(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】バイオLPG製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 3/12 20060101AFI20231220BHJP
B01J 38/12 20060101ALI20231220BHJP
B01J 29/90 20060101ALI20231220BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20231220BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C10L3/12
B01J38/12 Z
B01J29/90 Z
B01J29/40 Z
B01J29/70 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559148
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2021085074
(87)【国際公開番号】W WO2022122969
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523220628
【氏名又は名称】カラー ガス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CALOR GAS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ キース
(72)【発明者】
【氏名】レンスバーグ ヘンドリック ヴァン
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
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4G169BA07A
4G169BA07B
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4G169BD07B
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4G169DA06
4G169DA08
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4G169ZA11B
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4G169ZA32B
4G169ZC04
4G169ZC08
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF07A
(57)【要約】
本発明は、バイオLPGの生成方法及びその方法で使用するための触媒の分野に属する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C2又はC3脂肪族アルコールからバイオLPGを選択的に生成するための方法であって、
(a)1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールを含む供給流を、触媒を含む反応容器に導入するステップであり、前記触媒が、ZSM5ゼオライト材料、MCM22ゼオライト材料、又はそれらの組み合わせを含む、ステップ;
(b)250℃~750℃の温度及び0.5atm~50atmの圧力にて、前記反応容器内で前記供給流と触媒とを接触させるステップ;及び
(c)前記反応容器からC3及び/又はC4脂肪族炭化水素を含む生成物流を回収するステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
接触させるステップが、350℃~600℃、好ましくは375℃~500℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
接触させるステップが、1atm~20atm、好ましくは1atm~15atm、より好ましくは1atm~10atmの圧力で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
接触させるステップが、3atm~50atm、好ましくは3atm~20atm、より好ましくは3atm~15atm、最も好ましくは3atm~10atmの圧力で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
方法ステップa)~c)が、連続流プロセスとして連続的に行われる、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
連続流プロセスが、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~10μLの流量で、好ましくは、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~7.5μLの流量で、より好ましくは、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~5μLの流量で、供給流を反応容器に導入するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
連続流プロセスが、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~3μLの流量で、好ましくは、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1.5μL~2.5μLの流量で、最も好ましくは、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1.75μL~2.25μLの流量で、供給流を反応容器に導入するステップを含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
接触させるステップb)の間に反応容器にアルゴンなどの不活性ガスを通すステップであって、好ましくは、前記不活性ガスが、触媒150mg当たり0.5ml/分~10ml/分、好ましくは触媒150mg当たり0.5ml/分~5ml/分、より好ましくは触媒150mg当たり1.5ml/分~5ml/分、最も好ましくは触媒150mg当たり2ml/分~5ml/分の流量で反応容器に導入される、ステップをさらに含む、請求項5~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
接触させるステップが、1atm~20atmの圧力で実施され、連続流プロセスが、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~3μLの流量で供給流を反応容器に導入するステップを含み、前記プロセスが、接触させるステップb)の間に前記反応容器にアルゴンなどの不活性ガスを通すステップをさらに含み、前記不活性ガスが、触媒150mg当たり0.5ml/分~5ml/分の流量で前記反応容器に導入される、請求項5~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
接触させるステップb)が、触媒を窒素などの不活性希釈剤ガスと接触させるステップをさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップa)の前に、触媒を空気又は酸素と400℃~650℃の温度で1時間~10時間の期間接触させ、好ましくは、触媒を空気又は酸素と500℃~600℃の温度で4時間~6時間の期間接触させる、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ステップa)の前、かつ触媒を400℃~650℃の温度で1時間~10時間の期間にわたって空気又は酸素と接触させた後に、反応容器が、アルゴンなどの不活性ガスでパージされる前に、空気又は酸素流下で400℃~500℃の温度に、5時間~10時間の期間加熱される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールが、エタノール、イソプロピルアルコール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールが、発酵又は生物生成に由来する、例えば、燃焼ガスの発酵又は生物生成合成ガスに由来する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールを含む供給流が、前記供給流の成分の総重量に対して70重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%の量で1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールを含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールを含む供給流が、水をさらに含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
水が、供給流の成分の総重量に対して1重量%~30重量%の量で供給流中に存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
水が、供給流の成分の総重量に対して10重量%~20重量%の量で供給流中に存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
供給流が、前記供給流の成分の総重量に対して70重量%~99重量%、好ましくは80重量%~90重量%の量でエタノールを含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
供給流の流量が反応容器中に存在する150mgの触媒当たり毎分1.75μL~2.25μLである場合、2日後における少なくとも30%のC3及びC4脂肪族炭化水素の選択率を有する、請求項5~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
反応容器が、固定床反応器又は流動床反応器を含む、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
触媒が、担体、バインダー、又は支持体材料をさらに含む、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
触媒がZSM5ゼオライト材料を含み、前記ZSM5ゼオライト材料が20~150のSi/Al比を有し、好ましくはSi/Al比が25~100であり、より好ましくはSi/Al比が25~90であり、最も好ましくはSi/Al比が30又は80である、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
触媒が、Si/Al比が10~70であるMCM22を含む、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
ZSM5ゼオライト材料又はMCM22ゼオライト材料が、同等のSi/Al比を有する対応する助触媒不含ゼオライト材料と比較して、アンモニア昇温度脱離によって決定される酸性度が低減した助触媒含有ゼオライト材料である、請求項1~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
ZSM5ゼオライト材料又はMCM22ゼオライト材料が、i)アンモニア昇温度脱離によって決定した場合、同等のSi/Al比を有する対応する助触媒不含ゼオライト材料と、異なる酸部位強度分布、及びii)アンモニア昇温度脱離によって決定した場合、同等のSi/Al比を有する対応する助触媒不含ゼオライト材料と、異なる酸部位総数、の一方又は両方を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ZSM5ゼオライト材料又はMCM22ゼオライト材料が、ホウ素、リン、ガリウム、マグネシウム、亜鉛、カリウム、及びジルコニウムから選択される1又は2以上の助触媒元素を含む助触媒含有ゼオライト材料である、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
1又は2以上の助触媒元素が、0.5重量%~5重量%、好ましくは0.75重量%~3.25重量%の量でゼオライト材料中に存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
触媒がZSM5ゼオライト材料を含み、前記ZSM5ゼオライト材料が元素ホウ素又はリンにより促進された助触媒含有ZSM5ゼオライト材料を含む、請求項1~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
ホウ素又はリンが、ZSM5材料中に0.75重量%~3.25重量%、好ましくは1重量%~3重量%の量で存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ZSM5ゼオライト材料が、25~90のSi/Al比を有し、最も好ましくはSi/Al比が25~35又は75~85である、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
ZSM5ゼオライト材料が75~85のSi/Al比を有し、前記ZSM5ゼオライト材料が0.75重量%~1.25重量%のリンを含み、好ましくは前記ZSM5ゼオライト材料が80のSi/Al比を有し、前記ZSM5ゼオライト材料が1重量%のリンを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ZSM5ゼオライト材料が25~30のSi/Al比を有し、前記ZSM5ゼオライト材料が0.75重量%~3.25重量%のリンを含み、好ましくは、前記ZSM5ゼオライト材料が30のSi/Al比を有し、前記ZSM5ゼオライト材料が1重量%のリン、2重量%のリン、又は3重量%のリンを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
