(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】SARS-COV-2 スパイクタンパク質の受容体結合ドメインにコンジュゲートまたは融合している抗体およびワクチン目的でのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20231221BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231221BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231221BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20231221BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231221BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231221BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231221BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231221BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231221BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231221BHJP
C07K 14/015 20060101ALI20231221BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231221BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231221BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231221BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231221BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20231221BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/015
A61K47/68
A61P31/14
A61P37/04
A61K39/395 L
A61K39/395 U
A61K39/395 N
A61K39/00 G
A61K39/215
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528270
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2021081303
(87)【国際公開番号】W WO2022101302
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(71)【出願人】
【識別番号】509004712
【氏名又は名称】ベイラー リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR RESEARCH INSTITUTE
(71)【出願人】
【識別番号】518322621
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・エ・クレテイユ・ヴァル・ドゥ・マルヌ
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イヴ、レヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール、ジュラフスキ
(72)【発明者】
【氏名】ミレイユ、セントリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ、ジュラフスキ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェロニク、ゴドー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA45
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC06
4C076CC07
4C076CC35
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BA71
4C085BB31
4C085CC23
4C085CC32
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA31
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
SARS-CoV-2ワクチンは、罹患率および死亡率を減らすために不可欠である。本発明らは、重鎖がワクチンとしての使用のためにSars-Cov-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメインにコンジュゲートされた抗原提示細胞(すなわち、樹状細胞)の表面抗原(すなわち、CD40)に対する抗体を生産した。特に、本発明者らは、前記ワクチンが循環Ab分泌hu-B細胞を誘導し、S特異的IgG+ hu-B細胞を惹起し、セントラルメモリーCD4+ hu-T細胞の拡大およびエフェクターメモリーCD4+ T細胞の出現を惹起し、セントラルメモリーCD8+ hu-T細胞の拡大およびエフェクターメモリーCD8+ T細胞の出現を惹起し、最終的にメモリーhu-CD8+ T細胞のような幹細胞を誘導することを示す。よって、本発明は、重鎖および/または軽鎖がSars-Cov-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメインにコンジュゲートまたは融合している、抗原提示細胞の表面抗原に対する抗体に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その重鎖および/または軽鎖が配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している、抗原提示細胞の表面抗原に対する抗体。
【請求項2】
前記RBDポリペプチドが、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸からなる、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記RBDポリペプチドが、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、C538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなる、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記RBDポリペプチドが、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、C538S非天然突然変異とK417N、K417T、E484KおよびN501Y変異からなる群から選択される1以上の天然突然変異を含むアミノ酸からなる、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記RBDポリペプチドが、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417T、E484K、N501Y天然突然変異および非天然突然変異C538S変異を含むアミノ酸からなる、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
前記RBDポリペプチドが、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417N、E484K、N501Y天然突然変異およびC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなる、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
前記RBDポリペプチドが、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417N、E484Q、N501Y天然突然変異および非天然突然変異C538S変異を含むアミノ酸からなる、請求項1に記載の抗体。
【請求項8】
前記RBDポリペプチドが、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417T、E484Q、N501Y天然突然変異および非天然突然変異C538S変異を含むアミノ酸からなる、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
前記RBDポリペプチドが、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417N、L452R、T478K、E484K、N501Y天然突然変異および非天然突然変異C538S変異を含むアミノ酸からなる、請求項1に記載の抗体。
【請求項10】
前記RBDポリペプチドが、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417N、L452R、T478K、E484Q、N501Y天然突然変異およびC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなる、請求項1に記載の抗体。
【請求項11】
抗体の重鎖がRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項12】
抗体の軽鎖がRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項13】
抗体の重鎖および軽鎖がRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項14】
重鎖が、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、C538S変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドに融合または縮合され、軽鎖が、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417N、E484K、N501YおよびC538S変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項15】
軽鎖が、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、C538S変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドに融合または縮合され、重鎖が、配列番号1の319番のアミノ酸残基から541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、K417N、E484K、N501YおよびC538S変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項16】
IgG抗体、好ましくはIgG1もしくはIgG4抗体、またはいっそうより好ましくはIgG4抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項17】
キメラ抗体、特に、キメラマウス/ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項18】
DC免疫受容体(DCIR)、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF-44、CMRF-56、DCIR、DC-ASPGR、CLEC-6、CD40、BDCA-2、MARCO、DEC-205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN-1、B7-1、B7-2、IFN-?受容体およびIL-2受容体、ICAM-1、Fey受容体、LOX-1、およびASPGRと特異的に結合する抗体から選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項19】
CD40に特異的である、請求項1に記載の抗体。
【請求項20】
-12E12抗体に由来し、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含み、CDR1Hはアミノ酸配列GFTFSDYYMY(配列番号2)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列YINSGGGSTYYPDTVKG(配列番号3)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列RGLPFHAMDY(配列番号4)を有する重鎖と、
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含み、CDR1Lはアミノ酸配列SASQGISNYLN(配列番号5)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列YTSILHS(配列番号6)を有し、CDR3Lはアミノ酸配列QQFNKLPPT(配列番号7)を有する軽鎖
を含むか、または
-11B6抗体に由来し、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含み、CDR1Hはアミノ酸配列GYSFTGYYMH(配列番号8)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列RINPYNGATSYNQNFKD(配列番号9)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列EDYVY(配列番号10)を有する重鎖と、
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含み、CDR1Lはアミノ酸配列RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号11)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列KVSNRFS(配列番号12)を有し、CDR3Lはアミノ酸配列SQSTHVPWT(配列番号13)を有する軽鎖
を含むか、または
-12B4抗体に由来し、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含み、CDR1Hはアミノ酸配列GYTFTDYVLH(配列番号14)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列YINPYNDGTKYNEKFKG(配列番号15)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列GYPAYSGYAMDY(配列番号16)を有する重鎖と、
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含み、CDR1Lはアミノ酸配列RASQDISNYLN(配列番号17)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列YTSRLHS(配列番号18)を有し、CDR3Lはアミノ酸配列HHGNTLPWT(配列番号19)を有する軽鎖
を含む、請求項19に記載の抗体。
【請求項21】
前記抗CD40抗体が表Aに記載された、選択されたmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5およびmAb6からなる群から選択される、請求項19に記載の抗体。
【請求項22】
CD40アゴニスト抗体である、請求項19に記載の抗体。
【請求項23】
CD40アゴニスト抗体の重鎖または軽鎖(すなわち、RBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合していない鎖)がCD40LのCD40結合ドメイン(配列番号47)にコンジュゲートまたは融合している、請求項22に記載の抗体。
【請求項24】
CD40LのCD40結合ドメインが、場合によりリンカー、好ましくはFlexV1リンカーを介して前記CD40アゴニスト抗体の軽アミノ酸の軽鎖または重鎖のC末端に融合している、請求項23に記載の抗体。
【請求項25】
抗体の重鎖がRBDポリペプチドに融合または縮合され、軽鎖がCD40LのCD40結合ドメイン(配列番号44)にコンジュゲートまたは融合している、請求項23に記載の抗体。
【請求項26】
ランゲリンに特異的である、請求項1に記載の抗体。
【請求項27】
-15B10抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖と、15B10抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖、または
-2G3抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖と、2G3抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖、または
-4C7抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖と、4C7抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖
を含む、請求項26に記載の抗体。
【請求項28】
表Bに記載された、選択されたmAb7、mAb8、mAb9、mAb10、mAb11およびmAb12からなる群から選択される、請求項26に記載の抗体。
【請求項29】
