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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】燃料電池膜加湿器
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20231221BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20231221BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20231221BHJP
   H01M 8/04828 20160101ALI20231221BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231221BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/0438
H01M8/04694
H01M8/04828
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533367
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 KR2022095017
(87)【国際公開番号】W WO2022169351
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0017071
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0031930
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム ドウ
(72)【発明者】
【氏名】キム キョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】アン ナヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム インホ
(72)【発明者】
【氏名】オ ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】イ アルム
(72)【発明者】
【氏名】イ ジユン
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AC10
5H127BA02
5H127BA44
5H127BA45
5H127BB02
5H127BB33
5H127BB34
5H127DB85
5H127DC86
5H127EE17
(57)【要約】
本発明は、膜加湿器内外部の圧力差により発生する加湿効率低下を防止できる燃料電池膜加湿器に関するものであって、
本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器は、
内部にモジュール挿入部が形成されたミドルケースと、前記ミドルケースと結合されるキャップケースと、前記モジュール挿入部に挿入された中空糸膜モジュールと、前記ミドルケースと前記モジュール挿入部との間に形成され、燃料電池の出力状況に応じて前記ミドルケースの内部と外部の圧力差による前記モジュール挿入部の膨脹を防止するか、または前記圧力差を解消させる能動型圧力バッファ部とを備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にモジュール挿入部が形成されたミドルケースと、
前記ミドルケースと結合されるキャップケースと、
前記モジュール挿入部に挿入された中空糸膜モジュールと、
前記ミドルケースと前記モジュール挿入部との間に形成され、燃料電池の出力状況に応じて前記ミドルケースの内部と外部の圧力差による前記モジュール挿入部の膨脹を防止するか、または前記圧力差を解消させる能動型圧力バッファ部と、
を備える燃料電池膜加湿器。
【請求項2】
前記モジュール挿入部は、前記ミドルケースの内壁と離間して形成された外側隔壁を備え、
前記能動型圧力バッファ部は、前記外側隔壁と前記ミドルケースの内壁との間に形成される摺動構造体を備える請求項1に記載の燃料電池膜加湿器。
【請求項3】
前記摺動構造体は、
前記外側隔壁に固定され、前記ミドルケース方向に突出されるものの、前記ミドルケースの内壁と離間し得るように形成された第1の摺動部材と、
前記ミドルケースの内壁に形成され、前記外側隔壁方向に突出されるものの、前記外側隔壁と離間し得るように形成された第2の摺動部材と、
を備える請求項2に記載の燃料電池膜加湿器。
【請求項4】
