(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】新規な香味剤、香味剤組成物及びこれを含む製品{NEW FLAVORING AGENT,COMPOSITION AND ARTICLE COMPRISING SAME}
(51)【国際特許分類】
A24B 15/30 20060101AFI20231221BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20231221BHJP
A24B 15/32 20060101ALI20231221BHJP
A24B 15/40 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A24B15/30
A23L27/20 E
A23L27/20 F
A24B15/32
A24B15/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521969
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 KR2022018181
(87)【国際公開番号】W WO2023090889
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0159812
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、チャングーク
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、キュン ビン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、イク ジューン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、イン ボム
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ホ リム
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ジ ソブ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ゴン チャン
【テーマコード(参考)】
4B043
4B047
【Fターム(参考)】
4B043BB22
4B043BC02
4B043BC13
4B043BC14
4B043BC15
4B043BC16
4B043BC18
4B043BC19
4B043BC20
4B043BC21
4B047LB08
4B047LF01
4B047LF02
4B047LF03
4B047LF04
4B047LF05
4B047LF06
4B047LF07
4B047LF08
4B047LF09
4B047LG05
(57)【要約】
本発明は、新規な香味剤及びこれを含む製品に関し、より具体的には、香料化合物由来モイアティを化学式1で表し、熱分解時にラクトン化合物及び香料化合物に分解される化合物である、香味剤、これを含む組成物及び製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物である、香味剤:
[化学式1]
【化1】
(上記化学式1で、
nは1又は2の整数であり、
Mはアルカリ金属及び遷移金属から選択され、
Rは炭素数1~30の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、
モイアティAは、ヒドロキシル基を有する芳香族環、脂肪族環及び脂肪族鎖のうち少なくとも1つを有する香料化合物に由来するモイアティであり、前記ヒドロキシル基がカーボネート連結基(
【化2】
)に参加し、A'は、ヒドロキシル基を除く香料化合物に該当する。)。
【請求項2】
前記香料化合物は、
ヒドロキシル基を有する環状モノテルペン系化合物、ヒドロキシル基を有するモノテルペン系非環式化合物、ヒドロキシル基を有する炭素数6~10の芳香族化合物及びヒドロキシル基を有する炭素数5~6の非芳香族環から選択されるものである、請求項1に記載の香味剤。
【請求項3】
前記香料化合物は、下記化学式から選択されるものである、請求項1に記載の香味剤:
【化3】
【化4】
。
【請求項4】
前記A'は、下記化学式から選択されるものである、請求項1に記載の香味剤:
(*は、カーボネート内の酸素の結合位置である。)
【化5】
【化6】
。
【請求項5】
前記遷移金属は、Zr、Mg、Ca、Co、Rh、Ir、Nb、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu、Ag及びAuから選択され、
前記アルカリ金属は、Li、Na、K、Rb及びCsから選択されるものである、請求項1に記載の香味剤。
【請求項6】
前記化合物は、下記化学式1-1~1-28から選択されるものである、請求項1に記載の香味剤:
[化学式1-1]
【化7】
[化学式1-2]
【化8】
[化学式1-3]
【化9】
[化学式1-4]
【化10】
[化学式1-5]
【化11】
[化学式1-6]
【化12】
[化学式1-7]
【化13】
[化学式1-8]
【化14】
[化学式1-9]
【化15】
[化学式1-10]
【化16】
[化学式1-11]
【化17】
[化学式1-12]
【化18】
[化学式1-13]
【化19】
[化学式1-14]
【化20】
[化学式1-15]
【化21】
[化学式1-16]
【化22】
[化学式1-17]
【化23】
[化学式1-18]
【化24】
[化学式1-19]
【化25】
[化学式1-20]
【化26】
[化学式1-21]
【化27】
[化学式1-22]
【化28】
[化学式1-23]
【化29】
[化学式1-24]
【化30】
[化学式1-25]
【化31】
[化学式1-26]
【化32】
(ここで、M及びRは、上記化学式1で定義された通りである。)。
【請求項7】
前記香味剤は、
熱分解時に香味を発現する香味剤化合物である、請求項1に記載の香味剤。
【請求項8】
前記香味剤は、
熱分解時に前記香料化合物、ラクトン化合物及び二酸化炭素に分解されるものである、請求項1に記載の香味剤。
【請求項9】
前記化合物は、80℃以上の温度で熱分解されるものである、請求項1に記載の香味剤。
【請求項10】
前記ラクトン化合物は、下記化学式2のガンマラクトン又は化学式3のデルタラクトンである、請求項8に記載の香味剤:
[化学式2]
【化33】
[化学式3]
【化34】
(ここで、Rは、炭素数1~30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。)。
【請求項11】
前記ラクトン化合物は、下記化学式から選択されるものである、請求項8に記載の香味剤:
【化35】
。
【請求項12】
前記香味剤は、食品用又は喫煙物品用香味剤である、請求項1に記載の香味剤。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の香味剤;を含む、組成物。
【請求項14】
前記組成物は、
固相、スラリー、ペースト、ゲル、液相、エマルジョン又はエアロゾルである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、
食品用又は喫煙物品用に許容可能な担体、添加剤又はこの両方をさらに含むものである、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか一項に記載の香味剤を含む、喫煙物品。
【請求項17】
前記喫煙物品は、
前記香味剤を含むスラリー、ペースト、液相、ゲル、粉末、ビーズ、シート、フィルム、繊維又は成形体を含むものである、請求項16に記載の喫煙物品。
【請求項18】
前記喫煙物品は、
シガレット又は電子タバコである、請求項16に記載の喫煙物品。
【請求項19】
請求項1から12のいずれか一項に記載の香味剤を含む、食品。
【請求項20】