重鎖および/または軽鎖がFlexV1、f1、f2、f3およびf4からなる群から選択されるリンカーを介してRBDポリペプチドに融合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項30】
i)RBDポリペプチドに融合して配列番号42に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)配列番号43に示される軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項31】
i)RBDポリペプチドに融合して配列番号42に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号44に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項32】
i)RBDポリペプチドに融合して配列番号45に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号46に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項33】
i)RBDポリペプチドに融合して配列番号42に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号48に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項34】
i)RBDポリペプチドに融合して配列番号49に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号46に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項35】
i)RBDポリペプチドに融合して配列番号42に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号50に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項36】
i)RBDポリペプチドに融合して配列番号51に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号46に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項37】
i)RBDポリペプチドに融合して配列番号42に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号52に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項38】
i)RBDポリペプチドに融合して配列番号53に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号46に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項39】
請求項1に記載の抗体の重鎖および/または軽鎖をコードする、核酸。
【請求項40】
請求項37の核酸を含む、ベクター。
【請求項41】
請求項39に記載の核酸および/または請求項40に記載のベクターによりトランスフェクト、感染または形質転換された、宿主細胞。
【請求項42】
請求項1に記載の抗体を含む、ワクチン組成物。
【請求項43】
治療上有効な量の請求項1に記載の抗体を投与することを含む、必要とする対象にSARS-Cov 2に対するワクチン接種を行うための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、特に、ウイルス学およびワクチン学の分野にある。
【背景技術】
【0002】
2019年12月に中国の武漢で始まった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、世界の健康への脅威を誘発した。2020年3月11日、WHOはCOVID-19をパンデミックと宣言した。その急速さ、世界的な拡散速度、見られた死亡率の上昇は、公衆衛生、社会経済および科学的な課題を提起している。非常に活発に拡散していると思われ、2020年5月10日現在、185を超える国々で感染が認められ、410万人を超える患者が確認され、28万人を超える死者が出ている。SARS-CoV-2は、軽度の上気道疾患に似た臨床病理(感冒様症状)、時には重度の下気道疾患を呈する呼吸器症候群および多臓器不全および死に至る肺外症状を引き起こす。本パンデミックは、2002年の死亡率10%のSARS-CoV、2012年の死亡率36%のMERS-CoVを含む複数の高病原性ヒトコロナウイルス感染に続くものである。治療法もワクチンもない。しかし、このウイルスが集団に定着した場合、罹患率および死亡率を減らすためにSARS-CoV-2ワクチンが不可欠となる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は特許請求の範囲により定義される。特に、本発明は、重鎖および/または軽鎖がSars-Cov-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメインにコンジュゲートまたは融合している、抗原提示細胞の表面抗原に対する抗体に関する。
【発明の具体的説明】
【0004】
定義:
本明細書で使用する場合、用語「対象」または「それを必要とする対象」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物を意図する。一般に、患者は、SARS-Cov-2に罹患しているか、感染している可能性がある。
【0005】
本明細書で使用する場合、用語「コロナウイルス」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、コロナウイルス科のメンバーのいずれのメンバーも指す。コロナウイルスは、ゲノムが特定のウイルスによって約27kb~約33kb長のプラス鎖RNAであるウイルスである。ビリオンRNAは、5’末端にキャップを、3’末端にポリAテールを有する。このRNAの長さから、コロナウイルスはRNAウイルスゲノムの中で最大である。特に、コロナウイルスのRNAは、(1)RNA依存性RNAポリメラーゼ、(2)Nタンパク質、(3)3つのエンベロープ糖タンパク質、および(4)3つの非構造タンパク質をコードしている。これらのコロナウイルスは、様々な哺乳動物および鳥類に感染する。コロナウイルスは、呼吸器感染症(一般的)、腸管感染症(主に12か月を超える乳児)、および可能性として神経症候群を引き起こす。コロナウイルスは、呼吸器分泌物のエアロゾルによって伝播する。
【0006】
本明細書で使用する場合、用語「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2」または「SARS-Cov-2」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、軽度の上気道疾患に似た臨床病理(感冒様症状)、時には重度の下気道疾患を呈する呼吸器症候群および多臓器不全および死に至る肺外症状であるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)を引き起こすコロナウイルス株を指す。特に、この用語は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2分離株2019-nCoV_HKU-SZ-005b_2020を指し、その完全なゲノムは、NCBI受託番号MN975262として入手可能である。
【0007】
本明細書で使用する場合、用語「Covid-19」は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2により引き起こされる呼吸器系疾患を指す。
【0008】
本明細書で使用する場合、用語「無症候性」は、コロナウイルス感染の検出可能な症状を示さない対象を指す。本明細書で使用する場合、用語「症候性」は、コロナウイルス感染の検出可能な症状を示す対象を指す。コロナウイルス感染の症状には、倦怠感、嗅覚消失、頭痛、咳嗽、発熱、呼吸障害が含まれる。
【0009】
本明細書で使用する場合、用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書では互換的に使用され、いずれの長さのアミノ酸ポリマーも指す。これらの用語にはまた、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、または標識成分のコンジュゲーションなど、改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。遺伝子療法に関して述べられる場合、ポリペプチドは、個々の完全なポリペプチド、または完全なタンパク質の所望の生化学的機能を保持するその任意の断片もしくは遺伝的に操作された誘導体を指す。
【0010】
本明細書で使用する場合、用語「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはその類似体を含め、任意の長さのポリマー形態のヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含でよく、非ヌクレオチド成分が挿入されていてもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造の修飾は、ポリマーアセンブリの前後に付与され得る。用語ポリヌクレオチドは、本明細書で使用する場合、互換的に二本鎖および一本鎖分子を指す。特に断りのない限りまたは必要とされない限り、ポリヌクレオチドである、本明細書に記載の本発明のいずれの実施形態も、二本鎖形態と二本鎖形態を構成することが知られているまたは予測される2つの相補的一本鎖形態のそれぞれの両方を包含する。
【0011】
本明細書で使用する場合、「から誘導される」という表現は、第1の成分(例えば、第1のポリペプチド)、またはその第1の成分からの情報を使用して異なる第2の成分(例えば、第1の成分とは異なる第2のポリペプチド)を単離、誘導または作製するプロセスを意味する。
【0012】
本明細書で使用する場合、2配列間の「同一性パーセント」は、配列が共有する同一の位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置総数×100)であり、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮する。配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定は、以下に記載するように、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunschのアルゴリズム(Needleman, Saul B. & Wunsch, Christian D. (1970) "A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins". Journal of Molecular Biology. 48 (3): 443-53)を用いて決定することができる。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントはまた、例えばEMBOSS Needle(ペアワイズアライメント;www.ebi.ac.ukで入手可能)などのアルゴリズムを使用して決定することもできる。例えば、EMBOSS Needleは、BLOSUM62マトリックス、ギャップオープンペナルティ10、ギャップエクステンドペナルティ0.5、エンドギャップペナルティ フォールス、エンドギャップオープンペナルティ10、エンドギャップエクステンドペナルティ0.5で使用され得る。一般に、「同一性パーセント」は、一致する位置の数を比較した位置の数で割って100を乗じた関数である。例えば、アライメント後に比較した2つの配列間で、10個の配列位置のうち6個が同一である場合、同一性は60%である。同一性%は、通常、解析が行われたクエリー配列の全長にわたって決定される。同じ一次アミノ酸配列または核酸配列を有する2つの分子は、化学的および/または生物学的修飾に関係なく、同一である。本発明によれば、第2のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する第1のアミノ酸配列は、第1の配列が第2のアミノ酸配列と90;91;92;93;94;95;96;97;98;99または100%の同一性を有することを意味する。
【0013】
本明細書で使用する場合、用語「突然変異」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、置換、欠失または挿入を指す。特に、用語「置換」は、特定の位置の特定のアミノ酸残基が除去され、同じ位置に別のアミノ酸残基が挿入される。本明細書において、突然変異は標準的な突然変異の命名法に従って参照される。特に、用語「突然変異」は、「自然突然変異」および「非自然突然変異」を包含する。
【0014】
本明細書で使用する場合、用語「天然突然変異」は、SARS-CoV-2ポリペプチドの天然変異体に見出され得るいずれの突然変異も指し、それには一般に、B.1.1.7系統(別名20I/501Y.V1 Variant of Concern(VOC) 202012/01)、B.1.351系統(別名20H/501Y.V2)およびP.1系統(別名20J/501Y.V3)が含まれる。前記突然変異は、当該技術分野において周知であり、参照により組み込まれる以下の参考文献に記載されているものを含む。
【0015】
例えば、突然変異N501Yは、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内の非同義突然変異で、3つのSARS-CoV-2系統B.1.1.7、P.1(別名20J/501Y.V3)および501Y.V2がそれぞれイングランド南東部、ブラジル/日本および南アフリカで初めて同定された。それはRBD内の重要な接触残基の1つであり、ヒトおよびマウスACE2への結合親和性を高めることが確認されている。Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内のE484K変異は、南アフリカおよびブラジルの新系統501Y.S2およびB.1.1.28にそれぞれ存在し、多くの中和抗体の結合に重要であることが示されているRBD内の残基に影響を与える。Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内のE484Q変異は、それぞれインドおよびデンマークからの新系統B.1.617およびB.1.429に存在し、RBD内の同じ残基に影響を与える。研究により、系統B.1.617、B1.427およびB1.429のL452R変異は、スパイクタンパク質とそのヒトACE2受容体の間の相互作用を安定させ、それによってウイルスの感染性を高め得ることが示唆された。従って、この突然変異は抗体認識に影響を与え、SARS-CoV-2の免疫逃避を可能にする。この突然変異を有するウイルスは、人の回復期血清中の抗体による認識を逃れることが示されており、従って、ワクチンの有効性を変える可能性がある(例えば、Allison J. Greaney, Andrea N. Loes, Katharine H.D. Crawford, Tyler N. Starr, Keara D. Malone, Helen Y. Chu, Jesse D. Bloom, bioRxiv 2020.12.31.425021参照)。他にもいくつかの変異が発見されている。S1タンパク質の変異K417N、K417T、V367F、N354D、W436RまたはV483A、T478Kは、ACE2とより高い親和性で結合することが示されている。V483AおよびG476S変異は、これまでにMERSおよびSARS-CoVの研究において、ヒトの受容体結合親和性に関係することが報告されている。一方、R408Iは、潜在的にACE2結合親和性を低下させる。従って、本発明によれば、主な天然突然変異としては、配列番号1の417番のアミノ酸残基(K)がアミノ酸残基(N)に置換されている配列番号1のK417N変異、配列番号1の484番のアミノ酸(K)がアミノ酸(T)に置換されている配列番号1のK417T変異、配列番号1の484番のアミノ酸残基(E)がアミノ酸残基(K)に置換されている配列番号1のE484K変異、484番位のアミノ酸残基(E)がアミノ酸残基(Q)に置換されている配列番号1のE484Q変異、配列番号1の452番のアミノ酸残基(L)がアミノ酸残基(R)で置換されている配列番号1のL452R変異、478位のアミノ酸残基(T)がアミノ酸残基(K)で置換されている配列番号1のT478K変異、および配列番号1の501番のアミノ酸残基(N)がアミノ酸残基(Y)で置換されている配列番号1のN501Y変異が挙げられる。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「非天然突然変異」は、本発明のポリペプチドに遺伝的に挿入されたいずれの突然変異も指す。特に、前記突然変異は、ポリペプチドの生産を容易にするために挿入される。例えば、前記突然変異には、配列番号1の538番のアミノ酸残基(C)がアミノ酸残基(S)で置換されている配列番号1の突然変異C538Sが含まれる。前記突然変異は、本発明のポリペプチド内でジスルフィド結合ができることを避けるのに特に好適である。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「コードする」は、例えば遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチドにおけるヌクレオチドの特定の配列が、ヌクレオチド(例えば、rRNA、tRNAおよびmRNA)の規定配列またはアミノ酸の規定配列およびそこから生じる生物学的特性のいずれかを有する生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として働く固有の特性を指す。従って、遺伝子、cDNA、またはRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物系でタンパク質を産生する場合に、タンパク質をコードする。