前記第1の摺動部材及び第2の摺動部材のうち少なくともいずれか1つに形成され、前記外側隔壁と前記ミドルケースとの間の膨脹圧力サイズによって開放または閉鎖状態になりうるバイパスホールを備える請求項3に記載の燃料電池膜加湿器。
【請求項5】
前記第1の摺動部材と第2の摺動部材とは、互いに対向する方向に突出された摺動突起を備える請求項3に記載の燃料電池膜加湿器。
【請求項6】
前記第1の摺動部材の摺動突起と前記第2の摺動部材の摺動突起との間には摺動空間が形成される請求項5に記載の燃料電池膜加湿器。
【請求項7】
前記ミドルケースが外側に膨脹すれば、前記第2の摺動部材が前記ミドルケースとともに外側に膨脹し、前記第1の摺動部材は、前記外側隔壁に固定された状態を維持する請求項3に記載の燃料電池膜加湿器。
【請求項8】
前記中空糸膜モジュールは、複数の中空糸膜が集積された少なくとも1つ以上の中空糸膜束または複数の中空糸膜が収容された少なくとも1つ以上の中空糸膜カートリッジを備える請求項1~7のいずれか1項に記載の燃料電池膜加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池膜加湿器に関し、より具体的には、膜加湿器内外部の圧力差により発生する加湿効率低下を防止できる燃料電池膜加湿器に関する。
【0002】
【背景技術】
【0003】
燃料電池とは、水素と酸素を結合させて電気を生産する発電型電池である。燃料電池は、乾電池や蓄電池など、一般化学電池とは異なり、水素と酸素が供給される限り、電気を生産し続けることができ、熱損失がないので、内燃機関より効率が2倍くらい高いという長所がある。
【0004】
また、水素と酸素の結合により発生する化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換するので、公害物質排出が少ない。したがって、燃料電池は、環境親和的であり、かつ、エネルギー消費増加による資源枯渇に対する心配を減らすことができるという長所がある。
【0005】
このような燃料電池は、使用される電解質の種類によって、大別して、高分子電解質型燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell:PEMFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、及びアルカリ型燃料電池(AFC)などに分類することができる。
【0006】
これらのそれぞれの燃料電池は、元々同じ原理により作動するが、使用される燃料の種類、運転温度、触媒、電解質などが互いに異なる。この中で、高分子電解質型燃料電池は、他の燃料電池に比べて低温で動作するという点、及び出力密度が大きくて、小型化が可能であるので、小規模据え置き型発電装備だけでなく、輸送システムでも最も有望なものと知られている。
【0007】
高分子電解質型燃料電池の性能を向上させるにあたり、最も重要な要因のうち1つは、膜-電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)の高分子電解質膜(Polymer Electrolyte MembraneまたはProton Exchange Membrane:PEM)に一定量以上の水分を供給することによって含水率を維持させることである。高分子電解質膜が乾燥されれば、発電効率が急激に低下するためである。
【0008】
高分子電解質膜を加湿する方法では、1)内圧容器に水を満たした後、対象気体を拡散器(diffuser)に通過させて水分を供給するバブラ(bubbler)加湿方式、2)燃料電池反応に必要な供給水分量を計算し、ソレノイドバルブを介してガス流動管に直接水分を供給する直接噴射(direct injection)方式、及び3)高分子分離膜を利用してガスの流動層に水分を供給する加湿膜方式などがある。
【0009】
これらの中でも、排ガス中に含まれる水蒸気のみを選択的に透過させる膜を利用して、水蒸気を高分子電解質膜に供給されるガスに提供することによって高分子電解質膜を加湿する加湿膜方式が加湿器を軽量化及び小型化できるという点で有利である。
【0010】
加湿膜方式に使用される選択的透過膜は、モジュールを形成する場合、単位体積当り透過面積が大きい中空糸膜が好ましい。すなわち、中空糸膜を利用して膜加湿器を製造する場合、接触表面積が広い中空糸膜の高集積化が可能であって、小容量でも燃料電池の加湿が十分になされることができ、低価素材の使用が可能であり、燃料電池において高温で排出される未反応ガスに含まれた水分と熱を回収し、加湿器を介して再使用できるという利点を有する。
【0011】
一方、膜加湿器稼動時に、膜加湿器内外部の圧力差により加湿効率が低下するという問題点が発生する。これを図1, 図2, 及び図3を参照して説明する。
【0012】
