(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】金属鉱石ペレットの製造のための結合剤組成物、ペレットの製造のための方法、および金属鉱石ペレット
(51)【国際特許分類】
C22B 1/243 20060101AFI20231220BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20231220BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20231220BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20231220BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20231220BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C22B1/243
C04B28/02
C04B24/12 A
C04B22/14 B
C04B22/08 Z
C04B22/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538024
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021086019
(87)【国際公開番号】W WO2022136070
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511139291
【氏名又は名称】ホルシム テクノロジー エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ブルアール,エリック
(72)【発明者】
【氏名】クレイクス,アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ダロナ,ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェール,クレメント
【テーマコード(参考)】
4G112
4K001
【Fターム(参考)】
4G112MB00
4G112MB06
4G112MB23
4G112PB05
4G112PB08
4G112PB11
4G112PB20
4K001CA30
(57)【要約】
本発明は、金属鉱石ペレットの冷間成形のための結合剤組成物に関する。結合剤組成物は、水硬結合剤成分と添加剤とを含む。水硬結合剤成分の粉末度は、少なくとも、D95<40μm、D50<12μm、D10<5μm(レーザ回折式粒度分析器により特定)であり、ブレーン粉末度は、6500~9000cm2/gの間である。CaO含有量は、>62.5重量%であり、C3Sの含有量は、>60重量%、好ましくは>65重量%である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属鉱石ペレットの冷間成形のための結合剤組成物であって、
水硬結合剤成分と、添加剤と、を含み、
前記水硬結合剤成分の粉末度は、少なくとも、D95<40μm、D50<12μm、D10<5μm(レーザ回折式粒度分析器により特定)であり、ブレーン粉末度は、6500~9000cm
2/gの間であり、CaO含有量は、>62,5重量%であり、C3Sの含有量は、>60重量%、好ましくは>65重量%である、結合剤組成物。
【請求項2】
前記水硬結合剤成分は、前記水硬結合剤成分の全量の重量を基準として、0,1重量%~1重量%のアルカノールアミン、および/または、0.5重量%~10重量%のセッコウ、を含む、請求項1に記載の結合剤組成物。
【請求項3】
水硬結合剤は、Al
20
3>4重量%,Fe
2O
3<3重量%,SO
3>3.5重量%,C3A>2重量%(XRD-リートベルト分析による),C4AF<11%重量%(XRD-リートベルト分析による)であることをさらに特徴とする、請求項1または2に記載の結合剤組成物。
【請求項4】
