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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】テトラペプチド部分を含む化合物
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/10 20060101AFI20231220BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20231220BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231220BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20231220BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20231220BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20231220BHJP
【FI】
C07K5/10 ZNA
A61K47/64
A61K45/00
A61P35/00
A61K38/05
A61K31/704
A61K47/69
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537973
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021087374
(87)【国際公開番号】W WO2022136586
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20216764.9
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515327465
【氏名又は名称】コビオレス エヌヴイ
【氏名又は名称原語表記】COBIORES NV
【住所又は居所原語表記】Herestraat 49(bus913),B-3000 Leuven, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】カザッツァ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】キント,ネーレ
(72)【発明者】
【氏名】レインス,ヘールト
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヘレプッテ,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ドゥフェール,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC47
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF67
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA14
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA59
4C084MA05
4C084NA06
4C084NA07
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086EA10
4C086NA06
4C086NA07
4C086NA13
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA72
4H045EA15
4H045EA20
4H045FA33
(57)【要約】
本発明はがんの治療を目的とする化合物の分野に関する。これらの化合物の選択性は薬物の選択的放出を可能とする特定のテトラペプチド部分の存在を介して得られる。特に、該薬物は細胞増殖抑制薬、細胞毒性薬、または抗がん薬である。保護キャップ化基は化合物の血中での安定性を確保するために導入され得る。テトラペプチド部分はALLPまたはAPKPである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造式:C-OP-D
[式中:
Cはキャップ化基であり;
OPはテトラペプチド部分 ALLP(配列番号:1)またはAPKP(配列番号:2)であり;
Dは薬物である]
で示される化合物、あるいは該化合物の医薬的に許容される塩、該化合物を含む医薬的に許容される結晶もしくは共結晶、または該化合物の医薬的に許容される多形体、異性体、もしくは非晶質の形態。
【請求項2】
Dが、細胞毒性薬、細胞増殖抑制薬であるか、または抗がん薬である、請求項1に記載の化合物、塩、結晶、共結晶、多形体または異性体。
【請求項3】
OPとDとの間の連結が、直接的であるか、リンカーまたはスペース基を介して間接的である、請求項1または2に記載の化合物、塩、結晶、共結晶、多形体、異性体または非晶質の形態。
【請求項4】
リンカーまたはスペース基が自己排除性リンカーまたはスペース基である、請求項3に記載の化合物、塩、結晶、共結晶、多形体、異性体または非晶質の形態。
【請求項5】
CとOPとの間の連結が、直接的であるか、リンカーまたはスペース基を介して間接的である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物、塩、結晶、共結晶、多形体、異性体または非晶質の形態。
【請求項6】
大環状部分と一緒にさらに複合化される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、塩、結晶、共結晶、多形体、異性体または非晶質の形態。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物、塩、結晶、共結晶、多形体、異性体または非晶質の形態を含む組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの医薬的に許容される溶媒、希釈剤または担体をさらに含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
医薬として用いるための、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物、塩、結晶、共結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいは請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
がんを治療するのに用いるための請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物、塩、結晶、共結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいは請求項7または8に記載の組成物。
【請求項11】
がんの治療が併用化学療法治療または複合したモダリティ化学療法治療である、請求項10のいずれかに記載の化合物、塩、結晶、共結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいは請求項10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~5のいずれかに記載の化合物を製造する方法であって、薬物 D、テトラペプチド部分 OP、およびキャップ化基 Cを連結する工程を含み、ここでD、OPおよびCを連結することで化合物 C-OP-Dを得、薬物 Dとテトラペプチド部分 OPとの間の連結が直接的であるか、またはリンカーまたはスペース基を介しており、および/またはキャップ化基 Cとテトラペプチド部分 OPとの間の連結が直接的であるか、またはリンカーまたはスペース基を介している、方法。
【請求項13】
化合物 C-OP-Dを精製する工程をさらに含む、請求項12にて記載される化合物の製造方法。
【請求項14】
化合物 C-OP-Dの塩、非晶質の形態、結晶、または共結晶を形成することをさらに含む、請求項12または13にて記載される化合物の製造方法。
【請求項15】
請求項1~6または9~11のいずれか一項に記載の化合物、塩、結晶、共結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいは請求項7~11のいずれか一項に記載の組成物を含む容器を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はがんの治療を目的とする化合物の分野に関する。これらの化合物の選択性は、薬物の選択的放出を可能とする特定のテトラペプチド部分の存在を通して得られる。薬物は、特に、細胞増殖抑制薬、細胞毒性薬、または抗がん薬である。化合物の血中での安定性を確保するために、保護用キャップ化基が導入され得る。テトラペプチド部分はALLPまたはAPKPである。
【背景技術】
【0002】
がん療法は依然として今日の医学の大きな課題の一つである。がんを治療するのに、および/または転移を防止するのに、手術と、放射線療法、古典的な化学毒性の化学療法、分子標的薬、または免疫療法とを含む、複合的な治療解決手段が必要とされることが多い。
【0003】
化学毒性の薬物を使用する場合の大きな課題は、がん細胞に対するその選択性の低さであり、このために用量が制限され、生命を脅かす毒性の副作用がもたらされる。最も一般的な急性の毒性が、重度の白血球減少と血小板減少とをもたらす、骨髄毒性である。一般的に使用される薬物のいくつかはまた、より特異的な毒性を有する。アントラサイクリン系薬物である、ドキソルビシン(Dox)が、そのような化学毒性薬物の一例であって、重度の骨髄毒性に加えて、重度の心毒性を誘発する。これらの毒性のため、累積用量が500mg/mを超える、その使用が制限される。
【0004】
薬物の腫瘍特異性を高めるために使用される解決手段が、(i)腫瘍認識または腫瘍標的分子(例えば、受容体リガンド;例えば、Safavyら、1999, J Med Chem 42, 4919-4924を参照のこと)、または(ii)腫瘍細胞によって優先的に分泌または産生されるプロテアーゼにより腫瘍細胞のすぐ近くで優先的に切断されるペプチド(「オリゴペプチドプロドラッグ」)をコンジュゲートさせることである。
【0005】
ドキソルビシンのプロドラッグなどの腫瘍特異的オリゴペプチドプロドラッグが開発されてきた。プロドラッグを活性化するペプチダーゼは、必ずしも腫瘍特異的ではないが、薬物の選択性を、これらのペプチダーゼが充実性腫瘍の細胞外スペースにて(選択的に)過剰分泌され、がん細胞の浸潤と転移にて重要な役割を果たす程度まで、増大させることができる。N-スクシニル-ベータ-アラニル-L-ロイシル-L-アラニル-L-ロイシル-ドキソルビシン(Suc-βALAL-doxまたはDTS-201)がかかるプロドラッグの候補として選択された(Fernandezら、2001, J Med Chem 44:3750-3)。コンジュゲートされていないドキソルビシンと比べて、このプロドラッグは、毒性がマウスにて約5倍、イヌにて約3倍低い。Suc-βALAL-doxを用いる慢性治療によって、ラットにおいて8倍までの高用量でDoxを用いるよりも心毒性が有意に低いことが証明された。Suc-βALAL-doxのDoxに対する活性の改善が、いくつかの腫瘍異種移植実験にて観察された(Duboisら、2002, Cancer Res 62:2327-31; Ravelら、2008, Clin Cancer Res 14:1258-65)。2種の酵素、CD10(ネプリライシン(neprilysin)またはカラ(calla)抗原)およびチメットオリゴペプチダーゼ-1(THOP1)が、Suc-βALAL-doxのアクチベータとして、腫瘍細胞条件培地にて、および腫瘍細胞にて後に同定された(Panら、2003, Cancer Res 63:5526-31; Duboisら、2006, Eur J Cancer 42:3049-56)。Suc-βALAL-doxを用いるフェーズI臨床試験が(DIATOS SAによって)開始された。Suc-βALAL-doxによる骨髄毒性が、遊離ドキソルビシンとの比較で、3倍高い用量で生じた。極めて高い累積用量(2750mg/m)であっても、薬物関連の重度の心臓有害事象は観察されなかった。評価可能な患者の59%に臨床的有用性が観察された(Delordら、未公開)。
【0006】
WO02/100353は、具体的に、CD10で切断可能な3~6個のアミノ酸のオリゴペプチドで設計された化学療法のプロドラッグを開示する。WO02/00263は、THOP1で切断可能な3個のアミノ酸のオリゴペプチドを有するプロドラッグと、CD10によって切断されないアミノ酸オリゴペプチド(Leu-Ala-Gly)を有する少なくとも1つのプロドラッグとを開示する。WO00/33888およびWO01/95945は、固定位置に非遺伝的にコードされた(非天然の)アミノ酸を含む、4~20個のアミノ酸のオリゴペプチドを有し、そのオリゴペプチドがTHOP1で切断可能である、プロドラッグを開示する。WO01/95945では、βAla-Leu-Tyr-Leuオリゴペプチドを有する、少なくとも1つのプロドラッグが、CD10タンパク質分解作用に対して耐性であると報告されている。WO01/95943は、イソロイシンを固定して含む、3~4個のアミノ酸のオリゴペプチドを有し、そのオリゴペプチドが、好ましくは、THOP1に対して耐性である、プロドラッグを開示するが;CD10の感受性または耐性に関する情報は与えられていない。末端基に連結した(少なくとも2個のアミノ酸の)オリゴペプチドそれ自体に結合した薬物からなるより一般的な概念のプロドラッグがWO96/05863に開示されており、後にWO01/91798において拡張されている。
【0007】
非薬物部分が、少なくとも、水溶性ポリマーと、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の作用で選択的に切断可能なペプチド(4~5個の天然または非天然アミノ酸)とを含んでいる、他のポリマー薬物のコンジュゲートが、WO02/07770に開示される。WO02/38590、WO03/094972、WO2014/062587およびUS2014/0087991は、ヒト線維芽細胞活性化タンパク質(FAPα)によって活性化可能である、抗腫瘍プロドラッグに焦点を当てており;そのプロドラッグは固定位置に環状アミノ酸を有する4~9個のアミノ酸のオリゴペプチドを含む。WO99/28345は、プロドラッグにて存在するアミノ酸が10個未満のオリゴペプチドにおいて前立腺特異的抗原(PSA)によってタンパク質分解的に切断可能であるプロドラッグを開示する。
【0008】
WO97/34927は、FAPαで切断可能なプロドラッグ Ala-Pro-7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、およびLys-Pro-7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリンを明示する。WO00/71571は、FAPαで切断可能なプロドラッグに焦点を当てており、そこではCD26(ジペプチジルペプチダーゼIV)に対するタンパク質分解感受性について多少のさらなる実験的研究がなされた。
【0009】
FAPαによって活性化可能な他のプロドラッグには、プロメリチン毒素のプロドラッグ(LeBeauら、2009, Mol Cancer Ther 8, 1378-1386)、ドキソルビシンのプロドラッグ(Huangら、2011, J Drug Target 19, 487-496)、タプシガルギンのプロドラッグ(Brennenら、2012, J Natl Cancer Inst 104, 1320-1334)、および固定位置に環状アミノ酸を有する4~9個のアミノ酸のオリゴペプチドを含むプロドラッグ(WO03/094972)が含まれる。
【0010】
WO01/68145は、3~8個のアミノ酸のオリゴペプチドを含む、MMP切断可能であるが、ネプリライシン(CD10)耐性であるドキソルビシンのプロドラッグ(明細書の実施例1001を参照のこと)を開示する。メタロプロテイナーゼおよびプラスミン感受性ドキソルビシンのプロドラッグが、CNGRCペプチドのドキソルビシンとのコンジュゲートと同様に開発された(Huら、2010, Bioorg Med Chem Lett 20, 853-856; Chakravartyら、1983, J Med Chem 26, 638-644; Devyら、2004, FASEB J 18, 565-567; Vanhensbergenら、2002, Biochem Pharmacol 63, 897-908)。
【0011】
WO97/12624、WO97/14416、WO98/10651、WO98/18493およびWO99/02175は、ペプチドが前立腺特異的抗原(PSA)によって切断可能である、ペプチドを含むプロドラッグを開示する。
【0012】
WO2014/102312は、腫瘍細胞の近傍にて豊富に存在する少なくとも2種の異なるペプチダーゼによって2段階で切断されるテトラペプチドを含むプロドラッグを記載する。そのような2段階の活性化によって、薬物の選択性が増えた。開示のテトラペプチドには、ALGP、KLGPおよびTSGPが含まれる。
【0013】