図1, 図2, 及び図3は、従来技術に係る燃料電池膜加湿器の断面図である。説明の都合上、図面においてポッティング部P部分の中空糸膜のみ図示し、残りの部分の中空糸膜は、省略して図示した。従来技術の膜加湿器は、複数の中空糸膜が収容される中空糸膜モジュール11がミドルケース10の内部に収容される。図示されたように、中空糸膜モジュール11は、カートリッジ形態で形成されることができる。ミドルケース10内部には、カートリッジ形態の中空糸膜モジュール11が挿入されるモジュール挿入部12が形成される。モジュール挿入部12は、ミドルケース10内部に形成された複数個の隔壁12a、12bで形成される。ここで、モジュール挿入部12の外郭をなす隔壁12bは、実質的にミドルケース10内壁の一部分である。
【0013】
図2に示されたように、中空糸膜モジュール11の両側面を隔壁12a、12bに挟んで、中空糸膜モジュール11がモジュール挿入部12に挿入される。このとき、ミドルケース10は、中央部分が陥没された中央陥没部10aを備え、中央陥没部10aの内壁と中空糸膜モジュール11とが気密に密着される。その結果、ミドルケース10の未陥没部10bと中空糸膜モジュール11が形成する2つの流体流動空間A、Bは隔離される。中央陥没部10aとモジュール挿入部12の外郭をなす隔壁12bは実質的に同一である。
【0014】
一方、燃料電池スタック(図示せず)から排出された第2の流体は、ミドルケース10に形成された流体流入口(図示せず)を介して流入し、中空糸膜モジュール11を介して流動しながらブロワーから供給されて、中空糸膜内部を流動する第1の流体と水分交換を行う。キャップケース20は、ミドルケース10と結合され、キャップケース20には、第1の流体が流入/流出する流体流入口20aが形成される。
【0015】
しかし、高圧の運転条件、すなわち、ミドルケース10に形成された流体流入口(図示せず)から流入する第2の流体が膜加湿器外部の大気より圧力が大きい高圧の流体である場合、膜加湿器内部と外部は圧力差が発生し、膜加湿器内部を流動する第2の流体の圧力が外部の大気圧より大きいので、膜加湿器外部方向に圧力勾配が形成されて、膜加湿器の一部(具体的には、ミドルケースの陥没された部分)は、図3に示されたように膜加湿器外部の方向に変形が発生する。一方、内部の隔壁12aは、隔壁両側の圧力が同一であるので、圧力勾配が形成されず、変形が発生しない。
【0016】
圧力勾配により発生するミドルケース10の形状変更は、中空糸膜モジュール11とミドルケース10内壁との間にギャップ(gap)が生じるようにし、このようなギャップ(gap)を介して流体流動空間Aの第2の流体は、中空糸膜モジュール11を流動せずに流体流動空間Bに流動するようになる。中空糸膜モジュール11を流動しなかった第2の流体は、中空糸膜を介しての加湿がなされなかった流体であるので、結果的に、加湿効率が落ちるようになるという問題がある。
【0017】
図4は、図1に示された従来技術に係る燃料電池膜加湿器の問題点を解決するためのさらに他の従来技術に係る燃料電池膜加湿器(韓国公開特許2019-0138288参照)が示された図である。
【0018】
図4に示されたように、さらに他の従来技術に係る燃料電池膜加湿器は、ミドルケース10の内部にモジュール挿入部12と圧力バッファ部22とを形成した。圧力バッファ部22は、外側隔壁12bとミドルケース10とが離間形成されることによって生じる空間と、外側隔壁12bとミドルケース10との間に形成される連結部21とを備える。連結部21は、流体流動空間Aと流体流動空間Bとを隔離させて、流体出入口20aを介して流入した流体を、中空糸膜カートリッジCを介してのみ流動させる。
【0019】
このように構成される圧力バッファ部22は、外側隔壁12b両側の圧力が実質的に同一にする。圧力バッファ部22により外側隔壁12bの両側には圧力勾配が形成されないので、外側隔壁12bは変形されないようになる。したがって、図1に示された燃料電池膜加湿器とは異なり、中空糸膜カートリッジCと外側隔壁12bとの間にギャップ(gap)が発生しなくなり、流体流動空間Aの流体が中空糸膜モジュールを流動せずに流体流動空間Bに流動することを防止できるようになり、その結果、加湿効率の低下を防止できるようになる。
【0020】
