(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】位置情報を求めるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
A61B8/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537002
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2021084719
(87)【国際公開番号】W WO2022128664
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】バーラト シャム
(72)【発明者】
【氏名】チェン アルヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ラジュ バラサンダー イヤヴ
(72)【発明者】
【氏名】サットン ジョナサン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】トポレク グジェゴジ アンドレイ
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD15
4C601EE09
4C601FE01
4C601GA19
4C601GA28
(57)【要約】
対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めるためのシステム及び方法が提供される。デバイスは、20kHz以下の周波数を有する音響信号を出力及び/又はルーティングし、音響信号は、少なくとも、対象者の身体の外部に位置付けられた第1のセンサによって受信される。処理システムは、センサから受信信号を受信し、受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得し、デバイスのための位置情報を求めるために値を処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めるための処理システムであって、前記デバイスは、20kHz以下の周波数を有する音響信号を出力及び/又はルーティングすることが可能である、処理システムにおいて、前記処理システムは、
前記対象者の前記身体の外部に位置付けられた第1のセンサから、前記デバイスによって出力及び/又はルーティングされた前記音響信号に応じた第1の受信信号を受信することと、
前記第1の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得することであって、前記1つ又は複数のパラメータの各々は、前記音響信号が伝わった距離とともに変化する前記第1の受信信号のパラメータである、前記第1の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得することと、
前記デバイスのための位置情報を求めるために前記1つ又は複数のパラメータの各々のための前記値を処理することと
を行う、処理システム。
【請求項2】
前記デバイスは、超音波撮像プロセス中に20kHz以下の周波数を有する音響信号を射出する、請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
前記デバイスは経食道的心エコー法プローブを備える、請求項1又は2に記載の処理システム。
【請求項4】
前記第1のセンサは、使用時に、前記対象者の胸郭に位置付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項5】
前記第1の受信信号の前記1つ又は複数のパラメータは、前記第1の受信信号の強度、前記第1の受信信号の振幅、前記第1の受信信号の伝搬時間及び/又は前記第1の受信信号の周波数のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項6】
前記処理システムは、更に、前記デバイスの複数の位置のために、受信信号を受信することと、前記受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得することとを繰り返し、
前記デバイスのための位置情報を求めるために前記1つ又は複数のパラメータの各々のための前記値を処理することは、パラメータの最大値、パラメータの最小値、及び/又は変曲点に対応するパラメータの値のうちの少なくとも1つに対応する前記デバイスの位置を求めるために前記デバイスの前記複数の位置の各々に対応する前記値を処理することを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項7】
前記デバイスのための位置情報を求めるために前記1つ又は複数のパラメータの各々のための前記値を処理することは、更に、前記デバイスの基準位置に対応する前記1つ又は複数のパラメータの各々のための基準値を使用し、
前記位置情報は、前記基準位置に対する前記デバイスの位置を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項8】
前記処理システムは、更に、
前記第1のセンサとは異なる位置において前記対象者の前記身体の外部に位置付けられた第2のセンサから、前記デバイスによって出力及び/又はルーティングされた同一の前記音響信号に応じた第2の受信信号を受信することと、
前記第2の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得することであって、前記1つ又は複数のパラメータの各々は前記第1の受信信号のパラメータに対応する、前記第2の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得することと
を行い、
前記デバイスのための位置情報を求めるために前記1つ又は複数のパラメータの各々のための前記値を処理することは、前記第1及び第2のセンサの各々に対する前記デバイスの位置を求めるために前記第1及び第2の受信信号のための前記値を処理することを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項9】
前記処理システムは、更に、受信信号を受信することと、単一の位置から前記デバイスによって出力及び/又はルーティングされた複数の異なる音響信号のための前記受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得することとを繰り返し、
前記デバイスのための位置情報を求めるために前記1つ又は複数のパラメータの各々のための前記値を処理することは、前記受信信号の各々のための前記値を処理することを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項10】
前記処理システムは、更に、
前記デバイスから、前記デバイスによって出力及び/又はルーティングされた1つ又は複数の前記音響信号に応じた情報を受信することと、
受信信号が前記デバイスによって出力及び/又はルーティングされた1つ又は複数の前記音響信号のうちの1つに対応するか否かを判定することと
を行う、請求項1から9のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項11】
前記処理システムは、更に、求められた前記位置情報の指標を表示デバイスに対して出力する、請求項1から10のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項12】
前記デバイスは超音波撮像デバイスであり、
前記デバイスのための位置情報を求めるために前記1つ又は複数のパラメータの各々のための前記値を処理することは、前記デバイスが所望の位置にあるか否かを判定することを有し、