コード鎖(そのヌクレオチド配列はmRNA配列と同一であり、通常配列表で提供される)と非コード鎖(遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される)の両方は、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の生成物をコードするということができる。特に指定がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重型であり、かつ同一のアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。「タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列」という句は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が一部の変種でイントロンを含む可能性がある限り、イントロンも含み得る。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」は、DNAまたはRNA配列(例えば、外来遺伝子)が、宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば、転写および翻訳)を促進するために宿主細胞に導入可能とするビヒクルを意味する。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「プロモーター/調節配列」は、「プロモーター/調節配列」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特定の転写を開始し、それによってプロモーター/調節配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現を可能にするために必要な、細胞の合成装置、または導入された合成装置によって認識される核酸配列(例えば、DNA配列)を指す。ある実施態様では、この配列はコアプロモーター配列であってもよく、他の例では、この配列は、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列および他の調節要素も含み得る。プロモーター/調節配列は、例えば、遺伝子産物を組織特異的に発現させるものであり得る。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「作動可能に連結される」または「転写制御」は、異種核酸配列の発現をもたらす調節配列と異種核酸配列の機能的連結を指す。例えば、第1の核酸配列は、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合に、第2の核酸配列と機能的に連結されている。例えば、プロモーターは、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を与える場合に、コード配列と機能的に連結されている。機能的に連結されたDNA配列は互いに連続することができ、例えば、2つのタンパク質コード領域が連結している必要があれば、同じリーディングフレームにある。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「形質転換」は、宿主細胞が導入された遺伝子または配列を発現して目的物質、一般には、導入された遺伝子または配列によりコードされているタンパク質または酵素を産生するように、宿主細胞に「外来」(すなわち、固有または細胞外)遺伝子、DNAまたはRNA配列を導入することを意味する。導入されたDNAまたはRNAを受容し、発現する宿主細胞は、「形質転換」されている。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「発現系」は、例えばベクターによって運ばれ、宿主細胞に導入された外来DNAにコードされたタンパク質の発現のための、好適な条件下の宿主細胞および適合ベクターを意味する。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「スパイクタンパク質」または「プロテインS」は、その細胞受容体(すなわち、ACE2)に結合し、膜融合とウイルス侵入を仲介するSARS-Cov-2スパイク糖タンパク質を指す。3量体であるSタンパク質の各単量体は約180kDaで、それぞれ付着と膜融合を仲介するS1とS2の2つのサブユニットを含む。特に、スパイクタンパク質S1は、「RBD」とも呼ばれる「受容体結合ドメイン」を介して宿主受容体(すなわち、ヒトACE2受容体)と相互作用することにより、ビリオンを細胞膜に付着させる。スパイクタンパク質S2は、クラスIウイルス融合タンパク質として機能することにより、ビリオンと細胞膜の融合を仲介する。現在のモデルでは、このタンパク質は、融合前の天然状態、プレヘアピン中間状態、および融合後ヘアピン状態という少なくとも3つの立体配座状態を持っている。ウイルスと標的細胞膜の融合の際に、コイルドコイル領域(ヘプタッドリピート)がヘアピン3量体構造をとり、融合ペプチドがエクトドメインのC末端領域に近接して位置する。この構造の形成により、ウイルス膜と標的細胞膜の付着とそれに続く融合が促進されると思われる。スパイクタンパク質S2’はウイルス融合ペプチドとして機能し、ウイルスのエンドサイトーシスの際に起こるS2切断の後にこのマスクが解除される。一般に、スパイクタンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。
【化1】
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「RBDポリペプチド」は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドを指す。
【0025】
いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸からなる。
【0026】
いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ、1以上の非天然突然変異を含むアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ538番に非天然突然変異を含むアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつC538S変異を含むアミノ酸からなる。
【0027】
いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ1以上の天然突然変異を含むアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつ417、452、478、484または501番に1以上の天然突然変異を含むアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、K417T、E484KおよびN501Y変異からなる群から選択される位置に1以上の天然突然変異を含むアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、K417T、L452R、T478K、E484Q、E484KおよびN501Y変異からなる群から選択される位置に1以上の天然突然変異を含むアミノ酸からなる。
【0028】
いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつN501Y天然突然変異およびC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなる。
【0029】
いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417T、E484K、N501Y天然変異および非天然突然変異C538S変異を含むアミノ酸からなる。
【0030】
いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、E484K、N501Y天然突然変異および非天然C538S突然変異を含むアミノ酸からなる。
【0031】
いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417T、E484Q、N501Y天然突然変異および非天然突然変異C538S変異を含むアミノ酸からなる。
【0032】
いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、E484Q、N501Y天然突然変異および非天然C538S突然変異を含むアミノ酸からなる。
【0033】
いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、T478K、E484Q、L452RおよびN501Y天然突然変異および非天然C538S突然変異を含むアミノ酸からなる。
【0034】
いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、T478K、E484K、L452RおよびN501Y天然突然変異および非天然C538S突然変異を含むアミノ酸からなる。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「コンジュゲート」または互換的に「コンジュゲートポリペプチド」は、1以上のポリペプチドの共有結合によって形成された複合分子またはキメラ分子を表すことを意図する。用語「共有結合」「または「コンジュゲーション」は、ポリペプチドと非ペプチド部分が互いに直接共有結合しているか、そうでなければ、架橋、スペーサー、または1もしくは連結部分などの1または複数の介在部分を介して間接的に互いに共有結合していることを意味する。特定のコンジュゲートは融合タンパク質である。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「融合タンパク質」は、別のタンパク質に由来する2つ以上のポリペプチドの結合によって作出されるタンパク質を示す。特に、融合タンパク質は、組換えDNA技術によって作出することができ、一般に、生物学的研究または治療薬に使用される。融合タンパク質はまた、融合タンパク質のポリペプチド部分の間にリンカーを用いて、または用いずに、化学的共有結合によって作出することもできる。融合タンパク質では、2つ以上のポリペプチドは直接またはリンカーを介して融合される。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「直接」は、第1のポリペプチドのN末端の最初のアミノ酸が第2のポリペプチドのC末端の最後のアミノ酸に融合されることを意味する。この直接的融合は、(Vigneron et al., Science 2004, PMID 15001714)、(Warren et al., Science 2006, PMID 16960008)、(Berkers et al., J. Immunol. 2015a, PMID 26401000)、(Berkers et al., J. Immunol. 2015b, PMID 26401003)、(Delong et al., Science 2016, PMID 26912858)、(Liepe et al., Science 2016, PMID 27846572)、(Babon et al., Nat. Med. 2016, PMID 27798614)に記載されているように自然に生じる。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「リンカー」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、タンパク質が適切な二次および三次構造を形成することを保証するのに十分な長さのアミノ酸配列を指す。いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つで30未満のアミノ酸を含むペプチドリンカー、例えば、2~30アミノ酸、好ましくは10~30アミノ酸、より好ましくは15~30アミノ酸、さらにより好ましくは19~27アミノ酸、最も好ましくは20~26アミノ酸のペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、2;3;4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;21;22;23;24;25;26;27;28;29;30アミノ酸残基を有する。一般に、リンカーは、化合物が適切な立体配座(すなわち、IL-15Rβ/γシグナル伝達経路を介した適切なシグナル伝達活性を可能とする立体配座)をとることを可能とするものである。最も好適なリンカー配列は、(1)フレキシブルな拡張立体配座をとり、(2)融合タンパク質の機能的ドメインと相互作用可能な秩序を持った二次構造を形成する傾向を示さず、(3)機能的タンパク質ドメインとの相互作用を促進し得る疎水性または荷電性が最小限であるものと考えられる。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。齧歯類および霊長類の天然抗体では、2つの重鎖はジスルフィド結合によって互いに連結され、各重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖に連結している。ラムダ(λ)とカッパ(k)の2タイプの軽鎖がある。5つの主要な重鎖クラス(またはアイソタイプ)があり、これが抗体分子:IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEの機能活性を決定する。各鎖は明瞭に異なる配列ドメインを含む。典型的なIgG抗体では、軽鎖は可変ドメイン(VL)と定常ドメイン(CL)の2つのドメインを含む。重鎖は1つの可変ドメイン(VH)と3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3、CHと総称)の4つのドメインを含む。軽鎖(VL)および重鎖(VH)の両方の可変領域が、抗原に対する結合認識および特異性を決定する。軽鎖(CL)および重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖の会合、分泌、胎盤通過移動、補体結合、およびFc受容体(FcR)への結合などの重要な生物学的特性を付与する。Fvフラグメントは免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、1つの軽鎖と1つの重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基の間の構造的な相補性にある。抗体結合部位は、主に超可変領域または相補性決定領域(CDR)の残基で構成されている。時には、非超可変領域またはフレームワーク領域(FR)の残基が抗体結合部位に関与したり、ドメイン全体の構造、ひいては結合部位に影響を及ぼしたりすることもある。相補性決定領域またはCDRとは、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性および特異性を一緒に決定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖はそれぞれ3つのCDRを有し、それぞれL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3およびH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と呼ばれる。従って、抗原結合部位は、一般に、重鎖V領域および軽鎖V領域のそれぞれから設定されたCDRからなる6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)とは、CDRの間に挟まれたアミノ酸配列を指す。従って、軽鎖および重鎖の可変領域は、通常、以下の配列:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の4つのフレームワーク領域と3つのCDRから構成される。抗体可変ドメインの残基は、Kabatらによって考案されたシステムに従って慣習的に符番される。このシステムは、Kabat et al., 1987, in Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services, NIH, USA (Kabat et al., 1992, 以下、“Kabat et al.”)に示されている。Kabat残基の指定は、配列番号の配列中のアミノ酸残基の線形符番と必ずしも直接対応しない。実際の直鎖アミノ酸配列は、基本可変ドメイン構造のフレームワークであれ相補性決定領域(CDR)であれ、構造成分の短縮、または挿入に対応して、厳密なKabat符番よりも少ないまたは付加的なアミノ酸を含み得る。残基の正確なKabat符番は、所定の抗体について、抗体の配列中の相同な残基を「標準的な」Kabat符番配列とアラインすることによって決定することができる。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat符番システムに従って、残基31~35(H-CDR1)、残基50~65(H-CDR2)および残基95~102(H-CDR3)に位置している。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat符番システムに従って、残基24~34(L-CDR1)、残基50~56(L-CDR2)および残基89~97(L-CDR3)に位置している。以下に記載するアゴニスト抗体では、CDRは、www.bioinf.org.ukのCDR検索アルゴリズムを使用して決定されている。抗体のページのタイトル「How to identify the CDRs by looking at a sequence」の項を参照のこと。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「免疫グロブリンドメイン」は、抗体鎖(例えば重鎖抗体鎖または軽鎖など)の球状領域、またはそのような球状領域から本質的になるポリペプチドのことを指す。