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特表2023-554663無方向性電磁鋼板およびその製造方法
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  • 特表-無方向性電磁鋼板およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】無方向性電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20231221BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20231221BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C21D8/12 A
C22C38/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537440
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 KR2021019225
(87)【国際公開番号】W WO2022139337
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0179378
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ホンジュ
(72)【発明者】
【氏名】ク, ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, スンイル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウォンジン
【テーマコード(参考)】
4K033
【Fターム(参考)】
4K033AA01
4K033CA01
4K033CA02
4K033CA03
4K033CA04
4K033CA05
4K033CA06
4K033CA07
4K033CA08
4K033CA09
4K033DA01
4K033DA02
4K033EA02
4K033FA01
4K033FA03
4K033FA10
4K033FA13
4K033GA00
4K033HA02
4K033KA03
4K033RA03
4K033RA09
4K033RA10
4K033SA03
4K033TA03
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供する。具体的には、Sb、Sn、Cu、Cr、Mgの含有量を適切に調節して磁性を向上した無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:3.0~4.0%、Al:0.3~1.5%、Mn:0.1~0.6%、SnおよびSbのうち1種以上:0.006~0.1%、C:0.0015~0.0040%、Cr:0.01~0.03%、Cu:0.003~0.008%およびMg:0.0005~0.0025%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:3.0~4.0%、Al:0.3~1.5%、Mn:0.1~0.6%、SnおよびSbのうち1種以上:0.006~0.1%、C:0.0015~0.0040%、Cr:0.01~0.03%、Cu:0.003~0.008%およびMg:0.0005~0.0025%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
下記式1を満たすことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
[式1]
0.66≦([Sn]+[Sb])/([Cr]+[Cu]+[Mg])≦2
(式1において、[Sn]、[Sb]、[Cr]、[Cu]および[Mg]はそれぞれSn、Sb、Cr、CuおよびMgの含有量(重量%)を示す。)
【請求項2】
N、S、Ti、NbおよびVのうち1種以上をそれぞれ0.0003~0.0030重量%さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項3】
P:0.005~0.05重量%、Mo:0.001~0.01重量%およびNi:0.005~0.04重量%のうち1種以上さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項4】
平均結晶粒の粒径が55~75μmであることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項5】
鋼板の表面から内部方向に酸化層が存在し、酸化層の厚さは10~50nmであることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項6】
前記酸化層はAlを1.0~30重量%およびSi0.5~10.0重量%含むことを特徴とする請求項5に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項7】
前記酸化層中のSi含有量に対するAl含有量の重量比が5~20であることを特徴とする請求項5に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項8】
鋼板の表面から内部方向に2μm以内の深さで直径が10~500nmであるAlN析出物の分布密度が3個/mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項9】
厚さが0.10~0.35mmであることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項10】
