(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】パーソナル音響システム及びその使用
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
H04R1/02 103D
H04R1/02 103E
H04R1/02 102B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561416
(86)(22)【出願日】2021-12-11
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2021137274
(87)【国際公開番号】W WO2022135191
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】202011569907.1
(32)【優先日】2020-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523237637
【氏名又は名称】深▲セン▼市瓏為科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN LONGWEI TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Qianming Wang 226A, Huitong Building, No. 10, Longgang Road, Pingnan Community, Longgang Street, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲シン▼洪
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017AE18
(57)【要約】
本発明はパーソナル音響システム及びその使用を開示し、その技術案の要点として、ハウジングを含み、前記ハウジング内にそれぞれ右前スピーカー、左前スピーカー及びコントローラーが設けられ、前記右前スピーカーに右後ダクトが設けられ、前記右後ダクトの一端の開口と前記右前スピーカーの一方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記右後ダクトの他端の開口は人の耳から離れ、前記右前スピーカーと前記左前スピーカーは対称に設置される。本発明のパーソナル音響システムは耳に接触する必要がなく、使用者の負担を増やさなく、使用が快適である。音質効果が良く、低音が豊富である。スピーカーにキャビティを追加する場合、共振周波数が上昇して低音が悪くなってしまう。しかし、スピーカーにダクトを追加する場合、共振周波数を低減することができ、低音がより豊富になる。プライバシーが良く、人の邪魔をしないだけではなく、コミュニケーションのプライバシーも強化される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(10)を含み、前記ハウジング(10)内にそれぞれ右前スピーカー(31)、左前スピーカー(32)及びコントローラー(50)が設けられ、前記右前スピーカー(31)に右後ダクト(41)が設けられ、前記右後ダクト(41)の一端の開口と前記右前スピーカー(31)の一方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記右後ダクト(41)の他端の開口が人の耳から離れ、前記左前スピーカー(32)に左後ダクト(42)が設けられ、前記左後ダクト(42)の一端の開口と前記左前スピーカー(32)の一方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記左後ダクト(42)の他端の開口が人の耳から離れることを特徴とするパーソナル音響システム。
【請求項2】
前記右前スピーカー(31)に右前ダクト(43)が設けられ、前記右前ダクト(43)の一端の開口と前記右前スピーカー(31)の他方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記右前ダクト(43)の他端の開口は使用者の耳に近接し、前記左前スピーカー(32)に左前ダクト(44)が設けられ、前記左前ダクト(44)の一端の開口と前記左前スピーカー(32)の一方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記左前ダクト(44)の他端の開口は使用者の耳に近接することを特徴とする請求項1に記載のパーソナル音響システム。
【請求項3】
前記右前スピーカー(31)と前記左前スピーカー(32)とは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記左前ダクト(44)と前記右前ダクト(43)とは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記右前ダクト(43)の耳道口からの距離aは30mm~200mmの間にあり、前記右後ダクト(41)の遠端から空気中に放射して人の耳までに伝達する距離はbであり、b/a>2であることを特徴とする請求項2に記載のパーソナル音響システム。
