(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20231221BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231221BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20231221BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/48
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537413
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 KR2021019547
(87)【国際公開番号】W WO2022139429
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0179454
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 スン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク、 スン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】カン、 ウン-テ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウ、 ジュン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 ムンキュ
(72)【発明者】
【氏名】パク、 サングン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB12
5H050DA03
5H050GA03
5H050GA05
5H050GA08
5H050GA10
5H050GA15
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
本実施形態は、リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池に関する。一実施形態によるリチウム二次電池用負極活物質は、シリコンナノ粒子および炭素マトリックスを含むシリコン-炭素複合体を含み、酸化度が10.5%以下であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンナノ粒子および炭素マトリックスを含むシリコン-炭素複合体
を含み、
酸化度が10.5%以下である、リチウム二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記負極活物質の酸化度は6%~9%の範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記シリコン炭素複合体の表面に位置する非晶質炭素コート層をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記シリコンナノ粒子は(111)面におけるCuKα線を用いるX線回折角度(2theta)の半価幅が0.45°~0.65°の範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記シリコンナノ粒子は(111)面におけるCuKα線を用いるX線回折角度(2theta)の半価幅が0.5°~0.65°の範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項6】
前記シリコンナノ粒子は(111)面におけるCuKα線を用いるX線回折角度(2theta)の半価幅が0.57°~0.65°の範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項7】
前記非晶質炭素コート層が表面に位置するシリコン-炭素複合体のBET比表面積は5m
2/g以下である、請求項3に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項8】
前記非晶質炭素コート層が表面に位置するシリコン-炭素複合体のD90粒径は、180nm以下である、請求項3に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項9】
前記シリコン-炭素複合体内のシリコンナノ粒子の含有量は、前記シリコン-炭素複合体を基準として、45重量%~60重量%の範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項10】
前記炭素マトリックスは結晶質炭素および第1非晶質炭素を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項11】
前記結晶質炭素は、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、膨張黒鉛およびグラフェンのうち少なくとも一つを含む、請求項10に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項12】
前記第1非晶質炭素は、軟化点250℃以下の石油系ピッチ、コールタール、PAA、およびPVAのうち少なくとも一つを含む、請求項10に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項13】
前記非晶質炭素コート層は第2非晶質炭素を含み、
前記第2非晶質炭素は、軟化点250℃以下の石油系ピッチ、コールタール、PAAおよびPVAのうち少なくとも一つを含む、請求項3に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項14】
前記非晶質炭素コート層の平均厚さは10nm以下である、請求項3に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項15】
シリコン原料物質を粉砕してシリコンナノ粒子を得る段階;
前記シリコンナノ粒子と結晶質炭素を混合してシリコン-結晶質炭素前駆体を得る段階;
前記シリコン-結晶質炭素前駆体を第1非晶質炭素前駆体と結着させる段階;そして