重量%で、Si:3.0~4.0%、Al:0.3~1.5%、Mn:0.1~0.6%、SnおよびSbのうち1種以上:0.006~0.1%、C:0.0015~0.0040%、Cr:0.01~0.03%、Cu:0.003~0.008%およびMg:0.0005~0.0025%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式1を満たすスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、および
前記冷延板を最終焼鈍する段階を含むことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
[式1]
0.66≦([Sn]+[Sb])/([Cr]+[Cu]+[Mg])≦2
(式1において、[Sn]、[Sb]、[Cr]、[Cu]および[Mg]はそれぞれ前記スラブ中のSn、Sb、Cr、CuおよびMgの含有量(重量%)を示す。)
【請求項11】
前記熱延板を製造する段階の前にスラブを1200℃以下で加熱する段階をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記熱延板を製造する段階での仕上げ圧延温度は800℃以上であることを特徴とする請求項10に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記熱延板を製造する段階の後、850~1150℃で熱延板を焼鈍する段階をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記最終焼鈍する段階は、900℃以上の均熱温度で15秒以上維持して焼鈍することを特徴とする請求項10に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項15】
前記最終焼鈍する段階は、水素(H)40体積%以下および窒素60体積%以上を含み、露点が0~-40℃である雰囲気下で焼鈍することを特徴とする請求項10に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法に係り、より詳しくは、本発明は、Sb、Sn、Cu、Cr、Mgの含有量を適切に調節して磁性を向上した無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は電気エネルギを機械的エネルギに変換させるモータに主に使用されるが、その過程で高い効率を発揮するために無方向性電磁鋼板の優れた磁気的特性が求められる。特に近年では環境に優しい技術が注目され、全体電気エネルギ使用量の過半を占めるモータの効率を増加させることが非常に重要とされており、このために優れた磁気的特性を有する無方向性電磁鋼板の需要もまた増加している。
【0003】
無方向性電磁鋼板の磁気的特性は主に鉄損と磁束密度で評価する。鉄損は特定の磁束密度と周波数で発生するエネルギ損失を意味し、磁束密度は特定の磁場下で得られる磁化の程度を意味する。鉄損が低いほど同じ条件でエネルギ効率が高いモータを製造することができ、磁束密度が高いほどモータを小型化するか銅損を減少させ得るので、低い鉄損と高い磁束密度を有する無方向性電磁鋼板を作ることが重要である。
【0004】
モータの作動条件によって考慮すべき無方向性電磁鋼板の特性も変わる。モータに使用される無方向性電磁鋼板の特性を評価するための基準として多数のモータは商用周波数50Hzで1.5T磁場が印加されたときの鉄損であるW15/50が最も重要とされている。しかし、多様な用途のモータがいずれもW15/50鉄損を最も重要としているのではなく、主な作動条件によって他の周波数や印加磁場での鉄損を評価することもある。特に最近の電気自動車の駆動モータに使用される無方向性電磁鋼板では1.0Tまたはそれ以下の低磁場と400Hz以上の高周波での磁気的特性が重要な場合が多いので、W10/400などの鉄損で無方向性電磁鋼板の特性を評価する。
【0005】
無方向性電磁鋼板の磁気的特性を増加させるために通常用いられる方法はSiなどの合金元素を添加することである。このような合金元素の添加により鋼の比抵抗を増加させ得るが、比抵抗が高くなるほど渦電流損失が減少して全体鉄損を低下させることができる。反面、Si添加量が増加するほど磁束密度が劣り、脆性が増加する短所があり、一定量以上を添加すると冷間圧延が不可能であるため商業的生産が不可能になる。特に電磁鋼板は厚さを薄くするほど鉄損が低減する効果が見られるが、脆性による圧延性低下は致命的な問題になる。追加的な鋼の比抵抗の増加のためにAl、Mnなどの元素を添加して磁性に優れる最高級の無方向性電磁鋼板を生産することができる。
【0006】
電気自動車の駆動モータ用に使用される無方向性電磁鋼板は、400Hz以上の高周波鉄損が重要であるが、周波数が高くなるほど鉄損での渦電流損失の比率が高くなるので、比抵抗を高めて厚さを低くすることが有利である。しかし、鋼板の厚さが薄くなると冷間圧下率が増加するので、{111}//ND集合組織が発達して磁性が悪くなる原因になり、これを改善するために熱延板の厚さを低くして冷間圧下率を減少させると、冷間圧延の過程で鋼板の形状を十分に制御できず、幅方向の厚さ偏差が増加してモータコアの寸法不良をもたらす。また、鋼板が薄くなるほどコイルの長さが増加するので、連続焼鈍工程の作業時間が増加して、焼鈍生産性が低下する問題が発生する。
【0007】
