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特表2023-554620チップを再生するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】チップを再生するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20231221BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20231221BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20231221BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20231221BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20231221BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20231221BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12M1/00 A
C12M1/34 B
C12Q1/04
G01N21/64 F
G01N37/00 102
G01N35/02 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536196
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 US2021063391
(87)【国際公開番号】W WO2022132821
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/125,847
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】チェン、グオジュン
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド、ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】リアリック、トッド
(72)【発明者】
【氏名】サーストン、トーマス レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、ハイドン
【テーマコード(参考)】
2G043
2G058
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043DA06
2G043EA01
2G043EA13
2G043HA05
2G043HA07
2G043JA03
2G058CC02
2G058FB02
2G058FB14
2G058GA01
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB15
4B029BB20
4B029CC01
4B029CC02
4B029FA15
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR41
4B063QR48
4B063QR66
4B063QR90
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
本開示の態様は、センサチップ表面を再生するための方法およびシステムに関連し、連続する試料採取サイクルの間にセンサチップの表面を再生することにより、複数の試料採取サイクルにおいて単一のセンサチップを再使用するための技術を含む。試料を処理する集積デバイスを再使用するための方法であって、試料が複数のアリコートに分割され、方法が、複数のアリコートの第1のアリコートを、集積デバイスの複数のチャンバの少なくとも一部に負荷する工程と、分析物が複数のチャンバの少なくとも一部に存在する間に、第1のアリコートの分析物を試料採取する工程と、集積デバイスの複数のチャンバの少なくとも一部から第1のアリコートを取り出す工程と、複数のアリコートの第2のアリコートを、集積デバイスの複数のチャンバの少なくとも一部に負荷する工程とを含む方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を処理する集積デバイスを再使用するための方法であって、前記試料が複数のアリコートに分割され、前記試料が分析物を含み、前記分析物が1つまたは複数の発光標識された分子を含む生体分子を含み、前記方法が、
前記複数のアリコートの第1のアリコートを、前記集積デバイスの複数のチャンバの少なくとも一部に負荷する工程と、
分析物が前記複数のチャンバの少なくとも一部に存在する間に、前記第1のアリコートの前記分析物を試料採取する工程であって、前記1つまたは複数の発光標識された分子により放出されたシグナルの発光寿命、発光強度、波長、パルス持続時間、および/またはパルス間の持続時間を決定することを含む、前記試料採取する工程と、
前記集積デバイスの前記複数のチャンバの少なくとも一部から前記第1のアリコートを取り出す工程と、
前記複数のアリコートの第2のアリコートを、前記集積デバイスの前記複数のチャンバの少なくとも一部に負荷する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記第2のアリコートの分析物が前記複数のチャンバの少なくとも一部に存在する間に、前記第2のアリコートの前記分析物を試料採取する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のチャンバの少なくとも一部から前記第1のアリコートを取り出す工程が、前記複数のチャンバの表面に結合した2つ以上のコーティング分子とカップリング部分との間の共有結合を破壊することを含み、前記第1のアリコートの前記分析物が前記カップリング部分に結合している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
解離させる工程が、前記複数のチャンバの表面を溶液と個別の期間接触させることにより実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
解離させる工程が、摂氏20度以上かつ摂氏22度以下の温度で実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記個別の期間が60分以下を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液が、酢酸アンモニウム、水、およびヘキサフルオロ-2-プロパノールを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記溶液が、遊離ビオチンおよび/または1つもしくは複数の遊離ビオチンのアナログをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液が、酢酸アンモニウム、水、および1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液が、酢酸アンモニウム、水、ならびにノナフルオロ-tert-ブチルアルコール、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノールおよびオクタフルオロ-2-ブタノンのうちの1つまたは複数を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のチャンバの少なくとも一部から前記第1のアリコートを取り出す工程が、前記複数のチャンバの表面からコーティング分子を取り出すことを含み、前記第1のアリコートの前記分析物が、カップリング部分により前記複数のチャンバの少なくとも一部において前記コーティング分子の少なくとも一部に結合している、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のアリコートを前記複数のチャンバの少なくとも一部に負荷する工程の前に、前記複数のチャンバの表面を前記コーティング分子で再コーティングする工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のチャンバの少なくとも一部から前記第1のアリコートを取り出す工程が、前記複数のチャンバの少なくとも一部において前記第1のアリコートの前記分析物を酵素消化することを含む、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のアリコートの前記分析物がカップリング部分に結合しており、前記複数のチャンバの少なくとも一部から前記第1のアリコートを取り出す工程が、前記カップリング部分と前記第1のアリコートの前記分析物との間の共有結合リンカーを破壊することを含む、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記試料採取する工程が、
少なくとも1つの光源から送達された励起光を用いて前記第1のアリコートの前記分析物を励起すること、
前記少なくとも1つの光源から送達された光により励起されたときに、前記集積デバイスの光検出領域において前記第1のアリコートの前記分析物から放出されたシグナルを収集すること、をさらに含む、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のアリコートを前記複数のチャンバの少なくとも一部に負荷する前に、前記複数のチャンバの表面をコーティング分子でコーティングする工程をさらに含み、前記第1のアリコートの分析物が、前記コーティング分子と結合するためのカップリング部分に結合している、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記コーティング分子がビオチンおよびストレプトアビジンのうちの一方を含み、前記カップリング部分がビオチンおよびストレプトアビジンのうちの一方を含み、前記カップリング部分が前記コーティング分子とは異なる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のチャンバの少なくとも一部から前記第1のアリコートの前記分析物を取り出す工程の後で、前記コーティング分子が前記複数のチャンバ内に留まる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のアリコートを前記複数のチャンバの少なくとも一部に負荷した後で、前記複数のチャンバの他のものは前記第1のアリコートの前記分析物を一切含有しない、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記複数のチャンバの少なくとも一部から前記第1のアリコートの前記分析物を取り出す工程の後で、前記複数のチャンバに対して励起光を送達することにより、前記複数のチャンバから認識シグナルを取得し、前記励起光に応答して前記複数のチャンバから放出されたシグナルを収集する工程と、
前記励起光に応答して前記複数のチャンバから放出された前記シグナルに基づき、前記第1のアリコートが前記複数のチャンバの少なくとも一部から実質的に取り出されたかどうかを判定する工程と、をさらに含む、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記生体分子がポリヌクレオチドである、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記生体分子がポリペプチドである、請求項1乃至21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
試料を処理する集積デバイスを再使用するための方法であって、前記試料が分析物を含み、前記分析物が1つまたは複数の発光標識された分子を含む生体分子を含み、前記方法が、
前記試料の少なくとも一部分を、前記集積デバイスの複数のチャンバに負荷する工程と、
分析物が前記複数のチャンバ内に存在する間に、前記試料の少なくとも一部分の前記分析物を試料採取する工程であって、発光寿命、発光強度、波長、パルス持続時間、およびパルス間の持続時間を示す、前記1つまたは複数の発光標識された分子により放出されたシグナルを収集する工程を含む、前記試料採取する工程と、
前記複数のチャンバから前記試料の少なくとも一部分を取り出す工程であって、
前記複数のチャンバの表面に結合したそれぞれのコーティング分子とカップリング部分との間の共有結合を破壊することを含み、前記試料の少なくとも一部分の前記分析物が前記カップリング部分に結合している、前記取り出す工程と、を含む方法。
【請求項24】
前記共有結合が前記分析物を前記複数のチャンバの表面に結合させ、前記結合を破壊することにより、前記分析物が前記複数のチャンバの表面から放出される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記取り出す工程が、破壊の後で、前記分析物を前記複数のチャンバからフラッシングすることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記破壊する工程が、前記複数のチャンバの表面を、溶液と個別の期間接触させることにより実施される、請求項23乃至25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記破壊する工程が、摂氏20度以上かつ摂氏22度以下の温度で実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記個別の期間が60分以下を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記個別の期間が30分以下を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティング分子がビオチンを含み、前記カップリング部分がストレプトアビジンを含む、請求項23乃至29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記コーティング分子がストレプトアビジンを含み、前記カップリング部分がビオチンを含む、請求項23乃至30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
溶液が酢酸アンモニウムおよび水を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記溶液がヘキサフルオロ-2-プロパノールをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記接触の後で、
少なくとも1つの光源から前記複数のチャンバに対して励起光を送達することにより、前記複数のチャンバから認識シグナルを取得し、前記励起光に応答して前記複数のチャンバから放出されたシグナルを収集する工程と、
前記励起光に応答して前記複数のチャンバから放出された前記シグナルに基づき、前記試料の少なくとも一部分の前記分析物が前記複数のチャンバから取り出されたかどうかを判定する工程と、をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記複数のチャンバから前記試料の少なくとも一部分を取り出す工程の後で、前記試料の残りの部分を前記複数のチャンバに負荷する工程をさらに含む、請求項23乃至34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
試料が集積デバイスの1つまたは複数のチャンバ内に存在するかどうかを判定するための方法であって、
前記試料の少なくとも一部分を、前記集積デバイスの前記1つまたは複数のチャンバに負荷する工程と、
前記試料の少なくとも一部分を、前記集積デバイスの前記1つまたは複数のチャンバから取り出す工程と、
前記集積デバイスの前記1つまたは複数のチャンバに対して励起光を送達する工程と、
前記励起光に応答して前記複数のチャンバから放出されたシグナルを、前記集積デバイスの光検出領域において収集する工程と、
前記シグナルに基づき、前記試料の少なくとも一部分の少なくとも一部が、前記集積デバイスの前記1つまたは複数のチャンバ内に存在するかどうかを判定する工程と、を含む方法。
【請求項37】
前記取り出す工程の後で、前記シグナルに基づき、前記集積デバイスの前記1つまたは複数のチャンバ内に残存する前記試料の少なくとも一部分の量を決定する工程をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記1つまたは複数のチャンバ内に残存する前記試料の少なくとも一部分の量が閾値未満であると判定されたときに、前記試料の残りの部分を前記1つまたは複数のチャンバに負荷する工程をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記1つまたは複数のチャンバ内に残存する前記試料の少なくとも一部分の量が前記閾値未満ではないと判定されたときに、前記試料の残りの部分を前記1つまたは複数のチャンバに負荷することを中止する工程をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記取り出す工程が、前記1つまたは複数のチャンバの表面に結合したそれぞれのコーティング分子とカップリング部分との間の共有結合を破壊することを含み、前記試料の少なくとも一部分の分析物が前記カップリング部分に結合している、請求項36乃至39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記破壊する工程が、前記1つまたは複数のチャンバの表面を、溶液と個別の期間接触させることにより実施される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記破壊する工程が、摂氏20度以上かつ摂氏22度以下の温度で実施される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記個別の期間が60分以下を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記溶液が酢酸アンモニウム、水、およびヘキサフルオロ-2-プロパノールを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記取り出す工程が、前記1つまたは複数のチャンバの表面からコーティング分子を取り出す工程を含み、前記試料の少なくとも一部分の分析物が、カップリング部分により前記1つまたは複数のチャンバ内の前記コーティング分子の少なくとも一部に結合している、請求項35乃至44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記1つまたは複数のチャンバの表面を前記コーティング分子で再コーティングする工程をさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記取り出す工程が、前記1つまたは複数のチャンバ内に存在する前記試料の少なくとも一部分の分析物を酵素消化することを含む、請求項35乃至46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記試料の少なくとも一部分の分析物がカップリング部分に結合しており、前記取り出す工程が、前記カップリング部分と前記試料の少なくとも一部分の分析物との間の共有結合リンカーを破壊することを含む、請求項35乃至47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
集積デバイスを用いた試料の処理を継続するかどうかを判定するための方法であって、前記試料が複数のアリコートに分割され、前記方法が、
分析物が前記集積デバイスの1つまたは複数のチャンバ内に存在する間に、前記複数のアリコートの第1のアリコートの前記分析物を試料採取する工程であって、
少なくとも1つの光源から送達された励起光を用いて前記第1のアリコートの前記分析物を励起すること、
前記少なくとも1つの光源から送達された光により励起されたときに、前記集積デバイスの光検出領域において前記第1のアリコートの前記分析物から放出されたシグナルを収集することを含む、前記試料採取する工程と、
前記第1のアリコートの前記分析物から放出された前記シグナルに基づき、前記複数のアリコートの第2のアリコートを前記集積デバイスの前記1つまたは複数のチャンバに負荷するか判定する工程と、
前記複数のアリコートの第2のアリコートを前記集積デバイスの前記1つまたは複数のチャンバに負荷する工程と、を含む方法。
【請求項50】
前記複数のアリコートの前記第2のアリコートを前記集積デバイスの前記1つまたは複数のチャンバに負荷する工程が、請求項1乃至48のいずれか1項に記載の方法に従い実施される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記判定する工程が、
前記第1のアリコートの分析物から放出された前記シグナルに基づき、前記第1のアリコートの前記分析物の少なくとも1つの特徴を特定すること、
前記少なくとも1つの特徴に基づき、前記第2のアリコートを負荷するかどうかを判定すること、を含む、請求項49乃至50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記第1のアリコートの前記分析物の前記少なくとも1つの特徴が、波長、発光寿命、強度、パルス持続時間、またはパルス間の持続時間のうちの少なくとも1つを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記少なくとも1つの特徴に基づき、前記第1のアリコートの前記分析物の1つまたは複数の同一性を決定する工程と、
前記第1のアリコートの1つまたは複数の分析物の同一性に基づき、前記第2のアリコートを負荷するかどうかを判定する工程と、をさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
試料を処理するための再利用可能なデバイスであって、前記試料が複数のアリコートに分割され、前記デバイスが、
複数のアリコートの第1のアリコートを受け入れるための複数の反応チャンバであって、前記複数の反応チャンバの表面が、前記第1のアリコートの分析物に結合したカップリング部分と結合するように構成されたコーティング分子でコーティングされている、前記複数の反応チャンバと、
前記複数の反応チャンバに送達される励起光に応答して、前記複数の反応チャンバから放出されたシグナルを受け取るように構成された光検出領域と、
前記光検出領域により受け取られた前記シグナルに基づき、前記複数の反応チャンバが前記第1のアリコートの前記分析物の少なくとも一部分を含有するかどうかを判定するように構成された少なくとも1つのプロセッサと、を備えるデバイス。
【請求項55】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記光検出領域により受け取られた前記シグナルに基づき、前記複数の反応チャンバに含有される前記第1のアリコートの前記分析物の少なくとも一部分の量を決定するようにさらに構成されている、請求項54に記載のデバイス。
【請求項56】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記光検出領域により受け取られた前記シグナルに基づき、前記複数の反応チャンバが前記コーティング分子の少なくとも一部分を含有するかどうかを判定するようにさらに構成されている、請求項54乃至55のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項57】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記光検出領域により受け取られた前記シグナルに基づき、前記複数の反応チャンバに含有される前記コーティング分子の少なくとも一部分の量を決定するようにさらに構成されている、請求項56に記載のデバイス。
【請求項58】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記光検出領域により受け取られた前記シグナルに基づき、前記複数の反応チャンバが前記カップリング部分の少なくとも一部分を含有するかどうかを判定するようにさらに構成されている、請求項54乃至57のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項59】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記光検出領域により受け取られた前記シグナルに基づき、前記複数の反応チャンバに含有される前記カップリング部分の少なくとも一部分の量を決定するようにさらに構成されている、請求項58に記載のデバイス。
【請求項60】
方法であって、
第1の試料を、再利用可能なチップの複数のチャンバに負荷する工程であって、前記再利用可能なチップが、少なくとも1つの光源を備える装置から受け取られた励起光を前記複数のチャンバに対して方向付けるための複数の導波路、および前記第1の試料から放出された光を受け取るための複数の光検出領域を有する、前記負荷する工程と、
前記装置の前記少なくとも1つの光源から、前記再利用可能なチップの前記複数のチャンバに対して励起光を送達する工程と、
前記第1の試料の分析物のシークエンシングを実施する工程と、
前記再利用可能なチップの前記複数のチャンバから前記第1の試料を取り出す工程と、
第2の試料を、前記再利用可能なチップの前記複数のチャンバに負荷する工程と、を含む方法。
【請求項61】
デバイスであって、
少なくとも1つの光源を備える装置と共に使用するための再利用可能なチップを備え、前記再利用可能なチップは、
第1の試料を受け入れるための複数のチャンバと、
前記少なくとも1つの光源から前記複数のチャンバに対して励起光を方向付けるための複数の導波路と、
前記第1の試料から放出された光を受け取るための複数の光検出領域と、を含み、前記再利用可能なチップが、前記第1の試料を複数のチャンバから取り出すことができ、前記第1の試料が取り出された後に、第2の試料を前記複数のチャンバ内に受け入れることができるように構成されている、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、何万もの反応チャンバに対して同時に短光パルスを提供し、反応チャンバから試料分析用の蛍光信号を受け取ることによって、試料の超並列分析を行うことのできる集積デバイスおよびそれに関連する機器に関する。当該機器はポイント・オブ・ケア遺伝学的シークエンシングや個人化医療に有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
様々な用途で光を検出するのに光検出器が使用される。入射光の強度を示す電気信号を生成する集積型光検出器が開発されている。撮像用途の集積型光検出器は、シーン全体から受光した光の強度を検出するピクセルアレイを含む。集積型光検出器の例には、電荷結合素子(CCD)イメージセンサや相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサが含まれる。
【0003】
生物学的試料や化学的試料を超並列分析できる機器は、大きなサイズ、可搬性の欠如、当該機器を操作する熟練技術者の要求、出力の必要性、制御された操作環境の必要性、コストといった理由から、一般に研究室での使用に限定されている。このような機器を使用して試料を分析する場合、臨床でまたは現場で試料を抽出し、その試料を研究室に送り、分析結果を待つのが一般的なパラダイムである。結果を待つ時間は、数時間から数日の幅がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で開示される技術の態様は、ポリペプチド分子または核酸分子を含有する試料の同一性または配列を決定する方法と関連する。さらなる態様は、単一分子シークエンシングを含む、試料を次世代シークエンシングするための方法およびデバイスと関連する。本開示の態様は、発光分子、例えば発光標識等(例えば、フルオロフォア)を使用してポリペプチドまたは核酸分子をシークエンシングするための方法およびシステムと関連する。
【0005】
本開示に基づくシステムは単一分子分析を可能にする。例示的システムは、集積デバイス(チップとも呼ばれる)、および集積デバイスとインタフェース接続するように構成された装置を含む。集積デバイスは、ピクセルのアレイを含み得るが、個々のピクセルは試料ウェルおよび少なくとも1つの光検出器を含む。集積デバイスの試料ウェルは、集積デバイスの表面上に、またはそれを通じて形成され、そして集積デバイスの表面上に配置される試料を受け入れるように構成され得る。総じて、試料ウェルは試料ウェルのアレイとして形成され得る。試料ウェルの少なくとも一部分が単一試料(例えば、単一種類の生体分子を含有する試料)を受け入れるように、複数の試料ウェルが適するサイズおよび形状を有し得る。一部の実施形態では、一部の試料ウェルが1つの試料を収納する一方、その他の試料ウェルは、0、2個、またはそれ超の試料を収納するように、試料ウェル中の試料の数が集積デバイスの試料ウェルにおいて分布し得る。
【0006】
本開示の一部の実施形態は、複数のアリコートに分割される試料を処理する集積デバイスを再使用するための方法を提供する。様々な実施形態では、試料が分析物を含み、そして分析物が1つまたは複数の発光標識された分子を含む生体分子を含み、方法は、複数のアリコートの第1のアリコートを、集積デバイスの複数のチャンバの少なくとも一部に負荷する(loading)工程と;分析物が複数のチャンバの少なくとも一部に存在する間に、第1のアリコートの分析物を試料採取する工程であって、1つまたは複数の発光標識された分子により放出されたシグナルの発光寿命、発光強度、波長、パルス持続時間、および/またはパルス間の持続時間を決定することを含む、試料採取する工程と;集積デバイスの複数のチャンバの少なくとも一部から第1のアリコートを取り出す工程と;複数のアリコートの第2のアリコートを、集積デバイスの複数のチャンバの少なくとも一部に負荷する工程とを含む。アリコートという用語は、一部の実施形態では、同一試料のいくつかの部分を指す場合があるが、他の実施形態では、第1および第2のアリコートは、異なる供給源に由来する第1および第2の試料のいくつかの部分を含み得る。
【0007】
一部の実施形態は、試料を処理する集積デバイスを再使用するための方法であって、試料が分析物を含み、分析物が1つまたは複数の発光標識された分子を含む生体分子を含み、方法が、試料の少なくとも一部分を集積デバイスの複数のチャンバに負荷する工程と、分析物が複数のチャンバ内に存在する間に、試料の少なくとも一部分の分析物を試料採取する工程であって、発光寿命、発光強度、波長、パルス持続時間、および/またはパルス間の持続時間を示す、1つまたは複数の発光標識された分子により放出されたシグナルを収集することを含む、試料採取する工程と、複数のチャンバから試料の少なくとも一部分を取り出す工程であって、複数のチャンバの表面に結合したそれぞれのコーティング分子とカップリング部分との間の共有結合を破壊することを含み、試料の少なくとも一部分の分析物がカップリング部分に結合している、取り出す工程とを含む方法を提供する。
【0008】
一部の実施形態は、試料が集積デバイスの1つまたは複数のチャンバ内に存在するかどうかを判定するための方法であって、試料の少なくとも一部分を集積デバイスの1つまたは複数のチャンバに負荷する工程と、試料の少なくとも一部分を集積デバイスの1つまたは複数のチャンバから取り出す工程と、集積デバイスの1つまたは複数のチャンバに対して励起光を送達する工程と、励起光に応答して複数のチャンバから放出されたシグナルを、集積デバイスの光検出領域において収集する工程と、シグナルに基づき、試料の少なくとも一部分の少なくとも一部が、集積デバイスの1つまたは複数のチャンバ内に存在するかどうかを判定する工程と、を含む方法を提供する。
【0009】
一部の実施形態は、集積デバイスを用いた試料の処理を継続するかどうかを判定するための方法であって、試料が複数のアリコートに分割され、方法が、分析物が集積デバイスの1つまたは複数のチャンバ内に存在する間に、複数のアリコートの第1のアリコートの分析物を試料採取する工程であって、少なくとも1つの光源から送達された励起光を用いて第1のアリコートの分析物を励起すること、少なくとも1つの光源から送達された光により励起されたときに、集積デバイスの光検出領域において第1のアリコートの分析物から放出されたシグナルを収集することを含む、試料採取する工程と、第1のアリコートの分析物から放出されたシグナルに基づき、複数のアリコートの第2のアリコートを集積デバイスの1つまたは複数のチャンバに負荷するか判定する工程と、複数のアリコートの第2のアリコートを集積デバイスの1つまたは複数のチャンバに負荷する工程とを含む、方法を提供する。
【0010】
一部の実施形態は、試料を処理するための再利用可能なデバイスであって、試料が複数のアリコートに分割され、デバイスが、複数のアリコートの第1のアリコートを受け入れるための複数の反応チャンバであって、複数の反応チャンバの表面が、第1のアリコートの分析物に結合したカップリング部分と結合するように構成されたコーティング分子でコーティングされている、複数の反応チャンバと、複数のチャンバに送達される励起光に応答して、複数のチャンバから放出されたシグナルを受け取るように構成された光検出領域と、光検出領域により受け取られたシグナルに基づき、複数のチャンバが第1のアリコートの分析物の少なくとも一部分を含有するかどうかを判定するように構成された少なくとも1つのプロセッサと、を備えるデバイスを提供する。
【0011】
一部の実施形態は、第1の試料を再利用可能なチップの複数のチャンバに負荷する工程であって、再利用可能なチップが、少なくとも1つの光源を備える装置から受け取られた励起光を複数のチャンバに対して方向付けるための複数の導波路、および第1の試料から放出された光を受け取るための複数の光検出領域を有する、工程と、装置の少なくとも1つの光源から、再利用可能なチップの複数のチャンバに対して励起光を送達する工程と、第1の試料の分析物のシークエンシングを実施する工程と、再利用可能なチップの複数のチャンバから第1の試料を取り出す工程と、第2の試料を再利用可能なチップの複数のチャンバに負荷する工程とを含む方法を提供する。
【0012】
一部の実施形態は、少なくとも1つの光源を備える装置と共に使用するための再利用可能なチップであって、第1の試料を受け入れるための複数のチャンバと、少なくとも1つの光源から複数のチャンバに対して励起光を方向付けるための複数の導波路と、第1の試料から放出された光を受け取るための複数の光検出領域とを備える再利用可能なチップを備え、再利用可能なチップが、第1の試料を複数のチャンバから取り出すことができ、第1の試料が取り出された後に、第2の試料を複数のチャンバ内に受け入れることができるように構成されている、デバイスを提供する。
【0013】
一部の実施形態は、チップ表面の再生を通じてチップを再使用するためのデバイスおよび方法を提供するが、デバイスおよび方法は生体試料または化学的試料の大規模な並行分析に適する。一部の実施形態では、このようなデバイスおよび方法は、自動化された大規模な並行分析にさらに適する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】一部の実施形態による、集積デバイスおよび機器のブロック図である。
図1B】一部の実施形態による、集積デバイスの概略図である。
図1C】一部の実施形態による、集積デバイスのピクセルの概略図である。
図1D】一部の実施形態による、図1Cのピクセルの回路図である。
図1E】一部の実施形態による、図1Cのピクセルの上面図である。
図1F】一部の実施形態による、図1Cおよび図1Dのピクセルの平面図である。
図1G】一部の実施形態による、集積デバイスの代替ピクセルの概略図である。
図1H】一部の実施形態による、図1Gのピクセルの回路図である。
図1I】一部の実施形態による、図1Cおよび図1Dのピクセルの平面図である。
図2A】一部の実施形態による、集積デバイスのチャンバ内に固定化された分析物の例示的な図である。
図2B】一部の実施形態による、複数の試料を処理するために図1の集積デバイスを再利用するための例示的な処理の図である。
図3A】一部の実施形態による、図1の例示的な集積デバイスのチャンバの表面を再生するための例示的な処理の図である。
図3B】一部の実施形態による、図1Aの集積デバイスのチャンバの表面を再生するための別の例示的な処理の図である。
図3C】一部の実施形態による、図1Aの集積デバイスのチャンバの表面を再生するための別の例示的な処理の図である。
図3D】一部の実施形態による、図1Aの集積デバイスのチャンバの表面を再生するための別の例示的な処理の図である。
図4A】一部の実施形態による、チップ負荷および再生の処理の間に得られた分析物の存在を示す例示的なグラフである。
図4B】一部の実施形態による、チップ負荷および再生の処理の間に得られた分析物の存在を示す例示的なグラフである。
図4C】一部の実施形態による、チップ負荷および再生の処理の間に得られた分析物の存在を示す例示的なグラフである。
図4D】一部の実施形態による、チップ負荷および再生の処理の間に得られた分析物の存在を示す例示的なグラフである。
図4E】一部の実施形態による、異なる条件下で例示的な再生溶液に浸漬された試料のスペクトルの図である。
図4F】一部の実施形態による、再生工程と負荷工程との間に例示的な集積デバイスの反応チャンバから取得されたシグナルを示す例示的なグラフである。
図4G】一部の実施形態による、再生工程と負荷工程との間に例示的な集積デバイスの反応チャンバから取得されたシグナルを示すさらなる例示的なグラフである。
図4G-1】一部の実施形態による、再生工程と負荷工程との間に例示的な集積デバイスの反応チャンバから取得されたシグナルを示すさらなる例示的なグラフである。
図4H】一部の実施形態による、再生工程と負荷工程との間に例示的な集積デバイスの反応チャンバから取得されたシグナルを示すさらなる例示的なグラフである。
図4H-1】一部の実施形態による、再生工程と負荷工程との間に例示的な集積デバイスの反応チャンバから取得されたシグナルを示すさらなる例示的なグラフである。
図4I】一部の実施形態による、再生工程と負荷工程との間に例示的な集積デバイスの反応チャンバから取得されたシグナルを示すさらなる例示的なグラフである。
図4I-1】一部の実施形態による、再生工程と負荷工程との間に例示的な集積デバイスの反応チャンバから取得されたシグナルを示すさらなる例示的なグラフである。
図4J】一部の実施形態による、再生工程と負荷工程との間の例示的な集積デバイスの反応チャンバから取得されたシグナルを示すさらなる例示的なグラフである。
図4J-1】一部の実施形態による、再生工程と負荷工程との間の例示的な集積デバイスの反応チャンバから取得されたシグナルを示すさらなる例示的なグラフである。
図5A】一部の実施形態による、試料が図1Aの集積デバイスのチャンバ内に存在するかどうか判定するための例示的な処理を示すフローチャートである。
図5B】一部の実施形態による、図1Aの集積デバイスを用いて試料の処理を継続するかどうかを判定するための例示的な処理を示すフローチャートである。
図6A】一部の実施形態による、コンパクトなモードロックレーザモジュールを備える分析機器のブロック図である。
図6B】一部の実施形態による、分析機器に組み込まれた例示的なコンパクトなモードロックレーザモジュールの図である。
図6C】一部の実施形態による、1つまたは複数の導波路を介してパルスレーザによって光学的に励起され得る並列反応チャンバの例の図である。
図6D】一部の実施形態による、集積デバイス反応チャンバ、光導波路、および時間ビニング光検出器のさらなる詳細の図である。
