(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】線維芽細胞様滑膜細胞媒介性関節リウマチの有効な管理のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/12 20060101AFI20231221BHJP
A61K 36/324 20060101ALI20231221BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231221BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20231221BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20231221BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231221BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231221BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231221BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20231221BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20231221BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20231221BHJP
A23L 29/281 20160101ALI20231221BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20231221BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20231221BHJP
【FI】
A61K31/12
A61K36/324
A61P43/00 105
A61K31/19
A61K31/715
A61P19/02
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/06
A61K9/10
A61P43/00 121
A23L33/105
A23L29/281
A23G3/34 101
C12N5/071 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537122
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 US2021063689
(87)【国際公開番号】W WO2022133020
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501394435
【氏名又は名称】サミ-サビンサ グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】マジード ムハンメド
(72)【発明者】
【氏名】ナガブシャナム カリアナム
(72)【発明者】
【氏名】ムンドクール ラクシュミ
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4B041
4B065
4C076
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
開示した発明は、対象における線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の増殖、遊走の阻害に使用するための方法及び組成物に関する。本発明はまた、T-ヘルパー17(Th17)、T細胞における不均衡を調節するための組成物及び方法も開示する。開示した組成物は、20~50%のBDMC、10~25質量%のDMC、及び30~50質量%のクルクミンを含み、ボスウェル酸及び多糖を35~50質量%及び35~45質量%の範囲でさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20質量%以上で存在する濃縮ビスデメトキシクルクミン(BDMC)を含む、対象における線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の増殖及び遊走の阻害に使用するための組成物。
【請求項2】
組成物が20~50質量%のBDMC、10~25質量%のデメトキシクルクミン(DMC)、及び30~50質量%のクルクミンを含み、組成物中の総クルクミノイドが20~95質量%の範囲である、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
個々に使用する場合に、組成物中のBDMC、DMC、クルクミン、又はクルクミノイドの濃度が10~100μg/mLからなる範囲から選択される、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
組成物がボスウェリア・セラータ(Boswellia serrata)からのボスウェル酸(B)及び多糖(PS)をさらに含み、ボスウェル酸が、ボスウェル酸を35~50質量%、β-ボスウェル酸を20~30質量%、3-アセチル-11-ケト-β-ボスウェル酸(AKBA)を12質量%、及び多糖を35~45質量%の範囲で含む、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
個々に使用する場合に、ボスウェル酸、多糖の濃度が10~100μg/mLからなる範囲から選択される、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
濃縮BDMCクルクミノイド組成物及びBPSが1~4:4~1の比の組合せで存在する、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の阻害が、細胞周期阻害、炎症性マーカーのレベルの減少、及びアポトーシスの促進によってもたらされる、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
細胞周期阻害がG0/G1期にある、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
アポトーシスをBax対Bcl-2の比として測定する、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
炎症性マーカーが、TNF-α、IFN-γ、CCL-5、MMP-3、及びカテプシンからなる群から選択される、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
線維芽細胞様滑膜細胞の阻害が関節炎スコアの改善をもたらす、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
対象が哺乳動物である、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
20質量%以上で存在する濃縮BDMCを含む、哺乳動物の脾臓中のT-ヘルパー17(T
h17)及びT細胞(Treg)における不均衡の調節に使用するための組成物。
【請求項14】