前記のような問題を解決するために、製鋼工程で不純物を十分に除去して極清浄鋼にするか特定の元素を添加して鋼中の介在物および析出物の低減による磁性の改善方案などが試みられてきたが、これは商業的な生産条件の限界により実際適用するには限界がある。また、焼鈍温度や雰囲気の制御および圧延時の鋼板変形率を制御して集合組織を改善する方案が提案されているが、製造コストの増加、生産性の低下および不十分な効果などの理由により実際使用される技術はきわめて制限的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供する。具体的には、Sb、Sn、Cu、Cr、Mgの含有量を適切に調節して磁性を向上した無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:3.0~4.0%、Al:0.3~1.5%、Mn:0.1~0.6%、SnおよびSbのうち1種以上:0.006~0.1%、C:0.0015~0.0040%、Cr:0.01~0.03%、Cu:0.003~0.008%、およびMg:0.0005~0.0025%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
【0010】
本発明の無方向性電磁鋼板は、下記式1を満たし得る。
[式1]
0.66≦([Sn]+[Sb])/([Cr]+[Cu]+[Mg])≦2
(式1において、[Sn]、[Sb]、[Cr]、[Cu]および[Mg]はそれぞれSn、Sb、Cr、CuおよびMgの含有量(重量%)を示す。)
【0011】
本発明の無方向性電磁鋼板は、N、S、Ti、NbおよびVのうち1種以上をそれぞれ0.0003~0.0030重量%さらに含み得る。
【0012】
本発明の無方向性電磁鋼板は、P:0.005~0.05重量%、Mo:0.001~0.01重量%およびNi:0.005~0.04重量%のうち1種以上さらに含み得る。
【0013】
本発明の無方向性電磁鋼板は、平均結晶粒の粒径が55~75μmであり得る。
【0014】
本発明の無方向性電磁鋼板は、鋼板の表面から内部方向に酸化層が存在し、酸化層の厚さは10~50nmであり得る。
【0015】
酸化層はAlを1.0~30重量%およびSi0.5~10.0重量%含み得る。
【0016】
酸化層中のSi含有量に対するAl含有量の重量比が5~20であり得る。
【0017】
鋼板の表面から内部方向に2μm以内の深さで直径が10~500nmであるAlN析出物の分布密度が3個/mm以下であり得る。
【0018】
鋼板の厚さは0.10~0.35mmであり得る。
【0019】
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:3.0~4.0%、Al:0.3~1.5%、Mn:0.1~0.6%、SnおよびSbのうち1種以上:0.006~0.1%、C:0.0015~0.0040%、Cr:0.01~0.03%、Cu:0.003~0.008%およびMg:0.0005~0.0025%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式1を満たすスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階;熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および冷延板を最終焼鈍する段階を含むことを特徴とする。
【0020】
[式1]
0.66≦([Sn]+[Sb])/([Cr]+[Cu]+[Mg])≦2
(式1において、[Sn]、[Sb]、[Cr]、[Cu]および[Mg]はそれぞれSn、Sb、Cr、CuおよびMgの含有量(重量%)を示す。)
【0021】
熱延板を製造する段階の前にスラブを1200℃以下で加熱する段階をさらに含み得る。
【0022】
熱延板を製造する段階での仕上げ圧延温度は800℃以上であり得る。
【0023】
熱延板を製造する段階の後、850~1150℃で熱延板を焼鈍する段階をさらに含み得る。
【0024】
最終焼鈍する段階は、冷延板を900℃以上の均熱温度で15秒以上維持して焼鈍し得る。
【0025】
最終焼鈍する段階は、冷延板を水素(H)40体積%以下および窒素60体積%以上を含み、露点が0~-40℃である雰囲気下で焼鈍し得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施例によれば、高周波鉄損に優れる無方向性電磁鋼板を提供し、最高級の無方向性電磁鋼板を使用する環境に優しい自動車の駆動モータの性能向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限られない。これらの用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別することのみのために使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及されることができる。
【0029】
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
【0030】
ある部分が他の部分の「上に」または「の上に」あると言及する場合、これは他の部分のすぐ上にまたは上にあり得、その間に他の部分が介在し得る。対照的にある部分が他の部分の「すぐ上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。
【0031】
また、特記しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
【0032】
本発明の一実施例で追加元素をさらに含むことの意味は、追加元素の追加量だけ残部である鉄(Fe)の代わりに含むことを意味する。
【0033】
別に定義していないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。一般に用いられている辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在の開示された内容に合う意味を有するものとしてさらに解析され、定義されない限り理想的または公式的過ぎる意味に解釈されない。
