IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-554595コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法
<>
  • 特表-コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法 図1
  • 特表-コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法 図2A
  • 特表-コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法 図2B
  • 特表-コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法 図3A
  • 特表-コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法 図3B
  • 特表-コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法 図3C
  • 特表-コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法 図3D
  • 特表-コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法 図3E
  • 特表-コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法 図4
  • 特表-コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法 図5
  • 特表-コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】コーティングされたコイルのための装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20231221BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61B17/12
A61M25/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530196
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 US2021059918
(87)【国際公開番号】W WO2022109154
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/115,898
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】グプタ、アジェイ
(72)【発明者】
【氏名】トマシュコ、ダニエル ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】カンガス、スティーブン エル.
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD54
4C160DD63
4C160MM34
4C160MM36
4C267AA08
4C267BB06
4C267CC10
4C267GG01
4C267GG50
(57)【要約】
本開示は、概して、コイル塞栓術のための装置、システム、及び方法に関し、より具体的には、コーティングされたコイルを形成する用途及び方法に関する。一態様では、塞栓システムは、近位端と、遠位端と、それらの間の長さとを有し、かつシース内に摺動可能に配置された、コイルを含むことができる。コーティングがコイルの周りに配置され得る。送達フィラメントは、コイルをシースの遠位端からマイクロカテーテルの作業ルーメン内に放出し得るように、コイルの近位においてシース内に摺動可能に配置されるように構成し得る。コーティングは、コイルがマイクロカテーテルから放出されて、マイクロカテーテルの長手方向軸と実質的に整合している状態からマイクロカテーテルの長手方向軸と実質的に整合しない状態に遷移するときに実質的に破砕するように構成し得る。コーティングは、水性環境内に放出された後に可塑化するように構成し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塞栓システムであって、
前記塞栓システムはマイクロカテーテルを備え、前記マイクロカテーテルは、近位端と、遠位端と、長手方向軸と、当該マイクロカテーテルを通る作業ルーメンとを備え、
前記塞栓システムはシースを備え、前記シースは、近位端と、遠位端と、当該シースを通る送達ルーメンとを備え、前記シースの前記遠位端は、前記マイクロカテーテルの前記近位端に前記作業ルーメン内へ挿入可能であるように構成されており、
前記塞栓システムはコイルを備え、前記コイルは、近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端との間の長さとを有し、前記シース内に摺動可能に配置されており、
前記塞栓システムは、前記コイルの周りに配置されたコーティングを備え、
前記塞栓システムは送達フィラメントを備え、前記送達フィラメントは、前記コイルを前記シースの前記遠位端から前記マイクロカテーテルの前記作業ルーメン内に放出し得るように前記コイルの近位において前記シース内に摺動可能に配置されるように構成され、かつ、前記コイルを前記マイクロカテーテルの前記遠位端において前記作業ルーメンから標的部位へ放出し得るように前記コイルの近位において前記マイクロカテーテルの前記作業ルーメン内に摺動可能に配置されるように構成されており、
前記コーティングは、前記コイルが前記マイクロカテーテルから放出されて、前記マイクロカテーテルの前記長手方向軸と実質的に整合している状態から前記マイクロカテーテルの前記長手方向軸と実質的に整合しない状態に遷移するときに実質的に破砕するように構成される、又は、前記コーティングは、前記シースの前記遠位端から水性環境内に放出された後に可塑化するように構成される、
塞栓システム。
【請求項2】
前記コイルは、前記マイクロカテーテル内に配置されたときに実質的に線状である一次形状と、前記マイクロカテーテルから前記標的部位へ放出されたときに実質的に湾曲線状である二次形状とを有し、前記コーティングは、前記コイルが前記一次形状から前記二次形状に遷移するときに、前記コイルから実質的に破砕して剥がれるように構成される、請求項1に記載の塞栓システム。