前記処理システムは、更に、前記デバイスが所望の位置にあると判定したこと応じて、前記デバイスによって受信された撮像データに対応する画像を表示するように表示デバイスに指示する、請求項1から11のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項13】
対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めるためのシステムであって、前記デバイスは、20kHz以下の周波数を有する音響信号を出力及び/又はルーティングすることが可能である、システムにおいて、前記システムは、
使用時に、前記対象者の前記身体の外部に位置付けられ、前記デバイスによって出力及び/又はルーティングされた音響信号を受信する少なくとも1つのセンサと、
請求項1から12のいずれか一項に記載の処理システムと
を備える、システム。
【請求項14】
対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めるためのコンピュータによって実現される方法であって、前記デバイスは、20kHz以下の周波数を有する音響信号を出力及び/又はルーティングすることが可能である、コンピュータによって実現される方法において、前記コンピュータによって実現される方法は、
前記対象者の前記身体の外部に位置付けられた第1のセンサから、前記デバイスによって出力及び/又はルーティングされた前記音響信号に応じた第1の受信信号を受信するステップと、
前記第1の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得するステップであって、前記1つ又は複数のパラメータの各々は、前記音響信号が伝わった距離とともに変化する前記第1の受信信号のパラメータである、前記第1の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得するステップと、
前記デバイスのための位置情報を求めるために前記1つ又は複数のパラメータの各々のための前記値を処理するステップと
を有する、コンピュータによって実現される方法。
【請求項15】
処理システムを有するコンピューティングデバイス上で実行されたときに、請求項14に記載のコンピュータによって実現される方法のステップの全てを前記処理システムに実施させるコンピュータプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報を求めることの分野に関し、特には、対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めることに関する。
【背景技術】
【0002】
経食道的心エコー法(TEE)の使用は、手術中の心機能の監視のためにますます一般的になってきている。TEEは、高品質なリアルタイムの心臓の視覚化を可能とする。
【0003】
適切な心エコー図を取得するために、TEEプローブは、食道において十分に心臓に近い場所に位置付けられなければならない。例えば、左心室を見るためには、TEEプローブは食道中央位置になければならない。プローブを正確に位置付けるには、器用さと臨床的な専門知識とが必要とされる。
【0004】
食道内にTEEプローブを位置付けるときに非専門家であるユーザを誘導するための画像に基づいた様々な解決策が提案されている。これらの解決策は、プローブによって取得された超音波画像における特徴を特定することに依存する。しかしながら、超音波画像を取得するためには、プローブのトランスデューサアレイ要素が組織と接触していなければならないが、これは、最初にTEEプローブを挿入した場合には常に接触があるわけではない。更に、全てのプローブ位置が、位置の特定に使用され得る特徴を有する画像を提供するわけではない。このことは、食道の上側セクションについて特に当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、非専門家であるユーザがTEEプローブを位置付けることを可能とする向上された機構への需要が存在する。
【0006】
米国特許出願第2016/324501A1号は、音響画像平面に対する介入ツールの位置を超音波信号を使用して追跡するツール操作システムを記載している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は特許請求の範囲において定められる。
【0008】
本発明の態様に従った実施例によると、対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めるための処理システムであって、デバイスは、20kHz以下の周波数を有する音響信号を出力及び/又はルーティングすることが可能である、処理システムが提供される。
【0009】
処理システムは、対象者の身体の外部に位置付けられた第1のセンサから、デバイスによって出力及び/又はルーティングされた音響信号に応じた第1の受信信号を受信することと;第1の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得することであって、1つ又は複数のパラメータの各々は、音響信号が伝わった距離とともに変化する第1の受信信号のパラメータである、第1の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得することと;デバイスのための位置情報を求めるために1つ又は複数のパラメータの各々のための値を処理することとを行うように構成される。
【0010】
このシステムは、画像に基づいた位置情報が実際的に取得され得ない又は確定しない状況において、身体の内側のデバイスに関する位置情報を取得するために使用される。例えば、位置情報は、第1のセンサの位置に対する身体内のデバイスの相対位置を定める。
【0011】
発明者は、対象者の撮像のために対象者に挿入される多くのデバイスは、いくつかの動作モードにおいて音響信号(音声周波数/可聴周波数を有する)を送信することが可能であること、及び、身体の内側のデバイスによって送信された音響信号は、撮像データが生成され得ない位置にデバイスが位置していた場合であっても、外部のセンサによって受信されることを認識した。特には、聴診器などの可聴信号を検知するために使用可能な標準的な(すなわち、特化されていない)機器が使用され得、これは、専用の又は適合された技術を必要とせずに、デバイスの位置情報が取得され得又は求められ得ることを意味する。音声周波数は、人間が聴こえる範囲内の周波数、すなわち、20kHz以下の周波数、例えば、包括的に20Hzから20kHzの周波数である。故に、デバイスは、20kHz以下の周波数、例えば、20Hzから20kHzの周波数を有する音響信号を出力することが可能であり、第1のセンサは、同様に、この周波数範囲の音響信号に応答するように適合される。
【0012】
音声周波数信号(20kHz未満)を使用することの更なる利点は、このような音声信号は、より高い周波数の信号(例えば、超音波信号)よりも、材料を通る通過率が向上されていることである。
【0013】
受信された音響信号のいくつものパラメータの値は、送信と受信との間で信号が伝わった距離に応じて変化する。例えば、信号が伝わった距離が増加するにつれて、音響信号の強度は減少する。従って、このようなパラメータは、デバイスのための位置情報を求めるために使用される。
【0014】