前記食品は、
前記香味剤との混合又は熱による調理食品である、請求項19に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱によって香味成分が放出される新規な香味剤、香味剤組成物及びこれを含む製品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品及び喫煙物品に香味剤を付加して味をさらに向上させることができる。喫煙物品から発生した煙又はエアロゾルは上流から下流に移動して喫煙者に伝達され、喫煙満足度を感じるように製造されている。喫煙満足度を決定する要素としては様々な事項があるが、最も重要なのは喫煙者が感じるタバコ味である。喫煙者は1つの喫煙物品から様々なタバコ味を楽しむのを望むところ、タバコメーカーでは喫煙者のこのような欲求を満たすために加香物質(例えば、香味剤)を添加して喫煙者は様々な香味や風味を感じるようになる。
【0003】
従来の香味剤は、喫煙媒質の長期間保管時、常温で化学構造の分解可能性が高く、香味成分が揮発して喫煙中にタバコ味を増進させ得る十分な香味発現が難しく、又は喫煙時間が経過するにつれて香味の持続性が弱く、又はタバコ味が変化する。これに喫煙中に喫煙満足度を高める香味剤の開発が必要である。食品において様々な香味を付加するために香味剤を適用しているが、食品の長期間加工及び/又は格納される場合に香味が揮発し、放出されて消えてしまう場合が頻繁である。これに対し、揮発性香味の放出を防止又は遅延させて格納寿命を増加させ、消費者が使用するときに十分な香味発現がなされる香味剤の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の香味剤機能を有する化合物が常温(rt)又はこれと近接した温度で化学構造的安定性が低く、構造的変形又は分解が発生して香味成分が揮発する可能性がある。本発明は、これを解決するために、熱を加える場合に熱分解による香味成分が放出される、新規な香味剤を提供するものである。
【0005】
本発明は、本発明による新規な香味剤を含む香味剤組成物に関する。
【0006】
本発明は、本発明による新規な香味剤を含む製品に関する。
【0007】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及したものに制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載から該当分野における通常の技術者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例により、下記化学式1で表される化合物である、香味剤に関する。
[化学式1]
【化1】
(上記化学式1で、
nは1又は2の整数であり、
Mはアルカリ金属及び遷移金属から選択され、
Rは炭素数1~30の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、
モイアティAはヒドロキシル基を有する芳香族環、脂肪族環及び脂肪族鎖のうち少なくとも1つを有する香料化合物に由来するモイアティであり、前記ヒドロキシル基がカーボネート連結基(
【化2】
)に参加し、A'はヒドロキシル基を除く香料化合物に該当する。)
【0009】
本発明の一実施例により、前記香料化合物は、ヒドロキシル基を有する環状モノテルペン系化合物、ヒドロキシル基を有するモノテルペン系非環式化合物、ヒドロキシル基を有する炭素数6~10の芳香族化合物及びヒドロキシル基を有する炭素数5~6の非芳香族環から選択されるものであってもよい。
【0010】
本発明の一実施例により、前記遷移金属は、Zr、Mg、Ca、Co、Rh、Ir、Nb、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu、Ag及びAuから選択され、前記アルカリ金属は、Li、Na、K、Rb及びCsから選択されるものであってもよい。
【0011】
本発明の一実施例により、前記香味剤は、熱分解時に香味を発現する香味剤化合物であってもよい。
【0012】
本発明の一実施例により、前記香味剤は、熱分解時に前記香料化合物、ラクトン化合物及び二酸化炭素に分解されるものであってもよい。
【0013】
本発明の一実施例により、前記化合物は、80℃以上の温度で熱分解されるものであってもよい。
【0014】
本発明の一実施例により、前記香味剤は、食品用又は喫煙物品用香味剤であってもよい。
【0015】
本発明の一実施例により、本発明による香味剤;を含む、組成物に関する。
【0016】
本発明の一実施例により、前記組成物は、固相、スラリー、ペースト、ゲル、液相、エマルジョン又はエアロゾルであってもよい。
【0017】
本発明の一実施例により、前記組成物は、食品用又は喫煙物品用に許容可能な担体、添加剤又はこの両方をさらに含むものであってもよい。
【0018】
本発明の一実施例により、本発明による香味剤を含む、喫煙物品に関する。
【0019】
本発明の一実施例により、前記喫煙物品は、前記香味剤を含むスラリー、ペースト、液相、ゲル、粉末、ビーズ、シート、フィルム、繊維又は成形体を含むものであってもよい。
【0020】
本発明の一実施例により、前記喫煙物品は、シガレット又は電子タバコであってもよい。
【0021】
本発明の一実施例により、本発明による香味剤を含む、食品に関する。
【0022】
本発明の一実施例により、前記食品は、本発明の香味剤と混合、又は熱によって調理されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施例により、本発明による香味剤は、喫煙物品に適用するとき、喫煙中に香味成分が発現して副流煙の煙たい臭いを改善させ、加熱による熱分解時に香味成分が発散するので、タバコ味を向上させ、タバコ味を一定に維持させることができる。
【0024】
本発明の一実施例により、本発明による香味剤は、加熱によって熱分解されて香味成分が発散するので、食品に適用する際の調理過程で豊富な香味を提供することができ、食品の保管過程で香味剤の格納寿命を延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施例により、実施例で製造されたエチル4-ヒドロキシヘプタノエート(2a)のNMR分析結果を示すものである。
【
図2】本発明の一実施例により、実施例で製造されたエチル4-(メンチルカルボニルオキシ)ヘプタノエート(3a)のNMR分析結果を示すものである。
【
図3】本発明の一実施例により、実施例で製造された4-(メンチルカルボニルオキシ)ヘプタン酸(4a)のNMR分析結果を示すものである。
【
図4】本発明の一実施例により、実施例で製造された4-(メンチルカルボニルオキシ)ノナン酸(4b)のNMR分析結果を示すものである。
【
図5】本発明の一実施例により、実施例で製造されたエチル5-(メンチルカルボニルオキシ)デカノエート(3c)のNMR分析結果を示すものである。
【
図6】本発明の一実施例により、実施例で製造されたエチル5-(メンチルカルボニルオキシ)デカノエート(3c)のNMR分析結果を示すものである。
【
図7】本発明の一実施例により、実施例で製造された5-(メンチルカルボニルオキシ)デカン酸(4c)のNMR分析結果を示すものである。
【
図8】本発明の一実施例により、実施例で製造された5-(メンチルカルボニルオキシ)デカン酸(4c)のNMR分析結果を示すものである。
【
図9】本発明の一実施例により、実施例で製造されたエチル4-ヒドロキシウンデカノエート(2d)のNMR分析結果を示すものである。
【
図10】本発明の一実施例により、実施例で製造されたエチル4-ヒドロキシウンデカノエート(2d)のNMR分析結果を示すものである。
【
図11】本発明の一実施例により、実施例で製造されたエチル4-(メンチルカルボニルオキシ)ウンデカノエート(3d)のNMR分析結果を示すものである。
【
図12】本発明の一実施例により、実施例で製造された4-(メンチルカルボニルオキシ)ウンデカン酸(4d)のNMR分析結果を示すものである。
