(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】静脈及び動脈コンプライアンス回復
(51)【国際特許分類】
A61F 2/06 20130101AFI20231221BHJP
【FI】
A61F2/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537153
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 US2021063765
(87)【国際公開番号】W WO2022133066
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルヴィン・ティー・チャン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA16
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097DD15
4C097EE08
(57)【要約】
血液を短絡する方法は、第一の血管の壁と第二の血管の壁に第一の開口部を形成すること、第一のポートが第一の開口部を通して第一の血管と第二の血管との間のアクセスを提供するように、第一の血管の壁に、コンプライアントな流体容器の第一のポートを固定することと、コンプライアントな流体容器の本体を第二の血管内に配置することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を短絡する方法であって、
第一の血管の壁と第二の血管の壁とに第一の開口部を形成することと、
コンプライアントな流体容器の第一のポートが前記第一の開口部を通して前記第一の血管と前記第二の血管との間のアクセスを提供するように、前記第一のポートを前記第一の血管の壁に固定することと、
前記コンプライアントな流体容器の本体を前記第二の血管内に配置することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第一の血管が動脈であり、前記第二の血管が静脈である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一の血管から、前記第一のポートを通して、前記第二の血管内の前記コンプライアントな流体容器の前記本体内に血液を流すことをさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の血管の前記壁と前記第二の血管の前記壁とに第二の開口部を形成することと、
前記コンプライアントな流体容器の第二のポートが前記第二の開口部を通して前記第一の血管と前記第二の血管との間のアクセスを提供するように、前記第二のポートを前記第一の血管の壁に固定することと、
前記コンプライアントな流体容器の前記本体から、前記第二のポートを通して、前記第一の血管内に血液を流すことと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第一のポートと前記第二のポートとの間で、前記コンプライアントな流体容器の前記本体に血液を通すことをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第一のポートが、前記第一の血管内の血流に関して前記第二のポートの上流である、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の血管の壁及び前記第二の血管の前記壁に第三の開口部を形成することと、
第三のポートが前記第二の開口部を通して前記第一の血管と前記第二の血管との間のアクセスを提供するように、前記コンプライアントな流体容器の前記第三のポートを前記第一の血管の壁に固定することと、
前記第三のポートを通して、前記第一の血管と前記コンプライアントな流体容器の前記本体との間に血液を流すことと、を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第三の血管の壁と第四の血管の壁とに第二の開口部を形成することと、
第二のポートが前記第二の開口部を通して前記第三の血管と前記第二の血管との間のアクセスを提供するように、前記コンプライアントな流体容器の前記第二のポートを前記第三の血管の壁に固定することと、
前記第二のポートを通して、前記コンプライアントな流体容器の前記本体から、前記第三の血管内に血液を流すことと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記コンプライアントな流体容器の前記本体の一部分が、前記第四の血管内に配置される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の血管が大動脈であり、前記第二の血管が下大静脈であり、前記第三の血管が腸骨動脈であり、前記第四の血管が腸骨静脈である、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第一のポートが、前記第一の開口部内に配置される前記コンプライアントな流体容器のアンカー構造によって形成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アンカー構造が、前記第一の開口部を開き続けるように構成されたステントを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コンプライアントな流体容器の前記本体を前記第一の血管からの血液で充満することによって、前記第一の血管のコンプライアンスを追加し、それによって、前記第二の血管内の前記コンプライアントな流体容器の本体を拡張することをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
コンプライアンス回復埋め込み装置であって、
流体容器内の圧力レベルが、前記流体容器の外側の圧力レベルよりも大きい時に前記流体容器の断面積が増加し、前記流体容器内の圧力レベルが前記流体容器の外側の圧力レベルよりも小さい時に減少するように構成された、コンプライアントな流体容器と、
前記流体容器に結合され、前記流体容器の内部への流体アクセスを提供するように構成された、第一のポート構造と、を備える、コンプライアンス回復埋め込み装置。
【請求項15】
前記第一のポート構造が血管壁に固定されるように構成される、請求項14に記載のコンプライアンス回復埋め込み装置。
【請求項16】
前記第一のポート構造がステントフレームを含む、請求項14又は15に記載のコンプライアンス回復埋め込み装置。
【請求項17】
前記流体容器に結合され、前記流体容器の前記内部への流体アクセスを提供するように構成された第二のポート構造をさらに備える、請求項14~16のいずれか一項に記載のコンプライアンス回復埋め込み装置。
【請求項18】
前記第一のポート構造が、前記流体容器の第一の端部に結合され、前記第二のポート構造が、前記流体容器の第二の端部に結合される、請求項17に記載のコンプライアンス回復埋め込み装置。
【請求項19】
前記流体容器に結合され、前記流体容器の前記内部への流体アクセスを提供するように構成された第三のポート構造をさらに備える、請求項17又は請求項18に記載のコンプライアンス回復埋め込み装置。
【請求項20】
前記第一のポート構造が、前記第二のポート構造の開口部よりも大きい開口部を有する、請求項17~19のいずれか一項に記載のコンプライアンス回復埋め込み装置。
【請求項21】
前記流体容器が、管状部材及び前記管状部材の周りに配置されたスリーブを含む、請求項14~20のいずれか一項に記載のコンプライアンス回復埋め込み装置。
【請求項22】
前記スリーブが、その断面が前記管状部材内の圧力の増加に応答して、楕円形からより円形に変化するように構成される、請求項21に記載のコンプライアンス回復埋め込み装置。
【請求項23】
前記スリーブが弾性である、請求項21又は請求項22に記載のコンプライアンス回復埋め込み装置。
【請求項24】
前記スリーブが形状記憶合金フレームを含む、請求項21~23のいずれか一項に記載のコンプライアンス回復埋め込み装置。
【請求項25】
前記スリーブが編組みメッシュを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載のコンプライアンス回復埋め込み装置。
【請求項26】
流体バイパス埋め込み装置であって、
コンプライアントな管状構造と、
前記管状構造の第一の端部と関連付けられた第一の流体ポートと、
前記管状構造の第二の端部と関連付けられた第二の流体ポートと、を備える、流体バイパス埋め込み装置。
【請求項27】
前記第一の流体ポート及び前記第二の流体ポートの各々が、血管の内壁に固定するように構成される固定手段を備える、請求項26に記載の流体バイパス埋め込み装置。
【請求項28】
前記固定手段が、前記第一の流体ポート及び前記第二の流体ポートのそれぞれの一つから延在し、前記血管の前記内壁に接触するように構成される、一つ以上のアンカアームを含む、請求項27に記載の流体バイパス埋め込み装置。
【請求項29】
前記固定手段がフランジ構造を含む、請求項27又は28に記載の流体バイパス埋め込み装置。
【請求項30】
前記流体バイパス埋め込み装置の流体チャネル内に少なくとも部分的に配置される流れ制御手段をさらに含む、請求項26に記載の流体バイパス埋め込み装置。
【請求項31】
前記流れ制御手段が一方向弁を含む、請求項30に記載の流体バイパス埋め込み装置。
【請求項32】
前記第一の流体ポート及び前記第二の流体ポートのうちの一つ以上にそれぞれ連結された一つ以上の弁装置をさらに備える、請求項26に記載の流体バイパス埋め込み装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年12月18日に出願され、「INTRAVENOUS ARTERIAL COMPLIANCE RESTORATION」と題された米国仮特許出願第63/199,324号に対する優先権を主張し、その完全な開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は概して、医療用埋め込みデバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