前記シリコン-結晶質炭素前駆体および第1非晶質炭素前駆体混合物を炭化させてシリコン-炭素複合体を得る段階;を含み、
前記シリコン原料物質は(111)面におけるCuKα線を用いるX線回折角度(2theta)の半価幅が0.2°以上である、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記シリコン-炭素複合体を得る段階後に前記シリコン-炭素複合体の表面に非晶質炭素コート層を形成する段階をさらに含む、請求項15に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記シリコン原料物質はD1粒径が0.1μm~0.6μmの範囲である、請求項15に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項18】
前記シリコン原料物質はD10粒径が0.7μm~1.3μmの範囲である、請求項15に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項19】
前記シリコン原料物質はD50粒径が2.5μm~4.5μmの範囲である、請求項15に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項20】
前記シリコン原料物質はD90粒径が5.8μm~7μmの範囲である、請求項15に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項21】
前記シリコン原料物質はD99粒径が7.5μm~8.5μmの範囲である、請求項15に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項22】
前記シリコン原料物質を粉砕する段階の粉砕時間は10時間~30時間である、請求項15に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項23】
前記シリコン原料物質を粉砕する段階;は
純度99.9%エタノールを含む有機溶媒を使用する湿式粉砕である、請求項15に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項24】
前記シリコン-結晶質炭素前駆体を第1非晶質炭素前駆体と結着させる段階は、
1ton/cm
2以下の圧力を加えて行われる、請求項15に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項25】
前記シリコン-結晶質炭素前駆体および非晶質炭素前駆体混合物を炭化させる段階;は
前記シリコン-結晶質炭素前駆体および非晶質炭素前駆体混合物を成形して成形体を得る段階;
前記成形体を1000℃以下の不活性雰囲気で炭化させる段階;および
前記炭化した成形体を粉砕および分級してシリコン-炭素複合体を得る段階;を含む、請求項15に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項26】
前記炭化した成形体を粉砕および分級してシリコン-炭素複合体を得る段階は、
前記炭化した成形体をジェットミル(JET mill)およびピンミル(Pin mill)のうち少なくとも一つを用いて平均粒径(D50)が10~15μmの範囲のシリコン-炭素複合体を得るものである、請求項15に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項27】
請求項1に記載の負極活物質を含む負極;
正極;および
電解質;
を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態はリチウム二次電池用負極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、現在携帯用電子通信機器および電気自動車、そしてエネルギ貯蔵装置まで最も幅広く使用されている二次電池システムである。このようなリチウムイオン電池は商用の水系二次電池(Ni-Cd,Ni-MHなど)と比較して高いエネルギ密度と作動電圧そして相対的に小さい自己放電率などの長所を有しており関心が集められている。しかし、携帯用機器でのより効率的な使用時間、電気自動車でのエネルギ特性の向上などを考慮すると、電気化学的特性における改善は依然として解決されるべき技術的課題として残っている。そのため、現在も正極、負極、電解液、分離膜などの4つの原材料にわたって多くの研究と開発が進められている。
【0003】
これらの原材料の中でも負極については優れた容量保存特性および効率を示す黒鉛系物質が商用化されている。しかし、黒鉛系物質の相対的に低い理論容量値(LiC6:372mAh/g)と低い放電容量比率は市場で求められる電池の高エネルギ、高出力密度の特性を満たすには多少不足しているのが現実である。したがって、多くの研究者が周期表上のIV族元素(Si、Ge、Sn)に関心を持っており、中でも特にSiは非常に高い理論容量(Li15Si4:3600mAh/g)と低い作動電圧(~0.1V vs.Li/Li+)の特性により非常に魅力的な材料として脚光を浴びている。
【0004】
しかし、一般的なシリコン系負極材料の場合、サイクル中に300%に達する体積変化を伴い、持続的な充放電による粒子クラッキング(cracking)および電気的接触を失い、低い放電容量比率の特性を示すので実際の電池への適用が難しいという短所がある。
【0005】
したがって、シリコン系負極材料を使用しながらも電池の電気化学性能を向上させる特性を有する負極活物質の開発が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態では電気化学的性能に優れる負極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態による負極活物質は、シリコンナノ粒子および炭素マトリックスを含むシリコン-炭素複合体を含み、酸化度が10.5%以下であり得る。
【0008】
より具体的には、前記負極活物質の酸化度は6%~9%の範囲であり得る。
【0009】
前記リチウム二次電池用負極活物質は前記シリコン炭素複合体の表面に位置する非晶質炭素コート層をさらに含み得る。
【0010】
図1は一実施形態による負極活物質の構造、すなわち、シリコン炭素複合体の表面に位置する非晶質炭素コート層を含む場合を概略的に示すものであり、
