(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】超高感度バイオセンサ法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6804 20180101AFI20231221BHJP
G01N 33/552 20060101ALI20231221BHJP
G01N 33/553 20060101ALI20231221BHJP
G01N 33/544 20060101ALI20231221BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20231221BHJP
G01N 33/58 20060101ALI20231221BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20231221BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20231221BHJP
【FI】
C12Q1/6804 Z
G01N33/552
G01N33/553
G01N33/544
G01N33/53 M
G01N33/53 D
G01N33/58 A
C12Q1/6837 Z
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536199
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 US2021063637
(87)【国際公開番号】W WO2022132979
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】リード、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】リー、アン
(72)【発明者】
【氏名】アド、オメル
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、ハイドン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、グオジュン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045CB03
2G045CB04
2G045CB07
2G045CB08
2G045CB14
2G045CB17
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2G045CB21
2G045CB30
2G045DA13
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2G045FB12
4B063QA01
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4B063QX02
(57)【要約】
生体サンプルからの標的分子(例えば、標的核酸または標的タンパク質)の超高感度検出のための方法およびデバイスが本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、方法およびデバイスによって、標的分子の濃度の超高感度決定が可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の標的分子の濃度を決定する方法であって、前記方法は、
(i)前記標的分子を含む前記サンプルを、前記標的分子に対する結合親和性を有する複数の第1の親和性剤と接触させて、第1の親和性剤に結合した標的分子を含む複数の第1の複合体を生成する工程であって、前記複数の第1の親和性剤の少なくとも一部が表面に固定化されている、工程;
(ii)前記複数の第1の複合体を、前記第1の複合体に対する結合親和性を有する複数の第2の親和性剤と接触させて、第1の複合体に結合した第2の親和性剤を含む複数の第2の複合体を生成する工程であって、前記第2の親和性剤の少なくとも一部が標識分子に連結している、工程;
(iii)任意選択で未結合の第2の親和性剤を除去する工程、および/または前記複数の第2の複合体を単離する工程;
(iv)任意選択で、前記複数の第2の複合体の前記結合した第2の親和性剤から前記標識分子のそれぞれの少なくともセグメントを単離する工程;
(v)前記標識分子の前記セグメントを既知の濃度の参照分子と合わせる工程;
(vi)参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比を決定する工程;および
(vii)参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の前記比に少なくとも部分的に基づいて、前記サンプル中の標的分子の濃度を決定する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
サンプル中の標的分子の濃度を決定する方法であって、前記方法は、
(i)(a)前記標的分子を含む前記サンプルを、前記標的分子に対する結合親和性を有する複数の第1の親和性剤と接触させて、第1の親和性剤に結合した標的分子を含む複数の第1の複合体を生成する工程;
(i)(b)前記複数の第1の親和性剤の少なくとも一部を表面に固定化する工程;
(ii)前記複数の第1の複合体を、前記第1の複合体に対する結合親和性を有する複数の第2の親和性剤と接触させて、第1の複合体に結合した第2の親和性剤を含む複数の第2の複合体を生成する工程であって、前記第2の親和性剤の少なくとも一部が標識分子に連結している、工程;
(iii)任意選択で未結合の第2の親和性剤を除去する工程、および/または前記複数の第2の複合体を単離する工程;
(iv)任意選択で、前記複数の第2の複合体の前記結合した第2の親和性剤から前記標識分子のそれぞれの少なくともセグメントを単離する工程;
(v)前記標識分子の前記単離セグメントを既知の濃度の参照分子と合わせる工程;
(vi)参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比を決定する工程;および
(vii)参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の前記比に少なくとも部分的に基づいて、前記サンプル中の標的分子の濃度を決定する工程、
を含む、方法。
【請求項3】
前記サンプルが生体サンプルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記生体サンプルが、単一細胞、哺乳動物細胞組織、動物サンプル、真菌サンプル、または植物サンプルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記生体サンプルが、血液サンプル、唾液サンプル、喀痰サンプル、糞便サンプル、尿サンプル、口腔スワブサンプル、羊膜サンプル、精液サンプル、滑膜サンプル、脊髄サンプル、または胸水サンプルである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記標的分子が、タンパク質、小分子、または核酸である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸が、DNA分子および/またはRNA分子である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(i)および/または(ii)の前記接触を、4~37℃、任意選択で4~25℃の温度で実行する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
(i)および/または(ii)の前記接触を、5分~4時間実行する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の親和性剤が抗体またはアプタマーであり、前記標的分子が抗原であり、任意選択で前記抗原がタンパク質、ペプチドまたは多糖である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の親和性剤が抗体またはアプタマーであり、前記標的分子がタンパク質であり、前記抗体またはアプタマーが前記標的分子のエピトープに特異的に結合する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の第1の親和性剤の前記少なくとも一部が、固相ビーズ、マイクロ流体チャネル、ナノ開口、樹脂、マトリックス、膜、ポリマー、プラスチック、金属、またはガラスの表面に固定化される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記固相ビーズが磁気ビーズである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の親和性剤が抗体である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記標識分子のそれぞれが、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記標識分子のそれぞれが、2、3、4、または5つの異なる蛍光色素分子に連結している、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記標識分子のそれぞれが、2、3、4、または5つの同一の蛍光色素分子に連結している、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
(iv)に続いて、少なくとも1つの蛍光色素分子を前記標識分子のそれぞれに化学的に連結させる工程をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記標識分子のそれぞれが、少なくとも1つの蛍光色素分子に接続された化学リンカーを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記標識分子のそれぞれが、少なくとも1つの蛍光色素分子に接続されたビオチン-ストレプトアビジン複合体を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記標識分子のそれぞれが、核酸および少なくとも1つの蛍光色素分子に連結されたビオチン-ストレプトアビジン複合体を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記標識分子のそれぞれが、標識核酸であり、前記第2の親和性剤のそれぞれが、前記標識核酸の第1の鎖に連結されており、任意選択で、前記第1の鎖が、長さ5~50核酸塩基である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記標識核酸の前記第1の鎖が、ビオチン-ストレプトアビジン複合体を介して第2の親和性剤に連結している、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記標識核酸が1本鎖核酸である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記1本鎖核酸が、ヘアピンループを形成する領域を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記1本鎖核酸が、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記標識核酸が、前記第1の鎖と、前記第1の鎖に相補的な領域を含む第2の鎖とを含む2本鎖核酸である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の鎖が、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記標識核酸が、前記第1の鎖および核酸ダンベルを含み、前記核酸ダンベルの第1の領域は前記第1の鎖に相補的である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項30】
前記核酸ダンベルが、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記標識核酸が、前記核酸ダンベルの第2の領域に相補的な第2の1本鎖核酸をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の1本鎖核酸が、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記標識核酸が、前記第1の鎖および第2の1本鎖核酸を含み、前記第1の鎖はヘアピンループを形成する領域を含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の1本鎖核酸が、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
(i)および(ii)が、同時にまたは連続して起こる、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
(iii)が、前記サンプルを洗浄緩衝液で洗浄することによって前記未結合の第2の親和性剤を除去する工程を含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
洗浄緩衝液がリン酸緩衝生理食塩水である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
(iv)が、前記サンプルを溶出緩衝液で洗浄することによって、前記結合した第2の親和性剤から前記標識分子のそれぞれの前記少なくともセグメントを単離する工程を含む、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記溶出緩衝液が高塩緩衝液である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
(iv)が、前記サンプルの前記温度を変化させる(例えば、前記温度を上昇させる)ことによって、前記結合した第2の親和性剤から前記標識分子のそれぞれの前記少なくともセグメントを単離する工程を含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記標識核酸が2本鎖標識核酸であり、前記第2の親和性剤が、前記2本鎖標識核酸の第1の鎖に連結されており、前記標識核酸の単離セグメントが、前記2本鎖標識核酸の前記第2の鎖である、請求項22、23、27、または28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
(iv)が、前記2本鎖標識核酸の前記第1の鎖に相補的な過剰な1本鎖核酸で前記サンプルを洗浄することによって、前記2本鎖標識核酸の前記第2の鎖を単離する工程を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記参照分子のそれぞれが、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結しており、参照分子に連結した前記蛍光色素分子が、標識分子に連結した少なくとも1つの蛍光色素分子とは異なる、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
参照分子に連結した前記少なくとも1つの蛍光色素分子および標識分子に連結した前記少なくとも1つの蛍光色素分子を、同じ励起波長によって励起させることができる、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記参照分子のそれぞれが、参照核酸である、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記参照核酸が、1本鎖または2本鎖核酸である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記参照分子のそれぞれが、前記複数の第1の親和性剤の前記少なくとも一部と同じ表面に固定化される、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記参照分子のそれぞれが、前記複数の第1の親和性剤の前記少なくとも一部が固定化されている前記表面とは異なる表面に固定化される、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記参照分子のそれぞれが、第1の親和性剤に連結している、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記参照分子のそれぞれが、表面に固定化された、または第1の親和性剤に連結された1本鎖核酸と、前記1本鎖核酸に対する相補性の領域を含むダンベル核酸とを含む複合体である、請求項47~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記参照分子が、(iv)中に単離される、請求項47~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記標識分子が、標識核酸であり、前記参照分子が参照核酸であり、前記標識および参照核酸を、(iv)中に、任意選択でローリングサークル増幅を使用して増幅させる、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記標識分子の前記単離セグメントおよび前記既知濃度の参照分子を、(v)において検出チップ内で合わせる、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記検出チップが、サンプルウェルの規則的なアレイを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
各サンプルウェルの深さが50~500nm、任意選択で約300nmである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
各サンプルウェルの内部ベースの直径が50~250nm、任意選択で75~125nm、さらに任意選択で約100nmである、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
各サンプルウェルの内部ベースが、シラン含有化合物で機能化されている、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
各サンプルウェルの前記内部ベースが、ビオチン-ストレプトアビジン複合体で機能化されている、請求項54または57に記載の方法。
【請求項59】
各サンプルウェルの前記内部ベースが、正に帯電した分子で機能化されている、請求項55~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
各サンプルウェルの前記内部ベースが、1000nm
2あたり40~300個の正電荷で機能化されている、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記正に帯電した分子がポリリジン分子である、請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
前記ポリリジン分子が、10~200個のリジンアミノ酸、任意選択で20~100個のリジンアミノ酸、さらに任意選択で50個のリジンアミノ酸を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記正に帯電した分子が、正に帯電した末端シラン分子である、請求項59または60に記載の方法。
【請求項64】
各サンプルウェルの前記内部ベースが、前記標識核酸および/または参照核酸に相補的な核酸で機能化されている、請求項54~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
参照分子に対する標識分子の比を、蛍光測定値を使用して決定する、請求項1~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
参照分子に対する標識分子の比を、前記サンプルウェル内の標識分子および参照分子の蛍光測定値を使用して決定する、請求項54~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
参照分子に対する標識分子の比を、部分的には前記サンプルウェル内の標識分子および参照分子の滞留時間に基づいて決定する、請求項54~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記標識分子および前記参照分子を、各サンプルウェルの前記内部ベースにある正に帯電した分子との静電相互作用によって前記サンプルウェルに送達し、前記サンプルウェル内に維持する、請求項66または67に記載の方法。
【請求項69】
前記標識分子および前記参照分子を、前記標識核酸および/または前記参照核酸に相補的な各サンプルウェルの前記内部ベースにある核酸との相互作用によって前記サンプルウェルに送達し、前記サンプルウェル内に維持する、請求項66または67に記載の方法。
【請求項70】
前記標識分子および前記参照分子を、重力または磁場によって前記サンプルウェルに送達して、前記サンプルウェル内に維持する、請求項66または67に記載の方法。
【請求項71】
前記標識分子および参照分子を、クラウディング試薬を使用して前記サンプルウェルに送達して、前記サンプルウェル内に維持し、任意選択で、前記クラウディング試薬は、糖分子、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、デキストラン、フィコール、ウシ血清アルブミン、またはトレハロースである、請求項66または67に記載の方法。
【請求項72】
前記サンプル中の標的分子の濃度を、既知の濃度の標識分子および参照分子を含む標準サンプルの測定から導出された標準曲線を使用して決定する、請求項1~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
サンプルウェルのアレイを含む検出チップであって、各サンプルウェルのベースは、正に帯電した分子で機能化されており、任意選択で、前記ベースは内部ベースである、検出チップ。
【請求項74】
