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特表2023-554639冶金容器内の材料の状態を評価するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】冶金容器内の材料の状態を評価するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 21/00 20060101AFI20231221BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20231221BHJP
   G01N 22/02 20060101ALI20231221BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20231221BHJP
   G01N 21/954 20060101ALI20231221BHJP
   G01N 29/06 20060101ALI20231221BHJP
   G01B 21/08 20060101ALI20231221BHJP
   G01B 21/30 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F27D21/00 Q
F27D1/00 V
G01N22/02 A
G01N22/00 S
G01N21/954 Z
G01N29/06
G01B21/08
G01B21/30 102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537110
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 US2021063960
(87)【国際公開番号】W WO2022133173
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,584
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/553,903
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516286453
【氏名又は名称】パネラテック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PaneraTech, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100230640
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 望
(72)【発明者】
【氏名】バイラム,ヤクプ
【テーマコード(参考)】
2F069
2G047
2G051
4K051
4K056
【Fターム(参考)】
2F069AA06
2F069AA46
2F069AA57
2F069BB32
2F069GG07
2F069GG08
2F069GG09
2F069GG63
2F069NN26
2G047AA06
2G047BA03
2G047BC18
2G051AB03
2G051AB06
2G051AB08
2G051AB15
2G051BA06
2G051BA10
2G051CA04
2G051CB05
4K051AA05
4K051AA06
4K051AB03
4K051BH01
4K056AA05
4K056AA06
4K056BB08
4K056CA02
4K056FA19
4K056FA27
(57)【要約】
炉および取鍋を含む冶金容器内の耐火材料の状態を評価するためのシステムおよび方法であって、スラグ堆積物が、そのような容器内の金属の溶融中に生じるスクラップ蓄積および化学反応の結果としてそのような材料の表面上に形成される、システムおよび方法が開示される。システムおよび方法は、容器の動作寿命を予測し延長し、メンテナンス計画を改善するために、そのような材料の厚さを含む評価中の材料の劣化速度とスラグ堆積物の尺度の両方を決定するように動作する。システムは、異なるタイプのセンサを用いてそのような材料のいくつかの領域をサンプリングし、そのような材料の表面プロファイルを特徴付け、適切な信号処理技術および人工知能アルゴリズムを使用することによって、評価中の材料全体の厚さおよびスラグ堆積物を決定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冶金容器の一部を形成する耐火材料の状態を評価するためのシステムであって、材料の内壁は、前記耐火材料とは異なる溶融材料にさらされ、前記システムは、
a.前記耐火材料の1つまたは複数の関心ゾーンを画定する特定の具体的な位置で評価中の前記耐火材料の厚さを決定するための少なくとも1つの第1のセンサをさらに備える第1のサブシステムと、
b.前記耐火材料の前記1つまたは複数の関心ゾーンを含む前記内壁の所定の領域にわたって評価中の前記耐火材料の前記内壁の表面粗さを特徴付けて、前記内壁の前記所定の領域上の前記耐火材料の厚さおよびスラグ堆積物の厚さを含む合計厚さを決定するための少なくとも1つの第2のセンサをさらに含む第2のサブシステムと、
c.データ記憶デバイスと、前記第1のサブシステムによって生成された第1のデータセットと、前記第2のサブシステムによって生成された第2のデータセットと、追加の入力パラメータとを処理して、前記耐火材料の前記内壁の前記所定の領域にわたる前記耐火材料の厚さおよび前記スラグ堆積物の厚さを別個に推定するように構成された実行可能コンピュータコードとをさらに備える、メインのコンピュータベースのプロセッサをさらに備える第3のサブシステムと
を備える、システム。
【請求項2】
前記耐火材料の前記内壁の所与の領域にわたる前記耐火材料の厚さおよび前記所与の領域にわたる前記スラグ堆積物の厚さが、評価中の前記耐火材料の厚さを、前記耐火材料の厚さおよび前記スラグ堆積物の厚さを含む前記合計厚さから差し引くことによって別個に推定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記耐火材料の前記関心ゾーンを含む、特定の関心領域における評価中の前記耐火材料の厚さが、前記耐火材料の1つまたは複数の前記関心ゾーンにおける評価中の前記耐火材料の前記決定された厚さの、平均化を含む統計分析を実行することによって計算される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記耐火材料の前記内壁の前記所定の領域にわたる前記耐火材料の厚さおよび前記スラグ堆積物の厚さが、前記特定の関心領域における評価中の前記耐火材料の前記計算された厚さを、前記内壁の前記特定の関心領域を含む、前記所定の領域上の前記耐火材料の厚さおよび前記スラグ堆積物の厚さを含む前記合計厚さから差し引くことによって別個に推定される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1のセンサが、少なくとも1つのアンテナであって、前記少なくとも1つのアンテナを通って伝搬する電磁波の複数の反射およびプローブリンギングを低減するように物理的に構成される、少なくとも1つのアンテナを備え、前記第1のサブシステムが、前記少なくとも1つのアンテナに電磁的に結合され、前記少なくとも1つのアンテナによって送信される前記電磁波を生成し、前記少なくとも1つのアンテナによって受信される前記電磁波を検出することができるトランシーバと、一次コンピュータベースのプロセッサであって、データ記憶デバイスと、前記少なくとも1つのアンテナによって受信された前記電磁波を測定して、時間ドメインデータまたは時間ドメインデータに変換される周波数ドメインデータのいずれかを生成し、前記少なくとも1つのアンテナによって受信された前記電磁波が移動した距離を決定して、前記耐火材料の厚さを決定するように構成された実行可能コンピュータコードとを備える、一次コンピュータベースのプロセッサとを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記トランシーバおよび前記一次コンピュータベースのプロセッサの群から選択された要素の少なくとも一部が、前記耐火材料に埋め込まれる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1のセンサが、矩形断面を有するピラミッド状ホーンアンテナを備え、前記ピラミッド状ホーンアンテナは、第1のフレアプレートであって、平面セクションと、前記第1のフレアプレートの前記平面セクションの対向する側縁に沿った2つのフレアセクションとを有する、第1のフレアプレートと、前記第1のフレアプレートに対向して配置された第2のフレアプレートであって、前記第2のフレアプレートは、平面セクションと、前記第2のフレアプレートの前記平面セクションの対向する側縁に沿った2つのフレアセクションとを備える、第2のフレアプレートとを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のフレアプレートおよび前記第2のフレアプレートの少なくとも一方の厚さが、可変である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のフレアプレートおよび前記第2のフレアプレートの少なくとも一方の厚さ対長さ比が、15%~85%の範囲内である、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1のフレアプレートと前記第2のフレアプレートとの間の容積測定領域の少なくとも一部が、前記第1のフレアプレートおよび前記第2のフレアプレートの少なくとも一方の前記平面セクションの前記対向する側縁に沿って前記2つのフレアセクションを越えて延びる誘電材料を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1のセンサが、前記耐火材料に埋め込まれて動作し、前記耐火材料に本質的にインピーダンス整合されるように設計され物理的に構成されたアンテナを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1のセンサが、前記耐火材料の少なくとも1つの鋳造部分に埋め込まれたアンテナを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2のセンサが、前記容器が空である間に前記耐火材料の前記内壁の前記所定の領域の複数のレーザ走査を実行するように構成された少なくとも1つのレーザスキャナを備え、前記第2のサブシステムが、表面プロファイリングコンピュータベースのプロセッサであって、データ記憶デバイスと、前記少なくとも1つのレーザスキャナによって前記内壁の前記所定の領域に送信され、次いで、前記レーザスキャナによって受信される光が移動した距離を測定して、前記内壁の前記所定の領域の前記表面粗さを特徴付けて、前記内壁の前記所定の領域上の前記耐火材料の厚さおよび前記スラグ堆積物の厚さを含む前記合計厚さを決定するように構成された実行可能コンピュータコードとを備える、表面プロファイリングコンピュータベースのプロセッサをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第1のセンサおよび前記少なくとも1つの第2のセンサの各々が、アンテナ、超音波ユニット、レーザスキャナ、LIDARデバイス、赤外線カメラ、立体視カメラ、および熱撮像デバイスの群から選択される要素を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記実行可能コンピュータコードが、少なくとも1つのカスタマイズされた機械学習アルゴリズムを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記第3のサブシステムが、前記容器の残存動作年数を推定すること、および前記容器のメンテナンス計画を向上させることの群から選択されるアクションをさらに実行するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記耐火材料の前記1つまたは複数の関心ゾーンが、前記容器の前記内壁の前記所定の領域内で外接され、前記所定の領域は、前記関心ゾーンのすべての領域の和よりも大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1のサブシステムが、少なくとも1000℃の温度に耐えることができる少なくとも1つのケーブルによって前記少なくとも1つの第1のセンサに電磁的に結合されたトランシーバをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記冶金容器の一部を形成する前記耐火材料の前記状態が、前記容器が動作しておらず、少なくとも部分的に空である間に評価される、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
冶金容器の一部を形成する耐火材料の状態を評価するための方法であって、
a.前記耐火材料の1つまたは複数の関心ゾーンを画定する特定の具体的な位置で評価中の前記耐火材料の厚さを決定するための少なくとも1つの第1のセンサを備える第1のサブシステムと、前記耐火材料の前記1つまたは複数の関心ゾーンを含む内壁の所定の領域にわたって評価中の前記耐火材料の内壁の表面粗さを特徴付けて、前記内壁の前記所定の領域上の前記耐火材料の厚さおよびスラグ堆積物の厚さを含む合計厚さを決定するための少なくとも1つの第2のセンサをさらに備える第2のサブシステムと、第3のサブシステムであって、データ記憶デバイスと、前記第1のサブシステムによって生成された第1のデータセットと、前記第2のサブシステムによって生成された第2のデータセットと、追加の入力パラメータとを処理して、前記耐火材料の前記内壁の前記所定の領域にわたる前記耐火材料の厚さおよび前記スラグ堆積物の厚さを別個に推定するように構成された実行可能コンピュータコードとをさらに備えるメインのコンピュータベースのプロセッサをさらに備える第3のサブシステムとを提供するステップと、
b.電磁波が評価中の材料の所定の領域の少なくとも一部に衝突して反射するように、前記少なくとも1つの第1のセンサを囲む領域との間で前記電磁波を送受信することができるトランシーバをさらに備える前記第1のサブシステムを使用して、評価中の前記耐火材料の厚さを決定するステップであって、評価中の前記材料の前記所定の領域は、前記耐火材料の前記内壁の複数の関心ゾーンを含み、前記複数のゾーンの各々は、前記耐火材料の前記内壁にわたる前記少なくとも1つの第1のセンサのカバレッジ領域によって画定される関連するゾーン領域を有し、前記複数のゾーン領域は、評価中の前記材料の前記所定の領域に適合する1つまたは複数の関心領域の一部である、ステップと、
c.前記第2のサブシステムを使用して、評価される前記材料の合計厚さおよび前記耐火材料の前記内壁の表面上の前記スラグ堆積物の厚さを決定するステップであって、前記少なくとも1つの第2のセンサは、評価中の前記材料の前記所定の領域にわたる耐火材料プロファイルの前記内壁の前記表面粗さを特徴付ける、ステップと、
d.前記複数のゾーンに対応する、評価中の前記材料の前記表面上の前記スラグ堆積物の厚さを、前記複数のゾーンにおける評価中の前記材料の前記決定された厚さを、前記所定の領域にわたる評価中の前記材料および評価中の前記材料の前記表面上の前記スラグ堆積物の前記決定された合計厚さから差し引くことによって計算するステップと、
e.前記複数のゾーンに対応する、評価中の前記材料の前記表面上の前記スラグ堆積物の厚さを処理するステップであって、前記処理するステップが、前記複数のゾーンに対応する、評価中の前記材料の前記表面上の前記スラグ堆積物の厚さの前記計算された値の平均化を含む少なくとも1つの統計データ分析を実行して、前記関心領域内の前記材料の前記表面上の前記スラグ堆積物の厚さの平均値を決定することを含む、ステップと、
f.評価中の前記材料の前記所定の領域にわたる評価中の前記材料の厚さを、前記関心領域内の前記材料の前記表面上の前記スラグ堆積物の厚さの前記平均値を、評価される前記材料と前記耐火材料の前記内壁の前記表面上の前記スラグ堆積物との前記決定された合計厚さから差し引くことによって計算するステップと
を含む、方法。
【請求項21】