組成物が20~50質量%のBDMC、10~25質量%のDMC、及び30~50質量%のクルクミンを含み、組成物中の総クルクミノイドが20~95質量%の範囲である、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
個々に使用する場合に、組成物中のBDMC、DMC、クルクミン、又はクルクミノイドの濃度が、40mg/kg(哺乳動物の体重)~100mg/kg(哺乳動物の体重)の体重からなる範囲から選択される、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
組成物がボスウェリア・セラータからのボスウェル酸(B)及び多糖(PS)をさらに含み、ボスウェル酸が、ボスウェル酸を35~50質量%、β-ボスウェル酸を20~30質量%、3-アセチル-11-ケト-β-ボスウェル酸(AKBA)を12質量%、及び多糖を35~45質量%の範囲で含む、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
個々に使用する場合に、ボスウェル酸、多糖の濃度が40mg/kg(哺乳動物の体重)~100mg/kg(哺乳動物の体重)からなる範囲から選択される、請求項16に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
濃縮BDMCクルクミノイド組成物及びBPSが1~4:4~1の比の組合せで存在する、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
不均衡を、T
h17細胞を低下させ、T細胞(Treg)を増加させることによって調節し、それによってT
h17/Treg比を減少させる、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
安定化剤、生体利用能エンハンサー及び抗酸化剤、薬学的又は栄養補助食品的又は薬用化粧品的に許容される賦形剤及びエンハンサーをさらに含み、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ、散剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー、又は食料品の形態で経口投与する、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
20質量%以上で存在する濃縮ビスデメトキシクルクミン(BDMC)を含む、哺乳動物における関節リウマチの治療管理に使用するための組成物。
【請求項22】
組成物が20~50質量%のビスデメトキシクルクミン、10~25質量%のデメトキシクルクミン、及び30~50質量%のクルクミンを含み、組成物中の総クルクミノイドが20~95質量%の範囲である、請求項21に記載の使用のための組成物。
【請求項23】
個々に使用する場合に、組成物中のBDMC、DMC、クルクミン、又はクルクミノイドの濃度が40mg/kg(哺乳動物の体重)~100mg/kg(哺乳動物の体重)から選択される、請求項21に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
組成物がボスウェリア・セラータからのボスウェル酸(B)及び多糖(PS)をさらに含み、ボスウェル酸及び多糖(BPS)が、それぞれ35~50質量%及び35~45質量%の範囲で存在する、請求項21に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
個々に使用する場合に、ボスウェル酸、多糖の濃度が40mg/kg(哺乳動物の体重)~100mg/kg(哺乳動物の体重)の範囲から選択される、請求項24に記載の使用のための組成物。
【請求項26】
濃縮BDMCクルクミノイド組成物及びBPSが1~4:4~1の比の組合せで存在する、請求項21に記載の使用のための組成物。
【請求項27】
哺乳動物における関節リウマチの管理が、線維芽細胞様滑膜細胞の増殖及び遊走の阻害、T-ヘルパー17(T
h17)、T細胞(Treg)における不均衡の調節、炎症性マーカーのレベルの減少、アポトーシスの促進、並びに関節炎スコアの改善によってもたらされる、請求項21に記載の使用のための組成物。
【請求項28】
組成物が、安定化剤、生体利用能エンハンサー及び抗酸化剤、薬学的又は栄養補助食品的又は薬用化粧品的に許容される賦形剤及びエンハンサーをさらに含み、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ、散剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー、又は食料品の形態で経口投与する、請求項21に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が本明細書中に参考として組み込まれている、2020年12月17日に出願の米国仮特許出願63126920号の優先権を主張するPCT出願である。
本発明は、一般に、対象における線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の増殖、遊走の阻害に使用するための方法及び組成物に関する。本発明はまた、T-ヘルパー17(Th17)、T細胞における不均衡を調節するための組成物及び方法も開示する。さらにより詳細には、本発明は、ボスウェリア・セラータ(Boswellia serrata)からのボスウェル酸及び多糖をさらに含む、20~50%のBDMC、10~25質量%のDMC、及び30~50質量%質量%のクルクミンを含む組成物を開示する。
【背景技術】
【0002】
滑膜炎症及び関節損傷によって引き起こされる、遺伝的及び環境的要因の間の複雑な相互作用によって引き起こされる自己免疫性滑膜疾患である関節リウマチ(RA)臨床徴候。線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)は、滑膜、可動関節の空間を裏打ちする軟組織、腱鞘、及び滑液包の、関節内に位置する間葉細胞である(Nygaard, G., Firestein, G.S. Restoring synovial homeostasis in rheumatoid arthritis by targeting fibroblast-like synoviocytes. Nat Rev Rheumatol 16, 316-333 (2020))。滑膜の内膜の裏打ち中のFLSは、炎症を永続化させるサイトカイン及び軟骨破壊に寄与するプロテアーゼの生成において主要な役割を果たす。内膜の裏打ち層は、2種の細胞種、すなわち、A型又はマクロファージ様滑膜細胞及びB型又はFLSから構成される。滑膜の内膜の裏打ち層中に存在するFLSの役割は、細胞外基質(ECM)並びに軟骨表面を潤滑及び栄養を与えるための滑液の組成を制御することである。様々な研究により、RAにおいて、A型細胞が優勢となって炎症誘発性サイトカイン、ケモカイン、及び成長因子を生成し、立ち代わってこれが局所的FLSを活性化させ、IL-6、プロスタノイド、及びマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の生成を誘導することが示されている。このプロセスは、自己分泌/パラ分泌ネットワークによって起動される細胞外基質の破壊を引き起こして、滑膜炎を永続化させる。