(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/30 20060101AFI20231221BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231221BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20231221BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231221BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20231221BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C08F220/30
B32B27/30 A
B32B27/16 101
B05D7/24 302Z
B05D7/24 301T
B05D3/06 102B
H01L21/30 502D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506113
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 US2021061347
(87)【国際公開番号】W WO2022132431
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー, フェイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ウェイジュン
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J100
5F146
【Fターム(参考)】
4D075BB46Z
4D075BB50Z
4D075CA17
4D075DA06
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4J100FA03
4J100GA22
4J100JA37
4J100JA43
5F146AA33
(57)【要約】
光硬化性組成物は重合性材料および光開始剤を含むことができ、前記重合性材料は式(1)の10~40重量%の単官能―を含むことができ、R1はHまたはC
1-C
6アルキルであり、R2およびR3はC
1-C
10アルキルまたはアルキル-アリールの1つまたは複数の置換であり、R4、R5はHまたはC
1-C
10アルキルである。
【化31】
・・・(1)
前記光硬化性組成物は15mPa・s以下の粘度を有することができ、前記光硬化性組成物の光硬化層は、高温焼成処理を施した場合の熱収縮率が低く、少なくとも74%の炭素含有量を有することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光開始剤および重合性材料を含む光硬化性組成物であって、
【化21】
・・・(1)
前記重合性材料は、式(1)の構造を有する単官能アクリレートモノマーを含み、R1はHまたはC
1-C
6アルキルであり、R2およびR3はC
1-C
10アルキルまたはアルキル-アリールの1つ以上の置換であり、R4、R5はHまたはC
1-C
10アルキルであり、
式(1)のアクリレートモノマーの量は、前記重合性材料の総重量に対して、少なくとも10重量%、かつ40重量%以下であり、
前記光硬化性組成物の光硬化層の炭素含有量は、少なくとも74%である、
ことを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項2】
前記重合性材料は、少なくとも1種の多官能アクリレートモノマーをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載光硬化性組成物光硬化性組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、二官能アクリレートモノマー、三官能アクリレートモノマー、四官能アクリレートモノマー、またはそれらの任意の組合せを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、ビスフェノールAジメタクリレート(BPADMA)を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記多官能アクリレートモノマーの量は、前記重合性材料の総重量に対して、少なくとも10重量%であり、40重量%以下である、
ことを特徴とする請求項3に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
前記単官能アクリレートモノマーは式(2)の構造を有し、R1はHまたはCH
3である、
【化22】
・・・(2)
ことを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
前記単官能アクリレートモノマーの量は、前記重合性材料の総重量に対して、25重量%以下である、
ことを特徴とする請求項6に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
前記単官能アクリレートモノマーの量は、前記重合性材料の総重量に対して、15重量%以下で請求項6に記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