サンプルウェルの前記アレイが、規則的なアレイである、請求項73に記載のチップ。
【請求項75】
各サンプルウェルの深さが50~500nm、任意選択で約300nmである、請求項73または74に記載のチップ。
【請求項76】
各サンプルウェルの前記内部ベースの直径が、50~250nm、任意選択で75~125nm、さらに任意選択で100nmである、請求項73~75のいずれか1項に記載のチップ。
【請求項77】
前記正に帯電した分子が、シラン含有化合物を使用して各サンプルウェルの前記内部ベースに付着している、請求項73~76のいずれか1項に記載のチップ。
【請求項78】
前記正に帯電した分子が、ビオチン-ストレプトアビジン複合体を使用して各サンプルウェルの前記内部ベースに付着している、請求項73~77のいずれか1項に記載のチップ。
【請求項79】
各サンプルウェルの前記内部ベースが、1000nm
2あたり40~300個の正電荷で機能化されている、請求項73~78のいずれか1項に記載のチップ。
【請求項80】
前記正に帯電した分子がポリリジン分子である、請求項73~79のいずれか1項に記載のチップ。
【請求項81】
前記ポリリジン分子が、10~200個のリジンアミノ酸、任意選択で20~100個のリジンアミノ酸、さらに任意選択で50個のリジンアミノ酸を含む、請求項80に記載のチップ。
【請求項82】
前記正に帯電した分子が、正に帯電した末端シラン分子である、請求項73~79のいずれか1項に記載のチップ。
【請求項83】
サンプル中の標識化標的分子の濃度を決定する方法であって、前記方法は、
標識化標的分子を含有する前記サンプルを、既知の濃度の参照分子と合わせる工程;
参照分子の検出事象に対する標識化標的分子の検出事象の比を決定する工程;および
参照分子の検出事象に対する標識化標的分子の検出事象の前記比に少なくとも部分的に基づいて、前記サンプル中の標識化標的分子の濃度を決定する工程、
を含む、方法。
【請求項84】
前記標識化標的分子が、タンパク質、小分子、または核酸である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記核酸が、DNA分子および/またはRNA分子である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記標識化標的分子のそれぞれが、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している、請求項83~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記標識化標的分子のそれぞれが、2、3、4、または5つの異なる蛍光色素分子に連結している、請求項83~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記標識化標的分子のそれぞれが、2、3、4、または5つの同一の蛍光色素分子に連結している、請求項83~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記標的化標識分子のそれぞれが、少なくとも1つの蛍光色素分子に接続された化学リンカーを含む、請求項83~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記標識化標的分子のそれぞれが、少なくとも1つの蛍光色素分子に接続されたビオチン-ストレプトアビジン複合体を含む、請求項83~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記標識化標的分子のそれぞれが、核酸および少なくとも1つの蛍光色素分子に連結されたビオチン-ストレプトアビジン複合体を含む、請求項83~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記標識化標的分子が1本鎖核酸である、請求項83~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記1本鎖核酸が、ヘアピンループを形成する領域を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記標識化標的分子が、第1の鎖と、前記第1の鎖に相補的な領域を含む第2の鎖とを含む2本鎖核酸である、請求項83~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記標識化標的分子が、第1の鎖および核酸ダンベルを含み、前記核酸ダンベルの第1の領域は前記第1の鎖に相補的である核酸である、請求項83~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記標識化標的分子が、前記核酸ダンベルの第2の領域に相補的な第2の1本鎖核酸をさらに含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記標識化標的分子が、第1の鎖および第2の1本鎖核酸を含み、前記第1の鎖はヘアピンループを形成する領域を含む、請求項83~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記参照分子のそれぞれが、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結しており、参照分子に連結した前記蛍光色素分子は、標識化標的分子に連結した少なくとも1つの蛍光色素分子とは異なる、請求項83~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
参照分子に連結した前記少なくとも1つの蛍光色素分子および標識化標的分子に連結した前記少なくとも1つの蛍光色素分子が、同じ励起波長によって励起させることができる、請求項83~98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記参照分子のそれぞれが、参照核酸である、請求項83~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記参照核酸が、1本鎖または2本鎖核酸である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記標識化標的分子のそれぞれが表面に固定化される、請求項83~101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
前記参照分子のそれぞれが表面に固定化される、請求項83~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記参照分子のそれぞれが、前記標識化標的分子が固定化されている前記表面とは異なる表面に固定化されている、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記標識化標的分子が標識核酸であり、前記参照分子が参照核酸である、請求項83~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記標識化標的分子および前記既知濃度の参照分子を、検出チップ内で合わせる、請求項83~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記検出チップが、サンプルウェルの規則的なアレイを含む、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
各サンプルウェルの深さが50~500nm、任意選択で約300nmである、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
各サンプルウェルの内部ベースの直径が50~250nm、任意選択で75~125nm、さらに任意選択で約100nmである、請求項107または108に記載の方法。
【請求項110】
各サンプルウェルの前記内部ベースが、シラン含有化合物で機能化されている、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
各サンプルウェルの前記内部ベースが、ビオチン-ストレプトアビジン複合体で機能化されている、請求項109または110に記載の方法。
【請求項112】
各サンプルウェルの前記内部ベースが、正に帯電した分子で機能化されている、請求項109~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
各サンプルウェルの前記内部ベースが、1000nm
2あたり40~300個の正電荷で機能化されている、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記正に帯電した分子がポリリジン分子である、請求項112または113に記載の方法。
【請求項115】
前記ポリリジン分子が、10~200個のリジンアミノ酸、任意選択で20~100個のリジンアミノ酸、さらに任意選択で50個のリジンアミノ酸を含む、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記正に帯電した分子が、正に帯電した末端シラン分子である、請求項112または113に記載の方法。
【請求項117】
各サンプルウェルの前記内部ベースが、前記標識核酸および/または参照核酸に相補的な核酸で機能化されている、請求項109~116のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
参照分子に対する標識化標的分子の比を、蛍光測定値を使用して決定する、請求項83~117のいずれか1項に記載の方法。
【請求項119】
参照分子に対する標識化標的分子の比を、前記サンプルウェル内の標識分子および参照分子の蛍光測定値を使用して決定する、請求項107~118のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
参照分子に対する標識化標的分子の比を、部分的には前記サンプルウェル内の標識分子および参照分子の滞留時間に基づいて決定する、請求項107~119のいずれか1項に記載の方法。
【請求項121】
前記標識分子および前記参照分子を、各サンプルウェルの前記内部ベースにある正に帯電した分子との静電相互作用によって前記サンプルウェルに送達し、前記サンプルウェル内に維持する、請求項119または120に記載の方法。
【請求項122】
前記標識分子および前記参照分子を、前記標識核酸および/または前記参照核酸に相補的な各サンプルウェルの前記内部ベースにある核酸との相互作用によって前記サンプルウェルに送達し、前記サンプルウェル内に維持する、請求項119または120に記載の方法。
【請求項123】
前記標識分子および前記参照分子を、重力または磁場によって前記サンプルウェルに送達して、前記サンプルウェル内に維持する、請求項119または120に記載の方法。
【請求項124】
前記標識分子および参照分子を、クラウディング試薬を使用して前記サンプルウェルに送達して、前記サンプルウェル内に維持し、任意選択で、前記クラウディング試薬は、糖分子、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、デキストラン、フィコール、ウシ血清アルブミン、またはトレハロースである、請求項119または120に記載の方法。
【請求項125】
前記サンプル中の標的分子の濃度を、既知の濃度の標識化標的分子および参照分子を含む標準サンプルの測定から導出された標準曲線を使用して決定する、請求項83~124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項126】
前記標識化標的分子または標識分子が、分子バーコードをさらに含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
標的分子のアイデンティティを決定する方法であって、前記方法は、
(i)前記標的分子を、前記標的分子に対する結合親和性を有する第1の親和性剤と接触させて、前記第1の親和性剤に結合した前記標的分子を含む第1の複合体を生成する工程であって、前記第1の親和性剤は固相ビーズの表面に固定化されており、標識分子は、前記固相ビーズの表面に付着している、工程;
(ii)前記第1の複合体を、前記標的分子に対する結合親和性を有する表面固定化された第2の親和性剤と接触させて、前記第1の複合体に結合した第2の親和性剤を含む第2の複合体を生成する工程;
(iii)任意選択で、前記第2の複合体を洗浄する工程;
(iv)前記標識分子を単離する工程;
(v)前記単離標識分子を、既知の分子がサンプルウェルに付着している前記サンプルウェルを含む検出チップと接触させる工程;および
(vi)蛍光、発光、および/または速度論的測定を使用して前記標識分子のアイデンティティを決定し、それによって前記標的分子を同定する工程、
を含む、方法。
【請求項128】
標的分子のアイデンティティを決定する方法であって、前記方法は、
(i)前記標的分子を、前記標的分子に対する結合親和性を有する第1の親和性剤と接触させて、前記第1の親和性剤に結合した前記標的分子を含む第1の複合体を生成する工程であって、前記第1の親和性剤は固相ビーズの表面に固定化されている、工程;
(ii)前記第1の複合体を、前記標的分子に対する結合親和性を有する第2の親和性剤と接触させて、前記第1の複合体に結合した第2の親和性剤を含む第2の複合体を生成する工程であって、前記第2の親和性剤は、標識分子に付着している、工程;
(iii)任意選択で、前記第2の複合体を洗浄する工程;
(iv)前記標識分子を単離する工程;
(v)前記単離標識分子を、既知の分子がサンプルウェルに付着している前記サンプルウェルを含む検出チップと接触させる工程;および
(vi)蛍光、発光、および/または速度論的測定を使用して前記標識分子のアイデンティティを決定し、それによって前記標的分子を同定する工程、
を含む、方法。
【請求項129】
前記標識分子が、標識核酸である、請求項127または128に記載の方法。
【請求項130】
前記既知の分子が既知の核酸であり、任意選択で、前記既知の核酸は前記標識核酸に相補的である、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記速度論的測定が、前記サンプルウェル内の前記標識分子の滞留時間を含む、請求項127~130のいずれか1項に記載の方法。
【請求項132】
前記標的分子が、タンパク質、小分子、または核酸である、請求項127~131のいずれか1項に記載の方法。
【請求項133】
前記核酸が、DNAまたはRNAである、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記第1の親和性剤が抗体またはアプタマーであり、前記標的分子が抗原であり、任意選択で前記抗原はタンパク質、ペプチドまたは多糖である、請求項127~131のいずれか1項に記載の方法。
【請求項135】
前記固相ビーズが、プラスチック、ポリマー、ガラス、または磁気ビーズである、請求項127~134のいずれか1項に記載の方法。
【請求項136】
前記第2の親和性剤が抗体である、請求項127~135のいずれか1項に記載の方法。
【請求項137】
前記標識分子が、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している、請求項127~136のいずれか1項に記載の方法。
【請求項138】
前記検出チップが、サンプルウェルの規則的なアレイを含む、請求項127~137のいずれか1項に記載の方法。
【請求項139】
各サンプルウェルの深さが50~500nm、任意選択で約300nmである、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
各サンプルウェルの内部ベースの直径が50~250nm、任意選択で75~125nm、さらに任意選択で約100nmである、請求項138または139に記載の方法。
【請求項141】
前記標識分子が、分子バーコードをさらに含む、請求項127~140のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高感度バイオセンサ法に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプル中の標的分析物分子を迅速かつ正確に検出し、場合によっては定量できる方法およびシステムは、学術研究および産業研究、環境評価、食品安全性、医療診断、ならびに化学剤、生物剤、および/または放射線兵器剤の検出にとって不可欠な分析測定である。サンプル中の低レベルの分析物分子を定量するためのこれまでの技術のほとんどは、測定可能なシグナルを提供できるようにするために、増幅手順を使用してレポータ分子の数を増加させていた。例えば、これらの既知の方法には、抗体ベースのアッセイでシグナルを増幅する酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ならびにDNAベースのアッセイで標的DNA鎖を増幅するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が含まれる。
【0003】
これらの既知の方法および/またはシステムは、多くの分析物分子が測定シグナルを引き起こすアンサンブル応答に基づいている。ほとんどの検出スキームでは、集合シグナルが検出閾値を超えるためには、アンサンブルにおいて多数の分子が存在することが必要である。この要件により、ほとんどの検出技術の感度およびダイナミックレンジ(検出可能な濃度の範囲など)が制限される。既知の方法の多くは、バックグラウンドシグナルの増加につながる可能性がある非特異的結合の問題にさらに悩まされており、そのため正確性または再現性をもって検出できる最低濃度が制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、サンプル中の標的分子、特にそのような分子または粒子が非常に低濃度で存在するサンプルにおいて、標的分子を検出および定量するための改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様は、例えばサンプル中の標的分子の量(例えば濃度)を決定するためのプロセスにおいて使用するための方法、組成物、デバイス、および/またはカートリッジもしくは検出チップを提供する。本開示のいくつかの態様は、サンプル中の標的分子(例えば、標識化標的分子)の濃度を決定する方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態において、サンプル中の標的分子の濃度を決定する方法は、以下を含む:(i)標的分子を含むサンプルを、標的分子に対する結合親和性を有する複数の第1の親和性剤と接触させて、第1の親和性剤に結合した標的分子を含む複数の第1の複合体を生成する工程であって、複数の第1の親和性剤の少なくとも一部が表面に固定化している、工程;(ii)複数の第1の複合体を、第1の複合体に対する結合親和性を有する複数の第2の親和性剤と接触させて、第1の複合体に結合した第2の親和性剤を含む複数の第2の複合体を生成する工程であって、第2の親和性剤の少なくとも一部が標識分子に連結している、工程;(iii)未結合の第2の親和性剤を除去する工程、および/または複数の第2の複合体を単離する工程;(iv)任意選択で、複数の第2の複合体の結合した第2の親和性剤から標識分子のそれぞれの少なくともセグメントを単離する工程;(v)標識分子のセグメントを既知の濃度の参照分子と合わせる工程;(vi)参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比を決定する工程;および(vii)参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比に少なくとも部分的に基づいて、サンプル中の標的分子の濃度を決定する工程。
【0007】
いくつかの実施形態において、サンプル中の標的分子の濃度を決定する方法は、以下を含む:(i)(a)標的分子を含むサンプルを、標的分子に対する結合親和性を有する複数の第1の親和性剤と接触させて、第1の親和性剤に結合した標的分子を含む複数の第1の複合体を生成する工程;(i)(b)複数の第1の親和性剤の少なくとも一部を表面に固定化する工程;(ii)複数の第1の複合体を、第1の複合体に対する結合親和性を有する複数の第2の親和性剤と接触させて、第1の複合体に結合した第2の親和性剤を含む複数の第2の複合体を生成する工程であって、第2の親和性剤の少なくとも一部が標識分子に連結している、工程;(iii)未結合の第2の親和性剤を除去する工程、および/または複数の第2の複合体を単離する工程;(iv)任意選択で、複数の第2の複合体の結合した第2の親和性剤から標識分子のそれぞれの少なくともセグメントを単離する工程;(v)標識分子の単離セグメントを既知の濃度の参照分子と合わせる工程;(vi)参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比を決定する工程;および(vii)参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比に少なくとも部分的に基づいて、サンプル中の標的分子の濃度を決定する工程。
【0008】
いくつかの実施形態において、サンプル中の標識化標的分子の濃度を決定する方法は、以下を含む:標識化標的分子を含有するサンプルを、既知の濃度の参照分子と合わせる工程;参照分子の検出事象に対する標識化標的分子の検出事象の比を決定する工程;および参照分子の検出事象に対する標識化標的分子の検出事象の比に少なくとも部分的に基づいて、サンプル中の標識化標的分子の濃度を決定する工程。
【0009】
いくつかの実施形態において、サンプルは、生体サンプルである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、単一細胞、哺乳動物細胞組織、動物サンプル、真菌サンプル、または植物サンプルである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血液サンプル、唾液サンプル、喀痰サンプル、糞便サンプル、尿サンプル、口腔スワブサンプル、羊膜サンプル、精液サンプル、滑膜サンプル、脊髄サンプル、または胸水サンプルである。
【0010】