上記したすべてのプロドラッグに共通することは、通常は、オリゴペプチドのN-末端側に共有結合している、保護またはキャップ化部分の存在であって、それによりプロドラッグの安定性が付加され、および/またはプロドラッグが標的細胞などの細胞中に内在化することの防止が付加される。かかる保護またはキャップ化部分には、非天然アミノ酸、β-アラニルまたはスクシニル基が含まれる(例えば、WO96/05863、US 5,962,216)。さらなる安定化、保護、またはキャップ化部分には、ジグリコール酸、マレイン酸、ピログルタミン酸、グルタル酸(例えば、WO00/33888)、カルボン酸、アジピン酸、フタル酸、フマル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフチルジカルボン酸、アコニット酸、カルボキシ桂皮酸、トリアゾールジカルボン酸、ブタンジスルホン酸、ポリエチレングリコール(PEG)またはそのアナログ(例えば、WO01/95945)、酢酸、1-または2-ナフチルカルボン酸、グルコン酸、4-カルボキシフェニルボロン酸、ポリエチレングリコール酸、ニペコチン酸、およびイソニペコチン酸(例えば、WO02/00263、WO02/100353)、スクシニル化ポリエチレングリコール(例えば、WO01/91798)が含まれる。新たな型の保護またはキャップ化部分が、WO2008/120098にて導入されている、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸である。WO02/07770での保護およびキャップ化部分は、ポリグルタミン酸、カルボキシル化デキストラン、カルボキシル化ポリエチレングリコール、またはヒドロキシプロリル-メタクリルアミドまたはN-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルオキシアミドをベースとするポリマーであってもよい。WO2014/102312はホスホノアセチルを導入し、さらにはキャップ化基またはキャップ化部分として、従来より公知のスクシニル基を用いた。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、一般構造式:C-OP-D[式中:Cはキャップ化基であり;OPはALLP(配列番号:1)およびAPKP(配列番号:2)からなる群より選択されるテトラペプチド部分であり;Dは薬物である]で示される化合物;あるいは該化合物の医薬的に許容される塩、該化合物を含む医薬的に許容される結晶もしくは共結晶、または該化合物の医薬的に許容される多形体、異性体、もしくは非晶質の形態に関する。1の実施態様において、該薬物 Dは、細胞毒性薬、細胞増殖抑制薬、または抗がん薬である。もう一つ別の実施態様において、OPとDとの間の連結は直接的であるか、リンカーまたはスペース基を介して間接的である。さらなる実施態様において、CとOPとの間の連結は直接的であるか、リンカーまたはスペース基を介して間接的である。さらに別の実施態様において、OPとDとの間の連結、およびCとOPとの間の連結は、両方共に、直接的であるか、リンカーまたはスペース基を介して間接的である。特定の実施態様において、かかるリンカーまたはスペース基は自己消去性リンカーまたはスペース基である。さらなる実施態様において、上記した化合物、その塩、結晶、共結晶、多形体、異性体または非晶質の形態はいずれも、大環状部分とさらに複合化される。
【0015】
本発明は、さらには、化合物、その塩、その結晶、それを含む共結晶、または該化合物の多形体、異性体または非晶質の形態のいずれか1つを含む組成物に関する。かかる組成物は、例えば、医薬的に許容される組成物を形成するために、医薬的に許容される溶媒、希釈剤または担体の少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0016】
本発明は、さらには、医薬として用いるための、または医薬の製造において用いるための、例えば、がんの治療にて(治療する方法にて)用いるための、またはがんを治療するための医薬の製造において用いるための、化合物、その塩、その結晶、それを含む共結晶、または該化合物の多形体、異性体または非晶質の形態(そのいずれか1つを含む組成物)に関する。1の実施態様において、該医薬は、化学療法治療または複合したモダリティ化学療法治療(combined modality chemotherapy treatment)と組み合わされる。もう一つ別の実施態様において、該がん治療は、併用化学療法治療または複合したモダリティ化学療法治療である。さらなる実施態様において、化合物 C-OP-Dの薬物部分 Dは、併用化学療法治療または複合したモダリティ化学療法治療での細胞毒性薬、細胞増殖抑制薬、または抗がん薬として効果的である。
【0017】
本発明はさらには、薬物 D、テトラペプチド部分 OP、およびキャップ化基 Cを連結する工程を含む、上記したいずれかの化合物を合成または製造する方法であって、ここでD、OPおよびCの連結が化合物 C-OP-Dをもたらし、薬物 Dとテトラペプチド部分 OPとの間の連結が直接的であるか、リンカーまたはスペース基を介するかである、方法に関する。製造または合成方法のいずれも、さらに、化合物 C-OP-Dを精製する工程を含んでいてもよく、および/または化合物 C-OP-Dの塩、非晶質の形態、結晶または共結晶を形成する工程を含んでもよい。
【0018】
本発明はさらに、化合物、その塩、その結晶、それを含む共結晶、または該化合物の多形体、異性体もしくは非晶質の形態、あるいは上記した化合物のいずれか1つを含む組成物を含むキットをも想定している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】結腸直腸がんに対するドキソルビシンの、およびドキソルビシンを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の効能を親遊離薬物 D(parent free drug D)の効能と比較して評価するために、(A)LS 174Tおよび(B)HCT-116細胞をインビトロ実験にて用いた。細胞を15,000個の細胞/ウェル(LS 174T)または10,000個の細胞/ウェル(HCT-116)の密度で播種し、100μM(PhAc-ALGP-Dox、PhAc-APKP-DoxおよびPhAc-ALLP-Dox)または10μM(ドキソルビシン)より開始して1:5(1-in-5)の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド(Sigmoidal)-4PL回帰モデルに従って、3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=3)。
図2】膠芽腫に対するドキソルビシンの、およびドキソルビシンを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の効能を親遊離薬物 Dの効能と比較して評価するために、(A)A-172および(B)U-87MG細胞をインビトロ実験にて用いた。細胞を7,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、100μM(PhAc-ALGP-Dox、PhAc-APKP-DoxおよびPhAc-ALLP-Dox)または10μM(ドキソルビシン)より開始して1:5の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド-4PL回帰モデルに従って、3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=3)。
図3】トリプルネガティブ乳がんに対するドキソルビシンの、およびドキソルビシンを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の効能を親遊離薬物 Dの効能と比較して評価するために、(A)MDA-MB-231および(B)MDA-MB-468細胞をインビトロ実験にて用いた。細胞を10,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、100μM(PhAc-ALGP-Dox、PhAc-APKP-DoxおよびPhAc-ALLP-Dox)または10μM(ドキソルビシン)より開始して1:5の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド-4PL回帰モデルに従って、3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=3)。
図4】卵巣がんに対するドキソルビシンの、およびドキソルビシンを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の効能を親遊離薬物 Dの効能と比較して評価するために、(A)A2780および(B)A2780CpR(親株A2780のシスプラチン耐性変異株)細胞をインビトロ実験にて用いた。細胞を10,000個~12,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、100μM(PhAc-ALGP-Dox、PhAc-APKP-DoxおよびPhAc-ALLP-Dox)または10μM(ドキソルビシン)より開始して1:5の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド-4PL回帰モデルに従って、3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=3)。
図5】肺がんに対するドキソルビシンの、およびドキソルビシンを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の効能を親遊離薬物 Dの効能と比較して評価するために、(A)NCI-H1299および(B)NCI-H292細胞をインビトロ実験にて用いた。細胞を7,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、100μM(PhAc-ALGP-Dox、PhAc-APKP-DoxおよびPhAc-ALLP-Dox)または10μM(ドキソルビシン)より開始して1:5の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド-4PL回帰モデルに従って、3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=3)。
図6】黒色腫に対するドキソルビシンの、およびドキソルビシンを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の効能を親遊離薬物 Dの効能と比較して評価するために、A2058細胞をインビトロ実験にて用いた。細胞を7,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、100μM(PhAc-ALGP-Dox、PhAc-APKP-DoxおよびPhAc-ALLP-Dox)または10μM(ドキソルビシン)より開始して1:5の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド-4PL回帰モデルに従って、3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=3)。
図7】前立腺がんに対するドキソルビシンの、およびドキソルビシンを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の効能を親遊離薬物 Dの効能と比較して評価するために、DU145細胞をインビトロ実験にて用いた。細胞を5,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、100μM(PhAc-ALGP-Dox、PhAc-APKP-DoxおよびPhAc-ALLP-Dox)または10μM(ドキソルビシン)より開始して1:5の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド-4PL回帰モデルに従って、3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=3)。
図8】膵臓がんに対するドキソルビシンの、およびドキソルビシンを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の効能を親遊離薬物 Dの効能と比較して評価するために、MIA PaCa-2細胞をインビトロ実験にて用いた。細胞を10,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、100μM(PhAc-ALGP-Dox、PhAc-APKP-DoxおよびPhAc-ALLP-Dox)または10μM(ドキソルビシン)より開始して1:5の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド-4PL回帰モデルに従って、3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=3)。
図9】正常細胞(非がん細胞)に対するドキソルビシンの、およびドキソルビシンを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の正常な組織に対する毒性を親遊離薬物 Dの毒性と比較して評価するために、不死化ヒト乳腺上皮(HME-1)細胞をインビトロでの代理細胞として用いた。細胞を10,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、100μM(PhAc-ALGP-Dox、PhAc-APKP-DoxおよびPhAc-ALLP-Dox)または10μM(ドキソルビシン)より開始して1:5の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド-4PL回帰モデルに従って、3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=3)。
図10】正常細胞(非がん細胞)に対するMMAEの、およびMMAEを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の正常な組織に対する毒性を親遊離薬物 Dの毒性と比較して評価するために、(A)不死化ヒト乳腺上皮(HME-1)細胞、または(B)ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をインビトロでの代理細胞として用いた。細胞を10,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、500nMより開始して1:5の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド-4PL回帰モデルに従って、3~5回の3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=9~15)。
図11】トリプルネガティブ乳がんに対するMMAE、およびMMAEを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の効能を親遊離薬物 Dの効能と比較して評価するために、MDA-MB-231細胞をインビトロ実験にて用いた。細胞を10,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、500nMより開始して1:5の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド-4PL回帰モデルに従って、4回の3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=12)。
図12】黒色腫に対するMMAE、およびMMAEを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の効能を親遊離薬物 Dの効能と比較して評価するために、A2058細胞をインビトロ実験にて用いた。細胞を7,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、500nMより開始して1:5の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド-4PL回帰モデルに従って、4回の3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=12)。
図13】膠芽腫に対するMMAE、およびMMAEを含む化合物の細胞毒性効果を示す。 C-OP-D化合物の効能を親遊離薬物 Dの効能と比較して評価するために、(A)A-172および(B)U-87MG細胞をインビトロ実験にて用いた。細胞を7,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、500nMより開始して1:5の連続希釈に72時間にわたって曝露した。細胞生存率WST-1増殖アッセイを用いて評価された。グラフは平均値±SDとしてプロットされる。IC50を外挿するためにシグモイド-4PL回帰モデルに従って、2~4回の3重重複測定より非線形フィッティングを取得した(n=6~12)。
図14】PhAc-ALGP-PABC-MMAE、PhAc-ALLP-Dox、PhAc-ALLP-PABC-MMAE、または親遊離薬物に曝露した後のhiPSC由来の星状細胞(iAstro(登録商標))の細胞生存率を示す。 正常な星状細胞を、用量漸増のC-OP-D化合物に、および親遊離薬物 Dに72時間にわたって曝露した。代謝的に活性な細胞によるカルセイン-AM基質の変換を測定した後、細胞をPBSで濯ぎ、細胞生存率をWST-1で評価した。(A)では、500nMより開始して10点の連続希釈(1:5)に付した後のMMAE、PhAc-ALGP-PABC-MMAEおよびPhAc-ALLP-PABC-MMAEの用量応答曲線を、(B)では4PDで500μMより、またはDoxで50Mより開始して10点の連続希釈(1:5)に付した後のDoxおよびPhAc-ALLP-Doxについて示す。シグモイド-4PL非線形フィッティングモデルによる平均値±SDを示す。nは3レプリケートウェルである。
図15】結腸直腸がんに対するPhAc-ALLP-Doxのインビボ活性を示す。 (A)ヌードNMRIマウスに皮下移植し、示されるように10mg/kgまたは30mg/kgのPhAc-ALLP-Doxで、または対照ビヒクル(CTRL)で処理したLS174T結腸直腸腫瘍の体積をプロットして表す。マウスは矢印で示されるように週に2回、尾静脈注射を介する処理を受けた。データは平均値±SDで表される(一群当たりn=10)(****p<0.0001vs対照)。(B)腫瘍増殖阻害割合(TGI(%、平均値±標準偏差SD))を示す。
図16】黒色腫に対するPhAc-ALLP-PABC-MMAEのインビボ活性を示す。 ヌードNMRIマウスに皮下移植し、示されるようにMMAE、PhAc-ALLP-PABC-MMAEで、または対照ビヒクル(CTRL)で処理したA2058黒色腫腫瘍の体積をプロットして表す。マウスは矢印で示されるように週に2回、4サイクルにわたってTV注射を介する処理を受けた。データは平均値±SDで表される(一群当たりn=9)。