求められた位置情報は、センサに対するデバイスの位置及び/又はデバイスの以前の位置若しくは基準位置に対するデバイスの位置を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、デバイスは、超音波撮像プロセス中に、20kHz以下の周波数を有する音響信号を射出するように構成される。こうして、音響信号(周波数≦20kHzのもの)が、対象者の内側で実施される超音波撮像プロセスの副次的作用として生みだされ、これは、以前は使用されなかった信号が、デバイスの位置を追跡又は特定するために用いられることを意味する。この手法は、第2の超音波検知器(例えば、外部に位置付けられるもの)が必要とされず、代わりに、容易に入手可能で安価な可聴センサが使用され得、使用の柔軟性を増加させることも意味する。
【0016】
いくつかの超音波撮像モードにおいて、超音波撮像デバイスの撮像アレイ要素は、超音波送信パルスと同時に可聴音を射出する。例えば、カラードップラーモードにおけるドップラーパルスのパルス長が長いことに起因して、カラードップラーモードにおいて音が射出される。
【0017】
このようにして、この実施形態は、プローブ挿入プロセス中に超音波撮像デバイスの位置を追跡及び特定するために、超音波撮像中の可聴音の意図されない射出を使用する。このことは、超音波撮像プローブの位置を検知するために、標準的な機器、例えば、標準的な聴診器などの使用を促進し得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、デバイスは、経食道的心エコー法プローブを備える。使用中に、第1のセンサは、対象者の胸郭に位置付けられる。
【0019】
第1の受信信号の1つ又は複数のパラメータは、第1の受信信号の強度、第1の受信信号の振幅、第1の受信信号の伝搬時間及び/又は第1の受信信号の周波数のうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
受信信号の強度及び振幅は、送信と受信との間で伝わった距離が増加するにつれて減少する。
【0021】
受信信号の伝搬時間は、送信と受信との間で伝わった距離が増加するにつれて増加する。
【0022】
もしもデバイスがセンサに対して移動しているならば、受信信号の周波数はドップラーシフトする。もしもデバイスがセンサに向かって移動しているならば、受信信号の周波数は送信された信号の周波数に対して増加され、もしもデバイスがセンサから離間するように移動しているならば、減少される。もしもデバイスとセンサとの間で音響信号が伝わる経路のデバイスの移動の経路に対する角度がゼロでないならば、周波数がシフトされる量は、距離とともに増加する。
【0023】
いくつかの実施形態において、処理システムは、更に、デバイスの複数の位置のために、受信信号を受信することと、受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得することとを繰り返すように構成され;デバイスのための位置情報を求めるために1つ又は複数のパラメータの各々のための値を処理することは、パラメータの最大値、パラメータの最小値、及び/又は変曲点に対応するパラメータの値のうちの少なくとも1つに対応するデバイスの位置を求めるためにデバイスの複数の位置の各々に対応する値を処理することを有する。
【0024】
伝搬時間など、音響信号が伝わった距離が増加するにつれて値が増加するパラメータは、センサに最も近い位置において最小値を有する。振幅又は強度など、音響信号が伝わった距離が増加するにつれて値が減少するパラメータは、センサに最も近い位置において最大値を有する。周波数など、移動しているデバイスがセンサに向かって移動しているかセンサから離間するように移動しているかによって変化するパラメータは、センサに最も近い位置において変曲点を有する。
【0025】
従って、これらの値は、デバイスの複数の位置のうちのどれがセンサに最も近いかを特定するために使用される。センサは、デバイスの最も近い位置がデバイスの所望の位置に対応するように位置付けられる。例えば、デバイスが経食道的心エコー法(TEE)プローブである場合、所望の位置は食道中央位置であり、これは心臓に最も近く、心臓の解剖学的構造を撮像するために適切な位置である。対象者の胸部において心臓に最も近い位置にセンサを位置付けることによって、センサに最も近いTEEプローブの位置は、食道中央位置になる。
【0026】
いくつかの実施形態において、デバイスのための位置情報を求めるために1つ又は複数のパラメータの各々のための値を処理することは、更に、デバイスの基準位置に対応する1つ又は複数のパラメータの各々のための基準値を使用し;位置情報は、基準位置に対するデバイスの位置を含む。
【0027】
基準位置は、臨床的専門家によるデバイスの位置付けによって達成されたデバイスの所望の又は既知の位置である。基準位置に対するデバイスの位置を求めることは、デバイスを正確に再位置付する際にユーザを支援するために使用される。
【0028】
いくつかの実施形態において、処理システムは、更に、第1のセンサとは異なる位置において対象者の身体の外部に位置付けられた第2のセンサから、デバイスによって出力及び/又はルーティングされた同一の音響信号に応じた第2の受信信号を受信することと;第2の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を得ることであって、1つ又は複数のパラメータの各々は第1の受信信号のパラメータ(例えば、同一のタイプのパラメータである)に対応する、第2の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を得ることとを行うように構成され;デバイスのための位置情報を求めるために1つ又は複数のパラメータの各々のための値を処理することは、第1及び第2のセンサの各々に対するデバイスの位置を求めるために、第1及び第2の受信信号のための値を処理することを有する。
【0029】
もしもデバイスによって送信された音響信号を受信するために2つ以上のセンサが使用されているならば、受信信号は、これらのセンサに対するデバイスの位置を求めるために使用される。センサは、使用時に、対象者の身体の外部に位置付けられるので、それらの位置は既知であり、従って、センサに対するデバイスの位置は、対象者の身体内でのデバイスの位置を求めるために使用される。例えば、デバイスの位置は、マルチラテレーション及び/又は三角測量手法を使用して特定され得る。
【0030】
例えば、各センサに対するデバイスの位置は、各センサにおいて受信された音響信号の伝搬時間を処理することによって求められる。
【0031】
いくつかの実施形態において、処理システムは、更に、受信信号を受信することと、単一の位置からデバイスによって出力及び/又はルーティングされた複数の異なる音響信号のための受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得することとを繰り返すように構成され;デバイスのための位置情報を求めるために1つ又は複数のパラメータの各々のための値を処理することは、受信信号の各々のための値を処理することを有する。
【0032】
例えば、異なる音響信号は、異なる周波数を有する。もしもデバイスが超音波撮像デバイスであるならば、異なる撮像モードを使用して異なる音響信号が生みだされる。
【0033】
単一の位置から送信された複数の音響信号から取得された値を使用して位置情報を求めることは、求められた位置情報の信頼性を向上させる。
【0034】
デバイスによって送信された異なる音響信号は、信号を受信するために使用されるセンサのタイプに従って選ばれる。例えば、もしもセンサが聴診器であるならば、デバイスは、聴診器の膜部によって検知される高ピッチの信号と、聴診器のベル部によって検知される低ピッチの信号とを送信するように構成される。
【0035】
いくつかの実施形態において、処理システムは、更に、デバイスから、デバイスによって出力及び/又はルーティングされた1つ又は複数の音響信号に応じた情報を受信することと;受信信号がデバイスによって出力及び/又はルーティングされた1つ又は複数の音響信号のうちの1つに対応するか否かを判定することとを行うように構成される。
