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特表2023-554594液体試料の粘度を判定する方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】液体試料の粘度を判定する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/00 20060101AFI20231221BHJP
   G01N 27/62 20210101ALN20231221BHJP
【FI】
G01N11/00 A
G01N11/00 C
G01N27/62 X
G01N27/62 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530192
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 US2021060422
(87)【国際公開番号】W WO2022109434
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/117,207
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/160,359
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カテラル,ハンナ・ベス
(72)【発明者】
【氏名】カンプサノ,イアン・デイビッド・グラント
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA04
2G041DA05
2G041DA09
2G041FA12
(57)【要約】
液体試料の粘度を判定する方法及びシステムを提供する。本方法及びシステムは、音響液体処理機(101)を利用する。音響液体処理機(101)は、液体試料を受容すべく適合された第1の位置(105)を有する。音響液体処理機(101)は、指定量の液体試料が第1の位置から音響液体処理機(101)の第2の位置(109)に移送されるまで第1の位置(105)の液体試料に1つ以上の音響信号(217)を印加すべく構成されている。音響液体処理機(101)は、指定量の液体試料を第1の位置(105)から第2の位置(109)に移送するのに必要な音響信号(217)の数に基づいて、液体試料の粘度を判定すべく構成されたコントローラ(202)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質の試料の粘度を測定する方法であって、
前記タンパク質の前記試料を音響液体処理機の第1の位置に配置することと、
前記音響液体処理機を用いて、指定量の前記試料が前記音響液体処理機の第1の位置から第2の位置に移送されるまで1つ以上の第1の音響信号を印加することと、
前記試料の粘度を、i)前記指定量の前記試料を前記第1の位置から前記第2の位置に移送するのに必要な前記1つ以上の第1の音響信号の数、(ii)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なSubEject出力(dB)、(iii)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なSubEject振幅(ボルト)、(iv)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なNewEject振幅(ボルト)、(v)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なNewEject振幅+ThreshdB(ボルト)、及び/又は(vi)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要な出力差(ボルト)に基づいて判定することと
を含む方法。
【請求項2】
前記1つ以上の第1の音響信号を印加することが、前記試料の全部又は実質的に全部が前記第1の位置から前記第2の位置に移送されるまで前記1つ以上の第1の音響信号を印加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料のうち移送対象である前記指定量が、前記第1の位置に残る前記試料の部分のメニスカス上で1本以上の軸に沿って変位を生じさせるのに充分である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
流体移送測定技術を用いて、前記1つ以上の第1の音響信号の各々の間で移送された前記試料の量を測定することを更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記試料の粘度を判定することが、前記第1の音響信号のパラメータの組に基づいて前記試料の粘度を判定することを更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記パラメータの組が周波数、出力、振幅、波長、帯域幅、及び周期のうちの少なくとも2つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の第1の音響信号が各々1~4mHZ又は1.5~3mHz等、1mHz~5mHzの範囲内に周波数を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の第1の音響信号が各々1~2dB又は1~1.5dB等、0.5dB~2.5dBの範囲内に出力を有する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の第1の音響信号を印加することが、前記指定量の前記試料が移送されるまで前記パラメータの組を変化させることを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記パラメータの組を変化させることが、前記第1の音響信号の周波数を反復的に増加させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記周波数を反復的に増加させることが、反復毎に0.1Hz以下又は0.05Hz以下の周波数を増加させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記指定量の前記試料が移送されたか否かを判定することを更に含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記指定量の前記試料が移送されたか否かを判定することが、
前記第1の位置から移送されなかった前記試料の第1の部分に1つ以上の第2の音響信号を印加することと、
前記1つ以上の第2の音響信号の印加に基づいて、前記試料の移送されなかった前記第1の部分の量を判定することと、
前記試料の移送されなかった前記第1の部分の量の判定に基づいて、前記試料の移送された第2の部分の量を判定することと、
前記第1の部分及び/又は前記第2の部分の量を、前記試料のうち移送対象である前記指定量と比較することと
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記試料の移送されなかった前記第1の部分の量が、1つ以上の第2の音響信号の印加に応答して前記試料の移送されなかった前記第1の部分のメニスカス上に形成される刻印に基づいて判定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記試料が少なくとも12μL及び80μL以下の体積を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が約30μLの体積を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記試料が約20μLの体積を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の位置が前記音響液体処理機内に取り外し可能に配置されたソースプレートの第1のウェルであり、前記第2の位置が前記音響液体処理機内に取り外し可能に配置された行き先プレートの第1のウェルであり、前記行き先プレートの前記第1のウェルが前記ソースプレートの前記第1のウェルに対して反転している、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記試料の粘度を判定することが、前記1つ以上の第1の音響信号の数を、前記1つ以上の第1の音響信号の数と前記パラメータの組の粘度との所定の関係と比較することを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上の第1の音響信号の数と前記判定された前記試料の粘度に基づいて前記パラメータの組に関する前記所定の関係を更新することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記試料に関する質量分析データを生成することを更に含み、任意選択的に、前記1つ以上の第1の音響信号が前記試料又は前記試料の一部を質量分析計に移送する、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記生成が電子スプレーイオン化、大気圧イオン化、大気圧化学イオン化、又は大気圧マトリクス支援レーザー脱離/イオン化を用いて実行される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
分析装置を用いて試料の分析を実行することを更に含み、任意選択的に、前記1つ以上の第1の音響信号が前記試料を第1及び/又は第2の位置から前記分析装置に移送する、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記分析装置が質量分析計、液体クロマトグラフィー装置、分光測光装置、糖鎖分析装置、赤外線検出器、蛍光プレートリーダー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記試料の測定された粘度に基づいて前記試料が仕様に適合しているか又は不適合かを前記音響液体処理機により判定することを更に含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法を2時間以内に少なくとも100個の追加的試料に対して実行することを更に含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
タンパク質の試料の粘度を測定する方法であって、
前記タンパク質の前記試料を音響液体処理機の第1の位置に配置することと、
前記音響液体処理機を用いて、指定量の前記試料が第1の位置から第2の位置に移送されたと判定されるまで1つ以上の第1の音響信号を前記第1の位置の前記試料に繰り返し印加することと、
