(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】有機金属化合物を用いて薄膜を形成する方法、及びそれから製造された薄膜
(51)【国際特許分類】
C23C 16/40 20060101AFI20231221BHJP
C07F 19/00 20060101ALI20231221BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20231221BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231221BHJP
C07F 5/00 20060101ALN20231221BHJP
C07F 7/10 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
C23C16/40
C07F19/00
H01L21/316 X
H01L21/31 B
C07F5/00 D
C07F7/10 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532808
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2022018232
(87)【国際公開番号】W WO2023090910
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0159545
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】506327586
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック コオペレイション ファウンデーション,ヨンセイ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オ, ジョン-ド
(72)【発明者】
【氏名】イ, ヒュン-キュン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ミ-ラ
(72)【発明者】
【氏名】ソク, ジャン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク, チュン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, スン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ソニョン
(72)【発明者】
【氏名】ナ, スン-ギュ
【テーマコード(参考)】
4H048
4H049
4H050
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4H048AA03
4H048AB80
4H048VA30
4H048VA70
4H048VB10
4H049VN01
4H049VP02
4H049VQ39
4H049VR23
4H049VR51
4H050AA03
4K030AA11
4K030AA14
4K030BA01
4K030BA29
4K030BA42
4K030CA04
4K030DA03
4K030JA05
4K030JA06
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
4K030LA15
5F045AA06
5F045AA15
5F045AB31
5F045AC07
5F045AC11
5F045AC12
5F045AF03
5F045EE02
5F045EE07
5F045EE14
5F045EE19
5F058BC03
5F058BF04
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF37
(57)【要約】
本発明は、有機金属化合物(特に、希土類金属を含む有機金属化合物)を蒸着して優れた特性の薄膜を製造する方法、及び製造された薄膜に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバに有機金属前駆体化合物を注入する第1注入ステップと、
前記有機金属前駆体化合物を前記チャンバからパージする第1パージステップと、
前記チャンバに反応ガスを注入する第2注入ステップと、
前記チャンバから前記有機金属前駆体化合物と反応しないか或いは反応して生成された副産物をパージする第2パージステップと、を含むサイクルを繰り返して基板上に薄膜を蒸着し、
前記有機金属前駆体化合物は、下記化学式1で表される前駆体を含む、薄膜の製造方法。
【化1】
(式中、
Mは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタナム(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)又はルテチウム(Lu)のいずれかであり、
LはN(SiR
4R
5)
2であり、
R
1~R
5は、それぞれ独立して水素、炭素数1~4の直鎖状または分枝状の炭化水素であり、
xは1~3の整数である。)