大動脈などの動脈を含む特定の血管のコンプライアンスが不十分又は低いと、灌流の低下、心拍出量、及びその他の健康上の合併症が生じることがある。このような血管のコンプライアンスを回復させることで、患者の転帰を改善することができる。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、望ましくないほど硬い血管のコンプライアンス特性の回復を促進する装置、方法、及びシステムが説明される。本開示の様々な実施形態に関連する装置は、そのコンプライアンスを高めるために装置が動脈血管と流体連通して移植される時に、静脈血管内に位置付けられる/配置されるように構成された、適合する本体特徴を含むことができる。
【0005】
いくつかの実装では、本開示は、血液を短絡する方法に関する。方法は、第一の血管の壁と第二の血管の壁に第一の開口部を形成することと、第一のポートが第一の開口部を通して第一の血管と第二の血管との間のアクセスを提供するように、第一の血管の壁に、コンプライアントな流体容器の第一のポートを固定することと、コンプライアントな流体容器の本体を第二の血管内に配置することと、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、第一の血管は動脈であり、第二の血管は静脈である。
【0007】
方法は、第一の血管から、第一のポートを通して、第二の血管内のコンプライアントな流体容器の本体内に血液を流すことをさらに含むことができる。例えば、いくつかの実装では、方法は、第一の血管の壁と第二の血管の壁に第二の開口部を形成することと、第二のポートが第二の開口部を通して第一の血管と第二の血管との間のアクセスを提供するように、第一の血管の壁に、コンプライアントな流体容器の第二のポートを固定することと、第二のポートを通してコンプライアントな流体容器の本体から第一の血管内に血液を流すことと、をさらに含む。
【0008】
方法は、第一のポートと第二のポートとの間で、コンプライアントな流体容器の本体に血液を通すことをさらに含むことができる。いくつかの実装では、第一のポートは、第一の血管内の血流に関して、第二のポートの上流にある。
【0009】
いくつかの実装では、方法は、第一の血管の壁と第二の血管の壁に第三の開口部を形成することと、第三のポートが第二の開口部を通して第一の血管と第二の血管との間のアクセスを提供するように、第一の血管の壁に、コンプライアントな流体容器の第三のポートを固定することと、第三のポートを通して第一の血管とコンプライアントな流体容器の本体の間に血液を流すことと、をさらに含む。
【0010】
方法は、第三の血管の壁と第四の血管の壁に第二の開口部を形成することと、第二のポートが第二の開口部を通して第三の血管と第二の血管との間のアクセスを提供するように、第三の血管の壁に、コンプライアントな流体容器の第二のポートを固定することと、第二のポートを通してコンプライアントな流体容器の本体から第三の血管内に血液を流すことと、をさらに含む。
【0011】
コンプライアントな流体容器の本体の一部分は、第四の血管内に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、第一の血管は大動脈であり、第二の血管は下大静脈であり、第三の血管は腸骨動脈であり、第四の血管は腸骨静脈である。
【0012】
いくつかの実施形態では、第一のポートは、第一の開口部内に配置されるコンプライアントな流体容器のアンカー構造によって形成される。例えば、アンカー構造は、第一の開口部を開き続けるように構成されたステントを含み得る。
【0013】
方法は、コンプライアントな流体容器の本体を第一の血管からの血液で充填することによって、第一の血管のコンプライアンスを追加することをさらに含み、それによって、第二の血管内のコンプライアントな流体容器の本体を拡張してもよい。
【0014】
いくつかの実装では、本開示は、流体容器内の圧力レベルが流体容器の外側の圧力レベルよりも大きい時に流体容器の断面積が増加し、流体容器内の圧力レベルが流体容器の外側の圧力レベルよりも小さい時に減少するように構成された、コンプライアントな流体容器と、流体容器に結合され、流体容器の内部への流体アクセスを提供するように構成された第一のポート構造と、を備える、コンプライアンス回復埋め込み装置に関する。
【0015】
第一のポート構造は、血管壁に固定されるように構成され得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、第一のポート構造は、ステントフレームを含む。
【0017】
コンプライアンス回復埋め込み装置は、流体容器に結合され、流体容器の内部への流体アクセスを提供するように構成された第二のポート構造をさらに備えてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、第一のポート構造は、流体容器の第一の端部に結合され、第二のポート構造は、流体容器の第二の端部に結合される。
【0018】
コンプライアンス回復埋め込み装置は、流体容器に結合され、流体容器の内部への流体アクセスを提供するように構成された第三のポート構造をさらに備えてもよい。いくつかの実施形態では、第一のポート構造は、第二のポート構造の開口部よりも大きい開口部を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、流体容器は、管状部材及び管状部材の周りに配置されたスリーブを含む。例えば、スリーブは、その断面が管状部材内の圧力の増加に応答して、楕円形からより円形に変化するように構成され得る。いくつかの実施形態では、スリーブは弾性である。いくつかの実施形態では、スリーブは、形状記憶合金フレームを含む。いくつかの実施形態では、スリーブは編組みメッシュを含む。
【0020】
いくつかの実装では、本開示は、コンプライアントな管状構造、管状構造の第一の端部と関連付けられた第一の流体ポート、及び管状構造の第二の端部と関連付けられた第二の流体ポートを含む、流体バイパス埋め込み装置に関する。
【0021】
第一の流体ポート及び第二の流体ポートの各々は、血管の内壁に固定するように構成された固定手段を含み得る。例えば、固定手段は、第一の流体ポート及び第二の流体ポートのそれぞれの一つから延在し、血管の内壁に接触するように構成される、一つ以上のアンカアームを含む。いくつかの実施形態では、固定手段はフランジ構造を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、流体バイパス埋め込み装置は、流体バイパス埋め込み装置の流体チャネル内に少なくとも部分的に配置される流れ制御手段をさらに含む。例えば、流れ制御手段は一方向弁を含み得る。
【0023】
流体バイパス埋め込み装置は、第一の流体ポート及び第二の流体ポートのうちの一つ以上にそれぞれ結合された一つ以上の弁装置を含み得る。
【0024】
本開示を要約する目的で、特定の態様、利点、及び新規の特徴が記載されている。全てのそのような利点は、必ずしも任意の特定の実施形態に従って達成され得るわけではないことが理解されるべきである。したがって、開示された実施形態は、本明細書に教示又は示唆され得る他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書に教示されるような1つの利点又は利点の群を達成又は最適化する様式で実施され得る。
【0025】
様々な実施形態が、例解目的で添付図面に描写されており、決して本発明の範囲を限定していると解釈されるべきではない。加えて、異なる開示された実施形態の様々な特徴が、本開示の一部である追加の実施形態を形成するために組み合わせられ得る。図面全体を通して、参照番号は、参照要素間の対応を示すために再使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の開示の一つ以上の実施形態に関連する様々な特徴を有する心臓及び関連する血管系の例示的な表現を示す。
【
図2A】
図2Aは、心周期の収縮期中にコンプライアントな拡張を経験する血管の断面図を提供する。
【
図2B】
図2Bは、心周期の収縮期中にコンプライアントな拡張を経験する血管の側面図を提供する。
【
図4】
図4は、健康な患者の例における経時的な血圧を示すグラフである。
【
図5】
図5は、大動脈コンプライアンスが低下した例示的な患者における経時的な血圧を示すグラフである。
【
図6】
図6は、一つ以上の実施形態による、動脈血管及び静脈血管に移植されたコンプライアンス回復装置の断面図である。
【
図7】
図7は、一つ以上の実施形態による、ステントタイプのポート補強構造を含むコンプライアンス回復装置の側面図を示す。
【
図8A】
図8Aは、一つ以上の実施形態による、その本体部分に関連付けられたコンプライアントスリーブを含むコンプライアンス回復装置の側面図を示す。
【
図8B】
図8Bは、一つ以上の実施形態による、圧縮された構成における、
図8Aのコンプライアントスリーブの断面図を示す。
【
図8C】
図8Cは、一つ以上の実施形態による、拡張された構成における、
図8Aのコンプライアントスリーブの断面図を示す。
【
図9】
図9は、一つ以上の実施形態による、異なる形状を有するポート構造を含むコンプライアンス回復装置の断面図である。
【
図10】
図10は、一つ以上の実施形態による、流れ制御機構を含むコンプライアンス回復装置の断面図である。
【
図11】
図11は、一つ以上の実施形態による、二つ以上のポートを含むコンプライアンス回復装置の断面図である。
【
図12】
図12は、一つ以上の実施形態による、動脈血管及び静脈血管に移植されたコンプライアンス回復装置の断面図である。
【
図13】
図13は、一つ以上の実施形態による、動脈血管及び静脈血管に移植された単一ポートコンプライアンス回復装置の断面図である。
【
図14-1】
図14-1は、一つ以上の実施形態によるコンプライアンス回復装置を移植するためのプロセスの流れ図を示す。
【
図14-2】
図14-2は、一つ以上の実施形態によるコンプライアンス回復装置を移植するためのプロセスの流れ図を示す。
【
図14-3】
図14-3は、一つ以上の実施形態によるコンプライアンス回復装置を移植するためのプロセスの流れ図を示す。
【
図14-4】
図14-4は、一つ以上の実施形態によるコンプライアンス回復装置を移植するためのプロセスの流れ図を示す。
【
図14-5】
図14-5は、一つ以上の実施形態によるコンプライアンス回復装置を移植するためのプロセスの流れ図を示す。
【
図15-1】
図15-1は、一つ以上の実施形態による、
図14-1のプロセスの動作に対応するコンプライアンス回復装置及び特定の解剖学的構造の画像である。
【
図15-2】
図15-2は、一つ以上の実施形態による、
図14-2のプロセスの動作に対応するコンプライアンス回復装置及び特定の解剖学的構造の画像である。
【
図15-3】
図15-3は、一つ以上の実施形態による、
図14-3のプロセスの動作に対応するコンプライアンス回復装置及び特定の解剖学的構造の画像である。