図2はシリコン-炭素複合体の表面に位置する非晶質炭素コート層が形成されていない場合を例示的に示す図である。
【0011】
図1を参照すると、本実施形態ではシリコン炭素複合体の表面に非晶質炭素コート層が位置するので、負極活物質の表面を均一に囲んで比表面積が減少し、そのためリチウム二次電池の電気化学的性能を向上させることができる。
【0012】
それに対して、
図2のようにシリコン炭素複合体の表面に非晶質炭素コート層が形成されていない場合は、負極活物質の表面にナノシリコンと黒鉛粒子が露出して比表面積が増加し、そのためリチウム二次電池の性能劣化の原因になる。
【0013】
前記シリコンナノ粒子は(111)面におけるCuKα線を用いるX線回折角度(2theta)の半価幅が0.45°~0.65°の範囲であり得る。
【0014】
より具体的には、前記シリコンナノ粒子は(111)面におけるCuKα線を用いるX線回折角度(2theta)の半価幅が0.5°~0.65°の範囲または0.57°~0.65°の範囲であり得る。
【0015】
前記非晶質炭素コート層が表面に位置するシリコン-炭素複合体のBET比表面積は5m2/g以下であり得る。
【0016】
前記非晶質炭素コート層が表面に位置するシリコン-炭素複合体のD90粒径は、180nm以下であり得る。
【0017】
前記シリコン-炭素複合体内のシリコンナノ粒子の含有量は、前記シリコン-炭素複合体を基準として、45重量%~60重量%の範囲であり得る。
【0018】
前記炭素マトリックスは結晶質炭素および第1非晶質炭素を含み得る。
【0019】
前記結晶質炭素は、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、膨張黒鉛およびグラフェンのうち少なくとも一つを含み得る。
【0020】
前記第1非晶質炭素は、軟化点250℃以下の石油系ピッチ、コールタール、PAA、およびPVAのうち少なくとも一つを含み得る。
【0021】
前記非晶質炭素コート層は第2非晶質炭素を含み、前記第2非晶質炭素は、軟化点250℃以下の石油系ピッチ、コールタール、PAAおよびPVAのうち少なくとも一つを含み得る。
【0022】
前記非晶質炭素コート層の平均厚さは10nm以下であり得る。
【0023】
他の実施形態によるリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、シリコン原料物質を粉砕してシリコンナノ粒子を得る段階;前記シリコンナノ粒子と結晶質炭素を混合してシリコン-結晶質炭素前駆体を得る段階;前記シリコン-結晶質炭素前駆体を第1非晶質炭素前駆体と結着させる段階;そして前記シリコン-結晶質炭素前駆体および第1非晶質炭素前駆体混合物を炭化させてシリコン-炭素複合体を得る段階を含み、前記シリコン原料物質は(111)面におけるCuKα線を用いるX線回折角度(2theta)の半価幅が0.2°以上であり得る。
【0024】
次に、前記負極活物質の製造方法は、前記シリコン-炭素複合体を得る段階後に前記シリコン-炭素複合体の表面に非晶質炭素コート層を形成する段階をさらに含み得る。
【0025】
前記シリコン原料物質はD1粒径が0.1μm~0.6μmの範囲であり得る。
【0026】
前記シリコン原料物質はD10粒径が0.7μm~1.3μmの範囲であり得る。
【0027】
前記シリコン原料物質はD50粒径が2.5μm~4.5μmの範囲であり得る。
【0028】
前記シリコン原料物質はD90粒径が5.8μm~7μmの範囲であり得る。
【0029】
前記シリコン原料物質はD99粒径が7.5μm~8.5μmの範囲であり得る。
【0030】
前記シリコン原料物質を粉砕する段階の粉砕時間は10時間~30時間であり得る。
【0031】
前記シリコン原料物質を粉砕する段階;は純度99.9%エタノールを含む有機溶媒を使用する湿式粉砕を用いて行われ得る。
【0032】
また、前記シリコン-結晶質炭素前駆体を第1非晶質炭素前駆体と結着させる段階は、1ton/cm2以下の圧力を加えて行われ得る。
【0033】
前記シリコン-結晶質炭素前駆体および非晶質炭素前駆体混合物を炭化させる段階;は、前記シリコン-結晶質炭素前駆体および非晶質炭素前駆体混合物を成形して成形体を得る段階;前記成形体を1000℃以下の不活性雰囲気で炭化させる段階;および前記炭化した成形体を粉砕および分級してシリコン-炭素複合体を得る段階;を含み得る。
【0034】
前記炭化した成形体を粉砕および分級してシリコン-炭素複合体を得る段階は、前記炭化した成形体をジェットミル(JET mill)およびピンミル(Pin mill)のうち少なくとも一つを用いて平均粒径(D50)が10~15μmの範囲のシリコン-炭素複合体を得ることもできる。
【0035】
また他の実施形態によるリチウム二次電池は、前記一実施形態による負極活物質を含む負極;正極;および電解質;を含む。
【発明の効果】
【0036】
一実施形態によれば、構造的安定性に優れるので、クラッキングなしに可逆的な充放電が可能であり、そのため、長寿命-低膨張の特性を有する負極活物質を提供することができる。
【0037】
また、シリコン-炭素複合体内に結晶質炭素が完全にキャプチャリングできるので、非常に高容量の負極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】一実施形態による負極活物質の構造を概略的に示す図である。
【
図2】シリコン-炭素複合体の表面に位置する非晶質炭素コート層が形成されていない場合を例示的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
第1、第2および第3などの用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるがこれらに限られない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別することだけの使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及されることができる。
【0040】
ここで使用される専門用語は単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
【0041】
