、以下の式m-1からm-4から選択され、
【化37】
式中、FmocHNは、9-フルオレニルメトキシカルボニル保護基によって保護されたアミンを意味する、態様37またはから38に記載の方法。
【実施例】
【0173】
以下の実施例は、本明細書で特許請求される発明を例示するために提供されるのであって、限定するものではない。
【0174】
実施例1
【化38】
スキーム1.直鎖構成要素の合成。
アミノ酸(MF76)は、市販の(-)-2,3-O-イソプロピリデン-D-エリスロノラクトン(MF79)からKamiyaら(Kamiya,T.;Saito,Y.;Hashimoto,M.;Seki,H.Tetrahedron 1972,28,899)の方法によって得られた。標準的なMeCN-水性Na
2CO
3条件を用いたFmoc-OSuによるその後のFmoc保護は、構成要素MF77を収率81%で完成した。MF:C22H23NO6。MW:397.15。物理的状態:白い固体。
1H NMR(CDCl
3、400MHz):δ=7.77(d,J=7.5Hz、2H)、7.60(d,J=7.5Hz、2H)、7.37-7.44(m、2H)、7.30-7.36(m、2H)、5.22-5.37(m、1H)、4.65(d,J=7.3Hz、1H)、4.36-4.58(m、3H)、4.17-4.31(m、1H)、3.45-3.53(m、2H)、1.61(s、3H)、1.42(s、3H)ppm。HPLC-MS(TEAAc(pH7.0)-MeCN、MeCNの5%から100%までの7分での勾配)m/z 396.2([M-H]
-);保持時間4.8分。
【0175】
実施例2
【化39】
スキーム2.分岐構成要素の合成。
Fmoc-D-グルコサミン酸(MF73)。MeCN(50mL)中のFmoc-OSu(3.28g、9.74mmol)を、D-グルコサミン酸(2.0g、10.25mmol)および炭酸カリウム(2.17g、20.50mmol)の水(50mL)中撹拌溶液に0℃で添加した。混合物は、白濁が形成される前に短時間透明になった。反応物を0℃で0.5時間、次いで、室温で1時間撹拌した。混合物をHCl(1.0M)の添加によってpH8に調整し、次いで、真空中で濃縮した。残渣を水(-200mL)に溶解し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。HCl(1.0M)の添加によって水層をpH2.0に調整し、EtOAc(5×150mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮して、4.0gの所望の生成物を得た(収率94%)。MF:C21H23NO8。MW:417.14。物理的状態:白い固体。HPLC-MS(TEAAc(pH7.0)-MeCN、MeCNの5%から100%までの7分での勾配)m/z 416.2([M-H]-);保持時間4.1分。
【0176】
Fmoc-イソプロピリデン-D-グルコサミン酸(MF74)。EtOAc(20mL)中のFmoc-D-グルコサミン酸MF73(1.22g、2.92mmol)の撹拌懸濁液に、2,2-ジメトキシプロパン(20mL)およびp-トルエンスルホン酸(0.1g、0.53mmol)を添加した。1時間後、溶液をEtOAc(200mL)で希釈し、ブライン(3×25mL)で洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。残渣をNa塩に変換し、これをフラッシュクロマトグラフィ(C-18、H2O-MeCN)によって精製すると、所望の生成物840mg(収率58%)が得られた。MF:C27H31NO8。MW:497.20。物理的状態:白い固体。1H NMR(CDCl3、400MHz):δ=7.77(d,J=7.4Hz,2H)、7.62(dd,J=8.2、8.0Hz、2H)、7.41(dd,J=7.5、7.4Hz、2H)、7.32(dd,J=7.4、7.3Hz、2H)、5.59(d,J=10.0Hz、1H)、4.79(d,J=9.9Hz、1H)、4.46-4.55(m、2H)、4.41(dd,J=10.5、7.5Hz、1H)、4.26(dd,J=7.0、6.9Hz、1H)、4.09-4.23(m、2H)、4.01(dd,J=8.0、3.5Hz、1H)、3.72(t,J=7.9Hz、1H)、1.44(s、3H)、1.43(s、3H)、1.40(s、3H)、1.36(s、3H)ppm。HPLC-MS(TEAAc(pH7.0)-MeCN、MeCNの5%から100%までの7分での勾配)m/z 496.3([M-H]-);保持時間5.3分。
【0177】
実施例3
実施例3は、拡張直鎖構成要素の合成を示す(スキーム3)。
【化40】
【0178】
スキーム3.拡張直鎖構成要素の合成。
化合物S763の合成