評価中の前記材料の前記所定の領域にわたる評価中の前記材料の厚さの1つまたは複数の評価、および前記所定の領域にわたる評価中の前記材料の前記表面上の前記スラグ堆積物の厚さの1つまたは複数の評価に関連するデータセットを処理して、前記容器の動作残存寿命を推定することおよび前記容器のメンテナンス計画を改善することの群から選択されたアクションを実行するための情報を分析、予測、および提供するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記実行可能コンピュータコードが、少なくとも1つのカスタマイズされた機械学習アルゴリズムを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記カスタマイズされた機械学習アルゴリズムが、評価中の前記材料の劣化および摩耗を予測し、前記容器の動作残存寿命を推定することおよび前記容器のメンテナンス計画を向上させ、改善することの群から選択されたアクションを実行するために使用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの第1のセンサおよび前記少なくとも1つの第2のセンサの各々が、アンテナ、超音波ユニット、レーザスキャナ、LIDARデバイス、赤外線カメラ、立体視カメラ、および熱撮像デバイスの群から選択される要素を備える、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、本発明者によって2020年12月17日に米国特許商標局に出願された「SYSTEM AND METHOD FOR EVALUATING A STATUS OF A MATERIAL IN METALLURGICAL VESSELS」と題する同時係属の米国仮特許出願第63/126,584号明細書に基づき、その優先権を主張し、その明細書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、材料の状態を評価するためのシステムに関する。より詳細には、本発明は、異なるセンサからのデータを使用して耐火材料の状態を監視および決定するための検知システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電磁波を使用して、特定の材料の形成中および形成後に特性を測定するための多数の評価方法およびシステムが、様々な産業において開示されている。表面特性、スラグ堆積物、内部均一性、残留材料の厚さ、材料の浸食の速度、ならびに第1の材料の第2の材料への浸透のレベルおよび速度は、監視および評価を必要とし得る重要な属性のいくつかである。特に、評価中の材料の周囲のセンサの種類および配置は、これらの属性を測定できる程度を決定する上で重要な役割を果たす。
【0004】
冶金産業は、炉および取鍋などの容器を使用して、加工に使用される原料を溶融、処理、精製、および輸送する。それらは、コストおよび動作機能の点で製造業者にとって重要な資産である。高い動作温度での内部熱損失を最小限に抑えるために、これらの炉および取鍋は、非常に高い溶融温度および良好な絶縁特性を有する耐火材料を使用して構築され、耐火溶融チャンバを形成する。
【0005】
しかしながら、冶金容器の内部耐火壁は、動作中に劣化する。この劣化の影響は、耐火侵食、耐火腐食、応力亀裂、および耐火材料の溶融材料への拡散を含む。他方で、耐火材料が経時的に劣化するにつれて、溶融材料は、耐火材料の劣化した表面上に蓄積するか、または耐火材料に浸透し、劣化プロセスを加速させ、耐火壁を通した溶融材料の漏れの高いリスクを生じさせて、潜在的に破壊的な結果を伴う。その結果、製造業者はミスリードされ、炉壁を通した溶融材料の予期せぬ漏れ、または炉の予想される寿命の製造業者の経験に基づいて潜在的な漏れの可能性を低減するために再構築のために炉を保守的にシャットダウンする不確実性の増大を経験するリスクの増大に直面することがある。
【0006】
具体的には、炉壁などの材料の厚さを測定するためのマイクロ波センサの使用は、Woskovらによる米国特許第6,198,293号明細書およびWaltonらによる米国特許第9,255,794号明細書に説明されているように従来技術において取り組まれてきた。しかしながら、これらの努力は、特定の課題および制限に直面している。特に、高温炉の炉壁厚さを決定するためになされたこれらの試みは、特に炉の外側から比較的高い周波数帯域で送信されるマイクロ波信号を使用することによって耐火材料の内面を評価することに関与する大きな信号損失に見舞われている。同様に、比較的低い周波数帯域でも、信号は依然として損失を受け、既存のシステムが必要とする帯域幅および分解能に関して制限される。さらに、システム構成要素を評価される耐火材料の表面の近くに配置する際に、スプリアス信号反射が、関心のある反射信号を分離することを困難にし、したがって、そのような材料の内面または内部の状態の評価をさらに複雑にする。主要な課題は、温度が上昇するにつれて、炉壁の導電性が高くなることである。したがって、高温炉壁を通過する信号は大きな損失を受け、これらの信号の検出は非常に困難になる。さらに、ほとんどの場合、監視センサは、評価中の耐火材料への直接的な物理的アクセスを必要とし、近くの特定の物体、特に金属材料で作られた物体の存在に敏感である。
【0007】
Bayramらの米国特許第10,151,709号明細書、Ruegeらの米国特許第9,880,110号明細書、およびBayramらの米国特許第10,054,367号明細書に記載されているように、耐火材料の評価に関与するスプリアス信号の損失およびレベルを低減することによって、電磁波センサを使用して材料の状態を評価するためのさらなる努力がなされている。しかしながら、これらのシステムは、主に、受信信号に関連するクラッタを低減する試みとして、使用される電磁波の多重反射によって引き起こされる影響を軽減することを目的としている。さらに、これらの努力は、炉の外側から耐火材料に電磁波を送信する独立型システムに焦点を当ててきた。結果として、これらの努力は、外側シェルまたは特定の支持構造体のいずれかによって囲まれた炉または取鍋の場合には効果がなくなり、ここでは、そのようなシェルおよび構造体は、高導電性材料で作られ、それらを通る電磁波の伝播を損ない、またはこれらの努力は、外部評価システムを適切に設定することができないアクセス困難な領域での用途には効果がなくなる。
【0008】
Bayramによる国際PCT出願番号PCT/US2021/025706に記載されているように、冶金容器の耐火材料に埋め込まれた電磁波センサを統合するさらなる試みが従来技術で取り組まれてきている。しかしながら、この手法は、非常に特定の位置で新たに構築される容器、または再構築される容器に限定され、容器の耐火材料全体をコスト効率よく評価するために潜在的な制約をもたらす。さらに、この手法は、容器の特定の位置で耐火材厚さを測定するのに有効であるが、スラグ堆積物の尺度を提供しない。さらに、参照された従来技術は、この手法を、容器の耐火材料の表面プロファイルを測定するために鉄鋼産業で通常使用されるレーザまたは赤外線または立体視ベースのデバイスなどの既存のセンサとどのように統合するかを教示していない。
【0009】
特に、鋼冶金では、鋼の高速溶融および冶金反応を行って鋼の最終化学組成を調整するために、塩基性酸素炉または電気アーク炉が使用される。その後、溶鋼は、脱酸素剤、スラグ形成剤、脱硫剤、および合金化剤の添加を含む、さらなる精製のための取鍋に輸送される。これらの添加剤は、取鍋が動作する高温と共に、取鍋の内壁および底部の深刻な応力、摩耗、および劣化を加速し、これらに寄与し、内壁および底部の両方は取鍋動作中に溶融材料と接触する。特に、鋼の製造には、50トン以上の容量を有する電気アーク炉および取鍋が多用されている。これらの取鍋は、残留物の除去および検査のためにメンテナンスを受ける必要があり、場合によっては毎週修理する必要がある。同様に、鋼の製造は、連続溶融操作を受ける溶鉱炉も伴い得る。これらの炉は、溶融材料と相互作用する耐火材を内部に有する鋼ライニングを外側に有する。耐火材が劣化するにつれて、炉は、予定外の生産中断がないことを確実にするためにメンテナンスされる必要がある。
【0010】
さらに、高温での溶融鋼などの溶融材料の流れは、耐火材料の内面を浸食および劣化させ、耐火壁を通した溶融鋼の漏れまたは炉の外側シェルへの深刻な損傷のリスクをもたらす。さらに、溶鋼の漏れは、炉の周囲の機器に重大な損傷を引き起こす可能性があり、最も重要なことには、作業者の健康および生命を危険にさらす可能性がある。これらの理由から、ほとんどの場合、炉のオーバーホールは、必要とされるよりも実質的に早い時期に行われる。これは、製造業者の初期投資および炉の運転寿命にわたる生産能力の低下に関して、製造業者にとって大きなコストをもたらす。
【0011】
したがって、炉のオペレータにとって、炉壁のメンテナンスを効率的に計画し、耐火材料の劣化を監視することが重要であり、これはまた、炉の運転寿命を延ばし、実際に必要な場合に炉の必要な停止を計画するために、スラグ堆積物の決定を必要とし得る。取鍋または炉の寿命および動作能力は、動作寿命、平均動作温度、加熱および冷却温度速度、動作温度範囲、動作サイクル数、耐火材料の種類および品質、内側耐火壁上のスラグ堆積物、ならびに炉内で使用される溶融材料および添加剤の量および種類を含む多くの要因によって影響を受ける。これらの要因のそれぞれは、炉の予想寿命、および対応するメンテナンス作業をいつ実行するかの正確な推定を作成することを困難にする不確実性の影響を受けやすい。
【0012】
