(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】無方向性電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20231221BHJP
C22C 38/14 20060101ALI20231221BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20231221BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20231221BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C22C38/14
C22C38/60
C21D8/12 A
H01F1/147 183
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537616
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 KR2021019338
(87)【国際公開番号】W WO2022139359
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0179458
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ホンジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンス
(72)【発明者】
【氏名】シン,スヨン
【テーマコード(参考)】
4K033
5E041
【Fターム(参考)】
4K033AA01
4K033CA00
4K033CA01
4K033CA02
4K033CA03
4K033CA04
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5E041AA02
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5E041HB15
5E041NN01
5E041NN06
5E041NN15
5E041NN17
5E041NN18
(57)【要約】
【課題】無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供する。具体的には、Mo、Ti、Nb、Vを適切に添加し、最終焼鈍後の冷却過程で特定の温度範囲での時間を調節して微細な炭窒化物の形成を抑制する無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:3.3~4.0%、Al:0.4~1.5%、Mn:0.2~1.0%、C:0.0015~0.0040%、N:0.0005~0.0020%、S:0.0005~0.0025%、Mo:0.005~0.01%、Ti:0.0005~0.0020%、Nb:0.0005~0.0020%およびV:0.0005~0.0020%含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:3.3~4.0%、Al:0.4~1.5%、Mn:0.2~1.0%、C:0.0015~0.0040%、N:0.0005~0.0020%、S:0.0005~0.0025%、Mo:0.005~0.01%、Ti:0.0005~0.0020%、Nb:0.0005~0.0020%およびV:0.0005~0.0020%含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
下記式1を満たし、
平均結晶粒径が55~80μmであり、
50nm以下の粒径を有する炭化物、窒化物および炭窒化物のうち1種以上の分布密度が0.5個/mm
2以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
[式1]
1.75≦([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])/([C]+[N])≦4.00
(式1において、[Mo]、[Ti]、[Nb]、[V]、[C]および[N]はそれぞれMo、Ti、Nb、V、CおよびNの含有量(重量%)を示す。)
【請求項2】
下記式2により計算される値が500~2000であることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
[式2]
[平均結晶粒径(μm)]
2×[50nm以下の粒径を有する炭化物、窒化物および炭窒化物のうち1種以上の分布密度(個/mm
2)]
【請求項3】
Sn:0.015~0.1重量%、Sb:0.015~0.1重量%およびP:0.005~0.05重量%のうち1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項4】
Cu:0.05重量%以下、B:0.002重量%以下、Mg:0.005重量%以下およびZr:0.005重量%以下のうち1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項5】
比抵抗が50μΩ・cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項6】
密度が7.55g/cm
3以上であることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項7】
0.2%オフセット降伏強度(Rp
0.2)が440MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項8】
0.2%オフセット降伏強度(Rp