【請求項4】
b/a>8であり、前記右前ダクト(43)と前記右後ダクト(41)との断面積の誤差が10%を超えず、長さの誤差が10%を超えないことを特徴とする請求項3に記載のパーソナル音響システム。
【請求項5】
前記右前スピーカー(31)と前記左前スピーカー(32)とは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記右後ダクト(41)と前記左後ダクト(42)とは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記右前スピーカー(31)と前記左前スピーカー(32)の放射軸線はそれぞれ人の両耳を指し、2本軸線の夾角θが30°~170°の間にあり、前記右前スピーカー(31)の正面から放射される音波はそれぞれが指す耳まで伝達する距離aが30mm~200mmの間にあり、前記右後ダクト(41)の遠端から空気中に放射して人の耳まで伝達する距離はbであり、b/a>2であることを特徴とする請求項1に記載のパーソナル音響システム。
【請求項6】
b/a>8であることを特徴とする請求項5に記載のパーソナル音響システム。
【請求項7】
前記右前スピーカー(31)と前記左前スピーカー(32)とは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記ハウジング(10)内に右後スピーカー(33)と左後スピーカー(34)が対称に設置され、前記右前スピーカー(31)の後方に前記右後スピーカー(33)が逆向きに設けられ、前記左前スピーカー(32)の後方に前記左後スピーカー(34)が逆向きに設けられることを特徴とする請求項1に記載のパーソナル音響システム。
【請求項8】
前記パーソナル音響システムがシートのヘッドレスト内に取り付けられることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のパーソナル音響システムの使用。
【請求項9】
前記パーソナル音響システムがネックピロー内に取り付けられることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のパーソナル音響システムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音楽を再生するための音響機器分野に関し、特に自動車、飛行機、高速鉄道などの環境においてヘッドレスト又はネックピローとして使用できるパーソナル音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車音響のスピーカーの多くはドアパネルやセンターコンソールに取り付けられており、このような取り付け方には以下のような欠点がある。
【0003】
第一は、音場が中央に位置しないことである。シートが両側のドアパネルからの距離が異なるため、左右のスピーカーから発した音が人の耳に届く時間及び強度が異なり、よって、音場を中央に位置させることができない。
【0004】
第二は、音場のゾーンを分けることが難しいことである。社会の発展に伴い、車の中で好きな音楽を聴いたり、隣の人が音楽を聴いている間に邪魔されないようにしたり、自動車音響によって通信する場合に隣の人に遠端の通信先の話を聞いてほしくないという人が増えている。現在の自動車音響がこの要求を満足できない。
【0005】
第三は、コストが高いことである。現在の市場におけるハイエンドの自動車音響は、スピーカーの数が膨大であり、例えば、キャデラックCT6が既に34個に達し、次世代製品がさらに48個に達している。
【0006】
イヤホンは上記の大部分の不足を克服することができるが、人の頭に装着する必要があり、ある程度の不便をもたらし、しかもイヤホンは人の耳を遮って、隣の人とコミュニケーションするのに不便である。
【0007】
一部のシートにはスピーカーが取り付けられており、個人が楽しむための音楽を再生することができる。しかし、このような設計はサウンドボックスの設計構想を採用しており、シートに取り付けられるスピーカーとボックスの容積が小さいため、低音効果がとても悪く、高品質な音楽再生の要求には達していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は従来技術の不足を克服でき、シート上のヘッドレスト又は人の肩に付けられるネックピローに取り付けることができるパーソナル音響システムを提供することである。
【0009】