一方、冶金容器内での金属の溶融におけるスラグの形成は、不可避である。スラグの組成は、使用される溶融プロセスの種類および溶融される鉄または鋼の種類に依存する。鋳造プロセスからの砂で覆われたゲートおよびライザまたは錆および汚れで覆われたスクラップからなることが多い溶融される金属片の清浄度は、溶融操作中に形成されるスラグの種類に大きく影響する。不純物を除去するため、またはシステムの化学的性質を変化させるために、液体金属を材料で処理すると、追加の酸化物または非金属化合物が形成される。これらの酸化物および非金属は鉄に可溶性ではないので、これらは、エマルジョンとして液体金属中に浮遊する。溶融鉄が連続的にかき混ぜられているまたは撹拌される場合、スラグ粒子のこのエマルジョンは、安定したままである。特定の時点で、浮遊効果は十分に大きくなり、非金属が溶融金属の表面に上昇し、スラグとして凝集するようになる。
【0013】
いくつかの例では、酸化物は、一般的な金属温度よりも低い融点を有し得、液体スラグが形成される。酸化物が金属温度よりも高い融点を有する他の場合には、乾燥した不溶性の固体スラグが、形成される。さらに、スラグが炉壁の耐火ライニングまたはスラグの融点よりも低温の保持容器の他の領域と接触すると、スラグは、その凝固点未満に冷却され、耐火ライニングに付着してスラグ堆積物を形成する。高融点スラグは、堆積を促進する傾向が特にある。
【0014】
取鍋の壁は断熱がほとんどなくはるかに薄いため、炉耐火ライニングと比較して取鍋においてより多くの熱損失が発生し、スラグ堆積物は避けられない。特に、電気炉溶融で形成されるスラグは、シリカ(付着した砂および鋳造戻りからの汚れ)、スクラップからの酸化物、溶融および耐火ライニングとの反応からの他の酸化副生成物の間の複雑な反応から生じる。したがって、得られたスラグは、鉄、マンガン、マグネシウムおよびケイ素の酸化物、ケイ酸塩および硫化物の錯体液相と、アルミナ、酸化カルシウムおよび硫化物と、希土類酸化物および硫化物とを含み得る多くの他の錯体化合物からなる。
【0015】
スラグおよび不溶性の堆積形成は、延性鉄の製造において問題を引き起こす。形成が妨げられず、または形成時に除去されない場合、堆積物は、金属ハンドリングシステムの全体的な効率を低下させる。取鍋を絶えず清潔に保つ作業には、かなりの量の労力とメンテナンス材料が必要である。何回かの加熱の後、スラグ堆積物が増加するにつれて、取鍋の内部耐火壁の表面上に1インチ以上の堆積物まで達する可能性があり、それによってその能力を大幅に減少させる。また、取鍋内でより多くのバッチが処理されるにつれて、堆積したスラグ堆積物が浸食されることも多く、その結果、スラグの一部が溶鋼中に再侵入し、したがってその品質に悪影響を及ぼす。取鍋から溶融金属を導くために使用されるドレンまたは注入チャネルにおいても同様の問題が生じている。
【0016】
上述の結果として、30から100回の加熱後、またはスラグ堆積物が過剰になり耐火性摩耗が加速する場合はより早くライニングを交換する必要がある。炉が年に複数回メンテナンスのためにシャットダウンすることは珍しいことではない。さらに、各シャットダウンは数日まで続く可能性があり、炉の動作寿命に悪影響を及ぼす。一方、典型的な取鍋は、スラグ堆積物の領域内に6インチの耐火層を含み得る。製造業者は、耐火材の厚さが約1~2インチに減少するまで取鍋を動作可能に使用しようとしている。しかしながら、現在の技術は、耐火材料およびスラグの合計厚さしか示すことができていない。これは、耐火材料が薄くなるにつれて、耐火材厚さの推定誤差が経時的に増加することを意味する。例えば、スラグ厚さが1インチの場合、推定測定値は約2インチであり、これは耐火材料とスラグとを合わせた厚さに対応するため、耐火材厚さが1インチの厚さに近づくにつれて、推定測定誤差は50%に近づく。
【0017】
特に、耐火材摩耗の予測は、資産稼働時間が重要であり、資産停止時間を最小限に維持しなければならない産業にとって重要である。正確な耐火材摩耗予測は、製造業者が修理を最小限に抑え、資産の稼働時間を維持することを可能にする。しかしながら、炉の内壁の表面をプロファイリングするために使用される既存の技術および方法は、スラグ厚さと耐火材厚さとを正確に区別することができないため、耐火材劣化およびスラグ堆積物の問題が一緒に重なる。それらは、スラグ堆積物と耐火材の両方の合計厚さの尺度を提供することしかできない。結果として、この手段は、炉の内側耐火壁の実際の劣化が実際よりも小さいことを示し得る。
【0018】
取鍋および電気アーク炉を含む冶金容器内の耐火材厚さおよびスラグ堆積物を測定するための現在の方法および技術は、主に、残留耐火材厚さおよびスラグ堆積物厚さの合計のみを測定するために使用することができる、LIDAR走査、レーザ走査、赤外線、立体視、または音響技術に基づいている。しかしながら、これらの技術は、スラグ堆積物の厚さとは別個に耐火材料の厚さの尺度を提供しない。また、スラグ堆積物は、センサが耐火材料の表面粗さを正確に測定するのを妨げることがある。レーダまたは音響技術に基づく他の手法は、容器の非常に特定の位置における耐火材厚さの推定値を提供し得、これは、広い領域または炉の内壁全体にわたる耐火材厚さの推定には実用的ではなく、スラグ堆積物の測定値を提供することができない。
【0019】
炉の内壁と溶融材料は直接接触しており、それによって耐火材料の厚さおよびスラグ堆積物を減少させるため、現在のところ、炉の耐火材料の内壁に関連するスラグ堆積物厚さおよび耐火厚さを決定論的かつ別個に推定することができる確立された方法およびシステムはない。そのような方法およびシステムの欠如は、膨大な数の炉および取鍋の動作寿命とメンテナンス計画の両方を正確に推定する能力を損なう。したがって、少なくとも1つの第1のセンサと少なくとも1つの第2のセンサとの統合、および容器の耐火内壁の部分的または全体的な領域にわたってスラグ堆積物厚さおよび耐火材厚さを別個に推定することができるデータ処理構成要素に基づく、システムおよび方法の機会が依然として残っている。
【発明の概要】
【0020】
炉および取鍋を含む冶金容器内の耐火材料の状態を評価するためのシステムおよび方法であって、スラグ堆積物が、そのような容器内の金属の溶融中に生じるスクラップ蓄積および化学反応の結果としてそのような材料の表面に形成される、システムおよび方法が本明細書に開示される。例示的な実施形態の1つまたは複数の態様は、従来技術の欠点を回避しながら利点を提供する。システムおよび方法は、容器の動作寿命を予測し延長し、メンテナンス計画を改善するために、そのような材料の厚さを含む評価中の材料の劣化速度とスラグ堆積物の尺度の両方を決定するように動作する。システムは、異なるタイプのセンサを用いてそのような材料のいくつかの領域をサンプリングし、そのような材料の表面プロファイルを特徴付け、適切な信号処理技術および人工知能アルゴリズムを使用することによって、評価中の材料全体の厚さおよびスラグ堆積物を決定することができる。
【0021】
炉または取鍋などの冶金容器の一部を形成する材料の状態を評価するためのシステムは、複数のサブシステムを備える。評価中の材料の厚さを決定するためにデータを収集するためのサブシステム、評価中の材料の表面粗さを特徴付けるための表面プロファイルサブシステム、ならびに上記で示した2つのサブシステムによって収集されたデータおよび追加の入力パラメータを管理して、そのような材料の動作寿命を予測し、最終的に向上させるための材料評価の結果を生成するためのデータ処理サブシステム。材料評価の結果は、評価中の材料の厚さ、表面プロファイル、および経時的な表面の劣化速度、ならびにそのような材料の表面上のスラグ堆積物の厚さおよび容器の残りの動作寿命の推定を含む。
【0022】
評価中の材料の厚さを決定するためのサブシステムは、レーダまたは超音波ユニットなどの第1のセンサと、少なくとも1つのケーブルとをさらに備え、そのいずれも1000℃を超える温度に耐えることができ、容器内の特定の位置でデータを収集および通信するために使用される。表面プロファイルサブシステムは、好ましくは、容器の耐火材内壁の表面粗さを測定し、評価中の材料の厚さが決定された特定の位置を含む所定の領域にわたって耐火材およびスラグ堆積物の合計厚さを推定することができる、レーザ、赤外線、または立体視ユニットなどの第2のセンサをさらに備える非接触サブシステムである。さらに、本発明の文脈内では、容器は炉または取鍋を含むことができ、炉または取鍋という用語は、本発明が一方または両方に適用されるので区別なく使用される。
【0023】