アルカノールアミン,アルミン酸カルシウムセメント,硫酸鉄,塩化カルシウムおよび塩化マグネシウム,スルホアルミン酸ナトリウム,CSHシード,カルボキシメチルセルロース,カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース,ビニル共重合体,クエン酸ナトリウム,グルコン酸ナトリウム,エチレンジアミン四酢酸の二ナトリウム塩,メラミンホルムアルデヒド縮合物およびナフタレンホルムアルデヒド縮合物,リグノスルホナート,凝結遅延剤,流動化剤,CSHシード,融剤またはこれらの任意の混合物、を含む群からの1または複数を添加剤として含む、請求項1~3の何れか一項に記載の結合剤組成物。
【請求項5】
前記水硬結合剤成分は、アルミン酸セメントを含み、
前記アルミン酸セメントは、任意のアルミン酸カルシウムセメント,任意のスルホアルミン酸カルシウムセメントまたはこれらの任意の混合物、から任意に選択され、
前記水硬結合剤成分は、前記水硬結合剤成分の総重量を基準として、2重量%~20重量%のアルミナセメントを含む、請求項1~4の何れか一項に記載の結合剤組成物。
【請求項6】
融剤をさらに含み、任意に、前記融剤は、微粉砕した石灰石および/またはドロマイトである、請求項1~5の何れか一項に記載の結合剤組成物。
【請求項7】
凝結遅延剤,凝結促進剤,流動化剤を添加して凝結、粘性等を調整してもよい、請求項1~6の何れか一項に記載の結合剤組成物。
【請求項8】
金属鉱石ペレットの製造のための方法であって、
微粉砕した鉱石または鉱石濃縮物を、請求項1~7の何れか一項に記載の結合剤組成物と混合することと、
得られた混合物をペレット化ディスクまたはドラム凝集器等でペレット化することと、を含む方法。
【請求項9】
結合剤組成物は、乾燥ペレットの総重量を基準として、2重量%~12重量%、好ましくは4重量%~8重量%存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
鉱石の含水量は、混合前の鉱石の重量を基準として、3重量%~15重量%である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
ペレット化の前またはペレット化の間に、無煙炭または他の炭素源を鉱石に添加する、請求項8~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
乾燥粉末または水と混合したスラリーとしての結合剤組成物を、鉄鉱石もしくは鉱石濃縮物を運ぶコンベヤベルト上に、もしくは凝集装置に広げること、または、ペレット化ディスクもしくは他の凝集装置に供給される鉄鉱石に注入もしくは噴霧すること、をさらに含む、請求項8~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
形状およびサイズが一定のペレットが形成できるように、鉄鉱石と結合剤との混合物に水を注入すること、をさらに含む、請求項8~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
ペレット化の後に、2~7日間、相対湿度(r.h.)が90%を超える湿り大気中、5℃を超える温度でペレットを硬化させること、をさらに含む、請求項8~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項8~14の何れか一項に記載の方法によって製造される金属鉱石ペレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属鉱石ペレットの製造のための結合剤組成物と、金属鉱石ペレットの製造のための方法と、金属鉱石ペレットと、に関する。
【背景技術】
【0002】
粒度の細かい鉱石、例えば、粉砕した鉱石、粉末状の鉱石、または濃縮物としての鉱石は、冶金プロセス、例えば、溶鉱炉や直接還元等では加工できない。
【0003】
一般に、鉱石の冶金プロセス、例えば、液体金属への、または直接還元による鉱石の冶金プロセスでは、粒子間に気体流が必要となる。好適な、低い流動抵抗を確保しなければならない。したがって、例えば、鉱石をペレット化して好適なサイズのペレットを得る、または、鉱石を焼結して粒度を増加させることによって、粒子のサイズを大きくすることがよく知られている。
【0004】
溶鉱炉では、炉の高さによって、全体(bulk)の重量に対して、したがってペレットに対して、大きな圧力が加わる。また、ペレットは、運搬および取り扱いの間、摩擦および摩耗だけでなく、圧縮に曝される。
【0005】
したがって、十分な圧縮強度を有するペレットが必要となる。