ある部分が他の部分の「上に」または「の上に」あると言及する場合、これは他の部分のすぐ上にまたは上にあり得、その間に他の部分が介在し得る。対照的にある部分が他の部分の「すぐ上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。
【0042】
他に定義のない限り、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。一般に用いられている辞書に定義された用語は関連技術文献と現在開示されている内容に合う意味を有するものと追加解析され、定義しない限り理想的または公式的過ぎる意味に解釈されない。
【0043】
負極活物質
前述した通り、シリコン系負極材料の場合、低い放電容量比率の特性を示すので、実際電池への適用が難しいという短所がある。
【0044】
このようなシリコンの固有物性を克服するために、シリコン粒子の大きさをナノ大きさに制御した後、炭素マトリックスとともに複合したシリコン-炭素複合体を用いてリチウム二次電池の電気化学的特性を向上させるための試みがあった。
【0045】
しかし、炭素マトリックスを含むシリコン-炭素複合体におけるシリコンナノ粒子は、炭素マトリックスにより完璧にキャプチャリングされるべきであるが、可逆的な充放電のために結晶粒の大きさを小さくする場合には、粒子数が多く、炭素マトリックスによりキャプチャリングが難しくなり、これによる比表面積の増加により寿命特性が顕著に減少する問題がある。
【0046】
かかる問題を解決するために、一実施形態ではシリコンナノ粒子および炭素マトリックスを含むシリコン-炭素複合体を含み、酸化度が10.5%以下であるリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【0047】
本実施形態の負極活物質における酸化度は10.5%以下、より具体的には6%~10.5%または6%~9%の範囲であり得る。
【0048】
シリコンナノ粒子は可逆的膨張および収縮のために結晶粒の大きさが小さいほど良いが、結晶粒の大きさが小さくなるためにはシリコン原料のミリング時間が長くならざるを得ず、そのため、シリコン-炭素複合体の酸化度が増加する問題があり得る。したがって、シリコン原料の製造工程を制御して適切な結晶粒の大きさの範囲と酸化度の範囲を制御することが必要である。
【0049】
すなわち、本発明ではシリコンナノ粒子のD90粒径が後述する範囲を満たし、酸化度が前記範囲を満たすようにした。この場合、シリコンナノ粒子の可逆的膨張および収縮の容易さとともに負極活物質の生産性に優れるという点で有利な効果を有する。さらに、本実施形態の負極活物質を適用したリチウム二次電池に対して優れた電気化学的特徴を確保することができる。
【0050】
前記シリコンナノ粒子は(111)面におけるCuKα線を用いるX線回折角度(2theta)の半価幅が0.45°~0.65°の範囲、より具体的には、0.5°~0.65°または0.57°~0.65°の範囲であり得る。
【0051】
シリコンナノ粒子の(111)面の半価幅が前記範囲を満たす場合、シリコンナノ粒子のクラッキング(cracking)なしに可逆的な充放電が可能であるという点で有利である。また、前記のようなシリコンナノ粒子を使用する場合、単独素材の容量が例えば、1,400mAh/gを超える高容量のリチウム二次電池用負極活物質を製造することができる。
【0052】
本実施形態の負極活物質は前記シリコン炭素複合体の表面に位置する非晶質炭素コート層をさらに含む。
【0053】
前記非晶質炭素コート層が表面に位置するシリコン-炭素複合体のBET比表面積は、5m2/g以下、より具体的には3.5m2/g~5m2/gまたは4m2/g~5m2/g範囲であり得る。非晶質炭素コート層が表面に位置するシリコン-炭素複合体の比表面積が前記範囲を満たす場合、高容量のリチウム二次電池用負極活物質を製造することができる。
【0054】
前記シリコンナノ粒子は、D90粒径が180nm以下、より具体的には、50nm~180nm、50nm~150nm、80nm~150nm、または100nm~150nm範囲であり得る。
【0055】
このようなシリコンナノ粒子のD90粒径が小さくなるほどシリコンナノ粒子を含むスラリーの粘度は約10%近く増加する。これはスラリーの内部にナノ化されたシリコン粒子の数が増加したことを意味する。本実施形態ではシリコンナノ粒子のD90粒径が前記範囲を満たすので、スラリーの粘度が一定の水準を維持することができる。
【0056】
一方、前記シリコン-炭素複合体内のシリコンナノ粒子の含有量は、前記シリコン-炭素複合体100重量%を基準として、45重量%~60重量%の範囲であり得る。シリコンナノ粒子の含有量が高まるほど炭素マトリックス内に位置する高密度の第1非晶質炭素層中にシリコンナノ粒子および導電性と可逆性を付与するための結晶質炭素が完全にキャプチャリングし得、シリコン-炭素複合体の構造が崩壊しない、すなわち、構造的安定性が向上する。
【0057】
一方、前記炭素マトリックスは結晶質炭素および第1非晶質炭素を含み得る。
【0058】
前記結晶質炭素は、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、膨張黒鉛およびグラフェンのうち少なくとも一つを含み得る。
【0059】
また、前記第1非晶質炭素は、軟化点250℃以下の石油系ピッチ、コールタール、PAA、およびPVAのうち少なくとも一つを含み得る。
【0060】
前記炭素マトリックス内に含まれる結晶質炭素の平均粒径(D50)は8μm~10μmの範囲、または4μm~8μmの範囲であり得る。結晶質炭素の平均粒径が前記範囲を満たす場合、シリコンナノ粒子の不足した伝導特性を補完してリチウム二次電池の充放電可逆性を向上させることができる。
【0061】
前記第1非晶質炭素は、シリコンナノ粒子および結晶質炭素を電気的-物理的に連結させることによってシリコン-炭素複合体に含まれる各原料間の結着力を向上させることができる。
【0062】
シリコン-炭素複合体に含まれるシリコンナノ粒子、結晶質炭素および第1非晶質炭素の含有量が前記範囲内で適切に制御される場合、導電性および可燃性に優れ、構造安定性に優れる負極活物質を製造することができる。
【0063】