ZSM5ゼオライト材料が75~85のSi/Al比を有し、前記ZSM5ゼオライト材料が0.75重量%~3.25重量%のホウ素を含み、好ましくは、前記ZSM-5ゼオライト材料が80のSi/Al比を有し、前記ZSM5-ゼオライト材料が1重量%のホウ素、2重量%のホウ素、又は3重量%のホウ素を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
ZSM5ゼオライト材料が25~35のSi/Al比を有し、前記ZSM5ゼオライト材料が0.75重量%~3.25重量%のホウ素を含み、好ましくは、前記ZSM5ゼオライト材料が30のSi/Al比を有し、前記ZSM5ゼオライト材料が1重量%のホウ素、2重量%のホウ素、又は3重量%のホウ素を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
ステップa)~c)の連続プロセスを停止するステップ、及び触媒を回復させるのに十分な条件下で前記触媒を空気又は酸素と接触させるステップをさらに含む、請求項5~35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
ステップa)~c)の連続プロセスを停止するステップと、触媒を300℃~600℃の温度で1時間~20時間の期間にわたって空気又は酸素と接触させるステップであって、好ましくは、前記触媒を400℃~550℃の温度で5時間~15時間の期間にわたって空気又は酸素と接触させるステップとをさらに含む、請求項5~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
触媒を、前記触媒の初期の活性及び選択性と同等の活性及び選択性を有するように回復させる、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
触媒を、前記触媒の初期の活性及び選択性の70%以上、80%以上、又は90%以上に相当する活性及び選択性を有するように回復させる、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項40】
C2又はC3脂肪族アルコールからバイオLPGを選択的に生成するための方法であって、
(a)1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールを含む供給流を、触媒を含む反応容器に導入するステップであり、前記触媒が、ZSM5ゼオライト材料、MCM22ゼオライト材料、又はそれらの組み合わせを含む、ステップ;
(b)250℃~750℃の温度にて、前記反応容器内で前記供給流と触媒とを接触させるステップ;及び
(c)前記反応容器からC3及び/又はC4脂肪族炭化水素を含む生成物流を回収するステップ
を含み、
前記方法が、連続流プロセスであり、前記方法が、前記反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~10μLの流量で前記供給流を前記反応容器に導入するステップを含み、前記プロセスが、接触させるステップb)の間に前記反応容器にアルゴンなどの不活性ガスを通すステップをさらに含み、前記不活性ガスが、触媒150mg当たり0.5ml/分~触媒150mg当たり10ml/分、好ましくは触媒150mg当たり0.5ml/分~触媒150mg当たり5ml/分、より好ましくは触媒150ml当たり1.5ml/分~5ml/分、最も好ましくは触媒150mg当たり2ml/分~5ml/分の流量で前記反応容器に導入される、
前記方法。
【請求項41】
請求項1~39のいずれかに記載の通りにさらに規定された、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ZSM5ゼオライト材料、MCM22ゼオライト材料、又はそれらの組み合わせを含む触媒であって、前記ZSM5ゼオライト材料が、20~150のSi/Al比を有し、前記MCM22ゼオライト材料が、10~70のSi/Al比を有し、前記ZSM5ゼオライト材料又は前記MCM22ゼオライト材料が、同等のSi/Al比を有する対応する助触媒不含ゼオライト材料と比較して、アンモニア昇温度脱離によって決定される酸性度が低減した助触媒含有ゼオライト材料である、前記触媒。
【請求項43】
触媒が、請求項22~35のいずれかにさらに規定された通りである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
C2又はC3脂肪族アルコールをC3及び/又はC4脂肪族炭化水素に転化するための、請求項42又は43に記載の触媒の使用。
【請求項45】
請求項1~41のいずれかに記載の方法における触媒の使用をさらに含む、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
使用が、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の収率でC3及び/又はC4脂肪族炭化水素を生成するステップを含む、請求項44又は45に記載の使用。
【請求項47】
ZSM5ゼオライト材料又はMCM22ゼオライト材料を含む失活バイオLPG生成触媒を回復させるための方法であって、触媒を空気又は酸素と接触させるステップを含み、好ましくは、前記触媒を空気又は酸素と300℃~600℃の温度で1時間~20時間の期間接触させるステップを含み、好ましくは、ステップa)の前に、前記触媒を空気又は酸素と400℃~550℃の温度で5時間~15時間の期間接触させる、前記方法。
【請求項48】
触媒を、前記触媒の初期の活性及び選択性と同等の活性及び選択性を有するように回復させる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
触媒が、請求項22~35のいずれかに規定された通りである、請求項47又は48に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオLPGの生成方法及びその方法で使用するための触媒の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
液化石油ガス(LPG、Liquefied petroleum gas)は、典型的には、プロパン、ブタン、又はこれら2つの混合物を含む。LPGはまた、少量の他の炭化水素、例えばプロピレン及びブチレンを含むこともある。2018年末の時点で、LPGの消費量は年間約3億トンと推定されている。LPGは、暖房器具の燃料、屋外コンロやガスバーベキューなどの調理器具、特定の車両などの、さまざまな用途で使用されている。
【0003】
歴史的に、LPGは化石燃料に由来するものであった。例えば、LPGは石油や湿性天然ガスを精製する際に抽出又は生成されるか、石油又は天然ガス流が地中から湧き出る際に石油又は天然ガス流から抽出される。従来生成されていたLPGは化石燃料であるため、正味炭素排出量を削減するために、化石燃料由来のLPGを生物源由来のLPG(バイオLPG)に置き換えることへの関心が最近高まっている。バイオLPG(再生可能LPG、再生可能プロパン、再生可能ブタン、バイオプロパン、又はバイオブタンとも呼ばれる)は、従来からのLPGに比べてカーボンフットプリントがはるかに少ない。そのため、LPG業界や脱炭素推進派は、バイオLPGの生成量を拡大することに大きな関心を寄せている。
【0004】
バイオLPG生成について、以下の7つの一般的なプロセスが提案されている:i)廃植物油などのバイオオイルの水素化処理;ii)バイオオイル及びグリセリンの脱水素;iii)糖の発酵;iv)セルロース系バイオマスの加水分解及び発酵;v)湿性有機廃棄物のバクテリアによる嫌気性消化などの消化;vi)セルロース系バイオマス又は有機廃棄物のガス転換及び合成;並びにvii)セルロース系バイオマス及び有機廃棄物の液体転換及び合成。これらのプロセスの多くは、副産物としてバイオLPGを低収率で生成するのみであり、基本的に、異なる生成物の生成を指向している。さらに、これらの提案されたプロセスの多くは、実験室での実証に成功したか、コンセプト段階にとどまっており、商業化には成功していない。上述したプロセスのうち、バイオオイルの水素化処理のみが商業化に成功している。したがって、水素化処理はバイオLPG生成の唯一の重要な供給源である。バイオオイルの水素化処理は、副産物としてバイオLPGを生成し、基本的に、水素化植物油(HVO、hydrogenated vegetable oil)バイオディーゼルの生成を指向している。このような水素化処理プロセスでは、生成されるバイオプロパンに対するバイオディーゼルの比率は、典型的に9:1~10:1程度である。これらの水素化処理プロセスの中には、純粋なバイオオイル供給原料の水素化処理を伴うものもある。しかし、多くのプロセスでは、バイオオイルと石油中間体を混合してブレンドを形成し、そのブレンドを水素化処理して、ディーゼル、及びバイオディーゼルの混合物、と少量のバイオLPG副産物の混合物とを形成する。バイオLPG生成のために知られている、又は提案されている各種プロセスの詳細な議論は、Process Technologies and Projects for BioLPG, Eric Johnson, Energies, 2019, 12, 250に記載されている。
【0005】
したがって、BioLPGの生成のための新しい商業的に利用可能なルートが必要である。特に、高収率でバイオLPGを生成するバイオLPG生成プロセスが必要である。
【0006】
ガソリン及びオレフィンなどの長鎖炭化水素を生成する各種プロセスにおいて、エタノールを供給原料として使用することが知られており、副産物として少量のLPGが生成される。
【0007】
米国特許出願公開第20140081063号明細書は、ZSM-5触媒を用いてバイオエタノールから高オクタン価ガソリンを調製するプロセスを開示している。このプロセスの副生成物としてLPGが25%未満の低い収率で生成される。
【0008】
Johansson et al., The Hydrocarbon Pool in Ethanol-to-Gasoline over ZSM-5 catalysts, Catalysis Letters, (2009), 127:1-6には、ZSM5触媒を用いてエタノールをガソリンに転化するプロセスが開示されている。
【0009】
Costa et al., Synthesis of Propylene from Ethanol using Phosphorus-modified HZSM-5, Brazilian Journal of Chemical Engineering, Vol. 33, No. 3, pages 503 - 513には、リン助触媒含有HZSM-5触媒を用いてエタノールをプロピレンに転化するプロセスが開示されている。プロパンは、プロセスの少量の副生成物として10%未満の収率で生成される。
【0010】
上述したプロセスは、LPGの生成に主眼を置いたものではなく、長鎖炭化水素又はオレフィンの生成に主眼を置いたものである。LPGは、プロセスにおいて二次的副生成物として低収率で生成されるだけである。これらのプロセスで使用されるプロセスパラメーター及び触媒は、オレフィン及び長鎖アルカンの生成に特別に適合され、調整されている。
【0011】
したがって、エタノールを高収率でLPGに転化し、それによって高収率で経済的に利用可能なLPG生成プロセスを提供するプロセスが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第20140081063号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Process Technologies and Projects for BioLPG, Eric Johnson, Energies, 2019, 12, 250
【非特許文献2】Johansson et al., The Hydrocarbon Pool in Ethanol-to-Gasoline over ZSM-5 catalysts, Catalysis Letters, (2009), 127:1-6
【非特許文献3】Costa et al., Synthesis of Propylene from Ethanol using Phosphorus-modified HZSM-5, Brazilian Journal of Chemical Engineering, Vol. 33, No. 3, pages 503 - 513
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特定の脂肪族アルコールが、バイオLPGを高収率で生成するプロセスの供給原料として使用できるという驚くべき発見に基づいている。特定のプロセス条件と及び特定のゼオライト触媒を用いると、再生可能な生物源由来のエタノール又はイソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコールを高収率でバイオLPGに転化することができる。驚くべきことに、ZSM5ゼオライト材料又はMCM22ゼオライト材料を含む触媒は、特定の反応条件下で、特定の脂肪族アルコールを高収率でバイオプロパン及びバイオブタンの混合物(すなわちバイオLPG)に転化できることが判明した。本プロセスに伴う高収率は、異なるゼオライト触媒材料の使用に伴うことでは見出されなかった。特定のゼオライト材料は、本プロセスで使用した場合、他のゼオライト触媒と比較して触媒寿命が長いことも判明した。ZSM5及びMCM22ゼオライト材料を触媒として使用することのさらなる利点は、プロセスにおけるこれらの触媒の触媒活性が、使用後に空気にさらすだけで回復し得ることが見出されていることである。典型的に、ゼオライト触媒の選択性及び触媒活性は、特定のプロセスで触媒を使用するにつれて低下する。各種方法で触媒の活性をある程度まで回復させることは可能であるが、多くの場合、触媒の選択性及び活性を完全に回復させることはできず、触媒の有効性は時間とともに徐々に低下する。驚くべきことに、本発明の方法におけるZSM5及びMCM22触媒材料の選択性及び触媒活性は、使用により一旦低下しても、空気にさらすことにより、触媒の触媒活性及び選択性を大幅に回復させ、場合によってはプロセスにおける触媒の元の活性及び選択性まで回復させることができることが判明した。さらに、ZSM5及びMCM22ゼオライト材料を最適化し、調整することにより、プロセスにおいてバイオLPGのさらに高い収率及び選択性を実現し、触媒寿命をさらに長くするために使用できる、新規なZSM5及びMCM22ゼオライト触媒を提供できることが判明した。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、C2又はC3脂肪族アルコールからバイオLPGを選択的に生成するための方法であって、