0.2)が上降伏強度(ReH)の98.5%以上であることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項9】
重量%で、Si:3.3~4.0%、Al:0.4~1.5%、Mn:0.2~1.0%、C:0.0015~0.0040%、N:0.0005~0.0020%、S:0.0005~0.0025%、Mo:0.005~0.01%、Ti:0.0005~0.0020%、Nb:0.0005~0.0020%およびV:0.0005~0.0020%含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式1を満たすスラブを製造する段階、
前記スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および
前記冷延板を最終焼鈍する段階を含み、
前記最終焼鈍する段階は910~1000℃の均熱温度で均熱する段階および前記均熱温度から600℃まで25秒以内に冷却する段階を含むことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
[式1]
1.75≦([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])/([C]+[N])≦4.00
(式1において、[Mo]、[Ti]、[Nb]、[V]、[C]および[N]はそれぞれMo、Ti、Nb、V、CおよびNの含有量(重量%)を示す。)
【請求項10】
前記熱延板を製造する段階の後、前記熱延板を850~1150℃温度で熱延板焼鈍する段階をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記最終焼鈍する段階は、水素(H
2)と窒素(N
2)が混合された雰囲気で焼鈍することを特徴とする請求項9に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施例は無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。具体的には、本発明の一実施例はMo、Ti、Nb、Vを適切に添加し、最終焼鈍後の冷却過程で特定の温度範囲での時間を調節して微細な炭窒化物の形成を抑制する無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。結果的に磁性と強度の両方に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は電気エネルギを機械的エネルギに変換させるモータに主に使用されるが、その過程で高い効率を発揮するために無方向性電磁鋼板の優れた磁気的特性が求められる。特に近年では内燃機関の代わりにモータで駆動される環境に優しい自動車が注目され、駆動モータのコア素材として使用される無方向性電磁鋼板の需要が増加しており、このために磁気的特性と強度の両方に優れた無方向性電磁鋼板が求められている。
【0003】
無方向性電磁鋼板の磁気的特性は主に鉄損と磁束密度で評価する。鉄損は特定の磁束密度と周波数で発生するエネルギ損失を意味し、磁束密度は特定の磁場下で得られる磁化の程度を意味する。鉄損が低いほど同じ条件でエネルギ効率が高いモータを製造することができ、磁束密度が高いほどモータを小型化するか銅損を減少させることができる。したがって、低い鉄損と高い磁束密度を有する無方向性電磁鋼板を使用して効率とトルクに優れた駆動モータを作ることができ、これにより環境に優しい自動車の走行距離と出力を向上させることができる。
【0004】
モータの作動条件によって考慮すべき無方向性電磁鋼板の特性も変わる。モータに使用される無方向性電磁鋼板の特性を評価するための一般的な基準としては商用周波数50Hzで1.5T磁場が印加されたときの鉄損であるW15/50が広く使われている。しかし、環境に優しい自動車の駆動モータに使用される厚さ0.35mm以下の無方向性電磁鋼板では1.0Tまたはそれ以下の低磁場と400Hz以上の高周波での磁気的特性が重要な場合が多いので、W10/400鉄損で無方向性電磁鋼板の特性を評価する場合が多い。
【0005】
環境に優しい自動車の駆動モータ用無方向性電磁鋼板は磁気的特性ほどの優れた強度が求められる。環境に優しい自動車用駆動モータは主に回転子に永久磁石を挿入した形態に設計されるが、永久磁石挿入型モータが優れた性能を発揮するためには永久磁石ができるだけ固定子に近づくように回転子の外側に位置しなければならない。しかし、モータが高速で回転するときの電磁鋼板の強度が低いと回転子に挿入されている永久磁石が遠心力によって離脱するので、モータの性能と耐久性を確保するために高い強度を有する電磁鋼板が求められる。
【0006】
無方向性電磁鋼板の磁気的特性と強度を同時に増加させるために通常用いられる方法はSi、Al、Mnなどの合金元素を添加することである。このような合金元素の添加により鋼の比抵抗が増加すると渦電流損失が減少して全体鉄損を低下させることができる。また、合金元素が鉄に置換型元素に固溶されて強化効果を起こして強度を高めることができる。反面、Si、Al、Mnなどの合金元素の添加量が増加するほど磁束密度が劣り、脆性が増加する短所があり、一定量以上を添加すると冷間圧延が不可能であるため商業的生産が不可能になる。特に電磁鋼板は厚さを薄くするほど優れた高周波鉄損になるが、脆性による圧延性低下は致命的な問題になる。
【0007】
モータの設計意図によって磁気的特性は多少劣化しても強度が改善された電磁鋼板を使用することもあるが、このような用途の電磁鋼板を製造するための方法としては侵入型元素の析出を用いる方法と結晶粒の大きさを減少させる方法がある。主にモータを小型化して回転速度を上向させたり、回転子に挿入される永久磁石の効果を高めようとするとき電磁鋼板の磁気的特性が多少劣化しても強度が顕著に向上した電磁鋼板で製造された回転子を使用する。この時、C、N、Sなど侵入型固溶元素が含まれた微細析出物を形成させると強度の向上効果は良いが、鉄損が急激に劣化してかえってモータの効率を低下させる短所がある。そして、結晶粒の大きさを減少させる方法は未再結晶部の混入による鋼板材質の不均一度が増加して量産製品の品質偏差が大きくなる短所がある。
