(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-28
(54)【発明の名称】炭化水素を水蒸気分解するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C10G 9/36 20060101AFI20231221BHJP
C10G 45/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C10G9/36
C10G45/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538023
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 IB2021060935
(87)【国際公開番号】W WO2022136976
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ファラジャデ・ビバラン,サファ
(72)【発明者】
【氏名】フリッセン,マーティン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129CA22
4H129DA03
4H129DA15
4H129FA02
4H129FA12
4H129NA40
4H129NA45
(57)【要約】
炭化水素ストリームを水蒸気分解するシステムおよび方法が開示されている。前記方法は、水蒸気分解炉の対流部内にポリマー複合材管を含むスチームクラッカー内で炭化水素ストリームを水蒸気分解することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素ストリームを処理する方法であって、
一つ以上のポリマー複合材管を含む対流部を備えているスチームクラッカー内で前記炭化水素ストリームを水蒸気分解することを含む、方法。
【請求項2】
熱分解油ストリームを処理する方法であって、
精製ユニット内で前記熱分解油ストリームからヘテロ原子汚染物を除去して、精製された熱分解油を生成することと、
一つ以上のポリマー複合材管を含む対流部を備えているスチームクラッカー内で、精製された前記熱分解油ストリームを水蒸気分解して、オレフィンおよび芳香族化合物を生成することと、を含む方法。
【請求項3】
前記対流部は、前記スチームクラッカーのフィードプレヒータを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィードプレヒータは、140~260℃の温度で作動される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フィードプレヒータは、前記スチームクラッカーの放射部内で生成された煙道ガスによって加熱される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー複合材管は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、パーフルオロアルコキシ(PFA)またはこれらの組合せを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー複合材管は、20~300℃の動作温度限界を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記精製ユニットは、吸着ユニット、水素化処理ユニットを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記熱分解油は、10重量%を超える不飽和分子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー複合材管は、前記スチームクラッカー内の不飽和分子のファウリングを軽減するように構成される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記スチームクラッカーの前記対流部は、フィードプレヒータバンクと、上方混合プレヒータバンクと、下方混合プレヒータバンクとを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
熱分解油ストリームを処理する方法であって、
精製ユニット内で前記熱分解油ストリームからヘテロ原子汚染物を除去して、精製された熱分解油を生成することと、
一つ以上のポリマー複合材管を含むフィードプレヒータを備えるスチームクラッカー内で、精製された前記熱分解油ストリームを水蒸気分解して、オレフィンおよび芳香族化合物を生成することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2020年12月21日に出願された米国仮特許出願第63/128,263号に対して優先権の利益を主張するものであり、この特許は、参照によってその内容全体を本願明細書に組み込んだものとする。
【0002】
本発明は、一般に、炭化水素を水蒸気分解するシステムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、対流部内でポリマー複合材管を用いるスチームクラッキングユニットを用いて炭化水素を水蒸気分解するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
スチームクラッキング(水蒸気分解)は、化学産業において、軽質オレフィンや他の高価値の化学製品を製造するための、最も一般的に用いられているプロセスのうちの一つである。水蒸気分解プロセスにおいて、分解される原料および高圧蒸気は、煙道ガスから原料および高圧蒸気への間接的な対流熱伝達を介して、一連のチューブバンドルを備えている対流部で予熱される。そして、予熱された原料中の炭化水素と蒸気混合物は、スチームクラッカーの放射部内で分解される。
