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特表2023-554536縮合環化合物及びその応用、並びに該縮合環化合物を含む有機電界発光素子
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  • 特表-縮合環化合物及びその応用、並びに該縮合環化合物を含む有機電界発光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】縮合環化合物及びその応用、並びに該縮合環化合物を含む有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20231220BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20231220BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20231220BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20231220BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20231220BHJP
【FI】
C07F5/02 A CSP
C09K11/06 660
H10K50/12
H10K85/60
H10K85/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538057
(86)(22)【出願日】2022-05-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2022091381
(87)【国際公開番号】W WO2022237668
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】202110506028.2
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513322718
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】1 Qinghuayuan, Haidian District, Beijing 100084, China
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】段 錬
(72)【発明者】
【氏名】張 躍威
(72)【発明者】
【氏名】張 東東
(72)【発明者】
【氏名】李 国孟
【テーマコード(参考)】
3K107
4H048
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC07
3K107CC12
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD69
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB92
4H048VA22
4H048VA32
4H048VA77
(57)【要約】
縮合環化合物及びその応用、並びに当該縮合環化合物を含む有機電界発光素子を開示し、半導体技術分野に属する。縮合環化合物は下記式(1)又は式(2)で示される構造を有し、そのうち、特定の炭素原子数を有する芳香環又はヘテロ芳香環を核として、同一のホウ素含有基が2個縮合したことにより、半値幅が狭く、蛍光量子収率が高く、ガラス転移温度及び分子の熱安定性が高く、適切なHOMO及びLUMO準位を有する縮合環化合物を実現する。本発明の化合物は、有機電界発光素子の発光層ドーパント材料として有用であり、素子の発光色純度および寿命の向上を達成することができる。
【選択図】 図1
【化1】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合環化合物であって、
下記式(1)又は式(2)で表される構造を有し、
【化1】

式(1)、式(2)に、YおよびYは、それぞれ独立的にO、S、CRまたはNを示し、
、Aは、それぞれ独立に単結合、O、S、CR又はNRを示し、
環Dは水素を示し、または環Dは置換または非置換のC5~C20の芳香環、置換または非置換のC4~C60複素芳香環のいずれか一方を示し、
環Eは、置換または非置換のC5~ C20の芳香環、置換または非置換のC4~ C60の複素芳香環のいずれか一方を示し、
-Z12は、それぞれ独立にN原子またはCRを示し、隣り合う2つのR同士が互いに結合して環を形成してもよく、
、R、RおよびRは、それぞれ独立的に、水素、重水素、トリチウム、シアノ基、ハロゲン、置換または非置換のC1~C10アルキル基、置換または非置換のC3~C10シクロアルキル基、置換または非置換のC1~C10アルコキシ基、置換または非置換のC6~C30アリールオキシ基、C6~C30のアリールアミノ基、C3~C30ヘテロアリールアミノ基、置換または非置換のC6~C30アリール基、置換または非置換のC2~C30ヘテロアリール基のいずれかから選択され、
前記環D、環Eに置換基が存在する場合、前記置換基は、それぞれ独立的に、重水素、ハロゲン、C1~C30の鎖状アルキル基、C3~C30のシクロアルキル基、C1~C10のアルコキシ基、シアノ基、C6~C30のアリールアミノ基、C3~C30のヘテロアリールアミノ基、C6~C60の単環アリール基、C6~C60の縮合環アリール基、C6~C60のアリールオキシ基、C5~C60の単環ヘテロアリール基、C5~C60の縮合環ヘテロアリール基のいずれかから選択され、
前記R、R、R及びRに置換基が存在する場合、前記置換基は、それぞれ独立的に、重水素、ハロゲン、C1~ C30の鎖状アルキル基、C3~ C30のシクロアルキル基、C1~ C10のアルコキシ基、シアノ基、C6~ C30のアリールアミノ基、C3~ C30のヘテロアリールアミノ基、C6~ C60の単環アリール基、C6~ C60の縮合環アリール基、C6~ C60のアリールオキシ基、C5~ C60の単環ヘテロアリール基、C5~ C60の縮合環ヘテロアリール基のいずれかから選択される
ことを特徴とする縮合環化合物。
【請求項2】
前記環Dは、水素を示し、または、置換または非置換のC10芳香族環、置換または非置換のC12芳香族環、置換または非置換のC14芳香族環、置換または非置換のC16芳香族環、置換または非置換のC18芳香族環、置換または非置換のC20芳香族環、置換または非置換のC10のヘテロアリール環、置換または非置換のC12ヘテロアリール環、置換または非置換のC14のヘテロアリール環、置換または非置換のC16のヘテロアリール環、置換または非置換のC18のヘテロアリール環、置換または非置換のC22のヘテロアリール環のいずれかを示し、
前記環Eは、置換または非置換のC10芳香族環、置換または非置換のC12芳香族環、置換または非置換のC14芳香族環、置換または非置換のC16芳香族環、置換または非置換のC18芳香族環、置換または非置換のC20芳香族環、置換または非置換のC10のヘテロアリール環、置換または非置換のC12ヘテロアリール環、置換または非置換のC14のヘテロアリール環、置換または非置換のC16のヘテロアリール環、置換または非置換のC18のヘテロアリール環、置換または非置換のC22のヘテロアリール環のいずれかを示し、
前記環D、環Eに置換基が存在する場合、前記置換基は、それぞれ独立的に、重水素、ハロゲン、C1~ C10の鎖状アルキル基、C3~ C10のシクロアルキル基、C1~ C8のアルコキシ基、シアノ基、C6~ C20のアリールアミノ基、C3~ C2のヘテロアリールアミノ基、C6~ C30の単環アリール基、C6~ C30の縮合環アリール基、C6~ C30のアリールオキシ基、C5~ C30の単環ヘテロアリール基、C5~ C30の縮合環ヘテロアリール基のいずれかから選択される
請求項1に記載の縮合環化合物。
【請求項3】
前記環Dは、水素又はC4~C60複素芳香環を示し、前記複素芳香環中のヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、ホウ素原子、又は窒素原子から少なくとも1つ選定され、好ましくは、前記芳香環中のヘテロ原子は、ホウ素原子または窒素原子から少なくとも1つ選択され、