(a)1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールを含む供給流を、触媒を含む反応容器に導入するステップであり、前記触媒が、ZSM5ゼオライト材料、MCM22ゼオライト材料、又はそれらの組み合わせを含む、ステップ;
(b)250℃~750℃の温度及び0.5atm~50atmの圧力にて、反応容器内で供給流と触媒とを接触させるステップ;及び
(c)反応容器からC3及び/又はC4脂肪族炭化水素を含む生成物流を回収するステップ
を含む方法が提供される。
【0016】
典型的には、接触させるステップが、350℃~600℃、好ましくは375℃~500℃の温度で行われる。
【0017】
典型的には、接触させるステップが、1atm~20atm、好ましくは1atm~15atm、より好ましくは1atm~10atmの圧力で行われる。
【0018】
あるいは、接触させるステップが、3atm~50atm、好ましくは3atm~20atm、より好ましくは3atm~15atm、最も好ましくは3atm~10atmの圧力で行われる。
【0019】
好ましくは、接触させるステップが、350℃~600℃の温度及び3atm~10atmの圧力で行われる。最も好ましくは、接触は375℃~500℃の温度及び3atm~10atmの圧力で行われる。
【0020】
プロセスは、連続プロセスとして実施することができる。あるいは、プロセスはバッチプロセスとして実施してもよい。好ましい実施形態において、方法ステップa)~c)は連続流ステップとして実施される。好ましくは、連続流プロセスは、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~10μLの流量で;好ましくは、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~7.5μLの流量で;好ましくは、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~5μLの流量で;供給流を反応容器に導入するステップを含む。最も好ましくは、連続流プロセスは、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~3μLの流量で供給流を反応容器に導入するステップを含む。いくつかの場合において、連続流プロセスは、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1.5μL~2.5μLの流量、例えば反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1.75μL~2.25μLの流量で、供給流を反応容器に導入するステップを含む。
【0021】
プロセスは、反応容器に不活性ガスを通すステップをさらに含んでもよい。典型的には、不活性ガスはアルゴンである。不活性ガスは、典型的には、触媒150mg当たり0.5ml/分~10ml/分、好ましくは触媒150mg当たり0.5ml/分~5ml/分、より好ましくは触媒150mg当たり1.5ml/分~5ml/分、最も好ましくは触媒150mg当たり2ml/分~5ml/分の流量で反応容器に導入される。いくつかの場合において、不活性ガスは、触媒150mg当たり0.5ml/分~1.5ml/分、より好ましくは触媒150mg当たり0.75ml/分~1.25ml/分の流量で反応容器に導入される。好ましくは、方法ステップa)~c)は、連続流プロセスとして連続的に実施され、接触させるステップb)は、接触させるステップb)の間に反応容器に不活性ガスを通すステップをさらに含む。好ましくは、不活性ガスはアルゴンであるが、窒素などの他の不活性ガスを使用してもよい。
【0022】
好ましくは、接触させるステップは、1atm~20atmの圧力で実施され;ここで、連続流プロセスは、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~3μLの流量で供給流を反応容器に導入するステップからなり;そしてここで、プロセスは、接触ステップb)の間に前記反応容器中にアルゴンなどの不活性ガスを通過させることをさらに含み、ここで、不活性ガスは、触媒150mg当たり毎分0.5mlから5ml/分の流量で前記反応容器中に導入される。
【0023】
プロセスは、触媒を不活性希釈ガスと接触させるステップをさらに含んでいてもよい。好ましくは、不活性希釈ガスは窒素を含む。好ましくは、方法ステップa)~c)は、連続流プロセスとして連続的に実施され、接触させるステップb)は、触媒を窒素などの不活性希釈剤ガスと接触させるステップをさらに含む。
【0024】
ステップa)の前に、触媒中に存在するゼオライト材料は、好ましくはH型形態で存在する。ゼオライト触媒のH型形態は、ゼオライトが水素カチオンを含む形態である。したがって、ステップa)の前に、触媒がH型形態で存在しない場合、触媒はH型形態で存在するように処理される。したがって、いくつかの実施形態において、触媒を、H型形態の触媒を提供するのに適した条件下で空気又は酸素と接触させる。したがって、好ましい実施形態において、ステップa)の前に、触媒を400℃~650℃、好ましくは500℃~600℃の温度で空気又は酸素と接触させる。より好ましくは、ステップa)の前に、触媒を空気又は酸素と400℃~650℃の温度で1時間~10時間の期間接触させる。最も好ましくは、ステップa)の前に、触媒を空気又は酸素と4時間~6時間の期間接触させる。
【0025】
前段落に記載された実施形態において、いくつかの実施形態において、ステップa)の前、かつ触媒を400℃~650℃の温度で1時間~10時間の期間にわたって空気又は酸素と接触させた後に、反応容器は、アルゴンなどの不活性ガスでパージする前に、空気又は酸素流下で400℃~500℃の温度に、好ましくは5時間~10時間の期間加熱される。このようなステップは、典型的には、ゼオライト触媒がH型形態であることを確実にするために実施される。
【0026】
好ましくは、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールは、エタノール、イソプロピルアルコール、又はそれらの組み合わせを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールは、供給流中に存在する唯一のC2又はC3脂肪族アルコールとしてエタノールを含む。
【0028】
他の実施形態において、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールは、エタノール及びイソプロピルアルコールの混合物を含む。例えば、いくつかの実施形態において、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールは、供給流の30重量%~70重量%の量のエタノール、及び供給流の30重量%~70重量%の量のイソプロピルアルコールを含む。好ましい場合において、エタノールは40重量%~60重量%の量で存在し、イソプロピルアルコールは供給流の40重量%~60重量%の量で存在する。例えば、エタノール及びイソプロピルアルコールは共に、供給流の約50重量%の量で供給流中に存在し得る。
【0029】
好ましくは、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールは、再生可能な生物資源に由来する。したがって、いくつかの実施形態において、供給流は、化石燃料由来のC2又はC3脂肪族アルコールを含まない。いくつかの実施形態において、供給流は、化石燃料に由来するいかなる有機化合物をも含まない。
【0030】
好ましい実施形態において、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールは、発酵又は生物生成に由来する。
【0031】
いくつかの実施形態において、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールは、生物有機材料の発酵、例えばセルロース系材料の発酵から生成される。生物由来のC2又はC3脂肪族アルコールをもたらすようにセルロース系材料を発酵させるためのプロセスは、当該技術分野において公知である。
【0032】
他の実施形態において、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールは、リサイクル炭素に由来する。例えば、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールは、燃焼ガス又は生物生成合成ガスの発酵から生成することができる。燃焼ガスは、多くの工業プロセスの廃棄物流である。燃焼ガス及び合成ガスは、水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素を含む。これらのガスは、発酵プロセスにおける微生物によってC2又はC3脂肪族アルコールに転化することができる。
【0033】
本明細書で使用するバイオLPGという用語は、当該技術分野におけるこの用語の通常の意味に従って理解される。バイオLPGは、化石燃料の代わりに生物源由来の供給原料から生成されるLPGである。本明細書で使用される生物源由来という用語は、生物源から直接得られる材料、又は生物源から間接的に得られる材料を指すために使用される。例えば、本明細書で使用する生物源由来という用語は、化学プロセスの出発材料が生物源である化学プロセスによって得られる材料を包含する。例えば、生物源から得られた材料が、化学処理されて化学中間体となり、その中間体がLPGに転化される場合でも、LPGはバイオLPGと考えられる。本明細書で使用するバイオLPGという用語は、発酵などの微生物プロセスによって生成された供給原料から生成されたLPGを指す場合にも使用される。発酵などの微生物プロセスの供給原料は、それ自体が化石燃料、例えば化石燃料の燃焼から得られる二酸化炭素又は一酸化炭素に由来することもある。このようなプロセスで生成されたLPGは、バイオLPGと考えられる。何故ならこのLPG生成プロセスの供給原料が、化石燃料の燃焼から得られ、そうでなければ大気中に放出され、大気中の炭素濃度に寄与することになるガスを供給原料とする生物学的プロセスの生成物であるからである。
【0034】
好ましくは、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールを含む供給流は、供給流の成分の総重量に対して70重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%の量の1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールを含む供給流は、さらに水を含む。典型的には、水は、供給流の成分の総重量に対して1重量%~30重量%の量で供給流中に存在する。好ましくは、水は、供給流の成分の総重量に対して10重量%~20重量%の量で供給流中に存在する。これらの実施形態において、供給流は、典型的には、供給流の成分の総重量に対して70重量%~99重量%、好ましくは80重量%~90重量%の量のエタノールを含む。
【0036】
驚くべきことに、プロセス供給流中の低レベルの水(例えば、上述した量)は、ゼオライト材料触媒の寿命を延ばすことが判明した。供給流に水が含まれる場合、バイオLPGの生成のための触媒の選択性及び活性は、供給流に水が全く含まれない場合と比較して、より長い時間、不活性化することなく十分に高いレベルを維持することが判明した。高温の水蒸気がゼオライト触媒の脱アルミニウムを引き起こすことが多く、それに伴って触媒が失活することは記録により十分立証されているので、上記のことは驚くべきことである。生物由来のC2又はC3脂肪族アルコールは、発酵などの生成プロセスで残留する水を含むことが多いため、触媒寿命の延長は特に有利である。生物由来のC2又はC3脂肪族アルコールから水を分離して無水アルコールを得ることは高価であり、可能であれば避けることが望ましい。したがって、本発明の方法は、供給流中の水の存在が触媒の活性を阻害しないというだけでなく、供給流中の水の存在が実際には触媒の寿命を延長するという点で有利である。したがって、プロセスが連続プロセスである場合、触媒を回復させるためにプロセスを断続的に停止する必要なしに、より長い期間連続的に、プロセスを実施することができる。
【0037】