図7A図7Aおよび図7Bは、本開示の一部の実施形態におけるチップを再生する例示的な方法による、DNA分析物のシークエンシング精度を評価する実験の結果を示す図であり、図7Aは、再生工程と負荷工程との間の例示的な集積デバイスでの3回の逐次実行(2回のチップ再生)から取得されたシグナルの間の平均読み取り長さを示す折れ線グラフである。
図7B】本開示の一部の実施形態におけるチップを再生する例示的な方法による、DNA分析物のシークエンシング精度を評価する実験の結果の図である(これらの3回の実行の各々の平均精度、最大精度、および「アラインメント」を示す折れ線グラフを示す)。
図7B-1】本開示の一部の実施形態におけるチップを再生する例示的な方法による、DNA分析物のシークエンシング精度を評価する実験の結果の図である(これらの3回の実行の各々の平均精度、最大精度、および「アラインメント」を示す折れ線グラフを示す)。
図8A-8B】図8Aは、本開示の一部の実施形態におけるチップを再生する例示的な方法による、ペプチド分析物の3つの読み取り長さにわたってシークエンシング精度を評価する実験のシグナル読み取り結果を示す図であり(この実験は2つのCMOSチップで繰り返した)、図8Bは、本開示の一部の実施形態におけるチップを再生する例示的な方法による、ペプチド分析物の3つの読み取り長さにわたってシークエンシング精度を評価する実験のシグナル読み取り結果を示す図である(この実験は2つのCMOSチップで繰り返した)。
図8C-8D】図8Cは、本開示の一部の実施形態におけるチップを再生する例示的な方法による、ペプチド分析物の3つの読み取り長さにわたってシークエンシング精度を評価する実験のシグナル読み取り結果を示す図である(この実験は2つのCMOSチップで繰り返した)、図8Dは、本開示の一部の実施形態におけるチップを再生する例示的な方法による、ペプチド分析物の3つの読み取り長さにわたってシークエンシング精度を評価する実験のシグナル読み取り結果を示す図である(この実験は2つのCMOSチップで繰り返した)。
図8E-8F】図8Eは、本開示の一部の実施形態におけるチップを再生する例示的な方法による、ペプチド分析物の3つの読み取り長さにわたってシークエンシング精度を評価する実験のシグナル読み取り結果を示す図であるこの実験は2つのCMOSチップで繰り返した)、図8Fは、本開示の一部の実施形態におけるチップを再生する例示的な方法による、ペプチド分析物の3つの読み取り長さにわたってシークエンシング精度を評価する実験のシグナル読み取り結果を示す図である(この実験は2つのCMOSチップで繰り返した)。
図8G-8H】図8Gは、本開示の一部の実施形態におけるチップを再生する例示的な方法による、ペプチド分析物の3つの読み取り長さにわたってシークエンシング精度を評価する実験のシグナル読み取り結果を示す図であり(この実験は2つのCMOSチップで繰り返した)、図8Hは、本開示の一部の実施形態におけるチップを再生する例示的な方法による、ペプチド分析物の3つの読み取り長さにわたってシークエンシング精度を評価する実験のシグナル読み取り結果を示す図である(この実験は2つのCMOSチップで繰り返した)。
図9】一部の実施形態による、光退色を使用して集積デバイスを含むシステムを較正するための例示的プロセスを示す図である。
図10-1】一部の実施形態による、表面に付着された色素で標識された試料を示す図である。
図10-2】一部の実施形態による、反応チャンバ内に付着された色素で標識された試料を示す図である。
図11】一部の実施形態による、経時的な光源励起出力を示す例示的なグラフを示す図である。
図12-1】一部の実施形態による、参照色素からの経時的に測定された信号を示す例示的なグラフを示す図である。
図12-2】一部の実施形態による、反応チャンバ内の単一分子の収集に関する測定された退色時間および色素強度の例示的なヒストグラムを示す図である。
図13】一部の実施形態による、反応チャンバ内のシークエンシング反応を示す図である。
図14】一部の実施形態による、1つまたは複数の反応チャンバの負荷を定量化するための例示的なプロセスを示す図である。
図15-1】一部の実施形態による、単一負荷されたウェルを表す、チップ負荷プロセスからの例示的なトレースを示す図である。
図15-2】一部の実施形態による、二重負荷ウェルを表す、チップ負荷プロセスからの例示的なトレースを示す図である。
図15-3】一部の実施形態による、多重負荷ウェルを表す、チップ負荷プロセスからの例示的なトレースを示す図である。
図16】一部の実施形態による、生体分子に可逆的に結合される蛍光分子の周期的パルス化パターンを示す図である。
図17】一部の実施形態による、負荷パーセントを例示する反応チャンバの例示的なヒートマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の特徴および利点は、図面とともに、以下に記載される詳細な説明からより明かになり得る。図面を参照して実施形態を説明するとき、方向の言及(「上」、「下」、「頂部」、「底部」、「左」、「右」、「水平」、「垂直」等)を使用することがある。このような参照は、通常の向きで図面を見る読者の助けとなることのみが意図される。これらの方向の言及は具現化されるデバイスの特徴部の好適な向きまたは唯一の向きを記述することを意図するわけではない。デバイスは他の向きを使用しても具現化することができる。
【0016】
I.緒言
本開示の態様は、センサチップ表面を再生するための方法およびシステムと関連し、センサチップは集積デバイスの全部または一部を形成する。特に、一部の実施形態によれば、連続する試料採取サイクル間においてセンサチップの表面を再生することにより、複数の試料採取サイクルにおいて単一センサチップを再使用するための技術が提供される。
【0017】
集積デバイスは、それぞれ試料を受け入れるための複数の反応チャンバを有するセンサチップを備え得る。試料データは、複数の反応チャンバ内に配置された試料の一部分を励起光を用いて励起し、励起に応答して試料から放出されたシグナルを光検出器を用いて収集することにより取得され得る。試料採取を実施するために、反応チャンバ内に存在する試料の一部分が固定化される。例えば、各反応チャンバの表面は、分子、例えばビオチン等を用いてコーティングされ得るが、試料部分は、反応チャンバ内に試料の一部分を固定するために、ビオチン結合タンパク質、例えばストレプトアビジン等を用いて機能化され得る。一般的に、センサチップは、試料採取を実施した後に配置される。
【0018】
多くの用途において、1試料中に存在する多数の分析物種を検出するのが望ましい。しかしながら、試料採取を実施する集積デバイスは、ピクセルの数、したがって試料の分析物種を受け入れるために利用可能な反応チャンバに制約がある。多くの場合、集積デバイス上の反応チャンバの数は、試料採取されるのが望ましい分析物種の数よりも少ない。それに加えて、単一の分析物種を受け入れる反応チャンバの数を最大化するタイトレーションを取得するために試料は希釈され得るが、反応チャンバは、分析物を含有しないかまたは2つ以上の分析物種を含有することから、望ましい単一の分析物測定結果を取得することが不可能であるので、多くの反応チャンバは有用な測定結果をなおももたらさない。したがって、単一の集積デバイスが多数種を含有する試料を処理するのは一般的に不可能である。
【0019】
単一試料内に存在する多数の分析物種を試料採取するための1つの技術は、試料を細分化物(本明細書ではアリコートと呼ばれる)に分割し、そして異なる実験としてアリコートを個別に処理することである。例えば、試料の各アリコートは、各集積デバイスにより個別に処理され得る。しかしながら、そのような技術は、複数の集積デバイスの使用を必要とするので高価である。
【0020】
本発明者らは、単一の試料および/または複数の試料を対象に複数の実験を実施するための単一の集積デバイスを、集積デバイスを廃棄する前に再使用することが有利であることを認識した。そのようにして、多数の分析物種を含む試料が複数のアリコートに分割され、単一の集積デバイスを使用しながら連続した実験において処理され得る。従来技術によれば、試料は、(1)分子、例えばビオチン等を用いてチップ表面をコーティングすること;(2)コーティングに結合するためのカップリング部分、例えばストレプトアビジン等に結合した分析物を含有する試料の第1のアリコートを負荷し、そして標識された分析物がチップの表面に結合するのを可能にすること;(3)未結合の種をリンスすること;および(4)測定を実施すること(例えば、反応チャンバの表面に結合した分析物を励起し、励起された分析物から放出されたシグナルを収集することにより)により処理され得る。本明細書に記載されるように、試料をタイトレーション(単一種の分析物のみを受け入れる反応チャンバの数を最大化する)まで希釈しても、やはり分析物を含有しないいくつかの反応チャンバをもたらす。したがって、集積デバイスに第2のアリコートの試料を再負荷することで、未占有のまま存続する反応チャンバ内での分析物の測定を可能にすることが可能である。しかしながら、第1のアリコートの初回負荷によって反応チャンバが占有された場合、第2のアリコート内の分析物の測定が阻害または妨害され得る。
【0021】
したがって、本発明者らは、これまでに使用されたセンサチップ表面を再生するための技術を開発した。特に、本明細書に記載される技術は、ビオチン-ストレプトアビジン結合またはその他の相互作用を介してセンサチップの表面にこれまでに結合した分析物種を除荷する(unloading)ための方法と関連する。例えば、センサチップを除荷するための事例的技術には、(a)結合した係留(例えば、ストレプトアビジンおよびビオチンの)を破壊すること;(b)センサチップの表面から分子(例えば、ビオチン)コーティングを剥離すること;(c)占有された反応チャンバ内の試料分析物を酵素消化すること;および(d)試料分析物とカップリング部分(例えば、ストレプトアビジン、ビオチン)との間の結合を融解することが含まれる。センサチップ表面の再生の後で、集積デバイスには、第2のアリコートの試料が再負荷され得る。そのような技術は、多数の分析物種が試料内に存在するにもかかわらず、複数のアリコートを含む試料全体の処理を可能にする。
【0022】
本発明者らは、複数の実験において集積デバイスを再使用する際に、センサチップを長期にわたり使用すると、集積デバイスのコンポーネントが劣化し得ることもさらに認識した。したがって、本明細書に記載される技術の一部の態様は、集積デバイスの使用寿命を増加させるための技術と関連する。
【0023】
集積デバイスのセンサチップ表面を再生するための本明細書に記載される技術は、一部の実施形態では、DNA/RNA、および/またはタンパク質シークエンシング用途と組み合わせて使用され得る。
【0024】
本明細書に記載される集積デバイスは、本明細書に記載される技術の一部または全部を、単独または組み合わせて組み込むことができるものと認識すべきである。さらに、本明細書に記載されるものに加えて、その他の集積デバイスが記載されている方法および構造を採用することができる。
【0025】
表面の機能化またはコーティング
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される技術は、目的の分子を、試料ウェルの所望の領域(本明細書では反応チャンバとも呼ばれる)にコーティングする(または機能化する、または閉じ込める)のに使用可能である。一部の実施形態では、試料ウェルは、集積デバイスの表面に形成された開口部(集積デバイスの第1の層を通過して第2の層の中まで延在し、開口部に対して遠位側の底部表面に至る)により定義される体積または空間を占有する。一部の実施形態では、試料ウェルの開口部と底部表面との間に配置される第1の層および第2の層の露出表面は、側壁(試料ウェルにより占有される体積または空間をさらに定義する)と呼ばれることがある。
【0026】
複数の実施形態では、1つまたは複数の分析物(例えば、DNA分析物またはペプチド分析物)が底部表面上に固定化されるとき、底部表面をコーティングして、1つまたは複数の分子または複合体の連結を可能にするのが望ましいことがある。一部の実施形態では、底部表面がコーティング分子でコーティングされる。一部の実施形態では、コーティング分子はアビジンタンパク質である。アビジンタンパク質はビオチン結合タンパク質であり、アビジンタンパク質の4つのサブユニットのそれぞれにおいてビオチン結合部位を一般的に有する。アビジンタンパク質として、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、トラプトアビジン(traptavidin)、タマビジン、ブラダビジン(Bradavidin)、キセナビジン(xenavidin)、ならびにその同族体およびバリアントが挙げられる。一部の実施形態では、アビジンタンパク質はストレプトアビジンである。4つの結合部位のそれぞれはビオチン分子と独立に結合する能力を有するので、アビジンタンパク質の多価性は、様々な結合コンフィギュレーションを可能にすることができる。
【0027】
ある特定の実施形態では、コーティング分子は、ビオチン、ストレプトアビジン、およびビオチン-ストレプトアビジン複合体のうちの1つである。一部の実施形態では、コーティング分子はビオチンのアナログまたはストレプトアビジンのアナログである。一部の実施形態では、コーティング分子はビスビオチンである。一部の実施形態では、コーティング分子は、カップリング部分(例えば、ストレプトアビジン部分等)との相互作用、例えばビスビオチン-ストレプトアビジン結合等に関与する。
【0028】
一部の実施形態では、コーティング分子はアルキル鎖を含むシランである。一部の実施形態では、コーティング分子は、必要に応じて置換されたアルキル鎖を含むシランである。一部の実施形態では、コーティング分子は、ポリ(エチレングリコール)鎖を含むシランである。一部の実施形態では、コーティング分子は、カップリング部分を含むシランである。例えば、カップリング部分は、化学部分、例えばアミン基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、金属、キレート剤等を含み得る。あるいは、カップリング部分は、特異的結合エレメント、例えばビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、レクチン等、SNAP-TAG(登録商標(自己標識型タンパク質タグ)、会合性または結合性のペプチドまたはタンパク質、抗体または抗体断片、核酸または核酸アナログ等を含み得る。カップリング部分はメチルエーテル基を含み得る。付加的または二者択一的に、中間結合剤および/またはコポリマーが、目的の分子とカップリングまたは結合するのに使用される追加の基(いくつかのケースでは、化学官能基および特異的結合エレメントの両方を含み得る)にカップリングするのに使用され得る。例として、カップリング部分、例えばビオチンが基質表面上に積層され、そして所定のエリア内で選択的に活性化され得る。中間結合剤、例えば、ストレプトアビジンは、次にビオチンカップリング部分とカップリングし得る。目的とする分析物(例示的ワークフローにおいてそれ自体がビオチン化され得る)が、次にストレプトアビジンとカップリングする。
【0029】
ビオチンの化学構造を下記に再現する:
【0030】
【化1】
ストレプトアビジンは4つのビオチン結合部位を含有する。ストレプトアビジンが試料ウェルの底部表面上にコーティングされた後でも、余分の3つの結合部位が、ビオチンまたはビオチンコンジュゲートポリマーとのコンジュゲーションのために存続する。
【0031】
コーティング分子の例として、非限定的に、トランス-シクロオクテン(TCO)部分、テトラジン部分、アジド部分、アルキン部分、アルデヒド部分、メチルエーテル部分、イソシアナート部分、N-ヒドロキシスクシンイミド部分、チオール部分、アルケン部分、ジベンゾシクロオクチル部分、ビシクロノニン部分、およびチアミンピロホスフェート部分が挙げられる。共有結合カップリング部分を含むコーティング分子の例として、非限定的に、アジド-シランおよびアジド-オルガノシラン、例えばアジド-PEG-シラン(例えば、アジド-PEG-シラン、アジド-PEG-シラン)、ならびにアジド-アルキルシラン(例えば、アジド-C11-シラン)等が挙げられる。一部の実施形態では、カップリング部分は非共有結合カップリング部分である。
【0032】
カップリング部分の例として、非限定的に、ビオチン部分、アビジンタンパク質、ストレプトアビジンタンパク質、レクチンタンパク質、SNAP-タグ、メチルエーテル、およびビオチン-ストレプトアビジン複合体(例えば、ビス-ビオチン-ストレプトアビジン複合体)が挙げられる。例示的なビオチン部分には、モノビオチン(遊離ビオチン)およびビスビオチンが含まれる。一部の実施形態では、カップリング部分はアビジンタンパク質を含む。
【0033】
一部の実施形態では、方法は、試料ウェルの底部表面を、複数のコーティング分子、例えば第1のコーティング分子および第2のコーティング分子等でコーティングする工程をさらに含む。第2のコーティング分子として、ビオチン部分、アビジンタンパク質、ストレプトアビジンタンパク質、アジド部分、アルキン部分、ケトン部分、ヒドロキシルアミン部分を挙げることができる。一部の実施形態では、第2のコーティング分子は、ビオチン部分またはストレプトアビジンタンパク質である。一部の実施形態では、第1のコーティング分子および第2のコーティング分子は同一である。一部の実施形態では、第1のコーティング分子および第2のコーティング分子は異なる。一部の実施形態では、第1のコーティング分子および第2のコーティング分子は、いずれもビオチンである。一部の実施形態では、第1のコーティング分子および第2のコーティング分子は、いずれもストレプトアビジンである。一部の実施形態では、第2のコーティング分子はアジド部分である。一部の実施形態では、分析物は、ビオチン部分を含む第1のコーティング剤に固定化されている一方、アジド部分を含む第2のカップリング部分はコンジュゲートしていない。
【0034】
本明細書で使用される場合、一部の実施形態では、「表面」とは、1つまたは複数の試料ウェルを備える基材または固体支持体の表面を指す。一部の実施形態では、固体支持体とは、積層された材料、例えば本明細書に記載されるような機能化されたペプチドまたはDNAポリメラーゼ等を支持することができる表面、例えば受容表面等を有する材料、層、またはその他の構造を指す。一部の実施形態では、基材の受容表面は、ナノスケールまたはマイクロスケールの凹みのある特質、例えば試料ウェルのアレイ等を含む、1つまたは複数の特質を必要に応じて有し得る。一部の実施形態では、アレイは、平面配置のエレメント、例えばセンサまたは試料ウェル等である。アレイは一次元または二次元であり得る。一次元アレイは、第1の次元内に1列または1行のエレメントおよび第2の次元内に複数の列または行を有するアレイである。第1および第2の次元内の列または行の数は、同一である場合もあれば、またそうでない場合もある。一部の実施形態では、アレイは、例えば、10、10、10、10、10、または10個の試料ウェルを含み得る。
【0035】
II.集積デバイスの概要
本明細書に記載される技術は、集積デバイスのセンサチップ表面を再生するのに使用され得る。集積デバイスは、1つの例示的な実施形態において、装置内に位置する1つまたは複数の励起源から、集積デバイス内の試料を含有する反応チャンバへの励起光の提供を可能にし得る。励起光は、反応チャンバ内の照射領域を照射するために、エレメント、例えば集積デバイスの導波路等によって、反応チャンバを備える1つまたは複数のピクセルに向けて、少なくとも一部について方向付けられ得る。試料(例えば、蛍光標識等)に連結した反応チャンバまたは反応コンポーネント内に配置される試料は、反応チャンバの照射領域内に位置するとき、励起光による照射に応答して放射光を放射し得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の励起源は装置内に位置し、そこに集積デバイスが挿入され、そして協同して作動するが、そのいずれもシステム全体の一部である。
【0036】
集積デバイスを再使用するという概念が、装置(集積デバイスが挿入され、協同して作動する)が少なくとも1つのレーザ光源を含み、ならびに集積デバイスが光を方向付けるための導波路、ならびに反応チャンバおよび検出領域を有するピクセルを含むといった例示的システムの実施形態に関して記載されているが、新規性はそのように限定されない。その他の装置デザインおよび集積デバイスデザインが、光源が装置内に位置しないデザイン、および/または集積デバイスではなくむしろ追加の光学的コンポーネントが装置内に位置するデザイン(例えば、「オフ-チップ」)を含め想定される。
【0037】
1つまたは複数の反応チャンバ(例えば、一部の実施形態において、少なくとも2つの反応チャンバ)から放出される放出光は、集積デバイスのピクセル内の1つまたは複数の光検出器によって検出され得る。本明細書で説明されるように、集積デバイスは、複数のピクセル(例えば、ピクセルのアレイ)を有するように構成されてもよく、従って、複数の反応チャンバおよび対応する複数の光検出器を有し得る。検出された放出光の特徴は、放出光に関連付けられる標識を同定するための指示を提供することができる。そのような特徴は、光検出器によって検出される光子の到着時間、光検出器によって経時にわたって蓄積される光子の量、および/または2つ以上の光検出器にまたがる光子の分布を含む、任意の好適なタイプの特徴を含むことができる。一部の実施形態において、光検出器は、放出光に関連付けられる1つ以上の特徴、例えばタイミング特徴(例えば、発光寿命、パルス持続時間、パルス間持続時間)、波長、および/または、強度を検出可能にする構造を有することができる。一例では、1つまたは複数の光検出器は、励起光のパルスが集積デバイスを通じて伝搬した後の光子到着時間の分布を検出することができ、到着時間の分布は、放出光のタイミング特徴(例えば、発光寿命、パルス持続時間、および/またはパルス間持続時間のプロキシ)の指示を提供することができる。そのような情報は、例えば、「METHODS AND COMPOSITIONS FOR PROTEIN SEQUENCING」と題する米国特許出願第16/686,028号(2019年11月15日出願、代理人整理番号R0708.70042US02)、「METHODS AND COMPOSITIONS FOR PROTEIN SEQUENCING」と題するPCT出願第PCT/US19/61831号(2019年11月15日出願、代理人整理番号R0708.70042WO00)、「INTEGRATED SENSOR FOR MULTI-DIMENSIONAL SIGNAL ANALYSIS」と題する米国特許出願第17/190,331号(2021年3月2日出願、代理人整理番号R0708.70090US01)、「LABELED NUCLEOTIDE COMBINATIONS AND METHODS FOR NUCLEIC ACID SEQUENCING」と題する米国特許出願第15/600,979号(2017年5月22日出願、代理人整理番号R0708.70018US02)、および「METHODS FOR NUCLEIC ACID SEQUENCING」と題する米国特許出願第15/161,125号(2016年5月20日出願、代理人整理番号R0708.70020US00)に記載の技術を含む、試料中の分子の検出および/または同定のための技術において使用されてもよく、これらの出願の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。一部の実施形態において、1つまたは複数の光検出器は、蛍光標識によって放出される放出光の確率(例えば、発光強度)の指示を提供する。一部の実施形態において、1つまたは複数の光検出器は、放出光の空間的な分布(例えば、波長)を捕捉するようにサイズ決めおよび配置され得る。1つまたは複数の光検出器からの出力信号を使用して複数の標識の中からある蛍光標識を区別することができ、この場合、複数の標識を使用して、本明細書に記載されているように、試料またはその構造を同定することができる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「集積デバイス」は、ベース装置とインタフェース接続する能力を有するデバイスである。一部の実施形態では、集積デバイスは、1つもしくは複数の試料ウェルおよび/またはセンサを含み得る。一部の実施形態では、集積デバイスは、光を放射または検出するベース装置とインタフェース接続する能力を有し得る。そのような実施形態では、集積デバイスは1つまたは複数の試料ウェル(そのそれぞれは導波路を備える)を含み得る。「集積デバイス」は、本明細書ではマイクロチップ(または「チップ」)、例えばCMOSチップ等と呼ばれ得る。例示的集積デバイスはピクセルのアレイを備えるCMOSチップであり、個々のピクセルは試料ウェルおよび光検出器を備える。
【0039】
一部の態様では、本開示は、金属酸化物表面およびシリカ表面を有する試料ウェルを含む基材を含む集積デバイスを提供する。一部の実施形態では、集積デバイスは、親水性頭部基および疎水性テール基を含む両親媒性試薬により形成された金属酸化物表面上にコーティング層をさらに含む。一部の実施形態では、集積デバイスは、シリカ表面に結合した機能化剤をさらに含み、機能化剤はカップリング部分を含む。一部の実施形態では、基材は試料ウェルのアレイを含み、各試料ウェルは金属酸化物表面およびシリカ表面を有する。一部の実施形態では、アレイは微細加工されたマイクロアレイである。一部の実施形態では、基材は128,000個の試料ウェルを備える。一部の実施形態では、試料ウェルは、基材の表面に形成された上部開口部、および基材の表面に対して遠位側の底部表面を含む。一部の実施形態では、底部表面はシリカ表面により構成される。
【0040】
一部の実施形態では、試料ウェルは、基材(目的の分析物に結合する)の表面、例えばそのような表面にカップリングしたポリペプチドまたは核酸を有する試料ウェルの底部表面等の独立した領域であり得る固定化領域を含む。一部の実施形態では、試料ウェルは、定義された形状および体積(基材またはデバイス内に作製される)を有する空洞またはウェルを備える。試料ウェルは、当技術分野において記載されている技術(例えば、その全体を本願明細書に援用する米国特許出願第16/555,902号に開示されるような)を使用して製作され得る。
【0041】
一部の実施形態では、試料ウェルは、非金属性層を含む底部表面および金属性層を含む側壁表面により形成される。一部の実施形態では、非金属性層は、透明な層(例えば、ガラス、シリカ)を含む。一部の実施形態では、金属性層は、金属酸化物表面(例えば、二酸化チタン)を含む。一部の実施形態では、金属性層は、表面不活性化コーティング(例えば、リン含有層、例えば有機ホスホン酸層等)を含む。底部表面は、機能的部分を含む非金属性層を含み得る。一部の実施形態では、試料ウェルは、アルミニウムフィルム、窒化チタン(チナイト)フィルム、またはその両方を含有する上部表面を備える。上部表面は、選択的表面化学コーティング、例えば当技術分野において公知のコーティング等をさらに含み得る。一部の実施形態では、集積デバイスは、次世代シークエンシング装置、例えば、ベンチトップ次世代シークエンシング(NGS)装置等とインタフェース接続するように構成される。
【0042】
本明細書に記載されるタイプの集積デバイスは、目的の分子をその中に受け入れるように構成された1つまたは複数の試料ウェルを備え得る。一部の実施形態では、試料ウェルは、試料ウェルの表面、例えば底部表面等に配置され得る目的の分子を受け入れる。一部の実施形態では、試料ウェルが集積デバイス内に形成され、試料ウェルの底部表面は集積デバイス(この中に試料ウェルが形成される)の表面に対して遠位側にある。一部の実施形態では、目的の分子が配置される底部表面は、所望のレベルの励起エネルギーを用いて目的の分子を励起させるように構成された導波路から距離を有し得る。一部の実施形態では、試料ウェルは、導波路に沿って伝播する光学モードのエバネッセント場が目的の分子とオーバーラップするように、導波路に関して配置され得る。
【0043】
例えば、例示的なシステム1-100の概略的な概説が図1Aにおいて示されている。システムは、機器1-104とインタフェースする集積デバイス1-102の双方を備える。一部の実施形態において、機器1-104は、機器1-104の一部として集積される1つ以上の励起源1-106を含むことができる。一部の実施形態において、励起源は、機器1-104および集積デバイス1-102の双方の外部にあるものとすることができ、機器1-104は、励起光を励起源から受け取るとともに、励起光を集積デバイスに方向付けるように構成することができる。集積デバイスは、集積デバイスを受けるとともに集積デバイスを励起源と光学的に正確に位置合わせして保持するため、任意の好適なソケットを使用して機器とインタフェースすることができる。励起源1-106は、集積デバイス1-102に励起光を提供するように構成することができる。図1Aにおいて概略的に示されているように、集積デバイス1-102は、複数のピクセル1-112を有し、この場合、ピクセルの少なくとも一部分は、対象の試料の独立した分析を行うことができる。ピクセルがそのピクセルとは別々の光源1-106から励起光を受け取るため、そのようなピクセル1-112は「受動源ピクセル」と称することができる。この場合、この源からの励起光が、ピクセル1-112のうちのいくつかまたはすべてを励起する。励起源1-106は、任意の好適な光源とすることができる。好適な励起源の例は、2015年8月7日に出願され、「INTEGRATED DEVICE FOR PROBING, DETECTING AND ANALYZING MOLECULES」と題する米国特許出願第14/821,688号(代理人管理番号R0708.70004US02)に記載されており、この出願は参照によりその全体が援用される。一部の実施形態において、励起源1-106は、励起光を集積デバイス1-102に照射するように組み合わせられる複数の励起源を含む。複数の励起源は、複数の励起エネルギーまたは波長を生成するように構成することができる。
【0044】
図1Bを参照すると、ピクセル1-112は、関心対象の少なくとも1つの試料を受け取るように構成された反応チャンバ1-108、および、励起源1-106によって提供される励起光によって試料および反応チャンバ1-108の少なくとも一部分を照らすことに反応して、反応チャンバから放出される放出光を検出する光検出器1-110を有する。一部の実施形態において、反応チャンバ1-108は、集積デバイス1-102の表面に近接して試料を保持し得、これは、試料への励起光の照射および試料または反応成分(例えば、発光標識)からの放出光の検出を容易にし得る。図1Bの図示された実施形態に示されるように、反応チャンバ1-108および光検出器1-110は、1対1の対応を有する。一部の実施形態において、本明細書に説明されるように、各ピクセルは、光検出器毎に複数の反応チャンバを備え得る。
【0045】
励起光源1-106からの励起光を集積デバイス1-102に結合するとともに、励起光を反応チャンバ1-108にガイドする光学素子が、集積デバイス1-102および機器1-104のうちの一方または双方に位置付けられ得る。源からチャンバへの光学素子は、集積デバイス1-102に位置付けられる1つ以上の格子カプラを備えることができ、励起光を集積デバイスおよび導波路に結合して、励起光を機器1-104からピクセル1-112内の反応チャンバに照射する。1つ以上の光学スプリッタ素子は、格子カプラと導波路との間に位置することができる。光学スプリッタは、格子カプラからの励起光を結合するとともに、励起光を導波路のうちの少なくとも1つに送達することができる。一部の実施形態において、光学スプリッタは、励起光を、すべての導波路にわたって実質的に均一に送達することを可能にする構造を有することができ、それによって、導波路のそれぞれは、実質的に同様の量の励起光を受け取る。そのような実施形態は、集積デバイスの反応チャンバによって受け取られる励起光の均一性を改善することによって、集積デバイスの性能を改善することができる。
【0046】
反応チャンバ1-108、励起源からチャンバへの光学系の一部分、および、反応チャンバから光検出器への光学系は、集積デバイス1-102に位置付けられる。励起源1-106および源からチャンバへのコンポーネントの一部分は、機器1-104内に位置付けられる。一部の実施形態において、単一のコンポーネントが、励起光を反応チャンバ1-108に結合すること、および、反応チャンバ1-108からの放出光を光検出器1-110に送達することの双方においての役割を果たし得る。励起光を反応チャンバに結合するおよび/または放出光を光検出器に方向付けるための、集積デバイスに含まれる好適なコンポーネントの例は、2015年8月7日に出願された「INTEGRATED
DEVICE FOR PROBING, DETECTING AND ANALYZING MOLECULES」と題する米国特許出願第14/821,688号(代理人管理番号R0708.70004US02)、および、2014年11月17日に出願された「INTEGRATED DEVICE WITH EXTERNAL LIGHT SOURCE FOR PROBING, DETECTING, AND ANALZING MOLECULES」と題する米国特許出願第14/543,865号(代理人管理番号R0708.70005US00)に記載されており、これらの双方は参照によりその全体が援用される。
【0047】
ピクセル1-112は、それ自体の個々の反応チャンバ1-108および少なくとも1つの光検出器1-110に関連付けられる。集積デバイス1-102の複数のピクセルは、任意の好適な形状、サイズ、および/または寸法を有するように構成することができる。集積デバイス1-102は、任意の好適な数のピクセルを有することができる。集積デバイス1-102内のピクセルの数は、およそ100,000ピクセル~64,000,000ピクセルの範囲内、またはその範囲内における任意の範囲内の値とすることができる。一部の実施形態において、ピクセルは、1024個のピクセル×2048個のピクセルのアレイに配置することができる。集積デバイス1-102は、任意の好適な方法で機器1-104とインタフェースすることができる。一部の実施形態において、機器1-104は、集積デバイス1-102に着脱可能に結合するインタフェースを有することができ、それによってユーザは、集積デバイス1-102の使用のために集積デバイス1-102を機器1-104に取り付けて懸濁液中の少なくとも1つの関心対象の試料を分析するとともに、別の集積デバイスを取り付け可能にするために集積デバイス1-102を機器1-104から取り外し得る。機器1-104のインタフェースは、機器1-104の回路部と結合するように集積デバイス1-102を位置決めし、1つ以上の光検出器からの読み出し信号を機器1-104に送信することを可能にすることができる。集積デバイス1-102および機器1-104は、大きなピクセルアレイ(例えば、10,000超のピクセル)に関連付けられるデータを取り扱うためにマルチチャネル高速通信リンクを含むことができる。
【0048】
機器1-104は、機器1-104および集積デバイス1-102のうちの少なくとも一方の動作を制御するためにユーザインタフェースを含むことができる。ユーザインタフェースは、機器の機能を制御するために使用されるコマンドおよび/または設定などの情報をユーザが機器に入力可能とするように構成することができる。一部の実施形態において、ユーザインタフェースは、ボタン、スイッチ、ダイヤル、および、音声命令のためのマイクを含むことができる。ユーザインタフェースは、ユーザが、適切な位置合わせおよび/または集積デバイス上の光検出器からの読み出し信号によって取得される情報などの、機器および/または集積デバイスの性能に関するフィードバックを受け取ることを可能にすることができる。一部の実施形態において、ユーザインタフェースは、スピーカを使用してフィードバックを提供し、可聴フィードバックを提供することができる。一部の実施形態において、ユーザインタフェースは、ユーザに視覚的なフィードバックを提供するための、インジケータライトおよび/またはディスプレイスクリーンを含むことができる。
【0049】
一部の実施形態において、機器1-104は、コンピューティングデバイスと接続するように構成されたコンピュータインタフェースを含むことができる。コンピュータインタフェースは、USBインタフェース、ファイヤーワイヤーインタフェース、または任意の他の好適なコンピュータインタフェースとすることができる。コンピューティングデバイスは、ラップトップまたはデスクトップコンピュータなどの任意の汎用コンピュータとすることができる。一部の実施形態において、コンピューティングデバイスは、好適なコンピュータインタフェースを介して無線ネットワークを通じてアクセス可能なサーバ(例えば、クラウドベースのサーバ)とすることができる。コンピュータインタフェースは、機器1-104とコンピューティングデバイスとの間の情報の通信を容易にすることができる。機器1-104を制御および/または構成するための入力情報を、コンピュータインタフェースを介して、コンピューティングデバイスに提供するとともに、機器1-104に送信することができる。機器1-104によって生成される出力情報は、コンピュータインタフェースを介してコンピューティングデバイスによって受け取られることができる。出力情報は、機器1-104の性能、集積デバイス1-102の性能、および/または光検出器1-110の読み出し信号から生成されるデータについてのフィードバックを含むことができる。
【0050】
一部の実施形態において、機器1-104は、集積デバイス1-102の1つ以上の光検出器から受け取られるデータを分析するとともに制御信号を励起源1-106に送信する、または集積デバイス1-102の1つ以上の光検出器から受け取られるデータを分析するか、もしくは制御信号を励起源1-106に送信するように構成された処理デバイスを含むことができる。一部の実施形態において、処理デバイスは、汎用プロセッサ、特別に適応されたプロセッサ(例えば、1つ以上のマイクロプロセッサもしくはマイクロコントローラコアなどの中央処理ユニット(CPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、カスタム集積回路、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはそれらの組合せ)を含むことができる。一部の実施形態において、1つ以上の光検出器からのデータの処理は、機器1-104の処理デバイスおよび外部のコンピューティングデバイスの双方によって行うことができる。他の実施形態においては、外部のコンピューティングデバイスを省いてよく、1つ以上の光検出器からのデータの処理は、集積デバイス1-102の処理デバイスのみによって行ってよい。
【0051】
図1Bには、ピクセル1-112の行を示す集積デバイス1-102の断面概略図が示されている。集積デバイス1-102は、結合領域1-201、ルーティング領域1-202、およびピクセル領域1-203を含み得る。ピクセル領域1-203は、励起光(破線の矢印として示される)が集積デバイス1-102に結合する結合領域1-201から離れた位置の表面上に配置された複数の反応チャンバ1-108を有する複数のピクセル1-112を含み得る。複数の反応チャンバ1-108は、1つまたは複数の金属層1-106を貫通して形成され得る。点線の矩形によって示される1つのピクセル1-112は、反応チャンバ1-108と、1つまたは複数の光検出器1-110を有する光検出領域とを含む集積デバイス1-102の領域である。図示された実施形態において、ピクセルは単一の反応チャンバ1-108を含む。一部の実施形態において、各ピクセルは、2つ以上の反応チャンバを備え得る。
【0052】