(i)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要な反復回数、(ii)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なSubEject出力(dB)、(iii)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なSubEject振幅(ボルト)、(iv)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なNewEject振幅(ボルト)、(v)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なNewEject振幅+ThreshdB(ボルト)、及び/又は(vi)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要な出力差(ボルト)に基づいて試料の粘性を判定することと
を含む方法。
【請求項28】
前記1つ以上の第1の音響信号を反復的に印加することが、前記試料の全部又は実質的に全部が前記第1の位置から前記第2の位置に移送されるまで前記1つ以上の第1の音響信号を反復的に印加することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
第1の反復のために前記音響液体処理機の第1のパラメータの組を設定すること、及び前記1つ以上の後続する反復において前記音響液体処理機の第2のパラメータの組を設定することを更に含む、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記音響液体処理機の第2のパラメータの組に基づいて前記試料の粘度を判定することを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記試料のうち移送対象である前記指定量が、前記第1の位置に残っている前記試料の部分のメニスカス上の1本以上の軸に沿って変位を生じさせるのに充分である、請求項27~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
流体移送測定技術を用いて、前記反復間で移送された前記試料の量を測定することを更に含む、請求項27~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記パラメータが周波数、出力、振幅、波長、帯域幅、及び周期のうちの少なくとも2つを含む、請求項27~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記1つ以上の第1の音響信号が各々1~4mHZ又は1.5~3mHz等、1mHz~5mHzの範囲内に周波数を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上の第1の音響信号が各々1~2dB又は1~1.5dB等、0.5dB~2.5dBの範囲内に出力を有する、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記周波数を反復的に増加させることが、反復毎に0.1Hz以下又は0.05Hz以下の周波数を増加させることを含む、請求項27~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記指定量の前記試料が移送されたか否かを判定することを更に含む、請求項27~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記指定量の前記試料が移送されたか否かを判定することが、
前記第1の位置から移送されなかった前記試料の第1の部分に1つ以上の第2の音響信号を印加することと、
前記1つ以上の第2の音響信号の印加に基づいて、前記試料の移送されなかった前記第1の部分の量を判定することと、
前記試料の移送されなかった前記第1の部分の量の判定に基づいて、前記試料の移送された第2の部分の量を判定することと、
前記第1の部分及び/又は前記第2の部分の量を、前記試料のうち移送対象である前記指定量と比較することと
を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記試料の移送されなかった前記第1の部分の量が、1つ以上の第2の音響信号の印加に応答して前記試料の移送されなかった前記第1の部分のメニスカス上に形成される刻印に基づいて判定される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記試料が少なくとも12μL及び80μL以下の体積を有する、請求項27~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記試料が約30μLの体積を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記試料が約20μLの体積を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の位置が前記音響液体処理機内に取り外し可能に配置されたソースプレートの第1のウェルであり、前記第2の位置が前記音響液体処理機内に取り外し可能に配置された行き先プレートの第1のウェルであり、前記行き先プレートの前記第1のウェルが前記ソースプレートの前記第1のウェルに対して反転している、請求項27~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記試料に対して質量分析を実行することを更に含み、任意選択的に、前記音響信号が前記試料又は前記試料の一部を前記質量分析計に移送する、請求項27~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記質量分析が電子スプレーイオン化、大気圧イオン化、大気圧化学イオン化、又は大気圧マトリクス支援レーザー脱離/イオン化を含み、任意選択的に、前記質量分析データが前記粘度と同時に判定される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
分析装置を用いて前記試料の分析を実行することを更に含み、任意選択的に、前記1つ以上の第1の音響信号が、前記試料又はその一部を前記第1及び/又は前記第2の位置から前記分析装置に移送する、請求項27~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記分析装置が質量分析計、液体クロマトグラフィー装置、分光測光装置、糖鎖分析装置、赤外線検出器、蛍光プレートリーダー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記試料の測定された粘度に基づいて前記試料が仕様に適合しているか又は不適合かを前記音響液体処理機により判定することを更に含む、請求項27~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記方法を2時間以内に少なくとも100個の追加的試料に対して実行することを更に含む、請求項27~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
既知の粘度の標準と、(i)前記標準の指定量の移送に必要な前記第1の音響信号の数、(ii)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なSubEject出力(dB)、(iii)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なSubEject振幅(ボルト)、(iv)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なNewEject振幅(ボルト)、(v)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なNewEject振幅+ThreshdB(ボルト)、又は(vi)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要な出力差(ボルト)のいずれかとの所定の関係に基づいて、更生を実行することを更に含み、前記試料の粘度を判定することが更に前記較正に基づいて前記試料の粘度を判定することを含む、請求項27~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
タンパク質の試料の粘度を判定するシステムであって、
前記タンパク質の前記試料を受容すべく適合された第1の位置を有する音響液体処理機であって、指定量の前記試料が前記第1の位置から第2の位置に移送されるまで前記第1の位置において前記タンパク質の前記試料に1つ以上の第1の音響信号を印加すべく構成された音響液体処理機と、
i)前記指定量の前記試料を前記第1の位置から前記第2の位置に移送するのに必要な前記第1の音響信号の数(ii)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なSubEject出力(dB)(iii)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移送するのに必要なSubEject振幅(ボルト)、(iv)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移動させるのに必要なNewEject振幅(ボルト)、(v)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移動させるのに必要なNewEject振幅+ThreshdB(ボルト)、又は(vi)前記指定量の前記試料を前記第2の位置に移動するのに必要な出力差(ボルト)に基づいて前記試料の粘度を判定すべく構成されたコントローラと
を含むシステム。
【請求項52】
前記試料のうち移送対象である前記指定量が、前記試料の実質的に全部である、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記試料のうち移送対象である前記指定量が、前記第1の位置に残っている前記試料の部分のメニスカス上の1本以上の軸に沿って変位を生じさせるために必要な前記試料の最小量である、請求項51又は52に記載のシステム。
【請求項54】
前記コントローラが、流体測定技術を用いて、移送された前記試料の量を測定すべく構成されている、請求項51~53のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項55】
前記コントローラが、前記指定量の前記試料が移送されるまで前記音響液体処理機の前記パラメータの組を変化させるべく構成されている、請求項51~54のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項56】
前記コントローラが、前記第1の音響信号の前記パラメータの組に基づいて前記試料の粘度を判定すべく構成されている、請求項51~55のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項57】