【0008】
前記のような問題を解決するために、最終焼鈍工程の冷却速度の制御により磁性と強度の両方に優れた無方向性電磁鋼板を作ろうとしたが、これは未再結晶部の混入による材質の不均一度の上昇により量産工程に適用しにくい問題がある。この他にも磁性と強度を同時に改善するために従来に提案された多くの技術が製造コストの増加、生産性および実収率の低下、不十分な改善効果などの理由により使用されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することにある。より具体的には、Mo、Ti、Nb、Vを適切に添加し、最終焼鈍後の冷却過程で特定の温度範囲での時間を調節して微細な炭窒化物の形成を抑制する無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:3.3~4.0%、Al:0.4~1.5%、Mn:0.2~1.0%、C:0.0015~0.0040%、N:0.0005~0.0020%、S:0.0005~0.0025%、Mo:0.005~0.01%、Ti:0.0005~0.0020%、Nb:0.0005~0.0020%およびV:0.0005~0.0020%含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式1を満たす。
[式1]
1.75≦([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])/([C]+[N])≦4.00
(式1において、[Mo]、[Ti]、[Nb]、[V]、[C]および[N]はそれぞれMo、Ti、Nb、V、CおよびNの含有量(重量%)を示す。)
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、平均結晶粒径が55~80μmである。本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、50nm以下の粒径を有する炭化物、窒化物および炭窒化物のうち1種以上の分布密度が0.5個/mm2以下である。
【0011】
下記式2により計算される値が500~2000である。
[式2]
[平均結晶粒径(μm)]2×[50nm以下の粒径を有する炭化物、窒化物および炭窒化物のうち1種以上の分布密度(個/mm2)]
【0012】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、Sn:0.015~0.1重量%、Sb:0.015~0.1重量%およびP:0.005~0.05重量%のうち1種以上をさらに含む。
【0013】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、Cu:0.05重量%以下、B:0.002重量%以下、Mg:0.005重量%以下およびZr:0.005重量%以下のうち1種以上をさらに含む。
【0014】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、比抵抗が50μΩ・cm以上である。
【0015】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、密度が7.55g/cm3以上である。
【0016】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、0.2%オフセット降伏強度(Rp0.2)が440MPa以上である。
【0017】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、0.2%オフセット降伏強度(Rp0.2)が上降伏強度(ReH)の98.5%以上である。
【0018】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:3.3~4.0%、Al:0.4~1.5%、Mn:0.2~1.0%、C:0.0015~0.0040%、N:0.0005~0.0020%、S:0.0005~0.0025%、Mo:0.005~0.01%、Ti:0.0005~0.0020%、Nb:0.0005~0.0020%およびV:0.0005~0.0020%含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式1を満たすスラブを製造する段階、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および冷延板を最終焼鈍する段階を含む。
[式1]
1.75≦([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])/([C]+[N])≦4.00
(式1において、[Mo]、[Ti]、[Nb]、[V]、[C]および[N]はそれぞれMo、Ti、Nb、V、CおよびNの含有量(重量%)を示す。)
最終焼鈍する段階は、910~1000℃の均熱温度で均熱する段階および均熱温度から600℃まで25秒以内に冷却する段階を含む。
【0019】
熱延板を製造する段階の後、熱延板を850~1150℃温度で熱延板焼鈍する段階をさらに含む。
【0020】