前記重合性材料は、式(1)の単官能アクリレートモノマーとは異なる少なくとも1種の単官能アクリレートモノマーをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項10】
前記光硬化性組成物は、前記組成物の光硬化層が7.5パーセント以下の熱収縮率を有するように適合され、前記熱収縮率は、250℃で2分間にわたって焼成処理される前後における前記光硬化層の厚さの差である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項11】
前記光硬化性組成物の粘度は、15mPa・s以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項12】
前記光硬化性組成物は、前記組成物の光硬化層が2.9以下の大西ナンバーを有するように適合されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項13】
基板と、前記基板の上に重なる光硬化層とを含む積層体であって、前記光硬化層が、請求項1に記載の光硬化性組成物から形成される、
ことを特徴とする積層体。
【請求項14】
前記光硬化層は、7.5%以下の熱収縮率を有し、前記熱収縮率は、250℃で2分間にわたって焼成処理される前後における前記光硬化層の厚みの差である、
ことを特徴とする請求項13に記載の積層体。
【請求項15】
前記光硬化層は、2.9以下の大西ナンバーを有する、
ことを特徴とする請求項13に記載の積層体。
【請求項16】
基板上に光硬化層を形成する方法であって、
前記基板上に光硬化性組成物の層を塗布する工程であって、前記光硬化性組成物が光開始剤および重合性材料を含み、前記重合性材料が式(1)の構造を有する10重量%~40重量%の単官能アクリレートモノマーを含み、R1がHまたはC
1-C
6アルキルであり、R2およびR3がC
1-C
10アルキルまたはアルキル-アリールの1つ以上の置換基であり、R4、R5がHまたはC
1-C
10アルキルである工程と、
【化23】
・・・(1)
前記光硬化性組成物をスーパーストレートに接させる工程と、
前記光硬化性組成物に光を照射して光硬化層を形成する工程と、
前記光硬化層から前記スーパーストレートを除去する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記光硬化層は、7.5%以下の熱収縮率を有し、前記熱収縮率は、250℃で2分間にわたって焼成処理される前後における前記光硬化層の厚さの差である、
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記光硬化性組成物は、15mPa・s以下の粘度を有する、
ことを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記光硬化性組成物は、前記重合性組成物の総重量に対して、10重量%~30重量%の量のビスフェノールAジメタクリレート(BPADMA)をさらに含む、
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
物品を形成する方法であって、
基板上に光硬化性組成物の層を塗布する工程であって、前記光硬化性組成物が光開始剤および重合性材料を含み、前記重合性材料が式(1)の構造を有する10重量%~40重量%の単官能アクリレートモノマーを含み、R1がHまたはC
1-C
6アルキルであり、R2およびR3がC
1-C
10アルキルまたはアルキル-アリールの1つ以上の置換であり、R4、R5がHまたはC
1-C
10アルキルである工程と、
【化24】
・・・(1)
前記光硬化性組成物をスーパーストレートと接触させる工程と、
前記光硬化性組成物に光を照射して光硬化層を形成する工程と、
前記スーパーストレートを前記光硬化層から除去する工程と、
前記基板上にパターンを形成する工程と、
前記形成する工程において前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
前記処理する工程で処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光硬化性組成物に関し、特に、後続の焼成処理中に低い熱収縮率を有する光硬化層を形成するように適合されたインクジェット適応平坦化のための光硬化性組成物に関する。
【発明の背景】
【0002】
インクジェット適応平坦化(Inkjet Adaptive Planarization: IAP)は、基板の表面上に光硬化性、組成物の液滴を噴射し、平坦なスーパーストレートを付加された液体と直接に接触させて平坦な液体層を形成することによって、基板、例えば電気回路を含むウエハの表面を平坦化するプロセスである。平らな液体層は、典型的にはUV光の曝露下で固化され、スーパーストレートの除去後、平らなポリマー表面が得られ、これは、後続の処理ステップ、例えば、焼成、エッチング、および/またはさらなる堆積ステップにかけることができる。
【0003】
形成された光硬化層の後続の焼成は、多くの場合、そのガラス転移温度より高い温度で行われる。焼成は、典型的にはポリマー層のより緻密な充填物の形成を引き起こし、これは、層の望ましくない収縮をもたらし、平坦化効率に対するさらなる課題となりうる。典型的には、焼成中の熱収縮が光硬化性組成物の光硬化中の収縮よりも大きい。
【0004】