一方、図4に示されたような従来技術に係る燃料電池膜加湿器において、燃料電池の高出力状況または非正常出力状況に応じて、ミドルケース10に形成された流体流入口(図示せず)から流入する第2の流体の圧力(内部圧力P1)が膜加湿器外部の大気圧(外部圧力P2)より極めて大きい場合(P1>>P2)、図5A及び図5Bに示されたように、圧力差によりミドルケース10は、外部方向圧力を受けるようになり、外側に膨脹(E1で表示)することができる。このとき、外側隔壁12bは、連結部21と連結されているので、外側隔壁12bも外側に膨脹(E2で表示)することができる。外側隔壁12bが外側に膨脹すれば、中空糸膜カートリッジCと外側隔壁12bとの間にギャップ(gap)が発生しうる。したがって、中空糸膜モジュール11を流動しなかった第2の流体が発生するようになり、加湿効率が落ちるようになるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、膜加湿器内外部の圧力差により発生する加湿効率低下を防止できる燃料電池膜加湿器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器は、内部にモジュール挿入部が形成されたミドルケースと、前記ミドルケースと結合されるキャップケースと、前記モジュール挿入部に挿入された中空糸膜モジュールと、前記ミドルケースと前記モジュール挿入部との間に形成され、燃料電池の出力状況に応じて前記ミドルケースの内部と外部の圧力差による前記モジュール挿入部の膨脹を防止するか、または前記圧力差を解消させる能動型圧力バッファ部とを備える。
【0023】
本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器において、前記モジュール挿入部は、前記ミドルケースの内壁と離間して形成された外側隔壁を備え、前記能動型圧力バッファ部は、前記外側隔壁と前記ミドルケースの内壁との間に形成される摺動構造体を備える。
【0024】
本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器において、前記摺動構造体は、前記外側隔壁に固定され、前記ミドルケース方向に突出されるものの、前記ミドルケースの内壁と離間し得るように形成された第1の摺動部材と、前記ミドルケースの内壁に形成され、前記外側隔壁方向に突出されるものの、前記外側隔壁と離間し得るように形成された第2の摺動部材とを備えることができる。
【0025】
本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器において、前記第1の摺動部材及び第2の摺動部材のうち少なくともいずれか1つに形成され、前記外側隔壁と前記ミドルケースとの間の膨脹圧力サイズによって開放または閉鎖状態になりうるバイパスホールを備えることができる。
【0026】
本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器において、前記第1の摺動部材と第2の摺動部材とは、互いに対向する方向に突出された摺動突起を備えることができる。
【0027】
本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器において、前記第1の摺動部材の摺動突起と前記第2の摺動部材の摺動突起との間には摺動空間が形成され得る。
【0028】
本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器において、前記ミドルケースが外側に膨脹すれば、前記第2の摺動部材が前記ミドルケースとともに外側に膨脹し、前記第1の摺動部材は、前記外側隔壁に固定された状態を維持できる。
【0029】
本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器において、前記中空糸膜モジュールは、複数の中空糸膜が集積された少なくとも1つ以上の中空糸膜束または複数の中空糸膜が収容された少なくとも1つ以上の中空糸膜カートリッジを備えることができる。
その他、本発明の様々な側面による実現例の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0030】
本発明の実施形態によれば、膜加湿器内外部の圧力差により発生する加湿効率低下を防止できる。また、燃料電池の高出力状況または非正常出力状況でも、中空糸膜カートリッジと外側隔壁との間にギャップが発生することを防止して加湿効率の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】従来技術に係る燃料電池膜加湿器の問題点を説明するための図である。
図2】従来技術に係る燃料電池膜加湿器の問題点を説明するための図である。
図3】従来技術に係る燃料電池膜加湿器の問題点を説明するための図である。
図4図1に示された従来技術に係る燃料電池膜加湿器の問題点を解決するためのさらに他の従来技術に係る燃料電池膜加湿器が示された図である。
図5A図4に示されたさらに他の従来技術に係る燃料電池膜加湿器の問題点を説明するための図である。
図5B図4に示されたさらに他の従来技術に係る燃料電池膜加湿器の問題点を説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器の様々な形態が示された図である。
