(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】芯鞘型スパンボンド不織布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/147 20120101AFI20231221BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20231221BHJP
D04H 3/14 20120101ALI20231221BHJP
D04H 3/009 20120101ALI20231221BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20231221BHJP
D01F 8/16 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
D04H3/147
D04H3/16
D04H3/14
D04H3/009
D01F8/14
D01F8/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537173
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 KR2021020105
(87)【国際公開番号】W WO2022146004
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0186036
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0189933
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】カン,ドンホン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒ-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン-シン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウ-ソク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジョン-スン
【テーマコード(参考)】
4L041
4L047
【Fターム(参考)】
4L041AA07
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA21
4L041BC04
4L041BC11
4L041BD11
4L041CA05
4L041CA35
4L041DD14
4L041EE20
4L047AA21
4L047AA26
4L047AA27
4L047AB03
4L047BA08
4L047CB01
(57)【要約】
本発明によれば、優れた機械的物性を有し、耐熱性および耐薬品性が向上したポリフェニレンスルフィド素材のシース部と、高融点ポリエステル素材のコア部とからなる芯鞘型スパンボンド不織布、および、スパンボンド法によりポリフェニレンスルフィド素材の芯鞘型不織布を連続的に製造できる方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
700~3000ポアズ(poise)の溶融粘度(300℃下にせん断速度(shear rate)1,000で測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%;および
250℃以上の融点を有するポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%;が混合されてなる芯鞘型複合繊維の不織布ウェブを含む、
芯鞘型スパンボンド不織布。
【請求項2】
前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントは、
融点275℃以上、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定値による30,000~90,000g/molの重量平均分子量(Mw)、および60~80秒の結晶化速度(240℃下に測定)を有するポリフェニレンスルフィドを含む、請求項1に記載の芯鞘型スパンボンド不織布。
【請求項3】
前記ポリエステルフィラメントは、0.6dl/g以上0.7dl/g以下の固有粘度(IV)、300~500秒の結晶化速度(210℃下に測定)、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定値による50,000~65,000g/molの重量平均分子量(Mw)、40~60g/10minあるいは45~50g/10minの溶融流れ指数(280℃下に荷重2.06kgで測定)、および400~600ポアズ(poise)の溶融粘度(300℃下にせん断速度(shear rate)1,000で測定)を有するポリエステルを含む、請求項1に記載の芯鞘型スパンボンド不織布。
【請求項4】
前記ポリエステルフィラメントは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリナフタレンテレフタレートからなる群より選択された1種以上の重合体を含む、請求項1に記載の芯鞘型スパンボンド不織布。
【請求項5】
KS K ISO TR 12960:2011の標準試験法による液体抵抗性が96%以上であり、
KS K 0936:2007の標準試験法による加水解抵抗性が97%以上であり、
熱収縮率が0.5%以下であり(20cm×20cmの大きさの図柄が描かれた30cm×30cmの大きさの不織布試験片を220℃にて3分間オーブンで熱処理した後の不織布試験片での縦方向(MD)および横方向(CD)に収縮した長さにより測定)、
時間あたり1回未満の糸切れ回数(スパンボンド製造の過程で1時間紡糸した際にフィラメントが糸切れされる回数の測定)
を有する、請求項1に記載の芯鞘型スパンボンド不織布。
【請求項6】
KS K 0521の標準試験法による20.0kgf/5cm以上の縦方向(MD)の引張強度、20.0kgf/5cm以上の横方向(CD)の引張強度を有し、円形断面を有する、請求項1に記載の芯鞘型スパンボンド不織布。
【請求項7】
70~150g/m
2の単位面積あたりの重量を有する、請求項1に記載の芯鞘型スパンボンド不織布。
【請求項8】
シース部として700~3000ポアズ(poise)の溶融粘度(300℃下にせん断速度(shear rate)1,000で測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメント、およびコア部として250℃以上の融点を有するポリエステルを複合溶融紡糸して、ポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%、およびポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%を含む芯鞘型複合フィラメントを得る段階;
前記芯鞘型複合フィラメントを連続コンベヤベルト上に積層して繊維ウェブ(Web)を形成する段階;および
前記繊維ウェブを熱接着させる段階;
を含む、芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項9】
前記芯鞘型複合フィラメントを用いて繊維ウェブを形成する前に、固化する段階をさらに含む、請求項8に記載の芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項10】
