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特表2023-554527インプラント、及び放射線源とインプラントを有するアセンブリ
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  • 特表-インプラント、及び放射線源とインプラントを有するアセンブリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】インプラント、及び放射線源とインプラントを有するアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/04 20060101AFI20231220BHJP
   D01F 8/04 20060101ALI20231220BHJP
   A61F 2/82 20130101ALI20231220BHJP
【FI】
A61B18/04
D01F8/04 B
D01F8/04 Z
A61F2/82
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538019
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2021087083
(87)【国際公開番号】W WO2022136426
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】102020134541.0
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506138258
【氏名又は名称】ライニッシュ-ヴェストフェリッシェ テクニッシェ ホッホシューレ(アールダブリュティーエイチ)アーヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】バウアー, ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】グリース, トーマス ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】オルテガ, ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】スラブ, イオアナ
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ-ローデ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ムエス, ベネディクト
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
4L041
【Fターム(参考)】
4C160MM33
4C160MM43
4C267AA47
4C267BB44
4C267CC08
4C267CC20
4C267CC23
4C267FF05
4C267GG02
4C267GG05
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA21
4L041BD07
4L041CB05
4L041EE20
(57)【要約】
磁気的に加熱可能な充填剤が配置された少なくとも1種のポリマーマトリックス材料を含むフィラメントから構成され、前記フィラメントは、コア‐シース構造を有する断面を有する、体内、特に体の中空器官または管内に埋め込むためのインプラントであって、前記コアがポリマー補強構造を形成し、前記シースは、磁気的に加熱可能な充填剤が配置された前記ポリマーマトリックス材料を含み、前記充填剤の付加は、前記コアよりも前記シースでより大きいことを特徴とする、インプラントに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気的に加熱可能な充填剤(20)が配置された少なくとも1種のポリマーマトリックス材料(18)を含むフィラメント(10)から構成され、前記フィラメント(10)は、コア‐シース構造(12)を有する断面を有する、体内、特に体の中空器官(22)または管内に埋め込むためのインプラント(26)であって、前記コア(14)がポリマー補強構造を形成し、前記シース(16)は、磁気的に加熱可能な充填剤(20)が配置された前記ポリマーマトリックス材料(18)を含み、前記充填剤(20)の付加は、前記コア(14)よりも前記シース(16)でより大きいことを特徴とする、インプラント(26)。
【請求項2】
前記コア(14)が糸状であり、前記シース(16)が管状構造を有し、少なくとも部分的に前記コアを包むことを特徴とする、請求項1に記載のインプラント(26)。
【請求項3】
前記磁気的に加熱可能な充填剤(20)は、超常磁性充填剤(20)であることを特徴とする、請求項1または2に記載のインプラント(26)。
【請求項4】
前記磁気的に加熱可能な充填剤(20)は、結晶子の大きさが3nm以上100nm以下の範囲であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のインプラント(26)。
【請求項5】
前記フィラメント(10)は、交差構造または絡み合った構造を有する、あるいは前記フィラメント(10)は、編組構造を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のインプラント(26)。
【請求項6】
前記インプラント(26)は、管状構造を形成することを特徴とする、請求項5に記載のインプラント(26)。