【0006】
鉱石粒子を焼結してより大きな粒子とし、さらなる加工にとって好適なものとすることが知られている。焼結は、大きなエネルギーを消費するプロセスであり、通常、コークスの追加的な使用が必要となる。これによって、温室効果ガスが放出される。
【0007】
従来の乾式冶金プロセスでは、鉱石は、部分融解によってペレット化する。この方法の短所としては、鉱石を実際に加工して所望の金属を抽出する前に、追加的なエネルギーを必要とする点がある。
【0008】
関連産業においては、冷間ペレット化プロセスが知られており、用いられている。ペレットは、様々な種類の結合剤を使用して製造する。ポルトランドセメントを用いて鉱石をペレット化することが知られており、また、微細なポルトランドセメントを用いることでペレットの強度を向上できるという利点も知られている。これらのプロセスにおける主な制約として、ペレットの圧縮強さが時間の経過とともに低下することがあり、ペレットの取り扱いを支援するのに十分でない可能性がある、という点がある。そういったペレットは、冶金プロセスの前やその最中に、取り扱いの過程で破砕してしまうものと考えられる。
【0009】
高アルミナセメント、例えば、アルミン酸カルシウムセメントやスルホアルミン酸カルシウムセメントもまた、ペレットの製造のために用いられる。しかしながら、これらの結合剤は、とても高価である。
【0010】
また、水硬結合剤を用いて作られた鉱石ペレットを硬化させることによって、ペレットの圧縮強さを向上させることが知られている。例えば、高レベルのCO2を含有する飽和ガス流内でペレットを硬化させると、ペレットの強度を向上させることが知られている。これはまた、所望の強度を達成する効果的な手段であるとともに、CO2を含有する廃ガスを利用する方法であると考えられている。また、オートクレーブに飽和蒸気処理を導入する硬化方法が知られている。
【0011】
加えて、蒸気の飽和ガス内において適度な温度で硬化させることでペレットの冷間強度を向上させる、または硬化時間を減少させることが知られている。
【0012】
特許文献1(ソ連特許第562580号明細書)は、融剤を用いた鉄鉱石の非焼成ペレットの調製に関係し、鉄鉱石を水硬性セメントおよび触媒と混合することが記載されている。セメントは、50%を超えるアライトを含むアライト系セメントである。アルミナセメントの他に塩化カルシウムおよび塩化バリウムを触媒として使用する。ペレット化の後、混合物を150~180℃で2時間硬化させ、その後、通常の気圧下で250℃まで加熱する。これによって、200kg/ペレットまたは2000Nを超える圧縮強さが得られる。
【0013】
特許文献2(米国特許第3676104号明細書)には、高炉スラグとポルトランドセメントとからなるペレットの製造のための結合剤について記載されている。鉱石の他に、5%のセメントと10%の高炉スラグとが存在する。ペレットをスチームオートクレーブで硬化させる。
【0014】
特許文献3(国際公開第2019/033187号)は、粒径が0.8mmまでのとても微細な粒子の鉄鉱石と、98%が粒径44μm未満のセメントと、からペレットを冷間成形する方法に関する。
【0015】
特許文献4(英国特許第1445792号明細書)から、セメントを15~95%と、遊離鉄を含有する粉末5~85%と、を含む混合物2~40%に、鉄鉱石60~98%を混合することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】ソ連特許第562580号明細書
【特許文献2】米国特許第3676104号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/033187号
【特許文献4】英国特許第1445792号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
今日では、溶鉱炉およびDR反応器に供給する鉄鉱石ペレットは、一般に、有機物またはベントナイト等の結合剤を含むペレットを焼結または焼成することによって製造する。これら2つのプロセスでは、鉱石中の部分的な還元および酸化鉄の融解によって、凝集プロセスが起こる。この硬化プロセスでは、重機器、多くの燃料、エネルギーが必要とされ、温室効果ガスが大量に放出される。
【0018】