前述した通り、本実施形態の負極活物質はシリコン-炭素複合体の表面に位置する非晶質炭素コート層を含む。前記非晶質炭素コート層は第2非晶質炭素を含み、前記第2非晶質炭素は、軟化点250℃以下の石油系ピッチ、コールタール、PAAおよびPVAのうち少なくとも一つを含み得る。
【0064】
前記非晶質炭素コート層の平均厚さは10nm以下、より具体的には1nm~10nm範囲であり得る。非晶質炭素コート層の平均厚さが前記範囲を満たす場合、負極活物質の容量特性に優れある。
【0065】
本実施形態のリチウム二次電池用負極活物質は酸化度を特定範囲で制御することによって、構造的安定性に優れて高容量を有するリチウム二次電池用負極活物質を製造することができる。
【0066】
リチウム二次電池用負極活物質の製造方法
【0067】
以下、一実施形態によるリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を叙述する。ただし、下記製造方法はシリコン-炭素複合体を含むリチウム二次電池用負極活物質の製造方法に対する例示であり、本実施形態は下記方法に限定されるものではない。
【0068】
他の実施形態によるリチウム二次電池用リチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、シリコン原料物質を粉砕してシリコンナノ粒子を得る段階;前記シリコンナノ粒子と結晶質炭素を混合してシリコン-結晶質炭素前駆体を得る段階;前記シリコン-結晶質炭素前駆体を第1非晶質炭素前駆体と結着させる段階;そして前記シリコン-結晶質炭素前駆体および第1非晶質炭素前駆体混合物を炭化させてシリコン-炭素複合体を得る段階を含む。
【0069】
このとき、前記シリコン原料物質は(111)面におけるCuKα線を用いるX線回折角度(2theta)の半価幅が0.2°以上であり得る。
【0070】
また、シリコン-炭素複合体内に含まれるシリコンナノ粒子、結晶質炭素、非晶質炭素に係る具体的な説明は前述したのでここでは省略する。
【0071】
本実施形態で、前記リチウム二次電池の製造方法は、前記シリコン-炭素複合体を得る段階後に前記シリコン-炭素複合体の表面に非晶質炭素コート層を形成する段階をさらに含み得る。非晶質炭素コート層に係る具体的な説明は前述したのでここでは省略する。
【0072】
シリコンナノ粒子を用いるシリコン炭素複合体が長寿命および低膨張の特性を有するためには、シリコンナノ粒子が充分に低い結晶粒を有さなければならず、非晶質炭素を含む炭素マトリックスがシリコンナノ粒子および結晶質炭素をキャプチャリングできなければならない。
【0073】
本実施形態ではシリコン原料物質として、(111)面におけるCuKα線を用いるX線回折角度(2theta)の半価幅が0.2°以上、より具体的には0.2°~0.4°の範囲であるシリコンを用いる。
【0074】
また、前記シリコン原料物質はD1粒径が0.1μm~0.6μmの範囲であり得、D10粒径が0.7μm~1.3μmの範囲であり得る。
【0075】
また、前記シリコン原料物質はD50粒径が2.5μm~4.5μmの範囲であり得、D90粒径が5.8μm~7μmの範囲であり得、D99粒径が7.5μm~8.5μmの範囲であり得る。
【0076】
このようなシリコン原料物質を準備した後に機械的ミリングを用いてナノ大きさに粉砕し、粉砕されたシリコンナノ粒子は(111)面におけるCuKα線を用いるX線回折角度(2theta)の半価幅が、前述したように0.45°~0.65°の範囲、より具体的には0.5°~0.65°または0.57°~0.65°の範囲であり得る。
【0077】
シリコンナノ粒子の(111)面に対する半価幅の範囲は、前記シリコン原料を用いるミリング工程でミリング時間を長くするか、BPR(Ball Per Ratio)を高めるか、固形分比を調節してジルコニアボールと衝突確率を高めることなどを制御して調節できる。
【0078】
具体的には、ミリング工程でジルコニアビーズは投入原料のD99に対して2倍未満の大きさで使用した。粒度のD99が過度に大きいかジルコニアビーズが小さい場合はナノ化効率が過度に低下してナノ化所要時間の増加、それにともなうシリコンの酸化などの副作用が発生し得るからである。
【0079】
シリコン粉砕段階はシリコンナノ粒子の酸化を防止するためにエタノール、IPAなど有機溶媒を使用する湿式粉砕方法を用いることができる。具体的には純度99.9%エタノールを使用できる。効果的なシリコンナノ化のために固形分比は8~15%の範囲で行うことができる。
【0080】
原料対ジルコニアビーズのBPRは5:1であり、粉砕機内部ロータの回転速度は全体実施例に対して同一に2500rpmを維持した。シリコンナノ粒子の臨界の大きさ(Dc:150nm以下)の確認のためにBeckmann coulter社のナノ粒度測定器で粉砕粒子の大きさを測定し、XRDを測定してXRDの(111)ピークの半価幅を用いてSherrer equationで計算して結晶粒の大きさを確認した。
【0081】
前記シリコンナノ粒子を得る段階のシリコン粉砕時間は10時間以上であり得る。具体的には10~30時間以下または15時間~25時間であり得る。
【0082】
一般的にシリコンナノ粒子スラリーは噴霧乾燥機を用いて粉末状態にして使用できる。本発明では導電性および可逆性の付与のためにシリコンナノ粒子に黒鉛を混合して前駆体として得ることができる。すなわち、噴霧乾燥の前に高速分散機を用いて黒鉛粉末をシリコンナノ粒子スラリーに混合し噴霧乾燥してシリコン-黒鉛前駆体粉末を得ることができる。このとき、黒鉛は人造黒鉛、鱗片状黒鉛、または土状黒鉛が用いられる。黒鉛は中心粒度(D50)を基準として前駆体のD50大きさ未満の黒鉛を用いて、具体的には黒鉛のD50は5~10μmであり得る。噴霧乾燥段階におけるミリングの際に、使用された溶媒は揮発し得る。
【0083】
このように取得したシリコン-結晶質炭素で構成された噴霧乾燥前駆体を最終製品でシリコン-結晶質炭素前駆体と炭素支持層が形成され、完ぺきに結着できるように第1非晶質炭素前駆体、例えばピッチ(炭素ソース)と混合することができる。すなわち、前記シリコン-結晶質炭素前駆体を第1非晶質炭素と結着させる段階を経る。前記結着段階はシリコン-結晶質炭素前駆体と第1非晶質炭素の結着力増大のためにシリコン-結晶質炭素前駆体粉末の独立的な流動を最小化できる工程であれば制限はないが、例えばメカノフュージョン、ボールミルなど粉末との接触媒介による工程を適用することができる。