【0004】
分解炉の対流部は、液体原料の処理中にファウリングに頻繁に悩まされる。対流部におけるファウリングの正確なメカニズムはいまだ解明されていないが、ファウリングは、微粒子、ヘテロ原子および不飽和化合物(例えば、オレフィンおよびジオレフィン)を含むさまざまなパラメータによって引き起こされる可能性がある。炉の操業を維持するために、対流部でのファウリングは、定期的に除去される必要があり、このことにより、一定の労力がかかり、生産時間が少なくなる。このため、対流部におけるファウリングの防止および軽減により、スチームクラッカーの生産効率を著しく向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
全般的に見れば、スチームクラッカーのファウリングを除去するシステムおよび方法が存在するが、従来のシステムおよび方法に伴う上述した欠点を考慮すると、この分野における改良に対する必要性が残存している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
炭化水素、特に液体炭化水素を水蒸気分解するシステムおよび方法に付随する上述した問題に関する解決策が見出されている。前記解決策は、対流部にポリマー複合材管を備えているスチームクラッキングユニット(水蒸気分解ユニット)にある。
【0007】
これは、管を形成するのに用いられるポリマー複合材料(ポリマーコンポジット材料)が、管内でのファウリング率を低減するように構成されており、それによって、スチームクラッカーの対流部内でのファウリング問題を軽減し、スチームクラッカーによるファウリングのクリーニングの頻度を低減するため、有益である可能性がある。
【0008】
その結果として、開示されているシステムおよび方法は、スチームクラッカーの生産効率を向上させることが可能である。したがって、本発明の開示されているシステムおよび方法は、従来の水蒸気分解システムおよび方法に付随する問題に関する技術的解決策を提供する。
【0009】
本発明の実施形態は、炭化水素ストリームを処理する方法を含む。前記方法は、一つ以上のポリマー複合材管を含む対流部を備えるスチームクラッカー内で炭化水素ストリームを水蒸気分解することを含む。
【0010】
本発明の実施形態は、熱分解油ストリームを処理する方法を含む。前記方法は、精製ユニット内で前記熱分解油ストリームからヘテロ原子汚染物を除去して、精製された熱分解油を生成することを含む。前記方法は、スチームクラッカー内で精製された前記熱分解油ストリームを水蒸気分解して、オレフィンおよび芳香族化合物を生成することを含む。当前記スチームクラッカーは、一つ以上のポリマー複合材管を含む対流部を備えている。
【0011】
本発明の実施形態は、熱分解油ストリームを処理する方法を含む。前記方法は、精製ユニット内で熱分解油ストリームからヘテロ原子汚染物を除去して、精製された熱分解油を生成することを含む。前記方法は、スチームクラッカー内で精製された熱分解油ストリームを水蒸気分解して、オレフィンおよび芳香族化合物を生成することを含む。前記スチームクラッカーは、一つ以上のポリマー複合材管を備えるフィードプレヒータバンクを備えている。
【0012】
本明細書で使用されている様々な用語およびフレーズの定義を以下に示す。
【0013】
「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、当業者に理解される程度に近いと定義される。一つの非限定的な実施形態において、この用語は、10%以内、好ましくは、5%以内、より好ましくは、1%以内、および最も好ましくは、0.5%以内であると定義される。
【0014】
「重量(wt)%」、「体積(vol)%」または「モル(mol)%」は、それぞれ、ある成分を含む材料の総重量、全体積、または全モルに基づく成分の重量、体積またはモルの割合を指す。非限定的な実施例において、100モルの材料中の10モルの成分は、10モルパーセントの成分である。
「実質的に(substantially)」という用語およびその変化形は、10%以内、5%以内、1%以内または0.5%以内の範囲を含むように定義される。
【0015】
「抑制する(inhibiting)」、「低減する(reducing)」、「阻止する(preventing)」、「回避する(avoiding)」という用語またはこれらの用語の任意の変化形は、特許請求の範囲および/または明細書で用いられる場合、所望の結果を実現するための任意の測定可能な減少または完全な抑制を含む。
【0016】
「効果的な(effective)」という用語は、この用語が明細書および/または特許請求の範囲で用いられる場合、所望の予想される、または、意図される結果を達成するのに適していることを意味する。
【0017】
特許請求の範囲または明細書において「備える(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」または「有する(having)」という用語とともに用いられる場合の「一つの(a)」または「一つの(an)」という語の使用は、「一つの(one)」を意味する可能性があるが、「一つ以上の(one or more)」、「少なくとも一つの(at least one)」および「一つのまたは二つ以上の(one or more than one)」の意味にも一致する。
【0018】