【0036】
このようにして、デバイスによって送信された信号に対応しない、センサによって受信された信号は無視される。このことは、求められた位置情報の疑陽性の影響を低減する。
【0037】
例えば、送信された信号に対応する情報は、送信時間を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、処理システムは、更に、求められた位置情報の指標を表示デバイスに対して出力するように構成される。
【0039】
求められた位置情報の指標は、デバイスが所望の位置にあることの指標、デバイスと所望の位置との間の距離の指標、及び/又は所望の位置に到達するためにデバイスが移動されなければならない方向の指標を含む。表示デバイスは、求められた位置情報の指標の視覚的表現を、例えば、テキスト表示、画像表示などの形態によって提供するように構成される。
【0040】
いくつかの実施形態において、デバイスは超音波撮像デバイスであり;デバイスのための位置情報を求めるために1つ又は複数のパラメータの各々のための値を処理することは、デバイスが所望の位置にあるか否かを判定することを有し;処理システムは、更に、デバイスが所望の位置にあると判定したこと応じて、デバイスによって受信された撮像データに対応する画像を表示するように表示デバイスに指示するように構成される。
【0041】
このようにして、ユーザは、表示された画像に基づいてデバイスの位置が適切な撮像平面を達成するか否かを決定し、必要があれば、デバイスの位置の更なる調整を行う。
【0042】
音声に基づいた位置情報と画像に基づいた位置情報とのこの組み合わせは、音声に基づいた位置情報及び画像に基づいた位置情報のどちらかだけのときよりも高い正確性でデバイスが位置付けられることを可能とする。
【0043】
対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めるためのシステムであって、デバイスは、20kHz以下の周波数を有する音響信号を出力及び/又はルーティングすることが可能である、システムも提案される。システムは、使用時に、対象者の身体の外部に位置付けられ、デバイスによって出力及び/又はルーティングされた音響信号を受信するように構成された少なくとも1つのセンサと;上述された処理システムとを備える。
【0044】
本発明の別の態様によると、対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めるためのコンピュータによって実現される方法であって、デバイスは、20kHz以下の周波数を有する音響信号を出力及び/又はルーティングすることが可能である、コンピュータによって実現される方法が提供される。
【0045】
コンピュータによって実現される方法は、使用時に、対象者の身体の外部に位置付けられた第1のセンサから、デバイスによって出力及び/又はルーティングされた音響信号に応じた第1の受信信号を受信するステップと;第1の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得するステップであって、1つ又は複数のパラメータの各々は、音響信号が伝わった距離とともに変化する第1の受信信号のパラメータである、第1の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得するステップと;デバイスのための位置情報を求めるために1つ又は複数のパラメータの各々のための値を処理するステップとを有する。
【0046】
処理システムを有するコンピューティングデバイス上で実行されたときに、上述された方法のステップの全てを処理システムに実施させるコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品も提案される。
【0047】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかであり、これらを参照して明瞭にされるであろう。
【0048】
次に、本発明のより良好な理解のために、及びそれがどのように実現されるかをより明確に示すために、単なる例示として添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の実施形態による、対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めるためのシステムを示す。
【
図2】本発明の態様に従った、デバイスが対象者の食道を下降するように移動されるにつれてセンサによって受信される受信信号の振幅のために取得される値を示すグラフを図示する。
【
図3】本発明の態様に従った、デバイスが対象者の食道を下降するように移動されるにつれてセンサによって受信される受信信号の周波数のために取得される値を示すグラフを図示する。
【
図4】本発明の実施形態による、対象者の身体内でデバイスを位置付けるための方法を示す。
【
図5】本発明の実施形態による、対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めるためのシステムを示す。
【
図6】本発明の実施形態による、対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めるためのコンピュータによって実現される方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明が、図面を参照して説明される。
【0051】
詳細な説明及び特定の実施例は、装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示すが、例示のみを目的とすると意図されるものであり、本発明の範囲を限定することが意図されるものではないことが理解されるべきである。本発明の装置、システム及び方法のこれらの及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面から理解されるであろう。図面は単なる概略であり、縮尺通りに描かれていないことが理解されるべきである。図面全体を通じて同一の又は類似の部分を示すために同一の参照番号が使用されることも理解されるべきである。
【0052】
本発明の概念によると、対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めるためのシステム及び方法が提案される。デバイスは、20kHz以下の周波数を有する音響信号を出力及び/又はルーティングし、音響信号は、少なくとも、対象者の身体の外部に位置付けられた第1のセンサによって受信される。処理システムは、センサから受信信号を受信し、受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得し、デバイスのための位置情報を求めるために値を処理する。
【0053】
実施形態は、臨床的処置の最中に対象者の身体内に挿入されるいくつかのデバイスは、いくつかの動作モードにおいて、可聴周波数の音を自然に射出するということ、身体の内側で射出された可聴音は外部のセンサによって検知されるということ、及び、この可聴音の特定のパラメータはデバイスの位置のマーカとして使用され得るということの理解に少なくとも部分的に基づく。
【0054】
例示的な実施形態は、例えば、超音波に基づく心臓監視システム、腹腔鏡超音波システム、及び血管内超音波システムなどの超音波システムにおいて用いられる。
【0055】
図1は、本発明の実施形態による、対象者120の身体内のデバイス110のための位置情報を求めるためのシステム100を示す。システムは、センサ130と処理システム140とを備える。処理システム140自体が、本発明の実施形態である。
【0056】