レーダアンテナを使用する場合、第1のセンサは、評価される材料の関心領域を有し、容器の内壁にわたってそのようなアンテナのカバレッジ領域によって画定されたゾーン内に電磁波のセットを送信することによって動作する。電磁波がそのような領域に衝突した後、それらは散乱され、遠隔不連続部によって少なくとも部分的に反射され、少なくとも部分的に送信される。空隙、欠陥、評価される材料の内部の異なる材料の存在、および空気を含む2つの異なる材料間の任意の界面が、遠隔的な不連続性を表し得る。
【0024】
散乱電磁波は、第1のセンサによって受信され、次いで、測定され、記録され、一次コンピュータベースのプロセッサによって処理され、第1のセンサと評価される材料の表面との間のインターフェースなどの不連続部の既知の位置から送信または散乱された電磁波を基準として使用して時間調整される。一次コンピュータベースのプロセッサは、データ記憶デバイスと、時間ドメインデータまたは時間ドメインデータに変換される周波数ドメインデータを生成するために少なくとも1つのアンテナによって受信された電磁波を測定するように構成された実行可能コンピュータコードとを備える。次いで、これらのデータを使用して、当業者に周知のように、そのような少なくとも1つのアンテナによって受信された電磁波が移動した距離を決定して、前記耐火材料の厚さを決定することができる。
【0025】
レーザを使用する場合、第2のセンサは、第1のセンサが電磁波のセットを送信した関心領域を含む評価される材料の領域内に、光の形態の電磁波を送信することによって動作する。光がそのような領域に衝突した後、光は少なくとも部分的に反射され、第2のセンサにおいて受信され、次いで測定され、記録され、表面プロファイリングコンピュータベースのプロセッサによって処理され、送信された光を基準として使用して時間調整される。
【0026】
データ処理サブシステムは、メインのコンピュータベースのプロセッサと、第1のセンサおよび第2のセンサによって収集されたデータを管理するように構成された機械学習アルゴリズムを備え得る実行可能コンピュータコードとを備える。評価中の材料の関心領域にわたる1つまたは複数の評価は、そのような材料の厚さおよび表面プロファイル、スラグ堆積物の厚さ、ならびに材料内部の特定の欠陥または外来要素の位置を提供することができる。さらに、時間ドメインベースおよび/または周波数ドメインベースの信号処理技術または両方の組み合わせを使用して、評価された関心領域の状態を判定および視覚化することができる。
【0027】
本発明では、第1のセンサは、アンテナ放射縁部と耐火材料との間に隙間を有することなくレーダアンテナが耐火材料に嵌合するように、好ましくは耐火材料内に、より好ましくは1つまたは複数の鋳造された耐火レンガを使用して埋め込まれる。しかしながら、これは、容器の初期建設中または大規模な修理中にのみ実施することが可能である。あるいは、本発明の別の構成は、容器のチャンバの内側に配置されたアンテナを備える。その結果、既存の容器の耐火材料も評価することができる。さらに、異なる取り付け機構をアンテナに組み込んで、容器のチャンバ内にアンテナを物理的に配置してもよい。同様に、第2のセンサは、好ましくは、容器のチャンバ内の1つまたは複数の位置に配置される。
【0028】
複数のセンサからの測定値をデータ処理サブシステムと組み合わせて、冶金容器の耐火内壁の任意の領域または全体にわたるスラグ堆積物厚さおよび耐火材厚さを別々に推定することによって、状態を評価し、異なる材料の浸食プロファイルおよび厚さを決定する方法は、冶金容器の耐火材内壁の特定の位置において厚さを決定するステップを含む。本方法は、耐火材料の厚さが決定された位置を含む領域にわたって、耐火材料とそのような材料の表面上のスラグ堆積物との合計厚さを推定するステップをさらに含む。本方法はまた、両方の厚さを計算することと、耐火材料の厚さが決定された位置に対応して、評価中の材料の表面上のスラグ堆積物の平均化を含む、統計的分析を実行することとを含む。本方法は、耐火材料の厚さが決定された位置以外の、評価中の材料の特定の所定の領域に対応して、評価中の耐火材料の推定厚さおよびスラグ堆積物の厚さを計算することをさらに含む。本方法は、動作寿命を延ばし、評価中の材料およびその構築にそのような材料を利用する資産のメンテナンス計画を改善するのに有用な情報を分析、予測、および提供するために収集、推定、または計算されたデータを処理することをさらに含む。
【0029】
レーダアンテナおよびレーザ走査システムなどの複数のセンサを、カスタマイズされた機械学習アルゴリズムなどのカスタマイズされたコンピュータ処理ツールと統合することによって、レーダアンテナを耐火材料に埋め込むことができ、またはアンテナを冶金容器のチャンバの内側に配置することができ、システムおよび方法は、欠陥を識別し、そのような材料の内面の浸食プロファイルおよびスラグ堆積物を測定することができる。したがって、容器の耐火材料の実際の厚さおよびスラグ堆積物を決定することができる。結果として、容器の残りの動作寿命の推定がより正確になり、実際には容器の寿命を延ばすことに相当し得る。これは、冶金容器の修理、解体、または交換の費用のかかるプロセスをより良好に管理するためのより効果的で正確なスケジューリングにつながり、それと共に、動作の中断または溶融材料の漏れまたは容器金属外側シェルに対する深刻な損傷のリスクレベルを大幅に低下させる。したがって、システムおよび方法は、1つまたは複数の状態のより効果的な評価、監視、診断、または追跡を可能にし、これにより、冶金容器などの高価で潜在的に危険な資産の動作寿命を延ばし、メンテナンススケジューリングを改善することができる。
【0030】
本発明の多数の利点は、添付の図面を参照することによって当業者によってよりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】材料の状態を評価し、材料の厚さおよびそのような材料の表面上のスラグ堆積物の厚さを別個に決定するためのシステムの例示的な実施形態の概略図である。
図2】劣化した表面およびスラグ堆積物を有する冶金容器の内部耐火壁の一部の概略側面図である。
図3】材料の状態を評価し、材料の厚さおよびそのような材料の表面上のスラグ堆積物の厚さを別個に決定し、冶金容器の動作寿命を推定し、メンテンナンス計画を改善する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の説明は、本発明の特定の実施形態の説明であり、本発明の実装形態を実施することを可能にするために記載されており、好ましい実施形態を限定することを意図するものではなく、その特定の例として役立つものである。当業者は、本発明の同じ目的を実施するための他の方法およびシステムを修正または設計するための基礎として開示された概念および特定の実施形態を容易に使用することができることを理解するはずである。当業者はまた、そのような同等のアセンブリがその最も広い形態で本発明の趣旨および範囲から逸脱しないことを理解すべきである。
【0033】
材料の厚さおよびそのような材料の表面上のスラグ堆積物の厚さを別個に推定するためにそのような材料の状態を評価するためのシステムは、評価中の材料の厚さを決定するためのデータを収集するためのサブシステムと、評価中の材料の表面粗さを特徴付けるための表面プロファイルサブシステムと、他のサブシステムからのデータを管理し、そのような材料の動作寿命を向上させるために材料評価の結果を生成するためのデータ処理サブシステムとを備える、複数のサブシステムを統合する。
【0034】
本発明の実施形態の特定の態様によれば、図1は、冶金容器12の壁の一部を形成し、容器12のチャンバ15を少なくとも部分的に取り囲む耐火材料14の状態を評価するためのシステム10の例示的な実施形態の概略図を示す。容器12は、この例では鋼製外側シェルを有する。言い換えれば、耐火材料14は、鋼などの材料の溶融が起こるチャンバ15と、容器12の外側底部および外側側壁との間の1つまたは複数の層内に配置される。典型的には、耐火材料14の様々な層は、容器12の底部から上部に並んで配置されたレンガを使用して形成される。したがって、耐火材料14は、容器12のチャンバ15を取り囲む1つまたは複数の壁を形成する。耐火材料14は、スラグ堆積物18がない場合、容器12のチャンバ15内に含まれる鋼などの溶融材料13に連続している(すなわち、これに接触する)内面16を有する。システム10は、耐火材料14の厚さと、耐火材料14の内面16上のスラグ堆積物18の厚さとを別個に推定するように意図されている。
【0035】