スピーカーの正面と背面から放射される音波の振幅が同じであり、位相が逆であるので、何の遮蔽もない場合、表裏から放射される音波が互いに相殺され、低音が非常に悪くなるというのは音響短絡である。音響短絡を阻止し、低音を改善するためには、スピーカーの正面と背面からの音波が同じ空間に放射されるのを防ぐ工夫が必要である。サウンドボックスのキャビティはスピーカーの背面の音波を1つの独立な空間内に限定するものであるが、この追加されたキャビティによって、スピーカーの最低共振周波数が高くなり、低音が悪くなってしまう。本発明は新しい設計構想を用いることによって音響短絡の影響を阻止するか又は弱める。
【0010】
音波は自由音場空間を伝播する距離が2倍になるごとに振幅が半分に減衰する(6dB)特性がある。そのため、スピーカーの位置と聴音位置が相対的に安定を保つことができれば、スピーカーの一方の面の音波を1本のダクトを通じて遠い距離まで送り、他方の面は耳の近くに置くことができる。このように、遠端の音波は自由音場空間で伝播して再び耳に戻るときに振幅が近端の音波より遥かに小さくなり、良好な低音効果を得ることができる。特に、自由音場空間における伝播距離の差が8倍以上である場合、相殺の幅は1dB未満であり、互いに相殺されていないと同等に考えることができる。そして、スピーカーにダクトを追加すると、スピーカーの最低共振周波数を下げ、低音を改善することができる。
【0011】
しかし、遠く(距離が500mmより大きい)の人にとって、スピーカーの正面と背面の音波の伝播距離はほぼ同じであり、依然に振幅が近く、位相が逆の状態にあり、互いに相殺することを実現でき、遠くの人が干渉されることをさらに弱めることができる。この方式によって、高品質でプライバシーな音声再生を実現することができる。
【0012】
この機器は使用者の耳を覆う必要がないため、使用者と他人とのコミュニケーション又は外の有用な音を聞くことを妨害しない。そして、シートに取り付けても肩に付けても、使用者の負担を大幅に軽減する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下の技術案により実現される。
【0014】
ハウジング10を含み、前記ハウジング10内にそれぞれ右前スピーカー31、左前スピーカー32及びコントローラー50が設けられ、前記右前スピーカー31に右後ダクト41が設けられ、前記右後ダクト41の一端の開口と前記右前スピーカー31の一方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記右後ダクト41の他端の開口が人の耳から離れ、前記左前スピーカー32に左後ダクト42が設けられ、前記左後ダクト42の一端の開口と前記左前スピーカー32の一方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記左後ダクト42の他端の開口が人の耳から離れることを特徴とするパーソナル音響システム。
【0015】
上記したパーソナル音響システムであって、前記右前スピーカー31に右前ダクト43が設けられ、前記右前ダクト43の一端の開口と前記右前スピーカー31の他方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記右前ダクト43の他端の開口が使用者の耳に近接して、前記左前スピーカー32に左前ダクト44が設けられ、前記左前ダクト44の一端の開口と前記左前スピーカー32の一方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記左前ダクト44の他端の開口が使用者の耳に近接することを特徴とする。
【0016】
上記したパーソナル音響システムであって、前記右前スピーカー31と前記左前スピーカー32とは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記左前ダクト44と前記右前ダクト43とは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記右前ダクト43の耳道口からの距離aが30mm~200mmの間にあり、前記右後ダクト41の遠端から空気中に放射されて人の耳までに伝達する距離がbであり、b/a>2であることを特徴とする。
【0017】
上記したパーソナル音響システムであって、b/a>8であり、前記右前ダクト43と前記右後ダクト41とは断面積の誤差が10%を超えず、長さの誤差も10%を超えないことを特徴とする。
【0018】
上記したパーソナル音響システムであって、前記右前スピーカー31と前記左前スピーカー32とは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記右後ダクト41と前記左後ダクト42とは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記右前スピーカー31と前記左前スピーカー32の放射軸線はそれぞれ人の両耳を指し、2本の軸線の夾角θは30°~170°の間にあり、前記右前スピーカー31の正面から放射される音波がそれぞれが指す耳までに伝達される距離aが30mm~200mmの間にあり、前記右後ダクト41の遠端から空気中に放射されて人の耳までに伝達される距離はbであり、b/a>2であることを特徴とする。