図7】本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器の様々な形態が示された図である。
図8】本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器の様々な形態が示された図である。
図9】本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器の様々な形態が示された図である。
図10】本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器のミドルケースの一部が示された断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器の能動型圧力バッファ部の一構成である摺動構造体の第1実施形態を拡大図示した断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器の能動型圧力バッファ部の一構成である摺動構造体の第1実施形態を拡大図示した断面図である。
図13】本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器の能動型圧力バッファ部の一構成である摺動構造体の第2実施形態を拡大図示した断面図である。
図14】本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器の能動型圧力バッファ部の一構成である摺動構造体の第2実施形態を拡大図示した断面図である。
図15】本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器の動作状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、様々な変換を加えることができ、種々の実施形態を有することができるところ、特定実施形態を例示し、詳細な説明に詳細に説明しようとする。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むことと理解されなければならない。
【0033】
本発明において使用した用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないことと理解されるべきである。以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る燃料電池膜加湿器を説明する。
【0034】
図6,図7,図8,及び図9は、本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器の様々な形態が示された図である。図6,図7,図8,及び図9に示されたように、本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器(以下、「膜加湿器」ともいう)は、ミドルケース110とキャップケース120とを備える。
【0035】
ミドルケース110は、キャップケース120と結合して膜加湿器の外形を形成する。ミドルケース110とキャップケース120とは、ポリカーボネートなどの硬質プラスチックや金属からなることができる。ミドルケース110とキャップケース120とは、図6及び図7のように、幅方向断面形状が多角形であることができる。前記多角形は、四角形、正方形、台形、平行四辺形、五角形、六角形などであることができ、前記多角形は、角が丸くなった形態であることもできる。または、図8及び図9のように、幅方向断面形状が円形であることができる。前記円形は、楕円形であることもできる。図6,図7,図8,及び図9は、膜加湿器の例示的な形状であり、これに限定されるものではない。
【0036】
ミドルケース110には、各々第2の流体が供給される第2の流体流入口111と第2の流体が排出される第2の流体流出口112とが形成されており、ミドルケース110内部には、複数の中空糸膜が収容された中空糸膜モジュールFが配置される。設計によって、図面符号111が第2の流体が排出される第2の流体流出口になることができ、図面符号112が第2の流体が供給される第2の流体流入口になることができる。すなわち、図面符号111と図面符号112のうち、いずれか1つが第2の流体流入口になり、残りの1つは、第2の流体流出口になることができる。以下の説明において、図面符号111は、第2の流体流入口であり、図面符号112は、第2の流体流出口である場合を例示して説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0037】