この特定の構成では、評価中の材料の厚さを決定するためのデータを収集するためのサブシステムは、1000℃を超える温度に耐えることができ、トランシーバからの電磁波および信号、例えば無線周波数または音響信号を評価中の材料との間で送受信するように特に配置された少なくとも1つの第1のセンサを備える。好ましくは、システム10は、第1のセンサアンテナ17a、17b、17cであって、前記第1のセンサアンテナ17a、17b、17cを通って伝搬する電磁波の複数の反射およびプローブリンギングを低減するように物理的に構成される、第1のセンサアンテナ17a、17b、17cを備える。さらに、表面プロファイリングサブシステム20は、好ましくは、耐火材料14の内面16上に蓄積された可能性があるスラグ堆積物18を含む表面22の粗さを測定することを可能にする、非接触サブシステムである。
【0036】
図1を参照すると、アンテナ17a、17b、および17cは、耐火材料14に埋め込まれている。好ましくは、アンテナ17a、17b、17cは、耐火材料14の層のうちの1つに埋め込まれる。より好ましくは、アンテナ17a、17b、17cは、アンテナ17a、17b、および17cからの送信信号が耐火材料14を伝播して内面16の大部分に到達するように配置される。耐火材料14の厚さを決定するためのサブシステムは、電磁波を送受信することができるトランシーバ26と、トランシーバ26をアンテナ17a、17b、および17cにそれぞれ結合するためのケーブル19a、19b、および19cのセットとをさらに備える。
【0037】
耐火材料14の厚さを決定するためのサブシステムは、データ記憶デバイスと、トランシーバ26と統合された一次コンピュータベースのプロセッサとをさらに備えることができる。さらに、トランシーバ26は、少なくとも部分的に、アンテナ17a、17b、および17cのうちの1つまたは複数と一体化されてもよい。トランシーバ26、記憶デバイス、および一次コンピュータベースのプロセッサの構成要素は、これらの構成要素がこの実施形態の説明にとって重要ではないので、示されていないことに留意されたい。
【0038】
耐火材料14の厚さ、より具体的には耐火材料14の内面16の状態の決定中、内面16に到達した、アンテナ17a、17b、17cを介してトランシーバ26によって送信された電磁波は、部分的に反射される。この反射は、耐火材料14と、容器12のチャンバ15内の材料またはスラグ堆積物18のいずれかとの間のインターフェースにおいて伝播電磁波が直面する媒体の不連続性に起因する。好ましくは、アンテナ17a、17b、17cは、アンテナ17a、17b、17cからの送信信号が内面16に対して実質的に垂直に衝突するように配置される。
【0039】
典型的には、チャンバ15は、鋼または空気を含む(チャンバ15が空の場合)。内面16で反射された電磁波は、アンテナ17a、17b、17cによって受信され、さらなる処置、記憶、および処理のためにトランシーバ26に送信される。トランシーバ26は、好ましくは0.5GHz~70GHz範囲内の1つまたは複数の周波数帯域にわたって受信信号の振幅および位相を測定する。さらに、周波数および/または時間ドメインにおける1つまたは複数の信号処理方法を使用してこれらの信号を処理すると、内面16の輪郭の形状が、そのような輪郭の異なる点に沿った耐火材料14の対応する厚さと共に決定され得る。
【0040】
あるいは、アンテナ17a、17b、17cは、耐火材料14に埋め込まれる代わりに、容器12の耐火材料14に取り付けられてもよい。いずれの場合でも、アンテナ17a、17b、および17cの各々は、好ましくは、矩形セクションを有するピラミッド状ホーンアンテナを備え、ピラミッド状ホーンアンテナは、さらに、第1のフレア(flared)プレートであって、平面セクションと、第1のフレアプレートのそのような平面セクションの対向する側縁に沿った2つのフレアセクションとを有する、第1のフレアプレートと、第1のフレアプレートに対向して配置された第2のフレアプレートであって、そのような第2のフレアプレートは、平面セクションと、そのような第2のフレアプレートのそのような平面セクションの対向する側縁に沿った2つのフレアセクションとを備える、第2のフレアプレートとをさらに備える。より好ましくは、アンテナ17a、17b、および17cの各々は、第1のフレアプレートと第2のフレアプレートとの間の容積領域の少なくとも一部内に配置された誘電材料をさらに含み、誘電材料は、第1のフレアプレートおよび第2のフレアプレートの対向する側縁に沿って2つのフレアセクションを越えて延びる。最も好ましくは、誘電材料は、そのような誘電材料と耐火材料14との間の媒体不連続性を滑らかにするために、誘導体誘電率耐火材料14と一致する誘電体誘電率を有する。あるいは、耐火材料そのものを誘電体材料として用いてもよい。
【0041】
アンテナ17a、17b、および17cの各々として、ホーンアンテナ以外のおよび/または滑らかな転動縁を有する、または有さない異なるタイプのアンテナが使用されてもよいことが当業者には理解されよう。より具体的には、4つのフレアプレートを有するホーンアンテナ、円錐形などの非ピラミッド型ホーンアンテナ、または楕円形などの非矩形断面を有するホーンアンテナが、使用されてもよい。同様に、システム10は、フィルタ、インピーダンス整合ネットワーク、増幅器、非コヒーレント検出器、ならびに送信されおよび反射された電磁波の測定を実施し、従来技術で知られているようにトランシーバ26および一次コンピュータベースのプロセッサの機能を実行するために異なる方法で使用される他の試験機器などの無線周波数構成要素の様々な構成をさらに備え得ることが当業者には理解されよう。さらに、ケーブル19a、19b、および19cが、アンテナ17a、17b、17cをトランシーバ26に結合するための無線システムと置き換え可能であることが当業者には理解されよう。
【0042】
システム10は、耐火材料14の内面16上のスラグ堆積物18の蓄積から生じるスラグ堆積物表面22のトポグラフィをマッピングするための表面プロファイリングサブシステム20をさらに備える。この場合、スラグ堆積物表面22は、容器12のチャンバ15内に含まれる溶融材料13に連続している(すなわち、接触している)。好ましい実施形態では、表面プロファイリングサブシステム20は、レーザユニット(図示せず)を備える第2のセンサと、表面プロファイリングコンピュータベースのプロセッサとに基づく。さらに、表面プロファイリングコンピュータベースのプロセッサは、データ記憶デバイスと、少なくとも1つのレーザスキャナによって内面16の所定の領域に送信され、次いで少なくとも1つのレーザスキャナによって受信される光が移動した距離を測定して、内面16のそのような所定の領域の表面粗さを特徴付けるように構成された実行可能コンピュータコードとを備える。得られた内面16のプロファイルは、内面16のそのような所定の領域上の耐火材料の厚さおよびスラグ堆積物の厚さの合計を決定する。
【0043】
表面プロファイリングサブシステム20は、ビーム28のセットがスラグ堆積物表面22の関心領域を走査するように、1つまたは複数のレーザビーム28のセットを送信してスラグ堆積物表面22を照射する。スラグ堆積物表面22に衝突した後のビーム28のセットの反射は、従来技術で周知のように、スラグ堆積物表面22の粗さのレベルを測定するために表面プロファイリングサブシステム20によって受信される。さらに、立体視カメラ、音響センサ、赤外線カメラ、または熱画像デバイスの少なくとも1つまたは組み合わせを備える第2のセンサに基づいて、スラグ堆積物表面22の粗さを推定するための表面プロファイリングサブシステム20を実装するための他の代替形態が当業者には理解されよう。
【0044】
システム10は、システム10の動作中に生成されたデータと、ユーザによって提供された追加の入力パラメータまたは履歴データの両方を管理して、耐火材料14の摩耗を予測し、最終的に容器12の動作寿命およびメンテナンスを向上させるために耐火材料14の評価の結果を生成するデータ処理サブシステム24をさらに備える。上述の追加の入力パラメータは、容器の寿命および動作能力に影響を及ぼす可能性があり、動作寿命、平均動作温度、加熱および冷却温度速度、動作温度範囲、動作サイクル数、耐火材料の種類および品質、内側耐火壁上のスラグ堆積物、ならびに製造されるべき鋼および使用されるか、または使用されるべき添加剤の量およびグレード、耐火材料の劣化速度、動作周波数帯域に関連する材料の現在の厚さ、層数、種類および寸法、使用されるアンテナの種類、容器の周りのアンテナの位置に利用可能な面積、ならびに実際のおよび同様の容器の評価の履歴を含むことができる。
【0045】
