(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】血管調査によるバイオメトリクス認証
(51)【国際特許分類】
G06V 40/14 20220101AFI20231221BHJP
A61B 5/1171 20160101ALI20231221BHJP
【FI】
G06V40/14
A61B5/1171 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536827
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 JP2021046273
(87)【国際公開番号】W WO2022131290
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ジョン ライト
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド マイケル ダフィー
(72)【発明者】
【氏名】ハリー マイケル クローニン
【テーマコード(参考)】
4C038
5B043
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA07
4C038VB03
4C038VB08
4C038VB12
4C038VB13
4C038VC05
5B043AA09
5B043DA05
5B043FA09
5B043GA02
(57)【要約】
【解決手段】ここで紹介するのは、血管を通る血流の空間的特性と方向性の時間的変化に基づいて、未知の人物を認証するアプローチである。高レベルでは、これらのアプローチは、未知の人物を認識するために血管動態を監視することに依存している。例えば、認証プラットフォームは、解剖学的領域のデジタル画像を調べ、解剖学的領域内の血管系の特性が変形の結果としてどのように変化したかを確立し得る。特性の例は、血管系に含まれる血管の位置、サイズ、体積、および圧力、ならびに、血管系を流れる血液の速度および加速度を含む。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを含む電子デバイスを所持している人物を認証する要求を示す入力を受け取ること、
前記人物が主張する所定の個人と関連付けられたデジタルプロファイルを取得すること、
前記電子デバイスの前記カメラが解剖学的領域に向けられている間、解剖学的領域の変形を引き起こすジェスチャを実行するように、前記人物に対して指示を提示させること、
前記カメラにより生成されたデジタル画像の解析に基づいて、(i)前記人物の前記解剖学的領域が自然状態にある間の血液の第1のフローパターンと、(ii)前記人物の前記解剖学的領域が変形状態にある間の血液の第2のフローパターンとを推定すること、
前記デジタルプロファイルおよび前記第1のフローパターンに基づいて、前記所定の個人が前記ジェスチャを行ったとした場合に予想される、前記所定の個人の前記解剖学的領域を通る血液の第3のフローパターンを予測すること、および、
前記第2のフローパターンと前記第3のフローパターンとの比較に基づいて、前記人物を前記所定の個人として認証するか否かを決定すること、
を備える方法。
【請求項2】
前記デジタルプロファイルは、(i)前記解剖学的領域が自然状態にある間の前記解剖学的領域内の血管に関する空間的情報を提供する第1の血管パターンと、(ii)前記解剖学的領域が変形状態にある間の前記解剖学的領域内の血管に関する空間的情報を提供する第2の血管パターンと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予測することは、
前記ジェスチャにより引き起こされるであろう前記解剖学的領域の変形中に前記血管を通る血流をシミュレーションすることにより、出力として前記第3のフローパターンを生成するアルゴリズムを、前記第1の血管パターン、前記第2の血管パターン、および前記第1のフローパターンに対して適用することを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記推定することは、
前記解剖学的領域内の血管を通る血流を示す色の変化を特定するように、前記デジタル画像を調べることを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のフローパターンは、第1のベクトルとして表され、その各要素は、前記自然状態にある間の前記人物の前記解剖学的領域の対応する部分を通る推定される血流を示す値を含み、かつ、
前記第2のフローパターンは、第2のベクトルとして表され、その各要素は、前記変形状態にある間の前記人物の前記解剖学的領域の前記対応する部分を通る推定される血流を示す値を含み、かつ、
前記第3のフローパターンは、第3のベクトルとして表され、その各要素は、前記変形状態にある間の前記所定の個人の前記解剖学的領域の前記対応する部分を通る推定される血流を示す値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記決定することは、
第2および第3の行列にアルゴリズムを適用して前記第2および第3のフローパターン間の類似性を示すスコアを生成すること、および、
前記スコアに基づいて、前記人物が前記所定の個人である可能性を確立すること、
を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記取得することは、
異なる個人に関連付けられた複数のデジタルプロファイルが格納されているバイオメトリックデータベースにアクセスすること、および、
前記入力に基づいて、前記複数のデジタルプロファイルの中から前記デジタルプロファイルを選択すること、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記入力は、前記人物が主張する前記所定の個人を特定する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
電子デバイスのプロセッサにより実行されたとき、前記電子デバイスに、
変形したときの解剖学的領域内の静脈ネットワークを通る血流を予測するために訓練されるモデルを特定すること、
(i)自然状態の前記解剖学的領域に対応する血管パターンの第1シリーズと、
(ii)変形状態の前記解剖学的領域に対応する血管パターンの第2シリーズと、
(iii)前記第1シリーズにおける各血管パターンについて、前記解剖学的領域が前記自然状態にあるときに血液がその血管パターンをどのように流れるかを伝えるフローパターンのシリーズと、
(iv)前記第2シリーズにおける各血管パターンについて、前記解剖学的領域が前記変形状態にあるときに血液がその血管パターンをどのように流れるかを伝える変形フローパターンのシリーズと、を取得すること、および、
人物に関連付けられた血管パターンに適用されたときに前記人物の解剖学的領域内の前記静脈ネットワークを通る血流を予測できる訓練済みモデルを生成するように、(i)血管パターンの前記第1シリーズ、(ii)血管パターンの前記第2シリーズ、(iii)フローパターンの前記シリーズ、および(iv)変形フローパターンの前記シリーズを、訓練データとして前記モデルに提供すること、
を備える動作を実行させる命令が記憶された、非一時的媒体。
【請求項10】
前記第1シリーズにおける各血管パターンは、前記第2シリーズにおける対応する血管パターンと関連付けられ、かつ、前記第1および第2シリーズにおける対応する血管パターンは、同一の個人に関連付けられる、請求項9に記載の非一時的媒体。
【請求項11】
前記第1シリーズにおける各血管パターンは、前記解剖学的領域が前記自然状態にあるときの皮下血管間の空間的関係を示し、かつ、前記第2シリーズにおける各血管パターンは、前記解剖学的領域が前記変形状態にあるときの前記皮下血管間の空間的関係を示す、請求項9に記載の非一時的媒体。
【請求項12】
前記第1シリーズにおける各血管パターンは、異なる個人に関連付けられる、請求項9に記載の非一時的媒体。
【請求項13】
前記解剖学的領域は指である、請求項9に記載の非一時的媒体。
【請求項14】
前記解剖学的領域は手の掌側または甲側である、請求項9に記載の非一時的媒体。
【請求項15】
前記解剖学的領域は顔である、請求項9に記載の非一時的媒体。
【請求項16】
前記モデルは、前記提供することの結果に基づいて調整されるパラメータを有するニューラルネットワークを備える、請求項9に記載の非一時的媒体。
【請求項17】
解剖学的領域の変形を引き起こすジェスチャを実行するように、認証される人物に指示する通知を提示させること、
前記人物が前記ジェスチャを実行するときに電子デバイスにより生成される、前記解剖学的領域のデジタル画像を取得すること、
前記デジタル画像に基づいて、前記解剖学的領域の皮下血管を通る血流の特性を推定すること、および、
推定された前記特性と所定の個人に関連付けられたプロファイルとの比較に基づいて、前記人物を前記所定の個人として認証するか否かを決定すること、
を備える方法。
【請求項18】
前記デジタル画像は、前記電子デバイスにより放射される可視光、赤外光、または紫外線と連携して生成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記特性は、前記皮下血管により形成された静脈ネットワークの変形である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記特性は、前記皮下血管を流れる血液の方向性、速度、体積、位相、または圧力に関連する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
プロセッサと、
人物の解剖学的領域のデジタル画像を生成するように構成されたイメージセンサと、
ネットワークを介して、他の電子デバイスにホストされている認証プラットフォームとの接続を開始するように構成された通信モジュールと、
前記プロセッサにより実行されたとき、前記プロセッサに、
前記ネットワークを介した前記認証プラットフォームへの送信のために前記デジタル画像を前記通信モジュールへ転送させ、
前記通信モジュールから、前記デジタル画像の解析に基づいて前記認証プラットフォームにより取得された認証決定を受信させ、かつ、
前記認証決定を出力させる、命令が記憶されたメモリと、
を備える電子デバイス。
【請求項22】
前記デジタル画像は、前記人物がジェスチャを行うように要求されたという決定に応答して前記イメージセンサにより生成され、かつ、前記プロセッサは、前記ジェスチャの指示を前記認証プラットフォームに転送するようにさらに構成される、請求項21に記載の電子デバイス。
【請求項23】
前記電子デバイスは、
前記認証決定が出力されるユーザインタフェース(UI)出力装置をさらに備える、請求項21に記載の電子デバイス。
【請求項24】
前記UI出力装置はディスプレイである、請求項23に記載の電子デバイス。
【請求項25】
前記UI出力装置はスピーカである、請求項23に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「Vein Map Authentication with Image Sensor」と題され、2020年12月17日に出願された米国仮出願第63/127,054号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、コンピュータセキュリティにおけるバイオメトリック認証(生体認証)に関し、より具体的には、生理学的特性が検査され、最小限に破壊的な認証(minimally disruptive authentication)を可能にする技術に関連する。
【背景技術】
【0003】
バイオメトリック認証手順は、バイオメトリックを通じて個人が本人であること(個人の身元)を確認する。用語「バイオメトリック」は、本人確認の手段として使用できる身体的または行動的な特徴を指す。バイオメトリックは、なりすましが難しく、かつ、対応する個人がパスワードを覚えたりトークンを管理したりする必要がないため便利である。その代わり、認証メカニズムは個人の一部である。
【0004】
指紋は、歴史的に最も一般的なバイオメトリックモダリティである。しかし、技術の進化に伴い、他のバイオメトリックモダリティが出現している。例として、血管パターン認識(「静脈パターン認識」とも呼ばれる)は、近赤外光を使用して皮下血管(または単に「血管」)の画像を作成する。これらの皮下血管を総称して「血管パターン」または「静脈マップ」と呼び、これは認証に利用できる。静脈パターン認証は、血管パターンが対応する個人に固有であるだけでなく、その個人の年齢による変化が少ないことから、有望である。
【0005】
静脈パターン認証は、通常、手の甲に沿った血管パターンを特定し、その後、解析することが必要である。例えば、発光ダイオード(LED)から発生する近赤外光が手の甲に向けて照射され、それが皮膚を透過する。血管と他の組織との吸光度の違いにより、近赤外光は、異なる深さで皮膚に向かって反射する。反射した近赤外光の解析にもとづいて血管パターンが推測され、かつ、血管パターンから分岐位置と角度などの特徴が特定されることができる(そのうえ認証に利用されることもできる)。
【0006】