【請求項7】
前記磁気的に加熱可能な充填剤(20)が、0.1重量%以上90重量%以下の割合で前記シース(16)内に存在することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のインプラント(26)。
【請求項8】
前記ポリマーマトリックス材料(18)は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアミドおよび熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のインプラント(26)。
【請求項9】
前記コア(14)が、前記シース(16)と同じポリマーマトリックス材料(18)を含むポリマー強化構造を形成することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のインプラント(26)。
【請求項10】
前記コア(14)が磁気的に加熱可能な充填剤(20)を含まないことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のインプラント(26)。
【請求項11】
前記コア‐シース構造(12)は、共押出工程によって製造されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のインプラント(26)。
【請求項12】
前記コア‐シース構造(12)は、2層構造を形成することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のインプラント(26)。
【請求項13】
電磁放射線を放出するための放射線源(30)と、インプラント(26)の構成(28)であって、前記インプラント(26)は、磁気的に加熱可能な充填剤(20)を備え、前記インプラント(26)が請求項1から12の一項の記載に従って構成されることを特徴とする、構成(28)。
【請求項14】
前記インプラント(26)が、少なくとも前記シース(16)内において40℃から100℃の範囲にある温度まで、前記放射線源(30)によって放射される電磁放射線によって加熱され得るように、前記インプラント(26)と前記放射線源(30)が、互いに整合されることを特徴とする、請求項13に記載の構成(28)。
【請求項15】
前記放射線源(30)は、周波数が10kHzから1MHzの範囲の放射線を、1kA/mから100kA/mの範囲の振幅で放射するよう構成されていることを特徴とする、請求項13または14に記載の構成(28)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にステントなどのインプラントに関する。特に、本発明は、磁気誘起温熱療法に適用可能なインプラントに関する。本発明は、更に、そのようなインプラントと、電磁放射線を放出するための放射線源とを備える構成に関する。
【背景技術】
【0002】
治療的温熱療法はそれ自体として知られており、例えば、癌治療において有意な利益を達成することができる。
【0003】
例えば、I.Slabu、 MPI可視化およびハイブリッドインプラントファイバーの誘導加熱、磁性粒子イメージングに関する国際ジャーナル、Vol6,No2,Suppl1,Article ID2009024、およびI.Slabu、 ハイブリッド繊維フィラメントの温熱性能の評価、磁気と磁性材料のジャーナル、519(2021)167486から、磁性ナノ粒子を添加したポリプロピレンファイバーが有効な治療熱を発生できることが知られている。特に、このような繊維は、癌治療における誘導加熱可能なステントに使用することができる。さらに、いわゆる磁気粒子イメージング(MPI)への応用について記載されている。
【0004】
EP1489985B1は、感熱性の磁化率を有する、血管治療装置中の材料の使用を記載している。次いで、血管治療装置は、印加磁場を用いて、血管治療装置が実質的に非磁気的に感受性となる予め選択された温度まで、遠隔で非侵襲的に加熱され得る。この点に関し、材料は、例えば、ステント上のコーティングとして提供されてもよく、ステントのコアは、例えば、金属であってもよい。ステントがポリマーから形成される場合、材料はポリマーに埋め込まれてもよく、または、純粋な材料はポリマー上に被覆されてもよい。二層ポリマー構造は、この文献では記載されていない。
【0005】
US2003/0004563A1は、体内に埋め込むためのステントを記載している。ステントの構造については、添加剤と混合したポリマーで構成できることを述べている。添加剤は、例えば、金属の粒子、及び/または例えばナノメートル範囲の放射線不透過性材料を含み得る。特に、常磁性または強磁性材料を使用して、MRIプロセスで目に見えるようにしてもよい。或いは、純粋なMR材料の層が適用される内部ポリマーコアが存在するような二重層構造が使用されることが想定されてもよい。ポリマー骨格は、例えば、溶融紡糸によって製造することができる。二層ポリマー構造は、この文献では記載されていない。
【0006】
US2010/0087731A1は、複数のフィラメントから形成された管状ステントを記載しており、該フィラメントは、磁気共鳴イメージング(MRI)によって可視である、中に分散された薬物粒子を有する固体の生体吸収性ポリマー材料から構成されている。薬物粒子は超常磁性酸化鉄(SPIO)粒子である。SPIO粒子はMRI下のポリマーステントの視認性を高め、ステント劣化の正確なモニタリングを可能にする。ステントが劣化すると、SPIO粒子は放出され、下流に流れるか、または近傍のマクロファージに埋め込まれる。残りのステント本体内のSPIO粒子の量が減少し、異なるMRI信号が得られる。信号変化を定量化することにより、残存生分解性ステントのインジツ量を導き出し、ステント劣化率を正確に計算することができる。二層ポリマー設計も、この文書では記載されていない。