図1において図示されるデバイス110は経食道的心エコー法(TEE)プローブであるが、システム100は、身体における任意の適切なデバイスのための位置情報を求めるために使用される。適切なデバイスは、対象者の身体内に位置付けられるように設計され、超音波周波数よりも低い周波数、すなわち20kHz以下の周波数を有する音響信号を出力及び/又はルーティングすることが可能な、すなわち、「可聴信号」を出力及び/又はルーティングすることが可能な任意のデバイスである。例えば、デバイスは、腹腔鏡超音波プローブ又は血管内超音波プローブなどの介入性超音波のためのデバイスである。代替的に、デバイスは、音響信号を典型的には生成しない介入的処置のためのデバイスであり、音響信号は、追跡を目的として意図的に生成される。
【0057】
図1において、デバイス110は胃カメラ150の遠位端部にあり、対象者120の食道121内に挿入されている。
図1は、食道中央位置にあるデバイス110を図示しており、この位置は対象者の心臓122に近く、心臓の画像を取得するために適した位置である。
【0058】
カラードップラーモードなどのいくつかの撮像モードにおいて、TEEプローブ110は、可聴信号/音(すなわち、人間が聴こえる範囲内の周波数を有する)を射出する。音は、カラードップラーモードにけるドップラーパルスの長いパルス長に起因してTEEプローブにおける撮像アレイ要素によって射出される。この音の周波数は、撮像送信パルスのパルス繰返し周波数に比例する。
【0059】
従って、デバイス110は、可聴音を偶然に(しかし、例えば、その原則的/一次的な目的としてではなく)射出する撮像モードにおいて動作することによって可聴信号を射出する。デバイスがこの撮像モードにおいて動作している間に取得される撮像データは、画像を取得するために使用されてもされなくてもよい。別の実施例において、デバイスは、所望の特性(例えば、20Hzから20kHzの間の周波数)を有する音響信号をデバイスが射出するように構成されたカスタマイズモードにおいて動作する。
【0060】
他の実施例において、他のタイプのデバイス110も、動作の副次的作用として可聴信号/音を射出し、又は、それらは、例えば、可聴信号/音を生むことが可能な追加的なコンポーネントを取り付けられることによって、可聴信号/音を射出するように意図的に構成される。代替的に、音は、デバイス内で生成されず、むしろ、可聴信号/音は、別の場所(例えば、胃カメラ150の外部)で生みだされて、デバイスによって方向付け/ルーティングされる。可聴信号/音は、デバイスの一部分において生成され、デバイスの別の部分によって所望の方向に方向付けされる。
【0061】
デバイス110によって射出及び/又はルーティングされた可聴信号115は、対象者120の身体の外部に位置付けられたセンサ130によって受信される。
図1において、センサ130は対象者の胸郭において対象者の心臓122の近くに置かれる。センサ130は、20kHz以下の周波数を有する信号を受信することが可能な任意のセンサである。例えば、センサ130は、聴診器であり、又はデバイスによって射出及び/又はルーティングされた音の周波数範囲に調整されたマイクロホンを取り付けられた超音波プローブである。もしもマイクロホンを取り付けられた超音波プローブが使用されるならば、位置情報を求める際に使用される追加的なデータを取得するために、プローブはデバイス110からの超音波信号を検知するためにも使用される。
【0062】
センサ130は、音響信号115に応答して受信信号135を処理システム140に送る。処理システム140は、受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得する。受信信号の1つ又は複数のパラメータは、音響信号115が伝わった距離に応じて変化する1つ又は複数のパラメータを含む。適切なパラメータは、当業者には明らかであろうが、例えば、振幅、強度、伝搬時間、及び、移動しているデバイスからの信号である場合には、周波数、などがある。
【0063】
処理システム140は、デバイス110のための位置情報を求めるために、1つ又は複数のパラメータのための取得された値を処理する。受信信号135の1つ又は複数のパラメータのための値に基づいて位置情報を求めるための様々な方法が想定され、以下において説明される。
【0064】
実施例において、
図1において図示されるように、デバイス110は、対象者の口に挿入され、胃カメラ150の使用によって食道121を下降するように移動される。デバイスが移動されるにつれて、可聴信号115(すなわち、20kHz未満の周波数又は20Hzから20kHzの間の周波数を有する音響信号)が射出及び/又はルーティングされ、各信号はセンサ130によって受信される。換言すれば、音響信号は、食道に沿った複数の位置の各々において、デバイスによって射出及び/又はルーティングされる。デバイス110は、デバイスが食道を下降するように移動されるにつれて、音響信号を連続的に出力する。
【0065】
処理システム140は、センサ130から受信信号135を受信し、各受信信号のための1つ又は複数のパラメータのための値を取得し、故に、1つ又は複数のパラメータの各々のための、デバイス110の複数の位置に対応する複数の値を取得する。
【0066】
図2は、デバイス110が食道121を下降するように移動されるにつれて、
図1に図示されるように位置付けられたセンサ130によって受信された受信信号135の振幅のために取得された値を示すグラフ200を図示する。
【0067】
グラフ200が図示するように、センサによって受信された信号の振幅は、デバイスとセンサとの間の距離が減少するにつれて増加する。音響信号115が伝わった距離が小さいほど、信号がセンサにおいて受信される前に周囲によって吸収されるエネルギーは少なくなり、受信信号の振幅は大きくなる。
【0068】
グラフ200は、デバイス110が食道中央位置にあるときに受信信号135の振幅が最大値に到達することを図示している。外部のセンサ130の位置は、デバイス110が食道中央位置においてセンサに最も近くなるように配置される。食道の形状に起因して、デバイスが食道中央位置から離間するように下降して移動するにつれて、デバイスはセンサから離間するように移動し、受信信号の振幅を減少させ、次いで、胃中央位置にデバイスが近づくにつれてセンサに向かって再び移動し始め、受信信号の振幅を再び増加させる。
【0069】
従って、デバイス110は、デバイスによって出力及び/又はルーティングされた音響信号に応じた受信信号のための振幅値が第1の最大振幅に到達するまで食道を下降するようにデバイスを移動することによって、所望の食道中央位置に位置付けられ得る。第1の最大振幅を特定するために、デバイスは第1の最大振幅に対応する位置を越えて移動され、次いで、第1の最大振幅に対応する位置に戻るように移動される。
【0070】
図3は、デバイス110が食道121を下降するように移動されるにつれて、
図1に図示されるように位置付けられたセンサ130によって受信された受信信号135の周波数のために取得された値を示すグラフ300を図示する。
【0071】
ドップラー効果に起因して、受信信号135の周波数は、センサ130に対するデバイス110の移動に依存する。デバイスがセンサに向かって移動されるにつれて、センサにおいて受信される信号の周波数は、射出時の信号の周波数と比べて増加される。デバイスはセンサに向かって直接的に移動しているわけではないので、周波数の増加の量は、デバイスとセンサとの間の距離が減少するにつれて減少する。デバイスがセンサから離間するように移動されるにつれて、受信信号の周波数は、射出された信号の周波数と比べて減少される。
【0072】