【請求項3】
前記コーティングは、約10,000g/mol~約1,000,000g/molの数平均分子量を有する親水性ポリマーから形成されている、請求項1又は2に記載の塞栓システム。
【請求項4】
前記コーティングは、前記コイルの外面の周りに施されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の塞栓システム。
【請求項5】
前記コイルは、ポリマーを含み、前記コーティングは、親水性ポリマーを含み、前記コーティングは、前記マイクロカテーテルから放出されて、実質的に破砕するように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の塞栓システム。
【請求項6】
前記コイルは、ポリマーを含み、前記コーティングは、疎水性ポリマーを含み、前記コーティングは、前記シースの前記遠位端から水性環境内に放出された後に可塑化するように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の塞栓システム。
【請求項7】
前記コイルは、前記コーティングによって覆われた血栓形成促進性因子を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の塞栓システム。
【請求項8】
前記送達フィラメントは、前記コイルの前記近位端に可逆的に結合された遠位端を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の塞栓システム。
【請求項9】
前記コイルに結合され、前記コーティング内に配置された少なくとも1つの繊維を更に備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の塞栓システム。
【請求項10】
塞栓コイルであって、
前記塞栓コイルは、長手方向軸の周りに隣接する巻線に配置されたコイルフィラメントを備え、
塞栓コイルは、前記巻線の周りに配置されたコーティングを備え、前記コーティングは、前記コイルの一部分が前記コイルの残りの部分の前記長手方向軸と実質的に整合した状態から遷移するときに、破砕するように構成された脆弱コーティングである、又は水性環境内に放出された後に可塑化するように構成される、
塞栓コイル。
【請求項11】
前記コーティングは、親水性ポリマーを含み、前記コーティングは、前記コイルの前記一部分が前記コイルの前記残りの部分の前記長手方向軸と実質的に整合した状態から遷移するときに、破砕するように構成される、請求項10に記載の塞栓コイル。
【請求項12】
前記コーティングは、疎水性ポリマーを含み、前記コーティングは、水性環境内に放出された後に可塑化するように構成される、請求項10に記載の塞栓コイル。
【請求項13】
前記コイルフィラメントは、実質的に線状である一次形状と、実質的に湾曲線状である二次形状とを有し、前記コーティングは、前記コイルフィラメントが前記一次形状から前記二次形状に遷移するときに、前記コイルフィラメントから実質的に破砕して剥がれるように構成される、請求項10~12のいずれか一項に記載の塞栓コイル。
【請求項14】
前記コーティングは、前記巻線の周りに配置されている間、実質的に不溶性であり、前記コーティングは、前記巻線から破砕して剥がれると、実質的に可溶性である、請求項10~13のいずれか一項に記載の塞栓コイル。
【請求項15】
前記コーティングは、前記コイルフィラメントよりも低い摩擦係数を有する、請求項10~14のいずれか一項に記載の塞栓コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、コイル塞栓術のための装置、システム、及び方法に関し、より具体的には、コーティングされたコイルを形成する用途及び方法に関する。本明細書に記載される塞栓コイル等のコイルは、剛性、可撓性、血栓形成性、抗血栓性、潤滑性、摩擦性、治療、固定などを補助し得る材料特性を有し得る。
【背景技術】
【0002】
治療的血管閉塞(塞栓形成)は、インサイチュ(in situ)で病的状態を予防又は処置するために使用し得る。塞栓コイルは、様々な医療用途において血管を閉塞するために使用し得る。塞栓コイルの準備、送達、及び展開(例えば、カテーテルの中へ、カテーテルを通して、及びカテーテルから外へ)は、コイル及び/又は関連付けられた送達装置のサイズ、形状、可撓性、脆弱性などに応じて、困難である場合がある。本開示は、これら及び他の考慮事項に関して有用であり得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様では、塞栓システムは、マイクロカテーテルであって、近位端と、遠位端と、長手方向軸と、マイクロカテーテルを通る作業ルーメンとを備える、マイクロカテーテルを含み得る。システムはシースを含み得る。シースは、近位端と、遠位端と、シースを通る送達ルーメンとを有する。シースの遠位端は、マイクロカテーテルの近位端に作業ルーメン内へ挿入可能であるように構成し得る。システムは、コイルであって、近位端と、遠位端と、それらの間の長さとを有し、シース内に摺動可能に配置されている、コイルを含むことができる。コーティングがコイルの周りに配置され得る。送達フィラメントは、コイルをシースの遠位端からマイクロカテーテルの作業ルーメン内に放出し得るように、コイルの近位においてシース内に摺動可能に配置されるように構成し得る。送達フィラメントは、コイルをマイクロカテーテルの遠位端において作業ルーメンから標的部位へ放出し得るように、コイルの近位においてマイクロカテーテルの作業ルーメン内に摺動可能に配置されるように構成し得る。コーティングは、コイルがマイクロカテーテルから放出されて、マイクロカテーテルの長手方向軸と実質的に整合している状態からマイクロカテーテルの長手方向軸と実質的に整合しない状態に遷移するときに実質的に破砕するように構成し得る、又はコーティングは、シースの遠位端から水性環境内に放出された後に可塑化するように構成し得る。
【0004】