前記コントローラが、前記指定量の前記試料が移送されたか否かを、
前記第1の位置から移送されなかった前記試料の第1の部分に1つ以上の第2の音響信号を印加することと、
前記1つ以上の第2の音響信号の印加に基づいて、前記試料の移送されなかった前記第1の部分の量を判定することと、
前記試料の移送されなかった前記第1の部分の量の判定に基づいて、前記試料の移送された第2の部分の量を判定することと、
前記第2の部分及び/又は前記第1の部分の量を、前記試料のうち移送対象である前記指定量と比較することと
を含む、請求項51~56のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項58】
移送されなかった前記試料の前記第1の部分の量が、前記1つ以上の第2の音響信号の印加に応答して移送されなかった前記試料の前記第1の部分のメニスカス上に形成される刻印に基づいて判定される、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
前記試料が少なくとも12μL及び80μL以下の体積を有する、請求項51~58のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項60】
前記パラメータが周波数、出力、振幅、波長、帯域幅、及び周期のうち少なくとも2つを含む、請求項51~59のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項61】
前記1つ以上の第1の音響信号が各々1mHZ~4mHZ又は1.5~3mHz等、1mHz~5mHzの範囲内に周波数を有する、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記1つ以上の第1の音響信号が各々、1~2dB又は1~1.5dB等、0.5dB~2.5dBの範囲内に出力を有する、請求項60又は61に記載のシステム。
【請求項63】
前記第1の位置が前記音響液体処理機内に取り外し可能に配置されたソースプレートの第1のウェルであり、前記第2の位置が前記音響液体処理機内に取り外し可能に配置された行き先プレートの第1のウェルであり、行き先プレートの第1のウェルがソースプレートの第1のウェルに対して反転している、請求項51~62のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項64】
前記コントローラが、前記1つ以上の音響信号の数を、前記1つ以上の第1の音響信号の数と、前記1つ以上の第1の音響信号のパラメータの組の粘度との所定の関係と比較することにより前記試料の粘度を判定する、請求項51~63のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項65】
前記試料から質量分析データを生成すべく構成された質量分析装置を更に含み、任意選択的に、前記1つ以上の第1の音響信号が前記試料又はその一部を前記質量分析装置に移送すべく構成されている、請求項51~64のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項66】
前記質量分析データが電子スプレーイオン化、大気圧イオン化、大気圧化学イオン化、大気圧マトリクス支援レーザー脱離/イオン化を用いて生成され、前記粘度が前記質量分析データと同時に判定され得る、請求項65に記載のシステム。
【請求項67】
前記試料に対して分析を実行すべく構成された分析装置を更に含み、任意選択的に、前記1つ以上の第1の音響信号が前記試料を前記第1及び/又は前記第2の位置から前記分析装置に移送する、請求項51~66のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項68】
前記分析装置が質量分析装置、液体クロマトグラフィー装置、分光測光装置、糖鎖分析装置、赤外線検出器、蛍光プレートリーダー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項67に記載のシステム。
【請求項69】
前記音響液体処理機が、前記試料の測定された粘度に基づいて前記試料が仕様に適合しているか又は不適合かを判定すべく構成されている、請求項51~68のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項70】
前記コントローラが、既知の粘度の標準と、前記標準の指定量の移送に必要な前記第1の音響信号の数との所定の関係に基づいて較正され、前記コントローラが、前記較正に基づいて前記試料の粘度を判定すべく構成されている、請求項51~69のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項71】
前記コントローラが、前記較正に基づいて複数の試料の粘度を判定すべく構成されている、請求項70に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少量の液体試料、例えばタンパク質の粘度を判定するシステム及び方法を目的とする。
【背景技術】
【0002】
生命科学において、タンパク質を含む液体試料の粘度の測定が必要な場合がある。これらの粘度測定の信頼性が高いことが実行中の研究及びタンパク質治療製品の開発に必須であることが多い。このような状況における粘度の測定に円錐平板法が一般に用いられている。円錐平板法は、印加する回転せん断応力及びせん断速度の変化に基づいて試料の粘度を測定する動的粘度測定法である。円錐平板法は、一般に精度及び正確さが高いものとして当業者には評価されている。他の粘度測定法、例えばRheosense Initium及びMalvern Viscosizerも用いられ得る。
【0003】
音響信号を印加しながら液体を移動させる処理は音響液滴射出(ADE)として知られる。ADEの詳細に関して、引用により本明細書に組み込まれたB.Hadimioglu,R.Stearns,and R.Ellson,“Moving Liquids with Sound:The Physics of Acoustic Droplet Ejection for Robust Laboratory Automation in Life Sciences,”J Lab Autom.,vol.21,no.1,pp.4-18,Feb.2016,doi:10.1177/2211068215615096で議論されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】B.Hadimioglu,R.Stearns,and R.Ellson,“Moving Liquids with Sound:The Physics of Acoustic Droplet Ejection for Robust Laboratory Automation in Life Sciences”J Lab Autom.,vol.21,no.1,pp.4-18,Feb.2016,doi:10.1177/2211068215615096
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、(a)タンパク質の試料を音響液体処理機の第1の位置に配置すること、(b)音響液体処理機を用いて、指定量の試料が音響液体処理機の第1の位置から第2の位置に移送されるまで1つ以上の第1の音響信号を印加すること、及び(c)指定量の試料を第1の位置から第2の位置に移送するのに必要な1つ以上の第1の音響信号の数に基づいて試料の粘性を判定することを含む方法を提供する。追加的又は代替的に、粘度は、(i)指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要なSubEject出力(dB)、(ii)指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要なSubEject振幅(ボルト)、(iii)指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要なNewEject振幅(ボルト)、(iv)指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要なNewEject振幅+ThreshdB(ボルト)、及び/又は(v)指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要な出力差(ボルト)のいずれかに基づいて判定され得る。
【0006】
本開示の別の態様は、(a)タンパク質の試料を音響液体処理機の第1の位置に配置すること、(b)指定量の試料が第1の位置から第2の位置に移送されたと判定されるまで、音響液体処理機を用いて第1の位置の試料に1つ以上の音響信号を反復的に印加すること、(c)指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要な反復回数に基づいて試料の粘度を判定することを含む方法を提供する。追加的又は代替的に、粘度は、指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要なSubEject出力(dB)、SubEject振幅(ボルト)、NewEject振幅(ボルト)、NewEject振幅+ThreshdB(ボルト)の和、又は出力差(ボルト)に基づいて判定され得る。
【0007】
本開示の別の態様は、音響液体処理機である。音響液体処理機は、試料を受容すべく適合された1つ以上のウェルを有する第1の位置を有する。音響液体処理機は、指定量の試料が第1の位置から音響液体処理機の第2の位置に移送されるまで1つ以上の第1の音響信号を第1の位置で試料に印加すべく構成されている。音響液体処理機は、指定量の試料を第1の位置から第2の位置に移送するのに必要な第1の音響信号の数に基づいて試料の粘度を判定すべく構成されたコントローラを有する。追加的又は代替的に、粘度は、指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要なSubEject出力(dB)、指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要なSubEject振幅(ボルト)、指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要なNewEject振幅(ボルト)、指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要なNewEject振幅+ThreshdB(ボルト)、又は指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要な出力差(ボルト)に基づいて判定され得る。
【0008】
上述の1つ以上の態様のいずれかに更に従い、本方法及び/又は音響液体処理機は、以下の1つ以上の好適な形式のいずれかを更に含み得る。
【0009】
いくつかの形式において、試料のうち移送対象である指定量は試料の全部又は実質的に全部である。