血管パターンを再現することが難しいため、静脈パターン認証は、比較的偽造の影響を受けない非接触型のバイオメトリック認証として注目されている。さらに、静脈パターン認証は、他人受入率(false acceptance rate)(「偽陽性率」とも呼ばれる)および本人拒否率(false rejection rate)(「偽陰性率」とも呼ばれる)の点で、バイオメトリクス認証の他のアプローチよりも大きく進歩している。しかし、静脈パターン認証にはいくつかの欠点がある。例えば、個人は、静脈パターン認証に必要なスキャン機器に通常付随する見慣れない光源に体をさらすことを不快に感じる傾向がある。また、このスキャン機器は、いくつかの環境では設置することが(もし不可能でなければ)困難であり得、かつ、多くの商店主にとって法外に高価であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、未知の人物が血管スキャナに手を提示するよう促される従来の認証手順の高レベルの図を含む。
【0008】
【
図2】
図2は、フォトプレチスモグラムにおいて、どのように各心周期がピークとして示されるかを示す。
【0009】
【
図3】
図3は、血管系が撮像可能な未知の人物が本人であることを認証するために使用できるシステムの高レベル表現を含む。
【0010】
【
図4】
図4は、イメージセンサにより生成される画像データに基づいて未知の人物が本人であることを認証するように設計された認証プラットフォームを実装できる電子デバイスの一例を示す。
【0011】
【
図5】
図5は、周辺組織の物理的変形を引き起こすジェスチャの実行により、解剖学的領域(ここでは、顔)における下層の血管系がどのように変化し得るかを示す。
【0012】
【
図6A】
図6A-Cは、脈波を決定し、計算し、または得るためのいくつかの異なるアプローチを示す。
【
図6B】
図6A-Cは、脈波を決定し、計算し、または得るためのいくつかの異なるアプローチを示す。
【
図6C】
図6A-Cは、脈波を決定し、計算し、または得るためのいくつかの異なるアプローチを示す。
【0013】
【
図7】
図7は、解剖学的領域における血管動態の視覚的証拠(visual evidence)の解析に基づいて、認証プラットフォームのユーザを認証するための手順のフロー図を含む。
【0014】
【
図8】
図8は、使用段階(「実装段階」とも呼ばれる)中に認証プラットフォームにより実行されるプロセスのフロー図を含む。
【0015】
【
図9】
図9は、血管調査(vascular studies)を通じて未知の人物を所定の個人として認証するか否かを決定するための別のプロセスのフロー図を含む。
【0016】
【
図10】
図10は、認証プラットフォームが未知の人物を所定の個人として認証するか否かを決定するプロセスの視覚的な図を含む。
【0017】
【
図11】
図11は、変形したときの解剖学的領域の血管系を通る血液の流れ(フロー)を予測するように訓練されるモデルを作成するためのプロセスのフロー図を含む。
【0018】
【
図12】
図12は、本明細書に記載された少なくともいくつかの動作が実装され得る処理システムの一例を示すブロック図である。
【0019】
本明細書に記載された技術の様々な特徴は、図面と共に詳細な説明を検討することから、当業者にとってより明らかになるであろう。実施形態は、例として、限定されずに図面に示される。図面は例示の目的で様々な実施形態を描いているが、当業者は、技術の原理から逸脱することなく代替の実施形態が採用され得ることを認識するであろう。従って、図面に特定の実施形態が示されているが、本技術は様々な変更が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
静脈パターンのマッチングに依存する認証プログラムに登録するために、個人(「ユーザ」とも呼ばれる)は、最初に、血管スキャナに手を提示するよう促され得る。用語「血管スキャナ」は、(i)(例えば、近赤外範囲の)電磁放射を身体内に発するように動作可能なエミッタと、(ii)身体内の生理的構造により反射された電磁放射を感知するように動作可能なセンサと、を含む撮像装置を指すために使用され得る。通常、基準テンプレートとして機能する反射された電磁放射に基づいて、デジタル画像が作成される。高レベルでは、基準テンプレートは、認証に使用できる「グランドトゥルース」血管パターンを表す。
【0021】
図1は、未知の人物が血管スキャナに手を提示するよう促される、従来の認証手順の高レベルの図を含む。
図1に示すように、血管スキャナは、手に電磁放射を放射し、次に、手の血管により反射された電磁放射に基づいてデジタル画像(「スキャン」とも呼ばれる)を作成する。この画像は、手の血管パターンを表し、したがってエンロールメント段階(「登録段階」とも呼ばれる)の間に所定の個人について作成された基準テンプレートと照合されることができる。デジタル画像が基準テンプレートと一致する場合、未知の人物は、所定の個人として認証される。しかし、デジタル画像が基準テンプレートと一致しない場合、未知の人物は、所定の個人として認証されない。
【0022】
血管スキャナは、スキャンが実行されている間に身体に直接触れる必要がないため、静脈パターンマッチングは、バイオメトリック認証の魅力的な選択肢となっている。しかし、静脈パターンマッチングは、なりすましの影響を受けやすいことが示されている。例として、Jan KrisslerとJulian Albrechtは、2018年のChaos Communication Congressで、蝋で作った偽の手を用いて血管スキャナをバイパスできることを実演した。なりすましがほとんどの実世界の条件で成功する可能性は低いが、脆弱性に関連する懸念があると、バイオメトリック認証の信頼できる技術の採用を妨げ得る。
【0023】
そこで、ここに紹介するのは、血管を通る血流の空間的特性および方向性の経時変化に基づいて未知の人物を認証するアプローチである。高レベルでは、これらのアプローチは、未知の人物を認識するために血管動態を監視することに依存する。用語「血管動態」は、例えばジェスチャの実行による周囲の皮下組織の変形により引き起こされる、血管系とその特性の変化を指す。血管特性の例は、血管の位置、サイズ、体積、および圧力、ならびに、血管を流れる血液の速度と加速度を含む。
【0024】
以下でさらに説明するように、認証に対するこれらのアプローチは、遠隔(ranged)フォトプレチスモグラム(PPG)モニタリングの一形態と見なすことができる。用語「フォトプレチスモグラム」は、皮下組織内の血液の体積の変化を検出するために使用されることができる光学的に得られるプレチスモグラムを指す。心臓は、各心周期で、血液を身体の末梢に送り出す。この圧脈(pressure pulse)は、血液が皮膚に到達するときまでにいくらか減衰するが、皮下組織内の血管を検出可能な程度に拡張させるのに十分である。圧脈により引き起こされる体積の変化は、皮膚に光を照射し、次にイメージセンサに透過または反射した光の量を測定することで検出されることができる。PPGでは、
図2に示すように、各心周期がピークとして現れる。
【0025】
歴史的に、パルスオキシメータは、PPGモニタリングに一般的に使用されていた。パルスオキシメータは、通常、指先または耳たぶなどの身体の一部を通してフォトダイオードに向かって光を放出する少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を含む。しかし、PPGは、対象の解剖学的領域のデジタル画像の解析を通じても得られ得る。このようなシナリオでは、圧脈は、皮膚と皮下組織の色の微妙な変化により示され得る。しかし、圧脈の微妙な特性を確立するのは難しいかもしれない。例えば、圧脈のタイミングと位相は、下層の血管系の複雑な構造および身体の姿勢と顔の表情の複雑な影響のため、顔のデジタル画像の解析で発見するのは難しいかもしれない。身体の姿勢と顔の表情により引き起こされる皮下組織の変形は、顔の静脈ネットワークを流れる血液の抵抗に影響し、これは、静脈ネットワークに支配された皮下組織を観察するイメージセンサで生成される信号に影響を与える。皮下組織の変形とイメージセンサで生成される信号との間の関係を定量化することは難しいが、変形は、信号に予測可能な影響を与える(かつ、したがって認証手段として使用されることができる)。
【0026】
未知の人物を所定の個人として認証するか否かを決定するために、認証プラットフォーム(「認証システム」とも呼ばれる)は、未知の人物の血管動態が所定の個人の血管動態に匹敵する程度を決定し得る。例えば、未知の人物が、自分自身を所定の個人として認証することを望むと仮定する。このようなシナリオでは、未知の人物は、解剖学的領域内の皮下組織(したがって、血管系)の変形を引き起こすジェスチャを行うように促され得る。このジェスチャは、解剖学的領域に関連し得る。例えば、認証プラットフォームが顔の血管動態を調べる場合、未知の人物は、微笑むか又は顔をしかめるように促され得、認証プラットフォームが手の血管動態を調べる場合、未知の人物は、自身の手を握りしめるように促され得る。
【0027】
未知の人物がジェスチャを行う間、電子デバイスのカメラは、解剖学的領域のデジタル画像を生成し得る。例えば、カメラは、所定のケイデンス(頻度)で素早く連続してデジタル画像を生成し得る。別の例として、カメラは解剖学的領域のビデオを生成してもよく、この場合、デジタル画像はビデオのフレームを表し得る。デジタル画像の解析に基づいて、認証プラットフォームは、未知の実行者の「バイオメトリック署名」または「血管署名」を生成し得る。例えば、認証プラットフォームは、ジェスチャが実行された間に血管系がどのように変形したかをプログラム的に示す静脈モデルを生成し得る。高レベルでは、静脈モデルは、ジェスチャの結果として血管系の空間的特性がどのように変化したかを特定する。あるいは、認証プラットフォームは、デジタル画像の解析に基づいて血管特性のメトリックを推定し得る。例えば、認証プラットフォームは、ジェスチャの結果として血管系を通る血液の流れの方向性がどのように変化したかを定量化しようとしてもよい。
【0028】
次に、認証プラットフォームは、未知の人物が所定の個人として認証されるべきか否かを決定するために、所定の個人に関連付けられた登録済みのバイオメトリック署名(「基準バイオメトリック署名」とも呼ばれる)とバイオメトリック署名とを比較できる。例えば、認証プラットフォームが、ジェスチャが実行された時に未知の人物の血管系がどのように変形するかをプログラム的に示す静脈モデルを生成する場合、認証プラットフォームは、(i)所定の個人に関連付けられた静脈マップを取得し、かつ、(ii)静脈マップに基づいて所定の個人によるジェスチャの実行中に予想されるであろう変形を推定し得る。別の例として、認証プラットフォームが、ジェスチャが実行された間に血管特性がどのように変化したかを示すメトリックを推定する場合、認証プラットフォームは、(i)所定の個人に関連付けられた静脈マップを取得し、かつ、(ii)静脈マップに基づいて所定の個人によるジェスチャの実行中に予想されるであろうメトリックを推定し得る。以下でさらに説明するように、静脈マップは、所定の個人の血管系に関する情報を含むデジタルプロファイルに格納され得る。例えば、デジタルプロファイルは、異なる解剖学的領域に対する静脈マップ、異なる血管特性に対するメトリックなどを含み得る。
【0029】
要約すると、認証プラットフォームは、認証される人物に解剖学的領域の変形を引き起こすジェスチャを行うよう指示する通知を提示させ、人物がジェスチャを行う際に電子デバイスにより生成される解剖学的領域のデジタル画像を取得し、デジタル画像に基づいて解剖学的領域内の皮下血管を通る血流の特性を推定し、かつ、次に、推定された特性と所定の個人に関連付けられたデジタルプロファイルとの比較に基づいて人物を所定の個人として認証するか否かを決定し得る。推定された特性は、例えば、皮下血管を流れる血液の方向性、速度、体積、位相、または圧力であり得る。
【0030】
「読み取られる」情報が身体内にあるので、バイオメトリック署名に基づく認証は、静脈パターンマッチングと同じ多くの利点、すなわち高い精度、信頼性、および一貫性を提供する。しかし、特殊な機器(例えば、血管スキャナ)が必要ないため、このアプローチは実施することがより簡単である。代わりに、認証は、電子デバイスにより生成されたデジタル画像の解析に基づいて実行されることができる。電子デバイスは、特殊なソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアを含み得るが、汎用の標準化されたハードウェア(例えば、携帯電話、タブレットコンピュータなどに使用されているデジタルイメージセンサ)が、高品質のデジタル画像を取得するためには十分であり得る。
【0031】
高レベルでは、認証プラットフォームは、個人が、認証要素として機能する静脈マップを、PPG信号として機能する測定された血流に結合できるアプローチを促進するように設計されている。このように、認証は、個々の血管を検出できないが空間的に分析されたPPG信号を(例えば、デジタル画像の解析を通じて)検出できる電子デバイスを使用して達成され得る。具体的には、本明細書に記載のアプローチは、(i)特殊な装置を必要とせずに高セキュリティの認証を可能にし、(ii)知識要素(例えば、変形の)ならびに未知の人物および所定の個人のバイオメトリック情報に基づいて認証を可能にし、(iii)新しい変形が容易に識別および要求されることができるため、なりすましと盗難に対してロバストな認証が可能である。
【0032】
例示の目的で、実施形態は、所定の解剖学的領域内の血管系を監視するという文脈で説明され得る。例えば、実施形態は、顔、掌、または指のデジタル画像を調べるという文脈で説明され得る。しかし、本明細書に記載されるアプローチは、人体の他の部分における血管系に同様に適用可能であり得る。
【0033】
必須ではないが、実装は、電子デバイスにより実行可能である命令の文脈で以下に説明される。「電子デバイス」という用語は、一般に「コンピューティングデバイス」という用語と互換的に使用され、したがって、コンピュータサーバ、販売時点情報管理(POS)システム、タブレットコンピュータ、ウェアラブルデバイス(例えば、フィットネストラッカおよび時計)、携帯電話などを指すために使用され得る。