RAがFLSの生存を促進し、アポトーシスを通じた欠失を防止することも文書化されている(Bartok B, Firestein GS: Fibroblast-like synoviocytes: key effector cells in rheumatoid arthritis. Immunol Rev. 2010; 233:233-255)。制御性T細胞(Treg)/T-ヘルパー17(Th17)細胞間のバランスがRAの進行に関連づけられている。Th17細胞は、組織破壊及び関節軟骨損傷に手を貸すIL-17A及びTNF-αを分泌することによって炎症促進反応を媒介する一方で、Tregは抗炎症反応を媒介し、自己免疫寛容の状態を維持する。この不均衡が、数例として多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、SLEを含むいくつかの自己免疫疾患の根底にある原因であると考えられている(Li, C. et al. (Arsenic trioxide improves Treg and Th17 balance by modulating STAT3 in treatment-naive rheumatoid arthritis patients. Int. Immunopharmacol. 73, 539-551, 2019)。さらに、合成疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)及び生物学的DMARDを個々に又は組み合わせてのいずれかで使用するRAの現在の処置は、治療戦略を提供するが、過敏症、特に免疫関連のものを含む、顕著な副作用を示す。有効かつ非免疫変調性である治療標的を発見するために、この領域において相当な研究努力がなされている(Kohler et al. Current Therapeutic Options in the Treatment of Rheumatoid Arthritis, J. Clin. Med. 8, 1-15 (2019)。
【0003】
Rizaldyらは、クルクマ・ロンガ(curcuma longa)及びボスウェリア・セラータの抽出物が骨関節炎において治療上の利点を有することを示しているが(Rizaldy et al. A randomized Controlled Trial of Curcuma Longa and Boswellia Serrata Extract in Osteoarthritis. Global Journal of Medical Research: H Orthopedic and Musculoskeletal System 19(3))、この論文は、この活性を司っている経路及び因子を明らかにしていない。さらに、骨関節炎における単離した関節を標的化することとRAにおけるいくつかの関節を標的化することは全く異なる。
Svenssonらは、TNF阻害剤、並びにFc-Ig1及びIg2を含む非免疫調節性抗FLS手法を通じて、組合せ療法が、より良好な有効性及びより少ない副作用で、関節炎に対して有効に働いたことを再確認した(Svensson et al. Synoviocyte-targeted therapy synergizes with TNF inhibition in arthritis reversal. Sci. Adv. 6, eaba4353, Pgs. 1-17 (2020))。
【0004】
Shaikhらは、関節リウマチ処置においてクルクミンが、他のクルクミノイドと比較してより高い抗炎症性作用を有していたことを示した。さらに、彼らは、DMC及びBDMCがターメリック中のクルクミンの効果を妨害したことを示した(Shaikh et al. Does Curcumin Analogues, Demethoxycurcumin and Bisdemethoxycurcumin (BDMC), Enhance the Therapeutic efficacy of Curcumin in the Treatment of Rheumatoid Arthritis (RA), Nat. Prod. Chem. 8(6), Pgs. 1-9, 2020)。
Makuchらは、RAについてのクルクミンの包括的な総説を提供するが、作用機構及び細胞集団に対するその効果はさらなる研究を要することを明らかにした(The Immunomodulatory and Anti-Inflammatory Effect of Curcumin on Immune Cell Populations, Cytokines, and In Vivo Models of Rheumatoid Arthritis, Pharmaceuticals, 14, Pgs. 1-18, 2021)。Kloeschらは、高濃度のクルクミンを用いたFLSの処置が細胞生存度の劇的な減少をもたらし、アポトーシスを誘導したことを示した。しかし、クルクミンの分子機構は不明確であった。(kloesch et al. Anti-Inflammatory and Apoptotic Effects of the Polyphenol Curcumin on Human Fibroblast-like Synoviocytes, 15, Pgs. 400-405 (2013))。
【0005】
WO 2021/090154号は、ウィタノライド濃縮アシュワガンダ、BDMC濃縮クルクミン、及びAKBA濃縮ボスウェリア属(Boswellia)を包含する骨関節炎の組合せ処置を含む。しかし、これは非免疫調節効果のFLS経路は包含しない。
同様に、AU2010/345338 B2号は、関節炎を含む炎症状態に使用するための、ボスウェリア属抽出物及びクルクマ属(curcuma)の種を含む相乗的な組成物を包含するが、どのような具体的な経路も包含していない。
本質的には、現在の手法と共に作用し、免疫系を抑制せずに疾患制御を改善させることができる、RAのための安全、毒性がより低い、かつ有効である処置の、満たされていない必要性が存在する。さらに、処置が天然の薬草に基づいていれば、RA処置の免疫調節効果に関連する副作用の多くに打ち勝つことができる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的
個々の濃度のBDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸(B)、又は多糖(PS)を含む、対象における線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の増殖及び遊走の阻害に使用するための方法及び組成物を開示することが、本発明の主な目的である。別の目的は、濃縮BDMCクルクミノイド及びBPSの組成物を含む、対象における線維芽細胞様滑膜細胞の増殖及び遊走の阻害に使用するための方法及び組成物を開示することである。
本発明のさらに別の主な目的は、個々の濃度のBDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸、又は多糖を含む組成物を投与することを含む、哺乳動物の脾臓中のT-ヘルパー17(Th17)及びT細胞(Treg)における不均衡の調節に使用するための方法及び組成物を開示することである。別の目的は、濃縮BDMCクルクミノイドとBPSの組合せを含む組成物を使用して、哺乳動物におけるT-ヘルパー17(Th17)、T細胞(Treg)における不均衡の緩和に使用するための方法及び組成物を開示することである。