【
図15-4】
図15-4は、一つ以上の実施形態による、
図14-4のプロセスの動作に対応するコンプライアンス回復装置及び特定の解剖学的構造の画像である。
【
図15-5】
図15-5は、一つ以上の実施形態による、
図14-5のプロセスの動作に対応するコンプライアンス回復装置及び特定の解剖学的構造の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に提供される見出しは、単に便宜上のものであり、請求された発明の範囲又は意味に必ずしも影響するものではない。
【0028】
特定の好ましい実施形態及び実施例が以下に開示されているが、本発明の主題は、具体的に開示された実施形態を超えて、他の代替的な実施形態及び/又は用途、並びにその修正及び均等物にまで及ぶことを理解されたい。したがって、本明細書から生じ得る特許請求の範囲は、以下に記載される特定の実施形態のいずれによっても限定されない。例えば、本明細書に開示される任意の方法又はプロセスでは、方法又はプロセスの作用又は動作は、任意の好適な順序で実施され得、必ずしも任意の特定の開示される順序に限定されない。様々な動作は、特定の実施形態を理解するのに有用であり得る様式で、複数の別個の動作として順次説明され得るが、記載の順序は、これらの動作が順序依存性であることを暗示するものとして解釈されるべきではない。加えて、本明細書に記載される構造、システム、及び/又はデバイスは、一体化された構成要素として、又は別個の構成要素として具現化され得る。様々な実施形態を比較する目的で、これらの実施形態の特定の態様及び利点が記載されている。全てのそのような態様又は利点が、必ずしも任意の特定の実施形態によって達成されるとは限らない。したがって、例えば、様々な実施形態は、本明細書に同様に教示又は示唆され得る他の態様又は利点を必ずしも達成することなく、本明細書に教示されるような1つの利点又は利点の群を達成又は最適化する様式で実施され得る。
【0029】
位置の特定の標準的な解剖学的用語は、本明細書では、様々な実施形態に関して、動物、すなわちヒトの解剖学的構造を指すために使用される。「外側」、「内側」、「上部」、「下部」、「下」、「上」、「垂直」、「水平」、「頂部」、「底部」などの特定の空間的に相対的な用語及び同様の用語が、1つのデバイス/要素又は解剖学的構造の別のデバイス/要素又は解剖学的構造に対する空間的な関係を説明するために本明細書で使用されるが、これらの用語は、図面に例示される要素/構造間の位置関係を説明するために説明の容易さのために本明細書で使用されることが理解される。空間的に相対的な用語は、図面に示される方向に加えて、図面に図示される配向に加えて、使用又は動作中の要素/構造の異なる配向を包含することを意図していることを理解されたい。例えば、別の要素/構造の「上」として説明された要素/構造は、対象の患者又は要素/構造の代替的な配向に関して、そのような他の要素/構造の下又は横にある位置を表す場合があり、その逆も同様である。上に列挙されたものを含む空間的に相対的な用語は、参照される図のそれぞれの図示された配向に対して理解され得ることが理解されるべきである。
【0030】
[血管コンプライアンス及び解剖学的構造]
特定の実施形態は、血管移植装置、特に大動脈及び/又は下大静脈に移植されたコンプライアンス回復埋め込み装置に関連して本明細書に開示される。しかしながら、本明細書に開示される特定の原理は、大動脈及び下大静脈の解剖学的構造に特に適用可能であり得るが、本開示によるコンプライアンス回復埋め込み装置は、任意の好適な若しくは望ましい血管又は解剖学的構造に埋め込まれ得るか、又は埋め込みのために構成され得ることが理解されるべきである。
【0031】
心臓の解剖学的構造及び血管系は、本明細書に開示される特定の発明の概念の理解を支援するために以下に記載される。ヒト及び他の脊椎動物では、心臓は、概して、4つのポンプ室を有する筋肉性の器官を備え、その流れは、様々な心臓弁、すなわち、大動脈弁、僧帽弁(又は二尖弁)、三尖弁、及び肺動脈弁によって少なくとも部分的に制御される。弁は、心周期の様々な段階(例えば、弛緩及び収縮)の間に存在する圧力勾配に応答して、心臓のそれぞれの領域及び/又は血管(例えば、心室、肺動脈、大動脈など)への血液の流れを少なくとも部分的に制御するように構成され得る。様々な心筋の収縮は、心臓の電気システムによって生成されるシグナルによって促進され得、これは、以下で詳しく論じられる。
【0032】
図1は、本発明の開示の一つ以上の実施形態に関連する様々な特徴を有する心臓1及び関連する血管系の例示的な表現を示す。心臓1は、4つの心腔、すなわち、左心房2、左心室3、右心室4、及び右心房5を含む。血流に関しては、概して、血液は、右心室4から肺動脈弁9を介して肺動脈に流れ、これは、右心室4を肺動脈11から分離し、血液が肺に向かってポンピングされ得るように収縮期中に開き、拡張期中に閉じて、肺動脈11から心臓に血液が逆流するのを防ぐように構成されている。
【0033】
肺動脈11は、脱酸素化された血液を心臓の右側から肺に運ぶ。示されるように、肺動脈11は、肺動脈幹、及び肺動脈幹から分岐する左及び右の肺動脈を含む。肺動脈弁9に加えて、心臓1は、三尖弁8、大動脈弁7、及び僧帽弁6を含む、その中の血液の循環を支援するための3つの追加の弁を含む。三尖弁8は、右心房5を右心室4から分離する。三尖弁8は、概して、3つの尖点/弁尖を有し、概して、心室収縮中(すなわち、収縮期)に閉じ、心室拡張中(すなわち、拡張期)に開き得る。僧帽弁6は、概して、2つの尖点/弁尖を有し、左心房2を左心室3から分離する。僧帽弁6は、左心房2内の血液が左心室3に流入し得るように拡張期中に開き、適切に機能している場合は、血液が左心房2に逆流するのを防ぐように収縮期中に閉じるように構成されている。大動脈弁7は、左心室3を大動脈12から分離する。大動脈弁7は、血液が左心室3を出て大動脈12に入ることを可能にするように収縮期中に開き、血液が左心室3に逆流するのを防ぐように拡張期中に閉じるように構成されている。
【0034】
心臓弁は、概して、本明細書では弁輪と称される比較的密度の高い線維輪、及び弁輪に取り付けられた複数の弁尖又は尖点を含み得る。概して、弁尖又は尖点のサイズは、心臓が収縮したときに、対応する心腔内で生成された結果として血圧が上昇し、弁尖が少なくとも部分的に開いて、心腔からの流れを可能にするようなものであり得る。心腔内の圧力が低下すると、後続の心腔又は血管内の圧力が優勢になり、弁尖に向かって押し戻され得る。その結果として、弁尖/尖点は互いに並置し、それによって流路が閉じられる。心臓弁及び/又は関連する弁尖の機能障害(例えば、肺動脈弁機能障害)は、弁漏れ及び/又は他の健康上の合併症をもたらし得る。
【0035】
房室(すなわち、僧帽及び三尖)心臓弁は、概して、弁尖の適切な癒合を促進及び/又は容易にし、その脱出を防止するために、それぞれの弁の弁尖を固設する腱索及び乳頭筋(図示せず)の集合と結合している。乳頭筋は、概して、例えば、心室壁からの指様突出部を含み得る。弁の弁尖は、腱索によって乳頭筋に接続される。中隔と称される筋肉17の壁は、左心房2及び右心房5並びに左心室3及び右心室4を分離する。
【0036】
循環系、心血管系、又は血管系と称され得るヒトの体内の血管系は、様々な構造及び機能を有する血管の複雑なネットワークを含み、様々な静脈(静脈系)及び動脈(動脈系)を含む。動脈と静脈はどちらも、心血管系の血管の一種である。一般的に、大動脈などの動脈は血液を心臓から離れる方向に運び、下大静脈や上大静脈などの静脈は血液を心臓に戻す。
【0037】
上述のように、大動脈は大動脈弁7を介して心臓1に結合され、これは上行大動脈12につながり、腕頭動脈27、左総頸動脈28、及び左鎖骨下動脈26を大動脈弓に沿って生み、その後、下行胸部大動脈13及び腹部大動脈15として継続する。本明細書における大動脈への言及は、上行大動脈(「上行胸部大動脈」とも呼ぶ)、大動脈弓、下行大動脈、胸部大動脈(「下行胸部大動脈」とも呼ぶ)、腹部大動脈、又は他の動脈血管もしくはその一部を指すことが理解されよう。
【0038】
腹部大動脈15などの動脈は、血管コンプライアンス(例えば、動脈コンプライアンス)を利用して、血管壁の伸張を通してエネルギーを貯蔵及び放出し得る。「コンプライアンス」という用語は、その広範かつ通常の意味に従って本明細書で使用され、動脈血管又は人工埋め込み装置が、経壁圧の増加、又は血管(例えば、動脈)もしくは人工埋め込み装置もしくはその一部分の、膨張力又は圧縮力の印加時にその元の寸法に向かった反跳に抵抗する傾向に応答して、膨張、拡張、伸張、又はその他の方法で変形する能力を指しうる。血管又は人工埋め込み装置のコンプライアンスは、血管壁の弾性又は伸縮性に基づく場合もあれば、そうでない場合もある。
【0039】
動脈コンプライアンスは、心臓からの酸素化された血液による体内での臓器の灌流を促進する。一般的に、健康な大動脈及び体内の他の主要動脈は、少なくとも部分的に弾性かつコンプライアントであり、その結果、心臓が収縮期に収縮して圧力を発生させ続け、拡張期に体内の器官に血液を押し出す時に、血液の貯蔵庫として作用し、血液で充満することができる。高齢者及び心不全及び/又はアテローム性動脈硬化症に罹患している患者では、大動脈及び他の動脈コンプライアンスがある程度低下するか、又は失われ得る。このようなコンプライアンスの低下は、拡張期の血流の減少により、身体の器官への血液供給を減少させ得る。不十分な動脈コンプライアンスに関連するリスクの中でも、このような患者にもたらされる重大なリスクは、心筋自体への血液供給の減少である。例えば、収縮期に、比較的高い圧力で心臓を保持する心臓の収縮により、一般に、血液がほとんど又は全く冠動脈内及び心筋内に流れない場合がある。拡張期には、心筋は一般に弛緩し、冠動脈への流入を可能にする。そのため、心筋の灌流は拡張期血流、したがって大動脈/動脈コンプライアンスに依存する。
【0040】
心筋の不十分な灌流は、心不全をもたらし得る、及び/又は心不全と関連し得る。心不全は、息切れ、足首の腫脹、疲労、その他を含む特定の症状によって特徴付けられる臨床症候群である。心不全は、例えば、構造的及び/又は機能的心臓異常によって引き起こされうる、頸静脈圧の上昇、肺のパチパチ音及び末梢性浮腫を含む、特定の兆候を伴う場合がある。こうした状態は、安静時又はストレス時の心拍出量の減少及び/又は心内圧の上昇をもたらし得る。
【0041】
図2A及び
図2Bはそれぞれ、心周期の収縮期中に拡張を経験する、動脈(例えば、大動脈)などの血管215の断面図及び側面図を提供する。当業者であれば理解するように、心周期の収縮期は、左心室のポンプ期と関連付けられ、一方、心周期の拡張期は、左心室の休止期又は充満期と関連付けられる。