いくつかの実施形態において、標的分子はタンパク質、小分子、または核酸である。いくつかの実施形態において、核酸はDNA分子および/またはRNA分子である。
いくつかの実施形態において、(i)および/または(ii)の接触は、4~37℃、任意選択で4~25℃の温度で実行する。いくつかの実施形態において、(i)および/または(ii)の接触は、5分~4時間実行する。
【0011】
いくつかの実施形態において、第1の親和性剤は抗体またはアプタマーであり、標的分子は抗原であり、任意選択で抗原はタンパク質、ペプチドまたは多糖である。いくつかの実施形態において、第1の親和性剤は抗体またはアプタマーであり、標的分子はタンパク質であり、抗体またはアプタマーは標的分子のエピトープに特異的に結合する。
【0012】
いくつかの実施形態において、複数の第1の親和性剤の少なくとも一部は、固相ビーズ、マイクロ流体チャネル、ナノ開口、樹脂、マトリックス、膜、ポリマー、プラスチック、金属、またはガラスの表面に固定化される。いくつかの実施形態において、固相ビーズは磁気ビーズである。
【0013】
いくつかの実施形態において、第2の親和性剤は抗体である。
いくつかの実施形態において、標識分子(例えば、標識化標的分子)のそれぞれは、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している。いくつかの実施形態において、標識分子(例えば、標識化標的分子)のそれぞれは、2、3、4、または5つの異なる蛍光色素分子に連結している。いくつかの実施形態において、標識分子(例えば、標識化標的分子)のそれぞれは、2、3、4、または5つの同一の蛍光色素分子に連結している。
【0014】
いくつかの実施形態において、この方法は、(iv)に続いて、少なくとも1つの蛍光色素分子を標識分子(例えば、標識化標的分子)のそれぞれに化学的に連結させる工程をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、標識分子(例えば、標識化標的分子)のそれぞれは、少なくとも1つの蛍光色素分子に接続された化学リンカーを含む。いくつかの実施形態において、標識分子(例えば、標識化標的分子)のそれぞれは、少なくとも1つの蛍光色素分子に接続されたビオチン-ストレプトアビジン複合体を含む。いくつかの実施形態において、標識分子(例えば、標識化標的分子)のそれぞれは、核酸および少なくとも1つの蛍光色素分子に連結されたビオチン-ストレプトアビジン複合体を含む。いくつかの実施形態において、標識分子(例えば、標識化標的分子)のそれぞれは、標識核酸であり、第2の親和性剤のそれぞれは標識核酸の第1の鎖に連結しており、任意選択で、第1の鎖は長さ5~50核酸塩基である。
【0016】
いくつかの実施形態において、標識核酸の第1の鎖は、ビオチン-ストレプトアビジン複合体を介して第2の親和性剤に連結している。いくつかの実施形態において、標識核酸は、1本鎖核酸である。いくつかの実施形態において、1本鎖核酸は、ヘアピンループを形成する領域を含む。いくつかの実施形態において、1本鎖核酸は、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している。
【0017】
いくつかの実施形態において、標識核酸は、第1の鎖と、第1の鎖に相補的な領域を含む第2の鎖とを含む2本鎖核酸である。いくつかの実施形態において、第2の鎖は、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している。
【0018】
いくつかの実施形態において、標識核酸は、第1の鎖および核酸ダンベルを含み、核酸ダンベルの第1の領域は第1の鎖に相補的である。いくつかの実施形態において、核酸ダンベルは、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している。いくつかの実施形態において、標識核酸は、核酸ダンベルの第2の領域に相補的な第2の1本鎖核酸をさらに含む。いくつかの実施形態において、第2の1本鎖核酸は、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している。
【0019】
いくつかの実施形態において、標識核酸は、第1の鎖および第2の1本鎖核酸を含み、第1の鎖はヘアピンループを形成する領域を含む。いくつかの実施形態において、第2の1本鎖核酸は、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している。
【0020】
いくつかの実施形態において、(i)および(ii)は同時にまたは連続して起こる。いくつかの実施形態において、(iii)は、サンプルを洗浄緩衝液で洗浄することによって未結合の第2の親和性剤を除去する工程を含む。いくつかの実施形態において、洗浄緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水である。いくつかの実施形態において、(iv)は、サンプルを溶出緩衝液で洗浄することによって、結合した第2の親和性剤から標識分子(例えば、標識化標的分子)のそれぞれの少なくともセグメントを単離する工程を含む。いくつかの実施形態において、溶出緩衝液は、高塩緩衝液である。いくつかの実施形態において、(iv)は、サンプルの温度を変化させる(例えば、温度を上昇させる)ことによって、結合した第2の親和性剤から標識分子(例えば、標識化標的分子)のそれぞれの少なくともセグメントを単離する工程を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、標識核酸は、2本鎖標識核酸であり、第2の親和性剤は、2本鎖標識核酸の第1の鎖に連結しており、標識核酸の単離セグメントは、2本鎖標識核酸の第2の鎖である。
【0022】
いくつかの実施形態において、(iv)は、2本鎖標識核酸の第1の鎖に相補的な過剰な1本鎖核酸でサンプルを洗浄することによって、2本鎖標識核酸の第2の鎖を単離する工程を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、参照分子のそれぞれは、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結しており、参照分子に連結した蛍光色素分子は、標識分子に連結した少なくとも1つの蛍光色素分子とは異なる。いくつかの実施形態において、参照分子に連結した少なくとも1つの蛍光色素分子および標識分子(例えば、標識化標的分子)に連結した少なくとも1つの蛍光色素分子は、同じ励起波長によって励起させることができる。いくつかの実施形態において、参照分子のそれぞれは、参照核酸である。いくつかの実施形態において、参照核酸は、1本鎖または2本鎖核酸である。いくつかの実施形態において、参照分子のそれぞれは、複数の第1の親和性剤の少なくとも一部と同じ表面に固定化される。いくつかの実施形態において、参照分子のそれぞれは、複数の第1の親和性剤の少なくとも一部が固定化されている表面とは異なる表面に固定化される。いくつかの実施形態において、参照分子のそれぞれは、第1の親和性剤に連結している。いくつかの実施形態において、参照分子のそれぞれは、表面に固定化された、または第1の親和性剤に連結された1本鎖核酸と、1本鎖核酸に対する相補性の領域を含むダンベル核酸とを含む複合体である。いくつかの実施形態において、参照分子を、(iv)中に単離する。
【0024】
いくつかの実施形態において、標識分子(例えば、標識化標的分子)は標識核酸であり、参照分子は参照核酸であり、標識および参照核酸を、(iv)中に、任意選択でローリングサークル増幅を使用して増幅させる。
【0025】
いくつかの実施形態において、標識分子(例えば、標識化標的分子)(または標識分子のセグメント)および既知の濃度の参照分子を、検出チップ内で組み合わせる。いくつかの実施形態において、検出チップは、サンプルウェルの規則的なアレイを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、各サンプルウェルの深さは50~500nm、任意選択で約300nmである。いくつかの実施形態において、各サンプルウェルの内部ベースの直径は50~250nm、任意選択で75~125nm、さらに任意選択で約100nmである。
【0027】
いくつかの実施形態において、各サンプルウェルの内部ベースは、シラン含有化合物で機能化されている(functionalized)。いくつかの実施形態において、各サンプルウェルの内部ベースは、ビオチン-ストレプトアビジン複合体で機能化されている。いくつかの実施形態において、各サンプルウェルの内部ベースは、正に帯電した分子で機能化されている。いくつかの実施形態において、各サンプルウェルの内部ベースは、1000nm2あたり40~300個の正電荷で機能化されている。いくつかの実施形態において、正に帯電した分子はポリリジン分子である。いくつかの実施形態において、ポリリジン分子は、10~200個のリジンアミノ酸、任意選択で20~100個のリジンアミノ酸、さらに任意選択で50個のリジンアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、正に帯電した分子は正に帯電した末端シラン分子である。
【0028】
いくつかの実施形態において、各サンプルウェルの内部ベースは、標識核酸および/または参照核酸に相補的な核酸で機能化されている。
いくつかの実施形態において、参照分子に対する標識分子(例えば、標識化標的分子)の比を、蛍光測定値を使用して決定する。いくつかの実施形態において、参照分子に対する標識分子(例えば、標識化標的分子)の比を、サンプルウェル内の標識分子および参照分子の蛍光測定値を使用して決定する。いくつかの実施形態において、参照分子に対する標識分子(例えば、標識化標的分子)の比を、部分的にはサンプルウェル内の標識分子および参照分子の滞留時間に基づいて決定する。
【0029】
いくつかの実施形態において、標識分子および参照分子を、各サンプルウェルの内部ベースにある正に帯電した分子との静電相互作用によってサンプルウェルに送達し、サンプルウェル内に維持する。いくつかの実施形態において、標識分子および参照分子を、標識核酸および/または参照核酸に相補的な各サンプルウェルの内部ベースにある核酸との相互作用によってサンプルウェルに送達し、サンプルウェル内に維持する。いくつかの実施形態において、標識分子および参照分子を、重力または磁場によってサンプルウェルに送達し、サンプルウェル内に維持する。いくつかの実施形態において、標識分子および参照分子を、クラウディング試薬を使用してサンプルウェルに送達し、サンプルウェル内に維持し、任意選択で、クラウディング試薬は、糖分子、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、デキストラン、フィコール、ウシ血清アルブミン、またはトレハロースである。
【0030】
いくつかの実施形態において、サンプル中の標的分子の濃度を、既知の濃度の標識分子(例えば、標識化標的分子)および参照分子を含む標準サンプルの測定から導出された標準曲線を使用して決定する。
【0031】
本開示のいくつかの態様は、サンプルウェルのアレイを含む検出チップを提供し、各サンプルウェルの内部ベースは、正に帯電した分子で機能化されている。
いくつかの実施形態において、サンプルウェルのアレイは、規則的なアレイである。いくつかの実施形態において、各サンプルウェルの深さは50~500nm、任意選択で約300nmである。いくつかの実施形態において、各サンプルウェルの内部ベースの直径は50~250nm、任意選択で75~125nm、さらに任意選択で100nmである。
【0032】
いくつかの実施形態において、正に帯電した分子は、シラン含有化合物を使用して各サンプルウェルの内部ベースに付着している。いくつかの実施形態において、正に帯電した分子は、ビオチン-ストレプトアビジン複合体を使用して各サンプルウェルの内部ベースに付着している。いくつかの実施形態において、各サンプルウェルの内部ベースは、1000nm2あたり40~300個の正電荷で機能化されている。いくつかの実施形態において、正に帯電した分子はポリリジン分子である。いくつかの実施形態において、ポリリジン分子は、10~200個のリジンアミノ酸、任意選択で20~100個のリジンアミノ酸、さらに任意選択で50個のリジンアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、正に帯電した分子は正に帯電した末端シラン分子である。
【0033】
いくつかの実施形態において、標識化標的分子または標識分子は、分子バーコードをさらに含む。
本開示のいくつかの態様は、標的分子のアイデンティティ(identity)を決定する方法を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態において、標的分子のアイデンティティを決定する方法は、(i)標的分子を、標的分子に対する結合親和性を有する第1の親和性剤と接触させて、第1の親和性剤に結合した標的分子を含む第1の複合体を生成する工程であって、第1の親和性剤は固相ビーズの表面に固定化されており、標識分子は、固相ビーズの表面に付着している、工程;(ii)第1の複合体を、標的分子に対する結合親和性を有する表面固定化された第2の親和性剤と接触させて、第1の複合体に結合した第2の親和性剤を含む第2の複合体を生成する工程;(iii)任意選択で、第2の複合体を洗浄する工程;(iv)標識分子を単離する工程;(v)単離標識分子を、既知の分子がサンプルウェルに付着しているサンプルウェルを含む検出チップと接触させる工程;および(vi)蛍光、発光、および/または速度論的(kinetic)測定を使用して標識分子のアイデンティティを決定し、それによって標的分子を同定する工程、を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、標的分子のアイデンティティを決定する方法は、(i)標的分子を、標的分子に対する結合親和性を有する第1の親和性剤と接触させて、第1の親和性剤に結合した標的分子を含む第1の複合体を生成する工程であって、第1の親和性剤は固相ビーズの表面に固定化されている、工程;(ii)第1の複合体を、標的分子に対する結合親和性を有する第2の親和性剤と接触させて、第1の複合体に結合した第2の親和性剤を含む第2の複合体を生成する工程であって、第2の親和性剤は、標識分子に付着している、工程;(iii)任意選択で、第2の複合体を洗浄する工程;(iv)標識分子を単離する工程;(v)単離標識分子を、既知の分子がサンプルウェルに付着しているサンプルウェルを含む検出チップと接触させる工程;および(vi)蛍光、発光、および/または速度論的測定を使用して標識分子のアイデンティティを決定し、それによって標的分子を同定する工程、を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、標識分子は、標識核酸である。いくつかの実施形態において、既知の分子は既知の核酸であり、任意選択で、既知の核酸は標識核酸に相補的である。
【0037】
いくつかの実施形態において、速度論的測定は、サンプルウェル内の標識分子の滞留時間を含む。
いくつかの実施形態において、標的分子はタンパク質、小分子、または核酸である。一部の実施形態において、核酸はDNAまたはRNAである。
【0038】
いくつかの実施形態において、第1の親和性剤は抗体またはアプタマーであり、標的分子は抗原であり、任意選択で抗原はタンパク質、ペプチドまたは多糖である。
いくつかの実施形態において、固相ビーズは、プラスチック、ポリマー、ガラス、または磁気ビーズである。
【0039】
いくつかの実施形態において、第2の親和性剤は抗体である。
いくつかの実施形態において、標識分子は、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している。
【0040】
いくつかの実施形態において、検出チップは、サンプルウェルの規則的なアレイを含む。各サンプルウェルの深さは50~500nm、任意選択で約300nmであり得る。各サンプルウェルの内部ベースの直径は50~250nm、任意選択で75~125nm、さらに任意選択で約100nmであり得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、標識分子は、分子バーコードをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】1本鎖標識および参照核酸を利用する本開示の方法の例示的ワークフローを示す図。
【
図2】2本鎖標識および参照核酸を利用する本開示の方法の例示的ワークフローを示す図。
【
図3】ダンベル標識および参照核酸を利用する本開示の方法の例示的ワークフローを示す図。
【
図4】標識分子に対する参照分子の位置決めの例(左)および標識分子のいくつかの実施形態(右)を示す図。
【
図5】標識分子および参照分子の例示的構成を示す図。
【
図6】標識分子および参照分子をサンプルウェルに送達するための方法のいくつかの例を示す図。
【
図8】ポリリジンで機能化された検出チップの内部ベースの例を示す図。
【
図9】正に帯電したシランで機能化された検出チップの内部ベースの例を示す図。
【
図10A】本明細書に記載の検出チップを使用した動的パルス挙動を示す図。開口部の代表的なトレースを示す。
【
図10B】本明細書に記載の検出チップを使用した動的パルス挙動を示す図。15分間のパルス計数(パルス速度)のヒストグラムを示す。
【
図10C】本明細書に記載の検出チップを使用した動的パルス挙動を示す図。>0.3のパルス持続時間を有するパルスについてのビン比における特徴的な差異を有する、蛍光色素分子で標識化された2つの異なる核酸のクラスタ分離を示す。
【
図10D】本明細書に記載の検出チップを使用した動的パルス挙動を示す図。パルス持続時間のヒストグラムを示す。
【
図11A】シクロオクチン(cycooctyne)含有分子を用いて抗体を修飾する例示的な方法を示す図。
【
図11B】ビオチン-ストレプトアビジン複合体を用いて抗体を修飾する例示的な方法を示す図。
【
図12A】第1の親和性剤および第2の親和性剤を含む複合体(例えば、挟まれた抗体-抗原複合体)から核酸分子(例えば、標識分子)を溶出するための例示的な戦略を示す図。
【
図12B】第1の親和性剤および第2の親和性剤を含む複合体(例えば、挟まれた抗体-抗原複合体)から核酸分子(例えば、標識分子)を溶出するための例示的な戦略を示す図。
【
図12C】第1の親和性剤および第2の親和性剤を含む複合体(例えば、挟まれた抗体-抗原複合体)から核酸分子(例えば、標識分子)を溶出するための例示的な戦略を示す図。
【
図12D】第1の親和性剤および第2の親和性剤を含む複合体(例えば、挟まれた抗体-抗原複合体)から核酸分子(例えば、標識分子)を溶出するための例示的な戦略を示す図。
【
図13】ナノ開口の底部のPLL機能化表面へのdsDNAの可逆的結合による標識化dsDNAの添加時のパルスの開始を示す例示的トレースを示す図。
【
図14】相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサの寿命感度時間ビンで収集された相対シグナルの測定値を示しており、これは、Cy3およびAtto-Rho6G標識化dsDNAをそれぞれ25pM含有するサンプルの検出操作中に収集された色素の蛍光寿命(ビン比)に対応する図。
【
図15A】利用する本開示の方法の例示的ワークフローを示す図。
【
図15B】利用する本開示の方法の例示的ワークフローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
いくつかの態様において、本開示は、バイオセンサ検出の方法(例えば、標的分子の量、例えば濃度の正確な決定)を提供する。いくつかの実施形態において、バイオセンサ検出の方法(例えば、サンプル中の標識化標的分子の濃度を決定する方法)は、以下を含む:標識化標的分子を含有するサンプルを、既知の濃度の参照分子と合わせる工程;参照分子の検出事象に対する標識化標的分子の検出事象の比を決定する工程;および参照分子の検出事象に対する標識化標的分子の検出事象の比に少なくとも部分的に基づいて、サンプル中の標識化標的分子の濃度を決定する工程。いくつかの実施形態において、バイオセンサ検出の方法は、標的分子のアイデンティティを決定する工程を含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、バイオセンサ検出の方法(例えば、サンプル中の標的分子の濃度を決定する方法)は、以下を含む:
(i)標的分子を含むサンプルを、標的分子に対する結合親和性を有する複数の第1の親和性剤と接触させて、第1の親和性剤に結合した標的分子を含む複数の第1の複合体を生成する工程であって、複数の第1の親和性剤の少なくとも一部が表面に固定化されている、工程;
(ii)複数の第1の複合体を、第1の複合体に対する結合親和性を有する複数の第2の親和性剤と接触させて、第1の複合体に結合した第2の親和性剤を含む複数の第2の複合体を生成する工程であって、第2の親和性剤の少なくとも一部が標識分子に連結している、工程;
(iii)未結合の第2の親和性剤を除去する工程、および/または複数の第2の複合体を単離する工程;
(iv)任意選択で、複数の第2の複合体の結合した第2の親和性剤から各標識分子の少なくともセグメントを単離する工程;
(v)標識分子のセグメントを既知の濃度の参照分子と合わせる工程;
(vi)参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比を決定する工程;および
(vii)参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比に少なくとも部分的に基づいて、サンプル中の標的分子の濃度を決定する工程。
【0045】
いくつかの実施形態において、工程(i)は、(i)(a)標的分子を含むサンプルを、標的分子に対する結合親和性を有する複数の第1の親和性剤と接触させて、第1の親和性剤に結合した標的分子を含む複数の第1の複合体を生成する工程;および(i)(b)複数の第1の親和性剤の少なくとも一部を表面に固定化する工程、を含む。
【0046】
標的分子