本発明の別の主な目的は、哺乳動物における関節リウマチの治療管理に使用するための方法及び組成物を開示することであり、前記方法は、個々の濃度のBDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸、又は多糖を含む組成物を投与することを含む。別の目的は、哺乳動物における関節リウマチの治療管理に使用するための方法及び組成物を開示することであり、前記方法は、濃縮BDMCクルクミノイドとBPSの組合せを含む組成物を投与することを含む。
【0007】
概要
本発明は、BDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸、若しくは多糖を個々に、又は濃縮BDMCクルクミノイド組成物及びボスウェル酸多糖の組合せのいずれかの、対象におけるFLSの増殖、遊走の阻害、及び哺乳動物の脾臓中のT-ヘルパー17(Th17)、T細胞(Treg)における不均衡の調節に使用するための方法及び組成物を包含することによって、背景技術中で言及した前述の課題を広く解決する。
本発明の第1の態様は、個々の濃度のBDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸、又は多糖を含む、対象における線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の増殖及び遊走の阻害に使用するための組成物に関する。濃縮BDMCクルクミノイドとBPSの組合せを含む組成物も包含する。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、個々の濃度のBDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸、又は多糖を含む、哺乳動物の脾臓中のT-ヘルパー17(Th17)及びT細胞(Treg)における不均衡の調節に使用するための組成物を包含する。濃縮BDMCクルクミノイドとBPSの組合せを投与することも包含する。
本発明の別の態様は、個々の濃度のBDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸、又は多糖を含む、哺乳動物における関節リウマチの治療管理に使用するための組成物を包含する。濃縮BDMCクルクミノイドとBPSの組合せを投与することも包含する。
本発明の別の態様は、哺乳動物FLSを、個々の濃度のBDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸、又は多糖を含む組成物と接触させるステップを含む、哺乳動物における線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の増殖及び遊走を阻害する方法を包含する。濃縮BDMCクルクミノイドとBPSの組合せを含む組成物も包含する。
本発明のさらに別の態様は、a)T-ヘルパー17(Th17)、Tregの不均衡を有する哺乳動物を同定するステップと、b)個々の濃度のBDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸、多糖を含む組成物を投与するステップとを含む、哺乳動物の脾臓中のT-ヘルパー17(Th17)、T細胞(Treg)の不均衡を調節するための方法を包含する。濃縮BDMCクルクミノイドとBPSの組合せを含む組成物も包含する。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、a)関節リウマチを有する対象を同定するステップと、b)個々の濃度のBDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸、又は多糖を含む組成物を投与するステップとを含む、対象における関節リウマチの治療管理の方法を包含する。濃縮BDMCクルクミノイドとBPSの組合せを含む組成物も包含する。
本発明のより広い応用範囲は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかし、以下の詳細な説明及び具体的な例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、本発明に対する制限として解釈されるべきでなく、使用する試料の濃度範囲、クルクミノイドの誘導体/類似体、BPS、実験条件、哺乳動物の選択を変えることなどの様々な変化及び改変を行うことは、当業者の技術範囲内にあり、この詳細な説明から本発明の精神及び範囲の範囲内に十分あることを理解されたい。
【0010】
特許又は特許出願ファイルは、カラーで作成した少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面の本特許又は特許出願公開のコピーは、請求及び必要な費用の支払い後に事務局から提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】FLSにおけるビメンチンの免疫染色を示す図である。
【
図2】FLSにおけるビメンチンの免疫染色を示す図である。
【
図3】10、20、及び40μg/mLのAC3を使用した、FLS増殖の濃度依存性阻害を示す図である。20及び40μg/mlで、FLS対照と比較してP<0.01。
【
図4】10、20、及び40μg/mLでの用量依存的な様式のAC3の阻害の百分率を示す図である。20及び40μg/mlで、FLS対照と比較してP<0.01。
【
図5】クルクミノイド、AC3、C3、及びBPSのうちのいずれかによるFLS増殖の阻害の比較効果を示す図である。BPS以外は、FLS対照と比較してP<0.01。
【
図6】FLS増殖の阻害におけるAC3及びBPSの効果を示す図である。AC3の組合せ及び組合せで、FLS対照と比較してP<0.01。
【
図7】クルクミノイド、AC3、C3、及びBPSの細胞周期阻害を示す図である。
【
図8】クルクミノイド、AC3、C3、及びBPSのうちのいずれかで処理した場合の、S期にある細胞の百分率を示す図である。
【
図9】AC3、BPSで個々に処理した場合、及び組合せとしての場合の、細胞の百分率を示す図である。
【
図10】未処理(
図10)、クルクミン(
図11)、BDMC(
図12)、DMC(
図13)、AC3(
図14)、C3(
図15)、BPS(
図16)、それぞれ40及び80μg/mL(
図17)、それぞれ10及び40μg/mLのAC3とBPSの組合せ(
図18)についての、FACSを使用した細胞周期阻害を示す図である。
【
図19】クルクミノイド、AC3、C3、BPS、及びAC3+BPSの組合せのうちのいずれかを使用した、アポトーシス促進を示唆するBax/Bcl2の比を示す図である。AC3、Cur、及びBDMCで、FLS対照と比較してP<0.01。DMC及びAC3+BPSでP<0.05。
【
図20】対照(
図20)、BDMC(
図21)、クルクミン(
図22)、DMC(
図23)、AC3(
図24)、C3(
図25)がそれぞれ15μg/mL、BPS(
図26)、AC3(10μg/mL、
図27)、BPS(40μg/mL、
図28)、及びAC3+BPSの組合せ(10+40μg/mL、
図29)で処理した場合の、遊走アッセイにおけるFLSの遊走及び浸潤を示す図である。
図30及び31は遊走の阻害の百分率を示す。
【
図32】対照、RA対照、セレコキシブ対照、クルクミノイド、AC3、C3、BPS、及びAC3+BPSの組合せで処理した場合の関節炎スコアを示す図である。p<0.05及び**P<0.01。