最終焼鈍する段階は、水素(H2)と窒素(N2)が混合された雰囲気で焼鈍する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施例によれば、磁性と強度を同時に向上させた無方向性電磁鋼板を提供し、環境に優しい自動車の駆動モータの性能向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施例で最終焼鈍工程での温度を模式化したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限られない。これらの用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別することのみのために使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及されることができる。
【0024】
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
【0025】
ある部分が他の部分の「上に」または「の上に」あると言及する場合、これは他の部分のすぐ上にまたは上にあり得、その間に他の部分が介在し得る。対照的にある部分が他の部分の「すぐ上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。また、特記しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。本発明の一実施例で追加元素をさらに含むことの意味は、追加元素の追加量だけ残部である鉄(Fe)の代わりに含むことを意味する。
【0026】
ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。一般に用いられている辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在の開示された内容に合う意味を有するものとしてさらに解析され、定義されない限り理想的または公式的過ぎる意味に解釈されない。
【0027】
以下、本発明の実施例について本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施例に限られない。
【0028】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:3.3~4.0%、Al:0.4~1.5%、Mn:0.2~1.0%、C:0.0015~0.0040%、N:0.0005~0.0020%、S:0.0005~0.0025%、Mo:0.005~0.01%、Ti:0.0005~0.0020%、Nb:0.0005~0.0020%およびV:0.0005~0.0020%含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
【0029】
以下では無方向性電磁鋼板の成分を限定する理由から説明する。
【0030】
Si:3.30~4.00重量%
シリコン(Si)は材料の比抵抗を高めて鉄損を低下させ、固溶強化によって強度を高める役割をする。Siが過度に少なく添加される場合は鉄損および強度の改善効果が不十分である。Siを過度に多く添加する場合は、材料の脆性が増加して圧延生産性が急激に低下し、磁性に有害な表層部の酸化層および酸化物を形成して問題になる。したがって、Siを3.3~4.0重量%含むことができる。さらに具体的には、3.4~3.6重量%含むことができる。
【0031】
Al:0.40~1.50重量%
アルミニウム(Al)は材料の比抵抗を高めて鉄損を低下させ、固溶強化によって強度を高める役割をする。Alが過度に少なく添加される場合は微細窒化物が形成されるか、表層部の酸化層が緻密に生成されず、磁性改善効果を得にくい。Alが過度に多く添加されると、窒化物が過剰に形成されて磁性を劣化させ、製鋼と連続鋳造などのすべての工程上に問題を発生させて生産性を大きく低下させる。したがって、Alを0.4~1.5重量%含むことができる。さらに具体的には、0.5~1.0重量%含むことができる。
【0032】
Mn:0.20~1.00重量%
マンガン(Mn)は材料の比抵抗を高めて鉄損を改善し、硫化物を形成させる役割をする。Mnが過度に少なく添加される場合はMnSが微細に形成されて磁性劣化を起こし、Mnが過度に多く添加される場合は微細なMnSが過剰に析出され、磁性に不利な{111}集合組織の形成を助長して磁束密度が急激に減少する。したがって、Mnを0.2~1.0重量%含むことができる。さらに具体的には、0.30~0.70重量%含むことができる。
【0033】
C:0.0015~0.0040重量%
炭素(C)は磁気時効を起こし、その他不純物元素と結合して炭化物を生成して磁気的特性を低下させるが、電位移動を妨げて強度を向上させる役割をする。Cが過度に少なく添加されると、強度改善効果が不十分である。Cが過度に多く添加されると、微細炭化物が増加して磁性が急激に劣化する。したがって、Cを0.0015~0.0040重量%含むことができる。さらに具体的には、0.0020~0.0038重量%含むことができる。
【0034】
N:0.0005~0.0020重量%
窒素(N)は母材内部に微細なAlN析出物を形成するだけでなく、その他不純物と結合して微細な析出物を形成して結晶粒成長を抑制して鉄損を悪化させるが、強度を向上させる役割をする。窒素が過度に少なく添加されると、強度が十分に向上できない。窒素が過度に多く添加されると、微細窒化物が増加して鉄損が急激に劣化する。したがって、Nを0.0005~0.0020重量%含むことができる。さらに具体的には、0.0008~0.0018重量%含むことができる。
【0035】
S:0.0005~0.0025重量%
硫黄(S)は微細な析出物であるMnSおよびCuSを形成して磁気特性を悪化させ、熱間加工性を悪化させるので、低く管理することが好ましい。ただし、Sを過度に少なく添加すると、磁束密度が低下する。したがって、Sを0.0005~0.0025重量%含むことができる。さらに具体的には、0.0010~0.0023重量%含むことができる。
【0036】
Mo:0.0050~0.0100重量%