前記固化は、クエンチングコンディショナ(Quenching Conditioner)の温度が25~35℃である条件の冷却風を用いて行われる、請求項9に記載の芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項11】
前記繊維ウェブを形成する段階は、前記複合紡糸によって形成された芯鞘型複合フィラメントを延伸する段階、前記延伸された複合フィラメントを開繊する段階、および前記開繊された複合フィラメントを積層する段階を含む、請求項8に記載の芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項12】
前記延伸は、1kgf/cm
2以上の圧力条件下、空気延伸装置を用いて行われる、請求項11に記載の芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項13】
前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントは、
融点275℃以上、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定値による30,000~90,000g/molの重量平均分子量(Mw)、および60~80秒の結晶化速度(240℃下に測定)を有するポリフェニレンスルフィドが使用される、請求項8に記載の芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項14】
前記ポリエステルフィラメントは、0.6dl/g以上0.7dl/g以下の固有粘度(IV)、300~500秒の結晶化速度(210℃下に測定)、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定値による50,000~65,000g/molの重量平均分子量(Mw)、40~60g/10minあるいは45~50g/10minの溶融流れ指数(280℃下に荷重2.06kgで測定)、および400~600ポアズ(poise)の溶融粘度(300℃下にせん断速度(shear rate)1,000で測定)を有するポリエステルが使用される、請求項8に記載の芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項15】
前記熱接着は、カレンダーロール方式または熱風方式を用いて行われる、請求項8に記載の芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2020年12月29日付の韓国特許出願第10-2020-0186036号および2021年12月28日付の韓国特許出願第10-2021-0189933号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、機械的物性に優れ、耐熱性および耐薬品性が向上した芯鞘型スパンボンド不織布およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリフェニレンスルフィド(PPS)は、ベンゼン環に硫黄が結合した主鎖構造を有する結晶性エンジニアリングプラスチックであって、優れた耐薬品性と耐熱性を示す。
【0004】
ポリフェニレンスルフィド素材の不織布は、主にポリフェニレンスルフィドを溶融紡糸によって繊維化(filamentまたはstaple)した後、湿式工程によるwet-laid不織布工程、またはステープル(staple)繊維のカーディング(carding)後、結合工程(ニードルパンチングまたは熱接着)による乾式不織布工程によって製造される。
【0005】
前記ポリフェニレンスルフィド素材の商用(市販)不織布は、主に短繊維(staple繊維)を用いて製造されたものである。しかし、前記ポリフェニレンスルフィドの場合、スパンボンド紡糸の際、過度の結晶化によって紡糸工程上の安定性が低下したり、熱接着性の不足により機械的物性が低下したりするという問題があった。また、従来のポリフェニレンスルフィド素材の不織布は、PET繊維に比べて高価な製品であって価格競争力が不足する。
【0006】
前記PET素材のスパンボンド不織布の場合、耐熱性および耐薬品性が不足し、高温多湿な環境では加水分解を起こしやすく、石炭火力発電所、セメント工場、焼却設備、環境集塵設備、産業廃棄物処理設備などに用いられる難燃/耐熱性のバッグフィルタや自動車エンジンルーム用、排気系用内装材および強酸/強アルカリに対する耐久性が要求される液体ろ過用フィルタへの適用が困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の問題を解決すべく、本明細書では、機械的物性に優れているだけでなく、耐熱性および耐薬品性が従来よりも向上した、ポリフェニレンスルフィド素材のシース部および高融点ポリエステル素材のコア部からなる、芯鞘型スパンボンド不織布およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、
700~3000poiseの溶融粘度(300℃下に1,000のせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%;および
250℃以上の融点を有するポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%;が混合されてなる芯鞘型複合繊維の不織布ウェブを含む、
芯鞘型スパンボンド不織布を提供する。
【0009】
また、本明細書では、シース部として700~3000poiseの溶融粘度(300℃下に1,000のせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメント、およびコア部として250℃以上の融点を有するポリエステルを複合溶融紡糸して、ポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%、および、ポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%を含む芯鞘型複合フィラメントを得る段階;
前記芯鞘型複合フィラメントを連続コンベヤベルト上に積層して繊維ウェブ(Web)を形成する段階;および
前記繊維ウェブを熱接着させる段階;
を含む、芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法を提供する。
【0010】
以下、発明の実現例によるスパンボンド不織布およびその製造方法について詳細に説明する。
【0011】
それに先立ち、本明細書において明示的な言及がない限り、専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0012】
本明細書で使用される単数形態は、文言がこれと明確に反する意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0013】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、定数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、定数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるわけではない。
【0014】
そして、本明細書において、「第1」および「第2」のような序数を含む用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で、第1構成要素は第2構成要素と名付けられてもよく、類似して第2構成要素は第1構成要素と名付けられてもよい。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