標的分子は、任意のタンパク質、小分子、または核酸であり得る。いくつかの実施形態において、標的分子は、天然に存在する分子である。いくつかの実施形態において、標的分子は、合成分子である。いくつかの実施形態において、標的分子は、生体サンプルに由来するか、生体サンプルから得られる。標的分子は、抗原であり得る。いくつかの実施形態において、標的分子は抗原であり、この抗原はタンパク質、ペプチドまたは多糖である。
【0047】
生体サンプルは、単一細胞、哺乳動物細胞組織、動物サンプル、真菌サンプル、または植物サンプルであり得る。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血液サンプル、唾液サンプル、喀痰サンプル、糞便サンプル、尿サンプル、口腔スワブサンプル、羊膜サンプル、精液サンプル、滑膜サンプル、脊髄サンプル、または胸水サンプルである。
【0048】
いくつかの実施形態において、サンプルは、精製サンプル、細胞溶解物、単一細胞、細胞集団、または組織であり得る。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、イヌ、ネコ、ウマ、または任意の他の哺乳動物に由来する。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、細菌細胞培養物(例えば、大腸菌(E.coli)細菌細胞培養物)に由来する。細菌細胞培養物は、グラム陽性細菌細胞および/またはグラム陰性細菌細胞を含み得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、メタゲノムサンプルまたは環境サンプルからユーザーが開発した方法を介して事前に抽出された核酸またはタンパク質の精製サンプルである。血液サンプルは、対象(例えば、ヒト対象)から新たに採取された血液サンプルであってもよく、または乾燥血液サンプル(例えば、固体媒体(例えば、ガスリーカード)上に保存されたもの)であってもよい。血液サンプルには、全血、血清、血漿、赤血球、および/または白血球を含めてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、サンプル(例えば、細胞または組織を含むサンプル)は、当業者に知られているプロセスで調製、例えば、溶解(例えば、破壊、分解、および/またはそうでなければ消化)してもよい。いくつかの実施形態において、調製される、例えば溶解されるサンプルは、培養細胞、生検(例えば、がん患者、例えばヒトがん患者からの腫瘍生検)からの組織サンプル、または任意の他の臨床サンプルを含む。いくつかの実施形態において、細胞または組織を含むサンプルを、既知の物理的または化学的方法論のいずれか1つを使用して溶解させて、前記細胞または組織から標的分子(例えば、標的核酸または標的タンパク質)を放出させる。いくつかの実施形態において、サンプルは、電解法、酵素法、界面活性剤ベースの方法、および/または機械的均質化を使用して溶解させることができる。いくつかの実施形態において、サンプル(例えば、複合体組織、グラム陽性菌またはグラム陰性菌)は、連続して実行される複数の溶解方法を必要とする場合がある。いくつかの実施形態において、サンプルが細胞または組織を含まない場合(例えば、精製された核酸を含むサンプル)、溶解工程は省略してもよい。いくつかの実施形態において、サンプルの溶解は、標的核酸を単離するために実行する。いくつかの実施形態において、サンプルの溶解は、標的タンパク質を単離するために実行する。いくつかの実施形態において、溶解方法には、サンプルを粉砕するためのミルの使用、超音波処理、弾性表面波(SAW)、凍結融解サイクル、加熱、界面活性剤の添加、タンパク質分解剤(例えば、加水分解酵素またはプロテアーゼなどの酵素)の添加、および/または細胞壁消化酵素(例えば、リゾチームまたはザイモリアーゼ(zymolase)の添加がさらに含まれる。溶解用の例示的な界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリソルベートおよびアルキルフェノールエトキシレート、好ましくはノニルフェノールエトキシレート、アルキルグルコシドおよび/またはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが挙げられる。いくつかの実施形態において、溶解方法は、サンプルを少なくとも1~30分間、1~25分間、5~25分間、5~20分間、10~30分間、5~10分間、10~20分間、または少なくとも5分間、所望の温度(例えば、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、少なくとも90℃、または少なくとも95℃)で加熱することを伴う。
【0050】
親和性剤(Affinity agents)
本明細書に記載される第1の親和性剤は、標的分子に対して結合親和性を有する分子(例えば、抗体またはアプタマー)である。いくつかの実施形態において、第1の親和性剤は、1×10-3M~1×10-4M、1×10-4M~1×10-5M、1×10-5M~1×10-6M、1×10-6M~1×10-7M、1×10-7M~1×10-8M、1×10-8M~1×10-9M、1×10-9M~1×10-9M、1×10-9M~1×10-10M、または1×10-10M~1×10-12Mの間の標的分子に対して、結合親和性を有する。いくつかの実施形態において、第1の親和性剤は、標的分子(例えば、標的タンパク質)の特定のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態において、第1の親和性剤は一次抗体である。
【0051】
第1の親和性剤は、表面に固定化させてもよい。いくつかの実施形態において、第1の親和性剤を、結合親和性を有するその同族標的分子と接触させる(例えば、結合する)前に表面に固定化させる。他の実施形態において、第1の親和性剤を、それが結合親和性を有するその同族標的分子と接触した(例えば、結合した)後、表面に固定化させ、例えば、第1の親和性剤と標的分子との間で複合体が形成されるようにする。いくつかの実施形態において、第1の親和性剤は、固相ビーズ(例えば、磁気ビーズ、例えば、Dynabead(登録商標))、マイクロ流体チャネル、ナノ開口、樹脂、マトリックス、膜、ポリマー、プラスチック、金属、またはガラスに固定化させる。
【0052】
本明細書に記載される第2の親和性剤は、一般に、その同族標的分子に結合した第1の親和性剤を含む複合体に対して結合親和性を有する分子(例えば、抗体またはアプタマー)である。いくつかの実施形態において、第2の親和性剤は、1×10-3M~1×10-4M、1×10-4M~1×10-5M、1×10-5M~1×10-6M、1×10-6M~1×10-7M、1×10-7M~1×10-8M、1×10-8M~1×10-9M、1×10-9M~1×10-9M、1×10-9M~1×10-10M、または1×10-10M~1×10-12Mの間のその同族標的分子に結合した第1の親和性剤を含む複合体に対して、結合親和性を有する。
【0053】
標識分子および参照分子
いくつかの実施形態において、標識分子は、第2の親和性剤に連結した分子である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、標識分子を使用して、サンプル内の標的分子の総分量または量(例えば、濃度)を表す。標識分子を検出して、サンプル内の標的分子の総分量または量(例えば、濃度)を正確に決定することができる。標識分子の検出は、シーケンシング技術(例えば、タンパク質シーケンシングもしくは核酸シーケンシング)または蛍光測定値を使用して実行することができる。
【0054】
標識分子は、核酸を含んでもよい。いくつかの実施形態において、標識分子は、標識核酸である。いくつかの実施形態において、標識分子は、核酸および少なくとも1つの蛍光色素分子に連結されたビオチン-ストレプトアビジン複合体を含む。いくつかの実施形態において、標識分子は、2つの相補鎖を含む標識核酸であり、第1の鎖は第2の親和性剤に連結されている。
【0055】
いくつかの実施形態において、標識核酸は、長さ5~200、5~150、5~100、5~50、5~25、10~200、10~100、10~50、25~200、25~100、25~50、50~200、50~100、または100~200ヌクレオチドである。標識核酸は、1本鎖または2本鎖核酸であり得る。標識核酸は、2次または3次構造要素を含み得る。いくつかの実施形態において、標識核酸は、ヘアピンループを形成する領域を含む。いくつかの実施形態において、標識核酸は、ダンベル核酸である。いくつかの実施形態において、標識核酸は、第1の鎖と、第1の鎖に相補的な領域を含む第2の鎖とを含む2本鎖核酸である。
【0056】
標識分子は、
図4に示すようなものであってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、標識核酸は、第1の鎖および核酸ダンベルを含み、核酸ダンベルの第1の領域は第1の鎖に相補的である。いくつかの実施形態において、標識核酸は、第1の鎖および核酸ダンベルを含み、この標識核酸は、核酸ダンベルの第2の領域に相補的な第2の1本鎖核酸をさらに含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、標識分子は、少なくとも1つの蛍光色素分子に連結している。いくつかの実施形態において、標識分子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の蛍光色素分子に連結している。いくつかの実施形態において、標識分子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の異なる蛍光色素分子に連結している(例えば、各蛍光色素分子は、異なる励起波長によって励起される)。いくつかの実施形態において、標識分子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の同一の蛍光色素分子に連結している(例えば、各蛍光色素分子は、同じ励起波長によって励起される)。
【0058】
蛍光色素分子は、標識分子を第2の親和性剤に連結させる前または後に、標識分子に連結(例えば、化学的に結合)させることができる。いくつかの実施形態において、蛍光色素分子は、炭素ベースの化学結合を介して標識分子に連結している。いくつかの実施形態において、蛍光色素分子は、ビオチン-ストレプトアビジン複合体を介して標識分子に連結している。
【0059】
参照分子は、いくつかの実施形態において、サンプル中の内部標準として使用される(例えば、規定の既知の分量で操作者がサンプルに加える)分子である。いくつかの実施形態において、参照分子は、参照核酸(例えば、1本鎖または2本鎖核酸)である。参照分子は、表面(例えば、第1の親和性剤と同じ表面)に固定化することができる。いくつかの実施形態において、参照分子は、第1の親和性剤に連結している。いくつかの実施形態において、参照分子はどの表面にも固定化されない。
【0060】
いくつかの実施形態において、参照分子は、表面に固定化された、または第1の親和性剤に連結した1本鎖核酸と、1本鎖核酸に対する相補性の領域を含むダンベル核酸とを含む複合体である。
【0061】
標識分子と参照分子の検出事象の比の決定
本開示の方法において、標的分子の量(例えば、濃度)は、参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比に基づいて決定し、標識分子の検出事象は、標的分子の存在を表す。いくつかの実施形態において、検出事象は、シーケンシング(例えば、タンパク質シーケンシングもしくは核酸シーケンシング)または蛍光測定値を使用して決定することができる。本開示の方法では、参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比を決定する際に、参照分子の量(例えば、濃度)が知られている。いくつかの実施形態において、サンプル(例えば、生体サンプル)中の参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比を、標準曲線(例えば、既知分量の標識分子と参照分子の混合物を使用して作成された標準曲線)に対してプロットする。いくつかの実施形態において、標準曲線は、既知の濃度の標識分子および参照分子を含む標準サンプルの測定から導出する。
【0062】
参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比を決定するために、蛍光測定値を伴ういくつかの実施形態において、標識分子の単離セグメントおよび既知濃度の参照分子を、検出チップ内で合わせる。参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比を決定するために、シーケンシング測定を伴ういくつかの実施形態において、標識分子の単離セグメントおよび既知濃度の参照分子を、シーケンシングされるサンプルに合わせる。
【0063】
いくつかの実施形態において、参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比を、検出チップのサンプルウェル内の標識分子および参照分子の蛍光測定値を使用して決定する。
【0064】
参照分子に対する標識分子の比を、部分的には検出チップのサンプルウェル内の標識分子および参照分子の滞留時間に基づいて決定することができる。検出チップ内の標識分子および参照分子の滞留時間は、いくつかの実施形態において、サンプル(および検出チップのサンプルウェル)中の標識分子および参照分子の濃度と直接相関し得る。いくつかの実施形態において、例えばシグナルの信頼性を改善し、検出限界を低下させるために、分子の滞留時間を遅くすることができる。いくつかの実施形態において、標識分子および参照分子を、各サンプルウェルの内部ベースにある正に帯電した分子(例えば、ポリリジン)との静電相互作用によってサンプルウェルに送達して、サンプルウェル内に維持する。いくつかの実施形態において、標識核酸および参照核酸を、標識核酸および/または参照核酸に相補的な各サンプルウェルの内部ベースにある核酸との相互作用によってサンプルウェルに送達して、サンプルウェル内に維持する。いくつかの実施形態において、標識タンパク質および参照タンパク質を、標識核酸および/または参照核酸に対する結合親和性を有する各サンプルウェルの内部ベースにある抗体との相互作用によってサンプルウェルに送達して、サンプルウェル内に維持する。いくつかの実施形態において、標識分子および参照分子を、重力または磁場によってサンプルウェルに送達して、サンプルウェル内に維持する(例えば、標識分子および参照分子が、例えば固相ビーズ、例えば磁気ビーズの固体表面に連結したままである場合)。いくつかの実施形態において、標識分子および参照分子を、クラウディング試薬を使用してサンプルウェルに送達して、サンプルウェル内に維持する。クラウディング試薬としては、例えば、糖分子(例えば、スクロースまたはトレハロース)、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、デキストラン、フィコール、またはウシ血清アルブミンなどのタンパク質を挙げることができる。
【0065】
滞留時間の測定は、任意の好適な緩衝液を使用して実行することができる。いくつかの実施形態において、滞留時間の測定は、NaCl 200~350mM、KCl 10~30mM、Na2HPO4 3mM、KHPO4 1mM、4-ニトロ安息香酸 5mM、D-グルコース 50mM、0.1%Tween(登録商標)-20、pH=7.5)を使用して実行する。
【0066】
いくつかの実施形態において、蛍光測定値(例えば、滞留時間)は、パルスコールを使用して分析する。いくつかの実施形態において、検出チップの正に帯電した表面への標識分子および参照分子の可逆的結合により、一時的パルスが生じ、その後、それらの特性(例えば、パルス持続時間、単一フレームパルス)に基づいて、この一時的パルスを呼び出してフィルタリングすることができる。いくつかの実施形態において、単一フレームパルスが低いパルスは廃棄される。次いで、いくつかの実施形態において、操作者は、適格なパルスの統計、例えばパルス/開口およびパルス持続時間のヒストグラムを生成して、および/またはビン比のヒストグラムを生成して、標識と参照クラスタの分離を示すことができ、これに基づいて分子(例えば、分子の蛍光色素分子)の定量化を達成することができる。
【0067】
方法条件
この方法は、任意の適正な温度で実行することができる。例えば、本方法の任意の工程(例えば、第1の親和性剤とサンプルとの接触)は、4~40℃、4~37℃、4~30℃、4~25℃、4~15℃、4~10℃、10~40℃、15~37℃、15~25℃の温度、または室温で実行することができる。同様に、この方法の任意の工程は、任意の適正な期間、実行することができる。例えば、本方法の任意の工程(例えば、第1の親和性剤とサンプルとの接触)は、5~60分、5~300分、5~200分、5~100分、30~180分、1~4時間、1~3時間、または1~2時間、実行することができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、サンプルは、第2の親和性剤と接触させる前に、第1の親和性剤と接触させる。他の実施形態において、サンプルを、第1の親和性剤および第2の親和性剤と同時に接触させる。
【0069】
未結合の第2の親和性剤をサンプルから除去する工程は、サンプルを洗浄緩衝液で洗浄することによって実行する。洗浄緩衝液は、高塩洗浄緩衝液、低塩洗浄緩衝液、またはリン酸緩衝生理食塩水であってもよい。第1の親和性剤、第2の親和性剤、および標識分子を含む第2の複合体(例えば、表面に連結した第2の複合体)を単離する工程は、サンプルを濾過するか、または第2の複合体が連結している表面(例えば、ビーズ)を手動で除去することによって実行することができる。
【0070】
結合した第2の親和性剤から標識分子を単離する工程は、サンプルを溶出緩衝液で洗浄することによって実行することができる。溶出緩衝液は、高塩緩衝液、サンプルとは異なるpHを有する緩衝液、または当業者に知られている任意の溶出緩衝液であってもよい。いくつかの実施形態において、標識分子を、サンプルの温度を変化させる(例えば、温度を上昇させる)ことによって、結合した第2の親和性剤から単離する。
【0071】
いくつかの実施形態において、標識核酸は、
図12A~12Dに示されるようなプロセスを使用して単離する。
図12A~12Bは、2本鎖標識核酸のレポータ鎖に相補的な過剰な1本鎖核酸(すなわち、置換鎖)でサンプルを洗浄することによって、標識核酸(すなわち、レポータ鎖)を単離することができることを示す。
図12Cは、2本鎖標識核酸の第1の鎖(すなわち、捕捉鎖)に相補的な過剰な1本鎖核酸(すなわち、置換鎖)でサンプルを洗浄することによって、標識核酸(すなわち、レポータ鎖)を単離することができることを示す。
図12Dは、標識核酸(すなわち、レポータ)を、標識核酸を切断するニッキング酵素とサンプルを接触させることによって単離することができることを示す。
【0072】
いくつかの実施形態において、標識分子の単離前に参照分子が表面に連結しているか、または別様にサンプル中に存在する場合、参照分子は標識分子と同時に単離することができる。いくつかの実施形態において、標識核酸および参照核酸を、サンプルからの単離中または単離後に増幅させる。核酸は、任意の既知の増幅技術(例えば、ローリングサークル増幅)を使用して増幅させることができる。
【0073】
カートリッジまたは検出チップ
別の態様において、カートリッジまたは検出チップが提供される。いくつかの実施形態において、検出チップは、サンプルウェルのアレイ(例えば、サンプルウェルの規則的なアレイ)を含む。いくつかの実施形態において、検出チップによって蛍光測定値の収集が可能になる。検出チップは、例えば各サンプルウェルの内部ベース(すなわち、サンプルウェルの底部)において、正に帯電した分子で機能化してもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、検出チップ内のサンプルウェルの深さは、50~500nm、25~250nm、50~400nm、50~300nm、50~200nm、50~150nm、50~100nm、75~150nm、100~250nm、100~300nm、250~500nm、または250~350nmである。いくつかの実施形態において、検出チップ内のサンプルウェルの深さは、約50nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、または500nmである。いくつかの実施形態において、各サンプルウェルの内部ベースの直径は、50~250nm、50~200nm、50~150nm、50~100nm、75~150nm、75~200nm、100~150nm、100~200nm、または150~250nmである。いくつかの実施形態において、各サンプルウェルの内部ベースの直径は、約50nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、または250nmである。
【0075】
いくつかの実施形態において、検出チップは、サンプルウェルの内部ベースに付着した正に帯電した分子を含む。いくつかの実施形態において、正に帯電した分子は、シラン含有化合物またはビオチン-ストレプトアビジン複合体を使用して付着させる。いくつかの実施形態において、サンプルウェルの内部ベースは、1000nm2あたり20~500、30~400、50~350、50~300、50~250、50~200、50~100、100~400、または100~200個の正電荷で機能化されている。
【0076】
いくつかの実施形態において、正に帯電した分子はポリリジン分子である。ポリリジン分子は、リジンアミノ酸の直鎖または分岐鎖を含み得る。いくつかの実施形態において、ポリリジン分子は、10~200、10~150、10~100、25~200、25~150、25~100、20~100、20~75、25~50、または50~100個のリジンアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、ポリリジン分子は、約10、25、50、75、100、125、150、175、200、または225個のリジンアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、ポリリジン分子は