さらに、データ処理サブシステム24は、耐火材料厚さ測定サブシステムおよび表面プロファイリングサブシステム20によるシステム10の動作中に生成されたデータを管理するために、いずれもトランシーバ26に統合され得るデータ記憶デバイスおよびメインのコンピュータベースのプロセッサなどのいくつかのハードウェア構成要素を備える。さらに、データ処理サブシステム24は、耐火材料厚さ測定サブシステムおよび表面プロファイリングサブシステム20の動作を制御することができる。データ処理サブシステム24のハードウェア構成要素は、これらの構成要素が本実施形態の説明にとって重要ではなく、これらの構成要素の機能および構成は従来技術において周知であるために示されていないことが留意される。さらに、図1を参照すると、データ処理サブシステム24と耐火材料厚さ測定サブシステムおよび表面プロファイリングサブシステム20の各々との間のデータ通信および制御に使用される第1のセットのケーブル19a、19b、および19cならびに第2のセットのケーブル11aおよび11bが、無線システムと置き換えられてもよいことが当業者には理解されよう。
【0046】
好ましい実施形態では、データ処理サブシステム24は、評価中の材料の劣化および摩耗を予測し、ならびに動作残存寿命を推定し、容器のメンテナンス計画を最適化するために開発された1つまたは複数のカスタマイズされた人工知能アルゴリズムを含むソフトウェアをさらに備える。特に、特定の位置で第1のセンサを使用した、評価中の材料の厚さの推定値は、耐火材の化学的および物理的特性、スラグ化学的性質、溶融材料、保持時間、撹拌時間、および溶融温度を含む他の動作およびプロセスパラメータと共にこれらのアルゴリズムを訓練するために使用することができるデータセットを提供する。カスタマイズされたアルゴリズムが、評価中の材料の所定の関心領域の異なるゾーンのそれぞれについて訓練されると、それらの性能は、容器の寿命の異なる段階における耐火材厚さの追加の推定によって改善され得る。あるいは、経時的に収集された評価中の材料の厚さ推定データのすべてが、特定の人工知能アルゴリズムの1つまたは複数の訓練またはモデル構築に使用されてもよい。
【0047】
重要なことに、耐火材料14の状態は、動作上の摩耗、経年、および欠陥、亀裂、腐食、および浸食の存在、ならびに金属の溶融中に発生するスクラップ蓄積および化学反応の結果としての耐火材料14の表面上のスラグ堆積物18の尺度を含む、様々な要因によるそのような材料の劣化のレベルまたは速度を含むことができる。したがって、データ処理サブシステム24は、システム10が耐火材料14の厚さおよびスラグ堆積物18の厚さを別個に推定することを可能にしながら、耐火材料14および容器12の両方の動作寿命を延ばし、メンテナンス計画を改善するための情報を提供する。
【0048】
さらに、システム10は、ユーザが収集されたデータを処理するために1つまたは複数のコンピュータベースのプロセッサを制御することを可能にするように構成されたソフトウェアサブシステムを備える。このデータ処理は、評価中の材料の状態を評価し、容器の全体的な健全性の正確な推定を生成するために、これらのデータの測定、記憶、監視、記録、処理、マッピング、視覚化、転送、分析、追跡、および報告を含む。さらに、ソフトウェアサブシステムは、ローカルだけでなく、コンピュータネットワークまたはクラウドコンピューティング環境を介してリモートでもシステム動作を監視および制御することができる。データの視覚化は、材料の状態の評価の結果の2次元および3次元画像を表示することを含む。
【0049】
データ処理および画像処理アルゴリズムは、1つの技術または2つ以上の技術の組み合わせを使用して実施されてもよい。これらの技術は、フーリエ変換、スペクトル分析、周波数ドメインおよび時間ドメイン応答分析、デジタルフィルタリング、畳み込みおよび相関、デシメーションおよび補間、適応信号処理、波形分析、およびデータ処理のためのデータウィンドウおよび位相アンラップ、ならびに時間ドメイン、逆投影、遅延および和、合成開口レーダ撮像、逆伝播、逆散乱、および、画像処理のための差分撮像を適用する、または適用しない超解像を含むことができる。信号処理技術は、場合によっては動作周波数帯域、使用されるアンテナの種類、および容器の周りのアンテナの位置に利用可能な領域に関連する材料の厚さ、層数、種類、および寸法など、評価中の材料の特性に従って選択され得る。
【0050】
図2は、容器12の耐火壁の一部のセクション30の概略側面図を示す。特に、図2は、耐火材料14と、鋼などの溶融材料13が内部に含まれるチャンバ15とを備える、容器12の一部を示す、図1の一部を拡大した図である。耐火壁14は、溶融材料13に隣接する結果として耐火壁14の摩耗を描く内面16を有する。容器12の動作中、スラグ堆積物18は、耐火材料14の内面16の少なくとも特定の領域に蓄積する。その結果、スラグ堆積物表面22が画定され、これは一般的には、特に耐火材料14の異なる部分で不規則である。したがって、既存の表面プロファイリングシステムは、スラグ堆積物18の厚さおよび耐火材料14の厚さの合計を推定することしかできず、これは耐火材料14の厚さまたはスラグ堆積物18の厚さのそれぞれの推定における著しい誤差につながり得る。したがって、表面プロファイリングシステムの使用は、耐火材料14の厚さおよびスラグ堆積物18の厚さのそれぞれをより正確かつ別個に推定するための追加の技術を必要とする。
【0051】
本明細書では様々な実施形態を例示的な方法で説明してきたが、使用される用語は、限定ではなく説明の用語の性質であることを意図していることを理解されたい。本明細書に開示される任意の実施形態は、他の実施形態の1つまたは複数の態様を含むことができる。例示的な実施形態は、他の当業者が本発明を実施することができるように、本発明の原理のいくつかを説明するために記載された。
【0052】
(方法)
材料の状態を評価するための方法は、第1のセンサおよび第2のセンサからの測定値を組み合わせ、データ処理サブシステムを使用して、冶金容器の耐火内壁の領域または全体にわたってスラグ堆積物厚さおよび耐火材厚さを別個に決定するように動作する。図3は、材料の状態を評価し、材料の厚さおよびそのような材料の表面上のスラグ堆積物の厚さを別個に決定し、冶金容器の動作寿命を推定し、メンテナンス計画を改善するための方法の概略図を示す。レーダまたは超音波ユニットなどの第1のセンサが、容器内の特定の位置において耐火材厚さを推定するためのデータを収集するために使用される。レーザ、赤外線、または立体視ユニットなどの第2のセンサが、耐火内壁の表面プロファイルを取得し、容器の耐火内壁の全領域を含み得る所定の領域にわたって耐火材およびスラグ堆積物の合計厚さを推定するために使用される。最後に、データ処理構成要素が、以下のステップに従って、そのような所定の領域にわたって厚さを推定するために使用される。
【0053】
1.ステップ100において、1000℃を超える温度に耐えることができ、電磁波が評価される材料の所定の領域の少なくとも一部に衝突し、そこから反射するように、第1のセンサを取り囲む領域との間で前記電磁波を送受信することができるアンテナなどの少なくとも1つの第1のセンサを使用して、冶金容器の内部耐火壁の耐火材厚さなどの評価される材料の厚さを決定する。好ましくは、複数のアンテナが、評価される材料の所定の領域の少なくともより大きな部分の評価をより効率的に実行するために、特定の位置に適切に配置される。より好ましくは、そのような所定の領域は、容器の内壁の複数の関心ゾーンを含み、これらのゾーンの各々は、容器の内壁を覆う各アンテナのカバレッジ領域によって画定される関連するゾーン領域を有する。最も好ましくは、1つまたは複数のゾーン領域は、1つまたは複数の関心領域の一部であり、前記1つまたは複数の関心領域は、評価中の前記材料の前記所定の領域に適合する。
【0054】
2.次に、ステップ200において、ステップ100に説明された、評価中の材料の所定の領域の表面プロファイルを決定することができる、レーザユニットを備えるセンサなどの少なくとも1つの第2のセンサを使用して、評価される材料とそのような材料の表面上のスラグ堆積物との合計厚さを決定し、それにより、評価中の所定の領域にわたって、そのような材料の表面上のすべてのスラグ堆積物を含む、評価中の材料の表面粗さを推定することが可能になる。好ましくは、合計厚さが推定される所定の領域は、ステップ100で特定された容器の内壁の大部分または全体、ならびに複数のゾーンおよび関心領域を含む。
【0055】
3.次に、ステップ300において、評価中の材料の所定の領域内の複数の関心ゾーンに対応する、評価中の材料の表面上のスラグ堆積物の厚さを、ステップ100における評価される材料の推定された厚さを、ステップ200における評価される材料とそのような材料の表面上のスラグ堆積物との推定された合計厚さから差し引くことによって計算する。
【0056】