【0034】
特定のモジュールのような本技術の態様は、単一の電子デバイスにより排他的または主体的に実行されるとして説明され得るが、いくつかの実装は、ネットワークを通じてリンクされる複数の電子デバイス間でモジュールを共有する分散環境において実行される。例えば、未知の人物は、解剖学的領域のデジタル画像を生成する携帯電話により認証手順を開始するよう求められ得るが、未知の人物を認証するか否かの決定は、携帯電話がデジタル画像を送信するコンピュータサーバに存在する認証プラットフォームによって行われてもよい。
[用語]
【0035】
本明細書における「一実施形態」または「1つの実施形態」への言及は、説明される特徴、機能、構造、または特性が、技術の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。このようなフレーズの出現は、必ずしも同じ実施形態を指すものではなく、また、必ずしも互いに排他的である代替の実施形態を指すものでもない。
【0036】
文脈が明らかにそうでないことを要求しない限り、用語「備える」、「備えている」、および「構成される」は、排他的または網羅的な意味ではなく、包括的な意味で(すなわち、「含むがこれに限定されない」という意味で)解釈されるものとする。また、「基づく」という用語も、排他的または網羅的な意味ではなく、包含的な意味で解釈されるものとする。したがって、特に断らない限り、用語「基づく」は、「少なくとも部分的に基づく」を意味することが意図される。
【0037】
用語「接続された」、「結合された」、およびその変形は、直接的または間接的に、2つ以上の要素間の任意の接続または結合を含むことを意図している。接続/結合は、物理的、論理的、またはそれらの組み合わせであり得る。例えば、オブジェクトは、物理的な接続を共有していないにもかかわらず、互いに電気的または通信可能に結合され得る。
【0038】
「モジュール」という用語は、ソフトウェアコンポーネント、ファームウェアコンポーネント、またはハードウェアコンポーネントを指し得る。モジュールは、典型的には、1つまたは複数の入力に基づいて1つまたは複数の出力を生成する機能コンポーネントである。一例として、コンピュータプログラムは、異なるタスクの完了を担当する複数のモジュール、またはすべてのタスクの完了を担当する単一のモジュールを含み得る。
【0039】
複数の項目のリストに関して使用される場合、用語「または」は、リスト内の項目のいずれか、リスト内の項目のすべて、およびリスト内の項目の任意の組み合わせ、という解釈のすべてをカバーすることが意図される。
【0040】
ここに記載されたプロセスのいずれかにおいて実行されるステップの順序は、例示的なものである。しかし、物理的な実現性に反しない限り、ステップは、様々な順序と組み合わせで実行され得る。例えば、ステップは、ここで説明したプロセスに追加されるか、または、そこから削除され得る。同様に、ステップは、置き換えられるか、または、順序を変更され得る。このように、任意のプロセスの記載は、オープンエンドであることが意図されている。
[血管情報の解析による認証]
【0041】
ここで紹介されるのは、未知の人物が所定の個人であるというバイオメトリクス証明として、血管動態を利用する認証プラットフォームである。以下にさらに説明するように、解剖学的領域における血管を通る血流の空間的特性および方向性は、解剖学的領域の1つまたは複数のデジタル画像の解析に基づいて推定されることができる。周囲の皮下組織が(例えば、ジェスチャの実行により)変形するとき、血流の空間的特性および方向性は変化し、それらの変化は、未知の人物を所定の個人として認証するか否かを決定するために使用されることができる。
【0042】
認証プラットフォームは、ハンズフリーインタフェースを通じて承認される支払いなどのバイオメトリック主導の取引を保護するために使用されることができる。例えば、未知の人物が取引を完了するために自分自身を認証することを望むと仮定する。血管スキャナの近くに身体の一部(例えば、自身の手)を置くように未知の人物に促すのではなく、代わりに、未知の人物が取引を開始するために使用した電子デバイスを使用してバイオメトリクス認証が実行されることができる。例えば、未知の人物が所持している携帯電話を使用して取引を開始した場合、携帯電話は、認証プラットフォームにより解析されることができる解剖学的領域(例えば、顔)のデジタル画像を生成し得る。後述するように、認証プラットフォームは、携帯電話、または携帯電話が通信可能に接続されている他の電子デバイス(例えば、コンピュータサーバ)に存在し得る。この認証のアプローチは、皮膚の下の血管の解析に依存しているが、携帯電話は皮膚に接触する必要はない。その代わりに、未知の人物は、携帯電話を使用して認証目的の解剖学的領域のデジタル画像を生成するように促されるだけでよい。このように、認証プラットフォームは、血管動態に関する情報に依存することにより、最小限に破壊的な方法で人物が自分自身を認証することを可能にし得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、認証プラットフォームは、未知の人物が本人であることを認証するために独立して動作するが、他の実施形態では、認証プラットフォームは、他のシステムと連携して動作する。例えば、決済システムは、安全で手間のかからない方法で取引が完了することを確実にするために、認証プラットフォームとインタフェースで接続し得る。一例として、認証プラットフォームは、身体の一部を撮像可能にすることにより、未知の人物が取引を開始または完了することを許可されている非接触型の支払い手順を促進し得る。上述したように、未知の人物は、電子デバイスのカメラの視野内に身体の一部を配置するだけで、身体の一部を撮像可能にし得る。電子デバイスは通常、取引を開始または完了するために使用されるものであるが、必ずしもそうである必要はない。
【0044】
実施形態では、取引の開始または完了の文脈で認証を論じることがあるが、認証は様々な文脈で有用であることに留意されたい。例えば、一連の個人が、機密情報が共有されるネットワークアクセス可能な会議に招待されたと仮定する。ネットワークアクセス可能な会議に入ろうとする各人物は、アクセスが許可される前に、認証プラットフォームにより認証されることが必要であり得る。
[認証プラットフォームの概要]
【0045】
図3は、血管系が撮像可能な未知の人物が本人であることを認証するために使用できるシステム300の高レベル表現を含む。
図3に示すように、システム300は、ユーザインタフェース(UI)304、イメージセンサ306、光源308、プロセッサ310、またはそれらの任意の組み合わせへのアクセスを有し得る認証プラットフォーム302を含む。以下でさらに説明するように、システム300のこれらの要素は、同じ電子デバイスに組み込まれるか、または複数の電子デバイスの間に分散されることができる。例えば、認証プラットフォーム302は、部分的または全体的に、ネットワークアクセス可能なサーバシステム上に存在してもよく、一方、UI304、イメージセンサ306、光源308、およびプロセッサ310は、未知の人物のデジタル画像の生成を担当する別の電子デバイス上に存在してもよい。
【0046】
UI304は、それを介して未知の人物がシステム300と相互作用できるインタフェースを表す。UI304は、電子デバイスのディスプレイ上に表示される音声駆動型グラフィカルユーザインタフェース(GUI)であり得る。あるいは、UI304は、電子デバイスのディスプレイ上に表示される非音声駆動型GUIであり得る。そのような実施形態では、UI304は、認証目的のために提示されるべき身体部分を視覚的に示し得る。例えば、UI304は、解剖学的領域がイメージセンサ306により観察されることができるように自身の身体を位置付けるように、未知の人物に視覚的に促し得る。一例として、UI304は、未知の人物が自身の顔をイメージセンサ306に容易に合わせることができるように、イメージセンサ306により生成されたデジタル画像の「ライブビュー」を含み得る。別の例として、UI304は、手の掌側または甲側がイメージセンサ306を使用して画像化されることができるように、未知の人物が自身の手を置くべき場所を示すためのイラストを提示し得る。さらに、UI304は、認証プラットフォーム302により最終的になされる認証決定を提示し得る。
【0047】
イメージセンサ306は、デジタル画像を生成するために情報を検出および伝達できる任意の電子センサであり得る。イメージセンサの例は、電荷結合素子(CCD)センサおよび相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサを含む。イメージセンサ306は、カメラモジュール(または単に「カメラ」)に実装されてもよい。いくつかの実施形態では、イメージセンサ306は、電子デバイスに実装された複数のイメージセンサのうちの1つである。例えば、イメージセンサ306は、携帯電話に内蔵された前面カメラまたは背面カメラに含まれ得る。
【0048】
通常、デジタル画像は、通常の可視光と連携してイメージセンサ306により生成される。しかし、デジタル画像を表す画像データは、様々なフォーマット、色空間などであり得る。例えば、イメージセンサ306は、各画素が赤、緑、および青の別々の色度値に割り当てられるように、赤・緑・青(RGB)カラーモデルに従って画像データを出力するように設計されたカメラに実装され得る。別の例として、イメージセンサ306は、各画素が輝度成分(Y)に対する単一の値と彩度成分(Cb、Cr)に対する一組の値とに割り当てられるように、YCbCr色空間のうちの1つに従って画像データを出力するように設計されたカメラに実装され得る。
【0049】
光源308は、可視領域または非可視領域の光を放出できる1つまたは複数の発光体(illuminants)を含む。例えば、光源308は、イメージセンサ306によりデジタル画像が生成される間、白色光を放出できる発光体を含み得る。追加的にまたは代替的に、光源308は、紫外光または赤外光を放出できる発光体を含み得る。発光体の例は、発光ダイオード(LED)、有機LED(OLED)、共振器型LED(RCLED)、量子ドット(QD)、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)などのレーザ、スーパールミネッセントダイオード(SLED)、および種々の蛍光体を含む。
【0050】
当業者は、イメージセンサ306が、光源308により放出される光(可視または非可視にかかわらず)と連携してデジタル画像を生成するように(例えば、プロセッサ310により)指示される場合、イメージセンサ306は、適切な範囲の電磁放射を検出するように設計されなければならないことを認識するであろう。CCDおよびCMOSに加えて、イメージセンサの他の例は、モノリシック集積ゲルマニウム(Ge)フォトダイオード、インジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)フォトダイオード、水銀・カドミウム・テルル(HgCdTe)フォトダイオード、ならびに電磁スペクトルの赤外線および紫外線領域用に設計された他の光検出器(例えば、フォトダイオード)を含む。
【0051】
したがって、イメージセンサ306および光源308は、一緒に動作して特定の照明条件下で解剖学的領域のデジタル画像を生成し得る。例えば、光源308が可視領域の光を放射している間、イメージセンサ306は一連のデジタル画像を生成し得る。別の例として、イメージセンサ306は、光源308が可視領域の光を放射している間に少なくとも1つのデジタル画像を生成し、光源308が非可視領域の光を放射している間に少なくとも1つのデジタル画像を生成してもよい。
【0052】
上述のように、イメージセンサ306および光源308は、単一の電子デバイスに組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、電子デバイスは、未知の人物に関連付けられている。例えば、イメージセンサ306および光源308は、未知の人物と関連付けられている携帯電話に組み込まれてもよい。他の実施形態では、電子デバイスは、未知の人物に関連付けられていない。例えば、イメージセンサ306および光源308は、それを介して未知の人物が取引を完了しようとしているPOSシステムに組み込まれてもよい。
【0053】
この電子デバイスは、対象の解剖学的領域内の血管系の変化を監視することを担当するので、「血管監視装置」と呼ばれ得る。認証セッションの撮像部分の期間中、血管監視装置は、解剖学的領域に関連する画像データを収集できる。以下でさらに説明するように、認証プラットフォーム302は、画像データを調べることにより脈波を特定でき得る。用語「脈波」は、下層の皮下組織を通る血液の移動により引き起こされる解剖学的領域の表面に沿った色の変化を指し得る。色の変化は、人間の目で発見することが不可能ではないにしても困難であり得るが、認証プラットフォーム302は、画像データの解析を通じてこれらの変化を特定でき得る。脈波は心周期に関係するので、解剖学的領域(および心臓血管系全体)における血管系に関する情報は、脈波から収集できる。
【0054】
図3に示すように、認証プラットフォーム302は、フロー予測アルゴリズム312、フロー測定アルゴリズム314、パターンマッチングアルゴリズム316、認証アルゴリズム318、およびバイオメトリックデータベース320を含み得る。バイオメトリックデータベース320は、既知の人物を識別するために使用されることができる血管特性に関連する収集された情報を表すバイオメトリックデータを格納し得る。バイオメトリックデータベース320内のバイオメトリックデータは、システム300により採用される認証へのアプローチに応じて異なり得る。バイオメトリックデータベース320内のバイオメトリックデータは、不正アクセスを防止するために、暗号化され、ハッシュ化され、または難読化され(obfuscated)得る。