図8に示される通りである。
【0077】
いくつかの実施形態において、正に帯電した分子は正に帯電した末端シラン分子である。いくつかの実施形態において、正に帯電した末端シラン分子は
図9に示される通りである。
【0078】
いくつかの実施形態において、カートリッジまたは検出チップは、チャネルを含む表面を有するベース層を含み、チャネルのうちの少なくともいくつかの少なくとも一部は、(1)チャネルのベースに単一の頂点を有し、ベース層の表面に他の2つの頂点を有する、実質的に三角形の断面を有する、および(2)チャネルの表面開口部を実質的に密閉するように構成された、エラストマーを含む表面層を有する。
【0079】
いくつかの実施形態において、カートリッジまたは検出チップは、ベース層を含む。いくつかの実施形態において、ベース層は、1つまたは複数のチャネルを含む表面を有する。本明細書で使用される場合、「チャネル」という用語は当業者には公知であり、流体を収容および/または輸送するように構成された構造を指すことができる。チャネルは一般に、壁;ベース(例えば、壁に接続された、および/または壁から形成されたベース);チャネルの1つまたは複数の部分で開いているか、覆われているか、および/または密閉されていてもよい表面開口部から構成されている。
【0080】
本明細書で使用される場合、「マイクロチャネル」という用語は、サイズが1000ミクロン(1000μm)以下の少なくとも1つの寸法を含むチャネルを指す。例えば、マイクロチャネルは、サイズが1000ミクロン(1000μm)以下(例えば、100ミクロン(100μm)以下、10ミクロン(10μm)以下、5ミクロン(5μm)以下)の少なくとも1つの寸法(例えば、幅、高さ)を含み得る。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、1ミクロン(1μm)以上(例えば、2ミクロン(2μm)以上、10ミクロン(10μm)以上)の少なくとも1つの寸法を含む。上で参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、1ミクロン(1μm)以上1000ミクロン(1000μm)以下、10ミクロン(10μm)以上100ミクロン(100μm)以下)。他の範囲も可能である。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、1000ミクロン(1000μm)以下の水力直径を有する。本明細書で使用される場合、「水力直径(hydraulic diameter)」(DH)という用語は、当業者には公知であり、次のように決定され得る:DH=4A/P、式中、Aは、チャネルを通る流体の流れの断面積であり、Pは断面の濡れた周囲(流体が接触するチャネルの断面の周囲)である。
【0081】
いくつかの実施形態において、少なくともいくつかのチャネルの少なくとも一部は、実質的に三角形の断面を有する。いくつかの実施形態において、少なくともいくつかのチャネルの少なくとも一部は、チャネルのベースに単一の頂点を有し、ベース層の表面に他の2つの頂点を有する実質的に三角形の断面を有する。再び
図24を参照すると、いくつかの実施形態において、チャネル102の少なくともいくつかの少なくとも一部は、チャネルのベースに単一の頂点を有し、ベース層の表面に他の2つの頂点を有する実質的に三角形の断面を有する。
【0082】
本明細書で使用される場合、「三角形」という用語は、三角形が内接または外接して実際の形状に近似または等しくなることができる形状を指すために使用され、純粋に三角形に限定されない。例えば、三角形の断面は、1つまたは複数の部分で非ゼロの曲率を含むことができる。
【0083】
三角形の断面は楔形を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「楔形」という用語は当業者には公知であり、厚い端部を有し、薄い端部に向かって先細になっている形状を指す。いくつかの実施形態において、楔形は、厚い端から薄い端まで対称軸を有する。例えば、楔形は、厚い端部(例えば、チャネルの表面開口部)を有し、薄い端部(例えば、チャネルのベース)に向かって先細になっていてもよく、厚い端部から薄い端部まで対称軸を有してもよい。
【0084】
さらに、ある特定の実施形態において、実質的に三角形の断面(すなわち、「V溝」)は、様々なアスペクト比を有し得る。本明細書で使用される場合、V溝の「アスペクト比」という用語は、高さ対幅の比を指す。例えば、いくつかの実施形態において、V溝は、2以下、1以下、または0.5以下、および/または0.1以上、0.2以上、または0.3以上のアスペクト比を有してもよい。上で参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、0.1~2の間またはそれに等しい、0.2~1の間またはそれに等しい)。他の範囲も可能である。
【0085】
いくつかの実施形態において、少なくともいくつかのチャネルの少なくとも一部は、実質的に三角形の部分と、実質的に三角形の部分に開口し、チャネルの表面に対して実質的に三角形の部分の下に延びる第2の部分とを含む断面を有する。いくつかの実施形態において、第2の部分は、実質的に三角形の部分の平均直径よりも著しく小さい直径(例えば、平均直径)を有する。いくつかの実施形態において、チャネルの長さに沿った部分は、実質的に三角形の部分と第2の部分(「深いセクション」)の両方を有し得るが、チャネルの長さに沿った異なる部分は、実質的に三角形の部分のみを有する。いくつかのそのような実施形態において、装置(例えば、ローラ)が、実質的に三角形の部分と第2の部分(深いセクション)の両方を有する部分と係合するとき、表面層とのシールが達成されないため、ポンプ動作は開始されない。しかしながら、装置はチャネルの長さ方向に沿って係合するため、チャネルの一部が実質的に三角形のセクションのみを有する表面層を装置が変形させると、その部分の第2の部分(深いセクション)が欠落してシール(結果として圧力差)を作出することができるため、ポンプ動作が始まる。したがって、場合によっては、カートリッジまたは検出チップのチャネルの長さに沿った深いセクションの存在および不在により、装置との係合時にチャネルのどの部分がポンプ動作を受けることができるかを制御することが可能になる場合がある。
【0086】
カートリッジまたは検出チップのチャネルの少なくともいくつかの第2の部分としてそのような「深いセクション」を含めることは、さまざまな潜在的な利点のいずれかに寄与する場合がある。例えば、そのような深いセクションは、場合によっては、蠕動ポンプ移送工程におけるポンプ容積の減少に寄与する場合がある。いくつかのこのような場合には、より高い容積分解能(resolution)を得るためにポンプ容積を2倍以上減少させることができる。場合によっては、そのような深いセクションは、ローラがチャネル上の着地する場所によって決定されない、ポンプ容積の明確に定義された開始点を提供することもあり得る。例えば、実質的に三角形の部分と第2の部分(深いセクション)の両方を有するチャネルの部分と、実質的に三角形の部分のみを有するチャネルの部分との間の界面は、後者のチャネル部分の容積を占める流体のみをポンプ移送させることができるため、場合によっては、ポンプ容積の明確に定義された開始点として使用することができる。場合によっては、ローラがチャネルに着地する場所に、カートリッジまたは検出チップの位置合わせなどのさまざまな要因に応じて何らかの誤差が発生する場合がある。深いセクションを含めることにより、場合によっては、そのような誤差に関連するポンプ容積の変動が低減または排除される場合がある。
【0087】
本明細書で使用される場合、チャネルの実質的に三角形の部分の平均直径は、実質的に三角形の部分の頂点からチャネルの表面までのz軸にわたる平均として測定することができる。
【0088】
デバイスおよびモジュール
本明細書に記載の方法において使用するための装置、カートリッジもしくは検出チップ(例えば、チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)を含む)、および/またはポンプ(例えば、蠕動ポンプ)を含むデバイスまたはモジュールが一般的に提供される。本開示に従ってデバイスを使用して、生体サンプルからの標的分子の量(例えば、濃度)の正確な決定を促進することができる。デバイスおよび関連方法は、本明細書の他の場所に記載されるバイオセンサ検出方法の任意の工程による核酸および/またはタンパク質の処理のための反応を含む、化学反応および/または生物学的反応を実行するために使用することができる。
【0089】
本開示のデバイスは、いくつかの実施形態において、以下の工程:標識化標的分子を含有するサンプルを、既知の濃度の参照分子と合わせる工程;参照分子の検出事象に対する標識化標的分子の検出事象の比を決定する工程;および参照分子の検出事象に対する標識化標的分子の検出事象の比に少なくとも部分的に基づいて、サンプル中の標識化標的分子の濃度を決定する工程、のうちの任意の数を実行することができる。
【0090】
本開示のデバイスは、いくつかの実施形態において、以下の工程:
(i)標的分子を含むサンプルを、標的分子に対する結合親和性を有する複数の第1の親和性剤(affinity agents)と接触させて、第1の親和性剤に結合した標的分子を含む複数の第1の複合体を生成する工程であって、複数の第1の親和性剤の少なくとも一部が表面に固定化されている、工程;
(ii)複数の第1の複合体を、第1の複合体に対する結合親和性を有する複数の第2の親和性剤と接触させて、第1の複合体に結合した第2の親和性剤を含む複数の第2の複合体を生成する工程であって、第2の親和性剤の少なくとも一部が標識分子に連結している、工程;
(iii)未結合の第2の親和性剤を除去する工程、および/または複数の第2の複合体を単離する工程;
(iv)任意選択で、複数の第2の複合体の結合した第2の親和性剤から各標識分子の少なくともセグメントを単離する工程;
(v)標識分子のセグメントを既知の濃度の参照分子と合わせる工程;
(vi)参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比を決定する工程;および
(vii)参照分子の検出事象に対する標識分子の検出事象の比に少なくとも部分的に基づいて、サンプル中の標的分子の濃度を決定する工程、のうちの任意の数を実行することができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、工程(i)は、(i)(a)標的分子を含むサンプルを、標的分子に対する結合親和性を有する複数の第1の親和性剤と接触させて、第1の親和性剤に結合した標的分子を含む複数の第1の複合体を生成する工程;および(i)(b)複数の第1の親和性剤の少なくとも一部を表面に固定化する工程、を含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、本開示のデバイスにより、工程(i)~(vii)のすべてを実行する。いくつかの実施形態において、本開示のデバイスにより工程(i)を実行し、任意選択で工程(ii)~(vii)のうちの任意の数を実行する。いくつかの実施形態において、本開示のデバイスにより工程(ii)を実行し、任意選択で工程(i)および/または(iii)~(vii)のうちの任意の数を実行する。いくつかの実施形態において、本開示のデバイスにより工程(iii)を実行し、任意選択で工程(i)、(ii)、および/または(iv)~(vii)のうちの任意の数を実行する。いくつかの実施形態において、本開示のデバイスにより工程(iv)を実行し、任意選択で工程(i)~(iii)および/または(v)~(vii)のうちの任意の数を実行する。いくつかの実施形態において、本開示のデバイスにより工程(v)を実行し、任意選択で工程(i)~(iv)、(vi)、または(vii)のうちの任意の数を実行する。いくつかの実施形態において、本開示のデバイスにより工程(vi)を実行し、任意選択で工程(i)~(v)、(vii)、および/または(viii)のうちの任意の数を実行する。いくつかの実施形態において、本開示のデバイスにより工程(vii)を実行し、任意選択で工程(i)~(vi)、および/または(viii)のうちの任意の数を実行する。いくつかの実施形態において、本開示のデバイスにより工程(viii)を実行し、任意選択で工程(i)~(vii)のうちの任意の数を実行する。実験の必要に応じて、工程の順序を変更することができる。いくつかの実施形態において、工程のいずれか1つに手動工程が組み入れられている。この柔軟性により、ユーザーは複数のサンプルの種類および検出プラットフォームに対処することができる。
【0093】
いくつかの実施形態において、本開示のデバイスは、標識分子および/または参照分子を検出モジュールまたはデバイスに送達または移送するように配置する。いくつかの実施形態において、本開示のデバイスは、検出デバイスまたはモジュールに直接的に接続される(例えば、物理的に取り付けられる)か、または間接的に検出デバイスまたはモジュールに接続される。
【0094】
いくつかの実施形態において、カートリッジまたは検出チップは、流体を受け入れるように、および/またはバイオセンサ法で使用される1つもしくは複数の試薬を含有するように構成された1つもしくは複数のリザーバまたは反応容器を含む。いくつかの実施形態において、カートリッジまたは検出チップは、バイオセンサ法で使用される流体(例えば、1つもしくは複数の試薬を含む流体)を収容および/または輸送するように構成された1つもしくは複数のチャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)を含む。試薬には、緩衝液、酵素試薬、ポリマーマトリックス、捕捉試薬、サイズ特異的選択試薬、配列特異的選択試薬、および/または精製試薬が含まれる。バイオセンサ法で使用するための追加の試薬は当業者に公知である。
【0095】
いくつかの実施形態において、カートリッジまたは検出チップは、1つもしくは複数の保存された試薬(例えば、液体形態への再構成に好適な液体もしくは凍結乾燥形態のもの)を含む。カートリッジまたは検出チップの保存された試薬には、所望の工程を実行するのに好適な試薬および/または所望のサンプルの種類を処理するのに好適な試薬が含まれる。いくつかの実施形態において、カートリッジまたは検出チップは、1回使いきりカートリッジまたは検出チップ(例えば、使い捨てカートリッジまたは検出チップ)、または複数回使用カートリッジまたは検出チップ(例えば、再利用可能なカートリッジまたは検出チップ)である。いくつかの実施形態において、カートリッジまたは検出チップは、ユーザーによる供給サンプルを受けるように構成されている。ユーザーによる供給サンプルは、デバイスがカートリッジまたは検出チップを受ける前もしくは後に、例えばユーザーが手動で、または自動工程で、カートリッジまたは検出チップに加えることができる。
【0096】
本開示によるデバイスは一般に、本明細書に記載されるカートリッジまたは検出チップを動作させるために使用することができる機械的構成要素、電子的構成要素、および/または光学的構成要素を含む。いくつかの実施形態において、デバイス構成要素は、カートリッジもしくは検出チップ上、またはカートリッジもしくは検出チップの特定の領域上で特定の温度を達成および維持するように動作する。いくつかの実施形態において、デバイス構成要素は、カートリッジまたは検出チップの電極に特定の電圧を特定の期間印加するように動作する。いくつかの実施形態において、デバイス構成要素は、カートリッジまたは検出チップのリザーバおよび/または反応容器へ、それらから、またはそれらの間で液体を移動させるように動作する。いくつかの実施形態において、デバイス構成要素は、カートリッジまたは検出チップのチャネルを通って、例えばカートリッジまたは検出チップのリザーバおよび/または反応容器へ、それらから、またはそれらの間で液体を移動させるように動作する。いくつかの実施形態において、デバイス構成要素は、カートリッジまたは検出チップのエラストマー系の試薬固有のリザーバまたは反応容器と相互作用する蠕動ポンプ機構(例えば、装置)を介して液体を移動させる。いくつかの実施形態において、デバイス構成要素は、チャネルを介して流体をポンプ移送するためにカートリッジまたは検出チップのチャネルに関連付けられたエラストマー構成要素(例えば、エラストマーを含む表面層)と相互作用するように構成された蠕動ポンプ機構(例えば、装置)を介して液体を移動させる。デバイス構成要素には、例えば、サンプル情報を入力したり、特定の工程を選択したり、実行結果を報告したりすることができるユーザーインターフェースを駆動するためのコンピューターリソースを含めることができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、デバイスまたはモジュール(例えば、サンプル調製デバイス;シーケンシングデバイス;組み合わせたサンプル調製およびシーケンシングデバイス)は、明確に定義された流体流れ解像度(fluid flow resolution)で、かつ場合によっては明確に定義された流量で、少量の流体を正確に輸送するように構成される。いくつかの実施形態において、デバイスまたはモジュールは、0.1μL/秒以上、0.5μL/秒以上、1μL/秒以上、2μL/秒以上、5μL/秒以上、またはそれより高い流量で流体を輸送するように構成される。いくつかの実施形態において、本明細書のデバイスまたはモジュールは、100μL/秒以下、75μL/秒以下、50μL/秒以下、30μL/秒以下、20μL/秒以下、15μL/秒以下、またはそれより低い流量で流体を輸送するように構成される。これらの範囲を組み合わせることも可能である。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書のデバイスまたはモジュールは、0.1μL/秒以上100μL/秒以下、または5μL/秒以上15μL/秒以下の流量で流体を輸送するように構成される。例えば、ある特定の実施形態において、本明細書のシステム、デバイス、およびモジュールは、数十マイクロリットルまたは数百マイクロリットルのオーダーの流体流れ解像度を有する。流体流れ解像度のさらなる説明は、本明細書の他の場所で説明される。ある特定の実施形態において、システム、デバイス、およびモジュールは、カートリッジまたは検出チップの少なくとも一部を通じて少量の流体を輸送するように構成される。
【0098】
いくつかの実施形態において、カートリッジまたは検出チップは、少量の流体(例えば、1~10μL、2~10μL、4~10μL、5~10μL、1~8μL、または1~6μLの流体)を取り扱うことができる。いくつかの実施形態において、シーケンシングカートリッジまたは検出チップは、(例えば、調製されたサンプルをシーケンシングのために反応混合物に送達することが可能になるために)本開示のデバイスに物理的に埋め込まれるか、または関連付けられる。いくつかの実施形態において、本開示のデバイスに物理的に埋め込まれるか、またはそれに関連付けられるシーケンシングカートリッジまたは検出チップは、面シールガスケットまたは円錐形のプレスフィット(例えば、ルアーフィッティング)の形態の流体界面を有するマイクロ流体チャネルを含む。いくつかの実施形態において、次いで、調製されたサンプルの送達後に、本開示のデバイスからシーケンシングカートリッジまたは検出チップを物理的に分離するために、流体界面を破壊することができる。
【0099】
以下の非限定的な例は、本明細書に記載されるデバイス、方法、および組成物の態様を説明することを意味する。本開示による本開示のデバイスの使用では、以下に説明する工程のうちの1つまたは複数を進めてもよい。ユーザーはデバイスの蓋を開け、所望の工程を支持するカートリッジまたは検出チップを挿入することができる。次いで、ユーザーは、特定の溶解溶液と組み合わせることができるサンプルを、カートリッジまたは検出チップ上のサンプルポートに加えることができる。次に、ユーザーはデバイスの蓋を閉じ、デバイス上のタッチスクリーンインターフェースを介して任意のサンプル固有の情報を入力し、任意の工程固有のパラメータ(例えば、所望のサイズ選択の範囲、標的分子捕捉のための所望の相同性の程度など)を選択して、バイオセンサ法の実行を開始することができる。実行後、ユーザーは、関連する実行データ(例えば、実行が正常に完了したことの確認、実行固有の測定基準など)、ならびに工程固有の情報(例えば、生成されたサンプルの量、特定の標的配列の存在または不存在など)を受けることができる。実行によって生成されたデータは、ローカルまたはクラウドベースのいずれかでその後のバイオインフォマティクス分析を受けることができる。工程に応じて、完成したサンプルは、その後の使用(ゲノムシーケンシング、qPCR定量化、クローニングなど)のためにカートリッジまたは検出チップから抽出することができる。次いで、デバイスを開けて、カートリッジまたは検出チップを取り外すことができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、バイオセンサ検出用のモジュールはポンプを含む。いくつかの実施形態において、ポンプは蠕動ポンプである。いくつかのそのようなポンプは、本明細書に記載される流体処理のための本発明の構成要素のうちの1つまたは複数を備える。例えば、ポンプは、装置および/またはカートリッジもしくは検出チップを備えてもよい。いくつかの実施形態において、ポンプの装置は、ローラ、クランク、およびロッカーを備える。いくつかのそのような実施形態において、クランクおよびロッカーは、ローラに接続されているクランクロッカー機構として構成される。クランクロッカー機構と装置のローラとの連結により、場合によっては、本明細書に記載されている利点のいくつかを達成することができる(例えば、カートリッジまたは検出チップからの装置の容易な取り外し、ストローク量の良好な計測)。ある特定の実施形態において、ポンプのカートリッジまたは検出チップは、チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)を含む。いくつかの実施形態において、カートリッジまたは検出チップのチャネルの少なくとも一部は、本明細書に記載される複数の利点のいずれかに寄与し得るある特定の断面形状および/または表面層を有する。