【請求項2】
前記化学式1のLがビス(トリメチルシリル)アミン(bis(trimethylsilyl)amine)基である、請求項1に記載の薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記反応ガスが、オゾン(O
3)及び水(H
2O)よりなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1に記載の薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記有機金属前駆体化合物のキャニスター(canister)の温度が150℃以上である、請求項1に記載の薄膜の製造方法。
【請求項5】
工程温度が350℃以下のである、請求項1に記載の薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記有機金属前駆体化合物の注入時間が1秒以上、30秒以下であり、
前記有機金属前駆体化合物のキャリアガスの注入量が10sccm以上、5000sccm以下であり、
前記反応ガスの注入時間が1秒以上、30秒以下であり、
前記反応ガスの注入量が10sccm以上、5000sccm以下であり、
前記反応ガスの濃度が50g/m
3以上、500g/m
3以下である、請求項1に記載の薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記第1パージステップ及び前記第2パージステップのパージガス注入時間がそれぞれ独立して1秒以上、3分以下であり、
前記第1パージステップ及び前記第2パージステップのパージガス注入量がそれぞれ独立して10sccm以上、5000sccm以下である、請求項1に記載の薄膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された、炭素原子の含有量が1.5原子%以下である、薄膜。
【請求項9】
誘電定数が10以上であり、漏れ電流が4.0×10
-7A/cm
2以下である、請求項8に記載の薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属化合物を用いて薄膜を製造する方法に関し、具体的には、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)を用いて優れた特性の薄膜を形成する方法及び優れた特性の薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体として使用されている酸化ケイ素(SiO2)は、最近、半導体素子の密集パッキングと微視化されるチャネル長によって金属ゲート/高誘電体(High-k)トランジスタに代替されている。
【0003】
特に、素子間の線幅微細化により高誘電定数材料及びこれを適用する工程の開発に対する要求が高まっている。
【0004】
一方、高誘電体(High-k)は、高いバンドギャップ及びバンドオフセット、高いk値、ケイ素上での優れた安定性、最小のSiO2界面層、及び基材上の高品質界面を有するべきである。また、アモルファスまたは高結晶質のフィルムが望ましい。
【0005】
酸化ケイ素を代替するために盛んに研究及び適用されている代表的な高誘電体物質としては、酸化ハフニウム(HfO2)などを挙げることができ、特に10nm以下の工程では、次世代の高誘電体物質が持続的に要求されており、次世代の高誘電体物質の有力な候補としては、希土類のドープされた酸化ハフニウムなどが挙げられている。
【0006】
特に、希土類元素含有材料は、進歩したケイ素CMOS、ゲルマニウムCMOS及びIII-Vトランジスタ素子に有望な高誘電体物質であり、これを基材とした新世代の酸化物は、通常の誘電体材料に比べて容量において相当な利点を提供すると報告されている。
【0007】
また、希土類元素含有材料は、強誘電性、焦電性、圧電性、抵抗変換などの特性を有するペロブスカイト材料の製造に応用が期待されている。すなわち、有機金属化合物前駆体を用いる気相蒸着工程を介してABO3形態のペロブスカイトを製造し、A、Bカチオン(希土類または遷移金属)の種類又は組成を調節し、素材の誘電性、電子伝導性及び酸素イオン伝導度などの多様な特性を付与して、燃料電池、センサー、二次電池などの多様な産業分野に利用するための研究が進められている。
【0008】
この他にも、希土類元素含有材料は、多層酸化物薄膜構造の優れた水分浸透抵抗性を活用した封止用素材や次世代不揮発性メモリの実現に活用するために盛んに研究されている。
【0009】
しかしながら、依然として希土類含有層の蒸着が難しいため、蒸着に有利な様々なリガンドを有する希土類前駆体、及び効率の良い希土類前駆体の蒸着方法が研究されてきた。
【0010】
希土類前駆体を構成するリガンドの代表的な例としては、アミド(amide)、アミジネート(amidinate)、β-ジケトネート(β-Diketonate)、シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl、Cp)などの化合物群が挙げられるが、これらの前駆体は、高い融点、低い蒸着温度、高い薄膜内不純物、比較的低い反応性など、実際の工程に適用し難いという欠点があり、これに適した蒸着方法の開発も円滑に行われなかった。