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「Fc領域」は、天然配列Fc領域および変異体Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。ヒトIgG重鎖Fc領域は、一般に、C226番またはP230番からIgG抗体のカルボキシル末端までのアミノ酸残基を含むと定義される。Fc領域の残基の符番は、KabatのEUインデックスのものである。Fc領域のC末端リシン(残基K447)は、例えば、抗体の生産または精製中に除去され得る。よって、本発明の抗体の組成物は、総てのK447残基が除去される抗体集団、K447残基が除去されない抗体集団、およびK447残基を含むおよび含まない抗体の混合物を有する抗体集団を含み得る。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「キメラ抗体」は、非ヒト抗体のVHドメインおよびVLドメインとヒト抗体のCHドメインおよびCLドメインを含む抗体を指す。一実施形態では、「キメラ抗体」は、(a)定常領域(すなわち、重鎖および/もしくは軽鎖)、またはその一部が、抗原結合部位(可変領域)が異なるまたは変更されたクラス、エフェクター機能および/もしくは種の定常領域、または、キメラ抗体に新しい特性を付与する全く異なる分子、例えば.酵素、毒素、アゴニスト分子、例えばCD40リガンド、ホルモン、成長因子、薬物などに連結されるように変更、置換または交換されているか、あるいは(b)可変領域またはその一部が、異なるまたは変更された抗原特異性を有する可変領域で変更、置換または交換されている抗体分子である。キメラ抗体にはまた、霊長類化抗体、特にヒト化抗体も含まれる。さらに、キメラ抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基も含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密化するために行われる。さらなる詳細は、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)参照)を参照されたい。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「ヒト化抗体」には、マウス抗体の6つのCDRとヒト化フレームワークおよび定常領域を有する抗体が含まれる。より具体的には、用語「ヒト化抗体」は、本明細書で使用する場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含み得る。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(例えば、イン・ビトロ(in vitro)ランダムもしくは部位特異的突然変異誘発またはイン・ビボ(in vivo)体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含み得る。しかしながら、一実施形態では、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、本明細書で使用する場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図しない。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「免疫応答」は、抗原特異的抗体の生成および/または細胞傷害性応答を含む宿主の身体の抗原に対する免疫系の反応を指す。最初の抗原曝露に対する免疫応答(一次免疫応答)は、通常、数日から2週間のラグ期間の後に検出可能であり、同じ抗原によるその後の刺激(二次免疫応答)に対する免疫応答は、一次免疫応答の場合よりも迅速である。導入遺伝子産物に対する免疫応答には、導入遺伝子によってコードされる免疫原性産物に惹起され得る体液性(例えば、抗体応答)および細胞性(例えば、細胞溶解性T細胞応答)の両方の免疫応答が含まれ得る。免疫応答のレベルは、当技術分野で公知の方法(例えば、抗体価の測定)によって測定することができる。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「APC」または「抗原提示細胞」は、T細胞を活性化することができる細胞を表し、限定されるものではないが、特定のマクロファージ、B細胞および樹状細胞が含まれる。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「樹状細胞」または「DC」は、リンパ系組織または非リンパ系組織で見られる形態的に類似した細胞種の多様な集団のいずれのメンバーも指す。これらの細胞は、それらの明瞭に異なる形態学、高レベルの表面MHCクラスII発現を特徴とする(Steinman, et al., Ann. Rev. Immunol. 9:271 (1991)(このような細胞の記述については、参照により本明細書の一部とされる)。
【0048】
本明細書で使用する場合、用語「CD40」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、ヒトCD40ポリペプチド受容体を指す。いくつかの実施形態では、CD40は、UniProtKB-P25942により報告されているヒトカノニカル配列のアイソフォームである(ヒトTNR5とも呼ばれる)。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「CD40L」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、配列番号47のそのCD40-結合ドメインを含め、例えば、UniProtKB-P25942により報告されたヒトCD40Lポリペプチドを指す。CD40Lは、可溶性ポリペプチドとして発現させることができ、CD40受容体の天然リガンドである。
【化2】
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「CD40アゴニスト抗体」は、B細胞増殖アッセイなどの細胞に基づくアッセイで、CD40Lの不在下でCD40介在シグナル伝達活性を増強する抗体を指すことを意図する。特に、CD40アゴニスト抗体は、(i)フローサイトメトリー分析、またはCFSE標識細胞の複製希釈の分析によってイン・ビトロで測定されるように、B細胞の増殖を誘導し;かつ/または(ii)樹状細胞活性化アッセイを用いてイン・ビトロで測定されるように、IL-6、IL-12またはIL-15などのサイトカインの分泌を誘導する。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語「ランゲリン」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、ヒトC型レクチンドメインファミリー4メンバーKポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、ランゲリンは、UniProtKB-Q9UJ71により報告されているヒトカノニカル配列のアイソフォームである(ヒトCD207とも呼ばれる)。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「治療」または「治療する」は、予防的または回避的処置ならびに治癒的または疾患修飾的処置の両方を指し、病気であるまたは疾患もしくは医学的状態に罹患していると診断された患者だけでなく、疾患に罹患するリスクがあるまたは疾患に罹患した疑いがある患者の治療を含み、臨床再発の抑制も含む。治療法は、医学的障害を有する患者または最終的に障害を獲得する可能性のある患者に、障害または再発障害の1以上の症状を予防、治癒、発症の遅延、重症度の軽減、または改善を目的として、またはそのような治療がない場合に予想されるよりも患者の生存期間を延長するために投与され得る。「治療レジメン」とは、病気の治療のパターン、例えば、治療中に使用される投与パターンを意味する。治療レジメンは、導入レジメンおよび維持レジメンを含み得る。「導入レジメン」または「導入期間」という句は、疾患の初期治療に使用される治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指す。導入レジメンの一般的な目標は、治療レジメンの初期期間中に患者に高レベルの薬物を提供することである。導入レジメンは、(一部または全部)「ローディングレジメン」を採用することができ、これには、医師が維持レジメン中に採用するよりも多量の薬物を投与すること、医師が維持レジメン中に薬剤を投与するよりも高頻度で薬物を投与すること、またはその両方が含まれる。維持レジメン」または「維持期間」という句は、病気の治療中に患者の維持のために使用される治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指し、例えば、患者を長期間(数か月または数年)寛解状態に維持するためである。維持レジメンは、連続療法(例えば、毎週、毎月、毎年などの定期的な間隔で薬物を投与する)または間欠療法(例えば、中断治療、間欠治療、再発時の治療、もしくは特定の所定の基準[例えば、疼痛、疾患発現など]に到達した際の治療)を採用してもよい。
【0053】
本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」は、担体および/または賦形剤などの他の薬剤を伴う本明細書に記載の組成物、またはその薬学上許容される塩を指す。本明細書で提供される医薬組成物は、一般に、薬学上許容される担体を含む。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「薬学上許容される担体」には、所望の特定の剤形に適した、あらゆる溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などが含まれる。Remington's Pharmaceutical-Sciences, Sixteenth Edition, E. W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980)には、医薬組成物の製剤化に用いられる種々の担体およびその調製のための公知技術が開示されている。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「ワクチン接種」または「ワクチンを接種する」は、限定されるものではないが、特定の抗原に対する対象において免疫応答を惹起するプロセスを意味する。
【0056】
本明細書で使用する場合、用語「ワクチン組成物」は、免疫系の応答を誘導するためにヒトまたは動物に投与することができる組成物を意味することを意図し、この免疫系の応答は、特定の細胞、特に、APC、Tリンパ球およびBリンパ球の活性化をもたらし得る。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「抗原」は、MHC分子によりプロセシングされて提示された場合に、抗体またはT細胞受容体(TCR)と特異的に結合することができる分子を指す。抗原は、さらに、免疫系により認識され、かつ/または体液性免疫応答および/もしくは細胞性免疫応答を誘導し、Bおよび/またはTリンパ球の活性化をもたらすことができる。抗原は、1以上のエピトープまたは抗原部位(B-エピトープおよびT-エピトープ)を有し得る。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「アジュバント」は、対象または動物に投与した際に抗原に対する免疫応答を誘導および/または増強することができる化合物を指す。また、特定の抗原に対する特異的な免疫応答の質を加速、延長、または増強するために一般的に作用する物質を意味することも意図している。本発明の文脈では、用語「アジュバント」は、自然免疫応答の一過性の反応に影響を与えることによって自然免疫応答、そして抗原提示細胞(APC)、特に樹状細胞(DC)の活性化および成熟によって適応免疫応答のより長期的な効果の両方を高める化合物を意味する。
【0059】
本明細書で使用する場合、「治療上有効な量」という句は、医学的処置に適用可能な合理的ベネフィット/リスク比で免疫応答を誘導するのに十分な、有効本発明成分の量を意味する。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「免疫チェックポイント阻害剤」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、免疫阻害性チェックポイントタンパク質の機能を阻害するいずれの化合物も指す。本明細書で使用する場合、用語「免疫チェックポイントタンパク質」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、シグナルを上げる(刺激性チェックポイント分子)またはシグナル(阻害性チェックポイント分子)を下げる場合にT細胞により発現される分子を指す。免疫チェックポイント分子は、CTLA-4およびPD-1依存性経路に類似の免疫チェックポイント経路を構成することが当技術分野で認識されている(例えば、Pardoll, 2012. Nature Rev Cancer 12:252-264; Mellman et al., 2011. Nature 480:480-489参照)。阻害性チェックポイント分子の例としては、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、CD277、IDO、KIR、PD-1、LAG-3、TIM-3およびVISTAが挙げられる。
【0061】
本発明の抗体:
本発明の最初の目的は、重鎖および/または軽鎖がRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している、抗原提示細胞の表面抗原に対する抗体に関する。
【0062】
いくつかの実施形態では、抗体の重鎖がRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0063】
いくつかの実施形態では、抗体の軽鎖がRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗体の重鎖および軽鎖の両方がRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0065】
いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドに融合または縮合され、軽鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、K417N、E484K、N501Y天然突然変異およびC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0066】
いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、C538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドに融合または縮合され、重鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、E484K、N501Y天然突然変異およびC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0067】
いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドに融合または縮合され、軽鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、E484Q、N501Y天然突然変異およびC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0068】
いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドに融合または縮合され、重鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、E484Q、N501Y天然突然変異およびC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0069】
いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、C538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドに融合または縮合され、軽鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、L452R、T478K、E484Q、N501Y天然突然変異およびC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0070】
いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドに融合または縮合され、重鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、L452R、T478K、E484Q、N501Y天然突然変異およびC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0071】
いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドに融合または縮合され、軽鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、L452R、T478K、E484K、N501Y天然突然変異およびC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0072】
いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドに融合または縮合され、重鎖は、配列番号1の319番のアミノ酸残基~541番のアミノ酸残基の範囲であり、かつK417N、L452R、T478K、E484K、N501Y天然突然変異およびC538S非天然突然変異を含むアミノ酸からなるRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG抗体、好ましくはIgG1またはIgG4抗体、またはいっそうより好ましくはIgG4抗体である。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体、特に、キメラマウス/ヒト抗体である。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗体はヒト化抗体である。