本発明の目的は、十分な圧縮強さを有するペレットを生産できる、金属鉱石のペレット化のための結合剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的は、請求項1の結合剤組成物によって達成される。
【0020】
実施形態は、請求項1に従属する請求項で請求されている。
【0021】
本発明のさらなる目的は、十分な圧縮強さを有する金属鉱石ペレットを製造するための方法であって、プロセスのエネルギー最適化がなされている方法を提供することである。
【0022】
前記目的は、請求項8の特徴を有する方法によって達成される。
【0023】
実施形態は、請求項8に従属する請求項で請求されている。
【0024】
本発明のさらなる目的は、取り扱いおよび加工に十分な圧縮強さを有する金属鉱石ペレットを提供することである。この目的は、請求項15に係る金属鉱石ペレットによって達成される。
【0025】
以下に示す百分率は、特に断りのない限り、重量%の値である。
【0026】
本発明に係る、特定の水硬結合剤を含む結合剤組成物は、追加的なエネルギーを消費する加工工程を実施することなく、十分な圧縮強度を有するペレットを製造できる。
【0027】
本発明は、鉄鉱石ペレットの製造において、CO2の排出とエネルギーの消費とを大幅に減少させる。また、本発明では、必要とする機器が簡素化できる。
【0028】
従来の技術に記載されている経験に反して、圧縮強度は、水硬性反応中の後ろの段階において、低下することはなく、増加する。また、関連技術分野における一般的な知識に反して、ペレットが十分な強度を有することができるのは、水硬結合剤の粉末度だけが原因ではない。他の基準をさらに満たさなければならないことが分かった。
【0029】
水硬結合剤は、粉末度がD95<40μm、D50<12μm、D10<5μm(レーザ回折式粒度分析器により特定)の範囲であり、ブレーン粉末度が6500~9000cm2/gの間である、任意の水硬結合剤から選択してもよい。
【0030】
また、CaOの含有量は、好ましくは、62.5重量%を超え、C3Sの含有量は、>60重量%であり、好ましくは、>65重量%である。特に、水硬結合剤は、以下の基準を満たす場合に有利である。Al203>4重量%、Fe2O3<3重量%、SO3>3.5重量%、C3A>2重量%(XRD-リートベルト分析による)、C4AF<11%重量%(XRD-リートベルト分析による)。
【0031】
水硬結合剤の他に、結合剤組成物は、添加剤を含む。添加剤は、アルカノールアミン,セッコウ,アルミン酸カルシウムセメント,硫酸鉄,塩化カルシウムおよび塩化マグネシウム,スルホアルミン酸ナトリウム,CSHシード,カルボキシメチルセルロース,カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース,ビニル共重合体,クエン酸ナトリウム,グルコン酸ナトリウム,エチレンジアミン四酢酸の二ナトリウム塩,メラミンホルムアルデヒド縮合物およびナフタレンホルムアルデヒド縮合物,リグノスルホナート,凝結遅延剤(set retardants),流動化剤(superplasticizer),微粉砕した石灰石のような融剤および/またはドロマイト、を含む群からの1または複数とすることができる。
【0032】
有機添加剤の存在が有利であり、その有機添加剤はアルカノールアミンの群から選択してもよいことが分かった。
【0033】
アルカノールアミンは、アルカン骨格に、ヒドロキシル(-OH)およびアミノ(-NH2、-NHR、および-NR2)官能基の両方を含有する化合物である。アルカノールアミンという用語は、幅広い部類を表す用語である。アルカノールアミンは、N,N ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-プロパノールアミン(DIEPA)、N,N ビス-(2-ヒドロキシプロピル)-N-(ヒドロキシエチル)アミン(EDIPA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、トリエチレンペンタミン(TEPA)、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン(HEDETA)、アミノエチルエタノールアミン(AEEA)、およびこれらの組み合わせ、を含む群から選択されると有利である。
【0034】