【0101】
場合によっては、ある特定の利点を提供し得るいくつかのカートリッジまたは検出チップの1つの非限定的な態様は、カートリッジまたは検出チップ内にある特定の断面形状を有するチャネルを含むことである。例えば、いくつかの実施形態において、カートリッジまたは検出チップは、V字形のチャネルを含む。このようなV字形のチャネルを形成する潜在的に簡便ではあるが限定されない1つの方法は、カートリッジまたは検出チップにV字形の溝を成形または機械加工することによるものである。装置のローラがカートリッジまたは検出チップと係合してチャネルを通る流体流れを引き起こすある特定の実施形態において、V字形のチャネル(本明細書ではV溝または実質的に三角形の断面を有するチャネルとも呼ばれる)を含むことの利点が認識されている。例えば、場合によっては、V字形のチャネルはローラの影響を寸法的に受けない。換言すれば、場合によっては、装置のローラ(例えば、楔形ローラ)がV字形のチャネルと好適に係合するために固着しなければならない単一の寸法が存在しない。対照的に、半円形などのチャネルのある特定の従来の断面形状では、チャネルと好適に係合するために(例えば、流体シールを作出して、蠕動ポンプ移送工程における圧力差を引き起こすために)、ローラがある特定の寸法(例えば、半径)を有することが必要となる場合がある。いくつかの実施形態において、ローラの影響を寸法的に受けないチャネルを含めることにより、ハードウェア構成要素の製造がより簡単かつ安価になり、構成可能性/柔軟性が向上する可能性がある。
【0102】
ある特定の態様において、カートリッジまたは検出チップは、表面層(例えば、平坦な表面層)を含む。1つの例示的な態様は、V溝の上にエラストマー(例えば、シリコーン)を含む(例えば、本質的にそれからなる)膜(本明細書では表面層とも呼ばれる)を積層して、可撓管の実質的に半分を作製することを伴う、潜在的に有利な実施形態に関する。次に、いくつかの実施形態において、チャネル内にエラストマーを含む表面層を変形させてピンチを形成し、次にピンチを移動させることによって、吸引を作出するピンチの後縁に負圧を生成することができ、また、ピンチの前縁の方向に流体をポンプ移送して、ピンチの前縁に正圧を生成することができる。特定の実施形態において、このポンプ移送は、カートリッジまたは検出チップ(表面層を有するチャネルを含む)とローラを含む装置とをインターフェースすることによって行われ、この装置は、ローラを表面層の一部と係合させて、表面層の一部を関連するチャネルの壁および/またはベースで挟み込むこと、関連するチャネルの壁および/またはベースに沿ってローラを回転運動で移動させて、壁および/またはベースに対する表面層のピンチを移動させること、および/またはローラと表面層の第2の部分との係合を解除すること、を含むローラの運動を実行するように構成されている。特定の実施形態において、ローラのこの運動を実行するために、クランクロッカー機構を装置に組み込む。
【0103】
蛍光検出
励起光は、配列決定デバイスまたはモジュールの外部の1つ以上の光源から配列決定デバイスまたはモジュールに提供される。配列決定デバイスまたはモジュールの光学部品は、光源から励起光を受け取り、その光を、例えば導波路を介して、配列決定デバイスまたはモジュールのサンプルウェルのアレイに向け、サンプルウェル内の照明領域を照らすことができる。いくつかの実施形態において、サンプルウェルは、複数の分子を含む標的分子またはサンプルがサンプルウェルの表面に近接して保持されることを可能にする構成を有することができ、これにより、サンプルウェルへの励起光の送達および複数の分子を含む標的分子またはサンプルからの放出光の検出を容易にすることができる。照射領域内に配置された複数の分子を含む標的分子またはサンプルは、励起光によって照射されることに応答して放出光を放出することができる。例えば、核酸またはタンパク質(またはそれらの複数個)は、励起光の照射によって励起状態を達成することに応答して光を発する蛍光マーカで標識することができる。次に、複数の分子を含む標的分子またはサンプルによって放出される放出光は、分析される複数の分子を含む標的分子またはサンプルを備えたサンプルウェルに対応するピクセル内の1つまたは複数の光検出器によって検出され得る。いくつかの実施形態によれば、約10,000ピクセル~10,000,000ピクセルの間の数の範囲であり得るサンプルウェルのアレイ全体にわたって実行される場合、複数のサンプルウェルを並行して分析することができる。
【0104】
配列決定デバイスまたはモジュールは、励起光を受け取り、励起光をサンプルウェルアレイに導くための光学システムを含むことができる。光学システムは、励起光を配列決定デバイスまたはモジュールに結合し、励起光を他の光学部品に向けるように構成された1つ以上の格子カプラを含むことができる。光学システムは、励起光を格子カプラからサンプルウェルアレイに向ける光学部品を含むことができる。そのような光学部品は、光スプリッタ、光結合器、および導波路を含むことができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の光スプリッタは、格子カプラからの励起光を結合し、励起光を少なくとも1つの導波路に送達することができる。いくつかの実施形態によれば、光スプリッタは、導波路の各々が実質的に同量の励起光を受け取るように、全ての導波路にわたって実質的に均一な励起光の送達を可能にする構成を有することができる。そのような実施形態は、配列決定デバイスまたはモジュールのサンプルウェルによって受け取られる励起光の均一性を改善することによって、配列決定デバイスまたはモジュールの性能を改善することができる。励起光をサンプルウェルに結合するため、および/または放出光を光検出器に向けるための、配列決定デバイスまたはモジュールに含めるための適切な構成要素の例は、2015年8月7日に出願された発明の名称が「分子を探査し、検出し、分析するための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」である米国特許出願第14/821,688号、2014年11月17日に出願された発明の名称が「分子の探査し、検出し、分析するための外部光源を備えた集積デバイス(INTEGRATED DEVICE WITH EXTERNAL LIGHT SOURCE FOR PROBING,DETECTING,AND ANALYZING MOLECULES)」である米国特許出願第14/543,865号、および2020年6月26日に出願された発明の名称が「光および電気二次経路の排除(OPTICAL AND ELECTRICAL SECONDARY PATH REJECTION)」である国際特許出願第PCT/US2020/039868号に記載されており、これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれる。配列決定デバイスまたはモジュールに実装され得る適切な格子カプラおよび導波路の例は、2017年12月15日に出願された発明の名称が「光カプラ及び導波路システム(OPTICAL COUPLER AND WAVEGUIDE SYSTEM)」である米国特許出願第15/844,403号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0105】
追加のフォトニック構造は、サンプルウェルと光検出器との間に配置されてもよく、そうでなければ、放出光を検出する際のシグナルノイズに寄与する励起光が光検出器に到達するのを低減または防止するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、配列決定デバイスまたはモジュールのための回路として作用し得る金属層は、空間フィルタとしても作用し得る。適切なフォトニック構造の例は、スペクトルフィルタ、偏光フィルタおよび空間フィルタを含むことができ、2018年7月23日に出願された発明の名称が「光排除光構造(OPTICAL REJECTION PHOTONIC STRUCTURES)」である米国特許出願第16/042,968号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0106】
配列決定デバイスまたはモジュールから離れて配置された構成要素を使用して、励起源を配列決定デバイスまたはモジュールに位置決めおよび位置合わせすることができる。そのような構成要素は、レンズ、ミラー、プリズム、窓、開口、減衰器、および/または光ファイバを含む光学構成要素を含み得る。1つ以上の位置合わせ構成要素の制御を可能にするために、追加の機械的構成要素を機器に含めることができる。そのような機械的構成要素は、アクチュエータ、ステッパモータ、および/またはノブを含むことができる。適切な励起源および整列機構の例は、2016年5月20日に出願された発明の名称が「パルスレーザおよびシステム(PULSED LASER AND SYSTEM)」である米国特許出願第15/161,088号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。ビームステアリングモジュールの別の例は、2017年12月14日に出願された発明の名称が「コンパクトビーム成形およびステアリングアセンブリ(COMPACT BEAM SHAPING AND STEERING ASSEMBLY)」である米国特許出願第15/842,720号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。適切な励起源のさらなる例は、2015年8月7日に出願された発明の名称が「分子を探査し、検出し、分析するための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」である米国特許出願第14/821,688号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0107】
配列決定デバイスまたはモジュールの個々のピクセルとともに配置された光検出器は、ピクセルの対応するサンプルウェルからの放出光を検出するように構成および配置され得る。適切な光検出器のさらなる例は、2015年8月7日に出願された発明の名称が「分子を探査し、検出し、分析するための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」である米国特許出願第14/821,688号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。いくつかの実施形態において、サンプルウェルおよびそのそれぞれの光検出器は、共通の軸に沿って整列され得る。このようにして、光検出器は、ピクセル内でサンプルと十分に重なる可能性がある。
【0108】
検出された放出光の特性は、放出光に関連するマーカを同定するための指標を提供し得る。そのような特性は、光検出器によって検出された光子の到着時間、光検出器によって経時的に蓄積された光子の量、および/または2つ以上の光検出器にわたる光子の分布を含む、任意の適切な種類の特性を含み得る。いくつかの実施形態において、光検出器は、サンプルの放出光に関連する1つまたは複数のタイミング特性(例えば、発光寿命)の検出を可能にする構成を有し得る。光検出器は、励起光のパルスが配列決定デバイスまたはモジュールを通って伝播した後の光子到着時間の分布を検出することができ、到着時間の分布は、サンプルの放出光のタイミング特性(例えば、発光寿命のプロキシ(proxy))の指標を提供することができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の光検出器は、マーカ(例えば、発光強度)によって放出される放出光の確率の指標を提供する。いくつかの実施形態において、複数の光検出器は、放出光の空間分布を捕捉するようにサイズ設定および配置され得る。次に、1つまたは複数の光検出器からの出力信号を使用して、複数のマーカの中から1つのマーカ区別することができ、複数のマーカを使用して、サンプル内の1つのサンプルを同定することができる。いくつかの実施形態において、サンプルは、複数の励起エネルギーによって励起されてもよく、複数の励起エネルギーに応答してサンプルによって放出される放出光および/または放出光のタイミング特性は、1つのマーカを複数のマーカから区別し得る。
【0109】
動作中、励起光を用いてウェル内のサンプルの一部または全部を励起し、光検出器でサンプル放出からの信号を検出することによって、サンプルウェル内のサンプルの並列分析を行う。サンプルからの放出光は、対応する光検出器によって検出され、少なくとも1つの電気信号に変換され得る。電気信号は、配列決定デバイスまたはモジュールと接続された機器に接続され得る、配列決定デバイスまたはモジュールの回路内の導線に沿って送信され得る。電気信号は、続いて処理および/または分析され得る。電気信号の処理および/または分析は、機器の内外に配置された適切なコンピューティングデバイス上で行われ得る。
【0110】
機器は、機器および/または配列決定デバイスまたはモジュールの動作を制御するためのユーザーインターフェースを含み得る。ユーザーインターフェースは、ユーザーが、機器の機能を制御するために使用されるコマンドおよび/または設定などの情報を機器に入力できるように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、ユーザーインターフェースは、音声コマンド用のボタン、スイッチ、ダイヤル、および/またはマイクロフォンを含み得る。ユーザーインターフェースは、ユーザーが、適切な位置合わせおよび/または配列決定デバイスまたはモジュール上の光検出器からの読み出し信号によって得られる情報など、機器および/または配列決定デバイスまたはモジュールの性能に関するフィードバックを受信することを可能にし得る。いくつかの実施形態において、ユーザーインターフェースは、可聴フィードバックを提供するためにスピーカーを使用してフィードバックを提供することができる。いくつかの実施形態において、ユーザーインターフェースは、ユーザーに視覚的なフィードバックを提供するための表示灯および/または表示スクリーンを含み得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明される機器またはデバイスは、コンピューティングデバイスと接続するように構成されたコンピュータインターフェースを含み得る。コンピュータインターフェースは、USBインターフェース、FireWire(登録商標)インターフェース、または他の任意の適切なコンピュータインターフェースとすることができる。コンピューティングデバイスは、ラップトップまたはデスクトップコンピュータなどの任意の汎用コンピュータであり得る。いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイスは、適切なコンピュータインターフェースを介して無線ネットワークを介してアクセス可能なサーバ(例えば、クラウドベースのサーバ)であり得る。コンピュータインターフェースは、機器とコンピューティングデバイスとの間の情報の通信を容易にすることができる。機器を制御および/または構成するための入力情報は、コンピューティングデバイスに提供され、コンピュータインターフェースを介して機器に送信され得る。機器によって生成された出力情報は、コンピュータインターフェースを介してコンピューティングデバイスによって受信され得る。出力情報には、機器の性能、配列決定デバイスまたはモジュールの性能、および/または光検出器の読み出し信号から生成されたデータに関するフィードバックが含まれていてもよい。
【0112】
いくつかの実施形態において、機器は、配列決定デバイスまたはモジュールの1つまたは複数の光検出器から受信したデータを分析し、および/または制御信号を励起源に送信するように構成された処理デバイスを含み得る。いくつかの実施形態において、処理デバイスは、汎用プロセッサ、および/または特別に適合されたプロセッサ(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラコアなどの中央処理装置(CPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、カスタム集積回路、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、またはこれらの組み合わせ)を含むことができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の光検出器からのデータの処理は、機器の処理デバイスおよび外部コンピューティングデバイスの両方によって実行され得る。その他の実施形態において、外部コンピューティングデバイスを省略して、1つまたは複数の光検出器からのデータの処理は、配列決定デバイスまたはモジュールの処理デバイスによってのみ実行されてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態によれば、発光放出特性に基づいて複数の分子を含む標的分子またはサンプルを分析するように構成された機器は、異なる発光分子間の発光寿命および/または強度における差異、および/または異なる環境における同じ発光分子の寿命および/または強度における差異を検出することができる。本発明者らは、発光放出寿命の差を用いて、異なる発光分子の存在または非存在を識別すること、および/または発光分子がさらされる異なる環境または条件を識別することができることを認識し、評価した。場合によっては、(例えば発光波長ではなく)寿命に基づいて発光分子を識別することにより、システムの態様を単純化することができる。一例として、波長識別光学系(例えば、波長フィルタ、各波長用の専用検出器、異なる波長における専用パルス光源、および/または回折光学系)は、寿命に基づいて発光分子を識別するときに、数を減らしてもよく、または排除してもよい。場合によっては、単一の特徴的な波長で動作する単一のパルス光源を使用して、光学スペクトルの同じ波長領域内で発光するが、測定可能な異なる寿命を有する異なる発光分子を励起することができる。同じ波長領域で発光する異なる発光分子を励起および識別するために、異なる波長で動作する複数の光源ではなく、単一のパルス光源を使用する分析システムは、動作および維持するための複雑さが少なく、よりコンパクトであり、より低コストで製造することができる。
【0114】
発光寿命分析に基づく分析システムは、ある種の利点を有し得るが、分析システムによって得られる情報の量および/または検出精度は、追加の検出技術を可能にすることによって増加され得る。例えば、システムのいくつかの実施形態は、さらに、発光波長および/または発光強度に基づいてサンプルの1つ以上の特性を識別するように構成されてもよい。いくつかの実装形態において、発光強度は、異なる発光標識を区別するために追加的にまたは代替的に使用され得る。例えば、いくつかの発光標識は、それらの減衰速度が類似していても、有意に異なる強度で発光するか、または励起の確率に有意差(例えば、少なくとも約35%の差)を有し得る。測定された励起光に対してビニングされた信号を参照することによって、強度レベルに基づいて異なる発光標識を区別することが可能であり得る。
【0115】
いくつかの実施形態によれば、異なる発光寿命は、発光標識の励起に続く発光放出事象を時間ビニング(time-bin)するように構成された光検出器によって区別することができる。時間ビニングは、光検出器に対する単一の電荷蓄積サイクルの間に生じ得る。電荷蓄積サイクルは、光発生キャリアが時間ビニング光検出器のビン内に蓄積される読み出し事象間の間隔である。時間ビニング光検出器の例は、2015年8月7日に出願された発明の名称が「受信した光子の一時的ビニングのための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS)」である米国特許出願第14/821,656号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。いくつかの実施形態において、時間ビニング光検出器は、光子吸収/キャリア生成領域内に電荷キャリアを生成し、電荷キャリア格納領域内の電荷キャリア格納ビンに電荷キャリアを直接転送することができる。そのような実施形態において、時間ビニング光検出器は、キャリア移動/捕捉領域を含まなくてもよい。このような時間ビニング光検出器は、「直接ビニングピクセル」と呼ばれることがある。直接ビニングピクセルを含む時間ビニング光検出器の例は、2017年12月22日に出願された発明の名称が「直接ビニングピクセルを備えた統合光検出器(Integrated photodetector with direct binning pixel)」である米国特許出願第15/852,571号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0116】
いくつかの実施形態において、同じ種類の異なる数の蛍光色素分子を、標的分子の異なる成分(例えば、標的核酸または標的タンパク質)またはサンプル中に存在する複数の分子(例えば、複数の核酸または複数のタンパク質)に連結することができ、その結果、各個々の分子を発光強度に基づいて同定することができる。例えば、2つの蛍光色素分子が第1の標識分子に連結されてもよく、4つ以上の蛍光色素分子が第2の標識分子に連結されてもよい。異なる数の蛍光色素分子に起因して、異なる分子に関連する異なる励起および蛍光色素分子放出確率が存在し得る。例えば、信号蓄積間隔の間に、第2の標識分子についてより多くの放出事象が存在することがあり、その結果、ビンの見かけの強度は、第1の標識分子の場合よりも有意に高くなる。
【0117】