【0076】
キメラまたはヒト化抗体は、上記のように調製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製することができる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、対象とするマウスハイブリドーマから得、標準的な分子生物学技術を用いて非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作することができる。例えば、キメラ抗体を作出するために、マウス可変領域は、当技術分野で公知の方法(例えば、Cabillyらの米国特許第4,816,567号参照)を用いてヒト定常領域に連結することができる。ヒト化抗体を作出するために、マウスCDR領域は、当技術分野で公知の方法を用いてヒトフレームワークに挿入することができる。例えば、Winterの米国特許第5,225,539号、およびQueenらの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照されたい。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗体はヒト抗体である。いくつかの実施形態では、ヒト抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の一部を有するトランスジェニックマウスまたはトランスクロモソミックマウスを用いて同定することができる。これらのトランスジェニックマウスおよびトランスクロモソミックマウスには、本明細書においてそれぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスが含まれ、本明細書において「ヒトIgマウス」と総称される。HuMAbマウス(登録商標)(Medarex, Inc.)は、再配列されていないヒト重鎖(μとγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を、内因性のμおよびκ鎖遺伝子座を不活化する標的突然変異とともに含む(例えば、Lonberg, et al., 1994 Nature 368(6474): 856-859参照)。別の実施形態では、ヒト抗PD-1抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を有するマウスなどの導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を有するマウスを使用して惹起させることができる。本明細書で「KMマウス」と呼ばれるマウスは、IshidaらのPCT公開WO02/43478に詳細に記載されている。
【0078】
いくつかの実施形態では、抗体は、プロフェッショナルAPCの細胞表面マーカーに特異的である。抗体は、B細胞またはマクロファージなどの別のプロフェッショナルAPCの細胞表面マーカーに特異的であり得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗体は、DC免疫受容体(DCIR)、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CDl lb、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF-44、CMRF-56、DCIR、DC-ASPGR、CLEC-6、CD40、BDCA-2、MARCO、DEC-205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN-1、B7-1、B7-2、IFN-γ受容体およびIL-2受容体、ICAM-1、Fey受容体、LOX-1、およびASPGRと特異的に結合する抗体から選択される。
【0080】
いくつかの実施形態では、抗体は、CD40に特異的である。
【0081】
いくつかの実施形態では、抗CD40抗体は、12E12抗体に由来し、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含み、CDR1Hはアミノ酸配列GFTFSDYYMY(配列番号2)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列YINSGGGSTYYPDTVKG(配列番号3)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列RGLPFHAMDY(配列番号4)を有する重鎖と、
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含み、CDR1Lはアミノ酸配列SASQGISNYLN(配列番号5)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列YTSILHS(配列番号6)を有しし、CDR3Lはアミノ酸配列QQFNKLPPT(配列番号7)を有する軽鎖
を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、抗CD40抗体は11B6抗体に由来し、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含み、CDR1Hはアミノ酸配列GYSFTGYYMH(配列番号8)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列RINPYNGATSYNQNFKD(配列番号9)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列EDYVY(配列番号10)を有する重鎖と、
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含み、CDR1Lはアミノ酸配列RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号11)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列KVSNRFS(配列番号12)を有し、CDR3Lはアミノ酸配列SQSTHVPWT(配列番号13)を有する軽鎖
を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、抗CD40抗体は12B4抗体に由来し、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含み、CDR1Hはアミノ酸配列GYTFTDYVLH(配列番号14)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列YINPYNDGTKYNEKFKG(配列番号15)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列GYPAYSGYAMDY(配列番号16)を有する重鎖と、
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含み、CDR1Lはアミノ酸配列RASQDISNYLN(配列番号17)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列YTSRLHS(配列番号18)を有し、CDR3Lはアミノ酸配列HHGNTLPWT(配列番号19)を有する軽鎖
を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗CD40抗体は、表Aに記載された、選択されたmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5およびmAb6からなる群から選択される。
【0085】
【0086】
いくつかの実施形態では、抗CD40抗体は、CD40アゴニスト抗体である。CD40アゴニスト抗体は、WO2010/009346、WO2010/104747およびWO2010/104749に記載されている。開発中のその他の抗CD40アゴニスト抗体として、ファイザー社が開発した完全ヒトIgG2 CD40アゴニスト抗体CP-870,893(これはKD3.48×10-10MでCD40に結合するが、CD40Lの結合を遮断しない(例えば、米国特許第7,338,660号参照)およびSGN-40(免疫原としてヒト膀胱癌細胞株を用いて作製されたマウス抗体クローンS2C6からシアトル・ジェネティクス社が開発したヒト化IgG1抗体。これはKD1.0×10-9MでCD40に結合し、CD40とCD40Lの間の相互作用を増強することによって働き、従って部分アゴニスト効果を示す)(Francisco J A, et al., Cancer Res, 60: 3225-31, 2000)がある。さらにより詳しくは、CD40アゴニスト抗体は、表Aに記載された、選択されたmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5およびmAb6からなる群から選択される。
【0087】
いくつかの実施形態では、CD40アゴニスト抗体の重鎖または軽鎖(すなわち、RBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合していない鎖)がCD40LのCD40結合ドメインにコンジュゲートまたは融合している。
【0088】
いくつかの実施形態では、CD40LのCD40結合ドメインは、所望により、リンカー、好ましくは、本明細書で後述するFlexV1リンカーを介して前記CD40アゴニスト抗体の軽鎖または重鎖のC末端に融合している。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、抗体の重鎖がRBDポリペプチドに融合または縮合され、軽鎖がCD40LのCD40結合ドメイン(配列番号47)にコンジュゲートまたは融合しているCD40アゴニスト抗体からなる。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗体は、ランゲリンに特異的である。いくつかの実施形態では、抗体は、ATCC受託番号PTA-9852の抗体15B10に由来する。いくつかの実施形態では、抗体は、ATCC受託番号PTA-9853の抗体2G3に由来する。いくつかの実施形態では、抗体は、WO2011032161に記載された抗体91E7、37C1、または4C7に由来する。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗ランゲリン抗体は、15B10抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖と15B10抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗ランゲリン抗体は、2G3抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖と2G3抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗ランゲリン抗体は、4C7抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖と4C7抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗体は、表Bに記載された、選択されたmAb7、mAb8、mAb9、mAb10、mAb11およびmAb12からなる群から選択される。
【0095】
【0096】
本発明の抗体は、限定されるものではないが、任意の化学的技術、生物学的技術、遺伝学的技術または酵素的技術を単独でまたは組み合わせるなど、当技術分野でそれ自体公知のいずれの技術によって作製してもよい。所望の配列のアミノ酸配列が分かれば、当業者は、ポリペプチドの生産のための標準的技術によって前記ポリペプチドを容易に生産することができる。例えば、本発明の抗体は、現在当技術分野で周知の組換えDNA技術によって合成することができる。例えば、これらのフラグメントは、所望の(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列を発現ベクターに組み込み、このようなベクターを所望のポリペプチドを発現する好適な真核生物または原核生物宿主に導入した後にDNA発現産物として得ることができ、その後ここからこれらのフラグメントを周知の技術を用いて単離することができる。
【0097】
抗体の重鎖および/または軽鎖は、そのC末端を介してRBDポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖および/または軽鎖は、RBDポリペプチドのN末端に融合している。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗体の重鎖および/または軽鎖は、化学的カップリングを使用することによってRBDポリペプチドにコンジュゲートされている。抗体のそのコンジュゲート部分への結合またはコンジュゲーションに関しては、いくつかの方法が当技術分野で公知である。ある部分を抗体にコンジュゲートするために使用されているリンカー種の例としては、限定されるものではないが、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカー、例えば、バリン-シトルリンリンカーが挙げられる。リンカーは、例えば、リソソームコンパートメント内の低pHによって切断されやすいか、またはカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などの腫瘍組織で優先的に発現するプロテアーゼによって切断されやすいものが選択され得る。ポリペプチドをコンジュゲートするための技術は特に、当技術分野で周知である(例えば、Arnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy,” in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy (Reisfeld et al. eds., Alan R. Liss, Inc., 1985); Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery,” in Controlled Drug Delivery (Robinson et al. eds., Marcel Deiker, Inc., 2nd ed. 1987); Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,” in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications (Pinchera et al. eds., 1985); “Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy,” in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy (Baldwin et al. eds., Academic Press, 1985);およびThorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62:119-58参照;例えば、PCT公開WO89/12624も参照)。一般に、ペプチドは、抗体上のリシンまたはシステイン残基と、それぞれN-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはマレイミド官能基を介して共有結合される。操作されたシステインを用いたコンジュゲーションまたは非天然アミノ酸の組み込みの方法は、コンジュゲートの均一性を向上させることが報告されている(Axup, J.Y., Bajjuri, K.M., Ritland, M., Hutchins, B.M., Kim, C.H., Kazane, S.A., Halder, R., Forsyth, J.S., Santidrian, A.F., Stafin, K., et al. (2012). . Synthesis of site-specific antibody-drug conjugates using unnatural amino acids. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109, 16101-16106.; Junutula, J.R., Flagella, K.M., Graham, R.A., Parsons, K.L., Ha, E., Raab, H., Bhakta, S., Nguyen, T., Dugger, D.L., Li, G., et al. (2010). Engineered thio-trastuzumab-DM1 conjugate with an improved therapeutic index to target human epidermal growth factor receptor 2-positive breast cancer. Clin. Cancer Res.16, 4769-4778)。Junutula et al. (Nat Biotechnol. 2008; 26:925-32)は、「THIOMABs」(TDCs)と呼ばれるシステインに基づく部位特異的コンジュゲーションを開発しており、これは従来のコンジュゲーション法と比較した場合に治療係数の改善を示すと主張されている。抗体に組み込まれた非天然アミノ酸へのコンジュゲーションも、ADCについて検討されているが、このアプローチの一般性はまだ確立されていない(Axup et al., 2012)。特に、当業者はまた、アシル供与体グルタミン含有タグ(例えば、Gin含有ペプチドタグもしくはQ-タグ)または内因性グルタミンで操作されたFc含有ポリペプチドが、ポリペプチド工学によって(例えば、ポリペプチド上のアミノ酸欠失、挿入、置換または突然変異を介して)反応性にされることも想定することができる。次に、トランスグルタミナーゼは、アミン供与剤(例えば、反応性アミンを含むか、またはそれに結合した小分子)と共有結合的に架橋して、アミン供与剤がアシル供与体グルタミン含有タグまたは接近可能な/露出した/反応性の内因性グルタミンを介してFc含有ポリペプチドに部位特異的にコンジュゲートされた操作型Fc含有ポリペプチドコンジュゲートの安定で均一な集団を形成することができる(WO2012059882)。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗体の重鎖および/または軽鎖は、ドックリンドメインまたはマルチプルドメインによってRBDポリペプチドにコンジュゲートされて、US20160031988A1およびUS20120039916A1に記載されたコヘシン融合タンパク質との非共有結合的カップリングが可能となる。