前記環Eは、C4~C60ヘテロアリール環を示し、前記ヘテロアリール環のヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、ホウ素原子または窒素原子から少なくとも1つ選定され、好ましくは、前記芳香環中のヘテロ原子は、ホウ素原子及び窒素原子から少なくとも1つ選定される
請求項1に記載の縮合環化合物。
【請求項4】
前記環Dは水素、又は下記式(a)或いは式(b)で表される構造を示し、
環Eは下記式(a)或いは式(b)で表される構造を示し、
【化2】
式(a)、式(b)に、破線は式(1)または式(2)の母核の連結位置を示し、
式(a)に、Yは式(1)または式(2)のYおよび/またはYを示し、
式(a)に、X-X11は、それぞれ独立的にN原子またはCRを示し、隣接する2つのR同士が互いに結合して環を形成してもよく、
式(b)に、Yは、式(1)または式(2)のYおよび/またはYを示し、Yは、O、S、CRまたはNを示し、
式(b)に、X21-X35は、それぞれ独立的にN原子またはCRを示し、隣接する2つのR同士が互いに結合して環を形成してもよく、
、RおよびRは、それぞれ独立的に、水素、重水素、トリチウム、シアノ基、ハロゲン、置換または非置換のC1~C10アルキル基、置換または非置換のC3~C10シクロアルキル基、置換または非置換のC1~C10アルコキシ基、置換または非置換のC6~C30アリールオキシ基、C6~C30のアリールアミノ基、C3~C30ヘテロアリールアミノ基、置換または非置換のC6~C30アリール基、置換または非置換のC2~C30ヘテロアリール基のいずれかから選択され、
前記R、RおよびRに置換基が存在する場合、前記置換基は、それぞれ独立的に、重水素、ハロゲン、C1~ C30の鎖状アルキル基、C3~ C30のシクロアルキル基、C1~ C10のアルコキシ基、シアノ基、C6~ C30のアリールアミノ基、C3~ C30のヘテロアリールアミノ基、C6~ C60の単環アリール基、C6~ C60の縮合環アリール基、C6~ C60のアリールオキシ基、C5~ C60の単環ヘテロアリール基、C5~ C60の縮合環ヘテロアリール基のいずれかから選択される
請求項1に記載の縮合環化合物。
【請求項5】
下記式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(1-4)、式(1-5)、式(1-6)、式(1-7)、式(1-8)、式(1-9)、式(1-10)、式(2-1)、式(2-2)、式(2-3)、式(2-4)又は式(2-5)のいずれかで表される構造を有し、
【化3】
【化4】

式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(1-4)、式(1-5)、式(1-6)、式(1-7)、式(1-8)、式(1-9)、式(1-10)、式(2-1)、式(2-2)、式(2-3)、式(2-4)、式(2-5)において、Y、Y、Z-Z12の定義は、式(1)、式(2)における定義と同じであり、Y、Y、Y、X-X11、X21-X35の定義は、式(a)、式(b)における定義と同じである
請求項1または4に記載の縮合環化合物。
【請求項6】
前記X-X11が、それぞれ独立的にCRを示し、及び/又は、前記X21-X35が、それぞれ独立的にCRを示す
請求項5記載の縮合環化合物。
【請求項7】
前記Z-Zが、それぞれ独立的にCRを示し、及び/又は、前記Z-Z12が、それぞれ独立的にCRを示す
請求項1または5記載の縮合環化合物。
【請求項8】
下記の具体的な構造の化合物
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
から選択される
請求項1に記載の縮合環化合物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の縮合環化化合物の応用であって、
前記化合物は機能性材料として有機電子素子に応用され、前記有機電子素子は有機電界発光素子、光学センサー、太陽電池、照明素子、有機薄膜トランジスター、有機電界効果トランジスター、有機薄膜太陽電池、情報タグ、電子人工皮膚シート、シート状スキャナーまたは電子ペーパーを含み、
さらに、前記化合物は発光層材料として有機電界発光素子に応用される
ことを特徴とする応用。
【請求項10】
有機電界発光素子であって、
第1の電極、第2の電極、および前記第1の電極と前記第2の電極との間に挿入された1層以上の有機層を含み、
前記有機層は、請求項1ないし8のいずれかに記載の少なくとも1種の縮合環化合物を含み、
さらに、前記発光機能層は、正孔輸送領域と、発光層と、及び電子輸送領域とを含み、前記正孔輸送領域は陽極層に形成され、陰極層は前記電子輸送領域に形成され、前記正孔輸送領域と前記電子輸送領域との間に発光層が形成され、そのうち、前記発光層に請求項1ないし8のいずれかに記載の縮合環化合物が含有される
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光技術分野に関し、特に縮合環化合物及びその応用、並びに該化合物を含む有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(OLED:Organic Light Emission Diodes )は、サンドイッチ状の構造を有する素子であり、正負の電極フィルム層及び電極フィルム層の間に挟まれた有機機能性材料層を含む。OLED素子は、輝度が高く、応答が速く、視野角が広く、プロセスが簡単であり、柔軟化できる等の利点を有するため、新しいディスプレイ技術分野及び新しい照明技術分野において注目を集めている。現在、この技術は、新型照明灯具、スマートフォン、およびタブレットなどの製品の表示パネルに広く応用されており、さらにテレビなどの大型表示製品への応用分野も広がり、発展が早く、技術的要求が高い新型表示技術である。
【0003】
OLEDが照明及びディスプレイの両方の領域で進められているのにつれて、効率が良く、且つ寿命が長いOLED素子が、通常に素子構造及び様々な有機材料の最適化された組み合わせの結果であるため、そのコア材料の研究は、より一層注目が集められる。駆動電圧がより低く、発光効率がより良く、素子の耐用寿命がより長いOLED発光素子を製造することで、OLED素子の性能を向上させるために、OLED素子の構造及び製造プロセスに対する革新だけでなく、OLED素子における光電機能材料に対する研究及び革新も絶えず行われることで、より高い性能を有する機能材料を製造する必要がある。これを基に、OLED材料の業界は、低い始動電圧、高い発光効率、及びより優れた素子の耐用寿命を達成するために、新しい有機電界発光材料の開発に向けて継続的に努力している。
【0004】
OLED材料の選択において、一重項発光の蛍光材料は、寿命が良く、安価であるが、効率が低く、三重項発光の燐光発光材料は、高効率であるが、高価であり、且つ青色発光材料の寿命の問題がまだ解決されていない。有機発光材料として、日本九州大学のAdachiから熱活性化遅延蛍光(TADF)材料という新たな有機発光材料が提案されている。そのような材料の一重項-三重項エネルギーギャップ(ΔEST )は非常に小さく(<0.3eV)、三重項励起子が逆項間交差(RISC)によって一重項励起子に変換されて発光するため、素子の内部量子効率は100%に達する。
【0005】
MR-TADF材料は、色純度が高く、発光効率が高いという利点を有しており、科学業界と産業界において注目を集めている。しかし、周辺置換基はS準位に与える影響が小さく、すなわち材料の発光色の制御が困難であるため、その光色も青色から深青色までの領域に限られており、MR-TADF材料の高解像度表示、フルカラー表示及び白色光照明分野等への応用は著しく制限されている。
【発明の概要】
【0006】
前記技術的課題を解決するために、本発明は新たな構造の縮合環化合物を提供し、具体的に下記式(1)又は式(2)で表される構造を有し、
【0007】
【化1】
【0008】
式(1)、式(2)に、YおよびYは、それぞれ独立的にO、S、CRまたはNを示し、
、Aは、それぞれ独立に単結合、O、S、CR又はNRを示し、
環Dは水素を示し、または環Dは置換または非置換のC5~C20の芳香環、置換または非置換のC4~C60複素芳香環のいずれか一方を示し、
環Eは、置換または非置換のC5~ C20の芳香環、置換または非置換のC4~ C60の複素芳香環のいずれか一方を示し、
-Z12は、それぞれ独立にN原子またはCRを示し、隣り合う2つのR同士が互いに結合して環を形成してもよく、