【0010】
いくつかの形式において、試料のうち移送対象である指定量は、第1の位置に残っている試料の部分のメニスカス上の1本以上の軸に沿って変位を生じさせるのに必要な試料の最小量である。
【0011】
いくつかの形式において、コントローラは流体測定技術を用いて、移送された試料の量を測定すべく構成されている。
【0012】
いくつかの形式において、コントローラは、第1の音響信号のパラメータの組に基づいて試料の粘度を判定すべく構成されている。
【0013】
いくつかの形式において、パラメータは、周波数、出力、振幅、波長、帯域幅、及び周期のうち少なくとも2つを含む。
【0014】
いくつかの形式において、1つ以上の第1の音響信号は各々1~4mHz又は1.5~3mHz等、1mHz~5mHzの範囲内に周波数を有する。いくつかの形式において、1つ以上の第1の音響信号は各々1~2dB又は1~1.5dB等、0.5dB~2.5dBの範囲内に出力を有する。いくつかの形式において、コントローラは、指定量の試料が移送されるまで音響液体処理機のパラメータの組を変化させるように構成されている。
【0015】
いくつかの形式において、コントローラは、第1の音響信号の周波数を反復的に増加させるべく構成されている。
【0016】
いくつかの形式において、コントローラは、第1の音響信号の周波数を反復毎に0.1Hz以下又は0.05Hz以下反復的に増加させるべく構成されている。
【0017】
いくつかの形式において、コントローラは、指定量の試料が移送されたか否かを判定する。
【0018】
いくつかの形式において、コントローラは、指定量の試料が移送されたか否かを、試料のうち第1の位置から移送されなかった第1の部分に1つ以上の第2の音響信号を印加すること、試料のうち移送されなかった第1の部分の量を1つ以上の第2の音響信号の印加に基づいて判定すること、試料のうち移送された第2の部分の量を、試料のうち移送されなかった第1の部分の量の判定に基づいて判定すること、及び試料の第2の部分及び/又は第1の部分の量を、試料のうち移送対象である指定量と比較することにより判定する。
【0019】
いくつかの形式において、試料のうち移送されなかった第1の部分の量は、1つ以上の第2の音響信号の印加に応答して移送されない試料の第1の部分のメニスカス上に形成される刻印に基づいて判定される。
【0020】
いくつかの形式において、試料は少なくとも12μL、及び80μL以下の体積を有する。
【0021】
いくつかの形式において、試料は約30μLの体積を有する。
【0022】
いくつかの形式において、試料は約20μLの体積を有する。
【0023】
いくつかの形式において、第1の位置は音響液体処理機内に取り外し可能に配置されたソースプレートの第1のウェルであり、第2の位置は音響液体処理機内に取り外し可能に配置された行き先プレートの第1のウェルであり、行き先プレートの第1のウェルはソースプレートの第1のウェルに対して反転されている。
【0024】
いくつかの形式において、コントローラは、1つ以上の音響信号の数を、1つ以上の第1の音響信号の数と1つ以上の第1の音響信号のパラメータの組の粘度との所定の関係と比較することにより試料の粘度を判定する。例えば、いくつかの形式において、コントローラは、標準又は既知物質の粘度(例:コーンプレート由来のcP)と、指定量の標準又は既知物質を移送するのに必要な第1の音響信号の数(例:音響反復)との所定の関係に基づいて較正される。いくつかの形式において、コントローラは、標準又は既知物質の粘度(例:コーンプレート由来のcP)と、指定量の標準又は既知物質を移送するのに必要なSubEject出力(dB)、標準又は既知物質を移送するのに必要なSubEject振幅(ボルト)、指定量の標準又は既知物質を移送するのに必要なNewEject振幅(ボルト)、指定量の標準又は既知物質を移送するのに必要なNewEject振幅+ThreshdB(ボルト)、及び/又は指定量の標準又は既知物質を移送するのに必要な出力差(ボルト)との所定の関係に基づいて較正され得る。較正されたコントローラを用いて、組成が未知及び/又は粘度が未知の試料を含む1つ以上の試料の粘度を判定し得る。1つ以上の試料は互いに異なり得る。1つ以上の試料の粘度の判定はコントローラを更に較正することなく行われ得る。
【0025】
いくつかの形式において、コントローラは、1つ以上の第1の音響信号の数及び判定された試料の粘度に基づいてパラメータの組に関する所定の関係を更新する。
【0026】
いくつかの形式において、試料から質量分析データを生成すべく構成された質量分析装置において、任意選択的に、1つ以上の第1の音響信号が試料又はその一部を質量分析装置に移送すべく構成されている。
【0027】
いくつかの形式において、質量分析データは、電子スプレーイオン化、大気圧イオン化、大気圧化学イオン化、大気圧マトリクス支援レーザー脱離/イオン化を用いて生成され、前記粘度は前記質量分析データと同時に判定され得る。
【0028】
いくつかの形式において、試料の分析を実行する分析装置において、任意選択的に、1つ以上の第1の音響信号は試料を第1及び/又は第2の位置から分析装置に移送する。
【0029】
いくつかの形式において、分析装置は、質量分析計、液体クロマトグラフィー装置、分光測光装置、糖鎖分析装置、赤外線検出器、蛍光プレートリーダー、又はこれらの組み合わせを含む。
【0030】
いくつかの形式において、音響液体処理機は、試料の測定された粘度に基づいて試料が仕様に適合しているか又は不適合かを判定すべく構成されている。仕様とは、試料の特性(例:粘度)が指定されたパラメータ内に収まる場合の試料の許容度を示す1つ以上の指定されたパラメータを指す。試料の特性が指定されたパラメータ内に収まらない場合、当該試料は不適合とみなされ得る。
【0031】
いくつかの形式において、本方法及び/又は音響液体処理機は2時間以内に少なくとも100個の追加的試料に対して実行され得る。
【0032】
以下に記述する図面は本明細書に開示するシステム及び方法の様々な態様を示している。各図は開示するシステム及び方法の特定の態様の一実施形態を示し、各図は可能な実施形態に合致すべく意図されていることを理解されたい。更に、可能な限り、以下の記述では以下の図面に含まれる参照符号で要素を指示し、複数の図面に示す特徴が一貫的な参照符号で指定されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本開示の原理に従い構築された液体試料の粘度を判定すべく構成された音響液体処理機の一例を示す。
図2A】液体試料を含む第1の位置、及び第2の位置に液滴を射出する音響信号エミッタを示す、図1の音響液体処理機の一部の断面図である。
図2B図2Aと同様であるが、液体試料が音響信号発信器を介して第1の位置から第2の位置に一旦完全に射出された状態を示す。
図3A】第1の出力設定を有し、反復間で音響信号周波数が段階的に増加する音響信号を用いて濃度が100~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3B】第2の出力設定を有し、反復間で音響信号周波数が段階的に増加する音響信号を用いて濃度が100~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3C】第1の出力設定を有し、反復間での周波数の段階的な増加が0.1Hzに減少した音響信号を用いて濃度が100~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3D】第2の出力設定を有し、反復間での周波数の段階的な増加が0.1Hzに減少した音響信号を用いて濃度が100~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3E】第1の出力設定を有し、反復間での周波数の段階的な増加が0.05Hzに減少した音響信号を用いて濃度が100~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3F】第2の出力設定を有し、反復間での周波数の段階的な増加が0.05Hzに減少した音響信号を用いて濃度が100~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3G】第1の出力設定を有し、反復間での周波数の段階的な増加が0.1Hzに減少した音響信号を用いて濃度が135~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3H】第2の出力設定を有し、反復間での周波数の段階的な増加が0.1Hzに減少した音響信号を用いて濃度が135~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3I】第1の出力設定を有し、反復間での周波数の段階的な増加が0.05Hzに減少した音響信号を用いて濃度が135~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3J】第2の出力設定を有し、反復間での周波数の段階的な増加が0.05Hzに減少した音響信号を用いて濃度が135~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3K】第2の出力設定を有し、CPモードにおける反復間での周波数の段階的な増加が0.05Hzに減少した音響信号を用いて濃度が135~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3L】第2の出力設定を有し、CPモードにおける反復間での周波数の段階的な増加が0.05Hzに減少した音響信号を用いて濃度が135~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3M】第2の出力設定を有し、CPモードにおける反復間での周波数の段階的な増加が0.05Hzに減少した音響信号を用いて濃度が135~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3N】第2の出力設定を有し、CPモードにおける反復間での周波数の段階的な増加が0.05Hzに減少した音響信号を用いて濃度が135~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3O】第2の出力設定を有し、CPモードにおける反復間での周波数の段階的な増加が0.05Hzに減少した音響信号を用いて濃度が135~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図3P】第2の出力設定を有し、CPモードにおける反復間での周波数の段階的な増加が0.05Hzに減少した音響信号を用いて濃度が135~165mg/mLである液体試料の粘度の判定に用いた場合の円錐平板法と本開示の方法との相関関係を表すグラフを示す。
図4】本開示の原理に従い構築された、液体試料の粘度を判定する方法の一例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