【0055】
例えば、バイオメトリックデータベース320は、様々な個人のデジタルプロファイルを含み得、各デジタルプロファイルは、認証に使用されることができる対応する個人の静脈マップを含み得る。各静脈マップは、対応する解剖学的領域の2次元または3次元画像データから構成されるかまたは構築され得る。例えば、認証プラットフォーム302は、解剖学的領域内の血管系の変形に基づいて、未知の人物を所定の個人として認証するか否かを決定するようにプログラムされていると仮定する。このようなシナリオでは、認証プラットフォーム302は、未知の人物にジェスチャを実行するよう促し、その後、イメージセンサ306により生成された画像データの解析を通じて解剖学的領域内の血管系の変形を確立できる。次に、認証プラットフォーム302は、変形を、所定の個人に関連付けられた静脈モデルと比較できる。高レベルでは、静脈モデルは、ジェスチャが実行された間、所定の個人の血管系がどのように変形したかをプログラム的に示し得る。別の言い方をすれば、静脈モデルは、ジェスチャが実行され、それにより周囲の皮下組織の変形を引き起こすとき、単一の血管または血管の集合体の形状が時間とともにどのように変化するかを示す一連の離散的な位置を表してもよい。
【0056】
この静脈モデルは、いくつかの異なる方法で作成されることができる。いくつかの実施形態では、所定の個人は、登録段階の間の撮像されている間にジェスチャを行うように促され、静脈モデルは、得られたデジタル画像の解析に基づいて作成される。他の実施形態では、認証プラットフォーム302により静脈マップが作成されることができるように、所定の個人の解剖学的領域が画像化される。このような実施形態では、認証プラットフォーム302は、静脈マップに基づいて、ジェスチャを実行している間の血管系の変形をシミュレーションし得る。
【0057】
デジタルプロファイルは、単一のジェスチャに関連付けられた単一の静脈モデル、単一のジェスチャに関連付けられた複数の静脈モデル、または、異なるジェスチャに関連付けられた複数のモデルを含むことができる。同様に、デジタルプロファイルは、単一の解剖学的領域に関連付けられた単一の静脈モデル、単一の解剖学的領域に関連付けられた複数の静脈モデル、または、異なる解剖学的領域に関連付けられた複数のモデルを含むことができる。登録段階の間、個人は、どの解剖学的領域(複数可)およびジェスチャ(複数可)が認証に使用されることができるかを指定することが許可され得る。認証プラットフォーム302は、各々の解剖学的領域およびジェスチャのペアリングについて少なくとも1つの静脈モデルが作成されることを要求し得るが、個人は、複数の静脈モデルを作成することを許可され得る(例えば、改善されたロバスト性のために)。
【0058】
加えてまたは代替的に、デジタルプロファイルは、認証に使用されることができる異なる血管特性(例えば、所定の解剖学的領域内の血管を流れていると判断される血液の速度)についての基準値を含み得る。したがって、バイオメトリックデータベース320は、ジェスチャが実行されるときの単一の血管または血管の集合体についての血管特性の時間的変動を示すデータを含み得る。認証は、血管系の空間的変形の間の類似性の代わりに、またはそれに加えて、圧力および流量などの血管特性に関する値間の類似性に基づくことができる。
【0059】
上述のように、バイオメトリックデータベース320は、1つまたは複数のバイオメトリック署名を含み得る。各バイオメトリック署名の性質は、どのように認証が実行されるかに依存し得る。例えば、各バイオメトリック署名は、登録段階中に個人について作成された静脈モデルを表してもよい。あるいは、各バイオメトリック署名は、解剖学的領域における皮下組織の変形が起きたときの血管特性の時間的変化を示す1つまたは複数の値を表してもよい。一例として、バイオメトリック署名は、長さNのベクトルを備えてもよく、その各要素は、ジェスチャが実行されるときに解剖学的領域の血管系を血液が流れる速度を特定する値である。Nは、ジェスチャが実行される間に得られたサンプルの数を表し得る。別の言い方をすれば、流量は各デジタル画像について独立して推定されることができるので、Nは、ジェスチャが実行されるときに解剖学的領域について生成されるデジタル画像の数を表し得る。
【0060】
バイオメトリックデータベース320内のバイオメトリック署名は、単一の個人に関連付けられてもよく、この場合、認証プラットフォーム302は、未知の人物をその個人として認証することに制限されてもよい。あるいは、これらのバイオメトリック署名は、複数の個人に関連付けられてもよく、この場合、認証プラットフォーム302は、未知の人物をそれらの個人のいずれかとして認証できてもよい。さらに、上述のように、単一の個人は、バイオメトリックデータベース320において複数のバイオメトリック署名を有してもよい。これらのバイオメトリック署名は、異なるタイプ(例えば、血管特性の値に対して血管モデル)、異なる解剖学的領域、または異なるジェスチャに対応し得る。例えば、個人は、登録段階の間、異なる解剖学的領域に対する複数のバイオメトリック署名を作成することを選択してもよく、各解剖学的領域に対する異なるバイオメトリック署名が存在してもよい。別の例として、個人は、登録段階の間、異なるジェスチャに対する複数のバイオメトリック署名を作成することを選択してもよく、各ジェスチャに対する異なるバイオメトリック署名が存在してもよい。
【0061】
プロセッサ310によって実行されると、認証プラットフォーム302に実装されたアルゴリズムは、登録段階の間に個人がバイオメトリック署名を生成することを可能にする。その後、認証プラットフォーム302に実装されたアルゴリズムは、使用段階の間に確認を行うことを可能にする。登録段階および使用段階は、以下でさらに説明される。
【0062】
フロー予測アルゴリズム312は、解剖学的領域の1つまたは複数のデジタル画像の解析を通じて、解剖学的領域における脈波の相対的なタイミングを決定することを担当し得る。例えば、フロー予測アルゴリズム312は、デジタル画像に基づいて、ある空間座標(例えば、解剖学的領域を指定する)における脈波のタイミングまたは位相を、物理的な変形の有無にかかわらず決定し得る。物理的変形を伴わずに決定される場合、この測定値は「測定された静脈フローパターン」または「測定されたフローパターン」と呼ばれ得、一方、物理的変形を伴って決定される場合、この測定値は「測定された変形静脈フローパターン」または「測定された変形フローパターン」と呼ばれ得る。一例として、脈波の相対的な到着タイミングは、ディクロティックノッチなどの脈波の特徴の認識に基づいて推定され得る。この情報に基づいて、フロー予測アルゴリズム312は、血液が解剖学的領域内の血管系を通って流れている速度を推定できる。あるいは、フロー予測アルゴリズム312は、圧脈の位相、血流の方向、血流の体積、または解剖学的領域における血管系の圧力などの別の血管特性を推定してもよい。
【0063】
フロー測定アルゴリズム314は、変形したときの解剖学的領域で発生する脈波の伝搬パターンを予測することを担当し得る。この伝播パターンは、「予測された変形静脈フローパターン」または「予測された変形フローパターン」と称され得る。これを達成するために、フロー測定アルゴリズム314は、脈波が変形状態の解剖学的領域を通ってどのように伝播するかをモデル化し、推定し、または予測することによってPPGを作成してもよい。フロー測定アルゴリズム314は、入力として、測定されたフローパターン、静脈マップ、および変形静脈マップを取得してもよい。上述のように、変形静脈マップは、変形状態の解剖学的領域の少なくとも1つのデジタル画像に基づいて決定されてもよく、あるいは、変形静脈マップは、変形をシミュレーションするために静脈マップを変更することにより決定されてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、フロー測定アルゴリズム314は、機械学習アルゴリズムである。例えば、フロー測定アルゴリズム314は、ベストプラクティスの例に基づいて予め決定されるかまたは実験を通じて調整されるパラメータを有するニューラルネットワークに基づき得る。
【0065】
予測された変形フローパターンは、解剖学的領域の表面に関する2次元または3次元座標を用いて表現されてもよい。さらに、予測された変形フローパターンは、(i)タイミング情報および(ii)位相情報と関連付けられてもよい。タイミング情報は、圧脈が、解剖学的領域に到着した後、座標に到着し得る相対的な時間に関してもよい。タイミング情報は、例えば、ディクロティックノッチまたは圧脈を表す脈波の別の部分などの、圧脈の識別可能な特徴に対応し得る。位相情報は、ある単一の時点においてすべての座標に存在し得る圧脈の相対的な位相に関し得る。解剖学的領域における各座標は、解剖学的領域にわたる圧脈への異なる影響による異なる脈波形を有し得る。
【0066】
パターンマッチングアルゴリズム316は、予測された変形フローパターンと測定された変形フローパターンとの間の一致の強さを計算することを担当し得る。別の言い方をすれば、パターンマッチングアルゴリズム316は、予測された変形フローパターンと測定された変形フローパターンとの間の類似性の程度を確立することを担当し得る。類似性の程度は、「一致スコア」と呼ばれるメトリックを使用して表現され得る。一致スコアは、任意の適切な数値スケールを用いて表現され得る。例えば、一致スコアは、0と100の間の任意の整数値または0と1の間の任意の小数値を使用して類似性の程度を示し得る。
【0067】
認証アルゴリズム318は、一致スコアに基づいて、未知の人物を所定の個人として認証するか否かを決定することを担当し得る。例えば、認証アルゴリズム318は、一致スコアが所定の閾値を超える場合、未知の人物を所定の個人として認証するようにプログラムされ得る。一致スコアが所定の閾値を超えない場合、認証アルゴリズム318は、未知の人物を所定の個人として認証しなくてもよい。通常、認証アルゴリズム318は、認証が適切であるか否かを示すバイナリ信号(例えば、合格(パス)または不合格(フェイル))を出力するように設計される。しかし、認証アルゴリズム318は、非バイナリ信号を出力するように設計されてもよい。一例として、認証アルゴリズム318により生成される出力は、(i)未知の人物が所定の人物として認証されるべきであること、(ii)未知の人物が所定の人物として認証されるべきではないこと、または(iii)さらなる認証の試みが必要であることを示し得る。認証アルゴリズム318が、認証が適切であるか否かを確実に確立できない場合、認証プラットフォーム302は、(例えば、未知の人物に別のジェスチャを実行するか、または、撮像のための別の解剖学的領域を提示するよう促すことにより)さらなるアクションを取り得る。
【0068】
図4は、イメージセンサ408により生成される画像データに基づいて未知の人物が本人であることを認証するように設計された認証プラットフォーム414を実装できる電子デバイス400の一例を示す。上述したように、画像データは、身体の解剖学的領域の1つまたは複数のデジタル画像を表し得る。いくつかの実施形態では、それらのデジタル画像(複数可)は、解剖学的領域によりイメージセンサ408に向けて反射される周囲光に基づいて生成される。他の実施形態では、光源410は、イメージセンサ408によりそれらのデジタル画像(複数可)が生成される間に解剖学的領域を照らすように、解剖学的領域に向けて光を放出する。光源410は、ある時間間隔にわたり光の離散的な一連の「パルス」または「フラッシュ」を放出するようにも構成され得ることに留意されたい。
【0069】
いくつかの実施形態において、認証プラットフォーム414は、電子デバイス400により実行されるコンピュータプログラムとして具現化される。例えば、認証プラットフォーム414は、認証が適切であるか否かの判定がなされる画像データを取得できる携帯電話上に存在してもよい。別の例として、認証プラットフォーム414は、判定がなされる画像データを取得できるPOSシステム上に存在してもよい。他の実施形態では、認証プラットフォーム414は、電子デバイス400が通信可能に接続されている他の電子デバイスにより実行されるコンピュータプログラムとして具現化される。このような実施形態では、電子デバイス414は、処理のために画像データを他の電子デバイスに送信し得る。例えば、未知の人物の認証は、取引を開始するために使用されるPOSシステムにより求められ得るが、画像データは、未知の人物に近接して位置する携帯電話により生成され得る。画像データは、処理のためにPOSシステムまたは他の電子デバイス(例えば、コンピュータサーバ)に提供され得るか、または、画像データは、POSシステムまたは他の電子デバイスへの提供の前に携帯電話によって処理され得る。当業者は、認証プラットフォーム414の態様が複数の電子デバイスの間で分散され得ることも認識するであろう。
【0070】
電子デバイス414は、プロセッサ402、メモリ404、UI出力装置406、イメージセンサ408、光源410、および通信モジュール412を含むことができる。通信モジュール412は、例えば、他の電子デバイスと通信チャネルを確立するように設計された無線通信回路であり得る。無線通信回路の例は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、NFCなどのために構成された集積回路(「チップ」とも称される)を含む。プロセッサ402は、汎用プロセッサと同様の汎用特性を有することができ、または、プロセッサ402は、電子デバイス400に制御機能を提供する特定用途向け集積回路(ASIC)であってもよい。