本発明者らは、蛍光色素分子の崩壊速度および/または蛍光色素分子の強度に基づいて核酸またはタンパク質を区別することが、光励起および検出システムの簡略化を可能にし得ることを認識し、評価した。例えば、光励起は、単一波長源(例えば、複数の光源ではなく1つの特徴的な波長を生成する光源、または複数の異なる特徴的な波長で動作する光源)を用いて行うことができる。さらに、波長識別光学系およびフィルタは、検出システムにおいて必要とされない場合がある。また、単一の光検出器を各サンプルウェルに使用して、異なる蛍光色素分子からの発光を検出してもよい。「特徴的な波長(characteristic wavelength)」または「波長」という語句は、限定された放射帯域幅内の中心波長または優勢な波長を指すために使用される。例えば、限られた帯域幅の放射は、パルス光源によって出力される20nm帯域幅内の中心波長またはピーク波長を含むことができる。場合によっては、「特徴的な波長」または「波長」を使用して、ソース(source)による放射出力の全帯域幅内のピーク波長を参照することができる。
【0118】
配列決定デバイスまたはモジュール
本開示に従う核酸またはタンパク質の配列決定は、いくつかの態様において、単一分子分析を可能にするシステムを使用して実施され得る。システムは、配列決定デバイスまたはモジュールと、配列決定デバイスまたはモジュールとインターフェースするように構成された機器と、を含み得る。配列決定デバイスまたはモジュールは、ピクセルのアレイを含み得、個々のピクセルは、サンプルウェルおよび少なくとも1つの光検出器を含む。配列決定デバイスまたはモジュールのサンプルウェルは、配列決定デバイスまたはモジュールの表面上または表面を通して形成され得、配列決定デバイスまたはモジュールの表面に配置されたサンプルを受け取るように構成され得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、サンプルウェルは、デバイスに挿入することができるカートリッジまたは検出チップ(例えば、使い捨てまたは単回使用用のカートリッジまたは検出チップ)の構成要素である。全体として、サンプルウェルは、サンプルウェルのアレイとみなされうる。複数のサンプルウェルは、サンプルウェルの少なくとも一部が単一の標的分子または複数の分子(例えば、標的核酸または標的タンパク質)を含むサンプルを受け入れるように、適切なサイズおよび形状を有し得る。いくつかの実施形態において、サンプルウェル内の分子の数は、いくつかのサンプルウェルが1つの分子(例えば、標的核酸または標的タンパク質)を含み、他のサンプルウェルが0個、2個、または複数の分子を含むように、配列決定デバイスまたはモジュールのサンプルウェル間に分配されてもよい。
【0120】
分子バーコード
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、分子バーコードを、分子バーコード上の1つ以上の部位に結合するバーコード認識分子と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、複数の分子バーコード上の1つ以上の部位に結合する。したがって、いくつかの実施形態において、バーコード認識分子を使用して、混合物中の複数の異なる単一分子(例えば、同じまたは異なる分子バーコードを含む異なる分析物)からバーコード内容(barcode content)を解読することができる。例示的かつ非限定的な例として、多重化混合物(multiplexed mixture)は、分子バーコードに付着した複数の分析物を含むことができる。これらの分子バーコードのいくつかは、それに付着した分析物のサンプルの起源を示すサンプルインデックスを含むことができ、サンプルインデックスに結合するバーコード認識分子を使用して、どの分析物が対応するサンプルに由来するかを決定することができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、単一分子構築物は、分子バーコード(例えば、速度論的バーコード)を含む。いくつかの実施形態において、本開示の分子バーコードは、核酸バーコード(例えば、一本鎖核酸)である。いくつかの実施形態において、核酸バーコードは、DNA、RNA、PNA、および/またはLNAを含む。いくつかの実施形態において、分子バーコードは、ポリペプチドバーコードである。
【0122】
いくつかの実施形態において、分子バーコードは、一連のインデックス配列を含む。例えば、いくつかの実施形態において、分子バーコードは一連のインデックス配列を含む核酸バーコードである。いくつかの実施形態において、各インデックス配列は、一連のインデックス配列の任意の他のインデックス配列と異なる。いくつかの実施形態において、一連のインデックス配列の少なくとも2つのインデックス配列は同じである。いくつかの実施形態において、一連のインデックス配列は、一連のバーコード認識分子結合部位に対応する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、一連のインデックス配列の2つのインデックス配列を含む分子バーコード上の部位に結合する。いくつかの実施形態において、各インデックス配列は、バーコード内容に関して異なる情報を提供する。
【0123】
さらに、いくつかの実施形態において、分子バーコードは、分析物(例えば、ペイロード分子、検出分子)に付着される。いくつかの実施形態において、分析物は、生物学的供給源または合成供給源に由来する。いくつかの実施形態において、分析物は、血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または単一細胞に由来する。いくつかの実施形態において、分析物は生体分子である。いくつかの実施形態において、分析物は核酸またはポリペプチドである。いくつかの実施形態において、分析物は、核酸アプタマー、タンパク質、またはタンパク質断片である。いくつかの実施形態において、分析物は小分子、代謝産物、または抗体である。いくつかの実施形態において、分子バーコードは、リンカーを介して分析物に付着される。いくつかの実施形態において、リンカーは、切断部位(例えば、光切断可能部位)を含む。したがって、いくつかの実施形態において、切断配列を含む単一分子構築物は、分析物の除去を可能にして、基板表面(例えば、チップ)上でのローディングおよび/または分析を単純化する。
【0124】
また、いくつかの実施形態において、分子バーコードは付着分子を含む。いくつかの実施形態において、付着分子は、分子バーコードの表面固定化に適した任意の部分または連結基である。いくつかの実施形態において、付着分子は、共有結合連結基または非共有結合連結基を含む。いくつかの実施形態において、付着分子はビオチン部分を含む。いくつかの実施形態において、付着分子はビス-ビオチン部分を含む。表面固定化に有用な連結基ならびに他の組成物および方法は、本明細書中の他の場所でさらに詳細に記載され、そして当該分野で公知である。
【0125】
いくつかの実施形態において、切断部位は、所望の実施に応じて単一分子構築物に組み込まれなくてもよい任意の構成要素である。いくつかの実施形態において、付着分子は、分子バーコードが分析物を介して表面に付着され得るように、分析物に隣接し得る。単一分子構築物の他の構成および連結戦略の例は、本明細書の他の箇所に提供される。
【0126】
いくつかの態様において、本開示の方法は、分子のアイデンティティ、サンプル起源、および/またはアレイ上の単一分子の位置を解読することを含むバーコードデコンボリューションアプローチに関する。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、多重化サンプル中の分子バーコード情報をデコンボリューションするために有利に使用される。例えば、本開示の方法は、単一細胞ポリペプチド配列決定のための技術に適用することができる。いくつかの実施形態において、得られた単一分子構築物は、本開示に従ってポリペプチド配列決定(例えば、動的ペプチド配列決定)およびバーコード認識によって分析することができる。
【0127】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される標識分子は、本明細書に記載されるバーコード(例えば、分子バーコード)に付着または連結され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される基準分子は、本明細書に記載されるバーコード(例えば、分子バーコード)に付着または連結され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される親和性剤は、本明細書に記載されるバーコード(例えば、分子バーコード)に付着または連結され得る。
【0128】
いくつかの実施形態において、標的分子を検出する方法は、
図15Aに記載されるワークフローの使用を伴う。例えば、
図15Aに示されるように、第1の工程において、固相ビーズ(例えば、磁気ビーズ)は、最初に、一次抗体(例えば、1°抗体)および表面会合標識分子(レポータ)とともに装填され得る。標識分子は、標識核酸であり得る。標識分子は、本明細書に記載されるバーコード(例えば、分子バーコード)に付着または連結され得る。第2の工程において、標的分子(例えば、標的分子が抗原である場合)を含むサンプルを、表面固定化抗体を含むビーズに添加することができる。いくつかの実施形態において、サンプルは、表面固定化抗体に結合する(例えば、特異的に結合する)抗原を含む。第3の工程において、表面固定化二次抗体(2°抗体)を含む表面にビーズを添加して、表面固定化二次抗体とビーズに付着した一次抗体との間に結合した標的分子を含む複合体を生成することができ、ビーズは表面会合(surface-associated)標識分子に連結されている。第4の工程において、洗浄溶液または緩衝液を用いて複合体を洗浄する。第5の工程において、標識分子(レポータ)は、ビーズから除去(または切断)および単離される。第6の工程において、標識分子は、検出チップ(例えば、複数のサンプルウェルを含む)に添加され、検出チップは、チップに付着した既知の分子(例えば、既知の核酸または「既知の読み出しオリゴ(readout oligo)」)を含む。標識分子は、既知の分子に対する結合親和性を有する。標識分子と既知の分子との間の結合の関連および速度論は、標識分子のアイデンティティの決定を提供する。標識分子のアイデンティティのそのような決定は、その標識分子と会合した可溶性抗体(例えば、二次抗体(2°抗体))の同定を可能にし、これは、その後、可溶性抗体に結合することができる抗原の同定を可能にすることができる。
【0129】
いくつかの実施形態において、標的分子を検出する方法は、
図15Bに記載されるワークフローの使用を伴う。例えば、
図15Bに示されるように、第1の工程において、磁性固相ビーズは、最初に、表面固定化抗体(例えば、一次抗体(1°抗体))を装填され得る。第2の工程において、標的分子(例えば、標的分子が抗原である場合)を含むサンプルを、表面固定化抗体を含むビーズに添加することができる。いくつかの実施形態において、サンプルは、表面固定化抗体に結合する(例えば、特異的に結合する)抗原を含む。第3の工程において、標識分子(レポータ)に連結された可溶性抗体(例えば、二次抗体(2°抗体))をビーズに添加して、表面固定化抗体と標識分子に連結された可溶性抗体との間に結合した標的分子を含む複合体を生成することができ、標識分子は任意選択で核酸である。第4の工程において、洗浄溶液または緩衝液を用いてビーズを洗浄する。第5の工程において、磁石を使用してビーズを単離し、標識分子(レポータ)を可溶性抗体から除去(または切断)する。その後、標識分子を単離する。第6の工程において、標識分子は、検出チップ(例えば、複数のサンプルウェルを含む)に添加され、検出チップは、チップに付着した既知の分子(例えば、既知の核酸または「既知の読み出しオリゴ」)を含む。標識分子は、既知の分子に対する結合親和性を有する。標識分子と既知の分子との間の結合の関連および速度論は、標識分子のアイデンティティの決定を提供する。標識分子のアイデンティティのそのような決定は、その標識分子と会合した可溶性抗体(例えば、二次抗体(2°抗体))の同定を可能にし、これは、その後、可溶性抗体に結合することができる抗原の同定を可能にすることができる。いくつかの実施形態において、標識分子は、本明細書に記載されるバーコード(例えば、分子バーコード)に付着または連結される。
【0130】
本開示の態様は、分子バーコードの内容(content)を同定することに関する。本明細書で使用される場合、分子バーコードに関する「同定すること」、「認識すること」、「認識」などの用語は、分子バーコードの部分的なアイデンティティ(例えば、部分配列情報)ならびに完全なアイデンティティ(例えば、完全配列情報)の決定を含む。いくつかの実施形態において、この用語は、(例えば、オリゴヌクレオチドプローブとの相補性に基づいて)分子バーコードの少なくとも一部のヌクレオチド配列を決定または推測することを含む。さらに他の実施形態において、この用語は、分子バーコード上の1つまたは複数の部位における特定のインデックス配列の有無など、分子バーコードのある特定の特徴を決定または推測することを含む。したがって、いくつかの実施形態において、用語「バーコード内容(barcode content)」、「バーコードのアイデンティティ(barcode identity)」、および本明細書で使用される同様の用語は、分子バーコードに関する定性的情報を指す場合があり、分子バーコードを生化学的に特徴付ける特定の配列情報(例えば、インデックスのヌクレオチド配列)に限定されるものではない。
【0131】
いくつかの実施形態において、バーコード認識は、バーコード認識分子と分子バーコードとの間の異なる会合事象を観察することによって行われ、各会合事象は、ある持続時間にわたって持続するシグナルの大きさの変化を生成する。いくつかの実施形態において、これらの大きさの変化は、一連のシグナルパルス、またはシグナルトレース出力における一連のパルスとして検出される。本明細書で説明されるように、シグナルパルス情報は、一連のシグナルパルス内のバーコード特異的パターンに基づいてバーコード内容を同定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは複数のシグナルパルスを含み、各シグナルパルスはパルス持続時間を含む。いくつかの実施形態において、複数のシグナルパルスは、バーコード特異的パターン中のパルス持続時間の分布の要約統計量(たとえば、平均、メジアン、時間減衰定数)により特徴付けられうる。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンの平均パルス持続時間は、約1ms~約10秒の間(例えば、約1ms~約1sの間、約1ms~約100msの間、約1ms~約10msの間、約10ms~約10sの間、約100ms~約10sの間、約1s~約10sの間、約10ms~約100msの間、または約100ms~約500msの間))でありうる。いくつかの実施形態において、平均パルス持続時間は、約50ミリ秒~約2秒、約50ミリ秒~約500ミリ秒、または約500ミリ秒~約2秒である。
【0132】
いくつかの実施形態において、異なるバーコード内容に対応する異なるバーコード特異的パターンは、要約統計量における統計的有意差に基づいて互いに区別されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、1つのバーコード特異的パターンは、少なくとも10ミリ秒(例えば、約10ms~約10s、約10ms~約1s、約10ms~約100ms、約100ms~約10s、約1s~約10s、または約100ms~約1s)の平均パルス持続時間の差に基づいて、別のバーコード特異的パターンと区別可能であり得る。いくつかの実施形態において、平均パルス持続時間の差は、少なくとも50ms、少なくとも100ms、少なくとも250ms、少なくとも500ms、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、平均パルス持続時間の差は、約50ms~約1s、約50ms~約500ms、約50ms~約250ms、約100ms~約500ms、約250ms~約500ms、または約500ms~約1sである。いくつかの実施形態において、1つのバーコード特異的パターンの平均パルス持続時間は、別のバーコード特異的パターンの平均パルス持続時間と、約10~25%、25~50%、50~75%、75~100%、または100%超、例えば、約2倍、3倍、4倍、5倍、またはそれを超えて異なる。いくつかの実施形態において、異なるバーコード特異的パターン間の平均パルス持続時間の差が小さいほど、統計的信頼度で互いを区別するために、各バーコード特異的パターン内でより多くのパルス持続時間を必要とし得ることを理解されたい。
【0133】
いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、一般に、バーコード認識分子と分子バーコードとの間の複数の会合(例えば、結合)事象を指す。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、少なくとも10個の会合事象(例えば、少なくとも25個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも250個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、またはそれ以上の会合事象)を含む。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、約10~約1,000個の会合事象(例えば、約10~約500個の会合事象、約10~約250個の会合事象、約10~約100個の会合事象、または約50~約500個の会合事象)を含む。いくつかの実施形態において、複数の会合事象は、複数のシグナルパルスとして検出される。
【0134】
いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、本明細書に記載されるような要約統計量によって特徴付けられ得る複数のシグナルパルスを指す。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、少なくとも10個のシグナルパルス(例えば、少なくとも25個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも250個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、またはそれ以上のシグナルパルス)を含む。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、約10~約1,000個のシグナルパルス(例えば、約10~約500個のシグナルパルス、約10~約250個のシグナルパルス、約10~約100個のシグナルパルス、または約50~約500個のシグナルパルス)を含む。
【0135】
いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンは、ある時間間隔にわたって生じるバーコード認識分子と分子バーコードとの間の複数の会合(例えば、結合)事象を指す。いくつかの実施形態において、バーコード認識は、分子バーコードが異なる持続時間にわたって異なる組のバーコード認識分子に曝露される反復洗浄サイクルによって実行され得る。いくつかの実施形態において、バーコード特異的パターンの時間間隔は、約1分~約30分(例えば、約1分~約20分、約1分~10分、約5分~約20分、約5分~約15分、または約5分~約10分)である。
【0136】
いくつかの実施形態において、(例えば、所与の組のバーコード認識分子が洗浄サイクル中に除去される前に)バーコード特異的パターンとの所望の信頼レベルを提供する十分な会合事象を可能にする時間間隔を達成するように、実験条件を構成することができる。これは、例えば、試薬濃度、1つの試薬と別の試薬とのモル比(例えば、バーコード認識分子と分子バーコードとの比、1つのバーコード認識分子と別のバーコード認識分子との比)、異なる試薬種類の数(例えば、異なる種類のバーコード認識分子の数)、結合特性(例えば、バーコード認識分子結合のための速度論的および/または熱力学的結合パラメータ)、試薬修飾(例えば、相互作用速度論を変更し得るポリオールおよび他のタンパク質修飾)、反応混合物成分(例えば、pH、緩衝剤、塩、二価カチオン、界面活性剤、および本明細書に記載される他の反応混合物成分などの1つ以上の成分)、反応温度、および当業者に明らかな様々な他のパラメータ、ならびにそれらの組み合わせを含む様々な特性に基づいて反応条件を構成することによって達成することができる。反応条件は、例えば、シグナルパルス情報(例えば、パルス持続時間、パルス間持続時間、大きさの変化)、標識戦略(例えば、蛍光色素分子、連結基の数および/または種類)、表面修飾(例えば、分子バーコード固定化を含むサンプルウェル表面の修飾)、サンプル調製(例えば、分析物サイズ、固定化のための分子バーコード修飾)、および本明細書に記載される他の態様を含む、本明細書に記載される1つ以上の態様に基づいて構成され得る。
【0137】
バーコード認識分子
いくつかの態様において、本開示は、バーコード認識分子およびそれを使用する方法を提供する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、バーコード領域に関する所望の結合速度論に基づいて選択または操作することができる。例えば、いくつかの態様において、本明細書に記載される方法は、複数の部位が各部位での結合相互作用に基づいて互いに区別されなければならない多重化形式で行うことができる。したがって、異なる部位がシグナルパルス情報に基づいてより高い信頼度で区別され得るように、1つの部位における結合相互作用は、別の部位における結合相互作用とは十分に異なるべきである。
【0138】
理論により拘束されることを望むものではないが、バーコード認識分子は、結合の会合速度または「オン」速度(kon)と結合の解離速度または「オフ」速度(koff)とにより規定される結合親和性(KD)に従ってバーコード領域に結合する。速度定数koffおよびkonは、それぞれ、パルス持続時間(たとえば、検出可能な会合事象に対応する時間)およびパルス間持続時間(たとえば、検出可能な会合事象の間の時間)のクリティカル決定因子である。いくつかの実施形態において、これらの運動速度定数(kinetic rate constants)は、最良の精度を与えるパルス持続時間およびパルス速度(たとえばシグナルパルス周波数)を達成するように工学操作可能である。