発明の一実施形態により、700~3000poiseの溶融粘度(300℃下に1,000のせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%;および250℃以上の融点を有するポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%;が混合されてなる芯鞘型複合繊維の不織布ウェブを含む、芯鞘型スパンボンド不織布が提供される。
【0017】
本発明者らは、従来のポリフェニレンスルフィド素材の短繊維からなる不織布の耐熱性および耐薬品性が不足する問題を解決すべく、継続した研究を進行させた結果、ポリフェニレンスルフィドフィラメントおよびポリエステルフィラメントを用いて、シース(sheath)-コア(core)の形態の複合紡糸を実施することによって、前記シース部は、ポリフェニレンスルフィド樹脂から構成され、前記コア部は、高融点ポリエステル樹脂から構成された複合繊維を提供することによって、スパンボンド不織布の耐熱性と耐薬品性が向上できることを確認することで、本発明を完成した。
【0018】
したがって、本明細書による芯鞘型スパンボンド不織布は、短繊維から製造される不織布の適用限界を克服することができるのであり、既存に比べて同等以上の機械的物性も確保することで、ポリフェニレンスルフィド素材不織布の多様な応用が可能である。
【0019】
このような前記芯鞘型スパンボンド不織布は、ポリフェニレンスルフィド含有複合紡糸繊維からなるスパンボンド不織布を意味し、具体的には、シース部は、ポリフェニレンスルフィドフィラメントを含み、コア部は、ポリエステルフィラメントを含む。
【0020】
具体的には、前記芯鞘型スパンボンド不織布は、特定のパラメータ物性を有するポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部;および、250℃以上の高融点を有するポリエステルフィラメントを含むコア部;が複合紡糸されてなる繊維ウェブを含む。
【0021】
前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントは、700~3000poiseの溶融粘度(300℃下に1,000のせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリフェニレンスルフィド(PPS)からなる。より具体的には、前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントの溶融粘度は、700~2500poiseまたは700~1000poise(300℃下に1,000のせん断速度(shear rate)で測定)でありうる。前記溶融粘度が700poise以下であれば、紡糸されたフィラメントの機械的物性が低下して糸切れが発生することで紡糸性が低下することから、不織布ウェブの均斉度も低下するという問題があり、3000poiseを超えると、紡糸パックの圧力が高くなって押出量を減少させ、これによって生産性が低下しうる。
【0022】
また、前記ポリフェニレンスルフィドは、融点275℃以上、あるいは275~285℃の融点を有する線状(linear; 直鎖状)PPSが適用可能である。
【0023】
一般に、PPSは、重合過程で加熱硬化させた架橋型PPSと、加熱硬化過程を経ない線状PPSとに区分される。前記架橋型PPSは、褐色の自然色を有し、前記線状PPSは、ベージュまたは明るい灰色の自然色を有する。そのうち、前記線状PPSは、前記架橋型PPSに比べて繊維の製造に有利である。したがって、前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントは、前記線状PPSからなることが好ましい。以下、明示的な言及がない限り、PPSとは、前記線状PPSを意味する。
【0024】
具体的には、前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントは、融点275℃以上、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定値による30,000~90,000g/molの重量平均分子量(Mw)、および60~80秒の結晶化速度(240℃下に測定)を有するポリフェニレンスルフィドを含むことができる。このような物性を有するポリフェニレンスルフィドを用いる方が、機械的物性の確保と加工性の面で有利である。前記溶融粘度は、12mmのピストン径および20mm(L)×1mm(D)の口金規格を有する装置を用いて、310℃下に1,000のせん断速度(shear rate)で測定された値である。
【0025】
一実施形態によると、前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントは、275~285℃の融点を有し、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定値による40,000~60,000g/molの重量平均分子量(Mw)、および60~80秒の結晶化速度(240℃下に測定)を有する線状ポリフェニレンスルフィドフィラメントが適用可能である。
【0026】
このような特性を有するポリフェニレンスルフィドフィラメントが芯鞘型スパンボンド不織布のシース部に含まれることによって、スパンボンド紡糸の際、紡糸性が安定し優れていることから、優れた機械的物性を確保できる。
【0027】
より具体的には、シース部に前記ポリフェニレンスルフィドフィラメント(PPS成分)を用いることによって、PPSの優れた特性を有しながらも、高い価格のPPSの使用を最小化して経済性のある製品を製造することができる。また、前記シース部に前記物性を有するPPSが含まれることによって、スパンボンドの高速紡糸の際におけるPPS繊維の糸切れを低減して紡糸安定性を改善することができる。
【0028】
本明細書において、高分子の重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた、分析装置と示差屈折検出器(refractive index detector)などの検出器、および分析用カラムが用いられ、通常適用される、温度条件、溶媒、流量(flow rate)が適用可能である。前記測定条件の具体例として、210℃の温度、1-クロロナフタレン(1-chloronaphthalene)溶媒、および1mL/minの流量(flow rate)が挙げられる。
【0029】
前記ポリエステルフィラメントは、250℃以上、あるいは250~280℃の融点を有するポリエステルからなる。
【0030】
例えば、250℃以上の融点を有する前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリナフタレンテレフタレートからなる群より選択された1種以上の重合体を含むことができる。具体的には、前記ポリエステルフィラメントは、250℃以上の融点を有するポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことができる。
【0031】
また、前記ポリエステルフィラメントは、0.6dl/g以上0.7dl/g以下の固有粘度(IV)、300~500秒の結晶化速度(210℃下に測定)、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定値による50,000~65,000g/molの重量平均分子量(Mw)、40~60g/10minあるいは45~50g/10minの溶融流れ指数(280℃下に荷重2.06kgで測定)、および400~600poiseの溶融粘度(300℃下に1,000のせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリエステルを含むことができる。