【0011】
結果として、希土類含有フィルムの蒸着のために改善された希土類前駆体を適用した蒸着工程の開発が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、希土類有機金属前駆体化合物を用いる効率の良い薄膜の製造方法、及びそれによって製造された優れた特性の薄膜を提供することを目的とする。
【0014】
しかしながら、本願が解決しようとする課題は、上述した課題に限定されず、上述していない別の課題は、以降の記載から当業者には明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の一態様は、チャンバに有機金属前駆体化合物を注入する第1注入ステップと、
前記有機金属前駆体化合物を前記チャンバからパージする第1パージステップと、
前記チャンバに反応ガスを注入する第2注入ステップと、
前記チャンバから前記有機金属前駆体化合物と反応しないか或いは反応して生成された副産物をパージする第2パージステップと、を含むサイクルを繰り返して基板上に薄膜を蒸着し、
前記有機金属前駆体化合物は、下記化学式1で表される前駆体を含む、薄膜の製造方法を提供する。
【化1】
式中、
Mは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタナム(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)又はルテチウム(Lu)のいずれかであり、
LはN(SiR
4R
5)
2であり、
R
1~R
5は、それぞれ独立して水素、炭素数1~4の直鎖状または分枝状の炭化水素であり、
xは1~3の整数である。
【0016】
本願の他の態様は、上記の製造方法によって製造された、炭素原子の含有量が1.5原子%以下である、薄膜を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る薄膜の製造方法は、優れた特性の薄膜を効率よく製造することができるという効果がある。
【0018】
特に、前記薄膜は、厚さの均一度が高く、不純物の含有量が低く、優れた電気的特性(誘電定数、漏れ電流など)を示す。
【0019】
また、本発明の薄膜の製造方法によって製造された、優れた特性の薄膜は、様々な電子装置の誘電体(特に、High K/金属ゲート、DRAMキャパシタ)、ペロブスカイト素材、ディスプレイ、次世代メモリなどに使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】キャニスター温度の変化に伴う薄膜の蒸着率及び蒸着厚さ均一度の変化を示すグラフである。
【
図2】工程温度の変化に伴う薄膜の蒸着率及び蒸着厚さ均一度の変化を示すグラフである。
【
図3】工程温度の変化に伴う薄膜内成分の変化を分析して示すグラフである。
【
図4】工程温度の変化に伴う薄膜の電気的特性を分析して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態によって、発明の作用及び効果をより詳細に説明する。ただし、これらの実施形態は、発明の例示として提示されたものに過ぎず、これにより発明の権利範囲が定められるのではない。
【0022】
これに先立ち、本明細書及び請求の範囲に使用された用語または単語は、通常的且つ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者はその自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されるべきである。
【0023】
したがって、本明細書に記載されている実施形態の構成は、本発明の最も好適な一つの実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替することができる様々な均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。
【0024】
本明細書における単数の表現は、文脈上明らかに別段の意味を持たない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素またはこれらの組み合わせの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0025】
本願の一態様による薄膜の製造方法は、チャンバに有機金属前駆体化合物を注入する第1注入ステップと、
前記有機金属前駆体化合物を前記チャンバからパージする第1パージステップと、
前記チャンバに反応ガスを注入する第2注入ステップと、
前記チャンバから前記有機金属前駆体化合物と反応しないか或いは反応して生成された副産物をパージする第2パージステップと、を含むサイクルを繰り返し行って基板上に薄膜を蒸着し、
前記有機金属前駆体化合物は、下記化学式1で表される前駆体を含むことができる。
【0026】
【化1】
式中、