中空糸膜モジュールFは、図7及び図9のように、複数の中空糸膜が集積された中空糸膜束であるか、図6及び図8のように、中空糸膜または中空糸膜束が収容された中空糸膜カートリッジであることができる。図6及び図8において複数の中空糸膜カートリッジが中空糸膜モジュールFを形成することを例示したが、これに限定されず、1つの中空糸膜カートリッジで中空糸膜モジュールFを形成することもできる。以下の説明では、図6に示された複数のカートリッジCで中空糸膜モジュールFを形成し、幅方向断面形状が多角形である膜加湿器を例示として説明するが、これは、図7,図8,及び図9の膜加湿器にも実質的に同様に適用されることができる。また、カートリッジCの形状も、断面の形状が円形または四角形である場合を例示したが、カートリッジCの形状がこれに限定されるものではない。
【0038】
キャップケース120は、ミドルケース110の各両端に結合される。それぞれのキャップケース120には、流体出入口121が形成されており、このうち1つは、第1の流体流入口になり、残りの1つは、第1の流体流出口になる。一側キャップケース120の流体出入口121に流入した第1の流体は、中空糸膜カートリッジ(C、図1参照)内部に収容された中空糸膜の内部管路を通過した後、他側キャップケース120の流体出入口121に抜け出すようになる。中空糸膜は、例えば、ナフィオン(Nafion)材質、ポリエーテルイミド(polyetherimide)材質、ポリフェニルスルホン(polyphenylsulfone)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)材質の中空糸膜になることができる。
【0039】
中空糸膜カートリッジCの一端には、第2の流体流入口111を介して膜加湿器に流入した第2の流体を中空糸膜カートリッジの内部に流入させる第1のメッシュ部(M1、図1参照)が形成され、他端には、中空糸膜カートリッジ内部で水分交換を行った第2の流体を中空糸膜カートリッジ外部に流出させる第2のメッシュ部(M2、図1参照)が形成され得る。中空糸膜カートリッジCの両側面は、隔壁(211、212、図10参照)に挟まれてモジュール挿入部210に挿入される。また、選択的に、中空糸膜カートリッジの両側面には、係止片(図示せず)が形成され得るし、中空糸膜カートリッジがモジュール挿入部210に挿入されるとき、係止片は、モジュール挿入部210をなす隔壁211、212にわたって挟まれることができる。
【0040】
中空糸膜カートリッジまたは中空糸膜束の両端部には、中空糸膜を結束しながら中空糸膜の間の空隙を埋めるポッティング部Pが形成される。これにより、中空糸膜モジュールの両端部は、ポッティング部Pに塞がり、その内部には、第2の流体が通過する流路が形成される。ポッティング部の材質は、公知されたところによるものであって、本明細書において詳細な説明を省略する。ポッティング部P周りには、ポッティング部Pとミドルケース110との間を満たす樹脂層Eが形成されるか、機械的に組立を介してポッティング部Pとミドルケース110との間を気密に結合するガスケット組立体(図示せず)が形成され得る。
【0041】
図10は、本発明の一実施形態に係る燃料電池膜加湿器のミドルケースの一部が示された断面図である。図10に示されたように、ミドルケース110の内部には、モジュール挿入部210と能動型圧力バッファ部220とが形成される。
【0042】
モジュール挿入部210には、複数の中空糸膜が収容された中空糸膜カートリッジCが挿入される。モジュール挿入部210は、複数の中空糸膜カートリッジCが各々挿入され得るように複数の隔壁211、212からなる。一方、単一の中空糸膜カートリッジで中空糸膜モジュールFをなす場合、内側隔壁211は省略されることができる。この場合、モジュール挿入部210は、外側隔壁212のみでなされることができる。
【0043】
ミドルケースの内壁110aは、モジュール挿入部210の最外郭をなす隔壁212と離間して形成される。外側隔壁212とミドルケースの内壁110aとが離間形成されることによって生じる空間Sは、能動型圧力バッファ部220を形成する。能動型圧力バッファ部220は、外側隔壁212とミドルケースの内壁110aとの間に形成される摺動構造体221をさらに備えることができる。
【0044】
能動型圧力バッファ部220は、外側隔壁212の周りにわたって形成されることができる。能動型圧力バッファ部220は、流体流動空間Aと流体流動空間Bとを隔離させて、流体を、中空糸膜カートリッジCを介してのみ流動させる。
【0045】
また、能動型圧力バッファ部220の一構成である摺動構造体221は、燃料電池の高出力状況または非正常出力状況に応じて、ミドルケース110に形成された流体流入口111から流入する第2の流体の圧力(内部圧力P1)が膜加湿器外部の大気圧(外部圧力P2)より極めて大きい場合にも、圧力差による外側隔壁212の外側膨脹を防止して加湿効率が落ちることを防止できる。