【
図13】本発明の一実施例により、実施例で製造された4-(メンチルカルボニルオキシ)ウンデカン酸(4d)のNMR分析結果を示すものである。
【
図14】本発明の一実施例により、実施例で製造されたエチル4-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)ウンデカノエート(3e)のNMR分析結果を示すものである。
【
図15】本発明の一実施例により、実施例で製造されたソジウム(4-メンチルカルボニルオキシ)ウンデカノエート(5d)の熱分析結果を示すものである。
【
図16】本発明の一実施例により、実施例で製造されたソジウム(4-メンチルカルボニルオキシ)ウンデカノエート(5d)の熱分解温度による成分の分布を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。本発明の説明において、関連する公知の機能又は構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不要に濁す恐れがあると判断される場合、その詳細な説明は省略する。さらに、本明細書において使用される用語は、本発明の好ましい実施例を適切に表現するために使用された用語であり、これは、ユーザ、運用者の意図又は本発明の属する分野における慣例などによって変わり得る。したがって、本用語の定義は、本明細書全体にわたる内容に基づいて行われるべきである。各図面に示されている同一の参照符号は同一の部材を示す。
【0027】
明細書全体において、ある部材が他の部材「上に」位置しているとするとき、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0028】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0029】
以下、本発明の新規な香味剤及び前記香味剤の活用について実施例及び図面を参照して具体的に説明する。しかし、本発明はこのような実施例及び図面に制限されるものではない。
【0030】
本発明は、新規な香味剤に関し、本発明の一実施例により、前記香味剤は、熱を加える場合に熱分解によって香味成分を発現させることができる。
【0031】
本発明の一実施例により、前記香味剤は、下記化学式1で表される化合物であり得る。
[化学式1]
【化3】
【0032】
本発明の一例として、上記化学式1で、香料化合物はカーボネート連結基(
【化4】
)で共有結合されたものであり、上記化学式1の化合物は、熱を加える場合に熱分解されて香料化合物及びラクトン化合物に分解され、香味成分の発現が行われる。例えば、上記化学式1の化合物は、ラクトン系化合物の開環メカニズムで香料化合物のヒドロキシル基と反応してカーボネート連結基を介して香料化合物を共有結合させる。これは、常温(rt)及び/又は近接した温度で閉環によるラクトン化合物に転換されることを防止する保護基として作用し得る。上記化学式1の化合物は、約常温(rt)又はこれと近接した温度で構造的安定性を有し、揮発性が低く、熱を受けて閉環メカニズムでカーボネート連結基が切断され、ラクトン系化合物及び香料化合物に分解され香味が発現し、分解過程で人体に無害な二酸化炭素が発生し得る。すなわち、熱によってカーボネート連結基が切断されて香料化合物に分解され、二酸化炭素が生成され得る。次に、閉環によってラクトン系化合物に分解され、香味を発現させることができる。
【0033】
本発明の一実施例により、上記化学式1でnは1又は2の整数であってもよい。Rは炭素数1~30の直鎖又は分岐鎖アルキル基;好ましくは、炭素数2~10の直鎖又は分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0034】
本発明の一実施例により、上記化学式1でモイアティAは、ヒドロキシル基を有する芳香族環、ヒドロキシル基を有する脂肪族環及びヒドロキシル基を有する脂肪族鎖のうち少なくとも1つを有する香料化合物に由来するモイアティであってもよい。前記ヒドロキシル基は、環、鎖又はこのうち1つ以上(例えば、1つ又は2つ)を含み得る。これは、ヒドロキシル基を含む置換基、基本骨格及び/又はモイアティに該当し得る。前記ヒドロキシル基が化学式1でカーボネート連結基に参加し、A'はヒドロキシル基を除く香料化合物に該当し得る。すなわち、モイアティAにおいて香料化合物のヒドロキシル基がカーボネート連結基で保護されるので、常温で閉環による分解反応が防止され得る。
【0035】
本発明の一実施例により、前記香料化合物は、ヒドロキシル基を有する環状モノテルペン系化合物、ヒドロキシル基を有するモノテルペン系非環式化合物、ヒドロキシル基を有する炭素数6~10の芳香族化合物及びヒドロキシル基を有する炭素数5~10;又は炭素数5~6の非芳香族環及びこれらの異性体から選択されてもよい。例えば、前記香料化合物は、下記化学式から選択され、上記化学式1の熱分解時にカーボネート連結基が切断される場合に生成される化合物であり得る。
【化5】
【化6】
【0036】
本発明の一実施例により、前記モイアティAにおいてA'は下記化学式から選択されるものであってもよい。ここで、*は、カーボネート連結基内の酸素位置に該当する。
【化7】
【化8】
【0037】
本発明の一実施例により、前記Mは、アルカリ金属及び遷移金属から選択され、前記Mは、エステル基の酸素と塩(Salt)を形成して水溶性溶媒に対する溶解度を増加させ、食品及び喫煙物品の適用を容易にすることができる。例えば、前記遷移金属は、Zr、Mg、Ca、Co、Rh、Ir、Nb、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu、Ag及びAuから選択され、例えば、前記アルカリ金属は、Li、Na、K、Rb及びCsから選択されてもよい。例えば、前記Mは、1価のカチオンを形成する金属であってもよく、Li、Na及びKから選択されてもよい。
【0038】
本発明の一実施例により、前記ラクトン化合物は、下記化学式2のガンマ又は化学式3のデルタラクトンであってもよい。
[化学式2]
【化9】
[化学式3]
【化10】
【0039】
本発明の一例として、上記化学式1及び化学式2で、Rは、炭素数1~30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、好ましくは、炭素数2~10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であってもよい。
【0040】
本発明の一実施例により、前記ラクトンは、下記化学式から選択されるものであってもよい。
【化11】
【0041】
本発明の一実施例により、前記化合物は、下記化学式1-1~1-26から選択されてもよい。
[化学式1-1]
【化12】
[化学式1-2]
【化13】
[化学式1-3]
【化14】
[化学式1-4]
【化15】
[化学式1-5]
【化16】
[化学式1-6]
【化17】
[化学式1-7]
【化18】
[化学式1-8]
【化19】
[化学式1-9]
【化20】
[化学式1-10]
【化21】
[化学式1-11]
【化22】
[化学式1-12]
【化23】
[化学式1-13]
【化24】
[化学式1-14]
【化25】
[化学式1-15]
【化26】
[化学式1-16]
【化27】
[化学式1-17]
【化28】
[化学式1-18]
【化29】
[化学式1-19]
【化30】
[化学式1-20]
【化31】
[化学式1-21]
【化32】
[化学式1-22]
【化33】
[化学式1-23]
【化34】
[化学式1-24]
【化35】
[化学式1-25]
【化36】
[化学式1-26]
【化37】
(ここで、M及びRは、上記化学式1で定義された通りである。)
【0042】
本発明の一実施例により、前記化合物は、70℃以上;80℃以上;90℃以上;又は100℃以上であり、好ましくは、120℃以上;150℃以上;200℃以上;又はさらに好ましくは、200℃~300℃温度で熱分解するものであってもよい。また、酸素及び/又は水分を含む環境で熱分解することができる。