本発明の方法は、C2炭化水素又は長鎖炭化水素の生成よりもC3及び/又はC4炭化水素の生成に対して高い選択性を有する。バイオLPGは、主にC3及び/又はC4炭化水素、例えば飽和C3及び/又はC4炭化水素、例えばプロパン及びブタンを含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールの少なくとも90%が炭化水素生成物に転化される。いくつかの実施形態において、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールの少なくとも95%が炭化水素生成物に転化され、最も好ましくは、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールの約100%が炭化水素生成物に転化される。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも60%の収率でC3及び/又はC4炭化水素を生成する。好ましくは、このプロセスは、少なくとも30%の収率でC3及び/又はC4炭化水素を生成する。
【0040】
C3及び/又はC4炭化水素の正確な収率は、プロセスに使用される特定のプロセス条件の特質、及びプロセスで使用される特定の触媒に依存する。
【0041】
いくつかの実施形態において、触媒は、ZSM5ゼオライト材料を含み、本発明の方法は、55%~60%の収率でC3及び/又はC4炭化水素を生成する。好ましくは、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールの少なくとも95%が炭化水素生成物に転化され、最も好ましくは、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールの約100%が炭化水素生成物に転化される。
【0042】
他の実施形態において、触媒は、MCM22ゼオライト材料を含み、本発明の方法は、45%~55%の収率でC3及び/又はC4炭化水素を生成する。好ましくは、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールの少なくとも95%が炭化水素生成物に転化され、最も好ましくは、1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールの約100%が炭化水素生成物に転化される。
【0043】
いくつかの実施形態において、プロセスは、供給流の流量が、反応容器中に存在する150mgの触媒当たり毎分1.75μL~2.25μLである場合、2日後における少なくとも30%のC3及びC4脂肪族炭化水素の選択率を有する。
【0044】
反応容器は、本発明の方法を効果的に実施するための任意の適切な構成又はセットアップで触媒を含んでもよい。例えば、反応容器は固定床反応器を含んでもよい。あるいは、反応容器は流動床反応器を含んでもよい。
【0045】
本発明の方法を実施するための反応容器及び手段の他の適切な特徴は、本発明の方法などの触媒プロセスに当該技術分野で典型的に使用されるものである。
【0046】
いくつかの実施形態において、ゼオライト材料を含む触媒は、担体又は支持体材料を含んでもよい。しかしながら、これは必須ではなく、いくつかの実施形態では、触媒は担持されていなくてもよい。適切な担体又は担持材料の例は、炭素、シリカ、アルミナ、又はそれらの組み合わせなどの、当該技術分野において一般的に知られているものである。
【0047】
いくつかの実施形態において、ゼオライト材料を含む触媒は、1又は2以上のバインダー材料をさらに含んでもよい。適切なバインダー材料の例としては、粘土又はアルミナが挙げられる。いくつかの実施形態において、ゼオライト及び1又は2以上のバインダー材料を含む触媒材料は、ペレット化又は押出成形してもよい。他の実施形態において、触媒は、バインダー、担体又はサポート材料を含まないことがある。
【0048】
本発明の方法において使用するためのゼオライト材料を含む触媒は、本発明の方法を実施するための任意の適切なサイズの粒子として存在し得る。
【0049】
触媒は、ZSM5触媒材料、MCM22触媒材料、又はそれらの組み合わせを含む。上述したように、触媒は、好ましくは触媒のH型形態で存在する。本明細書で使用されるゼオライトのH型形態という用語は、当該技術分野における通常の態様において、プロトン化形態のゼオライト触媒を指すために使用される。
【0050】
ZSM5及びMCM22は、当該技術分野で公知のゼオライト材料である。ZSM5及びMCM22という用語は、特定の構造によって定義されるゼオライト材料の一般的なクラスを指す。本明細書で使用されるゼオライト材料の各クラス(すなわち、ZSM5又はMCM22)内では、シリカ対アルミナ比(Si/Al比)は変化し得る。
【0051】
触媒がZSM5ゼオライト材料を含む場合、ZSM5ゼオライト材料は、好ましくは20~150、より好ましくは25~100、最も好ましくは25~90のSi/Al比を有する。触媒がZSM5ゼオライト材料を含む本発明の非常に好ましい実施形態において、Si/Al比は30又は80である。
【0052】
触媒がMCM22ゼオライト材料を含む場合、触媒は典型的にSi/Al比が10~70であるMCM22を含む。
【0053】
考察したSi/Al比を有するゼオライト材料は、上記の範囲外のSi/Al比を有するゼオライト材料よりも高い収率でバイオLPGをもたらすのに優れていることが判明した。ゼオライト材料の酸性度は、とりわけ、ゼオライト材料のSi/Al比によって影響されることが知られている。典型的には、Si/Al比が高いほど、ゼオライト材料の酸性度が低いことを意味する。いかなる特定の理論にも限定されることなく、上述したSi/Al比を有するZSM5及びMCM22ゼオライト材料は、生成物流中の1又は2以上のC3及び/又はC4炭化水素の収率を増加させるのに最適なレベルの酸性度を有すると考えられる。
【0054】
ゼオライト材料は、ゼオライト構造への追加元素の添加によって促進(promoted)してもよい。ゼオライトは典型的に、式M2/nO・Al2O3・xSiO2・yH2Oで表される。前記構造において、Mはカチオンであり、nはカチオンの価数であり、xはSi:Al比であり、yは構造中に存在する水分子の数である。アルミナ及びシリカ(Al2O3及びSiO2)単位は、典型的には、ゼオライト構造の多孔性骨格内に存在し、カチオン及び水分子は前記多孔内に存在する。助触媒含有ゼオライト材料(a promoted zeolite material)は、少量の追加元素(アルミニウム、酸素又はケイ素以外)がゼオライト構造に化学的に導入されたものである。助触媒含有ゼオライト材料は、助触媒不含ゼオライト材料(unpromoted zeolite material)とは異なる特性を有する場合がある。例えば、所定の反応における触媒活性、特定の生成物に対する選択性、酸性度、及びゼオライトの他の多くの化学的特性は、ゼオライト構造への助触媒元素の導入によって調整することができる。多くの場合、助触媒元素を導入する効果は、所定の反応における前記ゼオライト材料の触媒活性に対する効果などの、ゼオライト材料の1又は2以上の特性に対して予測できない効果を有することがある。さらに、多くの場合、ゼオライト材料に異なる量の同じ助触媒元素を添加することの効果は、ゼオライト材料の特性に対して異なる効果を有する場合がある。
【0055】
驚くべきことに、本発明の方法において使用するためのZSM5及びMCM22ゼオライト材料が、ゼオライト材料の酸性度を低下させるように促進される場合、本発明の方法におけるゼオライト材料の触媒活性が改善されることが、本発明の発明者らによって判明した。特に、C3炭化水素及び/又はC4炭化水素に対するプロセスの選択性が改善され得、及び/又は前記触媒が過度な使用により失活する前の触媒の寿命が増加する。さらに、前記助触媒入りゼオライト材料が、供給流がC2又はC3アルコールと水の両方を含むプロセスにおいて触媒として使用される場合、触媒の寿命はさらに延長され得る。ゼオライト中に助触媒元素が存在することにより、高温の水蒸気によるゼオライトの脱アルミニウムが阻害され、ゼオライト中に助触媒元素が存在しない場合のコーキング及び他の触媒失活メカニズムによる触媒活性の低下が抑制されると考えられる。
【0056】
したがって、好ましい実施形態において、ZSM5ゼオライト材料又はMCM22ゼオライト材料は、同等のSi/Al比を有する対応する助触媒不含ゼオライト材料と比較して、アンモニア昇温度脱離によって決定される酸性度が低減した助触媒含有ゼオライト材料である。より好ましくは、ZSM5ゼオライト材料又はMCM22ゼオライト材料は、以下の一方又は両方を有する:i)アンモニア昇温度脱離によって決定した場合、同等のSi/Al比を有する対応する助触媒不含ゼオライト材料と、異なる酸部位強度分布;ii)アンモニア昇温度脱離によって決定した場合、同等のSi/Al比を有する対応する助触媒不含ゼオライト材料と、異なる酸部位総数。
【0057】
アンモニア昇温度脱離は、当技術分野で知られている技術である。所定の助触媒含有ゼオライト材料が酸性度を低下させるかどうか;異なる酸部位強度分布を有するかどうか;及び/又は異なる酸部位総数を有するかどうかは、所定のゼオライト材料のアンモニア昇温度脱離スペクトルの分析によって単純に決定することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、ZSM5ゼオライト材料又はMCM22ゼオライト材料は、ホウ素、リン、ガリウム、マグネシウム、亜鉛、カリウム、及びジルコニウムから選択される1又は2以上の助触媒元素を含む助触媒含有ゼオライト材料である。
【0059】
いくつかの実施形態において、1又は2以上の助触媒元素は、0.5重量%~5重量%、好ましくは0.75重量%~3.25重量%の量でゼオライト材料中に存在する。
【0060】
好ましくは、触媒は、ZSM5ゼオライト材料を含み、ZSM5ゼオライト材料は、元素ホウ素又はリンにより促進された助触媒含有ZSM5ゼオライト材料を含む。ホウ素及びリンは、上述したゼオライト材料の酸性度を低下させるように、任意の適切な量で存在することができる。好ましくは、ホウ素又はリンは、ZSM5材料中に、0.75重量%~3.25重量%、より好ましくは0.8重量%~3.2重量%、さらに好ましくは0.9重量%~3.1重量%、最も好ましくは1重量%~3重量%の量で存在する。好ましい実施形態において、ホウ素又はリンで促進されたZSM5ゼオライト材料は、25~90、最も好ましくは25~35又は75~85のSi/Al比を有する。
【0061】
いくつかの実施形態において、ZSM5ゼオライト材料は、75~85のSi/Al比を有し、ZSM5-ゼオライト材料は、0.75重量%~1.25重量%のリン、より好ましくは0.8重量%~1.2重量%のリン、さらに好ましくは0.9重量%~1.1重量%のリン、最も好ましくは約1重量%のリンを含む。非常に好ましい実施形態において、Si/Al比は80であり、ZSM5ゼオライト材料は1重量%のリンを含む。
【0062】
いくつかの実施態様において、ZSM5ゼオライト材料は、25~30のSi/Al比を有し、ZSM5-ゼオライト材料は、0.75重量%~3.25重量%のリン、より好ましくは0.8重量%~3.2重量%、さらにより好ましくは0.9重量%~3.1重量%、最も好ましくは1重量%~3重量%のリンを含む。非常に好ましい実施例において、ZSM-5ゼオライト材料は30のSi/Al比を有し、ZSM5-ゼオライト材料は1重量%のリン、2重量%のリン、又は3重量%のリンを含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、ZSM5ゼオライト材料は、75~85のSi/Al比を有し、ZSM5-ゼオライト材料は、0.75重量%~3.25重量%のホウ素、好ましくは0.8重量%~3.2重量%のホウ素、より好ましくは0.9重量%~3.1重量%のホウ素、最も好ましくは1重量%~3重量%のホウ素を含む。好ましい実施形態において、ZSM5ゼオライト材料のSi/Al比は80である。好ましい実施形態において、ZSM5-ゼオライト材料は、1重量%のホウ素、2重量%のホウ素、又は3重量%のホウ素を含む。非常に好ましい実施形態において、ZSM5ゼオライト材料のSi/Al比は80であり、ZSM5-ゼオライト材料は、1重量%のホウ素、2重量%のホウ素、又は3重量%のホウ素を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、ZSM5ゼオライト材料は、25~35のSi/Al比を有し、ZSM5-ゼオライト材料は、0.75重量%~3.25重量%のホウ素、好ましくは0.8重量%~3.2重量%のホウ素、より好ましくは0.9重量%~3.1重量%のホウ素、最も好ましくは1重量%~3重量%のホウ素を含む。好ましい実施形態において、ZSM5ゼオライト材料のSi/Al比は80である。好ましい実施形態において、ZSM5-ゼオライト材料は、1重量%のホウ素、2重量%のホウ素、又は3重量%のホウ素を含む。非常に好ましい実施形態において、ZSM5ゼオライト材料のSi/Al比は80であり、ZSM5-ゼオライト材料は、1重量%のホウ素、2重量%のホウ素、又は3重量%のホウ素を含む。
【0065】
MCM22及びZSM5ゼオライト材料は、各種供給源から容易に入手可能であり、又は当該技術分野で周知の方法を使用して合成することができる。上述した助触媒含有ゼオライト材料は、当技術分野で公知の方法を使用して合成することもでき、これらの例は、以下でさらに詳細に考察する。いくつかの実施形態において、助触媒含有ゼオライトは、ゼオライト粉末から直接製造される。ゼオライト触媒がバインダー、担体又は支持材料を含む場合、いくつかの実施形態において、ゼオライト粉末は、押出成形によって処理されるなどして、バインダー、担体又は支持材料で処理される前に促進される。他の実施形態において、触媒は、助触媒含有形態の触媒に転化される前に、押出成形などによって、担体、バインダー又は担体材料とともに処理される。
【0066】
上述したように、本発明の方法におけるMCM22及びZSM5ゼオライト材料の使用に伴う驚くべき利点は、触媒の触媒活性及びC3及びC4脂肪族炭化水素の生成に対するそれらの選択性を、簡単かつ大幅に回復させることができることである。
【0067】