【0032】
前記物性特徴を有するポリエチレンテレフタレートフィラメントをコア部材料として用いてこそ、前記シース部との混合時により優れた難燃性および高い耐薬品性、熱に対する長期的な安定性の効果を提供することができる。
【0033】
前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントおよびポリエステルフィラメントの各物性値は、不活性気体下に120~130℃の温度で9~11時間乾燥した後の物性値を示す。
【0034】
前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントと前記ポリエステルフィラメントの繊度(denier)および断面の形状は特に制限されない。非限定的な例として、前記フィラメントは、それぞれ1~10デニール(D)の繊度と円形断面を有することができる。
【0035】
一方、前記芯鞘型スパンボンド不織布に含まれる前記繊維ウェブは、10~30重量%の前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部、および70~90重量%の前記ポリエステルフィラメントを含むコア部から構成される。
【0036】
前記シース部のポリフェニレンスルフィドフィラメントの含有量が、複合繊維の全体の重量との対比で30重量%を超える場合、紡糸工程上の安定性が低下し、PPSの過度の結晶化により熱接着性が不足することにより、機械的な物性が低下するという問題が発生しうるのであり、高価なPPSを多く使用することによって、生産費用を増加させ不織布の経済性を低下させうる。
【0037】
また、前記シース部のポリフェニレンスルフィドフィラメントが複合繊維の全体の重量に対して10重量%以下である場合、フィラメント紡糸の際、コア部が繊維上にて一方の側に偏る偏心化が発生したり、コア部が繊維表面に露出して、不織布の耐熱性および耐化学的特性が低下しうる。
【0038】
したがって、シース部のポリフェニレンスルフィドフィラメントを10~30重量%として構成すれば、上記の問題点を解決すると同時に、機能性不織布の製造による既存の製品の代替および新規製品群の開発が可能である。
【0039】
そして、前記繊維ウェブの形態安定性確保のために、前記ポリエステルフィラメントは、前記繊維ウェブに70重量%以上90重量%以下の含有量で含まれるようにする。
【0040】
そして、優れた機械的物性の確保のために、前記ポリフェニレンスルフィド混繊スパンボンド不織布は、70~150g/m2、あるいは80~120g/m2、あるいは90~110g/m2の単位面積あたりの重量を有することができる。
【0041】
前記芯鞘型スパンボンド不織布は、前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントおよび前記ポリエステルフィラメントが複合紡糸からなる複合繊維ウェブを含むことによって、優れた機械的物性はもちろん、従来よりも耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。
【0042】
例えば、前記芯鞘型スパンボンド不織布は、100g/m2の単位面積あたりの重量を基準として、KS K ISO TR 12960:2011の標準試験法による液体抵抗性が96%以上であり、KS K 0936:2007の標準試験法による加水解抵抗性が97%以上であり、熱収縮率が0.5%以下であり熱収縮率が0.5%以下であり(20cm×20cmの大きさの図柄が描かれた30cm×30cmの大きさの不織布試験片を220℃で3分間、オーブンにて熱処理した後の、不織布試験片における縦方向(MD; machine direction)および横方向(CD; cross direction)に収縮した長さにより測定)、時間あたり1回未満の糸切れ回数(スパンボンド製造の過程にて1時間紡糸した際にフィラメントが糸切れされる回数を測定)を示すことができる。
【0043】
また、前記芯鞘型スパンボンド不織布は、100g/m2の単位面積あたりの重量を基準として、KS K 0521の標準試験法による20.0kgf/5cm以上の縦方向(MD)の引張強度、20.0kgf/5cm以上の横方向(CD)の引張強度を有し、円形断面を有することができる。
【0044】
具体的な一例により、前記芯鞘型スパンボンド不織布は、100g/m2の単位面積あたりの重量を基準として、KS K ISO TR 12960:2011の標準試験法による液体抵抗性が、96%以上あるいは96.5~99.5%でありうる。
【0045】
また、前記芯鞘型スパンボンド不織布は、100g/m2の単位面積あたりの重量を基準として、KS K 0936:2007の標準試験法による加水解抵抗性が、97%以上あるいは97~99%でありうる。
【0046】
前記芯鞘型スパンボンド不織布は、100g/m2の単位面積あたりの重量を基準として、熱収縮率が0.5%以下、あるいは0.1~0.5%(20cm×20cmの大きさの図柄が描かれた30cm×30cmの大きさの不織布試験片を、220℃で3分間、オーブンにて熱処理した後、熱処理された不織布試験片の縦方向(MD)および横方向(CD)で収縮した長さにより平均測定、3回測定平均値)でありうる。
【0047】
前記芯鞘型スパンボンド不織布は、100g/m2の単位面積あたりの重量を基準として、時間あたり1回未満の糸切れ回数(スパンボンド製造の過程にて1時間紡糸する際にフィラメントが糸切れされる回数の測定)を示して、優れた紡糸性を確保できる。
【0048】
一方、発明の他の実施形態によれば、
シース部として700~3000poiseの溶融粘度(300℃下に1,000のせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメント、およびコア部として250℃以上の融点を有するポリエステルを複合溶融紡糸して、ポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%、およびポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%を含む芯鞘型複合フィラメントを得る段階;
前記芯鞘型複合フィラメントを連続コンベヤベルト上に積層して繊維ウェブ(Web)を形成する段階;および
前記繊維ウェブを熱接着させる段階;
を含む、芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法が提供される。
【0049】
本明細書による芯鞘型スパンボンド不織布は、シース部のポリフェニレンスルフィドフィラメントと、コア部のポリエステルフィラメントとが、一定の条件で複合紡糸されてなる繊維ウェブを含むものであって、スパンボンド法によって製造される。
【0050】
前記スパンボンド法において、前記ポリフェニレンスルフィドおよび前記ポリエステルは、それぞれ独立に、溶融されて、異種樹脂の吐出孔数の調節が可能な1つの混繊用紡糸口金を通じて紡糸されるのであって、前記溶融紡糸によって得られたポリフェニレンスルフィドフィラメントおよびポリエステルフィラメントが混繊されることによって、前記芯鞘型複合フィラメントが得られる。
【0051】
あるいは、前記スパンボンド法において、前記シース部のポリフェニレンスルフィドおよびコア部の前記ポリエステルは、それぞれ独立に、溶融されて、別途の紡糸口金を通じて紡糸され、前記溶融紡糸によって得られた、シース部のポリフェニレンスルフィドフィラメントおよびコア部のポリエステルフィラメントが混繊されることによって、前記芯鞘型複合フィラメントが得られる。