上述のように、タンパク質を含む液体試料の粘度の測定が必要な場合がある。極めて少量(例:体積)の液体試料(いくつかの例では10μL程度)が研究で注目されることが多いため、これら極めて少量のタンパク質の液体試料の粘度の測定が必要な場合がある。しかし、従来の粘度測定技術には例えばスループット、速度、及び試料消費の観点から不利な点がある。
【0035】
例えば、上述の従来型円錐平板式粘度測定法は典型的に、正確な粘度測定を行うには80μLの液体試料を必要とする。従って、使用可能な液体試料が80μL未満である場合、円錐平板法は液体試料の粘度を測定するには動作が不可能又は不正確な場合がある。円錐平板法はまた、粘度測定の完了後に液体試料を回収することが典型的には困難又は不可能である点で破壊的測定方法でもある。その理由は、円錐平板法の測定処理が、粘度を判定すべく回転せん断応力及びせん断速度を追跡しながら、回転する円錐体で液体試料を回転させることを含むためである。円錐体が回転する結果、液体試料が回転して表面積対体積比が高い状態で平板上に液溜りを形成する。液体試料の一部が回転により平板から外れて円錐平板試験機の他の領域又は部品に浸入する場合がある。また、たとえ液体試料を回収できたとしても、液体試料の忠実度が(例えば試料の汚染及び/又は損傷による)影響を受ける可能性があり、回収された液体試料はその後の研究での使用に適さないであろう。従って、80μLを超える液体試料が使用可能であるとしても、円錐平板法の破壊的性質により、測定処理を通じて液体試料の全部又は大部分が破壊される場合がある。液体試料の全部又は大部分が破壊されることで限られた資源を消費してしまい、研究の反復性が阻害される。別の問題として、従来型円錐平板法は手動式である。従って、円錐平板法は高精度での測定が可能であるが、これは理想的な動作でしか生起しない。円錐平板法を実行する際に操作者が適切な技術を用いなければ、測定された液体試料の粘度が狂ってアッセイ同士の比較に支障をきたす恐れがある。
【0036】
少量の液体試料の粘度を測定する他の方法にも問題がある。例えば、Rheosense社のInitium法は、高粘度の液体試料に対して高い精度及び正確さを示しておらず、意図したように機能するには測定前に粘度の概略範囲が既知である必要があり、せん断速度を考慮していない。別の例として、Malvern社のViscosizer法もグリセロール標準を使用し、同じくせん断速度を考慮しない。更に、Rheosense社のInitium装置及びMalvern社のViscosizer装置は各々(一度に1つの試料を処理する)シリアル機器であり、毛細管の詰まりの影響を受け、徹底した洗浄及び乾燥手順を要する場合がある(これらの機器の毛細管に残留する液体が試料を希釈して粘度の読み取りを狂わせる恐れがあることが知られている)。徹底した洗浄及び乾燥手順は試料毎の実行時間が1時間を超える場合がある。
【0037】
本開示は、液体試料を第1の位置から第2の位置に移動させる音響液体処理機を用いて、タンパク質の液体試料の粘度を判定する高精度且つ精密な方法及びシステムを提供することにより、上述の問題を軽減することを目的とする。本方法及びシステムは、円錐平板法等、従来の方法で測定可能なものよりも少量の液体試料の粘度を非破壊的に測定する。実際に、開示する方法及びシステムを用いて、僅か10μL程度の液体試料でも液体試料の粘度を正確に判定することができる。更に、開示する方法及びシステムが非破壊的であるため、液体試料の忠実度に影響を及ぼすことなく液体試料を第2の位置から回収することができる。従って、液体試料を再利用して、研究の反復性を維持して資源を節約することができる。例えば、粘度の判定後に、高スループット動的光散乱粘度等の、但しこれらに限定されない追加的分析(He,F.;Becker,G.W.;Litowski,J.R.;Narhi,L.O.;Brems,D.N.;Razinkov,V.I.,High-throughput dynamic light scattering method for measuring viscosity of concentrated protein solutions.Anal Biochem 2010,399(1),141-3参照)、コロイド安定性測定(He,F.;Woods,C.E.;Becker,G.W.;Narhi,L.O.;Razinkov,V.I.,High-throughput assessment of thermal and colloidal stability parameters for monoclonal antibody formulations.J Pharm Sci 2011,100(12),5126-41参照)、サイズ排除クロマトグラフィーによるバイオ治療薬高分子量分析(Hong,P.;Koza,S.;Bouvier,E.S.,Size-Exclusion Chromatography for the Analysis of Protein Biotherapeutics and their Aggregates.J Liq Chromatogr Relat Technol 2012,35(20),2923-2950参照)及び高スループット質量分析(Campuzano,I.D.;San Miguel,T.;Rowe,T.;Onea,D.;Cee,V.J.;Arvedson,T.;McCarter,J.D.,High-Throughput Mass Spectrometric Analysis of Covalent Protein-Inhibitor Adduct for the Discovery of Irreversible Inhibitor:A Complete Workflow.J Biomol Screen 2016,21(2),136-44参照)に液体試料を用いることができる。開示する方法及びシステムはまた、操作者の技術に性能が依存しないように完全ではないにせよ、実質的に自動化されている。自動化された方法及びシステムもまた、円錐平板法よりも大幅に速いため、(円錐平板法で必要とされる)液体試料毎に数分ではなく、液体試料毎に数秒のタイムスケールで結果が得られる。
【0038】
図1に、本開示の教示に従い構築されたタンパク質の液体試料の粘度を判定するシステム100の一例を示す。図1に示すように、システム100は、液体試料を受容すべく適合された第1の位置105、及び第1の位置105から液体試料を受容すべく適合された第2の位置109を有する音響液体処理機101を含む。以下により詳細に議論するように、音響液体処理機101は、指定量の試料が第1の位置105から第2の位置109に移送されるまで第1の位置105の液体試料に1つ以上の第1の音響信号を印加すべく構成されている。システム100は次いで、指定量の試料を第1の位置105から第2の位置109に移送するのに必要な1つ以上の第1の音響信号の数に基づいて試料の粘度を判定すべく構成されている。
【0039】
図1に示す音響液体処理機101は、Labcyte社製のEcho550音響液体処理機又はEDC Biosystems社製のATS-100装置等のスタンドアロン科学機器であるが、他の例において、音響液体処理機101はより広範な科学機器に組み込まれ得る。音響液体処理機101は一般に、超音波パルスを印加して液体試料の液滴を射出するADE処理を用いることにより、少量の液体試料を第1の位置105から第2の位置109に非接触的に、且つ高精度で移送可能にする。音響液体処理機101は、少量(例:小体積)の液体試料、例えばミリリットル、マイクロリットル、ナノリットル、ピコリットル、その他の小体積又は少量の液体試料の移送に用いられ得る。本例において音響液体処理機101は治療用タンパク質等のタンパク質の試料と合わせて用いられるが、音響液体処理機101は代替的に核酸(DNA及び/又はRNA等)、界面活性剤、血清、培養細胞、又は他の注目する液体試料の試料粘度の判定に用いられ得る。治療用タンパク質の例として、抗体(モノクローナル抗体等)、抗原結合抗体フラグメント、抗体タンパク質製品、ホルモン、成長因子、サイトカイン、細胞表面受容体又はその配位子、融合タンパク質、キメラタンパク質、PEG化タンパク質、ペプチド、タンパク質フラグメント又はタンパク質を含む複合体(例:抗体薬剤複合体又は抗体核酸複合体等)が挙げられる。抗体タンパク質製品はまた、完全な抗体構造に基づくもの、及び完全な抗原結合機能を保持する抗体フラグメント、例えばscFv、Fabs及びVHH/VHを模倣するものを含む。抗体タンパク質製品の非限定的な例として、単鎖抗体(SCA)、ナノボディ、二重特異性T細胞エンゲージャ分子、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及び多重特異性抗体(二重特異性抗体又は三重特異性抗体等)が挙げられる。いくつかの実施形態において、抗体タンパク質製品は、二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE(登録商標))分子を含むか又は当該分子からなる。BiTE(登録商標)分子は、加工された二重特異性抗体タンパク質製品形式を指し、HuehlsらによるImmunol Cell Biol93(3):290-296(2015)参照。これらは、異なる抗体の2個の単鎖可変フラグメント(scFvs)、又は4個の異なる遺伝子からのアミノ酸配列の、典型的には約55キロダルトンである単一ペプチド鎖への融合を含む。scFvの一方はCD3受容体を介してT細胞に結合し、他方は腫瘍特異的分子を介して腫瘍細胞に結合する。
【0040】
本例において、第1の位置105は、試料の高スループット液体移送を容易にする複数のウェルを有するプレート又はトレイである。より具体的には、第1の位置105は、各々が試料の一部を受容すべく構成された384個のウェルを有するプレートである。代替的に、プレートは、96ウェル、1536ウェル、6144ウェル、又は高スループット液体移送を行う他の任意の数のウェルを有し得る。他の例において、第1の位置105は単一ウェルであり得る。更に他の例において、第1の位置105のプレートは、1つ以上のジャー、ビーカー、トラフ、ペン、フラスコ、試験管、シリンダ、ビュレット、マイクロ流体又はナノ流体アレイ、又は液体試料を保持するのに適した他の任意のレセプタクルの任意のもので代替され得る。本例において、第1の位置105を画定するプレートは、第1の位置105のウェル又は複数のウェル内に液体試料を分注し易いように音響液体処理機101から取り外し可能である。プレートは次いで、音響液体処理機101のADE動作の準備のために音響液体処理機101に装着することができる。しかし、他の例において、プレート(又は第1の位置105を規定する他の要素)は、音響液体処理機101の不可欠な部分となり得る。
【0041】
図1にも示すように、第2の位置109は第1の位置105に対して反転されて第1の位置105の上方に配置されている。第1の位置105から第2の位置に移送された液体試料は、液体試料の表面張力、又は電界の使用等、第2の位置に液体試料を保持する他の任意の適当な方法により第2の位置に保持することができる。しかし、他の例において、第2の位置109は第1の位置105に相対的に異なる位置に配置することができる。