【0139】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、従来から知られている技術を用いて当業者によって工学操作可能である。いくつかの実施形態において、望ましい特性は、分子バーコード上の1つ以上の部位に低~中程度の親和性で(例えば、約50nM以上、例えば、約50nM~約50μM、約100nM~約10μM、約500nM~約50μMのKDで)結合する能力を含み得る。例えば、いくつかの態様において、本開示は、可逆的結合相互作用を検出することによるバーコード認識の方法を提供し、低~中程度の親和性で分子バーコードに可逆的に結合するバーコード認識分子は、高親和性結合相互作用よりも有益な結合データをより高い確実性で有利に提供する。
【0140】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、他のオフターゲット(例えば、非相補的)部位に有意に結合することなく、約10-6M未満(例えば、約10-7M未満、約10-8M未満、約10-9M未満、約10-10M未満、約10-11M未満、約10-12M未満、10-16M程度まで)の解離定数(KD)で分子バーコード上の1つ以上の部位に結合する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、約100nM未満、約50nM未満、約25nM未満、約10nM未満、または約1nM未満のKDで分子バーコード上の1つ以上の部位に結合する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、約50nM~約50μM(例えば、約50nM~約500nM、約50nM~約5μM、約500nM~約50μM、約5μM~約50μM、または約10μM~約50μM)のKDで分子バーコード上の1つ以上の部位に結合する。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、約50nMのKDで分子バーコード上の1つ以上の部位に結合する。
【0141】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、少なくとも0.1s-1の解離速度(koff)で分子バーコード上の1つ以上の部位に結合する。いくつかの実施形態において、解離速度は、約0.1s-1~約1,000s-1(例えば、約0.5s-1~約500s-1、約0.1s-1~約100s-1、約1s-1~約100s-1、または約0.5s-1~約50s-1)である。いくつかの実施形態において、解離速度は、約0.5s-1~約20s-1である。いくつかの実施形態において、解離速度は、約2s-1~約20s-1である。いくつかの実施形態において、解離速度は、約0.5s-1~約2s-1である。
【0142】
いくつかの実施形態において、KDまたはkoffの値は、公知の文献値であり得るか、または値は、経験的に決定され得る。例えば、KDまたはkoffの値は、単一分子アッセイまたはアンサンブルアッセイにおいて測定することができる。いくつかの実施形態において、koffの値は、本明細書の他の箇所に記載されるような単一分子アッセイにおいて得られるシグナルパルス情報に基づいて経験的に決定することができる。例えば、koffの値は、平均パルス持続時間の逆数によって近似することができる。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、2つ以上の部位のそれぞれについて異なるKDまたはkoffで2つ以上の化学的に異なるバーコード領域に結合する。いくつかの実施形態において、第1の部位に対する第1のKDまたはkoffは、第2の部位に対する第2のKDまたはkoffと少なくとも10%(例えば、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%、またはそれ以上)異なる。いくつかの実施形態において、KDまたはkoffの第1および第2の値は、約10~25%、25~50%、50~75%、75~100%、または100%超、例えば、約2倍、3倍、4倍、5倍、またはそれ以上異なる。
【0143】
本明細書に記載されているように、バーコード認識分子は、分子バーコード上の1つ以上の部位を他のバーコード領域よりも結合することができる任意の生体分子であってもよい。認識分子としては、例えば、オリゴヌクレオチド、核酸、およびタンパク質が挙げられ、これらのいずれも合成または組換えであり得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子はオリゴヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ)である。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、核酸バーコードを、核酸バーコード上の1つ以上の部位に結合するオリゴヌクレオチドプローブと接触させることによって行うことができる。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブと核酸バーコードとの間の結合は、ハイブリダイゼーションまたはアニーリングを介して生じる。特定の実験条件(例えば、濃度、温度)を超えて、結合特性は、大部分、オリゴヌクレオチドプローブの長さおよび含量、ならびにそれが結合する(例えば、ハイブリダイズする、またはアニールする)核酸バーコード上の部位とのその相補性の程度によって駆動される。したがって、いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、長さ、ヌクレオチド含量(例えば、G/C含量、異なる結合特性を有するヌクレオチドアナログ(例えば、LNAアナログまたはPNAアナログ))、相補性の程度、ならびに実験因子(例えば、濃度、温度、緩衝液条件(例えば、pH、塩、マグネシウム)、およびDNA変性溶媒または安定化溶媒)を含むがこれらに限定されない、シグナルパルス特性を調節するための種々の調節可能な特徴を提供する。
【0145】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、少なくとも4ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、または少なくとも30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、30ヌクレオチド長未満(例えば、25ヌクレオチド長未満、20ヌクレオチド長未満、15ヌクレオチド長未満、12ヌクレオチド長未満、10ヌクレオチド長未満)である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、約3~約30ヌクレオチド長(例えば、約3~約10、約3~約8、約5~約25、約5~約15、または約5~10ヌクレオチド長)である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチド長である。
【0146】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、オリゴヌクレオチドプローブと完全に相補的ではない1つ以上のバーコード領域に結合し、そのバーコード内容情報を提供することができる。例えば、いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、オリゴヌクレオチドと100%未満(例えば、99%未満、98%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満またはそれ未満)相補的である配列を有する1つ以上のバーコード領域に結合する。
【0147】
オリゴヌクレオチドに加えて、核酸アプタマーを、本開示に従うバーコード認識分子として使用することができる。核酸アプタマーは、所望の親和性および選択性で標的に結合するように工学操作された核酸分子である。したがって、核酸アプタマーは、当技術分野で公知の選択および/または濃縮技術を使用して、所望のバーコード領域に結合するように工学操作され得る。いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、DNAアプタマーまたはRNAアプタマーなどの核酸アプタマーを含む。
【0148】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、タンパク質またはポリペプチドである。いくつかの実施形態において、認識分子は、抗体若しくは抗体の抗原結合部分、SH2ドメイン含有タンパク質若しくはその断片、又は不活性化酵素バイオ分子、たとえば、ペプチダーゼ、アミノトランスフェラーゼ、リボザイム、アプタザイム、若しくはtRNAシンテターゼ(「繰返しポリペプチド分析及び処理のための分子及び方法(MOLECULES AND METHODS FOR ITERATIVE POLYPEPTIDE ANALYSIS AND PROCESSING)」という名称の2016年9月2日出願の米国特許出願第15/255,433号明細書に記載のアミノアシルtRNAシンテターゼおよび関連分子を含む)である。
【0149】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、アミノ酸認識分子である。例えば、いくつかの実施形態において、分子バーコードはポリペプチドバーコードを含み、アミノ酸認識分子を使用して、ポリペプチドからバーコード内容を解読することができる。いくつかの実施形態において、アミノ酸認識分子は、異なる速度論的結合特性を有する1つ以上の種類の末端アミノ酸に結合する。いくつかの実施形態において、アミノ酸認識分子は、異なる速度論的結合特性を有するポリペプチドの異なるセグメントに結合する。例えば、いくつかの実施形態において、アミノ酸認識分子は、N末端またはC末端に同じ種類のアミノ酸を含むが、末端アミノ酸に対して最後から2番目(例えば、n+1)および/または後続の位置(例えば、2番目、3番目、4番目、5番目、またはそれ以上の位置のうちの1つまたは複数の異なるアミノ酸の種類)のアミノ酸含量が異なるポリペプチドセグメントに結合する。これらの概念(例えば、最後から2番目以上の位置のみにおけるアミノ酸含量の差異に基づく示差的結合速度論)およびアミノ酸認識分子のさらなる例は、2019年11月15日に出願されたPCT国際公開第WO2020102741A1号(発明の名称「タンパク質配列決定のための方法および組成物(METHODS AND COMPOSITIONS FOR PROTEIN SEQUENCING)」)(これは、その全体が参考として援用される)により詳細に記載される。
【0150】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、分子バーコードを1つ以上のバーコード認識分子と接触させることを含む。この議論の目的のために、本明細書に記載される方法の文脈における1つ以上のバーコード認識分子は、代替的に一組のバーコード認識分子と称され得る。いくつかの実施形態において、一組のバーコード認識分子は、少なくとも2個から最大20個(例えば、2~15個、2~10個、5~10個、10~20個)のバーコード認識分子を含む。いくつかの実施形態において、一組のバーコード認識分子は、20個超(例えば、20~25個、20~30個)バーコード認識分子を含む。しかしながら、任意の数のバーコード認識分子が、所望の用途に対応するために、本開示の方法に従って使用され得ることを理解されたい。
【0151】
本開示によれば、いくつかの実施形態において、バーコード認識分子に付着した標識からの発光を検出することによって、分子バーコード内容(content)を同定することができる。いくつかの実施形態において、標識されたバーコード認識分子は、少なくとも1つの分子バーコードに結合するバーコード認識分子と、バーコード認識分子に関連付けられる発光を有する発光標識とを含む。このようにして、発光(例えば、発光寿命、発光強度、および発光に基づく速度論的結合データを含む、本明細書の他の箇所に記載される他の発光特性)をバーコード認識分子の結合と関連付けて、少なくとも1つの分子バーコードを同定することができる。いくつかの実施形態において、複数の種類の標識されたバーコード認識分子を本開示に従う方法で使用することができ、各種類は、複数の中から一意に同定可能な発光を有する発光標識を含む。適切な発光標識は、蛍光色素などの発光分子を含んでもよく、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0152】
いくつかの実施形態において、バーコード認識分子は、結合誘導型(binding-induced)発光を有する標識を含む。例えば、いくつかの実施形態において、標識アプタマーはドナー標識およびアクセプター標識を含むことができる。遊離および未結合分子として、標識されたアプタマーは、ドナーおよびアクセプター標識が、標識間の検出可能なFRETを制限する距離(例えば、約10nm以上)によって分離される立体構造をとる。バーコード領域に結合すると、標識アプタマーは、ドナー標識およびアクセプター標識が、標識間の検出可能なFRETを促進する距離(例えば、約10nm以下)内にある立体構造をとる。さらに他の実施形態において、標識アプタマーは、消光部分を含むことができ、分子ビーコンと同様に機能することができ、発光は、遊離分子として内部消光され、バーコード領域に結合すると回復する(例えば、Hamaguchiら(2001年)、Analytical Biochemistry 294,126-131)。標識アプタマーと標識分子バーコードとの間のFRETの使用などの類似および代替の標識戦略は、当業者には明らかであろう。理論に束縛されることを望むものではないが、結合誘導型発光のためのこれらおよび他の種類の機構は、バックグラウンド発光を有利に低減または排除して、本明細書に記載される方法の全体的な感度および精度を増加させ得ると考えられる。
【0153】
いくつかの実施形態において、分子バーコード内容は、標識されたバーコード認識分子の1つ以上の電気的特性を検出することによって同定することができる。いくつかの実施形態において、標識されたバーコード認識分子は、少なくとも1つの分子バーコードに結合するバーコード認識分子と、バーコード認識分子に関連付けられた導電性標識とを含む。このようにして、1つ以上の電気的特性(例えば、電荷、電流振動色、および導電率に基づく速度論的結合データを含む他の電気的特性)をバーコード認識分子の結合と関連付けて、少なくとも1つの分子バーコードを同定することができる。いくつかの実施形態において、複数の種類の標識されたバーコード認識分子が、本開示に従う方法において使用されてもよく、各種類は、複数の中から一意に識別可能な電気シグナルの変化(例えば、バーコード特異的パターンの導電率の振幅および導電率遷移の変化などのコンダクタンスの変化)を生成する導電性標識を含む。いくつかの実施形態において、複数の種類の標識されたバーコード認識分子はそれぞれ、異なる数の荷電基(例えば、異なる数の負および/または正の荷電基)を有する導電性標識を含む。したがって、いくつかの実施形態において導電性標識は電荷標識である。電荷標識の例としては、デンドリマー、ナノ粒子、核酸および複数の荷電基を有する他のポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態において、導電性標識は、その正味電荷(例えば、正味正電荷または正味負電荷)によって、その電荷密度によって、および/またはその荷電基の数によって一意に同定可能である。
【0154】
実施例
本開示の実施形態は、以下の実施例を参照してさらに説明されるが、これらの実施例は、例示を目的とするものであり、本質的に限定的なものではない。
【実施例1】
【0155】
ストレプトアビジン固定化PLL表面の調製および低濃度での色素標識化dsDNA分子の結合事象の検出
図8に示す検出チップ(例えば、各サンプルウェルの内部ベースに機能化された正に帯電した分子を含む)は、以下のように作成した:
1.ビオチン-PEG-シランで底面に機能化されたナノ開口を含む相補型金属酸化物半導体(CMOS)チップを、70%イソプロパノール(3回)、0.1%Tween(登録商標)-20(3回)により、および1×結合緩衝液(50mM MOPS、75mM KOAc、10mM DTT、0.03%Tween(登録商標)-20、pH7.5)により3回湿らせた。
【0156】
2.チップを1×結合緩衝液中の20nM ストレプトアビジンとともに室温で30分間インキュベートした。
3.チップを、SC-6緩衝液(NaCl 200~350mM、KCl 10~30mM、Na2HPO4 3mM、KHPO4 1mM、4-ニトロ安息香酸 5mM、D-グルコース 50mM、0.1%Tween(登録商標)-20、pH=7.5)で5回洗浄した。
【0157】
4.SC-6に100nMのビオチン-ポリ-リジン(PLL)を加え、室温で30分間インキュベートし、SC-6で5回洗浄することにより、チップを機能化した(functionalized)。この方法で製造された検出チップは、1000nm2あたり平均2~3個のビオチンを提供し、その後のポリリジンの付着により、使用したポリリジンの長さに応じて1000nm2あたり約40~300の正電荷が提供された。
【0158】
5.反応緩衝液(酸素除去系を含有するSC-6緩衝液)をチップに加え、検出操作を開始した。
6.10分間の検出後、25bpのAtto-Rho6G標識化dsDNA分子を最終濃度25pMで反応緩衝液に加え、検出をさらに50分間継続させた。
【0159】
7.検出操作から収集されたトレースは、色素標識化dsDNA分子の添加時に開始されるパルス挙動の明確なパターンを示し、この方式で調製されたチップによって、非常に低濃度での単一の色素標識化DNA分子の可逆的結合事象が首尾よく検出されることを実証した。
【0160】
検出操作から収集された例示的なトレースを
図13に示す。この例示的トレース(CMOSチップの蛍光寿命感度動作によって生成された2つの時間ビンに分割された)は、ナノ開口の底部にあるPLL機能化表面へのdsDNAの可逆的結合による、標識化dsDNAの添加時のパルスの開始を示している。
【実施例2】
【0161】
ストレプトアビジン固定化PLL表面の調製、低濃度での異なる標識化dsDNA分子の検出、および色素比の決定。
実施例1の方法により製造された検出チップを使用して、以下のように非常に低濃度での色素標識化dsDNA分子の比の検出を実証した。
【0162】
1.区別可能な蛍光色素分子を含有する2つの種類のdsDNA分子(20~40bp)を別々に調製した(1つはCy3を含有し、もう1つはAtto-Rho6Gを含有し、これらはQuantum-Si CMOSチップ上の蛍光寿命によって区別可能である)。2つの種類の標識化dsDNA分子を、1:1の比で混合し、反応緩衝液(酸素除去系を含有するSC-6緩衝液)で最終濃度がそれぞれ25pMになるまで希釈した。
【0163】
2.サンプルを実施例1と同様に調製したCMOSチップに加え、検出操作を1時間実行した。
3.検出操作から収集されたデータは、正に帯電したPLL表面への標識化dsDNA分子の可逆的結合事象に対応するシグナルパルスを含むトレースで構成されていた。シグナルパルスが同定され、パルス中にCMOSチップによって検出された蛍光寿命情報に基づいて、各パルスがCy3またはAtto-Rho6Gに割り当てられた。
【0164】
2つの種類の標識化dsDNA分子の1:1混合比と一致して、
図14に示すように、Cy3パルスおよびAtto-Rho6Gパルスがほぼ等しい量(52%対48%)で存在すると判定された。「ビン比(binratio)」(色素の蛍光寿命に対応する、CMOSセンサの寿命感度時間ビンで収集された相対シグナルの尺度)を、パルスごとに決定し、ビン比分布に適用された混合ガウスモデルを使用して、各パルスをCy3またはAtto-Rho6Gの検出事象として分類した。
【実施例3】
【0165】
正に帯電したアミン末端シランと直接カップリングした表面を含むチップ上の色素標識化dsDNA分子の可逆的結合事象の検出。
正に帯電したアミン末端シランを含む検出チップを以下のように調製した:
1.CMOSチップを、
図9に示されるアミン末端シラン分子を用いたシラン表面不動態化化学によって調製した。この手順により、正に帯電したアミン末端分子が、ナノ開口の底部に位置するガラス表面に直接カップリングした(
図9にも示されている)。
【0166】
2.チップを70%イソプロパノール(3回)、0.1%Tween(登録商標)-20(3回)で湿らせ、緩衝液SC-6で5回洗浄した。
3.区別可能な蛍光色素分子を含有する2つの種類のdsDNA分子(20~40bp)を別々に調製した(1つはCy3を含有し、もう1つはAtto-Rho6Gを含有し、これらはQuantum-Si CMOSチップ上の蛍光寿命によって区別可能である)。2つの種類の標識化dsDNA分子を、1:1の比で混合し、反応緩衝液(酸素除去系を含有するSC-6緩衝液)で最終濃度がそれぞれ25pMになるまで希釈した。
【0167】
4.サンプルを、CMOSチップに加え、検出操作を1時間実行した。
5.動的パルス挙動が成功していることが観察された。これらの検出チップを使用して収集された代表的なデータについて
図10A~10Dを参照のこと。
【0168】
この上記の方法によって製造された検出チップは、利用可能なアパーチャ開口面積によって制限された電荷密度を提供し、推定電荷密度は1000nm2あたり80~120計数であった。
【0169】
開示のさらなる態様
上記の例示的な実施形態および実施例の態様は、本開示のさらなる実施形態を作出するために、種々の組み合わせおよび副組み合わせで組み合わせることができる。上記の例示的な実施形態および実施例の態様が相互に排他的でない限り、そのようなすべての組み合わせおよび副組み合わせが本開示の範囲内にあることが意図される。本開示の実施形態が多くの態様を含むことは、当業者には明らかであろう。したがって、特許請求の範囲は、説明および実施例に記載された好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、全体として説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【国際調査報告】