グラフ300における変曲点350は、デバイスの移動が、デバイスに向かう移動からデバイスから離間する移動に変わったポイントに対応する。換言すれば、変曲点350は、デバイスがセンサを通り過ぎて移動した位置に対応する。センサは、この位置が食道中央位置になるように位置付けられるが、デバイスのための特定の位置を達成するセンサのための他の適切な位置も、この教示から明らかであろう。
【0073】
同様に、デバイス100が食道上側位置から食道121を下降するように移動されるにつれて受信信号135の強度が最大値に達する位置又は伝搬時間が最小値に達する位置を特定することによって、処理システム140はデバイスが食道中央位置にあるときにこのことを特定する。
【0074】
図4は、本発明の実施形態による、対象者の身体内でデバイスを位置付けるための方法400を示す。この方法は、20kHz以下の周波数を有する音響信号を出力及び/又はルーティングすることが可能な任意のデバイスを位置付けるために使用される。例えば、デバイスは
図1のデバイス110である。
【0075】
方法はステップ410によって開始し、そこでは、センサが対象者の身体の外部に位置付けられる。センサは、20kHz以下の周波数を有する音響信号(すなわち、「可聴信号」)を受信することが可能な任意のセンサである。例えば、センサは
図1のセンサ130である。センサは対象者の身体内のデバイスの所望の位置に従って位置付けられ、デバイスが所望の位置にあるときに、センサによってデバイスから受信された音響信号のパラメータが最大値、最小値、又は変曲点に対応する値を有するようにされる。例えば、センサは、デバイスが所望の位置にあるときに、デバイスの移動の経路に沿った任意の他の位置にあるときよりもデバイスがセンサの近くにあるように位置付けられる。
【0076】
ステップ420において、デバイスは、対象者の身体の内側で移動される。例えば、
図1において図示されるように、デバイスは対象者の食道を下降するように移動される。デバイスが移動されるにつれて、デバイスは音響信号を出力及び/又はルーティングする。例えば、超音波デバイスの場合、デバイスは、カラードップラーモードなどの音声パルスが射出されるモードにおいて動作することによって音響信号を出力する。
【0077】
ステップ430において、音響信号はセンサによって受信される。処理システムはセンサから受信信号を受信する。
【0078】
ステップ440において、処理システムは、受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得する。上述されたように、1つ又は複数のパラメータは、音響信号が伝わった距離とともに変化する。例えば、処理システムは、受信信号の強度、受信信号の振幅、受信信号の伝搬時間及び受信信号の周波数のうちの1つ又は複数のための値を取得する。
【0079】
ステップ450において、処理システムは、各パラメータのための値が、最大値、最小値、又は変曲点に対応する値のうちの1つに到達したか否かを判定する。処理システムがこれらのうちのどれを判定するかは、伝わった距離に伴ってパラメータがどのように変化するかに依存する。例えば、
図2を参照して上述されたように、処理システムは、受信信号の振幅の値が最大値に到達したか否かを判定する。
【0080】
外部のセンサの位置及びデバイスの移動の経路は、1つ又は複数のパラメータの各々において2つ以上の最大値/最小値/変曲点が存在するようにされる。従って、処理システムは、最大値、最小値、又は変曲点に対応する値がデバイスの所望の位置に対応するか否かを判定する。
【0081】
例えば、
図2は、対象者の心臓の近くのセンサにおいて受信された信号の振幅が、デバイスが対象者の食道を下降するように移動するにつれて、食道中央位置において第1の最大値に到達したこと、及び更に食道を下降して胃中央位置において第2の最大値に到達したことを図示する。従って、デバイスが第1の最大振幅に対応する位置にあることを処理システムが判定したときに、処理システムはデバイスが食道中央位置にあることを判定する。他の実施例において、処理システムは、第2の若しくは後の最大値、最小値、又は変曲点に到達したと判定することによって、デバイスの所望の位置を特定する。
【0082】
図4に戻ると、もしもステップ450において、処理システムが、各パラメータのための値が最大値、最小値又は変曲点に到達していないこと、又は、もしもこれが第1の又は唯一の最大値、最小値又は変曲点ではないならば所望の位置に対応する最大値、最小値又は変曲点に到達していないことを判定したならば、デバイスは、対象者の身体の内側で更に継続的に移動され、デバイスから音響信号を受信するステップと受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得するステップとが反復される。
【0083】
ステップ420から450は、処理システムが、1つ又は複数のパラメータの各々のための値が最大値、最小値又は変曲点に到達したこと、又は、もしもこれが第1の又は唯一の最大値、最小値又は変曲点ではないならば所望の位置に対応する最大値、最小値又は変曲点に到達したことを判定するまで反復を継続する。
【0084】
ステップ460において、デバイスは対象者の身体内の所望の位置に位置付けられる。もしも処理システムが、デバイスが最大値、最小値又は変曲点に対応する位置にあるときにパラメータにおける最大値、最小値又は変曲点に到達したことを判定したならば、デバイスが所望のポイントに留まるように、デバイスの移動は停止され得る。もしも方法400がデバイスを対象者内に位置付けるために以前に使用されていたならば、例えば、処理システムは、取得された値を最大値、最小値又は変曲点に対応すると以前に特定された値と比較することによって、デバイスが最大値、最小値又は変曲点に対応する位置にあるときに最大値、最小値又は変曲点を特定することができる。
【0085】
処理システムは、ただ一度だけデバイスが最大値、最小値又は変曲点を通過して移動されると最大値、最小値又は変曲点を特定する。例えば、処理システムは、値が最大値、最小値又は変曲点に対応することを、この値に対応する位置のどちらかの側の位置からの値に基づいて判定する。従って、所望の位置は、判定された最大値、最小値又は変曲点に対応する位置に戻るようにデバイスを移動させることによって達成される。
【0086】
図1に戻ると、別の実施例において、デバイス110は、最初に、臨床的専門家によって食道中央位置などの所望の位置に位置付けられる。センサ130は、デバイスが初期位置にある間にデバイスによって出力及び/又はルーティングされた音響信号を受信し、処理システム140に受信信号を送る。
【0087】
処理システム140は、受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得する。このようにして、処理システムは、所望の位置からの信号に対応する1つ又は複数の基準値を取得する。
【0088】
次いで、デバイス110は、ユーザによって移動されるが、このユーザは臨床的専門家でなくてよい。センサ130は、デバイスによって新たな位置から出力及び/又はルーティングされた音響信号を受信し、処理システム140に受信信号を送る。処理システムは、受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値を取得する。1つ又は複数のパラメータのうちの少なくとも1つは、基準値が達成されたパラメータのうちの1つに対応する。
【0089】
デバイス110の相対位置を求めるために、処理システム140は、新たな位置に対応する値を基準値と比較する。例えば、処理システムは、デバイスの位置が初期位置と同一であるか否かを判定する。別の実施例において、初期位置に対するデバイスの新たな位置が求められるように、較正プロセスが使用される。例えば電磁的追跡、デバイス上の距離マーカなどを使用して、デバイスが移動した距離のグラウンドトルース知識が取得され、処理システムは、新たな位置に対応した値、基準値及び移動した距離のグラウンドトルース値を使用してデバイスの相対位置を求める。