【0042】
ここで図2A、2Bを参照するに、第1の位置105にあるタンパク質の液体試料213の粘度を判定するための音響液体処理機101及び音響信号発信器201並びにコントローラ202の内部を示している。上述のように、システム100を用いて粘度を判定するのに必要な液体試料213の量は少量である。例えば、液体試料213の体積は例えば、試料の10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100μL以下、或いは液体試料213の他の適当な体積その他の量であり得る。
【0043】
ここで図2A、2Bを参照するに、第1の位置105にあるタンパク質を含む液体試料213の粘度を判定するための音響液体処理機101及び音響信号発信器201並びにコントローラ202の内部を示している。図示する液体試料213が1つ以上の試料を含み、その各々が別の試料と同一又は異なる粘度を有し得ることに留意されたい。上述のように、システム100を用いて粘度を判定するのに必要な液体試料213の量は少量である。例えば、液体試料213の体積は例えば、試料の10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100μL以下、或いは液体試料213の他の適当な体積又は他の量であり得る。
【0044】
音響液体処理機101は、音響信号発信器201を介して、1つ以上の第1の音響信号を第1の位置105の液体試料に印加すべく構成されている。音響信号発信器201は、第1の位置105のプレートのウェル内の液体試料の表面に第1の音響信号の各々を集中させることにより、液体試料の表面にマウンド(「変位」と呼ばれる場合がある)を形成させ、第1の位置105の液体試料から第2の位置109内に液滴を射出する。射出される液滴の体積は第1の音響信号のパラメータの組に基づいて判定され得る。これらのパラメータは、周波数、出力、振幅、波長、帯域幅、周期、又は他のパラメータのうち1つ以上を含み得る。
【0045】
より具体的には、図2Aに示すように、音響信号発信器201は、第1の位置105を画定するプレートのウェル群の左端ウェルに含まれる液体試料213に1つ以上の音響信号217を印加することによりマウンド225を生成して第2の位置109を画定するプレートのウェル群の左端ウェル内へ上向きに液滴221を射出する。第1の位置105の他のウェル群が液体試料213からの追加的な試料を含み、その各々が同一試料をより多く(例えば試料を重複、三重に実行するため等)、及び/又は異なる試料(例えば異なるタンパク質、濃度、及び/又は製剤組成を含む)を含み得ることが理解されよう。音響信号発信器201は、指定量の液体試料213が第1の位置105のウェル群の左端ウェルから第2の位置109のウェル群の左端ウェル内へ射出された後で、音響信号発信器201が右方向に移動して第1の位置105の他のウェル群の各々のウェルに含まれる各々の液体試料に1つ以上の音響信号217を同様に印加することを示すべく右向き矢印と共に示されている。図2Aは第1の位置105及び第2の位置109の各々についてウェルの単一列のみを示すが、図1に示す第1の位置105及び第2の位置109のように、グリッド上に展開された複数の列、又は他の何らかの配置も可能であることに注意されたい。
【0046】
本例において、コントローラ202は、音響液体処理機101から遠隔に配置されているが音響液体処理機101に通信可能に接続されている。しかし、他の例において、コントローラ202は音響液体処理機101の一部であっても、又は音響液体処理機101に近接して配置され得る。図2Aに示すように、コントローラ202は一般に、プロセッサ206、メモリ210、通信インターフェース214、及び計算ロジック218を含む。当業者には、コントローラ202が追加的な要素、例えば本明細書では明示的に図示していないアナログ-デジタル変換器、デジタル-アナログ変換器、増幅器、センサ、及びゲージ等も含み得ることが理解されよう。任意選択的に、コントローラ202は、既知物質等の標準物質の粘度(例えば標準の円錐平板導出cP粘度)と、指定量の標準物質を移送するのに必要な第1の音響信号の数(例:反復)との所定の関係に基づいて較正される。図3H~3JにおけるR値との直線フィッティングが0.89~0.90であることは、粘度と、粘度及び/又は組成が未知の試料の粘度の判定用を含む第1の音響信号の数との関係に基づいてコントローラ202を高い信頼性で較正できることを示唆する。較正されたコントローラ202を用いて、組成及び/又は粘度が未知の試料を含む1つ以上の試料の粘度を判定することができる。較正されたコントローラ202は、更なる較正を行うことなく1つ以上の試料の粘度を判定することができる。いくつかの例において、較正は、標準又は既知物質の粘度と、指定量の標準又は既知物質の移送に必要な第1の音響信号の数との線形関係に基づいている。いくつかの例において、較正は、標準又は既知物質の粘度と、指定量の標準又は既知物質を移送するのに必要な第1の音響信号の数との間の所定の数学的関係に基づいており、当該数学的関係は線形又は非線形であり得る。いくつかの例において、較正は、標準又は既知物質の粘度と、(i)指定量の標準又は既知物質の移送に必要な第1の音響信号の数、(ii)指定量の標準又は既知物質の移送に必要なSubEject出力(dB)、(iii)指定量の標準又は既知物質の移送に必要なSubEject振幅(ボルト)、(iv)指定量の標準又は既知物質の移送に必要なNewEject振幅(ボルト)、(v)指定量の標準又は既知物質の移送に必要なNewEject振幅+ThreshdB(ボルト),又は(vi)指定量の標準又は既知物質の移送に必要な出力差(ボルト)のいずれかとの線形関係に基づいて行われ得る。
【0047】
プロセッサ206は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ、ASIC、フィールドプログラム可能ゲートアレイ、グラフィック処理ユニット、アナログ回路、デジタル回路、又は他の既知又は後日開発されたプロセッサであり得る。プロセッサ206は、メモリ210内の命令に従い動作する。メモリ210は揮発性メモリ又は不揮発性メモリであり得る。メモリ210は、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、電子的消去可能プログラム読み出し専用メモリ(EEPROM)のうち一つ以上、又は他の種類のメモリを含み得る。メモリ210は、光、磁気(ハードドライブ)、又は他の任意の形式のデータ記憶装置を含み得る。
【0048】
通信インターフェース214は、例えばHART(登録商標)インターフェース、FOUNDATION(商標)フィールドバスインターフェース、PROFIBUS(登録商標)インターフェース、又は他の何らかのポート又はインターフェースであってよく、音響液体処理機101(例:音響信号発信器201)とコントローラ202との間、及びシステム100の他の任意の要素との間の電子通信を可能又は容易にすべく設けられている。当該電子通信は、例えばHART(登録商標)通信プロトコル、FOUNDATION(商標)フィールドバス通信プロトコル、PROFIBUS(登録商標)通信プロトコル、又は他の任意の適当な通信プロトコル等、任意の既知の通信プロトコルを介して生起し得る。
【0049】
ロジック218は、メモリ210に記憶されたコンピュータ可読命令として実装された1つ以上のルーチン及び/又は1つ以上のサブルーチンを含む。コントローラ202、特にそのプロセッサ206はロジック218を実行して、プロセッサ206に、以下により詳細に記述するように、音響液体処理機101及び音響液体処理機101(例:音響信号発信器201)の内部の任意の要素の動作(例:制御、調整)、メンテナンス、診断、及び/又はトラブルシューティングに関連する動作を実行させることができる。
【0050】
より具体的には、コントローラ202は一般に音響信号発信器201の動作を制御すべく構成されている。特に、コントローラ202は、音響信号発信器201に、(i)第1の位置105内の第1のウェルに向かってパラメータの組の1つ以上の音響信号217を当該第1のウェル内の指定量の液体試料213が第2の位置109に移送されるまで射出し、(ii)音響信号発信器201を第1の位置105内の第2のウェルの下に配置されるように移動する指示を与えるべく構成されている。コントローラ202は、指定された条件の組が満たされるまでこれら2つのステップを繰り返す指示を与える。これらの条件は、第1の位置105の指定数のウェルが、指定量の液体試料を第2の位置109の対応するウェルに移送したことであり得る。コントローラ202は、指定量の液体試料213が移送されるまで、指定されたパラメータの組を変化させながら、1つ以上の音響信号217を反復的に発信するように音響信号発信器201に指示を与えるべく構成され得る。これらのパラメータは、周波数、出力、振幅、波長、帯域幅、周期、又は他のパラメータのうちの1つ以上を含み得る。
【0051】
いくつかの例において、コントローラ202はまた、指定量の液体試料213が第1の位置105から第2の位置109に移送された時点を判定すべく構成され得る。一例において、コントローラ202は、流体測定技術を用いて、第1の位置105から第2の位置109に移送された液体試料213の量を直接的又は間接的に測定すべく構成され得る。例えば、第1の位置105における体積損失(ウェル内の体積損失等)を測定して移送された液体試料213の量を計算することができる。例えば、ピング毎の流体変位を測定してピングの数を乗算することができる。例えば、液滴の体積は、本明細書に記述する1つ以上のパラメータに基づいて計算できる。移送された流体の量は、移送された液滴の数から計算できる。一例として、液滴の直径は音響信号217のビームの直径から判定され得る。一例として、液滴の直径及び/又は体積は光学的に判定され得る。コントローラは更に、移送された液体試料213の量が液体試料213のうち移送対象である指定量であるか否かを判定してし得る。コントローラは指定量の液体試料213が移送されたか否かを(i)第1の位置から液体試料213の移送されなかった第1の部分に1つ以上の第2の音響信号を印加するよう音響信号発信器201に命令すること、(ii)第2の音響信号の印加に基づいて、液体試料213の移送されなかった第1の部分の量を判定すること、及び(iii)液体試料213の移送されなかった第1の部分の量の判定に基づいて、液体試料213の移送された第2の部分の量を判定することにより、判定し得る。移送された液体試料213の量を判定した後で、コントローラ202は、試料の第2の部分及び/又は第1の部分の量を、液体試料213のうち移送対象である指定量と比較することができる。指定量の液体試料213が移送された場合、コントローラは、音響信号発信器201に、現在のウェルへの音響信号217の印加を停止して異なるウェルに移動するように命令し得る。