【0043】
本発明の一実施例により、前記香味剤は、食品及び喫煙物品の香味剤として活用することができる。すなわち、食品及び喫煙物品に許容可能な添加剤として活用することができる。
【0044】
本発明は、本発明による香味剤を含む組成物に関する。
【0045】
本発明の一実施例により、前記組成物は、本発明による香味剤(すなわち、上記化学式1で表される香味剤化合物)を含み、用途に応じて担体、添加剤又はこの両方をさらに含んでもよい。前記担体及び添加剤は、食品用又は喫煙物品用に許容可能な担体及び添加剤であり、例えば、溶媒、結合剤、希釈剤、分解剤、潤滑剤、香味剤、着色剤、保存剤、酸化防止剤、乳化剤、安定化剤、香味増進剤、甘味剤などを含むことができるが、これらに制限されない。
【0046】
本発明の一実施例により、前記組成物は、用途に応じてベースマトリックス(又は、基質)成分をさらに含むことができ、例えば、紙、パルプ、木材、ポリマー樹脂(例えば、セルロース)、繊維、植物性油、石油系油(例えば、パラフィン類)、動物性油、ワックス、脂肪酸(例えば、炭素数1~50の動物性脂肪、植物性脂肪、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸(例えば、単一又は多不飽和脂肪酸))などであってもよい。前記ベースマトリックス成分に有機物及び/又は無機又はセラミック粉末(例えば、チョーク(chalk)、パーライト(perlite)、バーミキュライト(vermiculite)、珪藻土(diatomaceous earth)、コロイダルシリカ(colloidal silica)、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム)、湿潤剤(例えば、グリセリン又はプロピレングリコール)及びアセテート化合物などがさらに追加されてもよい。
【0047】
本発明の一実施例により、前記組成物は、用途に応じてタバコ成分をさらに含んでもよい。前記組成物は、喫煙物品に適用するとき、喫煙条件下で主流煙と副流煙に香味を発現させることができる。前記タバコ成分は、板状葉タバコ、刻草、再構成タバコなどのタバコ原料に基づく固体物質であってもよく、葉タバコ、押出タバコ(extruded tobacco)及びバンドキャストタバコ(bandcast tobacco)から選択されてもよい。また、前記組成物は、タバコ媒質として適用可能なエアロゾル発生剤をさらに含んでもよく、前記エアロゾル発生剤は、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、乳酸、ジアセチン、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチルクエン酸、エチルミリステート、イソプロピルミリステート、メチルステアレート、ジメチルドデカンジオエート、ジメチルテトラデカンジオエートなどであってもよいが、これらに制限されない。
【0048】
本発明の一実施例により、前記香味剤は、前記組成物のうち0.0001重量%以上;0.001重量%以上;0.01重量%以上;0.0001重量%~100重量%(又は、未満)重量%;0.1重量%~80重量%;0.0001重量%~60重量%;0.001重量%~50重量%;0.1重量%~30重量%;1重量%~20重量%;5重量%~20重量%;5重量%~10重量%;であってもよい。前記範囲内で、前記香味剤の熱分解による香味発現機能を得ることができ、喫煙物品に適用するときにタバコ味の改善効果を得ることができる。
本発明の一実施例により、前記組成物は、様々な相(phase)で製造され、例えば、固相(例えば、粉末、クリスタル、フレーク、粉砕物)、スラリー、ペースト、ゲル、液相、エマルジョン又はエアロゾルであってもよい。例えば、前記組成物は、成形又は所望の製品に混合されるか、印刷、浸漬、噴霧及び/又はコーティングなどの本発明の技術分野において周知の方式で適用することができ、本文書には具体的に言及しない。
【0049】
本発明は、本発明による香味剤を含む食品に関する。本発明の一実施例により、前記食品は、上記言及した本発明による化学式1で表される香味剤化合物のうち少なくとも1つ以上を含み得る。前記食品の加熱及び/又は燃焼時の前記香味剤の熱分解による香味を提供することができる。
【0050】
本発明の一実施例により、前記食品は、食品原料及び前記香味剤又は前記香味剤を含む組成物から製造されることができ、前記組成物は目的する食品によって食品添加剤をさらに含むことができ、例えば、溶媒(例えば、水、アルコール、液状抽出物)、結合剤、希釈剤(例えば、油)、分解剤、潤滑剤、着色剤、保存剤、酸化防止剤、乳化剤、安定化剤、香味増進剤、甘味剤などを含むことができるが、これらに制限されない。例えば、前記香味剤は、前記食品にそれ自体で混合されるか、前記香味剤を含む組成物を用いて混合、浸漬、噴霧及び/又はコーティングされ得る。
【0051】
本発明の一実施例により、前記食品は、前記香味剤が添加又は加熱されて半調理又は調理されたものであってもよい。添加された場合、前記食品はさらなる加熱によって香味剤機能を発現させ得る。さらに、半調理又は調理されたもので香味剤と共に加熱され、その機能が発現されたものであり、前記半調理又は調理された食品に香味剤が添加され、さらなる加熱によってその機能を発現させ得る。
【0052】
本発明の一実施例により、前記香味剤は、前記食品のうち0.0001重量%以上~99重量%;0.01重量%以上;0.1重量%以上;1重量%~50重量%;1重量%~30重量%;又は1重量%~20重量%であってもよい。前記範囲内で前記香味剤の香味発現機能を提供し、食品原料固有の特性を維持させ得る。
【0053】
本発明の一実施例により、前記「食品」は、食品材料、ソース、添加剤、味付け類、飲食物、嗜好食品、加工食品、冷凍食品、冷蔵食品、保存食品、漬物食品、機能食品、発酵食品であってもよい。また、調理されずに添加された状態(例えば、表面コーティングされた状態、フィーリング(filling)された状態、調味された状態、漬けられた状態、乾燥された状態、混合された状態)、半調理又は調理食品(例えば、ベイキング、蒸し、焼き、揚げ物、煮物、加熱のような熱を加えて完成した食品)であってもよい。例えば、シリアル製品、米製品、タピオカ製品、サゴ(sago)製品、製パン製品、餅製品、ビスケット製品、パスチュリー製品、キャンディー製品、デザート製品、ガム、チューイングガム、チョコレート、アイスクリーム、蜂蜜製品、糖蜜製品、酵母製品、ベーキングパウダー、塩及び味付け製品、調味料、甘味料、香辛料(savory)製品、マスタード製品、酢製品、ソース(調味料)、調理された果物及び野菜製品、及び肉製品、ゼリー、ジャム、果物ソース、卵製品、牛乳及び酪農製品、チーズ製品、バター及びバター代替食品、牛乳代替食品、大豆製品、食用油及び脂肪製品、飲料、アルコール飲料、ビール、炭酸飲料、炭酸水及びその他の非アルコール性飲料、フルーツ飲料、フルーツジュース、コーヒー、人工コーヒー、お茶、ココア、チョコレート、キャンディー、抽出物食品、植物抽出物、肉抽出物、ゼラチン、薬剤、エリキシル(elixir)、シロップ及び飲料製造用のその他の製剤であってもよいが、これらに制限されない。
【0054】
本発明は、本発明による香味剤を含む喫煙物品に関する。本発明の一実施例により、前記喫煙物品は、上記言及した本発明による化学式1で表される香味剤化合物のうち少なくとも1つ以上を含んでもよい。前記喫煙物品の加熱及び/又は燃焼時の前記香味剤の熱分解による香味を提供することができる。すなわち、前記喫煙物品の加熱及び/又は燃焼時、主流煙及び/又は副流煙に香味を発現させ得る。
【0055】