図17】膠芽腫に対するPhAc-ALLP-PABC-MMAEのインビボ活性を示す。 ヌードNMRIマウスに皮下移植し、示されるようにMMAE、PhAc-ALLP-PABC-MMAEで、または対照ビヒクル(CTRL)で処理したU87MG腫瘍の体積をプロットして表す。マウスは矢印で示されるように週に1回、4サイクルにわたってTV注射を介する処理を受けた。データは平均値±SDで表される(一群当たりn=8)。
図18】膠芽腫に対するPhAc-ALLP-Doxのインビボ活性を示す。 ヌードNMRIマウスに皮下移植し、示されるようにDox、PhAc-ALGP-Dox、PhAc-ALLP-Doxで、または対照ビヒクル(CTRL)で処理したU87MG腫瘍の体積をプロットして表す。マウスは矢印で示されるように週に1回、4サイクルにわたってTV注射を介する処理を受けた。データは平均値±SDで表される(一群当たりn=8)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一般に、本発明は、改良された治療特性を有する治療剤の新規なプロドラッグの化合物、特に治療剤、とりわけ腫瘍またはがんを治療するのに有用な治療剤を含む、プロドラッグを記載する。「プロドラッグ」なる語は、一般に、薬理効果を示す前に、生体内変換を受ける化合物をいう。プロドラッグとは、このように、親分子にある望ましくない特性を改変または除去するのに、一時的に存在する特定の非毒性の保護基を含有する、薬物とみなすことができる(Vertら、2012, Pure Appl Chem 84:377-410を参照のこと)。保護基は、生物学的利用能の増加、溶解度の増加、安定性の増加、薬物を時期尚早にて放出することの回避または軽減(かくして、毒性の回避または軽減)、細胞透過性の改変、薬物で処理される対象での刺激の回避または軽減、薬物の対象における標的とされる細胞または器官への投与の支持等などの1または複数の機能を有し得る。本明細書で記載されるテトラペプチドを含む化合物(C-OP-D化合物 C-OP-Dプロドラッグ、またはC-OP-Dプロドラッグ化合物、あるいは単に(本発明に係る)化合物または(本発明に係る)プロドラッグとも称される)が、(健全な、または非がん細胞に比べて)がん細胞に対して好ましい選択性を示すプロドラッグであることが偶然にも見いだされたが、これらのプロドラッグから活性な薬物部分を放出することの背後にある活性化機構は、現在のところまだ解明されていない。
【0021】
1の態様において、本発明の化合物は、一般構造式:C-OP-D
[式中、
Cはキャップ化基であり;
OPはALLP(配列番号:1)およびAPKP(配列番号:2)(からなる群)より選択されるテトラペプチド部分であり;
Dは薬物である]
で示されるか;あるいは該化合物の医薬的に許容される塩、該化合物を含む医薬的に許容される結晶もしくは共結晶、または該化合物の医薬的に許容される多形体、もしくは医薬的に許容される異性体である。
【0022】
テトラペプチドの特性が上記したプロドラッグ化合物の(例えば、下記の実施例にて記載されるように決定される)選択性の鍵となる決定因子であり、このことはどの薬物がプロドラッグ化合物に組み込まれるかと関係しない。このことは、テトラペプチドALLP(配列番号:1)について、ドキソルビシンおよびオーリスタチンのプロドラッグ化合物を用いて以下に説明される。歴史的例示はさらにこのことを裏付けている。例えば、Dubowchikら1998(Bioorg Med Chem Lett 8:3341-3346および3347-3352)およびWalkerら2004(Bioorg Med Chem Lett 14:4323-4327)は、適切なペプチド部分が同定されると、薬物 Dは変更できることを実証した(ドキソルビシン、マイトマイシンC、およびタリソマイシンS10bで実証された)。同じことがプロドラッグに含まれる別のペプチド部分についても示されており、適切なペプチド部分が同定されると、薬物 Dは変更され得る(ドキソルビシンおよびパクリタキセルについて;Elsadekら、2010, ACS Med Chem Lett 1: 234-238、およびElsadekら、2010, Eur J Cancer 46:3434-3444にて実証されている)。かかるプロドラッグは、腫瘍特異的抗原を標的とする抗体(Dubowchikら、2002, Bioconjugate Chem 13:855-869; およびWalkerら、2004, Bioorg Med Chem Lett 14:4323-4327)と、または細胞透過性ペプチド(CPP; Yonedaら、2008, Bioorg Med Chem Lett 18:1632-1636)とうまく連結させることさえもできる。原理的には、アプタマーおよびシングルドメイン抗体またはそのフラグメントなどの抗体またはCPP以外の部分も結合させることができる。これらの例は、適切なペプチド部分が同定されると、その同定されたペプチド部分の機能を失うことなく、それはその両端(N-末端およびC-末端)で修飾され得ることを示す。1の実施態様において、一般的なプロドラッグ構造のC-OP-D中のテトラペプチド部分 OPおよび薬物 Dは、相互に直接的に連結(またはカップリングもしくは結合)させるか、または別法としてリンカーまたはスペース基を介して間接的に連結(またはカップリングもしくは結合)させる。連結(またはカップリングまたは結合)の型が何であれ、直接的、または間接的であっても、連結は:(1)テトラペプチド部分の機能性を妨げないか、または有意に妨げないとすべきであり、すなわち、OPのタンパク質分解切断性を妨げない、または有意に妨げないとすべきであり、(2)化合物の血中安定性を保持すべきである。そのプロドラッグ中のリンカーまたはスペース基の機能性(例えば、哺乳類の血清中の安定性、がん細胞に対する選択的毒性)の決定は試験され得る。
【0023】
ペプチド部分OPと、薬物部分 Dとの間のリンカーまたはスペース基
プロドラッグ化合物に組み込むことのできる薬物が多種多様であることを考慮して、薬物部分 Dに連結したテトラペプチド部分 OPのタンパク質分解または他の酵素分解を容易にするために、立体障害を緩和するのにスペーサーなどの、リンカーまたはスペース基(該用語は本明細書にて互換的に使用される)をテトラペプチド部分と薬物部分との間に距離を設けるために入れることができる。かかるリンカーまたはスペース基は、代替的に、または付加的に、例えば、プロドラッグ化合物を活性化するための、または薬物部分 DをC-OP-D化合物から放出するためのさらなる機構を提供することによって、プロドラッグ化合物の特異性を(さらに)高めるために存在し得る。かかるリンカーまたはスペース基は、さらに代替的に、または付加的に、テトラペプチド部分と薬物部分との間で化学的に連結し得るように存在し得る;すなわち、薬物部分と接続されるリンカーの末端は、薬物部分の化学構造にて存在する適切な基と官能的に化学的にカップリングするように設計され得る。かくして、リンカーまたはスペース基は、C-OP-D化合物の異なる部分の間に適切な化学的結合を提供し得る(かくして本発明の任意の可能な薬物部分 Dとテトラペプチド部分 OPとをカップリングさせる柔軟性を提供し得る)。リンカーまたはスペース基は、さらに代替的に、または付加的に、C-OP-Dコンジュゲートを製造する合成方法を(例えば、収率または特異性を向上させるためにコンジュゲーションする前に治療剤またはオリゴペプチドをリンカー基で予め誘導体化することによって)改良するために導入されてもよい。リンカーまたはスペース基は、その上さらに代替的に、または付加的に、C-OP-D化合物の物理特性を改良するために導入されてもよい。
【0024】
これに限定されるものではないが、かかるリンカーまたはスペース基は、テトラペプチド部分の放出/テトラペプチド部分からの放出の際に化学的な分解を用いて純粋に自己犠牲的であるか、または自己排除的であってもよい。リンカーまたはスペース基の自己犠牲または自己排除は、代替的に、エステラーゼまたはホスファターゼ活性などのさらなるトリガーに依存してもよいし、あるいは酸化還元感受性、pH感受性等のトリガー機構に依存してもよい;現在の状況においては、かかるリンカーも同様に自己犠牲的または自己排除性リンカーまたはスペース基と称される。
【0025】
OPとDとの間のリンカーは、例えば、自己犠牲的または自己排除性リンカーまたはスペース基とすることができる。テトラペプチド部分 OPがタンパク質分解で除去されると、かかるリンカーは自然と分解して薬物部分 Dを解放する。異なる型の自己排除性リンカーは、通常、脱離反応または環化反応を通して分解する。周知で、時々使用される自己犠牲的リンカーが、1,6-ベンジル脱離を介して分解する、p-アミノベンジルオキシカルバメート(PABC;別名:p-アミノベンジルオキシカルボニル)であり;o-アミノベンジルオキシカルボニル(OABC)は1,4-ベンジル脱離を介して分解する。PABCなどのリンカーは、一方で薬物 Dの-OH、-COOH、-NHまたは-SH基のいずれかを、他方でテトラペプチド部分 OPのカルボニル末端基に接続し得る。置換3-カルバモイル-2-アリールプロぺナール化合物は、カルバミン酸の脱離を通して分解する、自己犠牲的リンカーのさらなる一例であり;置換には、ニトロ基、ハライド(例えば、フルオリド)、およびメチル基が含まれる(Rivaultら、2004, Bioorg Med Chem 12:675)。ジスルフィド結合を含有する自己犠牲的リンカーは、かかる一群の新規なリンカーである(例えば、Gundら、2015, Bioorg Med Chem Lett 25:122-127)。Kratzら、2008(ChemMedChem 3:20-53)の表7にも概要が示されている。かかる自己犠牲的リンカーは、多量体化(例えば、二量体、三量体、…)され、伸長した自己犠牲的リンカーを形成し得る。かかるリンカーはまた、潜在的に複数の薬物部分 Dを担持するデンドリマーの形態にて多量体化され得る(例えば、Amirら、2003, Angew Chem Int Ed 42:4494-4499; de Grootら、2003, Angew Chem Int Ed 42:4490-4494)。
【0026】
OPとDとの間のリンカーは、例えば、酸に不安定なリンカーであり得る。正常な組織でのpHと比べて、腫瘍環境ではpHがより低いこと(0.5~1のpH単位の差)をうまく利用して、酸に不安定なリンカーは腫瘍環境にて優先的に切断される。酸に不安定なリンカーまたはスペーサーには、カルボン酸ヒドラジン結合、シス-アコニチル結合、トリチル結合、アセタール結合およびケタール結合などの酸に不安定な結合が含まれる。酸に不安定なリンカーの別の例として、モノマー分子が、各々相互に、酸に不安定な結合によって連結しているポリマー分子がある(例えば、Kratzら、2008, ChemMedChem 3:20-53の図10および表5を参照のこと)。
【0027】
OPとDとの間のリンカーは、例えば、自己犠牲的または自己排除性リンカー、あるいはスペース基とすることができ、ここで該自己犠牲または自己排除は、低酸素条件下で選択的に生じる。多くの腫瘍またはがん、特に充実性腫瘍またはがんは、低酸素領域の存在で特徴付けられる(例えば、Liら、2018, Angew Chem Int Ed Engl 57:11522-11531)。芳香族ニトロまたはアジド基がこの状況で適用でき、これらの化合物は(低酸素領域にて)還元され、1,6-または1,8-脱離を介して分解を開始する。ニトロイミダゾール、N-オキシドおよびニトロベンジルカルバメートのアナログ(例えば、イミダゾリルメチルカルバメート:Hayら、2000, Tetrahedron 56:645;例えば、ニトロベンジルオキシカルボニル基 Shyamら、1999, J Med Chem 42:941)が適用でき、限定されないが、2’-(4-ニトロベンジルカルボネート);2’-(4-アジドベンジルカルボネート);2’-(4-ニトロシンナミルカルボネート);2’-O-(2,4-ジニトロベンジルオキシカルボニル);2’-O-[2-ニトロ-5-(アリルオキシカルボニル)ベンジルオキシカルボニル];2’-O-(2-ニトロ-5-カルボキシベンジルオキシカルボニル);2’-O-(5-メチル-ニトロ-1H-イミダゾイル-2-イル)メチルオキシカルボニル);2’-O-(5-ニトロフラン-2-イルメチルオキシカルボニル);2’-O-(5-ニトロチオフェン-2-イルメチルオキシカルボニル);および3’-N-(4-アジドベンジルオキシカルボニル-3’-N-デベンゾイルを包含する(Damenら、2002, Bioorg Med Chem 10:71-77;例えば、スキーム1および実験例のセクションを参照のこと)。
【0028】
OPとDとの間のリンカーの自己排除はまた、トリメチルロックのラクトン化反応(Greenwaldら、2000, J Med Chem 43:475-487)などの分子内環化またはラクトン化反応に基づくこともできる。このような系には、限定されないが、(アルキルアミノ)エチルカルバメートと、[(アルキルアミノ)エチル]グリシルエステルとの系;N-(置換2-ヒドロキシフェニル)カルバメートと、N-(置換2-ヒドロキシプロピル)カルバメートとの系;およびo-ヒドロキシフェニルプロピオン酸と、その誘導体とに基づく系が含まれる。これらはShanらによる1997の総説(J Pharm Sci 86:765-767)の主題である。クマリン酸またはその誘導体のラクトン化はさらなるリンカー系を構成する(例えば、Wangら、1998, Bioorg Med Chem 6:417-426; Hershfieldら、1973, J Am Chem Soc 95:7359-69; Lippold & Garrett、1971, J Pharm Sci 60:1019-27)。プロドラッグでの2’-カルバメートの環化は、活性な薬物の放出をもたらす、さらなる系である(例えば、de Grootら、2000, J Med Chem 43:3093-3102)。
【0029】
OPと、Dとの間のリンカーは、例えば、還元条件に対して感受的である、酸化還元感受性リンカー(キノリンなど)であり得る。
【0030】
OPと、Dとの間のリンカーは、例えば、(テトラペプチド部分 OPをタンパク質分解で放出した後に)脱グリコシル化に付すと、自発的に分解して薬物 Dを放出する、グリコシル化テトラ(エチレングリコール)などの親水性ストッパーであり得る(例えば、Fernandesら、2012, Chem Commun 48:2083-2085)。
【0031】
いくつかの特許および特許出願は、ヘテロ環のスペーサーなどの他の自己犠牲的/自己排除性スペーサーを記載しており、抗体などの標的リガンドから薬物を放出することが記載される(例えば、米国特許第6,214,345号;US 2003/0130189;US 2003/0096743;米国特許第6,759,509号;US 2004/0052793;米国特許第6,218,519号;米国特許第6,835,807号;米国特許第6,268,488号;US 2004/0018194;WO 98/13059;US 2004/0052793;米国特許第6,677,435号;米国特許第5,621,002号;US 2004/0121940;WO 2004/032828;US 2009/0041791)。必ずしも自己排除性リンカーまたはスペーサー基ではない、他の例として、アミノカプロン酸、ヒドラジド基、エステル基、エーテル基、スルフィドリル基、エチレンジアミン(またはより長い-CH2-鎖)、アミノアルコール、およびオルトフェニレンジアミン(1,2-ジアミノベンゼン)が挙げられる。
【0032】
特定の実施態様において、リンカーまたはスペースは自己犠牲性リンカーではない。かかる非自己犠牲性リンカーは、依然として、標的細胞の外部または内部に存在する酵素によって切断され得る。
【0033】
さらなる実施態様において、薬物 Dと、テトラペプチド部分 OPとの間のリンカーまたはスペーサーは、L-アミノ酸またはL-アミノ酸の誘導体などのタンパク質性部分を含んでいない。さらなる実施態様において、該リンカーまたはスペーサーは、D-アミノ酸またはD-アミノ酸の誘導体を含んでいない。さらなる実施態様において、該リンカーまたはスペーサーは、非天然アミノ酸を含んでいない。
【0034】
さらなる実施態様において、上記される一般構造式:C-OP-Dの化合物は、大環状部分、例えば、自己排除性または自己犠牲性大環状部分と複合体化されてもよい。自己排除プロセスは純粋な自己排除プロセスであっても、さらなるトリガー(上記参照)で開始されるものであってもよい。
【0035】
大環状部分
化合物 C-OP-Dのテトラペプチド軸は、さらに、自己犠牲的または自己開裂的であるように設計された大環自体によって保護され得、ここで自己犠牲または自己開裂性のトリガーは、ベータ-ガラクトシダーゼまたはベータ-グルクロニダーゼなどの酵素の作用であり得る。かかる大環は、下記にて、さらに「大環状部分」と称される。ベータ--ガラクトシダーゼは、正常な組織と比べて、多くの腫瘍で大きく発現し(例えば、Chenら、2018, Anal Chim Acta 1033:193-198)、グルクロニドプロドラッグがさらなる一連のプロドラッグでもある(例えば、Tranoy-Opalinskiら、2014, Eur J Med Chem 74:302-313)。本発明の化合物のテトラペプチド部分を腫瘍細胞の近傍にて優先的に開口している大環にて捕獲することは、本発明の化合物に選択性のさらなる層を加えることである。かかる大環の一例がロタキサンまたは疑似ロタキサンであり、自己開裂に対する保護は、例えば、ガラクトシドなどのグリコシドとの連結を通して行うことができる。ここで、グリコシド部分は自己犠牲性リンカーを通して大環に連結され得る。本発明の化合物のテトラペプチド軸の保護能を有するかかる化合物の一例が、例えば、Baratらによって、2015(Chem Sci 6:2608-2613)に記載されており、自己犠牲性リンカー(ニトロベンジルオキシカルボニルリンカーであると記載されている場合には、脱グリコシル化反応後にそれ自体を排除する)を介してガラクトシド部分(ベータ-ガラクトシダーゼによる除去を可能とする)に連結されるロタキサンまたは疑似ロタキサン(自己開裂性大環として)からなる。