モリブデン(Mo)は焼鈍時に粒界に偏析して磁性に有害な{111}集合組織の発達を抑制し、冷却中に微細な炭化物を形成して強度を向上させる役割をする。Moが過度に少なく添加されるとその効果が不十分である。Moが過度に多く添加されると、炭化物の形成を助長して磁性を劣化させる。したがって、Moを0.005~0.01重量%含むことができる。さらに具体的には、0.0060~0.0090重量%含むことができる。
【0037】
Ti、Nb、V:それぞれ0.0005~0.0020重量%
チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)は、鋼中の析出物の形成の傾向が非常に強く、母材内部に微細な炭化物、窒化物または硫化物を形成して結晶粒成長および磁壁移動を抑制することによって鉄損を劣化させる。したがって、Ti、Nb、Vの上限を適切に調節する必要がある。反面、これらが少なすぎると、電磁鋼板の強度が顕著に低くなる。したがって、Ti,NbおよびVをそれぞれ0.0005~0.0020重量%含むことができる。さらに具体的には、それぞれ0.0007~0.0018重量%含むことができる。
【0038】
Ti+Nb+V:0.0030~0.0050重量%
前述したように、Ti、Nb、Vは強度を強化する役割をするので、こらの合量を0.0030重量%以上含むことが好ましい。これらが過度に多く含まれる場合、微細な炭化物、窒化物または硫化物を形成して結晶粒成長および磁壁移動を抑制することによって鉄損を劣化させる。
【0039】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は下記式1を満たす。
[式1]
1.75≦([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])/([C]+[N])≦4.00
(式1において、[Mo]、[Ti]、[Nb]、[V]、[C]および[N]はそれぞれMo、Ti、Nb、V、CおよびNの含有量(重量%)を示す。)
【0040】
式1を満たす場合、微細な炭窒化物の形成を最小化することができる。すなわち、1.75~4.00の範囲内では微細な炭窒化物の形成が抑制されて炭窒化物の分布密度が最小化するので、この範囲で管理される。式1値が過度に低いと、強度面で問題になる。さらに具体的には、式1値が2.00~3.50である。
【0041】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、Sn:0.015~0.1重量%、Sb:0.015~0.1重量%およびP:0.005~0.05重量%のうち1種以上をさらに含むことができる。
【0042】
Sn、Sb:それぞれ0.015~0.100重量%
スズ(Sn)およびアンチモン(Sb)は、鋼板の表面および結晶粒界に偏析して焼鈍時の表面酸化を抑制し、結晶粒界による元素の拡散を妨げ、{111}//ND方位の再結晶を妨げて集合組織を改善させる役割をする。SnおよびSbが過度に少なく添加される場合は前述した効果が充分でない。SnおよびSbが過度に多く添加される場合は、結晶粒界偏析量の増加によって靱性が低下して磁性改善に比べて生産性が低下する。したがって、SnおよびSbをそれぞれ0.015~0.100重量%さらに含むことができる。さらに具体的には、それぞれ0.020~0.075重量%さらに含むことができる。
【0043】
P:0.005~0.050重量%
リン(P)は鋼板の表面および結晶粒界に偏析して焼鈍時の表面酸化を抑制し、結晶粒界による元素の拡散を妨げ、{111}//ND方位の再結晶を妨げて集合組織を改善させる役割をする。Pが過度に少なく添加される場合はその効果が充分でない。Pが過度に多く添加される場合、熱間加工の特性が劣化して磁性改善に比べて生産性が低下する。したがって、Pを0.005~0.050重量%さらに含むことができる。さらに具体的には、Pを0.007~0.045重量%さらに含むことができる。
【0044】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、Cu:0.01重量%以下、B:0.002重量%以下、Mg:0.005重量%以下およびZr:0.005重量%以下のうち1種以上をさらに含むことができる。
【0045】
Cu:0.05重量%以下
銅(Cu)は高温で硫化物を形成できる元素であり、多量添加時にはスラブの製造の際に表面部の欠陥を引き起こす元素である。したがって、Cuをさらに含む場合、0.05重量%以下で含むことができる。さらに具体的には、0.001~0.05重量%含むことができる。
【0046】
B:0.002重量%以下、Mg:0.005重量%以下およびZr:0.005重量%以下
B、Mg、Zrは磁性に悪影響を与える元素であって、それぞれ前述した範囲でさらに含むことができる。
【0047】
残部はFeおよび不可避的不純物を含む。不可避的不純物は製鋼段階および方向性電磁鋼板の製造工程過程で混入される不純物であり、これは該当分野で広く知られているので、これについて具体的な説明は省略する。本発明の一実施例で前述した合金成分の他に元素の追加を排除するものではなく、本発明の技術思想を損なわない範囲内で多様に含まれる。追加元素をさらに含む場合は残部であるFeの代わりとして含む。
【0048】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、平均結晶粒径が55~80μmである。平均結晶粒径が過度に小さい場合、鉄損が劣る。平均結晶粒径が過度に大きい場合、強度が弱くなる。さらに具体的には、平均結晶粒径が58~75μmである。
【0049】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、50nm以下の粒径を有する炭化物、窒化物および炭窒化物のうち1種以上の密度が0.5個/mm2以下である。