【0034】
以下、本発明の実施例について本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施例に限られない。
【0035】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:3.0~4.0%、Al:0.3~1.5%、Mn:0.1~0.6%、SnおよびSbのうち1種以上:0.006~0.1%、C:0.0015~0.0040%、Cr:0.01~0.03%、Cu:0.003~0.008%、Mg:0.0005~0.0025%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
【0036】
以下では無方向性電磁鋼板の成分を限定する理由から説明する。
【0037】
Si:3.0~4.0重量%
シリコン(Si)は材料の比抵抗を高めて鉄損を低くする役割をする。Siが過度に少なく添加される場合は鉄損の改善効果が不十分であり得る。Siを過度に多く添加する場合は、材料の脆性が増加して圧延生産性が急激に低下し、磁性に有害な表層部の酸化層および酸化物を形成し得る。したがって、Siを3.0~4.0重量%含むことができる。さらに具体的には、3.1~3.8重量%含むことができる。
【0038】
Al:0.3~1.5重量%
アルミニウム(Al)は材料の比抵抗を高めて鉄損を低くする役割をする。Alが過度に少なく添加される場合は微細窒化物が形成されるか、表層部の酸化層が緻密に生成されず、磁性改善効果を得にくい。Alが過度に多く添加されると、窒化物が過剰に形成されて磁性を劣化させて、製鋼と連続鋳造などのすべての工程上に問題を発生させて生産性を大きく低下させ得る。したがって、Alを0.30~1.50重量%含むことができる。さらに具体的には、0.40~1.30重量%含むことができる。
【0039】
Mn:0.1~0.6重量%
マンガン(Mn)は材料の比抵抗を高めて鉄損を改善し、硫化物を形成させる役割をする。Mnが過度に少なく添加される場合は硫化物が微細に形成されて磁性劣化を起こし、Mnが過度に多く添加される場合は微細なMnSが過剰に析出され、磁性に不利な{111}集合組織の形成を助長して磁束密度が急激に減少する。したがって、Mnを0.1~0.6重量%含むことができる。さらに具体的には、0.2~0.5重量%含むことができる。
【0040】
SnおよびSbのうち1種以上:0.006~0.100重量%
スズ(Sn)およびアンチモン(Sb)は鋼板の表面および結晶粒界に偏析して焼鈍時の表面酸化を抑制し、結晶粒界による元素の拡散を妨げ、{111}//ND方位の再結晶を妨げて集合組織を改善させる役割をする。SnおよびSbが過度に少なく添加される場合は前述した効果が充分でない。SnおよびSbが過度に多く添加される場合、結晶粒界偏析量の増加によって靱性が低下して磁性改善に比べて生産性が低下し得る。したがって、SnおよびSbのうち1種以上を0.006~0.100重量%含むことができる。さらに具体的には、0.010~0.070重量%含むことができる。SnおよびSbのうち1種以上とはSnまたはSbが単独で含まれる場合は、その単独含有量であり、SnおよびSbが同時に含まれる場合は、SnおよびSbの合量を意味する。
【0041】
C:0.0015~0.0040重量%
炭素(C)は磁気時効を起こし、その他不純物元素と結合して炭化物を生成して磁気的特性を低下させるので低いほど好ましい。ただし、本発明の一実施例でCr、Cu、Mgを適正量含み、一定量以上含んでも磁性への影響はない。したがって、0.0015重量%以上含むことができる。したがって、Cを0.0015~0.0040重量%含むことができる。さらに具体的には、0.0020~0.0035重量%含むことができる。
【0042】
Cr:0.0100~0.0300重量%
クロム(Cr)は微細析出物を形成する傾向が強くはないが、表層部のAl系酸化層の形成を妨げ、Cr系炭化物を形成して磁性を悪化させ得る。Crが過度に少なく添加される場合はAl酸化層が過度に厚く形成されるか、表面に丸い形状の酸化物または窒化物が形成されて磁性を悪化させ得、Crが過度に多く添加される場合、緻密な酸化層が形成されにくいため磁性が悪化し得る。したがって、Crを0.0100~0.0300重量%含むことができる。さらに具体的には、Crを0.0120~0.0275重量%含むことができる。
【0043】
Cu:0.0030~0.0080重量%
銅(Cu)は高温で硫化物を形成できる元素であり、多量添加時には表面部の酸化層の組成にも影響を及ぼす元素である。適正量を添加すると微細な大きさのCuSまたはMnCuS析出物を粗大化させて磁性を改善させる効果がある。したがって、Cuを0.0030~0.0080重量%で含むことができる。さらに具体的には、0.0040~0.0077重量%含むことができる。
【0044】
Mg:0.0005~0.0025重量%
マグネシウム(Mg)は主にSと結合して硫化物を形成する元素であり、素地鉄の表面酸化層に影響を及ぼし得る。したがって、Mgを0.0005~0.0025重量%含むことができる。さらに具体的には、0.0008~0.0020重量%含むことができる。
【0045】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、下記式1を満たす。
[式1]
0.66≦([Sn]+[Sb])/([Cr]+[Cu]+[Mg])≦2.00
【0046】
さらに具体的には、式1値が0.68~1.95であり得る。
【0047】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、N、S、Ti、NbおよびVのうち1種以上をそれぞれ0.0003~0.0030重量%さらに含むことができる。