【0019】
上記したパーソナル音響システムであって、b/a>8であることを特徴とする。
【0020】
上記したパーソナル音響システムであって、前記右前スピーカー31と前記左前スピーカー32とは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記ハウジング10内には右後スピーカー33と左後スピーカー34が対称に設けられ、前記右前スピーカー31の後方に前記右後スピーカー33が逆向きに設けられ、前記左前スピーカー32の後方に前記左後スピーカー34が逆向きに設けられていることを特徴とする。
【0021】
上記したパーソナル音響システムの使用であって、前記パーソナル音響システムはシートのヘッドレスト内に取り付けられることを特徴とする。
【0022】
上記したパーソナル音響システムの使用であって、前記パーソナル音響システムはネックピロー内に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
従来技術と比べて、本発明は以下の利点がある。
【0024】
第一、本発明のパーソナル音響システムは耳に接触する必要がなく、使用者の負担を増加せず、使用が快適である。
【0025】
第二、本発明のパーソナル音響システムは音質効果がよく、低音が豊富である。スピーカーにキャビティを追加すると、共振周波数が上昇し、低音が悪くなる。しかし、スピーカーにダクトを追加すると、共振周波数を下げることができ、低音がより豊富になる。
【0026】
第三、本発明のパーソナル音響システムは左右対称性が良く、音場が自然である。
【0027】
第四、本発明のパーソナル音響システムはプライバシーが良く、他人の邪魔をしないだけでなく、コミュニケーションのプライバシーも強化される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の技術的特徴をさらに詳細に説明し、当業者が理解できるようにする。
【0030】
本出願はパーソナル音響システムを保護請求し、特にこの音響システムの機械構造を指す。このパーソナル音響システムはハウジング10を含み、前記ハウジング10内にそれぞて右前スピーカー31、左前スピーカー32及びコントローラー50が設けられ、コントローラー50がスピーカーをコントロールするためのものであり、右前スピーカー31と左前スピーカー32とは対称に設置される。前記パーソナル音響システムはシートのヘッドレスト内に取り付けられてもよく、ネックピロー内に取り付けられて肩に付けられてもよい。
【0031】
本出願は少なくとも以下の4つの実施例を含む。
【0032】
実施例1
【0033】
図1に示すように、ハウジング10、コントローラー50を含み、ハウジング10内に左前スピーカー32と右前スピーカー31がそれぞれ左右両耳に対応するように設けられるパーソナル音響システムである。説明を簡単にするために、右側の通路の設計のみを紹介し、左と右の設計方式は同じである。右前スピーカー31の一方の面には右前ダクト43が設けられ、右前ダクト43と右前スピーカー31とは密接に連結されて互いに密封される。右前ダクト43の他端は耳に近接し、耳道口からの距離aは30mm≦a≦200mmの条件を満たし、人の正常な使用に影響を与えない条件下で距離aが小さいほど音が良い。右前スピーカー31の他方の面と右後ダクト41とは密接に連結されて互いに密封され、右後ダクト41の他端は人の耳から離れ、人の耳までの音波の最短伝播距離はbであり、条件b/a>2を満たす。b/a>8である場合、人の耳に聞こえる音の効果は最良に近い。
【0034】
遠距離M点が使用者からの距離は通常500mmより大きいので、右前ダクト43と右後ダクト41の末端からM点までの距離差c/d<1。右前スピーカー31表裏から発せられる音波自体は振幅が同じであり、位相が逆であるため、M点に伝播したときに互いに相殺されることができて、M点にいる人が聞いた音を弱めることができる。最もよい消音効果を実現するために、その中の1つの比較的良い方式は右前ダクト43と右後ダクト41に近い断面積及び長さを持たせることであり、誤差は10%を超えない。
【0035】
右前ダクト43と右後ダクト41を近い寸法に設計できなければ、ダクト口の音波特性を測定することによって、調整することで正確な消音を実現することができる。右前ダクト43の設計が決まった後、右後ダクト41のダクト口の音波を測定する。右後ダクト41のダクト口の音波の振幅が右前ダクト43のダクト口の音波より大きいであれば、右後ダクト41の断面積を小さくするか又は右後ダクト41の長さを長くすることができる。逆の場合、右後ダクト41の断面積を大きくするか又はその長さを短くし、2つのダクト口の音波の周波数応答曲線が1/3倍周波数間隔平滑化された後に差異が6dB以下になるまで調整する。
【0036】