【
図33】対照、RA、セレコキシブ、AC3、BPS、及びAC3+BPSの組合せで処理した場合の、Th
17(
図33)、Treg(
図34)に対する調節効果、及びTh
17/Tregの比(
図35)を示す図である。正常(
図36)、AC3(50mg/kg、
図37)、AC3(100mg/kg、
図38)、BPS(40mg/kg、
図39)、AC3+BPS(50+40mg/kg、
図40)、AC3+BPS(100+40mg/kg、
図41)、セレコキシブ(
図42)のFACS研究。
【発明を実施するための形態】
【0012】
選択された定義
本出願中で使用するすべての用語は、別段に指定しない限りは、従来技術において知られている通常の意味を持つ。本発明において使用するいくつかの他の具体的な定義を以下に説明し、これらは本明細書全体にわたって適用される。特許請求の範囲は、別段に指定されない限りは、より広い定義を提供する。
【0013】
本出願では、試料へのあらゆる参照は、治療効果をもたらす以下の薬剤の1種又は組合せのいずれかをいう。薬剤としては、クルクミン、ビスデメトキシクルクミン、及びデメトキシクルクミンのいずれかを一般にいうクルクミノイド、又は適切に言及された場合はいつでもその組合せが挙げられる。濃縮BDMC組成物とは、少なくとも20質量%のBDMCを含むクルクミノイド組成物をいう。より詳細には、AC3とは、20~50質量%のビスデメトキシクルクミン、10~25質量%のデメトキシクルクミン、及び30~50質量%のクルクミンである組成物をいう。C3複合体はクルクミンが濃縮されており、75~81%のクルクミン、15~19%のデメトキシクルクミン、及び2.2~6.5%のビスデメトキシクルクミンである。ボスウェル酸は、US60/268,713号に開示されているようにボスウェリア・セラータから単離された天然抽出物であり、PSは、ボスウェリア・セラータのガム樹脂からの多糖である。具体的には、ボスウェル酸(B)に言及する場合はいつでも、これは、β-ボスウェル酸を20~30質量%、3-アセチル-11-ケト-β-ボスウェル酸を12質量%(AKBA)を含有するように標準化された、35~50質量%の総ボスウェル酸含有量を含む。多糖(PS)に言及する場合はいつでも、これは、35~45質量%の多糖(PS)を含んで、ガラクトース、アラビノース、及びD-グルクロン酸からなる中性糖を含有する。(ボスウェリア・セラータ組成物は、Sami-Sabinsa Group Limited、インドBangaloreからBoswellin(登録商標)PSとして市販されている)
【0014】
治療管理すること又は管理とは、本発明中に開示した状態を有効に寛解させる状態をいう。本明細書中における対照へのあらゆる参照は、実験、包含する実施例に応じて未処理、RA対照、又はセレコキシブ対照のいずれかをいい、適切な場合はいつでも、対照の詳細が言及されている。
本発明は、一般に、個々の濃度のBDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸(B)、又は多糖(PS)を含む、線維芽細胞様滑膜細胞の増殖、遊走の阻害、並びにT-ヘルパー17(Th17)及びT細胞(Treg)における不均衡の調節に使用するための方法及び組成物を包含する。濃縮BDMCクルクミノイドとBPSの組合せを含む組成物も包含する。本発明はまた、前述の組成物を使用した、対象における関節リウマチの治療管理の方法も包含する。
最も好ましい実施形態では、本発明は、20質量%以上で存在する濃縮ビスデメトキシクルクミン(BDMC)を含む、対象における線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の増殖及び遊走の阻害に使用するための組成物を開示する。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態では、本発明は、20質量%以上のビスデメトキシクルクミン(BDMC)を含む、哺乳動物の脾臓中のT-ヘルパー17(T
h17)、T細胞(Treg)の不均衡の調節に使用するための組成物を開示する。本実施形態の関連する態様では、不均衡は、3.5のRA対照と比較して、T
h17/Tregの比を好ましくは1、又はより好ましくはT
h17/Tregの比を0~1として(
図35)、T
h17細胞を低下させ、T細胞(Treg)を増加させることによって調節し(
図33~35、実施例9)、0.5のセレコキシブ対照とほぼ同等に良好となる(
図35)。
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、本発明は、20質量%以上で存在する濃縮ビスデメトキシクルクミン(BDMC)を含む、哺乳動物における関節リウマチの治療管理に使用するための組成物を開示する。本実施形態の関連する態様では、哺乳動物における関節リウマチの管理は、線維芽細胞様滑膜細胞の増殖及び遊走の阻害、哺乳動物の脾臓中のT-ヘルパー17(T
h17)及びT細胞(Treg)における不均衡の調節、炎症性マーカーのレベルの減少、並びにアポトーシスの促進によってもたらされる。本実施形態の関連する態様では、関節炎スコアの改善がもたらされる。線維芽細胞様滑膜細胞の阻害及び遊走、T-ヘルパー17(T
h17)、T細胞(Treg)における不均衡の調節、炎症性マーカーのレベルの減少、アポトーシスの促進、並びに関節炎スコアの改善の範囲及び詳細は、関連する実施形態中に説明されている。
【0016】
本発明の別の最も好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物FLSを、20質量%以上で存在する濃縮ビスデメトキシクルクミン(BDMC)を含む組成物と接触させるステップを含む、哺乳動物における線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の増殖及び遊走を阻害する方法を開示する。
本発明の別の最も好ましい実施形態では、本発明は、a)T-ヘルパー17(T
h17)及びTregの不均衡を有する哺乳動物を同定するステップと、b)20質量%以上で存在する濃縮ビスデメトキシクルクミン(BDMC)を含む組成物を投与するステップとを含む、哺乳動物の脾臓中のT-ヘルパー17(T
h17)、T細胞(Treg)における不均衡を調節する方法を開示する。本実施形態の関連する態様では、不均衡は、3.5のRA対照と比較して、T
h17/Tregの比を好ましくは1、又はより好ましくはT
h17/Tregの比を0~1として(
図35)、T
h17細胞を低下させ、T細胞(Treg)を増加させることによって調節する(
図33~35、実施例9)。
【0017】
本発明のさらに別の最も好ましい実施形態では、a)関節リウマチを有する対象を同定するステップと、b)20質量%以上で存在する濃縮ビスデメトキシクルクミン(BDMC)を含む組成物を投与するステップとを含む、対象における関節リウマチの治療管理の方法を開示する。本実施形態の関連する態様では、哺乳動物における関節リウマチの管理は、線維芽細胞様滑膜細胞の増殖及び遊走の阻害、哺乳動物の脾臓中のT-ヘルパー17(Th17)及びT細胞(Treg)において不均衡を調節すること、炎症性マーカーのレベルの減少、並びにアポトーシスの促進によってもたらされる。本実施形態の関連する態様では、関節炎スコアの改善がもたらされる。線維芽細胞様滑膜細胞の阻害及び遊走、T-ヘルパー17(Th17)、T細胞(Treg)における不均衡の調節、炎症性マーカーのレベルの減少、アポトーシスの促進、並びに関節炎スコアの改善の範囲及び詳細は、関連する実施形態中に説明されている。