特に、トリ-イソプロパノールアミン,ジ-エタノール-イソプロパノールアミンまたはこれらの混合物、を使用することができる。
【0035】
アルカノールアミンの添加量は、結合剤組成物の全量の0.1重量%から1重量%であってもよい。
【0036】
アルカノールアミンの他に、水硬結合剤の一部としての硫酸カルシウムの供給源に、セッコウをさらに添加してもよい。添加量は、0.5重量%から10重量%であってもよい。
【0037】
添加剤は、アルミン酸カルシウムセメントを含んでいてもよく、アルミン酸セメントは、任意のアルミン酸カルシウムセメント、任意のスルホアルミン酸カルシウムセメント、またはこれらの任意の混合物、であってもよい。
【0038】
アルミン酸カルシウムは、結合剤の総重量を基準として、2重量%から20重量%の間の量だけ存在していてもよい。
【0039】
添加剤として、硫酸鉄をさらに添加してもよく、好ましくは、水硬結合剤成分の総重量を基準として、5重量%まで添加してもよい。
【0040】
他の好適な添加剤は、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウム,スルホアルミン酸ナトリウム,CSHシード,カルボキシメチルセルロース,ビニル共重合体ならびにこれらの任意の混合物、であってもよい。
【0041】
微粉砕した石灰石および/またはドロマイトを、融剤として結合剤に添加することができる。鉱物の添加量は、鉱石の組成と、冷間結合ペレットの化学組成と、によって決まる。
【0042】
本発明の方法では、微細な鉱石は、乾燥した結合剤成分と混合してもよい。結合剤成分は、任意に、ペレットの総重量の2~12重量%の量だけ添加してもよく、好ましくは、乾燥ペレット(鉱石+結合剤+任意の添加剤)の総重量の4~8重量%の量だけ添加してもよい。
【0043】
鉱石の含水量は、鉱石の総重量を基準として、好ましくは、3重量%~15重量%であってもよい。
【0044】
鉱石に含まれる水は、結合剤の水硬性反応、および、結合剤粒子の鉱石粒子に対する良好な付着、のために使用し得る。
【0045】
鉱石の含水量が3重量%を下回る場合、水を添加してもよい。含水量が15重量%よりも多い場合、鉱石を部分的に乾燥させて、所望の含水量としてもよい。また、含水量は、鉱石だけでなく、結合剤の粉末度によっても決まり得る。
【0046】
鉱石の含水量が所望の範囲を下回る場合、結合剤組成物は、水および任意でさらなる添加剤と添加混合してスラリーとしてもよい。スラリーを添加する場合、凝結遅延剤,流動化剤または他の公知の添加剤、例えばクエン酸ナトリウム,グルコン酸ナトリウム,エチレンジアミン四酢酸の二ナトリウム塩,メラミンホルムアルデヒド縮合物およびナフタレンホルムアルデヒド縮合物,リグノスルホナート,凝結遅延剤,流動化剤、を添加して、凝結、粘性等を調整してもよい。
【0047】
鉱石および/または結合剤が微細であるほど、十分な強度を得るためにより多くの量の水が求められる。鉱石が微細であるほど、より多くの量の結合剤を必要とする。
【0048】
最低圧縮強度が少なくとも1400Nであると有利であることが分かった。
【0049】
第1の態様において、本発明は、結合剤組成物に関し、
水硬結合剤成分の粉末度は、少なくとも、D95<40μm、D50<12μm、D10<5μm(レーザ回折式粒度分析器により特定)であり、ブレーン粉末度は、6500~9000cm2/gの間であり、CaO含有量は、>62.5重量%であり、CaO含有量は、>62.5重量%であり、C3Sの含有量は、>60重量%、好ましくは>65重量%であり、
水硬結合剤成分は、水硬結合剤成分の全量の重量を基準として、0.1重量%~1重量%のアルカノールアミン、および/または、0.5重量%~10重量%のセッコウ、を含む。
【0050】
実施形態において、水硬結合剤は、Al203>4重量%、Fe2O3<3重量%、SO3>3.5重量%、C3A>2重量%(XRD-リートベルト分析による)、C4AF<11%重量%(XRD-リートベルト分析による)、であることをさらに特徴とする。
【0051】