図1Bは、励起光のビームを結合領域1-201および反応チャンバ1-108に結合することによる励起経路(破線で示される)を示す。図1Bに示される反応チャンバ1-108の行は、導波路1-220と光学的に結合するように位置付けられ得る。励起光は、反応チャンバ内に位置付けられる試料を照射し得る。試料または反応成分(例えば、蛍光標識)は、励起光によって照射されることに反応して、励起状態に達し得る。試料または反応成分が励起状態にあるとき、試料または反応成分は、反応チャンバに関連付けられた1つまたは複数の光検出器によって検出され得る放出光を放出し得る。図1Bは、反応チャンバ1-108からピクセル1-112の1つまたは複数の光検出器1-110への放出光(実線として示される)の光軸を概略的に示す。ピクセル1-112の1つまたは複数の光検出器1-110は、反応チャンバ1-108からの放出光を検出するように構成および配置され得る。好適な光検出器の例は、2015年8月7日に出願された「INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS」と題する米国特許出願第14/821,656号(代理人整理番号R0708.70002US02)に記載されており、この出願は参照によりその全体が援用される。個々のピクセル1-112に関して、反応チャンバ1-108および個々の光検出器1-110は、共通の軸に沿って(図1Aに示されるy方向に沿って)整列され得る。このように、光検出器(複数可)は、ピクセル1-112内で反応チャンバと重なり得る。
【0053】
反応チャンバ1-108からの放出光の方向性は、1つまたは複数の金属層1-106が放出光を反射するように作用し得るため、1つまたは複数の金属層1-106に対する反応チャンバ1-108内の試料の位置に応じて変わり得る。このように、1つまたは複数の金属層1-106と反応チャンバ1-108内に位置する蛍光マーカとの間の距離は、蛍光マーカによって放出される光を検出するための、反応チャンバと同じピクセル内にある、1つまたは複数の光検出器1-110の効率に影響を及ぼし得る。1つまたは複数の金属層1-106と、動作中に試料が位置可能な場所に近接する反応チャンバ1-108の底面との間の距離は、100nm~500nmの範囲内、またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲内であり得る。一部の実施形態において、金属層1-106と反応チャンバ1-108の底面との間の距離は、約300nmである。
【0054】
試料と1つまたは複数の光検出器との間の距離もまた、放出光を検出する際の効率に影響を及ぼし得る。光が試料と光検出器との間を移動しなければならない距離を減少させることによって、放出光の検出効率が改善され得る。加えて、試料と光検出器との間の距離を小さくすると、集積デバイスに占めるピクセルの設置面積を小さくすることを可能にし得、これにより、より多くの数のピクセルが集積デバイスに含まれることを可能にし得る。反応チャンバ1-108の底面と1つまたは複数の光検出器との間の距離は、1マイクロメートル~15マイクロメートルの範囲、またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲であり得る。一部の実施形態において、放出光は、励起光源および反応チャンバ以外の手段を通して提供され得ることを理解されたい。従って、一部の実施形態は、反応チャンバ1-108を含まなくてもよい。
【0055】
1つまたは複数のフォトニック構造1-230は、反応チャンバ1-108と光検出器1-110との間に配置され得るとともに、励起光が光検出器1-110に到達することを低減または防止するように構成され得、そうでなければ、励起光は放出光を検出する際の信号ノイズの一因となり得る。図1Bに示すように、1つまたは複数のフォトニック構造1-230は、導波路1-220と光検出器1-110との間に配置され得る。1つまたは複数のフォトニック構造1-230は、スペクトルフィルタ、偏光フィルタ、および空間フィルタを含む1つまたは複数の光除去フォトニック構造を含み得る。1つまたは複数のフォトニック構造1-230は、共通の軸に沿って個々の反応チャンバ1-108及びそれらの個々の1つまたは複数の光検出器1-110と整列するように配置され得る。集積デバイス1-102の回路として機能し得る金属層1-240は、一部の実施形態によれば、空間フィルタまたは偏光フィルタとしても機能し得る。そのような実施形態において、1つまたは複数の金属層1-240は、励起光の一部または全部が光検出器1-110に到達することを阻止するように配置され得る。
【0056】
結合領域1-201は、外部の励起源、例えば、図1Aに示される1つまたは複数の励起源1-116からの励起光を結合するように構成された1つまたは複数の光学コンポーネントを含み得る。結合領域1-201は、励起光のビームの一部又は全部を受光するように配置された格子カプラ1-216を含み得る。好適な格子カプラの例は、2017年12月15日に出願された「OPTICAL COUPLER AND WAVEGUIDE SYSTEM」と題する米国特許出願第15/844,403号(代理人整理番号R0708.70021US01)、および2020年4月29日に出願された「SLICED GRATING COUPLER WITH INCREASED BEAM ALIGNMENT SENSITIVITY」と題された米国特許出願第16/861,399号(代理人整理番号R0708.70071US01)に記載されており、これらの出願の各々は、参照によりその全体が本明細書に援用される。格子カプラ1-216は、励起光を、1つまたは複数の反応チャンバ1-108の近傍に伝搬するように構成され得る導波路1-220に結合し得る。代替的に、結合領域1-201は、光を導波路に結合するための他の周知の構造を備え得る。
【0057】
集積デバイスから離れて配置されたコンポーネントを使用して、励起源1-116を集積デバイスに対して位置決めおよび位置合わせし得る。このようなコンポーネントは、レンズ、鏡、プリズム、ウィンドウ、アパーチャ、減衰器、および/または光ファイバを含む光学コンポーネントを含み得る。1つまたは複数の位置合わせコンポーネントの制御を可能にするために、付加的な機械的なコンポーネントが器具に含まれ得る。そのような機械的なコンポーネントは、アクチュエータ、ステッパモータ、および/またはノブを含み得る。好適な励起源及び位置合わせ機構の例は、2016年5月20日に出願された「PULSED LASER AND SYSTEM」と題する米国特許出願第15/161,088号(代理人整理番号R0708.70010US02)に記載されており、この出願は参照によりその全体が援用される。ビームステアリングモジュールの別の例は、2017年12月14日に出願された「Compact Beam Shaping and Steering Assembly」と題する米国特許出願第15/842,720号(代理人整理番号R0708.70024US01)に記載されており、この出願は参照により本明細書に援用される。
【0058】
分析される試料は、ピクセル1-112の反応チャンバ1-108に導入され得る。試料は、生物試料又は化学的試料などの任意の他の適切な試料であり得る。試料は、複数の分子を含み得、反応チャンバは、単一分子を分離するように構成され得る。いくつかの例においては、反応チャンバの寸法は、単一分子を反応チャンバ内に閉じ込めるように作用し得、測定が単一分子に対して実行されることを可能にする。励起光は、反応チャンバ1-108内の照射領域内にある間に、試料、または試料に付着されるか、または試料に別様に関連付けられた少なくとも1つの蛍光マーカを励起するように、反応チャンバ1-108内に照射され得る。
【0059】
動作時、反応チャンバ内の試料の並列な分析は、励起光を使用してウェル内の試料の一部または全部を励起し、試料放出からの信号を光検出器で検出することによって実行される。試料からの放出光は、対応する光検出器によって検出され、少なくとも1つの電気信号に変換され得る。放出光の様々な特性(例えば、波長、発光寿命、強度、パルス持続時間、および/または任意の他の適切な特性)に関する情報は、本明細書で説明されるように、収集され、後続の分析のために使用され得る。電気信号は、集積デバイスの回路内の導電線(例えば、金属層1-240)に沿って送信され得、導電線は、集積デバイスとインタフェースする機器に接続され得る。電気信号は、続いて処理および/または分析され得る。電気信号の処理または分析は、機器上または機器から離れて配置された好適なコンピューティングデバイス上で行われ得る。
【0060】
図1Cは、一部の実施形態による、集積デバイス1-102のピクセル1-112の断面図を示す。図1Dは、ピクセル1-112の回路図を示す。図1Eは、一部の実施形態による、集積デバイス1-102に含まれ得るピクセル1-112の例示的なアレイおよび処理回路1-114を示す。
【0061】
図1C及び図1Dにおいて、ピクセル1-112は、ピン止めフォトダイオード(PPD:pinned photodiode)であり得る光検出領域と、蓄積ダイオード(SD(storage diode)0及びSD1)であり得る2つの電荷蓄積領域と、浮遊拡散(FD:floating diffusion)領域であり得る読み出し領域とを含む。また図示のように、ピクセル1-112は、ドレイン領域Dと、転送ゲートST0、TX0、TX1、およびREJとを含む。
【0062】
一部の実施形態において、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1、及び読み出し領域FDは、基板の一部をドーピングすることによって集積回路基板上に形成される。例えば、基板は低濃度にドープされ得、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1、および読み出し領域FDはより高濃度にドープされ得る。この例では、基板は低濃度にp型ドープされ得、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1、ならびに読み出し領域FDはn型ドープされ得る。代替的に、本明細書で説明される実施形態はそのように限定されないため、基板が低濃度にn型ドープされ得、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1、および読み出し領域FDがp型ドープされ得る。
【0063】
一部の実施形態において、光検出領域PPDは、入射光子が光検出領域PPD内で受け入れられると、電荷キャリア(例えば、光電子)を生成するように構成され得る。一部の実施形態において、電荷蓄積領域SD0及びSD1は、光検出領域PPDにかつ/又は互いに電気的に結合され得る。例えば、ピクセル1-112は、電荷蓄積領域SD0及びSD1を光検出領域PPDに及び/又は互いに電気的に結合する1つまたは複数の転送チャネルを含み得る。一部の実施形態において、転送チャネルは、領域間に配置された集積回路基板の部分をドープすることによって形成され得る。例えば、これらの部分は、領域(例えば、n型ドープPPDおよびSD0との間に配置されたn型ドープチャネル)と同じ導電型でドープされ得る。図1Dを参照すると、例えば、光検出領域PPDと電荷蓄積領域SD0との間に結合されたトランジスタのチャネルは、光検出領域PPDを電荷蓄積領域SD0に電気的に結合する転送チャネルである。同様に、電荷蓄積領域SD0とSD1との間に結合されたトランジスタのチャネルは、電荷蓄積領域SD0とSD1とを電気的に結合する転送チャネルであり、電荷蓄積領域SD1と読み出し領域FDとの間に結合されたトランジスタのチャネルは、電荷蓄積領域SD1と読み出し領域FDとを電気的に結合する転送チャネルである。光検出領域PPDとドレイン領域Dとの間に結合されたトランジスタのチャネルは、光検出領域PPDとドレイン領域Dとの間の転送チャネルである。
【0064】
一部の実施形態において、転送ゲートST0、TX0、TX1、およびREJは、光検出領域PPDから蓄積領域SD0、SD1への、電荷蓄積領域SD0、SD1との間の、および/または電荷蓄積領域SD0、SD1と読み出し領域FDとの間の電荷キャリアの転送を制御するように構成され得る。例えば、転送ゲートST0、TX0、TX1、およびREJは、適切な制御信号が転送ゲートに印加されたときに領域間で電荷キャリアを転送するために、ピクセル1-112の領域を電気的に結合するように転送チャネルに電気的に結合され、かつ転送チャネルをバイアスするように構成され得る。様々な実施形態によれば、転送ゲートは、転送チャネルに導電的に(例えば、物理的に)結合され得、かつ/または転送チャネルに十分に近接して配置され得、かつ/または転送チャネルに容量的に結合するために十分に薄い絶縁体によって分離され得る。一部の実施形態において、本明細書で説明する転送ゲートは、金属などの導電性材料を使用して形成され得る。代替的または追加的に、一部の実施形態において、本明細書で説明される転送ゲートは、ポリシリコンなどの半導体材料を使用して形成され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載の転送ゲートを形成するために使用される材料は、少なくとも部分的に不透明であり得る。
【0065】
一部の実施形態において、制御信号が転送ゲートで受信されると、転送ゲートは、制御信号を転送チャネルに電気的に結合し、転送チャネルにバイアスをかけ、それによって転送チャネルの導電率を増加させ得る。一部の実施形態において、転送チャネルは、同じ導電型であるが、転送チャネルによって電気的に結合されたピクセル1-112の領域よりも低いドーパント濃度でドープされてもよく、それによって、領域間に固有電位障壁(intrinsic electric potential barrier)を生成する。固有電位障壁は、転送ゲートまたは転送チャネルに外部電界が印加されない場合であっても、領域間に存在し得る。例えば、光検出領域PPDと電荷蓄積領域SD0との間の転送チャネルのドーパント濃度によって、光検出領域PPDと電荷蓄積領域SD0との間に固有電位障壁が生成され得る。一部の実施形態において、転送チャネルによって電気的に結合された領域間の固有電位障壁を低下させて、転送チャネルの導電率を増加させ、領域間の電荷キャリアの転送を引き起こすように構成される制御信号が転送ゲートに印加され得る。例えば、n型ドープされた転送チャネルの場合、制御信号は、領域のうちの1つ(例えば、転送チャネルのソース端子)における電圧よりも少なくとも転送チャネルの閾値電圧だけ大きい電圧を有し得、閾値電圧は、転送チャネルのサイズ、転送チャネルに近接する集積デバイス1-102の基板電圧、および他のそのようなパラメータに依存する。同様に、p型ドープされた転送チャネルの場合、制御信号は、領域のうちの1つにおける電圧よりも少なくとも閾値電圧だけ低い電圧を有し得る。一部の実施形態において、集積デバイス1-102の制御回路は、本明細書でさらに説明されるように、そのような制御信号を生成して転送ゲートに提供するように構成され得る。
【0066】
図1Cにおいて、ピクセル1-112は、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1、および読み出し領域FDが転送ゲートREJ、ST0、TX0、及びTX1から間隔を空けている方向(例えば、前面照射)において入射光子を受光するように構成された構成で示されている。しかしながら、一部の実施形態において、光検出領域PPDは、転送ゲートREJ、ST0、TX0、およびTX1が光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1、および読み出し領域FDから間隔を空けている方向(例えば、裏面照射)において入射光子を受光するように構成され得ることを理解されたい。一部の実施形態において、そのような構成は、転送ゲートの光学特性が入射光子に及ぼす影響が低減されるため、転送ゲートの電気特性を改善することができる。
【0067】
図1Dにおいて、ピクセル1-112は、読み出し領域FDに結合されるとともに、高電圧VDDPに結合するように構成されたリセット(RST)転送ゲートと、読み出し領域FDとビット線との間に結合された行選択(RS)転送ゲートとをさらに含む。集積デバイス1-102が電源(例えば、少なくともDC電源)に結合されると、転送ゲートRSTは高電圧VDDPに結合され得、高電圧VDDPは、電源によって供給され、および/または集積デバイス1-102の電圧レギュレータによって調整される。
【0068】
一部の実施形態において、転送ゲートRSTは、読み出し領域FDの電圧をリセットするように構成され得る。例えば、リセット信号が転送ゲートRSTに印加されると、転送ゲートRSTは、読み出し領域FDを高電圧VDDPに電気的に結合するように転送チャネルをバイアスして、転送チャネルの導電率を増加させて、電荷キャリアを読み出し領域FDから高電圧VDDPに転送し得る。一部の実施形態において、リセット転送ゲートRSTは、電荷蓄積領域SD0および/またはSD1の電圧をリセットするようにさらに構成され得る。例えば、リセット信号がリセット転送ゲートRSTに印加され、制御信号が転送ゲートTX1に印加されると、転送ゲートTX1は、電荷蓄積領域SD1内の電荷キャリアを読み出し領域FDに転送し、転送ゲートRSTは、電荷キャリアを高電圧VDDPに転送し得る。同様に、リセット信号がリセット転送ゲートRSTに印加され、制御信号が転送ゲートTX1およびTX0に印加されると、転送ゲートTX0は電荷蓄積領域SD0内の電荷キャリアをSD1に転送し、転送ゲートTX1は電荷蓄積領域SD1内の電荷キャリアを読み出し領域FDに転送し、転送ゲートRSTは電荷キャリアを高電圧VDDPに転送し得る。一部の実施形態において、集積デバイス1-102は、電荷キャリアを収集および読み出す前に、読み出し領域FDおよび電荷蓄積領域SD0、SD1をリセットするように構成され得る。例えば、集積デバイス1-102は、電荷キャリアを収集して読み出す前に、読み出し領域FDをリセットし、次いで電荷蓄積領域SD1をリセットし、次いで電荷蓄積領域SD0をリセットするように構成され得る。
【0069】
一部の実施形態において、ビット線は、読み出し領域FDに読み出された電荷キャリアを示す電圧レベルを受け取るように構成された集積デバイス1-102上の処理回路および/または外部回路に結合され得る。一部の実施形態において、処理回路1-114は、アナログデジタル変換器(ADC)を含み得る。一部の実施形態において、集積デバイス1-102は、電荷キャリアを読み出す前に、各ピクセルの読み出し領域FDの電圧をリセットするように構成され得る。例えば、集積デバイス1-102は、読み出し領域FDの電圧をリセットし、電圧をサンプリングし、電荷キャリアを読み出し領域FDに転送し、再び電圧をサンプリングするように構成され得る。この例では、第2のサンプリングされた電圧は、第1のサンプリングされた電圧と比較したときに読み出し領域FDに転送された電荷キャリアの数を示し得る。一部の実施形態において、集積デバイス1-102は、行ごとおよび/または列ごとなど、各ピクセル1-112からビット線に順次電荷キャリアを読み出すように構成され得る。ピクセル1-112のいくつかのアレイは、ピクセル1-112の異なるピクセルおよび/またはグループに電気的に結合された複数のビット線を有し得ることを理解されたい。一部の実施形態において、複数の列のピクセルは、同時に個々の処理回路に読み出され得る。例えば、各列の第1のピクセル(例えば、ピクセル(1,1)および(1,2)等)は、同時に個々の処理回路に読み出され、次いで、各列の第2のピクセル(例えば、ピクセル(2,1)および(2,2)等)は、同時に個々の処理回路に読み出され得る。一部の実施形態において、処理回路が、各列の代替として、または各列に加えて、アレイの各行に対して設けられてもよいことを理解されたい。一部の実施形態において、集積デバイス1-102は、処理回路の複数のユニット(各々がビット線に電気的に結合されるもの等)を含み得る。
【0070】
様々な実施形態によれば、本明細書で説明する転送ゲートは、1つまたは複数の半導体材料および/または金属を含み得るとともに、電界効果トランジスタ(FET)のゲート、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)のベースなどを含み得ることを理解されたい。様々な転送ゲートに印加される、本明細書で説明される制御信号は、半導体領域および半導体領域に電気的に結合された領域(例えば、隣接する領域)の電位などに応じて、形状および/または電圧が変化し得ることも理解されたい。
【0071】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるピクセルは、2つより多い電荷蓄積領域を含み得る。例えば、図1G図1Iに関連して本明細書で説明されるピクセル2-112は、3つの電荷蓄積領域を含む。
【0072】
図1Eは、一部の実施形態による、代替ピクセル1-112’の平面図である。一部の実施形態において、ピクセル1-112’は、ピクセル1-112について説明した態様で構成され得る。図1Eにおいて、ピクセル1-112’のドレイン領域Dは、光検出領域PPDの電荷蓄積領域SD0、SD1および読み出し領域FDと同じ側に配置されている。また、図1Eに示されるように、光検出領域PPDは、三角形の開口部を有するマスクを含み得、三角形の開口部は、電荷蓄積領域SD0、SD1およびドレイン領域Dに近接する光検出領域の側にある三角形の開口部の底辺部と、ドレイン領域Dおよび電荷蓄積領域SD0、SD1とは反対側の光検出領域PPDの側にある三角形の開口部の対応する頂部とを有する。
【0073】
一部の実施形態において、光検出領域PPDは、光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0、SD1およびドレイン領域Dに向かう方向に固有電界(intrinsic electric field)を誘起するように構成され得る。例えば、光検出領域PPDは、開口部を通して集積デバイス1-102の基板をドーピングすることによって形成され得、ドーピング中にマスクによって覆われた領域よりも、開口部を通して露出された基板の領域においてより高いドーパント濃度がもたらされる。この例では、三角形の開口部の底辺部におけるドーパント(例えば、n型ドーパント)の量が多いほど、ドレイン領域Dおよび電荷蓄積領域SD0に近接する光検出領域PPDの底辺部の電位が、光検出領域PPDの反対側の光検出領域PPDの頂部の電位よりも低くなり得る。光検出領域PPDにおける固有電界は、ピクセル1-112に印加される外部電界が存在しない場合であっても存在し得る。本発明者らは、光検出領域PPDの固有電界が、光検出領域PPDからドレイン領域Dおよび/または蓄積領域SD0、SD1への電荷転送の速度を増加させ、ピクセル1-112の動作中に電荷キャリアが排出および/または収集される効率を増加させることを認識した。図1Eの例では、固有電界は、ドレイン領域と電荷蓄積領域SD0との間の点線の矢印に沿って方向付けられ得る。例えば、固有電界は、電荷キャリアを点線の矢印に沿って流れることができ、転送ゲートREJまたはST0に印加される制御信号によって誘導される外部電界は、電荷キャリアをそれぞれドレイン領域Dまたは電荷蓄積領域SD0に流れさせることができる。
【0074】
図1Fは、一部の実施形態による、ピクセル1-112’の上面概略図である。図1Fに示すように、コンタクトは、ピクセル1-112’の部分の上方に配置され得る。一部の実施形態において、コンタクトは、入射光子が光検出領域PPD以外のピクセル1-112’の部分に到達すること、及び/又は斜めの入射角で隣接するピクセルの光検出領域に到達することを阻止するように構成され得る。例えば、コンタクトは、光検出PPDが入射光子を受光するように構成されている光軸に平行な方向に細長くなっていてもよい。一部の実施形態において、コンタクトは、タングステンなどの不透明材料を使用して形成され得る。本発明者らは、本明細書で説明されるコンタクトが、多くのまたは全ての入射光子が光軸以外の光路に沿って電荷蓄積領域SD0、SD1に到達することを防止して、入射光子が電荷蓄積領域SD0、SD1においてノイズ電荷キャリアを生成することを防止することを認識した。
【0075】
図1Fにおいて、一対のコンタクトが光検出領域PPDの両側に配置され、一対のコンタクトの第1のコンタクトはマスクの三角形の開口部の頂部のより近くに配置され、一対のコンタクトの第2のコンタクトはマスクの三角形の開口部の底辺部のより近くに配置される。第2のコンタクトは、入射光子が電荷蓄積領域SD0、SD1に到達するのを阻止するように構成され得る。第3のコンタクトが、光検出領域PPDが配置される端部とは反対側のピクセル1-112の端部に配置される。第1および第3のコンタクトはピクセル1-112と個々の隣接するピクセルとの間に配置され、第2のコンタクトは光検出領域PPDと転送ゲートST0,REJとの間に配置される。一部の実施形態において、光検出領域PPDの両側のコンタクトの対は、単一の円筒形コンタクト壁など、光検出領域PPDを少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つのコンタクト壁で置き換えられ得ることを理解されたい。
【0076】
図1Gは、一部の実施形態による、集積デバイス1-102に含まれ得る代替の例示的なピクセル2-112の断面図である。一部の実施形態において、ピクセル2-112は、図1A図1Fに関連してピクセル1-112について説明した態様で構成され得る。例えば、図1Gに示されるように、領域FD、およびドレイン領域D、ならびに転送ゲートは、それぞれ、ピクセル1-112に関して説明した態様で構成され得る。ピクセル2-112は、電荷蓄積領域SD1と読み出し領域FDとの間に電気的に結合された電荷蓄積領域SD2をさらに含む。例えば、複数の転送チャネルは、電荷蓄積領域SD1を電荷蓄積領域SD2に電気的に結合し、電荷蓄積領域SD2を読み出し領域FDに電気的に結合し得る。図1Gにおいて、転送ゲートTX0は、電荷蓄積領域SD1から電荷蓄積領域SD2への電荷キャリアの転送を制御するように構成され、転送ゲートTX1は、電荷蓄積領域SD2から読み出し領域FDへの電荷キャリアの転送を制御するように構成される。
【0077】
図1Hは、一部の実施形態による、ピクセル2-112の回路図である。図1Hに示すように、電荷蓄積領域SD1を電荷蓄積領域SD2に電気的に結合する転送チャネルは、転送ゲートTX0を有するトランジスタのチャネルであり、電荷蓄積領域SD2を読み出し領域FDに電気的に結合する転送チャネルは、転送ゲートTX1を有するトランジスタのチャネルである。リセットゲートRSTを有するトランジスタおよび行選択転送ゲートRSを有するトランジスタなど、図1Hに示すピクセル2-112の他のトランジスタは、ピクセル1-112に関して説明した態様で構成され得る。例えば、ピクセル2-112のアレイは、ピクセル1-112に関して本明細書で説明したような処理回路を備える構成で配置され得る。
【0078】
図1Iは、一部の実施形態による、集積デバイス1-102に含まれ得るピクセル2-112’の上面図である。一部の実施形態において、ピクセル2-112’は、ピクセル1-112’に関して本明細書で説明した態様で構成され得る。例えば、ピクセル2-112’の光検出領域PPDは、光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0及びドレイン領域Dに向かう方向に固有電界を誘起するように構成され得る。
【0079】
一部の実施形態では、集積デバイスは、例えば検出および/または分析するために、生体試料を調製する方法を実施する能力を有する試料調製モジュールを備える。一部の実施形態では、本明細書に記載される生体試料を調製する方法は、生体試料内の1つまたは複数の標的分子の同一性または配列(例えば、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列)を含む、試料の特性または特徴を特定するのに使用され得る。一部の実施形態では、生体試料は、単一細胞、哺乳動物細胞組織、動物試料、真菌試料、または植物試料である。一部の実施形態では、生体試料は、血液試料、唾液試料、喀痰試料、糞便試料、尿試料、バッカルスワブ試料、羊水試料、精液試料、滑膜試料、脊髄試料、または胸膜液試料である。一部の実施形態では、生体試料は、ヒト、非ヒト霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、または任意のその他の哺乳動物に由来する。一部の実施形態では、生体試料は、細菌細胞培養物(例えば、病原性大腸菌(E.coli)細胞培養物)に由来する。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分子は核酸である。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分子はタンパク質である。
【0080】
一部の実施形態では、生体試料を調製する方法は、1つまたは複数の試料変換工程、例えば試料の溶解、試料精製、試料の断片化、断片化された試料の精製、ライブラリー調製(例えば、核酸ライブラリー調製)、ライブラリー調製物の精製、試料の富化(例えば、親和性SCODAを使用する)、および/または標的分子の検出/分析等を含み得る。
【0081】
一部の実施形態では、試料(例えば、細胞または組織を含む試料)は、調製、例えば溶解され得る(例えば、破壊、分解され、および/またはさもなければ消化される)。一部の実施形態では、細胞または組織を含む試料は、標的分子(例えば、標的核酸または標的タンパク質)を前記細胞または組織から放出させるために、公知の物理的または化学的方法論のいずれかを使用して溶解される。一部の実施形態では、試料は、当業者にとって公知の任意の方法を使用して溶解され得る。例えば、試料は、電気分解的方法、酵素的方法、界面活性剤に基づく方法、および/または機械的ホモジナイゼーションを使用して溶解され得る。一部の実施形態では、試料(例えば、複合体組織、グラム陽性菌またはグラム陰性菌)は、複数の溶解法を連続して実施することを必要とし得る。一部の実施形態では、試料は、緩衝系の存在下で調製、例えば溶解される。この緩衝系は、本明細書に記載される方法を含む、任意の公知の溶解方法論の実施期間中にスラリー状の試料を作成し、試料を懸濁させ、および/または試料を安定化するのに使用され得る。一部の実施形態では、機械的ホモジナイゼーションにより溶解を引き起こす方法として、ビーズビーティング法、加熱法(例えば、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、または95℃を上回る、細胞壁を破壊するのに十分に高温となるまで)、シリンジ/針/マイクロチャネル通過法(剪断作用を引き起こす)、超音波処理法、またはグラインダーによる浸軟が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。一部の実施形態では、試料調製は、細胞破壊(すなわち、溶解後の望ましくない細胞および組織エレメントの除去が後続する)を含む。一部の実施形態では、細胞破壊は、タンパク質および/または核酸沈殿を伴う。一部の実施形態では、沈殿後に、溶解および破壊された試料には遠心分離が施される。一部の実施形態では、遠心分離後に上清は廃棄される。一部の実施形態では、タンパク質またはペプチドは免疫沈降に付される。
【0082】
一部の実施形態では、試料(例えば、標的核酸または標的タンパク質を含む試料)は、本開示に基づく方法において、例えば溶解後に精製され得る。一部の実施形態では、試料は、クロマトグラフィー(例えば、試料に選択的に結合する親和性クロマトグラフィー)、または電気泳動を使用して精製され得る。一部の実施形態では、試料は沈殿化剤の存在下で精製され得る。一部の実施形態では、精製工程または方法の後に、試料は洗浄され、および/または溶出緩衝液を使用して精製マトリックス(例えば、親和性クロマトグラフィーマトリックス)から遊離され得る。一部の実施形態では、精製工程または方法は、可逆的切り替え可能なポリマー、例えば電気活性ポリマー等の使用を含み得る。一部の実施形態では、試料は、多孔性マトリックス(例えば、セルロースアセテート、アガロース、アクリルアミド)を通じて試料を電気泳動的に通過させることにより精製され得る。
【0083】
一部の実施形態では、試料(例えば、標的核酸または標的タンパク質を含む試料)は、本開示に基づく方法において断片化される(すなわち、消化される)ことがある。一部の実施形態では、核酸試料は、配列特異的同定を行うための小さな(<1キロベース)断片から、ロングリードシークエンシング用途のための大きな(最大10+キロベース)断片まで、そのような断片を生成するために断片化され得る。核酸またはタンパク質の断片化は、一部の実施形態では、機械的(例えば、流体剪断作用)、化学的(例えば、鉄(Fe+)切断)、および/または酵素的(例えば、制限酵素、トランスポゼースを使用するタグメンテーション)方法を使用して実現され得る。一部の実施形態では、タンパク質試料は、任意の長さのペプチド断片を生成するように断片化され得る。タンパク質の断片化は、一部の実施形態では、化学的および/または酵素的(例えば、タンパク質分解酵素、例えばトリプシン等)方法を使用して実現され得る。一部の実施形態では、平均断片長は、反応時間、温度、ならびに試料および/または酵素(例えば、制限酵素、トランスポゼース)の濃度により制御され得る。一部の実施形態では、核酸の断片化および蛍光分子(例えば、フルオロフォア)による標識が同時に行われるように、核酸はタグメンテーションにより断片化され得る。一部の実施形態では、小さなおよび/または望ましくない断片、ならびに残留するペイロード、断片化工程期間中に使用した化学物質および/または酵素(例えば、トランスポゼース)を取り除くために、断片化された試料には、精製(例えば、クロマトグラフィーまたは電気泳動)のラウンドが施される。
【0084】
一部の実施形態では、試料(例えば、標的核酸または標的タンパク質を含む試料)は、本開示に基づく方法において、標的分子について富化され得る。富化は、富化されない試料の複雑性がシークエンシングプラットフォームの能力を上回るとき、または試料内に存在する標的分子の存在量が低い(例えば、シークエンシングプラットフォームによって容易に検出することができない等)ときに一般的に使用される。富化は、標的分子を選択的に増幅する機構の使用を伴う。この富化は、標的分子(複数可)(例えば、標的タンパク質(複数可)または標的核酸(複数可))を選択的に増幅するための、抗体、アプタマー、サイズに基づく選択、または静電荷に基づく選択の使用を伴い得る。試料調製の意図が特定の標的分子の配列決定にあるとき、富化が一般的に使用され得る。標的分子が相互に関連するかまたは相同であるとき、富化は、プロテオミック、ゲノム、またはメタゲノム分析または調査を実施または実行するのに使用され得る。
【0085】
一部の実施形態では、試料は、電気泳動法を使用しながら標的分子について富化される。一部の実施形態では、試料は、親和性SCODAを使用しながら標的分子について富化される。一部の実施形態では、試料は、電場反転ゲル電気泳動(FIGE)を使用しながら標的分子について富化される。一部の実施形態では、試料は、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を使用しながら標的分子について富化される。一部の実施形態では、富化期間中に使用されるマトリックス(例えば、多孔性媒体、電気泳動ポリマーゲル)は、試料内に存在する標的分子と結合する固定化された親和性薬剤(「固定化捕捉用プローブ」としても知られている)を含む。一部の実施形態では、富化期間中に使用されるマトリックスは、1、2、3、4、5個、またはそれ超の固有の固定化捕捉用プローブを含み、そのそれぞれは固有の標的分子と結合し、および/または異なる結合親和性を有して同一の標的分子と結合する。
【0086】
標的分子の増幅に付加して、または標的分子の増幅に代替して、試料は、望ましくない非標的分子(例えば、存在量の高いタンパク質(例えば、アルブミン))の枯渇により富化され得る(例えば、存在量が低い標的分子について)。望ましくない非標的分子の枯渇は、上記で議論したような戦略と類似した捕捉戦略を使用して実施され得る。枯渇戦略を使用するとき、捕捉用プローブは望ましくない非標的分子と結合し、そして標的分子が溶液内に留まるのを可能にする。この戦略は、標的分子の富化(すなわち、標的分子(複数可)の相対的濃度の増加)を同様に可能にする。
【0087】
一部の実施形態では、標的核酸は、標的核酸の配列決定前に富化される(例えば電気泳動法、例えば親和性SCODAを使用して富化される)。一部の実施形態では、試料(例えば、精製された試料、細胞ライセート、単一の細胞、細胞の集団、または組織)内に存在する複数の標的核酸(例えば、少なくとも2、3、4、5、10、15、20、30、50個、またはそれ超)の配列を決定する方法が本明細書に提示される。一部の実施形態では、試料は、試料内に存在する標的核酸または複数の標的核酸の配列を決定する前に、本明細書に記載されるように調製される(例えば、標的核酸について溶解、精製、断片化、および/または富化される)。一部の実施形態では、標的核酸は富化された標的核酸である(例えば電気泳動法、例えば親和性SCODAを使用して富化された)。
【0088】
一部の実施形態では、本開示に基づく方法において、標的分子または標的分子(複数)は、前記標的分子(複数可)およびその上流試料の分析を可能にするために、富化および後続する放出後に検出され得る。一部の実施形態では、標的核酸は、遺伝子シークエンシング、吸収、蛍光、電気的伝導度、キャパシタンス、表面プラズモン共鳴、ハイブリッド捕捉、抗体、核酸の直接標識(例えば、末端標識化、標識されたタグメンテーションペイロード)、インターカレーティング色素(例えば、臭化エチジウム、SYBR色素)による非特異的標識、または核酸検出のための任意のその他の公知の方法論を使用して検出され得る。一部の実施形態では、標的タンパク質またはペプチド断片は、吸収、蛍光、質量分析法、アミノ酸シークエンシング、またはタンパク質もしくはペプチド検出のための任意のその他の公知の方法論を使用して検出され得る。
【0089】
一部の実施形態では、デバイスは、デバイスのモジュールの任意の1つの中、内部または外部に、1つまたは複数の流体を輸送するように構成されたポンプ(例えば、ペリスタポンプ)をさらに備える。一部の実施形態では、デバイスは、デバイスまたはデバイスのモジュールにより受け入れられたカートリッジのマイクロ流体チャネルのいずれかの内部に、またはそれを通じて1つもしくは複数の流体を輸送するように構成されたポンプ(例えば、ペリスタポンプ)をさらに含む。一部の実施形態では、デバイスは、1000マイクロリッター以下、100マイクロリッター以下、50マイクロリッター以下、または10マイクロリッター以下の流量分解能を有して流体を輸送するように構成される。一部の実施形態では、デバイスは、2つ以上のカートリッジを同時に受け入れるように構成される。一部の実施形態では、デバイスは、デバイスにより同時に受け入れられた2つ以上のカートリッジ間で流体連通を確立するように構成される。一部の実施形態では、デバイスは、2つ以上のカートリッジを逐次的に受け入れるように構成される。
【0090】
一部の実施形態では、ペリスタポンプは、ローラーおよび流体デバイス(例えば、カートリッジ)を含む装置を備える。一部の実施形態では、ペリスタポンプは、ローラーおよびローラーと接続した回転揺動機構を含む装置を備える。一部の実施形態では、デバイスは試料調製モジュールを含み、試料調製モジュールはペリスタポンプ(チャネルを備えた表面を有する基層を含む流体カートリッジを含む)を含み、その場合、チャネルの少なくとも一部の少なくとも一部分は、実質的に三角形の形をした断面(チャネルの基部において1つの頂点を有し、および基層の表面において他の2つの頂点を有する)を有する。検出モジュールは、試料調製モジュールの下流に位置し得る。一部の実施形態では、試料調製領域は2つ以上の流体カートリッジを含む。
【0091】