【0018】
組成物が20~50質量%のBDMC、10~25質量%のデメトキシクルクミン(DMC)、及び30~50質量%のクルクミンを含む、FLSの増殖及び阻害に関連する実施形態では、組成物中の総クルクミノイドは20~95質量%の範囲である。本発明の本実施形態の関連する態様では、組成物はボスウェリア・セラータからのボスウェル酸(B)及び多糖(PS)をさらに含み、ボスウェル酸及び多糖(BPS)は、それぞれ35~50質量%及び35~45質量%の範囲で存在する。本発明の本実施形態及び他の実施形態の別の関連する態様では、個々に使用する場合に、組成物中のBDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸、多糖の濃度は、10~100μg/mLからなる範囲から選択される。本発明の本態様及び他の関連する実施形態では、組成物は、BDMCクルクミノイドが濃縮された組成物を含み、BPSは、それぞれ1:1の比、又は好ましくは1:2の比、又は好ましくは1:3の比、又は好ましくは1:4の比、又は好ましくは4:1の比、又は好ましくは3:1の比、又は好ましくは2:1の比の組合せで存在する。本発明の本実施形態の関連する態様では、C3及びBPSを、上記指定した範囲としての組合せとして使用する。指定した範囲内の組合せを見つける、又は適切な範囲を見つけることは、一般的な知識であり当業者に知られている。さらに、本発明の本態様及び他の実施形態では、より好ましくは、AC3を単独で又はBPSと組み合わせて使用する。本発明の本実施形態及び他の実施形態のさらなる態様では、個々に使用する場合に、BDMC、クルクミン、DMC、BPS、AC3、C3の濃度は、10~100μg/mLの範囲、又は好ましくは20~80μg/mLの範囲、又は好ましくは40~60μg/mLで使用する。
【0019】
本発明の本実施形態及び他の前述の実施形態の関連する態様では、線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の阻害は、細胞周期阻害、炎症性マーカーのレベルの減少、アポトーシスの促進、及び関節炎スコアの改善によってもたらされる。本実施形態の関連する態様では、試料を用いた処理の後、FLS増殖の阻害は、未処理の対照と比較して10~90%の範囲、又はより好ましくは50~90%の範囲、又は最も好ましくは60~90%の範囲である(
図3~6、実施例2)。本発明の本実施形態の関連する態様では、試料を用いた処理の後、細胞周期阻害はG0/G1期にあり、S期にある細胞の百分率は、1~20%の範囲、又はより好ましくは1~10%の範囲、又は最も好ましくは1~5%の範囲である(
図7~9、実施例3)。本発明の本実施形態の関連する態様では、炎症性マーカーは、TNF-α、IFN-γ、CCL-5、MMP-3、及びカテプシンからなる群から選択される。本実施形態のさらなる一態様では、それぞれの試料を用いた処理の後、炎症性マーカーの発現レベルは、未処理の対照と比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%低下する(表3、実施例4)。本実施形態のさらなる一態様では、炎症性マーカーIL6のELISA研究により、AC3とBPSの組合せが、AC3又はBPSを個々に使用した場合と比較してより良好な阻害を示したことが示された(実施例4)。本実施形態のさらなる一態様では、試料を用いた処理の後、1の未処理の対照と比較して、1~1.5の範囲のBax/Bcl2比の増加、又は好ましくは1.25~1.5の範囲の比の増加で、アポトーシスが促進される(
図19、実施例5)。本実施形態のさらなる一態様では、FLSの遊走は試料を用いた処理の後に阻害され(
図20~31、実施例6)、遊走の阻害は、未処理の対照と比較して、40~80%の範囲、又は好ましくは50~80%の範囲、又はより好ましくは50~70%の範囲であり(
図30)、AC3+BPSの組合せは、個々の処理と比較して有効であった(
図31)。本実施形態の別の態様では、試料を用いた処理の後、関節炎スコアは、未処理の対照と比較して、1~3の範囲、より好ましくは1~2の範囲である(
図32、実施例8、RA対照は3.5であり、陽性対照セレコキシブは1である)。
【0020】
哺乳動物の脾臓中のT-ヘルパー17(Th17)、T細胞(Treg)における不均衡の調節及び哺乳動物におけるRAの治療管理に関連する実施形態では、組成物は、個々に使用する場合に、組成物中のBDMC、DMC、クルクミン、クルクミノイド、ボスウェル酸、又は多糖の濃度は、好ましくは、40mg/kg(哺乳動物の体重)~100mg/kg(哺乳動物の体重)からなる範囲、又は好ましくは50~100mg/kg(哺乳動物の体重)からなる範囲から選択される。関連する実施形態では、濃縮BDMCクルクミノイド組成物及びBPSは、それぞれ1:1の比、又は好ましくは1:2の比、又は好ましくは1:3の比、又は好ましくは1:4の比、又は好ましくは4:1の比、又は好ましくは3:1の比、又は好ましくは2:1の比の組合せで存在する。
本発明の別の関連する実施形態では、組成物は、安定化剤、生体利用能エンハンサー及び抗酸化剤、薬学的又は栄養補助食品的又は薬用化粧品的に許容される賦形剤及びエンハンサーをさらに含み、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ、散剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー、又は食料品の形態で経口投与するために適切に配合されている(実施例10)。投与のための適切な配合物を見つけ出すことは、当業者の技術範囲内に十分ある。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の単離及び培養:以下の方法に従って、滑膜組織をコラーゲン誘導性関節炎ラットから無菌的条件下で得た(Jinjun Zhao, Qingqing Ouyang, Ziyou Hu,Qin Huang, Jing Wu, Ran Wang and Min Yang. A protocol for the culture and isolation of murine synovial fibroblasts. Biomedical Reports 5: 171-175, 2016)。
FLSを滑膜組織から酵素消化によって単離した。手短に述べると、組織を顕微手術用ハサミで1mm3ブロックに分けた。その後、組織を、酵素消化のために、10%のFBSを添加したDMEM中に0.1%のコラゲナーゼII型酵素を用いて、37℃で45分間、軌道攪拌インキュベーター(200rpm)中でインキュベートした。
【0022】
インキュベーション時間の後、チューブを激しく1~2分間渦攪拌して細胞を遊離させ、100μmのメッシュストレーナーを使用して濾過した。濾液を5分間、1200rpmで遠心分離し、細胞を、10%のFBS並びに100μg/mlのストレプトマイシン及び100U/mlのペニシリンを添加したDMEM中に再懸濁させ、37℃、5%のCO
2下の加湿インキュベーター中で培養した。抗ビメンチン抗体(PA5-27231、Thermo Fisher Scientific)を用いた細胞形態学的及び免疫細胞化学的染色に基づくFLS同定の後(