本発明の一実施例により、前記「喫煙物品」(smoking article)とは、タバコ、タバコ派生物、膨化処理タバコ(expanded tobacco)、再生タバコ(reconstituted tobacco)又はタバコ代用物に基づくか否かにかかわらず、喫煙可能な任意の製品又は喫煙体験を提供できる任意の製品を意味することができる。例えば、前記喫煙物品は、シガレット、葉巻(cigar)、小葉巻(cigarillo)、電子タバコなどのエアロゾルを発生させ得る喫煙可能物品を意味することができる。喫煙物品は、エアロゾル発生物質又はエアロゾル形成基質を含み得る。また、喫煙物品は、板状葉タバコ、刻草、再構成タバコなどのタバコ原料に基づく固体物質を含み得る。
【0056】
本発明の一実施例により、前記香味剤は、前記喫煙物品において喫煙媒質100重量部に対して0.0001重量部以上;0.001重量部以上;0.1重量部以上;1重量部以上;1重量部~20重量部で含まれてもよい。
【0057】
本発明の一実施例により、前記香味剤は、喫煙時、前記喫煙物品において喫煙媒質100重量部に対して0.00001重量部以上;0.0001重量部以上;0.001重量部以上;0.1重量部以上;1重量部以上;1重量部~20重量部で香味成分、例えば、ラクトン類を発現させることができる。
【0058】
本発明の一実施例により、前記喫煙物品は、シガレット型タバコ、液状型タバコ又はハイブリッド型タバコであり、燃焼式シガレット又は加熱式タバコであってもよい。又は電子タバコ(例えば、電子式で加熱されるタバコ)であってもよい。
【0059】
本発明の一実施例により、前記香味剤は、シガレットのシガレット紙に適用してタバコ加熱及び/又は燃焼時、特に煙発生(smouldering)時の熱によって香味成分(例えば、ラクトン類及び/又は香り成分)が発現し、副流煙の煙たい臭いを改善する効果を減らすことができる。
【0060】
本発明の一実施例により、加熱式タバコスティックの媒質に適用時、香味成分の味持続力を付与することができる。すなわち、加熱式タバコは静的な加熱によって媒質が抱いている香味成分が初期パフ(puff)で消尽されるが、前記香味剤は熱によって分解されてこそ発現するため、パフが持続されても香味成分が最後のパフでも生成されタバコ味を一定に維持させ得る。
【0061】
本発明の一実施例により、前記喫煙物品は、前記香味剤又は前記香味剤組成物を含むか製造されたものであり得る。例えば、前記喫煙物品の構成成分及び/又は部品に該当し得る。好ましくは、喫煙物品において加熱される領域の構成成分及び/又は部品であり得る。例えば、喫煙媒質(例えば、液相、ゲル、固相、スラリー、ペースト)、紙管、チューブ、フィルター(例えば、チューブフィルター、繊維フィルター、織物フィルター、紙フィルター、カプセルフィルター)、巻紙、シガレット紙、チップペーパー、ラッパー、カートリッジ(例えば、加熱カートリッジ)などであってもよく、これらは本発明の目的を逸脱しない限り、本発明の技術分野における周知の構成成分を含み、本文書には具体的に言及しない。
【0062】
本発明の一実施例により、前記香味剤は、前記喫煙物品の製造時にそれ自体で基質又は基材と混合されるか、前記香味剤を含む組成物を用いて基質又は基材と混合、印刷、浸漬(又は、含浸)、コーティング及び/又は噴射されて適用され得る。
【0063】
本発明の一実施例により、喫煙媒質、例えば、香味剤とタバコ原料(例えば、媒質原料、タバコ葉)を含むか、添加物をさらに含んでもよい。他の例として、前記香味剤は、喫煙物品の構成成分及び/又は部品製造時に香味剤として添加され、喫煙物品に適用可能なベース物質、溶媒、加香物質、喫煙媒質物質などと混合されてもよい。又は前記喫煙媒質は、液相、ゲル、又は固相であってもよい。
【0064】
以下、実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明しようとする。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0065】
実施例1
1.ソジウム(4-メンチルカルボニルオキシ)ヘプタノエート[Sodium(4-mentylcarbonyloxy)heptanoate、5a]の合成
[スキーム1]
【化38】
(1-1)エチル4-ヒドロキシヘプタノエート[Ethyl 4-hydroxyheptanoate、2a]の合成
γ-ヘプタラクトン20g(0.15mol)をメタノール100mLに溶かし、撹拌しながらKOH11.17g(0.16mol、1.05eq.)を徐々に入れて室温で12時間反応させた。反応液を減圧濃縮させた後、DMF80mLを入れて撹拌しながらブロモエタン17g(0.15mol、1eq.)を入れて12時間反応させた。反応液に水100mLを入れてエチルアセテートで抽出した後、水と塩水で洗浄した。有機層をMgSO
4で乾燥した後、減圧濃縮して18.1g(66.7%、2steps)の目的物2aを得た。
1H NMR(CDCl
3、400.13MHz);δ8.01(s、1H、-OH)、4.12(q、2H、J=8Hz、COO-CH
2-)、3.63(m、1H、CH-O)、2.42(m、2H、CO-CH
2)、1.81~0.92(m、12H、alkyl)(
図1)
【0066】
(1-2)エチル4-(メンチルカルボニルオキシ)ヘプタノエート[Ethyl 4-(mentylcarbonyloxy)heptanoate、3a]の合成
エチル4-ヒドロキシヘプタノエート(Ethyl 4-hydroxyheptanoate、2a)18g(0.1mol)をTHF120mLに溶かし、ピリジン16g(0.2mol、2eq.)を入れて氷水で冷却し、撹拌しながら、メンチルクロロホルメート23g(0.1mol、1eq.)THF20mL溶液をゆっくり滴下した。1時間後、反応液を室温まで上げ、一晩反応させた後、水を入れてエチルアセテートで抽出した。有機層をそれぞれ希塩酸、炭酸水素ナトリウム飽和溶液及び塩水で洗浄した後、MgSO
4で乾燥し、減圧濃縮して30g(収率81%)の目的物3aを黄色液体として得た。
1H NMR(CDCl
3、400.13MHz);δ4.74(7tet、1H、J=4Hz、-COOCH-)、4.51(td、1H、J=9、4Hz、COO-CH-)、4.12(q、2H、J=8Hz、COO-CH
2-)、2.36(m、2H、CO-CH
2-)、1.93~0.79(m、30H、alkyl)(
図2)
【0067】
(1-3)4-(メンチルカルボニルオキシ)ヘプタン酸[4-(mentylcarbonyloxy)heptanoic acid、4a]の合成
エチル4-(メンチルカルボニルオキシ)ヘプタノエート(Ethyl 4-(mentylcarbonyloxy)heptanoate、3a)25g(68.5mmol)をTHF100mL及び蒸留水30mLに溶かし、水酸化リチウム一水和物4.2g(102.4mmol、1.5eq.)を入れて室温で12時間反応させた。蒸留水50mLを追加し、エーテルで抽出した。水層に濃塩酸を入れてpH3に調整した後、エチルアセテートで抽出した。有機層を塩水で洗浄した後、MgSO
4で乾燥し、減圧濃縮して21.8g(収率81%)の目的物4aを黄色液体として得た。
1H NMR(CDCl
3、400.13MHz);δ4.76(m、1H、-COOCH-)、4.52(td、1H、J=9、4Hz、COO-CH-)、4.11(q、2H、J=8Hz、COO-CH
2-)、2.42(m、2H、CO-CH
2-)、1.99~0.82(m、27H、alkyl)(
図3)
【0068】
(1-4)ソジウム(4-メンチルカルボニルオキシ)ヘプタノエート[Sodium(4-mentylcarbonyloxy)heptanoate、5a]の合成
4-(メンチルカルボニルオキシ)ヘプタン酸2.5g(4-(Mentylcarbonyloxy)hepanoic acid、7.5mmol)を95%エタノール20mLに溶かし、98%NaOH0.29g(0.95eq.)を入れて室温で2時間撹拌した。Azotrope現象を用いて水とエタノールを飛ばし、トルエンを追加して水を除去した後、ヘキサン、エチルアセテートを入れて濾過して白色固体を得た。