本明細書に記載される又は別様に本開示の範囲内の様々な実施形態では、コイルは、マイクロカテーテル内に配置されたときに実質的に線状である一次形状と、マイクロカテーテルから標的部位へ放出されたときに実質的に湾曲線状である二次形状とを有し得る。コーティングは、コイルが一次形状から二次形状に遷移するときに、コイルから実質的に破砕して剥がれるように構成し得る。コーティングは、約10,000g/mol~約1,000,000g/molの数平均分子量を有する親水性ポリマーから形成し得る。コーティングは、コイルの外面の周りに配置され得る。コイルは、ポリマーを含み得、コーティングは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、及びポリアミンのうちの少なくとも1つを含み得る。コーティングは、親水性ポリマーを含み得、コーティングは、マイクロカテーテルから放出されて、実質的に破砕するように構成される。コイルは、ポリマーを含み得、コーティングは、キサンタンガム、ペクチン、キトサン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒアルロン酸、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、セルロースエーテル、アルブミン、デンプン、ポリ乳酸ホモポリマー、ポリグリコール酸ホモポリマー、乳酸のコポリマー、グリコール酸のコポリマー(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシアルカノエート、及び脂肪族ポリエステルのうちの少なくとも1つを含み得る。コーティングは、疎水性ポリマーを含むことができ、コーティングは、シースの遠位端から水性環境内に放出された後に可塑化するように構成される。コイルは、コーティングによって覆われた血栓形成促進性因子を含み得る。送達フィラメントは、コイルの近位端に可逆的に結合された遠位端を含み得る。少なくとも1つの繊維がコイルに結合され、コーティング内に配置され得る。
【0005】
本開示の一態様では、塞栓コイルは、長手方向軸の周りに隣接する巻線に配置されたコイルフィラメントを含むことができる。コーティングが巻線の周りに配置され得る。コーティングは、コイルの一部分がコイルの残りの部分の長手方向軸と実質的に整合した状態から遷移するときに、コイルの一部分の巻線から破砕して剥がれるように構成し得る脆弱コーティングであり得る、又はコーティングは、水性環境内に放出された後に可塑化するように構成し得る。
【0006】
本明細書に記載される又は別様に本開示の範囲内の様々な実施形態では、コーティングは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、及びポリアミンのうちの少なくとも1つを含み得る。コーティングは、親水性ポリマーを含み得、コーティングは、コイルの一部分がコイルの残りの部分の長手方向軸と実質的に整合した状態から遷移するときに、破砕するように構成された脆弱コーティングである。脆弱コーティングは、キサンタンガム、ペクチン、キトサン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒアルロン酸、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、セルロースエーテル、アルブミン、デンプン、ポリ乳酸ホモポリマー、ポリグリコール酸ホモポリマー、乳酸のコポリマー、グリコール酸のコポリマー(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシアルカノエート、及び脂肪族ポリエステルのうちの少なくとも1つを含み得る。コーティングは、疎水性ポリマーを含むことができ、コーティングは、水性環境内に放出された後に可塑化するように構成される。コイルフィラメントは、実質的に線状である一次形状と、実質的に湾曲線状である二次形状とを有し得る。コーティングは、コイルフィラメントが一次形状から二次形状に遷移するときに、コイルフィラメントから実質的に破砕して剥がれるように構成し得る。コーティングは、巻線の周りに配置されている間、実質的に不溶性であり得る。コーティングは、巻線から破砕して剥がれると、実質的に可溶性であり得る。コーティングは、コイルフィラメントよりも低い摩擦係数であり得る。シースは、近位端と、遠位端と、シースを通る送達ルーメンとを含み得る。コイルは、シース内に摺動可能に配置され得る。脆弱コーティングは、約10,000g/mol~約1,000,000g/molの数平均分子量を有する親水性ポリマーを含むことができる。
【0007】
本開示の一態様では、コイルを形成する方法は、コイルフィラメントを長手方向軸の周りに隣接する巻線に巻くことを含むことができる。コイルフィラメントは、約10,000g/mol~約1,000,000g/molの数平均分子量を有する親水性ポリマーを含む流体を保持する容器に浸漬され得る。コイルフィラメントの端部は、コイルフィラメントの反対側の端部が上昇して流体から出るまで、容器から持ち上げられてもよい。
【0008】
本明細書に記載される又は別様に本開示の範囲内の様々な実施形態では、コイルフィラメントの端部を持ち上げることは、コイルフィラメントの端部が長手方向軸及びコイルフィラメントの反対側の端部のそれぞれと実質的に一直線になるように、コイルフィラメントの端部を保持することを更に含むことができる。コイルフィラメントの隣接する巻線は、二次形状にヒートセットされ得る。流体は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、及びポリアミンのうちの少なくとも1つを含み得る。流体は、親水性ポリマーを含み得、コーティングは、マイクロカテーテルから放出されて、実質的に破砕するように構成される。流体は、キサンタンガム、ペクチン、キトサン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒアルロン酸、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、セルロースエーテル、アルブミン、及びデンプンのうちの少なくとも1つを含むことができる。流体は、疎水性ポリマーを含むことができ、コーティングは、シースの遠位端から水性環境内に放出された後に可塑化するように構成される。
【0009】