図1及び2)、4~7継代の細胞をさらなる研究のために使用した。
【0023】
(実施例2)
WST-1増殖アッセイ:WST-1アッセイを使用して、FLS増殖に対する様々な試料の効果を測定した。FLSを5×10
3個の細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート中に播種し、終夜、37℃、5%のCO
2下でインキュベートした。その後、細胞を、
図3~6に示すように様々な濃度の試料(AC3、C3、Cur、BDMC、DMC、BPS)を用いて72時間処理した。処理期間の後、無血清DMEM培養培地で1:10に希釈した100μlのWST-1試薬(5015944001、Sigma、米国)をそれぞれのウェルに加え、37℃、5%のCO
2下で2時間インキュベートした。610nmの参照波長を用いて、吸光度を450nmで測定した。AC3は、用量依存的な様式で、20μg/mL及び40μg/mLでFLS増殖のより良好な阻害を示した(
図3及び4)。FLS増殖の阻害におけるクルクミノイド類似体の比較研究は、20μg/mLでBDMC>クルクミン>DMCの傾向を示した一方で(
図5)、BPSは10%の阻害しか示さず、組合せは、Boswellin PS(BPS)又はAC3を個々に使用した場合よりもはるかに有効であった(
図6)。
【0024】
(実施例3)
細胞周期の分析:FLS細胞(8×10
4個の細胞/ウェル)を24ウェルプレート中に播種し、終夜、37℃、5%のCO
2下でインキュベートした
。無血清培地中で24時間同期させた後、細胞を、試料の存在あり又はなしで、DMEM10%のFBS中で24時間処理した。処理期間の後、細胞を収集し、氷冷PBS中に懸濁させた。遠心分離の後、渦攪拌しながら70%の氷冷エタノールをペレットに滴下することによって細胞を固定し、4℃で30分間保管した。細胞をヨウ化プロピジウム(PI)溶液(50μg/ml)で30分間、37℃、暗所で染色した。DNA含有量をフローサイトメトリー(BD FACS Celestaフローサイトメーター)によって分析した。クルクミノイドのうちAC3、BDMCがFLS複製の最大阻害を示し(
図7、8、12、及び14)、FLSはG0/G1期で停止していた。Boswellin PS(BPS)は、80μg/mLのみで阻害を示した(
図8、
図16)。
図9に例示するように、細胞周期阻害に対する組合せ(AC3+BPS)の効果は、使用した個々の試料(AC3及びBPS)よりも良好であった。
【0025】
(実施例4)
炎症性マーカーの測度:FLS細胞(8×104個の細胞/ウェル)を24ウェルプレート中に播種し、終夜、37℃、5%のCO2下でインキュベートした。細胞を、10ng/mlの組換えラットTNF-α(カタログ番号400-14、Peprotech、米国ニュージャージー州)を用いて、様々な濃度の試料の存在あり又はなしで、DMEM10%のFBS中で6時間及び24時間誘導して、試料の抗炎症効果を評価した。クルクミンは、炎症性マーカー(IFNγ、CCL-5、MMP-3、及びカテプシン、表2)を抑制することによってより良好な抗炎症活性を示した一方で、BDMCはTNF-αにおいて最も有効であり、最も重要なことに、AC3とBPSの組合せがすべての中で最も有効であった(表2)。
ELISA:24時間のインキュベーション期間の後、培養上清を収集し、ELISA方法によって炎症性マーカーIL6について評価した。10μg/mL(AC3)及び40μg/mL(BPS)の濃度では、阻害は、AC3及びBPSを個々に使用した場合の3及び1%と比較して、組合せとして使用した場合は20%であった。
【0026】
試用したキットはラットIL-6 DuoSet ELISA、R&D Systems、DY506-05であった。
RT-PCR発現研究:6時間のインキュベーションの後、未処理及び処理した細胞からの全細胞性RNAを、Trizol試薬(登録商標)(Ambion、Life Technologies)を使用して、製造者の指示に従って単離し、続いて無RNase DNase I処理(ThermoFisher Scientific)を行ってあらゆるゲノムDNAを除去した。メッセンジャーRNAの品質及び濃度を分光光度的に分析した(NanoDrop Lite、ThermoFisher Scientific)。Revert-aid First Strand cDNA合成キット(ThermoFisher Scientific)を使用して、製造者の指示に従って、1マイクログラムの全RNAをcDNAへと逆転写し、使用まで-80℃で保管した。
【0027】
その後、Eurofins Indiaから入手した具体的に設計されたプライマーを使用したcDNAの増幅のために、20μlの反応混合物を、SYBR green qPCRマスターミックスを使用したPCRに供し、内部対照として、ハウスキーピング遺伝子βアクチンをそれぞれの反応と共に同時増幅させた(表2)。PCRはLight cycler 96(Roche Life Science)において実施し、遺伝子のPCR条件は、95℃で10分間の初期変性、続いて、95℃で30秒間の変性、60℃で30秒間のプライマーのアニーリング、72℃で30秒間の伸長、及び72℃で30秒間の最終冷却からなる35サイクルであった(表1)。
【0028】
【0029】
【0030】
(実施例5)
アポトーシス分析-FLSアポトーシスはRT-PCR発現研究を用いて評価した。手短に述べると、FLS細胞(8×10
4個の細胞/ウェル)を24ウェルプレート中に播種し、終夜、37℃、5%のCO
2下でインキュベートした
。無血清培地中で24時間同期させた後、細胞を、試料の存在あり又はなしで、DMEM10%のFBS中で24時間処理した。処理期間の後、細胞を収集し、全細胞性RNAを単離し、以前に言及したようにRT-PCR分析用に処理した(表3)。BCl-2及びBaxタンパク質ファミリーは、アポトーシスの調節において中心的な役割を果たす。Bax/Bcl-2比は、アポトーシスに対する細胞の感受性を決定するレオスタットとして働くことができ、アポトーシスを受けている細胞はより高いBax/Bcl-2の比を有する(
図19)。対照と比較して、クルクミノイドの中でBDMC>DMC>クルクミンであり、AC3複合体はC3複合体よりも良好であった(
図19)。
【0031】
【0032】
(実施例6)
遊走アッセイ-FLSの遊走及び浸潤は、滑膜炎及び骨破壊において重要な役割を果たす。FLSは局所的に遊走し、血流を通じて遠位領域及び関節に浸潤する場合もある。RA-FLSは、軟骨のマトリックス分解をさらに悪化させ、最終的には骨侵食をもたらす、MMPを分泌する。
FLSの遊走潜在性は、単純な引っ掻きアッセイ及びFLS遊走による創傷の閉鎖を評価することによって研究することができる。未処理のFLSは遊走し、創傷を閉鎖させる一方で、処理したものでは閉鎖が遅延する(J Immunol March 1, 2014, 192 (5) 2063-2070)。FLS細胞(5×10
4個の細胞/ウェル)を24ウェルプレート中に播種し、37℃、5%のCO
2下でインキュベートして約80~90%の集密度に達成させ、その後、200μlのピペットチップで引っ掻くことによって傷をつけた。細片及び浮遊細胞の完全除去を確実にするために、細胞をPBSで洗浄した。その後、細胞を、2%のFBSを含有するDMEM培地中の様々な濃度の試料と共にインキュベートした。対照試料は、いかなる試料をも含まない、細胞及び培養培地を含有していた。細胞遊走は、Magvisionソフトウェアを使用して単層ギャップの閉鎖を評価することによって評価した。創閉鎖の阻害の百分率を対照ウェルと比較して計算した。対照(