D-ガラクトノ-1,4-ラクトン(2.94g、16.5mmol)を2,2-ジメトキシプロパン(60mL)およびアセトン(4.5mL)に懸濁し、その後、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.59g、8.35mmol)を添加し、反応混合物を40℃で7時間撹拌した。次いで、Na2CO3を添加することによって反応をクエンチし、懸濁液をセライトパッドで濾過し、溶媒を減圧下で除去した。次いで、残渣をジクロロメタンに溶解し、有機層を水で2回洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。最後に、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィ(SiO2、n-ヘキサン/EtOAc 1:1)によって精製すると、2.59gの所望の生成物(54%)1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δppm 1.36-1.43(m、9H)1.46(s、3H)3.67-3.75(m、1H)3.76-3.80(m、3H)3.80-3.87(m、1H)3.90-3.96(m、1H)4.05-4.12(m、1H)4.33-4.39(m、1H)4.53-4.57(m、1H)7.21-7.37(m、2H)が得られた。
【0179】
化合物S769の合成
化合物S763(2.59g、8.92mmol)を35mLのドライピリジンに溶解し、氷浴で溶液を0℃に冷却した後、DMAP(115mg、0.94mmol)を添加した。最後に、塩化メシル(828μL、10.71mmol)を添加し、混合物を0℃で1時間および室温でさらに時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をジクロロメタンに溶解した。次いで、有機相を水、NaCl飽和溶液で洗浄し、次いで、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィ(SiO2、n-ヘキサン:EtOAc 7:3)によって精製して、2.93gの所望の生成物(89%)を得た。1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δppm 1.41-1.48(m、12H)3.09(s、3H)3.81(s、3H)3.94(t,J=7.53Hz、1H)4.24-4.30(m、2H)4.30-4.42(m、2H)4.50(dd,J=11.10、2.70Hz、1H)4.56(d,J=5.40Hz、1H)
【0180】
化合物S771の合成
化合物S769(2.93g、7.961mmol)を乾燥DMF(27mL)に溶解し、次いで、NaN3(569mg、8.757mmol)を添加し、混合物を85℃で5時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をH2OとEtOAcの混合物に分配した。2相を分離した後、水層をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機層をNaCl飽和溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮して乾燥させた。最後に残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィ(SiO2、n-ヘキサン:EtOac 9:1)によって精製すると、生成物1.74(69%)が得られた。1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δppm 1.35-1.53(m、12H)3.32(dd,J=13.18、5.02Hz、1H)3.64(dd,J=13.18、3.26Hz、1H)3.79-3.80(m、3H)3.94(t,J=7.50Hz、1H)4.12-4.20(m、1H)4.34(dd,J=7.53、5.27Hz、1H)4.55(d,J=5.27Hz、1H)
【0181】
化合物S775の合成
化合物S771(1.74g、5.518mmol)を混合物1:2 THF/H2O(160mL)に溶解し、その後、Ba(OH)2・8 H2O(2.84g、16.5mmol)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。DOWEX 50WX2を添加し、その後、混合物を濾過した。最後に、濾液を真空中で乾燥させ、次のステップに直接使用した。
【0182】
化合物S777の合成
化合物S775(1.37g、4.54mmol)をMeOH/H2O 4:1混合物(25mL)に溶解し、次いで、活性炭担持Pdを添加した。次いで、フラスコを排気し、H2雰囲気下にセットし、混合物をH2を絶えず供給しながら室温で3時間激しく撹拌した。混合物をセライトパッドで濾過し、濾液を減圧下で濃縮し、真空中で乾燥させると、生成物1.25mgが得られ、これを以下のステップ(100%)に直接使用した。1H NMR(400MHz、メタノール-d4)δ ppm 1.40-1.46(m、12H)3.06(dd,J=13.20、8.80Hz、1H)3.24(dd,J=13.10、2.90Hz、1H)4.01(dd,J=7.90、4.40Hz、1H)4.25(d,J=6.60Hz、1H)4.29-4.38(m、2H)
【0183】
化合物S779の合成