一部の態様によれば、流体系が提供される。流体系は、一部の実施形態によれば、例えばペリスタポンプを使用して流体を流体容器に移転するのに使用可能である。一部の実施形態によれば、流体系は、アラインメントの特質を使用して流体容器を受け入れるように構成されたカートリッジまたはモジュールを含む。ある特定の実施形態によれば、カートリッジまたはモジュールは、アラインメントの特質を介して流体容器と流体的に接続するように構成される。これは、デバイスのカートリッジまたはモジュールと流体容器とのアラインメントおよび流体接続が同時になされるのを可能にし得る。ある特定の実施形態によれば、接続にこのような多様性があることで、デバイスのカートリッジまたはモジュールと流体容器との間の流体接続のデッドボリュームが有利に低下する(例えば、余分のチャネル長に対する必要性を低下させることにより)。
【0092】
2つのコンポーネントは、実施形態のいくつかのコンフィギュレーションにおいて、流体がその間を通過し得る場合、流体的に接続されている。例えば、第1の流体コンポーネントおよび第2の流体コンポーネントは、チャネル、マイクロチャネル、または管により接続される場合には、流体連通した状態にあり得る。別の例として、バルブが2つのコンポーネント間で流体の流通を可能にするように構成され得る限り、バルブにより分離されている2つのコンポーネントも流体的に接続されているとなおも考えられる。対照的に、その間に流体経路を有さず、機械的に接続されているに過ぎない2つのコンポーネントは、流体的に接続されているとはみなされない。流体的に接続されているコンポーネントは直接流体的に接続され得る(すなわち、中間コンポーネントのいずれも通過しない流体経路により接続され得る)。しかしながら、流体的に接続されているコンポーネントは、いくつかのケースでは、1、2、3、4、5、8、10、15、20個、またはそれ超の中間コンポーネントを通過する流体経路により接続されることがある。
【0093】
デバイスは、一部の実施形態によれば、チャネルを含む。チャネルは、一部の実施形態では、デバイスのアラインメントの特質と流体的に接続されている。アラインメントの特質は、デバイスの第1のアラインメントの特質であり得る。一部の実施形態によれば、デバイスは第2のアラインメントの特質をさらに含む。第2のアラインメントの特質は、ある特定の実施形態によれば、例えば流体容器を貫通する流体経路により確立された流体接続を介してチャネルと接続する。しかしながら、一部の実施形態またはコンフィギュレーションでは、第2のアラインメントの特質はチャネルと接続しない。一部の実施形態によれば、デバイスは流体容器を受け入れるように構成される。例えば、デバイスは、一部の実施形態によれば、流体容器を保持するように構成される。一部の実施形態によれば、デバイスはカートリッジを含む。一部の実施形態では、デバイスは、固体基材(例えば、カートリッジの固体基材)を含む。固体基材は、流体容器を受け入れるように構成された凹部を含み得る。
【0094】
流体容器は、適する様々な形状のいずれかを有し得る。例えば、流体容器は、ある特定の実施形態によれば、実質的に長方形の横断面を有し得る。一部の実施形態では、流体容器は、流体容器の最低横寸法と比較したとき、幅の狭い横断寸法を有する。一部の実施形態では、流体容器は、基材(例えば、集積デバイス、チップ)を収容するように構成され得る。一部の実施形態によれば、流体容器はフローセルである(例えば、内部、入口、および出口を含み、入口を通じて流体を受け入れ、および出口を通じて流体を移送するように構成されたセル)。例えば、流体容器は、集積デバイスを含むフローセルであり得る。一部の実施形態では、流体容器は内部(例えば、内部チャンバ)を有する。一部の実施形態では、デバイスの内部は、流体で少なくとも部分的にまたは完全に充填される能力を有する。流体デバイスの内部は、一部の実施形態ではある体積を有する。一部の実施形態では、流体容器は2以上の内部を有する。例えば、流体容器は、1、2、3、4、5個、またはそれ超の内部を含み得る。一部の実施形態によれば、これらの内部の少なくとも一部は、相互に流体接続している。一部の実施形態では、これらの内部は、流体が1つの内部から別の内部に直接流出することができないように、相互に分割される。流体容器に複数の内部を組み込むことは、一部の実施形態によれば、複数の集積デバイスまたは集積デバイスのいくつかの部分の同時充填が可能となり得るので有利である。複数の集積デバイスまたは集積デバイスのいくつかの部分を同時充填することで、流体の流れの均一性を高めることが可能となり得、および/または複数の試料(別の集積デバイスまたは集積デバイスのいくつかの部分と相互作用することが同時に可能である)の分析が可能となり得る。
【0095】
流体容器の各内部は入口および出口を含み得る。一部の実施形態によれば、入口および/または出口は流体デバイスに接続され得る(例えば、1つまたは複数のアラインメントの特質を介して)。一部の実施形態では、流体(例えば、生体分子、例えばペプチドまたはポリヌクレオチド等を含む流体試料)は、流体容器の1つまたは複数の内部を流通する。内部を通じた流体の流れは、一部の実施形態では、少なくとも部分的にまたは完全に流体容器の内部を充填することができる。
【0096】
一部の実施形態では、デバイスのカートリッジまたはモジュールは、チャネルを含む表面を有する基層を含む。一部の実施形態では、チャネルの少なくとも一部の少なくとも一部分は、チャネルの基部において1つの頂点を有し、そして基層の表面において他の2つの頂点を有する、実質的に三角形の形をした断面を有する。一部の実施形態では、チャネルの少なくとも一部の少なくとも一部分は表層を有する。表層はエラストマーを含み得る。表層は、チャネルの表面開口部を実質的に密閉するように構成され得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、用語「チャネル」は当業者にとって公知であり、また流体を収納しおよび/または輸送するように構成された構造を意味し得る。チャネルは、壁;基部(例えば、壁と接続しおよび/または壁から形成された基部);およびチャネルの1つまたは複数の部分において開放、カバー、および/または密閉され得る表面開口部を一般的に含む。一部の実施形態では、密閉される表面部分は完全に密閉される。一部の実施形態では、密閉される表面部分は実質的に密閉される。表面開口部は、表面開口部の50%超、60%超、75%超、90%超、または95%超が密閉される場合には、実質的に密閉され得る。一部の実施形態では、表面開口部はエラストマーにより密閉される。
【0098】
本明細書で使用される場合、用語「マイクロチャネル」とは、1000ミクロン以下のサイズの少なくとも1つの寸法を含むチャネルを指す。例えば、マイクロチャネルは、サイズとして1000ミクロン以下(例えば、100ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下)の少なくとも1つの寸法(例えば、幅、高さ)を含み得る。一部の実施形態では、マイクロチャネルは、1ミクロン以上(例えば、2ミクロン以上、10ミクロン以上)の少なくとも1つの寸法を含む。上記で引用された範囲の組合せも可能である(例えば、1ミクロン以上かつ1000ミクロン以下、10ミクロン以上かつ100ミクロン以下)。その他の範囲も可能である。一部の実施形態では、マイクロチャネルは、1000ミクロン以下の水力直径を有する。本明細書で使用される場合、用語「水力直径」(DH:hydraulic diameter)は当業者にとって公知であり、そしてDH=4A/Pとして決定され得るが、式中、Aはチャネルを通過する流体の流れの断面積であり、またPは断面の潤辺である(流体に接触したチャネル断面の周囲長)。
【0099】
一部の実施形態では、流体コンポーネントは、デバイスのリザーバおよび/またはチャネル(例えば、インキュベーションチャネル)に対して、それから、またはその間に液体を移動させるように作動することができる。一部の実施形態では、デバイスコンポーネントは、デバイスのチャネル(複数可)を通じて、例えば、流体デバイスのリザーバおよび/またはその他のチャネル(例えば、インキュベーションチャネル)に対して、それから、またはその間に液体を移動させるように作動することができる。一部の実施形態では、デバイスコンポーネントは、チャネルを通じて流体をポンプ搬送するためのカートリッジまたはモジュールのチャネルと関連するエラストマーコンポーネント(例えば、エラストマーを含む表層)と相互作用するように構成されたペリスタポンプ輸送機構(例えば、装置)を介して液体を移動させる。
【0100】
一部の実施形態では、モジュールまたはカートリッジの負荷期間中に流体交換が生ずる。例えば、一部の実施形態では、生体試料を集積デバイスの試料調製モジュールに負荷する期間中に流体交換が生ずる。試料負荷期間中の流体交換は、試料を収納するリザーバ内への溶液(例えば、緩衝化溶液、または試料を溶解するための溶液)の添加または除去を伴い得る。一部の実施形態では、試料負荷期間中の流体交換は、第1のチャネル、マイクロチャネル、またはリザーバ(例えば、試料インプットで使用されるチャネル、マイクロチャネル、またはリザーバ)から第2のチャネル、マイクロチャネル、またはリザーバ(例えば、溶解、断片化、消化、富化等のための)への試料の流体移送を伴い得る。さらに、一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分子を検出モジュールまたはデバイス(例えば、本明細書に記載されるようなシークエンシングモジュールまたはシークエンシングデバイス)に負荷する期間中に、流体交換が生ずる。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分子を検出モジュールまたはデバイスに負荷する期間中に生ずる流体交換は、検出に関与する溶液(例えば、フルオロフォアまたは参照分子を含む溶液)の添加または除去を伴う。
【0101】
一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分子(例えば、配列決定される標的タンパク質、ポリペプチド、または核酸)の検出期間中、またはデータの取得期間中に流体交換が生ずる。例えば、一部の実施形態では、試料ウェル(例えば、1つまたは複数の標的分子を含む試料ウェル)または反応チャンバ内での検出および/またはデータ取得期間中に流体交換が生ずる。一部の実施形態では、検出および/またはデータ取得期間中に生ずる流体交換は、検出および/またはデータ取得で使用される溶液(例えば、検出用のフルオロフォアを含む緩衝液)の添加または除去を伴う。一部の実施形態では、検出および/またはデータ取得期間中に生ずる流体交換は、試料ウェルまたは反応チャンバを剥離、再負荷、および/または除荷するのに使用される溶液(反応チャンバ表面からコーティング分子を剥離するのに使用される溶液)の添加または取り出しを伴う。
【0102】
一部の実施形態では、デバイス、それを使用する方法、および関連する流体は、数ある開示の中でも、2020年10月28日出願の「流体のペリスタポンプ輸送、および関連する方法、システム、およびデバイス(PERISTALTIC PUMPING OF FLUIDS AND ASSOCIATED METHODS,SYSTEMS,AND DEVICES)」と題する米国特許出願第17/083,106号;2020年10月28日出願の「生体分析用途のための流体のペリスタポンプ輸送、および関連する方法、システム、およびデバイス(PERISTALTIC PUMPING OF FLUIDS FOR BIOANALYTICAL APPLICATIONS AND ASSOCIATED METHODS,SYSTEMS,AND DEVICES)」と題する米国特許出願第17/083,126号;2020年10月28日出願の「試料調製するためのシステムおよび方法(SYSTEMS AND METHODS FOR SAMPLE PREPARATION)」と題する米国特許出願第17/082,223号;2020年10月28日出願の「シークエンシングのための方法およびデバイス(METHODS AND DEVICES FOR SEQUENCING)」と題する米国特許出願第17/082,226号;2021年1月20日出願の「選択的C末端標識するための化合物および方法(COMPOUNDS AND METHODS FOR SELECTIVE C-TERMINAL LABELING)」と題する米国特許出願第17/153,490号;および2021年4月21日出願の「シークエンシングのためのデバイスおよび方法(DEVICES AND METHODS FOR SEQUENCING)」と題する国際特許出願番号PCT/US2021/028471に記載されている通りであり、上記各号の全内容を本願明細書に援用する。
【0103】
III.チップを再使用するための技術
本明細書に記載されるように、本発明者らは、試料の連続した部分を処理するように集積デバイスのセンサチップを再使用する技術を開発した。本発明者らは、単に集積デバイスに試料の追加アリコートを負荷するだけで、それ以外何もしなければ、これまでに負荷された試料が新規に負荷された試料のシグナル収集を妨害し得るので、不正確な結果をもたらすことを認識した。したがって、本明細書に記載される技術は、これまでに負荷された試料を集積デバイスの反応チャンバから除荷し、そして後続する試料が負荷された後に集積デバイスを再使用するための方法と関連する。
【0104】
図2Aは、一部の実施形態に基づく、集積デバイスのチャンバ158内に固定化された分析物159の事例的ダイアグラムである。分析物159は、生体分子、例えばポリペプチドまたはポリヌクレオチド等を含み得る。図2Aは、反応チャンバ158の例を、試料採取される分析物159(例えば、ペプチドの鎖等)と共に提示する。分析物159は、反応チャンバ158の表面150をコーティングするコーティング分子152(例えば、ビオチン)と、分析物159に結合したカップリング部分154(例えば、ストレプトアビジン)との間の結合を介して反応チャンバ158の表面150と結合し得る。コーティング分子152とカップリング部分154との間の結合は、分析物159の試料採取が実施される間に、反応チャンバ158内の分析物149を固定化する。分析物159は蛍光色素で標識され得る。分析物の標識化は、特定の分析物と結合するように構成された認識分子160A、160Bを用いて可能となり得る。反応チャンバ158は、相補的金属酸化物半導体チップ164、および反応チャンバ158からの放射光を収集するためのフォトニックコンポーネント162を含む光検出領域161に近接して配置され得る。試料採取の後で、分析物159の少なくとも一部分が、本明細書に記載されるように、カッター分子156により切断され得る。
【0105】
図2Bは、一部の実施形態に基づく、複数の試料を処理するように図1Aの集積デバイスを再使用するための事例的方法である。工程(process)200は動作(act)202において開始し、試料の第1のアリコートが集積デバイスの反応チャンバ中に負荷され得る。例えば、多数の分析物種を含む試料が、集積デバイスを用いて連続的に処理されるように、複数のアリコートに分割され得る。第1のアリコートが集積デバイスの反応チャンバ中に負荷され得る。例えば、反応チャンバの表面は、コーティング分子、例えばビオチン等を用いてコーティングされ得る。試料の第1のアリコートの分析物は、カップリング部分、例えばストレプトアビジン等に結合し得る。第1のアリコートが反応チャンバ内に負荷されると、カップリング部分(試料の)がコーティング分子(反応チャンバ表面に固定されている)に結合することにより、分析物は反応チャンバの表面に固定(または付加)される。
【0106】
図2Bの動作204において、第1のアリコートの分析物は、分析物が反応チャンバ内に存在する間に試料採取され得る。分析物を試料採取する工程は、動作205Aにおいて、励起光を反応チャンバに送達して分析物および/またはそれに連結した蛍光標識を励起させる工程を含み得る。励起された試料は、動作205Bにおいて、集積デバイスの光検出領域により収集され得るシグナル(例えば、光子)を放出する。放出されたシグナルは、一部の実施形態では、分析物を特定するのに使用され得る。
【0107】
一部の実施形態では、分析物は、試料採取される1つのペプチドまたは複数のペプチドを含む。一部の実施形態では、分析物は1つまたは複数のペプチドを含み、そして励起される蛍光標識がアミノ酸認識分子にコンジュゲートしている。一部の実施形態では、ペプチド分析物の同定は、ポリペプチドを1つまたは複数のアミノ酸認識分子(1つまたは複数の種類の末端アミノ酸と会合する)と接触させることにより進めることができる。一部の実施形態では、図2Aに示すような切断分子またはカッターが、分析物の一部分を取り出すのに使用され得(例えば、ペプチドの鎖からペプチドを取り出すことにより)、そして分析物の次の部分が試料採取され得る。
【0108】
分析物から十分なシグナルが収集されたら、動作206において、第1のアリコートが集積デバイスの反応チャンバから取り出され得る。例えば、追加試料に関する情報を収集するために、追加試料(すなわち、試料の追加アリコート)を集積デバイス中に負荷することが望ましいと考えられる。しかしながら、本明細書に記載されるように、反応チャンバ内に存在するこれまでに処理された分析物が、新規に負荷された分析物のシグナル収集を妨害し得る。したがって、追加試料を集積デバイス内に負荷する前に、第1のアリコートが集積デバイスから取り出され得る。
【0109】
センサチップを除荷するための例示的技術には、(a)カップリング部分とコーティング分子との間(例えば、ストレプトアビジンとビオチンとの間)の結合した係留を破壊する工程;(b)分子(例えば、ビオチン)コーティングをセンサチップの表面から剥離する工程;(c)被占有反応チャンバ内の試料分析物を酵素消化する工程;およびd)試料分析物とカップリング部分(例えば、ストレプトアビジン、ビオチン)との間の結合を融解する工程が含まれる。そのような技術は本明細書にさらに記載される。
【0110】
動作206において、集積デバイスから第1のアリコートを取り出す工程の後で、試料の第2のアリコートが、動作208において反応チャンバ中に負荷され得る。第2のアリコートの分析物は、反応チャンバの表面をコーティングする(例えば、それに結合した)コーティング分子と結合するように構成されたカップリング部分に同様に結合し得る。第2のアリコートの分析物は、分析物に関する情報を収集するために試料採取され得る。
【0111】
集積デバイスに試料の複数のアリコートを負荷するおよび除荷する上記工程は、要望に応じて反復され得る。工程は、試料を複数のアリコートに分割することにより、多数の分析物の種を含む試料を処理すること、および各アリコートを連続的に処理することを可能にする。本明細書に記載される除荷技術は、妨害(新規に負荷されたアリコートの試料採取期間中に、これまでに負荷された分析物が新シグナルを発することに起因し得る)を阻止する。以下に記載する除荷技術のいずれも、研究者の目的を実現するために組み合わせて(例えば、連続して)使用され得る。
【0112】
コーティング分子とカップリング部分との間の結合の破壊
集積デバイスの反応チャンバから試料の一部分を除荷するための第1の例示的技術は、反応チャンバの表面をコーティングするコーティング分子と試料の分析物に結合したカップリング部分との間の共有結合を破壊することを伴う。コーティング分子とカップリング部分との間の結合を破壊すると、固定されていた分析物が反応チャンバの表面から放出され、分析物が集積デバイスからフラッシングされることが可能になる。一部の実施形態では、コーティング分子とカップリング部分との間の共有結合を破壊する工程は、カップリング部分とコーティング分子とを解離させる工程を含む。
【0113】
図3Aは、一部の実施形態に基づく、図1Aの集積デバイスのチャンバの表面を再生するための事例的工程である。工程310は、動作312(第1のアリコートの分析物が、集積デバイスの反応チャンバ内に存在する間に試料採取される)において開始する。例えば、少なくとも1つの光源から発した励起光が反応チャンバに送達され得るが、また反応チャンバから(例えば、第1のアリコートの分析物および/またはそれに連結した蛍光標識から)放出されたシグナルは、集積デバイスの光検出領域において検出され得る。
【0114】
動作314における試料採取する工程の後で、第1のアリコートが反応チャンバから取り出され得る。例えば、第1のアリコートからのシグナル妨害を受けることなく、試料の第2のアリコートの負荷を可能にするために、第1のアリコートが集積デバイスから取り出され得る。動作314は、第1のアリコートを集積デバイスから除荷する1例を提供するが、それは、反応チャンバの表面をコーティングするコーティング分子(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン)と、反応チャンバの表面に固定された試料分析物に結合したカップリング部分(例えば、ストレプトアビジン、ビオチン)との間の結合を破壊することを伴う。
【0115】
本発明者らは、分子、例えばビオチン等とストレプトアビジンとの間の結合を破壊するための従来技術は不適切であることを認識した。そのような技術は、高温(例えば、摂氏90度)および集積デバイスに対して損傷を引き起こすおそれがある化学物質を含む、過酷な条件を一般的に必要とする。そのような技術は、実施するのに長時間(例えば、60分を上回る)を要する可能性があり、単一の集積デバイス上で試料の連続するアリコートを連続的に処理するという要望と矛盾する。
【0116】
したがって、本発明者らは、コーティング分子とカップリング部分との間の結合を破壊するための改善した技術を開発した。コーティング分子-カップリング部分結合を破壊するための事例的方法は、動作315Aにおいて開始する。動作315Aにおいて、反応チャンバの表面は、再生溶液と接触し得る(例えば、その中に浸漬される)。再生溶液は、コーティング分子とカップリング部分との間の結合の破壊を促進する。
【0117】
一部の実施形態では、再生溶液は酢酸塩および水を含む。一部の実施形態では、酢酸塩は酢酸アンモニウムである。酢酸アンモニウムは、分析物が反応チャンバの表面から放出されたら、分析物が溶解し、および/またはフラッシング除去されるように、分析物(例えば、ペプチドまたはその他の生体試料)の溶解度を改善し得る。他の実施形態では、酢酸塩は酢酸ナトリウムである。本明細書に記載されるように、結合分子とコーティング分子との間の結合を破壊する既存の溶液は、集積デバイスのコンポーネントに損傷を与えるおそれのある強刺激性の化学薬品を含有する。水は、対照的に、集積デバイスコンポーネントと適合性があり、また集積デバイスに対する損傷を引き起こすリスクを有さない。
【0118】
再生溶液は、カップリング部分およびコーティング分子を破壊するように考案された化合物(例えば、有機化合物)をさらに含み得る。例えば、一部の実施形態では、再生溶液は、ビオチン-ストレプトアビジン複合体を破壊するための有機化合物、例えばフッ素化されたアルコール(またはフルオロアルコール)等、例えばヘキサフルオロ-2-プロパノール(すなわち、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、ヘキサフルオロ-イソ-プロパノール、または「HFIP」)、またはヘキサフルオロ-2-プロパノールアナログ等を含む。そのような化合物は、コーティング分子とカップリング部分との間の結合を破断することができ、これにより反応チャンバ表面からの分析物の放出が可能となる。一部の実施形態では、化合物は、ボンディング分子と分析物との間の結合を破断してカップリング部分(例えば、ストレプトアビジン)複合体そのものをさらに破壊し得る。
【0119】
一部の実施形態では、再生溶液は、アルコール、酢酸塩(例えば、酢酸アンモニウム)、および水を含む。一部の実施形態では、再生溶液は、フッ素化されたアルコール、酢酸塩、および水を含む。一部の実施形態では、再生溶液は、フッ素化されたケトン、酢酸塩、および水を含む。一部の実施形態では、再生溶液は、アルコール性刺激物質、酢酸塩、および水を含む。一部の実施形態では、再生溶液は、遊離ビオチンまたはそのアナログ、例えば、モノビオチン、イミノビオチン、および/またはデスチオビオチンをさらに含む。
【0120】
遊離ビオチンアナログには、一部の実施形態では、再生溶液の溶解度を増加させるためのポリエチレングリコール(PEG)リンカーまたは別のリンカーを有するビオチンが含まれることがある。例示的遊離ビオチンアナログの化学構造を下記に提示する。
【0121】
【化2】
本明細書に記載されるように、分子を破壊するための既存技術は冗長であり、試料を連続的に処理するという要望と矛盾する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるような組成物を有する再生溶液は、コーティング分子およびカップリング部分を60分以内に破壊する能力を有するか、またはそのように考案されている。一部の実施形態では、浸漬工程が、30分以内の個別の期間実施される。浸漬期間が短い方が、定常流を用いながら試料の複数のアリコートを処理することが可能になる。一部の実施形態では、本明細書に記載される再生溶液は、自動化されたチップ再生方法に適する。
【0122】
本明細書に記載されるように、分子を破壊するための既存技術は、高温、例えば摂氏90度で実施されなければならない。本明細書に記載されるような組成物を有する再生溶液は、コーティング分子およびカップリング部分を室温(例えば、少なくとも摂氏20度かつ摂氏22度以下)で破壊する能力を有する。操作温度が低いほど、高温度の使用に起因し得る、試料、集積デバイス、および/またはオペレーターに対する損傷のリスクが低下する。
【0123】
一部の実施形態では、再生溶液はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。一部の実施形態では、再生溶液はホルムアミドを含む。一部の実施形態では、再生溶液はEDTAおよびホルムアミドを含む。一部の実施形態では、再生溶液は酢酸ナトリウムおよびホルムアミドを含む。一部の実施形態では、再生溶液は、ヘキサフルオロ-2-プロパノール、ノナフルオロ-tert-ブチルアルコール、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノール、およびオクタフルオロ-2-ブタノンから選択されるフルオロアルコールを含有する。一部の実施形態では、再生溶液はヘキサフルオロ-2-プロパノールを含む。一部の実施形態では、再生溶液は、ヘキサフルオロ-2-プロパノール、例えばノナフルオロ-tert-ブチルアルコール、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノール、オクタフルオロ-2-ブタノール、またはオクタフルオロ-2-ブタノンのアナログを含む。一部の実施形態では、再生溶液は、ノナフルオロ-tert-ブチルアルコール、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノール、およびオクタフルオロ-2-ブタノン、酢酸塩(例えば、酢酸アンモニウム)、および水のうちの1つまたは複数を含む。
【0124】
動作315Bにおいて、例えばチップに再生溶液を適用することにより結合分子とコーティング分子との間の結合を破断することによって、コーティング分子から各カップリング部分が破壊される。例えば、本明細書に記載されるように、再生溶液は、カップリング部分からボンディング分子を破壊するための化合物、例えばヘキサフルオロ-2-プロパノール等(例えば、HFIP)を含有し得る。HFIPは芳香臭を有する無毒性アルコールである。HFIPは、皮膚および粘膜に対して腐食性であるので、刺激物である。一部の実施形態では、溶液は、約1~5mL、3~7mL、4~8mL、5~9mL、5~10mL、8~10mL、9~11mL、10~12.5mL、または12.5mLを上回る量のヘキサフルオロ-2-プロパノールを含有する。
【0125】
一部の実施形態では、溶液は、約1、2、3、4、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、または12.5mLを上回る量のHFIPを含有する。一部の実施形態では、溶液は、約1、2、3、4、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、または12.5mLを上回る量のHFIPを含有する。一部の実施形態では、溶液は、約1~15mL、1~12.5mL、1~5mL、3~7mL、4~8mL、6~9mL、5~10mL、7~11mL、8~10mL、9~11mL、10~12.5mL、または12.5mLを上回る量のHFIPを含有する。一部の実施形態では、溶液は約9mLの量のHFIPを含有する。一部の実施形態では、溶液は9mLの量のHFIPを含有する。
【0126】
再生溶液は酢酸アンモニウム(C・HN)をさらに含有し得る。一部の実施形態では、溶液は、0.1、0.2、0.25、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0mLの量の5M酢酸アンモニウムを含有する。一部の実施形態では、溶液は0.5mLの量の5M酢酸アンモニウムを含有する。
【0127】
一部の実施形態では、溶液はビオチン化合物を含有する。ビオチン化合物を添加することで、機能化された試料ウェル表面における、ストレプトアビジン結合部位に対する再生溶液の競合が増強し得る。ビオチン化合物を添加することで、溶液のヘキサフルオロ-2-プロパノールコンポーネントにより媒介されるように、試料ウェルの表面におけるビオチン-ストレプトアビジン相互作用の解離が(さらにまたは別途)促進される可能性がある。溶液はモノビオチンまたはビスビオチンを含有し得る。一部の実施形態では、溶液はペグ化されたビオチン、例えばビオチン-PEG等である。PEGリンカーは、溶液中のビオチンの溶解度を増強し得る。一部の実施形態では、溶液は、ビオチン-PEG、ビオチン-PEG、ビオチン-PEG、ビオチン-PEG、ビオチン-PEG、またはビオチン-PEGを含有する。一部の実施形態では、再生溶液は、10~500μMの間、50~250μMの間、100~250μMの間、100~500μMの間、100~200μMの間、または100~150μMの間の濃度でビオチン化合物を含有する。一部の実施形態では、再生溶液は、100μM~200μMの間の濃度のビオチン化合物を含有する。
【0128】
例示的な実施形態では、再生溶液は、9mLのHFIP、0.5mLの5M酢酸アンモニウム、1mLの水、および100μM~200μMの間の濃度でビオチン-PEG(ビスビオチン-PEG)を含有する。
【0129】
再生溶液の一部の実施形態、例えば核酸分析物の同定および/またはシークエンシングで使用される実施形態では、再生溶液はDNase酵素を含有する。DNase酵素はヌクレオシド消化ミックスの一部分として提供され得る。
【0130】
例示的な実施形態では、DNase酵素(またはヌクレオシド消化ミックス)が、再生溶液とは別にチップに適用される。したがって、一部の実施形態では、本明細書に提示されるチップ再生方法は、再生溶液およびDNase酵素の同時または個別の適用を含む。一部の実施形態では、DNase酵素が再生溶液の前にチップに適用される。したがって、これらの実施形態では、試料ウェルの表面を再生溶液と接触させる前に、核酸(DNA)分析物がDNaseを用いて少なくとも部分的に酵素消化される。
【0131】
一部の実施形態では、反応チャンバの表面を再生溶液内に浸漬する工程は、カップリング部分と破壊される分析物との間の共有結合をさらに引き起こす。この破壊の結果として、分析物およびカップリング部分は、動作315Cにおいて、各反応チャンバの表面から放出される。放出された分析物およびカップリング部分は、動作315Dにおいて、反応チャンバからフラッシングされ得る。本明細書に記載されるように、再生溶液は、分析物、例えば酢酸アンモニウム等の溶解度を増加させるためのコンポーネントを含有し得る。したがって、一部の実施形態では、分析物は、付加的または代替的に再生溶液に溶解され得る。
【0132】
集積デバイスの反応チャンバから第1のアリコートを取り出した後、工程310は動作316に進むことができる。本明細書に記載される取り出し工程は、後で負荷されたアリコートを試料採取するときに生ずる、これまでに負荷されたアリコートから放出されたシグナルに起因する妨害が存在しないことを保証する。したがって、第1のアリコートが取り出されたら、動作316において、第2のアリコートを集積デバイスの反応チャンバ内に負荷することができる。第2のアリコートは分析物を含み得るが、分析物は各カップリング部分に結合している。反応チャンバの表面をコーティングするコーティング分子は、第1のアリコートを取り除いた後にも、反応チャンバ内に留まり得る。したがって、工程310は、第2のアリコートを負荷する前に、集積デバイスの反応チャンバ内に追加のコーティング分子を負荷するという再コーティング工程を不要とし得る。第2のアリコートのカップリング部分は、試料採取工程が実施され得るように、残存するコーティング分子と結合して第2のアリコートの分析物を反応チャンバの表面に固定し得る。
【0133】
動作316の後で、第2のアリコートの分析物が試料採取され得る。例えば、少なくとも1つの光源から発した励起光は反応チャンバに送達され得、そして反応チャンバから(例えば、第2のアリコートの分析物および/またはそれに連結した蛍光標識から)放出されたシグナルが集積デバイスの光検出領域において検出され得る。コーティング分子およびカップリング部分の結合を破壊するための技術を介して集積デバイスを負荷および除荷する上記工程は、要望に応じて多数回反復され得る。
【0134】
一部の実施形態では、方法は、カップリング部分と複数のコーティング分子(例えば第1のコーティング分子および第2のコーティング分子等)との間の1つまたは複数の結合を破壊する工程を含み、第1および第2のコーティング分子はウェル表面に対して機能化されている。一部の実施形態では、第1および第2のコーティング分子は異なる。一部の実施形態では、第1のコーティング分子はストレプトアビジンタンパク質であり、および第2のコーティング分子は、ストレプトアビジンタンパク質ではない(例えば、アビジンタンパク質またはアジド部分である)。一部の実施形態では、方法は、コーティング分子と複数種類のカップリング部分(例えば第1および第2のカップリング部分等)との間の結合を破壊する工程を含み、コーティング分子は、ウェル表面に対して機能化されている。一部の実施形態では、第1および第2のカップリング部分は異なる。一部の実施形態では、第1のカップリング部分はビオチン部分であり、および第2のカップリング部分はビオチン部分ではない(例えば、SNAP-タグまたはアジド部分である)。そのようなすべての実施形態において、開示される方法に基づき再生溶液を使用することで、複数種類のコーティング分子と複数種類のカップリング部分とが組み合わさったそれらの間の結合の分解を実現し得る。
【0135】
一部の実施形態では、反応チャンバの表面を、動作315Aにおいて再生溶液と接触させる前に、コーティング分子とカップリング部分との間の結合を破壊するために、分析物は少なくとも部分的に酵素消化され得る。例えば、一部の実施形態では(例えば、DNAシークエンシング用途において)、再生溶液(カップリング部分およびコーティング分子を破壊するように考案された化合物を含む)と反応チャンバ表面との接触が分析物のサイズに起因して阻止され得るように、試料採取される分析物はきわめて大きい。したがって、一部の実施形態では、カップリング部分およびコーティング分子を破壊するように考案された化合物が反応チャンバの表面と接触するのを可能にするために、反応チャンバ内の試料採取された分析物の少なくとも一部分は酵素消化され得る。例えば、分析物がDNA鎖(例えば、DNAシークエンシングにおいて)を含む場合、DNA鎖の少なくとも一部分は、反応チャンバの表面が再生溶液と接触する前に酵素消化され得る(例えば、エンドヌクレアーゼ(例えば、DNase)および/またはエキソヌクレアーゼ消化を使用して)。
【0136】
反応チャンバコーティングの剥離
集積デバイスの反応チャンバから試料の一部分を除荷するための第2の例示的技術は、反応チャンバ表面からコーティング分子を剥離することを伴う。反応チャンバ表面からコーティング分子を剥離することで、コーティング分子に結合したカップリング部分およびそれに連結した分析物が反応チャンバから放出され、そして放出されたコンポーネントの溶解および/または集積デバイスからのフラッシングが可能になる。
【0137】
例えば、図3Bは、図1Aに示す集積デバイスのチャンバ表面を再生する事例的方法であり、一部の実施形態によれば、コーティングを反応チャンバ表面から剥離することを伴う。工程320は動作322において開始し、第1のアリコートの分析物が集積デバイスの反応チャンバ内に存在する間に試料採取される。例えば、少なくとも1つの光源から発した励起光が反応チャンバに送達され得るが、また反応チャンバから(例えば、第1のアリコートの分析物および/またはそれに連結した蛍光標識から)放出されたシグナルが集積デバイスの光検出領域において検出され得る。
【0138】
試料採取する工程の後で、動作324において、第1のアリコートが反応チャンバから除去され得る。例えば、第1のアリコートからのシグナル妨害を受けずに、試料の第2のアリコートの負荷を可能にするために、第1のアリコートが集積デバイスから除去され得る。動作324は、集積デバイスから第1のアリコートを除荷する第2の例を提供するが、それは、1つまたは複数のコーティング分子(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン)を含むコーティングを反応チャンバの表面から取り除くことを伴う。
【0139】
特に、動作325Aにおいて、反応チャンバの表面をコーティングする1つまたは複数のコーティング分子が反応チャンバ表面から剥がされる。一部の実施形態では、1つまたは複数のコーティング分子を剥離する工程は、上記で開示したような任意の再生溶液の添加を含む。一部の実施形態では、この工程は、HFIPまたは1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールの溶液の添加を含む。
【0140】
本明細書に記載されるように、カップリング部分は、反応チャンバ内のコーティング分子に結合し、カップリング部分に結合した第1のアリコートの試料分析物を反応チャンバの表面に固定して、試料採取を可能にする。したがって、コーティングを取り除いた結果として、分析物およびカップリング部分は、動作325Bにおいて各反応チャンバの表面からやはり放出される。放出された分析物およびカップリング部分は、動作325Cにおいて反応チャンバからフラッシングされ得る。一部の実施形態では、放出されたコンポーネントは、例えば溶液、例えば本明細書に記載される再生溶液のいずれか等中にチップの表面を浸漬することにより、付加的または代替的に溶解され得る。一部の実施形態では、開示される方法は、第1のコーティング分子および第2のコーティング分子を反応チャンバ表面から剥離する工程を含み、ただし第1および第2のコーティング分子は異なる。そのような実施形態では、第1のコーティング分子はストレプトアビジンタンパク質を含み得、および第2のコーティング分子は、ストレプトアビジンタンパク質ではない部分(例えば、アビジンタンパク質またはアジド部分であり得る)を含み得る。
【0141】
集積デバイスの反応チャンバから第1のアリコートを取り出した後、工程320は、動作326に進むことができる。動作326において、反応チャンバの表面は、追加のコーティング分子(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン)を反応チャンバ中に負荷することにより再コーティングされ、第2のアリコートの負荷に備える。
【0142】