したがって、いくつかの実施形態において、プロセスは、ステップa)~c)の連続プロセスを停止するステップ;及び触媒を回復させるのに十分な条件下で触媒を空気又は酸素と接触させるステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、触媒は、触媒の初期の活性及び選択性と同等の活性及び選択性を有するように回復させる。好ましくは、触媒は、触媒の初期の活性及び選択性の70%以上、80%以上、又は90%以上に相当する活性及び選択性を有するように回復させる。非常に好ましい実施形態において、触媒は、触媒の初期の活性及び選択性の100%に相当する活性及び選択性を有するように回復させる。
【0068】
本明細書で使用する触媒の初期の選択性及び活性という用語は、本明細書で開示するバイオLPGを選択的に生成するためのプロセスで使用される前の触媒の活性及び選択性を指すために使用する。本明細書で使用する活性という用語は、触媒がプロセス供給原料を化学生成物に化学的に転化する能力を指すために使用する。本明細書で使用される選択性という用語は、その他の化学生成物よりも特定の化学生成物を生成する触媒の能力を指すために使用される。例えば、C3及びC4脂肪族炭化水素に対する触媒選択性が40%であるとは、触媒によって生成される化学生成物の40%がC3及びC4脂肪族炭化水素であることを意味する。
【0069】
いくつかの実施形態において、プロセスは、ステップa)~c)の連続プロセスを停止するステップ;及び触媒を空気又は酸素と接触させるステップをさらに含む。好ましくは、この接触させるステップは、300℃~600℃、より好ましくは400℃~550℃の温度で行われる。好ましくは、この接触させるステップは、1時間~20時間、より好ましくは5時間~15時間の期間行われる。いくつかの実施形態において、接触させるステップは400℃~550℃の温度で5時間~15時間の期間行われる。典型的には、これらの条件は触媒を回復させるのに十分である。
【0070】
いくつかの実施形態において、プロセスは、反応容器から芳香族生成物流を回収するステップをさらに含んでもよい。芳香族生成物流は、典型的には、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、p-キシレン、1-エチル-3-メチル-ベンゼン、1,2,4-トリメチル-ベンゼン、1-メチル-2-イソプロピル-ベンゼン、又はそれらの組み合わせを含むが、他の類似の芳香族化合物も芳香族生成物流中に存在してよいことが理解されるであろう。本発明の方法の驚くべき利点は、このプロセスが他の炭化水素よりも芳香族に対して高い選択性も示すことである。この点で、本発明の方法の主要な炭化水素生成物はLPGであり、2番目に多い生成物は芳香族炭化水素である。典型的には、このプロセスは、C3-C4炭化水素(すなわちLPG生成物)及び芳香族炭化水素を、1:1(C3-C4炭化水素/芳香族)~2:1、好ましくは1.2:1~1.5:1の質量比で生成する。芳香族炭化水素は多くの用途に有用である。重要な用途は、特定のジェット燃料の成分としてのものである。したがって、本発明の方法は、生物由来のジェット燃料又はバイオ由来のジェット燃料に使用するための成分を提供することに用途を見出している。
【0071】
本発明の第2の態様によれば、C2又はC3脂肪族アルコールからバイオLPGを選択的に生成するための方法であって、
(a)1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールを含む供給流を、触媒を含む反応容器に導入するステップであり、前記触媒が、ZSM5ゼオライト材料、MCM22ゼオライト材料、又はそれらの組み合わせを含む、ステップ;
(b)250℃~750℃の温度にて、反応容器内で供給流と触媒とを接触させるステップ;及び
(c)反応容器からC3及び/又はC4脂肪族炭化水素を含む生成物流を回収するステップ
を含み、
前記方法が、連続流プロセスであり、前記方法が、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~10μLの流量で供給流を反応容器に導入するステップを含み、プロセスは、接触させるステップb)の間に反応容器にアルゴンなどの不活性ガスを通すステップをさらに含み、前記不活性ガスが、触媒150mg当たり0.5ml/分~触媒150mg当たり10ml/分、好ましくは触媒150mg当たり0.5ml/分~触媒150mg当たり5ml/分、より好ましくは触媒150ml当たり1.5ml/分~5ml/分、より好ましくは触媒150mg当たり2ml/分~5ml/分の流量で反応容器に導入される、
方法が提供される。
【0072】
好ましくは、プロセスは、反応容器中に存在する触媒150mg当たり毎分1μL~3μLの流量で供給流を反応容器に導入するステップを含み、プロセスは、接触させるステップb)の間に反応容器にアルゴンなどの不活性ガスを通すステップをさらに含み、前記不活性ガスが、触媒150mg当たり0.5ml/分~触媒150mg当たり5ml/分の流量で反応容器に導入される。いくつかの場合において、不活性ガスは、触媒150ml当たり0.5ml/分~1.5ml/分、又は触媒150mg当たり0.75ml/分~1.25ml/分の流量で反応容器に導入される。
【0073】
好ましくは、プロセスは、本発明の第1の態様に従って上記でさらに説明した通りである。
【0074】
本発明の第3の態様によれば、ZSM5ゼオライト材料、MCM22ゼオライト材料、又はそれらの組み合わせを含む触媒が提供され、ZSM5ゼオライト材料は、20~150のSi/Al比を有し、MCM22ゼオライト材料は、10~70のSi/Al比を有し、ZSM5ゼオライト材料又はMCM22ゼオライト材料は、同等のSi/Al比を有する対応する助触媒不含ゼオライト材料と比較して、アンモニア昇温度脱離によって決定される酸性度が低減した助触媒含有ゼオライト材料である。
【0075】
好ましくは、本発明の第3の態様の触媒は、本発明の第1の態様に従って上記で定義した通りである。
【0076】
本発明の第3の態様の触媒は、バイオLPG生成触媒である。
【0077】
本発明の第4の側面によれば、C2又はC3脂肪族アルコールをC3及び/又はC4脂肪族炭化水素に転化するための、本発明の第3の態様に従う触媒の使用が提供される。
【0078】
好ましくは、その使用は、本発明の第1又は第2の態様による方法において触媒を使用するステップを含む。
【0079】
好ましくは、使用は、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の収率でC3及び/又はC4脂肪族炭化水素を生成するステップを含む。
【0080】
本発明の第5の態様によれば、ZSM5ゼオライト材料又はMCM22ゼオライト材料を含む失活バイオLPG生成触媒を回復させるための方法であって、触媒を空気又は酸素と接触させるステップを含む方法が提供される。
【0081】
好ましくは、方法は、触媒を300℃~600℃、より好ましくは400℃~550℃の温度で空気又は酸素と接触させるステップを含む。
【0082】
好ましくは、方法は、触媒を空気又は酸素と1時間~20時間の期間、より好ましくは5時間~15時間の期間接触させるステップを含む。
【0083】
より好ましくは、方法は、触媒を空気又は酸素と300℃~600℃の温度で1時間~20時間の期間接触させるステップを含む。最も好ましくは、方法は、触媒を空気又は酸素と400℃~550℃の温度で5時間~15時間の期間接触させるステップを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、触媒は、触媒の初期の活性及び選択性と同等の活性及び選択性を有するように回復させる。好ましくは、触媒は、触媒の初期の活性及び選択性の70%以上、80%以上、又は90%以上に相当する活性及び選択性を有するように回復させる。非常に好ましい実施形態において、触媒は、触媒の初期の活性及び選択性の100%に相当する活性及び選択性を有するように回復させる。
【0085】
好ましくは、触媒は、本発明の第1及び第3の態様に従って定義される通りである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図1】100mgのZSM5ゼオライト触媒を用いて実施した本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図2】200mgのZSM5ゼオライト触媒を用いて実施した本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図3】100mgのゼオライト触媒MCM22を使用した本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図4】100mgのゼオライト触媒SAPO34を使用してエタノールを炭化水素に転化するプロセスの生成物選択性を示す。
【
図5】エタノールを炭化水素に転化するプロセスにおける、異なるゼオライト触媒のC3/C4炭化水素に対する生成物選択性を示す。
【
図6】エタノールを炭化水素に転化するプロセスにおける、異なるゼオライト触媒のC3/C4炭化水素に対する生成物選択性を示す。
【
図7】ZSM5を触媒として使用してエテンを炭化水素に転化するプロセスの生成物選択性を示す。
【
図8】異なる触媒量で異なる時間実施された本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図9】異なる触媒量で異なる時間実施された本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図10】異なる触媒量で異なる時間実施された本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図11】異なる触媒量で異なる時間実施された本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図12】異なる触媒量で異なる時間実施された本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図13】異なる触媒量で異なる時間実施された本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図14】異なる触媒量で異なる時間実施された本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図15】異なる触媒量で異なる時間実施された本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図16】異なる触媒量で異なる時間実施された本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図17】ホウ素助触媒含有ZSM5ゼオライト触媒を使用して実施した本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図18】リン助触媒含有ZSM5ゼオライト触媒を使用して実施した本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図20】ZSM5-30触媒を使用して実施した本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図21】ZSM5-80触媒を使用して実施した本発明の方法の生成物選択性を示す。
【
図22】リン助触媒含有ZSM5-30触媒を使用して実施した本発明の方法の生成物のガスクロマトグラフィースペクトルを示す。
【
図23】ジルコニウム助触媒含有ZSM5-30触媒を使用して実施したエタノールを炭化水素に転化するプロセスの生成物選択性を示す。
【
図24】バナジウム助触媒含有ZSM5-30触媒を使用して実施したエタノールを炭化水素に転化するプロセスの生成物選択性を示す。
【
図25】供給流が水とエタノールの混合物を含む、本発明の方法における本発明の触媒の生成物選択性を示す。
【
図26】供給流が水とエタノールの混合物を含む、本発明の方法における本発明の触媒の生成物選択性を示す。
【
図27】供給流が水とエタノールの混合物を含む、本発明の方法における本発明の触媒の生成物選択性を示す。
【
図28】供給流が水とエタノールの混合物を含む、本発明の方法における本発明の触媒の生成物選択性を示す。
【
図29】本発明の各種プロセスで使用される場合の、本発明の各種リン及びホウ素助触媒含有触媒の生成物選択性を示す。
【
図30】本発明の各種プロセスで使用される場合の、本発明の各種リン及びホウ素助触媒含有触媒の生成物選択性を示す。
【
図31】本発明の各種プロセスで使用される場合の、本発明の各種リン及びホウ素助触媒含有触媒の生成物選択性を示す。
【
図32】本発明の各種プロセスで使用される場合の、本発明の各種リン及びホウ素助触媒含有触媒の生成物選択性を示す。
【
図33】本発明の各種プロセスで使用される場合の、本発明の各種リン及びホウ素助触媒含有触媒の生成物選択性を示す。
【
図34】本発明の各種プロセスで使用される場合の、本発明の各種リン及びホウ素助触媒含有触媒の生成物選択性を示す。
【
図35】本発明の各種プロセスで使用される場合の、本発明の各種リン及びホウ素助触媒含有触媒の生成物選択性を示す。
【
図36】純粋な無水エタノール供給流及びエタノールと水との混合物を含む供給流を用いた本発明の各種プロセスの生成物選択性を示す。
【
図37】純粋な無水エタノール供給流及びエタノールと水との混合物を含む供給流を用いた本発明の各種プロセスの生成物選択性を示す。
【
図38】純粋な無水エタノール供給流及びエタノールと水との混合物を含む供給流を用いた本発明の各種プロセスの生成物選択性を示す。
【
図39】純粋な無水エタノール供給流及びエタノールと水との混合物を含む供給流を用いた本発明の各種プロセスの生成物選択性を示す。
【
図40】純粋なイソプロパノール供給流及びイソプロパノールとエタノールの混合物を含む供給流を用いた本発明の各種プロセスの生成物選択性を示す。