【0007】
米国特許出願第2016/0024699A1明細書には、磁気的にまたはX線を介して検出可能であり、かつ31マイクロメートル未満のサイズを有する添加剤が提供される溶融紡糸繊維が記載されている。添加剤は、例えば、金属またはX線に不透明な材料であってよい。添加剤は、ポリマーマトリックスのコア及び/またはシース中に存在してもよい。このような繊維は、特に、これらの繊維で製造された製品の汚染を検出するために、多種多様な製品に使用される。しかしながら、この文献はインプラントを記述しておらず、管状構造を形成する可能性も記述していない。
【0008】
DE102018005070A1は、ステントグラフトの製造方法に関する。この方法は、第1のポリマー系材料のグラフトを提供する工程と、添加剤製造プロセスによって第2のポリマー系材料の複数の支柱を含むステント構造をグラフトに適用する工程とを含む。本発明は、更に、本方法によって製造されたステントグラフトに関する。しかしながら、このようなステントグラフトでは、全体の管状構造に支柱が設けられており、繊維レベルでの多層構造は記載されていない。
【0009】
文献「ハイパーサーミックアブレーション療法における適用のためのナノフェライトベースの誘導性繊維の研究」は、本出願の発明者らによる刊行物であるが、ナノコンポジット繊維から生成されたステントにおける誘導加熱性ナノフェライトの、癌治療における、より正確な腫瘍との戦いにおける適用を記載している。この文献では、コア-シース構造についての記述はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行技術から公知のそのような解決策は、特に、改善された適用可能性に関して、改善の可能性を依然として有し得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明の目的は、先行技術の少なくとも1つの欠点が少なくとも部分的に克服される手段を創出することである。特に、本発明の目的は、インプラント、特にステントの適用性を改善することができる手段を提供することである。
【0012】
本発明によれば、前記目的は、請求項1に記載の特徴を有するインプラントによって解決される。本発明によれば、前記目的は、請求項13に記載の特徴を有する構成によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、明細書、及び図において開示されており、従属請求項、明細書、又は図において記載され若しくは示されている更なる特徴は、文脈から明らかに反対の結果が得られない限り、個別に又は任意の組み合わせで、本発明の目的を構成することができる。
【0013】
本発明は、磁気的に加熱可能な充填剤が配置された少なくとも1種のポリマーマトリックス材料を含むフィラメントから構成され、前記フィラメントは、コア‐シース構造を有する断面を有する、体内、特に体の中空器官または管内に埋め込むためのインプラントであって、前記コアがポリマー補強構造を形成し、前記シースは、磁気的に加熱可能な充填剤が配置された前記ポリマーマトリックス材料を含み、前記充填剤の付加は、前記コアよりも前記シースでより大きい。
【0014】
特に、このような構成は、例えば、加温療法または温熱療法での使用、または磁気共鳴画像法(MRI)または磁気粒子画像法(MPI)を用いた画像化において、従来技術の解決法よりも有意な利点を提供することができる。
【0015】
本明細書に記載されたインプラントは、特に、人体などの体内、特に生体への埋め込みに役立ち、例えば、血管、気管、胆管、および尿管、および尿道などの体の管または中空器官への埋め込みが、後にさらに詳細に記載されるように、特に好ましい。この目的のために、インプラントは、特に、例えば、圧縮及び/または変形状態で、血管または中空臓器のように、体内に導入され、所望の位置でその所望の適用形態に合致する柔軟性を有することができる。
【0016】
インプラントは、繊維とも呼ばれるフィラメントから形成される。インプラントを製造するために、当業者になじみのある繊維加工方法を用いて、フィラメントをそれ自体公知の方法で加工することができる。このような繊維加工方法または織物技術のさらなる加工処理の例は、例えば、織り、縦編み、編み、レース製造、編み込み、およびタフテッド製品の製造において生じるような、フィラメントのインターレースまたはインターツイングを含む。更に、インプラントは、不織布であってもよいが、フィラメントが不織布でないことが好ましい。
【0017】
前もって、フィラメントは紡糸工程によってつくることができる。この目的のために、共押出を用いてコア-シース構造を形成することができる。
【0018】
特に、限定されるものではないが、共押出工程により、繊維レベルでコア-シース構造を形成することが可能になる。コアは糸状であり、シースは管状構造を有し、少なくとも部分的にコアを包むことが好ましい。つまり、インプラントが形成されるフィラメントは、特に繊維加工方法によって、繊維レベルで多層構造として形成される。コアはフィラメント状であり、固体材料から形成される。シースは管状で、コアの周囲に形成される。これは、例えば、押出工程において2つの同軸ダイを用いることにより、コアをコアの周りに径方向に管状構造として内部及びシースに形成することができる。