【0009】
、R、RおよびRは、それぞれ独立的に、水素、重水素、トリチウム、シアノ基、ハロゲン、置換または非置換のC1~C10アルキル基、置換または非置換のC3~C10シクロアルキル基、置換または非置換のC1~C10アルコキシ基、置換または非置換のC6~C30アリールオキシ基、C6~C30のアリールアミノ基、C3~C30ヘテロアリールアミノ基、置換または非置換のC6~C30アリール基、置換または非置換のC2~C30ヘテロアリール基のいずれかから選択され、
【0010】
前記環D、環Eに置換基が存在する場合、前記置換基は、それぞれ独立的に、重水素、ハロゲン、C1~C30の鎖状アルキル基、C3~C30のシクロアルキル基、C1~C10のアルコキシ基、シアノ基、C6~C30のアリールアミノ基、C3~C30のヘテロアリールアミノ基、C6~C60の単環アリール基、C6~C60の縮合環アリール基、C6~C60のアリールオキシ基、C5~C60の単環ヘテロアリール基、C5~C60の縮合環ヘテロアリール基のいずれかから選択され、
【0011】
前記R、R、R及びRに置換基が存在する場合、前記置換基は、それぞれ独立的に、重水素、ハロゲン、C1~ C30の鎖状アルキル基、C3~ C30のシクロアルキル基、C1~ C10のアルコキシ基、シアノ基、C6~ C30のアリールアミノ基、C3~ C30のヘテロアリールアミノ基、C6~ C60の単環アリール基、C6~ C60の縮合環アリール基、C6~ C60のアリールオキシ基、C5~ C60の単環ヘテロアリール基、C5~ C60の縮合環ヘテロアリール基のいずれかから選択される。
【0012】
さらに、前記式(1)、式(2)において、前記環Dは、水素を示し、または、置換または非置換のC10芳香族環、置換または非置換のC12芳香族環、置換または非置換のC14芳香族環、置換または非置換のC16芳香族環、置換または非置換のC18芳香族環、置換または非置換のC20芳香族環、置換または非置換のC10のヘテロアリール環、置換または非置換のC12ヘテロアリール環、置換または非置換のC14のヘテロアリール環、置換または非置換のC16のヘテロアリール環、置換または非置換のC18のヘテロアリール環、置換または非置換のC22のヘテロアリール環のいずれかを示し、
【0013】
前記環Eは、置換または非置換のC10芳香族環、置換または非置換のC12芳香族環、置換または非置換のC14芳香族環、置換または非置換のC16芳香族環、置換または非置換のC18芳香族環、置換または非置換のC20芳香族環、置換または非置換のC10のヘテロアリール環、置換または非置換のC12ヘテロアリール環、置換または非置換のC14のヘテロアリール環、置換または非置換のC16のヘテロアリール環、置換または非置換のC18のヘテロアリール環、置換または非置換のC22のヘテロアリール環のいずれかを示し、
【0014】
前記環D、環Eに置換基が存在する場合、前記置換基は、それぞれ独立的に、重水素、ハロゲン、C1~ C10の鎖状アルキル基、C3~ C10のシクロアルキル基、C1~ C8のアルコキシ基、シアノ基、C6~ C20のアリールアミノ基、C3~ C2のヘテロアリールアミノ基、C6~ C30の単環アリール基、C6~ C30の縮合環アリール基、C6~ C30のアリールオキシ基、C5~ C30の単環ヘテロアリール基、C5~ C30の縮合環ヘテロアリール基のいずれかから選択される。
【0015】
さらに、前記式(1)、式(2)において、前記環Dは、水素又はC4~C60複素芳香環を示し、前記複素芳香環中のヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、ホウ素原子、又は窒素原子から少なくとも1つ選定され、好ましくは、前記芳香環中のヘテロ原子は、ホウ素原子または窒素原子から少なくとも1つ選択され、
【0016】
前記環Eは、C4~C60ヘテロアリール環を示し、前記ヘテロアリール環のヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、ホウ素原子または窒素原子から少なくとも1つ選定され、好ましくは、前記芳香環中のヘテロ原子は、ホウ素原子及び窒素原子から少なくとも1つ選定される。
【0017】
さらに、前記式(1)、式(2)において、前記環Dは水素、又は下記式( a )或いは式( b )で表される構造を示し、環Eは下記式( a )或いは式( b )で表される構造を示し、
【0018】
【化2】
【0019】
式( a )、式( b )に、破線は式(1)または式(2)の母核の連結位置を示し、
式( a )に、Yは式(1)または式(2)のYおよび/またはYを示し、
式( a )に、X-X11は、それぞれ独立的にN原子またはCRを示し、隣接する2つのR同士が互いに結合して環を形成してもよく、
式( b )に、Yは、式(1)または式(2)のYおよび/またはYを示し、Yは、O、S、CRまたはNを示し、
式( b )に、X21-X35は、それぞれ独立的にN原子またはCRを示し、隣接する2つのR同士が互いに結合して環を形成してもよく、
【0020】
、RおよびRは、それぞれ独立的に、水素、重水素、トリチウム、シアノ基、ハロゲン、置換または非置換のC1~C10アルキル基、置換または非置換のC3~C10シクロアルキル基、置換または非置換のC1~C10アルコキシ基、置換または非置換のC6~C30アリールオキシ基、C6~C30のアリールアミノ基、C3~C30ヘテロアリールアミノ基、置換または非置換のC6~C30アリール基、置換または非置換のC2~C30ヘテロアリール基のいずれかから選択され、
【0021】
前記R、RおよびRに置換基が存在する場合、前記置換基は、それぞれ独立的に、重水素、ハロゲン、C1~ C30の鎖状アルキル基、C3~ C30のシクロアルキル基、C1~ C10のアルコキシ基、シアノ基、C6~ C30のアリールアミノ基、C3~ C30のヘテロアリールアミノ基、C6~ C60の単環アリール基、C6~ C60の縮合環アリール基、C6~ C60のアリールオキシ基、C5~ C60の単環ヘテロアリール基、C5~ C60の縮合環ヘテロアリール基のいずれかから選択される。
【0022】
好ましく、本発明の縮合環化合物は下記式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(1-4)、式(1-5)、式(1-6)、式(1-7)、式(1-8)、式(1-9)、式(1-10)、式(2-1)、式(2-2)、式(2-3)、式(2-4)又は式(2-5)のいずれかで表される構造を有し、
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(1-4)、式(1-5)、式(1-6)、式(1-7)、式(1-8)、式(1-9)、式(1-10)、式(2-1)、式(2-2)、式(2-3)、式(2-4)、式(2-5)において、Y、Y、Z-Z12の定義は、式(1)、式(2)における定義と同じであり、Y、Y、Y、X-X11、X21-X35の定義は、式( a )、式( b )における定義と同じである。
【0026】
さらに、前記一般式において、前記X-X11が、それぞれ独立的にCRを示し、及び/又は、前記X21-X35が、それぞれ独立的にCRを示す。
【0027】
さらに、前記一般式において、前記Z-Zが、それぞれ独立的にCRを示し、及び/又は、前記Z-Z12が、それぞれ独立的にCRを示す。
さらに、上記一般式中、前記Z~Zは、それぞれ独立にCRと表され、前記Z~Z12は、それぞれ独立にCRと表される。
【0028】
本発明において、「置換または非置換」の基は、1つの置換基でも、複数の置換基で置換されていてもよく、複数の置換基である場合、異なる置換基から選択されてもよく、本発明において同じ表現が同じ意味を有し、置換基の選択範囲は、以上に示したとおりであるため、別途記載しない。
【0029】
本明細書において、Ca ~ Cbという表現は、当該基が有する炭素原子数がa ~ bであることを意味し、特に断りのない限り、一般的に当該炭素原子数には置換基の炭素原子数は含まれない。
本明細書において、「それぞれ独立的に」とは、主語が複数ある場合、互いに同一であっても、異なっていてもよいことを意味する。
【0030】