Mは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタナム(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)又はルテチウム(Lu)のいずれかであり、
LはN(SiR
4R
5)
2であり、
R
1~R
5は、それぞれ独立して水素、炭素数1~4の直鎖状または分枝状の炭化水素であり、
xは1~3の整数である。
【0027】
前記化学式1の有機金属前駆体化合物は、希土類原子とケイ素原子とを一緒に含んでおり、希土類原子とケイ素原子とを一緒に含む薄膜を製造するために、希土類有機金属前駆体化合物とケイ素有機金属前駆体とを別に用意して蒸着させなければならない従来の薄膜の製造方法の煩わしさを減らすことができる。
【0028】
また、従来の製造方法は、一般に、2つの前駆体間の揮発性と分解温度が異なり、高いアスペクト比構造で均一な組成を維持するのに困難があるが、本発明の前駆体を用いる場合、このような点を改善することができる。
【0029】
一実施形態において、前記化学式1のLは,
ビス(トリメチルシリル)アミン(bis(trimethylsilyl)amine、BTSA)であり得る。
【0030】
一方、前記薄膜の製造方法は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)であってもよく、原子層蒸着法のうちのプラズマ強化原子層蒸着法(PE-ALD)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0031】
また、前記チャンバに有機金属前駆体化合物を注入するステップは、物理吸着、化学吸着、または物理及び化学吸着するステップを含むことができる。
【0032】
一実施形態において、前記薄膜の製造方法は、反応ガスとして、酸素(O)原子含有化合物、窒素(N)原子含有化合物、炭素(C)原子含有化合物及びケイ素(Si)原子含有化合物のうちの少なくとも1種を注入するステップをさらに含むことができる。
【0033】
一実施形態において、前記反応ガスは、酸素(O2)、オゾン(O3)、水(H2O)、過酸化水素(H2O2)、窒素(N2)、アンモニア(NH3)及びヒドラジン(N2H4)の中から選択された少なくとも1種であってもよい。
【0034】
すなわち、所望の希土類含有フィルムが酸素を含有する場合、反応ガスは、酸素(O2)、オゾン(O3)、水(H2O)、過酸化水素(H2O2)及びこれらの任意の組み合わせから選択することができるが、これに限定されるものではない。
【0035】
所望の希土類含有フィルムが窒素を含有する場合、反応ガスは、窒素(N2)、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)及びこれらの任意の組み合わせから選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また、所望の希土類含有フィルムが他の金属を含む場合、反応ガスは、他の金属原子を含んでもよい。
【0037】
一実施形態において、前記有機金属前駆体化合物のキャニスター(canister)の温度は、150℃以上であってもよい。
【0038】
キャニスターは、薄膜の製造方法において反応のためのチャンバ内にソースガスを供給するために使用される。通常、キャニスターは、有機金属前駆体化合物を気化させてソースガスを生成させた後、そのソースガスを前記チャンバ内へ供給する。
【0039】
キャニスターの温度が150℃未満である場合、薄膜の製造方法によって製造された薄膜の厚さの均一度が大きく低下するおそれがある。
【0040】
これは、150℃未満のキャニスター温度で前記有機金属前駆体化合物のチャンバへの供給量が十分でないためである。
【0041】
一実施形態において、前記蒸着のための工程温度が350℃以下であってもよい。
【0042】
前記工程温度が高くなるにつれて蒸着率が高くなる可能性がある。また、250℃~350℃の工程温度で製造された薄膜は、均一度に優れるため、様々な用途に使用できる。
【0043】
また、前記工程温度が高くなるにつれて、製造された薄膜の不純物に該当する炭素原子の含有量が小幅に高くなることがあり、誘電定数が小幅に低くなるにつれて、漏れ電流が小幅に増加するが、250℃~350℃の工程温度で製造された薄膜の特性は、優れた品質の範囲内に該当して様々な用途に使用できる。
【0044】
一実施形態において、前記有機金属前駆体化合物の注入時間が1秒以上、30秒以下であり、前記有機金属前駆体化合物のキャリアガスの注入量が10sccm以上、5000sccm以下であり得る。
【0045】
また、前記反応ガスの注入時間が1秒以上、30秒以下であり、前記反応ガスの注入量が10sccm以上、5000sccm以下であり、前記反応ガスの濃度が50g/m3以上、500g/m3以下であり得る。
【0046】
一実施形態において、前記第1パージステップ及び前記第2パージステップのパージガス注入時間は、それぞれ独立して1秒以上、3分以下であり、前記第1パージステップ及び前記第2パージステップのパージガス注入量は、それぞれ独立して10sccm以上、5000sccm以下であり得る。
【0047】