【0069】
2.ソジウム4-(メンチルカルボニルオキシ)ノナノエート[4-(Mentylcarbonyloxy)nonanoate、5b]の合成
[スキーム2]
【化39】
(2-1)エチル4-ヒドロキシノナノエート[Ethyl 4-hydroxynonanoate、2b]の合成
γ-ノナラクトン20g(γ-Nonalactone、0.13mol)をメタノール100mLに溶かし、撹拌しながらKOH9.18g(0.14mol、1.05eq.)を徐々に入れて室温で12時間反応させた。反応液を減圧濃縮させた後、DMF80mLを入れて撹拌しながらブロモエタン14g(0.13mol、1eq.)を入れて12時間反応させた。反応液に水100mLを入れてエチルアセテートで抽出した後、水と塩水で洗浄した。有機層をMgSO
4で乾燥した後、減圧濃縮して24g(93%、2steps)の目的物2bを得た。
【0070】
(2-2)エチル4-(メンチルカルボニルオキシ)ノナノエート[Ethyl 4-(mentylcarbonyloxy)nonanoate、3b]の合成
エチル4-ヒドロキシノナノエート(2b)24g(0.12mol)をTHF120mLに溶かし、ピリジン18g(0.42mol、2eq.)を入れて氷水で冷却し、撹拌しながら、メンチルクロロホルメート26g(0.12mol、1eq.)THF30mL溶液をゆっくり滴下(dropping)した。1時間後、反応液を室温まで上げ、一晩反応させた後、水を入れてエチルアセテートで抽出した。有機層をそれぞれ希塩酸、炭酸水素ナトリウム飽和溶液及び塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮して34g(収率74.5%)の目的物3bを黄色液体として得た。
1H NMR(CDCl3、400.13MHz);δ4.74(7tet、1H、J=4Hz、-COOCH-)、4.51(td、1H、J=9、4Hz、COO-CH-)、4.12(q、2H、J=8Hz、COO-CH2-)、2.36(m、2H、CO-CH2-)、1.93~0.79(m、23H、alkyl)
【0071】
(2-3)4-(メンチルカルボニルオキシ)ノナン酸[4-(Mentylcarbonyloxy)nonanoic acid、4b]の合成
エチル4-(メンチルカルボニルオキシ)ノナノエート(3b)11.5g(29.9mmol)をTHF50mL及び蒸留水20mLに溶かし、水酸化リチウム一水和物2g(48.7mmol、1.6eq.)を入れて室温で12時間反応させた。蒸留水50mLを追加し、エーテルで抽出した。水層に濃塩酸を入れてpH3に調整した後、エチルアセテートで抽出した。有機層を塩水で洗浄した後、MgSO
4で乾燥し、減圧濃縮して8.6g(収率80%)の目的物4bを黄色液体として得た。
1H NMR(CDCl
3、400.13MHz);δ4.75(m、1H、-COOCH-)、4.49(m、1H、COO-CH-)、2.04(m、2H、CO-CH
2-)、1.93~0.79(m、31H、alkyl)(
図4)
【0072】
(2-4)ソジウム4-(メンチルカルボニルオキシ)ノナノエート[4-(Mentylcarbonyloxy)nonanoate、5b]の合成
4-(メンチルカルボニルオキシ)ノナン酸2.5g(4-(Mentylcarbonyloxy)nonanoic acid、4b、7.5mmol)を95%エタノール20mLに溶かし、98%NaOH0.29g(0.95eq.)を入れて室温で2時間撹拌した。Azotrope現象を用いて水とエタノールを飛ばし、トルエンを追加して水を除去した後、ヘキサン、エチルアセテートを入れて濾過して白色固体を得た。
【0073】
3.ソジウム5-(メンチルカルボニルオキシ)デカノエート[5-(Mentylcarbonyloxy)decanoate、5c]の合成
[スキーム3]
【化40】
(3-1)エチル5-ヒドロキシデカノエート(Ethyl 5-hydroxydecanoate、2c)の合成
δ-デカラクトン10g(δ-Decalactone、58.7mmol)をメタノール50mLに溶かし、撹拌しながらKOH4.2g(64.7mmol、1.05eq.)を徐々に入れて室温で12時間反応させた。反応液を減圧濃縮させた後、DMF40mLを入れて撹拌しながらブロモエタン6.4g(58.7mmol、1eq.)を入れて12時間反応させた。
反応液に水100mLを入れてエチルアセテート(ethylacetate)で抽出した後、水と塩水で洗浄した。有機層をMgSO
4で乾燥した後、減圧濃縮して7.6g(60%、2steps)の目的物2cを得た。
【0074】
(3-2)エチル5-(メンチルカルボニルオキシ)デカノエート[Ethyl 5-(mentylcarbonyloxy)decanoate、3c]の合成
エチル5-ヒドロキシデカノエート(2c)7.5g(34.6mmol)をTHF50mLに溶かし、ピリジン5.3g(69.2mmol、2eq.)を入れて氷水で冷却し、撹拌しながら、メンチルクロロホルメート8.3g(37.9mmol、1.1eq.)THF20mL溶液をゆっくり滴下(dropping)した。1時間後、反応液を室温まで上げ、一晩反応させた後、水を入れてエチルアセテートで抽出した。有機層をそれぞれ希塩酸、炭酸水素ナトリウム飽和溶液及び塩水で洗浄した後、MgSO
4で乾燥し、減圧濃縮した。混合物をn-ヘキサンとエチルアセテート混合溶媒(7:1)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーして4.5g(収率32.6%)の目的物3cを得た。
1H NMR(CDCl
3、400.13MHz);δ4.72(m、1H、-COOCH-)、4.52(m、1H、COO-CH-)、4.12(q、2H、J=8Hz、COO-CH
2-)、2.31(t、2H、J=8Hz、CO-CH
2-)、2.08~0.86(m、27H、alkyl)、0.79(d、6H、J=8Hz、-CH
3)(
図5、
図6)
【0075】
(3-3)5-(メンチルカルボニルオキシ)デカン酸[5-(Mentylcarbonyloxy)decanoic acid、4c]の合成
エチル5-(メンチルカルボニルオキシ)デカノエート(3c、2.7g(6.8mmol)をTHF20mL及び蒸留水10mLに溶かし、水酸化リチウム一水和物0.42g(10.2mmol、1.5eq.)を入れて室温で12時間反応させた。蒸留水10mLを追加し、エーテルで抽出した。水層に濃塩酸を入れてpH3に調整した後、エチルアセテートで抽出した。有機層を塩水で洗浄した後、MgSO
4で乾燥し、減圧濃縮して2.1g(収率78%)の目的物4cを黄色液体として得た。
1H NMR(CDCl
3、400.13MHz);δ4.72(m、1H、-COOCH-)、4.51(td、1H、J=8、4Hz、COO-CH-)、4.11(q、2H、J=8Hz、COO-CH
2-)、2.38(m、2H、CO-CH
2-)、2.06~0.78(m、33H、alkyl)(
図7、
図8)
【0076】
(3-4)ソジウム5-(メンチルカルボニルオキシ)デカノエート[5-(Mentylcarbonyloxy)decanoate、5c]の合成
5-(メンチルカルボニルオキシ)デカン酸(5-(Mentylcarbonyloxy)decanoic acid、4c、7.5mmol)を95%エタノール20mLに溶かし、98%NaOH0.29g(0.95eq.)を入れて室温で2時間撹拌した。Azotrope現象を用いて水とエタノールを飛ばし、トルエンを追加して水を除去した後、ヘキサン、エチルアセテートを入れて濾過して白色固体を得た。
【0077】
4.ソジウム(4-メンチルカルボニルオキシ)ウンデカノエート[Sodium(4-mentylcarbonyloxy)undecanoate、5d]の合成
[スキーム4]
【化41】
(4-1)エチル4-ヒドロキシウンデカノエート[Ethyl 4-hydroxyundecanoate、2d]の合成