図2A及び
図2Bに示すように、適切な動脈コンプライアンスでは、動脈内の圧力が増加すると、一般的に動脈内の体積の増加が生じる。大動脈に関しては、
図2A及び
図2Bに示すように、血液が大動脈弁207を介して大動脈215にポンプで送られると、大動脈の圧力が上昇し、大動脈の少なくとも一部分の直径が拡張する。収縮期に大動脈215に入る血液の第一の部分は、収縮期に大動脈を通過してもよく、一方で第二の部分(例えば、総血液量のおよそ半分)は、動脈コンプライアンスによって引き起こされる拡張体積に貯蔵されてもよく、それによって拡張期中に灌流に寄与するためのエネルギーを貯蔵する。コンプライアントな大動脈は、大動脈の少なくとも一部分の直径が拡張するように、各心拍と共に一般的に伸張し得る。
【0042】
動脈コンプライアンスの結果として動脈が圧力に応答して伸張する傾向は、一部の患者において灌流及び/又は血圧に有意な効果を有し得る。例えば、比較的高いコンプライアンスの動脈は、同じ圧力及び/又は体積条件下で、より低いコンプライアンスの動脈よりもより簡単に変形するように調整され得る。コンプライアンス(C)は、以下の方程式を使用して計算されてもよく、式中、Vは、体積の変化(例えば、mL)であり、Pは、収縮期から拡張期へのパルス圧(例えば、mmHg)である。
【0043】
【0044】
大動脈硬直及びコンプライアンスの低下は、収縮期血圧の上昇をもたらす可能性があり、これは次に、心内圧の上昇、後負荷の増加、及び/又は心不全を悪化させる可能性のある他の合併症につながる可能性がある。大動脈硬直は、拡張期血流の減少をさらにもたらし、これは冠動脈灌流の減少、心臓供給の減少、及び/又は同様に心不全を悪化させることができる他の合併症をもたらし得る。
【0045】
本明細書に開示される動脈コンプライアンス回復装置、方法、及び概念は、概して、胸部大動脈及び/又は腹部大動脈との関連で説明され得る。しかしながら、こうした装置、方法及び/又は概念は、任意の他の動脈又は血管に関連して適用され得ることが理解されるべきである。
【0046】
図3A及び
図3Bはそれぞれ、心周期の拡張期中の
図2A及び
図2Bに示される動脈215の断面図及び側面図を提供する。示されるように、動脈コンプライアンスは、拡張期に血管壁の内向きの収縮を引き起こし、それによって、弁207が閉鎖された時に動脈215を通して血液を押し続ける圧力を生じ得る。例えば、収縮期中、弁207を通して動脈215に入る血液の約50%が動脈を通過してもよく、一方、残りの50%は、血管壁の拡張によって可能になる動脈に貯蔵されてもよい。動脈215に貯蔵された血液の一部又はすべては、拡張期に収縮する血管壁によって動脈を通って押し出され得る。動脈硬化(すなわち、コンプライアンスの欠如)を経験している患者については、その動脈は、
図2A及び
図2Bならびに
図3A及び
図3Bに示される拡張/収縮機能に従って効果的に動作しない場合がある。
【0047】
図4は、健康な患者の例における経時的な血圧を示すグラフであり、動脈圧は、前方収縮期圧力波701と後方拡張期圧力波702の組み合わせとして表される。収縮期波701と拡張期波702の組み合わせは、波形703によって表される。
【0048】
図5は、大動脈コンプライアンスが低下した例示的な患者における経時的な血圧を示すグラフである。
図5のグラフは、参照目的のために、
図4に示される組み合わせた波703の例を示す。低いコンプライアンスが示される場合、健康な患者と比較して、大動脈に貯蔵されるエネルギーがより少ない場合がある。したがって、収縮期波形802は、正常なコンプライアンスを有する患者と比較して圧力の増加を示してもよく、一方、拡張期波形801は、正常なコンプライアンスを有する患者と比較して圧力の低下を示し得る。したがって、結果として得られる組み合わせ波形803は、収縮期ピークの増加及び拡張期圧の低下を表してもよく、これは様々な健康上の合併症を引き起こし得る。例えば、波形の変化は、左心室の負荷に影響を与え、冠動脈灌流に悪影響を与えうる。
【0049】
動脈コンプライアンスの低下と関連し得る健康上の合併症を考慮すると、上述のように、心臓及び/又は他の臓器の健康を改善するために、特定の患者及び/又は特定の条件下で、大動脈又は他の動脈又は血管のコンプライアンス特性を少なくとも部分的に変更することが望ましい場合がある。本明細書では、大動脈などの血管のコンプライアンスを少なくとも部分的に回復するための様々な装置及び方法が開示される。本明細書に開示される特定の実施形態では、いくつかの実施形態で動脈バイパスチャネルを実施するために使用できる、移植可能なコンプライアントな流体容器の使用を通して動脈コンプライアンスの回復を達成する。例えば、本開示によるコンプライアンス回復装置は、動脈壁内/動脈壁にあり得る拡張可能な流体容器本体部分/部材を備えてもよく、本体部分/部材は、少なくとも部分的に隣接静脈内に移植されるように構成される。装置は、動脈壁及び静脈壁を通してポート開口部を支持/維持して、動脈と静脈内に配置されたコンプライアントな本体部分との間の流体連通を提供するように構成されたアンカー構造を含み得る。装置は、ワイヤ形態又はステントアンカーなどの任意の適切なタイプのアンカー手段を使用して血管壁に固定され得る。コンプライアンス回復装置の特定の実施形態は、大動脈及び下大静脈における展開の文脈で本明細書に記述されているが、本開示によるコンプライアンス回復装置は、コンプライアンス特性の増加から利益を得る可能性のある心臓の任意の心腔又は任意の大動脈又は静脈に展開され得ることが理解されるべきである。本明細書に開示されるコンプライアンス回復装置は、冠動脈灌流を少なくとも部分的に増加させる役割を果たし得る。
【0050】
[コンプライアンス回復埋め込み装置]
本開示は、大動脈及び/又は他の動脈(及び/又は静脈)血管(複数可)にコンプライアンスを再び加え、心筋及び/又は他の身体の器官(複数可)の改善された灌流を提供するシステム、装置、及び方法に関する。例えば、本開示の実施形態は、大動脈/動脈血液が静脈血管(例えば、下大静脈)の一部を通過するように、大動脈及び/又は他の動脈血管から下大静脈及び/又は他の静脈血管への流れをバイパスするように構成された、コンプライアントな管状バイパス装置を含み得る。
【0051】
静脈血管内に少なくとも部分的に配置されるコンプライアントな流体容器を通る動脈血流をバイパスすることによって、本開示の実施形態は、特定の他のコンプライアンス回復の解決法と比較して、凝固/塞栓形成のリスクが低減される方法で動脈コンプライアンスを増加させることができる。さらに、静脈血管(複数可)の外部に配置されるのとは対照的に、静脈血管内に配置された流体容器本体では、血液漏出及び/又は容器の破裂の発生が血管(複数可)内に制限され得、それによって、腹腔及び/又は胸腔内などの血管外動脈血漏出に関連する危険が低減される。むしろ、そのような血液漏出は、静脈系内に堆積され得、患者に対して害をほとんど又は全くもたらさない。さらに、本明細書に開示される装置は、経腔送達/アクセスを使用して移植することができ、それによって、動脈系ではなく静脈系(例えば、下大静脈)を通して送達システム構成要素及び/又は他の作業器具を前進させることが可能になり、それにより、比較的大きな輪郭の装置/システムを使用することができ、及び/又は装置の移植(複数可)のための比較的安全なアクセス及び手順の実施を他の方法で提供することができる。
【0052】
図6は、一つ以上の実施形態による動脈15及び静脈19血管に移植されたコンプライアンス回復装置100の断面図である。コンプライアンス回復埋め込み装置100は、血流バイパスチャネル115を提供する方法で移植されたものとして示されており、動脈(例えば、大動脈)15から血液が流れ出て、動脈15の下流領域に戻ることができる。バイパス構造110は、有利なことにコンプライアントである。
図6では、バイパス構造110は、下大静脈19に移植されたものとして示されており、コンプライアンス回復装置100は、大動脈15から下大静脈19内の弾性バイパス構造110への流体アクセスを提供するように構成された第一のポート構造120及び第二のポート構造122を含む。しかしながら、本開示の実施形態は、任意の動脈及び/又は静脈血管(複数可)に移植され得る移植装置に関することを理解されたい。
【0053】
弾性バイパス構造110は、管状バイパス部材であってもよい。コンプライアントなバイパス構造110は有利なことにコンプライアントであり、収縮期に一つ以上の寸法に対して拡張し、バイパス構造110が動脈15及び/又は静脈19の血管の圧力の変化に応答して拡張期に収縮又は変形した時に放出されるエネルギーを貯蔵するように構成される。移植された時、埋め込み装置100は、静脈血管19(例えば、下大静脈)内に少なくとも部分的に常駐し、動脈血管15(例えば、大動脈)と比較して圧力が概してより低くてもよい。動脈壁79と静脈壁78の開口部と埋め込み装置100との間の密封を容易にするように構成される、上部ポート構造120及び下部ポート構造122を含めることができ、これにより、動脈血管15からの血液が、収縮期及び拡張期の間にそれぞれ、コンプライアントなバイパス構造110に流入し、収縮期及び拡張期に行き来することができる。ポート構造は、動脈79及び静脈壁78の開口部(複数可)を維持するように構成されてもよく、特定の壁アンカー構造(複数可)(例えば、形状記憶合金フレーム)を含んでもよい。
【0054】
図6に示すように、動脈(例えば、大動脈)血流は、それぞれ動脈15の壁及び隣接する静脈(例えば、下大静脈)19を通って開口部101を通過することができる。「開口部」という用語は、その広範かつ通常の意味に従って本明細書で使用される。一つ以上の血管に移植された本開示の埋め込み装置に関して、「開口部」という用語は、大動脈血管、静脈血管、及び/又は、動脈血管壁及び静脈血管壁の少なくとも部分的に重複する開口部の両方を通る開口部の組み合わせ内の開口部を指してもよく、その結果、開口部の重複は、両方の血管壁を通る単一の開口部を提供する。開口部101は、ポート/アンカー構造120によって維持されてもよく、これは、ステント、シャント、及び/又は他の構造などの任意の適切な又は望ましい構造又は形態を有してもよい。
【0055】
一つ以上のポート/アンカー構造120、122で図示されているが、本開示の埋め込み装置は、ポート/アンカー構造を含まずに移植されてもよいことが理解されるべきである。例えば、コンプライアントな(例えば、伸縮性の、弾性の)バイパス構造110は、こうした開口部を開き続ける、及び/又はインプラントを血管壁(複数可)に固定するための別個の構造的特徴がなくとも、一つ以上の流体ポート/開口部101、102を提供するために定位置に固定され得る。