動作328において、集積デバイスの反応チャンバには、試料の第2のアリコートが再負荷され得る。動作328の後で、第2のアリコートの分析物が、試料採取され得る。反応チャンバコーティングを剥離するための技術を介して集積デバイスを負荷および除荷する上記工程は、要望に応じて反復され得る。
【0143】
分析物の酵素消化
試料の一部分を集積デバイスの反応チャンバから除荷するための第3の例示的技術は、試料採取する工程の後で、反応チャンバ内に存在する分析物(例えば、ペプチド)を酵素消化することを伴う。試料採取する工程の後で分析物を酵素消化することで、コーティング分子およびカップリング部分の破壊、または集積デバイスの反応チャンバ表面の再コーティングを必要とせずに、これまでに試料採取された分析物を反応チャンバから取り出すことが可能になる。
【0144】
例えば、図3Cは、図1Aの集積デバイスのチャンバ表面を再生する事例的方法であり、一部の実施形態に基づき、これまでに試料採取された分析物を酵素消化することを伴う。工程330は動作332において開始し、第1のアリコートの分析物が、集積デバイスの反応チャンバ内に存在する間に試料採取される。例えば、少なくとも1つの光源から発した励起光が反応チャンバに送達され得、そして反応チャンバから(例えば、第1のアリコートの分析物、および/またはそれに連結した蛍光標識から)放出されたシグナルが、集積デバイスの光検出領域において検出され得る。
【0145】
試料採取する工程の後で、動作334において、第1のアリコートが反応チャンバから取り出され得る。例えば、第1のアリコートが集積デバイスから取り出され、第1のアリコートからのシグナル妨害を受けずに試料の第2のアリコートの負荷を可能にし得る。動作334は、集積デバイスの反応チャンバ内に存在するこれまでに試料採取された分析物を完全に酵素消化することを伴う、集積デバイスから第1のアリコートを除荷する第2の例を提供する。
【0146】
特に、動作335Aにおいて、第1のアリコートの分析物が、酵素消化され得る。例えば、図2Aに示す、カッターとも呼ばれ、またタンパク質およびDNA/RNAのシークエンシングで一般的に使用される切断酵素は、分析物を反応チャンバ表面上のその固定された位置から切断するのに使用され得る。一般的に、切断酵素が、シークエンシングを実施するために、ペプチドの鎖から単一のペプチドを切断するのに使用される。しかしながら、本発明者らは、参照チャンバを、ある濃度の切断酵素を含有する溶液内に長期化した期間浸漬することにより、ペプチド鎖全体が、反応チャンバ表面上のその固定されたポイントから切断され得ることを認識した。酵素消化された分析物は、集積デバイスから第1のアリコートの分析物を取り除くために、その後フラッシングされ、および/または溶解され得る。
【0147】
一部の実施形態では、各反応チャンバは、反応チャンバの表面をコーティングする複数のコーティング分子を含み得る。したがって、これまでに結合したコーティング分子がこれまでに結合した分析物(工程330の動作335Aにおいて酵素消化される)により占有される場合であっても、追加のコーティング分子が反応チャンバ内に留まり、試料の後続するアリコートのカップリング部分と結合することができる。一部の実施形態では、追加のコーティング分子は、動作335の後で、反応チャンバの表面を再コーティングするためにチップ内に負荷されてもよい。
【0148】
集積デバイスの反応チャンバから第1のアリコートを取り出した後、工程330は動作336に進むことができる。動作336において、集積デバイスの反応チャンバは、試料の第2のアリコートで再コーティングされ得る。第2のアリコートの分析物はカップリング部分を介して、反応チャンバ内に存在する残存コーティング分子に結合し得る。動作336の後で、第2のアリコートの分析物は試料採取され得る。これまでに試料採取された分析物を酵素消化するための技術を介して集積デバイスを負荷および除荷する上記工程は、要望に応じて反復され得る。
【0149】
分析物-カップリング部分間結合の融解
集積デバイスの反応チャンバから試料の一部分を除荷するための第4の例示的技術は、試料分析物が反応チャンバ内に存在する間に、試料分析物とそれに連結したカップリング部分との間の結合を融解することを伴う。例えば、図3Dは、図1Aに示す集積デバイスのチャンバ表面を再生する例示的方法を示し、一部の実施形態によれば、試料分析物とカップリング部分との間で形成された結合を融解することを伴う。工程340は動作342において開始し、第1のアリコートの分析物が集積デバイスの反応チャンバ内に存在する間に試料採取される。例えば、少なくとも1つの光源から発した励起光は反応チャンバに送達され得、また反応チャンバから(例えば、第1のアリコートの分析物、および/またはそれに連結した蛍光標識から)放出されたシグナルは、集積デバイスの光検出領域において検出され得る。一部の実施形態では、試料分析物とカップリング部分との間で形成された結合は二本鎖核酸分子(例えば、タンパク質シークエンシング用途におけるDNA分子リンカー)を含み、また結合の融解は、二本鎖核酸分子を一本鎖に変性させて試料分析物を放出させる工程を含む。
【0150】
試料採取する工程の後で、動作344において、第1のアリコートが反応チャンバから取り出され得る。例えば、第1のアリコートからのシグナル妨害を受けることなく、試料の第2のアリコートの負荷を可能にするために、第1のアリコートが集積デバイスから取り出され得る。動作344は、集積デバイスから第1のアリコートを除荷する工程の第2の例を提供するが、それは、試料分析物と、反応チャンバの表面をコーティングするコーティング分子に結合するように構成されたカップリング部分との間で形成された結合を融解することを伴う。
【0151】
特に、動作335Aにおいて、試料分析物とカップリング部分との間の結合は融解され得る。一部の実施形態では、動作335Aは、試料分析物をカップリング部分にリンクさせるDNA鎖を、二本鎖DNAから単一鎖DNAに変性させて、分析物を放出させることを含む。試料分析物とカップリング部分との間で形成されたDNA分子リンカーを変性する工程は、エネルギー、例えば熱等をシステムに注入してDNA鎖を融解することを含み得る。一部の実施形態では、この工程は、上記で開示したような任意の再生溶液の添加、および/または任意のその他の化学溶液の付着を含む。
【0152】
本明細書に記載されるように、試料分析物は、反応チャンバ表面をコーティングするコーティング分子と、試料分析物に付着したカップリング部分との間に形成される結合を介して反応チャンバ表面に固定されるように構成される。工程340は、カップリング部分と試料分析物との間の結合を破壊し、それによって、分析物が反応チャンバ表面にもはや固定されないことを企図している。したがって、カップリング部分と試料分析物との間の共有結合を融解した後で、第1のアリコートの分析物は、動作345Bで反応チャンバの表面から放出され得る。放出された成分は、動作345Cで反応チャンバからフラッシングされ得る。一部の実施形態では、放出された成分は追加的および/または代替的に溶解され得る。
【0153】
集積デバイスの反応チャンバから第1のアリコートを除去した後、工程340は動作346に進むことができる。動作346では、集積デバイスの反応チャンバは、試料の第2のアリコートを再負荷され得る。第2のアリコートの分析物は、反応チャンバ内に存在する残りのコーティング分子にカップリング部分を介して結合することができる。動作346の後、第2のアリコートの分析物を試料採取することができる。カップリング部分-分析物の結合を融解するための技術を介して集積デバイスを負荷および除荷する上記の処理は、要求に応じて繰り返すことができる。
【0154】
一部の実施形態では、試料分析物とカップリング部分との間の結合を融解する工程は、分析物と、複数の種類のカップリング部分、例えば、第1および第2のカップリング部分との間の結合を融解する工程を含む。一部の実施形態では、第1および第2のカップリング部分は異なる。一部の実施形態では、第1のカップリング部分はビオチン部分であり、第2のカップリング部分はビオチン部分ではない(例えば、SNAPタグまたはアジド部分である)。
【実施例1】
【0155】
集積デバイスから試料の一部を除去するための技術の有効性を、例えば、図4A~4Jに示されるように、本明細書でさらに実証する。特に、図4A~4Jは、コーティング分子とカップリング部分との間の結合を破壊するためのチップ再生技術を使用して蓄積されたデータを示す。以下のデータを生成した実験で使用した再生溶液は、酢酸アンモニウム、水、および1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)を含む。特に、再生溶液は、9mLのHFIP、0.5mLの5M酢酸アンモニウム、1mLの水、および100μMから200μMの間の濃度のビオチン-PEGを含有する。
【0156】
図4A~Dは、一部の実施形態による、チップの負荷および再生の処理の間に得られた分析物の存在を示す例示的なグラフを示す。例えば、図4Aを挙げると、連続する3つのグラフ411~413が示される。グラフ411は、集積デバイスの反応チャンバに分析物が93.6%負荷されているときのシグナル取得を示す。グラフ412は、本明細書に記載される破壊技術(22.5%負荷での)に従って分析物を反応チャンバから除去してから15分後に得られたシグナル取得を示す。グラフ413は、集積デバイスの反応チャンバに68%の負荷で追加の試料を再負荷した後のシグナル取得を示す。
【0157】
図4B~4Dは、集積デバイスを負荷および除荷する処理の間に得られた分析物の存在を示すさらなる例示的なグラフを示す。図4Bに示されるように、グラフ421は、第1の負荷を58.7%の負荷で実施した後のシグナル取得を示し、グラフ422は、その後の除荷を(8.5%の負荷で)実施した後のシグナル取得を示し、グラフ423は、第2の負荷を27.7%の負荷で実施した後のシグナル取得を示し、グラフ424は、その後の除荷を(3.8%の負荷で)実施した後のシグナル取得を示し、グラフ425は、第3の再負荷を23.4%の負荷で実施した後のシグナル取得を示す。図4Cに示されるように、グラフ431は、第1の負荷を30.4%の負荷で実施した後のシグナル取得を示し、グラフ432は、その後の除荷を(13.8%のパーセントの負荷で)実施した後のシグナル取得を示し、グラフ433は、第2の負荷を57.7%の負荷で実施した後のシグナル取得を示す。図4Dに示されるように、グラフ441は、第1の負荷を27.9%の負荷で実施した後のシグナル取得を示し、グラフ442は、その後の除荷を(7.2%の負荷で)実施した後のシグナル取得を示し、グラフ443は、第2の負荷を64.9%の負荷で実施した後のシグナル取得を示す。
【0158】
図4Eは、一部の実施形態による、高速液体クロマトグラフィーを使用して得られた、異なる条件下で再生溶液に浸漬された試料のスペクトルを示す。特に、曲線451は、最初に水で希釈し、続いて剥離緩衝液と混合した試料からのシグナル取得を示し、曲線452は、剥離緩衝液と10分間インキュベートし、続いて水で希釈した試料からのシグナル取得を示し、曲線453は、剥離緩衝液と50分間インキュベートし、続いて水で希釈した試料からのシグナル取得を示す。
【0159】
図4Fは、一部の実施形態による、再生工程と負荷工程との間に集積デバイスの反応チャンバから取得したシグナルを示す例示的なグラフを示す。特に、第1のグラフは、除荷の間に集積デバイスに送達される認識パルスに応答したシグナル取得を示す。第2のグラフは、第1の再生工程および負荷工程後のシグナル取得を示す。第3のグラフは、集積デバイスの追加の負荷後のシグナル取得を示す。第4のグラフは、集積デバイスの除荷および再生後のシグナル取得を示す。
【0160】
図4G~4Iは、一部の実施形態による、再生工程と負荷工程との間に集積デバイスの反応チャンバから取得したシグナルを示す追加の例示的なグラフを示す。図4Gに示されるように、グラフ461Aおよび461Bは、28%の試料を負荷した集積デバイスの反応チャンバからのシグナル取得を示す。グラフ462Aおよび462Bは、7%の試料を負荷した集積デバイスの反応チャンバからのシグナル取得を示す。グラフ463Aおよび463Bは、65%の試料を負荷した集積デバイスの反応チャンバからのシグナル取得を示す。
【0161】
図4Jは、一部の実施形態による、再生工程と負荷工程との間に集積デバイスの反応チャンバから取得したシグナルを示す追加の例示的なグラフを示す。特に、グラフの第1の行は、集積デバイスの第1の試料負荷後のシグナル取得を示し、グラフの第2の行は、集積デバイスの第1の除荷後のシグナル取得を示し、グラフの第3の行は、集積デバイスの再負荷後のシグナル取得を示す。
【0162】
IV.チップ再利用技術に関する態様
本発明者らは、本明細書に記載されるチップ再利用技術と組み合わせて使用できるさらなる技術をさらに開発した。例えば、図5Aは、一部の実施形態による、図1の集積デバイスのチャンバ内に試料が存在するかどうかを判定するための例示的な処理である。本発明者らは、集積デバイスに追加の試料を負荷する前に、本明細書に記載される除荷技術が首尾良く実施されたかどうかを判定することが有利であることを認識した。
【0163】
図5Aに示される工程500は動作502から始まり、試料の第1の部分が集積デバイスの反応チャンバから除去される。例えば、動作502は、本明細書に記載される集積デバイスの反応チャンバから試料を除去するための技術のいずれかに従って実施され得る。試料の第1の部分は、複数のアリコートに分割された試料の第1のアリコートを含み得る。
【0164】
集積デバイスから試料の第1の部分を除去した後、認識処理を実施することができ、それによって動作502において、励起光の認識パルスを使用して、集積デバイスの反応チャンバ内に試料が残っているかどうか、または試料が十分に除去されているかどうかを判定する。したがって、動作504において、少なくとも1つの光源からの励起光が集積デバイスの反応チャンバに送達される。
【0165】
動作502の後に試料の第1の部分の分析物が反応チャンバ内に残っている場合、残っている分析物および/またはそれに付着した蛍光標識は、動作504において少なくとも1つの光源からの励起光の送達に応答して励起され得る。励起された分析物および/またはそれに付着した蛍光標識は、励起に応答して光子を放出し、その光子は動作504において集積デバイスの光検出領域によって収集され得る。さらに、コーティング分子、カップリング部分、および/またはそれに付着した蛍光標識は、励起光に応答してシグナルを放出し得る。したがって、一部の実施形態では、集積デバイスの光検出領域によって反応チャンバから受信されたいずれかのシグナルを使用して、いずれかのコーティング分子および/またはカップリング部分が集積デバイスの反応チャンバ内に存在するかどうかを判定することができる。
【0166】
動作508では、試料の第1の部分のいずれかが、動作506で収集されたシグナルに基づいて集積デバイスの反応チャンバ内に存在するかどうかが判定される。例えば、放出されたシグナルは、分析物、コーティング分子、カップリング部分および/またはシグナルが放出されたものに付着した蛍光標識に関する情報(例えば、発光強度、発光寿命、波長、パルス持続時間、パルス間隔持続時間)を含み得る。集積デバイスは、何かあれば、反応チャンバ内に何が存在するかを判定するために放出情報を使用するように構成され得る。
【0167】
動作508において、試料の第1の部分の少なくとも一部が依然として反応チャンバ内に存在すると判定された場合、工程500は、是の分岐を通って動作502に進むことができ、試料の第1の部分を反応チャンバから除荷するための除去処理が繰り返される。一部の実施形態では、是の分岐を通って動作502に戻ったときに実施される除去処理は、工程500の開始時に実施される最初の除去処理とは異なり得る。
【0168】
動作508において、動作506で収集されたシグナルに基づいて、試料の第1の部分が反応チャンバ内にもはや存在しないと判定された場合、工程500は、是の分岐を通って動作510に進むことができ、試料の第2の部分が集積デバイスの反応チャンバに負荷される。試料の第2の部分は、試料が分割された複数のアリコートの第2のアリコートを含み得る。
【0169】
したがって、工程500は、追加の試料による集積デバイスの再負荷がいつ実施されるべきかを判定するために使用され得る。本明細書に記載されるように、本発明者らは、新しく負荷された分析物が試料採取されるときに反応チャンバ内に存在する以前に試料採取された分析物が、新たに負荷された分析物からのシグナル収集を妨げる場合があることを認識した。したがって、工程500は、以前に試料採取された分析物が、集積デバイスの再負荷に進む前に十分に除去されたことを確認するために使用され得る。
【0170】
一部の実施形態では、動作508において、試料の第1の部分が反応チャンバ内に存在するかどうかを判定する工程は、反応チャンバ内に残っている第1の試料の量を決定する工程を含む。このような実施形態では、決定された量を閾値と比較することができる。決定された量が閾値を下回る場合、工程500は動作510に進むことができ、追加の試料が集積デバイスの反応チャンバに負荷される。代わりに、動作508において、決定された量が閾値を下回っていない場合、工程500は、追加の試料を反応チャンバに負荷することを中止することができる。
【0171】
本明細書に記載されるように、動作506で収集されたシグナルは、反応チャンバ内のコーティング分子および/またはカップリング部分の存在を判定するために使用され得る。このような実施形態では、収集されたシグナルは、例えば、試料の第2の部分を集積デバイスの反応チャンバに負荷する前に、追加のコーティング分子および/またはカップリング部分を集積デバイスの反応チャンバに負荷するかどうかを判定するために使用され得る。
【0172】
本発明者らは、複数のアリコートに分割された試料の後続のアリコートの試料採取を継続するかどうかを判定するための、本明細書に記載されるチップ再利用技術と組み合わせて使用できる技術をさらに開発した。例えば、本発明者らは、一部の試料は目的の情報を含み得るが、他の試料は完全に試料採取する必要がないことを認識した。したがって、試料に関する情報は、試料の複数のアリコートの第1のアリコートから収集され、試料の第2のアリコートを集積デバイスに負荷することによって試料の処理を継続するかどうかを判定するために使用され得る。
【0173】
例えば、図5Bは、一部の実施形態による、図1Aの集積デバイスを用いて試料の処理を継続するかどうかを判定するための例示的な処理である。図5Bに示される工程500は、動作522から始まり、試料の第1の部分が集積デバイスの反応チャンバに負荷される。例えば、試料の第1の部分は、試料の第1のアリコートを含んでもよく、試料は複数のアリコートに分割されている。試料の第1の部分は、試料採取される複数の分析物を含んでもよい。分析物は、カップリング部分と、反応チャンバの表面をコーティングするコーティング分子との間の結合を介して反応チャンバの表面に分析物を固定するために、本明細書に記載されるカップリング部分に結合することができる。一部の実施形態では、分析物は蛍光色素で標識されてもよい。
【0174】
動作524~526では、動作522で反応チャンバに負荷された試料の第1の部分が試料採取され得る。例えば、動作524において、少なくとも1つの光源からの励起光が、集積デバイスの反応チャンバ内に存在している間に試料の第1の部分に送達され得る。結果として、試料の第1の部分の分析物および/またはそれに付着した蛍光標識が励起され、動作526で集積デバイスの光検出領域によって収集された光子を放出することができる。
【0175】
動作528では、動作526で収集されたシグナルに基づいて、試料の第2の部分を集積デバイスの反応チャンバに負荷するかどうかが判定される。例えば、本明細書に記載されるように、放出シグナルは、特徴的な強度、波長、発光寿命、パルス持続時間、パルス間持続時間等の、集積デバイスによって抽出され得る情報を含むことができる。一部の実施形態では、抽出された情報は、試料の第1の部分に存在する分析物の同一性を決定するために使用され得る。分析物の同一性に基づいて、全体として試料が目的のものであり、試料の追加のアリコートのさらなる処理が望ましいことを判定することができる。そのような場合、工程520は、是の分岐を通って動作530に進むことができる。
【0176】
他の例では、分析物の決定された同一性に基づいて、全体として試料が目的のものではないこと、ならびに時間および他のリソースを試料のさらなる処理に費やす必要がないことを判定することができる。したがって、動作528で、試料の第2の部分を負荷しないと判定された場合、工程520は、否の分岐を通って動作532に進むことができる。動作532において、ユーザは、試料の第2の部分を集積デバイスの反応チャンバに負荷することを中止することができる。代わりに、試料の第1の部分は、集積デバイスの反応チャンバから除去されてもよい。一部の実施形態では、動作532で、第2の追加の試料の第1の部分が、試料採取のために集積デバイスの反応チャンバに負荷され得る。一部の実施形態では、集積デバイスのセンサチップが追加的または代替的に処分されてもよい。
【0177】
動作528において、試料の第2の部分が負荷されるべきであると判定された場合、工程520は、是の分岐を通って動作530に進むことができ、例えば本明細書に記載される技術のいずれかに従って、試料の第1の部分が除去され、試料の第2の部分が集積デバイスの反応チャンバに負荷される。動作530に続いて、試料の第2の部分が処理される動作524に戻ることによって、工程520を要求に応じて繰り返すことができる。
【0178】
V.チップの寿命の増加
本明細書に記載されるように、本発明者らは、集積デバイスを複数の実験に再利用する際に、センサチップの長期間の使用により集積デバイスのコンポーネントが劣化する場合があることを認識した。したがって、本明細書に記載される技術の一部の態様は、集積デバイスの使用寿命を増加させるための技術に関する。例えば、集積デバイスのコンポーネントは、反応チャンバを再生溶液に繰り返し浸漬することにより腐食を受けやすくなる場合がある。したがって、一部の実施形態では、集積デバイスのコンポーネントは、そのような劣化に耐えるように構成され得る(例えば、耐食性コーティング等を含む)。一部の実施形態では、集積デバイスのコンポーネントは、チップおよび/またはフローセルの逐次再生によって生じ得るシークエンシングワークフローによって生成される発光シグナルとの干渉に耐えるように構成され得る。
【0179】
例えば、一部の実施形態では、集積デバイスチップの寿命の増加は、集積デバイスの反応チャンバの表面コーティングの安定性を維持することによって可能となり得る。集積デバイスの反応チャンバの表面コーティングの安定性を維持するための適切な技術の例は、代理人整理番号R0708.70066US01の下で、「気相における表面改質(SURFACE MODIFICATION IN THE VAPOR PHASE)」と題する2020年10月9日に出願された米国特許出願第17/067,184号に記載されており、その全体を本願明細書に援用する。一部の実施形態では、本明細書に記載される再生溶液のPH値は、反応チャンバ表面コーティングの安定性を増加させるために7に維持され得る。
【0180】
VI.追加のデバイスコンポーネント
一部の態様によれば、本明細書に記載される集積デバイスは、1つまたは複数の追加のコンポーネントを有するように構成され得る。例えば、図6Aは、一部の実施形態による、コンパクトなモードロックレーザモジュールを含む分析機器のブロック図である。図6Aに示されるように、ポータブル先端分析機器6-100は、機器6-100内に交換可能なモジュールとして取り付けられるか、またはそうでなければ機器6-100に結合される1つまたは複数のパルス光源6-106を備えることができる。ポータブル分析機器6-100は、光結合システム6-115および分析システム6-160を含むことができる。光結合システム6-115は、光学部品のいくつかの組合せ(例えば、以下の部品:レンズ、ミラー、光フィルタ、減衰器、ビームステアリング部品、ビーム整形部品のどれも含まなくてもよいか、それらの中から1つ、またはそれらの中から1つより多い部品を含んでもよい)を含むことができ、パルス光源6-106からの出力光パルス6-122に作用し、かつ/またはパルス光源6-106からの出力光パルス6-122を分析機器6-160に結合するように構成され得る。分析システム6-160は、試料分析のために光パルスを少なくとも1つの反応チャンバに導き、少なくとも1つの反応チャンバから1つまたは複数の光信号(例えば、蛍光、後方散乱線)を受信し、受信した光信号を表す1つまたは複数の電気信号を生成するように構成される複数のコンポーネントを含むことができる。一部の実施形態では、分析システム6-160は、1つまたは複数の光検出器を含むことができ、また、光検出器からの電気信号を処理するように構成された信号処理電子機器(例えば、1つまたは複数のマイクロコントローラ、1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ、論理ゲート等)を含むこともできる。分析システム6-160はまた、外部デバイス(例えば、機器6-100が1つまたは複数のデータ通信リンクを介して接続できるネットワーク上の1つまたは複数の外部デバイス)へ、およびその外部デバイスからデータを送信および受信するように構成されたデータ送信ハードウェアを含むこともできる。一部の実施形態では、分析システム6-160は、分析される1つまたは複数の試料を保持するバイオオプトエレクトロニクスチップ6-140を受け入れるように構成され得る。
【0181】
図6Bは、コンパクトなパルス光源6-108を含むポータブル分析機器6-100のさらに詳細な例を示す。この例では、パルス光源6-108は、コンパクトな受動的モードロックレーザモジュール6-113を備える。受動的モードロックレーザは、外部パルス信号の印加をせずに、自律的に光パルスを生成することができる。一部のインプリメンテーションでは、モジュールは機器のシャーシまたはフレーム6-103に取り付けることができ、機器の外側ケーシングの内側に配置することができる。一部の実施形態によれば、パルス光源6-106は、光源を操作し、光源6-106からの出力ビームに対して操作するために使用され得る追加のコンポーネントを含むことができる。モードロックレーザ6-113は、レーザの縦周波数モードの位相ロックを誘発する、レーザキャビティ内の、またはレーザキャビティに結合された要素(例えば、可飽和吸収体、音響光学変調器、カーレンズ)を備えることができる。レーザキャビティは、キャビティエンドミラー6-111、6-119によって部分的に画定することができる。このような周波数モードのロックは、レーザのパルス動作をもたらし(例えば、キャビティ内パルス6-120がキャビティエンドミラー間で往復する)、部分的に透過する一方のエンドミラー6-111から出力光パルス6-122のストリームを生成する。
【0182】
一部の場合、分析機器6-100は、取り外し可能でパッケージ化されたバイオオプトエレクトロニクスまたはオプトエレクトロニクスチップ6-140(「使い捨てチップ」とも呼ばれる)を受け入れるように構成される。使い捨てチップは、例えば、複数の反応チャンバ、光励起エネルギーを反応チャンバに送達するように構成された集積光学部品、および反応チャンバからの蛍光発光を検出するように構成された集積光検出器を備えるバイオオプトエレクトロニクスチップを含むことができる。一部のインプリメンテーションでは、チップ6-140は、1回の使用後に使い捨てにすることができるが、他のインプリメンテーションでは、チップ6-140を2回以上再利用することができる。チップ6-140が機器6-100によって受け取られると、それは、パルス光源6-106および分析システム6-160内の装置と電気的および光学的に通信することができる。電気通信は、例えば、チップパッケージ上の電気接点を通じて行われてもよい。
【0183】
一部の実施形態では、図6Bを参照すると、使い捨てチップ6-140は、追加の電子機器を含むことができるプリント回路基板(PCB)等の電子回路基板6-130上に(例えば、ソケット接続を介して)取り付けることができる。例えば、PCB6-130は、電力、1つまたは複数のクロック信号、および制御信号をオプトエレクトロニクスチップ6-140に提供するように構成された回路、ならびに反応チャンバから検出された蛍光発光を表す信号を受信するように構成された信号処理回路を含むことができる。オプトエレクトロニクスチップから戻されたデータは、機器6-100上の電子機器によって部分的または全体的に処理され得るが、一部のインプリメンテーションでは、データはネットワーク接続を介して1つまたは複数の遠隔データプロセッサに送信され得る。PCB6-130はまた、オプトエレクトロニクスチップ6-140の導波路に結合された光パルス6-122の光結合および電力レベルに関連するフィードバック信号をチップから受信するように構成された回路を含むこともできる。フィードバック信号は、光パルス6-122の出力ビームの1つまたは複数のパラメータを制御するために、パルス光源6-106および光学システム6-115の一方または両方に提供することができる。一部の場合、PCB6-130は、光源および光源6-106における関連回路を操作するために、パルス光源6-106に電力を提供または経路指定することができる。
【0184】
一部の実施形態によれば、パルス光源6-106は、コンパクトなモードロックレーザモジュール6-113を備える。モードロックレーザは、利得媒体6-105(一部の実施形態では固体材料であり得る)、出力カプラ6-111、およびレーザキャビティエンドミラー6-119を備えることができる。モードロックレーザの光キャビティは、出力カプラ6-111およびエンドミラー6-119に結合することができる。レーザキャビティの光軸6-125は、レーザキャビティの長さを長くし、所望のパルス繰り返し率を提供するために、1つまたは複数の折り目(曲がり)を有することができる。パルス繰り返し率は、レーザキャビティの長さ(例えば、光パルスがレーザキャビティ内を往復する時間)によって決定される。
【0185】
一部の実施形態では、ビーム整形、波長選択、および/またはパルス形成のために、レーザキャビティ内に追加の光学素子(図6Bには示さず)が存在してもよい。一部の場合、エンドミラー6-119は、縦キャビティモードの受動的モードロックを誘導し、結果としてモードロックレーザのパルス動作をもたらす可飽和吸収ミラー(SAM)を備える。モードロックレーザモジュール6-113は、利得媒体6-105を励起するためのポンプ源(例えば、レーザダイオード、図6Bには示さず)をさらに含むことができる。モードロックレーザモジュール6-113のさらなる詳細は、代理人整理番号R0708.70025US01の下で2017年12月15日に出願された「コンパクトなモードロックレーザモジュール(Compact Mode-Locked Laser Module)」と題する米国特許出願第15/844,469号に見出すことができ、これを本願明細書に援用する。
【0186】
レーザ6-113がモードロックされている場合、キャビティ内パルス6-120は、エンドミラー6-119と出力カプラ6-111との間を循環することができ、キャビティ内パルスの一部は出力カプラ6-111を介して出力パルス6-122として送信することができる。したがって、出力パルス6-122のトレーンは、キャビティ内パルス6-120がレーザキャビティ内の出力カプラ6-111とエンドミラー6-119との間で往復するときに出力カプラで検出することができる。
【0187】
一部のインプリメンテーションによれば、ビームステアリングモジュール6-150は、パルス光源6-106から出力パルスを受信することができ、オプトエレクトロニクスチップ6-140の光カプラ(例えば、格子カプラ)上への光パルスの少なくとも位置および入射角を調整するように構成される。一部の場合、パルス光源6-106からの出力パルス6-122は、オプトエレクトロニクスチップ6-140上の光カプラにおけるビーム形状および/またはビーム回転を追加的または代替的に変更するために、ビームステアリングモジュール6-150によって操作され得る。一部のインプリメンテーションでは、ビームステアリングモジュール6-150は、光カプラ上への出力パルスのビームの集束および/または偏光調整をさらに提供することができる。ビームステアリングモジュールの一例は、代理人整理番号R0708.70010US02の下で2016年5月20日に出願された「パルスレーザおよび生物学的分析システム(Pulsed Laser and Bioanalytic System)」と題する米国特許出願第15/161,088号に記載されており、これを本願明細書に援用する。ビームステアリングモジュールの別の例は、代理人整理番号R0708.70024US01の下で2017年12月14日に出願され、「コンパクトなビーム成形およびステアリングアセンブリ(Compact Beam Shaping and Steering Assembly)」と題する別個の米国特許出願第15/842,720号に記載されており、これを本願明細書に援用する。
【0188】
図6Cは、一部の実施形態による、1つまたは複数の導波路を介してパルスレーザによって光学的に励起され得る並列反応チャンバの例を示す。図6Cを参照すると、パルス光源からの出力パルス6-122は、例えば、バイオオプトエレクトロニクスチップ6-140上の1つまたは複数の光導波路6-312に結合され得る。一部の実施形態では、光パルスは、格子カプラ6-310を介して1つまたは複数の導波路に結合され得るが、一部の実施形態では、オプトエレクトロニクスチップ上の1つまたは複数の光導波路の端部への結合が使用され得る。一部の実施形態によれば、クワッド検出器6-320が、光パルス6-122のビームの格子カプラ6-310へのアラインメントを支援するために半導体基板6-305(例えば、シリコン基板)上に配置され得る。1つまたは複数の導波路6-312および反応チャンバまたは反応チャンバ6-330は、基板、導波路、反応チャンバ、および光検出器6-322の間に誘電体層(例えば、二酸化ケイ素層)を介在させて同じ半導体基板上に集積することができる。
【0189】
各導波路6-312は、導波路に沿って反応チャンバに結合される光パワーを均質化するために、反応チャンバ6-330の下にテーパ部分6-315を含むことができる。テーパの減少により、より多くの光エネルギーが導波路のコアの外側に強制的に進められ、反応チャンバへの結合が増加し、反応チャンバへの光結合の損失を含む、導波路に沿った光損失を補償することができる。第2の格子カプラ6-317は、光エネルギーを集積フォトダイオード6-324に導くために各導波路の端部に配置することができる。集積フォトダイオードは、導波路の下方で結合された電力量を検出し、検出された信号を、例えば、ビームステアリングモジュール6-150を制御するフィードバック回路に提供することができる。
【0190】
反応チャンバ6-330または反応チャンバ6-330は、導波路のテーパ部分6-315とアラインメントされ、タブ6-340に埋め込まれ得る。各反応チャンバ6-330についての半導体基板6-305上に光検出器6-322を配置することができる。一部の実施形態では、半導体吸収体(図6-5では光フィルタ6-530として示される)が、各ピクセルにおいて導波路と光検出器6-322との間に配置され得る。金属コーティングおよび/または多層コーティング6-350を、反応チャンバの周囲および導波路の上に形成して、反応チャンバ内にない(例えば、反応チャンバの上の溶液中に分散している)フルオロフォアの光励起を阻止することができる。金属コーティングおよび/または多層コーティング6-350は、各導波路の入力端部および出力端部における導波路6-312内の光エネルギーの吸収損失を低減するために、タブ6-340の端を越えて高くなっていてもよい。
【0191】
オプトエレクトロニクスチップ6-140上には、複数の行の導波路、反応チャンバ、および時間ビニング光検出器が存在し得る。例えば、一部のインプリメンテーションでは、各々が512個の反応チャンバを有する128個の行があり、合計65,536個の反応チャンバがあってもよい。他のインプリメンテーションは、より少ないまたはより多くの反応チャンバを含んでもよく、他のレイアウト構成を含んでもよい。パルス光源6-106からの光パワーは、チップ6-140に対する光カプラ6-310と複数の導波路6-312との間に位置する、1つもしくは複数のスターカプラもしくはマルチモード干渉カプラを介して、または任意の他の手段によって、複数の導波路に分配することができる。
【0192】
反応チャンバ6-330内で起こる生物学的反応の非限定的な例を図6Dに示す。この例は、標的核酸に相補的な伸長鎖へのヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの逐次的な取り込みを示す。逐次的な取り込みは反応チャンバ6-330内で行うことができ、DNAをシークエンシングするための先端分析機器によって検出することができる。反応チャンバは、約150nmから約250nmの間の深さ、および約80nmから約160nmの間の直径を有することができる。メタライゼーション層6-540(例えば、電気的な基準電位のためのメタライゼーション)を光検出器6-322の上にパターン化して、隣接する反応チャンバおよび他の不要な光源からの迷光を遮断するアパーチャまたは絞りを提供することができる。一部の実施形態によれば、ポリメラーゼ6-520は、反応チャンバ6-330内に位置することができる(例えば、チャンバの底部に取り付けられる)。ポリメラーゼは、標的核酸6-510(例えば、DNAに由来する核酸の一部)を取り込み、相補的核酸の伸長鎖をシークエンシングして、DNA6-512の伸長鎖を生成することができる。異なるフルオロフォアで標識されたヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログは、反応チャンバの上および反応チャンバ内の溶液中に分散させることができる。
【0193】
VII.チップ再利用技術の応用
このように、単一のデバイスによって処理される試料の数を増加させるためにセンサチップを再利用するための複数の技術を説明してきたが、ここで、チップ再利用技術の例示的な応用について説明する。例えば、本発明者らは、解析中の試料中の1つまたは複数の分子の同定が、本明細書に記載される技術と組み合わせて実施できることを認識した。特に、放出光の1つまたは複数の特性の測定値を、本明細書に記載される集積デバイス等のデバイスによって取得することができ、収集された測定値を、蛍光マーカについての測定された特性の既知の値と比較して、どの蛍光マーカが放出光源である可能性が最も高いかを判定することができる。次に、蛍光マーカを同定することにより、蛍光マーカが付着することが知られている特定の種類の分子に基づいて、蛍光マーカが付着している分子の同一性を知ることができる。
【0194】
本明細書に記載される技術は、例えば、代理人整理番号R0708.70042US02の下で2019年11月15日に出願された「タンパク質シークエンシングのための方法および組成物(METHODS AND COMPOSITIONS FOR PROTEIN SEQUENCING)」と題する米国特許出願第16/686,028号、代理人整理番号R0708.70042WO00の下で2019年11月15日に出願された「タンパク質シークエンシングのための方法および組成物(METHODS AND COMPOSITIONS FOR PROTEIN SEQUENCING)」と題するPCT出願第PCT/US19/61831号、および代理人整理番号R0708.70090US01の下で2021年3月2日に出願された「多次元信号解析のための集積センサ(INTEGRATED SENSOR FOR MULTI-DIMENSIONAL SIGNAL ANALYSIS)」と題する米国特許出願第17/190,331号に記載されている技術を含む、試料中の分子を検出および/または同定するための技術と組み合わせて使用することができ、これらの各々は、それらの全体を本願明細書に援用する。このような技術は、例えば、タンパク質シークエンシングおよび/または核酸(例えば、DNAおよび/またはRNA)シークエンシングの応用に使用され得る。