【0050】
本発明の一実施例ではMo、Ti、Nb、V、C、Nを一定の含有量以上を含みながらも、Mo、Ti、Nb、Vの含有量をC、N含有量に相対的に適正量を添加し、また、最終焼鈍過程での冷却時間を調節して、炭化物、窒化物または炭窒化物(以下、「炭窒化物」と通称することもある)の密度を極力低くすることができる。炭窒化物粒径の下限は5nmである。前述した粒径未満の炭窒化物は磁性に実質的な影響はない。粒径は鋼板を観察した時、炭窒化物の面積と同じ面積の仮想の円を仮定し、その円の粒径を意味する。炭窒化物の測定面は表面(ND面)または断面(TD面、RD面)である。炭窒化物はTEMを用いて観察することができる。炭窒化物とは鋼板の基材に比べてCおよび/またはNの含有量が高い粒子形状の部分を意味する。
【0051】
炭窒化物の分布密度は0.5個/mm2以下である。より具体的には、0.05~0.50個/mm2である。さらに具体的には、0.10~0.40個/mm2である。炭化物、窒化物または炭窒化物を同時に含む場合、これらの合計の分布密度である。
【0052】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、下記式2値が500~2000である。
[式2]
[平均結晶粒径(μm)]2×[50nm以下の粒径を有する炭化物、窒化物および炭窒化物のうち1種以上の分布密度(個/mm2)]
式2値が500~2000を満たすことによって、磁性を向上させると同時に強度を向上させることができる。
【0053】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、比抵抗が50μΩ・cm以上である。より具体的には、53μΩ・cm以上である。さらに具体的には、58μΩ・cm以上である。上限は特に制限されないが、100μΩ・cm以下である。
【0054】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、密度が7.55g/cm3以上である。本発明の一実施例で適切な密度を有しながらも改善された強度にできる。具体的には、密度は7.55~8.00g/cm3である。本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、強度および磁性の両方に優れる。具体的には、本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、0.2%オフセット降伏強度(Rp0.2)が440MPa以上である。モータが速い速度で回転する場合、モータの内側から外側方向に沿って強い応力が付与される。特に永久磁石挿入型モータの場合、永久磁石を回転子の最末端に配置して効率を向上できるが、降伏強度が低い電磁鋼板を使用するとモータが回転する時に回転子に挿入された永久磁石が遠心力によって回転子末端部の変形および破壊を誘発して耐久性に問題を起こす。このような理由から、鋼板の機械的特性は重要であり、これを0.2%オフセット降伏強度(Rp0.2)により確認することができる。さらに具体的には、0.2%オフセット降伏強度(Rp0.2)が440~460MPaである。
【0055】
また、本発明の一実施例で引張が付与される前に比べて引張が付与されても降伏強度の減少は少ないため、モータが速い速度で回転してもモータの強度を維持することができる。具体的には、0.2%オフセット降伏強度(Rp0.2)が上降伏強度(ReH)の98.5%以上である。さらに具体的には、0.2%オフセット降伏強度(Rp0.2)が上降伏強度(ReH)の98.5%~99.9%である。降伏強度はISO6892規格に従って平行部の長さ80mmの試験片で引張試験を行い、それぞれ0.2%引張または引張なしに降伏強度を測定する方式で測定することができる。
【0056】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、磁束密度(B50)が1.66T以上である。この時、B50は5000A/mの磁場で誘導される磁束密度を意味する。さらに具体的には、磁束密度(B50)が1.67~1.70Tである。本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、鉄損(W10/400)が12.0W/kg以下である。W10/400は400Hzの周波数で1.0Tの磁束密度を誘起した時の鉄損を意味する。さらに具体的には、鉄損(W10/400)が10.5~11.5W/kgである。鉄損の測定基準厚さは0.30mmである。
【0057】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブを製造する段階、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および冷延板を最終焼鈍する段階を含む。
【0058】
以下では各段階別に具体的に説明する。
先に、スラブを製造する。
【0059】
スラブの合金成分については前述した無方向性電磁鋼板の合金元素で説明したので、重複する説明は省略する。無方向性電磁鋼板の製造過程で合金成分は実質的に変動しないので、無方向性電磁鋼板とスラブの合金成分は実質的に同一である。
【0060】
具体的には、スラブは重量%で、Si:3.3~4.0%、Al:0.4~1.5%、Mn:0.2~1.0%、C:0.0015~0.0040%、N:0.0005~0.0020%、S:0.0005~0.0025%、Mo:0.005~0.01%、Ti:0.0005~0.0020%、Nb:0.0005~0.0020%およびV:0.0005~0.0020%含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式1を満たすことができる。