図4に示すように、プロセッサ402は、通信目的で、直接または間接的に、電子デバイス400のすべての構成要素に結合され得る。
【0071】
メモリ404は、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、電気的に消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、またはレジスタなどの任意の適切なタイプの記憶媒体で構成され得る。プロセッサ402によって実行可能な命令を記憶することに加えて、メモリ404は、イメージセンサ408により生成された画像データ、および(例えば、認証プラットフォーム414のモジュールを実行するとき)プロセッサ402により生成されたデータも記憶できる。メモリ404は、単に記憶環境の抽象的な表現に過ぎないことに留意されたい。メモリ404は、実際のメモリチップまたはモジュールで構成され得る。
【0072】
上述したように、光源410は、認証される未知の人物の身体の解剖学的領域に向けて、可視または非可視領域の光(より具体的には、電磁放射)を放出するように構成され得る。通常、光源410は、そうするよう指示された場合にのみ光を発する。例えば、認証プラットフォーム414が、認証が必要であると判断した場合、認証プラットフォーム414は、(i)光源410に発光を指示し、かつ(ii)イメージセンサ408に画像データを生成するよう指示するようにプロセッサ402に促す出力を生成し得る。
【0073】
通信モジュール412は、電子デバイス400の構成要素間の通信を管理できる。通信モジュール412は、他の電子デバイスとの通信も管理できる。電子デバイスの例は、携帯電話、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ウェアラブルデバイス、POSシステム、および1つまたは複数のコンピュータサーバで構成されるネットワークアクセス可能なサーバシステムを含む。例えば、電子デバイス400が携帯電話である実施形態では、通信モジュール412は、イメージセンサ408により生成された画像データを調べることを担当するネットワークアクセス可能なサーバシステムとの通信を促進し得る。
【0074】
便宜上、認証プラットフォーム414は、メモリ404に存在するコンピュータプログラムと称され得る。しかし、認証プラットフォーム414は、電子デバイス400に実装された、またはそれにアクセス可能な、ソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアコンポーネントで構成され得る。本明細書で説明された実施形態に従って、認証プラットフォーム414は、
図3を参照して上述したような様々なアルゴリズムを含み得る。通常、これらのアルゴリズムは、別々にアドレス指定可能な(したがって、他のモジュールを妨害することなく独立して実行できる)認証プラットフォーム414の別々のモジュールにより実行される。これらのモジュールは、認証プラットフォーム414の不可欠な部分であり得る。あるいは、これらのモジュールは、認証プラットフォーム414とは論理的に別個であり得るが、それに「並行して」動作できる。一緒に、これらのアルゴリズムは、認証プラットフォーム414が、イメージセンサ408により生成された画像データから決定される血管動態の解析に基づいて、未知の人物が本人であることを認証することを可能にし得る。
【0075】
例えば、未知の人物が自分自身を所定の個人として認証することを望むと仮定する。このようなシナリオでは、未知の人物は、解剖学的領域内の血管系の変形を引き起こすジェスチャを実行するように促され得る。未知の人物がジェスチャを行う間、イメージセンサ408は、解剖学的領域のデジタル画像を表す画像データを生成できる。画像データの解析に基づいて、認証プラットフォーム414は、未知の実行者の「バイオメトリック署名」を生成し得る。例えば、認証プラットフォーム414は、ジェスチャが実行された間に血管系がどのように変形したかをプログラム的に示す静脈モデルを生成してもよく、または、認証プラットフォーム414は、画像データの解析に基づいて血管特性のメトリックを推定してもよい。
【0076】
次に、認証プラットフォーム414は、未知の人物が所定の個人として認証されるべきか否かを決定するために、バイオメトリック署名を、所定の個人と関連付けられた登録されたバイオメトリック署名と比較できる。通常、登録されたバイオメトリック署名は、バイオメトリックデータベース416に格納される。
図4では、バイオメトリックデータベース416は、電子デバイス400のメモリ404に配置されている。しかし、バイオメトリックデータベース416は、代替的にまたは追加的に、ネットワークを介して電子デバイス400にアクセス可能なリモートメモリに配置され得る。バイオメトリック署名が、登録されたバイオメトリック署名と十分に類似している場合、認証プラットフォーム414は、未知の人物を所定の個人として認証し得る。
【0077】
他の要素も、認証プラットフォーム414の一部として含まれ得る。例えば、UIモジュールは、未知の人物に提示するためにUI出力装置406によって出力されるコンテンツを生成することを担当し得る。コンテンツの形態は、UI出力装置406の性質に依存し得る。例えば、UI出力装置406がスピーカである場合、コンテンツは、解剖学的領域がイメージセンサ408により観察可能であるように電子デバイス400を配置するための音声による指示を含み得る。別の例として、UI出力装置406がディスプレイである場合、コンテンツは、解剖学的領域がイメージセンサ408により観察可能であるように電子デバイス400を配置するための視覚的な指示を含み得る。UI出力装置406は、認証プラットフォーム414によりなされた認証決定を出力する(例えば、発するまたは表示する)ことも担当してもよい。
[ジェスチャの実行により引き起こされる血管の変形]
【0078】
所定の解剖学的領域内では、皮膚の下の血管が血管系を定義する。例として、顔は、血管系が視覚的に監視されることができるいくつかの解剖学的領域(例えば、額、頬、および顎)を含む。
図5は、周辺組織の物理的変形を引き起こすジェスチャの実行により、解剖学的領域(ここでは顔)における下層の血管系がどのように変化し得るかを示す。
図5は、血管系を流れる血液が脈波に関してどのように監視され得るかも示す。つまり、それが解剖学的領域内の毛細血管の動脈端に向かって流れると、血管系内の血液の動きが視覚的に監視されることができる。
図5では、脈波の到達順序の一例を示すために、1-4と番号付けされた任意のユニットが使用されている。
【0079】
上述したように、測定されたフローパターンは、(i)それらの血管の位置を変化させる血管の物理的な動きと、(ii)対象の血管系の血行動態フロー特性(血行力学的フロー特性)を変化させる周辺組織の変形と、により変化し得る。例えば、組織の圧縮は毛細血管圧を上昇させ得、それにより相対的な脈拍位相と脈波速度を変化させる。通常、あるジェスチャが繰り返し行われるといつでも血管系は予測可能な方法で変形するであろう。(i)ジェスチャ、(ii)変形していない血管パターン(例えば、
図5の左上の画像)、および(iii)測定されたフローパターン(例えば、
図5の左下の画像)が分かっている場合、測定された変形フローパターン(例えば、
図5の右下の画像)および/または変形血管パターン(例えば、
図5の右上の画像)が決定されることができる。このプロセスは、
図9のステップ904を参照して、以下でさらに説明される。
[脈波の解析によるフローパターンの確立]
【0080】
本明細書に記載されるいくつかのアプローチに対する重要な側面は、画像データの解析を通じて所定の解剖学的領域内の血管系を通る血液のフローパターンを確立することである。
図6A-Cは、脈波を決定し、計算し、または得るためのいくつかの異なるアプローチを示す。
図6Aは、デジタル画像が生成される関心領域(ROI)を定義するために物体認識が使用されるアプローチを示す。
図6Bに示すように、赤と緑の画素値は、少なくとも1周期の期間にわたりROIについて抽出され得る。これは、ROI内の複数のパッチに対して行われることができ、ここで画素値は各パッチにわたり平均化される。パッチは、固定サイズを有し、かつ、セグメンテーション関数に従ってROI内に分布され得る。あるいは、パッチは、(例えば、ROIのサイズに基づいて、または、利用可能な計算リソースの量に基づいて)調整されることができるサイズを有してもよい。次に、各パッチからの平均画素値は、脈波の位相を確立するために使用されることができる脈波値を推定するために使用されることができる。
図6Cに示すように、これらの脈波値は、任意のユニットにおける相対的な位相期間(phase period)を示し得る。
【0081】
赤と緑の画素値が、異なる深さ(例えば、異なる血管構造)で起こる変化に関連するため、この成分は、物理的変形により異なって影響され得ることに留意されたい。この差は、本明細書に記載されたアルゴリズムが、検出し、次に予測を作成するために使用するように訓練されることができる有用な成分であり得る。したがって、赤と緑の画素値が、認証プラットフォームで利用可能になるだけでなく、予測と位相の推定を計算するために独立して使用できることを確実にすることが有益であり得る。
[認証のための方法]
【0082】
図7は、解剖学的領域における血管動態の視覚的証拠の解析に基づいて、認証プラットフォームのユーザを認証するための手順700のフロー図を含む。以下でさらに説明するように、認証手順は、訓練段階、登録段階、および使用段階の3つの段階を有する。これらの段階は、ユーザが通常とは異なる方法で電子デバイスと相互作用することを必要とせず、最小限に破壊的な認証を可能にするように設計され得る。代わりに、ユーザは、それらのジェスチャの実行により変形される解剖学的領域のデジタル画像を電子デバイスが生成する間、ジェスチャを単に実行し得る。
【0083】
説明のために、認証手順は、ジェスチャの実行により周囲の皮下組織が変形されている間に血管系を監視するという文脈で説明され得る。しかし、周囲の皮下組織は、他の方法で変形され得る。例えば、監視される血管系が指に位置する場合、電子デバイスの内部に位置するハプティックアクチュエータ(または単に「アクチュエータ」)により生成される触覚フィードバックが周囲の皮下組織を変形させることができるように、ユーザは、電子デバイスに隣接して指を配置するように促されてもよい。
【0084】
訓練段階を開始するために、フロー予測アルゴリズムは、教師あり、半教師あり、または教師なし学習を受けることができ、ここで訓練データは、検索され、作成され、または取得され、その後、訓練目的のためにフロー予測アルゴリズムに提供される。訓練データは、対応する静脈マップおよび/または変形静脈マップと関連付けられた測定されたフローパターンおよび/または測定された変形フローパターンを含み得る。通常、ある解剖学的領域(例えば、顔)における変形の理解は、別の解剖学的領域(例えば、手)には単純に適用できないかもしれないので、訓練データは単一の解剖学的領域と関連付けられる。しかし、訓練データは、複数の個人に関連付けられてもよい。したがって、様々な個人について、訓練データは、測定されたフローパターン、測定された変形フローパターン、静脈マップ、変形静脈マップ、またはそれらの任意の組合せを含み得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、ジェスチャによる学習は、通常時(例えば、ジェスチャがない状態、「通常状態」とも呼ばれる)の間に学習されるモデルに基づく転移学習を介して達成される。例えば、ニューラルネットワークの各層は、(i)ジェスチャに依存しない対応する個人の特徴に関連する第1層と、(ii)ジェスチャにより変化する対応する個人の特徴に関連する第2層と、に分割され得る。第1層を固定し、対象のジェスチャごとに第2層のみを学習することで、学習のための画像データの削減(および学習プロセスの削減)が期待できる。
【0086】
上述のように、訓練データ(例えば、静脈マップおよび変形静脈マップ)の一部は、画像データであってもよい。いくつかの実施形態では、画像データは、様々なキャプチャ角度もしくは位置から生成されるか、または、様々なイメージセンサ(例えば、異なる電子デバイスに対応する)で生成され、使用段階におけるこれらの変化に対するより大きなロバスト性を提供する。
【0087】
さらに、訓練データは、訓練セットとテストセットに分割されてもよく、例えば、訓練データの80パーセントが訓練セットに割り当てられ、かつ、訓練データの20パーセントがテストセットに割り当てられる。当業者であれば、これらの値は、説明のために提供されたことを認識するであろう。訓練データの80パーセントより多いか又は少ないかが、訓練セットに割り当てられ得る。同様に、訓練データの20パーセントより多いか又は少ないかがテストセットに割り当てられ得る。訓練セットに割り当てられる訓練データの割合は、通常、テストセットに割り当てられる訓練データの割合よりも大きい(例えば、2倍,3倍,5倍など)。訓練セットは、後述するようにフロー予測アルゴリズムを訓練するために使用され得るが、テストセットは、フロー予測アルゴリズムが流れを予測する方法を適切に学習したことを確認するために使用され得る。
【0088】