本開示の非限定的な実施形態が、添付の図を参照して例として説明されるが、添付の図は、概略的なものであり、正確な縮尺で示されることを意図するものではない。図において、図示された各同一又はほぼ同一の構成要素は、典型的には、単一の数字によって表される。明確さのために、全ての図で全ての構成要素に符号を付すことはせず、当業者が本開示を理解することを可能にするために図示が必要でない場合には、各実施形態の全ての構成要素を示すこともしない。図は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態による、展開されている塞栓コイルを概略的に示す。
図2A】本開示の一実施形態による、流体に浸漬されている塞栓コイルを概略的に示す。
図2B】流体から取り出されている図2Aの塞栓コイルを概略的に示す。
図3A】本開示の一実施形態による、マイクロカテーテル内に導入されている塞栓コイルを収容するシースを含む、塞栓システムの準備を概略的に示す。
図3B】本開示の一実施形態による、図3Aの塞栓システムのシース内の送達フィラメントを概略的に示す。
図3C】本開示の一実施形態による、第1の時点において送達されている図3Aの塞栓システムのコイルを概略的に示す。
図3D】本開示の一実施形態による、第2の時点において送達されている図3Aの塞栓システムのコイルを概略的に示す。
図3E】本開示の一実施形態による、第3の時点において展開されている図3Aの塞栓システムのコイルを概略的に示す。
図4】本開示の一実施形態による、展開されている疎水性コーティングを有する塞栓コイルを概略的に示す。
図5】本開示の一実施形態による、展開されている疎水性コーティングを有する塞栓コイルを概略的に示す。
図6】本開示の一実施形態による、展開されている親水性コーティングを有する塞栓コイルを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、説明される特定の実施形態に限定されない。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態の説明のみを目的とするものであり、添付の特許請求の範囲を超えて限定することを意図するものではない。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0012】
本開示の実施形態は、医療装置及びシステム(例えば、血管系内の塞栓装置及び/又はアクセサリツールなど)を具体的に参照して説明する場合があるが、そのような医療装置及びシステムは、閉塞、固定、足場などのための種々の医療処置に使用し得ることを理解されたい。本明細書の医療装置は、異なるアクセスポイント及びアプローチを介して、例えば、経皮的に、内視鏡的に、腹腔鏡的に、又はそれらの組み合わせで挿入し得る、例えば、カテーテル、マイクロカテーテル、可視化装置(例えば、蛍光透視、超音波、X線、内視鏡など)を含む、患者の解剖学的構造をナビゲートするための種々の医療装置を含み得る。
【0013】
本明細書で使用されるとき、用語「コイル」は、塞栓形成などのための閉塞装置を含むことが意図されている。このような閉塞装置は、動脈瘤、血管、腫瘍、他の血管系、又は他の身体管腔のために意図され得る。
【0014】
本明細書で使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことが意図されている。「備える/からなる(comprises)」及び/若しくは「備えている/からなる(comprising)」又は「含む(includes)」及び/若しくは「含んでいる(including)」という用語は、本明細書で使用されるとき、述べられた特徴、領域、ステップ、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しない。
【0015】
本明細書で使用されるとき、「近位端」は、装置を患者に導入するときに装置に沿って医療専門家に最も近く位置する装置の端部を指し、「遠位端」は、植え込み、位置決め、又は送達の際に装置に沿って医療専門家から最も遠く位置する装置又は物体の端部を指す。
【0016】
本明細書で使用されるとき、接続詞「及び」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、そのように結合された構造、構成要素、特徴などのそれぞれを含み、接続詞「又は」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、そのように結合された構造、構成要素、特徴などの1つ又は他のものを、単独で、並びに任意の組合せ及び数で含む。
【0017】
全ての数値は、本明細書において、明示的に示されているか否かにかかわらず、用語「約」によって修飾されると想定される。「約」という用語は、数値の文脈において、一般に、当業者が列挙された値と同等である(すなわち、同じ機能又は結果を有する)と考えるであろう数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数を含むことができる。「約」という用語の他の使用(すなわち、数値以外の文脈における)は、別段の指定がない限り、本明細書の文脈から理解され、文脈と一致するように、それらの通常かつ慣習的な定義(単数又は複数)を有すると想定し得る。端点による数値範囲の記載は、端点を含む、その範囲内の全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
【0018】
本明細書における「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、説明される実施形態(単数又は複数)が特定の特徴、構造、又は特性を含むことができるが、全ての実施形態が必ずしもその特定の特徴、構造、又は特性を含まなくてもよいことを示すことに留意されたい。更に、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態に言及しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性が実施形態に関連して説明されている場合、明示的に説明されているか否かにかかわらず、そうでないことが明確に述べられていない限り、他の実施形態に関連してそのような特徴、構造、又は特性に影響を及ぼすことは、当業者の知識の範囲内であろう。すなわち、以下で説明される様々な個々の要素は、特定の組合せで明示的に示されていなくても、当業者によって理解されるように、他の追加の実施形態を形成するために、又は説明される実施形態(単数又は複数)を補完及び/若しくは強化するために、互いに組合せ可能又は配置可能であると考えられる。