【0052】
一例において、液体試料213のうち移送対象である指定量は液体試料213の全部であり得る。別の例において、液体試料213のうち移送対象である指定量は液体試料213の大半、実質的部分(但し全部ではない)、又は他の何らかの部分であり得る。本明細書で用いる液体試料の「実質的部分」は、当該体積の移動に必要な音響信号の反復回数が再現可能である体積を指す。追加的な数値的な詳細事項に注目する場合、実質的部分は、試料の少なくとも20%、30%、40%、又は50%を指す場合がある。本明細書で用いる「実質的に全部」は、再現可能な回数の音響信号の反復により液体試料の残量を移動させるのが不充分な体積である、液体試料の部分を指す。追加的な数値的詳細事項に注目する場合、液体試料の実質的に全部は試料の少なくとも80%、90%、95%、97%、又は99%を指す場合がある。別の例において、試料のうち移送対象である指定量は、第1の位置105に残っている液体試料213の一部のメニスカス上で1つ以上の軸に沿って変位を生じさせるのに充分な量である。当該変位は、マウンド、例えば図2Aに示すマウンド225と称する場合があり、第1の位置105内の液体試料213に集中された音響エネルギーが、液体試料213の表面張力により決定される射出の閾値を超えて、上の背景セクションで述べたようにレイリーテイラー不安定性に起因して液滴、例えば液滴221の射出を生起させる際に形成される。
【0053】
コントローラ202は、指定量の液体試料213が移送されるまで音響信号217のパラメータを反復的に変化させ得る。コントローラ202は、例えば、音響信号217の周波数を調整して、反復毎に周波数を0.1Hz以下、又は0.05Hz以下反復的に増加させ得る。いくつかの例において、印加される音響信号217は、1mHz~5mHzの範囲、例えば1~4mHZ又は1.5~3mHzの範囲に周波数を有し得る。他の例において、周波数範囲は、使用する機器及び意図する用途に応じて1mHz~5mHzの範囲よりも大幅に広いことがある。コントローラ202は、代替的又は追加的に、出力、振幅、波長、帯域幅、周期、又はこれらの組み合わせを含む他の音響信号パラメータを調整し得る。出力は、出力音響信号217のデシベル単位で直接的に、又は例えば音響信号発信器201のトランスデューサに印加される電圧を測定することにより間接的に測定することができる。いくつかの例において、音響信号217の出力は、1~2dB又は1~1.5dB等、0.5dB~2.5dBの範囲にあり得る。他の例において、出力範囲は、使用する機器及び意図する用途に応じて0.5dB~2.5dBの範囲よりも大幅に広いことがある。
【0054】
例えば液体試料213の全部が第1の位置105から第2の位置109に移送された様子を示す図2Bに示すように、指定量の液体試料213が移送された場合、コントローラ202は更に、音響信号発信器201により印加される、指定量の液体試料213を第1の位置105から第2の位置109に移送するのに必要な音響信号217の数(又は量)に基づいて液体試料213の粘度を判定すべく構成されている。例えば、コントローラ202は、指定量の液体試料213を第1の位置105から第2の位置109に移送するために50の音響信号217が必要な場合は液体試料213の第1の試料が第1の粘度を有するが、指定量の液体試料213を第1の位置105から第2の位置109に移送するために100の音響信号217が必要な場合、液体試料213の第2の試料が第1の粘度よりも高い第2の粘度を有すると判定し得る。本出願人は、液体試料213の粘度と、指定量の液体試料213を第1の位置105から第2の位置109に移送するのに必要な音響信号217の数との間に相関があることを発見している。この相関は、1:1の相関、2:1の相関、又は他の相関であり得る。いずれにせよ、コントローラ202はロジック218を実行して、プロセッサ206に、印加された音響信号217の数を、メモリ210に記憶された、印加された音響信号の数と粘度との所定の関係と比較することにより、試料213の粘度を判定させることができる。記憶された所定の関係は本明細書に記述する1つ以上のパラメータに対するものであり得る。
【0055】
いくつかの例において、コントローラ202は、指定量の移送に必要な音響信号217の数及び他の要因又はデータに基づいて液体試料213の粘度を判定し得る。一例として、粘度の判定は、更に、音響信号217の1つ以上のパラメータ、例えば印加された音響信号217の周波数(又は複数の周波数)に基づいていてよい。また更に、いくつかの例において、コントローラ202が粘度判定を行う際に、コントローラ202は、当該粘度判定を含めるようにメモリ210に記憶された所定の関係を更新し得る(例えば、指定量の移送に必要な音響信号217の数及び他の既知の要因又はデータに基づいて所定の関係を更新することにより)。すなわち、所定の関係は更なる経験的なデータに基づいて更に精度が向上され得る。
【0056】
いくつかの例において、液体試料213の一部又は液体試料213の全部の粘度が判定されたならば、コントローラ202は、測定された粘度が(例えば液体試料213の分析を可能にすべく)許容可能であるか否かに関する判定を行い得る。測定された粘度は、所定の値の範囲内にある場合、所定の許容範囲内の所定の値に等しい場合、所定の閾値よりも小さい場合、所定の閾値よりも大きい場合、又は他の何らかの適当な基準に合致する場合に許容可能であると判定され得る。例えば、コントローラ202は、標準又は既知物質の粘度(例:円錐平板由来のcP)と、指定量の標準又は既知物質の移送に必要な第1の音響信号の数との間で判定された関係に基づいて較正され得る。例えば、コントローラ202は、標準又は既知物質の粘度と、(i)指定量の標準又は既知物質の移送に必要な第1の音響信号の数、(ii)指定量の標準又は既知物質の移送に必要なSubEject出力(dB)、(iii)指定量の標準又は既知物質の移送に必要なSubEject振幅(ボルト)、(iv)指定量の標準又は既知物質の移送に必要なNewEject振幅(ボルト)、(v)指定量の標準又は既知物質の移送に必要なNewEject振幅+ThreshdB(ボルト)、又は(vi)指定量の標準又は既知物質の移送に必要な出力差(ボルト)のいずれかとの間で判定された関係に基づいて較正され得る。例えば、判定された関係は、線形関係であり得るが、いくつかの非線形数学的関係も適している。較正済みコントローラ202は、組成及び/又は粘度が未知の1つ以上の試料の粘度を判定することができる。較正済みコントローラは、更なる較正を行うことなく1つ以上の試料の粘度を判定することができる。測定された粘度はまた、液体試料の部分に印加される高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)又は超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)の正常な動作を阻止又は妨害しない粘度であると測定されたならば許容可能であると判定され得る。液体試料213の一部又は液体試料213の全部が許容されないと判定された場合、液体試料213の一部又は液体試料213の全部が廃棄され得、又は試料213は、粘度をHPLC又はUPLCの許容可能なレベルにすべく希釈され得る。HPLC及びUPLC機器等の機器により許容される最大粘度は、注入中及び注入後に試料が希釈される程度、注入針及びチューブ直径、並びに自動サンプラ及びシステム温度を含むいくつかの要因に依存し得る。従って、所定の閾値を、HPLC又はUPLC機器等の特定の機器により許容される最大粘度に設定することができる。本明細書に記述するシステム又は方法が、試料213の粘度が所定の閾値を超えることを確認した場合(すなわち、試料213の粘度が高過ぎると判定された場合)、試料213を機器に注入することができない、又は試料213を希釈して粘度を当該機器で許容可能なレベルにすることができる。例えば、液体試料213の粘度が500cP未満であると判定されたならばHPLC又はUPLCで用いるのに許容可能な粘度を有するように、所定の閾値が設定され得る。そのような例において、コントローラ202は、液体試料213の粘度が600cPであると判定した場合、液体試料は廃棄されても、又は許容可能な粘度に希釈され得る。
【0057】
更に、本出願人は、本明細書に既述する方法及びシステムが、円錐平板法及び他の従来技術に付随する問題を克服しながら液体試料の粘度を効果的に判定することを確認した。図3A~3Jに、液体試料213について円錐平板法により測定された粘度と本明細書に記述する方法及びシステムにより判定された粘度との相関を総反復回数の関数として示す。相関係数(R)から計算された線形回帰を示している。図3Aに、液体試料213の濃度が100~165mg/mL、及び音響信号217が第1の出力設定を有し、装置の既定BP2設定に従い反復毎に周波数が段階的に増加する条件下で両者を試験した場合の相関を示す。既定BP2設定が、図3C及び3G(0.1Hz)と、図3E及び3I(0.05Hz)での調整された設定よりも反復毎の刻み幅が大きく構成されていたことに留意されたい。反復毎に周波数が一定であるか又は周波数が直線的に増加することもいくつかの例では適当であると更に考えられる。複数の機器で出力設定が異なり得ることにも留意されたい。例えば、LabCyte社のEcho550自動液体処理機用ソフトウェアは低、中、及び高出力設定を有する。図3Bに、液体試料213の濃度が100~165mg/mL、及び音響信号217が第1の出力設定とは異なる第2の出力設定を有し、装置の既定CP設定(CP設定は動的流体解析を利用する)に従い反復間で周波数が段階的に増加する条件下で両者を試験した場合の相関を示す。既定CP設定は、図3D及び3H(0.1Hz)と図3F及び3J(0.05Hz)の調整された設定よりも反復毎の刻み幅が大きく構成されていたことに留意されたい。図3Cに、液体試料213の濃度が100~165mg/mL、及び音響信号217が第1の出力設定を有し、反復間での周波数の段階的増加が0.1Hzに過ぎない条件下で両者を試験した場合の相関を示す。図3Dに、液体試料213の濃度が100~165mg/mL、及び音響信号217が第2の出力設定を有し、反復間での周波数の段階的増加が0.1Hzに過ぎない条件下で両者を試験した場合の相関を示す。図3Eに、液体試料213の濃度が100~165mg/mL、及び音響信号217が第1の出力設定を有し、反復間での周波数の段階的増加が0.05Hzに過ぎない条件下で両者を試験した場合の相関を示す。本明細書に記述するように、反復間での周波数増加の規模が比較的小さいため、周波数のより大きい段階的増加と比較して、優れた(より強い)相関係数が得られることが観察されている。0.05~0.1Hzの範囲内での、段階的増加が比較的小さい増加であることに留意されたい。図3Fに、液体試料213の濃度が100~165mg/mL、及び音響信号217が第2の出力設定を有し、反復間で周波数がより小さい刻み幅0.05Hzで増加する条件下で両者を試験した場合の相関を示す。図3Gに、液体試料213の濃度が135~165mg/mL、音響信号217が第1の出力設定を有し、反復間で周波数が0.1Hzの刻み幅で段階的に増加する条件下で両者を試験した場合の相関を示す。図3Hに、液体試料213の濃度が135~165mg/mL、及び音響信号217が第1の出力設定を有し、反復間で周波数が0.1Hzの比較的小さい刻み幅で段階的に増加する条件下で両者を試験した場合の相関を示す。図3Iに、液体試料213の濃度が135~165mg/mL、及び音響信号217が第1の出力設定を有し、反復間で周波数が0.05Hzの比較的小さい刻み幅で段階的に増加する条件下で両者を試験した場合の相関を示す。図3Jに、液体試料213の濃度が135~165mg/mL、及び音響信号217が第2の出力設定を有し、反復間で周波数が0.05Hzの比較的小さい刻み幅で段階的に増加する条件下で両者を試験した場合の相関を示す。