「備える(comprising)」(および備える(comprise)および備える(comprises)等の備える(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(および有する(have)および有する(has)等の有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(および含む(includes)および含む(include)等の含む(including)の任意の形態)または「含む(containing)」(および含む(contains)および含む(contain)等の含む(containing)の任意の形態)という語は、包括的でありまたはオープンエンドであり、および追加的で列挙されない要素または方法ステップを除外しない。
【0019】
本発明のプロセスは、明細書を通して開示されている特定の材料、成分、組成等「を備える」、「から本質的に成る」または「から成る」ことができる。
【0020】
「主に(primarily)」という用語は、この用語が明細書および/または特許請求の範囲において用いられる場合、50重量%、50モル%および50体積%のうちのいずれかよりも大きいことを意味する。例えば、「主に(primarily)」は、50.1重量%~100重量%およびこれらの間のすべての値および範囲を含み、50.1モル%~100モル%およびこれらの間のすべての値および範囲を含み、または、50.1体積%~100体積%およびこれらの間のすべての値および範囲を含む得る。
【0021】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の図面、詳細な説明および実施例から明らかになるであろう。しかし、図面、詳細な説明および実施例は、本発明の具体的な実施形態を示してはいるが、単に例示として提示され、および限定することを意味するものではないことを理解すべきである。さらに、本発明の趣旨および範囲内での変形および変更は、当業者には、この詳細な説明から明らかになるであろうことが意図されている。さらなる実施形態において、特定の実施形態の形状構成は、他の実施形態の形状構成と組合せてもよい。例えば、一つの実施形態の形状構成を、他の実施形態のうちのいずれかの形状構成と組合せてもよい。さらなる実施形態においては、追加的な形状構成を、本願明細書に記載されている特定の実施形態に加えてもよい。
【0022】
より完全な理解のために、添付図面とともに解釈して以下の説明について言及する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態による、炭化水素ストリームを処理するシステムの概要図を示す。
【
図2】本発明の実施形態による、水蒸気分解炉の対流部の概要図を示す。
【
図3】本発明の実施形態による、炭化水素ストリームを処理する方法の概要フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
現在、スチームクラッカーの対流部はファウリングに悩まされている。したがって、スチームクラッカーは、定期的にファウリングを除去するためにクリーニングしなければならず、その結果として、操業時間のロスを生じ、スチームクラッカーの生産効率の低下を生じている。本発明は、この問題に対する解決策を提供する。
【0025】
解決策は、スチームクラッキングシステムの対流部内にポリマー複合材管を備えるスチームクラッキングシステムと、前記スチームクラッキングシステムを用いて、炭化水素ストリームを処理する方法とを前提としている。特に、ポリマー複合材管は、スチームクラッカーの対流部のファウリングを軽減し、それによって、ファウリングを除去するのに必要な時間を減少させ、そしてスチームクラッカーの全体効率を向上させるように構成されている。本発明のこれらおよびその他の非限定的な態様は、以下の段落に、より詳細に記載されている。
【0026】
A.炭化水素を処理するシステム
本発明の実施形態において、熱分解油ストリームを含む炭化水素ストリームを処理するシステムは、スチームクラッカーの対流部内でのファウリングを低減することが可能であり、それにより、スチームクラッカーの生産効率が向上する。
【0027】
図1を参照すると、炭化水素ストリームを処理するために使用されるシステム100の概要図が図示されている。
【0028】
本発明の実施形態によれば、システム100は、炭化水素ストリーム11を精製して、精製された炭化水素ストリーム12を生成するように構成された精製ユニット101を含む。
【0029】
炭化水素ストリーム11は、プラスチックの熱分解から生じる熱分解油ストリームを含むことができる。本発明の実施形態において、プラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカプロラクトン(PCL/ナイロンのようなプラスチック)またはこれらの組合せを含む。
【0030】
本発明の実施形態において、熱分解油ストリームは、有機性窒素、有機塩素、含酸素添加剤、ケイ素、フッ素、リンまたはこれらの組合せを含むヘテロ原子を含むことができる。熱分解油ストリームは、10~50重量%の不飽和炭化水素をさらに含むことができる。精製された炭化水素ストリーム12は、精製された熱分解油ストリームを含むことができる。精製された炭化水素ストリーム12は、0.1重量%未満のヘテロ原子を含んでいる可能性がある。精製された炭化水素ストリーム12は、1~50重量%の不飽和炭化水素を含んでいる可能性がある。本発明の実施形態において、精製ユニット101は、熱分解油ストリームからヘテロ原子を除去するように構成されている。精製ユニット101はさらに、熱分解油ストリームから少なくともいくつかの微粒子、粒子を除去するように構成してもよい。本発明の実施形態において、精製ユニット101は、吸着ユニット、水素化処理ユニットまたはこれらの組合せを含むことができる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、システム100は、精製された炭化水素ストリーム12を水蒸気分解して、オレフィンおよび/または芳香族化合物を含む分解されたストリーム13を生成するように構成されたスチームクラッキングユニット102を含む。本発明の実施形態において、スチームクラッキングユニット102は、一つ以上の水蒸気分解炉を備えている。水蒸気分解炉は、対流部および放射部を含むことができる。