【0048】
N:0.0003~0.0030重量%
窒素(N)は母材内部に微細なAlN析出物を形成するだけでなく、その他不純物と結合して微細な析出物を形成して結晶粒成長を抑制して鉄損を悪化させるので、低いほど好ましく、0.0003~0.0030重量%含むことができる。より好ましくは0.0005~0.0025重量%で管理される。
【0049】
S:0.0003~0.0030重量%
硫黄(S)は微細な析出物であるMnS、CuS,(Mn、Cu)Sを形成して磁気特性を悪化させ、熱間加工性を悪化させるので、低く管理した方が良い。したがって、Sをさらに含む場合、0.0003~0.0030重量%で含むことができる。さらに具体的には、0.0005~0.0025重量%含むことができる。
【0050】
Ti:0.0003~0.0030重量%
チタン(Ti)は鋼中の析出物の形成の傾向が非常に強く、母材内部に微細な炭化物または窒化物または硫化物を形成して結晶粒成長を抑制することによって鉄損を劣化させる。したがって、Ti含有量は各0.004%以下、より好ましくは0.002%以下で管理されなければならない。
【0051】
Nb:0.0003~0.0030重量%
ニオブ(Nb)は母材内部に微細な炭化物または窒化物を形成して結晶粒成長と磁壁移動を抑制して鉄損を劣化させる。したがって、Nb含有量は各0.004%以下、より好ましくは0.002%以下で管理されなければならない。
【0052】
V:0.0003~0.0030重量%
バナジウム(V)は母材内部に微細な炭化物または窒化物を形成して結晶粒成長と磁壁移動を抑制して鉄損を劣化させる。したがって、V含有量は各0.004%以下、より好ましくは0.002%以下で管理されなければならない。
【0053】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、P:0.005~0.05重量%、Mo:0.001~0.01重量%およびNi:0.005~0.04重量%のうち1種以上をさらに含むことができる。
【0054】
P:0.005~0.050重量%
リン(P)は鋼板の表面および結晶粒界に偏析して焼鈍時の表面酸化を抑制し、結晶粒界による元素の拡散を妨げ、{111}//ND方位の再結晶を妨げて集合組織を改善させる役割をする。Pが過度に少なく添加される場合はその効果が充分でない。Pが過度に多く添加される場合、熱間加工の特性が劣化して磁性改善に比べて生産性が低下し得る。したがって、Pをさらに含む場合、0.005~0.050重量%含むことができる。さらに具体的には、Pを0.007~0.045重量%さらに含むことができる。
【0055】
Mo:0.001~0.01重量%
モリブデン(Mo)は表面と粒界に偏析して集合組織を改善させる役割をする。Moが過度に少なく添加される場合は{111}集合組織が発達して磁性が悪化し得る。Moが過度に多く添加されると、SnとPの偏析を抑制して集合組織の改善効果が減少し得る。したがって、Moをさらに含む場合、0.001~0.01重量%で含むことができる。
【0056】
Ni:0.005~0.04重量%
ニッケル(Ni)は鋼の延性を増加させてSnとPの偏析を促進する役割をする。Niが過度に多く添加されると、磁束密度が急激に低下し得る。したがって、Niをさらに含む場合、0.005~0.04重量%で含むことができる。
【0057】
残部はFeおよび不可避的不純物からなる。不可避的不純物は製鋼段階および方向性電磁鋼板の製造工程過程で混入される不純物であり、これは該当分野で広く知られているので、これについて具体的な説明は省略する。本発明の一実施例で前述した合金成分の他に元素の追加を排除するものではなく、本発明の技術思想を損なわない範囲内で多様に含まれ得る。追加元素をさらに含む場合は残部であるFeの代わりとして含む。
【0058】
不可避的不純物としては、例えば、B、Zrなどがあり得、B:0.002重量%以下、Zr:0.005重量%以下で管理されなければならない。
【0059】
図1では本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板の断面を示す。図1に示すように、電磁鋼板100の表面から内部方向に酸化層20が存在する。酸化層20を除いた電磁鋼板100は電磁鋼板の母材10として区分する。
【0060】
電磁鋼板100は製造工程で酸素に露出して、雰囲気中の酸素が鋼板内部に浸透して表面で内部方向に酸素濃度勾配が存在し得る。
【0061】
酸化層20と母材10は酸素含有量が40重量%以上の酸化層20と酸素含有量が40重量%未満の母材10に区分する。このように区分された酸化層20の厚さは10~50nmであり得る。このように適切な厚さの酸化層20が形成されることによって、焼鈍時の雰囲気中の窒素が母材に拡散することを抑制して微細窒化物の形成が抑制されるので、磁性が向上することができる。鋼板の表面全体の酸化層20の厚さは異なってもよく、本発明の一実施例で酸化層20の厚さとは鋼板内での平均厚さを意味する。
【0062】
この酸化層20には製造工程で酸素の浸透によって存在する酸素の他にも母材10に拡散して濃化されたAlを多量含む。反面、AlおよびOの増加によって相対的にSi含有量は減少し得る。
【0063】
具体的には、酸化層20はAlを1.0~30重量%およびSi0.5~10.0重量%含むことができる。さらに具体的には、酸化層20はO:40~70重量%、Al:1~30重量%、Si:0.5~10.0重量%含み、残部Feおよび不可避的不純物を含むことができる。このようにAlが濃化した酸化層が形成されることによって、母材内部に丸い形状の酸化物や微細窒化物が形成されることを抑制して磁性が向上することができる。Oと同様に、Alは母材から表面方向に含有量が増加する濃度勾配が存在し得、前述した範囲は酸化層20中の平均含有量を意味する。