【0195】
核酸シークエンシング
本開示の一部の態様は、核酸およびタンパク質等の生物学的ポリマーのシークエンシングに有用である。一部の実施形態では、本開示に記載される方法、組成物、およびデバイスは、(例えば、一連の標識されたヌクレオチドまたはアミノ酸モノマーの取り込みの時間経過を検出することによって)核酸またはタンパク質に取り込まれる一連のヌクレオチドまたはアミノ酸モノマーを同定するために使用され得る。一部の実施形態では、本開示に記載される方法およびデバイスは、ポリメラーゼ酵素によって合成される鋳型依存性核酸シークエンシング反応生成物に取り込まれる一連のヌクレオチドを同定するために使用され得る。
【0196】
一部の実施形態では、核酸シークエンシングは、カップリング部分および/またはコーティング分子を介して固体支持体の表面にコーティングされる(例えば、試料ウェルの底面に付着された)目的の核酸を提供することを含む。一部の実施形態では、カップリング部分-コーティング分子コンジュゲートは、ビオチンカップリング部分とウェルの表面にコーティングされたストレプトアビジンカップリング部分との間の連結によって形成される。
【0197】
一部の態様では、標的核酸をシークエンシングする方法が提供される。一部の実施形態では、標的核酸をシークエンシングする方法は、(i)(a)前記標的核酸、(b)前記標的核酸に相補的なプライマー、(c)核酸ポリメラーゼ、および(d)前記標的核酸に相補的な伸長核酸鎖に取り込むためのヌクレオチドを含む混合物を提供する工程であって、前記ヌクレオチドは、異なる種類の発光標識されたヌクレオチドを含み、前記発光標識されたヌクレオチドは、前記伸長核酸鎖への逐次的な取り込み中に検出可能なシグナルを生成し、前記異なる種類の発光標識されたヌクレオチドの検出可能なシグナルは、タイムドメインで互いに区別可能である(例えば、検出可能なシグナルのタイミングおよび/または頻度を決定することによって)、工程;(ii)プライマーの伸長によって前記伸長核酸鎖を生成するのに十分な条件下で、(i)の前記混合物を重合反応に供する工程;(iii)前記伸長核酸鎖への逐次的な取り込み後、前記発光標識されたヌクレオチドからの前記検出可能なシグナルを測定する工程;ならびに(iv)前記伸長核酸鎖への逐次的な取り込みの際の前記発光標識されたヌクレオチドからの前記測定された検出可能なシグナルのタイミングおよび/または頻度を決定して、前記伸長核酸鎖への前記発光標識されたヌクレオチドの取り込みの時系列を特定し、それによって前記標的核酸の配列を決定する工程を含む。
【0198】
一部の態様では、(i)標的体積の試料ウェル中の複合体を1つまたは複数の標識されたヌクレオチドに曝露する工程であって、複合体は、試料中に存在する標的核酸または複数の核酸、前記標的核酸に相補的な少なくとも1つのプライマー、およびDNAポリメラーゼを含む、工程;(ii)プライマーの伸長によって伸長核酸鎖を生成するのに十分な条件下で複合体を重合反応に供する工程;(iii)励起光の一連のパルスを標的体積に方向付ける工程;(iv)プライマーを含む伸長核酸へのヌクレオチドの逐次的な取り込みの後、1つまたは複数の標識されたヌクレオチドから放出された複数の光子を検出する工程;ならびに(v)放出された光子の1つまたは複数の特性を決定することによって、取り込まれたヌクレオチドの配列を特定する工程を含む、シークエンシングする方法が提供される。これらの特性は、発光寿命、保持時間、発光強度、発光波長、パルス持続時間、および/またはパルス間持続時間から選択され得る。一部の実施形態では、特性は発光寿命である。
【0199】
一部の実施形態では、遊離ヌクレオチドは、発光標識されたヌクレオチドについての検出可能なシグナルがタイムドメインにおいて互いに区別可能(例えば、検出可能なシグナルのタイミング、強度および/または頻度を決定することによって)であるように、同じ種類の発光標識にコンジュゲートされる。例示的な実施形態では、遊離ヌクレオチドは同じ種類の標識にコンジュゲートされ、検出可能なシグナルの強度の差がタイムドメイン内で測定される。ポリメラーゼによって標的核酸に相補的な伸長核酸鎖に取り込まれたヌクレオチドは、遊離ヌクレオチドよりも長い持続時間の間、検出領域に留まり、そのため、それらの強度は取り込まれていないヌクレオチドよりも大きくおよび/または長くなる。
【0200】
一部の実施形態では、遊離ヌクレオチド(例えば、4種類のヌクレオチド)は、発光標識されたヌクレオチドについての検出可能なシグナルがタイムドメインにおいて互いに区別可能(例えば、検出可能なシグナルのタイミング、強度および/または頻度を決定することによって)であるように、異なる種類の発光標識に各々コンジュゲートされる。ポリメラーゼによって標的核酸に相補的な伸長核酸鎖に取り込まれたヌクレオチドは、遊離ヌクレオチドよりも長い持続時間の間、検出領域に留まり、そのため、それらの強度は取り込まれていないヌクレオチドよりも大きくおよび/または長くなる。
【0201】
本明細書に提供されるチップ再生方法の実施形態は、高精度および長い読み取り長さ、例えば、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、もしくは99.9999%の精度、および/または約10塩基対(bp)、50bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、1000bp、2,500bp、5,000bp、6,000bp、7,000bp、7,500bp、7,750bp、8,000bp、8,500bp、9,000bp、10,000bp、20,000bp、30,000bp、40,000bp、50,000bp、もしくは100,000bp以上の読み取り長さで単一の核酸分子をシークエンシングすることができる。例示的な実施形態では、開示される方法は、約70%、約72.5%、約74%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約92%の精度で単一の核酸分子をシークエンシングすることができる。一部の実施形態では、開示される方法は、約94%の精度で単一の核酸分子をシークエンシングすることができる。例示的な実施形態では、開示される方法は、約8500塩基対の読み取り長さで単一の核酸分子をシークエンシングすることができる。
【0202】
一部の実施形態では、標的核酸または核酸ポリメラーゼは支持体に付着される。一部の実施形態では、取り込みの時系列は、(i)の混合物を重合反応に供した後に特定される。一部の実施形態では、本出願の態様は、生体試料をアッセイするために、例えば、試料中の1つもしくは複数の核酸もしくはポリペプチドの配列を決定するために、および/または試料中の1つもしくは複数の核酸もしくはポリペプチドのバリアント(例えば、目的の遺伝子における1つまたは複数の変異)の存在または不在を決定するために使用され得る。一部の実施形態では、診断、予後、および/または治療の目的のために、核酸配列情報を提供するため、または目的の1つもしくは複数の核酸の存在もしくは不在を決定するために、患者試料(例えば、ヒト患者試料)に対して検査を実施することができる。一部の例では、診断検査は、例えば、対象の生体試料中の無細胞デオキシリボ核酸(DNA)分子および/または発現産物(例えば、リボ核酸(RNA))をシークエンシングすることによって、対象の生体試料中の核酸分子をシークエンシングすることを含み得る。
【0203】
一部の実施形態では、発光寿命および/または強度を使用して分析される(例えば、調査および/または同定される)1つまたは複数の分析物は、標識された分子(例えば、1つまたは複数の発光マーカで標識された分析物)であり得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の生体分子を含む分析物はマーカを使用して同定され得る。いくつかの例では、発光マーカが生体分子の個々のサブユニットを同定するのに使用される。一部の実施形態は、外因性または内因性マーカであり得る発光マーカ(本明細書において「マーカ」とも呼ばれる)を使用する。外因性マーカは、発光標識するためのレポーターおよび/またはタグとして使用される外部発光マーカであり得る。外因性マーカの例として、蛍光分子、フルオロフォア、蛍光色素、蛍光剤染色剤、有機色素、蛍光タンパク質、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に関与する種、酵素、および/または量子ドットを挙げることができるが、ただしこれらに限定されない。その他の外因性マーカも当技術分野において公知である。そのような外因性マーカは、特定の標的またはコンポーネントと特異的に結合するプローブまたは官能基(例えば、分子、イオン、および/またはリガンド)にコンジュゲートし得る。外因性タグまたはレポーターをプローブに連結させれば、外因性タグまたはレポーターの存在を検出することによって標的の同定が可能となる。プローブの例として、タンパク質、核酸(例えば、DNA、RNA)分子、脂質、および抗体プローブを挙げることができる。外因性マーカと官能基を組み合わせることで、分子プローブ、標識されたプローブ、ハイブリダイゼーションプローブ、抗体プローブ、タンパク質プローブ(例えば、ビオチン結合プローブ)、酵素標識、蛍光プローブ、蛍光タグ、および/または酵素レポーターを含む、検出で使用される任意の適するプローブ、タグ、および/または標識を形成することができる。
【0204】
一部の実施形態では、4つのヌクレオチドからなるセットにおける発光標識は、芳香族またはヘテロ芳香族化合物を含む色素から選択することができ、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンズインドール、オキサゾール、カルバゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、フェナントリジン、フェノキサジン、ポルフィリン、キノリン、エチジウム、ベンズアミド、シアニン、カルボシアニン、サリチレート、アントラニレート、クマリン、フルオレセイン、ローダミン、またはその他同様の化合物であり得る。例示的色素として、キサンテン色素、例えばフルオレセイン等、またはローダミン色素、ナフタレン色素、クマリン色素、アクリジン色素、シアニン色素、ベンゾキサゾール色素、スチルベン色素、ピレン色素、フタロシアニン色素、フィコビリンタンパク質色素、スクアライン(squaraine)色素、ボディパイ(BODIPY)色素等が挙げられる。
【0205】
一部の実施形態では、4つのヌクレオチドからなるセットにおける発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)546、Cy(登録商標)3B、Alexa Fluor(登録商標)555、およびAlexa Fluor(登録商標)555、ならびにFRET pair Alexa Fluor(登録商標)555およびCy(登録商標)3.5を含む。一部の実施形態では、4つのヌクレオチドからなるセットにおける発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3.5、Alexa Fluor(登録商標)546、およびDyLight(登録商標)554-R1を含む。一部の実施形態では、4つのヌクレオチドからなるセットにおける発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3.5、ATTO Rho6G、およびDyLight(登録商標)554-R1を含む。一部の実施形態では、4つのヌクレオチドからなるセットにおける発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3B、ATTO Rho6G、およびDyLight(登録商標)554-R1を含む。一部の実施形態では、4つのヌクレオチドからなるセットにおける発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3B、ATTO542、およびDyLight(登録商標)554-R1を含む。一部の実施形態では、4つのヌクレオチドからなるセットにおける発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3B、ATTO542、およびAlexa Fluor(登録商標)546を含む。一部の実施形態では、4つのヌクレオチドからなるセットにおける発光標識は、Cy(登録商標)3.5、Cy(登録商標)3B、ATTO Rho6G、およびDyLight(登録商標)554-R1を含む。
【0206】
ある特定の実施形態では、発光標識されたヌクレオチドの種類のうち、少なくとも1種類、少なくとも2種類、少なくとも3種類、または少なくとも4種類は、6-TAMRA、5/6-カルボキシローダミン6G、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)610、Alexa Fluor(登録商標)647、Aberrior Star635、ATTO425、ATTO465、ATTO488、ATTO495、ATTO514、ATTO520、ATTO Rho6G、ATTO542、ATTO647N、ATTO Rho14、Chromis630、Chromis654A、Chromeo(商標)642、CF(商標)514、CF(商標)532、CF(商標)543、CF(商標)546、CF(商標)546、CF(商標)555、CF(商標)568、CF(商標)633、CF(商標)640R、CF(商標)660C、CF(商標)660R、CF(商標)680R、Cy(登録商標)3、Cy(登録商標)3B、Cy(登録商標)3.5、Cy(登録商標)5、Cy(登録商標)5.5、ディオミクス(Dyomics)-530、ディオミクス(Dyomics)-547P1、ディオミクス(Dyomics)-549P1、ディオミクス(Dyomics)-550、ディオミクス(Dyomics)-554、ディオミクス(Dyomics)-555、ディオミクス(Dyomics)-556、ディオミクス(Dyomics)-560、ディオミクス(Dyomics)-650、ディオミクス(Dyomics)-680、DyLight(登録商標)554-R1、DyLight(登録商標)530-R2、DyLight(登録商標)594、DyLight(登録商標)635-B2、DyLight(登録商標)650、DyLight(登録商標)655-B4、DyLight(登録商標)675-B2、DyLight(登録商標)675-B4、DyLight(登録商標)680、HiLyte(商標)Fluor532、HiLyte(商標)Fluor555、HiLyte(商標)Fluor594、LightCycler(登録商標)640R、Seta(商標)555、Seta(商標)670、Seta(商標)700、Seta(商標)u647、およびSeta(商標)u665からなる群から選択される発光色素を含むか、または本明細書に記載されるような、式(色素101)、(色素102)、(色素103)、(色素104)、(色素105)、または(色素106)の発光色素である。
【0207】
一部の実施形態では、発光標識されたヌクレオチドの種類のうち、少なくとも1種類、少なくとも2種類、少なくとも3種類、または少なくとも4種類は、それぞれ、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3B、Cy(登録商標)3.5、DyLight(登録商標)554-R1、Alexa Fluor(登録商標)546、Atto Rho6G、ATTO425、ATTO465、ATTO488、ATTO495、ATTO514、ATTO520、ATTO Rho6G、およびATTO542からなる群から選択される発光色素を含む。
【0208】
一部の実施形態では、第1の種類の発光標識されたヌクレオチドはAlexa Fluor(登録商標)546を含み、第2の種類の発光標識されたヌクレオチドはCy(登録商標)3Bを含み、第3の種類の発光標識されたヌクレオチドは2つのAlexa Fluor(登録商標)555を含み、および第4の種類の発光標識されたヌクレオチドはAlexa Fluor(登録商標)555およびCy(登録商標)3.5を含む。
【0209】
一部の実施形態では、発光標識されたヌクレオチドの種類のうち、少なくとも1種類、少なくとも2種類、少なくとも3種類、または少なくとも4種類は、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)610、CF(商標)532、CF(商標)543、CF(商標)555、CF(商標)594、Cy(登録商標)3、DyLight(登録商標)530-R2、DyLight(登録商標)554-R1、DyLight(登録商標)590-R2、DyLight(登録商標)594、DyLight(登録商標)610-B1からなる群から選択される発光色素を含むか、または式(色素101)、(色素102)、(色素103)、(色素104)、(色素105)、または(色素106)の発光色素である。
【0210】
一部の実施形態では、第1および第2の種類の発光標識されたヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、CF(商標)532、CF(商標)543、CF(商標)555、Cy(登録商標)3、DyLight(登録商標)530-R2、DyLight(登録商標)554-R1からなる群から選択される発光色素を含み、ならびに第3および第4の種類の発光標識されたヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)610、CF(商標)594、DyLight(登録商標)590-R2、DyLight(登録商標)594、DyLight(登録商標)610-B1からなる群から選択される発光色素を含むか、または式(色素101)、(色素102)、(色素103)、(色素104)、(色素105)、または(色素106)の発光色素である。
【0211】
ある特定の実施形態では、発光標識されたヌクレオチド分子のうちの少なくとも1種類、少なくとも2種類、少なくとも3種類、または少なくとも4種類は、TagBFP、mTagBFP2、Azurite、EBFP2、mKalama1、シリウス(Sirius)、サファイヤ(Sapphire)、T-サファイヤ(Sapphire)、ECFP、セルーリアン(Cerulean)、SCFP3A、mターコイズ(mTurquoise)、mターコイズ(mTurquoise)2、単量体ミドリイシイ・シアン(Midoriishi-Cyan)、TagCFP、mTFP1、EGFP、エメラルド(Emerald)、スーパーフォルダー(Superfolder)GFP、単量体アザミグリーン(Azami Green)、TagGFP2、mUKG、mワサビ(mWasabi)、クローバー(Clover)、mネオングリン(mNeonGreen)、EYFP、シトリン(Citrine)、ヴィーナス(Venus)、SYFP2、TagYFP、単量体クサビラ・オレンジ(Kusabira-Orange)、mKOK、mKO2、mオレンジ(mOrange)、mオレンジ(mOrange)2、mラズベリー(mRaspberry)、mチェリー(mCherry)、mストロベリー(mStrawberry)、mタンジェリン(mTangerine)、tdトマト(tdTomato)、TagRFP、TagRFP-T、mアップル(mApple)、mルビー(mRuby)、mルビー(mRuby)2、mプラム(mPlum)、HcRed-タンデム(HcRed-Tandem)、mKate2、mネプチューン(mNeptune)、NirFP、TagRFP657、IFP1.4、iRFP、mケイマレッド(mKeima Red)、LSS-mケイト(mKate)1、LSS-mケイト(mKate)2、mBeRFP、PA-GFP、PAmチェリー(PAmCherry)1、PATagRFP、カエデ(Kaede)(green)、カエデ(Kaede)(red)、KikGR1(green)、KikGR1(red)、PS-CFP2、mEos2(green)、mEos2(red)、PSmOrange、またはドロンパ(Dronpa)からなる群から選択される発光タンパク質を含む。
【0212】
本開示は発光マーカについて言及しているが、その他の種類のマーカも、本明細書に提示されるデバイス、システムおよび方法と共に使用され得る。そのようなマーカは、質量タグ、静電タグ、電気化学的標識、または任意のこれらの組合せであり得る。
【0213】
外因性マーカが試料に添加され得るが、内因性マーカがすでに試料の一部分であることもある。内因性マーカには、励起エネルギーの存在下で発光するかまたは「自己蛍光を発する」ことができる現存する任意の発光マーカが含まれ得る。内因性フルオロフォアの自己蛍光は、外因性フルオロフォアの導入を必要としない、ラベルフリーの非侵襲的標識化を提供し得る。そのような内因性フルオロフォアの例には、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、脂質、コラーゲンおよびエラスチン架橋、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、酸化型フラビン(FADおよびFMN)、リポフスチン、ケラチン、ならびに/またはポルフィリンが、例としておよび非限定的に含まれる。
【0214】
本開示は、異なる分子を標識するための発光タグ(例えば、発光マーカ、発光標識)のセットを使用しながら、単一分子を検出するための技術を提示する。そのような単一分子は、タグを有するヌクレオチドまたはアミノ酸であり得る。タグは、単一分子に結合している間に単一分子から放出された際に、または単一分子に結合し、そして放出された際に検出され得る。いくつかの事例では、タグは発光性タグである。選択されたセット内の各発光性タグは各分子と会合する。例えば、4つのタグからなるセットは、DNA内に存在する核酸塩基を「標識する」のに使用され得る-セットの各タグは異なる核酸塩基と会合し、例えば、第1のタグはアデニン(A)と会合し、第2のタグはシトシン(C)と会合し、第3のタグはグアニン(G)と会合し、そして第4のタグはチミン(T)と会合する。それに加えて、タグのセット内の発光タグのそれぞれは、セットの第1のタグをセット内のその他のタグから区別するのに使用され得る異なる特性を有する。このように、各タグは、これらの識別的な特徴のうちの1つまたは複数を使用して一義的に特定可能である。例としておよび非限定的に、1つのタグを別のタグから区別するのに使用され得るタグの特徴には、励起エネルギーに応答してタグにより放出された光の発光エネルギーおよび/または波長、特定のタグにより吸収され、タグを励起した状態に置く励起光の波長、および/またはタグの発光寿命が含まれ得る。
【0215】
ある特定の実施形態では、鋳型依存性核酸シークエンシング産物が、天然に存在する核酸ポリメラーゼにより実施される。一部の実施形態では、ポリメラーゼは、天然に存在するポリメラーゼの突然変異体または改変されたバリアントである。一部の実施形態では、鋳型依存性核酸シークエンシング産物は、鋳型核酸鎖に対して相補的な1つまたは複数のヌクレオチドセグメントを含む。1つの態様では、本開示は、その相補的な核酸鎖の配列を決定することにより、鋳型(または標的)核酸鎖の配列を決定する方法を提供する。
【0216】
用語「ポリメラーゼ」とは、本明細書で使用される場合、重合反応を触媒する能力を有する任意の酵素(または重合化酵素)を一般的に指す。ポリメラーゼの例として、非限定的に、核酸ポリメラーゼ、転写酵素、またはリガーゼが挙げられる。ポリメラーゼは重合酵素であり得る。
【0217】
単一分子の核酸伸長(例えば、核酸シークエンシングのため)に関する実施形態は、標的核酸分子に対して相補的な核酸を合成する能力を有する任意のポリメラーゼを使用し得る。一部の実施形態では、ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、および/またはその1つまたは複数の突然変異体または変化形態であり得る。
【0218】
ポリメラーゼの例として、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、耐熱性ポリメラーゼ、野生型ポリメラーゼ、改変されたポリメラーゼ、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼI、T7DNAポリメラーゼ、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼφ29(psi29)DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tliポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、VENTポリメラーゼ、DEEPVENTポリメラーゼ、EX-Taqポリメラーゼ、LA-Taqポリメラーゼ、Ssoポリメラーゼ、Pocポリメラーゼ、Pabポリメラーゼ、Mthポリメラーゼ、ES4ポリメラーゼ、Truポリメラーゼ、Tacポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tmaポリメラーゼ、Tcaポリメラーゼ、Tihポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、Platinum Taqポリメラーゼ、Tbrポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Pfutuboポリメラーゼ、Pyrobestポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Sacポリメラーゼ、Klenow断片、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、ならびにそのバリアント、改変された産物、および誘導体が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。一部の実施形態では、ポリメラーゼは単一サブユニットポリメラーゼである。DNAポリメラーゼの非限定的な例およびその特性は、とりわけ、DNA Replication 2nd edition、コーンバーグおよびベーカー(Kornberg and Baker)、ダブリュー・エイチ・フリーマン(W.H.Freeman)、New York,N.Y.(1991)に詳記されている。
【0219】
標的核酸の核酸塩基と相補的なdNTPとの間で塩基対が形成されると、ポリメラーゼは、新規に合成された鎖の3’ヒドロキシル末端とdNTPのアルファリン酸との間でホスホジエステル結合を形成することにより、新規に合成された核酸鎖にdNTPを組み込む。dNTPにコンジュゲートした発光タグがフルオロフォアである実施例において、その存在は励起によりシグナル伝達され、そして組み込み工程期間中またはその後に発光のパルスが検出される。dNTPの末端(ガンマ)リン酸にコンジュゲートした検出標識の場合、dNTPが新規に合成された鎖に組み込まれると、ベータおよびガンマリン酸が放出され、そして試料ウェル内で自由に拡散する検出標識は、フルオロフォアから検出される発光の減少を引き起こす。
【0220】
一部の実施形態では、ポリメラーゼは高処理性のポリメラーゼである。しかしながら、一部の実施形態では、ポリメラーゼは低処理性のポリメラーゼである。ポリメラーゼの処理性とは、核酸鋳型を放出せずに、dNTPを核酸鋳型中に連続的に組み込むポリメラーゼの能力を一般的に指す。一部の実施形態では、ポリメラーゼは、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性および/または3’→5’エキソヌクレアーゼ(活性)が低いポリメラーゼである。一部の実施形態では、対応する野生型ポリメラーゼと比較して、それより低下した5’→3’エキソヌクレアーゼ活性および/または3’→5’活性を有するように、ポリメラーゼは改変される(例えば、アミノ酸置換により)。DNAポリメラーゼのさらなる非限定的な例として、9°Nm(商標)DNAポリメラーゼ(ニューイグランドバイオラボ社(New England Biolabs)、およびクレノウ(Klenow)エキソポリメラーゼのP680G突然変異体(ツスケら(Tuske et al.)(2000)JBC 275(31):23759-23768)が挙げられる。一部の実施形態では、ポリメラーゼが有する処理性が低ければ、ヌクレオチド反復の1つまたは複数のストレッチ(例えば、同一種類の2つ以上の連続した塩基)を含有するシークエンシング鋳型に対して正確性が向上する。一部の実施形態では、ポリメラーゼは、非標識核酸に対するよりも標識ヌクレオチドに対してより高い親和性を有するポリメラーゼである。
【0221】
他の態様では、本開示は、標的核酸が断片を含む場合に、複数の核酸断片をシークエンシングすることにより標的核酸をシークエンシングする方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、親標的核酸についてその配列または部分配列を提供するために、複数の断片配列を組み合わせる工程を含む。一部の実施形態では、組み合わせる工程は、コンピューターハードウェアおよびソフトウェアにより実施される。本明細書に記載される方法は、関連する標的核酸のセット、例えば染色体またはゲノム全体等の配列決定を可能にし得る。
【0222】
シークエンシング中、重合化酵素は、標的核酸分子のプライミング位置とカップリングし(例えば、それに連結し)得る。プライミング位置は、標的核酸分子の一部分に対して相補的であるプライマーであり得る。あるいは、プライミング位置は、標的核酸分子の二本鎖セグメント内に提供されるギャップまたはニックである。ギャップまたはニックは、長さが0から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、または40個のヌクレオチドであり得る。ニックは、二本鎖配列の一方の鎖内に切断箇所を提供することができる(重合化酵素、例えば鎖置換型ポリメラーゼ酵素等のためのプライミング位置を提供し得る)。
【0223】
いくつかのケースでは、シークエンシングプライマーは、固体支持体に固定化されることもあれば、またされないこともある標的核酸分子に対してアニーリングされ得る。固体支持体は、例えば、核酸シークエンシングで使用されるマイクロチップ(またはチップ)上に試料ウェル(例えば、ナノアパーチャ、反応チャンバ)を備え得る。一部の実施形態では、シークエンシングプライマーは固体支持体に固定化され得るが、また標的核酸分子のハイブリダイゼーションでも、標的核酸分子を固体支持体に固定する。一部の実施形態では、ポリメラーゼが固体支持体に固定化され、そして可溶性プライマーおよび標的核酸がポリメラーゼと接触する。しかしながら、一部の実施形態では、ポリメラーゼ、標的核酸、およびプライマーを含む複合体が溶液の状態で形成され、そして複合体は固体支持体に固定化される(例えば、ポリメラーゼ、プライマー、および/または標的核酸の固定化を介して)。
【0224】
適切な条件下では、アニーリングしたプライマー/標的核酸に接触するポリメラーゼ酵素は、1つまたは複数のヌクレオチドをプライマーに添加するかまたは組み込むことができ、またいくつかのヌクレオチドが、5’→3’の方向、鋳型依存性の様式でプライマーに添加可能である。ヌクレオチドのそのようなプライマーへの組み込み(例えば、ポリメラーゼの作用を介して)は、プライマー伸長反応と一般的に呼ばれ得る。各ヌクレオチドは、核酸伸長反応期間中に検出可能および同定可能(例えば、その発光寿命および/またはその他の特徴に基づき)であり、また伸長されたプライマーに組み込まれた各ヌクレオチド、したがって新規に合成された核酸分子の配列を決定するのに使用される検出可能なタグと会合し得る。新規に合成された核酸分子の配列相補性を介して、標的核酸分子の配列も決定可能である。いくつかのケースでは、シークエンシングプライマーの標的核酸分子に対するアニーリング、およびヌクレオチドのシークエンシングプライマーへの組み込みが、類似した反応条件(例えば、同一または類似した反応温度)または異なる反応条件(例えば、異なる反応温度)において生じ得る。
【0225】
したがって、一部の態様では、本開示は、核酸生体分子からヌクレオチド配列情報を決定するための(例えば、ポリヌクレオチドをシークエンシングするための)方法および組成物を提供する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列情報は、単一の核酸生体分子について決定可能である。本開示のシークエンシング法は、「合成によるシークエンシング」アッセイ法を含み得る。本開示のシークエンシング法は、タイムコース(またはタイムドメイン)測定アッセイ法を含み得る。一部の実施形態では、合成によるシークエンシング法は、標的核酸分子の集団(例えば、標的核酸のコピー)の提示、および/または標的核酸の集団を実現するために標的核酸を増幅させる工程を含み得る。しかしながら、一部の実施形態では、合成によるシークエンシングは、評価される各反応において単一分子の配列を決定するのに使用される(そしてシークエンシングのための標的鋳型の調製において、核酸増幅は不要とされる)。一部の実施形態では、本出願の一部の態様によれば、複数の単一分子シークエンシング反応が並行して(例えば、単一のチップ上で)実施される。例えば、一部の実施形態では、複数の単一分子シークエンシング反応が、単一のチップ上に作製された分離型の反応チャンバ(例えば、ナノアパーチャ、試料ウェル)内でそれぞれ実施される。
【0226】
一部の実施形態では、開示される核酸シークエンシング法は、相補的な金属酸化物半導体(CMOS)チップ上に作製された試料ウェル内で実施される。各ウェルは、CMOSフォトダイオードに対してアラインメントされ得る。一部の実施形態では、開示される核酸シークエンシング法は、ベンチトップ集積デバイスと連携してCMOSチップ上で実施される。一部の実施形態では、シークエンシング法は、1チャネルまたは複数チャネル光検出式の合成による配列決定型集積デバイスと連携して、CMOSチップ上で実施される(図2Aを参照)。
【0227】
一部の実施形態では、発光標識されたヌクレオチドの核酸は、第1および第2のオリゴヌクレオチド鎖の少なくとも1つに対してアニーリングされる第3のオリゴヌクレオチド鎖をさらに含む。一部の実施形態では、核酸は、第1、第2、および第3のオリゴヌクレオチド鎖の少なくとも1つに対してアニーリングされる第4のオリゴヌクレオチド鎖をさらに含む。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチド鎖は、ホリデイジャンクションを形成する。
【0228】
一部の態様では、本開示は鋳型核酸の配列を決定する方法を提示する。一部の実施形態では、方法は、標的体積内の複合体(複合体は鋳型核酸、プライマー、および重合化酵素を含む)を、複数種類の発光標識されたヌクレオチドに曝露することを含む工程を含む。一部の実施形態では、各種類の発光標識されたヌクレオチドは、核酸を介して1つまたは複数のヌクレオシドポリホスフェートと結びついた1つまたは複数の発光標識を含む(例えば、同一の発光標識を含むかまたは異なる発光標識を含む)。一部の実施形態では、核酸は保護分子を含む。したがって、一部の態様では、本開示は、本明細書に記載される発光標識されたヌクレオシドポリホスフェート組成物のいずれかを利用する核酸シークエンシング法を提示する。
【0229】
一部の実施形態では、方法は、1つまたは複数の励起エネルギーの一連のパルスを標的体積の近傍に向けて方向付ける工程をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、プライマーを含む核酸への逐次的な組み込み期間中に、発光標識されたヌクレオチドから発した複数の放出光子を検出する工程をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、放出光子のタイミングおよび必要に応じて周波数を決定することにより、組み込まれたヌクレオチドの配列を特定する工程をさらに含む。
【0230】
一部の実施形態では、反応混合物内の異なる4種類のヌクレオチド(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミン/ウラシル)は、それぞれ、1つまたは複数の発光分子(例えば、1つまたは複数の発光標識)で標識され得る。一部の実施形態では、各種類のヌクレオチドは、2つ以上の同一の発光分子(例えば、ヌクレオチドに結びついた2つ以上の同一の蛍光色素)に結びつくことができる。一部の実施形態では、各発光分子は、2つ以上のヌクレオチド(例えば、2つ以上の同一ヌクレオチド)に結びつくことができる。一部の実施形態では、2つ以上のヌクレオチドは、2つ以上の発光分子に結びつくことができる(例えば、1つまたは複数の保護分子を含む核酸リンカーを介して)。一部の実施形態では、4つのヌクレオチドすべてが、同一のスペクトル範囲(例えば、520~570nm)内で吸収および放出する発光分子で標識される。
【0231】
一部の実施形態は、高い正確性および長いリード長、例えば少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、もしくは99.9999%の正確性、および/または約10塩基対(bp)、50bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、1000bp、10,000bp、20,000bp、30,000bp、40,000bp、50,000bp、もしくは100,000bp以上のリード長等を有して、単一の核酸分子をシークエンシングする能力を有する。一部の実施形態では、単一分子のシークエンシングで使用される標的核酸分子は、固体支持体、例えば試料ウェルの底部または側壁等に固定されるかまたは連結した、シークエンシング反応の少なくとも1つの追加コンポーネント(例えば、DNAポリメラーゼ等のポリメラーゼ、シークエンシングプライマー)を含有する試料ウェル(例えば、ナノアパーチャ)に添加または固定化される一本鎖標的核酸(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、DNA誘導体、リボ核酸(RNA)、RNA誘導体)鋳型である。標的核酸分子またはポリメラーゼは、試料壁、例えば試料ウェルの底部または側壁等に、直接またはリンカーを介して連結可能である。試料ウェル(例えば、ナノアパーチャ)は、プライマー伸長反応を介する核酸合成に必要とされる任意のその他の試薬、例えば適する緩衝剤、補助因子、酵素(例えば、ポリメラーゼ)等、ならびにデオキシリボヌクレオシドポリホスフェート、例えばデオキシリボヌクレオシドトリホスフェート、(デオキシアデノシントリホスフェート(dATP)、デオキシシチジントリホスフェート(dCTP)、デオキシグアノシントリホスフェート(dGTP)、デオキシウリジントリホスフェート(dUTP)、およびデオキシチミジントリホスフェート(dTTP)を含む)dNTP等を含有し得るが、これらは発光タグ、例えばフルオロフォア等を含む。一部の実施形態では、dNTP(例えば、アデニン含有dNTP(例えば、dATP)、シトシン含有dNTP(例えば、dCTP)、グアニン含有dNTP(例えば、dGTP)、ウラシル含有dNTP(例えば、dUTP)、およびチミン含有dNTP(例えば、dTTP))の各クラスが、タグから放出された光の検出が新規に合成された核酸に組み込まれたdNTPの同一性を示すように、異なる発光タグにコンジュゲートしている。蛍光タグからの放射光は、例えば本明細書において別途記載されるような検出用のデバイスおよび方法等を含む、任意の適するデバイスおよび/または方法を介して検出可能、およびその該当する蛍光タグ(したがって、関連するdNTP)に帰属可能である。蛍光タグは、蛍光タグの存在が新規に合成された核酸鎖へのdNTPの組み込みを阻害しない、またはポリメラーゼの活性を阻害しないような任意の位置においてdNTPにコンジュゲートし得る。一部の実施形態では、蛍光タグはdNTPの末端リン酸(例えば、ガンマリン酸)にコンジュゲートしている。