【0036】
さらなる実施態様において、一般構造式:C-OP-Dの化合物におけるキャップ化基 Cおよびテトラペプチド部分 OPは、相互に直接的に連結(またはカップリングもしくは結合)されるか、あるいはまた、リンカーまたはスペース基を介して間接的に連結(またはカップリングもしくは結合)される。キャップ化基 Cと、テトラペプチド部分 OPとの間の直接連結は、例えば、テトラペプチド部分 OPのN-末端アミノ基を介して、もしくはテトラペプチド部分 OPのアミノ酸の一方の側鎖を介して直接的であってもよい。あるいはまた、該連結は、例えば、テトラペプチド部分 OPと、キャップ化基 Cとの間にリンカーまたはスペーサー基を導入することによって間接的であってもよい。連結(あるいはカップリングまたは結合)の型が何であれ、直接的、または間接的であっても、連結は:(1)テトラペプチド部分の機能性を妨げないか、または有意に妨げてはならず、すなわち、OPのタンパク質分解切断性を妨げないか、または有意に妨げてはならず、(2)化合物の血中安定性を保持しなければならない。そのプロドラッグ化合物中のリンカーまたはスペース基の機能性(例えば、哺乳類の血清中の安定性、がん細胞に対する選択的毒性等)の決定は試験され得る。キャップ化基 Cと、テトラペプチド部分 OPとの間にリンカーまたはスペース基を含めると考え得る理由は、テトラペプチド部分 OPと、薬物部分 Dとの間にリンカーまたはスペース基を設けることに関して上記したのと同じである。
【0037】
特定の実施態様において、キャップ化基 Cと、テトラペプチド部分 OPとの間のリンカーまたはスペーサーは、L-アミノ酸またはL-アミノ酸の誘導体などのタンパク質性部分を含んでいない。さらなる実施態様において、該リンカーまたはスペーサーは、D-アミノ酸またはD-アミノ酸の誘導体を含んでいない。さらなる実施態様において、該リンカーまたはスペーサーは、非天然アミノ酸を含んでいない。
【0038】
キャップ化基 C
本発明の化合物の存在する、通常は、オリゴペプチドのN-末端側に共有結合している、保護またはキャップ化部分 Cは、それによりプロドラッグの(例えば、哺乳類の血液または血清中での)溶解性および/または安定性が付加され、および/またはプロドラッグの標的細胞などの細胞への内在化の防止が付加される。かかる保護またはキャップ化部分には、非天然アミノ酸、β-アラニルまたはスクシニル基が含まれる(例えば、WO96/05863、米国特許第5,962,216号)。さらなる安定化、保護、またはキャップ化部分には、ジグリコール酸、マレイン酸、ピログルタミン酸、グルタル酸(例えば、WO00/33888)、カルボン酸、アジピン酸、フタル酸、フマル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフチルジカルボン酸、アコニット酸、カルボキシ桂皮酸、トリアゾールジカルボン酸、ブタンジスルホン酸、ポリエチレングリコール(PEG)またはそのアナログ(例えば、WO01/95945)、酢酸、1-または2-ナフチルカルボン酸、グルコン酸、4-カルボキシフェニルボロン酸、ポリエチレングリコール酸、ニペコチン酸、およびイソニペコチン酸(例えば、WO02/00263、WO02/100353)、スクシニル化ポリエチレングリコール(例えば、WO01/91798)が含まれる。1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸である、新規な型の保護またはキャップ化部分が、WO2008/120098にて導入されている。WO02/07770での保護およびキャップ化部分は、ポリグルタミン酸、カルボキシル化デキストラン、カルボキシル化ポリエチレングリコール、またはヒドロキシプロリル-メタクリルアミドまたはN-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルオキシアミドをベースとするポリマーであってもよい。他のキャップ化基として、イプシロン-マレイミドカプロイル(Elsadekら、2010, Eur J Cancer 46:3434-3444)、ベンジルオキシカルボニル(Dubowchikら、1998, Bioorg Med Chem Lett 8:3341-3346)およびスクシニルおよびホスホノアセチル(例えば、WO2014/102312)が挙げられる。
【0039】
さらなる実施態様において、(a)ポリエチレングリコール基は、テトラペプチド部分 OPのN-末端アミノ酸などのアミノ酸に連結、カップリングまたは結合され得る。このようなペグ化は、哺乳動物に投与した後に循環する化合物 C-OP-Dの半減期を増大させるために、および/または化合物 C-OP-Dの溶解性を増加させるために導入されてもよい。(a)ポリエチレングリコール基/ペグ化の付加は、代替的に、または付加的にキャップ化剤の役割を果たし得る。
【0040】
薬物部分 D
本発明のテトラペプチド部分 OPにコンジュゲートした薬物部分 Dまたは治療剤は、がん(例えば、細胞増殖抑制性、細胞毒性、抗がん性または抗血管新生活性を発揮することにより;例えば、補助療法として、治療レジメンの一部として)、炎症性疾患、または他の何らかの病態の治療に有用であるかもしれない。薬物部分 Dまたは治療剤Dは、標的細胞に(受動的に、または任意の取り込み機構によって)入ることができるいずれの薬物または治療剤であってもよい。かくして、治療剤は、アルキル化剤、抗増殖剤、チューブリン結合剤、ビンカアルカロイド、エネジイン、ポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体、プテリジンファミリーの薬物、タキサン、アントラサイクリン(およびオキサゾリノアントラサイクリン、Rogalskaら、2018n PLoS One 13:e0201296)、ドラスタチンまたはそのアナログ(オーリスタチンなど)、トポイソメラーゼ阻害剤、白金配位錯体の化学療法剤、およびメイタンシノイドを含む、多様な群の化合物より選択され得る。
【0041】
より詳細には、該薬物部分 Dまたは治療剤は、以下の化合物、またはその誘導体もしくはアナログ:ドキソルビシンおよびアナログ[例えば、N-(5,5-ジアセトキシペンタ-1-イル)ドキソルビシン:Farquharら、1998, J Med Chem 41:965-972;エピルビシン(4’-エピドキソルビシン)、4’-デオキシドキソルビシン(エソルビシン)、4’-ヨード-4’-デオキシドキソルビシン、および4’-O-メチルドキソルビシン:Arcamoneら、1987, Cancer Treatment Rev 14:159-161 & Giulianiら、1980, Cancer Res 40:4682-4687;DOX-F-PYR(DOXのピロリジンアナログ)DOX-F-PIP(DOXのピペリジンアナログ)、DOX-F-MOR(DOXのモルホリンアナログ)、DOX-F-PAZ(DOXのN-メチルピペラジンアナログ)、DOX-F-HEX(DOXのヘキサメチレンイミンアナログ)、オキサゾリノドキソルビシン(3’-デアミノ-3’-N,4’-O-メチリデノドキソルビシン、O-DOX):Denel-Bobrowskaら、2017, Life Sci 178:1‐8)]、ダウノルビシン(またはダウノマイシン)およびそのアナログ[例えば、イダルビシン(4’-デメトキシダウノルビシン):Arcamoneら、1987, Cancer Treatment Rev 14:159-161;4’-エピダウノルビシン;単糖ダウノサミン、アコサミンまたは4-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-L-トレオヘキソピラノースと結合した簡略化されたコア構造を有するアナログ:Fanら、2007, J Organic Chem 72:2917-2928での化合物8~13を参照のこと]、アムルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、カリケアミシン、エトポシド、リン酸エトポシド、CC-1065(Bogerら、1995, Bioorg Med Chem 3:611-621)、デュオカルマイシン(デュオカルマイシンAおよびデュオカルマイシンSAなど;Bogerら、1995, Proc Natl Acad Sci USA 92:3642-3649)、デュオカルマイシン誘導体KW-2189(Kobayashiら、1994, Cancer Res 54:2404-2410)、メトトレキサート、メトプテリン、アミノプテリン、ジクロロメトトレキサート、ドセタキセル、パクリタキセル、エピチオロン、コンブレタスタチン、コンブレタスタチンA4ホスフェート、ドラスタチン10、ドラスタチン10アナログ(オーリスタチン、例えば、オーリスタチンE、オーリスタチン-PHE、モノメチルオーリスタチンD、モノメチルオーリスタチンE、モノメチルオーリスタチンFなど;例えば、Madernaら、2014, J Med Chem 57:10527-10534を参照のこと)、ドラスタチン11、ドラスタチン15、トポテカン、エクサテカン、SN38、カンプトテシン、マイトマイシンC、ポルフィロマイシン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、フルダラビン、タモキシフェン、シトシンアラビノシド、アデノシンアラビノシド、コルヒチン、ハリコンドリンB、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシンC、ブレオマイシンおよびそのアナログ(例えば、リブロマイシン、Takahashiら、1987, Cancer Treatment Rev 14:169-177)、メルファラン、クロロキン、シクロスポリンA、およびメイタンシン(およびメイタイシノイドおよびそのアナログ、例えば、ジスルフィドまたはチオール置換基を含むアナログ:Widdisonら、2006, J Med Chem 49:4392-4408;メイタイシンアナログDM1およびDM4)の1つであってもよい。誘導体とは、表記の化合物を(該化合物に直接的または間接的に連結されたテトラペプチド部分とは異なる)もう一つ別の化学的部分と反応させることで得られる化合物を意図するものであり、表記化合物の医薬的に許容される塩、酸、塩基、エステルまたはエーテルを包含する。
【0042】
他の治療剤または薬物として、ビンデシン、ビノレルビン、10-デアセチルタキソール、7-エピタキソール、バッカチンIII、7-キシロシルタキソール、イソタキセル、イホスファミド、クロロアミノフェン、プロカルバジン、クロラムブシル、チオホスホラミド、ブスルファン、ダカルバジン(DTIC)、ゲルダナマイシン、ニトロソ尿素、エストラムスチン、BCNU、CCNU、ホテムスチン、ストレプトニグリン、オキサリプラチン、メトトレキサート、アミノプテリン、ラルチトレキセド、ゲムシタビン、クラドリビン、クロファラビン、ペントスタチン、ヒドロキシ尿素、イリノテカン、トポテカン、9-ジメチルアミノメチル-ヒドロキシ-カンプトテシン塩酸塩、テニポシド、アムサクリン;ミトキサントロン;L-カナバニン、THP-アドリアマイシン、イダルビシン、ルボダゾン、ピラルビシン、ゾルビシン、アクラルビシン、エピアドリアマイシン(4’-エピ-アドリアマイシンまたはエピルビシン)、ミトキサントロン、ブレオマイシン、アクチノマイシンDを含むアクチノマイシン、ストレプトゾトシン、カリシアマイシン;L-アスパラギナーゼ;ホルモン;アロマターゼの純粋な阻害剤;アンドロゲン、プロテアソーム阻害剤;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI);エポチロン;ジスコデルモリド;ホストリエシン;STI571(メシル酸イマチニブ)などのチロシンキナーゼ阻害剤;エルロチニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ、カネルチニブ、PKI166、ゲフィチニブ、スニチニブ、ラパチニブ、EKB-569などの受容体チロシンキナーゼ阻害剤;ダサチニブ、ニロチニブ、イマチニブなどのBcr-Ablキナーゼ阻害剤;VX-680、CYC116、PHA-739358、SU-6668、JNJ-7706621、MLN8054、AZD-1152、PHA-680632などのオーロラキナーゼ阻害剤;フラボピロドール、セリシクリブ、E7070、BMS-387032などのCDK阻害剤;PD184352、U-0126などのMEK阻害剤;CCI-779またはAP23573などのmTOR阻害剤;イスピネシブまたはMK-0731などのキネシンスピンドル阻害剤;ソラフェニブ、CHIR-265、PLX-4032、CI-1040、PD0325901またはARRY-142886などのRAF/MEK阻害剤;ブリオスタチン;L-779450;LY333531;エンドスタチン;HSP90結合剤 ゲルダナマイシン、ハリコンドリンB、エリブリンなどの大環状ポリエーテル、あるいはそのアナログまたは誘導体が挙げられる。
【0043】
化合物の「アナログ」なる語は、一般に、その化合物の構造的アナログまたは化学的アナログをいう。アナログには、限定されないが、異性体が含まれる。
【0044】
化合物の「誘導体」なる語は、元の化合物と構造的に類似し、かつその十分な機能特性を保持する、化合物をいう。誘導体は、元の化合物と比べて、1または複数の原子が欠けているか、置換されているか、異なる水和/酸化状態にあるため、または分子内の1または複数の原子が、限定されないが、水酸基の付加、酸素原子の硫黄原子への置換、またはアミノ基の水酸基への置換、水酸基のカルボニル基への酸化、カルボニル基の水酸基への還元、炭素-炭素二重結合のアルキル基への還元、または炭素-炭素単結合の二重結合への酸化などで入れ替わっているために、構造的に類似している可能性がある。誘導体は、所望により、1または複数の、同じまたは異なる置換を有してもよい。誘導体は、出典明示により本明細書に組み込まれる、March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, Wiley, 6th Edition (2007) Michael B. Smith or Domino Reactions in Organic Synthesis, Wiley (2006) Lutz F. Tietzeにおいて提供される方法などの、合成または有機化学のテキストブックにて示される、任意の種々の合成方法または適切な適用法によって製造され得る。
【0045】
塩、結晶、共結晶、多形体、異性体
塩、結晶、共結晶、多形体、および異性体の文脈などで本明細書にて使用される「医薬的に許容される」とは、意図される医薬用途に対して安全かつ効果的である、本発明のC-OP-D化合物のそれらの塩を意味する。加えて、かかる塩、結晶、共結晶、多形体、および異性体のいずれもが所望の生物学的活性を有するものとする。
【0046】
塩:本発明の薬物部分 Dまたは化合物 C-OP-Dにて存在する酸性または塩基性基の一部または全部が置換されて得られる多数の任意の化合物。適切な塩には、限定されないが、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛およびジエタノールアミンの塩が含まれる。医薬的に許容される塩の総説については、例えば、出典明示により本明細書の一部とされる、Bergeら、1977(J. Pharm. Sci. 66、1-19)またはHandbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use(P. H. Stahl, C.G. Wermuth(Eds.)、August 2002)を参照のこと。現行の規制スキームでは、同じ活性部分の異なる塩の形態は、異なる医薬品活性成分(API)とみなされる(FDA draft guidance for industry 「Regulatory Classification of Pharmaceutical Co-Crystals」;August 2016から由来)。
【0047】
多形体:同じAPIの異なる結晶形態。これには、溶媒和物または水和物(偽多形体としても知られる)および非晶質の形態が含まれる。現行の規制スキームでは、異なる多形形態は同じAPIとみなされる。APIの凍結乾燥した結果、APIの非晶質の形態を含む乾燥粉末となることも多い。
【0048】
共結晶:同じ結晶格子内に、非イオン性かつ非共有結合で結合した、2種またはそれ以上の異なる分子を含む結晶性材料。共結晶とは、同じ結晶格子中に2種またはそれ以上の異なる分子、典型的にはAPIまたは薬物と、共結晶形成剤(「共形成体」)とから構成される、結晶性材料である。医薬品の共結晶は、塩および多形体などの、APIまたは薬物の従来の固形状の形態を超えた固形状態を工学的に作り出す機会を広げた。共結晶は、塩と異なり、それらの成分が中性状態にあり、非イオン的に相互作用するため、塩とは容易に区別される。加えて、共結晶は、多形体と異なり、結晶格子中に分子の異なる配置またはコンフォメーションを有する唯一の単一成分の結晶形態、非晶質の形態、ならびに溶媒和物および水和物の形態などの多成分の相を含むものと定義される。その代わり、共結晶は、共結晶と溶媒和物のどちらも格子中に2以上の成分を含有するという点で溶媒和物とより似ている。物理化学の観点から、共結晶は溶媒和物と水和物の特殊なケースであるとみなすことができ、ここで第2成分の形成剤は不揮発性である。従って、共結晶は、第2成分が不揮発性である溶媒和物の特殊なケースとして分類される。
【0049】
異性体:同じ配列(同じ分子式)で一緒に連結した同じ原子を含有するが、組織または配置は3次元的に異なる、立体異性分子または立体異性体。時にエナンチオマーとも称される光学異性体は、互いに重ね合わせることのできない鏡像体の分子である。光学活性に応じて、エナンチオマーは左型または右型と記載されることも多く、対の各メンバーはエナンチオモルフと称される(各エナンチオモルフは1のキラリティの分子である)。等しい量の2つのエナンチオモルフの混合物は、ラセミ混合物と称されることが多い。検出限界の範囲内で1つのエナンチオモルフだけを含む化合物は、エナンチオピュアな化合物と称される。光学異性体は、分子が1または複数のキラル中心を含む場合に生じ得る。幾何異性体は、通常、化学結合を中心とした回転ができないシス-トランス異性体をいう。シス-トランス異性体は二重または三重結合のある分子に見られることが多い。構造異性体は同じ原子を含有する(同じ分子式である)が、異なる順序で連結している。