実施例2
【0037】
上記実施例の右前ダクト43と右後ダクト41の寸法はいずれも要求に応じて個別に設けることができ、前ダクトがなくなるまで短縮された場合には、
図2の実施例となる。ハウジング10とコントローラー50、右前スピーカー31と左前スピーカー32を含む能動騒音低減機器である。使用者に対する影響を低減するために、右前スピーカー31と左前スピーカー32は人の耳の後ろ又は下に位置し、人の耳の耳道口からの距離はaであり且つ30mm≦a≦200mmである。この距離が30mm未満である場合、機器が人の耳に接触する可能性があり、不快感をもたらす。この距離が200mmより大きい場合、音場の安定性が悪く、効果はよくない。
【0038】
2つのスピーカーの放射軸線はいずれも人の耳を指し、よって、夾角θを形成し且つ30°<θ<170°である。右前スピーカー31と左前スピーカー32及び関連部品の設計は左右対称であるため、次に右通路の設計についてのみ説明する。右前スピーカー31と後ダクト41の一端とは連結して互いに密封され、右後ダクト41の他端の開口は人の耳から離れる。後ダクト41の遠端開口から人の耳までの音波の最短伝播距離がbであり、b/a>2の場合、良好な低音効果を得ることができ、b/a>8の場合、最良に近い効果を得ることができる。
【0039】
遠端M点にいる人にとって、右前スピーカー31がMからの距離cと後ダクト41の開口がM点からの距離dはほぼ同じであるため、右前スピーカー31の正面と背面から放射する音波はM点で依然に相殺の条件を満たす。最もよい消音効果を得るためには、右前スピーカー31と後ダクト41の開口の音波特性に応じて調整する必要がある。通常、右前スピーカー31から放射される音波は比較的大きく、右前スピーカー31の開口の放射面積を調整する必要がある。開口面積を小さくし、放射減衰を増やすことによって、右前スピーカー31から直接に放射される音波の感度を低減でき、周波数応答曲線が1/3倍周波数間隔平滑化された後に差が6dBを超えない最もよい相殺効果を達成できる。
【0040】
実施例3
【0041】
図3は
図2実施例の基に右後スピーカー33と左後スピーカー34を追加したものである。後スピーカーが発する音波は前スピーカーが外に放射される音波と同じであり、位相が逆である。
【0042】
右前スピーカー31と左前スピーカー32の背後にそれぞれ右後ダクト41と左後ダクト42が追加されたため、後ダクト(41と42)口の音波が右前スピーカー(31と32)から放射される音波より小さくなるので、後スピーカー(33と34)を追加設置する。右前スピーカー(31と32)から直接に放射される音波と後ダクト(41と42)口から放射される音波を測定することによって、差値を算出する。その後、コントローラー50が後スピーカー(33と34)の応答特性をコントロールすることによって、後スピーカー(33と34)で再生される音波をちょうど差値に等しくして、より良い消音効果を実現する。
【0043】
実施例4
【0044】
図4の実施例は
図3の実施例の基に後ダクト(41と42)を削減し、コストを削減した。前スピーカー(31と32)が周囲空間に放射した音波を後スピーカー(33と34)によって完全に相殺する。この設計は
図3の大部分の機能を実現できるが、低音効果が少し悪くなる。
【0045】
本発明の前記実施例は、本発明の好ましい実施形態についての説明に過ぎず、本発明の構想と範囲を限定するものではない。本発明の設計思想を逸脱しない前提において、当業者が本発明の技術案に対して行った様々な変形と改良は、すべて本発明の保護範囲に入るべきである。
【符号の説明】
【0046】
10 ハウジング、31 右前スピーカー、32 左前スピーカー、50 コントローラー、41 右後ダクト、43 右前ダクト、33 右後スピーカー、34 左後スピーカー、44 左前ダクト、42 左後ダクト
【0047】
発明の概要
技術的な問題
問題の解決策
発明の有益な効果
【手続補正書】
【提出日】2023-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音楽を再生するための音響機器分野に関し、特に自動車、飛行機、高速鉄道などの環境においてヘッドレスト又はネックピローとして使用できるパーソナル音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車音響のスピーカーの多くはドアパネルやセンターコンソールに取り付けられており、このような取り付け方には以下のような欠点がある。
【0003】
第一は、音場が中央に位置しないことである。シートが両側のドアパネルからの距離が異なるため、左右のスピーカーから発した音が人の耳に届く時間及び強度が異なり、よって、音場を中央に位置させることができない。
【0004】
第二は、音場のゾーンを分けることが難しいことである。社会の発展に伴い、車の中で好きな音楽を聴いたり、隣の人が音楽を聴いている間に邪魔されないようにしたり、自動車音響によって通信する場合に隣の人に遠端の通信先の話を聞いてほしくないという人が増えている。現在の自動車音響がこの要求を満足できない。