【0052】
また、前記芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法は、連続押出機を用いて進行可能であって、効果的に、機械的物性、耐熱性および耐薬品性に優れた不織布を連続的に製造することができる。
【0053】
具体的には、本明細書によれば、275℃以上の融点を有するPPSと、250℃以上の融点を有するポリエステルとを複合紡糸する段階;前記芯鞘型複合フィラメントでもって繊維ウェブ(Web)を形成する段階;および前記繊維ウェブを熱接着させる段階を含むことを特徴とする芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法を提供することができる。
【0054】
前記複合紡糸によって形成されたフィラメントは、芯鞘型(Sheath and Core)構造を有することができ、この場合、前記PPSは、前記芯鞘型構造のシース部成分(Sheath Component)を形成し、前記PETは、前記芯鞘型構造のコア部成分(Core Component)を形成する。
【0055】
ここで、前記シース部のポリフェニレンスルフィドおよび前記コア部のポリエステルの構成に関する具体的な内容について、上述した芯鞘型スパンボンド不織布に対する内容を代わりとする。
【0056】
ここで、先に説明したように、前記シース部とコア部として用いられる原料は、すべて、不活性気体中にて、例えば、窒素雰囲気中にて、120~130℃の温度で9~11時間乾燥して使用することができる。
【0057】
一例を挙げると、コア部の素材として用いるポリエステル(具体的には、PET)の場合には、重合体の加水分解による分子量の低下防止およびチップ(Chip)間の分子量の差を均一にすべく乾燥工程を行う。具体的には、前記乾燥工程により、コア部の原料は、100ppm以下に水分率を制御して使用することができる。
【0058】
また、シース部の素材として用いるPPSの場合には、吸湿性が小さく、高温で加水分解安定性および熱安全性を有するが、微量の水分によって発生しうる物性の低下や紡糸安定性の低下が発生しうる。したがって、前記PPSの乾燥工程を行うことによって、微量水分によるPPSの物性低下および紡糸安定性を防止することができる。
【0059】
このような前記芯鞘型複合フィラメントは、700~3000poiseの溶融粘度(300℃下に1,000のせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%と、250℃以上の融点を有するポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%とを含む。
【0060】
前記シース部およびコア部成分の複合溶融紡糸の際、各材料は、連続押出機に投入した後、原料が有する融点よりも10~40℃、より高い温度で溶融させた後、芯鞘型複合紡糸が行われる。このような方法により、各成分の溶融が効果的に行われて、芯鞘型複合紡糸が連続的に、より円滑に行われる。
【0061】
前記複合紡糸温度は、290℃~320℃でありうる。
【0062】
また、前記芯鞘型複合フィラメントを用いて繊維ウェブを形成する前に、固化する段階をさらに含むことができる。
【0063】
前記繊維ウェブを形成する段階は、前記複合紡糸によって形成された芯鞘型複合フィラメントを延伸する段階、前記延伸された複合フィラメントを開繊する段階、および前記開繊された複合フィラメントを積層する段階を含むことができる。
【0064】
つまり、前記複合溶融紡糸により放出されたフィラメントは、冷却風で固化した後、高圧の空気を用いた延伸装置を経た後、開繊および積層すれば、芯鞘型複合繊維から構成された繊維ウェブが形成できる。
【0065】
具体的には、前記固化は、クエンチングコンディショナ(Quenching Conditioner)の温度が25~35℃あるいは25~30℃の条件の冷却風を用いて行われる。前記クエンチングコンディショナ(Quenching Conditioner)の温度が25℃未満であれば、紡糸工程中の糸切れによって不織布の製造が不可能であるという問題があり、35℃以上であれば、温度が高くなって冷却がうまく行われず均一な冷却が難しくなるか、繊維の冷却が不十分であって糸切れが増加するという問題が発生しうる。
【0066】
前記延伸は、1kgf/cm2以上あるいは1~4kgf/cm2の圧力条件下、空気延伸装置を用いて行われる。
【0067】
前記芯鞘型複合フィラメントは、静電気帯電法、衝突板法、気流拡散法などの通常の開繊法によって、連続移動するコンベヤベルト(例えば、金属製ネット)上に積層して繊維ウェブを形成する。
【0068】
前記延伸された複合フィラメントを開繊する段階は、前記延伸された複合フィラメントを吐出する段階、および、拡散した前記フィラメントをコンベヤベルトに捕集する段階を含むことができる。
【0069】
そして、前記繊維ウェブを熱接着によって結合することで、前記ポリフェニレンスルフィドを含む芯鞘型スパンボンド不織布が提供される。
【0070】
このような過程により、コンベヤベルトに捕集される複合フィラメントが、積層されながら繊維ウェブを形成し、次に、前記繊維ウェブを熱接着させることによって、本発明のスパンボンド不織布が製造される。
【0071】
具体的には、前記熱接着は、カレンダーロールまたは熱風方式を用いて行われる。前記熱接着は、前記ポリエチレンフィラメントを熱接着によって固定させる温度範囲下で行われる。
【0072】
さらに具体的には、前記熱接着は、加熱されたローラの間に繊維ウェブを圧着通過させるカレンダリング法によって行われる。あるいは、熱い空気がウェブを通過するようにする熱風法によって前記熱接着が行われてもよい。
【0073】
発明の一実施形態により、前記芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法についての好ましい実施形態は、次の通りである。
【0074】
まず、上述した物性特性を有するPPSおよびPET樹脂を、それぞれの押出機で溶融した後、シース/コア(Sheath/Core)の重量比に合わせて吐出するのであって、紡糸温度290℃~320℃で孔径φ0.4mm~φ0.6mmの芯鞘型複合紡糸口金から複合繊維を紡出する。
【0075】
次に、口金から吐出された繊維は、クエンチングコンディショナ(Quenching Conditioner)の温度を25℃以上あるいは25~35℃に設定した後、冷却風(Quenching Air)により固化し、前記口金から距離1,500mmの位置に設置したエジェクター(Ejector)を通過させる。
【0076】
次に、1.0kgf/cm2以上の延伸空気でエジェクター(Ejector)から噴射させてフィラメントを延伸する方法がPPS繊維部分の結晶化を効率的に制御可能で、紡糸工程上の安定性を向上させることができる点で好ましい。
【0077】
継続して、延伸されて噴射されたマルチフィラメントは、コンベヤベルト上にて捕集することでウェブを形成し、得られたウェブを熱接着することで不織布を製造する。
【0078】
以上のように提供される芯鞘型スパンボンド不織布は、優れた機械的物性を示し、従来よりも向上した耐熱性および耐薬品性を示して、石炭火力発電所、セメント工場、焼却設備、環境集塵設備、産業廃棄物処理設備などに用いられる難燃/耐熱性のバッグフィルタや、自動車のエンジンルーム用、排気系用の内装材、および、強酸/強アルカリに対する耐久性が要求される液体ろ過用フィルタへの使用に適する。
【発明の効果】
【0079】