【0064】
酸化層20中のSi含有量に対するAl含有量の重量比が5~20であり得る。このように酸化層20中のAlの量が増加すると緻密な酸化層を形成して最終焼鈍過程で発生し得る表面層下の微細析出物の形成を抑制して優れた磁気的特性を得ることができる。さらに具体的には、酸化層20中のSi含有量に対するAl含有量の重量比が7.0~17.0であり得る。
【0065】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、平均結晶粒径が55~75μmであり得る。前述した範囲で無方向性電磁鋼板の磁性がより優れる。結晶粒径は(測定面積÷結晶粒個数)0.5で計算する。結晶粒径は圧延面(ND面)と平行な面を基準として測定し得、母材10内で測定し得る。具体的には、平均結晶粒径が60~70μmであり得る。
【0066】
本発明の一実施例では合金成分を適宜制御することによって、表面部のAlN析出物の密度を低下させることができる。具体的には、鋼板の表面から内部方向に2μm以内の深さで直径が10~500nmであるAlN析出物の分布密度が3個/mm以下であり得る。このように、AlN介在物の分布密度を低くすることによって、磁壁移動を妨げる微細析出物を抑制して磁性向上に寄与することができる。さらに具体的には、AlN析出物の分布密度が0.5~2.5個/mmであり得る。この時、AlNの直径は圧延面(ND面)と平行な面を基準として測定することができる。AlNの直径はAlNと同じ面積を有する円を仮定してその円の直径で求める。
【0067】
鋼板の厚さは0.10~0.35mmであり得る。
【0068】
前述したように、本発明の一実施例で最適の合金組成を提示し、析出物の特性を改善して磁性を向上させることができる。具体的には、無方向性電磁鋼板の鉄損(W10/400)が12.5W/kg以下、磁束密度(B50)が1.650T以上になる。鉄損(W10/400)は400HZの周波数で1.0Tの磁束密度を誘起したときの鉄損である。磁束密度(B50)は5000A/mの磁場で誘導される磁束密度である。さらに具体的には、無方向性電磁鋼板の鉄損(W10/400)が11.6W/kg以下、磁束密度(B50)が1.660T以上であり得る。
【0069】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および冷延板を最終焼鈍する段階を含む。
【0070】
先に、スラブを熱間圧延する。
【0071】
スラブの合金成分については前述した無方向性電磁鋼板の合金元素で説明したので、重複する説明は省略する。無方向性電磁鋼板の製造過程で合金成分は実質的に変動しないので、無方向性電磁鋼板とスラブの合金成分は実質的に同一である。
【0072】
具体的には、スラブは重量%で、重量%で、Si:3.0~4.0%、Al:0.3~1.5%、Mn:0.1~0.6%、SnおよびSbのうち1種以上:0.006~0.1%、C:0.0015~0.0040%、Cr:0.01~0.03%、Cu:0.003~0.008%およびMg:0.0005~0.0025%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、上記式1を満たす。
【0073】
その他の追加元素については無方向性電磁鋼板の合金元素で説明したので、重複する説明は省略する。
【0074】
スラブを熱間圧延する前に加熱する。スラブの加熱温度は制限されないが、スラブを1200℃以下で加熱する。スラブの加熱温度が過度に高いと、スラブ中に存在するAlN、MnSなどの析出物が再固溶された後に熱間圧延および焼鈍時に微細析出されて結晶粒成長を抑制して磁性を低下させ得る。
【0075】
次に、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する。熱延板の厚さは2~2.3mmになる。熱延板を製造する段階での仕上げ圧延温度は800℃以上であり得る。具体的には、800~1000℃であり得る。熱延板は700℃以下の温度で巻き取られ得る。
【0076】
熱延板を製造する段階の後、熱延板を熱延板焼鈍する段階をさらに含むことができる。この時、熱延板の焼鈍温度は850~1150℃であり得る。熱延板の焼鈍温度が過度に低いと、組織が成長しないか、微細に成長して冷間圧延後の焼鈍時に磁性に有利な集合組織を得るのが容易でない。焼鈍温度が過度に高いと磁性結晶粒が過度に成長して板の表面欠陥が過剰になる。熱延板の焼鈍は必要に応じて磁性に有利な方位を増加させるために行われ、省略することも可能である。焼鈍された熱延板を酸洗し得る。
【0077】
次に、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する。冷間圧延は0.1mm~0.35mmの厚さに最終圧延する。冷間圧延する段階で圧下率を85%以上に調節することができる。さらに具体的には、圧下率は85~95%であり得る。圧下率が過度に低い場合、鋼板の幅方向への厚さの差異が発生し得る。
【0078】
次に、冷延板を最終焼鈍する。冷延板を900℃以上の均熱温度で15秒以上維持して焼鈍する。無方向性電磁鋼板の鉄損は結晶粒の大きさと密接な関連があるので適切な温度および時間で焼鈍する。さらに具体的には、950~1100℃の均熱温度で30~150秒間焼鈍する。
【0079】
最終焼鈍する段階は、冷延板を水素(H)40体積%以下および窒素60体積%以上を含み、露点が0~-40℃である雰囲気下で焼鈍する。具体的には、水素5~40体積%および窒素60~95体積%含む雰囲気で焼鈍する。最終焼鈍過程で平均結晶粒の粒径が55~75μmになり、前段階の冷間圧延段階で形成された加工組織がすべて(すなわち、99%以上)再結晶される。
【0080】