4.次に、ステップ400において、ステップ300からのデータを処理し、これは、評価中の材料の所定の領域内の複数の関心ゾーンに対応する、評価中の材料の表面上のスラグ堆積物の厚さの計算値の平均化を含む統計分析を実行することを含む。好ましくは、この結果、評価中の材料の所定の領域内の関心領域のそれぞれについてのスラグ堆積物厚さの平均値が得られる。
【0057】
5.次に、ステップ500において、耐火材料の厚さが決定された複数の関心ゾーン以外の、評価中の材料の所定領域に対応する評価中の材料の厚さを、ステップ400において計算された、関心領域内のそのような材料の表面上のスラグ堆積物厚さの平均値を、ステップ200における評価される材料とそのような材料の表面上のスラグ堆積物との推定された合計厚さから差し引くことによって計算する。
【0058】
6.最後に、ステップ600において、ステップ100から500で収集、推定、または計算されたデータを処理して、評価中の材料およびその構築にそのような材料を利用する資産の動作寿命を延ばし、メンテナンス計画を改善するのに有用な情報を分析、予測、および提供する。好ましくは、評価中の材料の特性に従ってデータを処理するために、少なくとも1つの信号処理方法が選択される。より好ましくは、人工知能に基づくカスタマイズされたアルゴリズムを使用して、評価中の材料の劣化および摩耗を予測し、ならびに動作残存寿命を推定し、容器のメンテナンス計画を最適化する。最も好ましくは、容器の動作寿命にわたる複数の評価が実行されて、評価中の前記材料の劣化および摩耗をより正確に予測して容器の残りの動作寿命をより良好に推定し、メンテナンス計画を改善する。
【0059】
上記のステップ100およびステップ200を参照すると、これらのステップの順序は交換可能であり、これらのステップの各々の実行は他方の実行を排除しないことを理解されたい。言い換えれば、ステップ100または200のいずれかは、説明された方法および結果の性能にいかなる制限も課すことなく、または影響を与えることなく、それぞれステップ200または100の前、後、または同時に実行されてもよい。
【0060】
さらに、上記のステップ100を参照すると、評価される材料の厚さを推定するために、音響センサを含む第1のセンサが使用されてもよいことが当業者には理解されよう。この場合、音響信号がこの材料の所定の領域に衝突してそこから反射するように、これらの信号が、センサを囲む領域との間で送受信される。同様に、上記のステップ200を参照すると、残留耐火材厚さおよびスラグ堆積物厚さの合計を測定するために使用することができる、LIDAR走査、レーザ走査、赤外線走査、立体視、または音響技術に基づく技術および方法が現在存在していることを当業者は理解するであろう。結果として、参照される第2のセンサは、レーザユニットだけでなく、代替的に、LIDARユニット、赤外線カメラ、立体視カメラ、または音響センサを備えてもよい。
【0061】
さらに、比較的均一なスラグ堆積物厚さを有するように、評価される材料の所定の領域を含む容器の内壁の各関心ゾーンを選択することが重要である。これにより、関心ゾーンごとに評価中の材料の厚さのより正確な推定値が提供される。所与のゾーンのスラグ厚さが均一でない場合、第1のセンサを使用したデータサンプリングの量を増大させて、第1のセンサデータサンプルのそれぞれにおけるスラグ厚さ値の変動を低減することが推奨される。
【0062】
好ましいシステム構成では、上記のステップ100を参照すると、アンテナを備える少なくとも1つの第1のセンサを使用して材料の厚さを推定するステップは、以下のステップをさらに含む。
【0063】
1.1 ステップ110において、1000℃を超える温度に耐えることができ、アンテナを取り囲む領域との間で電磁波を送受信することができるアンテナを備える少なくとも1つの第1のセンサを、これらの信号が評価される材料の所定の領域に衝突し、そこから反射するように配置する。特に、冶金容器の場合、少なくとも1つのアンテナは、電磁波が容器の内壁および/または底部に送信されるように、チャンバを取り囲む耐火材料に取り付けられるか、または埋め込まれるように配置されなければならない。あるいは、少なくとも1つのアンテナが、チャンバの内部に挿入することができる構造内に設置されてもよい。好ましくは、複数のアンテナが、評価される材料の所定の領域の少なくともより大きな部分の評価をより効率的に実行するたように適切に配置される。最も好ましくは、複数の関心ゾーンが、容器の内壁および/または底部を評価するために選択される。
【0064】
1.2 次に、ステップ120において、ステップ110に説明されるように、送信機および少なくとも1つのアンテナを使用して、少なくとも一つの電磁波が評価中の材料に衝突するように少なくとも1つの電磁波を送信する。特に、冶金容器の場合、少なくとも1つの電磁波は、容器チャンバの内壁および/または底部に送信されなければならない。好ましくは、複数の電磁波が、複数のアンテナを使用して送信される。
【0065】
1.3 次に、ステップ130において、ステップ110で説明されるように、受信機および少なくとも1つのアンテナを使用して、評価中の材料から反射されている少なくとも1つの電磁波を受信する。あるいは、少なくとも1つの電磁波が、第1のアンテナによって送信され、第2のアンテナによって受信されている。特に、冶金容器の場合、少なくとも1つの電磁波は、容器のチャンバの内壁および/または底部から反射されているはずである。好ましくは、複数の電磁波が、複数のアンテナを使用して送信される。
【0066】
1.4 次に、ステップ140において、評価中の材料から反射された少なくとも1つの電磁波(S11および/またはS22パラメータ)の振幅および位相を測定する。あるいは、ステップ130に説明されるように、第1のアンテナによって送信され、第2のアンテナによって受信される少なくとも1つの電磁波(S12および/またはS21パラメータ)の振幅および位相を測定する。
【0067】
1.5 次に、ステップ150において、ステップ140で説明したように、評価中の材料から反射された少なくとも1つの電磁波(S11およびS22パラメータ)の測定された振幅および位相を記憶デバイス内に記録する。
【0068】
1.6 次に、ステップ160において、少なくとも1つの送信および受信アンテナ、または代替的に少なくとも1つの送信アンテナおよび少なくとも1つの受信アンテナの複数の位置についてステップ110から150を繰り返して、評価される材料の所定の領域の評価を完了する。特に、冶金容器の場合、少なくとも1つのアンテナの複数の位置は、容器のチャンバの内壁および/または底部を含む材料の状態の評価を可能にする。
【0069】
1.7 次に、ステップ170において、収集されたデータを一次コンピュータベースのデータプロセッサに転送する。
【0070】
1.8 次に、ステップ180において、収集されたデータを少なくとも1つの信号処理方法によって処理する。好ましくは、信号処理方法は、評価中の材料の特性に応じて選択される。
【0071】
1.9 最後に、ステップ190において、処理されたデータの結果に基づいて、評価中の材料の状態を決定する。
【0072】
上記のステップが、評価中の材料または特定の種類の材料の特定の評価に合わせて対応して調整され得ることが当業者には認識されよう。特に、収集されるデータの種類は、S12またはS21パラメータおよび/またはS11およびS22パラメータの測定値、より具体的には、収集されたデータを処理するために使用される技術に関して異なり得る。
【0073】
収集されたデータの処理を含む材料の評価が完了すると、そのような材料の状態を判定することができる。材料の状態は、動作摩耗、経年劣化、および欠陥、亀裂、および浸食の存在、ならびにスラグ堆積物を含む様々な要因によるそのような材料の厚さおよび劣化のレベルまたは速度を含むことができる。さらに、経時的な材料の状態の複数の評価を使用して、そのような材料劣化を推定し、冶金容器の残りの動作寿命を予測し、メンテナンス計画を改善する傾向を作り出すことができる。
【0074】
材料の状態を評価するための本システムおよび方法は、例示的な方法で本明細書に開示されており、使用されている用語は、限定的な性質ではなく説明的なものであることが意図されていることを理解されたい。上記の教示に照らして本発明の多くの修正および変形が可能であることが当業者には認識されよう。明らかなことに、上記の教示に照らして、本発明の多くの修正および変形が可能である。本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的均等物の範囲内で具体的に説明されている以外の方法で実施されてもよい。
図1
図2
図3
【国際調査報告】