γ-ウンデカラクトン10g(γ-Undecalactone、54.2mmol)をメタノール50mLに溶かし、撹拌しながらKOH3.9g(56.9mmol、1.05eq.)を徐々に入れて室温で12時間反応させた。反応液を減圧濃縮させた後、DMF50mLを入れて撹拌しながらブロモエタン(bromoethane)5.9g(54.2mmol、1eq.)を入れて12時間反応させた。反応液に水80mLを入れてエチルアセテート(ethylacetate)で抽出した後、水と塩水で洗浄した。有機層をMgSO
4で乾燥した後、減圧濃縮して10.7g(85.6%、2steps)の目的物2dを得た。
1H NMR(CDCl
3、400.13MHz);δ4.12(q、2H、J=8Hz、COO-CH
2-)、3.59(m、1H、CH-O)、2.43(m、2H、CO-CH
2)、1.81~0.92(m、20H、alkyl)](
図9、
図10)
【0078】
(4-2)エチル4-(メンチルカルボニルオキシ)ウンデカノエート]Ethyl 4-(mentylcarbonyloxy)undecanoate、3d]の合成
エチル4-ヒドロキシウンデカノエート(Ethyl 4-hydroxyundecanoate、2d)11g(47.7mmol)をTHF60mLに溶かし、ピリジン(pyridine)6.8g(95.5mmol、2eq.)を入れて氷水で冷却し、撹拌しながら、メンチルクロロホルメート(mentyl chloroformate)10.5g(47.7mmol、1eq.)THF20mL溶液をゆっくり滴下した。1時間後、反応液を室温まで上げ、一晩反応させた後、水を入れてエチルアセテート(ethylacetate)で抽出した。有機層をそれぞれ希塩酸、炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)飽和溶液及び塩水で洗浄した後、MgSO
4で乾燥し、減圧濃縮して8.3g(収率42.1%)の目的物3dを黄色液体として得た。
1H NMR(CDCl
3、400.13MHz);δ4.74(7tet、1H、J=4Hz、-COOCH-)、4.51(td、1H、J=9、4Hz、COO-CH-)、4.12(q、2H、J=8Hz、COO-CH
2-)、2.36(m、2H、CO-CH
2-)、1.93~0.79(m、23H、alkyl)(
図11)
【0079】
(4-3)4-(メンチルカルボニルオキシ)ウンデカン酸[4-(Mentylcarbonyloxy)undecanoic acid、4d]の合成
エチル4-(メンチルカルボニルオキシ)ウンデカノエート(Ethyl 4-(mentylcarbonyloxy)undecanoate)(3d)8.3g(19.4mmol)をTHF30mL及び蒸留水20mLに溶かし、水酸化リチウム一水和物(lithium hydroxide monohydrate)1.2g(29.1mmol、1.5eq.)を入れて室温で12時間反応させた。蒸留水20mLを追加し、エーテルで抽出した。水層に濃塩酸を入れてpH3に調整した後、エチルアセテートで抽出した。有機層を塩水で洗浄した後、MgSO
4で乾燥し、減圧濃縮した。混合物をヘキサン(n-hexane)とエチルアセテート混合溶媒(8:1)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーして6.8g(収率91.8%)の目的物4dを得た。
1H NMR(CDCl
3、400.13MHz);δ4.75(m、1H、-COOCH-)、4.51(m、1H、COO-CH-)、2.43(m、2H、CO-CH
2-)、2.17~0.78(m、35H、alkyl)(
図12、
図13)
【0080】
(4-4)ソジウム(4-メンチルカルボニルオキシ)ウンデカノエート[Sodium 4-(Mentylcarbonyloxy)undecanoate、5d]の合成
4-(メンチルカルボニルオキシ)ウンデカン酸(4-(Mentylcarbonyloxy)undecanoic acid、4d)2.5g(7.5mmol)を95%エタノール20mLに溶かし、98%NaOH0.29g(0.95eq.)を入れて室温で2時間撹拌した。Azotrope現象を用いて水とエタノールを飛ばし、トルエンを追加して水を除去した後、ヘキサン(n-hexane)、エチルアセテートを入れて濾過して白色固体を得た。
【0081】
5.ソジウム4-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)ウンデカノエート[sodium 4-(Benzyloxycarbonyloxy)undecanoate、5e]の合成
[スキーム5]
【化42】
(5-1)エチル4-ヒドロキシウンデカノエート[Ethyl 4-hydroxyundecanoate、2d]の合成
γ-ウンデカラクトン10g(54.2mmol)をメタノール50mLに溶かし、撹拌しながらKOH3.9g(56.9mmol、1.05eq.)を徐々に入れて室温で12時間反応させた。反応液を減圧濃縮させた後、DMF50mLを入れて撹拌しながらブロモエタン5.9g(54.2mmol、1eq.)を入れて12時間反応させた。
反応液に水80mLを入れてエチルアセテートで抽出した後、水と塩水で洗浄した。有機層をMgSO
4で乾燥した後、減圧濃縮して10.7g(85.6%、2steps)の目的物2dを得た。
1H NMR(CDCl
3、400.13MHz);δ4.12(q、2H、J=8Hz、COO-CH
2-)、3.59(m、1H、CH-O)、2.43(m、2H、CO-CH
2)、1.81~0.92(m、20H、alkyl)
【0082】
(5-2)エチル4-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)ウンデカノエート[Ethyl 4-(benzyloxycarbonyloxy)undecanoate、3e]の合成
エチル4-ヒドロキシウンデカノエート(2d)8.3g(36mmol)をTHF50mLに溶かし、ピリジン5.5g(72.3mmol、2eq.)を入れて氷水で冷却し、撹拌しながら、クロロギ酸ベンジル(benzylchloroformate)6.1g(35.3mmol、1eq.)THF20mL溶液をゆっくり滴下(dropping)した。1時間後、反応液を室温まで上げ、一晩反応させた後、水を入れてエチルアセテートで抽出した。有機層をそれぞれ希塩酸、炭酸水素ナトリウム飽和溶液及び塩水で洗浄した後、MgSO
4で乾燥し、減圧濃縮して9.9g(収率75.6%)の目的物3eを黄色液体として得た。
1H NMR(CDCl
3、400.13MHz);δ7.37~7.34(m、5H、ph)、5.14(m、2H、O-CH
2-Ph)、4.12(brs、1H、O-CH-)、2.42(m、2H、CO-CH
2-)、1.90~0.79(m、21H、alkyl)(
図14)
【0083】
(5-3)4-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)ウンデカン酸[4-(Benzyloxycarbonyloxy)undecanoic acid、4e]の合成
エチル4-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)ウンデカノエート(3e)10g(27.5mmol)をTHF30mL及び蒸留水20mLに溶かし、水酸化リチウム一水和物1.7g(41.4mmol、1.5eq.)を入れて室温で12時間反応させた。蒸留水20mLを追加し、エーテルで抽出した。水層に濃塩酸を入れてpH3に調整した後、エチルアセテートで抽出した。有機層を塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮して8.2g(収率89%)の目的物4eを得た。