本発明において、前記置換または非置換のC6-C60アリール基は、単環のアリール基および縮合環のアリール基を含み、好ましくはC6-C30アリール基であり、さらに好ましくはC6-C20アリール基である。単環アリール基とは、分子中に少なくとも1つのフェニル基を含む基であり、分子中に少なくとも2つのフェニル基を含む場合には、フェニル基同士が互いに独立して単結合で連結されており、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられる。具体的には、前記ビフェニル基は2-ビフェニル、3-ビフェニル、及び4-ビフェニルを含み、前記ターフェニル基は、パラ-ターフェニル-4-イル基、パラ-ターフェニル-3-イル基、パラ-ターフェニル-2-イル基、メタ-ターフェニル-4-イル基、メタ-ターフェニル-3-イル基、及びメタ-ターフェニル-2-イル基を含む。縮合環芳香族基とは、分子内に少なくとも2つの芳香環を有し、かつ、芳香環同士が互いに独立ではなく、隣り合う2つの炭素原子を共有して互いに縮合している基である。例えば、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、フルオレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、またはそれらの誘導体基などが挙げられる。前記ナフチルは、1-ナフチルまたは2-ナフチルを含み、前記アントラセニルは、1-アントラセニル、2-アントラセニルおよび9-アントラセニルから選択され、前記フルオレニル基が、1-フルオレニル、2-フルオレニル、3-フルオレニル、4-フルオレニルおよび9-フルオレニルから選択され、前記ピレン基が、1-ピレン基、2-ピレン基、及び4-ピレン基から選択され、前記テトラセニルは、1-テトラセニル、2-テトラセニルおよび9-テトラセニルから選択される。前記フルオレンの誘導体基が、9,9-ジメチルフルオレン基、9,9-ジエチルフルオレニル基、9,9-ジプロピルフルオレニル基、9,9-ジブチルフルオレニル基、9,9-ジペンチルオレン基、9,9-ジヘキシルフルオレニル基、9,9-ジフェニルフルオレニル基、9,9-ジナフチルフルオレニル基、9,9′ -スピロビフルオレン基、ベンゾフルオレン基から選択される。
【0031】
本発明で言及するC3~ C60ヘテロアリール基は、単環ヘテロアリール基および縮合環ヘテロアリール基を含み、好ましくはC3-C30ヘテロアリール基であり、さらに好ましくはC4-C20ヘテロアリール基であり、より好ましくはC5-C12ヘテロアリール基である。単環ヘテロアリール基とは、分子中に少なくとも1つのヘテロアリール基を含むものであり、分子中に1つのヘテロアリール基と他の基(例えば、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基など)を含む場合、ヘテロアリール基と他の基とは互いに独立して単結合で連結されており、単環ヘテロアリール基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基などが挙げられる。縮合環ヘテロアリール基とは、分子に少なくとも1つの芳香族複素環と1つの芳香族性を有する環(芳香族複素環または芳香環)とを含有し、かつ、両者が互いに独立しているのではなく、隣り合う2個の原子を共有して互いに縮合している基である。縮合環ヘテロアリール基の例としては、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾフラニル、インドリル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾリル、アクリジニル、イソベンゾチエニル、ベンゾカルバゾリル、アザカルバゾリル、フェノチアジニル、フェナジニル、9-フェニルカルバゾリル、9-ナフチルカルバゾリル、ジベンゾカルバゾリル、インドロカルバゾリル等が挙げられる。
【0032】
本発明において、前記ヘテロ原子とは、一般的にN、O、S、P、Si及びSeから選ばれる原子又は原子団を意味し、N、O、Sが好ましい。
本明細書において、ハロゲンの例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0033】
本発明に係る化合物の好ましい構造として、以下の具体的な化合物1~112が挙げられ、これらの化合物は単に代表的なものである。
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
【化9】
【0039】
本発明はさらに前記化合物の有機電子素子への応用を提供することにある。
【0040】
好ましくは、前記有機電子素子は有機電界発光素子、光学センサー、太陽電池、照明素子、有機薄膜トランジスター、有機電界効果トランジスター、有機薄膜太陽電池、情報タグ、電子人工皮膚シート、シート状スキャナーまたは電子ペーパーを含み、一番好ましくは有機電界発光素子である。
【0041】
具体的に、本発明が提供する化合物は発光層材料として有機電界発光素子に応用されることが好ましく、発光層材料として有機電界発光素子の発光層に応用されることがさらに好ましく、具体的に発光色素として応用される。
【0042】
本発明は、有機電界発光素子を提供しており、第1の電極、第2の電極、および前記第1の電極と前記第2の電極との間に挿入された1層以上の有機層を含み、そのうち、前記有機層は、本発明の前記した縮合環化合物の少なくとも1種を含む。
【0043】
具体的に、本発明は有機電界発光素子を提供しており、基板と、前記基板に順次形成されたアノード層、複数の発光機能層、及びカソード層と、を含み、前記発光機能層は、前記陽極層に形成された正孔注入層と、前記正孔注入層に形成された正孔輸送層と、前記電子輸送層に形成された発光層と、前記正孔輸送層と前記電子輸送層との間に発光層を有する電子輸送層とを含み、そのうち、前記発光層に、前記一般式(1)、一般式(2)、式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(1-4)、式(1-5)、式(1-6)、式(1-7)、式(1-8)、式(1-9)、式(1-10)、式(2-1)、式(2-2)、式(2-3)、式(2-4)または式(2-5)のいずれかで示される本発明の一般式の化合物を含有することが好ましい。
【0044】
上記の本発明に関わる化合物は、有機電界発光素子における発光層材料として優れた性能を有する理由は定かではないが、以下の理由によるものと推測される。
【0045】
MR-TADF材料は、色純度が高く、発光効率が高いという利点を有しており、科学業界と産業界において注目を集めている。現在のMR-TADF素子は、空色-深青色の領域において30nm未満の半値幅(FWHM)を有する高色純度のルミネッセンスを実現することができるが、長波長(520nmより大きい)領域において、半値幅が広くなる傾向がある(FWHMは一般に40nm以上)。これは、MR-TADFスペクトルの実効的な赤方偏移を実現するためには、強い電荷移動状態を導入する必要があり、分子基底状態および励起状態の立体配置が大きく変化するため、その半値幅が広くなりやすいためである。この目的のために、本発明は、機能モジュール設計に基づいて、このような縮合環化合物(一般式は以下に示す)を設計し、BN母核は狭スペクトル発光を担当する一方、パラ供与体-Π-供与体特性を有する芳香族縮合環は、スペクトルの赤方偏移を担当するで、MR-TADF材料の非常に狭い半値幅(25nm未満)を、全発色範囲にわたって達成することができる。
【0046】
【化10】
【0047】
本発明の縮合環化合物は、狭い半値幅、高い蛍光量子収率を有するとともに、高いガラス転移温度及び分子熱安定性を有し、且つ、好適なHOMO及びLUMO準位を有する。本発明のこのような縮合環化合物を用いて製造されたOLED素子のエレクトロルミネセンススペクトルは、狭い半値幅を有し、顕著な多重共鳴効果を示し、それにより多重共鳴-熱活性化遅延蛍光の材料系及び発光色範囲が拡大され、かつ低始動電圧、高発光効率、さらには寿命が優れていることから、現在のパネル製造業者の高性能材料の要求を満たすことができ、応用の見通しがよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明による有機電界発光素子の構造模式図であり、そのうち、記号1が基板、記号2が陽極、記号3が正孔輸送層、記号4が有機発光層、記号5が電子輸送層、記号6が陰極である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の前記した新規の化合物の具体的な製造方法について、複数の合成実施例を挙げて詳述するが、本発明の製造方法はこれらの合成実施例に限定されるものではない。