【0100】
いくつかの実施形態では、抗体の重鎖および/または軽鎖は、RBDポリペプチドに融合して融合タンパク質を形成する。いくつかの実施形態では、RBDポリペプチドは、直接またはリンカーを介して重鎖にまたは軽鎖に融合される。本明細書で使用する場合、用語「直接」は、RBDポリペプチドのN末端の最初のアミノ酸が重鎖または軽鎖のC末端の最後のアミノ酸に融合されることを意味する。この直接融合は、(Vigneron et al., Science 2004, PMID 15001714)、(Warren et al., Science 2006, PMID 16960008)、(Berkers et al., J. Immunol. 2015a, PMID 26401000)、(Berkers et al., J. Immunol. 2015b, PMID 26401003)、(Delong et al., Science 2016, PMID 26912858)、(Liepe et al., Science 2016, PMID 27846572)、(Babon et al., Nat. Med. 2016, PMID 27798614)に記載されているように自然に起こる。
【0101】
いくつかの実施形態では、リンカーは、下記のFlexV1、f1、f2、f3、またはf4からなる群から選択される。
【化5】
【0102】
いくつかの実施形態では、抗体は、i)RBDポリペプチドに融合して配列番号42に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)配列番号43に示される軽鎖を含む。
【化6】
【0103】
いくつかの実施形態では、抗体は、i)RBDポリペプチドに融合して配列番号42に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号44に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む。
【化7】
【0104】
いくつかの実施形態では、抗体は、i)RBDポリペプチドに融合して配列番号45に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号46に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む。
【化8】
【0105】
いくつかの実施形態では、抗体は、i)RBDポリペプチドに融合して配列番号42に示される融合タンパク質を形成している重鎖、およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号48に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む。
【化9】
【0106】
いくつかの実施形態では、抗体は、i)RBDポリペプチドに融合して配列番号49に示される融合タンパク質を形成している重鎖およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号46に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む。
【化10】
【0107】
いくつかの実施形態では、抗体は、i)RBDポリペプチドに融合して配列番号42に示される融合タンパク質を形成している重鎖およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号50に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む。
【化11】
【0108】
いくつかの実施形態では、抗体は、i)RBDポリペプチドに融合して配列番号51に示される融合タンパク質を形成している重鎖およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号46に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む。
【化12】
【0109】
いくつかの実施形態では、抗体は、i)RBDポリペプチドに融合して配列番号42に示される融合タンパク質を形成している重鎖およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号52に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む。
【化13】
【0110】
いくつかの実施形態では、抗体は、i)RBDポリペプチドに融合して配列番号53に示される融合タンパク質を形成している重鎖およびii)RBDポリペプチドに融合して配列番号46に示される融合タンパク質を形成している軽鎖を含む。
【化14】
【0111】
本発明の核酸、ベクターおよび宿主細胞:
本発明のさらなる目的は、RBDポリペプチドに融合された、抗原提示細胞の表面抗原に対する抗体の重鎖および/または軽鎖をコードする核酸に関する。
【0112】
一般に、前記核酸は、DNAまたはRNA分子であり、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクターなどのいずれの好適なベクターに含まれていてもよい。
【0113】
従って、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸を含むベクターに関する。
【0114】
このようなベクターは、対象に投与した際に前記抗体の発現を引き起こすまたは命令するために、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどの調節要素を含んでもよい。動物細胞の発現ベクターに使用されるプロモーターおよびエンハンサーの例としては、SV40の初期プロモーターおよびエンハンサー、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターおよびエンハンサー、免疫グロブリンH鎖のプロモーターおよびエンハンサーなどが挙げられる。動物細胞の発現ベクターは、ヒト抗体C領域をコードする遺伝子が挿入および発現可能である限り使用可能である。好適なベクターの例としては、pAGE107、pAGE103、pHSG274、pKCR、pSG1βd2-4などが挙げられる。他のプラスミドの例としては、複製起点を含む複製プラスミドまたは組込プラスミド、例えば、pUC、pcDNA、pBRなどが挙げられる。他のウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターおよびAAVベクターが挙げられる。このような組換えウイルスは、パッケージング細胞のトランスフェクションまたはヘルパープラスミドもしくはウイルスでの一過性トランスフェクションによるなど、当技術分野で公知の技術によって生産され得る。典型的なウイルスパッケージング細胞の例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などが挙げられる。このような複製欠陥組換えウイルスを生産するための詳細なプロトコールは、例えば、WO95/14785、WO96/22378、US5,882,877、US6,013,516、US4,861,719、US5,278,056およびWO94/19478に見出せる。
【0115】
本発明のさらなる目的は、本発明による核酸および/またはベクターによりトランスフェクト、感染、または形質転換させた宿主細胞に関する。
【0116】
本発明の核酸は、好適な発現系で本発明の抗体を生産するために使用することができる。一般的な発現系としては、大腸菌宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳動物宿主細胞およびベクターが挙げられる。他の宿主細胞の例としては、限定されるものではないが、原核細胞(細菌など)および真核細胞(酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が挙げられる。具体例としては、大腸菌(E.coli)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)またはサッカロミセス(Saccharomyces)酵母が挙げられる。哺乳動物宿主細胞としては、DHFR選択マーカーとともに使用されるdhfr-CHO細胞(Urlaub and Chasin, 1980に記載)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、CHOK1 dhfr+細胞株、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞、例えば、GS Xceed(商標)遺伝子発現系(Lonza)を併用するGS CHO細胞株、またはHEK細胞が挙げられる。
【0117】
本発明はまた、本発明によるポリペプチドを発現する組換え宿主細胞を生産する方法に関し、前記方法は、(i)イン・ビトロまたはエクス・ビボ(ex vivo)で上記のような組換え核酸またはベクターをコンピテント宿主細胞に導入する工程、(ii)得られた組換え宿主細胞をイン・ビトロまたはエクス・ビボで培養する工程、および(iii)、所望により、前記抗体を発現および/または分泌する細胞を選択する工程を含む。このような組換え宿主細胞は、本発明の抗体の生産のために使用することができる。
【0118】
よって、本明細書で開示した宿主細胞は、本発明の抗体を生産するために特に好適である。実際に、組換え発現が哺乳動物宿主細胞に導入されると、ポリペプチドは、宿主細胞おける抗体の発現に十分な時間、宿主細胞を培養し、所望により、宿主細胞が増殖している培養培地に抗体を分泌させることによって生産される。抗体は、例えば、それらの分泌の後に培養培地から、標準的なタンパク質精製法を用いて回収および精製することができる。
【0119】
医薬組成物およびワクチン組成物:
本明細書に記載の抗体は、1以上の医薬組成物の一部として投与されてもよい。任意の従来の担体媒体が、望ましくない生物学的効果を生じさせる、またはそうでなければ医薬組成物の他の成分と有害な様式で相互作用するなど、本発明の抗体と不適合である限り、その使用は本発明の範囲内にあることが企図される。薬学上許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、限定されるものではないが、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;コーンスターチおよびポテトスターチなどのスターチ;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク;ココアバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、紅花油、ゴメ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液; エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性適合潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香料および香味剤、保存剤および酸化防止剤は、処方者の判断に従って、組成物に存在することができる。
【0120】
本明細書に記載の抗体は、ワクチン組成物を調製するために特に好適である。よって、本発明のさらなる目的は、本発明の抗体を含むワクチン組成物に関する。
【0121】
いくつかの実施形態では、本発明のワクチン組成物は、アジュバントを含む。いくつかの実施形態では、アジュバントはミョウバンである。いくつかの実施形態では、アジュバントは、フロイントの不完全アジュバント(IFA)または他の油系アジュバントであり、30~70%、好ましくは40~60%、より好ましくは45~5%重量(w/w)の割合で存在する。いくつかの実施形態では、本発明のワクチン組成物は、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、およびTLR8アゴニストからなる群から選択される少なくとも1つのToll様受容体(TLR)アゴニストを含む。
【0122】
治療方法:
本明細書に記載された抗体ならびに医薬組成物またはワクチン組成物は、SARS-Cov-2に対する免疫応答を有するために特に好適であり、従って、ワクチンの目的で使用可能である。
【0123】
よって、本発明のさらなる目的は、本発明の抗体の治療上有効な量を投与することを含む、必要とする対象にSARS-Cov2に対してワクチン接種を行う方法に関する。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された抗体ならびに医薬組成物またはワクチン組成物は、Covid-19の治療に特に好適である。
【0125】
いくつかの実施形態では、対象は、コロナウイルス感染に感受性のあるヒトまたは他の任意の動物(例えば、鳥類および哺乳動物)(例えば、ネコおよびイヌなどの飼育動物;ウマ、ウシ、ブタ、ニワトリなど)の家畜および農用動物であり得る。一般に、前記対象は、非霊長類(例えば、ラクダ、ロバ、シマウマ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ラット、およびマウス)ならびに霊長類(例えば、サル、チンパンジー、およびヒト)を含む哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト動物である。いくつかの実施形態では、対象は農用動物またはペットである。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は幼児である。いくつかの実施形態では、対象は小児である。いくつかの実施形態では、対象は成人である。いくつかの実施形態では、対象は高齢者である。いくつかの実施形態では、対象は未熟な幼児である。
【0126】
いくつかの実施形態では、対象は、症候性または無症候性である。
【0127】
一般に、本発明の有効成分(すなわち、本明細書に記載された抗体および医薬組成物またはワクチン組成物)は、治療上有効な量で対象に投与される。本発明の化合物および組成物の総1日量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるであろう。任意の特定の対象に対する特定の治療上有効な用量レベルは、治療される障害および障害の重症度、採用される特定の化合物の活性、採用される特定の組成物、対象の年齢、体重、健康状態、性別および食事;採用される特定の化合物の投与時間、投与経路および排泄速度;治療期間;併用されるまたは採用する特定のポリペプチドと同時に用いられる薬物、および医学分野で周知の同様の要因を含む様々な要因によって異なる。例えば、所望の治療効果を得るために必要なレベルよりも低いレベルで化合物の投与を開始し、所望の効果が得られるまで用量を漸増させることは当業者の技量の十分な範囲内にある。しかしながら、製剤の1日量は、成人1人、1日当たり0.01~1,000mgの広範囲にわたって変更可能である。特に、組成物は、治療する対象に対して用量を症状に合わせて調整するために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250および500mgの有効成分を含有する。薬剤は、一般に、約0.01mg~約500mgの有効成分、特に1mg~約100mgの有効成分を含有する。有効量の薬物は、通常、0.0002mg/kg~約20mg/kg体重/日、特に約0.001mg/kg~7mg/kg体重/日の用量レベルで供給される。
【0128】