【0019】
図1を参照すると、本開示の塞栓システムの一実施形態によるコイル100は、動脈瘤120内に展開されて示されている。図示のシステムは、血管122内に延ばされたマイクロカテーテル110を含み、マイクロカテーテル110の遠位端110dは、治療のために動脈瘤120に向けられている。マイクロカテーテル110の遠位端110dは、例えば、他の可能な技術の中でもとりわけ、蛍光透視法によって放射線不透過性バンド112を可視化することによって、観察下で操作され得る。コイル100は、動脈瘤120の容積を概ね充填するために、マイクロカテーテル110から遠位方向に展開されている。
【0020】
本明細書に記載される種々の実施形態では、コイルは、望ましくは、展開するために、及び動脈瘤を充填するために可撓性であり得る。しかしながら、そのような可撓性コイルは、マイクロカテーテルを通した送達中に面倒な問題を有することがある。例えば、コイルは、マイクロカテーテルを通してコイルを軸方向に遠位方向へ押圧する近位部材によって、脱出、座屈、又は破砕することがある。これらの面倒な問題は、コイルに、当該コイルよりも大きい軸方向剛性を有する本明細書に記載されるコーティングを施すことにより、対処し得る。該コーティングは、マイクロカテーテルを通しての当該コイルへの押し込み性を補助し、これらの面倒な問題を低減し得る。しかしながら、そのような剛性は、例えば、動脈瘤内へのコイルの展開中には望ましくない場合がある。従って、コイルがマイクロカテーテルを通して送達された後の展開時に、コイルがコーティングを実質的に失うことが望ましい。
【0021】
本明細書に記載される種々の実施形態では、コイルは、コイルの外面の周囲、コイルの全表面の周囲、並びに/又はコイル内及びコイル全体にわたって配置されたコーティングを含み得る。コーティングは、例えば、準備、送達、及び/又は展開のために、コイルの特性を一時的に変更する材料を含み得、その材料は、薬剤送達などの治療特性を有し得、又は身体機能、例えば血栓形成を支援、阻害、若しくは加速し得る。コーティングは、例えば、潤滑性を含むことによって、又はコイルから延びる繊維を封入及び/若しくは再配置するなど表面積を低減することによって、送達中のコイルの摩擦を低減し得る。そのようなコーティングは、長期間にわたってコイル上に残り得る。あるいはその代わり、そのようなコーティングは、準備、送達、及び/若しくは展開中に、若しくはその直後に(例えば、コイルを送達又は展開するマイクロカテーテルの抜去前に)コイルから除去されるように、生体内分解性、脆弱、若しくは可溶性であり得る。
【0022】
図2Aを参照すると、コーティングは、本開示の方法の実施形態に従ってコイル200に形成されている。コイル200は、容器222内に収容された流体220に浸漬されている。流体220は、コイル200をコーティングするように意図された、本明細書に記載される材料(単数又は複数)を含む。コイル200は、コイル200が容器222の底222bに接触する前に、かつ/又はコイル200がコイル200自体に接触する前に、流体220が実質的にコイル200の外面全てに接触又は付着するように、均一なペースで流体220に浸漬され得る。コイル200は、コイル200の一部分が容器222の側面222sと最小限に接触するように、容器222内に浸漬され得、これにより、流体220とコイル200の表面との間の接触を最大限にすることを支援し得る。コイル200の全長は、コイル200の実質的に全ての表面又は全ての露出面若しくは外面が流体220と接触するように、流体220に浸漬され得る。コイル200の長さは、流体220がコイル200を覆う、コイル200に付着する、及び/又はコイル200に結合するように、一定期間にわたって浸漬され得る。
【0023】
図2Bを参照すると、コーティングが図2Aのコイル200に形成されていることが示されており、コーティングされたコイル200は、容器222から取り出される。コイル200は、コイル200の表面が流体220と適切に接触するように、(すなわち、図2Aのプロセスを介して)流体220内に完全に浸漬される。コイル200は、コイル200の端部をクランプ234で把持し、コイル200を容器222の流体220から持ち上げることによって、流体220から取り出すことができる。クランプ234は、アーム230をトラック232に沿って垂直に平行移動させることができるガントリシステムのアーム230に結合されている。クランプ234は、コイル200が容器222から上昇するときに、コイル200と容器222との間の更なる接触が実質的に回避されるように、容器222の上方に垂直に配置され得る。コイル200が流体220から上昇するにつれて、コイル200の一部分200pは、大気に晒され、容器222の上方でその長さに沿って長手方向に一直線になる。この長手方向のアライメントが実質的に真っ直ぐなコーティングされたコイル200を形成し、流体220が乾燥及び/又は付着する際に、いくばくかの流体220がコーティングのためにコイル200の長さに沿って流れること、及び/又は重力によって容器222内に流れることを可能にし得る。コイル200は、均一なペースで(例えば、所望のコーティング厚さ、流体又はコーティングの固体パーセンテージ、粘度などによって異なり得る、約1mm/s~約25mm/sの速度でコイル200の長さに沿って垂直に上昇して)流体220及び容器222から取り出され得る。コイル200は、コイル200がその長手方向軸に沿って実質的に真っ直ぐにされた状態で(例えば、完全に上昇すると、コイル200の端部がコイル200の反対側の端部の上方に垂直に配置された状態で)、コーティングがコイル200の長さに沿って形成されるように、流体220から完全に取り出され、容器222の上方でクランプ234によって保持され得る。コイル200は、コーティングが完全に形成されるように、一定期間にわたって容器222の上方でクランプ234によって保持され得る(例えば、室温で、例えば、約30分~約4時間の範囲の一定期間にわたって、例えば、完全に乾燥する、硬化するなど(これは、例えば、約60℃~約100℃で、例えば、インラインIRランプを使用して、例えば、温度を上昇させること、又は、例えば、約40℃~約100℃で、例えば、約15分~約1時間にわたって、コイル200を対流式オーブンに移送することによって短縮し得る))。浸漬コーティング(すなわち、ディップコーティング)プロセスが示されているが、本明細書に記載される様々な実施形態では、コイルは、溶剤コーティング、スプレーコーティング、ブラシ又は他のアプリケータを使用するコーティングなどの代替方法によってコーティングされ得る。