【0090】
処理システム140は、デバイスを初期位置に戻すためにデバイス110がどのように移動されるべきかを判定する。例えば、基準周波数に対する周波数の減少は、デバイスがセンサ130から離間するように移動していることを示す。もしもセンサ130が、デバイスの初期位置がセンサに最も近い位置であるように位置付けられるならば、処理システムは、初期位置に向かって移動するためにデバイスが現在の移動の方向とは反対の方向に移動されるべきであると判定する。
【0091】
いくつかの臨床的処置において、デバイス110を複数の所望の位置の間で移動させることが有利である。臨床的専門家は、デバイスを複数の所望の位置の各々に位置付け、複数の位置の各々からの信号に対応する受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値が取得される。次いで、非専門家であるユーザは、現在の位置に対応する受信信号のための値を所望の位置の各々からの値と比較する処理システムによって必要とされると、所望の位置の間でデバイスを操作する。
【0092】
いくつかの実施形態において、システム100は、デバイス110によって射出及び/又はルーティングされた信号に対応しない音響信号が無視されるように構成される。例えば、デバイス及びセンサ130が接続され、センサは、デバイスによって信号が出力及び/又はルーティングされた時間から予め定められた期間内だけ作動するように構成される。予め定められた時間は、例えば、音響信号の予期される最大伝搬時間に基づいて決定される。
【0093】
デバイス110は処理システム140と通信している。例えば、処理システムは、デバイスによって出力及び/又はルーティングされた音響信号に応じた情報を受信し、受信信号がデバイスによって出力及び/又はルーティングされた音響信号に対応するか否かを判定するように構成される。デバイスによって出力/ルーティングされた信号に応じた情報は、センサ130によって受信される他の信号から信号を区別するために使用される信号の任意の特性を有する。例えば、情報は、出力/ルーティングの時間を含み、処理システムは、出力/ルーティングの時間、受信の時間及び予期される伝搬時間に基づいて、受信信号が出力/ルーティングされた信号に対応するか否かを判定する。
【0094】
いくつかの実施形態において、デバイス110は、1つの位置から複数の異なる音響信号を出力及び/又はルーティングし、処理システム140は、複数の出力/ルーティングされた信号に対応する複数の受信信号のための1つ又は複数のパラメータのための値を取得する。
【0095】
複数の異なる音響信号を出力及び/又はルーティングするデバイス110を構成するための方法は、当業者には明らかであろう。例えば、もしもデバイスが超音波デバイスであるならば、デバイスは、異なる動作モード(例えば、2D、3D、カラードップラーなど)の間で切り替えることによって、又は、種々の特性(例えば、振幅、周波数など)の信号をデバイスが射出するカスタマイズモードにおいて動作することによって、異なる音響信号(例えば、異なる周波数を有する信号)を射出するように構成される。
【0096】
デバイス110によって出力及び/又はルーティングされた音響信号は、センサ130に合わせて調整される。例えば、もしもセンサが聴診器であるならば、デバイスは、交番性の高ピッチ及び低ピッチ信号を出力及び/又はルーティングするように構成される。センサの膜部は高ピッチ信号を受信し、聴診器のベル部は低ピッチ信号を受信し、結果として、均一な信号より高いSNRがもたらされる。高ピッチ信号は100~500Hzの範囲の周波数を有し、低ピッチ信号は20~100Hzの範囲の周波数を有する。
【0097】
信号が複数の位置から出力及び/又はルーティングされる実施形態において、デバイス110の単一の位置からの異なる音響信号が、求められた位置情報の信頼性を向上させるために使用される。異なる音響信号の同一のセットが、デバイス110の異なる位置から出力及び/又はルーティングされ、故に、処理システム140は、各位置に対応する1つ又は複数のパラメータの各々のための値のセットを取得する。
【0098】
例えば、処理システムは、現在の位置に対応する各パラメータのための値のセットを対応する基準値のセットと比較して、基準位置に対するデバイスの位置をより高い信頼性で求める。
【0099】
いくつかの実施形態において、システム100は表示デバイス160を更に備える。処理システム140は、求められた位置情報の指標を表示デバイスに対して出力するように構成される。表示される指標は、例えば、テキスト及び/又は画像を含む。
【0100】
表示される指標は、処理システム140によって求められた位置情報のタイプに依存し、例えば、デバイス110の現在の位置が、受信信号のパラメータの最大値、受信信号のパラメータの最小値、又は変曲点に対応する受信信号のパラメータの値に対応することの指標;受信信号のパラメータの最大値、受信信号のパラメータの最小値、又は変曲点に対応する受信信号のパラメータの値に対応する位置にデバイスを位置付けるために必要とされるデバイスの移動の方向の指標;基準位置に対するデバイスの位置;デバイスの現在の位置が基準位置に対応していることの指標;基準位置にデバイスを位置付けるために必要とされるデバイスの移動の方向の指標;及び/又は、デバイスの現在の位置とデバイスの所望の位置との間の距離の指標のうちの少なくとも1つを含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、デバイス110は超音波撮像デバイスなどの撮像デバイスであり、処理システム140は、デバイスが所望の位置にあるか否かを判定するように構成される。処理システム140は、更に、もしもデバイスが所望の位置にあることを処理システムが判定したならば、表示デバイス160上の表示をデバイス110からの撮像データに基づく画像に遷移させるように構成される。画像を表示するように遷移することは、デバイスが所望の位置にあることの指標として働く。
【0102】
デバイス110が所望の位置にあることを判定することは、例えば、デバイスが、受信信号のパラメータの最大値、受信信号のパラメータの最小値、又は変曲点に対応する受信信号のパラメータの値に対応する位置にあること、又はデバイスが基準位置にあることを判定することを有する。
【0103】
例えば、もしもデバイスからの音響信号がカラードップラーモードなどの超音波撮像モードの動作の副次的作用であるならば、デバイス110はデバイスの位置付けの間に撮像データを取得する。もしも現在の動作モードが所望の位置の解剖学的構造を視覚化するのに適しているならば、デバイスが所望の位置にあることを処理システムが検知したときに、デバイスの動作は同一のモードで継続される。代替的に、対象となる解剖学的構造を撮像するために、デバイスの動作モードはより適切なモードに変更される。例えば、経食道的心エコー法の場合、心臓の解剖学的構造を撮像するために、デバイスの動作モードはBモードに変更される。
【0104】
デバイスが所望の位置にあることを処理システム140が判定したときにデバイス110からの画像を表示することは、デバイスの位置を最終決定するために画像に基づく誘導システムが使用されることを可能とする。システムのユーザは、現在のビューが解剖学的構造の所望のビューに対応することを確かめ、もしも現在のビューが所望のビューに対応していないならば、プローブの位置を更に調節する。典型的には、デバイスが所望の位置の近傍にあるとき、デバイスからの画像は、デバイスの再位置付けに際してユーザを誘導するために使用される特定可能な解剖学的特徴を含有する。
【0105】