後続の処理中に収縮率の低い平面光硬化層をもたらす改善されたIAP材料が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、光硬化性組成物は、光開始剤および重合性材料を含むことができ、前記重合性材料は、式(1)の構造を有する単官能アクリレートモノマーを含むことができ、R1はHまたはC1-C6アルキルであり、R2およびR3はC1-C10アルキルまたはアルキル-アリールの1つ以上の置換であり、R4、R5はHまたはC1-C10アルキルであり、
【0006】
【0007】
式(1)のアクリレートモノマーの量は、前記重合性材料の総重量に対して、少なくとも10重量%かつ30重量%以下であってよく、光硬化性組成物の光硬化層の炭素含有量は少なくとも74重量%であってよい。
【0008】
一態様では、前記重合性材料は、少なくとも1種の多官能アクリレートモノマーをさらに含むことができる。特定の態様では、前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、二官能アクリレートモノマー、三官能アクリレートモノマー、四官能アクリレートモノマー、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。ある特定の態様では、前記少なくとも1つの多官能アクリレートモノマーは、ビスフェノールAジメタクリレート(BPADMA)を含むことができる。
【0009】
前記光硬化性組成物の別の特定の態様では、前記多官能アクリレートモノマーの量が重合性材料の総重量に対して、少なくとも10重量%、かつ30重量%以下でありうる。
【0010】
前記光硬化性組成物の特定の実施形態では、前記単官能アクリレートモノマーは、式(2)の構造を有することができ、R1がHまたはCH3である。
【0011】
【0012】
一態様では、式(2)の前記単官能アクリレートモノマーの量は、前記重合性材料の総重量に対して、25重量%以下でありうる。
【0013】
別の態様では、式(2)の前記単官能アクリレートモノマーの量は、前記重合性材料の総重量に対して、15重量%以下でありうる。
【0014】
さらなる実施形態では、前記光硬化性組成物は、前記組成物の光硬化層が7.5パーセント以下の熱収縮率を有するように適合させることができる。前記熱収縮率は、250℃で2分間にわたって焼成処理に供される前後における光硬化層の厚さの差である。
【0015】
別の態様では、前記光硬化性組成物の粘度は、15mPa・s以下でありうる。
【0016】
さらに別の態様では、前記光硬化性組成物は、前記組成物の光硬化層が2.9以下の大西ナンバー数を有するように適合させることができる。
【0017】
一実施形態では、積層体は、基板と、前記基板の上に重なる光硬化層とを含むことができ、前記光硬化層が上述の光硬化性組成物から形成される。
【0018】
前記積層体の一態様では、前記光硬化層が7パーセント以下の熱収縮率を有することができる。前記熱収縮率は、250℃で2分間にわたって焼成処理される前後における前記光硬化層の厚さの差である。
【0019】
前記積層体の別の態様では、前記光硬化層が2.9を超える大西ナンバーを有することができる。
【0020】
さらなる実施形態では、基板上に光硬化層を形成する方法は、前記基板上に光硬化性組成物の層を塗布することを含むことができ、前記光硬化性組成物が光開始剤および重合性材料を含むことができる。前記重合性物質は、式(1)の構造を有する10重量%~30重量%の単官能アクリレートモノマーを含むことができ、R1はHまたはC1-C6アルキルであり、R2およびR3はC1-C10アルキルまたはアルキル-アリールの1つ以上の置換基であり、R4、R5はHまたはC1-C10アルキルである。
【0021】
【0022】
前記方法は、前記光硬化性組成物をスーパーストレートに接させる工程と、前記光硬化性組成物に光を照射して光硬化層を形成する工程と、前記硬化層から前記スーパーストレートを除去する工程とを含むことができる。
【0023】
前記本方法の一態様では、前記光硬化層は、7.5パーセント以下の熱収縮率を有することができる。前記熱収縮率は、250℃で2分間にわたって焼成処理される前後における前記光硬化層の厚さの差である。
【0024】
本発明の別の態様では、前記光硬化性組成物の粘度は、15mPa・s以下であってよい。
【0025】
本方法のある態様では、前記光硬化性組成物は、前記重合性組成物の総重量に対して、10重量%~30重量%の量のビスフェノールAジメタクリレート(BPADMA)をさらに含むことができる。
【0026】
別の実施形態では、物品を形成する方法は、基板上に光硬化性組成物の層を塗布する工程を含むことができる。前記光硬化性組成物は、光開始剤および重合性材料を含むことができる。前記重合性材料は、式(1)の構造を有する10重量%~30重量%の単官能アクリレートモノマーを含み、R1はHまたはC1-C6アルキルであり、R2およびR3はC1-C10アルキルまたはアルキル-アリールの1つまたは複数の置換であり、R4、R5はHまたはC1-C10アルキルである。
【0027】
【0028】
前記方法は、スーパーストレートと接触させる工程と、前記光硬化性組成物に光を照射して光硬化層を形成する工程と、前記スーパーストレートを前記光硬化層から除去する工程と、前記基板上にパターンを形成する工程と、前記形成する工程において前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、前記処理する工程で処理された前記基板から物品を製造する工程と、を含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の説明は、本明細書に開示される教示を理解するのを助けるために提供され、教示の特定の実装および実施形態に焦点を当てる。この焦点は、教示を説明するのを助けるために提供され、教示の範囲または適用性に対する限定として解釈されるべきではない。