【0005】
第三は、コストが高いことである。現在の市場におけるハイエンドの自動車音響は、スピーカーの数が膨大であり、例えば、キャデラックCT6が既に34個に達し、次世代製品がさらに48個に達している。
【0006】
イヤホンは上記の大部分の不足を克服することができるが、人の頭に装着する必要があり、ある程度の不便をもたらし、しかもイヤホンは人の耳を遮って、隣の人とコミュニケーションするのに不便である。
【0007】
一部のシートにはスピーカーが取り付けられており、個人が楽しむための音楽を再生することができる。しかし、このような設計はサウンドボックスの設計構想を採用しており、シートに取り付けられるスピーカーとボックスの容積が小さいため、低音効果がとても悪く、高品質な音楽再生の要求には達していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は従来技術の不足を克服でき、シート上のヘッドレスト又は人の肩に付けられるネックピローに取り付けることができるパーソナル音響システムを提供することである。
【0009】
スピーカーの正面と背面から放射される音波の振幅が同じであり、位相が逆であるので、何の遮蔽もない場合、表裏から放射される音波が互いに相殺され、低音が非常に悪くなるというのは音響短絡である。音響短絡を阻止し、低音を改善するためには、スピーカーの正面と背面からの音波が同じ空間に放射されるのを防ぐ工夫が必要である。サウンドボックスのキャビティはスピーカーの背面の音波を1つの独立な空間内に限定するものであるが、この追加されたキャビティによって、スピーカーの最低共振周波数が高くなり、低音が悪くなってしまう。本発明は新しい設計構想を用いることによって音響短絡の影響を阻止するか又は弱める。
【0010】
音波は自由音場空間を伝播する距離が2倍になるごとに振幅が半分に減衰する(6dB)特性がある。そのため、スピーカーの位置と聴音位置が相対的に安定を保つことができれば、スピーカーの一方の面の音波を1本のダクトを通じて遠い距離まで送り、他方の面は耳の近くに置くことができる。このように、遠端の音波は自由音場空間で伝播して再び耳に戻るときに振幅が近端の音波より遥かに小さくなり、良好な低音効果を得ることができる。特に、自由音場空間における伝播距離の差が8倍以上である場合、相殺の幅は1dB未満であり、互いに相殺されていないと同等に考えることができる。そして、スピーカーにダクトを追加すると、スピーカーの最低共振周波数を下げ、低音を改善することができる。
【0011】
しかし、遠く(距離が500mmより大きい)の人にとって、スピーカーの正面と背面の音波の伝播距離はほぼ同じであり、依然に振幅が近く、位相が逆の状態にあり、互いに相殺することを実現でき、遠くの人が干渉されることをさらに弱めることができる。この方式によって、高品質でプライバシーな音声再生を実現することができる。
【0012】
この機器は使用者の耳を覆う必要がないため、使用者と他人とのコミュニケーション又は外の有用な音を聞くことを妨害しない。そして、シートに取り付けても肩に付けても、使用者の負担を大幅に軽減する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下の技術案により実現される。
【0014】
ハウジングを含み、前記ハウジング内にそれぞれ右前スピーカー、左前スピーカー及びコントローラーが設けられ、前記右前スピーカーに右後ダクトが設けられ、前記右後ダクトの一端の開口と前記右前スピーカーの一方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記右後ダクトの他端の開口が使用者の右耳から離れ、前記左前スピーカーに左後ダクトが設けられ、前記左後ダクトの一端の開口と前記左前スピーカーの一方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記左後ダクトの他端の開口が使用者の左耳から離れることを特徴とするパーソナル音響システム。
【0015】
上記したパーソナル音響システムであって、前記右前スピーカーに右前ダクトが設けられ、前記右前ダクトの一端の開口と前記右前スピーカーの他方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記右前ダクトの他端の開口が使用者の右耳に近接して、前記左前スピーカーに左前ダクトが設けられ、前記左前ダクトの一端の開口と前記左前スピーカーの一方の面とは密接に連結されて互いに密封され、前記左前ダクトの他端の開口が使用者の左耳に近接することを特徴とする。
【0016】