【0019】
本発明の目的のために、管状構造は、特に、シースがコアの周りを走行するという点で、シースが、特に、完全にまたは全表面にわたって、コアの外側を覆うように、シースが管状構造を有することを意味するものとして理解されるべきである。その後、管状構造の内部は、特に、コアによって完全に充填される。特に、コア及びシースは、好ましくは閉鎖層を形成することができ、層は、好ましくは、細孔を含まない。しかしながら、コアまたはシース内の細孔は、一般に、本発明に包含されることが意図されている。
【0020】
フィラメントを製造するための共押出工程は、材料、特にポリマー材料が配向されているので、特に高い強度を達成することができる。これは、例えば、材料が異常に配向している添加剤製造工程よりも利点がある。
【0021】
フィラメントは、磁気的に加熱可能な充填剤が構成された少なくとも1つのポリマーマトリックス材料を有する。特に、磁気的に加熱可能な充填剤は、マトリクス材料中に均一に微細に分布することができ、これにより、本明細書に記載されるインプラントにおいて、充填剤は、フィラメントの断面に沿った所定の領域にのみ存在することが意図される。充填剤の分布が均一であればあるほど、より均一で、明確な温熱療法を実行することができる。
【0022】
磁気的に加熱可能な充填剤に関しては、本発明の意味において、これは特に、磁場または電磁場によってトリガーされたときに加熱される充填剤であるべきである。加熱は、特に、既知のパラメータを有する磁場が印加されると、そのような効果が達成され、充填剤または特にフィラメントを定義された温度値まで加熱することができるように、定義された再現可能な方法で行われる。加温療法の用途に関しては、後述するように、フィラメントが40℃から100℃、好ましくは41℃から44℃の範囲の温度を得ることができるように、フィラメントを加熱することができると有利である。この文脈において、本発明によれば、例えば41℃から44℃の範囲のような非常に狭い温度範囲でも、または特に前述の範囲にある他の温度範囲も、非常に定義された方法で設定できることが特に有利である。これは、特に、充填剤の選択と付加、及びそれらの磁気励起のパラメータにより可能である。
【0023】
上記の温度範囲の中で、特に高温は、高強度集束超音波(HIFU)、高周波誘導熱療法(HITT)、またはレーザー誘起間質温熱療法(LITT)に類似して、熱アブレーション法を実施することを可能にする。熱アブレーション法は、約80から100℃の温度、または41から44℃の範囲の低温範囲で、特にアポトーシス性細胞損傷を伴う標的組織の殺傷(凝固)を目的とし、一方、望ましくない壊死を回避する。本発明によるインプラントは、原則として、熱アブレーション法、特に低温範囲で、特に治療上有効な熱を発生させるため、または画像化のために使用することができる。
【0024】
充填剤の構成に関して、本明細書に記載されるインプラントまたはフィラメントは、上述のようなフィラメントがコア-シース構造を有する断面を有し、コアはポリマー補強構造を形成し、シースは、磁気的に加熱可能な充填剤が配置されたポリマーマトリックス材料を含み、シースの充填剤の付加は、コアよりも大きいことを特徴とする。コアは、更に、シースに設けられたマトリクス材料を含んでもよく、または異なるポリマーから形成されてもよい。
【0025】
従って、磁気的に加熱可能な充填剤は、主に外側領域に存在し、一方、コアは、磁気的に加熱可能な充填剤の含有量が少ないか、または、特に、それを含まない。その結果、コアにポリマー補強構造が形成される。本発明の目的のために、コアの補強構造は、特に、コアがシースに対して補強を提供すること、特に、コアがシースよりも大きな安定性または強度を有することを意味する。特に、補強は、フィラメントの引張強さに関係し得る。
【0026】
上述したフィラメントの構造、従ってインプラントの構造は、特に温熱療法の分野において、特に効果的な治療効果を、インプラントの特に有利な適用性と組み合わせることを可能にし得る。
【0027】
これは、インプラントが、電磁励起を介して磁気的に加熱可能な充填剤によって体内で加熱され得るからである。達成される温度は、特に、粒子負荷に比例するか、または粒子負荷に依存する。例えば腫瘍組織を破壊するために、41℃から44℃の治療上有効な温度まで十分に高い加熱を行うには、電磁場のパラメータ選択に関する医学的安全限界を遵守しつつ、充填剤の高粒子負荷を必要とする。この高負荷は伝統的に単成分繊維への加工性の大きな問題を提起する。これは、繊維の引張強さが、繊維またはフィラメントの製造中のフィルター寿命と同様に、粒子負荷の増加と共に減少するという事実による。
【0028】
ここに記載されているインプラントにおいて、従って、二成分繊維製造アプローチにおいて、シース内の粒子負荷機能成分または粒子負荷機能領域に加えて、機械的強度、特に引張強さの顕著な改善によって、第2の構成要素または第2の領域が、製造中、特に製造中の紡糸処理中、および完成後の両方の製造中に保証され得る。
【0029】
これは、例えば、繊維またはフィラメントレベルで被覆を有さないが、ステントグラフトの既に形成された管状の全体構造が被覆されている、従来技術で公知の構造にも適用される。
【0030】
これにより、先行技術に比べて安定性を大幅に向上させることが可能となり、用途を大幅に向上させることができる。特に、改良された安定性は、特に腫瘍制御のための温熱療法における効果的な使用に必要な高粒子負荷で達成することができる。これは、特に高粒子負荷が、腫瘍組織の特に確実な破壊を可能にし得る電磁励起を介して磁気的に加熱可能な充填剤の温度を可能にし得るためである。