化合物S777(1.15g、4.17mmol)をH2O/アセトン1:1混合物(100mL)に溶解し、その後、FmocOSu(2.28g、6.75mmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。NaHCO3(350mg、4.18mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した後、0.1M HClを用いてpHを約5単位に調整し、混合物をEtOAcで3回抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィ(SiO2、n-ヘキサン:EtOAc 2:3からEtOAc+1%酢酸への勾配溶出)によって精製すると、所望の生成物1.5g(73%)が得られた。1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δppm 1.34-1.50(m、12H)3.42-3.56(m、2H)3.75-3.84(m、1H)4.08-4.16(m、1H)4.17-4.24(m、1H)4.27-4.35(m、1H)4.38-4.48(m、2H)4.59(d,J=6.00Hz、1H)5.15-5.25(m、1H)7.30(t,J=7.50Hz、2H)7.39(t,J=7.40Hz、2H)7.58(d,J=7.40Hz、2H)7.75(d,J=7.60Hz、2H)
【0184】
実施例3b
分枝ジオール誘導体の合成
【化41】
スキーム4.誘導体18の合成:i)FmocOSu、Na
2CO3、H
2O/ACN 1:1、3時間;ii)AD-ミックスβ、K
2CO
3、H
2O/tert-BuOH 1:1、70時間;iii)2,2-ジメトキシプロパン、p-TsOH、乾燥EtOAc、4日。
化合物16の合成
(S)-2-アミノブタ-3-エン酸塩酸塩(15,750mg、5.45mmol)をH
2O/ACN 1:1混合物(50mL)に溶解し、次いで、FmocOSu(1.84g、5.45mmol)およびNa
2CO
3(1.73g、16.3mmol)を添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、有機溶媒を減圧下で蒸発させた後、水溶液を2N HClを用いてpH≒1~2に酸性化した。次いで、得られた混合物をEtOAcで5回抽出し、有機層を無水Na
2SO
4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィ(RP-C18AQ、2:3から3:2へのH
2O/ACN勾配溶出)によって精製した。生成物を含有する画分をプールし、有機溶媒を減圧下で蒸発させた。形成された白色沈殿を濾別し、真空中で乾燥させると、Fmoc保護誘導体16 1.50g(85%)が得られた。
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δppm 4.18-4.56(m、3H)4.60-5.55(m、4H)5.76-6.06(m、1H)7.28-7.36(m、2H)7.37-7.45(m、2H)7.51-7.65(m、2H)7.72-7.84(m、2H)
【0185】
化合物17の合成
Fmoc-ビニルグリシン16(1.48g、4.59mmol)をtert-BuOH/H2O 1:1混合物(30mL)に溶解し、その後、AD-ミックスβ(6.88g)およびK2CO3(634mg、4.59mmol)を添加し、混合物を室温で24時間撹拌した。Na2S2O3(3g)を添加し、室温で15分間撹拌した後、6N HClを用いて混合物をpH1~2に酸性化し、次いで、EtOAcで5回抽出した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィ(RP-C18AQ、H2O/ACN勾配溶出1:2から1:1)によって精製すると、ジオール誘導体17(63%)1.03gが得られた。1H NMR(400MHz、アセトン)δppm 3.52-3.64(m、2H)3.67-3.82(m、1H)4.20-4.51(m、5H)4.52-4.63(m、1H)6.23-6.42(m、1H)7.29-7.36(m、2H)7.37-7.45(m、2H)7.69-7.79(m、2H)7.82-7.89(m、2H)。
【0186】
化合物18の合成
化合物14(1.02g、2.85mmol)を乾燥EtOAc(20mL)および2,2-ジメトキシプロパン(34mL、276.5mmol)に溶解した。p-トルエンスルホン酸(54.2mg、0.285mmol)を添加し、混合物を室温で4日間撹拌した。20mLの5% NaHCO3溶液を添加することによって反応を停止させ、次いで、有機溶媒を減圧下で蒸発させた。クロマトグラフィ分離のために水相を直接注入した(RP-C18AQ、H2O/ACN勾配溶出9:1から7:3)。生成物を含有する画分をプールし、有機溶媒を減圧下で除去した。残りの水相を氷浴中で冷却した後、対応するカルボン酸を沈殿させながら2N HClを用いてpHを約1~2に調整した。得られた懸濁液をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機層をNaCl飽和溶液で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮して乾燥させ、900mgの生成物(80%)を得た。1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δppm 1.24-1.54(m、6H)3.69-3.92(m、1H)4.04-4.31(m、2H)4.32-4.54(m、3H)4.54-4.71(m、1H)5.37-5.53(m、1H)7.26-7.34(m、2H)7.34-7.45(m、2H)7.48-7.64(m、2H)7.75(d,J=7.5Hz、2H)。