1H NMR(CDCl3、400.13MHz);δ7.37~7.35(m、5H、ph)、5.14(m、2H、O-CH2-Ph)、4.48(m、1H、O-CH-)、2.47(m、2H、CO-CH2-)、1.90~0.79(m、21H、alkyl)
【0084】
(5-4)ソジウム4-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)ウンデカノエート[sodium 4-(Benzyloxycarbonyloxy)undecanoate、5e]の合成
4-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)ウンデカン酸[4-(Benzyloxycarbonyloxy)undecanoic acid、4e、2.5g(7.5mmol)を95%エタノール20mLに溶かし、98%NaOH0.29g(0.95eq.)を入れて室温で2時間撹拌した。Azotrope現象を用いて水とエタノールを飛ばし、トルエンを追加して水を除去した後、ヘキサン(n-hexane)、エチルアセテートを入れて濾過して白色固体を得た。
【0085】
実験例
5d化合物(2B)が熱に露出時、熱的特性(pyrolytic behavier)を確認するために熱分解実験を進行し、これは通常知られている熱分解-ガスクロマトグラフィー/質量分析(Pyrolysis-Gas Chromatography/Mass Spectrometry[Py-GC/MS])方法によって観察した。熱分解装備(Pyrolyzer)は、『Double-Shot Pyrolyzer 2020iD』(Frontier Lab、Japan)をGC/MS(Agilent 6890 GC、USA/Aginelt 7890 MSD、USA)装備に連結されているシステムで行った。2Bをエチルアルコール(Ethyl alcohol)溶液に2.5%濃度に希釈した後、pyrolyzer sample cupに10ulローディングした後、熱分解させた。熱分解温度はDouble-Shot Pyrolyzerの高炉(Furnace)の温度を指定してサンプルが受ける温度を調節したが、最初の熱分解温度は80℃で30秒間サンプルが置かれたサンプルカップを高炉に露出させ、サンプルカップ内のターゲット化合物(2B)が熱分解を受けるようにした。熱によって生成、あるいは熱によって揮発された成分は、すぐにGC/MSの注入口(Injector)に注入され、分離(separation)された。熱分解後、GC/MS分析される間、サンプルカップを高炉から出して熱分解温度の影響を受けないようにし、最初の熱分解によるGC/MS分析の終了後、最初に使用されたサンプルカップに新たに化合物を注入せずに再び熱分解を受けるようにしたが、このとき、熱分解温度は10℃高い90℃で30秒間熱分解を受けるようにした。やはり熱分解が終わった後、サンプルカップを高炉から出して、熱分解温度の影響を受けないようにした。このような方式で、最初の試料をサンプルカップにローディングした後、熱分解させる際の温度は80℃、90℃、100℃から最終的には320℃まで昇温しながら熱分解実験を行った。その結果、熱分解温度が高くなって受ける化合物の熱分解特性を温度帯別に分割して考察することができた。その結果は
図15及び
図16に示した。
[分解メカニズム]
【化43】
【0086】
図15及び
図16において、[2B]化合物は熱分解実験結果、約120℃の温度でメントール及びガンマ-ウンデカラクトンが分解されることを確認することができた。
【0087】
すなわち、前記分解メカニズムでラクトン[1B、ガンマ-ウンデカラクトン]を開環(ring-opening)し、ヒドロキシル基をカーボネート連結基(carbonate linkage)でL-メントールと共有結合させて[2B]化合物を製造した。[2B]化合物が製品マトリックスに適用した後、熱によってL-メントール([3B])とCO2が生成され、ヒドロキシル基が露出した[4B]化合物が生成される。[4B]化合物はまた、熱によって閉環(ring-closing、intramolecular esterification)され、ガンマ-ウンデカラクトン[5B]が生成される。[2B]状態でヒドロキシル基がメンチルカーボネート基(Menthyl carbonate group)で保護され、常温では閉環(ring-closing、intramolecular esterification)が発生することを抑制し得る。[2B]化合物の熱分解パターンをみると、120℃から260℃の温度に至る間、メントールが熱分解され発現し、ガンマ-ラクトンは120℃から200℃に至る間、一次発現し、続いて200℃から300℃に至る間、二次発現が豊富になる。おそらく保護基(protecting group)として活用したメントールが熱によってdeprotectingされて発現しても、[4B]形態の化合物状態、すなわち中間状態(intermediate)でしばらく存在するようである。結局は、分子間エステル化反応(intramoleculat esterification)によってラクトンが生成されるが、塩(Salt form)状態ではこのような閉環(ring-closing)が遅延(retardation)され得る。また、熱分解実験結果、温度が高くなるにつれてメントールが熱分解されて発現し、salt形態の[4B]状態のとき、より高い高温で分子間エステル化反応(intramoleculat esterification)が生じ、ラクトン[5B]が生成された。すなわち、メントールが熱分解される温度帯と時間差を置いて、高い温度帯で残りの熱分解(Ring-Closing)が起こることが分かった。
【0088】
実施例2
製造例の目的物(合成されたソジウム(4-メンチルカルボニルオキシ)ヘプタノエート、5a、1重量%)、水(40重量%)、牛乳(10重量%)及び小麦粉(49重量%)を混合し、混練してドウを製造し、電気オーブンにより200℃で1時間加熱してベーキングした。オーブンから取り出した後、臭いを嗅いで香味(例えば、目的物の合成に使用されたラクトン香及びメントール香)が発現することを確認した。
【0089】
実施例3
製造例の目的物(合成されたソジウム5-(メチルカルボニルオキシ)デカノエート、5c、0.01~5重量%)、ベース基質(パルプ、95~99重量%)及びその他の添加剤(残量)を混合後にロールツーロールを用いてシート(2mm厚さ)で製造し、常温で乾燥した。前記シートは室温で臭いを嗅いでみたが、目的物の合成に使用された香料化合物の臭いはなかった。次に、前記シートは、シガレットタバコのシガレット紙に適用して通常的なシガレットタバコで作製し、タバコを吸煙し、喫煙中の香味(例えば、目的物の合成に使用されたラクトン香及びメントール香)が発現することを確認した。
【0090】
実施例4
製造例の目的物(合成されたソジウム(4-メンチルカルボニルオキシ)ウンデカノエート、5d、0.003~0.02重量%)、タバコ粉末(tobacco powder、90~99重量%、0.03mm~約0.12mmの平均粒子径)及びその他の添加剤(残量)を混合した後、通常的な方法でタバコ組成物を製造した。前記タバコ組成物を喫煙媒質に適用し、シガレット紙を包んでラッピングした後、フィルター及び巻紙を構成して通常的なシガレットタバコを製造した。シガレットタバコを吸煙し、主流煙と副流煙で喫煙中の香味が発現することを確認した。
【0091】
以上のように、実施例が限られた実施例と図面によって説明されたが、該当技術分野における通常の知識を有する者であれば、上記の記載から様々な修正及び変形が可能である。例えば、説明された技術が説明された方法とは異なる順序で実行、及び/又は説明された構成要素が説明された方法とは異なる形態で結合又は組み合わせられる、あるいは、他の構成要素又は均等物によって代替又は置き換えられても、適切な結果が達成できる。したがって、他の実施形態、他の実施例、及び特許請求の範囲と均等なものも、後述する特許請求の範囲に属する。
【国際調査報告】