【0050】
医薬
本発明のさらなる態様は、医薬として使用するために、または医薬の製造において使用するために本明細書にて開示される、化合物 C-OP-D(あるいはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、またはそれを含む共結晶)に関する。1の実施態様において、医薬は、例えば、がんの治療にて用いるためのものである。
【0051】
組成物
本発明は、化合物 C-OP-Dの塩、化合物 C-OP-Dを含む結晶または共結晶、化合物 C-OP-Dの多形体または非晶質の形態、または化合物 C-OP-Dの異性体を含む組成物に関する。特に、化合物 C-OP-Dの医薬的に許容される塩、化合物 C-OP-Dを含む医薬的に許容される結晶または共結晶、化合物 C-OP-Dの医薬的に許容される多形体、化合物 C-OP-Dの医薬的に許容される非晶質の形態、または化合物 C-OP-Dの医薬的に許容される異性体を含む組成物に関する。さらには特に、かかる組成物は医薬的に許容される組成物であり、少なくとも1つの医薬的に許容される溶媒、希釈剤、または担体をさらに含む。
【0052】
本発明のさらなる態様は、本明細書にて開示される、化合物 C-OP-D(あるいはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、またはそれを含む共結晶)を含む組成物に関する。
【0053】
上記した組成物のいずれも、医薬として使用することができ、あるいは医薬の製造において用いるためのものであり;かかる医薬は、例えば、がんの治療にて用いるためのものである。1の実施態様において、上記した組成物のいずれかは医薬的に許容される組成物であり、少なくとも1の医薬的に許容される溶媒、希釈剤または担体をさらに含む。
【0054】
かくして、本発明の組成物は、化合物 C-OP-D(あるいはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、またはそれを含む共結晶)の他に、適切な溶媒(プロドラッグ化合物を所望の程度まで可溶化させる能力を有する)、希釈剤(濃縮されたプロドラッグ化合物を所望の程度まで希釈する能力を有する)、または担体(プロドラッグ化合物を吸収、吸着または取り込む能力を有し、その後でプロドラッグ化合物を対象の体の細胞外コンパートメントにおいていずれかの速度で放出する能力を有する任意の化合物)を含み得る。該組成物は、あるいはまた、複数(すなわち、1よりも多い)のプロドラッグ化合物、あるいはその塩、結晶、多形体、または非晶質の形態、異性体、またはそれを含む共結晶を、あるいはその任意の組み合わせ(例えば、プロドラッグ化合物1+その塩、プロドラッグ化合物1+プロドラッグ化合物2、プロドラッグ化合物1+その塩+プロドラッグ化合物2等)を含んでもよい。特に、該溶媒、希釈剤または担体は、医薬的に許容される、すなわち、本発明の組成物を用いて治療されるべき対象への投与が許容されるものである。医薬的に許容される組成物を処方するのに役立つのは、例えば、任意の薬局方の本である。組成物は、頭蓋内、脊髄内、経腸的、非経口的、臓器内、腫瘍内、髄腔内、硬膜外等の投与を含む、任意の投与方法に適するように処方され得る。プロドラッグ化合物が投与される方法は、例えば、その薬物動態学的特性に応じて、製剤に応じて、治療されるべき対象の全体的な身体状態に応じて、および、例えば、治療医の判断に応じて変化し得る。
【0055】
がん
本発明の化合物 C-OP-D(あるいはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、またはそれを含む共結晶)、または該化合物を含む組成物は、薬物の放出によって治療可能な疾患を治療するのに特に適している。特に興味深いのは、がんまたは充実性腫瘍などの腫瘍である。「がん」には、例えば、乳がん、軟組織肉腫、結腸直腸がん、肝臓がん、小細胞、非小細胞などの肺がん、気管支がん、前立腺がん、腎臓がん、食道がん、卵巣がん、脳がん、および膀胱がん、結腸がん、頭頸部がん、胃がん、膀胱がん、非ホジキンリンパ腫、白血病、神経芽細胞腫、神経膠芽腫、間葉様腺がん、基底様腺がん、子宮内膜腺腫、(転移性)非小細胞肺腺腫、(転移性)黒色腫、粘膜上皮性肺腺腫、結腸腺腫、結腸腺がん、前立腺腺腫、膵管腺腫が含まれる。
【0056】
治療/治療的に効果的な量
本発明の化合物 C-OP-D(あるいはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、またはそれを含む共結晶)を用いて治療されるべき対象は、かかる治療を必要とする任意の哺乳動物であり得るが、とりわけ、ヒトである。治療は、[例えば、(原発性)腫瘍体積または(原発性)腫瘍質量を減少させる点で、および/または転移(例えば、転移の数および/または増殖)を減少または阻害する点で]疾患を退縮させること、予想される疾患の進行と比べて該疾患の進行が減っていること、または疾患が安定していること、すなわち、疾患が退縮でも進行でもないことをもたらし得る。これらはすべて治療の好ましい成果である。特に、該化合物 C-OP-D(あるいはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、またはそれを含む共結晶)の、または該組成物の効果的な量は、治療用量で重篤な白血球減少症または心臓毒性/心臓傷害性を惹起しない。重篤なヒト白血球減少症を可能とする定義は、WHO基準で定義されたグレード3の白血球減少症(1000~1900個の白血球/mL)またはグレード4の白血球減少症(1000個未満の白血球/mL)である。
【0057】
「治療」/「治療する」とは、治療せずに放置されたままの場合の、疾患または障害、またはその単一の徴候の進行または予測される進行と比べて、該疾患または障害、またはその単一の徴候の進行が任意の速度で減少、遅延または遅滞することをいう。このことは、治療モダリティがそれ自体で完全または部分的応答をもたらさないが(または何ら応答をもたらさないことさえあり得るが)、特に他の治療モダリティと組み合わせた場合に、(例えば、疾患または障害を療法に対してより感受的とすることにより)完全にまたは部分的に応答に対して寄与し得ることを意味する。より望ましいのは、該治療が、疾患または障害、あるいはその単一の徴候の進行が無/ゼロとなること(すなわち、「阻害」または「進行の阻害」)であるか、あるいは既に発症している疾患または障害、またはその単一の徴候であっても任意の速度で退縮させることである。「抑制/抑制する」は、その文脈において、「治療/治療する」の代替として使用され得る。「治療/治療する」もまた、疾患または障害に付随する1または複数の臨床徴候の、またはそのいずれか単一の徴候の有意な改善を達成することをいう。状況に応じて、有意な改善は定量的または定性的に評点化されてもよい。定性的基準が、例えば、患者の幸福度であってもよい。定量的評価の場合には、有意な改善は、典型的には、治療前の状況と比べて、10%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、95%以上、または100%の改善である。改善を評価する時間枠は観察される基準/疾患の型に依存するであろうし、当業者が決定し得る。
【0058】
「治療的に効果的な量」は、対象において疾患、障害、または望ましくない症状を治療または予防するための治療剤の量をいう。「効果的な量」なる語は、薬剤または薬剤を含む組成物(例えば、医薬または医薬組成物)の投与レジメンをいう。効果的な量は、一般に、接触または投与の方法に依存するであろうし、および/またはそれを調整する必要があろう。薬剤または薬剤を含む組成物の効果的な量は、有意または不必要な毒性作用(しばしば、最大耐用量、MTDとして表される)を引き起こすことなく、所望の臨床成果または治療効果を得るのに必要とされる量である。効果的な量を得るか、維持するために、薬剤または薬剤を含む組成物は、所望の時間スパン/治療期間にわたって効果的な量を得るか、または維持するように、単回投与として、または複数回投与にて投与されてもよい(単回投与に関する説明を参照のこと)。効果的な量は、治療する必要のある症状の重篤度に応じてさらに変化してもよく;これは哺乳動物または患者の健康または身体状態に依存するかもしれず、通常、何が効果的な量であるかを確立するためには、治療している医者、または医師の評価が必要とされるであろう。効果的な量は、さらに、異なる型の接触または投与を組み合わせることで得られるかもしれない。
【0059】
一般に上記の態様および実施態様は、1または複数の治療用化合物をそれを必要とする対象に、すなわち治療を必要とする対象に投与することを含んでもよい。一般に、記載された臨床応答を得るために、(治療的に)効果的な量の治療用化合物がその必要とされる対象に投与される。「投与する」とは、薬剤(例えば、治療用化合物)または該薬剤を含む組成物(医薬または医薬組成物など)と、該薬剤または組成物が接触する対象(例えば、細胞、組織、器官、体腔)との間で相互作用をもたらす、任意の接触の方法を意味する。投与は、例えば、非経口投与(静脈内、筋肉内、皮下)、髄腔内投与、脳内投与、硬膜外投与、心内投与、骨内投与、腹腔内投与、(ミニ)ポンプ制御投与、がんまたは腫瘍の近傍における投与、カテーテルまたは末梢静脈挿入式中心カテーテルまたは経皮的留置式中心カテーテルを介する投与とすることができ、例えば、ボーラス投与を含む。薬剤または組成物と、対象との間の相互作用は、薬剤または組成物を投与した直後に、またはほとんどすぐ後に開始して起こり得るか、(薬剤または組成物を投与した直後に、またはほとんどすぐ後に開始して)長期間にわたって起こり得るか、または薬剤または組成物の投与時間に対して遅延させることができる。より具体的には、「接触」は効果的な量の薬剤または薬剤を含む組成物の対象への送達をもたらす。
【0060】
一般に、薬理学的化合物の単回投与は、細胞、器官および/または身体からそれが徐々に取り除かれるため、効果が一過性であるに至り、そのことは化合物の薬物動態学的/薬物動力学的挙動に反映される。かくして、治療剤の所望のレベルに応じて、薬理学的化合物の2回またはそれ以上(複数回)の投与が必要とされ得る。
【0061】
組み合わせ/併用療法
本明細書にて言及される「組み合わせ」または「いずれかの方法での組み合わせ」または「いずれか適切な方法での組み合わせ」は、2種の(またはそれ以上の)治療モダリティを投与する任意の順序をいうものとし、すなわち、2種の(またはそれ以上の)治療モダリティの投与は同時に、または任意の時間にわたって相互に別々に起こり得;および/または本明細書にて言及される「組み合わせ」、「いずれかの方法での組み合わせ」または「いずれか適切な方法での組み合わせ」は、2種の(またはそれ以上の)治療モダリティを組み合わせた、または別々の製剤をいうことができ、すなわち、2種の(またはそれ以上の)治療モダリティが、個々に、別々のバイアルで、または(他の適切な)容器にて提供され得、あるいは同じバイアルまたは(他の適切な)容器にて組み合わさって提供され得る。同じバイアルまたは(他の適切な)容器中に組み合わせた場合、2種の(またはそれ以上の)治療モダリティは、各々、単一チャンバーのバイアル/容器の同じバイアル/容器のチャンバーにて、あるいは複数のチャンバーのバイアル/容器の同じバイアル/容器のチャンバーにて提供され得るか;または各々が複数のチャンバーのバイアル/容器の別個のバイアル/容器のチャンバーにて提供され得る。本発明の治療モダリティは、式:C-OP-Dで示される化合物(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)および免疫チェックポイント阻害剤である。
【0062】
本明細書にて開示される化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)と、化学療法剤との、および/または1または複数のアルキル化抗腫瘍剤との、および/または1または複数の抗代謝物との、および/または1または複数の微小管阻害剤との、および/または1または複数のトポイソメラーゼ阻害剤との、および/または1または複数の細胞毒性抗生物質との、および/または1または複数の(生物学的)抗がん剤(抗体など)との、および/または1または複数の免疫療法剤との組み合わせが、本発明の1の態様である。
【0063】
本発明に係る化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)を併用療法に含めることも想定される。特に、腫瘍またはがんの治療では、これは、複合したモダリティ化学療法、すなわち、抗がん剤の化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)と、放射線療法(直接的な放射線照射によるか、同位体標識の抗体または抗体フラグメントの投与を介するかのいずれか)または外科的手術などの他のがん治療との使用であり得る。これはまた、併用化学療法、すなわち、患者を多くの異なる薬物(ここで該薬物は、その作用機序、およびその副作用の点で異なることが好ましい)で治療することでもあり得る。かかる併用化学療法において、異なる薬物が、同時に(ただし、必ずしも単一の組成物中で組み合わせる必要はない)または任意の順序で互いに分離して投与され得る。併用化学療法の利点は、任意の1の薬剤に対する耐性の発達する機会を最小限とすることである。さらなる利点は、個々の薬物が、各々、低用量で使用され、それで全体としての毒性を下げることができることである。
【0064】
かくして、本発明に係る化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)、またはかかる化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)を含む組成物が、かくして、単独療法として、または併用化学療法の治療、もしくは複合したモダリティ化学療法の治療の一部として疾患(例えば、がん)の治療用の医薬を製造するためなどの、医薬を製造するための(方法にて)使用され得る。
【0065】
本発明に係る化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)、またはかかる化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)を含む組成物が、かくして、単独療法として、または併用化学療法の治療、もしくは複合したモダリティ化学療法の治療の一部として疾患(例えば、がん)を治療するための(方法にて)使用され得る。疾患の治療方法において、化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)、またはそれを含む組成物は、必要とされる対象に投与され、それで該疾患を治療する。特に、化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)の、またはそれを含む組成物の治療的に効果的な用量、または治療的に効果的な用量レジメンは、必要とされる対象に投与され、それで該疾患を治療する。一般に、必要とされる対象は、該疾患に罹患しているか、または該疾患と診断された哺乳動物などの対象である。
【0066】
より一般的には、併用化学療法と関連して、本発明に係る抗がん剤の化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)は、1または複数のアルキル化抗腫瘍剤と、および/または1または複数の抗代謝物と、および/または1または複数の微小管阻害剤と、および/または1または複数のトポイソメラーゼ阻害剤と、および/または1または複数の細胞毒性抗生物質と、および/または1または複数の(生物学的)抗がん剤(抗体など)と組み合わせることができる。適用できるならば、1の実施態様において、1または複数のこれらが本発明に係るプロドラッグ化合物(またはその塩)に含まれ得る。もう一つ別の実施態様において、本発明に係るプロドラッグ化合物は、Dが該プロドラッグ化合物にて存在する場合、遊離した薬物 Dと併用されない。あるいはまた、本発明に係るプロドラッグ化合物は、Dとは異なる1または複数のアルキル化抗腫瘍剤、および/またはDとは異なる1または複数の抗代謝物、および/またはDとは異なる1または複数の抗微小管剤、および/またはDとは異なる1または複数のトポイソメラーゼ阻害剤、および/またはDとは異なる1または複数の細胞毒性抗生物質と組み合わせることができ、ここでDは本明細書にて開示されるプロドラッグ化合物 C-OP-Dの一部である。
【0067】
免疫療法はがん療法の有望な新規の領域であり、数種の免疫療法が、前臨床的に、ならびに臨床試験にて評価されており、有望な活性が証明されている(Callahanら、2013、J Leukoc Biol 94:41-53;Pageら、2014、Annu Rev Med 65:185-202)。しかしながら、すべての患者が免疫チェックポイント遮断に対して感受的であるわけではなく、時にPD-1またはPD-L1遮断抗体が腫瘍の進行を促進する。この目的に対して、化学療法を含むコンビナトリアルがん治療は、腫瘍生物学の異なる要素に作用することでより高い割合で疾患の制御を達成し、相乗的な抗腫瘍作用を得ることができる。現在では、特定の化学療法が、免疫原性細胞死を誘発することによって、がん免疫編集においてエスケープを促進することによって、腫瘍免疫を増大させることが認められている。本発明に係る任意の化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)は、限定されないが、免疫チェックポイント拮抗剤などの免疫療法剤と組み合わせることができる。本明細書でいうところの免疫チェックポイント拮抗剤または阻害剤には、細胞表面タンパク質細胞毒性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、プログラムされる細胞死タンパク質-1(PD-1)およびその個々のリガンドが含まれる。CTLA-4はその共受容体B7-1(CD80)またはB7-2(CD86)に結合し;PD-1はそのリガンドPD-L1(B7-H10)およびPD-L2(B7-DC)に結合する。他の免疫チェックポイント阻害剤には、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(またはCD276)、B7-H4(またはVTCN1)、BTLA(またはCD272)、IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)、KIR(キラー細胞免疫グロブリン様受容体)、LAG3(リンパ球活性化遺伝子-3)、NOX2(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)オキシダーゼイソフォーム2)、TIM3(T-細胞免疫グロブリンドメインおよびムシンドメイン3)、VISTA(T細胞活性化のV-ドメインIg抑制剤)、SIGLEC7(シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン7、またはCD328)およびSIGLEC9(シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン9、またはCD329)が含まれる。特定の実施態様において、免疫チェックポイント拮抗剤または阻害剤は、(上記にて説明した)組み合わせまたは併用療法にて含めるために選択される。