【0046】
以下、摺動構造体221の第1実施形態について図11及び図12を参照して説明する。図11及び図12は、能動型圧力バッファ部220の一構成である摺動構造体221の第1実施形態を拡大図示した断面図である。
【0047】
図11及び図12に示されたように、摺動構造体221は、第1の摺動部材221aと第2の摺動部材221bとを備える。第1の摺動部材221aは、外側隔壁212に固定され、ミドルケース110方向に突出されるものの、ミドルケース110の内壁110aと離間し得るように形成される。第2の摺動部材221bは、ミドルケース110の内壁110aに形成され、外側隔壁212方向に突出されるものの、外側隔壁212と離間し得るように形成される。
【0048】
第1の摺動部材221aと第2の摺動部材221bとは、互いに対向する方向に突出された摺動突起221aa、221baを備え、2つの摺動突起221aa、221ba間には、摺動空間SSが形成される。
【0049】
燃料電池の低出力状況に比べて高出力状況の第2の流体の圧力は相対的に大きい。また、燃料電池の正常出力状況に比べて非正常出力状況の第2の流体の圧力は相対的に極めて大きくなる。
【0050】
燃料電池の高出力状況または非正常出力状況で、第2の流体の圧力が相対的に大きくなると、大きい圧力差によりミドルケース110は外部方向圧力を受けるようになり、外側に膨脹(E1で表示)するようになる。このとき、ミドルケース110に形成された第2の摺動部材221bがミドルケース110とともに外側に膨脹しながら摺動空間SSは次第に小さくなる。高出力状況または非正常出力状況が持続されるか、より悪化すると、第2の流体の圧力がさらに大きくなり、2つの摺動突起221aa、221baが接触した状態になり、摺動空間SSが一時的にない状態になることができる。摺動空間SSがなくなるまで第1の摺動部材221aは、外側隔壁212に固定された状態を維持する。(図12参照)
【0051】
その後、高出力状況または非正常出力状況が解消される場合、すなわち、燃料電池が低出力状況または正常出力状況に復帰する場合、第2の流体の圧力が相対的に小さくなるので、膨脹圧力が次第に小さくなり、第2の摺動部材221bは、外側隔壁212方向に復帰するようになる。これにより、摺動空間SSは、元の状態に復帰するようになる。(図11参照)
【0052】
このように構成される能動型圧力バッファ部220は、燃料電池の出力状況が異常圧力差を発生させる非正常出力状況である場合にも、外側隔壁212両側の圧力が実質的に同一に維持され得るようにする。能動型圧力バッファ部220により外側隔壁212の両側には圧力勾配が形成されないので、外側隔壁212は変形されない。
【0053】
次に、第2実施形態の摺動構造体221’について図13及び図14を参照して説明する。図13及び図14は、能動型圧力バッファ部220の一構成である摺動構造体の第2実施形態を拡大図示した断面図である。
【0054】
図13に示されたように、摺動構造体221’は、前述した第1実施形態の摺動構造体220と同様に、第1の摺動部材221aと第2の摺動部材221bとを備え、本実施形態において第1の摺動部材221aと第2の摺動部材221bとは、バイパスホール221ab、221bbをさらに備える。バイパスホール221ab、221bbは、第1の摺動部材221aと第2の摺動部材221bとの間の膨脹圧力サイズによって開放または閉鎖状態になることができる。
【0055】
例えば、第1の摺動部材221aと第2の摺動部材221bとの間の膨脹圧力が大きくなくて、摺動空間SSが相対的に大きいときには、バイパスホール221ab、221bbは、摺動部材221a、221bにより閉まった状態となる。(図13参照)
【0056】
燃料電池の低出力状況に比べて高出力状況の第2の流体の圧力は相対的に大きい。また、燃料電池の正常出力状況に比べて非正常出力状況の第2の流体の圧力は相対的に極めて大きくなる。
【0057】
燃料電池の高出力状況または非正常出力状況で、第2の流体の圧力が相対的に大きくなると、大きい圧力差によりミドルケース110は膨脹圧力を受けるようになり、外側に膨脹(E1で表示)するようになる。このとき、ミドルケース110に形成された第2の摺動部材221bがミドルケース110とともに外側に膨脹しながら摺動空間SSは次第に小さくなる。
【0058】
高出力状況または非正常出力状況が持続されるか、より悪化すると、第2の流体の圧力がさらに大きくなり、摺動空間SSはさらに小さくなりつつ、摺動部材221a、221bにより閉まった状態にあったバイパスホール221ab、221bbは、次第に開度(opening)が大きくなりながら開放された状態となる。(図14参照)