本発明によれば、優れた機械的物性と耐熱性および耐薬品性を有するポリフェニレンスルフィド素材の芯鞘型スパンボンド不織布、および、スパンボンド法によるポリフェニレンスルフィド素材の芯鞘型不織布を、連続的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0081】
実施例1
スクリューと加熱体を有する2機の連続押出機、異種樹脂の吐出孔数の調節が可能な混繊用紡糸口金、圧縮空気発生装置、空気延伸装置、金属製ネットコンベヤ、カレンダーロール、熱風乾燥機、張力調節装置、および巻取機が備えられた、スパンボンド不織布製造用装置を用意した。
【0082】
シース部(A成分):PPS原料は、窒素雰囲気中で130℃の温度で10時間乾燥してシース部(Sheath)として用いたのであり、乾燥後の融点が280℃、重量平均分子量(Mw)は50,000、溶融粘度が700Poise(300℃、Shear rate 1000 l/s)、結晶化速度(@240℃)が70秒であった。
【0083】
コア部(B成分):PET原料は、窒素雰囲気中で130℃の温度で10時間乾燥して成分コア部(Core)として用いたのであり、乾燥後の融点が250℃、重量平均分子量(Mw)は55,000、溶融粘度が450(300℃、Shear rate 1000 l/s)、溶融流れ指数が45~50g/10min(@280℃)、固有粘度(IV)が0.65dl/g、結晶化速度(@210℃)が400秒であった。
【0084】
前記PPS 15重量%とPET 85重量%をそれぞれの連続押出機に投入して加熱溶融し、複合紡糸した。具体的には、280℃の融点を有するPPSは290℃で溶融させ、250℃の融点を有するPETは284℃で溶融させた後、芯鞘型複合紡糸を行った。
【0085】
この時、延伸後に形成される複合フィラメントが3~9デニール水準になり、15重量%のPPSフィラメントおよび85重量%のPETフィラメントが紡糸されるように重量比に合わせて吐出した。
【0086】
紡糸口金を通じて紡出されたフィラメントを25℃の雰囲気下でQuenching Airにより固化した後(つまり、クエンチングコンディショナ(Quenching Conditioner、Q/C)温度25℃)、前記口金から距離1,500mmの位置に設置したエジェクター(Ejector)を通過させ、空気延伸装置を用いて1.0kgf/cm2以上のエアで延伸させることで、円形断面を有する芯鞘型複合フィラメントを得た。
【0087】
次に、通常の開繊法によって、前記混合複合フィラメントを連続移動する金属製ネットコンベヤ上に積層することで、不織布の単位面積あたりの重量が100g/m2となるように繊維ウェブを形成させた。
【0088】
形成された繊維ウェブを210℃に加熱された上/下カレンダーロール(nip圧力30N/cm)を通過させて熱接着することで、芯鞘型スパンボンド不織布が得られた。
【0089】
実施例2
複合紡糸時、前記PPSの投入量が10重量%であり、PETの投入量が90重量%であることを除けば、実施例1と同様の方法で不織布を製造した
【0090】
実施例3
複合紡糸時、前記PPSの投入量が30重量%であり、PETの投入量が70重量%であることを除けば、実施例1と同様の方法で不織布を製造した。
【0091】
実施例4
複合紡糸時、前記クエンチングコンディショナ(Quenching Conditioner、Q/C)の温度が35℃であることを除けば、実施例1と同様の方法で不織布を製造した。
【0092】
実施例5
複合紡糸時、前記PPSの溶融粘度が3000Poiseであることを除けば、実施例1と同様の方法で不織布を製造した。
【0093】
参考例1
クエンチングコンディショナ(Quenching Conditioner、Q/C)温度が15℃であることを除けば、実施例1と同様の方法で紡糸を実施した。しかし、この場合、紡糸過程で糸切れが発生して不織布を製造できなかった。
【0094】
比較例1
複合紡糸時、前記PPSの溶融粘度が4000ポアズ(Poise)であることを除けば、実施例1と同様の方法で紡糸を実施した。しかし、この場合、パック(Pack)圧力が過度に上昇して実験を中断したことから、不織布を製造できなかった。
【0095】
比較例2
PETを使用せずにPPSだけで単独紡糸したことを除けば、実施例1と同様の方法で紡糸を実施した。しかし、前記PPSの単独繊維からなる場合、紡糸の過程にて糸切れが発生して、不織布を製造できなかった。
【0096】
比較例3
複合紡糸時、前記PPSの投入量が5重量%であり、PETの投入量が95重量%であることを除けば、実施例1と同様の方法で不織布を製造した。
【0097】
比較例4
複合紡糸の際、前記PPSの投入量が40重量%であり、PETの投入量が60重量%であることを除けば、実施例1と同様の方法で不織布を製造した。
【0098】
比較例5
シース部(Sheath)には、280℃の融点を有するPPSの代わりに、250℃の融点を有するPETを使用したのであって、コア部(Core)には、250℃の融点を有するPETの代わりに214℃の融点を有する低融点PETを使用した。また、シース部(Sheath)の投入量が85重量%であり、コア部(Core)の投入量が15重量%であることを除けば、実施例1と同様の方法で複合紡糸を実施した。
【0099】
比較例6
複合紡糸時、前記PPSの溶融粘度が650Poiseであることを除けば、実施例1と同様の方法で紡糸を実施した。
【0100】
参考例2
クエンチングコンディショナ(Quenching Conditioner、Q/C)温度が40℃であることを除けば、実施例1と同様の方法で紡糸を実施した。しかし、この場合、紡糸の過程にて糸切れが発生して、不織布を製造できなかった。
【0101】
[試験例]
前記実施例、参考例および比較例に対して、以下の評価項目別の測定方法により物性を測定し、その結果を表1または表2に示した。
【0102】
[試験例1.溶融粘度]
12mmのピストン径および20mm(L)×1mm(D)の口金規格を有する装置を用いて、300℃下に1,000のせん断速度(shear rate)の条件下、ポリフェニレンスルフィドおよびポリエチレンテレフタレートの溶融粘度をそれぞれ測定した。
【0103】
[試験例2.引張強力(kgf/5cm)]
Instron社の万能試験機を用いて、KS K 0521の標準試験法によって引張強力を測定した(単位:kgf/5cm)。
【0104】
具体的には、実施例および比較例の各不織布に対して、縦及び横(MDとCD)の方向に横5cm×縦20cmの大きさの試験片を製造した後、Instron社の測定装置を用いて引張速度200mm/min.で引張強力を測定した。
【0105】
[試験例3.液体抵抗性(KS K ISO TR 12960:2011)]
引張強力の測定した際と同一の大きさの試験片を用意した。以後、無機酸(方法A)と無機塩基(方法B)に対して、以下のような処理条件で対照試験片と損傷試験片を製造し、KS K 0743:2016の試験方法を用いて、対照試験片との対比での損傷試験片の引張強力(kgf/5cm)の比率を計算して、液体抵抗性を評価した。
【0106】
処理条件
(1)方法A
対照試験片-0.025M硫酸、(60±1)℃、1h浸漬
損傷試験片-0.025M硫酸、(60±1)℃、144h浸漬
【0107】
(2)方法B
対照試験片-水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、リットルあたり2.5gの飽和懸濁液、(60±1)℃、1h浸漬
損傷試験片-水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、リットルあたり2.5gの飽和懸濁液、(60±1)℃、144h浸漬