本明細書に記載された抗体および医薬組成物またはワクチン組成物は、任意の投与経路、特に、経口、鼻腔、直腸、局所的、口内(例えば、舌下)、非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、または静脈内)および経皮投与によって対象に投与され得るが、任意の所与の場合に最も好適な経路は、治療する条件の性質および重症度ならびに使用する特定の有効薬剤の性質によって異なる。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された抗体ならびに医薬組成物またはワクチン組成物は、例えば、いずれの公知の治療薬またはSARS-Cov-2コロナウイルスに対してワクチン接種を行うための方法と組み合わせて、対象に投与してもよい。このような既知の治療薬の限定されない例としては、限定されるものではないが、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、ヒドロキシクロロキン、およびクロロキンなどの抗ウイルス薬が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された抗体および医薬組成物またはワクチン組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、CTLA-4アンタゴニスト、VISTAアンタゴニスト、TIM-3アンタゴニスト、LAG-3アンタゴニスト、IDOアンタゴニスト、KIR2Dアンタゴニスト、A2ARアンタゴニスト、B7-H3アンタゴニスト、B7-H4アンタゴニスト、およびBTLAアンタゴニストが挙げられる。いくつかの実施形態では、PD-1(プログラム細胞死-1)軸アンタゴニストとしては、PD-1アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体)、PD-L1(プログラム細胞死リガンド-1)アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)およびPD-L2(プログラム細胞死リガンド-2)アンタゴニスト(例えば、抗PD-L2抗体)が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、およびオプジーボ(登録商標)としても知られる)、Merck 3475(ペンブロリズマブ、MK-3475、ラムブロリズマブ、キートルーダ(登録商標)、およびSCH-900475としても知られる)、ならびにCT-011(ピディリズマブ、hBAT、およびhBAT-1としても知られる)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224(B7-DCIgとしても知られる)である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A、MDX-1105、およびMEDI4736からなる群から選択される。MDX-1105(BMS-936559としても知られる)は、WO2007/005874に記載されている抗PD-L1抗体である。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634 A1に記載されている抗PD-L1である。MEDI4736は、WO2011/066389およびUS2013/034559に記載されている抗PD-L1抗体である。MDX-1106(MDX-1106-04、ONO-4538またはBMS-936558としても知られる)は、米国特許第8,008,449号およびWO2006/121168に記載されている抗PD-1抗体である。Merck 3745(MK-3475またはSCH-900475としても知られる)は、米国特許第8,345,509号およびWO2009/114335に記載されている抗PD-1抗体である。CT-011(ピジジルマブ)(hBATまたはhBAT-1としても知られる)は、WO2009/101611に記載されている抗PD-1抗体である。AMP-224(B7-DCIgとしても知られる)は、WO2010/027827およびWO2011/066342に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。アテゾリムマブは、米国特許第8,217,149号に記載されている抗PD-L1抗体である。アベルマブは、US20140341917に記載されている抗PD-L1抗体である。CA-170は、WO2015033301およびWO2015033299に記載されているPD-1アンタゴニストである。その他の抗PD-1抗体は、米国特許第8,609,089号、US2010028330、および/またはUS20120114649に開示されている。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ニボルマブ、ペンブロリズマブまたはピディリズマブから選択される抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L1アンタゴニストは、アベルマブ、BMS-936559、CA-170、デュルバルマブ、MCLA-145、SP142、STI-A1011、STIA1012、STI-A1010、STI-A1014、A110、KY1003およびアテゾリムマブからなる群から選択され、好ましいものは、アベルマブ、デュルバルマブまたはアテゾリムマブである。
【0130】
以下、図面および実施例により本発明をさらに説明する。しかしながら、これらの実施例および図面は、本発明の範囲を限定するものと何ら解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【
図1】
図1 同種または異種のプライム/ブーストワクチン戦略で投与したaCD40-RBDワクチンの免疫原性。NSGヒト化マウスをJackson Laboratories(米国)から購入した。マウスのヒト免疫系再構築のために、5名のドナーから造血幹細胞の提供を受けた。動物は、フランス高等教育研究革新省の勧告に従い、モンドール生物医学研究所(U955 INSERM-パリ・エスト・クレテイユ大学、イル・ド・フランス、フランス)で飼育した。所内倫理委員会ComEth Anses/ENVA/UPECは、許可番号25329-2020051119073072 v4のプロトコールを承認した。 ここでは、このようなHISマウスが、TLR3/7アゴニスト(Poly(IC))をアジュバントとしたCD40標的SARS-CoV2 RBDタンパク質に応答して、B細胞およびT細胞免疫を惹起できるかどうかを調べた。Poly(IC)/aCD.RBD は、0週目、3週目および5週目に単独で投与したか(第2群)、または0週目にSARS-CoV2 Sタンパク質をコードするDrepワクチンでプライムした後、3週目および5週目に投与した(第3群)(
図1A)。対照群1は、PBSまたはPoly(IC)を注射した動物の半数で構成されていた。21日目(プライミング注射の3週間後)および終了時(最後のブースター注射の1週間後)に免疫応答を調べた。ヒト免疫系の再構成は、グループ間で類似していた(
図1B:ベースライン時の血液、
図1C:犠死時の脾臓)。
【
図2】
図2 ワクチンにおける循環型Ab分泌hu-B細胞の誘導。抗体分泌細胞(hCD45+ hCD19+ hCD27+ hCD38+ mCD45-)の頻度は、21日目にHISマウスの血液(A)および犠死時に血液(B)および脾臓(C)においてフローサイトメトリーにより評価した。
【
図3】
図3 aCD40-RBD+Drep-SプライミングはS特異的IgG+ hu-B細胞を惹起する。スパイク特異的IgGスイッチhu-B細胞(hCD45+ hCD19+ hIgG+ Spike+ mCD45-)の頻度は、HISマウスの血中(A)および犠死時の脾臓(B)のに21日目のビオチン化SARS-CoV2スパイクを用いてフローサイトメトリーにより評価した。
【
図4】
図4 aCD40-RBDワクチンは、21d.p.i.にCM CD4+ hu-T細胞の拡大を、そして42d.p.i.にEM CD4+ T細胞の出現を惹起した。エフェクターメモリーhu-CD4+ T細胞(hCD45+ hCD3+ hCD4+ hCD27- hCD45RA- mCD45-)およびセントラルメモリーhu-CD4+ T細胞(hCD45+ hCD3+ hCD4+ hCD27+ hCD45RA- mCD45-)の頻度を、ベースライン時、21日目および犠死時にHISマウスの血液でフローサイトメトリーにより評価した。
【
図5】
図5 aCD40-RBDワクチンは、21 d.p.i.にCM CD4+ hu-T細胞の拡大を、そして42 d.p.i.のEM CD4+ T細胞の出現を惹起した。エフェクターメモリーhu-CD8+ T細胞(hCD45+ hCD3+ hCD4- hCD27- hCD45RA- mCD45-)およびセントラルメモリーhu-CD8+ T細胞(hCD45+ hCD3+ hCD4+ hCD27+ hCD45RA- mCD45-)の頻度を、ベースライン時、21日目および犠死時にHISマウスの血液でフローサイトメトリーにより評価した。
【
図6】
図6 aCD40-RBDワクチンは、21 d.p.i.にCM CD4+ hu-T細胞の拡大を惹起し、そして42 d.p.i.にEM CD4+ T細胞の出現を惹起した。幹細胞様メモリーhu-CD8+ T細胞(hCD45+ hCD3+ hCD8+ hTbet+ hCD45RA+ hCD62L+ hCD95+ hCD122+ mCD45-)の頻度を、犠死時のHISマウスの血液(A)および脾臓(B)でフローサイトメトリーにより評価した。
【
図7-1】
図7 回復期のNHPにおいてαCD40.RBDにより誘導されたSARS-CoV-2特異的B細胞およびT細胞応答。a.カニクイザルにおける研究デザイン。
【
図7-2】
図7 回復期のNHPにおいてαCD40.RBDにより誘導されたSARS-CoV-2特異的B細胞およびT細胞応答。b.Luminexに基づく血清アッセイを用いて測定した、血清サンプルにおけるSARS-CoV-2 Sタンパク質へのIgG結合の相対MFI(各群6頭の平均±SD)。縦の点線は、それぞれウイルス曝露とワクチン接種を示す。c.SARS-CoV-2への曝露前(-26週)およびワクチン注射週(0週)のサル(n=12)のSARS-CoV-2のSタンパク質特異的結合を、症状発現から24週後にサンプリングした回復期のヒト(n=7)と比較したもの。
【
図7-3】
図7 回復期のNHPにおいてαCD40.RBDにより誘導されたSARS-CoV-2特異的B細胞およびT細胞応答。d.マルチプレックス固相化学発光アッセイを用いたNHPの血清で測定されたRBDに対するSARS-CoV-2抗体の定量。実線はそれぞれ個々の値を示し、太い点線は各実験群の平均値を示す。e.NHP血清における抗体により誘導されたACE-2の結合阻害の定量。記号はdと同様。
【
図7-4】
図7 回復期のNHPにおいてαCD40.RBDにより誘導されたSARS-CoV-2特異的B細胞およびT細胞応答。f.各非免疫化回復期サル(n=6、青い線および記号)およびαCD40.RBD-ワクチン接種回復期サル(n=6、緑の線および記号)の全CD4+ T細胞集団におけるRBD特異的Th1 CD4+ T細胞(CD154+およびIFN-γ±IL-2±TNF-α)の頻度。PBMCは、SARS-CoV-2 RBDオーバーラッピングペプチドプールで一晩刺激した。各実験群の時点は、Wilcoxon符号付き順位検定を用いて比較した。g.非免疫回復期サル(左)とαCD40.RBDワクチン接種回復期サル(右)のRBD特異的CD4+ T細胞(CD154+)におけるサイトカイン産生細胞の頻度。各バーは、6頭のワクチン接種回復期サルの平均±SDを示す。サイトカインの分布は、各バー内に示した。BL:免疫の約1週間前のベースライン、「Post imm」:免疫後2週間。
【
図8-1】
図8 回復期カニクイザルにおけるαCD40.RBDの有効性。a.ナイーブ(左、グレーの線)、回復期(中央、青い線)、およびαCD40.RBDワクチン接種回復期サル(右、緑の線)の気管スワブにおけるゲノムウイルスRNA(gRNA)の定量。太線は各実験群の平均ウイルス量を表す。b.気管スワブ中のサブゲノム(sgRNA)ウイルス量の平均。データは、各実験群(n=6 NHP/群)の平均値±SDとして示される。
【
図8-2】
図8 回復期カニクイザルにおけるαCD40.RBDの有効性。c.気管スワブにおいて経時的に検出限界(LOD)を超えるウイルスgRNAを有するサルのパーセンテージ。実験群は、ログランク検定を使用して比較し、両側p値を示す。d.気管スワブ(左のパネル)および鼻咽頭スワブ(右のパネル)におけるgRNAウイルス量の曲線下面積(AUC)。d.各プロットは1頭のサル(n=6 NHP/群)を表し、バーは各群の平均を示す。群は、両側ノンパラメトリックマンホイットニー検定を用いて比較した。
【
図8-3】
図8 回復期カニクイザルにおけるαCD40.RBDの有効性。e.BALにおける曝露3日後(d.p.expo)のgRNAウイルス定量。e.各プロットは1頭のサル(n=6 NHP/群)を表し、バーは各群の平均を示す。群は、両側ノンパラメトリックマンホイットニー検定を用いて比較した。f.抗原投与後のSARS-CoV-2 IgG結合N、S、およびRBDの定量。各実線は個々の値を示し、太い点線は各実験群の平均を示す。
【
図8-4】
図8 回復期カニクイザルにおけるαCD40.RBDの有効性。g.抗体による誘導されるACE-2結合の阻害の定量。線はfと同様。
【実施例】
【0132】
実施例1:
材料および方法
20週齢の雌NSG(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ)ヒト化マウス(hu-マウス)は、Jackson Laboratories(バーハーバー、ME、USA)からMTA #1720として供給された。マウスのヒト免疫系再構築のために、4名のドナーから造血幹細胞の提供を受けた。ヒト免疫細胞再構築のレベルは平均70%に達した。hu-マウスは、モンドール生物医学研究所インフラ設備(U955 INSERM-パリ・エスト・クレテイユ大学、イル・ド・フランス、フランス)において、温度20~24℃、湿度50±15%、12時間明/12時間暗周期で、人間の世話による病原体を含まない条件下、マイクロアイソレーターで飼育した。プロトコールは、所内倫理委員会「Comited’Ethique Anses/ENVA/UPEC(CEEA-016)」の声明番号20-043 #25329で承認されたものである。本研究は、登録番号25329-2020051119073072 v4として「研究革新教育省」により認可されている。
【0133】
ヒト化マウスのワクチン接種
hu-マウスに0、3、および5週目に免疫誘導を行った。プライミング注射は、DREP-S(10μg)の筋肉内注射と組み合わせて、または組み合わせずに、50μgのポリイノシン酸-ポリシチジル酸(Poly-IC;Invivogen)をアジュバントとした10μgのαCD40-RDBの腹腔内投与であった。その後、hu-マウスにαCD40-RDB(10μg)とPoly-IC(50μg)のブースターi.p注射を施した。血液は、0週目(免疫前)、3週目、および6週目に採取した。hu-マウスは6週目に安楽死させた。
【0134】
SARS-CoV-2 Sタンパク質特異的B細胞分析
プライミング免疫の3週間後のhu-mice PBMC、および6週間後(最後のリコール注射の1週間後)のhu-マウスPBMCおよび脾細胞を、まずビオチン化SARS-CoV-2 Sタンパク質とともに4℃で30分間インキュベートした。洗浄工程の後、細胞を4℃で30分間、ストレプトアビン-AF700(1:10、ThermoFisher Scientific)、抗ヒト(h)CD45-PeCy7(1:50、#2120080、HI30、Sony)、抗マウス(m)CD45-BV711(1:50、#1115735、30F11、Sony)、抗hCXCR4-Pe-Dazzle(1:50、#12-9999-42、12G5、eBiosciences)、抗hCCR10-PE(1.50、#314305;R&D System)、抗CD3-PV510(1:50、#2102240、UCHT1、Sony)、抗CD4-FITC(1:50、#2187040、OKT4、Sony)、抗CD8-PerCpCy5.5(1:50、#2323550、SK1、Biolegend)抗体および以下のB細胞特異的抗体:抗hCD19-BV421(1:16、#2111170、HIB19、Sony)、抗hCD20-APC(1:50、#2111550、2H7、ソニー)、抗hIgG-BV786(1:16、#564230、G18-145、BD Biosciences)、抗hCD38-APC-Cy7(1:16、#2117670、HIT2、ソニー)で染色した。脾細胞の染色には、生存率マーカー(LiveDeadアクアまたはイエローステインThermoFisher Scientific)も含まれる。細胞をFACSバッファー(PBS1%FCS)で2回洗浄し、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)で取得した。解析はFlowJo v.10.7.1で行った。
【0135】
結果
同種または異種プライム/ブーストワクチン接種戦略で問うよされるaCD40-RBDワクチン(すなわち、i)RBDポリペプチドに融合された重鎖、およびii)配列番号43に示される軽鎖を含む抗体)の免疫原性を、
図1に記載のプロトコールに従って検討した。結果を
図1~6に示す。特に、本発明者らは、ワクチンが循環Ab分泌hu-B細胞を誘導し(
図2)、S特異的IgG+ hu-B細胞を惹起し(
図3)、21d.p.i.にセントラルメモリーCD4+ hu-T細胞の拡大を、そして42 d.p.iにエフェクターメモリーCD4+ T細胞の出現を惹起し(
図4)、21 d.p.i.にセントラルメモリーCD8+ hu-T細胞拡大を、そして42 d.p.iにエフェクターメモリーCD8+ T細胞の出現を惹起し(
図5)、最後に、42 d.p.i.に幹細胞様メモリーhu-CD8+ T細胞を誘導する(
図6)ことを示す。実際に、ポリイノシン酸-ポリシチジル酸(Poly-IC、50μg)をアジュバントとするαCD40.RBD(10μg)の腹腔内経路による単回注射は、免疫マウスの50%の血液でSARS-CoV-2 Sタンパク質特異的IgGスイッチヒトB細胞を惹起するのに十分であった(
図3)。最後のαCD40.RBDブーストから1週間後の6週目に、脾臓のヒトCD19+ B細胞の非バイアスt-SNE分析により、ワクチン群では、コントロールではなく、終末分化形質細胞(PC)のよく説明されたサブセット、初期形質芽細胞(PB)、ならびにPBおよび未熟PCのコンティンジェントに相当する細胞クラスターが明らかになったが対象群ではなそうではなかった(データは示さず)。同じ時点で、脾臓のSARS-CoV-2 Sタンパク質特異的IgGスイッチヒトB細胞は、全てのワクチン接種hu-マウスで(データは示さず)、主としてPBと未熟PCの表現型のもので検出された。
【0136】
全てのスパイクタンパク質特異的IgGスイッチングヒトB細胞はCXCR4を発現し、CCR10の高発現によって駆動する離散した細胞島がt-SNE分析で観察され(データは示さず)、これは手動バックゲーティングを用いて確認された(データは示さず)。次に、特異的かつ機能的なCD4+およびCD8+メモリーT細胞を誘導するワクチンの能力を評価した。RBDペプチドプールによる脾細胞のエクス・ビボ刺激後、ワクチン接種したhu-マウスについて、Th1(IFN-γ+/-IL-2+/- TNF-α)型CD4+ T細胞応答およびIFNγ分泌CD8+ T細胞が観察された(データは示さず)。HLA-I四量体を用いて、ワクチン接種したhu-マウスの脾臓に、SARS-CoV-2 RBDタンパク質から予測される最適エピトープに特異的なヒトCD8+ T細胞の存在が確認された(データは示さず)。サブユニットワクチンは、ヒトのワクチン接種キャンペーンにおいて、他のタイプのワクチンのブースターとして考慮される可能性もある。そこで、同種プライムブーストレジメンに加えて、ベクターに基づくワクチンによる異種プライミングのブーストを行うαCD40.RBDの能力を調べた。SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(DREP)-SをコードするDNA起動自己増幅RNAレプリコンベクターは、ウイルスRNAレプリカーゼの遺伝子をコードするアルファウイルスゲノムに基づき、ウイルスの構造タンパク質をコードする遺伝子を欠く29、これまでに記載されているプラットフォーム28である。