上記したパーソナル音響システムであって、前記右前スピーカーと前記左前スピーカーとは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記左前ダクトと前記右前ダクトとは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記右前ダクトの耳道口からの距離aが30mm~200mmの間にあり、前記右後ダクトの遠端から空気中に放射されて右耳までに伝達する距離がbであり、b/a>2であることを特徴とする。
【0017】
上記したパーソナル音響システムであって、b/a>8であり、前記右前ダクトと前記右後ダクトとは断面積の誤差が10%を超えず、長さの誤差も10%を超えないことを特徴とする。
【0018】
上記したパーソナル音響システムであって、前記右前スピーカーと前記左前スピーカーとは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記右後ダクトと前記左後ダクトとは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記右前スピーカーと前記左前スピーカーの放射軸線はそれぞれ人の両耳を指し、2本の軸線の夾角θは30°~170°の間にあり、前記右前スピーカーの正面から放射される音波がそれぞれが指す右耳までに伝達される距離aが30mm~200mmの間にあり、前記右後ダクトの遠端から空気中に放射されて右耳までに伝達される距離はbであり、b/a>2であることを特徴とする。
【0019】
上記したパーソナル音響システムであって、b/a>8であることを特徴とする。
【0020】
上記したパーソナル音響システムであって、前記右前スピーカーと前記左前スピーカーとは構造が同じであり且つ対称に設置され、前記ハウジング内には右後スピーカーと左後スピーカーが対称に設けられ、前記右前スピーカーの後方に前記右後スピーカーが逆向きに設けられ、前記左前スピーカーの後方に前記左後スピーカーが逆向きに設けられていることを特徴とする。
【0021】
上記したパーソナル音響システムの使用であって、前記パーソナル音響システムはシートのヘッドレスト内に取り付けられることを特徴とする。
【0022】
上記したパーソナル音響システムの使用であって、前記パーソナル音響システムはネックピロー内に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
従来技術と比べて、本発明は以下の利点がある。
【0024】
第一、本発明のパーソナル音響システムは耳に接触する必要がなく、使用者の負担を増加せず、使用が快適である。
【0025】
第二、本発明のパーソナル音響システムは音質効果がよく、低音が豊富である。スピーカーにキャビティを追加すると、共振周波数が上昇し、低音が悪くなる。しかし、スピーカーにダクトを追加すると、共振周波数を下げることができ、低音がより豊富になる。
【0026】
第三、本発明のパーソナル音響システムは左右対称性が良く、音場が自然である。
【0027】
第四、本発明のパーソナル音響システムはプライバシーが良く、他人の邪魔をしないだけでなく、コミュニケーションのプライバシーも強化される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の技術的特徴をさらに詳細に説明し、当業者が理解できるようにする。
【0030】
本出願はパーソナル音響システムを保護請求し、特にこの音響システムの機械構造を指す。このパーソナル音響システムはハウジング10を含み、前記ハウジング10内にそれぞて右前スピーカー31、左前スピーカー32及びコントローラー50が設けられ、コントローラー50がスピーカーをコントロールするためのものであり、右前スピーカー31と左前スピーカー32とは対称に設置される。前記パーソナル音響システムはシートのヘッドレスト内に取り付けられてもよく、ネックピロー内に取り付けられて肩に付けられてもよい。
【0031】
本出願は少なくとも以下の4つの実施例を含む。
【0032】
実施例1
【0033】
図1に示すように、ハウジング10、コントローラー50を含み、ハウジング10内に左前スピーカー32と右前スピーカー31がそれぞれ左右両耳に対応するように設けられるパーソナル音響システムである。説明を簡単にするために、右側の通路の設計のみを紹介し、左と右の設計方式は同じである。右前スピーカー31の一方の面には右前ダクト43が設けられ、右前ダクト43と右前スピーカー31とは密接に連結されて互いに密封される。右前ダクト43の他端は耳に近接し、耳道口からの距離aは30mm≦a≦200mmの条件を満たし、人の正常な使用に影響を与えない条件下で距離aが小さいほど音が良い。右前スピーカー31の他方の面と右後ダクト41とは密接に連結されて互いに密封され、右後ダクト41の他端は
右耳から離れ、
右耳までの音波の最短伝播距離はbであり、条件b/a>2を満たす。b/a>8である場合、
右耳に聞こえる音の効果は最良に近い。
【0034】