【0050】
本発明で使用する石油エーテル、t-ブチルベンゼン、酢酸エチル、硫酸ナトリウム、トルエン、塩化メチレン、炭酸カリウム、三臭化ホウ素、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、反応中間体等の化学原料は上海泰坦ハイテック株式会社及び西隴化学株式会社から購入したものである。下記化合物の同定に用いられる質量分析計は、ZAB-HS型質量分析計(英国Micromass社製)を用いた。
【0051】
続いて、本発明の化合物の合成方法について簡単に説明する。まず、n-ブチルリチウムまたはt-ブチルリチウム等で、X、X、XとXの間/上の水素、Cl原子をオルトメタル化する。次いで、三臭化ホウ素を添加してリチウム-ホウ素の金属交換を行った後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等のブレンステッド塩基を添加することにより、タンデムボラ・フリーデルクラフツ反応(Tandem Bora-Friedel-Crafts Reaction)を行い、目的物を得ることができる。
合成実施例
合成実施例1:
【0052】
【化11】
【0053】
化合物1の合成
【0054】
【化12】
【0055】
0℃の1-1(2.00g、4.85mmol )のtert-ブチルベンゼン(60mL)溶液に、tert-ブチルリチウムのペンタン溶液(6.06mL、1.60M、9.70mmol )を徐々に添加し、60℃に昇温し、3時間反応させる。反応終了後、-30℃に降温し、三臭化ホウ素(2.43g、9.70mmol )をゆっくり加え、室温で0.5時間撹拌を続ける。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.88g、14.55mmol )を室温で加え、145℃で5時間反応を継続した後、室温まで降温し、臭化フェニルマグネシウム(1.76g、9.70mmol )を滴下し、室温で8時間反応させて停止する。溶媒を真空下でスピン乾燥させ、シリカゲルカラム(展開溶媒:酢酸エチル:石油エーテル=50:1)を通して、緑色の固体である目的化合物1(1.02g、収率25%、HPLC分析純度99.46% )を得た。MALDI-TOF-MS結果により、分子イオンピークが419.45であり、元素分析結果により、理論値は、C 85.94、H 4.33、B 2.58、N 3.34、O 3.82 (%)であり、実験値は、C 85.64、H 4.45、B 2.28、N 3.74、O 3.89(%)である。
合成実施例2:
【0056】
【化13】
【0057】
化合物23の合成
【0058】
【化14】
【0059】
0℃の23-1(3.17g、4.85mmol )のtert-ブチルスチレン(60mL )の溶液に、tert-ブチルリチウムのペンタン溶液(6.06mL、1.60M、9.70mmol )を徐々に添加し、次いで60℃に昇温し、3時間反応させる。反応終了後、-30℃に降温し、三臭化ホウ素(2.43g、9.70mmol )をゆっくり加え、室温で0.5時間撹拌を続ける。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.88g、14.55mmol )を室温で添加し、145℃で5時間反応を継続した後に停止する。溶媒を真空下でスピン乾燥させ、シリカゲルカラム(展開溶媒:酢酸エチル:石油エーテル=50:1)を通し、黄色の固体である目的化合物23(0.45g、収率16%、HPLC分析純度99.26% )を得た。MALDI-TOF-MS結果により、分子イオンピークが583.46であり、元素分析結果により、理論値は、C 86.45、H 4.49、B 1.85、N 7.20 (%)であり、実験値は、C 86.75、H 4.41、B 1.55、N 7.28(%)である。
合成実施例3:
【0060】
【化15】
【0061】
化合物34の合成
【0062】
【化16】
【0063】
本実施例は、化合物1の合成と基本的に同様であり、異なる点は、本実施例において、1-1を同量の34-1に交換し、臭化フェニルマグネシウムを臭化2、4、6-トリメチルベンゼンマグネシウムに交換することである。黄色の固体である目的化合物34(1.55g、収率24%、HPLC分析純度99.66% )を得た。MALDI-TOF-MS結果により、分子イオンピークが664.38であり、元素分析結果により、理論値はC 86.77、H 5.76、B 3.25、N 4.22(%)であり、実験値はC 86.67、H 5.86、B 3.05、N 4.42(%)である。
合成実施例4:
【0064】
【化17】
【0065】
化合物41の合成
【0066】
【化18】
【0067】
本実施例は化合物23の合成と基本的に同じであり、異なる点は23-1を同量の41-1にしたことである。標的化合物41(0.74g、10%収率、HPLC分析純度99.36% )は、暗赤色の固体である。MALDI-TOF-MS結果により、分子イオンピークが758.45であり、元素分析結果により、理論値はC 85.51、H 4.25、B 2.85、N 7.39(%)であり、実験値はC 85.61、H 4.15、B 2.95、N 7.29(%)。
Elemental Analysis:C 85.51、H 4.25、B 2.85、N 7.39(%)
合成実施例5:
【0068】
【化19】
【0069】
化合物49の合成
【0070】
【化20】
【0071】
本実施例は化合物23の合成と基本的には同様であるが、本実施例では23-1を同量の49-1に変更する点が異なる。標的化合物49(1.74g、収率25%、HPLC分析純度99.36% )が赤色の固体である。MALDI-TOF-MS結果により、分子イオンピークが608.35であり、元素分析結果により、理論値はC 82.93、H 3.65、B 3.55、N 4.61、O 5.26(%)であり、実験値はC 82.73、H 3.65、B 3.75、N 4.41、O 5.46(%)である。
合成実施例6:
【0072】
【化21】
【0073】
化合物67の合成
【0074】
【化22】
【0075】
本実施例は、化合物34の合成と基本的に同様であり、異なる点は、34-1を同量の67-1に置き換えることである。目的化合物67(0.84g、収率13%、HPLC分析純度99.85% )は橙赤色固体である。MALDI-TOF-MS結果により、分子イオンピークが664.02であり、元素分析結果により、理論値はC 86.77、H 5.76、B 3.25、N 4.22(%)であり、実験値はC 86.57、H 5.96、B 3.45、N 4.02(%)である。
合成実施例7:
【0076】
【化23】
【0077】
化合物73の合成
【0078】
【化24】
【0079】
本実施例は化合物23の合成と基本的に同じであり、異なる点は23-1を同量の73-1にしたことである。標的化合物73(1.69g、収率23%、HPLC分析純度99.63% )を赤色の固体として得た。MALDI-TOF-MS結果により、分子イオンピークが758.35であり、元素分析結果により、理論値がC 85.51、H 4.25、B 2.85、N 7.39(%)であり、実験値がC 85.51、H 4.25、B 2.85、N 7.39(%)。
合成実施例8:
【0080】
【化25】
【0081】
化合物79の合成
【0082】
【化26】
【0083】
本実施例は化合物23の合成と基本的に同様であり、異なる点は23-1を同量の73-1に置き換えることである。目的化合物79(1.69g、収率23%、HPLC分析純度99.23% )は、赤色の固体である。MALDI-TOF-MS結果により、分子イオンピークが758.35であり、元素分析結果により、理論値がC 85.51、H 4.25、B 2.85、N 7.39(%)であり、実験値がC 85.51、H 4.25、B 2.85、N 7.39(%)である。
合成実施例9:
【0084】
【化27】
【0085】
化合物85の合成
【0086】
【化28】
【0087】