【0031】
このようにして、高負荷時のシースの強度低下を、コアの特性、従ってコアにより形成された補強構造によって補償できるので、粒子負荷の高い柔軟性または自由度が可能になる。更に、曲げ応力下で十分な弾性を許容することが可能となる。これは、充填剤を多量に充填すると材料が脆くなり、曲げ半径が制限されるためである。本発明によれば、例えば、ステントを製造するために使用することができるシングルスレッド編み工程において、偏向ピンで達成可能な角度を改善することができるので、製造を改善することができる。従って、適用性を改善することができる。これは、治療上有効であるためには一定の温度に到達しなければならないが、健康な周囲組織に持続的な損傷を与えないためには、特定の用途において44℃の温度に達したり、それを超えたりしてはならないことから重要である。この温熱療法は、腫瘍組織が健康な正常組織よりも温度上昇に対してより敏感に反応するという事実を利用する。従って、人体に対して特に穏やかな条件下で適切な温度ウィンドウに到達するためには、高粒子負荷を有することが有利であり、これは、例えば、上述したように、インプラント全体の機械的特性を損なうことなく、本発明によれば達成され得る。
【0032】
従って、例えば、必要な粒子負荷に関連するコアまたは補強層の厚さの相互作用は、常に、可能な限り材料が低く、従って空間が低いインプラントをもたらし得、それにもかかわらず、所望の用途に対して高い程度の有効性を可能にし得る。
【0033】
更に、このように、繊維断面の一部のみが粒子負荷を有する必要があるので、単成分繊維と比較して同様に高いレベルの加熱を達成することができると同時に、コストを低減することができる。
【0034】
従って、上述の利点は、温熱療法において特に有益であり得ることが明らかである。この点に関し、次のことに言及すべきである。例えば、がん細胞は健康な体細胞よりも熱に反応しやすいという点で、温熱療法のアプローチがある。しかし、体温が43℃又は44℃以上に上昇すると、健康な体細胞でも壊死による細胞死が起こる。
【0035】
この点に関し、細胞壊死は、44℃以上のような43℃以上の温度で起こり得るが、しばしば、細胞膜の喪失と反応する細胞に対する非常に重度の損傷の結果であることが言及されるべきである。炎症反応が起こり、炎症や瘢痕化を引き起こす。アポトーシスは、およそ41から43℃又は44℃までの温度範囲で、細胞の徐々の分解を伴うプログラム細胞死の一形態である。DNAが断片化される。炎症反応は回避され、膜自体は無傷のままである。一般に、温熱療法(アポトーシスまたは壊死性)の毒性作用は、細胞質および核内における熱不安定性蛋白質の変性によって引き起こされると考えられている。他のタンパク質やDNAとのさらなる凝集による共作用があり、細胞複製を妨げる。
【0036】
従って、特に、本発明によれば可能な限り、温度ウィンドウに関連して正確に設定することができる定義された温度範囲は、非常に有利である。
【0037】
更に、温熱療法は、腫瘍のより良好な血液循環をもたらし、薬物の吸収および放射線療法のような放射線治療の光線に対して組織を感作する。温熱療法の効果を決定するのは、特に、標的領域の温度レベルと適用期間である。壊死を防止するために、磁気加熱充填剤が使用される。ここでは、細胞死はアポトーシスを介して起こる。すなわち、アポトーシスはすべての細胞の代謝の一部であり、それゆえ、天然の制御された細胞死とも呼ばれる。上述したように、炎症反応(壊死と同様)はなく、また、罹患した細胞が隣接組織を損傷することなく死滅することが保証される。従って、本発明のインプラントは、温熱療法のための穏やかで効果的な方法を提供する。
【0038】
要約すると、複数の外科的介入を必要とせずに、腫瘍増殖により引き起こされる中空臓器または血管の閉塞を治療するために、磁気的または誘導的に加熱可能なインプラント構造を使用することにより、正確な位置での正確なインターバルアブレーション療法のための測定が可能である。
【0039】
好ましくは、磁気的に加熱可能な充填剤は、超常磁性充填剤とすることができる。ナノフェライトの超常磁性効果は、例えば、強磁性または強磁性材料の非常に小さな粒子の磁気特性を記述する。これらが、前もって印加された磁場がスイッチオフされた後にキュリー温度以下の温度でさえ永久磁化を示さない場合、これは超常磁性効果と呼ばれる。従って、ポリマーマトリックス中のナノフェライトの蓄積は、マクロ的には常磁性体のように振る舞うが、強磁性体の高い磁気飽和を有し、従って、軟磁性強磁性体のように誘導磁場に反応する。常磁性体とは対照的に、個々の原子ではなく、互いに独立に磁化の方向を変える小さな磁性粒子である。このような超常磁性材料、特に飽和温度を調節可能な超常磁性ナノフェライト粒子は、したがって、局所加熱を制御するために使用されることが好ましい。
【0040】
このような充填剤の利点は、それらが、特に規定された方法で、及び/または短時間内に、構造体を調節可能な飽和温度まで加熱することを可能にすることである。その結果、本発明によるインプラントを用いて、特に穏やかな方法で温熱療法を実施することができる。
【0041】
このような超常磁性充填剤の例としては、特に、超常磁性酸化鉄粒子、例えばマグネタイトまたはマグヘマイトなどのフェライトが挙げられる。
【0042】