【0030】
別途定義されない限り、本明細書に用いられるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の技術者により一般に理解されるのと同じ意味をもつ。材料、方法、および実施例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書に記載されていない範囲で、特定の材料および処理行為に関する多くの詳細は従来のものであり、インプリントおよびリソグラフィ技術内の教科書および他のソースに見出すことができる。
【0031】
本明細書において用いられるとき、「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」という用語またはそれらの任意の他の活用形は、非限定的な包含をカバーするものとする。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの特徴のみに限定されず、明示的に列挙されていないか、またはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の特徴を含みうる。
【0032】
本明細書で使用される場合、および、それに反することが明確に記載されていない限り、「または」は包含的離接を指し、排他的離接を指すものではない。たとえば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在する)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)Bが真である(または存在する)、ならびに、AおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つである。
【0033】
また、「a」または「an」の使用は、本明細書に記載の要素および構成要素を記載するために用いられる。これは、単に便宜上、本発明の範囲の一般的な意味を示すために用いられる。本明細書は1つまたは少なくとも1つを含めるように読まれるべきであり、複数でないことを意図することが明白でない限り、単数形は複数形も含める。
【0034】
本発明は、光開始剤および重合性物質を含む光硬化性組成物であって、重合性物質が式(1)の構造を有する単官能アクリレートモノマーを含むことができ、R1がHまたはC1-C6アルキルであり、R2およびR3がC1-C10アルキルまたはアルキル-アリールの1つ以上の置換基であり、R4、R5がHまたはC1-C10アルキルで光硬化性組成物に関する。
【0035】
【0036】
特定の態様において、単官能アクリレートモノマーは、式(2)の構造を有することができ、R1は、HまたはCH3である。
【0037】
【0038】
驚くべきことに、式(1)のモノマーと多官能アクリレートモノマーとの特定の組合せは、硬化後に低い熱収縮率を有する光硬化性組成物をもたらすことができることが観察された。一態様では、光硬化性組成物から形成された光硬化層の熱収縮率は、250℃で2分間にわたって焼成処理した場合、7.5%以下、例えば7.2%以下、7.0%以下、6.8%以下、6.5%以下、6.3%以下、または6.0でありうる。本明細書で使用するとき、熱収縮は、焼成処理における前後の光硬化層の高さの%差として計算される。
【0039】
一態様では、重合性材料の多官能アクリレートモノマーは、二官能アクリレートモノマー、三官能アクリレートモノマー、四官能アクリレートモノマー、又はこれらの任意の組合せでありうる。多官能アクリレートモノマーの限定的ではない例は、ビスフェノールAジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、またはそれらの任意の組合せでありうる。
【0040】
特定の態様において、多官能アクリレートモノマーは、二官能アクリレートモノマーでありうる。ある特定の態様では、二官能アクリレートモノマーは、式(3)に示される構造を有するビスフェノールAジメタクリレートでありうる。
【0041】
【0042】
一態様では、式(1)の単官能アクリレートモノマーの量は、重合性材料の総重量に対して、少なくとも10重量%、例えば、少なくとも15重量%、または少なくとも20重量%でありうる。別の特定の態様では、式(1)のモノマーの量は、重合性材料の総重量に対して、40重量%以下、または30重量%以下、または25重量%以下、または20重量%以下、または15重量%以下、または12重量%以下、または10重量%以下でありうる。式(1)のモノマーの量は、上記の最小数と最大数のいずれかの間の範囲内の数でありうる。
【0043】
別の態様では、多官能アクリレートモノマーの量は、重合性材料の総重量に対して、少なくとも10重量%、または少なくとも15重量%、または少なくとも20重量%、または少なくとも25重量%でありうる。別の態様では、多官能アクリレートモノマーの量は、重合性材料の総重量に対して、50重量%以下、例えば、40重量%以下、または30重量%以下、または25重量%以下、または20重量%以下でありうる。多官能アクリレートモノマーの量は、10wt%~50wt%、15wt%~40wt%、または10wt%~30wt%など、上記の最小数および最大数のいずれかの範囲内の数でありうる。