本実施例は化合物23の合成と基本的には同様であるが、本実施例において23-1を同量の85-1に置き換える点は異なる。標的化合物85(1.00g、収率13%、HPLC分析純度99.76% )は赤色の固体である。MALDI-TOF-MS結果により、分子イオンピークが790.25であり、元素分析結果により、理論値がC 82.05、H 4.08、B 2.73、N 7.09、O 4.05(%)であり、実験値がC 82.35、H 4.05、B 2.43、N 7.09、O 4.08(%)である。
合成実施例10:
【0088】
【化29】
【0089】
化合物93の合成
【0090】
【化30】
【0091】
本実施例は化合物23の合成と基本的には同様であるが、本実施例において23-1を同量の93-1に置き換える点は異なる。目的化合物93(1.20g、収率16%、HPLC分析純度99.25% )は、赤色の固体である。MALDI-TOF-MS結果により、分子イオンピークが774.25であり、元素分析結果により、理論値がC 83.74、H 4.16、B 2.79、N 7.23、O 2.07(%)であり、実験値がC 83.84、H 4.06、B 2.99、N 7.03、O 2.07(%)である。
【0092】
以下に、本発明の化合物を有機電界発光素子に具体的に適用し、実際の使用特性を試験することによって、本発明の技術的効果および利点を示して検証する。
【0093】
有機電界発光素子は、第1電極、第2電極、及びこれら2つの電極間に位置する有機物層を含む。有機材料は、複数の領域に分割されてもよく、例えば、有機材料層は、正孔輸送領域、発光層、及び電子輸送領域を含んでもよい。
【0094】
陽極の材料としては、インジウム錫酸素(ITO)、インジウム亜鉛酸素(IZO)、二酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等の酸化物透明導電材料及びこれらの任意の組み合わせを用いることができる。陰極の材料としては、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)等の金属又は合金、及びこれらの任意の組み合わせを用いることができる。
【0095】
正孔輸送領域は、陽極と発光層との間に位置する。正孔輸送領域は、単層構造の正孔輸送層(HTL)であり、1種類の化合物のみからなる単層正孔輸送層と、複数種類の化合物からなる単層正孔輸送層を含む。正孔輸送領域は、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子ブロック層(EBL)のうち少なくとも1つを含む多層構造であってもよい。
【0096】
正孔輸送領域の材料としては、CuPcのようなフタロシアニン誘導体、ポリスチレン、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸( Pani/DBSA )、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン) /ポリ(4-スチレンスルホナート) ( PEDOT/PSS )、ポリアニリン/カンファースルホン酸( Pani/CSA )、ポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホナート) ( Pani/PSS )、芳香族アミン誘導体のような導電性重合体、または導電性ドーパントを含有する重合体などを用いてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0097】
発光層は、異なる波長スペクトルを放出することができる発光染料(すなわち、ドーパント)を含み、ホスト材料( Host )を同時に含むことができる。発光層は、赤、緑、青等の単色を発光する単色発光層であってもよい。複数の異なる色の単色発光層を画素パターンに応じて平面的に配列してもよいし、カラー発光層を積層形成してもよい。また、異なる色の発光層を積層する場合、各発光層は、互いに離間していてもよいし、互いに連結していてもよい。また、発光層は、赤、緑、青などの異なる色を同時に発光することのできる単一のカラー発光層であってもよい。
【0098】
電子輸送領域は、単層構造(ETL)の単層電子輸送層であってもよく、単一化合物のみを含有する単層電子輸送層と、複数の化合物を含有する単層電子輸送層とを含む。電子輸送領域は、電子注入層(EIL)、電子輸送層(ETL)、正孔阻止層(HBL)のうちの少なくとも1つを含む多層構造であってもよい。
【0099】
次に、図1を参照して有機電界発光素子の作製工程を説明する。基板1上に、陽極2、正孔輸送層3、有機発光層4、電子輸送層5、及び陰極6を順次に積層し、封止する。このうち、有機発光層4を作製する際には、ワイドバンドギャップ材料源、電子供与体型材料源、電子受容体型材料源、共鳴型TADF材料源を共蒸着する方法により、有機発光層4を形成する。
具体的には、本発明の有機電界発光素子の製造方法は、以下の工程を含む。
【0100】
1、陽極材料でコーティングされたガラス板を、市販の洗浄剤で超音波処理し、脱イオン水で洗浄し、アセトンとエタノールの混合溶媒で超音波脱脂し、清浄な環境下で水分が完全に除去されるまでベーキングし、紫外線及びオゾンで洗浄し、低エネルギー陽イオンビームで表面を衝撃する。
2、前記陽極付きガラス板を真空チャンバー内に入れ、1×10-5 ~ 9×10-3Paに真空排気し、前記陽極層膜上に正孔注入材料を0.1 ~ 0.5nm/sの蒸着レートで真空蒸着して、正孔注入層を形成する。
3、正孔注入層の上に、正孔輸送材料を真空蒸着して、0.1 ~ 0.5nm/sの蒸着速度で正孔輸送層を形成する。
4、前記正孔輸送層の上に、0.1 ~ 0.5nm/sの蒸着速度で電子ブロック層を真空蒸着する。
5、電子ブロック層の上に素子の有機発光層を真空蒸着し、有機発光層材料はホスト材料およびTADF色素を含み、多元共蒸着法を用いて、色素が所定のドープ比に達するように、ホスト材料の蒸着速度、増感剤材料の蒸着速度、および色素の蒸着速度を調節する。
6、有機発光層の上に、0.1 ~ 0.5nm/sの蒸着速度で正孔ブロック層を真空蒸着する。
7、素子の電子輸送材料を0.1 ~ 0.5nm/sの蒸着速度で正孔ブロック層上に真空蒸着して、電子輸送層を形成する。
8、電子輸送層上に、電子注入層としてLiFを0.1 ~ 0.5nm/sで真空蒸着し、素子の陰極としてAl層を0.5 ~ 1nm/sで真空蒸着する。
【0101】
本発明の実施例は、以上に提供される有機電界発光素子を備える表示装置を提供する。当該表示装置は、具体的には、OLEDディスプレイなどの表示装置、および該表示装置を含むテレビ、デジタルカメラ、携帯電話、タブレットなどの表示機能を有する任意の製品または部品であってもよい。この表示装置は、上述した有機電界発光素子が従来技術に対して有する利点と同様のものを有しており、ここで繰り返し述べない。
【0102】
以下、実施例により、本発明の有機電界発光素子をさらに説明する。
素子実施例1
本実施例で作製した有機電界発光素子の構造を下記に示す。
【0103】
ITO/HI (10nm)/HT (30nm )/EBL (10nm )/Host:3wt%1(30nm )/HBL (10nm ) ET (30nm )/LiF (0.5nm )/Al (150nm )
【0104】
ここで、アノード材料はITOであり、正孔注入層材料はHIであり、全体の厚さが一般的に5 ~ 30nmであるが、本実施例では10nmである。正孔輸送層の材料はHTであり、全体の厚さが一般的に5 ~ 500nmであるが、本実施例では40nmである。Hostは、有機発光層のワイドバンドギャップホスト材料であり、本発明の化合物P-4は、色素であり、ドーピング濃度が3wt%であり、有機発光層の厚さは、一般的に1 ~ 200nmであり、本実施例では30nmである。電子輸送層の材料はETであり、厚さが一般的に5 ~ 300nmであり、本実施形態では30nmである。電子注入層及びカソード材料は、LiF (0.5nm )及び金属アルミニウム(150nm )から選択される。
【0105】
本実施例で作製した有機電界発光素子D1に対して、直流電圧を印加し、10 cd/mの発光をさせたときの特性を測定したところ、波長450nm、半値幅22 nm、CIE色座標( x,y ) = (0.12,0.09)、外部量子効率EQEが28.8%である青色発光が得られた(駆動電圧2.6V )。
【0106】
素子実施例2
発光層に用いられるワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更した以外は、素子実施例1と同様の方法で作製し、具体的な素子構造は以下の通りである。