【0056】
コンプライアンス回復装置100は、上部入口ポート120及び下部出口ポート122を含む。装置100は、一つ以上の接触アーム、フランジ、グロメット、縫合、タブ、フープ、ワイヤ形態、バーブ、及び/又は類似のものなど、任意の適切な又は望ましい固定手段を使用して、動脈壁79及び/又は静脈血管19(例えば、下大静脈)78の壁78内に固定され得る。
【0057】
図6に図示された矢印によって示されるように、動脈血管15から、コンプライアントなバイパス構造/本体110を通って、動脈系内に戻るバイパス血流は、その中への方向の流れによる弾性バイパス構造内での血液プールの欠如による、凝固リスクの減少により、動脈コンプライアンスの増加をもたらすことができる。本明細書ではコンプライアントなバイパス構造110と称される埋め込み装置の本体を静脈血管19(例えば、下大静脈)に配置することによって、動脈血管15及び静脈血管19にコンプライアンスを再び加えることができる。例えば、動脈血管15内の圧力が増加すると、増加した流量がバイパス構造110に入り、それによって、コンプライアントなバイパス構造を外向きに拡張させるか、又はそのコンプライアンス及び/もしくは弾性特性のために他の方法で変形させる。動脈血管15の圧力が減少すると、その拡張によってコンプライアントなバイパス構造110に貯蔵されたエネルギーは、バイパス構造110を収縮させ、それによって、バイパス構造110から血流を動脈系に押し出し、動脈系にコンプライアンスが再び加えられる。さらに、静脈血管19内でのコンプライアントなバイパス構造110の拡張は、静脈血管19内の圧力を増加させ、及び/又はその中に配置される流体を、ある程度まで静脈系内でのコンプライアンス及び/又は流れを増加させるような様式で押すことができる。したがって、単一の埋め込み装置100は、患者の循環系の動脈系及び静脈系の両方のコンプライアンスを増加させるのに役立つ。
【0058】
コンプライアントなバイパス構造110が、少なくとも部分的に静脈血管19内に配置されるように装置100を移植することによって、埋め込み装置100が何らかの方法で漏出又は破裂する場合、こうした漏出は、循環系内、特に静脈系(例えば、下大静脈19)で実質的に維持され得る。静脈血管(複数可)内のこうした漏出は、体腔内の循環系外部の血流漏出と比較して、患者への比較的少ない損傷/損傷をもたらし得る。例えば、静脈血管内での漏出は、患者に実質的に損傷又は傷害をもたらさない場合がある。
【0059】
バイパス構造110は、弾性ポリマー又は他の材料などのコンプライアントな材料から構築することができる。いくつかの実施形態では、コンプライアントなバイパス構造110は、織られた形状記憶合金の編組み構造など、織られた構造を含む。さらに、コンプライアントなバイパス構造110は、静脈血管(例えば、下大静脈)19及び/又は複数の静脈血管(例えば、下大静脈及び腸骨静脈)内に移植されるように構成されているため、コンプライアントなバイパス構造110が形成される材料は、いくつかの実装では半透過性であってもよく、コンプライアントなバイパス構造110の可撓性膜を通してある程度の量の血液が静脈系内に浸潤することは、許容可能/取るに足りず、及び/又は有害作用のリスクの減少を呈する場合がある。
【0060】
コンプライアントなバイパス構造110は管状バイパス構造として図示されているが、当然のことながら、コンプライアントなバイパス構造110は、任意の適切な又は望ましい形状又は形態を有し得る。例えば、バイパス構造110は、必ずしも管状ではないパウチタイプの形態を有してもよい。さらに、構造110はバイパス構造として記述されているが、いくつかの実施形態では、本開示の
図13に図示するように、また以下でさらに詳細に説明するように、構造110は、動脈血管15の上流ポート/開口部から動脈システムの下流ポート/開口部に血流を通すことによって提供するのではなく、むしろ、動脈壁を通してポート/開口部を通して、構造110内に血液を循環させてもよく、血液が同じポートを通して動脈系に再び導入され、その結果、実質的に動脈システムのセグメントは装置100を通してバイパスされない。
【0061】
いくつかの実施形態では、バイパス構造110は、ポリマー又は弾性材料に加えて、又は代替として、生体組織を含む(例えば、
図8A~8Cを参照)。例えば、ウシ心膜組織がバイパス構造110を形成するために利用されてもよく、形状記憶合金の編組み又はフレームなどの二次構造が構造110の周りに固定されて、必要に応じて、システムへのコンプライアンスを再導入するために埋め込み装置100が伸張/伸張及び収縮/回復できるようにする。
【0062】
概して、動脈血管15と静脈血管19との間に圧力勾配が存在してもよく、動脈血管15内の圧力レベルは、心周期の少なくとも一部分を通して静脈血管19内の圧力よりも高い。さらに、一部の状況では、血管の外側(例えば、腹部及び/又は胸腔内)の圧力レベルは、静脈血管19内よりも大きくてもよい。したがって、血管壁79の開口部101を通して動脈血管15から押し出された血液は、血管系の外側の周囲の解剖学的領域内に脱出するのではなく、静脈血管壁78の開口部を通して静脈血管19に入る傾向があり得る。こうした状況を考慮すると、アンカー構造120、122は、血管間及び/又はその中の開口部の周りに完全な流体密封を提供する必要はない場合がある。
【0063】
いくつかの実施形態では、コンプライアントなバイパス構造110は血液に対して少なくとも部分的に透過性があると記載されているが、バイパス構造110は、バイパス構造110の壁に血液が浸透しないように、実質的に流体密封であることが有利であり得る。例えば、こうした流体密封性は、その中の流体圧力の増加が存在する下で、構造の弾性のある拡張又は他の変形を促進してもよく、これは、埋め込み装置100のコンプライアンス回復特性を増加させるのに役立つ。
【0064】
バイパス構造110の弾性/コンプライアントな特性は、有利なことに、こうした弾性/コンプライアントな特性がなければ達成不可能な様式で、コンプライアンスを増加させ得る。例えば、弾性/コンプライアントな特徴が存在しない場合、バイパス構造110は、その中の圧力の増加に応答して体積を変化させる能力なしに、単純に、システムからのエネルギーを吸収及び/又は戻すことなく動脈系の総体積を拡大し、かつ/又は心周期全体を通して血管系の体積の変化をもたらし得るが、これは概してコンプライアンスを改善しない場合がある。
【0065】
コンプライアントなバイパス構造110は、構造110が静脈血管19を不利な様式で閉塞しないように、構造の一つ以上の部分におけるその断面直径に関してなど、サイズ設定及び/又は構成され得る。別の方法として、構造110は、構造110が心周期の一つ以上の周期で静脈構造19を実質的に閉塞するように、サイズ設定及び/又は寸法設定されてもよい。いくつかの実施形態では、コンプライアントなバイパス構造110は、圧力増加条件に応答してその拡張を制限するような様式で構築され、その結果、構造110は、静脈血管19の望ましくない閉塞を引き起こす程度にまで拡張しない。例えば、構造110の拡張性は、その中の圧力の増加にかかわらず、それを超えるとさらに膨張しない構造限界を有してもよい。埋め込み装置100は、任意の適切な又は望ましい長さLを貫通することができる。
【0066】
図7は、一つ以上の実施形態による、ステントタイプのポート補強構造220、222を含むコンプライアンス回復装置200の側面図を示す。コンプライアンス回復埋め込み装置200は、
図6に示される、上述したコンプライアンス回復埋め込み装置100と一つ以上の点で類似し得る。埋め込み装置200は、その中の入口201及びその出口202の開口部と流体連通し得る弾性/コンプライアントな管状バイパス構造210を含んでもよく、これは、本明細書に詳細に説明するようにバイパス流れポートとしての役割を果たす。
【0067】
入口201及び出口202のポートは、それぞれのポート/アンカー構造220、222の少なくとも一部を形成し得る、それぞれのステントフレーム227で補強することができる。例えば、ステントフレーム227は、本明細書に記載されるように、血管壁の開口部内に適切な流体シールを形成するように拡張するように構成された自己拡張形状記憶合金フレームを含み得る。さらに、フレーム227は、
図3に示すように、上述のように移植された時に動脈壁79及び静脈壁78に近似する役割を果たし得る。例えば、移植された時、アンカー構造221、223は、壁79、78を何らかの様式で共に保持して、こうした血管壁を互いに近似させ、それによって、血管系の外側の流体漏出のリスクを低減することができる。
【0068】
補強ステント227は、任意の好適な又は望ましい長さLを有し得る。長さLは、標的動脈血管(例えば、大動脈)の内部と、隣接する標的静脈血管(例えば、下大静脈)の内部との間の距離にわたるように寸法設定することができる。例えば、いくつかの実装では、ステント構造227は、およそ1~3cmの長さLを有してもよい。こうした範囲内において、比較的広範囲の長さのLは、比較的高度に石灰化した大動脈/血管に対して実施され得る。
【0069】
図8Aは、一つ以上の実施形態による、その本体部分310に関連付けられたコンプライアントスリーブ350を含む、コンプライアンス回復装置300の側面図を示す。
図8B及び8Cは、一つ以上の実施形態による、それぞれ圧縮及び拡張された構成における、
図8Aのコンプライアントスリーブ350の断面図を示す。
図8B及び
図8Cは、D
1及びD
2方向の断面積の変化を示すが、いくつかの実施形態では、バイパス導管スリーブの直径変化は、主に一方向/寸法ではなく、実質的に均一であり得る。
【0070】
圧力の増加がこうした構造の伸張/拡張をもたらす、コンプライアントな流体容器構造を含む様々な実施形態が本明細書に開示されるが、いくつかの実施形態では、こうしたコンプライアンスは、埋め込み装置に関連付けられた一つ以上の二次構造の使用によって達成され得ることが理解されるべきである。例えば、本明細書に開示される管状バイパス構造は、いくつかの実施形態では、バイパス構造の材料が埋め込み装置にコンプライアンス特性を提供するようにコンプライアントであってもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、こうした管状バイパス構造は、弾性材料及び/又はコンプライアントな材料を備えてもよく、むしろコンプライアントな補強構造の処置を介して埋め込み装置にコンプライアンスが提供されてもよい。例えば、