【0232】
一部の実施形態では、一本鎖標的核酸鋳型は、核酸合成に必要なシークエンシングプライマー、dNTP、ポリメラーゼ、およびその他の試薬と接触し得る。一部の実施形態では、すべての該当するdNTPが、dNTPの組み込みが連続して生じ得るように、一本鎖標的核酸鋳型と同時に接触し得る(例えば、すべてのdNTPが同時に存在する)。他の実施形態では、dNTPは一本鎖標的核酸鋳型と逐次的に接触し得るが、その場合、一本鎖標的核酸鋳型が異なるdNTPと接触する間に洗浄工程を設けながら、一本鎖標的核酸鋳型は各該当するdNTPと個別に接触する。一本鎖標的核酸鋳型を各dNTPと個別に接触させ、その後洗浄するそのようなサイクルは、同定される一本鎖標的核酸鋳型の連続する各塩基位置に対して反復され得る。
【0233】
一部の実施形態では、シークエンシングプライマーが一本鎖標的核酸鋳型に対してアニーリングし、そしてポリメラーゼが、一本鎖標的核酸鋳型に基づき、dNTP(またはその他のデオキシリボヌクレオシドポリホスフェート)をプライマーに連続的に組み込む。組み込まれた各dNTPと会合する固有の発光タグは、dNTPをプライマーに組み込む期間中またはその後に適する励起光を用いて励起され得るが、またその発光は、本明細書において別途記載される検出用のデバイスおよび方法を含む、任意の適するデバイス(複数可)および/または方法(複数可)を使用してその後検出され得る。光(例えば、特定の放射(発光)寿命、強度、スペクトル、および/またはその組合せを有する)の特定の放射を検出することで、その検出を組み込まれた特定のdNTPに帰属することができる。検出された発光タグの収集から得られた配列は、次に配列相補性を介して一本鎖標的核酸鋳型の配列を決定するのに使用され得る。
【0234】
本開示はdNTPについて言及するが、本明細書に提示されるデバイス、システム、および方法は、様々な種類のヌクレオチド、例えばリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチド等(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、または10個のリン酸基を有するデオキシリボヌクレオシドポリホスフェート)と共に使用され得る。そのようなリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドは、様々な種類のタグ(またはマーカ)およびリンカーを含み得る。一部の実施形態では、本開示は、各内容を本願明細書に援用する、米国特許出願第14/543,865号、同第14/543,867号、同第14/543,888号、同第14/821,656号、同第14/821,686号、同第14/821,688号、同第15/161,067号、同第15/161,088号、同第15/161,125号、同第15/255,245号、同第15/255,303号、同第15/255,624号、同第15/261,697号、および同第15/261,724号に記載されている技術において有利に利用され得る方法および組成物を提供する。
【0235】
ヌクレオチドが組み込まれた際に放出されたシグナルはメモリ内に保管され、そして標的核酸鋳型の配列を決定するために後ほど処理され得る。これは、組み込まれたヌクレオチドの同一性を時間の関数として決定するために、シグナルを参照シグナルと比較することを含み得る。二者択一的または付加的に、ヌクレオチドが組み込まれた際に放出されたシグナルは、収集され、そして標的核酸鋳型の配列をリアルタイムで決定するためにリアルタイム処理され得る(例えば、ヌクレオチドが組み込まれた際に)。
【0236】
用語「核酸」とは、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の核酸サブユニットを含む分子を一般的に指す。核酸は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)、またはそのバリアントから選択される1つまたは複数のサブユニットを含み得る。いくつかの事例では、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)もしくはリボ核酸(RNA)、またはその誘導体である。核酸は一本鎖または二本鎖であり得る。核酸は環状であり得る。
【0237】
用語「ヌクレオチド」とは、本明細書で使用される場合、核酸サブユニット(A、C、G、T、もしくはU、またはそのバリアントもしくはアナログを含み得る)を一般的に指す。ヌクレオチドは、増殖する核酸鎖に組み込み可能である任意のサブユニットを含み得る。そのようなサブユニットは、A、C、G、T、またはUであるか、あるいは1つもしくは複数の相補的A、C、G、T、もしくはUに対して特異的であるか、またはプリン(例えば、AもしくはG、またはそのバリアントもしくはアナログ)もしくはピリミジン(例えば、C、T、もしくはU、またはそのバリアントもしくはアナログ)に対して相補的である任意のその他のサブユニットであり得る。サブユニットは、個々の核酸塩基、または塩基の群(例えば、AA、TA、AT、GC、CG、CT、TC、GT、TG、AC、CA、またはそのウラシルカウンターパート)の溶解を可能にすることができる。
【0238】
ヌクレオチドは、ヌクレオシドおよび少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ超のリン酸(PO)基を一般的に含む。ヌクレオチドは、核酸塩基、五炭糖(リボースまたはデオキシリボースのいずれか)、および1つまたは複数のリン酸基を含み得る。リボヌクレオチドは、糖がリボースであるヌクレオチドである。デオキシリボヌクレオチドは、糖がデオキシリボースであるヌクレオチドである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドモノホスフェートまたはヌクレオシドポリホスフェートであり得る。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオシドポリホスフェート、例えばデオキシリボヌクレオシドトリホスフェート等であり得、それはデオキシアデノシントリホスフェート(dATP)、デオキシシチジントリホスフェート(dCTP)、デオキシグアノシントリホスフェート(dGTP)、デオキシウリジントリホスフェート(dUTP)およびデオキシチミジントリホスフェート(dTTP)dNTPから選択され得るが、これらは検出可能なタグ、例えば発光タグまたはマーカ等(例えば、フルオロフォア)を含む。
【0239】
ヌクレオシドポリホスフェートは「n個」のリン酸基を有し得るが、ただし「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上の数である。ヌクレオシドポリホスフェートの例として、ヌクレオシドジホスフェートおよびヌクレオシドトリホスフェートが挙げられる。ヌクレオチドは、末端リン酸が標識されたヌクレオシド、例えば末端リン酸が標識されたヌクレオシドポリホスフェート等であり得る。そのような標識は、発光性(例えば、蛍光性または化学発光性)の標識、蛍光誘発性の標識、有色の標識、発色性の標識、質量タグ、静電標識、または電気化学的標識であり得る。標識(またはマーカ)はリンカーを介して末端リン酸と結びつくことができる。リンカーは、例えば少なくとも1つまたは複数のヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アミノ基、またはハロアルキル基を含み得、それらは、例えば、天然または改変されたヌクレオチドの末端リン酸において、リン酸エステル、チオエステル、ホスホルアミデート、またはアルキルホスホナート結合を形成するのに適すると考えられる。リンカーは、例えば重合酵素の支援を得る等して末端リン酸から標識を分離するように、切断可能であり得る。ヌクレオチドおよびリンカーの例は、本願明細書に援用する米国特許第7,041,812号明細書に提示されている。
【0240】
ヌクレオチド(例えば、ヌクレオチドポリホスフェート)は、メチル化された核酸塩基を含み得る。例えば、メチル化されたヌクレオチドは、核酸塩基に連結した(例えば、核酸塩基の環に直接連結した、核酸塩基の環の置換基に連結した)1つまたは複数のメチル基を含むヌクレオチドであり得る。例示的なメチル化された核酸塩基として、1-メチルチミン、1-メチルウラシル、3-メチルウラシル、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、1-メチルアデニン、2-メチルアデニン、7-メチルアデニン、N6-メチルアデニン、N、N-ジメチルアデニン、1-メチルグアニン、7-メチルグアニン、N-メチルグアニン、およびN、N-ジメチルグアニンが挙げられる。
【0241】
用語「プライマー」とは、本明細書で使用される場合、A、C、G、T、および/またはU、あるいはそのバリアントまたはアナログを含む配列を含み得る核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチド)を一般的に指す。プライマーは、DNA、RNA、PNA、またはそのバリアントもしくはアナログを含む合成オリゴヌクレオチドであり得る。プライマーは、そのヌクレオチド配列が標的鎖に対して相補的であるように設計され得るか、またはプライマーはランダムヌクレオチド配列を含み得る。一部の実施形態では、プライマーは、尾部(例えば、ポリA尾部、インデックスアダプター、分子バーコード等)を含み得る。一部の実施形態では、プライマーは、5~15塩基、10~20塩基、15~25塩基、20~30塩基、25~35塩基、30~40塩基、35~45塩基、40~50塩基、45~55塩基、50~60塩基、55~65塩基、60~70塩基、65~75塩基、70~80塩基、75~85塩基、80~90塩基、85~95塩基、90~100塩基、95~105塩基、100~150塩基、125~175塩基、150~200塩基、または200塩基超を含み得る。
【0242】
ペプチドシークエンシング
一部の実施形態では、本開示の態様は、生体試料をアッセイするのに、例えば、試料中の1つもしくは複数のポリペプチドの同一性もしくは配列を決定し、および/または試料中の1つもしくは複数のバリアント(例えば、目的のポリペプチド内の1つまたは複数のアミノ酸置換)の有無を判定するのに使用可能である。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物には、ペプチド分解工程期間中に単一分子結合相互作用を検出することによるペプチドシークエンシング(「ポリペプチドシークエンシング」とも呼ばれる)を施すことができる。一部の実施形態では、目的のペプチドは、表面に共有結合的または非共有結合的に連結している。
【0243】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドのシークエンシングとは、ポリペプチドについて配列情報を決定することを指す。一部の実施形態では、これは、ポリペプチドの一部(または全部)について、連続する各アミノ酸の同一性を決定することを伴い得る。しかしながら、一部の実施形態では、これは、ポリペプチド内のアミノ酸のサブセットの同一性を評価すること(および、例えば、ポリペプチド内の各アミノ酸の同一性を決定することなく、1つまたは複数のアミノ酸の種類について、その相対的な位置を決定すること)を伴い得る。一部の実施形態では、アミノ酸含有量情報は、ポリペプチド内の異なる種類のアミノ酸の相対的位置を直接決定することなく、ポリペプチドから取得可能である。アミノ酸含有量は、それ単独で、存在するポリペプチドの同一性を推測するのに使用され得る(例えば、アミノ酸含有量をポリペプチド情報のデータベースと比較し、そしてどのポリペプチド(複数可)が同一のアミノ酸含有量を有するか決定することにより)。
【0244】
一部の態様では、本明細書に提示されるペプチドをシークエンシングするための方法は、ポリペプチドの1種類または複数種類のアミノ酸を特定することにより実施され得る。一部の実施形態では、ポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸(例えば、末端アミノ酸および/または内部アミノ酸)は標識され(例えば、結合剤、例えばアミノ酸認識分子等を使用しながら、例えば直接的または間接的に)、そしてポリペプチド内の標識されたアミノ酸の相対的な位置が決定される。一部の実施形態では、ポリペプチド内のアミノ酸の相対的な位置は、一連のアミノ酸標識を使用して決定される。ある特定の実施形態では、ポリペプチド内のアミノ酸の相対的な位置は、一連の標識工程および切断工程を使用して決定される。しかしながら、一部の実施形態では、ポリペプチド内の標識されたアミノ酸の相対的な位置は、ポリペプチドからアミノ酸を取り除くことなく、むしろ標識されたポリペプチドを、孔(例えば、タンパク質チャネル)を通じて配置転換させ、そしてポリペプチド分子内の標識されたアミノ酸の相対的な位置を決定するために、孔を通じて配置転換させる期間中に標識されたアミノ酸(複数可)からのシグナル(例えば、FRETシグナル)を検出することにより決定可能である。
【0245】
一部の実施形態では、末端アミノ酸(例えば、N末端またはC末端アミノ酸)の同一性が評価され、その後に、末端アミノ酸が除去され、そして末端に位置する次のアミノ酸の同一性が評価されるが、この工程は、ポリペプチド内の複数の連続するアミノ酸が評価されるまで、繰り返される。一部の実施形態では、アミノ酸の同一性を評価する工程は、存在するアミノ酸の種類の決定を含む。一部の実施形態では、アミノ酸の種類の決定は、例えば、天然に存在する20個のアミノ酸のうちのどれが末端アミノ酸であるか決定することにより(例えば、個々の末端アミノ酸に対して特異的である結合剤を使用しながら)、実際のアミノ酸の同一性を決定する工程を含む。一部の実施形態では、アミノ酸の種類は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セレノシステイン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンから選択される。
【0246】
しかしながら、一部の実施形態では、末端アミノ酸種類の同一性を評価する工程は、ポリペプチドの末端に存在し得る潜在的アミノ酸のサブセットを決定する工程を含み得る。一部の実施形態では、これは、アミノ酸は1つまたは複数の特定のアミノ酸ではない(したがって、その他のアミノ酸のいずれかであり得る)ことを決定することにより実現可能である。一部の実施形態では、これは、アミノ酸の特定のサブセットのどれが(例えば、サイズ、電荷、疎水性、翻訳後修飾、結合特性に基づき)、ポリペプチドの末端に位置し得るか(例えば、2つ以上の末端アミノ酸の特定のサブセットと結合する結合剤を使用しながら)決定することにより実現可能である。一部の実施形態では、末端アミノ酸種類の同一性を評価する工程は、アミノ酸が翻訳後修飾を含むことを決定する工程を含む。
【0247】
一部の実施形態では、本明細書に提示される方法は、ポリペプチドを、1種類の末端アミノ酸に選択的に結合する標識されたアミノ酸認識分子と接触させる工程を含む。一部の実施形態では、標識された認識分子は、その他の種類の末端アミノ酸よりも、1種類の末端アミノ酸に選択的に結合する。一部の実施形態では、標識された認識分子は、同一種類の内部アミノ酸よりも1種類の末端アミノ酸に選択的に結合する。なおも他の実施形態では、標識された認識分子は、ポリペプチドの任意の位置において1種類のアミノ酸、例えば末端アミノ酸および内部アミノ酸と同一種類のアミノ酸に選択的に結合する。
【0248】
一部の実施形態では、ポリペプチドシークエンシングは、1種類または複数種類の末端アミノ酸と会合するポリペプチドを1つまたは複数のアミノ酸認識分子と接触させることにより進行可能である。一部の実施形態では、標識されたアミノ酸認識分子は、末端アミノ酸と会合することによりポリペプチドと相互作用する。
【0249】
一部の実施形態では、標識された認識分子の1つまたは複数の電気的特徴を検出することにより、1種類または複数種類のアミノ酸が同定される。一部の実施形態では、標識された認識分子は、1種類のアミノ酸に選択的に結合する認識分子、および認識分子と会合する伝導度標識を含む。このように、1つまたは複数の電気的特徴(例えば、電荷、電流振動カラー(current oscillation color)、およびその他の電気的特徴)は、ポリペプチドのアミノ酸を同定するための認識分子の選択的結合と関連し得る。一部の実施形態では、複数種類の標識された認識分子が、本出願に基づく方法に使用され得るが、その場合、各種類は、複数の中から一意的に特定可能な電気信号の変化(例えば伝導性の変化、例えば伝導度の強度変化や特徴的なパターンの伝導度遷移等)を生成する伝導度標識を含む。一部の実施形態では、複数種類の標識された認識分子のそれぞれは、異なる数の荷電基(例えば、異なる数の負荷電基および/または正荷電基)を有する伝導度標識を含む。したがって、一部の実施形態では、伝導度標識は電荷標識である。電荷標識の例として、複数の荷電基を有するデンドリマー、ナノ粒子、核酸、およびその他のポリマーが挙げられる。一部の実施形態では、伝導度標識は、その正味電荷(例えば、正味の正電荷または正味の負電荷)により、その電荷密度により、および/またはその荷電基の数により一義的に特定可能である。
【0250】
したがって、一部の実施形態では、1種類または複数種類のアミノ酸に選択的に結合する1つまたは複数の標識されたアミノ酸認識分子の発光寿命または発光強度を検出することにより、1種類または複数種類のアミノ酸が同定される。一部の実施形態では、本明細書に提示される方法は、ポリペプチドを、1種類または複数種類の末端アミノ酸に選択的に結合する1つまたは複数の標識されたアミノ酸認識分子(または認識分子)と接触させる工程を含む。例証的および非限定的な例として、4つの標識された認識分子が本出願の方法で使用される場合、任意の1つの試薬が、1種類の末端アミノ酸(他の3試薬のいずれかが選択的に結合する別の種類のアミノ酸とは異なる)に選択的に結合する(例えば、第1の試薬は第1の種類の末端アミノ酸に結合し、第2の試薬は第2の種類の末端アミノ酸に結合し、第3の試薬は第3の種類の末端アミノ酸に結合し、そして第4の試薬は第4の種類の末端アミノ酸に結合する)。
【0251】
一部の実施形態では、認識分子は、従来知られている技術を使用しながら、当業者により工学操作され得る。一部の実施形態では、望ましい特性は、1種類のアミノ酸がポリペプチドの末端(例えば、N末端またはC末端)に位置するときに限り、高い親和性を有してそれに選択的に結合する能力を含み得る。なおも他の実施形態では、望ましい特性は、1種類のアミノ酸がポリペプチドの末端(例えば、N末端またはC末端)に位置するとき、およびポリペプチドの内部位置に位置するときに、高い親和性を有してそれに選択的に結合する能力を含み得る。一部の実施形態では、望ましい特性には、2種類以上のアミノ酸に、低親和性を有しながら(例えば、約50nM以上、例えば約50nM~約50μMの間、約100nM~約10μMの間、約500nM~約50μMの間のKを有しながら)選択的に結合する能力が含まれる。例えば、一部の態様では、本開示は、可逆的結合相互作用を検出することによりシークエンシングする方法を提示する。有利には、そのような方法は、低親和性を有しながら2種類以上のアミノ酸(例えば、アミノ酸タイプのサブセット)に可逆的に結合する認識分子を使用して実施され得る。
【0252】
一部の実施形態では、ポリペプチドシークエンシングは、カップリング部分および/またはコーティング分子を通じて固体支持体の表面体にコーティングされた(例えば、試料ウェルの底部表面に連結した)目的のポリペプチドを提供することを含む。一部の実施形態では、カップリング部分-コーティング分子コンジュゲートは、ウェルの表面にコーティングされたビオチンカップリング部分とストレプトアビジンカップリング部分との間のリンケージにより形成される。
【0253】
一部の実施形態では、目的のポリペプチドは、カップリング部分を通じて、一方の末端部において表面に固定化される一方、他方の末端部はシークエンシング反応において末端アミノ酸が検出および切断されるように自由な状態にある。したがって、一部の実施形態では、ある特定のポリペプチドシークエンシング反応で使用される試薬は、ポリペプチドの非固定化された(例えば、遊離した)末端において、末端アミノ酸と選好的に相互作用する。このように、ポリペプチドは、検出および切断の反復したサイクルにおいて固定化されたまま存続する。
【0254】
一部の実施形態では、ポリペプチドシークエンシングは、ポリペプチドを、1種類または複数種類の末端アミノ酸と会合する1つまたは複数のアミノ酸認識分子と接触させることにより進めることができる。一部の実施形態では、標識されたアミノ酸認識分子は、末端アミノ酸と会合することによりポリペプチドと相互作用する。
【0255】
一部の実施形態では、方法は、標識されたアミノ酸認識分子を検出することによりポリペプチドのアミノ酸(末端または内部アミノ酸)を同定する工程をさらに含む。一部の実施形態では、検出する工程は、標識されたアミノ酸認識分子から発した発光を検出する工程を含む。一部の実施形態では、発光は標識されたアミノ酸認識分子と一義的に関連し、これにより、発光は標識されたアミノ酸認識分子が選択的に結合するアミノ酸の種類と関連する。したがって、一部の実施形態では、標識されたアミノ酸認識分子の1つまたは複数の発光特性を決定することにより、アミノ酸の種類が特定される。
【0256】
他の実施形態では、ポリペプチドシークエンシングは、ポリペプチドをエキソペプチダーゼ(ポリペプチドの末端アミノ酸に結合し、それを切断する)と接触させることにより末端アミノ酸を取り除くことによって進行する。エキソペプチダーゼにより末端アミノ酸が取り除かれると、ポリペプチドシークエンシングは、ポリペプチド(n-1個のアミノ酸を有する)を末端アミノ酸の認識および切断の追加サイクルに付すことにより進行する。一部の実施形態では、これらの工程は、例えば、動的ペプチドシークエンシング反応の場合と同じ反応混合物において生じ得る。一部の実施形態では、これらの工程は、当技術分野において公知のその他の方法、例えばエドマン分解によるペプチドシークエンシング等を使用して実施され得る。
【0257】
一部の実施形態では、動的ポリペプチドシークエンシングは、末端アミノ酸と標識されたアミノ酸認識分子、および必要に応じて切断試薬(例えば、エキソペプチダーゼ)との結合相互作用を評価することによりリアルタイムで実施される。標識されたアミノ酸認識分子は、末端アミノ酸と会合(例えば、結合)し、それから解離し得るが、それは末端アミノ酸を特定するのに使用され得る信号アウトプットにおいて一連のパルスを惹起する。一部の実施形態では、一連のパルスは、対応する末端アミノ酸の同一性の診断に役立ち得るパルシングパターン(例えば、特徴的なパターン)を提供する。
【0258】
エドマン分解は、ポリペプチドの末端アミノ酸を修飾および切断する反復したサイクルを伴い、連続的に切断されたアミノ酸のそれぞれが同定され、ポリペプチドのアミノ酸配列が決定される。従来のエドマン分解によるペプチドシークエンシングは、(1)目的のポリペプチドを、1種類または複数種類の末端アミノ酸に選択的に結合する1つまたは複数のアミノ酸認識分子と接触させることにより実施可能である。一部の実施形態では、工程(1)は、ポリペプチドに選択的に結合しない1つまたは複数の標識されたアミノ酸認識分子のいずれかを取り除く工程をさらに含む。
【0259】
一部の実施形態では、動的ペプチドシークエンシングが、異なる会合事象、例えばアミノ酸認識分子とペプチドの末端に位置するアミノ酸との間の会合事象を観察することにより実施されるが、その場合、各会合事象は、シグナル、例えば発光シグナルの強度変化(ある期間遷延する)を生成する。
【0260】
一部の実施形態では、異なる会合事象、例えばアミノ酸認識分子とペプチドの末端に位置するアミノ酸との間の会合事象を観察することは、ペプチド分解工程期間中に実施可能である。一部の実施形態では、1つの特徴的なシグナルパターンから別のパターンへの移行は、アミノ酸切断(例えば、ペプチド分解に起因するアミノ酸切断)を示す。一部の実施形態では、アミノ酸切断とは、ポリペプチドの末端からの少なくとも1つのアミノ酸の除去(例えば、ポリペプチドからの少なくとも1つの末端アミノ酸の除去)を指す。一部の実施形態では、アミノ酸切断は、特徴的なシグナルパターン間の持続時間に基づく推定により決定される。一部の実施形態では、アミノ酸切断は、標識された切断試薬とポリペプチドの末端に位置するアミノ酸との会合により生成されたシグナルの変化を検出することにより決定される。一部の実施形態では、切断試薬(エキソペプチダーゼ)が使用される場合、アミノ酸は、分解期間中にポリペプチドの末端から逐次的に切断されるので、一連の強度変化または一連の信号パルスが検出される。
【0261】
一部の実施形態では、信号パルス情報は、一連の信号パルス内の特徴的なパターンに基づきアミノ酸を同定するのに使用され得る。一部の実施形態では、特徴的パターンは複数の信号パルスを含み、各信号パルスはパルス持続時間を含む。一部の実施形態では、複数の信号パルスが、特徴的パターンにおけるパルス持続時間の分布に関する要約統計量(例えば、平均、メジアン、時間減衰定数)により特徴付けられ得る。一部の実施形態では、特徴的パターンの平均パルス持続時間は、約1ミリセカンド~約10秒の間(例えば、約1ms~約1秒の間、約1ms~約100msの間、約1ms~約10msの間、約10ms~約10秒の間、約100ms~約10秒の間、約1秒~約10秒の間、約10ms~約100msの間、または約100ms~約500msの間)である。一部の実施形態では、単一のポリペプチド内の異なる種類のアミノ酸に対応する異なる特徴的パターンは、要約統計量における統計的有意差に基づき相互に区別され得る。例えば、一部の実施形態では、1つの特徴的パターンは、少なくとも10ミリセカンド(例えば、約10ms~約10秒の間、約10ms~約1秒の間、約10ms~約100msの間、約100ms~約10秒の間、約1秒~約10秒の間、または約100ms~約1秒の間)の平均パルス持続時間の差異に基づき、別の特徴的パターンから区別可能であり得る。一部の実施形態では、統計的信頼度を有してあるパターンを別のパターンと区別するには、異なる特徴的パターン間の平均パルス持続時間における差異が小さいほど、各特徴的パターンにおいてより多くのパルス持続時間を必要とし得るものと認識すべきである。
【0262】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載される化合物の任意の1つを試料ウェルの表面に連結することにより、ペプチドまたはアミノ酸認識分子を表面に固定する方法を提示する。一部の実施形態では、表面は、ペプチドの機能化された末端部に連結(例えば、共有結合)するように構成されたカップリング部分を用いて機能化される。一部の実施形態では、方法は、複数の試料ウェルそれぞれの表面に単一のペプチドを固定化する工程を含む。一部の実施形態では、試料ウェル毎に単一のペプチドを封じ込めることは、単一分子検出方法、例えば単一分子ペプチドシークエンシングにとって有利である。
【0263】
一部の実施形態では、機能化された末端部を含むペプチドは相補的なカップリング部分と接触する。一部の実施形態では、機能化された末端部およびカップリング部分は、非共有結合性の結合パートナー(例えば、ペプチドと試料ウェル表面の間に非共有結合性のリンケージを形成する)を含む。非共有結合性の結合パートナーの例として、タンパク質-タンパク質結合パートナー(例えば、バルナーゼ(barnase)およびバルスター(barstar))、およびタンパク質-リガンド結合パートナー(例えば、ビオチンおよびストレプトアビジン)が挙げられる。
【0264】
発光寿命測定を使用したシークエンシング
集積光検出器上の個々のピクセルは、分子または分子上の特定の位置等の1つまたは複数の標的を標識するフルオロフォアおよび/またはレポーターを特定するために使用される発光寿命測定を可能にすることができる。以下の説明は寿命測定に基づく試料の特定について論じているが、励起光に応答して反応チャンバから放出されるシグナルの1つまたは複数の追加または代替の特性が、試料を特定するために使用され得ることが理解されるべきである。例えば、その全体を本願明細書に援用する代理人整理番号R0708.70090US01の下で2021年3月2日に出願された「多次元信号解析のための集積センサ(INTEGRATED SENSOR FOR MULTI-DIMENSIONAL SIGNAL ANALYSIS)」と題する米国特許出願第17/190,331号に記載されている技術のいずれかを使用することができる。
【0265】
タンパク質、アミノ酸、酵素、脂質、ヌクレオチド、DNA、およびRNAを含む、任意の1つまたは複数の目的の分子は、フルオロフォアで標識され得る。放出された光のスペクトルの検出または他の標識化技術と組み合わせると、発光寿命は、使用され得るフルオロフォアおよび/またはレポーターの総数を増加させることができる。寿命に基づく特定は、タンパク質間相互作用、酵素活性、分子動力学、および/または膜上の拡散を含み得る、複合体混合物における分子相互作用の特性に関する情報を提供するために、単一分子の解析方法に使用され得る。さらに、異なる発光寿命を有するフルオロフォアを使用して、標識された成分の存在に基づく様々なアッセイ方法において標的成分をタグ付けすることができる。一部の実施形態では、フルオロフォアの特定の寿命の検出に基づいて、微小流体システムを使用する等して、成分を分離することができる。
【0266】
発光寿命の測定は、他の解析方法と組み合わせて使用され得る。例えば、発光寿命は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術と組み合わせて使用して、1つまたは複数の分子上に位置するドナーおよびアクセプターフルオロフォアの状態および/または環境を識別することができる。このような測定は、ドナーとアクセプターとの間の距離を決定するために使用され得る。一部の場合、ドナーからアクセプターへのエネルギー移動により、ドナーの寿命が減少する場合がある。別の例では、発光寿命測定は、異なる寿命を有する4つのフルオロフォアを使用して、DNA分子内の4つの異なるヌクレオチド(A、T、G、C)を未知のヌクレオチド配列で標識し得る場合等の、DNAシークエンシング用途で使用され得る。フルオロフォアの発光スペクトルの代わりに発光寿命が、ヌクレオチドの配列を特定するために使用され得る。特定の技術について発光スペクトルの代わりに発光寿命を使用することによって、絶対強度測定によるアーチファクトが減少するため、精度および測定分解能を向上させることができる。さらに、寿命測定により、より少ない励起エネルギー波長が必要とされ、および/またはより少ない発光エネルギー波長を検出する必要があるため、システムの複雑さおよび/または費用を軽減させることができる。
【0267】
一部の実施形態では、本開示に記載される集積光検出器は、発光寿命を測定または識別することができる。発光寿命の測定は、1つまたは複数の蛍光分子を励起し、放出される発光の時間変化を測定することに基づく。蛍光分子が励起状態に達した後に蛍光分子が光子を放出する確率は、時間の経過とともに指数関数的に減少する。この確率が減少する速度は、蛍光分子の特徴である場合があり、異なる蛍光分子では異なる場合がある。蛍光分子によって放出された光の時間特性を検出することにより、蛍光分子を特定すること、および/または蛍光分子を互いに対して識別することが可能になり得る。発光分子は、本明細書では発光マーカ(または単に「マーカ」)、標識およびフルオロフォアとも呼ばれる。
【0268】
励起状態に達した後、マーカは所与の時間に特定の確率で光子を放出することができる。励起されたマーカから光子が放出される確率は、マーカの励起後、時間の経過とともに減少する場合がある。時間の経過とともに光子が放出される確率の減少は、指数関数的減衰関数p(t)=e-t/τで表すことができ、式中、p(t)は時間tでの光子放出の確率であり、τはマーカの時間パラメータである。時間パラメータτは、マーカが光子を放出する確率が一定の値となる励起後の時間を示す。時間パラメータτは、その吸収および発光スペクトル特性とは異なり得るマーカの特性である。このような時間パラメータτは、マーカの発光寿命、または単に「寿命」と呼ばれる。一部の実施形態では、マーカは、0.1~20nsの範囲の発光寿命を有し得る。しかしながら、本明細書に記載される技術は、使用されるマーカの寿命に関して限定されない。
【0269】
マーカの寿命は、1つより多いマーカを区別するために使用されてもよく、および/またはマーカを特定するために使用されてもよい。一部の実施形態では、異なる寿命を有する複数のマーカが励起源によって励起される発光寿命の測定が実施され得る。一例として、それぞれ0.5、1、2、および3ナノ秒の寿命を有する4つのマーカが、選択された波長(例えば、例として635nm)を有する光を放出する光源によって励起され得る。マーカは、マーカによって放出される光の寿命の測定に基づいて、互いから特定または区別され得る。
【0270】
発光寿命の測定は、絶対強度値とは対照的に、時間の経過とともに強度がどのように変化するかを比較することによる相対強度測定を使用することができる。その結果として、発光寿命の測定は、絶対強度測定の困難の一部を回避することができる。絶対強度測定は、存在するフルオロフォアの濃度に依存する場合があり、様々なフルオロフォア濃度のために較正工程が必要になる場合がある。対照的に、発光寿命の測定は、フルオロフォアの濃度に非感受性である場合がある。
【0271】
寿命測定によってマーカ間を区別すると、発光スペクトルの測定によってマーカを区別する場合よりも、使用される励起光の波長をより少なくすることができる場合がある。一部の実施形態では、より少ない波長の励起光および/または発光性の光を使用する場合、センサ、フィルタ、および/または回折光学系の数を減らすか、または排除することができる。一部の実施形態では、標識化は、異なる寿命を有するマーカを用いて実施することができ、マーカは、同じ励起波長またはスペクトルを有する光によって励起することができる。一部の実施形態では、単一の波長またはスペクトルの光を放出する励起光源が使用されてもよく、これによりコストを削減することができる。しかしながら、任意の数の励起光の波長またはスペクトルを使用することができるため、本明細書に記載される技術はこの点に限定されない。一部の実施形態では、集積光検出器を使用して、受信した光に関するスペクトルおよび時間情報の両方を決定することができる。一部の実施形態では、存在する分子の種類の定量解析は、マーカから放出される発光の時間パラメータ、スペクトルパラメータ、または時間パラメータとスペクトルパラメータの組合せを決定することによって実施され得る。
【0272】
本出願の態様による集積光検出器を有する集積デバイスは、様々な検出およびイメージング用途に適した機能を備えて設計することができる。このような集積光検出器は、1つもしくは複数の時間間隔、または「時間ビン」内の光を検出する能力を有することができる。光の到達時間に関する情報を収集するために、入射光子に応答して電荷担体が生成され、それらの到達時間に基づいてそれぞれの時間ビンに分離され得る。
【0273】
入射光子の到達時間を検出する集積光検出器は、追加の光学フィルタリング(例えば、光学スペクトルフィルタリング)の要件を軽減することができる。以下に記載されるように、本出願による集積光検出器は、特定の時点で光生成担体を除去するためのドレインを含むことができる。この方法で光生成担体を除去することにより、励起光パルスに応答して生成される不要な電荷担体は、励起パルスからの光の受信を防ぐための光学フィルタリングを必要とせずに廃棄され得る。このような光検出器は、全体的な設計統合の複雑さ、光学および/もしくはフィルタリング部品、ならびに/またはコストを削減することができる。
【0274】
一部の実施形態では、発光寿命は、発光強度値を時間の関数として検出するために集積光検出器の1つまたは複数の時間ビン内に収集された電荷担体を集合させることにより放出された発光の時間プロファイルを測定することによって決定され得る。一部の実施形態では、マーカの寿命は、マーカが励起状態に励起され、次いで光子が放出される時間が測定される複数の測定を実施することによって決定され得る。各測定について、励起源はマーカに方向付けられた励起光のパルスを生成することができ、励起パルスとその後のマーカからの光子事象との間の時間が決定され得る。追加的または代替的に、励起パルスが繰り返しかつ周期的に発生する場合、光子放出事象が発生するときと、後続の励起パルスとの間の時間を測定することができ、測定された時間を励起パルス間の時間間隔(すなわち、励起パルス波形の周期)から減算して、光子吸収事象の時間を決定することができる。
【0275】
複数の励起パルスを用いてこのような実験を繰り返すことによって、励起後の特定の時間間隔内に光子がマーカから放出される事例の数を決定することができ、これは、励起後のこのような時間間隔内に光子が放出される確率を示す。収集された光子放出事象の数は、マーカに放出された励起パルスの数に基づき得る。測定期間にわたる光子放出事象の数は、一部の実施形態では50~10,000,000またはそれ以上の範囲であり得るが、本明細書に記載される技術はこの点に限定されない。励起後の特定の時間間隔内にマーカから光子が放出される事例の数は、一連の離散時間間隔または時間ビン内で発生する光子放出事象の数を表すヒストグラムに反映され得る。時間ビンの数および/または各ビンの時間間隔は、特定の寿命および/または特定のマーカを特定するために設定および/または調整され得る。時間ビンの数および/または各ビンの時間間隔は、放出された光子を検出するために使用されるセンサに依存する場合がある。時間ビンの数は、1、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上、例えば、16、32、64、またはそれ以上であってもよい。曲線適合アルゴリズムを使用して、記録されたヒストグラムに曲線を適合させることができ、その結果、所与の時間におけるマーカの励起後に光子が放出される確率を表す関数が得られる。上記の減衰関数p(t)=e-t/τを使用して、ヒストグラムデータを近似的に適合させることができる。このような曲線適合から、時間パラメータまたは寿命を決定することができる。決定された寿命をマーカの既知の寿命と比較して、存在するマーカの種類を特定することができる。
【0276】
寿命は、2つの時間間隔で取得された強度値から計算することができる。一部の実施形態では、光検出器は少なくとも2つの時間ビンにわたる強度を測定する。時間t1とt2との間に発光エネルギーを放出する光子は、光検出器によって強度I1として測定され、時間t3とt4との間に放出される発光エネルギーはI2として測定される。任意の適切な数の強度値を取得することができる。次いでこのような強度測定値は、寿命を計算するために使用され得る。1つのフルオロフォアが1度に存在する場合、時間ビニング発光シグナルを単一の指数関数的減衰に適合させることができる。一部の実施形態では、2つのみの時間ビンが、フルオロフォアについての寿命を正確に特定するために必要とされ得る。2つ以上のフルオロフォアが存在する場合、発光シグナルを二重または三重指数関数等の複数の指数関数的減衰に適合させることによって、組み合わせた発光シグナルから個々の寿命を特定することができる。一部の実施形態では、2つ以上の時間ビンが、このようなシグナルから1つより多い発光寿命を正確に特定するために必要とされ得る。しかしながら、複数のフルオロフォアを用いる一部の事例では、単一の指数関数的減衰を発光シグナルに適合させることによって平均発光寿命を決定することができる。