代替的に、表示デバイス160は、デバイスの位置付けの間中、デバイス110からの撮像データに基づいて1つ又は複数の画像を表示する。このようにして、音声に基づいた位置付けが画像に基づいた位置付け誘導と組み合わされる。
【0106】
図5は、本発明の別の実施形態による、対象者520の身体内のデバイス510のための位置情報を求めるためのシステム500を示す。システム500は、
図1において示されたシステム100と類似のものであるが、システム500は、第1のセンサ530と第2のセンサ570とを備える。
【0107】
複数のセンサ530、570の使用は、三角測量及び/又はマルチラテレーション技術を使用してデバイス510の位置を特定することを可能とする。
図5においては2つのセンサが使用されているが、求められた位置情報の正確性を向上させるために更なるセンサが使用されてもよい。
【0108】
図5において、第2のセンサ570は、第1のセンサ530に対して対象者520の反対側に位置付けられているが、センサは、デバイス510から音響信号を受信することが可能な任意の位置に置かれてよい。例えば、両方のセンサ530、570が対象者の前側に位置付けられ、対象者の正中線の各側に1つのセンサが置かれてもよく、又は両方のセンサが対象者の後側に位置付けられてもよい。
【0109】
デバイス510は、
図1におけるデバイス110と同一のものでよいが、音響信号515を出力及び/又はルーティングし、音響信号は第1のセンサ530及び第2のセンサ570の両方によって受信される。処理システム540は、
図1における処理システム140と同一のものでよいが、両方のセンサから受信信号を受信する。換言すれば、処理システムは、第1の受信信号535を第1のセンサから、第2の受信信号575を第2のセンサから受信し、第1及び第2の受信信号の両方は、デバイスから出力/ルーティングされた同一の信号に応じたものである。
【0110】
処理システム540は、第1の受信信号535の1つ又は複数のパラメータのための値、及び第2の受信信号575の1つ又は複数の対応するパラメータのための値を取得する。処理システムは、第1のセンサ530及び第2のセンサ570の各々に対するデバイス510の位置を求めるために値を処理する。
【0111】
例えば、処理システム540は、センサに対するデバイスの位置を求めるために、デバイス510と第1のセンサ530及び第2のセンサ570の各々との間での音響信号の伝搬時間を分析する。対象者520の身体に対する外部のセンサの位置は既知であるので、身体内でのデバイスの位置は、例えば三角測量及び/又はマルチラテレーション技術を使用して、センサに対するデバイスの位置から求められる。
【0112】
システム500は、更に、
図1のシステム100を参照して上述された方法の任意のものを実行するために使用される。例えば、複数のセンサの使用は、複数の受信信号からの値が比較のために使用可能であるので、受信信号の1つ又は複数の値を1つ又は複数の基準値と比較することを伴う方法の信頼性を向上させる。
【0113】
図6は、本発明の実施形態による、対象者の身体内のデバイスのための位置情報を求めるためのコンピュータによって実現される方法600を示す。方法600は、20kHz以下の周波数を有する音響信号を出力及び/又はルーティングすることが可能な任意のデバイスのための位置情報を求めるために使用される。
【0114】
方法はステップ610によって開始し、そこでは、対象者の身体の外部に位置付けられた第1のセンサから、デバイスによって出力及び/又はルーティングされた音響信号に応じた第1の受信信号が受信される。
【0115】
ステップ620において、第1の受信信号の1つ又は複数のパラメータのための値が取得され、1つ又は複数のパラメータの各々は、音響信号が伝わった距離とともに変化する第1の受信信号のパラメータである。
【0116】
ステップ630において、デバイスのための位置情報を求めるために1つ又は複数のパラメータの各々のための値が処理される。
【0117】
開示される方法はコンピュータによって実現される方法であることは理解されよう。そのため、コンピュータプログラムであって、このコンピュータプログラムが処理システム上で実行されたときに、任意の説明された方法を実現するためのコード手段を含むコンピュータプログラムの概念も提案される。
【0118】
上に論じられたように、システムは、データ処理を実施するためにプロセッサを使用する。プロセッサは、必要とされる様々な機能を実施するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアによって多くのやり方で実現され得る。プロセッサは、典型的には、必要とされる機能を実施するためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされた1つ又は複数のマイクロプロセッサを用いる。プロセッサは、いくつかの機能を実施する専用のハードウェアと、他の機能を実施する1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路との組み合わせとして実現され得る。
【0119】
本開示の様々な実施形態において用いられる回路の例としては、これらに限定されるものではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などがある。
【0120】
様々な実施態様において、プロセッサは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROMなどの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなどの1つ又は複数の記憶媒体に関連付けられる。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されたときに、必要とされる機能を実施する1つ又は複数のプログラムによってエンコードされる。様々な記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に固定され、又は、可搬式であって、記憶媒体上に記憶された1つ又は複数のプログラムがプロセッサにロードされ得る。
【0121】
特許請求された本発明を実践するにあたって、開示された実施形態に対する変形例が、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、当業者によって理解及び実行され得る。特許請求の範囲において、「備える、含む、有する」という語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形の要素は複数性を排除するものではない。
【0122】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項において記載されたいくつかのアイテムの機能を果たし得る。
【0123】
特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0124】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに、又はその一部として供給される光学的記憶媒体又は固体状態媒体などの適切な媒体上に記憶/分配されてよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線遠隔通信システムを介してなど、他の形態において分配されてもよい。
【0125】
もしも「適合される」という語が特許請求の範囲又は説明において使用されているならば、「適合される」という語は「構成される」という語と等価であると意図されることが留意される。
【0126】
請求項における任意の参照記号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【国際調査報告】