上述した前記有機金属前駆体化合物、前記反応ガス及び前記パージガスに対する工程条件を満たさない場合、優れた特性の薄膜を得ることができなかった。
【0048】
一方、前記薄膜の製造方法の前記サイクルの回数は、1回以上、100,000回以下であり得る。
【0049】
本願の他の態様による薄膜は、上記の製造方法によって製造され、不純物である炭素(C)原子の含有量が1.5原子%以下であり得る。
【0050】
また、X線光電子分光法(XPS)によって、前記薄膜の別の不純物である窒素(N)原子が検出されなくてもよい。
【0051】
一実施形態において、前記薄膜は、誘電定数が10以上であり、漏れ電流が4.0×10-7A/cm2以下であり得る。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を用いて本願をより具体的に説明するが、本願はこれに限定されるものではない。
【0053】
[合成例]
[NHtBuCH2CH2NMe2リガンドの製造]
2-クロロ-N,N-ジメチルエチルアミン塩酸塩(2-chloro-N,N-dimethylethylamine hydrochloride)1eqを100mLの水に徐々に溶解させ、0℃でゆっくりNaOH水溶液1eqを添加した。その後、同じ温度で滴下漏斗(dropping funnel)を用いてt-ブチルアミン4eqをゆっくり仕込み、室温で一晩撹拌した。反応終了後、NaOH1eqを加えてさらに撹拌し、ヘキサン溶媒を用いて抽出した。有機層をMgSO4で脱水した後、常圧で溶媒除去及び精製を行った。合成されたNHtBuCH2CH2NMe2は無色の液体であり、合成収率は30%であった。
【0054】
得られたNHtBuCH2CH2NMe2の化学構造式及びNMR測定結果は、下記の通りである。
【0055】
[NHtBuCH2CH2NMe2の化学構造式]
【0056】
【0057】
1H-NMR(400MHz、Benzene-D6):
δ1.06(s,9H)、2.06(s,6H)、2.33(t,2H)、2.56(t,2H)
【0058】
[La(btsa)2(NHtBuCH2CH2NMe2)(La(N(SiMe3)2)2(NHtBuCH2CH2NMe2))の製造]
La(btsa)31eq入りのフラスコに溶媒としてのトルエン(Toluene)を入れ、実施例1のNHtBuCH2CH2NMe21eqを入れる。70℃で一晩加熱する。反応終了後、減圧濃縮し、110℃、56mTorrで昇華精製してLa(btsa)2(NHtBuCH2CH2NMe2)を得る。
【0059】
合成されたLa(btsa)2(NHtBuCH2CH2NMe2)はアイボリー色の固体であり、合成収率は76%であった。
【0060】
合成されたLa(btsa)2(NHtBuCH2CH2NMe2)の化学構造式及びNMR測定結果は、下記の通りである。
【0061】
[La(btsa)2(NHtBuCH2CH2NMe2)の化学構造式]
【0062】
【0063】
前記La(btsa)2(NHtBuCH2CH2NMe2)の化学構造式において、BTSAはビス(トリメチルシリル)アミン(bis(trimethylsilyl)amine)基であり、tBuはtert-ブチル(tert-butyl)基である。
【0064】
1H-NMR(400MHz、THF-d8):
δ0.15(s,36H)、1.23(s,9H)、2.48(s,6H)、3.03(t,2H)、3.09(t,2H)
【0065】
[製造例]
原子層蒸着(ALD)装備を用いて、前記合成例によって製造された有機金属前駆体化合物を薄膜に蒸着した。
【0066】
本実験に使用された基板はp型Si(100)ウェーハであり、抵抗は0.02Ω・mである。蒸着に先立ち、p型Siウェーハは、アセトン-エタノール-脱イオン水(DI water)にそれぞれ10分ずつ超音波処理(Ultra sonic)して洗浄した。Siウェーハ上の自然酸化物薄膜は、HF10%(HF:H2O=1:9)の溶液に10秒間浸漬した後、除去した。HF洗浄したSiウェーハは、直ちに原子層蒸着(ALD)チャンバへ移動させた。実験に使用された有機金属前駆体化合物であるLa(btsa)2(NHtBuCH2CH2NMe2)は、希土類金属であるLaとSiの元素の両方が含まれている前駆体であり、キャニスターの温度を130℃~160℃に維持した。
【0067】
La(btsa)2(NHtBuCH2CH2NMe2)(10秒)-Ar(30秒)-オゾン(O3)(10秒)-Ar(30秒)の順に供給した。
【0068】
反応ガスとして使用されたオゾン(O3)は、空気圧バルブのオン/オフを調整して1,000sccmの流量で注入した。このとき、オゾンの濃度は220g/m3であった。
【0069】
La(btsa)2(NHtBuCH2CH2NMe2)及びオゾンのパージのためのアルゴン(Ar)の流量は1,500sccmとした。
【0070】
250℃~350℃の工程温度範囲で反応器圧力は1torrとし、サイクル回数は200回とした。
【0071】
下記表1に薄膜製造のための工程条件を示した。
【0072】
【0073】
上記の製造例によって製造された薄膜の蒸着率、厚さ均一度、及び成分とその組成比を分析した。