図8A~8Cに示すコンプライアンス回復装置300は、それに関連付けられた補強コンプライアンス部材350を有する管状バイパス構造310を含む。例えば、コンプライアンス部材350は、管状バイパス構造310の周りに配置された円筒形/管状構造を備えてもよく、コンプライアンス構造350は、管状構造310内からのその上の放射方向の力に応答して、その一つ以上の寸法に対して外向きに拡張するように構成される。
【0071】
一部の実施例によると、バイパス構造310は、ウシ心膜などの生物学的組織、又は本質的に弾性ではないポリエステル材料を含み得る。しかしながら、弾性/コンプライアンスは、
図8A~8Cに示すように、管状構造の上にコンプライアンススリーブ350を配置することによって、埋め込み装置によって提供されてもよく、及び/又は埋め込み装置300の本体/管310と何らかの方法で組み込まれてもよい。
【0072】
スリーブ部材350は、各心周期に伴い拡張及び収縮するように構成されてもよく、それによってエネルギーを貯蔵し、そのコンプライアンスを増加させるような様式でそのようなエネルギーを循環系に戻す。スリーブ350は、形状記憶合金フレームなどの可撓性材料、織られた弾性布/スリーブ、及び/又は電気活性材料を含むことができる。すなわち、スリーブ350は、圧力の増加に応答して半径方向に伸張及び拡張し、圧力が減少するにつれて非伸張状態、又はより低い伸張状態に戻ることによって、装置300のコンプライアンスを改善し、それによって、その中に配置された流体にエネルギーを戻すことができる。いくつかの実施形態では、スリーブは、非円形形状(例えば、楕円形)に付勢された形状であり、円形断面形状からのこのような逸脱は、断面積がバイパス構造310の壁に弾性がある必要なく、圧力の増加に応答して断面積がより円形になるため、断面積の拡張のための空間を提供することができる。血管壁のこの操作は、心周期中に経験される圧力の典型的な変化に応答して、より体積の変化を導入し、それによって心臓効率を増加させ、拍動負荷を低減することができる。
【0073】
上述のように、いくつかの実施形態では、スリーブ350は、弾性の様式で伸張せず、むしろ、
図8B及び8Cに示す通り、その断面積の再形成を通してコンプライアンスを提供し得る。例えば、
図8Bでは、スリーブ350は、第二の寸法D2よりも大きい第一の寸法D
1を有する楕円形に付勢される形状記憶合金を含み得る。
図8Cに示すように、スリーブ350内からの半径方向に外向きの力の存在下では、スリーブ350は、示されるように、より円形の断面形状を取り得る。概して、当業者であれば理解するように、
図8Cに示される円形構成の面積は、実質的に周囲/周囲長さの変化がないと仮定する場合、
図8Bに示される楕円形構成の面積よりも概して大きくてもよく、したがって、圧力が低減され、スリーブ350が
図8Bの楕円形構成に向かって付勢され戻ると、エネルギーが循環系に再び導入されて、そのコンプライアンスを改善/増加させ得る。すなわち、弾性の伸張又は断面の再成形のいずれによってであれ、スリーブ350は、有利なことに、その中の圧力条件の関数として拡張及び回復し、その結果、スリーブ350の内部体積は心周期を通して変化し、それによってシステムにコンプライアンスを導入するように構成される。
【0074】
図8Bをさらに参照すると、動脈系内の拡張期の流れは、拡張期にバイパスチャネル310の断面積の減少によって可能となり、これはチャネルを通して血液を強制的に動脈に戻す。すなわち、収縮期と拡張期の間のバイパス構造310の異なる断面積は、コンプライアンス及び灌流を促進する。一般的に、硬い大動脈では、大動脈の断面積は収縮期から拡張期に変化しない場合があり、したがって心臓灌流が悪化する。スリーブ250は、動脈血管の代理として機能するバイパス構造310の断面形状を、非円形形状(例えば、楕円形、レーストラック、三角など)に変更させることができる。したがって、装置300は、楕円形又はその他の非円断面形状は同じ周囲を有する円形断面形状よりも小さい面積を有する、という原理を利用する。いくつかの実施形態では、スリーブ350はさらに、断面形状の再形成に加えて、又は断面形状の再形成の代替として、伸張するように構成され、これは、伸張するか非円形の断面形状に形状付勢されるが、その両方ではない、流体容器本体部分を含む解決策と比較して、改善されたコンプライアンス回復特性を提供し得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、スリーブ350は、装置300と結合する前に開放構成を有し得る。すなわち、スリーブ350は、スリーブが装置300のバイパス構造310の周りに配置されることを可能にする特徴を有してもよい。例えば、接続手段を使用して、バイパス構造310の周りにスリーブ350を固定してもよい。接続手段は、装置300の移植後のスリーブ350の連結を可能にし得る。ラッチ、磁石、スナップなど、任意のタイプの接続手段を使用してもよい。接続手段は、ヒンジ機能、縫合、別個の取り付けられた構成要素、又は他の機構を含んでもよい。いくつかの実装では、スリーブは、装置300の移植前に、装置の本体310の上に摺動するように寸法設定されてもよい。
【0076】
スリーブ350は、任意の適切な又は望ましい長さL2を有してもよい。例えば、長さL2は、移植された状態でのポート320、322の間の長さL1の一部分を表し得る。例えば、いくつかの実施形態では、埋め込み装置300は、第一の軸方向301に移植されるように構成された支持構造320、322を含んでもよく、管状バイパス構造310は、移植された状態での、スリーブ350の長さL2に対応する、その長さの少なくとも一部分にわたり、実質的に垂直な配向302に配向されてもよい。例えば、管状バイパス構造310は、血流が第一の配向301で埋め込み装置300に出入りし、管状バイパス構造310の本体を通って、バイパスされた動脈血管の軸に実質的に平行であり得る、直交/垂直の配向302に沿って流れることを可能にする、一つ以上の屈曲309を含み得る。
【0077】
図9は、一つ以上の実施形態による、異なる形状を有するポート構造420、422を含むコンプライアンス回復装置400の断面図である。一部の実施例によると、本開示の実施形態は、有利なことに、コンプライアンス回復装置の入口ポートからその出口ポートへの方向バイパス流を促進し得る。例えば、血液が動脈血管を通って任意の方向に流れる場合、こうした血管から経路指定されるバイパス流体が、バイパスされた血管と共通の方向に流れることが望ましい場合がある。本開示の実施形態は、こうした方向への流れを保証及び/又は促進するための特定の流れ制御特性を含み得る。
【0078】
本開示の態様によるコンプライアンス回復埋め込み装置のための流れ制御は、特定の絶対的なサイズ及び/又は相対サイズを有するポート構造の使用を通して達成され得る。例えば、上流入口ポート構造420は、下流支持構造422と関連付けられた対応する直径/寸法D2よりも大きい直径又は他の寸法D1を有する流路領域を有するように構成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、入口ポートは、およそ2~3cmの直径を有してもよく、一方、出口ポートは、およそ1~2cmの直径を有してもよい。比較的拡大した入口ポート構造420では、装置400のチャネル415への流入に関連する圧力は、下流支持構造422からの流出と比べて比較的低くてもよく、それによって、入口ポート構造420から出口ポート構造422への方向の流れが促進される。したがって、実質的に平行な流れは、コンプライアンス回復装置400のバイパスチャネル415内と同様に、動脈血管15のバイパスされたセグメント409内で流れ得る。すなわち、チャネル415内のバイパスされた流れは、動脈血管15を通る血流の自然な方向を反映するために実施され得る。
【0079】
図10は、一つ以上の実施形態による流れ制御機構を含む、コンプライアンス回復装置500の断面図である。本開示の態様によるコンプライアンス回復用バイパス埋め込み装置のための流れ制御機能を提供するために、異なるサイズの入口ポート及び出口ポートを活用することに加えて、又は別の方法として、本開示の態様によるバイパス埋め込み装置を通した所望の方向及び/又は体積又は流量を達成するために、様々な他の流れ制御機構を利用してもよい。例えば、弁又はその他の流れ制御機構は、埋め込み装置の一つ以上のポートで、又はその近くで、コンプライアンス回復埋め込み装置の一つ以上の部分と関連付けられ得る。
図10に示すコンプライアンス回復埋め込み装置500は、バイパス構造510のチャネル515を通った所望の方向への流れを許容すると同時に、逆方向への流れを制限又は遮断するように構成及び/又は配向され得る、一つ以上の一方向弁511、512を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、本開示の態様によるコンプライアンス回復埋め込み装置は、埋め込み装置500の入口ポート構造520に関連付けられた一方向弁を含み得る。例えば、ポート構造520は、組織壁79、78の開口部を維持する、及び/又は埋め込み装置500を組織壁(複数可)79、78に固定するように構成されたステントフレーム又はその他の構造を含み得る。こうしたフレームの内部は、
図10に示すように、一方向弁511と関連付けられ、かつ/又は固定されていてもよい。いくつかの実装では、第二の一方向弁512がさらに実施されてもよい。例えば、複数の一方向流れ制御弁を含む実施形態では、こうした弁の一つは、入口ポート構造520に結合され、かつ/又は入口ポート構造520と関連付けられてもよく、一方で、
図10に示すように、別の弁は、出口ポート構造522に結合され、かつ/又は別の方法で出口ポート構造522と関連付けられてもよい。本開示の態様によるコンプライアンス回復装置に関連付けられた弁特徴は、弁が流れを許容するために開き、各心周期に伴い閉じるように、弁の方向に圧力勾配の存在下で流れを許容するために開くことで機能し得る。
【0081】
図10は、コンプライアンス回復装置500のそれぞれのポートに関連付けられた二つの一方向弁511、512を示すが、本開示の態様によるコンプライアンス回復装置は、任意の数の弁を含んでもよく、こうした弁(複数可)は、埋め込み装置500の任意の適切な位置又は望ましい位置に位置付けられ、配置され、及び/又は構成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、一方向弁の特徴(複数可)は、バイパス管/構造510と関連付けられてもよい。
【0082】