【0024】
本明細書に記載される種々の実施形態では、コイルは、例えば、マンドレル上で、コイルの長さ及びコイルを通る長手方向軸に沿って、フィラメントから巻線に形成され得る。これらのフィラメント巻線は、例えば、巻線が長手方向軸に沿って実質的に直線的に形成された状態で、コイルの一次形状を形成し得る。隣接する巻線は、互いに接触し得、又はそれらの間にギャップを含み得る。隣接する巻線は、例えば、溶融流動、粘着、接着剤、コーティングなどを介して互いに付着し得る。一次形状は、二次形状、例えば、螺旋、ボール、円錐、曲線形状、互いに間隔を空けた又は重複する層状形状、蛇行、それらの組み合わせなどに形成し得る。二次形状は、例えば、マンドレル上で形成されて、ヒートセットされ得、それにより、例えば、コイルが、例えば、シース、マイクロカテーテル、コーティングなどの中で、張力がかかった又は拘束された状態ではなく自由形状であるときに、二次形状がコイルに変形を生じさせて、二次形状を形成する。本明細書に記載のコーティングは、フィラメントを成形する前、コイルの一次形状を形成した後、又はコイルの二次形状を形成した後に、コイルのフィラメント上に形成され得る。コーティングは、コイルの巻線にわたって連続し得る。
【0025】
本明細書に記載される種々の実施形態では、コイルのフィラメントは、1つ以上の材料、例えば、合成ポリマー、天然ポリマー、架橋ポリマー、非架橋ポリマー、熱硬化性ポリマー、及び/又は熱可塑性ポリマーを含むポリマーを含み得る。ポリマーの例としては、ポリオレフィン;ポリウレタン;ブロックコポリマー(例えば、エステル、エーテル、及び/又はカーボネートを含むセグメントを有するブロックコポリマー);ポリエーテル;ポリイミド;アクリレート(例えば、シアノアクリレート);エポキシ接着材料(例えば、一液型エポキシ-アミン材料、二液型エポキシ-アミン材料);エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、及び/又は熱可塑性オレフィンエラストマーのポリマー及び/又はコポリマー;ポリジメチルシロキサン系ポリマー;レーヨン;セルロース;セルロース誘導体(例えば、ニトロセルロース);天然ゴム;ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート);ポリラクチド;ポリグリコリド;ポリカプロラクトン;ラクチド、グリコリド、及び/又はカプロラクトンのコポリマー;ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、及びヒドロキシブチレートとヒドロキシバレレートとのコポリマー;ポリエーテルエステル(例えば、ポリジオキサノン);セバシン酸、ヘキサデカン二酸、及び他の二酸のポリマー及びコポリマーなどのポリ酸無水物;オルトエステル;ポリアミノ酸;ポリ核酸;ポリサッカライド;並びにポリヒドロキシアルカノエートが挙げられる。様々な実施形態では、フィラメントは、これらの材料の1つ以上の混合物及び/又はコポリマー(例えば、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー)を含むことができる。様々な実施形態では、コイルは、本明細書に記載される1つ以上のフィラメント材料を含む、凝固又は閉塞を促進するようにコイルから延びる1つ以上の繊維を含み得る。
【0026】
本明細書に記載される様々な実施形態では、コーティング又はコーティングを形成する流体は、1つ以上の材料、例えば、以下に列挙されるものなどの1つ以上のポリマー材料を含み得る。いくつかの実施形態では、固体及び/又は脆性コーティングは、不溶性であり得、送達のためにコイルを硬化させてもよく、コーティングは、展開時にコーティングが、破砕して粒子になり、コイルから剥がれ得るように、脆弱であり得、粒子は、吸収される又は身体を通過するときに可溶性及び生体適合性であり得る。コーティングは、例えば、約1,000g/mol~約100,000g/molの数平均分子量を有する、実質的に水不溶性の疎水性ポリマーから形成し得る。疎水性ポリマーは、血液の存在下で生分解性であり得、ポリマーは、例えば、約1週間~約1ヶ月の範囲で実質的に分解する。コイルは、ポリマーを含み得、コーティングは、ポリ乳酸ホモポリマー、ポリグリコール酸ホモポリマー、及び乳酸とグリコール酸のコポリマー(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシアルカノエート、並びに脂肪族ポリエステルのうちの少なくとも1つを含み得る。コーティングは、コイルがその長手方向軸の実質的に外側に、及び/又はマイクロカテーテル若しくはシースの長手方向軸の実質的に外側に、移動、屈曲、又は変形する(例えば、コイルの少なくとも一部分がその長手方向に一直線にされた形状又は一次形状から移動する)ときに、コーティングが破砕するような、組成物を有し得る。例えば、コーティングは、1種以上の親水性ポリマーを含むことができる。例えば、コーティングは、ポリビニルピロリドンポリマー又はコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドのコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドのコポリマー、ポリアミン、キサンタンガム、ペクチン、キトサン誘導体、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒアルロン酸、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、セルロースエーテル、アルブミン、デンプン、デンプンベースの誘導体などのうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、約10,000g/mol~約1,000,000g/molの範囲の数平均分子量を有する親水性ポリマーを含み得る。特定の有益な実施形態では、コーティングは、約10,000g/mol~約1,000,000g/molの範囲の数平均分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーから形成し得る。
【0027】