【
図41】純粋なイソプロパノール供給流及びイソプロパノールとエタノールの混合物を含む供給流を用いた本発明の各種プロセスの生成物選択性を示す。
【
図42】純粋なイソプロパノール供給流及びイソプロパノールとエタノールの混合物を含む供給流を用いた本発明の各種プロセスの生成物選択性を示す。
【
図43】純粋なイソプロパノール供給流及びイソプロパノールとエタノールの混合物を含む供給流を用いた本発明の各種プロセスの生成物選択性を示す。
【
図44】各種ゼオライト触媒のアンモニア昇温脱離(NH3 TPD)スペクトルを示す。
【
図45】各種ゼオライト触媒のアンモニア昇温脱離(NH3 TPD)スペクトルを示す。
【
図46】各種ゼオライト触媒のアンモニア昇温脱離(NH3 TPD)スペクトルを示す。
【
図47】各種ゼオライト触媒の多孔性データを示す。
【
図48】各種ゼオライト触媒の多孔性データを示す。
【
図49】各種ゼオライト触媒の線形等温線プロットを示す。
【
図50】各種ゼオライト触媒の線形等温線プロットを示す。
【
図51】各種ゼオライト触媒の線形等温線プロットを示す。
【
図52】各種ゼオライト触媒の線形等温線プロットを示す。
【
図53】各種ゼオライト触媒の線形等温線プロットを示す。
【
図54】各種ゼオライト触媒の線形等温線プロットを示す。
【
図55】異なる操作条件下での試験触媒の選択性の一般的な傾向を示す。
【
図56】異なる操作条件下での試験触媒の選択性の一般的な傾向を示す。
【
図57】異なる操作条件下での試験触媒の選択性の一般的な傾向を示す。
【
図58】異なる操作条件下での試験触媒の選択性の一般的な傾向を示す。
【
図59】異なる操作条件下での試験触媒の選択性の一般的な傾向を示す。
【
図60】異なる操作条件下での試験触媒の選択性の一般的な傾向を示す。
【
図61】異なる操作条件下での試験触媒の選択性の一般的な傾向を示す。
【
図62】異なる操作条件下での試験触媒の選択性の一般的な傾向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
[実施例1]
市販のゼオライトZSM5、MCM22及びSAPO34を用いて試験を行った。プロセスの供給流として使用した1又は2以上のC2又はC3脂肪族アルコールは、エタノールを含んでいた。
【0088】
反応容器に、表1に示す量の触媒及び炭化ケイ素を充填した。
【0089】
【0090】
反応容器への充填前に、すべてのゼオライトを550℃で5時間空気にさらし、H型形態であることを確実にした。反応容器への装填後、反応容器を空気流(25ml/分/8つの試験管のブロック)下で460℃まで加熱し、7時間保持した。反応圧力を5barに設定してアルゴンでパージしながら試験管を400℃まで冷却した。次に、エタノールを各反応容器に2.5μL/分の速度で、温度400℃にて導入した。内部標準としてアルゴンを反応容器管当たり0.625ml/分の速度で導入し、希釈ガスとして窒素を反応容器管当たり37.5ml/分の速度で各反応容器の各触媒床に導入した。窒素希釈ガスの目的は、単に以後のガスクロマトグラフィー分析のための空間速度を上げることである。
【0091】
異なる鎖長の炭化水素とジエチルエーテルの形成のための各触媒の経時的選択性を
図1から
図7に示す。
図8は、異なるゼオライトのC3及びC4脂肪族炭化水素形成に対する経時的選択性を対比したものである。
図8は、C3及びC4脂肪族炭化水素形成に対するZSM5及びMCM22触媒の初期の選択性が、他のゼオライトよりも著しく高いことを示している。C3及びC4脂肪族炭化水素の形成に対するすべての触媒の選択性が短時間で低下することも
図8からわかる。しかし、この選択性の低下は、他のゼオライトに比べてMCM22及びZSM5では著しく小さい。
【0092】
すべての場合において、約100%という、エタノールから炭化水素生成物への非常に高い転化率を得た。ゼオライトSAPO3では、反応を進めた数時間の後、ほぼすべてのエタノールがエチレンに転化され、他の炭化水素はほとんど生成されなかった。
【0093】
ZSM5は、C3及びC4脂肪族炭化水素に対して約55%~60%の選択率を有していた。MCM22は、C3及びC4脂肪族炭化水素に対して約45%~55%の選択率を有していた。
【0094】
エタノールの代わりにエテンを供給源として同様の実験を行った。異なる触媒を用いたこの実験の結果を
図9に示す。
図9から、(
図8に示した)エタノールの代わりにエテンを供給原料として使用した場合、各触媒の選択率及び寿命が異なることがわかる。エテンを供給物とした場合、ゼオライトは、エタノールを供給原料とした場合よりもはるかに速い活性化を受けた。MCM22及びZSM5ゼオライト触媒では、エテンを供給物として使用した場合よりも、エタノールをプロセスのための供給物として使用した場合に、C3/C4(すなわちLPG)の収率が高いこともわかる。
[実施例2]
【0095】
実施例1と同様の実験を、触媒としてMCM22及びZSM5のみを使用して実施したが、より長い期間、連続プロセスとしてプロセスをオンラインにした場合の影響を調査した。
【0096】
反応容器に、表2に示す量の触媒及び炭化ケイ素を装填した。
【0097】
【0098】
反応容器への充填前に、すべてのゼオライトを550℃で5時間空気にさらし、H型形態であることを確実にした。反応容器への装填後、反応容器を空気流(35ml/分/8本のブロック)下で470℃まで加熱し、7時間保持した。反応圧力を5barに設定してアルゴンでパージしながら試験管を400℃まで冷却した。次に、エタノールを各反応容器に2.5μL/分の速度で、温度400℃にて導入した。内部標準としてアルゴンを反応容器管当たり0.625ml/分の速度で導入し、希釈ガスとして窒素を反応容器管当たり37.5ml/分の速度で各反応容器の各触媒床に導入した。反応がオンラインになってから11日後に温度を425℃まで上昇させた。窒素希釈ガスの目的は、単に以後のガスクロマトグラフィー分析のための空間速度を上げることである。
【0099】
この実験では、触媒1グラム当たりのエタノール転化率を決定するために、異なる触媒添加量を使用して試験した。
【0100】
触媒の寿命を延ばすために、触媒のその場での回復を達成できるかどうかどうかも検討した。したがって、触媒の1回目の回復がオンラインでの4日後に行われ、別の4日間の触媒作用の後、2回目の回復が行われ、さらに5日間の触媒作用が行われた。
【0101】
【0102】
図10は、ZSM5を用いたC3及びC4炭化水素の初期選択率は高く約55%~65%であることを示している。オンラインでの最初の24時間は、主留分はC3であったが、この比率は1日経つとC4化合物が優勢になるように変化することもわかった。
図11は、C3及びC4炭化水素の選択率が、オンラインで数日経過すると徐々に低下することを示している。
【0103】
異なる添加量のZSM5触媒を対比した
図11~
図14のデータは、オンラインでの異なる時点における触媒の失活の開始を示している。これは、触媒の失活が、オンライン時間よりも、エタノール総濃度に大きく影響されることを表している。触媒失活の指標は、ゼオライトがC2炭化水素をC3及びC4炭化水素に転化しようとし始めたときの、C2炭化水素の急激な増加である。C2炭化水素の出現を触媒の著しい失活の開始と考えると、表3のデータは、ZSM5の失活は、ZSM5の1g当たり約100mlのエタノールが転化された後に始まることを示している。
【0104】
【0105】
図11~14のデータはまた、より低い触媒添加量で実施した実験について、ZSM5の著しい失活を示していることがわかる。しかし、470℃でのその場の空気中での回復は、ZSM5の活性及び選択性はほぼ完全な再生をもたらした。いくつかの場合(例えば
図12に示すデータの場合)において、1回目の回復によって、触媒の活性及び選択性は初期の活性及び選択性よりも実際に向上した。同様の活性及び選択性の回復は、2回目の空気中での回復でも達成された。
【0106】
図15は、MCM22がオンラインでの最初の24時間にわたり、約45~55%のC3及びC4炭化水素の選択性を示すことを示している。しかし、C2炭化水素生成量の増加によって示されるように、オンラインでの約1日後に、MCM22触媒は失活し始める。MCM22データを上述のZSM5データと同様に比較すると、MCM22の失活は、MCM22の1g当たり約33mlの総エタノール転化率で始まることがわかる。しかし、有利なことに、すべての触媒添加量において、エタノール転化率はほぼ100%であった。
【0107】
より短いオンライン期間後にエテンが支配的になり始めると、MCM22の失活はZSM5の失活よりも顕著であった。幸いなことに、この場合も、470℃でのその場の空気中での回復は、MCM22の活性及び選択性はほぼ完全に再生をもたらした。さらに、同様の活性及び選択性の再生が、2回目の空気での回復の後にも観察された。触媒寿命という点でのMCM22の性能は、1回目及び2回目の回復によって、新しい触媒に比べて顕著に向上することも認められた。
【0108】
図18は、ZSM5及びMCM22のC3及びC4選択性を比較したものである。このグラフのデータは、C3/C4選択性と触媒安定性の両方の点でZSM5の優れた性能を明確に示している。
[実施例3]
【0109】
この実験では、ゼオライト触媒に助触媒元素を含めることの、触媒の触媒活性及び選択率、並びに触媒の寿命に対する影響を調べた。
【0110】
助触媒元素による修飾のために選択した触媒は、ZSM5-30(Si/Al比30のZSM5)である。このゼオライトは、Alfa Aesar社からアンモニウム塩として市販されている。この触媒を助触媒元素であるホウ素とリンで修飾した。化合物B1/ZSM5-30及びP1/ZSM5-30を合成した。助触媒元素(例えば、B1)の後の式で指定された数字は、化合物中に含まれる助触媒元素の重量パーセントを示す。
【0111】
化合物は、文献、例えばWang et al., Ind. Eng. Chem. Res., 2009, 48, 10788 - 10795に記載されている方法を用いて合成した。
【0112】
まず、アンモニウム塩を550℃で5時間焼成してH型形態に転化した。H-ZSM5(30)の初期湿潤点(IW)を測定したところ、水を用いて0.852g/gであった。
【0113】
B1/ZSM5-30の合成
ホウ酸(0.29g)を4mLの脱イオン水(IW量)に溶解し、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。この溶液をH-ZSM5(30)に攪拌しながら滴下添加し、溶液を完全に添加した後、材料はIW点になり、材料を室温で1時間放置し、次に、材料を空気中で120℃にて一晩乾燥させ、続いて、550℃で4時間焼成した。
【0114】
P1/ZSM5-30の合成
第二リン酸アンモニウム(0.206g)を4mLの脱イオン水(初期湿潤、IW量)に溶解し、H-ZSM5(30)に攪拌しながら液体がすべて吸着してペーストが得られるまでゆっくりと添加した。この材料を室温で1時間放置し、次に、空気中で120℃にて一晩乾燥させ、続いて550℃で4時間焼成した。
【0115】
修飾ゼオライトの触媒活性試験
ホウ素及びリン修飾ZSM5-30触媒の触媒活性を試験した。助触媒不含ZSM5-30の触媒活性を、助触媒不含ZSM5-80(Si/Al比=80)触媒の触媒活性とともに試験した。
【0116】
150mgの各触媒を150mgの炭化ケイ素と混合した後、反応容器管に充填した。
【0117】
反応容器管に充填した後、試験管を空気気流下で475℃まで加熱し、3時間保持した。反応圧力を5barに設定してアルゴンでパージしながら試験管を400℃まで冷却した。次に、エタノールを各反応容器に2.0μL/分の速度で、温度400℃にて導入した。内部標準としてアルゴンを反応容器管当たり0.625ml/分の速度で導入し、希釈ガスとして窒素を反応容器管当たり37.5ml/分の速度で各反応容器の各触媒床に導入した。実験持続時間中、これらの反応条件を維持した。窒素希釈ガスの目的は、単に以後のガスクロマトグラフィー分析のための空間速度を上げることである。
【0118】
ホウ素及びリン助触媒含有触媒の実験の結果を
図19及び20に示す。
図21は、助触媒不含ZSM5-30とB1/ZSM5-30及びP1/ZSM5-30の結果の比較を示す。
図21では、助触媒含有触媒B1/ZSM5-30及びP1/ZSM5-30の両方が、助触媒不含ZSM5-30よりも高いC3及びC4炭化水素に対する選択性を有することがわかる。さらに、両方の助触媒含有触媒は、対応する助触媒不含の触媒よりも長い触媒寿命を有していた。リン助触媒含有触媒の初期選択性はホウ素助触媒含有触媒よりも高かったが、ホウ素助触媒含有触媒の寿命延長はより大きかった。触媒の寿命延長は、ゼオライト化学において非常に重要であり、プロセスの効率を著しく向上させる。
図22及び23は、助触媒不含HZSM5-30及びHZSM5-80の結果を示す。HZSM5-80触媒は、向上したC3/C4炭化水素選択性及びより長い触媒寿命を有する(C3/C4選択性の低下及びC2炭化水素生成量の増加によって示される)。
図24は、P1/ZSM5-30触媒についてのオンラインでの3時間後の生成物のガスクロマトグラフィースペクトルである。C3及びC4炭化水素化合物が、プロパン、ブタン、及びイソブテンに対応する大きなピークを伴って生成物のスペクトルを支配していることがわかる。
【0119】
アンモニア昇温脱離スペクトル
ゼオライトへの助触媒元素の導入がゼオライトの酸性特性にどのように影響するかを決定するために、アンモニア昇温脱離(NH3-TPD)実験をゼオライトに関して実施した。
【0120】
実験プロトコル
時間又は試料温度の関数としてガス状生成物の分析及びモニタリングを可能にするPfeiffer社製ThermoStar四重極質量分析計に連結されたTCD検出器を備えた、Micromeritics社製 2920内で、NH3-TPD実験を実施した。