図11は、一つ以上の実施形態による、二つ以上のポートを含むコンプライアンス回復装置600の断面図である。特定のコンプライアンス回復埋め込み装置は、二つの流体アクセスポート、すなわち単一の流体入口ポート及び単一の流体出口ポートを含むものとして本明細書に図示及び開示されている。しかしながら、本開示の態様によるコンプライアンス回復装置は、ポートの任意の適切な又は望ましい数、配置、サイズ、及び/又は構成を含み得ることが理解されるべきである。
【0083】
図11は、二つ以上のポート601~603を含むコンプライアンス回復埋め込み装置600を示す。それぞれのポートに関連付けられたポート構造620、621、622の相対的なサイズに応じて、動作中、ポートの各々は、入口ポート又は出口ポートのいずれかとして主に役立ち得る。二つ以上のポートの使用は、比較的小さなポートサイズで所望の量のバイパス流を可能にし得る。すなわち、流体の流れのためのポート面積の総量は、より大きなポートのより少ない数ではなく、より大きな数のポートを使用して達成され得る。比較的小さなポートサイズの使用は、標的血管の湾曲及び/又は埋め込み装置が移植される解剖学的構造の観点から有利であり得る。例えば、ポートが、固定される血管の外周に対して比較的小さい寸法を有し、それによって、コンプライアンス回復装置を移植する時に血管の再形成の量を減少させることが望ましい場合がある。さらに、比較的小さな流体入口ポート/出口ポートは、血管のより小さな穿刺穴を可能にし、それによって、患者の血管への損傷又は損害のリスクを潜在的に低減し得る。いくつかの実施形態では、本開示の態様によるコンプライアンス回復装置の流体入口ポート及び/又は出口ポートは、約1.5cm以下の直径を有することが望ましい場合がある。
【0084】
移植装置600が移植される場所に応じて、移植領域の動脈血管15は、肝臓、腎臓、胃、及び/又は他の器官(複数可)に送達し得る特定の動脈分枝と関連付けられ得る。例えば、
図11に示す大動脈15の腹部領域は、動脈分枝(及び腹部大動脈に隣接する下大静脈19に関する静脈分枝)を概して含まなくてもよいが、血管の解剖学的構造でさらに上の方にある領域は、血管側枝を含んでもよく、したがって、より大きな柔軟性及び血管分岐の周り又はその近くでの配置を可能にするために、埋め込み装置600のそれぞれのポートの輪郭/足跡を減少させることが望ましい場合がある。
【0085】
図12は、一つ以上の実施形態による、動脈血管及び静脈血管に移植されたコンプライアンス回復装置700の断面図である。特定の実施形態が本明細書に開示され、大動脈の一つの部分から大動脈の別の部分へ流体をバイパスする様式で移植されるように記載されているが、本開示の装置は、任意の動脈及び/又は静脈の血管に移植されるように構成され得ることが理解されるべきである。さらに、いくつかの実装では、コンプライアンス回復埋め込み装置の一つのポートは、大動脈及び下大静脈に移植されてもよく、一方で別のポートは、それと流体連通する一つ以上の他の血管に移植されてもよい。例えば、コンプライアンス回復装置700に関して、バイパスポート720及び722は、大動脈15及び下大静脈19だけでなく、腸骨動脈及び/又は腸骨静脈などの他の大きな導血管も横断し得る。
【0086】
図12に示すように、本開示の態様によるコンプライアンス回復埋め込み装置は、腸骨動脈25及び/又は腸骨静脈25内のその一つ以上のポートに対して移植され得る。例えば、
図12の図示した実施形態では、埋め込み装置700は、左腸骨動脈25l及び左腸骨静脈29lの壁に移植されたポート構造722を含む。当然のことながら、ポート構造722は、右腸骨動脈25r及び/又は右腸骨静脈29rに移植されてもよい。
図12に図示する例では、インプラントバイパス構造710のチャネル715を通る血流は、腹部大動脈のセグメント709ならびに腸骨動脈25の一部分をバイパスし、チャネル715を通って腸骨動脈25l内に血液を堆積させることができる。
【0087】
一部の状況では、腸骨動脈及び腸骨静脈は、それぞれ大動脈及び下大静脈と同じ血管の一部とみなされ得る。すなわち、本開示の態様によるコンプライアンス回復埋め込み装置が移植される血管への言及は、流体的に連結された血管系/ツリーの幹及び分枝を指し得る。したがって、その別個のポート構造が特定の血管内に固定され、かつ/又は移植されると記述されるコンプライアンス回復装置を参照する場合、そのような移植装置は、異なる分枝、又は共通する血管系/ツリーの幹及び分枝に移植され得ることが理解されるべきである。別の方法として、血管系/ツリーの分枝は、いくつかの状況では、明確さのために、発生元の幹に対して別個の血管と呼ばれ、考慮されてもよい。
【0088】
図13は、一つ以上の実施形態による、動脈血管及び静脈血管に移植された単一ポートのコンプライアンス回復装置800の断面図である。いくつかの実施形態では、本開示の態様によるコンプライアンス回復埋め込み装置は、別個の入口ポート及び出口ポートを含まないが、ポート構造が移植/固定された動脈血管(例えば、大動脈)の圧力の増加に応答して、下大静脈などの静脈血管内に拡張できるコンプライアンスチャンバへのアクセスを提供する単一ポートを含む。例えば、
図13に示すように、単一のポート構造820は、埋め込み装置800がバイパスチャネルではなく、コンプライアントなチャンバの機能として作用することを可能にしてもよく、これは特定の例では望ましい場合がある。
【0089】
コンプライアンス回復埋め込み装置800のパウチ構造810は、バルーン、可撓性の袋、及び/又は同種のものを含んでもよく、その本体部分は、アンカー/ポート構造820が壁を通してポート801及び動脈血管79及び静脈血管78をそれぞれ提供するような様式で固定される時、静脈血管19内に配置されるように構成される。塞栓リスクを呈し得る、パウチ810内での血液停滞/プールのリスクを低減するために、それからの動脈血管15への血液の比較的強い排出を提供するために、パウチ810が有意に適合/弾性があることが望ましい場合がある。可撓性のパウチとして示されているが、コンプライアンスチャンバ810は、
図8A~
図8Cに関して上述したように、ステント/スリーブを含み得る。例えば、パウチ810は、形状記憶合金フレーム又は織られたメッシュを含んでもよく、これは本明細書に詳細に説明するように、拡張及び戻りを促進し得る。いくつかの実施形態では、パウチ810は、有利なことには、特定のポリマー材料及び構造と比較して、経時的に破損又は分解しにくい形状記憶合金又は他の材料を含み得る。
【0090】
【0091】
ブロック1402で、プロセス1400は、コンプライアンス回復装置を含む一つ以上の送達システムの構成要素を、腸骨静脈29の一つを介して、下大静脈などの静脈血管19へと前進させることを伴う。例えば、コンプライアンス回復装置は、送達カテーテル内に圧着又は別の方法で圧縮された構成で含有され、経血管的に輸送することができる。例えば、ガイドワイヤは、経皮的アクセスを介して大腿静脈内及びさらに下大静脈内に導入され得る。
【0092】
ブロック1404では、プロセス1400は、下大静脈19又はその他の静脈血管及び隣接する動脈血管(例えば、大動脈15)の壁を穿刺して、一つ以上の送達システムの構成要素を動脈血管15内に前進させることを伴う。例えば、本開示の態様によるコンプライアンス回復装置の患者の腹腔内への移植のために、経腔的処置を実施することができ、大動脈へのアクセスは、動脈血管及び静脈血管を分離する血管壁を穿刺し、その中に形成される開口部を通して送達システムを前進させることによって、下大静脈を介して行われる。動脈系へのアクセス及び/又は内部での前進が困難な解剖学的状態を呈する患者のために本明細書に開示される装置を移植する場合は、経腔的処置が好ましい場合がある。例えば、比較的小さい、蛇行した、及び/又は重度に石灰化した大動脈は、経腔的アクセスにより適している場合がある。さらに、動脈系内の圧力条件により、大腿動脈又はその他の動脈アクセスを介して大動脈にアクセスすることが難しく又は曲げられない場合がある。
【0093】
いくつかの実装では、蛍光透視法又は他の撮像技術を使用して、下大静脈から隣接する大動脈への穿刺を補助することができ、このような穿刺は機械的又は電気外科手術のいずれかで行われ得る。鞘装置は、画像1504に示すように、拡張器先端954を使用して、下大静脈19及び大動脈15の壁を通して拡張するために、ワイヤ955にわたって前進することができる。画像1504に示すように血管壁を通して穿刺する場合、腹腔内の圧力は、概して静脈血管19の流体圧よりも高い場合があり、動脈血管15からの任意の血液漏出は、腹腔内に無差別に漏出するのではなく、静脈19に入るように傾斜してもよく、これは過度の損傷のリスクのない経腔的処置の実施を促進し得る。
【0094】
ブロック1406で、プロセス1400は、画像1506に示すように、動脈血管15の壁79に対して、及び/又は動脈血管15の壁79に、コンプライアンス回復装置900の第一のポート又はポート構造に関連付けられた一つ以上の動脈血管アンカーの特徴又は手段を展開することを伴う。例えば、送達システムが動脈血管15に交差すると、動脈アンカー(複数可)921aは、カテーテル/鞘1952から展開されてもよく、こうしたアンカー特徴(複数可)は、血管壁の開口部1901を通って引き戻される装置に抵抗するような方法で、埋め込み装置を保持する役割を果たし得る。例えば、動脈アンカー手段/特徴は、一つ以上のフック、バーブ、フランジ、アーム、クランプ、タブ、縫合、及び/又は同種のものを含み得る。アンカー(複数可)921aの展開は、少なくとも部分的に、鞘952を引き戻してアンカー921aを露出させることによって達成されてもよく、ポート/アンカー構造920及び/又は固定手段921aは、鞘1952から解放された時に拡張するように構成されてもよい。例えば、アンカー(複数可)921aは、鞘1952から展開された時に、特徴を拡張して固定した構成を取る形状記憶特性を有するように構成されてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、アンカー(複数可)921aは、何らかの様式で動脈壁79に取り付けられ、かつ/又はその中に埋め込まれるように構成されているか、又は単に、開口部1901を通って装置が引き戻されるのを防ぐなど、開口部901よりも大きい埋め込み装置のポート構造920の直径を提示する役目を果たし得る。経時的に、組織の内部成長は、アンカー(複数可)921aを動脈壁79に固定し得る。
【0096】
ブロック1408で、プロセス1400は、血管壁の開口部1901を通して送達システムの構成要素(複数可)を引き込め、静脈血管19の壁78に対してコンプライアンス回復装置のポート構造920に関連付けられた一つ以上の静脈アンカー921vを展開することを含む。例えば、埋め込み装置900は、鞘952からさらに抜き、静脈アンカー(複数可)921vを露出及び/又は展開してもよい。