【0107】
ITO/HI (10nm )/HT (30nm )/EBL (10nm )/TD:3wt%1(30nm )/HBL (10nm ) ET (30nm )/LiF (0.5nm )/Al (150nm )
【0108】
本実施例で作製した有機電界発光素子D2について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長450nm、半値幅22 nm、CIE色座標( x,y ) = (0.13,0.09)、外部量子効率EQEが34.8%である青色発光が得られた(駆動電圧2.4V )。
【0109】
素子実施例3
発光層に用いられる色素を1から23に変更する以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し、素子構造は以下の通りである。
【0110】
ITO/HI (10nm )/HT (30nm )/EBL (10nm )/Host:3wt%23(30nm )/HBL (10nm ) ET (30nm )/LiF (0.5nm )/Al (150nm )
【0111】
本実施例で作製した有機電界発光素子D3について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長466nm、半値幅23nm、CIE色座標( x,y ) = (0.12,0.11)、外部量子効率EQEが27.3%である青色発光が得られた(駆動電圧2.6V )。
【0112】
素子実施例4
発光層のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、色素を1から23に変更する以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し、素子構造は以下の通りである。
【0113】
ITO/HI (10nm )/HT (30nm )/EBL (10nm )/TD:3wt%23(30nm )/HBL (10nm ) ET (30nm )/LiF (0.5nm )/Al (150nm )
【0114】
本実施例で作製した有機電界発光素子D4について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長466nm、半値幅23nm、CIE色座標( x,y ) = (0.12,0.10)、外部量子効率EQEが33.5%である青色発光が得られた(駆動電圧2.4V )。
【0115】
素子実施例5
発光層の色素を1から34に変更した以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し、素子構造は以下の通りである。
【0116】
ITO/HI (10nm )/HT (30nm )/EBL (10nm )/Host:3wt%34(30nm )/HBL (10nm ) ET (30nm )/LiF (0.5nm )/Al (150nm )
【0117】
本実施例で作製した有機電界発光素子D5について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長520nm、半値幅25nm、CIE色座標( x,y ) = (0.21,0.72)、外部量子効率EQEが29.3%である緑色発光が得られた(駆動電圧2.3V )。
【0118】
素子実施例6
発光層のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、色素を1から34に変更する以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し、素子構造は以下の通りである。
【0119】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/TD:3wt%34(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0120】
本実施例で作製した有機電界発光素子D6について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長520nm、半値幅25nm、CIE色座標( x,y ) = (0.21,0.72)、外部量子効率EQEが34.6%である緑色発光が得られた(駆動電圧2.2V )。
【0121】
素子実施例7
発光層の色素を1から41に変更する以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し、素子構造は以下の通りである。
【0122】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%41(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0123】
本実施例で作製した有機電界発光素子D7について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長600nm、半値幅27nm、CIE色座標( x,y ) = (0.36,0.64)、外部量子効率EQEが23.3%である橙色発光が得られた(駆動電圧2.4V )。
素子実施例8
【0124】
発光層のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、色素を1から41に変更する以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し、素子構造は以下の通りである。
【0125】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/TD:3wt%41(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0126】
本実施例で作製した有機電界発光素子D8について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長600nm、半値幅27nm、CIE色座標( x,y ) = (0.36,0.64)、外部量子効率EQEが30.3%である橙色発光が得られた(駆動電圧2.4V)。
【0127】
素子実施例9
発光層の色素を1から73に変更した以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し、素子構造は以下の通りである。
【0128】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%73(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0129】
本実施例で作製した有機電界発光素子D9について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長590nm、半値幅26nm、CIE色座標( x,y ) = (0.32,0.62)、外部量子効率EQEが25.3%である橙色発光(駆動電圧2.5V )が得られた。
【0130】
素子実施例10
発光層のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、色素を1から73に変更する以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し。素子構造は以下の通りである。
【0131】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/TD:3wt%73(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0132】
本実施例で作製した有機電界発光素子D10について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長590nm、半値幅26nm、CIE色座標( x,y ) = (0.32,0.62)、外部量子効率EQEが31.3%である橙色発光(駆動電圧2.5V )が得られた。
【0133】
素子実施例11
発光層の色素を1から79に変更する以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し、素子構造は以下の通りである。