【0121】
約80mgの試料をU字型試験管に装填し、測定器に取り付けた。試料をアルゴン流下で、120℃で30分、500℃にて20分の2ステップで乾燥させた。次に、試料を100℃まで冷却し、この温度で1時間5%のNH3/Heを流すことによりNH3で飽和させ、続いて、1時間持続する排気ステップを実施した。次に、試料を500℃まで加熱してNH3を脱離させ、TCDとMSの両方で脱離ステップ中に流出ガスをモニタする。
【0122】
H2O+、OH+、NH3+及びN+イオンプロファイルをモニタするために、イオンm/z18、17及び14を追跡した。
【0123】
表4のデータは、ゼオライトの総アンモニア脱離値を示す。総アンモニア脱離値が低いほど、ゼオライトの酸部位密度が低い。酸部位密度は、ゼオライトの総酸度と相関している(ただし、それが唯一の決定因子であるわけではない)。ホウ素及びリン助触媒含有ゼオライトの両方は、助触媒不含ゼオライト触媒と比較して、低下した酸部位密度を示したことがわかる。この低下した酸部位密度は、総アンモニア脱離のより低い値によって示される。ゼオライトのTPDスペクトルの分析はまた、助触媒含有ゼオライトでは、酸部位分布がシフトしており、助触媒含有ゼオライトは、対応する不含助触媒ゼオライト材料よりも、強酸部位に対する弱酸部位の比率が高いことも示した。この発見は、低下した酸部位密度と組み合わせて、助触媒含有ゼオライト材料は、対応する助触媒不含ゼオライト材料と比較して、低下した酸度を有していることを結論付けるものである。
【0124】
【0125】
本発明の発明者らは、C3及びC4炭化水素に対する助触媒含有触媒の選択性の増加は、ベースラインの対応する助触媒不含触媒材料と比較して、助触媒含有ゼオライト触媒の低下した酸度に少なくとも部分的に起因すると考えている。このことをさらに詳しく調べるために、触媒の多孔性及び細孔構造の分析を行い、以下でさらに詳しく説明する。
【0126】
多孔性測定
すべてのゼオライト触媒試料の多孔性をMicromeritics社製Gemini VI測定器で測定した。表面積は、ブルナウアー-エメット-テラー(BET、Brunauer, Emmett and Teller)転化を用いて計算した。細孔容量及び面積分布は、バレット-ジョイナー-ハレンダ(BJH、Barret, Joyner and Helnda)法を用いて計算した。測定結果を以下の表5に示す。すべての試料が、IV型挙動を確認するヒステリシスループを伴うZSM5ゼオライトに典型的な非常に類似した等温線を示す。収集されたデータから、多くの特徴を観察することができる。ZSM5(80)はZSM5(30)よりも表面積が大きく、このことは製造者のデータと一致しており、NH4-ZSM5(30)を焼成してアンモニウム対アニオンを除去すると、予想通り表面積が増加する。
【0127】
【0128】
ゼオライトに修飾剤を添加した結果、表面積及び細孔容量がわずかに低下したが、大きな変化はなく、反応条件又はアンモニウムのイオン交換による細孔の閉塞又は材料の大きな構造変化はないことを示している。このことは、すべての試料で等温線の性質が一貫していることからも確認され、修飾の際にも同じ基礎構造を示している。
【0129】
理論に限定されるものではないが、促進時のゼオライト触媒の細孔構造に大きな変化がないことから、触媒性能の変化は、触媒の表面特性又は構造特性とは対照的に、主に触媒の酸強度の低下によるものである可能性が高い。
【0130】
ゼオライト触媒の酸度を低下させる効果をさらに調べるために、助触媒含有ゼオライト触媒Zr1 ZSM5-30及びV ZSM5-30を合成した(ZSM5をそれぞれ1重量%のジルコニウム及びバナジウムで促進した)。これらの触媒の総脱離量(m/z17標準面積(x10-10)は、それぞれ4.72及び5.69であった。したがって、これらの触媒は、表4に示したように、総脱離量が4.64であった対応する助触媒不含ゼオライト触媒よりも高い酸部位密度を有していた。これらの触媒は、
図25及び26と
図22、23及び24との比較からわかるように、ホウ素及びリン助触媒含有触媒に伴うC3/C4炭化水素選択性の改善又は触媒寿命の改善は見られなかった。
[実施例4]
【0131】
水蒸気が中に存在しているエタノール供給流を使用した場合のプロセスへの影響を調査するために、実施例4を実施した。使用した供給流は、約12%の水及び約88%のエタノールを含んでいた。
【0132】
表6に示す触媒を試験した。
【0133】
【0134】
反応条件
各触媒を別個の反応容器に入れた。各反応容器に触媒を充填した後、反応容器を空気流下で475℃まで加熱し、3時間保持した。反応圧力を5barに設定してアルゴンでパージしながら反応容器を400℃まで冷却した。エタノール/水混合液(約88:12)(2.0μL/分/反応容器)を400℃で導入し、内部標準としてアルゴン(~8ml/分)を使用した。
【0135】
これらの実験結果を
図27~30に示す。これらのグラフに示した矢印は、無水エタノールを使用した場合に触媒が失活し始める後の期間を示している。グラフからわかるように、供給流に12%の水が含まれる場合、いずれの触媒も試験期間中に失活せず、触媒寿命は供給流に無水エタノールを使用した場合をはるかに上回っている。9日間のオンライン運転後にプロセスを停止したところ、どの触媒も失活を示さなかった。リン助触媒含有触媒は、対応する助触媒不含ゼオライト材料と比較して、顕著に向上したC3及びC3/C4選択性を示した。
[実施例5]
【0136】
異なるレベルの助触媒元素をゼオライトに含めた場合の影響を調べるために、さらなる研究を行った。
【0137】
以下の触媒を試験用に合成した:B1/ZSM5-30;B3/ZSM5-30;B1/ZSM5-80;B3/ZSM5-80;P1/ZSM5-30;P3/ZSM5-30;P1/ZSM5-80;並びにP3/ZSM5-80;P1/ZSM5-200;P2/ZSM5-30;P2/ZSM5-80;B1/ZSM5-200及びP1/ZSM5-200。
【0138】
ZSM5-30、ZSM5-80、及びZSM5-200のSi/Al比はそれぞれ30、80、及び200である。
【0139】
助触媒元素の後の式において指定された数字は、ゼオライト材料中の助触媒元素の重量パーセントに対応する。
【0140】
ゼオライトの合成
ZSM5ゼオライトはAlfa Aesar社から入手した。
【0141】
化合物は、文献、例えばWang et al., Ind. Eng. Chem. Res., 2009, 48, 10788 - 10795に記載されている方法を用いて合成した。
【0142】
以下の手順で使用したゼオライトは、アンモニウム型ではなくプロトン型、すなわちNH4-ZSM-5ではなくH-ZSM-5であった。H-ZSM-5材料は、親NH4-ZSM-5ゼオライトを550℃で5時間空気焼成することによって調製した。初期湿潤含浸を効果的に実施するために、材料の初期湿潤点(IW、incipient wetness point)を測定した。
【0143】
ホウ素助触媒含有ゼオライト
ホウ素による修飾は、5.7g/100mLという限定的な溶解度を有するホウ酸を使用して実施した。このため、3%のBを、1回の含浸ではなく、複数回の含浸により調製することが必要となった。
【0144】
B1/ZSM5-30
H-ZSM5(30) 5g
H3BO3 290mg
【0145】
ホウ酸(0.29g)を4mLの脱イオン水(IW量)に溶解し、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。この溶液をH-ZSM5(30)に攪拌しながら滴下添加し、溶液を完全に添加した後、材料はIW点になり、材料を室温で1時間放置し、次に、材料を空気中で120℃にて一晩乾燥させ、続いて、550℃で4時間焼成した。
【0146】
B3/ZSM5-30
B1/ZSM5-30 2.5g
H3BO3 145mg
【0147】
ホウ酸(0.145g)を2mLの脱イオン水(IW量)に溶解し、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。これを1%のホウ素助触媒入り触媒に滴下添加し、手動で混合した後、ヒュームカップボードで乾燥させ、空気中120℃で一晩乾燥させ、続いて550℃で4時間焼成した。次に、この焼成物を、ホウ素添加乾燥及び焼成の同じ手順に供し、H-ZSM-5(30)上に3%のホウ素を生成した。
【0148】
B1/ZSM5-80
H-ZSM5(80) 5g
H3BO3 290mg
【0149】
ホウ酸(0.29g)を4mLの脱イオン水(IW量)に溶解し、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。この溶液をH-ZSM5(80)に攪拌しながら滴下添加し、溶液を完全に添加した後、材料はIW点になり、材料を室温で1時間放置し、次に、材料を空気中で120℃にて一晩乾燥させ、続いて、550℃で4時間焼成した。
【0150】
B3/ZSM5-80
B1/ZSM5-30 2.5g
H3BO3 145mg
【0151】
ホウ酸(0.145g)を2mLの脱イオン水(IW量)に溶解し、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。これを1重量%のホウ素助触媒含有触媒に滴下添加し、手動で混合した後、ヒュームカップボードで乾燥させ、空気中120℃で一晩乾燥させ、続いて550℃で4時間焼成した。次に、この焼成物を、ホウ素添加乾燥及び焼成の同じ手順に供し、H-ZSM-5(80)上に3%のホウ素を生成した。
【0152】
B1/ZSM5-200
ZSM5-200の細孔容量は限定的であり、ホウ酸の溶解度が低いため、ZSM5-200上の1重量%のホウ素を二重含浸によって達成した。
【0153】
ZSM5-200 2.5g
H3BO3 73mg
【0154】
ホウ酸(0.073g)を1mLの脱イオン水(IW量)に溶解し、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。この溶液をZSM5-200に攪拌しながら滴下添加し、溶液を完全に添加した後、材料はIW点になり、材料を室温で1時間放置し、次に、材料を空気中で120℃にて一晩乾燥させ、続いて、550℃で4時間焼成した。次に、この焼成物を、ホウ素添加乾燥及び焼成の同じ手順に供し、ZSM5-200上に1%のホウ素を生成した。
【0155】
リン助触媒入りゼオライト
リン酸二水素アンモニウムを使用して本節のゼオライトを修飾し、この材料の溶解度は25℃で40g/Lであるため、1回の含浸で3重量%の材料が生成した。
【0156】
P1/ZSM5-30
H-ZSM5-30 5g
(NH4)H2PO4 179mg
【0157】
リン酸二水素アンモニウム(0.179g)を3mLの脱イオン水に溶解し(IW量)、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。この溶液をZSM5-30に攪拌しながら滴下添加し、溶液を完全に添加した後、材料はIW点になり、材料を室温で1時間放置し、次に、材料を空気中で120℃にて一晩乾燥させ、続いて、550℃で4時間焼成した。
【0158】
P3/ZSM5-30
H-ZSM5-30 5g
(NH4)H2PO4 555mg
【0159】
リン酸二水素アンモニウム(0.555g)を3mLの脱イオン水に溶解し(IW量)、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。この溶液をZSM5-30に攪拌しながら滴下添加し、溶液を完全に添加した後、材料はIW点になり、材料を室温で1時間放置し、次に、材料を空気中で120℃にて一晩乾燥させ、続いて、550℃で4時間焼成した。
【0160】
P1/ZSM5-80
H-ZSM5-80 5g
(NH4)H2PO4 179mg
【0161】
リン酸二水素アンモニウム(0.179g)を3mLの脱イオン水に溶解し(IW量)、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。この溶液をZSM5-80に攪拌しながら滴下添加し、溶液を完全に添加した後、材料はIW点になり、材料を室温で1時間放置し、次に、材料を空気中で120℃にて一晩乾燥させ、続いて、550℃で4時間焼成した。
【0162】
P3/ZSM5-80
H-ZSM5-80 5g
(NH4)H2PO4 555mg
【0163】
リン酸二水素アンモニウム(0.555g)を3mLの脱イオン水に溶解し(IW量)、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。この溶液をZSM5-80に攪拌しながら滴下添加し、溶液を完全に添加した後、材料はIW点になり、材料を室温で1時間放置し、次に、材料を空気中で120℃にて一晩乾燥させ、続いて、550℃で4時間焼成した。
【0164】
P1/ZSM5-200
H-ZSM5-200 5g
(NH4)H2PO4 179mg
【0165】
リン酸二水素アンモニウム(0.179g)を2mLの脱イオン水に溶解し(IW量)、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。この溶液をZSM5-200に攪拌しながら滴下添加し、溶液を完全に添加した後、材料はIW点になり、材料を室温で1時間放置し、次に、材料を空気中で120℃にて一晩乾燥させ、続いて、550℃で4時間焼成した。
【0166】
この研究における以下の2つの材料をリン酸(85%)から調製し、2重量%のPを得るのに必要な量を酸の特性から計算した。
【0167】
P2/ZSM5-30
H-ZSM5-30 5g
H3PO4(85%) 0.223mL
【0168】
リン酸(0.223mL)を3mLの脱イオン水(IW量)に溶解し、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。この溶液をZSM5-30に攪拌しながら滴下添加し、溶液を完全に添加した後、材料はIW点になり、材料を室温で1時間放置し、次に、材料を空気中で120℃にて一晩乾燥させ、続いて、550℃で4時間焼成した。