最終焼鈍した後、絶縁被膜を形成する。前記絶縁被膜は有機質、無機質および有機/無機複合被膜で処理され得、その他絶縁が可能な被膜剤で処理することも可能である。
【0081】
以下では実施例により本発明をより詳細に説明する。しかし、このような実施例は単に本発明を例示するためであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0082】
表1および表2および残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分でスラブを製造した。これを1150℃で加熱し、830℃の仕上げ温度で熱間圧延して、板の厚さ2.3mmの熱延板を製造した。熱間圧延された熱延板は1030℃で100秒間熱延板焼鈍した後、冷間圧延して厚さを0.27mmにし、950℃で88秒間再結晶焼鈍を行った。
【0083】
各試験片に対する酸化層の厚さ、酸化層中のAl、Si含有量、表層部のAlNの分布密度W10/400鉄損、B50磁束密度を表3に示した。
【0084】
酸化層の厚さは酸化層の厚さは試験片をFIBで加工してなめらかな断面を製造し、これをTEM高倍率で撮影して母材表層の10地点以上で酸化層の厚さを測定した平均値を示した。
【0085】
AlNは鋼板の表面を1μm研削し、これをTEM高倍率で撮影して2500μm以上の面積に対してAlNの個数を測定して表3に整理した。
【0086】
磁束密度、鉄損などの磁気的特性はそれぞれの試験片に対して幅60mm×の長さ60mm×枚数5枚の試験片を切断してSingle sheet testerで圧延方向と圧延垂直方向を測定してその平均値を示した。この時、W10/400は400Hzの周波数で1.0Tの磁束密度を誘起した時の鉄損であり、B50は5000A/mの磁場で誘導される磁束密度を意味する。
【0087】
【表1】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
表1~表3に示すように、合金成分が適切に制御されたA4、B4、C3、C4、D3、D4の場合、酸化層が適切に形成され、AlNが少なく形成されて磁性に優れること確認することができる。
【0090】
反面、A1はCrを過度に少なく含んで、酸化層が適切に形成できず、AlNが多量形成されて磁性が劣ることを確認することができる。
【0091】
A2はMgを過度に少なく含んで、酸化層が適切に形成できず、AlNが多量形成されて磁性が劣ることを確認することができる。
【0092】
A3は式1値が過度に大きいため、酸化層が適切に形成できず、AlNが多量形成されて磁性が劣ることを確認することができる。
【0093】
B1はSn、Sbを多量含み、式1値が過度に大きいため、酸化層が適切に形成できず、AlNが多量形成されて磁性が劣ることを確認することができる。
【0094】
B2はMgを多量含んで、酸化層が適切に形成できず、AlNが多量形成されて磁性が劣ることを確認することができる。
【0095】
B3は式1値が過度に小さいため、酸化層が適切に形成できず、AlNが多量形成されて磁性が劣ることを確認することができる。
【0096】
C1はCuを多量含んで、酸化層が適切に形成できず、AlNが多量形成されて磁性が劣ることを確認することができる。
【0097】
C2はSn、Sbを少なく含み、式1値が過度に小さいため酸化層が適切に形成できず、AlNが多量形成されて磁性が劣ることを確認することができる。
【0098】
D1はCuを過度に少なく含んで、酸化層が適切に形成できず、AlNが多量形成されて磁性が劣ることを確認することができる。
【0099】
D2はCrを過度に多く含んで、酸化層が適切に形成できず、AlNが多量形成されて磁性が劣ることを確認することができる。
【0100】
D5はAlを過度に少なく含んで、酸化層が適切に形成できず、磁性が劣ることを確認することができる。
【0101】
本発明は実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0102】
100 無方向性電磁鋼板
10 母材
20 酸化層

図1
【手続補正書】
【提出日】2023-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:3.0~4.0%、Al:0.3~1.5%、Mn:0.1~0.6%、SnおよびSbのうち1種以上:0.006~0.1%、C:0.0015~0.0040%、Cr:0.01~0.03%、Cu:0.003~0.008%およびMg:0.0005~0.0025%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
下記式1を満たすことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
[式1]
0.66≦([Sn]+[Sb])/([Cr]+[Cu]+[Mg])≦2
(式1において、[Sn]、[Sb]、[Cr]、[Cu]および[Mg]はそれぞれSn、Sb、Cr、CuおよびMgの含有量(重量%)を示す。)
【請求項2】
N、S、Ti、NbおよびVのうち1種以上をそれぞれ0.0003~0.0030重量%さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項3】
P:0.005~0.05重量%、Mo:0.001~0.01重量%およびNi:0.005~0.04重量%のうち1種以上さらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項4】
平均結晶粒の粒径が55~75μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項5】
鋼板の表面から内部方向に酸化層が存在し、酸化層の厚さは10~50nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項6】