【0068】
特に、免疫原性細胞死の誘発能を有する本発明に係る任意の化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)は、免疫療法剤と組み合わせることができる。免疫原性細胞死を誘発することが知られている薬物部分 Dには、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、マホスファミド、ミトキサントロン、オキサリプラチン、およびパツピロンが含まれる(Bezuら、2015、Front Immunol 6:187)。
【0069】
薬物のドキソルビシン(アドリアマイシンまたはルーベックスなどの商品名でも知られる)は、一般的に、いくつかの白血病およびホジキンリンパ腫、ならびに膀胱がん、乳がん、胃がん、肺がん、卵巣がん、甲状腺がん、軟組織肉腫、多発性骨髄腫等などの多数の型のがんを治療するのに使用される。ドキソルビシンは異なる併用療法にてさらに使用される。ドキソルビシン含有療法には、ACまたはCA(アドリアマイシン、シクロホスファミド)、TAC(タキソテール、AC)、ABVD(アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)、BEACOPP(ブレオマイシン、エトポシド、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、シクロホスファミド、オンコビン(ビンクリスチン)、プロカルバジン、プレドニゾン)、CHOP(シクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)、FACまたはCAF(5-フルオロウラシル、アドリアマイシン、シクロホスファミド)、MVAC(メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチン)、CAV(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン)およびCAVE(CAV、エトポシド)、CVAD(シクロホスファミド、ビンクリスチン、アドリアマイシン、デキサメタゾン)、DT-PACE(デキサメタゾン、タリドミド、シスプラチンまたはプラチノール、アドリアマイシン、シクロホスファミド、エトポシド)、m-BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、アドリアマイシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾン)、MACOP-B(メトトレキサート、ロイコボリン、アドリアマイシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン)、Pro-MACE-MOPP(メトトレキサート、アドリアマイシン、シクロホスファミド、エトポシド、メクロレタミン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾン)、ProMACE-CytaBOM(プレドニゾン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、シタラビン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、メトトレキサート、ロイコボリン)、スタンフォードV(ドキソルビシン、メクロレタミン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、プレドニゾン)、DD-4A(ビンクリスチン、アクチノマイシン、ドキソルビシン)、VAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン)、Regimen I(ビンクリスチン、ドキソルビシン、エトポシド、シクロホスファミド)およびVAPEC-B(ビンクリスチン、ドキソルビシン、プレドニゾン、エトポシド、シクロホスファミド、ブレオマイシン)が含まれる。ドキソルビシンを含む併用化学療法の他にも、BEP(ブレオマイシン、エトポシド、プラチナ剤(シスプラチン(プラチノール))、CAPOXまたはXELOX(カペシタビン、オキサリプラチン)、CBV(シクロホスファミド、カルムスチン、エトポシド)、FOLFIRI(フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン)、FOLFIRINOX(フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチン)、FOLFOX(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン)、EC(エピルビシン、シクロホスファミド)、ICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド(VP-16))およびIFL(イリノテカン、ロイコボリン、フルオロウラシル)などの多数の他の併用化学療法がある。ドキソルビシンとシロリムス(ラパマイシン)との組み合わせは、マウスのAkt陽性リンパ腫の治療において、Wendelら、2004(Nature 428, 332-337)にて開示されている。これらの併用療法のいずれにおいても、ドキソルビシンは、本明細書にて開示される化合物 C-OP-D(あるいはその塩、結晶、多形体または異性体、またはそれを含む共結晶)と置き換えることができ、この場合にはDがドキソルビシンである。
【0070】
さらにまた、本発明に係る抗がん剤の化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)(単独であるか、またはすでに併用化学療法の、もしくは複合したモダリティ療法の一部としてであるかにかかわらず)と、細胞増殖抑制剤以外の化合物とを含む、併用療法も想定され得る。かかる他の化合物には、がんを治療するのが承認されている、またはがんの治療用に開発されている任意の化合物が含まれる。特に、かかる他の化合物には、アレムツズマブ(慢性リンパ性白血病)、セツキシマブ(結腸直腸がん、頭頚部がん)、デノスマブ(充実性腫瘍の骨転移)、ゲムツズマブ(急性骨髄性白血病)、イピリムマブ(黒色腫)、オファツムマブ(慢性リンパ性白血病)、パニツムマブ(結腸直腸がん)、リツキシマブ(非ホジキンリンパ腫)、トシツモマブ(非ホジキンリンパ腫)およびトラスツズマブ(乳がん)などのモノクローナル抗体が含まれる。他の抗体には、例えば、アバゴボマブ(卵巣がん)、アデカツムマブ(前立腺および乳がん)、アフツズマブ(リンパ腫)、アマツキシマブ、アポリズマブ(血液がん)、ブリナツモマブ、シクツムマブ(充実性腫瘍)、ダセツズマブ(血液がん)、エロツズマブ(多発性骨髄腫)、ファルレツズマブ(卵巣がん)、インテツムマブ(充実性腫瘍)、マツズマブ(結腸直腸、肺および胃がん)、オナルツズマブ、パルサツズマブ、プリツムマブ(脳がん)、トレメリムマブ、ウブリツキシマブ、ベルツズマブ(非ホジキンリンパ腫)、ボツムマブ(結腸直腸腫瘍)、ザツキシマブおよびWO 2006/099698に記載される抗胎盤成長因子抗体が含まれる。かかる併用療法の例には、例えば、CHOP-R(CHOP(上記を参照のこと)+リツキシマブ)、ICE-R(ICE(上記を参照のこと)+リツキシマブ)、R-FCM(リツキシマブ、フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン)およびTCH(パクリタキセル(タキソール)、カルボプラチン、トラスツズマブ)が含まれる。
【0071】
アルキル化抗腫瘍剤の例には、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミドおよびブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、N-ニトロソ-N-メチルウレア(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(MeCCNU)、ホテムスチンおよびストレプトゾトシン)、テトラジン(例えば、ダカルバジン、ミトゾロミドおよびテモドロミド)、アジリジン(例えば、チオテパ、マイトマイシンおよびジアジコン(AZQ))、シスプラチンおよび誘導体(例えば、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチン)、および非典型的なアルカリ化剤(例えば、プロカルバジンおよびヘキサメチルメラミン)が含まれる。
【0072】
抗代謝物の亜型には、抗ホレート(例えば、メトトレキセートおよびペメトレキセド)、フルオロピリミジン(例えば、フルオロウラシル、カペシタビンおよびテガフール/ウラシル)、デオキシヌクレオシドアナログ(例えば、シタラビン、ゲムシタビン、デシタビン、ビダーザ、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビンおよびペントスタチン)およびチオプリン(例えば、チオグアニンおよびメルカプトプリン)が含まれる。
【0073】
抗微小管剤には、ビンカアルカロイド亜型(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンおよびビンフルニン)およびタキサン亜型(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)が含まれる。他の抗微小管剤には、ポドフィロトキシンが含まれる。
【0074】
トポイソメラーゼ阻害剤には、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、エキサテカン、およびイリノテカンの活性代謝物であるSN-38)、およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、ノボビオシン、メルバロン、およびアクラルビシン)が含まれる。
【0075】
細胞毒性薬には、さらには、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、アクラルビシンおよびミトキサントロン)、ならびにアクチノマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシンおよびマイトマイシンを含む他の薬物が含まれる。
【0076】
他の抗がん薬には、パルボシクリブ(PD-0332991)、リボシクリブまたはアベマシクリブなどのCDK4/6阻害剤が含まれる。
【0077】
他の抗がん薬には、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、タラゾパリブ、ルカパリブ、ベリパリブ、CEP-9722、BSI-201、INO-1001、またはPJ34などのポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害剤が含まれる。
【0078】
本発明に係る任意の抗がん剤の化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)は、(単独であるか、またはすでに併用化学療法の、もしくは複合したモダリティ療法の一部としてであるかにかかわらず)さらに、連結されている、がん関連のモノクローナル抗体の、薬物活性化酵素への適用を含む、抗体誘導性酵素プロドラッグ療法(ADEPT)に含めることができる。その後の非毒性剤の全身性投与はその毒性薬への変換をもたらし、その結果として、悪性細胞を標的とし得る、細胞毒性作用が得られる(Bagshaweら、(1995) Tumor Targeting 1, 17-29)。
【0079】
さらには、本発明に係る任意の抗ガン剤の化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)は(単独であるか、またはすでに併用化学療法の、もしくは複合したモダリティ療法の一部としてであるかにかかわらず)、化学療法の間に生じ得る、(多)薬物耐性の反転能を有する1または複数の薬剤((M)DRリバーサーまたは(M)DR拮抗剤)と組み合わせることができる。かかる薬剤には、例えば、ロペラミド(Zhouら、2011, Cancer Invest 30, 119-125)が含まれる。もうひとつ別のかかる組み合わせには、プロドラッグ化合物を酸化鉄のナノ粒子などのナノ粒子に担持させること(Kievit et al. 2011、J Control Release 152、76-83)またはリポソームに担持させることが含まれる。リポソームに担持される薬物の例として、ドキソルビシン(ドキシル、カエリキシまたはミオセット(Doxil、CaelyxまたはMyocet)の商品名でも知られる、塩酸ドキソルビシンリポソーム)、ダウノルビシン(ダウノソーム(DaunoXome)の商品名で知られる)およびパクリタキセル(Garcionら、2006, Mol Cancer Ther 5, 1710-1722)が挙げられる。
【0080】
本発明に係る化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)、またはかかる化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)を含む組成物は、かくして、医薬、例えば、疾患(例えば、がん)を治療するための医薬を製造するために、単剤療法として、あるいは併用化学療法の治療または複合したモダリティ化学療法の治療の一部として使用され得る。本発明に係る化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)、またはかかる化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)を含む組成物は、かくして、疾患(例えば、がん)を治療するために、単剤療法として、あるいは併用化学療法の治療または複合したモダリティ化学療法の治療の一部として(治療方法にて)使用され得る。かかる治療のいずれも、さらには、薬物耐性拮抗剤を含む治療と組み合わせられ得る。
【0081】
その実施態様において、本発明に係る化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)、またはかかる化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)を含む組成物は、併用化学療法の治療または複合したモダリティ化学療法の治療において適用され、その薬物部分 Dは、併用化学療法の治療または複合したモダリティ化学療法の治療において細胞毒性、細胞増殖抑制、または抗がんの薬物として効果的または治療的に効果的である。
【0082】
C-OP-Dの合成または生成
さらなる態様において、本発明は化合物 C-OP-Dを合成または生成する方法に関する。
一般に、化合物 C-OP-Dを生成する方法は、薬物 D、テトラペプチド部分 OP、およびキャップ化基 Cを連結する工程を含む、方法であって、ここでD、OP、およびCの連結により、化合物 C-OP-Dが得られ、薬物 Dと、テトラペプチド部分 OPとの間の連結、および/またはキャップ化基 Cと、テトラペプチド部分 OPとの間の連結が直接的であるか、またはリンカーまたはスペース基を介するかである、方法である。
【0083】
特定の実施態様において、化合物 C-OP-Dを合成または生成するための方法であって、ここで、
- 薬物 Dをキャップ化されたオリゴペプチド部分の複合体C-OPと連結し、化合物 C-OP-Dを得るか;または
- 薬物 Dをテトラペプチド部分 OPと連結し、キャップ化基 Cをそのテトラペプチド部分-薬物の複合体OP-Dと連結し、化合物 C-OP-Dを得るか;または
- 薬物 Dをテトラペプチド部分 OPの中間体と連結し、そのテトラペプチド部分の中間体を伸長させ、キャップ化基 Cをそのテトラペプチド部分-薬物の複合体OP-Dと連結し、化合物 C-OP-Dを得るか;または
- 薬物 Dをテトラペプチド部分 OPの中間体と連結し、そのテトラペプチド部分の中間体をキャップ化基 Cが既に結合しているテトラペプチド部分の残基で伸長させ、化合物 C-OP-Dを得るか;または
- 薬物 Dをテトラペプチド部分 OPの中間体と連結し、そのテトラペプチド部分の中間体を1または複数の工程にて伸長させ、そのうちの1の工程がキャップ化基 Cが既に結合しているアミノ酸で伸長させ、化合物 C-OP-Dを得るか;または
- 上記のいずれかにおいて、薬物 Dを、リンカーまたはスペース基を介して、複合体のC-OPに、テトラペプチド部分 OPに、またはテトラペプチド部分 OPの中間体にカップリングさせるか;または
- 上記のいずれかにおいて、リンカーまたはスペース基にカップリングした薬物 Dそれ自体を、そのリンカーまたはスペース基を介して、複合体のC-OPに、テトラペプチド部分 OPに、またはテトラペプチド部分 OPにカップリングさせるか;または