【0169】
P2/ZSM5-80
H-ZSM5-30 5g
H3PO4(85%) 0.223mL
【0170】
リン酸(0.223mL)を3mLの脱イオン水(IW量)に溶解し、25℃に加温して完全な溶解を確実にした。この溶液をZSM5-30に攪拌しながら滴下添加し、溶液を完全に添加した後、材料はIW点になり、材料を室温で1時間放置し、次に、材料を空気中で120℃にて一晩乾燥させ、続いて、550℃で4時間焼成した。
【0171】
触媒試験実験
特定の触媒を別個の反応容器に充填して試験した。各反応容器は150mgの触媒及び150mgの炭化ケイ素を含んでいた。
【0172】
反応条件
反応容器管に充填した後、その管を空気気流下で475℃まで加熱し、3時間保持した。反応圧力を5barに設定してアルゴンでパージしながらその管を400℃まで冷却した。次に、エタノールを各反応容器に2.0μL/分の速度で、温度400℃にて導入した。内部標準としてアルゴンを反応容器管当たり1ml/分の速度で導入し、希釈ガスとして窒素を反応容器管当たり37.5ml/分の速度で各反応容器の各触媒床に導入した。実験持続時間中、これらの反応条件を維持した。窒素希釈ガスの目的は、単に以後のガスクロマトグラフィー分析のための空間速度を上げることである。
【0173】
ホウ素助触媒含有ゼオライトの結果を
図31に示す。すべてのホウ素助触媒含有触媒がC3/C4炭化水素に対して良好な初期選択性を示したことがわかる。すべてのホウ素助触媒含有触媒は、触媒B1ーZSM5-200を除いて、対応する助触媒不含ベースライン触媒ZSM5-30と比較して延長された触媒寿命を示した。すべてのホウ素助触媒含有触媒は、B1ZSM5-200を除いて、助触媒不含ZSM5-30触媒と同程度のC3/C4炭化水素の初期選択性を示した。
【0174】
図32~35にリン助触媒含有触媒の結果を示す。これらのリン助触媒含有触媒のすべては、助触媒不含ゼオライトZSM5-30よりも高い初期C3/C4選択性を有していた。リン助触媒含有触媒のすべては、助触媒不含ゼオライトZSM5-30と比較してより長い触媒寿命を示した。触媒寿命が最も長かった触媒は、P3ZSM5-30及びP1ZSM5-80であった。特に、P1ZSM5-80は、オンラインでの7日後に失活の兆候を示さなかった。
[実施例6]
【0175】
実施例5で合成した触媒P1ZSM5-30、P1ZSM5-80及びB1ZSM5-80、並びにZSM5-30について、実施例5で規定したのと同じ反応条件を用いて、さらなる試験を実施した。これらの試験結果を
図36及び37に示す。
【0176】
助触媒含有ZSM5-80触媒は両方とも、助触媒不含ZSM5-30に対して同様の初期C3/C4及びC3選択率を有することがわかる。しかし、P1ZSM5-30は、他のすべての触媒よりも高い初期C3/C4及びC3選択率を有していた。しかし、P1ZSM5-30触媒はすべての触媒の中で最も急速に失活した。
[実施例6]
【0177】
供給流がエタノールと水の両方を含む本発明の方法において、助触媒含有ゼオライト触媒を使用することを調べるために、さらなる実験を行った。以下の表7に示す触媒を、純粋な無水エタノール供給流と、85%のエタノールと15%の水を含む供給流の両方で試験した。
【0178】
【0179】
反応条件
各触媒を別個の反応容器管に入れた。反応容器管に充填した後、その管を空気気流下で475℃まで加熱し、3時間保持した。反応圧力を5barに設定してアルゴンでパージしながらその管を400℃まで冷却した。次に、エタノール(又はエタノール/水混合物)を、400℃の温度にて2.0μL/分の速度で各反応容器に導入した。アルゴンを内部標準として反応容器管当たり1ml/分の速度で導入し、窒素を希釈ガスとして各反応容器管内の各触媒床に37.5ml/分の速度で導入した。窒素希釈ガスの目的は、単に以後のガスクロマトグラフィー分析のための空間速度を上げることである。実験持続時間中、これらの反応条件を維持した。
【0180】
実験結果を
図38~41に示す。これらの図は、無水エタノール供給流を使用した場合、及びエタノールと水の85:15混合物を使用した場合における、試験した触媒のそれぞれのC3/C4選択率及びC3選択率を示す。
【0181】
純粋な無水エタノール実験では、B1/ZSM5-30及びP1/ZSM5-30を除き、すべての助触媒含有触媒は、ベースラインの助触媒不含ZSM5-30触媒よりも向上した触媒寿命を示した。しかし、これらの触媒は、ベースラインの助触媒不含ZSM5-30触媒と比較して、向上した初期選択率を示した。P1ZSM5-80は非常に良好な触媒安定性を示し、失活は16日後に始まっただけであった。B1ZSM5-80、B3ZSM5-80、及びP3-ZSM5-30もすべて、ベースラインのゼオライトよりも寿命が大幅に向上した。
【0182】
エタノール水溶液実験では、P1-ZSM5-30を除き、すべての助触媒含有触媒は、助触媒不含ベースラインZSM5-30触媒よりも向上した触媒寿命を示した。ただし、P1-ZSM5-30触媒は、助触媒不含ベースラインZSM5-30触媒よりも向上した初期選択率を示した。純粋な無水エタノールの代わりに水性エタノールを使用した場合、ゼオライト触媒のすべては、向上した触媒寿命を示した。突出した2種類のゼオライト触媒は、顕著な触媒安定性及び寿命を示したP1ZSM5-80と、優れたC3選択性を示したP1ZSM5-30であった。
[実施例7]
【0183】
異なるアルコールを供給流に使用して、触媒の触媒活性を調べることにした。純粋なイソプロパノール(IPA、iso-propanol)供給流、及びエタノールとイソプロパノールの混合物を使用して試験を行った。表7に示したのと同じ触媒を使用し、実施例6に示したのと同じ反応条件で試験を行った。
【0184】
IPAとエタノールの1:1混合物の結果
P3ZSM5-30及びB1ZSM5-30の結果をそれぞれ
図42及び43に示す。他のゼオライトの結果(図示せず)もほぼ同じであった。どちらのゼオライトもC3及びC4炭化水素選択性を示したことがわかる。リン助触媒含有触媒は試験期間中に失活しなかったが、ホウ素助触媒含有触媒は約10日後に失活し始めた。全体として、LPG形成のためのエタノール/IPAの使用は、純粋なエタノールを使用した場合と少なくとも同等の結果を示し、したがって、IPA/エタノール混合物が実行可能な代替バイオ供給原料であることを示した。
【0185】
純粋なIPAの結果
P1ZSM5-30及びP1ZSM5-80の結果をそれぞれ
図44及び
図45に示す。他のゼオライトの結果(図示せず)もほぼ同じであった。IPAを使用した場合の全体的なC3C4選択率(~約50~57%)は、対応するエタノール/IPA(~約35~43%)及び純粋なエタノール(35~43%)の反応よりも高かった。これは、C3供給原料はより重質な炭化水素及び芳香族に転化しにくく、プロパン及びイソブタンに転化する供給原料の割合が多いためであると仮定される。12日間の試験期間中、いずれの触媒にも失活の兆候は全く見られなかった。P1ZSM5-80触媒がオンライン時間にわたり最も優れたプロパン選択性を示した。結論として、実験は、純粋なIPAをLPG形成のための転化供給原料として使用できることを示した。
[実施例8]
【0186】
以下の実験プロトコルを使用して、アンモニア昇温脱離(NH3-TPD)を使用して、各種助触媒含有ゼオライト触媒材料の特性決定を行った。
【0187】
実験プロトコル
TCD検出器を装備し、時間又は試料温度の関数としてガス状生成物の分析及びモニタリングを可能にするBalzers社製Thermostar四重極質量分析計に連結された、Micromeritics社製 2920内で、アンモニア昇温脱離(NH3-TPD)実験を実施した。約80mgの試料をU字管に装填し、計器に取り付けた。次に、試料をアルゴン気流下で、120℃で30分、500℃で20分の2ステップで乾燥させた。次に、試料を100℃まで冷却し、この温度で1時間5%のNH3/Heを流すことによりNH3で飽和させ、続いて、1時間の排気ステップを実施した。次に、試料を500℃まで加熱してNH3を脱離させ、TCDとMSの両方で脱離ステップ中に流出ガスをモニタする。NH3
+イオンのプロファイルをモニタするために、カチオンm/z17を検出した。
【0188】
結果
図46は、助触媒不含ゼオライトH-ZSM5-30のNH3-TPDプロファイルを、合成した各種助触媒含有H-ZSM5-30材料のものと対比して示している。
図47は、助触媒不含ゼオライトH-ZSM5-80のNH3-TPDプロファイルを、合成した各種助触媒含有H-ZSM5-80材料のものと対比して示している。
【0189】
助触媒元素の添加がゼオライトのTPDスペクトルに影響を及ぼすことがわかる。リン及びホウ素助触媒含有ゼオライトについては、対応する助触媒不含ゼオライト触媒と比較して、低温のピークが増大し、高温のピークが減少していることがわかる。これは触媒の酸部位分布の変化を示している。具体的には、対応する助触媒不含ゼオライト材料と比較して、弱酸部位の数が増加し、強酸部位の数が減少していることを示している。
【0190】
以下の表8のデータは、各種助触媒含有ゼオライトの総脱離量を示す。
【0191】
【0192】
表8のデータは、B1/ZSM5-30及びB3ZSM5-80を除く、すべてのホウ素及びリン助触媒含有ゼオライトは、対応するベースライン助触媒不含ゼオライト材料よりも低い酸部位密度を有することを示す。このことは、上述した酸部位分布の変化と組み合わせて、これらの助触媒含有ゼオライトはすべて、対応する助触媒不含ベースラインゼオライト材料と比較して、低下した総酸度を有することを意味する。助触媒含有ゼオライトB1/ZSM5-30及びB3ZSM5-80は、ベースライン助触媒不含ゼオライト材料と比較して、増加した酸部位密度を有していた。しかし、これらのゼオライトは、対応する助触媒不含ベースラインゼオライト材料と比較して、全体的な総酸度が依然として低かった。このことは、助触媒含有ゼオライトが、対応するベースライン助触媒不含ゼオライト材料よりも、多くの弱酸部位を有し、少ない強酸部位を有するという上述のシフトした酸部位分布に起因する。
【0193】
図48は、各種助触媒含有MCM22ゼオライトのTPDスペクトルを、ベースライン助触媒不含MCM22ゼオライトと比較して示している。すべての助触媒含有ゼオライトは、シフトした酸部位分布を有し、対応する助触媒不含ベースラインゼオライト材料と比較して、弱酸部位が多く、強酸部位が少ないことがわかる。総脱離量(m/z17標準面積(x10-10))は、助触媒不含MCM22では、2.15であったが、B1及びB3助触媒含有材料では、それぞれ2.20及び2.17であった。これは酸部位の総数の漸進的な増加である。ただし、弱酸性部位に有利に著しくシフトした酸部位分布は、ホウ素助触媒含有ゼオライトの全体的な酸度は低くなることを意味する。
[実施例9]
【0194】
種々の助触媒不含及び助触媒含有ゼオライト触媒の細孔率を調べた。すべての試料は、Micromeritics社製Gemini VI測定器で測定した。表面積は、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)転化を用いて計算した。細孔容量及び面積分布は、バレット-ジョイナー-ハレンダ(BJH)法を用いて計算した。測定値を
図49と50の表に示す。すべての試料が、IV型挙動を確認するヒステリシスループを伴うZSM5ゼオライトに典型的な非常に類似した等温線を示した。
図51~56は、ゼオライト材料の線形等温線を示す。
[実施例10]
【0195】
異なる反応条件下でのゼオライト触媒の性能を決定するために、さらなる実験を行った。試験した触媒は、ZSM5-80、P1ZSM5-30及びP1ZSM5-80であった。
【0196】
【0197】
図55及び
図56は、C3炭化水素並びにC3及びC4炭化水素の合計の収率に対する異なる温度の影響を示す。375℃、400℃、及び425℃の温度で試験を行った。
【0198】
図57及び58は、C3炭化水素並びにC3及びC4炭化水素の合計の収率に対する、異なる不活性ガス(アルゴン)流量の影響を示す。7ml/分/触媒グラム、15ml/分/触媒グラム及び30ml/分/触媒グラムの流量を試験した。これはそれぞれ、1.05ml/分/触媒150mg、2.25ml/分/触媒150mg、4.5ml/分/触媒150mgに相当する。
【0199】
図59及び60は、C3炭化水素並びにC3及びC4炭化水素の合計の収率に対する、異なるアルコール流量の影響を示す。触媒1g当たり10μl/分、触媒1g当たり20μl/分、触媒1g当たり40μl/分、及び触媒1g当たり60μl/分の流量を試験した。これはそれぞれ、触媒150mg当たり1.5μl/分、触媒150mg当たり3μl/分、触媒150mg当たり6μl/分、及び触媒150mg当たり9μl/分に相当する。
【0200】
図61及び62は、C3炭化水素並びにC3及びC4炭化水素の合計の収率に対する異なる圧力の影響を示す。1bar、5bar、及び10barの圧力を試験した。
【0201】
図55~62に示した実験結果は、異なる操作条件での3つの試験触媒の選択率の一般的な傾向が類似していることを実証している。以下の所見を示すことができる:
- 温度を上げると、C3及びC4炭化水素の合計についてより高い全収率が得られた。
- 触媒床上の不活性ガス流量が高いと、C3及びC4炭化水素の合計の収率も高くなった。不活性ガス流量が高くなると、副生成物として生成する芳香族の量も少なくなった。
- エタノール流量が低いと、C3炭化水素とC3及びC4炭化水素の合計の両方の収率が増加した。
- 反応圧力を高くすると、生成物流中のプロパン量が増加した。ただし、圧力が高くなると、芳香族形成も増加した。その結果、C3及びC4炭化水素の合計の収率は、やはり低い圧力で最も高くなった。
【国際調査報告】