【0108】
[試験例4.加水分解抵抗性(KS K 0936:2007)]
引張強力の測定時と同一の大きさの試験片を用意した。以後、スパンボンド不織布に対して高温の水に露出させるべく、以下のような処理条件で対照試験片と損傷試験片を製造し、KS K 0743:2016の試験方法を用いて、対照試験片との対比での損傷試験片の引張強力(kgf/5cm)の比率を計算して、加水分解抵抗性を評価した。
【0109】
処理条件
対照試験片-水 温度、(80±1)℃、1h処理
損傷試験片-水 温度、(80±1)℃、28日処理
【0110】
[試験例5.熱収縮率]
MD×CD=30cm×30cmの大きさの不織布試験片に20cm×20cmの大きさの図柄を描いた後、これをマチスオーブン(MATHIS OVEN、DaeLim starlet社)を用いて、予熱板で220℃、3分間熱処理後に取り出して、熱処理前の試験片との対比での収縮した長さを測定する方法により、熱収縮率を計算した。
【0111】
[試験例6.紡糸性]
前記実施例、参考例および比較例で製造されたスパンボンド不織布の製造過程での紡糸安定性を、1時間紡糸した際の糸切れの回数を測定する方法で評価した。
【0112】
評価基準
1時間あたりの糸切れ回数が1回未満の場合:良い(○)
1時間あたりの糸切れ回数が1~3回の場合:普通(△)
1時間あたりの糸切れ回数が3回超過の場合:悪い(X)
【0113】
【0114】
【0115】
前記表1および2の結果からみると、実施例は、特定の溶融粘度を満足するPPSをシース部として含み、高融点のPETをコア部として含み、PPS含有量も10~30重量%使用されることによって、比較例よりも紡糸安定性に優れ、機械的物性に優れていることが確認された。また、実施例は、比較例に比べて、液体抵抗性96%以上、加水分解抵抗性97%以上、および熱収縮率0.5%以下と優れていることが確認された。
【0116】
これに対し、参考例1の場合、上述した通り、紡糸後の固化の過程でクエンチングコンディショナ(Quenching Conditioner)の温度が15℃と過度に低いことから紡糸がうまく行われず、糸切れが発生して不織布を製造できなかった。
【0117】
また、比較例1は、シース部素材であるPPSの溶融粘度が過度に高いことから、紡糸パックの圧力上昇により不織布を製造できず、不織布の物性と紡糸性を評価できなかった。比較例2および4は、PPSだけで単独紡糸したのであるか、PPSの投入量が過度に多いことから、紡糸工程での糸切れの発生により不織布を製造できず、やはり、物性および紡糸性を評価できなかった。比較例3は、前記PPSの含有量が過度に低いことから熱収縮率が高く、実施例1~5に比べて、不織布の液体抵抗性および加水分解抵抗性が不良であった。比較例5も、PET素材だけでシース部およびコア部を形成することから、実施例1~5に比べて、不織布の液体抵抗性および加水分解抵抗性が不良であった。
【0118】
これに加えて、PPSの溶融粘度範囲が650poiseの比較例6は、本願発明によるシース部のPPSの溶融粘度範囲を外れることから、糸切れの発生により不織布の製造が不可能であった。また、クエンチングコンディショナの温度が40℃の参考例2も、本願発明の固化温度条件の範囲を外れることから、糸切れによって不織布を製造できなかった。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
また、本明細書では、シース部として700~3000poiseの溶融粘度(300℃下に1,000 l/sのせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメント、およびコア部として250℃以上の融点を有するポリエステルを複合溶融紡糸して、ポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%、および、ポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%を含む芯鞘型複合フィラメントを得る段階;
前記芯鞘型複合フィラメントを連続コンベヤベルト上に積層して繊維ウェブ(Web)を形成する段階;および
前記繊維ウェブを熱接着させる段階;
を含む、芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法を提供する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
発明の一実施形態により、700~3000poiseの溶融粘度(300℃下に1,000 l/sのせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%;および250℃以上の融点を有するポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%;が混合されてなる芯鞘型複合繊維の不織布ウェブを含む、芯鞘型スパンボンド不織布が提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントは、700~3000poiseの溶融粘度(300℃下に1,000 l/sのせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリフェニレンスルフィド(PPS)からなる。より具体的には、前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントの溶融粘度は、700~2500poiseまたは700~1000poise(300℃下に1,000 l/sのせん断速度(shear rate)で測定)でありうる。前記溶融粘度が700poise以下であれば、紡糸されたフィラメントの機械的物性が低下して糸切れが発生することで紡糸性が低下することから、不織布ウェブの均斉度も低下するという問題があり、3000poiseを超えると、紡糸パックの圧力が高くなって押出量を減少させ、これによって生産性が低下しうる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
具体的には、前記ポリフェニレンスルフィドフィラメントは、融点275℃以上、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定値による30,000~90,000g/molの重量平均分子量(Mw)、および60~80秒の結晶化速度(240℃下に測定)を有するポリフェニレンスルフィドを含むことができる。このような物性を有するポリフェニレンスルフィドを用いる方が、機械的物性の確保と加工性の面で有利である。前記溶融粘度は、12mmのピストン径および20mm(L)×1mm(D)の口金規格を有する装置を用いて、310℃下に1,000 l/sのせん断速度(shear rate)で測定された値である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
また、前記ポリエステルフィラメントは、0.6dl/g以上0.7dl/g以下の固有粘度(IV)、300~500秒の結晶化速度(210℃下に測定)、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定値による50,000~65,000g/molの重量平均分子量(Mw)、40~60g/10minあるいは45~50g/10minの溶融流れ指数(280℃下に荷重2.06kgで測定)、および400~600poiseの溶融粘度(300℃下に1,000 l/sのせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリエステルを含むことができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