特に、充填剤、とりわけ超常磁性充填剤が、3nm以上100nm以下、例えば10nm以上30nm以下の範囲で、コアサイズまたは磁気コアサイズとも呼ばれる結晶子の大きさを有し、材料が超常磁性特性を示す結晶子の大きさが、材料依存性が強い場合に有利であり得る。磁気ナノ粒子(MNP)とも呼ばれるこのようなナノ粒子は、診断(磁気共鳴イメージング(MRI)における造影剤)及びそれらの物理的特性のために特に効果的な治療用途における記載された利点を可能にすることができる。
【0043】
これは、ナノ粒子が、その磁気引力及び大きな表面対体積比のために、例えば≦10μmのような、数マイクロメートルのサイズの凝集体(巨視的凝集体)を形成する傾向があるためである。ナノコンポジットの製造において、製造プロセスにおける凝集体の形成は、限定された範囲または多大な費用でのみ影響を受けることができる。凝集体は不完全性のように作用し、得られたナノコンポジットの特性に著しく影響する。材料特性を改善する一つの可能性は、最終生成物中の粒子の均一な分布にある。現在、2つの製造プロセスがナノコンポジットの製造に工業的に使用されている。例えば、二軸押出機による溶融紡糸工程としての押出による溶融混合プロセスと、溶液混合プロセスである。インジツ重合法粒子機能化または超音波を用いて、マトリックス中のナノ粒子を均質化する。
【0044】
紡糸工程は、特に有利であり、第2の構成要素であるコアは、粒子負荷機能性構成要素に加えて紡糸され、シースは、本発明によるインプラントの製造のために、紡糸工程中及び完了後の両方の間に機械的強度の顕著な改善を保証することができる。このように、特に2つの材料の共押出は、溶融紡糸工程において使用される。
【0045】
紡糸工程は、二軸スクリュー押出機による溶融混合プロセスに続く。これは、1ステップのプロセスでも、2ステップのプロセスでもあり得る。溶融混合プロセスの生成物は、コンパウンディングとも呼ばれ、ペレットである。次に、これを溶融紡糸工程で繊維に紡糸する。
【0046】
インプラントは、管状構造、すなわち、特にダクト状または管状構造を有することが更に好ましい。例えば、インプラントはステントであり得る。この場合、コア-シース構造から形成されたフィラメントは、繊維処理工程によって処理され、管状構造を形成することができる。特に、この実施形態では、インプラントは、温熱治療用途に有利であり得る。特に好ましくは、この構造は、癌治療のような中空臓器または血管への挿入に有効であり得る。従って、本明細書に記載されたインプラントは、特に癌患者の治療において、または温熱療法的に狭窄を治療するために、特に有利な特性を可能にする。
【0047】
この点に関し、癌はドイツで2番目に高い死因であることに留意すべきである。腫瘍塊は、静脈、気管、胆管、尿管、尿道などの血管や中空臓器にしばしば浸潤または収縮する。狭窄はしばしば内膜過形成、すなわち細胞の増殖によって引き起こされる。これはステント血栓症に加えて、ステント移植後の典型的な合併症である。前述の記述は、生命を脅かす状況につながり得る。可能であれば、腫瘍塊を外科的に切除し、心血管領域に生じる狭窄はしばしば薬物で治療する。しかし、局所再発はしばしば新たな閉塞または再狭窄を引き起こす。この点に関して、中空体または血管を開くために金属ステントがしばしば使用されるが、これはしばしば一時的に効果的であり、従って、再手術を必要とする。
【0048】
ここに記載されたインプラントは、腫瘍または腫瘍組織が局所の温熱によって破壊され得るという事実、または腫瘍関連または狭窄関連の狭窄または中空臓器または血管の閉塞が除去され得、それによって、中空構造を再び露出させ得るという事実に基づいている。
【0049】
これは、本発明によるインプラントによって特に有利な方法で可能となる。これは、一方では安定性が高まるため、問題なく中空の臓器や血管に挿入できるためである。加えて、温熱特性はインプラントの明確な加熱を可能にし、これは穏やかな治療に効果的である。
【0050】
加えて、フィラメントは、基本的な利点、即ち、血管径の保持を維持することができる開孔インプラントを形成することができ、一方、内方成長した組織を温熱療法的に除去することにより、欠点、即ち、特に腫瘍組織の内方成長を回避することができる。
【0051】
特に、インプラントを中空臓器または血管に挿入する場合、カテーテルシステムを介して罹患部位に導入することができる。例えば、自己膨張を用いて、管腔内のインプラントを膨張させ、血管または臓器壁内に固定することができる。挿入後、インプラントは、既に説明したように、必要に応じて数回、交流磁場を介して局所的に加熱される。このように、中空臓器、血管または他の空洞に成長する腫瘍の治療は、既に記載されているように、電磁加熱を介して非侵襲的に行うことができる。このように、患者は時に危険な反復外科的介入を免れることができる。定期的な改訂作業が不要になるため、医療システムの大きなコスト削減にもなる。
【0052】
更に有利には、フィラメントは交差または絡み合った構造を有し得る。従って、フィラメントは、特に、それ自体公知の繊維処理工程によって、インプラント内に加工することができ、特に不織布ではない。このようにして、定義され、等しく安定な構造を作製することができ、これにより、インプラントとしての使用を改善することができる。
【0053】
フィラメントが編組構造を有することが特に好ましい。特に、編組構造は、中空臓器または血管内での治療に対して利点を有することができる。これは、特に、織物ステントが、高い柔軟性を有し、製造中に繊維に低い機械的応力を受ける編組構造で可能となるためである。更に、特に編組は、中空器官または血管に挿入されるように容易に圧縮することができ、それによって、十分な機械的復元力により、中空器官内に所望の非圧縮形状を維持することができる。その結果、編組は、繊維加工方法によって製造された他の製品よりも、または不織布または不織生地よりも利点を有し得る。