【0032】
本発明の実施形態において、スチームクラッキングユニット102内で、水蒸気分解炉の対流部は、一つ以上のポリマー複合材管(polymer composite tubes)を備えている。前記ポリマー複合材管は、バンドル状にすることができる。ポリマー複合材管は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、パーフルオロアルコキシ(PFA)またはこれらの組合せを含むポリマー複合材料で構成することができる。
【0033】
前記ポリマー複合材管は、ポリフェニレンサルファイドから成り、前記複合材管は、20~300℃の動作温度限界の範囲、ならびに20~40℃、40~60℃、60~80℃、80~100℃、100~120℃、120~140℃、140~160℃、160~180℃、180~200℃、200~220℃、220~240℃、240~260℃、260~280℃および280~300℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の動作温度限界を有することができる。
【0034】
本発明の実施形態において、対流部は、放射部内での分解のために原材料(例えば、精製された炭化水素ストリーム12)を準備するように構成されている。
図2に示すように、水蒸気分解炉の対流部は、フィードプレヒータバンク201と、上方混合プレヒータバンク202と、下方混合プレヒータバンク203とを含むことができる。
【0035】
本発明の実施形態において、フィードプレヒータバンク201は、精製された炭化水素ストリーム12(例えば、プラスチック由来の熱分解油ストリーム)を第一の温度まで加熱するように構成されている。本発明の実施形態において、第一の温度は、60~150℃の範囲内にあり、ならびに60~70℃、70~80℃、80~90℃、90~100℃、100~110℃、110~120℃、120~130℃、130~140℃および140~150℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値である。
【0036】
上方混合プレヒータバンク202は、(1)フィードプレヒータバンク201からの、予熱された、精製された炭化水素ストリーム12と、(2)水蒸気と、の混合物を、第二の温度まで加熱するように構成することができる。発明の実施形態において、第二の温度は、150~230℃の範囲内にあり、ならびに150~160℃、160~170℃、170~180℃、180~190°℃、190~200℃、200~210℃、210~220℃および220~230℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値である。
【0037】
本発明の実施形態において、下方混合プレヒータバンク203は、上方混合プレヒータバンク202からの混合物を第三の温度までさらに加熱するように構成されている。第三の温度は、300~600℃の範囲内とすることができ、ならびに300~330℃、330~360℃、360~390℃、390~420℃、420~450℃、450~480℃、480~510℃、510~540℃、540~570℃および570~600℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値とすることができる。
【0038】
本発明の実施形態において、フィードプレヒータバンク201、上方混合プレヒータバンク202および/または下方混合プレヒータバンク203は、水蒸気分解炉の放射部からの煙道ガスを用いて加熱される。
【0039】
本発明の実施形態において、フィードプレヒータバンク201内の煙道ガスは、140~260℃の温度であり、ならびに140~150℃、150~160℃、160~170℃、170~180℃、180~190℃、190~200℃、200~210℃、210~220℃、220~230℃、230~240℃、240~250℃および250~260℃の間のすべての範囲および値の温度である。
【0040】
本発明の実施形態において、上方混合プレヒータバンク202内の煙道ガスは、420~550℃の温度であり、ならびに420~430℃、430~440℃、440~450℃、450~460℃、460~470℃、470~480℃、480~490℃、490~500℃、500~510℃、510~520℃、520~530℃、530~540℃および540~550℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の温度である。
【0041】
本発明の実施形態において、下方混合プレヒータバンク203内の煙道ガスは、760~1140℃の温度であり、ならびに760~790℃、790~820℃、820~850℃、850~880℃、880~910℃、910~940℃、940~970℃、970~1000℃、1000~1030℃、1030~1060℃、1060~1090℃、1090~1120℃および1120~1140℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の温度である。
【0042】
本発明の実施形態によれば、フィードプレヒータバンク201は、一つ以上のポリマー複合材管を備えている。
【0043】