【0084】
その後シリコン-結晶質炭素前駆体の内部に存在する気孔を最小化し、結着力を増加させて高密度化できるように特定の圧力を定められた時間範囲で印加するシリコン-結晶質炭素前駆体および第1非晶質炭素混合物を成形して成形体を得る段階を行い得る。このとき、加圧圧力は1ton/cm2以下であり得る。加圧成形の際に結着段階で混合された非晶質炭素は噴霧乾燥工程で生成されたシリコン-結晶質炭素前駆体内部の微細気孔を埋めることによって合成粉末の電気化学的特性を向上させることができる。前記加圧成形は自体製作された金型(mold)に粉末を埋めて加圧プレス設備を用いて行い、成形工程後に収得される半製品はブロックの形態である。
【0085】
加圧成形工程後に1000℃未満、不活性雰囲気でブロックを炭化させ、その後ジェットミル、ピンミルなどの乾式粉砕工程を経た後、分級してシリコン-炭素複合体を得ることができる。
【0086】
前記炭化した成形体を粉砕および分級してシリコン-炭素複合体を得る段階後に、得られたシリコン-炭素複合体を非晶質炭素前駆体を用いて10nm以下の非晶質炭素コート層を形成する段階をさらに含み得る。このとき、得られる負極活物質の粒度D50は10~15μmであり得る。
【0087】
このとき、コーティングとして使用される非晶質炭素前駆体は軟化点250℃未満の石油系ピッチまたはコールタール、PAA、PVAなど炭素ソースであり得る。コーティング工程はツイストブレードミキサを用いて行い、工程変数としては時間、回転速度などがあるが、本発明では重要に制御されるべき構成ではないため記載しない。
【0088】
その後、不活性雰囲気で1000℃未満温度で熱処理を行って篩い分けにより最終製品を製造した。
【0089】
負極活物質を収得した後に条件別にXRDを測定して(111)主ピークの半価幅を用いて、Sherrer equationで結晶粒の大きさを計算した。
【0090】
また、前記シリコン-炭素複合体の酸化度はLECO ONH836 Seriesを用いて測定した。
【0091】
本発明のまた他の実施形態では、前述した本発明の一実施形態による負極活物質を含む負極、正極、そして前記負極および正極の間に位置する電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0092】
前記負極は、負極活物質、バインダおよび選択的に導電材を混合して負極活物質層形成用組成物を製造した後、それを負極集電体に塗布して製造することができる。
【0093】
前記負極集電体は例えば、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコートされたポリマー基材、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0094】
前記負極活物質としては、前述した本発明の一実施形態と同じであるため省略する。
【0095】
前記バインダとしては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース/スチレン-ブタジエンゴム、ヒドロキシプロピレンセルロース、ジアセチレンセルロース、ポリビニルクロライド、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどを使用できるが、これに限定されるものではない。前記バインダは前記負極活物質層形成用組成物の総量に対して1重量%~30重量%で混合され得る。
【0096】
前記導電材としては電池に化学的変化を誘発せず、かつ導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、具体的には天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスキー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを使用できる。前記導電材は前記負極活物質層形成用組成物の総量に対して0.1重量%~30重量%で混合され得る。
【0097】
次に、前記正極は、正極活物質、バインダおよび選択的に導電材を混合して正極活物質層形成用組成物を製造した後,この組成物を正極集電体に塗布して製造することができる。このとき、バインダおよび導電材は前述した負極の場合と同一に使用する。
【0098】
前記正極集電体は、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものを使用できる。
【0099】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物(リチエイテッドインターカレーション化合物)を使用できる。
【0100】
前記正極活物質は具体的には、コバルト、マンガン、ニッケルまたはこれらの組み合わせの金属とリチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを使用でき、その具体的な例としては下記化学式のいずれか一つで表される化合物を使用できる。LiaA1-bRbD2(前記式において、0.90≦a≦1.8及び0≦b≦0.5である);LiaE1-bRbO2-cDc(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、及び0≦c≦0.05である);LiE2-bRbO4-cDc(前記式において、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobRcDα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobRcO2-αZα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α<2である);LiaNi1-b-cCobRcO2-αZ2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbRcDα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbRcO2-αZα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbRcO2-αZ2