遠距離M点が使用者からの距離は通常500mmより大きいので、右前ダクト43と右後ダクト41の末端からM点までの距離差c/d<1。右前スピーカー31表裏から発せられる音波自体は振幅が同じであり、位相が逆であるため、M点に伝播したときに互いに相殺されることができて、M点にいる人が聞いた音を弱めることができる。最もよい消音効果を実現するために、その中の1つの比較的良い方式は右前ダクト43と右後ダクト41に近い断面積及び長さを持たせることであり、誤差は10%を超えない。
【0035】
右前ダクト43と右後ダクト41を近い寸法に設計できなければ、ダクト口の音波特性を測定することによって、調整することで正確な消音を実現することができる。右前ダクト43の設計が決まった後、右後ダクト41のダクト口の音波を測定する。右後ダクト41のダクト口の音波の振幅が右前ダクト43のダクト口の音波より大きいであれば、右後ダクト41の断面積を小さくするか又は右後ダクト41の長さを長くすることができる。逆の場合、右後ダクト41の断面積を大きくするか又はその長さを短くし、2つのダクト口の音波の周波数応答曲線が1/3倍周波数間隔平滑化された後に差異が6dB以下になるまで調整する。
【0036】
実施例2
【0037】
上記実施例の右前ダクト43と右後ダクト41の寸法はいずれも要求に応じて個別に設けることができ、前ダクトがなくなるまで短縮された場合には、
図2の実施例となる。ハウジング10とコントローラー50、右前スピーカー31と左前スピーカー32を含む能動騒音低減機器である。使用者に対する影響を低減するために、右前スピーカー31と左前スピーカー32は
右耳と左耳の後ろ又は下に位置し、人の耳の耳道口からの距離はaであり且つ30mm≦a≦200mmである。この距離が30mm未満である場合、機器が人の耳に接触する可能性があり、不快感をもたらす。この距離が200mmより大きい場合、音場の安定性が悪く、効果はよくない。
【0038】
2つのスピーカーの放射軸線はいずれも右耳と左耳を指し、よって、夾角θを形成し且つ30°<θ<170°である。右前スピーカー31と左前スピーカー32及び関連部品の設計は左右対称であるため、次に右通路の設計についてのみ説明する。右前スピーカー31と右後ダクト41の一端とは連結して互いに密封され、右後ダクト41の他端の開口は右耳から離れる。右後ダクト41の遠端開口から右耳までの音波の最短伝播距離がbであり、b/a>2の場合、良好な低音効果を得ることができ、b/a>8の場合、最良に近い効果を得ることができる。
【0039】
遠端M点にいる人にとって、右前スピーカー31がMからの距離cと右後ダクト41の開口がM点からの距離dはほぼ同じであるため、右前スピーカー31の正面と背面から放射する音波はM点で依然に相殺の条件を満たす。最もよい消音効果を得るためには、右前スピーカー31と右後ダクト41の開口の音波特性に応じて調整する必要がある。通常、右前スピーカー31から放射される音波は比較的大きく、右前スピーカー31の開口の放射面積を調整する必要がある。開口面積を小さくし、放射減衰を増やすことによって、右前スピーカー31から直接に放射される音波の感度を低減でき、周波数応答曲線が1/3倍周波数間隔平滑化された後に差が6dBを超えない最もよい相殺効果を達成できる。
【0040】
実施例3
【0041】
図3は
図2実施例の基に右後スピーカー33と左後スピーカー34を追加したものである。後スピーカーが発する音波は前スピーカーが外に放射される音波と同じであり、位相が逆である。
【0042】
右前スピーカー31と左前スピーカー32の背後にそれぞれ右後ダクト41と左後ダクト42が追加されたため、後ダクト(41と42)口の音波が前スピーカー(31と32)から放射される音波より小さくなるので、後スピーカー(33と34)を追加設置する。前スピーカー(31と32)から直接に放射される音波と後ダクト(41と42)口から放射される音波を測定することによって、差値を算出する。その後、コントローラー50が後スピーカー(33と34)の応答特性をコントロールすることによって、後スピーカー(33と34)で再生される音波をちょうど差値に等しくして、より良い消音効果を実現する。
【0043】
実施例4
【0044】
図4の実施例は
図3の実施例の基に後ダクト(41と42)を削減し、コストを削減した。前スピーカー(31と32)が周囲空間に放射した音波を後スピーカー(33と34)によって完全に相殺する。この設計は
図3の大部分の機能を実現できるが、低音効果が少し悪くなる。
【0045】
本発明の前記実施例は、本発明の好ましい実施形態についての説明に過ぎず、本発明の構想と範囲を限定するものではない。本発明の設計思想を逸脱しない前提において、当業者が本発明の技術案に対して行った様々な変形と改良は、すべて本発明の保護範囲に入るべきである。
【符号の説明】
【0046】
10 ハウジング、31 右前スピーカー、32 左前スピーカー、50 コントローラー、41 右後ダクト、43 右前ダクト、33 右後スピーカー、34 左後スピーカー、44 左前ダクト、42 左後ダクト
【国際調査報告】