【0277】
一部の場合、光子放出事象の確率、したがってマーカの寿命は、周囲および/またはマーカの状態に基づいて変化し得る。例えば、励起光の波長よりも小さい直径を有する体積内に閉じ込められたマーカの寿命は、マーカがその体積中にない場合よりも短くなり得る。マーカが標識化のために使用される場合と同様の条件下で、既知のマーカを用いた寿命測定を実施することができる。既知のマーカを用いたそのような測定から決定された寿命は、マーカを特定するときに使用することができる。
【実施例2】
【0278】
本開示によるDNAシークエンシング用途におけるチップ再生の例示的な方法の実施後にシークエンシング精度のオンチップ評価を実施した。CMOSチップ上の試料ウェルのアレイに、目的の既知のDNA分子を含有する試料のアリコートを負荷した。この評価では、試料のアリコートに対する末端DNAシークエンシング性能の3回の逐次実行を実施した:1回目の実行は新しく、きれいなチップで実施した。2回目の実行は、本開示の例示的な再生溶液を適用した後に実施した。3回目の実行は、再生溶液をチップに2回目に適用した後に実施した。したがって、3回目の実行の結果は、2回目の再生工程の評価を表した。この実験で使用した再生溶液は、9mLのHFIP、0.5mLの5M酢酸アンモニウム、1mLの水、100μMから200μMの間の濃度のビオチン-PEG(ビス-ビオチン-PEG)を含有した。
【0279】
この実験の再生工程についてのワークアップは次の通りである。1回目のシークエンシング実行後、チップから残留物を除去し、次いでヌクレオシド消化ミックス(NEB#M0649)をチップに適用した。次いでチップを37℃で40分間インキュベートする。続いて、再生溶液をチップに適用し、チップをさらに室温で30分間インキュベートする。最後に、チップから再び残留物を除去する。
【0280】
2回目および3回目の実行の前に再生溶液を適用すると、試料ウェルの表面におけるストレプトアビジン-ビオチン相互作用が首尾良く解離されたようである。3回の実行の各々についてのヌクレオチドシークエンシングの読み取り長さおよび精度を測定し、図7Aおよび図7Bに示すグラフに表した。図7Bに示されるように、約74%の平均精度および94%以上の最大(または「最高」)精度を2回目および3回目の実行において観察した。実際、驚くべきことに、2回目および3回目の実行は、1回目の実行と同等の優れたシークエンシング性能を示した。したがって、この実験では、チップの再生および再利用により読み出しが改善された可能性がある。図7Aは、3回の実行から取得されたシグナル間の平均読み取り長を示し、これは、約8500bpの3回目の実行の間の読み取り長さを含んだ。図7Bはまた、分子の既知の配列に対する配列読み出しの各々の「アラインメントスコア」を示す。
【0281】
続いて、本開示によるペプチドシークエンシング用途におけるチップ再生の例示的な方法の実施後のシークエンシング精度のオンチップ評価を実施した。CMOSチップ上の試料ウェルのアレイに、目的の既知のペプチド分子を含有する試料のアリコートを負荷した。この評価では、試料のアリコートの8回の逐次実行を実施した。1回目の実行は新しく、きれいなチップで実施した。各連続実行を上記のように再生溶液を適用した後に実施した。この実験では、末端アミノ酸に結合する標識されたアミノ酸認識分子を使用して、目的のペプチドの存在を検出した。標識された認識分子の発光により、シグナル出力に一連のパルスが発生する。一連のパルスは、対応する末端アミノ酸の同一性を診断する特徴的なパルスパターンを提供する。この実験を、2つの異なるチップであるS42906-16-14およびS42906-16-19を使用して繰り返した。
【0282】
この実験の再生工程についてのワークアップは次の通りである。1回目のシークエンシング実行後、チップから残留物を除去し、次いで再生溶液をチップに適用し、チップを室温で30分間インキュベートする。最後に、チップから再び残留物を除去する。
【0283】
図8A図8Hに示されるシグナル出力結果において実証されるように、1回目の実行以降の実行についてのペプチド分子の精度および読み取り長さの結果は、予想を上回った。各実行について負荷したウェルのパーセンテージが図8Aにプロットされる。実行5~8についての負荷パーセンテージは25%を超えた。チップ上のウェルの総数のうち、能動的に負荷され、パルスしている試料ウェルのパーセンテージ(活性%)が図8Bにプロットされる。この図は、試料の約2.4%から17.5%の間が、実行2と実行8との間で能動的にパルスを示していたことを示す。実行5と実行8との間で、活性%の頻度は約15%であった。
【0284】
読み取り長さ1、2、および3(R1、R2、およびR3)のシークエンシング結果の精度が、8回の実行の各々について図8C~8Eにプロットされる。y軸は、プロットされている読み取り長さについてのシークエンシング読み出しを提供する試料ウェル(アパーチャ)のカウントを反映する。これらのカウントは、読み取り長さ1から読み取り長さ3に進むにつれて数が減少する。図8Eは、8回の実行の各々にわたるシグナル対ノイズ比(SNR)の中央値を示す。図8Gは、すべての読み取り長さにわたる平均切断深度を示す。図8Hは、3を超える読み取り長さを有する各実行についてのチップの活性ウェルの割合を示す。
【0285】
両方の実験の結果は、再生処理が、後で負荷されたアリコートをサンプリングするときに発生する、以前に負荷されたアリコートから放出されるシグナルから生じる顕著な干渉を生じなかったことを示し、したがって、チップから試料を除去するための実行可能な解決策を提示する。
【0286】
VIII. 光退色情報を使用した集積デバイス較正
本明細書に記載される技術の態様は、参照色素から取得される光退色情報を使用して、集積デバイスおよび/または集積デバイスと相互作用する1つまたは複数のコンポーネントを較正するための技法をさらに提供する。例えば、集積デバイスは、少なくとも1つの励起源をさらに含むシステムの一部であり得る。本明細書で説明される較正技法は、集積デバイスを備えるシステムを較正するために使用され得る。図9は、一部の実施形態による、光退色情報を使用して集積デバイスを備えるシステムを較正するための例示的なプロセス900を示す。
【0287】
動作902において、試料分子は、参照色素により標識され得る。例えば、参照色素は、少なくとも1つの光源からの光による励起に反応して放出光を放出する蛍光分子を含み得る。参照色素分子は、参照色素分子によって放出される放出光の特性が、参照色素分子が結合される試料分子を同定するために使用され得るように、特定の試料分子に結合する種類のものであり得る。
【0288】
動作904において、色素で標識された試料が1つまたは複数の反応チャンバ内に負荷される。例えば、一部の実施形態において、複数の反応チャンバから受信した信号の差を評価するために、同じ種類の複数の参照色素が複数の反応チャンバに負荷される。一部の実施形態において、本明細書に記載される技術の態様はこの点で限定されず、試料分子は、試料分子が複数の反応チャンバに負荷された後に参照色素で標識され得る。
【0289】
図10-1は、一部の実施形態による、表面1006に付着した参照色素分子1010で標識された試料分子1009を示す。図10-2は、一部の実施形態による、反応チャンバ内に付着された色素標識試料を図示する。特に、図10-2では、アミノ酸鎖(フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、ロイシン(L)、およびセリン(S))からなる試料分子1009が、反応チャンバ1008内に負荷される。試料分子1009は、参照色素分子1010で標識される。集積デバイスの概要を参照して本明細書で説明したように、参照色素分子1010によって放出されたシグナルを収集するためのフォトニックコンポーネント1012を含むCMOSチップ1014が設けられ得る。
【0290】
動作904は、1つまたは複数の反応チャンバが励起光により照射されていない間に実行され得る。一部の実施形態において、複数の色素で標識された試料分子が、動作904において複数の反応チャンバ内に負荷され得ることを理解されたい。
【0291】
一部の実施形態において、参照色素を有する試料分子は、反応チャンバ内に単独で負荷されてもよく、シークエンシングされる分子は、その後、反応チャンバ内に負荷されてもよい。一部の実施形態において、参照色素を有する分子は、較正プロセスを実行した後にシークエンシングされる分子と共に反応チャンバ内に負荷され得る。一部の実施形態において、参照色素は、シークエンシングされるべき分子自体に結合され得、参照色素は、シークエンシングを行う前に切断され得る。一部の実施形態において、参照色素は、反応チャンバ内に付着または他の方法で固定化される必要がない自由拡散色素分子であり得る。一部の実施形態において、参照色素は、チップの界面化学調製(surface chemistry preparation)の一部として反応チャンバ内に負荷され得る。従って、本技術の態様は、反応チャンバ内の参照色素の特定の構成に限定されない。一部の実施形態によれば、動作902は、2019年10月28日に出願された「METHODS OF PREPARING SAMPLES FOR MULTIPLEX POLYPEPTIDE SEQUENCING」と題する米国特許出願第17/082,906号(代理人整理番号R0708.70077US01)に記載されている技法を含み得、この出願は参照によりその全体が援用される。
【0292】
動作906において、1つまたは複数の反応チャンバが、光源(例えば、レーザ)からの励起光により照射される。特に、動作906において、1つまたは複数の反応チャンバが、(例えば、光源をブロック解除すること、光源をチップに再結合すること、および/またはシステムの特性退色時間(characteristic bleaching time)に対して速い時間内に光源によって供給される出力を増加させることによって)励起光により周期的に照射され得る。例えば、図11は、一部の実施形態による、経時的な光源励起出力を示す例示的なグラフ1100を示す。励起光は、一部の実施形態において、参照色素が退色されるまで、反応チャンバに照射され得る。一部の実施形態において、反応チャンバへの励起光の照射は、参照色素分子の退色を回避するように制御され得る。光退色参照色素分子のさらなる説明は、本明細書において提供される。
【0293】
動作908において、動作906において照射された1つまたは複数の試料分子を含む反応チャンバに関する退色ステップを示す時間トレースが記録される。例えば、図12-1は、一部の実施形態による、参照色素からの経時的に測定された信号を示す例示的なグラフ1200を示す。図12-1に示されるように、測定された信号は、強度が上昇し、その後、ある期間後に強度が低下する。測定された信号の強度の上昇と低下との間の期間は、参照色素分子の退色時間に相当し得る。
【0294】
動作910において、励起すべき追加の励起経路があるかどうかが判定される。動作910において、励起すべき追加の励起経路があると判定された場合、プロセス900は、「是」の分岐を通って動作906に戻り、追加の励起経路により追加の反応チャンバを照射する。動作910において、追加の励起経路が存在しないと判定された場合、プロセス900は、「否」の分岐を通って動作912に進行し得る。
【0295】
動作912において、参照メトリック(reference metrics)が保存され得る。例えば、参照メトリックは、動作908で取得された退色ステップを示す時間トレースを含み得る。例えば、図12-2は、一部の実施形態による、反応チャンバ内の単一分子の収集に関する測定された退色時間および色素強度の例示的なヒストグラムを示す。グラフ1902は、集積デバイスの反応チャンバ内に負荷された単一分子参照色素の収集に関する測定された退色時間のヒストグラムを示す。図12-2に示されるように、単一分子参照色素の収集に関するメジアン退色時間は、5.8秒である。グラフ1904は、集積デバイスの反応チャンバ内に負荷された単一分子参照色素の収集に関する測定された参照色素信号強度のヒストグラムを示す。一部の実施形態において、退色時間は、測定された信号強度に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。例えば、測定された信号強度はピークを示し得る。ピーク強度に達してからピーク強度から低下するまでの期間が、退色時間に相当し得る。
【0296】
参照メトリックは、動作908において取得された情報から導出される情報を含み得る。一部の実施形態において、参照メトリックは、特性退色時間に基づいて決定され得る、反応チャンバ(単数または複数)内の分子(単数または複数)に関する参照励起強度を含み得る。例えば、退色時間の指数分布はexp(-t/τ)で表され、ここで、τは特性退色時間である。単一分子の収集に関して、ln(2)で除算されたメジアン退色時間は、特性退色時間τの推定値を提供する。より速い特性退色時間は、より高い励起強度から生じ得、逆もまた同様である。
【0297】
動作914において、シークエンシングパラメータは、参照メトリック(例えば、特性退色時間、励起強度)に基づいて調整され得る。一部の実施形態において、反応チャンバに励起光を照射するレーザの出力が調整され得る。例えば、一部の実施形態において、レーザ出力は、比較的速い特性退色時間を考慮して減少され得る。レーザ出力は、一部の実施形態において、その後のシークエンシング用途の間の励起強度が標的値を超えないことを確実にするために減少され得る。従って、光損傷がシークエンシング反応の寿命の要因となり得るシークエンシング用途に関する読み取り長(read length)が改善され得る。
【0298】
一部の実施形態において、集積デバイスの構成は、参照メトリックに基づいて調整され得る。例えば、本発明者らは、反応チャンバにおける差異により、参照色素の特性退色時間が異なる反応チャンバ間で変化し得ることを認識した。従って、反応チャンバ、光検出器、および/または励起光をピクセルに照射する光源の構成は、参照メトリックに基づいて調整され得る。例えば、比較的速い退色時間を有する反応チャンバの場合、反応チャンバに照射される励起光の強度および/または持続時間は、減少され得る。
【0299】
一部の実施形態において、退色情報は、反応チャンバ内の参照色素分子の数を特定するために使用され得る。例えば、参照色素分子が光退色するまでに、励起光が1つまたは複数の参照色素分子に照射される実施形態において、退色ステップは、反応チャンバから収集された(例えば、1つまたは複数の参照色素分子から放出された)信号の強度の経時的変化を見ることによって観察され得る。1つの参照色素分子の光退色は、強度の単一のステップ(single step)(例えば、ある時点における信号の強度の特徴的な低下)によって表され得る。一部の実施形態において、信号の強度の特徴的な低下は、退色前に参照色素分子によって放出された信号の強度と実質的に等しい。具体的には、退色後、参照色素分子はもはやシグナルを放出せず、退色前の参照色素分子によって放出された信号の強度と実質的に等しい強度の単一のステップ分の減少が生じる。
【0300】
単一の退色ステップが観察される場合(例えば、経時的に観察される信号強度の変化によって表されるように)、単一の参照色素分子が退色して、信号が収集される反応チャンバ内に単一の参照色素分子が存在していると判定され得る。2つ以上の退色ステップが観察される場合、複数の参照色素分子が反応チャンバ内に負荷されたと判定され得る。反応チャンバ内に負荷されていると判定された参照色素分子の数は、反応チャンバ内に存在する試料の生体分子の数を決定するための代理とみなすことができる。一部の実施形態において、反応チャンバ内の試料分子の数の指標は、特定の反応チャンバをその後の分析に含めるか、または除外するために使用され得る。光退色を使用して定量的負荷の指標を決定するためのさらなる説明が、本明細書において提供される。
【0301】
較正プロセス900の実行に続いて、集積デバイスは、1つまたは複数の反応チャンバ内に配置された分子からのシグナルを収集および分析するために使用され得る。例えば、図13は、一部の実施形態による、較正プロセス900に続いて実行され得る反応チャンバ内のシークエンシング反応を示す。図6に示されるシークエンシング反応は、反応チャンバ1008内の試料1009への参照色素分子1010A、1010Bの付着を含み得る。本明細書に記載されるように、参照色素分子は、特定の種類のものであり得、例えば、特定の種類の試料分子に結合し得る。例えば、参照色素分子1010Aは、第1の種類のアミノ酸(例えば、Lで示されるロイシン)のみに選択的に結合し、参照色素分子1010Bは、第2の種類のアミノ酸(例えば、それぞれF、Y、およびWで示されるフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン)に選択的に結合する。試料分子1009のサンプリング(例えば、励起光を反応チャンバ1008に照射し、結合した参照色素分子1010A、1010Bから放出されるシグナルを収集することによる)に続いて、試料分子および/またはそれに結合した参照色素分子1010A、1010Bの切断が、切断分子316を用いて行われ得る。試料分子は、参照分子によって放出されるシグナルに基づいて同定され得る。結合、放出シグナルの受信、および切断のプロセスは、単一の試料分子および/または反応チャンバに対して複数回繰り返され得る。一部の実施形態において、本明細書に説明される較正技法は、タンパク質および/またはDNA/RNAシークエンシング用途における使用のために構成される集積デバイスを含むシステムを較正するために使用され得る。
【0302】
本明細書に説明される較正技法は、較正に続いて行われる任意の好適なサンプリング技法と組み合わせて使用され得る。例えば、一部の実施形態において、本明細書に説明される較正技法は、2021年10月22日に出願された「SYSTEMS AND METHODS FOR SAMPLE PROCESS SCALING」と題する米国特許出願第17/5085,783号(代理人整理番号R0708.70112US02)に説明されるような試料多重化のための技法と組み合わせて使用されてもよく、この出願は参照によりその全体が援用される。
【0303】
IX. 定量的負荷
いくつかの態様は、集積デバイスの1つまたは複数の反応チャンバの定量的負荷の指標を決定するためのシステムおよび方法に関する。例えば、本発明者らは、集積デバイスの1つまたは複数の反応チャンバの定量的負荷の指標をリアルタイムで(例えば、負荷プロセスの間に)決定することが有利であることを認識した。定量的負荷の指標は、反応チャンバ内に何個の生体分子が存在するか(例えば、反応チャンバが空であるか、単一負荷されているか、二重負荷されているか、または3個以上の生体分子が多重負荷されているか)の表示を含み得る。一部の実施形態において、定量的負荷の指標は、単一負荷(または所望される任意の他の個数に負荷)されている反応チャンバの割合の表示を含み得る。
【0304】
図14は、一部の実施形態による、1つまたは複数の反応チャンバの負荷を定量化するための例示的なプロセス1400を示す。プロセス1400は、集積デバイスに試料が負荷される動作1402で開始され得る。試料は、複数の生体分子を含み得る。複数の生体分子は、任意の適切な種類のものであり得る。例えば、複数の生体分子は、シークエンシングを通じて同定されることが望まれる生体分子を含み得る。一部の実施形態において、複数の生体分子はペプチドを含む。一部の実施形態において、複数の生体分子は、核酸(例えば、リボ核酸、デオキシリボ核酸)を含む。
【0305】
複数の生体分子は、蛍光標識分子(本明細書では参照色素分子とも呼ばれる)で標識され得る。一部の実施形態において、複数の生体分子は、試料を集積デバイス上に負荷する前に標識され得る。一部の実施形態において、複数の生体分子は、負荷時に標識されていなくてもよく、集積デバイス上に事前または後に負荷される蛍光標識分子は、複数の生体分子に結合され得る。
【0306】
一部の実施形態において、蛍光標識分子は、生体分子自体に直接付着され得る。蛍光標識分子は、生体分子に共有結合され得るか、または生体分子に非共有結合され得る(例えば、リンカーまたはストレプトアビジンを介して)。一部の実施形態において、蛍光標識分子は、チップの界面化学調製の一部として反応チャンバ内に負荷され得る。一部の実施形態において、蛍光標識分子は、本明細書にさらに記載されるように、生体分子に可逆的に結合される。従って、本技術の態様は、反応チャンバ内の蛍光標識分子の特定の構成に限定されない。一部の実施形態によれば、動作1402は、2020年10月28日に出願された「METHODS OF PREPARING SAMPLES FOR MULTIPLEX POLYPEPTIDE SEQUENCING」と題する米国特許出願第17/082,906号(代理人整理番号R01408.70077US01)に記載されている技法を含み得、この出願は参照によりその全体が援用される。
【0307】
一部の実施形態において、蛍光標識分子はオリゴヌクレオチドからなる。オリゴヌクレオチドは生体分子に共有結合され得る。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、生体分子に共有結合している相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズされる。
【0308】
蛍光標識分子は、生体分子から(例えば、1つまたは複数のスペーサーを介して)最小距離(例えば、1nm超、2nm超、5nm超、5~10nm、10nm超、10~15nm、15nm超、15~90nm、90nm超)分離され得る。蛍光標識分子を生体分子から最小距離だけ分離することによって、定量的負荷の決定の間(例えば、光退色の間)に生体分子に損傷が生じることが防止され得る。
【0309】
動作1404において、励起光は、集積デバイスの1つまたは複数の反応チャンバに照射され得る。励起光は、本明細書に説明されるように、少なくとも1つの励起源(例えば、レーザ)により生成され得る。励起光は、集積デバイスの反応チャンバの全てまたはその一部に照射され得る。
【0310】
励起光は、反応チャンバ内の生体分子に結合された任意の蛍光標識分子を励起させて励起光を放出させる。動作1406において、励起光に反応して個々の反応チャンバから1つまたは複数の参照色素分子によって放出された信号が取得され得る。
【0311】
例えば、放出光は、集積デバイスの1つまたは複数の光検出領域によって収集され得る。一部の実施形態において、集積デバイスは、各反応チャンバに対して1つの光検出領域を含み得る。一部の実施形態において、複数の光検出領域が単一の反応チャンバに対して設けられ得る。一部の実施形態において、複数の反応チャンバが単一の光検出領域に対応し得る。
【0312】
動作1408において、定量的負荷の指標が、動作1406において取得された放出シグナルに基づいて決定され得る。本明細書に記載されるように、定量的負荷の指標は、反応チャンバ内に何個の生体分子が存在するか(例えば、反応チャンバが空であるか、単一負荷されているか、二重負荷されているか、または3個以上の生体分子が多重負荷されているか)の表示を含み得る。一部の実施形態において、定量的負荷の指標は、単一負荷(または所望される任意の他の個数に負荷)されている反応チャンバの割合の表示を含み得る。
【0313】
一部の実施形態において、励起光を集積デバイスの1つまたは複数の反応チャンバに照射することは、1つまたは複数の蛍光標識分子を光退色させることを含み、定量的負荷の指標は、放出シグナルにおいて表される光退色ステップの数(例えば、放出シグナルにおいて観察され得る光退色ステップの数)に基づいて決定される。例えば、反応チャンバ(単数または複数)は、(例えば、光源をブロック解除すること、光源をチップに再結合すること、および/またはシステムの特性退色時間に対して速い時間に光源によって供給される出力を増加させることによって)ステップ関数(step function)に応じて励起光により照射され得る。励起光は、参照色素が退色されるまで、反応チャンバに照射され得る。図15-1、図15-2、および図15-3は、動作1404において光退色される蛍光標識分子を有するチャンバから取得された例示的なトレースを示す。他の実施形態において、反応チャンバ内の1つまたは複数の参照色素によって放出された信号は、光退色を行うことなく取得され得る。
【0314】
図15-1は、一部の実施形態による、単一負荷されたウェルを表すチップ負荷プロセスからの例示的なトレース1500Aを示す。図15-1に示すように、ある期間にわたる信号強度がプロットされている。励起光が最初に反応チャンバに照射されると、反応チャンバから受信される信号の強度は、ピークまで上昇し得る。(例えば、レーザ等の光源をオンにすることによって)励起光を反応チャンバに照射した後、強度の単一のステップ(例えば、ある時点における信号の強度の特徴的な低下)が図15-1において確認される。一部の実施形態において、図15-1に示されるように、信号の強度の特徴的な低下は、退色前に参照色素分子によって放出された信号の強度と実質的に等しい。退色後、参照色素分子はもはやシグナルを放出せず、その結果、図15-1に示すように強度の単一のステップ分の減少が生じる。従って、図15-1に示される信号は、反応チャンバ内の単一の蛍光標識、従って単一の生体分子の存在を示す。
【0315】
図15-2は、一部の実施形態による、二重負荷されたウェルを表すチップ負荷プロセスからの例示的なトレース1500Bを示す。図15-2に示されるように、信号は、2個の蛍光標識分子、従って反応チャンバ内の2個の生体分子の存在を示す信号強度の2つのステップを含む。
【0316】
図15-3は、一部の実施形態による、多重負荷されたウェルを表すチップ負荷プロセスからの例示的なトレース1500Cを示す。図15-3に示されるように、信号は、3個の蛍光標識分子、従って反応チャンバ内の3個の生体分子の存在を示す信号強度の3つのステップ(受信信号の強度の3つの特徴的な低下)を含む。
【0317】
場合によっては、光退色ステップが観察されないことがある。従って、観察された光退色の欠如に基づいて、生体分子が反応チャンバ内に存在しないことが決定され得る。
一部の実施形態において、反応チャンバ内に存在する蛍光標識分子を光退色することなく、信号が反応チャンバから取得され得る。そのような実施形態において、反応チャンバ内に存在する蛍光標識分子の数、従って生体分子の数は、反応チャンバから取得される信号の相対強度によって決定され得る。
【0318】
一部の実施形態において、蛍光標識分子は、生体分子または生体分子に付着した二次生体分子に可逆的に結合され得る。例えば、二次生体分子は、N末端アミノ酸認識剤(例えば、ClpS、UBRボックスなど)を含み得る。一部の実施形態において、二次生体分子はオリゴヌクレオチドである。一部の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、生体分子または生体分子に付着したオリゴヌクレオチドへの可逆的ハイブリダイゼーションが可能である。
【0319】
蛍光標識分子の生体分子への結合のオンおよびオフは、蛍光標識分子のオンおよびオフパルス化によって表すことができる。特に、蛍光標識分子が生体分子に結合されて励起光により励起されるとき、蛍光標識分子は、1つまたは複数の光検出領域によって収集され得る放出光を放出する。結合していない場合、蛍光標識分子は放出光を放出し得ない。蛍光標識分子は、生体分子に対して周期的な結合パターンをとることができる。従って、蛍光標識は、生体分子に結合したときに蛍光標識から放出された光を収集することによって検出することができる周期的パルス化パターンを生成する。
【0320】
図16は、一部の実施形態による、生体分子に可逆的に結合される蛍光分子の周期的パルス化パターンを示す図である。プロット1602及び1604は、単一パルス周期Tの間に1つまたは複数の光検出領域によって検出されたパルスの例を示す。
【0321】
プロット1602および1604は、2個の生体分子およびそれに可逆的に結合された個々の蛍光標識を有する二重負荷されたウェルの例を示す。従って、パルス期間T中に2個のパルスが検出される。プロット1602の図示された実施形態において、2個の蛍光標識分子は、期間Tの間に実質的に同時に個々の生体分子に結合する。従って、2個の蛍光標識分子の各々からの個々のパルスから構成される強度2Iを有する単一の複合パルスが、期間T内に検出される。プロット1604の図示された実施形態において、2個の蛍光標識分子は、期間Tの間の離散時間において個々の生体分子に結合する。従って、強度Iを有する2個のパルスが期間T内に検出される。
【0322】
図示される実施形態は、反応チャンバに2個の生体分子が二重負荷される例を示したが、本明細書に説明される技法は、同様に、パルス化周期Tの間に反応チャンバから放出されたパルスの強度を決定することによって、反応チャンバ内の単一生体分子の存在、2個を上回る生体分子の存在、または任意の生体分子の欠如を検出するために使用され得る。パルスのパルス化周期および強度は、生体分子に可逆的に結合される蛍光標識分子の特性パルス幅および特性強度に基づいて決定され得る。
【0323】
図16は、パルスのタイミングおよび強度を検出し、かつ使用して、個々のパルス周期Tの間に生体分子に結合されている反応チャンバ内の蛍光標識分子の数、従って、反応チャンバ内に現在存在する生体分子の数を決定する方法を示す。従って、プロセス1400の動作1408は、本明細書に記載されるような可逆的結合分子を使用して行われ得る。
【0324】
プロセス1400に戻ると、プロセス1400は、放出された信号に基づいて定量的負荷の指標を決定した後、動作1410に進行し得る。動作1410において、負荷を継続するかどうかが決定される。負荷を継続するか終了するかの決定は、動作1410で決定された定量的負荷の指標に基づいて決定され得る。
【0325】
例えば、一部の実施形態において、集積デバイスの動作は、定量的負荷の指標に基づいて最適化され得る。一部の実施形態において、定量的負荷の指標は、集積デバイスへの試料の負荷を行う方法を調整するために使用され得る。一部の実施形態において、定量的負荷の指標を使用して、最適な数の反応チャンバに所望の数の生体分子が負荷されたかどうかを判定することができる。一部の実施形態において、生体分子の所望の数は1であり、従って、定量的負荷の指標を使用して、最適な数(例えば、最大)の反応チャンバが単一負荷されているかどうかが判定される。
【0326】
定量的負荷の指標によって示されるように、負荷される反応チャンバの最適な数に達していない場合、追加の負荷が行われ得る。例えば、プロセス1400は、追加の試料が集積デバイスに負荷される動作1402にループバックされ得る。
【0327】
一部の実施形態において、定量的負荷の指標を使用して、後続の負荷ステップで負荷される追加の試料の量を調整することができる。例えば、試料は、特定の濃度の生体分子を含み得る。定量的負荷の指標を使用して、生体分子の濃度を増加させるかまたは減少させるかを決定することができる。例えば、単一負荷反応チャンバの最適な数が満たされていないと判定された場合、初期試料よりも生体分子の濃度が高い追加の試料を使用して追加の負荷を実施することができる。
【0328】
一部の実施形態において、定量的負荷の指標は、後続の分析のために反応チャンバからの信号を処理する方法を調整するために使用され得る。例えば、反応チャンバが空であるか、二重負荷されているか、または多重負荷されていると判定された場合、これらの反応チャンバに対してシークエンシングを実行しないこと、またはこれらの反応チャンバから受信した信号を処理しないことのいずれかによって、これらの反応チャンバからの信号を無視すると判定され得る。
【0329】
一部の実施形態において、定量的負荷の指標は、集積デバイスの将来の動作を通知するために使用され得る。例えば、定量的負荷の指標は、集積デバイスへの試料の負荷を将来行う方法(例えば、試料中に存在する生体分子の濃度、負荷を実施する時間、負荷を実施する速度など)を調整するために使用され得る。
【0330】
動作1410において負荷を継続しないと決定された場合、プロセス1400は動作1412に進行し、そこで負荷が終了される。例えば、一部の実施形態において、終了は、固定化されていない(例えば、結合されていない)ペプチドを含む溶液の除去、洗浄、および/または交換によって実施され得る。一部の実施形態において、終了は自律的に実行され得る。
【0331】
一部の実施形態において、負荷を終了させることは、反応チャンバから蛍光標識分子を除去することを含み得る。一部の実施形態において、蛍光標識分子は、化学的切断プロセスによって除去され得る。一部の実施形態において、蛍光標識分子は、酵素的切断プロセスによって除去され得る。
【0332】
本明細書で説明されるように、プロセス1400は連続的に実行され得る。一部の実施形態において、プロセス1400は、例えば、ソフトウェアを使用して自律的に実行され得る。これにより、各反応チャンバ内の標識された生体分子の数を連続的に監視することが可能になる。ソフトウェア分析プロセスは、負荷をリアルタイムで監視することができる。例えば、ソフトウェア分析は、本明細書に記載されるように、信号パルス/光退色ステップを検出し得る。
【0333】
一部の実施形態において、1つまたは複数の異なる種類の蛍光標識分子が生体分子に提供される。例えば、第1の種類の蛍光標識分子および第2の種類の蛍光標識分子が、生体分子への結合のために提供され得る。
【0334】
一部の実施形態において、反応チャンバの「ヒートマップ(heatmap)」を生成して、1つまたは複数の生体分子が負荷された集積デバイスの割合(例えば、反応チャンバの割合)を視覚的に示し得る。図17は、一部の実施形態による、負荷パーセントを例示する反応チャンバの例示的なヒートマップを示す。
【0335】
一部の実施形態において、定量的負荷の指標は、集積デバイスの一部(例えば、集積デバイスの全ての反応チャンバの一部)に対してのみ取得され得る。定量的負荷の指標は、集積デバイス全体(または、従って、他の部分)に関する定量的負荷の外挿された指標を得るために、集積デバイスの残りの反応チャンバに外挿され得る。
【0336】
一部の実施形態において、試料のシークエンシングは、本明細書に説明される較正および定量的負荷技法を実行した後に、(例えば、プロセス1400の動作1414において)実行され得る。例えば、較正および定量的負荷技術は、例えば、2020年6月12日に出願された「TECHNIQUES FOR PROTEIN IDENTIFICATION USING MACHINE LEARNING AND RELATED SYSTEMS AND METHODS」と題する米国特許出願第16/900,582号(代理人整理番号R0708.70063US01)に記載されるような、機械学習を使用した試料同定のための技術と組み合わせて使用されてもよく、この出願は、参照によりその全体が援用される。
【0337】
集積デバイスに関連する(例えば、集積デバイスの1つまたは複数の反応チャンバの占有率に関連する)リアルタイム測定値を取得するための本明細書に記載される技術は、集積デバイスを使用している間(例えば、試料調製の間、負荷の間、シークエンシングの間、試料除去の間等)にいつでも実装することができ、そのような技術は、集積デバイスの負荷の間の使用に限定されない。
【0338】
X. 均等物および範囲
本開示の技術のいくつかの態様および実施形態をこのように記載したが、様々な改変、変更および改良が当業者に容易に想起されることを理解されたい。そのような改変、変更および改良は、本明細書に記載される技術の精神および範囲内にあることが意図される。したがって、上記の実施形態は例として提示されているものにすぎないこと、ならびに、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明の実施形態は詳細に記載されているものとは別様に実践され得ることを理解されたい。加えて、本明細書に記載される2つ以上の特徴部、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴部、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が相互に矛盾するものでなければ、本開示の範囲内に含まれる。
【0339】
また、記載したように、いくつかの態様は、1つ以上の方法として具現化してよい。方法の一部として実施される動作は、任意の好適な形で順序付けることができる。それに応じて、例示的な実施形態では連続的な動作として示されている場合であっても、いくつかの動作を同時に実施することを含み得る、示されているものとは異なる順序で動作が実施される実施形態を構築することができる。
【0340】
本明細書において定義および使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により援用される文献中の定義および定義される用語の通常の意味の両方、またはそのいずれかを超えて統括するものと理解されたい。
【0341】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」および「an」は、明らかにそれとは反対のことが示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されたい。
【0342】
「および/または」などの句は、本明細書および特許請求の範囲において本願明細書で使用されるとき、そのように連結された要素の「一方または両方」を、すなわち、ある場合には連言的に存在し、他の場合には選言的に存在する要素を意味するものと理解されたい。
【0343】
本明細書および特許請求の範囲において本願明細書で使用されるとき、1つ以上の要素の列挙に関して、「少なくとも1つ」という句は、要素の列挙中の要素のうちのいずれか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解されたいが、必ずしも、要素の列挙内に具体的に列挙されるあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、また要素の列挙中の要素の任意の組み合わせを排除するわけではない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が言及する要素の列挙内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定されるそれらの要素に関するか関しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることを可能にする。
【0344】
特許請求の範囲および上記の明細書において、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」、「から構成される」などのようなすべての移行句はオープンエンド、すなわち限定はされないが含むことを意味するものであると理解されたい。「からなる」および「本質的に~からなる」という移行句はそれぞれクローズドまたはセミクローズドの移行句とする。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4G-1】
図4H
図4H-1】
図4I
図4I-1】
図4J
図4J-1】
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7B-1】
図8A-8B】
図8C-8D】
図8E-8F】
図8G-8H】
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12-1】
図12-2】
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図16
図17
【国際調査報告】