図20)と比較して、それぞれ15μg/mLのクルクミノイドの中で、BDMC(
図21)はDMC(
図23)、クルクミン(
図22)よりも良好であった一方で、AC3複合体(
図24)はC3複合体(
図25)よりも良好であり、AC3+Boswellin PS(BPS)(
図29)はAC3(
図27)及びBPS(
図28)よりも良好であった。
【0033】
(実施例7)
ラットにおける関節炎研究
マウスモデル(表4)コラーゲン誘導性関節炎(CIA)は、広く研究されている関節リウマチの自己免疫モデルである。このモデルでは、自己免疫関節炎は、完全フロイントアジュバント中に乳化させたII型コラーゲン(CII)を用いた免疫化によって誘導する。これらの動物は、ヒト自己免疫疾患関節リウマチといくつかの臨床的、組織学的、及び免疫学的な特長を共有する自己免疫媒介性多発性関節炎を発生する。CIIに対する免疫応答は、コラーゲン特異的T細胞の刺激、並びに免疫原(異種CII)及び自己抗原(マウス又はラットCII)のどちらにも特異的な高い力価の抗体の産生の両方によって特徴づけられている。
【0034】
【0035】
関節炎を、不完全フロイントアジュバント(FIA)を用いて1:1の比で乳化した2型コラーゲン(ニワトリ胸骨軟骨、Sigmaカタログ番号:C9301)を投与することによって誘導した。0日目に、ラットに、尾の基部に200μL(200μg/動物)のコラーゲン-FIA乳剤を皮内注射した(初回免疫化)。ブースター注射には、乳剤を上記と同じように調製し、7日目に与える100μL(100μg/動物)のコラーゲン-FIA乳剤で注射した。試験試料を0日目から20日目まで投与した。
(実施例8)
関節炎スコア 関節炎スコア付けの標準方法を使用して、4つすべての足の腫脹及び紅班の度合を評価した。0-徴候なし、1-発赤で浮腫なし、2-発赤で緩和な浮腫あり、3-発赤で重篤な浮腫あり、4-発赤、重篤な浮腫、及び硬直した動き。AC3とBPSの組合せ(
図32)は、それぞれ100及び40mg/kgの濃度で有効であった。セレコキシブは、関節リウマチ対照と共に陽性対照として使用した。
【0036】
(実施例9)
脾臓細胞の脾臓単離におけるTreg及びTh17の分析:リンパ球単離のために、脾臓をコラーゲン誘導性関節炎ラットから無菌的条件下で得た。脾臓を、100μg/mlのストレプトマイシン及び100U/mlのペニシリンを含有するPBSで2回洗浄し、顕微手術用ハサミで小片に切断し、シリンジのプランジャー末端を用いてホモジネートし、100μmのメッシュストレーナーを使用して濾過した。濾液を5分間、1200rpmで遠心分離し、PBSで1~2洗浄し、その後、1×10
6個の細胞/mlを、10%のFBSを添加したRPMI培地中に懸濁させた。不均衡は、3.5のRA対照と比較して、T
h17/Tregの比を好ましくは1、又はより好ましくはT
h17/Tregの比を0~1として(
図35)、T
h17細胞を低下させ、T細胞(Treg)を増加させることによってもたらされる(
図33~35)。
フローサイトメトリー(FCM)分析:Th17及びTreg細胞を評価するために、単離したリンパ球を、4時間、20ng/mLの酢酸ミリスチン酸ホルボール(P8139、Sigma)及び500ng/mLのイオノマイシン、及び製造者によって提案された濃度の、モネンシンを含有するタンパク質輸送阻害剤であるBD GolgiStop(554724、BD)で刺激した。
【0037】
刺激の後、細胞を収集し、Th17及びTreg集団を評価するために2×105個の細胞を異なるチューブに分割した。分析のために使用した抗体希釈率は、それぞれの製造者によって推奨された通りであった。Th17集団を評価するために、細胞を最初にFITCマウス抗ラットCD3(559975、BD pharmingen)及びAPCマウス抗ラットCD4(550057、BD pharmingen)抗体で染色した。Treg集団を評価するために、細胞を最初にAPCマウス抗ラットCD4(550057、BD pharmingen)及びBV421マウス抗ラットCD25(565608、BD pharmingen)抗体で染色した。それぞれの表面染色抗体の添加に続いて、チューブを30分間、4℃、暗所でインキュベートした。表面染色の後、固定及び透過処理溶液(BD Cytofix/Cytoperm、554722)を使用して、製造者の指示に従って、細胞を固定及び透過処理(pemeabilized)し、サポニン含有緩衝液(BD Perm/Wash、554723)中に再懸濁させた。固定及び透過処理に続いて、Th17及びTreg細胞を、PEコンジュゲート抗マウス/ラットIL-17A(12-7177-81、eBioscience)及びPEコンジュゲート抗FOXP3(12-5773-80、eBioscience)抗体のそれぞれと、30分間、4℃、暗所でインキュベートした。その後、細胞をサポニン含有緩衝液で2回洗浄し、染色緩衝液中に再懸濁させた後、フローサイトメトリー分析を行った。FCMはBD FACSCelestaシステム(BD Biosciences、米国ニュージャージー州Franklin Lakes)で行い、FlowJoソフトウェアを使用して分析した。
【0038】
(実施例10)
配合物:組成物を薬学的/栄養補助食品的許容される賦形剤、アジュバント、希釈剤、安定化剤、分散性ガム、生体利用能エンハンサー又は担体と共に配合し、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ、散剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー、又は食料品の形態で経口投与する。
【0039】
関連する態様では、生体利用能エンハンサーは、ピペリン(BioPerine(登録商標))、ケルセチン、ニンニク抽出物、ショウガ抽出物、及びナリンギンの群から選択される。別の関連する態様では、安定化剤は、ロスマリン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、メタ亜硫酸水素ナトリウム、没食子酸プロピル、システイン、アスコルビン酸、及びトコフェロールからなる群から選択される。さらに別の関連する態様では、分散性ガムは、寒天、アルギネート、カラゲナン、アラビアガム、グアルガム、イナゴマメガム、コンニャクガム、キサンタンガム、及びペクチンからなる群から選択される。
表5~9は、ビスデメトキシクルクミンを含有する栄養補助食品配合物の例示的な例を提供する。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
上記配合物は単なる例示的な例であり、前記目的を意図する、上記活性成分を含有するあらゆる配合物が均等物であるとみなされる。
本発明の他の改変及び変動は、前述の開示及び教示から当業者に明らかであろう。したがって、本発明の特定の実施形態のみを本明細書中に具体的に記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに数々の改変をそれに行ってよく、添付の特許請求の範囲と併せてのみ解釈されるべきであることが、明らかであろう。
【配列表】
【国際調査報告】