【0074】
(1)蒸着率の測定
蒸着率は、下記数式1によって計算された。
[数式1]
蒸着率(Å/cycle)=蒸着厚さ/ALDサイクル数
前記数式1の蒸着厚さは、エリプソメータ(Ellipsometer)で測定し、FE-SEMを用いて確認した。
【0075】
(2)厚さ均一度の測定
厚さ均一度は、下記数式2によって計算された。
[数式2]
厚さ均一度(%)=(最大厚さ-最小厚さ)/(2×平均厚さ)
前記数式2の最大、最小及び平均厚さは、薄膜が形成されたウェーハの9箇所で測定された値から定められた。
測定は、エリプソメータ(製造社:エリプソテクノロジー、モデル名:Elli-SE-UaM8)によって行われた。ウェーハの9箇所の位置は、それぞれ中央(C)、右方(R)、左方(L)、上方(T)、下方(B)、右上方(RT)、左上方(LT)、右下方(RB)及び左下方(LB)であった。
【0076】
(3)成分及び組成比の測定
製造された薄膜の成分及び組成比をX線光電子分光法(XPS)を用いて分析した。
【0077】
[実施例1]
前記表1に記載の工程条件で工程温度を250℃に固定し、キャニスターの温度を130℃~160℃の範囲で変化させ、前記製造例によって薄膜を製造し、薄膜の蒸着率(GPC)及び厚さ均一度(uniformity)を測定し、その結果を
図1に示した。
【0078】
図1に示すように、キャニスターの温度が高くなるにつれて蒸着率が高くなり、厚さ均一度が低くなった。
【0079】
キャニスターの温度を130℃及び140℃としたとき、それぞれ薄膜の測定位置による厚さのバラツキが30.3%及び18.6%と非常に高いため、薄膜の不均一を確認することができた。
【0080】
これに対し、キャニスターの温度を150℃及び160℃に高めた場合は、それぞれ薄膜の測定位置による厚さのバラツキが1.4%及び1.6%と非常に低いため、非常に均一な厚さの薄膜が形成された。
【0081】
すなわち、キャニスターの温度が薄膜の蒸着率及び厚さ均一度に大きく影響することが分かった。
【0082】
[実施例2]
前記表1に記載の工程条件でキャニスターの温度を150℃に固定し、工程温度を250℃~350℃の範囲で変化させて前記製造例によって薄膜を製造し、薄膜の蒸着率(GPC)及び厚さ均一度を測定し、その結果を
図2に示した。
【0083】
図2に示すように、工程温度が高くなるにつれて蒸着率が高くなることを確認することができた。
【0084】
また、工程温度を250℃、300℃及び350℃としたとき、薄膜の測定位置による厚さのバラツキがそれぞれ1.4%、1.0%及び4.2%に該当するため、薄膜の厚さ均一度に非常に優れることを確認することができた。
【0085】
また、
図3に示すように工程温度を変化させた実施例2によって製造された薄膜の元素を分析した。
【0086】
全ての薄膜において、La、Si、O元素が検出され、不純物である窒素(N)は検出されなかった。
【0087】
不純物である炭素(C)は、すべての薄膜で検出され、その含有量は工程温度によって変わった。
【0088】
すなわち、工程温度が高くなるにつれて薄膜内の不純物である炭素の含有量が高くなったが、250℃~350℃の工程温度で製造された薄膜は、炭素の含有量が1.3原子%以下と非常に低い優れた特性を示した。
【0089】
また、製造時の工程温度の変化による薄膜のLa、Si及びOの比率はほぼ差がなく、La:Si:Oの原子比率は1:1:3であって、LaSiO3薄膜が形成されたことを確認することができた。
【0090】
一方、製造された薄膜の電気的特性(誘電定数及び漏れ電流)を測定した結果、薄膜製造の際に工程温度が高いほど誘電定数の測定値が低くなり、漏れ電流の測定値が高くなることを確認することができた。
【0091】
250℃~350℃の工程温度で製造された薄膜の誘電定数及び漏れ電流の測定値はいずれも、実際の用途への使用に十分な優れた範囲内に該当した。
【0092】
上記の薄膜製造によって、様々な工程条件が調節されたALDを介して優れた特性の薄膜を形成することができることが分かった。
【0093】
特に、キャニスター温度及び工程温度の調整によって薄膜の特性を向上させることができることを確認することができた。
【0094】
すなわち、工程条件の調節によって均一な厚さの薄膜製造が可能であり、優れた薄膜物性(不純物の含有量及び誘電特性などの電気的特性)を確保することができる。
【0095】
本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更又は変形形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係る薄膜の製造方法は、優れた特性の薄膜を効率よく製造することができるという効果がある。
【0097】
特に、前記薄膜は、厚さの均一度が高く、不純物の含有量が低く、優れた電気的特性(誘電定数、漏れ電流など)を示す。
【0098】
また、本発明の薄膜の製造方法によって製造された優れた特性の薄膜は、様々な電子装置の誘電体(特に、High K/金属ゲート、DRAMキャパシタ)、ペロブスカイト素材、ディスプレイ、次世代メモリなどに使用できる。
【国際調査報告】