図3Aを参照すると、塞栓システムの一実施形態の準備が示されており、該システムは、マイクロカテーテル310の作業ルーメン内に導入されているコーティングされた塞栓コイル300を収容するシース302を含む。シース302は、包装中にコイル300を、例えば、外傷又は摩耗から保護することができ、患者へ送達するためにコイル300を準備するのを補助し得る。コーティングされたコイル300は、マイクロカテーテル310を通って延びる長手方向軸lとその長さに沿って実質的に整合した一次形状にある。コイル300を収容するシース302の遠位端は、マイクロカテーテル310の近位端にあるアクセスハブ306を通って延びている。シース302の外径は、シース302の遠位端がマイクロカテーテル310の近位端内にしっかりと着座するように、マイクロカテーテル310の内径に実質的に一致し得る。あるいは、シース302及びマイクロカテーテル310の両方の外径は、それらが互いに当接するように、実質的に一致し得る。図3Aに示す構成では、コイル300は、例えば、実質的に長手方向軸lに沿って、シース302の送達ルーメン内からマイクロカテーテル310内へ自由に摺動可能である。
【0028】
図3Bを参照すると、図3Aの塞栓システムのシース302が、シース302の近位端内に摺動可能に延ばされた送達フィラメント304とともに示されている。コイル300は、医療専門家350による送達フィラメント304の遠位平行移動によって、シース302内から図3Aのマイクロカテーテル310内へ送達され得る。シース302内への送達フィラメント304の更なる平行移動は、マイクロカテーテル310内へのコイル300の更なる送達をもたらすことになる。送達フィラメント304の挿入可能な長さは、送達シース302の長さに実質的に一致し、その結果、送達フィラメント304の近位端とシース302の近位端との間の距離Lは、シース302内に残るコイル300の長さに実質的に等しい(すなわち、コイル300の長さの残りは、マイクロカテーテル310内にある)。送達フィラメント304の近位端がシース302の近位端に接近すると(例えば、Lが約10cmなどであるとき)、ユーザ350は、送達フィラメント304をシース302内に平行移動させることを停止してもよく、シース302がシステムから抜去されるまで、送達フィラメント304に沿ってシース302を近位方向に引き出し得る。ユーザ350は、その後、シース302が近位方向に抜去されなかった場合、シース302内の送達フィラメント304を失うことなく、コイル300を更に送達、放出、及び/又は展開するために、ハブ306を通してマイクロカテーテル310内へ送達フィラメント304を更に平行移動させてもよい。
【0029】
図3Cは、動脈瘤320内に送達及び展開されている図3A及び図3Bの塞栓システムのコイル300を示す。コイル300は、コーティング308を含む。コーティングされたコイル300は、マイクロカテーテル310の及び/又はコイル300の近位部分の長手方向軸lに実質的に沿ったマイクロカテーテル310を通して、図3Bの送達フィラメント304の遠位平行移動によって、マイクロカテーテル310を通して遠位方向に平行移動されている。コイル300の遠位端300dが、可視化し得る遠位マーキングバンド312、例えば、蛍光透視法によって可視化し得る放射線不透過性遠位マーキングバンド312を過ぎてマイクロカテーテル310から外へ遠位方向に延びるにつれて、遠位端300dは、マイクロカテーテル310及び/又はコイル300の近位部分の長手方向軸lとの全体的な整合から部分的に外れるように(すなわち、概ね並びが崩れて)自由に動く。本明細書に記載される種々の実施形態では、コイルの一部分は、例えば、体液流、重力、体液との接触、組織との接触、医療装置との接触、偶然、又はそれらの組み合わせによって、長手方向軸との全体的なアラインメントから外れて移動し得る。コイル300の遠位端300dとコーティング308とがマイクロカテーテル310から出て、長手方向軸lとの全体的なアラインメントから外れると、脆性コーティング308の一部分308dは、破砕して粒子300eになり、コイル300から剥がれるが、図4図6を参照することを含めて本明細書で説明するように、同様の又は代替的なコーティング遷移が生じ得る。コーティング308がコイル300から剥離すると、コイル300の特性は、本明細書に記載されるように変化し得る。例えば、コーティング308は、コイル300上にある間、コイル300の剛性を増大させることができ、その結果、コイル300は、マイクロカテーテル310を通して送達フィラメント304によってより容易に押され、コーティング308がコイル300の遠位端300dから剥離するにつれて、コイル300は、動脈瘤320内へ展開するためにより可撓性になることができる。加えて、コーティング308がコイル300から剥がれて粒子308eに破砕するにつれて、コーティング308及びコイル300の両方の材料は、本明細書に記載されるように、身体、例えば、血栓形成促進剤、血栓形成繊維などに晒されることができる。
【0030】
図3Dは、動脈瘤320内に更に送達及び展開されている図3A図3Cの塞栓システムのコイル300を示す。送達フィラメント304は、マイクロカテーテル310を通して遠位方向に平行移動され、送達フィラメント304の遠位端は、コイル300の近位端に当接する。コイル300がマイクロカテーテル310の外へ遠位方向に平行移動され続け、長手方向軸lとのアラインメントから実質的に外れると、マイクロカテーテル310の外部のコーティング308の部分308dは、粒子308eに破砕して剥離し続け、その結果、コイル300は、コーティング308がないため動脈瘤320内への展開中に更に曲がることができる。送達フィラメント304がマーキングバンド312の遠位端から距離Xだけ離れると、システムを操作する医療専門家は、コイル300がマイクロカテーテル310から完全に展開されそうであることを可視化することができ(例えば、蛍光透視法によって可視化し得る放射線不透過性送達フィラメント304を採用することによって)、又はマイクロカテーテル310を通して遠位方向に平行移動された送達フィラメント304の長さに基づいて、コイル300がマイクロカテーテル310から完全に展開されそうであることを推測し得る。距離Xは、様々な長さ、例えば、約1センチメートルなどであり得る。コイル300がほぼ完全に展開されると、医療専門家は、必要に応じて、マイクロカテーテル310を操作すること及び/又は送達フィラメント304を平行移動させることによって、コイル300を再配置し得る。本明細書に記載される種々の実施形態では、送達フィラメント304及びコイル300は、送達中に互いに一時的に結合され得、それにより、再配置が困難である場合、送達フィラメント304の遠位及び近位平行移動が、同様にコイル300も平行移動させて、送達フィラメント304及びコイル300の完全な近位抜去及び廃棄を可能にする。例えば、送達フィラメント304は、コイルの相補的幾何学形状、例えば、チャネル、C字形リンクなどと実質的に連結する幾何学形状を有し得る。