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α<2である);LiaNibEcGdO2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5及び0.001≦d≦0.1である。);LiaNibCocMndGeO2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5及び0.001≦e≦0.1である。);LiaNiGbO2(前記式において、0.90≦a≦1.8及び0.001≦b≦0.1である。);LiaCoGbO2(前記式において、0.90≦a≦1.8及び0.001≦b≦0.1である。);LiaMnGbO2(前記式において、0.90≦a≦1.8及び0.001≦b≦0.1である。);LiaMn2GbO4(前記式において、0.90≦a≦1.8及び0.001≦b≦0.1である。);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiTO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);及びLiFePO4。
【0101】
前記化学式において、AはNi、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであり;RはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであり;DはO、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;EはCo、Mnまたはこれらの組み合わせであり;ZはF、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはこれらの組み合わせであり;QはTi、Mo、Mnまたはこれらの組み合わせであり;TはCr、V、Fe、Sc、Yまたはこれらの組み合わせであり;JはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはこれらの組み合わせである。
【0102】
前記電解質は非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0103】
前記非水性有機溶媒は電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をする。
【0104】
前記リチウム塩は有機溶媒に溶解して、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオン移動を促進する役割をする物質である。
【0105】
リチウム二次電池の種類によって正極と負極の間にセパレータが存在し得る。このようなセパレータとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜を使用でき、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータなどのような混合多層膜を使用できるのはもちろんである。
【0106】
リチウム二次電池は使用するセパレータと電解質の種類によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池に分類することができ、形状によって円筒型、角型、コイン型、パウチ型などに分類でき、サイズによってバルク型と薄膜型に分けられる。これら電池の構造と製造方法はこの分野に広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0107】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、本発明はこれによって制限されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0108】
実施例1
(1)ナノシリコン粒子を含むスラリーの製造
下記表1のような特徴を有するポリシリコン原料物質を準備した後、有機溶媒を使用して機械的ミリングを実施し、D50が100nm、D90が147nmであり、スラリー粘度が5530cpsである実施例1のナノシリコン粒子を含むスラリーを製造した。
【0109】
【0110】
(2)負極活物質の製造
シリコン-炭素複合体100重量%を基準として、前記(1)で製造したシリコンナノ粒子を含むスラリーを50重量%、中心粒度(D50)が5~10μmである黒鉛粒子22重量%を高速混合機に投入した後に分散させて中心粒度(D50)が15~20μmであるシリコン-黒鉛噴霧乾燥前駆体を合成した。次に、前記シリコン-炭素複合体100重量%を基準として、ピッチ粉末28重量%を混合して混合粉末を製造した。炭素支持体の形成のために一定の大きさの金型に前記混合粉末を装入した後約50トンの圧力で一軸加圧成形を実施した。
【0111】
加圧工程で得られたブロックはナノシリコン酸化防止のために1000℃未満、不活性雰囲気で熱処理を行った後にジェットミル(JET mill)でD50を基準として10~15μmの範囲で粉砕して炭素-シリコン複合体を製造した。
【0112】
次に、前記炭素-シリコン複合体およびコールタールをツイストブレードミキサ(twisted blade mixer)に投入して約30分間攪拌した後、1000℃未満の不活性雰囲気で熱処理を行った後、#635mesh(20μm)の篩い分けにより厚さ4-5nmの非晶質炭素コート層が形成された負極活物質を製造した。
【0113】
このとき、コールタールは炭素-シリコン複合体を基準として、3~10重量%を添加した。
【0114】
実施例2~6および比較例1~4
(1)シリコンナノ粒子を含むスラリーの製造
D50およびD90、スラリー粘度が下記表2の値を有するようにしたことを除いては実施例1の(1)と同様の方法でシリコンナノ粒子を含むスラリーを製造した。
【0115】
【0116】
(2)負極活物質の製造
シリコンナノ粒子を含むスラリー、黒鉛粒子およびピッチ粉末の含有量を下記のように調節して使用したことを除いては実施例1の(2)と同様の方法で実施例2~6および比較例1~4による負極活物質を製造した。
【0117】