- 上記のいずれかにおいて、複合体のC-OPに、テトラペプチド部分 OPに、またはテトラペプチド部分 OPの中間体にカップリングさせたリンカーまたはスペース基それ自体を薬物 Dにカップリングさせ、ここで該リンカーまたはスペース基が構造的に一方の複合体のC-OP、テトラペプチド部分 OP、またはテトラペプチド部分 OPの中間体と、他方の薬物 Dとの間にあるか;または
- キャップ化基 Cをテトラペプチド部分 OPに直接的または間接的に連結し、複合体のC-OPを薬物 Dに直接的または間接的に連結して化合物 C-OP-Dを得るか;または
- キャップ化基 Cをテトラペプチド部分 OPの中間体に直接的または間接的に連結し、テトラペプチド部分の中間体を伸長させ、薬物 Dを複合体のC-OPに直接的または間接的に連結させて化合物 C-OP-Dを得る
方法である。
【0084】
化合物 C-OP-Dを生成する上記の方法において、1の工程において
- OPを合成する間に、キャップ化基 Cがテトラペプチド部分 OPに導入されてもよく;または
- OPを合成する間に、リンカーまたはスペース基がテトラペプチド部分 OPに導入されてもよく、または(テトラペプチド部分 OPと連結させる前に)薬物 D上に導入される。
【0085】
化合物 C-OP-Dを生成するための上記したいずれの方法も、化合物 C-OP-Dを精製する工程をさらに含んでもよい。
【0086】
化合物 C-OP-Dを生成するための上記したいずれの方法も、化合物 C-OP-Dの塩、結晶、共結晶、多形体または非晶質の形態を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0087】
上記したように、テトラペプチド部分 OPと、薬物 Dおよび/またはキャップ化基 Cとの当該連結は、直接的であっても、あるいはリンカーまたは自己犠牲性もしくは自己排除性スペーサーなどのスペース基を介して間接的であってもよい。プロドラッグ化合物を精製する解決方法は、明らかに、薬物の、および/またはキャップ化基の、および/またはテトラペプチド部分 OPの特性に依存するであろう。当業者であれば、利用可能である多数の精製技術から選択して、本発明に係る任意の可能な化合物に適する精製方法を設計することができるであろう。
【0088】
キット
本発明はさらに、本発明に係る化合物 C-OP-D(またはその塩、結晶、多形体、異性体または非晶質の形態、あるいはそれを含む共結晶)を含むか、またはかかるプロドラッグ化合物またはその塩を含む組成物を含む、容器からなるキットに関する。かかるキットは、さらに、(本発明に係る化合物を保持する)同じ容器内に、または1または複数の別個の容器内に、抗体または(例えば、上記のような)そのフラグメントなどの1または複数のさらなる抗がん薬を含んでもよい。別法として、または加えて、かかるキットは、さらに、(本発明に係る化合物を保持する)同じ容器内に、または1または複数の別個の容器内に、1または複数の薬物耐性拮抗剤を含んでもよい。かかるキットの他の任意の構成要素には、本発明に係る化合物を含む療法の成功を予後、予測または決定する能力を有する1または複数の診断剤;使用説明書;[本発明の(医薬的に許容される)組成物を生成または処方するためなどの]医薬的に許容される滅菌担体、賦形剤、または希釈剤を入れる1または複数の容器;ADEPT療法のための薬剤を入れる1または複数の容器等が含まれる。
【0089】
他の定義
本発明は、特定の実施態様に関して、特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲におけるいかなる引用符号も範囲を限定するものと解釈すべきではない。記載の図面は概略図に過ぎず、非限定的である。図面にて、構成要素のいくつかの大きさは、例示を目的とするため、誇張され、スケール通りに描かれていない可能性がある。本明細書および特許請求の範囲において「含む」なる語が使用される場合、それは他の要素または工程を排除するものではない。単数形の名詞に言及して、不定冠詞または定冠詞、例えば、「a」または「an」、「the」が用いられる場合、これは、他の何かが特に記載されない限り、その複数の名詞を包含するものである。さらには、明細書および特許請求の範囲における第1、第2および第3等の用語は、類似する要素を区別するために使用されており、必ずしも連続的または時系列の順序を記載するために記載されるものではない。こうして使用される用語は適切な環境下で互換的であり、本明細書に記載の本発明の実施態様は本明細書にて記載または説明される以外の順序で操作可能であることを理解すべきである。
【0090】
本明細書にて上記および下記される用語または定義は、発明の理解を助けるためにのみ提供される。特記されない限り、本明細書にて使用される用語はすべて、当業者にとって同じ意義を有する。分子生物学に関して、実践する者は、特に、当該分野の定義および用語について、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Press, Plainsview, New York(2012);およびAusubelら、current Protocols in Molecular Biology(Supplement 100)、John Wiley & Sons, New York(2012)を対象とする。本明細書にて提供される定義はいずれも当業者によって理解される範囲を下回るものと解釈すべきではない。
【0091】
本明細書にて使用される「配列番号:Xで定義される」なる語は、配列番号:Xにて付与されるアミノ酸またはヌクレオチドの配列からなる生物学的配列をいう。例えば、配列番号:Xにて/により定義される抗原は、配列番号:Xにて付与されるアミノ酸配列からなる。さらなる例が、配列番号:Xを含むアミノ酸配列であり、それは配列番号:Xにて付与されるアミノ酸配列よりも長いが、全体として配列番号:Xにて付与されるアミノ酸配列を含む、アミノ酸配列(ここで、配列番号:Xにて付与されるアミノ酸配列は、より長いアミノ酸配列のN-末端またはC-末端に位置し得るか、またはより長いアミノ酸配列に埋め込まれ得る)をいうか、または配列番号:Xにて付与されるアミノ酸配列からなるアミノ酸配列をいう。
本明細書の上記および下記にて引用される参考文献はすべて、出典明示によりそのすべてが本明細書に組み込まれる。
【0092】
実施例
略語:
Dox:ドキソルビシン;MMAE:モノメチルアウリスタチンE(モノメチルバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-ノルエフェドリン);TNBC:トリプルネガティブ乳がん;CrC:結腸直腸がん;GBM:多形性膠芽腫;PrC:前立腺がん;PaC:膵臓がん;OvC:卵巣がん;NSCLC:非小細胞肺がん;hiPSC:ヒト人工多能性幹細胞;PhAc:ホスホノアセチル;ALGP(配列番号:3):アラニル-ロイシル-グリシル-プロリル(Ala Leu Gly Pro);ALLP(配列番号:1):アラニル-ロイシル-ロイシル-プロリル(Ala Leu Leu Pro);ALKP(配列番号:2):アラニル-ロイシル-リシル-プロリル(Ala Leu Lys Pro);PABC:p-アミノベンジルカルバメート;aIC50:絶対IC50(細胞の50%を死滅させるのに必要な濃度);DMF:N,N-ジメチルホルムアミド;DIC:N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド;HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール;DIEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン;TMSBr:臭化トリメチルシリル
【0093】
実施例1. オーリスタチンを含む、およびドキソルビシンを含むプロドラッグ化合物の化学合成、および中間体の化学合成
オーリスタチンを含む、およびドキソルビシンを含むプロドラッグ化合物の化学合成を下記に示す。
テトラペプチド部分 OPとしてALGP(配列番号:3)を、キャップ化基を有しないか、キャップ化基 Cとしてスクシニルまたはホスホノアセチルを有し、薬物 Dとしてドキソルビシンを含むプロドラッグの合成が、WO 2014/102312の実施例1に記載されている。当業者であれば、これらの化合物の合成が、他のテトラペプチド部分(特に、テトラペプチド部分ALLP(配列番号:1)、APKP(配列番号:2))を用いて類似する化合物の化学合成を可能とすることを理解するであろう。テトラペプチド部分 OPとしてALGP(配列番号:3)を、キャップ化基 Cとしてホスホノアセチルを、および薬物 Dをメイタンシン、ゲルダナマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、カンプトテシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、メトトレキサート、アミノプテリン、およびアムルビシンのいずれかで含む、プロドラッグの合成が、WO 2014/102312の実施例16にて記載されている。
【0094】
リンカーまたはスペース基 PABC(p-アミノベンジルオキシカルバメート;あるいはまた、p-アミノベンジルオキシカルボニル)が存在し、テトラペプチド部分 OPと薬物 Dとの間に導入される場合、PABCは、OPのタンパク質分解除去の後に、自発的1,6-ベンジル脱離機構を介して取り除かれる。PABCのオルトバージョンも同様に使用でき、自発的1,4-脱離を介して取り除かれる。PABCリンカーの導入が、下記にて、薬物 Dがオーリスタチンであるケースで説明される。薬物 Dがドキソルビシンである、テトラペプチドのプロドラッグにおいても同様に導入され得る(例えば、Elsadekら、2010, ACS Med Chem Lett 1:234-238を参照のこと)。
【0095】
化合物1:PhAc-ALGP-PABC-MMAE[化合物2]
【0096】
【化1】
[化合物1]MMA-E(本明細書にて互換的にMMAEまたはオーリスタチンとも称される)
MMA-Eは市販のサプライヤーより購入した。
【0097】
中間体1の製造:
【化2】
前に記載される標準的Fmocペプチド合成を用いてBoc-Ala-Leu-Gly-Proを(5または20ミリモルのスケールで)製造した。
【0098】
中間体2の製造:
【化3】
中間体1(1.5g、3.29ミリモル)のDCM(10mL)およびMeOH(5mL)中溶液に、EEDQ(1.63g、6.57ミリモル、2当量)および4-アミノベンジルアルコール(485.56mg、3.94ミリモル、1.2当量)を添加した。混合物を15℃で16時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を分取性HPLCに付して精製し、ベンジルアルコール化合物(0.6g、1.07ミリモル、収率32.5%)を得た。
上記の化合物(0.6g、1.07ミリモル)のDMF(5mL)中溶液に、ビス(4-ニトロフェニル)カルボネート(6当量)およびDIEA(6当量)を加えた。溶液を15℃で16時間撹拌した。反応混合物をその後で減圧下にて濃縮し、残渣を分取性HPLCに付して精製し、中間体8を白色の固体として得た(0.75g、収率96.4%)。
【0099】
化合物1を中間体2とMMA-Eとから得(750mg、収率56%、白色固体)、つづいて化合物1については同様の操作を用いることでBoc基の脱保護に付した(490mg、収率71%、白色固体)。
外観:白色固体
HPLCによる純度:>96%
保持時間:12.154分
質量分析:1205.6[M+H]
【0100】
化合物2:PhAc-ALGP-PABC-MMAE
【化4】
[化合物2]PhAc-ALGP-PABC-MMAE
化合物2は、化合物1を2-ホスホノ酢酸と、DMF中にてHATU/DIEAを用いてカップリングさせることで得られた。化合物2は分取性HPLCで精製した後に収率19%で単離された。
外観:白色固体
HPLCによる純度:>96%
保持時間:14.950分
質量分析:1327.5[M+H]
【0101】
化合物3:PhAc-ALLP-ドキソルビシン
【化5】
[化合物3]PhAc-ALLP-ドキソルビシン
【0102】
ペプチド ジエチル-PhAc-ALLP(PhAc:ホスホノアセチル部分)は、標準的な固相Fmocペプチド(CTC樹脂、HBTUカップリング(Pro、Leu、Leu、Ala)またはDICカップリング(2-(ジエトキシホスホリル)酢酸))によって合成された。
【0103】
次にプロリン残基をジクロロメタン中にてN-ヒドロキシスクシイミド(HOSu)を用いて活性化し、ジエチルホスホニルアセチルエステル(EtO)P(O)-CH-C(O)NH-ALAP-OSuを得る。ついで、ホスホニル酸部分をDCM中0.5M TMsBrで一夜にわたって脱保護に付す。冷メチル-tert-ブチルエーテルで沈殿させることで(HO)P(O)-CH-C(O)NH-ALLP-OSuを得る。乾燥後、塩酸ドキソルビシンをDIEAの存在下にてDCM中で活性化ペプチドとカップリングさせる。3時間反応させた後、混合物を減圧下で濃縮し、その後で残渣を分取性HPLCに付して精製し、表記化合物を赤色の粉末として得た(純度:95%)。
【0104】
化合物4:PhAc-ALLP-PABC-MMAE
【化6】
[化合物4]PhAc-ALLP-PABC-MMAE
【0105】
ペプチド ジエチル--PhAc-ALLP-OHを実施例3に記載される標準的な固相反応で製造した。
【0106】
反応スキーム:
【化7】
【0107】
その後で、4-アミノベンジルアルコールをDMF中にてDICおよびHOBtを用いて上記のペプチドにカップリングさせる。次に、ビス(4-ニトロフェニル)カルボネートおよびDIEAを上記の中間体のDMF中溶液に加える。ジエチル-ホスホニオアセチルエステルをDMF中にてTMsBrによる脱保護に供し、最後にオーリスタチンEをDIEAを用いてDMF中にて上記のカルボネート誘導体と縮合させる。その最終化合物を分取性HPLCに付して精製し、最終的にナトリウム塩に変換する。
外観:白色固体
HPLCによる純度:98.8%
保持時間:12.154分
質量分析:692.7[M+2H]2+
【0108】
実施例2. ALLPテトラペプチドを含む、およびAPKPテトラペプチドを含む、ドキソルビシンのプロドラッグ化合物の評価
テトラペプチドALLPまたはAPKPを含むドキソルビシンのプロドラッグを合成し、種々のがん適応症でのそれらのインビトロ効能について分析し(図1~8および表1)、この結果をWO2014/102312に記載されているPhAc-ALGP-Doxの分子と一緒に考察した。親薬物分子(遊離ドキソルビシン)の効能は、そのプロドラッグバージョンと比較した場合に、適応症に応じて、平均して4.5~608倍高かった。PhAc-ALLP-DoxおよびPhAc-APKP-Doxは共にマイクロモルの範囲内でがん細胞を効果的に標的とすることができた。PhAc-APKP-Doxが大多数のがん細胞系に対して同様のマイクロモルの効能を示したのに対して、PhAc-ALLP-Doxは、親薬物の遊離ドキソルビシンと比べて、黒色腫、卵巣がん、結腸直腸がん、および膠芽腫(GBM)にて最も望ましい等強度(equipotency)でさらなる適応症特異的細胞毒性を発揮した。
【0109】
表1. 種々のがん適応症におけるALLP-およびAPKP-テトラペプチドを含むドキソルビシンのプロドラッグ化合物のインビトロ効能
細胞を、その最適細胞密度(5.000~15.000細胞/ウェル)に従って、96ウェルプレートに播種した。絶対IC50値(μM)は、72時間連続して薬物に曝露した後の細胞生存率の評価に基づく(WST-1)。100μM~2.048nMの範囲にある、10点の連続した滴定のシグモイド-4PL非線形フィッティングを用いてaIC50を外挿した。値は3重重複で測定した平均値で表す。
【0110】
【表19】
【表20】
【0111】
利用可能ながん細胞株において最大有効性を評価した(表2)。その高い効能と一致して、PhAc-ALLP-Doxは、GBM、黒色腫、OvC、およびCrCにおいて最も顕著な細胞毒性を示し、極めて効果的であった(表2)。
【0112】
表2. 種々のがん適応症におけるALLP-およびAPKP-テトラペプチドを含むドキソルビシンのプロドラッグ化合物の最大有効性
細胞を、その最適細胞密度(5.000~15.000細胞/ウェル)に従って、96ウェルプレートに播種した。細胞生存率は、72時間連続して薬物に曝露した後に評価した(WST-1)。100μM~2.048nMの範囲にある、10点の連続した滴定のシグモイド-4PL非線形フィッティングを用いた。最大有効性は100μMでの細胞毒性(%)と定義した。実験は3重重複で行われた。
【0113】
【表21】
【表22】
【0114】
有意な効能はプロドラッグの本質的な要素の一つであるが、がん細胞に対する正常な非がん細胞と比べた選択性はもう一つ別の本質的な要素であり、場合によっては任意のプロドラッグにとってはさらに重要な要素である。正常細胞におけるがん細胞に対する絶対IC50(すなわち、細胞の50%を死滅させるのに必要とされる濃度)を計算することは、これらの化合物の選択性を予測する広く受け入れられる方法を提示する。
Basidaらによって、2009(Anticancer Res 29:2993-2996)に記載されるように、選択指数が2よりも大きい化合物は、潜在的に治療域を拡大する可能性がある。従って、正常ヒト乳腺上皮(HME-1)細胞は、親遊離薬物と、テトラペプチドALLPまたはAPKPを含むプロドラッグに同様に曝露された(図9および表3)。PhAc-ALLP-DoxおよびPhAc-APKP-Doxは、親遊離薬物のドキソルビシンと比べた時に、正常な細胞にて等強度(equipotent)の毒性に到達するまでに有意に高い濃度を必要とした。平均して、プロドラッグの選択性指数(SI)は、膵臓がん(MIA PaCa-2)を除いて、遊離ドキソルビシンのそれを常に少なくとも2倍上回った。ベンチマーク化合物との比較において、PhAc-ALGP-Dox、PhAc-ALLP-Doxは、GBM、黒色腫、および結腸直腸がんの特定の亜型(すなわち、デュークスB型腺がん)にて関連する優位性を発揮した。
【0115】
これらの結果を合わせると、PhAc-ALLP-DoxおよびPhAc-APKP-Doxの可能性がさらにインビボでの検証が強調される。