【0031】
図3Eは、動脈瘤320内に完全に展開されている図3A図3Dの塞栓システムのコイル300を示す。コイル300のかなりの部分が図3Dの所望の展開位置にあることが確認されると、送達フィラメント304は、コイル300の完全な展開(すなわち、マイクロカテーテル310からのコイル300の放出)のために、マイクロカテーテル310の遠位端にあるマーキングバンド312を過ぎて遠位方向に平行移動され得る。コーティングの残りの部分308dは、コイル300から粒子308eに破砕されており、その結果、コイル300全体は、コーティングがないため動脈瘤320内へ展開するように曲がることができる。送達フィラメント304がコイル300に結合されている場合、送達フィラメント304は、コイル300がマイクロカテーテル310の外部で送達フィラメント304から分断されるように、操作、例えば、回転、撹拌などされ得る。コイル300の展開後、所望であれば、例えば、動脈瘤320を更に充填するために、追加のコイルが同様の方法でマイクロカテーテル310を通して送達及び展開され得る。
【0032】
図4及び図5を参照すると、本明細書に記載される様々な実施形態では、コイル400、500のコーティング408、508は、コイル400、500が展開される際に様々な方法で遷移し得る。例えば、図4を参照すると、疎水性材料を含むコーティング408は、マイクロカテーテル410(及び/又はシース若しくは他の細長い部材、図示せず)内での送達中に実質的に剛性であり得、コイル400が脱出することなく遠位方向に前進させられることを可能にする。コーティング408(すなわち、脆性コーティング)がマイクロカテーテル410から遠位方向に延ばされるにつれて、コーティング408の一部分408dは、マイクロカテーテル410と実質的に整合せず、及び/又はコーティング408の近位の残りの部分は、破砕して粒子408eになり、コイル400から剥がれ、コーティング408がないためコイル400が(例えば、展開するために)曲がることを可能にする。コーティング408がコイル400に実質的に付着していないので、粒子408eは、コイル400から破砕して剥がれる。あるいは、図5を参照すると、コーティング508は、コイル500に実質的に付着し得、その結果、コーティング508の一部分508dがマイクロカテーテル510から遠位方向に延ばされて、マイクロカテーテル510及び/又はコーティング508の近位の残りの部分と整合しないため、一部分508dは、コイル500に沿って割れて少なくとも部分的に分離した部分508eになり(すなわち、脆性コーティング部分508dが割れ、それにより割れる前よりも剛性が低くなる)、コイル500が、割れたコーティング508eとともに曲がることを可能にする。コーティングの一部分508dは、割れるが、コーティング508がコイル500に実質的に付着しているので、コイル500に沿って実質的に維持される。そのような疎水性コーティング408、508は、実質的に乾燥した状態でより剛性(例えば、ガラス様)であり得、流体によって急速に可塑化されなくてもよい。このような疎水性コーティング408、508は、コイル400、500の展開中に割れてもよく、コーティング408、508とコイル400、500との間に実質的な付着がある場合、コーティング408、508は、展開されたコイル400、500に沿って実質的に残ってもよい。コーティング408、508がコイル400、500に実質的に付着していない場合、コーティング408、508は、展開中又は展開後に展開されたコイル400、500から実質的に破砕して剥がれ、体内で生分解し、通過又は代謝し得る。
【0033】
図6を参照すると、本明細書に記載される種々の実施形態では、コイル600のコーティング608は、コイル600が展開されるにつれて溶解し得る。コイル600に沿ったコーティング608は、マイクロカテーテル610(及び/又はシース若しくは他の細長い部材、図示せず)内での送達中に実質的に剛性であり得る親水性材料を含み、コイル600が脱出することなくマイクロカテーテル610を通して遠位方向に前進させられることを可能にする。コーティング608がマイクロカテーテル610から遠位方向に延ばされるにつれて、コーティング608の一部分608dは、水性流体(例えば、血液)に実質的に晒され、かつ/又はその中で飽和する。コーティング608の一部分608dは、粒子608e及び/又は溶液に分散してコイル600から剥がれ、コーティング608がないためコイル600が展開するように曲がることを可能にする。そのような親水性コーティング608は、実質的に乾燥した状態でより剛性(例えば、ガラス様)であり得、流体によって急速に可塑化され、剛性を低減し得る。コーティング608が流体中で所望の可撓性に可塑化するための持続時間は、コーティング608の組成に依存し得る。いくつかの実施形態では、コーティング608は、コイル600の展開中及び/又は展開後にコイルから剥がれてもよい。
【0034】
本明細書で開示され特許請求される装置及び/又は方法の全ては、本開示を踏まえて、必要以上の実験を伴うことなく、作製及び実行し得る。本開示の装置及び方法を好ましい実施形態に関して説明してきたが、本開示の概念、趣旨、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される装置及び/又は方法に、並びに方法のステップ又は一連のステップに、変形を適用し得ることが、当業者に明白であり得る。当業者に明らかな全てのそのような類似の置換及び修正は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨、範囲、及び概念の範囲内であると見なされる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
【国際調査報告】