例えば、前記芯鞘型スパンボンド不織布は、100g/m2の単位面積あたりの重量を基準として、KS K ISO TR 12960:2011の標準試験法による液体抵抗性が96%以上であり、KS K 0936:2007の標準試験法による加水分解抵抗性が97%以上であり、熱収縮率が0.5%以下であり(20cm×20cmの大きさの図柄が描かれた30cm×30cmの大きさの不織布試験片を220℃で3分間、オーブンにて熱処理した後の、不織布試験片における縦方向(MD; machine direction)および横方向(CD; cross direction)に収縮した長さにより測定)、時間あたり1回未満の糸切れ回数(スパンボンド製造の過程にて1時間紡糸した際にフィラメントが糸切れされる回数を測定)を示すことができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
また、前記芯鞘型スパンボンド不織布は、100g/m2の単位面積あたりの重量を基準として、KS K 0936:2007の標準試験法による加水分解抵抗性が、97%以上あるいは97~99%でありうる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
一方、発明の他の実施形態によれば、
シース部として700~3000poiseの溶融粘度(300℃下に1,000 l/sのせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメント、およびコア部として250℃以上の融点を有するポリエステルを複合溶融紡糸して、ポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%、およびポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%を含む芯鞘型複合フィラメントを得る段階;
前記芯鞘型複合フィラメントを連続コンベヤベルト上に積層して繊維ウェブ(Web)を形成する段階;および
前記繊維ウェブを熱接着させる段階;
を含む、芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法が提供される。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
このような前記芯鞘型複合フィラメントは、700~3000poiseの溶融粘度(300℃下に1,000 l/sのせん断速度(shear rate)で測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%と、250℃以上の融点を有するポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%とを含む。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
[試験例1.溶融粘度]
12mmのピストン径および20mm(L)×1mm(D)の口金規格を有する装置を用いて、300℃下に1,000 l/sのせん断速度(shear rate)の条件下、ポリフェニレンスルフィドおよびポリエチレンテレフタレートの溶融粘度をそれぞれ測定した。
【手続補正11】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
700~3000ポアズ(poise)の溶融粘度(300℃下にせん断速度(shear rate)1,000
l/sで測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%;および
250℃以上の融点を有するポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%;が混合されてなる芯鞘型複合繊維の不織布ウェブを含む、
芯鞘型スパンボンド不織布。
【手続補正12】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
前記ポリエステルフィラメントは、0.6dl/g以上0.7dl/g以下の固有粘度(IV)、300~500秒の結晶化速度(210℃下に測定)、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定値による50,000~65,000g/molの重量平均分子量(Mw)、40~60g/10minあるいは45~50g/10minの溶融流れ指数(280℃下に荷重2.06kgで測定)、および400~600ポアズ(poise)の溶融粘度(300℃下にせん断速度(shear rate)1,000
l/sで測定)を有するポリエステルを含む、請求項1に記載の芯鞘型スパンボンド不織布。
【手続補正13】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
KS K ISO TR 12960:2011の標準試験法による液体抵抗性が96%以上であり、
KS K 0936:2007の標準試験法による加水
分解抵抗性が97%以上であり、
熱収縮率が0.5%以下であり(20cm×20cmの大きさの図柄が描かれた30cm×30cmの大きさの不織布試験片を220℃にて3分間オーブンで熱処理した後の不織布試験片での縦方向(MD)および横方向(CD)に収縮した長さにより測定)、
時間あたり1回未満の糸切れ回数(スパンボンド製造の過程で1時間紡糸した際にフィラメントが糸切れされる回数の測定)
を有する、請求項1に記載の芯鞘型スパンボンド不織布。
【手続補正14】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
シース部として700~3000ポアズ(poise)の溶融粘度(300℃下にせん断速度(shear rate)1,000
l/sで測定)を有するポリフェニレンスルフィドフィラメント、およびコア部として250℃以上の融点を有するポリエステルを複合溶融紡糸して、ポリフェニレンスルフィドフィラメントを含むシース部10~30重量%、およびポリエステルフィラメントを含むコア部70~90重量%を含む芯鞘型複合フィラメントを得る段階;
前記芯鞘型複合フィラメントを連続コンベヤベルト上に積層して繊維ウェブ(Web)を形成する段階;および
前記繊維ウェブを熱接着させる段階;
を含む、芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法。
【手続補正15】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項14
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項14】
前記ポリエステルフィラメントは、0.6dl/g以上0.7dl/g以下の固有粘度(IV)、300~500秒の結晶化速度(210℃下に測定)、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定値による50,000~65,000g/molの重量平均分子量(Mw)、40~60g/10minあるいは45~50g/10minの溶融流れ指数(280℃下に荷重2.06kgで測定)、および400~600ポアズ(poise)の溶融粘度(300℃下にせん断速度(shear rate)1,000
l/sで測定)を有するポリエステルが使用される、請求項8に記載の芯鞘型スパンボンド不織布の製造方法。
【国際調査報告】