前記酸化層はAlを1.0~30重量%およびSi0.5~10.0重量%含むことを特徴とする請求項5に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項7】
前記酸化層中のSi含有量に対するAl含有量の重量比が5~20であることを特徴とする請求項5又は6に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項8】
鋼板の表面から内部方向に2μm以内の深さで直径が10~500nmであるAlN析出物の分布密度が3個/mm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項9】
厚さが0.10~0.35mmであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項10】
重量%で、Si:3.0~4.0%、Al:0.3~1.5%、Mn:0.1~0.6%、SnおよびSbのうち1種以上:0.006~0.1%、C:0.0015~0.0040%、Cr:0.01~0.03%、Cu:0.003~0.008%およびMg:0.0005~0.0025%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式1を満たすスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、および
前記冷延板を最終焼鈍する段階を含むことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
[式1]
0.66≦([Sn]+[Sb])/([Cr]+[Cu]+[Mg])≦2
(式1において、[Sn]、[Sb]、[Cr]、[Cu]および[Mg]はそれぞれ前記スラブ中のSn、Sb、Cr、CuおよびMgの含有量(重量%)を示す。)
【請求項11】
前記熱延板を製造する段階の前にスラブを1200℃以下で加熱する段階をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記熱延板を製造する段階での仕上げ圧延温度は800℃以上であることを特徴とする請求項10又は11に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記熱延板を製造する段階の後、850~1150℃で熱延板を焼鈍する段階をさらに含むことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記最終焼鈍する段階は、900℃以上の均熱温度で15秒以上維持して焼鈍することを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項15】
前記最終焼鈍する段階は、水素(H)40体積%以下および窒素60体積%以上を含み、露点が0~-40℃である雰囲気下で焼鈍することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
C:0.0015~0.0040重量%
炭素(C)は磁気時効を起こし、その他不純物元素と結合して炭化物を生成して磁気的特性を低下させるので低いほど好ましい。ただし、本発明の一実施例でCr、Cu、Mgを適正量含み、Cを一定量以上含んでも磁性への影響はない。したがって、0.0015重量%以上含むことができる。具体的には、Cを0.0015~0.0040重量%含むことができる。さらに具体的には、0.0020~0.0035重量%含むことができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
Ti:0.0003~0.0030重量%
チタン(Ti)は鋼中の析出物の形成の傾向が非常に強く、母材内部に微細な炭化物または窒化物または硫化物を形成して結晶粒成長を抑制することによって鉄損を劣化させる。したがって、Ti含有量は0.004%以下、より好ましくは0.002%以下で管理されなければならない。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
Nb:0.0003~0.0030重量%
ニオブ(Nb)は母材内部に微細な炭化物または窒化物を形成して結晶粒成長と磁壁移動を抑制して鉄損を劣化させる。したがって、Nb含有量は0.004%以下、より好ましくは0.002%以下で管理されなければならない。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
V:0.0003~0.0030重量%
バナジウム(V)は母材内部に微細な炭化物または窒化物を形成して結晶粒成長と磁壁移動を抑制して鉄損を劣化させる。したがって、V含有量は0.004%以下、より好ましくは0.002%以下で管理されなければならない。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
具体的には、スラブは重量%で、Si:3.0~4.0%、Al:0.3~1.5%、Mn:0.1~0.6%、SnおよびSbのうち1種以上:0.006~0.1%、C:0.0015~0.0040%、Cr:0.01~0.03%、Cu:0.003~0.008%およびMg:0.0005~0.0025%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、上記式1を満たす。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
化層の厚さは試験片をFIBで加工してなめらかな断面を製造し、これをTEM高倍率で撮影して母材表層の10地点以上で酸化層の厚さを測定した平均値を示した。
【国際調査報告】