【0097】
いくつかの実施形態及び/又は実装では、コンプライアンス回復埋め込み装置900は、静脈アンカー(複数可)921vを含まない。すなわち、動脈アンカー(複数可)921aは、インプラントを血管壁(複数可)に定位置に固定するのに十分であり得る。いくつかの実施形態では、動脈アンカー(複数可)921a及び静脈アンカー(複数可)921vは、血管壁をその間に挟み、ポート構造920を定位置に固定するために、共に閉じるように構成され得る。こうした実装は、アンカーを共に治癒させ、開口部901の周りに比較的安定した流体シールを形成し得る。いくつかの実施形態では、アンカーは、グロメットタイプの取り付け機構を含む。いくつかの実施形態では、アンカー特徴は注入可能であってもよく、そのいくつかの態様は、ポート構造920、開口部901、及び/又はアンカー921の周りに流体シールを形成するように硬化され得る接着剤で膨張され得る。
【0098】
ブロック1410で、プロセス1400は、送達システムの構成要素(複数可)をさらに引き込めて、少なくとも部分的に静脈血管(例えば、下大静脈)19内にコンプライアンス回復装置900の本体部分910を展開することを伴う。例えば、本体部分910は、本明細書で詳細に説明するように、有利なことに弾性及び/又はコンプライアントであり得る管状バイパス構造/導管を備えてもよい。
【0099】
ブロック1412では、プロセス1400は、静脈血管19及び隣接する動脈血管15の壁を別の位置で穿刺して、血管壁の二次的な開口部903を介して送達システムの構成要素(複数可)を動脈血管15内に前進させることを伴う。例えば、開口部903は、動脈15に対して開口部901の下流であってもよい。例えば、ブロック1412に関連する動作の実施は、鞘952が二次的な穿刺/開口部903の領域に引き込められると、ノーズコーン954を鞘952に向かって、及び/又は鞘952内に引き込めて、機械的又は電気外科手術による穿刺を介して、穿刺開口部903を通してガイドワイヤ959を前進させ、それによって、その開口部903を拡張するために、ノーズコーン954を前進させ得る比較的小さなポートを形成することを伴い得る。
【0100】
ブロック1414では、プロセス1400は、動脈15の壁79に対してコンプライアンス回復装置900の第二のポート構造922に関連付けられた動脈アンカー(複数可)923aを展開することを伴う。ブロック1416では、プロセス1400は、血管壁の開口部903を通して、送達システムのカテーテル/鞘952を引き抜き、静脈血管19の壁78に対して静脈アンカー(複数可)923vを展開することを含む。ポートアンカー(複数可)923vは、大動脈/動脈15から静脈19(例えば、下大静脈)を通って埋め込み装置900の本体910内に漏出防止ポートを形成するのに役立ち得る。フロー
図1400は、血管壁に移植されている埋め込み装置900の二つのポート構造のみを記述するが、プロセス1400は、任意の数のポート構造の移植及びそれぞれの血管壁へのその固定を伴い得ることを理解されたい。すなわち、ブロック1412~1416に関連する動作を必要に応じて繰り返して、任意の数の追加的なポートを設置することができる。
【0101】
ブロック1418では、プロセス1400は、送達システムのカテーテル/鞘952を引き抜き、コンプライアンス回復埋め込み装置900を完全に展開することを含む。いくつかの実装では、埋め込み装置900の展開は、展開を完了するために、それを通して一つ以上の送達システムの構成要素を引き抜くことを可能にするために、開放端のテール部分917を含むことを伴い得るか、又は含むことを必要とする。ブロック1420では、プロセス1400は、一つ以上の縫合919、クリップ、クランプ、又はその他の封止手段又はツールの使用を通してなど、何らかの方法で、テール部分917を閉鎖又は封止することを伴う。いくつかの実施形態では、テール部分917は、形状記憶機構、又は移植された構成におけるテール部分917を通った流体の流れを少なくとも部分的に遮断するために閉鎖構成に付勢されたその他の構成要素を使用して、自動的に閉鎖するように構成され得る。特定のベルト、ストラップ、クランプ、又は類似のものを含む、その他の封止手段が利用されてもよく、テール部分917上に自動的に係合するように構成されてもよく、又は適切な作業器具を使用してテール部分917に固定されてもよい。いくつかの実施形態では、縫合(複数可)又は他の封止手段919は、画像1517に示すように、インプラント900が展開された後、テール部分917を再係合してそれを封止する必要がないように、テール部分917に予め取り付けられてもよい。
【0102】
[追加の実施形態]
実施形態に応じて、本明細書に記載されるプロセス又はアルゴリズムのいずれかの特定の作用、事象、又は機能が、異なる順序で実施され得、追加され得、併合され得、又は完全に除外され得る。したがって、特定の実施形態では、全ての記載された作用又は事象が、プロセスの実践に必要であるわけではない。
【0103】
とりわけ、「できる(can)」、「できた(could)」、「得る(might)」、「得る(may)」、「例えば(e.g.,)」などの本明細書で使用される条件付きの文言は、特に別段の記載がない限り、又は使用される文脈内で別様に理解されない限り、その通常の意味で意図され、かつ特定の特徴、要素、及び/又はステップを特定の実施形態が含むが、他の実施形態が含まないことを伝えることが概して意図される。したがって、そのような条件付きの文言は、特徴、要素、及び/又はステップが、1つ以上の実施形態に任意の方法で必要とされること、あるいは1つ以上の実施形態が、これらの特徴、要素、及び/若しくはステップが含まれるか、又は任意の特定の実施形態で実行されるかを判断するための論理を、著者の入力若しくは促しの有無にかかわらず、必然的に含むことを暗示することが概して意図されるものではない。「備える」、「含む」、「有する」などの用語は、同義であり、それらの通常の意味で使用され、包括的に、非限定的な様式で使用され、追加の要素、特徴、作用、動作などを排除しない。また、「又は」という用語は、その包括的な意味で使用され(かつその排他的な意味ではない)、そのため、例えば、要素のリストを接続するように使用されるとき、「又は」という用語は、リスト内の要素のうちの1つ、いくつか、又は全てを意味する。特に別段の記載がない限り、「X、Y、及びZのうちの少なくとも1つ」などの接続的な文言は、項目、用語、要素などが、X、Y、又はZのいずれかであり得ることを一般的に伝えるために使用されるように文脈を用いて理解される。したがって、そのような接続的な文言は、特定の実施形態が、Xのうちの少なくとも1つ、Yのうちの少なくとも1つ、及びZのうちの少なくとも1つが各々存在することを必要とすることを暗示することが概して意図されるものではない。
【0104】
上記の実施形態の記載では、開示を合理化し、様々な発明の態様のうちの1つ以上の理解を支援する目的で、様々な特徴が、単一の実施形態、図、又はその記載において一緒にグループ化されることがあることが理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、任意の特許請求の範囲がその特許請求の範囲に明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。更に、本明細書の特定の実施形態に例解及び/若しくは記載される任意の構成要素、特徴、若しくはステップは、任意の他の実施形態に適用されるか、又はそれらとともに使用され得る。更に、構成要素、特徴、ステップ、又は構成要素、特徴、若しくはステップのグループは、各実施形態に必要又は不可欠であるわけではない。したがって、以下に開示及び請求される本明細書の発明の範囲は、上記に記載された特定の実施形態によって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきであることが意図される。
【0105】
特定の順序的な用語(例えば、「第1」又は「第2」)は、参照の容易さのために提供され得、必ずしも物理的特徴又は順序を暗示するものではないことを理解されたい。したがって、本明細書で使用される場合、構造、構成要素、動作などの要素を修正するために使用される順序的な用語(例えば、「第1」、「第2」、「第3」など)は、いかなる他の要素に対する要素の優先順位又は順序を必ずしも示すものではなく、むしろ、要素を、同様又は同一の名称(順序的な用語の使用以外)を有する別の要素から概略的に区別し得る。加えて、本明細書で使用される場合、不定冠詞(「a」及び「an」)は、「1つ」ではなく「1つ以上」を示し得る。更に、条件又は事象に「基づいて」実施される動作はまた、明示的に列挙されていない1つ以上の他の条件又は事象に基づいて実施され得る。
【0106】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、例示的な実施形態が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。更に、一般的に使用される辞書に定義される用語などの用語は、関連技術の文脈においてその意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書に明示的に定義されない限り、理想化又は過度に形式的な意味で解釈されないことが理解される。
【0107】
空間的に相対的な用語「外側」、「内側」、「上部」、「下部」、「下」、「上」、「垂直」、「水平」、及び類似の用語は、図面に示されるように、1つの要素又は構成要素と別の要素又は構成要素との間の関係を説明するために、説明を容易にするために本明細書で使用され得る。空間的に相対的な用語は、図面に描写される配向に加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる配向を包含することを意図していることを理解されたい。例えば、図面に示されるデバイスが裏返される場合、別のデバイスの「下」又は「真下」に位置付けられるデバイスは、別のデバイスの「上」に配置され得る。したがって、「以下」という例解的な用語は、下位置及び上位置の両方を含み得る。デバイスはまた、他の方向に配向され得、したがって、空間的に相対的な用語は、配向に応じて異なる解釈をすることができる。
【0108】
別途明示的な記載がない限り、「より少ない」、「より多い」、「より大きい」などの比較及び/又は量的用語は、平等の概念を包含することを意図している。例えば、「より少ない」は、厳密な数学的な意味での「より少ない」だけでなく、「以下」も意味し得る。
【国際調査報告】