【0059】
図14のように、バイパスホール221ab、221bbが開放された状態になると、流体流動空間Aの流体がバイパスホール221ab、221bbを介して流体流動空間Bに流動した後、第2のメッシュ部M2及び第2の流体流出口112を介して排出されながら流体流動空間Aを流動する流体の圧力を解消できるようになる。
【0060】
その後、高出力状況または非正常出力状況が解消される場合、すなわち、燃料電池が低出力状況または正常出力状況に復帰する場合、第2の流体の圧力が相対的に小さくなるので、膨脹圧力が次第に小さくなり、第2の摺動部材221bは、外側隔壁212方向に復帰するようになる。これにより、摺動空間SSは、元の状態に復帰しながらバイパスホール221ab、221bbは再度閉鎖状態になり、流体流動空間Aの流体が中空糸膜モジュールFを流動せずに流体流動空間Bに流動することを防止できるようになる。
【0061】
このように構成される能動型圧力バッファ部220は、燃料電池の高出力状況または非正常出力状況でも、中空糸膜カートリッジと外側隔壁との間にギャップが発生することを防止するか、または圧力差を解消させて加湿効率が落ちることを防止できる。
【0062】
これに対して、図15に示すように、内側隔壁211間に中空糸膜カートリッジCが配置され、燃料電池スタック(図示せず)から排出されて第2の流体流入口111に流入した第2の流体は、第1のメッシュ部M1を介してカートリッジC内部に流入して中空糸膜外部を流れながら水分交換を行った後、第2のメッシュ部M2を介してカートリッジ外部に流出する。このとき、中空糸膜カートリッジCを介して流動する流体の圧力P1が同一であるので、内側隔壁211両側の圧力は、平衡をなして変形が発生しない。
【0063】
一方、外側隔壁212では、一側には、中空糸膜カートリッジCを介して高圧P1の第2の流体が流動し、他側では、中空糸膜カートリッジCを流動しない高圧P1’の第2の流体が流動する。外側隔壁212両側を流動する第2の流体は、実質的に同じ圧力(P1=P1’)を有するので、外側隔壁212両側の圧力は、平衡をなして変形が発生しない。
【0064】
一方、燃料電池の高出力状況または非正常出力状況で、能動型圧力バッファ部220を流動する第2の流体の圧力P1とミドルケース110外部の大気圧P2との間の圧力差が大きい場合には、摺動構造体221の第2の摺動部材221bがミドルケース110とともに外側に膨脹するだけであり、第1の摺動部材221aは、外側隔壁212に固定された状態を維持するようになる。したがって、外側隔壁212と中空糸膜カートリッジCとの気密性は維持されて、第2の流体が外側隔壁212と中空糸膜カートリッジCとの間に流出しない。
【0065】
一方、能動型圧力バッファ部220に流入した第2の流体は、摺動構造体221でターニングした後、中空糸膜カートリッジC内部に流れるようになる。
【0066】
したがって、従来とは異なり、燃料電池の高出力状況または非正常出力状況でも、中空糸膜カートリッジCと外側隔壁212との間にはギャップ(gap)が発生しなくなり、流体流動空間Aの流体が中空糸膜モジュールFを流動せずに流体流動空間Bに流動することを防止できるようになり、その結果、加湿効率の低下を防止できるようになる。
【0067】
さらに、高出力状況または非正常出力状況が持続されるか、より悪化すると、第2の流体の圧力がさらに大きくなり、摺動空間SSは、さらに小さくなりつつ、摺動部材221a、221bにより閉まった状態にあったバイパスホール221ab、221bbは、次第に開度(opening)が大きくなりながら開放された状態となる。バイパスホール221ab、221bbが開放された状態になると、流体流動空間Aの流体がバイパスホール221ab、221bbを介して流体流動空間Bに流動した後、第2のメッシュ部M2及び第2の流体流出口112を介して排出されながら流体流動空間Aを流動する流体の圧力を解消できるようになる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、または追加などによって本発明を様々に修正及び変更させ得るであろうし、これも本発明の権利範囲内に含まれるといえるであろう。
【符号の説明】
【0069】
110:ミドルケース 120:キャップケース
210:モジュール挿入部 211:内側隔壁
212:外側隔壁 220:能動型圧力バッファ部
221:摺動構造体
221a:第1の摺動部材 221b:第2の摺動部材
221aa、221ba:摺動突起 221ab、221bb:バイパスホール
SS:摺動空間
A、B:流体流動空間
C:中空糸膜カートリッジ
F:中空糸膜モジュール
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】