【0044】
なお、さらなる態様において、式(1)の単官能モノマーに対する多機能アクリレートモノマーの重量%比は、1:5~5:1、例えば1:3~3:1、または1:1~3:1でありうる。
【0045】
モノマーの選択に重要なのは、硬化前に重合性組成物の低粘度を維持するという態様である。一実施形態では、硬化性組成物の粘度が30mPa・s以下、例えば、25mPa・s以下、または20mPa・s以下、または15mPa・s以下、または10mPa・s以下でありうる。他の特定の実施形態では、粘度は、少なくとも3mPa・s、例えば、少なくとも5mPa・s、または少なくとも8mPa・sでありうる。特に好ましい態様では、光硬化性組成物は、15mPa・s以下の粘度を有することができる。本明細書で使用するとき、全ての粘度値は、ブルックフィールド粘度計を使用するブルックフィールド法を用いて23℃の温度で測定された粘度に関する。
【0046】
光硬化性組成物中の重合性材料の量は、光硬化性組成物の総重量に対して、少なくとも75重量%、例えば、少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%でありうる。別の態様では、重合性材料の量は、光硬化性組成物の総重量に対して、99重量%以下、例えば、98重量%以下、または97重量%以下、または95重量%以下でありうる。重合性材料の量は、上記の最小値と最大値のいずれかの間の値でありうる。特定の態様では、重合性材料の量は、少なくとも85重量%かつ98重量%以下でありうる。
【0047】
別の実施形態では、光硬化性組成物の重合性材料は、式(1)の単官能アクリレートモノマーおよび少なくとも1つの多機能アクリレートモノマーに加えて、特定の量の重合性モノマー、オリゴマー、またはポリマーを含むことができる。そのような重合性化合物の限定的ではない例は、例えば、アクリル酸ベンジル、アクリル酸1-ナフチル、ジビニルベンゼン、マレイミドモノマー、ビニルエーテル、またはスチレン誘導体でありうる。
【0048】
一態様では、重合性材料は、式(1)の単官能アクリレートモノマーおよび多機能アクリレートモノマーに加えて、少なくとも1種のさらなる単官能アクリレートモノマー、例えば、少なくとも2種または3種のさらなる単官能アクリレートモノマーを含むことができる。特定の態様では、最後の1つの追加の単官能アクリレートモノマーの量は、重合性材料の総重量に対して、少なくとも30重量%、または少なくとも40重量%、または少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%でありうる。ある特定の態様では、重合性材料が追加の単官能アクリレートモノマーとして、少なくとも40重量%の量のベンジルアクリレートを含むことができる。
【0049】
さらなる態様において、本開示の硬化性組成物は、溶媒を含まなくてもよい。
【0050】
光に曝露された場合に組成物の光硬化を開始させるために、1種以上の光開始剤を光硬化性組成物に含めることができる。
【0051】
ある態様では、硬化は、光および熱硬化の組合せによっても行うことができる。
【0052】
光硬化性組成物は、1種以上の任意の添加剤をさらに含有することができる。任意の添加剤の限定的ではない例は、安定剤、分散剤、溶媒、界面活性剤、阻害剤、またはそれらの任意の組合せでありうる。
【0053】
一実施形態では、光硬化性組成物を基板上に塗布して、光硬化層を形成することができる。本明細書で使用するとき、基板と、基板の上に重なる光硬化層との組合せは、積層体と呼ばれる。
【0054】
重合性材料のモノマーの組合せは、光硬化層中の高い炭素含有量をもたらすことができる。一実施形態では、光硬化層の炭素含有量は、少なくとも70%、例えば、少なくとも72%、または少なくとも73%、または少なくとも74%、または少なくとも75%、または少なくとも76%、または少なくとも77%でありうる。特定の態様では、炭素含有量が少なくとも74%でありうる。
【0055】
別の態様では、積層体の光硬化層は、2.9以下、または2.8以下、または2.7以下、または2.6以下の大西ナンバーを有することができる。別の態様では、大西ナンバーは、少なくとも1.8、例えば、少なくとも1.9、または少なくとも2.0、または少なくとも2.1、または少なくとも2.2、または少なくとも2.3であってもよい。
【0056】
特定の実施形態では、光硬化層は、少なくとも74%の炭素含有量および2.9以下の大西ナンバーを有することができる。
【0057】
本開示は、さらに、光硬化層を形成する方法に関する。本方法は、上述の光硬化性組成物の層を基板上に塗布すること、光硬化性組成物をテンプレートまたはスーパーストレートと接触させること、光硬化性組成物に光を照射して光硬化層を形成すること、および、テンプレートまたはスーパーストレートを光硬化層から除去することを含むことができる。
【0058】
基板および固化層は、固化層および/または固化層の下にあるパターン化層の一方または両方のパターンに対応する画像を基板に転写するために、追加の処理、例えばエッチングプロセスに供されてもよい。基板は、例えば、硬化、酸化、層形成、堆積、ドーピング、平坦化、エッチング、成形可能材料除去、ダイシング、ボンディング、およびパッケージングなどを含む、デバイス(物品)製造のための既知のステップおよびプロセスにさらに供することができる。