【0116】
表3. ALLP-およびAPKP-テトラペプチドを含むドキソルビシンのプロドラッグ化合物の選択性指標
絶対IC50値(μM)は72時間にわたって連続して薬物を曝露した後の細胞生存率評価(WST-1)に基づく。100μM~2.048nMの範囲で10点の連続した滴定のシグモイド-4PL非線形フィッティングを用い、aIC50を外挿した。実験は三重重複(n=3)で行われた。選択性指標は、正常細胞にて細胞の50%を死滅させるのに必要な薬物の濃度を、腫瘍細胞にて同じ効能を発揮するのに必要な薬物の濃度で割った、割合であるとして定義された。細胞をその最適細胞密度(5.000-15.000細胞/ウェル)に従って96ウェルプレートに播種した。従って、SIが1より低いと、腫瘍細胞に対して選択的でなく、その一方でその指標が高いほど、選択性があると考えられる。SIが2よりも高いと、これらの化合物はより効果的な治療域を潜在的に有し得る(1)。*PhAc-ALGP-Doxの場合、正常な細胞におけるIC50は試験した最高濃度(100μM)を超えた。そのため、選択性は過小評価され、報告された値を超えている。
【0117】
【表23】
【表24】
【0118】
実施例3. ドキソルビシンおよびオーリスタチンのALLP-テトラペプチドを含むプロドラッグ化合物の評価
モノメチルオーリスタチンE(MMAE)を、ALLP-テトラペプチドをベースとするプロドラッグに組み入れることのできる、代替薬物として選択した。MMAEは、ドラスタチンから誘導され、ナノモルレベルの効能を有するが、インビボでの治療域を欠くことで特徴付けられる、合成された微小管干渉剤である。得られた化合物PhAc-ALLP-PABC-MMAEの毒性および選択性を、がん適応症のTNBC、GMBおよび黒色腫で評価した(図11~13および表4~6)。ドキソルビシンを含むプロドラッグと比較した場合に、遊離したMMAEと比べて、PhAc-ALLP-PABC-MMAEの効能の減少がより顕著であったが、より重要なことは、低ナノモルの範囲内でMMAEをベースとするプロドラッグの可能性を強調した。PhAc-ALLP-PABC-MMAEの、MMAEと比較した毒性は、乳腺上皮(HME-1)細胞で有意に違わなかった。しかしながら、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対する選択性を測定した場合に、3種のすべての適応症で安全性が上昇したことは明らかであった(SIが、TNBCで3.8、GMBで2.2、および黒色腫で6.2であった)(図10および表4~6)。これらの適応症の中で、効能および最大有効性はA2058黒色腫細胞が最も高かった(各々、0.03μMおよび95.2%)(表5)。PhAc-ALLP-PABC-MMAEをGMBの治療薬候補と考える場合、非がん関連の星状細胞はがん特異的選択性を評価するための関連する細胞型と考えることができる。従って、hiPSC由来の分化した星状細胞(I型)を用いて選択性指標を算定した(表6)。重要なことは、PhAc-ALLP-PABC-MMAEはこの細胞型に対して効能を完全に欠いており、腫瘍微小環境の外側ではこのプロドラッグの活性化がないことを示していることである。それ故に、選択性指標は人為的閾値の10倍を超え、最大細胞毒性はわずか2%であった。ALLPがGMBに対する適応症特異的選択性を発揮したようなので、PhAc-ALLP-DoxのiAstroに対する細胞毒性も評価された。このプロドラッグ化合物についても、優れた選択性が確認され(SI=14.9±0.8)(図14および表4~6)、ALLP-テトラペプチドをベースとするプロドラッグに存在する毒性部分にかかわらず、GBMにおけるALLPの可能性が強調された。
【0119】
表4. ALLPをベースとするプロドラッグのインビトロ効能
正常な細胞(HME-1、HUVECまたはiAstro)またはがん細胞(A-172、U-87MG、A2058およびMDA-MB-231)のいずれかをその最適細胞密度(5.000~10.000細胞/ウェル)に従って96ウェルプレートに播種した。絶対IC50値(μM)は72時間にわたって連続して薬物を曝露した後の細胞生存率評価(WST-1)に基づく。10点の連続した滴定のシグモイド-4PL非線形フィッティングを、500nM(MMAEおよびPhAc-ALLP-PABC-MMAE)または100μM(PhAc-ALLP-Dox)から開始して用い、aIC50を外挿した。実験は三重重複にて行った。
【0120】
【表25】
【0121】
表5. ALLPをベースとする新規なプロドラッグの最大効能
正常な細胞(HME-1、HUVECまたはiAstro)またはがん細胞(A-172、U-87MG、A2058およびMDA-MB-231)のいずれかをその最適細胞密度(5.000~10.000細胞/ウェル)に従って96ウェルプレートに播種した。細胞の生存率を72時間の連続した薬物の暴露後に評価した(WST-1)。10点の連続した滴定のシグモイド-4PL非線形フィッティングを、100μM(CBR-014)または500nM(MMAEおよびCBR-073)から開始した。最大有効性を100μMでの細胞毒性と定義した。実験は三重重複にて行われた。
【0122】
【表26】
【0123】
表6. ALLPをベースとするプロドラッグの選択性指標
絶対IC50値(μM)は72時間にわたって連続して薬物を曝露した後の細胞生存率評価(WST-1)に基づく。10点の連続した滴定のシグモイド-4PL非線形フィッティングを用い、aIC50を外挿した。実験は三重重複(n=3)で行われた。選択性指標は、正常細胞にて細胞の50%を死滅させるのに必要な薬物の濃度を、腫瘍細胞にて同じ効能を発揮するのに必要な薬物の濃度で割った、割合であるとして定義された。細胞をその最適細胞密度(5.000-10.000細胞/ウェル)に従って96ウェルプレートに播種した。SIが1より低いと、選択的でなく、その一方で指標が高いほど、選択性が大きいと考えられる。SIが少なくとも2であると、これらの化合物はより効果的な治療域を潜在的に有し得る。値はHME-1細胞に対する選択性、*はHUVEC細胞(SI=HUVECIC50がんIC50)に対する選択性、または**はhiPSC(iAstro、SI=iAstroIC50がんIC50)に対する選択性について算定される。
【0124】
【表27】
【0125】
実施例4. 材料および方法
表7. 使用した薬物およびプロドラッグの概要
【表28】
【0126】
治療および薬物
ドキソルビシン-HClをLC-Labs(D-4000-500mg)から入手し、一方でMMAEおよびプロドラッグ化合物はWuXi AppTec(中国)を用いて合成した。10mMのストック溶液(PhAc-ALLP-PABC-MMAE)をDMSOまたはH2Oに溶かし、使用する直前まで-20℃で貯蔵した。
【0127】
インビトロ効能、最大有効性および選択性指標
市販のすべての細胞株はATCC(LGC Standards SARL、フランス)で購入した。細胞を、5.000と10.000細胞/ウェルの間で変化する、その最適細胞密度に従って96ウェルプレートに播種した。一夜付着させた後、10点連続滴定体(1:5)を、10mMのストック溶液より開始し、ATCCによって推奨されるその同等の完全培地にて調製した。プロドラッグを含むドキソルビシン希釈では100μMより開始し、親化物のドキソルビシン希釈では10μMより開始した。よりずっと強力なMMAEおよびPhAc-ALLP-PABC-MMAEの場合には、同様の希釈シリーズを培地にて調製し、500nMで開始した。72時間後、化合物を上清と一緒に除去し、細胞をPBSで1回洗浄し、余分な薬物を除去した。
【0128】
細胞の増殖および生存率に関するWST-1アッセイ(Roche、スイス)を製造業者のプロトコルに従って行った。Kaleido 2.0ソフトウェアを搭載したPerkin Elmer Ensightマルチプレートリーダー(Perkin Elmer、USA)を用いて、吸光度を4時間測定した。細胞生存率は非処理の細胞と比べたパーセンテージで表された。絶対IC50値は、Graphpad Prism 7.0を用いる方法にて、シグモイド-4PL回帰に従って、非線形フィッティングから外挿された。同様に、最大有効性を100%から、細胞を化合物の存在下でインキュベートした場合に測定された細胞生存率を差し引くことで決定した。例えば、化合物の存在下で細胞が20%の生存インキュベーションを示した場合、その時にはその化合物の最大有効性は100%-20%=80%である。
【0129】
選択性指標(SI)は、正常な(対照、非がん)細胞において細胞の50%を死滅させるのに必要な薬物の濃度を、腫瘍細胞において同じ効能を発揮するのに必要とされる濃度で割った、割合と定義された:
SI=IC50(対照細胞)/IC50(がん細胞)、または
SI=HME-1IC50がんIC50
【0130】
ヒト人工多能性幹細胞由来の星状細胞(iAstro(登録商標))
hiPSC由来の星状細胞はTempo Biosciences社(iAstro(登録商標))から購入した。使用する前に、6枚のウェルプレートを1mlのGFRマトリゲル(Matrigel)(1:100~0.1mg/ml、Corning社、#356231)で被覆し、37℃で一夜重合化させた。アッセイする3日前に、細胞を解凍し、iAstro培地のGFRマトリゲルに播種し、48時間にわたって解凍から回復させた。最初の24時間は、RevitaCell(登録商標)サプリメントを用いて回復を助けた。形態学的検査に付した後、細胞を、StemPro Accutase試薬(Invitrogen社)を用いて、ポリ-L-リジン(50μg/ml、P2533、Sigma Aldrich社)およびマウスラミニン(4ng/ml、L2020、Sigma Aldrich社)で被覆された、96ウェルのプレートおよび4ウェルの顕微鏡用容器(Millipore社)に移した。一夜回復させた後、iAstroを上記と同じ処理プロトコルに曝した。
【0131】
実施例5. PhAc-ALLP-Doxの結腸直腸がんに対するインビボ活性
PhAc-ALLP-Doxのインビボ有効性を結腸直腸がんのマウス実験で試験した。LS-174T結腸直腸腫瘍細胞をNude NMRIマウスに異種移植した。合計で、30匹の成体(9~10週齢)のヌード雌NMRIマウス(Janvier、フランス)を右脇腹にて皮下(SC)腫瘍細胞移植に供した。合計で、2x10個のLS-174T細胞をPBSに懸濁させ、200μLの最終容量で注射した。腫瘍は触診可能であり、200mmの体積に達するや否や、処理を開始した。0日目に、マウスを、以下の実験用サブコホートを得るのに、腫瘍体積に基づいて、3群:
- ビヒクル(0.9% NaCl)を5ml/kgの用量で静脈内(iv)に週に2回(Q2W)投与する対照群;
- PhAc-ALLP-Dox(10mg/kg iv、Q2W);および
- PhAc-ALLP-Dox(30mg/kg iv、Q2W)
に無作為に分類した。
【0132】
処理は、週に2回、合計で4回(1、4、7および10日目)の尾静脈投与/注射で実施された。積極的処理期の後に1週間の追加観察がなされた。実験の間に、腫瘍体積を週に2回測定し、デジタルキャリパー(Mitutoyo社、イリノイ州)で以下の式:
V=4/3π×[(d/2)x(D/2)]
[式中、dは腫瘍の短軸であり、Dは腫瘍の長軸である]
を用いて3次元的に評価した。
【0133】
結果を図15Aに示す。重要なことは、マウスが両方の用量のプロドラッグに耐性があり、30mg/kgのPhAc-ALLP-Doxを受けた処理群は、非処理の対照群と比べた場合に、腫瘍体積が有意に減少したことである。
【0134】
対照に対するパーセンテージで表される腫瘍増殖阻害(TGI)は、次式:
%TGI=(1-{Tt/T0/Ct/C0}/1-{C0/Ct})x100
[式中、TtおよびT0は、各々、時間tおよび0での処理マウスXの個々の腫瘍体積であり、CtおよびC0は、各々、時間tおよび0での対照群の平均腫瘍体積である]
を用いて計算された。図15Bに示されるように、30mg/kgのPhAc-ALLP-Doxで処理されたコホートにて、約60%のTGIが得られた。
【0135】
投与されたマウスにおいて、毒性の明白な徴候も、体重の有意な減少も、または血球数の変化も観察されなかった。
【0136】
実施例6. PhAc-ALLP-PABC-MMAEの黒色腫に対するインビボ活性
PhAc-ALLP-PABC-MMAEのインビボ有効性をマウス黒色腫実験で試験した。A2058黒色腫細胞をヌードNMRIマウスに皮下(SC)移植した。合計で、36匹の成体(9~10週齢)のヌード雌NMRIマウス(Janvier、フランス)を右脇腹にてSC腫瘍細胞移植に供した。合計で、3x10個のA2058細胞をPBS+マトリゲル(1:1)に懸濁させ、200μLの最終容量で注射した。腫瘍は触診可能であり、200mmの体積に達するや否や、処理を開始した。0日目に、マウスを、以下の実験用サブコホートを得るのに、腫瘍体積に基づいて、4群:
- ビヒクル(PBS pH7.2)を5ml/kgの用量で静脈内(iv)に週に1回(QW)投与する対照群;
- PhAc-ALLP-PABC-MMAE(2mg/kg iv、QW);
- PhAc-ALLP-PABC-MMAE(4mg/kg iv、QW);
- MMAE(0.9mg/kg iv、QW)
に無作為に分類した。
【0137】
処理は、週に1回、合計で4回(1、7、14および21日目)の尾静脈投与/注射で実施された。積極的処理期の後に2週間の追加観察がなされた。実験の間に、腫瘍体積を週に2回測定し、デジタルキャリパー(Mitutoyo社、イリノイ州)で以下の式:
V=4/3π×[(d/2)x(D/2)]
[式中、dは腫瘍の短軸であり、Dは腫瘍の長軸である]
を用いて3次元的に評価した。
【0138】
結果を図16に示す。2mg/kgのPhAc-ALLP-PABC-MMAEを投与されたコホートは、重要なこととして、非処理の対照群と比較した場合に、腫瘍の体積を減少させた。完全な応答が34日目まで観察され、再発または毒性の巨視的徴候の兆しは何もなかった。より高い濃度のPhAc-ALLP-PABC-MMAEを投与されたマウスは、腫瘍増殖を顕著に減少させたにもかかわらず、体重が有意に(>20%)減少したため、21日目に死亡した。
【0139】
実施例7. PhAc-ALLP-PABC-MMAEの膠芽腫(GBM)に対するインビボ活性
PhAc-ALLP-PABC-MMAEのインビボでの有効性をマウスGBM実験にて試験した。U87MG膠芽腫細胞をヌードNMRIマウスに皮下(SC)移植した。合計で、24匹の成体(9~10週齢)のヌード雌NMRIマウス(Janvier、フランス)を右脇腹にてSC腫瘍細胞移植に供した。合計で、5x10個のU87MG細胞をPBS+マトリゲル(1:1)に懸濁させ、200μLの最終容量で注射した。腫瘍は触診可能であり、200mmの体積に達するや否や、処理を開始した。0日目に、マウスを、以下の実験用サブコホートを得るのに、腫瘍体積に基づいて、3群:
- ビヒクル(PBS pH7.2)を5ml/kgの用量で静脈内(iv)に週に1回(QW)投与する対照群;
- PhAc-ALLP-PABC-MMAE(2mg/kg iv、QW);
- MMAE(0.9mg/kg iv、QW)
に無作為に分類した。
【0140】
処理は、週に1回、合計で4回(1、7、14および21日目)の尾静脈投与/注射で実施された。積極的処理期の後に1週間の追加観察がなされた。実験の間に、腫瘍体積を週に2回測定し、デジタルキャリパー(Mitutoyo社、イリノイ州)で以下の式:
V=4/3π×[(d/2)x(D/2)]
[式中、dは腫瘍の短軸であり、Dは腫瘍の長軸である]
を用いて3次元的に評価した。
【0141】
結果を図17に示す。2mg/kgのPhAc-ALLP-PABC-MMAEを投与されたコホートは、重要なこととして、非処理の対照群と比較した場合に、毒性の巨視的徴候の兆しは何もなく、腫瘍の体積を減少させた。反対に、0.9mg/kgのMMAEを投与されたマウスは、腫瘍増殖を顕著に減少させたにもかかわらず、体重が有意に(>20%)減少したため、21日目に死亡した。
【0142】
実施例8. PhAc-ALLP-Doxの膠芽腫(GBM)に対するインビボ活性
PhAc-ALLP-Doxのインビボでの有効性をマウスGBM実験にて試験した。U87MG膠芽腫細胞をヌードNMRIマウスに皮下(SC)移植した。合計で、32匹の成体(9~10週齢)のヌード雌NMRIマウス(Janvier、フランス)を右脇腹にてSC腫瘍細胞移植に供した。合計で、5x10個のU87MG細胞をPBS+マトリゲル(1:1)に懸濁させ、200μLの最終容量で注射した。腫瘍は触診可能であり、200mmの体積に達するや否や、処理を開始した。0日目に、マウスを、以下の実験用サブコホートを得るのに、腫瘍体積に基づいて、4群:
- ビヒクル(PBS pH7.2)を5ml/kgの用量で静脈内(iv)に週に1回(QW)投与する対照群;
- PhAc-ALLP-Dox(30mg/kg iv、QW);
- PhAc-ALGP-Dox(154mg/kg iv、QW)
- Dox(5mg/kg iv、QW)
に無作為に分類した。
【0143】
処理は、週に1回、合計で4回(1、7、14および21日目)の尾静脈投与/注射で実施された。積極的処理期の後に1週間の追加観察がなされた。実験の間に、腫瘍体積を週に2回測定し、デジタルキャリパー(Mitutoyo社、イリノイ州)で以下の式:
V=4/3π×[(d/2)x(D/2)]
[式中、dは腫瘍の短軸であり、Dは腫瘍の長軸である]
を用いて3次元的に評価した。
【0144】
結果を図18に示す。30mg/kgのPhAc-ALLP-Doxを投与されたコホートは、重要なこととして、非処理の対照群と比較した場合に、腫瘍の体積を減少させた。5mg/kgのDoxまたは154mg/kgのPhAc-ALGP-Doxを投与されたマウスは、PhAc-ALLP-Doxと同様に、腫瘍増殖を有意に減少させた。処理されたコホートは、巨視的な毒性の徴候も、体重の顕著な減少(>20%)も示さなかった。
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【配列表】
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【国際調査報告】