実施例1~実施例3、比較例1、比較例9はシリコンナノ粒子を含むスラリーを50重量%、黒鉛粒子18重量%、ピッチ粉末32重量%を使用し、実施例4~実施例6および比較例2~比較例8はシリコンナノ粒子を含むスラリーを50重量%、黒鉛粒子22重量%、ピッチ粉末28重量%を使用した。
【0118】
ただし、比較例6~9の場合は前記実施例1の(2)で炭素-シリコン複合体を製造した後に1000℃未満の不活性雰囲気で熱処理を行った後、#635mesh(20μm)の篩い分けにより、非晶質炭素コート層が形成されていない負極活物質を製造した。
【0119】
比較例5
(1)スラリーの製造
ポリシリコン原料物質を準備した後、機械的ミリングを実施せず、スラリーを製造した。
(2)負極活物質の製造
前記(1)で製造したスラリーを50重量%、黒鉛粒子20重量%、ピッチ粉末30重量%を使用したことを除いては実施例1の(2)と同様の方法で負極活物質を製造した。
【0120】
実験例1-SEM分析
実施例1により製造した負極活物質に対してSEM分析を実施して
図3および
図4に示した。
【0121】
図3および
図4を参照すると、実施例1による負極活物質は4-5nm程度の非晶質炭素コート層が形成されたことが確認された。
【0122】
実験例2-負極活物質特性の評価
実施例および比較例で製造した負極活物質に対して、シリコンナノ粒子に対する(111)面における半価幅、負極活物質の酸化度および比表面積を測定した。
【0123】
具体的には、シリコンナノ粒子に対してはCuKα線を用いるX線回折による(111)面の回折ピークの半価幅FWHM(111)を測定した値であり、酸化度はLECO ONH836 Seriesを用いて測定した値である。
【0124】
比表面積は、BET測定装備(Micromeritics TriStar II 3020)を用いて測定した。結果は下記表3に示した。
【0125】
【0126】
表3を参照すると、実施例1~7の酸化度は10.5%以下であり、シリコンナノ粒子の(111)面の半価幅が0.45°~0.65°の範囲を満たすことが確認された。
【0127】
しかし、比較例1の場合、酸化度が10.5%を超えて、比較例2、3、5の場合はシリコンナノ粒子の(111)面の半価幅が前記範囲を超えることが分かる。
【0128】
また、非晶質炭素コート層が形成された実施例1~6の場合、シリコンナノ粒子が比較例4と類似の半価幅を有するにも関わらず、比表面積が大幅に減少したことが分かる。
【0129】
次に、非晶質炭素コート層が形成されていない比較例6~7の場合、シリコン-炭素複合体粒子の表面に露出した開気孔(open pore)に起因して高い比表面積値を有することが確認された。
【0130】
実験例3-電気化学の評価
(1)コイン型半電池の製造
上記のように製造された負極活物質を用いてCR2032コインセルを製造した後に電気化学評価を行った。
具体的には、負極活物質96.1重量%、導電材(super C65)1重量%、CMC(carboxy methyl cellulose)1.7重量%、スチレンブタジエンゴム(SBR)1.2重量%を混合した混合物を製造した。前記混合物8重量%を容量が360mAh/gである商用の天然黒鉛と混合して約440mAh/gの容量を有する負極活物質スラリーを製造した。
【0131】
次に、Cu集電体上に前記スラリーをコートし、乾燥した後に圧延して負極を製造した。前記負極のローディング量は8.0±0.5mg/cm2であり、電極密度は1.55~1.60g/ccであった。
【0132】
前記負極、リチウム金属負極(厚さ300μm、MTI)、電解液とポリプロピレンセパレータを用いて通常の方法で2032コイン型半電池を製造した。前記電解液は1M LiPF6をエチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒(混合比EC:EMC=3:7体積%)に溶解させて混合溶液を製造した後、ここにビニレンカーボネート(VC)1.5重量%を添加して使用した。
【0133】
(2)充放電特性の評価
前記(1)で製造されたコイン型半電池を常温(25℃)で24時間の間エージング(aging)した後、充放電テストを行った。
容量評価は440mAh/gを基準容量とした。0.005V~1.0Vの作動電圧区間で充放電テストを行い、充放電時の電流は初期サイクルでは0.1Cで測定した。また、最初の1C容量を基準として充放電時0.5Cの電流を印加して50回サイクル寿命を測定した。このとき、充電cut-off currentは0.005Cに設定した。結果は下記表4に示した。
【0134】
(3)膨張特性の評価
膨張特性(%)は初期電極厚さに対して0.5C電流で50サイクルを行った後に充電状態で完了した電極の厚さ増加率により得られる。測定はサイクル完了後にコインセルを解体し、DMC溶媒を用いて電極表面異物を洗浄した後にマイクロメーターで測定した。
【0135】
【0136】
表4を参照すると、負極活物質の酸化度が10.5%以下を満たす実施例1~7は、容量特性および効率に優れることが分かる。それに対して酸化度が10.5%を超える比較例1は、容量が顕著に低下することが確認された。具体的には、容量および効率面において、比較例1と比較すると、ナノシリコン粒子を含む結晶質炭素のキャプチャリングが不足した比較例2の値がより低下する結果が示され、寿命特性においてもナノシリコンの膨張による粒子構造の損傷により比較例1の寿命が約20%以上減少した。
【0137】
また、シリコンナノ粒子の(111)面の半価幅が0.45°~0.65°の範囲を満たす実施例1~6は寿命および膨張特性にも優れる。これに対してシリコンナノ粒子の(111)面の半価幅が前記範囲を超える比較例1、2、3および5の場合、寿命特性が顕著に低下し、膨張特性も悪いことが確認された。これはナノシリコン粒子の効率的なキャプチャリング効果およびナノシリコンの半価幅の増加に起因するものであると考えられる。
【0138】
また、実施例1~7の負極活物質に対する比表面積は比較例1~5に比べて顕著に低いので高い容量と効率値を示した。
【0139】
さらに、非晶質炭素コート層が形成されていない比較例6~8の場合、シリコン-炭素複合体粒子の表面に露出した開気孔(open pore)により寿命および膨張特性が顕著に劣化した。
【0140】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
【国際調査報告】