[式1]
1.75≦([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])/([C]+[N])≦4.00
(式1において、[Mo]、[Ti]、[Nb]、[V]、[C]および[N]はそれぞれMo、Ti、Nb、V、CおよびNの含有量(重量%)を示す。)
【0061】
スラブの製造工程は該当技術分野で知られている工程により行される。
スラブを製造した後、スラブを加熱する。具体的には、スラブを加熱炉に装入して1,200℃以下の温度で加熱する。スラブの加熱温度が過度に高いと、スラブ中に存在するAlN、MnSなどの析出物が再固溶された後に熱間圧延および焼鈍時に微細析出されて結晶粒成長を抑制して磁性を低下させる。
【0062】
次に、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する。熱延板の厚さは2~2.3mmである。熱延板を製造する段階での仕上げ圧延温度は800℃以上である。具体的には、800~1000℃である。熱延板は700℃以下の温度で巻き取られる。熱延板を製造する段階の後、熱延板を熱延板焼鈍する段階をさらに含むことができる。この時、熱延板の焼鈍温度は850~1150℃である。熱延板の焼鈍温度が過度に低いと、組織が成長しないか、微細に成長して冷間圧延後の焼鈍時に磁性に有利な集合組織を得るのが容易でない。焼鈍温度が過度に高いと磁性結晶粒が過度に成長して板の表面欠陥が過剰になる。熱延板焼鈍は必要に応じて磁性に有利な方位を増加させるために行われ、省略することも可能である。焼鈍された熱延板を酸洗する。さらに具体的には、熱延板の焼鈍温度は950~1150℃である。
【0063】
次に、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する。この時、圧下率を70~85%に調節して圧下する。必要に応じて冷間圧延する段階は1回の冷間圧延段階または中間焼鈍を間に置いた2回以上の冷間圧延段階を含むことができる。この時、中間焼鈍温度は850~1150℃である。冷延板の厚さは0.10~0.35mmである。次に、冷延板を最終焼鈍する。冷延板を焼鈍する工程で焼鈍温度は通常無方向性電磁鋼板に適用される温度であれば大きな制限はない。無方向性電磁鋼板の鉄損は結晶粒の大きさと密接な関連があるので、910~1000℃の均熱温度(Tmax)で焼鈍する。この時、均熱温度とは温度変動が殆どない状態を意味する。また、均熱時間は100秒以下で短時間焼鈍する。
【0064】
その後、均熱温度(T
max)から600℃まで25秒以内(t)に冷却する。このように短時間に冷却して微細な炭窒化物の生成を極力抑制し、結晶粒の不規則な成長を抑制することができる。さらに具体的には、均熱温度(T
max)から600℃まで15~23秒間(t)冷却する。
図1には本発明の一実施例による均熱温度および冷却時間(t)を模式的に示した。
【0065】
最終焼鈍する段階は水素(H2)と窒素(N2)が混合された雰囲気で焼鈍する。具体的には、水素を5~40体積%、および窒素を60~95体積%含む雰囲気で焼鈍する。前述した雰囲気で焼鈍すると、高温で形成される磁性に有害な微細酸化物の形成を防止できる長所がある。最終焼鈍過程で平均結晶粒の粒径が55~80μmであり得、前段階の冷間圧延段階で形成された加工組織がすべて(すなわち、99%以上)再結晶される。
【0066】
最終焼鈍した後、絶縁被膜を形成する。前記絶縁被膜は有機質、無機質および有機/無機複合被膜で処理され、その他絶縁が可能な被膜剤で処理することも可能である。以下では実施例により本発明をより詳細に説明する。しかし、このような実施例は単に本発明を例示するためであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0067】
表1の成分、および残部がFeおよび不可避的不純物からなるスラブを製造した。スラブを1,150℃で加熱し、880℃の仕上げ温度で熱間圧延して、板厚さ2.0mmの熱延板を製造した。熱間圧延された熱延板は1020℃で100秒間熱延板焼鈍した後、冷間圧延してそれぞれの厚さを0.25mmにした。これを表2の温度で100秒間最終焼鈍を行った。
【0068】
各試験片に対する関係式1の計算値、最終焼鈍時の均熱温度から600℃までの冷却時間、直径50nm以下である(Mo、Ti、Nb、V)(C、N)析出物の分布密度、平均結晶粒径、上降伏強度(ReH)、0.2%オフセット降伏強度(Rp0.2)、Rp0.2/ReHおよび磁気的特性を表2に示した。
【0069】
各成分の含有量はICP湿式分析で測定した。最高温度から600℃までの冷却時間は試験片の表面にTCを付着して板温を直接測定して所要時間を測定した。析出物はレプリカ法でTEM試験片を製造し、高倍率で0.5mm2以上の面積を観察して直径50nm以下であり、かつMo、Ti、Nb、Vのいずれかが含まれた炭化物または窒化物が見つかると、その個数を観察面積で割って分布密度を計算した。結晶粒径は試験片の圧延垂直方向の断面を研磨した後にエッチングして光学顕微鏡で結晶粒が1500個以上含まれるように十分な面積を撮影して、(測定面積÷結晶粒個数)0.5で計算した。降伏強度はISO6892規格に従って平行部の長さ80mmの試験片で引張試験を行い、結果値を示した。磁束密度、鉄損などの磁気的特性はそれぞれの試験片に対して幅60mm×の長さ60mm×枚数5枚の試験片を切断してSingle sheet testerで圧延方向と圧延垂直方向を測定してその平均値を示した。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