高レベルでは、フロー予測アルゴリズムは、特定の入力が与えられた解剖学的領域の血管系を通る血液の流れに関連する出力(「予測」とも呼ばれる)を生成するように設計されたアルゴリズムのセットを備える。これらの入力は、静脈マップ、変形静脈マップ、または解剖学的領域の画像データを含み得る。いくつかの実施形態では、このアルゴリズムのセットは、1つまたは複数のニューラルネットワークを表す。ニューラルネットワークは、既知の入力および出力にそれぞれが関連付けられた例を処理することにより学習して、入力と出力との間の確率重み付けされた関連付け(probability-weighted associations)を形成する。これらの確率重み付けされた関連付けは、「重み」と呼ばれ得る。訓練段階の間、ランダムに選択された重みが、フロー予測アルゴリズムのニューラルネットワーク(複数可)により最初に使用され得る。フロー予測アルゴリズムが、測定されたフローパターン、静脈マップ、および変形静脈マップから学習するにつれて、これらの重みは調整されることができる。したがって、フロー予測アルゴリズムは、予測された変形フローパターンを出力する方法を学習するにつれて、これらの重みを調整し得る。
【0089】
フロー予測アルゴリズムにより出力された各々の予測された変形フローパターンは、グランドトゥルースとして機能する対応する測定された変形フローパターンからの偏差に基づいてスコア付けされ得る。通常、これは、訓練セットに含まれる各例について行われる。より具体的には、パターンマッチングアルゴリズムは、各時間座標(例えば、±3、5、または10ミリ秒)においてタイミングまたは位相についての閾値を使用してスコアを計算し得る。測定された変形フローパターンと予測された変形フローパターンとの間のタイミングの差が閾値を超える場合、その時間座標は失敗としてマークされ得る。スコアは、失敗として分類された時間座標の割合に基づいて、パターンマッチングアルゴリズムにより計算され得る。さらに、パターンマッチングアルゴリズムは、スコアを所定の閾値と比較し、対応するスコアが所定の閾値を超えるか否かに応じて、訓練セットにおける各例を「合格」または「不合格」のいずれかとして分類してもよい。パターンマッチングアルゴリズムは、訓練セットにおける合格例の割合に基づいて、フロー予測アルゴリズムの全体的な成功率を計算できる。
【0090】
フロー予測アルゴリズムのニューラルネットワーク(複数可)の重みは、成功を最適化するために調整が行われる任意のスキームごとに調整され得ることに留意されたい。既知のスキームの一例は、モンテカルロアプローチである。したがって、訓練段階のこの部分は、所定数のサイクル繰り返されてもよく、または訓練段階のこの部分は、全体の成功率が許容値(例えば、90、95、または98パーセント)に達するまで繰り返されてもよい。
【0091】
フロー予測アルゴリズムが適切に動作していることを確認するために、テストセットが使用され得る。したがって、予測されたフローパターンまたは予測された変形フローパターンを生成するために、フロー予測アルゴリズムは、テストセットに含まれる静脈マップおよび変形静脈マップに適用され得る。上述したように、パターンマッチングアルゴリズムは、それぞれ、予測されたフローパターンまたは予測された変形フローパターンと、測定されたフローパターンまたは測定された変形フローパターンとの比較に基づいて、フロー予測アルゴリズムの性能を示すスコアを計算し得る。
【0092】
登録段階(「セットアップ段階」とも呼ばれる)において、静脈マップおよび変形静脈マップは、電子デバイスの通常の使用中にユーザに対して生成され得る。例えば、登録段階を開始する要求を示す入力を受け取ると、電子デバイスは、解剖学的領域が変形する間(例えば、ユーザによるジェスチャの実行による)、解剖学的領域のデジタル画像を生成し得る。顔のデジタル画像が電子デバイスにより生成されている間、ユーザが微笑む、顔をしかめる、または唇をすぼめることを要求する(例えば、テキストを介して)ことにより、UIを介して変形が促され得る。例えば、UIは、ユーザに視覚的に指示するように、解剖学的領域または人体の一般的なモデルにより、変形のグラフィカル表現を表示し得る。別の例として、UIは、解剖学的領域の変形を引き起こし得るジェスチャのグラフィカル表現を表示し得る。例えば、グラフィカル表現は、デジタル画像を生成することを担当する電子デバイスと特定の方法(例えば、画面上で指をスワイプする、筐体を特定の方法で保持するなど)で相互作用するための視覚的指示として機能し得る。
【0093】
これらのデジタル画像から、解剖学的領域に対する静脈マップと変形静脈マップが生成されることができる。
図7に示すように、静脈マップと変形静脈マップは、通常、バイオメトリックデータベースに格納され、その後、未知の人物が自分自身をユーザとして認証しようとするときに取得される。
【0094】
図8は、使用段階(「実装段階」とも呼ばれる)中に認証プラットフォームにより実行されるプロセス800のフロー図を含む。最初に、認証プラットフォームは、未知の人物を所定の個人として認証する要求を示す入力を、ソースから受け取る(ステップ801)。いくつかの実施形態では、ソースは、認証プラットフォームと同じ電子デバイス上で実行されているコンピュータプログラムである。例えば、認証プラットフォームが携帯電話上に存在する場合、認証要求は、未知の人物が認証を必要とするアクティビティを実行しようとしているモバイルアプリケーションから生じ得る。他の実施形態では、ソースは他の電子デバイスから生じる。例えば、未知の人物が、商店主に関連付けられたPOSシステムを使用して取引を完了しようとすると仮定する。このようなシナリオでは、POSシステムは、その認証が実行されることを要求し得る。POSシステムは認証に必要とされる画像データの生成を担当し得るが、認証プラットフォームは、ネットワークを介してPOSシステムに通信可能に接続されているコンピュータサーバ上に存在し得る。
【0095】
次に、認証プラットフォームは、所定の個人に関連付けられた(i)静脈マップおよび(ii)変形静脈マップを受け取ることができる(ステップ802)。上述したように、変形静脈マップは、登録段階の間に所定の個人により実行されたジェスチャに関連付けられ得る。さらに、認証プラットフォームは、未知の人物にジェスチャを実行するよう促す通知を提示させ得る(ステップ803)。この通知は、登録段階中に所定の個人により実行されたものと同じジェスチャを実行するよう未知の人物に促すことが意図されている。
【0096】
上述したように、ジェスチャを実行することは、対象の解剖学的領域の変形をもたらし得る。未知の人物がジェスチャを実行すると、電子デバイスは解剖学的領域の変形を監視し得る。例えば、電子デバイスのイメージセンサは、解剖学的領域の観察を通じて画像データを生成し得、認証プラットフォームは、解析のためにこの画像データを取得し得る(ステップ804)。いくつかの実施形態では、画像データは、解剖学的領域の変形前、変形中、または変形後に生成されるデジタル画像を備える。例えば、電子デバイスは、変形が起こる前の第1の時間間隔にわたる第1の一連のデジタル画像、および、変形が「保持」されている間の第2の時間間隔にわたる第2の一連のデジタル画像を生成し得る。したがって、電子デバイスは、解剖学的領域が自然状態(「リラックス」状態とも呼ばれる)および変形状態にある間のデジタル画像を生成し得る。通常、第1および第2の時間間隔は、少なくとも1つの心拍周期(cardiac pulse cycle)の全体が観察されることができる十分な長さである。心拍周期の持続時間は、様々な生理的要因によって変化するが、それは通常0.5-2.0秒の範囲に収まる。従って、第1および第2の時間間隔は、少なくとも1秒、2秒、または3秒であり得る。より長い持続時間は、任意に、1つより多い心拍周期を取り込むために使用され得る。
【0097】
次に、認証プラットフォームは、画像データを解析して、(i)測定されたフローパターンおよび(ii)測定された変形フローパターンを決定できる(ステップ805)。これを達成するため、認証プラットフォームは、フロー測定アルゴリズムを画像データに適用し得る。画像データに適用される場合、フロー測定アルゴリズムは、最初に、静脈マップおよび変形静脈マップにおける特定の解剖学的座標に対応する画像データ内の画素位置を決定するための登録操作(「マッピング操作」とも呼ばれる)を実行し得る。このマッピング操作は、これらのデータセットにおける値が解剖学的領域における同じ位置に関連することを確実にする。次に、フロー測定アルゴリズムは、様々な画素領域(例えば、3x3、6x6、または9x9画素領域)にわたり画像データの赤または緑の周波数成分を平均化し得る。選択される周波数帯は、解剖学的領域に血液を運ぶ圧脈の周波数にほぼ対応し得る。しかし、もし適切であれば、他の周波数が代わりに使用されてもよい。平均の赤または緑の周波数成分は、対象の周波数帯の強度を特定する時系列が作成されるように、異なる時点に対応する画像データについて計算されることができる。例えば、フロー測定アルゴリズムは、異なるデジタル画像(例えば、それは、電子デバイスにより生成されたビデオのフレームを表す)の赤または緑の周波数成分を平均化し得る。さらに、フロー測定アルゴリズムは、赤または緑の周波数成分の平均値の時間変化する系列の解析に基づいて、ディクロティックノッチなどの圧脈の単一の識別可能な位相の相対的タイミングを決定するようにパターン認識を行い得る。圧脈のこの位相が特定された後、フロー測定アルゴリズムは、圧脈の特定された位相の最も早く検出された出現に関連する画素領域の一部または全部にタイミング値を割り当て得る。高レベルでは、これらのタイミング値は、画像データの解析から決定されるように、血液が解剖学的領域の血管系を通ってどのように流れるかを示すフローパターンを表し得る。画像データが自然状態の解剖学的領域と関連している場合、このフローパターンは、「測定されたフローパターン」と称され得る。画像データがその変形状態の解剖学的領域と関連している場合、このフローパターンは、「測定された変形フローパターン」と称され得る。
【0098】
認証プラットフォームは、次に、予測された変形フローパターンを生成するように、フロー予測アルゴリズムを(i)未知の人物について生成された、測定されたフローパターン、(ii)所定の個人についての静脈マップ、および(iii)所定の個人についての変形静脈マップに適用できる(ステップ806)。高レベルでは、予測された変形フローパターンは、ジェスチャが実行されたときに血液が所定の個人の血管系を通ってどのように流れ得るかという予測を表す、タイミング値を含むデータ構造であってもよい。
【0099】
次に、認証プラットフォームは、類似性を示すメトリックを生成するために、パターンマッチングアルゴリズムを(i)測定された変形フローパターンおよび(ii)予測された変形フローパターンに適用できる(ステップ807)。上述したように、このメトリックは、「一致スコア」と呼ばれ得る。高レベルでは、このメトリックは、値ごとに、測定された変形フローパターンが予測された変形フローパターンと同等である度合いを示し得る。
【0100】
次に、認証プラットフォームは、メトリックに基づいて、未知の人物を所定の個人として認証するか否かを決定できる(ステップ808)。例えば、認証プラットフォームは、メトリックを所定の閾値と比較する認証アルゴリズムを適用し得る。メトリックが所定の閾値を超える場合、認証アルゴリズムは、未知の人物が所定の個人として認証されるべきことを示す出力を生成し得る。しかし、メトリックが所定の閾値を超えない場合、認証アルゴリズムは、未知の人物が所定の個人として認証されるべきではないことを示す出力を生成し得る。
【0101】
図9は、血管調査を通じて未知の人物を所定の個人として認証するか否かを決定するための別のプロセス900のフロー図を含む。一方、
図10は、認証プラットフォームが未知の人物を所定の個人として認証するか否かを決定するプロセスの視覚的な図を含む。最初、認証プラットフォームは、未知の人物を所定の個人として認証する要求を示す入力を受け取り得る(ステップ901)。
図9のステップ901は、
図8のステップ801と実質的に同様であってもよい。説明のために、プロセス900は、未知の人物が所持している電子デバイスにより生成されたデジタル画像を調べるという文脈で説明される。しかしながら、当業者は、プロセス900が、未知の人物が電子デバイスに近接しているが、電子デバイスを所持していないシナリオ(例えば、電子デバイスがPOSシステムである場合)にも同様に適用可能であり得ることを認識するであろう。
【0102】
その後、認証プラットフォームは、未知の人物が主張する所定の個人と関連付けられたデジタルプロファイルを取得できる(ステップ902)。例えば、認証プラットフォームは、異なる個人に関連付けられた複数のデジタルプロファイルが格納されているバイオメトリックデータベースにアクセスしてもよく、次に、認証プラットフォームは、入力に基づいて複数のデジタルプロファイルの中からデジタルプロファイルを選択し得る。通常、入力は、未知の人物が主張する所定の個人を(例えば、名前、または電子メールアドレスもしくは電話番号などの識別子を使用して)識別するので、認証プラットフォームは、バイオメトリックデータベースに格納されているそれらの中から適切なデジタルプロファイルを簡単に特定し得る。
【0103】
デジタルプロファイルは、所定の個人に関連付けられた1つ以上の血管パターン(「静脈マップ」とも呼ばれる)を含み得る。所定の個人に関連付けられることに加えて、各血管パターンは、所定の解剖学的領域に関連付けられてもよい。例えば、デジタルプロファイルは、顔、掌、指などに対する別々の血管パターンを含み得る。さらに、デジタルプロファイルは、異なる状態の同じ解剖学的領域に対する血管プロファイルを含み得る。例えば、デジタルプロファイルは、(i)解剖学的領域が自然状態にある間の解剖学的領域内の血管に関する空間的情報を提供する第1の血管パターンと、(ii)解剖学的領域が変形状態(例えば、ジェスチャの実行による)にある間の解剖学的領域内の血管に関する空間的情報を提供する第2の血管パターンと、を含み得る。