B.炭化水素ストリームを水蒸気分解する方法
本発明の実施形態においては、プラスチックから生じる熱分解油ストリームを含む炭化水素ストリームを処理する方法が記載されている。
図3に示すように、本発明の実施形態は、プラスチック由来の熱分解油を処理する方法300を含む。方法300は、
図1に示すような、上述したシステム100によって実施することができる。
【0044】
本発明の実施形態によれば、ブロック301に示すように、方法300は、精製ユニット101内で、炭化水素ストリーム11の熱分解油からヘテロ原子汚染物を除去して、精製された炭化水素ストリーム12の精製された熱分解油を生成することを含む。本発明の実施形態において、熱分解油は、プラスチックを熱分解することから生成される。プラスチックは、廃棄プラスチックを含んでいてもよい。熱分解油を生成するのに用いられる例示的なプラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカプロラクトン(PCL/ナイロンのようなプラスチック)またはこれらの組合せを含んでもよい。
【0045】
本発明の実施形態において、熱分解油は、合計で1000~50000ppmのヘテロ原子を含む。精製された熱分解油は、100~1000ppmのヘテロ原子を含むことができる。本発明の実施形態では、ブロック301において、精製ユニット101は、吸着ユニットおよび/または水素化処理ユニットを含む。本発明の実施形態において、吸着ユニットは、汚染物を除去するように、および/または少なくともいくつかの不飽和化合物を除去するように構成されている。水素化処理ユニットは、後のプロセスでの除去のために汚染物を無機化合物に変換するように、および/または、水素を用いて不飽和化合物を飽和化合物に変換するように構成することができる。ブロック301における熱分解油は、10~50重量%の不飽和炭化水素を含むことができる。精製された熱分解油は、本発明の実施形態において、1~50重量%の不飽和炭化水素を含むことができる。本発明の実施形態では、ブロック301において、精製ユニット101は、熱分解油から不飽和炭化水素を実質的に除去しないように構成されている。精製ユニット101は、ブロック301において、350~450℃の動作温度で動作させることができる。精製ユニット101は、ブロック301において、40~130barの動作圧力で動作させることができる。
【0046】
本発明の実施形態によれば、ブロック302に示すように、方法300は、スチームクラッキングユニット102内で、精製された熱分解油を水蒸気分解して、オレフィンおよび芳香族化合物を生成することを含む。本発明の実施形態では、ブロック302において、スチームクラッキングユニット102の一つ以上の水蒸気分解炉は、前記水蒸気分解炉の対流部内でのファウリング率を低減するように構成されたポリマー複合材管を備えている。本発明の実施形態において、対流部内でのファウリングは、一つ以上のポリマー、コークス、ポリスチレン、インディナス(indienes)、シクロペンタジエンまたはこれらの組合せを含む可能性がある。
【0047】
本発明の実施形態において、ポリマー複合材管は、一つ以上の水蒸気分解炉の対流部内にある。ポリマー複合材管は、一つ以上の水蒸気分解炉のフィードプレヒータバンク201内にある可能性がある。本発明の実施形態において、フィードプレヒータは、140~260℃の温度で、ならびに140~150℃、150~160℃、160~170℃、170~180℃、180~190℃、190~200℃、200~210℃、210~220℃、220~230℃、230~240℃、240~250℃および250~260℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の温度で作動される。
【0048】
本発明の実施形態では、ブロック302において、熱分解油は、800~850℃の温度で、ならびに800~805℃、805~810℃、810~815℃、815~820℃、820~825℃、825~830℃、830~835℃、835~840℃、840~845℃および845~850℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の温度で分解される。
【0049】
本発明の実施形態では、ブロック302において、スチームクラッキングユニット102は、10~700msの滞留時間、ならびに10~50ms、50~100ms、100~150ms、150~200ms、200~250ms、250~300ms、300~350ms、350~400ms、400~450ms、450~500ms、500~550ms、550~600ms、600~650msおよび650~700msの範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の滞留時間で作動される。
【0050】
本発明の実施形態では、ブロック302において、水蒸気分解は、0.35~1.0の炭化水素に対する水蒸気の重量比、ならびに0.35~0.40、0.40~0.45、0.45~0.50、0.50~0.55、0.55~0.60、0.60~0.65、0.65~0.70、0.70~0.75、0.75~0.80、0.80~0.85、0.85~0.90、0.90~0.95および0.95~1.0の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の炭化水素に対する水蒸気の重量比で実行される。
【0051】