実施形態において、結合剤組成物は、アルカノールアミン,セッコウ,アルミン酸カルシウムセメント,硫酸鉄,塩化カルシウムおよび塩化マグネシウム,任意のスルホアルミン酸ナトリウム,CSHシード,カルボキシメチルセルロース,カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース,任意のビニル共重合体,クエン酸ナトリウム,グルコン酸ナトリウム,エチレンジアミン四酢酸の二ナトリウム塩,メラミンホルムアルデヒド縮合物およびナフタレンホルムアルデヒド縮合物,リグノスルホナート,凝結遅延剤,流動化剤,CSHシード,融剤またはこれらの任意の混合物、を含む群からの1または複数を添加剤として含む。
【0052】
実施形態において、結合剤組成物は、アルミン酸セメントを含み、前記アルミン酸セメントは、任意のアルミン酸カルシウムセメント,任意のスルホアルミン酸カルシウムセメントまたはこれらの任意の混合物、から任意に選択される。
【0053】
実施形態において、水硬結合剤成分は、水硬結合剤成分の総重量を基準として、2重量%~20重量%のアルミナセメントを含む。
【0054】
実施形態において、結合剤組成物は、融剤をさらに含み、任意に、前記融剤は、微粉砕した石灰石および/またはドロマイトである。
【0055】
実施形態において、凝結遅延剤、凝結促進剤および流動化剤等を添加して凝結および粘性等を調整してもよい。
【0056】
本発明の第2の態様は、金属鉱石ペレットの製造のための方法であって、
微粉砕した鉱石または鉱石濃縮物を、先行する請求項のいずれかに記載の結合剤組成物と混合することと、
得られた混合物をペレット化ディスクまたはドラム凝集器等でペレット化することと、を含む。
【0057】
実施形態において、結合剤組成物は、乾燥ペレットの総重量を基準として、2重量%~12重量%、好ましくは4重量%~8重量%存在する。乾燥ペレットとは、乾燥鉄鉱石+水硬結合剤+添加剤の乾燥ベース(dry basis of additives)、のことを表す。
【0058】
実施形態において、鉱石の含水量は、混合前の鉱石の重量を基準として、3重量%~15重量%である。
【0059】
実施形態において、ペレット化の前またはペレット化の間に、無煙炭または他の炭素源を鉱石に添加する。
【0060】
実施形態において、結合剤組成物は、水を添加混合してスラリーとしてもよい。
【0061】
実施形態において、凝結遅延剤、凝結促進剤、流動化剤、または他の公知の添加剤を添加して、凝結および粘性等を調整してもよい。実施形態において、無煙炭または他の炭素源を鉱石に添加する。
【0062】
実施形態において、乾燥粉末または水と混合したスラリーとしての結合剤組成物は、鉄鉱石もしくは鉱石濃縮物を運ぶコンベヤベルト上に、もしくは凝集装置に注入もしくは噴霧する、または、ペレット化ディスクもしくは他の凝集装置に供給される鉄鉱石に注入もしくは噴霧する。
【0063】
実施形態において、鉄鉱石と結合剤との混合物に水を注入または噴霧することによって、形状およびサイズが一定のペレットを形成できる。
【0064】
実施形態において、ペレット化の後に、任意に、2時間から2日間、r.h.が90%を超える湿り大気中、5℃を超える温度でペレットを硬化させる。
【0065】
本発明の第3の態様は、先述の結合剤組成物を用いて、先述の方法によって製造される金属鉱石ペレットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
様々な実施形態と以下の添付図面とによって、本発明をさらに説明する。
【
図1】本発明のプロセスを、関連技術において知られているプロセスと比較して示す概略図である。
【
図2】本発明および比較例に係る例の化学分析を示す表である。
【
図3】本発明および比較例に係る例のクリンカー鉱物分析を示す表である。
【
図4】本発明および比較例に係る水硬結合剤の例の粉末度である。
【
図5】本発明に係る結合剤を用いて作られた、本発明に係るペレットの圧縮強さである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
結合剤組成物を準備するために、粉末度がD95<40μm、D50<12μm、D10<5μmを満たし、CaOの含有量が62,5重量%を超え、C3Sの含有量が>60重量%、好ましくは>65重量%である任意のもののうちから、水硬結合剤を選択する。この水硬結合剤は、前記基準を満たす限り、CEM Iまたは他のセメント、例えばCEM II,CEM III,アルミン酸カルシウムセメント,スルホアルミン酸カルシウムセメントまたはこれらの任意の混合物から選択してもよい。