【0059】
また、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D-RDRAM等の半導体装置の層間絶縁膜として用いてもよいし、半導体製造工程で用いられるレジスト膜として用いてもよい。
【0060】
実施例においてさらに実証されるように、驚くべきことに、光硬化性組成物において、式(1)の単官能アクリレートモノマーと、多官能アクリレートモノマーを含む少なくとも1つの第2のモノマーとを含有する重合性モノマーの特定の組合せが、特にIAP処理に非常に適した特性を有することができることが発見された。本発明の光硬化性組成物は、15mPa・s未満の所望の低粘度を有することができ、高温焼成処理に曝されると、光硬化層を低熱収縮性で形成することができる。
実施例
以下の限定的ではない実施例は、本明細書に記載の概念を例示する。
【0061】
実施例1
光硬化性IAP組成物の調製
各サンプルについて単官能アクリレートモノマー3-フェノキシベンジルアクリレート(POBA)を二官能アクリレートモノマービフェニルAジメタクリレート(BPADMA)、ならびに、ベンジルアクリレート(BA)、1-ナフチルアクリレート(1-NA)、およびオルト-フェニルフェノールEOアクリレート(Miwon Specialty Chemical Co,LtdからのMiramer M1142)から選択される2つのさらなるモノマーと組み合わせることによって、5つの光硬化性組成物(サンプルS1~S5)を調製した。各組成物についての重合性材料のモノマーの正確な組み合わせおよび量を、以下の表1にまとめる。
【0062】
さらに、二官能BPADMAをBAおよび1-NAと組み合わせることによって(比較例の組成物C1)、ならびに、BPADMAをBA、1-NAおよび1-アダマンチルメタクリレート(1-AMA)(比較例の組成物C2)と組み合わせることによって、2つの比較例の光硬化性組成物を調製した。1-AMAの構造を式(4)に示す。
【0063】
【0064】
比較例の組成物C1およびC2の重合性材料も表1にまとめてある。全ての光硬化性組成物は、光開始剤としてIrgacure819を1~5重量%の量で、界面活性剤としてC10GM2070を0.1重量%~3重量%の量でさらに含有した。
【0065】
【0066】
表1にまとめた光硬化性組成物から、厚さ約300μmの光硬化性組成物の液膜をガラス基板上に塗布し、2.4J/cm2の硬化エネルギ線量に相当する4mW/cm2の紫外線強度に600秒間さらすことによって、光硬化層を調製した。光硬化後、全ての光硬化層は固体であった。
【0067】
熱収縮の測定
熱収縮を評価するために、光硬化層を、250℃の温度を有するホットプレート上に2分間、光硬化後に配置した。これは、本明細書では焼成とも呼ばれる。全ての焼成処理を空気下で行った。熱収縮は、エリプソメーターを用いて焼成処理前後の試験された層の厚さの変化を測定し、式:St=(Tu-Tb)/Tuに従って熱収縮(St)を計算することによって得られ、Tuは焼成前の未焼成段階における層の厚さであり、Tbは焼成後の層の厚さである。
【0068】
表2は、全てのサンプルについての熱収縮試験の結果をまとめたものである。表2は、計算された炭素含有量の重量%および層の大西ナンバーをさらに含む。サンプルS1~S5は、比較例のサンプルC1およびC2よりも約1~3パーセント低い熱収縮率を有していたことが分かる。
【0069】
【0070】
試料の粘度は、スピンドルサイズ#18のブルックフィールド粘度計LVDV-II + Proを用いて、200rpmで、23℃で測定した。粘度試験のために、約6~7mLのサンプル液体を、スピンドルヘッドを覆うのに十分な量で、サンプルチャンバーに添加した。全ての粘度試験について、少なくとも3回の測定を行い、平均値を計算した。
【0071】
大西ナンバー(ON)は、経験的パラメータであることが知られており、重合体繰り返し単位中の全原子数(Nt)を、単位中の炭素原子数(Nc)と酸素原子数(NO)との差分で割った比率、ON=Nt/(NC-NO)として計算される。大西ナンバーの計算のために、硬化した材料は、付加重合によって形成された重合モノマー単位を100重量%含有する(重合中に原子が失われない)と仮定した。
【0072】
本明細書に記載される実施形態の明細書および例示は、様々な実施形態の構造の一般的な理解を提供することが意図される。本明細書および例示は、本明細書に記載の構造または方法を使用する装置およびシステムの要素および特徴のすべてを網羅的かつ包括的に説明するものではない。別個の実施形態はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよく、逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される様々な特徴は別個に、または任意のサブコンビネーションで提供されてもよい。さらに、範囲で記載された値への言及は、その範囲内のそれぞれのおよびすべての値を含む。多くの他の実施形態は本明細書を読んだ後にのみ、当業者に明らかでありうる。本開示の範囲から逸脱することなく、構造的置換、論理的置換、または別の変更が行われうるように、他の実施形態が使用され、本開示から導出されうる。したがって、本開示は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきである。
【国際調査報告】