【0137】
本発明者らは、2つのワクチン接種群において、αCD40.RBDを含むプライムブースト戦略は、B細胞およびT細胞のSARS-CoV-2特異的応答が効率的に惹起したことを実証した(
図2)。両ワクチン接種群において、エフェクターメモリーCD4およびCD8+ T細胞(CD45RA
-CD27
-)の拡大が示された。
【0138】
実施例2:αCD40.RBDワクチンは、回復期カニクイザルの特異的免疫応答をリコールし、SARS-CoV-2再感染に対する回復期カニクイザルの防御を向上させる
材料および方法
本研究では、モーリシャスAAALAC認定飼育センターから来た37~58か月齢のカニクイザル(Macaca fascicularis)(雌8頭、雄13頭)を使用した。動物は全てIDMIT施設(CEA、Fontenay-aux-roses)で、BSL-3封じ込め(動物施設認可番号D92-032-02、オー・ド・セーヌ県、フランス)下で、欧州指令2010/63/EU、フランス規則、およびthe Standards for Human Care and Use of Laboratory Animals, of the Office for Laboratory Animal Welfare(OLAW、保証番号#A5826-01、US)に準拠して飼育された。プロトコールは、所内倫理委員会「Comited’Ethique en Experimentation Animale du Commissariat a l’Energie Atomique et aux Energies Alternatives」(CEtEA #44)により、声明番号A20-011で承認されたものである。本研究は、「研究革新教育省」により登録番号APAFIS#24434-2020030216532863v1として認可されている。
【0139】
非ヒト霊長類研究デザイン
SARS-CoV-2に曝されたことがある回復期のカニクイザルを用いて、ヒドロキシクロロキン(HCQ)およびアジスロマイシン(AZTH)の抗ウイルス効果を評価した。AZTHはHCQもHCQとAZTHの併用も、ウイルス複製に有意な効果を示さなかった5。感染後(p.i.)6か月(24~26週)に、これらの動物のうち12頭を2つの実験群に無作為に割り付けた。回復期ワクチン接種群(n=6)には、PBSで希釈した200μgのαCD40.RBDワクチンを皮下(SC)経路で、アジュバントなしで投与した。他の6頭の回復期動物は対照として使用し、SCにより同量のPBSを施した。2群の回復期動物で、抗SARS-CoV-2免疫応答評価のために、ワクチンまたはPBS注射後2週目と4週目にサンプリングを行った。さらに、SARS-CoV-2に暴露されていない対照として、同じ起源で齢が一致した6頭のカニクイザル(43.7か月±6.76)を研究に含めた。
【0140】
マカクザルの実験的SARS-CoV-2感染
免疫誘導の4週間後に、全ての動物を、前投薬にアトロピン(0.04mg/kg)および麻酔にケタミン(5mg/kg)とメデトミジン(0.05mg/kg)を用い、鼻腔内経路と気管内回路の組合せ(各鼻孔0.25mLおよび気管内に4.5mL、すなわち、合計5mL;0日)により総用量106pfuのSARS-CoV-2ウイルス(受託番号 EPI_ISL_406596のhCoV-19/フランス/lDF0372/2020株;GISAID EpiCoVプラットフォーム)に曝した。曝露1、2、3、4、6、9、14、および20日後(d.p.exp.)に鼻咽頭スワブ、気管スワブおよび直腸スワブを収集し、採血は2、4、6、9、14、および20d.p.expに行った。気管支肺胞洗浄(BAL)は、ウイルス複製のピークに近く、ワクチン接種群と対照群の差を観察できるように、3d.p.exp.に50mLの無菌生理食塩水を用いて実施した。本発明者らの初期の研究30では、それ以降の時点では、BAL中のウイルス量は非常に低いか陰性であることを認めた。胸部CTは、ベースライン時、およびチレタミン(4mg/kg)およびゾラゼパム(4mg/kg)を用いて麻酔した動物で2および6d.p.exp.に実施した。病変は、本発明者らが以前に記載したように採点した30。血球数、ヘモグロビン、およびヘマトクリットは、DXH800アナライザー(Beckman Coulter)を用いてEDTA血液から決定した。
【0141】
抗スパイク、抗RBD、およびIgG阻害抗体の評価
ヒトおよびNHP血清からの抗スパイクIgGの力価をマルチプレックスビーズアッセイによって測定した。簡単に述べれば、従前に記載されているように6、Luminexビーズをスパイクタンパク質に結合させ、Bio-Plexプレート(BioRad)に加えた。磁気プレート洗浄機(MAG2xプログラム)を用いてPBS0.05%ツィーンでビーズを洗浄し、連続希釈した個々の血清とともに1時間インキュベートした。次に、ビーズを洗浄し、抗NHP IgG-PE二次抗体(Southern Biotech、クローンSB108a)を1:500希釈で、室温で45分加えた。洗浄後、ビーズをプレートシェーカーで振盪しながら(800rpm)5分間リーディングバッファーに再懸濁させ、その後、そのままLuminex Bioplex 200プレートリーダー(Biorad)で読み取った。ベースラインサンプルの平均MFIを陰性対照用の参照値として使用した。抗スパイクIgGの量を、MFIシグナルを陰性対照の平均シグナルで割った値として報告した。ウイルス学的に確認されたCOVID-19で入院した回復期の患者からのヒト血清を症状回復の3か月後に採取し、抗スパイク抗体の力価測定のための対照として使用した。
【0142】
抗RBDおよび抗ヌクレオキャプシド(N)IgGは、従前に記載されているように7、Mesoscale Discovery(MSD、ロックビル、MD)が開発した市販のマルチプレックスイムノアッセイを使用して力価を測定した。簡単に述べれば、抗原を独自のバッファー中200~400μg/mLでスポットし、洗浄し、乾燥し、さらに使用するためにパッケージングした(MSD(登録商標)コロナウイルスプレート2)。その後、MSD Blocker Aでプレートをブロッキングし、希釈バッファーで1:500および1:5000に希釈した参照標準、対照およびサンプルを添加した。インキュベーション後、検出抗体(MSD SULFO-TAGTM Anti-Human IgG Antibody)を加え、次いでMSD GOLDTM Read Buffer Bを加え、MESO QuickPlex SQ 120MM Readerを用いてプレートを読み取った。結果を任意単位(AU)/mLで表した。
【0143】
MSD擬似中和アッセイは、スパイクタンパク質とACE2受容体の結合を中和する抗体を測定するために使用した。プレートを上記のようにブロッキングおよび洗浄し、アッセイ希釈液で1:10および1:100希釈したアッセイキャリブレーター(COVID-19中和抗体;Sタンパク質に対するモノクローナル抗体;200μg/mL)、対照血清、および試験血清サンプルをプレートに添加した。プレートをインキュベートした後、MSD SULFO-TAGTMコンジュゲートACE-2の0.25μg/mL溶液を添加し、その後、プレートを上記のように読み取った。電気化学的発光(ECL)シグナルを記録し、結果を1/ECLとして表した。
【0144】
統計分析
データは、古典的なエクセルファイル(Microsoft Excel 2016)を用いて収集した。非マッチ群間の差は、対応のないt検定またはマン・ホイットニーU検定(Graphpad Prism 8.0)を用いて比較し、マッチ群間の差は、対応のあるt検定またはウィルコクソン符号順位検定(Graphpad Prism 8.0)を用いて比較した。ウイルス動態パラメーターは、ログランク検定(Graphpad Prism 8.0)を用いて比較した。ウイルスと免疫パラメーターの相関は、ノンパラメトリックスピアマン相関(Graphpad Prism 8.0)を用いて決定した。
【0145】
結果
このhu-マウスモデルで観察された免疫原性は、本発明者らのこれまでのCD40標的インフルエンザおよびHIVワクチン研究
21,22,26,27と一致しており、αCD40.RBDがRBD特異的T細胞およびB細胞応答を惹起すための強力なプライムまたはブーストワクチンであり得ることを示している
19。そこで、6頭の回復期カニクイザルに、アジュバントなしで200μgのワクチンを皮下注射した。さらに12頭(回復期6頭とナイーブ6頭)の動物に対照としてPBSを注射した(
図7a)。ワクチン群と対照群に無作為に振り分けた回復期のサルは全て、ヒドロキシクロロキン(HCQ)による曝露前または曝露後の予防を評価するための試験で、約6か月前(範囲=26~24週)にSARS-CoV-2に感染していた。HCQの抗ウイルス効果
30の証拠は観察されず、このウイルスへの初回曝露後、全ての動物が同様のウイルス量のプロファイルを示し(データは示さず)、一過性の中等度の疾患を有し、血清中に検出された抗S IgG抗体のレベルが増加した(
図7b)。αCD40.RBD-ワクチン注射の時点で、2群の回復期のサルの抗S IgGレベルは同等であり、回復期の患者の血清で検出された特異的応答の平均範囲にあった(
図7c)。
【0146】
ワクチン接種前、サルのSARS-CoV-2感染により、抗RBD抗体(
図7d)および低いが検出可能なレベルの、スパイクタンパク質のACE2受容体への結合を阻害する抗体(
図7e)の両方が生じた。ワクチン接種前、RBDおよびN-ペプチドプールによるPBMCのエクス・ビボ刺激後、回復期のサルの両群について、低いTh1(IFN-γ+/- IL-2+/- TNF-α)型CD4+ T細胞応答が観察された(データは示さず)。回復期の動物に、検出可能な抗RBDまたは抗N CD8+T細胞を有するものはなかった(データは示さず)。αCD40.RBDワクチン注射の2週間後、ワクチン接種を受けた6頭のサルは全て、血清中の抗S(
図7b)および抗RBD IgG(
図7d)レベルの有意な増加を示し、これはACE2受容体へのRBD結合の阻害能力の増加と相関し(p=0.022、
図7e)、ワクチン接種の4週後も上昇したままであった。真正ウイルスを用いたイン・ビトロアッセイ
14では、ワクチンによって上昇した抗体が、αCD40.RBDに存在するD614Gを含む変異体を中和するだけでなく(データは示さず)、これまでに循環している変異体によって上昇した抗体に対して部分的に耐性があることが知られているB1.1.7および程度は低いがB1.351も交差中和することが確認された
31、32。PBSを注射した回復期の対照では、これらのパラメーターはいずれも増加しなかった(
図7b、d、e)。さらに、ワクチン接種したサルにおける抗S IgGレベルは、症候性SARS-CoV-2感染の1~3か月後にヒトで通常観察されるレベルよりも高かった(p=0.0018)(データは示さず)。また、この免疫化により、6頭の免疫動物の全てで、抗RBD Th1応答が有意に増加したが(p=0.031;
図7f、g)、抗N CD4+ T細胞(データ示さず)またはSARS-CoV-2特異的CD8+ T細胞の規模には変化は見られなかった(データ示さず)。
【0147】
ワクチンまたはプラセボ注射の4週間後、12頭の回復期のサルに、これまでに報告されている抗原投与手順
30を用いて、鼻腔内および気管内経路を組み合わせて投与した高用量(1×10
6pfu)のSARS-CoV-2への2回目の曝露を行った。また、対照として6頭のSARS-CoV-2ナイーブ動物にも抗原投与を行った。気管スワブ(
図8a-d)および鼻咽頭(
図8d)スワブおよび気管支肺胞洗浄液(BAL、
図8e)においてウイルスゲノム(gRNA)およびサブゲノム(sgRNA)RNAが検出されたことにより示されるように、全てのナイーブ動物は感染した。注目すべきは、これらの動物におけるウイルス複製のダイナミクスは、2群の回復期サルで、6か月前の初回感染時に観察されたものと同等であったことである(データは示さず)。
【0148】
ワクチンを接種していない回復期の動物は、2回目のSARS-CoV-2投与に対して防御されなかったが、ナイーブ動物よりも有意に低いウイルスRNAレベルが上気道で検出された(
図8a~e)。αCD40.RBDワクチンは、回復期のサルで観察された部分的な防御を顕著に改善した。ワクチン接種動物は全て、ワクチン接種をしていない回復期動物よりも有意に低いウイルスgRNAレベルを示した(p=0.015、
図8d)。sgRNAのレベルは、ワクチン接種動物6頭中5頭の上気道サンプルで検出限界以下にとどまったが、sgRNAはワクチン接種していない回復期動物6頭中4頭および全てナイーブ対照動物では検出された(データは示さず)。さらに、検出不能なgRNAレベルに達するまでの曝露後時間(p.expo.)は、ワクチン接種した回復期動物では、非ワクチン接種動物および対照動物よりも有意に短かった(
図8c)。また、ワクチン接種の有効性は下気道においてより高く、ワクチン接種したサル6頭中3頭だけが、BAL中のgRNAが検出限界を超えたのはp.expo.3日目であったのに対し、ワクチン接種していない回復期動物6頭では6日目であった(
図8e)。消化管からのウイルスの排出の完全な防御が、非ワクチン接種およびワクチン接種回復期サルで認められ(データは示さず)、ワクチンに加えて、自然感染免疫がウイルスの二次感染を防ぐために重要な役割を果たす可能性があることが示している
33。
【0149】
ナイーブ感染動物と比較した、ワクチン接種および非ワクチン接種回復期サルにおけるウイルス量の減少は、白血球数に対する限定的な影響(データは示さず)および血漿中のサイトカイン、特にIL-1RAおよびCCL2濃度の減少(データは示さず)に関連していた。このようなウイルス量およびサイトカインプロファイルはまた、X線コンピューター断層撮影(CT)によってスコア化されるような肺病変の減少(データは示さず)とも関連していた。
【0150】
次に、SARS-CoV-2ウイルス投与後の全動物の免疫応答を解析した。ナイーブ対照は、抗S、抗RBD、および抗N IgGの生成が最も遅く(
図8f)、そのレベルは、p.expo.20日目において他の2群よりも有意に低いままであった(p=0.022)。非ワクチン接種回復期動物は、迅速かつ強固な既往抗体応答を生じ(
図8f)、これは、p.expo.9日目までの、RBDに結合したACE2を中和する血清能力の有意な増加(p=0.031)(
図8g)と関連しており、この時点で、ワクチン接種群で観察されたレベルに到達した。血清の抗S特異的抗体応答および抗RBD特異的抗体応答および中和活性は、ワクチン接種サルにおいて、抗原投与時にすでに達成された高いレベルで維持され、対照サルに優る状態を維持した(
図8f、g)。抗RBD Th1 CD4+応答は、対照(回復期およびナイーブ)動物のほとんどについて抗原投与後に増加し、ナイーブ対照の一部では、p.expo.9日目に早くもより高レベルを示した(データは示さず)。逆に、18頭の動物全てが、N-ペプチドプールに対して同等の抗体およびCD4+ T細胞応答を示し(データは示さず)、おそらく感染個体における非構造抗原に対する応答の優位性を反映していると思われる。IFN-γが介在するCD8+ T細胞反応も主としてNペプチドに対するものであったが(データは示さず)、全ての回復期サルでは、強度はナイーブ対照よりも有意に低下し(データは示さず)、おそらくウイルス複製をよりよく制御した結果、ウイルス抗原への曝露の低下を反映していると思われる。記録された全てのパラメーター間のスピアマン分析により、抗RBD阻害抗体およびACE2阻害抗体の誘導が、炎症性サイトカインIL-1RAおよびCCL2の血漿レベルと同様に、ウイルス量および疾患マーカーの減少と相関させるための最も強いパラメーターであることが判明した(データは示さず)。
【0151】
考察
ヒトにおいて、SARS-CoV-2の自然感染および最初のワクチン候補によって誘導される防御の持続期間は不明である。回復期のヒトでは、ウイルス中和抗体応答は衰え、以前の曝露から数か月以内に再感染することが報告されている33,34。感染後3か月以内にほとんどの患者で観察された中和抗体レベルの低下は、長期的な防御を提供するためにワクチンブースターが必要であることを示唆し得る35。初回感染後すぐに行われた従前のNHP再投与試験36とは対照的に、本発明者らは、SARS-CoV-2の再感染が、ウイルスへの初回曝露から6か月後の回復期のサルにおいて完全に防止されないことを実証し、防御免疫が経時的に衰えることを確認した。また、現在ヒトで使用されているワクチンは、重症化を防ぐことを目的としており、感染を防ぎ、二次感染を大幅に制限するために必要なレベルまで初期のウイルス複製を減少させる能力については、部分的な情報しか得られていない。無症状のまたは軽症で発症したワクチン接種者は、ウイルスを伝播し続け、ウイルスの循環に積極的に寄与する可能性がある。本発明者らが開発したαCD40.RBDワクチンは、回復期のサルの免疫を著しく向上させ、その結果、ウイルスに再び曝された後にウイルス量を、そのような二次伝播を避け得るレベルまで減少させた。よって、このワクチンは、自然感染またはベクターに基づくワクチンによる事前のプライミングによって誘導された既存の免疫の適切なブースターとなり得る。CD40発現細胞に抗原を標的化するこの新世代のサブユニットワクチンは、安全で効率的なブースター戦略に有利であり得る。アジュバントを必要とせずに防御免疫を誘導することができることで、アジュバントを使用したワクチンよりも忍容性が向上し、ウイルスの循環を制御する上で考慮すべき人口の重要な集団として特定の脆弱性を持つ人または小児に適したタンパク質に基づくワクチンの開発が加速される。
【0152】
参考文献:
本願を通じて、様々な参考文献が、本発明が属する最先端の技術を説明している。これらの参考文献の開示は、参照により本開示の一部とされる。
【配列表】
【国際調査報告】