【0104】
次に、認証プラットフォームは、電子デバイスのカメラが解剖学的領域に向けられている間、解剖学的領域の変形を引き起こすジェスチャを実行するように、未知の人物に対して指示を提示させることができる(ステップ903)。未知の人物がジェスチャを実行すると、カメラは一連のデジタル画像を生成し得る。これらのデジタル画像は、所定のケイデンス(例えば、0.1秒、0.2秒、または0.5秒毎)で離散的に素早く連続して生成され得る。あるいは、カメラは解剖学的領域のビデオを生成してもよく、この場合、デジタル画像はビデオのフレームを表し得る。このシナリオでは、デジタル画像は、所定のレート(例えば、1秒あたり20、30、または60フレーム)で生成され得る。
【0105】
次に、認証プラットフォームは、カメラにより生成されるデジタル画像に基づいて、未知の人物のフローパターンを推定できる。より具体的には、認証プラットフォームは、デジタル画像の解析に基づいて、(i)未知の人物の解剖学的領域が自然状態にある間の血液の第1のフローパターンと、(ii)人物の解剖学的領域が変形状態にある間の血液の第2のフローパターンと、を推定できる(ステップ904)。上述したように、これらのフローパターンは、電子デバイスのカメラにより生成された異なるデジタル画像に基づいて推定されるであろう。第1のフローパターンは、自然状態の解剖学的領域のデジタル画像(例えば、ジェスチャが実行される前または後に生成されたもの)の解析に基づいて生成され得、第2のフローパターンは、変形状態の解剖学的領域のデジタル画像(例えば、ジェスチャが実行または保持されている間に生成されたもの)の解析に基づいて生成され得る。
図8に関して上述したように、第1および第2のフローパターンは、解剖学的領域の血管を通る血液の流れを示す色の変化(例えば、赤成分または緑成分における)を特定するように、対応するデジタル画像の画素のプログラムによる解析に基づいて推定され得る。
【0106】
さらに、認証プラットフォームは、デジタルプロファイルおよび第1のフローパターンに基づいて、所定の個人がジェスチャを行ったとした場合に予想される、所定の個人の解剖学的領域を通る血液の第3のフローパターンを予測できる(ステップ905)。上述のように、デジタルプロファイルは、(i)解剖学的領域が自然状態にある間の所定の個人の解剖学的領域内の血管に関する空間的情報を提供する第1の血管パターンと、(ii)解剖学的領域が変形状態にある間の所定の個人の解剖学的領域内の血管に関する空間的情報を提供する第2の血管パターンと、を含み得る。第1の血管パターン、第2の血管パターン、および第1のフローパターンにアルゴリズムを適用することにより、認証プラットフォームは、出力として、第3のフローパターンを生成でき得る。高レベルでは、アルゴリズムは、ジェスチャによって引き起こされるであろう解剖学的領域の変形の間に血管を通る血流をシミュレーションし得る。
【0107】
次に、認証プラットフォームは、第2のフローパターンと第3のフローパターンとの比較に基づいて、未知の人物を所定の個人として認証するか否かを決定できる(ステップ906)。例えば、第1のフローパターン、第2のフローパターン、および第3のフローパターンは、行列として表現されると仮定する。第1のフローパターンは、第1のベクトルまたは行列として表されてもよく、その各要素は、自然状態にある間の未知の人物の解剖学的領域の対応する部分を通る推定される血流を示す値を含む。第2のフローパターンは、第2のベクトルまたは行列として表されてもよく、その各要素は、変形状態にある間の未知の人物の解剖学的領域の対応する部分を通る推定される血流を示す値を含む。一方、第3のフローパターンは、第3のベクトルまたは行列として表されてもよく、その各要素は、変形状態にある間の所定の個人の解剖学的領域の対応する部分を通る推定される血流を示す値を含む。このようなシナリオでは、認証プラットフォームは、第2および第3のベクトルまたは行列にアルゴリズムを適用して、第2および第3のフローパターン間の類似性を示すスコアを生成し得る。次に、認証プラットフォームは、スコアに基づいて、未知の人物が所定の個人である可能性を確立できる。本明細書で使用される「行列」という用語は、一連の行ベクトルまたは列ベクトルを指すために使用され得ることに留意されたい。
【0108】
他のステップも含まれる得る。一例として、認証プラットフォームは、未知の人物が所定の個人として認証されたか否かを示す信号を(例えば、メッセージまたは通知の形態で)生成してもよい。認証プラットフォームは、この信号を、認証する要求がそこから受信されたソースに送信し得る。例えば、未知の人物を認証する要求が携帯電話上で実行されるコンピュータプログラムから受信された場合、認証プラットフォームは、認証を必要とするいずれかのタスクの実行を未知の人物に許可するか否かをコンピュータプログラムが確立できるように、信号を携帯電話に提供し得る。同様に、未知の人物を認証する要求が取引中のPOSシステムから受信された場合、認証プラットフォームは、取引が完了されることができるように、POSシステムに信号を提供し得る。
【0109】
図8を参照して上述したように、認証を実行することは、認証プラットフォームが、フロー予測アルゴリズムを(i)未知の人物に関連付けられた測定されたフローパターン、(ii)所定の個人に関連付けられた静脈マップ、および(iii)所定の個人に関連付けられた変形静脈マップに適用して、予測された変形フローパターンを生成することを必要とし得る。この予測された変形フローパターンは、所定の個人が特定のジェスチャを行った場合に血液がどのように血管系を流れるかに関する認証プラットフォームによる予測を表す。いくつかの実施形態では、フロー予測アルゴリズムは、フロー予測モデルを集合的に定義するアルゴリズムの集合の一部である。一般に、フロー予測モデルは、予測を行うために例を用いて「訓練」される機械学習(ML)または人工知能(AI)モデルであり、すなわち、変形したときに血液が血管系を通ってどのように流れるかを予測する。一般に、フロー予測モデルは、機械学習(ML)または人工知能(AI)モデルであり、それは、例を用いて「訓練」されて、予測を、すなわち変形したときに血液が血管系を通ってどのように流れるかを作成する。
【0110】
図11は、変形したときに解剖学的領域の血管系を通る血液の流れを予測するように訓練されるモデルを作成するためのプロセス1100のフロー図を含む。上述のように、解剖学的領域は、ジェスチャの実行により変形され得るか、または、解剖学的領域は、外力(例えば、ハプティックアクチュエータによって生成される触覚フィードバック)を加えることにより変形され得る。変形の性質は、解剖学的領域に依存し得る。例えば、顔の血管系は、ジェスチャ(例えば、笑顔またはしかめっ面)を行うよう人物に指示することにより変形しやすいかもしれず、指の血管系は、電子デバイスに対して指を置くように人物に指示し、かつ、その後、外力を加える(例えば、触覚フィードバックを介して)ことにより変形しやすいかもしれない。
【0111】
最初に、認証プラットフォームは、変形したときの解剖学的領域の静脈ネットワークを通る血流を予測するために訓練されるモデルを特定できる(ステップ1101)。用語「静脈ネットワーク」および「血管系」は、互換的に使用され得ることに留意されたい。したがって、用語「静脈ネットワーク」は、解剖学的領域内に位置する血管系の部分を指し得る。解剖学的領域は、血管動態が撮像により監視され得る身体の任意の部分であり得るが、一般的な解剖学的領域は、指、手の掌側および甲側、ならびに顔を含む。
【0112】
次に、認証プラットフォームは、(i)自然状態の解剖学的領域に対応する血管パターンの第1シリーズと、(ii)変形状態の解剖学的領域に対応する血管パターンの第2シリーズと、(iii)第1シリーズにおける各血管パターンについて、解剖学的領域が自然状態にあるときに血液がその血管パターンをどのように流れるかを伝えるフローパターンのシリーズと、(iv)第2シリーズにおける各血管パターンについて、解剖学的領域が変形状態にあるときに血液がその血管パターンをどのように流れるかを伝える変形フローパターンのシリーズと、を取得できる(ステップ1102)。第1シリーズにおける各血管パターンは、解剖学的領域が自然状態にあるときの皮下血管間の空間的関係を示し得る。一方、第2シリーズにおける各血管パターンは、解剖学的領域が変形状態にあるときの皮下血管間の空間的関係を示し得る。
【0113】
さらに、第1シリーズにおける各血管パターンは、第2シリーズにおける対応する血管パターンと関連付けられ、第1および第2シリーズにおける対応する血管パターンは、同一の個人に関連付けられ得る。従って、単一の個人は、第1シリーズにおけるある血管パターン、第2シリーズにおけるある血管パターン、フローパターンのうちの1つ、および、変形フローパターンのうちの1つに関連付けられ得る。通常、第1シリーズにおける各血管パターンは異なる個人と関連付けられるが、同じ個人が第1シリーズにおける複数の血管パターンと関連付けられてもよい。例えば、単一の個人は、同じ解剖学的領域に対応するが異なる電子デバイスにより生成された画像データを用いて生成された血管パターンに関連付けられ得る。同様に、第2シリーズにおける各血管パターンは、通常、異なる個人と関連付けられる。しかし、上述のように、第1シリーズにおける各血管パターンは、第2シリーズにおける対応する血管パターンと同じ個人に関連付けられ得る。
【0114】
次に、認証プラットフォームは、(i)血管パターンの第1シリーズ、(ii)血管パターンの第2シリーズ、(iii)フローパターンのシリーズ、および(iv)変形フローパターンのシリーズを、訓練データとしてモデルに提供できる(ステップ1103)。このようなアプローチは、人物に関連する血管パターンに適用されたとき、人物の解剖学的領域における静脈ネットワークを通る血流を予測するようにモデルが訓練されるようにする。別の言い方をすれば、認証プラットフォームは、血流を予測できる訓練済みモデルを生成するように、この情報を訓練データとしてモデルに提供し得る。例えば、認証プラットフォームが、所定の個人の解剖学的領域を通る血液の流れを予測するタスクが課されている場合、認証プラットフォームは、所定の個人に関連付けられた1組の血管パターンに訓練済みモデルを適用し得る。血管パターンの組は、自然状態の解剖学的領域に対応する1つの血管パターンと、変形状態の解剖学的領域に対応する別の血管パターンとを含み得る。訓練が完了した後、認証プラットフォームは、訓練済みモデルをバイオメトリックデータベースに格納し得る(ステップ1104)。
[追加の考慮事項および実装]
[A.パーソナライズされたジェスチャ]
【0115】
上述したように、静脈マップは、未知の人物を所定の個人として認証するか否かを決定する際に重要な役割を果たし得る。認証プロセスを調整するために、認証プラットフォームは、それらの静脈マップに基づいて変形を設計または選択し得る。
【0116】
例えば、未知の人物が自分自身を所定の個人として認証することを希望していると仮定する。認証プロセスの一部として、認証プラットフォームは、所定の個人に関連付けられた静脈マップ(例えば、自然状態の解剖学的領域についての第1の静脈マップと、変形状態の解剖学的領域についての第2の静脈マップ)を取得し得る。この状況において、認証プラットフォームは、これらの静脈マップの固有の側面をよりよく表面化または強調する変形を設計または選択し得る。例えば、認証プラットフォームは、バイオメトリックデータベースに含まれる静脈マップの一部または全部を解析して十分に固有な特徴を特定し得る。これらの特徴は、異なる血管間の空間的関係(例えば、珍しい分岐位置または珍しい寸法)に関係してもよく、またはこれらの特徴は、血管の血管特性(例えば、静脈ネットワークを流れる血液の速度、体積、または圧力が変形後に平均より多くまたは少なく変化するか否か)に関係してもよい。
【0117】
加えてまたは代替的に、認証プラットフォームは、固有の特徴を表面化する方法で、ジェスチャを実行する(または、変形を促す、変形を誘発する、または変形を引き起こす)要求を未知の人物に配信するシステムを利用してもよい。例えば、認証プラットフォームは、掌に沿った位置に圧力を加えるよう未知の人物に求めて、固有の血管の位置への血流を阻害または閉塞してもよく、それにより、その固有の血管に流入する他の血管の静脈抵抗に固有の影響を生じさせる。解剖学的領域を介して発せられる圧脈(したがって、圧脈を視覚的に捕らえる画像データ)に対する変形の影響は、変形と同位置にあるかもしれず、または、変形の位置から多少離れた位置にあるかもしれない。
【0118】
上述したように、認証プラットフォームは、認証プロセスの一部として、測定されたフローパターンおよび測定された変形フローパターンを生成し得る。いくつかの実施形態では、認証プラットフォームは、測定されたフローパターンと測定された変形フローパターンとの間の差異を決定し、次に、他の例に対してこれらの差異を比較し、変形により画像データに生じる変化も十分に固有であることを確実にする。
[B.測定されたフローパターンのマッチング]
【0119】
測定されたフローパターンおよび測定された変形フローパターンが未知の人物について既知である後、認証プラットフォームは、元の静脈マップ認証要素との関連付けが前に確立されていたので、測定されたフローパターンの一致のみに基づいて未知の人物を認証してもよい。この「軽量」認証プロセスは、最小限の機密情報または行動を含む状況など、一部の状況にのみ適しているかもしれない。しかし、この「軽量」認証プロセスは、例えば、時間または計算リソースが限られている場合に、未知の人物を迅速に認証するために有用であり得る。
[C.複数の変形]