【0187】
実施例4
ペプチド合成
ペプチドは、マルチペプチドシンセサイザー、例えばMultisyntechからのフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)固相ペプチド合成によって合成した。このために、4.0当量の各アミノ酸誘導体を使用した。アミノ酸誘導体を、1当量の1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールを含むN-メチルピロリドンに溶解した。ペプチドをTentagel R樹脂上で合成した。結合反応は、反応媒体としてのジメチルホルムアミド中で、樹脂充填に対して4当量のHATUおよび8当量のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を用いて5分間行った。ジメチルホルムアミド中25%ピペリジンを使用して、各合成ステップ後8分でFmoc基を切断した。樹脂を2%ヒドラジンのDMF溶液で2×30分間処理してivDde保護リジンを遊離させた。その後、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(10当量)およびDIPEA(10当量)を樹脂に添加し、1時間インキュベートした後、DMFで3回洗浄した。合成樹脂からのペプチドの放出および酸不安定性保護基の切断は、トリフルオロ酢酸、トリイソプロピルシランおよび水(38:1:1)を含有するカクテルを用いて室温で3時間で達成された。その後、反応溶液を冷却したジイソプロピルエーテルと混合してペプチドを沈殿させた。沈殿物を濾過し、冷ジイソプロピルエーテルで再度洗い流し、少量の酢酸水溶液に溶解し、凍結乾燥した。得られた粗物質を、0.1%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリル/水の勾配を用いた分取RP-HPLCによって精製した。
【化42】
【0188】
精製された物質の同一性を、イオンスプレー質量分析法によって確認した。
BPRu-(MF74)5-K(MH)アミド
配列:BPRu-MF74-MF74-MF74-MF74-MF74-Lys(MH)-NH2
特殊アミノ酸誘導体:
BPRu:ルテニウム(ビピリジル)3カルボン酸
Fmoc-Lys(ivDde)
ESI-MScalc:M+=1876Da;ESI-MSexp:[M+2H]2+=937Da
BPRu-(MF77)5-K(MH)アミド
配列:BPRu-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-Lys(MH)-NH2
特殊アミノ酸誘導体:
BPRu:ルテニウム(ビピリジル)3カルボン酸
Fmoc-Lys(ivDde)
ESI-MScalc:M+=1576Da;ESI-MSexp:[M+2H]2+=789Da
BPRu-(MF77)10-K(MH)アミド
配列:BPRu-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-Lys(MH)-NH2
特殊アミノ酸誘導体:
BPRu:ルテニウム(ビピリジル)3カルボン酸
Fmoc-Lys(ivDde)
ESI-MScalc:M+=2161Da;ESI-MSexp:[M+3H]3+=721Da
BPRu-(S779)5-K(MH)アミド
配列:BPRu-S779-S779-S779-S779-S779-Lys(MH)-NH2
特殊アミノ酸誘導体:
BPRu:ルテニウム(ビピリジル)3カルボン酸
Fmoc-Lys(ivDde)
ESI-MScalc:M+=1876Da;ESI-MSexp:[M+2H]2+=939Da
BPRu-(FA36)5-K(MH)アミド
配列:BPRu-FA36-FA36-FA36-FA36-FA36-Lys(MH)-NH2
特殊アミノ酸誘導体:
BPRu:ルテニウム(ビピリジル)3カルボン酸
Fmoc-Lys(ivDde)
ESI-MScalc:M+=1576Da;ESI-MSexp:[M+2H]2+=788Da
BPRu-(FA36)5-K(MH)アミド
配列:BPRu-FA36-FA36-FA36-FA36-FA36-FA36-FA36-FA36-FA36-FA36-Lys(MH)-NH2
特殊アミノ酸誘導体:
BPRu:ルテニウム(ビピリジル)3カルボン酸
Fmoc-Lys(ivDde)
ESI-MScalc:M+=1935Da;ESI-MSexp:[M+2H]2+=968Da
略語:
DMF:ジメチルホルムアミド
MH:マレイミドヘキサノイル
【0189】
BPRu-(MF74)5-K(MH)アミドおよびBPRu-(MF74)5-K(MH)-NH2は、本明細書および本開示の内容において交換可能に使用され得る。BPRu-(MF77)5-K(MH)アミドおよびBPRu-(MF77)5-K(MH)-NH2は、本明細書および本開示の内容において交換可能に使用され得る。BPRu-(MF77)10-K(MH)アミドおよびBPRu-(MF77)10-K(MH)-NH2は、本明細書および本開示の内容において交換可能に使用され得る。
【0190】
Irリンカー-MF77コンジュゲーションの一般プロトコル:
ステップ1、Ir結合:
【化43】
10mLフラッシュにおいて、ポリオールリンカーN°(n=10、6.6mg、4.34μmol)を1mLの乾燥DMFに溶解した。DIPEA(2.8mg、21.7μmol)およびIr3+-NHSエステル(Cs+塩、10.5mg、5.20μmol、1mLのDMFに溶解)を添加した。反応物を室温で4時間反応させた。その後、溶媒を蒸発させ、赤色固体を2mLのH
2Oに溶解し、生成物をHPLC-分取C18、10mL/分、1回の注入によって精製した:
方法:
0分:98% H
2O、2% CH
3CN;
0~10分:98% H
2O、2% CH
3CN;
10~60分:70% H
2O;30% CH
3CN;
60~90分:20% H
2O;80% CH
3CN;
【0191】
ステップ2、脱保護:
合わせた分画8.8mgをDMF中5%ヒドラジン溶液4mLに溶解し、反応物を室温で2時間反応させた。その後、溶媒を蒸発させ、赤色固体を2mLのH2Oおよび10当量に溶解し、Cs2CO3を添加した。生成物をHPLC-分取C18によって精製すると、生成物7.4mgが得られた。
【0192】
ステップ3、マレイミド結合:
10mLフラッシュ中で、ステップ2の生成物(7.4mg、2.81μmol)を2mLの乾燥DMFに溶解し、DIPEA(1.8mg、14.04μmol)およびマレイミド-NHSエステル(7.5mg、28.07μmol)を添加した。反応物を室温で4時間反応させた。その後、赤色溶液を乾燥させ、赤色固体をエッペンドルフに移した0.2mLのCHCl
3に溶解させ、0.8のEt
2Oで沈殿させ、固体を遠心分離によって分離した。固体を同じ方法で4回洗浄することによって精製し、0.2mLのCHCl
3に溶解し、0.8のEt
2Oで沈殿させた。その後、固体を真空乾燥して、4.9mgの赤色固体生成物N°を得た。
【化44】
【化45】
【0193】
Ir3+-(MF77)10-K(マレイミド)アミド
配列:Ir3+-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-Lys(マレイミド)-NH2
ESI-MScalc:M+=2844Da;ESI-MSexp:[M+2H]2+=1423Da
ポリオール前駆体:(MF77)10-K(ivDde)アミド
配列:MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-K(ivDde)-NH2
ESI-MScalc:M+=1522Da;ESI-MSexp:[M+2H]2+=762Da
Ir3+-(MF77)5-K(マレイミド)アミド
配列:Ir3+-MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-Lys(マレイミド)-NH2
ESI-MScalc:M+=2259Da;ESI-MSexp:[M+2H]2+=1130Da
ポリオール前駆体:(MF77)5-K(ivDde)アミド
配列:MF77-MF77-MF77-MF77-MF77-K(ivDde)-NH2
ESI-MScalc:M+=937Da;ESI-MSexp:[M+2H]2+=469Da
【0194】
実施例6
部位特異的抗体コンジュゲート
それぞれ、Bhakta S.ら、2013(Engineering THIOMABs for site-specific conjugation of thiol-reactive linkers,Methods Mol Biol)に記載されているプロトコルにしたがって、Elecsys抗トロポニンTクローン5D8由来のThioMab変異体を、位置A114Cおよび位置S374Cで異なるルテニウム標識(異なるリンカーを有する)とコンジュゲートした。次いで、これらのコンジュゲートを使用して、異なる濃度の元のR2試薬(検出試薬)を置き換えるRoche Troponin T hs Elecsysアッセイ(Id.05092744190、Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)を行った。
【0195】
標識の非部位特異的コンジュゲーション(SATP-マレイミド)