本発明の実施形態では、ブロック302において、熱分解油は、50~100%の変換率、ならびに50~60%、60~70%、70~80%、80~90%および90~100%の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の変換率で分解される。本発明の実施形態において、熱分解油の変換率は、熱分解油中の芳香族化合物の割合に依存する。場合により、熱分解油は、100重量%のパラフィンを含むことができ、そして、熱分解油の変換率は実質的に100%になる可能性がある。ブロック302において、生成されたオレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、ブタジエン、ペンタジエンまたはこれらの組合せを含むことができる。生成された芳香族化合物は、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレンまたはこれらの組合せを含むことができる。
【0052】
本発明の実施形態を
図3のブロックを参照して説明してきたが、本発明の実施は、
図3に図示されている特定のブロックおよび/またはブロックの特定の順番に限定されないことを正しく認識すべきである。したがって、本発明の実施形態は、さまざまなブロックを
図3の順序とは異なる順序で用いて、本願明細書に記載されているような機能を提供することができる。
【0053】
本願明細書に記載されているシステムおよびプロセスは、示されていない、化学的プロセスの当業者に知られているさまざまな装置も含むことができる。例えば、いくつかのコントローラ、配管、コンピュータ、バルブ、ポンプ、ヒータ、熱電対、圧力計、ミキサー、熱交換器等は示されていない可能性がある。
【0054】
本発明の文章には、少なくとも以下の12の実施形態が記載されている。
【0055】
実施形態1は、炭化水素ストリームを処理する方法である。前記方法は、一つ以上のポリマー複合材管を含む対流部を備えるスチームクラッカー内で前記炭化水素ストリームを水蒸気分解することを含む。
【0056】
実施形態2は、熱分解油ストリームを処理する方法である。前記方法は、精製ユニット内で前記熱分解油ストリームからヘテロ原子汚染物を除去して、精製された熱分解油を生成することを含む。前記方法は、スチームクラッカー内で、精製された前記熱分解油ストリームを水蒸気分解して、オレフィンおよび芳香族化合物を生成することをさらに含み、前記スチームクラッカーは、一つ以上のポリマー複合材管を含む対流部を含む。
【0057】
実施形態3は、実施形態1、2のうちのいずれかの方法であり、前記対流部は、前記スチームクラッカーのフィードプレヒータを含む。
【0058】
実施形態4は、実施形態1~実施形態3のうちのいずれかの方法であり、前記フィードプレヒータは、140~260℃の温度で作動される。
【0059】
実施形態5は、実施形態1~実施形態4のうちのいずれかの方法であり、前記フィードプレヒータは、前記スチームクラッカーの放射部内で生成された煙道ガスによって加熱される。
【0060】
実施形態6は、実施形態1~実施形態5のうちのいずれかの方法であり、前記ポリマー複合材管は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、パーフルオロアルコキシ(PFA)またはこれらの組合せを含む。
【0061】
実施形態7は、実施形態1~実施形態6のうちのいずれかの方法であり、前記ポリマー複合材管は、20~300℃の動作温度限界を有している。
【0062】
実施形態8は、実施形態1~実施形態7のうちのいずれかの方法であり、前記精製ユニットは、吸着ユニット、水素化処理ユニットを含む。
【0063】
実施形態9は、実施形態1~実施形態8のうちのいずれかの方法であり、前記熱分解油は、10重量%を超える不飽和分子を含む。
【0064】
実施形態10は、実施形態1~実施形態9のうちのいずれかの方法であり、前記ポリマー複合材管は、前記スチームクラッカー内の不飽和分子のファウリングを軽減するように構成されている。
【0065】
実施形態11は、実施形態1~実施形態10のうちのいずれかの方法であり、前記スチームクラッカーの前記対流部は、フィードプレヒータバンクと、上方混合プレヒータバンクと、下方混合プレヒータバンクとを含む。
【0066】
実施形態12は、熱分解油ストリームを処理する方法である。前記方法は、精製ユニット内で前記熱分解油ストリームからヘテロ原子汚染物を除去して、精製された熱分解油を生成することを含む。前記方法は、スチームクラッカー内で、精製された前記熱分解油ストリームを水蒸気分解して、オレフィンおよび芳香族化合物を生成することをさらに含み、前記スチームクラッカーは、一つ以上のポリマー複合材管を含むフィードプレヒータを含む。
【0067】
上述したおよび本願明細書に記載されているすべての実施形態は、明確に除外されていない限り、任意の方法で組合せることができる。
【0068】
本出願の実施形態およびそれらの利点を詳細に説明してきたが、本願明細書において、さまざまな変形、置換および変更を、添付の特許請求の範囲によって定義される実施形態の趣旨および範囲から逸脱することなく行えることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載されているプロセス、機械、生産物、組成物、手段、方法およびステップの具体的な実施形態に限定されることを意図されていない。当業者は、上記開示から容易に認識するであろうから、実質的に同じ機能を実行する、または、本願明細書に記載されている対応する実施形態と実質的に同じ結果を達成する、現存するかまたは後に開発されるプロセス、機械、生産物、組成物、手段、方法またはステップを利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、それらの範囲内に、このようなプロセス、機械、生産物、組成物、手段、方法またはステップを含むように意図されている。
【国際調査報告】