【0054】
更に、磁気的に加熱可能な充填剤が0.1重量%以上90重量%以下、好ましくは3重量%以上30重量%以下の割合でシース内に存在する場合に好ましい。特に、この実施形態では、充填剤は、インプラントが約41℃から44℃の範囲で上述の所望の温度に加熱されるように加熱され得る。この点に関し、本発明によるインプラントは、特に本実施形態では、安定性の低下などの機械的特性を、単成分構造で、すなわち、補強層なしで、減少させることができ、その結果、本発明は、特に本実施形態では、有効な利点を有することができる。
【0055】
ポリマーマトリックス材料に関しては、これがポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアミドおよび熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択されることが有利である。これらのポリマーは、特に、充填剤を均一に分散するのに適していることが示されている。更に、それらは充填剤により十分に加熱することができ、そのため、それらは温熱療法に負の影響を及ぼさないか、または限定的なだけである。更に、ここに記載したポリマーは、それらの不活性のためにインプラントとしてもよく適しており、人体によって劣化しないか、または著しく劣化しないので、インプラントとしての長期使用も可能である。
【0056】
加えて、または代替的に、コアが、例えば、シースとして、これからなる同じポリマーマトリックス材料を含むポリマー強化構造を形成することができる。この実施形態では、体に接触する材料のみが体内に導入される必要があるため、インプラントとしての相溶性をさらに高めることができ、したがって、あらゆる反発反応またはそのリスクをさらに回避することができる。
【0057】
加えて、特に本実施形態では、同一材料が互いに接着したり、特に使用されるコア-シェル構造において互いに良好に接着したりすることができるため、特に高いレベルの安定性を達成することができる。最後に、生産プロセスを単純化することができ、コストを節約することができる。
【0058】
達成される安定性に関しては、コアが磁気的に加熱可能な充填剤を含まないことも有利であり得る。この実施形態では、強化構造は、ポリマー材料中に存在する充填剤によって安定性が全く低下しないので、特に高い安定性または特に有利な機械的特性を有し得る。その結果、フィラメントの厚さを減少させることができ、または同じ厚さで、充填剤によるシースの負荷を増加させることができる。
【0059】
更に、シースの厚さに対するコアの厚さの比は、1/19以上19/1以下の範囲にあることが好ましい。例えば、シースは、コアとシースの組み合わせに基づいて、重量で30%以上70%以下の割合を有することができる。原則として、この比が現在の範囲にある場合、中空臓器または血管などのインプラントとして容易に適用できるだけの補強を提供することが可能であり、一方、治療上有効な温度を達成するために高い負荷を依然として可能にする。
【0060】
コア-シース構造またはインプラントがそれぞれ2層構造を形成する場合、すなわち、フィラメントがシースおよびコアからなる場合、同じことが達成され得る。この実施形態においても、追加の材料を放棄することができる。
【0061】
インプラントの更なる技術的特徴および利点に関しては、構成の説明、図面および図面の説明、およびその逆が参照される。
【0062】
本発明は、更に、電磁放射線を放出するための放射線源と、インプラントとを備え、インプラントは、磁気的に加熱可能な充填剤を備える構成に関する。この構成は、インプラントが前述のように構成されていることを特徴とする。
【0063】
このような構成は、放射線源を介して、磁気的に加熱可能な充填剤が、磁気緩和プロセスによって定義され再現可能な方法で誘導的に加熱され、インプラントが、従って、定義された方法で、温熱療法に使用され得ることを可能にする。
【0064】
この目的のために、特に、体内で使用される場合、インプラントが、少なくともシース内において、40℃から100℃の範囲、例えば41℃から44℃の範囲内にある温度まで、放射線源によって放射される電磁放射線によって、加熱され得るように、インプラントと放射線源が、互いに整合されることが有利であり得る。これは、例えば、癌組織の効果的で等しく穏やかな破壊を可能にする。
【0065】
放射された放射線をインプラントに適切に同調させることは、特に、適切な周波数を設定することによって、電磁放射側で可能にすることができる。例示的な周波数および振幅は、それぞれ10kHzから1MHzおよび1kA/mから100kA/mの範囲である。
【0066】
このような範囲は、周波数と磁場の振幅の適切な組み合わせにより、組織の意図しない加熱が、いわゆる渦電流の形成によって特に効果的に対抗できるので、有利である。特に、組織のエネルギー沈着は周波数依存性であることが考慮される。
【0067】
放出された放射線、すなわち、磁場の方向、周波数、磁場の振幅のインプラントへの適切な同調は、特に、粒子特性、例えば、粒子の大きさ、結晶性、磁気挙動、特にそれらの磁気緩和、それらの安定化シェルを成形することによって、インプラント上で行うことができ、これは、ポリマー中の凝集体の小または無しの均一な分布に影響を与える。粒子の設計はまた、鎖の形態または凝集体としてのポリマー中の個々の粒子の構成を提供し、それは印加磁場に対する増強した反応をもたらす。