Elecsys高感度トロポニン-T(HS Tn-T)クローン5D8を、多様なポリオールリンカーを含む新たに合成したマレイミド-Ru(ルテニウム)複合体のコンジュゲーションおよびELC(電気化学発光)性能評価に使用した。官能化抗体を生成するために、N-スクシンイミジル-S-アセチルチオプロピオネート(SATP)と1:5の化学量論(IgG:SATP)でコンジュゲートすることによってチオール官能性をIgGに導入して、MAB<Tn-T>chim-5D8-IgG-SATP(1:5)を生成した。ヒドロキシルアミン処理によって硫黄からのアセチル保護を除去して、最終スルフヒドリル含有抗体を得た。次いで、このSH抗体を、5% DMSOを含む50mM KPP、150mM KCl、pH7.4中のマレイモドポリオール-ルテニウム標識とコンジュゲートした。
【0196】
実施例7
Elecsysの性能
全てのアッセイ変異体は、トロポニンTアッセイ仕様を使用して、ブランク対照とともにトロポニンT hsアッセイプロトコルを使用してCobas E170モジュールで実行された(希釈剤マルチアッセイ、Id.11732277122、Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ、トロポニンT hs CalSetからのCal1およびCal2(Id.05092752190、Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)。PEGおよびポリオール系リンカーの取り込み速度は同様である(取り込み速度を参照)。新たなポリオールリンカーFA41は、低(Cal1/MA)および高範囲(Cal2/MA)のTnT分析物において同等の信号対雑音比を示し、前世代のポリオール(MF74)よりもリンカー安定性が著しく改善されている。MA:血清ブランク;Cal1:18ng/L;Cal2:4200ng/L。
【0197】
次いで、これらのコンジュゲートを、2.5μg/ml濃度の元のR2試薬を置き換えるトロポニンT hs Elecsysアッセイ変異体(Id.05092744190、Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)で使用した。TnT R2緩衝液中4℃でコンジュゲートを1週間インキュベートした後、最初のECL測定を行った。
【表1】
【0198】
分岐ポリオールリンカー(MF74基)は、PEG23およびリンカーなし(BPRu-MEA)と比較して、雑音に対するより良好な信号を与える(Cal1/MAおよびCal2/MA)。
【0199】
図1は、Elecsys ECL技術の原理および可能なElecsys抗体検査の機能を示している。ECL(電気化学発光、結合抗原-抗体複合体を有する1つの磁化可能微粒子、2つの非結合コンジュゲート、3つの流路、4つの磁石、5つの例えばビオチン化抗体、6つの例えばストレプトアビジン被覆磁気ビーズ)は、イムノアッセイ検出のためのRocheの技術である。この技術に基づいて、十分に設計された特異的且つ高感度のイムノアッセイと組み合わせて、Elecsysは信頼できる結果をもたらす。ECLイムノアッセイの開発は、ルテニウム複合体およびトリプロピルアミン(TPA)の使用に基づくことができる。反応複合体を検出するための化学発光反応は、試料溶液に電圧を印加することによって開始され、正確に制御された反応をもたらす。ECL技術は、優れた性能を提供しながら、多くの免疫測定原理に適応することができる。
【0200】
表2は、BPRu-(MF77)
5K(MH)アミド、BPRu-(S779)
5-MHおよびBPRu-(MF74)
5K(MH)アミドが、RP HPLC(水/アセトニトリル+0.1% TFA)において6.85分、6.75分および6.72分の同様の保持時間を有することを示す。対応するPEG結合化合物は、9.73分の保持時間を有する。
【表2】
【0201】
図2は、本発明の方法を使用することによる、ならびにPEG-リンカーありおよびリンカーなしの比較方法を使用することによる、Elecsys E170:トロポニンT hsアッセイ(ブランク値)の結果をそれぞれ示している。取り込み速度の関数としてのマルチアッセイ(MA)希釈剤カウントが示されている。取り込み速度は、ここでは抗体あたりのECL標識の平均数を意味する。マルチアッセイ希釈剤は、ブランクおよび2.5μg/mLコンジュゲートを含む。コンジュゲートおよび複合体という用語は、本開示全体において交換可能に使用され得る。コンジュゲーション手順は、例えば実施例6に記載されている。
【0202】
図3および
図4は、本発明の方法を使用することによる、ならびにPEG-リンカーありおよびリンカーなしの比較方法を使用することによる、Elecsys E170:トロポニンT hsアッセイの結果をそれぞれ示している。標識取り込み速度の関数として、Cal1カウント/マルチアッセイ(MA)希釈剤カウントおよびCal2カウント/マルチアッセイ(MA)希釈剤カウントが示されている。標識取り込み速度は、ここでは抗体あたりのECL標識の平均数を意味する。Cal1/マルチアッセイ希釈剤およびCal2/マルチアッセイ希釈剤は、前洗浄ステップを含まず、2.5μg/mLのコンジュゲートを含む。
【0203】
本特許出願は、欧州特許出願20216267.3号の優先権を主張し、この欧州特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】