【0068】
D10は、粒度の体積分布の10パーセンタイル値に対応する。すなわち、体積の10%がD10より小さい粒子からなり、90%がD10より大きい。D50は、粒度の体積分布の中央値、つまり50パーセンタイル値に対応する。すなわち、体積の50%がD50より小さい粒子からなり、50%がD50より大きい。D95は、粒度の体積分布の95パーセンタイル値に対応する。すなわち、体積の90%がD95より小さい粒子からなり、10%がD95より大きい。
【0069】
粒子のD10、D50またはD95は、一般に、レーザー回折によって特定する。種々の粉末の粒度分布は、レーザー式マルバーンMS2000粒度計を用いて測定する。測定は、好適な媒体(例えば、水性媒体)内で行う。粒子のサイズは、0.02μmから2mmの間となるであろう。光源は、赤色ヘリウムネオンレーザー(632nm)と青色ダイオード(466nm)とからなる。光学モデルは、フラウンホーファーモデルであり、演算マトリクスは多分散型(polydis-perse type)である。
【0070】
バックグラウンドノイズの測定を、ポンプ速度を2000rpmとし、撹拌速度を800rpmとしてまず第一に行い、ノイズの測定を、10秒間(10s)、超音波のない状態で行う。その後、レーザーの光強度が少なくとも80%と等しく、減少する指数曲線がバックグラウンドノイズについて得られることを確認する。確認できない場合は、セルのレンズの汚れを取らなければならない。
【0071】
その後、第1の測定を、試料に対して、以下のパラメータ:ポンプ速度2000rpm、撹拌速度800rpm、超音波のない状態で不明瞭度の限度(obscuration limit)を10%から20%の間、を用いて行う。不明瞭度を10%よりもわずかに大きくするために、試料を導入する。不明瞭度が安定してから、浸漬と測定との間の時間を10秒(10s)に設定して、測定を行う。測定の時間は、30秒(30s)である(30000の解析された回析像)。得られた顆粒グラム(granulogram)において、粉末の集合の一部が凝集している可能性があるという事実を考慮に入れるべきであろう。
【0072】
次に、第2の測定を、(タンクを空にすることなく)超音波とともに行う。ポンプ速度を2500rpmとし、撹拌を1000rpmとし、超音波を100%放射する(30ワット)。この速度を3分間維持し、その後、初期のパラメータに戻す。すなわち、ポンプ速度を2000rpmとし、撹拌速度を800rpmとし、超音波のない状態とする。(発生した可能性がある気泡を除去するための)10秒(10s)後、測定を30秒(30s)行う(30000の解析された画像)。この第2の測定は、超音波分散によって解凝集した粉末に対応する。
【0073】
各測定は、結果の安定性を確認するために、少なくとも2回繰り返す。装置は、各作業の前に、粒径曲線が知られている標準試料(シリカ,C10,Sifraco)を用いて較正する。明細書中に示す測定値および公表する範囲は、すべて超音波を用いて得られた値に対応する。
【0074】
好ましくは、以下の基準をさらに満たす。Al203>4重量%,Fe2O3<3重量%,SO3>3.5重量%,C3A>2重量%(XRD-リートベルト分析による),C4AF<11%重量%(XRD-リートベルト分析による)。
【0075】
好ましくは、結合剤組成物は、先述の水硬結合剤を主な構成要素として含み、任意に添加剤を含む、既成の(ready engineered)、すぐに使える組成物である。
【0076】
この目的のために、水硬結合剤に添加剤を混合する。主な添加剤は、アルカノールアミン、および/またはセッコウ、および/または硫酸鉄である。液体の添加剤を使用する場合、クリンカーまたは他の固体の水硬結合剤の構成要素を粉砕する工程で添加できる。
【0077】
水硬結合剤成分の総重量を基準として、アルカノールアミンは、0.1重量%から1重量%添加してもよく、セッコウは、(水硬結合剤の一部としての硫酸カルシウムの供給源に追加して)0.5重量%から10重量%添加してもよく、硫酸鉄は、0.1重量%から3重量%添加してもよい。これらの添加剤の1つだけでも、水和後の結合剤に十分な強度をもたらす可能性はあるものの、前記添加剤の任意の混合物も好適である。
【0078】