【0068】
構成の更なる技術的特徴および利点に関しては、インプラントの説明、図面および図面の説明、およびその逆が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
以下は、添付図面を参照した本発明の例示的な説明であり、ここで、以下に示す特徴は、それぞれ個別にまたは組み合わせて、本発明の態様を構成することができ、本発明は、以下の図面、説明および実施形態に限定されるものではない。
図1図1は、本発明によるインプラント用フィラメントの概略図である。
図2図2は、本発明によるインプラントの動作形態である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、 本発明によるインプラント26用フィラメント10の概略図である。
【0071】
特に、インプラント26は、中空の臓器腫瘍を治療するために、図2に示すように、人体、特に人体の中空の臓器22に埋め込むのに役立つ。更に、インプラント26を血管に挿入することもできる。
【0072】
インプラント26は、フィラメント10から、例えば編組構造で構成される。フィラメント10は、磁気的に加熱可能な、特に超常磁性充填剤20が構成された少なくとも1つのポリマーマトリックス材料18を有する。
【0073】
更に、図1は、フィラメント10が、コア14がポリマー強化構造を形成するように、コア-シース構造12を有する断面を有することを示す。
【0074】
コア14はフィラメント状に配置され、ファイバまたはフィラメントとして配置され、シース16は管状構造を有し、少なくとも部分的にコア14を包むことが示されている。
【0075】
シース16は、磁気的に加熱可能な、特にナノスケールの充填剤20が構成されたポリマーマトリックス材料18を含む。シース16への充填剤20の付加は、コア14への付加よりも大きいことが分かる。特に、コア14は充填剤20を含まない。更に、コア-シース構造12またはフィラメント10は、特に2層構造として設計される。
【0076】
特に、磁気的に加熱可能な充填剤20は、0.1重量%以上90重量%以下の量でシース16内に存在してよい。更に、マトリックス材料18は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアミドおよび熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択され得る。コア14の材料は、同じ前述の材料から形成することができる。
【0077】
図2に示すように、フィラメント10は、バイコンポネント繊維とも呼ばれ、織物製造プロセスの助けを借りてインプラント26、特にステントに加工することができる。好ましくは、編みは、ここでは製造プロセスとして言及される。次いで、インプラント26は、図2に示すように、血管および中空臓器22に浸潤した腫瘍において、血管および中空臓器22を開いた状態に保ち、腫瘍組織24を破壊することによって腫瘍を温熱処理するために使用することができる。
【0078】
この形態の治療を実施するために、インプラント26は、磁気誘導によって加熱され得る織物ステントとして設計される。ここでは、フィラメント編組構造を織物ステントとして使用する。この編組構造は、充填剤22としてナノフェライトを組み込んだポリマー繊維からなる。使用するナノフェライトを合成し、二軸スクリュー押出機上でポリマーと共に配合し、紡糸可能なマスターバッチを形成する。その後、このマスターバッチは、溶融紡糸工程を用いて誘導加熱可能な繊維に紡糸される。特に、コア材料とシース材料の共押出を行い、コア-シース構造を形成する。インプラント26またはステントは、それぞれ、カテーテルシステムを介して、体内または中空臓器22または血管内の対応する位置に前進され、次いで、自己膨張によって膨張される。
【0079】
電磁場中で励起されると、ナノフェライトは、磁場の吸収エネルギーを熱に変換し、それを環境に放出する。これは、例えば充填剤20が好ましくは43℃まで加熱するように電磁放射を放射する放射線源30を使用することによって可能になる。放射線源30は、インプラント26と一貫した、または協調した構成28を形成することができる。
【0080】
その結果生じる局所温熱療法は、インプラント26の周囲の内方成長した腫瘍または対応する腫瘍組織24を破壊することができる。説明したように、これは、特に、充填剤20として調整可能な飽和温度を有する特定の超常磁性ナノフェライトを用いることによって可能である。達成可能な表面温度は、磁場のパラメータに大きく依存し、これは、ナノフェライトおよびナノフェライトを組み込んだ繊維の特性、およびフィラメント10の粒子負荷または充填剤付加のレベルに調整されなければならない。電磁場のパラメータ選択は、医療安全上の制限の遵守によって制限される。しかし、これらは、本発明によれば容易に達成可能であるが、充填剤付加は、コア14の強化層に起因して十分に高くなるように選択することができる。
【0081】
ナノフェライトは、吸収された誘導エネルギーをポリマー繊維を介して熱として腫瘍組織24に放出し、固有のサーモスタットとして作用する。このようにして、腫瘍組織24は、図2に示すように、温度の局所的な上昇によって破壊される。
【符号の説明】
【0082】
10 フィラメント
12 コア―シース構造
14 コア
16 シース
18 マトリクス材料
20 充填剤
22 中空臓器
24 腫瘍組織
26 インプラント
28 構成
30 放射線源
図1
図2
【国際調査報告】