【0134】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%79(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0135】
本実施例で作製した有機電界発光素子D11について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長570nm、半値幅26nm、CIE色座標( x,y ) = (0.34,0.60)、外部量子効率EQEが28.3%である橙色発光(駆動電圧2.5V )が得られた。
【0136】
素子実施例12
発光層のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、色素を1から79に変更する以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し、素子構造は以下の通りである。
【0137】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/TD:3wt%79(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0138】
本実施例で作製した有機電界発光素子D12について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長570nm、半値幅26nm、CIE色座標( x,y ) = (0.34,0.60)、外部量子効率EQEが32.3%である橙色発光(駆動電圧2.5V )が得られた。
【0139】
素子実施例13
発光層の色素を1から85に変更した以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し、素子構造は以下の通りである。
【0140】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%85(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0141】
本実施例で作製した有機電界発光素子D13について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長630nm、半値幅28nm、CIE色座標( x,y ) = (0.70,0.30)、外部量子効率EQEが24.6%である赤色発光が得られた(駆動電圧2.3V )。
【0142】
素子実施例14
発光層のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、色素を1から85に変更する以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し。素子構造は以下の通りである。
【0143】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/TD:3wt%85(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0144】
本実施例で作製した有機電界発光素子D14について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長630nm、半値幅28nm、CIE色座標( x,y ) = (0.70,0.30)、外部量子効率EQEが31.6%である赤色発光が得られた(駆動電圧2.3V )。
【0145】
素子実施例15
発光層の色素を1から93に変更する以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し、素子構造は以下の通りである。
【0146】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%93(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0147】
本実施例で作製した有機電界発光素子D15について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長620nm、半値幅28nm、CIE色座標( x,y ) = (0.69,0.31)、外部量子効率EQEが23.6%である赤色発光が得られた(駆動電圧2.3V )。
【0148】
素子実施例16
発光層のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、色素を1から93に変更する以外に、素子実施例1と同様の方法で作製し素子構造は以下の通りである。
【0149】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/TD:3wt%93(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0150】
本実施例で作製した有機電界発光素子D16について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長620nm、半値幅28nm、CIE色座標( x,y ) = (0.69,0.31)、外部量子効率EQEが32.4%である赤色発光が得られた(駆動電圧2.2V )。
【0151】
素子比較例1
発光層に用いられる本発明の化合物1を、先行技術の化合物P1に変更する以外に、素子実施例1の作製方法と同じであり、具体的な素子構造は以下の通りである。
ITO/HI(10nm)/HT(40nm)/Host:3wt% P1 (30nm)/ET (30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0152】
本実施例で作製した有機電界発光素子DD1について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長520nm、半値幅43nm、CIE色座標( x,y ) = (0.22,0.68)、外部量子効率EQEが26.8%である青色発光が得られた(駆動電圧2.5V )。
【0153】
素子比較例2
発光層に用いられる本発明の化合物1を、先行技術の化合物P1に変更する以外に、素子実施例2の作製方法と同じであり、具体的な素子構造は以下の通りである。
ITO/HI(10nm)/HT(40nm)/TD:3wt% P1 (30nm)/ET (30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0154】
本実施例で作製した有機電界発光素子DD2について、性能を測定した結果、直流電圧を印加して、10 cd/mの発光時の特性を測定したところ、波長520nm、半値幅45nm、CIE色座標( x,y ) = (0.22,0.68)、外部量子効率EQEが30.2%である青色発光が得られた(駆動電圧2.5V )。
上記各実施例で用いた各種有機材料の構造式は次の通りである。
【0155】
【表1】
【0156】
前記した各素子実施例に作製された有機電界発光素子D1~D16、及び、素子DD1,DD2の具体的な特性データを、下記表2に示す。
【0157】
【表2】
【0158】
以上の実験データから、本発明の化合物は、典型的なMR-TADF材料の共役骨格を増幅し、より多くの窒素原子またはホウ素原子を導入することにより、BN剛性骨格のHOMO、LUMO軌道の重なりをより大きく保ちながら、目標とするMR-TADF材料の顕著な赤方偏移を達成することが示された。電界発光スペクトルの半値幅から明らかなように、実施例では効果的な多重共鳴効果が確認され、多重共鳴-熱活性化遅延蛍光の材料系および発光色範囲が極めて拡大され、優れた応用の見通しがある。
【0159】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく当業者の様々な変形および改良形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
なお、上記実施例は説明を明確にするためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。上記の説明に基づいて、当業者であれば、他の異なる形態の変更または変形を行うことができる。ここでは、全ての実施形態を網羅すること必要もない。これらに基づく明らかな変化や変更も、本発明の範囲内にある。
図1
【国際調査報告】