また、水硬結合剤は、アルミン酸セメントを含んでいてもよく、アルミン酸セメントは、任意のアルミン酸カルシウムセメント、任意のスルホアルミン酸カルシウムセメント、またはこれらの任意の混合物であってもよい。特に、結合剤全量に対して2重量%~20重量%含まれる。
【0079】
他の好適な添加剤としては、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウム,スルホアルミン酸ナトリウム,CSHシード,カルボキシメチルセルロースならびにビニル共重合体を挙げることができる。
【0080】
図1は鉄鉱石に関するものであるが、本発明は、他の金属鉱石、例えば銅鉱石等にも首尾よく適用することができる。
【0081】
図1から明らかであるように、鉄鉱石を粉砕、加工して、例えば、鉄鉱石濃縮物とする。好ましくは、濃縮物中の含水量は、鉱石の重量を基準として、3重量%から12重量%に調整する。含水量は、鉱石の粉末度だけではなく結合剤組成物の粉末度にも適応させるべきである。後者は、鉱石の粉末度と鉄鉱石の種類とに適応させてもよい。鉱石が微細であるほど、より多くの結合剤を必要とする。
【0082】
赤鉄鉱石は、磁鉄鉱石と比較して、圧縮強度がより高いペレットを生産できることから、後者の粉末度はより高いものにしなければならず、より多くの結合剤が求められる。よって、より多くの水を必要とする。鉱石の含水量がこの閾値を下回る場合、水を添加してもよい。含水量が閾値より多い場合、鉱石を部分的に乾燥させて、所望の含水量としてもよい。
【0083】
鉱石濃縮物を凝集装置に供給する。凝集装置は、ディスク凝集器/ペレタイザー、または、微粉砕した原材料をペレットに加工する、他の任意の好適な、周知の装置であってもよい。
【0084】
結合剤組成物を鉄鉱石に加えるのは、ペレタイザーに供給している間でもよく、ペレタイザー中でもよい。ペレットがペレタイザー装置内で形成される前に凝結してしまうことを避けるために、結合剤組成物は、好ましくは、ペレット化プロセスの直前に添加する。
【0085】
水および/または液体ペレット化剤を鉱石/結合剤混合物に追加的に加えて、一定の形状およびサイズのペレットが確実に形成されるようにしてもよい。追加的な水は、鉱石の含水量を考慮して計算してもよい。好ましいペレットのサイズは、10mmから15mmである。例えばカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等の凝結遅延剤、凝結および/または硬化促進剤、例えばクエン酸ナトリウム等の流動化剤、または他の公知の添加剤を添加して、凝結、硬化、粘性等を調整してもよい。
【0086】
結合剤の添加量は、ペレットの総重量の2~12重量%、好ましくは、ペレット(鉱石+結合剤+任意の添加剤)の総重量の4~8重量%である。
【0087】
ペレットは、その後、2~7日間硬化させる。硬化の間、温度は、5℃を下回るべきではなく、相対湿度は、90%r.h.を超えるべきであり、好ましくは、100%r.h.であるべきである。
【0088】
図2の表は、本発明および比較例に係る水硬結合剤の例の化学分析を示す。GU CEM Iを除くすべてが、CaOの含有量に関係する基準を満たしている。
【0089】
図3に、クリンカー鉱物に関するそれぞれの分析を示す。表から理解できるように、CEM I 52,5を除くすべてが、C3Sの含有量の基準を満たしている。
【0090】
図4に、粒子分布およびブレーンの表面を示す。粒子分布に関する基準は、非発明的な例であるGU CEM IおよびType Gは満たしていないものの、表面に関する基準は満たしている。CEM I 52,5Nは、表面に関する基準は満たしていないが、粒子分布に関する基準はもちろん満たしている。
【0091】
図5に、本発明の結合剤組成物を用いて作られた、本発明に係るペレットの圧縮強度を示す。すべての例で、2日後および7日後に十分な圧縮強度を示している。
【0092】
図6に、比較例を示す。基準を満たさない結合剤組成物を用いて作られたペレットは、十分な圧縮強度を有していない。一般的な知識に反して、ペレットが十分な強度を有するためには、微粉砕した水硬結合剤を準備するだけでは十分ではない。粒度分布または表面が基準を満たすとしても、両方を満たさなければならない。粒度および表面の基準の他に、CaO含有量またはC3Sの含有量が十分でない場合、圧縮強度は十分に高くはならない。
【国際調査報告】