【0058】
更に分析すると、液体試料の移送に必要な追加的な出力が粘度と相関することが示され、上で概説した総反復回数(図3K、R=0.896908)、指定量(図3L、R=0.84986)の試料の移送に必要なSubEject出力(dB)、(iii)指定量(図3M、R=0.851302)の試料の移送に必要なSubEject振幅(ボルト)、(iv)指定量(図3N、R=0.873549)の試料の移送に必要なNewEject振幅(ボルト)、(v)指定量(図3O、R=0.853561)の試料の移送に必要なNewEject振幅+ThreshdB(ボルト)、又は(vi)指定量(図3P、R=0.859205)の試料の移送に必要な出力差(ボルト)を含む。従って、本明細書に記述する方法及びシステムにおいて、指定量の試料を第1の位置から第2の位置に移送するのに必要な総反復回数に加えて、粘度が、指定量の試料を(例えば第2の位置に)移送するのに必要なSubEject出力(dB)、指定量の試料を(例えば第2の位置に)移送するのに必要なSubEject振幅(ボルト)、指定量の試料を(例えば第2の位置に)移送するのに必要なNewEject振幅(ボルト)、指定量の試料を(例えば第2の位置に)移送するのに必要なNewEject振幅+ThreshdB(ボルト)、指定量の試料を(例えば第2の位置に)移送するのに必要な出力差(ボルト)のいずれに基づいて判定されてもよいと考えられる。従って、粘度の判定が指定量の試料の移送に必要な総反復回数に基づいている場合、粘度はまた、以下のいずれに基づいて判定されてもよいと考えられる。指定量の試料の移送に必要なSubEject出力(dB)、指定量の試料の移送に必要なSubEject振幅(ボルト)、指定量の試料の移送に必要なNewEject振幅(ボルト)、指定量の試料を第2の位置に移送するのに必要なNewEject振幅+ThreshdB(ボルト)、及び/又は指定量の試料の移送に必要な出力差(ボルト)。
【0059】
図3A~3Pから、より高濃度の液体試料213について最も強い相関関係(R値で示す)が観察されたことが理解されよう。また、図3H及び3Jに示す周波数の段階的な増加において、液体試料213の約0.9以上のR値を含む、第1の出力設定及び第2の出力設定がなされた液体試料213の大部分で約0.6以上の相関関係(R値で示す)が観察されたことが理解されよう。更に、円錐平板法と本開示の方法との相関(R値で示す)は、より高濃度のタンパク質を用いる場合に一般に強くなる(図3G~3Jでの135~165mg/mLと図3C~3Fでの100~165mg/mLを比較されたい)。反復間で周波数を変化させるべく刻み幅を調整することで(円錐平板粘度との相関で示すように)粘度の音響測定に影響を及ぼし得ることが更に考えられる。いくつかの実施形態において、反復間で周波数を変化させるための刻み幅は既定値又はベースライン値から減らされる(すなわち、刻み幅を小さくする)。しかし、刻み幅を小さくするのは、試験すべき音響信号217をより多く必要になるため、指定量の液体試料213を第1の位置105から第2の位置109に移送するのに必要な時間が長くなり、従って本開示の方法のスループットを潜在的に低下させるというトレードオフが生じ得る。しかし、より小さい刻み幅に対してスループットが比較的低くても(毎ステップ約0.05Hz等)、本明細書に記述する方法及びシステムは依然として従来の円錐平板アッセイよりも相当高速であることに留意されたい。いずれにせよ、特により小さい刻み幅及び高い濃度の液体試料213について得られる相関データは、本明細書に記述する方法及びシステムの精度が従来の円錐平板法と競合し得ることを示している。
【0060】
図3A~3Jに示すデータの場合、当初は81つのBTI mAbsをA52SuTにおいて約10mg/mLで受容し、30kDaMWカットオフフィルターを用いて目標の150mg/mL±10%に濃縮した。濃度は、SoloVPE及び各消衰係数を用いて測定された。粘度測定は、以下のジオメトリに設定されたAnton Paar MCR Rheometerで実行された。20mm、1.988°円錐平板、Peltier鋼板 -990918。粘度は、せん断速度10~1000からのフロースイープ設定を用いて測定された。本研究における粘度値は1000s-1と報告されている。各測定で80μLが鋼板に装填された。Echo粘度測定の場合、各試料のうち30μLがEcho550と互換性を有する384ウェルプレートに装填された。当該プレートをEcho 550の「ソースプレート」位置に装填した。Echo550は、ソースプレートから行き先プレートに50nLの材料を移送すべく設定された(任意選択的に、ソースプレートを密封して内容物を密封部分に移送することも可能であり、試料を新たなプレートに移す必要がない)。試料の表面に「マウンド画像印刷」(MIP)を形成するのに必要な反復又は「ピン(ping)」回数が記録された。Echo550の設定は、以下の流体クラス命名法に準拠している。B-バッファのみ、BP-バッファ及びタンパク質(界面活性剤が無く粘度が中程度の液体)|最小ウェル流体体積15μL|最大65μL、GP-グリセロール及びタンパク質(界面活性剤が無く高粘度の液体)|最小ウェル流体体積15μL|最大65μL、CP-タンパク質結晶試薬(低レベル界面活性剤を含む高粘度流体)|最小ウェル流体体積25μL|最大50μL。材料を移送するために、共に材料の移送頻度を段階的に増加させる2つのプロトコルBP及びCP出力設定を評価した。CPモードが、動的流体解析を用いてウェル内の流体の粘度及び表面張力の測定値に基づいて出力を動的に調整し、他の技術では移送できないタンパク質結晶試薬及び他の水性液体の移送に応用できるモードと考えられることに留意されたい。
【0061】
図4は、ADEを有する音響液体処理機(例:音響液体処理機101)を用いて液体試料(例:液体試料213)の粘度を判定する反復方法400の一例のブロック図である。図示する方法400において、液体試料は、音響液体処理機の第1の位置に配置される(ブロック401)。音響信号のパラメータの組が初期化され(ブロック402)、パラメータの組の指定数の音響信号が第1の位置のウェル内の液体試料の一部に印加される(ブロック403)。次に、方法400は、第1の位置のウェルから第2の位置のウェルに移送された液体試料の部分の量を判定する(ブロック404)ことを含む。当該量が、液体試料のうち移送対象である部分の指定量と比較される(ブロック405)。液体試料の移送された部分の量が不充分ならば、音響信号パラメータの組は変化しても、又は変化しなくてもよいが(ブロック406、407)、指定数の音響信号が再び印加され(ブロック403)、液体試料の移送された部分が再び判定される(ブロック404)。液体試料の指定量の部分が移送されていれば(ブロック405)、方法400は、第1の位置の指定数のウェルが液体試料の指定量の部分を移送したか否かを判定する(ブロック408)ことを含む。第1の位置の指定数のウェルが液体試料の指定量の部分を移送させていない場合、音響液体処理機は、第1の位置の異なるウェルに音響信号を印加すべく配置されるように調整され(ブロック409)、指定数の音響信号が再び印加され(ブロック403)、液体試料の移送された部分が再び判定される(液体試料のうち移送対象である当該部分は以前に移送された部分と同じ又は異なる組成及び/又は粘性を有する試料であり得る)(ブロック404)。第1の位置の指定数のウェルが液体試料の指定量の部分を移送させていれば、方法400は、指定量の液体試料の移送に必要なパラメータの組及び音響信号の数に基づいて液体試料の粘度を判定することを含む(ブロック410)。
【0062】
本明細書に記述するシステム及び方法はADEの関連で用いられるが、本システム及び方法は、下流分析(例:質量分析、高スループット動的光散乱粘度、コロイド安定性測定、及び/又はサイズ排除クロマトグラフィーによるバイオ治療高分子量分析)を行う分析装置と組み合わせて用いてもよいことが理解されよう。第1の例において、音響波を用いて液体試料が質量分析計(例:高分解能精密質量(HRAM)質量分析計)に導入されて、電子スプレーイオン化にレイリーテイラー不安定性と同様の原理を適用することができる。開示するシステム及び方法は次いで、粘度を測定して質量分析データを生成することができる。従って、本システムは、粘度データ及び質量分析データを同時に生成することができる。しかし、本システム及び方法は厳密に電子スプレー動作を用いる必要はない。このような例において、本システム及び方法は、狭いキャピラリーに閉じ込められた液体試料に電界を印加するのではなく、液滴に電界を貫通させて大気圧イオン化を通じて電子スプレーイオン化現象を発生させることができる。他の例において、大気圧化学イオン化が用いられ得る。更に他の例において、大気圧マトリクス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)イオン化が用いられ得る。本システム及び方法は、後続の大気圧MALDI質量分析のためにMALDI目標板に液滴を載せることができる。このように、本システム又は方法は、試料の粘度を判定し、当該試料又はその一部を更に質量分析計に移送して質量分析を実行することができる。
【0063】
第2の例において、液体試料は音響液体処理機とは異なる分析装置、例えば、液体クロマトグラフィー装置(例:イオン交換クロマトグラフィーカラム、陽イオン交換クロマトグラフィーカラム、陰イオン交換クロマトグラフィーカラム)、高速液体クロマトグラフィー装置、超高速液体クロマトグラフィー装置、分光測光装置(例:UV検出器)、糖鎖分析装置、赤外線検出器、蛍光プレートリーダー、別の種類の分析装置、又はこれらの組み合わせ等に導入され得る。液体試料は、音響液体処理機による流体の音響移動を介して、異なる分析装置に導入され得る。異なる分析デバイスは音響液体処理機と流体連通し得る。開示するシステム及び方法は次いで、粘度を測定して下流分析データを生成することができる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図3N
図3O
図3P
図4
【国際調査報告】