【0120】
上述したように、所定の個人は、登録段階の間に複数のジェスチャを実行するように促され得る。このようなアプローチは、認証のための複数のオプションがあるので、顕著なセキュリティ上の利点を提供する。未知の人物が所定の個人として認証されることを求める場合、認証プラットフォームは、登録段階中に所定の個人により実行された複数のジェスチャのうちの任意の組合せを未知の人物が実行することを要求できる。したがって、認証プラットフォームは、認証プロセス中に未知の人物が複数の異なるジェスチャを実行することを要求してもよく、認証プラットフォームは、それらのジェスチャの所定の割合(例えば、50パーセントより大きい、正確に100パーセント)が所定の個人と一致となる場合にのみ、未知の人物を所定の個人として認証してもよい。
【0121】
認証プラットフォームは、未知の人物が同じジェスチャを複数回実行するよう要求することもできる。例えば、認証プラットフォームは、認証プロセス中に未知の人物が単一のジェスチャを複数回実行することを要求してもよく、認証プラットフォームは、それらの実行の所定の割合(例えば、50パーセントより大きい、正確に100パーセント)が所定の個人と一致となる場合にのみ、未知の人物を所定の個人として認証してもよい。
【0122】
認証プラットフォームが、登録段階中に個人が複数のジェスチャを実行することを可能にする実施形態では、認証プラットフォームは、それらの異なるジェスチャについて別々のバイオメトリックデータベースを管理してもよい。例えば、認証プラットフォームは、第1のジェスチャのための情報(例えば、静脈マップおよび変形静脈マップ)を含む第1のバイオメトリックデータベース、第2のジェスチャのための情報を含む第2のバイオメトリックデータベースなどを管理してもよい。あるいは、認証プラットフォームは、異なるジェスチャに関連付けられた情報を、単一のバイオメトリックデータベースの異なる部分に格納してもよい。
【0123】
さらに、バイオメトリックデータベースにおけるエントリは、対応する個人を識別する名前または識別子(例えば、電子メールアドレスまたは電話番号)だけでなく、対応するジェスチャを識別するラベルにも関連付けられ得る。したがって、異なるジェスチャ(例えば、笑顔としかめっ面)は、バイオメトリックデータベースのエントリに付加されることができる異なるラベルに関連付けられ得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、適切なラベルは、認証に使用される画像データの解析に基づいて識別される。例えば、画像データが顔のデジタル画像を含む場合、認証プラットフォームは、それらのデジタル画像を調べてどのジェスチャが実行されたかを決定し得る。画像データの自動解析は、いくつかの点で有用であり得る。第1に、認証プラットフォームは、未知の人物に明示的にジェスチャを実行するよう指示するのではなく、未知の人物によりどのジェスチャが実行されたかを推定でき得る。第2に、認証プラットフォームは、バイオメトリックデータベースから取得するための適切な静脈マップを確立でき得る。例えば、認証プラットフォームが、デジタル画像において未知の人物が所定のジェスチャを行ったと決定した場合、認証プラットフォームは、バイオメトリックデータベースから所定のジェスチャに関連付けられた静脈マップを取得できる。
[遠隔血管調査(Ranged Vascular Studies)を通じて未知の人物を認証することの利点]
[A.加齢と環境による変化]
【0125】
血管の形状は一般に変化しないことが理解されているが、血管の特性(流量など)は、年齢、病気などの要因により影響を受け得る。温度と湿度などの環境要因も血管の特性に影響を与え得る。例えば、低い気温により、血管が圧縮され又は収縮し得る。血流は、生理的要因(例えば、緊張とストレス)および生理的活動(例えば、運動)によっても影響を受け得る。
【0126】
認証プラットフォームは、このような血管特性の変化に対してロバストであるように設計されることができる。認証プラットフォームの1つの重要な側面は、変形の結果としての血流の局所的な空間的特性および方向性に着目していることである。そのため、身体全体に影響を与える傾向がある上述の要因の影響は、通常、無視できるか、または(例えばモデリングにより)管理可能である。例えば、緊張状態とリラックス状態では、ジェスチャの実行による解剖学的領域内の静脈ネットワークを通る血流の方向性のパターンは観察可能であるが、信号の絶対強度(例えば、画像データの解析を通じて決定される)は、異なり得る。
【0127】
全体的な血流の変化は、個々の測定値にノイズを導入し得る。しかし、この影響は、身体活動(例えば、運動)を行った後でも血流が容易に観察可能なままであることを示した最近の研究において、適切に対処されている。
[B.困難なシナリオにおけるロバスト性]
【0128】
継続的な研究は、デジタル画像の解析による血管動態の確立または監視の精度とロバスト性とを向上している。特に、携帯電話とタブレットコンピュータのように容易に入手可能な電子デバイスを利用するアプローチにおいて、遠隔監視に対する関心も高まっている。
【0129】
未知のユーザの健康状態の変化が局所的なスケールの空間的特性に影響を与えるシナリオ(例えば、外傷性損傷、脳卒中などによる)では、認証プラットフォームは、これらの変化を説明するためにモデリング技術を採用し得る。例えば、認証プラットフォームが、未知の人物に関連する画像データの解析に基づいて、変形が生じたことを検出した場合、認証プラットフォームは、静脈マップを適宜調整するように設計されたMLベースのモデルを適用できる。したがって、認証プラットフォームは、それらの個人が登録段階を完了した後の個人の健康状態の変化を説明するために、静脈マップをインテリジェントに操作でき得る。別の例として、認証プラットフォームが、未知の人物に関連する画像データの解析に基づいて心拍数が高いことを検出した場合、認証プラットフォームは、MLベースのモデルを適用して流量または圧力などの血管特性に対する適切な調整を決定できる。ただし、空間的情報と血管特性は、時間の経過に対してかなり均一である傾向があるので、このようなタイプの調整が広く必要とされることは考えられない。
[処理システム]
【0130】
図12は、本明細書に記載された少なくともいくつかの動作が実施され得る処理システム1200の一例を示すブロック図である。例えば、処理システム1200の構成要素は、イメージセンサを含む電子デバイス上にホストされ得る。別の例として、処理システム1200の構成要素は、イメージセンサにより生成された画像データを調べることを担当する認証プラットフォームを含む電子デバイス上にホストされ得る。
【0131】
処理システム1200は、バス1216に通信可能に接続された、プロセッサ1203、メインメモリ1206、不揮発性メモリ1210、ネットワークアダプタ1212(例えば、ネットワークインタフェース)、映像ディスプレイ1218、入力/出力装置1220、制御装置1222(例えば、キーボード、ポインティングデバイス、またはボタンなどの機械的入力)、記録媒体1226を含む駆動ユニット1224、または信号生成装置1230を含み得る。バス1216は、適切なブリッジ、アダプタ、またはコントローラによって接続される1つまたは複数の物理バスおよび/またはポイントツーポイント接続を表す抽象的なものとして図示されている。したがって、バス1216は、システムバス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、PCI-Expressバス、HyperTransportバス、ISA(Industry Standard Architecture)バス、SCSI(Small Computer System Interface)バス、USB(Universal Serial Bus)、I2C(Inter Integrated Circuit)バス、またはIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)標準1394に準拠するバスを含み得る。
【0132】
処理システム1200は、コンピュータサーバ、ルータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、ビデオゲーム機、ウェアラブル電子デバイス(例えば、時計またはフィットネストラッカ)、ネットワーク接続(「スマート」)デバイス(例えば、テレビまたはホームアシスタント装置)、拡張または仮想現実システム(例えば、ヘッドマウントディスプレイ)、または処理システム1200により行われるアクション(複数可)を指定する命令セットを(順次または別の方法で)実行できる別の電子デバイスのものと同様のコンピュータプロセッサ・アーキテクチャを共有してもよい。
【0133】
メインメモリ1206、不揮発性メモリ1210、および記録媒体1224は、単一の媒体であるように示されているが、「記録媒体」および「機械可読媒体」という用語は、1組以上の命令1226を記憶する単一の媒体または複数の媒体を含むように解釈されるべきである。また、「記録媒体」および「機械可読媒体」という用語は、処理システム1200による実行のための命令のセットを記憶し、符号化し、または運ぶことができる任意の媒体を含むと解釈されるべきである。
【0134】
一般に、本開示の実施形態を実装するために実行されるルーチンは、オペレーティングシステムまたは特定のアプリケーション、コンポーネント、プログラム、オブジェクト、モジュール、または命令のシーケンス(「コンピュータプログラム」と総称される)の一部として実装され得る。コンピュータプログラムは、典型的には、コンピューティングデバイス内の様々なメモリおよび記憶装置に様々なタイミングで設定された1つまたは複数の命令(例えば、命令1204、1208、1228)を備える。プロセッサ1202によって読み出され、実行されると、命令は、処理システム1200に、本開示の様々な態様を実行するための動作を実行させる。
【0135】
実施形態は、完全に機能するコンピューティングデバイスの文脈で説明されてきたが、当業者は、様々な実施形態が、様々な形態のプログラム製品として配布可能であることを理解するであろう。本開示は、実際に配布を実現するために使用される機械またはコンピュータ可読媒体の特定のタイプに関係なく適用される。機械およびコンピュータ可読媒体のさらなる例は、揮発性メモリデバイス、不揮発性メモリデバイス1210、リムーバブルディスク、ハードディスクドライブ、光ディスク(例えば、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)およびデジタル多用途ディスク(DVD))等の記録可能タイプ媒体、クラウドベースストレージ、デジタルおよびアナログ通信リンク等の伝送タイプ媒体を含む。
【0136】
ネットワークアダプタ1212は、処理システム1200が、処理システム1200および外部のエンティティによりサポートされる任意の通信プロトコルを通じて、処理システム1200の外部であるエンティティとネットワーク1214内のデータを仲介することを可能にする。ネットワークアダプタ1212は、ネットワークアダプタカード、無線ネットワークインタフェースカード、スイッチ、プロトコル変換器、ゲートウェイ、ブリッジ、ハブ、受信機、リピータ、または集積回路を含むトランシーバ(例えば、Bluetooth(登録商標)またはWi-Fiでの通信を可能にする)を含むことができる。
[備考]
【0137】
請求された主題の様々な実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提供されたものである。それは、網羅的であること、または請求された主題を開示された正確な形態に限定することを意図していない。多くの修正および変形が当業者には明らかであろう。実施形態は、本発明の原理およびその実用的用途を最もよく説明するために選択および説明され、それによって、関連する技術の当業者は、請求された主題、種々の実施形態、および企図された特定の用途に適する種々の改変を理解できるようになる。
【0138】
詳細な説明は、特定の実施形態および企図される最良の態様を説明しているが、詳細な説明がいかに詳細に見えても、本技術は多くの方法で実施することが可能である。実施形態は、本明細書に包含されながら、その実装の詳細においてかなり異なる場合がある。様々な実施形態の特定の特徴または側面を説明するときに使用される特定の用語は、その用語が関連付けられる技術の任意の特定の特性、特徴、または側面に限定されるように、本明細書で再定義されることを意味するものと解釈されるべきではない。一般に、以下の特許請求の範囲で使用される用語は、それらの用語が本明細書で明示的に定義されない限り、本明細書に開示される特定の実施形態に技術を限定するように解釈されるべきではない。したがって、本技術の実際の範囲は、開示された実施形態だけでなく、実施形態を実施または実装するすべての等価な方法も包含する。
【0139】
本明細書で使用される用語は、主として、読みやすさと説明のために選択されたものである。それは、主題を画定または囲い込むために選択されたものではない。したがって、本技術の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろ、これに基づく出願で発行される任意の請求項によって限定されることが意図される。したがって、様々な実施形態の開示は、以下の特許請求の範囲に規定される技術の範囲を例示するものであるが、限定するものではないことを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本開示は、コンピュータセキュリティにおけるバイオメトリック認証に適用できる。
【国際調査報告】