表1~表3に示すように、合金成分が適切に調節され、最終焼鈍時の冷却時間が短く調節された実施例は、炭窒化物の分布と結晶粒径が好適に制御されて440MPa以上の高いRp0.2と優れた磁気的特性が現れることを確認することができる。A1、D2は式1値が過度に小さいため、強度特性が劣ることを確認することができる。B2、C2は式1値が過度に大きいため、炭窒化物が多量発生し、磁性が劣ることを確認することができる。
【0074】
B1、C1は冷却時間が過度に長いため、炭窒化物が多量発生し、磁性が劣ることを確認することができる。A2は均熱温度が過度に高いため、結晶粒が大きく、強度特性が劣ることを確認することができる。D1は均熱温度が過度に低いため、結晶粒が過度に小さく形成され、強度および磁性がいずれも劣ることを確認することができる。D5およびD6はMo、Ti、Nb、Vの含有量が少ないため、強度および磁性がいずれも劣ることを確認することができる。
【0075】
本発明は実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:3.3~4.0%、Al:0.4~1.5%、Mn:0.2~1.0%、C:0.0015~0.0040%、N:0.0005~0.0020%、S:0.0005~0.0025%、Mo:0.005~0.01%、Ti:0.0005~0.0020%、Nb:0.0005~0.0020%およびV:0.0005~0.0020%含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
下記式1を満たし、
平均結晶粒径が55~80μmであり、
50nm以下の粒径を有する炭化物、窒化物および炭窒化物のうち1種以上の分布密度が0.5個/mm
2以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
[式1]
1.75≦([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])/([C]+[N])≦4.00
(式1において、[Mo]、[Ti]、[Nb]、[V]、[C]および[N]はそれぞれMo、Ti、Nb、V、CおよびNの含有量(重量%)を示す。)
【請求項2】
下記式2により計算される値が500~2000であることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
[式2]
[平均結晶粒径(μm)]
2×[50nm以下の粒径を有する炭化物、窒化物および炭窒化物のうち1種以上の分布密度(個/mm
2)]
【請求項3】
Sn:0.015~0.1重量%、Sb:0.015~0.1重量%およびP:0.005~0.05重量%のうち1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1
または2に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項4】
Cu:0.05重量%以下、B:0.002重量%以下、Mg:0.005重量%以下およびZr:0.005重量%以下のうち1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項5】
比抵抗が50μΩ・cm以上であることを特徴とする請求項1
乃至4のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項6】
密度が7.55g/cm
3以上であることを特徴とする請求項1
乃至5のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項7】
0.2%オフセット降伏強度(Rp
0.2)が440MPa以上であることを特徴とする請求項1
乃至6のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項8】
0.2%オフセット降伏強度(Rp
0.2)が上降伏強度(ReH)の98.5%以上であることを特徴とする請求項1
乃至7のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項9】
重量%で、Si:3.3~4.0%、Al:0.4~1.5%、Mn:0.2~1.0%、C:0.0015~0.0040%、N:0.0005~0.0020%、S:0.0005~0.0025%、Mo:0.005~0.01%、Ti:0.0005~0.0020%、Nb:0.0005~0.0020%およびV:0.0005~0.0020%含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式1を満たすスラブを製造する段階、
前記スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および
前記冷延板を最終焼鈍する段階を含み、
前記最終焼鈍する段階は910~1000℃の均熱温度で均熱する段階および前記均熱温度から600℃まで25秒以内に冷却する段階を含むことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
[式1]
1.75≦([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])/([C]+[N])≦4.00
(式1において、[Mo]、[Ti]、[Nb]、[V]、[C]および[N]はそれぞれMo、Ti、Nb、V、CおよびNの含有量(重量%)を示す。)
【請求項10】
前記熱延板を製造する段階の後、前記熱延板を850~1150℃温度で熱延板焼鈍する段階をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記最終焼鈍する段階は、水素(H
2)と窒素(N
2)が混合された雰囲気で焼鈍することを特徴とする請求項9
または10に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【国際調査報告】